【田村くん】竹宮ゆゆこ 12皿目【とらドラ!】at EROPARO
【田村くん】竹宮ゆゆこ 12皿目【とらドラ!】 - 暇つぶし2ch744:名無しさん@ピンキー
09/03/28 23:58:31 e8UiOzvK
>>755
GJ
つか鼻血ネタww

745:名無しさん@ピンキー
09/03/29 00:13:58 qrFN+CYg
>>755
GJです><
さりげにとらちわww

746:名無しさん@ピンキー
09/03/29 01:06:03 7R/flhcU
あれ何か視界がボヤけ…
リアルに泣いた俺は負けか?

747:名無しさん@ピンキー
09/03/29 01:10:45 9tkHfxD2
>>761
なら俺も負け組だ…
原作とアニメが終わった今、みのりんSSはHappyENDでも泣ける…

748:名無しさん@ピンキー
09/03/29 02:00:43 IHzeKle2
三人娘どれも泣ける…

749:名無しさん@ピンキー
09/03/29 04:52:32 wWmWaugv
誰もいない深夜に、こっそりと投稿してみます
でも、長いので多分途中で切られるだろうな・・・

750:名無しさん@ピンキー
09/03/29 04:54:43 wWmWaugv
ふたりだけの(修学)旅行  【竜児×亜美 H未満】

年が明け新学期、大河に励まされ何とか登校した竜児を待っていたのは三泊四日のはずの沖縄修学旅行が、二泊三日の冬山に変更されたという知らせだった。
太陽輝く沖縄よりは、灰色の雪山が今の自分にこそお似合いかと自嘲気味になった竜児が、本屋をスルーし、立ち寄った病院で待っていたのは、年末の入院費用の請求書・・・
そこには、高須家の家計を根本から揺るがすような金額が記されていた。
「ありえねぇ・・・どうすんだよ、これ・・・」

翌日、少し早めに家を出た竜児は教室には立ち寄らず、まっすぐに職員室に向かった。
クラスメートたちが来る前に担任を捕まえて、話しておきたいことがあったのだ。
ところが・・・職員室のドアを開けると、独身の机の前には意外な先客がいた。
今年初めてその御尊顔を拝ませていただいた2-Cの、いや全校のアイドル・川島亜美が
何やら独身と揉めている様子。
考えてみれば、あのイブのクリパ以来の再会と言うことになるのか。
そして自分は、亜美の忠告に従わず大怪我をした上に大病を患ったわけで・・・


751:名無しさん@ピンキー
09/03/29 04:55:55 wWmWaugv
「だーかーらー、無理なんですってばー」
「でもね、川嶋さん・・・一生に一度の、高校二年の修学旅行なのよ?」
「それは分かっていますけど、旅行の出発時間が、普段の始業より早くなるなんて思ってなかったんです。ですから、無理なんです」
「それは、予定が急に変更になっちゃったから・・・あら? 高須君? 早いのね」
独身がようやく竜児に気がついたらしく、笑顔を向けてくる。
同時に亜美が、ギョッとした表情で振り向いた。
どうやら、竜児には聞かれたくない話をしていたようだ。

「おはようございます(結婚)むりちゃん先生。ちょっと先生にお話がありまして・・・」
「まさか高須君まで、修学旅行欠席します、なんて言わないわよね?」
担任のいきなりの一言に(何でいきなり言い当てられてるんだ? とうとう独身術に目覚
めたのか? それとも30歳までだと魔女になるというあれか?・・・)などと思いつつ
そんなことは、顔には決して出さないようにする竜児。
「あっ、そうだ! 高須君からも言ってあげてくれないかな?」
「・・・・・・何をですか?」
言ってることが意味不明、こういうところが三十路にして独身たるゆえんなのでは・・・
「川嶋さんが、修学旅行に行かないって言うのよ」
「えぇっ?」


