09/04/22 21:53:25 7gVO4HUO
「………」
自分が思っている以上に、話が突飛すぎて言葉を失ってしまった。
「おまけに、赤外線カメラモードまでついてて、もはやただの監視カメラの域を越えてるよ」
「……それじゃぁ、入手経路なんてもう分かりそうにないな………」
俺は椅子にうなだれてしまった。
折角こちら側からの最大の反撃材料になりかねないものだっただけに、ショックは大きかった。
「いや、まだ諦めるには早いと思う」
「まだ何かあるのか?」
「うん。あれだけ高性能で市販に売られてないと分かれば、かなり特殊な状況で作られて、
かなり特別なルートで流されたものなんだと思うんだ」
「……なるほど。闇のルートってやつか」
噂には聞いたことがある。
合法ではさばけないような代物を、高額でさばき、莫大な利益を生んでいるというのは、
前に本で読んだことがある。
その時は、半ば嘘のようにも思えたが、今はそれが実感となって理解できた。
最も有名で、最も悪質なのは、言わずと知れた麻薬だ。
「とりあえず、今分かってるのはこれくらい」
「ああ……すまんな、ありがとうよ」
「……いいよ。そんな高性能カメラが手に入ったんだから、安いよ」
「ま、ことが片付いたら後払いで、後二つやるよ」
その言葉に、青山は歓喜の笑みをこぼした。
青山と別れた後、話に夢中になって食べ忘れていた弁当を胃袋におさめ、足早に学校を出た。
斑鳩達が、終始俺と青山の話に、聞き耳を立て、まだかまだかと様子を伺っていたが、
俺は、連中の遊ぼうと言う誘いを断って教室を出てきたのだ。
(しかし……そんなものを、惜し気もなくストーキングの道具に使うなんてな)
青山の話を聞いた俺は、あの野郎のことを頭の中で反芻させていた。
だがこれで、ある程度の人物像は絞れるかもしれない。
そして、ただ一つだけ確信したことがある。
このストーカー野郎は、ただのストーカーではなく、とてつもなくヤバイ奴なのだということだ。
どこで手に入れたか知らないが、普通では手に入らないカメラを、少なくとも3台は用い(恐らくはそれ以上)、
対象に近づく者は、容赦なく攻撃し、あげくに対象を孤立させようとしているのだ。
事実、俺も一度は殺されかけたのだ。
だがな、ストーカー野郎。
例え、お前が最狂のストーカーでもな、あくまでお前はストーカーに過ぎない。
社会不適合者なのだ。
俺は、お前を許しはしない。
もし俺の周りの人間を傷つけてみろ、地獄の果てにだって追いかけて、お前をやってやるからな。
覚悟しておけよ……。
俺は一人、厳粛に誓いを立てた。
301:名無しさん@ピンキー
09/04/22 22:02:30 7gVO4HUO
第6回は以上です。
作者は、今無駄に創作意欲がありますので、しばらくは投下ペースが早いと思われます
早すぎもいけないとあれば、セーブしながら投下いたしますので、ご一報くださいm(__)m
302:名無しさん@ピンキー
09/04/22 22:19:51 l8p0xuRW
>>301
鉄は熱いうちに打て、ということで情熱のあるときに書くのは良いことだと思います。
他の作者様とのニアミスを防ぐために投下予告だけしてくだされば、大量投下大歓迎。
303:名無しさん@ピンキー
09/04/22 22:47:03 zSFJg1Az
>>301
GJ、投下乙です
ただ、「市販で売られている」が若干不自然な気が…
「市販されている」か「一般に売られている」の方が自然かと
304:名無しさん@ピンキー
09/04/23 00:25:20 KEXYLM0z
スレタイ見たときは正直キモい変態しかいないスレかなぁと思ったが、なんかここの住人ってけっこう紳士なんだな。
職人さんにアドバイスしたり。
あと、職人さんGJです。昨日今日で流し読みした者ですが、先が楽しみです
305:名無しさん@ピンキー
09/04/23 02:12:37 nr7Ko620
GJ!!
次回も楽しみにしてます。
306:名無しさん@ピンキー
09/04/23 04:01:27 Ac+BeYZ5
続きが気になるなー
ところで姉スレと妹スレを両方見てる身としては
是非とも青山と姉の話を過疎ってるお姉さんスレでやって欲しい
307:名無しさん@ピンキー
09/04/23 11:12:03 NEpDOmc6
まったくだ。青山姉が妹だったらここでやって欲しいくらいだ。
妙に背徳暗エロスが滲み出てて無視できないw
308:名無しさん@ピンキー
09/04/23 19:56:16 kt3J63KH
35 名前:Socket774 :04/10/28 12:55:57 ID:lSUt/0HR
勝手に飲まれなくなったのは今まで飲んでたやつが逝……ガクブル
新スレ立ったんで軽くネタ投下でも
先週の週末に義妹(になる予定の子)から電話掛かってきたんですよ
ずいぶん切羽詰った調子なんで、何事かと思ったらPCが起動しないとの事
週明けに提出しなけりゃいけない課題があるそうで、どうにかしてくれと泣きつかれますた
義妹(になry)のPCは、元々俺が以前使ってた自作機をバラのパーツ状態で譲った物で
組み立てからOSインスコまで全部自分でやらせたマシン。
トラブルは自分で解決するよう指導してきたおかげで、メモリ増設やらドライブ類の載せ換え
ビデオカード増設など全部自分でやるぐらいになってたんですが、手に負えず電話してきたらしい
電源かメモリあたりが逝ったかな?と思いながら箱を開けて中見るように指示すると
ママンの上のコンデンサがぽっこり膨れてる模様。
ソケ370のママンで保障期間なんかとっくに過ぎてるし、スペックもだいぶ厳しいようなことを以前
言っていたので買い替えを勧めてみたが、学生なんで金の余裕無し、課題は週明けにも出さなきゃならん
ということでちょっと半泣き
俺が何とかしてやるからとなだめつつ膨れてるコンデンサの容量とかを確認させていったん電話を切りますた
40 名前:Socket774 :04/10/28 13:08:51 ID:lSUt/0HR
続き
電話を切って、コンデンサのストックあったかな?とか考えてると何やら嫌な気配が
振り返ると彼女が泣いてるんだか笑ってるんだか怒ってるんだか判らんけどとにかくおっかない顔で
包丁かざして立ってますた
つーかどう見ても刺す気満々。腰抜かしそうになりながらもとりあえず謝りながらなだめておちつかせようともう必死
なんだかよくわからんけどとりあえず謝りたおしまくって、包丁から手を離させるのまで約一時間。
ちょっと外出するんで続きは夕方にでも
54 名前:Socket774 :04/10/28 17:17:48 ID:lSUt/0HR
帰ってきたので続きです
PC関連の知識がまったく無い彼女が、会話の中の端々の単語に『ママ(板)』だの(コンデンサーが)『妊娠』だの
(コンデンサーが)『膨れてきてる』だの聞こえてくるので思いつめちゃったわけで
義妹切羽詰った様子で電話してくる→『妊娠』だの『俺が何とかする』だのという会話→ぷっつーん
というコース・・・・・・
それから3時間ほど掛かってようやく完全に理解させますた
相手も理解できるとつい使い慣れた言葉で会話しちゃうけど、知らない人が単語だけ聞いたら相当誤解生むのが
身に染みてわかりますた。反省
んで翌日彼女の実家に義妹のPC修理に出かけて玄関くぐったら義母(になry)が
『ア ン タ ○ ○ に ま で 手 を 出 す な ん て ど う い う つ も り ! ?』
il||li _| ̄|○ il||li 親子で早とちりかよ…・・・
309:名無しさん@ピンキー
09/04/24 00:23:54 io1AdP6d
保守
310:名無しさん@ピンキー
09/04/24 00:28:08 rE5bhn13
さけ
311:名無しさん@ピンキー
09/04/24 21:29:15 bF40HAQ1
レス下さった皆様、ありがとうございます。
嬉しくも、不備があったんじゃないかとドキドキしながら読ませて頂いています。
青山姉に関してまさかここまで、関心されるとは思いませんでした。
あくまで青山のキャラを浮かび上がらせるために作ったキャラでしたので。
そのため、青山姉弟の話は考えておりません。
ただ今後はわかりませんけども…。
また、
×→市販で売られている
○→市販されている
でした。
もう弁解の余地もありません…なんで気付かなかったんだorz
では、第7回投下します。
312:いつか見た夢
09/04/24 21:31:35 bF40HAQ1
それから一週間がたつ。
ストーカー野郎は、今のところ不気味なくらいに姿を見せない。
奴の姿を見たのだって、たった一度きりだが、例のコールタールのような視線を、
ここ数日間、ただの一度も感じなかったためだ。
だがしかし、こういう時こそ油断してはいけないのだ。
この数日間は、言うならば嵐の前の静けさといったとこのはずだ。
計算高い奴のことだから、何か企てる準備をしているに違いないのだ。
この一週間は、こちらを油断させ、陥れるための準備と潜伏期間なのだ。
この期間が後どれほどなのかは分からない。
だが俺には、決して油断はないと思うんだな、ストーカー野郎。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「例のあやちゃんのストーカー……最近何も音沙汰なくなっちゃったけど、諦めたのかな?」
沙弥佳の言葉に、綾子ちゃんもこちらをうかがっている。
「まだなんとも言えないが……俺は諦めてなんかいないと思う」
綾子ちゃんは、もしかしたらと思っていたのだろう、その整った眉を眉間によせた。
「あれだけのことをするような奴だ、多分諦めることはないはずだ」
時間は遡るが、俺は誓いを立てた翌日、休日ということもあり青山を引き連れ、綾子ちゃんのうちに再び訪れた。
本格的に家の中にあるであろう、盗聴器や例のカメラを探すためだ。
青山は、俺にはよく分からない道具を使い、盗聴器を探し始めた。
沙弥佳と綾子ちゃんは、初めて会った青山に戸惑いはしたが、その内に打ち解けたようだった。
沙弥佳も綾子ちゃんも、元々人を外見だけで判断しないため、青山の仕事を興味深げに見ていた。
結果、家の中には、ほぼ一部屋に一つから二つもの盗聴器がしかけられていた。
例のカメラも、綾子ちゃんの部屋は言うに及ばず、二階のトイレや洗面所、脱衣所と風呂にあったのだ。
しかも、それらはうまくカムフラージュされ、青山の言うところでは、
完全に新しい物に取り替えられていたのである。
そして、その新しく取り付けられた物に、高性能カメラを仕掛けたのだ。
全く……あまりの徹底ぶりに俺はもはや、呆れてものも言えない。
当然、綾子ちゃんはそれらが見つかっていく度に、顔面を蒼白とさせていったのは、言うまでもない。
さすがの妹も、最初のように興味津々とは行かなかった。
綾子ちゃんの家を出て、再びうちにもどってきた。
もちろん、青山も一緒だ。
今度はうちを、例の機械を使って探索してもらう。
綾子ちゃんがうちに来てから、そういったものが仕掛けられていないと限らない。
それに、うちは綾子ちゃんの家に比べ、比較的侵入しやすい作りなのだという。
なるほど、ならばうちにもそれがないかどうか確かめてみたくなったのだ。
うちは昼間は、誰もいなくなりがちだ。
それを考慮すれば、しておくに越したことはない。
313:いつか見た夢
09/04/24 21:34:45 bF40HAQ1
案の定、早速いくつか盗聴器がしかけられていた。
数そのものは、綾子ちゃんの家の比ではなかったが。
カメラも一応探してみはしたが、見つけられなかった。
カメラは、かなり徹底されたカムフラージュが施されていたことを考えると、
そう簡単に、取り付けられるものではないと言う。
青山は、一通りの仕事を終えると、俺に機械の使い方を教え、帰っていった。
俺は帰り際に、移動中に青山の姉貴が、なぜか事あるごとに視界に映っていたことを告げると、
綾子ちゃんに代わって、今度は青山が顔を青くしていた。
「……でも、とりあえず今すぐにでも、奴が何か仕掛けてくるとは思えないけどな」
二人を少しでも安心させようと言うが、そんなのは気休めに過ぎないのは分かっているつもりだ。
二人を学校に送り届け、俺も高校へと向かう。
青山に依頼した件も、まだ全容は掴めていないし、奴も何も仕掛けてこない。
正直、八方塞がりと言った状態だ、どうしようもない。
(とにかく、今は青山の結果待ちだな……)
俺は小さくため息をついた。
放課後、出ようとした教室で、青山によって呼び止められた。
「九鬼くん。ちょっといい?」
この数日、青山は人が変わったように思う。
まず、喋り方が前のようにボソボソとしたものではなくなった。
依然、小声ではあるが。
どうも聞くところによれば、彼女ができたということだった。
最初は、その話を聞いて羨ましいと思ったりもしたが、相手のことを聞いてゾッとした。
ショートパンツを履いた、溌剌とした年上のお姉さんだったという話だったからだ。
この先、こいつがどういう人生を歩むかは知らないが、決して穏やかなものではないと悟った。
「ん? おお……ここじゃちょっと無理そうな内容か?」
青山は頷いた。
今、掃除当番達が教室を掃除し始めようとしていたので、例の技術棟へと赴いた。
「ね、ねぇ……ここって入っちゃいけないんじゃなかったっけ?」
「まぁ、本当はな。でも結構大丈夫みたいだからさ」
俺達は、技術棟の屋上への扉がある場所まできた。
それにここなら、気兼ねすることなく話せると思ったからだ。
「例の件のことだろ? 話を」
聞かせてくれ、とまでは言えなかった。
「あなたたち、何してるの?」
俺達は、驚いて階下に目をやった。
そこにはあの女、藤原真紀があの時と同じく、そこにいた。
314:いつか見た夢
09/04/24 21:36:59 bF40HAQ1
「とりあえずあのカメラのことだけど……」
あの後、藤原真紀に屋上の扉を開けてもらい、屋上で話を聞くことになった。
「どうもある大企業が依頼して作ったものらしいんだ」
「ZONYとかか?」
青山は首を横に振った。
「分からない。それ以上は無理だったみたいだから。でも、逐一監視する目的で作られたのは、間違いないよ」
「使ってみたのか?」
「試しにね。はっきり言ってただの監視カメラのレベルじゃないけどね、あれは」
青山が言うには、昔の劣化したビデオテープから、一気に最新のブルーレイにまで飛躍している程だと言う。
「……何か別の目的があって作られたってことか?」
「分からない。でも、友達も同じことを言ってたよ」
「まぁいい。問題はどうしてそんなものを、何台も奴が持ってたかってことだ」
「いくつか推測はたつけどね。そもそも、その依頼した企業の人間だったとか」
「……もしくは元々非合法のものを売りさばく売人、か」
「それもありうるね」
「本当に自分の商品なら、売らずにあんなことに使ったりするものかな?」
「どうだろ? でも、九鬼くんの言うストーカーなら、ないとも言えないかも」
確かにそうだ。
奴は、邪魔になった俺を殺そうとしたのだ。
利益うんぬんなんてものは、どうでもいいのかもしれない。
もちろん、それは推測の一つに過ぎない。
奴は、ただの客の可能性だってある。
「奴が客の可能性もあるよな?」
「ないとは言えないね。今だったら所謂株長者っていう人種もいるしね」
「なるほど。株で稼いだ金で、趣味の悪いことにつぎ込んでいるわけだ。全く、金遣いのいいこったな」
「それに、あれはかなり法外の値段がするみたいだから、一台だけならまだしも、
個人で何台も所有するには、相当なお金が必要なのは間違いないよ」
青山が数秒考えて、口を開きかけたとき、真紀が口を挟んだ。
「それはどうかしらね」
「なんだ? ……部外者が口挟むもんじゃないぞ」
「そうね。でも考えが纏まらない時こそ、第三者の意見も取り入れるべきじゃない?」
「あんた、話聞いてたのか」
「別に聞きたくて聞いてたわけじゃないわよ。たまたま耳に入ってきていただけ」
青山は、どうもこの女が苦手のようだ。
俺だって正直、あまり好きではない。
「……そうかい。で? その第三者の意見ってのを聞かせてくれよ」
「あら、聞く気になったの?」
「あんたが言い始めたんだろ。さっさと言いなよ」
「もう。せっかちね。まぁいいわ。あなたたち新聞は読む?」
「一体なんの話だ。俺はそんなことこれっぽっちも聞いてないぞ」
「いいから。新聞は読む?」
「ちっ……読むけど、それがどうした」
青山もそれに肯定する。
「新聞って、いかに早く、いかに正確に情報を伝えるかというのが、役割よね」
俺と青山の顔を交互に確認して、話を続ける。
315:いつか見た夢
09/04/24 21:41:12 bF40HAQ1
「でもね、その情報がもし必ずしも本当でなかったら? 起こった事柄が本当でも、
その内容が歪められていたら? ……そう考えたことはない?」
一体何が言いたいのだ、この女は……。
「誰かに意図的に、情報操作されてると言いたいのか?」
「まぁ、そうなるかしらね」
真紀は、俺の目を見据えながら言った。
「……ない……とは言えないと思う」
「おいおい。青山はこんな女の言っていることを、信じると言うのか?」
「もちろん、全て信じているわけじゃないけど、例えば内容をぼかしたりなんかはあるかも」
「内容をぼかす………?」
「うん。こういった情報操作なら、現代に限らず、昔から行われてることだしね。歴史だってそうだよね?
