猟奇・鬼畜・グロ・嗜虐・リョナ系総合スレ 第8章at EROPARO
猟奇・鬼畜・グロ・嗜虐・リョナ系総合スレ 第8章 - 暇つぶし2ch250:「月の裏側」プロローグ 1/3
09/06/20 10:02:08 UGRg3Sx/
ここは?何か変な感じ・・・。
あれ?手足が動かないよ?
えっと、あたしいったい何してたんだっけ?

宙人くんとエッチして・・・、えへへっ。
全身マッサージしてもらってお風呂に入ったことはかすかに覚えてるんだけど。
でも、宙人くん?宙人くんはどこ?なーさんは?
それにとってもおなかがすいてるよ。

「宙人くーーん!」「なーさーーん!」

「パパー!おなかすいたよー!!!」

「お目覚めかい。きらりちゃん。」
はっ、男の人だ。

「誰?」

「???おじさん?なんで逆さまなの?」
「え?違う?あれっ、あたしなんで逆さ吊り?」

「困るよきらりちゃん。映画撮影の途中で寝てもらっちゃあ。」
「映画撮影・・?そうなんだ・・?」

「『そうなんだ』、じゃないよ。」
「いいかい?君は囚われの身。でも、決して気高さと笑顔を絶やさないお姫様だ。」
「王子様が助けてくれることを信じる強いお姫様なんだよ!!」


251:「月の裏側」プロローグ 2/3
09/06/20 10:03:36 UGRg3Sx/
「ご、ごめんなさい。」
「じゃ、ここのカメラで君を撮ってるから、これからしばらく絶対に笑顔を絶やしちゃいけないよ。」
「はいっ。わかりましたー。」

カメラあったんだ。
えへへ、おどろいちゃったよ。いきなり逆さまなんだもん。
でも、映画撮影なんてお仕事あったっけ?

「3、2、1、キュー」
うーん・・・。笑顔~。笑顔~。
でも、王子さまって宙人くんだったりして?宙人くんの王子さま姿、すてきだろうなぁ。

「いいよ。いいよ。」「さあ、お姫様。もっと気高く。」

お姫さまかー。こうかな?
「そうそう。GOOD!」
宙人くんー。早く助けてー。なーんてね。


「はーい。肩の力抜いて。そのままリラックス。もっと、リラックスー。」
「じゃ、すこし首筋がちくっとするけど、そのままの表情で我慢だよ-。」
「あー、横の奴、しっかりバケツで受けとけよ。床にあまりこぼさないようにな。」

あ、他にもスタッフさんいたんだ。って当然か。

不意に背後から来た何かが首の横をすっーと撫でた。

252:「月の裏側」プロローグ 3/3
09/06/20 10:04:48 UGRg3Sx/
あれ・・・?。あれれれ・・・・?
なんか、頭がぼーっとしてきちゃった。
雨?ほっぺになんかかかったよ。気持ち悪いよ・・。
は、早く撮影終わらないかな?意識が・・・。また寝ちゃうよ・・・。




はっ、ダメだよ。撮影中なんだよ。
あたしのことを見にきてくれるお客さんのために、もっとがんばらなくちゃいけないの。
あ!宙人くんだ!!
やっぱり宙人くんが王子さまだったんだ・・・。嬉しいよ・・・。
ああ、何だろう・・・目の前が真っ白・・・・。
ひろと・・・くん・・・・・・・。



長い沈黙のあと、男の声が響いた。

「はい!カーット!」
「最高だよ。きらりちゃん。ご苦労様。」

そういいながら、男は、少女の下へ向かい、血に塗れた頬を撫でた。
少女は、穏やかな微笑みを浮かべたまま事切れていた。

253:「月の裏側」 1/7
09/06/20 10:06:51 UGRg3Sx/
あの味が忘れられない。
こうしてビデオで気を紛らせていることが日課となってしまった。

偽のスタッフにあっさり騙され、食事に仕込んだ睡眠薬で豪快に眠らされるプロローグ。
濃厚なファックにオナニーシーン、アダルトビデオ仕立ての前編。
全身マッサージに名を借りて行われた、拡張、浣腸プレイの中編。

どの彼女も非常に可愛い。
そしてここからの後編。この可愛い彼女の末路を見ながら、頭の中で反芻させる。もはや味わうことのできないあの味を。

縛られ全裸で逆さづりされた、少し小柄な少女。彼女の表情は微笑んでいるものの、頬は血しぶきに塗れていた。
噴出した血の勢いは、周期的に強弱を繰り返しながら、次第に衰えていく。
突然、どういうわけか、虚ろになりかけた彼女の瞳に輝きが戻った。
苦痛に歪みかけた表情が、ほっとしたかのような穏やかな笑顔で満たされていく。

だが、弱々しいその流れから、彼女の命が残りわずかであることは明らかだ。
瞳から輝きが急速に失われていくのがわかる。
ついには、微笑みだけを残し、彼女の瞳の輝きは完全に失われてしまった。

そして、彼女の前に大包丁を握った男が立った。

254:「月の裏側」 2/7
09/06/20 10:09:33 UGRg3Sx/
彼女の髪は汚れぬよう上で纏められていた。
男は左手で髪を掴んで首を乱暴に引っ張ると、右手で持った包丁を首にスルリと滑り込ませた。
刃が首の半分まで食い込むと、刃先がギリギリと前後へ動きながら、着実に進んでいく。
ゆっくりと反対側へ抜け出すと、胴体が振り子のように大きく揺れ動いた。ギイギイと彼女を吊り下げる滑車の鎖が鳴る。
そして、彼女の首は男の左手にあった。

別れた双方の切断面から、内部に残った血がダラリと床を染めていく。
切り離された首は、台の上のすのこの付いた金属製のトレイに立てて置かれた。
トレイには、血だまりが広がっていくのがわかる。

おもむろに臍と恥丘の中間に大包丁をつきたて腹部を切開。
ジッパーを開いたように、スーッと皮膚が正中で分かれると、中から臓物がズルリとはみ出してくる。
宙吊りになったそれからは、彼女の温もりがまだ残っているのか、湯気がゆらゆらと立ち上がっている。
垂れ下がった腸の一番下になったところを両断し、少し引き出して床に垂らす。すると、茶色とも緑ともつかない液体がどくどくと床にあふれ出す。
周囲に漂っているであろうムッとした臭気が伝わってくるかのようだ。

液体がもう流れ出ないことを確認すると、胃、小腸、大腸、肝臓、腎臓など臓物を切り分け手際よくトレイに置いていく。
どれも、あまり血はついておらず、実に瑞々しく、艶やかだ。

口のなかによだれが溢れてくる。
ごま油で食した生肝の味。あの臭みのないつるんとしたなめらかな食感。
歯で噛むと、プツンと勢いよく弾けたソーセージの食感。
旨い出汁で煮込んだもつ鍋の味。

255:「月の裏側」 3/7
09/06/20 10:11:57 UGRg3Sx/
空洞になった腹部から小刀で横隔膜を切除、トレイに置かれる。
血の色をした艶のある真っ赤な肉。この焼肉も絶品だった。

さらにぽっかりと口を開けた胸腔に手を突っ込み、心臓や肺を固定している管を小刀で切り取る。
先ほどまで彼女の生命を育んでいた心臓が取り出され、そっとトレイに置かれる。
これは焼肉と生とで食した。それはレバーに似たような味でいてとても上品な味わいだった。

続けて両方の肺を取り出してトレイに置いた。その表面の色は喫煙者のそれと違い穢れを知らぬ白さを保っていた。
今度は上方をまさぐり、膀胱を切除。わずかに残る尿を床に捨てたあと、トレイに置かれた。

さらに卵巣が付いたままの子宮を子宮口のところでカットし、膣を残した状態で摘出。
まるで水揚げされたイカのように、デロリと拡げてトレイに置かれた。
見た目はグロいが、味は実に良かった。子袋の歯ごたえが忘れられない。


滑車を動かし、作業しやすい高さまで肢体を下ろすと、大きく股を広げた。
恥丘の外側から、大陰唇の外側、肛門の外側まで大きな範囲で、皮膚を切り裂いていく。
再び恥丘のそばの切れ目から、刃を皮膚と筋肉の間に入れてやりながら、一気にめくりあげてやると、
外性器はすべての部品を保ったまま、いともあっさりと剥がれた。

原形のまま剥がされたそれは、白い肌にペロリと捲れた割れ目の赤が映え、実に美しい。
まさに、リアルな造型をもった天然のオナニーホールだ。
もう一度この味を味わいたい。あのカルパッチョの感動は忘れない。

裏側には、何かがぶら下がっている。裏返すと、膣と直腸、尿管であることが明らかだ。
カメラワークは、わざわざそれを確認するようかのように実に丹念に嘗め回していく。


256:「月の裏側」 4/7
09/06/20 10:13:53 UGRg3Sx/
おもむろに後ろ手で縛ったままの縄を小刀で切り離すと、力なく垂れ下がり両腕がバンザイをした。

チェーンソーのスイッチが入る。
甲高いモーターの回転音が響き渡たると、それはガリガリと音を立てながら、
いともあっさりと、華奢ながらも美しい両腕を肩口から切断した。

細い断面に見える赤い肉。その中心にある骨。さらにその骨の中心はピンク色。

続いてチェーンソーは、外性器を切り取られ、ぽっかりと穴のあいた筋肉の露出した股間でぴたりと停止した。
位置を定め・・・・、一気に押し下げられる。
ギューウーウーン。ウーーーーーーーーーーーーーーーーン。

大きくガリガリと、骨盤を破断する音が響き渡る。
チェーンの回転とともに、血と肉と骨が煙のように飛散し、壁や床を点々と染めていく。
ガコッと音がして完全に骨盤が2つに割れると、両脚の付け根はもはや股間から腹部に移動していた。

背後に回るとそれをさらに延長するかのように、今度は背骨のど真ん中を、切り裂いていく。
飛沫を撒き散らしながら、背骨の真ん中を首まで一気押し進めた。

そして、ラストスパートだ。
前に回る。両乳房の中間を上から一気に切り裂いていく。
ウウウウウウーーン。
首まで到達したと同時に滑車が揺れた。カシャンカシャンと音がすると同時にモーターが本来の音を取り戻した。

チェーンソーのスイッチが止められても、
分断された2本のそれらは、お互いの自由を喜ぶかのように、しばらくの間、ゆらゆらとゆらめいていた。


257:「月の裏側」 5/7
09/06/20 10:16:21 UGRg3Sx/
胴体の切断面をカメラは大きく鮮やかに捉えていく。
わざわざ背骨を割っていったのはこれを見せるためだ。
整然と並ぶ脊柱はなんと美しいことか。ピンク色の断面に鮮やかな赤の斑点が散りばめられた骨髄。
何もなくなってしまった胸腔の内側、肋骨が描くカーブの美しさに見惚れてしまう。
ピンク色の乳頭の残る白い肌と内側の赤い肉のコントラストに目を奪われる。
表からでは見ることのなかった彼女の裏側。
ああ、彼女の中にこれほど美しい世界が広がっていたなんて。

続いて乳房の切除。
刃を立て皮膚を切り裂く。乳房を囲むように、円形に切れ目を付けていく。
切断面から皮膚と筋肉の間に小刀を入れると、ポコッという感じでめくれあがる。
金属製トレイの上に置かれた乳房は、小ぶりながらもぷるっと揺れ、瑞々しさを保っていることが伺えた。


滑車から胴体のそれぞれを降ろすと、台の上でチェーンソーを使い、脚を胴体から切り離した。
彼女のほっそりと美しくも、しっかりとした脚が台の上に載せられる。
今にも立ち上がって歩き出しそうな脚を、止めを刺さんばかりに、容赦なく膝と足首の関節で3分割にする。

先に切り離されていた腕を取り出し、同様に3分割する。

最後に、微笑みを湛えた顔に付いた血を、優しく濡れタオルで拭う。
それを台の中心に据えると、彼女の部品が並べられていく。
もはや頭部以外、家畜と同じように解体された彼女のすべてを、カメラは記録していた。

そこにあるものは、もはやアイドルではなく、食材だった。



258:「月の裏側」 6/7
09/06/20 10:18:01 UGRg3Sx/
場面は仕込みと調理の映像に変わる。

包丁が見事に赤い肉を切り出していく。まだ人の形を残したそれが、完全な食肉に変えられていく。
一部の肉は、ミキサーにかけられてミンチになり、機械で腸に詰められていく。
パンパンに膨らみつやつやに張りがでたそれは、捻られくびれがつけられていく。
肺や腎臓もミンチにされて同じ道を辿った。

美しいカーブを描く胸腔はいくつにも分断され、骨付きカルビに。
背骨や脛の部分は、うまい出汁をとるのに使われスープになった。

余った骨や皮、筋などはゼラチンをとるために煮込まれていく。
あの美しかった10本の手の指は1本ずつ切断され、煮込まれていく。
せめて、1本だけでもその形のままむしゃぶりついてみたかった。

DVDを切り替える。ここからは追加映像。
ついに彼女の人として残った部分が解体されていく。

頭髪の生え際に沿ってナイフを入れていく、一周すると頭髪が頭皮ごと剥けた。
続いて皮膚の裏側にナイフを入れながら、顔の皮をはがしていく。ゆっくり丁寧に。

目のない顔がペロリと剥けた。下から歯をむき出した悪魔のような赤い顔が顕になる。
2つのデスマスク。その対比が実にシュールだ。
もはや美しかったアイドルの面影はどこにもない・・・・。

259:「月の裏側」 7/7
09/06/20 10:20:31 UGRg3Sx/
顔の皮についている唇が切り取られ保存される。

あの唇のやわらかな感触が思い出される。
皿に乗ったやってきた、上下に分かれたそれを、口の中でいやというほど嘗め回した。
ツルツルとしたすべるようなそれを、口の中でむしゃぶりつくし、そして丸呑みにした。

顎の筋肉と腱、喉を切り裂き、顎を引きちぎる。
全体像を見せた舌を根元から丁寧に切り取る。
彼女はこの舌でどんなものを食べ、何を感じてきたのだろう?
そんな彼女の舌の料理はやはり最高の味だった。ただ、量が少ないことが非常に残念だった。

顔に残った肉を剥ぎ取っていく。
この肉のシチューも良かった。

頭蓋骨を電動カッターでカットしていく。
1周するとパカッと蓋がとれ、そこには白っぽい色をした脳があった。
この脳を丁寧に取り出しまな板の上に載せる。脳漿がじわりと板の上に広がる。
布で水分をとってから、料理に合わせて、適度な大きさにカットしていく。

断面がそのまま見えるバター炒めがよかった。とろける旨みとコク。
彼女が得た楽しい思い出も隠し味になっているようだった。

彼女は美しく大きな瞳の持ち主だった。2つの瞳が皿に置かれた。
映像を通して目が合う。どこか物悲しげに何かを訴えているように見える。

丸い丸いそれらを思い切り噛み潰したあとの、どろりと口中に広がる涙のような味を思い出した。

260:「月の裏側」エピローグ 1/3
09/06/20 10:22:18 UGRg3Sx/
ここは?何か変な感じ・・・。

えっと、あたしいったい何してたんだっけ?
確か映画撮影してたはずなんだけど・・・・。

あ!あれだ!あんなところで撮影してるよ!
でもなんで?あたしなんで天井裏にいるの?

それに?あれって何?
なんで首がないの?人形だよね?
うわっ!中から内臓が出てきたよ。ほんとリアルにできてるよね。
おまんこまでついてる・・・。この人形、女の子なんだ。

ええっ!切り取っちゃうの?女の子の大事なところを!酷い!

