キモ姉&キモウト小説を書こう!Part17at EROPARO
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part17 - 暇つぶし2ch137:此方から彼方まで在処を求め
09/01/19 11:21:35 6g0RFYsR

「────ちっ。
 はぁい♪ お兄ちゃん。いい朝ね。太陽は今日も私のために燃えているわ」

落ちる時に受身を取り損ねて痛みを訴える頭の上、オレの顔と天井の間から舌打ちと共に声が降りる。
随分と気さくで馴れ馴れしい、そして盛大に不本意ながらも聞き覚えのある声だ。
世界広しと言えども朝一でこんな挨拶を飛ばしてくる奴を、オレは一人しか知らない。

「・・・・・・朝っぱらからどういうつもりだ? 此方(こなた)。
 いくらオレでも、起きた瞬間から実の妹に命を狙われる覚えはないんだが」
「そうね。
 このアタシ様の大いなる慈悲で懇切丁寧に説明してあげてもいいんだけど、先ずは起きてくれないかしら。
 妹のスカートの中は見上げるものではないわよ? お兄ちゃん」

色々と言いたいことはあるが、一歩下がった妹に従って体を起こす。
立つのも面倒なのでベッドを椅子代わりにして腰掛けたが、やはり愛用の寝具には小さな裂け目ができていた。
憂鬱だ。しかも黒か、似合ってないな。

「失礼な上に今日も朝からだるそうね、お兄ちゃん。
 そのくせにゴキブリのような素早さとしぶとさを発揮した点は褒めてあげるわ。
 冥土の土産に被せてあげようと履いて来たパンツが台無しね」
「おい」

心の重さに拍車をかける爽やかボイス、ただし色は真っ黒である。
頭痛のしてきた額に手を当てながら視線を上げると、そこには意味不明に幸せそうな女の笑み。
と言っても一見した年齢は幼く、まだ中学生程度だ。
早朝、外に人の声もしない時間から皺一つない女子用の学生服を着込み、
とうに整えたらしいツインテールを頭の左右で揺らしている。
室内の薄い朝日を浴びて綺麗に艶を出す髪は黒く、座ったオレを見下ろすくりっとした瞳の光は強い。

「此方」
「何かしらお兄ちゃん。
 アタシが褒めてあげると言ったのに話の途中で言葉を切らせるとはいい度胸ね。
 それに生意気だわ。実の兄だからって名前で呼ぶことを許可した記憶はないわよ?
 家族だからってあまり馴れ馴れしくしないでよね、許可するからもっと呼んで下さい」
「おい。いいから話をさせろ、此方」
「何かしらお兄様、アタシは今いい気分よ。そう、人間の一人も殺せそうなくらい」

頼むから会話を成立させる努力をしてくれ。
それと、たった今オレを刺殺しようとしたばかりだろうが。

「ノン♪ ノン♪ ノン♪ どうやら貴様の体に黒目という部位は存在しないようね、お兄ちゃん」

背を曲げ、寄せた顔の前で指を左右に振る我が妹。
思わず首を捻るオレの前に、愛用のベッドを傷物にしてくれた凶器が差し出される。

「竹光よ。このアタシ様の迸る殺気が強烈な余り、どうやらただの竹のオモチャが真剣に見えてしまったようね。
 流石はアタシ、溢れんばかりの才能だわ。正直惚れる」

刃文も木目も存在しないのっぺりとした刀身は、触れさせた指を刃に沿って引いても血も出ない。
成程。確かにこれは竹光である。が。

「ちょっと待て。そもそもの行動の理由とか色々と突っ込みどころはあるが、
 それは置いといてお前、今さりげなく指を振りながらもう片方の手で背中にそれを隠さなかったか?
 まさかその隙に本物と入れ替えたんじゃないだろうな? 竹光でベッドを貫いたんならそれはそれで恐ろしいが」

幾らなんでも竹製の刃がギラギラと光を反射するだろうか。怪しい。

138:此方から彼方まで在処を求め
09/01/19 11:22:34 6g0RFYsR

「突っ込むとはいきなりご挨拶ねお兄ちゃん。
 セクハラは人類が生んだ最も低俗な意思の疎通法よ、喪男の求愛活動なら他所でヤって頂戴。
 それと仮にアタシが本物の包丁を使っていたとしても大丈夫、
 いくらアタシでもこんな朝っぱらから人をSATSUGAIしたりはしないわ。もうシャワー浴びちゃったもの」
「何だその返り血を落とす手間がなければ殺ってる的な発言は・・・・・・」
「何だも何もそれが真実と言うものよ?」
「あっさり認めやがった!?」
「悲しいけど、これって現実なのよね」
「うざいっ!」

ああ。まったく、なんだって睡眠を妨げられた朝からこんな会話をしければならんのか。本当に疲れる。
御境(みさかい) 此方。たった1つ違いの上に母親の腹も同じなのに、どうしてコイツはこうもこんな奴なのか。
性格を形容しようとしたのに当てはまる言葉が思いつかん。

「まあ流石にまだお兄ちゃんを殺すつもりはないわよ。
 殺るならそれに相応しい格好というものがあるわ・・・・・・・・・その、ウエディングドレス・・・とか」
「随分と用途を間違った花嫁衣裳だなおい!?」

あの女性の憧れには『貴方の色に染まります』という意味があると聞いたことはあるが、
そこで血の色を想定するのはいくらなんでも間違いだろう。あと頬を染めるな。
更にさりげなくいつかはオレを殺す可能性も示唆しなくていい。兄は悲しいぞ、妹よ。

「・・・・・・はあ。分かった、取り敢えずお前の奇行に関するあれやこれは脇に投げ捨てておくとしよう」

話がサイドステップを踏むくらいならいいが、このまま行くとムーンウォークを刻みそうだからな。

「で。朝っぱらから何の用だ?」
「『で。朝っぱらから何の用だ?』ねえ・・・・・・ふうん。随分と偉くなったものねえ、お兄ちゃん。
 家族相手に、それは他人行儀と言うものよ?」

文脈が解らない。

「おはようございます」

いきなり頭を下げられた。
向こう10年は白髪の心配が無さそうな頭部が目の前を縦に通り過ぎ、シャンプーの香りを振り撒いてから戻る。
何のつもりだ。

「だから『おはようございます』よ、お兄ちゃん。
 まさか全国一億二千万の日本国民共通の一般常識を知らないの? 頭は大丈夫?」

少なくともお前よりは自信があるぞ、妹よ。まあ言いたいことは理解できたがな。
質問に答えるのにこんな回りくどい真似をする理由は別だが。

「はぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・おはよう、此方」
「ええ。存分におはようございます、お兄様」

人一人起こして朝の挨拶をするまでにこうも時間がかかるかね、普通。
よその家庭も兄妹ってのはこんなに複雑なのか。いやはや。面倒な話だ。

139:此方から彼方まで在処を求め
09/01/19 11:24:18 6g0RFYsR



睡眠欲の次は食欲。これこそが正しい朝の順番である。寝たら食べる、起きたら食う。朝食は一日の活力だ。
そんな訳で、オレは我が家の食卓へと急いでいるのである。

「まったく。お兄ちゃんが着替えに手間取ったせいで予想より遅れてしまったわ。
 冷たいものはお腹に良くないのに、冷めた味噌汁のおかげでこのアタシがお腹を下したらどう償ってくれるのかしら?
 学校を休んで付きっ切りの看病を要求するわよ。
 でも看病の前にアタシの健康を損なったことに関する懺悔が先だがら、
 その時は土下座させて心行くまで踏んであげるわ」

そんなオレに半歩くらい先行する気の早い我が妹。
お前が部屋に残ってオレの着替えを覗こうとしなければ揉めて時間を食うこともなかったんだがな。
あと人の腕を抱きかかえながら歩くな。当たらない胸の発育具合に悲しくなる。

「当ててないのよ」

最近のツンデレが負け惜しみも兼ねるとは知らなかった。

「おはよう、彼方(かなた)姉(ねえ)」
「連れて来てあげたわよ、お姉ちゃん」

そんなやり取りをしつつ階下へ到着。食卓と同時に目に入る、台所に立つ姉の背中に声をかける。
妹である此方より背は高く髪は短く、肩口で切られた黒髪の下でエプロンの紐が学生服の上を走っていた。

「あ、おはよう在処(ありか)ちゃん。此方もご苦労様かな」

綺麗に保たれた西洋版割烹着の前がこちらを向き、朝に相応しい朗らかな声が返ってくる。
表情も柔和かつ穏やかであり、厨房で包丁を握ることへの緊張感は全くないのは手馴れている証拠だ。
家の両親は朝が早く、そのため放置プレイを放任主義と言える程に育った子供達に朝食の仕度は任せっ放しであり、
自分達は通勤途中にコンビニやチェーン店で朝の栄養摂取を済ませているような人間である。
そんな一男二女の我が家、
御境家の食卓を預かるのは主に長子にして長姉である彼方姉であり、それは今朝も変わらない様子だ。

「今、温め直しているところだからもう少しかかるかな。
 ちょっとだけ待っていて欲しいかも。先に座ってて」

振り向いた姉が菜箸で食卓の方を指す途中で、腕に押された胸が形を変えた。
まだ食欲を満たす時間だというのに目と腰のやり場に困る光景である。
歳はオレと一つしか違わないのにこれが女体の神秘とでも言うのか、
性別の差が我が姉の胸に与えた果実は他の野郎に収穫されることもなく日々豊かに実りっぱなしで、
こう、何と言いますか大変にけしかりやがりませんね、はい。
前に向き直る時にヒップが描く軌道も実にグッド。
今日も朝からナイスバディ、
姉より(年齢差から来る体型的に)優れた妹などいないということを見事に体現してくれている。
眼福とはこのことだ。流石に姉相手に性欲を持て余す趣味はないがな、大佐。

「────お兄ちゃん」

よって横から聞こえるブリザードな響きに負けてテーブルを目指す訳では決してない。
ないったらないのだ。
妹に負ける兄などいない。そう思いたいところである。

「女の胸が大きいのは夢を詰め込んだからで、小さいのは夢を与えたからよ。
 悪女=ナイスバディ=非貧乳の法則を知らないのかしら・・・・・・? 豊胸は罪悪よ、憶えておきなさい」

まだ何か言っているが聞こえない。
『貧乳はステータス』と言って自己正当化に走らないだけよしとしよう。そうだろう、全国一千万の男児諸君よ。

140:此方から彼方まで在処を求め
09/01/19 11:25:38 6g0RFYsR

「よっと。此方、リモコン取ってくれ」
「座る時、立つ時の掛け声は衰えの現れよお兄様。・・・・・・はいどうぞ、感謝するがいいわ」
「サンキュ」

そんな調子で引いた椅子に腰を下ろし、リモコン片手にチャンネル操作。
どう見てもバラエティにしか見えないニュース番組からマシなやつを選び出す。
最終的にボタンを二週させて決めたのは『朝ズドッ!』だった。
Tv テレビ
Crew クルー
Station ステーション
略してTCSという局が流している番組で、
司会者のみの ぶんやが主にマスコミだけの支点から勝手に世論を代弁するニュース(笑)番組である。
これがなんのかんのいって面白い。
番組の趣旨が、ぶんやが庶民にとって特に大きな問題をズドッ!と突き刺すことなのだが、
これが如何に見当外れの方に行くかを生暖かく見守るのが最近の視聴者の流行らしい。
オレも、たまに特集コーナーを引っ張り過ぎるが、扱うニュースの量もそこそこなので比較的よく見ている。

「ふーん。『○○の少女、恋敵を脅すために家を爆破!?』ねえ。正直、手段としてはどうかしら」
「海外はやることが過激だな。やっぱ日本が一番だ」
「甘いわねお兄ちゃん。日本人って派手さを嫌う分、被害は少ないけどやる時は陰湿なのよ。
 アタシなら爆破なんてしないで攫(さら)って流すか埋めるか消すかするわ。
 ガキ相手なら刃物をちらつかせるだけで十分だし、バレる犯罪に意味はないのよ」
「このご時勢に余り怖いことを言うな。まあ、逮捕されたら恋も何もないとは思うがな」
「『真のオタクは犯罪などしない! 来週のアニメが見れなくなる!!』ってやつ?」
「なんだそりゃ」
「メディアのオタク批判のあり方に対する有志の意見よ」

なんて会話を交わしながらまったりと待つこと数分。

「お待たせかな」

姉が温まった食事を載せた皿をオレ達に渡し、せめてもの手伝いと並べている間にエプロンを解いて席に着く。
横長のテーブルの端にオレ、左右に此方と彼方姉という形で卓が埋まった。
家族五人が食事時に揃うことは滅多にないので、使わない椅子は仕舞われているのだ。

「今朝のメインはホッケの開きの塩焼かな」

首相の『煮付け』発言で話題になったやつか。TCSでも何か言っていたかな。
確かあるにはあるって結論だった気がするが、どちらにせよホッケ自体に罪はない。
成長途中の男子としては美味しくいただくだけである。

「戴きます」
「戴きます」
「戴きます」

姉弟・兄妹の三人、合わせて合掌する。親はいないけど、それでも家族で囲む食卓だ。
家族の大切さが叫ばれる昨今、照れ臭いが温かい気分にはなる。
出される料理が美味ければ尚更で、家の姉の料理は下手な主婦顔負けだしな。
学生だから時間をかけていられないが、ちゃんと習って時間をかければ相当なものが作れるのではなかろうか。
密かにそう思わないでもないね。何にせよ手作りの料理ってのはいいもんだ。
ビバ手料理。ビバホームメイド。ちなみにビバはイタリア語で、ホームメイドは英語だ。

「へえ。ホッケって、居酒屋以外で普段から食べるものじゃない気がするけど、普通にイケルんだな」
「身が多い割には安かったし助かったかな。焼くだけだと調理も簡単。
 普段よりちょっと量があるけど、朝からで大丈夫だった?」
「ああ平気平気。そのために塩焼にしてくれたんだろ?」

141:此方から彼方まで在処を求め
09/01/19 11:27:42 6g0RFYsR

その位の配慮は信頼出来る。
最近は家族でも気付けない、なんてことが強調され易いが、家族だから気付けることもちゃんとあるのだ。
味付けが軽いお蔭で箸が進む進む。
もともと庶民の朝食なんてシンプルなもの、一汁一菜が基本。
ホッケを中心に、味噌汁を飲んで、たまに漬物を挟んで。
そうして体重を増やしながらあっと言う間に大部分を食べ終わってしまった。
残るホッケの頭は流石に残し、いい具合に焼かれた皮を端で切り取って白米に乗せて挟む。

