☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第94話☆at EROPARO
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第94話☆ - 暇つぶし2ch1:フェイトの真ソニックフォームには脱衣があと94回ある!
09/01/25 14:16:53 fPfkjkfC
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレです。


『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

『注意情報・臨時』(暫定)
 書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
 特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
 投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。

リンクは>2


2:フェイトの真ソニックフォームには脱衣があと94回ある!
09/01/25 14:20:57 fPfkjkfC
【前スレ】
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第93話☆
スレリンク(eroparo板)

【クロスものはこちらに】
 リリカルなのはクロスSS倉庫
 URLリンク(www38.atwiki.jp)
 (ここからクロススレの現行スレッドに飛べます)

【書き手さん向け:マナー】
 読みやすいSSを書くために
 URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

【参考資料】
 ・Nanoha Wiki
  URLリンク(nanoha.julynet.jp)
  (用語集・人物・魔法・時系列考察などさまざまな情報有)
 ・R&R
  URLリンク(asagi-s.sakura.ne.jp)
  URLリンク(asagi-s.sakura.ne.jp)
  (キャラの一人称・他人への呼び方がまとめられてます)

☆魔法少女リリカルなのはエロ小説☆スレの保管庫
 URLリンク(red.ribbon.to)  (旧)
 URLリンク(wiki.livedoor.jp)   (wiki)




3:名無しさん@ピンキー
09/01/25 14:25:05 OWncPTob
>>1
乙。……94枚は脱がせがいがあるな。

4:名無しさん@ピンキー
09/01/25 17:30:49 dHpwuOVP
>>1乙。
……脱衣ブロック崩しというものがあってだな

5:名無しさん@ピンキー
09/01/25 17:45:25 o+9HsVA/
>>1乙。
それでもエロノだったらブレイクインパルスで全て脱がせそうだな。

……メイドガイの作者が書いてる同人にあったな、そういうの。

6:名無しさん@ピンキー
09/01/25 17:47:48 IB4yfch+
>>1
94枚か。一枚の厚さは0.1mmの防御には十分な強度を持つ強靱な魔法被覆で
パージするときは一枚ずつしか脱げないんですね。
最後に近くなればなるほど透けてきて……

7:名無しさん@ピンキー
09/01/25 17:49:46 LyMYEMRk
前スレだと容量オーバーなんで一番槍だッ!
あと数分後、最終チェックが終わり次第投下しまーす

8:ておあー
09/01/25 17:53:31 LyMYEMRk
よし行こう。

>>前スレのシロクジラ氏
>……ごめん、いやらしいよね、こんな子
このセリフで眠っていたリビドーが目覚める気配がした!! 俺孕ませるよ、シロクジラ氏!!

・小ネタ
・中途半端にエロ
・ショタザフィとロリアルフ
・ある意味人体改造ネタ
・アルフが孕んでもいいじゃない

タイトル『それは奇跡の代償』NGワードもこれでお願いします。

9:それは奇跡の代償
09/01/25 17:54:32 LyMYEMRk
「んっ、射精すぞっ!」
「うんっ、来てぇ! もう来てぇっ、ザフィイラアァーッ!!」

 女の絶叫にも似た懇願と共に、男の濃厚な白濁液が女の膣に注ぎ込まれる。
 勢い良く放出された精を受け止めた女の肢体は悦びに打ち震え、顔には恍惚の表情が浮かぶ。
 一方の男もまた、あからさまに表に出す事はなかったが確かに強烈な快感を得、心満たされる。

 いわゆる愛し合う者同士の営み―セックスの光景。

 ただ、世間一般のそれと今展開されているそれには一つ大きな違いがあった。

「はぁ……ちょっと、休憩しよっか……」
「そうだな」

 肉棒を引き抜かれ、脱力しベッドに身を預ける女はまだ二桁の齢にも達しないと思われる少女。
 その隣に転がり少女を愛おしげに見つめる男もまた、彼女と同じ年頃の少年。
 実はこの男女二人、本来は立派に成熟した肉体の持ち主でありながら、とある理由からここ最近は子供の姿での
交わりを常としているのだ。

「……アルフ」
「……なんだい?」
「その、具合はどうだ……? お前に言われた通り心持ちさっきより大きくしてみたのだが」
「んー、あー……こんな事言うの、凄くワガママなのはわかってるんだけどさ。今度はキツいかも……ほんのちょっと」

 魔導師フェイト・T・ハラオウンの使い魔、アルフ。
 同じく魔導師八神はやての守護獣である魔導生命体、ザフィーラ。
 それが二人の名前と出自だ。
 今二人が子供の姿をとっているのは、実はこの出自に関係がある。


10:それは奇跡の代償
09/01/25 17:55:22 LyMYEMRk
 数年前、前線を退き"フェイトの帰る場所を守る"事にしたアルフは、常に子供の姿で生活するようになった。
 使い魔は居るだけで主人の魔力を消費してしまうので、少しでもその負担を軽減しようと考えての事である。
 主の事を思っての行為であり、それ自体に問題はないように思えた。
 だがその事が、後に周囲から見れば大変馬鹿馬鹿しくも本人にとっては重大な問題を引き起こしてしまう。

 なんと、体を小さくした事で、恋人であるザフィーラの鋼の軛(隠喩)が入らなくなってしまったのだ。

 元々恵まれた体格のザフィーラの鋼の軛(隠喩)は、一般的な男性のそれと比べてもかなり、いや大変逞しい逸品である。
 少女どころか幼女でも通りそうな子供フォームで受け入れられないのは当然だった。
 下手をすれば裂けてしまう。そしてそんな恋人を傷つけかねない行為を紳士であるザフィーラがする筈が無い。

 アルフは悩んだ。
 セックスの時だけアルフが元の姿に戻るという手もある。実際我慢しきれず、何度か実行した。
 しかしその方法には、フェイトの消費魔力を増やしてしまうという問題がある。
 あの優しい彼女の事だから、気づいても多分黙認してくれるだろう。
 しかし、もしたまたま虫の居所が悪かったり徹夜で仕事中の時にピンポイントでぶち当たったら……
 「こっちは大変なのにそっちは今から恋人とアハンウフンですかいいですね死ねばいいのに」とまでは言われなくても、
翌朝一番に「さくやはおたのしみでしたね」くらいは言われるかもしれない。
 そう考えると、思う存分行為を愉しむ事もできなかった。


 一方ザフィーラは子供フォームを習得した。



11:それは奇跡の代償
09/01/25 17:56:55 LyMYEMRk
 笑ってはいけない。
 当人達には真剣な問題だったのだ。
 ただまあ、『紳士が変態紳士にランクアップした瞬間だった』くらいの事は言ってもいいかもしれない。

「……そうか」
「あ、でも気持ちいいのは気持ちいいんだよ! それにザフィーラがいいなら全然これでもいいし! ちょっとキツく
締め付けるほうが気持ちいいってアンタこの前言ってたじゃん!!」
「いや、私一人が良ければそれでいいという訳でもあるまい。お前と二人で行うものなのだからな」
「……ありがと」

 こうして子供の姿で交わる事にした二人だが、残念ながら元の姿でやっていた時ほどしっくりいかず、こうして行為の
後は毎回微調整を図っている。 
 ちなみに一番最初に子供フォーム同士で行為をする事になった時、脱いだザフィーラの鋼の軛が大人サイズのままだった
為にアルフに殴られた事を付記しておく。
 「それじゃ意味無いだろバカ犬!」「私にも男としての面子があるのだよ!」などという会話が交わされたとか
交わされなかったとか。

「ということはさっきとその前の中間がよいということか」

 アルフの見ている前で、小康状態にあった肉棒が僅かに縮む。

「あーダメダメ。多分目に見てわかるほど小さくなったら細くなりすぎてると思うんだよ。さっきはあともうちょいの
とこって感じだったから」
「ぬう……難しいものだな」

 細さだけではなく長さや雁首など、まだまだ摺合わせを行わなければならないポイントは多いのだ。

「結局は実際に使いながら確認するしかないというわけか」
「そういう事だね。んじゃ、休憩終わりって事で。第8ラウンド行こっか」



12:それは奇跡の代償
09/01/25 17:58:30 LyMYEMRk
 アルフと口付けを交わし唾液を交換するうち、ザフィーラの肉棒が再び活力を取り戻してゆく。
 アルフの秘所もまた、愛する男のモノを受け入れられる悦びにひくひくと震えその時を待つ。
 野生の力ゆえか、それともお互いへの愛の深さの成せる業か、双方に一切の衰えは見られない。 

「あぅ……っ、ん、あっ、でもこれ、これいいかもっ……」

 ザフィーラが自分の中に沈み込む感触に、アルフが喘ぎ交じりの蕩けた呟きを漏らす。

「凄いぞアルフ……締め付けの、強さが全く違う……」

 ザフィーラも表情を歪めながら彼女に応える。両者ともこれまでとは段違いの快感に襲われていた。
 肉棒と膣壁それぞれが、引き裂かれていた恋人同士が再会したかのように強く強く互いを求め合う。
 もうお互いを二度と離すまいと、熱く激しく滾ってゆく。

「動かすぞ……!」
「あ、ふぁっ! やめ、ザフィ、ッ、んぅ! つよ、強すぎ……っ、あぁんっ!!」


 その日の行為は一際激しいものとなった。
 日付が変わる前に始まったこの日の交わりが終わるのは、日の出をとうに過ぎた時間だったという。


 その後―


「シャマル、アルフは!? アルフは大丈夫なの!?」
「落ち着いてフェイトちゃん……そしてよく聞いて。信じられないかもしれないけど……」

 こうして主人(主にフェイト)にバレないようにこっそりセックスライフを送っていたアルフとザフィーラだったが、
ある日意外な形でその事実が周囲に知られる事となった。


13:それは奇跡の代償
09/01/25 17:59:39 LyMYEMRk
「に、に、妊娠!?」 
「まあ一つの奇跡よねえ……でもセックス自体はしてたんでしょ? あの二人?」
「え、で、でも魔力消費が……」

 そして―

「つまり子供フォームでアルフとエッチしてたと」
「Exactly(その通りでございます)」

 という会話があったりなかったりして―

「それで方々を追い出されてうちに転がり込んで来た訳かい」
「面目ありませんが、他に頼る場所がありませんorz」

 幼女を孕ませたという点だけが何故か異常にクローズアップされたザフィーラは八神家を追い出されナカジマ家に
身を寄せていた。
 なんかもう幼女と一緒に置くと孕ませる危険物扱いされ、ヴィータ達のいる八神家のみならず、リエラのいる
ハラオウン家、ヴィヴィオのいる高町家からも出入り禁止を食らったのである。
 アルフのいるハラオウン家からNOを突き付けられたのはある意味一番の衝撃であった。

「どうせならその嫁さんと二人で新居に移りゃあいいだろうに」
「私も仕事がありますし、アルフが出産するまではなるべく人が周りにいた方がいいだろうという事になりまして」
「まあ一理あるわな。どうせ賑やかな家だし、一人……一匹? ぐらい増えても俺は構わねえよ。ギンガもそれで
いいだろ?」
「いいですけど、チンクに手を出したらギュイイイィンですからね」

「……」


 その後チンクに手を出さなかった(当然だが)事で「なんでチンク姉には手を出さねえんだそれはチンク姉に女としての
魅力がねえって事かこの犬野郎いっぺん表出ろ」とノーヴェに意味の分からない理由で絡まれたという。
 

「もうどうしろと……」

 頑張れザフィーラ、パパになるその日まで。


14:ておあー
09/01/25 18:01:35 LyMYEMRk
投下終了。お付き合いくださった方、ありがとうございます。
我ながらアホらしい話と思いつつ、実際セックスの時に恋人のモノが別人のとチェンジしてたらやっぱ違和感が
あるんでなかろうかと真面目に不真面目な妄想をしました。セックスの相性は大事って時々聞きますしね。

旧年中はお世話になりました、と今頃挨拶。
思うように書けないんで書かなかったらご覧の有様だよ!! 時間過ぎるのはえー……今年もお世話になります。
あと保管庫の過去作に感想を下さった方にも感謝を。力をもらいました、すぐ結果に結びつきませんでしたがorz


15:名無しさん@ピンキー
09/01/25 18:08:54 OWncPTob
GJ!
何故だろう。ザッフィーには逆境がよく似合う…………。

16:名無しさん@ピンキー
09/01/25 18:16:17 VfjyJ9lB
GJ
最高だぁぁぁ
ザッフィー危険物扱いですかw
グリフィスと同類扱いは辛いやね。
でも八神家の場合は、ヴィータじゃないね。リインⅡを孕ませると思われたんだ。
しかし高町家では、なのはさんと内縁のインモラルビースト義父さんが怒ってるんだろうね。
そしてハラオウン家ではフェイトさんが、部屋の隅で泣いたますが無害です。

17:名無しさん@ピンキー
09/01/25 19:03:10 dHpwuOVP
>>14
GJ。
ザフィーラ不憫すぐるwwww

18:名無しさん@ピンキー
09/01/25 20:01:54 RimQJjS5
新スレ初っ端からGJww

しかもロリショタッッ!!
はやくパパになるんだw
がんばれ守護獣!


あと
ちゃんと結婚式ぐらいあげさせてやれよハラオウン家と八神家!

