【なんでもあり】人外と人間でハァハァするスレ2at EROPARO
【なんでもあり】人外と人間でハァハァするスレ2 - 暇つぶし2ch650:名無しさん@ピンキー
09/02/11 23:29:28 avbwg8RL
>>652
溶けて再度固まるとチョコの脂だけが白く残っちゃうんだよね。
普通に食べられるけど風味は落ちる。

美味しく食べられるうちに食べて欲しいんだ!と迫るチョコレート生命体…

651:名無しさん@ピンキー
09/02/11 23:38:12 TrPb/rKq
「食べちゃったらもうあなたと話せない」

とチョコレートを目の前にしてさめざめと泣く女の子。

愛しているから食べてもらいたいチョコレート生命体。
食後の喪失感を考えると食べられない女の子。

さぁ どっちを選ぶ!

652:名無しさん@ピンキー
09/02/11 23:45:36 n+nOCwsy

「俺はお前の中で生き続けるんだ…っ」

これで一本書けるな。

653:名無しさん@ピンキー
09/02/11 23:59:41 YgkVD6dU
脳の性欲と食欲を司る部分は同じだとか
食事シーンをねっちょりエロ演出したときの威力は計り知れない
人間×食べ物しか見たことなかったけど
食べ物×人間もいいな…

654:名無しさん@ピンキー
09/02/12 00:11:46 4Mh8V0BU
>>651
黒光りするモノを見せつけ
「さあ、遠慮は要らない食べてくれ!君のためなら消えてもいいんだ!好きなんだ!さあさあ!」
「むぐっ…うむぅっ!(うあああ喉の奥にまで入ってきたあ……甘くておいしいけど絵的にやばいよう…)」
「ああ…あったかいよ…キミの口の中…とろけそうだ…… うッ!」
ですねわかります

ねっとりと表面を舐め回して味わった後、女の子の体温で溶けるチョコを潤滑にレッツいけないこと。
これならチョコ生命体を殺さず女の子の一生分のチョコを賄えるな!

655:名無しさん@ピンキー
09/02/12 00:30:20 zoUrdcCo
>>656に激しく同意
>>589で食欲=性欲のネタに期待できるかとワクテカ!
159さん。変な奴のことは気にしないでいいからまた投下してくれ!

656:名無しさん@ピンキー
09/02/12 00:30:54 zoUrdcCo
656じゃないよ657だよテラハズカシス

657:名無しさん@ピンキー
09/02/12 01:59:48 hrs9+J91
シャイな職人だったら、あんまり話題に出すと来にくくなるかもしれないよ。
荒らしがいることに触れるのも控えようよ。

チョコ欲しいな・・・茜たんでもバッタ彼女たんでも姫乃さんでもいいからチョコくれよ。
マノンたんのチョコもほしい・・・。
おっぱいチョコでもいいからほしい。
チョコレートでできた彼女とかマジほしい。

658:903 ◆AN26.8FkH6
09/02/12 02:20:38 b9ni67V4
>>661
男のチョコですまないが、良かったらどうぞ。
チョコ生命体で萌えたので板チョコ置いときますね

659:甘い恋人1
09/02/12 02:21:30 b9ni67V4
ドアを開けたら、部屋の真ん中に人間サイズの板チョコレートが立っていた。
何を言っているのかわからないと思うが、都もわからなかった。
部活で疲れた頭が幻覚を見たのかもしれないと思って目をこすってみたが、その幻覚は消えなかった。
板チョコは、「やあおかえり」と甘いバリトンで出迎えてくれた。
都の手からドサリと鞄とスポーツバッグが落ちた。

「疲れてるんだ私……」
「それはいけない、甘いものでもどうかな」

板チョコが、ベッドによろよろと腰掛けた都の顔を覗き込んだ。
カカオの甘い匂いがする。
シュールだ。非常にシュールだ。
成人男性ほどもある2m弱の板チョコレートである。銀紙に包まった上から、紙のパッケージが巻いてあり、
茶色いパッケージには優美なフォントでBitter chocolateと銀の箔押しがされている。
パッケージデザインだけを見ると、都が愛しているメーカーの板チョコレートによく似ていたが、
パッケージのどこにもメーカー名は見当たらない。

「あの……どなたですか」

都は恐る恐る聞いてみた。もしかしたら、これは何かの壮大な冗談なのかもしれない。
クローゼットの中からドッキリのプラカードが出てくるとか。隠しカメラがついていて、
誰かがどこかでこんな彼女の様子をみて笑っているとか。

「名乗るほどのものでもない。ただのビターチョコレートだよ」

板チョコは優しく囁いた。

「えっと、普通ただのチョコレートは」
「ビターチョコレート」
「ビターチョコレートはしゃべらないと思うんですが何でですか」

この状況に流されまい、何か言わねばなるまいと、都は一生懸命に聞いた。聞いたのだが

「何故といわれても……愛?」

質問に疑問系で返ってきた。質問には質問で返すなと教わらなかったのかこのカカオマスが。

「意味がわかんないです……」

少し脱力気味に都は頭を落とした。もしかして何か脳の病気にかかっていたらどうしようという
怖い考えが浮かんできて、慌てて頭をふる。

660:甘い恋人2
09/02/12 02:22:02 b9ni67V4

「愛っていうのは多分、いつも愛してくれている君への愛なんだと思う」

確かに都はチョコが大好きだった。愛していると言ってもよかった。
太る、にきびができるなどの乙女にとっての一大事理由から、一週間に板チョコは三枚までと
固く制限はしていたが、都は板チョコが大好きだった。この少々酸味のある苦さと絶妙な甘さ、
歯に当てた時のパリっとした感触、喉を通っていく濃厚なチョコレート味。
糖分を摂取するときに脳が恋愛時のような幸福感を感じるというが、それならば都がいつも感じるのは
恋の甘さなのかもしれなかった。
まさしくスイートエクスタシー。祝福しろ、天国にはチョコレートが必要なのだ。
だからと言って、部屋に巨大なチョコの幻覚が現れることへの説明にはならないのだが。
でも、そんな都だからその台詞には少しときめいてしまったのだ。
漫画や映画の中でしかお目にかかれない大仰な台詞も、じかに耳障りの良い甘い声で
愛して止まないカカオマスと砂糖、ココアとバター、粉乳で出来た甘い被造物の愛の告白は心地よく
都の硬直していた脳を溶かし、酩酊させていくようだった。

「チョコさんは私の事好き?」
「そうみたいだ。ほら、胸がドキドキしてたまらない」

都がそっと手を伸ばすと、チョコレートのパッケージの上からでもドキドキという鼓動が伝わって
くるような気がした。

「私も、チョコさんの事大好き」

うっとりと少女が囁くと、ハラリと紙のパッケージが外れて落ちた。
銀色の包み紙が端からビリリと慎ましやかに破れ、茶色く滑らかなカカオマスの四角い角が艶かしく
顔を出した。
板チョコはまるでゴム板のようになめらかに身体を曲げると、チョコレートの露出した上部を
ベッドに座っていた都の顔に近づけてきた。
先ほどと比べ物にならないほどの濃厚な甘いチョコレートの香りがただよってくる。
都はそっと目を閉じた。男性経験などなかったが、それでもこれがどんな意味を持つのか、
これからどんなことが起こるのか、少女には理解できた。
部屋の中に巨大板チョコがいた時の衝撃などとうに吹っ飛んでしまった。
板チョコレートとキスをするというシチュエーションにもはや何の疑問も抱けなかった。
ああ、キスされちゃう。
ドキドキと胸が痛いほどに高鳴った。
これがきっと、恋なんだ。少し震え、制服のスカートを握り締める少女の唇に、少し固い感触が触った。
固さはすぐに柔らかくなり、柔らかく甘い感触は都の唇の中にねっとりと忍び込んできた。
甘い。
これがキスの味……。
濃厚な甘さがあとからあとから口の中を蹂躙し、咥内を満たして喉の奥まで流れてくる。
ぬるいホットチョコレートを飲んでいるような気分だった。
体の中の中までチョコレートでいっぱいになって、体中がチョコレートになってしまうようだ。
脚の間が熱い。甘いチョコの匂いに、頭が痺れる。
銀紙が、都の身体をそっと包んできた。
気がつくと、都は左手でブラウスの下からその控えめだが形の良いやや小ぶりの乳房を愛撫し、
右手をスカートの中に入れ、下着の上から濡れそぼった秘所を何度も撫で回していた。

「体の中、全部チョコレートになっちゃう……こんなの…だめぇ……」

舌ッたらずな甘い声が少女の唇からこぼれた。
上部が溶けかけた板チョコレートは、嬉しそうに都の耳元で甘く囁きながら、ゆっくりと覆いかぶさってきた。

「君に食べられてしまいたい…。どうか全部食べてくれないか、君の中に入りたいんだ」
「来てぇ…チョコさん来てぇ…二人で一緒になろぉ…?」

ふとももに絡みつく銀紙がスカートを捲り上げてくる。
都はうっとりと目を閉じた。

661:甘い恋人3
09/02/12 02:22:44 b9ni67V4



「あれー不二家、何かいいにおいする?」
「そう、かな?さっきチョコ食べたから、その匂いじゃないかな?」

クラスメートから声をかけられた都は、曖昧に微笑んでみせた。
控えめで可愛らしい彼女の笑顔は、甘い匂いとともに、とろけるような色気を感じさせた。
男子生徒は慌ててその顔から目を逸らす。強烈に反応しかかった股間がどうか彼女に気がつかれて
いませんようにと願いながら。

「うふふ、チョコさんの匂いが残っちゃったかな…?」

少し自分の制服の匂いを嗅いでみた都は、うっとり笑った。
非常食と称していつも入れている鞄の中の小さなチョコ袋から「君は良い匂いがするよ、愛する人」と
甘いバリトンが聞こえたが、その声は教室の他の誰にも気がつかれることはなかった。

「みやこー、ポッキーいるー?」
「あっいるいる、一本ちょうだい」

友人から差し出されたチョコポッキーから「愛してるよ」と声が聞こえた。
都は微笑みながら「私も」と答え、パクリとくわえた。

「何か言った?」
「ううん」

口の中に広がる甘さに恍惚となりながら、都は何気なく答えた。
チョコレートに愛される。なんて甘美なのだろう。

662:甘い恋人
09/02/12 02:24:18 b9ni67V4
終わり!小ネタすいませんでした。

性欲と食欲が直結してるのは非常にエロいですね!

