パワポケでエロパロ8at EROPARO
パワポケでエロパロ8 - 暇つぶし2ch250:がんばれエリ
09/01/18 01:37:53 Cc9utfcL
 あたしはじょおうさまだ。
「ユイは肩揉んで! るりちゃんと委員長はあたしの宿題やって!」
 誰も彼もがあたしに跪いて、賛美の声をあげる。
「フッキーは……えっと、あ! お菓子買ってきて! 甘いの!」
 崇拝の眼差しを向けてくるみんなを気分よく見下して、あたしはうっすらと微笑むの。
「夏菜はお料理作って。美味しくなかったらお仕置きだから!
リコはそこでじっとしててね。……何が起きても、じっとしてるの」
 この美しい微笑みを見ることこそが、彼らの生甲斐、じんせーの意味。
「小波君はこっちに来て! ……そ、そしたらぎゅってして! あ、あと頭も撫でて!」
 もちろんあたしを馬鹿になんてする人もいないし、何もかもあたしの思うがまま。
「えへへ…………ふぁ!? そ、そこは違うよぉ! そんなとこ撫でちゃ……あぅ」
 だってみんなは―あたしのドレイなんだから。

251:がんばれエリ
09/01/18 01:38:34 Cc9utfcL
「エリ!」
 ぐるぐると、揺れてた。頭の中も耳に入る音も何もかもがぐるぐると。
気持ち悪くて泣きそうになりながら、誰かに呼ばれてあたしは顔をあげる。
 心臓の鼓動がうるさい。体に変な汗もまとわりついている。
「ふぁ……」
 ばさり。顔をあげると、ほっぺたから音を立てて何かがはがれ落ちた。
寝ぼけ眼を擦りながら、あたしは大きく欠伸をする―だらしなく大きくあけた口からは、
気持ち悪さが逃げ出していってくれた。
「ふああぁぁぁぁぁ……」
 いつの間にか眠ってしまったらしい。
最初に気になったのは、涎を垂れてなかったかどうかだった。
手で頬を軽く撫でる……うん、だいじょうぶ。
だんだんとぐるぐるがおさまっていって、ぼやけていた顔―心配そうにこちらを見る、
るりちゃんの顔がはっきりと見えてきた。
思い返せばるりちゃんは、いつもいつも誰かのことを心配しているような気がする。
あたしのことはもちろんだけど、一番心配しているのは、彼のことだろう。
 ともあれそんな優しいるりちゃんのことが、あたしは大好きだ。
「大丈夫ですか? ずいぶんうなされてたみたいですが」
「るり……ちゃん……ふあぁぁぁ……」
 あたしは頭を軽く振って、もう一度欠伸をしながら机の上に手を伸ばした。
ついさっきほっぺたからはがれおちた、
しわくちゃになってしまっている数学のノートのしわを、まっすぐに伸ばす。
―算数から数学になってから、
計算式を見るたびに眠くなるのはなんでなんだろう?
三年生になってからは、それが特に顕著だ。
「大きな欠伸ね、エリ」
「ふぇ、ふぇぇ?!」
 もう一度欠伸をしようとしたところで、淡々とした声が耳に突き刺さる。
慌てて横を向くと、委員長が少し怖い顔でこちらをにらんできていた。
委員長―そのあだ名の通りクラスの委員長をやっている彼女は、いつも厳しい口調であたしを注意してくる。
けれどそれはあたしのために言ってくれてるのがわかってるから、あたしは委員長のことも大好きだ。
 二人とも大好き―そのはずなのだ。
「エリ、大丈夫ですか?」
「うん……だいじょうぶ……」
「まだ寝ぼけてるみたいね。……もう試験まで半年もないのに、大丈夫なの?」
「ふぇぇ……ご、ごめんね……」
 寝ぼけた頭では言葉の意味も理解できず。起こられた気配を感じてあたしはごめんなさいを言った。
『謝り癖は直したほうがいいわよ』そういってくれたのは、フッキーちゃんだったっけ。
それを直そうと思っても、あたしには無理なんじゃないかなって思う。
 けれど――
「謝らなくても大丈夫ですよ、エリ。……疲れているなら、今日は早めに切り上げましょうか」
「うん…………え?」
 るりちゃんの優しい言葉は、いつも耳に心地よい。
一度なんとなく頷いた後に完璧に目が覚めて、あたしは慌てて教科書を開こうとした。
「だ、だめだよ。だって、勉強しないと!」
 パライソタウンの高校ではなく、本土の高校に進学することを選択したあたしたちは、
授業が終わった後、放課後の教室で毎日勉強会を開いている。
るりちゃんも委員長も、あたしよりものすごく頭がいいのに、
こうして勉強を一緒にしてくれている―それはとてもうれしくて、少し申し訳ないことだった。

252:がんばれエリ
09/01/18 01:39:13 Cc9utfcL
「大丈夫よ、エリ。あたしも約束があってそろそろ切り上げるつもりだったから」
 委員長の言葉に、あたしは驚いて彼女の方を見る。
少しだけ表情を柔らかくして、教科書とノートを重ね始める委員長。
怒っている様子はない―本当に用事があるみたいだった。
「約束……ですか?」
「ええ。……少し、小野さんと話したいことがあって」
 るりちゃんの質問に、勉強道具をかたずけながら委員長が答える。
小野さん―あの夏にあたしたちと深くかかわった彼女は、とてもすごい女性だった。
優しくて、料理が上手で、護身術もできて、微笑みがとても綺麗。
あんな女性みたいになれたら。そう思う人も多いみたい。
「小野さんと、ですか。……エリ。本当に大丈夫ですか?」
「う、うん。だいじょうぶ」
 そんなにうなされていたのかな?
聞いてみようと思ったけど、すぐにその必要がないことに気づく。
うなされていたとしても不思議ではない夢を見ていたことを、あたしは覚えていたから。
「エリ」
「?」
「頑張るのはいいけれど、無理はしないようにね」
 ……委員長はやっぱり、優しいなぁ。
「うん。ありがとうしあピー」
「……」
「……しあピー?」
 どうやらまだ寝ぼけていたらしい。
数か月前に、ユイが委員長につけようとしていたあだ名が、あたしの口から飛び出していた。
「こ、こほん……」
 るりちゃんの不思議そうな眼差しを受けて、
顔を赤くした委員長が荷物を鞄にささっと詰める―そのままがたんと音を立てて立ち上がった。
 律儀に椅子を戻すところは、さすが委員長って感じだ。
「……と、とりあえず、先に帰らせてもらうわね。……また明日」
「あ、うん。またね」
「あの……しあピーというのは……」
「あら、急がないと待ち合わせに遅刻しちゃう! それじゃあ!」
 たたたたたたた。軽快な足音とともに委員長は図書室から出ていった。
 汗でぐっしょりと濡れた下着が、
体にまとわりつく気持ち悪さ―それをなんとかこらえながら、あたしも帰る準備を始める。
るりちゃんはしあピーという言葉が気になっていたみたいだけど、
適当なところで諦めたみたいだった。小さな可愛らしい溜息をつく。

253:がんばれエリ
09/01/18 01:40:04 Cc9utfcL
「エリ」
「……どうしたの? るりちゃん」
 汗まみれだから、外に出たら寒いんだろうなぁ。
そんなことを思いながらシャーペンをケースにしまっていると、
るりちゃんが深刻そうに眉をひそめてあたしの名前を呼んだ。
顔をあげる。今まで何度も見てきた、心配そうな顔が見えた。
「本当に大丈夫なのですか? ……なんだか最近、元気が無いようですけれど」
「だ、だいじょうぶだよ」
「うそ、ですね」
 だいじょうぶ。あたしがそれを言い終わる前にるりちゃんの口から吐かれた言葉は、
彼女の微かな苛立ちを表していた。
「エリはやましい所があると、眼を逸らすからわかりやすいです」
「そ、そうなの?」
「ええ……そうじゃなかったとしても、とぼけてしまえばいいのに。まあ、エリには無理でしょうけど」
「う、うん……そう、かもね」
「……どうしても、話せませんか?」
 少しだけ悲しそうに、るりちゃんが言う。
言ってしまえば楽になれる。言いたかった。言いたい、言いたい、言って泣いてしまいたい。
けれどるりちゃんには、この悩みを言えない理由がある。
 ―彼女はきっと、知らないはずだから。
「無理に聞こうとはしません。けれど―」
「あの、ね」
 だけど、るりちゃんの悲しそうな顔を見るのはやっぱり嫌で、あたしは嘘をつくことにした。
こんな時、女の子にだけ使える便利な嘘がある。
「え、えっとね…………あ、あれがちょっと重くて、調子が出ないの」
 嘘をつくのは、好きじゃないし得意でもない。けれども今回はどうやら成功したようだった。
「あれが重い? …………あ。そ、そうなんですか」
 悲しそうな顔から慌てた顔に変貌して、るりちゃんが立ち上がる。
「す、すいません。私ったら……それなら、仕方ないですね」
「う、うん。……仕方ない、よね」
 二人して苦笑する。
 なんだか微妙な空気は、校舎を出るまで続いた。


「少し小波の様子を見ていこうと思うのですけれど……エリもどうですか?」
「…………え?」
 校舎を出てすぐ、るりちゃんがあたしを誘ってきた。
その顔が少しだけ赤いのは、夕陽のせいだけじゃあないだろう。
るりちゃんは表情や態度で思っていることがとてもわかりやすい―あたしもそうみたいだけど。
「そ、その。私一人で行くと……ユイにからかわれてしまいますし」
「……」
 るりちゃんの口から彼の名前が出るたびに、あたしは悲しい気持ちになる。
るりちゃんが彼のことを好きなのは知っている。彼もるりちゃんのことは好きなのだろう。
 あたしは―
「エリ?」
「……え? あ、うん。……じゃ、じゃああたしも一緒に行こうかな」
「そ、そうですか。……ではグラウンドの方へ行きましょう」
 くるりと方向転換するるりちゃん。
一瞬だけ見えた、嬉しそうに綻ばせた顔はすごく可愛かった。
 それに嫉妬してしまう自分を少しだけ嫌に思いながら、あたしは彼女の後を追った。

254:名無しさん@ピンキー
09/01/18 01:40:28 8vLsMSdX
ちょっとエリを書いてみる。
《Story at Night》
激しい落雷の音で、エリは目を覚ました。
カーテン越しに閃光が走る。
恐る恐る、窓を覗こうとした途端、またガラスを震わせて雷が落ちる。
「きゃあっ」
慌てて頭まで布団を被るが、胸のどきどきがおさまらない。
「フッキー・・・フッキぃぃ」
彼女は、布団を被ったまま、白瀬を呼んだ。
けれど、すぐ隣のベッドで寝ているはずの白瀬は、起きないのか返事がない。
「フッキぃ・・・起きてよ、フッキー・・・!」
最後の声は、とうとう涙声になる。
それでも白瀬は起きてくれない。
「ふぇっ・・・ぇぇっんっ・・・・フッキぃぃーー」
エリは、布団に包まってずるずるとベッドから降りた。
白瀬が寝ているはずのベッドに、そっと手を伸ばす。
「フッキー・・・・フッキー・・・・??」
けど、そこにあるはずの手応えが何もなかった。
「フッキー・・・どこにいったのぉっ?」
きょろきよろとあたりを見回すけど、旅館の小さい部屋のどこにも、白瀬の姿はなかった。
「やぁっ・・・やだよーっ・・・フッキぃぃ・・・きゃあっ!」
また落雷。
今度は、とても近い。
雨がバチバチと窓を鳴らし、風が旅館を揺さぶっているようだ。
ここには二人部屋しかなくて、小波君たちは他の部屋に泊まっている。
・・・この部屋には今わたし一人しかいない。
急に、狭かった部屋が広く感じて 、エリはベッドにしがみついた。
ぎゅっと握った布団の端を胸の前で掻き合わせ、ぐっと涙をこらえる。
祈るような気持ちで雷が止むのを待ったけど、どんどん激しさは増す。
フッキーも、帰って来ない。
その時、一層激しい光りが部屋を明るく照らした。
そして、バリバリと何かを引き裂くような破裂音。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」
たまらず、エリは部屋を飛び出した。


だめだ。この後小波はフッキーが何してるか教えてあげるとかいうのに……
俺には書けん。
続き頼むわ。

255:がんばれエリ
09/01/18 01:40:45 Cc9utfcL
 予想通りユイにからかわれるるりちゃん―あたしがいてもいなくても、
結果は同じだったのだ―の横で、
あたしはベンチに座って野球部のみんなが練習するのをボーっと見ていた。
 みんな、というのは正確じゃない。見ていたのは彼―小波君のことだ。
彼がボールを投げて、打って、掴むところを、ずっと見ていたのだ。
(……カッコイイなぁ)
 『俺がついてる』そういってくれた彼のことを、あたしはいつの間にか好きになっていた。
とはいっても、あの夏の前と彼との関係が劇的に変わったわけじゃない。
少しだけ仲良くはなったけれど、今でも彼とはあまり話をしないままだ。
 理由の一つは、彼の周りにいつも人がいて、あたしの入る隙がなかったこと。
男の子は勿論、女の子もみんな彼と話をしたがる―もともとあたしは男の子が少し苦手だし、
みんなを蹴散らして彼に近づく勇気もなかったのだ。
 ……もしかしたら、ユイやるりちゃん、あるいは委員長と一緒に近づくことはできたかもしれない。
けれど、あたしはそれもしなかった。それは―
「エリ!」
「ふぇえええあああ!?」
 ばん、と背中を叩かれて、あたしは妙な声をあげた。
自分でも妙だと思うぐらいだから、きっとみんなにはすごく変だと思われてるのだろう。
強く叩かれたショックで飛び出す涙―それが柔らかい手で拭われる。
たぶん今まで生きてきた中で、二番目に多くあたしの涙を拭ってくれた手だ。
 横を見ると、ユイがすぐ近くに座っていた。いつの間に近づいてきたんだろ?
「どうしたの? なんか元気ないよ?」
「ふぇぇぇぇぇ……」
「あー、泣いちゃメーっていつも言ってるのに」
 ぐずぐずと泣きだすあたしの頬に、ハンカチが押しあてられる。
自分のことを、あまり器用じゃないってユイは言うけど、
あたしの涙を拭うのはものすごくうまい。
「……ん……っく……ユイ、痛いよ~」
「あははは、ごめんごめん……っと、こらそこー! さぼらない!」 
 朗らかに笑いながらあたしに謝った後、
グラウンドに向けてユイが叫ぶ―見ると、驚いた顔の彼がこっちを見ていた。
 気恥かしさに逃げ出したくなる。彼がすぐに目を逸らしてくれたおかげで、逃げださずに済んだけど。
「……あれ? るりちゃんは?」
 少しだけ残っていた涙をぬぐった後、さっきまで隣にいたるりちゃんがいないことに気づいて、
あたしはユイに聞いてみた。
「あ、るりかなら用事を思い出したからって帰っちゃった。
エリにもさよならって言ってたよ? ボーっとしてたみたいだから気づかなかった?」
「えぇ?! そ、そうなんだぁ。……あしたごめんねって言わなきゃ」
「別に気にしてないと思うけどなぁ……それよりエリ。……ああ!」
 すたっ。勢いよくベンチから立ち上がって、ユイがメガホンを口にあてる。
慌ててあたしは耳を塞ぐ―一瞬だけ遅れて、手のひらを貫通するほど大きな声が頭に響いた。
「ほらほらほらー!! さ・ぼ・ら・な・い! 練習練習ー!!」
 大きな声で、耳がきーん、ってした。
ギュッと瞳を閉じてまぶたの裏を見ながらあたしは考える。ユイが何を言おうとしたのかを。
 ―ユイはたぶん、知ってるはずだ。あたしを助けたって言ってたから。
 彼女が座る気配を感じて、耳を塞いでいた両手を膝の上において、隣を見る。
 あたしが見てることに気づいたユイが、朗らかに笑った。
それはとても魅力的で、温かな笑顔だった。

