キモ姉&キモウト小説を書こう!Part17at EROPARO
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part17 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
09/01/13 23:16:51 wO0qph0Y
■16スレ目
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■15スレ目
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■14スレ目
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■13スレ目
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■12スレ目
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■11スレ目
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part10
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■10スレ目
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part10
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■8スレ目
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part8
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■6スレ目
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part6
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■5スレ目
キモ姉&キモウト小説を書こう!
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■4スレ目
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part4
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■3スレ目
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part3
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■2スレ目
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part2
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■初代
キモ姉&キモウト小説を書こう!
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3:名無しさん@ピンキー
09/01/13 23:17:12 wO0qph0Y
■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。

SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー!荒らしに構う人も荒らしです!!
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・スレは作品を評価する場ではありません


4:名無しさん@ピンキー
09/01/13 23:18:29 wO0qph0Y
■誘導用スレ

嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 第53章
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ヤンデレの小説を書こう!Part21
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お姉さん大好き PART6
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いもうと大好きスレッド! Part4
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5:名無しさん@ピンキー
09/01/13 23:31:30 tvCIQxF7
スレ立てgj!

6:名無しさん@ピンキー
09/01/13 23:42:09 w6IMI4fu


7:名無しさん@ピンキー
09/01/13 23:45:28 rE+MegyI
>>1乙!

Part16から逃げてきました

8:名無しさん@ピンキー
09/01/14 06:06:05 EKRER5Hj
>>1は俺の嫁

9:名無しさん@ピンキー
09/01/14 06:59:29 mM8FrWXh
>>1
キモウトは追って来てないな

10:名無しさん@ピンキー
09/01/14 08:40:26 DsN6/Lpg
>>1

11:名無しさん@ピンキー
09/01/14 13:31:27 JaLk6Xhh

part16にはもう自立してもらわないと

12:名無しさん@ピンキー
09/01/14 14:32:47 Mt4Obf8T
>>1
俺……part16を出ようと思うんだ

13:名無しさん@ピンキー
09/01/14 14:39:33 7pczNlEQ
>>9
追っては来ない。……待ち伏せているだけだ。

14:名無しさん@ピンキー
09/01/14 15:19:12 xMYrdVHV
>>7>>8>>9>>11>>12
「「「「「やっと見つけた、お兄ちゃん」」」」」

15:名無しさん@ピンキー
09/01/14 15:33:31 guZ+K5wT
>>1

あーあ。みんなあっさり見つかりやがって…俺みたいにスケープゴート立てときゃ良かったのに…。ま、これでしばらくのんびり出来るぞっと!

16:名無しさん@ピンキー
09/01/14 17:09:25 teVqCq4f
乙一

17:名無しさん@ピンキー
09/01/14 20:44:48 HWtgeYUz
>>15
フフ 兄さん、私から逃げられると思って?

18:名無しさん@ピンキー
09/01/14 21:09:07 C9skc8hF
>>1

19:名無しさん@ピンキー
09/01/14 23:19:27 S13CdSq4
このスレッドは19を超えました。
もう書けないので兄さんはおとなしくpart16にお戻りください

待ってるから…
もし来なかったら

わかるよね


20:名無しさん@ピンキー
09/01/14 23:39:05 xYOqoEAv
孔明ならぬ、キモウトの罠

21:名無しさん@ピンキー
09/01/15 00:27:47 qc6B9gqb
ジャーンジャーン

22:名無しさん@ピンキー
09/01/15 00:55:31 /+qBj1N9
げえっ、キモ姉!


23:名無しさん@ピンキー
09/01/15 01:06:16 vvmRITjV
 非情の女王
    聖帝 キモ姉

「こんなに苦しいのなら、弟以外の愛などいらぬっ!!」


24:名無しさん@ピンキー
09/01/15 08:14:50 EJ+FvkN5
ライバルの恋人(実は兄弟)を横恋慕し、拉致するキモウト。
愛した兄の為に命を掛けて戦い、兄の為に死ぬキモウト。
自慰をする弟に見とれてしまい、憎悪しながらも愛してしまったナルシーなキモ姉。
弟への愛深きゆえ非情になった高飛車なキモ姉。
弟を助ける為に自らの瞳を差し出し、周囲の子供も可愛がる盲目のキモ姉(但しショタ好き)。
幾度も苦難に逢いながらも、一途に兄を思い続ける病弱なキモウト。

意外にもこのスレではありふれた存在だな。

25:名無しさん@ピンキー
09/01/15 15:00:31 KIBeS59y
>>24

弟……この姉が幼い時より可愛がりそして育てた男
そしてその男は美しく成長した!

師匠「ならぬ! それだけはならぬぞ姉!」
姉「な……なぜ!!」
師匠「きさまがいくら想い募ったところでその願いだけはかなわぬ!!」
姉「そんなバカな!!」
師匠「いかにおまえが愛そうと結ばれぬわけがある!! よいか姉……。あの男はお前の弟!!」
姉「な!! お……弟!?」



姉「弟より愛しい男など存在しねぇ―!!」
師匠「あべしっ!」

26:名無しさん@ピンキー
09/01/15 15:21:26 P+Ozuima
カンフー映画的ノリか…嫌いじゃないぜ。

弟「俺は…無限の宇宙で飛びたいんだ!俺は航空学生になる!」
姉「ダメ!危なすぎるわ!お願いだから普通の学校にして!」
数カ月後…異星人との戦いが始まった。弟はいくつかの戦いにでて腕を磨いた。
弟「ついに親玉か…オハネ25テイクオフ!出るぞ!」
そして弟が攻撃した瞬間、触手に取り込まれた。
弟「うわあああああ…動け!動けよ!」
姉「やっと捕まえた。ここでずーっと一緒にいよう?そのために契約したんだから…」
弟「姉さん!元に戻ってよ!姉さんはソイツのコアとして利用されてるだけなんだ!」
姉「本体の怪しげなババア?ブッ殺したわよ?弟狙いだったから…」

マ●ロスF的ノリでやっちまった… 

27:名無しさん@ピンキー
09/01/15 15:49:36 d+Xn6vN9
姉「まいったな……わたしのコレ(弟)は許しちゃくれないのよね……」

28:名無しさん@ピンキー
09/01/15 19:03:05 0bRKQM2Q
弟「姉さん…もう一度…ぬくもりを…」

サ○ザ的ノリ

29:名無しさん@ピンキー
09/01/15 19:31:07 EJ+FvkN5
キモウト「姉よ…貴女もまた強敵(とも)だった」
キモ姉「我が生涯に一片の悔いなし!!」
キモウト「…じゃあお兄ちゃんは頂いていくね」
キモ姉「悔いな死!!」


あと○塾的なノリだったら…


「ぬぅ…まさか…あれは奇猛妬発情拳…!?」
「知っているのか義姉さん!?」
「兄への狂おしい思いを気として応用する…現代では使い手が絶えたと思われていたが…」
「キモウト八人衆…恐るべき相手だ…!!」


キャプテン○なら…

「(弟の)ボールは友達、恐くない!!」
おーっと!!キモ姉君のオーバーヘッドフェラだぁー!!
「甘い!!」
キモウト三角跳びでそれを阻止す…だが間に合わない!!
しかし弟くんのバー直撃!!


弟死亡確認!!

30:名無しさん@ピンキー
09/01/15 20:38:10 P+Ozuima
姉「逃げちゃ駄目よ!私から、なにより自分から!」
弟「姉さんが何を言ってるのか僕には分からないよ!」
姉「人と関わるのが怖いの?自分が傷つくから?」
弟「いや…姉さんのゲンドウがコワレテいるからヒイてるだけ。」
姉「私と一つになりましょう?それはとても気持ち良いことなのよ。」
弟「逃げて良いよな逃げて良いよな全力で逃げろ!」
姉「裏切ったな!私の気持ちを父さんと同じに裏切ったんだ!」
弟「うわあああああああああ」


エ●ァ的ノリで一発

31:名無しさん@ピンキー
09/01/15 20:49:57 K0DLMGF1
伏せ字ウザス
わかるひとだけわかってね的でオタ臭いからやめようぜ

32:名無しさん@ピンキー
09/01/15 21:28:00 yoaZqWID
>>26
オハネ25って寝台車じゃないか

33:名無しさん@ピンキー
09/01/15 21:46:47 fQC6+nOc
ここまでキモ姉の自演

34:名無しさん@ピンキー
09/01/15 21:54:37 SGHCe32V
ここからキモウトのターン

35:名無しさん@ピンキー
09/01/15 22:20:28 WBimPsVk
あれ…なんで俺…ここ何処だ…頭いてぇ

36:名無しさん@ピンキー
09/01/15 23:36:13 /+qBj1N9
ちょっと姉ちゃんに、部屋に来るように呼ばれてたんだっけ

37:名無しさん@ピンキー
09/01/15 23:38:10 yoaZqWID
誰がキモ姉と同じ部屋で寝るか!
俺は1人で寝るぞ!!


38:名無しさん@ピンキー
09/01/16 00:32:48 qhkfAY8v
ガチャガチャ
アケテヨ>>37クンアケテヨ

>>37(ドアの向こうで何か言ってる・・・
・・どうせこっちには来られないだろ)



キモウト「待ってたよ お兄ちゃん」

39:名無しさん@ピンキー
09/01/16 10:22:00 zSveQ3VO
 >>37は裸に剥かれ、立ったまま柱に手と身体を縛り付けられている。
 そして目の前に置かれた腰丈程のテーブル上に、興奮剤を投与されて勃起したペニスを乗せていた。
「ごめんなさいお姉ちゃん! ヤメてぇぇぇっ!!」
 姉は>>37の真横で冷たく笑い、
「だってお姉ちゃんとセックスしたくないんでしょ? なら、そんなオチンチン要らないわよね? ギロチンポよっ♪ えいっ♪」
 頭上に掲げていた五キロは有ろうかと言う重々しい百科事典を、何の躊躇も無く、>>37のペニスに落とした。

 ―ドスンッ!!

「うわあぁぁああぁぁぁぁぁあっ!!?」



40:名無しさん@ピンキー
09/01/16 10:34:19 mj5WIPWI
>>38
「せっかくだから、俺はこのドアを開けるぜ」(コンバット越前みたいな甲高い声で。)

41:名無しさん@ピンキー
09/01/16 11:10:24 uDiHKlya
>>39
         ,,x-ー:: ":::::
        ,x '"::::::::::::::::::::
      ,、'":::::::::::::,, x-‐ ァ:
    ,,x '"::::::,,、- '"     |:::
    `"i`ー'"        ヾ
      !  、 、,,,,,,,,,;;;;;;;;;彡ミ
     |,,,,ノi `ーヾ;; '"----、
     ヾ::ヽ     -┴'~
      ~|:/ ' ' ' `ー ' "'"
      /_
     l    '' )    i
      ヽ,,、'~`      U
       ゙, __ ,-、_,ノ`
 |/      ゙, `'" ,,y
 |/  彡  ゙、`-'"
   /|/     i
   /        !    ,, -'"
    |     `ー '"|::
    |      /|||ヽ
          /|||||/心
          |ヾ/ /`ー


42:名無しさん@ピンキー
09/01/16 20:35:18 IYBLyhzw
>>前789
エロゲの「彷徨う淫らなルナティクス」がそんな感じの設定だったな
キモウト成分ありでハッピーエンドあり
兄妹姦が最初と最後だけだが

って書こうとしたら埋まったよw

43:名無しさん@ピンキー
09/01/16 20:49:40 mj5WIPWI
>>38>>40を踏まえて妹の姉に対する思いを詩にしてみます。

今はいいのさ全てを忘れて兄と佇む二人きりの部屋、
この戦場で後に残れば地獄に堕ちる、

姉!姉!

殺意溢れるドアの向こうに、奴の声
姉!姉!姉!姉!姉!姉!

流れる血しぶき、後で後で拭け、狙い定める私(妹)ターゲット(抹殺対象)
姉!姉!姉!姉!姉!姉!

今はいいのさ(兄以外の)全てを捨てて獣と化した妹の私、
この戦場でもがき苦しむ地獄の炎、

姉!姉!

殺意溢れるドアの向こうに奴の声、姉!姉!姉!姉!姉!姉!
邪魔はさせない、奴を奴を殺る。覚悟を決めたわ、姉がターゲット。
姉!姉!姉!姉!姉!姉!