実際には違ってもその時代の権力者によって、良いように歪められてる部分って結構あるからね」
「た、確かにそうだが……」
かと言って、それを今当たり前のように言われても俄かに信じがたい。
「それで君は……それが今回のことと何かが関係してると?」
青山が、遠慮しがちに真紀に問い掛ける。
「つまり、入手方法よ。必ずしも売人だとか客とは限らないでしょ?」
「なんだそれは? だとしたら後は盗っ人くらいしか考えつかないぞ」
「ちゃんと分かっているじゃない」
真紀は、薄く笑いを浮かべた。
「おいおい、だとしても、どうやって盗み出すってんだ。第一、それと新聞の話がどう繋がってるってんだ?」
「さあ? それは調べないと分からないわよ。あくまで他にもやり方があるんじゃないって話でしょ」
……本当にこの女とはやりづらい。
しかし青山は、手を顎にあて、何か考えているようだ。
「一般にはで手に入れられない…盗っ人…情報の隠蔽…」
……なんなんだ、一体。
青山は深く考え出すと、人の呼びかけにも反応しなくなる癖があったようだった。
俺が何度も呼びかけても、反応しなかったからだ。
しばらく一人考えていた青山が、ふいに俺に話しかけてきた。
「九鬼くん。綾子ちゃんがストーカーされるようになったのっていつ頃から?」
「俺も詳しくは知らないな。それと何か関係があるのか?」
「ちょっと調べてみようと思って。帰ったら綾子ちゃんに聞いてみてくれない?」
「……何だかわからんが、聞いておいてみよう」
「ありがとう、大体でいいから。とりあえず分かったら連絡してほしい」
「分かった」
真紀は何か気付いているのか、ほくそ笑んでおり、青山は青山で、何を考えてるのかさっぱりだった。
俺一人だけ理解していないのは、なぜこんなにまで疎外感を感じるのだろう……。
316:いつか見た夢
09/04/24 21:42:16 bF40HAQ1
青山達と話しているうちに、時刻はすでに16時を大きく回っており、中学校に着く頃には、17時を過ぎそうだった。
「もしもし、沙弥佳? 悪い。今からそっちに行くから、もうしばらく待っててくれ」
『もうお兄ちゃん遅いよー』
「悪かったって。そん代わり、帰りにうまいもん奢ってやっから」
『本当!? だったらキシマイ堂のパフェがいいな~』
「よりによってあそこのかよ……あそこ美味いけど、高いんだよな……」
『でもお兄ちゃん、おいしいの奢ってくれるって言ったよね?』
「い、いや、そうじゃなくて、別にあそこのじゃぁなくても良くないかって意味だ」
『私と綾子ちゃんはキシマイ堂のパフェが食べたいのです』
「綾子ちゃんもって……絶対口からでまかせだろ……」
『それはどうかな~? はい』
『あ、あの……わ、私もキシマイ堂のパフェ食べたいです……』
なんということだ。君もか、綾子ちゃん……。
『へっへっへ~。2対1だね~お兄ちゃん!』
「くっ……後で覚えてろよ」
俺は妙な敗北感を覚えながら、電話を切った。
現在17時半を回ったところだ。
俺達は今、キシマイ堂というカフェにいる。
この店は、カップル達の間で有名な店で、なぜか特定のカップルがここで特定の物を頼むと、
既成事実を作ることができるらしいのだが、何の既成事実であるかは、俺は知らない。
まぁ、良くあるジンクスというやつなんだろう。
そして、なんとあの青山の姉貴がここでバイトしていたのには、驚いた。
接客の際、ありがとう、あなたのおかげです、なんて意味深なことを言われたら、なおさらだ。
本能が深く追及するなと告げていたので、何も言わないでおいたが。
「えへへ~いただきま~す♪」
「あの、九鬼さん、いただきます」
「どうぞ。いただいちゃってくれ」
二人は、特大パフェを二人で食べるつもりらしい。
はっきり言って、俺には例え二人でだとしても食べ切れる自信はない。
まぁ、それくらい大きい。 まさに特大である。
目の前の美少女二人は、そんなのどこ吹く風と言わんばかりであったが……。
とはいえ、これで聞きにくいことも、聞きやすくなると言うものだ。
「なぁ、綾子ちゃん。ちょいと聞きたいことがあるんだが」
「はい?」
綾子ちゃんは手を止め、体ごとこちらに向けた。
当然一旦スプーンを置き、口を拭いている様は、とても優雅で一分の隙もない。
「綾子ちゃん、ストーカーされているように気付いたのっていつくらいか覚えてるか?」
「え? ……そうですね。3、4ヶ月程前からでしょうか……」
「4ヶ月前か……すまん、ちょっと電話してくる。すぐに戻るよ」
「はーい。いってらっしゃーい♪」
……妹よ。もう少し、綾子ちゃんを見習ってくれ。
317:いつか見た夢
09/04/24 21:45:47 bF40HAQ1
俺は、携帯を取り出しながら店内を出る。
『……もしもし』
「よぉ。今聞いてみたんだが、気付いたのは4ヶ月くらい前かららしい」
『4ヶ月前か……』
「なぁ、お前さん、さっきもそんなだったが、一体何を考えてるんだ?」
『うん、ちょっとね。まだ確信できていないし、なんとも言えないけど、ストーカー正体が掴めるかも』
「ストーカーされてるのに気付いた時期がそれに必要だってのか?」
『うん。正確には、その期間前後に、ニュースで何か起こってないか調べたくて。
それに今回の事件は、結構根が深いような気がしてね……』
正直、そいつは考えすぎなんじゃないかと思うが、口にはしなかった。
「分かった。後何か聞いておかなくちゃならないことはないな?」
『特にないよ。結果はすぐにでると思うから、明日にでも学校で』
「相変わらず、仕事が早くて助かる」
むしろ、早すぎのような気もするが、それは本当だ。
「それじゃぁ、明日、詳しく聞かせてくれ」
『分かったよ。それじゃあまた明日』
俺は電話を切って、店内に戻って行った。
「よぉ青山。調べついたか?」
翌日の放課後、俺は青山を技術棟の屋上に呼び出した。
不本意ながら、藤原真紀も一緒だ。
「うん。やっぱり持つべきは友だね。かなり面白いことがわかったよ」
青山が、持つべきは友だなんて言うと、笑えてしまうのはなぜだろう。
「ふむ。どんなことが分かった?」
「まず、もう5ヶ月くらい前の話なんだけど、K県Y市でトラックによる交通事故があったんだ。それも単独事故」
「単独事故?」
「もちろん、事故そのものは決して珍しいものではないんだけど……中身がね」
「なんだったんだ?」
「うん……当時の記事には、デジタル機器としか書かれていなかったんだけどね……ここからが、
友達に頼んで調べてもらったんだけど、どうもただのデジタル機器ではなくて……」
「あのカメラだって言うのか?」
つい力んでしまい、凄んでしまった。
青山は、ややためらいがちに頷く。
「確証はないよ。でも、最新のカメラであったことは間違いないみたい。
それもかなり小型のね。話を聞く限り、それしか考えられないんだよ」
青山が続ける。
「そして、そのトラックの運転手が謎の失踪をとげてる」
「行方不明?」
「おかしいでしょ? しかも大した記事にはなってないんだよ。テレビにもなっていないし、当時の記事も、
扱いがすごく小さかったし。事故ってだけで、少なくともその日のニュースくらいにはなるはずなのに」
言われてみれば確かにそうだ。
「確かにおかしな話だ。おまけに運転手が行方知れずときたら、普通ならワイドショーのいいネタになるはずだしな」
「ワイドショーどころか、翌日のトップニュースだってありうるよ」
青山の言葉に、俺は頷いた。
なぜかその時、漠然と俺に不安がよぎった。
318:いつか見た夢
09/04/24 21:47:33 bF40HAQ1
「それにね、事故の対応も凄く不審なんだよ」
「どういうことだ?」
「普通事故があれば、必ず警察が来るよね?」
「ああ。昔、自転車に乗ってるときに原付きにぶつけられたことがあったが、その時にだって来た」
「そう、よほど小さなものじゃない限り、警察は来るものなんだけど、この時は、
警察の前に別の人達が来て、対応したらしいんだ」
「別の人達だと? なんなんだ、その別の人間ってのは」
「残念だけど、そこまでは……ただ、トラックの中身と運転手を探してたのは、間違いないみたい。
その人達が帰って、警察が来たみたいなんだけど、どうもその人達が警察に連絡させなかったみたいなんだ」
それは珍妙な話ではないか。
まるで警察が来る前に、撤収しなければならない理由でもあったのか?
「その事故のあった近辺に住んでる人達に、友達がわざわざ聞いてくれたみたいでね、
この辺の話は、信憑性を持っていいと思う。
おまけに、そのトラック、どうもタイヤが破裂したみたいになってたって話だよ」
「なるほどな。でもな青山。そいつと今回のストーカーとどう結び付くというんだ?」
「うん……実はね、九鬼くんからもらったカメラから指紋が出てきたんだ」
「まさか本当に、指紋まで特定したのか?」
「あ……ま、まずかったかな、やっぱり」
「いや、そんなことはない。ただ、あまり乗り気じゃぁなかったろう? だからな……」
そう、まさかこの青山が、そこまでのことをしてくれるとは思わなかったのだ。
「……で、データベースにアクセスしてみたんだけど」
「何かひっかかったのか?」
「………うん」
青山が、妙な間をおいて肯定するが、何かが納得いかないといった風だ。
「……その、はっきり言うと……その指紋の人物はすでに、死んでる………みたいなんだ」
「………なんだって?」
多分、この時の俺は、間抜けな顔をしていたことだろう。
青山が口にしたことは、それほどに予想だにしなかったことだった。
その男の名は、蒲生義則(がもう よしのり)というらしい。
「おいおい、まさかお前は幽霊がストーカーしているとでも言いたいのか?」
「まさか。僕は幽霊は信じているけど、それとこれは全く別と思ってるよ」
だとしたら、最近やつが現れないのももしや死んだからなのか?
