09/06/13 23:05:51 GEiDhvuZ
とらドラif『あるいは、裏方な二人』
「北村君ちょっといいかな」
ソフトボールの練習後、グランドの整備が終わったころを見計らい、櫛枝みのりは北村祐作を呼び出した。
「ああ、別にかまわんぞ」
普段の櫛枝からはあまり見られない、笑いを隠した真剣そのものの表情に、北村は多少声を落としながら答えた。
残っていた生徒と別れを告げて、櫛枝と連れ添い人気の少ない体育館の裏側までやってきた。
何のために呼び出されたのか検討は付かないし、一年以上部活の関係で顔をあわせているが、こんな様子の櫛枝を見たのは初めてだった。
何かを言い出そうとしているが、それを口にするのをためらうように、若干考えるそぶりを見せた後、思いを打ち明けた。
「大河と高須君がツーショットなのッ!!」
前後の会話がぶっ飛んだ内容に、さすがの北村も一呼吸の間脳の活動が停止、再起動まで3、2、1、
「そっ、そうなのか。それは知らなかった。最近何かと一緒にいると思ったらそういうことだったのか」
「毎日気づいていないと思っているのかな? 大河達毎日一緒に登校してる。私はいっつもお邪魔虫。いつ打ち明けてくれるのかなってずっと待ていた……しかしッ!! いつまでたっても打ち明けてくれない」
地面の上でごろんごろんと転がる櫛枝、すでに土ぼこりで汚れていたユニフォームが、いっそう焦げちゃに、染め上がっていく。
「確かに、一言教えてくれてもいいものだ。高須と逢坂のために是非、祝電のひとつも書き上げてやりたいものだ」
両手を組みながら大きくうなずき、頭の中で二人に送る言葉を考え込む。そこで、櫛枝は、地面をなぞる人間ローラをやっと停止し、起き上がり、
「でもね、私思うの。大河って気難しいところもあって、根っこはとってもシャイなの、もしかしたら、まだちゃんと言ってないのかも。それで、私たちに報告できないのかなって」
「なるほど、高須にしてもあの顔のせいで、女性に対して積極的な性格ではないからなぁ。奥手な二人、互いを思いながらも、最後の一歩が踏み出せないっていうところか」
「そうなのッ!! そこで、この愛天使みのりちゃんが、シャイな二人の恋をひそかに応援してやろうってわけさッ!! そこで、高須君の親友である北村君にも是非協力してもらいたいわけ」
「なるほどな。いいだろうっ!!」
眼鏡を“きらん”と、怪しく光らせながら、北村はその手を櫛枝にさしだした。
「愛するもの達のために、共に親友のために影ながら応援しようじゃないか」
「さっすが北村君、話がわかるじゃないかッ!! 私はいま、めがっさ燃えているよ。愛という名の炎が私の中で熱くたぎっているよ~~~、私はいま燃えている~~~ッ!!!」
この二人の怪しい会談を偶然目撃したソフトボール部部員Aは後にこう語る。
『二人して両手を握り合いながら、高笑いしちゃって。まるで、世界征服をたくらむ魔王と参謀って感じ』