ノブに手をかけドア開く

生きて見つめる・・・

44:名無しさん@ピンキー
09/01/16 21:49:25 /F423bt4
(唇から出た血で)赤い彗星(のような速さでやってくる)お姉ちゃんですね。わかります。

45:名無しさん@ピンキー
09/01/16 21:52:47 8x+ZKnsb
>>39
ITEEEEEEEEEEEEE

46:名無しさん@ピンキー
09/01/16 21:56:34 xeTLVl8G
「いやあ、助けて、助けて…お願い、せんせぇ!!」
「何故だね? 君が助けてと言ったからスイッチを切ったんだ」
「でも、だめ、いや、寒い・・・」
薫は 必死で湯川の腰にすがり付いて顔を擦りつける
「お願い,お願い,お願いぃぃ…」

「君は言動が首尾一貫していないな。警視庁の優秀な刑事がそんなことでは」
困る、と言うと同時に、コントローラの出力を最大にしてコマンドを入力する。

G+PPP+K  →↘↓↙←↖↑↗+G+P+K  E+P

「やあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~」

全身を満たした爆発の波動に絶叫した薫は、湯川の右手に強く噛み付き
声を押し殺すと、激しく震えて、椅子に崩れ落ち失神した。
スラックスはすでに夥しく濡れて、湯気を立てている。
湯川は、噛み付かれた右手を振り払おうとせず、ゆっくりと薫の口が開くに任せた。

長椅子に放恣な姿勢で横たわれ、唇を湯川の血で赤く染めた薫を
彼女には決して見せない優しい眼差しで見つめてから
血の流れる自分の右手を意外な物を見つけたように眺める。

「実に面白い」

呟くと、薫に覆い被さるようにかがみ込んで、
血濡れた唇に自分の唇を重ねる。*********
やっぱり鬼畜です。
この後どうしましょう?
1.縛る
2.ラブラブ
3.合体して装置を使って、二人とも失神→草薙に心中と間違えられる
4.その他

47:名無しさん@ピンキー
09/01/16 22:10:30 VVjqlS1l
5.スレチ

48:名無しさん@ピンキー
09/01/16 23:37:34 EtHUZMvW
5.スレチに一票 ガリレオは専用スレがあるのでそちらに投下してください。

49:名無しさん@ピンキー
09/01/17 00:01:49 hYYpZtCT
誤爆に一票

50:名無しさん@ピンキー
09/01/17 00:27:48 uJTVSh15
7.そろそろ投下に一票

51:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
09/01/17 01:30:11 JWBeSZiJ
投下

52:素直クールが着る水着
09/01/17 01:30:52 JWBeSZiJ
燦燦(さんさん)と降り注ぐ太陽の日差し。飛沫になって輝く水と、方々から聞こえる歓声。
汗と海と、薄着の時節。あるいは──人によっては──UFOの、夏。

「流石に凄い人だね、兄さん」

塩の効いた液体が心地良く肌を濡らし、蒸発に従って冷まされる体温が気持ち良い。
突き刺さる陽光に眩しい砂浜、
辺りは人でごった返しているにも拘(かかわら)らず、隣に座る妹の声は不思議と涼やかに通った。

「夏だからね」
「夏だけど、だよ」

返答は少し皮肉気な笑み。クスクスと笑う声が潮風に乗る。

「夏と、海と、水着。男女が大胆になれる3種の神器──だったかな?」

海と人の波からは少し離れたビニールシートの上。パラソルの色彩が投げかける影を、妹の顔が遮る。
色彩は落ち着いた青の、だけどデザインは扇情的なビキニを貼り付けた胸が揺れた。
色白を自慢していた肌は日に焼けてしまい、影がそうする以上に色濃い。
太陽の下ならばさぞ艶のある小麦色として栄えるだろう。格好と相まって大勢の、特に異性の目を惹くに違いない。

「多いね・・・・・・カップル」
「夏、だからね」

仰ぎ見る妹の顔が、つ、と横を向いた。視線は彼方の波間。
乾き始めた黒髪が一房、凭(もた)れていた耳からはらはらと落ちる。
指先まで染みた気怠さの中で繰り返した言葉は、妹の唇から長い吐息を紡いだ。

「夏だけどだよ。兄さん。この暑さだっていうのに、熱いね・・・・・・どこも誰も」

青いシートがガサガサと音を立て、視界に現れた片手で妹が小さな額を撫でる。

「のぼせそう────いいや、溺れそう・・・かな」

言いながら放した手は、僕の胸の上で指を広げた。
くすぐったさの後に落とされた唇が息吹き、熱のある呼気がゆっくりと肌の上を滑る。妹と一泳ぎしたばかりの僕は裸に近い。
反射的な緊張で硬直した肉体が、ゆっくりと押さえられた。
乾ききらない手を胸に、湿った頬を腹に乗せ、妹が抱きついてくる。

「ちょっと」
「大丈夫、どうせばれないよ。私と兄さんとの関係が何なのかも・・・・・・ナニをしているのかもね」

空いていた方の手が、海パンを通して僕の腰に触れた。
押し付けられる、水分を含んでザラついた布地の感触が徐々に下腹、
股間の付近を隠す唯一の布切れの中央へ這い進んでくる。

「~~♪」

鍵盤でも叩くような気軽さでトントンと男性に触れる指先。
疲労した肉体は理性より本能に近くて、集まる血流に熱をもったソコが膨らんでいく。

53:素直クールが着る水着
09/01/17 01:34:19 JWBeSZiJ
「一度こういうセリフを言ってみたかったんだ。
 『体は正直』だね? 兄さん・・・・・・ん」

反論の弁もない。それでも、せめて抵抗の意思を吐くべき口も、妹の口付けによって塞がれてしまう。
海水に重くなった髪を僕の顔へ垂らし、自分の顔を傾けて唇を押し付けてくる妹。
押し付ける位置を上げた豊満な胸は重く、
鼻での呼吸をこなせる程度には慣れているはずなのに、わざと息を吹き込まれた。
匂いとも違う、どこか清涼な感覚に混じる磯の香。
鼻腔に届いた吐息は肺に送られる前に吸い戻され、替わって舌が伸びて来る。
唾液をたっぷりと乗せた柔肉は先端で僕の舌に挨拶をすると、侵入した口腔に纏った体液を塗りつけ始めた。
くねり、うねり、濡れそぼった全身で僕の口内を洗う。ザラザラとした感触に背が震えた。
血の下がる頭に、背にする砂の熱感が遠くなる。海パンごと擦られる部分が固く跳ねた。
高まっていく感覚の終点が彼方、水平線の辺りに見え始める。

「少しはそれらしい気分が出たかな?」

案の定、妹はそこで手を離した。
抜かれた舌から垂れる糸を拭い、手の甲に乗せてから改めて口付け、吸い上げる。

「体力を使い果たすには早いからね。まだ遊ぼう、兄さん。まだまだ楽しもう、2人っきりで」

深く息を吐く僕の上で、妹の表情がにこやかに踊った。

「一夏の思い出は、それからが最高だよ」

立ち上がって離れた背が、膝を曲げて手を伸ばしてくる。
覗き込んでくる瞳には微かな疑いもない。僕にその催促を断る術はなかった。

「分かった」

促されるままに背を浮かせる。しかし、手は借りなかった。
自分でもそうした理由ははっきりしない。妹の目には抵抗が映ったのだろうか。

答えてくれる唇は、立った時には一歩先で僕を誘っていた。

54:素直クールが着る水着
09/01/17 01:36:24 JWBeSZiJ
足のつく波間で戯れ、目標まで競い泳ぎ、水の掛け合いや駆けっこをし、ビーチバレーをし、
そうして勝敗を笑い合い、カキ氷とヤキソバを手にパラソルの影を求めて戻り、お腹を満たして。
青春というものがあるのなら充分に、いや、十二分に満喫したと思う。
振り返らなくても、欠片の後悔もないと言い切れる時間だった。
ただ。
青春とは、書いて字の如く青い春。
蕾が開く前、果実が熟すまで、まだ若い頃だけに許される刹那の時間だ。
だから、僕らに許された青春はここまで。子供の時間は終わり。
一つ大人になる僕らは、どちらかが不本意であれ花を咲かせる僕らは、だから散らさなければならない。
それまで守ってきたものを。開いた花弁の一枚を。

「もういいかな」

海水で口を濯(ゆす)いだ妹は、それだけ言って僕の手を引いた。

『ファーストキスがソース臭のするイチゴシロップ味というのは、幾ら何でもいただけないからね』

そう言った妹の顔には、まだ青い照れ臭さがあった。この時だけは、歳相応の反応だったかもしれない。

「こっちだよ、兄さん。大丈夫──下調べはしてあるから」

今日の企画・立案は妹に任せてある。そうするしかなかったから。
今日僕がここに来て、ここにい続ける理由は全て妹のため。妹の手によるものなのだから。

「足元。気をつけて」

人気(ひとけ)と海辺から離れて海沿いの岩場を目指す。
内陸では先ず見ないごつごつした形の足場を踏んで更に先へ。
妹の足が止まったのは、それから悪戦苦闘しつつの数分を歩いてからだった。

「ここだよ。さあ、気を付けて降りて」

上から見下ろしているとよく分かる、周囲の岩場の中で一箇所だけ空間の開いた場所。
潮の関係か波の浸食が深く、刳り貫いたように適度なスペースがある。
加えて満潮が近付かないと海水も届かないようで、一見して砂は乾いていた。

「ネットって奴は便利だね、一般の有益性を別にすれば大抵の情報は手に入る。
 幸い他のカップ──利用者もいないようだ。どうかな兄さん。
 お誂(あつら)え向きだろう?」
「そうだね」

ゆっくりと降りて、確りと足場を確認してから視線を上げる。
見れば、一足先に着地した妹が屈んで水着を埋めていた。

「万が一、脱いで波や風に流されでもしたら困るからね」

折られていた膝が戻る。
日焼けを免れていた部分が晒され、小麦色と白色のコントラストが陽射しに映えた。
歳の割に大きな胸も毛の生え揃ったソコも隠すことなく、何も恥じ入ることなどないように妹は立っている。

55:素直クールが着る水着
09/01/17 01:38:23 JWBeSZiJ
「ごめんね、兄さん。せっかちで」

言いながら両腕を広げ、潮風を全身に浴びて歩んで来た。
抱き締められ、何よりも強く、妹の肌から女の香が匂い立つ。

「でも、もう我慢出来そうにないんだ。だからお願いだ。
 遠慮なんかしなくていい、一息に奪ってくれ。準備なら済んでる。
 今日、兄さんを一目見た時から・・・・・・・・・いいや、今日のことを思った昨日の夜から濡れているんだ」

触れている体温より熱い、震えた吐息が耳を撫でる。

「さあ兄さん、私はいつでもいい。どんな風だっていい。好きなように私を使ってくれ。
 叶うならいつまでも、兄さんが私の体に飽き果てるまで存分にだ。
 私はそれでいい。それがいいんだ」

こんな時にだけ潮風は止み、海鳥の姿はどこにもなく、波は緩やかで静まっていた。

「兄さん。私を抱いてくれ」

返事はしなかった。僕は溺れるように、妹の体へ沈んで行った。



海水に沈めた下半身を引き上げる。こういう時に男性は楽だ。
外側を流すだけで情事の残滓を消し、表面を取り繕うことが出来る。
ついでに相手のアフターケアの余裕があれば十全だ。
まだ立てない妹の足に、砂を洗い落としたばかりの水着をかけてやる。
僕の背に爪痕をつけた手は、曲げた腕と共に太陽から顔を隠していた。
潮の音(ね)に嗚咽が混ざる。聞いて呼び起こされる感情は悲痛でも罪悪感でもなかった。

「立てるようになったら海で体を洗ってくれ。そのまま水着を着ると・・・・・・多分、分かるから」

緩く開かれた妹の股間からは、白濁した液体が溢れ出していた。
それが何なのかは言うまでもないことだ。決まっている。僕が最もよく知っている。
繰り返した放出の最後、妹に両足で挟まれた腰を引けずにそのまま出したのだ。
妹の、中に。
大丈夫ではあるだろう。問題はないと言えるのかもしれない。
でもそれこそ、そういう問題ではないのだ。

「うん。うん、ごめんね兄さん。すまない。手間をかけさせて、最後に我儘もしてしまって。
 すまない、兄さん。ごめんなさい。本当にごめんなさい」

妹は泣いている。嬉しさで泣いている。
その雫が悲しみか痛みのせいならば、誰かが悪いのだとして、罪が僕にあるのならば良かった。
その方がずっと分かり易い。

56:名無しさん@ピンキー
09/01/17 01:38:48 cLqNxhmw
冬の夜は寒いけれど話は熱いな!

57:素直クールが着る水着
09/01/17 01:39:35 JWBeSZiJ
「でもね、兄さん」

その方が、ずっと救いがあった。

「兄さんには悪いけど私は幸せだよ。一番、世界で一番、幸せだよ。
 今まで家族として愛してくれていたのは知ってる。
 でも今、無理矢理であっても妹じゃなくて女として抱いてくれた。女としての私に兄さんを抱かせてくれた。
 兄さん。ありがとう。ありがとう兄さん。ありがとう。ありがとう」

恋が叶った人間を悲しませる方法が、世界のどこにあるのだろうか。

暫く、妹の瞳からは塩の味がする雫が溢れた。



「次は、いつ来れるのかな・・・・・・?」
「冬か春・・・・・・遅ければ一年後、かな」
「そう。でもさよならは言わないよ、兄さん。愛してる────たとえ、これが最後でも」

最後。迫った妹の唇を受け入れさせたのは、その言葉だったのかもしれない。

どちらにせよ、僕らの関係はこの一度きり。それが約束だった。
許されざる関係であるのではなく、許されない関係であるかもしれない僕らの、
僕がぎりぎりで妥協できた結論がそれ。

具体的な始まりがいつだったのかは、最早知りようもない。
それでも全体の切欠を求めるなら、原因は父の再婚だった。相手は、俗な言い方をすればバツイチの子連れ。
兄妹のいない僕からすればバランスは取れていたと言える。
両者の抱えている一人っ子は年齢が近く性別が異なり、伴侶を亡くした原因が同じく事故死で。
その運命的な出会いを、僕と妹にまで必然と当てはめる気はないけれど。
『お義兄(にい)さん』と僕を呼んだ妹から、兄以前の文字が消えた時には既に手遅れだったのか。
僕が『義妹』を一文字で認識する頃には、戻れない所まで来ていたのか。
僕が大学へ進学した時期には、もう間違いのだけど。

妹に異性として好かれた。弱みを握られた。帰省を口実に呼び出され、たった一度の関係を強制された。
本なら一行にも満たない過程には、果てしなく思えた紆余曲折があったけれど。
それももう終わりだ。妹は約束を守るだろう。妹は僕に嘘を付かない。そこには不思議と信頼がある。

同時に、それだけが僕の支えでもあった。


58:素直クールが着る水着
09/01/17 01:40:23 JWBeSZiJ

2人、熱気を上げる堤防の側を歩く。
仮に大人の足でも夏には怠さを覚えるだろう海の外周、果てなど見えなかった道。
けれど、果てがないわけじゃない。この道にも果てがある。
これまでの僕と妹の関係にも、今日の僕らの関係にも。
無意識にそれをこの道に見立てたのかもしれない。
これで終わり。
これが終点。
ここでお別れ。
歩きながら、そんな思いがあった。
僕らが2人で過ごす夏はここまで。今日の約束もここまで。
妹が約束を守るならば僕は解放され、今までと似た、ただ妹に対する何かが変わった人生が続く。
揺らいでも真っ直ぐに。陽炎が浮かぶ、夏の焼けた線路のように。
その終着駅に妹の姿はない。当然の帰結。有り触れた必然の終幕だ。
当事者の一人である僕が閉幕を願っている以上、物語の公演は続かない。
夏には終わりがあるのだから。ただ、男女としての僕らが同じものを迎えるだけ。
何もおかしなことはない。

そう思った矢先。堤防の終端、海と陸の境界線が見えた。

妹がペースを上げる。その背中を汗をかかない程度に追い、やがて追いついた。
走ればあっと言う間の距離だったから。そんな間を詰めて、妹はほんの少し、まだ先にいる。
でもそこは、堤防とその先との境目を向こう側へ越していて。
水着から着替えた服で立っていた妹が、数歩先で振り返った。