げえっ?縦に割っちゃう??
何これ?こんなホラー映画初めて。

あ、あんなところに首があったんだ。

えー!?あれあたしだよ?しかも笑ってるよ。
困るなあ、勝手にあたしの人形作って。しかもバラバラなんて・・・。

でも・・・、でも、あの顔いい表情してるよね。

どうしたの?なんで涙が出るんだろ?
この悲しさは一体なに?

わかんないよ・・・・。

261:「月の裏側」エピローグ 2/3
09/06/20 10:23:33 UGRg3Sx/
「ななー!」
「あっ、なーさん!」「どこ行ってたの?すっごく探したんだよ?」

「なーなななー!」
「え、美味しいものが食べ放題の天国みたいなところがあるって?」
「でも、あたしお仕事の途中だし。」

「ななーなななな!」
「大丈夫。スタッフや事務所のみんなもそのうちに来るから、先に行ってまってればいい?」
「宙人くんや星司くんもそのうちに来る?」

「う~ん・・・。」

「でも、なーさんがそういうなら大丈夫だよね。お腹すいたし。」

「じゃあ。いこう!なーさん!」
「なー!!」





262:「月の裏側」エピローグ 3/3
09/06/20 10:26:02 UGRg3Sx/
あの味が忘れられない。
私は不幸だった。

最高の料理を味わってしまったが故の不幸。
何を食べても満足することがない。
彼女ほどの食材はもはや手に入らないだろう。何年も求め続けて止まなかったものなのだから。

私はチャンネルを変えた。
流れてくるのは聞き覚えのある曲。歌番組だ。
月島きらりとユニットを組んでいた者たちが、きらりの思い出を語り、歌っている。
居なくなってしまった彼女に、どこかに居るだろう彼女に想いが伝わるように。

ははっ。実に無駄なことだ。
私は彼女を独占している優越感に浸った。彼女は私の中にしか存在しないのだから。

いや。まてよ。
そうだ。きっと彼女も寂しがっているに違いない。
彼女たちに、もう一度ユニットを組ませてやろうじゃないか。

「観月 ひかる、雪野のえる、花咲こべに、か。」

今度はどのような趣向でいこうか。
3種盛りで、個性豊かな彼女たちを比べてみるのも悪くはない。

私は、例の店のオーナーに電話をかけた。

-完-

263:名無しさん@ピンキー
09/06/20 11:55:24 Hi/opqIi
御馳走様でした…!
人体の内部描写詳細だなあ、素晴らしい。

264:名無しさん@ピンキー
09/06/20 16:55:26 3+Xi6bSB
GJ!
カニバリズムもいいもんだな…

265:名無しさん@ピンキー
09/06/20 21:03:35 WrrJpTz3
GJ
物悲しくもあり、引き込まれる感じもあり。
喰った男を解体したい…

266:名無しさん@ピンキー
09/06/21 00:04:00 x6yxMJo2
>>249
GJ! グロで蟹場なのに、妙に少女趣味でロマンティックなのがイイ!


もうすぐお中元の季節です。
お世話になったあの人に、月蝕食堂の新鮮な女体料理を・・・

大企業の社長や大物政治家とかの接待だったら、さもありなんって感じだな。

267:名無しさん@ピンキー
09/06/21 00:24:52 LdflndhW
蟹場で美しいと感じてしまったよ
コレはGJと言わざるを得ない

268:名無しさん@ピンキー
09/06/21 07:55:10 /pJpCJFq
レイラ解体を投下した者です。
最近になって、書き忘れた場面がいくつかあったことに気づいたので、
それを入れた別ルート(カニバ無し、エログロ)を書こうと思います。
多分長くなるかもしれません

269:名無しさん@ピンキー
09/06/26 23:34:05 u1tL8FMa
>>268
了解。ノシ 保守しつつ気長に待ってる。

270:名無しさん@ピンキー
09/06/30 11:50:31 ogci3tNw
>>242>>268も期待してます

271:名無しさん@ピンキー
09/07/03 23:22:55 Ly1P3to8
ほしゅ。

272:名無しさん@ピンキー
09/07/05 15:40:49 7M/a/rgk
ほす

273:名無しさん@ピンキー
09/07/06 16:28:11 t/bZ7cP1
作品投下時以外の
この過疎っぷりは一体…

274: ◆/W8AnhtEnE
09/07/08 00:15:40 Lp8ESTPj
 
 これより軽いネタを4レス投下させていただきます。
今夜は七夕なわけですが、自分の住んでいるところでは雲が空を覆っていて
時たま星空が垣間見える状態なので彦星と織姫の再会は難しそうです。
 そんな発想から思いつきました。七夕伝説とかけ離れた妄想ネタですがどうぞ。

275:七夕 1/4 ◆/W8AnhtEnE
09/07/08 00:17:28 Lp8ESTPj

「織姫っ!」
川幅広く水を湛え、底が見えないほど深い河。
そのほとりで若い男が身を乗り出し、必死に対岸に呼びかけている。
「織姫っ!大丈夫なのか!」
黒い霧に包まれてしまい見通すことが出来ない向こう岸に向けて喉が張り裂けんばかりに
声をあげる男。
カキンッ! ザシュッ!
「はっ!―てやあっ!」
大河を流れる水の音にかき消されて彼の元には中々聞こえないが、対岸からは鋭き剣戟の音
そして勇ましい女の声が放たれていた。
男が不安でまんじりともしない時間を堪えていると、やがて霧が晴れ始める。

 ようやく露わになった向こう岸の様子。
その川原には異形の怪物―一般的には鬼と言われる姿形だ。―が何体も倒れ伏し
身体から流れ出る血が川の流れを濁らせている。
そして武器を手にして立っている鬼達、それに立ち向かうようにこちら側に背を向けて
刀を構えている人の姿があった。
「織姫ぇっ!」
男の声に応じて振り向く対岸の人影。
若く、溌剌とした輝きを持つ女だ。
「彦星、もう少し待っていて! もうすぐこいつらを倒せるから!」
男に笑顔を向ける女。
彼女の名は織姫。その姿を心配そうに見つめる男を彦星という。
遠い昔に大河の両岸に離れ離れにされた愛し合う二人。
七月七日の今日は、一年で唯一この河に橋が架けられて二人は再会することが出来るのだ。
だが今、それを邪魔する悪しきものが雲のような黒い霧を生み、織姫のいる岸の水際に漂わせている。
彼女がその霧から生まれる鬼を倒し尽くさない限り橋は架けられない。
彦星は、愛する彼女が自分との再会のために闘う様をただ見ていることしか出来なかった。


「たあああぁぁぁっっ!」
ザシュッ!
織姫は最後に残った鬼に飛び掛って、その胸に刀を突き立てる。
そして刀を抜くとドウッと倒れる鬼の亡骸。
これで岸に立つのは織姫ひとりとなった。
傷は負っていないものの、必死に動かした手足の疲労からくるこわばりに僅かに顔をゆがめながら
彼女はホッと息をつく。
もう恋路を邪魔する怪物はこれで倒し尽くしたのだ。よって橋が架けられ、愛する彦星と一年振りに
身体を触れ合わせること出来る。
すると彼女の目前の水際から白い光が発し、そのまま彦星が待つ対岸に伸び始める。
「彦星、逢いたかったよ……」
一年ぶりの再会にこみ上げる涙を流してそっと呟く織姫。
そして涙を拭き、対岸の恋人向かって晴れやかな笑みを見せる。

 だがその時、歓喜をもたらした白い光を覆ってしまうように再び黒い霧が湧き起こる。
「そ、そんなっ!」
疲れ果てた織姫に再度近づく魔の手。
(彦星と逢うためには……何があっても負けられないッ!)
一瞬怯えの表情を見せたが立ち直り、刀を構える。
そして彦星が待つ対岸の景色を再び黒い霧が塗りつぶした。


276:七夕 2/4 ◆/W8AnhtEnE
09/07/08 00:18:25 Lp8ESTPj

(長い……いつになったら霧は晴れるんだよ!)
焦燥に囚われる彦星。
先ほどの霧より倍以上の時間がたったが、今彼の恋人を視界から隠している黒い霧は
いつまでたっても晴れる気配が無い。
時間がたつと共に霧の向こうから聞こえる織姫の声も精彩を欠いていっている。
「……くそぉ!……ま、まだだ……まだ…」
気合の入った凛々しい叫びから、途切れ途切れに聞こえる掠れた叫び声に。
それは必死に自らを鼓舞する織姫の悲鳴のように彼には聞こえた。


 織姫は刃を振って鬼の腹を斬りつける。
さっきまでは臓物を撒き散らす致命傷をもたらしていた一閃だが、今は浅く鬼の肌を傷つけただけだ。
闘いの間、縦横無尽に河原を駆け、跳ね飛んで敵に襲い掛かっていた彼女の脚は酷使の末
もう立っているのが精一杯なのだ。とても勢いをつける踏み込みなど出来ない。
そんな彼女にせせら笑うように傷つけられた鬼が近づく。
その他にも織姫の周囲には数え切れない鬼が取り巻いている。
「……くそぉ!……ま、まだだ……まだ…」
刀が重い、鳥の羽のように軽く自らの一部となっていた刀が信じられないほど重い。
織姫は両腕を震わせながら刀を必死に構える。



「はぐぅぅぅッッッ!!」
今までは力弱くとも闘志が込められた叫びを放っていた織姫。
だが今彦星の耳に入ったのは傷つけられた恋人の悲鳴だった。

「アギャッ!!」
「織姫ぇぇぇッッ!」
愛する者の助けにもなれず、ただ呼びかけることしか出来ない己の境遇に絶望する彦星。
その耳から更なる悪夢がもたらされる。

「はひゃっ、ひッ!? ゴブウウゥゥゥッッッ!!」

「ガァッ!ゴボォッ!」

苦悶の度合いを増していく織姫の悲鳴。
河原に突っ伏し、彦星は無力な自分の不甲斐無さに涙を流すことしか出来なかった。


277:七夕 3/4 ◆/W8AnhtEnE
09/07/08 00:19:04 Lp8ESTPj

 正面から近づく鬼を睨みつけている織姫。
彼女は気づかない、もう弱り切って周りに気を配れなくなった彼女に背後から近づくもう一体の鬼に。
そしてその鬼は手にした金棒を織姫の左肩に振り下ろした。
「はぐぅぅぅッッッ!」
突如感じた左肩からの激痛に悲鳴を上げる織姫。
鎖骨を折り、力を失った腕から刀を取り落としてしまう
織姫は信じられない痛みに涙を零しながら思わず右腕で肩を押さえる。
そうして構えを解いてしまった彼女に正面の鬼が腕を振り、その横顔に拳を叩きつけた。

「アギャッ!!」
こめかみに強い衝撃を受け、脳を揺さぶられる織姫。
彼女の肢体は弾き飛ばされ河原を跳ね転げる。
ようやく動きを止めたその身体。
衣は破れ、各所から石に傷つけられた肌が垣間見える。
飛ばされて叩きつけられた右の頭からはどくどくと血が流れ、頭蓋から血を失わせている。
意識を半ば絶ってしまった彼女は近づく鬼達に何も反応できない。
「織姫ぇぇぇッッ!」
遠くから呼びかける彦星の声もこめかみを揺さぶるパンチの余韻で織姫には聞き取ることが出来ない。

ビリリリリッッ!
「はひゃっ?」
無造作に鬼の一匹が織姫の衣を剥ぎ取る。
意識が朦朧としたままの織姫、その露わになったお腹を振り上げられた鬼の足が踏みつける。
「ひッ!? ゴブウウゥゥゥッッッ!!」
凶器と化した足の裏を目にして恐怖で意識が戻り一瞬怯えた声を漏らす織姫。
その内臓が肋骨ごと内臓を踏みにじられる。
「ガァッ!ゴボォッ!」
踏み折られた肋骨、潰された内臓から流れ出た血がそのお腹を満たしていく。
その一部は食道を遡り、彼女の口から吐き出される。


278:七夕 4/4 ◆/W8AnhtEnE
09/07/08 00:19:54 Lp8ESTPj

 耐え切れないような長い時間が過ぎ、ようやく晴れ始める黒い霧。
涙に濡れた瞳を対岸に向ける彦星。
「あっ…あああ…そ、そんなぁ……」
再び露わになった対岸の光景。
河原には鬼達が車座になってなにやら話し込んでいる。
その向こうの大きな岩を目にして彦星は絶望の呟きを漏らした。
大きな岩を彩る白と赤のもの。
それは無惨に磔にされた織姫の姿だった。
傷ついた身体の両掌、そして両膝に太い鉄杭を打ち込まれて岩肌に縫い止められている。
衝撃的過ぎる光景に呆けたように見続ける彦星の視線に気づいたのか、織姫がゆっくりと
俯いた顔を上げる。
血に塗れ、腫れた瞼でほとんど瞳を閉じられながらも愛する彦星の姿を捉える織姫。

「……ひ…こぼ、し………た……す…け……て……」
恋人との再会を前に、無惨に敗北した織姫。
その愛する者に会うために苦難を乗り越えようと決意していた強き心はもはや砕け、手の届かぬところにいる
彦星に掠れた哀願を口にする。
「……お、おりひめ…………」
その声は聞き取れるものではなかったが、口の動き、その弱々しい素振りから彼女の願いを知った彦星。
だが、彼には越えることの出来ぬ大河を前にして何も彼女を救う手立ては何も無い。

『さあて、もう期限だな! もう月も落ち、まもなく夜明けの時間だ!』
鬼の一人がそう言い放って立ち上がる。
それに続いて立ち上がった鬼達が織姫を磔にしている岩に向かい、彼女の身体を彦星の視線から覆い隠していく。
『じゃあ、もう一年後だな。あばよ! この男と逢引するような女にはきちんと罰を与えておくからな!』
一体の鬼が振り向いて彦星にそう言い放つ。
その肩越しに周りを取り囲んだ鬼に恐怖の表情を浮かべ、震える織姫の姿が垣間見えた。

次の瞬間、対岸の風景が全てかき消える。


こうして彦星と織姫は一年に一度しかない再会の機会を逃してしまったのである。


279:名無しさん@ピンキー
09/07/08 07:06:07 Rk1ndh0B
ただでさえ一年に一回しか会えないのにハードル上げすぎ

280:名無しさん@ピンキー
09/07/08 19:37:33 /DGQ9fya
今年の東京は晴れてたよ!
だから多分これは「もし」雨が降ったらのシチュエーションなんだよ…(ノд`)

281:名無しさん@ピンキー
09/07/09 00:29:58 PGdR5mbX
>>274
乙&GJです。 って、休日天女シリーズの方でしたか。
折角の七夕ネタなんだし、エロ分も欲しかったかも・・・ 
(去年の七夕の彦×織の睦言とか、この話終了直後に鬼どもが瀕死&緊縛織姫を・・・(ry みたいな)

282:名無しさん@ピンキー
09/07/09 06:29:13 4EjY8556
ちなみに織姫と彦星って
恋人同士じゃないから
来年は気をつけてね

283:名無しさん@ピンキー
09/07/09 18:06:24 LVnJJUqf
ΩΩΩ>な、なんだってーー!

確かにWikipedia引いたらすでに「夫婦」とあったな
そりゃ「恋人」じゃねーやw

284:名無しさん@ピンキー
09/07/13 08:45:40 HWyFK4AW
ここの住人ってポテチ食いながらPOSO動画をマターリたしなむ的な?