「あれ? 在処ちゃんってこういうお魚の皮も残さず食べちゃう人だったかな?」
「ん? いや、大体はそうするけど」

普通はそうするよな、うん。ホッケの開きは皮も食うはず。地方とかで違うもんだったっけ。
エビフライの尻尾は否定派賛成派で分かれた気がするが。

「ふーん、そう。
 じゃあお姉ちゃんの分もあげちゃおうかな。在処ちゃん、はい、あーーん」
「ぶっ!?」

などと考えたところで差し出される魚の皮。箸で挟まれ、丁寧にも下に手が添えられている。

「お姉ちゃんっ!」

妹がテーブルに掌を叩き付けた。

「此方に文句を言われる筋合いはないかな。
 在処ちゃんが降りてくるのが遅かったの、原因は何?」
「ぬぐ」

が、勢いこそ良かったものの相手の質問に女らしからぬ声で詰まる。

「と言うかオレの意思の確認はないのかよ」

そこは最初に尋ねるべきではないだろうか。

「在処ちゃんは私がお箸をつけたものを食べるのは嫌かな・・・・・・?」

聞き方の再考を求める。誤解を招くぞ。

「そう。嫌なのかな」

解っててやっていませんか。

「い、いや、オレは別に彼方姉のことが嫌いではないし、
 関節キスで騒ぐ年齢でもないのであって、厚意そのものも有難迷惑ではないんだがな!?」
「じゃあ問題ないかな! はいあーーーーーーんん!!」

言い切らないうちに、開いた口をロックした彼方姉の箸が突き出される。
人間、喋っている間は警戒が薄いもので隙を衝かれやすい。
これが漫画やアニメなら流れ的にも口にしてしまう展開だろう。しかし。



「────だが断る」



この御境 在処が最も好きなことのひとつは、
それをお約束と思ってるやつに『NO』と現実を教えてやることだ。


142:此方から彼方まで在処を求め
09/01/19 11:29:23 6g0RFYsR


「かなっ!?」

空中で互いの箸が激突した。予想外のことに驚愕の声が上がる。
別に叫ぶ程のことじゃあないだろ、彼方姉。
何が起きたのか。真実はたったひとつだぜ、我が姉よ。たったひとつの、単純(シンプル)な答えだ。
箸を思い切り刺し出した姉の突きを、閉じた箸を上向きにした弟の盾が防いだ。それだけさ。
不意を打とうとしたようだが、甘かったな彼方姉。

「かな・・・・・・かなッ!」
「パリィッ!」

初撃は防いだ。動揺も引きずり出した。両方やんなくっちゃあならないのがつらいところを両方こなした。
覚悟もできてる。
しかし相手も然る者、そう易々と諦めてはくれない。
一旦は引いてから箸を別角度で繰り出し、それも同じように防がれたと見るや、
ホッケの皮を挟んだまま、先端をオレが握る箸の隙間へと押し込んでくる。
間隔が無理やりに押し広げられた瞬間に咄嗟にパリィ(受け流し)へ切り替えたが、くそっ、脂で滑る!?

「かなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかな」
「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ」

食卓の上を覆う無数のラッシュ。
飛び散る脂、響く掛け声、高速で行き交う箸が弾き合って奏でる澄んだ剣戟音。
一秒に十回『かな/アリ』発言が十秒に渡って続く。
その間に、流星のような攻防を繰り返しながら一見して互角の勝負は、僅かにオレが押されていた。
いや、時間が経つ程に押され始めていたと言うべきか。
箸の側面で受けたホッケの皮にべっとりと付いていた脂が、手に落ちて力の伝達と操作性を歪めているせいだ。
握力×体重×スピード=破壊力。
握力と体重ではオレが勝り、筋力差によるスピードは女性特有のしなやかな動きを駆使する姉が相殺。
三要素のうち二つもの舞台で上に立ちながら、にも拘らず不安定なその足場が邪魔をしている。
裸の相手を投げるのが難しいように。氷の上で体重を足に乗せながらする歩行が困難であるように。
脂による摩擦の減耗が、それを補うための余分が、オレの箸捌きから重さを奪っている。
ラッシュの速さ比べでは負けていないというのに、マズイ。
このままではディ・モールト(非常に)マズイぞッ!
このままでは敗北を免れ得ない。あの、姉が笑みと共に繰り出してくる一口を詰め込まれてしまう。
そんなのはゴメンだ、冗談じゃない。それはオレの意思じゃあない。
この歳にもなって実の姉に『あーん』なんて死んでも嫌だ。
来るべきその初体験の瞬間は、いつか、共に過ごす美しい彼女との黄金の未来へ取っておくべきもの。
そこは断固として譲れない。
仮にそれがなかったとしても。そう。
男一人に女二人の姉弟/兄妹が座る食卓で『はい、あーん』が展開されるなどと。

現実の家庭にラブコメを持ち込むがごとき思想!!!

オレにリアル萌えの趣味は断じてない。
そして脳内の嫁も夢で見る美幼女美少女美女美熟女男装麗人の皆さんで既に乗車率400%。
つまり、実姉(じつあね)の萌え要素など。



全 力 で お 断 り し ま す !





143:此方から彼方まで在処を求め
09/01/19 11:31:10 6g0RFYsR
「KANAHHH!」
「PARRYYY!」



だが、残念ながらそのための手段がない!
このますます手を滑らす脂のように、血が滴るように今ッ、じわじわとオレが押し負けているのが現実!
防御の決壊は目前だ。ここは機転がいる。
初手で負ったハンデを、そのまま勝利の布石に変えるような逆転的発想がッ!

「隙ありかな? ボラーレ・ヴィーア(飛んで行きな)!」
「しまった!?」

思考のせいで生まれた間隙を思い切り殴り付けられた。
脂に塗れ、
スチュワーデスがファースト・クラスの客にサービスするワインのグラスのようにツルツルピカピカの箸が、
掴みきれなくなった手を抜けて弾き飛ばされる。
思わず、オレの手はそのちっぽけで頼りない2本の棒切れを追っていた。

「もう遅いかな! 回避不可能よッ!
 かなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなァーーーッ」

そんなオレの顔面に叩き込まれる箸先がいやにはっきりと見える。
ああ。世界がゆっくりだ。何て言えばいいのか。
普段とは違う流れの中にいるっていうか、周囲が止まっている中で自分だけが変わらず流れているみたいな。
そんな感覚がある。

ふと、伸ばした自分の手に目が行った。

思い付き、実行する。

「・・・・・・かな?」

スローになった世界の加速は早い。
無限に引き伸ばされた一瞬が、今度は無限を凝縮した刹那になる。
二人の時間が同じ世界に重なった時、
姉の箸は────箸を掴む『右手』は、オレの『左手』に押さえられていた。

「深い理由なんか要らねえよな。
 “箸で挑んでくる相手に、何も箸で応じてやるこたあねー”。咄嗟にそう思っただけだよ」

考えてもみれば間抜けな話で、相手の流儀に合わせてやる必要なんかない。
でなくとも利き腕に、右手に握った箸が駄目になったら右手を使えばいい。
それが無理なら左手を使えばいい。
そんなのは腹を空かせた子供がお握りを両手に掴むくらい当然のことだ。

「ず、ずるい・・・っ!」

そして、この『食べない』と『食べさせる』の争いに付き合う義理もない。
そもそも食べることを拒否し続けても体力の消耗戦になるだけでオレには不毛なのである。
ではどうするか。
逆に考えるんだ、
『“姉に食べさせられる”のを拒否するんじゃなくて、“姉に”食べさせればいいさ』と考えるんだ。

「ひょいっと」

そんな訳で、まだ脂塗れの右手で姉の箸からホッケの皮を摘み出す。

144:此方から彼方まで在処を求め
09/01/19 11:32:35 6g0RFYsR
「あ」

摘み出し、どうせ指ももう脂塗れなのでついでに丸め、間抜けに開かれた姉の口へ投入してやった。

「アリーヴェデルチ!(さよならだ)」

姉のホッケよ、その口へ帰れ。それがお前の運命だ。

「勝った! 今日の朝ごはん完! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぅー、ご馳走様でした」

いい加減に疲れたのでテンションを下げ、手を合わせて深々と食卓に頭を垂れる。
働き出した胃が朝の少ない血液を貪欲に持って行ってくれているので、ついでに賢者タイムへ突入。
きっかり三秒。顔を上げて見ると、変わらない体勢の姉と、何故か妹まで肩を震わせていた。

「あ、あわわわわ」
「あ、あああああ」

壊れた声優音声付き目覚ましのような声を上げてから口を閉じる。
突っ込んでやった餌を飲み込んだ彼方姉の喉がごくりと鳴った。

「こ、これはこれでいいかもしれなくもないかもかなーーー!?」
「なっ、何をしてくれてんのよお姉ちゃんっ!!!」

立ち上がり、飛んでいった箸を探す。

「わ、私は何もしていないかな!? 此方っ。してくれたのは在処ちゃんの方だよ!」

どう跳ねたり転がったりしたのか、二本ともテーブルの下に落ちていた。

「お姉ちゃあぁぁぁぁあああああああんん!?!
 アンタのくだらない『あーん』はこれを狙っていたのなら予想以上の効果をあげたわ!
 アンタがッ! 泣くまで! 殴るのをやめないッ!」

屈みこんで拾う時にスカートから伸びてばたばた動く足が四本ほど見えたが、
血は股間より腹部に集まって来ていたし、
ニーソでもなかったためにオレの心が燃え尽きるほどヒートもしなかったので無視した。

「もう頭にきた、アタシは妹をやめるわ! お兄ちゃんッ!!
 アタシは兄妹を超越する! お兄ちゃん、アナタの愛でねェーーッ!!」

剣呑な気配が渦巻く前に食器を流しへ置いて回れ右。背後の厄介毎に絡まれるはごめんだね。
御境 在処はクールに去るぜ。あらほらさっさー。


なんて。
罷り間違っても、これが毎日の日常なんてことはあるはずがないんだが。
それにしても、我が家ながら何とも疲れる食卓である。
やれやれだぜ。








向けられるお兄ちゃんの背中を見るのは、いつもツライ。
刹那でも、帰って来る保障があっても、それはお兄ちゃんがアタシから離れるということだから。


145:此方から彼方まで在処を求め
09/01/19 11:35:41 6g0RFYsR
「・・・・・・行っちゃったわね。
 はあ。どうして肝心な時に限って妹の方を向いてくれないのかしら」

早起きしたアタシ達と違って済ませてない登校の準備をしに行っただけだし、
終わっても外に出て待っててくれるから、どうせすぐに会えるけど。
すぐにすぐに必ず会えるはずだけど。そんな理屈はアタシの心に響かない。

「それは在処ちゃんが此方なんかに興味がないからかな」

逆のベクトルでなら、この女の声はよく響くけど。

「五月蝿いわね、馴れ馴れしく名前で呼んでるんじゃないわよ。一体いつアタシがそれを許可したのかしら?」
「それは在処ちゃんのことかな? それとも自分の名前?」

ウザイ。

「五月蝿いっつってんのよ。その馬鹿みたいな口癖を止めなさい。
 お兄ちゃんの名前にちゃん付けでお姉ちゃん面をするのもね。気持ち悪い」
「くすくす。仕方のない妹」

本当に、この女は。

「そんなに羨ましかったの?」

キモチノワルイ。

「黙りなさい。それ以上、一言でも喋ったら殺すわよ」
「出来もしない癖に」

音が鳴る。握ったままの箸の先を合わせ、かちかちと姉が打ち鳴らす。

「自分が最初に協定を破って着替えを覗こうとでもしたんでしょう?
 なら、私がちょっとくらい在処にアクションを起こしたって、咎めるのは筋違い」

いつも食べ終わるとすぐに食器を片付けてしまうお兄ちゃんの、
本当なら流しに浸けられて落とされてしまう唾液が少し────でも確実についた2本の棒切れ。
もしかして。あのやり取りは、少しでも多く自分の箸にお兄ちゃんの唾液を擦りつけようとしたのか。

「つい・・・・・・お兄ちゃんを起こす以上のことをしようとしたのは謝るわ。
 でも、着替えを覗くのはお兄ちゃんに対して積極的に何かをする訳じゃない。
 あくまでお兄ちゃんに何かを強いたり意思を無視するような邪魔はしない、消極的な行動よ。
 アンタのはそうじゃない。特に、お兄ちゃんに拒まれてまで食べさせようとしたのはやり過ぎよ」

圧(へ)し折ってやる。そう思ったのがバレたのか、姉はそれを口に入れると、しばらく舌で弄んでから抜き出した。

「ん・・・・・・ぷあ。
 あれは在処の照れ隠し。嫌がられたような言い方は心外ね」

自分の唾液だけを帯びた棒切れを皿に乗せる。

「最後まで抵抗されておいてよく言えるわね。お兄ちゃんの都合を考えないのは相変わらずか」
「それは間違い。私は在処のことしか考えない」
「お兄ちゃんのことじゃなくてお兄ちゃんの都合って言ったのよ」
「同じことよ」
「違うわ」
「違わない」
「違う」
「違わない」
「違う」
「違わない」

146:此方から彼方まで在処を求め
09/01/19 11:37:21 6g0RFYsR

平行線だ。
この女とアタシはいつもそう。お兄ちゃんを基点に、アタシとコイツは常に対極にいる。

まるで線を引いた境目の、此方(こちら)と彼方(あちら)にいるように。

姉妹だけど。むしろ姉妹だからこそ、求める在処に3人は居られないから。
いつかと願う其処を境界線に、これまでもこれからも対立する。し続ける。
どちらかが消えるまで。どちらかを消すまでは。

「不毛ね」
「不毛よ」

だから、アタシ達の争いはそう長く続かない。
だけど、アタシ達の諍いはいつも終わらない。

「ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」

お兄ちゃんがそうしたように手を合わせ、食事を終えて食器を流しへ運ぶ。
家族の情などなくても同じ家に住む姉妹。
いつか着けるべき決着は、いつにでも着けられる。優先事項はお互いにあった。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

無言でお兄ちゃんの後を追う。当然に抜け駆けを監視し合いながら。
お兄ちゃんは既に外に出て待っているだろう。待たせていると言ってもいい。
玄関で、左右に置かれた鞄のうち、自分の物を取る。同時に用意を終えて顔を見合わせた。

「はん」
「ふん」

アタシが姉を殺さない理由。
コイツが妹を殺さない理由。
それは敵がお互いだけじゃなく、どこにでもいるから。どこにでも生まれる可能性があるから。
例えば、アタシとコイツがお兄ちゃんと通う学校なんかでも。
アタシがお兄ちゃんより下の、コイツがお兄ちゃんより上の、二人がお兄ちゃんの側の邪魔者を始末する。
お兄ちゃんに近寄る存在の排除。その一点が共通の利益だ。

此方から彼方まで、御境 在処の全存在をカバーする。

そのためだけに。最後のその瞬間まで、お互いがお互いを殺せない。
奇しくもお兄ちゃんを挟んだ二人の不一致が生んだ、唯一の一致だ。
時が来るまではせいぜい利用してやろう。どちらもそう思っている。
それはそう、自分がそこにいたいと思う、未来の在処を確実にするためだけに。

「「じゃあ、其処(そちら)は任せたから」」

扉を開ける。数歩先には思った通りの背中があった。
今はまだ、その背中に自分から近付いて行ける。それが出来なくなった時がどちらかの最期だ。
言葉には出さない、暗黙の決意。

胸に抱く想いを新たにしながら、アタシはお兄ちゃんに向かって歩き出した。

147:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
09/01/19 11:38:31 6g0RFYsR
投下終了します

148:名無しさん@ピンキー
09/01/19 13:00:05 bwOhF23i
取り敢えず、前の職人がせっかく投下してくれたんだから間隔はあけよう。あんた、多いよなこうゆうの

149:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
09/01/19 13:34:14 6g0RFYsR
>>148の方
すみません。気を付けるように致します

>>131の方、スレの皆様
申し訳ありませんでした

150:名無しさん@ピンキー
09/01/19 13:46:25 /MkRjJhH
>>148
書けもしないクズ乙!