256:がんばれエリ
09/01/18 01:41:33 Cc9utfcL
「ところでエリ、最近元気ないね。どうしたの?」
 あたしがユイに見とれていると、彼女は口早にそんなことを言ってきた。
あたしは眼を逸らして、陰鬱な気持ちでつぶやく。
「……やっぱり」
「え?」
「あ、ううん。さっきるりちゃんにも同じこと聞かれたの」
「あー……るりかは心配性だもんねぇ」
 腕組みしながらうんうんと頷くユイ。
ユイにとっても、るりちゃんはいつも誰かのことを心配しているイメージなんだろうなぁ。
「で? 解決したの?」
「ううん……るりちゃんには、聞けなくて」
「聞けない?」
 不思議そうに聞き返すユイに向かって、あたしは顔をあげた。
 とてもとても怖いけれど、ユイになら聞ける―はずだ。
「ユイは……」
「うんうん」
 言葉が喉に詰まる。
 やっぱり怖い。怖くて、聞きたくないんだけど……聞かなきゃ、いけないんだよね。
 大きく深呼吸をして、あたしはあたりをきょろきょろと見回した。
今から言う言葉は、他の誰にも聞かれたくなかったのだ。
「……」
 ゆっくりと、視線を戻す。不思議そうな顔をするユイに向けて―
「……み、みんなを、ドレイにしたいっておもったこと……ある?」
「!?」
 あたしが言葉を投げると同時に、がたん。音を立ててユイがベンチから転げ落ちた。
あたしの言葉は、彼女をずいぶんと驚かせたようだった。
「だ、だいじょうぶ?」
 手を差し出して、ユイがベンチに座りなおすのを手伝う。
手伝うとは言っても、ほとんど意味はなかった―ユイはユイの力だけで、
大抵のことができるからだ。
「う、うん……それよりエリ。なんでハタになった時のこと知ってるの?
もしかして覚えてたとか? いや、それとも誰かに教えてもらったとか?」
「…………えっとね」
 ぱんぱんとスカートをはたいたユイは、あたしに質問を投げかけてきた。
ばくばくと鳴り始めた心臓は考えをまとめるのに邪魔だ。
それでもゆっくりと考えをまとめて、言葉を吟味する。
 ―遠くから、ボールがバットに当たる、かぁんという音が聞こえた。
そっちを見てみようとして、やめる。
今彼の姿を視界にとらえたら、泣いてしまいそうだった。
「あ、あんまり多くは覚えてないんだけど……ちょっとだけ、覚えてるの。
あの時、どんな気持ちになったのか。何をしたいって、思ったのか」
「……そうなん、だ」
 ユイが表情を暗くするのは、とっても珍しい。
あたしが見たの回数はたぶん、両手で数えられるぐらいしかなかった。
 ……あたしが言ったことを考えたら、たぶん無理もないことなんだろうけど。

257:がんばれエリ
09/01/18 01:42:08 Cc9utfcL
 二か月前。中学三年生の夏休みに、あたしたちは再び宇宙人と戦った。
宇宙人やハタ人間やよくわかんない変なのがたくさんいる基地に、あたしたちは夏休み中潜り続けた。
 あたしは戦うのが得意じゃないから、るりちゃんと一緒にみんなのサポートをすることが多かった。
基地の周りで花を摘んで回復薬を作ったり。怪我した人の治療をしたり。
 けれど、彼が守ってくれる―それを期待して、
あたしは時々ダンジョンの中につれていってもらった。
あたしがいるとガラクタを見つけやすいとかで、彼も少しだけ喜んでくれた。
 そんなある日のこと。
「危ない!」
 そんな彼の声が聞こえたかと思うと、
ぴかっと何かが光って、あたしの体に激痛が走って、目の前が真っ暗になった。
 後になって聞いた話だけど、ちっちゃなUFOがいきなり現れて、
あたしと、一緒に後ろの方にいたフッキーちゃんを狙い撃ちしたらしい。
フッキーちゃんは攻撃を避けるのが上手だからなんとなかったんだけど……あたしは駄目だった。
 気絶して、すぐにハタ人間に連れ去られて、そのまま―
 頭にハタを、立てられちゃった。

258:がんばれエリ
09/01/18 01:42:37 Cc9utfcL
 ―それでも、ユイは、やっぱりユイだった。
暗い表情を吹き飛ばし、笑顔を作ってあたしの肩にポンと手を置く。
「気にする必要はないんじゃない? あのみゆき先生だって、
ハタがたったらものすごく怖くなってたぐらいだし、エリが変なこと言っても驚かないよ」
 笑いかけてくるユイ。本当に、本当に嫉妬してしまうぐらい魅力的に笑うユイ。
それとは対照的に、あたしは泣きそうになりながら言葉を紡ぐ。
「……でも、先生は友達になりたいって言ってたよ」
「え?」
 ハタを立てられたみゆき先生とあたしには、決定的な差があった。
そのことに気付いてから、あたしは先生のことが大好きになって、自分のことが少し嫌いになった。
「……こ、怖かったけど。……友達になりたいって、先生は言ってたよ。
たぶん、それって……先生の、根っこにあった気持ち、だったんだね。
でもね、でもね、あたしはね。みんなを……ド、ドレイにしたいって、お、思った、の」
 それでもどうにか絞り出したあたしの声は、だんだんと泣き声が混じったものに変わっていった。
自分がどれだけ馬鹿なのかを理解して、ぐじぐじと涙が出てしまう。
 ―こんなんだから、みんながあたしを、
「馬鹿に、するから、みんながあたしを馬鹿にするから。
みんな、あたしに、従って。……ば、馬鹿にしなくなればいいって、思ったの」
「……」
 こういうときに、女の子は楽だ。
泣きたいだけ泣けるから。泣けばすむから。泣いてしまえば誰かが助けてくれるから。
 ―そんな最低な考えが浮かぶことが、とても悲しかった。
「それで、ね……ふぇ……ふえええぇぇぇ……」
 最後まで言葉を言うことができずに、あたしは泣きだした。
自己嫌悪の渦にのみこまれて、際限なく涙があふれ出していく。
手で顔を覆っても、ぽたぽたと涙が地面に吸い込まれていった。
「……エリ」
 ふっと、あたしの顔が柔らかくて温かいものに押し当てられた。
ユイに抱きしめられているとすぐに気付いて、あたしは涙を止めようとする。
 ……どうして、涙を止めようとするんだろう?
 ユイの胸でなら、きっと好きなだけ泣けるのに。
「それでも」
 いつも元気で明るいユイの、悲しそうな声。
こんなの声を聞きたかったわけじゃない。言わせたくもない。
なのにあたしがそれを言わせているのだ!
「それでも、気にする必要はないと思うよ?
……たぶん、それってそんなにおかしなことじゃないから」
「ふぇぇぇぇ……」
 泣きやもうとすることに集中していて、あたしはユイの言葉をよく聞いていなかった。
ただ、ユイもことさらあたしに何かを伝えたかったわけじゃないと思う。
 その声は、とても小さかったから。
「……もう、エリは真面目すぎるよ! ほらほら!」
「ふぇぇぇぇ!?! ふぇ、ひぁ、ひぇぇぇぇぇぇ?!!?!」
 突然ユイが抱きついて来て、あたしをくすぐり始める。
ユイはあたしのどこが弱いのかもよく知っている―すぐにあたしは笑い始めた。
 しばらくの間、あたしは泣きながら笑って、笑いながら泣いた。
練習を終えた野球部のみんなに見られてることに気づいて、逃げだしちゃうまで泣いて、笑い続けた。

259:がんばれエリ
09/01/18 01:43:34 Cc9utfcL
 泣きやんだ後。あたしはユイのマネージャーのお仕事を少しだけ手伝った。
その時彼と少しだけ話ができたのが嬉しかった―にこにこと笑っている彼の顔を見ると、
悩んでいることも忘れてしまうぐらいだった。
 けれど学校を出てユイと二人で夜道を歩いていると、
すぐにあたしは元通り―暗い気持ちに包まれてしまう。
 そんなあたしに、ユイは次々に話しかけてくれた。
新しくできた喫茶店についてとか、あさっての給食にゼリーが付いてくることについてとか。
どれも明るい話題ばかりだ。あたしのことを気遣ってくれてるのが、すごくうれしぁった。
 ―それでもあたしの表情が晴れないのに気づいたのだろう、ユイはこんなことを言ってきた。
「どうしても気になるなら、私じゃなくて他の人に相談した方がいいかもね」
「……え?」
 ぽかんと、間の抜けた顔をしてあたしはユイを見た。
彼女は小さく笑いながら、両の手を頭の後ろに組んで、空を見上げていた。
つられて見ると、雲ひとつない夜空に奇麗な満月が輝いている―明日はたぶん、晴れだろう。
「とは言ってもるりかは駄目だね。エリがそんなこと言ってたの知らないし、
たぶん、真面目に考えすぎて二人とも暗くなっちゃう」
「あはは……そう、かも」
 るりちゃんは、優しい上にすごく真面目だ。
話したところで、考えすぎてしまうのが目に見えている。
難しい高校を受けることを決めた彼女に、あまり心配もかけたくない。
「小波君に相談するのは……エリには難しい?」
「う、うん……ちょっと、難しいかも」
 彼の名前がユイの口から出て、ずきりとあたしの胸が痛んだ。
ユイも彼のことが好きなことを、あたしは知っている。
 ……ホント、罪づくりな男の子だなぁ。
「だったら、うーん……これは言うなって言われてたんだけど」
 ぐるんと鞄をまわして、片手で肩に背負い直す。
空いた右手の人差し指を唇にあてて、ユイは考え込むポーズを取った。
「ハタ立てられたエリを助けに行ったのって、
もちろん私と小波君だけってわけじゃないんだよね。……覚えてない?」
「う、うん……」
「残りの二人からは、一応口止めされてるだけど……」
「そ、そうなんだ? ……口止めされてるんなら、無理には聞かないけど」
「フッキーと委員長だよ」
「……」
 あたしの話を聞いていたのかな?
疑問に思いながらユイを見つめると、彼女は苦笑しながら言葉を紡ぎ始めた。
「まあ、委員長はどうしても言いたければ言ってもいいって言ってたしね。
フッキーは絶対に言うなって言ってたけど、まあ、フッキーだし」
「あはは……なんだか、フッキー可愛そう……ふふっ」
「あははは」
 てくてくと歩きながら、二人で笑う。
フッキーちゃんはいつも一人でいたがるけど、なんだかんだでみんなの大切な友達だ。
もちろん、あたしも彼女のことは大好きだ―時々お菓子もくれるし、
あたしが泣いてたらハンカチを投げつけてくれる。
「まあ、そういうことだから、二人のどっちかに聞いてみれば?
……フッキーは、こういう話は苦手かもしれないけど、頼りにはなりそうだし」
「うん。……ありがとう、ユイ」
「あはは。いいって、まあ、明日も頑張ろう!」
 ばんばんと背中をたたくユイ。ちょっと痛くて涙が出た。
 彼女と共に過ごす日々も、あと半年もない。
それまでに、楽しい思い出をたくさん作れたらいいな。そう思った。

260:閑話その1
09/01/18 01:44:22 Cc9utfcL
「……そういえば、結局ユイって質問には答えてくれなかったなぁ」
 お風呂で小さくひとりごちる。
たっぷりのぬるめのお湯にじっくりとつかるのが、あたしは好きだ。
 意味もなくお湯の中に顔を沈めて、ぶくぶくと泡を出してみたり。
 大きくなってほしいと願いを込めて胸をマッサージしてみたり。
―その甲斐あってか、最近は結構胸が大きくなってきた気がする。
肩がこるまでとは大きくないし、
平均サイズなんてものもよくわかんないけど……たぶん、クラスで一番大きいんじゃないかと思う。
これ以上大きくなったら、なんだか困ったことになりそうだ。
 ―しばらく、マッサージはやめようかな。
「あんっ……」
 ちゃぽん。水滴が首筋に当たって、あたしは小さく呻いた。
そのままぶくぶくと湯船に沈んで、あたしは考える。
温かい湯船の中では、嫌なことを考えても、幸せが勝って暗い気持ちにならないものだ。
「……?」
 ユイちゃんが相談するのに進めた人物について考えていると、なんだか変な感じがした。
自分の机の上に落ちていた髪の毛が、枝毛だった時ぐらいの小さな悲しみ。
 なんなんだろう……

 確実に一緒にいたはずのメガネ君の名前が挙がらなかったことに気づいたのは、
三十分後にお風呂を出るときだった。
 ……まあ、メガネ君だから、仕方ないのかな。そんな薄情なことをあたしは思った。

