いもうと大好きスレッド! Part 5at EROPARO
いもうと大好きスレッド! Part 5 - 暇つぶし2ch250:名無しさん@ピンキー
09/04/16 01:21:08 oL47Um4/
>>248
これ何%くらい書き終えてる?
大作な予感がするけど、途中で打ち切られそうな予感もする……。

251:名無しさん@ピンキー
09/04/16 02:13:00 Y/6Hxf25
普通にGJです
マイペースで完結目指したってくださいな^^

252:名無しさん@ピンキー
09/04/16 07:04:15 9oi98s9t
なんか凄いワクワク感が。

253:名無しさん@ピンキー
09/04/16 10:55:51 3nbSvn94
歯ブラシ
まで読んだ

254:名無しさん@ピンキー
09/04/17 21:48:30 eZUZ1f3D
レス下さった方、ありがとうございます。

>>249
ライトノベルは読んだことがないので、わかりません。
持っている友人がいるのでいくつか読んでみたいと思います。

>>250
数字化するほど、どれくらいとはわかりません。
ただまだ序盤というのは間違いないです…。
一応、大まかな話の流れは決めているので、
うまく話の流れやフラグを回収できるよう頑張ります。

>>251>>252
初GJ頂きました! ありがとうございますm(__)m


後タイトル決めてなかったので、つけてみました。
>>247の続きです。

255:いつか見た夢
09/04/17 21:50:46 eZUZ1f3D

そこにいたのは理知的な雰囲気と、たおやかさを秘めたような少女だった。
「何してるの?」
「あー……」
参ったな……どう答えるべきか……。
そもそも技術棟は、放課後は用事もなしに立ち入ってはいけないところなのだ。
しどろもどろしていると余計に怪しまれる。
ここは開き直って正直に言うのも手だ。
「まぁ何と言うか……ただの好奇心だ」
「……そう」
少女がふっとした表情を和らげたのに疑問が浮かんだが、すぐに氷解した。
この少女も恐らく、同じような理由で来たのだろう。
「あんたもそうなのか?」
「ええ。あなた、いつもここに?」
「いや、今日初めてきた。こんなに静かな場所があるなんて知らなかった」
「そう。なら屋上には行ってないのね」
「屋上? ここの扉、錠があるぞ?」
俺がそう告げると、少女は唇の端をわずかに上げた。
「……あなたはここに来た初めてのお客さんだからね……屋上行ってみたいでしょ?」
「行けるのか?」
壁に隠れて分からなかったが、少女の手には鍵の束が握られていた。
「……なるほどな」
俺は苦笑した。彼女はこの扉の番人というわけだ。
「行く?」
もちろん、と短く答えた。

少女によって開かれた扉の先は、とても学校にいるとは思えなかった。
ゲームで例えれば、今からここで何らかのイベントでもありそうな雰囲気だ。
「おぉ、やっぱ外に出ると空が近くに感じるな」
「ふふふ、大袈裟ね。まぁ開放感があるのは確かだけどね」
「ここならいい昼寝ができそうだぞ」
「うん、できるわよ?」
やってんのかよ……。
「ところで……あんたの名前は?」
「こういう時って男の人から名乗るものなんじゃないの?」
人を喰ったような性格してるな、こいつ……。
「悪かった、それもそうだな。俺は九鬼だ」
「え?」
「どうした?」
「いいえ……あなたがあの九鬼君かと思って」
「知ってるのか?」
「ええ、ちょっとした有名人だからね」
有名人? この俺が?
特別何かやらかした覚えは………そこまで考えて思い付いた。
もしや――
「毎朝、可愛い女の子と手を繋ぎながら歩いてるらしいじゃない?」
やっぱりそれか………。
「別に一緒に歩きたくて歩いてるわけじゃない」
「そうなの? でも結構お似合いのカップルだって聞いてるわ」
「あいつは妹だ」
俺はぶっきらぼうに答えた。



256:いつか見た夢
09/04/17 21:52:40 eZUZ1f3D

「仲の良い兄妹じゃない」
からからと笑う目の前の少女に、最初に抱いたイメージはもうない。
この女は、ああ言えばこう言う……女狐タイプか。
「………」
「あら、もしかして怒った?」
「別に」
そっぽを向いてしまう。
ちっ……これでは肯定しているみたいではないか。
「九鬼君って、見た目より子供ね」
「……」
こういう女は苦手だ……。
「大体あんた、その話誰から聞いたんだ?」
「別に誰というわけじゃないわよ。あなたが使ってる駅を使ってる友達くらいいるもの」
「……なるほど」
俺は穴があれば今すぐにでも入りたい気分になった。
そんな俺の様子を見て、この女はまたからからと笑った。
全く……最初はちょっと良いと思ったが、とんだひねくれ女だ。

「もういい。俺は行くぞ」
「あらもういいの? 折角こうしてここに来たのに」
「元々ただの暇つぶしに来ただけだからな」
「そう。だったらまた暇な時においでよ。開けたげるから」
「いつになるか分からないのにか?」
「その時はその時よ。そうそう、まだ名前名乗ってなかったわね。私、真紀。――藤原真紀」
これが俺と真紀との出会いだった。



校舎から出て、部活連中が励んでいる校庭を足早に突っ切る。
校門のところにちょっとした人垣ができていた。
その中心に妹である沙弥佳がいた。
あいつはその容姿のおかげで、一人でいると必ず男どもに声をかけられる。
俺が沙弥佳に気付くと同時に、向こうも俺に気付いたようだった。
「あ! お兄ちゃーん!」
沙弥佳が人垣をすり抜けて俺のところまでやってくる。
「わざわざ高校まで来たのか」
「うん! それにその方が時間短縮できるから」
「駅で待ち合わせするつもりだったんなら、ここまで来る方が効率悪いだろ……」
だから時間つぶしてたってのに……。
「はぁ……で、あの連中はどうするんだ?」
親指で、校門の前に壁を作っている連中を指す。
「どうもしないよ??」
「……ま、別におまえのせいじゃぁないしな」
こいつからしたら、ただ校門で待ってただけだからな。
だが、俺からしたらそうもいかない。
男達が、俺を睨むような嫉むような視線を向けてきているからだ。
ま、いつものごとくちょいと睨みをきかせれば大丈夫だろう。
ナンパ師ってのは、大体の奴がたいしたことのない奴らばかりだからだ。



257:いつか見た夢
09/04/17 21:55:05 eZUZ1f3D


「で……朝言ってたコってのが……?」
俺の前に立っている女の子に視線をやった。
「うん、そうなの」
「ふむ」
今俺達は、電車で一駅のところにある喫茶店にいる。
その駅の改札を出たところで、沙弥佳の友達という女の子が待っていた。
「とりあえず紹介するね。同じクラスのあやちゃんだよ」
「ぁ……う……えと、さやちゃんの友達で、渡邉綾子(わたなべ あやこ)です……」
「大丈夫だよ、あやちゃん。こう見えてお兄ちゃん頼りになるから」
「おい、こう見えてってどういう意味だ。……で綾子ちゃん? あ、これから綾子ちゃんって呼ばせてもらうぞ」
「あ、はい……」
「わざわざ俺をここに連れてきた理由っての聞かせてくれ」
「……はぃ」
一言答えるたびに消え入るような小声になっていく。
さっき会った藤原真紀とかいう女と違って、ずいぶんと引っ込み思案な女の子のようだ。
「それは私から言うよ」
沙弥佳は綾子ちゃんの取り巻く状況を、話し始めた。

「実はあやちゃんね、今……ストーカーされてるの」
「ストーカー?」
思わず綾子の方を見る。
それに気付いた綾子は、そっと頷いた。
「そうなの……初めはね、ただなんとなく視線を感じるくらいだったらしいの」
「……」
「そのうち、だんだん身の回りのものがなくなりはじめて……」
沙弥佳の話を聞きながら、綾子ちゃんを見ている。
なるほど。よくよく見ると沙弥佳程ではないが、なかなかに可愛らしい顔立ちをしている。
もし今のように暗い表情ではなく、明るい表情で笑っているところを見たら、思わず惚れてしまいそうだ。
「それからはなるべく一人でいないようにしたり、なるべく私物も持ち帰るようにしてたみたいなんたけど」
「効果なし、か?」
二人して頷いた。
「それで私達に相談したみたいなのね。私達も、それを知ったクラスの男子達も助けてくれるようになって……」
「ストーカーも止んだのか」
「……のはずだったんだけど……」
沙弥佳の表情も沈んだ。
「今度はね、お家の方で色々起こるようになったみたいなの。その……し、下着までなくなったりとか
変な物まで送られてくるようになったりとか、最近は電話まで掛かってくるようになったみたいで……」
沙弥佳は、そこで一旦話を区切って目の前にある紅茶を一口飲んだ。
綾子ちゃんは、黙ったまま俯いている。
俺もコーヒーに口をつけた。



258:いつか見た夢
09/04/17 21:58:42 eZUZ1f3D

一息ついた沙弥佳は、再び口を開いた。
「……そこまではね、そこまではまだ良かったの……ごめん、良くはないよね……」
沙弥佳が綾子ちゃんの方に向かって謝る。
「ううん、大丈夫だから……」
綾子ちゃんは力無く笑う表情を見せるが、引き攣ってあまり笑えていなかった。
「その……周りのね、人達にまで……被害が出るようになったんだ……」
「……そいつは、さすがに酷いな」
「最初のうちは皆大丈夫大丈夫って言ってたんだけど……」
「大丈夫じゃなくなった?」
沙弥佳も何かを思い出したのだろう、その先は何も言わなかった。
「皆も気味悪がって、だんだんあやちゃんから離れていって………」
なるほど。 クラスの団結すらも崩壊させるとはなかなかやるな、そのストーカーも。
「今じゃ誰も周りにいなくなったってわけか……」
「うん………」
「……しかしそのストーカー野郎もかなり狡猾な奴だな。聞く限りじゃ俺にじゃなくて、
警察にいった方が良いんじゃないか? こっちだけで手におえるような奴じゃない気がするが」
そこまで言って、沙弥佳の態度が急変した。

「行ったわよ! 行ったに決まってるじゃない!!」
突然両手でテーブルを叩き、大声で席を立つ。
その勢いそのままに、俺に向かって怒りの表情を見せた。
「何度も行ったのに、皆口揃えて『大丈夫だよ』とか『気のせいじゃない?』ばっかり!! 大丈夫じゃないから行ってるのに!!」
沙弥佳の突然の変貌ぶりに、俺も綾子ちゃんも目を見開いて驚いた。
店内の客や店員が、何ごとかと訝しみながらこちらをみてきた。
「さ、さやちゃん、落ち着いて……」
綾子ちゃんが沙弥佳をなだめる。
沙弥佳は、自分が店内の注目を浴びていることに気付き、顔を真っ赤にして座ると、
紅茶を飲んだ。
「ま、まぁとにかくだ。 綾子ちゃんは今まで通りに学校以外でもあまり一人にならない方がいいな」
月並みなことしか言えない自分がにくい。
「あ、あのそれでねお兄ちゃん、そこで相談なんだけど……」
沙弥佳は意を決したような顔をして
「しばらくの間、うちにあやちゃん泊めてあげたいなって思って………」
「………は?」
「だからあやちゃんをうちに泊めたいの」
こいつは何をいきなり……。
「さ、さやちゃん、やっぱりいいよ……泊まったらさやちゃん達に迷惑かかっちゃうよ……」
「あやちゃんはちょっと黙ってて」
「あ……ぅ……ごめん」
それきり綾子ちゃんは黙ってしまった。
「……つまり、俺も手ごめにして親父達を説得しろってか?」
「さすがお兄ちゃん。頭いい~♪」
「………はっきり言って俺に説得できるとは思えんが……」
「お願い! もうお兄ちゃんしか頼る人いないの!」
沙弥佳が頭を下げる。
……こいつがこうして俺に頭を下げる時は、にっちもさっちもいかなくなった時だけだ。
「………はぁ。まぁ……俺もそんな話聞かされちゃあどうにかしてやりたいって思うしな……」
「じゃあお兄ちゃん……?」
「言っておくが、あまり期待はするなよ?」
その言葉に綾子ちゃんも少し明るい表情をしたような気がした。
「うん! ありがとうお兄ちゃん!」
だからな妹よ……そんな顔は反則だぜ?