しかし、こうも都合良くこのストーカー野郎が死ぬだろうか。
「そいつが死んだのはいつかは分かるか?」
「もちろん。すでに1年以上前に死んでるよ」
もしやとは思ったが、やはり違ったようだ。
だが、この蒲生という男が何かしら関わったと思われる代物が、こんな犯罪に使われていたのだ、
こいつは、色々と調べてみる価値はあるようだ。
「………確か、指紋というのは3~4年なら、残ると聞いたことがある。
そいつが最後に触ったのが1年前だとしたら、何か関わった可能性は?」
「ないとも言えないね。でも結局は、なんの打開にもならないかもしれない……」
「……そうだな、お前の言う通りだ」
結局は、直にあの野郎を捕まえないとなんの意味もないのか。
ここで今まで黙っていた真紀が、口を開いた。
「……あなたたち、さっきからすごく面白いこと言っているけど、
単純にその人が関わった人を調べれば良いと思わないの?」
「「あ………」」
俺と青山は、そんな単純なことにも気付かないほど、冷静ではなかったようだ。
319:名無しさん@ピンキー
09/04/24 21:51:43 bF40HAQ1
今回分の投下は以上です。
また早ければ、日曜に投下できそうです。
少しでも面白いと思って頂けるよう精進いたしますので、これからもよろしくお願いしますm(__)m
320:名無しさん@ピンキー
09/04/24 22:23:20 FmyN1+CK
おつ~
だんだんサスペンスが深まってきましたなぁ ノってるウチに書ききってしまうのが吉だぞ
321:名無しさん@ピンキー
09/04/24 23:40:11 P4qNPATG
投下乙です
というか、指紋データベース漁れる青山はいったい何者なんだよww
322:名無しさん@ピンキー
09/04/25 00:31:51 LgO5+dA6
キシマイ堂を見た瞬間にキモウトスレかと勘違いした。
投下乙。
323:名無しさん@ピンキー
09/04/26 22:06:47 Xob5HPms
>>321
創作だから・・・
324:名無しさん@ピンキー
09/04/26 22:17:15 DaQRkgak
レスして頂きまして、ありがとうございますm(__)m
青山はやればできる子なんです。
生暖かく見守ってやってください。
では予告通り8回投下したします。
325:いつか見た夢
09/04/26 22:18:58 DaQRkgak
結局、あの後作戦会議は終わり、俺達はお開きとなった。
青山が例の彼女とデートの約束があるらしく、帰らなくてはいけなくなったからだ。
青山が去った後、真紀が、人って見かけによらないのね、と言ったのが、なぜか印象的だった。
続けてあの女狐は、こともあろうか、俺をデートに誘ったが、丁重にお断りしておいた。
いくら恋人が欲しいと言っても、俺にだって多少は選ぶ権利があるというものだ。
ともあれ、今探るべきことは、カメラに付着していた指紋の持ち主である、
蒲生という人物の人間関係や、仕事、とにかくあらゆる情報だ。
すでにストーカー野郎が、俺達の周りをうろつかなくなって丸一週間以上。
そろそろ何かしてきても、おかしくないはずだ。
一刻も早く、何かしら奴に繋がりそうな情報が欲しい。
今にして思えば、一度奴と対峙したときに、是が非でも追いかけておくべきだったかもしれない。
何もかも手遅れになってしまっては、何の意味もないのだ。
手札が何もない今、焦っても仕方ないとは言え、どうしても焦りが出てしまう。
とにかく今は、青山に任せるしかない。
俺は俺で、自分が今できることをするべきだと、自分に言い聞かせた。
『………!』
『さや………待ってろ、いま……!』
なんだ?
今俺は夢を見ている。
それは自分でも、はっきりと分かる。
『……いちゃん……ごめ……』
よく聞き取れない。
なんだ、何と言っている?
『お兄………私…………ゃんのこと……』
なんだ? 今なんと言った?
――直後に轟音が鳴り響いた。
「………ってぇ……」
俺は、いつもと違う目覚めの感覚に、目を醒ました。
体を起こし、周りを見回す。
「……おれの部屋……だよな」
目を醒ますと、自分が今ベッドではなく、床にいることに気がついた。
ベッドから落ちて、どうも体をぶつけたらしい。
頭はどこも痛みを感じなかったので、頭はぶつけなかったようだ。
のそっとベッドに潜り込み、枕元にある時計を見ると、まだ6時半を過ぎたところだった。
「後10分か15分もしたら沙弥佳が起こしにくるな……」
まだ覚醒しきっていない頭で、ぼんやりと天井を見ながら呟いた。
326:いつか見た夢
09/04/26 22:23:46 DaQRkgak
(沙弥佳か……)
俺は、さっき見た夢を思い出だしていた。
さっきの夢はなんだったのだろう。
まるで、壊れかけたテープのように、音が途切れ途切れになっていた。
そもそも夢の中で音があったこと自体、珍しいことではあるが。
ただ俺と沙弥佳が何かに巻き込まれて、危険な状況であったということしか、分からない。
そして、沙弥佳が最後に言おうとした言葉……。
カチャ
突然、部屋のドアが控えめに開かれると、沙弥佳が入ってきた。
「お兄ちゃ~ん……って、まだ寝てるよね」
なぜかその時俺は、寝たふりをしてしまった。
(何をしているんだ、俺は)
「えへへ~お兄ちゃんの寝顔だぁ……やっぱり可愛いな」
沙弥佳は俺の頬を、指で軽く撫でる。
「お兄ちゃんのこんな顔見れるのも、私だけの特権だもん………」
何か、いつもと違う感じがした。
そもそも、この時間に自分から目が覚めるということ自体ないのだから、
妹が朝俺の部屋に来て起こす前のことなど、知る由もなかったのだが。
「お兄ちゃんは知らないと思うけど……今、学校でお兄ちゃんって女の子の間じゃ有名なんだよ?」
女の子に限らず、そりゃぁそうだろうな。
学校まで、両手に花なのだ。
おまけにその二人は美少女で、俺は高校生だ、目立たぬはずはない。
「いつもクラスの女の子達から紹介してって言われてるんだよ………お兄ちゃんのこと何も知らない癖に……
お兄ちゃんの外見だけで、中身なんて全然見てないような薄汚い子達になんか、紹介できるわけないのに」
本当、馬鹿だよねと付け加える。
……なんだろう、この感じは。
「あやちゃんは本当に私の友達だったから紹介しただけなのに、調子に乗って私にも私にもだなんて……」
沙弥佳は、寝ている俺の体にしな垂れかかってくる。
正直、今ここで起きた方が良いような気がしたが、タイミングを逃してしまった。
「でも最近………お兄ちゃん、私のこと見てくれる時間、すごく減った」
今起きてすぐにでも、そんなことはないと言いたかったが、理性がそれを拒んだ。
「………お兄ちゃん、最近あやちゃんのことばかり見てるよね………ねぇ、なんで?
それに………私が話しかけてもどこか上の空で、何かいつも考えてる……それがすごくつらいよぅ……」
まるで俺が起きていることを、悟っているかのように話す沙弥佳に、一瞬バレたかと思った。
「ねぇ……もっと私のことも見てよ……あやちゃんばかりじゃイヤだよ………それにお兄ちゃん、
他にも別の女の子の匂いがするよ………学校でお兄ちゃんに近づく泥棒猫がいるの?」
その独白であるはずの問い掛けに、俺はドキリとしてしまった。
「お兄ちゃん……?」
いかん、起きていることがバレたか?
仕方ない、起きたふりをしてやり過ごすしかないか……。
「ん………重いぞ」
「あ……」
沙弥佳は目に少し涙を滲ませていた。
急いで、それを拭う。
327:いつか見た夢
09/04/26 22:26:33 DaQRkgak
「えへへっおはよ、お兄ちゃん」
「ん……おはよ、沙弥佳。……目、どした?」
白々しい嘘だ。
だが、気付いたと思わせてはいけない。
「え! あ……な、なんでもないよ! ちょっと目にゴミが入っちゃって!」
「ん……そうか。とりあえず出てってくれ、着替えるから」
しかし、いつもならこの台詞の後は哀しい顔をするはずが、今日は笑顔だった。
それが余計に痛々しく見える。
「うん、先に下行ってるから」
沙弥佳は、笑顔のまま部屋を出ていった。
俺はなんともやりきれない思いになったまま、制服に着替えた。
「面白いことが分かったよ、九鬼くん」
放課後、青山が珍しく興奮気味に話しかけてきた。
俺達は、また例によって技術棟の屋上に来ている。
藤原真紀は、待ってましたと言わんばかりに扉の前にいた。
聞けば、なんとなくよと短く、愛想もなく答えた。
この女に愛想があったとしても、それはそれであまりいい気持ちにならないだろうが。
「まず、蒲生義則についてだけど、製薬会社の営業マンだったみたい」
「営業マン……サラリーマンか」
「それもかなりやり手だったみたいだよ。しかも、その蒲生義則の勤めてた会社がK県のY市にあるんだ」
「Y市? 確か例の事故があった場所だな」「そう。それで蒲生義則は、やり手だった分、周りと良い人間関係を築けてなかったみたい」
「まぁ、よくある話だな」
俺は頷きながら、先を促す。
「いや……ちょっと違うかな? 蒲生義則はむしろ、その仕事ぶりが嫌われる要因だった感じかな」
「グレーゾーン商法ってやつか……でも、人によっちゃぁ稼げてるんなら、それでいいって奴もいたんじゃないか?」
「うん………いなかったことはなかったと思うよ」
「いなかったことはなかった? 何か含みのある言い方だな」
「……蒲生義則に肯定的だった人は、何人も死んでるみたいだから」
「死んでる……?」
こいつはいよいよきな臭くなってきた。
指紋の人物は死に、それに関わり(しかも肯定的な人間)を持った連中も仲良くあの世行きとなれば、
さすがの俺でも怪しいと思うし、興味もわくというものだ。
「それもかなり不自然なね。ある人は列車との事故で、またある人は車との正面衝突で……他にも水難事故だとか。
とにかく事故が起こりそうもない状態で起こってるんだ。水難事故に至っては、別に嵐でもなかったのに転覆してる」
俺は言葉も発さずに、青山の説明を聞いていた。
「最も不審だったのは、今川という人なんだけど……殺されてる……みたい」
「殺人……?」
「それも首をこう、たった一かきで………」
青山は、自分の首を切ったようなジェスチャーをしてみせる。
「……それでお前は、他の人間がどうなったかも調べたというわけか」
「うん。詳しい話は長くなるからやめるけど、皆事故に見せかけて殺されたんじゃないかと思ってる。
証拠がありありであるにも関わらず、事故として発表されたって感じだからね」
青山はかなり興奮していたようで、一旦深呼吸して気持ちを鎮めている。
328:いつか見た夢
09/04/26 22:30:23 DaQRkgak
「しかも、それらの事件は全て、蒲生義則の死亡後にあったってこと。まるで蒲生義則の亡霊がやったみたいにね」
「製薬会社の営業マンが、何故カメラを持ってたか……ってこともだな」
「きっと蒲生義則も死んだ……いや、多分殺された理由はあのカメラにあるんじゃないかと思う。それで……」
青山がまたも珍しく、こちらを上目使いに伺ってくる。
多分、こいつのこんな仕草は、そういう趣味の女にはたまらなく感じさせそうだ。
「なんだ?」
「……そのさ、行ってみない?」
「どこにだ?」
肝心の主語が抜けていてさっぱりだ。
「だから……蒲生義則の家にだよ」
きっとこの時、俺の目は点になっていたはずだ。
さて、青山の提案で来ることになったわけだが。
「紹介するよ、九鬼くん。僕の友達の徳川さんと織田さん」
駅で待っていると、青山が二人の男を連れてきた。
徳川と呼ばれた男は、俺よりも10cmは高く、190近くあるだろうか。
けれども、ひょろひょろでまさに骨と皮だけと言った感じだ。
もう一方の織田と呼ばれた方は、身長こそ俺が勝るが、かなりがっちりとした体格をしており、
短髪モヒカンの頭とどこか聡明さを佇ませた顔は、爽やか好青年といった印象だ。
実際に、織田は紹介された後、自ら握手をもとめ手を差し出してきたほどだ。
「で、こっちが今回の依頼主の九鬼くんです」
青山が二人に俺を紹介する。
「九鬼です。今日はよろしく」
「話は聞いてる。何やら危なげなことに首突っ込んでるみたいだね」
織田は印象通り、爽やかとした口調で話しかけてきた。
「いや、突っ込んだというより、巻き込まれたが正しい、かな?」
「九鬼くん。この二人が今回の主な情報提供者なんだ。二人ともこういうヤバ気な話は好きだから、
今日は一緒に行動することになったけど、構わないよね?」
「構わないも何も、もう連れて来てるだろ。それに、助かりますよ」
俺は二人を見て、軽く礼をした。
「いや~気にしなくていいよ。僕らも片足半分突っ込んでるしねぇ」
片足ではなく、さらにその半分というのは、突っ込んだ方がいいのだろうか。
徳川の話し方は、所謂オタクっぽい話し方だ。
それに青山を加えたトリオは、なるほど、なかなか世の中うまい具合に出来ているようだ。
「君からの話を聞いたとき、またただのストーカー事件だと思ったんだけどね」
織田が、初対面の時以上の爽やかさと、興奮気味な口調で喋る。
見た目だけではやはり人は判断できない。
この男もやはり、青山と同じ人種なのだと痛感した。
「何やらきな臭い方向に行ってるし、俺のジャーナリストとしての魂がこう、なんかね!」
俺は、愛想笑いを浮かべながら、この男の話に聞いていた。
まぁ……言わずもながら、いつものごとく右から左だが。
今俺達は、K県K市にあるという、蒲生が生前住んでいた家に向かっているところだ。
その間、織田という男のどうでも良い話を延々と聞かされた。
ぱっと見は女の子受けしそうなものだが、これでは駄目だろう。
329:いつか見た夢
09/04/26 22:33:33 DaQRkgak
見れば、青山も少し引いてしまっていた。
ただ、一つだけ彼の言っていたことで、頭の片隅に残っていることがある。
それは俺の名前のことだった。
「へぇ、九に鬼で九鬼かぁ。カッコイイじゃないか。知ってる? 九というのは、すごく強いとか、
最上といった意味が含まれていることがある。空想上の生き物で、九尾の狐というのがいるんだが、
これも非常に強いといった意味があると言われてたりするんだ。古今東西なぜか九というのには、
同じような意味で表されることが多い。南米アンデスの神話にも、ビラコチャと呼ばれる創造神が、
やはり屈強な戦士の神を九人引き連れていたっていう話もあるんだよ。同じ神話でエジプトの神話でも、
やっぱり初期の九柱神が最も偉大な神であるとされているしね」
このくだりだけは覚えていた。
それ以外は、全く覚えていない。
そんな話を聞いているうちに、目的の場所である蒲生の家に着いた。
蒲生の家は一軒家だった。
聞けば、家族がいたわけでもないのに、一人こんな家に住んでいたのか。
俺は、この家になぜか漠然とした違和感を感じた。
家主であった蒲生が死に、すでに1年は経っているはずなのに、この家はまだどこか活気を感じたのだ。
この家は、もういない主人を未だ待ち続けているような、不思議な佇まいを感じさせた。
織田が、門に手をかけ、敷地へと入っていく。
俺達もそれにならって、敷地内へと足を運ばせる。
「ここからは、なるべく話さないようにしよう。静かにしないと近所に声なんかあっという間だ」
俺達は頷いた。
ここは清閑な住宅街だ。
場合によっては足音だって響く。
「まずどうします?」
徳川が、織田に問いかける。
「ま、ここはまずは普通に正面からいきましょう」
織田が、呼び鈴を鳴らす。
電気を使わない、古いタイプの呼び鈴だったため、家の中で音はあまり反響しない。
もう一度鳴らしたが、反応はなかった
「こういう古いタイプの家なら、裏に勝手口があるはずだが……」
織田は、俺達にそこにいろとジェスチャーし、足音を偲ばせながら裏へと廻っていった。
青山と徳川は、そわそわと落ち着かなさそうだ。
人に見つからないかと、周りをキョロキョロと何度も伺っている。
はっきり言って、まんま挙動不審者そのものだ。
そう、1年は空き家のはずなのだが、とてもそんな風には感じられない。
そもそも、ここは蒲生の親の代から住んでいたらしく、蒲生が死んでからもう誰も住んでいないはずなのだ。
俺より一足早く入った織田も、その違和感に感づき、話しかけてきた。
「なぁ……この家、なんか変だよな」
「……ええ、まだ生活感を感じますね」
遅れて入ってきた、青山と徳川もやはり同じことを思ったようだ。
「い、一応靴脱いだ方がいいかな……?」
徳川が馬鹿みたいなことを言うが、無視した。
330:いつか見た夢
09/04/26 22:34:34 DaQRkgak
「とりあえず、一階と二階とに二手に分かれようか」
「その方がいいでしょうね。あまり時間があるとも限らないですし」
「良し。じゃあ僕と徳川君、君と青山君に別れようか」
「俺達は二階を見てきます」
俺の言葉に、織田と徳川は首をふった。
台所を出て、階段を上り二階へと上がる。
階段はギシギシと音を軋ませ、実はかなり老朽化しており、崩れたりしないだろうかと心配になる。
二階はわずか6疂程の部屋が、二部屋とドアが閉まっているため、広さは分からないが、計三部屋あった。
「じゃぁ、お前はこの部屋な。俺は隣を調べる」
青山は頷くものの、どこか頼りなさげだ。
もしかしたら、不法侵入で捕まったりしないか等と考えているのかも知れない。
「そうビクビクするなってな。簡単に調べるだけでいいんだ、時間はかからんさ」
「う、うん」
そう言って青山は、目の前の部屋へと入っていく。
俺もその隣の部屋へと移動する。
この部屋には、古ぼけた箪笥とさらに年季の入った、小さな机が置いてあった。
蒲生はずっとこの家で育ち、両親が死に、さらに自分が死ぬまでこの家で暮らしていたという。
この古ぼけた家具はもしかしたら、両親、それも父親が使っていたのかもしれない。
俺は箪笥を開き、何か入っていないか見てみたが、何も入っていなかった。
次に机も見たが、同様だった。
押し入れの中も覗いては見たが、やはり何もなかった。
(もしかしたら、ここはガキどものたまり場かなんかだったりしてな)
俺はそんなことを考えて、一人苦笑する。
「この様子じゃぁ何かあるとも思えないが……」
ドアの閉まった部屋を調べるため、ドアの前まできた時、なぜか俺は強烈な何かを感じた。
(なんだ……? ……何か変だ)
なるべく音を立てずにゆっくりと、ドアのノブへと手をかけ、やはりゆっくりとした動作でノブを回していく。
俺の本能が、何か危険だと警鐘をならす。
ゆっくり、ゆっくりとドアを開けた、その向こうに――奴がいた。
戦慄した。
俺はこのうえなく戦慄した。
なぜ奴がここに? どうして? 鍵は? どうやって中に?