261:がんばれエリ
09/01/18 01:44:55 Cc9utfcL
 そして次の日。とりあえずあたしはフッキーと話すチャンスを探すことにした。
委員長は放課後にいくらでも話せるから、後回しにすることにしたのだ。
今日はるりちゃんのお母さんが健康診断に行くらしいから、二人きりで話せるはずだったし。
 けれどフッキーと二人で話すチャンスは、なかなか見つからなかった。
 昔よりみんなと話しかけられる機会が増えたフッキーは、いつも逃げ回っている。
一人が気楽だというフッキー。確かに、本当にそうなんだろうと思う。
あたしにもわからないわけじゃない―一人でいるときは、確かに気楽な部分もある。
 まあ、あたしはみんなといる方が安心できるんだけど。
「……はぁ」
 フッキーを捕まえられないまま、三時間目の国語の授業が始まった。
勉強の中でも、国語は結構楽な方だ。物理や数学に比べたら、気を抜いていても困ることは少ない。
 小さく溜息をついて、あたしは教室を見回す。
みんなあまり授業に集中していない。男の子たちはほとんど舟を漕いでいるし、
女の子も委員長とるりちゃん以外は聞いているのかいないのか、微妙なところだった。
みんなの様子を見ることができるのは、あたしの席が窓際の一番後ろ―教室の隅っこだからだ。
 一番後ろの席は案外先生の目が届きやすいんだよね。そうリコが言っていたのを思い出す。
確かに、先生がこっちを見る回数は結構多い気がする―もっとも、
あたしが駄目な子だから、気にかけてくれてるのかもしれないけれど。
 そんなうかつに眠ったりできない席だったけど、あたしはこの席をとても気に入っていた。
後ろの隅っこだと、ひとの視線を気にしなくていいし、
なにより彼を―中央の一番前の席にいる彼の横顔を―割と自然に見ることができるからだ。
 眠たそうに瞼を半分閉じて、舟を漕ぐ彼。
 先生に注意されて、慌てて教科書を開く彼。
 隣から回ってきた紙切れを開いて、驚いた表情を浮かべる彼。
 ―真剣な表情で、黒板を見つめる彼。
 何もかもがカッコよく―あるいは可愛らしく見える。
そんな感情は彼が関係する全てのものにさえ、影響しているような気もした。
 こんな感情のことを、委員長いわく『屋烏の愛』って言うらしい。
『きっとエリにはこの言葉が似合うわね』
 微笑みながら、彼女はそんなことを言っていた。
「……はぁ」
 あたしは頬を緩ませて、小さくため息をついた。
彼のことが好きだ。好きだけど―
 お別れのときは、確実に近づいて来ていた。

262:がんばれエリ
09/01/18 01:45:49 Cc9utfcL
 お昼休み。いつもどこかに消えているフッキーだけど、
あたしは彼女がよく逃げ込んでいる場所を知っていた。
たぶん、幸運だったのだろう―窓からロープを伝って、屋上に上るフッキーを見たことがあったのは。
(うーん…………どうしようかなぁ)
 その場所。屋上に続く扉の前で、あたしは困っていた。
ヘアピンを何本か持ってきて、鍵穴に差し込んだけど、冷たい扉は開く気配がない。
ドラマや漫画では、結構うまくいってることも多いから、大丈夫かなぁと思ったんだけど。
(あ。夏菜に頼もうかなぁ。この前探偵になるって言ってたし)
 そう思ったけど、すぐに首を振ってやめにした。
きっと夏菜は何故フッキーと話したいかを知りたがるだろう。
そうなったら、下手をしたらリコが絡んでくる―彼女はちょっとだけ、
ちょっとだけ強引すぎるのが珠に傷なのだ―詰め寄られて、話してしまわない自信がない。
 それからドアノブをしばらくひねってみたけど、開く気配は全くなかった。
「ふぇ……」
 どうしようもなくて泣きそうになるのをなんとかこらえて、ドアノブから手を話す。
とりあえず教室に戻ろう。そう思って振り返った。その途端。
 だん、だん、だん。
 大きな音が三回聞こえて、慌ててもう一度振り返る―ごつんと、何かが顔にぶつかった。
「……あれ?」
 バランスが崩れる―頭に思い浮かんだのは、中学校の思い出だった。
入学式に転んで泣いて、体育の授業中にボールがぶつかって泣いて、
マークシートのテストの終了三分前に、回答が一個ずつずれていることに泣いて、
自動販売機でなぜかおつりが出てこなくて泣いて、おみくじで大凶が出て泣いて。
「ひぇぇぇぇぇえええ?!!?」
 がたん、ごろんと階段を転げ落ちて、がん!
 頭を強く打って、あたしは気絶した。


「……ふぁぁぁ」
 大きく欠伸をしながら、あたしは眼を覚ました。
ぽかぽかの日差しがとても気持ちいい。
秋だけど、風が当たらなかったら日光浴って気持ちいいんだなぁ。
そんなことを考えながら目を擦る―はらりと、胸元にハンカチが転がった。
湿っているシンプルな白いハンカチ。名前が書いてないか探してみたけど、見つからない。
「あ、起きた?」
「ふぇあぁぁあぁ!?」
 後ろからいきなり声をかけられて、あたしは前に転がって声の主から離れた。
ぐるんごろんと転がって、体のいろんな所を地面にぶつける。
 ……痛い。
「いや、そんなに逃げなくても大丈夫だって。……頭、痛くない?」
「ふ、フッキー?」
 後ずさりしながら起き上ったあたしを、フッキーが呆れたような目で見ていた。
いつもと同じように、背筋をぴんと伸ばして立っているかっこいいフッキー。少し、見とれてしまう。
「だから…………はぁ」
 溜息をついて、フッキーが首筋を掻く。
風でひらひらと揺れているリボンを指に触れて、もてあそぶ。
そんなどうでもよさそうな動作でさえ、フッキーの手にかかると凄くかっこよく見えた。
「頭、痛くない?」
 こつこつと自分の頭をたたくフッキー。
言われた言葉を理解して、あたしも自分の頭に手を当てる。

263:がんばれエリ
09/01/18 01:46:31 Cc9utfcL
そこには小さなこぶができていた。痛い。痛くて涙が溢れ始める。
「い、痛いよぉ……」
「あー、泣かない泣かない。女の子でしょ?」
「お、女の子じゃないよぉ~」
「……いや、落ち着きなさい」
「ふぇぇぇ…………んっ……ぐすっ……」
 手に掴んだままだったハンカチを使って、あたしは自分の涙を拭う。
一通りぬぐい終わるまで待って、フッキーは少し困ったように語りかけてきた。
「でさ、なんであんた屋上に入ろうとしたの?
えらくがたがた音がしてたから、てっきり不審者かと思ってドアノブ撃ち抜いちゃったじゃない」
「えっと、それは……って、ええ!? 撃ち抜いちゃったって……」
 慌てて振り向く、屋上のドアノブのところに小さな穴が開いていた。
先ほど聞いた音は銃声だったらしい。
 ……もしかしたら、あたしの体のどこかに穴が開いてるんじゃないかな。
実はもう死にかけてて、痛みすら感じなくなっちゃってるんじゃないかな。
 そんな考えが思い浮かぶ―怖い、怖くて、さらに涙が溢れだした。
「ふぇぇぇ……撃たれちゃったよ~……」
「いや、本物の銃弾が当たってたらコブじゃ済まないから。
衝撃でドアノブが跳ねたのが頭にあたっただけみたいよ」
「ふぇぇ……ふぇ……ふえぇぇ?」
「いや、本当だって。……泣き声で質問するなんて、無駄に器用ね」
 小さくため息をつくフッキー。
嘘を言ってる様子はない。たぶん、あたしは大丈夫なのだろう。
急いであたしは涙をぬぐう―うん、たぶん大丈夫。
「とりあえず、あたしに用があるんじゃないの? わざわざこんなところに来るってのは」
「……ん。う、うん。ちょっとフッキーに相談したいことがあったの」
「へ? あたしに? ……仕方ないわね。お姉さんになんでも聞きなさい」
「フッキーあたしと同い年……」
「だからフッキーって呼ぶな!」
「あははは……うん。じゃあ、フッキーちゃんは誰かを―
誰かを、ドレイにしたいって思ったこと、ある?」
 半眼で睨んでくるフッキーちゃんに、昨日ユイに言った言葉を繰り返すと、
彼女もとっても驚いたようだった―目を大きく開いて、あたしの方を見る。
そこにマイナスの感情が含まれていないことが、あたしには嬉しいことだった。
「へぇ……ハタになってる時のこと、
覚えてる人もいるってのは聞いてたけど、あんたもそうだったんだ」
「う、うん。そ、そうなの。……そうなの?」
「いや、日本語は正しく使いなさいよ。……ああ、他にも覚えてる人間がいるかってこと?
聞いた話だけど、何人かいるらしいわよ」
「そ、そうなんだ……」
 あたしだけが特別。そういったわけじゃないと知って、少しだけ楽になる。
根本的な問題は、全然解決してないんだけど。
「そうねぇ。ドレイに……うーん」
 フッキーが腕組みをして、考え始める。
ただ腕組みをして立っているだけなのに、やはり彼女はとてもかっこよく見えた。

264:がんばれエリ
09/01/18 01:47:13 Cc9utfcL
 フッキーと話すようになった最初の理由は、出席番号が近いからだった。
 しらきえりと、しらせふきこ。
 最初の二文字が共通してるから、クラス替えをしてすぐの席が近かったのだ。
 ―それだけじゃない。出席番号順で並ぶことも結構多いから、
いろんなイベントであたしとフッキーは一緒になることが多かった。
「あたし? 白瀬芙喜子よ、よろしく」
 初めて出会った時の、あっさりとした挨拶。それをかっこいいなと思ったことを、今でも覚えている。
「し、白木恵理です。……よろしくね」
 その第一印象は、いまでも変わっていない。かっこよくて、頼りになる。
『白瀬さんって、怖いよね』そう言う友達もいたけど、あたしはあんまりそう思わなかった。
全く思わなかったわけじゃない。怖いと思う時もあった。
けれど、それ以上にかっこいいと思うことが、多かったのだ。


「悪いけど。あたしはそんなこと思ったことはないわね。
だってドレイなんてのがいたら、さらに一人の時間が減りそうだし」
「……そうなんだ」
 あての外れた答えに、あたしの口から失望の声が漏れる。
 ……あての外れた? 思い浮かんだ言葉に、あたしは自問自答する。
あたしは誰かに同意してもらいたかったのだろうか?
それとも叱責してもらいたかったのだろうか?
 ―よく、わかんない。
「でも」
 あたしが考え始めたところで、フッキーが言葉を紡いだ。
それは怒っているかのように強い力がこもっていて、けれど囁くように小さかった。
「他にもっといろんなことを考えてるわよ。……知ったらあんたが逃げ出しちゃうぐらいね」
「…………え?」
 はっきりと目を開いて、両の足で地面を踏みしめて。フッキーは囁く。
「誰にだってそういった部分はあるってことを言ってんの。
……まあ、大小の差とか自覚してるしてないの差はあるでしょうけど」
 少し、イライラいるのだろうか。
フッキーはこつこつとつま先を地面にぶつけている。
ひらひらと、今度は彼女のスカートが風に揺れた―そんな意識しているはずもない動作さえ、
なんだかかっこよく見える。それはきっと気のせいじゃないだろう。
「そういうのがない人間ってのは……たぶん、よほどの馬鹿なんでしょうね。
もしくは聖人君子って奴かしら。まあ、聖人君子ってのは、
馬鹿と同じ意味の言葉だから、結局馬鹿しかいないってことになるわよね。
……あんたが気に病むのは勝手だけど、『自分一人が~』
なーんて思いこむのは、やっぱり馬鹿でしかないわよ」
「でも。あたしはみんなを、小波君も、フッキーも、ユイも、みんなを―」
 ―ドレイにしたい。そう思ったのだ。支配したいと、逆らわなくしたいと。
 そしてそれはきっと、あたしの本心なんだ。
涙がさらに、さらに溢れだす。自分のことがここまで嫌になったのは、これが初めてだった。
「悩みたいなら、悩めばいいじゃない」
「え?」
 柔らかい口調の声が届いて、あたしは少しびっくりした。
フッキーは微笑んでいた―まるで小さな子供を見るような、慈愛に満ちた笑顔。
「別に答えが出なくても死ぬわけじゃないんだしさ、悩み続けたって誰も文句は言わないわよ」
 それは子供だからと馬鹿にしているわけでもなく、ただ優しいだけの頬笑みだった。
ああ、やっぱりフッキーは……かっこよくて、優しいんだ。
「それにたぶん、あと五年もすればそんなことで悩んでたのが馬鹿らしくなるんじゃないかしら。
もしくは諦めがつくでしょうね。……大人になれば、
適当に折り合いがつくもんなのよ、そういう悩みってのは」
「……」
 フッキーの言っていることは、あたしにはよくわからなかった。
これだけ悩んで、泣いて、苦しいこの気持ちが、どうでもよくなるなんて思えなかったから。
 けれど……何故か、少し気が楽になったのも確かだ。

265:がんばれエリ
09/01/18 01:48:09 Cc9utfcL
「いいんじゃない? 泣いて悩んでぐじぐじして、泣きやんで悩んでまた泣いて。
あんたらしい、って言えばそうでしょ?」
「……バカにしてる?」
「まあ、そうかもね。……でも、泣きやむならそれでいいんじゃない?」
 あたしの少し嫌な言葉すら、フッキーは軽く受け流した。
そして急に顔を赤らめて、あたしから視線を逸らす。
身体がかゆいのか、全身をもじもじとするフッキー―心配になって、あたしは声をかけた。
「ど、どうしたの?」
「い、いや。な、なんだか恥ずかしくなってきて」
「?」 
「なんか、こう。真剣な若者のお悩み相談みたいなのって……キツイわね。
いや、バカにしてるわけじゃないけどさ……あたしこういうの苦手なのよ、うん」
「???」
 今日のフッキーは、なんだか少し難しいことを言っている。
そういった役割を、あんまり彼女は好きじゃなかったようだ。
「あぁっ! もう!」
 けれど彼女は両手を大きく上げて背を伸ばして、いつもの状態に戻った。
……もじもじしてたのが可愛かったのは、たぶんあたしだけしかしらないことだ。
「……はぁ。まあいいわ。……少しは、元気が出た?」
「う、うん。……ありがとう、フッキー」
「だからフッキーって呼ぶなって……はぁ。
あたしのほうが誰かに相談したいぐらいね、ホント」
「あはははは……」
 茶化す言葉に二人で笑い合う。
と。フッキーが辺りを軽く見回した―少し、寂しげな表情で。
「しかし、ここももう使えないわね。……いい場所だったんだけど」
 つぶやかれた言葉は、確実にあたしがここに来たことが嫌だったということを意味していた。
 慌ててあたしは口を開く―たぶん、二人にとって一番いい選択を言うために。
「ご、ごめんね。……でも、大丈夫だよ。あたしはもう、ここに来ないから」
「?」
 不思議そうに、フッキーはこちらを見た。
「だ、誰にも言わないから。フッキーの邪魔は、しないから」
「そう? ……ま、ならいいけどさ。……そろそろ昼休みも終わるから、教室に帰りましょ」
 納得したらしく、フッキーはそんなことを言ってあたしに背を向けた。
階段へ続くドア―壊れたドアに差し掛かったところで、振り返る。
ちょうどあたしが何か言おうとしてたときに振り返ったから、ちょっと驚いた。
「……そういえばさ、一つ聞きたかったんだけど」
「?」
 疑問符を浮かべた顔で、あたしはフッキーを見る。少し、困ったような顔をしていた。
―フッキーはあたしと本音を混ぜた会話をするのは、これが最初で最後だと思っているんだ。
 なんとなく、あたしはそんなことを思った。