19:7の1
09/01/25 20:46:11 VfjyJ9lB
素晴らしいザッフィーの作品の後で気が引けますが、作品の続きができましたので上げます。

注意事項
・微エロ?で一部バトルを含みます
・前作:「再び鎖を手に」の続編です。
・時間軸はJS事件から1年後
・ユーノ×なのはです。
・捏造満載
・キャロ・エリオ・ルーテシアは出ません。(3人のファンの方、すみません)
・前作からのオリキャラ出ています。
・物騒な単語(「殺す」とか「復讐」とか)いっぱい出てきます
・主人公 ユーノ
・スバルは相変わらずです。
・タイトルは 翼を折る日

20:7の1
09/01/25 20:49:41 VfjyJ9lB
第4章
 ティアナに資料を渡した翌日、なのはとヴィヴィオを乗せたセダンをクラナガン301に向けたユーノは、
後部座席で巨大フェレットのぬいぐるみに抱かれて眠っているヴィヴィオをバックミラー越しに見ると、おおげ
さにため息をついた。

「なに、ユーノくん?」
「ヴィヴィオは、あれをユーノパパって呼ぶんだよね。な・の・は」
「そ、そんなことないよ。あれは大きなフェレットさんっていう名で、ヴィヴィオもそう呼んでる・・はず」

 慌てふためいて否定するなのはの声がだんだん小さくなる。

「ふーん、そうなの。ヴィヴィオは、なのはママがお仕事で疲れて帰ってきた日は、フェレットさんを独り占め
 するって怒ってたよ」
「ふぇぇぇ、そ、そんなこと、す、少ししかないもん」

 頬を赤く染めたなのはは、必死に否定するが否定し切れていない。

「しかもフェレットさんをユーノきゅんって呼ぶんだよって『おかしいよね。フェレットさんにユーノパパの名
 前をつけるなんて、私の言ってることそんなに間違ってる?ユーノパパ、少しなのはママの頭冷やして』って」
「もうやめてぇぇぇ」
「うん、やめるよ。でもなのは、なんで僕の写真じゃなくてフェレットのぬいぐるみなの?」

「そ それは・・・・さすがに恥ずかしいよ。ユーノ君の写真は」
「僕としては、巨大フェレットのほうが恥ずかしいよ。娘にパパは、フェレットさんはフェレットさんでも巨大
 フェレットさんだよって言われてごらん。クロ助になんて言われるか?」
「ご、ごめん・・・」
 小声で謝るなのはの顔は、熟れたトマトを思わせるほど真っ赤だった。

 クラナガン301の1階のイベント広場は、戦場だった。
 空を覆う青い帯のウィングロード上を駆けめぐる白い影が、空中を必死に飛んで逃げる黒い怪人に迫る。

「うおりやゃゃゃ 食らえ、正義のディバインバスター!」
 白鉢巻きをたなびかせたスバル・ナカジマが、なのは譲りの必殺技を右手に竜巻の鞭、左手に炎の剣、
頭部が地震で崩れ落ちたビルの形をした怪人サイガインジャーの漆黒の闇を思わせる胴体に叩き込む。

「ぐわぁぁぁぁ!!!」

 数々の災害をミッドチルダにもたらしてきた怪人は、特別救助隊の”白い鬼神”の鋼の拳によって爆散し、観
客の大きなお友達や両親と一緒にいる本当の子供たちの目前から消滅した。

「わぁぁぁ スバル姉ちゃんかっこいぃぃぃ!」
「スバル姉ちゃん、すげぇぇぇ すげぇぇぇよぉ」
「やった、やったぞぉぉぉぉ、ついにサイガインジャーおぉぉぉぉ!!!」
「勝った!勝った!勝ったぁぁぁぁぁ」
「ディバインバスター キタァァァァァ」
「白い鬼神 やたぁぁぁぁぁ!!!」

 ウィングロードから舞い降り、舞台の中央で天に向かって拳を突き上げるスバルに賞賛の歓声と拍手の嵐が送
られる。やがて舞台を白い煙が包み、それが消えた時、スバルの姿も消えていた。

「午後の部は、午後二時からです。皆様、チャリティショーに御参加いただきありがとうございました。皆様の
 募金は、クラナガン母子福祉連合会、ミッドチルダ福祉協議会を通じて、災害によって家族を失った人々に、 
希望の光を持たらします。本当にありがとうございました」

 舞台に片隅に立つ司会が、午前のショーが終わったことを告げると大きなお友達と両親に手を引かれた子供
たちが、ぞろぞろとイベント広場から、昼の食事を求めて出てくる。

「終わったみたいだね。行こうか、なのは、ヴィヴィオ」

 チャリティーショーを見終わったユーノは立ち上がると、スバルに会いに行こうと二人に声を掛けた。

21:7の1
09/01/25 20:54:14 VfjyJ9lB
「スバルお姉ちゃん、かっこよかったよね。なのはママ」
「うん、かっこよかったね」

 とヴィヴィオに笑ったなのはが『白い鬼神って、二つ名まで私に似なくても良いのに』とつぶやいたのを
ユーノは聞き逃さなかった。

 三人が舞台裏に設けられた臨時の楽屋を訪れた時、楽屋裏は野戦病院と化していた。

 サイガインジャーの戦闘員を演じていた特別救助隊の新人たちが、スバルのリボルバーシュートによって
負ったダメージから、未だに立ち直れずマグロになっている。
 倒れた新人たちの前では、正座させられた白い鬼神が漆黒の怪人から叱責を浴びていた。

「スバル!お前、少しは手加減ってものを覚えろ。俺はともかく、あいつらが立ち直れなきゃ、午後のショーは
 できないんだぞ。どうするつもりだ!」
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

 脇腹を冷却魔法で冷やしながら、小さくなっているスバルをどやしつけているのは、特別災害救助隊から今回
のイベントに参加している”疾風の纏持ち”の異名を持つコンラッド・コルベット曹長である。

 災害現場に救助隊の活動拠点を迅速に設け、初期の災害救助に当たる橋頭堡小隊を率いるコンラッドの得意技
は瞬間転移である。

 今回のイベントショーの影の主役サイガインジャーに、コンラッドの瞬間転移が必要だと言うことで参加した
のだが、主役の白い鬼神”スバル・ナカジマ”のディバインバスターの予想外の威力に、かなりのダメージを負
っているようだ。

「大丈夫ですか?コンラッドさん」
「こ、これぐらい。痛てぇぇ・・・だが断る。断じて傷など負っているものか!痛てぇぇ・・くない、ないぞ。
 何のこれしき、トクサイの俺が痛みなど・・・痛っ、痛ったー く、くねぇぞ」

 痛みのあまり、蒼白な顔で支離滅裂なことを口走り始めたコンラッドを見上げるスバルの両目がうるうるしたか
と思うと涙が滂沱のごとく流れ出す。

「うわぁぁぁぁん うわぁぁぁぁん うわぁぁぁぁん またやっちゃたよぉぉぉぉ ギン姉ぇぇー」

 あまりの惨状にスバルに挨拶するどころではないと判断したユーノとなのは、顔を見合わせると頷いた。

 治癒魔法で脇腹の痛みが完全に取れたコンラッドが、尊敬のまなざしでユーノを見つめている場所から、かな
り離れたところでスバルは、なのはのお話聞かせて級の説教を受けていた。

「スバル、全力全開って教えたのは確かにあたしだよ。でも、でもね、イベントショーで全力全開でディバイン
 バスター撃つのはどうかな? スバルにとってのディバインバスターって、そんなに軽いものなのかな?
 ちょっーとお話、聞かせてもらえない」

「ひぃぃぃぃ、な、なのはさん。すみません、すみません、すみません、ごめんなさい」

 模擬戦のティアナの末路を思い出したスバルは、白い魔王に頭を下げ、ひたすら許しを乞うていた。

 その姿を観客席でスバルの活躍を待ちわびている大きなお友達や本当の子供たちが見たら、絶句するのが半分
思わず納得するのが半分といったところだろう。

 みんなのヒーロー(?)白い鬼神も白い魔王の前では、赤子同然だということは、リアルなのはを知っている大きな
お友達や子供たちの親なら誰もが納得するからである。

「なのはママ、スバルお姉ちゃん泣かせちゃ駄目だよ」

 ヴィヴィオの声に振り向いたなのはの目に、ユーノと首から下がサイガインジャー姿のコンラッドが飛び込んできた。



22:7の1
09/01/25 20:56:30 VfjyJ9lB
「なのは、スバルのディバインバスターは、このイベントの最大の出し物だよ。彼女のディバインバスターを見
 に来るお客さんのおかげで救われる人々がいるんだ。彼女のディバインバスターは、けして軽いものじゃない」
「ユーノくん」

「なのはさん、お願いします。スバルがディバインバスター撃つの許してやってください。こいつは馬鹿正直な
 ぐらい真面目な奴なんです。この馬鹿は、今回のチャリティに命を賭けてるんです。頼みます」

 土下座せんばかりの勢いで、頭を下げるコンラッドの脇に立っているユーノと目があったなのはは、頷いた。

「スバル、ディバインバスターを撃つときのタイミングをコンラッドさんが瞬間転移に掛かる0.2秒前に合わ
 せない。そうすればけがをさせなくて済むよ。できるよね?」

 白い魔王モードに移行して念を押すなのはに戦慄したスバルは、かくかくと首を縦に振った。

 楽屋裏の惨状を納めた三人は、スバルとコンラッドに別れを告げるとクラナガン301が誇る透明エレベータ
ーに乗って、最上階のレストラン”301”に向かった。

「スバルくん大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。スバルは強い子だから」

 平然とした調子で答えるなのはの顔を横目で見たユーノは、内心の懸念を隠すべく平静を装った。

 なのはのお説教を聞かされた後、たっぷり30分間、ディバインバスターを撃つタイミングをなのはに叩き込ま
れたスバルは、白い鬼神から燃え尽きた鬼神モードに移行し、ぶっ倒れてしまった。

 スバルの有様に震え上がりつつも『大丈夫なんですか?』と尋ねるコンラッドになのははしれっと答えた。

「六課の時より軽いから、30分もすれば回復するよ」  
「そ、それなら、次のショーに間に合いますね。あははは 」

 空虚な笑いで、恐怖に凍り付いた楽屋の空気を紛らわしたコンラッドのひきつった笑顔を思い出したユーノは、
スバルに特訓を課すなのはの狂気を内包した表情が、脳裏に焼き付いて離れなかった。

<57階 第41管理世界 古代ブンドゥ文明展会場です。お降りの方に道をお譲りください>

 エレベーターの機械音声に従って、後ろの方から出てくる乗客に道を譲るためにエレベーターの外に出た
ユーノの目の端を、昨日モニター越しに会話した赤毛の少女が走り抜けた。

(ティアナか、彼女が何故、ここにいる?)
「ユーノくん、どうしたの?ボーッとしてるよ」


23:名無しさん@ピンキー
09/01/25 20:56:39 C/jQROtG
続きが気になるから速く読みたい

24:7の1
09/01/25 20:57:17 VfjyJ9lB
「いや、何でもないよ。ちょっと古代ブンドゥ文明の石版について、知り合いの学者に聞かれたことがあってね。
 少し気になったんだよ」
「食事を終えたら、後で見学する?」

 人混みに紛れたティアナが見えなくなったのを確かめたユーノは、
「今回の文明展は、11月4日まで開催されているから、今日じゃなくても良いよ。食事の後は、映画でも見に
 行こう。ほら97管理外世界から輸入された『○エモンの魔界大冒険』は、子供たちの間でも大評判だよ。
 魔法学院でも評判だってヴィヴィオも言ってるしね。そうだろヴィヴィオ」

「うん、大評判だよ。ユーノパパ、○エモンのぬいぐるみ買って。ヴィヴィオの巨大フェレットさんは、なのは
 ママにあげるからお願いだよ」
「ヴィ、ヴィヴィオ」

 娘の爆弾発言に狼狽するなのはにユーノは、念押しをした。

「じゃあ食事の後で映画館に行こう。良いね なのは」
「・・・う、うん」
(白い魔王モードを発動させないようにしないとまずいな。レベル3末期で進行を押さえ込まないと・・・)

<68階最上階”レストラン301”です。本レストランは、各管理世界の名物料理を集めたクラナガン随一の
レストランです。皆様、お楽しみください>

 アナウンスが終了すると同時に開いた扉から人々の流れに乗って出た三人は、レストランの3D表示される
各管理世界の自慢のメニューを見ながら、何にしようか話し合った。

「ヴィヴィオ、聖王陵の果物と翠屋のスイーツがいいな」
「な、何んで翠屋のスイーツがあるのかな?」

「まあいいじゃないか。それより久々に97管理世界の料理食べよう。なのは」
「そーだね。この”体に優しいイタリア料理コース”って良いかも。ヴィヴィオは?」
「なのはママと同じ~ ユーノパパは?」
「僕もなのはママやヴィヴィオと同じで良いよ。あと翠屋のガトーショコラと聖王陵のモレスも食べようよ」

 ヴィヴィオの希望を入れたことにちょっと不満顔のなのはに気づいたユーノだったが、あえて無視し、予約し
ていた個室を確認するとウェイターに案内を頼んだ。

 景観条例の関係でクラナガン301の周囲10km以内には、30階建て以上の建物が無いため、最上階の個室から、
蒼い空と地平線の彼方に見えるチルダ山脈の連なりがはっきりと見えた。

「1年前は、あの空で戦ったんだね」

 食後のデザートの翠屋製ガトーショコラを食べ終えたなのはが窓の外を見ながら、感慨深げにつぶやいた。

「なのはママ、あの時は、ごめんね」

「ううん、ヴィヴィオは悪くないよ。悪いのは・・・ きゃぁぁ」

 ドーーンという音ととも発生した衝撃により、椅子から立ち上がりかけたなのは床に叩きつけられた。


25:7の1
09/01/25 21:02:11 VfjyJ9lB
以上、第4章終了です。

スバルには、バトルより人命救助とかレンジャーとかの話が
似合うと思うので”特災小町スバル”というタイトルの作品を
いずれ書きたいと思います。

26:名無しさん@ピンキー
09/01/25 21:11:19 o+9HsVA/
>>14
GJ!
ザッフィーは本当に苦労が似合いますね。
頑張れ。アルフと子供の三人一緒になって、川の字に眠ることができる日までw

27:名無しさん@ピンキー
09/01/25 21:46:27 20kFo+6a
前スレ600番シガー氏GGGGGGGJJJJJJJJ!
管制官のずっこけぶりでまずワロタw
文章も気のせいか今回特に気合が入ってたような。
思わず読みふけってしまったじゃまいか!

28:超硬合金
09/01/26 00:03:36 fb/KLlr2
てあおー様
現在私の書いている短編(非エロ、ギャグ)で
氏の納豆ネタにインスパイアされた小ネタを挟みたいと考えています。
よろしいでしょうか?

