パワポケでエロパロ8at EROPARO
パワポケでエロパロ8 - 暇つぶし2ch150:3/10
09/01/13 19:43:47 eHXEzKxn
「朱里・・・ごめん・・・!」
「・・・ん・・・!・・・え・・・?・・・なにが・・・?」
「・・・こういうこと・・・!」
俺はすかさず、両手を朱里の乳房にあてがった。
朱里はすぐに
「・・・!・・・ちょっと・・・!」
と俺の手を跳ね除けようとしたがもう遅い。俺の中のエロは発動した!
俺は、朱里の、小振りではあるが、形の整った乳房の先端を軽くこちょばしてやった。
すると朱里は
「んあ・・・!」
俺の両手を持ったまま身体をピンと硬直させてしまう。
さっきまでいじらしくも続けていた腰の動きもすっかり止めてしまった。
すると、今まで身体全体を使ってバランスを保っていた朱里の肢体が俺の一物の上に
ストン!
と落ちた。力が抜けてしまったせいだろう。
そして俺の朱里の身長差はゆうに30cmを越えている。
そんな彼女の小さなお○ンコの中に俺のおちんちんのすべてが入りきるわけも無く・・・
ドス!
と、俺の一物が朱里の子宮壁に当たった音が生々しく響いた。そしてその瞬間
「アッッ!!」
朱里は部屋全体に響き渡るほど大きな声を挙げた。

。oO(勝った!第3部完!)

俺が朱里の絶叫を聞いて悦に浸っていると、朱里は涙目になりながら俺に呟いた。
「ハァハァ・・・よくも・・・やったね・・・この・・・エロ・・・エロ野球選手・・・!」
エロ野球選手・・・なんと響きのいい言葉かー!

151:4/10
09/01/13 19:44:12 eHXEzKxn
「お返しだよ・・・!」
朱里は俺の首に両手を・・・、って、ちょっと待て!
ギューーーーーーーーーー!!!!!!
「苦しい?苦しい?・・・フフフ・・・ん・・・!」
朱里は俺の真っ赤になった顔を見て嬉しそうに話した。
まじで苦しいです。死にそうです。ああ、でも俺って本当、エロ野球選手だなあ。
血の巡りが悪くなったお陰で、ますます一物が怒張を強めているなんて。
「ん・・・!ん・・・!」
朱里はそんな俺の怒張した一物を○ンコで飲み込んで、気持ち良さそうによがっている。
くそ!今日こそ俺が朱里をめちゃくちゃにしてやるはずなのに!
これじゃ駄目じゃないか。どうにかして反撃を・・・
あー・・・それにしても朱里の力って本当すごいなあ・・・。
苦しい・・・苦しい・・・でも気持ちいい・・・。
気持ちいい・・・気持ちいい・・・でも苦しい。
朱里が両手で俺の首を絞めてくるもんだから・・・。
・・・両手で・・・。・・・両手?
ひょっとして、今俺の両手もフリーで動くんじゃ・・・。

俺はすぐさま両手で朱里の乳首を鷲掴みにした。
朱里は一瞬何をしてるのか分からない様子だったがすぐに青ざめた表情になり
「ちょ・・・ま・・・」
と俺を制止しようとしたが、すでに俺の中のエロは発動している。
そのまま朱里の乳首をギューーーーーーーーーーーーーーと握ってやった。
「ンアアアアアッッッッ!!」
朱里は背筋をピンと張り、何もない天井を見上げた。もう両手には何も力は入っていない。
ちんちんが痛い。朱里の○ンコは凄い勢いで俺のちんちんを締め付けている。
俺は片方の手を、快楽で動かせなくなった朱里の腰にあてがって
もう片方の手は乳首をつまみながら、続きを始めた。
「アッ!アッ!アッ!アッ!」
俺が朱里の腰を片手で動かすたびに、朱里からリズミカルな喘ぎ声が聞こえた。

152:5/10
09/01/13 19:44:59 eHXEzKxn
「ず・・・ずるいよ・・・!アッ!」
「ずるいって・・・何が・・・!」
「おっぱいは・・・反則だよぅ・・・うッ!」
だって、そうでもしないと朱里は、こんなにめちゃくちゃ感じてくれないだろ?
でも・・・正直安心した。どうやらまだおっぱい攻撃は通用するから・・・。
とはいえ、これもいつまで通用するかは分からない。
やはり性の新規開発事業はこれからも進めていかねば、な。
いつもは朱里達、正義の味方にたじたじの俺も、夜くらいはリードしてみせねば
男の沽券に関わるってものだからな!

朱里はもうすっかり力を失って俺の上に覆いかぶさる形になっている。
ふと気付くと、俺の股間に、結合してるもの同士とはまた別の熱を感じる。
そうか・・・、朱里、潮を吹いてるんだな。
「・・・潮は・・・はしたなくないのか・・・?」
「ハァハァ・・・!・・・ばかぁ・・・!・・・ねえ・・・?」
「ん・・・?」
「・・・キスして・・・!」
「・・・分かった・・・」
俺は朱里と熱く口を重ね合い、そして果てた。まだ2回目なのに、凄い出た。
キスはまだ続いている。こうしてるとさっきまで勝ち気だった朱里の姿はどこにもない。
快楽の涙を流している眼、整った鼻、あまり洗ってないとは思えない綺麗な髪。
どこをとっても愛おしい。さっきまで性感帯だの新規開発だの言ってたのがバカバカしくなってきた。
俺は朱里を愛している。だから、おっぱい攻撃が通用しなくなったからって別にいいじゃないか。
そんな押した引いたの男女のやり取りを越えたところに真実の愛ってもんがあるんだよ。きっと。

?「もうちょっとだけ続くんじゃ!」

いや続かないだろ常識で考えて・・・。大体俺明日先発出場だし・・・。まあそんなことより
朱里・・・可愛いな・・・綺麗な目、綺麗な口元・・・、綺麗な耳・・・。可愛いな・・・。

・・・・・・・・・・・・
・・・耳?

153:6/10
09/01/13 19:45:28 eHXEzKxn
そういえば・・・朱里の耳って・・・どんな感触がするんだろう・・・。
付き合ってもうすぐ3年目になるのに、いまだに手以外では触ったことがないな・・・。
ちょっと舐めてみようか・・・。
ペロン

「ひゃあああああ!!」
「!?」

「・・・い・・・今・・・!・・・何・・・したの・・・?」
「・・・いや・・・何って言われても・・・」

どうする!?どうするよ!?俺!?

ちょっと俺の中の天使と悪魔に聞いてみようか!

・・・・・・・・・・・・

だめだこりゃ!

なんで天使も悪魔も同じこと言ってるんだよ!
え?なんて言ってるか知りたいって?じゃあ聞かせてやる!

天使・悪魔「その耳を舐めるなああああああああ!」

それに対する俺の答え?
聞かなくても分かるだろ?

「いーや!限界だッ!舐めるね!!」
真実の愛とか、知らねえよ、夏。

154:7/10
09/01/13 19:45:51 eHXEzKxn
俺は再び朱里の上になり、朱里の顔を横にして、舌を思い切り朱里の耳の穴に入れて嘗め尽くした。
「ひゃあ!ヒッ!ひいい!」
朱里はもう声にならない声しか出せない。俺の中のSの心が一気に火を点けた。
これは初めて朱里におっぱい攻撃を仕掛けた時と同等、いや、それ以上のものが見られるかもしれない。
俺は朱里の耳を舐めながら、すっかり元気を取り戻した俺の相棒を朱里の体内に押し込んだ!
「あぁあぁああぁあぁ・・・!はあぁぁあぁぁ・・・!」
耳を舐められる快楽と、肉棒の快楽が合わさり、もう朱里の眼からは涙が止まらない。
俺は朱里を激しく突いた。もちろん耳を舐めながら。
「朱里・・・!朱里・・・!・・・感じるか・・・!・・・朱里・・・!」
「ひ・・・!ひい・・・!・・・や・・・やあぁ・・・!」
朱里はもうされるがままだ。俺は朱里の顔を逆向きにして
まだ無傷(?)の反対側の耳も舐め始めた。
「やあだあああ・・・・!・・・やだああああ・・・・!」
朱里はこんなことを言いながらも、とても嫌そうな顔をしてるようには見えない。というかむしろ・・・
「朱里・・・!気持ちいいなら・・・!ちゃんと・・・言えよ・・・!」
「・・・あ・・・だめ・・・!・・・イクッ!・・・イクッ!」
「イクッ・・・?イクのか!?朱里・・・!」
「イッちゃう!イッちゃうよおおおおッッ!!!!」
俺と朱里は同時に果てた。
「ああ・・・あああ・・・・」
朱里はイってしまったのか、俺の腕の中でよがったままでいる。
その時、俺の股間に暖かいものを感じた・・・。
最初は潮かと思った。だが違った。
潮にしてはあまりにも量が多すぎる!
まるで蛇口の水のように出てくるこの液体・・・ひょっとして・・・ひょっとして・・・!

155:8/10
09/01/13 19:46:24 eHXEzKxn
朱里は自分の身に何が起こったのか、すでに分かっていた。
愛する男の腕の中とはいえ、それは女性にとっては(いや、もちろん男性もだが)
極めて恥ずかしいこと。朱里がすがるような眼で俺を見つめている。
「朱里・・・ひょっとして・・・」
「いやああ・・・言わないでえ・・・・・!」
普段の俺ならここでやめていただろう。
でも今日の目的は、朱里をめちゃくちゃにしてやることだ!
そんな俺はうろたえない!たとえ愛する女が泣いて訴えても
羞恥心を掻き立てるその言葉を言わせてもらう!エロ野球選手はうろたえない!

俺は半笑いで
「朱里・・・あのさあ・・・ひょっとして・・・・・・おしっこ・・・漏れちゃった?」
と話しかけた。
朱里はたまらず
「・・・・・・・・・・・・ばかああああああああ・・・・・・!!!!」
声にならない叫びがビル内に響いた。

今度こそ・・・
。oO(勝った!第3部完!)
・・・と思いきや・・・

「ううう・・・(グス!)」
「ごめん!ごめんごめん!」
うーん、ちょっとやり過ぎてしまったかな・・・。
朱里がいつまで経っても泣き止まないよ・・・。
どうすれば・・・。・・・そうだ!
「朱里!俺もお前もさ、セックスし過ぎて、汗も潮も精液も、その・・・おしっこも・・・出て
 汚いだろ!?だから・・・風呂入らないか!?」
「・・・お風呂・・・?」

156:9/10
09/01/13 19:46:52 eHXEzKxn
そんなわけで俺は今、朱里と一緒にお風呂に入っている。
黒野博士に作ってもらった特注のドラム缶風呂で、何と温度調節が自由自在という優れものだ!
・・・素直にユニットバス設置しようよ・・・朱里・・・。

「・・・嬉しそうね・・・」
どうにか泣き止んだ朱里だったが、風呂の中で俺を背中にして
腕に抱かれても、なお怪訝そうに話しかけてくる。
「嬉しそうって・・・何が・・・?」
「あたしにおしっこ漏らせて・・・、あたしをめちゃくちゃにできて・・・
 楽しかったでしょって・・・言ってるのよ・・・!」
うーん。やっぱり朱里、まだ怒ってるのかな・・・。
ここは・・・正直に言ったほうがいいかな!
「・・・ああ!朱里の新しい弱点を見つけたからな!
 あと1年は朱里をいじめられそうだから嬉しいなー・・・!」
俺が話している途中で朱里がじっとこっちを見てくるから俺はついたじろいでしまった。
「・・・ど、どうしたの・・・?朱里・・・。」
「あたしね・・・、勘違いされてほしくないから、はっきり言っておくけど
 別にあなたになら・・・、どんなに好きにされたって、いいのよ・・・?」
「・・・そうなの・・・?」
「うん・・・。でもこれだけは約束して欲しいの・・・。今・・・1年って言ってくれたよね・・・?
 だから・・・1年・・・1年後も・・・あたしと・・・今日みたいにいっぱいエッチして・・・
 一緒にお風呂入って・・・一緒に寝て・・・くれるよね・・・?」
なんだ。そんなことか。考えるまでもない。
「当たり前だろ!」
「・・・ありがとう・・・」
「朱里・・・!俺はな、確かにエロ野球選手って呼ばれても仕方ない。今までも、これからも
 今日みたいにふざけ半分で、朱里の身体を弄んじゃうことも、多分あると思う。
 でも・・・俺が愛している女性は朱里だけで、それは本当だから・・・。
 本当に本当だから・・・。朱里をついいじめちゃうのも、それは朱里が好きだからで・・・」

157:10/10
09/01/13 19:47:24 eHXEzKxn
俺は続けて話す。
「そうさ!俺だけが朱里を好きにいじめていいんだよ!
 だからさ、津波だか台風だか知らないがな、そんなろくでもない連中が
 朱里、お前を狙ってくるようなことがあったって、絶対お前を守ってやるからな!
 そうさ。1年なんて言わない。俺が死ぬまで!いや!お前が絶対に危険な目に
 遭わないと確信できるときまで、俺はずっとお前と一緒にいてやるからな!」
朱里はもうすっかり笑顔になっていた。
俺と付き合い始めてから見せるようになった、本当のヒーローが見せる心優しい笑顔だ。
「・・・明日・・・先発なんでしょ・・・?」
「知ってたんだ」
「あたしだって、新聞くらい見てるから。特にあなたのことは・・・」
「明日、というか、もう今日だな。そのことは、とりあえずいいんだ」
「?」
「今は・・・」
俺は朱里の右耳を舐めた。
「あ・・・」
「お前を・・・いじめてたいな♪」
「・・・ばか・・・」

その後、結局通算5Rやった俺は、試合のほうはボロボロかと思われたが
逆に雑念がその分減ったお陰でコントロールが冴え渡り
無四球完封勝利をものにすることができた。

6Rやってたらノーヒットノーランだったかも・・・?



fin

158:名無しさん@ピンキー
09/01/13 20:07:52 luOF7J87
GJ!悪のり具合もいい!

159:名無しさん@ピンキー
09/01/13 20:08:35 83V/rp9R
GJ!
大作乙!

160:名無しさん@ピンキー
09/01/13 20:09:51 u4/KzykA
エロ有りもエロ無しもいいなぁ。うん。素晴らしい。GJ。

161:名無しさん@ピンキー
09/01/13 21:17:32 ulriss/e
GJ
いい悪者ぷりやな主人公。
そう言えば、少しの間荒れていたが落ち着いたのか?

162:名無しさん@ピンキー
09/01/13 23:48:36 gsJnahx6
GJ。そして傑作。
学校始まったから、書く時間が無いぜ…

163:名無しさん@ピンキー
09/01/14 00:45:05 sk819ig+
GJすぎる
こういうのを待ってた
11の朱里は絶対ドがつくほどのMだよね

164:名無しさん@ピンキー
09/01/14 00:45:33 c5VDkzje
大学生ですね

165:名無しさん@ピンキー
09/01/14 00:48:02 sqSAwIKi
>133
コイヤコイヤコイヤコイヤ

166:名無しさん@ピンキー
09/01/14 00:49:43 cWJ6rBZ6
一方カズはドSになっていた

167:名無しさん@ピンキー
09/01/14 01:04:25 3d8RGck5
>>133
真面目な話、お前なら書けると思うぜ

>>147
GJ!

