【友達≦】幼馴染み萌えスレ17章【<恋人】at EROPARO
【友達≦】幼馴染み萌えスレ17章【<恋人】 - 暇つぶし2ch450:名無しさん@ピンキー
09/04/08 23:19:29 6ne2zgKe
>>482
俺は
お前を
待っていた

451:名無しさん@ピンキー
09/04/09 00:01:10 c+Gl7BY4
僕っ娘じゃなかった……だと……?

452:名無しさん@ピンキー
09/04/09 01:54:29 RrQs/Hvi
こんな 話を 待っていた!
GJです。

453:名無しさん@ピンキー
09/04/09 04:22:57 oQ/6vnMO
ぐっじょおぶb
これは傍観者が動かないとどーにもならんなw

454:名無しさん@ピンキー
09/04/09 11:31:34 y/V9wywg
GJ-

そして傍観者たる「僕」のほうは「僕」のほうで、
2つ下で子どものころから「僕」が世話をやいてあげてた従妹が、
今も出入り口の陰でどきどき盗みぎきを鋭意敢行中で、
最後の台詞でorzになってたりするわけですね、
わかります。

455:名無しさん@ピンキー
09/04/09 17:51:52 kwjzcBCt
>>487
幼馴染相談の無限ループ

456:名無しさん@ピンキー
09/04/10 13:20:20 jdKQsHoH
「幼なじみが~しない馴染みモノ」シリーズの人もコテつけてみたら

457:名無しさん@ピンキー
09/04/10 13:21:47 jdKQsHoH
文が途中で切れてた……

コテつけてみたらどうだろう、と思う。

458:名無しさん@ピンキー
09/04/10 21:45:54 cP3REkSP
不要

459:名無しさん@ピンキー
09/04/11 18:25:23 +FKD6d/F
コテ、ですか
前からいくつか投下してはいるけど、正直名乗るほどの者でもないですし
あー、でも連作の場合は、名前があったほうがわかりやすいのかな?

というわけで、投下開始
ラストパートでござい

460:幼なじみが素直にならない幼なじみモノ(完)
09/04/11 18:29:01 +FKD6d/F
そろそろ何らかの進展があってもいいよね、意気地なしのキミたちでも。
「いきなり何を言いだすかと思えば……」
だってさ、僕があれだけ忠告したんだよ?
このまま何もしなかったら、いつか彼女が誰か取られちゃうよって。
普通ならすぐに告白して、そのままラブラブ街道一直線だろうに。
「ら、ラブラブ街道?」
それなのに、2週間経った今も、未だに彼女のこと避けっぱなしで。
本当に彼女のこと好きなのかと、小一時間問いつめたいね。
「だ、だからオレは別に」
顔に出てるんだよね、『オレのモノを取る』って。だいたいこの前認めてたし。
「う、ぐ……」
……全く、面倒な性格だね。
普段は邪険に扱ってたくせに、彼女が取られそうになると拗ねるわけだ。
で、自分が彼女を好きなことは認められない、と。
「う、うるさいな!オレだって色々複雑なんだよ。それに……」
それに?
「……自信が、ない」
…………自信、ねぇ。何の自信さ。
「朝は弱いし、面倒くさがりだし、大した才能があるわけじゃない。
 アイツに対していつも辛く当たるくせに、大事なことは何でもアイツにフォローされる。
 ……自発的な行動ができるわけでもない、何かあったら文句言うだけの、自分勝手な男だ」
……それで?
「そんなオレがアイツと恋仲になったとして、更に負担かけるのも迷惑だろ?」
……さぁね。
「……ちょうどいいのかも知れない。オレがアイツから離れたほうが。
 アイツがオレを気に掛けなくて済むからさ」
…………本当、自分勝手だよね。
「な、何だよ」
いや、別に。テンプレだなぁと。
本当、嫌になるくらい。

……よし、決めた。僕、委員長に告白する。
「……は?」
だってキミ、彼女から身を退くんだろ?
だったら彼女は今はフリーなんだし、僕が付き合ったって問題ないよね。
「な、だってお前、この前冗談だって」
告白はまだしてないけど……、好きっていうのは、別に否定してないよね?
「な……っ!?」
僕は今まで、キミの親友ポジションだった。
親友の恋路を応援するのは吝かじゃなかったから、黙ってた。
けど、キミが退くなら話は別だ。僕は僕の好きなようにやらせてもらうよ。
「ちょっと待て!何でそうなる!」
キミが彼女から離れたここ2週間、彼女は寂しそうだった。
いるはずの人間がいない。存在の欠如。まぁ、人恋しくなるだろうね。
そんな委員長の隣にいたのは……この、僕だよ。
「……!」
この半月でわかったことがある。
やっぱり、委員長は素敵な女性だ。
美人で有能、気配りができて、誰にでも親切で。笑顔も素敵だ。
そんな女性を好かない男はいないよ。それは、僕も例外じゃない。
「…………」
言っておくけど。
キミが何もしない限り、僕はもう気にしないから。
せいぜい自分の身勝手を後悔するんだね。
「……ま、まて」
あ、委員長?ちょっと話があるんだけどー
「あ、おい!……くそ、勝手にしろよ……」

……そうそう、今日の放課後。……本当?なら屋上で……
「何なんだよ、どうしろってんだよ……」

461:幼なじみが素直にならない幼なじみモノ(完)
09/04/11 18:34:07 +FKD6d/F
「で、こんなところに呼び出して、何の話?」
いやまぁ、ちょっとみんなには秘密にしたくて。
「なに、クラスで問題でもあった?だったら今なら誰もいないでしょうし、教室で……」
いやいや、個人的に大事な話なんだよ。聞いてくれるかな?
「……まぁ、いいけど。何を話すの?」
……コホン。
単刀直入に言うね?……僕、委員長のこと、好きだよ。
「……………え?」
あれ、聞こえなかった?僕は、キミを好きだ、って言ったの。
「え、え?ぇえっ!?」
この半月、結構\長いことキミと一緒だったでしょ?
その間に、キミという存在がどれだけ素敵か、改めて理解したんだよねー。
「あ、え、ぅ……」
だから、僕は委員長とはもっと仲良くしたいんだよ。わかる?
「で、でも!あなた、私の気持ち、知ってるじゃない……」
関係ないね。僕は僕のやりたいようにやるよ。
「けど、わ、私は……」
まぁ、困るのもわかるけどね。
でもさ、あんなヘタレより、僕を選んだほうが絶対にいいよ?
「……え?」
だってさ、彼ってヘタレじゃない。
朝は弱いし、面倒くさがりだし。さして能力があるわけでもない。
キミには文句ばっかり言うくせに、失敗はキミにフォローしてもらってる。
自分の意見はないくせに、何かあれば文句をいう。
そんな、自分勝手な人間だよ。彼はね。
「…………」
それに比べれば、僕はキミの負担にはならない。
お互いがお互いを思い合う、いい関係を築けると思う。
キミもお荷物が減って、今よりずっと楽に……。
「……じゃ、ない」
ん?
「アイツは、お荷物なんかじゃない!」
……わからないなぁ。
キミだって理不尽に思うでしょ。彼は人の好意に気付かない人間だよ?
キミがいくら行動したって、返ってきたものは何かあった?
「ないわよ、そんなもの!」
でしょ?そんなの、苦しいだけじゃないか。
僕は、恋愛関係ってお互いがお互いを大事にすることで成り立つ思う。
キミがいくら彼を大事にしたって、彼はキミを大事にしてくれない。
いいの?キミばかり損だよ、それって。
「いいわよ、別に!」
……やっぱりわからないなぁ。何でそんなに好きなの?
「な、何でって……」
どうしてそこまで好きになれるか。聞かせて欲しいね。
「……理由なんて、ないわ」
あらら。それなら、僕にもチャンスはありそうだけど。
「強いて言うなら、ずっと一緒にいたから、かな」
……ずっと一緒にいたから?
「言っておくけど。私、アイツとは幼い頃からずっと一緒にいるの。
 アイツのことはあなたよりもずっと知ってる。悪い部分なんか、星の数ほどわかってるわ」
うん、確かに一理あるね。
「アイツはいつも私の傍にいてくれた。
 ……遠くの街で、迷子になったときも。可愛がってたペットが死んだときも。
 仲良くしてた子が転校しちゃったときも。怖い夢を見て、一人で泣いたときも。
 アイツは、いつも私と一緒にいてくれたの」
………。
「私の傍にはアイツがいて、あなたはアイツにはなれない。
 ……ごめんなさい、あなたの気持ちは受け取れない。
 私が好きなのは、アイツなんだから」
……いや本当、うらやましいことで。

462:幼なじみが素直にならない幼なじみモノ(完)
09/04/11 18:36:49 +FKD6d/F
「それにしても、あなたずいぶんアイツを悪く言うのね。友達でしょ?」
親友だよ。そこは訂正しとくけど。
……まぁ、あれは彼の言葉だし。
キミには関係ないことを、ちゃんと言ってもらわないといけないね。
「え?」
さぁ、終わったよ。そろそろ出てきたらー?
「……何でわかるんだよ」
そりゃまぁ、聞こえるように言ったし。キミが来るのは予想済みさね。
「え、え?ど、どうして!?」
どうして、って。まぁ、理由は彼にでも聞いてよ。
「ちょっと、ちょっと待ってよ、え、えぇ!?」
ねぇ、これでわかったろ?
「……何がだよ」
キミの心配なんてその程度のもんだってことさ。
彼女はそんなの気にしない。彼女が嫌なのは、キミが離れてしまうこと。
他の誰でもない。キミがいるから、彼女は頑張れるんだよ。
「……そう、なのか」
負担だと思うなら、できることから始めればいい。
うらやましいよね、それを支えてくれる人が一緒なんだから。
「お、お前……」
「ちょ、ちょっと!あ、アンタどこから聞いてたの!?言いなさい!!」
ほら、キミの不安は払拭されたんだし。
さっさと気持ちを伝えること。誰かに取られないうちに、ね。
「で、でも。お前はいいのか?」あぁ、彼女が好きって話?
そりゃ好きだよ、友人としてね。
「……は?」
素敵な人だし、仲良くしたいよ。でも別に恋仲までは想定してないし。
「だ、だましたな!?」
「ちょっと、本当にどこから聞いてたのよ!?
 ぜ、全部忘れなさい、今すぐ!?」
だまされるキミが悪い。
じゃ、あとは頑張れ。お邪魔虫は撤退するからねー。
「ま、待てこら!」
「こら、無視するな!わ、私はアンタのことなんか、何とも思ってないんだからぁ!!」
「あーもう、うるさい!オレだってお前のことなんか好きじゃねーよ!」
「何ですってぇ!?」
「何だよ!」

ありゃりゃ。先は長そうだなぁ、これ。
それにしても、本当、幼なじみっていいよね。
僕もあんな幼なじみが欲しい……え?従妹?「幼なじみ優性の法則」?
……ま、それはそれ、これはこれ。
その話は、また気が向いたときにしようか。
とりあえず今は、あの二人を見守ろうよ、ね?

「好きって言え!」
「言わねーよ!バカ」
「言いなさいよ!!」
「絶対言わないからな!!」

463:名無しさん@ピンキー
09/04/11 18:40:06 +FKD6d/F
と、いうお話だったのさ(AAry

あんまりダラダラ続けてもアレなんで、この話はここまで
気が向けば書くかもしれませんが、予定は未定です。ネタないし
あと>>487さん、ちょっとネタもらいました、ごめんなさい

それではまた、別の作品であいませう
……また一年空いたりして

464:名無しさん@ピンキー
09/04/11 18:46:19 sl+BI8TA
リアルタイムGJ!
なんか他にも何組かくっつけてそうな手際の良さだなw

465:名無しさん@ピンキー
09/04/11 21:39:11 AFqU3t2r
GJ!

そんな!やっと素直になった幼なじみものを期待してたのにCry

466:名無しさん@ピンキー
09/04/12 02:09:56 zZ6JQUag
リアルにこんなカップルいたら死ぬほどウゼェだろうなw
GJでした~

467:名無しさん@ピンキー
09/04/12 08:51:53 l56NGIfg
>>496
いやぁ、ツンデレ幼馴染ごちそうさまでした

>>498
Cryって…センスあるなw

468:名無しさん@ピンキー
09/04/15 11:09:41 u/c1aq6P
近未来の出生管理センターで体外受精により生まれてくる試験管ベビーたち
試験管がお隣どうしだった、受精卵時代からの幼なじみ

という電波を受信した

469:名無しさん@ピンキー
09/04/16 06:53:55 9oi98s9t
新しいなオイw

470:名無しさん@ピンキー
09/04/16 20:26:18 Hm+7aehw
なぜか悟空とブロリーが浮かんだぞ

471:名無しさん@ピンキー
09/04/16 21:29:23 9oi98s9t
>>503
「病院のベッドがお隣な幼馴染み」って良く見るシチュじゃね?

472:名無しさん@ピンキー
09/04/17 08:40:23 rqqwGZ4t
試験管ならベッドより距離は近いな

473:名無しさん@ピンキー
09/04/17 10:59:22 mRd8i1af
それに出会いがもっと古いぜ
受精卵より古い馴染みがいるか?

474:名無しさん@ピンキー
09/04/17 11:49:59 sUL5vzhJ
>>506
前世とかオカルトに頼らざるをえないな

475:名無しさん@ピンキー
09/04/17 12:53:41 DN1ieshp
「ねえ!早く学校行こうよ!」
とある朝、窓の外から幼馴染の声が聞こえる、
「今日遅刻したら掃除の罰当番だよー!」
いや、俺たちの関係は幼馴染なんて生易しいものではない、
「いい天気だよー!」
産婦人科の隣のベッドからの付き合い、なんてありがちなものでもない、
「今日のお弁当は君の大好物の……だよー!!」
最初の出会いは中世、とある騎士団の騎士(俺)と第一皇女(あいつ)
近隣諸国にまで評判の美人だったらしい、
ただの騎士である俺は嫉妬やら何やらで謀殺された、
あいつは俺の後を追ったらしい、
「新しい朝だよー!希望の朝だよー!」
次は江戸中期わりと宮大工の俺と有力な旗本の娘なあいつ、
普通に考えて許されない恋、
二人で悩んだ末にコードレスバンジー。
「はやくはやくー!」
今度はいきなり宇宙になった、
「疾風」の通り名をもつエースパイロットの俺、
歌声で兵士たちの心身を癒す敵軍の歌姫のあいつ、
戦争は無事終結してハッピーエンド、
…かと思ったら最後にイカレちまった指揮官の超兵器で二人まとめて光に消えた、
「朝食を食え!学校の支度をしろ!今日は始まったばかりだ!
 ハリー!ハリー!ハリー!」
その次はファンタジー、勇者と魔王の世界だった、
神竜の末裔とされる女勇者のあいつ、魔界のとある村に住む村人Aの俺、
仲間を裏切り勇者に協力するも村ごと魔王に消滅させられた、
勇者はすべてが終わった後に自決したらしい。

まだまだ続きはあるがキリがないのでカット、
記憶はお互いが出会った瞬間全て蘇る、
……毎回の別れも全て、
次こそは幸せな未来を望む誓いの言葉も。

……どうでもいいけれど俺社会的な地位あいつより上だったことなくね?
「早くしなさーい!!」
いきなり部屋のドアが開かれる、
我が愛しの姫君が痺れを切らして俺の前に現れた、
やれやれと起き上がる、
今回は現代、幼稚園の時に引っ越した家の隣にこいつがいた、
いつもより早い出会い、平和な国、時代、
今度こそは望んだ最後を迎えられるかもしれない。

476:名無しさん@ピンキー
09/04/17 12:54:17 DN1ieshp
>>507
こんな感じですか?