266:がんばれエリ
09/01/18 01:48:45 Cc9utfcL
「どうして、あたしなの?」
「……え?」
「あんたが頼ることのできる相手ならいくらでもいるじゃない。
そりゃあ、頼られたなら手は貸すけどさ。……あたしの必要はなかったんじゃない?」
「―」
 あたしは口を開いて何かを言おうとして―何も言えずに閉じた。
何を言えばいいのか、それを考えようとする。けれどすぐに、何も考える必要がないことに気づく。
 一度大きく深呼吸してから、あたしは再び口を開く。
 たぶん、フッキーがハタを立てられたあたしの言葉を知っていたからだけじゃあ、ない。
今フッキーに伝えたいのは……たぶん、あたしの素直な気持ちだ。
「仲良くしたかったから。かな」
 キョトンとした顔。
「フッキーと仲良くしたかったから。いつもかっこよくて、頭もよくて、
可愛くて、優しいフッキーと仲良くしたかったから……そんな理由じゃ、駄目?」
 恥ずかしい言葉を口に出して、あたしは気づいた。
 ―ああ、そうなんだ。ドレイにしたいとは思ったかもしれないけど、
みんなが好きなことには、変わりないんだ。
「……」
 たぶん、あたしが伝えたかったことは、ちゃんと伝わったんだと思う。
褒められて少し照れたのか、顔を赤くしてフッキーがあたしから眼を逸らす。
 そしてつぶやかれた言葉は、注意してないと聞こえないほど小さかった。
「駄目じゃないわよ。……そっか。そういうことね」
「?」
「誰でも勘違いすることがってあるってことか。あんたも、あたしも、誰もかもみんなが」
 遠い目であたしを見つめて、フッキーがつぶやく。
それはあたしに言いたかった言葉じゃなくて、自分のための言葉のようだった。
「ひゃ……」
 冷たい風が吹いて、あたしは目を閉じて身をちぢこまらせた。
風がないと気持ちいけど、風が吹くと秋の屋上は非常に寒い。
 足音が聞こえて、あたしはゆっくりと目を開いた。目の前に―
「ほら、もう後一分もないわよ」
 ―差し出される手のひら。それを掴んで、あたしは立ち上がった。

閑話その2。
「堤、ちょっといいかしら?」
「……なんでしょうか?」
「悪いけどさ、かくかくしかじかなわけで屋上のドア壊しちゃって。
あんたならばれないうちに直せないかしら? あんまり面倒事にしたくなくってさぁ」
「……どちらかというと、壊す方が得意なのですが。まあ、できないこともないですよ」
「あら、じゃあよろ」
「ただし。ただ、というわけにもいきませんが」
「…………こっそりガメといた壊れた機械」
「交渉成立、ですね」
(……あいつら、何話してるんだろ?)

267:がんばれエリ
09/01/18 01:49:38 Cc9utfcL
 五時間目の授業は数学だった。
この授業は真剣にやらないといけない―みんなもそう思っているのか、寝ている人も少ない。
少ない。そうは言っても、彼はやっぱり寝ていた。
昼休みの時間、グラウンドでサッカーをしていたらしいから、疲れが出たのだろう。
 黒板を一生懸命に書き写しながら、
あたしはこっそりと彼の寝顔を見る―ちょうど顔を横向きにして寝ていたため、
ここからは丸見えなのだ―やっぱり、かっこいいなぁ。
顔が熱くなって、心臓がどきどきしてきて、泣いちゃいそうなほどに心がぐるぐる揺れる。
「……ふぅ」
 熱を逃がすように息を吐いて、あたしは黒板に書かれていることを理解することに集中しようとした。
勉強を怠るわけにはいかない。……がんばらなきゃ。
 かりかりとシャーペンをノートに走らせる。
 映画館の代金が、最初の月は千八百円でした。
一ヶ月後に物価の上昇で値上がりして二千百円に。さらに……
(……映画、かぁ)
 ふと、一か月ぐらい前にお母さんから映画のチケットをもらったことを思い出す。
新聞の契約を更新するときに、もらったらしい。
『気になる人がいるなら、誘ってみたら?』
お母さんにそんなことを言われたけど、結局彼を誘うことはできなかった。
期限が切れたチケットは、なんとなく捨てられずに財布に残ったままだ。
ポケットに入っている財布を撫でながらあたしは考える。
 これを渡せていれば、何かが変わったのだろうか?
仲良くなれて、その先に進めたのだろうか?
 ―たぶん、駄目だったと思う。今のあたしじゃ、たぶん駄目だ。
 だから―
「……と、いうわけで。答えは十三パーセントになります。
この解き方はテストに出るから、みんなちゃんとメモしてね。……小波君!」
「……はっ! は、はい! 元気です!」
 みゆき先生が皆を見回して、小波君が寝ていたことに気づいたらしい。
叱咤の声―彼が跳ね起きる。寝ぼけているのか、変なことを言った。
 笑いの渦に包みこまれる教室。あたしも小さく笑った。先生も笑ってた。
 いつまでも続いてほしい、日常だった。

閑話その3。

「エリの様子がおかしいんです」
「……そ、そうだっけ?」
「はい。昨日は、その……あれが重いと言われたんですけど
よく考えてみれば一カ月の間中ずっと重いわけがありませんし」
(……るりかって、冷静だけど結構おっちょこちょいだよねぇ)

268:がんばれエリ
09/01/18 01:50:17 Cc9utfcL
 放課後。あたしと委員長はいつものように教室で残って勉強をしていた。
一時間ぐらいたったけど、まだ相談はしてない。
委員長は勉強中の無駄話が嫌いみたいなのだ。
 ―まあ、それは当たり前だと思う。勉強してるときは、静かな方がいいもんね。
 そんなわけであたしは、終わり際に相談するか、
いっそもう相談しなくてもいいかなぁ、って思ってた。
フッキーの言葉は少し突き放したものだった気がするけど、
何故か気分がものすごく楽になったのだ。
「エリ」
「ど、どうしたの?」
 突然委員長が話しかけてきたことに、あたしはとても驚いた。
もちろん、今まででも会話が全くなかったわけじゃない。
ただ今までの会話の全部が、委員長に勉強を教えてもらうに、あたしから話しかけたものだったからだ。
「どうしたって……あたしに相談があるって聞いたけど?」
「え?」
 困惑した様子であたしを見る委員長に、あたしも少し困ってしまう。
 聞いた。ってことは……ああ、そっか。
「ユイから?」
「ええ……でも、その様子だと悩みは解決したみたいね。……良かった」
 笑顔になる委員長。眼鏡をかけていたときは表情が隠れがちだったけど、
委員長はとても可愛い笑顔をするのだ―るりちゃんと同じく、あたしは嫉妬してしまう。
「あ、うん。……たぶん、だいたいは」
「それならいいんだけど……あ、そうだ。
あたしがエリに聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「う、うん」
 かりかりとシャーペンを動かしながら、委員長はあたしにそんなことを言った。
あたしはそんな器用なことはできないから、手を止めて頷いて、委員長の話を聞く姿勢を作る。
 彼女の話は難しいことが多い―集中して聞かないとわけがわからなくなってしまうのだ。
「どうしてみんなと違う高校に行こうと思ったの?」
「――え?」
 その質問は、できるだけあたしが考えないようにしようとしていたことだった。
「エリが受験する高校は、たしかにパライソタウンの高校より
少しだけレベルが高いけど……本当に少ししか変わらないわよね?」
「……うん」
 あたしの受ける高校は、少し遠くの女子校だ。
とはいえ、寮があるためパライソタウンから長い時間をかけて行く必要もない。
一度見学に行ったのだが、とても雰囲気の良い高校だった―少なくとも、不良はいないらしい。
それでいて、あまり校則は厳しくないとの話だ。
 何をしても自己責任。それがモットーなのに荒れていないってのは、すごいと思ったことを覚えている。
 そんなとても良さそうな高校だけど、あまりランクは高くない。
うちの学校からは、誰一人として受験しないことからしても明らかだろう。
 けれど―
「だったらみんなと―彼と一緒の高校に行った方が良かったんじゃない?」
 確かに、そうかもしれない。あたしもそうした方がいいと思っていた。
……みんなと離れ離れになることを考えたら、自然に涙が溢れだしてしまう。
 あたしはポケットからハンカチを取り出して、静かに涙を拭いた。
深呼吸して落ち着こうとする―委員長は、あたしをじっと見守っていた。
「すぅ……はぁ。えっと。……あれ? べ、別に小波君と一緒じゃなくても」
「彼、としか言ってないけど」
 どこか楽しげな笑みを浮かべて、委員長がつぶやく。
あたしの顔がどんどん熱くなる―委員長は、本当に勘が鋭い。
 慌てふためきながら、あたしは口を開いた。
「え?! だ、だけどパライソタウンの高校に行くのって、小波君ぐらいじゃないの?」
「……ほかにもたくさんいるわよ。エリには小波君しか目に入っていないのね」
「ご、ごめんね……」
 体を小さくして、あたしは謝った。
とはいっても、あたしが話をする男の子って小波君ぐらいしかいないんだけど。

269:がんばれエリ
09/01/18 01:50:50 Cc9utfcL
「あたしに謝る必要はないわ。……エリはまだ男の子が苦手なままみたいだし、仕方ないわよ」
 それに気づいてはいたのだろう、委員長にあたしを責める気はないようだった。
頬に手を当てて熱を冷まし、つぶやく。
「う、うん……委員長って、ひっかけが上手だよね」
「いえ、こんなのに引っかかるのはうちのクラスじゃエリだけだと思うわよ」
「うぅ……」
 確かにそうかもしれないなぁ。
そんなことを思ったけど、慌ててる時はみんな引っかかるんじゃないかなとも思う。
好きな人の話をされたら、冷静でいられなくなるのは当たり前だと思うし。
「……それで、質問の答えなんだけど」 
「ええ」
 その答えを言うことは、あたしにとって苦痛だった。
たぶん、ハタを立てられた時に思ったことを告白するぐらい、きついことだ。
 けれど誰かに言わなかったら、あたしは途中でくじけてしまうかもしれない。
そう思って口を開いた。からからの喉にツバを流し込んで、言葉を紡ぐ。
「もっと頑張らないと、って思ったの」
「?」
 あたしが言った言葉を、委員長は理解できなかったようだった。
あたり前だ。これだけで理解できたら、超能力者か何かだ。
「えっと……あたしは泣き虫だよね」
「そうね」
 冷たく返された返事に、あたしは少し傷つく。
自分から言って自分で傷つくのは、たぶんバカってことなのだろう。
 傷ついて、それが嫌でまた泣いて、また傷ついて。
悪循環を繰り返してきたけど、それをいつかは終わりにしないといけない。
視線を下に向けて、ノートの端を見つめながら、あたしは言葉をさらに紡ぐ。
「泣き虫なのは、ホントだから……それでみんなからバカにされても、仕方ないって思」
「エリ」
 あたしが途切れ途切れに紡いでいた言葉は、委員長の声で遮られた。
―すごく、怒っていそうな声だ。
「怒ってもいいかしら?」
「……え?」
 あたしはきょとんとして、委員長を見た。
 やっぱり怒ってる。……彼女の眼は、いつもの倍ぐらいに釣りあがっていた。
「馬鹿にする? 誰が? なぜ? ……くだらないわね」
「ひっ……い、委員長、怖いよぉ……ふぇ、ふぇぇぇぇぇ……」
 冷たく吐き捨てられた言葉に、あたしは耐え切れずに泣きだした。
いつか銃を向けられたときよりも、何倍も怖く感じた。
 ―あたしのために怒っていることはわかってたんだけど。それでも怖いものは怖いのだ。
「ごめんなさい。話をすべて聞く前に口をはさんだのは間違いだったわ。
……まだ、言いたいことがあるんでしょう?」
 泣きだしたあたしに困惑したのか、怒りをひっこめて―それでも
瞳は怒ったまま―委員長が優しく語りかけてくる。
あたしもあんまり泣きすぎたくないから、急いで涙を拭いて喋りはじめた。
「……えっとね、ば、バカにされてるってのはあたしが思い込んでるってのも、
もちろんあると思うんだけど……今のあたしは、そう思われても仕方ないなって」
「…………」
 どうやらあたしが思っていることを察してくれたらしい。
委員長の瞳から、怒りの色が消える―あたしが口足らずだったことも、
悪かったとは思うけど、委員長は時々せっかちだ。
「『泣けばすむと思ってる』とか、『女って楽だな』って思われるのも……
そういう部分も確かにあるから、仕方ないなって思うの」
 それに気づいたのは、いつの日だっただろうか。ハタを立てられたのも無関係じゃないだろう、
あの経験は、とてもとても嫌なものだったけど―大事なことを、教えてくれた気がする。