それと、変態紳士にランクアップしたザッフィーに祝福を。

29:名無しさん@ピンキー
09/01/26 02:15:46 KfDI8whg
前スレ600のシガー氏GJでした!
さて、親御さんへのご挨拶と言う話が感想でちょこっと出ましたけど
娘の夫が親子ほど年の離れた相手と知った士郎さんと桃子さんどんな顔するでしょうw
……元ボディガード(原作)の士郎さんと地上本部の長のレジアス中将の拳と拳の対話が繰り広げられるのか!?
続きを楽しみにしています!

30:名無しさん@ピンキー
09/01/26 02:37:22 09V9mzMR
士郎「・・・・・・・・」
レジ「・・・・・・・・」
徐に服を脱ぎ捨ててマッスルポーズ
士郎「その大胸筋、侮りがたし」
レジ「父君の方こそ、トレーニングの難しい大腿二頭筋をよくぞそこまで」
士郎「若い頃、相当絞り込んだでしょう?」
レジ「何、昔のことです。ハッハッハッ・・・・」
恭也「くっ、俺の方が現役なのにどうして2人の方がマッチョなんだ」

31:名無しさん@ピンキー
09/01/26 03:30:33 RT0kflKq
あの体で、それはないわw<レジアス

32:名無しさん@ピンキー
09/01/26 03:35:47 Itd0461a
いやいや、世の中には固太りって言葉もあってな……

33:名無しさん@ピンキー
09/01/26 05:58:27 zbCVGQUC
力士だってあの一見肥満に見える身体ほとんど筋肉だからな。
某漫画でも握力×体重×スピード=破壊力とあるし、実際レジアスは性格的に鍛練して無いとは思えないし、かなり強いんジャマイカ

34:名無しさん@ピンキー
09/01/26 09:27:27 B2cGdNK4
ゼストが生きていた頃は二人で競い合うように筋トレをしてたんじゃないの?

35:名無しさん@ピンキー
09/01/26 09:41:41 ncl9iq01
正直、細くて強いやつよりは、太くて強いやつの方が現実的だしな

36:名無しさん@ピンキー
09/01/26 09:55:44 9gmY0SMc
>>35
そりゃあ太い方が細いのよりいいだろうな・・・・・・性的な意味で

37:名無しさん@ピンキー
09/01/26 10:02:06 ncl9iq01
それんがユーノよりレジィを選んだ理由ですか。
エロいな、なのはさん。

38:名無しさん@ピンキー
09/01/26 13:46:42 AJaf8D4A
激しく遅いが全スレ524
瀬戸内寂聴が「小説家は人が悪い」といっていたから
意地が悪い人が多いのかねえ。

遅レスですまん。

39:名無しさん@ピンキー
09/01/26 13:46:48 mAeu0ack
>>30
キモイからやめろクソが

40:名無しさん@ピンキー
09/01/26 14:24:06 W5sKFRkR
すげぇ・・・・
>>38が今までの全スレ>>524に語りかけてやがる・・・!

41:名無しさん@ピンキー
09/01/26 14:34:58 Uvpf3pAb
おお、確かにすげぇ……
にしてもスレを越えてまで瀬戸内寂聴のことを話したかったのかw

42:名無しさん@ピンキー
09/01/26 19:26:59 Dz5IKGMh
瀬戸内寂聴はまだ性欲あるらしいからな

43:超硬合金
09/01/26 20:33:02 4sBJB/ni
>>28
ておあー様
済みません、お名前間違えてしまいました。

44:ておあー
09/01/27 20:23:36 ZqanAicZ
>>43
私は一向に構わんッ!!

あと返事が遅れてすみません。毎日スレをチェックしとるわけではないので
ちと遅くなってしまいました。

45:Foolish Form ◆UEcU7qAhfM
09/01/27 20:28:52 sNIVywRD
さてさて、ちょっと久しぶりに投下しま。
前回はフェイトカワイソスだったので今回は持ち上げてみた。

・フェイト中心、でも最後はいつものユーなの
・もちろん非エロ
・闇の書事件から*年後

ではでは、始まります。

46:あなたの幸せを見つめて 1/7
09/01/27 20:30:22 sNIVywRD
「なのはにはこういうのが似合うんじゃないかな」
「あっ、それも可愛いね。でもこっちもいいなぁ……」
フェイト・テスタロッサは、親友の高町なのはと買い物に出ていた。
今日は二人だけのお出かけ、男子禁制。
つまりは、服のお買物。

大きなショッピングモールの中にある一角を色々見て回って、お気に入りを探す。
モールに着いてからこの方、なのはの浮き立ちようときたら、そのまま魔法もなしに空へ飛んで行きそうだった。

「フェイトちゃんと二人でお買い物なんて、久しぶりだね」
「うん。このところずっと一緒にいられなかったから」
互いの服を見繕いながら、フェイトはなのはの顔を見つめる。端目にもなのははニヤニヤしていた。
もちろん、その理由は知っている。もうすぐユーノが遺跡調査から帰ってくるのだ。
遠くの次元世界から、確か一ヵ月ぶりだろうか。
連絡もまともに取り合えない距離らしく、しばらくなのはは元気のない日々が続いていた。
心配なのは十分、痛いほど分かる。
自分自身、何かの折になのはと離れ離れになったら、きっといてもたってもいられないだろうから。
「ふんふんふ~ん♪」
なのはは鼻歌を歌いながら、相当楽しそうに服を選んでいる。物凄くおめかしするつもりだ、間違いない。

でも。

「フェイトちゃん、この白いワンピースなんてどう?」
そう言って、フェイトの胸にワンピースを押し当ててくる。
「うーん、もうちょっと落ち着いた色のほうがいいかな? 水色はどうだろ?」
この、人をいつも自分より考える性格。
それが逆に壁となってしまう―特にユーノ関連で―こともあったけど、フェイトはそんななのはが大好きだった。

結局、散々迷った挙げ句にフェイトは水色のワンピース、
なのははストライプのシャツに青いプリーツスカートを買った。
「なのはは赤いロングスカートを諦めた、と」
「何書いてるの、フェイトちゃん?」
「ななっ、何でもないよ!?」
フェイトは咄嗟に手帳を後ろ手に隠した。
なのはは怪訝に思ったようだったが、すぐに気にしなくなった。
こういうところが、すごく有り難かったりする。
「次はどこにいこっか?」
なのはが聞いてくる。
昼食を食べて後に出かけたが、この昼下がり、少し小腹が空いた。
「何か食べに行かない?」
「そうしよっか」

モールは広い。反対側まで行けば、飲食店のテナントがこれでもかとひしめいている。
お気に入りの服を買った紙袋を抱えて、フェイトは歩きだした。

「はふ、はふ……」
並んでベンチに座る。
膝の上に乗せられているのは、たっぷりと詰まったたこ焼き。
一つ一つが大粒で、しかもタコもぶつ切り並に入っている。
ソースとマヨネーズがかかったうえに青海苔がまぶしてある、オーソドックスなもの。

47:あなたの幸せを見つめて 2/7
09/01/27 20:30:54 sNIVywRD
鰹節が踊っているのを見ているだけで、催眠術にかかったように時間が過ぎていく。
その間に思い出すことは、もちろんなのはのこと。

初めて出会った日。母の言葉を信じ、優しかった頃の母に戻ってもらうため、身を粉にしていた時の自分。
生まれて初めて、敵対せずに人と触れ合えることができた喜び。
あの日から多くの友人に恵まれたのも、なのはのお陰以外の何物でもない。
感謝してもし足りないくらいだったが、当の本人はすました顔で「そんな水臭いこと言っちゃダメだよ」と言う。
そんなものかと思いつつも、フェイトはなのはがいることには世界中にいる神様にありがとうが言いたかった。
なのはだけじゃない、本当は誰かに鎌を振りかざして襲い掛かっていたかもしれないのだ。
そんな人間だと自覚しているから、アリサも、すずかも、はやても、もちろんユーノも。
皆みんな、大切な友達だった。
「……ちゃん? フェイトちゃん?」
名前を呼ばれ、なのはの方へ向くと、ハンカチで口元を拭かれた。
「もう、ソースついてたよ?」
「え? え!?」
慌てて口元を拭ったが、何もなかった。
「今、わたしが拭いたよ?」
「え……あ、そうだったんだ」
完全にぼーっとしていたようだった。恐るべし、鰹節。
口がお留守になり、つい……とは言い訳か。
「ごめんね、なのは」
「ん?」
なのはが首を傾げる。
「だって、迷惑かけちゃったし……」
「なんだ、そういうこと」
得心顔でうんうん頷いていたなのはだったが、やがてフェイトに向き直った。
「あのね、フェイトちゃん。何かをしてもらった時は、『ありがとう』って言うんだよ。
そして、何かをした方は『どういたしまして』って言うの。
『ごめんなさい』じゃないんだよ?」
フェイトちゃんは何も悪いことしてないんだから、となのははフェイトの手を握った。
「って実はまぁ先生の受け売りなんだけど……ってフェイトちゃんどうしたの!?」
知らず、涙が零れていた。後からあとから溢れて止まらない。
「あり、がとう……なのは。ありがとう……」
頬を伝って流れ落ちた雫は、空になったたこ焼きの箱に落ちて、小さな印を作った。
なのはは、そんなフェイトに肩を寄せて、泣き止むまでずっと、そのままでいてくれた。

すっかり泣き腫らした頃、フェイトはすっかり元気になって、仲良くなのはと手を繋いで家路へと歩いていた。
傍らには大切な人がいる。
「ずっといっしょにいられる……よね?」
「もちろんだよ、フェイトちゃん」

大親友。誰よりも、そうひょっとして家族よりも大切なひと。
フェイトはなのはの顔を見て、安心しきった顔で微笑んだ。

***

「ん、なんだフェイト、随分とご機嫌だな」
「何でもないよ、お兄ちゃん♪」

48:あなたの幸せを見つめて 3/7
09/01/27 20:31:20 sNIVywRD
クロノをどぎまぎさせつつ、ハミングを口ずさみながら夕飯の準備を義母のリンディと手伝うフェイト。
リンディにも、エイミィにも、使い魔のアルフにまで同じことを聞かれたが、返事は全部鼻歌で返した。
出かける前からかなり楽しそうにしていて、帰ってきたら余計にご機嫌なのだから、
皆が不思議に思うのも無理はない。
それもこれも、全部なのはのお陰だ。
トントントンとリズム良くネギを刻みながら、今度はフェイトが踊りだしそうだった。

「お兄ちゃん、クロノお兄ちゃん」
食事後、フェイトは義兄の部屋をノックしていた。
「ん、入っていいぞ」
緊張を押し隠しきれていない微妙な反応が、またクロノらしい。
フェイトもまた微笑をたたえたまま、クロノに問いかけた。
「このリボンなんだけど……どっちが似合うかな、って」
赤と緑、二つのリボンを差し出す。
「ある人にプレゼントしたいんだけど、喜んでもらえそうな方を……」
「何っ!? 男にプレゼン、ト? ああ、いや、別に構わんぞ、うん。けどな、僕はまだ早いと思うんだ」
「何が?」
勝手に一人で暴走しているらしいクロノをなだめすかすのは、割かし面倒だった。
かといって身近に相談できる男性といえばクロノしかいない。
「やだなあ、勘違いしちゃダメだよ、お兄ちゃん。私はただ、ある人に頼まれただけだよ。
『女の子にあげるプレゼントは、どんな風にラッピングしたらいいかな?』って。
それ、少なくとも本人に聞くことじゃないでしょう?」
「え?」
なんだそうか、なるほどなるほどと安心して頷くクロノに、思わずフェイトは吹き出した。
「ふふっ、ふふふふ……」
「なっ、失礼だぞ君は。尋ねてきたのはそっちじゃないか」
「ごめんね、でも、ふふふ、ははは……」

クロノをからかうのは、実は少し楽しかったりする。
「お兄ちゃん」と呼ぶだけで顔を真っ赤にするのだ、楽しくないはずがない。
エイミィには「男は狼だからねぇ~、気をつけるんだよ」とは言われるが、半ば笑っていたので冗談だろう。
それに何より、クロノはエイミィが好きなのだから。
一言も口には出さないが、そこは女の勘とでも言おうか、すぐに分かる。

「─コホン。で、どんな包み紙なんだ?」
「うん、これなんだけど」
取り出したのは、クリーム色に水色の水玉がついた、比較的オーソドックスなもの。
「これか……」
「こっちの包み紙は決まったんだけど、まだリボンの方がね」
クロノはリボンを重ねながら、慎重に吟味する。
「ところで、その女の子ってのはどんな娘なんだ?」

問われて、フェイトは彼女の像を思い描く。
「えっとね、一途で、頑張り屋さんで、思いやりがあって、ちょっと意地っ張りなところがあるけど、
芯が強くて、運動は苦手で……」
スラスラと言葉が出てくる辺り、よくまぁ自分も観察しているものだなとフェイトは改めて自分を見つめ直した。

49:あなたの幸せを見つめて 4/7
09/01/27 20:32:27 sNIVywRD
「要するに、猪突猛進型か」
「そうそれ」
「誰かに似てるな」
クロノが言った言葉の意味は、最後まで分からなかった。
「だとすると、こっちの赤い方がいいんじゃないか。女の子らしくて」
そう言って、赤いリボンを差し出す。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
やっと決心をつけて、フェイトはぺこりと頭を下げた。
「お礼だよ」
ちゅ、と頬にキス。

その後しばらく義兄の部屋から形容しがたいうめき声が聞こえてきたが、ハラオウン家の誰一人気にしなかった。

***

「という訳で、これがお店のメモ。それから、これがラッピングの紙とリボン。
店員さんに見せて、『これで包んで下さい』って言えばいいよ」
「ありがとう」
「でも、私に先に会っちゃっていいの?」
「だから、内緒なんだよ。誰にも秘密にしててね」
「うん、約束」
翌日、海鳴市某所の公園。
人目を避けるようにして集まった二人の少年少女。
目的は、物々交換。
「本当にこんなものでいいの?」
「ううん、それがいいの」
少年が差し出したのは、5枚のチケット。
その全てが、映画館の招待券。
「まだ、家族らしいこと、何もしてないから。一緒に、どこかに行ってみたいんだ」
そんな、ささやかな願い。
「それにしても、びっくりしたよ。突然『なのはの欲しがってる服を調べてくれ』なんて」
服の一着に、冗談で映画館のチケットなどねだってみたが、まさか本当に用意するとは予想外だった。
だから。
「ありがとう」
「いやいや、こっちこそありがとう。これくらいだったらお安い御用だよ」
互いに譲らず礼を言い続け、それはいつしか笑いになった。