752:名無しさん@ピンキー
09/03/29 04:56:32 wWmWaugv
あわてて亜美の顔を見返す竜児に、亜美はチッと小さく舌打ちして目をそらし、
「行かないんじゃありません、行けなくなったと言ったんです」
知られたくなかった・・・という表情で、竜児から顔をそむける亜美。
「川嶋、どういうことだよ」
亜美は答えず、代わりに独身が説明する。
「ほら、沖縄が雪山に変更になったでしょう。それでバスの出発時間が、沖縄に行く時の飛行機の予定より、ずっと早くなっちゃって・・・」
独身の話を受けて、渋々という感じで説明を始める亜美。
「あたしは、前の日に地方でグラビアの撮影があるの。飛行機に乗るバスの時間なら、
間に合うはずだったんだけど、雪山スキーのバスの出発時間には、始発で帰ってきても間に合わないの。だから修学旅行には、行けないの」
「そうなのか・・・」

川嶋も居残り組か・・・などと喜べるはずもないが、
「だから・・・電車で後から追いかければ、お昼過ぎにはゲレンデで合流出来るってば!」
「みんながバスで楽しく旅行してるのに、一人寂しく電車なんて嫌です! 高須君だってそれくらい、わかるでしょ?」
「おう・・・つうか、お前が一人旅って時点でダメダメだろうと思うが」
竜児としては、素直に自分の思ったままを言ってみたつもりだったのだが、
「・・・亜美ちゃんのこと、電車にも乗れないようなダメ人間だとか思ってるわけ?」
亜美の目つきがきつくなる、睨んでいる一方で拗ねてるような顔にも見える。
「そうじゃなくて・・・お前みたいな綺麗な女の子が、一人で電車旅なんかしてたら大変なんじゃないのか?ってことだよ。ナンパとかいろいろとさ?」
言った途端に、亜美の整った顔がマンガのように真っ赤になっていった。
これは極めて珍しい反応だと言える。
普段なら、『高須君ってば、何当たり前のこと言ってんの~お・ば・か・さ・ん~』
くらいの返事が帰って来ても、よさそうなものなのだが・・・。


753:名無しさん@ピンキー
09/03/29 04:57:07 wWmWaugv
「まぁ・・・た、た、確かにそういうのはウザいけどね」
何故かしどろもどろになっているし、こういう亜美も珍しい。
「うーん、川嶋さんの場合は確かにそういう心配があるか・・・いいわねぇ・・・若くて綺麗で、スタイル良くて、モテモテで・・・17歳で・・・将来が・・・(ブツブツ)」
担任が何やら暗黒面に落ちていきそうなので、慌てて止めに入ることにする。
「い・・・いや、先生もまだまだ全然若いじゃないですか!」
「・・・17歳の高校生に、三十路過ぎた独身女を“若い”と言われてもねぇ・・・」
マズイ・・・却って独身の心の何かに触れてしまったようだ。
「う゛・・・おい川嶋、何とか言ってやってくれよ」
亜美は未だ赤い顔のまま、ぼんやりと夢見心地のような感じだったが、
「え?何?・・・ああ、ゆりちゃん先生のこと?・・・大丈夫ですよう。先生だってまだ17歳と165カ月なだけじゃないですかっ」明るく笑う亜美、
「お前っ! よりによって、なんて危険な表現法を使うんだっ!」
「165ヵ月!・・・4950日!・・・118800時間!・・・分だと・・・」
「先生!分とか秒とかいいですから! 生命誕生30億年の歴史に比べれば13年なんてゼロと同じですからっ! しっかりして下さい、先生っ! (結婚)むり先生っ!」


754:名無しさん@ピンキー
09/03/29 04:59:08 wWmWaugv
いきなり名前を素で間違える竜児に、ゆりが突然正気に戻った。
「高須君・・・先生の名前は恋ヶ窪ゆりです。恋崖っぷち結婚むり、ではありません・・・」
(誰だ、それ?)という気持ちは押しとどめて、竜児は話を元に戻そうと試みる。
「先生(の結婚)がむりか、ゆりかは置いといて、今は川嶋の旅行の話じゃないんですか?」
担任としての使命感が独身三十路の絶望感を上回ったのか、(結婚)むり先生が正気に戻る。
「はっ、そうでした。川嶋さんが旅行行かないとクラスの皆・特に男子が寂しがるわよ?高須君も、川嶋さんが旅行に来なかったら寂しいわよね? つまらないわよね?」
いや、竜児一個人がどう思おうと亜美の旅行不参加の決定に何かの影響を与えられるとも
思えないのだが・・・と竜児が答えを探していると、
「えーっ?先生~・・・高須君が『あたしが行かないと寂しい』なんて思うわけないじゃ
ないですか~」
「そ、そんなことはないわよね、ね、ね? 高須君?」
「いや、おれは別に・・・」
「さ・び・し・い・わ・よ・ね!!!」