151:名無しさん@ピンキー
09/01/19 13:59:30 VGM6qD/D
>>148の言ってることはもっともだと思う
まあGjの一言なり付け加えるべきだと思うがな…
つか>>150は荒れるからそういうことは書き込まないでくれ

とりあえずお二方GJ

152:名無しさん@ピンキー
09/01/19 16:01:09 GtRtYFJm
自治厨乙

>>131>>147 gjです

153:名無しさん@ピンキー
09/01/19 16:02:10 EtXwBmqX
>>131>>148も乙&GJでした。

しかし>>131は…パンドラの箱、開けちまったな…

154:名無しさん@ピンキー
09/01/19 19:01:34 BnlGLR69
>>131>>147
乙!

155:名無しさん@ピンキー
09/01/19 21:44:15 UR5Zk9cP
>>147
あんたはSS書く前にまず反省を覚えたほうがいいよ。
半年は投稿停止でROM専としてがんばりな。

156:名無しさん@ピンキー
09/01/19 21:50:13 XeCef2h4
とりあえず>>3だな

157:名無しさん@ピンキー
09/01/19 22:08:27 EI21Bs10
>>131
きついなあ。これはきつい。
どうなるんだろうね、胸が不安でいっぱいだ。
>>147
お疲れ。テンポがいいね。パロディの盛り込み方も素敵だ。

158:名無しさん@ピンキー
09/01/19 22:53:01 weOfOcHq
>>112->>147
すげぇ・・・投下ラッシュだ・・・
お疲れ様ですGJ!

159:名無しさん@ピンキー
09/01/19 22:58:06 hQpp5fme
別に他の人の作品が投下されてから間隔なんかあけなくてもよくね?

160:名無しさん@ピンキー
09/01/19 23:08:08 n5ecefdG
二人ともgjだと思う

161:名無しさん@ピンキー
09/01/19 23:10:38 UX7x/qm4
>>159
それは無い
でも前の作者の投下から3時間も経過してたら充分だと思う

ちょっと神経質になりすぎのような

162:名無しさん@ピンキー
09/01/19 23:12:30 hQpp5fme
そうか…昔は投下ラッシュきたといってみんなで喜んでたもんだが時代が変わったか…

163:名無しさん@ピンキー
09/01/19 23:16:10 q1Qb/cDR
別に投下ラッシュしてもよかろうに・・・

164:名無しさん@ピンキー
09/01/19 23:23:26 Mvv1WU9T
荒らしはスルーしろよ

165:名無しさん@ピンキー
09/01/20 00:27:35 VdsbcBWI
バレンタインデー約三週間前です。
今年もキモ姉妹の恋愛成就のために何人の神父が葬られるでしょうか

166:名無しさん@ピンキー
09/01/20 00:33:00 LRZtDr5F
>>165

家族で恋愛なんかあるかよww

うちなんか姉とはここんとこずっと話さえしてないぞ

167:名無しさん@ピンキー
09/01/20 01:30:13 x2Lj+eaC
ところで、避難所ってどこ?

168:名無しさん@ピンキー
09/01/20 01:35:48 fuQl6QvS
>>166
いいから涙拭けよ。

169:名無しさん@ピンキー
09/01/20 01:50:39 swBxsf6m
オイラなんて、姉貴夫婦に受胎告知されたよ。9月にはおじさんになるぜ…。

170:名無しさん@ピンキー
09/01/20 01:55:11 yXRlpEVh
だいぶ育ってきてから「あなたの子なのよ」と

171:名無しさん@ピンキー
09/01/20 02:33:39 EF6efuLF
彼女と妹から貰う予定>バレンタインチョコ

妹は知らんが彼女のほうは手作りで作るらしくかなり気合入ってた。
今から楽しみだお。

172:名無しさん@ピンキー
09/01/20 02:48:27 1JwXio3d
いきなり語り出したよ…キモ姉やっちゃって><

173:名無しさん@ピンキー
09/01/20 03:46:10 cWUnBBfm
舐めるのはチョコだけでいいの?食べるのはチョコだけでいいの?
お姉ちゃんも甘いんだよ?ほら、特に唇が美味しい部分だから、ね?

174:名無しさん@ピンキー
09/01/20 04:00:04 HwUonhVO
弟「うわぁwwお姉ちゃん、全身が毛だらけ!」
 「ハァハァ、こっちも!そっちも!」

175:名無しさん@ピンキー
09/01/20 04:58:18 7/PeD/mb
>>173
なんか、物凄くキスシス思い出しました。

176:名無しさん@ピンキー
09/01/20 06:49:04 lZPKF21v
姉はバインバインのおっぱいチョコ
妹はツルツルの下半身チョコ



当然ホワイトデーのお返しは弟(兄)のホワイトチョコ一人3ガロン

177:名無しさん@ピンキー
09/01/20 11:09:27 EGU58IwV
1ガロンは約3.8リットル。3ガロン×2人前×3.8=22.8リットル。一発6ミリリットルとして
38000発…アーメン。

178:名無しさん@ピンキー
09/01/20 12:34:17 utl2Ekso
>>177
1日五発、亜鉛パワーで二倍の量。

10年と5ヶ月でなんとかなるさ。

179:名無しさん@ピンキー
09/01/20 13:28:02 wqevXnC3
>>178
毎年9年5ヶ月借精が貯まるのか。
軽く死ねるな。

180:名無しさん@ピンキー
09/01/20 13:44:23 uksAE8Dg
しかし一年間でこれを吐き出そうと思えば、一日平均50発…ええい、ここの姉妹は
サキュバスか何かか?

181:名無しさん@ピンキー
09/01/20 15:13:27 mgUTYvKS
>>171が机にチョコレートを並べてニヤついていると、
部屋の入り口から「やめなさい!!」という一喝が響く。
171が「なんだと~」という唸り声とともに振り向くと、
入り口に眼の細いグラマラス美人姉が立っていた。
「義理チョコごときで浮ついて情けない奴ね」と姉が小馬鹿にするようにのたまう。
椅子に座った171の肩に手を掛けて押さえつける。
「他の女なんかゴミのようなモノでしてねぇ」
「171クンの浮ついた恋心が他の女に届く前に、お姉ちゃんの愛が柔らか~く包み込むの」
姉の唇が171の唇を塞いだ、171の口の中が甘い。
一口サイズのチョコレートを仕込んでいたようだ。
「さぁ、続けましょ・・・」
「性欲のことで困ったら、お姉ちゃんに言ってきなさい、171クンは大事な弟だから・・・」
171は勃っていた。
「お姉ちゃんにいっぱいお返しが欲しいな・・・」
171は姉の身体に深く埋もれていったのだった。

182:名無しさん@ピンキー
09/01/20 19:53:07 yXRlpEVh
バレンタインチョコも呪術的に色々仕込まれてるアイテムではあるな

183:名無しさん@ピンキー
09/01/20 20:24:52 wKYU7Ezo
自分の体組織を仕込むか薬を仕込むか、それが問題だ

184:名無しさん@ピンキー
09/01/20 20:36:13 Vb1w8Ak8
両方いれればいいじゃない

185:名無しさん@ピンキー
09/01/20 21:32:39 nRNzxu56
姉の体組織には有毒成分が含まれているんですね、わかります

186:名無しさん@ピンキー
09/01/20 22:19:32 CBUsuFaR
毒が裏返った!

187:名無しさん@ピンキー
09/01/20 22:19:56 NEMafCPc
>>185
弟には媚薬、泥棒猫には・・・

188:名無しさん@ピンキー
09/01/20 22:23:38 BvJKnuKv
毒手の達人なキモ姉が、体組織を仕込むとな?

189:名無しさん@ピンキー
09/01/21 00:08:16 +EEgaEBp
一日置きに姉の唾液(解毒剤)を摂取しないと、生きて行けない弟。

190:名無しさん@ピンキー
09/01/21 00:30:39 qIVNLnMc
お兄ちゃん(弟)中毒という素晴らしい言葉を思いだした

191:名無しさん@ピンキー
09/01/21 00:31:12 A7TPcq3Z
お兄ちゃんの中毒症状は私が治してみせるッ!

192:名無しさん@ピンキー
09/01/21 01:16:22 IxikupN8
遠い異国の腹違いの兄との幸せを思い浮かべながら、昼間から大麻吸って妄想に浸る金髪キモウトを思い浮かべた。

193:名無しさん@ピンキー
09/01/21 09:23:39 G+dQsc5r
甲賀忍法帖の陽炎みたいなキモ姉妹。

194:名無しさん@ピンキー
09/01/21 09:42:51 aB0j+o1t
まあ待て、チョコの前にやる事があるだろう。豆とか鬼とか恵方巻きとか

195:名無しさん@ピンキー
09/01/21 09:57:16 x7OsoYZT
>>194
お兄(鬼)ちゃんにナニなお豆を食べてもらい、
お返しとしてお兄ちゃんの恵方巻きをパックンチョさせてもらうわけですね?

196:名無しさん@ピンキー
09/01/21 11:17:45 gIhlGT0P
このシスコンどもめ!

197:名無しさん@ピンキー
09/01/21 12:25:16 Gwv4knGv
それは最上級のほめ言葉ですねw

198:名無しさん@ピンキー
09/01/21 14:26:51 bbCfOxQb
>>192
そういう退廃的というかダウナーな感じのキモウトもいいね

199:記憶の中の貴方へ ◆YVZUFUAt8U
09/01/21 18:54:16 j87lGCrW
こんばんは、投稿します。

200:記憶の中の貴方へ ◆YVZUFUAt8U
09/01/21 18:56:55 j87lGCrW
雫姉の機嫌は、中杉さんの運転する車が校門前に到着する頃には、完全に直っていた。
僕たちの通う高校へ着くまでの間、車内で雫姉はずっと、隣にいる僕の手を握っていた。ひんやりとした雫姉の手。なんでも、こうしていると、とても心が安らぐのだそうな。
普段人前では見せない、穏やかな笑顔は日だまりで眠る子猫のようで、小さいけれど、大切な幸せをかみしめているようであった。
天下の雛守家、しかも現当主が見せるには余りにあけすけなその表情に、僕は思わずドキリとしてしまっていた。
雫姉はいつの間にやら、僕に寄りかかっている。腰まで届く、真っ直ぐで、絹のようにきめ細かい、つややかな黒髪が僕の頬をくすぐる。女性特有の何ともいえない香りに、僕の顔は更に赤くなる。
すると、
「着きましたよ。お嬢様、広樹様」
 ちょうど良いタイミングで学校へ着いたみたいだ。中杉さんは、やわらかな笑顔で車のドアを開けてくれた。運転主の中杉さんは執事長でもあり、雛守家の使用人全てを束ねている人だった。
背は低く、そろそろ還暦に手が届くそうだが、それを感じさせない洗練された所作と、ハキハキとした物言い。
ピシリと線が入ったように真っ直ぐな背筋と、親しみの持てる笑顔、そしてひょうきんな性格を持つ、矍鑠(かくしゃく)とした人である。
僕は、そんな高齢の人から恭しくされるのには未だに慣れる事が出来ない。「すみません」と一言。おずおずと下車した。
そこを見ると雫姉は慣れたもので、「ふむ」とうなずくと、「下校時刻はいつも通りに」と告げ、すでにさっさと車を降りてしまっている。
先ほどまでの安らいだ表情はもう無い。あるのはいつもの涼しげで、凜とした表情だった。


僕たちが通うのは私立連翹(れんぎょう)学園。財閥などの資産家、家柄のある家庭の子女だけが通うことの出来る名門校だった。馬鹿高い学費と寄付金が必要な学校。それだけあって敷地は広く、設備は行き届いている。
記憶をなくした3年前から、僕はここに通っている。雫姉1人だけだが、事情をよく知る、知り合いがいた方が心細くないだろう、という雫姉の心遣いだった。
訳あってお金をあまり持っていない僕に、「金は気にするな」と雫姉は一言、その後、学費から生活費の何もかもを出してくれている。


201:名無しさん@ピンキー
09/01/21 18:57:14 6Xd0Z8Fv
しえん

202:記憶の中の貴方へ ◆YVZUFUAt8U
09/01/21 18:59:20 j87lGCrW
「昼休みにそちらに行く。昼は一緒に食べよう」
弁当のはいった手提げ袋を胸元に掲げ、静かだが少し弾んだ声でそう告げる雫姉。多忙な雫姉は暇を見つけては、一緒に昼食を食べにくる。弁当は雫姉の手作りだ。
弁当だけでなく、朝食といった、僕の食事の一切は雫姉が作ってくれる。
僕が家にきたばかりの頃は、屋敷お抱えの料理人が作ってくれていたのだが、しきりに味を褒める僕を見て、彼女は一瞬不機嫌になると「私が作る」といいだした。
いきなりのセリフに驚いた僕に、彼女は恨めしげな顔で、「家族の食事は、家族が作る物だ。それとも……イヤなのか」と言ってきかない。以降は、料理人に教わりながら僕に作ってくれている。
おいしいから良いのだけれど、忙しすぎて身体をこわさないか雫姉が心配だ。でも今日は……。
「ごめん、雫姉今日はちょっと……」
てっきり、僕が頷くと思っていたのだろう雫姉は僅かに目を見張ると
「なんだ、私との食事を断るのだ。一体どんな用事だ」
 先ほどまでの弾んだ声はどこへやら。一転して低い声に変わった。
「うん。クラス委員の仕事のお手伝い。どうしてもと頼まれて……」
「昼食を食べる時間ぐらい、なんとかならんのか?」
「打ち合わせをしたいからって……その、ごめん」
 涼しげな目の奥にある、優しげな光は消え失せ視線が針のように鋭くとがる。
「約束しちゃったから。……雫姉も約束は守れって言っているよね?」
 少し意地悪な言い方だが、そうでも言わなくては承知しない感じだった。
 ムッとした様子の雫姉が口を開いたとき、
「広樹くーん。おはよー!!」
良く通る、元気な声が耳に届いた。