663:名無しさん@ピンキー
09/02/12 02:26:01 hrs9+J91
なんてシュールなんだ!!
だがGJ!
チョコレ・・・ビターチョコレートのくせにかっこいいじゃないか畜生!

664:名無しさん@ピンキー
09/02/12 02:53:03 PU5ddBQY
女臭くてウザー
サイトでやれよ

665:名無しさん@ピンキー
09/02/12 02:57:06 OIzbPAyi
>>666
GJ!

666:名無しさん@ピンキー
09/02/12 03:05:23 1xmRYhzQ
GJ!
ちょっと板チョコ買いに行ってくる

667:名無しさん@ピンキー
09/02/12 09:41:13 gDrxriNe
>>666
GJ!
ビターチョコ氏は渋くてかっこいいな。
板チョコ見るたびに思い出しちまうwww


668:名無しさん@ピンキー
09/02/12 10:17:53 csKXY4Me
すごいな、まさになんでもあり。
チョコ男ってwww

669:名無しさん@ピンキー
09/02/12 11:50:10 hrs9+J91
亀レスだが>>633-634に同意
旧作にコメつけられたら面白いと思う
スレでいきなり旧作の感想書いたら
雑談の流れきっちゃったりすることになりそうだし

670:名無しさん@ピンキー
09/02/12 11:50:52 S/3SFsG0
バカ過ぎるwwwwもっとやれwww

671:名無しさん@ピンキー
09/02/12 12:39:25 zoUrdcCo
さて容量が400を越えたわけだが。
そろそろ次スレのこと考えないか?
注意書き必須
薔薇はイタチ
このへんをテンプレに入れたらどうかと思う

672:名無しさん@ピンキー
09/02/12 15:35:24 hrs9+J91
あー、もう容量そんな行ってたか
今回スレの進行早いな・・・超マイナージャンルなのに・・・
俺も一個提案
職人はトリップだけじゃなくてコテハンつけたらどう?
投稿のレス番がかぶることも多くなってくる頃じゃない?
1-111みたいなのでも一応職人判別できるけど数字じゃ紛らわしい気がする
トリップと話だけで「あの職人かー」って分かる古参住民だけじゃないだろうし
コテついてると分かりやすんじゃないかな

673:名無しさん@ピンキー
09/02/12 16:24:23 S/3SFsG0
コテトリは書く人任せでいいよ

674:名無しさん@ピンキー
09/02/12 17:57:32 detGzHaw
真性キチの粘着荒し一匹はスルーって入れとかないか?

675:保管庫
09/02/12 20:23:32 pd+MDM+p
>>673
了解です。
時間のあるときに過去作品に随時コメント機能を付けていきますね。

676:名無しさん@ピンキー
09/02/12 21:13:56 5tPvezQF
テンプレいじってみた

【なんでも】人外と人間でハァハァするスレ【あり】3

ここは異種族と人間の恋愛でハァハァするスレです。
モンスターでも異星人でも動物でも植物でも無機物でも!
とにかく人外と人間でハァハァ萌え萌えエロエロしようぜ!
でも、変態紳士淑女の集まるスレなので、
空気があれそうなレスには徹底スルー。sage推奨ですよ奥さん

保管庫
URLリンク(www26.atwiki.jp)
絵板
URLリンク(www2.atpaint.jp)
前スレ:【なんでも】人外と人間でハァハァするスレ【あり】2
スレリンク(eroparo板)

あと適当に関連スレ張っとくかんじでいいかな?


677:名無しさん@ピンキー
09/02/12 21:30:19 mV9oBydW
>>675の言うように『注意書き必須』はテンプレに入れた方が良いと思うよ
数字は板違い、もか

678:名無しさん@ピンキー
09/02/12 22:05:38 hrs9+J91
【なんでも】人外と人間でハァハァするスレ3【あり】

ここは異種族と人間の恋愛でハァハァするスレです。
モンスターでも異星人でも動物でも植物でも無機物でも!
とにかく人外と人間でハァハァ萌え萌えエロエロしようぜ!
でも変態紳士淑女の集うスレなのでジェントリズムを心がけよう。
投下前には注意書きを忘れずに。
荒れそうなレスは徹底スルー。
人外萌えに定義も貴賎もなし!…でも数字ネタは数字板でね。

保管庫
URLリンク(www26.atwiki.jp)
絵板
URLリンク(www2.atpaint.jp)
前スレ:【なんでも】人外と人間でハァハァするスレ【あり】2
スレリンク(eroparo板)

いじってみたが、どうだろうか。

679:名無しさん@ピンキー
09/02/12 22:24:15 GFucdKP+
ここ恋愛前提のスレではないよな?一行目おかしくね?

>>1にプラスして
《利用上の注意》
・sage推奨、荒らしはスルー
・801は801板へ
・SS投下の際には種族や傾向等の注意書きを

とでもしとけばいんじゃねーか
個人的にテンプレは簡潔な方が見易い

680:名無しさん@ピンキー
09/02/12 22:31:44 zoUrdcCo
うん
エロ前提のスレだからな

681:名無しさん@ピンキー
09/02/12 22:33:20 zoUrdcCo
途中送信してしまった

・次スレは>>970もしくは容量が480を越えたときに

もつけ加えてはどうか

682:名無しさん@ピンキー
09/02/12 23:42:08 S/3SFsG0
>>683
シンプルな方がいいってのに同意
>>685
すぐに埋まるとも限らんしスレ立てまでテンプレ入れなくてもいいんじゃない。かなり長いこと埋まらず並立してるのはよく見る。


683:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 00:53:58 8i55BlZa
こんなスレがあったのかとか思いつつ俺が通りますよ……。

魔獣に男が(性的な意味で)襲われちゃう作品を投下します。
先ず読むにあたっての諸注意を。

・ちと長いです。なので前半と後半に分かれます。
・エロスは後半です。薄着でお待ちください。
・なんだか少し設定っぽい所があるので注意です。
・それとやや厨ニ病気味です、其処は生暖かく見守ってください。

上記から、見たくないと思われた方は精神安定上、コテをNGにする事をお勧めします。
では、次のレスから投下開始。

684:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 00:55:18 8i55BlZa
ぱちり……

夜闇を照らす焚き火の炎の中から、木が爆ぜる音が周囲に響く。
俺は何も言わず、串に刺して火に炙ったハムをひと齧り。
そしてする事もなく、夜闇に揺らめく炎を漫然と眺める。
さっきから聞こえる音とすれば、焚き火の木が燃える音と虫の鳴き音、
そして、さっきから吹付ける風によってゆれる葉擦れの音だけ。

――やはり、一人での野宿は何処か物悲しい物がある。
これが話相手の一人でもいれば、もう少しは気が紛れるのであろうが、
いまさら無い物ねだりしても仕方が無い。

俺はラムザ、ラムザ=アーズグレイ、
傭兵の真似事をしたり、宝捜し屋(トレジャーハンター)の真似事したりしつつ諸国を旅する。
―いわゆる冒険者と呼ばれる職業をしている。

ごく普通の冒険とは無縁な、いわゆる一般人達から見れば、
冒険者と言うのは夢とロマンに満ちた職業―の様に聞こえるのだろうが、
その実際はと言うと、つまらないいざこざに巻き込まれたり、挙句に怒り狂ったドラゴンに追い掛け回されたり、
その苦労の割に依頼料が少なかったり、その腹いせに攻撃呪文で森を吹き飛ばしたら村の人達に怒られたり、
……とまあ、大方のイメージと違って冒険者と言うのはかなり大変だったりする。

言っておくが、これは只の一例だぞー……本当だって。

んで、そんな冒険者をしている俺が、なんでこんな何も無い場所で野宿しているんだ?というと。
何てことは無い、ちょいとばかし不幸な偶然が重なった結果である。

こうなったのも全ては空気の読めない野盗達が悪いのだ!
……なにも街道の分かれ道の前で襲い掛かって来るか?

で、その野盗達の「へっへっへ、命が惜しかったら素直に金目の物よこしな」等と
お決まりのセリフを言う様が余りにもウザかったので、有無を言わさず攻撃呪文で吹き飛ばしたのだが……、

まあ、まさか野盗と一緒に道標まで吹き飛んでいるとは思ってもいなかった訳で……加減って本当に大切ですね?
俺の後を通りかかる人達、本気でごめんなさい。

んで、道標がなくなってどっちに行こうかと迷った挙句、適当にこっちだろうと進んで見たら大チョンボ。
進めど進めど森ばかりで着く筈であろう街は全く見えず、気が付いたら見事なまでに山の中。
其処でようやく自分の間違いに気付き、元の道に戻ろうとした時には既に日も沈んで周囲は真っ暗闇。
一応、照明の魔法はある事にはあるのだが、うっそうと木々が茂る夜の森を進むにはやはり心もとない。
で、今、危険を承知で暗闇の中を引き返すべきか、それか1夜を明かして明るくなってから引き返すべきかと悩んだ挙句。
暗闇の中を闇雲に進んで更に迷ってしまっては余計に面倒だ、と言う結論に至り、仕方無しに野宿を決めた訳で……。
あー、こうなる事だったらあの野盗連中をもう少しいびり倒しておくべきだった!

誰だ、殆ど自業自得じゃないのかって言った奴!
……その通りだよ、ほっといてくれ。


685:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 00:56:23 8i55BlZa

ぱちり……がしゃぁ……

思い出したかの様に―炎の中で木が爆ぜ、その拍子に燃えている焚き木が崩れ落ちる。

何時までもこうして焚き火を眺めていても仕方ない。
いい加減、とっとと寝てしまおうか……。

そう思いつつ、追加の焚き木を足し、ハムの最後のひとかけらを口にいれようとした矢先。
――不意に虫の鳴き声が止んだ。

「…………」

俺はハムを食おうとしていた手を止め、何言う事なく傍らに置いてある鞘に収まった剣へ手を掛ける。
そう、剣士でもあり魔道士でもあり、数多もの修羅場を潜り抜けて来た冒険者である俺のカンが告げていた。
―何かが、こちらを見ている、と。

周囲に意識を巡らせてみると、
案の定、俺の背後から少し離れた方の茂みに、こちらを伺う誰かの気配を感じた。

……やれやれ、先程吹き飛ばした野盗達が早速復讐に来たのか?
それとも、炙ったハムの香ばしい匂いに惹かれて飢えた獣が来たのか?
まあ、どっちにしろ、この誰かさんがこちらに危害を加えるつもりならば、俺がやる事はたった一つ。

 徹 底 的 に ぶ ち の め す !

