【友達≦】幼馴染み萌えスレ17章【<恋人】at EROPARO
【友達≦】幼馴染み萌えスレ17章【<恋人】 - 暇つぶし2ch383:春の夕べの夢醒めて〈2〉 ◆ncmKVWuKUI
09/04/02 09:58:25 Oet9ybQh

 その言葉の意味を、数拍おいてから夕華は理解した。
 恐怖も虚脱感も胸の苦しさも一瞬わすれ、え、と目をまるくする。
 祖父が妾を囲っていたという話とは、まったくべつの種類の衝撃だった。

 「あの家の嫡男である男児とめあわせる」。その一言が、寝耳に水だった。

(私が、お祖父様に結婚させられる? きょうくんと?)

 きょうくん。京介君。柿子の弟。
 ちょっと前までは素直で、どこへ行くにも自分のあとを付いてきた子。最近はひねくれてきて、ずいぶんと生意気になっている子。

 まさか。考えられない。
 二つ違いのあの子は、夕華にとっても実の弟のような近さだ。
 近いくらいに、近すぎる。だから、そんな相手として意識したことはこれまでまったくない。

 なかった、けれど―

(くらくら、する……)

 鉄貫をにぎっている拳もいないほうの拳もこめかみに添えて、頭をぎゅっと押さえ、夕華はうなだれた。
 心と思考の混迷が極まって、めまいが起きかけていた。

 知ったばかりの暗い現実に少女をひきもどしたのは、聞く耳が凍るかのような父の言葉だった。

「無論、そんなことにはならない。
 おまえならいくらでも良縁に恵まれるはずだ。それをなぜあのような奴ばらになど。
 父上がどう言おうと、わたしはぜったいに認めない。あの家と縁を結ぶことは。虎狼の血と狐狸の血を混ぜることは」

 強固で揺るぎもしない、冷えた意志のこもった断言だった。

 苦しげな顔を上げはしても、父になにを言えばいいのか夕華にはもうわからない。
 いちどきに得た知識が多すぎた。
 大火、赤い財、京口渋沢両家の因縁、祖父の妾のこと、弟のような子との結婚の話、そしてその話への父の侮蔑と拒絶。

 それらの話題、ことに後半のほうは、考えても混乱と苦悩が深まるばかりで―

 いつ立ち上がっていたのか、話し終えたらしい父はすでに腰掛けから歩み去るところだった。
 提灯をのこして足音が館のほうへ消え、そして虫の音が庭に戻ってくる。
 時がたち、迎えにきた姉弟の声がその場に響くまで、少女は立ち尽くしていた。


 京口夕華が女学校へ入学する半年前、夕華の祖父が急死する三年前のことである。


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