285:名無しさん@ピンキー
09/07/13 18:21:42 pXTupIb9
>>284
グロ好き≠リョナ

自分の好きな対象のみのリョナしか受け付けないのは特殊なんだろうな

286:名無しさん@ピンキー
09/07/17 15:45:32 C9sKDXh+
久しぶりの投下です。
ディグダグってゲームありますよね。
あれのパロディです。
ちょっとレズチックですがエロは有りませんのでご安心を。
『穴掘り人』で5レス消費します。
でわ。


287:『穴掘り人』 1/5
09/07/17 15:46:21 C9sKDXh+
『穴掘り人』



「ディグダグが来たわよぉ―――――!!」
 暗闇の奥から突然現れた全身緑色の少女の叫びが洞窟の中に木霊した。
 すると、先に洞窟の中にいた少女の一団の間に緊張が走る。
 そんな少女たちの出で立ちはひときわ変わったものであった。
 大きくは2種類に分かれるその姿は、まず先ほど叫んだ少女と同じ、体のラインがはっきりと判る緑の全身タイツに、お尻の辺りから生えた爬虫類のような尻尾と襟元から尻尾までの背ビレが特徴的な少女たち。
 もうひとつは、同じく体のラインがはっきりと判る赤い全身タイツに、顔を覆う黄色の大きなゴーグルを付けた少女たちだ。
 彼女たちはそれぞれファイガ族、プーカァ族と呼ばれこのような洞窟の中で共生生活をしている種族である。
「あいつは近いの?」
 ブーカァ族の少女の1人が、先ほどのファイガ族の少女に質問する。
「2人やられたわ。じきにここにも来ると思う」
 ファイガ族の少女は顔をこわばらせながら答えた。
 その答えに少女たちは何かを思案するように、一様に難しい顔をしていたが、先ほど質問したフーガァ族の少女が真っ先に顔を上げると、
「皆一旦ここを離れましょう。ここに留まるのは危険だわ」
 その言葉に皆頷くと、次々にその場からかき消すように1人、また1人薄闇に溶けるように消えて行く。
 ところが、
「逃げよっ!」
「いや、私は戦うわ。フウコは逃げなよ」
 フウコと呼ばれたフーガァ族の少女に、ファイガ族の少女は力強く答える。
 するとフウコは一瞬視線を泳がせると、
「ホムラが残るなら私だって……」
 そう言ってファイガ族の少女―ホムラの腕をそっと掴んだ。
 そんな2人に眉を吊り上げて先ほどのファイガ族の少女が詰め寄ってきた。
「あんたたち何してんの!? あいつはすぐそこまで来てるんだから逃げるなり迎え撃つなり早ぎゅあああああっ!?」
 怒り心頭で2人に怒鳴り散らしていた少女が突然体を強張らせて仰け反った。
「「!?」」
 驚愕の表情を浮かべるフウコとホムラ―そんな2人の耳に、聞きなれない音が聞こえて来た。
 それを何かに例えるなら、風穴の光も上手く通らないような狭い狭い隙間を強い風が通り抜ける時に良く似ている。
 そんな耳障りな音を聞いた、と彼女たちが感じたその時、目の前で仰け反っていた少女の体にある変化が起きた。
 初めは何かの見間違いかと感じた。
 少女の細い腰周りや、へそのくぼみが目立つ引き締まったお腹が膨らんだ?
 2人にはその様に見えた。
 そしてそれは見間違い等ではなく現実に起こっている出来事だった。
 段々といびつに形を変えてゆく少女の体。
 それは、徐々に徐々に大きさを増して広がって行く。
「あ゛あ゛……ぐぅ……、こ、こん……――」
 何かに耐えるように少女は腹に手を当てながら身を震わせる。
 その間にも膨らみは胸の辺りまで広がって来ていた。
「おごっ! げごっ!! お゛がああああああああああ!!」
 内臓が圧迫されたせいで、上を向いた口から叫びと共に絶え間なく胃液が零れる。
 その間にも段々と丸みを増してゆく少女の胴体。
 そして、ついには―
「ふあがぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ――」


288:『穴掘り人』 2/5
09/07/17 15:47:06 C9sKDXh+
「!!」
 風船の破裂するような乾いた音と共に少女の膨らんだ胴体が弾け飛んだ。
 赤いタイツの切れ端と少女の中身が辺りに飛び散る。
 それは間近で見ていた2人の全身にも雨あられのように降りかかる。
「お、ぐぅ……」
 胴体を失った少女が残った内臓を零しながら地面に倒れた。
 その手足が微かに動いているが、彼女が助かる事は無いだろう。
 フウコとホムラは、その瞳に一瞬悲しみの色を浮かべたが、すぐにそれを消すと洞窟の奥をにらみ付けた。
 そこには―何かが佇んでいた。
 形容するなら全身上から下まで真っ白な人影だった。
 表情は蒼いバイザーで覆われていてうかがい知ることは出来ない。
 その白い影の手には、赤い銃のようなものが握られていて、その先端から同色のロープのようなものが目の前で倒れている少女の背中まで伸びていた。
「喰らえっ!!」
 ホムラはそう叫ぶと、少し腰溜めに身構えた。
 するとホムラの背ビレがにわかに輝く。
 ホムラが唇をすぼめて突き出す。
 その途端、白い影が距離を取るかのように後退った―と次の瞬間、ホムラの細められた唇から炎が走った。
 それは白い影の足元を吹き飛ばす。
 もうもうと土ぼこりが上がる中、
「フウコ飛んでっ!」
 ホムラがフウコの手を取って叫んだ。
 そのまま2人は掻き消えるようにその場から消える。
 そして後に残されたのは、白い影と少女の亡骸。
 それを暫く眺めていた白い影は、歩きながら地面に転がっていたロープを手元のガンに巻き取って行く。
 最後に血のこびり付いた銛が納まると白い影はゆっくりとした動作で岩壁に向かう。
 先ほどの騒動にもビクともしなかった岩の壁が行く手を遮っている。
 白い影は、そんな岩の壁に先ほどの赤い銃を押し当てた。
 するとどうしたことだろうか? 白い影が触れた部分から丁度通れるくらいに岩壁がすり鉢状に抉れたのだ。
 そのまま岩壁に出来た穴の中に吸い込まれてゆく白い影。
 暫く岩を削るような音が聞こえていたが、それもやがて聞こえなくなると、洞窟には少女の無残な亡骸に相応しい静寂が訪れた。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


 別の洞窟に移動した2人は息を潜めて様子を伺っていた。
 元々洞窟に暮らす彼女らに時間の感覚はあまり無い―眠くなれば眠り、目が覚めれば活動する、ただそれの繰り返しに曜日や時間は必要無かった。
 だからどれくらい時間が立ったのかは判らない。
 その間に眠気も襲ってこなかった事から、多分半生活サイクル―1生活サイクルが1日に相当―は立ってはいないのだろう。
「あいつ、諦めたかしら?」
「それは無いわ。ディグダグは私たちを殺しつくすまでここから離れる事は無いと思う。それがディグダグよ」
 フウコの言葉にホムラは溜息混じりに答えた。
 そんなホムラの言葉に不安を隠しきれないフウコはまた言葉を発する。
「何なのかしら、あのディグダグって」
 それにホムラは首を左右に振ると、
「そんな事を言ったら私たちだって変でしょ? こんな洞窟の中を移動して暮らす生き物なんてあんまりいな……」
 途中まで何かを言いかけた所でホムラは急に黙り込むと鋭い視線で辺りをうかがう。
 その姿にフウコも表情を引き締めると、同じように辺りに視線を送る。
 するとそんな2人の耳に何か地響きに似たものが聞こえてくる。
「あいつ……。私たちに感づいたわね」


289:『穴掘り人』 3/5
09/07/17 15:48:04 G/RcsuDb
「どうやって私たちの位置を……?」
 ホムラの言葉に、フウコが疑問を投げかけた。
 しかし、帰ってきたのは答えではなく、ホムラの悪戯っぽい笑みだった。
「考えても仕方ないわ。幸いまっすぐこっちに向かってるみたい―ふふ、見てなさいよ」
 そう言うと再び先ほどと同じような姿勢を取る。
 ホムラは背ビレを輝かせながら、
「今度こそ、ここから壁越しに焼き殺してやるっ!」
 そうホムラが目の前の壁に殺意を込めた言葉をぶつけた瞬間、目の前の壁に小さな穴が空いた。
 そこに向けてホムラの火炎が迸る。
 それは小さな穴を抜けてその中に吸い込まれて行った。
「どう?」
 フウコがホムラの側によって手応えを確認した。
 しかし帰ってきた答えは、
「おかしいわ。手ごたえが無い」
 会心の一撃が空振りに終わり、にわかにホムラは動揺していた。
 フウコはそんなホムラを慰めようと近付こうとした。
 その時だった。
 フウコの頬に何かが触れた―と思った次の瞬間、
「危ないっ!!」
「!?」
 轟音とフウコの叫びが交錯し、辺りは土煙に覆われた。
 暫くして凄まじい音が納まって気が付くと、フウコもホムラも地面の上に倒れていた。
「痛ったぁ……。まさか岩を落としてくるなんて、あのクソディグダグ……」
 いち早く目覚めたホムラが身を起こそうとすると、
「ぅ……」
 その上に覆いかぶさるようにしていたフウコがにわかに呻き声を上げた。
 そんなフウコを気遣って、ホムラは上体を捻って覆いかぶさるフウコに向き直ろうとした。
 しかし、
「フウコ。大じょ……夫……」
 そんなホムラの目に飛び込んできたのは、右足を岩に挟まれたフウコの姿だった。
「フウコっ!?」
 ホムラは慌てて起き上がると、フウコの足の上にあった岩をどけた。
 しかし、岩の下から出てきたのは白い骨を除かせた足首まで。
 そこから先は見当たらない。
「ドジった……」
「フウコォ!!」
 ホムラは気丈に笑顔を見せるフウコを胸に抱きしめた。
「ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめ……」
 ホムラの謝る声に涙が混じり始める。
 そんなホムラの背中に腕を回したフウコは、
「泣かないでよ、もう。その為に体張ったのに……ねえ、怪我は無い?」
「フウ、コ……」
 笑顔のフウコを見ていると、ホムラの心には何か熱いものがあふれ出す。
 それは物心ついた時から何となく感じてはいたが、ここまで強く感じたのは初めてだ。
 心の内側を焦がすような……、優しくもあり、荒々しくも感じる何か……。
 すると突然、ホムラはフウコの顔に自分の顔を近づけた。
 いつものじゃれあう時とは違う雰囲気に、フウコは息を呑む。
(フウコが欲しい……)
 自分でも信じられないような気持ちが沸き起こると、ホムラはその気持ちに逆らう事無く従った。
 フウコの少しぷっくりとしたピンク色した唇を奪うために更に顔を近づけた。
 しかし、そんな情熱のひと時を邪魔する無粋者がいた。
『ミツケタ……』


290:『穴掘り人』 4/5
09/07/17 15:48:41 G/RcsuDb
 しわがれて無機質な声が洞窟に木霊すると、ホムラもフウコもそちらに鋭い視線を向けた。
 そこにいたのは白い影―ディグダグだった。
 ディグダグは天井にあいた穴から上半身を出してこちらの様子を伺っていた。
 そして赤い銃をまっすぐと2人に向けて構えると、
『オマエタチヲハイジョ―』
 ディグダグの声が轟音にかき消される―ホムラが三度口から火を吹いたのだ。
 天井と一緒に地面に叩きつけられたディグダグは、それでも素早く立ち上がると、足元を掘ってその中に逃げ込んだ。
 2人の耳に岩を削る音が聞こえてくる。
 そちらをじっと眺めていたホムラは、同じ方向を見ていたフウコの頬に口づけする。
「ホムラ……?」
「フウコは逃げて。私はあいつを倒す」
「駄目よ……、今のうちに一緒に逃げ―」
 フウコの言葉は、ホムラの熱い唇に吸い取られて消えた。
 体を震わせるフウコを一度力強く抱きしめたホムラは、すっとフウコから体を離すと立ち上がった。
「じゃね。楽しかったわフウコ」
「ホムラ……。ねえ止めてホムラ……。ホムラァァァ――――――――――!!」
 フウコは去ってゆくホムラの背中にあらん限りの気持ちを込めて名前を叫んだ。
 しかし、ついにホムラは振り返る事は無かった。
「ぅぅ……」
 そして、後にはホムラの消えた穴を見つめながら泣くフウコの声が洞窟に響いていた。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


 樹木もまばらな草原を赤い装束を纏った少女、フウコが歩いていた。
 右足が失われたため、左右の長さが違う足で不器用に歩く姿は痛々しい。
 そして憔悴しきった顔は死人のように蒼ざめていた。
 この地表を抜けなければ別の土地には逃げられない。
 しかし彼女たちの力は地面の中でしか発揮されない。
 ゆえにこうして地表を不自由な足で移動しているのだった。
 あの後、いくら待ってもホムラは帰ってこず、ディグダグも現れなかった。
 仲間を失って1人で生きるくらいなら地の底でホムラを待とうと思ったフウコだったが、去り際にホムラが残した言葉を守ってここまで逃げてきた。
 今は何も考えまい。
 フウコはそう思って歯を食いしばってまた一歩を踏み出す―が、そんなフウコを悲劇が襲った。
 フウコの足元の地面が小石を巻き上げて跳ね上がったかと思った次の瞬間、
「ギャン!!」
 フウコの―女性の大事な部分を何かが深々と貫いた。
「あがががががががががががががががががががが――」
 悲鳴を上げて地面をのた打ち回るフウコ。
 その側の地面が盛り上がると、
『ツカマエタ』
 地面を割って薄汚れた白いヘルメットが頭を出した。
 それは徐々に地面から、肩、胸、腰、足、と姿を現した―あのホムラが追っていったディグダグだ。
 しかもその体には、下半身を失ったホムラを纏いつかせていた。
 ディグダグが身をゆするたびに、ホムラの噛み付いた首筋や、指が半ばまで食い込んだ胸や背中から鮮血が零れて―またホムラのちぎれた胴体から零れる血が、白い体を赤く染めた。
 それでもディグダグは何事も無かったかの様に、赤い銃を構えると、
『ハイジョスル』
 引き金の側にあるボタンを押した。
 耳障りな音と共に、フウコとディグダグを繋ぐロープが蛇のようにのた打ち回る。
 すると、
「おお!? おあああああああああああああああああああああああああ!!」