203:記憶の中の貴方へ ◆YVZUFUAt8U
09/01/21 19:00:33 j87lGCrW
振り向くとそこには、ショートカットのかわいい女の子。この子が手伝いを約束した、楠真琴(くすのき まこと)さんだった。
「おはよう。楠さん」
「やだなあ、真琴で良いって言ってるじゃん。何度言わせるのさぁ」
 ニコニコとした楠―いや真琴さんは、今日も元気を身体いっぱいで表していた。何が楽しいのかハハハと笑ったかと思うと、あろう事か飛びつくように、僕をギュッと抱きしめてきた。ソフトボール部の真琴さんの身体は引き締まっている。
先ほどまで早朝練習をしていたのだろう、タイトな身体から、甘い女の子の汗の香りがした。どうにか逃げだそうとするが身長が155センチになるかどうか位に低い僕は、長身の真琴さんのなすがままだ。それでも必死に抜け出そうとしていると、
「おい、なんだ。この失礼な娘は」
 言うやいなや、雫姉は僕を真琴さんから引きはがした。すかさず僕を守るように抱き寄せる。かなり強く握ったのか、腕を握る雫姉さんの手は痛かった。今度は女性らしい柔らかな身体に抱きすくまれて、とうとう僕は動けなくなる。
案の定、雫姉は怒っていた。と、そこで何かに気づいたらしく、
「まて、楠といったな……お前まさか―」
「ああ、雛守のお姫様か。おはようございます。そうです、その『楠』ですよ」
 真琴さんは今雫姉さんの存在に気づいたとでも言うように、クスリと小さく笑った。
 両者の視線が絡む。ギチリと空気が重く硬化していく。
先に目をそらしたのは真琴さんだった
「さあ、広樹くん。『約束』のお仕事だよ!朝からうんざりする程働いてもらうんだからね」
明るく告げると、にらみ合いの時に雫姉から抜け出していた、僕の手を引き意気揚々と歩き出した。さっきのアレは何だったのだろう。とっさに僕は、雫姉の手提げ袋から、自分の弁当箱を取り出す。雫姉はもどかしげに
「広樹……私は―」
と何かを言おうとした。捨てられた猫のような目に、僕は何か言わなければいけない気がして、よく分からなかったが「大丈夫」と返しておいた。
その間にも真琴さんは僕をずんずんと引っ張っていく。雫姉の伏せた顔は前髪に隠れて見えなかったが、寂しげにたたずむ姿は酷く印象的だった。

204:記憶の中の貴方へ ◆YVZUFUAt8U
09/01/21 19:02:47 j87lGCrW
雫姉から十分に離れたとき、ようやく真琴さんは足の速度をゆるめた。
「広樹くんさ。存外かなりのシスコンなんだね。」
後ろの雫姉に意識が向いていた僕は、いきなりそんなことを言われるとは思っていなかったので、驚きながらも、とりあえず「そうかな?」と返した。
「そうだよ!あんなにお姉さんとベタベタしててさ」
気に入らないらしくぷりぷりとしている。
「そうなの?」
「そうなの!!」
そもそもさ、と彼女は続けた。
「いつまでもお姉さんだけって、それって気持ち悪い。すごく気持ち悪い」
いつになく平坦な言い方に、僕も考えてしまう。
「大体さ、だったらもっとあたしとさ……」
考えていたので聞き逃していた。思わず聞き返すと真っ赤な顔で「別に!!」と言われてしまった。
再びぐいぐいと引っ張られる。繋いだままの真琴さんの手は、雫姉とは違う温かな手の平だった。


―なんだあの娘は、
広樹とあの女が去った、校門前。雫は未だそこに佇んでいた。登校する他の生徒達の、何事かとうかがう目にはとっくに気づいていたが、そんなことは今の雫にとって取るに足らないことだった。
広樹にも広樹のつきあいがある。ある程度は譲歩するつもりだった。そもそも広樹から昼食の件について告げられたとき、怒って見せたが、あれはあわてる彼を見て楽しんでやろうと思ったからだ。不満が無いわけではない。が、こんなことは初めてではない。
今週末にでも、今回のことを『埋め合わせ』としてどこかに連れて行かせるつもりであった。だから我慢できないわけではない。
しかし、
―よりにもよって楠家だと?
あの家は非常にやっかいだ。今更ながら友人は良く選べと言っていなかったことが悔やまれる。しかしそれ以上に気に入らないのは―
―あの娘の目だ。
一見快活な様子で接していたが、あの娘が広樹を抱きしめた瞬間、彼女の目が確かに媚びをはらんだ色をたたえたことを、雫は見抜いていた。そして、雫が広樹と取り返した瞬間、気色ばんだ視線でこちらを見据えていたことにも、やはり気づいていた。
あの目は間違いなく広樹に思いを寄せている。雫には分かる。そのことが雫にはたまらなく我慢ならない。あのような汚らしい目で広樹を辱めていることに我慢ならない。
―あいつは―広樹は私のものだ!!
きつく噛み締めた歯からはギチリと音がした。感情が身体を支配する。荒々しく燃え上がる怒りの熱が体内をうねり、駆け抜ける。雫の心の奥の奥、そこにある鬱蒼とした闇。それがゆっくりだが、確実に外へと這い出してこようとしていた。
そこへ、ずっと佇んで身動きしない雫を心配して、女生徒の一人が声をかけようとしたが、
「ヒッ―」
前髪の間から見えた雫の視線に、色を失い、身体を恐怖で震わせる。雫はそれでようやく我に返ると、呼吸を落ち着けた。視線を上げ自分のクラスに足を向ける。だが、未だ、広樹の去っていた方向に目は向いたままであった。
「真琴といったか、あの娘。邪魔だな」
 どうすればここまで底冷えのする声が出せるのか。
晴れやかな朝の空気を、静かな氷の声が引き裂いた。

205:記憶の中の貴方へ ◆YVZUFUAt8U
09/01/21 19:04:11 j87lGCrW
今日はここで投稿終わります。ありがとうございました。

206:名無しさん@ピンキー
09/01/21 19:44:35 /djVPO53
>>205
盛り上がって参りました!
続きが楽しみだー
完結まで応援するよ

207:名無しさん@ピンキー
09/01/21 20:49:08 ep+/Exwx
クールな姉最高!

208:名無しさん@ピンキー
09/01/21 20:59:14 G+dQsc5r
>>205
広樹くんは雫と真琴のキャットファイトに割って入って、命を落とすんじゃ・・・
いや、なんでもない、gj。

209:名無しさん@ピンキー
09/01/21 21:44:07 4wUMbcuf
>>205
GJ!!!
こんな姉が欲しい!

210:名無しさん@ピンキー
09/01/22 00:05:54 FVHtrgJ7
>>205
GJ
これはいいキモ姉

211:名無しさん@ピンキー
09/01/22 00:23:43 fRhEGNtz
>>205
GJ! niceキモ姉!
俺の姉とは大違いだ

212:名無しさん@ピンキー
09/01/22 07:44:44 Do7NcMbI
>>211
詳細を聞いとこうか

213:名無しさん@ピンキー
09/01/22 13:12:19 ePM3IJc/
>>211
怪しい日本語(例:ゼンジー北京、ブラックラグーンのシェンホア)
を操るキモ姉ですかね。

214:名無しさん@ピンキー
09/01/22 20:56:03 FivWNJCP
ノスタルジアマダー?

215:名無しさん@ピンキー
09/01/22 21:59:05 HLOUDOm9
秋冬to玉恵
待ってます・・・

216:名無しさん@ピンキー
09/01/23 02:40:17 EqMzbFy/
避難所でやれ

217:名無しさん@ピンキー
09/01/23 21:12:13 bMsC9jqN
このスレの住人には
是非小川未明氏の「港に着いた黒んぼ」を読んでもらいたいな
いや、その話に登場する姉はかなりキモ姉とは違うベクトルの姉だけど
それなりに通じる物があるし


218:名無しさん@ピンキー
09/01/23 23:39:45 MHiF2miE
>>217
kwsk

219:名無しさん@ピンキー
09/01/24 08:30:42 y2rMLaw2
>>217
ググったら粗筋が見つかったけど
黒んぼが登場する必然性は全くないのね
ただの船乗りでいいじゃんかと思った

あと弟に逃げられてる時点でキモ姉としてはD判定

220:名無しさん@ピンキー
09/01/24 08:44:50 y2rMLaw2
兄または弟と相思相愛なのに
親や友人の前では二人の関係を隠さなくちゃいけないことがストレスになって
次第に心が壊れていく妹または姉……

なんてパターンを、こないだから考えてるけど
まったくもって書いてる暇がない
未完のSSがあちこちに……だめぽ orz

221:名無しさん@ピンキー
09/01/24 09:05:38 V5UQQQZ7
>>220
お、キモ姉妹の新パターンじゃね?それ
応援してるぜ、がんばって書き終えてくれ

222:名無しさん@ピンキー
09/01/24 14:57:22 7bnJN/gp
大好きな兄がナムに引っ張られて以来、大麻漬けになったメリケンさんのキモウト。
兄がナムで死んだと通知が来てからもキモウト特有の思い込みと大麻パワーを合わせてますます幻想の兄との世界に入り浸る。
で、ある事件がきっかけでキモウトの家に回されてきた親戚の子供を兄だと思いはじめて、大麻とセックスで溢れた監禁生活が始まって……

駄目だ。ここまでしか書けない

223:名無しさん@ピンキー
09/01/24 15:19:09 Beic+3bw
日本なら芋虫でアメリカならジョニーだな。

224:名無しさん@ピンキー
09/01/24 19:03:29 z8wOy9S7
未帰還兵の兄を救出するべくヴィエトニャムへ単独潜入を試みるランボーな妹
共産政府軍や密林の猛獣との死闘の末、山奥の村でついに兄と再会
ところが兄はヴィエトニャム美人とケコーンして、自らの意志で村に留まっていたのだった!

……と、ここまで書いてみた

225:名無しさん@ピンキー
09/01/24 20:13:30 H/ATGdG6
戦争ネタと言う事で

捕虜になった弟を救うために敵地に単身突撃する姉を妄想した

226:名無しさん@ピンキー
09/01/24 20:24:49 9x7NE4kh
兄が泥棒猫たちに攫われた。兄を取り戻すためにコマンドーキモ姉。

「キモ姉が泥棒猫と接触すると何が起こるんです?」
「第三次世界大戦だ」

227:名無しさん@ピンキー
09/01/24 20:30:18 WzW01j8L
「泥棒猫を始末する」「姉を止める」。“両方”やらなくっちゃあならないってのが“キモウト”の辛いところだな。

228:名無しさん@ピンキー
09/01/24 20:55:57 p8Oz1PqV
>>226
カービー将軍、乙

229:名無しさん@ピンキー
09/01/24 21:51:19 z8wOy9S7
兄よりも軍事的才能に恵まれた妹が
家臣たちの協力を得て兄を幽閉
兄になり代わって戦国大名となる

だが隙を見て兄が出奔
妹の手が届かない女人禁制の高野山を目指すが
「お兄ちゃんを連れ戻さなきゃオマエら全員切腹」と脅された家臣たちに追いつかれ
必死の泣き落しに負けて妹のもとへと戻る

兄に操を立てた妹は生涯不犯
といいつつも一か月のうち長い期間は城内の御堂に籠もって
監禁した兄を、ぬっぽぬっぽと犯していたりする

そんな上杉謙信女人説

230:名無しさん@ピンキー
09/01/24 22:09:29 qDnYT4hm
>>229
無駄に辻褄あってるよwww

231:名無しさん@ピンキー
09/01/24 23:06:33 jxLrWZQs
それ読みたいぞ

232:名無しさん@ピンキー
09/01/25 00:23:01 bEyqCbAv
姉に監禁されたいと思った俺は末期か?

妹しかいないが

233:名無しさん@ピンキー
09/01/25 00:46:21 9ZYhLAHI
お市の方がキモウト

234:名無しさん@ピンキー
09/01/25 00:46:50 6VTYxQum
>>232
末期だとしても構わない俺は逝く

235:名無しさん@ピンキー
09/01/25 01:48:17 WYVEm8OF
お姉ちゃんが盗んだ下着はやっぱり涎でベトベトなんだろうか

236:名無しさん@ピンキー
09/01/25 01:51:05 BOVu3jQg
地獄少女で兄を殺すキモウト


…うさぎ

237:名無しさん@ピンキー
09/01/25 01:51:28 UGgQPQcY
>>226

キモ姉「こいよ弟君! 彼女なんて捨ててかかってこい! 怖いのか?」

弟「彼女にはもう用はねぇ!アハハハハ 倫理観も必要ねぇやぁハハハ
  誰が近親相姦なんか!近親相姦なんかこわかネェェェ!
  このアマ、犯してやる!」

この後、たっぷり精子抜きされる弟。

238:名無しさん@ピンキー
09/01/25 02:03:22 WHpWHCg3
「面白い奴だ、気に入った。殺すのは最後にしてやる」
「最後に殺すと言ったな、あれは嘘だ」

239:名無しさん@ピンキー
09/01/25 02:49:04 3G2gxt+Y
「(男君に)良いとこ見せましょ」

「不審者を発見。目標は緑色のシャツを着て
ドブのような濁った眼をしてるキモ姉だ」

240:名無しさん@ピンキー
09/01/25 21:40:58 9tkKHE+U
改造人間キモウトが最上階の会議室で、キモウトを改造した会社のCEOたる、
最愛のお兄ちゃんを人質に取る役員の泥棒猫と対決!