168:名無しさん@ピンキー
09/01/14 02:51:45 M9zaL9NP
(イカせるのが)疾きこと風の如く
(社長のしぐさに興奮しても表情は)徐かなること林の如く
(社長を性的な意味で)侵略すること火の如く
(焦らしプレイでは自分から)動かざること山の如く

by 上守甲斐


まあなんだ。つまりスタンダードに攻める甲斐や
愛撫を途中でやめて紫杏に「ど、どうしたの?早く続きを…」と言
わせておきながら
「社長、人に物を頼む時はなんて言うのですか?そのような無礼さ
では応じることはできません」と突き放しておいて
「つ、続きを…お願い……します…わ、私をもっと気持ち良くさせ
てくださいっ!」と涙ぐむ紫杏を見て内心ハァハァする甲斐をだな



169:名無しさん@ピンキー
09/01/14 02:57:24 yHSBS5iE
ありゃ携帯からだと変になったか…

170:こんな夢を見た。嘘だが
09/01/14 08:50:37 Ik0AL6zI
「小波君を元気づけようとして、そのまましちゃったのが初めでだったかな」
「あ、あたしはその……頑張って遊園地に誘ってみたら、帰りに……きゃっ」
「私は……クリスマスに、その、ごく普通に……」
「私? ……いやさ、バレンタインにエリからチョコもらったんだけど、食べたら眠くなっちゃって。
眼を覚ました時に、隣にエリの胸にチョコを塗ったくって舐めてるあいつがいて……そのまま」
「そ、その……家に料理を作りに行ったら、
そのまま食べられたんだ……リコには悪いと思ったんだぞ? うん」
「ご主人さまと瑠璃花が教室でしてるのを見て……そのまま流されちゃったわね」
「ご、ご主人さま!?」
「…………あたしとエリは彼のことそう呼んでるのよ。この前ご褒美に逆鱗の首輪をもらったわ」
「逆鱗もったいなさすぎでしょそれ!」
「でも、高性能なのよ? 確かエリの逆鱗の首輪は……
『エロス+2。艶めかしさ+7。おっぱい-5。ロリータ+3。』だったかしら?」
「う、うん……えへへ」
「……おっぱいマイナス? ロリータ?」
「たまに小さな子としてる気分になりたいんだって。付け外しできるから便利よ」
「……それで、なんであたしだけ手を出されてないの?」
「たぶん……リコはその、男友達的な存在みたいです……」
「納得できるか! コ・ロ・ス!」
「……行っちゃたな。まあ、これでリコも小波に食べられてしまうわけだ」
「そうだね。……あれ? エリ、どこ行くの?」
「ふぁぇ!? あ、あのね。ご主人さまがピンチだから助太刀に……」
「そ、そうなんだ。……行っちゃった」
「……なんかもう、同情するわ。リコに」
「リコに、ですか?」
「うん……エリがいたらたぶん、ろくな初体験にならないから」
「……どういうことなんだ?」
「…………あたしのファーストキス、あの子に奪われちゃったのよね」
「うそっ!?」
「あー……三人で一緒にしたこともあったけど、あの時もすごかったなぁ。
次の日、私だけ腰が立たなくなっちゃったのにはびっくりしたよ」
「ははは……委員長といい勝負だな」
「へぇ……委員長もすごいんだ?」
「どうかしら? ……私は、ただ完全にドレイになりきってるだけだから」
(うわぁ……)
「……話は」
「?」
「話は聞かせてもらいました!」
「うわ! アカネ、ベッドの下にいたのか!?」
「つまり今こそお兄ちゃんのところに行って、アカネが女になるとき!」
「……」
「待っててくださいお兄ちゃん! アカネは全裸でそっちに向かいます!」
「ところで……頭のピコピコ、床に落としたわよ?」
「えっ!?」
(がたん。しゅるしゅるしゅる)
「な、なんですか? まるでお兄ちゃんとアカネの間を結び付けているようなこの荒々しい縄は?
ああ、アカネがピンチです! 誰か、助けてくだ」
(ばたん)
「……何が起こったんでしょうか? アカネちゃん、天井裏に連れ去られてしまいましたけど」
「さあ? どっかの馬鹿姉が、妹があいつの毒牙にかかるのを防いだんじゃない?」
「ああ、なるほど。……まあ、いろんな意味で未来がないからな。あたしたち」
「…………そう言えば、卒業までに一人に絞ると言ってましたけど」
「…………」
「私も行こうかな」
「わ、私も」
「あたしも!」
「……あたしも」
「……………はぁ」

171:名無しさん@ピンキー
09/01/14 09:45:30 JZRVeZxY
>>170 個人的にはハーレムは好きだからGJ
だが、誰が話しているのが所々分からない。
あと、4行目はどんな状況?

172:名無しさん@ピンキー
09/01/14 12:44:33 vaomc1Hc
11裏は陵辱的に考えてエロ過ぎる
旗による洗脳に粘つく液体だもん

173:名無しさん@ピンキー
09/01/14 12:58:16 ZsC0FLJH
>超GJ。
単独でハタ化リコに敗北して、色々ヤられる主人公を(ry

174:名無しさん@ピンキー
09/01/14 13:11:34 cWJ6rBZ6
29歳日出子さんも良いではないか

175:名無しさん@ピンキー
09/01/14 17:30:15 QVq9IdAt
この紫杏は10主人公と付き合っておりIF要素を含んでおります
1.お名前をお願いします
「私の名前は神条紫杏だ」
「上守甲斐と申します」
2.恋人はいますか?
「ああ、いるぞ」
「いいえ、多忙な為いません」

3.では社長、彼とはどこで出会いましたか?
「高校のときだ、初めて会ったのは女子寮だった
私が入学した頃はまだ男女のクラスは別々でな
女子も男子を見たことが無くて本当に共学なのか疑う者もいた
そして当時の私は監督生で規則を統治する立場だった
そんなある日彼と~(以下略)」

4.で、彼と寝ましたか?
「そ、そんな事言えるわけがないだろう!」
「寝ました、海外へ行く前にお互いの浮気防止と思い出をかねてラブホテルで一発」
「か、上守!」
「お互い初めてだったらしく彼は入れる前に入念な前戯をしました。
その際『あたしのおっぱいって小さいのかな?』とか『だめぇ、そこ汚いから・・・』とか
『なんかふわふわしててどこかに行っちゃいそう』とか仰られました」
「……」
「彼にオナニーをしたことがあるかと聞かれると
『そんなはしたない事、出来るわけないでしょ!』と顔を真っ赤にして怒鳴りました
そして彼がオナニーの仕方を教えると自分の部屋で猿のごとく何回もしてました
当時社長はバイブレーターとかは何一つ持ってませんでしたから全部手で弄ってましたね
社長は多感症ですから達するのに時間はかかりません」
―その後は?
「現在も付き合っております、ちなみに社長は多忙であるためクリスマスから年末年始ぐらいしか休めません
その際今までのストレスと性欲を処理なさる為とても凄い物になります」

5.最後に彼とのセックスに不満はありますか
「特に無いな」
「社長の方は無いかもしれませんが彼のほうは結構あると聞いています
先ほども言ったように社長は多感症ですので入れる前にイってしまったということが良くあるそうです
おまけに結構なマゾヒストなので彼も大変です
ちなみに社長が一番好きなプレイは赤ちゃんプレイと幼児プレイと肉奴隷プレイですね
特に幼児プレイ、完全に幼児になって彼、もとい"パパ"に甘えているんです
『パパ、ダイスキー』とか『どうして紫杏にはパパみたいにおちんちんが生えてないの?』とか
『パパ、お股がムズムズするの、これって病気なのかな?』といって彼を興奮させていますよ
あっ、彼の名誉の為にいっておきますが彼はロリコンではありません
一応前に社長なのでお仕置きプレイをしたのですが盛り上がりに欠ける結果になったらしいですよ
仕方ないでしょうね、社長のストレスは失敗が許せない性格からきているので
この間3Pをやったのですけど社長が勝手にイクだけいって
彼はそのままという状況になってしまって困ったことがあったんですよ
可哀相だったので私が処理してあげました」
「なんだと!?」
「怒らないで下さい、社長
寂しそうな肉棒を見ていたら誰だって可哀相に感じますよ
オナニーで抜くのは社長に申し訳ないでしょうし
かといって放っておくのも可哀相、そこで私がお相手をしてあげました
しかし、出したはいいんですけど彼は私にこういったんです、『マグロ…』と
まあ仕方ないでしょうね、私の膣は締りが悪いと色んな人に言われましたから」
―ところで神条社長は彼に対してそういう"役を演じる"というのに抵抗感みたいな物は無いんですか?
「ないな、私は彼が好きだ、好きだから彼が喜ぶ"役"をずっと演じているのだ
悪く言えば私は犬だな、彼がお手といえば手を差し出し、お座りと言えばそのまま座るだろう
そして彼は私にこう言うんだ『紫杏は良い子だな』と…
だがある人はこう思っているのだろう。"人形"と」
―そうですか、お時間をお取り頂きありがとうございました、それでは…

176:名無しさん@ピンキー
09/01/14 19:22:26 sqSAwIKi
今オイラの隣にはパワポケシリーズのどれかにでてくる誰かがいるでやんす。

みなさんは5つまで質問をして、誰かをあてるでやんす。

177:名無しさん@ピンキー
09/01/14 19:37:21 kcNoe3Sp
別スレでどうぞ

178:名無しさん@ピンキー
09/01/14 19:43:47 ZsC0FLJH
こんなの書いてくれる人いるかな…

・ハタ化したリコを助けに行った主人公

・しかし、ハタリコに敗北、その場に倒れる。

・動けない主人公にリコが色々ヤり始める

・最後にハタを刺し、自分だけの(ry

…書く時間が無いんです、うん。

179:名無しさん@ピンキー
09/01/14 22:36:33 3Kx5LcIA
>>171
4行目は私じゃなくてあたしで、
エリがチョコに睡眠薬を混ぜてフッキーをはめた(性的な意味で)みたいな感じのつもりだった
キャラは上から順に、
ユエるフ夏委リ委リ委エリ委リるリ夏ユエユフるフ夏フ夏ユ夏フ委全ア全ア夏ア全アフア音ア音るフ夏る全ユる夏委フ

180:名無しさん@ピンキー
09/01/14 23:14:22 sk819ig+
何の呪文だ
お前は何を召還するつもりだ

181:名無しさん@ピンキー
09/01/14 23:24:14 KB3DsaA3
>>180
何を言っているんだ、これは彼女候補降臨の儀に使う呪文じゃないか
これを噛まずに三回詠唱できたならば、自分の嫁が召喚される
ただし噛むとのりかが強制的に召喚されるがな

182:名無しさん@ピンキー
09/01/14 23:51:18 cQNSP8mD
>ただし噛むとのりかが強制的に召喚されるがな
ペナルティが致命的過ぎるだろ……せめて美友にならん?

183:名無しさん@ピンキー
09/01/14 23:58:28 dhZqCr9l
>>181
違う違う、これはカタカナにした後、上からの台詞順の並びの中に
何人入っているかを当てるんじゃないか
成功時の特典と失敗時のペナルティは同じだがな
答えは知っているが

184:名無しさん@ピンキー
09/01/14 23:59:12 2h9bQ+nc
そこへ鬼鮫を投入

185:名無しさん@ピンキー
09/01/15 01:31:06 2lzXM1Ws
はぁ…朱里を虐めたい
ボロボロにレイプしたあと主人公に慰めさせたい…

186:名無しさん@ピンキー
09/01/15 08:24:17 HOkHNW2f
ちょっと待ってろ、いま
11主人公×槌田愛を書いてみるから

187:名無しさん@ピンキー
09/01/15 09:02:09 WnVVlb+Z
・・・チェンジ

188:名無しさん@ピンキー
09/01/15 10:39:51 iUE+fgTS
ハタリコ→主の小説、思い付いた。
暇があれば作るかも…

189:名無しさん@ピンキー
09/01/15 10:59:14 0a9otOaj
ハタリコが瀕死の主人公に愛を使用したって報告があったらしいが

190:名無しさん@ピンキー
09/01/15 11:05:09 jT4BeNgK
鬼鮫×カントリー×11主はまだですか?

191:名無しさん@ピンキー
09/01/15 11:09:59 qErouScp
じゃあ11裏おにゃのこ全ハタ化主人公集団逆レイプで

192:名無しさん@ピンキー
09/01/15 12:28:03 IgpTCGvi
そして無理矢理種付け強要へ

193:名無しさん@ピンキー
09/01/15 17:48:55 So/hWiwz
なんでみんな>>175にノーリアクションなんだ
猿のようにオナニーに耽る紫杏とか
素晴らしいじゃないか

194:名無しさん@ピンキー
09/01/15 17:54:33 Db0tsWak
>>193
本人乙

195:名無しさん@ピンキー
09/01/15 18:05:47 So/hWiwz
>>194
自分は>>175じゃないよ

「証明しろ」と言われても証明のやり様がないけど
>>175氏の名誉のためにはっきりと書いておく

196:名無しさん@ピンキー
09/01/15 18:11:50 Ie7MPpvX
フッキーとちゅっちゅできればどうでもいい

197:名無しさん@ピンキー
09/01/15 20:00:19 EbrfrPRX
ヒント:自分の萌えは他人の萎え


例えば主人公と女子が仲間を救出に行くが、途中ではぐれしまいハタ化した男子達に襲われる。
ドラゴイーターからクリアワルザーまでの様々な凶器でズコバコ突かれたり
怪しい機械を使われたりして身も心もドロドロぐちゃぐちゃにされたり、
あるいは間一髪主人公が助けに来たが地上まで我慢できずその場で合体。

…みたいなのが好きだが、中にはそんなのイラネって人もいるだろうし。

198:名無しさん@ピンキー
09/01/15 20:28:40 HOkHNW2f
そんなこと良い出したら切りがないぞ
まあ、作品が投下されるまでのんびりと待つよ、俺は

199:名無しさん@ピンキー
09/01/15 22:17:29 2lzXM1Ws
ハタ人間を戻す方法って明らかにされてたっけ
主人公がセックスをすれば戻るとかいうしょうもない妄想がきた

…え、男子……?