「結局、聞かなかったね? お義兄さん────今日、私が『大丈夫な日』なのかどうか」

懐かしい呼び名が紡がれる。
緩く舞い上がったワンピースの裾が、言い終わる頃に漸(ようや)く降りた。
波の音は遠く、声を掻き消すには小さい。夏の熱気が、じりじりと意識を濁らせる。

「私は兄さんに嘘を吐けない。兄さんにだけは嘘を吐けない。
 出来るのは、言わないことだけ。聞かれない限り沈黙を続けることだけ。
 だから、日取りを決めた段階から、
 私が────血の繋がらない義妹が、どれだけお義兄さんに信頼されているかの賭けだったけど。
 私が、血の繋がった妹以上に家族と思われているのかが鍵だったけど。
 義兄を好きになって、脅して、関係を強要するような浅ましく狂った義妹が、
 避妊や安全日という常識を持っていると考えてくれるかどうかが最後の分かれ目だったけど」

そこで閉じた唇が、賭けの結果を口にすることはなかった。

「いつか行くよ、兄さんに会いに。そしてまた来るよ、兄さんと此処に。その時は・・・・・・たとえ兄妹でなくても家族だ」

愛おしそうに、両手が服で見えなくなった腹部を撫でる。

「産まれる前には会いたい、かな・・・? こっちの海なら水温的にはぎりぎりで間に合うかもしれない。
 次の夏は違う水着を用意しないといけないね。
 2人の子供に障らないように・・・・・・・・・それとも産後のシェイプアップかな? ふふ」

踏み出す前に、今はまだ邪魔にならない腹を抱えた妹は反転していた。
妹と、異性と。更にもう一つの女の混ざり合った目が、一瞬だけ僕を見詰める。

「じゃあね────『あなた』。また今度」

そう言って。
波間の輝きより光に満ちた笑顔を浮かべた義妹は、僕の前から去って行った。
磯の香より濃く、沖の水底よりも深い、仄(ほの)暗い予感を残してから。

59:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
09/01/17 01:42:00 JWBeSZiJ
終了

60:名無しさん@ピンキー
09/01/17 01:56:21 vVUE0CIn
>>59
GJ。良いねぇ

61:名無しさん@ピンキー
09/01/17 02:28:21 zQEUwsIs
ちくしょう…上手いなぁ……
悔しいからGJなんて言わねえからな!こんな寒い夜に季節外れのアッツイの投下しやがってッ!

62:名無しさん@ピンキー
09/01/17 03:33:40 /KY4VDFa
おじさんのSS好きだぜ

63:名無しさん@ピンキー
09/01/17 05:32:23 8r+5GWTM
ぐっじょぶ!
何とかエロシーンの別個投下を!!

64:名無しさん@ピンキー
09/01/17 05:41:58 vzmRtov4
いいふいんきだなぁ…GJ

65:名無しさん@ピンキー
09/01/17 06:27:21 W7oNrS+X
ちょっと一泳ぎしてくる

66:名無しさん@ピンキー
09/01/17 12:08:34 XZrsCi5M
>>65
今日のご奉仕は温水プールですね?
わかります!!!義兄さん

67:名無しさん@ピンキー
09/01/17 12:10:27 uE2fFoo6
おじさん!!ずっと待ってたよ!!!GJ!!!!!

68:Y-275
09/01/17 13:21:04 mEDml/Ju
はじめまして。投下します。
エロ無し。異能モノ。
普段2次スレに投下しているため、キャラの名前が思い付かず、その辺にあるゲームや雑誌からお名前を頂戴したので、
その辺は敢えて突っ込まず生暖かい目で見てやってください。

69:血筋の呪い
09/01/17 13:23:33 mEDml/Ju

「青大、全てはお姉ちゃんに任せてと、言っておいたはずよ。」
甘い香りが充満する部屋。
今日まで抱きつづけた違和感に足を急かされ、入った和室。
中に入った所で、僕の足がすくむ。
部屋に充満した匂いに隠された異様な光景に圧巻され、今まで聞いたことの無い、形容しがたい姉の声に搦め捕られる。
あの日、両親を失い、流れるようにたどり着いた今の生活が全て狂っていたという事実を知る。
見せられ続けた現実は、ひた隠しにされてきた真実がいとも簡単に蹂躙し、2度と戻らないモノになった。

………………………………

「青大(はると)、霞(しあ)、心して聞きなさい。母さん達が呪い殺されたわ。」
両親が死んだ。
その事実を姉が告げてきたのが3ヶ月前。
代々、この街で占術を営む我が藤堂家には、姉と、妹、そしてボクの3人が取り残された。
「幸いにも、既に最後の神托は、私が受け取ったわ。どうにか藤堂家は潰れずにもたせられると思う。」
姉が言う。
「……うえっ、えぐっ、……」
隣で嗚咽づく妹の霞。
冷静に、残されたボクと霞を守るため、姉がボクらに言った言葉よりも、悲しみの方が凌駕したらしい。
それは、ボクも一緒で、
「……………………」
簡単に折れそうになる心を奮い立たせるように無言でその場に立ち尽くすのがやっとだった。
固く拳を握りしめ、震える足を諌めながら。
最も、ボクの心を占拠したのは悲しみではなく、恐怖だった。
血に宿る能力と呪い。
藤堂家に表裏一体のモノとして預けられたもの。
能力の代償に授けられた呪い。
誓約を破れば、与えられるリスク。
今まで、両親につき、占術を学ぶ上で、みっちり叩き込まれた事だった。
それでも…
それでも、やっぱりこうして突き付けられるまで、ボクは逃げ続けていた。
いざ、こうして、現実になってしまえば、自らの身体を全て恐怖で染めあげてしまうのだから。
そして、共に両親から学び、育ってきた姉と妹もそれは同じ事なはず。
「さぁ、泣かないで霞。泣いていても何も変わらないわ。」
それでも姉として、敢えては取り乱さず、冷静に立ち振る舞う月(ゆえ)姉さんの力強いたたずまいに、
幾分かの安堵が流れ込んだのを、よく覚えている。

………………………………

藤堂家は古くは室町時代から、この街と共にある。
時代の推移と共に、明進、暗転を繰り返しながら、現代まで伝わってきた。
「お姉ちゃん、大丈夫かな?」
傍らで霞が呟く。
今、ボクらは庭の離れの前にいる。
人の死に纏わり付く、現実の厄介ごとを全て執り行ったボクらは、今度は家のしきたりを執り行わなければならない。
当主の選定と、契約。
「月姉さんなら大丈夫さ。」
「そっか、そうだよね。」
離れは占術を行う場所。
神聖にして、不可侵。
だから、契約に関係の無いボクらはこうして表で待たなければならない。
いかに、その血を引こうとも、姉が時期当主として契約を履行するまでは、そこに立ち入ることは出来ない。
「お兄ちゃん……」
霞が口を開く。
「私、不安なんだ…」
「呪いの事か…」
胃に鉄を流し込まれるような不快感に、僕は顔をしかめながら言を返す。
「うん。まず、今、私達を脅かすものであることが怖い。
そして、それが、私達の子供にも引き継がれると思うと…」

70:名無しさん@ピンキー
09/01/17 13:25:31 mEDml/Ju
そういって霞が僕の手を握る。
抗いがたい、血の宿命というやつだ。
先に述べたように、藤堂家には与えられた能力と、その報いとしての呪いが受け継がれつづける。
今、ボクらが感じる恐怖を、ご先祖様達も感じ、これから生まれてくる子孫達も感じつづける事になる。
そもそも、藤堂家の血を他に出す事はまかならない。
藤堂家は、子を3人産む。
一番年上の者が、純血を守り、占術を学び、残った2人が結婚し、子孫を残す。
そうして、完成された遺伝子はよく出来ている。
必ず男女が交互に生まれるのだ。
生まれながらにして僕の許婚である妹の霞。
彼女の言うところの私達の子供は、文字通り、将来産まれてくるボクの子供である。
こう考えると、呪縛の中でしか存在できない藤堂家を肯定することになるので、深くは考えないようにしている。
「あ、お姉ちゃん出てきた。」
思考の深淵の中にいた僕を霞の言葉が現実に引き戻す。
「お帰り、月姉さん。どうだった?」
霞の言葉に、離れから出てきた姉に声をかける。
「ええ、問題無いわ。今日から、私、藤堂 月が当主として、藤堂家を継ぎます。」
凛としたたたずまいでボクら兄妹に告げる姉。
「そっか、良かったね。お兄ちゃん。」
歓喜の声をあげる霞。
「ああ。」
肯定の意志を示すボク。
「至らない所も多いけど、これからもよろしくね、青大、霞。」
改めて告げる姉。
何の疑問も持たずにこの日からまた、同じ日々が続くと、本気でボクは思っていた。

………………………………

「姉さん!!」
風雲急を告げる。
そんな言葉がある。
後々、考えてみれば、その時がターニングポイントとなって、波乱が始まる。
的な言葉であるとボクは理解している。
この日、高校で霞が倒れたという事実を知った。
将来を約束された霞の異変に、いてもたってもいられなくなったボクは、急ぎ藤堂の家へと引き返した。
「姉さん、霞は?」
リビングで、祈るように座り込む姉に開口一番、霞の安否を尋ねる。
「……ごめん、青大……」
姉は敢えては明言せずにボクに謝罪をいれる。
呪い。
その言葉がボクの脳裏を過ぎる。
「状態はどうなんだ?」
突き付けられた言葉を拒絶するように、姉に状態を尋ねる。
「今は安定したけれど、さっきまで、ひどい熱でうなされ続けていたわ。」
「そっか…」
姉の口から、一先ずは安心だということを聞かされ、腰を落ち着ける。
姉の前に座り、急かされるように戻った自らを落ち着けていく。
「でも、……いつまた……ごめんね、青大。私が未熟なばかりに…」
腰を落ち着けたボクに姉が伝えた言葉は謝罪。
当主として、姉としての月姉さんの霞を思う気持ちが、痛いほど伝わる。
「そんな、謝らないでくれよ。姉さん。」
姉さんの気持ちがわかるから、だからこそ、気にしてほしくなかった。
気にするべきは血の宿命。
いつまでも、どこまでも、ボク達を、ボク達の過去、そして未来をも縛り続ける呪い。
「なぁ…姉さん…」
ボクは再び口を開く。
「どうしたの?青大?」
姉さんの返事を聞いて、僕は先の言葉を紡ぐ。
「呪いって解くことは出来ないのかな?」
「なにを言っているの青大?」

71:名無しさん@ピンキー
09/01/17 13:27:21 mEDml/Ju
「呪いを解きたいんだ…」
いつまでもボクらを縛りつづけるもの、呪い。
それが有る限りは、ボクらは苦しみつづける。
まだまだ、自覚も無いし、思いは男女のソレとは勿論違うのだけれど、
将来共に歩むことを約束した霞が苦しむことは見るに耐えなかった。
そして霞がこうなったことを、自らの力量不足と気に病む姉を見るのも。
大切な人を失いたくない。
切なる願いとして、それを心に抱く。
そして、その思いの丈を、有りのままをボクは言葉として紡ぎ出す。
「そこまで思っているのね。」
ボクの言葉を受け止めた姉が思案顔をする。
「分かったわ。私が何とかする。藤堂家当主、藤堂 月として、そして、あなたの姉として。」
暫時後、姉は僕の思いを、呪いを解くために、力を貸してくれることを承諾してくれる。
「ただし、私が良いというまでは、青大は何もしないで。」
条件付きではあったが。
「実は、私は少し前に占いで、身内に良くない事が起こることを予見していたのよ。」
姉が続ける。
「それを好転させる為、ここのところはずっと、占術を施してきた。それが完成せずに、翻す訳には行かないことはわかるでしょ?」
姉が言う。
絶対的原則として、契約不履行の禁というものがある。
一度結んでしまった契約は反古する訳には行かないのである。
その上でしか占術は成り立たない。
それはボクも両親から散々習った。
「だから、すべてが終わったら、私が呼びに行くわ。それまでは、青大は待っていてちょうだい。」
姉はそこまでを口にすると、表情を変える。
ボクの心を安堵させるようなものへと。
それでも、ボクは違和感を感じた。
呪いを解きたいと言った僕の出来ることを待つ事だと言う。
そして、姉の作った表情も。
何故だろう?その表情はボクに確かに安堵を与えたはずなのに、宿る瞳の色には不安を感じざるを得なかった。

………………………………

「姉さん、姉さん、霞が、霞が!!」
離れの戸を叩く手が、朱く染まる。
姉が呪いを解くと約束してくれてから3日目の夜、霞の異変にボクは姉を呼びに離れに来ていた。
これまでの3日間はずっとこんなだった。
霞の調子がよくなると、姉は離れに篭り、占術に専念する。
やがて、容態が悪化すると看病に戻ってくる。
ボクが呼びにいくこともあったし、姉が自ら戻ってくる事もあった。
だが、今朝は違っていた。
霞が朝から高熱をだし、ひどくうなされているのに関わらず姉は無言で離れに篭ったのだ。
ボクは霞の側を離れる訳にはいかず、かといって、姉が戻ってくるはずもなく、どっちつかずのまま、時は流れた。
そんな、時間は唐突に終わりを告げる。
先刻、妹は、霞は、息を引き取ったのだ。
そのことの悲しみよりも、朝からの姉が気になって、ボクは夢中で離れへと駆けた。
固く閉ざされた門にボクはありったけの声を張り上げる。
「姉さん!!開けてよ、霞が!!霞が!!」
半狂乱。
その響を伴うボクの声が辺りにこだまする。
先程から30分以上の間、叩きつづけた扉。
扉はそれでも頑なに閉じられつづけたまま。
その扉を押し開く事はボクにはまかりならない。
その部屋は、当主以外の立入を認めない。
沈黙を語る扉。
開く事さえ叶わない、その扉は、越えることのできない壁として存在しているように思える。
そう思うと、自らがなんてちっぽけなのかと思えてくる。
絶望に打ちひしがれ、救いを求めることしか出来ない。
泣けてくる。
呪いを解きたい等と宣いながら、姉に任せることしか出来なかった自分自身に、霞を失った悲しみに。