241:名無しさん@ピンキー
09/01/25 23:02:39 IoNp1wJy
>>240
「あはははは!!!そんな機械の出来損ないの体で○○ちゃんと愛し合うですって!!」
「何が可笑しいクソ姉!!」
「改造手術で子宮はおろか内臓を総取替えした貴女に。人を愛する事など無理よ!!無理無駄無駄無駄ぁあ!!」
「!!……………」
「あはは、ショックだったのかしら…安心なさいな。○○ちゃんの子供なら、私が何人でも産んで育ててあげる…」
「……」
「子供達でサッカー、いやラグビーの試合ができる位はね。あはっ」
「……ふふっ」
「あらっ頭までいっちゃったのかしら?」
「感謝するわよクソ姉…これで私はお兄ちゃんの前で、ずっと若く美しくいられるのだから!!」
「なっ……!!」
「元々子供嫌いな私にとって、お兄ちゃんの愛を奪う我が子など不要…」
「し、しかし機械の体で発情できるものか!!」
「ならお兄ちゃんを想うだけで、内股を伝うこのねっとりした液体は何かしら……たかが改造手術されたくらいで!!」
「ひっ……」
「私のお兄ちゃんへの愛と肉欲が!!」
「く、来るなぁ!!」
「消しされると思うなよクソ姉がぁ!!!!」



「クソ姉…貴女は地獄で私たちの幸福を羨むがいいわ……私たちはずっと永遠に幸せだし。さて…

おにぃちゅわ~ん!!」

「……ってお兄ちゃんがいない!!どこなの!?」
「先ずは実の姉を倒した事を誉めておこう。だが君の愛しき兄上は、われら泥棒猫が預かる」
「な、なんですって!!」
「また会おう妹くん。いや改造人間キモウトよ」

「泥棒猫め…あなた達からお兄ちゃんを取り返すまで、私は諦めない!!」



続きません

242:名無しさん@ピンキー
09/01/25 23:57:25 1aLQ3twE
1回に11つ子を連発すればJリーグまでいけるぞ!キモ姉!

243: ◆U4keKIluqE
09/01/26 00:02:25 adaHZjGU
今年最初の投下です。5分割です。

244:転生恋生 第九幕(1/5) ◆U4keKIluqE
09/01/26 00:03:45 K+1IM184
 翌日の月曜日、俺は自分の席に着くときに、これまでにないほど緊張した。まともに猿島の方を見ることができなかった。
 猿島は既に登校していて、いつものように文庫本を読んでいた。俺に対して、特に注意を払うそぶりもない。
 俺はクラスメートに対する朝の挨拶は欠かさない方だ。相手が誰であれ、朝初めて顔を合わせたら「おはよう」と声をかける。
 普段どおりにしないといけない。ちょっとでもルーチンを壊したら、全ての歯車が狂ってしまう。
 そう思いつつ、俺は席につきながら声を出せずじまいだった。軽く「おはよう」ということができなかった。
 ちらちらと猿島の方を見ながら何も言い出せずにいる俺に、猿島の方から声をかけてきた。
「おはよう」
 視線は文庫本から外さなかったが、その一言で俺は救われた。
「おはよう」
 何とか声を出すことができた。
 そのやりとりだけで、朝は全く猿島と会話ができなかった。猿島はひたすら文庫本を読み続けるだけで、こちらから話しかけるのを拒絶する雰囲気を漂わせていたし、俺も何を話題にしてよいのかわからなかった。
 だけど、俺は不思議と気分が楽になっていた。他の人がいるところで「けいちゃん」の話題を出してはいけないということはわかっていたし、猿島との間でその他の話題はありえない。
 それならいっそのこと、会話がない方がいい。どうせ普段も猿島と挨拶以外で言葉を交わしていなかったのだから。
 やがて茂部先生が入ってきて朝のホームルームが始まり、通常どおり授業時間となった。

 3時限目は体育で球技の時間だった。今は体育館に集まって、男女混合でバスケットボールのリーグ戦をやっている。
 一応男女双方に先生がついていて、準備運動などは別々にやる。2人1組でやる柔軟体操を男女で組んでやるのは色々と問題があるからだ。
 まあ、男子の方はウェルカムなので、主に問題があるのは女子の方だが。
 女子の担当は草葉梢先生だ。中性的な顔立ちでありながら、ジャージ姿の上からでもわかるすらりとしたモデル体型ということもあり、男女双方から人気がある。
 若くて新任であるせいか、生徒から「梢ちゃん」と呼ばれているのは教師としてどうかと思うが、べつに俺が気にすることでもないか。
「梢ちゃん、個人指導してくんないかなー」
「今から水泳の授業が待ち遠しいぜ」
「梢ちゃんハァハァ」
 田中山は草場先生に対しても欲情している。あいにく先生は既婚なのだが、こいつらには関係ないらしい。「むしろ人妻萌え~」とか言っているし、実にフレキシブルな感性の持ち主だ。
 もっとも、俺は準備運動のときからずっと、猿島のことが気になってしかたがなかった。
 うちの学校の体操服は男女共通でTシャツとハーフパンツだ。そのせいで猿島の太ももは見えない。普段も猿島はスカートを規定どおり膝下10センチで穿いているから、おみ足を目にする機会には恵まれなかった。
 日曜日の「けいちゃん」のミニスカートから伸びていた太ももは、俺の脳裏に焼きついたままだ。今の猿島は「けいちゃん」の面影を微塵も感じさせない地味な女子高生なのに、俺は猿島の中に「けいちゃん」の影を追わずにはいられなかった。
 試合が始まってからも、俺は隣のコートで動き回る猿島の姿を目で追っていた。バスケットボールは攻守の切り替えが激しい競技だが、猿島は走り回ることはそれほど苦にしていない様に見える。
 その一方で、ドリブルミスが多い。手先が器用ではないというより、球技が苦手なのかもしれない。
 俺自身プレーに参加しながら、ちらちらと猿島を観察し続けていたが、その努力は突然報われた。


245:転生恋生 第九幕(2/5) ◆U4keKIluqE
09/01/26 00:05:13 K+1IM184
 試合中、ゴール前で猿島がパスを受ける場面があった。フリーで、3ポイントシュートが狙える位置だった。「猿島! 撃て!」というチームメイトの叫びに応じて、猿島が一瞬屈んで溜めを作ってから、大きくジャンプしてシュートを放った。
 見事な跳躍だった。読書少女のイメージからは想像もつかないほど高いジャンプで、ボールは慌ててカットに入った相手チームのメンバーの手が届かない高さで放物線を描き、ゴールめがけて飛んでいった。やはり足腰は鍛えている。
 惜しくもボールはリングに跳ね返されたが、俺にとってはどうでもよかった。
 跳躍の瞬間、Tシャツの裾がめくれ上がり、猿島の臍のあたりが見えた。俺の予想通り、猿島のウェストは引き締まっていて、くびれがあった。
 ほんのコンマ何秒という短い間のできごとだったが、俺は充分目に焼きつけた。
 邪念の代償はすぐに訪れた。
 自分が参加している試合のボールから目を離していたために、俺はパスが送られてきたことに気づかず、ボールをまともに鼻で受け止めた。
 更に悪いことに、衝撃でよろけた拍子に転倒し、右足を挫いてしまった。ここまで無様な怪我の仕方も珍しいだろう。
「何やってんだ、ボケ!」
 チームメイトの罵倒も甘んじて受けるしかない。傍から見ればボケているとしかいいようのない醜態だった。
 とはいえ痛いものは痛い。尻餅をついて右足首を押さえている俺のところへ、草場先生が心配そうな顔で駆けつけてきた。
「桃川君、大丈夫?」
「……すいません。ちょっと休ませてください」
「保健室に行きなさい。無理は禁物よ」
 草場先生はクラスの保健委員を呼んだ。保健委員は各クラスから男女1名ずつ選ばれているが、男子の委員(確か足利と言った)は陸上部の競技会で公欠を取っていたはずだ。
「私が保健委員です」
 名乗り出たのは猿島だった。そうだ、女子の委員はこいつだった。
 俺は猿島に付き添われ、右足を引きずりながら保健室へ向かった。
「肩を貸しましょうか?」
 猿島はそう申し出てくれたが、猿島に触れるなんて、恥ずかしくてとてもできない。
 保健室へ着いてみると、『養護教諭出張中 器具は保健委員が管理すること』という貼り紙が扉にしてある。つまり、猿島が俺の手当をしてくれるというわけだ。
「そこへ座って」
 俺は言われたとおりに椅子へ腰かける。猿島は慣れた様子で棚から包帯と湿布を取り出すと、俺の靴下を脱がして右足首の手当を始めた。
「慣れてるんだな」
 黙っていられなくて話しかけた。俺としては猿島を見下ろす形になるが、細いうなじが眩しくて、自分のために手当をさせることにくすぐったい気分がしてならない。
「よそ見をしているからよ」 
 猿島は意味のわからない言葉を返した。
「は?」
 聞き返した俺に、顔を上げずに猿島がぶっきらぼうな口調で補足する。
「私の方を見ていたでしょう?」
 気づかれていた。俺は頭に血が上る思いだった。
「何のことだ?」


246:転生恋生 第九幕(3/5) ◆U4keKIluqE
09/01/26 00:06:27 K+1IM184
 こういうときにすっとぼけようとするのが、平均的男子の見苦しいところなのかもしれない。
「バレていないとでも思っているの?」
 猿島が手を止めて、俺を見上げた。眼鏡越しに冷たい眼差しを向けられて、俺としては断罪される罪人のような気分に突き落とされた。
「ごめん」
「素直に認めればいいのよ」
 猿島は俺の足に視線を落として、手当を再開する。顔が見られなくなって、ちょっと残念な気もするが、手当をしてもらわないわけにはいかない。
「……昨日のことがずっと頭から離れない」
 一旦認めてしまうと、自分の気持ちを吐き出さずにはいられなかった。
「猿島のことばかり考えていた」
「私じゃなくて、私が演じた役のことでしょう?」
 猿島の口調に変化はない。相変わらず淡々としている。普段のこいつには感情がないのかと思ってしまうくらいだ。
「それもひっくるめて、猿島のことが気になる」
「私の芝居を気に入ってくれたのは光栄だけど、普段の私には関心を持たないでほしいわ」
「どうして?」
「素の私のイメージが弱いほど、芝居の印象が強くなるからよ」
 猿島の頭には芝居のことしかないのだろうか。
「べつに、普段の猿島と親しくなったっていいだろう? おまえだって、普通に友達だっているんじゃないのか?」
「……桃川君は私にとって観客の一人よ」
 俺と親しくなる気はないということか。この言葉に俺は打ちのめされた。どうしてかわからないが、ひどくがっくりきた。
「でもさ、あんな凄いの見せられたら、猿島に興味を持たずにはいられないよ」
「……終わったわ」
 猿島は立ち上がった。俺の手当が終わったという意味だ。今度は椅子に座っている俺が見下ろされる位置関係になる。
「何にしても、あんな欲望丸出しのケダモノみたいな目で女の子を見るのは感心しないわね」
 返す言葉もない。耳まで赤くなっていくのが自分でもわかった。
「ごめん、本当にごめん」
 謝るしかなかった。猿島の気分を害してしまって、これから二度とまともに口を利いてもらえなくなるかもしれないということが無性に怖かった。
「男の子だからしょうがないかもしれないけど、やっぱりエチケットは守ってほしいわ」
 声も表情も変化はない。俺が思う以上に猿島が精神的に大人なのか、それとも本当に感情の起伏がないのか。
「言い訳かもしれないけど、俺だって誰に対してもじろじろ見つめたりはしないよ。猿島のことが気になってしょうがないんだ」
 猿島は左手で眼鏡のつるの位置を直した。
「桃川君、自分が何を言っているか、わかっているの? まるっきり私を口説いているように聴こえるんだけど」


247:転生恋生 第九幕(4/5) ◆U4keKIluqE
09/01/26 00:07:22 adaHZjGU
「え!?」
 俺はうろたえた。そんなつもりはなかったんだが……、いや、確かにさっきからの自分の発言を振り返ってみると、確かにそう取られかねないことばかり言っていたような気がするが……。
 待て待て、それより何より……、猿島は不愉快に思っているのか? それが問題だ。まるで表情が変化しないから、判断がつかない。
 とりあえず、俺に邪念はないことをわかってもらわないと……。
「猿島は迷惑か?」
 何を言っているんだ、俺は? これじゃあ、まるで……、本当に口説いているみたいじゃないか。
 それとも、俺自身が猿島のことを好きになってしまったんだろうか? 猿島みたいな接し方をしてくる女の子は初めてだから、単に舞い上がっているだけかもしれない。
 もう、何が何だかわからなくなってきた。一つはっきりしているのは、俺が今顔を真っ赤にしているということだ。
「……悪い気はしないわね」
 それって、OKってことか? いやいや、待て待て。いつの間にか、俺が猿島に言い寄る構図になっているじゃないか。
「でも、学校での私にはあまり馴れ馴れしくしないでほしいわ。目立ちたくないの」
「悪かった。もう余計なことはしないから。とにかく戻ろう」
 俺は左足だけでバランスをとりながら立ち上がった。一刻も早くこの場から、猿島と二人きりの空間から逃れたかった。頭が熱くなって溶解してしまいそうだ。
 だが、猿島は自分から俺の右腕を担ぐようにして、肩を貸してきた。
「無理しないで。右足を安静にしないと、治るものも治らないわよ」
「ああ……」
 しかたなく、俺は右半身の体重を猿島に預けるようにして歩き出した。草場先生からは、直接教室へ戻るように指示されている。
 保健室を出て廊下を歩いている間、当然のことながら俺は猿島の体に触れていた。上半身だけなら、俺が猿島の方を抱いているようにも見えかねない体勢だ。
 猿島の体からはコロンと汗が混じったような酸っぱい匂いがした。心臓の鼓動が倍速になるのを止められない。
 教室へたどり着くと、俺は机に手をついて体を支えながら、自分の席に座った。
「もう大丈夫だよ。世話になったな」
 時計を見ると、授業はまだ15分ほどある。猿島の性格からして、一応体育館へ戻るんじゃないかと思った。
 だが、猿島は俺の隣の席にそのまま座った。
「戻らなくていいのか?」
「戻るわよ。でもその前に、さっきの話の続きをするわ」
 何だろう? 何か期待していいのか。
「桃川君の好みのタイプって、どんなの?」
「そんなこと聞いてどうするんだ?」
「役作りの参考にするわ」
 また何かデートしながら演じてくれるってわけか。それはそれで楽しみだが、やっぱり素の猿島としては接してくれないのかな。
「あのさ、どうしてそうまでして演じることにこだわるんだ? 普段の自分を見せるのがそんなに嫌か?」
「嫌よ」
 猿島は即答した。