477:名無しさん@ピンキー
09/04/17 14:45:02 Ah/rGL6f
凄い運命ww

まぁ現代物の学生とかである必要はないんだし、たまにはファンタジーや歴史物の幼馴染でもいいな

478:名無しさん@ピンキー
09/04/17 14:51:40 klIbQRjQ
>>508
今の日本なら、幸せな日々が掴めると思う
つーか掴んでくれ。GJ

479:名無しさん@ピンキー
09/04/17 16:13:23 mRd8i1af
何回悲恋くりかえしてんだよww

480:名無しさん@ピンキー
09/04/17 17:39:31 3WYXu6kT
代理出産を引き受けたら既に自分の子も身ごもってて受精卵の時から幼馴染

481:名無しさん@ピンキー
09/04/17 22:30:59 Vfkud4rJ
>>508
GJ! 久遠の絆思い出しちまったぜ…


で、今世での甘く幸せな日々を描いた続きは?w

482:名無しさん@ピンキー
09/04/17 22:31:31 sUL5vzhJ
>>508
GJです! 何回転生繰り返したんだww
これ全部書ききったら何冊分になるんだろう

483:名無しさん@ピンキー
09/04/18 00:02:40 cbCvr1Ny
>>513
子宮からか。
確かに一番近いな。

484:名無しさん@ピンキー
09/04/18 04:26:07 4T/n8o1l
>>515
なんか複数の書き手による競作ネタにできそうだよなw
1世代目と基本的な設定さえ固めてしまえば、あとは最低限の縛りだけでかなり自由。
出会い→過去世の記憶覚醒→つかのまの幸せ→死別
このパターン守れば、異世界だったおkだものw

485:名無しさん@ピンキー
09/04/18 06:45:30 QCXSsFBA
>>517
常に両想い。これ鉄の掟なり。
話の展開上NTRや凌辱に転がる恐れあり。
しかしそれを打ち破るは幼馴染みの堅固な絆なり。
時代を越え、記憶を失いしも想いは消せぬ。
一途な想いこそ幸せを掴む鍵なり。

……NTR、凌辱を否定しているわけではないので、誤解なきよう。

486:名無しさん@ピンキー
09/04/18 09:50:21 F8gSF71H
程度によっては凌辱される前に自殺したりしそう

487:名無しさん@ピンキー
09/04/18 12:26:31 lCbmtKiy
幸せに終わってもまた一からやり直しか?
あ、あれか、“100万回生きた”の線か

488:名無しさん@ピンキー
09/04/21 11:04:45 JOvnGzTk
年上年下同い年
どの馴染みがいちばん好まれてるのかな

489:名無しさん@ピンキー
09/04/22 00:27:31 nUL5Sh+B
同い年大好き!!

いや年下も年上も良いんだけど、やっぱり同い年になっちゃうなぁ。

490:名無しさん@ピンキー
09/04/22 00:40:24 Dj1sv6gL
そりゃ幼馴染の王道にして神髄といえば同い年だろう。
しかし年上年下もまた素晴らしく、どれが欠けても人生は退屈だ。

491:名無しさん@ピンキー
09/04/22 01:11:31 gfYhZiPC
同い年原理主義が参上!

が、年下や年上の幼なじみは、それはそれで趣があり……一概にどれがいい、とは言えないな
ま、自分で書く分には同い年以外はないんだけどね

492:名無しさん@ピンキー
09/04/22 04:31:15 jDySnpMy
同学年なんだけど女の子の方がちょっとだけ早く生まれてて
何かにつけてお姉さんぶるのが良い

493:名無しさん@ピンキー
09/04/22 04:59:44 d4njoKGg
>>525
どう見ても年下です。ありがとうございました。
な見た目だと更にツボだなぁ

494:名無しさん@ピンキー
09/04/22 12:21:41 YmJsC//S
階段で常に自分の数段上をキープしてそこから見下ろしてくるとかもう最高です

495:名無しさん@ピンキー
09/04/23 20:28:01 cgC+AjZD
つまりきみたちゃMなのかね

496:名無しさん@ピンキー
09/04/23 23:08:21 UFwWoz+a
微Mで微S

497:名無しさん@ピンキー
09/04/24 02:37:21 4ZHPHzZq
創作ではドMだが現実ではドS

498:名無しさん@ピンキー
09/04/24 07:22:26 x2XfpRX2 BE:298126433-2BP(1)
同い年≧年上>>>年下

499:名無しさん@ピンキー
09/04/24 17:43:58 rsGeIFCs
テンプレ
「私の方が年上なんだからね!」
「年上って……ほんの数ヵ月差じゃねぇかよ」

500:名無しさん@ピンキー
09/04/24 20:21:12 rdiWf/ue
「うるさいわね、じゃあ月上よ!」
「…そんな言葉聞いたことないっての」
「どっちにしても私のほうが上だってことには変わりないでしょ!」

501:名無しさん@ピンキー
09/04/24 20:39:11 cn6kj/WQ
年上なのに男の方が出来た子でなかなかお姉さんぶれないのもいい

502:名無しさん@ピンキー
09/04/24 23:00:45 4XMDYqNb
完全に同月同日生まれで昔からどっちが早いかもめている仲

503:名無しさん@ピンキー
09/04/25 00:10:16 ZaNr3U+j
「どう男。試験勉強頑張ってる?な、なんなら私が勉強見てあげるよ?」
「あぁ、ありがとう。でも大丈夫だよ。それに女より僕の方が頭いいしね(苦笑)」
「う…じ、じゃあ夜食でも作ろうか?」
「母さんが作ってくれるから。気持ちだけ受取っておくよ」
「うー…(じわっ)」
「…えーと…やっぱり作ってもらえるかな?」
「!うん!(ぱぁっ)あ、で、でも勘違いしないでよ!?ひ、暇だっただけなんだからね!?」
「ふふっ、わかってるよ。(女は分かりやすいなぁ)」

504:名無しさん@ピンキー
09/04/25 00:11:28 ZaNr3U+j
あー・・・
あんま幼なじみっぽくないかな?

505:名無しさん@ピンキー
09/04/25 00:13:03 AXgzlfdg
>>537
いやいやGJ

506:名無しさん@ピンキー
09/04/25 01:07:25 bv8hoZhZ
>>532
その数ヶ月の差で学年が分かれるパターンもいいな

507:名無しさん@ピンキー
09/04/25 06:21:24 TG/Glqyp
いやいや、

508:名無しさん@ピンキー
09/04/25 06:23:36 TG/Glqyp
年下を侮るべからず!
小さい頃から「~~お兄さんと結婚するー」とか言って懐いてくれるお隣の年下っ子とか最高じゃないスか!

509:名無しさん@ピンキー
09/04/25 09:17:34 cfKtiCYv
互いに泥酔している幼馴染カップル(もちろん成人ね)とかは?

510:名無しさん@ピンキー
09/04/25 12:16:54 R15d0m/C
ロリは好きだが、妹属性は嫌いなんで
お兄ちゃんとか言われた瞬間にうわぁってなる、そんな俺は異端
幼馴染かわいいよ幼馴染
典型的でいけば、ショートヘアーに胸大きめってとこか…

511:ボルボX ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:36:15 AXgzlfdg
やっとパソコンの規制解けたと思ったら次の規制に巻き込まれました。
投下します。

512:秋夜思(春の夕べの夢醒めて・番外) ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:37:18 AXgzlfdg
 初秋の西日照りつける畑地だった。

 竹の柵でかこまれた二十坪ほどの土地で、植わった作物が三人の少年にふみつけられている。

 畑の持ち主こそ、荒らされて迷惑しごくというものだが、少年たちにとってそれは意図したいたずらではなかった。

 作物の被害は、畑で展開されている乱闘の巻きぞえである。
 中学生に小学生ふたりが立ち向かっていた。子供の争いとはいえ三人ともさんざんな暴れようで、いずれも鼻や切れた唇から血を流していた。

(この野郎、すっかり怒り狂ってるな。自分も痛い目みることになったのがそんなに意外か)

 眼前の、逆上した中学生の顔色を見て、鈴木満(みつる)はそう洞察した。
 胸ぐらをつかまれて揺さぶられたあげく眉のあたりを殴られ、思わず目をかばって押さえたところであって、じつのところ余裕の持ちようもなかったが。

 満は必死で手をのばし、相手の顔をかきむしろうとした。
 けれど、身長も腕の長さも相手のほうがずっと上だった。こちらの胸ぐらをつかむ腕をぐっと伸ばされると、満のほうからは蹴りしか攻撃がとどかなくなる。
 蹴る前に、今度は頬骨のあたりを殴られた。

 揺れる視界のなか、中学生の後方で、脾腹を殴られてうずくまっていた京介がよろめいて立ちあがるのが見えた。その幼い顔の下半分は、鼻血で鮮やかに染まっている。

 渋沢京介は、満の同級生である。
 ともに小学四年生だが、誕生日のきている満のほうがひとつ年上だった。
 喧嘩の相手である中学生はもとより、満に比べてさえ小柄な京介だが、このとき手に細竹を持っていた。

 中学生は、背後の京介には気づかず、満の鼻を力いっぱいねじりながら罵ってきた。

「このくそ野郎―他人の喧嘩に横から手出しして莫迦でしたと言え」

 もがれそうな鼻の痛みに涙をにじませながらも、敵の腕に爪をくいこませ、満はくぐもる声で罵倒しかえす。

「ばがはぞっぢだ、弱虫っ」

 それを聞くと中学生はいきりたち、満の胸ぐらは離さないまま、鼻をねじっていた手をあげてまたも握りこぶしをかかげた。
 すばやく満は手で顔をかばった。これ以上殴られるのはごめんである。

 敵の後ろでは京介が攻撃態勢に入っていた。長柄のなぎなたを構えるように細竹を持ちなおして腰を落とし、ためをつくっている。

(おい早くしろよ、キョウスケ、早くそれでこいつを叩け)

 満の急いた内心に応えるように、京介が細竹を横殴りに振った。
 しなった竹がぶうんと暮れの空気を薙ぎ、満を殴ろうとしていた中学生の首筋を襲ってしたたかに打つ。

 当たった場所は急所だが、昏倒させられるたぐいの打撃ではなかった。
 柵の補修用として畑の隅につまれていた細竹は、長柄の武器にするには細すぎ、軽すぎる。
 そのかわり、しなる一撃は鞭に似て、小学四年生の京介の手によるものでもかなりの激痛をともなっている。
 皮膚が裂ける痛みをまともに浴びた中学生は叫び、即座に満をつかんでいた手を離してとびのいた。距離をとったかれは首を押さえ、怒りで顔を朱に染めた。

513:秋夜思
09/04/25 14:38:42 AXgzlfdg

「汚い喧嘩しやがって! 二人がかりのうえに武器もちだして。
 だから金貸しの家の餓鬼なんてのは見下げたものだっていうんだ」

 鼻にしわをよせ、京介を見つめて吐き捨てた中学生に、かわって満が啖呵をきった。

「四つも年下のキョウスケにさんざんからんでおいて、反撃されたら『汚い喧嘩だ』か。どっちが卑怯だよ」

「そいつは道場に行ってるだろ! 俺は武道なんかやったことはない」

「だから一対一が公平だとでも言うつもりか。こいつはまだ年齢一桁なんだぞ」

 自分自身もわずか十歳ながら、満は退かずに言いかえした。
 その満の横をとおり、鼻血をぬぐいつつ京介が前に出る。
 細竹を投げ捨て、京介はぎらぎらした目で中学生をにらみつけた。かれは何度も叫んだ言葉を、また指とともに突きつけた。

「もうカキ姉ちゃんのことを悪く言うな」

 中学生はその要求を嘲笑しかけて、異様に殺気立った眼光のまえに笑いを引っこめたようだった。
 いっしゅん気圧された色を面にただよわせてから、忌々しそうにそっぽを向く。

「はん、これからも何度だって言うさ。『おまえの姉貴は遊び女の産んだ子で―』」

 言い終える前に、地面を蹴った京介がかれにむしゃぶりついた。
 相手の挑発的な言葉に同じく怒気をみなぎらせていた満までが、あぜんとする勢いだった。
 京介が目の前で武器を捨てたことで油断していたらしき中学生は、不意をつかれた形になった。組みつかれて脚と脚をからめられ、よろけて後ろに倒れる。
 土ぼこりがぱっと散った。

 あ、まずい、ととっさに満は思った。
 かれも割と喧嘩っぱやいほうであるため、経験的にわかっていた。武器もなしの取っ組み合いになれば、四つ年上で体格にまさる相手に勝てるはずがない。
 京介に助太刀しなければ、と走りだしかけて、満は止まった。

 予想外のことが起きていた。

「また言ったな」

 中学生の腹に馬乗りになった京介は、相手の右手の小指をつかんで、痛烈にねじりあげていた。
 押し倒された状態からその中学生は、自由な左手をあげて京介の髪をひっつかんだ。だが、とたんに苦痛のうめきを洩らす。
 京介がすかさず、指が折れる寸前まで力をこめたようだった。小指の関節がぎりぎりと軋むくらいに極められている。
 激痛に顔をひきつらせた相手の上に、京介の鼻血がぽたぽたと落ちていた。