291:『穴掘り人』 5/5
09/07/17 15:49:19 G/RcsuDb
 フウコの体が風船のように膨らみ出した。
 それは先ほど破裂した少女に倍する速度で膨らみ、あっと言う間にフウコの胴体はパンパンに膨らんだ。
 ところが、ここで思わぬ事態が起こった。
「おぎゃあおおおお、おげっ! ごげああああ……はぁ……はぁ……ぁぁ……」
 ボールのようになってのた打ち回っていたフウコの腹が急激に萎んでゆく。
「ぅぅ……、ぅ?」
 フウコは視界の霞む目でディグダグを見上げる。
 一体ディグダグに何が? もしや私を助ける気? しかし、フウコの見通しは甘いとしか言い様が無かった。
 先ほどの更に倍する速度でフウコの体が膨らんだ瞬間、フウコの意識が一瞬途絶えた。
 そのせいで、フウコは股を汚す事になるのだが、それどころではない。
 激しい痛みにすぐに意識が戻ると、
「ぎゅわおぎゅあがががががが――――――――――ッ!!」
 先ほど以上の叫び声を上げて手足を振り回してのた打ち回る。
 そんな事を何度も何度も繰り返していると、その内フウコの抵抗も無くなって来た。
 ただ、だらりと首を折ったまま、
「ごろじなざいよおおおおおおおおおお。はやぐごろじでえ……」
 とうわ言を呟くだけになっていた。
 そんなフウコをディグダグはひび割れたバイザー越しに眺めながら、
『クルシメ。クルシメ。モットクルシメ。ソウスレバコノサンゲキモオワル』
 そう言って、またフウコの体から空気を抜き始めた次の瞬間、ディグダグの体を炎が包んだ。
『グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
 ディグダグがどんなにもがこうが、炎は衰えるどころかますます力を増す。
 その内ディグダグはがっくりと地面に四肢を付くとそのまま動かなくなった。
「……?」
 呆然とその姿を眺めていたフウコは、『火』と言うキーワードからある人物を思い出す。
 それは、
「ホムラ……」
 ホムラが勝った―実際は相打ちだが、朦朧としたフウコにそれは判らない―そう思うだけで心が救われる気がした。
 しかし、
「あ゛」
 フウコは自分の体の中で何かが動いたような気がして、目だけ動かして確めようとした。
 だが、それは永遠に不可能となった。
 再びフウコの体が風船のように膨らむ。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛――」
 消耗しきったフウコにはただ呻き声を上げてそれを甘受するしか無かった。
 そして、フウコの体が限界まで膨らみきった瞬間、
「おがっ!!」
 短い悲鳴を残して、フウコの体もはかなく爆ぜて辺りに中身を撒き散らした。
「ぁぁ……」
 急速に失われてゆく命を感じながら、フウコは青空を眺めていた。
 そんな、フウコの体に何かが覆いかぶさって来た。
「フ……コ……」
「ホ……ム……」
 そんな無残な亡骸が最期の言葉を交わす姿を、いつの間にか起き上がったディグダグがじっと見下ろしていた。
 そして、
『プレイヤーハマダマンゾクシテイナイ。ツギノエモノヲ……』
 しわがれた声でそう呟くと、重そうに足を引きずりながらその場を去って行く。
 あとには青空の下にさらされた屍が不釣合いな笑みを浮かべていた。



END


292:名無しさん@ピンキー
09/07/17 15:55:26 C9sKDXh+
以上です。
読んでくれた方に感謝。
参考にしたのは最も古いディグダグでした(と言うかそれしか知らないので)。
でわ。


293:名無しさん@ピンキー
09/07/17 17:45:37 MD1wLlrK
じゃあね

294:名無しさん@ピンキー
09/07/17 20:53:30 0hICIp89
>>292
GJ!
あの色気のないレゲーで、よくもまあここまで妄想できるもんだ。

295:名無しさん@ピンキー
09/07/18 20:04:05 xHhu16Vj
GJだがディグダグの単語を見るたびに吹いてしまう

296:名無しさん@ピンキー
09/07/19 04:48:28 dYejtR1T
ディグダ ディグダ ダグダグダグ

297:名無しさん@ピンキー
09/07/19 10:33:33 oqiE4HJn
>>292
GJ! 素晴らしかった。
膨らませて萎ませて膨らませてのコンボは良い。勃起した。

298: ◆/W8AnhtEnE
09/07/20 19:32:34 s8ypCKQ5

毎度、蓮弓天女ネタを投下している者です。

七夕ものをお読み頂きありがとうございました。
ネタが浮かんですぐ書き上げたものなので、リョナ分のみで作品に広がりが無くスイマセンです。
ご指摘も有難うございました。てっきり夫婦とは知らず恋人と思い込んでいました。

では、これより「海日天女」を6レス投下させていただきます。

299:海日天女 1/6 ◆/W8AnhtEnE
09/07/20 19:33:29 s8ypCKQ5

 ここはとある海水浴場。
日中は燦々と降り注ぐ陽の光の下多くの海水浴客の喧騒に満ちていたが、夜が更けた今は人の気配は無い。
少し交通の不便なこの浜辺には花火をしたり、4WD車で砂の上を走り回るような輩が訪れることはなく
砂浜は月の光に照らされ、静かに波の音だけが響いていた。


ドゴオォーン!
突如、ビーチに轟音が響く。
その音が発生した一角には濛々と土煙が立ち込めていた。
土煙に険しい視線を送る一人の少女。
場に似つかわしい漆黒のゴスロリドレスに身を包んだ彼女の名は『月曜日』という。
人々を安寧から引き摺り落とし、恐怖の労働に就かせる悪の五姉妹『ヘイジツーシスターズ』の長女だった。
「だからっ、効かないよこんなものは!」
土煙の中から放たれた声に目を見開く月曜日。
 僅かな後、視界が晴れたそこには人の背丈を越える巨大な右手が伏していた。
その正体は月曜日の特殊能力、敵を握り潰す強力な力を持った『マンデーハンド』だ。
彼女は先ほどマンデーハンドで地に立つ敵を叩き潰したはずだ。
だが巨手の下には右腕を上げ、軽々とそれを受け止めている女の姿があった。

「喜月壁(ハッピーマンデーフィールド)はこんなものじゃ壊せないんだからっ!」
笑みを浮かべる女。
 その肩口までの長さの金髪にはワイルドな印象を放つシャギーがかけられている。
くっきりとした目鼻立ち、その中の可愛らしさを感じさせる大きな瞳は月曜日を見据えていた。
露出が多いカフェオレ色の肌、大きな胸を強調するような葡萄酒のような赤色のホルタービキニでその身を包んでいる。
その指先から肘、爪先から腿の半ばまでも同じ色の長グローブとブーツ、オーバーニーソックスで覆っていた。
 彼女の名は『海日天女(かいじつてんにょ)』、聖なる力『ホリデー』を用いてヘイジツシスターズと闘い
人々に休日をもたらす正義の『蓮弓天女』の一人だった。

「それじゃっ、今度はボクから行くよ!」
 対月曜日の秘法『喜月の秘法(ハッピーマンデー法)』を身に付けた選ばれし天女である海日天女は
月曜日に向かってそう言い放つ。
彼女が右腕に力を込めると、虹色の光に包まれて頭上のマンデーハンドが掻き消えた。
マンデーハンドを形成する悪の力『ロウドウー』が彼女の強力なホリデーに浄化されたのだ。
海日天女はそのままホリデーで輝く右腕を月曜日に向ける。
自信に満ちた笑みを敵に向ける彼女。
その右腕にはどんどんとホリデーが集められていく。
「行けええぇぇぇッッ! ホリデーウェーブッ!」
天女の叫びと共にその手から放たれたホリデーは、大きな波のような勢いで月曜日に襲い掛かった!
「ギャヤアアアァァァァアッッ!」
ホリデーの波に飲み込まれ、途方もない衝撃に襲われた月曜日劈くような悲鳴が響く。

 波が消えた砂浜。月曜日は跡形もなく消えてしまった。
こうして海日天女はヘイジツーシスターズの一人を打ち倒し、人々に休日をもたらしたのである。



 翌日、再び多くの人で賑わいを見せる浜辺を海日天女は散策していた。
(みんな、楽しんでくれているね。)
自らの勝利で多くの人々に安息と喜びがもたらされた光景を眺めて満足する天女。
 ふと、その瞳が不安げに辺りを見回しながら歩く少年の姿を捉えた。
その少年は視線に気づいたのか彼女の方を向いて立ち止まる。
(えっ!?……あの子、ボクのことが見えているのかな?)
蓮弓天女は人々には不可視の存在である。
だが、いわゆる霊感が強い人物など極一部の人々は彼女達の姿を目にすることが出来るという。
「……君、どうしたの?」
やや戸惑いながら海日天女は少年に話しかけた。


300:海日天女 2/6 ◆/W8AnhtEnE
09/07/20 19:34:09 s8ypCKQ5

「えっ!…は、ぁっ!」
少年は驚いて声にならない音を漏らす。
何しろ目の前に立ち、話しかけてきたのはスタイルの良い肢体をワインレッドのビキニで覆った美女なのだ。
そんな少年の反応にクスッと笑みを零しながら天女は問いかける。
「何か、困っているみたいだけど?」
首をかしげて問いかける天女、そのちょっと子供らしい仕草に少年の心は跳ね回る。
「えっ!…あぁ……うう、と。」
ドギマギさせた心を落ち着かせながらも、中々彼は答えられない。
そんな彼に天女は思いついたことを口にする。
「誰か人でも探しているの?」
「……は、はい……恥ずかしいんですけど、僕、迷子になっちゃったんです。」
「えっ、アハハハハッ! 」
彼女の問いかけが呼び水になったのか答える少年。
その答えに海日天女は思わず笑ってしまった。目の前の少年は童顔で小柄だから判別は難しいが小学校の高学年
あるいは中学生に見える。
この世の理である年齢には囚われない彼女だが、外見の設定上の年齢の19歳よりほんの数歳年下なだけの
少年の子供っぽさに可笑しさがこみ上げてしまったのだ。

「あっ、ゴメンね! 笑っちゃったりして。でもそういう時は『~とはぐれちゃった。』とか言った方がカッコいいよ。」
耳まで赤く染めて恥ずかしげに俯いた少年に気づき、慌てて謝る海日天女。
「お、お姉さんが一緒に探してあげるからさ。お姉さん、探し物は得意なんだよ。ねっ?」
海日天女は困り顔のまま少年の機嫌を直してもらおうと提案する。
「…アハッ! はいっ、お願いします。」
年上の美女の戸惑う顔に笑いを耐え切れなくなった少年はそう笑顔で応じた。

「じゃあ、ちょっとおでこ突き出してくれない? まず、探し物が見つかるおまじないをボクがかけて上げるから。」
そう言う海日天女にやや戸惑った顔をしながら少年は言われたとおりにする。
すると天女は瞳を閉じ、まるでキスをするかのように顔を近づけてきた。
顔を真っ赤にする少年、そのまま天女は自分の額を彼のものと突き合わせた。

 息遣いすら感じられるほど近い距離で見る彼女の美貌は少年の心を激しく揺さぶる。
一本一本見分けられる端整な睫毛、日に焼けているのにシミ一つなくきめ細かさを保っている肌、流麗なラインの鼻筋
そしてぷっくりとした桜色の口唇。
(ふんふん。もう、コウフンしないでよぉ。なかなか読み取れないじゃないか。)
そんな彼に心の中で悪態をつくそもそもの興奮の原因の海日天女。
天女の能力を使い、彼女は額を突き合わせることで彼の記憶を読み取っていたのだ。
(ええと、君の名前はユウキミチヤくん。中学一年生。ここには両親と親戚とで来ていて―)
脳裏に浮かんだミチヤの両親と親戚の顔、それを彼女が目撃した場所を今まで散策した光景から瞬く間に拾い出す。
すると数分前に側を通り過ぎたパラソルの下の女性の顔と彼の母の顔が一致した。
「うん、わかった! ついてきて、ミチヤくん!」
額を離すとニッコリと笑って少年に告げる天女。
道哉は自分の名前を言われたことに驚きながらも、歩き出した彼女の背中についていった。



 再び、夜の帳が下り静寂に満ちたビーチ。
その一角の松林の中を海日天女は歩いていた。
今日一日、彼女は道哉を始めとして迷子の保護、具合が悪くなった人の介護、そして溺れかけた人を天女の力で救ってきた。
道哉の場合を除けば彼女は姿を現さず、そっと手を貸して手助けをした。
どれもこれも皆に良い休日を過ごしてもらうためだ。
夕暮れ時に見た満足そうに家路についた人々の顔は彼女に大きな喜びを与えた。

自らの手で勝ち取った勝利の結果、人々が楽しい一日を過ごした事は彼女にとって最も幸せなことだった。



301:海日天女 3/6 ◆/W8AnhtEnE
09/07/20 19:34:43 s8ypCKQ5

「そこにいるのはお見通しよっ! 出てきなさいっ!」
今日一日の思い出に笑みを浮かべていた美貌を凛とした表情に替え、松の木に睨みつけるような視線を向ける海日天女。
「一人で笑ってしたりして楽しそうですわね。」
その声に応じて現れたのは小柄な少女だ。
純白のレオタードとタイツというこの場に似つかわしい格好をしている。
「人々が休日で笑って楽しそうにしているとわたし、とってもムカついてくるの。
 とっとと貴女には死んでもらって汗水垂らして働いてもらうわ。」
少女の名は『火曜日』、ヘイジツーシスターズの次女だ。
「そうはさせないッ!みんなの休みはボクが守るんだ!」
拳を握り締め、海日天女は少女に飛び掛った。



「はぁ……あっ……はっ、はぁ…」
火曜日との戦いが始まってしばらくの後、海日天女は窮地に立っていた。
天女は火曜日に飛び掛ろうとするも、撓って襲い来る火曜日の鞭によって彼女に近づくことは出来ない。
逆にその肢体に傷を増やすだけの状況であった。
破れかけたビキニ、小麦色の肌のあちこちにも赤い線が刻まれている。

(こうなったら、この一撃に全てをかけるしかない!)
ジリ貧となっていくこの状況を打開するため、決意を胸に彼女は敵を見据える。
(敵の特殊能力、チューズデートランスデューサーを撃ち砕けるかはわからない。
 でも、ボクはボクの技を信じる!)
天女の力ホリデーを悪の力ロウドウーに変換できるチューズデートランスデューサー。
火曜日が持つその鉄壁の守りに挑もうとする海日天女。
彼女が右腕を火曜日に向けると、その手が光を放ち始める。
「ホリデーウェーブッッッ!」
甲高い叫びと共に、巨大な波のようなホリデーが火曜日目掛け放たれた!