んじゃ、やる事も決まった事だし、取り敢えずだんまり決めこむよりも声でも掛けて見るか。

「何時までコソコソ隠れているつもりだ?……言っとくが、俺はコソコソしている奴は大っ嫌いなんだ。
そう言う奴は大体が弱虫だからな」

気配の方に目線を向ける事なく、隠れている誰かさんに向け、わざとらしい声で「弱虫」の所を強調して挑発する。
もし、この気配の主が先程の野盗であれば、まんまとこの挑発に乗って姿を現す筈だ。
そうなればこっちのもの、さっさと攻撃呪文で叩きのめせばENDだ。
それで万が一、矢を放ってきたとしても、それに対する方法は幾らでも持っている。
つまり、隠れている誰かさんはこちらに気付かれた時点で、大ポカを踏んだも同然なのだ。

まあ……これが野盗ではなくて只の通りすがりの兎さんだった場合、
兎に挑発する様がただひたすら間抜けにしか見えないのだが……。

―しかし、それは俺の杞憂だった様だ。
挑発に乗ったのか、それとも別の理由で動いたか、
直ぐにがさりと茂みを揺らして誰かさんが動きを見せた。


686:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 00:57:49 8i55BlZa

「あ……すみません。別にコソコソするつもりはなかったのです」

俺に向けて掛かった声は、予想に反して意外にも可愛らしい女の声だった。
ありゃ?……これはちょっと拍子抜け。

これが男のだみ声だったのであれば、問答無用で攻撃魔法の一つでも叩きこんでいた所だったが、
まさか気配の主が女だったとは思ってもなかった。

いやいや、ひょっとすると野盗達の仲間に女がいる場合だってある。
女の声に油断して、鼻の下を伸ばして気を抜いた途端に槍でグサリ! では笑い話にもならない。
ま、兎に角、相手が何であれ警戒はしておくに越した事はないだろう。

鞘に収めたままの剣を片手に警戒を緩めぬまま、俺は気配の方に顔を向け、口を開く。

「俺に何か用か?……用があるんだったら姿を見せてくれると有り難いんだが……?」

俺の、警戒を混じらせた声での問い掛けから、やや間を置いて

「す、姿を見せてと言われても……その、多分……私の姿を見たら驚いちゃうと思いますよ?
あの……それでも良いんですか? 本っ当に私を見たら驚きますよ?」

そう言って誰かさんは姿を見せないまま。

はい?……何を意味の分からない事を……。
気配の方へ向ける眼差しが、次第に怪訝な物に変わって行くのが俺自身でも分かった。

ひょっとして、この誰かさんはとてつもなく奇抜なファッションでもしているのだろうか?
例えば無意味に露出度の高い服にトゲ付きのショルダーガード、しかも髑髏のネックレスを首に掛けているとか?

―って、流石にそれは無いか。
もし、この世にそんな格好している奴がいたのだったらその場で指差して爆笑してやるよ、うん
……と、そんなくだらない事はさて置き。

「俺が驚くも驚かないも、お前さんが姿を見せてから決める、
それでも姿を見せるのが嫌だったら、とっととどっか行ってくれ。
俺はなんだかんだ言って何時までも姿を見せない相手にかまってやれるほど、心が広くないんでね」

そう、誰かさんに向けて言い放つと、俺はぷいとそっぽを向く。
そっぽを向いたのは『これ以上、言い訳を聞くつもりは無い』との、
隠れている誰かさんへ向けた無言の意思表示である。


687:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 00:59:01 8i55BlZa

「う~……分かりました。けど、本当に驚かないでくださいね?」

と、渋々とした感じが混じった言葉と共に、ガサガサと茂みを揺らして気配の主が姿を現す。
振り返り、その姿を見て―俺は息を飲んだ。

確かに、声の主は女性だった。見た目は十代中頃くらいか、
ややカールがかった肩くらいの長さの赤毛、くりくりとした大きな瞳、
どちらかと言えば元気の良さそうな少女と言った所。
見た感じスタイルも良く、身体の流れるようなラインと張りの有る大きな乳房、
健康的な小麦色の肌等は中々魅力的であり、
人通りの多い街中を歩けばナンパ男の2~3人は声を掛けてくるであろう魅力が有る、
……ただし、その体躯が普通の大人よりも二周り以上も大きい上に、
下半身が獣の物で無ければ、の話ではあるが。

――そいつは、人間ではなかった。ましてや亜人ですらもなかった。
”彼女”のその上半身は裸で、群青色の瞳は猫の様に縦長な瞳孔をしており、
更に引き締まった腹部から先の下半身は獅子の物であり、
その猫科特有のラインを描く下半身の全体は赤みがかった獣毛に覆われていた。
見れば、両腕もひじから先が下半身と同じ色の獣毛に覆われ、
人間の物に近い形の掌のやや太目な見た目の指の先に、僅かであるが湾曲した鋭い爪が見えている。
それだけでは無い、背には1対の黒い蝙蝠の翼が生え、更に尾は鋭い針を有する蠍の尾であり、
尾の先端の針が焚き火の明かりの照り返しを受け、ギラリと輝きを放っていた。

「マンティコア、か……?」

最初のパッと見た目、俺は”彼女”はスフィンクスの一種かと思ったが、
焚き火の明かりに照らし出されたその特徴から見て、”彼女”はどちらかと言えばマンティコアの方が近いと判断した。

――マンティコア――
山奥の森林や人気の無い古城などに住む、人語を介するキマイラやスフィンクスに似た魔獣の一種。
赤毛の獅子の身体(または下半身)、背の蝙蝠の様な翼、そして鋭い毒針を有する蠍の物に似た尻尾に、
三列の鋭い歯を有する人間の老人のような頭(または上半身)と言われている、中々ユカイな姿をした魔獣で。
かつてはテリトリーに迷い込んだ人間を骨も残さず食らう魔獣として恐れられて来た。
だが、実際の所、彼等が人間を襲って食っていると言う目撃例が全くと言って良いくらいにない上に、
「人間? ああ、そりゃもう死にそうな位まで腹へってたら食うかもしれない?」との、
マンティコア達自身からの弁もあって、現在では図鑑に肉食と記されているだけになっていたりする。

……とは言え、彼等が人間にとっては脅威的存在で有る事には変わりは無く、
三列の鋭い牙による噛みつき&毒針による高い攻撃性と獣特有の素早い動きに加え、、
そしてある程度の魔力耐性を持った丈夫な毛皮に高い知能を併せ持った彼等は、
普通の腕前程度しか持っていない冒険者にとっては充分に恐るべき敵と言え、
毎年、迂闊に彼等のテリトリーへ踏みこんだ冒険者や商人が襲われ大怪我を負った、なんて話は何度も耳にする。

まあ、自慢ではないが高い剣の技量と確かな魔道の腕前を持ち合わせる俺にとっては。
マンティコアなんぞダース単位で現れようとも恐れるものではないし。
それにちゃんと怒らせない様に会話すれば、知能の高い彼らはちゃんと話も聞いてくれる上、
時には普通では知る事の出来ない面白い話も聞けたりもする。

……それにしても、マンティコアの人間部分は大体―いや、殆どが皺だらけの老人なのが普通なのだが。
こいつの場合はまったく正反対で、うら若き女性の上半身である。

俺の個人的な検分だが、目の前にいる”彼女”はマンティコアの突然変異、もしくは亜種なのだろうか?


688:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 01:01:25 8i55BlZa

「なるほど、こりゃお前さんの言う通り、慣れてない奴だったら間違い無く驚いている所だったな」
「……あれ?……あの、驚かないんですか……?」

驚くことなく納得の呟きを漏らす俺に
”彼女”は群青の瞳の瞳孔を細めて心底意外そうな表情を浮べる。

「まあな、これでも俺は結構色々な経験してるもんでな、少々の事では驚かんよ」
「はぁぁ~、それはそれは……貴方って子供の割に凄いんですね」

むかっ!

「……をい」
「え?あ、あれ?私、何か悪い事言いました?」

子供呼ばわりされた事にやや険悪な物を混じらせた声を上げる俺に、
”彼女”は俺が何故怒っているかが理解できず、おろおろとうろたえる。

「……言っておくが、俺はこれでも酒も煙草も嗜める歳だ。子供呼ばわりしないでくれ」
「え、ええっ!? で、でも、貴方は身体も小さいし子供っぽい顔付きだし、何処から如何見ても……」
「…………」
「ああっ、ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ!」

険悪さの度合いが増した俺の視線に、ようやく自分の間違いに気付き、慌てて謝りたおす”彼女”。

……ったく、俺が一番気にしている事を2度も言いやがって!
どうせ俺は身長も低いし童顔だし何処から如何見てもアソコの毛も生えていないようなガキに見えるよ! どちくしょう!
これがもし、あからさまな悪意を込めて言っているのであれば、即、その場で張り倒している所である。

だがしかし、どうやら”彼女”はいわゆる天然、と呼ばれる類みたいで、
人を怒らせてしまう様な事を、悪気もなくつい自然に言ってしまうクチ、と言った所なのだろう。
……こう言うタイプと話していると自然と胃が痛くなる……。

と、何時までもくだらない掛け合いをしている場合じゃなくて、

「お前さんが俺を子供扱いした事に付いての追求は後にしておくとしてだ。…一体、俺に何の用だ?
どうもお前さんの態度からして、テリトリーに入った人間を追い払いに来たって訳じゃあ無さそうだが……?」
「あ、そうでした!うっかり忘れる所でした!」

……をいをい……大事な事をうっかり忘れそうになるなよ……。

「あの、私の名前はエルミナーデって言います。
もし呼びにくいと思いましたらエルミィって呼んでも良いです」

と、俺の前に来た”彼女”ことエルミィが自己紹介をする。
ちょこんとおすわりをしてぺこりと頭を下げる様子がなんだかラブリー。

「……俺はラムザ、ラムザ=アースグレイだ」

自己紹介された以上、俺も取り敢えず自己紹介を返す。
ただ、初対面の相手に舐められぬ様に低い声で淡々と、と言った感じで。
これは初対面の人間に対する交渉や会話の際の何時も行う、
相手に舐められない為のお決まりのテクニックの一つである。


689:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 01:02:52 8i55BlZa

「えっと……あの、ラムザさんは冒険者なんですよね?……」
「……ああ……そうだな」

おずおずと話し始めたエルミィに対して、俺は適当に相槌を打ちつつ、
串に残ったハムを齧り、ハムの無くなった木串を焚き火の中へ放りこむ。

まあ、確かに今の俺の姿は丈夫で尚且つ動きやすい服装の上に
装甲竜(アーマー・ドラゴン)の鱗を加工した胸甲冑(ブレストプレート)を付け
更に腰の左右には、旅に必要な道具や路銀をいれる為の皮製のウエストポ-チを付けている等
何処から如何見ても、その格好は旅の傭兵か冒険者の風貌である。
無論、見た目が如何見ても12、13位にしか見えないとか、その割に目つきが鋭いとか言う事は抜きにして、だが。

しかし、その冒険者の俺に何の用なのだろうか………?