72:名無しさん@ピンキー
09/01/17 13:29:45 mEDml/Ju
ただ、いたずらに喉を通過する叫びは単なる音としか思えなくなる。
「ち…くしょうっ……!!」
それ以上は堪えきれなかった。
扉を叩く手を力無く弛緩させると、ボクの手は、土を掴む。
何も手応えも無い代わりに、冷たい土を。
"ギイイイィィ"
その時、戒めを解かれた扉がひとりでに開く。
ぽっかりと口を開け、ボクを飲み込もうとせんが如く、暗闇を開く。
「……………………」
禁忌。
もちろん、その中に足を踏み入れることはタブーだ。
それでも、何の手応えも無かったことが気になって仕方が無い。
ボクが飛び込むのを待たんが如く広がる闇の先に答えがあることはわかる。
そこには、ボクの呼び掛けに応じなかった姉がいるのだから。
「………………………ゴクッ……」
瞳の先に広がる漆黒にボクは知らず知らず唾を飲み込む。
踏み出す足を躊躇わさせる血の呪縛と、大切なものを失った悲しみ。
その2つを秤にかける。
こんな時でもボクを縛り付ける血の呪いが忌ま忌ましくなる。
小さい頃から共にあることが義務として育ったから。
本来は秤にかける必要等は無いのに。
かけるべき等価なモノではないのに。
「……ゴクッ……」
ボクはもう一度唾を飲み込み、足を中へと差し向けて行く。

………………………………

「青大、全てはお姉ちゃんに任せてと、言っておいたはずよ。」
甘い香りが充満する部屋。
順路に沿って、たどり着いたその部屋にあったものに驚愕する。
「な、んで…霞…が……」
そこにあったのは、磔けにされた霞の姿。
だけでなく、先日亡くなった両親の姿もある。
「見てしまったのね、青大。イケない子ね。」
そこまでを見渡してから、ボクは初めて姉と目を合わす。
虚ろな目をした月姉さんと。
「あと、少しだったのに…」
姉が呟く。
「姉さんが…」
「ねえ、青大、見える?」
ボクの言葉など無視するように姉が口を開く。
そこに見えるのは先程から変わらない、ボクの家族が磔になった姿。
「もう少しで、私達をこの血に束縛するものが無くなって、私達だけの未来がやって来るはずだったのに…」
目に映る光景に身体を奪われた、ボクの前まで姉がやって来る。
目前まで迫り、真正面から姉の吐息がかかる。
腐った果実のような匂いに目眩を覚える。
「なんで…だよ!なんで…」
「青大が言ったのでしょう?」
姉の視線に捕われてしまう。
蜘蛛のように粘つきボクの身体へ絡み付く。
「呪いを解きたい…と。」
「…………っ!!だからって、違う、その為の答えが家族を殺すことだなんて間違ってる。」
「青大……?わたしの、青大は、そんなこと言わないはずよ……?」
そういった姉の声が、ぞっとするほど冷たい声が耳朶に張り付く。
姉さんがボクを見つめる。
甘い匂いに吐き気さえ催す。
「姉さん……いったい……」
その時、ボクの視界の端が一冊の本を捕らえる。
姉の前から逃げるように、移動すると、一目散にその本に飛びつき、中を覗く。
そして、目に飛び込んで来たもの。

73:名無しさん@ピンキー
09/01/17 13:31:39 mEDml/Ju
その内容の異常さに目を疑ってしまう。
それは日記だった。
ただし、そこに書かれていたのは……
「見たんでしょう……?青大……?それが、私達の未来よ、、」
すべてが未来の日付だった。
そこまで来て、ようやく僕は理解する。
藤堂家とは、占術とは、そして、
呪いとは何なのかを。

………………………………

甘い匂いを満たす部屋。
その真ん中、一人の少女が鎮座する。
幼い頃からここにいることを義務付けられた少女、それが藤堂 月だった。
独特の甘い匂いを発しつづけるのはお香。
人の睡眠を促す、いや、それ以上。
少女に夢を見させるもの。
夢の中で見た情報は、藤堂の血の力を借りて、部屋の中で具現化する。
幼い頃からこの部屋で夢の住人となる事を強いられた月は、自由に夢を操れるほどまでになる。
やがて、力もついて、その力はその部屋より外へも力を及ぼして行く。
それが授けられた力。
望みの未来を引き寄せる能力。
それにより、藤堂家は権威から保護された。
そして、それが血を外に流出させる訳にはいかない理由。
誰にでも授けては良いものでは無い、この力は、固く固く隠されつづけた。
その部屋の中で少女は思う。
表で元気に遊ぶ少年少女の姿を。
それは自分より年上の、未来の弟と妹の姿。
彼女の成長に合わせ、夢の中の少年少女も大きくなる。
進学、就職……そして、自らの意志で繋がる2人。
いつしか、少女はそんな2人に嫉妬を覚える。
2人の為に、今、こうして、夢と幻に生きる自分は何なのであろうという思いが変貌する。
少し早く産まれてしまったが為に手繰り寄せられなかった自分の運命。
もし、自分の方が後に産まれていれば、夢の中で結ばれるのは自分であったはずなのに……と。
離れから解放され過ごす時間の中で、少女は妹と自らを置き換えて行く。
純血を守り、家を守ることを義務付けられた中、唯一手に入れられる快楽の中で、一心に少年を求めた。
表向き、弟妹にそのことを悟られぬように繕いながら。
偽った自分。
血の能力を発揮する自分も偽りなら、そこから離れた自分も偽り。
2重の偽りの中で彼女は苦しむ。
やがて、2重の生活は混じり合い、一つになる。
幼い頃からその双肩に貸せられた重責に屈した心は、離れの中で、具現化を伴いながら、彼女に淫らな夢を見せつづけた。
それが両親にばれた時、彼女は、自らの意志で両親を能力で殺害した。

………………………………

「青大……。わたしの、愛しい……青大……」
「姉さんは、いったい、何をしようっていうんだ……」
真実を知ってしまったボクは顔を寄せる姉に言う。
「言ったでしょう、青大…あなたの望み、呪いの無い未来……それをわたしがひきよせてあげるのよ……」
「それで、なんで霞が死ななきゃならないんだよ…!!」
感情のまま、離れの前で泣き叫んだ時のような声をあげる。
「血の縛りを、束縛を、壊すのよ、青大……あなたと私しかいない世界で、私達は愛し合うの……古しえよりの誓いを破ってね……うふ」
「そんな……姉さん……!!」
「わたしと青大以外、この血を引く者は、みんなわたしたちを苦しめるのよ」
「…………」
わからない、姉さんがなにを言っているのか。
「わたしがここで能力を手に入れて、皆を助けてるのに、皆は私をのけ者にしている……」
「皆って?」
「お父さんも、お母さんも、おばさまも、霞も。青大だけ、青大だけが、わたしの側でわたしを見てくれた。」

74:名無しさん@ピンキー
09/01/17 13:33:15 mEDml/Ju
違う。
喉までくる言葉は張り付いて声として紡ぎ出せない。
目を合わせた姉さんの瞳はどこかを見ている。
でも、姉さんはどこかも見ていない。
やがて、変わる辺りの景色。
そこでは…
そこではボクが自身の肉棒を姉さんに突き刺していた。
磔けにされた両親も、霞もそこにはいない。
ああ……そうか……
ここは、姉さんの夢幻の中。
ボクの知っている姉さんも、ボク自身もここにはいない……
「だから、やらなきゃ、わたしと青大が幸せになるためには、青大も私を大切といってくれたもの…」
傍目から見る淫靡に姉さんと繋がるボクは愛おしそうに姉さんを抱きしめる。
「う、ふ、ふ、青大、青大ぉ、もっと、もっとぉ、わたしを求めて……」
もはや、姉さんはボクの言葉を聞いていない。
そしてボクも…
部屋に立ち込める甘い匂いに耐え切れ無くなってむせてしまう。
涙で歪んだ視界の中で、ただ、獣の如く腰を動かすボク自身を見つめる。
「なにもかもをすべて反古にしなければならない。そのために呪いとわたしたちを知るものはすべて消さなければならないの。」
姉さんの声が響く。姉さんが笑う。
誰よりも愉しそうに、悲しそうに。
誰よりもボクを愛して、そして……憎んで。
「青大、わかるでしょう…?わたしたちは呪われているのよ、生まれた時から、すべてが。」
そんなことを言いながら、姉さんはボクを見ていない。
今語りかけたのは、どちらになのだろう?
夢の中のボク?
それともボク自身。
だめだ。
わからない。
「青大……、どうして悩んでいるの?青大は可愛くて、優しくて、愛おしくて……いつもいつもわたしの側にいてくれるはずよ……?」
姉さんはとっくに壊れてしまっていた。
夢と現実の間にさまよって、今と未来に引き裂かれて…
どうして、気づかなかったのだろう?
どうして、今まで……
なにもかも手遅れになる前に。
なにもかも失う前に。
"ぐいっ"
そんな思考の中で急に手が引かれる。
胸いっぱいに広がる、熟れすぎた桃の実にも似た香り。
少しずつ少しずつ頭の中に溜まっていた煙りが、急速に満ちるような錯覚を覚える。
「青大はわたしの言うことならなんでも聞いてくれる。優しいいい子なのよ……
だからこの香を……もっと、この香を吸って……!そうしてわたしと一緒に、ずっと……」
視界が揺らめく。
「青大……、わたしのかわいい青大。呪いからわたしを解放して、守ってくれる青大。わたしの、青大。」
柔らかく冷たいものに頬が包まれる。姉さんの腕と、胸。
ゆっくりと遅すぎる鼓動が聞こえる。
「そうよ……青大。わたしの言うことを聞いていれば、わたしも青大も幸せになれる……」
次第に闇が頭を支配する。
混濁してボクのすべてを覆い尽くす。
闇に身を任せてボクは自らの身体を漂わす。
姉さんは呪いをかけて、父さんを、母さんを、そして霞を殺した。
でも、姉さんが呪ったのはそれだけじゃなくて、自らを、自らの血を呪った。
そう、ボクの血は、ボクと姉さんの血は、ボクら藤堂の血は呪われている。
そんな事を思いながら、ボクは意識を手放した。

75:Y-275
09/01/17 13:38:10 mEDml/Ju
以上です。
変なとこで区切りは入りますが、まとめた時は気にならないと思われます。
はじめてのシチュスレ投稿で、勝手の違いに戸惑いながらの投下で、
たどたどしいですが、スルーして上げてください。
キモ姉への愛おしさが溢れ出して、勢いで書いた為、ところどころ、どっかで聞いたことのある言い回しがある気がしても、気にしないのが、粋ってもんですよ。
駄文乱文失礼しました。

76:名無しさん@ピンキー
09/01/17 14:30:45 H+Jym3qJ
gj おもしろかった

77:名無しさん@ピンキー
09/01/17 14:47:52 5zpBYqME
GJ

78:名無しさん@ピンキー
09/01/17 20:53:29 dUQ3Ytv0
南斗六聖拳でいうところの『殉星』の姉、堪能しますた。

79:名無しさん@ピンキー
09/01/17 23:33:08 cBVWMRXB
GJ
これはまさに
happy end

80:名無しさん@ピンキー
09/01/18 01:42:05 g/pxXAzM
俺、大学に合格したら一人暮らしするんだ・・・

81:名無しさん@ピンキー
09/01/18 01:57:40 HIdkwkIr
>>80お兄ちゃんが受験に落ちて来年も家に居ますように……)

82:名無しさん@ピンキー
09/01/18 02:01:51 dNA4qiOw
80「無い、無い、無い! 俺のセンター試験の受験票が無い!
  これじゃ受験を受けることもできない!
  いったいどこにいったんだ!」

83:名無しさん@ピンキー
09/01/18 02:04:39 7zd0/Fad
>>80が大学受かったら私と一緒に住むんだよね
もう部屋も決めて引っ越しの準備もできてるんだから

84:名無しさん@ピンキー
09/01/18 02:52:05 ppqDxUHl
合格 →姉による監禁生活はっじまっるよー!
不合格→妹による監ry


80「・・・そうだ・・・就職すればいいんだ・・・
  ハハ、何で気づかなかったんだろう。これで解放されるんだ・・・」

85:名無しさん@ピンキー
09/01/18 03:07:58 6y7LzBUv
昨今の不況の影響で高卒なんか採ってる余裕無いんですよ^^;

86:名無しさん@ピンキー
09/01/18 04:14:37 HIdkwkIr
「高卒でも大丈夫だもん! >>80お兄ちゃんは私に永久就職するんだからっ!」

87:名無しさん@ピンキー
09/01/18 04:34:28 Qn9tIKQE
>>85
J隊があるでないか。J隊が。
しかも陸か海ならば常にキモ姉、キモウトからも隔離された状態にある。


まあ、守衛なんかは無視してお兄ちゃん(弟くん)拉致る姉妹には効果内が。

88:名無しさん@ピンキー
09/01/18 08:05:15 0vSPy2vd
あれ?過去に作戦中の護衛艦から拉致してきましたというツワモノがいたような…

89:名無しさん@ピンキー
09/01/18 08:30:22 azGG2ilh
海→キモ姉様に不可能など存在しねえ、護衛鑑から拉致ってみせる
陸→キモウトに(ry


80「J隊でも奴らは止められないのか…!!ならばそれ以上、それも脱出不可能なあの場所しか!!」

後日キモ姉妹の目をかいくぐって、アメリカの某刑務所に入った80。
刑務所の中に入ったにもかかわらず、彼の表情は晴れやかだった。

90:名無しさん@ピンキー
09/01/18 08:47:13 8l8VvHWI
>>89
序列二位のキモ姉に挨拶しなきゃな!

91:名無しさん@ピンキー
09/01/18 08:51:15 OSyoJd1n
オリバVSキモ姉かw

92:名無しさん@ピンキー
09/01/18 09:25:14 Ece7CzbX
お姉ちゃんと妹でパンツを引き合いながら殴り合うわけですね

93:名無しさん@ピンキー
09/01/18 10:09:10 NgNAfvM6
>>89
金髪の腹違いの姉が看守なんですね

94:名無しさん@ピンキー
09/01/18 12:43:37 cc3ELVr0
>>91
普通にオリバの筋肉愛を上回る弟愛でキモ姉が勝ちそうw

95:名無しさん@ピンキー
09/01/18 13:23:30 /2ik0f81
そこで世界各国のキモ姉妹が同時に行動を起こすシンクロニシティが

96:名無しさん@ピンキー
09/01/18 13:56:52 ppqDxUHl
最凶死刑囚の姉妹をもつ男の物語・・・ゴクリ・・・

97:名無しさん@ピンキー
09/01/18 13:57:21 2aBxxNP0
三者面談マダー?

