09/02/05 01:57:58 RtpOuoed
自然、顔には苦虫を噛み潰したような表情が宿った。
「浮かない顔ですね」
綺麗な、澄んだ女の声がした。
振り向けばそこには燃えるように鮮やかな緋色の髪を揺らした、美女と形容すべき女性が立っていた。
「あ、シグナム」
ゴードンの肩に乗っていたリインが嬉しそうに小さな手を振る。
それに対し彼は一瞬瞳を細めた。
老兵にとっては複雑な想いを抱かずにはおれぬ相手、夜天の守護騎士ヴォルケンリッターが将シグナム。
だがゴードンは常に洒脱な軽口を忘れずに彼女に返す。
「別にそうでもないさ。それにしても久しぶりだなぁ、綺麗なお嬢さん。相変わらず目の覚めるような美貌だ」
「ええ、お久しぶりです……ですが、その……そんな風に言わないでください。恥ずかしいので」
ゴードンのあからさまなくらいの褒め言葉に、シグナムは頬をほんのりと赤らめて恥らう。
元より甘い言葉とは無縁の古き騎士には、ほとんど冗談に近い褒め言葉でも効果はてきめんのようだ。
彼女のそんな様子に少しばかり弄ってやろうか、と思う老兵だがそこはあえて我慢しておいた。
あまり真っ直ぐな女性をいぢめるのは彼の流儀ではない。
話題を変えようと言葉を捜し始めたゴードンだが、以外にも一瞬の沈黙はシグナムの方から破られた。
「どうですか? うちの部下の出来は」
「家族の贔屓目から見てもよく出来てるさ。あの歳でアレなら大したもんだ」
「そうですか。ところで……」
言葉を続けながら、それを境にシグナムの瞳の色が変わった。