「それなら、私をラムザさんの仲間にしてください! お願いします!!」

 ぶ っ ! !

余りにも予想外かつ唐突な頼みに、俺は思わず飲み込もうとしていたハムを全て噴き出してしまった。
……ああ、勿体無い……。

「ちょ、ちょっと突然噴き出さないでくださいよ……もう……」
「……え、えっと……仲間にしてくれってーのは、いったい如何言う事だ?」

身体に付いたハムの欠片を
獣毛に覆われた手(彼女の場合、前足と言うのだろうか?)で払いつつ抗議の声を上げる彼女に
俺は唐突に沸いた頭痛と眩暈を抑える様に指先をこめかみに当てながら、やや引きつり気味な声で聞く。

「え?……言ったままの意味ですよ?」
「…………」

しれっと答える彼女に、俺は只々、絶句するしかなかった

今まで、俺は旅の中で、子守りのアルバイトをやっているコボルトの話や、
とある街で野菜のたたき売りをしているオーガの話は聞いた事はあった。
だが『冒険者の仲間にしてくれ』と言い出すマンティコア、と言うのは流石に初めてである。

普通、野に住まう魔獣幻獣の類と言うのは
その性質上もあってか、余り人間と余り関わり合いになりたくないらしく、人里に降りる事は殆ど無いと言って良い。
そりゃ大きな都市に行けば、稀に魔獣の類に出会う事もあるが、そう言うのは大体が行商目的で訪れた者が殆どであり、
わざわざ進んで人間社会に溶け込もうとする者なんぞ一部の例外を除いて皆無と言って久しい、のだが……、
どうも今、俺の目の前にいる彼女は、その一部の例外と言ったところのようで。
はてさて、こやつは何の目的があって冒険者になりたいと言い出すのだろうか……?


690:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 01:05:08 8i55BlZa

「私、この普通とは違う身体の所為で同族から好かれてないんですよ……」
「…………」

そう、俺が聞いても居ないのに声に悲しげな混じらせて話し始める彼女。
……なんだか話し方に少々演技っぽい物を感じるが、その突っ込みの言葉を敢えて喉で抑え、黙って聞く。

人間であれ魔物であれ、どの世界においても普通とは毛色が異なる物は一様につま弾きにされる傾向にある。
恐らく、彼女は普通とは違う容姿の所為で仲間内からつま弾きにされたしまったクチ、と言った所だろう。
……世の中というものは如何も世知辛い物である。

「それで、私は仲間に好かれようと色々と努力しました
好物である肉を持ってきてご近所さんの家に置いたり、歌をうたって見たり色々したんです」
「ああ……それでどうなったんだ?」
「けど、如何言う訳か余計に仲間から嫌われちゃって………
まあ、偶々、肉を置いた家に住んでいるご近所さんの帰りが遅くなって、
帰ってきた頃には肉が異臭を放つようになったり、私の歌を聞いた仲間が一様に微妙な表情を浮べてたりしましたが。
……流石にこれは違いますよね?」

いや、じゅーぶんなまでにそれが原因だと思います。
腐った肉を家の前に置かれたり、聞きたくも無い下手糞な歌を聴かされたり……んな事されて嫌わない方がおかしい。
……やっぱ、こいつは紛れもなく天然の様だ。

「結局、村八分の形に居た堪れなくなった私はマンティコアの集落から出て行かざるえませんでした」

あったんだ、そんな集落……世の中は広い。

「そして、この山での生活を始めてから、私は思いました、
今は私の事を良く見てくれない皆に何時かは私の凄さを認めてもらおうと!
そして、何時かは皆に憧れられる存在になりたいと!」
「……ああ、そうか」

なんだか声に熱の篭り始めたエルミィに、やや疲れた調子で返す俺。

「そんなある日、この山に訪れたとある人が話してくれた話から、私は冒険者と言う人達の存在を知りました。
その人から聞いた話によると、彼等冒険者は世界各地を回って様々な偉業を打ち建てている、と!」

……誰だ、そんな無責任な話をした奴。

さっきも説明したと思うが、冒険者と言うのは大概は郵便配達の真似事をしたり、
遺跡の盗掘の真似事をしたり、はたまた野良ゴブリンや野良コボルトなどの弱小モンスターをいびったりと、
英雄譚で聞くような輝かしい活躍とはかなり縁遠い事をやっているのが殆どで。
ましてや、エルミィの言うような偉大な功績を打ち立てた冒険者と言うのは、
7つの海を航海し、独力で新大陸を発見したエモード=シャイコフ
生涯で133の遺跡を発掘し、古代文明の全容を解明したマーズ=レイノス
全ての生物を記した図鑑を書くと言う目的を掲げ、生物図鑑の基礎を築き上げたエミール=N=ラインハルト
世界最高峰の山、ガルガット山を制覇したのを皮切りに世界の山々を制覇していったベルモンド=バーグレー
今も生きる伝説、打ち立てた功績は100を越えると言われるレグナス=フェノルード
等など、それこそ伝説級の冒険者と言うのは今まで五本の指で数えるほどしか存在していない。

……当然、その五本の指の万倍以上の冒険者が、名を残す事も出来ずに歴史の影に消えていっている訳で。
恐らく、その話をした奴は、ほんのヨタ話のつもりで彼女へ話をしたのだろうが……。


691:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 01:08:12 8i55BlZa

「私、そう言う人たちの様になりたいんです!
少なくとも、皆の心に残るような凄い冒険者に!」

肉球のある右手をぐっと突き上げ、熱く語る彼女をよそに、俺は内心呆れ果てていた。

―そう、良く居るのだ、何処か誰かさんの作り話、またはヨタ話を真に受けて、
『よーし!俺も(私も)冒険者になって一旗上げるぞ!』と身の程も知らずに息巻く人が。
まあ、こいつの場合、人では無く魔獣であるが。……と、それはさて置き。

おおむね、そう言う人達は意気揚揚と故郷を飛び出して、思いつくまま無理無茶無策無謀を繰り返し、
大概はその無理が祟った挙句、そのまま何処かの村の無縁仏の一員となってしまったり。
例え運良く生き残ったとしても、叶わぬ自分の理想と、思う以上に厳しい現実とのギャップに苦しんだ挙句、
腐った木の枝が自らの重みで折れるように挫折して、尻尾巻いて故郷へ逃げ帰るか何処かの村に住み付くかして、
いきなりパン屋を始めたり、ひっそりと畑を耕し始めたり等して余生を送る事が多い。
……まあ、これは一種の一過性の性質の悪い流行り病の様な物、と考えれば良い。

恐らく、エルミィは自分を追い出した仲間に対して
『私を追い出したあいつらに私の凄さを認めさせてやりたい!』とかなんとか考えて冒険者になろうと思ったのだろう。

……傍目から見れば本気でどーでも良い事なのだが。
実際に巻き込まれる側にとっては正直言って堪った物ではない。
どーやら、それに巻き込まれてしまったのかと考えた俺は、心の中で小さく溜息をついた。

「しかし、私一人だけでは人間の皆さんと仲良くなれるかどうか不安です。
恐らく、私一人だけでは宿屋に泊まることすら難しいと思います。
其処で、腕の良い冒険者の人と一緒に旅をする事で、人間の皆さんと接する機会を作り、
そのついでに私の名を広めようと思ったのです!」

まあ、確かに、それは自分一人で無理無茶無策無謀を繰り返すよりかは良い考えだとは思う。
……だが、重要な事が所々抜けまくっている。

自分自身が気付かぬ内に相手を怒らせてしまう様な性格では、冒険もクソもあったもんではない。
これでは三日も持たずに同行者と大喧嘩して終了、となるのがセキの山だ。
と言うか、先ずはその事ある毎にたぷたぷ揺れる胸を隠せ。青少年にとっては目の毒だ。


692:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 01:11:54 8i55BlZa

「私が見た所、ラムザさんはとっても凄い冒険者だと思います。
ですから―その、私をラムザさんの冒険に一緒に連れて行ってくれませんか?」

そういって、彼女が人間が土下座する様に身体を伏せて上目遣いで俺の顔を見ながら頼みこむ。
俺は胸の前に腕を組んで、うんうんと頷くと、ゆっくりと彼女の顔を見据え、

「悪いが、断わる」

と、きっぱりと言い放った。

「――え?………」

その一言が暫く理解出来なかったのか、エルミィは少しの間だけぽかんとした表情を浮べた後、

「そ、そんなぁ!な、何でですかっ!?
ラムザさんに迷惑なんてかけたりしませんし、荷物だって持ちますし、戦いの時は手伝ったりもしますし、
そ、それに私の肉球も触り放題なんですよ!それなのに何で断わるんですか!?」

少しだけ涙目になって俺に食って掛かる。

……ちょっとだけ、そう、ホンのちょっとだけ『肉球触り放題』の言葉に心動かされそうなったが、
何とかそれを堪え、俺は腕を組んだまま彼女をじっと見据えて諭す様に言う。

「何でってな………お前さんはとにかく世の中の事を知らなさすぎる。
この世の中、お前さんが思っている以上に悪党と呼ばれる類の連中は多いんだ。
平気で他人を騙す奴もいる、他人の事を何とも思わない奴もいる、暴力で物事を済ませる奴もいる、
俺は旅をしている中、そんなあくどい連中をイヤと言う程見て来た。
そしてそう言う連中に酷い目に遭わされた冒険者も、同じくイヤと言う程にな。
冒険者が夢とロマンに満ち溢れている職業の様に聞こえるけど、現実は伝承歌(サーガ)や英雄譚ほど甘くはないんだ。
悪い事は言わん。冒険者になるのは諦めて、素直に人里離れた山に移り住んでしまった方が身の為だ。
現実の厳しさに絶望して、身も心も傷ついて人間嫌いになってしまう前に、な?」
「……う…うぅっ……」

俺の説教に、エルミィは項垂れてしょぼくれる。
ちと厳しい様であるが、これくらい言わないと彼女は分からないだろう。

「な、なら、私にだって考えがありますよ!
わ、私を連れて行かないと言うなら、ラムザさんを襲っちゃいますよ!ガオーって!」

だが、エルミィは思いのほか諦めが悪いらしく、
最期の手段とばかりに爪を出した両手を振り上げて、襲いかかる仕草をする。
しかし、その可愛らしい声と若干腰が引き気味な態度の所為か、如何もサマになっていない……。
これでは一般市民程度をビビらせる事は出来ても、俺の様に場馴れした冒険者を脅すなんて到底無理だろう。
だが、まあ……そーくるならちょいと脅かすか。


693:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 01:13:07 8i55BlZa

「――やってみろよ」
「………え?」
「襲ってみろって言ってるんだ、だが、その代わり――」

予想外の返事に戸惑う彼女へ冷たい視線を投掛けつつ、俺はすっくと立ちあがり。
手に持っている長剣(ロングソード)を鞘から引き抜くと、傍の人の胴体ほどの太さの立ち木の前に立ち。
そのまま軽く気合を込めて一閃、更に返す刃で2度3度、圧倒的な迅さで剣を振るった後、剣を収める。

ギ……ズズン……

―刹那。振るわれた剣の軌跡に合わせて、木に割線が刻み込まれ
そこから輪切りとなった木は、まるで子供に突き崩された積み木の様にバラバラになって地に倒れる。
その間も無く、俺は小さく呪文を詠唱し。

「―砕け!”破空弾”(エア・ブリット)」

ず ど ば ん っ!

