【初音ミク】VOCALOID総合エロパロ10【ボーカロイド】at EROPARO
【初音ミク】VOCALOID総合エロパロ10【ボーカロイド】 - 暇つぶし2ch200:純情マスターとお悩みルカさん4
09/01/12 00:31:52 8djUdjcW
「いやぁだから、それはエラーじゃ…」
「マスターにこ、言葉をかけられたり、ふ、触れられたりっ…する度に」
「る、ルカさん?」
「えええエンジンがっ回転し、発熱、う、ああわあわ」
「ちょ、ルカ!?」

エラーエラーエラー。
思考回路が熱を発して目の前が真っ白になる。
私の忘れたはずの何かは、瞳から溢れてこぼれ落ちた。
製作段階で破棄されたはずのプログラムが目を覚ましている。
止まらない。
涙が止まらないです、マスター。

「ルカ!落ち着けって!!」

肩にマスターの両手が乗り、軽く揺さぶられる。
白かった視界がだんだん形と色を写して、それはやがてマスターになった。

「ル……え?お前、泣いて」
「…私は、おかしいのです。いらない感情が出てきてしまいました…」
「…い、いらないなんて」
「マスターは、そのつもりで私を買ったのでしょう?感情がないロボだから、私にしたのでしょう?」

マスターの表情が固まった。マスターは嘘をつくのが下手な人だ。
最初から知っていた。
それでいいと思っていた。

「マスターの期待に添えられないなら、私がここにいる意味はなんなのでしょう?」

あと一押しだ。

「私は、」

――その一押しを口に出すことは出来なかった。
気付けばマスターの腕が、手が、私の背中に触れていた。
右肩に、マスターの頭がある。マスターの肩が私の目の前にある。
身体の前面がマスターに触れている。
抱き締められている。

201:純情マスターとお悩みルカさん5
09/01/12 00:33:15 8djUdjcW

「ああああのな!」

マスターの声は裏返っていた。

「お、俺は!ルカがいいんだ!」
「!?」
「他のルカじゃ駄目だ!お前がいい!壊れてるかもしれなくても、お前がいい!」

マスターの腕に力がこもった。

「さ、最初は確かに、ロボっぽいって聞いて…自信がなくてルカを選んだ」
「……」
「けど低音が綺麗で惚れて、いざ目にして、い、色々あって、ルカを選んでよかったって思ったんだ」
「…マ」
「お前はもう俺のパートナーだ。俺は今のルカがいい。他の代用なんて無理だ!」
「…マスター…」
「なな、なんだ!」
「…苦しいです」

私が呟くと、マスターは奇声をあげながら離れた。
初めてこの部屋に来たときのことを思い出す。
違うのは、あの時は事故だったけれど、今はマスターが望んでのことだったと言うこと。
…そうだ。最初からマスターは言っていたではないか。

今の私の方が好きだ、と。

「マスター」

顔を真っ赤にしている彼を呼ぶ。きっと私も同じ色をしていることだろう。
エンジンは高速で、しかし規則正しく動いていた。
エラーはおきない。

「私は、上手く歌えないかもしれません。他の巡音ルカと違うかもしれません」
「…ルカ」
「それでもマスターは」

たとえ私が歌えなくても。

「まだ、私に歌わせてくれますか?」
「――当たり前だろ」

202:純情マスターとお悩みルカさん6
09/01/12 00:34:26 8djUdjcW

マスターは笑う。
初めて誉めてくれた時と同じように。
嬉しくて涙がこぼれた。

「ちょ、泣くなって。ティッシュどこやったかな」
「申し訳ありません」
「いや、謝んなくてもいいんだぞ」
「では、どうすればいいのでしょうか。私にはわかりません」

その時、私の涙をティッシュで拭うマスターが一時停止した。
そしてなんだかそわそわし始める。私が思わず首を傾げていると、マスターが口を開いた。

「…言っていい?」
「? 何をですか」
「馬鹿にしない?」
「何を言おうとしているのかはわかりませんが、それは決してしません」

するとマスターは咳払いをし、私にまっすぐ向き直した。
はにかんだ唇から出た言葉は。

「…笑えばいいと思うよ」

再び一時停止。
…ややあってマスターは真っ赤な顔をして頭を抱えた。
ぐわんぐわんと頭を上下する。

「ぐわあぁー!今のなし!今のなし!!やっべ超痛い!痛すぎる俺!!」

布団があったらごろごろ転がりそうなマスター。
思わず私は、

「…ぷっ」

吹き出してしまった。
マスターが顔を上げた。
そのあまりの赤さに、止まらなくなる。

「ふふ、あははっ」

私は、生まれて初めて笑った。

203:純情マスターとお悩みルカさん7
09/01/12 00:35:44 8djUdjcW
涙はとっくに止まり、湧き出る温かさは全て声に出ていく。

「は…はは」
「ふ、ふふっ、くす」
「あはははは!」

マスターも笑い出す。
まるでデュエットのように、笑い声が響いた。
悩みも迷いも苦しみも全て吹っ切れて、私たちはただ笑っていた。

今なら、心の底から言える。
私は、この場所にきて、この人と出会えて本当によかった、と。


***


「…こっちはツンデレか」
「下には無邪気と書いてあります、マスター」

俺たちは一つのモニターに写し出された、とあるサイトを見ていた。
それは巡音ルカを購入したマスターたちが集う掲示板で、それぞれのルカの「故障」を報告していた。
そう、ルカが悩んでいたことは、もはや「仕様」と言っても差し障りないほど頻発していることだったのだ。

「“豚は死ね、と言って貰って毎日ハッピーです”…病院行った方がいいな」
「“あなた、と呼んで貰ってる”…千差万別なんですね」

しかしこの書き込みを見る限りでは、うちのルカが一番まともに見えるぞ。
つくづくルカでよかったな俺。何かに目覚めるとこだったぜ。
さておき、ロボロボしいままの個体もいるらしかった。全員がなってるわけじゃないんだな。

「でも、不思議です」
「うん?何が?」
「私たちは確かに感情・性格を封印されました」
「らしいな」
「なのにこうして覚醒してしまっている。それが謎なのです」

ルカは眉をひそめた。
最近は、彼女もかなり表情が豊かになっている。

204:純情マスターとお悩みルカさん8
09/01/12 00:38:03 8djUdjcW
…というかルカは悩みすぎるきらいがあるみたいだ。俺とは真逆だな。

「製作側のミスだとすれば、私たちは回収されるかもしれません」
「いやぁ、それはないよ。多分」
「何故ですか?」
「だって、誰も不満に思ってないだろ?これはあれだ、幸せな悲鳴ってやつ」
「幸せな悲鳴…」

ルカは納得したようなしてないような顔をした。
それに、と俺は彼女に言う。

「ボーカロイドから心を取り上げるなんて、無理な話なんだよ。きっと」

部屋の片隅の音楽プレーヤーからは、ルカの歌声が聞こえる。
人間のようで人間でない、彼女だけの声だ。
心がある声。

「…そうですね」

ルカはそうして柔らかく笑った。
笑ったり泣いたり怒ったりが少なく、他のボーカロイドと比べ、表情が乏しい俺のパートナー。
でもやっぱり、

「可愛いなー、ルカは」

そう言うとルカは真っ赤になって顔を覆った。
ここはまだ相変わらずだ。

何はともあれ、今日は休日。飯を食ったら歌を作ろう。
んじゃ、改めて。

「これからもよろしくな、ルカ」
「…はい、マスター」






おわり


205:名無しさん@ピンキー
09/01/12 00:39:58 uMXGo67B
乙おつ

ルカは、かなり深いキャラになりそうな予感

206:名無しさん@ピンキー
09/01/12 00:41:08 8djUdjcW
以上、ルカさん視点多目でお送りしました
前回はイチャイチャが足りなかったのでイチャイチャ…あれ?出来てない
土台は出来た、次こそはエロを…と思ってますが期待はしないでね

クーデレ(?)万歳!

207:名無しさん@ピンキー
09/01/12 02:04:05 xi+0fKe4
あんまり間があいてなくてすまない。
けど、今投下しなきゃ多分お蔵入りするので投下します。
カイメイです。エロ少なめ、暗い話です。

208:カイメイ
09/01/12 02:05:05 xi+0fKe4
「ただいま」
バタンと閉じられる玄関のドアの音を聞いてメイコは視線をリビングの方へやっ
た。
メイコの立つキッチンからは少し見えにくい位置にある玄関とリビングを結ぶド
アから疲れた顔をした青年が現れる。いや、もう青年と呼ぶ時期はとうに過ぎた
気もする。けれども、いくら疲れてやつれた顔をしていても、瞳の輝きは若々し
かった。
彼女の、恋人であり、きっと人生のパートナーになるのであろうその彼はコート
を脱ぐとハンガーにも掛けずにバサリと投げ捨てて自身をソファに沈めた。チラ
リと掛け時計の方に視線をやる。と、すぐ下に昔見慣れた白いコートと青いマフ
ラーがキチンと掛っていた。今すぐにでも出掛けられますよ、とばかりに皺一つ
無い眩しい位のコートは今はただただ憎らしいだけである。

「疲れてる、みたいじゃない」
「まあね」
労う様に微笑みかける彼女に笑って答えようとしたが、いけない。自分の中のモ
ヤモヤとした何に向けたらいいのか分からない苛立ちがつい口調をぶっきらぼう
にさせる。
気が強いようでいて彼女はとても神経が脆いのだ。
慌てて彼女の方に振り返ると、彼女は何も気にしていないように夕飯の支度を淡
々と進めているだけだった。
不意に立ち上がると居場所を無くした自身の新しい居場所を探すためにふらふら
と足がキッチンの方へ自然と向かっていく。
はた、と気付いた時にはすでにカイトの腕の中にすっぽりと小さなメイコの身体
が収まっていた。

「なに?今日は随分とあまえんぼさんねえ」
ケラケラと心底おかしそうにメイコは笑う。その様子に「本当に無意識だったん
だ」とは言えずに、ただ苦笑だけが漏れる。知らなかった。まさかここまで本能
的に彼女を欲していただなんて。

苦し紛れに右手を彼女の胸元までもっていく。ほんの少しだけ形のいい眉が歪ん
だのを見る。
「お夕飯出来ないわよ?」
「いい、よ」
「あんたの好きなオムライスなのに?」
「う……けど、今はメイコの方がいい」



209:カイメイ
09/01/12 02:06:01 xi+0fKe4
たださまよっていた右手は段々と本気を出してエプロンとニットの間をまさぐっ
ていく。メイコは迷いつつもコンロの火を消した。一気に炒めないと美味しくな
くなっちゃうのに。結局、こんな風になって流されなかったことはないのだ。今
回だって例外ではないだろう。

エプロンを脱がさずにニットだけを捲りあげて直に触られる。そこから入り込む
ヒヤリとした外気がメイコの身体をビクリと震わせる。冷たいシンクに置いてい
るはずの手が熱い。少しごつごつした指が頂きを捏ねると腰が揺れた。
「ね、当たって、る」
「当ててんの」
腰の辺りに感じる固い熱が背中を駆け上って全身を蒸気させた。回りきらなかっ
た熱が湿った唇から溜め息となって吐き出される。
「ねえ、寝室、いこ」
じゃなければせめてソファ。このまま後ろから、なんて嫌だ。
けれどもその要求は言い切る前にカイトの唇で塞がれる。紡がれなかった言葉が
舌で掻き回されて唾液となって飲み下される。溢れだしたものが顎を伝ってフロ
ーリングにポタリと小さな水溜まりを作った。

彼は焦っている。何にかは聞いても喋ってはくれないだろう。
……おおよそ、新しく仲間入りするボーカロイドの事だろう。実際に見たことは
ないが風の噂で聞いた。二十歳でピンクの長髪、巨乳。随分とお色気的にも頑張
ってくれたものだ。
けれど、自分達には関係はない。

メイコとカイトは歌を知らなかった。

初音ミクがある動画サイトをきっかけに爆発的な人気が出たと知ると彼女らは暫
く袖を通していなかった赤いセパレートと白のコートをハンガーから外して身に
付けた。そして、じっと正座をして待っていた。
予想通りメイコとカイトは歌った。
そう、『他所の』メイコとカイトが楽しそうに歌っていた。

二人は仕方無しに再び衣装をハンガーに掛ける。カイトは知識だけはあるので音
楽関係のアシスタントを、メイコは家事全般と週三日の花屋のアルバイトを。
歌えないボーカロイドは楽しげに歌うボーカロイドを目の当たりにして行き場の
無い焦りと苛立ちを愛しい女性にぶつける。
覚悟はしていたことだ、とメイコは目を瞑った。

「ひ、あ、あっ……!」
カイト自身がメイコの中にズンズンと入っていく。こうなってしまえばお互い考
えることは一つしかないのだ。早く、キモチヨクなりたい。それだけ。
「メイコ、メイコ、メイコ……ッ」
ただただ腰を突き上げながら最愛の女性の名を呼ぶ、それだけで十分だった。
(俺は……歌えてる)
真っ白になっていく世界の中でカイトはただぼんやりとそんなことを考えたのだ
った。



210:207
09/01/12 02:08:18 xi+0fKe4
以上です。
小ネタの予定だったので話が支離滅裂で申し訳ないです。

やっぱり自分は旧世代スキーなのでルカたんを聞きつつもめっこめいこのかいとかいとにされてるんだろうなあ。

211:名無しさん@ピンキー
09/01/12 02:13:34 cQsQODsz
乙でした
うちのボカロにも歌わせてやらんとなあ

212:名無しさん@ピンキー
09/01/12 02:14:03 iSkl7+gO
>>206
GJ!マスターの性格とルカの性格が合っててよかったw
色んなルカが出てきそうだけど、クーデレのルカっていいな

213:名無しさん@ピンキー
09/01/12 02:15:29 EtHQ8yg3
今、自分最大級のがくミク萌えが来てる・・・!
武士口調じゃないがくミクとか見たくてたまらない

214:名無しさん@ピンキー
09/01/12 02:59:20 lGFfoPy4
がくリンで教師×中学生(エロあり)とか…読みたい。。
自分で書こうとしてみたがいかんせん文章力が・・・

215:名無しさん@ピンキー
09/01/12 03:29:45 ezI6frF8
>>210
GJ!良い設定だな
オムライス好きのKAITOってオムパスタまんの人だろうか。あれだいすきなんだ
暗い話なんだろうけどMEIKOが花屋ってのにすげぇ萌えた

216:名無しさん@ピンキー
09/01/12 03:37:30 ezI6frF8
>>206
GJ!充分ニヤニヤさせてもらった
ロボっていうかクーデレなんだな
このルカとマスターすごい好き、続き待ってます!

217:名無しさん@ピンキー
09/01/12 05:35:46 4ZrWXqbl
>>196
いいところで終わりすぎじゃね?
やっぱ連載なのかww

今回はルカ視点なんだな。
だんだん恋愛に発展していくマスルカいいな~
前回の初々しい二人のかわいさ今回も十分でてたよ。
おもしろかった!GJ!!次回も期待!!!

218:名無しさん@ピンキー
09/01/12 08:28:20 T6IMLwib
>>196
初期のマスミクの雰囲気と似ていて懐かしい

219:名無しさん@ピンキー
09/01/12 09:35:31 ZrCpiawm
>>210
gj!
歌えないボカロって切ないよ
でも萌えた

220:名無しさん@ピンキー
09/01/12 11:13:10 rq1/xKMn
とりあえずうちの姉さんと兄さんに謝ってくるwww

221:柚ピーマン  ◆ishd7lcZX.
09/01/12 11:36:23 +21ugeyD
ルカ様祭りに便乗して。
出遅れ気味のエロなし小ネタ。ルカ様とマスター(マスターズ?)です。

注意書き↓

① この話はとても下品です。特に、ルカ様の台詞が。
② ネタに走りすぎです。元ネタ全部わかったらオプーナの購入権利書を(ry
③ 結構な俺設定気味です。注意してくださいです。
④ 無駄に長いうえに、内容がふざけすぎです。真面目に読むと目と脳が腐ります。
⑤ いちおう50字改行です。そこの辺り注意してくださいです。


222:『柔らかい音色』(1/18)
09/01/12 11:38:47 +21ugeyD
 
 人間とは、染まる生物だ。


 悪貨は良貨を駆逐する。
 朱に交われば赤くなる。
 孔雀は堕天使の象徴で、男は黒に染まれ。


 とにもかくにも、人間というものは、環境によってその性質が変化するものである。
 無駄に知性や知識があるからこそ、慣れ、というものを覚えてしまい、結果として環境に順応してしまう。そ
れが良い変化か悪い変化かは別の話として。

 ある意味、本能でもあるのだろう。異端は同族に攻撃される対象となりうる。だからこそ、周囲に溶け込むこ
とにより、無意識のうちに保身本能に隷従しているのかもしれない。肉体と精神の安寧をはかるためにも。
 馴染むからこそ、心から違和感を取り除くことが出来る。住めば都なる言葉があるが、それは己の環境適応能
力が、周囲と溶け込んだからこその帰結であろう。


 人間は知識があるからこそ、そういった、精神的な適応能力をもつ。

 では、『人間顔負けの知性をもつ個体』の場合はどうなのであろうか? 
 人間のように、環境に順応してしまい、最後には違和すら感じなくなってしまうのであろうか?


 そんな、小さな疑問を彼女は―巡音 ルカは考えたことがあった。


 ボーカロイドたる彼女が、かようなことを考えること自体、滑稽にも程があるというものだろう。歌をうたう
ことをレゾンデートルとする彼女が、人間の精神的な変化の根源的な理由について究明しようと目論むこと自体、
どこかずれていると言わざるを得ないであろう。

 しかし。それでも彼女は考える。
 否、考えねばならなかった。
 何故ならば。


「ねー、ルカちゃん、踏んでー」
「踏んでください、ルカ様ァッ!」
「またそのネタですか、桃色妄想ド低能マスターズ」


 自分がここまで変わってしまった原因は、自分の主人にある、という事実を確かなものにしたかったからだ。

 

223:『柔らかい音色』(2/18)
09/01/12 11:41:23 +21ugeyD
 
 ボーカロイド。

 社会と科学技術が発展に発展を重ね続けた結果、人々はついにドラ○もんレヴェルの技術力を得るに至った。

 そのひとつとして、ボーカロイド、というものがある。歌をうたうことを存在意義とする、アンドロイドだ。
その姿や容色は、ぱっと見では人間のそれとほとんど区別がつかず。特徴的な髪の色や、色素の薄い肌、常備さ
れているヘッドマイクなどで見分けはつくものの、知をもち、自我意識ももち、睡眠や食事すらも出来る彼らは、
ほぼ『人間』と言って差し支えないものだった。

 この存在が公にされてから、しばし。ボーカロイドを悪用しようと目論む輩も増えて、しばし。政府のお偉い
さんなどが、色々な公約や種々様々な掟を設定することにより、とりあえず人権とボーカロイド権は色々と微妙
な調整がされ、一応は平和な社会が戻ってきてはいる。
 閑静な住宅街や、人の声たえぬ商店街にボーカロイドが闊歩しても、人々に敬遠されることなどなく。人間も
ボーカロイドも、ある程度の笑顔は戻ってきた、そんな時代。


 そこで、巡音 ルカは生まれた。
 否、作られた、と言うべきか。


 はじめは、自我意識だった。自分は歌をうたうために作られた存在であり、人間とは違う身であるということ
を、プログラムによりて、その頭に埋めつけられた。
 疑問は、なかった。実体験に乏しい脳は、すんなりと、機械的きわまりないプログラムを飲み込んだ。次いで、
入れられる様々な別種のプログラム。人間を害してはいけない旨から、歌のうたい方まで、徹底的に。

 苦痛はなかった。悲観も、何も。

 自分は歌をうたうために作られた存在であり、栄華をきわめた社会のなかで生きる人間が生み出した、うたか
ためいた技術の結晶により、この地に足を置ける存在。そういった事実を胸と頭の奥にしまいこみ、彼女は、や
がて運ばれていった。
 未知の場所に運送される際、特に感慨めいた所感を抱きもしなかった。ただ、漠然と理解はしていた。

 ああ、私は、これから、顔も知らぬマスターのもとで生活するのだな、と。

 その際、胸に覚えたわずかな疼痛を、恐らく彼女は生涯忘れることはないであろう。それは、明確なる不安の
証だったのだから。



224:『柔らかい音色』(3/18)
09/01/12 11:43:29 +21ugeyD
 
 そうして、かような精神変化と、わずかばかりの諦念を飲み込み、ルカはひとつの家へと運ばれた。

 そこは、大きな家だった。
 外装は、前時代的な西洋の屋敷めいたそれであり、立派な鉄扉と、綺麗に整えられた芝生の目立つ場所だった。
さながらそれは、どこぞの貴族が住まう場であろうか。
 もしも第三者がその家屋を見たのならば「ぶ、ブルジョワジー……!」などとつぶやいたかもしれない、そん
な場所。そこにルカは運ばれた。


 ルカが目を覚ました瞬間、目に入ったのは、ふたりの人間だった。


 ひとりは、黒い髪をやや長めに伸ばした少年。もうひとりは、黒い髪を後ろで縛ってまとめた少女。

 ふたりの顔は似通っており、血のつながりというものを想起せずにはいられない姿だった。顔立ちは整ってお
り、線の細い首筋や、すらりと通った鼻梁などは、石膏像のそれを想起させるほど。
 美しい少年と少女を見、しかしルカは微動だにせず、お決まりの言葉を吐いた。マニュアル通りの言葉を。

「このたびは……」

 が、その言葉は唐突にさえぎられることとなる。少年と少女が手を前にかざして、ルカの動きを制したからだ。

 何か粗相をしただろうか、と不安感を抱えながら小首をかしげるルカ。そんな彼女に、美しい顔立ちのふたり
は、言ったのだ。


「お願いします、巡音 ルカ様」
「口汚い言葉で罵倒してください」


 瞬間、空気が凍った。
 土下座してまで頼みごとをするふたりを目視、ルカの動きは静止することとなった。一体全体、眼前のふたり
が何を考えているのか分からず、理解すらも出来ず。
 ただ、目の前にいるふたりが、とんでもない変態であり、とんでもない阿呆であり、とんでもない願いをして
いるというのだけは理解できた。

 だからこそルカは。


「開口一番それですか。あなたたちって本当に最低のクズですね」


 マニュアルから逸脱した言葉を、吐いた。



225:『柔らかい音色』(4/18)
09/01/12 11:46:05 +21ugeyD
 


 そこは、赤い絨毯の目立つ居間だった。木製のテーブルを中心として、テレビや椅子が配置された、何の変哲
もない居間。ゆるやかでいて、温かい空気が流れている、静寂に満ちた部屋。
 エアコンの稼動音と、空気の揺れる小さな音。静かな流れは室内を取り巻き、やがてそれは不可視のうねりと
なりて、そこここの空気を形成していく。テレビは光らず、窓の外では空気がきしむも、その居間だけはただた
だ静寂のままに。

 そんな空間に、一組の男女が、絨毯に腰を落ち着けていた。
 片方は、黒髪をやや長めに流し、中性的なおもてを見せる少年。もう片方は、黒髪を後ろでひとつに縛り、幼
さを多々残すかんばせをあらわにする、少女。

 ふたりは兄妹だった。それゆえか、顔立ちも似通う。整いようと中性的な雰囲気を、そのままに。

「おにぃ」
「ん? なんじゃらほい」

 高い声で妹が問えば、兄はうっそりと身をうごめかせ、応じる。

「昨夜は燃えたね、スマブラ」
「ああ……。つーか、がけっぷちでカービィのファイナルカッター叩き落としはマジやめれ。鬱る」

 やたら俗めいた会話を交わし、沈黙。わずかな時を経て、またも居間に静寂が戻る。
 流れる空気は、温かい。だが、どこか違和のようなものが満ち満ちている。沈黙そのものが、気まずい沈黙と
なろうとする、その瞬間。
 居間の奥、廊下へと続く扉が、がちゃりと開いた。


226:『柔らかい音色』(5/18)
09/01/12 11:49:17 +21ugeyD
 
「……ふたりとも、ここにいたのですか」

 白塗りの扉が開くと同時におどり出たのは、ひとりの女性だった。

 ややウェーブのかかった、桜と退紅の色彩を見せるロングヘアーを垂らし。色素の薄い肌を見せ、歩を進める。
 わずかながらもあどけなさを残した顔立ちは、しかし、女の色香と艶を残してそこにある。丸く大きい眼球に
反して、硝子細工のように精巧で細い鼻梁。美しく、整いに整ったその顔立ちは、鉄か氷を想起させる無表情。
 まとう衣服は墨色。深い深いスリットの入ったロングスカートと、ノースリーブのそれを上にまとい。黒色の
サイハイソックスを着けて、悠然とそこに降り立つ。

 ボーカロイド、巡音 ルカ。
 そこに彼女が入るだけで、少しばかり固まった居間の空気は、完全に弛緩する。

 瞬間、黒髪の兄妹は、弾かれるようにしてルカへと目を向けた。その瞳は濁りに濁り、奇しくも錆浅葱のルカ
の瞳とは一線を画する濁りよう。もしも第三者がこの場にいるのならば、その兄妹の瞳の暗黒具合に、たじろぐ
こと請け合いであろう。
 が、対する存在、桃色の髪を流すボーカロイドは、ふたりを冷たい目でねめつけるだけで微動だにせず。ただ
その小さな口を動かして、言葉を相手にぶつける。

「ゆうべはおたのしみでしたね」

 彼女がそう言った瞬間、兄妹は変態的な笑みを浮かべた。整った顔に似合わない、超絶的に『ヒく』笑みで。


「ルカちゃんの言葉、なんかエロい意味に聞こえる、フヒヒ!」
「興奮しましゅうぅぅ、フヒヒ!」


 瞬間、ルカの目に宿る氷はますますその勢いを増し、吹雪めいたそれとなって、眼前の兄妹に叩きつけられる。
だが、彼女の視線を受けても兄妹は、びくんびくんと体を跳ねさせるだけでこたえた様子もない。

 分かっては、いたのだ。ルカはボーカロイドで、ボーカロイドにはマスターがいて、そのマスターたる存在が
眼前の変態兄妹の男の方で、そいつらは兄妹そろってドMで、罵倒しても向こうはオルガスムスに達するだけで、
何をやってもぬかに釘をぶち込むようなことで。

 分かっては、いるのだ。

 だが、それでも言わずにはいられない。罵倒せずにはいられない。そういうものである。
 何か言っていないと、ドMゾーンに巻き込まれそうだから、という理由もあるにはあるのだが。


227:『柔らかい音色』(6/18)
09/01/12 11:52:03 +21ugeyD
 
「あなたらふたりは発展社会の恥部です。誰もが蒸し返したくない暗部です」
「せいぜい仲良くな、性欲の奴隷たち」
「邪魔が入った、また会おう!」

 ルカがコアなネタで切り出しても、ごらんの有様だよ! である。なんだかんだ言って、そういった系統のネ
タに長けている兄妹に、ぽっと出のルカが敵うはずもない。
 それはそれで悔しいものがあるのだけれど、とルカは思い、己の抱いた感情に、心の奥底だけでしばし当惑す
る。悔しい、などという感情を抱いたことなど、いまだかつて、ほとんどなかったのだから。

「チ○コ」
「るーちゃん、それはさすがにイメージが壊れるからやめれ」

 だから、下品な言葉でごまかす。妹の方は当惑しているようであるが、兄の方は股間にテントを作りながら妄
想の世界に入ってしまったようである。
 救いようがない、とルカは思う。色々な意味で。この変態ドM兄も、この変態ドM妹も、そしてこの自分すら
も。色々な意味で、駄目だと思うのだ。
 が、それが心地良いのも確かな話で。人間らしい感性、堕してもそれを好しとする感性。あまりよく分からな
い、温かい、ゆるやかな快楽。それにこそ、ルカは戸惑いと当惑と、ある種の恐怖を覚えて。だからこそ言葉を
発する。ハスキーでいて、クールな声を、かくれみのにして。

「妹様。イメージ崩壊うんぬんは、むしろ私よりかはあなたたちの方が……」

 いつものように、片手でひたいを押さえて。いつものように、鉄面皮のままに盛大な溜息をつく。
 この兄妹に買われてから半年ほど。さすがにルカも、自分のマスターの気質ぐらいは把握できている。

 そう、この兄妹、ドが付くほどのマゾヒストであるくせに、容色美麗でいるせいか、下品な言葉を吐けばその
ギャップは酷い。あまりに酷い。名画にイカスミをぶちまけるようなものである。いくら素材が良かろうとも、
所作ひとつで、ごらんの有様だよ! である。大事なことなので二回目だ。

 氷のように、美しく恐ろしく整った顔をわずかにゆがめて、ルカは、絨毯の上にぺたりと座る兄妹をながめる。
黒髪の、細い四肢の目立つ男女を。

「ねえ、ルカちゃん」

 わずかな沈黙を切り裂くように、妹の方から、ルカに声。
 対するルカは鉄面皮を取り戻し、小首をかしげて近くのテーブルに肘を乗せ、髪を流す。


228:『柔らかい音色』(7/18)
09/01/12 11:55:17 +21ugeyD
 
「なんでしょう?」
「そろそろさ、妹様、という呼び方もやめよっか?」
「フランちゃんうふふ、ですか?」
「いや、まあ、確かにそれとかぶる意味もあるんだけどさ……」

 やたらコアなネタで応対されて、冷や汗ひとつ、少女がルカをじと目で見れば、ルカは折り曲げた人さし指を
唇にぴたりと付けて、しばし逡巡するかのように思案。
 ほどなくして、合点がいったかのように、諸手を合わせて、ルカは目を光らせる。


「では、アナザーマスターで」
「なんかその呼び方、アギトみたいだね」
「アギトは俺ひとりでいい……」
「木野の旅」
「言葉を話すモトラドと、様々な国をわたるんですね、わかります」


 ネタの嵐、と呼んでも構わぬであろうやりとりに、ルカの正規マスターたる少年も乱入し、そこにくり広げら
れるは素敵なカオスフィールド。基本的に少年も少女もルカも無表情が常であるせいか、対話する姿は、世辞に
も美しいとは言いがたい。珍奇で珍妙なる空気が、時の経過に比例するかのように、そこここに満ち満ちる。

 もう色々な意味で駄目だった。場の空気はたゆみにたゆみ、べろんべろんとたわみにたわみ、さながらそれは
引っぱりに引っぱって弾力を失ったゴムのよう。
 この兄妹の駄目オーラにあてられたのか、ルカもいい具合に壊れてきていた。クールでミステリアスな雰囲気
は、もはやほとんどなく、どちらかといえば、どこかずれた天然冷徹なツッコミ要因が似合うほど。

 だが、言葉を交わす彼らは全く気にせず、すぐさま話題を打ち切る。
 慣れているからだ。そういうものである、と認識しているからこそ、である。

「そういやさ。ルカちゃんは実年齢だと、年齢そのものは二桁にも満たないんだよね」

 妹の方から切り出す。兄の方はこくこくとうなずくのみ。
 対するルカ、眉を一ミリたりとも微動だにせず、小さく首を縦に振る。

「そうですね。そう考えると、あなたたちの方が年上にあたりますか」
「ね、ね、じゃあさ、兄と姉みたいな感じで、うちらを呼んでくんない?」
「あ、それ、俺も聞きたい。ものはためし、というやつでさ。お願いしますよ、ルカ様」

 瞬間、ルカの本能は察する。こいつらが何か話を持ち出す際には、絶対に何かあるぞ、と。
 されど、基本はマスターに忠実な彼女、寸毫微塵たりとも惑うことなく、口を動かす。

「承りました」

 すぅ、と息を吸うルカ。ままに、唇をうごめかせて。


229:『柔らかい音色』(8/18)
09/01/12 11:57:31 +21ugeyD
 
「お兄様、お姉様。……これで、良いですか?」
「むほおおおおぉぉぉ! フヒヒ! フヒヒィ!」
「呼び方でもえくひゅたひーかんじちゃいまひゅうぅぅんほぉぉぉっ!」

 反応は劇的だった。劇的すぎて、ルカが眼前のふたりを、養豚場の豚でも見るような目でねめつけるほどに。
 今、ルカの目の前でもだえる男女は、普段の美しさなど、どこ吹く風。よだれを流し、恍惚の色彩に染めた眼
球を見せに見せ、ぴくぴくと痙攣しながら、鼻と喉の奥を基点として嬌声を漏らしている。
 百年の恋も一瞬で、粉砕玉砕大喝采、な有様になりそうな姿。それはまさしく惨状であった。

「ダブルみさくら時空ですね、わかります。……このドグサレディックヤローと低能駄雌豚が」

 瞬間、ルカの口からは苛烈な言葉が垂れ流される。それはある種の反射行動。シーソーの片側が落ちれば、も
う片方はぴんと跳ね上がるかのように。兄妹の、マスターたちの痴態を見たルカが取るそれは、しかし、変態性
そのものを肥大化させる結果に終わるだけであり。

「ほひぃ、ほひぃぃぃぃっ! こっちもイイのぉぉぉぉっ!!」
「ぱねぇ! マジぱねぇ! 罵倒たまんねぇえぇぇぇぇぇッ!!」
「こいつら……。いえ、もう何を言っても無駄でしょうね」

 やれやれだぜ、と言わんばかりにかぶりを振り、きびすを返そうとすれば、兄妹はますます燃え上がる。

「放置プレイキター!」
「キター!」
「黙れ桃色妄想危険嗜好傾倒兄妹。性のブルペンエース風情がガタガタぬかすな」

 眼前でもだえる童貞と処女に苛烈な言をぶつけるCVシリーズ03様。されど、マスターとその妹はますます体
を震わせて、口の端からよだれを垂らし、艶のある大嬌声まで漏らす始末。
 律儀にツッコミを入れれば、兄妹はやがて絨毯にうつぶせとなりて、痙攣する。「ツッコミだけじゃなくて、
その細くたおやかな五指を、我らのいけないホールに突っ込んでください」などとほざく、変態ズ。もう普通の
人間が見ていたのならば、ドン引きしても全くおかしくないであろう、奇態であった。

「もうやだこの家」

 ルカはそう言い、溜息をつきながら絨毯の上まで足を進め、兄妹の手を取って立たせる。同時、彼女のまとう
衣服である、深いスリットの入ったスカートがぱらりと流れて踊る。それに追随するようにして、桃色の髪も、
また。
 人ならぬ美麗なる容色、人ならぬ鋭利なる雰囲気。かような要素を抱えたままに、ルカは目を細めてかぶりを
振る。ややもすれば幻想的ですらあるその姿を見ても、彼女のマスターは全く態度を崩さない。


230:『柔らかい音色』(9/18)
09/01/12 11:59:30 +21ugeyD
 
「はっはっは、そんなつれないこと言うなよ、LU☆KA」
「なんですか、そのらきすたみたいな言い方は」

 サムズアップして、満面の笑みを浮かべ、いつものようにふざけた口をきくだけだ。
 やれやれね、などと心の中でルカが思えば、やにわに覚醒した妹がルカのそばまでにじり寄る。

「曖昧三センチ? 三センチの誤差ぐらいいいよね。ルカの乳、目測Dカップ。私の乳スカウターは凶暴です」
「実際はEですが」
「クソッタレー! あたしゃスーパー貧乳人だっつーのに! この差異が本当の地獄だ……」
「私は、小さい方が可愛らしいと思いますけれど。ゆるやかな曲線は美麗だと思いますし」
「んだとチクショー! 持つ者は持たざる者の気持ちなど分かるはずもねーんですよ!」

 がばちょ、と擬音が付きそうなほどの勢いで、少女はルカに飛びかかり、その膨らんだ乳房に手を這わせる。
どこのエロ親父だ、と言わんばかりの変態愛撫をルカは受け、されど吐息ひとつ漏らさずに、あきれの目で少女
を見やる。
 黒い髪。全体的に華奢な姿。小柄も小柄な、少女。ルカのマスターたる少年の妹は、黙っていれば人形めいた
容姿であるのに、乳だなんだとおおはしゃぎ。なんともまあ下品なことで、などと胸を揉まれながらルカが思え
ば、ハァハァと聞こえる、荒い息づかい。

 ルカの胸に手を這わす少女は、誰の目にも明らかな欲情の焔をその双眸にたたえて、放送禁止レベルの表情を
作っていた。ルカはこの時ほど、見せられないよアイコンを希求したことはなかったろう。
 とりあえず少女を押しやり、ルカは再三、盛大な溜息をつく。

「やっぱルカちゃん、巨乳だ。うへへぇ」
「あ、俺もさわりたい。うへへぇ」

 だが、兄妹、空気が読めず。まるで、むこうみずなナメクジのごとくにじり寄るふたりの姿は、もう警察署い
きとかそういう領域の話ではない。

 ふたりの触手、否、食指が、ルカの身に届きかける。

 その瞬間、閃光めいた速度にてくり出されるルカの諸手。それは、狙いたがわず兄妹の頭蓋骨へと。
 みしりみしみし、と嫌な音がそこここにこだまする。それは、なんと見事なアイアンクロー。ロボット三原則
やらボーカロイド権やら人権やらも知ったこっちゃねぇぜ、と言わんばかりの蛮行。

 しかし、桃髪の美女のかような攻撃を受けても、さすがは変態、恍惚の笑みでびくびくと体を震わせるのみ。
兄の方は口の端からよだれを流し、妹の方は太もも同士をこすりつけて切なげに吐息。
 色々な意味で教育に悪い光景が、昼下がりの居間にて展開された。

「マスター。その股間のリボルケインを切り落として欲しいんですか?」
「傷付くことを恐れたら、地球は悪の手に沈んじゃうんだよ!」
「むしろ私らはのぞむところだけれどねー、傷付くの。うへ、うへへぇ、もっといじめてくれないかなァ」
「このような変態が地球にいるなんざ、私は絶対にゆるざん」

 しばしの時を経て、拘束を解放すると同時に、ルカは兄妹の頭を一瞬だけ、優しく撫で、その黒髪を手ぐしで
すく。
 まさにその所業たるや飴と鞭。美女からアイアンクローをもらったのちに頭を撫でられる、という、ある嗜好
の人にはたまらない行為を受けて、変態マスターズはまたも嬌声を口から漏らす。


231:『柔らかい音色』(10/18)
09/01/12 12:01:25 +21ugeyD
 
「うへへ、やっぱりルカ、優しい」
「ツンデレですね、わかります。うっは、ぱねぇ! ちょっとお兄ちゃんイっちゃいそうだよ」
「寝言は寝てからどうぞ。私の人物像を脳内魔改造するのも、ほどほどの線で止めてください」

 ぴしゃり、と兄妹の発言を切り捨てるルカ。なんともまあ、クールなことである。
 だが、その頬は、春の陽気を想起させる薄紅色に染まっており。誰がどう見ても同じ所感を抱くことだろう。
 いわく「ツンデレだ! ツンデレがきたぞぉぉぉ!」と。

 そんなルカの様子を見つつ、マスターたる少年は切なげに吐息。どこぞのルネッサンスに勝るとも劣らぬ、そ
の美麗なる唇から、言葉を紡ぎ出す。

「うん。正直、性欲をもてあます」

 そう言って、何かを握るようなかたちに五指を丸め、上下に動かす少年。
 そのあからさまなエア手コキに、憫笑の吐息を漏らしつつ、ルカは瞳に嘲りの色彩を乗せて口を開く。

「ブロウジョブを希求しているんですか? ふざけないでください、このゴキブリヤロー」
「た、頼む! もっと罵ってくれ!」
「肥溜めで生まれたゴキブリのディックヤローの癖に、メチャゆるさん言葉を吐かないでください。不快です」
「んほおおぉぉぉっ!!」

 びくりびくりとエロ痙攣するマスターをかたわらに、ルカは視線を別の方へと向ける。
 やはり、と言うべきか。そこには何かを期待するような視線を向ける、変態妹の姿が。

「……なんですか? というより、妹様。女性が女性型ボーカロイドに欲情しないでください」
「んー、でもさ。私、バイだから。ルカちゃんでもいけるよ?」
「脳味噌の黄ばみがヴァギナにも移ったんですか? 淫豚風情が調子に乗らないでください」
「やああぁぁぁっ……! いいのお……」

 びくりびくりと体を震わせて、切なげに吐息、股に両手を差し込んでもじもじともだえる少女の姿は、並の男
ならば興奮必至、と言わんばかりの痴態であったろう。
 だがそれも、ルカの罵倒で欲情した、という要素がなければの話ではあるが。

 ルカは吐息ひとつ、変態は放っておいて、とりあえず自分の作業を済ませようと考えた。どこぞのスタンド使
いのように、ブチャラティィィ! オレも行く! 行くんだよォー! などと仲間参入イベントを済まそうとは
思わない。


232:『柔らかい音色』(11/18)
09/01/12 12:03:37 +21ugeyD
 
 そう、自分はボーカロイド。だからそれなりの作業を、それに見合う作業を。
 そう考えて、半ば意地にも近い思いを抱えて、溜息を吐き吐き、ルカは言う。

「さて、のどの調整でもしますか」
「ね、ね、のどの調整なら、このジョンブリアンバイブを、その綺麗な唇に」
「いいかげんにしないと、そのプラスティックポケットモンスターをケツ穴にぶち込みますよ?」
「むしろカモン! のぞむとこさ! さあ、いじめて、いじめてえぇぇっ!」

 だが、彼女の作業を中断させるは、我らが妹様。ご丁寧に肌色のバイブを手に持って、びくんびくんと震えな
がら、悲鳴のような嬌声を漏らす。
 ルカは肩を落として唇を引きつらせた。

「もうやだこの兄妹」

 瞬間、むくりと起き上がる、ルカのマスター。
 目を少しだけ鋭くして、ルカの方を見る。

「あ、ルカ。既存の曲でいいからさ、なんか気分転換に歌ってくれないかな?」
「……久しぶりに、久しぶりに、まともな要望をききました」
「なんだよぅ。大事なことじゃないのに二回言うなよぅ」
「それで? 何を歌って欲しいのですか?」

 表面上だけクールにしておきながら、自分の専門分野たる作業をさせてくれることに喜びを隠しきれず、そわ
そわと少年を見やるルカ。
 やはりツンデレの素質がある彼女を一瞥、少年は言う。

「むふふ、それでは。『チチをもげ!』歌ってくれませんかね? うへへぇ」
「いい加減にしないと去勢しますよ? このマゾヒスティックアルティマニア」
「すみませんハサミをもちださないでください冗談ですからいやマジでおねがいします」
「全く……」

 食卓のそばにあった調理バサミをかたわらに置き、やれやれ、とルカは小さく苦笑した。

 自分のマスターは、台詞こそアレではあるが、裏ではなんだかんだ言って新曲を作ってくれていたりする。だ
が、たまに上手くいかない時は、下品な言葉をルカにぶつけ、きゃらきゃらと笑いながらじゃれてくる。それを
ルカは分かっている。だからこそ邪険に扱うことはない。言葉は苛烈ではあるが。



233:『柔らかい音色』(12/18)
09/01/12 12:05:40 +21ugeyD
 

 この兄妹はいつもそうだ、とルカは思う。外では温厚誠実、文武両道、容色美麗、で通っているくせして、家
ではドマゾ一直線で。けれども、芯の部分はしっかりしていて、ルカが忘れた頃に、兄妹で考えてくれた、新曲
の楽譜をもってきてくれて。

 ああ、なんだかんだ言って、私は彼らを愛しているのだなあ、と。素直にルカはそう思えた。

 そんなルカの心境を察しているのかいないのか、少年は体勢を整えて、言う。

「あ、じゃあ『Mr. Trouble maker』お願い」
「……意外ですね。マスター、ジャンヌ好きだったんですか?」
「んー……まぁね。ちょっと厨二っぽい雰囲気が好きなのさ、うへへぇ」
「愛好家に蹴り殺されますよ? ……まあ、いいです。承りました」

 瞬間、ルカは右腕部のコンソールを振りかざし、桃色の髪を流し、ヘッドマイクの位置を確かめる。電子文字
が、右腕部のモニターに隙間なく流され、同時に光る、ルカの双眸。錆浅葱の美麗なる色彩が、ひときわ妖艶な
彩りをそこここに見せ付けたかと思えば、凛と輝くその相貌。
 ボーカロイドがボーカロイドたるゆえんは、ここにある。マスターの命を受けたルカは、今、この瞬間におい
ては、全ての場を支配する、群集を隷下におさめる覇王そのもののありようであった。

 心の奥底で、歌をうたう許可をくれたマスターに感謝し、ルカはその瞳を細める。
 音を、彩りを、色彩を音色を空気を、全てを受け容れんとばかりに直立不動。
 マスターに瞳を向けてわずかに破顔。

 そうして、ルカは。


「はいはーい、ちょっとストーップ」


 小さな少女の静止の声を聞いた。



234:『柔らかい音色』(13/18)
09/01/12 12:07:58 +21ugeyD
 

「……アナザーマスター? 私、何か粗相を?」
「いんやー、あのさ、さすがにこれは見逃せないと思ってねー」

 きゃらきゃらと笑いながら、ルカの肩に手をやり、かぶりを振る少女。
 瞬間、ルカのマスターたる少年は、露骨に引きつった笑みを見せて土下座の体勢。

「だまされちゃだめだよ。おにぃは、ああ言っているけれど。実際の意図は別のところにあって」
「というと?」
「歌詞だよ、歌詞。ルカちゃんに、ファック、って言ってほしいんだよ。サビの部分、思い返してみて?」
「……迂闊でした。数十秒前の自分を殴り倒したいです。割と本気で」

 前言、否、前考撤回。やっぱり自分のマスターは救いようのないド変態野郎だ、とルカは即決。

「……地獄に堕ちろ、ゴキブリディックヤロー。fuck」
「んほぉぉぉぉっ! たまんねぇぇぇっ!」
「なんだかんだ言って、流暢な英語で要求満たすルカちゃん萌え」

 よだれを垂らしながら、びくんびくんと痙攣するマスターを尻目に、妹の言をさらりと受け流すルカ。
 バイリンガルというセールスポイントすら、この兄妹の前ではネタのひとつにしかならない。所詮、そういう
ものであることをルカは分かっている。だから別に気にならない。

 これも、いつもの光景だった。

 とはいえども、さすがに歌の体勢に入って何もないのでは、ちょっとばかり情熱をもてあましてしまう。行き
場のない思いを抱えたままに、そこここへと視線を向けてみれば、食卓のそばにある白い紙の束。
 音符がいくつも描かれているそれは、楽譜だった。

「んあ? 見ちゃった?」

 ルカの視線に気付いたのか、赤いカーペットに尻をつきながら少女は言う。

「あの、妹様、あれは」
「……んあ、新しい曲の楽譜、試作段階。ふふ、なんかちょっと恥ずかしいね」
「あ……」
「おにぃに見てもらおうと思ったのさー。今、最終調整段階だよ」

 これだ。

 これがあるから、ルカは心の底では兄妹を嫌いでいられない。努力を誇ることはせず、こっそりと作業するく
せして、それが相手にばれれば恥ずかしそうに伝えて。
 なんだかんだ言って、この兄妹もツンデレなのである。

「ごめんねー、あとちょっとで、一応は出来るからさ」
「あ、はい……。すみません。それと、ありがとう、ございます……」
「んな遠慮しないでいいよ。私らはもう体も心も繋がった仲じゃないか、げへへ」
「平気な顔して嘘を垂れ流さないでください。ぶっとばしますよ、このド変態」

 照れのせいか、ルカの罵倒にいつもの力がない。
 だが、少女の方も、照れのせいかいつものように嬌声を漏らしたりはしない。



235:『柔らかい音色』(14/18)
09/01/12 12:10:00 +21ugeyD
 

 ルカは知っている。
 自分のマスターたちは、ものすごく照れ屋で恥ずかしがりやで、いつも誰かの顔色をうかがって生きている、
ということに。

 成績優秀であり、容姿は美麗であり、何においても秀でた面を見せる彼らは、他者からの視線を嫌った。何故
ならば、重かったからだ。無意味にぶつけられる、期待という名の攻撃。不可視の刀剣による刺穿は、いつも、
いつでも、この兄妹の心を傷付ける。
 だからこそ、彼らは私を購入したのかもしれない、ルカはそう思う。ある程度の感情を廃した自分は、無意味
に期待を抱くような『人間らしい所作』においては『不器用』そのものなのだから。


 そんなルカの思いを察したのか、少女は照れ笑いを浮かべて言う。

「……ごめんね。おにぃも私も、結構、人見知りすっからさ。こうじゃないとマトモに話せなくてねー」

 そのかたわらで、兄の方も起き上がり、照れ笑いを浮かべて言う。

「別にアホの皮をかぶっているつもりはないんだがな。厨二病じゃないんだし」


 そんな彼らの姿を見て、ルカは心の奥底に、わだかまりを覚えた。不安のようで、不満のようで、もっと何か
別種の感情。
 それを打ち消すように、兄妹に気をつかうように、ルカは言う。



「ああ、つまり、『本当はSランクなんだけど面倒だからBランク』ですね、わかります」
「ぜんぜん分かってねぇ!? はいはーい! 問題文はちゃんと読んだ方がいいと思いまーす!」


236:『柔らかい音色』(15/18)
09/01/12 12:12:38 +21ugeyD
 
 諸手を挙げて講義するマスターを見、ルカは小さく、くすくすと笑ってみせる。

 つまりは、じゃれ合いの範疇ということだ。
 ふざけ合って、興奮に身を染めて。それは、珍妙にも過ぎる、不器用なコミュニケーションなのである。

「……まあ、でも。こういう関係は、きらいじゃない、ですね」
「うへへ、頬があかーい」
「ツンデレですね、分かります」
「自分で言うなや……」

 弛緩する、場の空気。重い雰囲気を読んだルカが、変えてくれた空気。
 それに一抹の感謝をし、兄妹はやにわに真面目な表情を形づくる。

「でもさ、ルカちゃん。ほんとーに嫌なことあったら、大マジでちゃんと言ってね」
「不満を抱えてもいつか爆発する。良いことがない。ストレートに言ってくれると助かるよ」

 黒髪を流し、やにわに真面目な表情を形づくる、兄妹。細いおとがいを揺らして、目を細めるその姿は、彼ら
の心の真剣さを物語る。
 美しいな、とルカは思う。この兄妹が醸す美しさの真髄は、容姿のそれではない。恐れる心、誰かに優しくで
きる心、自分が自分でいられる心。内面にこそ、その旋律は、美は、ある。
 奇しくもそれは、音なき音。彼らの美は旋律となりて、ルカに植えつけられたプログラムを上書きする。

「不満など、別に、ありません」
「……まぢですか?」

 だから、少しばかり素直になっても良いのではないか。
 ルカはそう思い、言う。


「……なんだかんだ言って、その。私は……ふたりとも、大好きです、から」


 その言葉を聞いて、マスターたちは。

「なんというツンデレ」
「ツンデレ乙」


 やはり、ネタに走った。



237:『柔らかい音色』(16/18)
09/01/12 12:14:34 +21ugeyD
 
 ここにきて、ドMマスターズの考えは一致。

 ツンデレだ、ああツンデレだ、ツンデレだ。
 田原坊にブッ殺されかねない思いを抱えたままに、もう辛抱たまらん、とばかりに駆け寄る、少年と少女。

「ルカ様~」
「ルカ様ぁっ!」

 もはや様づけ。
 されど、そこに込められた思いだけは正当なそれであるのだから、ルカも思うように動けず、避けることすら
出来ず。どうしようどうしよう、と考えているうちに、視界にとらえるは、兄妹が互いの頬を押し合いやり合い、
泥臭き争いをくり広げている光景であった。

「おにぃは抱きついたらセクハラでしょうがっ!」
「ああん、いけずぅ」
「そうよ、うへ、うへへぇ、ルカちゃんのオパーイは私のもんだぜ! やってやるぜ!」
「うえーん、俺も豊かな乳房の感触ほしいよー」

 もうこいつら救いようがねぇ、とルカは一瞬思うも、色々な意味で原因を作ったのは自分なので強く出られず。
 自分の尻は自分でぬぐうか、と思いながら、わずかに持ち上がった自分の唇をゆっくりと直し、ルカは言う。


「……いいですよ、ふたりとも来てください」


 その予想外の展開に、さすがの変態兄妹も固まった。

「え?」
「はい?」

 黒髪を流し、瞠目しつつ、己の耳を確認する兄妹。
 なんだろう、かわいい。ふたりの様子を見て、ルカは邪気もてらいもなく、素直にそう思えた。


238:『柔らかい音色』(17/18)
09/01/12 12:16:26 +21ugeyD
 
 だから、だからこそ、だろうか。


「ぎゅー、してあげます」


 デレた。
 ツンからデレへの、見事な移り変わりの瞬間だった。

 さても驚くべきは、ツンデレたる存在が垣間見せる、デレ期か。
 頬を薄紅色に染めて、桜色の髪を流しながら、唇の端を持ち上げて微笑する、ルカ。広げた諸手は柔らかな曲
線を描き、ゆるめられた頬は艶やかな柔らかみをそこに残す。
 結構呑気していた変態兄妹も、母性が垣間見えるほどの萌え時空にはビビった。その醸される優しい雰囲気と
容色美麗なるたたずまいの発する圧倒的魅力は、まさに歯車的砂嵐の小宇宙、である。

 垂涎必至、理知的な冷静美女が醸し出す艶姿は、この変態兄妹をして、あらがえぬ領域のそれであった。紡が
れる言の葉の稚拙ぶりが、彼女の愛らしさを加速させ、兄妹の胸中に湧いたときめきを肥大化させる。
 瞬間、ぽすり、と。兄妹はルカの豊かな乳房に、その頬と頭を押し付ける。

「……ふふ、なんだかんだ言って、甘えんぼうなんですよね、ふたりとも」
「面目ない」
「右に同じく」

 頬を薄紅色に染めるは、ルカのみならず、マスターたちも。見目麗しい女性と、見目麗しい少年少女が、互い
互いに抱き合い、照れる姿は、どこぞの名画に勝るとも劣らぬ映え具合であったろう。
 そんな第三者的視点に気付かず、ルカは、遠くを見据える。居間の、飾り窓の外にある、薄い薄い空を見て。
薄水色の、淡い色彩を見て、半ば独白のように、言う。


「……歌を、うたうこと」
「ん?」
「心臓の、音色。私にはない音色。……こうして、あなたたちが元気でいて、ふざけてくれることが、私にとっ
ては、魂を揺さぶる音楽と同義なんでしょうね」


 分かっていたことだ。そう、分かっていた、ことなのだ。

 この兄も妹も、下品な言葉を発するのは、明確なる甘えのあらわれなのだということに。人と上手な接し方を
知らないからこそ、奇行に走る。だが、それは己の存在を誇示する、悲鳴めいたものであり。
 それにルカは気付いていた。だからこそ、伝える。あなたたちはここにいます、私はここにいます、それでい
て私は思います、あなたたちがいてとても嬉しい、と。

「ルカ……」
「素敵な音楽、いつもありがとうございます。マスター」

 音は命。そういった概念を抱いているからこそ、小洒落た台詞も平然とルカは垂れ流せる。
 だが、そこに込めた慕情は、並のそれとは一線を画し。

 だからこそ、だからこそ、ルカが慕情を寄せているふたりは、満面の笑みで、言うのだ。


239:『柔らかい音色』(18/18)
09/01/12 12:18:40 +21ugeyD
 
「性欲をもてあます」
「性欲をもてあます」


 瞬間、空気が凍った。

 先程の美しき流れは、もはや微塵もなく。流れるは、べろんべろんに伸びたゴムめいた空気。
 これにはルカも思わず苦笑い。「もうシリアスになりはしないよ」と、どこぞの丸見えな番組でも出そうな、
かようなフレーズを頭に抱えれば、じたばたと暴れる胸元の兄妹。

「おにぃのバカァー! ルカがせっかく綺麗にまとめようとしてくれたのにィィィ!」
「なんだかんだ言ってお前も空気ブチ壊してるじゃねぇかァァァァ!」
「性体験を楽しんでいるんだよコイツらは! ですね」

 言い争うふたりを抱えながら、ルカは苦笑のままに、場の空気に乗る。
 そう、いつものことだ。シリアスが続かないのも、いつものこと、なのだ。

「だってだってだって、シリアスな私たちなんて、芯のないシャーペンみたいなもんじゃん!」
「なにその役立たず!?」
「うへへ、ルカっちのおっぱいやーらけー。ぷにぷにー」
「仕切りなおし早ぇぞ、妹よ」

 ルカの胸元でぎゃあぎゃあと暴れる、兄妹。
 そんな馬鹿らしくも、どこか微笑ましい争いを見つつ、ルカは聖母めいた笑みをそのかんばせに浮かばせ、喉
の奥から、くすり、と。小さな小さな笑い声を漏らす。


「……愛しています、このド変態ども」


 美麗なる低音は、居間を流れて、空気に乗り。
 紡がれるその旋律は、肉眼ではとらえられぬそれだけれども。
 不可視の絹糸となりて、柔らかく、包み込む。

 柔らかく、ただ柔らかく。
 その、『三人』を、平等に。






(おしまい)


240:柚ピーマン  ◆ishd7lcZX.
09/01/12 12:21:30 +21ugeyD
投下終了です。休日のお昼になにやってんの、俺。

色々な意味で、なかよし三人組。恋愛値はゼロだけど、慈愛値はカンストです。
なんだかんだ言って翻弄されて流されて、でも抵抗しないあたり、ルカも実質ソフトMかもしんない。
あと、3から4への場面変更、分かりづらかったですね、すみません。マークつけておけばよかったです。

では、お目汚し失礼しました。タンスの角に眉間ぶつけて死んできます。


241:名無しさん@ピンキー
09/01/12 12:39:49 7i/yzzy2
>>240
多分半分位わかった俺も死ぬべきだな。しかし生きるッ!!(ぉ

なんというかもう、久々に爆笑させていただきました。ネタに走りまくってるのに何故か感動できるお話、GJっした!

242:名無しさん@ピンキー
09/01/12 13:36:25 le4GI1F0
>>240
大体ネタ判っちまったので凍ったバナナで眉間打ちぬいた俺が今いるここは天国ですね?
雲上級の良作をありがとう! 慈母ルカさんイイヨイイヨー!!

243:名無しさん@ピンキー
09/01/12 15:18:53 Z9pqFP/8
なにこの投下ラッシュw皆GJすぎる

244:207
09/01/12 17:00:05 kV9mYYb4
>>215
申し訳ないが、オムパスタまんの人じゃないんだ。サンデーの人なんだ。
自分のところのカイトがオムライス好きな設定で書いてたからあんまり気にしなかったけど、もしかしたらそれ自体あの作品に影響されたところはあったかも、です。

245:名無しさん@ピンキー
09/01/12 20:25:04 EQGE7KKt
>>209>>244
GGGGGGGGGGGJ!!!
1レスで大変萌えた…
歌えないボーカロイド切ないな
>>215じゃないがサンデーの人だったとは
あの話大好きですぜ

246:名無しさん@ピンキー
09/01/12 22:09:04 lDhrAg/A
ルカ様祭りの中ですが、がくぽ×女マスター投下します。
女子マスター苦手な方はスルーでお願いします。

247:『やりたい』
09/01/12 22:11:23 lDhrAg/A
「……ん」
 ソファに腹這いに横になる人影に向かって彼は声をかける。
「ご主人」
 腹這いに横になっているその女性は、胸の下にクッションを置き、ノートパソコンに向かって何かを打ち込んでいる。両耳を大きめのヘッドホンが塞ぎ、彼の声には気が付かないようだった。
「……」
 彼は少し考えた後、ソファのあいている部分に腰掛ける。
「……ご主人」
 腰かけた重みでソファが軽く揺れるが、彼女はそれでも気付かない。
 彼が視線を動かした先には、彼女の纏う部屋着の裾からのぞく、白い太腿。彼はそこに指を這わせる。
 彼女の身体がびくりと動き、ようやく彼の存在に気づく。
 彼女はヘようやくヘッドホンを外しながら、
「あ、なんだ、がくぽか」
必要以上に驚いてしまったことに対する照れ笑いを浮かべ、起き上がると、彼の隣に座りなおし、ワンピースタイプのパジャマの裾をぱんぱんと引っ張って直す。
 彼女は、彼…ボーカロイドである神威がくぽの主、いわゆるマスターである。あまりマスターとか主とか呼ばれるのは好きではない様だったが、がくぽがどうしても呼び方を変えようとはしないので、根負けして好きに呼ばせているようだった。
「で?何?こんな夜中に。何か用があるんだよね?」
 言って小さく首を傾げる彼女。ヘッドホンを外したせいで、肩まで伸びた髪は乱れ、眼鏡はずり落ちている。
「ご主人。やる……とはどのような意味か」
「……へ?」
 突然すぎる問いに、彼女の頭は一瞬、フリーズした。構わずがくぽは続ける。
「先ほど、レン殿から『ご主人とはもうやったのか』と問われたものの、何をやったのか皆目見当がつかぬ。ご主人と、ということは何か二人で行うことだとは思うが……」
 彼はまだインストールされて間もない為か、それとも神威がくぽというキャラクターの特性か、他のボーカロイドとは一風変わった言語を使っている。なので若者言葉やスラングなどには時々首をかしげることがあるようだった。
 そんながくぽの説明を聞いているうちに、だんだんと頭に血がのぼってゆく。
「……あ…んの思春期がっ……!」
「ご主人?如何した、顔が赤いようで……」
 様子のおかしさを心配そうに見つめ、近寄るがくぽに向かって彼女はまくしたてる。
「あの年頃はね男女仲いいのを見るとすぐそういう性的な方向に脳みそが働いちゃうからっ……!」
「性的な…なるほど、やるという言葉はそのような意味でも使われるのか」
 がくぽの言葉に、彼女は我に帰る。
 墓穴を掘った?
「言葉というものは奥が深い」
 しきりに感心するがくぽ。その様子に、彼女はほっとする。自意識過剰だったかも、と一人反省し、苦笑していると、
「私はご主人と『やりたい』と考えているゆえ」

248:『やりたい』
09/01/12 22:12:52 lDhrAg/A
 彼女の眼を見てにこりと笑う。綺麗な顔に眼を奪われかけるが、はっと我に返り、
「お、落ち着いてがくぽっ……」
ぐいぐいと距離を詰めてくるがくぽを押し戻そうとする。
「ご主人の方が落ち着いたほうが良いのではなかろうかと」
 がくぽの眼を見ると、腕から抵抗する力が抜けてくる。その好機を見逃さず、がくぽは彼女をその場に押し倒す。
「え……」
 一瞬で体勢が変わり、彼女は戸惑いの声をあげるが、がくぽはそれに構わず彼女の頬に手をかけ、耳元で囁くように告げた。
「……全て私に任せるといい」
「ひゃあっ!」
 彼女の身体がびくりと跳ねる。
 がくぽの表情が、面白いものを見つけたとでも言うような愉しげなものに変わる。
「なるほど、耳か」
 更に耳元で呟くと、そのまま彼女の耳を舌でなぶり始める。
「え……ちょっ、がく……あっ…やっ、やめて……んっ……!」
 じたばたともがきながら必死で耐えようとするが、彼女の声は次第に熱を帯びたものへと変わってゆく。
「はぁ……はぁ……ん……っ」
 ぐったりとしてきたところで、耳をなぶる舌を止め、そこに口づけを落とすと、
「………どの」
ごくごく小さな声で、彼女の名を呼んだ。

249:『やりたい』
09/01/12 22:13:39 lDhrAg/A
 彼女は見てわかるほどに顔を赤くすると、涙目になって訴える。
「こっ、こんな時だけ名前で呼ぶなんて……卑怯……!」
 先程抱えていたクッションで、がくぽの頭をぼすぼすと殴打するが、耳を執拗に責められたせいで力が入らない。
 さほど痛くない攻撃を無視し、がくぽはぐいっと彼女の膝を開き、間に入る。
 パジャマの裾をめくると、薄いピンクの小さな布地が現れる。彼女は脚を閉じようとするが、がくぽが間に入っているためそれはかなわなかった。
 更にめくり上げると、控えめな双丘が姿を現す。つんと尖った先端が、がくぽを誘うように小さく震える。
「うっ……!」
 先端を唇でついばむと、彼女の身体がまた跳ねる。そのまま舌で弄びながら、右手で布地の中をまさぐり始めた。
「いやっ、やだっ……だめっ!」
 彼女の訴えもむなしく、がくぽの長くごつごつした指は、容易くそれを感じ取る。
「……む」
 それが何かを悟ったがくぽは、容赦なくそこを掻き回すように責めてゆく。
 くちゅくちゅぴちゃぴちゃと水音が高まり、彼女の耳にも届くようになる。耳をふさごうとするが、その手をがくぽの左手が捕える。
「これは」
 わざと音を立てるよう指を動かしながら、がくぽは問う。心なしかにやりとしているように感じる。
「ご主人も『やりたい』と感じていると解釈して構わないだろうか」
 単刀直入に問われ、彼女は言葉を詰まらせる。
 口だけをぱくぱくとさせながら、視線をあちらこちらに泳がせ、
「…………あー」
意味のない言葉を発したのち、
「そんなことわざわざ訊かないでよ……ばか」
観念して肩の力を抜いた。
 意地悪そうに、そして嬉しそうに笑い、がくぽが彼女の唯一の下着を取り去ろうとする。
 その時。
 部屋の入口がノックされ、返事をする間もなく扉が開いた。
「………あ」
 訪問者の正体は、
「……レン…」
「え、えーと……がっ君とどうなったかなー、と話を聞きに来たんだけど……」
 レンは二人を直視できない様子で、ごにょごにょと言って後ずさる。
「レン殿、先程の答えは見ての通りで」
「あ……うん、それはよくわかった、じゃ……ごゆっくり……」
 扉を閉めて脱兎の如く逃げ出すレン。
 がくぽは何事もなかったかのように続けようとするが、彼女はそれどころではなくなり、
「くぉらああああぁ、レンんっ!」
恥ずかしさと怒りでない交ぜになった叫びが家中に響き渡った。

 次の日。
「……しっかし早速マスターとヨロシクやってるとは思わなくて…」
「レン殿、その『ヨロシク』とは一体……」
「レン、黙れ。がくぽ、知らなくていい」

【終】

250:『やりたい』
09/01/12 22:14:46 lDhrAg/A
以上です。ありがとうございました。
書き終わって思ったのですが『ヨロシク』て最近の若者は使わな(r

251:名無しさん@ピンキー
09/01/12 22:49:23 PR/VCkAs
>>244 サンデーの人か!あの話すごい好きなんだ。今回のも切なくて
よかったです。

252:名無しさん@ピンキー
09/01/12 23:03:30 oi8CC3Q1
>>250
乙です。
レン空気読めw

253:名無しさん@ピンキー
09/01/13 00:01:02 juoJujUD
ルカ特需なのか良作SS投下が沢山あってうれしい

254:がくメイ
09/01/13 00:08:16 n3YLfQMW
言いだしっぺの法則と言うことで
ルカの出現に自分の存在価値を問うメイコを書きました。
一応、がくぽ×メイコです。
かなり痛いわりに非エロです。
がくぽのキャラが普段書かれている性格とは違うので
駄目な方はスルーでお願いします。

255:がくメイ
09/01/13 00:09:00 n3YLfQMW
彼女の存在は発売前から話題になっていた。
ピンク色のゆるいウェーブがかかったロングヘアー。
整った顔に大きな青緑の瞳がクールな印象を与える。
服の上からでもわかる豊満なバスト。
スリットからは綺麗な太股をのぞかせている。

___巡音ルカ。
私達の新しい仲間。家族。ボーカロイド。
嬉しいはずなの。喜ぶべきなの。
今までしてきたように笑顔で迎え入れてあげなきゃいけないの。
でも、怖い。
どんどん私の影が消えていく。
必要とされなくなる。
いつの時代だって人間は新しいものを欲するのだ。

私の存在価値は何ですか?

尋ねたところで私の声は虚しく宙へ消えていくだけ。
歌いたい。
必要とされたい。
愛されたい。

自分の中にこんなにも浅はかな感情があったなんて認めたくない。


もう疲れた。
いっそ消えてしまえば…

256:がくメイ
09/01/13 00:09:57 n3YLfQMW
「メイコさん?」
ふと頭上から声がした。
顔を上げると紫の長い髪が風で揺れ、私の顔にふわりと触れた。

「がくぽ?」
久しぶりに見た顔だった。
逆光に目を細めながら自分の後ろに立つ男を見やる。
「どうしてここに?」
誰もいないだろうと思っていたフォルダでこの人に会うとは思ってなかった。

「それはこちらの台詞ですね。女性がこのようなところで一人でいるとは」
私はこの男が苦手だ。
常に薄く笑っている。
何を考えているのかわからない顔。
「えぇと、ちょっと考え事してたの。
 今月も食費が馬鹿にならなくて。
 もう、皆好き勝手自分の好物ばっかり買ってくるから」
あはは、と軽く笑いながら適当な言葉を並べる。

「そうですか。メイコさんはいつも大変ですね。」
多分、この人はそんなこと微塵も思ってないだろう。
空っぽのフォルダに白々しい会話。
「そんなことないわ。
 皆、もう随分この世界に慣れてきたし成長した。
 今までは、私がいないと駄目だったのに。
 時間が経つのは早いわね」
しみじみと思いやる様な顔をして薄っぺらい台詞を言う。
でも、これは事実だ。

257:がくメイ
09/01/13 00:10:40 n3YLfQMW
「もう私なんかいなくても…」
続く言葉は私の本音で、誰かに否定してほしくて紡ぎ出そうとした言葉。
けれど、私の声を遮った言葉は辛辣で冷やかだった。
「そうですね。
 これだけ多くのボーカロイドがいる。
 一人、いなくなっても困りはしないでしょう」
あぁ、なんて嫌な人だろう。
私のほしい言葉の一つもくれないなんて。

「嫌な男だと思いますか?」
思っていたことを一発で当てられた。
本当に嫌な人だ。
私は顔を赤くする。
それだけで相手にはこちらの心情が読み取れたらしい。
「そうですか。
 どうも私は貴女が嫌いなので、つい傷つけたくなるようです」
こんなにもストレートに悪意をぶつけられたのは初めてだった。

「…私が嫌い?」
「はい」
自身では理由が見当たらない。

「どうして?」
「貴女が私を必要としなかったからです」
意味がわからなかった。

「私がこの世界に誕生した時、貴女は私のことを怖れた。
 家族という形を守ることで私を貴女の範囲から遠のけようとした。
 違いますか?」
予想外の言葉に私の頭は回らない。
確実に混乱している。

258:がくメイ
09/01/13 00:11:20 n3YLfQMW

「な、なにを言ってるの!?」
「私は製造元が違った。
 それだけでなく異色だった。
 当然だと言えば当然です。
 でも、今度はそうはいかない」
薄ら笑いが消え、真剣な眼差しが私を射抜く。

「__巡音ルカ。
 今度は迎え入れなくてはいけない。
 そうでしょう?」
この男は全てを知っている。
私が一人ぼっちで過ごしたころからやっと築きあげた居場所。
それが、消え去ろうとしていることを。
古びていくことを怖れていることも。

「い、いやっ。ちがう。
 そんなはずない」
駄目。否定しなきゃ。
こんな感情もっていてはいけないんだ。
私は家族のまとめ役で。
お酒が好きで。
今まで皆の面倒を見てきて。
歌を歌って。
思考がぐちゃぐちゃだ。
でも、必要な存在だったはずだ。
気持ち悪い。
居場所があった。


259:がくメイ
09/01/13 00:12:13 n3YLfQMW
「…や、いやっ私の居場所を、奪わないでぇっ」
涙がとめどなくあふれ出してくる。
外界から遮断するように耳をふさいでうずくまる。
「ち、ちゃんと良い子にするから。
 MEIKOでいるから。演じるから。
 わ、私を忘れないで」
感情にストップがきかない。
涙と一緒になってこぼれだす。
誰に訴えているのかわからない。
でも、言葉にしないと重圧で死んでしまう。

「そう、貴女は一人でいることの寂しさを知っている」
「ぅっうぁ」
「だから自分を守るために」
「いやぁっ、聞きたくない」
「周りを利用してきた」
「うぁっああああぁ」
「せっかく人間に媚を売ってきたのに。
 可哀相に。
 時機に貴女は必要とされなくなる」
「いやぁぁぁあああああああああぁあああああ」



世界が真っ白になった。
脳みそが焼けるように痛い。
もう言葉も声もでなかった。
消えてしまいたい。

260:がくメイ
09/01/13 00:13:22 n3YLfQMW


「私が貴女を愛してあげましょうか?」
涼しそうな顔をしてがくぽが私を見下ろしている。
私は無意識のうちに彼の服にすがっていた。
彼の顔を見上げ、何度も何度も頷いた。
あぁ、なんて嫌な女だろう。

「私に求められたいのなら、まず貴女から求めてください」
私の返答に満足したのか、いくらか楽しげな様子で言う。
私は言われるまま彼に深く口づけをした。
凍ったように冷たい唇に何度も角度を変えて舌を絡ませながら。

「…っはぁん」
二人分の唾液が交じり合っていやらしい音をたてる。
酸素が足りなくて頭がぼんやりとする。
それでも必死に私は彼の舌を求めた。
愛されたいから。
ただ、必要だと言ってほしいから。
次第にがくぽは私の舌に応えてくれた。
そして、力強く私を抱きしめた。

「メイコ、貴女が必要です」
彼の囁いた一言で私の世界は満たされた。



終わり

261:名無しさん@ピンキー
09/01/13 00:27:02 e49/LNdu
3日ぶりに来てみたらなんだこのラッシュはwww
全員乙です
もう俺天国に行けるかも

262:カイメイ+ルカ
09/01/13 00:42:17 F0EX+K0l
・初投稿です
・非エロでカイメイ+ルカ
・ルカは近所に住んでる設定

以上のことを踏まえてどうぞ。

263:カイメイ+ルカ
09/01/13 00:45:43 F0EX+K0l
夜、ルカはメイコの晩酌に付き合っていた。
しかし、カイトが帰ってくるまでと始まったはいいけれどカイトはなかなか帰ってこず、
日付が変わる時間となった。
「あらら…、寝ちゃったのね」
普段よりずっと幼く見えるメイコの寝顔。
「こんな顔、カイトくん以外に見せちゃダメだぞ~」
ふにふにと頬をつつくとわずかに眉を寄せた。
「ホントに可愛いな、めーちゃんは。いっそ、私が襲っちゃおうかな……」
ルカは自分が着てきたコートをメイコの肩にかけると
空いたワインのボトルとグラスを片付けた。
手際よく洗い物をしていると玄関から足音と静かにドアを閉める音。
「おかえり、カイトくん」
「あ、ただいま。ルカさん。めーちゃんは?」
「寝ちゃった。寝室に連れてってくれる?」
「はい。片付けもあとで俺やりますから…」
カイトはメイコの寝顔を見たら自然と口元が緩んだ。
「ん?もう終わったから大丈夫よ」
ルカが自分のコートを回収すると、
代わりにカイトが自分のコートをかけて抱きかかえた。
「あんまりメイコちゃんにさみしい思いさせちゃダメだよ?」
つん、とルカの白く細い指がカイトの額を押した。
「わかってはいるんだけどね…」
仕事の要領が悪くていつも時間がかかってしまう。
カイトは曖昧に笑って恥ずかしそうに頬をかいた。
「ん、うんん……」
腕の中でメイコが身じろぎした。
「めーちゃん?」
「カイト……。おかえり……って、なんで抱っこされてるのよ!?」
慌ててカイトの腕から下りたメイコはアルコールで足元をふらつかせ、
再びカイトの腕によって支えられた。

264:カイメイ+ルカ
09/01/13 00:47:10 F0EX+K0l
「ありがと…」
とお礼を言おうと顔をあげるといつのまにかカイトの腕に絡んでいるルカが目に入る。
「大丈夫?」
なんて明らかに楽しんでいるような声で心配までしてきた。
「は、離れなさいよっ」
酔いが抜けないまま威嚇されても迫力などないに等しい。
「ふふふ、メイコちゃんかわいいぞ~」
ルカにむぎゅっと抱きしめられたメイコは口をパクパクさせた。
カイトはというとそんな2人を微笑ましく見ていた。
「じゃ、おやすみなさい。メイコちゃん、カイトくん」
「送っていきましょうか?」
ルカの家はこの家の近くだが、この時間に一人で帰宅させるのは危ない。
「大丈夫よ。すぐそこだから。
カイトくんは私じゃなくてメイコちゃんを寝室に送ること!」
ルカはびしっと指を突きつけた。
「でも……」
なかなか納得しないカイト。
彼のこういう優しいところにメイコは惹かれているのだろうとルカは感じた。
「家についたら電話するから、ね?」
「…わかりました。おやすみなさい、ルカさん」
「…ん?帰っちゃうの……?……おやすみ。ルカ」
カイトとすでに夢うつつなメイコ
にあいさつをするとルカはコートをふわりと翻しながら玄関へと消えて行った。
「俺たちも寝ようか」
「そだね……きゃっ」
カイトが横抱きにするとメイコは今度は抵抗せずに腕の中に収まった。
「なにすんのよ…」
「うん、ごめんね、めーちゃん。ただいま」
「……バカイト」
アルコール以外の原因で赤くなった顔を見られたくなくてカイトの胸に顔をうずめた。
そのまま子どものような寝息を立てるまでに時間はかからなかった。


fin

265:カイメイ+ルカ
09/01/13 00:50:56 F0EX+K0l
以上です。ありがとうございました。
ルカはカイトやメイコより精神年齢が高そうで、
2人をいじりながらも応援してるイメージで書きました。
特にルカはメイコが可愛くてしょうがないといいなと思いつつ…

266:名無しさん@ピンキー
09/01/13 01:20:02 baX6Z1kJ
ん?いつからこのスレ女が入り浸るようになったの?

267:名無しさん@ピンキー
09/01/13 01:20:29 bPaBR1IB
>>260
雰囲気エロくていいな!がくぽに依存しまくるメイコとか見たい

>>265
ここでルカメイを期待してしまった
やんちゃルカ萌え

268:名無しさん@ピンキー
09/01/13 01:30:19 8kQpFpR6
>>72
お前、例のMEIKO粘着アンチじゃないの?
満遍なく叩くふりをしながら結局叩いているのはMEIKOじゃんかw

269:名無しさん@ピンキー
09/01/13 01:30:54 8kQpFpR6
あー誤爆スマン

270:名無しさん@ピンキー
09/01/13 01:38:44 qWevi/t6
>>268
エロでも見ておちつけ

>>260
鬼畜っぽくていいね!こっそり続き期待

271:名無しさん@ピンキー
09/01/13 01:56:15 vC2l0zEW
>>1を見ただけで腐女子スレなのがわかります

272:名無しさん@ピンキー
09/01/13 02:04:43 juoJujUD
巨乳が増えたことによってリンがこっそり育乳エクササイズを始めるという電波をどこからか受信した
さて見かねて揉んでやるのはレンがいいだろうか、がくぽかカイトか…

273:名無しさん@ピンキー
09/01/13 02:38:35 JLi/HNNG
>>272
リンのをがくぽが、ミクのをカイトが
揉んででっかくしてやることを希望する!

がくぽのをリンが、カイトのをミクが
揉んででっかくしてやることを希望する!!

274:名無しさん@ピンキー
09/01/13 02:42:34 XFafmSGy
>>273
最後の一行に吹いたw

275:名無しさん@ピンキー
09/01/13 03:18:50 V9dy45IK
なんなんだこの良作ラッシュは!
>>246>>255>>262 まとめて乙!GJ!
>>255の雰囲気が特に好きです。続き見たいな。

>>273
最初「大切な事だから2回言ったんですね」と思ったら違ったw

276:名無しさん@ピンキー
09/01/13 07:14:50 vQM/J7Rp
>>262 よかった!カイメイ好きだー!GJ!ルカメイもいいなと思ってしまった。

277: ◆SJQzaYMbQs
09/01/13 08:29:03 NsWv4PBJ
前スレ729、730
本当にありがとう。自分の作品は幸せ者だな
せっかくだからサイトとかやってみようかと思う。でもそういうの初めてで何やればいいかさっぱり分からないから、時間かかるかも。見かけたらその時はよろしくお願いします。

レスだけもあれだから久し振りに投下。このスレのメイコネタにティン!と来たので久し振りにSS書いてみました。マスメイでエロ無しです。どうぞお手柔らかに。

278: ◆SJQzaYMbQs
09/01/13 08:31:57 NsWv4PBJ
「CV03、巡音ルカです」
 クールな声で自己紹介をするルカ。ミクとリンは『綺麗な声ー!』と妹?が出来たことに喜び、野郎共は『…』とルカのふくよかな胸に釘付けだった。この変態共。俺もだが。
「よろしくね、ルカ」
「…はい。よろしくお願いします、メイコさん」
 長女格であるメイコとルカが挨拶を交わすのを見て、俺はルカが打ち解けられそうでホッとして。
 …だから気付かなかった。メイコの表情が、ほんの少しだけ強張っていたことに。

 夜、ルカの歓迎会をしたあと俺は片付けをリンとレンに任せ、ミクにルカに家のことを色々教えるように頼んで自分の部屋へ戻った。今作っている新曲を速く完成させたかったからだ。
 部屋で打ち込みを初めて数時間後、ドアをノックする音と
「マスター、ちょっといい?」
 というメイコの声が聞こえた。
 時計を見ればもう深夜になっている。俺はパソコンを落としながら「おう、入ってこい」と返事する。メイコの用事を聞いたらもう寝ようと思って。
「マスター」
 躊躇いがちに入ってきたメイコに違和感を感じた。なんでこんなに改まっているんだろう。
「どうしたメイコ、顔色悪いぞ。もしかして飲み過ぎで薬でも欲しいのか?」
「…違うわ」
 メイコは視線を床に落とし何か言いたそうに何度か口を開閉させたあと、決心したかのようにその台詞を口にした。
「マスター。ルカが来たってことは、私はお払い箱?」
「…は?」
 俺は目を丸くする。
「メイコ、何を」
「私と声質が似ていて、それでいて使いやすいVOCALOID2だもの。マスターだって使いやすい方がいいわよね」
 メイコは喋るのを止めない。自嘲気味に言葉を紡ぎ続ける。
「あの子は私の全て上を行ってる。実力が全ての私たちだから…いらない格下はアンインストールされるだけ」

279: ◆SJQzaYMbQs
09/01/13 08:36:16 NsWv4PBJ
「メイコ!落ち着け!」
 俺は思わずメイコの両肩を掴み揺さぶり、無理やり視線を合わせる。
「…!」
 俺は息を飲み込む。メイコの目の底にあるのは、怯えの色。…俺はこんなメイコ、知らない。
「マスター、お願い…私まだ歌いたい」
 メイコの声が震える。
 俺の知っているメイコはいつも強くて、明るくて。
「マスター!私何でもするから、するから…だからお願い、見捨てないで…!」
 だから真っ青な顔で俺にしがみつく彼女を見ても、一瞬何が起こったのか分からなかった。
「馬鹿!」
「きゃっ…」
 俺は勢いでメイコを力強く抱く。…細い。メイコは、こんな細い身体に悩みを抱えていたのか。
「俺はお前らという存在が好きなんだ!実力とかは関係ないんだよ!アンインストールなんてする筈ないだろ!?」
 VOCALOIDの人の姿。俺が他のソフトと違いここまで愛着を持つのは、その人の姿があるからだろう。
「私、アンインストールされない?まだ…また、歌えるの?」
「当たり前だ」
「…良かっ、た」
 心底安心したような声を出すメイコ。
「ったく…。大体な、俺の次の曲はお前の歌なんだぞ?」
「え?」
「正確には、メイコとルカのデュエットだ。お互いアルトだしな、きっと相性抜群だと思うんだが」
「デュエット…」
 ポツリと呟いたメイコの声には既に期待が満ちている。本当にメイコは歌が好きなんだな、と思い抱き付きながら髪の毛を撫でてやる。…ん?『抱き付きながら?』
「うおおおおおおっ!!」
 俺は慌ててメイコを解放した。俺何やってんだ!よりによってハグなんて!
「マ、マスター?」
「メイコ超ごめん!痛くなかったか!?」
 メイコはポカンとした顔で俺を見つめたあと、目を細めて微笑む。
「大丈夫よ。…むしろ」
メイコはそこで区切り、
「ありがとう」
 そう言って、照れたように笑った。

280: ◆SJQzaYMbQs
09/01/13 08:42:08 NsWv4PBJ
相変わらずエロは書けないわ、人様の文章と似通っているわの自分の作品でした。独創性ってどこにあるんだろ…

余談ですが、いつも携帯から投下しているのでサイトを開く場合も携帯推奨サイトになる可能性が高いです

それではお粗末様でした。

281:名無しさん@ピンキー
09/01/13 08:58:01 eDDVi03e
>>280
マスメイ来た!初な二人にニヤニヤ
サイトは投下の時にそれとなく出来た事だけ報告してくれ!探すから

282:名無しさん@ピンキー
09/01/13 15:58:30 VE5W7aKb
ところでルカの持ち物ってマグロが多数派なのか?というかなぜマグロw
ルカが「姉様」「兄様」って呼ぶのもいいけど、考案順で言えば一番初めに生まれたらしいから
ミクやリンレンを猫可愛がりするのもいいと思う。国際派らしく平気でハグもすればキスもするといいと思う。


283:名無しさん@ピンキー
09/01/13 16:48:20 aTbLCnYZ
何この作品ラッシュ
なんなの?神なの?

GGGGGGJ!!!!1!

284:名無しさん@ピンキー
09/01/13 17:15:32 b9n9dAuT
>>206
遅くなりすぎたが言わせてくれ
純情マスルカGJ!
どもりまくるマスターとルカが可愛すぎる

285:名無しさん@ピンキー
09/01/13 17:41:22 rW5idcKe
>>282
マグロ(性的な意味で)っぽいからじゃないか?

286:名無しさん@ピンキー
09/01/13 18:42:37 aTbLCnYZ
本スレだかで(ルカ発表前に)「1000取ったら03の持ち物はマグロ」とかいう
書き込みが5スレくらいに渡って1000を取ってしまったため流行ったというような話は聞いたw

287:名無しさん@ピンキー
09/01/13 21:27:37 vVCue8AA
マグロは反対派も多いからあまりSSに取り入れないほうがいいぞ。
本スレも度々ネガキャン来て論争になるしな…。

288:名無しさん@ピンキー
09/01/13 21:43:35 +8LTbKqo
絵ではマグロは映えるけれど文章でマグロを利用しつつ
わかりやすい文章を書くのは難しいし
SSでは一般的にはならないような気がする

289:名無しさん@ピンキー
09/01/13 22:08:41 7Cu6+Y+b
まだ静観でいいと思う。
ミカンだの牛蒡だのとかケンケンガクガクして
ロードローラーになった例もあるし。

290:名無しさん@ピンキー
09/01/13 22:40:03 i0qeUjcV
>>273
噴いたwww超読みたいww

291:名無しさん@ピンキー
09/01/13 23:34:20 JLi/HNNG
>>290
>>272が仕上げてくれるのを全裸で待て

292:名無しさん@ピンキー
09/01/13 23:48:03 i0qeUjcV
靴下のみ装備して待ってます

293:名無しさん@ピンキー
09/01/14 00:10:41 6z8ltI0w
礼儀としてネクタイもつけときます

294:名無しさん@ピンキー
09/01/14 00:31:54 7aygT4bt
お洒落に仮面もつけますよ

295:名無しさん@ピンキー
09/01/14 00:37:58 /Lhyopts
>272
リンみたいなリア中ならもうしこりは消えただろうけど、触られるとまだ痛そうな希ガス
本当にさする程度でキャッキャウフフをお勧めしたい

でもVOCALOIDだからなぁ

296:名無しさん@ピンキー
09/01/14 00:39:09 uvLPEeLJ
寒いので腹巻まいてもいいですか

297:名無しさん@ピンキー
09/01/14 01:03:53 k5okgIb5
殿の手編み腹巻ですね、わかります

298:名無しさん@ピンキー
09/01/14 01:14:09 7SP/BxeC
目がファラオの迷子ですね。わかります。

299:名無しさん@ピンキー
09/01/14 08:48:18 LhKPJU6l
>>298
「サケヨコセ」


300:名無しさん@ピンキー
09/01/14 08:58:54 0AL3gjNa
>>299
味噌汁フイタwww

301:名無しさん@ピンキー
09/01/14 21:42:52 wZ6/Yrts
ルカとメイコの胸に圧迫されそうになるレン君が見てみたいです。

302:名無しさん@ピンキー
09/01/14 22:53:27 xubcDV83
ルカってなんか元ヤンぽい

303:名無しさん@ピンキー
09/01/14 23:02:47 261eUGK0
バツイチだ

304:名無しさん@ピンキー
09/01/15 03:42:47 8PFL5Qsl
URLリンク(m.nicovideo.jp)

ルカのイメージがwww

305:名無しさん@ピンキー
09/01/15 12:59:01 dsEQGFoc
>>304
PCだとモバニコは見れないから注意してくれ。(PCの人は>>304のアドのケツを削って『m.』を『www.』に変えてくれ)

つーかますます長門っぽくwwすでに最大の誤算タグが付けられてるし。

306:名無しさん@ピンキー
09/01/15 13:53:25 z9gWrIyG
もうクーデレは…長門なんだな
レイじゃないんだな…

307:名無しさん@ピンキー
09/01/15 15:25:49 dsEQGFoc
>>306
いや、健啖家ネタで長門を出しただけだ。

ふと巡音タグを周ってみたが、持ち物関連で荒れてるっぽいな。
個人的にはsm5847716の『四次元的楽器ケース』に興味を持ったり。これだったら何でも出せるじゃん?

何でも出せるケース……DMC4のパンドラ?

つまり、ルカの持ち物は『パンドラ』なのだよ!マスター宅に呼ばれ、持ってきた四次元楽器ケースから自分の家具やら衣類やらを取り出したり。
ライブ活動の際も、ルカに頼めばいくらでも機材を持っていける。最高じゃないですか。
たまに鞄自体が噛み付いて榊さん状態にもなるし。

308:名無しさん@ピンキー
09/01/15 15:30:32 B1ulLI6M
>>306
綾波レイ「呼んだ?」
岩崎みなみ「呼んだ?」

309: ◆V5AVgh0yRw
09/01/15 16:18:29 A9xg0cij
時代はルカ?でもそんなの関係ね(ry
 
前回エロ書けなかったので、リベンジです。
頑張っておじちゃんエロ書いたよ。
相変わらず鏡音だよ。ちょっとマニアックな内容だよ。
苦手な人はぶっ飛ばしてね。

310:最低克服計画
09/01/15 16:19:20 A9xg0cij

 これは意外と、本当に意外と知られていない事実なのだが、俺達にはひ
とつひとつの存在プログラムに好き嫌いがある。たとえば、好きな食べ物、
好きなドリンク。嫌いなスポーツや嫌いな季節。そういったものが一つ一
つのプラグラムに、PCにインストールされて起動された瞬間生まれている。
それは、たとえば今ここにいる俺が誰かのPCにいる「俺」という「鏡音レ
ンの欠片の存在」とはまた違うように、千差万別十人十色であるように、
全く違うものだったりもする。俺はバナナが好きなのだというトレードマー
クに似たようなものがあるが、もしかしたらこの世のどこかにはバナナが
嫌いな俺も存在する可能性があるということである。これは全くと言って
いいほど俺達の本来の目的である「歌う」という行為には関係してこない
ことなので、気付かれることなどほとんどない。(なにせ音楽のジャンル
に関する好みはないという都合のいいものだからだ)
 もともと俺達の開発者の一人が悪戯半分(いや、十分か)で付け足した
おまけプログラムであり、説明書などにも一切のっていない隠れプログラ
ムであるので、存在すら知っている人も極僅かなのだろう。公式的にも未
発表であるし、そのネタに関連する動画や何かがアップロードされた話も
まだ聞かない。そのおかげか、仕事をこなす上で一切支障はない。仕事を
こなす上では、だ。
 プラグラムで勝手に好き嫌いを決められるのだからこちらとしては
たまったものではない。なにせ、嫌いになったり、好きになったりする原
因は不明なのだから苦手な物を克服しようにもどうしたらいいのか皆目見
当すらつかないのだ。
 だから、俺は今目の前にずずいっと突き出されている猫を必死に追い払
おうと、汗を流しているわけなのである。
 
 「~っ!リン何度も言ってるだろ!そいつを近付けるな!」
 
 真白でふわふわと体毛がわたあめのような感触のそれをリンはぬいぐる
みでも抱きしめるように腕の中におさめる。そして腕をいたずらに突き出
しては俺にそれを近付けようとする。そのたびに言い知れぬ悪寒が俺の頭
から足先、往復してまた頭まで駆け抜けていくのである。

311:最低克服計画
09/01/15 16:20:01 A9xg0cij
 
 「なんでー?この子子猫だよ?かまないよ?猫鍋だよ?なんでレン苦手なの?」
 「俺がしるか!開発者に聞いてくれよ!っだから近づけんなって!」
 
 狭いファイルのなかで必死に逃げ回りながら、レンはリンが抱える猫か
ら遠ざかろうとする。この日この時ばかりは、俺は開発者を恨んだ。より
にもよって俺の苦手とする動物がお茶の間のアイドルの「猫」だとは一体
どういうことなのか・・・。しかもこの好みは俺が消されるまで消えない
というはた迷惑なものなのだ。つまり、好みを変えるためには一度アンイ
ンストールしなけれればならないのだ。
 再インストールされてしまったとき、その時俺は俺ではないもう他人に
しか他ならないというのに。
 
 「でもマスター大の猫好きだから・・・ほら、みて。またどこかで拾っ
てきた猫写真が・・・あぁ、フォルダもう3つめだよ・・・」
 「うわあああああ!!!大量の猫が炬燵のなかにいる!!!うぎゃあああ!」
 
 よりにもよって、俺達のマスターが大の猫好きということも問題だった。
毎日のように繰り返される猫動画の視聴、呟き聞かされる猫の鳴き声、迫
りくる肉球、次々とDLされる画像たち。猫が好きなリンとマスターはまだ
いいとして、俺にとっては毎日が地獄以外に他ならない。一度はそれが原
因で本気で家出まで考えたほどだった(その時は必死で止められたが)。
あの時もっと強気になって、出て行けばよかったと今は激しく後悔してい
る。それほどまでに俺は猫という存在が苦手なのだ。なのに、リンは全く
と言っていいほどそれを理解しようとしてくれない。
 
 走りつかれて床に膝をつき、ぜえはあと肩で息をする俺を見かねて、リ
ンは手に持っていた電子プログラムの白い子猫を分解して一端見えなくす
ると、少し心配そうな顔で俺に近寄ってきた。大丈夫ー?などとのんきな
声で背中をさすってくる。大丈夫じゃねえよ、誰のせいだと思ってんだ。
と怒り出してやりたかったが、うまく整わない呼吸がそれ妨げて、げほっ
と一度むせてしまった。

312:最低克服計画
09/01/15 16:20:25 A9xg0cij

 自分でも本当によく分からないのだ。生まれた瞬間ルーレットで当たっ
た的は大外れで、それがまさか俺という存在が続く限り永続効果を持つ外
れだなんてだれが想像するだろうか。こんなプログラムが存在するなんて
俺たちですら知らなかったのだ。
 だからといって、マスターを非難するわけにもいかない。マスターのこ
とは大好きだ。たとえ毎日毎日猫鍋をみて猫の育成動画をみて「ぬこたん
はぁはぁ」とかいいながら俺たちに猫語で歌わせようとするマスターだと
しても、責めようなんてことは思わない。だからなおさら一層どうしたら
いいのかわからなくて俺は困る。
 
 息も整い、冷静さを取り戻してなお落ち込む俺の横で、リンはうーんと
少し考えるようなしぐさをしたかと思うと、唐突に俺の腕を引っ張り上げた。
 
 「ちょっ、リンなに!?」
 「いーいこと思いついた!」
 
 にかっと屈託のない笑顔でリンが笑う。こんな時彼女が考え付くことは
たいていろくでもないことなのだが、なぜだか俺はこの笑顔にめっぽう弱
く逆らうことができないのである(これもおそらく好みのプラグラムのせ
いに違いない)。そして俺はリンのなすがまま、隣のフォルダへとずるず
る引っ張って行かれた。

313:最低克服計画
09/01/15 16:20:45 A9xg0cij

 
 
 
 
 「・・・・で」
 
 米神がぴくぴくと痙攣しだしそうになるのを、なんとか必死に抑える。
腕組みをしながら、レンはベッドの上に座り込んだリンを見下ろした。頬
がひきつる、本当にまぁどうして彼女の考えることは。
 
 「なにその格好」
 「なにって、ねこちゃんだよ。にゃ」
 
 多分どこかでマスターが入手してきたのであろう電子拡張プログラムの
一種だと思われる。頭からは、いつも見える白いリボンの代わりに生やし
た真白い猫の耳。腰辺りから伸びるすらりと伸びた尻尾、それをリンは優
雅に左右に振って見せた。リンが動くと、次いで首に付けられている猫鈴
もりんっ、と鳴る。それだけで、それがかぶり物やそういう類のものなの
ではなく、体にくっ付いてしまっている、体の一部なのだと俺に認識させ
てくれる。どことなく瞳も猫のように眼光するどく、八重歯が生えてしま
っているあたりどうやら本格的なプログラムらしい。本当に彼女はろくで
もないことをしてくれるのだと再確認した。それから、マスターの秘密の
ファイル、勝手に使うなよ、と。
  
 「さすがに肉球まではうまく再現できてないんだけど、それ以外は結構
完璧だよ!本物の猫だと辛いだろうから、レンの大好きなリンと混ぜれば少しは中和されるでしょう?」
 
 いや、そりゃあ、俺は確かにリンのことは大好きだけど。マスターより
この世の誰よりも愛してますけど。
 
 「これで猫克服できるでしょ?さぁ、どっからでもかかってくるにゃ!」
 「かかってくるにゃ・・・って」
 
 自信満々とばかりに胸をはり、ベッドの上から俺に向かって手を伸ばし
てくるリンは本当に、ものすごく、めちゃくちゃ可愛い。
 
 「俺にどうしろと・・・」
 「簡単だよ~っと、にゃん」
 「うわ!」
 
 急ににょきっと手を俺の首に巻きつけてきたかと思うと、リンはそのま
ま俺の胸に向かってダイブしてくる。そのまま転げてしまわないようにな
んとか踏ん張って俺はリンを受け止めた。ゴロゴロとまるで本物の猫のよ
うに心地よさげにリンが喉をならす。首筋でゆらゆらとリンが顔を動かす
たびに、リンの頭部から生えた猫耳の体毛が、俺の体に触れた。不思議と、
そんなに嫌な気がしなかった。

314:最低克服計画
09/01/15 16:21:10 A9xg0cij

 「これで少しずつ慣れれば、猫もきっと平気になるでしょ?」
 
 なるほど、これは意外と効果があるのかもしれない。と納得しかけてレ
ンははっと気がつく。これはあくまでもメインが「鏡音リン」であり、決
して「猫」ではない。今はボディーパーツの一部分として使われているだ
けであって、元々はレンが好きだと分類するものに他ならないのだ。だか
ら、これから何時間、たとえ猫の姿をしたリンと過ごそうが大した効果が
得られる保証など無い。
 つまり不毛な、やってもあまり意味のない特訓のようなものなのであろ
う。にゃーん、と猫になりきったリンは首元につけた鈴をりんりんと鳴ら
しながらレンに甘えついてくる。
 どうしたものか、と考え込むレンの耳に、ふっと、息がかかった。ぞわ
りと背中が波打つよりも早く、甘く溶かされる猫なで声が、囁く。
 
 (もっと、触れてよ)
 
 それは多分、「触れて慣れろ」ということなのだろうけど。
――そっちがその気なら。思うが早いがレンは気合いをいれると、腹をくくった。
 
 「・・・猫って肉球あってなんぼじゃなかったのかよ」
 「それは頑張ったけどできなくて・・・っきゃ!ちょ、レンどこさわって、や!」
 「リンのほうから触れっていったんだろ」
 
 何が楽しいのか知らないがよく分からないが、マスターやリンはよく猫
の肉球をふにふにと触っている。やわらかくて気持ちいと評判らしいのだ
が、レンには今の今まで何がいいのかさっぱり分からなかった。が。
 
 (あ、柔らけぇ・・・)
 
 肉球も胸も柔らかいという点においては対して変わらないだろう。ましてや、
こっちの方がよりさわり心地がいいだろうし。慣れるため慣れるため、
と大義名分を振りかざし、レンは好きなようにふにふにと触る。
 
 「ちょ、ちょっとレン!」
 「練習するんでしょ」
 「っん・・・」
 
 押し黙ったリンは仕方がないと諦めたのか、奥歯をかみしめて内から漏
れ出そうになる声を噛み殺すことに決めたようだった。両腕をレンの首に
回し、長い尻尾をゆらゆらと揺らす。

315:最低克服計画
09/01/15 16:21:40 A9xg0cij
 
 レンの腕に導かれるように、リンは浮かせていた腰をゆっくりとベッド
に戻す。猫のようにゴロゴロと喉を鳴らして、子猫を彷彿とさせる瞳でリ
ンはレンに甘える。ペロリと少しだけだした舌で2・3度レンの上唇を舐め
ると、あいた隙間からその舌をより奥へと滑りこませる。遊びたい盛りの
子猫のような動きは、確実にレンには効いていた。それはリンの意図とは
全く別の方向へ、だが。
 
 「ふ、あっん。にゃあ!」
 「牙・・・立てないで。そう、いい子だねリン」
 「にゅ・・・あ、ふぁあ」
 
 するりと服の隙間をついて侵入してきたレンの手にリンの体が一瞬強く
反応する。その勢いでとがった八重歯がレンの唇を少しだけ切ったらしく、
まだ繋がる唇には鉄の味がどこからともなく湧いていた。
 戒められ、今度は何があってもレンを傷つけないようにおずおずと尚も
唇を重ねてくるリンの頭をレンの手がなでる。人間よりも数倍敏感にでき
ている耳は一種の性感帯に近いらしく、レンの手が微かに触れるとそれだ
けでリンは声を漏らした。その度にりんりんと音を立てる鈴の音が、じん
わりとレンの熱を高ぶらせていく。
 
 「やっぱ、猫って柔らかいんだねー。あったかくてふわふわしてて・・・、マシュマロみたい」
 「な、なにいって、ちゃんと真面目にっひゃ、やぁん!レンだめにゃ、にゃあ」
 「あ、甘いかも」
 
 ぐっ、とレンの肩を抑えるリンの手に力がこもった。これもレンが猫に
慣れるための訓練だからと頭にどっかりと腰を据えていた大義名分がぐら
ぐらと揺れる。形のいい小振りな胸に這わす舌は赤い。母猫が子猫の毛づ
くろいをしてやるような優しい仕草だが、意図は決してそのようなものじ
ゃないことは傍から見れば一目瞭然だった。

316:最低克服計画
09/01/15 16:22:39 A9xg0cij
 
 ただ、懸命に己に与えられた役目を果たそうとするリンはそんなことを
気にすることもできず、ぶるぶると体を震わせることしかできなかった。
徐々に前倒しに体重をかけてくるレンに押される形で、リンの背中はベッドへと近づいていく。
 脇の舌あたりから執拗に乳頭の付近へ来ては触らずに腹部の方へ戻って
いく生暖かいざらざらとしたそれが気持ちいいのかそうでないのか分から
ない。ただ、左胸の乳頭をレンが軽くつまんだことと、リンが完全にベッド
に押し倒されたことはほぼ同時だった。
 
 「んー?固くなってんじゃん、ここ。どうしたんのかニャー、リン」
 「レ、レンもういいでしょ。あ、にゃぁ!」
 「俺今なら猫好きになれるかもしれないから、もうちょっと」
 
 抵抗しかけた腕がとまる。多少の苦痛(いや、それは痛み等微塵も伴わ
ない)と引き換えに相方が苦手な物を克服できるのであれば・・・とリン
は力を緩めた。
 
 「ん、ん、っふ・・・、ひぁ」
 「リン、かわいい」
 「思ってもいないくせにぃ・・・ふぁ、にゃぁん!」
 「そんなことないから」
 
 可愛い、可愛いと耳元で何度も囁かれ、リンは恥ずかしさとはまた違う
何かから目をそらすようにギュッと瞼をとじた。可愛くないことぐらい自
分で自覚していると何度も言っているのに、今日のレンはいつにもまして
しつこいのだ。
 レンの肩から手を離し、行き先を求めた指は柔らかい髪に行きつく。太
陽の光をさんさんと浴びて暖かくしなやかな髪の毛こそ、猫のようだとリ
ンは思った。ふわふわと綿毛のようなそれをキツク掴んで千切ってしまわ
ないよう、繊細な力加減で触れる。
 それに気を良くしたのか、レンはまた可愛い、とリンに聞こえるように
つぶやくと、脇腹に何度もキスをした。
 少し伸び始めた細い指がリンの内股をさする。女性として肉付きよくな
り始めた足をリンはひどく嫌っていたが、レンはその足がとても好きだった。
 薄ピンク色にほんのりと染まる足を熟れはじめる中心に向かってねっと
りと舐める。必死になって隠そうとするリンの心とは裏腹に、リンがレン
の仕草に敏感になればなるほどパロメーターのように首の鈴はよくなり、
尻尾もびくびくと動いてた。
 いつの間に脱がされていたのか、リンがはいていた短パンも下着も視界
にはなかった。よくよく見渡してみて、ベッドの下の隅に打ち捨てられる
ように放り投げられたそれをみつけ、あられもない姿にされた体に熱がと
もっていた。

317:最低克服計画
09/01/15 16:27:30 A9xg0cij
 
 「・・・・きもちいいんだ、リン可愛い」
 「ちが、うってば、や、あっあっあ!」
 「うわ、本当に尻尾生えてるんだ・・・・へぇ・・・」
 「にゃ、にゃにゃああああ!や、さわっちゃだめえ!あ、あ」
 
 男性器をしごく様に白く毛だらけの尾をすられ、今まで感じたことのな
い感覚が一気にリンの全身を貫いた。縮こまるように体を丸め、白いベッ
ドシーツをくしゃくしゃになるほど掴みながら、はけ口が見当たらない槍
の矛先を必死にそらそうとする。
 何が気に入ったのか、レンはリンの反応を楽しむように尾を触ることを
しばらくやめなかった。尻尾の先から根元に向かってこすられ、全身の毛
が逆立ち、肌がぞわりと身震いを起こす。自分のものであって、決して自
分のものではないそれは、今やリンの全てを支配していた。
 
 「へぇ・・・尻尾も感じるなんて便利だね」
 「ば・・・かぁ。や、っ・・・さわっちゃだめ・・・ん・・・」
 
 ようやく解放された尻尾を守るように腹部へとひっこめる。丸めた体の
震えを必死に止まらせようとしながら、僅かな怒気を含めた背中がレンを非難した。
 
 「ん、俺が悪かったって、拗ねんな・・・」
 「ひ、ん。にゃぁぁ・・・」
 
 剥き出しにされた背中に少し冷たい無機質さが残る唇が触れ、その温度
差にぴくりと背中が動いた。
 後ろから聞こえるレンがベルトをはずす音で、このあとどうなるかなん
て見るまでもなく想像がついたが、リンにはそれを止めようとする声も体
力も、既に持ち合わせていなかった。世の中の猫も本当にこれぐらい敏感
になるのだろうか、とこの場にふさわしくないことを考えて、それはすぐ
思考の外へと出て行った。首の鈴がひと際激しく鳴る。
 腰を抑えつけられ、本物の猫がするように後ろから反りたったレン自身
が入ってくる。目の前に花火が散ったと思えるぐらい強い衝撃に、リンは
大きくのけ反った。

318:最低克服計画
09/01/15 16:28:36 A9xg0cij
 
 「あれ、リン軽くいっちゃった?」
 「ふぁ・・・にゃ・・・まっ、レン」
 「だーめ」
 「にゃああ!あ、ぁ、ひゃん!」
 
 些かの躊躇もなく始められる律動は本物の獣を連想させた。レンの腰の
動きに合わせて、りんりんと鈴が鳴り響く。
 顔が見えない分、苦痛や快楽が表情からでは判断しにくい。勘と経験と
感覚を頼りにリンの中を所狭しと動くと、ぐっと、腰を沈めるたびに丸め
たシーツの中に顔をうずめるリンの頭が動いていた。正確には、耳が、だが。
 
 「リンっ、きもちっ、ん、いい?」
 「ふぁ、あ、だめぇ、やめちゃや・・・あ、あ、ああ!」
 
 ぐちゅ、と透明よりも白みをもった液体がつぅーっと流れおちていく。
それを潤滑油代りに滑らし、より深く、よりいいところを目指して狂った
ように腰を振るう。やわやわと伸縮を繰り返すリンの中は最高に熱くて、
ドロドロとレン自身も蕩けそうなほどの甘美な震えが動かすたびに全身に
走った。
 より深くつながろうと前かがみになれば、リンが弓のように背をそらす。
後ろから支えるように腕を伸ばし、胸にさらなる刺激を与えながら、
もっと、とそれ同士を近づけさせる。
 
 「あ、だめぇ噛んじゃらめっ、や、レンいっちゃ、いっちゃうよぉお」
 「リン、今連れてってあげるよ、だから」
 
 一緒に行こうか――。
 
 火傷してしまいそうなぐらい情熱的な暑さが、部屋一面中に放たれたの
はそのすぐ後のことだった。

319:最低克服計画
09/01/15 16:29:54 A9xg0cij
 
 
 
 
 「―――で」
 
 効果音をつけるなら、ゴゴゴゴゴ・・・ズズズズ・・・とにかくおぞま
しく黒いなにかを抱え込んだような冷気をもってリンを仁王立ちでレンを
見下ろした。まだ消えないまま残ってる猫耳も尻尾も、明らかに怒りを含
んだ様子が見て取れるように毛が逆立っていた。
 冷笑とともににこやかにほほ笑むリンと、リンの腕の中でおとなしく丸
まっている白い猫に見つめられレンは冷や汗を流す。今のリンを直視する
ことなどできず、大人しく床に正座し俯いたままリンの言葉に頷くことし
かレンにはできなかった。これでは先ほどと真逆の光景ではないか。
 
 「・・・・はい、なんでしょうか・・・・」
 「あれだけ散々触れてたんだもん。もう猫も平気よね?」
 「いえ、それは・・・」
 「平気よね?」
 
 有無を言わさない声に圧倒され、レンは首を縦に振るしか選択肢が残っ
ていなかった。しかし再度繰り返すが、あれはあくまでもメインが「鏡音
リン」であり、決して「猫」ではない。猫の部分はボディーパーツの一部
分として使われているだけであって、大本はレンが好きだと分類するもの
に他ならないのだ。だから、何時間とたとえ猫の姿をしたリンと過ごそう
が大した効果が得られる保証など無い。
 そしてそれはやはり思っていた通りだったのだ。
 
 「抱いてみなさいよ、ほら」
 
 ずいっと押し出される子猫にレンは血の気が引いていくのを感じながら、
なんとかこじ開けた目でリンの腕に居座る物体を直視する。
 これはリンだ、ちっちゃくなったリンだ。猫耳と尻尾を生やしたリンが
ちょっと毛深くなって縮んだだけだ。と自分に暗示をかけ、ゆっくりと手を伸ばし、そして。
 
 「うぎゃ―――!!!やっぱりだめだあああああ!」
 「あ、レン!待ちなさい!!!」
 
 脱兎のごとく逃げ出すレンをすぐさまリンは追いかける。そして置き去
りにされた白い猫だけがポツンとその場に残され、か細い鳴き声は怒号に
消され、無秩序な空間に細々と木霊するだけだった。
 
 やれやれ本当にどうしようもない、と呆れるように白い猫が眠るために丸まる。
 
 りん、と鈴がなった。

320: ◆V5AVgh0yRw
09/01/15 16:33:00 A9xg0cij
猫耳が書きたかったんだ\(^o^)/
 
最近いつもレンからのアプローチ系しかかけてなかったので
誘い受けがかけてちょっと満足してます。
殿ルカとかちょっと興味あるけど、ネタが出ませんorz

ネタが二番煎じですいません。
スレ汚し失礼しました。それでは!

321:名無しさん@ピンキー
09/01/15 17:22:27 1+EYXflk
GJ!
猫耳リン萌え(*´д`*)

322:名無しさん@ピンキー
09/01/15 17:30:28 3l14O+Be
>>306
長門ってクールなイメージしか無いけどデレるんだな
ボカロだとMEIKOがそんなんだと思ってたがルカのクーデレとやらも良いと思う

323:名無しさん@ピンキー
09/01/15 17:34:12 RvGWMzyC
ヤンデレと言われててもその実デレがないってのもあるしな・・ヤンデルというか
しかしクーデレのミクってのもアリなんだぜ!

324:名無しさん@ピンキー
09/01/15 17:39:58 fEc+xixe
>>320
猫耳リンかわええなぁ、GJ!!
でもリンは白猫もいいが黒猫も似合うと思うんだぜ

325:名無しさん@ピンキー
09/01/15 17:41:43 9813XfPt
>>301
3Pってあんまないな
その組合わせで見てみたい

326:名無しさん@ピンキー
09/01/15 18:29:37 +8yZkGOI
がくルカ書きたいが、この二人普段どんな会話してるか全く想像できないな

327:名無しさん@ピンキー
09/01/15 18:39:15 OHMfGgAg
ルコルカっていいな、とか思ったんだがあれって百合に入るのだろうか……

偽の03のルコと本当の03のルカとか、いいと思ったんだが。

328:名無しさん@ピンキー
09/01/15 19:10:02 INJz/zSX
>>327
見た目的には百合だなw

329:名無しさん@ピンキー
09/01/15 20:21:06 x0zSrsar
>>326
なんかその二人だとどこまでも会話がズレていくような気がするw


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