248:転生恋生 第九幕(5/5) ◆U4keKIluqE
09/01/26 00:08:12 adaHZjGU
「どうして?」
「嫌なものは嫌なの」
 要するに、自分で自分が好きになれないんだな。俺も自分の平均値ぶりにうんざりしているから、わからなくもない。
 だけど、俺と違って猿島はかなり個性的で、他人より抜きん出た技能を持っているんだから、もっと自信を持っていいと思うんだが。
「私は、自分と違う人間になりたいから、芝居に打ち込んでいるの。桃川君が好みのタイプをリクエストしてくれたら、演じきってみせるわ」
 昨日のけいちゃんみたいな女の子らしい女の子でも、もう少し大人っぽいお姉さんキャラでも、あるいはお淑やかなお嬢様でも。
 それは何とも魅惑的な申し出だった。猿島一人と付き合うだけで、ちょっとしたハーレム気分が味わえるわけだ。
 でも、俺はどうにもすっきりとしないものがあった。それはそれで楽しいだろうが、やっぱりもどかしい。
「あのさ、昨日俺はけいちゃんの脚に見とれていただろ?」
「ええ、そうね」
「あれは猿島の脚じゃないか。今日だってそうだった。猿島は芝居以外でも、自分自身の魅力を持っていると思う」
 だから、普段の猿島と仲良くなりたい。そういう意味で言ったんだが、猿島は何を思ったか、立ち上がって右足を椅子の上に乗せた。
「そんなに私の脚が気に入ったの?」
 そう言って、ハーフパンツの裾をめくって太ももを露にした。いきなりのことで、俺は息を呑んだ。
「新体操部の子の方がきれいな脚をしていると思うけど」
「猿島の脚はきれいだよ」
「触ってみる?」
 返事をする暇もなく、俺は猿島に手を取られて、太ももを撫でさせられた。引き締まっているだけではなく、すべすべしていて、表面は柔らかかった。
「どう?」
 こんなことしてもまるで表情に変化がないというのが信じられない。それでも俺の手は勝手に太ももの上を這い回ってしまう。
「俺は触らせてもらって嬉しいけど、いいのか?」
 俺の指が内股に触れた瞬間、猿島が体をびくりと震わせた。
「ごめん!」
 俺が慌てて手を引っ込めるのと同時に、猿島は椅子から右足を下ろす。裾が落ちて、太ももが見えなくなった。
「……今日はここまでよ」
 猿島の息が少し乱れている。目元もほんのりと赤い。
「次もあると期待していいのか?」
 我ながら余計な一言だったと、口に出した直後から後悔した。猿島は「どうかしらね」と呟きながら眼鏡を直した。
 そのまま何も言わずに教室を出て行った。授業へ戻ったんだろう。
 調子に乗ってやり過ぎたか。気分を害してしまったのか。俺は気持ちが沈んだ。
 チャイムが鳴ったのは、それから1分とたたないうちだった。

 その日はそれからずっと、猿島は俺が声をかけてもそっぽを向くだけで、応対してくれなかった。
 俺に顔を向けていなくても、耳が赤くなっているのが見て取れたが、怒っているのか照れているのかまるでわからない。それでますます不安がかきたてられる。
 唯一救いになったのは、陸上部員が公休ということで司が昼休みに現れず、久しぶりにゆっくりと昼食を取れたことだ。


249:namaco
09/01/26 00:09:50 adaHZjGU
投下終了です。次回で少し話が動きます。


250: ◆.mKflUwGZk
09/01/26 00:11:19 adaHZjGU
何故かトリップが外れたので変更します。


251:名無しさん@ピンキー
09/01/26 00:13:48 BpwtI/kh
>>249
GJ!
押しではなく自発的によってくるように誘い込む・・・!
猿島さんマジパネェッス!

252:名無しさん@ピンキー
09/01/26 00:18:21 89qSNYDu
>>249GJ!
弟くんの思春期特有の青臭さと迂闊さに「青春」を感じました。その描写、Yesだねッ!

253:名無しさん@ピンキー
09/01/26 02:07:08 0gAdXNmk
>>249
gj!
今のところ本気で太郎ちゃんを落とそうとしてるのは猿島だけとお見受けした

254:名無しさん@ピンキー
09/01/26 02:35:56 EvMNxwVC
猿は前世のこと後悔してんのかね?
とりあえず雉は悪い事をしたぐらいの認識はあるみたいだが


しかし姉のターンが怖い、このまま猿ルートで前世なにそれ美味しいのなハッピーエンド
てな訳にはいかんだろうし

255:名無しさん@ピンキー
09/01/26 07:08:03 9ZgE2uD/
>>249 GJ!!お疲れ様です。前話に引き続き、猿島のターンでしたね。意外と積極的なタイプのようですね。
それにしても、照れて(?)赤くなっている猿島かわいい。

256:名無しさん@ピンキー
09/01/26 09:55:51 sDtGOZ+8
リアルタイムGJ!
それにしても雉が空気すぐる

雉分がたりない・・・

257:名無しさん@ピンキー
09/01/26 16:32:33 eJK+SjbR
GJ!
だが俺は犬っ娘派

258:名無しさん@ピンキー
09/01/26 17:56:09 p5Ckcil1
キモ姉「私の戦闘力は53万です」

259:名無しさん@ピンキー
09/01/26 20:01:54 0CnzQnEM
>>249
GJ!
今後の姉が夜叉猿の首を持って刃牙の前に現れた、
範間勇次郎とだぶってみえる。

260:名無しさん@ピンキー
09/01/26 20:34:39 fVPnjsT4
おそらく前世で村人に鬼の事をチクったのは猿なんじゃね?
雉は黙認してたから罪の意識はある。犬は全く関与してなかった。

だから猿島は前世みたいにならぬように序盤から本気だとか?

まあ、何が言いたいかと言うと>>249GJ!

261:名無しさん@ピンキー
09/01/27 05:43:38 nYGyqu3v
投下します。

262:傷 (その11)
09/01/27 05:45:46 nYGyqu3v

「冬馬くんが壊れたって……葉月ちゃん、あなた一体、何を言っているの?」

 携帯電話を片手に弥生は困惑していた。
 電話越しに泣きじゃくる妹の声はまるで聞き取ることが出来ず、何を言っているのか、どういう事態が起こったのか、サッパリ要領を得ない。
 正直な話、弥生は、ここまで取り乱した葉月の声を初めて聞いたと言ってよかった。
 兄との“初体験”をしくじったというだけで、ここまで恐慌状態になる葉月ではない。
 あの、常に沈着冷静な―というより、およそ物に動じるという神経をどこかに置き忘れて生まれてきたような怜悧な妹が、ここまで平静さを失うなど、よほどの緊急事態が発生したと考えねばならない。


「いいから葉月……葉月ちゃん……分かったから……お ち つ き な さ い!!!」


 その声は、いま弥生が立っている女性用トイレに響き渡った。
 無論、ただの大声ではない。
 聞く者を制するに足る鋭い意思を込められた声だ。
 かつての生徒会時代。誰もがより多くの部費を求めて紛糾する予算委員会で、汗臭いラグビー部の男子生徒や、パンクファッション的厚化粧に身を包んだ軽音楽部の女子生徒を、たちまちの内に黙らせたという、鉄鞭のごとき一喝。
 さすがの葉月も一瞬パニックを忘れ、息を飲まざるを得ない。
「いまからすぐに帰ります。話の詳細は家で改めて聞くから、とりあえず泣きやむこと。―いい?」

 鼻をすすりながら「はい……」と呟く葉月の返事を確認すると、素早く電話を切る。だが携帯を握った手は下ろさない。ボタンを操作して、自室のパソコンと接続し、監視映像を画面に呼び出す。
 葉月からのメールで弥生は、彼女が風呂場で冬馬と何をするつもりだったか、一応のことは知っていた。
 液晶ディスプレイに展開するバスルームの生映像。そこには今、誰もいない。
 ならば回線を切り替えてみる。
 リビング……やはりいない。
 葉月の部屋……そこも無人だ。
 冬馬の部屋……ここも違う。
 弥生の部屋……いるわけもない。
 そして、両親の寝室で、ダブルベッドに横たわった弟の姿をようやく発見し、弥生は肩の荷を下ろしたようにホッと一息ついた。
 
 なるほど、確かに浴室で冬馬が倒れたのなら、担ぎ込むのに一番近い空間は、リビングの隣にある両親の部屋だ。葉月の体格と体力では、二階に並ぶ三つの子供部屋に高校生男子を運搬することなど出来るはずがない。
 電話では狼狽しまくっているように聞こえたが、それでも、やるべき事をキチンと済ませてから連絡を入れた事からしても、葉月は最低限の理性をギリギリ保持していたようだ。
 そしていま、リアルタイムの監視映像によると、妹の姿は、穏やかに寝息を立てる冬馬の傍らにある。
 携帯の液晶画面では解像度が荒すぎてよく分からないが、葉月の様子からして、確かに今しがたまで泣き喚いていたのは事実のようだった。
 とりあえず冬馬が無事なのは分かったが、逆に言えば、分かったのはそれだけだ。
 弥生は、ふたたびバスルームの映像を呼び出す。だが今度はリアルタイムではなく録画分だ。その映像を数分前まで巻き戻す。
 
―そして、弥生は知った。
「…………なに……これ……!?」
 何を言っているのか全く解読不可能だった、葉月の『冬馬が壊れた』という言葉が、実に的確かつ正確な状況報告であったことを。


「急用!! 緊急!!」
 それだけ言い放ち、トイレから長瀬の待つ個室に戻るや、上着とカバンを引っ掴み、テーブルの上に千円札を二枚叩きつけ、弥生は足早に外に出た。
 呆気に取られる長瀬にかける言葉は何もなかった。
 申し訳ないと思わぬでもないが、詫びも説明も、すべては後回しだ。弥生にとって、冬馬と葉月以上に優先すべき事など、この地球には存在しないのだから。
 そもそも弟が妹と近親相姦未遂の挙げ句、幼児退行を起こしましたなどと、言えるわけもない。
 そして、自転車のペダルを満身の力で漕ぎつつ、家路を急ぐ弥生の心に、もはや長瀬のことなどいささかも存在していなかった。弥生はいま、怒りと後悔で一杯だったのだ。
 無論、怒りの対象は他の誰でもない。自分自身だ。


263:傷 (その11)
09/01/27 05:47:10 nYGyqu3v

(何故この事態を予想しなかったんだろう……私ともあろう者が……!?)
 知っていたはずだった。
 理解していたはずだった。
 冬馬がセックスに対し多大なトラウマを抱えている可能性があることを。
 そんな彼に対し、まともに色仕掛けを振ることがいかに危険な行為であるかを。
 だが、弥生は安心してしまった。
 弟に於けるトラウマの顕現が、勃起不全だと聞いて、油断してしまった。
 
 素直に考えるなら、心的外傷がインポテンツという形をとって表層化している以上、この場合、冬馬のトラウマが肉体に与えた最大の問題は、単なる男根の機能障害ではなく、もっと精神的な―性欲そのものに対する減退と解釈するべきだ。
 そして、いかに葉月がクールな相貌をたたえた美少女だとしても、13歳の“おんな”とも呼べぬボディを前にして、冬馬の不能が反応するとは弥生には思えなかった。弥生ならともかく、葉月の肉体ごときに心因性の性欲減退に影響を与えるだけの魅力があるはずがない。
 つまり、異性の裸身を前にしても、精神が興奮を感じられないという現実こそが、冬馬が治療すべき真の病根であり、インポテンツなどそれら精神疾患の一症状でしかないのだ。
 逆に言えば、冬馬の精神が『女体に反応できない自分自身』に耐えられなくなるほどの性的魅力を所有した女体を前にしなければ、彼の心的外傷が全面的に疼くことはないだろう。

 それと、もう一つ。
 芹沢事件の顧客どもは、みな普通のプレイに飽きた政財界の男女が主だったと聞く。ならば彼らの平均年齢は、普通に考えても中年・熟年・初老といったところだろう。
 つまり、どこからどう見ても第二次性徴前のオンナノコでしかない葉月の肢体が、芹沢家時代の忌まわしい記憶を冬馬に回帰させるキッカケ足り得るかどうかは、疑問だと言わざるを得ない……。

 今から考えれば迂闊もいいところだ。
 人のトラウマが何に反応するかなど、心理学者でも精神分析医でもカウンセラーでもない弥生に、予測できるはずがない。―というのは言い訳だ。
 予想できなかったはずがない。たとえば幼児期に監禁されたトラウマを持つ者が、閉所や暗闇や孤独に恐怖を抱かないはずがないのだ。ならば―、

『セックスに関するトラウマを彼が抱えているらしい』

 何も詳細は必要ない。
 この一文で、彼に対する許されざる行為全般は、すべて説明がつくではないか。
 13歳の未成熟な女体が相手とはいえ、裸形の愛撫がセックスを喚起させないはずがない。
 だが弥生は、そうは考えなかった自分自身に殺意に近い怒りを抱く。
 不能という彼の現在を小賢しく考察した挙げ句、弟が幼児退行するほどの事態をむざむざ座視してしまうなど、あっていいことではない。

(もし、冬馬くんがずっとこのままだったら……)
 そう考える弥生を、身の毛もよだつほどの戦慄が包んだ。
(もし、冬馬くんがずっとこのままだったら……)
(もし、冬馬くんがずっとこのままだったら……)
(もし、冬馬くんがずっとこのままだったら……)
(もし、冬馬くんがずっとこのままだったら……)

「……答えなんか……出るわけないじゃない……!!」

 誰に言うでもなく呟いた弥生は、ペダルを漕ぐ足に更に力を込めた。


//////////////////////

「どうしました、ごしゅじんさま? ぼくがごほうしするのはおいやですか?」

 にじり寄る兄の手を反射的に振り払った葉月に、彼はあどけない表情で尋ねた。
 いや、ただあどけないだけではない。
 よく見れば、その目には精一杯の媚態と、それ以上の怯えが入り混じっている。
「もしぼくが、ごしゅじんさまのおきにさわるようなことをしてしまったのなら、えんりょなくばつをおあたえください。いかなるおしおきでもかまいません。―ですから」
「ですから……?」
 おそるおそる葉月が冬馬の言葉に合いの手を入れる。
「このおすいぬのそそうを……おとうさまとおかあさまにほうこくなさるのだけは……どうか、ごかんべんください……おねがいします……!!」
 そう言って、浴室の床に額をこすりつける冬馬の表情は、葉月には見えない。だが、小刻みに震えるその肩が、言葉以上の雄弁さで、彼の心理を説明していた。


264:傷 (その11)
09/01/27 05:48:40 nYGyqu3v

―なるほど……。
 葉月は、事態の超展開に愕然としながらも納得せずにはいられない。
 顧客を不快にさせた。
 そこにいかなる理由があろうとも、この私娼窟を取り仕切る芹沢夫妻が、彼ら“養子”という名の商売道具たちに折檻を与える名分としては、その事実だけで充分なのだろう。
 当時の恐怖を、かつて現役の“養子”だった冬馬が忘れるはずがない。おそらく骨の髄にまで、客の機嫌を損ねることへの怖れを刻み込まれているはずだ。

「兄さん、顔を上げてください。お願いですから」
「いいえ、いいえ、ごしゅじんさまがぼくをおゆるしくださるまでは」
「許します! 許しますから! だからもう―」
「ほんとうですかっっ!?」