この野郎少しは空気読めよ、あんた北村君と並んで川嶋亜美と仲の良い男子の双璧じゃ
ねーのかよ!・・・などという担任(独身三十路)の心中など分かろうはずもなく
「まあ、みんなは寂しがるだろうなぁ・・・俺には、全く関係ないけどな」
竜児の、あまりと言えばあまりの暴言に担任の眦がカッと吊り上がる。
同時に、亜美の視線が凶悪にきらめいて、
「ほら先生、高須君は亜美ちゃんが旅行に行こうが行くまいが『関係ない』んですって~」
亜美の口調は完全に、竜児を非難しているとしか思えないトーンに変わっている。
「・・・高須君、どうしてそこで『川嶋の行かない修学旅行なんて嫌だ!お前が行かないなら俺も行くのをやめる! やめゆうぅぅぅ』くらいのことが言えないの・・・」
独身が頭を抱えて溜息を漏らす。亜美が
「高須君がそんなこと言うわけないじゃん」と小さな声で呟いたが誰にも聞こえていない。


755:名無しさん@ピンキー
09/03/29 05:00:28 wWmWaugv
学園祭でもクリスマスパーティーでも、自分がどんなに頑張ってみせても竜児が見ている
のは、手乗りタイガーと実乃梨ちゃん。
そんなことは嫌というほど知っているし、自分が一番になれないのも分かっている。
そもそも竜児は「川嶋の周りには大勢いるんだし自分は特に必要ない」と考えている上に
「大河は一人きりなんだから、俺がいなくてはダメだ」と思っている節がある。
亜美が「竜児一人がいてくれればそれでいい」と思っても、そんなことは信じてくれない。
自業自得とは言え、竜児が亜美のために旅行に行かない、なんてことはありえない・・・。
だからなのか・・・少しずつ自分の内に内にと、潜って行きかけた亜美の耳に、その声は
錯覚としか思えなかった。

「先生、俺も、修学旅行、行きません!」
「そうそう、高須君、やれば出来るんじゃない・・・って、えぇっ!?」
独身の声にびっくりして、亜美も竜児の顔を見つめる。
今、なんて言ったのだ、この男は? 修学旅行に行かない?
「・・・と言うかですね。川嶋とは関係なく俺も、修学旅行には行けませんので」
「「はぁ?」」
独身と亜美の声が重なる。
「朝早くから先生を探していたのは、それを伝えるためだったんですけど・・・」
「「何で?」」
またしても二人同時。
竜児は亜美の方をちらりと見て、一瞬ためらった後、
「冬休みにインフルエンザで、何日か入院してしまいまして」
独身が首を傾げる・・・だから? と思っているのが明らかだ。
入院の件は、大河の「あんたが年末にでも死のうものなら、みんなの予定が滅茶苦茶に
なっちゃうでしょ!」との一言で、独身には連絡済みである。
亜美の方は、そもそも入院の事実自体を知らなかったはずで、目をぱちくりしている。
「その時の入院・検査・点滴なんかの費用請求が来たんですが・・・高須家の家系を圧迫するくらいの額になっているんです・・・」
「・・・・・・つまり、修学旅行の積立金を返還してもらって、それに当てようと?」
返事をせずに、竜児はうなづいた。
独身は一年生の時には副担任だったし、高須家が複雑な家庭環境なのも、理解してくれて
いるはずだ。
そもそもが、三泊四日の沖縄旅行なんて竜児には贅沢過ぎる話だった。
母親の泰子がどうしても、というから行くつもりになっていただけなのだ。
年末に突発事態が発生した今、しかもこの心理状態で冬山なんてはっきり言って行きたく
ないに決まっているし、行けるわけもない。