259:いつか見た夢
09/04/17 22:00:38 eZUZ1f3D

「あ、あの」
「ん? なんだ?」
「さやちゃんのお兄さんは―」
「ああ、すまん。九鬼でいい」
「あ……はい。九鬼……さんはそれでいいんですか?」
「いいも何も、ここまで聞いて放っておけるほど、薄情じゃぁないつもりだぞ」
「うんうん! お兄ちゃんはそう言うとこがカッコイイんだよ~♪」
沙弥佳は無視だ。
「それに……手がないわけでもないしな」


店を出て、家に向かう。
「お兄ちゃん、これからどうするの?」
「家に帰る」
「え? ……ちょ、ちょっといきなり過ぎない?」
沙弥佳も、まさかいきなりうちに行くことになるとは思わなかったようだ。
「早い方がいいだろ?」
「う、うん。そうだけど……」
「期待はするなとは言ったが、勝算が全くないわけじゃない」
「そう、なの……?」
「ああ。今日は幸いにして、父さんの帰りが遅い。つまり今敵は一人しかいない」
「敵って……」
沙弥佳が思わず苦笑する。
「ようするに、お前がやったのと同じ手を使うということだな」
「なっ……! 私そんな打算してないもん!!」
こいつが口調が鋭くせずに怒るときは、図星だった時だ。
「クックッ……隠さなくていいさ。これでも15年もお前の兄貴やってるんだぜ?」
ニヤリと口元を歪ませる。
「むー……」
沙弥佳は頬を膨らませ、唇を尖らせる。
そんな二人を見ていた綾子ちゃんは、ようやく緊張が解れたのあろう、
あはは、と笑ってみせた。

さて、俺のとった作戦とは単純に、情に訴えた泣き落とし作戦だ。
もちろん本当に泣くわけではないが。
妹は別にして、だがな。
今回ターゲットになる母は、いつも強気に振る舞っているだけに、情に弱い部分があるのだ。
まずは母を陥落させ、その状態で父の説得に挑もうというものだ。
父はドンと構えてはいるが、その実、母には滅法弱いということは隠していたって分かっている。
だから、母を落とせば恐らくは父も落とせるはず……と俺は踏んだのだ。



260:いつか見た夢
09/04/17 22:03:30 eZUZ1f3D


当の妹達は、最初は喜び勇んでいたものの、家が近づくたび口数が減っていった。
俺は沙弥佳の手を握り、
「大丈夫だ」
とだけ言った。



時は5時半を少し回ったところだ。
今現在、九鬼家の門の前にいる。
「さて、沙弥佳にはもう一度お母さんに情で訴えてもらって、それを俺がフォローする」
「うん……」
「そんなに気負うな。お前の声ってさ、不思議と心に響くとでも言うのか……なんか人をその気にさせちまうんだよ」
「うん……」
「だから、さっきみたいにやりゃぁきっとうまくいくと思うんだ。大丈夫だ、お前ならうまくいくさ」
沙弥佳の目を見て、言葉を放った。
「う、うん……私、頑張る!」
「よし! その意気だ!」
「ごめんね……さやちゃん」
「いいっていいって! 元はと言えば私のお節介ってのもあるんだから」
沙弥佳は深呼吸を数度繰り返し
「良し、行こう」
と言った。



「いや~意外となんとかなるもんだね~」
沙弥佳は先の戦いを終え、軽快に言い放つ。
「本当にありがとうね、さやちゃん……」
綾子ちゃんは感極まって、涙目になっていた。
「気にしない気にしない! それに……」
チラリと俺の方を視線を向けた。
「お兄ちゃん……ありがとう」
「私からもお礼を……本当にありがとうございます」
二人揃って礼を言う。
綾子ちゃんに至っては、土下座までする始末だ。
「おいおい、綾子ちゃん、そいつはやり過ぎだ。俺はたいしたことはしてないぞ」
そうたいしたことは何もしていない。
結局、妹の情に訴えた抗議とも非難ともとれる泣き落としは成功した。
俺はただ、こういう時こそ、いつも言う無償なき愛ってのを差し延べるべきなんじゃないかと言っただけ。
ただ、それが決定打になったのかもしれない。
母である遥子は、敬謙とまでは言わないが、一応クリスチャンなのだ。
「とりあえず、今から家に戻って着替えとか必要最低限のものは持ってきた方がいい」
俺の言葉に二人は頷いた。

「さて、それじゃぁ君の家に行くとしようか」
「え? お兄ちゃんも行くの?」
「そりゃぁ行かざるをえないだろ。女の子だけじゃな」
「そうだけど……」
「なんだ、不満なのか?」
「そ、そんなんじゃ………」
「だったらいいだろ。それに量があれば荷物持ちになるし、いざって時のボディガードにもなる」
沙弥佳は、たまに変なとこで妙に渋る。
それだけは未だ良く分からん。
「それに……まぁこれは明日以降になるだろうけど、ちょいと確かめたいこともあるしな」
俺の言葉に、二人は頭にクエスチョンマークを浮かばせた。




261:名無しさん@ピンキー
09/04/17 22:06:50 eZUZ1f3D
第3回投下終了です。

これからも頑張って投下していくつもりなので
よろしくお願いしますm(__)m


262:名無しさん@ピンキー
09/04/18 01:45:51 5rjO+5Xm
ぐっじょぶ
うるおうわぁ

263:名無しさん@ピンキー
09/04/18 02:17:26 kvuLAkvr
じーじぇ。相変わらず続きが気になる展開だな。

けど、全レス返しは止めといた方が良いかも。気にする人は気にするし。

264:名無しさん@ピンキー
09/04/18 09:15:46 AZmEpqPO
>>261
なんてこった。長編が始まってるし続いてるし面白い。いい仕事。いわゆるGJ。
そぼろでGJと書いた弁当を進呈せざるをえない。

265:名無しさん@ピンキー
09/04/19 16:18:30 zMz3R+Bt
レスして下さった片、ありがとうございます。

個別レスは、あまりよろしくないということなので、
これからは控えさせていただきます。

後そぼろGJは吹きましたwww


では、>>260からの続きです

266:いつか見た夢
09/04/19 16:20:27 zMz3R+Bt

「そうだ。綾子ちゃん」
「はい」
「一応念のために君の番号教えてくれ」
「あ、はい」
綾子ちゃんは、バックから携帯を取り出し、俺の携帯と番号をやりとりする。
沙弥佳はなぜか、終始それを不機嫌そうな顔で見ていた。
何を考えているんだ、お前は。

綾子ちゃんのうちに行くまでの間、沙弥佳を交え、他愛もない話しをした。
家族構成や、互いの誕生日、学校での出来事、沙弥佳との出会い等々。
それこそ些細なことまでだ。

しかし、侮ることなかれ。
こう言った話は、相手との距離を埋めるためには必要だし、こう言った何気ない話の中にこそ、
相手の本質の一部を垣間見ることだってあるのだ。
そして、今回のストーカー野郎の情報も何かしら得られる可能性もある。

ただその間も、なぜだか沙弥佳はどことなくぎこちなかった。

「ここです」
綾子ちゃんの家に到着して、思わず感嘆のため息を漏らした。
「うちの二倍……いや、三倍はあるんじゃないか……?」
「あ、あやちゃんち初めて来るけど、こんなに大きかったんだ……」
沙弥佳も驚いて、ぽかんと口を開けている。
言っておくが、うちだってそれなりに良いとこに住んでる。
だが、この家は俺達はやはり小市民であることを思い知らされる。
しかも庭が広い。 それも半端なく………。
テニスとバスケが同時にできる、と言えば想像してもらえるだろうか。

しかも、ここは一等地なのだ。
不況不況とは言われていても、あるとこにゃぁあるもんだな……。

「で、でだ……確認するが、両親は今いないんだな?」
「はい」
綾子ちゃんは短く返事する。
「お手伝いさんも今の時間はいません」
「そいつはいい。説明の手間も省けるしな」
「ね、早く行きましょうよ」
「あ、うん」

俺達は綾子ちゃんの家にお邪魔する。
家に入るなり綾子ちゃんが一人、部屋に向かって行くので、沙弥佳も一緒に行かせた。
いくらこんな時でも、女の子の部屋においそれと入って行くのは気が引けたからだ。
とは言え、後で入らねばならぬのだが。



267:いつか見た夢
09/04/19 16:23:26 zMz3R+Bt

二人が二階の部屋に行ったのを見送って、俺は行動を開始した。
まずは玄関横の部屋からだ。
そう、隠しカメラや盗聴器の有無を確認するためだ。
盗聴器は専門の道具がないので、一丁一石とはいかないが、カメラなら見つけられるかもしれない。

人様のうちを我が物顔で、あれこれ物色するのはいい気持ちがしないが仕方ない。
最近のストーカーは最悪の場合、カメラを仕掛けていないとも言い切れないからだ。

手早く部屋の中を探索する。
次に隣の部屋を、そして一番きな臭い居間を通り抜け、その反対側にある和室へ。
更に、和室を廊下で挟んだ使われていない部屋は、物らしい物は置かれていなかった。
一部屋一部屋は広いが、その割に物が少ないように思われた。
お嬢様と言えど、人の子。
使うスペース等、限られているのだろう。
さて、次はいよいよ居間だ。

ところで、隠しカメラ等といった物の設置場所は、どういう所にするか分かるだろうか。
当然人目のつかない所だ。
だが、狡猾な奴はそうはしない。
敢えて、人目のつく場所の近くに置く。
よく人が使う場所、その中にも"目につくからこそ"できてしまうスペースがある。
目につくような場所なら、ある訳無いという心理をついている来るのだ。


また、普段目にしないような所。
これは、人目のつかない所と同義だが、隠し場所は実に巧妙になっている。
人は物を探す時、基本的に自分の目線以上場所や、手の届かない場所には滅多と目を向けない。
これも人間心理をついた設置場所だ。

今回は、時間も限られているため、あまり悠長に探していられない。
だから俺は、この点にだけ絞って探している。
それに俺は、周りの人間を被害に遭わして、人間関係を破壊してしまうような狡猾な奴は、
こう言った人間心理だって当然ついていると踏んだのだ。

なぜ詳しいかって?
そりゃぁ、そういうヤバイ趣味した知り合いがいるからに決まっている。
断じて俺は経験者等ではない。
後は、相手の立場になって考えること。
これは俺の経験上、全てに当て嵌まって言えることだと思う……いや全ては言い過ぎた。

「家の中で一番怪しい場所の一つだしな……どこからいくか」
まずはスタンダードにテーブル。下を覗いてみる。
「無いか……」
次にテレビ、冷蔵庫の上、壁掛け式の時計、そして鏡。
隠せそうな場所は、思いつく限り探すがなかった。
「やっぱりカメラは考えすぎたか………?」
その時俺は、ふと天井を見上げた。
「………ん?」
何気なしに見上げた天井に、違和感を感じた。
正確には、偶然目に入った天井から吊り下げられた照明の接合部だ。



268:いつか見た夢
09/04/19 16:25:10 zMz3R+Bt
今までの部屋の照明は、据え付けられた円盤状のものだった。
しかし、この居間の照明だけはかなり丁重な作りで、天井から吊り下げ式になっていた。
恐らく本当は、別の照明が取り付けられていたのだと思われた。
天井から延びる長さと、テーブルとの距離が、照明の明るさに対して下過ぎるからだ。
以前どんな照明が取り付けられていたかは分からないが、取り替えたのは正解だろう。
この居間の雰囲気に、シンプルだが豪華さを感じるこの照明は、良く合っていた。
だからこそ、気がつかなかったと言っていい。
何より家族で住むなら、居間にはもっとも金をかける。
けれど、こうした違和感というのは、そうそう拭い切れるものではない。