50:あなたの幸せを見つめて 5/7
09/01/27 20:32:58 sNIVywRD
「それじゃ、僕はこれで。家族で楽しい時間を、フェイト」
「私も、二人が上手くいくように祈ってるよ、ユーノ」

そして、少年と少女は別れた。
互いの目的を果たすために。

翌日のハラオウン家。
「わあ、いいわね。来週の日曜日、早速行きましょう」
「母さん、そんな急に大丈夫なのか?」
「せっかくの招待券ですもの。それに期限は今月だし。休暇の一つや二つなら何とかなるわ」
「フェイト、映画って何をやるんだ?」
出自を秘密にしつつ、フェイトが映画のチケットを皆に見せると、やにわに家の中が騒がしくなった。
「5枚あるってことは……私も行っていいの?」
「もちろんだよ、エイミィ姉さん」
「ちょっ……姉さんだって! ねぇ、クロノ、姉さんだって!!」
既に公認扱いなのだが、それを再認識したエイミィはクロノに抱きついた。
クロノ本人はまんざらでもない様子だったが、流石に恥ずかしいのか鬱陶しそうに手を払っていた。
「もう、恥ずかしがっちゃって~」と頬ずりされていたが、やはりクロノはエイミィには勝てないらしい。
初めてのイベントにはしゃぐアルフ。喜んで予定を空けてくれたリンディ。目の前で抱き合っている二人も、もちろん。
引き受けてよかったと、フェイトは笑みを零さずにはいられなかった。

一方、その頃。
「おかえりっ、ユーノ君!」
「ただいま、なのは」
玄関に現れたユーノに、思わず顔を綻ばせたなのはがいた。
「これ、お土産だよ」
皆には内緒だよ、と言ってユーノが渡したのは、蒼いガラス球。
聞けば、レイジングハートに似ていたからこっそり持って帰ってきたという。
「まぁ正真正銘のガラス球だし、掃いて捨てるほどあったし、特に何の力もないんだけど……」
「うんうん、ありがとう」
今日から、机の上には、新しい仲間が一人増えることとなった。
……実は、その地でこの玉が文字通り掃いて捨てるほど沢山あったと知るのは、ずいぶん後のことなのだが。
「ところで」
「にゃ?」
「もう一つ、あげるものがあるんだ。……ちょっと言いたいこともあってね」
ユーノの顔は、僅かに翳っていた。
「今日はゆっくりしておきたい、かな。なのは、お茶淹れてくれる?」
「うん、分かった」
何かあるな、と思いつつ、なのははできるだけそれを考えないようにした。
良くない話ならいつ聞いても良くないだろうし、そもそもユーノが話してくれるまで、待ちたかったから。

***

翌日の夜になって、ようやくユーノは決心がついたようだった。
その前に、と昨日言っていたものを寄越される。
「はい、これ」
「え……?」


51:あなたの幸せを見つめて 6/7
09/01/27 20:34:40 sNIVywRD
なのはは、誕生日でもない突然のプレゼントに目を白黒させた。
『あげるものがある』とは言っていたが、まさか綺麗にラッピングされたものが来るとは。
「どうしたの、急に?」
「いや、実はね」
ユーノは今後の予定について話し始めた。
数ヶ月がかりで申請していた遺跡調査の許可が、やっと降りたのだという。
そのため、短くても二週間、長ければ二ヶ月ほど家を空けることになる。
出発は、四日後。
「ごめんね、帰ってきてすぐ。だから、ちょっと寂しくさせちゃうことのお詫び」
「もう、気にしなくてもいいのに。向こうでも電話くらいは使えるんでしょ?」
「でも、なのはの顔を見られないのは辛いから」
「ユーノ君……」
寂しさ全開だったが、かといってそれを伝えてはユーノが行き辛くなってしまう。
わがままよりは、ユーノを笑って見送りたかった。
「わたしは、ユーノ君のこと応援してるよ。だから、行ってきて。わたしなら大丈夫だから」
「うん」
ユーノも、少しだけ強がっているようだった。
彷徨わせている視線が、何よりの証拠だ。
「これ、開けていい?」と聞くと、ユーノは「もちろん」と答えた。
何が入っているんだろうと期待に胸を膨らませつつ、包み紙をそっと開くと。
「こ、これ、どうしたのユーノ君?」
中に入っていたのは、ショッピングモールで買わなかった赤いロングスカート。
ワンピースとの脳内闘争に敗北したのもあるが、それ以上に値段がやや高かった。
お小遣いを二、三か月分ははたかないと買えない代物だったはず。
「っていうかユーノ君、どうして?」
どうして、昨日に買わなかったことをもう知っているのか?
どうして、高い買い物なのにためらいもなくプレゼントしてくれるのか?
色んな「どうして」がごちゃ混ぜになって、言葉が出なくなる。
しかし、ユーノの言葉は簡単だった。
「なのはに喜んで欲しいから、かな。少し会えないけど、その間なのはには笑顔でいて欲しいから」

その瞬間、フェイトが流した涙の意味を知った。
なぜって、
「ありがとう、ユーノ君、ありがとう……!」
思わず押し倒してしまい、ユーノの胸で泣き出したからだった。

52:あなたの幸せを見つめて 7/7
09/01/27 20:35:09 sNIVywRD
「嬉しい……ユーノ君、すっごく嬉しいよ!」
嬉し涙。そんな言葉を噛み締めながら、ユーノにそっと唇を寄せた。
ドキドキが止まらない。
「ねぇ、そのスカート、今履いてみせてよ」
「うん、もちろんだよ」

***

ユーノは息を呑んだ。
スカートを履いたなのはの姿は、ほんのちょっぴり大人びていた。
くるりと一回転すると、ふわりと裾が舞い上がる。
「よく似合ってるよ、なのは」
「えへへ、ありがとう」
裾を持ち上げて、頭を下げる。
さながら、魔法でドレスアップしたシンデレラのようで。
ひょっとしたら、本当にお姫様かもしれなくて。
ただただ、見とれるしかなかった。
できれば、この時間が永遠に続きますようにと思った。
名残惜しい。なのはと一緒にいたい─だったら。
「なのはの姿、もっと目に焼き付けておきたいな」
そのままファッションショーが始まり、夜遅くになって両親に叱られたのはまた別のお話。

53:Foolish Form ◆UEcU7qAhfM
09/01/27 20:37:12 sNIVywRD
前回投下時はすまんかった(´・ω・`)以後気をつける。



「クロノ、俺と代われ!」って思った人数の分だけ作者の勝ち星ですよ。
ではまた。

54:名無しさん@ピンキー
09/01/27 23:21:26 NCopOUq2
>>53
GJ
クロノ…美味しいキャラだなあ…
しかしフェイト、嬉しそうななのはを見て「ニヤニヤしていた」はないでしょうよww
普通に「ニコニコ」ってことにしとけw

55:名無しさん@ピンキー
09/01/27 23:25:45 scbgVnUM
ふぇいとそん→ニコニコ
俺ら→ニヤニヤ

56:名無しさん@ピンキー
09/01/27 23:35:34 +EAik07U
>>53
GJ!!久々のほのぼのSS。
やはり、なのユー独特のゆったりな恋愛感はいやされます。

そして最後に・・・
なにが「ありがとう。お義兄ちゃん(チュ・・・)」だ!
クロノ、てめえいっぺん俺と代われ!!

57:名無しさん@ピンキー
09/01/27 23:47:22 a68+nt4L
>>56
できれば次からはsageてくれないか

58:名無しさん@ピンキー
09/01/28 01:49:55 YBk4sC+o
ピンク髪は淫乱と聞きましたがそれよりも青は根暗、赤はバカなだけと言い争う姫の間を割ってメカメカしいアイツが登場した時はとても爽快な気分でした

それはどうでもいいけどピンク魔力光も淫乱なんでしょうか?


59:名無しさん@ピンキー
09/01/28 02:25:11 Mp9TH3Ba
キャロ「地雷王より速ーい」
呪いうさぎ「家族が増えるね!ヴィータちゃん」
ヴィータ「やったな!」
フェイト「私のこと好きになーる好きになーる」

ごめん、書きたかっただけ。

60:名無しさん@ピンキー
09/01/28 02:41:38 iLVHpr8K
>>59
最初と最後しかわからなかった。
というか、フェイトがリ○アだと割と洒落にならない気が・・・・・。
未来でプレシア化して時間圧縮・・・・・ということは、クロノがスコ○ルか。

61:名無しさん@ピンキー
09/01/28 03:39:07 Lj62MOjQ
>>60
リ○ア=アルテ○シア説か?未だに要るんだな どちらでも良いが
作品自体が完全に答えを出さないものをあたかもそれが唯一であるというのはどうかと?

62:60
09/01/28 09:06:11 iLVHpr8K
>>61
いや、そこまで絶対視してないよ。
ただそんな説もあったなって思いだしただけで、他意はない。
気に障ったのなら謝るよ。

63:名無しさん@ピンキー
09/01/28 14:59:47 Cds2C050
つまり、フェイトは俺の嫁と

64:名無しさん@ピンキー
09/01/28 18:28:54 dlo+T+Ae
いや、その理屈はおかしい

65:超硬合金
09/01/28 20:16:53 WVpqc3J2
ておあー様快諾有難うございます。
早ければ今週末くらいにアップさせていただきます。

66:Foolish Form ◆UEcU7qAhfM
09/01/28 23:14:35 xgCU6zaU
二日連続投下なんですが……大丈夫、かな?
OKそうなら30分頃に。

67:名無しさん@ピンキー
09/01/28 23:15:55 WEvd/T5a
OKOK!
レッツゴー!

68:名無しさん@ピンキー
09/01/28 23:18:15 z3lktsni
>二日連続投下
何の問題も無いぜ
以前は朝刊を配達するがごとく毎朝投下に来てた人すらいたしw

69:Foolish Form ◆UEcU7qAhfM
09/01/28 23:20:59 xgCU6zaU
>67-68
了解です、では10分後に。

70:Foolish Form ◆UEcU7qAhfM
09/01/28 23:31:14 xgCU6zaU
30分になったので投下します。

・フェイト×クロノ
・ガチエロ、っていうかかなり凌辱気味
・闇の書事件解決後~中学卒業のどこか

事前注意
・NTR(寝取られ)
・逆レイプ
・Nice boat.(死亡描写あり)

以上三警報が発令されています。
純愛好きの方や血を見るのが嫌な方にはオススメできません。

本短編はいつもの純愛とはかけ離れています。
また一切関連性もないただの単発企画です。
当方のユノなの短編集とは矛盾だらけですが、全て仕様です。

71:Forbidden Fruit 1/6
09/01/28 23:32:02 xgCU6zaU
楽園から追放されたのは、肋骨と泥から作られた女が禁断の果実を喰らったから。
ならば、果実を喰らうように唆した蛇には、一体どんな神罰が下るのか─

***

フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。
闇の書事件が終りを告げ、ハラオウン家の養子になってしばらく経つ。
リンディ、クロノ、それからエイミィ。もちろんアルフも。
家族らしい家族と団欒の時を過ごすのは、かつては遠い日のアリシアだけにあった。
それが今、目の前にある。触れられる。見える。聞こえる。
幸せでない日々はなかった。

ある日までは。

なのは達の世界で聖書なるものを読んだのはいつだっただろうか。
キリスト教に改宗する心積もりは更々なかったが、イヴの負った罪科が気になった。
「お兄ちゃん」
そして今日も、右手が伸びる。
机に立てかけられた、家族で写っている写真に。
指で義兄の輪郭をそっと撫で、その指先を見つめる。
「ちゅ」
軽く、キスをする。
「ちゅ……んちゅ……お兄ちゃん、クロノお兄ちゃぁん……」
のみに飽き足らず、写真に残った追憶を求めるように、指を咥え、舐めしゃぶった。
これがクロノの指だったら、或いはもっとクロノを求められる部位であったらと思うと、自然と動きは激しくなった。
満たされない想いが奔流となって理性を押し流し、愛欲の底無沼深くへと嵌っていく。
唾液で濡れた指をちゅぽんと名残惜しそうに離して、下腹部の疼きに向かう。
既にスカートの下、ショーツは僅かに染みができていた。
悦楽を求めて、そのラインをなぞる。
「んっ……」
突然の刺激に一瞬だけ身体が震えたが、あとはもう波に任せるまま、秘裂を愛撫し始めた。
「お兄ちゃん、切ないよ……もっと、私を見てよ……」
クロノの指が這っているかのように、自身の感覚が消失する。
妄想の中で、フェイトはクロノに抱かれていた。
「お兄ちゃん……そこ、気持ちいいよぉ。んあっ、ふぁっ……」
しとどに濡れ、染みが広がったショーツの奥で、秘部がクロノを欲している。
我慢できないとばかりにショーツをぐいと横にどけ、直接秘裂をぴたぴたと触る。
どこで仕入れた知識かなんて、とうに忘れた。今あるのは、クロノへの欲望のみ。
兄の怒張でのみ貫かれたく、蜜壷には浅く指を入れ、未通の証を残して愉悦に耽る。
くちゅくちゅと愛液を掻き出す度に波は大きくなり、フェイトの理性を奪おうと迫る。
秘豆は完全にしこり立って尖り、物欲しそうに皮から顔を出して快楽をねだっていた。
本能に応えてその淫核を摘むと、びく、びく、と身体が痙攣した。
トロリと愛液が膣からあふれ出し、絶頂の近いことを報せる。
「お兄ちゃん……ダメぇ……そんなとこいじっちゃ、やだぁ……」