98:名無しさん@ピンキー
09/01/18 14:57:26 lWXW/GyP
普通の刑務所では奴らから逃れられそうにないので、
キモ姉に跨がれる替わりの獄長の人間御輿の下の人として、
キモウトに一日中「お兄ちゃん!してぇぇぇー!!」と叫ばれる替わりの、
『鬼の哭き声』が響くカサンドラ監獄にしますた、と>>80

99:名無しさん@ピンキー
09/01/18 15:10:09 7zd0/Fad
そういえば茄子のDDDで刑務所というか牢獄というなの隔離病棟に入れられた
凶悪犯な妹っていたな

なんかもうあらゆる物に耐性もっちゃう上にすごい馬鹿力で
普通にやれば勝てる相手がいないってやつ

100:名無しさん@ピンキー
09/01/18 15:21:54 JrKmYPKx
さすがきのこキモウトには定評がある

101:名無しさん@ピンキー
09/01/18 16:15:43 uU3UeKAJ
きのこは妹に関しては定評があるよな
琥珀√の秋葉とかはなかなかよかった

102:名無しさん@ピンキー
09/01/18 16:23:49 X20Soa/w
このスレに避難所あるのさっき初めて知った。

103:名無しさん@ピンキー
09/01/18 16:34:50 azGG2ilh
>>98
もうすぐ君のもとに…

性器末求精主のキモ姉妹がやってくるぞ。


104:名無しさん@ピンキー
09/01/18 16:37:23 ONl8xpZe
その2
俺、就職したら彼女と同棲するんだ・・・

105:名無しさん@ピンキー
09/01/18 17:03:39 /2ik0f81
あっ、白亜紀の岩塩層で塩漬けになっていたキモ姉妹が

106:名無しさん@ピンキー
09/01/18 17:41:13 5ZPvjiGh
>>98
日本語でおk

107:名無しさん@ピンキー
09/01/18 19:20:02 K6Apss60
>>102
俺も最近避難所の存在を知った。
あそこって、流れちゃった作品の感想とかを書くんでいいのかな?

108:名無しさん@ピンキー
09/01/18 23:42:48 6adOHhF6
何か最近、長編SSの前編だけ書いて去ってしまう
お兄ちゃんばっかりだね・・・・

109:名無しさん@ピンキー
09/01/18 23:53:13 Xbyam8Il
それは全部作者のキモウト&キモ姉の仕業だと思います。
後編を書こうとしたら双方どちらかに拉致&監禁されるのはよくあること
作者「さぁ~て、後編書、うわッ何をすrくぁwせdrftgyふじこlp;@;」
みたいな感じで・・・
んじゃ、キモウトに黙って女友達と遊んできます 

110:名無しさん@ピンキー
09/01/19 00:03:41 Pa33X+Ux
兄上ドノとかいうキモウトの続き待ってるんですけど

111:名無しさん@ピンキー
09/01/19 00:06:36 s0u+H1Eh
さーて、今日も一人で寝るか…

112:記憶の中の貴方へ ◆YVZUFUAt8U
09/01/19 00:23:36 /vNrhDa7
下手な文ですが。投稿させていただきます。

113:記憶の中の貴方へ ◆YVZUFUAt8U
09/01/19 00:26:06 /vNrhDa7
猛々しい炎が森を赤く染め上げた。時々見る夢は、決まってここから始まる。
ひっくり返った乗用車から吹き出される赤い炎。夜でもなお、まぶしい鮮烈な赤に森は照らし出された。僕には何がなにやら分からない。
車から少し距離を置いたここからでは、目に見えるのは圧倒的な赤だけであった。これがいつもの夢だ。
と、右手を強く握られていることに気づいた。向けた視線の先には「彼女」が立っていた。姿は分からない。なぜなら、彼女の姿は赤の景色に染まらず、影そのものの様に黒で塗りつぶされていた。
真っ黒な「彼女」、でも僕は女性、それも僅かに歳の低い女の子であると分かった。その不自然さに、ここにいたって僕は、ようやくこれがいつもとは違う夢であることに気づく。
気づいても夢の中ではどうにもならない。すると、その影のような「彼女」がクスリと笑ったのが分かった。なぜか分からないけど分かった。
「×うやく死×でく×まし×ね」
他にも何か言っていたが、彼女の声はラジオのように途切れ途切れで、僕には上手く聞き取れなかった。が、夢の中の僕は違ったらしい。その言葉で、身体を震わせ崩れ落ちた。
僕にも流れ込んでくるこの感情は、恐怖と悲しみ、怒り。いろいろな感情がない混ぜになり、その後にはどうしようもないほどの絶望があった。
ふくれあがった強い感情に身体の震えは収まらず、涙があふれた。そんな僕を「彼女」はそっと、ようやく手に入れた宝物のように、後ろから抱きしめた。「彼女」は僕にささやく。その声には僕などでは測れないほどの、あふれ出る喜色が込められていた。
「愛×てい×す。×さん」
僕はわからない。身体が熱くて寒い。燃え上がる炎と抱きしめられた身体は熱を帯びていく。その一方で、心はどうしようもなく冷え切っていく。僕には分からない、何もかもが分からない。
「彼女」は再びクスリと笑うと僕に口づけ、そして…………

「起きろ!バカ広樹!!」


114:記憶の中の貴方へ ◆YVZUFUAt8U
09/01/19 00:27:07 /vNrhDa7
目を開けるとそこは赤の景色でもなく自室のベッドの上であった。目の前には起こしてくれたのだろう、姉さんがこちらをにらみ付け、仁王立ちしている。
「おはよう雫(しずく)姉」
とりあえず声をかけたが、ブスッとしたままの雫姉は応えずに
「広樹(ひろき)、うなされていた。またあの夢なのか」
夢については雫姉も知っている。頷くと雫姉は一瞬寂しげな目をした。何でだろう。
「なあ、思い出しそうなのか?」
今度は不安のやや混じった声であった。夢を見た事を知ると、僕に決まって聞くこの言葉に
「……分からない」
と僕はいつものように応えた。
僕の記憶は三年前までしかさかのぼれない。三年前に山奥で起きた交通事故。その影響で記憶がないのだった。一番古い記憶は運び込まれた病院の天井と薬品の匂いで始まっている。
聞いた話では事故現場は見通しの悪いカーブで車は曲がりきれず崖下に転落。僕以外の家族は死んだそうだ。悲惨な事故であったらしい。僕の思い出せない記憶である。
「おい、聞いてるのか?」
ジロリとにらみ付けているのは、雛守(ひなもり)雫。通称雫姉。本当の姉ではない。僕は一人っ子で兄弟はいなかった。なんでも僕とは従姉弟の関係なのだそうだ。
事故で家族を亡くした僕を引き取ってくれた女性で、僕は今、彼女のお屋敷にお世話になっている。今年で18歳になるが、僕と1歳しか変わらないのに、とてもしっかりして出来た女性だ。
それもそのはずで、彼女はこの国の上流社会では名の知られた、雛森家の当主なのであった。彼女も5年前に親を亡くしており、以降歴史ある雛森家の当主を務めている。
平安にまでさかのぼれる、生粋の名家、雛森家。当時13歳だった彼女が世襲することに、当然親族は猛反発したらしい。
が、彼女の大人顔負けの類い希な交渉術は親族を震え上がらせ、反対の声の一切を叩き潰したらしい。


115:記憶の中の貴方へ ◆YVZUFUAt8U
09/01/19 00:28:12 /vNrhDa7
同席していた後見人の執事長、中杉さん曰く「ご親族の皆様をキッと見据えられました、お嬢様のお顔と、一様にお顔を青く変えましたご親族との対比が傑作でありました。この日ほど、雛守家にお仕え申し上げたことが誇らしかった日はございませぬ。」だそうな。
以前から彼女と親交があったらしい僕が似たような境遇に陥ったことに、彼女は何か感じる物があったのかもしれない。入院してすぐ引き取ることを決めると、退院と同時に、この家に住まわせてくれた。家族のように扱ってくれと言われて以来、僕は「雫姉」と呼んでいる。
と、無反応の僕に、彼女の視線がさらに鋭くなりつつあることに気づいた。あわてて返事を返した。
「ごめん、なんだっけ?」
「やっぱり聞いてなかったか。『無理に思い出す必要はない』と言ったんだ。お前は今を精一杯頑張っている。それで、良いではないか」
雫姉なりに心配していたことが嬉しくて、思わず微笑むと、「うん」と返事した。
「ありがとう雫姉」
雫姉は何故か赤くなると「ばか、朝食が出来た。すぐに来い!」と慌ただしく出て行こうとした。 その背中に僕は夢で気になった事を聞いてみた。
「ねえ、雫姉。僕って一人っ子だよね?」
「どうした急に」
彼女は部屋を出て行こうとしていた足をピタリと止めると、背を向けたまま尋ねた。
「今日見た夢なんだけどね。誰かに抱きしめられていたような気がしたんだ。いつもは車が燃えている景色だけなんだけど……。今日は一緒に誰かいたんだ。
僕って、家族で出かけた帰りに事故にあったんだよね?でも夢では年の近い女の子に抱きしめられていたんだ」
 雫姉は背を向けたまま無言だった。だけれど、これまでの不機嫌さとは違う、静かで寒くなる空気が背中から出ていた。僕は居心地の悪さを紛らわせるように
「夢の中の女の子ってさ。―いや、顔とか思い出せなかったけど。何となく女の子って気がしたんだけどね。あんまり親しそうにしていたから、他にも家族がいたのかなっと思って。もしかしたらさ僕の妹とかいた―」
「いない」
冗談めかした言葉に、返ってきた雫姉の声は平坦で、身をすくめるほどの冷たい響きがあった。
「でも―」
「いない!」
 普段とは違う、切り捨てるような口調。まだ雫姉は背を向けたままだ。
「夢は正確ではない。時と場合でいくらでも変化する。それが夢だ。
私は以前のお前を知っているが、お前はずっとご両親との3人家族だった。夢の何もかもを信じるな。
ご両親がお亡くなりになり、今お前の家族は私だけだ。それが現実だ。いいか広樹―今の家族は私だけだ」
やはり背を向けたまま。雫姉は話は終わりだとばかりに一度深呼吸すると、
「朝食が出来ている。早く来い」
 ドアに手をかけながら言った。驚きを受けたまま、僕は何も言えないでいた。
「それから、」
 まだ何かあるのかと僅かに身構えた僕に、彼女はようやくちらりと視線を向けると、いつもの微笑みで
「おはよう、広樹」
と言ったのだった。


116:記憶の中の貴方へ ◆YVZUFUAt8U
09/01/19 00:30:56 /vNrhDa7
今日はこれで投稿終わります。ありがとうございます。

117:名無しさん@ピンキー
09/01/19 00:37:13 TXvnQTDV
sage進行なので次投下する時はメール欄にsageと入力してから投下をお願いします。
続き期待してます。

118:記憶の中の貴方へ ◆YVZUFUAt8U
09/01/19 00:40:00 /vNrhDa7
すみません。以後ないようにします。

119:名無しさん@ピンキー
09/01/19 01:21:40 v6QHDDnI
最近のキモ姉相手の弟くんの言葉遣いは俺好みだぜ!
馴々しいわけでもなく律義すぎでもない

120:名無しさん@ピンキー
09/01/19 02:10:34 q2QkiRJP
「それから、」
 まだ何かあるのかと僅かに身構えた僕に、彼女はようやくちらりと視線を向けると、いつもの微笑みで
「GJ、>>116


121:名無しさん@ピンキー
09/01/19 03:25:40 5nD9TQ/4
>>116
GJ!
全裸で待機もしくはソックスのみ着用して続編を待つ

122:傷 (その10)
09/01/19 07:38:09 NUg0CoQv
投下します。

123:傷 (その10)
09/01/19 07:38:47 NUg0CoQv

「あの、弥生さん、コーヒー飲まないと冷めますよ……?」
 
 携帯を睨みながら、笑ったりしかめっ面をしたり、独りで百面相を続ける弥生に、呆れたように長瀬が声をかける。弥生は、そんな長瀬に済まなさそうな視線をちらりと送ると、うって変わってニヤついた眼差しを、ふたたび手元の携帯に向ける。
「…………」
 長瀬透子は、そんな弥生をジト目で睨まずにはいられない。
 さっき―正確には、長瀬がドリンクバーから二人分のホットコーヒーを注いで、この部屋に持って来たときには弥生は携帯の画面に夢中だったので、もう二分以上は、彼女は携帯から顔を上げていないことになる。
 長瀬は、太い溜め息をつくと、冷めかけたコーヒーを、一口すすった。

 駅前のカラオケボックス。
 受験勉強のフラストレーションを発散する、という長瀬の誘いに乗って、このカラオケ屋に足を運んだ弥生だが、結局、二人で談笑したり歌ったりしたのは最初の10分だけだった。
 携帯に、一通のメールが送られてくるや否や、弥生は長瀬そっちのけで携帯にかじりつき、ひたすら意識をそっちに集中させ始めたからだ。間を持て余した長瀬が、ドリンクバーからコーヒーのお代わりを持ってきても、弥生は心の篭もらぬ一礼を返しただけだった。
 
「あの……弥生さん、さっきからいったい何をなさってるんですか?」

 さすがに長瀬が苛立った声を上げる。
 もともと短気と傍若無人で知られた長瀬透子が、ここまで自分の存在をないがしろにされて、それでも声を荒げず、何らアクションを起こさないのは、当の相手が他ならぬ柊木弥生であるからに他ならない。
 先程から弥生は、携帯にかじりついてこそいるが、別に忙しくボタンを操作してメールを打っているようでもない。むしろ何かのムービーを見ているかのような気配さえあるのだが、いかに長瀬としても、それ以上は分からない。
「ほんと、ごめんなさいね、とーこ……ちょっと何気に緊急事態だったのよ」
 さすがに弥生は、長瀬の不機嫌な声を聞いてまで、携帯にかじりつくような真似はしない。少し、はにかんだような笑顔を浮かべると、ぺろりと舌を出した。
「妹からだったの。知ってるわよね、葉月のことは?」

