【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 4冊目at EROPARO
【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 4冊目 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
09/05/14 07:11:44 1qeJoZyp
2げと。>>1

3:名無しさん@ピンキー
09/05/14 08:16:20 h16Hxwsg
>>1
乙。前スレ>>973もGJ

4:名無しさん@ピンキー
09/05/14 09:24:58 xFEbhaha
前スレ>>973乙した!ようやく切彦ちゃんのエロが来たか…

5:名無しさん@ピンキー
09/05/14 11:14:48 iSBKuDRZ
おお、やっと切彦ちゃんモノがきたか

6:名無しさん@ピンキー
09/05/14 18:45:40 w6Xcutc0
乙たてさまー>>1

7:名無しさん@ピンキー
09/05/15 00:42:23 Vvoznc6e
前スレのキリヒコちゃん、ご馳走様でした

8:名無しさん@ピンキー
09/05/15 03:54:48 BKV5IMoY
切彦ちゃんもいいな


まあ一番いいのは夕乃さんだけどな!

9:名無しさん@ピンキー
09/05/15 22:17:16 Ds4dt88W
>>1


誰かwikiを……

10:名無しさん@ピンキー
09/05/19 04:38:59 +qC43OuZ
環さん

11:名無しさん@ピンキー
09/05/19 14:51:26 OqN5sRCX
雪姫

12:名無しさん@ピンキー
09/05/19 15:58:24 IQEvMGns
環さんのエロは難しい

13:名無しさん@ピンキー
09/05/19 19:58:29 T9YPEMaK
エロを書いてくれる方が来るまでのつなぎということで、少しずつ書いてみます。
前スレの「約束」っていうのの続きです。

紫と夕乃に問い詰められた真九郎が部屋から逃げ出した後の話になります。
次レスから投下します。
エロはありません。


14:依頼
09/05/19 19:59:28 T9YPEMaK

仕事の依頼というのは何のこともないただの相談だった。
急ぎの依頼と言ったのは紅香が忘れていたからだ。
本来なら昨日に連絡するところをあまりに忙しく、重要な件ではないので伝え忘れていた、すまんな、と軽く謝っていた。
滅多にない失敗だが、たまにあるのだろうか、と真九郎は考える。
だが、助けてもらったことにはかわりないので一応礼を言っておいた。
紅香は不思議な顔をしたが、理由は聞かずに、気にするな、とだけ声を掛ける。


真九郎が紅香に指示された場所に行くと二人の少女が待っていた。
一人は光。
落ち着きがなく、そわそわしている。

もう一人は見たこともない少女。
元気そうな光とは対照的に落ち着いた清楚な空気を纏っているように感じた。
肩より少し長い黒髪がそよ風で揺れ、その姿勢の良い立ち方のせいか少し大人びて見える。
持っていた鞄には小さなピアノのキーホルダーのようなものが付いていた。
ただの付き添いだろうか。

「私、堕花光といいます。この前は…」

『堕花』という名字に真九郎は少し動揺するが、顔には出さずに自己紹介をする。

「揉め事処理屋の紅真九郎です。こんにちは。
 こんなにすぐに会うことになるなんて思ってなかったよ」

「あ、あのっ、私は、工藤綾です。あの…」

隣にいた少女も自己紹介をした。
どこか話し辛そうにしたまま口をつぐんだ。
代わりにだろうか、光が話しだした。

「すみません。私、『揉め事処理屋』なんて知らなくて。この前もらった名刺をお母さんに見せて相談したらどこかに連絡していたようで。
 何かあるなら相談に乗ってくれる人がいるって。それで今日ここに来るように言われて…」

光の母親が紅香さんに連絡を取ったということになる。
ってことはやっぱりあの『堕花』なのか…?
でもこの娘は何も知らなそうだ。
真九郎の名刺の相談だから紅香は真九郎に話をもってきたのだろうか…。

「相談っていうのは、私、お姉ちゃんがいるんですけど、最近ずっと変な不良に絡まれてて…。
 『私はジュウ様の下僕にしていただいた』とか『前世の強い絆がある』とか言っていて。
 お姉ちゃんがその男にたぶらかされるのを見ていられないんです!
 だから、その男の普段の生活を追ってみようと思って、私ったらあんな行動を…。

 だ、だ、だから!こ、この前のことは誰にも言わないでください!!」


15:依頼
09/05/19 20:00:16 T9YPEMaK

恥ずかしそうに顔を赤く染め、頭を下げながら言い訳をする光。
隣の少女は穏やかな顔をして真九郎のことを不思議そうに眺めている。
何かを思い出しそうとしているようにも見えた。

前に見た光の行動を思い出し、笑いそうになる真九郎。
笑いを誤魔化しながら光に尋ねる。

「もちろん、誰にも言わないよ。
 その話だけ聞くとちょっと危ないね。
 依頼っていうのは、その『ジュウ様』っていう男の人を何とかしてほしいの?」

嫌な予感が頭をよぎったが、無視することにした。
でもこういう時の予感って的中率が凄いんだよな…。

「いえ、どんな人間か見極めて欲しいんです。
 悪い奴ではないのですが、こういう仕事をしている紅さんなら色んな人を見てきていると思うので。
 なぜか私も助けられたことがあって…、私にはあいつの考えがまるでわかりませんでした」

「じゃあ、今知っていること教えてくれる?」

「はい。え~と、外見は金髪、背は高くて、目つきが悪い。周りからも不良と言われていて恐れられているような…。
 やる気のない態度が全面に出ていて、かなり強いです。それからいつも左手首に高そうな腕時計をしていたと思います。
 名前は柔沢ジュウです」

真九郎は「やっぱりか~」と心の中で唱えながら光に対応する。
同時に紅香が言っていた言葉を思い出す。
『何も出来ないヘタレな息子』のようなことを言っていたと思うけど…。
彼のどこがヘタレなんだろうと疑問を持つ真九郎。

きっと基準が紅香ということがそもそもの間違いなのだろう。
あの人を基準にしたらヘタレじゃない人間は世界中でどれだけいるのだろうか。

「あ~、君のお姉さんはきっと大丈夫だよ。安心していいと思う。
 もしその柔沢君が悪いことをするようだったら、誰も逆らえないくらい圧倒的に強くて怖い真っ赤な人がちゃんと止めてくれるはずだし。
 多分、ぐぅの音も出ないくらいコテンパンにやられちゃうよ。
 だから安心していいよ。その人が動いたら大抵の問題は一瞬に解決しちゃうしね。
 まぁ、常識はないけどね。『授業参観』っていう言葉を知らなかったくらいだから」

「知ってるんですか?」

「少しだけね」

依頼を受けそうになっている今の状況でこんなことを言うのはなんだが、真九郎としては紅香の個人情報はあまり触れたくはないというのが本音だ。
紅香のことは知らない方がいい情報があまりに多過ぎる。
それでトラブルになり、殺されかけた経験もある。


16:依頼
09/05/19 20:01:02 T9YPEMaK

ジュウを調べるということは紅香を調べるということに直結する。
だから断るというわけではないが、今回の話では真九郎の力になれることはなさそうだ。
もしかしたら紅香はこの依頼の内容を知っていたのかもしれない。
真九郎に依頼を持ってきたのはそういう理由もあるのかもしれない。
紅香の素性を知っている人間はごく一部だ。
今回の依頼を受け、ジュウのことを調べると、紅香の住んでいる家や環境、家族のことにまで踏み込んでしまう恐れがある。

もし他の揉め事処理屋にこの情報が流れでもしたら…。
きっと莫大な料金で裏で取引されるだろう。
裏の世界で知らない者のいない柔沢紅香だが、その素性は極々一部の人間しか知らない。
もしかして本人は以外に誰も知らないのかもしれない。
きっとジュウにも揉め事処理屋のことは言っていないだろうと思う。

だけどこの話は紅香が持ってきた。
ということはこれは「引き受けろ」と暗に言っているのだろうか?

真九郎と光が接触したことを知って、光の母親が紅香に任せた。
紅香は真九郎と光を会わせるように仕組んだ。

少し考えさせてもらおうか…。

家庭環境のことなど知りたくない。
紅香のことで知りたいと思ったのは、九鳳院蓮杖との関係くらいだろう。

蓮杖との関係は未だ掴めていない。
訊いても笑うだけで教えてくれない。
怪しい関係でもあったのだろうか。
銀子に頼もうとしたことがあったが、以前紫のことを調べてもらったことを思い出し、やめておくことにした。

あの時銀子は目を細め、パソコンに向かってブツブツと呟いていたのをよく覚えている。
「データベースにハックしても手動でどんどん修復されていくのよ」と珍しく愚痴も零していた。
時間が経つのに比例して、機嫌も悪くなっていく。
銀子は真九郎にとって一番長い付き合いだが、そのような姿は見たことなかったし、見たくもなかった。
何より興味本位で人の過去をほじくり返すのは失礼極まりないことだと思う。

「そういえば光ちゃんのお母さんは柔沢くんのこと知ってるの?」


17:依頼
09/05/19 20:01:47 T9YPEMaK

「あ、はい。何度か家に来ているので。
 でも母やおっとりしていて、何の抵抗もなく受け入れてしまいました。
 心配したとこといえば…、柔沢ジュウの髪が痛んでいるかどうかだけです」

「…へぇ、ちょっと変わったお母さんだね。
 でも、うん、やっぱり大丈夫だと思うよ。
 会ったことはないけど光ちゃんのお母さんも、それに柔沢君のお母さんも人を見る目はあると思う。
 その人たちが問題ないと思ってるってことは、きっとそうなんだよ。
 多分、こんな言葉じゃ納得は出来ないだろうけどね…」

さすがに初対面の男にこんなことを言われても納得はできない。
やはり一応は調べてもらいたいものだ。

「そうですか。でも、もしもの…」と光が言いかけたところで、突然綾が真九郎の胸に抱きついた!
油断していた真九郎は何もすることが出来ずに体勢を崩し、よろけてしまう。
綾を良く見てみると真九郎の胸に顔を埋めながら強く抱き締め、肩を震わせていた。
泣いているのだろうか…?
いくら知らない人間だからといって、ここで身体を無理矢理離すような無粋な真似は真九郎にはできない。

どうしたんだろう?と考えたが、落ち着くまではこのままの方が良いだろう。
敵意や悪意や殺気は一切感じない。
初対面のはずなんだけど…。知り合いなのだろうか?

さっきまで紫と夕乃からの攻撃を回避するためだけに使っていた頭を働かせる。
見たことはない…、じゃあ間接的に知っている?
もしかして麻里子さんの知り合いとか?

杉原麻里子さんはあれから何度も知り合いを紹介してくれた。
『絶対信用できる頼れる正義の味方!!』というキャッチコピーをつけて自信満々に言うから、依頼者は期待するんだろうな。
依頼者に会った時、ちょっと残念な顔をされる度にショックを受けていたのを思い出す。
でもこの娘はそんな反応じゃなかった。
やっぱりわからない。
もうしばらく様子見か。

光も友人の突然の行動に驚いていた。
光には仲の良い友達でおしとやかな綾がこんな行動に出るなんて想像も出来ない。
知り合いなのかと訝しい顔を真九郎に向けるが、真九郎は目に見えて困っていた。


18:依頼
09/05/19 20:02:25 T9YPEMaK

光と真九郎は視線が合ったが何も言葉に出来ず、お互い苦笑いのまま綾が落ち着くのを待つ。

まだ「………っ、…ぅ。…ぅっ…」と声を漏らしているが、何とか落ち着いてきたようで息が整い始めた。
「……すみ…ません」とかすれた声で呟いた綾は真九郎を見上げる。
綾の顔は涙に濡れて、真九郎に何かを求めているようにも感じる。
とりあえず綾の頭を撫でながら、ハンカチを取り出し涙を拭ってあげた。
されるがままになっている綾に微笑みかけ、問いかけてみる。

「俺のこと知ってるの?」

「ぁっ、はぃ…。すみません。突然抱きついたりして…」
綾はそう言って紅潮した顔を隠すように両手で覆い、涙を拭っている。

「いや、いいよ。気にしないで。どこかで会ったことあるんだっけ?」

「はい。一度小さな頃に命を助けてもらいました。
 紅さんは制服を着ていたらしいので、多分高校生くらいの頃だと思います」

『高校の頃に命を助けた』か…。全く覚えがないけど。
高校生になって揉め事処理屋を始めてから一年以内に大変な仕事がいくつも入ったのを思い出す。
一流になるためには通らなければならない道なのだろうが、何度も死ぬ覚悟を決めた仕事だ。
『命を賭ける』ではなく、『死ぬ覚悟をする』ということ。
全力を尽くして、手を尽くして、ひたすら前を向いて歩くために『命を賭ける』のではなく、
現実から顔を背け、逃げるために死を選ぶ、生きることを諦めて『死ぬ覚悟をする』といったバカバカしい考え方が頭の中にあった頃の話だ。
早く一流になりたいということを考え、背伸びしようとしていた時期だから余計に危なかったのだろう。
生き残れたのは紫が居てくれたのと、運が良かっただけだろう。

あの頃の仕事といえば、
一つは、紫の護衛。
二つ目は、理津の護衛。
三つ目は、人探し。

どれも瀕死の重傷を負った。

紫の護衛をしていた頃は、麻里子さんから依頼と銀子からの依頼、あと紅香さんからの依頼だけだったと思う。
目の前の綾という少女が真九郎と関わるようなものはなかった。

理津さんの時は切彦ちゃんと会って、刺されて殺されかけて、帰り道に切られて殺されかけて、病院でもビッグフットに殺されかけて…。
…なんで今、生きているんだろうかと強く自問したくなる。

絶奈さんの時の依頼主は確か六歳くらいの女の子だから綾とは同年代のはず。
でも名前は…かりんとうを食べて喜んでいた…、…う~ん、瀬川、だったと思う。
…あの子は確か瀬川静之だ。
今でも元気だろうか?
姉さんはどうなったのかな?
懐かしい。
でも目の前の少女とは何の関係もないだろう。

話は変わるが、絶奈はあれから何かと絡んでくるようになった。
「私は崩月には負けないよ」と言い出し「右腕も星噛製にしてあげる」とか「なんなら身体全部でもいいよ」とか「家に来なよ」と怪しい笑顔で何度も迫ってきた。
もちろん丁重にお断りしているわけだけど、崩月の角を研究したいのだろうか?