72:Forbidden Fruit 2/6
09/01/28 23:32:29 xgCU6zaU
コリコリと秘芯を揉み転がして、空いた手で写真を抱き寄せ、写り身のクロノに口づける。
「あっ、イッちゃう、お兄ちゃん、お兄ちゃ、ああああああっ……!!」
ぷしっ、ぷしゃぁっと勢い良く愛液が手を熱く浸し、絶頂の津波が脳髄の隅まで駆け巡る。
鋭い喘ぎの後、息荒く呼吸を整えながらも、フェイトは束の間の安らぎを味わっていた。

***

だが、自らを慰めれば慰めるほど、クロノへの欲望は増えていく。
「お兄ちゃん♪」
わざとクロノがどぎまぎするような言葉を選び、短いスカートを更に短くしていく。
腰をかがめた時。階段を昇ったりする時。
ショーツが見えるようにわざと振る舞い、また呼びかけたりしてこちらに向かせたりした。
クロノがわざとらしく咳払いをして目を逸らすのが少し不満だったが、その赤い顔を見ているだけで大満足だった。
……けれど。
最近はエイミィとばかりくっついている。
それは祝福すべきことであったのかもしれないけれど、同時に嫉妬の暗い炎が灯ったのを感じた。
もっと私と一緒にいて欲しい。もっと私を見て欲しい。
元々赤面症の気があったが、クロノを前にしてはキスを交わしたい、この身を捧げたい想いでいっぱいだった。
顔を突き合わせて云々言うより、仕草で攻めることを選んだ。
結果、クロノは毎晩良く分からない呻きを発している。
エイミィに告白する訳にはいかないであろう、悩み。
義妹よりも初心な少年は、その若い衝動を抑えるのに必死なようだった。

フェイトの理性は、次第にタガを外していった。
風呂上りでバスタオル一枚の姿を露骨に見せたり、時には緩く結んで解いてみたり。
あまつさえ、そのままの格好でクロノに抱きついたりした。
「フェ、フェイト。僕らは、その、義理でも兄妹なんだ」
「兄妹だから、いいんだよ♪」
間違いなんて起こさないよね? と小悪魔のように微笑んで、頬を突く。
そうなると、決まってクロノはトイレに駆け込んで、10分ほど出てこなくなるのだった。
何をしているかは明白。入れ替わるように入って、何度残り香を自慰の肴にしたことか。
白濁を胎内に注ぎ込まれたい、妊娠するまで子宮を満たして欲しい。
「お兄ちゃん、トイレでナニしてたの?」
後ろから抱き締めてクロノの胸をなぞりながら、甘く囁く。
「なっ、トイレですることといえば排泄行為以外にないだろう。大体君だってさっき入ってきたばかりじゃないか」
「ふぅ~ん、それもそうだね。ごめんねお兄ちゃん、変なこと聞いて」
お休みのキスは、いつも頬。早く唇にキスしたい。舌を割り入れて、クロノを味わいたい。
愛欲は、日に日に高まっていった。

そしてある夜、遂に決行のチャンスが訪れた。
リンディとエイミィが共に管理局に出向いて、家の中にはフェイトとクロノ、二人きりになったからだ。
アルフの食事にはアルコールをしこたま仕込んでおいた。朝まで起きることはないだろう。
クロノのにも、自分のにも、少々。理性を奪う簡単かつ最高の手段だ。
食事が終り、適当にテレビをカチャカチャと回していた頃、ようやくクロノの準備が整ったようだった。
「ん、何だか暑いな。ヒーター、効きすぎなのか?」
「そうかも。でもこっちの方が早いよ」

73:Forbidden Fruit 3/6
09/01/28 23:33:12 xgCU6zaU
その瞬間を待っていた。
酔った勢い、とでも言おうか。服を脱いで、キャミソール一枚になる。
もちろん、ブラジャーは外してある。
「ぶっ」
下着にも等しい姿にクロノは口に含んでいた水を盛大に噴き出し、フェイトのキャミソールを濡らす。
水に透けた薄手のキャミソールからは、なだらかな胸の稜線と、その真中で紅く色づく蕾をくっきりと映し出した。
「フェ、フェイト、君は一体何を……は、はしたないぞ!」
慌てて口を拭くクロノだったが、その顔は血が上って真っ赤だった。
アルコールも少しずつ回って、本能が少しずつ本性を出しているようだ。
いつものクロノと違い、その目はフェイトの胸に釘付けとなっている。
もう一押しで、全ては陥落する。
「お兄ちゃん……私、何だか身体が熱いよ……ねぇ、冷ましてよ、お兄ちゃん」
寄り添うようにしなだれかかり、胸元を大きく開いてキャミソールをぱたぱたさせ、風を送る。
胸の突起が良く見えるような位置に座り、クロノの目線を誘う。
案の定、チラチラとこちらを見つつも、最後の一歩で踏みとどまっているようだった。
だとしたら、やることは一つ。
「お兄ちゃん、少し気分が悪いから、ベッドに連れて行って」
自分から、アタックをかける─クロノを奪うに限る。

足腰も立たない、と瞳を潤ませて頼むと、クロノはお姫様抱っこでフェイトをベッドまで運んでくれた。
シーツの上に寝かせられると、クロノはそそくさと出て行こうとした。
「ねぇ、お兄ちゃん。熱、測って?」
だから、額を掻き上げて、それを留める。
「まったく、今日の君は随分と甘えん坊だな」
と、クロノは言いつつも、アルコールの力か、さして拒否することもなく応じてくれた。
「僕も少し熱があるみたいだけど、これは気のせい、なのか?」
おでことおでこをくっつけて、
「うん、僕と同じくらいだ……んっ」
首に手を回し、そのままベッドに引き寄せた。
乱暴に唇を奪い、クロノが戸惑いの最中、フェイトは舌を潜り込ませた。
デザートを味わうかのように義兄の口を犯し、唾液を嚥下していく。
ちゅぷ、くちゅ、と耳に心地よい水音が直に伝わり、フェイトの意識を溶かしていく。
「フェイト……止めるんだ、僕たちは、兄妹……んあっ!」
クロノの声は聞こえない。
フェイトの手はクロノのズボンに向かい、そのままジッパーを下げてクロノ自身を曝け出す。
「止め、止めろ、フェイト……」
クロノは腰が砕けてしまったようで、されるがままになっている。
口だけでは、どうということもない。
手でクロノの一物を扱く。半勃ちになっていたそれはみるみる硬度を増していき、屹立する怒張と化した。
しゅっ、しゅっと擦っていくうちに、鈴口から透明な粘液が僅かに出てきた。
「気持ちいい、お兄ちゃん?」
返事を待たず、フェイトは亀頭全体に我慢汁を塗り付け、手のひら全体でペニスを愛撫する。
そして一度ビクリと震えた頃、フェイトは手の動きを止めた。
「フェイト……?」
声が上ずっている。止めてくれてホッとしているのか、止めないでくれと懇願しているのか。
フェイトは、後者の意だと受け取った。
「焦らしたりしないから大丈夫だよ、お兄ちゃん。私で沢山イッてね」
フェイトは、大きく勃起したクロノの怒張をその小さな口に含んだ。

74:Forbidden Fruit 4/6
09/01/28 23:33:53 xgCU6zaU
「ちゅぱ……ちゅぷ……んちゅ……」
きつい臭いが鼻の奥を突いたが、気にならなかった。
むしろ、獣じみた本能を加速させ、衝き動かされる性の慟哭だけが感情を支配していく。
粘りつくような苦い我慢汁を飲み下しながら、愛する人の性器を舐る。
鈴口に舌を軽く入れ、エラの張ったカリ首の裏を舐め上げる。
「うあっ……フェイト、出る、出るっ!」
「ちゅっ、おにいひゃん、だひても、いいよ」
ビクビクと口の中で震えているのが良く分かる。
亀頭を舐め回し、ちゅうちゅうと赤子が乳を飲むように陰茎を吸うと、クロノは限界に来たようだった。
「やめっ、フェイ……トっ……!!」
びゅるっ、とフェイトの口内に叩きつけるものがあった。
どく、どくと脈打って、マグマのような白濁液がフェイトを汚していく。
粘りを通り越して絡みつくような濃さの精液が、舌を、歯を、喉を染めていく。
口の中には納まりきらなくて、その一部が口の端から溢れ出した。
一滴たりとも逃さぬまいと諸手で受け止め、口中に残っているものは半分ほど飲みこむ。
もう半分を喉の奥へ押しやる前に、まずは尿道の中にある精液を吸いだす。
刺激にもう一度脈動して、クロノの精が全てフェイトの口へと集められた。
「ほら、お兄ちゃん。お兄ちゃんの精液、苦くて、甘くて……凄く美味しいよ」
舌先に絡んだ白濁をクロノに見せ付けて、零れ落ちそうになった分を舐め取り、全て飲み干す。
─もちろん、これで終りにするつもりはない。
クロノのペニスを扱き立てて、一度萎んだそれを再び勃起させると、フェイトはショーツを脱ぎ捨てた。
スカートの下には何もない。
「頼む、これ以上は……僕とフェイトは……いや、エイミィだって……」
「今はエイミィ姉さんのことはいいから」
今までの行為で、完全にフェイトも出来上がっていたから、秘部は愛液で濡れぼそっていた。
けれど、もう少しだけ楽しみたい。
クロノへ馬乗りになって、その胸に身体を預ける。
フェイトは、素股の要領でクロノの怒張を秘唇で包み込むと、上下にグラインドを始めた。
「あぅぁっ……!」
クロノが喘ぐ。ぬるぬるの粘液に勃起を包まれ、秘裂の先端にある柔突起に裏筋を擦られて、
二度目の射精を求めて苦しそうにもがいていた。
「あぅっ! お兄ちゃん、クリ、クリトリスが気持ち良いよぉっ……」
愛液でクロノのペニスはトロトロに溶かされ、熱く固く勃ちきっていた。
「頼む……もう、止めてくれ……フェイト……僕には、エイミィが……」
「だぁめ」
スッ……と身体を持ち上げたかと思うと、フェイトは手で肉棒を押さえ、膣口に添えると、腰を一気に落とした。
「んあああああっ!」
一気に怒張はフェイトの最奥まで突き抜け、根元まで入った。
一筋の血が流れ、フェイトは感極まった声を漏らす。
「あはっ……お兄ちゃんの初めて、私が貰っちゃった。私も初めてだから、おあいこだね」
どうして知ってるんだ、とクロノが喘ぎながら聞くが、フェイトは冷ややかに答えた。
「だって、エイミィ姉さんとセックスするなんて、結婚してからじゃなきゃやらないでしょ、お兄ちゃんなら」
図星。本当はブラフだったけれど、顔に出た同様の色はどう見ても本物だ。

75:Forbidden Fruit 5/6
09/01/28 23:34:30 xgCU6zaU
身体を密着させて、少し腰を上げる。
「お兄ちゃん、本当に私たちが兄妹なら、私の膣中でなんか出さないよね?
精液いっぱいびゅーびゅー出しちゃって、私を妊娠させたり、しないよね?」
クロノの顔が青ざめたが、それでも欲望というものは退かないらしい。
肉棒はフェイトの膣中でガチガチだ。どうあっても白濁を放出するまで、収まる気配はない。
「私、お兄ちゃんが大好き……だから、私ならいつでもしてあげるよ。
お兄ちゃんの好きな時におちんちん舐めてあげるし、お兄ちゃんのしたいときにセックスしてあげる。
だから、だから……お兄ちゃん、私のことを見てよ、もっともっと私と一緒にいてよぉっ!!」
涙を流して、抽迭を激しくする。
痛みは、最初からなかった。ただただ腰を振って、義兄から精液を搾り取ろうと動く。
「やめっ……僕たちは、兄妹なんだ、って言ってる、だろ……出る、出るからっ……」
クロノが限界を訴える。
でも、絶対に止めない。
ぶじゅ、ぶしゅ、と水音を響かせて、フェイトはもう一度膣の一番奥までクロノの怒張を押し込んだ。
「やめろっ、フェイト……うあっ、あああああああああーっ!」
二度目の射精が、信じられないほど大量にフェイトの子宮へと流れていく。
小さな膣に収まりきらないだけの白濁液が、ごぽりと溢れてふとももに流れていく。
「あぁっ……出てる、私のお腹に沢山精液出てるよ……こんなに沢山……
お兄ちゃんのおちんちん、ビクビクしてる。ふふっ、これだけ出せば、絶対妊娠しちゃうね」
抜かずにずっと繋がったまま、精子という精子が完全に染み渡るまでその身体を離さなかった。
「お兄ちゃんに中出しされちゃった……お兄ちゃんの赤ちゃん、できるといいなあ」
クロノの耳元で囁く声はあまりに甘美で。
「あ、あはは……フェイトとの子供か。そうか……」
「そうだよ、お兄ちゃん。私たちの赤ちゃん。こんなにいっぱい射精したんだから。責任、取ってね?」
間もなくして、クロノは堕ちた。

***

リンディはもう少しだけ管理局に残り、エイミィだけが先に帰ってくるというメールが来た。
フェイトは、どうしてこうも都合の良いことが続くのだろうかと半ば軽い戦慄をも覚えながら、
姉のような人を迎えるのに余念がない。
その瞳には、暗い光だけがやどっていた。
「たっだいま~!」
そして、エイミィが帰ってきた。
「お帰りなさい……」
フェイトが出迎える。
手には包丁、身体にはエプロン。
典型的な料理中の姿─だが。
「あれ? クロノ君は?」
エイミィは賢しくも感じ取ったようだった。
自分をすぐに迎えに来ないこと、代りにフェイトがいること。
そして何より、手に持った包丁。
そう、普段にはないこと。
「クロノ君、トイレにでも入ってるの?」
しかし悲しいかな、エイミィはそこから現実離れした結論を弾き出すことはできなかった。
そこで急用の一つでも思い出していれば、或いは免れえたのかもしれない。
だが。