俺は混乱していた。
奴はあの時と全く同じ格好をして、俺の目の前に立っているのだ。
331:いつか見た夢
09/04/26 22:37:15 DaQRkgak
そんな俺を前に、奴は一歩踏み出す。
俺は全く動けない。
この時にはすでに、次にすべき行動は決まっていたが、体はそれに反し、全く動けなかったのだ。
人は目前の恐怖に対峙した時、動けなくなると聞いたことがあったが、まさにその通りであった。
蛇を目の前にした蛙と言ってもいい。
とにかく、逃げなければならないのに体が動いてくれない。
それは、死への恐怖だ。
奴は俺を殺そうとしたのだ、今回だってきっと……いや、間違いなく殺そうとするだろう。
(こ、殺されるのか? 俺は今ここで死んでしまうのか?)
俺の何mか後ろでは、青山がまだ部屋を調べている。
声を出せば、助けてくれるかもしれないし、声を聞いて下の連中だって来てくれるかもしれない。
だが、たとえそうだとしても、助けが間に合うか?
俺は、また一歩ゆっくりと近づいてくる奴の黒の手袋をはめた左手に、ナイフを持っているのに気付く。
まずい…。
まずい……!
奴は冗談抜きで俺を殺そうとしている。
奴の持つギラつくナイフが、俺の理解を超え、直感としてその殺意を感じとる。
一歩一歩、スローモーションのような動きで俺に近づいてくる。
逃げなければ!逃げなければ!逃げなければ!逃げなければ!逃げなければ!
逃げなければ!逃げなければ!逃げなければ!逃げなければ!逃げなければ!
頭の中で何度も反芻するも、この体は動いてくれない。
「あ…」
その時になってようやく、声を出せた。
しかし奴はもう俺の前に来ており、そのナイフを高々と振り上げた。
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
その瞬間、俺の中の何かが解放された。
332:名無しさん@ピンキー
09/04/26 22:39:36 DaQRkgak
今回は以上です。
読んで下さった方、ありがとうございます。
333:名無しさん@ピンキー
09/04/26 23:42:09 v6CF8U8o
GJ
>>330の
>>俺の言葉に、織田と徳川は首をふった。
は普通NOを表す時の表現になるので
頷いた、又は、あごを引いた、縦に振った、等が適切だと思う。
334:名無しさん@ピンキー
09/04/27 21:30:20 HUEMTcY3
職人さん、いつも楽しく読ませていただいています。
こういった掲示板にメッセージを送るのは初めてなので緊張します。
また続きがよみたいです。がんばって書いてください。
335:名無しさん@ピンキー
09/04/29 00:51:06 jNMys6dG
>>467の人気に嫉妬
336:335
09/04/29 06:43:08 jNMys6dG
亀だが、誤爆だったスマン
337:名無しさん@ピンキー
09/04/29 23:55:28 D/WwJaE+
いつもレスしていただき、ありがとうございますm(__)m
しかし…またもやってしまった…。
×→ふった
○→縦にふった
ですね…何度も確認したのに……orz
指摘して下さった方、ありがとうございました。
>>331の続きを投下いたします。
338:いつか見た夢
09/04/29 23:57:55 D/WwJaE+
俺は今何故、叫んでいるのか分からない。
だが叫ばなければどうしようもできなかったような気がした。
振り下ろされたナイフは相変わらずスローモーションで、俺の目前に迫る。
相手はスローモーションなのに、こちらの動きはやたらと滑らかで、右手で奴の左手の手首を掴んだ。
「!?」
奴は、一瞬だけ驚いたようで動きが止まったものの、直ぐさま右足で蹴り飛ばしてきた。
「ぐっ!?」
俺の腹に思いきり奴の爪先がめり込み、廊下に背中から飛ばされてしまう。
「がっ……」
盛大に倒れたため、受け身もとることができずに、背中を打ち付けてしまう。
「かはっ……はっ、はっ……」
呼吸がうまくできない。
なおも奴は倒れた俺に向かってくる。
その時、青山が何事かと顔を出した。
「馬鹿……早く逃げ」
全て紡ぐ前に、精一杯の抵抗として倒れたまま蹴りを放つ。
いとも簡単に防がれてしまうが、今は少しでも逃げるための時間稼ぎが必要だ。
「ぁ……九鬼くん……これは一体?」
下からドタドタと織田と徳川も駆け上がってくる。
「どうした!?」
さすがの奴もこれだけの人間がいるとは思わなかったのだろう、俺から注意がそれる。
(今だ!)
起き上がって、力の限り体当たりする。
もちろん、左手に持っているナイフは使わせない。
体当たりしたまま、ドアのふちにこの野郎の背中をぶち当てる。
「ぐ……!?」
奴が低く呻き声をあげた。
この頃には、俺の頭は妙に落ち着いていて、周りの一挙一動が手にとるように感じられる。
「九鬼君!」
誰かが叫ぶ。
その一瞬、俺の脳裏に織田が移動中に語っていたことが浮かんだ。
『九というのは、すごく強いとか、最上といった意味が含まれていることがある。』
(そうだ、やらなくてはやられるんだ! 戸惑うな! 一度ならずとも今も殺されかけたんだ!)
自分の中のもう一人の自分が叫んでいる。
右手でナイフを持った左手首を掴んだまま、左手を思いきり握りしめ、渾身の力で奴の脇腹に叩き込んだ。
「うぐっ」
奴は再び呻き声をあげるが、お構いなしに再度脇腹に拳を叩き込む。
しかし、奴も黙ってはいなかった。
がら空きになっている俺の胴体に、膝蹴りを食らわした。
「げっ!?」
こちらの体勢が悪かったのだろう、奴の膝は、俺の鳩尾に入ったのだ。
瞬間、息が止まる。
(まずい……今のは、まずい)
339:いつか見た夢
09/04/30 00:00:33 D/WwJaE+
俺は、ズルリとその場に膝をついてしまった。
このまま、こいつに殺されてしまうのか?
こんなところで俺の人生は、終わってしまうのか……。
くそっ……終ってたまるか……こんなところで終ってたまるかっ!
どれほどの時間が経ったかは分からない。
おそらくはほんの何秒かであろうが、奴は何もしてこない。
なぜだと顔をあげると、奴は俺を見下ろしておらず、三人の方へと向いていた。
視線をおえば、三人は警棒のようなものを手に持っていた。
いつぞやに青山が、俺に渡してくれた物だ。
しかし、三人はこの全身黒ずくめのこいつに対し、明らかに怯えている様子だった。
(喰らえっ!)
俺は、今度は右の拳で奴の臑を殴る。
「がぁっ!?」
さすがの奴にも、この不意打ちはかなりのものだったらしい。
ただ、それでもナイフは手から落とすことはなかった。
立ち上がりざまに、奴の股間に頭突きを食らわした。
普段なら、そんな攻撃はしたいとも思わないが、今はそんなことを言っている場合ではない。
「これで少しの間は時間が……ぐあっ!?」
三人に逃げようと言おうとした瞬間、俺の右腕になんとも言えない、熱い痛みが走った。
見れば、奴がそのナイフで右腕を切り付けたのだ。
ナイフは相当鋭いのか、少し間をおいてプツプツと赤い液体が流れ始めた。
「ぅぐっ……あぁ……」
……なんと言う痛みだ。
今まで味わったことのない痛みだった。
もちろん、怪我なんてのはこの十数年しか生きていない人生の中でも、数え切れないほどしてきた。
しかし、この痛みは今までのものと比べ、形容しがたい痛みだった。
今までの事故による怪我と違い、これは人為的なものだ。
ただそれだけの差なのに、こんなにも違いがあるのか。
この様子を見ていた青山達は、もはや完全に竦み上がって逃げることすらできないでいた。
腕からは、とめどなく血の雫が滴り落ちて、廊下に小さな池を作っていった。
「………殺す」
低く、くぐもった声でたった一言、呟くように。
「なん、だと………?」
俺は少しだけ驚いた。
まさかこの野郎が、喋るなんざ思いもしなかったからだ。
「……邪魔するなら………邪魔する奴らは全員殺す!!」
俺は先程よりも足がすくんでしまった。
それほど奴の言い放った言葉には、強烈な怨嗟が込められていた。
だが、奴は俺に攻撃を加える事なく、唐突に苦しみだした。
340:いつか見た夢
09/04/30 00:03:17 D/WwJaE+
「ぐぅっ……あぐ……うぐあぁっ……」
苦しみだした奴は一歩二歩と後退し、頭を押さえながら片膝をついた。
「な、なんだってんだ……」
「ぐ、ぐぉおおおっ……」
突然の自体に、俺も他の三人も呆気に取られていたが、奴は立ち上がり、俺に向かって走り込んできた。
「ぐぅぅ、どけぇっ!」
不覚にも体当たりを食らわされ、そのまま廊下に突き飛ばされてしまった。
しかし、奴はそんな俺など見向きもせずに、階段まで行き、勢いそのままに階段を駆け降りていった。
そして、ガチャガチャとドアの開ける音が聞こえ、外に出て行ったことが伺える。
三人もあまりの勢いで走り込んできた奴に、恐怖の色をみせていたが一階に降りていった奴を見送ると、
へなへなと、下半身から力が抜けてしまったようだった。
徳川にいたっては、呼吸することすら忘れていたようで、床に腰付けてからというもの、
呼吸困難の患者のような、荒い呼吸を何度も繰り返していた。
「あ……い、今のがもしかして……?」
織田が、やっとのことで喋る。
「ええ……この家に入った時感じた違和感は、きっとあいつがいたからでしょうね」
俺がそう返したものの、織田はそれ以上のことは言わなかった。
いや、言いたくとも、まだ混乱した頭では言うことがままならないのだ。
先程、俺が奴と出会った瞬間も同じようなものだったのだ、それも仕方ないと言えた。
「とにかく今は……くっ」
必死だったためか、最初に痛みを感じて以来、あまり感じていなかった腕の痛みが、
安心して緊張の糸が切れてしまったところに、急激な熱さを訴えだしたのだ。
当たり前だが、まだ血は流れていて、ドクドクと熱い血の脈動を感じた。
それを見た青山が、駆け寄ってきた。
「く、九鬼くん、大丈夫?」
普通に生活していれば、お目にかかることもない出血量に、半ば青ざめた顔をしている。
「ああ、大丈夫だ……と思いたいがな。とにかく今は止血しないと……」
「そ、そうだね。何か血を拭いたりできそうなもの……」
ついさっきまでへたれ込んでいた織田が、俺のところまで歩み寄り、自身のTシャツを脱いで、腕に巻いていく。
「これだけの騒ぎがあったんだ、近所の人が警察を呼んだかもしれない。すまんが今はこいつで我慢してくれ」
確かに、今ここでは応急手当ての道具もなさそうだ。
「すみません。お借りします」
「何、気にしなくていいよ」
織田は、少しバツの悪そうな表情で、鼻の頭をかく。
武器を携帯しながらも、何もできなかった自分を責めているのかもしれない。
「とりあえず、これでよし。……だけどここを出る前に、一度この部屋を調べてみないと」
織田の言葉に、俺は頷いた。
「ですね。奴がこの部屋に何かしら用があったからのはずだし……」
俺達は、急いで部屋の中を調べる。
そう、何故奴がここにいたのかは、謎だ。
だが、ここに何かしらの用事があって、きていたのは間違いないはずなのだ。
……そのおかげで俺はまたしても殺されかけたのだが。
341:いつか見た夢
09/04/30 00:05:07 FtgVgvhA
全員で手分けして6坪ほでの部屋を調べていく。
この部屋には、比較的多く物が置いてあり、二つも三つも机や椅子、クローゼット等がある。
ここに置いてあるいくつかは、俺や青山が調べた部屋に置いてあったものかもしれない。
「うーん、特にここにも何かあるわけじゃなさそうだな」
「ですねぇ……さっきの人が持ち去ったのかもしれませんし」
織田に徳川が相槌をうつ。
「あれ? ねぇ九鬼くん、それ何?」
青山が俺の足元を指さし、尋ねてきた。
見ると、そこには小瓶が転がっていた。
「何か粉のような物が入っているな。いや、量から考えると入っていた、か」
俺は瓶を拾い上げ、そっと匂いを嗅いでみた。
「……特に匂いは感じないな。味は……」
「やめた方がいい」
俺の行動を見ていた織田が制止する。
「無臭でも、無味な毒物だってある。それに、劇薬の大半は無味なものの方が多いんだ」
そこまで言われると、さすがに口にするのは躊躇った。
「徳川さん、こいつを調べられないですか?」
織田が、徳川に問いかける。
「うん、やってみよう。ごめん、借りるよ」
小瓶を徳川に手渡し、お願いしますと頭をたれた。
その時、俺が調べようとしていたアンティークと思われるテーブルから、一枚の紙が音も無く床に落ちた。
「……これは?」
その紙を拾い上げ、それに印刷された文字を読む。
「取引先一覧……?」
そこには、おそらく蒲生が生前に仕事上必要であったろう、取引先企業の名がずらりと並んでいた。
青山達も寄って来て、紙を覗く。
「ふーむ。何かヒントに……なるかもね。見てみなよ、この名前」
織田がある企業名を指差した横に、確かにどこかで聞いた覚えのある名前があった。
今井克利(いまい かつとし)。
最近、どこかで聞いたことがあったはずだったが、思い出せない。
俺が記憶の引き出しを漁っている時、青山が何かに気付いたようだった。
「あれ? 確かこの名前って……」
「気付いたみたいだね。そう、この名は首を掻き切られて殺された人物だ」
言われてやっと思い出すことができた。
つい昨日言われたことだったのに、忘れていたとは……。
「やはりあいつがこの人物を殺したんだろうか……」
「どうだろう? 早計に決め付けるのは早いけど、可能性は高いかもね。まぁ、とりあえずここを出よう。
まだ10分も経っていないけど、そろそろ時間的に限界だと思うから」
織田に促されて、俺達は早々と蒲生宅……いや、元蒲生宅を出た。
342:いつか見た夢
09/04/30 00:07:24 FtgVgvhA
織田はああは言っていたが、俺は今井という人物や他の関係者を亡き者にしたのは、
間違いなく奴だとなぜかこの時、強く思った。
物的証拠ではないが、奴がナイフで攻撃してきたのはその何よりの証拠ではないのか?