あの事件のせいで紅香の代わりに真九郎が狙われるようになったらしい。
なんとかしたいものだけど、いくらなんでも相手が強すぎる。

『身体を酷使して、角の力を使い力を限界ギリギリまで引き出して、絶奈に全身の力を抜いてもらった状態で一発だけ全力のパンチを頭に打ち込ませてもらう』という有り得ないハンデをもらって、ようやく対等になれる相手だ。
敵対することはさすがにもう二度とないだろう。
今度、本気で闘ったら間違いなく殺されてしまう。


19:依頼
09/05/19 20:03:16 T9YPEMaK

だからいつも適当に流しているわけだけど、相変わらず身体に悪いアルコールを飲んでいるのだけは会うたびに注意する。
すると「そんなこと言うのはキミだけだよ」と顔を綻ばせていた。
こんな顔もできるんだ、と疑ってしまうほど優しい笑顔には毎回見蕩れてしまう。

いつか殺しあった時の狂気に塗れた絶奈のイメージとは全く掛け離れており、甘く柔らかい表情に今では大人の艶やかさも加わり、酔いで顔を赤く染めた無防備な姿は、思わず護りたくなってしまうような、そんな魅力で溢れていた。
もちろん何かあったら絶奈を護るなんて言ってられないし、女性らしさを持った絶奈と殺し合うことなんて真九郎には出来ない。

このことが夕乃に知られたら『崩月の一級戦鬼×星噛製陸戦兵器』の試合を生で見れるのだろうか。
マニアのルーシー・メイなら心を躍らせるだろうが、真九郎としてはあってはいけないことだと考えている。
だから絶対知られてはいけない。
…なんという危ない橋を渡っているのか、と今日になってやっと自覚した。

でも裏十三家の会合には出ているわけだから、きっと知り合いなんだろう。
そうすると切彦ちゃんも絡んでくるわけか…。
『崩月×星噛×斬島』なんてことに…。
ま、有り得ない、とそんな考えはそうそうに捨ててしまう。
『崩月夕乃+星噛絶奈+斬島切彦×紅真九郎』だったらあるだろうか。

有無を言わさず正座をさせられ反論の余地はない。
夕乃に笑顔で迫られ、酔った絶奈にからかわれ、切彦に冷静だが狂った口調で問い詰められる。
『闘う』なんていう選択肢は初めからなかったわけだ。
でも殺される感じはする。
闘ったらどうなるんだろうか。
切彦ちゃんに右腕と首を切断される。
絶奈さんに一発もらって気を失う。
夕乃さんには手も足も出ないことは目に見えるほど明らか。
対戦はまさに刹那の間に終わるだろう。

余計なことを考えていた思考を元に戻す。
綾に目を向けると真九郎がずっと難しい顔で考えていたからか、綾は顔を崩して心配しているようだった。


20:依頼
09/05/19 20:04:39 T9YPEMaK

じゃあこの娘は誰だろう。
他の依頼か?
暴走族に文句を言いに行ったり、落書き犯を捕まえたり…。
泣かれるようなことはしていないはずだけど…。
あぁ、そうか!人違いか!
この娘の為にも間違いは正しておかなければいけない。

「あの人…」

「そうです!小さい頃、人殺しの老人に誘拐されたんです!思い出してもらえましたか!?」

綾は嬉しそうに声を張って期待を込めた目を真九郎へ向ける。
今の世の中、人殺しの老人なんて一杯いるんだけど…。
人違いではなく、確信しているように思える。
さてどうしたものか?

なんか銀子のとこのラーメンが食べたくなってきたな。
そこで話を聞こうか?

「ごめんね。まだちょっと思い出せないかな。話は変わるけどお腹空かない?ラーメンでも食べに行こうか?
 おいしいところがあるからさ」

銀子に問いたださなければいけないことがあったので光と綾を誘ってみる。
二人とも「はい」と言ってついてきた。
良かった、昼ごはんはまだ食べてなかったようだ。

歩きながら改めて綾の顔を良く見てみるがやっぱり心当たりはない。
高校の頃だと何年前だろう。
それに小さい頃と言っていた。
面影はあるはずだと思って見つめるが全然思い出すことはできない。
何かきっかけでもあれば良いのだけど…。

真九郎は光と綾の話に耳を向ける。
名前だけでは国内か国外かはわからないが、ピアノコンクールで良いところまでいったという話が聞こえてきた。
ピアノをやっている幼い子を助けるという依頼された覚えはない。
他は雑談のようで特に目ぼしい情報はなかった。

「ちょっと遅くなったけど、ここでお昼を食べよう。なかなか好評でおいしいんだよ」

「あ、はい。何度かきたことあります。店員さん綺麗だし、ラーメンおいしいですよねっ」

綾は真九郎の言葉に素早く反応してくれる。
初対面だから気を使っているという風ではなく、真九郎に話しかけられたのが嬉しいようだった。
真九郎は二人を連れて風味亭の暖簾をくぐる。


21:名無しさん@ピンキー
09/05/19 20:06:00 T9YPEMaK
とりあえずここまでです。
では。

22:名無しさん@ピンキー
09/05/19 20:11:01 w2yk/mVj
GJ
やばいぜ、わくわくしてきたぜ

23:名無しさん@ピンキー
09/05/19 23:41:46 9Eg5oA0L
GJ
いいぞいいぞ、楽しみに待ってます

24:名無しさん@ピンキー
09/05/20 00:57:31 xtfjD8FO
>>21
おお、GJ!

25:名無しさん@ピンキー
09/05/20 04:30:59 l47/dL+b
>>21
乙した

26:名無しさん@ピンキー
09/05/21 10:42:22 Zw5LFetS
>>12
弥生さんのエロはもっと難しい

27:名無しさん@ピンキー
09/05/22 19:49:17 maPYJpIE
確かにムズイ

28:名無しさん@ピンキー
09/05/24 04:55:28 nq5x2WEY
闇絵さんもね

29:名無しさん@ピンキー
09/05/24 18:16:25 UMfIBwmD
Wikiいじってる?

30:名無しさん@ピンキー
09/05/24 18:19:15 9fBi2FE7
誰かわかる人やってくれ

31:名無しさん@ピンキー
09/05/24 22:11:35 pb1G8Hzu
誰か、是非妖艶な絶奈の純愛を…。
自分にはエロは書けないみたいです…。

あとWikiいじってみました。

トップページに四冊目リンクさせたのと
前スレが倉庫に入っていたので誰かが更新してくれてた
「バレンタインネタ」、「美夜救済SS」、「3スレ770」
の目次つけただけですが。


>>20の「依頼」の続きです。

とらドラを読んでいたせいか綾の母親が泰子になりました。

次から投下。


32:名無しさん@ピンキー
09/05/24 22:13:34 UMfIBwmD
乙しえ

33:楓味亭
09/05/24 22:15:51 pb1G8Hzu

「らっしゃい!おっ、シンちゃんじゃねぇか!ちょうど席が空いたところだ!そこ座んな!」

男らしく威勢の良い声が店内に響いた。
昼時を過ぎたせいか、客は一杯だがちょうど食べ終わった客がいたらしく、待つことはなかった。
カウンターではなく、端にあるテーブル席に着く。

しばらく待つと女性の店員が水とおしぼりを持ってきた。
眼鏡を掛けたその女性は何も言わず無愛想に真九郎を見つめ、連れの二人には「いらっしゃい」優しく声を掛ける。
真九郎は女性に向けられた目で「ロリコン」と言われた気がしたのは気のせいだろう。

「あっ、銀子。聞きたいことがあるんだけど…」

「何?」

「いや、後で良いや。とりあえず注文な。もやしラーメン大盛りと…」

「私は塩ラーメンをお願いします。光は?」

「じゃ私はチャーシューの醤油ラーメンで」

「はい。もやし大盛りと塩とチャーシューね。あっ、ちゃんとこのお兄さんに奢ってもらうんだよ」

「いえ、そんな…」

「いいよ。元々そのつもりだから。それにここだったらツケもきくしね」

「……あんた、いくら溜まってると思ってるの?
 こないだの料金もまだ振り込まれてないじゃない。
 プロだったらちゃんと期日は守って支払いなさいよ。
 もし今月中に払えなかったらウチでこき使ってあげるからね。
 いつかみたいに怪我して動けないなんてことにはならないでよね」

「あ、あぁ。もちろん」

「じゃ部屋を用意して待ってるわ。ラーメンはすぐ出来るから待っててね」

小さな頃から聞きなれた、冷たいけど温かい口調は相変わらずだ。
姿勢良く背筋は伸び、全体的に細く引き締まり、無駄な脂肪の全くない身体、
手足も綺麗でまるでモデルのようだった。
冷たそうな眼鏡の奥の瞳にはいつも優しさが詰まっていて何度となく助けられている。

「何度見ても惚れ惚れしてしまうくらい綺麗な人。仲良いんですね」

「まあ、長い付き合いだからね」

「どれくらいですか?」

「幼稚園から、だったかな?あいつがいなきゃ俺はこの仕事をやっていけなかっただろうから、すごく感謝しているんだ」


34:楓味亭
09/05/24 22:17:10 pb1G8Hzu

銀子がいなければ真九郎が本当の意味で頼れる情報屋はいなかっただろう。
いつだったか違う情報屋に依頼した時は必要な情報が足りず、結局銀子に依頼したくらいだ。

情報が足りないと仕事も上手く回せない。
情報の価値、というものの重さを知っているし、身に染みている。
どれだけ早く仕事を終えられるかということも情報の質に左右されるし、情報の真偽も大きく関わってくる。
今まで銀子の情報が間違っていたのは九鳳院の件だけだった。
九鳳院は特殊な体質のためどうしようもなかったのだろう。
極少数の人間しか知ることの出来ない奥の院。
噂で耳にすることはあるかもしれないが真実がどうかは九鳳院の人間と
九鳳院に密接に関わった人間にしかわからないことだった。

その上、友人としても大切な存在だ。
保育園では手をとって一緒に遊ぶようになってから、
その後色々あったけど何も言わず、ただずっと傍にいてくれた。
ずっと味方でいてくれた。
今でもちゃんと叱ってくれる。
銀子がいなければ今の真九郎はいなかっただろう。
銀子は相変わらず揉め事処理屋のことをよく思っていないが、
今でも続けていられることだけは評価しているようだった。

綾はいつの間にか母親にメールを打っていた。
綾の携帯が鳴り、電話に出ると綾は真九郎に替わるように促されたようで、
「母と話してもらえませんか?」と小さく言う。
携帯を渡された真九郎が電話に向かって話しかけた。

「あの…」

「こんにちは、綾の母の泰子といいます。
 あの時は、綾を助けていただいて本当にありがとうございました」

「あ、こんにちは。紅です。
 すみません。まだよく思い出せないんですけど、どんな事件だったんですか?」

「えっ、あぁ、そうですね。綾はどんな事件かは説明できませんからね。
 綾が巻き込まれたのは九年くらい前にあった事件です」

「…九年前?」

「老夫婦が幼い子どもの子宮を食べるという事件が全国各地で起きていて…。
 同じマンションにその人たちいたらしくて、綾が誘拐され、部屋に監禁されたそうです。
 なんとか逃げたらしいのですが外で捕まってしまって、そこで紅さんに助けてもらったと聞きました」

「老夫婦…?」

…聞いたことある気がする。
…たしか切彦ちゃんに巻き込まれる前くらいかな。

………。

………。

………。

「あぁ、あの時のっ!?」


35:楓味亭
09/05/24 22:18:46 pb1G8Hzu

やっと思い出すことが出来た。
『揉め事処理屋をやっていけるのか』『自分に向いているのか』『これは適職なのか』『天職なのか』と
将来のことを案じていた時期にあった事件だ。
昼飯を食べに行こうと楓味亭へ向かっている途中に見つけた様子のおかしい老夫婦が傍にいる
幼い少女に殺気を向けていることを感じ、ただ助けた。
真九郎にとってはそれだけのことだが、やはり少女にとっては命の恩人ということになる。

真九郎は綾と光に「ちょっと失礼するね」と声を掛け、足早に席を立ち、店の外へ出た。
もちろん綾に配慮しての行動だ。

「…あの、娘さんは事件のこと覚えているんですか?」

「覚えているというか、覚えていないというか…。
 事件の詳細は覚えていませんけど事件に巻き込まれたという記憶はあるみたいで。
 今でもなんとなく思い出すようで…」

「全部忘れることは出来なかったわけですか…。
 出来れば忘れてしまって、あんな事件なかったことになれば、って思っていたんですけど…。
 やっぱりあんな体験は忘れることは出来ませんよね…」

真九郎は自分の過去と照らし合わせてみる。
家族がいなくなった原因を作ったテロ。

爆音、
悲鳴、
瓦礫、
暗闇、
廃墟、
血の味、
焦げた臭い、
繋いだ手、
死臭、
救助、
絶望。

紫と会うまで誰にも言えないトラウマとなってずっと忘れることは出来なかった。
頭にこびりつき消えることはなかった。
悪夢に何度もうなされた。
全く向き合うことが出来なかった。

綾はそこまで酷い状態でない様子。
あんな酷い事件に巻き込まれた割には随分と良い精神状態のようで安心できた。

36:楓味亭
09/05/24 22:19:39 pb1G8Hzu

「いえ、思い出すのは助けてくれた男の子の部分がほとんどのようです。
 事件自体は思い出さないように話題にはしていませんが、
 綾はずっと助けてくれた高校生に会いたがっていたようで…。
 さっきすごく嬉しそうなメールで『あの人、見つかった!』って私の携帯に入ってきました。
 相当嬉しかったんでしょうね。ふふ。
 もし紅さんさえよければ、たまに会ってやってもらえませんか?」

「あ、はい、俺なんかでよければいつでも。
 でも、俺と関わるとますます忘れられなくなりそうですが」

「それは大丈夫だと思います。
 本来ならトラウマになるような事件のはずが綾が話題にする時はいつも笑顔ですから。
 『あの人に会いたい』って、ずっとそればかり言ってましたし」

本当に大丈夫なのだろうか…。
その後またお礼を言われ、電話を切った。
嘆息し、店に入って行く真九郎。

「はい、携帯。ありがとう。綾ちゃんのこと思い出したよ」

「そうですか。嬉しいです。あ、私のことは呼び捨てにしてください」

「呼び捨てでいいの?」

「はい。ちゃん付けだと嫌な感じがするんです。だから…」

「そっか、わかった。綾、だね」

「はい、お願いします。
 事件のこと、私はあまり覚えてないので説明も出来なくて…。
 でも真九郎さんのことだけは覚えてて。
 助けてくれた後も警察行ってもずっと一緒にいてくれたんですよね。
 それだけで、なんていうか…、すごく救われたんです」