掌から放たれた不可視の矢が輪切りとなって倒れた木の輪切りの一つに突き刺さり、
其処を中心として耳をつんざく音を立てると共に輪切りが砕け散り、木片を撒き散らす。

俺の使った『破空弾(エア・ブリット)』は風の属性の攻撃魔法として良く使われている物で
高圧で圧縮された空気の矢、または弾を放ち、命中した対象に破壊的な衝撃波を撒き散らす術である。
術者の腕前や素養、状態の差によって威力や射程が多少は異なるが、当ればごらんの通り。
ヤワな防具を着た人間程度なら一撃で致命傷を与える威力を持つ。
無論、マンティコアだろうとも、当て所によっては充分に倒す事の出来る威力である。

「……と、お前さんの頭がこの木と同じ事になるだけだ」
「…………」

剣を鞘に収めつつ半ばから砕けた木片を指差し、俺は彼女に向けて冷たく言い放つ。
それを目の当たりにしたエルミィは、ポカンと口を半開きにしてあっけにとられていた。

まあ、呆然とするのも当然だろう、目の前で太目の木をあっさりとなます切りにした上で
攻撃魔法で粉々に打ち砕くパフォーマンスを見せ付けられたのであれば、普通は呆然としてしまう。
おまけに、脅しとは言え、ついさっき自分が襲うと言った相手がこれを軽くやって見せたのだ。
その驚きは想像に難く無い。

「ま、俺はこれくらいの腕は持っているんでな、
降りかかる火の粉は自分で振り払えるし、旅の仲間なんて必要ないんだよ」
「で、でも………」
「くどい、2度も同じ事を言わせるな。良いからさっさと冒険者になるのは諦めて山奥に引っ込んでろ!」
「………あう………」
「分かったらさっさと行った!俺は気が短いんだ!
とっとと行かないと、その場で三枚に下ろして毛皮のバックにしちまうぞ!」
「う……分かり、ました………」

何度か粘るエルミィであったが、結局俺の頑なな態度に無駄と悟ったらしく
頭も尻尾もがっくりと項垂れさせ、しょぼくれた様子でその場を立ち去っていった。

――やれやれ、ちと厳しく言い過ぎたような気もするが、これも仕方の無い事だと思おう。
あ……そういや俺を子供扱いした事に対する追求がまだだったかな……?
ま、いいか。今更呼び止めるほどの事じゃないし……多少むかついたけど……。

「さて、今夜は妙なお客さんが来たけど、気にせずここで寝るとするか……」

彼女の気配が完全に感じ取れなくなるまで待った後
夜空に浮かぶ三日月を見上げ、俺はポツリと呟くと虫除けの香を焚き、焚き火に薪をくべると、
その場に横になり、そのまま程よい眠気に意識を預けるのであった……。

694:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 01:14:04 8i55BlZa
前半は以上です。

エロスありの後半は明日辺りに投下できればなと。

695:名無しさん@ピンキー
09/02/13 01:24:36 WritWaOz
やばいwktkがとまらない・・・・
後半待ってます、GJ

696:名無しさん@ピンキー
09/02/13 01:38:54 GyHB+sv7
wktkwktk

697:名無しさん@ピンキー
09/02/13 06:53:37 xZ2Xr4Sk
エルミィかわいいよエルミィ

698:名無しさん@ピンキー
09/02/13 09:44:40 gUdzDA06
楽しみにしてるよ

699:名無しさん@ピンキー
09/02/13 15:13:02 Kfg0zAep
>>702=ビターチョコレート

700:名無しさん@ピンキー
09/02/13 17:40:39 Kfg0zAep
揉めてる原因の2作品を読んでみたが、これは……ww
なんか厨設定まんまなのと、設定すらなさげなシチュものかw
後発のはキャラも立ってないしとりあえずシチュを書いてみたかっただけちゃうんかとww
これが職人ねえ…へえー…職人なんだ…
まあ注意書き段階でとっととNGしてた俺が正しかったってわけだw

701:名無しさん@ピンキー
09/02/13 17:41:08 Kfg0zAep
やべ
ごめん愚痴スレと間違えた

702:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 18:02:04 8i55BlZa
前編を投下した後でスレチと言われるかと思ってたけど、好評を頂けた様で何よりな俺が通りますよ。
そう言う訳で、これから後編を投下します。
前編の時にも書きましたが、読むに当たって諸注意を。

・やっぱり長いです、容量が足りなくなるかもしれません。
・ずばり逆レイプです。作者が好きだから仕方がありません。
・設定っぽいのは相変わらずです。
・やや厨ニ病気味です。

くどい様ですけど、見たくない場合はコテをNGにして置くと精神安定上オススメです。
では、次レスより投下。

703:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 18:04:43 8i55BlZa
「うひょー! どれもこれも美味そうで選り取りみどりじゃないか!」

目の前のテーブルに広がるのは豪華な料理の数々。
ロミール湾産の大手長海老のフライ、フェルビ鳥の丸焼き、フォノゴロ鍋に金貨鯛の生け作り!
おまけにカルガヤ茸のソテーに黄金蛍烏賊の踊り食い! 更に追い討ちのフェルベ牛のサーロインステーキ!

それらが俺の前で、芳醇な香りと美味そうな輝きを持って、私を食べてくれと俺を誘惑している!
もうどれもこれも本当に美味そうで、見ているだけで口の中が涎で一杯になってしまう。

「いっただきまーす!」

無論、俺は迷う事無く誘惑に乗り、フォークとナイフを手に料理達へ挑もうと……

  ど す ん ! !

「――ぐぇっ!?」

こ……これは一体何事っ!?
折角、大手長海老のフライにかぶり付く寸前の良い所だったのに!
いきなりのボディプレスで叩き起こしてくれた空気の読めない馬鹿者は誰だっ!! しかもかなり重いし!

と、心の中で怒りに逸らせつつ俺が目を開けると――

「――エ、エルミィ、か?」

月明かりに照らし出され、夜闇に爛々と目を輝かせるエルミィの顔が其処にあった。
恐らく。上空から寝ている俺に向けて急襲を掛けたのだろうか。その接近に全く気付けなかった。
……クソッ、油断した!

「……………」
「一体、何の真似だ?……俺に頼みを断わられた腹いせに食うつもりか?
先に言っとくが、俺の腹の中はかなりどす黒い! だから俺なんて喰ったら腹壊すぞ?」

両腕で俺の身体を抑え付けながら、何も言わず俺を見下ろす彼女に向けて
俺は精一杯の強がりを言うのだが――正直言って、この状況がかなりやばい事は確かだった。

今や俺は、彼女の巨躯によって完全に身体を押さえつけられ、
抵抗や逃亡する事はおろか振り払う事すら出来ず、殆ど身動きが取れない。
おまけにさっきのボディプレスの衝撃の所為で、
傍に置いてあった剣が如何やっても手の届かない位置まで弾き飛ばされてしまっている。
恐らく今から攻撃呪文を詠唱した所で、直ぐに口を抑えつけられてしまう事だろう。
無論、言葉巧みに彼女を騙して体の上から退いてもらう、と言うのも無理だ、
ついさっき、無下に追い払った相手が、素直に俺の言葉を聞くかどうか甚だ疑問だからだ。
……完全に八方塞がり……もはや覚悟を決めるしか他が無い。

嗚呼、ラムザ=アーズグレイ、魔獣に喰われて死す、か。
やれやれ、死に方としては余り上等とは言えないな、せめてベットの上で心安らかに逝きたかったものだが……。

「あの? ラムザさん?何を……喰われる寸前の鹿の様な顔してるんですか?
別に私はラムザさんを喰おうとは思ってませんよ?」
「……へ?」

一人、悲壮な覚悟をして悦に浸っている所へ。
エルミィから掛けられた思いもよらぬ言葉に、思わず間抜けな声を出す俺。

「ですから、私はラムザさんを殺して食おうとかなんて思ってませんって、勘違いしないでくださいよ」
「――じゃあ、一体、何の用だよ?」
「それは……私を旅に連れて行ってくれる様、もう1度、ラムザさんに頼みに来ました!」

と、俺に圧し掛かったまま元気良く言ってのける。

704:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 18:06:16 8i55BlZa

「をい……お前さん……諦めて、なかったのか?」
「はい、ラムザさんに色々言われましたけど……やっぱり、私は、冒険者になる事を諦め切れません。
もう帰る場所のない私にとって、冒険者になって旅をする事が唯一の選択肢なんです」
「だ、だがなぁ、口で言うほど甘くはないんだぞ、冒険者って言うのは?」
「でも、世の中の厳しさなんて、実際に味わって見ないと分からないと思うんです、
私はやりもしない内に諦めるなんて出来ません、やっぱり実際に旅に出て確かめたいんです!
それに、ラムザさんとなら上手くやっていけそうですし……
――って、勘違いしないでくださいよ!ラムザさんは冒険者としてベテランの人みたいですし、
私に分からない事や困った事があったら助けてくれるかな?と思っているだけですから!」

と、右手をパタパタと横に振って少々恥かしげに言う彼女。

をいをい……と言う事は俺にお前さんのお守をやってくれって事か?