「言ったんだから、折ってやる。そっちが姉ちゃんを侮辱するなら、そのたびに折る。何度負けたって最後には、かならずつけを全部払わせるからな」

 ためらいのない苛烈な敵意が満面にたぎっている。
 ふだんはややおっとりしている幼い声は、血でくぐもり、獰猛に濁っていた。

514:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:40:07 AXgzlfdg

 こいつこんな奴だったっけ、と助太刀も忘れて満は呆然としている。それは小指を折られそうな中学生も同じのようだった。顔色が蒼白なのは痛みのせいだけではあるまい。
 京介のことはずっと本質的におとなしい奴だと思っていたのだが、今日かぎり認識を改める必要がありそうである。
 この相手にはこれまで我慢してきていたとはいえ、争いに臨んでのこの猛りかたは、闘鶏用の若鶏さながらだった。

 それにしても、指まで折ろうというのは明らかにやりすぎだった。
 満は京介を制止するべきか迷いはじめたが、ためらっているあいだに、中学生が「やめろ」と悲鳴をあげた。小指の付け根の関節がぐりっとねじられている。

 やむなく満は声をかけようとして、後方の騒ぎに気がついた。
 畑の入り口をふりかえる。

 こちらを指差しているほかの子供たちと、柵をとびこえて猟犬か矢のごとく一直線に駆けつけてくる少女の姿が見えた。
 それがだれかを視認してから満が次に吐いた言葉には、安堵と気まずさがかなりこもっていた。

「だれだよ、この期におよんでから夕華ちゃんを呼んだのは」

 その名前を聞いた瞬間に、京介も中学生も地面で動きをとめて凍りついている。

\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\

 数日後の、「お泊り会」の夜。

 あごまで湯にしずめた京介の鼻先に、アヒルのおもちゃがぷかぷかと流れてきた。
 湯の熱にやや朦朧としながら、少年は浮いたおもちゃを両手でそっと捕らえた。

 京介は杉材の湯船につかり、風呂場に流れる憤懣の声にだまって耳をかたむけていた。

「あそこの畑の持ち主ときたら、聞きしに勝る怒りっぽさだったよ。
 職員室にどなりこんできて、俺と京介をわざわざ呼び出させたうえ、先生たちの前で『今後一切うちの土地を踏むんじゃねえ』と拳骨落としたんだぜ……いまどきそこまでするかあ?
 作物を倒したのは悪かったけど、あちこち怪我してるのにこぶを増やすことはないじゃん、そう思うでしょ!?」

 渋沢邸の風呂場だった。
 場所からして当然といえば当然だが、木製の風呂椅子にすわって愚痴りつづけている満は京介とおなじく全裸である。
 その満の話し相手は京介ではない。

「私からは何とも。暴れる場所を選ぶべきだったねとしか言えないなあ」

 おなじく風呂椅子に腰かけて、満の背中を泡立つタオルで流してやっていた京口夕華が、苦笑ぎみに応じた。
 満がすばやく反応して首をふった。

「俺や京介が、あんな雷親父の畑をわざわざ指定したわけじゃないってば!
 夕華ちゃんが前もって頭下げといてくれなかったら、ぜったい拳骨一発じゃすまなかったって」

 湿気に濡れた壁に声がはねかえって響く。
 アヒルをもてあそびながら、京介はちらと何度目かに洗い場のほうを見た。
 視線の先にある満の顔はなんだか赤い。背を伸ばして座り、いつになく口数を多くしている。

515:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:41:19 AXgzlfdg

 背を流されながら、満はどう見てもがちがちになっていた。
 愚痴にしてもほんとうに畑の主に怒っているわけではなく、現在の状況に戸惑ってしゃべらずにはいられないという感じだった。

 夕華のほうは、いつもどおりに屈託なく、落ちついた声で会話している。―こちらも身につけているものは、腰に巻いた湯文字だけだった。
 満の緊張の原因が、裸の上級生女子にかいがいしく世話されているためであることは、ほぼ間違いない。

 京介はふてくされ気味に目を細めた。
 談笑する二人の姿は、なぜか見ずにはいられないがぜんぜん面白くない。

(あちこち痛いから気分が苛立つんだ、きっと……)

 数日前の喧嘩であの中学生に殴られた部位が、じくじく痛む。腫れは引きかけていたが、湯につかっているうちまた傷が熱を持ってきていた。
 振り切るように強引に目をそらし、京介はむっつりとアヒルを湯にしずめた。

(お風呂上がるまでに気分変えなきゃだめだ。友達と一緒のお泊り会なのに、不機嫌になってるわけにはいかないんだから)

 京口家と渋沢家のあいだでの「お泊り会」は、かなりひんぱんにあった。
 たいがいは祖父に連れられて、孫たちがどちらかの家にいくのである。
 年来の友人である祖父たちは夜遅くまで話しこむことが多く、子供たちは子供たちで好きなようにやるのが常だった。

 ただし今回の、渋沢家のほうで開かれたお泊り会は、いつものそれとは様子が違う。
 夕華にくわえ、満が来ている。孫を助けたお礼ということで、京介の祖父が招いたのだった。代わりにというべきか夕華の祖父は今夜は訪れていなかった。

 別に、だからどうというわけではない。
 お泊り会で三人以外の子供が混じるのは、これが初めてではない。
 それに、満は京介にとっても特に仲のいい友のひとりだ。数日前にも喧嘩に加勢してくれたほどの友人に、文句があるはずもない。

 ただ―
 最近、満がよく夕華に話しかける気がする。それもなるべく人に聞かれないようにして。
 今日もこの家に来るや、二人きりでひそひそと何かを話していた。
 もちろん京介は見て見ぬふりをした。が、いかにも秘密の話といった二人の雰囲気や、かれの話に興味をひかれているらしい夕華の様子に、どうしてだかむずむずするものを覚える。

 満とは以前、好きな女子がいるかという話をしたことがあった。
 京介は「そんなのいない」と否定したが、満はそれに返して「俺はいるけどな」と宣言してきたのである。
 照れは入っているが真剣な顔で、京介に聞かせておこうとするかのようだった。満の好きな娘は上の学年にいて、その女子のことは京介もよく知っているのだと。

(それがどうしたってのさ……ミツルくんがだれを好きでもいいことじゃないか)

 そう思った直後に、いきなりその満がぱっと立ち上がった。
 夕華に洗髪してもらうのが終わったところらしく、そそくさと腰にタオルを巻いている。

「ありがと夕華ちゃん、それじゃ俺これで出るから」

「お風呂でゆっくり温まっていけばいいのに」

「暑い日に湯につかるのはあまり好きじゃないんだよ。じゃ!」

516:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:42:24 AXgzlfdg

 満は木戸を開け、逃げるように脱衣所のほうへすばやく消えた。
 夕華の「せわしないなあ、もう」というつぶやきを聞きとめ、京介はつかの間(これだからゆうかちゃんは)と内心でため息をついた。わかっちゃいない。

(女の子といっしょのお風呂は僕らにはもう恥ずかしいんだって、なんでゆうかちゃんはわかってないんだろう)

 肌をあらわにすることに無頓着なきらいが夕華にはあった。昔から知っている年下の子たちに対しては。ことに京介に対しては。
 気にしていないというより、気づいていないのではないかと思う。自分より小さな子供だって日々成長していて、異性を見る目がすこしずつ変わっているということに。

 本には、「着付けも入浴も使用人に世話されていたころの華族は、裸を見られることにおおらかであった」という記述がある。
 だが夕華のこれはそれとは違う、と京介は確信している。夕華はこういうことに今もって鈍いだけだ、と。

(僕を子供扱いするけど、そこらへんはゆうかちゃんのほうがずっとコドモじゃないか)

 ちょっと優越感をまじえながらの京介の慨嘆をよそに、「さてと」と夕華はつぶやき、湯船のほうを向いていきなり言った。

「―ほら、次」

 声をかけられて反射的に夕華に向きなおった京介は、ぐっと唇をひきむすんだ。
 言葉はそっけないが、夕華の目は「ここに来なさい」と強く命じている。

 京介は内心で(そんな簡単に言うこと聞いたりするもんか)と強がったが、思いと裏腹に、いつのまにか湯船から這い出していた。
 湯ぼてりした頭をぼうっとさせたまま、ぺたぺたと濡れた足音をたてて歩みよる。
 夕華のまえの風呂椅子にすとんと腰を落とすと、すぐに湯桶で頭からお湯をかけられた。

(……あれ、いま体が勝手に動いた)

 頭を洗われはじめてから、ようやく京介はわれにかえって憮然とした。
 簡単に逆らえなくなるあたり、子供扱いされてもしょうがないのかもしれない。

 それにしても、文句が言葉にしないうちに消えていくほど気持ちよかった。

 少女のほそやかな十指が、頭皮を指の腹で押さえ、爪を立てないようにして毛根から洗っている。
 夕華からしても慣れた頭が相手であるためか、満を洗ったときよりなめらかな手つきだった。一定の速さで、丁寧に頭皮をすみずみまでこすってくる。

 京介は大人しく洗髪されていく。
 会話はなかった。沈黙が重い。
 頭を洗う夕華の指はあいかわらず優しいが、それだけに京介は胸にうずくものを覚えた。

(……なんで、こうなるんだろ)

 あの喧嘩の最後に駆けつけた夕華は、てきぱきと場を片づけた。
 中学生をふくめ喧嘩で傷ついた三人を近所の医者のところに送ったのち、やってきた畑の地主にかわりに謝った。
 できるだけ地主の怒りをやわらげるため、ほかの子供たちにも手伝ってもらって、日が暮れるまで畑をなるべく元通りにする作業をしていたそうである。

517:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:43:44 AXgzlfdg

 けれど京介は、そこまで後始末してくれた夕華と口論してしまったのだった。

 あとで満やほかの子供たちから事情を聞いたとき、夕華は京介にむかって怒ったのだった。
 「前からちょっかいを出されていたなら、なんでもっと早く私か柿子に言わなかったの! 今日だって最初から私を呼べばよかったのに」と。
 うつむいて聞いていた京介は、「言えないし、呼べるもんか」と拒絶の言葉をぶつけたのである。
 その直後に顔をあげたとき、ずきんと心が傷より痛んだ。そのときの少女の顔には怒りより、悲しげな色が濃かった。

(謝ろうかな……でも、釈然としない)

 つぶっていた目をうすく開け、風呂場の床に暗く視線を落としながら、京介は悶々とする。
 けれど、夕華がその悩みを打ち消した。
 桶の湯を京介の頭に少しずつかけて、手ぐしで髪をすいて洗髪剤を流しながら、彼女はつぶやいたのである。

「このまえは、怒鳴ったりしてごめんなさい」

「え」

 京介はぐっと胸がつまるのを感じた。少女は自分から折れてくれたのだった。
 こうなると、まだ意地をはっているほうがみっともない。いや、そんなことよりも、これ以上突っぱねあっていたくはなかった。

「あ、その、僕こそ、ごめん」

 先に謝らせたことで、京介は逆に恥ずかしくなる。いくらか男心に鈍かろうと、やはり夕華のほうが大人なのだと実感させられる。

「きょうくん、私、喧嘩になったことを怒っていたわけじゃないよ。
 発端は、柿子を悪く言われたことなんでしょう。その場にいたら私だって突っかかっていたよ。
 指を折ったのはやりすぎと思うけれど、ずっと体の大きい相手に勝つやり方なんてそんなにないし」

 あのとき夕華がいだいた怒りは、九割が中学生へ向けられたもののようだった。京介はほんの少しだけ、喧嘩した相手に同情を寄せている。
 彼女が場に駆けつけてからは、終始しょげかえっていた相手の姿を思い出す。夕華は折れた指に応急措置をして、医者へ行くよう言ったとき以外、中学生を一瞥もしなかった。

 彼女がそこまで誰かに冷たい怒りを抱くのは珍しいことだった。「年下をいじめた」ということが許せないのかもしれない。
 彼女にとって、大きな子は、自分より小さな子を庇護する義務を負うものなのだ。

 だから京介は、一割とはいえ自分がなぜ夕華に怒りを向けられたのかもよくわかっている。夕華にとってまだ「小さな子」である自分が、頼ろうとしなかったからだ。

518:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:44:56 AXgzlfdg

「―相談していてほしかっただけなの。守ってあげられたのに。
 こんなに殴られて……」

 しんみりした声を出し、京介の体のあちこちに残るあざに夕華がそっと触れてきた。

 京介は首をふった。

「もう僕だって四年生だよ、低学年じゃない。女の子に守られるなんて変じゃないか」

 それに、あいつの前で夕華に頼るなど、絶対にできなかったのだ。

「変なんかじゃないよ、それに心配なものは心配……ううん、この話はもうやめる。
 ねえ、仲直りしましょう」

「うん」

 京介は、今度の提案には素直にうなずいた。
 二度目の洗髪がはじまる。夕華はいつも洗髪を二回に分けてほどこすのだった。

 また会話が消えるが、今度の沈黙は悪いものではなかった。
 丁寧すぎるくらいに長々と頭を洗われているが、いつもとおなじく時間は気にならなかった。

\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\

 子供たちが浴室にいるのと同時刻、渋沢邸の書斎である。
 屋敷の一角にしつらえられたこの書斎は、和風建築のこの家にはめずらしい洋風の一間だった。

 さほど広い空間ではないが、書架の配置により、入り口の扉からは奥が見えないようにされている。
 窓のカーテンも毛氈も壁の煉瓦も、赤色を基調としているが、赤といっても古びたダークレッドで、むしろ落ちついた印象の色である。
 読書するものが心を乱さないよう、派手な彩色のものはいっさいなく、調和を壊さないように配慮が行き届いていた。

 その静謐な空間に、寒気がする光景が現出している。
 来客は書斎に通されるなり、机の前に立ったままで、謝罪をはじめていた。

「このたびは愚息が申し訳ありません、ほんとうに申し訳も……!」

 深く頭を下げているのは茶のスーツの壮年男性だった。
 身なりこそよいが、顔色は土気色に変わっており、低頭しつづけているうちに薄い髪がほつれてきている。
 床の毛氈に頭をこすりつけそうなほど、繰りかえし腰を深々と折っていた。

 重厚なマホガニー材の机から立ち上がって、その謝罪を受けているのは少壮の男である。
 中肉中背で隙なく黒スーツを着こなしたその男は、腰を低くする来客を無言で見下ろしていた。
 銀縁眼鏡の奥で、眼光がわずかに嫌悪を帯びている。

519:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:46:15 AXgzlfdg

 それに気づかず、いまや土下座しかねないほど低姿勢になっている来客は、しどろもどろに脂汗を流して哀れをさそう声を出した。

「明日、あらためて愚息とともにお詫びに参ります。ほんとうに、こちらさまにはなんとお詫びすればよいか」

 受ける男は無言だったが、書斎の奥まったほう、書架の陰からなだめる声がひびいた。

「おいおい、たかが子供の喧嘩でそこまで大げさにならんでも。
 それに、こちらも謝らなければ。うちの孫のほうが大きな怪我をさせてしまったのだから」

 横目でちらと奥のほうを見てから、銀縁眼鏡の男はようやく口を開いた。

「父の言うとおり、京介のほうこそとんでもないことをしました。折れていたのでしょう、そちらの息子さんの指。
 それについては、治療費をすべてこちらでもたせていただきたい」

「そんな……いえ、ご厚意はありがたいのですが……」

「いいえ。いかに『おびえての反撃』にせよ、うちの子のやりようは過ぎた対応ですからね。
 こちらで叱っておきますので、おたくの息子はおたくで言って聞かせてください」

 慇懃な口調だが、言葉のうちにあからさまに、「そちらの息子が小さなうちの子に売った喧嘩なのだぞ」という含みをこめている。
 銀縁眼鏡も冷たい印象のその男は、京介の父親で、渋沢圭介という。
 歳は四十、渋沢家の創設した地方銀行である坂松銀行において常務の地位についていた。
 奥にある革ばりの肘掛け椅子から声をかけたのは、渋沢家当主の元介。こちらは圭介の父、京介の祖父であり、渋沢翁と呼ばれている地域の顔役だった。

「そういうことで、お気をつけてお帰りください。それと息子さんまで謝りに来るには及びませんよ、本当に」

「はい……あの、どうか、くれぐれもお見限りなく……」

「お見限り?」

 うっかり聞き返してしまってから、圭介は舌打ちしかけた。
 相手のほうは、嘆願の糸口をつかんだとばかりににわかに顔を上げ、必死にすがる目を向けてくる。

「はい、ようやく風が向いてきたと申しますか、ご存知のようにうちの会社はいまが肝心な折ですから。
 来年には市場の活性化が取りざたされていますし、ふんばりどころなのです。
 坂松銀行様のほうを通して説明させていただいたとおり、ここでてこ入れしていただければもうじき確実に持ちなおす方向に向かうはずです。
 ですから、なにとぞそこのところを重ねてお願いしたく……いまご当家に見捨てられてはわたしどもは―」

「そんなことをここで言われても困りますねえ。おたくへの融資を仕切っているのはあくまで銀行のほうですよ。
 その件については、調査の結果をふまえて会議をおこなったのち、後日にきちんと通達させていただくと言っているではありませんか。それをお待ちいただきたい。
 今回の私事と、当行があなたの事業に融資するか否かという問題とは、いかなる意味でも関係しませんからご心配なく」

520:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:47:14 AXgzlfdg

 隠しもしない冷ややかな態度で、圭介は突き放した。
 うちしおれて来客が出ていった後、圭介は書斎の奥へ身をはこび、卓をはさんで元介の前のソファに腰を下ろした。
 すっかりぬるくなった珈琲のカップを持ち上げ、一気にあおってから、苦みのこもった息をふうっと吐き出す。

「やれやれ、三日ぶりに家に帰ってきたばかりだというのに。
 親の立場となるとやっかいなものですね。子供の問題がからめば、うちに援助をもとめようという魂胆がある人間とでも、直接顔を合わせざるをえないんだから」

 うんざりしている圭介の表情を見てか、かれの対面にいる渋沢元介は、舶来ものの水煙草をくゆらせる手を休めた。
 ふわふわ癖っ毛の頭をぽりぽり掻き、元介はため息まじりに圭介に話しかけてきた。

「なんともまあ、あの社長もこの数年で態度が変わったものだ……次期社長と呼ばれていたころは傲岸とした若いのだったのになあ。
 圭介、あの会社はやっぱり再建見込みなしかね」

 圭介は「まあ、ないでしょう」と冷然たる口調で答えた。

「あそこは屋台骨が白蟻に食われた態で、すっかり駄目になっています。
 貸付担当者が帳簿を洗いなおしてみたところ、先代の社長が倒れていまの社長に代わってから、急速に経営が悪化していました。経理関係の人間もつぎつぎ入れ代わっていますね。
 市場の波を読みまちがえて不良在庫を大きく抱え、赤字分をあちこちからの借入金で埋めてやりくりしていた末に、いまでは『借金して当面の借金を返す』という深みに入っていますよ。
 うちの損失は、担保をしっかりおさえたおかげでなんとか軽くすみそうですがね。頼みどおりに追加融資してやるなどはまず論外です。
 あとは会社ごと切り捨てるか、融資と引き換えに社長以下いまの経営陣を根こそぎ刈り取って、もっとましな人材をこちらから送り込むかの判断です。
 それにしても同族会社というものは、跡継ぎの育成に失敗すると悲惨なものですね。我が家も京介の教育にはよほど気をつけないと」

 冷笑こそしなかったが、圭介の声には寸分の慈悲もこもっていない。
 口ひげをひねっていた元介が顔をしかめる。

「なあ、お前、すこし冷たい態度を取りすぎてやしないか」

「これはお父さんの言葉とも思えない。冷徹でなければできない家業でしょう」

「それでも冷酷であってはならないし、侮蔑にいたっては匂わせもしてはならない。
 あの社長の息子は、京介に手を出したとき『金貸しの子』と罵っていたそうではないか。じぶんの父親がお前に頭を下げるのを知っていて、長年歯を食いしばっていたのかもしれんぞ。
 うちはあくまでも地元の支持を失うわけにはいかん。血も涙もないと恨まれるようになれば、不利益をこうむる」

「……なるほど、気をつけましょう。
 ところでその喧嘩ですが、京介のやりようが凶暴すぎるというのはわたしの本心ですよ。
 柔術で相手の指を折ったあげく、何度でも指を折ってやると恫喝したそうではありませんか」

「ふむ。子爵様などは話を聞いて『男子はそのぐらいでよい』と上機嫌で京介を褒めておられるがね。
 柿子の生まれを侮辱されたのがきっかけというしな。体を張って家門の名誉を守ろうとする意地自体は、跡継ぎの男には良いことだぞ」

 孫をかばう元介の声には、一方で息子の過去の不始末をちくりと皮肉る色がある。
 鼻白んだ様子も見せず圭介は皮肉を無視して、父の言葉の一部に反応した。

「ほう、子爵様がそう言いましたか。そういえば、あちらの家は代々、尚武の家風ですね。虎狼の家とみずから誇る向きがあったくらいの。
 京介はまだ九歳です。身近な人やものごとから甚大な影響を受ける年頃ですよ。心当たりはありませんか、京介の身近にいる子で」

521:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:48:09 AXgzlfdg

「……よくよくお前は京口家との縁組の話が気にいらないのだな。
 夕華ちゃんの人柄はお前も知っているだろうが。あの娘が京介に悪影響をおよぼしているように見えるかね」

「娘はよくてもその周りがあまりよろしくない、と申し上げているのです。
 京口子爵家の人々には、注意したほうがいいですよ。名家意識に凝り固まった華族というものは取り扱いが難しい。現実に沿わなくても、みずからの価値観を押し通そうとします。
 ことにご子息は、どうやら我が家を敵視までしているようですからね―もしも子爵様に不幸があって、京口家当主が代替わりすれば、あそことの縁組は簡単にご破算になりますよ。
 向こうから婚約破棄されるという運びにでもなれば、わが家は世間の笑いものですよ」

「そんなことはわかっておる、あっちとの付き合いはおまえより長いんだ。
 だいたいまだ先のことだ、あの子たちにしろはっきり婚約させとるわけではないわ。いまは様子見しとるんだと何度言わせる気だ」

「なら、いいのですが。
 しかしお父さん、華族の血をわが家に入れておいても損はないとはいえ、なにもそうまでして京口子爵家にこだわる必要はないと思いますがね」

 それだけを言って圭介は言葉を切った。
 何度話しても、京介の将来の縁談については、議論が平行線のままである。
 もっとも、親子それぞれの意見が一致しないのは、この話ばかりにかぎらなかった。

 圭介は鋭利な眼光をきらめかせて、不機嫌に水煙草のきせるをふかす元介を見やった。
 父の方針にはじつのところ大いに異がある。それは渋沢家の根幹にかかわることだった。

(地元重視のみでやっていける時代はいずれ終わりますよ、お父さん)

 先の大戦後、この国の経済圏は地方ごとに細分化している。「新華族法」とならぶ悪名高さをもつ法案、通称「地方関税」と呼ばれる税制によってである。
 国内で一定量以上の物資を、一定の距離をこえて移動させたときに課されるというこの無茶苦茶な税によって、各地の経済圏は分断されたのである。

 とはいえ、それによって渋沢家のような中小の勢力は保護され、地元の実力者として半世紀の安逸をむさぼってこれた面があるのだが……
 その分断と安逸の時代も、終わりを迎えようとしている。

(新華族法はまだまだ続くかもしれないが、地方関税は遠からず撤廃される見込みなのだから)

 手かせ足かせをつけられた状態でもゆるやかに力をたくわえていた巨大財閥が、いまこそ時節とばかりに歩調をそろえて本格的に政界に働きかけている。
 ひとたび国会で審議にかけられれば、国の政策としては愚かきわまる地方関税は、息の根をとめられるだろう。

 地方経済圏の壁が消えたとき起こるのは、各地に大資本による激突である。大財閥の傘下企業が乗りこんできて、弱い経済圏から吸収、淘汰されていくだろう。
 銀行業界にかぎっても、比喩でなくつぶしあいとなるはずだ。
 渋沢家がそのなかで生き延びていくためには、人情ではなく徹底した合理性が求められるようになるはずだと圭介は見ていた。

 だから、駄目とわかったものはそれ以上の負債とならないうちに、固執せず切り捨てるか処断するべきなのだ。
 たとえば先ほどの社長の会社のように。

 たとえば、代替わりした場合の京口子爵家のように。

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522:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:49:20 AXgzlfdg

 秋とはいえ残暑のきつい日々がつづき、夜も夜とて蒸し暑い。
 涼を感じさせるのは蒼白い月光くらいのものである。

 就寝前、京介と満は、座敷の一間でねそべって将棋を打っていた。
 それぞれ麻の浴衣を、夜着として身につけている。

「キョウスケ、連休の宿題は片づけた? そら、王手」

「もちろん。……待った」

 いまだ飛び交う蚊を遠ざけて、布団は吊られた蚊帳のなかに敷かれている。
 十二畳ほどのこの一階の座敷が、男子組の今夜の寝所である。
 夕華と柿子はべつの座敷に寝ている。今夜は男女ふたりずつ、それぞれ別の部屋に分かれたのだった。

「計算ドリル写していいか」

「じゃあ、十手さかのぼらせて」

「ふざけ……いや、お安い御用だ」

 座敷の障子はあけはなしてあり、縁側から月明かりがさしこんでくる。
 ランプをつけずとも将棋くらいはできる明るさだった。
 持ち駒を点検しながら、ふと満が口にした。

「あのさ……前にしたろ、俺の好きな女子の話だけど。最上級生なんだ」

 それを聞いて、ぴたっと京介の手が止まった。
 ややあってぎこちなく動き、ろくに考えもせず自殺的な悪手を打ってしまう。もっとも、京介は動揺しなくても元から下手な指し手だったが。
 打ったあと、かれは「それがなにさ」と声をなるべく静めて訊いた。

 即座に打ち返した満のほうからも、平静をよそおっているのが丸わかりの言葉が返ってきた。

「あっちの卒業まであと半年だから、いいかげん距離を詰めようかと思ってさ」

「そ……そうなんだ」

 京介の、駒をつまんだ手がわなないた。
 間近から、満の決意を固めた声が届く。

「今はせっかく近くにいられるし、これだけで満足するなんて嫌だからな。
 いい機会なんだから、どんどん自分から動かなきゃなって」

「……大胆なんだな。
 あの……ミツルくん、なんで僕にそういうことを言うの?」

523:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:50:19 AXgzlfdg

 手につづいて声も震わせながら、おずおずと京介は訊いた。
 「おまえにだって関係あるからさ」と、それが満の答えだった。緊張してはいるが、揺れてはいない。

「協力してほしいんだ。だれのことか薄々わかってるだろ」

 将棋盤ごしに見つめられ、われしらず、京介はごくりと唾を呑んだ。

「あっちには今んとこ、俺、おまえと似たような扱いを……いや、明らかにおまえよりも優先度低い扱いをされてるけどさ。
 そうじゃなくて、俺を一番に見てほしい。できれば付き合いたいとも」

「……こ、交際とかそういうことは、早いんじゃないかな。僕たちまだ小学生だし……」

「ばっか、将来の布石だって。あっちが卒業して同じ学校じゃなくなってみろ、接点ますます少なくなるぞ。
 いまは駄目でもいいんだ。何年かあとにもう一度当たってみるとき、昔の思い出ってやつがあれば有利かもしんないだろ。
 だから、あっちが卒業するまでいろいろ印象づけて……そうだな、一回告白くらいはしときたいって思ってる。
 いろいろと、おまえに協力してもらうかもしれないから話したんだ」

「―それは」

 京介はうつむいた。

(協力は無理だ)

 満のことは、親友だと思っている。
 それに、夕華の相手が満なら納得できなくもない。この友人は、明るくて侠気があって遊びがうまく、たいてい人の輪の中心にいる。
 いわばクラスの人気者で、タイプ的には夕華と似ていなくもない―そのせいなのか京介とは相性が良かった―お調子者のところはあるが、魅力的な男子である。

 それでも、かれが夕華に近づくことの協力までは、できない。
 それを京介は、この場ではっきり言うべきか迷った。
 だが言う前に、かれの様子をうかがっていた満が照れくさそうにそっぽを向いた。

「やっぱ、とつぜんこんなこと頼むのは変だったかな。
 でもとりあえず今夜くらいはいいだろ。ちょっとあっちの部屋に行ってくる。じつはもう段取りをつけてるんだ。
 でも大人たちが万が一見回りにくることを考えたら、ひとりは部屋にいたほうがいいと思うんだ。部屋がからっぽだと、いざというとき言い訳もしてもらえず、何かとまずいし。
 だからキョウスケはただ蚊帳に入って待っててくれるだけで―」

 急展開に度肝を抜かれて、とっさに京介は手を伸ばし、満の浴衣の裾をつかんだ。

「ま、待ってよ。今夜って、そんないきなり……」

524:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:51:12 AXgzlfdg
「さっき、せっかく近くにいるって言ったじゃん」

 どうやら精神的な距離だけではなく、実際の距離のことも指していたらしかった。
 たしかに夕華が今夜泊まっているのは同じ屋根の下なのだから、絶好の機会といえばこれ以上ないかもしれない。