756:名無しさん@ピンキー
09/03/29 05:01:21 wWmWaugv
大河がなんと言おうと、これが最後のチャンス・イベントだろうが先立つ物がないのでは
如何ともし難いのが現実というものだ・・・実乃梨とも顔を合わせなくて済むし。
「そんな・・・川嶋さんだけじゃなくて、高須君まで。高須君が行かなかったら・・・
行かなかったら・・・」
独身の声が、だんだんと小さくなって行く。
きっと頭の中で、言葉をどう続ければ良いのか考えているのだろう。
「・・・そう!高須君が行かなかったら絶対に北村君が寂しがるわ! 春田君や春田君や春田君なんかもっ!」
・・・川嶋の時は「クラスのみんな」で、俺だと北村と春田なのかと思わず苦笑。
そう思いつつ、入学当初だったら、俺が休むと知ったら、クラスのほとんどが大喜びした
だろうなぁと思い直す・・・当時副担任だった、この独身も含めてなのだが。
今は数人とは言え、自分の不在を寂しがってくれる奴らがいるはずだ。
「そうそう、あと能登君もね!」独身が何やら続けているのをサラッと流して考える。
実乃梨はともかく、大河は自分が行かなければ、多分だが寂しがってくれるだろう。
・・・って、大河? 何かが引っ掛かったが、独身の声でそれも消えてしまった。

「ねえ、高須君・・・どうしても無理そうなの?」
「残念ですけど、家計の危機なので。それに・・・」
「それに?」
「いや何でもないです。それより遅れてなら行ける、川嶋の方を説得した方がいいんじゃないんですか?」
さりげなく話をそらして亜美の方を見ると・・・亜美は何かを考え込んでいた。
「川嶋?どうかしたか?」
竜児の声に、はっと我に返ったように、
「えっ?何?高須君?」
あわてた様子の亜美を、竜児は訝しく見つめる。
「高須君はご家庭の事情だから仕方ないとして、川嶋さんは出来るなら行った方がいいんじゃないか、ってことです」
「うーん・・・・・・」
顎に人差し指を当てる、というマンガでも最近は見かけないポーズで固まっている亜美は、
さすがにモデルというべきか、顎のラインも人差し指の細さも、そこらの女子高生が束に
なっても、足元にも及ばないだろう美しさ。
それも無意識のうちにだろうから、恐ろしいったらない。
真剣に考え込んでいるためか、表情はいつものぶりっ子仮面とも腹黒ちわわとも違って
年相応の少女のものになっていて、それが竜児には嬉しく映る。
(めったに見せないけど、こいつもこういう顔が出来るんだよな・・・)


757:名無しさん@ピンキー
09/03/29 05:07:40 pZtHxBlV
こんな時間に……!

758:名無しさん@ピンキー
09/03/29 05:15:02 wWmWaugv
朝の光を浴びた亜美の姿につい見とれていると、少しして亜美が妙なことを言い出した。
「・・・先生? あたしが修学旅行に行けなかった・・・として、ですね」
「なあに? 川嶋さん」
「その三日間の扱いって、どうなるんですか? 修学旅行って授業の一環として行われているんですよね? お休みしたってことになっちゃうんですか?」
「え? え・・・えぇと、どうなるのかしらねぇ?」
おいおい、質問してるのは川嶋の方だろ、生徒に聞き返してどうする。
と心の中で突っ込みつつも、亜美の質問の意図は竜児にも分からない。
「他の先生方に確認しておいていただけませんか? 昼休みにでも聞きに行きますから」
「それはいいですけど・・・休み扱いなら行くけど、違うなら行かない、なんていうのは先生、認めませんからね」
「いえ、行けないことは決定なんですけど・・・ちょっと気になることがあるので」
独身は納得していない顔ながらも、必ず確認すると約束してくれた。

取りあえず要件は済んだので、職員室を出て亜美と並んで教室に向かうことにする。
それにしても、こいつが行けないと知ったらみんな(特に男子)はガッカリするだろうな、
たとえ沖縄じゃなくなったとしても・・・などと竜児が考えていると、
「ねぇ高須君、旅行に行けないことタイガーにはもう言ってあるの?」
亜美が痛いところを聞いてきた。
「まだ誰にも言ってねぇ・・・まず独身に言わなきゃな、と思ってたからな」
「ふーん・・・タイガーがっかりするだろうねぇ・・・もしかしたら実乃梨ちゃんも」
亜美の言葉に、とたんに脚が重くなるのを感じてしまった。
イブの夜、先に帰ってしまった亜美は、あの後に何があったのか知るはずもないのだ。
自分が実乃梨に振られた、などということは・・・。
「・・・櫛枝はがっかりしたりはしないと思う。大河も、今年からは俺離れをして一人で頑張る、みたいなこと言ってたから多分平気だろう」
会話に少し、間が空いた。