「そう、役に立てて良かったよ」

「役に立てただなんて…。真九郎さんがあの時、
 助けてくれなかったら私は今ここにいることは出来ませんでした。
 私もお母さんも感謝の気持ちで一杯です」

「ありがとう。そんなに言ってもらえるとちょっと照れるね」

「でも本心ですから」

「でも、ま、元気でなによりだね」

「はいっ、真九郎さんのおかげです」


37:楓味亭
09/05/24 22:20:44 pb1G8Hzu

いつになく積極的な綾に驚いている光。
初対面の男の人に名前で呼びかけるなんて光の知っている綾ではありえない。
それほど感謝しているのだろう。
でもそれだけではないような気もする。

「あれはたまたま通りがかっただけだからね。俺の方こそ君に感謝しなきゃいけないな。
 俺が今でも揉め事処理屋なんて仕事やれているのは、君のおかげでもあるんだ」


「…どういうことですか?」

当然の疑問を口にする綾。
真九郎はその疑問に丁寧に答える。

「あの時、迷ってたんだ。このままやっていけるのかって。
 君を助けた後、すぐだったかな。危ない会社に誘われてね。
 将来のことを考えたらそこに入ったほうがいいのか…、とか悩んでいたりしてたんだ。
 で、軽率な行動をとって何度も殺されかけて…」

「…やっぱり大変なお仕事なんですね…」

「まぁね。で、その仕事が終わった後に
 俺が揉め事処理屋を始めるキッカケになった人に偶然出会って相談したんだ。
 そうしたらその人は大声で笑った後、俺に新聞記事を見せて言ったんだよ。
 『偶然で人を救えるなんて最高じゃないか』って。
 それが君の記事だった。
 もちろん俺の名前は書いてなくて一般人だか学生だかが少女を助けたって書いてあったけどね。
 なんか嬉しくなって。
 で、そのまま続けるって決めて今に至るんだけど、俺、要領悪くてその後も何度も死にかけてね」

「それは相手をちゃんと見ないで突っ走って、人の注意もろくに聞かずに、
 いつまで経っても引き際を覚えないからでしょう?
 はい、もやしラーメン大盛りに、塩ラーメンね。
 チャーシューもすぐに持ってくるからちょっと待ってね」

物騒なことを笑って話す真九郎に、タイミング良くラーメンを持ってきた銀子が付け加える。
今の真九郎の説明だけだとバカな揉め事処理屋だと思われるだろうから、
と一応のフォローをしたのだろう。
フォローになっているのかは不明だけど。
相手を見ないで無謀な行動に出たのは事実だから否定できない。
それが恩人である紅香に迷惑がかかりそうになったりもしたから、なお悪い。

銀子は真九郎と綾の前に丼を置いた後、すぐに戻っていった。

綾は動揺しながらも少し感動しているようだ。
自分を護ってくれた人が、自分を助けたことがキッカケで仕事を辞めずに、
もっとたくさんの人を助けていた。
胸が熱くなる。
嬉しくなる。
涙が溢れてくる。


38:楓味亭
09/05/24 22:21:24 pb1G8Hzu

「はい、チャーシューね。…えっ、ちょっと、真九郎。何、女の子泣かせてんのよ?」

銀子は光の前に丼を置いた後、真九郎を睨みつける。
真九郎は胸の前で右手を振り、慌てて否定した。

「俺は何も…」

「すみません。私、ずっとずっと会いたかったんです。私を助けてくれたのに
 連絡先も聞けずにお礼も出来なかったってお母さん言ってました。
 どんな人かって聞いても曖昧にしか覚えてなかったようですし。
 警察の人に聞いても個人情報がどうとかって言って、教えてくれなくて…。
 私が覚えていたのは外見と笑顔と名前の一部で…。
 さっき真九郎さんを見てた時、知ってるような不思議な感じがしたんです」

「そうなんだ。でも凄い偶然だよね。今日は光ちゃんの付き添いで来たの?」

「はい、一人じゃ寂し…、いえ、心配だったらしくて。
 それで少しで良いから時間を作ってほしいって言われて…。ね、光」

「えっ、う、うん!お母さんを通してるけどやっぱり怖くて…。すみません」

「いや、いいよ。当然の行動だと思う。何にも警戒しない方が異常だよ」

三人とも目の前のラーメンに箸を伸ばす。
真九郎はいつも通りに、綾は感動が収まらないようで少し震えていた。
光は何かを真剣に考えているようだった。

ラーメンを食べ終わった頃には客もまばらになっていた。
空になった丼を下げに来た銀子に真九郎は話しかける。

「そうだ、銀子」

「何?」

「お前なにやってんだよ」

「何が?」

「環さんに頼まれてなんかしなかったか」

「…ちょっとお邪魔するわね」

銀子は、光と綾に声を掛けて真九郎の席の隣に座った。
間近にある銀子の冷酷な目が真九郎を射抜いている。


39:楓味亭
09/05/24 22:22:33 pb1G8Hzu

「…聞いた?」

「あぁ、よく引き受けたな」

「…忘れなさい」

「なんで?」

「忘れなさい」

銀子は、長い付き合いの中でも見たことの無いような凄みのある非情な目をして真九郎で睨んでいた。
元々鋭い目つきをする銀子だが、今の目には色んな葛藤が入り混じっているようにも感じる。
真九郎は圧倒され、息苦しささえ覚えた。
改めて意思の強さというモノがどんなに凄いものなのかと実感してしまう。

「そ、そうだ!真九郎さん、携帯の番号を教えてもらっても良いですか?」

「あ、あぁ、いいよ。番号言うから掛けてくれる?
 赤外線とかよく使い方がわからないんだ」

良い娘だ。
話題を変えて、ラーメン屋の隅のテーブル席に突如発生した張り詰めた空気を砕いてくれた。
真九郎は綾に番号を教えて電話を掛けてもらう。
携帯からは…、

『今すぐ死になさい!!』

………。

………。

………。

今までの流れを考えてみたら容易に想像がつくことだった。
色んな人に、個人に専用の着信音が設定してあるなら、設定していない人間から掛かってきたときも
何か特徴ある着信音が使われることくらいは考えておくべきだった。

まずはこの声の感想でも…。

「な、なぁ、なんか気合入ってないか?」

「…そうね」

柄にも無く銀子が顔を朱に染めて目を大きく開いて真九郎を見つめていた。
「死になさい」という言葉を発した自分が恥ずかしいのだろうか。
もっと他に恥ずかしい着信音があった気がするけど…。


40:楓味亭
09/05/24 22:25:03 pb1G8Hzu

いつもなら平然としているか、感情を出して叱りつけるはずだけど、
今日会ったばかりの娘たちの前ではさすがに恥ずかしかったのか?
それとも自分の声に迫力がありすぎて驚いてしまったとか。

何も言わず銀子が真九郎の携帯を取り上げる。
躊躇なくそのままバキッと半分に折り、「はい」と笑顔で真九郎に優しく返してくれた。

その後銀子は席を立って店の奥へ入っていく。
きっと自分の部屋に戻ったのだろう。
こんな状況になったらやっぱり逃げ出したいよな。

でも環さんがマスター音源を確保しているんだからいくらでもコピーできるんだ。
またもらっておこう。
さすがの銀子も焦ったのか。
あとでメールに添付して送ってあげようか。

もしかして情報屋銀子の本領発揮した姿が見れるかも。
環さんのところから音源を探し、無理矢理奪い取る姿は目に浮かばない。
ネットからハックしてデータを壊すのだろうか。
でも環さんは、というか五月雨荘にネット環境なんてなかったと思うけど。
もしかして光でも入ってたりしてないかな。

しばらくすると銀子が戻ってきた。

何も言わず、何もなかったかのように真九郎の隣の席に座る。
感情を出さない平顔はいつもの銀子そのものだ。

興味があったので、なんであんな声を録音したのか、経緯を聞いてみた。


少し前に銀子は環に簡単な仕事の依頼をしたらしい。
環は仕事を終えるとすぐに銀子に連絡し、報酬は違うもので支払ってほしいと要求した。
その報酬が銀子の声の録音だったようだ。
環は、どこからか調達した高感度のマイクを使い、誰もいない静かな道場に銀子を連れて行き、録音したという。
初めは照れていたが、これは仕事の報酬である以上、プロとして開き直った銀子。
「今すぐ死になさい!!」と言ったときには銀子の目は輝いていたんだろうな。
何度か録り直し、使えそうなものを環がチョイスして、真九郎の携帯に入れて設定したようだ。

これは余談だが、闇絵はこれを機に携帯を持とうかと真剣に悩んでいるらしい。
相当気に入ったようだ。


41:楓味亭
09/05/24 22:26:12 pb1G8Hzu

今、目の前では危険と縁の無い話をしている。
けど、ここにいる光以外の三人は死の恐怖を知っている。
死を身近に感じたことがある人間ばかりだ。

今日まで知らなかったけど、綾は小さな頃に何かの事件に巻き込まれたらしい。
真九郎は失敗したら死と隣り合わせの仕事をしている。
銀子は真九郎のことをずっとサポートしているようだった。

今日の会話の話だけで、綾と真九郎は自分が死ぬ恐怖を、銀子は大切な人がいなくなるかも
しれない恐怖を味わったことがある、ということがわかった。

光は知らなかった。
一歩足でも踏み外したら奈落の底に落ちてしまうかもしれない世界があるなんて…。
ほんの小さなのミスで命に危険が及ぶかもしれない世界があるなんて…。
そんなものがこんなにも身近にあるなんて思いもしなかった。
実感も湧かない。
自分の身に何も降りかかっていないのはただの幸運なのだろうか。
当たり前のことが当たり前であるうちは、その大切な価値を感じることが出来ない。
失ってからその価値を感じる人間が大多数だろう。

仲の良い綾の命の恩人で、いかにも優男のような外見をしている目の前の男はそんな世界で何年も生きているらしい。
そんな世界には出来れば関わりたくはない。
でもあるのは事実。
否定は出来ない。

自分一人が否定したところでいつかどこかで巻き込まれるかもしれない。
これから先、自分や周りの人間に何かあったときのため見ておくのも何か勉強になるかもしれない。
危険に対する対処の仕方を学べるかもしれない。

光は一度目を閉じ、決意と覚悟を胸に秘め、真九郎の眼を見た。

「あのっ!私に紅さんの仕事を手伝わさせてもらえませんか?」

「え?さっき言ってた男の子のことがそんなに気になってるの?」

真九郎は光の意外な言葉に戸惑い、光は真九郎の言っている言葉の意味が理解できなかった。
光の思いを知らない真九郎としては当然の反応なんだが…。
思い込みの激しい光にはわかるはずもない。

「えっ!?ちょっ。ち、違います!!」

「でも、顔、真っ赤だよ」

「真っ赤ね」

「光、認めちゃおう」


42:楓味亭
09/05/24 22:27:07 pb1G8Hzu

ちょっと意気込んで顔が赤くなっただけなのに…。
綾まで…。
私、そんなに赤くなってるの?
あれっ、さっきの決意は?
覚悟はどこに行ったの?
かなり重かったよ?
そんなに簡単に流しちゃうの?

「そっか、調べて欲しい一番の理由って、気になる男の人、だからなんだね。
 でもお姉さんも彼のこと好きなんでしょ?
 若いのになかなか難しい恋愛するんだね」

「あ、いえ。えっ!?」

「ん~、好きになったんだから仕方ないか…。
 でもプライバシーに関わるから一緒には連れて行けないね。
 あ、調べたら報告するんだから関係ないかな」

「で、でもっ」

「好きな人が気になるからっていっても、やっぱりしちゃいけないことがあると思うからさ」

「そ、そういう意味じゃなくて…」

「シンちゃん、そんなこと言わずに連れてってやったらどうだい?
 やっぱり好きな奴のことは気になるもんさ。
 なっ、銀子」

銀正が餃子を持ってきて一言挟んでいった。
餃子はただでサービスしてくれるらしい。
お礼を言い、ありがたく好意に甘える。
なぜ銀子に話を振ったかはわからなかったが…。
銀子はムッとした顔をしていたが、真九郎は特に気にせず話を続ける。

「そうか~、まぁ危ないことはないだろうから大丈夫だとは思うけど…」

『堕花が揉め事処理屋の手伝いをする』
これはどうなのだろうか。
まぁ、裏十三家の一つ、と言っても何も知らないようなので問題はないか。
でももし何かあってこっちの世界に引きずり込まれたら…。
彼女の人生がめちゃくちゃになってしまう恐れもある。

調査対象は『柔沢ジュウ』。
最悪だ。
『柔沢ジュウ』を調べること自体が大問題だから、もし裏で何かに巻き込まれたら重大なことになる。
命に関わる危険がある。
そういえばこの依頼は引き受けるって決めてないはず…。


43:楓味亭
09/05/24 22:28:01 pb1G8Hzu

「光ちゃんは、今、何年生だっけ?」

「中学三年です」

「ついて来ると危ない目に遭うかもしれないよ。
 まだ中三で命の危険のある場所に望んで行くのはおかしいと思う」

「あんたが人のこと言えんの?」

辛辣な銀子の言葉が真九郎の耳に入った。
いつもの銀子なら揉め事処理屋の手伝いなんてさせるわけがないが、
さっきまでの話を聞いて安全だと判断したのかもしれない。
調べる相手がどんな人物かを知ってたら絶対にこんなことを言わないはずだ。

「はは、言えないかもな。
 あとさっき光ちゃんが言ってた依頼だけどね、
 俺が探偵のようなことをやるよりも、光ちゃんが堂々と調べた方が成功する確率は高いと思うよ。
 俺が調べると、もしかして何も調べられないうちに終わるかもしれないからね」

真九郎が秘密裏にジュウのことを調べると弥生か他の誰かに妨害される恐れもある。
多分警告はしてくれるだろうが、してくれない場合は最悪即死だ。
恩人の息子の素行調査なんてするもんじゃないし、もしするとしたら紅香さんに許可を取ったほうが確実か…。
情けないな…。

隣で銀子が不思議そうにしているが、気にしてはいけない。
依頼の内容も話さないほうが良いだろう。
銀子は紅香さんの息子のことは知ってたんだっけな。
言った覚えはないけど、ま、確認する必要なんて無いか。

「なんでですか?」

「ま、色んなしがらみがあってさ。
 依頼受けるかの返事は保留にして数日以内にその依頼を受けるかどうか連絡するってことで良い?」

「はい、お願いします」

「ありがとう、光ちゃんも一緒に調べられるかはその時に連絡するね」

「は、はいっ」

光は、揉め事処理屋の仕事ぶりが見られる可能性が残ったことに喜んでいた。
その姿をなぜか羨ましそうな目で見ていた綾。

その後は、雑談。
綾が興味を示した真九郎の話や光に聞いた環の話で盛り上がっていた。

しばらく時間が経ち、落ち着いたところで真九郎が支払いを済ませ、楓味亭を後にした。


44:名無しさん@ピンキー
09/05/24 22:29:20 pb1G8Hzu
このあとも続いていきます。

45:名無しさん@ピンキー
09/05/25 00:36:19 NqQiNVLt
乙した!