 だいたい、すでに会う段取りをつけているなら、京介がとやかく言えるものではない。
 だが、ひきとめる手をゆるめなければならないとは思っても、すぐには満の裾を離せなかった。
 それでいて、言う言葉とて見つからず、声は出てこない。口はむなしく開いたままだった。
 満は、京介の手に手をそえて外しながら、「おい、なにを心配してんだよ」とわずかに不機嫌な口調で言った。

「変なことなんかしねえよ。今夜は話してきたいだけだってば」

「……うん……わかってる……」

「だいたい柿子ちゃんの性格はお前がよく知ってるだろ。じりじり距離を詰めるだけでも並大抵の苦労じゃないんだぞ」

「カキ!?」

「ん?」

「……カキ姉ちゃ……ん?」

「うん。柿子ちゃん」

 豆鉄砲を食らわされた鳩さながらの表情で、京介は呆然とした。
 たしかに姉はいま夕華と同じ部屋にいる。
 一気に肩の力が抜け、へたへたとたたみに突っ伏した。

「どうした、キョウスケ」

「なんでもない……姉ちゃんが好きなら協力する、喜んで協力させてもらいます。
 だから行くなら早く行っちゃってくれ……」

「行ってくる。ところでそれ、王手」

 満の指さした将棋盤上では、またしても見事に玉が詰んでいる。
 今度もやはり京介の負けだった。

…………………………
……………
……

525:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:52:15 AXgzlfdg

 ―ふすまを開けて、足音を立てないようにおそるおそる満が廊下に踏み出していったあと、京介は盤と駒を片づけた。
 敗者に科されたペナルティを終えてから、蚊帳にごそごそともぐりこむ。

「疲れた……」

 二枚並べられた布団のひとつに横たわる。
 満の好きな女子がまさか柿子とは思わなかった。弟として日々あの烈しい気性に悩まされている京介からしたら、完全に予想の範囲外である。
 (いじめられるのが好きな人っているらしいけど、まさかミツルくんがそうなんだろうか)と、かなり失礼なことを友人に対して考える京介だった。

 ふと中学生との喧嘩のことに思いいたる。相手が柿子のことを侮辱したあと、激怒した京介に満が加勢してきたのだった。
 あの手助けは、友人としての義理と侠気からだけではなかったのだろう。

(カキ姉ちゃんの悪口で、ミツルくんもあいつに怒っていたのか)

 納得が深まるほどに、自分が安堵していくことに京介は気づいていた。
 満の懸想した女子が夕華ではなかったからだろう。

 姉である柿子を侮辱されたときとはまったく別の意味で、自分はやっぱり夕華のことでは平常でいられなくなるようだ。
 ふだんその意味を深く考えることは避けていたのだが、今回はなかなかそうはいかなかった。
 なにしろ、ほかの男子が夕華と距離をちぢめようとして、それを手伝うことに京介が拒否感を覚えたのは、今夜が初めてではない。 満のばあいは単なる誤解だったが…… 

(……あいつが、最初だった)

 蚊帳網をとおして格子天井を見つめながら、つぎにゆっくり考えたのは、あの中学生のことだった。

 話しかけられたのは去年だった。
 公園で遊んでいたとき、呼び出されて「京口のお嬢さんにこっそり渡してくれよ」と文をことづかったのである。

 押しつけられ、ぽかんとしてそれを受けとり、しばらく立ち尽くした。初めての種類の戸惑いが芽生えていた。
 数時間その場で円をかくようにうろうろ歩いてから、京介はその中学生を探して「ごめんね、なんだか僕、渡す気になれない」と告げ、文を返したのだった。
 険悪な目で見られ、突き飛ばされて京介はしりもちをついた。
 見下ろされ、さげすむように言われた。「前から見てたけど、おまえってまさしく甘ったれのぼんぼんってやつだよな。いつもお嬢さんにべたべたして恥ずかしくないのか」と。

 以来、町内で顔を合わせるたびに「そこの甘ったれ」「金貸しの子」と聞こえよがしに呼ばれてきた。
 たぶん、その嫌がらせも終わりだろう。終わらなくても、もうどうということはない。
 我慢してきた末に反撃に踏み切ったあと、体の大きな相手に対する恐怖はふしぎと消えていた。だから、戦ったことを悔いてはいない。

 すこし後味の悪さはつきまとっていたが。

(……ゆうかちゃんに手紙を渡すくらい、してあげればよかったんだろうか。
 ―ううん、やっぱり、僕の手で渡すのは嫌だ)

526:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:53:14 AXgzlfdg

 重い気分で、京介はごろりと寝返りをうった。
 夕華だって、いつかだれかを好きになる。そんな当然のことを考えるたびに、京介の心には複雑な寂しさがわきあがってくる。
 やっぱり自分は、まだお姉さん離れしきれていない子供なのだろう。けれど、女々しい想いだと自戒していても、やはり自分の手で橋渡し役をつとめるなど嫌なのだ。
 その心の声を完全に無視することはできなかった。そんなことをすればきっと後悔することになると予感があった。

 良い悪いは別として、あの少年とのことはまぎれもなくきっかけだった。京介が、幼児期を脱して思春期を迎えたことの。
 あの少年との最初の悶着以来、なんとなく、京介はそれまでより夕華と距離を置きたがるようになったのだった。

 彼女に可愛がられ、甘やかされるのが恥ずかしい。
 二つ違いなだけで、頭を抑えつけられているのが気に入らない。
 夕華が京介を、弟のような小さな子としてしか見てくれないのが―

「きょうくん?」

 呼び声に、上体をはね起こした。
 唐突に耳にとどいたその声は、廊下のほうから聞こえた。ふすまがわずかに開いている。
 京介が絶句しているうちに、夕華が確認の声を出した。

「起きてるみたいだね」

 白絹地の寝巻きをまとった細身の少女が、影のように座敷にすべりこんでくる。
 彼女は素足でたたみを踏みしめ、後ろ手でふすまの蒔絵の引手を閉めた。一連の動作はすばやいが、音をまったくたてないあたり、狐か猫かという身ごなしである。
 混乱しつつ、とっさに京介は声を投げた。

「なんで入ってくるんだよ!」

 夕華がむっとしたように眉を寄せた。

「人の顔を見るなり、ずいぶんな言い方」

「だ、だって、なんでゆうかちゃんがここに」

 もごもご文句を言う京介に、夕華は耳を貸さなかった。

「ミツルくんが戻ってくるまで、こっちの蚊帳に入れてもらうから」

 そう言うなり、本当に京介のいる蚊帳にもぐりこみ、空になっていた隣の布団にねそべってくる。
 ぬるんだ夜気に、少女の香りがふわりと甘くただよう。京介は思わずとびのくように、夕華から距離をとって蚊帳のすみに身をひいた。
 その態度がわざと大げさにしたように見えて気に入らなかったらしく、夕華は手をのばして京介の袖をつかみ、はっきり機嫌を損じた声を出した。

「何、それは。わざとらしいことしないで、普通にしなさい。さ、こっちに来るの」

527:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:54:09 AXgzlfdg

 普通に並んで添い寝するつもりらしかった。あいかわらず、幼児か同性の友人とおなじ扱いである。
 この困った人から逃れようと、京介は袖をふりはらった。

「やだよ、暑いじゃないか! ひっぱるなよ、ちょっと」

「こら、いい加減にしなさい!」

 あくまで避けようという態度をとられて、とうとう怒り心頭に発したのか、夕華が本格的に腕をつかんできた。
 京介は手をふりほどこうとしてあらがう。もみ合う形になり、すぐそれは蚊帳がきしむくらいの本格的なものになった。
 子供とはいえ双方、柔術のいろはを修めさせられている。

 もっとも、敵意などは毛頭ないため喧嘩といえるようなものではなく、幼い獣のじゃれあいに近い。たびたびあることだった。

 正面から京介におおいかぶさった夕華が、小手をとってかれの手首をくるりとひねる。
 関節を極められて布団に押さえつけられる前に、京介は手首をぱっと返して技を外し、横に転がって逃げた。
 まともに取っ組み合いになると勝てないのだった。夕華は細身だが、京介より背が高い。力でもまだ劣るのに、そのうえ武芸の技量にいたっては比べ物にならない。

 逃げた京介に、すぐさまとびついて背中から押さえこむ形で、夕華が体重をかけてくる。
 少女の柔らかい体をあわてて振り落とすべく、今度は反対側に転がろうとして、そこで京介は完全に捕まった。
 京介の背にはりつくようにして同時に転がった夕華に、腕と脚で抱きすくめられていた。

 ―つかまえた。

 薔薇の花弁のような美唇が、京介の耳朶をついばむほどの近くから、楽しげなささやきを熱い息とともに洩らした。
 夕華のしなやかな脚が、京介の腰に背中側から巻きついている。
 短い攻防だったが、全力に近かったため双方の息と心臓は弾んでいた。寝巻きの薄布を通して、体熱と鼓動が伝わる。
 強烈な困惑を覚え、京介は振りほどこうともがいた。

「はなせ、莫迦っ」

「莫迦とはなに、憎まれ口ばかり叩いて。
 観念しておとなしくしなさい」

 少年の胴に後ろからまわされた夕華の脚が、ふくらはぎで交差してしっかり京介を捉えた。いよいよ逃げようもなくなる。
 まくれた寝巻きのすそから出て、京介の腰をはさんだ少女の太ももが、夜目にも白い。子供のたわむれながら美妙な妖しさのただよう光景だった。
 背から抱きしめる形で密着したまま、ふと内緒話のごとく声をいちだんと低めて、夕華がわけを明かした。

「ミツルくんには、少しのあいだ柿子とふたりっきりになりたいと頼まれていたんだ。だから私は部屋を空けてきたの。
 度胸あるね、あの子。やっぱり柿子が好きなのかな」

「う……うん。そう言ってた」

528:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:55:12 AXgzlfdg

 どうやら、昼間の夕華と満のひそひそ話は、この計画の算段をつけるためだったらしい。
 そうと気づいたとき、京介の体からふっと最後の力みが抜けた。

「柿子、もてるよね」

 そう言うと夕華も手足から力を抜き、京介の拘束をほどいた。なんとなく、少年にもう逃げる気がないことが伝わったようだった。
 少女と少年はやっとのことで、並んでおとなしく横たわった。

「暑いなあ」

 夕華は自分の襟をつかんでぱたぱたと胸元に空気を入れだした。
 目の前でひらめく襟から視線をそらし、京介はぶっきらぼうにつぶやいた。

「ゆうかちゃんが暴れたからだとおもうけど」

「また憎まれ口を。君が意味不明に逃げたからでしょう。
 一度言いたかったけれど、なんでこのごろよそよそしいの。私のどこかが気にいらないにしても、理由くらい言いなさい。
 ほら」

「え、いや……」

 じとっともの問いたげな夕華の視線が、京介にひた当てられている。
 赤子のころから知っている弟分の態度が、むかしと変わってしまったことを、夕華は思いのほか気にしていたらしい。
 (けど、いきなり理由を言えといったって)と京介は目を蒼ずむ闇のなかに泳がせた。


 「お姉さんぶられるのがなんとなく気に食わない」と言おうとしたが、それは途中でひっこめた。喧嘩になるだけならまだいいのだが、本気で傷つかれたくはない。

 では他はどうだろう。今しがたのように夕華にじゃれつかれて密着されたり、素肌が見えてしまったりすると、昔には感じなかった困惑がわきおこってくる。
 それらについては、言えない。そんなことを気にしているとは認めたくない。
 その点はふだんからなるべく考えまいとしているので、今回もさっさと意識から外す。

 もっと他には、と理由を探してみたところで、さきほどの夕華の口ぶりを思い出す。柿子のことを「もてるよね」と評して、くすりと笑んでいた。
 そこで京介はこみあげる腹立たしさを感じた。ほんとうにゆうかちゃんはわかっていない、と。

 年下年上を問わず、近隣一帯の男子のあこがれの的になりつつあるのは、むしろ夕華のほうなのだ。
 子爵令嬢という身分におそれをなしてか、告白にまでふみきってくる者がほとんどいないだけである。それも、今はまだ、だろう。
 柿子はといえば、傍目から見ているとたしかに姉には多くの男子が寄ってくる―ただし、その半分以上は、彼女を通して夕華と仲良くなりたいと思う輩なのである。
 柿子はうまくさばいているようだが、いらだたしいことに、最近では京介も取り次ぎを頼まれることが皆無ではない。あの中学生との因縁も、それが発端だったのだから。

 むろん、これも言うつもりはなかった。

 あれは言わない、これは言いたくないとなるとけっきょく、言葉につまるしかない。
 かといって何も言わないわけにはいかない。不満げな夕華の瞳が、間近から急かしてくる。
 言葉選びに逡巡したすえ、京介は苦しまぎれに言った。

529:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:56:08 AXgzlfdg

「別に、そっちに深刻な問題があるわけじゃないから。ゆうかちゃんが気にしなければいいだろ」

 そう言ったとき、夕華の眉間のあたりに愁いがただようのが見えた。

「避けられるようになれば、気にしないわけがないでしょう」

「その、嫌いとかじゃないからね」

 あわててそう保証したあとで、京介はきまり悪くなって顔をしかめた。顔が熱い。
 悪いことをしている気分に追い込まれたあげくの、言い訳めいた言葉だが、考える間もなく自然に口から出てきた。それがどういうわけかいたたまれない。
 幸いにも暗がりのことである。互いの表情はなんとか読み取れても、頬の紅潮まではわからない。

 夕華は気づく様子もなくあお向けになって、「それならいいか」とつぶやいている。

 開けはなした縁側の障子から、月影が座敷に入ってくる。風はなく、ぬるんだ夜気は動かない。
 枕をならべながら、なんとはなしに話をぽつぽつと続けていく。

「こんな夜はむじなが出るというね」

「空を見れば月がふたつ昇ってたとか? あんなの子供だましじゃないか」

「昔あれだけ怖がっていたくせに」

「ゆうかちゃんがさんざん脅かしたからだろ!
 五歳児の寝入りばなに怪談を語り聞かせるとか、鬼畜の所業だよ」

「あはは。
 むじなは知らないけど、狐ならいるよ。最近鳴き声がするから。耳をすませていれば今夜も聞こえるかも」

「え……いや、その手に乗るもんか。狐もいない」

「ほんとうよ。うちの庭に住み着いたみたい。夜になると町中に出ているんだって」

「……へえ」

「今年、できちゃった結婚をした豆腐屋のおにいさんがいるでしょう。このまえ化かされたと言っているよ。
 十六夜月の明るい晩に、赤ちゃんを抱いて夜道を歩いていたら、狐があとから付いてくる。
 おにいさんがちらちら後ろをふりむきつつ歩いていたら、腕に抱いていた赤ちゃんがいきなり『おとうさん厚揚げちょうだい』って話しかけてきたんだって」