「無駄ですわ。」
迫り来るホリデーの波にも関わらず笑みを浮かべて立ったままの火曜日。
彼女がその波に飲み込まれようとした瞬間、ホリデーウェーブは掻き消えてしまった。
「私のトランスデューサーを甘く見てもらっては困りますね。」
愕然とする海日天女に投げかけられる火曜日の嘲笑。
「では、お返しですよ。」
彼女に向けられた火曜日の腕から、黒き光が放たれた。

「きゃややあああああッッッ!」
強力なロウドウーを浴び、弾き飛ばされる海日天女。
松の枝や幹をロウドウーの光と共に巻き込んでへし折りながら飛ばされるその身体。
「アギィッ!」
一際太い松の木に叩き付けられたことでようやく動きを止めた。
木の根元に倒れこんだ海日天女。その肌は赤い傷で覆われ、左の太腿には松の枝が突き刺さって
貫通したままになっている。
あちこちの骨も折られ、身動きが取れない彼女に火曜日が近づく。
「酷い有様ですね!」
傷ついた海日天女を見下す火曜日。
だが天女は痛みに苦しみながらもキッと敵を睨む。


302:海日天女 4/6 ◆/W8AnhtEnE
09/07/20 19:35:19 s8ypCKQ5

「へぇー、まだそんな目が出来るんだ。……これ、何かわかるかしら?」
火曜日が指で挟んでかざしたのは細い針だ。
「さ、さぁ……裁縫でもするの? お嬢ちゃん。」
小馬鹿にしたように応じる海日天女。
ムッとした火曜日は彼女の左の二の腕に針を突き刺す。
小麦色の肌につうっと刺し込まれた銀色の針。
チクッとした痛みを覚悟していた天女。
「ギャヤアアアアアアアァァァァッッッ!!」
だがその身体を襲ったのは灼熱のような激痛だった。
鍛えこまれた筋肉、女らしさを肢体に与える薄い脂肪の層。
その全てを焼き尽くすような痛みが彼女の中を駆け巡る。
天女が悶える様子を満足そうに見ていた火曜日がそっと針を抜いた。

「アギャッ! ギィァ……アァ…。」
強烈な痛みに頭を真っ白にさせ、目を裏返してしまった海日天女が呻く。
「どう、効いた? ロウドウーを濃縮して作った針は? これでいつもは休日に遊び過ぎた労働者をチクチク刺しているんだけど
 あなたを刺したのは特別製、普通の針の2000倍のロウドウーを濃縮して出来ているんだよ。」
ロウドウー針で刺された後の痛みは一般には筋肉痛と同一視される。
だが、天女か感じた痛みは筋肉からの鈍痛どころではなく身が裂けるかと思うほどの鋭い痛みだった。
「次はここにしようか?」
痛みの余韻に半ば意識を失って悶えている天女。
火曜日はそのむっちりとした右の太腿に針を刺し込む。
「ギガガガアアアアアアアァァァッッッ!」
その瞬間雄叫びのような悲鳴を上げ、脚をバタつかせる海日天女。
太腿から伝わる激しい痛みに下半身の痛覚以外の感覚が消え失せてしまう。
ただ痛みに反射して彼女の長い脚は跳ね動かされている。

「次はここ、ふっくらして刺しがいがありそうね。」
針を抜き、海日天女の乳房に目を移す火曜日。
「ギッ!…アガァッ!……イ、いや……やめ、て……」
ビキニで覆われていないカフェオレ色の肌に押し当てられる針。
痛みに心をも傷つけられ、それを目にするとフルフルと首を振って情けない声を出してしまう天女。
火曜日はその声にニンマリとした笑みを浮かべて針を刺し込んだ。
弾力のある肌が鋭い針に一瞬耐えるものの、プチッと貫かれてしまう。
「ハギャヤアアアアアァァァッッッ!」
海日天女は胸の膨らみから走る、中に詰まった肉ごと焼かれるような激痛に身体を跳ね踊らせる。
同時に乳房が弾んでしまい、より針からの刺激を強めてしまう。

「さて、一本一本刺していたらまだるっこしそうだからいっぺんに刺してあげる。」
火曜日の手にぎっしりと握られた針。
「イヤアアアアアァァァッッッ!!」
それを目にした海日天女の泣き叫ぶような悲鳴が松林中に響いた。


303:海日天女 5/6 ◆/W8AnhtEnE
09/07/20 19:35:57 s8ypCKQ5

「もううんともすんとも言わなくなっちゃいましたね。」
気だるげに言葉を発する火曜日。
彼女の視線の先には両手首を纏めて鉄杭で貫かれ、『人』の形で松の木に磔にされた天女の姿があった。
 人々をロウドウーから救う海日天女は火曜日に嬲られ、今その命を散らせようとしていた。
ワインレッドのビキニは破り捨てられ、露わになった乳房は針山のように数え切れないロウドウー針が刺し込まれている。
信じがたい激痛に脳を焼かれた彼女の意識は既に失われ、力無く顔を俯かせていた。
その身体に視線を向けた火曜日が手を振ると天女に刺さった針が掻き消える。

「ほら、起きなさいよ。針は抜いてあげたわよ。」
海日天女の前髪を掴み、顔を持ち上げる火曜日。
快活そうな笑みを浮かべていた美貌は、光を失い濁った瞳、涙が垂れた跡が残る日焼けした頬、空ろに開いた口唇と
無惨なものと化していた。
「っ……あ……がぁ……あぁ……」
天女は顔を持ち上げられた拍子にか細い呻きを漏らす。
呻きと共にその口唇から涎が一筋垂れた。

「さて、この二本はどこに刺してあげようかな?」
海日天女の目の前で二本の針を見せびらかす。
「…え、ぁ……い、いや……もう…死んじゃう……ボク、死んじゃうよぉ……」
意識を取り戻した天女は瞳に恐怖の光を宿し、震えながら呟く。
「殺すためにやってあげているんだから当然じゃない? じゃあ、ここにしてあげる。」
火曜日は天女の左乳房を摘まむように握り、その頂、桃色の蕾に針を刺した。
「い、いや、そこはッ―ギィェェエエエァァアアアアアアァァァッッッッ!!」
ツンと尖った乳首に針が刺し入れられた瞬間、天女は身を仰け反らせて叫ぶ。
拘束された身を振り動かし、身体全体を走る痛みの電流に苦しむ彼女。

「もう一本も。」
「アギギギギイイイイエエエェェェェッッッ!!!」
もう片方の乳首にも針が刺し込まれる。
痛みで視界が明滅し、天女の脳の中焼けるような刺激が渦巻く。
ロウドウー針を数え切れないほど刺し込まれ体内のホリデーを汚染されてしまった海日天女。
常人ならすでに幾度も死ぬような責めを受けた彼女の身体はホリデーをも失ったことでもう限界を迎えようとしていた。
 その身体、首もとより少し下がった位置に赤い玉が体内より浮かび上がる。
「あらっ、これがあなたのホリデークリスタルね。」
赤い玉の正体、それは蓮弓天女の力の源、ホリデークリスタルだった。
力を失い、肉体を限界まで傷つけられた海日天女はもはや身体の中にそれを保持しておくことも出来ないほど
ダメージを負ってしまっていたのだ。

「じゃあ、とどめね。」
新たな針を握り、クリスタル見つめる火曜日。
海日天女は見開いた瞳でその光景を見つめ、息をつぐ魚のように口唇をパクパクさせる。
そして絶望に捕われた彼女の胸の宝玉に針が突き刺さった。
「ガァッ――――ッッッ!!」
赤い宝玉に硬さをもろともせず刺し込まれる針。
海日天女は息を詰まらせたような呻きを漏らして瞳を裏返らせる。
やがてクリスタルに針の傷からひび割れが走り、一気に砕け散った。
同時に仰け反っていた海日天女の身体がだらんと垂れ下がる。


生気が失せたその美貌、力を無くしたその肢体。
こうして海日天女は火曜日に敗れ、人々の休日は失われたのである。



304:海日天女 6/6 ◆/W8AnhtEnE
09/07/20 19:36:31 s8ypCKQ5

 僅かな街路灯からの光に照らされた海岸の遊歩道。
そこを結城 道哉は懐中電灯を手にして歩いていた。
彼は日中、岩場から海に飛び込んだ際に時計を外して足元に置いたことをすっかり忘れてしまい
夜になってから思い出して、家族らと泊まっている近くの民宿から探しに来たのだ。
幸い時計はすぐ見つかり、彼は民宿への帰路を急いでいた。
(あれ、あの女の人は!?)
遊歩道から分かれた小道が松林に続いている。
ちょうどそこで道哉は松の木々の隙間に紅の水着を着た女の姿を目にした。
(迷子になった僕を助けてくれたお姉さんだよね?)
昼間の美女を再び目にした嬉しさと好奇心から彼は松林へと続く道を進んだ。



 道哉は松の木の陰で息を殺して身体を震わせていた。
昼間出会った女性が、無惨に少女に殺される光景を目撃してしまったのだ。
(何なの!? 二人ともよくわからないことをしていたし……)
超常の光景を目にした疑問、そして少女への恐怖でわなわなと震える道哉の身体。
「木の陰の男の子、出てきなさい。」
その瞬間、少女から道哉に声がかけられた。

 どうせ逃げ切れないと観念して、怯えながら身体を露わにする道哉。
「フフ、見てたわね、ぼく?」
レオタード姿の女の子が道哉に近づく。
「君にもロウドウーをたっぷり注入して明日から休み無しに働いてもらうわ。」
「そ、そんな、僕はまだ中学生だよ! それに今は夏休みだよっ!」
「そんなのロウドウーの前には関係ないわ。中学生なら労働じゃなくてちゃんと学校に行かせてあげる。」
近づいてくる少女―火曜日―に道哉は蛇に睨まれた蛙のように動くことが出来ない。
少女の手が彼に触れようとした瞬間。
「てやあああぁぁぁっっっ!」
「ギャァッ!」
火曜日の身体が雄叫びと共に横から飛んできた何かに弾き飛ばされた。

思わず目を閉じた道哉が目を開くと目の前にはポニーテールの少女が立っていた。
純白の衣の少女や彼より幾らか年上に見える。
少女は長身を青色の競泳水着のようなボディースーツ、手足をメタリックな手袋やブーツで包んでいた。
「キミの休日はアタシが守ってあげるからねッ!」
彼女は道哉の方を見遣ってそう語りかけた。
そして視線の向きを変え、松の木に叩きつけられた火曜日に言い放つ。


「アタシの名はSV(Summer Vacation)ガール! 子供たちを守って安らぎと楽しみをもたらす戦士よ!」



305:名無しさん@ピンキー
09/07/20 19:50:52 MHdxzG/T
毎日が

306:名無しさん@ピンキー
09/07/21 00:18:10 7ifYH/7G
相変わらず素晴らしいクォリティだ
読んでいて思わずおっきしてしまう

しかし、毎度チート級の強さ(リョナる側だから当然か)のヘイジツーシスターズが、逆にニートあたりにリョナられる展開も面白かったりして

307:名無しさん@ピンキー
09/07/22 04:55:40 9Xl9dJfx
働いたら負けかなとr

308:名無しさん@ピンキー
09/07/27 19:33:56 trkyR1fV
あああああぁぁぁ
レイラ解体全然進まねー
ってかネタ切れだあああああ

309:名無しさん@ピンキー
09/07/27 19:37:34 trkyR1fV
ごめんなさい落ち着きました

310:名無しさん@ピンキー
09/07/31 03:36:25 X4lEb4ra
良かった

311:名無しさん@ピンキー
09/08/07 02:25:59 GIq4ZTD0
保守

312:名無しさん@ピンキー
09/08/10 12:11:22 e8/bycpN
ここは
モータルコンバットやエターナルチャンピオンズみたいな
超絶グロな話でもイケるのかい?

313:名無しさん@ピンキー
09/08/10 13:36:05 Ew64M/JN
イケるも何も大歓迎です

314:名無しさん@ピンキー
09/08/10 14:06:10 VW4omdfo
というかここの住民を引かせるくらい超絶グロなものが書けるなら
その道で食っていく自信すら抱くいい機会なのでは?

315:名無しさん@ピンキー
09/08/11 15:43:14 IciYqGTv
つまりこういうのをお望みとな!?

【リョナ】モータルコンバット3、UMK フェイタリティ集!!
URLリンク(www.nicovideo.jp)

エターナルチャンピオンズ~武士道・悪道~
URLリンク(www.nicovideo.jp)

ここには載ってなかったけど
エターナルチャンピオンズだと
女キャラを裸にしてそのまま婆~ミイラにして殺す技あったな
あれは美しい女性キャラに対しては最強のリョナかもしれん

316:名無しさん@ピンキー
09/08/11 23:52:33 0DREWDwr
むしろ
その世界観やフェイタリティを文章で表現できたら尊敬する

317:名無しさん@ピンキー
09/08/17 19:04:22 wlUNMeGA
だいぶ今更だけど
>>305が可哀想すぎる件

318:名無しさん@ピンキー
09/08/17 20:59:44 y9BFIi95
お盆に降臨はないのか、九月の五連休まで待てと言うのか!

319:名無しさん@ピンキー
09/08/18 07:47:11 kZJ51MCp
専ら、福路のハーフボストンクラブが桃子の膝靭帯をズタズタに引き千切った。足取りが覚束なくなったところで、チキンウィングフェイスロックでマット上を好きなように引き回す。
福路の腹筋は本格声優らしい鍛え振りで、臍に指を入れると筋力で折られる。
福路と透華のコンビネーションは抜群で、華麗なパフォーマンスと美貌を備え長期政権を築いた。
束ねた木製バットをへし折るローキックと、ダンプカーの衝突と同じ威力のミドルキックを使い分ける。
嫌味ったらしい体回転(ウザターンと呼ばれる)を伴う掌底は福路流古武術由来で、相手は分厚い肉球を味わえる。
福路にとってドムは唯のサンドバッグ。体重差は何の意味も持たない。
福路のビンタで池田は場外まで吹き飛ばされる。
ムエタイ式の膝蹴りで鼻をぐちゃぐちゃに潰し、眼底を打ち砕く。
福路に目潰しをかますと、生爪を剥がされたうえに指を捻られ折られ手の平の骨格を粉砕される。

そんな福路ですら上埜には赤子同然にあしらわれる。

透華の必殺技は顔面ウォッシュとスワンダイブ式ミサイルキック。

320:名無しさん@ピンキー
09/08/21 00:07:50 wsjW6ykb
古賀のり夫
神にも匹敵する力を与えられながら、
豚にすら劣る悪の塊に、
少しずつ命を削られていくなんて。

321:名無しさん@ピンキー
09/08/22 01:01:51 G1rdtwH/
エンブリヲン・ロードのアイマスクメイドは、自害せずに責め続けられたらどうなっていただろう。
とりあえず爪を噛むのと脱糞はするか。脂汗で前髪が張り付いて、涎を撒き散らして傍から見れば善がり狂っているように。
媚び諂う嘆願の声を聞くには、正常な発音ができるくらいに締め付けを一旦緩めねばならないか。

322:名無しさん@ピンキー
09/08/28 23:16:28 gsmprLV2
保守

323:名無しさん@ピンキー
09/08/29 07:38:23 yv/wjelf
レイラとエリウッドマダー?