46:名無しさん@ピンキー
09/05/25 04:04:54 loo91r4I
乙です

47:名無しさん@ピンキー
09/05/26 01:20:48 AEH3Qco5
>>44
おお、きてたGJ!
絶奈の純愛も見てみたいわ

48:名無しさん@ピンキー
09/05/26 18:35:53 9Q7MPixV
女子高生になった紫が
トウヘンボクの真九郎をいじめる(性的に)SSを希望

49:名無しさん@ピンキー
09/05/27 21:07:44 lh6PzRGo
絶 奈:「おひさしぶり、紅くん」
真九郎:「星噛絶奈……。なんの用だ?」
絶 奈:「そう身構えないでよ。今日は戦り合うつもりはないから。
    クリスマスの時のお詫びに、プレゼントを持って来たの」
真九郎:「いらないから、さっさと帰ってくれ」
絶 奈:「ふふふ。コレを見ても同じことが言えるかしら? ジャジャーン!」
真九郎:「自分で効果音出してるし……。なんだ、コレ? バイブ?」
絶 奈:「そんな陳腐なモノと一緒にしないでほしいわね。
    コレは悪宇商会が自信をもっておすすめする夏の新作!
    星噛家が総力をあげてつくりあげた究極にして至高の男根!
    星噛製閨戦壱式百八号、名付けて『無敵砲台』!」
真九郎:「悪宇商会も星噛家もなにやってんだーー!?」
絶 奈:「コレさえあれば、夜の揉め事は万事解決! 包茎早漏短小とは永遠におさらば! 
    外見だけじゃなく、持続力だってモンスター級の超優れモノよ!
    感想は?」
真九郎:「…………すごく、大きいです」
絶 奈:「気にいってくれたようでなによりだわ。
    それじゃあ早速、君の股間の貧相なものと交換しちゃいましょう」
真九郎:「え、ちょっと? どこを握って……、なっ? ぎゃぁぁぁあああッツツツ!!??」
絶 奈:「そうそう。言い忘れたけど、『無敵砲台』は強力過ぎて、並の女のアソコには
    入れられないのよ。受け入れられるとしたら、それは『孤人要塞』たる私だけ。
    もう君は私から離れられない―って、気絶してるじゃない。だらしないわね。
    ……ま、いいか。起きた時には、新しい世界が君を待っているわよ、紅真九郎くん」



50:名無しさん@ピンキー
09/05/27 23:53:05 U57UXfKH
     ヽ       j   .す
  大.   ゙,      l.    ご
  き    !      ',     く
  い    ',        ',    :
  で    ト-、,,_    l
  す    !   `ヽ、 ヽ、    _
   ;    /      ヽ、`゙γ'´
      /         \
      !   ト,       ヽ
ヽ__  ___ノ ,!   | | ト,       ゙、
  レ'゙ ,イ ./|!  .リ | リ ! .|! | ト|ト}
 ,イ ,/ ./〃/ / | / .リ/ //イ|.リ
// //ノノ  //゙ ノ'////|.リ/
´彡'゙,∠-‐一彡〃 ト.、,,,,,,,,,,,レ゙
二ニ-‐'''"´      /`二、゙゙7
,,ァ''7;伝 `        {.7ぎ゙`7゙
  ゞ‐゙''  ,. ,. ,.  l`'''゙" ,'
  〃〃"      !   |
              !  l
 !       (....、 ,ノ  !
 j        `'゙´  ,'
     ー--===ァ   /
      _ _   ./
\     ` ̄   ,/
  ` .、       /
   :ミ:ー.、._  /``'''ー-、
    `゙三厂´



51:名無しさん@ピンキー
09/05/28 00:14:00 enDJbQZp
>>49
>並の女のアソコには
環さんか夕乃さんならなんとかなりそうな気がせんでもないなw

52:名無しさん@ピンキー
09/05/28 02:13:08 w2tGY1JP
>>51
つまり・・・乱入か

53:名無しさん@ピンキー
09/05/29 18:26:45 GJCOFJaE
>>52
何故か知らんが
3人ループで挿入って(ピーに入れまくり的な)意味の乱入
なのか
プレイ中に2人が乱入してくる
のかどっちか分からない

何を いって るんだ おれは 

54:49
09/05/30 01:49:23 7keyS6MB
>>49の続き


 天国であり、地獄であった。
 それが星噛絶奈との睦み合いを終えた紅真九郎の正直な感想だった。
 二人で繰り広げた物理的かつ性的な応酬については、殆ど記憶していない。
 気がつけば、豪奢な寝台に仰向けに転がり天井を見上げていた。かたわらには一糸まとわぬ絶奈の姿が。
 むせかえるほどに濃厚な性臭と、全身に広がる粘っこい倦怠感。
 真九郎は理解した。自分が新しい世界へと足を踏み入れてしまったことを。
 はたして、これは哀しむべきことなのだろうか。それとも、喜ぶべきことなのだろうか。
 少年の思考は自問の迷宮を彷徨う。
 不意に、絶奈が真九郎の胸板についと指を滑らせた。
 酒を飲んだわけでもないのに、彼女の頬は朱に染まっている。先程までの情交の残り火だ。
 鉄板をも貫く凶器と同義の指先が、文字を書くように、または蜘蛛が這うように動く。
「本当に素敵だったわ、紅くん。ね、もう一回シよ?」
「……勘弁してくれ」
 普段の絶奈からは想像できない、とろけるような甘い声音。だが、真九郎はにべもなく断った。
「ええー? 私はまだ満足してないわよ。あと一回だけでいいからがんばってよ。
 ほら、口ではそういっても股間の大砲はビッキビキじゃない」
「……無理なものは無理だ。いくらモノが勃っても、体力がもう限界なんだよ」
 喉奥から搾り出された拒絶は、もはや哀願に近かった。
 星噛製の男性器の威力は確かに凄まじい。コレで貫かれれば、貞淑な修道女さえも淫奔な娼婦に変えてしまうだろう。
 しかし、それだけのモノを使いこなすには、真九郎の経験値があまりにも不足しているのだ。
 崩月で鍛えた体は決して脆弱ではない。それでも、根こそぎの体力気力を持っていかれた。
 たとえるなら、原付の免許をとったばかりの人間が、いきなりF1マシンを操縦させられたようなものだ。
「ふ~ん。そうなの」
 興醒めだといわんばかりの絶奈の口ぶりだが、今の真九郎にそれを気にかける余裕はない。
「……とにかく、今は休ませてくれよ」
 もそもそと穴兎のように布団にもぐりこむ真九郎。今日は色々なことがありすぎた。心身ともに休息を欲している。
 だが、「はい、そうですか」とそれを認める星噛絶奈ではない。
「こうなったらあとはもう、逆レイプしかないわね」
「なんでそうなる!?」
 真九郎が抵抗する暇もあればこそ。
 がばっと一息に毛布を剥いだ絶奈は、次の瞬間には真九郎の上に馬乗りになっていた。
「私は和姦のほうが好きなんだけど、こっちのほうが君の好みだっていうんなら、お応えするのもやぶさかではないわ」
「そんなわけないだろ、バカ野郎!」
 なけなしの体力を振り絞った真九郎の抵抗をものともせず、絶奈は易々と少年の四肢を布団に縫い留めた。
 もはや真九郎に為す術はない。ただ蹂躙される時を待つだけの哀れな犠牲獣。
 絶奈は怯える真九郎に猫科の肉食獣のような笑みを浴びせると、ゆっくり自分の腰を移動させた。
 散々に男の精を貪った後でありながら、彼女の性器はいささかの形崩れも見せていない。
 割り開かれた陰唇が、真九郎の逸物を咥え込まんと厳かに花開く。
 淫靡に蠢く肉襞が、すっかり観念して大人しくなった真九郎のモノの先端に触れた刹那、
「真九郎さん、無事ですかッ!?」
 非自然的な轟音と共に寝室の扉が爆砕され、立ち上る粉塵の中から一人の女が姿を現した。

55:49
09/05/30 01:50:09 7keyS6MB
「なッ!? 核爆発にも耐える超合金製の扉が」
「ひょっとして……」
「崩月夕乃、推して参りました!」
 黒曜石よりも黒く輝く長い髪。服の上からでもはっきりとわかるたわわに実った乳房。
 他の追随を許さない圧倒的なまでに美しい白皙の顔貌。双眸に宿す紅蓮の業火。
 間違いなく、裏十三家が一、崩月家の現当主崩月法泉の孫娘、崩月夕乃その人であった。
「夕乃さん!」
 これで助かると喜色満面に姉弟子の名を叫ぶ真九郎。応えてにっこりと微笑む夕乃。ただし、目は笑っていなかった。
 真九郎の頬がわずかに引き攣った。
「いろいろと聞きたいことも言いたいこともありますが、とりあえず後回しにしてあげます。
 今はそこの淫売さんから真九郎さんを取り戻すことが最優先です」
 敢然と夕乃は絶奈と相対する。流麗な立ち姿には、なんの気負いも不安も感じ取れない。
 対する、絶奈の表情は険しい。
 ここは悪宇商会のセーフハウスの一つ。登記簿に載らず、警察も手が出せない闇の聖域。
 それがこうも早く発見された上、突破されてしまったとあっては、最高顧問として腹立たしいことこの上なかった。
 見れば、粉塵の向こうでは警護の任に当てていた黒服の男たちが、ダース単位で地に伏し呻いている。
 男たちは皆、有能な戦闘屋だった。裏十三家の人間が相手でなければという但し書きはつくが。
 もっとも、絶奈にとって彼らはいくらでも替えのきく駒。信頼を置くに値しない。
 彼女が真に信頼し、自分の寝室を預けていたのは同じく裏十三家の―
「切彦はどうしたのかしら? あとで紅くんを貸してあげるって条件で見張りにつかせていたはずだけど」
「切彦? なんです、それ? 美味しいんですか?
 ―ああ。そういえば、途中で刃物を振り回す狂犬と逢ったので、ちょっと躾てあげましたっけ」
 しれっと言い放つ夕乃。ますます顔をしかめる絶奈。
「さて、星噛さん。うちの真九郎さんを返してもらいましょうか」
 もちろん、そのあとは全殺しです。そういって、夕乃は悠然とした足取りで寝台へと歩を進めた。
 絶奈は忌々しそうに舌打ちをする。
 崩月の戦鬼。比類なき暴力の具現。その猛威はキリングフロアで身をもって味わった。
 生まれついての戦鬼ではない真九郎でさえ、あそこまで絶奈を追い込んだのだ。
 ならば、純血の戦鬼たる崩月夕乃の戦闘力はどれほどのものか。
 状況を打破すべく思索をめぐらせていた絶奈は、ややあってなにかを思いついたようににやりと笑った。
「無駄よ、崩月の」
 夕乃の足が止まった。

56:49
09/05/30 01:51:07 7keyS6MB
ここまで。つづきは後日。

57:名無しさん@ピンキー
09/05/30 02:25:15 HRIS9+oQ
おおっ、本当に絶奈で描いてくれる方がいるとは!?
ありがとうございます!
GJです!
続きも楽しみにしてます!

58:名無しさん@ピンキー
09/05/30 03:03:29 j4W01SIP
GJ! 楽しみにしてるぜ!

59:名無しさん@ピンキー
09/05/30 10:01:06 ZUrNF6iU
乙!なんか楽しみだw

60:名無しさん@ピンキー
09/05/30 19:08:58 58EX9CyS

だれかWikiいじってくれたみたいだね 現行スレ更新されてた

61:名無しさん@ピンキー
09/05/30 23:48:26 8JS0GemA
>>56
乙した!