わざわざ、もう一年も前に死んでしまった蒲生の家に来ていたのもそうだ。
不思議と傷の痛みによって、俺の頭はクリアになっていく。
証拠なんてものは何もなく、ただ何かあるかもしれないと言う理由だけで訪れた蒲生の家に、
奴が現れた(正確には、最初からいたのだが)のも奴が蒲生や今井と何らかの関係があったから、
そうではないのか?
奴は、この二人の人物と不可解な死を遂げた人達とも何かしら関係がある人物であることは間違いないはずだ。
とにかく、この紙に名のある人物達を徹底的に調べねばならないのは、もはや避けては通れない。
そしてこれらの人物達と交差する人間こそ、奴なのだと直感で理解した。
帰りの車の中で俺は、傷の手当てをしながら先程から同じことばかり考えていた。
しかし、どうしてもそれらが上手いこと、一つにまとまらない。
背後の事実関係を解き明かすまでは、この靄に包まれている今回の事件は、全体を見ることは出来ない。
俺はため息を一つつき、今は焦っても仕方ないと自分に言い聞かせた。
あれほど出ていた腕からの出血は、今は止まってなんとか小康状態といったところだ。
俺は、沙弥佳や家族へなんて言い訳するべきか、頭を悩ませながらため息をついた。
「ただいま」
「おかえりっお兄ちゃん!」
沙弥佳は、相変わらず俺が一人で出かけ、帰ってきた時には犬みたいに飛んでくる。
沙弥佳が犬になったところを想像してしまい、頭をふった。
「俺にそんな趣味はないぞ」
「え? 何が?」
沙弥佳が胸にうずめていた顔をあげる。
「いや、なんでもない」
俺は苦笑しながら、リビングへと歩きだした。
「おかえりなさい。九鬼さん」
俺が帰ってくる今の今まで沙弥佳とささやかなティータイムであったようで、
ティーカップをテーブルに置いて、綾子ちゃんが挨拶をしてきた。
「ああ、ただいま。見たとこティータイムだったみたいだな。俺にもいいか?」
「はい。準備しますから、ちょっと待っていて下さいね」
「あ、私も手伝うよー」
リビングに置いてある、ガラス戸から新しいティーカップと受け皿を出し、新たにお茶受けも取り出していく。
この二人は何をやっていても絵になるな。
そう、まるでとても仲の良い姉妹のようにも見える。
姉のような綾子ちゃんに、妹のような沙弥佳。
そんな二人を見ていると、とてもほほえましい気分になってくる。
「なぁに、お兄ちゃん。私たちそんなにおかしい?」
俺は、気持ちがすぐ表情となって出てくるタイプらしい。
343:いつか見た夢
09/04/30 00:12:53 FtgVgvhA
「いや、なんでもないさ。それよりも今日の茶はなんだ? 普段飲んでるのとは違うな」
指摘されたのが恥ずかしくて、話をそらしてしまった。
「あのね、今日のはトルコティーだよ。それも少し値の張るお茶っ葉らしいの」
「らしい? 誰かから貰ったのか?」
「そうなんです。以前父がトルコに行った時、わざわざ買ってきてくれたんですよ」
「それでちょうど前のお茶っ葉が切れたから今回使ってみようってことになったの。それに結構美味しいよ」
「そうか。トルコティーは初めてだからな、ちょいと楽しみだ」
どうも俺と沙弥佳が、初めて綾子ちゃんの家に行った時に、こいつを持ってきたらしい。
「ふぅ……なるほど、こいつは確かに美味いな」
「うふふっでしょう?」
「喜んで頂けてなによりです」
二人は自分達の気に入ったものが、俺も気に入ったことにご満悦といった顔をしている。
ここで一息ついて、沙弥佳が聞いてくる。
「ところでお兄ちゃん。その服どうしたの?」
「え? あ、ああ、この服はちょっと気に入ったんで買ったんだ。それに安かったしな」
半分嘘、半分本当だ。
いつもならこんな派手な色使いの服は買わないが、仕方ない。
最近の高速のサービスエリアでは、ちょっとした買い物ができたり、ちょっとした観光スポットになっていたりと、
目まぐるしく様変わりしてきている。
この服もそういったサービスエリアで買ったものだ。
色使いは派手だが、なるべく俺に似合ったものを見繕ってきたつもりではあるが。
朝と着ているものがが違えば、誰だって気になるものだが、特に怪しまれはしないはずだ。
それに、今日は友達と街に繰り出して遊んでくるという理由をつけて出ていった。
そういう意味でも良いカムフラージュになったはずだ。
まさか、前の服が切られてもう着ることができないとは言えない。
「ふーん。ちょっといつもの服とは違うけど、悪くないと思うよ」
「そ、そうか……俺もいつもの服とは違うからどうかと思っちゃいたんだが」
ギリギリ合格ラインのようだった。
沙弥佳は、俺の着る服一つとってもあれやこれやとうるさいので、ホッとした。
だが、沙弥佳は何が気に入らないのか、少し不機嫌そうな態度で続けた。
「それで、朝着て行った服はどうしたの?」
「ああ、帰りに友達のとこに寄ってな、そいつのとこに忘れてきちまった。気付いた時にはもう家の前だ」
こいつは変なところでやたらと鋭いので、何かあった時はいつもこうして言い訳を考えなければならない。
それに季節はすでに、長袖を必要としている時期なので怪我を隠せるのは助かった。
しかし、沙弥佳はどこか不機嫌なままであった。
とはいえ、俺としてもいつまでも沙弥佳のご機嫌取りに付き合うつもりはない。
「ところで今日の晩飯はなんなんだ?」
「今日は、おば様の希望もあってビーフストロガノフですよ」
「お、中々豪勢だな。綾子ちゃんが作るのか?」
「はい。とはいっても、さやちゃんと共同作業ですけど」
「そうか。ビーフストロガノフは好物だからな、楽しみにしてるぜ」
「はい、楽しみにしていて下さいね」
こうして綾子ちゃんと、何気ない会話をしていると、ふと昨日の朝のことが思い出されてきた。
何気なく沙弥佳の方を見れば、頭をたれているおかげで前髪が顔を隠し、表情を読み取ることができなかった。
ただ、その両手は力いっぱいに握られ、小刻みに震えていた。
344:名無しさん@ピンキー
09/04/30 00:17:27 FtgVgvhA
今回は以上です。
ここまで読んでくれてありがとうございますm(__)m
今日からGW。
できれば、このままストーカー確保までいきたいです…。
345:名無しさん@ピンキー
09/04/30 06:40:34 EzKcbxbq
>ストーカー確保
ちょ、ネタバレネタバレwww
346:名無しさん@ピンキー
09/04/30 10:24:34 AYOWBv9Z
エロパロでやる意味あるの?
347:名無しさん@ピンキー
09/04/30 10:35:06 LzadE/Ha
なんか段々エロパロスレでやる内容じゃなくなってきたな。
自己満足でアクション小説を書くスレじゃないんだけどな・・・普通に妹が絡む
話が読みたい。
348:名無しさん@ピンキー
09/04/30 11:14:13 bd7yC7iZ
まったくもって禿同
349:名無しさん@ピンキー
09/04/30 23:25:29 EzKcbxbq
そもそも自己満足じゃない小説なんて存在するのかと問いたいがどうか。
ちゃんと読んでりゃ妹の異常な性癖なんかも読み取れるし。
「妹」が全く出て来ないみたいな明らかなスレ違いならともかく、今の段階でそう判断するのは時期尚早では?
それでも気に入らないなら、小説書けとは言わんから自分でもネタを振れ。
350:名無しさん@ピンキー
09/04/30 23:26:19 8bLQC2ni
作者~乙
まあ、最近過疎ってたし寛容にいこうよ。
終盤にエロになるさ!!
そうだろ作者さん(期待眼差し
351:名無しさん@ピンキー
09/05/01 03:10:03 i7jQs0X+
仲良くできんもんかねぇ~
352:名無しさん@ピンキー
09/05/01 08:32:00 J8W1Db5s
>>344
相変わらず面白れーですGJ!
警棒三人衆役に立たないw あの状況じゃ仕方ないか。
そして妹にもっと光を。
353:名無しさん@ピンキー
09/05/01 15:13:47 g9J8MUc0
話の流れがストーカー主体なのか、妹なのかわかりにくいからじゃね?
354:名無しさん@ピンキー
09/05/01 15:22:22 sX/4jQQk
>>351
無理じゃないの
エロパロ板のシチュ系スレなのに
該当シチュがメインじゃない長編って時点でキツイし
正直最初の一話で終わりかと思ってた
355:名無しさん@ピンキー
09/05/01 16:40:48 g9J8MUc0
>>351
ネタ投下しろとか書いてる奴もいるけどそもそもこの小説をエロパロ板で
やる必要性があるのかがわからねぇ、論点のすり替え乙としか言えない。
妹や主人公に身近な人間が関わっているサスペンス風小説という
ような形にしかなってないし作者自身が次はストーカー確保とか
書いている時点でますますエロパロ板でやる要素があるのかが
わからん。
ヤンデレ要素とかがあるのならヤンデレスレに行けばいいし
修羅場的要素なら(今はどうなっているのか不明だが)修羅場スレ
に書けばいいやん。
実際ストーカーから発展した話が修羅場スレに書かれてる。
萌えが~とは言わないしエロ少なめは置いておくとしても妹は
出てこない、ストーカーと謎の殺人事件とか出てくるとエロパロ
板って何?ってなるのは普通だろ。
356:名無しさん@ピンキー
09/05/01 17:25:26 BVS5Z0Yu
読まなきゃいいんだよ
俺なんて最初から読んでないし
読まない自由もあるもんさ
タイトルでNGすればいいだけの話
357:名無しさん@ピンキー
09/05/01 17:27:12 sX/4jQQk
鳥付けてくれるとうれしいな
358:名無しさん@ピンキー
09/05/01 17:32:51 BVS5Z0Yu
鳥付だと便利だね
読みたいやつはガッツリ読んでGJ贈ればいいし
読みたくないやつはNGしてスルーすればいいだけ
スレは平穏で平和が一番
359:名無しさん@ピンキー
09/05/01 20:22:30 7F0illNZ
まあ、妹との絡みが少ないのは気になる所だが、
だからってこのまま投げっぱなしされても困る
ちゃんと物語を終わらせてから、妹Hを書いて欲しいなw
360:名無しさん@ピンキー
09/05/01 21:39:38 VgRb+Ag3
今荒らされてるスレに居る荒らしが同じ手口で荒らして居る件について。
361:名無しさん@ピンキー
09/05/02 02:51:55 YAI9Qvcv
みる限り長い作品になりそうだし、これから妹もでてくるんじゃないの?
このスレ自体人気ないんだから投下されるだけでも有り難いって思わなきゃね。
362:名無しさん@ピンキー
09/05/04 08:05:48 w1W7vnun
どういう展開であれ最後まで読みたいな
363:名無しさん@ピンキー
09/05/04 08:41:46 MjzWnbRT
URLリンク(sub.momopuri.net)
364:名無しさん@ピンキー
09/05/04 09:26:02 QG5edN8t
少なくとも俺はwktkして見てる
からみが無いだの何だの言う奴は基本荒らしだからスルースルー
365:名無しさん@ピンキー
09/05/04 14:08:44 uLrHOOy2
はいはい荒らし乙
366:名無しさん@ピンキー
09/05/04 21:53:50 6+lNoqvP
>>96 >>206の続きはまだか。
367:名無しさん@ピンキー
09/05/09 01:23:42 FHdc7oQW
続きはまだ~
368:名無しさん@ピンキー
09/05/09 22:15:33 bpVD4EIG
ほら、職人さんがいなくなった。
良かったね荒らし野郎。
369:名無しさん@ピンキー
09/05/09 22:26:17 Cr2hCi0b
勝利宣言乙
過疎ったからさっさと別のスレに行こうね^^
370:名無しさん@ピンキー
09/05/10 14:22:46 SApA7PAm
長編オナニー野郎に居座られるくらいなら
過疎った方がマシ
371:名無しさん@ピンキー
09/05/11 00:03:30 kKZjlzSL
自分で書きもしない癖によくもまあ。
372:名無しさん@ピンキー
09/05/13 11:55:17 EBDSg3l9
むしろ過疎っている方がすっきりする。
373:名無しさん@ピンキー
09/05/13 15:01:58 0waSoVtO
例の長編ってやっぱ妹強姦or殺されて復讐てな流れだったんかな?