「じゃぁ……悪いが調べさせてもらいますよ」
誰にとも知れず、一人呟いた。

テーブルに上って、接合部に手を伸ばし、照明を外す。
かなり重い。
一瞬、照明を落としそうになって、バランスを崩した。
「やっぱりな」
俺は思わず口元をニヤリとさせた。
接合部には、高性能の小型カメラが取り付けられていた。
確かにここなら、電気の心配いらずで24時間監視することができる。
これじゃぁ視線も感じるはずだ。
となると当然………
俺は居間から移動し、一階にあるトイレに向かう。
「………当たり前のように取り付けられていたな」
やはりトイレにもあった。
それも二カ所もだ。
……綾子ちゃんの名誉のためにも、これ以上は言わない。
察してくれ。

ちょうどトイレから出てきた時、沙弥佳と綾子ちゃんが二階から荷物を持って下りて来た。
「お兄ちゃん、何してるの?」
「ん……まぁ、ちょいと宝探しをな」
「宝探し、ですか?」
「え? え? 何々?? 何が見つかったの??」
とっさに俺はなんと言ったらいいのか分からず、苦笑いしながら肩をすくめた。


「とりあえず、こっちが確認したかったことは終わった。そっちはいいのか?」
「うん。生活用品なんかはうちの使えばいいしね」
「それじゃ、戻るとするか」
俺達は、綾子ちゃんの家を出て、自宅へ戻ることにする。
しかし、門を出た時――俺はやたら強い視線を感じて、思わず周りを見回した。
「どうしたの?」
沙弥佳が不思議そうな顔で、尋ねてくる。
「い、いや、なんでもない」
行こう、とだけ告げて、俺達は歩きだした。
俺は帰路の途中、先ほどの視線のことを考えていた。



269:いつか見た夢
09/04/19 16:26:16 zMz3R+Bt

「「いただきます」」
家に帰り着くと、ちょうど夕飯の用意ができたらしく、久しぶりに父なしの夕飯とあいなった。
母と沙弥佳は、綾子ちゃんと話を弾ませている。
なんだかんだで、母もまんざらではない様子だ。
まぁ、そこは間違いなく母の長所ではあるが。
綾子ちゃんは、普段いつも一人で夕飯を食べていると言っていたので、
こうして皆でテーブルを囲むというのが、すごく嬉しそうだ。
おまけに家は、うちよりもはるかに広いのだ、当然と言えば当然なのかもしれない。

けれど、俺はその会話に加わらず、先程の視線のことをまだ考えていた。
恐らくさっきのは、例のストーカー野郎だろう。
十中八九、自分の愛する綾子ちゃんに近づいた俺を、目の敵にしたのだ。
もしかしたら、明日にでも何か仕掛けてこないとも言い切れない。
奴はこちらを知った。 これはほぼ間違いないだろう。
だが、こっちは奴の顔や名前、素性等知りはしないのだから。
こちらからも早々に手を打つ必要がある。

俺は食事をとりながら、今後のことについて作戦を練り始めた。


食後、沙弥佳はいつになくテンションが高く、綾子ちゃんも夕方に初めて会った時とは、
別人かと思えるほどよく笑い、よく喋った。
いや、こっちが本当の綾子ちゃんなのかもしれない。
なんにせよ、俺にたいしても、随分と心を開いてくれていると受け取った。
これなら気楽に父も説得できそうだ。


日付が変わるか変わらないかという時分に、父は帰ってきた。
最初、居間にいた綾子ちゃんを見て、やや驚いた表情をしてみせた後、
沙弥佳がすぐに説明しだした。
そして、母がそれを更に強調付け、とんとん拍子に承諾されたのだ。

正直、俺は一言だって喋っていない。
こういう時、女同士による団結というのは、何故こうも有無を言わせぬ迫力があるのか。
だが父は、終始冷静に対処していたように思える。
父の姿に、ある種の後光が指しているようにすら、俺には見えた。
ともあれ、こうして綾子ちゃんはしばらくの間、うちに厄介になることが決まった。

いつもなら俺の後、風呂に入る沙弥佳だが、今日は綾子ちゃんと共に、俺の前に入った。

風呂と言えば、奇妙なことが一つある。
何故か、俺の下着がたまに失くなるのだ。
一度両親に聞いて「そんなの知らない」で一蹴されたのは、記憶に新しい。
これはミステリーだ。
家族という最も小さなコミュニティーにおいて、これをミステリーと言わずして何といおう。
それとも誰かが盗んだとでも言うのだろうか?
そもそも下着を盗むなんて、男であれ女であれ、とんだ変態だ。
ましてや男ものの下着だ。
もしそうであれば、見つけたら取っ捕まえて、懲らしめてやることに決めた。



270:いつか見た夢
09/04/19 16:27:33 zMz3R+Bt

沙弥佳たちが風呂から上がってきたのを見計らい、俺も風呂に入った。
「………」
美少女と言っていい二人が入った直後の風呂は、なぜかとても甘美な香りがした。


一夜明けた早朝、俺はいつもと違い、やたらと体が重いことに気が付き目を醒ました。

寝ぼけた頭で体ごと横に向けると、沙弥佳が隣で寝ていた。
なんでいんだ……。
「………おい、沙弥佳。おい起きろ」
沙弥佳に声をかける。
「んう~……もうちょっと……」
何がもうちょっとだ、俺はちょっとだって待ちたくはない。
「おい沙弥佳、さっさと起きろ!」
昨日とは打って変わって、俺が沙弥佳の体を揺すって起こす。
「んぁ……?」
一緒に寝なくなってから、こんな顔は初めて見るがなんとも情けなく思えるのはどうしてか。
というか、俺がこいつのこんな顔を見るのなんて、いつぶりだろうか。
俺がそんなことを考えているうちに、沙弥佳はまた寝始めた。
「だから寝るなって! いい加減起きろ!」
何が悲しくて、起きぬけに声を荒げねばならんのだ。
「うぅん……ふぁぁ……ぉはよぅ、ぉ兄ちゃん」
「おはよう。そしてさっさと自分の部屋に戻りなさい」
「寒いからいや~……ぉやすみ……痛っ!」
ちょっと本気で叩いてやった。
「お兄ちゃん、痛いよ~………何も叩かなくったって~……」
「おかげで目が醒めたろ?」
「それはそうだけどぉ……」
「大体なんでお前がここにいる」
「あれ~? なんでだろ~?」
寝ぼけて入ってきたのか……。
俺は朝っぱらからため息一つつき、
「とりあえず部屋に戻れ」
「一緒じゃダメ……?」
「ダメ」
即答した。

沙弥佳は不満げに部屋を出て行った。
時計の針が、盤上をちょうど半分に分けていた。
二度寝しようと思えばできなくもない時間だ。
「ま、どうせ沙弥佳が起こしにくるだろ」
思いきり他力本願だが、あいつは俺を起こしにくることを至上としているから、問題ない。
決めた後は、布団の中でくるまって、あの心地良さに包まれたい。
再び布団に寝転がった俺は、慌てて布団をめくりあげた。
寝転がった瞬間、足の方が何やら冷たかったからだ。
「なんだこれ?」
オネショ? 馬鹿な。 有り得ない。
第一、臭いもしないし水量も少ない。
ならば何なのだ、これは………。



271:いつか見た夢
09/04/19 16:29:22 zMz3R+Bt

俺の足の部分に当たる場所が、なぜか不自然に濡れていたのだ。
更に今気付いたことだが、右足のふともも部分のパジャマも、不自然に湿っていた。
な、何なんだ一体………?
下着のことといい、最近はやたらと変なことばかり起こるような気がする。
「にしても……これ、一体どうなってんだよ」
俺は完全に目が覚めてしまい、二度寝する気が失せてしまった。


眠気が失せた俺は、仕方なく制服に着替え、珍しく朝一番でリビングへ下りた。
こうして朝早くに誰もいないリビングにいると、気持ちが浮ついてしまうのは何故だろう。
眠気はないが、習慣というものでコーヒーを飲むために豆を挽く。
うちはコーヒーは豆から挽いてドリップさせる。

「あら、おはよう。こんな珍しいことが二日も続けて起こるなんて」
コーヒーが出来上がるのを待っていると、母が起きてきた。
「ん、おはよ。今日は本当に早く目が覚めたんだ」
「いつもこれくらいだったらお母さん、我が子の成長を見てるような気がして嬉しいわ~」
「沙弥佳の仕事をとるのは忍びないな」
「お兄ちゃんなんだから、いつまでも妹に甘えてないのよ、もう」
「はいはい」
「はいは一回よ。あ、新聞とってきて」
「はいよ」
リビングを出たところで父も起きてきた。
「おはよう。珍しく沙弥佳よりも早いんじゃないか?」
「おはよう。一年に一度あるかないかのレアな日なんだよ」

夫婦揃ってこうも立て続けに突っ込まれると、なぜか照れ臭い気持ちになってしまった。

俺は玄関を出て、新聞を取りに外へ出た。
新聞を取って家に戻ろうとしたその瞬間――視線を感じた。
………まさか――
俺は昨日のように、後ろを振り返り周囲を見回した。
俺が後ろを振り向くと、それまで感じた視線を感じなくなった。
………今の感じは………間違いない、昨日と同じだ。
この粘つくような、こびりつくような、なんとも言えない嫌な視線。
まさかもううちを突き止めたのか……?
いや、充分有り得ることではないのか?
このストーカー野郎は、昨日あの後も俺達の後を着いて来たのだ。
ただ、その気配を感じさせなかっただけで……。
「ちっ」
俺は舌打ちした。せざるを得なかった。きっとそうなのだ。
野郎は間違いなく俺達の後を尾行し、うちを突き止めた。
俺はうかつにも、その間、ひたすらこれから先のことばかり考えていて、
まさか尾行のことまでは考えもしなかったのだ。



272:いつか見た夢
09/04/19 16:32:57 zMz3R+Bt

「ちょっとお兄ちゃん!」
突然ドタドタとすごい勢いで、沙弥佳が二階から下りてきた。
「もう何勝手に起きてるの!? ベッドにいなかったから心配しちゃったじゃない!!」
いかん、口調が鋭い。かなり頭に来てるようだ。
「お兄ちゃんは私が起こすまで、ちゃんと寝てなきゃダメでしょ!?」
「いやさ、あのあと寝れなかったからな……それで、ちょいと早起」
「言い訳なんてしないで!! いい!? お兄ちゃんを起こすのは私の仕事なの!!
だからお兄ちゃんは私が起こしに来るまで部屋から出ちゃダメなんだから!!!」
俺にはみなまで言わすつもりはないらしい。
全く、こいつは朝っぱらから元気な奴だ……。
つい20分か30分くらい前は、あんなに眠そうな顔していた癖に。
「何よ!?」
「い、いや、なんでもないぞ?」
毎度のことだが、なんでお前はこんな時だけ俺の心が読めるんだ……。

「それで? お兄ちゃんはなんでそんな所にいるの?」
妹は、普段が可愛いだけに怒り心頭の時、本当に怖い。
そして後ろには、綾子ちゃんの姿もあった。
「た、単純に新聞とりに来ただけだぜ?」
俺は、家に入り玄関の扉を閉めた。
そんな俺の様子に、二人は怪訝な目をしながらリビングへ移動していった。
お父さん、お母さん。あなたたちの娘の方が、俺のことよりももっとちゃんとさせた方がいいと愚息は思うぜ。

「なぁ、今日ちょっと早く出ねえか?」
朝食の後、俺は沙弥佳と綾子ちゃんに問いかけた。
「なんだ? お前がそんなこと言い出すなんてどうしたんだ」
父が珍しく、いち早く口を開いた。
「んー……ちょっと、な」
俺はいい淀んだ。
まさか例のストーカー野郎が、昨日の今日でうちを突き止めているなんて、
とてもじゃぁないが言えるはずもない。
カメラのことも伏せてあったし、何より視線を感じただけで、証拠は何もない。