759:名無しさん@ピンキー
09/03/29 05:16:03 wWmWaugv
あー・・・人がいたとは・・・お恥ずかしい限りです(汗


760:名無しさん@ピンキー
09/03/29 05:18:41 wWmWaugv
「みのりちゃんと何かあったの?」
目を細めて竜児の顔を見つめる亜美の様子には、いつものからかう様子が見られず竜児は
意外に感じた。
好奇心でも厭味でもない気遣うような目に見え、ついつい腹黒魔女の前で本音を漏らして
しまう。
「イブにふられた・・・つうか、ふられる前に告白自体を拒否られた、以上」
「・・・それで、熱出して寝込んでたの?」
まただ。
今の言葉にもからかってやろうという響きがない、それどころか竜児のことを心配してる
かのような柔らかさ・暖かさが感じられる・・・間違いなく気のせいだろうが。
「熱が出たのはインフルエンザのせいだ、三日間入院して退院後も自宅療養してた」
「大変な年末年始だったんだね・・・」
まあな、と竜児は苦笑する。
「大河にクリスマスケーキ焼いてやれなかったし、年越しソバも、雑煮もおせちも作ってやれない年末年始だった・・・大掃除も出来なかったしな・・・川嶋は?」
「イブのパーティーの後、クリスマスから実家に帰って年末年始は海外・・パパとママが
 日本に帰った後は、そのまま向こうでお仕事よ」
「羨ましがるべきなんだか、大変だなと同情するべきなんだか・・・微妙な年末だな」
亜美が、むっとしたような微妙に怒ったような顔を竜児に向ける。
「本当に大変だったのは高須君の方でしょう。日本にいたら、絶対お見舞いに行ったのに」
「店が休みで、泰子が面倒みてくれたからな。俺は横になって呻ってただけだし、川嶋が
 来てくれても何も相手してやれなかったよ」
「それでも、お見舞いに行きたかったの! でもまあ、元気になって良かったね、って・・・」
亜美が急に言いよどむ。


761:名無しさん@ピンキー
09/03/29 05:19:27 wWmWaugv
竜児は首をかしげて亜美の方を見た。
「・・・元気になったのは、体の方だけだよね。まだ二週間しか経ってないんだもんね」
何が二週間なんだ? と聞き直しそうになって、竜児は自分で自分にあきれてしまった。
イブに実乃梨に振られてから、まだ二週間だと亜美は言っているのだ。
そんなことも忘れているのか、自分は。
インフルエンザの高熱で、記憶を無くしてしまったとしか思えない気がした。
「・・・まあ、さっき先生の前では言えなかったけど、正直なところ今の俺は、冬山に行きたいような心境でないのは確かだよ」
「そう・・・だよね・・・」
つぶやく亜美の声を始業のチャイムがさえぎった。

修学旅行の話題で浮かれまくっているクラスメートの中、竜児は『自分が行けなくなった』
ことを切り出せずに、そのまま何となく休み時間を過ごしてしまっていた。
大河も実乃梨も北村も、すごく旅行を楽しみにしているのが分かり、言えなかったのだ。
今日は午前授業をはさんで、午後はホームルームで旅行の班を決めれば終わり。
そこで言うしかないか・・・と教室を見まわしてみて、ふと気が付いた。
そう言えば亜美の姿が見えない・・・多分、旅行に行けない間の扱いがどうなるのかを
独身に確認しに行っているんだろう、と考えていたら当の川嶋亜美が教室に戻ってきた。
何だかよく分からないが、つかつかと竜児の席までやってきて、右手を差し伸べる。
「高須君、三日間よろしくね」
教室が一瞬しんとなった後、ざわめきだす。
(何で高須ばっかり・・・)
(亜美ちゃん、やっぱり高須君狙いかぁ)
(つうか、これフライングじゃね?)
(これでまるおくんとタイガー含めた四人は、同じ班確定っ?)
やかましい教室を置き去りに、竜児の頭の中は???で一杯だ。
三日間よろしくって・・・俺もお前も居残り組じゃねーかよ? 旅行行けないだろうが?
「はいはいはーい」
独身が両手を叩きながら教室に入ってくる。
「それでは、みんな席に着いて~。これから修学旅行の班分けをします。今日は班分けが終わったら、自由解散です。班ごとに旅行の計画を練るもよし。取りあえず帰るもよし。
 八人で男女混合の班を作って下さ~い」