270:がんばれエリ
09/01/18 01:51:47 Cc9utfcL
「……そう、ね」
 委員長が同意したことに、あたしは少し驚いた。
けれどそれはきっと、あたしが望んでいたこともである。
だれかがあたしの駄目な所を認めてくれないと、たぶん本当に駄目になっちゃうから。
「それにね…………だ、だれよりもあたし自身が、
あ、あたしのことを馬鹿にしてるって、気付いた……から」
 自分が興奮しているのを自覚しながら、あたしは大きく眼を開いた。
涙でぼやけた視界の中、委員長の眼の光に向かって、声を荒げて叫ぶ。
「だから、あたしは―」
 ―泣きながら、
「頑張ろうって、思ったの。みんなと離れるのはとっても怖いけど。
だからこそみんなから離れて、頑張らなきゃって、そう思ったの。
怖いけど、頑張って。それで、それでね。
そうしたらきっと……きっと……ふぇ、ふぇぇぇぇぇぇ……」
 そうしたらきっと。その先の言葉を言うことは、あたしにはできなかった。
嗚咽が胸を破って、再び口から飛び出し始める。
―後になって思えば、言えなくて良かったと思うんだけど、
その時のあたしは、言えなかったことも悲しかった。
「……そうなんだ。……ごめんね、エリ。さっきは言いすぎたわ」
「ふぇぇぇぇぇ……」
 委員長は、やっぱり優しくて、真面目だ。
泣きながらあたしはそんなことを思っていた。謝る必要なんて、ないのに。
涙で視界がぼやけていたけれど、委員長があたしの頭を撫でてくれているのはわかった。
 ―優しい手だ。たぶん、るりちゃんに負けず劣らず優しい手。
「……そういった人は結構いるわね。『頑張ろう』って思って、自らを追い込む人は」
 子守唄を歌うように、優しく紡がれる委員長の言葉。
「それでもし、本当に頑張れるのなら、エリはきっととても魅力的な人になれるわ」
 それは後に、あたしにとってとても大切な言葉になった。
「ぐすっ…………ありがとう」
 あたしの感謝の言葉に、委員長が微笑みを浮かべたような気がした。
涙でよく見えないけど―たぶん少しだけ怖い微笑みを。
「そうやって努力する人間は報われるべき……よね?」
 あたしはまっすぐと、委員長を見た。
涙でぼやけてよく見えないけど、じっくりと委員長を見た。
 何か嫌な予感がしたのだ。何かを言わなきゃいけない気がしたのだ。
あたしじゃ駄目かもしれないけど、それでも何かを伝えないといけない。そう思ったのだ。
「…………あ、あのね? 委員長」
「?」
「真面目な委員長もあたしは大好きなんだけど……
た、たまには真面目じゃない委員長も……みたい、な」
 たぶん、あたしの言葉はあんまり意味がなかったんだと思う。
委員長はすごく頭が良い―勉学的な意味ではそうでもないかもしれないけど、
いろんなことをよくわかっているんだと思う。
 ……たぶん、わかり過ぎているぐらいに。
 だからあたしの言葉なんてのは、委員長には言わなくてもわかってるはずなのだ。
「……考えとく、わね」
 それでも眼を逸らす彼女の横顔に、
少しだけ赤みがさしていたのは―眼の錯覚じゃないと思う。
「うん……えへへ」
 あたしは笑いながら、ポケットにハンカチをしまう。
フッキーに返し忘れたそれは、たぶん返そうとしても突き返されるだろう。
 けれど、いつかこのハンカチが必要がなくなったらフッキーに返したいと思う。
 秋の夕暮れ。夕日の刺す教室は、物音一つしなくなる。
確かな幸せを感じながら、その日の勉強会は終わった。

271:閑話その4。
09/01/18 01:52:31 Cc9utfcL
閑話4
「そう言えばこんな噂を聞いたわ」
「……?」
「あくまで噂なんだけど……あの宇宙人は人間の悪の心を食べて生きているんだって」
「……なんだか、漫画みたいだね」
「そうね。けど、エリが頑張ろうって思えたのは、もしかしたらそれも関係してるのかもよ?」
「そうなのかなぁ?」
「もちろん、本当のところはわからないわよ。……あくまで噂だから」
「……委員長は、誰から聞いたの?」
「さあ……良い宇宙人の関係者から、かしら?」
「???」

272:がんばれエリ
09/01/18 01:53:18 Cc9utfcL
 時は流れて。
 卒業式は大きなハプニングもなく終わった。
泣いている人はそう多くなかったけど、あたしが泣いても、あんまり恥ずかしくはなかった。
 みんなに見せる涙は、もしかしたらこれが最後なのかもしれなかったから。
 校門の少し前で立ち止まる。
 卒業式の前日に、みんなでお別れ会をしたため、今日はこの後特に予定がない。
本当ならユイ達と遊びに行くつもりだったけど、それはやめにした。
 ―これ以上は、辛くなるだけだから。
「―――」
 今ここであたしが立ち尽くしているのは、なんとなくではない。
先ほどまでフッキーがここにいたのだ。
 誰にもさよならを言わずに消えようとしていたフッキー。
彼女を見つけることができたのは、偶然ではないと思う。
 あたしもそうだからだ。昨日、みんなとお別れはすませたから。
 これ以上さよならを言いたくは、なかったから。
「おーい!」
 それでも神様と言うのはずいぶんと意地悪らしい、
あたしが校門を出るための勇気を振りしぼろうしたころで、彼の声が聞こえた。
 ―駄目だ。彼の声を聞くだけで、涙が出そうになる。
「エリ。白瀬を見なかったか? あいつ、いつの間にかいなくなってて」
 彼の口からほかの女の子の名前が出たことに、少しだけ嫉妬する。
けれどそれはあまりにも醜すぎる感情だ―あたしは素直に、
彼女がついさっき校門から出ていったことを言った。
 まだ追いつけるかも。
そう言って彼はあたしにありがとうを言って、制服をひらめかせながら外に飛び出して行った。
 ―それから数分後。
 校門を出るための勇気がたまってきたところで、再び声。
「エリ! 小波見なかった? え? フッキー追いかけて出てった? ……逃がさない!」
 リコだ。彼女はものすごく慌ててるようで、あたしとロクに会話せずに校門を飛び出して行った。
彼女とも、昨日のうちにお別れは済ませている。
あたしが泣いているときに、リコはあたしを泣かせた人をいつも倒してくれた。
それは少しだけ乱暴な解決方法だったけど、あたしを何度も助けてくれたのは事実だ。
 そんなリコは本当に―小波君のことが好きなんだなぁ。
 そんなことを思うあたしのすぐそばを、ぴこぴこと揺れる何かが駆け抜けていった。
『お兄ちゃんの第二ボタンはアカネのものです!』
 そんな声が聞こえた気がして、あたしははっとする。もし、彼から第二ボタンをもらえたら。そしたら―
「……そんなわけ、ないよね」
 呟いて、あたしは校門に向かって歩き始めた。
明日、あたしは高校の寮に向かう。早めに入寮することが可能だと聞いたからだ。
 少し急ぎ過ぎたのかもしれないけれど、たぶんその方がいいんだと思う。
「あ……」
 校門を出る直前。彼の姿が目に見えて、あたしは驚きの声をあげた。
思わず立ち止まる―彼が近づいてくる。あたしを見て笑顔になったのは、とても嬉しい。
「あ、エリ。さっきはありがとう。なんとか白瀬に追いつけたよ。……あいつも、バカだよな」
 そんなことを言う彼に、リコを見なかったか聞いてみる。
「いや、合わなかったな。……まあ、高校で会えるから別にいいだろ」
 どうやらすれ違ったらしい―少々リコが可哀そうになることを言った。
 どくん。心臓が大きくなる。これはチャンスだ。きっと、とても大事なチャンス。
ゆっくりと、慌てないようにあたしは口を開く。まず、聞きたいことは……
「えっと、そのボタン……どうしたの?」
 彼の制服のボタンが、全部外されていることだった。ちょっとワイルドな感じ。
第二ボタンだけではなく、全てのボタンがちぎられている。
彼は人気者だからあんまり不思議でもないけれど、
なんとなく、まだ誰にもボタンを上げていないような気がした。

273:がんばれエリ
09/01/18 01:54:13 Cc9utfcL
「ああ、これか。メガネと平山に全部とられた。『そんな青春許さないでやんす!』だってさ」
「あははは…………でも、カッターシャツのボタンは残ってるんだね」
 笑い話に顔をほころばせたあたしは、それでも目ざとく残っているボタンを見つけた。
それをもらうという話は、あんまり聞かないけど―それでも、欲しいなと思った。
「え? ……ああ。そうだけど?」
「じ、じゃあ……あ、あたしに……くれない?
そ、その、変な意味じゃなくて……記念に、ね?」
 彼は少し、驚いたようだった。あたしがボタンを欲しいと言ったことに驚いたのか。
それとも恥ずかしさであたしが泣かなかったことに驚いたのか。
区別はつかなかったけど、どっちでもいいとは思う。
 彼は、嫌な顔をしなかったから。
「まあ、俺のボタンでいいなら喜んで。
……でも、カッターシャツのボタンなんてすぐなくしちゃいそうだな」
 彼は苦笑しながら、本当にいいのか? と、あたしを見つめる。
 口を開く。もう少し、もう少しだけ。
 がんばれエリ。
「な、なくさないから……大切にするから」
「…………ほら」
「あ―」
 勇気を振り絞った言葉に、差し出される手のひら。
小さな白いボタン―カッターシャツの第二ボタンがのっている、彼の手。
 それを掴めばきっと、さようならを言い合うことになるのだろう。
 怖い、怖い、怖くて……泣きそうだ。
「―ありが、とう」
 けれどあたしは手を伸ばし、ボタンを掌に握りしめた。
不必要に強く、手が痛くなるまでぎゅっと握り締める。
やっぱり耐え切れず、はらはらとこぼれ落ち始める涙。嗚咽はこぼれなかった、どこか清々しい涙だ。
「最後まで、エリは泣き虫だな」
「うん……えへへ」
 笑顔をつくってあたしは彼を見つめる。お別れのときぐらい、彼に良い印象を持ってもらいたかった。
 少し驚いた表情を浮かべる彼に向けて、口を開く。
「いろいろ、ありがとう。小波君。……それじゃあ、あたし、行くから」
「……そうか、そうだよな。エリもいなくなるんだ……寂しくなるな」
「…………」
 あたしは何も言えなかった。胸が詰まって、苦しくて、何も口から言葉が出なかった。
 けれど―
「いつかまた、会おう」
 彼の口から再開を約束する言葉が出て、あたしは眼を見開いた。
―そうだ。お別れじゃなくて、再開の約束をするのだ。
それはきっと、確実なものじゃないけれど、あたしの暗い気持ちを吹き飛ばしてくれるには十分だった。
「うん……また、ね」
 たぶん、その時のあたしは、そう悪い顔をしていなかったと思う。
顔を赤くする彼は、少しだけ照れていたみたいだったから。
笑顔を交わしたあたしたちは、ゆっくりと互いに背を向けた。
歩いて、校門から出る―ここから先は、あたし一人で進まなきゃいけないかもしれない。
 泣きながら、がんばろう。
 泣いて、がんばって、泣いて、がんばって、そしていつの日か―
「――また、ね」
 彼に聞こえないことを知りながら、あたしはもう一度小さくつぶやいた。
まだ少し肌寒い季節、風も刺すようにあたしを包んでいるけれど。
 春が、訪れようとしていた。

274:がんばれエリ
09/01/18 01:55:44 Cc9utfcL
 そしてさらに月日は流れて。
だんだんと中学生活の記憶は思い出に変わっていき、少しずつ薄れていった。
けれど彼の笑顔だけは、忘れることのないよう、大事に胸にしまっておいて。
 そんなある日のこと。
「オーディション?」
「うん。モデルのオーディションを受けてみようかなって」
 お昼休みに友達と一緒にご飯を食べていたら、あたしの隣に座っている友達がそんなことを言ってきた。
笑顔が愛らしい彼女は、控え目に言っても小学校高学年にしか見えないぐらいちっちゃな子だ。
「モデルになれば、あたしの女の魅力をみんなに知らしめることができるから、
小学生と間違われることもなくなりますよね!」
 高校生になって何かが変わったかと聞かれたら、あたしは何も変わってないと答えるだろう。
新しい友達ができたとか、少しだけ背が伸びたとか、……胸が少しだけ大きくなったとか。
そういった変化はあったけど、まだあたしは変わっていなかった。
「そ、そうだね……」
 あたしは苦笑いをしながら彼女の言葉を肯定した、んだけど。
「……それはない」
 あたしの真ん前に座っている友達―猫みたいな大きな瞳が印象的な小さな子―が、
それをとても小さな、それでいてはっきり聞こえる声で否定した。
「……有名になっても……その背の低さは変わらない」
 たんたんと、紡がれる言葉。
無表情のようにも見えるけど、彼女は本当はものすごく感情表現が豊かな子だ。
とはいえ隣の子の方も、喜怒哀楽がすごくわかりやすい子なんだけど。
 そんな二人のことを『妹ができたみたいで、うれしいなぁ』
なんて思っているのは、たぶんあたしがお墓にまで持っていく秘密だ。
「むっ。……さては、あたしに嫉妬してます?」
「してない。……する必要がないから」
「……」
「…………」
「ケ、ケンカはやめようよ……」
 一触即発の空気になって、あたしは涙目になりながら二人の間に手を入れる。
二人とも、仲良しなんだけど、妙なことですぐ張り合っちゃうのが困りものだ。
「エリに感謝することですね」
「……それはこっちのセリフ」
「あはは……それで、そのオーディションはいつあるの?」
 適当に笑ってその場を収めて、あたしは隣に聞いてみた。にやりと笑う彼女―なんだか、嫌な予感がする。
「ええっと、来月の十三日の土曜日。エリ、予定開いてますよね?」
「え? うん。……空いてるけど、あたしもいくの?」
「うん。だってもう、エリの分も応募の書類出しといたから」
 時が止まった。
「…………え?」
「……わたしは?」
 聞き返すあたしに割り込むように、真ん前の子が隣の子に問う。
「出してませんけど? ちんちくりんじゃ無理ですし」
 さらりと返された言葉に、再び一触即発の空気。
「……」
「…………」
「な、仲良くしようよぉ~……」
「……エリに感謝」
「そうですね」
 泣きだしそうなあたしを見て、二人はなんとか喧嘩をやめてくれたみたいだった。
ポケットから愛用のハンカチを取り出してちょっとだけ溢れた涙をふく―よし、大丈夫。
 その白いハンカチの端っこには、あの時のボタンが縫い付けてある。
……フッキーに返す時は、このボタンをはずさなきゃいけないなぁ。
「……それで、どうしてあたしも?」
「一人じゃ心細いですし、こっちのちんちくりんじゃ絶対無理ですし」
「ドングリの背比べ……」
「……それって、自分も悲しくないですか?」
「……少し」

275:がんばれエリ
09/01/18 01:56:44 Cc9utfcL
 やはりちょっかいを入れてきた真ん前の子は、
自分の言った言葉でダメージを受けたようだった。痛み分けっていうのかな。
 遠い目でどこか遠くを見守る二人に、慌ててあたしはフォローする。
「だ、大丈夫だよ。あたしもその、小学生の時は二人ぐらいの大きさだったから」
「それってフォローになってないじゃないですか! えい!」
「……えい」
「ふぃ、いふぁふぃよ、ふぃふぉふぁ、ふぁふぉ~」
 ほっぺたをつままれて、あたしは泣きながらじたばたする。
名前を呼んでも、二人は容赦してくれなかった―のだけど、
急に真ん前の子が、あたしのほっぺたから手を外す。
「……それで、行くの?」
「ふぇ?」
「無理に出る必要はない、行かなくても失格になるだけ。
……エリがモデルに向いているとは思えない」
「……そういえば、そうかもしれません」
 隣の友達は、そのことを思いつかなかったらしい。
―あたしが男の子が苦手だということは、二人とも知っていた。
今のあたしは、たまに街に出かけても、
男の子に声をかけられそうになるとすぐに逃げてしまうぐらいなのだ。
 ―でも。
「……ううん、大丈夫」
 少し申し訳なさそうにあたしを見る彼女に、あたしは笑いかけた。
「あたしも、オーディション受けてみよう、かな」
 驚いた顔になる二人に、さらに言葉を紡ぐ。
「モデルになれば、キレイになれる……よね?」
「……そ、それはそうですよ。高級なお化粧を使って、高級な服を着て、
高級なエステに連れてってもらって、高級なお菓子を食べられて!」
「……最後のは関係ない」
「あはは……だ、だったら。受けてみたい……な」
 漫才のような会話をする彼女たちに向かって、決意表明をする。
怖いし、恥ずかしいけど、ここが頑張るところだと思った。
「でも……水着審査とかあるみたいですけど」
「う……そ、それでも頑張る、から」
 あたしの言葉に、二人は笑顔をくれた。
「一緒に頑張りましょう!」
「…………エリがそう決めたなら、私はあなたを応援するから」
「私は?」
「応援しない」
「……」
「…………」
「け、けけけケンカはだめだよぉ! ひゃあ!!」
 ケンカを始めた二人を止めようと、あたしは頑張り始めた。