沙弥佳は、無意識に何かを感じ取ったのか、
「私はいいけど………」
と答えたのち、目で綾子ちゃんは?と合図する。
「私も構いません」
「よし。ならそろそろ準備するか」
「あ、あのお兄ちゃんが、自発的に学校に行きたがるなんて……」
「……明日は雨かしらね。予報じゃ晴れと言っていたけれど」
そこの親子二人は黙ってろ。
前言撤回。
やっぱり何も感じ取ってくれていなかった。
妹よ………いつも口をすっぱくして言っているがな、察してくれ。
ただ、父だけは
「あまり無茶はするなよ」
と、こっちの心中を察してくれたようだった。
いつもこういう時、お父さんはすごくカッコ良く見え、男として憧れる。
そして、その気遣いに俺は感謝した。




273:名無しさん@ピンキー
09/04/19 16:37:36 zMz3R+Bt
第4回終了です。

それと訂正。
>>257の二行目
×→立っている
○→座っている

でした。
申し訳ありませんでしたm(__)m


274:名無しさん@ピンキー
09/04/19 19:16:24 3gtw3Qcx
一番槍GJ

キモ姉妹スレ住人としてはシーツの湿り気に心当たりがあります

275:名無しさん@ピンキー
09/04/19 19:19:50 zllkl74r
GJ~
続きがきになるぜ

276:名無しさん@ピンキー
09/04/20 01:46:39 JhjP9t4p
GJ、続き待ってます

一丁一石ってのは一朝一夕の誤字かな?
ちょっと用法が違うよね

277:名無しさん@ピンキー
09/04/20 22:03:16 WMBV0oXG
昨日に引き続いてまた投下したいと思います


それと誤用を指摘していただきありがとうございます
調べたら確かにそうでした

今後もそういうことがあれば指摘していただけると作者は喜びますm(__)m
なるべく、そういったことがないのが最上なんですが…


278:いつか見た夢
09/04/20 22:04:27 WMBV0oXG

朝7時半。
いつもより、20分は早く家を出た。
「沙弥佳」
「うん?」
「今日からしばらく学校への送り迎えは、俺がする。いいな」
「え? な、なんで?」
そりゃぁ驚くだろうな。
今までなら、駅で別れた後に学校に行っていたのだ。
それがいきなり、学校まで送り迎えされるとなれば当然の反応と言えた。
「まぁ……例のストーカー対策、だな」
すでに向こうに、一歩先を譲ってしまっているが、下手なことを言って不安を煽る必要はない。
「ストーカー対策……ですか」
綾子ちゃんが、不安ありげに表情を曇らせた。
「ああ。俺と駅で別れた後、何があるとも限らないからな」
「……分かった。お兄ちゃんがそういうなら従うよ」
いつものこいつなら、お兄ちゃんと一緒だ~なんて言いそうなものだが、
さすがに今回ばかりは、手放しに喜ぶことはなかった。
「二人とも、そんな暗い顔すんなよ。折角の美人がもったいないぜ」
二人を元気づけようと、おどけながら普段なら歯が浮きそうなことを口にした。
しかし真に受けたのか、二人とも顔が赤く染まり、揃って俯いてしまった。

だからな妹よ……綾子ちゃんならともかく、お前はそこでツッコミをだな……。


しかしながら、こんな状況でも相変わらず沙弥佳は、俺の腕にしっかりとしがみついていた。
綾子ちゃんは、最初こそ驚きはしたものの、話しに聞いてた通りなんですね、と笑った。

駅を通り過ぎ、2年前まで歩いていた道を歩く。
「この道歩くんも久しぶりだな」
「こうやって二人でここ歩いてたんだよね……」
沙弥佳が感慨深げに呟いた。
「お二人はいつもそうやって登校してらしたんですよね」
「ああ、本当に毎日な。初めのうちはクラスの男子からからかわれてな、大変だった」
俺はその頃のことを思い出し、笑った。
「お兄ちゃん、すごく嫌がってたんだよね~」
「お前な、何他人事みたいに……」
俺達兄妹の会話を聞きながら、綾子ちゃんは口に手をやってクスクスと笑う。
全く、一つ一つの動作が一々お嬢様という雰囲気を醸し出していた。
「お前ももうちょい、その辺見習おうな」
「え? 見習うって?」
「なんでもない」
俺はしがみつかれていない方の肩をすくめた。



279:いつか見た夢
09/04/20 22:06:05 WMBV0oXG

「でも……羨ましいなぁ、さやちゃんは」
「羨ましい?」
「私一人っ子だから、そんな風にお兄ちゃんやお姉ちゃんと一緒に歩いて見たかったんです」
「ああ、なるほどな。でも、こいつはちょっと欝陶しいけどな」
「なっ……! ちょっと何それ!! こんな可愛い妹が一緒に歩いてあげてるって言うのに!!」
頼んだ覚えなどないのだが……。
「ま、まぁ男にも一人になりたい時ってのがあってだな……」
「うふふ。本当に仲良いなぁ」
その時、綾子ちゃんの見せた笑顔に、俺は心臓を鷲掴みにされたような気持ちになった。

二人を学校に送り届け、一人駅へと引き返す。
校門の前まで沙弥佳は、俺と腕組み続けた。
しかも、その反対には綾子ちゃんというお嬢様もいたとなれば、
俺は中学生達や校門にいた教師達の注目の的になった。
だが、あれは2年前までの日常そのものだった。
来年からあれがまた繰り返されるのかと思うと、俺はまたため息が出た。

ホームでいつもよりも、遅い電車を待つ。
次の電車が、なんとかギリギリで間に合う最後の電車だ。
しかもラッシュは過ぎているので、いつもに比べ、人もまばらだ。
プルルルルルル――
『間もなく○×行き普通電車が参ります。白線の内側までお下がりください』
アナウンスがあった直後、電車がホームに入って来た。
人が降りていき、電車に乗り込もうとしたその時、またも例の視線を感じた俺は、
電車に乗り込まず、またも後ろを振り向いた。
しかも、前二回よりも強い視線――。
いる。
ストーカー野郎がこの近くにいるのだ。
プルルルルルルルルル――
到着する時よりも長い発車音が鳴り続く。
プシュー
電車の扉が閉じ、電車は行ってしまった。

今までなら、俺が周囲を気にしたらすぐに感じなくなった視線は、
今回は未だに途切れることがなかった。

(どこだ? どこにいる?)
この絡み付いてくるような視線を、送ってきやがる奴はどこだ!
ふと、反対のホームに目を移した。
大きなガラス張りの壁で、光の反射具合によっては、鏡のようにも見える。
俺のいるホーム側には、駅を出たすぐ横に歩道橋がある。
その歩道橋に、いつもならあるはずのない影が出来ていた。
俺はその影を注視した。
その影は、俺に見られていると気付いたのか、ふっと移動しガラス鏡の中から消えた。



280:いつか見た夢
09/04/20 22:07:12 WMBV0oXG

あいつだ!
そいつは、黒いウィンドブレーカーとそれに据え付けられたフードをし、
下も黒のズボンという出で立ちだった。
俺は、階段を三段四段飛ばしで、駆け降りていく。
改札をジャンプで飛び越え、駅を出て歩道橋へと走っていく。
後ろで駅員と思われる人物の声が聞こえるが、今は構っていられない。
説教なら後でたっぷりと聞いてやる!

歩道橋の階段を全速力で駆け登り、最上段に着く。
そこから数歩歩き、俺のいたホームの反対側のホーム上に設置された、ガラス張りの壁を見る。
(ここから奴は……俺をあのガラス越しに見ていた)
ガラスを見ながら、奴と同じ行動をとってみた。
(ここで俺を見、そして後ろに引くように動いた……)
当然後ろには、今しがた自分が上ってきた歩道橋の階段。
駅のホームからここまで、20秒と経ってない。
(俺の見間違い……か? それともその時間の間に走り去った……?)
もしそうなら、これだけ見晴らしがよく開けたロータリーで、見落とすはずがない。
(それか、他にも逃げ道が?)
俺は上ってきた階段を、数段下りて手摺りから身を乗り出し、下を覗いてみた。
眼下に、人一人入れるかどうかという隙間があった。
その隙間から、どうも線路のすぐ脇を数十メートルほど、隙間道が延びていた。
(ここだ)
下まで数メートルの高さがある。
死にはしないだろうが、気をつけなければ足を挫くかもしれない。
階段の下には、先程の駅員と思われる人物が、こちらに向かってきていた。
(迷っている暇はない!)
俺は、手摺りに足をかけジャンプした。
耳に、誰かが叫んだような声が響いた。

飛び下りた場所は、歩道橋の階段横にできた、四方わずか2メートル足らずの小さなスペースだった。
飛び下りた衝撃で、足が痺れたが今はそんなことを気にしている暇はない。
俺は、隙間道を身を横にしながら、進んでいく。
どれほど進んだか、背中にあった壁が途切れ、開けた場所に出た。
俺はそのまま、真っすぐ進んでいったものの、そこは橋になっており、上に上れそうにない。

けれど俺の視界の脇を、何かがうごめいていた。
それは奴であり、線路を横断し、なんとか上に登れそうな場所を見つけたのだろう、
四苦八苦しながらも必死に上へ登っていたのだ。
(逃がすか!)
線路を横切ろうとした時、あまりの興奮に俺は、列車が近づいて来ていたことに気付かなかった。


ガタンガタンガタンガタ…ン…タタン…タン……



281:いつか見た夢
09/04/20 22:08:18 WMBV0oXG

「……さ、さすがに死ぬかと思った」
俺は危うく死にかけた。
列車に轢かれ、人間としての原型を留めないような死に方等、したくない。
列車が去った後、線路の向こうを見れば、奴が上に登りきり、ご大層にもこっちを見下していた。
いや、さっきのもたついた登り方も、演技だったのかもしれない。

奴は、俺が死ななかったのが悔しかったのか、自身の前にあるガードレールを蹴り、そこから立ち去っていった。

俺はのろのろと上へのぼり、奴がいないか辺りを見渡したが、見つけることはできなかった。
それに例の視線も感じとることはなかった。
(周りの人間にまで、手を出すような危険な野郎だとは思ってはいたが、
まさかここまでするとはな……)
俺は、怒りで握りこぶしを作った。
恐らくは、さっき電車にに轢かれそうになった時に、制服が破れたのだろう、
制服が破け、怪我をしていることに気付いた。
俺は、今日はこのまま学校をサボりたい気分になった。


ピリリリリリ――
サボろうかと決めた時、携帯が鳴り、画面に見知った名が映し出されていた。
斑鳩からだ。
「もしもし?」
『よぉ、おはよーさん。今日はどうしたん? もしかしてサボり?
九鬼がサボりなんて、こりゃ明日は雨だな』
最近、どこかで聞いたような台詞を吐きながら、斑鳩が電話をかけてきた。
「そういうお前こそ、珍しく文明の機器なんて使っているじゃないか」
そう、斑鳩は携帯は当たり前、デジタルなんてつく物は、まともに使えないのだ。
所謂、機械音痴……いや、機械そのものは使えるから、デジタル音痴といったところか。
しかし、相変わらず目ざといくらいのタイミングだな……。
『小町ちゃんがお前のこと、心配してたぜ』
小町ちゃんと言うのは、うちのクラスの担任で、ナイスバディなお姉さんだ。
やけにフェロモンたっぷりで、お姉様なんて慕っている女子もいる。
あまり興味はないが、いい目の保養にはなってくれている。
ちなみに、この斑鳩の憧れの女性らしい。
「そうか。そいつは光栄だな」
『お前、絶対にそんな風に思ってないだろ。……まぁいいか。で、どうすんの学校』
「いやー、どうしようか迷ってる」
『もしサボるんなら、俺も付き合うぜ?』
「んー……どうしようかな」
俺はその時、ズボンのポケットに手を突っ込んだ。
手にコツンと、硬いものが当たった。
「っと、コイツの存在をすっかり忘れてたぜ」
『あん? なんだって?』
「いや、こっちの話だ。ところで斑鳩。今日、青山のやつ来てるか?」
『青山ぁ? 来てないけど、あの根暗がどうかしたん?』
「まぁ、ちょいと野暮用がな」
『お前もさぁ、あんなんと付き合うのやめろよ? いてもいなくてもどうでもいいけど、
なんつーか、変なことに首突っ込んでそうだしさ』
斑鳩、お前その勘を活かした職に就いたら、間違いなく成功するぞ。