76:Forbidden Fruit 6/6
09/01/28 23:34:59 xgCU6zaU
「ううん。今、クロノお兄ちゃんは寝てるよ」
「あぁ、なるほど。ところでフェイト、今日のご飯は何? あたしお腹すいちゃってさあ。
何か摘むものがあったらそれでもいいんだけど、ある?」
靴を脱ぎ、スリッパに履き替えるエイミィ。
下を向いていたため、致命的にもフェイトの顔を見損ねてしまった。
「ごめんなさい、エイミィ姉さん……」
「ふぇ? ごめんなさいって、何が?」
フッと顔を上げたエイミィの顔に浮かんだのは、恐怖よりも疑問符が先立った。
「どうしたの、包丁なんて構えて。Gでもいた?」
フェイトは顔をフルフルと振ると、申し訳なさそうに、しかし狂疾に冒された声で言った。
「今日は、エイミィ姉さんを料理するんだ……」
「あたしを料理? え、まさか女体盛り? アハハ、フェイトにはまだ早いか」
母から受けた歪んだ愛は、矯正しきることはできなかった。
兇器を持ち、突きつけることで、その遺伝の恐ろしさを知った。
けれど、もう止まらない。もう止められない。
クロノとの恋路には、エイミィはいてはいけないのだ。
最初から、存在していてはならない存在だったのだ。
「さようなら」
独占の衝動が全身を覆いつくし、手に持った包丁をエイミィに突き立てた。
「えっ……がっ、ごほっ……」
心臓には刺さっただろうか。肺は突き抜けただろうか。
エイミィの顔は一瞬だけ疑問に、次いで驚愕。最後には苦痛からの開放を訴えていた。
その目が言う通りに、包丁を引き抜いた。動脈を貫いたのか、どくっ、どくっ、と鮮血が溢れてくる。
「姉さんが悪いんだよ? 私のクロノをたぶらかすから……私はクロノと一緒じゃないと幸せになれないのに。
ごめんね、姉さん。でも、私とクロノの幸せに、姉さんは邪魔だから……」
エイミィは何かを言おうとしていたが、血を吐いてそれも叶わなかった。
ガクガクと嫌な震えをしばらく続けていたが、やがて動かなくなった。
「これで、お兄ちゃんは私だけのものだね……待っててね、お兄ちゃん。私、お兄ちゃんだけの人になるから」

アルフが起きた時、どうなるだろう。
リンディが帰ってきた時、一体どうなるだろう。
フェイトは鼻歌を唄いながら、本物の料理を作り始めた。
クロノに、愛する人に食べてもらうために。

77:Foolish Form ◆UEcU7qAhfM
09/01/28 23:37:07 xgCU6zaU
もはや何も言うまい。
次はユノなのに戻って純愛予定。

では。

78:名無しさん@ピンキー
09/01/28 23:39:09 oEWZdv9y
GJ
前に、「エイミィがフェイトと浮気したクロノを殺す」のがあったのを思い出した。
NICEBOATは萌えるな。

79:名無しさん@ピンキー
09/01/29 00:08:49 nff3pM0d
>>77
koeeeeeeeeee
しかしフェイトって妙にこう、不貞愛みたいなのが映える希ガス。GJ

80:名無しさん@ピンキー
09/01/29 00:16:01 +FW/zJ5X
かーなーしみのー♪むこーへとー♪


ヤンデレな義妹に愛されて眠れない提督乙。
次のなのユーも楽しみにしてるぜ。

81:名無しさん@ピンキー
09/01/29 00:19:00 nFJhc3Ko
GJ。なんというか、タメのない、箇条書きっぽい修羅場だった。
この後のクロノとか超見たいかも。

82:B・A
09/01/29 02:45:12 CXz+6DS6
ひょっとして、その日の晩御飯は・・・・・・。
久々に背筋が凍ったよ。


久しぶりに連載が進みます。


注意事項
・非エロでバトルです
・時間軸はJS事件から3年後
・JS事件でもしもスカ側が勝利していたら
・捏造満載
・一部のキャラクターは死亡しています(はやて、ヴィータ他)
・一部のキャラクターはスカ側に寝返っています
・色んなキャラが悲惨な目にあっています、鬱要素あり
・物騒な単語(「殺す」とか「復讐」とか)いっぱい出てきます
・名前のあるキャラが死にます
・シグナム、アギト、シャッハ、はやてが好きな人は辛いと思います
・SSXのネタも入っています
・主人公その1:エリオ(今回、出番なし)
     その2:スバル
・タイトルは「UNDERDOGS」  訳:負け犬

83:UNDERDOGS 第十五話①
09/01/29 02:47:09 CXz+6DS6
これまでの功績が認められて中将への昇進が決まり、就任と報告のために本局へと帰還したグリフィスを待っていたのは、
クロノ・ハラオウン元提督を筆頭とするレジスタンス組織の拠点壊滅の知らせだった。
まるで幽霊のように神出鬼没で、尻尾すら掴ませようとしなかった彼らが、一拠点だけとはいえ
スカリエッティ配下の機人部隊に壊滅させられたというニュースは、自身の障害に対しては容赦しないという
ジェイル・スカリエッティの恐ろしさを改めて知らしめることとなり、管理局全体を騒然とさせた。
長い間、沈黙を守り続けていたスカリエッティがレジスタンス打倒のために動いたのは、何か大きな事件が起きる前触れかもしれないと震える者もいた。
そして、もう1つ変化が起きていた。グリフィスに対する局員達の態度が硬化したのである。
理由は、彼が第56管理世界との戦いにおいて質量兵器を使用したことにある。
スカリエッティの要求に従って解禁されたとはいえ、質量兵器は忌むべきものであるという教育を受けてきたために未だ抵抗を示す者が大多数を占めている。
特に山を吹き飛ばすほどの威力を誇る大型質量兵器はその破壊力故に取り扱いには細心の注意が払われており、解禁されてから3年、
試射も含めて三度しか使用されていない。そして、グリフィスが指揮を執っていた戦いが、記録に残る四度目の使用となったのである。
局員の中には、やはり質量兵器は封印すべきだという意見を述べる者もいる。しかし、そういった意見は「広域攻撃を魔導師個人に頼る方が遥かに危険である」
という反論によって強引に押さえ込まれていた。何れにしても、質量兵器はそれだけ複雑な立場に置かれているということである。
グリフィスもそれを知っていたため、最後まで質量兵器を使うことに躊躇していた。いや、そもそも戦況が予想通りに進んでいれば、
使うことなく講和を結べるところまで彼は漕ぎ着けていた。あのまま何事もなければ、あんなものを使わずに済んだのである。

(彼らが戦闘帰機人や質量兵器に手を出さざるえないところまで追い込んでしまったのは僕らの責任だ。
けど、彼らにはあれを製造する技術はないはず。裏で糸を引いた者がいるはずだ。
戦争を長引かせようとするする奴が。そんなことをしそうな奴は、あいつしかいない)

局員達の警戒するような視線を無視して自分の執務室に戻ったグリフィスは、扉に鍵をかけるとスカリエッティへのホットラインを呼び出した。
ややして仮想ディスプレイに現れたスカリエッティの笑みに軽い殺意を覚えながらも、グリフィスは努めて冷静に第56管理世界での出来事を簡潔に説明した。

「・・・・・以上です」

『なるほど、あちらも戦闘機人を・・・・』

「しかも、捕獲した機人は8割以上の部品が管理局製のものと同じ規格であり、動力周りの設計もこちらのものと酷似していた。
事前に調べた限り、あそこの科学技術はミッドよりも遅れていたため、独自開発された可能性は限りなく低い」

『ならば、機密情報が外部に漏れたことになるね。ハッキングの形跡がないか、こちらでも調べておこう』

(いいや、そんなことをしても何も出やしない。お前が直接出向けば、そんなことをする必要はないからな)

実は、グリフィスはここ数日の間、度々スカリエッティにコンタクトを試みていたのだが、ここ2週間ほど彼は捕まらず、
クアットロに門前払いを受け続けていたのだ。そして、アインヘリアル陥落の際にクアットロが戦死すると、それと入れ替わるように彼は戻ってきた。
その2週間の間に第56管理世界とコンタクトを取り、技術提供を行うことは不可能ではないはずだ。

「内通者を疑う必要もありますね。或いは、戦争の長期化を狙う第三勢力か・・・・・」

チラリとスカリエッティの顔を覗くが、彼は不気味な笑みを浮かべたまま表情を変えることはなかった。や
はりと言うべきか、この程度では尻尾を出すことはないようだ。


84:UNDERDOGS 第十五話②
09/01/29 02:47:59 CXz+6DS6
(もう少しカマをかけるか? いや、踏み込み過ぎれば怪しまれる。懐に潜り込めるまで、堪えるんだ)

グリフィスは焦る気持ちを抑えようと、スカリエッティに気づかれないように注意しながら深く息を吸った。
本より、グリフィスはスカリエッティに心から組みしている訳ではない。いや、それなら管理局の上層部にも言えることだが、
グリフィスの場合は彼らのようにスカリエッティを恐れていないし、御せるとも思っていない。
それどころか、取り返しのつかない事態に陥る前に打ち倒すべきだと考えている。3年前、クロノ達の誘いを蹴ってまで管理局に残ったのも、
内部からスカリエッティを排斥するためだったのだ。無論、テロ活動によって人々の安全を脅かすことにも抵抗があった。

『時に、質量兵器を使用したと聞いたが?』

「ええ、撃たなければこちらがやられていました。死者220名、重軽傷者55名、死体を確認できなかったのが1209名、
これで僕もめでたく大量虐殺者という訳だ」

『大義のために人を殺す者を、英雄と呼ぶのではないのかい?』

「英雄だって?」

俯いたグリフィスの眼鏡が鈍い輝きを放つ。握りしめていた拳はふるふると震え、込み上げてきた怒りは自然と声に表れていた。

「多くの人が死んだんだ。それだけじゃない。質量兵器を撃ち込まれた土地が正常な状態にまで回復するのに50年はかかる。
僕のしたことは大量虐殺にして未曽有の環境破壊だ」

グリフィスといえど、既に将校だ。世の中が綺麗事だけでできていないことは知っているし、
ここまで出世するのに色々と汚い手も使ってきた。しかし、今回ばかりは薄っぺらい良心が悲鳴を上げている。
自分がしたことは、ボタンを押しただけだ。たった1つのボタンを押しただけで、数千人もの命が消し飛んだ。
指先1つで誰もが大量虐殺を行うことができる、それが質量兵器の恐ろしさなのである。

『痛ましいことだ。だが、汚染などは放っておけば自然に治まる。そういうものだろう?』

(そういう問題じゃない・・・・そういうのじゃないんだ・・・・・)

自国に質量兵器が撃ち込まれたことで、第56管理世界の人々の管理局への怒りと憎しみはますます募りつつある。
これでは、友好的な講和は不可能かもしれない。それに、言えた義理ではないが、どんな非道にも越えてはならない一線というものがあるはずだ。
それは殺人であったり、民間人を巻き込まないことであったりと、組織や個人によって様々だが、そういった約束を守るからこそ、
自分達は己の行いに対して誇りが持てるのである。だが、スカリエッティにはそれがない。善悪の基準を持たず、日常と非日常の境界を知らず、
世界を歪めてもなお逸脱したままの破綻した倫理観を持つ生まれながらに壊れている異端者。
曲がりなりにも彼のことを理解しようとした管理局のやり方は、やはり間違っていたのだ。

『まあ、政治に関しては君達に任せるよ。こちらはこちらで立て込んでいてね』

「何かあったのですか?」

『気紛れな王様がママとピクニックに出かけていてね。手薄になったゆりかごの守備をなんとかしなければならないんだ』

「なら、私の権限で艦隊を派遣しましょう。親子水入らずの時間を邪魔しちゃ不味い」

『助かるよ。では、何かあればまた知らせてくれたまえ』

最後まで不気味な笑みを浮かべたまま、スカリエッティの姿が画面から消える。グリフィスは仮想ディスプレイを閉じると、
背もたれに体重を預けて大きく息を吐いた。

(今から艦隊を組織してミッド衛星軌道上に到着するのがだいたい4時間・・・・・いや、5時間か。
戦力も中将としての権限ならギリギリ揃えられるが・・・・・・・・・)

思わぬ形で舞い込んだチャンスに、グリフィスはどう出るべきか迷っていた。
聖王が不在の今、ゆりかごの防衛力は極端に落ちている。今ならば、通常の艦隊だけでも渡り合うことは不可能ではないはずだ。
しかし、事を起こせば管理局は間違いなく自分を造反者として始末しようとするはずだ。
テロリストとして糾弾され、略式裁判の後に幽閉もしくは極刑。今の上層部ならそれくらいのことはやりかねない。
そして、彼らが新たなスカリエッティとして彼の研究を引き継ぐのだ。それでは根本から世界の歪みを解決したことにはならない。

85:UNDERDOGS 第十五話③
09/01/29 02:48:39 CXz+6DS6
(博打になるが、事を同時に進めるしかないか。最悪の場合、ミッドを引き替えにすることも考慮に入れておかねばならないな)

思考を整理し直し、グイフィスは第56管理世界に残っているルキノを通信で呼び出した。

「ルキノ、代わりの者を寄こすから、君は別行動を取って欲しい。彼らにある情報を流すんだ」

『ある情報、ですか?』

「ああ、プランを前倒しする。足りない戦力は、外部から引き入れるしかないね」

『そこまでして、性急に事を進める必要があると?』

「これ以上、戦争を長引かせる訳にはいかないだろう」

そこで一旦言葉を切り、グリフィスは眼鏡のズレを直す。

「回収したアレの修繕は、終わっているね?」

『エンジンを最新のものに積み替えましたし、艤装も完了しています。
後は細かな調整を残すだけですね』

「では、彼らに譲渡しよう。高い金を払って修繕したんだ、有効活用してもらわないとね」

『わかりました・・・・・・・・グリフィス』

敬礼した後、ルキノは声の調子を変えてグリフィスに話しかける。
副官としてではなく、機動六課時代からの友人としての言葉だ。

『馬鹿なこと、考えていないよね?』

「僕はもう、十分に馬鹿なことをしてきたよ」

一方的に通信を切り、グリフィスは眼鏡のズレを直して背もたれにもたれかかった。

「あなたと僕と、馬鹿だったのはどっちでしょうね・・・・・・提督」





グリフィスとの通信を終えたスカリエッティは、ウーノが淹れてくれた一口啜ると、中断していた作業を再開した。
現在、彼が行っているのはフェイト・ナンバーズの改良である。
苦心の末に肉体の完璧な複製には成功したものの、記憶や感情の移植技術はまだ完成には程遠い。
この問題を解決しなければ、プロジェクト「F.A.T.E」の真の完成には成りえないのだ。