62:名無しさん@ピンキー
09/06/02 03:00:17 jkjJdVMD
保守

63:名無しさん@ピンキー
09/06/03 04:14:17 f1C9fFfy
保志

64:49
09/06/04 02:31:27 y/Tt28BK
wiki編集してくれた方、ありがとうございます。
>>55の続きです。

「紅くんはあなたたちのところへは帰らないわ。私と一緒に悪宇商会で人でなしな日々を送るんだから」
「は? え? ちょっと? せめて人間らしく……」
 絶奈の言葉に、夕乃よりも早く真九郎が反応した。
 このサイボーグ娘はいったいなにを血迷ったことを言っているのか。
 駆け出しとはいえ、紅真九郎は揉め事処理屋。悪宇商会とは敵対することこそあれ、手を組むことなどありない。
 商会の所業や構成員には少なからず含むところもある。所属するなど言語道断だ。
 それについては夕乃も同意見だったようで、
「なにを言い出すかと思えば、そのような世迷言を。
 いいですか? 真九郎さんは高校を卒業したら、私と結婚して崩月流を継ぐんです。
 悪宇商会に与するなど、断じてありえません!」
「もしもし、夕乃さん? 前半おかしくない? そんなの初耳なんだけど……」
 訂正。どうやら、夕乃と真九郎とでは、その考えに大きな隔たりがあったようだ。
 夕乃の力説を受けても、絶奈はどこ吹く風と不敵な笑みを崩さない。
 二人の美少女の視線が中空で衝突する。間に光った稲妻は真九郎が見た幻影だったか。
 睨み合うこと十数秒。先に相手から目線を切ったのは意外にも絶奈だった。
「もう一度言うわ、崩月の。耳穴かっぽじってよく聞きなさい。
 紅くんは、帰らない」
 幼い子どもを諭すような、ゆっくりとした口調。
「ふざけるのも大概にしなさい!」
 夕乃の一喝は真九郎を萎縮させただけに終わり、絶奈の毛筋一本揺らすことができなかった。
 絶奈は不気味なほど優しい笑みを浮かべると、持ち上げた真九郎の右掌をそっと己の下腹部に押し当て、
「紅くんは帰らない。だって、私のお腹には紅くんの赤ちゃんがいるんだもの!」
 爆弾を投下した。
 今この場において、その台詞は爆弾発言どころの騒ぎではなかった。正真正銘、爆弾そのもの。
 広い室内からあらゆる音源が消滅し、絶対の静寂が空間を満たす。
 まるで、この部屋だけ世界の理から弾き出されたようだった。それほどのデッドサイレンス。
 そして、きっかり一分が経過したところで、
「なんだってぇぇええッツ!?」
 真九郎が絶叫した。間髪入れず夕乃が続く。
「ど、どういうことですか、真九郎さん!? 赤ちゃんってなんですか、ベイビーですか!?
 一昨日、『オレが好きなのは夕乃さんだけ。夕乃さん以外の女なんてメスブタも同然だ』って言ってくれたじゃないですか!」
「落ち着いて、夕乃さん! オレはそんなこと言ってないよ!
 おい、アンタ! 赤ちゃんってどういうことだ!?」
 くつくつと笑いを零しながら絶奈が答えた。
「あら? あれだけ膣内に射精しておいて、覚えがないとは言わせないわよ。
 君も知ってのとおり、星噛の人工臓器は超高性能。妊娠や出産もできるし、受精したらすぐにわかる機能もついているの。
 君のおちんちんも星噛製でしょう? 抜群に相性がよかったみたいでね。当たっちゃったってわけ。
 やだ、思い出したら、また濡れてきちゃった」
 真九郎がうっと呻く。
 ノイズ混じりだが、確かに記憶がある。
 もぎとられた逸物。嗤う絶奈。覚醒する意識。異形の男根。にじり寄る豊満な肢体。昂る欲求。吹き飛ぶ理性。味わった至上の肉悦。
 間違いなく、真九郎は絶奈を抱いた。ならば、行為の先に妊娠という結果があるのは当然のこと。
「…………やっちまった」
 油断した自分が間抜けだった。避妊を忘れていた自分が愚かだった。
 どんなに後悔してももはや手遅れ。純然たる事実を覆すことなど、神ならぬ人の身でできようはずもない。
 これから先、紅真九郎の人生は大幅な制約を課されることだろう。星噛絶奈の望むままに。
 突きつけられたあまりにも衝撃的な事実に、真九郎の意識が肉体から乖離しかける。
 だが、蛇のように絡みついてきた絶奈の体の感触がそれを阻んだ。
「ねえ、紅くん。これからは家族三人で悪事に邁進しましょうね。
 そういうわけだから、崩月の。紅くんのことは、きれいさっぱり諦めてちょうだい」
「あ、あああ、そんな、まさか……。嘘です、真九郎さんが…………」
 絶奈の声が耳に入っていないのか、夕乃は呆けたように意味のないことをぶつぶつと呟いている。
 常の大和撫子然とした彼女からは、遠くかけ離れた姿だった。

65:49
09/06/04 02:31:58 y/Tt28BK
 真九郎から見えない位置で、絶奈はしてやったりとほくそ笑んだ。
 実のところ、絶奈は妊娠などしていない。
 ≪星噛製陸戦壱式百四号≫の子宮には特殊な仕掛けがある。それは望まぬ妊娠を避けるための防御装置。
 絶奈自身の意志でそれを解除しない限り、受精確率は絶無である。
 正攻法では怒れる夕乃に抗し切れないと踏んだ絶奈は、弁舌の刃で活路を開こうとしたのだ。
 正面から勝てない相手には搦め手を用いるのが定石。
 少しばかり希望的観測も入っていたが、結果として絶奈の狙いは的中した。
 真九郎は沈黙。夕乃は自失。絶奈の一人勝ち。
 真九郎が手玉に取りやすいことは既知だったが、あの崩月の娘までこうも呆気ないとは、正直言って拍子抜けだった。
 裏を返せば、崩月夕乃にとって紅真九郎がそこまでの存在だったということか。
 こんな戦鬼化以外になんの取り得もないような少年が。
「真九郎さん…………。うちの真九郎さん、私の真九郎さん……」
 夕乃はまだ立ち直っていない。この隙に痛撃を加えて、とっとと姿を消すのが上策。
 ちらりと絶奈が夕乃に目を向ける。その目には多分に侮蔑の感情が含まれていた。
 裏十三家の次期当主ともあろう者が、男一人のことで醜態をさらすな。
 だが、夕乃の姿を視界に捕らえた途端、絶奈の顔色が変わった。全身の産毛がぞわりと逆立つ。
 目に映るのは先程までと変わらぬ茫然となった女の姿。だというのに、この違和感はなんだ。
 アレは危険。極めて危険。
 数多の修羅場を潜り抜けてきた絶奈の第六感が、大音量で警鐘を鳴らしていた。
「夕乃、さん……?」
 絶奈に遅れること暫し。真九郎も姉弟子が纏う空気の変質に気がついたようだ。
 直後、爆音が響く。
 それまで夕乃が立っていた床が醜くひしゃげる。
 なにが起きたか、真九郎と絶奈が理解するよりも速く寝台を衝撃が襲う。続く、ぼふっというくぐもった音。
 衝撃と音の正体は確認するまでもなく崩月夕乃。
 黒真珠のような夕乃の瞳が真九郎の顔を覗き込んだ。
「真九郎さん」
 優しい声だった。八年に渡って、真九郎を叱咤激励してきた少女の声。
 夕乃は崇高な聖母のごとく慈愛に満ちた笑みをつくると、
「私も真九郎さんの赤ちゃんを妊娠します!」
 断固たる決意でそう宣言した。
「「――は?」」
 真九郎と絶奈の声が重なる。

66:49
09/06/04 02:32:32 y/Tt28BK
「嗚呼。なんて可哀想な、真九郎さん。
 私がえっちなことをさせてあげなかったから、こんな女の姦計に嵌ってしまったんですね。
 でも、もう安心してください。すぐにお姉さんが可愛がってあげますから」
 あまりに飛躍しすぎている夕乃の論理。真九郎は咄嗟に言葉が出ない。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、崩月の!」
 どうにか正気を取り戻した絶奈が夕乃に食ってかかった。
「なんですか、お妾さん」
「は? 妾ってなによ?」
「私が真九郎さんの奥さんで、あなたはお妾さんです。
 本当はすぐにでもぶち殺してあげたいんですけど、お腹の赤ちゃんに罪はありませんから。
 まるで生きるに値しない外道が母親だとしても。
 あ、ちゃんとお手当ては出してあげますから安心してくださいね」
「…………いい度胸してるわね、妄想電波女」
 静かなる殺気をこめた絶奈の視線を、夕乃は涼やかな笑顔で受け流す。
 その笑顔がたまらなく癇に障った。
 と同時に、冷静さを取り戻す。敵のペースに飲まれるな。戦うのは常に自分の土俵で。
 二人の決定的な差を見せつけてやる必要があった。絶奈はなにを思ったか、自身の淫唇をくぱあと広げ、
「これを見なさい、崩月の。
 私のココは星噛の技術を駆使して珠玉の一品に仕立ててあるのよ。ミミズ千匹にして数の子天井。
 この味を知ってしまった紅くんが、あなたの貧弱なマンコで満足できると思って?」
 自信満々の絶奈に向けて、夕乃は誰が見てもそれとわかる嘲笑を口元に浮かべた。
「愛液のかわりに機械油を垂れ流すようなそそで真九郎さんが満足できるわけありません。
 私の綺麗で未使用な天然モノでこそ、真九郎さんは本当の快楽を得られるんです。
 それこそが私と真九郎さんの愛の力!
 わかったら、さっさと消えなさい、淫乱ポンコツガラクタ痴女」
 怒りと屈辱のあまり、絶奈の顔面がその頭髪よりも赤くなる。
 二人が放つ殺気は瘴気へと変じ、室内を隙間なく満たした。それにあてられた真九郎は息をするのがやっとだった。
「ここまでコケにされたのは、紅くんに強奪戦を申し込まれて以来よ。
 あなたといい、柔沢紅香といい、紅くんの周りにはこういう女が集るフェロモンでも出ているのかしら。
 いいわ。そこまで言うんなら、一つ勝負といこうじゃない」
「勝負、ですか?」
「そう。私とあなた、どっちが紅くんを気持ちよくしてあげられるかの勝負。
 あなたが言う愛の力が勝つか。それともやっぱり、私のこの体が勝つか。白黒つけましょう」
 絶奈はどかっと真九郎の左側に腰を下ろす。
「望むところです! その勝負、受けて立ちましょう」
 夕乃は流れるような動きで真九郎の右側に陣取る。
 髪の色から生き方まで、全てが正反対の二人の美少女が、真九郎を挟んで相対した。

67:49
09/06/04 02:33:28 y/Tt28BK
ここまで。なんか全員おかしくなってしまったorz
次回はちゃんとエロ入れます。

68:名無しさん@ピンキー
09/06/04 02:42:02 bO/yfXKy
夕乃さんぶっ飛び杉wwww

いいな
もっとやれ!!!

69:名無しさん@ピンキー
09/06/04 04:03:43 cKbk/w/0
乙!なんかいろいろカオスw

70:名無しさん@ピンキー
09/06/04 16:10:17 gKs790DZ
乙です!
原作のキャラが出てて面白いっす。
続き待ってます。

71:名無しさん@ピンキー
09/06/04 21:26:17 Nc5fbgbb
>>67
おつ!エロに期待

72:名無しさん@ピンキー
09/06/04 23:05:43 IZCZsXPU
おつした!

73:名無しさん@ピンキー
09/06/05 18:55:09 mVmofSwL
なんだ貴方が神か・・・乙!

74:名無しさん@ピンキー
09/06/07 13:32:56 HBGhirXi
保志

75:名無しさん@ピンキー
09/06/09 00:45:38 Xn0QNgYu
総一郎

76:名無しさん@ピンキー
09/06/09 12:44:02 5npzRG4J
うな

77:名無しさん@ピンキー
09/06/09 12:47:01 jrVF11Ix
ジュウ

78:名無しさん@ピンキー
09/06/09 21:54:02 tG/fyjyt
>>77で不覚にもww

>>67
gj!!!


79:名無しさん@ピンキー
09/06/11 19:46:46 QOVy2u4D
denpa

今日も朝が来る

ゆっくりとした鼓動にやさしく包み込まれながら○○○は目蓋を開けた
大きく切れ長の黒目がちな瞳は困惑に染まっている。まるで初めて世界を見るような。

だがその震える視点が、光沢の無いパサパサの金色の何かに止まった時
瞳は焦点を取り戻し、先ほどまであった透明な緊張感は薄らぐ。

何も分からない。把握できていない。

しかし○○○はまどろみの中に戻る。真っ白いシーツに裸体を絡め、握っていたあたたかいものを掴みなおす。


大好きな姉の寝姿を見に来た妹の絶叫がとどろくまで

80:名無しさん@ピンキー
09/06/13 23:34:50 7ucHxFHl
保守

81:名無しさん@ピンキー
09/06/14 19:48:57 hRLZtSsw
つずきマダー


82:名無しさん@ピンキー
09/06/14 19:58:10 PW3qYMqT
>>31のリクエストにお応えして絶奈の純愛モノを書こう



としてた時期が俺にもあった

83: ◆JI6GRfrLos
09/06/15 02:29:43 gaX8ORt0
「またか…」
ジュウは新品になっている歯ブラシを見て溜め息をついた。
最近、家の消耗品が何時の間にかに補充されている事が多い。
ひげ剃りや洗剤。ティッシュや歯ブラシにいたるまで。
そしてそれらのゴミが何故かなくなっている。
細かい事だが、部屋が片付ける前に綺麗になっていたりするのは不気味だ。
…どうせ紅香が気紛れにやっているのだろう。
適当な理由で納得し、ジュウは考えるのをやめた。

――――

「はぁはぁ…ジュウ様の…ジュウ様の使用済み歯ブラシ…使用済みの…歯ブラシ…」
荒い息を尽きながら、堕花雨は帰路についていた。
「これで…歯を磨いても宜しいのでしょうか?いいですよね。全然問題ないですよね?」
自問自答する声は艶を帯び、明瞭な意志が感じられる。
歌うように雨は続ける。
「何故ならジュウ様とわたしには前世の絆がありますから。
使用済みの歯ブラシで歯を磨くことなど当然です。当たり前です。真理であります。
オリハルコンより強固な絆で結ばれいるのですから。
従者として、下部として主の使用品を受け取るは最大の名誉です。
そしてジュウ様はわたしを愛してくださってます。
50音最初の二文字は伊達ではありません。
従って問題ありません」
無茶苦茶な理論だが、それを咎めるものはいない。
足を止め、歯ブラシを構え、ひと息つく
「堕花雨。参ります」
はむ。とかぶりつき、口内全体で歯ブラシをなめあげる。
「あぁ…飲んでしまいました…
わかります。ジュウ様の成分がわたしの細胞と溶け合い混じり合い一つになっていくのが…
身も心もジュウ様に染まっていくのがわかります…
この思い出があれば冥界の王ハ・デスさえも打ち取り天上天下をジュウ様に献上することさえ造作もないでしょう…」
月を見上げ、涙さえ浮かべながら雨はひとり言葉を紡ぐ。
「ジュウ様…ジュウ様の全ては何人たりとも犯させは致しません…
全ての私品はわたくしが責任をもって管理いたします。御安心下さい」

―――
ほのぼの純愛ってこんな感じだよね?

84:名無しさん@ピンキー
09/06/15 06:43:35 0V/HoWUs
怖いよ…

85:名無しさん@ピンキー
09/06/15 18:26:30 wwBUJXTm
なぜか違和感感じないんだが

86:名無しさん@ピンキー
09/06/15 19:43:13 0cXxbC9c
実は雨の前に弥生さんがこっそり摩り替えて(ry

87:名無しさん@ピンキー
09/06/15 20:16:20 UPgbHl5P
>>83
どっかのドラマCDサンプルにインスパイアされた?
ともあれ乙

ふと、夕乃さんバージョンも出来そうだと思った。

88:名無しさん@ピンキー
09/06/15 20:28:36 zx1Gaxgj
やはり雨はいいなぁ…このスレの変態雨を見るのが大好きです。

89:名無しさん@ピンキー
09/06/15 23:57:23 gaX8ORt0
>>87
他スレで聞いて、すぐ書いた。
夕乃さんバージョンね…真九郎のオナニーティッシュをコレクションしてる夕乃さんとか?

