【友達≦】幼馴染み萌えスレ17章【<恋人】at EROPARO
【友達≦】幼馴染み萌えスレ17章【<恋人】 - 暇つぶし2ch532:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 15:00:45 AXgzlfdg

 夕華が好むのは、京介に「お願い」されることだとかれは知っていた。お姉さんぶりたがる彼女は嬉々としてそれを聞き入れ、ほとんどの要求をかなえてくれる。
 だから京介は、ここしばらく言おうとしなかった懇願を口にした。

「……あの、僕、ほんとに眠れなくなったみたい。
 だから、昔みたいに眠らせてほしいんだけど」

 最近はめずらしい少年の甘えを聞いて、夕華は軽いおどろきに目を見開いている。
 京介を見つめるその瞳が、やがて、ふっと優しくゆるんだ。
 沈んだ雰囲気が、彼女から消えていくことにほっとしながら、京介はさらに続けた。

「……―歌ってよ、久しぶりに」

 またも赤面し、口にしたそばからぎゅっと目をつぶる。
 夕華の気をまぎらわすために言い始めたことだが、たまの同衾の夜くらい素直でいようという思いも起こっていた。
 はたして無言のあと、少女が身を寄せてくる気配があった。

 ―しょうのない子。

 困ったふうをよそおって、かすかに嬉しげなささやきだった。
 それから歌が始まった。ふたりきりのときの儀式に近い、赤子のころから聞きなれていた、久方ぶりの子守歌。
 始まっても、すぐにはそうと気づかなかったほど、彼女の唇がつむぐ音色は淡いものだった。

   冷たきむろに醸されて、
   若紫の色深く、
   泡咲く酒のさかづきを、
   わがくちびるに含ませよ。

 宝林宝樹のこずえが風に鳴る音か、迦陵頻伽(かりょうびんが)の鳴く声かという雅歌だった。蜜を一滴からめた、温かく甘やかな柔音が、京介の耳に忍び入ってくる。
 一貫して低く、かそけく、清和して澄み、哀婉雅亮にみちみちて、おだやかに眠りの園へみちびく歌。

 あやされて陶然としながらも、夕華に寝かしつけてもらうのは今夜限りにしようと、京介は胸のうちにかたく誓っている。もう幼児ではないのだから。
 それでも彼女にこうしてもらうときがいちばん安らぐのは、幼児のころと変わりなかった。
 これを最後と思えばこそ、いまこのときだけは彼女に甘ったれていたい。


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