282:いつか見た夢
09/04/20 22:10:09 WMBV0oXG

斑鳩の言ったことは、当たらずも遠からずだ。
青山というのは、うちのクラスにいるちょいとヤバイ趣味をもったやつで、
先の隠しカメラの設置場所等、俺に教議してくれたやつだ。
その時は、危ない奴だと半ば右から左に聞いていたが、なんだかんだで、その知識が役立った。

「そうか……すまんが、やっぱ今日はサボることにすんわ」
『お? じゃぁ俺もサボることにするわ。ナンパにでも行かね?』
「いいのか? サボったら小町ちゃんに嫌われるぞ。それに、別に遊ぼうと思ってるわけじゃない」
ナンパもそりゃぁしてみたいとは思う。
だが、ストーカー野郎に殺されかけたのだ、今はそれどころではない。
『う……そ、それは…』
「というわけで、小町ちゃんには今日は休むと伝えておいてくれ」
『そんなの自分で言えよー』
……無理だから頼んでるってのに。
「良く考えな? 小町ちゃんと話せる機会を与えたいと思って言ったんだぜ、俺は」
『おお! そういうことだったのか! さすがは心の友だ!』
これで大丈夫だろう。
斑鳩が変なところで馬鹿で助かった。

電話を切って、次は俺から電話をかけた。
プルルルル、プルルルル、プルルルル――
斑鳩との電話の後、俺は青山に電話しているが、やつは一向に電話に出る気配がない。
「ちっ。まだ寝ているのか?」
俺は携帯をしまい、青山の家に行くために、一つ先の駅まで歩くことにした。
とてもじゃないが、今すぐそこの駅に行こうものなら、説教で時間をとられてしまう。
それに、ストーカー野郎を追いかけるためだなんて、言ったってどうせ信じはしないだろう。


目的地である青山の家まで、電車でおよそ40分。
そこから、歩きで15分ほど。
だが、今回は更に一駅歩かなければならない。
一年の時に、一度だけ行ったことがあるだけだが、なんとかなるだろう。
全く……ストーカー野郎のおかげで、とんだ出費と時間を使いそうだ。

一駅歩いて、駅の隣にあるコンビニで、消毒液と傷薬と包帯を買う。
俺をみる店員の目が、明らかに怪しんでいたのは、この際無視だ。
この時間なら、普通電車であれば、座ることができるだろうし、怪我の手当もできる。
俺は切符を買い、ホームに出て椅子に座った。
やっとこさ一息つけそうだ。
携帯で時間をみると、10時になろうというところだった。
一時限目の休み時間も終わり、二時限目になろうといったところか。
電車を待つ間、俺は再度、青山に電話した。



283:いつか見た夢
09/04/20 22:11:18 WMBV0oXG

プルルルル、プルルルル、プルルルル、プッ
(今度は繋がったか?)
『………もしもし?』
「青山か? 九鬼だけど、今いいか?」
『………何?』
相変わらず、ボソボソ喋って良く聞き取れない。
「ああ、実はなちょいと面白い物を手に入れたんだ」
『………』
「でな、そいつを今からお前のとこに持っていきたいんだ」
『どんなやつ?』
いつも間を置いて、聞き取りにくい喋り方をするこいつの声が、
いくらか聞き取りやすく、間をおかずに直ぐさま返答した。
「ああ、カメラだ。小型カメラ。良くは分からないが、多分高性能だと思う」
『隠しカメラ?』
(こいつ、自分の興味のある時だけは、食いつきがいいな)
俺は思わず苦笑してしまった。

「良く分からないから電話してるのさ。お前にこいつを見せて、意見を聞きたいんだ」
『わかったよ』
「今家だよな? 学校に来てないんだし」
『家だよ。とにかく待ってる』
「ああ。それじゃぁ1時間後くらいに行くぜ」
それだけ言うと、どちらからとも知れず電話を切った。
電話を切ったと同時に、電車がホームに入ってきた。



青山邸につき、出迎えてくれたのは、意外にも青山の姉だった。
確か、以前にここに来た時も、青山の姉貴が出迎えてくれたはずだ。
その時は休みの日だったからなんとも思わなかったが、今日は平日だ。
もしかしたら、大学生なのかもしれない。
そんな青山の姉に、青山の部屋に案内された。
俺を先導する形で階段を上っていく青山の姉貴は、まるで男を誘うな足取りで、階段を上がっていく。
沙弥佳や綾子ちゃんとは、また違ったタイプの美人だと俺は思った。
ショートパンツを履き、少し焼けた健康そうな生足は、否応なく俺の本能を刺激した。

「しんちゃん、 お友達来たよ?」
「入って」
どうぞ、と手でジェスチャーされ、部屋に入る。
「よぉ、悪いな、突然きちまって」
「……別にいいよ。それより……」
「ああ、これなんだが……」
ポケットからカメラを取り出した。
手に取り、青山はいつになく真剣な表情で、それを調べている。



284:いつか見た夢
09/04/20 22:12:15 WMBV0oXG
「何かわかりそうか?」
「見ただけじゃなんとも……でも今まで見たことがないタイプだよ」
「初めて見るタイプってことか」
「うん、そうなるね」
「そうか……」
「でもそれだけに、色々調べがいがありそうだけど」
「今から調べられるか?」
「やってみるよ」
そう言うと青山は、デジタルカメラでそのカメラを撮り始めた。
「何してるんだ?」
「……見ての通り、デジカメでカメラを撮ってるんだけど?」
「そんなのは見れば分かるさ。それでどうしようってんだ?」
「うん、僕には分からないから、これを知ってるかもしれない友達に聞いてみるんだ」
「そのためにわざわざ、デジカメで……」
みなまで言わず、俺は口をつぐんだ。
青山の友達と言えば、ネットでの友達に決まっているのだ。
良く類は友を呼ぶとは言ったものだが、それはネットの世界にも当て嵌まるようだ。
いや、ネットの世界だから、なのかもしれない。
「しんちゃん入るね?」
その時、青山の姉貴が飲み物と菓子を持って、部屋に入って来た。
お盆をテーブルに置き、青山の姉貴は青山に向きかえる。
すると、たった今の今まで仕事人の顔をしていた青山は、途端に表情が曇った。
「何してるの? しんちゃん」
「……べ、別になんだっていいだろ……」
いつも何を考えているのか分からない、無表情な青山が、
明らかに困惑と、恐怖感を滲ませた顔をして見せた。
「もう。またお姉ちゃんに隠し事? いつも隠し事はダメって言ってるでしょ?」
青山の姉貴は青山とは対称的に、明らかに場違いな笑顔をして見せた。

「た、ただデジカメでカメラを撮ってるだけだよ……」
おずおずと答える青山に、姉貴はずいっと身をのりだす。
その様子はまるで、支配者が奴隷にするそれと同じだった。
「……そう、ならいいけど。分かってると思うけど、もう二度あんなのカメラに撮っちゃダメよ?」
「……あ、ぅ………う、うん……わ、分かってるよ………」
俺はこの姉弟に、ただならぬ雰囲気を感じた。
なんと言っていいのか分からないが、とても普通の姉と弟の関係には見えなかったからだ。

何か……ただならぬ何か……まるで……まるで一線を越えてしまっているような……?
そこで俺は思考をストップさせた。
馬鹿な。そんな漫画や小説みたいなことがそうそうあるはずもない。
俺はかぶりを振った。
「……ね、ねぇ……もういいだろ……友達が来てるんだ……」
いつものボソボソした喋り方。
青山がこんな喋り方なのは、もしかしたら姉貴が原因かもしれない。
「……そうね。まぁ、しかたないわね」
「………」
姉貴は俺の方を向き、ごめんなさい、ごゆっくり、と言い、部屋を出て行った。
「……く、九鬼くん」
「なんだ……?」
「……あ、その、……ご、ごめん……」
俺はただ肩をすくめ、
「気にしてないさ。お前も結構大変みたいだな」
と笑ってみせた。




285:名無しさん@ピンキー
09/04/20 22:15:22 WMBV0oXG
以上です。

やっとぼちぼち自分が書きたかっとことを投下できました。

このまま、ストーカー編突っ走っていけたらなと思っていますm(__)m



286:名無しさん@ピンキー
09/04/20 22:23:24 fXeO9Gep
乙~
青山弟、前科とおしおき歴ありだなw

287:名無しさん@ピンキー
09/04/20 23:40:07 anx6KLyu
うーん。誤用を少なくする方法ね。

どうなんだろう?外国語に訳して、その訳を和訳してみる とか?
で、大体同じ文章になれば間違いは少ないと思うんだよ?

例えば
ocn 翻訳サービス
  URLリンク(www.ocn.ne.jp)
翻訳:@nifty
  URLリンク(tool.nifty.com)
Infoseekマルチ翻訳
  URLリンク(translation.infoseek.co.jp)
livedoor 翻訳
  URLリンク(translate.livedoor.com)
エキサイト翻訳
  URLリンク(www.excite.co.jp)
Yahoo!翻訳
  URLリンク(honyaku.yahoo.co.jp)

などを使ってみて。

288:名無しさん@ピンキー
09/04/21 02:02:03 pf6CLhbc
お疲れ~
連載早いね~

289:名無しさん@ピンキー
09/04/22 00:16:39 3b8iKfqp
>>285
超GJ! ストーカー捕獲までまだまだかかりそうだな。
これ以上非エロを続けるなら、自サイトでやるかアプロダ連載にして欲しい。
誰かのフラストレーションが溜まりきる前に。

290:名無しさん@ピンキー
09/04/22 00:30:42 6SYHVk4S
>>289
誰か って それお前だろ
別においらにはふらすとれーしょんなんて無いぞ。

291:名無しさん@ピンキー
09/04/22 00:37:51 6SYHVk4S
って事で

作者様はこのまま投下して下さっても良いですよ。
何処かのアプロダなどで公開したら、スレが過疎化するだけですから。


・・・・・・
たった1人が仕切ってるんじゃねぇよ。そっちの方が、よほど苛立つってんだよ
・・・・・・
って、私としたことが。

292:名無しさん@ピンキー
09/04/22 00:58:35 xvW+goKi
>>1にもエロなし可とあるし
エロまで長かろうが無かろうが問題なしですよ>作者さん

自分は楽しく読まさせてもらってるんで、
作者さんの思う通りに話を進めて欲しいです。

293:名無しさん@ピンキー
09/04/22 15:15:01 sYuaIwFR
GJ。

職人さんは職人さんのヤりたいように書いてください。



294:名無しさん@ピンキー
09/04/22 21:47:11 7gVO4HUO
レスして下さった方、ありがとうございます

やはり反応があると書き手として、大変嬉しいです。

後エロシーンについては、とりあえずしばらくエロシーンはないです。
申し訳ないです。
ネタとしてあるので何卒ご容赦くださいませm(__)m


295:いつか見た夢
09/04/22 21:48:18 7gVO4HUO

その後は、青山はまたさっきのイキイキとした目で、俺に色々なことを教えてくれた。
全く、学校で普段がこれなら、女の子からも嫌われることもないだろうに。
ま、内容は別として、だが。
「……ところで、九鬼くん。制服が破れてるみたいだけど」
「ああ、ちょっとな。どうってことはないさ」
俺の腕を見て、不思議そうに青山は尋ねる。
俺は、要所要所をぼかしながら説明したが、まさか殺されかけたなどと言えるわけはない。