90: ◆JI6GRfrLos
09/06/16 00:29:36 52b2djzH
「観念したら?真九郎くん?」
「くっ…だれがっ!」
どん。と衝撃を受け、壁にぶつかり、自分が殴られた事に気付く。
血と胃液がせり上がり、強烈な吐き気とめまい。
絶奈との戦力差は歴然だった。
「今ので気絶してればよかったのに…頑丈なのも考え物ね。まぁたっぷり苦しんで…」
「お待ちなさいっ!」
コンクリートの壁を突き破り、そのまま絶奈を吹き飛ばす。
立つ影は2つ。
「真九郎さんをいぢめる人は許さない!おねぇちゃんホワイト!」
「同じく、おねぇちゃんレッド…」
「「2人はプリプリ!!」」
どっごん。とカラフルな煙幕が立ち込める。
「夕乃さん!…紅香さん?!何をしてるんですか?」
「真九郎さん。わたしはおねぇちゃんホワイトです。おねぇちゃん、と呼んで下さい」
「いや、でも」
「呼んで下さい」
「あの…」
「呼んで下さい」
「…おねぇちゃん」
「なんですか?真九郎さん?」
聞きたい事はいくらでもあるが、とりあえずは…
「…その格好は?」
おねぇちゃんホワイト(夕乃さん)はフリフリのレースをふんだんに使ったドレス。
青いリボンがアクセントになっている。
頭にはヘルメット。色つきのカバーガラスで顔の上半分を伺う事は出来ない。
おねぇちゃんレッド(紅香さん)は赤い皮のスーツに赤いサングラス。
いつもの拳銃片手に佇んでいる。
…紅香さんって年齢的におねぇちゃんは…
「真九郎。考えた事を口にだしてみろ」
「…スーツ。よくお似合いですね」
危なかった。
「真九郎さんっ!わたしはどうですか?」
「…夕乃さんも可愛いですよ?」
「今はおねぇちゃんです」
「…おねぇちゃんかわいい」
プライドよりも、命は大事だ。考えるんじゃない。感じよう。
「もうっ真九郎さんったら。年増なんて目でもないなんて大胆過ぎですよ?」

――――
あれ…おかしいな…俺、夕乃さんバージョン書こうとしてたのにな…まぁいっか。

91:名無しさん@ピンキー
09/06/16 03:07:38 mLXgrPj1
>>90
久々に声出して笑ったじゃねえか

っていうかプリプリ同士を戦わせてどーするw

92:名無しさん@ピンキー
09/06/16 04:09:32 A2hBT+Cj
>>90
夕乃さん!…紅香さん?!
の部分ワラタw

あと細かいことだけど絶奈は真九郎のこと名字で呼ぶぞ

93:名無しさん@ピンキー
09/06/16 04:29:50 d731uI0r
環さんのことも忘れないでいてあげてください

94: ◆JI6GRfrLos
09/06/16 07:32:28 52b2djzH
環さんね…環さんか…
―――
「よく、たどり着いたな…」
ぎぃと軋む音を立て、男たちがこちらを向く。
数はおおよそ20。
その目は一様に濁り、常軌を逸したものたちだとわかる。
「ジュウ様。おさがり下さい…」
「いや…雨は下がってろ。俺はコイツらの目的を聞きたい…」
くつくつと笑いが木霊し、狭い部屋に嘲笑が響く。
「…何がおかしい?」
「くっくっく…我等の目的を聞きたいのだろう?教えてやろう…我等の目的はっ」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「この世の女の貧乳化ぁぁぁっ!我等こそが貧乳教祖っ!
つるぺたはすてぇぇぇぇぇたぁぁぁぁぁっす!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
怒号の後に蔓延した沈黙が痛い。
こんな人間に振り回されたのか…
「…早く帰りたくなってきた。終わらせてくれ」
「御意…あの見苦しいもの達を成敗してきます」
「ほざけっ!貧乳普及率66%のお前らに我等の野望は打ち砕けぬわっ!」
「…もしかしてわたしもカウントされてるのかしら?」
「気にするな円。着痩せするだけだと思え」
「今、明確にわたし達を線引きしましたね?雪姫?」
「落ち着けよ。おまえら…」
「そうです。発展的素養がないと育乳が出来ないではないですか。
髪の一本から爪の先までジュウ様のものです。胸もジュウ様が大きくして下さいます。今は小さくとも…」
「雨。おまえが一番落ち着け…授乳の役割を果たせればいいとかだろ。そこは」
「…ジュウ様が吸ってくださるのですか?」

―――

あれ…環さんいないな…そして何かが違う。

95:銀子のショットガン
09/06/16 14:11:23 PM3Jh/jL
使いまわしのネタだけど……

「ちょっと真九郎」
「なんだ銀子どうした」

「アンタは今日誕生日なんでしょ」
「あぁそうだな、俺も十八か、まぁ18才になったからって特に何もかわらないけどさ」
「そう? 結構大事なことが出来るようになるんじゃないの」
「そうかぁ? 酒タバコ選挙権は二十歳だろ、ギャンブルだって18才でも学生は入場禁止だろ? あとなにが……」
「……あら、もうこんな所ね、誕生日祝いにそこの自販機でジュースおごってあげるからここで待ってて」
「わるいな、銀子」

「はい、サービスで開けておいてあげたわよ」
「そうかありがとな、どれ………、あれ? なんだか味が変な気が…」
「なに…私が買ってきたものにケチつけるわけ?」
「いや……すまん…(でもなんかおかしいな、……なんだか急に眠くなって……Zzz…Zzz)」

「……あれっ……そうだ……ジュースを飲んでたら急に眠気が……ここは一体どこだ? って銀子! なぜ俺と一緒のベッドに?!」
「ここは保健室のベットよ」
「ちょっと待て銀子、俺たちなんで服着てないんだ?」

「あたしの両親達がもうすぐここにくるわ、そしたら皆で市役所に行くわよ」
「だから……なんで市役所なんだよ……」
「婚姻届に決まってるじゃない。アンタは18才になったんだから問題ないわよね。とりあえず入籍だけでいいわよ。お式や新居は卒業してからね。いいこと、ちゃんと責任とってもらうわよ!」
「……orz」



96:名無しさん@ピンキー
09/06/16 19:30:00 y+7wSVFI
で、>>66の続きはまだですか?

97:名無しさん@ピンキー
09/06/16 21:12:10 1+6mbndd
このスレに舞い降りる壊れたキャラたちが大好きですたい。 みんなGJだー!

98:名無しさん@ピンキー
09/06/16 23:36:37 7v7cL+Xo
>>93
環さん書いてるけどエロで糞詰まり
文才ある人が羨ましい…

99:名無しさん@ピンキー
09/06/16 23:59:44 52b2djzH
>>98
ぶっちゃけオープンエロなキャラでエロは難しいよな。
かえってキャラを崩しにくいから。

100:名無しさん@ピンキー
09/06/17 15:47:42 ej7bFhxk
環さん…実は処女…とか?

101:名無しさん@ピンキー
09/06/17 18:49:12 J6M/Crvh
ちょっとご無沙汰してたら何というGJ!
どれもこれもナイスです


102:名無しさん@ピンキー
09/06/17 23:44:02 bLC+byud
>>100
環さんが処女?うん、ありえる!

103:名無しさん@ピンキー
09/06/18 11:09:19 WPFHRAjj
まさかここでのたもうたスレの住人と会うとは

104:名無しさん@ピンキー
09/06/20 02:16:06 WspvkyId
環さんは処女

105:名無しさん@ピンキー
09/06/21 08:20:22 VibWuAh1
環さんは処女!

106:名無しさん@ピンキー
09/06/21 10:47:31 d1hz4sKi
環さんは処女!!

107:名無しさん@ピンキー
09/06/22 00:11:58 BXEiuDus
ちょい抑えような
ありえるけど

108:名無しさん@ピンキー
09/06/22 17:22:10 kb8kz5DS
すいませんでした。

109:名無しさん@ピンキー
09/06/22 23:57:52 xZAhIOUb
         / ̄ ̄ ̄ \
      /   :::::\:::/\  
     /    。<一>:::::<ー>。 
     |    .:::。゚~(__人__)~゚j すいません…!
     \、   ゜ ` ⌒´,;/゜    
        ⌒ヽ゚  '"'"´;゚ 
     /     ┌─┐
     i   丶 ヽ{ .毒 }ヽ
     r     ヽ、__)一(_丿
     ヽ、___   ヽ ヽ 
     と_____ノ_ノ


110:名無しさん@ピンキー
09/06/24 21:40:12 E+pgf9mx
ジュウを描きたくなったから描いてみたんだが酷すぎる(笑)
URLリンク(imepita.jp)

111:名無しさん@ピンキー
09/06/25 13:38:27 JWCd2jd7
>>66の続きずっと待ってるよ。絶奈と夕乃さんとの3Pモノなんて容易じゃないだろうけど

112:名無しさん@ピンキー
09/06/26 18:11:47 Jt90SSMd
>>106
禿同

113:名無しさん@ピンキー
09/06/28 06:57:36 hcipoNXb
>>111
禿げ上がる程同意

114:名無しさん@ピンキー
09/06/29 15:26:22 zaI1oFRm
保守

115:ぬたきっち
09/06/29 23:24:34 zLckaP0U
保守


116:名無しさん@ピンキー
09/07/01 16:30:45 9NrUSinK
保守

117:名無しさん@ピンキー
09/07/02 03:56:24 EDtHIktw
環と絶奈は良い友達になれると予想。

真九郎をおもちゃにするという意味で。

118:名無しさん@ピンキー
09/07/03 04:26:42 Df5Xur7M
真九郎におもちゃにされる、の間違いだな

119:名無しさん@ピンキー
09/07/03 23:37:15 7Ey5FHaq
真九郎がおもちゃにされる、だろjk

120:名無しさん@ピンキー
09/07/05 07:10:41 HYWBnore
真九郎におもちゃにされる、の方がいいわ
純愛が一番だけど

121:名無しさん@ピンキー
09/07/05 23:58:19 4z2woZ7B
禿同

122: ◆WsILX6i4pM
09/07/06 15:15:24 6MYV7NxO
久々にSS書きたくなったから書くわ。
次のレスの内容をそのレスが書かれた時点から一週間以内に書く。

123:名無しさん@ピンキー
09/07/06 15:31:13 WUXYce0u
真九郎と夕乃さんのらぶらぶえっち
紫に嫉妬した夕乃が強引に迫るというノリからで

124: ◆WsILX6i4pM
09/07/06 15:51:29 6MYV7NxO
把握
締め切りは13日の15時。これより早くなることはあっても遅くならないようにする。

125:名無しさん@ピンキー
09/07/06 23:47:48 G8wFJ6MI
待ってます!

126:名無しさん@ピンキー
09/07/06 23:59:06 tXNrLwSX
頑張って下さい

127:名無しさん@ピンキー
09/07/07 03:56:25 rvOUgRLT
>>124
ガンバレ、めっさガンバレ

128: ◆WsILX6i4pM
09/07/07 15:19:00 BVPyjrJx
一週間どころか一晩でジェバンニしてしまった。
つうわけで投下。

129: ◆WsILX6i4pM
09/07/07 15:21:17 BVPyjrJx
「し~んくろ~っ!」
 放課後、買い物を済ませて五月雨荘へと帰って来た真九郎を迎えたのは五月雨の門に寄りかかるように立つ九鳳院紫の明るい声だった。
「紫?」
 小走りに駆け寄ると、紫は嬉しそうな笑顔を浮かべて真九郎にすり寄って来る。
「どうしたんだよいきなり」
 約束はしていない。携帯にもやってくると告げるような連絡は入っていなかったはずだが。
「急に会いたくなってな。せっかくだから驚かせてやろうと待ち構えていたのだ!」
「なんだよそりゃ……」
 大人びた口調とは裏腹に、やることは年相応に子供じみた紫に少しだけ呆れながら、歩き出す。
「ちょっと待ってて。今部屋を開けるから」
 言って鍵を取り出す為に、両手をふさぐ内、片手の買い物袋を下ろす。
「ふむ。部屋まで私が持つぞ!」
 鍵を取り出す間に、買い物袋を両手で持ち上げた紫が勝手に歩き出す。
 五月雨荘の門から部屋までならば心配するような距離でもないし、下ろした袋には卵や豆腐のような落としていけないような物は入っていない。
「じゃあ、折角だからお願いしようかな?」
 頼られた事が嬉しいのか、満面の笑みで紫が頷いてみせる。
 扉の前に立った紫に遅れて真九郎は鍵をノブに差し込む。カチャリと小気味良い音をさせて鍵が開く。
「それではどうぞ、姫?」
「んむ」
 ちょっとだけふざけながら部屋へと二人で入る。
「そういえば紫?」
 冷蔵庫を開けて買ったものをしまいながら問う。
 自分の分を持ってきた紫が首を傾げて「なんだ?」と返した。
「今日は晩御飯食べてくのか?」
「あぁ。屋敷のご飯も美味しいが真九郎のご飯が恋しくなってきていたしな」
「あはは。一流シェフと並べなれると肩身が狭いな」
 苦笑しながら、今一度冷蔵庫の中身を確かめる。
「う~ん……。急だったしあんまりスゴいのは作れないかな……それでも良い?」
「はんばーぐはっ!?」
「無理」
 む~っ、とむくれる紫だったが、すぐに気を取り直したようで、むくれ顔を正した。
「まぁ真九郎のご飯ならなんでも良いぞ。私は寛大なのだ」
 真九郎はそんな紫の頭を撫でてやるとせめて少しでも喜んでくれる献立は何かと頭を捻らせ始めた。


130: ◆WsILX6i4pM
09/07/07 15:22:33 BVPyjrJx
 † † †

 真九郎の部屋のチャイムが慣らされたのは夕飯もそろそろ出来上がろうかという頃だった。
 さしずめ夕飯の匂いに釣られて環さんが来たのではないかと判断し、ちょうど良い塩梅になった味噌汁の火を止める。
「はい、今出ます!」
 扉の向こうの客人に声をかけながら、扉を開く。
「こんばんは。真九郎さん」
「あ……夕乃さん」
 想定していなかった相手に一瞬呆気に取られていると、夕乃が手にしたタッパーを掲げて見せた。
「家のお夕飯なんですけど、作り過ぎちゃって」
「それでわざわざ家まで?」
「ええ……ご迷惑でしたか?」
「いや、そんな事はないよ。上がってよ夕乃さん」
「はい」
 笑みを浮かべる夕乃を招き入れ、自分は台所に向かう。受け取ったタッパーの中身を暖めようと蓋を開こうとして―
「なぜお前が!」
「む、紫ちゃん!?」
 二人の大声に溜め息を吐くことになった。
「二人ともどうしたのさ? 会うなり大声上げて」
「だって真九郎!」
「せっかく二人きりだと思ったのに!」
「はいはい、とりあえず落ち着こうよ。夕乃さんはご飯食べた?」
「いえ、まだ」
「じゃあ食べていかない?」
「真九郎!」
 抗議の声を上げる紫を無視して台所に戻る。出来上がった料理を盛り付けていく。その間にタッパーの中身―煮付けを鍋で暖めてそれもよそる。
「さぁ、出来たから食べよう」
「し・ん・く・ろ・う!」
「うるさくするとご飯食べさせないよ?」
「……う~っ」
 ふんっ、と鼻を鳴らして紫が席に着く。
「全く、あんま家の事は……」
「家は関係ない」
「は?」
「一人の女として敵なのだ」
 溜め息ひとつ。確かに紫が夕乃を嫌う素振りを見せるのは家云々よりは人間としての部分が理由のようだ。
 もっとも、人間として夕乃が嫌われる理由までは分からないが。別に子供受けが悪いわけでもないのだが。
「仕方ありませんね……?」
 夕乃が苦笑を向けるのに苦笑で返す。
「そうだね。とりあえずは夕飯かな?」
「ええ」
「真九郎、はやく“いただきます”をするぞ!」
「はいはい」
 紫に急かされて真九郎は手を合わせる。
「じゃ、いただきます」
「「いただきます」」
 紫と夕乃も返して、夕食が始まった。