待ってる間にFEででも書くか…

324:青月 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:46:05 JKC+73KV
 毎度、『蓮弓天女』ネタを投下させていただいている者です。
ブルーマンデーを直訳したコテをつけてみました。

 さて、もうそろそろ遅いところも学生の夏休みも終わりですが、前回投下分から続くような形の
蓮弓天女外伝『SV(Summer Vacation)ガール』を投下させていただきます。
妙に長くなってしまったので、連投規制を避けるためまず前半部分を投下させていただきます。
後半部分は夜か明日にでも投下できたらと思っております。

 ではお楽しみいただけたら幸いです。



325:SVガール 前編 1/14 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:47:35 JKC+73KV

「アタシの名はSV(Summer Vacation)ガール! 子供たちを守って安らぎと楽しみをもたらす正義の戦士よ!」

 目の前に現れた僕の窮地を救ってくれた女の人がポニーテールを揺らしてそう叫んだことは覚えている。
だが、気がつくと僕は朝日の光が降り注ぐ民宿の布団の中にいた。
夢とも現実ともつかぬ記憶だけが頭の中に残り、僕は戸惑いを覚えていた。


 その日、旅行を終え僕は両親と共に家へと帰った。
帰路は車で数時間もかかり、朝早くに宿を出たのに家に着いたのはもう午後だった。

ピンポーン。

 荷物を下ろして、数日ぶりの部屋のベッドで寛いでいるとチャイムの音が廊下から聞こえた。
「あら、すみちゃん。こんにちは。」
「おばさんお帰りなさい! 旅行は楽しかったですか?」
「ええ、楽しかったわ。私たちが行った海はね―」
開けっ放しの扉から玄関で話す母さんとお客さんの声が聞こえる。
お客さんは若い女の人みたいだ。かなり親しげに母さんと話している。
誰なんだろう?と気になり僕は1階に向かった。

「あ、道哉くん! おかえり!」
階段を下りた僕に視線を向けたお客さん。
僕より頭半分に背の高い肢体を白のTシャツと若草色のミニスカートで包んでいる若い女の人だ。
ポニーテールに結わえた髪の下の整った目鼻立ちを僕に向けた彼女。
「あっ!?……えぁっ!?」
驚きから奇妙な声を上げて僕は彼女の姿を見つめることしか出来ない。
なぜなら彼女は服こそ普通の女性だが、その顔は昨日僕を救ってくれた"SVガール"のものにそっくりだったのだ。
「どうしたの? お姉さんの顔を見忘れちゃった?」
彼女はニコッと笑いながら話しかけてくる。
「すみちゃんごめんなさいね。この子ったら昨日、時計を忘れて夜に砂浜に取りに行ったりして寝不足なのよ。
 帰りの車の中でもずっと寝ていたのよ。ほら、道哉! シャキッとしなさい!」
呆然としたままの僕に母さんの窘める様な声が耳に響く。

「そうなんですか、おばさん。今、夏休みの宿題を見てあげようかなって思って、アタシお邪魔したんですけど
 道哉くんの頭を目覚めさせるには好都合ですね。上がっていいですか?」
「ええどうぞどうぞ。道哉の好きにやらせたら宿題なんてやるわけ無いんだからみっちりしごいてやってね。
 あとで御土産のお菓子を持っていってあげるわ。」
「ありがとうございますっ!」
僕が口を挟む間もなく話は進み、彼女と一緒に部屋に行く羽目になってしまった。

「と、ところであなたは……だ、誰なんですか?」
部屋に入ってベッドの際に座りかけた彼女におずおずと話しかける。
「昨夜会ったでしょう? アタシの名前はSVガール。キミに安らぎと楽しい休みをもたらすための戦士よ。」
「そ、それは覚えてますけど……何で母さんはあなたのことを知っているんですか?」
「それはね、キミと一緒にいても不都合が無いように世界の法則を少し弄ったんだ。
 今のアタシは"夏谷 澄魅"(なつや すみ)って名前で道哉くんの幼馴染のお姉さんってことになっているの。ほらっ!」
そう言って彼女は窓のレースのカーテンを開ける。
隣は空き地のはずだったが……
「えっ!? い、家が?」
「あれがアタシの家。」
2階建ての家が忽然と建っていた。

「うーんと、他に設定としては『両親は転勤のためでアタシだけの一人暮らし』、『道哉くんより3つ年上の
 高校1年生のお姉さん』ってところが重要かな?
 それじゃあ、道哉くん。アタシと一緒に楽しい休みを過ごそうね!」
そう言って澄魅さんは向日葵のように明るい笑みを僕に向けた。


326:SVガール 前編 2/14 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:48:26 JKC+73KV

 母さんが持ってきた御饅頭を食べながら僕は澄魅姉ちゃんが話す驚くべき事実を聞いた。

・『ホリデー』という力を使い、『ヘイジツーシスターズ』という敵と人々の休みを守るために戦う存在がいること。
・澄魅姉ちゃんもその一人であるということ。
・普段人と接触することは無いが、イレギュラーな事態で襲われそうになった僕を救ったことで
 澄魅姉ちゃんは僕を守る専属のような存在になってしまったこと。

「大丈夫、昨日も見たでしょう? アタシ強いんだから、道哉くんの事絶対に守って見せるから!」
張り切った表情を見せる澄魅姉ちゃん。
―僕は澄魅姉ちゃんのことを本当の幼馴染のお姉さんのように思ってしまい、つい姉ちゃんという
呼び方をつけてしまう。
「あ、あの……」
「どうしたの?」
「そ、その……その格好のときはSVガールって呼ぶのも変だし、どう呼んだらいいかわからないから
 す、澄魅姉ちゃんって呼んでいいですか?」
「えっ!?……うん、もちろんいいよ!」
おずおずと呼び方について切り出してみたら、澄魅姉ちゃんはとっても嬉しそうに応えてくれた。



 8月も半ばを過ぎたある日。
これまでの夏休みの間、僕は澄魅姉ちゃんととても楽しい時を過ごしてきた。
澄魅姉ちゃんは僕の中学校を卒業したことになっているので勉強も教えてくれたし、一緒にプールに行ったり
テレビゲームを楽しんだりするうちにあっという間に日が過ぎてしまった。

 今日、僕は澄魅姉ちゃんと一緒に家の近くの大きなショッピングセンターに遊びに来ていた。
今はちょっと僕は澄魅姉ちゃんから離れてアクセサリーのお店を眺めていた。
(澄魅姉ちゃんに似合いそうなアクセサリーとかあるかな?)
男らしいところを見せようと思って、僕は澄魅姉ちゃんへのプレゼントになりそうなものを探しているのだ。
色とりどりの装身具、カジュアルな店であることもあり物によっては僕でも買えそうな値札がついている。

「あら? 結城くん。」
 その時、背後から柔らかな声と共に僕の肩に手がかけられた。
慌てて振り向くと、そこに立っていたのは学校の担任の吉岡先生だった。
セミロングの黒髪に優しげな瞳を覆う眼鏡。
穏やかな笑みを浮かべるその綺麗な顔立ちで見つめられ僕は思わずドキッとした。
淡いブルーのワンピースを着ている先生の学校でのスーツ姿とのギャップにも胸を昂ぶらせてしまう。

「どうしたの?……もしかして、好きな子へのプレゼント?」
「えっ!?……あぁっ……。」
囁くような声で心の中を見通したように告げる先生に僕は動揺を隠せない。
確かに僕は自分でアクセサリーをつける事なんて無さそうな子供だけど……
「どんな子? ひょっとしたらクラスの子?」
とっても楽しそうに先生は問いかけてくる。
「い、いや……ち、違います! 家の隣の幼馴染のお姉さんです。」
誤解を与えてはまずいと思った僕はつい正直に答えてしまう。
「あらっ……えーと、確か……夏谷さんね? 去年卒業した子でしょう?」
先生の記憶にも澄魅姉ちゃんの存在が埋め込まれていることに驚く。
「は、はい。そうです。」
「そっかぁ……あんな綺麗な子が結城くんの彼女なのね。」

 思わず否定しようとしたが先生は話を続ける。
「で、何をプレゼントしようとしたの?」
「この辺のネックレスとかです。」
いくつかネックレスか並んだ棚を示す。
「そうね。夏谷さんに似合いそうなネックレスね……。結城くんはどれにしようと思ったの?」
そう問いかけられて、僕は気になっていた鎖の先に赤く輝く石がついたネックレスを指差した。


327:SVガール 前編 3/14 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:49:19 JKC+73KV

「これです。」
「うん……ガーネットね。結城くん、これにしなさい!」
先生はまじまじとその石と側の説明の札を見つめると自信たっぷりに命令した。
「えっ!? な、なんでですか!?」
「この宝石、ガーネットの石言葉は『情熱・変わらぬ愛と忠誠』だそうよ。元気一杯で結城君からの愛がたっぷりの
夏谷さんにはピッタリじゃない!」
「あ、ありがとうございます!」
「いいのいいの、彼女と楽しんでね。それじゃあ結城くん、また2学期学校でね!」
そう先生は言い残して立ち去った。
ガーネットのネックレスは僕の1月分のお小遣いで何とか買える金額だった。


「プハぁー! おいしいッ!」
マンゴージュースを口にして笑顔を浮かべる澄魅姉ちゃん。
それぞれの買い物を済ませて落ち合った僕と姉ちゃんは、一息を入れるためにカフェを訪れていた。
黄色く甘い飲み物を味わっている姉ちゃんに声をかける。
「あのさ、姉ちゃん。」
「んっ?……どうしたの、道哉くん?」
「こ、これ、姉ちゃんに似合うかなって思って……。」
バッグからリボンのついた小袋を手に取り澄魅姉ちゃんに差し出した。
「えっ、プレゼント!? 何なんだろう?」
澄魅姉ちゃんは嬉しそうに笑いながら袋を開けた。
「うそっ、すごい綺麗! 道哉くん、こんなの貰っちゃっていいの!?」
包みから現れたネックレスを手に取って驚きで目を丸くしている。
「うん、た、たいしたものじゃないんだけど……むぅっ!」
姉ちゃんのあまりの喜びように嬉しさと恥ずかしさを覚えてしまい、もじもじと話す僕。
その口唇が突然柔らかいもので塞がれた。

机の上に身を乗り出した姉ちゃん。
その紅い口唇が僕の口唇に重ねあっていたのだ。
(き、キスッ!?)
僕は驚きで固まってしまう。
睫毛の一本一本まで見て取れる近さに姉ちゃんの笑顔がある。
女の人の甘い香りが僕の鼻腔を震わせ、瑞々しい澄魅姉ちゃんのリップが僕の口唇に柔らかな感触を伝える。
僕にとっては永遠とも思える時間。
やがて姉ちゃんは口唇を離した。
僕のことを笑みを浮かべて見つめる澄魅姉ちゃん。
二人の唾液で濡れ、艶やかに光る朱色の口唇。
その下の襟元に同じような色彩を輝かせる宝石が揺れていた。

「ありがとう、道哉くん。今のはアタシからのほんのお返し!」
僕のファーストキスの相手となった姉ちゃんが明るく口にする。
「う、うん……ねえちゃんに喜んでもらえて……僕も嬉しいよ。」
初めての接吻の衝撃で頭がまだぐらぐらとしている僕は辛うじてそう答えることが出来た。


328:SVガール 前編 4/14 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:50:20 JKC+73KV

8月26日水曜日。

 変わらない夏休みの朝を僕は迎えた。
ベッドから離れて身支度を整え朝食をとる。
いつも食べ終わる頃に澄魅姉ちゃんが僕の家のチャイムを鳴らして入ってくるのだけど
今日は不思議なことに呼び鈴の音は食卓に響かなかった。
「あら、澄魅ちゃんどうしたのかしら?」
夏休みになってから毎日繰り返されてきた澄魅姉ちゃんの来訪が無いことに、母さんが食器を
片付けながら疑問を口にする。
「寝坊でもしたんじゃないかな? 澄魅姉ちゃんの部屋、昨日真夜中まで電気がついていたよ。」
「そうなの? でも道哉は何でそれを知っているのかしら?」
深夜までゲームをしていた僕は、隣の家の澄魅姉ちゃんの部屋にずっと明かりがついているのを見ていた。
不用意にそれを口にしたらたちまち母さんが突っ込みを入れる。
「えっ!? いや、それは、まあっ。……あっ、子供のとき見ていたアニメが再放送でやっているんだ。
 ちょっとそれ見るね!」
しどろもどろになる僕はテーブルの上の新聞のテレビ欄を目にして慌てて話題を変えた。


「おはようございます、おばさん。おはようっ、道哉くん!」
 ちょうどアニメを1話見終わったときに澄魅姉ちゃんが姿を見せた。
上半身のTシャツ姿はいつもの姉ちゃんだが、下に長いジーンズを穿いているのが目に止まった。
いつも姉ちゃんはスカートやハーフパンツといった膝辺りまでの肌を晒す服を着ていたからちょっと目新しく感じたのだ。
「おはよう、澄魅姉ちゃん! いつもより遅かったけど、寝坊したの?」
「あっ……う、うん……目覚ましたくさんかけていたんだけどちょっと昨日寝るのが遅かったから。」
その疑問はすぐに掻き消え、姉ちゃんに問いかける。
少し言葉を詰まらせながらも澄魅姉ちゃんはそう答えた。


「マイナスとマイナスをかけたら正の数になるからこうだよね、澄魅姉ちゃん?」
「うん、それであってるよ。」
僕は自分の部屋で澄魅姉ちゃんに見てもらいながら宿題をやっていた。
「あっ、もうノート終わりだ。」
続きの計算を書こうとノートを捲ると最後の1ページになってしまった。
「新しいノートあるの?」
「うん、えーと……あっ! 本棚の一番上の棚だ。」
僕は新品のノートが並べられた棚を指差す。
「なら、アタシが取ってあげるね。」
僕の身長は150cmちょっとしかない低さだ。けど澄魅姉ちゃんは僕より頭半分以上背が高く、腕もスラリと長い。
僕なら踏み台が無ければとてもノートには届きそうにないが、姉ちゃんはうんと背伸びをすると手を伸ばした。

「よいしょ、もう少し…………あぐッ!!」
 プルプルと震える指がノートに届きそうになった瞬間、突然澄魅姉ちゃんは呻き声をあげてそのまま倒れてしまった。
「姉ちゃん!?」
僕は床の上に転がった姉ちゃんに慌てて近づく。
「ぐっ……うううぅぅっっ……」
姉ちゃんは左膝を両腕で抱えるようにして身体を丸めていた。
顔には脂汗が浮き出て、いつも明るい声しか口にしない姉ちゃんが呻きを漏らしてしまっている。
「姉ちゃん! 怪我したの!? 大丈夫!?」
僕はオロオロとしながら、姉ちゃんのジーンズに隠された膝が恐ろしいことになっていないか怖くなり
Gパンを足首から引き捲くっていく。
澄魅姉ちゃんは僕が脚に手を当てても何も応えずに眉をしかめて痛みに苦しんでいた。


329:SVガール 前編 5/14 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:51:06 JKC+73KV

「あっ!」
 やがて露わになる澄魅姉ちゃんの左膝。それを目にした僕は思わず息を呑んでしまった。
姉ちゃんの膝にはグルグルと包帯とテープが厚く巻かれていたのだ。
「ね、ねえちゃん……どうしたの……これは……?」
あまりにも痛々しい姿に僕の声は震えてしまう。
「び、ビックリ……させちゃったね……。うぐっ……き、気にしないで……昨日少し、ドジっちゃっただけだから……。」
姉ちゃんは青ざめた顔に何とか笑みを浮かべようとしながら僕にそう語る。
でもこれはちょっとやそっとの怪我であるはずが無い。
その時、ふと僕は閃いてしまった。

「姉ちゃん……僕の休みを守るために敵と戦ってこんな大怪我したの?」
「あっ……そ、それは……。」
姉ちゃんは目を見開いた後、眉を伏せる。
「ぼくのせいで……姉ちゃんが怪我しちゃったの?」
「いや、そうじゃないよ! これはアタシのドジのせい……道哉くんのせいじゃないよ。」
「でも……でも……。」
「……白状しちゃうとね。確かに昨夜の戦いでこの傷を負っちゃったんだけど、今日道哉くんが
 休日を迎えられているってことはアタシが勝ったってことなのよ。
 気にしなくていいよ。これがアタシの使命なんだから。
 それに前に言ったでしょう、道哉くんのことは必ず守ってみせるって。
 アタシは休日を守る正義の戦士、SVガールなんだから! 心配しなくても大丈夫!」
そう言って澄魅姉ちゃんはニッコリと笑った。



 その日の夜。
僕は電気を消した部屋、その開いた窓の側でそっと耳を澄ませていた。
ガチャッ!
かすかにドアを開ける音が聞こえた。
そっと外を覗き見ると、隣の家の玄関が開き澄魅姉ちゃんが姿を見せた。
昼間見せた苦痛の表情、あんな怪我を負ったままなのに姉ちゃんは真夜中に出かけようとしているのだ。
ひょっとしたら戦いに?
もしやと思って澄魅姉ちゃんの家の様子に気を配っていた僕の心に、本当に姉ちゃんが姿を現したことで
強い不安が生まれる。
僕はそっと1階に降りて玄関の扉を開ける。
外に出て門の陰から道を見渡すと、少し先に澄魅姉ちゃんの後ろ姿が見えた。
僅かに左脚を引き摺っている姉ちゃん、僕はこっそりとそのあとを尾けていった。


330:SVガール 前編 6/14 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:51:48 JKC+73KV