「よほど食い意地が張った赤ちゃんだったんだね」

 本当に眉に唾をつけかねないくらいに警戒していた京介は、「ふん、やっぱり怪談の方向に話を持っていくんじゃないか」という顔をして、ここぞとばかりにまぜかえした。
 が、夕華は神妙に続けた。

530:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:58:01 AXgzlfdg

「そう言ったときの赤ちゃんの口は耳まで赤々と裂けていたんだって」

「……ふ、ふーん……」

「おにいさんはおもわず赤ちゃんを路上に放り出して逃げ帰ったの」

「え、だめじゃないか」

「帰ってから急に頭がはっきりして思い出せたっていうの。おにいさんの子供はまだ奥さんのおなかの中で、産まれてさえもいなかったって。
 誰のものとも知れない赤ちゃんを抱いて、真夜中に外出していたことは覚えてるんだけど、外に出た経緯はいまもさっぱり思い出せないみたい」

 少女がとつとつと抑揚なく語る怪の話に、背筋に冷たいものが差しこみ、京介はついぎゅっと布団をつかんでしまった。
 してやったりと、夕華が声にいたずらっぽい笑いを含ませた。

「こんな夜、だれも気づかないうちに狐が家の中に入りこんでいて、ふすまを開けて部屋をのぞきこんだりしてね。君の知っている人に化けて。
 ふふ、きょうくん、私が狐だったらどうする」

 しかし、つぎの言葉を続けたときに、夕華のからかいの微笑は消え、声が少し震えた。

「いきなり、どろんと消えてしまったり……するかもしれないよ」

 あいにくその声の震えには、京介は気づかなかった。
 少年は怯えをさそわれたことがただ腹立たしく、すぐさま事実とは逆の強がりを言い返した。

「幼児じゃあるまいし、そんなちゃちな怪談で怖がったりするもんか。
 だいたい不思議でもなんでもないね。夢遊病ってやつじゃあないの。豆腐屋のおにいさんは、きっと夢を見ながら寝ぼけて外にさまよい出てたんだ。
 赤ちゃんなんて最初から抱いてなかったんだよ。悪夢にかわったところで目がさめたけど、夢の印象が強すぎて現実とのあいだがあいまいになってるんだよ」

「ふうん……でも、夢だとしてもなんだかぞっとすると思わない。
 おにいさんは、夢を見ているうちは赤ちゃんのことを疑いもしなかったんだよ。まだ生まれてきていないはずだって気づくこともなかった。
 時々あるでしょう、真に迫った夢が。この世にいないはずの人がいたり、自分がいまある自分でなかったり……起きてからやっと『ああ、いまのはほんとうのことじゃなかった』って気づくような」

「そりゃ、そういう夢くらい僕だって見たことはあるよ。死んだおばあちゃんと昔どおりに話してて、おやつもらったとかね。
 けど、なんでそんなのが怖いのさ」

 今度は強がりではない。幽霊だの妖怪だのの話からそれて、京介はほっとしているのだった。
 けれど夕華はゆっくりかぶりをふった。

「怖いよ。ある瞬間まで信じていたことがいきなりひっくりかえって、目が覚めたらぜんぜんべつの世界があったなんて。
 あやふやで、確かでないのが怖いの。吊り橋をわたっていたら、とつぜん足元の板をはずされるようなものじゃない」

531:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 14:58:57 AXgzlfdg

「……なんだか、やっぱりぴんとこない。それにそんなの、夢に限らず現世だってそうだというじゃないか。
 この世では確実なことも変わらないものもほとんどないって、法事のとき来るお坊さんが説いてたじゃない。色即是空諸行無常、タダ春ノ夜ノ夢ノ如シ、って」

 ただのとりとめのない話題だと思い、京介はあくびしながら気楽に話していた。
 その隣で、夕華がつぶやきをもらす。

「そっか。夢も現も同じ、なにも確かなことなんてない、か。―そうだね、そうかもね……」

 あれ、と京介はようやく気がついた。少女の様子がいつもと違うことに。
 見つめられてかすかな胸騒ぎを覚える。

(ゆうかちゃん?)

 いま夕華が浮かべているのは、消え入りそうな寂しげな微笑だった。
 ずっと共に育ってきたはずなのに、彼女のその表情は京介がはじめて見るものだった。

「それならこれまでのことだって、幻を見つづけてたのかもね。
 狐の惑わしか、邯鄲の夢みたいな幻で、あした目覚めたらまったく違った人生がそこにあるのかもしれない。君も私も……」

 網をとおして蚊帳にさしこむ秋の月が蒼い。
 彼女の微笑がどこか透きとおって、かげろうのように薄くゆらめいている気がする。

 衝動に突き動かされ、気がつけば京介は夕華の袖をぎゅっとつかんでいた。
 一瞬のことで、あわてて離す。それでもかれは言おうとした言葉のほうはとどめはしなかった。

「やめろよ、そんな話。よくわからないけど、怪談のたぐいなんかもう聞きたくない」

 怒ったふうをよそおったあと、わざとすねた声で京介は言った。

「じつはちょっと怖かったよ。
 眠れなかったらゆうかちゃんのせいだ」

「―ごめんね」

 やはり、沈んだ笑みだった。
 もうそれを見たくなくて、京介は、育つつある男としての自尊心をいっとき捨てることにした。
 もぞもぞと動き、うつぶせる。幼い柔らかさのある片頬を布団に押しつけ、恥ずかしさを押し殺して、言うための勇気をやしなう。

532:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 15:00:45 AXgzlfdg

 夕華が好むのは、京介に「お願い」されることだとかれは知っていた。お姉さんぶりたがる彼女は嬉々としてそれを聞き入れ、ほとんどの要求をかなえてくれる。
 だから京介は、ここしばらく言おうとしなかった懇願を口にした。

「……あの、僕、ほんとに眠れなくなったみたい。
 だから、昔みたいに眠らせてほしいんだけど」

 最近はめずらしい少年の甘えを聞いて、夕華は軽いおどろきに目を見開いている。
 京介を見つめるその瞳が、やがて、ふっと優しくゆるんだ。
 沈んだ雰囲気が、彼女から消えていくことにほっとしながら、京介はさらに続けた。

「……―歌ってよ、久しぶりに」

 またも赤面し、口にしたそばからぎゅっと目をつぶる。
 夕華の気をまぎらわすために言い始めたことだが、たまの同衾の夜くらい素直でいようという思いも起こっていた。
 はたして無言のあと、少女が身を寄せてくる気配があった。

 ―しょうのない子。

 困ったふうをよそおって、かすかに嬉しげなささやきだった。
 それから歌が始まった。ふたりきりのときの儀式に近い、赤子のころから聞きなれていた、久方ぶりの子守歌。
 始まっても、すぐにはそうと気づかなかったほど、彼女の唇がつむぐ音色は淡いものだった。

   冷たきむろに醸されて、
   若紫の色深く、
   泡咲く酒のさかづきを、
   わがくちびるに含ませよ。

 宝林宝樹のこずえが風に鳴る音か、迦陵頻伽(かりょうびんが)の鳴く声かという雅歌だった。蜜を一滴からめた、温かく甘やかな柔音が、京介の耳に忍び入ってくる。
 一貫して低く、かそけく、清和して澄み、哀婉雅亮にみちみちて、おだやかに眠りの園へみちびく歌。

 あやされて陶然としながらも、夕華に寝かしつけてもらうのは今夜限りにしようと、京介は胸のうちにかたく誓っている。もう幼児ではないのだから。
 それでも彼女にこうしてもらうときがいちばん安らぐのは、幼児のころと変わりなかった。
 これを最後と思えばこそ、いまこのときだけは彼女に甘ったれていたい。

533:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 15:01:46 AXgzlfdg

   忘れがたみよ、津の国の、
   遠里小野の白すみれ、
   人待ちなれし木のもとに、
   摘みしむかしの香ににほふ。

 耳慣れた妙なる調べにくるまれて、京介は急速にうとうとしていく。
 声の高低や音律を、どの段階でどのように変えていけば京介が睡眠に落ち込んでいくのかを、長年の経験で夕華には把握されている。
 リラックスすればつぎは眠気を甘く呼び起こすように、まどろめば眠りをさらに深みにいざなうように。

 同じ歌詞がくりかえし続くこともあれば、途中で別の歌に飛んでいるらしきこともある。それはさほど重要なことではない。
 聴きいる京介は歌詞の内容よりも、夕華の声そのもので夢のふちに近づいていくのだから。

(あ、手―)

 少女の繊美な手で、髪をそうっと撫でられている。
 はっきり目覚めているときは怒り顔で首をふって払うそれも、ほんとうは心地いい。
 まだ意識はあるが、何をされているのかわからなくなっているふりをして、京介はその手の感触に黙ってひたった。

(くやしいな……)

 甘美なまどろみにたゆたいつつ、ぼんやり考えた。夕華に子供扱いされることは嫌なのに、これ以上なくこころよいのが、悔しい。
 いや、本当に悔しいのはそんなことではなかった。
 赤ん坊のころからずっと、夕華にはこんなふうに、いつも面倒を見てもらうばかりだった。今となってはそれが歯がゆくてたまらない。こちらからはなにも返せていない。

   待つにし来ます君ならば、
   千夜(ちよ)をもかくてあらましを、
   忘れてのみは、いつのよも、
   めぐり会ふ日はなかるべし。

 京介は、夕華の胸元に顔をうずめた。
 自分から無意識にすりよったのか、彼女に引き寄せられたのか定かではなかった。
 どちらにしてもすでに、少女の白絹の袖はかれの頭を抱き、やわらかくつつんでいる。

 清浄の伎楽にも似たかれのための歌声。抱擁されて間近に感じる少女の体温。
 鼻腔を満たす白薔薇のような甘い肌の香。髪を撫でてくる優しい手。

 寝かしつけられて眠りのきわにある思考が、温かく澄んだ想いを引きだした。
 今はほとんど借りを返せていないが、いつかこの年上の美しい少女のために何かをしてあげたい。

(もっと大きくなったら……ゆうかちゃんのために、なにかを……―)

   まぼろし追うてくたびれて、
   しばし野末の仮の宿、
   結ぶや君よ何の夢……

\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\

534:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 15:04:40 AXgzlfdg

 暗い部屋のなか、くうくうと穏やかな寝息がふたりぶん、夜具から聞こえてくる。
 渋沢柿子は蚊帳のかたわらにかがみこんで、身動きせず中をじっとのぞきこんでいた。

 座敷の入り口でちょっと開いたふすまから顔を出している満が、「……俺、戻れないだろ?」と同意を求めてきた。
 柿子はうなずき、いまいましげに悪態をついた。

「たしかに熟睡してるわね。この阿呆共」

 起こさないよう気遣った小さな声である。
 いましがたまでは、叩き起こしてやるつもりだった。
 よけいなことを謀ったあげく、満をこちらの部屋に送りこんだことを忘れて、のうのうと寝入っている夕華に腹を立てていた。

 そういうつもりで柿子は部屋のランプを点けたのだが、寝顔を見て、黙ってまた消したのである。
 京介の頭を抱いた夕華は、安らかな表情で眠っている。ランプに照らされたときその目元で露がきらめいたのを柿子は見たのだった。

(……この娘、なんで泣いてんのかしら)

 首をかしげる。
 心当たりはないでもない。来年、夕華が帝都の女学校へ行くという話が持ち上がっている。
 となると、京介との別れを惜しんでの涙だろうか。それだけではないのかもしれないが。
 いずれにしてもこうなると、放っておいてやったほうがよさそうだった。

(―どうせ起こしても話してはくれないだろうし。
 女学校のこと、そろそろこの娘の口から聞きたいもんだけど)

 柿子は、冷めた目で幼なじみの横顔を見おろす。
 入学のための上京うんぬんは、夕華から直接聞いた話ではない。祖父の元介が得た情報を教えられたのだ。
 祖父には、もしかしたらおまえを付いていかせることになるかもしれない、と言い含められている。それはまあ、いいのだが。

(相談もされないと微妙な気分になるのは、なにもあんただけのことじゃないわよ、夕華)

 蚊帳から離れ、柿子はふんと鼻から息を抜いた。
 満に対し、いちおう親友のために弁解しておく。

「意図してあんたを追い出すつもりはなかったでしょうけどね。この娘はいつも京介を寝かせるうち、自分も一緒に寝てるのよ。ほんと成長がないわ。
 ところであんた、今夜はどこで寝るつもりよ。そこらで雑魚寝でもすんの?」

「蚊に食われるのは嫌だな……どこで寝よう」

 考えるふりをしているが、満の声は期待に満ち、視線は柿子の顔色をうかがっている。何を考えているか簡単に読み取れた。

535:秋夜思 ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 15:05:08 AXgzlfdg
 このマセガキ、と呆れ、あーあとため息をついた。

「……ま、京介に加勢してくれたそうだし……
 わかったわよ。あんたはわたしの蚊帳に入れてやるから」

「え、ほんと!? やっ……」

「死人のように寝とけよ。妙な動きを見せたら誇張ぬきで泣くまで殴るわ。
 さっきみたいに顔近づけてきたりすれば、明日の朝陽がしみるほど顔面を腫らすことになるわよ」

 強烈にどすのきいた早口で、柿子は釘を刺した。
 やりかねないと思ったのか満は憮然として黙りこむ。柿子はかれをうながして、部屋に帰るべく座敷から出た。
 ふすまを閉めかけて、ふともう一度、夜具に目をむけた。
 安らかに甘寝にひたっているあの二人は、一見して仲むつまじい姉弟に見える。ほんとうの姉弟よりずっと。

(でも、この子たちは、実際のところ相手をどう思ってるのかしらね)

 柿子が幼いころ、よちよち歩きの京介が自分より夕華にべったりなことで、腹を立てたときがあった。
 「こいつはわたしの弟で、あんたのじゃない」と夕華に抗議し、それは声高な喧嘩に発展した。
 争いのすえに柿子はそばでおろおろする弟をつかまえ、首を絞めかねない剣幕で「おい、どっちがお姉ちゃんだか言ってみろ」と迫ったものだった。