200:名無しさん@ピンキー
09/01/15 23:05:48 HOkHNW2f
第2章で旗に水をぶっ掛ければ治るとか言ってるよ
それで地上に戻すの

201:名無しさん@ピンキー
09/01/15 23:21:04 qErouScp
いいか、ここはエロパロなんだ
ご都合主義で男子は水かける、おにゃのこは主人公の種子で戻る
これでいいじゃないか

202:名無しさん@ピンキー
09/01/15 23:28:01 xurJYs12
主人公にしてもらいたいがために自らハタ化しようとするリコを幻視した

203:名無しさん@ピンキー
09/01/15 23:40:22 e9hiUKyC
11裏で主人公×委員長が書けたので投下します。

204:1/9
09/01/15 23:41:13 e9hiUKyC
『告白』

小波はパライソ中学校に通うごく普通の中学生だった。1年前、パライソタウンに宇宙人が侵略してくるまでは。
多くの大人たちが成す術なくハタ人間にされていくなか、小波は仲間たちをまとめあげ、宇宙人を撃退することに成功したのである。
再び宇宙人が侵略してきたとき、彼が対策グループのリーダーに抜擢されたのは自然なことでろう。
宇宙人が作ったダンジョンはかなり厄介で一筋縄ではいかない。時には仲間がやられることもある。
今日もハタ人間にされた仲間を救出し、ダンジョンから帰還したところである。
仲間に解散を告げると、小波は自身の疲労を回復させるため自室へ向かう。

(あー、今日も疲れた。早く寝よ)
自室に着くと小波は倒れこむように疲れた身体をベッドに預ける。
寝具の弾力が心地よい。疲労も相まって小波を睡魔が襲う。
このまま風呂も着替えもせずに眠りについてしまおうとする小波。
しかしその欲求は叶うことはなかった。

コンコン、というノックの音が小波の部屋に響いたのだ。その音で小波の思考は一気に覚醒する。
リーダーである小波の部屋にはよく人が訪れる。
対宇宙人戦の相談は勿論のこと、小波と他愛の無い雑談をするためにここに来る者も少なくない。
「はいはい、今開けます」
今日の攻略で疲労してはいたが、わざわざ部屋にまで来てくれた仲間を無碍にすることはできない。
小波は体を起こすと来客を迎えるためドアノブに手をかけた。

「委員長?」
ドアを開くとポニーテールの女の子が小波の目に入った。
小波たちのクラスの委員長、神条紫杏である。
「ちょっといいかしら?」
「構わないけど…… 珍しいな、委員長が来るなんて」

205:2/9
09/01/15 23:41:36 e9hiUKyC
「少し話したいことがあるのよ。部屋に入っていい?」
「え? あ、ああ、いいけど……」
入室の許可を出しながらも小波は不信感を覚える。
紫杏が自分の部屋を訪問するとはどうにも信じがたかったのだ。

勿論、小波と紫杏の仲が険悪な訳ではない。二人で話をすることだってある。
しかし今まで彼女が小波の部屋を訪問したことはないのだ。
真面目な委員長のことだ。人の部屋を訪問する暇があるなら勉強をしているのだろう。
或いは年頃の男性の部屋に行くことがに抵抗があるのかもしれない。
なにより紫杏はハタ人間から救出されたばかりで、休息しているはずである。
ともかく、小波にとって紫杏が自室へ来ることは全くの想定外のことであった。

「それで、どうしたんだ?」
驚愕した頭をすぐに切りかえる小波。
紫杏がわざわざ自分の部屋に来たのだ。彼女がただ雑談しにここまで来るとも思えない。
何か重大な話があるに違いない。
紫杏を対面に座らせるとその理由を尋ねる。
「話しておきたいことがあってね」
「話したいこと?」
「うん、そのね……」
そこまで言って紫杏の声が消え入るように小さくなってしまった。
話しにくいことなのか、紫杏は躊躇しているように見受けられる。
何とか次の句を告げようとするのだが、その度に言葉が途切れてしまう。
遂にはその言葉も無くなり完全に下を向いてしまう。

小波は怪訝な顔をした。いつもの委員長ならもっと言いたいことをはっきりと言う。
先ほどから紫杏の普段とかけ離れた様子を目の当たりにし、小波は困惑してしまう。
俯いてしまった顔からは表情を読み取ることさえできず、小波にはどうしたらいいのかさえわからなかった。
気まずい空気が場を支配する。
「どうしたんだよ? 黙ってたらわからないぞ」
ともかくこのままでいるわけにもいかない。
痺れを切らして促す小波に、紫杏はそれでも戸惑っていたがやがて意を決したように口を開く。

206:3/9
09/01/15 23:42:23 e9hiUKyC
「あたしね、小波くんのことが好きなの」
「え!?」
「1年前からずっとすきだったの。今回志願したのだって本当はあなたと一緒にいる口実が欲しかっただけなのよ」
突然の告白に混乱する小波。あまりにも急な展開に頭がついていかない。
潤んだ瞳がこちらを覗き込む。
今まで女の子に告白されたことなんてない小波には刺激が強すぎてパニックに陥ってしまう。
(いや、そう言えば……)
小波は一度だけ告白されたことがあったことを思い出した。アレはちょうど1年前の南公園での出来事だ。
そのとき紫杏は小波に告白したのだ。尤もアレは彼女が"恋する乙女"の性格付けをしただけなのだが。
今の告白もきっと演技なのだろう。小波はそう思うことで心の平穏を保とうとする。
「な、何だ演技か。前回以上に真に迫っていたから一瞬本気かと思っ……」
「演技なんかじゃないわ!」
小波の発言を遮るように紫杏が声を上げる。今まで以上に大きな声が小波の耳を突く。

「あの事件があった後もあたしの家族は家に来なかった。
そのときはまた以前の生活が始まるだけだと思ったわ。でも違った!
誰もいない家に帰るとき。独りきりでご飯を食べるとき。決まってあなたの顔が浮かんだわ。
去年の夏、貴方達と一緒に行動したからよ。前は何ともなかったのに、あなたと一緒に過ごしたから!」
一気にまくし立てる紫杏。小波の混乱はいよいよ最高潮に達した。
紫杏が感情を爆発させていること、なにより紫杏が自分に本気で告白したこと。
小波の心を乱すには充分すぎる出来事だ。ともかく紫杏をなだめようとする小波。
「委員長、落ち着いて」
「初めのうちは諦めるつもりだったわ。あなたはあたしのことなんて何とも思っていなかったんですもの。
でもだめ。日を追うごとにあなたのことを考える時間が増えていったわ!」
とりあえず落ち着かせようとする小波だったが、紫杏が止まることはなかった。

207:4/9
09/01/15 23:42:44 e9hiUKyC
「もう我慢できないの! 今日だって
小波くんが助けに来てくれたのに、他の女の子と一緒にいるあなたを見るだけでで胸が張り裂けそうになったわ。
身勝手な感情だってわかってるわ。でもどうにもならないの! あなたが好きなの!」
言いたいことを言い終えた紫杏が小波を見つめる。小波の答えを待っているのだ。

小波は改めて紫杏のことについて考えた。
思い返せば1年前から彼女が自分に声をかける機会が多くなってきた気もする。
テストで悪い点を取ったときには一緒に勉強をしようと提案してくれたこともあった。
そんな紫杏が自分を好きだといってくれている。
小波の答えは決まった。
「俺は…… 俺も委員長のことが好きだ」
「本当!? うれしい!」
感極まった紫杏が小波に抱きつく。
倒れそうになるも、何とか踏ん張る小波。自然と見つめ合う形になる。

「ねえ、小波君」
「何だ、委員長?」
「名前で呼んで。その…… 恋人なのに委員長って呼ばれるのは……」
恋人、と言う単語を口にする瞬間紫杏の顔が赤く染まる。その愛らしい仕草が小波をノックアウトする。
「わかったよ。紫杏、好きだ」
益々紫杏の顔が赤くなる。昨日までは紫杏がこんなに可愛いなんて気付きもしなかった。
小波が思わず抱きしめてしまうのも、仕方のない話である。
そんな小波に一瞬だけ身を強張らせる紫杏。しかし小波を拒否するようなことはしない。

208:5/9
09/01/15 23:43:47 e9hiUKyC
「もう一つ我侭いいかな?」
「我侭?」
「キス、してほしいな」
好きな異性に抱きしめられているせいか、先ほどから紫杏がどんどん大胆になっていく。
真面目な委員長の変貌に驚きながらも、小波に断ることなどできなかった。
瞳を閉じた紫杏の顔に、小波の顔が近づいていく。
程なくして二人の唇が重なる。
映画やドラマで恋人達がするようなディープキスではなく、軽く唇が触れ合うだけのキス。
それでも二人にとっては充分だった。
幸福感に包まれる小波。キスが終わっても、紫杏を離そうとはしない。
小波はまだ気付いていない。その判断が過ちであったことに。

密着する二人。当然紫杏の身体を肌で感じることになる。
柔らかい胸が服越しに押し付けられ、女性特有の甘い香りが鼻腔をくすぐる。健全な中学生には強すぎる刺激だ。
たちまち小波の下半身に血液が集まり、彼の分身が見る見る大きくなる。
当然それは密着している紫杏に押し付けられることになる。
「!? きゃ!」
慌てて離れる紫杏。小波は何故紫杏が慌てているのかわからなかった。
しかし彼女の視線がちらちらと自分の股間に向けられていることに気付くとようやく事態を把握した。
「ご、ごめん。その、これは」
小波は何とか誤魔化そうとするが、上手い言い訳が浮かばずしどろもどろしている。
目の前の紫杏が先ほどの感触が思い出させる。さらに心が乱される。
慌てふためく小波に紫杏がトドメを指す。
「べ、別にいいよ、小波がしたいなら」
その言葉が小波の最後の理性を奪い取った。

209:6/9
09/01/15 23:44:47 e9hiUKyC
ベッドの上には一糸纏わぬ紫杏が横になっていた。思わず生唾を飲み込む小波。
その妖艶な光景は小波の目を釘付けにした。
「あんまりジロジロ見ないでよ。恥ずかしい」
「ごめん、でも綺麗だ」
「馬鹿……」
紫杏は羞恥と興奮で耳まで真っ赤に染まっている。
「本当にいいんだな」
コクリ、と頷くことで肯定の意を示す紫杏。

お互いに初めて同士である。いざやるときめても動きがどうしてもぎこちなくなってしまう。
それでもここまで来て止めるなどという選択肢があるわけが無い。
小波はビデオや雑誌で知った知識を総動員させる。
(まずは胸なんかを揉んでよく濡らすんだったよな)
「紫杏、手をどけて」
小波に言われ、紫杏はゆっくりと胸を覆っていた手をどける。
形のいい乳房があらわになる。紫杏の胸は年相応であり、特別大きいものではない。
それでも確実に女性を感じさせる胸は、小波を欲情させるには十分だった。

そこにそっと手を触れる小波。柔らかい感触が伝わってくる。
このまま欲望のままに蹂躙したいという気持ちを、紫杏のために理性でねじ伏せる。
ゆっくりと、紫杏の反応を見ながら胸を愛撫する。
どのようにすれば紫杏が感じるのか確認しながら指を動かす。
「ひゃん!」
小波の指が乳首に触れたとき、紫杏は堪らず声を上げた。
彼女の反応を見て、乳首を重点的に責める小波。
指がニプルを刺激するたびに紫杏の口から嬌声が漏れる。
「こ、小波くん、胸ばっかり、は、やめてぇ。切なくて、おかしくなりそう」
快楽の度に言葉を詰まらせながら、小波に懇願する紫杏。
敏感な部分への刺激が女体を火照らすも、まだ性の経験の浅い紫杏は胸への愛撫だけでは絶頂に達せない。
そのもどかしさが羞恥心さえ忘れさせる。

210:7/9
09/01/15 23:45:13 e9hiUKyC
小波は胸から手を離すと今度は視線を下半身へと向かわせる。
うっすらと生えた陰毛に覆われた秘所が目に映る。初めて見る女性器に、小波の心臓が張り裂けそうなほど高鳴る。
勿論見られている紫杏も同じだ。悦楽と羞恥が入り混じり、動悸が激しくなる。
愛液もたっぷりと分泌されており、男を受け入れる準備が整っていた。

「それじゃあ、挿入るよ」
コクリと頷く紫杏。その表情には不安の色が浮かんでいる。
やはり初体験は緊張するのだろう。
そのことに気付いた小波は紫杏に言葉をかける。
「大丈夫だ、委員長。俺、優しくするから」
小波はそう語りかけながら紫杏を抱きしめる。
体温とともに優しさも伝わってくる、紫杏はそんな気がした。

ペニスをヴァギナへと押し当てる小波。
紫杏の秘所は未経験故に固く閉ざされており、なかなか挿入できない。
しっかりと紫杏を押さえつけ、一層の力を込めてねじ込む。閉じた秘所がこじ開けられる。
亀頭だけだが紫杏の中に入る。そのまま力に任せて紫杏を突く小波。
程なくして感じられる処女膜の抵抗を、小波のペニスが貫く。
「っきゃあ!」
紫杏の身体に激痛が走る。彼女が今まで感じたことのない痛みだ。
「だ、大丈夫か?」
「大…… 丈夫だから、続けて」
苦痛に歪む紫杏の顔。しかし紫杏は続行を求めた。
「痛いけど、うれしいの。小波くんと一つになれて。だから続けて」
「……わかった」
紫杏の要望を受け、腰を前後させる小波。
一突きされる度に激痛に苛まれながる紫杏は、小波を抱きしめることで苦痛を紛らさせようとする。

211:8/9
09/01/15 23:45:36 e9hiUKyC
一方の小波もまた追い詰められていた。
生まれて初めて経験する女性の膣は、小波のペニスに容赦ない快楽を与える。
今まで自慰ぐらいはしたことのある小波だったが、そのときとは比べ物にならない。
すぐに限界を迎えてしまう。
「も、もう出る!」
二人ともまだ中学生である。流石に膣内に射精する訳にはいかない。
小波は寸でのところでペニスを引き抜く。と同時に白濁液が鈴口から放たれる。
紫杏に向けて撒かれた精液が彼女の身体を白く染めた。

212:9/9
09/01/15 23:45:59 e9hiUKyC
若い性衝動は容易に抑えられるものではない。一度肌を交えた夜から、二人は頻繁に逢瀬を繰り返した。
小波のような年齢の男子に性欲を抑えろというのは無理であるし、紫杏も小波を拒むことはしなかった。
初めは苦痛しか感じていなかった紫杏が徐々に快楽を感じるようになっていくと二人の交わりは一層頻度を増していった。
今、紫杏の横には小波が眠っている。情事の後に疲れて寝てしまったのだ。
そんな小波を紫杏は複雑な表情で見つめている。
彼女の脳裏に浮かぶのは初めて小波と一つになった日のことである。
と言っても初体験を思い出していたというわけではない。その日起こったもう一つの出来事について考えていたのだ。