「あぐううううぅぅッッッ!」
 大きな枝に弾き飛ばされた澄魅姉ちゃんが石畳の上を滑るように転がる。
SVガールに変身した姉ちゃん、そのスーツのメタリックな部分はあちこちがひび割れてしまっていた。
「うぐっ!……あうっ!」
痛みに呻きながら、姉ちゃんは地面に手を突いてゆっくりと立ち上がる。
脚にはガクガクと震えが走り、立っているのが精一杯のSVガール。
でも姉ちゃんはファイティングポーズをとり、額から流れた血で汚れてしまっている顔を敵に向けた。

「あら、まだそんな目が出来るのね!」
 辺りに響く可愛らしい声。
澄魅姉ちゃんが視線を向けた先には僕の同い年ぐらいの一人の女の子が立っている。
彼女のことを姉ちゃんは『木曜日』と呼んでいた。
姉ちゃんを追って近くの公園に足を踏み入れた僕。
そこで繰り広げられていたのは信じられない光景、SVガールに変身した姉ちゃんと木曜日の死闘が繰り広げられていたのだ。
強くかっこいいSVガール、澄魅姉ちゃんのその姿を見るのは夏休みに入ってすぐの時以来だった。

「でも、連戦でもう戦闘で消費するホリデーの量に、身体の中で生み出されるホリデーの量が追いつかないみたいね。」
(まさか、ずっと澄魅姉ちゃんは僕のために戦っていてくれたの?)
木曜日の言葉に胸が張り裂けそうになる。
木の影から戦いの様子を見る僕にも姉ちゃんの劣勢は明らかだった。
SVガールは飛びかかったり、手から光る玉を撃ち出したりしているがすべて木曜日の周りの地面から生えた木の幹や
大きな枝のようなものに防がれてしまっている。
逆に木曜日が振るうその枝は避けようとする姉ちゃんの身体に当たり、その度に姉ちゃんは大きく弾き飛ばされてしまっていた。


「そんなボロボロの身体で健気ねぇ……でもそろそろ終わりにしてあげる。」
 木曜日は10本近い枝を澄魅姉ちゃんに向けて狙いを定める。
姉ちゃんはハッと目を見開いたが、次の瞬間口唇を噛み締めて木曜日を睨む。
嵐の前の静けさ、緊迫の時間が流れる。
(あっ!?)
僕は左に澄魅姉ちゃん、右に木曜日が見渡せる広場の横の茂みからその様子を眺めていた。
その澄魅姉ちゃんの更に背後の石畳がボコッと盛り上がり、木曜日の枝が突き出る。
後ろから狙う凶刃に全く気づかず前方の木曜日を見据えている姉ちゃん。

「姉ちゃんあぶない! 後ろ!」
「えっ!?」
次の瞬間、茂みから顔を出した僕は叫んでいた。
驚いた様子で僕の事を見る姉ちゃん。
だが、すぐに背後の枝に気づいて自らの身を貫こうと伸びたそれを蹴り上げた。
空へ向かって弾かれる枝。
「えっ!?」
澄魅姉ちゃんの窮地を救えてホッとする間もなく僕は息を止めてしまう。
ニヤリと僕を見て笑みを浮かべる木曜日、その周囲の枝が僕のほうに一斉に向けられたのだ。
凄まじい速さで伸ばされる枝、僕はそれをただ見つめるだけで身体を動かすことが出来ない。
その視界を遮るように影が現れた。
青色のボディースーツに包まれた大きな背中、メタリックなアームカバーやブーツを穿いたスラリとした手脚。
SVガール、澄魅姉ちゃんだ。

「サンライトアタックッッ!」

 姉ちゃんは右手を引くと叫びながら突き出した。
その腕からまぶしい光、夏の太陽のような光の渦が木曜日の枝に向かって放たれた。
爆発的に炎を噴き上げて焼き尽くされる枝。
しばらくして炎が消えたそこには木曜日の姿だけしかなかった。


331:SVガール 前編 7/14 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:52:27 JKC+73KV

「やるわね……そんな量のホリデーを残していたなんて。でもいいの? ここでホリデーを使い切っちゃって?」
「お前に心配される筋合いは無い……。」
残った木曜日も服を焦がし、立っているのがやっとという有様だ。
彼女の声に応じた澄魅姉ちゃんの声は今まで聞いた事の無い凄みのあるものだった。
「まぁ、いいわ……わたしからの最後のプレゼント……。」
そういって木曜日はガクッと倒れる。
次の瞬間、風切り音が僕の耳に飛び込んでくる。
ふと上を見上げた僕。そのすぐ目の前に木曜日の枝が迫っていた。
(えっ……あっ!? 姉ちゃんが蹴り上げたやつ!?)
位置がずれていたので澄魅姉ちゃんの技で焼かれなかったのだろう。
僕は声を上げる余裕すらなかった。
「うわっ!」
固まっていた僕の身体が突き飛ばされる。

ザシュッ!

「ぐうぅッ!」
尻餅をついた僕の目に映ったのは、右腕を貫かれ顔を歪めて呻く澄魅姉ちゃんの姿だった。

「あら…………ざんね、ん……。」
地に倒れ伏した木曜日がその様子を見て呟くと彼女の身体は光に包まれて掻き消えた。
同じように澄魅姉ちゃんを貫いた枝も消える。
「澄魅姉ちゃん!? 大丈夫!?」
あわてて僕は立ち上がって姉ちゃんに近づく。
澄魅姉ちゃんが僕のほうに向き合った次の瞬間。

バチンッ!

 僕の右頬に熱い痛みが走った。
「どうして来たのっ!?」
血で汚した顔に怒りを浮かべ、昂ぶった声をあげる澄魅姉ちゃん。
姉ちゃんに僕はビンタされたんだ。
「ね、姉ちゃんのことが心配で……こんなことになるなんて、グスッ…ご、ごめんなさい……。」
窘められたり注意されることはあったが、姉ちゃんから怒りをぶつけられるのは初めてだった。
姉ちゃんに嫌われたくない想い、僕を庇って傷ついた姉ちゃんに対する申し訳なさ、様々な想いが頭を巡り
思わず僕は涙を零してしまう。

 僕の事を見つめている澄魅姉ちゃん。
その表情が怒りから悲しげなものに変わっていく。
そしてその姿もSVガールのコスチュームから元の私服に戻った。
「あっ。」
泣きじゃくる僕の頭の後ろに澄魅姉ちゃんの腕が回され、そのまま姉ちゃんの胸に顔を押し付けられた。
ワンピースの布地を涙で濡らしてしまい、その下の柔らかな感触に顔を離そうとするが姉ちゃんの腕の拘束は解けない。
「ぶっちゃってゴメンね、道哉。」
優しげな声が頭の上から聞こえる。呼び捨てられても嫌な気分は全くしなかった。
「でも、道哉のことすごくアタシは大事に思っているの。アタシは道哉の休みのためなら何でも出来る。
 だから道哉は危ないことをしないで楽しい休みを送って、それがアタシの願い。」
柔らかな胸、そこから伝わる温かさで僕の涙と頬の熱さは引いていった。

 やがて澄魅姉ちゃんの腕が解かれる。
顔を上げた僕の目に映ったのはいつもの姉ちゃんの表情だった。
「道哉くん、帰ろう!」
「うん、姉ちゃん。大丈夫?」
傷ついた姉ちゃんを心配して声をかけるが、澄魅姉ちゃんは柔らかな笑顔を浮かべて頷いた。
僕はよろける姉ちゃんに肩を貸して支えながら家路についた。


332:SVガール 前編 8/14 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:53:15 JKC+73KV

「おじゃまします。」
 翌朝、僕はホーローの鍋を手に持って澄魅姉ちゃんの家を訪れていた。
朝食後も姿を見せない姉ちゃんを心配する母さんに
『ちょっと昨日具合悪そうだったから、風邪でもひいたんじゃない?』
と取り繕うように答えたところ、母さんは手早く野菜たっぷりのスープを作って僕に持っていくように命じたのだ。
前に預けられていた鍵で玄関を開け、中に入る。
1階に人の気配は無い。
昨日の戦いで酷く傷ついた姉ちゃんはまだ起き上がれないのだろう。
食卓に鍋を置いて、静かに階段を上がっていく。

 トントン
澄魅姉ちゃんの部屋の扉をノックしたが返事は無い。
「姉ちゃん? 道哉だよ。」
声をかけてみたが姉ちゃんの応じる声はしない。
あれだけ酷い怪我を負ったのだからひょっとしたら……
最悪の展開を想像してしまい、僕は慌ててドアを開けた。

「あっ…あ、みちや、くん?」
部屋の中に入った僕。
するとベッドの上でタオルケットに包まった澄魅姉ちゃんが薄っすらと目を開けて僕を見る。
「あ、ご、ごめんなさい。起こしちゃった?」
僕は早とちりで姉ちゃんの安眠を妨げてしまったのだ。
「ううん、そんなことないよ。おはよう、道哉くん。」
「お、おはよう、澄魅姉ちゃん。」
穏やかな声を僕にかけてくれる姉ちゃん。
優しげだけど、いつもよりちょっと弱々しい声だったのが僕の心を揺らす。
「姉ちゃんのことを母さんに問われて『風邪だよ』って誤魔化したらスープを持ってけって言われたんだ。
 下に置いてあるけど今飲む?」
「ありがとう、でも今は食欲が無いから後でいただくね。」
姉ちゃんは頭を横に振って答える。
いつもの元気一杯の姉ちゃんとは違う弱々しい姉ちゃん。
僕の胸はその姿を見て締め付けられる
「ね、姉ちゃん、看病とか手伝えることある?」
「大丈夫。傷はホリデーの力で治癒されるから、一日もあれば歩けるようになると思うから心配しないで。
 道哉くんは家に帰って自分の楽しいことしていて。」
そんな状態でも姉ちゃんは僕を優先するのだった。

 ますます胸に痛みが走り、ついに涙が零れ出てしまう。
「姉ちゃんの側にいたいんだ。邪魔なの、僕?」
心と共に震える口唇が言葉を紡ぐ。
澄魅姉ちゃんは驚いた表情を浮かべ、一転して優しげな笑みを僕に向けてくれた。
「そんなことないよ。でも、つまらないでしょう? 今日はアタシは道哉くんと遊ぶことも出来ないし。」
「ううん、姉ちゃんと一緒にいるだけで僕はとっても楽しいよ。それにほら。」
窓の外、暗くなった空にちょうど雨音が響き始める地面を僕は見る。
「雨が降り始めたみたいだから外には出かけられないしさ。」
「そう、なら道哉くんのしたいようにしていいよ。」
「ありがとう、澄魅姉ちゃん。」


333:SVガール 前編 9/14 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:54:03 JKC+73KV

 母さんに澄魅姉ちゃんの家で過ごすことを告げた後、僕は姉ちゃんのベッドの傍らで本を読んでいた。
姉ちゃんはときたま穏やかな視線を僕に向けて、僕が見返して目が合うと優しい笑顔を見せてくれる。
ふとした瞬間に姉ちゃんが眠りにつき、柔らかな寝息の音が耳に聞こえてくることもあった。
窓の外から雨音が聞こえる静かな部屋。
僕は安らぎと楽しさに包まれた時間を過ごしていた。

「あぐっ!」
「ね、姉ちゃん!? どうしたの!?」
耳に飛び込んだ澄魅姉ちゃんの呻き声に急いで本から顔を上げて問いかける僕。
姉ちゃんはタオルケットを捲りあげて身体を起こそうとしていた。
「動いちゃダメだよ姉ちゃん!? 何かするなら僕がしてあげるから!」
側に寄ってベッドの上に座るのもやっとの姉ちゃんの身体を支える。
「だめだね、アタシ。」
姉ちゃんが自嘲したような言葉を吐く。
「道哉くん、お願いがあるんだけどいいかな?」
「なに?」
「ちょっと一人じゃ歩けそうに無いから一緒に支えて欲しいの。」
「歩くなんてそんな!? いいよ、何か必要なら僕が取ってくるから!」
起き上がるのも大変そうな姉ちゃんが歩くなんて……僕は驚いて姉ちゃんを止める。
だけど姉ちゃんは顔を俯かせて、かすかな声で応じた。
「……イレ……」
「え、何!?」
「……と、トイレに行きたいの……」
そう聞き漏らしてしまいそうな小さな声を発した姉ちゃん。
その顔は恥ずかしさで真っ赤にしてしまっているが、僕も申し訳なさで顔を赤く染めてしまう。
「ご、ごめん姉ちゃん。じゃあ、僕が肩貸すから行こう。」
ゆっくりと僕がその身体を支えながら姉ちゃんは足を床に下ろす
パジャマ姿の澄魅姉ちゃん。木曜日の枝触手で貫かれた右腕は三角巾で吊られている。
「じゃあ、行くね。」
僕は姉ちゃんの左腕を肩に回して立ち上がった。
思ったより姉ちゃんの身体は軽かった。
だけどその足はほとんど動かせず、半分引き摺るような形になってしまう。
少しでも姉ちゃんの苦痛を減らすように気をつけながら僕は歩みを進めていった。

トイレまで姉ちゃんを連れて行けた僕は、前の壁に寄りかかって姉ちゃんを待っていた。
しばらくすると水が流れる音が響く。
「姉ちゃん、大丈夫?」
「うん、ちょっと待ってて。」
もぞもぞ動く音が中から聞こえた。たぶん衣服を穿いているのだろう。
そう思って待っている僕だったが
ガタッ!
「ぐうぅっ!」
トイレの中から響いた鈍い音、そして姉ちゃんの声に驚く。
「大丈夫、姉ちゃん!? 開けていい!?」
僕の問いかけにも返答は無い。
急いで僕は扉を引いた。


334:SVガール 前編 10/14 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:54:56 JKC+73KV

「姉ちゃん!?」
僕が目にしたのは床に倒れている澄魅姉ちゃん。
扉に打ち付けたのであろう、額から血が流れてしまっている。
「あっ!……」
姉ちゃんの姿を目にして僕は一瞬視線を背けてしまう。
何故なら、足首まで下げられたパジャマのズボンと可愛らしい桃色のパンツ。
その上のムッチリとしたお尻が曝け出されてしまっていたのだ。
「あうぅ……」
姉ちゃんが漏らした呻き声にお尻のほうを見ないようにしながら応じる。
「姉ちゃん、しっかりして!?」
「……パンツも穿けずに転ぶなんて……アタシ、ダメだね…………」
か細い声を口にする姉ちゃん。
「ちょっと身体触るね。ごめん。」
出来る限りお尻の陰から覗く股の辺りを見ない様に気をつけながら、姉ちゃんのズボンと下着を引き上げる。

そのまま姉ちゃんを抱くようにしてベッドに戻った。
再びベッドに寝そべった姉ちゃんにタオルケットをかけてあげた時に
「ありがとう。」
そう僕に言ってくれた姉ちゃん。
いつも強い姉ちゃんの少し頼りない姿に僕の胸はドキッとしてしまった。



 夜も更けて、電灯の明かりがついた澄魅姉ちゃんの家のダイニング。
僕は澄魅姉ちゃんと机を囲んで母さんのスープを口にする。
「おいしいね。」
「うん。」
静かな食卓、姉ちゃんはだいぶ元気な姿を取り戻していた。
ちょっとおぼつかない足どりだけど支えなくてもベッドからここまで歩けたし、もう苦しい表情は見せない。
ホリデーによる回復力にに僕は驚かされていた。