――はっきり言って、冗談では無い。
何を好き好んで俺はこの天然ボケ魔獣と共に旅をせねばならんのだ。
多分、彼女は行く先行く先でトラブルを起こして、その度に俺がそのフォローに回る羽目になるだろう。
無論、そんなの繰り返していたら、一つの国を周っただけで俺の胃に穴があいてしまう事うけあいだ。
おまけに彼女の大きな体躯から見て、恐らくその食事の量もハンパでは無い筈、
そうなると只でさえ逼迫気味な俺の財政状況はかなり危うくなる事だろう。

――よし、ここは彼女には悪いがきっぱりと断わろう。
と、俺が言葉を出そうとした矢先。

「ですから―お願いです!私を、ラムザさんの仲間にしてください!!」
「う……え……」

エルミィがお互いの鼻先がぶつかる直前までズイッと顔を寄せ、俺に向けて頼み込んでくる。
その迫力に俺は一瞬圧されてしまい、言う事も言えず、つい間抜けな声を漏らしてしまう。

う~む、拙い、この状況はかなり拙い。

………さっきから、俺の胸元に彼女の乳房がぐいぐいと押しつけられ、
そのやわらかな感触を俺へ大アピールしているのだ。

俺は、今までなるべく意識しない様にしていたが、
今まで野生に住んでいたと思われる彼女は、人間で言う着衣と言うものを何ら着けてはおらず。
その形の良い大きな乳房も、野性的に引き締まったウェストも、猫科の動物特有の優美な曲線も、
それら何ら隠す事無く全てさらけ出しているのだ。

おまけに、それが普通の人間より二周りも大きい為、ある種のダイナミズムさえも感じさせる。
しかもそれが今、目と鼻の先に、いや、それどころか身体に密着しているのだ
普通は気にしてしまう、現に俺だって……

――って、き、気にするな気にするな!これしきの事で惑わされるなラムザ!

と、必死に心の中で、俺の奥で騒ぎ始めた欲望を自制をしていたのだが……

「……あの、さっきから私のおなかに何かが当ってるんですけど……?」

思いの他、俺の股間の放蕩息子は正直だったらしく、
その存在をエルミィのおなかをぐいぐいと押す事で誇示していた。……こ、この馬鹿息子ぉぉぉぉぉぉぉ!!
見ると、彼女はきょとんとした表情を浮べている。

……うう……滅茶苦茶みっともないぞ、俺……。


705:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 18:07:47 8i55BlZa

「――ひょっとして、ラムザさん、私に欲情しているんですか? そうなんですか?」
「…………」

エルミィの身もフタもない問い掛けに、俺は頬がかあっと赤くなる感覚を感じ、思わず彼女から視線をそらす。
――しかし、それが行けなかった。

「やっぱり、そうなんですね!私に欲情しているんですね!
魔獣の私に、人間のラムザさんが欲情しちゃってるんですね!そうなんですね!」

どうやら、俺の視線を逸らす行動を無言の肯定と受け取ったらしく
彼女はその瞳をより爛々と輝かせ、俺に早口でまくし立てる。
気が付いて見れば、その息も荒くなっており、彼女が獣の本能を見せ始めている事が容易に窺い知れた

そういや、今の時期はマンティコアの発情期だった様な……何か、別の意味で拙い(まずい)状況になってなくね?

うん、確かに食料的な意味で喰われる心配は無くなった。
けど、その代わりに、今度は性的な意味で喰われる事態になろうとは……。
俺は今まで、成り行き上とは言え、女を抱いた(むしろ抱かれたとも言う)事は2度か3度はある。
その相手は、娼婦だったり、または依頼主だったりと色々あった。幸い、男に迫られる事は無かったが。
まあ、それはそれである種の役得、と、俺も割りきって楽しんでいた。
……その殆どが逆レイプに近かったけどな……

しかし、今回ばかりはマジでやばい、何せ相手は亜人どころか魔獣なのだ。
俺には獣姦の趣味なんて無い。おまけに相手が人を喰う事もある魔獣である以上、何されるか分かった物ではない。
下手するとやった後に食われる可能性も……流石に、そうなるのはご免被りたい所である。

しかし、最早、欲望のスイッチが入った彼女を
言葉で説得して止めさせるのは不可能とは言わないが至難の技だろう。

何とかしなければ……
俺は必死に脳をフル回転させて打開策を考え出そうとした、

「――痛っ!」

――が、その思考は、唐突に太腿に走った痛みで中断された。
見ると、俺の太腿まで伸びたエルミィの尾が、先端の針を太腿へ突きたてている所だった。

驚く俺に、息を荒げ頬を上気させたエルミィが言う。

「ラムザさん、貴方に逃げたり抵抗されたりされたら私は困りますので、早めに毒を打ち込んでおきますね。
あ、でも、安心してください。暫く身体は動かせなくなりますけど、死ぬ事はありませんから」
「え……えるみぃ……らめろ……――っ!?」

声を上げようとして、俺は舌が痺れた様に上手く動かない事に気付いた。
クソっ、もう、毒の効果が出てきたのかっ!?……なんて回りの速い毒だ!

試しに腕を動かそうとしたが、まるで重しを付けられたかの様に動かす事すらままならない。
くそ、もう体も動かなくなって来たのか……これでは彼女の言う通り、抵抗も逃亡も出来ない……。
おまけに舌もろくに動かせなっている以上、呪文を詠唱する事すらもままならないだろう。
これでは『解毒呪(ディ・ポイズン)』で毒の効果を消し去る事も無理だ。


706:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 18:09:45 8i55BlZa

「人間の雄の匂い……悪くない……むしろ……良い匂い」

俺が動けなくなった事を良い事に、エルミィは俺の首元に顔を寄せてスンスンと匂いを嗅ぎまわる。
その度に、熱い吐息が肌を擽って、なんだか気持ち悪い様な気持ち良い様などっちともつかない微妙な感じがする。
うあ~っ!体さえ言う事聞けば振り払えると言うのにぃっ!

「ラムザさんの肌……ぺろ……汗の味がする……」

あらかた匂いを嗅ぎ回って満足したのか、今度は俺の首元や頬を念入りに舐め始める。
人間の物よりも大きく長い舌がザラザラヌメヌメと這いまわり、顔の周りに涎の跡を残して行く、
その何とも言えないゾワリとした感触に、俺は背中が泡立つ感覚を憶える。
……うう、獣臭い……

つか、涎でベトベトになるから止めてくれ……とエルミィに言いたいのだが、
毒によって舌がろくに動かせない状態では、いくら文句を言った所で呂律の回らない声を出すしか出来ない。
……はっきり言って、この状況はかなり苛立たしい。

がちゃがちゃ

「あれ?……これ、結構……ややこしいですね………?」

不意に身体に圧し掛かっているエルミィが離れ、同時に腰の方から金属が触れ合う音がしはじめる。
何だろうかと気になり目線を下に送ると、彼女が肉球のついた指先で器用にズボンの金具を外そうとしている所が見えた。

をいこら、待て待て、人が何も出来ない無い事を良い事にさり気にズボンを脱がそうとするな!
まあ、流石に人間の履いているズボンを脱がした事が無いのか、
金具を外すのに苦戦している様だが……さて、これで諦めてくれたらどれだけ……

「仕方ありません! こうなれば私の爪で破り取ります!」

俺が楽観的な事を考えている内に
指先から人間の大人の小指の長さほどある下手なナイフよりも切れ味の良い爪を伸ばし、トンでもない事を宣言する彼女。
をいっ、『シャキーン!』って口で擬音を言いながら伸ばした爪をズボンに立てるなっ!!
結構、高価なんだぞ!そのズボンっ!

「あ、はずれた……なーんだ、こうすれば良かったんだ」

―と、爪がズボンに触れた拍子に偶然にもズボンの金具が外れた様だ。
……良かった、このズボン、店主が泣き出すまで値切りに値切って買ったお気に入りのものだから。
ここで破かれずに済んで本当に良か――

「これでこの邪魔な物を脱がす事が出来ます♪」

――って、ちっとも良くねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!
こら、止めろっ、ズボンに手を掛けるなって……
あー分かった分かったからズボンを脱がそうとしないでくれっ!!な、お願い!頼むから―

「せーのっ……えぃっ!!」

俺の懸命な心の叫びも虚しく、妙に楽しげなエルミィによってズボンと下着が一気にずり下げられ、
その下の本能を剥き出しにした息子がブルンと彼女の前に晒し出された。


707:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 18:11:09 8i55BlZa
「うわぁ……これが人間の……ビクンビクンって震えています……」

既に臨戦体勢となり、夜空を貫かんとばかりにいきり立つ息子を見て
彼女は驚きと喜びを混じらせた表情を浮べ、呟きを漏らす。

頼むから目をギラギラ輝かせて興味深げに見るなって……だから、指先でつつくな、頼むから……
クソ、こんな状況なのに未だに息子がビンビンなのは毒の副作用か?

……単に、俺がこれから起る事に期待しているからじゃない?、とか言うのは無しだぞ?

「これが……人間の雄の匂い……なんてたまらない……」

俺の息子の匂いでも嗅いでいるのだろうか、
スンスンと言う鼻音と共に彼女の吐く生暖かい吐息が息子を刺激する。
なんだかくすぐったい様な、気持ち良い様な微妙な感じ。

「……いただきます」

ぺろり

「――ヒッ!?」

くすぐったさを我慢していたら、不意に生暖かいぬめった感触が息子を撫で上げる。
舌で舐められている、と気付いた時にはエルミィが俺の息子を舌で念入りに舐る所であった。

「あむ……ぺちゃぺろ……ぺちゃ……」
「―――っ!!――ぅっ!!」

その動きはテクニックも何も無い、
どちらかと言えばまるで子供が棒付きキャンディを舐める様な感じであったが、
それでも人間の物よりも大きく長い彼女の舌は、
俺の息子に纏わり付く様な熱くざらざらとしていながらもぬめっていると言う、人間の物では味わえない感触を与え、
その電撃的な刺激で俺に声にならない呻きを上げさせるのには充分!

霞んだ視界で彼女の方をみれば、その欲情の度合いを増しているらしく
四つん這いの姿勢となった彼女が赤い獣毛に覆われた腰を高く突き上げ、
夜空に向けてピンと伸ばした蠍の尾をゆらゆらと動かしていた。

「ちゅぶ……ちゅばちゅば……ちゅばちゅば」
「――ふぁっ!……らめっ!!」

尿道を通して先走りが溢れる感触を俺が感じると同時に
彼女は先走りを漏らさぬ様に息子を咥え込み、口内でその長い舌を雁首や竿を問わず絡め付かせ、
口の端から猥らな水音を上げながら、先端から溢れ出る先走りを吸い上げ、そして嚥下して行く。

うっ……あっ……もう――これ以上、耐え 切れ……ないっ!!