 確かに知っている。
 と言うより、この桜ケ丘学園に在籍している全校生徒の中で、柊木葉月の名を知らない者はモグリ学生だと断言できるだろう。初等部入学以来、首席を貫く「完璧超人」柊木弥生の妹にして、姉をさらに凌駕するIQの所有者。
 柊木冬馬が、弥生の運動面でのセンスのみを一方的に継いだ弟と言われているのと同様に、もっぱら姉の学業面での優秀さを拡大解釈した妹と言われ、その年齢で、すでに数々の論文を学会に発表し、有名大学や一流企業の研究室にも参加している中学一年生。
 神童・天才と呼称される彼女の怜悧な一瞥は、授業中の教師にも多大なプレッシャーを与えるとさえ言われているが、しかし長瀬はこの少女があまり好きではなかった。
 生徒会の後輩として、柊木家を訪問した時に一度紹介してもらったことがあるが、そのときの葉月はにこりともせず、機械的に名前だけを名乗って自室に去った。その時に向けられた冷たい視線を、いまでも長瀬は忘れていない。
 ただの無愛想ではない。
 長瀬はかつて今まで、あんな見下されたような一瞥を向けられた事が無かった。しかも、その相手が弥生以上の知能指数を誇る天才児とあらば、その侮蔑の眼差しが錯覚でないことなど、それこそ一目瞭然だった。
 早い話が、葉月に関する第一印象は、長瀬の中では最悪の一言だったのだ。
 だが、弥生が意外なほどに葉月という妹を可愛がっているということも知っている長瀬としては、彼女の名を聞いたところで、それほど顔をしかめるわけにも行かない。

「ふふふ……葉月ちゃんが、好きな男の子にこれから勝負をかけるって、メールが来たのよ」
「勝負をかける?」
「ええ」
 そこで一度、弥生はいつくしむような視線を携帯に落とし、ウットリと言った。


「あの子、これから“初体験”をするらしいわ」


 その言葉に、さすがの長瀬もあんぐりと口を開くしかなかった。



124:傷 (その10)
09/01/19 07:40:34 NUg0CoQv
////////////////////////

 冬馬の肌を見るのは初めてではない。むしろ日常では、見る機会は決して少なくないと言える。誰にも見せない自分の裸身を、彼は家族にだけは無雑作に晒すからだ。
 だが、何度見ても慣れない。
 葉月はそう思う。
 背中に刻まれた『犬』の文字。
 胸に焼き付けられた『ドレイ』の文字。
 そして、その二つの文字を彩るように存在する、無数の裂傷、痣、火傷の痕跡。
 さらに風呂の湯によって上昇した体温が、普段見えない傷まで浮かび上がらせ、まるでちょっとした耳無し芳一だ。すべての傷がTシャツに隠れる範囲に刻まれているというのもまた、加害者の凄まじい悪意を感じる。
 だが、葉月は湯舟に浸かって硬い表情を続ける兄の裸身をを見ても、もはや心を萎えさせる気は無い。


 冬馬の告白を聞いたとき、最初彼女は絶望した。
 兄が性的不能者だったことに絶望したわけではない。
 たとえいかなる理由に基づくものだったにしても、おれには女性を受け入れられないと言い切った兄の心が、言葉で覆せるものではないと知ったからだ。だが、とりあえず無用の挑発を続けるうちに、葉月は考えを変えた。
 兄の絶望を己の絶望の理由にしている自分自身に、葉月は強い憤りを覚えたのだ。
 だから、彼女は昂然と言い放った。
「証明してやる」と。
 性的不能など、人が人を愛せない理由にはならないと証明して見せる、と。
―だから風呂場に行こう、と。

 だが、溜め息混じりに冬馬は言った。
「とりあえず先に夕食を取ろう」
 そして、その“とりあえず”の間に、葉月はようやく自分の発言の意味に気付き始めた。
 たとえ性器の直接的な挿入が不可能であったとしても、互いが互いの肉体を重ね合わせる行為は、歴としたセックスにまぎれもないということに。
 人並み外れた学識の所有者といったところで、しょせん彼女は13歳の中学生だ。肉体的にも精神的にも、まだまだ子供に過ぎない。いまから自分たちが行う営みが、“初体験”であると知れば、そこに尻込みを覚えるのは無理もないと言うべきであろう。

 だから葉月は、姉にメールを送った。
 冬馬が不能であるという事実とともに、その問題に関わる成り行きの果てに、やがて自分が兄と繰り広げるであろう“予定”を知らせたのだ。早く帰ってきてくれという意思を込めて。
 どのみち、弥生がこの情報をむざむざ黙殺するとは、葉月には思えなかった。
 冬馬に対する“証明作業”にしても、一対一よりは、姉と二人がかりの方が、より効率的であることは改めて言うまでもない。
 だが、姉は帰ってこなかった。

 “初体験”への重圧と同時に、平行して葉月はもう一つ思索を続けていたが、そのときはその考えが重要だとは思わなかった。そんな推測が正しいとも思わなかったからだ。
 だが、
「もう、……やめるか?」
 と言った冬馬の瞳に浮かんだ色を見て、葉月は気付いたのだ。
 取りとめもないはずの自分の考えが正しかったことに。
 冬馬が性的に不能になった現実によって“解放”を覚えていることに。
 トラウマに膝を屈することによって、救いを得ていることに
 そんな兄を、葉月は認めたくなかった。
 そんな兄を、葉月は許せなかった。
 その思いが、初体験へのプレッシャーに折れかけていた彼女の心を、ふたたび甦らせるよすがとなった。

 しかし、葉月は不思議と兄をバカにする気にはならなかった。
 冬馬は、葉月にとって理想的な兄であり、理想的な話し相手であり、そして理想的な男性であった。だから、むしろ自分に初めて弱味を見せた兄に、身が震えるような可愛らしさ―嗜虐的な笑みさえ浮かんだのだ。
 それは、妹として兄を見上げる事に慣れた葉月にとって、初めて浮かんだ感情だった。
 葉月にはもはや、冬馬に対する恐れはない。


125:傷 (その10)
09/01/19 07:41:54 NUg0CoQv

 プラスチックの湯桶に湯を汲み、ざばっとかぶる。
 熱い。
 今日の風呂の湯を張ったのは冬馬だ。湯張りといっても湯量と湯温を設定してボタンを押すだけだが、彼が設定すると、いつも湯温が熱くなる。ぬるま湯に長湯するのが好きな葉月からすれば、熱すぎる冬馬設定の湯は苦手なのだが、今は文句を言う気にはならない。
 この熱めの湯が、自然と葉月に気合を入れてくれるからだ。

 ボディシャンプーを手に取り、薄い胸に白い泡を塗りたくると、冬馬を振り返った。
「さあ兄さん、まずは身体を洗いましょうか」
「……そんなソープランドの真似事を、どこで覚えてくるんだ?」
 いまだにしかめっ面を崩さぬ彼は、苦々しい声を出したが、葉月はニッコリ笑って受け流した。
「『オンナノコはいつでも耳年増♪』って歌があったの知ってます?」
「それひょっとして……おニャン子クラブか?」
「昨日TVでやってた、なつメロ特番で聞いたんです。兄さんがその曲を知っていたのは意外でしたけど」
「たしか「セーラー服を脱がさないで」……だっけ?」
「昔の歌って露骨ですね。ちょっとセンス的に信じられませんけど」
 そう言って微笑する葉月に、苦笑とはいえ、ようやく冬馬も頬を緩めて見せる。

「葉月」
「なんですか?」
「今のお前も、そんな歌を笑えないくらい露骨だって気付いてるか?」
 揶揄するように尋ねてくる兄に、一瞬素に戻ってしまう葉月だったが、
「勿論」
 と、すぐに家族にしか見せない人懐っこい微笑を浮かべて言った。
―頬が羞恥に染まっていなければ完璧なのに。
 そう思いつつ。
 だが、そういう不器用さでなければ訴えられないものもある。葉月の無理やりな照れ隠しは、それなりに兄の情緒的な部分を直撃したらしかった。

「……よし!」
 そう言って、勢いよく湯舟から立ち上がった彼は、
「うじうじすんのはもうやめだ。やるからには―楽しくやろう」
 と破顔して、葉月に背を向けて座った。
「おれだって、このまま一生インポでいたいわけじゃない。おまえのおかげでおれの“男”が復活できたら、スシくらいは奢ってやらなきゃ済まねえな」
「兄さん……」
 そこにいたのは、弱味を突かれて苦虫を噛み潰していた兄ではなかった。彼は陽気で元気な、いつもの―弥生と葉月が愛してやまない一人の男に戻っていた。
「期待してるぜ、妹よ」

/////////////////////

 ペースを取り戻した冬馬の姿に、弥生はおもわず顔をほころばせた。
 無論、彼女は、そんな弟の姿を直接見ているわけではない。弥生の熱い目が注がれているのは、携帯の画面越しの監視映像だ。
 もはや長瀬は、そんな弥生に何も言わない。
 ほったらかしにされて愉快であろうはずもないが、弥生の言った「妹が初体験をする」という言葉と、
―頼むから少しだけ、何も言わずに携帯をいじる自分の邪魔をしないでくれ。
 という台詞に、このやんちゃな後輩は頷いた。

 彼女の承諾が、半ば無理やりだということは弥生にも分かっている。
 だが弥生は、今回は敢えて甘えることにした。
 生徒会時代から、つねに弥生の傍にいた長瀬は、こういう眼をした弥生には逆らわない方がいいということを知り抜いているのだろう。だから、彼女は無言でカバンから文庫本を取り出し、しおりを挟んだページを開いた。それがすでに数分前だ。
 そんな長瀬にすまないと思う一方で、やはり、このメールが着信した瞬間に急用を偽ってカラオケ屋を出るべきだったかと思わなくもない。他人に気を遣うことを苦にする弥生ではないが、事が事だけに、いまは長瀬の存在が少々鬱陶しい。


126:傷 (その10)
09/01/19 07:43:48 NUg0CoQv

 だが、どのみち弥生は家に帰る気はなかった。
 せっかく葉月が“こちら側”に来る覚悟を決めたのだ。このままノコノコ帰宅して、葉月の“初めて”に水を差す野暮はしたくない。冬馬が不能だという話が本当ならば、挿入に伴う外傷を負うこともないだろう。
 メールの文面的に、独りで兄の肉体と向かい合うことに葉月は不安を覚えているらしいが、それでも妹の覚悟を、自分と同じ土俵に乗せるための通過儀礼だと思えば、嫉妬など湧きはしない。むしろ、頑張りなさいよと画面越しに声援を送りたい気分だ。
 形はどうあれ、想い人との初体験はロマンチックであるべきだ。なら自分の出る幕などある筈がない。―これがもし、弟と同席しているのが葉月でなく、どこかの雌ネコだったなら、野暮もクソも今すぐ飛んで帰って、あらゆる手段で事の成就の妨害をしただろうが。
 それに、どうせ風呂場の監視映像は、自動的に弥生のパソコンのハードディスクに記録されるようになっている。いま観なくとも、帰宅してからたっぷり妹の“どきどき初体験”を拝見すればいい。あわてる必要などない。
 そこまで思って、弥生は顔を上げた。

「ねえ、とーこ」
「はい?」
「あなたってバージン?」
 そのイキナリ過ぎる質問に、口をパクパクさせる長瀬。
 そんな彼女に、弥生は仏像のようなアルカイックスマイルを向ける。
「……中3のときに一応済ませましたけど……」

 その相手が誰なのかを訊くつもりは、さすがに弥生にはない。
 義務教育が満期終了せぬうちの性経験を早いとも遅いとも言う気もない。
 長瀬透子が、これでも校内有数のモテ女なのは周知の事実だ。外見だけの話をすれば、彼女の美貌は弥生にさえ引けは取らない。もっとも、そのあまりに狷介な性格から、三ヶ月と交際が維持した例はないらしいが。
 だから―というわけではないが、弥生はさらに悪趣味な質問をした。

「気持ちよかった?」
 
 長瀬は、眉間に皺を寄せると、
「……いえ、あんまり」
 と、呟くように言った。
「ふん?」
「痛いだけでしたから」
「でも、したのは初めてのその時だけじゃないんだよね?」
「それから三度ほど機会に恵まれましたけど、やっぱり痛いだけでした。それ以降はずっとプラトニックですよ。健全なものです」
 普段の彼女からは想像しにくい覇気のない声で、吐き捨てるように長瀬は言った。
 どうやら彼女といたした男たちは、凄まじく身体の相性が悪かったか、もしくは余程の下手くそぞろいだったらしい。

「弥生さんは、……まだ、なんですよね?」
「うん」
「正直言って、うらやましいです」
「まだ処女だって事が?」
「いえ、セックスに幻想を抱ける身分だってことが、です」
「…………」

 バカにされた、とは弥生は思わなかった。
 長瀬からすれば、彼女なりに真剣な悩みなのだろう。
 性行為こそ経験済みであっても、性の快楽を知らない身であれば、自分の肉体に不安を覚えても何ら不思議ではない。ひょっとすると、自分は“男”を受け付けない体なのかも知れないという一抹の疑念は、年頃の女の子からすれば恐怖以外の何物でもないだろう。
 ひょっとすると、長瀬が弥生に、ほのかに百合的な憧憬を抱いているのも(その感情に弥生本人が気付いているという事実を長瀬本人はまだ知らないが)、その不安の表れなのだろう。
 そんな彼女ならば、訊いてみる価値はある。


「もし、セックスを前提としない男女交際を求められたら、とーこはどうする?」


 長瀬は表情を変えなかった。
 たっぷり十秒ほどの沈黙の後、彼女はようやく口を開いた。
「アリかも知れませんけど……でも多分、いずれ耐えられなくなるでしょうね。その人のことが好きになるほどに、不安になっていくと思います」
「セックスをしないことが?」
 長瀬は頷いた。
「だって、どう考えても無理があるじゃないですか。60歳と70歳の交際ならともかく、肉体を重ねるという過程を経ずして男女が互いを理解できると思うほど、あたしは自惚れ屋じゃないですよ」