 そう言って顔を上げた冬馬の貌は、まさしく一片の曇りさえない歓喜に満ち溢れたものだった。その、あまりにあけっぴろげな笑顔に、思わず葉月は、圧倒されたように息を飲む。そして、妹が仰け反った分、兄はずいっとにじり寄り、距離を詰めた。

「―では、おゆるしいただいたおれいに、せいいっぱいごほうしさせていただきます」

 悲鳴を上げる暇さえなかった。
 バスチェアに乗った葉月のほっそりとした腰。そこから伸びる両脚を掴み、広げ、股間に優しいキスをする。その間一呼吸とかかってはいない。そして、クリトリスへのキスの感触が消えぬ内に、葉月の神経を更なる高圧電流が走る。
「―かはっっっっ!!?」
 一瞬だった。
 まさしく一瞬の内に、すさまじい快感が葉月の局所を中心に全身に発信されたのだ。

 葉月はまだ13歳だ。その肉体は前述の通り、お世辞にも豊満とは言いがたい。
 しかし、知識はある。
 思春期真っ盛りの少女としては恋愛と同様に性愛にも興味を持つのは当然の事だ。そういう意味では、いかに天才を謳われようが、しょせん葉月も年頃のオンナノコとしての範疇をはみ出す存在ではない。
 オナニーの経験も少なからずある。
 連日連夜というほどの頻度ではないし、感じるエクスタシーもお粗末なものだが、別にその事実に絶望する気は葉月にはない。女体としての自分の完成度を誇るには、まだまだ時期尚早だということを葉月は知っていたからだ。
 だが―違う。
 この心地良さはまさに、想像を絶するものだった。
 冬馬が―かつてセックスのプロとしての生活を余儀なくされてきた彼から与えられる快感は、これまで葉月なりに知っていたつもりの常識をあっさり覆すものだった。
 
「ッッッッッッッッ!!??」

 何も考えられなかった。
 肺の中の酸素は残らず消費され、排出されるCO2の量は一瞬にして数倍以上になった。だが息を吸い込もうにも、身体がそれを許可しない。圧倒的過ぎるクンニリングスの快感を前に、彼女の理性は消滅し、呼吸器は排気以外の行動をまるで許さない。
 あと数分、この舌技の前に身を晒せば、葉月は間違いなく失神していただろう。未熟な女体に与えられた過度の快感と、その喘ぎと悶えがもたらす呼吸困難によって。
 だが、性に不慣れな彼女の肉体は、凄絶なまでの刺激を前に、おとなしくそれを甘受するという選択をさせなかった。この現状に一分の抵抗を示す意思が、まだ彼女には残っていたからだ。

 弥生による説得という過程を踏んではいるが、すでに葉月は自分が冬馬に抱く感情が、愛情であったことを歴然と意識している。かつては必死になって否定したものだが、いまでは、以前の自分の愚直さに苦笑することさえ出来るだろう。
 眼前の男は、そんな葉月が慕ってやまぬ意中の想い人である。
 しかも、そのテクニックはあまりに圧倒的だ。
 その彼が、跪くように自らの不浄の器官に奉仕する姿に、喜びを覚えぬわけがない。
―とは、葉月は考えなかった。

 いまの冬馬は、葉月が愛した兄ではない。
 いまの冬馬の愛撫は、葉月を愛するがためのものではないのだ。
 何故なら、ここにいる兄の魂は、柊木家で自分たちと出会う以前の―数年前に彼と千夏がいた頃の芹沢家に回帰してしまっているのだから。
『ごしゅじんさま』と呼ばれ、奉仕を受ける自分は、いまの冬馬にとって金を払って服従を請求するかりそめの主―名もなき顧客の一人に過ぎない。
 その事実は、葉月にとっては死に等しいほどの孤独だったのだ。 
 しかし、嫌悪感と寂寥感に苛まれながらも、葉月の抵抗はまるで儚い。目的のための合理的な動作を意図して足掻くには、冬馬の舌が与える快楽は、あまりにも圧倒的過ぎた。


265:傷 (その11)
09/01/27 05:54:49 nYGyqu3v

 暴風雨のような快楽の海を漂う一枚の木の葉と化した葉月の全身。
 だが、波にもまれ、押し流され、声を上げることはおろか呼吸さえままならない彼女が取れる抵抗は、せめて意図せぬままに四肢を動かし、じたばたと暴れることしかなかった。 
 そして、肉体が限界を迎えようとしたまさにその瞬間、いまだ動きを止められない右膝が、冬馬の肩を打った。いや、攻撃はそれで終わらない。やもりのようにピタリと張り付いていた葉月の股間から、たまらず離れた冬馬のこめかみを、彼女の左膝が正確に捉えた。
 そのまま壁に激突する兄の側頭部が立てた音は、予想以上に大きく浴室に響き渡り、冬馬は苦痛に顔を歪めることさえなく、その場に崩れ落ちた。
 葉月が荒れ狂う鼓動と混濁した意識を抑え、何とか我に返ったのは、さらにそれから数分が経過してからだ。

「……あの……にいさん……?」

 そして冬馬は、
 そのまま眠るように意識を失い、
 目を覚まさなかった。



 冬馬の寝顔は、いつもと変わらない。
 葉月は、布団に覆われた彼の下半身に目をやってみる。
 意識を失ってなお硬度を保っているペニスは、ベッドの上に小さなテントを形作っていた。
 もし、あのまま冬馬の為すがままに快感に身を任せていたなら、おそらく今頃、自分は処女ではなかっただろう。
 だが、それは―それだけはいやだった。
 求めてやまぬ兄の愛撫といえど、男娼としての冬馬に、単なる客の一人として身体を触れられることなど、葉月にとって到底ガマンできることではなかった。
『ごしゅじんさま』ではない。
 家族として、妹として、そして女として、せめて葉月が何者であるかも認識していない今の冬馬にだけは、抱かれたくなかった。それは葉月の心の奥底にあった、女としての最後のプライドだった。

(恥かしげもなくよく言うわ、まったく……)
 ここへ来てなお、矜持を振りかざすワガママっぷりには、我ながら嘲笑するしかない。
 冬馬を壊したのは、他ならぬ自分なのだ。
 もう涙も出ない。
 まったく要領を得ない説明ではあったが、一応、姉に連絡は入れた。
 まもなく戻ってきてくれるだろう。
 だが、両親が帰ってきたら、なんと報告したらいいのか、もはや葉月には分からない。
 いや、―そんなことはもはや、どうでもいい。
(わたしのワガママが……兄さんを壊してしまった……わたしが……兄さんを……)
 もしも今、冬馬が意識を回復させ、何事もなかったように笑うためには葉月の命が必要だと言われれば、おそらく彼女は躊躇なく死を選ぶだろう。だが、そんな都合のいい話は存在しない。人間一人の命ごときで、過ぎ去った時間を巻き戻すことは出来ないのだから。
 
 柱に掛かった時計を見る。
 まもなく時刻は午後九時を回ろうかというところだ。
 葉月は服の袖で涙を拭った。

 罪悪感に打ちひしがれるのは簡単だ。今この場に於ける最も手軽な時間潰しだと言える。
 だが、そうではない。
 兄が愛してくれた柊木葉月は、そんなブザマな暇人ではないはずだ。
 冬馬のために、いま一番やらねばならないことは何だ? いまのうちにやっておける事はあるか?
(……ある)
 それは考えることだ。
 彼の意識が数年前まで退行を起こしたのは何故か? それを考察し、せめて姉が帰宅したときには、全てを説明できるようにしておく必要がある。なにしろ葉月は当事者なのだ。
 何が起こったのか、どういう過程で兄が自壊を起こしたのか知っているのは、葉月しかいないのだから。

 葉月は、こんこんと眠りつづける兄の額にそっとキスをすると、そのまま立ち上がり、彼の携帯を手にとった。そしてアドレス帳を開き、その名を捜す。
―景浦千夏という名を。


266:傷 (その11)
09/01/27 05:56:43 nYGyqu3v

「じゃあ、異変が起こったのは、冬馬くんのお尻に指を突っ込んだ時なのね?」
「はい」
「他には?」
「兄さんに……言葉責め?……をしていました」
「具体的には?」
「気持ちよければ、素直に気持ちいいと言えと強要しました」
「…………」

 弥生が帰宅したとき、葉月はすでに冷静だった。
 そこに悪意がないのは分かる。
 だが、まるで台詞を言うように淡々と状況を語る妹に、さすがの弥生も険しい目をせずにはいられない。
 だが、葉月はそんな姉を前にしてもなお、顔色を変えることはなかった。パニックになって電話をしてきたのは、本当に妹だったのだろうかと疑わせるほどに、葉月は平静さを保持している。それはもう、落ち着きなさいと怒鳴りつけたはずの弥生が、気分を害するほどに。

「兄さんが芹沢家で、女性だけではなく男性の相手も勤めていた事実は、姉さんが帰宅する前に、景浦千夏さんに連絡を取って確認を取りました。おそらくは、わたしの行為によって、その瞬間の記憶が回帰し、兄さんの意識を当時に退行させたのでしょう」

 その一言に、弥生は思わず息を飲んだ。
「確認って……千夏に話したの……今夜の出来事をッッッ!?」
 だが、葉月の表情は変わらない。
「すべてを話したわけではありません。現在の兄さんの症状を告げ、対策を訊いただけです。何といっても、兄さんの過去を実際に御存知なのは、あの方だけですから」
 それは分かる。
 確かに冬馬の精神が芹沢家時代に退行してしまった以上、その当時を知る人物のサジェスチョンは絶対に不可欠だ。だが弥生としては、この件に自分たち姉妹以外の人間が絡むことは最大限回避したかった。それが姉妹の両親であってもだ。

 そして何より、冬馬がこうなった過程をすべて聞いた上で、千夏という少女が黙ってこちらに協力するとは、弥生にはとても思えなかった。
 なにしろ現在、戸籍的にも冬馬と葉月は実の兄妹ということになっている。そんな二人が浴室でしようとしていた行為は、世間的には充分にタブーの範囲内だし、感情的にも千夏が、その情報を心穏やかに聞いたとは考えにくい。
 かつて千夏からサシで話を聞いた経験を持つ弥生には、それが分かる。
 千夏が冬馬の話をするときに浮かべた瞳は、とてもではないが、彼女を弟に近寄らせるのは危険だと弥生が判断せざるを得ない輝きを宿していたのだから。
 だが葉月は、そんな弥生の思考を先読みしたかのように話を進めた。

「大丈夫です。すべてを話したわけではないと言ったでしょう? わたしは今朝、兄さんがいきなり幼児退行を起こしたと言っただけです」
 
(今朝いきなりって……いくら何でも、そんなムチャクチャな話が通じるわけがない)
―とは、弥生は思わなかった。
 確かに、冬馬はいつPTSDの症状が発症してもおかしくないほどのトラウマを抱えているからだ。何故そうなったのかのプロセスなど理解できないと言った方が、むしろ話に信憑性が出るかもしれない。

「で、千夏は何て言ったの?」
「千夏さんは、とりあえず兄さんが目覚めてもまだ、精神退行を続けたままだったなら、むしろ自分の出る幕はないと仰っていました。つまり兄さんの記憶と意識の整合性を元に戻したいなら、柊木家に引き取られて以降の兄さんの記憶を喚起させるしかない、と」
「それが道理……よね」
 弥生としては頷かざるを得ない。
 千夏の記憶さえも冬馬にとって芹沢家を連想させる可能性は充分にある。
 ならばここで必要とされるものは、あくまで彼が、芹沢家と縁を切って以降の記憶だ。
 しかし、問題はまだ残っている。というか、そもそも、この問題を無視して情況は何も先に進めない。
 すなわち―
「冬馬くんは、本当に目覚めるの? いつまでもこの昏睡状態が続くようなら、どうすればいいの?」


267:傷 (その11)
09/01/27 05:58:50 nYGyqu3v

 だが、その問いかけにも、葉月の視線はまるで揺るがなかった。
「兄さんがこのまま眠り続けるということはない。―そう千夏さんは言ってくれました」
「その根拠は?」
「兄さんは、警察に保護されてからも、食欲減退や悪夢に悩まされたりすることもなかった、極めて強靭な精神の所有者であり、何が原因で退行を起こしたかは分からないが、このまま安眠に逃避することを選ぶような細い神経は持っていないと、彼女は太鼓判を押してくれました」
「それを信じろって言うの?」
 あまりに脳天気な言い草に、弥生の拳がさらに固く握り締められる。
 そもそも冬馬が本当に悪夢や不眠症、食欲減退といった心因性の諸症状に悩まされていなかったと、なぜ千夏が保証できる? 彼は密かに苦しみ、それでも苦しんでいる自分を見せなかっただけかも知れないではないか。
 冬馬が、弱音や弱味を他人に気安く見せない人間であることを、千夏が知らないはずがない。なのに、何故そんな気休めのような言葉を吐くのだ?