762:名無しさん@ピンキー
09/03/29 05:20:45 wWmWaugv
八人・・・うちのクラスは41人だから、行けない俺と川嶋を除くと39人、一つの班は
七人になるってことだな・・・などと竜児が考えている所で
「高須ぅ!」
「高っちゃん」
「高須~」
男三人衆がやってくる。
「当然、俺たちの班の男子はこの四人だよな!」
はっはっはっと笑う親友には申し訳ないと思うのだが。
「あ、あのな北村・・・」
説明しようとしたところに、今度は大河の声が飛ぶ。
「竜児っ! あたしみのりんと組むけど、竜児も入れてやってもいいわよっ」
「おお、逢坂と櫛枝か。これも当然、俺たちと同じ班だよな、高須」
「いや・・・あのな、北村聞いてくれ」
言った瞬間、実乃梨が目をそらして俯いたのが分かった・・・
そう言う意味じゃねーんだよ、櫛枝! と竜児が言いかけた瞬間、
「高須君・・・あなた、まだ話してないの?」
独身の低い声が耳に届いた。
大河が何事?と竜児を見る。実乃梨も伏せていた目を上げる。
北村はきょとんとした顔で独身のことを見つめている。
「・・・みなさんにお知らせすることがあります・・・私から、言っていいのね?」
独身の視線に、竜児はうなずきで返す。
「高須君は・・・事情により、今回の修学旅行には参加しません」
一瞬、教室が静まり返った後、
「竜「えぇぇぇぇぇぇっ!」児、何で!」という大河の叫びを北村の絶叫がさえぎる。
ああ・・・俺は少なくとも男友達には恵まれたみたいだな、と思う竜児の意識の中・・・
「高須、何でだよ!」「高っちゃん!」「高須寂しいよぅ高須」という男子の声がするが、
独身がゆっくりと第二弾攻撃に移り・・・先制弾が単なる挨拶のような核爆弾を落とす。
「実はもう一人、修学旅行に参加出来なくなった人がいます・・・・・・」
教室中が静まり返った。
(高須が行かないってことは、タイガーか?)
(いや、タイガーは高須の不参加、知らなかったみたいだゾ)
(じゃあ、北村か?)
(北村は絶叫してただろーが!)
・・・クラスの雰囲気がどんどんと怪しくなっていく。
(まさか・・・)
(嘘だろ・・・)
(そんな・・・)
(やめてくれよ・・・)
「川嶋亜美さんが、仕事の都合で修学旅行に行けなくなりました」
独身の宣言に、2-C全体が悲鳴を上げた・・・主に男子の絶叫なのだが。


763:名無しさん@ピンキー
09/03/29 05:21:43 wWmWaugv
阿鼻叫喚というか地獄絵図というか・・・混乱の極みに陥った2-Cの中で、
「と・に・か・く! 高須君と川嶋さんを除いた39人で5つの班を作って下さい!」
独身の怒号に近い叫びが響き・・・大河の班は、櫛枝、木原、香椎、北村、能登、春田の
七人で決まったようだ。
普段なら自分と亜美が加わるだろうから、まあ不自然なことはないだろう。
その七人が取り囲んでいるのは、自分と亜美だ。
「竜児、何で?」
「・・・」
「高須! お前が行かないなら俺も行くのやめる、やめゆうぅぅ!」
「高っちゃん!」
「高須ぅ~」
「亜美ちゃん、どうして? まるおは知ってたの?」
「仕事って・・・沖縄行こうねって言ってたじゃない」
一斉に騒ぎ立てるな、つうか櫛枝が勘違いしていると嫌だし、とっとと説明してしまおう。
「年末にインフルエンザで入院した。んで旅行に行く金がなくなった。以上」
う゛・・・と黙り込む男子軍団。