127:傷 (その10)
09/01/19 07:46:24 NUg0CoQv

「でも、その過程を経たために、とーこは男を相手にすることがつらくなったんでしょう?」
「……人をレズビアンみたいに言わないで下さい」
「レズビアンは恥ずべきことなの?」
 そう言われて、不意を突かれたような顔をした長瀬だが、
「……なんてね」
 と言って、にっこりと微笑みを返す弥生に、彼女は恥かしげに頬を染めてそっぽを向いた。弥生は、そんな長瀬に、さらに悪戯っぽい目を向けると、静かに携帯を閉じた。

 もういい。
 とりあえず、いまはいい。
 出来ることは、この星空の下から妹の無事と成功を祈るくらいだが、それでも弥生は、さほど深刻な心配はしていなかった。
 葉月は仮にも自分の妹だ。13歳とはいえ姉がいなければ何も出来ない甘ったれではない。
 そして何より、いまあの子の傍には弟がいる。冬馬がいる限り不安はない。たとえ何が起こったとしても、弟が無事に始末をつけてくれるだろう。―弥生は少なくとも、自分の弟と妹を、その能力面・人格面に於いて、ただの身内という以上に信頼していた。

 彼が不能だったというのは意外だったが、それでも弥生はまるで動揺していなかった。現状はどうあれ、永久に冬馬の勃起不全が治らないとは弥生も考えてはいないからだ。
 それに、いざとなれば、性器挿入というプロセスを経ずとも、セックスを楽しむ方法など幾らでも存在する。男としては少なからず意気消沈するのも当然かもしれないが、不能に伴う劣等感など、弥生からすればまるでナンセンスな感情にしか思えない。


「さ、―歌お?」
 弥生は携帯をカバンにしまうと、何事もなかったかのような口調でリモコンに手を伸ばした。


//////////////////////////

 兄の背中は、広く、分厚く、温かかった。
 百聞は一見にしかず、百見は一触にしかず―という言葉を葉月は思い出していた。確か、冬馬の部屋にあった漫画の台詞だ。
 その傷だらけの体躯を初めて直接触れて、葉月は知った。彼女にとって、兄の過去の悲惨さを物語るだけの証拠品でしかなかったその背中は、意外なほどに固い筋肉に鎧われた“男”の肉体であったことを。
 ずば抜けた身体能力を誇る兄と、かたや体育全般には全く自信を持たない妹。自分の肉体のバネが旧型のディーゼルエンジンだとすれば、兄のバネは、まるで航空機用のガス・タービンエンジンだ。埋蔵されているスペックやポテンシャルがまったく違う。
“牡”を喪失したなど、とんでもない。
 そのきめ細かい肌をどれほどの醜い傷が覆っていようが、それすら関係ない。
 ボディシャンプーの泡越しではあったが、自分や弥生とは圧倒的に違うその肉体は、彼が単なる虐待被害者ではなく、凄惨極まる幾多の戦場をくぐりぬけて生き延びた、逞しい戦士の身体にさえ思えた。
 
「意外とやせっぽちでがっかりしたか?」
 おれの手料理は不味かったか、と訊くような口調で、振り返りもせず冬馬が尋ねる。
「とんでもない」
 葉月は泡まみれの胸を、兄の背に押し付ける。
「兄さんこそ、……わたしの身体に失望してはいませんか?」
「失望?」
「だってわたしは……弥生姉さんのように豊満な身体を所有してはいませんから……」

 そう。実は、妹は予想もしていなかった。
 おびただしい傷に包まれた兄の肉体。だが、後ろめたいことなど何一つないと言わんばかりに無雑作に、堂々とそこにある冬馬の身体。それを前に、まさか自分の―シミ一つない自分の身体を引け目に感じてしまうなんて。
 葉月は忘れていたのだ。
“女”として、自分のボディがいまだ発展途上にあるという事を。
 薄い胸。
 貧しい臀部。
 女としては明らかに未成熟な己の肉体。
 当たり前だ。まだ彼女は13歳だ。その肉体をして異性を煽りたてるには、まだまだ早過ぎる。たとえ数年後には大輪の花を咲かす女体であっても、今の彼女は所詮、花の蕾に過ぎない。


128:傷 (その10)
09/01/19 07:49:01 NUg0CoQv

 兄と自分が互いの裸身を晒しあえば、その傷痕の醜悪さゆえに恐縮し、身を竦ませるのは兄の方だと思っていた。心を開くのは兄の方であり、兄の心を解きほぐすのは自分であると、葉月は何の疑いもなく信じていたのだ。
 だが実際のところ、葉月を無雑作に受け入れた冬馬の背に、自らの肉体を恥じる卑屈さは微塵もなく、かすかな威厳すら漂っている。

「どうした葉月、元気がないな」

 冬馬にそう言われて、葉月は顔を上げた。
 いや、顔を上げて、彼女は初めて自分が俯いていたことに気付いたのだ。
―このままではダメだ。
―いったい、何を気落ちしている?
―まだ中学一年生でしかない自分の肉体が貧弱なのは、自明の理ではないか。そもそも兄は、そんなことで相手の評価を下げるような人ではない。
 そう思って気を取り直そうとした瞬間だった。
「おれに『証明してやる』って言い放ったお前がよ。らしくないな」
 それは侮蔑の言葉ではない。冬馬が自分を元気付けようとしたことは分かる。だが、兄の笑いを含んだ声を聞いて、思わずカッとなった葉月は、そのまま手を伸ばし、力任せに彼の乳首を強く捻った。
「ひっ!!」
 謝罪代わりに浴場に響く、兄の悲鳴。
 だが、その声を聞いた瞬間、葉月の眉がぴくりと動いた。

 いや、聞き違いではない。
 確かに今、冬馬があげた悲鳴の中には、快感の喜びが含まれていた。
 そのとき葉月は思い出していた。
 彼の肉体に刻み込まれているのは、凄惨な暴虐の痕跡だけではない。彼は、おびただしい人数の男女によって、あらゆる刺激を快感として意識できるように、全身の性感帯を開発されている、他人の手垢のついた身体を所有する者なのだ。

「兄さん……!」

 葉月は笑った。
 無数の男女の精と愛液にまみれ、快楽に馴らされた肉を持つ冬馬。―そんな彼を不潔と罵倒する気は葉月には毛頭ない。
 彼女はただ、嬉しかったのだ。
 もはや、この身で女を愛せないと叫んだ彼の肉体は、まだ死んではいない。
 いや死んだどころではない。一般人なら苦痛に顔をしかめるような刺激さえ快感として受信できる鋭敏な性感は、まだまだ健在ではないか。
 それが分かっただけでも大いなる収穫―いや、そんな低次元の話ではない。勃起を失った彼の身体だが、それでも性感そのものを喪失したわけではないという事実は、それこそ兄のために欣喜雀躍すべきであろう。
 自分の未成熟過ぎる女体を嘆いている場合ではない。
 やらねばならないことは文字通り山積みだ。

「兄さんは、……痛いのが気持ちいいんですね?」

 そう言いながら、葉月はふたたび乳首を捻る指先に力を込める。
「ッッッ!!」
 兄の背中がビクンと跳ねる。
 逃がさない。
 上体を反らした冬馬を、そのまま背後からぎゅっと抱き締め、乳首をつねりながら、葉月は眼前の耳朶に、がぶりと歯を立てた。

「~~~~~~~~~~~~~~~ッッッッ!!」

 両親が在宅中なら、間違いなく風呂場にカッ飛んでくるような叫びを上げる兄。
 だが、彼の背にぴたりと身を寄せる妹には分かっていた。
 冬馬の心臓が、先程までとはまるで別人のような激しい動悸を刻んでいることが。
(兄さんが興奮している……興奮してくれている……!)
 魂が震えるような歓喜が葉月の全身を包む。
 だが、ここで手を緩める気はない。緩めるわけにはいかない。

 右手を兄の股間に下ろす。
―くにゅっ。
 と言いそうな柔らかい感触が葉月の指先を襲う。
 途端に葉月の眉が歪んだ。
 やはりダメなのか。
 葉月の鼻に薫るアドレナリン臭からも、冬馬が性感に打ち震えていることは明白な事実だというのに、肝心の兄の肉棒は、まるでそこだけ別の肉体であるかのように無関心を装っている。
 だが諦めはしない。
 葉月はそのまま指をペニスから、さらにその下へと這わせ、思い切り握り締めた―冬馬の陰嚢を。


129:傷 (その10)
09/01/19 07:51:24 NUg0CoQv
 まるで電気椅子に座った囚人だ。
 今度という今度は、悲鳴すら上げられずに、激しい痙攣を繰り返す冬馬。
 じたばたと暴れる兄を必死に抱き止め、引き剥がされないように懸命になるが、ボディシャンプーの泡がぬるぬると滑り、背後から胸と股間に回した両腕だけでは振り解かれそうになる。
 だが、ここで逃げられては何もかも台無しだ。

「気持ちいいくせに」

 妹のその一言で、電源を引っこ抜かれたように兄の抵抗は停止する。
 そして、おそるおそるこっちを振り向いた冬馬の瞳は、潤みを含んでいた。

 案の定だ。
人間のマゾヒズムは、苦痛系と羞恥系という二つに大別できるが、ただ刺激や恥辱を機械的に与えられても、そこには何も発生しない。被虐を快楽と認識するためには、それらの刺激を与え、さらに葛藤を煽り立てる観察者の存在が不可欠である。
 観察者とはつまり“御主人様”“女王様”と一般的に呼称される場合が多い。
―かつて精神分析の論文と学術書を読み漁ったときに初めて目にした概念『SM』。
まさか実践に応用する機会が自分の人生にあろうとは、そのときは葉月も予想だにしていなかった。だが、その機会は来た。機会に恵まれた以上は、少女独特の潔癖さから思わず目をそむけた理論であろうと、科学者としての本能が、それを活用することに躊躇を感じさせない。

「気持ちいいって言いなさい、兄さん」

 睾丸を掴んだ右手を握っては緩め、苦痛のシグナルを交互に彼の脳に送る。
 そして今度は、いまだ泡で真っ白になっている首筋に歯を立てて見る。無論、乳首を捻る左手の指は一切脱力させない。
「いっっ!! いやだああぁぁっっ!!」
 だが、当然のように葉月はそんなワガママは許さない。
 うなじに食い込ませた歯にさらに力を込め、無言の回答を返す。
「はっ、はづきぃぃぃっっっっ!!」
 乳首に這わせた指を離し、間髪入れずに冬馬の臀部に移動させ、中指で肛門の入口をなぞる。
 優しく。
 そっと、赤ん坊の頬を撫でるように。
 そして、


「あああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっ!!!!」


 真っ白い泡を潤滑油代わりにした葉月の指が、無言で兄のアナルをえぐった瞬間、彼の視界は消えた。
 数年ぶりに味わう前立腺の感覚。
 かつては日常的と言えるほどの頻度で身体に覚え込まされた、そのエクスタシー。
 そんな昔馴染みの快楽は、彼の中の何かを呼び起こした。
 冬馬の深層心理が、あえて眠らせることに決めた旧き記憶。
 フラッシュバックの中で、パズルのピースのように―あるいは走馬灯のように、忌まわしい記憶が次々と甦る。まるでリアルタイムで人生をやり直しているかのような新鮮さを伴って。

 背中に突き立てられる彫刻刀。
 胸に当てられるハンダごて。
 肩に押し付けられるタバコ。
 腹に叩き付けられる一本鞭。
 腕に突き立てられる注射針。
 無駄だと分かっていても喉を嗄らす悲鳴。
 慟哭。
 絶叫。
 嗚咽。
 そんな自分に浴びせかけられる侮蔑。
 嘲笑。
 怒号。

 我を忘れるような快感と激痛を交互に与えられ、自我がボロボロに風化してゆく感覚。
 現実から目をそむけ、肉体から意識を乖離させ、日常を懸命に否定して過ごした日々。
 朝、並んで食事を取ったルームメイトが夕方には発狂し、その翌朝には首吊り死体として天井からぶら下がっている光景を眺めながら、怒りも、哀れみも、まるで何も感じない自分自身に恐怖する。


130:傷 (その10)
09/01/19 07:53:16 NUg0CoQv

 これは悪夢だ。
 そう、文字通り悪い夢―起きたら忘れる夢の世界でしかない。
 こんなことが現実なわけがない。
 本当のおれは、今頃ベッドの中で寝返りでも打っているに違いない。

 だから何でも出来る。
 どうせ夢だ。
 おっさんのちんこをおしゃぶりすることも。
 おばさんのまんこをぺろぺろ舐めることも。
 小便や精液や愛液や唾液やそれら汚物一切を迷わず飲み込むことも。

 だから何でも言える。
 どうせ夢だ。
 ごしゅじんさま、このいやらしいかちくを、どうか、かわいがってください。
 このにくどれいの、きたならしいけつまんこを、ごしゅじんさまのたくましいおちんぽさまで、おもうぞんぶんおかしてください。
 ぼくのおすいぬちんぽを、ごしゅじんさまのしまりのいいおまんこさまにそうにゅうさせていただいて、なんとおれいをいっていいかわかりません。
 ごしゅじんさまのにくべんきとしてしようしていただいて、まことにありがとうございました。
 ぼくに、にんげんとしていきるしかくはありません。ですから、これからもおすいぬとして、ごしゅじんさまによろこんでいただけるようにどりょくします。


「きもち……いいです……ごしゅじん……さま」


 だらしなく萎えた一物が立ち上がっていた。
 しなびた状態からは想像できないほどの膨張率と硬度を誇り、その様はまるで逞しい一本の凶器だ。そして、ぱくりと開いた鈴口からは大量の白濁液が、惜しみなく発射され、壁のタイルを真っ白に染め上げた。
 その壮絶な眺めに、葉月はしばし声を忘れた。
 数年分蓄積された冬馬の射精は、眼前の壁を、まるで白ペンキをぶっかけたようにデコレートしている。そんな絵を目の当たりにして、13歳の少女が絶句しないわけがない。

 だが、次の瞬間には、葉月はすでに己を取り戻していた。
―成功だ。
 まさかこんなにうまくいくとは思ってもいなかった。
 勃起どころか射精まで完遂したのだ。弥生でも千夏でもない、他でもない自分が―この柊木葉月が、兄の不能を治したのだ。
 葉月は、彼の肛門から指を抜くと、へなへなと崩れ落ちる兄の正面に回りつつ歓喜の叫びを上げた。
「やりましたよ兄さん!! 成功です!! 成功ですよ兄さん!!」


「……ああ……ゆびをぬかないでください、ごしゅじんさまぁ……ぼくのおすいぬけつまんこを、もっともっとほじほじしてくださぁい……!」


 まるで幼児のような口調とともに振り返る冬馬の瞳に、もはや理性の輝きはなかった。
「…………え…………!?」
 事態が把握できず、きょとんとした葉月の声は―しかし、その声に兄が応えることはなかった。彼はそのまま身を縮めて妹の爪先に口付けすると、天使のような屈託のない笑顔を浮かべた。



「こんどは、ぼくにごほうしさせてください。ごしゅじんさまのおまんこさまを、ぼくのいぬじたで、ぺろぺろさせてくださいませぇ」



 そこに、葉月が知る柊木冬馬の姿はなかった。



131:傷 (その10)
09/01/19 07:54:27 NUg0CoQv
今回はここまでです。


132:名無しさん@ピンキー
09/01/19 08:06:12 YSea1pRj
>>131
GJ!