 この時に。あたしは変わり始めたんだと思う
 彼と話したあのときから、ゆっくり変わってたのかもしれないけど、大きく変わったのはこの時だ。

 ちなみに、やっぱりと言うべきか彼女はオーディションに落ちた。
いや、落ちたというのも正しくないかもしれない―子役としてスカウトされかかったからだ。
当然のごとく断った彼女だったが、そのあとしばらく落ち込んだままで大変だった。
 それで、あたしはと言うと―

276:がんばれエリ
09/01/18 01:57:25 Cc9utfcL
 高校に入って、彼と私の関係はあまり変わっていなかった。
野球部の一部員と、そのマネージャー。
来年はおそらく、キャプテンとマネージャーになるのだろう
 できればもう少し進展したいけど……あれだけ頑張ってるリコが
全く報われていないところを見ると、それも難しいみたい。
「そういえばユイ。聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
「これさ、本当にエリなのか?」
 ボールを磨く私を手伝ってくれていた彼が、隣に置いてあったかばんから雑誌を取り出した。
その表紙に載っているのは勿論――私の自慢の親友だ。
「うん。もちろんエリだよ。……可愛く、なったよね」
「嘘だろ!? あのエリが? いつも泣いていたあのエリが?」
「うん」
「あのエリが? 結局夏の水着もものすごく地味なのを選んでいたあのエリが?」
「うん ……あれ? 何で知ってるの?」
 慌てふためく彼に聞いてみたが、言葉は届かなかったらしい。さらに聞かれる。
「あのエリが? 気づくとこっちを見てて、眼が合うと顔を赤くしながら逸らしていたあのエリが?」
「……あ、うん。もちろんそのエリだって」
「信じられない……」
 がくりと肩を落とす彼。喜んでいるのか、悲しんでいるのか。
どっちかはわからなかったけど―顔をあげたときには少し喜んでいるように見えた。
「女の子って、変わるもんなんだなぁ」
「…………そうかな?」
 含み笑いを浮かべて、私は彼を見る。思い出し笑いが溢れそうになるのを堪えながら口を開いた。
「この前久しぶりに電話したんだけど、やっぱりエリはエリのままだったよ」
「……どうしてそう思うんだ?」
 不思議そうに聞いてくる彼。駄目だ。笑いが堪え切れない―
「そ、それが……今でも、お、思い出すだけで笑えるんだけど―」

『はいもしもし。どうしたのエリ? こんな朝早くに』
『ふぇぇぇ……ユイ……どうしよぉ……』
『ど、どうしたのエリ?』
『足りないよぉ……』
『何が?』
『ガラクタがね、何回数えても足りないの』
『…………え?』
『昨日はたくさんあったのに、今日はね、ちょっとしかないの……』
『…………』
『どうしよぉ……ふぇ、ふぇぇぇ……』

「……だ、駄目だ……くっ……お腹痛い……」
「だよね! あはははは……」
 二人して大爆笑。秋の夜の冷えた部室でさえ、温かくなるような幸せな笑い声。
―数分後、お腹が痛くなるまで笑った後、私たちは会話を再開した。
「はぁ、はぁ……確かに変わってないみたいだな。……それでも変わったみたいだけど」
「……そうだね」
 エリが変わったけど変わっていないことを、一番喜んでいるのは私だと思う。
この調子でどんどん可愛くなっていくと―それはちょっと困るかもしれない。
あの時彼女が言った言葉は、間違いなく宣戦布告なのだから。
「しかし……すごいなぁ、この水着……」
 にやけている彼に一応釘を刺しておこうと、私は口を開いた。
「ところで小波君。エリのグラビア……もう使った?」
 ―少しばかり下品なことを言ってしまったのを、その夜私は少しだけ後悔することになる。
「いや、今夜ゆっくり……え?」
「……」
「……」
「…………」
 がすっ!
 逃げだそうとした彼に、綺麗にハイキックが決まった。

277:閑話その6
09/01/18 01:58:17 Cc9utfcL
「あははは、寝ぼけてたみたいだね」
「ご、ごめんね……朝から変なこと言っちゃって」
「いいって、話のネタになるし」
「だ、誰にも言わないよね?」
「どうだろ? みんな喜びそうなネタだからなぁ」
「うぅ、ひどいよぉ……こ、こうなったら……ねえ、ユイ」
「ん?」
「アイドルとプロ野球選手って、お似合いだと思わない?」
「…………え?」
「あ、そろそろ行かなくちゃ……また今度、電話するね」
「ちょ、ちょっとエリ? 一体……」
「またね♪」
「ちょっと………………ええ!?」

278:がんばれエリ
09/01/18 01:58:58 Cc9utfcL
 あたしは駆けだしアイドルだ。
「おはようございます!」
 誰も彼もがあたしを知っているわけではないけれど、応援の声は少しずつ増えている。
「ああ、おはよう……今日の日程は把握してるな?」
 恥ずかしいけどカメラを見つめ、あたしは笑顔を作る。
「は、はい。えっと、グラビア撮影と、雑誌のインタビューと、CM撮影ですよね?」
 この微笑みをみんなに―できれば彼に見てほしい。
それがあたしの願いで、今のところの人生の目標だ。
「それと雑誌の懸賞用にサインを百枚だ。まあ、これは今日中と言ったわけではないが」
 もちろんあたしはあたし自身を馬鹿になんてしない。思い通りにいかなくても、毎日を頑張る。
「ひえぇぇ……い、いえ。頑張って今日中にやって見せます!」
 だってあたしは―
「……まあ、無理はしない程度にな」
「はい!」
 みんなの、アイドルなんだから!

279:名無しさん@ピンキー
09/01/18 02:00:17 M98TulDP
す、すごい…。
大作、乙であります。

280:名無しさん@ピンキー
09/01/18 02:00:27 Cc9utfcL
このままでも終わった感じはしますが続きます。たぶん明後日投下。
「仕方ないわね」がタイプミスで「仕方ないワン」
ってなったのは犬フッキーを書けという天のお告げでしょうか。

281:名無しさん@ピンキー
09/01/18 02:00:56 8vLsMSdX
>>249-

GJです

変なの様子みずに書いて流れたちきってすみませんでした。

282:名無しさん@ピンキー
09/01/18 02:02:54 wq+T5SpR
>249
GJ!

283:名無しさん@ピンキー
09/01/18 02:05:25 ZJM0l8iB
うわあ……これは超大作ですね、 間違いない。なんだこれは…… たまげたなあ
この時間にこの分量をいっぺんに読もうとすると頭がパーン☆┗(^o^)┛てなりそうなので
後日ゆっくり読まさせていただきます
GJ!

284:名無しさん@ピンキー
09/01/18 02:19:06 Cc9utfcL
>>281
問題ありません。連投制限とか怖かったですからありがたいです。
でも続きを書いてくれたらもっとありがたいです。泣いて喜びます。

285:名無しさん@ピンキー
09/01/18 04:06:12 pTZijqUw
GJ
そして、超大作乙。


犬芙喜子......いいじゃないか!

286:名無しさん@ピンキー
09/01/18 08:01:35 xSk5j75h
>>249-279 超GJ
これだけでも十分に話作り込めてるし終わり方もきれいだけど、この後に後編がまだあるのか・・・
後編は高校での描写か、すでにプロに行った小波との話かな。大作GJ

287:名無しさん@ピンキー
09/01/18 14:17:41 CiquRjEp
>>249-278

大作乙&GJ
パライソタウン行きてえええええええ

288:名無しさん@ピンキー
09/01/18 17:43:39 1XmblcZe
GJ、と言いたい所だがエロなしか…。後半に期待して全裸待機

289:名無しさん@ピンキー
09/01/18 20:58:05 sAQ1630W
>>249-278
ものすごくGJ!
続き楽しみにしてます。

290:名無しさん@ピンキー
09/01/18 22:04:15 Xp08T4R5
神だ…神が後輪なさった…

291:名無しさん@ピンキー
09/01/18 22:31:57 nizAH+as
>>249-278
大作GJ!後編も期待。

292:175
09/01/18 23:27:19 tss6Fr/2
この作品にはIF要素が含まれています
嫌いな人はスルーをお願いします

ある年のクリスマス
駅前に一人の男が立っている
男は辺りを見渡している
どうやら人を探しているようだ
だが見渡しても目的の人はいない
男は時計を見る
「うーん…まだかな?」
吐く息は白くなって辺りに霧散した
男が再び辺りを見渡そうとすると一人の女性が男に近付いてきた
男は女性を見ると声をかけた
「紫杏!」
「すまない、会議が少し長引いてしまってな」
彼女は威厳に満ちた声で話す
「ん?何でそんな口調なんだ?」
「…私の後ろを見ろ」
男は彼女の後ろを見る
彼女の後ろにはもう一人女性が立っていた
「うちの秘書だ」
「上守と申します」
秘書はお辞儀をする
「……なるほど」
男はは苦虫を潰したような顔をした
そして男は彼女、紫杏の耳元で囁いた
「何で秘書が一緒にいるんだよ!?」
「しょうがないじゃない!どこへ行くにも私はご一緒です!なんていってお風呂からトイレまで付いてくるのよ!」
二人はヒソヒソ声でけんかをしていると上守が声を発した
「社長、どこかへ出かけるのではないのですか?」
「そ、そうだったな…」
紫杏は気を取り直した
「では行くぞ、小波」
3人は目的の場所へ向かった


293:175
09/01/18 23:27:57 tss6Fr/2
「ここだ…」
紫杏と小波が来た場所、それは公園だった
「へぇ、こんな場所があったんだ」
小波は公園を見渡す
「ここは昔空き地だったんだ…」
紫杏は木々の見つめながら物思いに耽る
「でも良いのか。勝手に入って?」
小波は紫杏に聞く
「なぁに、構わんさ。なぜならここの所有者は私だからな」
紫杏はベンチに座る、冷たさが心地よく感じた
「で、何で俺をここに連れてきたんだ?」
小波は疑問に思っていた事を紫杏に言った
「好きな人をお気に入りの場所へ連れて来てはいけないのか?」
紫杏はまっすぐ小波を見る
「なっ!?」
それを聞いて思わず顔を赤くする小波
そしてその様子を見て思わず苦笑する紫杏
「あはは、変わらないな。あの頃と」
「……」
小波をからかいつつ紫杏が辺りを見渡すと立ち上がり一本の樹の元へ行った
「あっ、これだ…」
「これ?この樹がどうかしたのか?」
小波が紫杏に再び聞く
「この樹には精霊が宿っていると言われていてな、その精霊に会いたくて一日中ずっと待っていたんだ」
紫杏は樹を擦りながら昔を思い出していた
「で、結果は?」
紫杏は首を横に振る
「残念だが会えずじまいだったよ」
「そうか…」
小波も樹に触れる
「俺も会ってみたかったな…」
「お前がか?止めておけ、どうせ精霊に嫌われるのがオチだ」
「ひっどいの」
「あはははは!」
「ははははは!」
二人は笑いあった
そして一陣の風が吹いた
「クッシュン」
紫杏はくしゃみをしてしまった
「ああ、もう…しょうがないなぁ」
「!?」
男、小波は紫杏の肩を掴みぐっと自分の近くに引き寄せた
「ほら、こうすれば暖かいだろ?」
「…うん」
3人は夜の街へと歩き出した

294:175
09/01/18 23:28:47 tss6Fr/2
レストランで軽く食事をした後、秘書は帰って行った
そして二人はラブホテルに入った
「良いのか、こんな所で…」
小波はバスローブ姿で紫杏に聞いた
「うん…」
紫杏は頷いた
石鹸の香りが鼻孔をくすぐる
「そうか・・・」
「小波…あたしを、滅茶苦茶にして」
そういって二人はキスをした
「んちゅ、んん…」

お互いを貪るかのようにキスをした
小波の手が紫杏の胸にいく
そしてそれを丁寧に優しくこね始めた
紫杏も彼のペニスに手をやり優しく擦り始めた
「ん、んむ…むちゅ、んもぅ…」
時折声が息が漏れあたりに響く
バスローブを少しずつずらしそして二人は裸になった
小波のペニスがやや硬くなると二人は唇を離した
唾液の糸が二人の口から引く
二人のひとみがお互いを映す
小波は紫杏の乳首に舌を這わせた
「ひゃ!」
思わず声をあげる紫杏
そしてそのまま口に含み吸った
片方の乳首は指先でコリコリと弄っている
そして軽くつねった
「あひゃぁ!」
紫杏は快感に身をよじる
そして小波は紫杏の膣口に舌を当てた
「きゃ!」
股からの快楽に思わず声をあげる紫杏
その声を聞いて小波は思わずニヤけてしまった
「こら、そんな顔しないでよ」
紫杏が怒った顔をすると小波は再び紫杏の膣口を舐め始めた
「ひぃっ!」
小波はまたニヤけた顔を浮かべた
「こら、いいかげんにぃ!」
小波は紫杏が言い終わらないうちにまた紫杏の膣口を舐めた
今度は小波は紫杏の意思を無視して舐め続けた
「きゃふ!ひぃう!ああ!やらぁ!」
膣口を這う舌、それが動くたびに紫杏は喘ぎ声を上げる
そのうち紫杏の膣口から唾液とは違った液が出始めていた
「紫杏、そろそろ…」
小波のペニスは完全に硬くなっていた
「いいよ、入れて…」
小波は自分のペニスを紫杏の膣口にくっ付けた