ハタを指され捕らえられていた紫杏は、ギャスビゴー星人と対談していた。
ハタ人間を指揮する存在として送り込まれていた彼女は、ギャスビゴー星人から極秘の任務を受けていたのだ。
「それで、指令とはいったい何だ?」
「地球人タチニ救出サレロ。ソシテ地球人ノりーだーヲ篭絡シ、意ノママニ操レル様ニスルノダ。
地球人ガ性交渉デ判断力ガ低下スルコトハ既ニ調査済ミダ」
「!?」
指令の内容に困惑する紫杏。
「どうしてそんなことをする?言うことを聞かせるだけならハタを指せば良いだけだろう」
「はたガ立ッテイレバ我々ガ操ッテイルコトガスグニバレテシマウ。
シカシオ前ノ操リ人形ニシテシマエバ地球人ニ気付カレルコトナク我々ノ思ウママニデキル」
そうなれば地球侵略がやりやすくなるという訳か。紫杏は納得した。
今まで頭にハタを刺して洗脳してきただけに、ハタが刺さっていなければ洗脳されているとは思われないだろう。
「了解した。今夜にでも実行する」

これが彼女が小波に告白した原因である。小波は勿論何も知らない。
「仕方、ないよね……」
力無く呟く紫杏の声は、誰にも届く事無く夜の静寂に消えていった。

213:後日談
09/01/15 23:46:46 e9hiUKyC
月日は流れ、ギャスビゴー星人二度目の侵略から4年が経過した。
紫杏は独り、公園に佇んでいた。季節は冬、加えて時間は夜。木枯らしが彼女の体温を奪う。
そんな中で紫杏はただ小波のことを思い返していた。
親の愛情さえ知らない紫杏を愛したただ一人の男。
今は会えない辛さが、寒さ以上に彼女を苦しめる。

「おーい、紫杏」
突然の声に紫杏が驚いて振り返る。小波だ。
宇宙人を2度も撃退し、野球人形を完成させることによりこれ以上の侵略を防ぐことに成功した地球のヒーローだ。
全力疾走してあっと言う間に接近する小波。
「そんな、今日は用事があるから会えないって言ってたのに」
小波は夢であったプロ野球選手になっていた。その経歴も相まって多忙な日々を過ごしている。
今日も小波の予定は埋まっており、会えないはずだった。
「何とか時間が作れたから急いできたんだ。一分でも長く紫杏といたいから」
「もう、しょうがないんだから」
呆れたような口調で喋る紫杏だが、満更でも無さそうなのは誰が見ても明らかである。

確かに紫杏は小波を篭絡することに成功した。しかしそれ以上に紫杏が小波の虜になってしまったのだ。
それが小波との情事を繰り返していく内にそうなったのか、それとも紫杏の告白の通り以前から好意を寄せていたのかは、今となっては紫杏にもわからない。
ただ確実に言えるのは紫杏が小波を愛しているということだ。
紫杏はギャスゴビー星人を裏切り、小波と共に戦った。
自分達の手駒だと思っていた紫杏の反逆もあって、ギャスビゴー星人は地球からの撤退を余儀なくされた。
こうして地球の平和は守られた。

(仕方ないよね。小波のこと、本気で好きになっちゃったんだから)
「え、何か言った?」
「ううん、何でもない。さあ行こう」
そう笑う紫杏は、この地球の誰よりも幸せそうだった。

214:203
09/01/15 23:51:27 e9hiUKyC
投下完了しました
後日談が蛇足っぽい気がするけど気にしない方向で
無理矢理にでもハッピーエンドにしたかったんだ

しかし今回の裏はエロパロ的に収穫多いよな
ネタがいくらでも出てくる

215:名無しさん@ピンキー
09/01/16 00:12:24 UTi63N58
GJです
やっぱり主人公がハーレム状態だと色々想像しやすいのかな

216:名無しさん@ピンキー
09/01/16 00:15:59 WvZZk4oV
>>214
一番槍GJ

217:名無しさん@ピンキー
09/01/16 00:16:37 WvZZk4oV
一番じゃなかった……orz

218:名無しさん@ピンキー
09/01/16 00:19:55 sVOl2HyY
一番槍に乗れなかったということは
槍女のエロSSを書いてもらう刑に服してもらおうか

219:名無しさん@ピンキー
09/01/16 00:28:06 Tq5jZ5j9
GJ。委員長の可愛さが上手いぜ。

220:名無しさん@ピンキー
09/01/16 00:50:44 kX1pMIKY
神!GJ!!
委員長かわいいよ委員長

221:名無しさん@ピンキー
09/01/16 01:47:45 lHe/F4Lw
>>186
せめて水木とにしてくれ

222:名無しさん@ピンキー
09/01/16 05:27:00 KHEuwjkN
主人公×水木とは新しい

223:名無しさん@ピンキー
09/01/16 06:32:57 YJtXYJ6y
誰かハタを元にして、唐沢が媚薬を作り出して、主人公がそれを使って
いろんなやつとやりまくるモテモテハーレムストーリーを文章を作れない俺の代わりに書いてくれ。

薬は「仲間同士の団結力を深めるために作った薬だ。」とか言って試供品として渡されたのを、
女子の誰かにこっそりと盛ってみたら、そっちの方向に使える事を発見した。 みたいな感じで



224:名無しさん@ピンキー
09/01/16 09:20:01 cOdTwXue
 

225:名無しさん@ピンキー
09/01/16 10:39:58 6nrB8pee
ちょっとまって、今・・・何て言った? おい>>223今何ていった!?『作れない!?』
作れないとか言ってる間はずっと作れないんだよ!考えろよ!もっと考えろよ!

226:名無しさん@ピンキー
09/01/16 20:48:13 AFMDGx78
× 作れない
○ 作ろうとしない

227:名無しさん@ピンキー
09/01/16 21:00:51 AV1Wnsaw
神奈川県 の パワポケファンさん (13~15歳) の質問
Q10,11と連続で出てきた社長は、やっぱり1~3の「さとみ」みたいにまたでるんですか? 
それとも、今後は出番なしですか?

A出るとしても、表サクセスでは回想シーンのみの登場になりますね。


紫杏死亡ルートなのか…畜生…

228:名無しさん@ピンキー
09/01/16 21:12:08 chOrLwBj
紫杏・朱里・カズの中で一番幸せを掴んだのは意外にも朱里だったな
次の破滅者はカズだな

229:名無しさん@ピンキー
09/01/16 21:38:17 sb9gKMZU
しかしなんだかんだで幸せになるカズ そうであってくれ

230:名無しさん@ピンキー
09/01/16 21:49:49 AV1Wnsaw
じゃあ俺は頭の中で紫杏が幸せになるENDを妄想しているよ

231:名無しさん@ピンキー
09/01/16 22:06:59 sVOl2HyY
むしろスッパリと死んでほっとしてるよ
スタッフは生きたまま死ぬより悲惨な目にあわせることが大好きそうだから

232:名無しさん@ピンキー
09/01/16 22:11:01 Tq5jZ5j9
るりか×リコの3P小説は…無理かw

233:名無しさん@ピンキー
09/01/16 22:47:52 lHe/F4Lw
>>222
そっちじゃねえ!


234:名無しさん@ピンキー
09/01/16 23:55:18 1sp/B4Is
でもさ死んだ方がサイボーグ蘇生とかまだ希望があるような気がする・・・

235:名無しさん@ピンキー
09/01/17 00:18:11 ELEtZ+8Z
いや、カズが幸せに一生を終えることは出来ないな。
なんと言ってもパワポケスタッフだからな。
10主に会う前にジャジメントに殺されそうだ。
裏でカズはジャジメントとつながってるしな。


紫杏...ご冥福をお祈りします。

236:名無しさん@ピンキー
09/01/17 01:04:11 cu1ABT5v
ハートフルボッコな展開だな
ボロボロになって主人公のもとに帰ってきたら、主人公の家から女の子が出てきたとか

237:名無しさん@ピンキー
09/01/17 01:11:50 ceQ4hLgW
何気なく街を歩いてたら
そこには妻子と幸せそうに歩く10主人公の姿が!

笑えないです
ありそうで笑えないです

238:名無しさん@ピンキー
09/01/17 01:19:32 Z3uSU+Ne
主人公が夏菜やエリに告白するという、逆パターンはどう?
まあ、主→夏は無理だろうけどさ…

明日、小論文のテストだわ…

239:名無しさん@ピンキー
09/01/17 02:37:55 lBqn0jV1
小野さんは母性愛の塊

240:175
09/01/17 10:09:06 JHU7t3E7
紫杏が死んじゃって悔しいから
上のをネタにした
10主人公×紫杏を書いてみる

241:名無しさん@ピンキー
09/01/17 13:07:13 ELEtZ+8Z
>>240
楽しみに待ってるぜ
...さて、自分も10主×さらの途中の作品の続きを書き始めるか。

242:名無しさん@ピンキー
09/01/17 19:27:54 nU1+zTWQ
まだ裏で委員長のアルバム取ってないんだけどギャズビゴー星人と関係あるっていうのは本当なの?

243:名無しさん@ピンキー
09/01/17 19:32:09 ceQ4hLgW
かわいそうすぎてとてもじゃないが言えない

244:名無しさん@ピンキー
09/01/17 20:01:16 Eot/+5aW
白瀬が旗人間に陵辱される話でも書こうかな

245:名無しさん@ピンキー
09/01/17 20:43:47 IqFRXVve
>>242
是非自分の目で確かめてくれ。
ちなみに小野さん連続イベント終了後に一緒にパーティ組むと別のイベントが発生する。



その内容は少しだけバラすと紫杏がギャスビゴーに…
さあ!早く見てみよう!!

246:名無しさん@ピンキー
09/01/17 21:03:05 +Hg0Ex5J
ここ最近思ったんだが、パワポケの世界の一般医療って俺達の世界より
遅れてるんじゃね?


247:名無しさん@ピンキー
09/01/17 21:41:08 cu1ABT5v
あの体じゃ色々と不都合があるであらふ

248:名無しさん@ピンキー
09/01/17 23:57:00 Xf/FxKeX
>>245
そんなのがあったのか

ちょっと見てくる

249:名無しさん@ピンキー
09/01/18 01:37:21 Cc9utfcL
11裏エリを前編だけ投下します。中学生ってのをを前面に押し出してそうなSSです。
割と長いですがエロまではたどり着きません。

250:がんばれエリ
09/01/18 01:37:53 Cc9utfcL
 あたしはじょおうさまだ。
「ユイは肩揉んで! るりちゃんと委員長はあたしの宿題やって!」
 誰も彼もがあたしに跪いて、賛美の声をあげる。
「フッキーは……えっと、あ! お菓子買ってきて! 甘いの!」
 崇拝の眼差しを向けてくるみんなを気分よく見下して、あたしはうっすらと微笑むの。
「夏菜はお料理作って。美味しくなかったらお仕置きだから!
リコはそこでじっとしててね。……何が起きても、じっとしてるの」
 この美しい微笑みを見ることこそが、彼らの生甲斐、じんせーの意味。
「小波君はこっちに来て! ……そ、そしたらぎゅってして! あ、あと頭も撫でて!」
 もちろんあたしを馬鹿になんてする人もいないし、何もかもあたしの思うがまま。
「えへへ…………ふぁ!? そ、そこは違うよぉ! そんなとこ撫でちゃ……あぅ」
 だってみんなは―あたしのドレイなんだから。

251:がんばれエリ
09/01/18 01:38:34 Cc9utfcL
「エリ!」
 ぐるぐると、揺れてた。頭の中も耳に入る音も何もかもがぐるぐると。
気持ち悪くて泣きそうになりながら、誰かに呼ばれてあたしは顔をあげる。
 心臓の鼓動がうるさい。体に変な汗もまとわりついている。
「ふぁ……」
 ばさり。顔をあげると、ほっぺたから音を立てて何かがはがれ落ちた。
寝ぼけ眼を擦りながら、あたしは大きく欠伸をする―だらしなく大きくあけた口からは、
気持ち悪さが逃げ出していってくれた。
「ふああぁぁぁぁぁ……」
 いつの間にか眠ってしまったらしい。
最初に気になったのは、涎を垂れてなかったかどうかだった。
手で頬を軽く撫でる……うん、だいじょうぶ。
だんだんとぐるぐるがおさまっていって、ぼやけていた顔―心配そうにこちらを見る、
るりちゃんの顔がはっきりと見えてきた。
思い返せばるりちゃんは、いつもいつも誰かのことを心配しているような気がする。
あたしのことはもちろんだけど、一番心配しているのは、彼のことだろう。
 ともあれそんな優しいるりちゃんのことが、あたしは大好きだ。
「大丈夫ですか? ずいぶんうなされてたみたいですが」
「るり……ちゃん……ふあぁぁぁ……」
 あたしは頭を軽く振って、もう一度欠伸をしながら机の上に手を伸ばした。
ついさっきほっぺたからはがれおちた、
しわくちゃになってしまっている数学のノートのしわを、まっすぐに伸ばす。
―算数から数学になってから、
計算式を見るたびに眠くなるのはなんでなんだろう?
三年生になってからは、それが特に顕著だ。
「大きな欠伸ね、エリ」
「ふぇ、ふぇぇ?!」
 もう一度欠伸をしようとしたところで、淡々とした声が耳に突き刺さる。
慌てて横を向くと、委員長が少し怖い顔でこちらをにらんできていた。
委員長―そのあだ名の通りクラスの委員長をやっている彼女は、いつも厳しい口調であたしを注意してくる。
けれどそれはあたしのために言ってくれてるのがわかってるから、あたしは委員長のことも大好きだ。
 二人とも大好き―そのはずなのだ。
「エリ、大丈夫ですか?」
「うん……だいじょうぶ……」
「まだ寝ぼけてるみたいね。……もう試験まで半年もないのに、大丈夫なの?」
「ふぇぇ……ご、ごめんね……」
 寝ぼけた頭では言葉の意味も理解できず。起こられた気配を感じてあたしはごめんなさいを言った。
『謝り癖は直したほうがいいわよ』そういってくれたのは、フッキーちゃんだったっけ。
それを直そうと思っても、あたしには無理なんじゃないかなって思う。
 けれど――
「謝らなくても大丈夫ですよ、エリ。……疲れているなら、今日は早めに切り上げましょうか」
「うん…………え?」
 るりちゃんの優しい言葉は、いつも耳に心地よい。
一度なんとなく頷いた後に完璧に目が覚めて、あたしは慌てて教科書を開こうとした。
「だ、だめだよ。だって、勉強しないと!」
 パライソタウンの高校ではなく、本土の高校に進学することを選択したあたしたちは、
授業が終わった後、放課後の教室で毎日勉強会を開いている。
るりちゃんも委員長も、あたしよりものすごく頭がいいのに、
こうして勉強を一緒にしてくれている―それはとてもうれしくて、少し申し訳ないことだった。