374:名無しさん@ピンキー
09/05/15 09:57:49 K/xlLnNo
>>373
自己満足な小説書く野郎の事だからそういう展開も考えてたのかもな>妹強姦or殺されて
復讐END
375:名無しさん@ピンキー
09/05/15 12:04:16 xDu9Q1jt
そういう流れだったかもしれんね
考えようによっちゃここ向けはここ向けだな
Hシーンも考えてたって話もあったし
せめてそこまでは見てみたかった
376:名無しさん@ピンキー
09/05/18 22:32:03 PT1Oc1eL
聞いて過疎リーナ♪
ちょっと言い難いんだけど
聞いて過疎リーナ♪
早く続編が見たいの
聞いてくれてありがと過疎リーナ♪
377:名無しさん@ピンキー
09/05/20 19:49:13 RnBWq/fO
保守
378:名無しさん@ピンキー
09/05/22 21:31:40 VjFbDQrT
ほ
379:名無しさん@ピンキー
09/05/23 04:57:11 9zMLe8pA
過疎ってるのが良いなら無くて良いんじゃね?
380:名無しさん@ピンキー
09/05/23 05:01:38 HLz3wpH6
妹という属性がキモウトやヤンデレに吸収されて幾星霜
381:名無しさん@ピンキー
09/05/23 09:25:38 OJbwQKc3
確かにキモ姉妹スレとの境界線はよくわからない。
382: ◆MZ/3G8QnIE
09/05/24 23:31:23 YEFeDJef
山も落ちもない、ゆるゆるな兄妹ライフを目指した。うまくいかなかった
エロは寸止め、3レス予定
383: ◆MZ/3G8QnIE
09/05/24 23:33:35 YEFeDJef
あれは、俺が大体10歳、陽華が5、6歳位の時だったろうか。
リビングで二人して、ただぼーっとテレビを眺めていた。
両親と上の兄がたまたま出かけていて、テレビを何時間見ようと咎める人が居ない。
それを良いことに、20時過ぎても、俺たちはテレビにかじり付いたままだった。
とは言っても特に見たい番組がある訳でもなく、チャンネルを適当に替えること数十回、結局は何かの連続ドラマに落ち着く。
ストーリーはよく憶えていないが、メロドラマであったことは確かだ。
当然のことながら、唐突にラブシーンが始まる。
「にーさんにーさん」
チャンネルを替えようとリモコンに手を伸ばした手が、くいくいと引っ張られる。
「あれ、なに」
陽華は熱い口づけを交わす主人公らを指差して、純真な眼差しで俺に問いかけてきた。
「あれはキスだよ」
「キス?」
「好きな人同士は、あんなことをするんだって」
「ふうん」
生返事を返しながら、熱心に画面に食い入る陽華。
俺はと言えば、今さら番組を変えるのも気がひけて、気まずい思いを抱えたまま彼女とテレビを交互に見ていた。
「じゃあ」
突然、振り返り身を乗り出す陽華。
彼女の顔がぐっと接近してきた。
「わたし、にーさんとキス、するね」
「ええと……」
俺は顔を逸らしながら、彼女を押し止める。
「陽華、それはまずいと思うよ」
「どうして?
わたしはにーさんのことが好きで、にーさんもわたしが好き。
問題はないと思うわ」
「うーん」
俺自身、何が問題なのか良く判っていなかったが、それでも近親相姦への忌避感は、多少身についてはいた。
貧困な知識の中から、彼女を納得させられる良い言葉を考える。
384: ◆MZ/3G8QnIE
09/05/24 23:34:51 YEFeDJef
「この"好き"って意味は、僕たちが互いを"好き"って言うのとは、ちょっと違う。
長い人生で、一番大切に思える人に対してしか、キスはしちゃいけないんだよ」
「わたし、にーさんのこと、とーさんやかーさんや大にーさんよりも大切で、世界でいちばん大切だと思ってるけど」
ちなみに"大にーさん"とは、俺の7歳年上の兄のことだ。
「うん、僕も陽華のことは、世界で一番好きだよ。
でも、僕も陽華も、将来それよりずっと好きな人が出来ると思う。
本当の"一番好き"は、その時の為にとっておくべきなんじゃないかな」
「にーさんより好きなひとができるなんて、想像できないわ」
けど、と言いながら陽華はすっと身を引いた。
「にーさんに、わたしよりキスしたいひとがいるなら、仕方がないね」
陽華は憮然として俺から身を離すと、チャンネルを替えてしまった。
どうやら姫の機嫌を損ねてしまったらしい。
俺は苦笑しつつ、離れた陽華の方に近付くと、そっと彼女の頭を抱き寄せた。
繊細な髪を掻き分け、真っ白な額に口を寄せる。
「……あ」
「唇同士は無理だけどね」
それだけでたちまちむくれ顔が緩み、頬を赤く染める彼女が愛しい。
俺は彼女を抱き寄せたまま、羽根のようなその身を抱えて、膝の間に座らせた。
「今は、僕にも陽華より好きな人なんて考えられない。
僕は陽華が好きで、陽華も僕が好き、それで問題ないように思える。
けど、家族って、あらかじめ与えられたものでしかないから、いつかは自分で選ばないといけないんだよ。
与えられたものに縋ったままだと、それは幸せなことなのかもしれないけど、成長もないし、新しいものも始まらない。
自分から選ぶ"大切な人"は、きっと新しい世界に繋がっている。
僕は前に進みたい。大切な人を見付けて、新しい自分になりたい。
陽華にも、幸せになるだけじゃなくて、素敵な女性になって欲しいんだ」
「……うん」
陽華は頬を赤く染めたまま、じっとして俺に頭を撫でられていた。
「にーさん」
「なに?」
膝の上で、少女はポツリと呟いた。
「私にもいつかできるかな。いちばん大切なひと」
「きっと、できるさ」
385: ◆MZ/3G8QnIE
09/05/24 23:36:33 YEFeDJef
そんなこんなで大体10年が経って。
俺たちは、リビングでキスを交わしていた。
「……ん」
唇と唇を合わせ、時折歯茎が当たる程度の、軽くて長いキス。
どちらともなく唇が離れ、陽華ははあと息を継いだ。
「えへへ」
「何か可笑しい?」
へらりと笑う陽華の髪を撫でる。
「可笑しくはないわ。嬉しいの」
陽華は小さな頭を俺の胸に預けた。
「一緒にいられることが、にーさんとキスできることが」
「俺は一概に嬉しくないかな」
「どうして?」
「父さん達が生きてたら、こんなことはそうそう出来ない」
罪悪感はまだある。きっと一生ついてまわる。
何より、もう陽華との関係で許しを請うことすら出来ないのが、哀しかった。
陽華も寂しそうな顔で俯く。
「けど、とーさんやかーさんが生きてても、私はにーさんを選んだと思うわ」
「俺はちょっと、陽華を選んでたかどうか、自信ないな」
「そうなの?」
陽華、若干不満げな顔。
「世間体ってのも、あるけどね」
あの地震が起きた日。
胸の中にいる少女の存在がなければ、他の家族を置いて、潰れた車から脱出しようなどとは考えなかっただろう。
二人だけ生き残り、状況が飲み込めず呆然とする陽華を抱きしめて、俺は泣き叫ぶことしか出来なかった。
あの時、腕の中の温もりだけが、この世でたった一つ、確かで、揺ぎ無く、もっとも尊いものだと思えて。
その想い出があったから、俺は世間にどう見られようと、この少女と人生を共にする覚悟が出来たのだ。
「にーさん」
「ん?」
「にーさんは、誰か他の人を好きになった方が、幸せになれたのかしら」
「俺は今、幸せだよ」
俺は陽華のさらりと流れる黒い髪に、顔を埋めた。
シャンプーの良い香りがする。
「私は結局、にーさん以外を好きになれなかった。
好きな人を選び取って、新しい家族を作って、別の世界と繋がることが出来なかった。
素敵な女性に、なれなかった……」
「そんなことない」
俺は、泣き出しそうにしている小さな少女を、強く抱きしめた。
「陽華は変わったよ。
友達を作って、色々なものを体験して、自分の夢を見付けた。
陽華といるから、毎日が輝いて見える。生きてて良かったって、思える」
「……うん」
386: ◆MZ/3G8QnIE
09/05/24 23:38:40 YEFeDJef
「それに」
俺はそっと陽華の後ろに回りこむと、小さな二つの膨らみに触れた。
小さく声を漏らしながら反応する陽華。
「こことかは、少し変わったね」
「ん……。お、大きさは、あんまり、変わってないよ」
「感度はよくなった」
両の胸を弄りながら、長い髪を掻き分けてうなじに吸い付く。
陽華は真っ赤になりながら、俺の頭を抑える。
「に、にーさん。こういうことは、ベッドの上でするものよ」
「それもそうか」
顔と手を離す。
少し名残惜しい気もしたが、本格的に始めるとなると、避妊具だけは取ってくる必要がある。
「それじゃ……する?」
陽華は上目遣いで訊ねた。
俺は頬に軽くキスして、身を離す。
「先に部屋で待ってて。シャワー浴びてくるから」
シャワーを浴び、若干緊張しながら自室に入る。
待っていたのは微かな寝息と、幸せそうな寝言だった。
「やれやれ……」
時を経ても、変わらないものもある。
どんな状況でも寝れる特技というべきか悪癖は、いつまで経っても直らない。
性欲より睡眠欲を優先するのは、生物として自然な姿だろうが。
「にーさんのにおい……」
顔を枕に埋めてにへらと笑う彼女の頭をそっと撫でる。
眠りは深く、起きる気配はない。
たぎっていた部分が、下着の中で急速に萎んで行くのを感じる。
寝込みを襲うような趣味はなかった。
「おやすみ、陽華」
俺は温かな少女を抱きしめて、眠りに落ちた。
387: ◆MZ/3G8QnIE
09/05/24 23:43:27 YEFeDJef
予定超過失礼しました
タイトルは"五月雨姫"で
たぶん続きません
388:名無しさん@ピンキー
09/05/25 00:41:20 lVVAEPzK
いい萌えだ GJ
両親が死んで~のくだりでついキモウトスレの発作が出そうになったがw
389:名無しさん@ピンキー
09/05/25 14:45:46 2viX/NXy
>>388
覚醒→両親殺害ですねわかります
キモ姉妹スレだと思って読んでいた俺よりマシ
ブックマークが隣あってるんだもの……
それはそうと職人GJ
いい話だったよ
390:名無しさん@ピンキー
09/05/25 23:38:56 rhWxf3OB
キモ姉妹ってよくわかんないんだけど、
実妹もしくは姉が実兄もしくは実弟とセクロスするとキモ姉妹なん?
普通に楽しんだ後にキモ姉妹言われるともにょもにょするんで聞いてみる。
あと>>387GJ。好きな人の匂いに萌える女の子最高にござる。
391:名無しさん@ピンキー
09/05/26 00:45:21 8wDIFm+T
>>390
ここの事w
スレリンク(eroparo板)
さらにディープな人たちで盛況してる
392:名無しさん@ピンキー
09/05/26 20:30:48 7Nx+ydzr
GJ!
393:名無しさん@ピンキー
09/05/29 08:11:08 SzFLD50s
素晴らしいですGJ
394:名無しさん@ピンキー
09/06/01 19:09:19 XaK/i3E9
>>387
遅ればせながらGJ。
ずっと恋していた妹はもちろん、恋心に気付いたお兄ちゃんの覚醒ぶりがなんかいいな。
ところで、誰も7つ歳上の大にーさんの存在に、触れてないのね……
多分両親と一緒に死んだんだと思うけど。
395:名無しさん@ピンキー
09/06/01 21:30:01 9ijK8Q1H
>>96 >>206の続きはまだか。
396:名無しさん@ピンキー
09/06/02 21:59:13 ONdOXKpu
問:以下の組み合わせで最適と思うものを4組線で結びなさい。
妹 兄
①アホの子 A バカ、ダメ人間
②ツンデレ B ぶっきらぼう
③ダウナー C 実直、朴訥
④大人しい D 親切、穏やか
397:名無しさん@ピンキー
09/06/02 23:00:34 iPGbC5m5
1-A
2-D
3-B
4-C
でFA!