「で、るぅっっっっっ!!!」
「――っ!!」

視界が一瞬の内に真っ白に染まる感覚、そして腰を突き抜ける快感。
動かない筈の体を2度3度痙攣させ、俺はエルミィの口内で滾りを解き放ってしまう。
その滾りの勢いに驚いたのか、彼女はビクリと身体を震わせる。

……嗚呼、やっちまった……。

708:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 18:12:04 8i55BlZa

「……う~、苦い……けど……嫌って感じじゃない……なんでだろう?」

口に収まりきれず溢れ出し、
可愛らしい顔や豊満な乳房、獣の下半身等へ飛び散った精液を指で掬いとって、不思議そうに眺めた後。
その指を口に運び入れて舐めとり、その味に彼女が呟きを漏らす。

まあ、それは俺も何時も不思議に思っている事だ、
1度だけ、そう、1度だけ俺は娼婦の悪戯によって自分の精液をなめさせられた事があったが、
その臭いとえぐさは、とてもじゃないが口に入れられた物ではなかった事を思い出す。

と、それはさて置き
どうやら時間と共に毒の効果が少しだけ収まってきているらしく
体はまだ動かない上にまだ舌に痺れが残ってはいるが、少しだけ喋れる事に俺は気付いた。
ナイスだぞ、俺の新陳代謝の早さ! GJだ、俺の肝臓!

――よし、これなら
先ず、行為に夢中になっている彼女に気付かれないように
ディ・ポイズンを唱えて身体の運動神経を侵している麻痺毒を完全に消し去り。
その後で、死なない程度の威力の攻撃呪文で彼女を気絶させる事が出来る筈。
そう考えた俺は早速、ごく小さな声での呪文の詠唱を開始した、

だが、俺は発情した獣の行動の早さを甘く見ていた。

「――のわっ!?」

呪文の詠唱を行い始めた矢先、唐突にがばっ!、と言う感じにエルミィに覆い被さられ、
それに俺が声を上げて驚く間も無く、後頭部へ回された彼女の右腕によって抱き寄せられ
更にそのままムギュウ、と言う感じに彼女の乳房の間に俺の顔面を埋められてしまう。
当然、呪文は中断される。

「ふむぅっ!?(何っ?)ふむむむっ、むぐぅっ!(エルミィっ、お前っ!)」
「ラムザさぁん……私、もう、体が止まりません……やって、良いですよね? 良いですよね?」

顔面へぎゅうぎゅうに押しつけられる乳房に口を塞がれ、くぐもった声で抗議の声を上げるが
どうやら全然聞いていない様で、目を潤ませた彼女が興奮を顕わにして問いかけながら、
未だいきり立ったままの息子の先端が秘裂に当るように腰を僅かに動かして調整する。
ずっしりと身体に感じる彼女の体重と体温。
視界を覆い尽くす上気して赤みがかった彼女の乳房。
顔面に感じる豊満な乳房の柔らかさ。
どくんどくん、と身体全体を通して聞こえる彼女の鼓動。
獣臭さに混じって漂う発情した獣の何とも言えない淫臭。
そして否応無しに口に流れ込む彼女の汗の味。
………それらが俺の五感を緩やかに支配しつつあった。

「――ふむぐっ!?(待てこらっ!?)ふむぐごぐぐぐぅぅっ!!!(止せ止めろ止めてくれっ!!)」
「あ……あたってる、ラムザさんのがあたってる!」

そして、ぬちゅりと音を起てて息子の先端が、獣毛の間で熱く濡れている秘裂に触れ
其処からとろとろと溢れ出た愛液によって息子の全体を艶かしくコーティングして行く。
その息子の先端が秘所を突つく感触に、彼女は歓喜の声を上げ、蠍の尾をブンブンと円を描くように振りまわす。


709:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 18:12:44 8i55BlZa

「い、いれますよ! いれちゃいますよ! 私のけものまんこの中にラムザさんの人間おちんちんを入れちゃいますよ!?」
「むぐぐっっ!!!(だからっっ!!!)むぐごぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!(やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!)」

最早、無駄と分かりつつも俺は尚も懸命に抗議の声を上げるが。
当然、情欲で興奮しきった獣へと化した彼女が聞いてくれる筈も無く、
そのまま後ろ足の力を抜きゆっくりと腰を下ろしていく。

ぬぷん

「あはぁっ!はいったぁっ♪」
「―――っっ!!」

僅かな抵抗すら感じず、俺の息子は生暖かい愛液で溢れ返った膣の中へあっさりと全体を飲みこまれ、
すかさず中の熱く濡れた淫肉がくにゃくにゃと息子全体へ纏わり付き、何とも形容しがたい快楽を与えてくる!
何だこれ!―これが、魔獣の中なのかっ!人間の物とは……全然違うっ!

「私の中でラムザさんのがピクピクって動いてます♪」
「……ふぐぐぅ……」

息子の全てを秘裂の中へ飲み込んだ後、
エルミィはグチュグチュと腰をこねくり回し、膣内に収まっている俺の息子の感触を味わう。
その度に結合部からブチュブチュと愛液が溢れ、息子を包み込むみっしりと襞の詰まった淫肉が息子全体を揉み解す!
と、とても気持ち良い……だ、だが、ここであっさり出す訳には行かない。我慢だラムザ! 快楽に身を任せるなっ!
そう心に決めた俺は、歯を食い縛って括約筋を引き絞り精一杯の抵抗を行った……

「それじゃあ、動きますよ!………あっあっあっ♪」
「――う、ううううううっ!!??」

だが、その決意は彼女が小刻みに腰を動かした事で、
最強クラスの攻撃呪文を叩き付けられた城壁の様に、呆気なく瓦解し始めた。
やばいっ、腰がただ単純に上下にガクガクと振られているだけなのに!
息子を包む肉襞がやわやわと蠢いて四方八方から息子がもみくちゃにされてっ! 気持ち良いっ!
―だがっ、それでもっ! 俺はっ! 耐えるんだっ! 人間としてっ!

「気持ち良い♪気持ち良いですっ♪ラムザさんのおちんちん気持ち良いですっ♪」
「うっぐっ!?ぐぐっっ!ぐぐぅっっ!!」

……うあっだっ、駄目だぁっ!!包み込んでいる淫肉がっ!
グネグネって、蠢いてっ! 奥へ奥へ息子を吸い込み始めてっ! 気持ち良過ぎるっ!
うっ……くっ、うっ…あっあっあっ……うぁっ!!もうっ、限界っ―――

「うぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!」
「あ、私の中で熱いのが一杯出てるっ、人間のせーしが一杯出てるぅっ♪」

腰の奥から熱い何かが突き抜ける様な感覚と共に、
俺は獣が唸るような声を上げ、身体を震わせながら彼女の膣内へ精を解き放った。

どくっどくっどくっ、と溢れ出さんばかりの勢いで叩き込まれる熱い滾りを、
彼女の人間よりも大きな膣が全て受け止め、そして淫肉をうねらせながら奥へ奥へと吸いとって行く。
その膣の動きに、俺の息子は持ち主の意思とは関係無しに、彼女の中でビクンビクンと震えて喜びを現す。


710:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 18:13:22 8i55BlZa

「あ、あっ――ぁっっっっっっっっっ」

それによって彼女も達したらしく、声にならない声を上げて体をブルブルと震わせながら
乳房の間に俺の頭を埋めるように俺を強く抱き寄せ、ぶしゅうと音を立てて結合部から愛液を噴出させる。
ああ、ズボンまでベトベトに………後で洗わなくちゃ………

「………もっと、もっと気持ち良くなりたいです! もう一回しましょう、もう一回!」
「……うぐぅ……」

しかし、俺がズボンに降掛った不幸に悲しむ間も無く、
再び彼女が腰を先ほどよりも大きく、そして激しく、より多くの快感を得る為に動かし始める。
をい、まだやる気ですかこの天然ボケ魔獣は………。

―って、うあっ、ちょっ、やめっ、射精したばっかで敏感になった息子にそれきついって!
断続的に押し寄せる快感に耐えるように、俺は彼女の大きな身体にしがみ付いて身を捩じらせる。

―賢明な方なら、もうお分かりだろうと思うが、
既にこの時、俺の身体に回っていた麻痺毒はもうとっくの内に消え去っていた、
……のだが、その事に気付く余裕なんぞ、今の俺には欠片すらもなかったのだった。

――そして
満点の星と、三日月が漆黒の空にうっすらと輝く真夜中、
人里離れた山奥の森林の奥の、火の勢いが弱まり始めた焚き火の傍において。

「ひゃん!あんっ!ひぃんっ♪あんっ!ひゃうん!」
「んぐぅぅぅぅぅぅ!うぐぅぅぅぅぅ!!」

粘った物がぶつかり合う様な卑猥な水音と女の嬌声、
そしてくぐもった悲痛な呻き声は一晩中、止む事無く続いたのだった。

711:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 18:14:05 8i55BlZa
                   * * *

………バシャ………

「――ふぅ………やっとさっぱり出来た」

朝、まだ朝靄煙る泉のほとりにて、へちまのたわし片手に自分の身体を清める俺の姿があった。
………湧水の冷たい感触がかなり心地良い。

こら、男の身体なんぞ見ても何も面白くないぞ?
まあ、胸見られたくらいでぎゃーぎゃー騒ぐ女と違って、
俺は見られた程度では騒ぎはしないが。それでも他人に裸を見られるのはあまり良い気分はしない。
この世の中、男の方が良いと抜かす連中もいるくらいだし……。
――と、下らん事はさて置き。

あの後、結局一晩中やりとおしでエルミィも俺も疲れ果てたのか、何時の間にかお互いに気を失ったらしく
俺が気が付いたときには、既に日も昇り始めようとしている所だった。

目が覚めた俺は、すぴょすぴょと眠り続けるエルミィの大きな身体の下から身を捻って抜け出した後、
精液とも愛液ともつかぬ液でベトベトとなった鎧と衣服を洗うついでに、
同じく体液でベトベトになった自分の身体も洗っていたのだ。

―今回は運良く、近くに綺麗な涌き水の出る泉があったから良かったが。
もしも身を清める場所が無かったら、汚れた格好のままで街まで行く羽目になっていた所である。
これも日頃の行いの賜物……なのだろうか?