 † † †

 それを紫が言い出したのは夕飯が半分も減った頃だったろうか。
「真九郎、口移しをしてくれ」
「……はい?」


131: ◆WsILX6i4pM
09/07/07 15:24:26 BVPyjrJx
 思わず箸を取り落としそうになりながら真九郎は問いを返した。
「……なんで?」
「環が言っていたのだ。親しい男女はあ~んをして食べさせあう。そして更に親密になると口移しをするのだと」
 あんの害悪女子大生!
「……真九郎さん。ちょっと環さんにご挨拶してきますね?」
「ちょっと待った! 良いから! 俺から言っておくから!」
 確かに環には苦情というか報復が必要だが、それをこの一流の武闘家にやらせるわけにはいかない。
 相手も一流だけにお互いただでは済まなそうだし。厳しい夕乃だから本当に洒落にならないだろう。
「で、真九郎。口移しは?」
「しない!」
「何故だ! 私達は親密な男女だろう。それこそ口移しするくらいには親密ではないのか!?」
「親密だからって口移しするなんて話は聞いたことがない! 紫は環さんに騙されてるんだよ!」
「……そうなのか?」
「そう」
 ふむ、と頷いて紫が引き下がる。
「だから学校のみんなは知らなかったのか」
 いやそりゃ知らないだろう。口移しが常識の小学生なんて嫌すぎる。
「と、とりあえずご飯は自分で食べたら? 紫ちゃん」
 夕乃が促すが、紫はまた考え込んでしまう。
「……あ~んはどうなのだ?」
「「え?」」
 思わず真九郎と夕乃の声が重なる。
「口移しが駄目なのは分かった。しかしあ~んはどうなのだ?」
 ……確かに親密な男女はあ~んくらいするだろう。しかしそれをしていいものやら。
「駄目か?」
「……駄目じゃないけどさ」
「駄目です!」
「あ~んはおかしいのか?」
「いやおかしくはないですけど。……私だってしたいですし……」
「そうか!」
 言うが早いか紫は真九郎の隣にすり寄ると口を開いた。
「あ~ん」
「う……」
 安易に応えてしまったものだと思う。心の準備もままならない内に相対してしまうとやはり照れが先行してしまい、躊躇いが生まれる。
「……あ?」
 動かない真九郎に「どうした?」と視線を投げ掛ける紫。こうなっては仕方ないと腹を括るしかないだろう。
 おかずの煮付けを取り、紫の口にそっと入れてやる。
「はむ」
 むぐむぐと咀嚼する様子を見ながら溜め息を吐く。
「ありがとう真九郎!」
「どういたしまして」
 笑いかけて、紫はまた普通の食事に戻っていく。
「……甘やかしすぎなんじゃないですか?」
「はは、そうかな?」


132: ◆WsILX6i4pM
09/07/07 15:25:41 BVPyjrJx
 夕乃の言葉に苦笑で返して真九郎もまた箸を進める。
 しばらく和やかな夕餉が過ぎていく。自分のような者には身に余る幸せだろう。そう感じる。
 緩やかな時の流れだった。
「ごちそうさま!」
 紫の声にはっと我に返る。気が付けば箸が止まっていた。
「お粗末様。紫迎えは?」
「ん、ちょっと待て」
 言って紫は懐から携帯を取り出す。
「……もうすぐ来るな」
「そうなの?」
「ああ」
 紫が応えると、部屋のチャイムが鳴らされた。
「来たようだ」
 ……この完璧すぎるタイミング。監視されてるって事だよな……。
「見送りはいいからな。……そうだ真九郎」
「ん?」
 一度玄関に向けた足を戻して紫が歩み寄ってくる。
「んーっ!」
 そのまま抱きつかれた。数秒そうしてから紫は、またな、と言い残して玄関から出て行った。
 まるで一連の動作が幻だったんじゃないかと思うほどあっさりと。
「行っちゃいましたね」
「……うん」
「真九郎さん」
「ん?」
「さっきも言いましたけど、紫ちゃんを甘やかし過ぎなんじゃないですか?」
「……甘やかしてるというか一方的に甘えられてる気がするけど」
「大して変わりませんよ。……正直、少し羨ましいですけど」
 ふと零した夕乃の言葉に、真九郎は思い当たる事があった。
 学校でも、家でも頼られる事の多い彼女は、甘えられる相手がいないのではないかと。
 生徒会長として、法月家次期当主として、責任ばかりを被って、誰にも頼れないのではないか。
「……夕乃さん」
「はい?」
「俺で良かったら、甘えてよ」
「え……?」
「年下で、夕乃さんより弱くいし……でも、少しでも気が楽になるんだったら……」
「ふふ」
「……笑うことないでしょう? 確かに頼もしくないだろうけどさ」
「いえ、ごめんなさい。違うんです。真九郎さんは頼もしいです。……嬉しくて」
「……」
「本当に甘えていいんですか?」
「勿論」
「じゃあ」
 夕乃が悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「あ~ん」
「え!?」
 驚き固まる真九郎に、夕乃はむくれた表情を作ってみせる。
「紫ちゃんには出来て、私には出来ないんですか?」
「いやその……」
「甘えさせて……くれないんですか?」
 ……その上目遣いは反則だろう。
「分かりました」
 緊張しながら、先に紫にしたように煮付けを箸で掴んで差し出す。
「……あ、あ~ん」
「あ~ん」


133: ◆WsILX6i4pM
09/07/07 15:27:06 BVPyjrJx
 箸が夕乃の口に含まれた瞬間、舌の動きすら箸に伝いに手に感じられ心臓が跳ねる。
 紫の時と違うのは、やはり異性として認識しているからだろうか。
「美味しいです」
「作り手が良いからね?」
「お母さんの料理だからじゃないですよ? 真九郎さんが食べさせてくれたからです」
 そう言って照れくさそうに笑う夕乃に、真九郎の胸が高鳴る。
「それじゃ、真九郎さん。……あ~ん」
「え?」
 差し出された箸に真九郎が硬直する。
 食べろと、そう言うのだろうか。
「あ~ん」
「いや、その今は夕乃さんが甘えるんでしょ?」
「あ~ん」
「……」
 仕方なく口を開いて少しだけ頭を前に出す。差し込まれた箸が料理を舌に乗せるが正直味など分からないくらいに緊張している。
「美味しいですか?」
「う、うん」
「そう言えば間接キスですよね?」
「んぶふっ!」
 危うく吹き出す所をなんとか堪える。
「ゆ、夕乃さん?」
「だって、さっき真九郎さんが使ったのも、今私が使ったのも、自分の箸じゃないですか」
 ……そうだった。と言うことは先に間接キスをしたのは自分が原因か。
「なんなら口移しもしてみますか?」
「なっ!? ちょっと夕乃さん冗談にも」
「私なら……いいですよ?」
 ―二の句が継げない。
 いやちょっと待て。口移しって。間接キスどころか直接のキス吹っ飛ばして口移しって。
「真九郎さんは嫌……ですか?」
 いや、いやいやいや。
 嫌じゃないけど。そういう問題か?
「口移しで食べさせてくれないですか?」
 本気なのか? 何も分からなくなってくる。視界が狭くなる。ただ狭くなった視界には夕乃の唇だけが映って―。
「もっと甘えさせてくれませんか?」
「いいの?」
「はい」
「いや、その口移しがじゃないよ? その……俺が、好きなの?」
「―はい」
 言い逃れは出来ない。言い逃れして行為を避けたとして、それは結局夕乃の想いを受け取れないと応えるのと同じだ。
 夕乃は行為を盾に聞いているのだ。私の想いを受け取ってくれるかと。
 だとしたら―。
「夕乃さん……一度食べさせて」
「……はい」
 再び箸が差し出される。それを口に含み、真九郎は夕乃に身体を近付ける。
 意志は固まった。覚悟も決めた。
 紅真九郎は、法月夕乃を―受け入れる。
 そうして、薄く開かれた夕乃の唇に、自分のそれを重ねた。

134: ◆WsILX6i4pM
09/07/07 15:28:35 BVPyjrJx
「……ふ」
 微かに漏れる吐息を塞いで、軽く咀嚼した料理を流し込む。
 少しずつ、少しずつ。それを夕乃が改めて咀嚼し、嚥下する。
 夕乃から舌で差し出された分を舌で絡めとり、また咀嚼して真九郎も飲み込む。
「んく、ん」
 じわりと滲む唾液を互いの舌で混ぜながらそれも飲み下す。
 とうに口の中に料理はない。それでも、貪るように唇を重ね舌を絡める。
 熱に浮かされたように一心に互いを求める。
「んぁ……ちゅ。んむっ、ちゅぱ」
 時折微かに零れる甘い声と吐息。それすらも吸い取るかのように尚も舌を絡め合う。
 気が付けば真九郎は夕乃を押し倒していた。
 夕乃を抱き締めながら身体ごと触れあわせる。
「ん……ちゅ。んぁ……」
 背中に夕乃の腕が回され、更に密着が深まる。伝わる体温の暖かさが更に真九郎を煽る。
「夕乃さ……」
 腕を夕乃の服の中に滑らせる。素肌を伝い、行き着いた先の下着に包まれた夕乃の膨らみを手のひらで包む。
 片手には収まりきらないサイズのそれを揉みしだくと、夕乃が切なげな声を漏らして身を捩った。
「ごめん……ちゅ、痛かった?」
「や……違うん……ん、です」
 口付けを交わしながら夕乃は答える。
「その……ちゅ、気持ちよくて」
 かっ、と頭の中が熱くなった。自分の行為で夕乃が感じてくれている。そう考えると、もっと感じさせたいと思うようになる。
「夕乃さん……ん、もっと……」
 抱き寄せて夕乃の身体を浮かし、背に回した手でホックを探り当て外す。そのまま下着の間に出来た隙間に手を差し込む。
「は……ぁ、真九郎さ……ちゅ、しんくろ……ぅんっ、さん」
 胸元の膨らみ。それを包む布地の下で自分の手が夕乃に直接触れている。
 手のひらにはどこまでも沈み込みそうな柔らかさと心地よい弾力が伝わってきて、真九郎の興奮を更に煽る。
「夕乃さん……下、いい?」
 真九郎の問いに頷いて応える。了解を得た真九郎は夕乃の下半身に手を滑らせた。
 胸とはまた違う柔らかさの太股を撫でるとくすぐったそうに脚が震える。掌を内股に触れさせるとその震えは一層大きくなった。
「は……ぁ、真九郎さん……ちゅ、んちゅ……」
 するすると内股から付け根へと近付けていく。
 やがて、下着に包まれた中心に指先が触れる。
「ふ……っんぅ」
 夕乃の身体が跳ねる。
「大丈夫?」
「……はい」


135: ◆WsILX6i4pM
09/07/07 15:29:33 BVPyjrJx
 返事を受けて真九郎は再び夕乃に指先を触れさせる。再び夕乃の身体がびくりと震える。
「ふく……っ、んん……」
「……夕乃さん。我慢しないでいいから」
 身体の震えと声を押し殺そうと必死に耐える夕乃の耳元で囁いてやる。
「は……あ……やっ、だって……やぁっ!」
 大きく身体を捩りながら、真九郎にしがみついて夕乃が声を上げる。
「はず……か……しいです……っ」
「大丈夫。可愛いよ、夕乃さん」
「あ、やっ、だめっ! そんな……言われたら……っ、ん、んぅうう!」
 一際大きく夕乃が身体を跳ねさせる。そのまま深い息を吐いて夕乃が脱力する。しばらく痙攣が止まず、呼吸も荒い夕乃をそっとしておいてやる。
 やがて落ち着いた夕乃が、真九郎を抱き締めてきた。
「大好きです。真九郎さん」
「俺も……大好きだよ夕乃さん」
 そっと口付けを交わす。優しく、永いキスを終えて唇が離れていく。
「真九郎さん。して……くれますか?」
「うん……」
 深いキスを重ねながら、真九郎は自身の硬直した下半身を晒し、それをそっと夕乃の入り口にあてがう。
「……いくよ?」
「はい」
 腰を前に押し出す。きつい抵抗を押し分けながら進んでいく。
「夕乃……さ……っ」
 熱い。その熱が夕乃の体温だと思うだけで快感は際限なく高まり、剛直は更に硬く、敏感になっていく。
 ず、と肉同士が擦れる。潤みきった夕乃のそこでさえ拒絶するように締め付けられる。
「しんくろ……さんが、っはぁ……入って……っ」
 互いを強く抱き締め合いながら繋がりを深くしていく。ある所まで進むと抵抗が一気に緩み、根元まで入り込んだ。
「……入った」
「はい……っ、真九郎さんの……奥まで……」
 ゆっくりと引き抜いて再び挿入する。先までの抵抗感が嘘のようにスムーズに動く。
「ん……っうぅ」
「……痛い?」
「痛い……です。でも、大丈夫ですから……」
 健気に笑う夕乃に、ざわざわとした感情が込み上げてくる。
 刷毛で撫でられるような擽ったさ。胸を締め付けるような切なさ。
 心の底から愛しかった。
「ごめん……でも、我慢できない」
 腰の動きを再開させる。一度奥まで貫く度に達してしまいそうな快感を耐えながら動く。
「夕乃さん……」
「ふ……っ、んぅ、く……っ」
 蕩けるような熱さと柔らかい圧迫。絡めとるような肉の動き。
 交歓の悦びに身を振るわせながら更に貪欲に貪る。