 「カキちゃんがおねえちゃんで、ゆうかちゃんがゆうかちゃんです」という答えを引き出してとりあえず満足したのだが、よく考えればなんだか後半が変な答えである。
 どうもあのころから腹違いの弟は、人間関係で「父」「姉」「友人」というような基本的な分類に加えて、「ゆうかちゃん」という項目を存在させていたらしき節がある。
 そう気づいたあとは、なつかれ度合いを夕華と競うのはもう馬鹿らしくなった。

 今もむかしも、柿子へ対するときの京介の態度はあまり変わらない。
 一方で、夕華に接する態度は、あのころから大きく変化しつつある。
 それでも、あのように寄り添って眠る姿を見れば、三つ子の魂という言葉がすぐ思い浮かぶ。
 表面がどれだけ違ったものになろうと、奥底にはあのころから変わっていない何かがあるのだろう。それはたぶん、柿子との結びつきより強いのだ。

「……せいぜい今のうちに仲良くやんなさいよ」

 最後にそう声をかけて、柿子は静かにふすまを閉めた。

536:ボルボX ◆ncmKVWuKUI
09/04/25 15:09:05 AXgzlfdg
「春の夕べの夢醒めて」の番外編でした。子供の頃の話。
つぎの投下は本編に戻ります。

537:名無しさん@ピンキー
09/04/25 15:44:38 aAZGrwAA
GJ!嫉妬するカキ姉に萌えたw

538:名無しさん@ピンキー
09/04/25 22:41:09 sHlcns/u
GJ!
今のヘタレ京介からは想像もつかんなw

539:名無しさん@ピンキー
09/04/26 00:14:15 jGKbTG+E
さて。空気読まずに投下しますか。

540:名無しさん@ピンキー
09/04/26 00:16:03 jGKbTG+E
「ねぇ男。」

窓越しに女が話しかける。

二人の家は隣同士。昔からよく遊んだりもした、絵に描いたような『幼馴染』だ。

「ん?なんだ?俺今眠いんだけど」

あくびを噛み殺しつつ男が答える。

「その…さ…お、男って、す、好きな人とか…いる…?」

唐突な質問に男が目を丸くする。

「…は?何?いきなり何なの?」

「い、いいから!…ねぇ…好きな人、いるの?」

いつになく真剣な表情で女が男に尋ねる。よく見ると頬が少し赤い。

「……いるよ。ずっと、ずっと前から」

その様子にふざけているわけではないと感じ、男も真面目に返答する。

541:名無しさん@ピンキー
09/04/26 00:17:04 jGKbTG+E
「…そっか。好きな人、いたんだ…」

本人は気付いていないだろうが、顔にはありありと落胆が見て取れる。

男はそれを見て何かを決心したようだ。

「…うん。そっか。ゴメンね変な事聞いちゃって。今のは忘れて!それよりさ…」

女が話を変えようとする。しかし、無理をして平静を装おうとしているのはバレバレだ。

その証拠に、微妙に目尻から涙が零れかけている。


542:名無しさん@ピンキー
09/04/26 00:18:21 jGKbTG+E
「…なぁ女。」

男が女に話しかける。

「…何よ?」

「俺さ。そいつのことがずっと好きだったんだ。いつから好きだったのかもわからなくなるくらい」

「…」

「そいつはさ。強くて、かっこよくて、でも本当は他の子以上に女の子らしくて」

「…やめて。」

「いつも楽しそうに笑ってて、その顔がすごく好きで、でも時々寂しそうな顔をすることがあって、そんな顔見ると辛くて」

「…やだ。聞きたくない」

「だけど声もかけづらくて、遠くから見てるのが精一杯で、でもやっぱりいつも一緒にいたくて」

「やめて!」

女が男の話を遮るように叫ぶ。

543:名無しさん@ピンキー
09/04/26 00:19:02 jGKbTG+E
「そんな話…聞きたくない…」

「…」

「自分勝手だってわかってる。でも、男からそんな話聞きたくないよ…」

「…」

「ねぇ…男…。私、ずっと男のことが好きだったんだよ…?」

「…」

「ずっと、ずっと…でも、男に好きな人がいるなら諦めなきゃいけないよね…?」

「…」

「だから…諦めないといけないのに…」

「…」

女の目から涙が流れ始める。

「…やだよぉ…やだぁ!…ひっく…大好きだよぉ…諦めたくない…ふぇ…」

「…」

「…離れたくないよぉ…うぇぇ…ずっと…ずっと一緒にいたい…ひっく…やだよぉ…男…」

ずっと。ずっと一緒だった。

いつも二人だった。

気づけば、男のことを好きになっていた。

近すぎて、いつの間にか一緒にいるのが当たり前になっていた。

でも、本当はそれは当たり前のことなんかじゃなくて。

気付いていたけれど、声に出したら、もう一緒にはいられない気がして。

必死で自分を騙していた。離れたくなかったから。

けれど、今日。好きな人がいると聞いて。

もう、話すしかなかった。

544:名無しさん@ピンキー
09/04/26 00:20:37 jGKbTG+E
「…」

「ぐすっ…ひっく…何か喋ってよぉ…ふぇぇぇぇん…」

少しの沈黙の後、男が口を開いた。

「…そいつはさ、ちっちゃい頃からずっと一緒でさ」

「…え?」

頭が真っ白になった。

「いつも一緒にいて、バカやったり、喧嘩もしたりした」

「…男」

ちっちゃい頃。喧嘩。

どちらも記憶にある。

「年取るにつれて、段々意識するようになって、話もしづらくなって」

「…」

そういえば、小学校の半ばぐらいからあまり話をしなくなった。

「中学に入るぐらいからは、バカみたいにそいつばっかり気にしてた」

「…ねぇ」

中学の頃は、よく男と目が合った。

会うと、すぐに逸らされてしまったけど。

「高校に入って、凄く可愛くなって、俺なんか全然釣り合わなくて、ずっと我慢してた」

「…ねぇ、男」

高校に入ってから、何度か告白されたことがある。

男のことが大好きだったから、全て断ったけれど。

545:名無しさん@ピンキー
09/04/26 00:21:04 jGKbTG+E
「でも、今日、『好きだ』って言われて、もう我慢できなくなった」

「…それって」

期待しても、いいんだろうか。

「結果なんてどうでもいい。ただ、聞いてほしい」

「…」

男が。もしかしたら。自分のことを。

「女。俺は」

「…うん」

好きでいてくれるなんていう、奇跡を。

そして、今。



「お前のことが、大好きだ。俺と、付き合ってくれ」



奇跡は、起きた。

「…っ!」

546:名無しさん@ピンキー
09/04/26 00:21:25 jGKbTG+E
「…っ!」

声が、出てこない。

嬉しすぎて。

「どうしようもないくらい、お前のことが好きだ。」

「…いいの?私は可愛くないよ?」

夢じゃないんだろうか。

こんなことが起きるなんて。

「さっき言ったろ。お前は凄く可愛いよ」

「…ねぇ。さっきの、本当…?」

だから、確かめる。

これが、夢じゃないことを。

帰ってきたのは。

「…何度でも言ってやるよ。…大好きだ」

望んでいた答え。

「…っう…ふぇ…」

「…なんで泣くんだよ」

「だって…嬉しくて…」

「…そっか。…返事、聞いてもいいか?」

「…うん。……こちらこそ、よろしくお願いします!」

こうして二人は、やっと素直になって。

ずっと、ずっと一緒に。

二人で、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

おしまい。

547:名無しさん@ピンキー
09/04/26 00:22:46 jGKbTG+E
製作時間1時間半ぐらい。
微妙かな?
まぁなんにせよ、読んでくれた人。
ありがとう!

548:名無しさん@ピンキー
09/04/26 00:41:09 jXe0MJ2t
何と言う王道
何と言う直球
素直に言おう
ごちそうさま

549:名無しさん@ピンキー
09/04/26 00:41:19 9zPmWIA1
よくやった

550:名無しさん@ピンキー
09/04/26 02:07:45 MmIpPqhQ
ボルボXさん超GJ!

仲睦まじ過ぎて泣けてくる。
本編楽しみにしてます。

551:名無しさん@ピンキー
09/04/26 10:36:22 Go+E9JG4
柿子「おい京介、俺の名を言ってみろぉ」
京介「カキねえちゃんさま…です」

552:名無しさん@ピンキー
09/04/26 15:46:47 jGKbTG+E
幼馴染みって昔から一緒にいないといけないから今からじゃ作れねぇんだよな・・・orz
俺も可愛い幼馴染みが欲しかった・・・

553:名無しさん@ピンキー
09/04/26 18:14:17 2CxHJCFf
>>585
まったくだ
妹なぞより幼馴染がほしかったッ!

554:名無しさん@ピンキー
09/04/26 18:42:57 0CtAPuMU
"ゆうかちゃんがゆうかちゃんです"・・・ツボだ(w


夕華のキャラが昔某エロ漫画でちょい出てきたキャラに被るのだが、
モチーフがあったりするのだろうか・・・

555:名無しさん@ピンキー
09/04/27 02:29:32 Ds5otSth
遅れながら乙
相変わらずしっかりした文章で書かれていてとても読みやすかったです
次の本編も首を長くしてお待ちしています

556:名無しさん@ピンキー
09/04/28 04:37:38 x3EkwNrb
前にこのスレで話題になっためだかボックスが連載化するそうで

557:名無しさん@ピンキー
09/04/28 19:15:40 DkvRmoCt
>>589
 楽しみだな。


558:名無しさん@ピンキー
09/04/29 21:51:46 0H6+RxMa
うわあああ冥土超がよみがえっちゃったーーー!
お嬢様ー!妹さまー!美鈴ー!てか紅魔館の皆様逃げてー!

559:名無しさん@ピンキー
09/04/29 21:53:00 0H6+RxMa
OK誤爆った。失礼

560:名無しさん@ピンキー
09/04/29 22:30:11 VhvIqva2
どうにか兄と姉を生贄に捧げて可愛い双子の幼馴染みを召喚できないものか・・・

561:名無しさん@ピンキー
09/04/30 22:33:36 9u+An08T
双子幼馴染の見分けがつくのは主人公だけなんて
超ド定番設定は最高だよね

562:名無しさん@ピンキー
09/05/01 06:38:47 KWv4wHiZ
だよね!
双子の姉はクリが弱くて妹は乳首が弱いとか、ちゃんと主人公は昔から分かってるんだよな。

563:名無しさん@ピンキー
09/05/01 15:50:48 trCRssVw
>>595

小学生の頃にたまたま見てしまったAVの内容を3人で実践したのが最初なんですね
よくわかります

564:名無しさん@ピンキー
09/05/01 17:22:22 Q3p0IqCH
タイトルは、
『悶絶焦らしプレイ!!イケないM男の悲劇!!』
姉からは足コキ、妹からは手コキで扱かれ、ギリギリのすんどめ地獄。


565:名無しさん@ピンキー
09/05/01 17:47:41 o1aZqZYO
M男プレイくらいならいいが、もし過激な内容のAVだったらどうする気かと
縛ってのレイプものとか

566:名無しさん@ピンキー
09/05/02 06:46:32 Tfx9eKqj
縛られるのが大好きな幼馴染みになりますが何か?

567:名無しさん@ピンキー
09/05/02 16:23:26 ViDPDtHN
俺が一番好きなコピペ

>小学校のとき、思い切って好きだった女子に
>「結婚してください」と言った。思いきり馬鹿に
>されて、卒業まで笑われた。
>中学も高校も一緒だったからずっと笑われた。
>
>
>
>
>今でもたまに夕食のときに笑われてる。



568:名無しさん@ピンキー
09/05/02 21:27:23 ie4O27XG
>>600
急いで保管庫にある15-49の小ネタを読みに行くんだ

569:名無しさん@ピンキー
09/05/03 00:55:26 dFvyCFzG
>>601
サンクス 
やっぱり幼馴染っていいな

570:名無しさん@ピンキー
09/05/03 03:48:30 jz/yHFqH
red.ribbon.to/~eroparo/sslibrary/o/original1859.html

これの続きってないのか?

571:名無しさん@ピンキー
09/05/03 19:24:39 dFvyCFzG
>>603
探してみたけど見つからないな

572:名無しさん@ピンキー
09/05/03 20:39:21 mzkeockz
>>603
続きはない
何故なら作者が書いてないからな

……はい、しばらくお待ちくださいませorz
話を膨らませるのがうまくいかず……

573:名無しさん@ピンキー
09/05/03 22:37:25 Vh3+Zlz+
>>605
本人かw

いつまでも待ちます

574: ◆1Bix5YIqN6
09/05/04 02:55:13 fspLFsfj
あーあー、酉のテスト中ー。
これから投下しますよ、と。小ネタです。

575:ホットケーキフレーバー ◆1Bix5YIqN6
09/05/04 02:56:12 fspLFsfj

「幼馴染みって面倒なんだよね」
 ……と、そいつは言った。
「知ってるか? おねしょしてた年齢とか、泣かされた回数とか、泣かした回数とか。そういう腐れ縁の面倒くささ」
「大変だな」
「そう、大変なんだよ。だからだな、俺を少しでいいんだ、かくまってくれ。な? 友達だろ?」
「……いや。悪いが、匿えないな」
「……なんでだよ。いけず」
「気色悪いな」
「ぶった切るな馬鹿」
「……俺は話を早くぶった切って後ろを向く事を薦めるよ」
「は? ……げぇ! 早苗ェ―!?」
「はいはいとっととこっちに来ましょうねー? とりあえずペンチでその軽い口を捻り千切ってあげるから」
「ギャ―! プリーズ! プリーズヘルプミー、吉原ぁ―!」
 笑顔で手を振って馬鹿を見送って、俺は頷く。
「分かる。分かるぞ」
 ……そう。幼馴染みなんてものは、基本的に面倒なのだ。

/

 家に帰ると、理汐<りしお>がベランダに寝転がっていた。
 人間関係が希薄になるとされているマンションで、コイツは驚くくらいに遠慮がない。
 面倒な事になる前に、ベランダ窓を開き、声をかける。
「理汐」
 呼びかけに対し、返ってきたのは寝息だ。
 ベランダも、そうきれいな場所でもない。引きずるように部屋の中に入れ、座布団を頭の下に敷き、タオルケットをかけてやる。
 起きた後のために、台所にポテチを探しに行く。
 この手の菓子は常備してあるが、……盗み食いとか、されていないだろうか。
「……ふむ」
 結論を言えば、されていた。大方、昨日の風呂の間だろう。ゴミ箱を開けば、くしゃくしゃになったポテチの袋がある。
 昼寝の後は、何かを食わせなければならない。
 そうでなければ、アイツは―
「は……」
 ため息を一つ。
 非常用に取っておいたホットケーキミックスを取り出し、フライパンを用意する。
 この前蜂蜜を直飲みされたので蜂蜜はない。よって、砂糖を多めに混ぜる事で代用する。
 ……と、背後で理汐が目覚めた気配。具体的には、匍匐前進でこちらに寄ってくる気配がした。
「理汐。あと少し待て」
 がたん、と椅子が揺れる音がした。気づかれていないとでも思っていたのだろうか。驚いた拍子にぶつけてしまったのだろう。
「何故バレた、とお前は言う」


