10/02/22 03:40:30 NGyoaR30
「とって・・・」
勇は言われるがまま華乃のかばんを取ると、中からプレゼント用の包装に包まれた物を見つけた。
「これ・・・まさか・・・」
「う・・・ん・・・」
華乃は勇からその包を受け取ると、再び勇の前に差し出した。その震える手で。
「お・・・たんじょう・・・び・・・おめで・・・とう・・・」
「まさか・・・このために・・・」
勇はその時、ようやく華乃の手がばんそうこうだらけであるのに気がついた。
「華乃・・・」
「勇・・・ごめん・・・ね・・・」
「謝るのは俺のほうだ・・・ごめん・・・」
もっと早く帰宅していれば、そもそももっと早く仲直りをして、一緒に帰宅していればこんなことにはならなかった、と勇は自分を責めた。
「勇・・・」
「なんだ」
「好き・・・キス・・・して・・・」
「ああ、俺も好きだ・・・愛してる・・・」
勇は華乃の唇に自らの唇を重ねた。
(うれしい・・・勇・・・)
華乃の意識はそこで暗転していった。
「華乃?」
唇を離してみるとすでに華乃の目から光が消えていた。
「華乃!」
勇は華乃の大きな胸をかき分けて谷間に手を突っ込むと、すでに心臓がその鼓動を停止させていた。
「駄目だ華乃!死ぬな!」
勇はその後、心臓マッサージと人工呼吸を繰り返した。
華乃の悲鳴を聞いた近所の人の通報と勇の懸命な救命活動により華乃は一命を取り留めることができた。しかし、体の損傷はあまりにも酷く、肋骨
の粉砕骨折、子宮、膀胱、卵巣の圧壊、肝臓損傷、胃の破裂、電流による神経系の損傷と十四時間にもわたる大手術が必要な程であった。当然ながら、彼女の格闘家としての選手生命は永遠に断たれた。