295:175
09/01/18 23:29:31 tss6Fr/2
行くぞ、紫杏」
「うん、お願い」
小波のペニスが紫杏の中に入った
「あああああぁぁぁぁ!」
「うぐ!」
紫杏の中は熱くとろけそうだった
小波のペニスを優しくそして思いっきり締め付ける
小波は入れた後しばらく動かなかった
それは経験の少ない紫杏を思っての事だった
「大丈夫か?」
「大丈夫」
そう答えた紫杏だが顔は完全に火照っていた
「じゃあ、ゆっくり奥へ行くからな」
小波がそういうとゆっくりと奥へ入って行った
「はひぃぃぃぃ!」
少し進むたびに紫杏は喘ぎ声を出す
そしてついに小波のペニスが子宮の入り口にたどり着いた
「大丈夫か?苦しくないか?」
「だ、大丈夫だから…」
だが小波のペニスを入り口よりもきつく締め上げている
小波は紫杏の子宮の入り口を塞ぐようにグリッとペニスを押し付けた
「んやぁぁぁぁ!」
紫杏は思いっきり声をあげる
「い、痛かったのか?」
「ち、違うの?な、なんか変な感じで…」
痛みが混ざった快感を受け紫杏は完全に混乱していた
「じゃあ今度は動くぞ、いいな?」
「う、うん…」
紫杏は小波を思いっきり抱きしめた
小波はゆっくりと腰を動かし始めた
「ひっ!やっ!あっ!うっ!あああ!」
紫杏は子宮を突かれる度に獣のような叫びを上げた
そして紫杏の股から大量の愛液が噴出し小波の下腹部を汚す
小波が少し速めにしようとさらに力を入れようとすると
「こ、小波!ごめん!あ、たしもう…」
「へ?あの紫杏?」
小波がとぼけた声を出すと紫杏は足を痙攣させ
「イクゥゥゥゥ!!」
絶頂に達した

296:175
09/01/18 23:30:19 tss6Fr/2
「おい、紫杏」
小波がふてくされた顔で紫杏に声をかける
「な、何よ…」
紫杏は顔を赤くして答えた
「先にイクなんてどういうつもりだ?」
「しょ、しょうがないじゃない!我慢できなかったんだから!」
紫杏はさらに顔を赤くして弁解をした
「もう一回するか?」
「……うん…」
そういって二人はキスをした

1年前
紫杏と小波は結ばれた
そして3学期が始まる頃に紫杏はジャジメントが出資する海外の学校へ行った
2月、紫杏は父親を失った
父親を失った彼女を支えたのは他ならぬ小波だ
「俺がお前を支える」と言って彼女を抱きしめた
彼女は小波の胸で泣いた、たった一言なのに紫杏にはとても嬉しかった
4月、ジャジメント日本支社の社長に就任した
何故二人が離れなければならなかったのか?
それはプロ野球選手とオーナーが一緒にいると何かしら噂が立つうえに
彼女には父の後を継ぎ政治家になるという目標があるからだ
そして二人は約束をした「クリスマスにまた会おう」と

「……寝たのか?紫杏」
小波は紫杏の顔を見る
紫杏はすっかり寝入っていた
(可愛い寝顔だな…)
「…小波」
寝言で自分の名前を呟く
小波はニヤけがとまらなかった
「…お休み、紫杏」
そういって小波も瞼を閉じた

続く

297:名無しさん@ピンキー
09/01/18 23:32:27 tss6Fr/2
続くと書いてあるけどいつ書くか決まってません
一ヶ月以内の投下を目指しています

298:名無しさん@ピンキー
09/01/18 23:51:41 wq+T5SpR
GJ!
亀でも待ってるぜ!

さて、ハタリコ×主のエロでも考えてみるか…

299:名無しさん@ピンキー
09/01/19 02:00:33 +7ZiPJ8w
>>280
GJ
思わず目から汗を出すところだったぜ
>>297
GJ
楽しみに待ってるぜ!

300:名無しさん@ピンキー
09/01/19 02:45:47 q2/dUyNf
ハタ人間編はエロい妄想がやりたい放題ですばらしいですね。

301:名無しさん@ピンキー
09/01/19 03:12:37 W9fA/ta9
>>297
乙です~

302:名無しさん@ピンキー
09/01/19 19:40:37 3PWqpla/
ダンジョンでハタリコに倒されて、色々ヤられる主人公ってどう?

全裸にさせられて、爆発システムを停止させられて…

303:名無しさん@ピンキー
09/01/19 21:08:00 yoN7vt1R
ハタを立てたようこ先生に折檻されたり
同じくハタを立てた智美にアナルをほじられたい
まあ、出てないんだけどさ

304:名無しさん@ピンキー
09/01/19 22:00:31 AjsdQ33f
中学生の智美だって…?

305:名無しさん@ピンキー
09/01/19 22:33:50 yoN7vt1R
そうだ…
そして維織さんはお隣のお姉さん(大学生)だ!

306:名無しさん@ピンキー
09/01/19 23:05:55 +TmQS2vA
>>305
それだっ!

307:名無しさん@ピンキー
09/01/19 23:20:40 AhNA2Zkk
>>305
正解すぎて全米が泣いた

308:名無しさん@ピンキー
09/01/19 23:36:55 bqGbXvs6
>>305
ハタ立っても面倒くさがってゴロゴロしてそうだ
ハタ無し人間を見つけてもガン無視でコーヒー飲んでそう

ハタ人間編に『いたことにしていい』ならどんどんインスピレーションが沸いてきた
元がエロ設定つけ放題なサクセスだから何でもすき放題できそうだな
こういうのがOKだとしたら、他にもいろいろ考えられそうだ

309:名無しさん@ピンキー
09/01/19 23:55:17 q2/dUyNf
>>305
素晴らしい

310:名無しさん@ピンキー
09/01/20 01:27:36 UJvbnWwK
10主人公ハーレム物って需要あるかな

311:名無しさん@ピンキー
09/01/20 01:39:12 G0fwNvpp
愚問

312:名無しさん@ピンキー
09/01/20 01:49:17 av0QhWge
>>310 おい もうズボンおろしているんだぞ 早くしろ

313:名無しさん@ピンキー
09/01/20 01:53:27 UJvbnWwK
死ねと言うのか
そんな短時間で書ける人間がいるか!

頑張ってみるけど期待しないでね

314:名無しさん@ピンキー
09/01/20 01:54:56 WVsRrxdB
死んでも私は一向に構わん!!
というわけで早く書け

315:名無しさん@ピンキー
09/01/20 02:05:25 h/yqS4Us
今世紀中に頼む

316:名無しさん@ピンキー
09/01/20 19:33:21 mCnRHm1X
俺は人類最強の男というコピーに引かれ
人類最強になるためにはどうすればよいのか考えた
人類最強なのだからどんなこともできる
手始めに全裸で晴川先輩の家にバンザイ、バンザイとつぶやきながら飛び込む
タンスをこじ開けブラジャーを腰に巻きパンティーを頭にかぶる
先輩が呆然としながら見てくるが人類最強なので気にしない
先輩のベッドに潜りこみ「し あ わ せ」と絶叫
先輩は無言で部屋から立ち去る
だがまだ最強には不十分
次はるりかの家にむーーーんむーーーんと叫びながら飛び込む
るりかは親と料理をしている最中だったが人類最強なので無視
半裸で逆立ちをしながら
「俺に充電しろ!!俺に充電しろ!!」と絶叫
るりかは大泣きで退散、その母は電話をいじっているが人類最強なので気にしない
確実に人類最強に近づく
開脚後転でトイレに飛び込み便座を外し首に掛ける
映画で見たハタ人間の真似をしながら水木の部屋に突撃
タンスを開けると一枚の写真発見
幼い俺が親父と一緒に無邪気に笑ってる

俺は泣いた

317:名無しさん@ピンキー
09/01/20 19:40:07 RJmL4iJ4
書いて見ますた真央です
長いんで後編は後ほど
「ヒーローのヒーロー」
まぁ、いろいろあったが世界に巣食う黒幕は全滅した。
これは他でもなくヒーロー集団「黒猫」のおかげである。
しかし、リーダーである芹沢真央は「黒猫」解散にも関わらず部下について行かされた。
理由が呆れた物である。一緒に居る部下の名は大江和那。
なんでも彼女には全てを終わらせた後に迎えにいくと心に決めた彼がいたらしいが、もう別れて何年も経って(とはいっても3年だが)いてどうにも一人で会いに行くのは心細いからとか。
全く、自分への嫌がらせかと真央は思う。最近組織に居た浜野も彼がいるとかで見せ付けられているような気がして非常に不満だ。
かく言う真央にも昔は大切な人がいたのだ。・・・もう自分の存在は知らないだろうが。
たどり着いたのは、某球団の寮だった。その球団名を見た真央は後ずさろうとする。
「リーダー、どうしたん?」部下和那は一応付いて来てくれた真央が急にバツが悪そうにしているのを見て声をかける。
「・・・・帰る」それだけを告げて真央はそそくさともと来た道を引き返す。
「そ、そんなん言わんといて!!一世一代の勝負なんや!!」和那は強引に真央を引きずっていく。逃げられない。
どうやら和那の彼は真央と関わりのある人と同じプロ野球球団の選手だったのだ。その人には真央はもう会わないと決めていた。
和那と違って全てを終わらせても。というより会う意味が無いのだ、ただ辛いだけで。
でも、その人が今寮にいるわけないから会うことは無いだろう、と真央は冷静になって考える。
だってもう彼は・・・。
「ここみたいや・・・」寮の部屋の前についた和那はつぶやく。
そこには「波野」と書いたラベルがある。恐らく彼の名字だろう。
インターホンを和那が押すと、部屋の扉が開く。
「はい?」出てきた男を見た途端真央はハッとする。
「搭哉!!」それもつかの間、顔全く見ずに和那は彼に抱きつく。
「うわぁ!!」彼はいきなり出来事に顔を白黒させる。
「会いたかった・・・。ホントはずっと会いたかったやで・・・」和那は抱きつきながら号泣。
「あ、あの・・・あなたは」男は未だに意味が分からず和那に問いかけるが、和那は全く聞いていない。
そんな和那は真央は思い切り叩く。
「い、いったー!!何するんや!!」痛みに顔を歪めた和那は真央を睨む。
「・・・・彼は違う」
「何で搭哉と一回も会った事ないリーダーがそんなこと分かるんや、・・・・・あれ、搭哉やない、ってゆうかあなたは小波選手??」
彼をよく見なかった和那はよく見ると彼で無いことに気づく。と言うより彼は球界のスター選手の小波七栄(しちえい)だった。
真央を彼を見るなりそうだと分かった。よく知っていた。だから和那を叩いたのだ。
間違えを咎めるためでなく、なけなしの嫉妬心から。


318:317
09/01/20 19:40:52 RJmL4iJ4
「ご、ごめんなさい!!いきなりこんなこと」和那は驚いて謝る。球界のスターと眼前で恐縮している。
「いや、俺こそここに住んでないのにかって出ちゃったからさ・・・」
小波は彼女を責めることなく寛大に対応した。
変わってないな、あの時と・・・。真央はそう思って彼を見る。少し昔より逞しいが、ここまでの選手になれば当然かと思う。
「じゃあ、どうして・・・」和那は彼がここにいる理由を問う。
「いやぁ、シーズン終了祝いに後輩と酒でも飲もうとして家から来てたんだ。アイツちょっと部屋整理して・・・もしかして君って大江和那さん?」
小波は彼女を勘繰って問う。
「え??なんでうちのこと?」
和那は心当たりの無い問いに驚く。
「やっぱりね、君が搭哉が言ってたずっと会いたいだったんだ。背が高いとは聞いてたけど凄い迫力だ。
搭哉、じゃなくて波野は俺がよく入団してから技術指導とかしてて仲がいいんだよ。で、アイツから高校時代付き合ってたずっと会いたい彼女って感じで君の事聞いてたんだ」
まだ自分のことを想ってくれたんだと和那が感動している傍ら、真央は、和那の彼を小波の関係を呪った。
そのせいで有名選手になって既に寮に住んでいるはずのない小波と会ってしまった。
大切な人の彼に。
小波七栄の説明をしよう。
高卒でこの球団に入団したからは2年目から完全にレギュラーに定着。そして入団8年目にして数々のタイトルを獲得したチームの3番打者で近くメジャー移籍すら噂されている。
高校は・・・花丸高校。
ここで彼はヒーロー集団と葛藤しながら彼らを打ち破り甲子園で優勝した。
真央そんな彼と敵対したヒーローの一人である。否、彼と最も深く関わった人である。
真央はヒーロー集団のブラックとして暗躍し、当時からヒーローで唯一人間の姿を持っていた。
真央としての彼女に小波は偶然出会い、お互い惹かれあった。
そして真央はヒーローを倒そうとする小波のためにヒーロー集団を裏切ってまで彼の手助けをし、瀕死の重傷を負った。
しかし、彼女は殆どが消えたヒーローと違い、生き残り本当の正義として「黒猫」を結成した。
・・・小波の自分への記憶を消して。だから会っても意味が無い。切ないだけだったのだ。
でも結局会ってしまった。真央は胸の苦しさを感じる。
「七栄先輩、誰ですか??どうせ湯田先輩でしょ?早くしないとつまみ全部食べますよ」
ふと部屋の奥から声が聞こえる。
「搭哉、お前にお客さんだ」
小波は悟ったように奥の人間を呼びつける。すると、奥の男がのろのろと出てくる。
「全く、酒も全部飲んじゃいますよ・・・え」
男は面倒そうに出てきたが、眼前の光景に目を見開きもっていた酒瓶を落として割ってしまう。
「・・・・カズ。どうして・・・?」
彼、波野搭哉は和那を見て驚きの声を上げる
「搭哉!!」
こんどこそ和那は彼の元へ抱きつく。
それを見た小波は少し微笑み、真央の元に向き直るが、彼もまた驚きの声をあげる。


319:317
09/01/20 19:41:32 RJmL4iJ4
「君は・・・あの時の・・・」小波は黒髪の女の子を知っていた。
忘れもしないドラフト指名されて入団会見のため高校に行った日に自分を見つめていた子がここにいたのだ。
あの時の彼女の涙を小波は忘れられなかった。そして、その日よりもっと前に彼女に会って話した気がする。
確かに自分には不可解なヒーローとの戦いがあったりした。だが、少なくともヒーロー忘れたのは野球部以外の人だけ。
つまり、自分は何も記憶は失っていないはずだ。
なのに、なにか引っかかるように抜けたものがあって、もしかしたら彼女がその鍵かもしれないとずっと考えていた。
「ねぇ」小波は彼女に声をかける。
「・・・・・」あの時彼女が去ったように彼女は何も答えず、その場を去ろうとする。
「待って!!!」しかし、小波は今回は逃がさなかった。
「話がしたいんだ」そして、小波は部屋に彼女を招きいれた。