「さて、そろそろ行かなくちゃ。」
洗い物を済ませた姉ちゃんがふと呟く。
「姉ちゃん、無茶だよ!」
夜になってからずっと思っていた恐れが現実のものとなり、僕は叫んでしまう。
澄魅姉ちゃんは今夜も僕のために戦いに行ってしまうんだ。
「これがアタシの使命なんだから。行かせて、道哉くん。」
困り顔で僕のことを見つめる姉ちゃん。
「イヤだよ! 姉ちゃんッ!」
「あいつを倒さないと道哉くんをとっても苦しめることになっちゃうの。道哉くんがアタシの苦しむ姿を
 見たくないのと同じように、アタシも道哉くんのそんな姿を見たくないの。」
「でも、でもっ! あっ!」
何とか姉ちゃんを押しとどめられる言葉を見つけようとする僕の口唇に触れる瑞々しい感触。
すぐ間近から姉ちゃんが優しげな眼差しで僕のことを見つめていた。

そっと僕と触れ合わせていた口唇を離す姉ちゃん。
「道哉くんはここで待っていて、必ず帰ってくるから……。」
強い意志のこめられた言葉。
僕はそれに抗うことは出来なかった。
「絶対帰ってきてね!」
ただ、姉ちゃんを失いたくない思いからそう応じる。
「うん、もちろんだよ。」
そう言って廊下に進む姉ちゃんの後を僕はついていく。
玄関のドアを開ける澄魅姉ちゃん。
降りしきる雨の音と涼しい空気が廊下に入り込んでくる。

「じゃあ、いってきます。」
振り向いた姉ちゃんは笑顔でそう言い残して僕の前から歩み去っていった。


335:SVガール 前編 11/14 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:55:42 JKC+73KV

 閉店時間を過ぎたショッピングセンターの広大な駐車場。
いつもならまだ従業員の一部は残っているような時間だが人の気配はまったくない。
それどころかすぐ前を通る大通りを走る車の音も聞こえてこなかった。
この世の原則から僅かにずれた空間、ただ降りしきる雨粒がアスファルトを濡らしていた。

 所々にある街灯に照らし出されるのは2人の女。
一人は若く、睨み付けるような強い視線を注いでもう一人の女と向かい合っている。
ポニーテールに結わえた髪から雨の滴を垂らす彼女は夏谷澄魅だ。
もう一人は澄魅より遥かに幼い、幼女といっていいほどの女の子だった。
だが澄魅は敵意を剥き出しにして彼女と対峙している。
それも無理はない、幼女の名は『金曜日』、人々を苦しめる悪のヘイジツーシスターズの末妹だった。

「木曜日お姉さまはどうにか倒せたみたいだけど、体を回復させるのにホリデーを使い切ったみたいだね。
 お前の身体からホリデーはほとんど感じられないもん。」
にんまりとした笑みを澄魅に向ける金曜日。
リボンで飾られた金髪、フリルのついた可愛らしい黄色のドレスを揺らしながら叫ぶ。
「お前のこと、わたしがたっぷりいたぶってあげるッッ!!」

「必ず帰るって言ったから……。」
俯いて静かな声で呟く夏谷澄魅。
「お前を倒して道哉くんの休日は守ってみせるっ! SVS(Summer Vacation System)セットアップッ!!」
顔を上げ、澄魅は力強く叫ぶ。
その声に応じて夏谷澄魅からSVガールへと彼女は変身を始める。

 彼女の身体から放たれる赤く光が身に纏う衣服を掻き消して、その裸身を露わにする。
首筋からツンと張った胸、すらっとしたウエスト、そして脚の隙間からかすかに茂みが垣間見える股間までを
青い競泳水着のようなスーツで覆われる。
そして赤い光が渦を巻くように澄魅の手足に巻きついていく。
やがて肘までの手甲、膝まで覆うメタリックなロングブーツに姿を変えた。

「子供たちを守って安らぎと楽しみをもたらす正義の戦士! アタシの名はSVガールッ!!」
戦う装いを身に纏い終え、金曜日に名乗りを上げるSVガール。
「へぇー、変身できるホリデーは残っていたんだ。……でも必殺技を撃てるほどのホリデーはなさそうだね。」
そう嘯く金曜日に躍り掛かるSVガール。
彼女は敵に勝る肉体を生かして接近戦で勝負をつけようとしたのだ。
身体を振って、硬い手甲に覆われた拳を幼女に殴りつける
だが突き出された腕は横からの閃光に弾かれてしまった。

 背後に飛び退って敵を見やる彼女の目に映ったのは、長い刃の細い剣を握る金曜日の姿だった。
「これは私の武器、『フライデーレイピア』よ!」
刃からも金色の光を放つ剣、今度は逆にそれを手にした金曜日がSVガールに襲い掛かる。
繰り出される刃を避け、手足の硬い鎧で捌く澄魅。
「くっ! うぐっ!」
脇腹のスーツが裂かれ、薄く血が滲む。
刃を防ぐために上げ、肢体を躍らせるようにステップを踏む脚。その太股にも赤い傷が刻まれてしまう。
SVガールの最高の状態ではない肢体は刃に追いつけず、徐々に浅い傷を負わされてしまっているのだ。

(く、こうなったら……いちかばちか……)
接近戦でも手詰まりに陥ってしまったSVガール。
これ以上不利になる前に彼女は決断した。
ザシュ!
「アグッ!」
わざと防御を緩ませ、隙を作った彼女。
その脇腹が深く刃に貫かれてしまう。
痛みに顔をゆがめるSVガール。逆に喜色を浮かべる金曜日。
次の瞬間、SVガールは大振りな蹴りを金曜日の頭めがけて放った。
一転して驚いた金曜日は慌てて刃を抜いてその脚を防ごうとする。
大振りな蹴りは不十分な体勢の金曜日を防いだ剣もろとも弾き飛ばした。


336:SVガール 前編 12/14 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:56:09 JKC+73KV

 間合いを得たSVガールは身に残ったホリデーを右手にかき集める。
(このホリデーの量でどこまでダメージを与えられるか……でも、やるしかない!)
彼女の瞳に剣を支えによろよろと起き上がろうとする金曜日の姿が映る。
肉弾の攻撃ではさほどのダメージを与えられないのだ。やはり必殺の技でなければ。
決意を込め、ありったけの力を右手に集中させる。
顎から滴る雨粒、もはや立っているのもやっとなほどに限界までかき集めた力。
「サンライトアタックッッッ!!!」」
がくがくと震える脚を一歩前に置いて、赤く輝く右腕を金曜日めがけて突き出した。
その手の先から放たれた強烈な光線はそのまましゃがみ込む金曜日に命中した。

 ドゴゴォォォーン!!
轟音と共に土煙に包まれる駐車場。
金曜日の姿が隠れてもSVガールは視線を外さずキッと見据えたままだ。

「えっ……あぁ……!?……ち、ちくしょう……。」

その瞳が見開かれ、力ない呟きが漏れる。
土煙が彼女の視線の先には、宙に浮かんで立つ大きな円状の盾、その影から顔をのぞかせた金曜日の可愛らしい顔があった。
「あー、びっくりした。思ったよりホリデーがあったんだね。そのままくらっていたら危なかったかも……。
 でも残念でした! この『フライデーシールド』のおかげでわたしは無傷だよ。」
小柄な身の丈を上回る盾の横でくるんと回ってお辞儀をする金曜日。

「さて、お返しだよ!」
 そう彼女が口にした途端、横の大盾が金色に輝きはじめる。
「フライデーバスターッッッ!!!」
SVガールの必殺技をも上回る、強烈な光の奔流が立ち尽くした彼女を飲み込んだ。
「あぎゃああああああぁぁぁっっっ!!!」
肌を焼き尽くされるような激痛、そして途方もない衝撃にSVガールは弾き飛ばされた。
「アギャッ!……う、グゥッ……。」
アスファルトの上を叩き付けられる様に跳ねた後、動きを止めるSVガールの身体。
戦う力、ホリデーを失った状態で凄まじい攻撃を身に受けた彼女は肢体を丸ませたまま動きを取れない。
そんなSVガールに、フライデーレイピアを手にした金曜日が近づいていく。

「ふん、無様だね。」
 傍らに立った金曜日に蹴られ、仰向けにさせられるSVガール。
そのコスチュームのメタリックな装甲は消失し、ボロボロに破かれた青いボディースーツだけが僅かに身を隠している。
露わになってしまった部分の肌には痛々しい数え切れないほどの傷が刻まれていた。
「あ……ぅぁ……。」
力強い意思の光が宿っていたはずの瞳は虚ろに曇ってしまっている。
「蓮弓天女の場合はホリデークリスタルを壊せば死ぬらしいけど、お前は違うんだよね?
 どうすれば殺せるのかお姉さまが言ってたと思うけど忘れちゃった。」
困ったように笑う金曜日。
その手に握られたレイピア、その切っ先がSVガールの胸に向けられる。
「だから、いろいろ試していたぶってあげる!」
鋭い刃がコスチュームの裂け目から覗く花芯―SVガールの左胸の乳首に刺し込まれた。
「ギャァッ!?」
胸から響く鋭い痛みに目を見開くSVガール。
その瞳が自らの乳房に刺し込まれた刃を目にしてますます驚愕の色を濃くする。
「アギィッ……エギャァッ!!」
ゆっくりと深くSVガールの肉を抉っていく刃。
形良い乳房を震わせて苦悶するSVガール。
「ガギャヤアアアァァァッッッ!!!!」
その声が突如激しいものになった。
身体をがくがくと痙攣させ、傷口と刃の隙間から一気に血が溢れる。
流れ落ちた血は彼女の周りの水溜りを赤く染めていく。


337:SVガール 前編 13/14 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:56:46 JKC+73KV

「これが心臓?」
 金曜日が楽しげに問いかける。
彼女は刃の切っ先が硬い肉に当たっていることに気づいていた。
「ガギギギイイイイイイイイイィィィッッッッ!!!!!」
少し剣を回して抜くをえぐってみた途端、SVガールは狂ったような悲鳴を上げる。
心地よい音楽でも耳にするようにうっとりとした表情を浮かべた幼女は、一気に腕に力を込めた。
SVガールの心臓はいとも簡単に刺し貫かれてしまった。
「ゴガギャァァッッ!!…………」
濁った叫びが途切れ、SVガールはガクッと首の力を失って水溜りに顔をつける。
その瞳からは完全に光が失われてしまっていた。

「あれ? 壊れちゃったの?」
 拍子抜けしたような声を漏らす金曜日。
「心臓は動いているかな? ってわたしが心臓を壊しちゃったからわからないじゃん!」
地団駄を踏んで、自らの失敗を悔しがる。
「もっといろいろ遊びたかったのに、こんなに脆いの?」
金曜日は剣をSVガールの亡骸から抜き、滅茶苦茶に振り回す。
「もうっ! 起きなさいよ!」
そのまま血に濡れた剣の切っ先をSVガールの虚ろな瞳に向ける。
命の彩を失った彼女の左の瞳を金曜日は無造作に刺し貫いた。
その瞬間、ビクッと痙攣が走るSVガールの身体。
「あ、動いた!?」
それを目にした金曜日に笑みが浮かぶ。
「なら、こっちも!」
そうしてSVガールの右眼も刺し貫く。
だが、今度は反射は起きなかった。
「なんだ、つまんないの……そう言えばコイツ、中学生の男の子と仲良くしているんだったよね?
 その子にコイツの死体を見せて、ついでにロウドウーを流しこんでやろう。
 労働基準局が真っ青になるような児童労働をたっぷりさせてやるんだから。」
新たなターゲットを思いつく金曜日。



 夏谷澄魅は暗く、閉ざされた意識の海を漂っていた。
(もうアタシは奴に敵いっこない……ホリデーも失われ、こんな身体じゃ……。)
敗北した戦士は絶望に捕らわれ、その命の炎も消えかかっていた。
彼女が意識をも手放し、死を望もうとした瞬間。
『中学生の男の子と…………ロウドウーを流しこんで…………』
耳から届いた金曜日の声が意識の海に波紋を広げる。
(男の子……道哉くん!?)
一月ほどの間、共に過ごし、護ってきた少年。
澄魅はその姿、そして彼に告げた言葉を思い起こす。
(必ず帰るんだ……そして道哉くんにただいまを言わなくちゃ。……今、とっても心配してくれているんだろうな、あの子。)
絶望で黒く染まった心を新たな希望の光が照らし出す。
澄魅は決意を新たにして現実の世界に覚醒した。



338:SVガール 前編 14/14 ◆/W8AnhtEnE
09/08/30 08:57:59 JKC+73KV

「さて、男の子はどっちにいるんだろう?」
 辺りをきょろきょろと見渡し、目指す男の子―道哉の気配を探る金曜日。
その足首を何かが掴んだ。
驚いて彼女は下を見る。
すると死んだはずのSVガールが彼女の足首を掴んでいたのだ。
「あら、お前生きていたの? 良かった、じゃあ次は―」
「つ、次なんか……ない……今ここで……お前は倒されるんだから。」
真っ黒な視界、それでも声を頼りにSVガールは金曜日に向けてそう呟く。
「何おかしなことを言っているの? 頭壊れちゃった? ……えっ!?」
嘲笑う金曜日、だがその声が途中で止まる。
彼女の足首を掴んだSVガールの右手。そこからホリデーの輝きが放たれていたのだ。
「う、嘘でしょう!? もうホリデーはないはず!?」
「これなら……逃げられない……さ、サンライト、アタック!!」
道哉を想う彼女の心が新たなホリデーを生み出したのだ。
ゼロ距離で金曜日に必殺技を浴びせたSVガール。
「そ、そんな、ギャアアアアアアアア!!!!」
金曜日はホリデーの光に包まれその身を焼き尽くされた。



 ザアアァァァァッッー!!
雨音が激しさを増す夜の街。
その住宅街の一角を傷ついた少女がおぼつかない足取りで歩いていた。
自らの身体を支えることも出来ずに、家々の塀に身体をもたれさせながらも必死に前へと歩む彼女。
それはかろうじて戦いに勝利した夏谷澄魅の姿だった。

 無数の傷に覆われた肌を雨が打つ。
失われた瞳は未だ再生せず、無惨に晒された赤黒い眼窩が痛々しい。
暗く閉ざされた彼女の視界。
だが澄魅の心はしっかりと護るべき道哉の気配を捉えることが出来た。
澄魅は帰りを待っているであろう彼の元に向けて必死に足を動かし続けた。


 澄魅姉ちゃんが出て行ってから数時間。
道哉は玄関に体育座りの格好で座りこみ、ただ彼女の帰りを待ち続けていた。

ドシャッ!!

 その時、彼の耳に雨音とは違う音が玄関の扉の向こうから聞こえた気がした。
慌てて立ち上がり扉を開ける道哉。

「姉ちゃん!?」
 彼が目にしたのは玄関を出てすぐのポーチの段差につまづき、倒れ伏している澄魅の姿だった。
「しっかりして、澄魅姉ちゃん!」
跪き、彼女を抱き起こそうとする道哉。
彼の声に応じるように澄魅はよろよろと顔をあげた。
その顔を目にして道哉は思わず息を呑む。
優しげな眼差しを彼に送っていた瞳が失われ、赤黒い空洞と化してしまっていたのだ。
だが自分に向けられる澄魅の言葉に我に返る。

「道哉……お姉ちゃん、帰ってこれたよ…………た、ただいま……みちや……。」

 今にも消え入りそうな微かな声、彼女は口元を緩ませて笑みを浮かべようとする。
瞳が失われた無惨な容貌のはずなのに、道哉にはそんな彼女がとても美しく見えた。

「おかえり、澄魅姉ちゃん。」

そう言って道哉は雨に濡れ、冷え切った澄魅の身体をギュッと抱き締めた。



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