ちなみに、昨日の行為による疲れの影響はと言うと、意外な事にそう思ったほど無かったりする。
まだ息子にジンジンとした痺れが残ってはいるが、そう気になる程の痺れでもないし、
いずれは半日もたてば消える程度の物だろう。

……ひょっとして、エルミィにされるがままだったのが幸いしたのだろうか……?

ま、それはさて置き、身体も洗った事だし、次は服を乾かさなきゃなっと。

バシャリ

洗いたての上下の衣服と鎧を脇に抱えて泉から上がった後、タオルで身体をふきつつ適当な岩に腰掛け、
その横の岩の上に、鎧、上の服とズボン、そして下着と分けて置く。

そして指先をなめて唾液で濡らし、頭上に掲げて指先の風の感触で大気の流れを見た後。
俺はその流れの向きに合わせて身体の向きを変え、呪文を詠唱し始める。
呪文の内容は『火』の要素と『風』の要素を組み合わせた物。

「――渦巻け、熱旋風(ヒート・ストーム)」

ひゅうぅぅ

―そして呪文が完成し、俺はためらう事無く衣服に向けて呪力を解き放つ、
それと同時に衣服の置かれている岩の周りに風が渦巻き、つむじ風となって衣服を空中へと舞い上げる。
風に巻かれた衣服は空中のその場に留まったままくるくると高速回転し、
回転するその勢いによって水を振り払われる事で衣服は脱水され、徐々に水分を失っていく。
それと共に風は次第に熱気を帯びた物へ変わり、俺が眺める前で衣服は次第に天日で乾したかの様に乾燥され、
水分によって重たげだった衣服の回転が、脱水と乾燥により布本来の軽さに戻った事で軽やかな回転へと変わっていく。

712:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 18:15:35 8i55BlZa

「……そろそろころあい、かな?っと」

衣服の回転の具合を見て、パチリ、と指を鳴らすと共に熱を帯びたつむじ風が消え、
差し出した俺の手の上に衣服が舞い落ちる。
うん、良い感じに乾いている。

「今回は大成功だな。よしよし」

衣服の乾き具合を見た後、俺は顔に笑みを浮かべ呟きを漏らしながら衣服を着込んで行き、
その上に鎧を装着した後、腰に荷物を入れたウェストポーチを装着する。

俺が使ったこの呪文、本来は『火炎旋風波(ファイアー・ストーム)』という
灼熱の竜巻を発生させる事でトロルの群すらも瞬時に消し炭に変える程の威力を発揮する広範囲攻撃呪文なのだが、
その呪文を構成する『火』の要素と、『風』の要素の割合を最小にし、
風の勢いと発生する熱量を格段に弱める事で、濡れた衣服を舞い上げて脱水、乾燥させる効果へアレンジした術である。
呪文のしくみと意味をきちんと理解した上で呪文を構成すれば、これくらいは簡単にできるものなのだ。

……たまに構成を少し間違えて衣服をあらぬ方へ飛ばしてしまったり、衣服を炎上させてしまう事もあるが、
まあ、それはそれでご愛嬌、と思ってほしい。うん

ちなみに、呪文を唱える前に大気の流れを見たのは、少しでも魔力の風をコントロールしやすくする為のもので、
これをうっかり怠ってしまうと、運が悪い時にはコントロール不能となった魔力の風が暴走する事だってありえるのだ。
以前、そのミスを犯した所為で半日にわたって竜巻に追い掛け回され、死ヌル様な思いをした出来事があり、
それ以来、俺はこの手の術を使うときは欠かさずに大気の流れのチェックを行う事を心がけている。
……何事も、実例あっての教訓だと言う事である。

さて、身体も洗って身なりも整えて、剣を含めた荷物も持って、改めて街に向かう準備は完了っと、
……後は……

「問題はこいつだな……さぁ、どうした物か……」

俺が目覚めた事に気付く事すら無く、
未だ、猫のように丸まってすぴょすぴょと寝息を立てている天然ボケ魔獣―もとい、エルミィを見下ろして、
俺は頭をぽりぽりと掻きながら困った様に呟き、深く溜息を漏らした。

そりゃ彼女を置いていくのは簡単である。
彼女が目覚めぬうちに静かにその場を立ち去れば良いだけの話で、
後は野となれ山となれと決め込んでさっさと忘れてしまえばすむ事だ。
……そう、さっきまで、俺はそうしようと考えていた。

――ほんの気紛れで、寝ている彼女の様子を見に行くまでは――

こいつ、『旅は楽しいです……』とか『ラムザさん、私を冒険者にしてくれてありがとう………』とか、
本当に幸せそうな寝顔で寝言を漏らしているのだ……置いて行かれるとは夢にも思わずにだ。

目が覚めて、俺の姿が何処にも無いと知れば、こいつはさぞかし落胆する事だろう。

だが、俺には、んなの知ったこっちゃ無い……そう、知ったこっちゃ無いんだが……
……やれやれ。どうも、俺も甘い所があったみたいだな。

ひとしきり考えた後、心の中で溜息をついた俺は早速、行動に移った。


713:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 18:19:01 8i55BlZa

「おきろっ!」

静かな森に げしっ! と小気味イイ音が響き渡った。

「――ふにゃっ!? 何事っ!?」

寝言で『もうおなかいっぱい……』とか言い始めた所でいきなり蹴りをかまされた彼女は、
驚いた猫の様に飛び起きると自分に何が起きたか理解できず、きょときょとと周囲を見やり―

「……あ、う……ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ。ラムザさんごめんなさいっ!」

―俺と目が合うや、いきなり頭を地に擦り付けて謝り倒す。
その様子を前に、訳がわからない俺は目を点にしつつ彼女の様子を伺う。

「昨晩は本当にごめんなさいっ、あの時、私っ、本能に逆らえなくてっ! ついそのままなし崩しにしちゃって、
それでラムザさんに嫌な思いさせて、本っ当にごめんなさいっ!もう、私を連れて行ってとか言いません!
むしろ、置いて行かれても当然だと思っています、けど、最期にラムザさんには謝りたかったんです!」

……なんだ、その事か……
どーやら、彼女、昨日の晩に俺を性的な意味で襲っちゃった事で謝っている様である。
ここで、俺が心の狭い奴だったのならば、思いつくままに言葉で彼女を責め立てるのだろうが、
さすがに今更過ぎた事で怒る程、俺は心は狭くは無い。
それに不幸中の幸いと言ってなんだろうか、魔獣という特性なのか、
彼女の毛皮には蚤・ダニの類は存在しないらしく、刺された場所は皆無だった。

……まあ、変なビョーキを感染(うつ)したのであれば話は別なのだが……。
兎に角、何時までもこうやって謝られても話は進まない。さっさと話を次に進めることにする。

「なにを今更、俺は過ぎた事で怒りはしねーよ。次、同じ事をしないように気を付けりゃいい事だからな。
……その代わり、2度目は無いがな?」
「は?……はぁ……分かり、ました……」

俺の言葉の意味が少々飲み込めなかったのか、彼女は気の抜けた返事を返す。
それに構う事無く、俺は踵を返して2~3歩ほど歩いた後。

「何をしている?……そんな所でぼやってしていたら置いていくぞ?
お前さんにはこれから、荷物持ちからやってもらわなきゃあならんからな」

足を止め、振り向く事なく言った後、そのままさっさと歩き出す。

………多分、俺の後ろの方で、エルミィは俺の言った意味が理解出来ず暫く呆然と佇んだ後、
言葉の意味を理解すると同時にぱあっ、と満面の笑顔を浮べ、俺を追って歩き出す筈だ。

ほら、思った通り、俺の後ろの方から慌てる様に、ちゃっちゃっ、と爪が地を蹴る音が追っかけて来た。
……分かりやすい奴め。

714:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 18:19:39 8i55BlZa
そして、俺は歩きながら、彼女の方を見る事なく言葉を続ける。

「先に言っておくが、冒険者の旅ってのは決して物語の様に優しく無い。
もし、俺が『こいつは足手纏いだ』と判断する様な事があったら、容赦なくお前さんを置いていく。分かったな?」
「は、はいっ!分かりましたっ!」

一拍の間を置いて、元気の良い声が俺の背に掛かる。
俺は口の端に小さく笑みを浮べ、更に続けて言う。

「もう一つ言っておくが、俺の行く道は決して平坦じゃない、それこそ、山あり谷あり何でもあり、だ。
だから、今、お前さんが進もうとしている道はそれこそシヌル程きつい事を改めて覚悟しておけ。
もし、途中で投げ出すような事があったら只では済まさんぞ?」
「はいっ、覚悟します!」

うん、良い返事だ。
それにしても、道に迷って野宿した結果が、何処か抜けている天然ボケ魔獣と出会う事になるとは………
人生と言うものは何処で何が切欠となって、運命が変わるか分かったもんじゃないな。

………まあ、悪い気はしない。
むしろ、今はこれで良かったと思っている。

長い間、俺は1人でいる事が多かった、
そう、辛い時も、悲しい時も、苦しい時も、誰に頼る事無く1人で過ごして来た。
だから、俺は話相手の1人、いや、1頭くらい居ても良いかな? と言う、ごく些細な考えがわいた。
しかし、それがエルミィを連れていこうと思った理由となった。

それに……昔の冒険者が言った名言があるじゃないか。
そう、良く言うだろ? 旅は道連れ 世は情け、ってな?

「先ずは、街についたらお前さんの丸出しの胸を隠す物を買わなきゃな?
流石にそのままじゃ、なにかと人目に付くし、見ている俺もいろいろな意味で落ち着かんからな。
……さ、やる事が決まったらとっとと行くぞ。言っておくが俺は歩くのが早い、だから置いて行かれるなよ!」
「はいっ! ラムザさん! これから宜しくお願いしますっ!」

――そして
空に輝く太陽が見送る中。1人ぼっちから、1人と1頭になって、冒険者達は歩き始める
あての無い、遠い遠い旅の道の先へ。

―――――――――了?―――――――――


715:通りすがり ◆/zsiCmwdl.
09/02/13 18:20:43 8i55BlZa
以上です。
容量が足りないので新スレを立てようとしたのですが弾かれてしまい無念。
そう言う訳で、有志の方は新スレをお願いします。

716:名無しさん@ピンキー
09/02/13 19:11:05 NRfqnHZh
>>719
超乙!!エルミィかわいいよエルミィ

厨設定も昇華できれば悪くないし
かのドラゴンもまたいで通る某あの人だっていわせてみれば(ry
また機会があれば続編投下されたらなぁと期待してみる


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