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「あれー不二家、何かいいにおいする?」
「そう、かな?さっきチョコ食べたから、その匂いじゃないかな?」
クラスメートから声をかけられた都は、曖昧に微笑んでみせた。
控えめで可愛らしい彼女の笑顔は、甘い匂いとともに、とろけるような色気を感じさせた。
男子生徒は慌ててその顔から目を逸らす。強烈に反応しかかった股間がどうか彼女に気がつかれて
いませんようにと願いながら。
「うふふ、チョコさんの匂いが残っちゃったかな…?」
少し自分の制服の匂いを嗅いでみた都は、うっとり笑った。
非常食と称していつも入れている鞄の中の小さなチョコ袋から「君は良い匂いがするよ、愛する人」と
甘いバリトンが聞こえたが、その声は教室の他の誰にも気がつかれることはなかった。
「みやこー、ポッキーいるー?」
「あっいるいる、一本ちょうだい」
友人から差し出されたチョコポッキーから「愛してるよ」と声が聞こえた。
都は微笑みながら「私も」と答え、パクリとくわえた。
「何か言った?」
「ううん」
口の中に広がる甘さに恍惚となりながら、都は何気なく答えた。
チョコレートに愛される。なんて甘美なのだろう。