576:ホットケーキフレーバー ◆1Bix5YIqN6
09/05/04 02:56:42 fspLFsfj
「なぜバレ―はっ!」
 答え。お前がパターンすぎるから。
「理汐。おはよう」
「……おはよう」
 ふてくされたように、理汐は言う。
「ホットケーキ?」
「ああ。蜂蜜はないが、その分生地は甘いぞ」
「ならよし」
 立ち上がる気配。そして、歩み寄ってくる気配。
 そして、肩口に手がかかり、ぐ、と力が入った。肩が沈み、そこから理汐がフライパンを覗き込む。
「おおー」
「……理汐、」
「ほら、手元手元。注意してよ」
 ……お前のせいだ、と言えない面倒くささ。
 これが幼馴染みだ、と思う。分かっている。分かっているんだ、馬鹿よ。
「……せめて座って待ってろ。遅くなるぞ、ホットケーキ」
「おまえの嫌がる顔も美味しいからいいよ」
「本当にめんどくせぇ!」
「う、うぉう、ごめんっ!?」
「す、すまん本音が出た」
 ぐ、と強く握られた肩の手に左手を重ねる。強張りをほぐすように緩く、だ。
「……本音って、ひどくない?」
「ひどくないぞ。大丈夫だ。問題ない」
「そう?」
 肩にかかる力が弱くなる。代わりに、うなじ辺りに額が来る。
 ぐりぐり、と押し付ける動きは、それはそれで、邪魔だ。
「理汐」
「……邪魔? 邪魔?」
「邪魔だ」
 答えると、額のこすりつけが加速した。
「……理汐! 料理の途中で邪魔をするな!」
 振り向き怒鳴ると、そこには理汐の笑顔があった。
「やっと振り返ってくれたね、湊<みなと>」
 ああ、と思う。
「ねぇ」
「もう少しだけ、顔、近づけてもいいかな」
 ―幼馴染みと言うのは、面倒だ。
 返事は無言。理汐はそれを好き勝手に、……俺の思い通りに解釈して、肩に再度力を込めてくる。俺の膝はそれに逆らわず落ち、そして、ん、と彼女は息を漏らす。
「……ちょっと、ホットケーキの味。あとにおい」
「味見したからな」
「ずるい」
「味見がずるいとはなんだ。お前が作るか?」
「……ごめん。代わりにホラ、……私食べていいよ?」
「……夜にしろ」
 やっぱり、幼馴染みは面倒だ。
 面倒を見なくちゃならないし、NOと言えなくなってしまう。
 にひ、と笑う彼女のため、俺はホットケーキを焼いていく。

577: ◆1Bix5YIqN6
09/05/04 02:58:14 fspLFsfj
/
投下終了。
うん、勢いで書いただけに、明日になれば投下できないと思ったんだ。
ホントはエロまで行きたかったけど眠いからナシだよ!
……どうしてプロットきちんと考えてないのは書くのが早いのか。
楽しんでいただけたら、本当に幸いですよ、と。

578:名無しさん@ピンキー
09/05/04 03:46:16 Xmlk7gD2
GJ!
俺もこんな幼馴染がほしかったッ!

579:名無しさん@ピンキー
09/05/04 05:46:03 NupB2qC6
これはGJ
かわええなw

580:名無しさん@ピンキー
09/05/04 07:32:37 9Dcy/8Kr
かわいすぎだろGJ……

581:名無しさん@ピンキー
09/05/04 10:31:40 h24Ml330
ほのぼのしてていいな

しかし題材がホットケーキとは貴様まさか甘スレn(ry

582:名無しさん@ピンキー
09/05/04 14:14:02 08BgGrhm
しがみついてうなじに額つける図とか想像するだけでテンション上がった。
そして「私食べていいよ」に拒否しない展開に期待した。
これは当然夜にいただくシーンも書くんだよな。

583:名無しさん@ピンキー
09/05/06 09:05:08 /guMZp7H
最初は男の後ろをちょこちょこついてまわり、成長するにつれ、
男の服の裾を掴み、背中に隠れ、手を繋ぎ、腕にしがみつき、常に抱きつき離れない。

そんな依存系幼馴染み。

584:名無しさん@ピンキー
09/05/06 10:00:23 /LC3Td+p
お前らが糖尿なのはよくわかったw

585:名無しさん@ピンキー
09/05/06 17:18:50 oaTs6yb5
甘スレ行けお前等




あっちで待ってるからw

586:名無しさん@ピンキー
09/05/08 19:47:21 YVtvdvRj
ホットケーキと聞いて甘スレからきました

587:名無しさん@ピンキー
09/05/09 00:14:51 xmtgGA5M
甘スレってどこだい……?

588:名無しさん@ピンキー
09/05/09 00:18:38 kXjwPvdv
板内を「甘」で検索すればすぐ出てくる

589:名無しさん@ピンキー
09/05/09 00:28:22 xmtgGA5M
サンクス

590:名無しさん@ピンキー
09/05/09 00:29:09 xmtgGA5M
連レスになって悪いが、作者は甘スレのことを知らなかったので、偶然の一致だと思われまする。

591:名無しさん@ピンキー
09/05/09 21:32:46 5gzEqny+
幼馴染、純愛、新婚、甘えん坊の4スレをブックマークしている俺に死角はなかった

592:名無しさん@ピンキー
09/05/09 21:56:19 x8kReoFG
>>624
その中だと純愛だけ未ブクマだったが今から常駐するか

593:名無しさん@ピンキー
09/05/09 21:57:51 pDdrJA1G
えーと
>>603で所望された話の続きを書き始めました
とりあえず起承転結の「承」、その1ができたので、投下します

594:幼なじみとなくしもの
09/05/09 22:07:10 pDdrJA1G
俺と紅葉が友達になってから、数日が経った。
今日は『母』こと静子さんの他に、ちょっとした来客があった。
俺たちに縁が深い、しかし「俺たち」の知らない面々である。

「紅葉ぃ、心配したんだから~っ!」
入ってくるなり紅葉に抱きつく女。
「え、あ、あの?」
「あぁ、頭にケガしてるし!でもお肌とかはいつもと同じだぁー」
困惑する紅葉をよそに、そのまま頬擦りを始めてしまう。何だこの女。
「ちょ、ちょっとアンタ」
よくわからないが、怪我人なんだから大事に扱え、と言おうとしたとき、
「こら、三雲。秋吉が困ってるだろう」
「ほらほら、とっとと離れる」
後から入って来た二人の男に引き剥がされた。
「あ、もう!いいじゃないスキンシップくらい!いつものことよ?」
お楽しみを邪魔されたかのように頬を膨らませる女。しかし、
「その『いつも』がわからないのがこの二人だろう。話を聞いてなかったのか?」
男の一言に、うーと唸って、黙り込んだ。
何がなんだかわからない俺。紅葉も同様、ポカンとした表情を浮かべている。
そんな様子に気付いたか、もう一人の男が苦笑しながら話しかけてくる。
「あー、ごめんな?たぶん、二人とも俺らのことわからんと思うから、軽く自己紹介するわ」

結論から言えば、彼らは俺たちの友人だった。
紅葉に頬擦りを仕掛けた女が、三雲 裕美(みくも ひろみ)。
三雲の行動を止めて黙らせた男が、神崎 博彦(かんざき ひろひこ)。
俺たち二人に自己紹介をすると言ったのが、牧野 和樹(まきの かずき)。
高校時代を共に過ごしたという彼らは、俺と紅葉が事故に会ったことを聞き、
わざわざ見舞いに来てくれたのだという。
……残念ながら、彼らのことも思い出せなかったが。
「でもさー、大変だよね。記憶がなくなっちゃうなんて」
ちっとも大変そうじゃない口調で三雲が言う。
「せっかく紅葉が目を覚ましたって聞いて走ってきたのに、私のこと忘れてるんだもの」
「ご、ごめんなさい……」
申し訳なさそうにちぢこまる紅葉。いや、別にお前が悪いわけじゃないと思うぞ。
紅葉の様子に気付いたか、三雲もちょっとばつが悪そうな顔をして、フォローに入る。
「う、ううん!紅葉が悪いわけじゃないのよ?ただね……」
「ただ?」

595:幼なじみとなくしもの
09/05/09 22:09:20 pDdrJA1G
顔を伏せた三雲を覗き込むように見つめる紅葉。と、三雲はニヤリと口の端を吊り上げ、
「せっかく紅葉と私が築いた色々な関係を忘れられちゃって、お姉さん少し寂しいのよー」
ずいぶんと楽しそうに、そんなことを言った。
「い、色々な関係?」
疑問を口にした紅葉に、更に楽しそうな表情を浮かべる三雲。
そのまま紅葉の耳に顔を近付け、小さな声でひそひそと話し続ける。
「そうよー、おんなじ大学で、女の子同士だったから、あんなこととか、こんなこととか……」
「……え、え?わ、私、そんなことまで……!?」
三雲の言葉に顔を赤らめる紅葉。
何だ。
女の子同士で何をするというのだ。
二人の(というか三雲の)話が気になって、つい身体がそちらに傾いてしまう。
一体何を話してるのか、耳をそばだてようとしたところで、
「三雲、勝手なことを吹き込むな」
ここまで黙っていた神崎が、再び三雲を引き剥がす。
「もう、また邪魔して!」
「お前が話すとややこしくなる。少し静かにしていろ」
またも文句を言う三雲を一蹴する神崎。
「まぁまぁお二人さん、そうカッカせず、な?」
間に入ったのは牧野だった。
牧野はニコニコとした表情をこちらに向けて、
「気ぃ悪くせんといてな?俺らと君らは、こんな感じで毎日つるんでたんよ」
と、流暢な(?)関西弁で話す。
「今日は二人の目が覚めたって亮平のオカンに聞いて来た次第。スマンなぁ、騒がしゅうて」
「い、いや。わざわざありがとな」
自分の交友関係に関西弁を操る男がいたことに驚きつつ、礼を言う。
「紅葉ちゃんも大変やったねぇ。傷とか残らんかった?」
「は、はい!大丈夫です、ありがとう」
紅葉に話を振る牧野と、なぜか慌てた風な紅葉。
……たぶん紅葉は三雲の話を反芻していたんだろうが。
そんな紅葉を笑顔で眺める牧野だったが、ふと俺を見て、
「ところで亮平。ジブン、いつ帰ってきたん?」
そんなことを聞いてきた。

それからしばらく、俺たちは他愛もない会話を続けた。
高校時代の思い出や、大学での過ごし方。友達の話など。
「何かジブンとは久しぶりに話すなぁ。3年のときには塾やなんやで話ができへんかったし」
なんて牧野は言ってたが、俺にとっては初対面の気分だ。
自分の知らない「氷川 亮平」を友人に聞かされるのは、何だか不思議な気持ちになった。
紅葉に関しては、三雲が最近の動向を妄想を交えながら話し、そのたびに牧野に突っ込まれていた。
いちいち真に受ける紅葉がずっと真っ赤な顔をしていて、それがまた三雲を煽ったわけだが。
そんな感じで楽しい時間はあっという間に過ぎ、そろそろ三人が帰る時間になった。

596:幼なじみとなくしもの
09/05/09 22:17:08 pDdrJA1G
「結局、春海ちゃんは来ずじまいかいな」
帰りぎわ、ふと牧野がそんなことを言った。
「ハルミちゃん?」
唐突に出てきた新たな人物の名前。誰だ、それ。
俺の顔に浮かんだ疑問符に気付いたか、説明しようとする牧野。
「ん?あぁ、春海ちゃんはな、」
「牧野」
そして、神崎がそれを止めた。睨むように牧野を見つめている。
何となく、場の雰囲気が固まる。
……俺は何か、まずいことを聞いたか?
「……あ、あぁ。スマンな」
剣呑な空気を読んでか、牧野が部屋の出口へ向かう。
「ほな、また。元気で過ごしな」
「あ、あぁ。今日はありがとう」
振り返って手を振る牧野に、俺も手を上げて返す。
「それじゃ、また来るから。紅葉、早く元気になってね!」
「うん、裕美ありがとうね」
さんざんからかわれている内に、三雲とはすっかり打ち解けたらしい。
紅葉は笑顔で三雲を見送る。
「…………」
最後に残ったのは神崎だ。
無言で、俺をじっと見ている。
思えば今日、神崎とは一言も話していない。三雲が話し続けてたのもあるが。
「……ど、どうした?」
沈黙に耐えられず、話しかける。「いや……」
何かを考え込むような、そんな雰囲気である。
……何で、そんなに苦しそうな顔をしてるんだ。
何かを後悔しているような、そんな表情を浮かべる神崎。どうしたというのだろう。
そのまま、再び沈黙が続く。
しばらく考え込むような様子だった神崎が、何かを言おうと口を開き、
「博彦、帰るんちゃうんかー?」
牧野の声に中断される。
タイミングを逸した。神崎は口を閉ざし、
「また来る。元気でな」
一言、そのまま病室を出て行った。
「……何だったんだろうな」
「……さぁ」
首を傾げる俺と紅葉。
彼らの足音が、だんだん遠くなっていた。

「でも、いい人たちばかりだったね」
三人が帰った後、俺と紅葉は彼らの話をしていた。
「まぁ、悪い奴らではなさそうだが。お前、三雲に散々いじられてたろ」
「あ、あれは確かにちょっと恥ずかしかったけど……」
あはは、と苦笑いの紅葉。
まぁ、あれは彼女なりの気づかいだったと思おう。おかげですぐに打ち解けたしな。
「あんな感じで仲良かったんだろうね、私たち」
「たぶんな。実感はないけど」
結局、彼らとの会話でわかったのは、自分たちの高校時代のこと。
残念なことに、記憶の復帰までには至らなかった。しかし、
「あぁいう友人に囲まれてて、よかったと思う」
それは本心からの言葉だ。
彼らとの学校生活は、さぞかし充実していたことだろう。
紅葉も俺の言葉に頷く。そのままポツリと、
「早く思い出したいなぁ……」
なんて、小さな声でつぶやいた。
俺も心のなかで同意する。
ま、すぐに思い出せるだろう。
仲のいい友人が大事じゃないわけないからな。


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