【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合38at EROPARO
【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合38 - 暇つぶし2ch755:ハレルヤ! 魔法が消える日(1)
09/11/18 01:18:26 ECvoG1LJ
それは、我々が住まう世界とは別の世界のことである。
トリステイン王国。
美しく整備された都は花に彩られ、人々が幸福の中に一年中飽くことを知らず、
平和に満ちあふれた国……は、見かけ倒しの偽りであった。
現実は……神より授かりしものと信じて疑わぬ力、『魔法』を使う能力を持つ者、『貴族』。
それを持たざる者、『平民』。
貴族は平民を、魔法という暴力装置によって支配し、抑圧し、搾取する社会。
威を誇り、平民のわずかな富を奪い取り、酒食に耽りて自らは励まず。
平民は諦観と絶望にくれるのみ。貴族への憎悪はあれど、抵抗する手段はない。
それが数百年、数千年、永遠に続くものと誰もが信じていた。
あの恐ろしい出来事は、ほんのわずかな心の隙をついたものだったのかも知れない……。

月が朱に染まった。
天空の星々が位置に乱れを生じ始めた。
「破滅が来るぞ!」
「我らには災いが待っている!」
「大いなる不幸が襲う!」
予言者たちの、災いの到来を叫ぶ声が、貴族たちの闊歩する通りに響きわたった。
しかし、貴族たちはそんな予言を嘲った。月や星の異常など、すぐおさまると信じていた。
だが、そんな楽観はすぐに消えることになる。
それから間もなく、温暖であったトリステインの気候が崩れ出したのだ。
貴族が平民から奪い取るための稔りをもたらし続けた太陽は分厚い雲の向こうに隠れた。
季節外れの北風が大地に吹き付け、草花を枯らしていった。
誰もが経験したことのない、深刻な凶作がトリステインを襲った。
だが貴族は容赦せず、搾取を続けた。平民の命綱となる作物を奪い取った。
それは豊作、不作に関わらず、収穫の時期のいつものことであった。
だが……。
都の郊外の農村にて、それは始まった。
「まだ隠しているだろう! さあ、作物を出せ!!」
「お願いします、これ以上お渡ししては、我々は飢えてしまいます」
「うるさい!! 出せと言ったら出せ!」
小作人の平民と地主の貴族の押し問答が起きていた。
「父ちゃんをいじめるな!」
「うわっ!」
突然、横から飛び出してきた少年の体当たりを受けて地主の貴族は倒れた。
「お、おい、地主様になんてことをするんだ! 謝れ!」
「やだ! こいつなんか貴族じゃない、泥棒だ!」
少年は毅然と言う。
「く、くそっ、このガキ……少し痛い目に合わせてやる!」
「お、お許しを! 良く言って聞かせますから」
「うるさい! もう許さん、食らえ!!」
火の魔法の使い手を自称する貴族は、魔法の詠唱を始めた。
「うわっ! や、やめ……」
魔法が放たれた……はずが、何も起きない。
「?」
平民の親子には、焦げ目一つついていない。
「な、なんだ!? 一体どうしたのだ!? こんなはずは……」
使い慣れているはずの魔法が、全く発動されない。
焦って詠唱を繰り返す貴族だが、火はおろか、煙一つ上がらない。
これには平民の親子も唖然とするばかりだ。何が起きたのだ?
ともかくこれは、形勢逆転のチャンスだ。
「食らえっ、野郎ーっ!!」
平民の父親は必死に詠唱し続ける貴族の顔目がけて、大きめの石を投げつけた。
「ぎゃあああああーっ!!」
石が額に命中した貴族は地面をのたうち回った。
「今だ、やっちまえー!!」
物陰から一部始終を見ていた平民たちが飛び出してきて、一斉に袋叩きにかかった。平民の親子も一緒だ。
ものの10分とたたぬうちに、貴族は事切れた。


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