09/06/20 04:00:15 xiGDLVO7
エステルは爪先立ちで達哉に首に腕を回し、達哉はエステルの細いウエストを両側から
支えながら、二人は楽しかった一日の余韻を味覚で味わっていた。他に人気のない礼拝堂
は二人きりになるという目的においては絶好の場所と言えた。互いの唾液の甘味。そして
混ざり合うことで生じる更なる美味さは媚薬のそれ。
「………んぁ……」
やがて達哉の方から顔を離すと、彼の口の中に射し込まれたままだったエステルの小さ
な舌がテラテラと光りながら姿を現す。その先から伸び二人を繋ぐ唾液の架け橋と良い、
切なげに潤んだ瞳と良い彼女がもっと口付けを続けていたかったのは明らかだが、達哉の
中の愛しさは恋人の全てを求めるほどに高まっている。まだ互いの吐息を感じるほどの近
さにある大きな瞳を見つめながら、達哉は両の腕をウエストからヒップの方へと動かし更
なる行為への了承をアイサインで求めるが。
「あ……あの、達哉……」
エステルの瞳が……揺らいだ。
「あ、ああ……ごめん」
恥ずかしそうに俯かれてしまっては、もう無理強いは出来ない。腕の中の天使をそっと
地上に降ろしながら精一杯の笑顔で言葉を継ぐ。せめてエステルに不快感を与えてしまわ
ないようにと。
「わわ、私も達哉にその……も、もっと愛して欲しいのだけれど、ここだと余りゆっく
りは出来ないから続きは私の部屋で……………………って、え?」
「こ、今度はもう少し先まで足を伸ばそうか? エステルは満弦ヶ崎の外は余り知らな
いだろう? 月人居住区から遠い街っていうのは心細いかも知れないけど、これからの事
を考えたらエステルが率先して色々な所を見て回った方が良いとかなって思うし、それに
……」