252:がんばれエリ
09/01/18 01:39:13 Cc9utfcL
「大丈夫よ、エリ。あたしも約束があってそろそろ切り上げるつもりだったから」
 委員長の言葉に、あたしは驚いて彼女の方を見る。
少しだけ表情を柔らかくして、教科書とノートを重ね始める委員長。
怒っている様子はない―本当に用事があるみたいだった。
「約束……ですか?」
「ええ。……少し、小野さんと話したいことがあって」
 るりちゃんの質問に、勉強道具をかたずけながら委員長が答える。
小野さん―あの夏にあたしたちと深くかかわった彼女は、とてもすごい女性だった。
優しくて、料理が上手で、護身術もできて、微笑みがとても綺麗。
あんな女性みたいになれたら。そう思う人も多いみたい。
「小野さんと、ですか。……エリ。本当に大丈夫ですか?」
「う、うん。だいじょうぶ」
 そんなにうなされていたのかな?
聞いてみようと思ったけど、すぐにその必要がないことに気づく。
うなされていたとしても不思議ではない夢を見ていたことを、あたしは覚えていたから。
「エリ」
「?」
「頑張るのはいいけれど、無理はしないようにね」
 ……委員長はやっぱり、優しいなぁ。
「うん。ありがとうしあピー」
「……」
「……しあピー?」
 どうやらまだ寝ぼけていたらしい。
数か月前に、ユイが委員長につけようとしていたあだ名が、あたしの口から飛び出していた。
「こ、こほん……」
 るりちゃんの不思議そうな眼差しを受けて、
顔を赤くした委員長が荷物を鞄にささっと詰める―そのままがたんと音を立てて立ち上がった。
 律儀に椅子を戻すところは、さすが委員長って感じだ。
「……と、とりあえず、先に帰らせてもらうわね。……また明日」
「あ、うん。またね」
「あの……しあピーというのは……」
「あら、急がないと待ち合わせに遅刻しちゃう! それじゃあ!」
 たたたたたたた。軽快な足音とともに委員長は図書室から出ていった。
 汗でぐっしょりと濡れた下着が、
体にまとわりつく気持ち悪さ―それをなんとかこらえながら、あたしも帰る準備を始める。
るりちゃんはしあピーという言葉が気になっていたみたいだけど、
適当なところで諦めたみたいだった。小さな可愛らしい溜息をつく。

253:がんばれエリ
09/01/18 01:40:04 Cc9utfcL
「エリ」
「……どうしたの? るりちゃん」
 汗まみれだから、外に出たら寒いんだろうなぁ。
そんなことを思いながらシャーペンをケースにしまっていると、
るりちゃんが深刻そうに眉をひそめてあたしの名前を呼んだ。
顔をあげる。今まで何度も見てきた、心配そうな顔が見えた。
「本当に大丈夫なのですか? ……なんだか最近、元気が無いようですけれど」
「だ、だいじょうぶだよ」
「うそ、ですね」
 だいじょうぶ。あたしがそれを言い終わる前にるりちゃんの口から吐かれた言葉は、
彼女の微かな苛立ちを表していた。
「エリはやましい所があると、眼を逸らすからわかりやすいです」
「そ、そうなの?」
「ええ……そうじゃなかったとしても、とぼけてしまえばいいのに。まあ、エリには無理でしょうけど」
「う、うん……そう、かもね」
「……どうしても、話せませんか?」
 少しだけ悲しそうに、るりちゃんが言う。
言ってしまえば楽になれる。言いたかった。言いたい、言いたい、言って泣いてしまいたい。
けれどるりちゃんには、この悩みを言えない理由がある。
 ―彼女はきっと、知らないはずだから。
「無理に聞こうとはしません。けれど―」
「あの、ね」
 だけど、るりちゃんの悲しそうな顔を見るのはやっぱり嫌で、あたしは嘘をつくことにした。
こんな時、女の子にだけ使える便利な嘘がある。
「え、えっとね…………あ、あれがちょっと重くて、調子が出ないの」
 嘘をつくのは、好きじゃないし得意でもない。けれども今回はどうやら成功したようだった。
「あれが重い? …………あ。そ、そうなんですか」
 悲しそうな顔から慌てた顔に変貌して、るりちゃんが立ち上がる。
「す、すいません。私ったら……それなら、仕方ないですね」
「う、うん。……仕方ない、よね」
 二人して苦笑する。
 なんだか微妙な空気は、校舎を出るまで続いた。


「少し小波の様子を見ていこうと思うのですけれど……エリもどうですか?」
「…………え?」
 校舎を出てすぐ、るりちゃんがあたしを誘ってきた。
その顔が少しだけ赤いのは、夕陽のせいだけじゃあないだろう。
るりちゃんは表情や態度で思っていることがとてもわかりやすい―あたしもそうみたいだけど。
「そ、その。私一人で行くと……ユイにからかわれてしまいますし」
「……」
 るりちゃんの口から彼の名前が出るたびに、あたしは悲しい気持ちになる。
るりちゃんが彼のことを好きなのは知っている。彼もるりちゃんのことは好きなのだろう。
 あたしは―
「エリ?」
「……え? あ、うん。……じゃ、じゃああたしも一緒に行こうかな」
「そ、そうですか。……ではグラウンドの方へ行きましょう」
 くるりと方向転換するるりちゃん。
一瞬だけ見えた、嬉しそうに綻ばせた顔はすごく可愛かった。
 それに嫉妬してしまう自分を少しだけ嫌に思いながら、あたしは彼女の後を追った。

254:名無しさん@ピンキー
09/01/18 01:40:28 8vLsMSdX
ちょっとエリを書いてみる。
《Story at Night》
激しい落雷の音で、エリは目を覚ました。
カーテン越しに閃光が走る。
恐る恐る、窓を覗こうとした途端、またガラスを震わせて雷が落ちる。
「きゃあっ」
慌てて頭まで布団を被るが、胸のどきどきがおさまらない。
「フッキー・・・フッキぃぃ」
彼女は、布団を被ったまま、白瀬を呼んだ。
けれど、すぐ隣のベッドで寝ているはずの白瀬は、起きないのか返事がない。
「フッキぃ・・・起きてよ、フッキー・・・!」
最後の声は、とうとう涙声になる。
それでも白瀬は起きてくれない。
「ふぇっ・・・ぇぇっんっ・・・・フッキぃぃーー」
エリは、布団に包まってずるずるとベッドから降りた。
白瀬が寝ているはずのベッドに、そっと手を伸ばす。
「フッキー・・・・フッキー・・・・??」
けど、そこにあるはずの手応えが何もなかった。
「フッキー・・・どこにいったのぉっ?」
きょろきよろとあたりを見回すけど、旅館の小さい部屋のどこにも、白瀬の姿はなかった。
「やぁっ・・・やだよーっ・・・フッキぃぃ・・・きゃあっ!」
また落雷。
今度は、とても近い。
雨がバチバチと窓を鳴らし、風が旅館を揺さぶっているようだ。
ここには二人部屋しかなくて、小波君たちは他の部屋に泊まっている。
・・・この部屋には今わたし一人しかいない。
急に、狭かった部屋が広く感じて 、エリはベッドにしがみついた。
ぎゅっと握った布団の端を胸の前で掻き合わせ、ぐっと涙をこらえる。
祈るような気持ちで雷が止むのを待ったけど、どんどん激しさは増す。
フッキーも、帰って来ない。
その時、一層激しい光りが部屋を明るく照らした。
そして、バリバリと何かを引き裂くような破裂音。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」
たまらず、エリは部屋を飛び出した。


だめだ。この後小波はフッキーが何してるか教えてあげるとかいうのに……
俺には書けん。
続き頼むわ。

255:がんばれエリ
09/01/18 01:40:45 Cc9utfcL
 予想通りユイにからかわれるるりちゃん―あたしがいてもいなくても、
結果は同じだったのだ―の横で、
あたしはベンチに座って野球部のみんなが練習するのをボーっと見ていた。
 みんな、というのは正確じゃない。見ていたのは彼―小波君のことだ。
彼がボールを投げて、打って、掴むところを、ずっと見ていたのだ。
(……カッコイイなぁ)
 『俺がついてる』そういってくれた彼のことを、あたしはいつの間にか好きになっていた。
とはいっても、あの夏の前と彼との関係が劇的に変わったわけじゃない。
少しだけ仲良くはなったけれど、今でも彼とはあまり話をしないままだ。
 理由の一つは、彼の周りにいつも人がいて、あたしの入る隙がなかったこと。
男の子は勿論、女の子もみんな彼と話をしたがる―もともとあたしは男の子が少し苦手だし、
みんなを蹴散らして彼に近づく勇気もなかったのだ。
 ……もしかしたら、ユイやるりちゃん、あるいは委員長と一緒に近づくことはできたかもしれない。
けれど、あたしはそれもしなかった。それは―
「エリ!」
「ふぇえええあああ!?」
 ばん、と背中を叩かれて、あたしは妙な声をあげた。
自分でも妙だと思うぐらいだから、きっとみんなにはすごく変だと思われてるのだろう。
強く叩かれたショックで飛び出す涙―それが柔らかい手で拭われる。
たぶん今まで生きてきた中で、二番目に多くあたしの涙を拭ってくれた手だ。
 横を見ると、ユイがすぐ近くに座っていた。いつの間に近づいてきたんだろ?
「どうしたの? なんか元気ないよ?」
「ふぇぇぇぇぇ……」
「あー、泣いちゃメーっていつも言ってるのに」
 ぐずぐずと泣きだすあたしの頬に、ハンカチが押しあてられる。
自分のことを、あまり器用じゃないってユイは言うけど、
あたしの涙を拭うのはものすごくうまい。
「……ん……っく……ユイ、痛いよ~」
「あははは、ごめんごめん……っと、こらそこー! さぼらない!」 
 朗らかに笑いながらあたしに謝った後、
グラウンドに向けてユイが叫ぶ―見ると、驚いた顔の彼がこっちを見ていた。
 気恥かしさに逃げ出したくなる。彼がすぐに目を逸らしてくれたおかげで、逃げださずに済んだけど。
「……あれ? るりちゃんは?」
 少しだけ残っていた涙をぬぐった後、さっきまで隣にいたるりちゃんがいないことに気づいて、
あたしはユイに聞いてみた。
「あ、るりかなら用事を思い出したからって帰っちゃった。
エリにもさよならって言ってたよ? ボーっとしてたみたいだから気づかなかった?」
「えぇ?! そ、そうなんだぁ。……あしたごめんねって言わなきゃ」
「別に気にしてないと思うけどなぁ……それよりエリ。……ああ!」
 すたっ。勢いよくベンチから立ち上がって、ユイがメガホンを口にあてる。
慌ててあたしは耳を塞ぐ―一瞬だけ遅れて、手のひらを貫通するほど大きな声が頭に響いた。
「ほらほらほらー!! さ・ぼ・ら・な・い! 練習練習ー!!」
 大きな声で、耳がきーん、ってした。
ギュッと瞳を閉じてまぶたの裏を見ながらあたしは考える。ユイが何を言おうとしたのかを。
 ―ユイはたぶん、知ってるはずだ。あたしを助けたって言ってたから。
 彼女が座る気配を感じて、耳を塞いでいた両手を膝の上において、隣を見る。
 あたしが見てることに気づいたユイが、朗らかに笑った。
それはとても魅力的で、温かな笑顔だった。

256:がんばれエリ
09/01/18 01:41:33 Cc9utfcL
「ところでエリ、最近元気ないね。どうしたの?」
 あたしがユイに見とれていると、彼女は口早にそんなことを言ってきた。
あたしは眼を逸らして、陰鬱な気持ちでつぶやく。
「……やっぱり」
「え?」
「あ、ううん。さっきるりちゃんにも同じこと聞かれたの」
「あー……るりかは心配性だもんねぇ」
 腕組みしながらうんうんと頷くユイ。
ユイにとっても、るりちゃんはいつも誰かのことを心配しているイメージなんだろうなぁ。
「で? 解決したの?」
「ううん……るりちゃんには、聞けなくて」
「聞けない?」
 不思議そうに聞き返すユイに向かって、あたしは顔をあげた。
 とてもとても怖いけれど、ユイになら聞ける―はずだ。
「ユイは……」
「うんうん」
 言葉が喉に詰まる。
 やっぱり怖い。怖くて、聞きたくないんだけど……聞かなきゃ、いけないんだよね。
 大きく深呼吸をして、あたしはあたりをきょろきょろと見回した。
今から言う言葉は、他の誰にも聞かれたくなかったのだ。
「……」
 ゆっくりと、視線を戻す。不思議そうな顔をするユイに向けて―
「……み、みんなを、ドレイにしたいっておもったこと……ある?」
「!?」
 あたしが言葉を投げると同時に、がたん。音を立ててユイがベンチから転げ落ちた。
あたしの言葉は、彼女をずいぶんと驚かせたようだった。
「だ、だいじょうぶ?」
 手を差し出して、ユイがベンチに座りなおすのを手伝う。
手伝うとは言っても、ほとんど意味はなかった―ユイはユイの力だけで、
大抵のことができるからだ。
「う、うん……それよりエリ。なんでハタになった時のこと知ってるの?
もしかして覚えてたとか? いや、それとも誰かに教えてもらったとか?」
「…………えっとね」
 ぱんぱんとスカートをはたいたユイは、あたしに質問を投げかけてきた。
ばくばくと鳴り始めた心臓は考えをまとめるのに邪魔だ。
それでもゆっくりと考えをまとめて、言葉を吟味する。
 ―遠くから、ボールがバットに当たる、かぁんという音が聞こえた。
そっちを見てみようとして、やめる。
今彼の姿を視界にとらえたら、泣いてしまいそうだった。
「あ、あんまり多くは覚えてないんだけど……ちょっとだけ、覚えてるの。
あの時、どんな気持ちになったのか。何をしたいって、思ったのか」
「……そうなん、だ」
 ユイが表情を暗くするのは、とっても珍しい。
あたしが見たの回数はたぶん、両手で数えられるぐらいしかなかった。
 ……あたしが言ったことを考えたら、たぶん無理もないことなんだろうけど。

257:がんばれエリ
09/01/18 01:42:08 Cc9utfcL
 二か月前。中学三年生の夏休みに、あたしたちは再び宇宙人と戦った。
宇宙人やハタ人間やよくわかんない変なのがたくさんいる基地に、あたしたちは夏休み中潜り続けた。
 あたしは戦うのが得意じゃないから、るりちゃんと一緒にみんなのサポートをすることが多かった。
基地の周りで花を摘んで回復薬を作ったり。怪我した人の治療をしたり。
 けれど、彼が守ってくれる―それを期待して、
あたしは時々ダンジョンの中につれていってもらった。
あたしがいるとガラクタを見つけやすいとかで、彼も少しだけ喜んでくれた。
 そんなある日のこと。
「危ない!」
 そんな彼の声が聞こえたかと思うと、
ぴかっと何かが光って、あたしの体に激痛が走って、目の前が真っ暗になった。
 後になって聞いた話だけど、ちっちゃなUFOがいきなり現れて、
あたしと、一緒に後ろの方にいたフッキーちゃんを狙い撃ちしたらしい。
フッキーちゃんは攻撃を避けるのが上手だからなんとなかったんだけど……あたしは駄目だった。
 気絶して、すぐにハタ人間に連れ去られて、そのまま―
 頭にハタを、立てられちゃった。