「お茶のお代わりをお持ちしました」

「ああ、ありがとう、ウーノ」

「彼の好意を受けるのですか?」

「それくらいのハンデはいるんじゃないかな。平穏は喜ばしいが、変化がないのは退屈だ。
獅子身中の虫がどこまで楽しませてくれるのか、楽しみだよ」

「余り羽目を外し過ぎぬよう、お気をつけてください」

「わかっているさ」

微笑を返し、スカリエッティは新たに注がれたお茶の香りを嗅ぐ。

86:UNDERDOGS 第十五話④
09/01/29 02:49:26 CXz+6DS6
「ドクター。質問をよろしいでしょうか?」

「何だい?」

「フェイトお嬢様のクローン・・・・・・・・あれに用いられている技術を使えば、私やドクターの複製を作ることも可能でしょうか?」

「ああ、もちろんだとも。ただし、肉体だけだがね」

記憶の移植そのものは可能だが、それによって生み出されるのは同じ記憶と体を持った別の人物だ。
心まではオリジナルを再現できないので、プロジェクトFの到達点である死者の蘇生には成りえない。
もっとも、生命操作技術の完成のみを求めているスカリエッティにとってはそれだけでも十分であり、
自分が志半ばで倒れた時のために現存しているナンバーズには自身のクローンの受精卵を仕込んである。
彼にとって重要なのはジェイル・スカリエッティという存在が存続し続けることであり、
今の自分が消えようと死のうと何ら未練はないのである。

「心の再現とは難しいね。記憶と結びついていることは過去の研究から明らかなのだが、
どんなに調べてみてもそのシステムを解明できないんだ。これは、アプローチを変えるしかないかもしれないね」

そう言って、スカリエッティは仮想ディスプレイを展開して先ほどから観察していたものをウーノに見せる。
それは、頭蓋を切開されて脳を剥き出しにされた少女であった。驚くことに、その少女はまだ生きていた。
瞼はうっすらと開いており、定期的に流される電流に苦悶の声を漏らしている。できるだけ人間の形を保っていた方が
精密なデータを検出することができるというのが、スカリエッティの言い分であり、実験体となった少女の脳神経を駆け回る
電気信号は直に埋め込まれたコードを通じて余すことなく機械に記録されている。
他にも、輪切りにされたまま活かされている脳や、極細の神経細胞まで解剖された脳など、数多くの実験体から
得ることのできた情報がディスプレイに表示されている。

「とりあえず、新しいサンプルで実験を再開するつもりだ。ウーノ、またしばらくは1人にしてくれるかい?」

「わかりました。何かご用がありましたら、お呼びください」

一礼し、ウーノはスカリエッティの研究室を後にする。
歩き始めた時は普段と変わらぬ無表情のままだった。
最初の角を曲がったところで、テロリスト達になぶり殺しにされるスカリエッティの姿が思い浮かんで顔に曇りが現われた。
自分が出産したドクターのクローンが、愛する彼とは別人になっているといるかもしれないことが不安だった。
生まれたクローンと過ごす内に、自分が愛したジェイル・スカリエッティという存在が記憶の中から消えてしまうことに恐怖した。
そして、唯一無二だと思っているこの思いが消えてしまうことが耐えられなかった。
戻るつもりだった管制室を素通りし、ウーノは自室へと駆け込んでベッドに飛び込んだ。
枕に頭を埋め、目から零れる冷たい雫に気づくまいと己を誤魔化す。
こんな不条理があって良いのだろうか。
彼を思って尽くすことが、結果的に彼の存在をこの世から消してしまうことに繋がるなんて。
このお腹の中で眠っている受精卵は、決して自分が愛した男になることはない。
同じ顔と記憶と知識を持ちながらも、別の心を持った別の存在へと成長し、彼が抱き続けた夢を継承するのだ。
それが、最初から自分のものであったかのように。

「ドクター・・・・・・・」

ウーノの悲嘆に呼応するように、記憶回路が誤作動を起こして過去の記録が走馬灯のように脳裏を過ぎる。
稼働に成功し、初めてドクターと出会った瞬間。彼にかけられた言葉は今でもハッキリと思い出せる。
マニュアル通りに淹れた紅茶を、美味しいと飲んでくれた時。それが何故か嬉しくて、今度はもっと美味しい紅茶を淹れたいと思った。
2番、3番と妹達が稼働していき、家族が増えてきたこと。その日から、姉として彼女達の模範となれるよう自分を戒めていった。
こちらのミスでドクターの実験が失敗に終わった時。ドクターは自分を責めずに優しく励ましてくれた。
寝食も忘れて実験に没頭し、疲れ果てて眠っていたドクター。毛布をかけた時、寝言で自分の名前を呼んでくれた。
他にもたくさんの記録が滝のように流れていく。これが、思い出というものなのだろうか。

87:UNDERDOGS 第十五話⑤
09/01/29 02:50:15 CXz+6DS6
『私はジェイル・スカリエッティ、君の父にして主だ。うん、君のIDかい? 生憎、そんなものは決めていなくてね。
だが、呼び名がないというのは少しばかり不憫かもしれないな・・・・・・・・そうだね、ウーノ〈1番〉と呼ぼう。
栄えあるスカリエッティ製戦闘機人の第1号たる君の名は、ウーノ』

『紅茶を淹れてくれたのかい? うん、良い香りだ。君はいつもパーフェクトだね、ウーノ』

『これが君の妹となるドゥーエとトーレ。ウーノ、君も今日からお姉さんだ。彼女達に色々と教えてやってくれないかい』

『悲観することはない。実験は失敗したが、そこから得られたものもまた多い。
今回の実験で得られたことは、このやり方では望む結果が得られないと実証できたことだ』

『・・・・・・ウーノ、君は・・・・・パーフェクトだ・・・・・』

たくさんの思い出が自分の中にはある。
そのどれもが取るに足らない出来事かもしれないが、自分にとってはかけがえのない記憶だ。
そして、やがて生まれてくるであろう新たなジェイル・スカリエッティは、記憶の中にいるドクターとは別人なのだ。
その子の誕生は、同時に彼の消滅を意味しているのだ。

(嫌です、ドクター・・・・・・・・あなたが消えてしまうなんて、私には耐えられない。
あなたとの繋がりがなければ、私は生きていけない。けれど、私は戦闘機人。ナンバーズ№1ウーノ。
意思など持たず、ジェイル・スカリエッティという男に尽くすだけの存在。この思いは、間違いなのでしょうか。
それとも・・・・・・・・・・・・)

問いかけに答えなどなかった。
いったい、自分はどうすれば良いのか。
今の幸せを守るためにはどうすれば良いのか。
どうすれば、ドクターを生かすことができるのか。
答えの出ぬまま、ウーノは静かに泣き続けた。





襲撃を受けた基地は、酷い有様だった。
外壁は粉々に撃ち砕かれ、周囲一帯は焼け野原と化している。
廃坑を利用して造られた基地のため、内部では落盤が起きているようであり、
生存者がいたとしても生き埋めになっている可能性が高かった。

「3年前は、あたし達が同じことをしたんだよね」

崩れた基地を見上げて、セインは心苦しそうに呟いた。
3年前に地上本部を襲撃した時は人命を尊重したため、ここまで酷い破壊は加えなかったが、
やろうと思えばそれだけの力が自分達にはあった。そして、それがどれほどの悲しみを生み出すのかを、
当時の自分はまるで理解していなかったのだ。被害を受ける側にならねば暴力の恐怖を知ることができないのが、
セインにはとても辛かった。

「セイン、どこだい? 杖を落としてしまったんだ。悪いけど、取ってもらえるかな?」

「あ、ごめんなさい」

近くに転がっていた杖を広い、手探りで地面を探していたヴェロッサに手渡す。
そして、大柄のヴェロッサを難儀しながらも立ち上がらせると、自分が側にいることを教えるために彼の手を握り締めた。

88:UNDERDOGS 第十五話⑥
09/01/29 02:50:53 CXz+6DS6
「すまない・・・・ありがとう」

「ううん、気にしないで。それより、生存者は見つかった?」

「いや、まだだ」

ヴェロッサは現在、使役できる猟犬の大半を生存者の捜索と周辺の警戒に回している。
そのため、衰えた彼の五感の代わりを担う猟犬がいないのである。

「歯痒いね。こんな体じゃ、まともに動き回ることもできない。
君がいてくれなければ、クロノ君達の手助けもできないなんて」

「・・・・・・あたしがここにいるのは、償いだから」

3年前、セインはシャッハ・ヌエラという女性騎士と戦って敗れ、捕縛された。
そして、ヴェロッサに捕らえられたウーノとともに連行されそうになったのだが、
外に連れ出される寸前でラボの自爆装置が作動し、落盤から自分達を庇ってシャッハは死亡、
ヴェロッサも突き飛ばされた自分を守ろうとして落下した瓦礫に両足を潰され、頭部を強打したことで五感のほとんどを失ってしまった。
無論、そのドサクサに紛れて逃走するつもりだったのだが、苦しげに呻くヴェロッサの声と落盤の下から流れ出る赤い血が、
セインをその場に止まらせた。
理由はわからないが、このまま立ち去ってはならないと思ったのだ。
結果、ウーノは逃走に成功し、ヴェロッサを仲間のもとへと運んだセインは捕縛されて機動六課預かりとなった。
その後、スカリエッティに下って強硬路線を取り始めた管理局にクロノ提督が反旗を翻し、
セインもオットーやディードと共に戦列に加わった。だが、セインは2人のように自由を求めている訳ではない。
彼女が戦う理由は自分達を庇って死んだシャッハへの償いであり、彼女の代わりに五感を失ったヴェロッサを守ることである。
だから、前線には出ずに諜報員としてヴェロッサと行動を共にしているのだ。

「あたしがさ、ロッサの目と耳になるよ。それがあたしにできる、償いだから」

「セイン・・・・・・・・うん? 猟犬が何かを見つけたみたいだ」

「本当?」

「少し奥まったところだ・・・・・・・ダメだ、魔力が切れた」

「捕まって。ISディープダイバー!」

ヴェロッサの体を抱き締め、セインは崩れた基地の壁をすり抜けて暗闇の通路へと着地する。
動力が停止しているため、内部は数センチ先も見えない暗闇だったが、戦闘機人であるセインと
視覚を猟犬に頼っているヴェロッサには苦にならなかった。2人は寄り添い合うように通路を進み、
猟犬が知らせてくれた場所へと向かう。すると、程なく通路の脇に倒れている人物を発見した。

「・・・・・・・・誰だ?」

「生きている!? ロッサ、生きているよ」

「・・・・・その声、セインとかいう戦闘機人・・・・・」

「ラッド・カルタスだね。こっちはヴェロッサ・アコース。他に生存者はいる?」

「この娘だけだ。頼む、治療を・・・」

辛そうに身を捩り、カルタスは左手で覆い隠していた人形サイズの少女を平らな地面に寝かす。
リインフォースⅡだ。重傷を負っているのか、騎士甲冑が真っ赤に染まっている。

89:UNDERDOGS 第十五話⑦
09/01/29 02:51:43 CXz+6DS6
「僕が治療しよう」

「ロッサ、こっちだよ」

セインに誘導され、ヴェロッサはリインに手をかざして魔力を注ぎ込む。
デバイスである彼女には通常の回復魔法が利かないため、魔力を流し込んで元々備わっている自動修復機能を
促進させる以外に治療を施すことができない。だが、この傷の深さではこの程度の修復は気休めにしかならないため、
すぐにでも設備の整った場所で専門知識を持ったデバイスマイスターに診てもらわねばならない。
それでも幾らかマシになったのか、リインはゆっくりと瞼を開いてこちらを見上げてきた。

「アコース査察官・・・・・それに、セイン・・・・・・・・」

「喋らないで。もう少し、修復に専念するんだ」

「リイン・・・・みんなを守れなかったです。シグナムも、アギトも・・・・・」

「シグナム・・・・・そうだ、シグナムは? 彼女は無事なのかい? セイン、彼女を探してくれ。僕の大切な友人なんだ」

見えぬ目をセインに向け、ヴェロッサは懇願する。しかし、セインは動こうとしなかった。
いや、動けなかったのだ。何故なら、彼女の視線の先には血塗れとなって地面に突き刺さっているレヴァンティンがあったからだ。

「そんな・・・・・あの人が・・・・・」

「セイン? どうしたんだい、セイン? 早くシグナムを・・・・・」

「ロッサ、騎士シグナムはもういない」

担い手を失った魔剣が全てを物語っていた。ヴォルケンリッターが将。
誰よりも苛烈で誇りに生きた彼女は仲間を守るために戦い続け、この場所で果てたのだ。

「俺が駆けつけた時には、手遅れでした。彼女はもう・・・・・」

「リイン、守れなかったです。はやてちゃんの時のように、また守れなかったです」

リインの目尻から、涙の粒が零れる。3年前、彼女は主である八神はやてと共にゆりかごへ突入し、
力及ばずに敗北した。はやてはリインの目の前でガジェット達に八つ裂きにされ、
リインは捕らえられて過酷な実験を課せられ続けてきた。その時の悔しさと悲しみを思い出しているのだ。

「君のせいじゃない。何もできなかった、僕達の責任だ」

「それでも、守れなかったのはリインの力不足です。アギトだって、一生懸命戦っていたのに、
ロードがいなかったリインは何もできませんでした」

震える手で、リインはずっと握り締めていた小さな腕輪を持ち上げた。
それに見覚えがあったセインが小さな声で嗚咽する。リインが掲げた赤い腕輪は、
アギトが普段から身に付けていたものだからだ。