「ふーん……」
もしかしたら、こいつは何も言わないだけで気付いたのかもしれない。
「それならさ、これを持っていくといいよ」
何やら警棒のような物を、青山は差し出した。
「まぁ……電気が流れるようになってるんだ」
「つまり、スタンガンっていうやつか……」
「……これなら、いざっていう時、武器になるよね」
「いいのか?」
「いいよ。その代わり……このカメラを僕にくれない?」
「別に構わんぜ。俺には不要なものだしな。何なら後二つ三つやってもいい」
「本当に?」
「ああ、何に使うかは知らんが、別に俺にはどうでもいいことさ」
それにいつまでも、部屋に置いておくことはできない。
沙弥佳がしょっちゅう部屋を掃除するためだ。
青山はそこはかとなく爛々と目を輝かせた。

「その代わり、なるべく早く調べてくれ。あまり時間があるとは言えないんでな」
「うん、分かった。早ければ明日明後日には、ある程度のことは分かると思うよ」
「明日明後日には、だって?」
「うん……やっぱり今日中の方がいい……?」
俺は首を横に振った。
「いいや。もちろん今日中だって構わないが、明日明後日だなんて、思ってる以上に仕事が速いぜ」
それは本当だ。
まさかそんなに早く、何か分かるかもしれないだなんて、思いもしなかったからだ。
こういうのことは、実際には四、五日で分かっただけでも早い。
ましてや、今までに見たことがないタイプの物であるにも拘わらず、だ。
それに俺はこの青山という小男を、信頼している。
確かに、クラスの周りの連中からしたら、根暗で裏じゃ何をしているのか分からないような、
この男のことを不気味だとか、危険なやつだとか言っているのは知っている。
もちろん、この俺もかつて初めて同じクラスになった時は、そう思った。
だが、こいつはただなんとなくつるんで、友達面して、いざという時には何もしてくれないような、
形だけの友達とは、俺は違うと考えている。
無理なことは無理とはっきり言い、できることはしっかりとやる。
自分の分相応というのを、この若さにしてはっきりと自覚しているのだ。
それに気付いた時、俺はこいつにはただならぬ敬意を抱いたものだった。
以来、俺の中で青山は、周りがなんと言おうが、気のおけないやつだと思っている。
もちろん、利用してないと言えば嘘になるが、こいつを巻き込みたくないと考えているのも事実だ。



296:いつか見た夢
09/04/22 21:49:32 7gVO4HUO
そうこう考えているうちに、青山は先程のデジカメで撮ったデータを、パソコンに取り込んでいる。
カチャカチャとキーボードを叩き始め、何やら画面の向こうの友達とやらと、
文字で会話しているようだった。
「そいつがお前の言う友達か?」
少し意地悪げに言った。
しかし、青山はそんなこと気にもかけずに
「うん。もちろん彼以外にもいるけどね」
と、淡々と言った。
俺もブラインドタッチはできるが、青山はそれに加えてキーを叩くスピードが半端じゃなかった。
そして、おもむろにメールソフトを起動させ、先程撮ったデータを相手に送信したのだ。

「……これで良し。後は向こうが調べてくれると思う。他にも何人かにこの画像は、
送るつもりだから、もしかしたら入手経路とかも分かるかも……」
「そんなことまで分かるのか?」
「うん。でも必ずではないけどね」
もし入手経路が分かれば、それを購入したやつが分かるかもしれない。
そうすれば、あのストーカー野郎の面だって拝めるかもしれないのだ。

「それじゃぁ後は、お前に任すぜ?」
「うん、いいよ。他にも何か調べておくことはある?」
他にも、か………。
「……指紋とか……?」
「……指紋………さすがにそれは一日二日では無理だよ」
「一日二日では無理でも、何日かかければ分かるのか?」
「……多分。でも、それなりにヤバイことになると思うし……」
いくらヤバイ知識を知っていても、いざとなるとやはり怖いようだ。
まぁ、当たり前だろうが。
「分かった。その辺りまではやりたくないなら、やらなくてもいい」
「……ごめん。……でもなるべく善処するよ……」
「それじゃぁ何か分かったら連絡してくれ」
「……うん」
最後には、いつもの青山に戻っていた。



青山の姉貴が持って来た、飲み物や菓子を胃に収め、俺は早々に青山邸を出た。
ただ、青山の顔が、もう帰るの?みたいな顔をしていたのが気掛かりではあったが。
しかし、それも仕方ないというものだ。
何故なら、トイレを借りるために部屋を出ると、そこには青山の姉貴がいたからだ。
直ぐさま俺を見る顔が、先程までのお客さん向けの顔に戻ったが、
明らかに俺を疎ましく見ていたのは、隠しきれていなかった。
それを見てしまうと、さすがに早くここから出たいと思うのは、当たり前のことだ。
それに………あの姉弟は普通じゃない。
いや、正確に言うと姉貴が普通ではないのだ。
俺は、先程思い浮かんだ、一線を越えているんではないかと、再び思い返してしまった。
少なくとも、あれは普通の姉弟のする態度ではない。
そう、まるで姉のくせに、一人の女のように嫉妬しているみたいだった。
ともかく、あの姉貴には近づかない方がいいと、俺の本能が告げていた。



297:いつか見た夢
09/04/22 21:50:43 7gVO4HUO


「カメラのことは、とりあえずは青山に任せるとして……」
これからどうするか。
気付けば、昼はとうに過ぎ、もう3時前になろうとしていた。
青山邸にかなりの時間、過ごしていたようだ。
「ま、腹も減ったし飯にするか」
俺は自販機でお茶を買い、駅に行く途中にあった公園で、遅めの昼食をとった。
まぁ……弁当には相変わらず………察してくれると助かる。


『まもなく○○に到着します。お降りのお客様は………』
電車内のアナウンスが、地元に帰ってきたことを告げる。
時間はすでに4時を過ぎており、駅は学校帰りの生徒達が多くいた。
これならば、怪しまれることもなく、改札を出ることができるだろう。
もう沙弥佳達も学校が終わっている頃だ。
この調子ならば、ちょうど良い時間に学校に着くことができそうだ。
難無く改札を抜け、一路中学校へと足を向ける。
妹達の学校の生徒達が、ちらほら歩いている。
もしかしたら、もう校門辺りで待っているかもしれない。



「えへへ~♪」
案の定、沙弥佳達は校門のところで待っており、沙弥佳は俺の姿を目視するや、一目散に走って来た。
妹は、相変わらず頬を緩ませ、俺の腕にしがみついている。
綾子ちゃんは、それをほほえましく思っているのか、優しい表情を浮かべていた。
けれど、俺の破れた制服を見て、怪訝な表情をつくった。
「あ、あの九鬼さん……」
「ん? なんだ?」
「その制服………どうしたんですか? 朝は破れてなかったですよね?」
「あ、本当だ。なんで破れてるの? お兄ちゃん」
「んー、まぁたいしたことじゃない。危うく轢かれそうになって、ちょいと転んだだけだ」
嘘はついていない。
「えー!? だ、大丈夫!? 怪我してない!??」
「すりむいて、打ち身になった程度だって」
これも嘘ではない……出血もしたが、今はもう止まっている。
「そう……。ならいいけど……」
沙弥佳が上目使いで、心配そうに俺の顔を覗き込む。
綾子ちゃんも何やら考えているようで、顔をやや俯かせながら、申し訳なさそうにしていた。
「そう心配するな。もう痛みもないんだ」
そんな二人を見て俺は、苦笑せざるをえなかった。




298:いつか見た夢
09/04/22 21:51:35 7gVO4HUO


翌日。
昨日から、いつもより早起きして沙弥佳と綾子ちゃんの二人を、学校まで送ることが日課となった。
もちろん、帰りも迎えに行くわけだが。
しかし、そうすることで綾子ちゃんが、少しでも気が楽になるというのなら、それで構わないのだ。
そのせいか、沙弥佳の言うところでは、うちに厄介になるようになってからというもの、
綾子ちゃんは少し変わったのだと言う。
俺には、どこがどんな風に変わったのかは分からない。
けれども、綾子ちゃんにたいして、俺も父性本能とでも言うのか、庇護欲とでも言うのか、
もやもやとしてなんとも言えないが、それらに近い感情が沸き始めていたのは間違いなく、
あのストーカー野郎にもたっぷりとお返ししないと気が済まなくなった今では、
綾子ちゃんといれば、その機会は必ず訪れるのだから、いうことはない。



「はい、席についてー。HR始めるわよー」
小町ちゃんの声で、HRが始まった。
今日は真面目に登校している。
とは言っても、昨日が特別だっただけで、いつも真面目に学校には来ている。
……ま、成績がいいというわけでもないんだが。
「今日も特別あるわけじゃないから、いつも通りな」
相変わらず、教師とは思えぬサバサバっぷりだ。
「それと、九鬼。あんたは昼休みあたしんとこに来るように」
「……はぁ。はいよ」
「なんだい、そのため息は。大体あたしの仕事場でサボり決め込もうなんざ、10年早いぞ」
「了解しましたよ、先生」
「ったく……これでもうちょっと成績が良くて可愛いげがあったら………」
………あったらどうしたというのだ。


昼休みになり、小町ちゃんのところに赴くべく職員室へ移動する。
斑鳩や、その他数名の男子から、妬みの視線を浴びながら教室を出た。
教室を出たところで、青山が声をかけてきた。
「……九鬼くん」
「ああ、青山か。なんだ、例の件もう何か分かったのか?」
「……うん」
「よし。職員室から戻って来たら、詳しく聞かせてもらおう」
「……分かった」
こいつもこいつで、相変わらず単語一言しか喋らないやつだ。
まぁ、欝陶しいのよりはマシだがな。
青山は、フラリと教室の中へと入っていった。



299:いつか見た夢
09/04/22 21:52:27 7gVO4HUO

「……でだ、分かってるのか? 九鬼。お前はもっとしっかりやればなぁ――」
「……はぁ」
小町ちゃんは弁当をつつきながら、かれこれ十数分に渡って、くどくどと説教をたれている。
(一体いつになったら終わるんだ)
第一、喋るか食べるか、どっちかにしてくれ、気になってしょうがない。
「だからな、お前はそうなんであって――」
当然だが、説教など右から左だ。
この女教師は確かに美人だが、俺から言わせてもらうと、どうにも"女"というのを
いまひとつ感じられない。
本人の前では、口が裂けても言えないが、はっきり言ってオッパイキャラ以外の何者でもない。
やはり女というのは、綾子ちゃんみたいな………って、なんで綾子ちゃんがここに出てくるんだ。
「おい! 聞いてるのか、九鬼!」
小町ちゃんは更にヒートアップし、説教が終わったのは、予鈴が鳴った直後のことだった。
こうして俺は、昨日に続いて弁当を時間に食べそこねた。

教室に戻り、青山の姿を探したが、席を外していて見当たらなかった。
代わりに、斑鳩達からの質問責めを受けることになるなんざ、運がなかった。


一日の授業が終わり、俺は斑鳩達から声をかけられるが、手でそれを制し、青山のところへと向かう。
「よぉ、昼休みは悪かったな。思いの外、小町ちゃんの説教が長くなったんでな」
「……うん、それはいいよ。予想もしてたしね」
「そうか」
青山は頷いた。
「で、悪いが弁当食わしてもらいながら、話聞かせてくれ」
「……うん、いいよ」
俺はバックから弁当を取り出し、昨日に続いて遅い昼食をとりはじめた。
「で、どこまで分かったんだ?」
「うん。まずあのカメラは、今まで見たことがなかったと言うのは、言ったと思うんだけど」
俺は飯を食らいながら、頷く。
「それであれが最新のものであることは、予想がついてたんだ。だけど……」
「だけど……?」
「なんて言うのかな………どうも、あれは市販で売ってる物じゃないみたいなんだ」
「市販で売られてない?」
「うん」
青山は、この上なくはっきりと力強く声にした。