136: ◆WsILX6i4pM
09/07/07 15:30:52 BVPyjrJx
 突き上げる度に揺れる胸元を指先で捉え、その柔らかさに陶然となる。
 重ねた唇の端から涎が垂れれば舌先ですくい取りまた口内を行き来させる。
 全てが溶け合いそうな中で、下半身の脈動が大きくなり限界が近いことを告げる。
「夕乃さん……もう少しだから」
 未だ苦痛に耐える夕乃に、頭を撫でながら囁きかける。こくこくと頷くのを見て真九郎は抽送を早めた。
「あ……っ、あくっ! んぅっ!」
「夕乃さん……っ!」
 ―爆ぜる。身体の奥から熱が奔流となって溢れ出す。
 とっさに引き抜いて、真九郎は白濁を夕乃の腹上に撒き散らす。
 今までにないほど強く脈動して、大量の精液が夕乃の腹を白く染める。
「……終わったんですか?」
「うん……」
 自らに降りかかった精液を指先ですくい取り、弄ぶ。
「これが……真九郎さんの……」
「……そうだよ」
「なんだか不思議。これが赤ちゃんの元なんですよね」
 夕乃がくすっと笑う。真九郎もつられて笑って、どちらからともなく口付けた。
 抱き締め合いながら、夕乃が真九郎の耳元で囁く。
「いつかは……中に下さいね?」
「うん」
 満たされる。どうしようもなく。
 身に余る程に幸せだった。諦めていた幸せがここにあった。愛している人がいて、愛してくれる人がいる。
 それのどんなにかけがえのないことか。
「大好きだよ、夕乃さん。愛してる」
「……私も、です」
 失いたくない。そう願って抱き締める。互いが互いを捕らえるかのように、抱き締め合う。
 この幸せよいつまでも、そう願って。

 了

137: ◆WsILX6i4pM
09/07/07 15:34:21 BVPyjrJx
以上夕乃さん甘々を目指した何か。SS書くの久しぶり過ぎて勝手が分からなかったんで粗かったりする部分はお目零しを。
次はレス下3つ目の内容で書きます。一週間ルールも同じ。でわでわ。

138:名無しさん@ピンキー
09/07/07 19:15:28 zhDCc78g
GJ!!

139:名無しさん@ピンキー
09/07/07 19:28:06 NEG7qIQ8
乙でした!

140:名無しさん@ピンキー
09/07/07 19:38:08 D5ItWqWt
>>137
乙!
真九郎が彼氏が出来なくて嘆いている環さん(処女)を慰めるんだが、
酒の力もあいまってヤッちゃうお話を希望

141: ◆WsILX6i4pM
09/07/07 20:42:50 BVPyjrJx
>>140
把握。14日19時締め切りでがんばります。

142:名無しさん@ピンキー
09/07/07 22:56:06 TrSGyiNF
GJ!次回作も期待

143:名無しさん@ピンキー
09/07/07 23:59:18 KySxqIj3
乙した!次も期待!

144:名無しさん@ピンキー
09/07/08 03:00:37 PqUPkUzR
もう来てたw>>137GJ!

145:名無しさん@ピンキー
09/07/08 03:12:04 L4/Qs8UY
ダメだ…
夕乃さんラヴの一員としてこれだけは言わせておくれ…

夕乃さんの名字は『崩月』だッ!

146: ◆WsILX6i4pM
09/07/08 11:52:46 oNrufxs3
>>145
申し訳ない。久しぶり過ぎて色々忘れてた法泉の名前とごっちゃになってたみたいだ。

147:名無しさん@ピンキー
09/07/08 23:49:31 S/FbJdSs
そんくらいの誤字は気にすることないって

148:名無しさん@ピンキー
09/07/09 02:25:15 I8/U9eB7
>>137
リクエストした123です。

一週間後と思ったらもう来てたw

で、読み終えてもニヤニヤが止まりません
どうしてくれますか

本当にありがとうございました

149:名無しさん@ピンキー
09/07/11 03:59:05 g8c0cG1C
期待age

150: ◆WsILX6i4pM
09/07/12 16:36:34 yJN2EyoQ
流石に連続ジェバンニは出来なかった。
とりあえず出来たので投下します。

151: ◆WsILX6i4pM
09/07/12 16:37:33 yJN2EyoQ
 深夜、真九郎の部屋。普段なら布団に入ろうかという時間だが、未だにそれは叶わない。
 部屋には未だ煌々とした灯りが灯され食卓を照らしている。その理由はというと―。
「あたしのな~にが不満だってのさ~」
 ―傍迷惑な隣人がつまみを作るのを強要したあげく居座って管を巻いているからだ。
「顔良いから声掛けてみたけど中身オッサンで萎えた。とかさ~! 言葉選びなさいよ」
 個人的には実に真っ当な評価だと思うので真九郎としてはフォローのしようもなく、苦笑いを浮かべるより他ない。
 今にしたってジャージで酒を呑みながら愚痴る行為は中年男性そのものだ。
 そもそも酔っ払った彼女に下手な言葉を返すと無駄に長引いてしまうから受け流すのが一番なのだと判断して、真九郎は返答を頷くに止めておく。
 絡み上戸の環の扱いにすっかり慣れてしまったのはそれだけ親しく鳴ったからと言うことか。
 それが酔っ払いのあしらい方が巧くなっただけと思うと多少悲しいが。
「……」
 不意に黙り込んでしまった環に視線を送ると、真面目な顔になった彼女がぽつりと零した。
「……そんなに魅力ないかな?」
「そんな事はないと……思いますけど」
「う~ん……」
 環がテーブルの上にだらりと身を崩して、横目で真九郎を伺う。
「じゃあさ、例えば私とちゅ~したいとか思う?」
 言われてどきりとする。普段意識しないが、基本的に環は美人なのだ。
 それを意識してしまうと薄く開かれた薄桃色の唇が妙に艶めかしく見えて、無意識にそれに近付いて―。
 ってだめだ。なにやってるんだ。
 ふらつく頭を左右に降り、目前のグラスを呷る。
「―はぁっ」
「お~、いいねぇ真九郎くんいい呑みっぷり」
「どういたしまして……」
 ―微かに喉を灼くのはアルコール。呑んでいるのは真九郎とて同じだった。
 初めは、余りに呑め呑めとうるさいから仕方無くだった。しかし始めてみるとこれがなかなか止まらない。
 結局勧められるままに呑んで、今やすっかり真九郎も酔いが回っていた。
「で、ちゅ~は?」
 悪戯っぽく顔を覗き込む環から目を少しだけ逸らす。
「……少なくとも酒臭いのは嫌です」
「がーん!」
 わざとらしく叫んで、環は頭を抱えて仰け反る。
「……わ~るかったわよ~。どうせ酒臭い中身オッサン女ですよ~」
「ちょっとそんな環さん……」


152: ◆WsILX6i4pM
09/07/12 16:38:35 yJN2EyoQ
 ぶつくさいって拗ねる環を宥めようと必死に頭を巡らせる。しかし気の利いた言葉など真九郎から出よう筈もない。
 その事を自覚しているから、真九郎は素直な言葉で応えることにした。
「いやその、環さんの気取らない所とかは一緒にいて楽って言うか、変に気を使わないで良いし良いところだと思いますよ?」
「む~……」
「それに実際美人じゃないですか。さっきの話だと顔良いって言われたんでしょう? 少なくともそこは自信持って良いですよ」
「でもさ……」
「確かにフランク過ぎたりお酒呑み過ぎだったりだらしなかったりですけど……」
「……言い過ぎじゃない?」
「いや、そういう事じゃなくて……そういうのを差し引いても―いや、ひっくるめて素敵な女性だと思いますよ?」
「……」
 沈黙が流れる。
 失敗したか―そう思われた瞬間、ふんわりとした重みとも言えないような重みが降ってきた。
 驚いた真九郎が硬直していると追い討ちをかけるように唇に柔らかい感触が伝わった。
 それがキスだと気付いた瞬間、頭にかっと血が昇るのを感じた。
「な、ちょ……なにしてるんですか環さんっ!」
「ん~、欲情」
 顔を真っ赤に染めながら真九郎が叫ぶ。払いのけられた環は瞼を半目に、口元をにんまりと釣り上げて応える。
「な、なにを……っ」
「真九郎くんってさ、天然たらしだよね」
 言われた意味が分からなくて言葉に詰まる。
「結構さらっと甘い台詞を言うよね。純情な乙女ならイチコロだよ?」
「純情な乙女ならって……」
「例えば……あたしとかね」
 そう言って再び環が唇を重ねる。先のように軽く触れさせるだけではない、擦り付けるような、甘さを含んだキス。
 微かに口元から吐息が漏れてそのくすぐったさに頭が痺れる。体の芯が熱くなって、目の前の女性が欲しくて堪らなくなる。
「ん……」
 気が付けば無意識に環の胸元に掌を押し当てていた。環はそれを嫌がるでもなく受け入れ唇を重ね続ける。
 拒否がない事で遠慮がなくなっていく。更に大胆に掌を押し当て、膨らみを指先で弄る。
 互いの息が荒くなる。アルコールと行為への酔いに思考が茫洋としていく。
 ただ行為だけがより深く相手を求めたもの変わり、激しくなっていく。
 密着させた体そのものを擦り付け合う。環の脚を割開くように真九郎の脚が滑り込めば、待っていたと言わんばかりにそこに腰が押し付けられる。


153: ◆WsILX6i4pM
09/07/12 16:41:03 yJN2EyoQ
「んん……」
「……どこが純情な乙女ですか」
「真九郎くんこそ……酒臭いキスは嫌だったんじゃないの?」
「環さんからキスしてきたんでしょう」
「真九郎くんが悪いんじゃん」
「……知りませんよ」
 言葉を交わしながらも行為は止めず、むしろ加速していく。
 ジャージの胸元のジッパーを下げ、Tシャツを捲り上げる。
「ん、待って」
 言って環が自らの背に腕を回す。ぷつんという音がしてブラのホックが外された。
「……はい」
 Tシャツと一緒に捲り上げて素肌のまま胸元を真九郎の目の前に晒す。
「ん……」
 唇を重ね、掌を直に触れさせる。
 掌でやわやわと揉み、乳首をくすぐる。
 その間にも真九郎の太股で秘部を擦り付けて自らを慰める。下着からは愛液が染み出し、くちゅくちゅと音を立てる。
「環さん……」
 猛った感情のまま押し倒す。胸元を弄り、膝で下着越に環の中心をぐりぐりと刺激する。
「んっ、んん……」
「環さん……、環……さん」
 脳髄が痺れるような感覚。ただ熱情が押し寄せそれに従うしか考えられなくなる。
「ぅあ……っ、真九郎……くん」
 衝動が募る。貫きたい、中に身を沈めたい、繋がりたい。
「環さ……んっ」
「ちょ、ちょっと待って!」
 身を乗り出しベルトを緩めようとした所に制止を掛けられる。
「環さん?」
 ここまで煽っておいて何故止めるのかと訴えかける。
「や、その……聞いて欲しいんだけど」
「……はい」
「実はその…………だったり」
「え?」
「だからその、初めて……だったり?」
「……」
 え~と、なんだ。
 普段からセクハラしてきて、男漁りを日常的にしていて、その事を隠そうともしなくて、今も逆レイプみたいな流れで迫ってきて―。
 そんな人が……ぶっちゃけ処女?
「オッケーです」
「何が!?」
 ここまで来て止まれる筈もない。
 首筋にキスを降らせて真九郎は今度こそベルトを緩めた。
「ひゃ……ちょ、真九郎くん?」
「環さんの初めて……下さい」
「……引いてない」
「だからむしろオッケーですって」
「……しょうがないなぁ」
 そっと首筋に腕が回される。優しい抱擁を受けて真九郎は更に体を密着させる。
「……おいで?」
 それが合図だった。環の下着を一息に下ろして自らを押し当てる。


154: ◆WsILX6i4pM
09/07/12 16:42:32 yJN2EyoQ
 そのまま力を込めて、真九郎は環の中に身を沈めていった。
「あ……あく……っ!」
 痛がる姿に心を痛めながら、しかし本能は更なる結合を求める。
「環さん……っ!」
 一息に根元までを沈め、最奥を突く。
「や……っ、あくっ……」
 苦痛に顔を歪める環の為にぴったりと動きを止め、呼吸の安定を待つ。
「あ、はは……すご、奥まで入ってるよ」
「……入れましたから」
「うん……動く?」
「良いんですか?」
「……いいよ」
 応えを得て真九郎は動き出す。
 緩やかに出し入れするが、環の内がぎゅっと締め付けてきてそれだけで堪らない快感に見舞われる。
 その快感で自らが更に硬さを増していくのを感じながら抽送を繰り返す。
「真九郎くん……中で動いてるの分かるよ……」
 痛みに震えながらも甘さを含んだ声音が耳朶をくすぐり、真九郎の本能を溶かしていく。
 気を緩めれば欲望のままに激しく責め立ててしまいそうになるのを必死で御する。
「く……っ、環さ……ん」
 剛直が跳ねる。今すぐにだって果ててしまいそうな快楽に溺れながらそれでもより長く繋がっていたくて耐える。
「真九郎くん……我慢してるでしょ」
 環が囁いて、腰をくねらせた。
「うわ……っ」
 唐突な動きに危うく達してしまいそうになるのをなんとか堪える。
「ふふ……、我慢しなけていいのに」
 更に腰をくねらせ真九郎を翻弄する。
「環さん、痛いんじゃ……」
「へーき。だからね真九郎くん……」
 ―滅茶苦茶にしちゃっていいよ。
 その言葉で限界だった。
 一瞬で限界まで高まった射精感をそれでも抑える。それすらも環の言葉に崩された。
「イっちゃえ」
 刹那、一際強く締め付けられ途方もない官能が頭を真っ白にそもる。
「環……さ……っ!」
 ガクガクと体を振るわせながら真九郎は環の中に精液をぶちまける。
 今までにない時間をかけて吐き出される白濁は環の中を満たし、更には溢れ出す。
「ぅあ……っ、あぁ……っ」
 ようやくそれが止んだ時には環の膣中から溢れ出した精液と血液が床にピンク色のシミをこぼしていた。
「あはは……しちゃったねぇ……」
 耳元で囁く声が妙に遠い。
「ねえ真九郎くん…………だよ」
 ろくに返事も返せないまま、真九郎の意識は眠気に浚われた。

 † † †

 ―意識が覚醒する。
「……酒臭」
 部屋中に充満するアルコール臭に顔をしかめながら起きあがろうとして―。



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