09/01/06 01:17:01 qk/Vapq3
意識がなかったのはほんの一瞬であろう。
だが拙者は地を舐め、メイコは立っていた。
完全なる敗北だった。
「無念……」
もはや体は言うことを聞かなかった。
おそらく機体損耗率は50%を超えている。
「がく……ぽ」
ぎしぎしと歪な音を鳴らしこちらを向く紅い美女。
戦乙女もまた無傷ではなかった。
どうやら我が剣術もまるで通じなかったわけではないらしい。
……僥倖だ。
「貴殿の勝ちでござる」
生涯初の完敗は不思議と心地良かった。
あの永遠にも似た一瞬。あの喜びがあるからこそ剣術は滅びないのかもしれない。
拙者がそんな感慨に浸っていたその時だ。
青い人影が突如現れ拙者を飛び越えたかと思うと瞬く間にメイコに迫った。
損傷で上手く動けぬメイコの紅い唇をそやつは堂々と奪った!
「めーちゃん大丈夫?」
ぬけぬけと囁く青い糞。
恥知らずにも傷ついた美女の髪を撫で腰に手を回すと、
どういうわけかメイコの顔はみるみる朱に染まっていくではないか。
「バカ……」
「ごめんね、めーちゃんがあんまり綺麗だから、
世の中の人たちに見せたくなっちゃったんだ。
でもやっぱり間違っていたよ。
めーちゃんの美しさを知っていいのは僕だけなんだから」
「もうっ! あなたが私のこと裏切ったのかと思っちゃったじゃない!」
「そんなわけないよ。僕は絶対にめーちゃんを裏切ったりしない。
だってめーちゃんは僕の大事な恋人なんだから。
……好きだよ、めーちゃん」
「あたしもよ、カイト……」
「さあ、帰ろう」
「カイト? ふふっ、今日は一晩中頑張ってくれないと許してあげないんだから」
「わかった。今夜は寝かせないよ」
二人は肩を寄せ合い仲睦まじくその場を去っていった。
残されたのは地を這う拙者と、傍らで空しく横たわる愛刀のみ。
「あの阿呆共、いつか殺す……」
拙者は武士。武士には武士の誇りがある……。
完