「じゃぁあのカメラは、一体どうやって手に入れたと言うんだ?」
「それはまだ分からないけど……ただかなり特殊なものみたいなんだ」
「どういう風に特殊なんだ?」
「まず、素材からして普通の監視カメラとは違うんだ。細かいことは省くけど、普通、
監視カメラってプラスチックであったり、ちょっと大きい物であれば鉄製の外殻で、
カメラそのものを被ったりするんだけど、あれはカメラそのものが既に、外殻でできてる」
「なんだと……?」
こいつは驚いた。
あのカメラは、そんじょそこらじゃ手に入れられない代物だったらしい。
俺はもはや弁当を食べること等忘れ、青山の話に耳を傾けていた。
「しかも、カメラそのものが、とてつもなく高性能なんだ。それにこれは友達とも話したんだけど、
同規模のカメラとしては、間違いなく世界で一番の高性能カメラだと思う」


300:いつか見た夢
09/04/22 21:53:25 7gVO4HUO
「………」
自分が思っている以上に、話が突飛すぎて言葉を失ってしまった。
「おまけに、赤外線カメラモードまでついてて、もはやただの監視カメラの域を越えてるよ」
「……それじゃぁ、入手経路なんてもう分かりそうにないな………」
俺は椅子にうなだれてしまった。
折角こちら側からの最大の反撃材料になりかねないものだっただけに、ショックは大きかった。
「いや、まだ諦めるには早いと思う」
「まだ何かあるのか?」
「うん。あれだけ高性能で市販に売られてないと分かれば、かなり特殊な状況で作られて、
かなり特別なルートで流されたものなんだと思うんだ」
「……なるほど。闇のルートってやつか」
噂には聞いたことがある。
合法ではさばけないような代物を、高額でさばき、莫大な利益を生んでいるというのは、
前に本で読んだことがある。
その時は、半ば嘘のようにも思えたが、今はそれが実感となって理解できた。
最も有名で、最も悪質なのは、言わずと知れた麻薬だ。
「とりあえず、今分かってるのはこれくらい」
「ああ……すまんな、ありがとうよ」
「……いいよ。そんな高性能カメラが手に入ったんだから、安いよ」
「ま、ことが片付いたら後払いで、後二つやるよ」
その言葉に、青山は歓喜の笑みをこぼした。


青山と別れた後、話に夢中になって食べ忘れていた弁当を胃袋におさめ、足早に学校を出た。
斑鳩達が、終始俺と青山の話に、聞き耳を立て、まだかまだかと様子を伺っていたが、
俺は、連中の遊ぼうと言う誘いを断って教室を出てきたのだ。
(しかし……そんなものを、惜し気もなくストーキングの道具に使うなんてな)
青山の話を聞いた俺は、あの野郎のことを頭の中で反芻させていた。
だがこれで、ある程度の人物像は絞れるかもしれない。
そして、ただ一つだけ確信したことがある。
このストーカー野郎は、ただのストーカーではなく、とてつもなくヤバイ奴なのだということだ。

どこで手に入れたか知らないが、普通では手に入らないカメラを、少なくとも3台は用い(恐らくはそれ以上)、
対象に近づく者は、容赦なく攻撃し、あげくに対象を孤立させようとしているのだ。
事実、俺も一度は殺されかけたのだ。
だがな、ストーカー野郎。
例え、お前が最狂のストーカーでもな、あくまでお前はストーカーに過ぎない。
社会不適合者なのだ。
俺は、お前を許しはしない。
もし俺の周りの人間を傷つけてみろ、地獄の果てにだって追いかけて、お前をやってやるからな。
覚悟しておけよ……。

俺は一人、厳粛に誓いを立てた。




301:名無しさん@ピンキー
09/04/22 22:02:30 7gVO4HUO
第6回は以上です。

作者は、今無駄に創作意欲がありますので、しばらくは投下ペースが早いと思われます

早すぎもいけないとあれば、セーブしながら投下いたしますので、ご一報くださいm(__)m



302:名無しさん@ピンキー
09/04/22 22:19:51 l8p0xuRW
>>301
鉄は熱いうちに打て、ということで情熱のあるときに書くのは良いことだと思います。
他の作者様とのニアミスを防ぐために投下予告だけしてくだされば、大量投下大歓迎。

303:名無しさん@ピンキー
09/04/22 22:47:03 zSFJg1Az
>>301
GJ、投下乙です

ただ、「市販で売られている」が若干不自然な気が…
「市販されている」か「一般に売られている」の方が自然かと

304:名無しさん@ピンキー
09/04/23 00:25:20 KEXYLM0z
スレタイ見たときは正直キモい変態しかいないスレかなぁと思ったが、なんかここの住人ってけっこう紳士なんだな。
職人さんにアドバイスしたり。

あと、職人さんGJです。昨日今日で流し読みした者ですが、先が楽しみです

305:名無しさん@ピンキー
09/04/23 02:12:37 nr7Ko620
GJ!!
次回も楽しみにしてます。

306:名無しさん@ピンキー
09/04/23 04:01:27 Ac+BeYZ5
続きが気になるなー
ところで姉スレと妹スレを両方見てる身としては
是非とも青山と姉の話を過疎ってるお姉さんスレでやって欲しい

307:名無しさん@ピンキー
09/04/23 11:12:03 NEpDOmc6
まったくだ。青山姉が妹だったらここでやって欲しいくらいだ。
妙に背徳暗エロスが滲み出てて無視できないw

308:名無しさん@ピンキー
09/04/23 19:56:16 kt3J63KH
35 名前:Socket774 :04/10/28 12:55:57 ID:lSUt/0HR
勝手に飲まれなくなったのは今まで飲んでたやつが逝……ガクブル

新スレ立ったんで軽くネタ投下でも
先週の週末に義妹(になる予定の子)から電話掛かってきたんですよ
ずいぶん切羽詰った調子なんで、何事かと思ったらPCが起動しないとの事
週明けに提出しなけりゃいけない課題があるそうで、どうにかしてくれと泣きつかれますた
義妹(になry)のPCは、元々俺が以前使ってた自作機をバラのパーツ状態で譲った物で
組み立てからOSインスコまで全部自分でやらせたマシン。
トラブルは自分で解決するよう指導してきたおかげで、メモリ増設やらドライブ類の載せ換え
ビデオカード増設など全部自分でやるぐらいになってたんですが、手に負えず電話してきたらしい
電源かメモリあたりが逝ったかな?と思いながら箱を開けて中見るように指示すると
ママンの上のコンデンサがぽっこり膨れてる模様。
ソケ370のママンで保障期間なんかとっくに過ぎてるし、スペックもだいぶ厳しいようなことを以前
言っていたので買い替えを勧めてみたが、学生なんで金の余裕無し、課題は週明けにも出さなきゃならん
ということでちょっと半泣き
俺が何とかしてやるからとなだめつつ膨れてるコンデンサの容量とかを確認させていったん電話を切りますた

40 名前:Socket774 :04/10/28 13:08:51 ID:lSUt/0HR
続き

電話を切って、コンデンサのストックあったかな?とか考えてると何やら嫌な気配が
振り返ると彼女が泣いてるんだか笑ってるんだか怒ってるんだか判らんけどとにかくおっかない顔で
包丁かざして立ってますた
つーかどう見ても刺す気満々。腰抜かしそうになりながらもとりあえず謝りながらなだめておちつかせようともう必死
なんだかよくわからんけどとりあえず謝りたおしまくって、包丁から手を離させるのまで約一時間。


ちょっと外出するんで続きは夕方にでも

54 名前:Socket774 :04/10/28 17:17:48 ID:lSUt/0HR
帰ってきたので続きです

PC関連の知識がまったく無い彼女が、会話の中の端々の単語に『ママ(板)』だの(コンデンサーが)『妊娠』だの
(コンデンサーが)『膨れてきてる』だの聞こえてくるので思いつめちゃったわけで
義妹切羽詰った様子で電話してくる→『妊娠』だの『俺が何とかする』だのという会話→ぷっつーん
というコース・・・・・・
それから3時間ほど掛かってようやく完全に理解させますた
相手も理解できるとつい使い慣れた言葉で会話しちゃうけど、知らない人が単語だけ聞いたら相当誤解生むのが
身に染みてわかりますた。反省

んで翌日彼女の実家に義妹のPC修理に出かけて玄関くぐったら義母(になry)が

『ア ン タ ○ ○ に ま で 手 を 出 す な ん て ど う い う つ も り ! ?』

il||li _| ̄|○ il||li 親子で早とちりかよ…・・・


309:名無しさん@ピンキー
09/04/24 00:23:54 io1AdP6d
保守

310:名無しさん@ピンキー
09/04/24 00:28:08 rE5bhn13
さけ

311:名無しさん@ピンキー
09/04/24 21:29:15 bF40HAQ1
レス下さった皆様、ありがとうございます。

嬉しくも、不備があったんじゃないかとドキドキしながら読ませて頂いています。

青山姉に関してまさかここまで、関心されるとは思いませんでした。
あくまで青山のキャラを浮かび上がらせるために作ったキャラでしたので。
そのため、青山姉弟の話は考えておりません。
ただ今後はわかりませんけども…。

また、
×→市販で売られている
○→市販されている
でした。
もう弁解の余地もありません…なんで気付かなかったんだorz

では、第7回投下します。

312:いつか見た夢
09/04/24 21:31:35 bF40HAQ1
それから一週間がたつ。
ストーカー野郎は、今のところ不気味なくらいに姿を見せない。
奴の姿を見たのだって、たった一度きりだが、例のコールタールのような視線を、
ここ数日間、ただの一度も感じなかったためだ。
だがしかし、こういう時こそ油断してはいけないのだ。
この数日間は、言うならば嵐の前の静けさといったとこのはずだ。
計算高い奴のことだから、何か企てる準備をしているに違いないのだ。
この一週間は、こちらを油断させ、陥れるための準備と潜伏期間なのだ。
この期間が後どれほどなのかは分からない。
だが俺には、決して油断はないと思うんだな、ストーカー野郎。


「ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「例のあやちゃんのストーカー……最近何も音沙汰なくなっちゃったけど、諦めたのかな?」
沙弥佳の言葉に、綾子ちゃんもこちらをうかがっている。
「まだなんとも言えないが……俺は諦めてなんかいないと思う」
綾子ちゃんは、もしかしたらと思っていたのだろう、その整った眉を眉間によせた。
「あれだけのことをするような奴だ、多分諦めることはないはずだ」

時間は遡るが、俺は誓いを立てた翌日、休日ということもあり青山を引き連れ、綾子ちゃんのうちに再び訪れた。
本格的に家の中にあるであろう、盗聴器や例のカメラを探すためだ。
青山は、俺にはよく分からない道具を使い、盗聴器を探し始めた。
沙弥佳と綾子ちゃんは、初めて会った青山に戸惑いはしたが、その内に打ち解けたようだった。
沙弥佳も綾子ちゃんも、元々人を外見だけで判断しないため、青山の仕事を興味深げに見ていた。

結果、家の中には、ほぼ一部屋に一つから二つもの盗聴器がしかけられていた。
例のカメラも、綾子ちゃんの部屋は言うに及ばず、二階のトイレや洗面所、脱衣所と風呂にあったのだ。
しかも、それらはうまくカムフラージュされ、青山の言うところでは、
完全に新しい物に取り替えられていたのである。
そして、その新しく取り付けられた物に、高性能カメラを仕掛けたのだ。
全く……あまりの徹底ぶりに俺はもはや、呆れてものも言えない。
当然、綾子ちゃんはそれらが見つかっていく度に、顔面を蒼白とさせていったのは、言うまでもない。
さすがの妹も、最初のように興味津々とは行かなかった。

綾子ちゃんの家を出て、再びうちにもどってきた。
もちろん、青山も一緒だ。
今度はうちを、例の機械を使って探索してもらう。

綾子ちゃんがうちに来てから、そういったものが仕掛けられていないと限らない。
それに、うちは綾子ちゃんの家に比べ、比較的侵入しやすい作りなのだという。
なるほど、ならばうちにもそれがないかどうか確かめてみたくなったのだ。
うちは昼間は、誰もいなくなりがちだ。
それを考慮すれば、しておくに越したことはない。