398:名無しさん@ピンキー
09/06/03 00:57:17 lhajI2jZ
1-D
2-A
3-B
4-C
と見た
399:名無しさん@ピンキー
09/06/03 01:25:41 wlOfZYlw
1-C
2-A
3-D
4-B
400:名無しさん@ピンキー
09/06/04 00:26:21 H2U4AhFg
1―CD
2―ABCD
3―ABCD
4―ACD
……だめだ、CとDはあいすぎる
401:名無しさん@ピンキー
09/06/04 04:00:07 tMJ1eS6b
1-B アホの妹を流しつつもしっかりとフォローする兄の図
2ーD 親切で優しい兄の前で素直になれない妹
3ーA バカな兄に悪態をつきながらもほっとけない妹
4ーC 話さなくても心で通じ合ってる兄妹、最早夫婦以上
402:名無しさん@ピンキー
09/06/04 11:01:45 SBVMLHbf
せっかくのネタ振りなので保守代わりに書いてみる。
とりあえず>>397で。
1-A
「うにゃー! 勉強わかんないー! なんなのさーもー!!」
「困っているみたいだな妹よ! にーちゃんが助けに来てやったぜ!!」
「おにーちゃん! 勉強わかんないんだよー! 教えてよー!」
「うむ! この兄に任せておくがいいっ!!」
「きゃーおにーちゃんかっこいー!」
「…………うん……うん…………あっ……ごめんわかんない」
「ふえ?」
「わかんないんだぜ! ハッハッハ!」
「……むーーー! おにーちゃんのバカー! 期待させてなにさー! ダメ人間ー!」
2-D
「……うわ。なによコレ。超難しいんだけど……」
「どうかした? わからないところがあるの?」
「ふわ!? お、おにー、ハッ、兄貴!? いや別にわかんないとこなんてないし!!」
「そう? なにかあったら言ってね。分かる範囲でなら僕が教えてあげるから」
「だから無いって…………あっ、ちょっと待って!」
「ん?」
「……ココ。別にわかんないわけじゃないけど構って欲しそうだし教えてみてよ」
「あはは。うん、いいよ。ここはね……」
「……うん……うん。あ、そっか! ……っ! ほ、本当にわかってるんだからね!?」
3-B
「……はぁ……(わかんない……)」
「(さっきから止まってんな)……わかんねーのか?」
「……別に(ウザいなぁ……)……あっ」
「(メンドクセーな)……ほら。じゃーな」
「……………………(勝手に書かないでよ……)」
4-C
「えっと……どうしよう……難しいよ……」
「どうかしたか?」
「お兄ちゃん……えっとね……あのね、ここが……」
「わからないのか?」
「……っ(こくこく)」
「……説明しながら解く。聞いて覚えろ。ここは……」
「あ、あの」
「どうかしたか」
「あ、ありがとう」
「……まだ説明は途中だ。良く聞いてろ」
「うん……」
こんな感じ? 違ったらゴメン。疲れるw 頭の体操みたいw
403:名無しさん@ピンキー
09/06/04 11:18:18 SBVMLHbf
ついでだから>>398も。
1-D
「うにゃー! 勉強わかんないー! なんなのさーもー!!」
「どうかした? わからないところがあるの?」
「おにーちゃん! 勉強わかんないんだよー! 教えてよー!」
「うん。出来る範囲でいいなら教えるよ。どこがわからないの? 見せて」
「ここ! もーわけわかんないよーっ! おにーちゃんわかるー?」
「ああ、これはね……」
「わ、わ、うわー!! すごーい! おにーちゃんあったまいー!!」
2-A
「……うわ。なによコレ。超難しいんだけど……」
「困っているみたいだな妹よ! にーちゃんが助けに来てやったぜ!!」
「ハァ!? 別に呼んでないし何しに来たんだよ兄貴っていうか勝手に入るなー!」
「ハハァン、さては勉強がわからないんだな! おいおいそんな時こそこの兄を頼れよ!」
「うっさいバカ、どーせできないんだから来んじゃないって……ちょ、あ、もうっ!」
「まぁまぁいーから見せろって。…………うん……うん…………あっ……ごめんわかんない」
「……は?」
「わかんないんだぜ! ハッハッハ!」
「開き直るんじゃないわよ! ちょっと期待した私がっ……て別に期待してないし! 出てけーっ!」
3-Bと4-Cは >>397と一緒。
404:名無しさん@ピンキー
09/06/04 11:45:50 SBVMLHbf
なんか面白くなってきたので>>399も。
スレの邪魔になってたらごめんなすって。
1-C
「うにゃー! 勉強わかんないー! なんなのさーもー!!」
「どうかしたか?」
「おにーちゃん! 勉強わかんないんだよー! 教えてよー!」
「少し静かにしろ。……説明しながら解く。聞いて覚えろ。ここは……」
「うー……うん、うん……えっと……今のわかんないー」
「ここか? いいか、ここはな……」
「うにゃー……、むずかしーよー……。わたしバカだからできないよ~……」
「わかるまで教えてやる。馬鹿なことを言うな」
「うー、バカっていったー。バカって言ったほうがバカなんだぞー」
「……言葉のあやだ。問題作るから解いてみろ」
「にゃう~~……」
2-Aは>>398と同じ。
3-D
「……はぁ……(わかんない……)」
「どうかした? わからないところがあるの?」
「……別に(ウザいなぁ……)……」
「……………………(にこにこ)」
「……………………(やりずらいなぁ……)……ん、ここ(トントン)」
「ここがわからないんだね。……うん、うん。それじゃ、説明するよ」
「……………………(……となり座らないで……近い……)」
「えっとね、ここはこうして…………ん? どうかした?」
「……………………(なんか温かくてヤダ……)……別に……」
4-B
「えっと……どうしよう……難しいよ……」
「……わかんねーのか?」
「……っ(こくこく)」
「どこよ」
「……えっと、ここ。ここ、わかんないの……」
「(メンドクセーな)……ほら。じゃーな」
「…………あ、ありがと…………行っちゃった……」
つ、疲れた。大体こんな感じかな個人的な印象では。
保守終了。お目汚し失礼しました。ノシ
405: ◆cW8I9jdrzY
09/06/05 21:06:27 AaPEM4N9
流れを読まずに投下します。
高校生の双子の話ですが、一応妹ということで。
406:水野兄妹の平凡な一日(1/7) ◆cW8I9jdrzY
09/06/05 21:07:45 AaPEM4N9
カーテンから漏れてくる明るい朝の日差しの中、俺は目を覚ました。
「―う……」
昨日の練習試合で頑張りすぎたせいか、体のあちこちにまだ疲れが残っている。
血管と神経を介して全身を巡る倦怠感に、俺は力なく仰向けでベッドに横たわっていた。
だが彼女はそんな俺を容赦なく責めたてている。
―ぐちゅっ、ぐちゃぁっ、じゅぷぷっ……。
「―あぁっ……んんっ……け、啓一……起きた?」
「お前なぁ……」
呆れた表情の俺を、黒く大きな瞳が見下ろしている。
恵は目を細めて笑いながら俺の上で激しく腰を振っていた。
制服は上だけで、下半身には灰色の靴下以外何もはいていない。
細くくびれた腰も、なめらかな曲線を描く太ももも、そして汁を弾けさせて繋がる結合部も
全てが隠れることなく俺の前にさらけ出されていた。
「……朝から兄貴を強姦ですか。さすがに勘弁してくれません? 恵さん。
夕べも散々付き合ってやったじゃないか。正直、俺もう限界なんだけど」
いったいこの妹は何発ヤれば気が済むのだろうか。サキュバスじゃねーんだから。
しかし恵は俺の抗議の声に頬を膨らませて言った。
「だって……最近してなかったんだもん」
「当たり前だ。お前生理で滅茶苦茶辛そうだっただろ」
一応俺だって、お前のそういうとこはちゃんと注意して見てますよ。
だが彼女は俺が気を遣うと妙に不機嫌になるというか、なんか意地を張りたがる。
対等な立場ってのにすごいこだわるんだよな。まあわかるっちゃわかるけど。
「ほら啓一も動いてよ。そっちもたまってるでしょ?」
「いや昨日ので出し尽くした。ごめんなさい弾切れです」
「嘘。啓一の、私の中でビクビク動いてるじゃない……まだいけるよ」
全てを見透かした目で妹が俺を見つめている。
たしかに無理をすれば一発や二発できないこともないが、朝から体力使い果たしてどうすんだ。
俺、今日も部活あるっての。またキャプテンにどやされたくないぞ。
兄の思いをよそに、恵の膣は絶え間なく俺を締めつけ淫らな音を響かせた。
「はんっ……んあぁ……お、奥ぅっ……!」
硬い肉棒は鋭利な槍となって妹の中を思い切り貫いている。
その先端は奥の奥、恵の子宮をつついてコリコリと心地よい感触を伝えていた。
普段上に乗るのは嫌がる癖に、こういうときだけ都合いいんだから困ったもんだ。
俺はため息をついて大人しく妹に犯され続けた。
407:水野兄妹の平凡な一日(2/7) ◆cW8I9jdrzY
09/06/05 21:08:25 AaPEM4N9
「う、くっそ……熱っ……!」
「あはぁっ……啓一ぃ……いいよぅ……!」
真っ直ぐ通った鼻筋。笑みの形に歪められた細い唇。振り乱されるストレートの長い黒髪。
こうして見ると、やはり一つ一つのパーツは俺と似ている気がする。
とはいえその雰囲気や顔立ちは俺よりも柔らかで繊細で、やはり女の子らしかった。
華奢で軽い体が上下に動くたび、俺のチンポが擦られて硬度を増す。
俺に絡みついてくる恵の肉も汁も、マグマのように熱くなって俺を溶かそうとする。
―やれやれ。今日の部活は休むか。
俺は仰向けに寝転がったまま両手を伸ばし、恵の腕をぐっとつかんだ。
「け、啓一……? きゃっ !!」
力を込めて引き寄せるとバランスを崩して俺の上に倒れかかってきた。
軽い悲鳴をあげる恵の乳房が、セーラー服とパジャマ越しに
ふにゃりという気持ちのいいおっぱいの感触を俺に伝えてくる。
妹の背中に腕を回し、彼女をぎゅっと抱きしめる俺。
―トクン、トクン……。
二つの心臓の鼓動が共鳴し合う。彼女は俺に抱かれたままで、上気した顔をこちらに向けていた。
「な、何するのよ……ちょっとびっくりしたじゃない……」
口をとがらせる恵だったが、隠しようのない嬉しさが顔からにじみ出ている。
こうして俺にぎゅうぎゅうされるのがこいつは本当に好きだ。
互いの体温を感じながら、俺たちは数秒間動きを止めて見つめ合った。
不意に恵の桃色の唇が動き、短い言葉を紡ぐ。
「啓一……大好き……」
悔しいことに、そのセリフに俺はグッときてしまった。あーもう、可愛いなあこいつは。
欲望の赴くままに俺の腰が動き、跳ねるように下から恵を突き上げた。
「―あああぁっ…… !?」
突然の突きこみに目を白黒させて彼女が喘ぐ。
俺は体力と筋力を総動員して恵を責めたて、存分に妹を鳴かせた。
「うあぁ、はあんっ…… !! 啓一ぃぃっ !!」
だが俺の体はそろそろ限界だった。てかこの体勢、思った以上にきついです。
早くこいつをイカせてやらんとこっちがやばい。
俺たちは抱き合ったまま激しく腰を動かし、本能のままに肉を重ね合った。
そして俺の気が遠くなってきた頃。
「あぁ、はひぃぃっ !? あああぁあぁっ !!!」
ようやく恵が絶頂に達し、俺の腕の中でくたっと意識を失った。
―ドク、ドクドクッ……!
