【みなみけ】桜場コハル Part 9【今日の5の2】at EROPARO
【みなみけ】桜場コハル Part 9【今日の5の2】 - 暇つぶし2ch434:名無しさん@ピンキー
09/04/06 00:11:00 DrYPhYTo

     「体温」


 暗く長い廊下を、必死に駆け抜けていく女性がいた。
 時折、元来た廊下を振り返り、得体の知れない何かが追ってきていないかを確認しながら。
 長い廊下を抜け、螺旋階段を駆け下り、扉を押し開けながら、逃げるように走り続ける。

 やがて、体力の限界が来たのか、女性は立ち止まってしまった。
 胸を押さえ、荒くなった呼吸を整えながら、今いる場所を確認する。
 壁には数多くの絵画が飾られ、天井には豪華な装飾とシャンデリアのある大広間だ。
 ふと女性は後ろを振り返るが、その視線の先には誰もいなかった。
 逃げ切れた、助かった・・・。
 そう思ったのか、女性は大きく息を吐き出す。


 大きな落雷が落ち、薄暗い大広間が一瞬明るくなる。


 その時、女性は見てしまった。
 窓から入ってきた落雷の光の中に、人の影があったのを。
 見上げると、天井付近の大窓が開いており、その窓枠に人が立っていた。

 漆黒の衣服とマントを身にまとった長身の男。
 綺麗に整った顔に、死者のように白い肌。

 男は女性を見下ろし、冷たく、そして美しく微笑む。
 すると微笑んだ口から、長く鋭利な犬歯が姿を現した。


 女性は悲鳴を上げる間もなかった。
 なぜなら男は、微笑みを見せたその直後、女性との距離を一瞬のうちに埋めて、その無防備な喉元に噛みついていたのだから。

 噛みつかれた女性は抵抗することもできず、体を痙攣させ、声なき声を口から漏らすしかなかった。
 そんな女性の体を強く抱き寄せ、男はより深く牙を突き刺していく。

 首から流れ落ちる鮮血。
 やがて女性の体痙攣は静まり、息をすることもなくなった。

 存分に血を飲んだ男は、もう脈のない女性の喉元から口を離す。
 口元と牙に残る血を舌で舐めとり、男は先ほどとは違う、満足げな笑みを浮かべたのだった。



「あーあ、最後の一人もやられちゃったよ」
 頬杖をつきながら、夏奈は呑気な言葉を口にする。
 毎週金曜に放送されている洋画劇場を、夏奈は春香と二人で観ていた。
 吸血鬼の存在を信じない若者たちが、曰く付きの洋館に行き、そこで出くわした吸血鬼に次々と狩られていくという内容の、二時間弱ほどの長さの映画だ。
「んん~っ、もうこんな時間かー」
 本来なら九時の放送であったが、その前の野球中継が延長となり、見終わった頃には時計の針は十二時前を指していた。
「こういう映画って、幽霊とか信じない奴は必ずやられちゃうよな」
「・・・・・・」
「ハルカ?」
 返事がない。
 春香は眉間にシワを寄せ、スタッフロールの流れるテレビ画面をずっと凝視していた。



次ページ
続きを表示
1を表示
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch