09/01/10 03:02:23 uh4da/I9
自分が彼女…リンと出会った時、彼女はまだ幼い少女だった。
馴染みの女の付き人として現れ、他の娘は消してしまった光を
一切隠すことなく自分に近づいてきた。
無邪気に笑顔を振りまいている姿は彼女の辿る道を全く想像させず、
反って憐みを感じたのを覚えている。
時が経ちリンは見習から遊女になった。
まだ年若い彼女は上の女にも客にも小娘扱いされ
『そういう趣味』のわずかな客を相手していると聞く。
そしてリンの一番の相手はおそらく自分である。
酔狂だ、と他人は言うし、自分でもそう思う
何故 色恋の技を知らぬ娘を好んで買い、その上指一本も触れないのか・・・。
ただ他の女と絡む気もせず、かと言ってこの娘を抱こうとは思わないから、
そう結論付けているが本当のところは分かっていない。
「がくぽさん。」
窓枠に腰をかけ外をぼんやりと眺めていると、ふとリンが呼びかけた。
「今日はお喋りもしないのですか?
これでは夜は更に長ってしまいますよ。」
「別段話すことなど無い。
もし語りたいことがあるならお主が勝手に語ればよい。」
「…私には話せることなどありませんから。」
言葉が見つからなくて、しかたなく沈黙を返しまた目線を窓に投げる。
雪で白く染まった道を月が照らしていた。
カサカサと衣の音がし瞳を端へとやると菊色の着物が自分の脇に座っていた。
「がくぽさんが私を買うのはなぜですか?」
かすかにリンが呟いた。
「同情…ですか…?」
だんだんと声は震えていく。
泣いているのかもしれない、そう思ったが慰め方を知らないから黙って月の方を見た。