133:名無しさん@ピンキー
09/01/19 08:15:38 jECGRXd/
続きキタコレ!

134:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
09/01/19 11:17:24 6g0RFYsR
>>131の方、GJを贈らせていただきます

今回の投下は少し長くなります
前スレにプッチ神父が大勢いらっしゃったのでつい影響されて後半、ネタに走りました
一度に投下しきれなかった場合は時間をおいて続きを投下させていただきます
では

135:此方から彼方まで在処を求め
09/01/19 11:18:01 6g0RFYsR
朝と言うのは凡そ平均的な人類一般にとって心地良いものであると、ふと目覚めの後に思う。
その理由を説明しろと言われてもオレ如き凡人の理解が及ぶ範囲では到底不可能なこと請け合いだが、
今のところそのような事態になったことはないので苦労はしていない。
目蓋越しの光と布団越しの鳥の声。
この早朝に独特な清涼ながらも段々と温度を増していく室内の、温まった空気の眠気を誘うことに比べたら、
そんな難解な思考で安眠を遠ざける必要性は獏にでも食わせておけばいい。
朝と布団は気持ちいい。ついでに二度寝だともっと気持ちいい。これが常識である。
どんな理屈と難解な語句に溢れた論文よりも、こっちの方が全国のお子様お父様お母様の支持を得ること請け合いだ。
ビバ人類共通。ビバお日様の恵み。気持ち良すぎてまた眠くなってきたぜ。はぁ~ビバノンノン。

さて。
しかしここで眠れば育つ年齢の諸君ならばそのまま二度寝タイムなところ、
朝寝上級者を脳内で公言する身のオレとしてはこのまま眠ったりはしない。
まあ個人差もあるだろうがオレにとって睡眠に関する最も気持ちいい時間とは、
ふと目が覚めた時にそのまま眠らずちょっとだけ意識を起こしてウトウトしている時間なのである。
考えてもみて欲しい。何故、多くの人間にとって普通に寝るよりも二度寝や昼寝の方が気持ちいいのか。
単純に寝てる時間が快楽とイコールならば前者の方が得られる満足度は高いはずである。
にも拘らず、あくまでオレとしては、
と添えることで決して自分がジコチュウなる虫や電気鼠の親戚ではないことをアピールしつつ述べさせてもらうと、
全オレによる一人脳内会議では圧倒的に後者の方がキモチイイ。まさに満場一致。異議なしコールのガンパレード。
国連も真っ青、拒否権持ちのちょっと素敵な五大国の方々が涙を流して羨ましがること間違いなしの全会一致だ。
ちなみに異論は認める。異議ありの場合は住所・年齢・性別・電話番号(出来ればケータイのやつ)と、
ここが重要なんだが顔写真を添付の上でオレの下駄箱まで投函して欲しい。
オレのメアドにメールするのもオッケーだ。その際は写メの添付を忘れないように頼む。

さてさて。
話が少々サイドステップを踏んだようだが、兎に角、オレは通常の睡眠よりも二度寝の方が気持ちいい。
勿論それなりの論拠はある。先ず、基本的に二度寝というのは一度目が覚めてからするものだ。
つまり一回目と二回目の睡眠の間には幾らかの目覚めの時間があるわけで、実はここが得られる快楽が最も大きい。
何でかと言うと、そのまま文字通りに目が覚めているからだ。
人間、記憶に残らないものは基本的に楽しめない。と言うか意識がない時だと感覚がどれだけ働いていてもあんまり関係ない。
対して二度寝、正確に言うとその直前は違う。
何せ睡眠の余韻を引きずりつつも意識があるので、しっかりとその快感を感じることが可能なのだ。
『人は目覚めている限りにおいて生きている』という有難い言葉をどこかの学者が言ったかもしれないが、
オレは諸手を挙げて同意するね。
どんな体験も体感も意識がなければ無意味。
極論を言ってしまえば、男ならプロポーズせずにはいられないような超絶美人のネーチャンに逆レイプされても、
それが寝ている時じゃあ意味がないのさ。何の有難味もない。何故って憶えていないから。
認識出来ないものはないのと同じ。
例えばクラスで人気のあの子なんかに片思いされていたとしても、それに気付けないなら不毛である。
片思いは、本人がされていることに気付かないとチャンスとして活かせないのだ。
『実はアイツってお前のことを好きだったんだぜ』なんて後に友人から聞いても後の祭り、逃した人魚は戻らない。
青春の苦い思い出である。
これで解り難いなら、酒を飲んでる時は気持ちいいが、
その気持ち良さは酔い潰れて気を失った瞬間に終わってしまうようなものだと思って欲しい。

オレ達が認識する睡眠の快感とは、正確には睡眠の直前直後の快感なのである。
この理論でいくと、
睡眠の直後であり睡眠の直前でもある二度寝前のタイミングこそが、まさに至高の快楽タイムなのだ。
意識が覚め過ぎずしかし眠らず、夢と現実の狭間にたゆたうファンタジーな時間。
幸せ絶頂である。人はこの時のために『あと五分』という名台詞を発明したのだと断言するね。
ああ、ありがとう。ありがとう。神様ありがとう。両親よありがとう。
この素晴らしき快楽タイムを味わわせるべくオレをこの世に産んでくれたアンタらに、オレは心から感謝します。

136:此方から彼方まで在処を求め
09/01/19 11:19:43 6g0RFYsR
だからあと五分と言わず、オレはこの幸福な時間を少しでも長引かせるべく最大限の努力をすることにしよう。
二度寝前の気だるーい時間をちょっとでも長く味わう秘訣は、当然ながらうっかり寝ないことだ。
折角の気持ちよさも意識が途切れちゃ意味がない。眠らない、しかし起きないという絶妙な眠気の維持が肝要である。
ここで大抵の人間は舵取りを謝って夢の中に真っ逆さまだ。だがオレはそんな轍は踏まない。
伊達に朝寝上級者を自称していないのだよ。
朝起きて二度寝し、昼飯を食って昼寝して起きて二度寝し、夕飯を食って本寝して起きて二度寝すること四捨五入して20年。
無数の失敗を経験し、最近にやってようやく得たまどろみの極意、決して無駄にはしない。
まあ、そんな大層なことを言ってもちょっと目を開けるだけなんだがな。
いやー、起きてから最初に目を開ける時の、
何と言うか目蓋の外の明るさに目が慣れるまでのあの感じが丁度いい眠気覚ましになるんだ。
開けっ放しだと完全に目が覚めるから、何秒か目を開けたらまた閉じるんだが。
眠気が消えそうになったら目を閉じ、夢の世界へ行きそうになったら目を開く。
この無限ループこそが絶対にして唯一の覚醒阻止かつ二度寝防止法だ。
人はこれによって二度寝直前の快楽を味わい続けることが出来るのである。



とまあ、オレは大体そんなことを考えてから、より長く心地良くこの気持ちよさに浸るべく目を開けたんだが。



知らない、じゃなくて見慣れた、だがぼやけた天井。
お天道様の投げかける光はまだ両目に厳しく、目は半分くらい閉じたまま。
それでもふと明るい方へと目をやれば、
カーテンの隙間から部屋へ差し込み、健気にもオレの覚醒を促すお日様の光が映る。
好い感じにぬくい陽光が部屋の中を反射してキラキラと輝いていた。でもちょっと眩しい。
何か知らんが日光がやけに一箇所で反射しまくっている。キラキラを通り越してギンギラギンというレベルだ。
古いか。
それにしても開きたてのぼんやりした視界にはウザったいってレベルじゃねーぞ。
しかもその光源がゆぅらゆらと狙いを定めるみたいに揺れているもんだから堪らない。
目を閉じ直しても目蓋越しに光っているのが分かるくらいだ。
寝起きの気怠さと天秤にかけてもぎりぎりで鬱陶しい方に傾く。仕方がない。
どうも誰かに負けた気がして気が進まないが、本当に仕方なく←ここ重要、光源の排除にかかるとしよう。
決めたら即実行が成功の道。
うっかりと見始めた夢の向こうで手を振っている美人のねーちゃんの誘惑を振り切り、
オレは幾らかの勿体無さを感じながらもしっかりと目を開いて焦点を合わせた。

その木造のグリップより伸びる刃は厚みと鋭さを両立し、肉を斬る重さと扱い易さを追求したものにして、
古くは刀匠の技術を取り入れて今なお広く民に伝える一品。
その用途は野菜を切り魚を捌き肉を裂き骨を断ち、時には人間をも斬るという広範さ。一家に数本、主婦の友。
姓は持たず、名は包丁。江戸っ子でありんす。

という。
目覚めたら包丁。目を開ければ包丁。ナイフとも西洋剣とも違う独特の長さと反りを持つ刀身に、鍔のない持ち手部分。
日本人伝統の調理用具が、刃先をオレに向けて滞空していた。

新ジャンル「朝から包丁」、始まります。

って最初っからクライマックスかよ!?

「愛してるから殺したーーーーーーーいっっ!!」
「ふるおあああああぁぁぁぁぁぁあっ!?」

まさに黒ヒゲ間一髪、
殺る気満々のセリフと同時に転がったオレに遅れてザクッ、とかズバッ、じゃなくてドズゥッて感じの音が鳴る。
間違いなくマットを貫通した証拠を耳に、オレは勢い余って滑り落ちたベッドの脇から下手人を見上げた。
勿論その間にも命の危機を感じていたのは言うまでもない。
ヤバイ。トはともかくスに濁点がつくとか半端ないぞ、犯人はどこのヤの字だ。ヤスか。

137:此方から彼方まで在処を求め
09/01/19 11:21:35 6g0RFYsR

「────ちっ。
 はぁい♪ お兄ちゃん。いい朝ね。太陽は今日も私のために燃えているわ」

落ちる時に受身を取り損ねて痛みを訴える頭の上、オレの顔と天井の間から舌打ちと共に声が降りる。
随分と気さくで馴れ馴れしい、そして盛大に不本意ながらも聞き覚えのある声だ。
世界広しと言えども朝一でこんな挨拶を飛ばしてくる奴を、オレは一人しか知らない。

「・・・・・・朝っぱらからどういうつもりだ? 此方(こなた)。
 いくらオレでも、起きた瞬間から実の妹に命を狙われる覚えはないんだが」
「そうね。
 このアタシ様の大いなる慈悲で懇切丁寧に説明してあげてもいいんだけど、先ずは起きてくれないかしら。
 妹のスカートの中は見上げるものではないわよ? お兄ちゃん」

色々と言いたいことはあるが、一歩下がった妹に従って体を起こす。
立つのも面倒なのでベッドを椅子代わりにして腰掛けたが、やはり愛用の寝具には小さな裂け目ができていた。
憂鬱だ。しかも黒か、似合ってないな。

「失礼な上に今日も朝からだるそうね、お兄ちゃん。
 そのくせにゴキブリのような素早さとしぶとさを発揮した点は褒めてあげるわ。
 冥土の土産に被せてあげようと履いて来たパンツが台無しね」
「おい」

心の重さに拍車をかける爽やかボイス、ただし色は真っ黒である。
頭痛のしてきた額に手を当てながら視線を上げると、そこには意味不明に幸せそうな女の笑み。
と言っても一見した年齢は幼く、まだ中学生程度だ。
早朝、外に人の声もしない時間から皺一つない女子用の学生服を着込み、
とうに整えたらしいツインテールを頭の左右で揺らしている。
室内の薄い朝日を浴びて綺麗に艶を出す髪は黒く、座ったオレを見下ろすくりっとした瞳の光は強い。

「此方」
「何かしらお兄ちゃん。
 アタシが褒めてあげると言ったのに話の途中で言葉を切らせるとはいい度胸ね。
 それに生意気だわ。実の兄だからって名前で呼ぶことを許可した記憶はないわよ?
 家族だからってあまり馴れ馴れしくしないでよね、許可するからもっと呼んで下さい」
「おい。いいから話をさせろ、此方」
「何かしらお兄様、アタシは今いい気分よ。そう、人間の一人も殺せそうなくらい」

頼むから会話を成立させる努力をしてくれ。
それと、たった今オレを刺殺しようとしたばかりだろうが。

「ノン♪ ノン♪ ノン♪ どうやら貴様の体に黒目という部位は存在しないようね、お兄ちゃん」

背を曲げ、寄せた顔の前で指を左右に振る我が妹。
思わず首を捻るオレの前に、愛用のベッドを傷物にしてくれた凶器が差し出される。

「竹光よ。このアタシ様の迸る殺気が強烈な余り、どうやらただの竹のオモチャが真剣に見えてしまったようね。
 流石はアタシ、溢れんばかりの才能だわ。正直惚れる」

刃文も木目も存在しないのっぺりとした刀身は、触れさせた指を刃に沿って引いても血も出ない。
成程。確かにこれは竹光である。が。

「ちょっと待て。そもそもの行動の理由とか色々と突っ込みどころはあるが、
 それは置いといてお前、今さりげなく指を振りながらもう片方の手で背中にそれを隠さなかったか?
 まさかその隙に本物と入れ替えたんじゃないだろうな? 竹光でベッドを貫いたんならそれはそれで恐ろしいが」

幾らなんでも竹製の刃がギラギラと光を反射するだろうか。怪しい。


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