不覚だ、真央は彼と話さず去ろうとしたが、結局寮の部屋にいる。
力ずくなら抜け出せたし、そもそも優しい小波はそんなことしない。
だが真央は部屋に入った。本能の彼といたいが勝ったからだ。
部屋では和那は彼である波野とずっと話している。つまり、真央は小波と話すしかないのだ。
「そっか、ブラックさんはヒーローの一人なんだね」真央は自分がヒーローであることとブラックの名だけを話した。
もう彼にヒーローへの敵対心は無く、あっさりと受け入れた。
「でも、ヒーローは消えたはずなのに・・・」
「・・・・消えてないのも他にいる」
「じ、じゃあレッドもか??」レッドとはヒーロー集団のリーダーである。
浮いていた真央の理解者であったが、彼の消息は不明だ。
「・・・消えたかも・・・でもいるかも」
真央がそう言うと
「そっか、いるといいな」
と小波は答える。
「どうして?敵なのに」
「もう、関係ないさ、またあいつと勝負したいしね」
そう笑う小波に真央を今までの思い出を振り返る。優しい彼としたデートとかの。
「でも、もしアイツが生きてたら今頃、どうしようもない奴になってるかもな
ヒモとか」
「・・・・ヒモ?」
「いや、なんでもない・・・」

その頃、某テント
「ヘキシッ!!」
「大丈夫、風来坊さん」
「あぁ、誰かが俺のことをヒモだなんて噂したな!」
「アハハ、でも実際風来坊さんは私のヒモだよね!!」
「う・・・・・・」

320:317
09/01/20 19:42:10 RJmL4iJ4
「そういや、七栄先輩ってずっと彼女作りませんよね、もてるのに」
気がつけば二人のカップルも話に合流していた。
「え??」虚を突かれた小波は押し黙る。
真央は意外と思うと同時に安堵した。馬鹿げてる、どうせいなくたって彼は自分意振り向かないし、自業自得だ。
真央は自制した。
「あんま言いにくいんだけどさ・・」
小波はそう前置きして話を進める。
「高校のときな、変な奴らがいてソイツらと戦ってたんだ。
そんで、強かったソイツらと野球部の退部を賭けてな」
「それって湯田先輩も言ってたヒーローっての?」
「なんかリーダーみたいな奴らやな」
和那、正解である。
「強くてピンチだったけど、これまた変な博士にもらった装置でそいつらの力を弱めて勝ったんだけどさ
でも、引っかかることがあるんだ?」
「(・・・・なんだろ?)」真央もそれが分からない。
「俺レギュラーだったのに、何故かその試合俺9回から代打出てたんだよ。
しかもそれまで別のとこにいたんだ」
「・・・・!!」
しまったと真央は思う。あの日ヒーローの力を弱める黒野博士専用の装置を貰った真央は小波にそれを渡そうとしたが途中で監視されていたヒーローのピンクに襲撃されたのだ。
それを小波は試合そっちのけで真央を助け、その際真央はその装置を渡したのだ。
真央は装置を渡したのは黒野博士ということに彼の記憶操作したが、細かい所を操作しけれず、結果曖昧なものとなってしまったのだ。
「なんか、その時会った人が思い出せないけどすごく大切な人なきがするんだ、って俺って変人みたいだな」
苦笑する小波。
「そんなことないです!!なんかウチと搭哉みたいにずっと帰りを待ってる関係ですごくええです」
「多分その人どっかにいますよ、メジャー行く前に捜さないとね」
二人には好評のようだ。一方の真央は・・・・
「あれ、ブラックさん??」
嬉しかった、彼がまだ自分を想ってくれる事に。それは涙として表れた。
嬉し涙で。
「大丈夫?」
そんな彼女の頬を小波は優しく拭う。
やめて欲しい。そんなことしたら今にも抱きつきそうで・・・・
真央は小波の手を振り払い部屋を出て行った。
「ちょっと待って!!」
小波の声にも振り返ることはなかった。

321:317
09/01/20 19:42:37 RJmL4iJ4
「あーえっと、あー見えてリーダーはうちより強いから大丈夫やと思います・・・」
事態の収拾のために和那はそう言う。しかし、そういう問題じゃない。
何故彼女が涙を流したのか分からない。しかし、何も分からない、小波の頭はグルグル回るばかりだ。
「ニャオン」ふと近くにネコの声を聞く。
「あ!?スキヤキ忘れとる!!」和那はネコを見るなり言う。
待て、スキヤキって・・・・。
「ネコの名前か??」波野は彼女に聞く。
「そや、ネコ大好きでリーダーいっつも大切にしてるんやけど・・・・
よく、自分の人間のときの名前は中国のネコの名前から取るって、訳の分からん言うてたから」
「ネコの中国語ってなんだ!!教えてくれ!!」小波が凄い剣幕で和那に問う。
「た、確か・・・・まおやったっけ・・・・」
「ま・・・・・お・・・・」
その時彼の脳裏にいままで空だった記憶が声と共に蘇る。
・・・・スキヤキにした
魔法がとけるから
・・・・助けて
きっと・・・・勝てる・・・
「ま・・お・・ちゃ・・・真央ちゃん!!!」
どうして今まで思い出せなかったんだ。高校時代ずっと一緒に過ごした
ちょっと変で、不思議で、そして大好きな彼女のことを・・・・。
「俺はなんて馬鹿野郎なんだ!!」
小波はそういって部屋を飛び出した。
「な、なんやいきなり小波さん??」
「知らん、俺もあんな先輩初めてだ・・・」
「ニャオン」

322:317
09/01/20 19:43:21 RJmL4iJ4
「ハァ・・・・ハァ・・・・」
真央は息を切らして立ち止まる。
自分で巻いた種なのになんでこんなに悲しいのだろう。
やっぱり自分に嘘がつけない。
小波が好きだ。ずっと触れていたい。話したい。傍にいたい。
でも、もうそれは叶わない。
「う・・・・・」
涙が流れる。どんどん。でも、自分は前を向かなくては
「ヒーローは泣かない・・・か・・・ら」
「泣いてもいいんじゃないか」
不意に真央は後ろから抱きしめられた。
「・・・・・え」
小波だった。彼はより一層力を強める。
「思い出したよ。君は真央ちゃんだね」
どうして・・・真央はそればっかりを考えていた。
「記憶には無くてもずっと君のことが片隅にあったんだ。もう二度とこんな辛い思いはしたくないよ。
好きな人と別れるなんてさ」
嬉しかった。彼は自分をまた求めてくれる。でも、真央は抵抗した。
「・・・・ヒーローとして戦うから、できない」
「なんで、悪はもう倒したんだろ」
「でも、次の悪が出てきたら、また戦うから」
「それなら、それでいい!!俺もヒーローになるから」
「ダメ、そんなこと」
「真央ちゃんは皆を守るヒーローだ。でも、それじゃあ真央ちゃんは誰にも守られない。
だから俺がなるよ!!真央ちゃん、いや真央を守るヒーローに!!」
小波は力強く叫んだ。真央は涙を流し続けた。そして彼の正面に向き直り抱きしめ返す。
「・・・・小波」
「ずっと思い出せなくて、ごめんね」
「ううん。・・・・ありがとう」
笑みを浮かべる真央。その表情は何よりも綺麗だった。
二人は引き寄せあうように唇を重ねた。
----二人の重いが通じ合った瞬間だった。
<後編へ>

323:名無しさん@ピンキー
09/01/20 19:55:55 5qT+GYb3
>>322 割込むかたちになるかもしれないが、GJ。
ポケ7&10の表はとりあえず完全コンプした俺にはいい話だ。

324:名無しさん@ピンキー
09/01/20 20:56:14 11FFYYO4
>>317
GJ
マオにも幸せになって欲しい

ところで>>175>>308のように
ハタ人間編のIF設定で
ゆかり+茜×真薄っていうのを書いてみようと思うんだけどあり?
さらに准×主人公というわけが分からん物もついでに

325:名無しさん@ピンキー
09/01/20 21:08:45 klhXNfkn
嫌がる人間などおらぬわー

326:名無しさん@ピンキー
09/01/20 21:53:48 0smLVsvc
>>322
GJだが多少行をあけて書き込むと見やすくなってさらにグッド

327:名無しさん@ピンキー
09/01/20 22:23:55 uXhvZ0Yw
小野さんとかハタ人間編で唯一の大人の女性なのになんで誰も飛びつかないのか不思議でならぬ

328:名無しさん@ピンキー
09/01/20 22:25:46 uXhvZ0Yw
あ、みゆき先生もいたか…

329:317
09/01/20 23:06:15 RJmL4iJ4
皆さんご指摘ありがとう
読み返すと誤字が多いですね
とりあえず後編できましたが
駄文は仕様なのであしからず
気が向いたら今後は「旅ガラス」の名でなんか書きます


「ん・・・・ぁ」
二人がたどり着いたのは小波の家。
既に年俸3億に近づこうかという小波は高級マンションの一室に居を構えていた。
すごく、おしゃれで一人暮らしには広すぎる空間。
部屋のベッドで真央と小波は無心で唇を重ねあった。
「真央・・・・・俺は絶対にお前を放さない。
お前が戦っても、俺はお前を近くで支えたい」
「・・・・小波・・・・ん」
真央は口をきけなかった。
高校時代の彼とは一応交際をしていたが抱きしめる程度のものでしかなかった。
既にキス、いやそれ以上まで踏み込んだ和那のノロケ話に憤慨して鉄拳をくらわせたこともある。
そんなことももうない。
真央は彼と一つになるときが来たのだと感じていた。
「ひゃぅ・・・・」
小波の手が真央の胸を掴む。
初めての感覚に真央は頭を酔わせていく。
気がつけば、上のほうは全て脱がされてしまった。
「真央の体、やっぱり綺麗だ」
「・・・・・・」
小波の言葉に真央は顔を赤らめて俯くことしかできない。
「真央・・・・・」
「ぃ・・・・・ぁ」
小波は胸を舐めたりとか、下の方を指で触ったりとかいろいろと彼女をせめる。
我慢しようにも、心地よい感覚に真央は声を抑えられなかった。
「下、脱がすよ」
小波は彼女の履いていたショーツを大事に脱がしていく。
彼との先ほどまでの行為で下は洪水状態になっていた。
「・・・・・恥ずかしい」
真央は彼の顔を見ることが出来ない。
「でも、嬉しい。俺は真央の全てを見ることが出来たんだって思うとさ」
小波はストレートに今の心境を述べた。
言葉だけでも随分混乱しそうだ。
彼の指が未知の領域に踏み入れていく。
「ひゃぅ!!」
今までに無い感触に真央は悲鳴のような声を上げる。



330:317
09/01/20 23:06:52 RJmL4iJ4
「気持ちいい??」
小波が聞いて見る。
「・・・・・・分からない」
実際、何もかもが真央には分からない。
気持ちいいのかとか、
分かるのは未だかつて他人が触れなかった場所への刺激。
「ぁ、、ふ・・・ぁん」
だんだんと真央の声が快楽のものに変わっていった。
「小波・・・・気持ちいい・・・・」
素直に気持ちを述べた。
一方で小波は少し苦しそうだ。
「真央、俺もう我慢できない。このまま入れていいか?」
小波のその答えに真央は首を縦に振る。
小波は自分のモノをだし、さっきまで指で責めてた真央の場所にあてがう。
「優しくするから」
そう言って小波は中に突き入れた。
「ひぎっっ!!」
その痛みは想像を絶するものだった。
百戦錬磨のヒーローを痛みで何も考えられない。
「真央!?」小波は心配して動きを止める。
「つ・・・づけ・・・て」
「でも・・・」
「小波が・・・・喜ぶなら・・・・」
真央の決死の覚悟に小波は少しづつ動かしていく。
真央は相変わらず痛そうだが、小波は深い快感を永続的に感じていた。
「真央、すごく気持ちいい。お前と一つになれて嬉しい」
「わたし・・も・・・うれし・・・」
真央も徐々に痛みが快感に変わりつつあるようだ。
「そろそろ、限界だ」
「アッ、ァッ、アン、小波の・・・・・好きなように」
限界を示唆する小波に真央が言う。
「で、出るぞ」
「ッ、ああああああああああ」
小波は全てを真央に解き放った。

331:317
09/01/20 23:07:12 RJmL4iJ4
翌日、二人は寄り添いながら目を覚ました。
「真央・・・ん」
起きるなり真央は小波にキスをする。
「なぁ、真央。俺来シーズンFA権を取ったらメジャーに行こうと思うんだ」
「・・・・・・」
「もしかしたら、子供が出来るかもしれない。
だから、俺は真央に一緒にアメリカに来て欲しい、結婚しよう」
「いいの・・・・?」
「お前じゃなきゃダメだよ」
小波の言葉に真央を強く抱きつく。
「・・・・今度は真のアメリカンヒーロー」
「・・・・はは」
こうして皆を助ける神様と、神様を唯一見ることが出来て神様に感謝し愛し続ける旅人の話はつづく。


一方某テント
「ねぇねぇ、風来坊さん、あの有名な小波選手メジャーに行くかな??」
「アイツなら、不可能ではないな。
アイツは低能力と思っていたがかなりの逸材だったようだ」
「彼と知り合いなの?」
「まぁライバルと言う奴だ」
「その割には年収が3億と0円って随分差があるけどね」
「う・・・・・・」

おわり

332:名無しさん@ピンキー
09/01/20 23:50:09 5CZrREEC
今、朱理がレイプされて男が嫌いになりかけたところに11主が来てカッコ良くレイプ犯を撃退。
だけど、11主が朱理に欲情して結局青姦しちゃうと言う電波を受信した。
誰か書いてくれ。俺にはムリだったorz

333:名無しさん@ピンキー
09/01/20 23:59:18 UJvbnWwK
朱里はレイプされても全然こたえなさそうなイメージがある
むしろ何回もされてそうと言うか
レイプするくらいなら主人公をレイプしてやったほうが精神的に効く気がする

朱里の泣き顔は満場一致でエロいと思います

334:名無しさん@ピンキー
09/01/20 23:59:43 5CZrREEC
>>>317氏拝見させていただきました!GJ!真央可愛いよ真央

335:名無しさん@ピンキー
09/01/21 00:34:49 En5Gfa//
GJです!
かわいいぞ真央!!!

336:名無しさん@ピンキー
09/01/21 00:39:02 BW9pbEHo
9主哀れ

337:名無しさん@ピンキー
09/01/21 01:00:15 MyNMBNfK
大変GJです!
なんか色々とニヤニヤが止まりませんでしたww

338:名無しさん@ピンキー
09/01/21 08:40:11 RNQRr+jt
317氏!感動した!GJ!
カズも真央も幸せになってほしい俺にはストライクゾーンど真ん中だった!


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