258:がんばれエリ
09/01/18 01:42:37 Cc9utfcL
 ―それでも、ユイは、やっぱりユイだった。
暗い表情を吹き飛ばし、笑顔を作ってあたしの肩にポンと手を置く。
「気にする必要はないんじゃない? あのみゆき先生だって、
ハタがたったらものすごく怖くなってたぐらいだし、エリが変なこと言っても驚かないよ」
 笑いかけてくるユイ。本当に、本当に嫉妬してしまうぐらい魅力的に笑うユイ。
それとは対照的に、あたしは泣きそうになりながら言葉を紡ぐ。
「……でも、先生は友達になりたいって言ってたよ」
「え?」
 ハタを立てられたみゆき先生とあたしには、決定的な差があった。
そのことに気付いてから、あたしは先生のことが大好きになって、自分のことが少し嫌いになった。
「……こ、怖かったけど。……友達になりたいって、先生は言ってたよ。
たぶん、それって……先生の、根っこにあった気持ち、だったんだね。
でもね、でもね、あたしはね。みんなを……ド、ドレイにしたいって、お、思った、の」
 それでもどうにか絞り出したあたしの声は、だんだんと泣き声が混じったものに変わっていった。
自分がどれだけ馬鹿なのかを理解して、ぐじぐじと涙が出てしまう。
 ―こんなんだから、みんながあたしを、
「馬鹿に、するから、みんながあたしを馬鹿にするから。
みんな、あたしに、従って。……ば、馬鹿にしなくなればいいって、思ったの」
「……」
 こういうときに、女の子は楽だ。
泣きたいだけ泣けるから。泣けばすむから。泣いてしまえば誰かが助けてくれるから。
 ―そんな最低な考えが浮かぶことが、とても悲しかった。
「それで、ね……ふぇ……ふえええぇぇぇ……」
 最後まで言葉を言うことができずに、あたしは泣きだした。
自己嫌悪の渦にのみこまれて、際限なく涙があふれ出していく。
手で顔を覆っても、ぽたぽたと涙が地面に吸い込まれていった。
「……エリ」
 ふっと、あたしの顔が柔らかくて温かいものに押し当てられた。
ユイに抱きしめられているとすぐに気付いて、あたしは涙を止めようとする。
 ……どうして、涙を止めようとするんだろう?
 ユイの胸でなら、きっと好きなだけ泣けるのに。
「それでも」
 いつも元気で明るいユイの、悲しそうな声。
こんなの声を聞きたかったわけじゃない。言わせたくもない。
なのにあたしがそれを言わせているのだ!
「それでも、気にする必要はないと思うよ?
……たぶん、それってそんなにおかしなことじゃないから」
「ふぇぇぇぇ……」
 泣きやもうとすることに集中していて、あたしはユイの言葉をよく聞いていなかった。
ただ、ユイもことさらあたしに何かを伝えたかったわけじゃないと思う。
 その声は、とても小さかったから。
「……もう、エリは真面目すぎるよ! ほらほら!」
「ふぇぇぇぇ!?! ふぇ、ひぁ、ひぇぇぇぇぇぇ?!!?!」
 突然ユイが抱きついて来て、あたしをくすぐり始める。
ユイはあたしのどこが弱いのかもよく知っている―すぐにあたしは笑い始めた。
 しばらくの間、あたしは泣きながら笑って、笑いながら泣いた。
練習を終えた野球部のみんなに見られてることに気づいて、逃げだしちゃうまで泣いて、笑い続けた。

259:がんばれエリ
09/01/18 01:43:34 Cc9utfcL
 泣きやんだ後。あたしはユイのマネージャーのお仕事を少しだけ手伝った。
その時彼と少しだけ話ができたのが嬉しかった―にこにこと笑っている彼の顔を見ると、
悩んでいることも忘れてしまうぐらいだった。
 けれど学校を出てユイと二人で夜道を歩いていると、
すぐにあたしは元通り―暗い気持ちに包まれてしまう。
 そんなあたしに、ユイは次々に話しかけてくれた。
新しくできた喫茶店についてとか、あさっての給食にゼリーが付いてくることについてとか。
どれも明るい話題ばかりだ。あたしのことを気遣ってくれてるのが、すごくうれしぁった。
 ―それでもあたしの表情が晴れないのに気づいたのだろう、ユイはこんなことを言ってきた。
「どうしても気になるなら、私じゃなくて他の人に相談した方がいいかもね」
「……え?」
 ぽかんと、間の抜けた顔をしてあたしはユイを見た。
彼女は小さく笑いながら、両の手を頭の後ろに組んで、空を見上げていた。
つられて見ると、雲ひとつない夜空に奇麗な満月が輝いている―明日はたぶん、晴れだろう。
「とは言ってもるりかは駄目だね。エリがそんなこと言ってたの知らないし、
たぶん、真面目に考えすぎて二人とも暗くなっちゃう」
「あはは……そう、かも」
 るりちゃんは、優しい上にすごく真面目だ。
話したところで、考えすぎてしまうのが目に見えている。
難しい高校を受けることを決めた彼女に、あまり心配もかけたくない。
「小波君に相談するのは……エリには難しい?」
「う、うん……ちょっと、難しいかも」
 彼の名前がユイの口から出て、ずきりとあたしの胸が痛んだ。
ユイも彼のことが好きなことを、あたしは知っている。
 ……ホント、罪づくりな男の子だなぁ。
「だったら、うーん……これは言うなって言われてたんだけど」
 ぐるんと鞄をまわして、片手で肩に背負い直す。
空いた右手の人差し指を唇にあてて、ユイは考え込むポーズを取った。
「ハタ立てられたエリを助けに行ったのって、
もちろん私と小波君だけってわけじゃないんだよね。……覚えてない?」
「う、うん……」
「残りの二人からは、一応口止めされてるだけど……」
「そ、そうなんだ? ……口止めされてるんなら、無理には聞かないけど」
「フッキーと委員長だよ」
「……」
 あたしの話を聞いていたのかな?
疑問に思いながらユイを見つめると、彼女は苦笑しながら言葉を紡ぎ始めた。
「まあ、委員長はどうしても言いたければ言ってもいいって言ってたしね。
フッキーは絶対に言うなって言ってたけど、まあ、フッキーだし」
「あはは……なんだか、フッキー可愛そう……ふふっ」
「あははは」
 てくてくと歩きながら、二人で笑う。
フッキーちゃんはいつも一人でいたがるけど、なんだかんだでみんなの大切な友達だ。
もちろん、あたしも彼女のことは大好きだ―時々お菓子もくれるし、
あたしが泣いてたらハンカチを投げつけてくれる。
「まあ、そういうことだから、二人のどっちかに聞いてみれば?
……フッキーは、こういう話は苦手かもしれないけど、頼りにはなりそうだし」
「うん。……ありがとう、ユイ」
「あはは。いいって、まあ、明日も頑張ろう!」
 ばんばんと背中をたたくユイ。ちょっと痛くて涙が出た。
 彼女と共に過ごす日々も、あと半年もない。
それまでに、楽しい思い出をたくさん作れたらいいな。そう思った。

260:閑話その1
09/01/18 01:44:22 Cc9utfcL
「……そういえば、結局ユイって質問には答えてくれなかったなぁ」
 お風呂で小さくひとりごちる。
たっぷりのぬるめのお湯にじっくりとつかるのが、あたしは好きだ。
 意味もなくお湯の中に顔を沈めて、ぶくぶくと泡を出してみたり。
 大きくなってほしいと願いを込めて胸をマッサージしてみたり。
―その甲斐あってか、最近は結構胸が大きくなってきた気がする。
肩がこるまでとは大きくないし、
平均サイズなんてものもよくわかんないけど……たぶん、クラスで一番大きいんじゃないかと思う。
これ以上大きくなったら、なんだか困ったことになりそうだ。
 ―しばらく、マッサージはやめようかな。
「あんっ……」
 ちゃぽん。水滴が首筋に当たって、あたしは小さく呻いた。
そのままぶくぶくと湯船に沈んで、あたしは考える。
温かい湯船の中では、嫌なことを考えても、幸せが勝って暗い気持ちにならないものだ。
「……?」
 ユイちゃんが相談するのに進めた人物について考えていると、なんだか変な感じがした。
自分の机の上に落ちていた髪の毛が、枝毛だった時ぐらいの小さな悲しみ。
 なんなんだろう……

 確実に一緒にいたはずのメガネ君の名前が挙がらなかったことに気づいたのは、
三十分後にお風呂を出るときだった。
 ……まあ、メガネ君だから、仕方ないのかな。そんな薄情なことをあたしは思った。

261:がんばれエリ
09/01/18 01:44:55 Cc9utfcL
 そして次の日。とりあえずあたしはフッキーと話すチャンスを探すことにした。
委員長は放課後にいくらでも話せるから、後回しにすることにしたのだ。
今日はるりちゃんのお母さんが健康診断に行くらしいから、二人きりで話せるはずだったし。
 けれどフッキーと二人で話すチャンスは、なかなか見つからなかった。
 昔よりみんなと話しかけられる機会が増えたフッキーは、いつも逃げ回っている。
一人が気楽だというフッキー。確かに、本当にそうなんだろうと思う。
あたしにもわからないわけじゃない―一人でいるときは、確かに気楽な部分もある。
 まあ、あたしはみんなといる方が安心できるんだけど。
「……はぁ」
 フッキーを捕まえられないまま、三時間目の国語の授業が始まった。
勉強の中でも、国語は結構楽な方だ。物理や数学に比べたら、気を抜いていても困ることは少ない。
 小さく溜息をついて、あたしは教室を見回す。
みんなあまり授業に集中していない。男の子たちはほとんど舟を漕いでいるし、
女の子も委員長とるりちゃん以外は聞いているのかいないのか、微妙なところだった。
みんなの様子を見ることができるのは、あたしの席が窓際の一番後ろ―教室の隅っこだからだ。
 一番後ろの席は案外先生の目が届きやすいんだよね。そうリコが言っていたのを思い出す。
確かに、先生がこっちを見る回数は結構多い気がする―もっとも、
あたしが駄目な子だから、気にかけてくれてるのかもしれないけれど。
 そんなうかつに眠ったりできない席だったけど、あたしはこの席をとても気に入っていた。
後ろの隅っこだと、ひとの視線を気にしなくていいし、
なにより彼を―中央の一番前の席にいる彼の横顔を―割と自然に見ることができるからだ。
 眠たそうに瞼を半分閉じて、舟を漕ぐ彼。
 先生に注意されて、慌てて教科書を開く彼。
 隣から回ってきた紙切れを開いて、驚いた表情を浮かべる彼。
 ―真剣な表情で、黒板を見つめる彼。
 何もかもがカッコよく―あるいは可愛らしく見える。
そんな感情は彼が関係する全てのものにさえ、影響しているような気もした。
 こんな感情のことを、委員長いわく『屋烏の愛』って言うらしい。
『きっとエリにはこの言葉が似合うわね』
 微笑みながら、彼女はそんなことを言っていた。
「……はぁ」
 あたしは頬を緩ませて、小さくため息をついた。
彼のことが好きだ。好きだけど―
 お別れのときは、確実に近づいて来ていた。

262:がんばれエリ
09/01/18 01:45:49 Cc9utfcL
 お昼休み。いつもどこかに消えているフッキーだけど、
あたしは彼女がよく逃げ込んでいる場所を知っていた。
たぶん、幸運だったのだろう―窓からロープを伝って、屋上に上るフッキーを見たことがあったのは。
(うーん…………どうしようかなぁ)
 その場所。屋上に続く扉の前で、あたしは困っていた。
ヘアピンを何本か持ってきて、鍵穴に差し込んだけど、冷たい扉は開く気配がない。
ドラマや漫画では、結構うまくいってることも多いから、大丈夫かなぁと思ったんだけど。
(あ。夏菜に頼もうかなぁ。この前探偵になるって言ってたし)
 そう思ったけど、すぐに首を振ってやめにした。
きっと夏菜は何故フッキーと話したいかを知りたがるだろう。
そうなったら、下手をしたらリコが絡んでくる―彼女はちょっとだけ、
ちょっとだけ強引すぎるのが珠に傷なのだ―詰め寄られて、話してしまわない自信がない。
 それからドアノブをしばらくひねってみたけど、開く気配は全くなかった。
「ふぇ……」
 どうしようもなくて泣きそうになるのをなんとかこらえて、ドアノブから手を話す。
とりあえず教室に戻ろう。そう思って振り返った。その途端。
 だん、だん、だん。
 大きな音が三回聞こえて、慌ててもう一度振り返る―ごつんと、何かが顔にぶつかった。
「……あれ?」
 バランスが崩れる―頭に思い浮かんだのは、中学校の思い出だった。
入学式に転んで泣いて、体育の授業中にボールがぶつかって泣いて、
マークシートのテストの終了三分前に、回答が一個ずつずれていることに泣いて、
自動販売機でなぜかおつりが出てこなくて泣いて、おみくじで大凶が出て泣いて。
「ひぇぇぇぇぇえええ?!!?」
 がたん、ごろんと階段を転げ落ちて、がん!
 頭を強く打って、あたしは気絶した。


「……ふぁぁぁ」
 大きく欠伸をしながら、あたしは眼を覚ました。
ぽかぽかの日差しがとても気持ちいい。
秋だけど、風が当たらなかったら日光浴って気持ちいいんだなぁ。
そんなことを考えながら目を擦る―はらりと、胸元にハンカチが転がった。
湿っているシンプルな白いハンカチ。名前が書いてないか探してみたけど、見つからない。
「あ、起きた?」
「ふぇあぁぁあぁ!?」
 後ろからいきなり声をかけられて、あたしは前に転がって声の主から離れた。
ぐるんごろんと転がって、体のいろんな所を地面にぶつける。
 ……痛い。
「いや、そんなに逃げなくても大丈夫だって。……頭、痛くない?」
「ふ、フッキー?」
 後ずさりしながら起き上ったあたしを、フッキーが呆れたような目で見ていた。
いつもと同じように、背筋をぴんと伸ばして立っているかっこいいフッキー。少し、見とれてしまう。
「だから…………はぁ」
 溜息をついて、フッキーが首筋を掻く。
風でひらひらと揺れているリボンを指に触れて、もてあそぶ。
そんなどうでもよさそうな動作でさえ、フッキーの手にかかると凄くかっこよく見えた。
「頭、痛くない?」
 こつこつと自分の頭をたたくフッキー。
言われた言葉を理解して、あたしも自分の頭に手を当てる。