北村だけでなく能登も春田も、高須家が決して裕福な家庭ではないことぐらい知っている。
知っているから何も言えないのだろうし、それはむしろありがたいとも思う。
「でも・・・」
知っていても納得できないらしいのは大河か。
楽しみにしてたみたいだもんな、修学旅行。
「日程の変更で、集合時間に間に合わなくなっちゃったの」と一方の亜美。
「え~・・・亜美ちゃんがいないなんてつまんないよ~」
「仕方ないよ、麻耶。お仕事なんだから」

何となくしょんぼりする七人の中で、やはり空気を読めない約一名が、
「でもでも~じゃあ、高っちゃんと亜美ちゃんは三日間、何してんの? 家でゴロゴロ?
 それとも二人で、どっか別のとこ行くとか? あ、群馬がいいよ! 群馬っ!」
「なっ! なんですってーっ!」
大河が睨みつけるのは、理不尽な気はするが春田じゃなくて竜児だ。
「そう言えば、さっき三日間よろしくとか言ってたな。何のことだ、川嶋?」
「ん?あ~そうそう。さっき、ゆりちゃんに聞いたんだけどぉ」
ニコニコと極上の天使スマイルを向けてくる亜美に、嫌な予感が広がって行く。
「修学旅行ってさぁ~学校行事の一環なわけじゃない? つまり課外授業なわけ・・・
 んでもって、それに参加できない可哀想な亜美ちゃんたち二人は~」


764:名無しさん@ピンキー
09/03/29 05:22:54 wWmWaugv
いつの間にか教室中が静まり返って、亜美の話に注目しているのが竜児には恐ろしい。
「みんなが楽しくスキーしてる中、出された課題をこなさなきゃいけないんだって」
なるほど・・・居残り組は自由行動じゃなくて、プリントか何かで自習なのか。
何だ、そんなことか・・・と教室も普段の様子に戻るが、話はまだ続くようで、
「でもでも~あたしと高須君が『二人っきりで』教室来ても仕方ないじゃない? 二年は
みんな修学旅行行っちゃってて、二階のフロアには誰もいないんだし、先生方も引率で
いないわけだし」
(誰もいないフロアに亜美ちゃんと高須が二人っきり!?)
(そんなの押し倒せって言ってるようなもんじゃないか!)
(うわ・・・亜美ちゃん、貞操の危機? まじでなのぉ?)
・・・教室内に不穏な空気が立ち込め始める、最大の瘴気は目の前の小さな少女からだ。
「・・・おい、ばかちー。何が言いたい」

亜美は余裕の目付きを大河に向けて言い放つ。
「だ・か・らぁ~逢坂さんがスキーを楽しんでる三日間、代わりに亜美ちゃんが高須君の家に行って、二人で寂し~くお勉強しなきゃならなくなっちゃったってこと。わかる?」
「「「「「「「なっ!!!!!!!」」」」」」」
大河だけじゃなく、実乃梨まで含めた七人が一斉に絶句する。
というかクラス全部が固まったのを見て、あわてた竜児は、
「ちょっと待て川嶋。学校に来ても仕方ないのは分かるが、何で俺んちでやるんだ?」
(俺んちで・・・犯る、だってよ!)
(高須君、犯るきまんまん?)

今やクラス全員が竜児と亜美の周りを取り囲んでいた。
もはや聞き耳を立てる気すらないらしい。
固唾を飲んで亜美の返事を待っていると、答は意外なところから返って来た。
「それはですね、高須君」
空気の嫁ない独身がいつのまにか、すぐ近くに来ていた。
つうかその存在感の薄さも、独身の理由の一つなんじゃないのか?
合コンとか行っても、ただの人数合わせだろアンタ・・・。
「川嶋さんのおうちは、修学旅行に合わせて、皆さんも旅行に出かけちゃうらしいの。
そうすると家には、川嶋さん一人だけになっちゃうでしょ?」
ここでいう「おうち」は亜美が世話になっているという叔父さん夫婦の家のことだろう。



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