膣内に噴き出す俺の汁も今日は出が悪い。
意識を手放しそうになりながら、俺はまだ恵と抱き合っていた。
遅刻しなかったのは恵が早めに起こしてくれたからだが、
おかげで今日一日、俺は物凄い眠気と疲労に襲われる羽目になった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
408:水野兄妹の平凡な一日(3/7) ◆cW8I9jdrzY
09/06/05 21:10:02 AaPEM4N9
食堂や購買が飢えた生徒で埋め尽くされる、平凡な高校の昼休み。
啓一はひとり、ひと気のない校舎裏に呼び出されていた。
そこで彼を待っていたのはひとりの小柄な少女。彼とは初対面だった。
「あ、あの、水野センパイ……あたしと、つ、付き合ってくれませんか……?」
真っ赤な顔でショートカットの頭を下げる彼女を、啓一は真剣な目で見つめた。
答えは初めから決まっている。ただそれを言うのが申し訳ない。
「……ごめん」
ようやく覚悟を決めて、啓一は短くつぶやいた。
少女はそれを聞いて少しの間動きを止めたが、やがて声を震わせて言った。
「い、いいえ……こちらこそ、無理言ってごめんなさい……。
その、やっぱりセンパイには……素敵な恋人さんとか、いるんですか……?」
「え? う、うーんと……」
毎度のことながらこの質問には返答に窮する。
彼と恵の仲は秘密であり、表向きはあくまで仲のいい双子の兄妹ということになっていた。
その妹に朝からレイプされましたなどとは口が裂けても言えない。
「う、うん。俺も好きな人がいるからさ……ホントごめんね」
「そうですか……」
悲しそうにうつむく少女。捨てられた子犬のような表情が啓一の哀愁を誘った。
「……でもありがとう、すごく嬉しかったよ。じゃあね」
「はい、さようなら。センパイ……」
いっそ全てを公にできたらこんな苦労をしなくても済むのだが。
重い気分を胸に、啓一は賑やかな校舎内へと戻っていった。
自分の教室に帰ると、既に仲のいい友人たちが啓一の席を囲んで昼食をとっていた。
その中には当然のように、水色の弁当箱を手にした彼の妹、恵の姿もあった。
「おー啓一、どこ行ってたんだ?」
「……トイレだよ」
感情を押し殺して簡潔に答える。また女子を振ったと言えば友人の嫉妬の拳が飛んできてしまう。
「なんだ腹でも壊してんのか? それならその弁当、俺が食ってやるよ」
「何言ってるんだ、お前はいつもパン食だろ」
啓一は友人の軽口に合わせ、机の上に自分の弁当箱を広げた。
塩鮭混ぜご飯。ほうれん草とベーコンの炒め物。ちくわとワカメの酢の物。そしてトマトと卵焼き。
量こそ違えど、メニューは恵のと全く同じものである。
友人は恵の弁当と啓一のをジロジロ見比べて羨望の声で言った。
「あーあ、恵さんの手作り弁当か。俺も食いてえなあ」
「いやこれ、半分は俺が作ってる」
「野郎の手料理など要らんわ! 恵さんの作ったとこだけよこせ!」
「お前は何を言ってるんだ……料理の腕はほとんど変わらんっての……」
ちらりと目をやると恵はこちらを向いて微笑んでいた。
彼女は何も聞いていないが、啓一が後輩の女子に呼び出されたことには気づいていた。
そしてその少女の告白に自分の兄が何と答えたかも。いつものことだ、彼女には全てわかっている。
嫉妬もやきもちもなく、恵は穏やかな顔で優しく兄を見つめていた。
「啓一、佐藤君におかず分けてあげたら? すごく欲しそうにしてるじゃない」
「じゃあ仕方ないからこのワカメとほうれん草をやろう。感謝するように」
次の瞬間、友人の手が素早く伸びて啓一の卵焼きをかっさらっていった。
409:水野兄妹の平凡な一日(4/7) ◆cW8I9jdrzY
09/06/05 21:11:09 AaPEM4N9
放課後の帰り道、恵は啓一と肩を並べて二人きりで歩いている。
いつもは他の友達も一緒なのだが、今日はたまたま二人だけだ。
「啓一、ちょっと寄り道しない?」
「ん、いいぞ」
双子の片割れは彼女の提案にそう言ってうなずく。
基本的にこの双子は相手の望むようにして、反対することは滅多にない。
少し西に傾いた日に照らされて、恵と啓一は通学路を外れて細い路地を進んでいった。
歩幅は啓一の方が大きいため、どうしても彼女は少しだけ早足になってしまう。
「ねえ、啓一」
「どうした?」
横を向いて兄を見上げる妹を、啓一の黒い瞳が映し出している。
彼女の目から見ても、兄は凛々しくて優しい理想の男性だった。
先ほどのように告白されることも多いが彼は全て断っていた。それも彼女のためだ。
「……何でもない」
顔を正面に戻して恵はそうつぶやいた。
そんな妹の心など全てお見通しと言わんばかりに、啓一が彼女に笑いかける。
「今なら人いないから、ぎゅーっとしていいぞ」
「馬鹿……誰か来たらどうするのよ。家まで我慢するもん」
「あーあ、無理しちゃって。大丈夫だよ、ほら」
からかうような口調で言い、いきなり啓一は彼女の頬にキスをした。
幼い子供がするような無邪気な口づけと、してやったりの兄の笑顔。
完全な不意打ちに恵は思わず真っ赤になってしまった。
「け、啓一……」
頭から湯気を立てる妹を優しく抱き寄せる啓一。
今我慢すると言ったばかりだと言うのに、彼女は兄に力いっぱいもたれかかってしまった。
そうして二人がたどり着いたのは、住宅地の片隅にある小さなコンビニだった。
自動ドアをくぐり、兄妹は誰も客がいない店内に足を踏み入れる。
「んー……新刊出てないなあ……」
「あ、俺腹減ったから何か買ってくる。恵も食べないか?」
そう聞いてくる啓一に、恵は少し強い口調で言い返した。
「私はちゃんとカロリーをコントロールしてるの! 間食ダメ、絶対!」
「はいはい、わかりましたよ」
笑ってレジに向かう啓一から離れ、店内を適当にうろうろする。
さらさらの自分の黒髪を撫でながら、わずかな待ち時間を彼女は楽しんでいた。
410:水野兄妹の平凡な一日(5/7) ◆cW8I9jdrzY
09/06/05 21:11:55 AaPEM4N9
「おまたせ、んじゃ行くか」
「うん」
ありがとうございましたー、という店員の声を背中に、二人並んで店を出る。
一面の青い空が目に飛び込んできて、彼女は何とはなしにそれを見上げた。
(綺麗だけど、なんか、その……お腹減ってきちゃうな……)
そのとき、空腹を自覚してしまった妹に向かって啓一が手を差し出した。
「―ほい」
「あ……」
ほかほかの肉まん。その白い肌は西日を照り返し、黄色く染まって恵を誘惑してくる。
(―お、おいしそう……でも間食は……)
肉まんを見つめて唾を飲み込む妹を見て兄は笑っていた。
「どうした、食べないのか?」
「う、うう……」
「んじゃ俺がいただきまーす。はむっ」
「あっ!」
肉まんにかぶりつく啓一の姿に、彼女はつい声をあげてしまった。
彼は勝ち誇ったような顔で恵を見つめ、旨そうに口を動かしている。
「うん。あったかくてジューシー、そしてこのアクセントのカラシが最高」
「け、啓一の意地悪……」
「という訳で、ほれ?」
「…………」
目の前に突き出されたのは、啓一の食べかけの肉まんではなく新しいのだった。
妹の心の葛藤などお見通しらしく、ちゃんともう一個買ってきていたようだ。
さすがにこれには逆らえず、彼女はついつい手が伸びてしまう。
(―うぅ……私、啓一の思い通りになっちゃってる……)
伸ばした手をぴたりと止めて、悔しそうに双子の兄を見上げる恵。
「ほれほれ、どうしたどうした?」
「う、く……!」
歯を食いしばり、彼女は精一杯の抵抗をしてみせた。
このまま懐柔される訳にはいかない。乙女のプライドを総動員して意思を示す。
「い、いらない……」
「ふーん。意外に強情だな。じゃあ俺が両方とも―」
その言葉に、ついに心が折れた。
「じ、じゃあ……そっちの、食べかけのをちょうだい……」
まるまる一個と言わなかっただけマシだろうか。だが彼女はささやかな敗北感に打ちのめされていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
411:水野兄妹の平凡な一日(6/7) ◆cW8I9jdrzY
09/06/05 21:12:34 AaPEM4N9
その晩またも私は啓一の部屋に夜這いをしかけた。
なんかここ最近、啓一のペースばっかりで面白くない。私たちが対等だって
この辺で改めてちゃんと思い知らせておかないと、このまま彼のいいようにされてしまいそうだ。
近頃の啓一は妙に用心してるから、その隙をつくのも容易じゃない。
音もなくドアを開けると私は寝ている啓一のベッドに近寄り、そっと中をめくった。
啓一は仰向けでぐっすりと眠っているようで、こちらに無防備な寝顔を晒していた。
……う、この顔いいかも。後でキスしちゃおう。
そう思いながらパジャマの下を下着ごとずらし、啓一の性器を露にした。
本人と同様にぐったりしたあそこに軽く口づけして、愛情を込めて舌を這わせる。
袋を指でしごきつつ棒の先をチロチロ舐めていくと、ゆっくりそれは立ち上がっていった。
十七年間見慣れた、啓一のおチンチン。
どこを舐めれば感じるか、どういじれば気持ちいいか、私は全て知っている。
「ん、はぁ……」
荒い息を吐いて、私は勃起した男性器を熱っぽい眼差しで見つめた。
小さい頃、なんで啓一にだけ象さんがついてるのか不思議に思ってたっけ。
その象さんは、今や私の夜の生活にとって無くてはならないものになっている。
「う……」
すっかり硬くなったそれをくわえると、啓一がうめき声をあげた。
起きちゃったかな? と思ったが、幸い彼の意識は闇に沈んだままだった。
私の口は小さめで、啓一のコレをくわえるのも楽じゃない。
でも彼に言わせると、私がコレを一生懸命口に含んでるところがまた可愛いんだって。
そんなことを笑いながら言うから、私の怒りを買うんだけどね。
おチンチンをほおばり、私は兄に奉仕するように口内の亀頭を舌で優しく愛撫した。
―ちゅぱ、ちゅぱちゅぱ。
唾と先走りの汁が混ざっていやらしい音をたてる。
私は満足感と劣情に体を火照らせ、しつこく啓一の肉棒を舐め続けた。
「―う、あ……め、恵……?」
しまった、起きちゃったか。まあ仕方ない。
「はあ……お前、またか……? なんでそんなにスケベなんだよ……」
なんで私が怒られるのやら。しかも双子の妹、自分の分身をまるで痴女のようなこの言い方。
元はと言えば学校でも家でもセックスのときも、啓一が偉そうに兄貴面するからじゃない。
私も君も元々は一つ、何でも対等のはずなんだよ? 忘れちゃったの?
私は怒りを込めて彼を責めたててやった。
「く、やべ、出る―」
彼の陰茎がビクビク震えて発射準備を整える。
これを待っていた。私は急いでおチンチンから口を離し、両手で彼の棒をぎゅっと握り締めた。
「痛っ……! 恵、お前……」
「うふふ、寸止めされて苦しそうね。出したい? 出したい?」
啓一は苦しそうな顔で私をにらみつけている。なんかとってもいい気分。
「お前―やめろっ……!」
「ふふん♪ やーだよーだ」
おチンチンを握ったまま微笑んで、先っちょを軽くねぶりあげる。
啓一は悲鳴をあげて身をよじり、苦悶の視線を私に向けた。
「出したいなら大人しく私の言うこと聞いてよ。いい?」
「……うう、くそ……わ、わかった……」
悔しさをにじみ出し、降参して白旗をあげる啓一。ふん、いい顔よ。
私はそんな兄の上にゆっくりとのしかかり、既に濡れ濡れの私の中に彼のを導いていった。
412:水野兄妹の平凡な一日(7/7) ◆cW8I9jdrzY
09/06/05 21:13:14 AaPEM4N9
―じゅぷ……ぬぷぽっ……!
私の肉をかき分けて入ってくる太い肉棒の感触に、私は熱い息を吐いた。
「あはぁ……♪ いい、啓一? 今日は私より先にイキなさい」
「なん、だって……?」
「いつもいつも私ばっかりイカされてるから今日は仕返し。だから早く出してね」
「…………」
啓一は気にいらない顔だったが、射精寸前で止められたことと
彼を包み込む私の膣の絡みに理性を失ったのか、私が上になって腰を振ると激しく喘ぎ始めた。
「うあっ! く……ぐぅぅ……!」
「ほ、ほらぁ……啓一、いいでしょ……?」
いい気になって兄を責めたてる私だったが、見た目ほどの余裕がある訳ではない。
ガチガチになったおチンチンは容赦なく私を貫いてくるし、先ほどのフェラで
私が多少なりとも感じてしまっていたのも、この我慢比べには辛いところだった。
でも今回は負けるわけにはいかない。
私は両手で自分の口を押さえて、声をあげるのを必死で我慢しながら彼を苛んでいく。
ギシギシとベッドがきしみ、幾度となく繰り返されてきた私たちの交わりを見届けていた。
「ほら……早く、イっちゃい……なさい、啓一……!」
「うあぁ―く、くそ……!」
―じゅぷぷっ、くちゅっ! じゅぽっ !!
私の膣はエッチな音をたてて啓一を包み込み、彼の肉棒をしごいてやまない。
たしかに対抗心や悔しさが私たちの心にはあったけれど、
こうやって繋がったままで互いの顔を見ていると、とても懐かしい安心感を覚える。
興味本位から初めて本番をしたのは中学生になったばかりのときだっけ。あれは痛かった。
あのときは啓一だけ気持ちよくなって、私は痛さのあまり泣き喚くだけだった。
それから好奇心はどんどんエスカレートしていって、相手の体で何でも試した。
傷がついたり痛かったりするのはさすがにやらなかったけれど、おかげで経験だけは豊富になった。
でもそれが愛とか恋だったのかと聞かれると、多分違うと思う。
年頃になって芽生えた性欲を互いの体で発散させていただけ。
それがこうやって男女の仲、本当に愛し合うようになったのはほんの最近のことだ。
今の私は啓一が好きだし、啓一も私が大好きだ。
両親にも友達にもバレていないと思うけど、やっぱり近親相姦だから今でも少しドキドキする。
知らない人から告白されて断るのも申し訳ないと思う。
でも私は啓一がいないと生きられない。そしてそれは啓一も同じ。
心も体も同じで、性別だけが違う一組の双子の男女。それが私たちなんだ。
「ぐああっ……駄目だ、出るっ……!」
その声と共に啓一が弾け、私の中にどろどろの液体を注ぎこんだ。
―ビュルビュルビュル……ドクゥッ!
「ああぁ……♪ やった、啓一ぃ……!」
が、私の忍耐もそこまでだった。体の奥から熱いものがせり上がり、熱い衝動となってあふれ出す。
「―ああぁぁ……!」
私の意識も闇に飲まれ、その体が啓一の上に力なく横たわった。
ベッドの中で、私と啓一はくっついて寝転がっている。
もう深夜だ。また明日も寝不足になってしまいそうで、啓一は大変だろう。
そんな兄の胸を指でいじりながら、私は彼の名を呼んだ。
「啓一……」
「なんだよ。もう俺は怒ってないぞ?」
そんなことはわかっている。私の心は君の想い、君の心は私の想い。
私たちの間にわからないことなんてあるわけない。
「私、啓一の……何かな?」
「おいおい、なんで今さらそんなこと聞くんだ。わかってるくせに」
「そうだね、ふふふ……」
私は笑い返した。大事な片割れ、心の分身、もう一人の自分。
色々な言い方があるけれど、私たちの仲を一言で説明するのはどんな言葉でも不可能だろう。
「じゃ、おやすみ……」
腕を伸ばし、狭いベッドの中で私は啓一に抱きついた。向こうもいつものように私を抱き返してくる。
そんな当たり前のことに私は笑みを浮かべつつ、今夜も安らかな眠りについた。
413:名無しさん@ピンキー
09/06/05 22:18:01 Dk35T8g7
GJです。
キモ姉妹スレかと思った
414:名無しさん@ピンキー
09/06/05 23:32:26 jhLEa4ox
おもしろかったよ、GJ
415:名無しさん@ピンキー
09/06/05 23:36:07 1+rwuM/x
久々の投下だなぁ gj
416:名無しさん@ピンキー
09/06/06 02:42:27 QKgRDOZV
ここでの設定はまた違うのね GJ
417:名無しさん@ピンキー
09/06/06 06:44:36 BWRSvhEr
ああ、純愛で和むなあ。
や、あちらはあちらで好きですよ?
418:名無しさん@ピンキー
09/06/06 08:12:04 obXGp3a4
>>413
荒らし消えろ
419:名無しさん@ピンキー
09/06/06 13:27:04 RxK6oFVS
ぐっじょーぶ
いや、明記してないだけで多分このシリーズの設定ずっと同じだとおもふ
420:名無しさん@ピンキー
09/06/06 14:04:24 vQF11rSE
ん、これ連載もの?
421:名無しさん@ピンキー
09/06/06 15:17:57 a/f8MrwI
というほどでもない
422:名無しさん@ピンキー
09/06/07 00:53:47 GIIDjC6D
>>412
GJです。
>>420
専用スレの無いSSスレの『ふたりはひとつ』シリーズの続きのようなモノだと思います。
ツンデレスレにもスピンオフっぽい話がありますね。
すでに知ってたらスイマセン。
423:名無しさん@ピンキー
09/06/07 16:18:33 kSDbar4S
GJ
ツーカーというか、すごい通じあってる感じがいい
424:名無しさん@ピンキー
09/06/07 17:44:54 LVcBsZtr
( ̄ー ̄)ニヤリッ
URLリンク(www.movie-calendar.jp)
425:名無しさん@ピンキー
09/06/11 10:41:33 U7qX7slV
保守age
426:名無しさん@ピンキー
09/06/16 20:03:26 ZuYSP2iB
保守
427:名無しさん@ピンキー
09/06/20 12:38:14 nTf3wP+w
保守……
428:名無しさん@ピンキー
09/06/20 20:41:26 icZcrmn4
驚くほど投下がない
429:名無しさん@ピンキー
09/06/20 23:42:23 nTf3wP+w
425、426、427って全部俺なんだぜ……
帰って来てください職人(´;ω;`)
430:名無しさん@ピンキー
09/06/20 23:57:18 8P7Zd+ow
>>429
ノ
職人じゃなくて申し訳ないが俺もいるぜ