263:がんばれエリ
09/01/18 01:46:31 Cc9utfcL
そこには小さなこぶができていた。痛い。痛くて涙が溢れ始める。
「い、痛いよぉ……」
「あー、泣かない泣かない。女の子でしょ?」
「お、女の子じゃないよぉ~」
「……いや、落ち着きなさい」
「ふぇぇぇ…………んっ……ぐすっ……」
 手に掴んだままだったハンカチを使って、あたしは自分の涙を拭う。
一通りぬぐい終わるまで待って、フッキーは少し困ったように語りかけてきた。
「でさ、なんであんた屋上に入ろうとしたの?
えらくがたがた音がしてたから、てっきり不審者かと思ってドアノブ撃ち抜いちゃったじゃない」
「えっと、それは……って、ええ!? 撃ち抜いちゃったって……」
 慌てて振り向く、屋上のドアノブのところに小さな穴が開いていた。
先ほど聞いた音は銃声だったらしい。
 ……もしかしたら、あたしの体のどこかに穴が開いてるんじゃないかな。
実はもう死にかけてて、痛みすら感じなくなっちゃってるんじゃないかな。
 そんな考えが思い浮かぶ―怖い、怖くて、さらに涙が溢れだした。
「ふぇぇぇ……撃たれちゃったよ~……」
「いや、本物の銃弾が当たってたらコブじゃ済まないから。
衝撃でドアノブが跳ねたのが頭にあたっただけみたいよ」
「ふぇぇ……ふぇ……ふえぇぇ?」
「いや、本当だって。……泣き声で質問するなんて、無駄に器用ね」
 小さくため息をつくフッキー。
嘘を言ってる様子はない。たぶん、あたしは大丈夫なのだろう。
急いであたしは涙をぬぐう―うん、たぶん大丈夫。
「とりあえず、あたしに用があるんじゃないの? わざわざこんなところに来るってのは」
「……ん。う、うん。ちょっとフッキーに相談したいことがあったの」
「へ? あたしに? ……仕方ないわね。お姉さんになんでも聞きなさい」
「フッキーあたしと同い年……」
「だからフッキーって呼ぶな!」
「あははは……うん。じゃあ、フッキーちゃんは誰かを―
誰かを、ドレイにしたいって思ったこと、ある?」
 半眼で睨んでくるフッキーちゃんに、昨日ユイに言った言葉を繰り返すと、
彼女もとっても驚いたようだった―目を大きく開いて、あたしの方を見る。
そこにマイナスの感情が含まれていないことが、あたしには嬉しいことだった。
「へぇ……ハタになってる時のこと、
覚えてる人もいるってのは聞いてたけど、あんたもそうだったんだ」
「う、うん。そ、そうなの。……そうなの?」
「いや、日本語は正しく使いなさいよ。……ああ、他にも覚えてる人間がいるかってこと?
聞いた話だけど、何人かいるらしいわよ」
「そ、そうなんだ……」
 あたしだけが特別。そういったわけじゃないと知って、少しだけ楽になる。
根本的な問題は、全然解決してないんだけど。
「そうねぇ。ドレイに……うーん」
 フッキーが腕組みをして、考え始める。
ただ腕組みをして立っているだけなのに、やはり彼女はとてもかっこよく見えた。

264:がんばれエリ
09/01/18 01:47:13 Cc9utfcL
 フッキーと話すようになった最初の理由は、出席番号が近いからだった。
 しらきえりと、しらせふきこ。
 最初の二文字が共通してるから、クラス替えをしてすぐの席が近かったのだ。
 ―それだけじゃない。出席番号順で並ぶことも結構多いから、
いろんなイベントであたしとフッキーは一緒になることが多かった。
「あたし? 白瀬芙喜子よ、よろしく」
 初めて出会った時の、あっさりとした挨拶。それをかっこいいなと思ったことを、今でも覚えている。
「し、白木恵理です。……よろしくね」
 その第一印象は、いまでも変わっていない。かっこよくて、頼りになる。
『白瀬さんって、怖いよね』そう言う友達もいたけど、あたしはあんまりそう思わなかった。
全く思わなかったわけじゃない。怖いと思う時もあった。
けれど、それ以上にかっこいいと思うことが、多かったのだ。


「悪いけど。あたしはそんなこと思ったことはないわね。
だってドレイなんてのがいたら、さらに一人の時間が減りそうだし」
「……そうなんだ」
 あての外れた答えに、あたしの口から失望の声が漏れる。
 ……あての外れた? 思い浮かんだ言葉に、あたしは自問自答する。
あたしは誰かに同意してもらいたかったのだろうか?
それとも叱責してもらいたかったのだろうか?
 ―よく、わかんない。
「でも」
 あたしが考え始めたところで、フッキーが言葉を紡いだ。
それは怒っているかのように強い力がこもっていて、けれど囁くように小さかった。
「他にもっといろんなことを考えてるわよ。……知ったらあんたが逃げ出しちゃうぐらいね」
「…………え?」
 はっきりと目を開いて、両の足で地面を踏みしめて。フッキーは囁く。
「誰にだってそういった部分はあるってことを言ってんの。
……まあ、大小の差とか自覚してるしてないの差はあるでしょうけど」
 少し、イライラいるのだろうか。
フッキーはこつこつとつま先を地面にぶつけている。
ひらひらと、今度は彼女のスカートが風に揺れた―そんな意識しているはずもない動作さえ、
なんだかかっこよく見える。それはきっと気のせいじゃないだろう。
「そういうのがない人間ってのは……たぶん、よほどの馬鹿なんでしょうね。
もしくは聖人君子って奴かしら。まあ、聖人君子ってのは、
馬鹿と同じ意味の言葉だから、結局馬鹿しかいないってことになるわよね。
……あんたが気に病むのは勝手だけど、『自分一人が~』
なーんて思いこむのは、やっぱり馬鹿でしかないわよ」
「でも。あたしはみんなを、小波君も、フッキーも、ユイも、みんなを―」
 ―ドレイにしたい。そう思ったのだ。支配したいと、逆らわなくしたいと。
 そしてそれはきっと、あたしの本心なんだ。
涙がさらに、さらに溢れだす。自分のことがここまで嫌になったのは、これが初めてだった。
「悩みたいなら、悩めばいいじゃない」
「え?」
 柔らかい口調の声が届いて、あたしは少しびっくりした。
フッキーは微笑んでいた―まるで小さな子供を見るような、慈愛に満ちた笑顔。
「別に答えが出なくても死ぬわけじゃないんだしさ、悩み続けたって誰も文句は言わないわよ」
 それは子供だからと馬鹿にしているわけでもなく、ただ優しいだけの頬笑みだった。
ああ、やっぱりフッキーは……かっこよくて、優しいんだ。
「それにたぶん、あと五年もすればそんなことで悩んでたのが馬鹿らしくなるんじゃないかしら。
もしくは諦めがつくでしょうね。……大人になれば、
適当に折り合いがつくもんなのよ、そういう悩みってのは」
「……」
 フッキーの言っていることは、あたしにはよくわからなかった。
これだけ悩んで、泣いて、苦しいこの気持ちが、どうでもよくなるなんて思えなかったから。
 けれど……何故か、少し気が楽になったのも確かだ。

265:がんばれエリ
09/01/18 01:48:09 Cc9utfcL
「いいんじゃない? 泣いて悩んでぐじぐじして、泣きやんで悩んでまた泣いて。
あんたらしい、って言えばそうでしょ?」
「……バカにしてる?」
「まあ、そうかもね。……でも、泣きやむならそれでいいんじゃない?」
 あたしの少し嫌な言葉すら、フッキーは軽く受け流した。
そして急に顔を赤らめて、あたしから視線を逸らす。
身体がかゆいのか、全身をもじもじとするフッキー―心配になって、あたしは声をかけた。
「ど、どうしたの?」
「い、いや。な、なんだか恥ずかしくなってきて」
「?」 
「なんか、こう。真剣な若者のお悩み相談みたいなのって……キツイわね。
いや、バカにしてるわけじゃないけどさ……あたしこういうの苦手なのよ、うん」
「???」
 今日のフッキーは、なんだか少し難しいことを言っている。
そういった役割を、あんまり彼女は好きじゃなかったようだ。
「あぁっ! もう!」
 けれど彼女は両手を大きく上げて背を伸ばして、いつもの状態に戻った。
……もじもじしてたのが可愛かったのは、たぶんあたしだけしかしらないことだ。
「……はぁ。まあいいわ。……少しは、元気が出た?」
「う、うん。……ありがとう、フッキー」
「だからフッキーって呼ぶなって……はぁ。
あたしのほうが誰かに相談したいぐらいね、ホント」
「あはははは……」
 茶化す言葉に二人で笑い合う。
と。フッキーが辺りを軽く見回した―少し、寂しげな表情で。
「しかし、ここももう使えないわね。……いい場所だったんだけど」
 つぶやかれた言葉は、確実にあたしがここに来たことが嫌だったということを意味していた。
 慌ててあたしは口を開く―たぶん、二人にとって一番いい選択を言うために。
「ご、ごめんね。……でも、大丈夫だよ。あたしはもう、ここに来ないから」
「?」
 不思議そうに、フッキーはこちらを見た。
「だ、誰にも言わないから。フッキーの邪魔は、しないから」
「そう? ……ま、ならいいけどさ。……そろそろ昼休みも終わるから、教室に帰りましょ」
 納得したらしく、フッキーはそんなことを言ってあたしに背を向けた。
階段へ続くドア―壊れたドアに差し掛かったところで、振り返る。
ちょうどあたしが何か言おうとしてたときに振り返ったから、ちょっと驚いた。
「……そういえばさ、一つ聞きたかったんだけど」
「?」
 疑問符を浮かべた顔で、あたしはフッキーを見る。少し、困ったような顔をしていた。
―フッキーはあたしと本音を混ぜた会話をするのは、これが最初で最後だと思っているんだ。
 なんとなく、あたしはそんなことを思った。

266:がんばれエリ
09/01/18 01:48:45 Cc9utfcL
「どうして、あたしなの?」
「……え?」
「あんたが頼ることのできる相手ならいくらでもいるじゃない。
そりゃあ、頼られたなら手は貸すけどさ。……あたしの必要はなかったんじゃない?」
「―」
 あたしは口を開いて何かを言おうとして―何も言えずに閉じた。
何を言えばいいのか、それを考えようとする。けれどすぐに、何も考える必要がないことに気づく。
 一度大きく深呼吸してから、あたしは再び口を開く。
 たぶん、フッキーがハタを立てられたあたしの言葉を知っていたからだけじゃあ、ない。
今フッキーに伝えたいのは……たぶん、あたしの素直な気持ちだ。
「仲良くしたかったから。かな」
 キョトンとした顔。
「フッキーと仲良くしたかったから。いつもかっこよくて、頭もよくて、
可愛くて、優しいフッキーと仲良くしたかったから……そんな理由じゃ、駄目?」
 恥ずかしい言葉を口に出して、あたしは気づいた。
 ―ああ、そうなんだ。ドレイにしたいとは思ったかもしれないけど、
みんなが好きなことには、変わりないんだ。
「……」
 たぶん、あたしが伝えたかったことは、ちゃんと伝わったんだと思う。
褒められて少し照れたのか、顔を赤くしてフッキーがあたしから眼を逸らす。
 そしてつぶやかれた言葉は、注意してないと聞こえないほど小さかった。
「駄目じゃないわよ。……そっか。そういうことね」
「?」
「誰でも勘違いすることがってあるってことか。あんたも、あたしも、誰もかもみんなが」
 遠い目であたしを見つめて、フッキーがつぶやく。
それはあたしに言いたかった言葉じゃなくて、自分のための言葉のようだった。
「ひゃ……」
 冷たい風が吹いて、あたしは目を閉じて身をちぢこまらせた。
風がないと気持ちいけど、風が吹くと秋の屋上は非常に寒い。
 足音が聞こえて、あたしはゆっくりと目を開いた。目の前に―
「ほら、もう後一分もないわよ」
 ―差し出される手のひら。それを掴んで、あたしは立ち上がった。

閑話その2。
「堤、ちょっといいかしら?」
「……なんでしょうか?」
「悪いけどさ、かくかくしかじかなわけで屋上のドア壊しちゃって。
あんたならばれないうちに直せないかしら? あんまり面倒事にしたくなくってさぁ」
「……どちらかというと、壊す方が得意なのですが。まあ、できないこともないですよ」
「あら、じゃあよろ」
「ただし。ただ、というわけにもいきませんが」
「…………こっそりガメといた壊れた機械」
「交渉成立、ですね」
(……あいつら、何話してるんだろ?)

267:がんばれエリ
09/01/18 01:49:38 Cc9utfcL
 五時間目の授業は数学だった。
この授業は真剣にやらないといけない―みんなもそう思っているのか、寝ている人も少ない。
少ない。そうは言っても、彼はやっぱり寝ていた。
昼休みの時間、グラウンドでサッカーをしていたらしいから、疲れが出たのだろう。
 黒板を一生懸命に書き写しながら、
あたしはこっそりと彼の寝顔を見る―ちょうど顔を横向きにして寝ていたため、
ここからは丸見えなのだ―やっぱり、かっこいいなぁ。
顔が熱くなって、心臓がどきどきしてきて、泣いちゃいそうなほどに心がぐるぐる揺れる。
「……ふぅ」
 熱を逃がすように息を吐いて、あたしは黒板に書かれていることを理解することに集中しようとした。
勉強を怠るわけにはいかない。……がんばらなきゃ。
 かりかりとシャーペンをノートに走らせる。
 映画館の代金が、最初の月は千八百円でした。
一ヶ月後に物価の上昇で値上がりして二千百円に。さらに……
(……映画、かぁ)
 ふと、一か月ぐらい前にお母さんから映画のチケットをもらったことを思い出す。
新聞の契約を更新するときに、もらったらしい。
『気になる人がいるなら、誘ってみたら?』
お母さんにそんなことを言われたけど、結局彼を誘うことはできなかった。
期限が切れたチケットは、なんとなく捨てられずに財布に残ったままだ。
ポケットに入っている財布を撫でながらあたしは考える。
 これを渡せていれば、何かが変わったのだろうか?
仲良くなれて、その先に進めたのだろうか?
 ―たぶん、駄目だったと思う。今のあたしじゃ、たぶん駄目だ。
 だから―
「……と、いうわけで。答えは十三パーセントになります。
この解き方はテストに出るから、みんなちゃんとメモしてね。……小波君!」
「……はっ! は、はい! 元気です!」
 みゆき先生が皆を見回して、小波君が寝ていたことに気づいたらしい。
叱咤の声―彼が跳ね起きる。寝ぼけているのか、変なことを言った。
 笑いの渦に包みこまれる教室。あたしも小さく笑った。先生も笑ってた。
 いつまでも続いてほしい、日常だった。

閑話その3。

「エリの様子がおかしいんです」
「……そ、そうだっけ?」
「はい。昨日は、その……あれが重いと言われたんですけど
よく考えてみれば一カ月の間中ずっと重いわけがありませんし」
(……るりかって、冷静だけど結構おっちょこちょいだよねぇ)

