【友達≦】幼馴染み萌えスレ17章【<恋人】at EROPARO
【友達≦】幼馴染み萌えスレ17章【<恋人】 - 暇つぶし2ch624:名無しさん@ピンキー
09/05/16 06:14:29 t8nN6DmE
 長かった螺旋階段が漸く一段落つき、足場らしきものが目の前に広がります。
 よく見れば、まだ階段は続いていました。ただ僕が下りるべきはここだと感じたのです。
 少し歩くと、大きな扉がありました。
 見るとそれは木のような質感で、中央に鳥のような彫刻が施されてあります。
 と、突然そのくちばしの部分が動きました。そして人が通れるほどの大きさに開いたのです。
 まるで僕を待ち構えるかのようです。
 いざ進もうとすると、今度は予期せぬ大きな揺れが襲ってきました。
 ふと、さっきの女性が心配になった僕は階段まで戻り、下を覗き込みます。
 誰もいません。それどころか階段が崩れ落ちていきます。僕のいる足場まで不安定になってきました。
 僕は急いで扉の方に戻ります。見れば、くちばしがゆっくりと閉じようとしているではありませんか。
 どうして自分はその先に行こうとしているのか、考えるより先に足が動きます。
 が、すぐの距離なのに体が進みません。まるで、夢でも見ているかのように、自由が利かないのです。
 足元は沈み始め、くちばしはもはや人の通れる大きさではなくなってしまいました。
 瓦礫と共に下へ、ゆっくりと落ちていきます。

「?」
 ここはどこでしょう。
 僕は誰なのでしょう。
 暗い場所に僕はいます。
 ぼんやりと映る黒い線に白い色。
 息が、苦しい。そして、胸が張り裂けるように痛い。
 顔に、瑞々しい何かを感じます。これは、涙?
 どうして、こんなに、空しいのでしょうか。
 どうして、こんなに、切ないのでしょうか。
 目から涙が、止まりません。僕は、一体? 分かりません。分からない。
 体を動かすことも、声を出すことも、何も出来ません。出来ることは僅かに開いた目から、涙を溢すだけ。
 誰もいません。目の前に誰もいないのです。それが何故か、凄く哀しい。
 夢か幻か、今の今まで見ていた光景が、懐かしく羨ましい。
 ここは空虚でただただ、何もありません。泣きたくなるほど、何も。

 いつの間にか眠っていたようです。
 眠っていたということは、僕はずっと横になっていたのでしょう。
 頭は割とすっきりしました。そして差し込んでくる光が、いくらか不安な気持ちを和らげてくれます。
 僕は時間をかけて、現状の把握を始めることにしました。
 口元にあるのは、酸素吸入器でしょうか。ここは、病院なのかもしれません。
 体を、動かしたい。それなのに腕が、重い。
 動いて。
 動け。
「!」
 ぱたっ、と少しだけ持ち上がり、また柔らかな下へ落ちます。
 やっぱり僕はベッドに寝ているようです。そして、手に感じる僅かながらの違和感。
 体の奥に、染み透ってくる何か。
 知っています。これは、点滴。

 僕が発した僅かな音に呼応するかのように、物音が聞こえました。
「ゆ、き?」
 微かな声。女性のそれでした。
「ゆき!」
 視界に入り、じっと覗き込んでくる女性。
 目が合うと、女性はその顔をくしゃくしゃにして喜びました。
 この瞬間は、形容し難いほどに嬉しかった。人がいて、僕の存在に気づいてくれたということで、どれだけ救われるかが分かりました。
 そして僕は、すぐに思い出しました。
 幼馴染の、三橋野叶のこと。目の前で大粒の涙を溢している彼女こそ、あの顔のぼやけた女性でした。
 今ははっきりと、顔が映ります。心につかえていたものが取り払われたようで、嬉しくて僕も涙が出ました。


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