「アギトの欠片・・・・・これだけしか見つからなかったです。体は、もうどこにもなくて・・・・・・」

「・・・・・・・もう、良いよ。今は眠るんだ」

「ごめんなさい・・・・・アギト・・・・・・シグナ・・・」

最後まで言葉は続かず、リインは力尽きて静かに寝息を立てる。
肉体が安定したと判断すると、ヴェロッサは魔力を注ぐのを止めてカルタスに向き直った。

90:UNDERDOGS 第十五話⑧
09/01/29 02:52:41 CXz+6DS6
「よく、彼女を守ってくれたね」

「止してください。俺がもっと早く駆けつけていれば、シグナム二尉は死なずに済んだかもしれないのに」

「それでも、大切な友人を君は守ってくれた。礼を言わせて欲しい」

「・・・・・・・・・そこの角に、まだ五体満足な奴がいるんです」

「生存者かい?」

「あたしが見てくる」

「大丈夫かい、セイン?」

「動いていた方が、まだマシだから」

知人の死にセインも相当堪えているようだが、それでも心配かけまいと平静を装っているようだ。
本当は声を張り上げて泣き喚きたいのを必死で堪えているのが声音から読み取れる。
場違いながらも、ヴェロッサは彼女が人間として成長していっていることが嬉しかった。
まだ出会ったばかりの頃のセインは無邪気なだけで倫理観に乏しく、死がどういうものなのか、
傷つくことがどういうことなのか理解していなかったのだ。そこから躓きながらも少しずつ学んでいき、
感受性を育んでいったのである。そして、自分1人ならば、きっと悲しみに耐えられずに慟哭していたであろう。
すぐ隣で共に悲しんでくれる人がいることが、ヴェロッサにとって救いであった。

「あれ・・・・・この人・・・・・」

「セイン?」

「ロッサ、この人って・・・・・・・」

「・・・・・まさか、カルタス君!?」

「・・・・騎士シグナムが、命がけで遺してくれた希望の1つです」

苦しげに呻きながら、カルタスは立ち上がった。
彼自身も相当のケガを負っており、傷口からはケーブルや基盤が顔を覗かせている。
足取りも覚束なく、気持ちだけが急いているのか何度も転びそうになった。

「カルタス君、そんな体でどこに!?」

「スバルを追いかけないと・・・・・・彼女は、マリアージュを追っていきました。
きっと、今頃は街に・・・・・ぐああぁぁぁぁぁっ!!!」

突如、カルタスは右腕を押さえて塞ぎこんだ。
慌てて駆け寄ったセインが、彼の顔を覗き込んで絶句する。
土気色に染まったカルタスの額からは、夥しい量の脂汗が流れていた。
戦闘機人の体を以てしても耐えられぬ激痛に、彼は苛まれているのだ。
だが、それでもカルタスは出口に向かって歩もうとする。右腕を庇うように左手で押さえ、
何度も瓦礫で躓きそうになりながら、暗闇の通路を歩いて行く。
いったい、何が彼をここまで駆り立てているのだろうか。
彼の悲壮な決意は、いったい誰に向けられたものなのだろうか。


91:UNDERDOGS 第十五話⑨
09/01/29 02:53:36 CXz+6DS6
「ぐうぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「カルタス!?」

「触るなぁっ!!」

セインを振り払い、その反動でカルタスは尻餅をつく。
気が狂いそうな痛みで、脳が焼けてしまいそうだった。視界は明滅していて焦点も定まらず、
右腕の中で虫が這いずり回るようなおぞましい感覚が少しずつ強くなっていっている。
骨が折れたわけでも火傷をしたわけでもない。未知の痛みにカルタスは声を抑えることができなかった。

(この痛みはいったい・・・・・腕が、千切れそうだ・・・・腕? どうして、右腕が・・・・・俺の腕は、
あの時・・・・・ガジェットに・・・・ああ・あ・・・・・あああぁぁっ!!!)

激痛に耐えられず、カルタスは前のめりに倒れて瓦礫の山へと顔を突っ込んだ。
セインが慌てて抱え起こすが、朦朧とした意識は遠のいていくばかりだ。
そして、気絶する寸前に彼が見たのは、あるはずのない褐色に染まった右腕であった。





路地裏に逃げ込んだ最後の1人を破壊したところで、スバルは力尽きてその場に倒れ込んだ。
ISの連発と過度の魔力行使で全身が悲鳴を上げていた。特に右腕はフレームにまでダメージが
入っているようで、しばらくはISの使用を控えねばならない。
とはいえ、単独行動を取っていた頃はもっと酷い状況に陥ったこともあった。
五体満足で動ける分だけまだマシと考え、スバルは右腕に簡易治癒魔法を施して立ち上がろうとする。
だが、思いに反して体は動いてくれなかった。いつもは軽々と持ち上げているマッハキャリバーが
いつになく重い。両腕にも力が入らず、視界も段々と霞みつつあった。

(やば・・・・・無理し過ぎた・・・・・・)

せめてどこかに隠れなければと考えたが、周囲に隠れられそうな場所はなかった。
自分はお尋ね者だ。このままここで気を失ってしまえば、遠からず誰かに見つかって管理局に通報されてしまう。

(イクスのところに・・・・・戻らないと・・・・・・)

眠りに付いたイクスは、途中で見つけた洞窟の中に横たわらせている。
全てのマリアージュを破壊した後で、あの娘が好きだった空と海が見える場所に埋葬するつもりだったからだ。
だが、こんな状態ではとても彼女のもとに戻れそうにない。
悔しさを噛み締めながら、スバルは声を押し殺して涙した。
その時、すぐ側で地面を踏み締める音が聞こえた。

「お前は・・・・・・」

男の声だ。
何者なのだろうか。
問い返そうと頭を上げるが、霞んだ目では相手の顔がよく見えなかった。
そして、言葉を紡ぐ前にスバルは力尽き、気を失った。





夢を見ていた。
たくさんの人が死んでいく夢だ。
最愛の姉が、父が、恩師が、大切な仲間が、かけがえのない親友が、目の前で次々に死んでいった。
みんな、助けられたかもしれない人達だ。もっと自分がうまくやれていれば、救えたかもしれない命だ。
誰かの力になりたいと願いながらも、自分はとうとう誰も救えなかった。

92:UNDERDOGS 第十五話⑩
09/01/29 02:54:33 CXz+6DS6
『なら、どうしてまだ戦おうとするの?』

どこからともなく声が聞こえる。聞き覚えがあるようにも思えたが、確信は持てなかった。
ただ、この声の主に敵意がないことだけは漠然と感じ取ることができた。

『そんなに辛い目にあって、それでも戦おうとするのはどうして?』

「約束したから・・・・・・どんなに辛くても、生きるって。あたしにとって、生きるってことは誰かを助けることだから。
だから、戦うんだ。それに、苦しい思いをしている人を放っておくなんて、できないよ。自分の力じゃどうしようもできない不条理は、凄く怖いんだ」

『8年前のあなたが、そうだったように?』

靄がかかったかのように不鮮明だった景色が一変し、グレンの炎に包まれた瓦礫の世界が現れる。
スバルにとっては忘れることのできない、忌まわしき場所。全ての始まりとも言える、あの白い魔導師と出会った8年前の空港火災の現場。
そして、8年前と同じく女神像の前で塞ぎ込んでいる幼い頃の自分が、ジッとこちらを見上げていた。

『8年前、“あたし”はここにいた』

「寂しくて怖くて、逃げ出したいけど足が竦んで。あの人が来てくれなかったら、きっとあたしはここで終わっていた」

『だから、戦うの? 何もできなかった自分を助けるために。そんなことをしても、時が戻ることはないのに』

「そうだね。きっとあたしは、助けた人達に昔の自分を重ねて、あの人になろうとしていたんだ。けれど・・・・・」

あの人に抱かれて飛んだ夜空を思い出す。満天の星空には炎も煙も届かなかった。
何もないけれど、どこまでも広がる空が心地よくて。ともすれば広い世界に1人で取り残されてしまったかのような寂しさを
包み込んでくれるあの人の温もりが暖かくて。自分もいつか、あの人みたいな大人になれたら良いなと思ったのだ。
それが幻想で終わると気づくのに、そう長い時間はかからなかったが。

「あたしはあたしにしかなれない。あの人みたいに飛べないし、救えない。弱かった頃のあたしを救うなんて、できないんだ。
だって、それはここにいるあたし自身なんだから。だからこの手を伸ばすのは、あたしにじゃなくて別の誰か。
この手で救える命を救うために。泣いている誰か、大切な何かを守れる自分になるために。変わるために・・・・・」

決意を込めた瞳で女神像を見上げる。支柱が傷ついた女神像は自重で傾き、今にも崩れてしまいそうだ。
その中心に向けて、鋼を纏った拳を向ける。

(戦闘機人モード、オン。IS振動破砕、アクティブ)

傾く女神像に向けて拳を打ち込み、振動エネルギーを流し込む。それは女神像だけでなく、
支柱を通じてこの世界全体にまで浸透し、記憶に刻まれた真っ赤な炎にまで亀裂を走らせる。

「誰かを守れる自分になるんだ。この手で救える命があるのなら。だから、あたしに力を貸して欲しい。
あたしとお前で、あの人とは違う、あたし達のやり方で」

世界が砕け散る中、スバルの言葉を聞いて幼い少女が手を差し出す。過去から現在へ、共に未来を歩くために。
そして、立ち上がった少女の口から、聞き慣れた電子音声が紡がれた。

『その通りです、相棒。私はあなたと共に走るために生み出された』

「一緒に往こう、マッハキャリバー!」

かつての自分の手を掴み、スバルは亀裂の向こうへ、現実の世界へと飛び立っていく。

93:UNDERDOGS 第十五話⑪
09/01/29 02:55:25 CXz+6DS6
『非礼をお詫びします、相棒。あなたの夢は、決して独り善がりな自己満足ではありません。
何故なら、その夢は私の夢でもあるからです。あなたと共に走ることが。あなたと共に誰かを救うことが。
その夢は、私とあなたで築き上げた、この世界で唯一無二の想いです。この私が保証します』

「謝るのはこっちだよ。辛いことが多すぎて、心が挫けかけていた。この夢は、あたしをこのまま眠らせないために
お前が見せてくれたものなんだね?」

『約束しましたから。あなたが誰かのために走れる日が来るまで、私があなたをレスキューすると。
この身はあなたの体を外敵から守り、言葉はあなたの心を絶望から掬います。あなたの言葉を、
私とあなたの夢を嘘にしないために。折れそうになった時は、何度でも私が支えます。
どこまでもあなたと共にいます』

「そうだ、お前がいたんだ。いつだって、どんな時だって、お前はあたしの側にいてくれた。
あんまりにも距離が近すぎて、それを忘れていた。あたしはまだ、1人じゃないんだ。
ううん、いつだって、1人で戦っていたわけじゃないんだ。マッハキャリバーが、ずっと側にいてくれたんだ」

意識が覚醒していくに従い、手を取った彼女の姿も薄れていく。
消えてしまう前に言いたかった。
ずっと一緒に戦い続けてくれている鋼の相棒に。
だが、その言葉を告げるよりも早く、白い光が世界を満たしていった。





目が覚めた場所は、路地裏ではなく見知らぬ部屋だった。
殺風景な室内は最低限の調度品しか置かれておらず、掃除も余りしていないのか少し埃っぽい。
そういえば、気を失う前に誰かが近くにいた気がする。ここは、その人物の家なのだろうか。

「そうだ、マッハキャリバー!?」

慌てて起き上がり、肌身離さず身に付けていた相棒の行方を探す。すると、すぐ横の卓の上に布かれた
柔らかそうなハンカチの上に鎮座しているマッハキャリバーの姿が目に入った。
手に取ってみると、こちらに反応するように表面を青く光らせる。自己修復は完了しているのか、
どこにも異常は見られなかった。
相棒の無事に安堵し、スバルは夢で言えなかった言葉を告げる。

「ありがとう、相棒」

《No problem,Buddy》

マッハキャリバーの言葉に笑みを返し、スバルは改めて状況を再確認する。
マリアージュを倒して力尽きた自分は、何者かに保護されてこの部屋に運ばれた。
ご丁寧に傷の手当てもされていて、汚れた服の代わりに清潔なシャツが着せられている。
念のために体を隅々まで調べてみたが、暴行の形跡はなし。脱がされた服もマッハキャリバーの横に綺麗に畳まれていた。
少なくとも、今のところ自分をここに運んだ人物に敵意や害意はないようだ。

94:UNDERDOGS 第十五話⑫
09/01/29 02:56:00 CXz+6DS6
「さすがに、罠ってことはないよね」

「まあ、ここまで手の込んだ罠ってのも面白いかもしれないな」

何気なく呟いたその言葉に、低い男の声が被さる。
反射的にスバルはベッドから飛び降り、部屋に入って来た男を睨みつけた。
男は無手だったが、脇に提げられたホルスターには実弾デバイスが収められている。
いつでも抜けるように留め金は外されており、スバルは警戒するように手の中のマッハキャリバーを握り締める。
この距離では魔法よりも銃の方が早い。男の抜き打ちにもよるが、ほぼ間違いなくBJを展開するよりも早く銃弾が叩き込まれるだろう。

「あんた、いったい・・・・・・」

「ま、一応は正義の味方ってとこか。なあ、犯罪者さん」

窓から差し込んだ月明かりに照らされ、男の顔が露になる。

「久しぶりだな、ナカジマ」

「ヴォルツ・・・・司令・・・・・」

見覚えのある傷だらけの顔に、スバルは言葉を失った。
彼の名はヴォルツ・スターン。
数ヶ月前、マリンガーデン火災において共に肩を並べて救助活動を行った、災害救助隊の司令であった。


                                                        to be continued


95:B・A
09/01/29 02:56:44 CXz+6DS6
以上です。
思った以上にかさ張ってしまい、敵襲まで書けませんでした。
本当はこの後○○○○○が現れてピンチな○○○をスバルが助けようとして○○○と・・・・・・・。
終わりが見えているのにまだ遠い。

96:名無しさん@ピンキー
09/01/29 08:59:22 Dfb/aO8r
GJ!!
スバルが正気に戻れて良かった…
真に強い魔道師とデバイスとの対話は最高です
そしてヴォルツと再開したにもかかわらずこの状態
今までしてきた事を考えれば和解するのは難しいか


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