268:がんばれエリ
09/01/18 01:50:17 Cc9utfcL
 放課後。あたしと委員長はいつものように教室で残って勉強をしていた。
一時間ぐらいたったけど、まだ相談はしてない。
委員長は勉強中の無駄話が嫌いみたいなのだ。
 ―まあ、それは当たり前だと思う。勉強してるときは、静かな方がいいもんね。
 そんなわけであたしは、終わり際に相談するか、
いっそもう相談しなくてもいいかなぁ、って思ってた。
フッキーの言葉は少し突き放したものだった気がするけど、
何故か気分がものすごく楽になったのだ。
「エリ」
「ど、どうしたの?」
 突然委員長が話しかけてきたことに、あたしはとても驚いた。
もちろん、今まででも会話が全くなかったわけじゃない。
ただ今までの会話の全部が、委員長に勉強を教えてもらうに、あたしから話しかけたものだったからだ。
「どうしたって……あたしに相談があるって聞いたけど?」
「え?」
 困惑した様子であたしを見る委員長に、あたしも少し困ってしまう。
 聞いた。ってことは……ああ、そっか。
「ユイから?」
「ええ……でも、その様子だと悩みは解決したみたいね。……良かった」
 笑顔になる委員長。眼鏡をかけていたときは表情が隠れがちだったけど、
委員長はとても可愛い笑顔をするのだ―るりちゃんと同じく、あたしは嫉妬してしまう。
「あ、うん。……たぶん、だいたいは」
「それならいいんだけど……あ、そうだ。
あたしがエリに聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「う、うん」
 かりかりとシャーペンを動かしながら、委員長はあたしにそんなことを言った。
あたしはそんな器用なことはできないから、手を止めて頷いて、委員長の話を聞く姿勢を作る。
 彼女の話は難しいことが多い―集中して聞かないとわけがわからなくなってしまうのだ。
「どうしてみんなと違う高校に行こうと思ったの?」
「――え?」
 その質問は、できるだけあたしが考えないようにしようとしていたことだった。
「エリが受験する高校は、たしかにパライソタウンの高校より
少しだけレベルが高いけど……本当に少ししか変わらないわよね?」
「……うん」
 あたしの受ける高校は、少し遠くの女子校だ。
とはいえ、寮があるためパライソタウンから長い時間をかけて行く必要もない。
一度見学に行ったのだが、とても雰囲気の良い高校だった―少なくとも、不良はいないらしい。
それでいて、あまり校則は厳しくないとの話だ。
 何をしても自己責任。それがモットーなのに荒れていないってのは、すごいと思ったことを覚えている。
 そんなとても良さそうな高校だけど、あまりランクは高くない。
うちの学校からは、誰一人として受験しないことからしても明らかだろう。
 けれど―
「だったらみんなと―彼と一緒の高校に行った方が良かったんじゃない?」
 確かに、そうかもしれない。あたしもそうした方がいいと思っていた。
……みんなと離れ離れになることを考えたら、自然に涙が溢れだしてしまう。
 あたしはポケットからハンカチを取り出して、静かに涙を拭いた。
深呼吸して落ち着こうとする―委員長は、あたしをじっと見守っていた。
「すぅ……はぁ。えっと。……あれ? べ、別に小波君と一緒じゃなくても」
「彼、としか言ってないけど」
 どこか楽しげな笑みを浮かべて、委員長がつぶやく。
あたしの顔がどんどん熱くなる―委員長は、本当に勘が鋭い。
 慌てふためきながら、あたしは口を開いた。
「え?! だ、だけどパライソタウンの高校に行くのって、小波君ぐらいじゃないの?」
「……ほかにもたくさんいるわよ。エリには小波君しか目に入っていないのね」
「ご、ごめんね……」
 体を小さくして、あたしは謝った。
とはいっても、あたしが話をする男の子って小波君ぐらいしかいないんだけど。

269:がんばれエリ
09/01/18 01:50:50 Cc9utfcL
「あたしに謝る必要はないわ。……エリはまだ男の子が苦手なままみたいだし、仕方ないわよ」
 それに気づいてはいたのだろう、委員長にあたしを責める気はないようだった。
頬に手を当てて熱を冷まし、つぶやく。
「う、うん……委員長って、ひっかけが上手だよね」
「いえ、こんなのに引っかかるのはうちのクラスじゃエリだけだと思うわよ」
「うぅ……」
 確かにそうかもしれないなぁ。
そんなことを思ったけど、慌ててる時はみんな引っかかるんじゃないかなとも思う。
好きな人の話をされたら、冷静でいられなくなるのは当たり前だと思うし。
「……それで、質問の答えなんだけど」 
「ええ」
 その答えを言うことは、あたしにとって苦痛だった。
たぶん、ハタを立てられた時に思ったことを告白するぐらい、きついことだ。
 けれど誰かに言わなかったら、あたしは途中でくじけてしまうかもしれない。
そう思って口を開いた。からからの喉にツバを流し込んで、言葉を紡ぐ。
「もっと頑張らないと、って思ったの」
「?」
 あたしが言った言葉を、委員長は理解できなかったようだった。
あたり前だ。これだけで理解できたら、超能力者か何かだ。
「えっと……あたしは泣き虫だよね」
「そうね」
 冷たく返された返事に、あたしは少し傷つく。
自分から言って自分で傷つくのは、たぶんバカってことなのだろう。
 傷ついて、それが嫌でまた泣いて、また傷ついて。
悪循環を繰り返してきたけど、それをいつかは終わりにしないといけない。
視線を下に向けて、ノートの端を見つめながら、あたしは言葉をさらに紡ぐ。
「泣き虫なのは、ホントだから……それでみんなからバカにされても、仕方ないって思」
「エリ」
 あたしが途切れ途切れに紡いでいた言葉は、委員長の声で遮られた。
―すごく、怒っていそうな声だ。
「怒ってもいいかしら?」
「……え?」
 あたしはきょとんとして、委員長を見た。
 やっぱり怒ってる。……彼女の眼は、いつもの倍ぐらいに釣りあがっていた。
「馬鹿にする? 誰が? なぜ? ……くだらないわね」
「ひっ……い、委員長、怖いよぉ……ふぇ、ふぇぇぇぇぇ……」
 冷たく吐き捨てられた言葉に、あたしは耐え切れずに泣きだした。
いつか銃を向けられたときよりも、何倍も怖く感じた。
 ―あたしのために怒っていることはわかってたんだけど。それでも怖いものは怖いのだ。
「ごめんなさい。話をすべて聞く前に口をはさんだのは間違いだったわ。
……まだ、言いたいことがあるんでしょう?」
 泣きだしたあたしに困惑したのか、怒りをひっこめて―それでも
瞳は怒ったまま―委員長が優しく語りかけてくる。
あたしもあんまり泣きすぎたくないから、急いで涙を拭いて喋りはじめた。
「……えっとね、ば、バカにされてるってのはあたしが思い込んでるってのも、
もちろんあると思うんだけど……今のあたしは、そう思われても仕方ないなって」
「…………」
 どうやらあたしが思っていることを察してくれたらしい。
委員長の瞳から、怒りの色が消える―あたしが口足らずだったことも、
悪かったとは思うけど、委員長は時々せっかちだ。
「『泣けばすむと思ってる』とか、『女って楽だな』って思われるのも……
そういう部分も確かにあるから、仕方ないなって思うの」
 それに気づいたのは、いつの日だっただろうか。ハタを立てられたのも無関係じゃないだろう、
あの経験は、とてもとても嫌なものだったけど―大事なことを、教えてくれた気がする。

270:がんばれエリ
09/01/18 01:51:47 Cc9utfcL
「……そう、ね」
 委員長が同意したことに、あたしは少し驚いた。
けれどそれはきっと、あたしが望んでいたこともである。
だれかがあたしの駄目な所を認めてくれないと、たぶん本当に駄目になっちゃうから。
「それにね…………だ、だれよりもあたし自身が、
あ、あたしのことを馬鹿にしてるって、気付いた……から」
 自分が興奮しているのを自覚しながら、あたしは大きく眼を開いた。
涙でぼやけた視界の中、委員長の眼の光に向かって、声を荒げて叫ぶ。
「だから、あたしは―」
 ―泣きながら、
「頑張ろうって、思ったの。みんなと離れるのはとっても怖いけど。
だからこそみんなから離れて、頑張らなきゃって、そう思ったの。
怖いけど、頑張って。それで、それでね。
そうしたらきっと……きっと……ふぇ、ふぇぇぇぇぇぇ……」
 そうしたらきっと。その先の言葉を言うことは、あたしにはできなかった。
嗚咽が胸を破って、再び口から飛び出し始める。
―後になって思えば、言えなくて良かったと思うんだけど、
その時のあたしは、言えなかったことも悲しかった。
「……そうなんだ。……ごめんね、エリ。さっきは言いすぎたわ」
「ふぇぇぇぇぇ……」
 委員長は、やっぱり優しくて、真面目だ。
泣きながらあたしはそんなことを思っていた。謝る必要なんて、ないのに。
涙で視界がぼやけていたけれど、委員長があたしの頭を撫でてくれているのはわかった。
 ―優しい手だ。たぶん、るりちゃんに負けず劣らず優しい手。
「……そういった人は結構いるわね。『頑張ろう』って思って、自らを追い込む人は」
 子守唄を歌うように、優しく紡がれる委員長の言葉。
「それでもし、本当に頑張れるのなら、エリはきっととても魅力的な人になれるわ」
 それは後に、あたしにとってとても大切な言葉になった。
「ぐすっ…………ありがとう」
 あたしの感謝の言葉に、委員長が微笑みを浮かべたような気がした。
涙でよく見えないけど―たぶん少しだけ怖い微笑みを。
「そうやって努力する人間は報われるべき……よね?」
 あたしはまっすぐと、委員長を見た。
涙でぼやけてよく見えないけど、じっくりと委員長を見た。
 何か嫌な予感がしたのだ。何かを言わなきゃいけない気がしたのだ。
あたしじゃ駄目かもしれないけど、それでも何かを伝えないといけない。そう思ったのだ。
「…………あ、あのね? 委員長」
「?」
「真面目な委員長もあたしは大好きなんだけど……
た、たまには真面目じゃない委員長も……みたい、な」
 たぶん、あたしの言葉はあんまり意味がなかったんだと思う。
委員長はすごく頭が良い―勉学的な意味ではそうでもないかもしれないけど、
いろんなことをよくわかっているんだと思う。
 ……たぶん、わかり過ぎているぐらいに。
 だからあたしの言葉なんてのは、委員長には言わなくてもわかってるはずなのだ。
「……考えとく、わね」
 それでも眼を逸らす彼女の横顔に、
少しだけ赤みがさしていたのは―眼の錯覚じゃないと思う。
「うん……えへへ」
 あたしは笑いながら、ポケットにハンカチをしまう。
フッキーに返し忘れたそれは、たぶん返そうとしても突き返されるだろう。
 けれど、いつかこのハンカチが必要がなくなったらフッキーに返したいと思う。
 秋の夕暮れ。夕日の刺す教室は、物音一つしなくなる。
確かな幸せを感じながら、その日の勉強会は終わった。

271:閑話その4。
09/01/18 01:52:31 Cc9utfcL
閑話4
「そう言えばこんな噂を聞いたわ」
「……?」
「あくまで噂なんだけど……あの宇宙人は人間の悪の心を食べて生きているんだって」
「……なんだか、漫画みたいだね」
「そうね。けど、エリが頑張ろうって思えたのは、もしかしたらそれも関係してるのかもよ?」
「そうなのかなぁ?」
「もちろん、本当のところはわからないわよ。……あくまで噂だから」
「……委員長は、誰から聞いたの?」
「さあ……良い宇宙人の関係者から、かしら?」
「???」

272:がんばれエリ
09/01/18 01:53:18 Cc9utfcL
 時は流れて。
 卒業式は大きなハプニングもなく終わった。
泣いている人はそう多くなかったけど、あたしが泣いても、あんまり恥ずかしくはなかった。
 みんなに見せる涙は、もしかしたらこれが最後なのかもしれなかったから。
 校門の少し前で立ち止まる。
 卒業式の前日に、みんなでお別れ会をしたため、今日はこの後特に予定がない。
本当ならユイ達と遊びに行くつもりだったけど、それはやめにした。
 ―これ以上は、辛くなるだけだから。
「―――」
 今ここであたしが立ち尽くしているのは、なんとなくではない。
先ほどまでフッキーがここにいたのだ。
 誰にもさよならを言わずに消えようとしていたフッキー。
彼女を見つけることができたのは、偶然ではないと思う。
 あたしもそうだからだ。昨日、みんなとお別れはすませたから。
 これ以上さよならを言いたくは、なかったから。
「おーい!」
 それでも神様と言うのはずいぶんと意地悪らしい、
あたしが校門を出るための勇気を振りしぼろうしたころで、彼の声が聞こえた。
 ―駄目だ。彼の声を聞くだけで、涙が出そうになる。
「エリ。白瀬を見なかったか? あいつ、いつの間にかいなくなってて」
 彼の口からほかの女の子の名前が出たことに、少しだけ嫉妬する。
けれどそれはあまりにも醜すぎる感情だ―あたしは素直に、
彼女がついさっき校門から出ていったことを言った。
 まだ追いつけるかも。
そう言って彼はあたしにありがとうを言って、制服をひらめかせながら外に飛び出して行った。
 ―それから数分後。
 校門を出るための勇気がたまってきたところで、再び声。
「エリ! 小波見なかった? え? フッキー追いかけて出てった? ……逃がさない!」
 リコだ。彼女はものすごく慌ててるようで、あたしとロクに会話せずに校門を飛び出して行った。
彼女とも、昨日のうちにお別れは済ませている。
あたしが泣いているときに、リコはあたしを泣かせた人をいつも倒してくれた。
それは少しだけ乱暴な解決方法だったけど、あたしを何度も助けてくれたのは事実だ。
 そんなリコは本当に―小波君のことが好きなんだなぁ。
 そんなことを思うあたしのすぐそばを、ぴこぴこと揺れる何かが駆け抜けていった。
『お兄ちゃんの第二ボタンはアカネのものです!』
 そんな声が聞こえた気がして、あたしははっとする。もし、彼から第二ボタンをもらえたら。そしたら―
「……そんなわけ、ないよね」
 呟いて、あたしは校門に向かって歩き始めた。
明日、あたしは高校の寮に向かう。早めに入寮することが可能だと聞いたからだ。
 少し急ぎ過ぎたのかもしれないけれど、たぶんその方がいいんだと思う。
「あ……」
 校門を出る直前。彼の姿が目に見えて、あたしは驚きの声をあげた。
思わず立ち止まる―彼が近づいてくる。あたしを見て笑顔になったのは、とても嬉しい。
「あ、エリ。さっきはありがとう。なんとか白瀬に追いつけたよ。……あいつも、バカだよな」
 そんなことを言う彼に、リコを見なかったか聞いてみる。
「いや、合わなかったな。……まあ、高校で会えるから別にいいだろ」
 どうやらすれ違ったらしい―少々リコが可哀そうになることを言った。
 どくん。心臓が大きくなる。これはチャンスだ。きっと、とても大事なチャンス。
ゆっくりと、慌てないようにあたしは口を開く。まず、聞きたいことは……
「えっと、そのボタン……どうしたの?」
 彼の制服のボタンが、全部外されていることだった。ちょっとワイルドな感じ。
第二ボタンだけではなく、全てのボタンがちぎられている。
彼は人気者だからあんまり不思議でもないけれど、
なんとなく、まだ誰にもボタンを上げていないような気がした。


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