「信じるしか……ないじゃないですか……ッッッ」


 その瞬間、初めて葉月の顔を覆う、理性の仮面が剥がれ落ちた。
「葉月ちゃん……」
 カタカタと振るえる小さな肩を両手で抑え、潤んだ瞳から雫がこぼれ落ちるのを懸命にこらえながら、兄を見つめ続ける13歳の少女は、計り知れぬほどの後悔や罪悪感と戦いながら、なおも気丈に振舞いつづけていたのだ。
 弥生はとっさに、そんな葉月を思いっきり抱き締めずにはいられなかった。

 そう、信じるしかない。それ以外の選択肢はない。
 千夏の言葉も実際のところ、その事実に基づいた気休めだ。
 結局、冬馬の精神力にすがりつく以外に、自分たちにできることなどないのだ。
 
「……ねえ……さん……わたし……」
「黙って」
「……ごめん……なさい……ッッッ!!」
「何も言わなくていいの。何も謝る必要なんてないの。あなたからメールを貰ってすぐに帰らなかった私だって同罪なんだから」
「ごしゅじんさま、どうざいとはなんのことですか?」


 そこには、子供のような顔をして、罪のない瞳を二人に向ける冬馬がいた。
 

「……兄さん……ッッッ」
「冬馬くん……あなた……!?」
 姉妹は絶句していた。
 このまま起きないのではないかと危惧した冬馬が目覚めた。
―それはいい。
 だが、一眠りすれば元に戻る。そんな儚い希望を姉妹が抱かなかったわけではない。
 分かっている。現実は、特撮ヒーローものの洗脳とは違うのだ。怪人が死んだからといって、悪の組織に操られていた人々が、そうそう都合よく正気に返ったりはしない。
 だが、それでもなお一縷の望みを、二人は抱かずにいられなかったのだ。
 そして、その希望はいま、明確な形で姿を消した……。

「ごしゅじんさま、きゅうそくをとらせていただいてありがとうございました。このおれいに、いっそうのごほうしをさせていただきます」
 目を輝かせて葉月に向き直る冬馬。
 そんな兄から引きつった表情で仰け反る葉月。
 だが、弥生は目を逸らさなかった。
「―待ちなさい」
 声を掛けられ、ぽかんとした顔を弥生に向けた冬馬だが、ややあって、屈託のない笑顔を彼女にも見せた。

「ああ、こっちにもあたらしいごしゅじんさまがいらっしゃったんですね。では、どちらのごしゅじんさまをさきにおあいていたしましょうか。なんなら、おふたりどうじでも、ぼくはかまいませんよ?」



268:傷 (その11)
09/01/27 06:00:44 nYGyqu3v

 一瞬、傷ましいものを見る顔になった弥生だが、次の瞬間、彼女は反射的に息を飲んだ。
 上体を起こすのと同時に、冬馬の下半身を覆っていた布団がはらりとめくれ上がり、そこにあったもの―石のような硬度と蛇のようなサイズを誇る“それ”を、まじまじと見てしまったからだ。
(こっ、これが……冬馬くんの……っっ!?)
 だが、今は完全体となった弟のペニスに眼を奪われている場合ではない。
 この、見るも無残な想い人を、ふたたび毅然とした柊木冬馬に戻さねばならないのだ。

「冬馬くん、頭を打った場所は大丈夫? 頭痛がしたり吐き気を感じたりはしない?」
 その言葉に、冬馬の瞳がまたも戸惑いの色を浮かべた。
 無理もない。彼を有料の性欲処理具として扱っていた者たちは、決してこういう気遣いを冬馬に見せなかったはずだからだ。
 だが、ならばなおさら付け入る隙はある。弥生はそう判断せざるを得ない。
「私が―この御主人様がコーヒーを振舞ってあげる。プレイはそれからでも遅くはないでしょう?」


//////////////////////////

 ケトルが低い音を立て始めた。
 そろそろ湯が沸いた。
 弥生は三個並んだマグカップにインスタントコーヒーを入れ、その上からクリープ、そして角砂糖を放り込む。弟のカップには一つ。妹は二つ。そして自分のコーヒーには三つ。その上から熱湯を注ぎ込んだ。
 そして、最後に白い錠剤を取り出すと、冬馬のカップにだけ、それを数錠落とした。
―それは、かつて彼女が七万円で購入した洗脳用の導入剤であった。

 これは賭けだった。
 コーヒーを入れてくると言って、キッチンへ行こうとする弥生を、葉月は、姉が何を言っているのか分からないという顔をして見送っていたが、当事者たる冬馬の意識が目覚めてしまった以上、説明をしている暇もない。
 弥生には確信があったのだ。
 冬馬の精神状態を、芹沢家から現在に回帰させるためには、もはやこの薬を使用するしかないと。

 かつて弥生は、通販でこっそり買ったこの薬物を使って、冬馬に自分への愛情を人為的に植え付けようとしたことがある。
 結果から言えば、その目的は失敗した。
 薬を一服盛られた翌日からも、冬馬が弥生に対して何ら態度を変えることはなかったからだ。だが、それは、この薬が単なる失敗商品だったことを意味するのかと言えば、それは違う。
 その場に於いては、弟は姉のマインドコントロールの通り命令に従い、彼女の股間に舌で奉仕させることに成功していたからだ。
 いま考えれば、その時点で弟が精神退行を起こしても仕方ない程の、危険極まりない行為だったと弥生は慄然とするが、しかしその事実は、このドラッグがただのボッタクリでなかった事を歴然と証明している。
 千夏も言っていたではないか。冬馬を回復させるためには、むしろ柊木家の記憶を喚起させよと。
―つまり、弥生には成算があった。


「ねえ冬馬くん、コーヒーのお味はどう?」
「……はい……とても……おいしいです……」

 冬馬は明らかに眠気をこらえている。
 大したものだ。もう効き始めた。
(さすがにマニュアルの倍以上の量を投与したら、こうなるか)
 あまりにあからさまな兄の異変に、不審げな表情を見せる葉月を放置して、弥生はほくそ笑んだ。
 以前、この薬を使った時は、効果が現れるまで20分近くかかったが、いまはもう、二口三口カップに口をつけただけで、冬馬が舟を漕ぎ始めたのだ。
 だが、安心するのはまだ早い。
 むしろ本番はこれからなのだから。

「冬馬くん、私の声が聞こえたら、はいと返事してください」
「……はい」
「いま、あなたはどこにいるの?」
「……おうちです……」
「おうち?」
「……ぼくの……せりざわとうまの……うちです」
「そう。で、冬馬くんは今、お幾つになったのかな?」
「……ことしのたんじょうびで……きゅうさいになりました……」


269:傷 (その11)
09/01/27 06:04:42 nYGyqu3v

「姉さん、これは?」
 さすがに葉月ももう黙ってはいられなくなったのだろう。
 だが、それを説明する時間は弥生にはない。
 冬馬の意識は、薬の効果のおかげで半ばトランス状態にあるとはいえ、完全な忘我の境地に在るわけではない。余計な会話を挟めば、それは当然彼の耳に入り、冬馬の催眠を妨げる雑音と化してしまう。
 弥生は妹に目で合図する。
 詳細は後で説明してあげるから、とりあえず今は静かにしなさいと。
 
「では冬馬くん、私が手を一つ叩けば、あなたは一つ歳を取ります。いいわね?」

 ぱん。
 ぱん。
 ぱん。

「さて冬馬くん、あなたはいま何歳になったの?」
「……12歳……です」
「で、いまどこにいるの?」
「……せいわえんとかいう……孤児院、です……」

(孤児院?)
 弥生はその言葉に疑問に持ったが、しかし即座にその問いは氷解した。
 今から4年前、当時12歳だった彼らは、芹沢孝之夫妻の逮捕によってようやく解放され、育児施設に保護されていたはずだ。その一年後に柊木家の両親が彼を“発見”するまでは。
 納得した弥生はふたたび手を打った。

「また一年経ったわ。ここはどこかしら?」
「……ここは」
「ここは?」
「ここは……柊木という家です……おれの三度目の里親の……」
 冬馬の言葉遣いが変わった。
 心なしか表情も先程より大人びている気がする。
(うまく行ってる。ここまでは)
 弥生は合格発表を見るような心持ちで、いよいよ最後の指示を弟に出した。
「さて冬馬くん、あなたはこれから、あと二年歳を取るわ。そして顔を上げて私を見た瞬間、すべてを思い出すの。いい、わかった?」

 ぱん。
 ぱん。

 弥生は息を飲んだ。
 葉月も固唾を飲んだ。
 そして、冬馬がゆっくり顔を上げた。その瞳に年齢相応の知性の輝きが戻る。



「……あれ、姉さん?」



 その瞬間、弥生と葉月は、弾かれたように冬馬に抱きついていた。
 無論、下心の為せる業ではない。
 歓喜と安堵が、二人に取らせた行動であった。

 柊木冬馬は、こうして帰還した。



270:傷 (その11)
09/01/27 06:05:44 nYGyqu3v
今回はここまでです。

271:名無しさん@ピンキー
09/01/27 06:18:01 om2qzxrU
otsu

272:名無しさん@ピンキー
09/01/27 06:22:10 yeO7KSju
乙!!!!!!

273:名無しさん@ピンキー
09/01/27 11:47:24 ZSqVmYQ0
よかったぁぁぁ。
冬馬がもどってきてほんとよかったぁぁぁ つд;

274:名無しさん@ピンキー
09/01/27 12:13:16 e/eVd6Ak
冬馬復活ッッッ!!冬馬復活ッッッ!!

275:名無しさん@ピンキー
09/01/27 17:42:18 CiG54fP9
さすがキモ姉&キモウト…格が違った!
GJ!!!

276:名無しさん@ピンキー
09/01/27 18:53:35 /T336s8J
チンコは復活しないけどな!

277:名無しさん@ピンキー
09/01/27 19:15:17 dDLABvpX
GJ!
某カルタグラのキモウトよろしく
「じゃあ今度はボクが犬として飼ってあげるよ。
ほら、ワンって鳴いてみなよ。ワンワンワンって、げははははっ!」
みたいにくるかと思ったら意外と常識的だったw

278:名無しさん@ピンキー
09/01/27 20:35:53 KWa/uR+o
>>270
GJ!

緊急事態なのにちゃっかりいちもつチェックを忘れない弥生姉さんすげえ!

279:名無しさん@ピンキー
09/01/27 23:18:41 +eHU/RNE
>>270乙&GJ!!
第1話で出た薬が伏線になっているとは思わなかったわ。
そして冬馬還ってこれてマジ良かったわぁ…

280:名無しさん@ピンキー
09/01/28 15:44:48 bJbM2aEm
◎キモウト&妹嫌いな兄
○キモウト&普通の兄
△キモウト&シスコン兄
×キモウト&キモ兄

281:名無しさん@ピンキー
09/01/28 18:00:17 8IGr9R9G
要求の仕方が斬新だね

282: ◆P/77s4v.cI
09/01/28 18:38:49 bbVzBVx4
すいません。以前長いものを投下した者ですが、
15レス以上だと避難所か他のスレを探した方がいいでしょうか?

283:名無しさん@ピンキー
09/01/28 18:39:29 bbVzBVx4
すいません。トリを外し忘れてました。

284:名無しさん@ピンキー
09/01/28 18:42:04 vP9WphrX
別に問題はないと思いますが

285:名無しさん@ピンキー
09/01/28 18:44:34 Rep6ZhVq
その酉番・・・
フラクタル・・・がくる・・・?

286:名無しさん@ピンキー
09/01/28 19:09:58 xzpHefMg
是非投下を

287:名無しさん@ピンキー
09/01/28 19:11:51 Kj9IeJMB
>>282
残レス数も容量も問題なさげだし、おいでませ。
出来れば最初に「およそ何レス使用」と書いてくださると
ニアミス防止になって良いかと。

288:フラクタル ◆P/77s4v.cI
09/01/28 19:14:36 bbVzBVx4
答えてくれた方ありがとうございます。
では投下します。おそらく17レス。微エロです。

289:フラクタル ◆P/77s4v.cI
09/01/28 19:15:15 bbVzBVx4

 七月の太陽は、気性の荒い女のようだ。家への帰り道、俊介はそんなことを思っていた。ヒステリーを起こし、誰が悪いのかもわからず、ただ当たり散らす。
 実際に目にしたことはないが、見ればきっと、この熱気さながらだと思うに違いない。
 背中には家から出てコンビニに行っただけだというのに汗。シャツが肌に張り付く感じが嫌で仕方なかった。
 家が見えたとき、丁度、門が開いた。
 視線をそのままにしていると、舞が耳の横の髪を正しながら出てきた。
 動きやすさを重視したのか男物のワイシャツと下は綿のジャージという室内着。手にはいくつかの雑誌を白いビニールテープで縛って持っていた。
「今日って古紙回収の日だったか」
「ああ、お兄ちゃん。一か月に一回だから、この日にちゃんと出しとかない面倒なのよ」
 ふっ、と息をついて雑誌の束を地面に置く舞。
「ちょっと疲れたわ」
 家の中も掃除していたのだとすぐにわかった。夏の日差しの下、薄らと汗が滲んでいる。
 雑誌の束をその場に置くと、まだあるからと言って家に引っ込むと、もうひと束持ってきた。
 それを見て、あっ、と俊介は驚く。
「さて、と」
 が、舞はそのことには気づかなかったのか、ゴミ置き場へと向かった。
「俺が持つよ」
 そう言う俊介を嫌うように、舞はずんずん歩く。
「すぐそこよ。別にいいわ」
「まあまあ」
 そして、半ば強引に舞の手から雑誌を奪った。両手分ということもあり、手には赤く跡ができていた。俊介の手にずしりとした重さが加わった。
 舞は俊介の慌てぶりを見て、じろりと睨む。
 やがて、よいしょ、という掛け声とともに奪われた雑誌を上から踏みつけた。
「じゃあそれ、お願い。私まだすることがあるから」
 そう言うと舞は振り向きざまに俊介をじろりと諫め、家に入っていった。
「……これ、昨日買ったばっかりなんだぞ」
 俊介は一人になると、肩を落としながら本の束を見る。
 一番上には、お姉さん特集、というタイトルの表紙。
 胸元を強調するためか布の面積が極端に小さな水着に身を包んだ女がアップで写り、周りに卑猥な文字が羅列していた。ポルノ雑誌だった。
 わざわざ表紙を見せて積まれているせいで、上から見ると本の束まるまるアダルト関係の本だと誤解してしまいそうなのは、もちろん舞の謀略だろう。
「抜き出しても、また見つけられそうだしなぁ」。
 口から大きな溜息がでた。
「もう何回目だっけ……天井裏の物まで見つけるなよ……」
 もう諦めたのか、俊介は家と束を見比べた後、仕方ないと呟いてごみの収集されるところまで持って行き、家に戻った。

290:フラクタル ◆P/77s4v.cI
09/01/28 19:16:16 bbVzBVx4
 俊介がパタンとベッドに倒れこむ。布団からは温かみが暑さへと変化し、干していたようだ。
 思いいたって携帯を開いてメールを送った。
 内容もたいしたものではない。今大学ですか? それだけだった。
 十数秒でバイブレーターが部屋に響く。
 休日なのに大学があるわけないよ。今は家でだらだらテレビを見てる。返事を見て、苦笑する。
 返信しようと思った途端、またメールが来た。
 差出人は同じ人物だ。
「――」
 それを読む。
 俊介は起き上がって、自分の頭ぽかりと殴った。すぐさま机に移動してから小枝子にメールを送った。
 しばらくやりとりをこなすと小枝子からメールが来なくなったので、忙しくなったのだろうと思ってそろそろ自分も何かしようと、自室を出る。
 気がつくと空は薄い青色の帳が扇の形をして広がってあった。部屋に差し込んでくる太陽の温度は、昼と比べると色の濃度に反比例している。
 俊介は考え、今日の夕食は自分が作ることにしようと、舞の部屋に行った。
「ちょっといいか」
 扉をノック。中から話声がちくちくとしていた。
 誰かが来客した気配は感じなかったので、おそらく携帯で誰かと通話しているのだろう。
「悪い、話し中だったんだな」
 案の定、開けられた扉からは舞が携帯を手にしている姿があった。
「何?」
「話し中ならいいんだ。大したことじゃないから」
「いいから。何の用?」
「あー……今日の夕飯、俺が作ろうと思うんだけど」
「……どうして?」
「いや、いつも作ってもらってばっかりで悪いな、と」


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