313:いつか見た夢
09/04/24 21:34:45 bF40HAQ1
案の定、早速いくつか盗聴器がしかけられていた。
数そのものは、綾子ちゃんの家の比ではなかったが。
カメラも一応探してみはしたが、見つけられなかった。
カメラは、かなり徹底されたカムフラージュが施されていたことを考えると、
そう簡単に、取り付けられるものではないと言う。

青山は、一通りの仕事を終えると、俺に機械の使い方を教え、帰っていった。
俺は帰り際に、移動中に青山の姉貴が、なぜか事あるごとに視界に映っていたことを告げると、
綾子ちゃんに代わって、今度は青山が顔を青くしていた。



「……でも、とりあえず今すぐにでも、奴が何か仕掛けてくるとは思えないけどな」
二人を少しでも安心させようと言うが、そんなのは気休めに過ぎないのは分かっているつもりだ。
二人を学校に送り届け、俺も高校へと向かう。
青山に依頼した件も、まだ全容は掴めていないし、奴も何も仕掛けてこない。
正直、八方塞がりと言った状態だ、どうしようもない。
(とにかく、今は青山の結果待ちだな……)
俺は小さくため息をついた。


放課後、出ようとした教室で、青山によって呼び止められた。
「九鬼くん。ちょっといい?」
この数日、青山は人が変わったように思う。
まず、喋り方が前のようにボソボソとしたものではなくなった。
依然、小声ではあるが。
どうも聞くところによれば、彼女ができたということだった。
最初は、その話を聞いて羨ましいと思ったりもしたが、相手のことを聞いてゾッとした。
ショートパンツを履いた、溌剌とした年上のお姉さんだったという話だったからだ。
この先、こいつがどういう人生を歩むかは知らないが、決して穏やかなものではないと悟った。
「ん? おお……ここじゃちょっと無理そうな内容か?」
青山は頷いた。
今、掃除当番達が教室を掃除し始めようとしていたので、例の技術棟へと赴いた。

「ね、ねぇ……ここって入っちゃいけないんじゃなかったっけ?」
「まぁ、本当はな。でも結構大丈夫みたいだからさ」
俺達は、技術棟の屋上への扉がある場所まできた。
それにここなら、気兼ねすることなく話せると思ったからだ。
「例の件のことだろ? 話を」
聞かせてくれ、とまでは言えなかった。
「あなたたち、何してるの?」
俺達は、驚いて階下に目をやった。
そこにはあの女、藤原真紀があの時と同じく、そこにいた。




314:いつか見た夢
09/04/24 21:36:59 bF40HAQ1
「とりあえずあのカメラのことだけど……」
あの後、藤原真紀に屋上の扉を開けてもらい、屋上で話を聞くことになった。
「どうもある大企業が依頼して作ったものらしいんだ」
「ZONYとかか?」
青山は首を横に振った。
「分からない。それ以上は無理だったみたいだから。でも、逐一監視する目的で作られたのは、間違いないよ」
「使ってみたのか?」
「試しにね。はっきり言ってただの監視カメラのレベルじゃないけどね、あれは」
青山が言うには、昔の劣化したビデオテープから、一気に最新のブルーレイにまで飛躍している程だと言う。
「……何か別の目的があって作られたってことか?」
「分からない。でも、友達も同じことを言ってたよ」
「まぁいい。問題はどうしてそんなものを、何台も奴が持ってたかってことだ」
「いくつか推測はたつけどね。そもそも、その依頼した企業の人間だったとか」
「……もしくは元々非合法のものを売りさばく売人、か」
「それもありうるね」
「本当に自分の商品なら、売らずにあんなことに使ったりするものかな?」
「どうだろ? でも、九鬼くんの言うストーカーなら、ないとも言えないかも」
確かにそうだ。
奴は、邪魔になった俺を殺そうとしたのだ。
利益うんぬんなんてものは、どうでもいいのかもしれない。

もちろん、それは推測の一つに過ぎない。
奴は、ただの客の可能性だってある。
「奴が客の可能性もあるよな?」
「ないとは言えないね。今だったら所謂株長者っていう人種もいるしね」
「なるほど。株で稼いだ金で、趣味の悪いことにつぎ込んでいるわけだ。全く、金遣いのいいこったな」
「それに、あれはかなり法外の値段がするみたいだから、一台だけならまだしも、
個人で何台も所有するには、相当なお金が必要なのは間違いないよ」
青山が数秒考えて、口を開きかけたとき、真紀が口を挟んだ。
「それはどうかしらね」
「なんだ? ……部外者が口挟むもんじゃないぞ」
「そうね。でも考えが纏まらない時こそ、第三者の意見も取り入れるべきじゃない?」
「あんた、話聞いてたのか」
「別に聞きたくて聞いてたわけじゃないわよ。たまたま耳に入ってきていただけ」
青山は、どうもこの女が苦手のようだ。
俺だって正直、あまり好きではない。
「……そうかい。で? その第三者の意見ってのを聞かせてくれよ」
「あら、聞く気になったの?」
「あんたが言い始めたんだろ。さっさと言いなよ」
「もう。せっかちね。まぁいいわ。あなたたち新聞は読む?」
「一体なんの話だ。俺はそんなことこれっぽっちも聞いてないぞ」
「いいから。新聞は読む?」
「ちっ……読むけど、それがどうした」
青山もそれに肯定する。
「新聞って、いかに早く、いかに正確に情報を伝えるかというのが、役割よね」
俺と青山の顔を交互に確認して、話を続ける。


315:いつか見た夢
09/04/24 21:41:12 bF40HAQ1
「でもね、その情報がもし必ずしも本当でなかったら? 起こった事柄が本当でも、
その内容が歪められていたら? ……そう考えたことはない?」
一体何が言いたいのだ、この女は……。
「誰かに意図的に、情報操作されてると言いたいのか?」
「まぁ、そうなるかしらね」
真紀は、俺の目を見据えながら言った。
「……ない……とは言えないと思う」
「おいおい。青山はこんな女の言っていることを、信じると言うのか?」
「もちろん、全て信じているわけじゃないけど、例えば内容をぼかしたりなんかはあるかも」
「内容をぼかす………?」
「うん。こういった情報操作なら、現代に限らず、昔から行われてることだしね。歴史だってそうだよね?
実際には違ってもその時代の権力者によって、良いように歪められてる部分って結構あるからね」
「た、確かにそうだが……」
かと言って、それを今当たり前のように言われても俄かに信じがたい。

「それで君は……それが今回のことと何かが関係してると?」
青山が、遠慮しがちに真紀に問い掛ける。
「つまり、入手方法よ。必ずしも売人だとか客とは限らないでしょ?」
「なんだそれは? だとしたら後は盗っ人くらいしか考えつかないぞ」
「ちゃんと分かっているじゃない」
真紀は、薄く笑いを浮かべた。
「おいおい、だとしても、どうやって盗み出すってんだ。第一、それと新聞の話がどう繋がってるってんだ?」
「さあ? それは調べないと分からないわよ。あくまで他にもやり方があるんじゃないって話でしょ」
……本当にこの女とはやりづらい。
しかし青山は、手を顎にあて、何か考えているようだ。
「一般にはで手に入れられない…盗っ人…情報の隠蔽…」
……なんなんだ、一体。
青山は深く考え出すと、人の呼びかけにも反応しなくなる癖があったようだった。
俺が何度も呼びかけても、反応しなかったからだ。
しばらく一人考えていた青山が、ふいに俺に話しかけてきた。
「九鬼くん。綾子ちゃんがストーカーされるようになったのっていつ頃から?」
「俺も詳しくは知らないな。それと何か関係があるのか?」
「ちょっと調べてみようと思って。帰ったら綾子ちゃんに聞いてみてくれない?」
「……何だかわからんが、聞いておいてみよう」
「ありがとう、大体でいいから。とりあえず分かったら連絡してほしい」
「分かった」
真紀は何か気付いているのか、ほくそ笑んでおり、青山は青山で、何を考えてるのかさっぱりだった。
俺一人だけ理解していないのは、なぜこんなにまで疎外感を感じるのだろう……。





316:いつか見た夢
09/04/24 21:42:16 bF40HAQ1
青山達と話しているうちに、時刻はすでに16時を大きく回っており、中学校に着く頃には、17時を過ぎそうだった。
「もしもし、沙弥佳? 悪い。今からそっちに行くから、もうしばらく待っててくれ」
『もうお兄ちゃん遅いよー』
「悪かったって。そん代わり、帰りにうまいもん奢ってやっから」
『本当!? だったらキシマイ堂のパフェがいいな~』
「よりによってあそこのかよ……あそこ美味いけど、高いんだよな……」
『でもお兄ちゃん、おいしいの奢ってくれるって言ったよね?』
「い、いや、そうじゃなくて、別にあそこのじゃぁなくても良くないかって意味だ」
『私と綾子ちゃんはキシマイ堂のパフェが食べたいのです』
「綾子ちゃんもって……絶対口からでまかせだろ……」
『それはどうかな~? はい』
『あ、あの……わ、私もキシマイ堂のパフェ食べたいです……』
なんということだ。君もか、綾子ちゃん……。
『へっへっへ~。2対1だね~お兄ちゃん!』
「くっ……後で覚えてろよ」
俺は妙な敗北感を覚えながら、電話を切った。


現在17時半を回ったところだ。
俺達は今、キシマイ堂というカフェにいる。
この店は、カップル達の間で有名な店で、なぜか特定のカップルがここで特定の物を頼むと、
既成事実を作ることができるらしいのだが、何の既成事実であるかは、俺は知らない。
まぁ、良くあるジンクスというやつなんだろう。
そして、なんとあの青山の姉貴がここでバイトしていたのには、驚いた。
接客の際、ありがとう、あなたのおかげです、なんて意味深なことを言われたら、なおさらだ。
本能が深く追及するなと告げていたので、何も言わないでおいたが。


「えへへ~いただきま~す♪」
「あの、九鬼さん、いただきます」
「どうぞ。いただいちゃってくれ」
二人は、特大パフェを二人で食べるつもりらしい。
はっきり言って、俺には例え二人でだとしても食べ切れる自信はない。
まぁ、それくらい大きい。 まさに特大である。
目の前の美少女二人は、そんなのどこ吹く風と言わんばかりであったが……。
とはいえ、これで聞きにくいことも、聞きやすくなると言うものだ。

「なぁ、綾子ちゃん。ちょいと聞きたいことがあるんだが」
「はい?」
綾子ちゃんは手を止め、体ごとこちらに向けた。
当然一旦スプーンを置き、口を拭いている様は、とても優雅で一分の隙もない。
「綾子ちゃん、ストーカーされているように気付いたのっていつくらいか覚えてるか?」
「え? ……そうですね。3、4ヶ月程前からでしょうか……」
「4ヶ月前か……すまん、ちょっと電話してくる。すぐに戻るよ」
「はーい。いってらっしゃーい♪」
……妹よ。もう少し、綾子ちゃんを見習ってくれ。



317:いつか見た夢
09/04/24 21:45:47 bF40HAQ1
俺は、携帯を取り出しながら店内を出る。
『……もしもし』
「よぉ。今聞いてみたんだが、気付いたのは4ヶ月くらい前かららしい」
『4ヶ月前か……』
「なぁ、お前さん、さっきもそんなだったが、一体何を考えてるんだ?」
『うん、ちょっとね。まだ確信できていないし、なんとも言えないけど、ストーカー正体が掴めるかも』
「ストーカーされてるのに気付いた時期がそれに必要だってのか?」
『うん。正確には、その期間前後に、ニュースで何か起こってないか調べたくて。
それに今回の事件は、結構根が深いような気がしてね……』
正直、そいつは考えすぎなんじゃないかと思うが、口にはしなかった。
「分かった。後何か聞いておかなくちゃならないことはないな?」
『特にないよ。結果はすぐにでると思うから、明日にでも学校で』
「相変わらず、仕事が早くて助かる」
むしろ、早すぎのような気もするが、それは本当だ。
「それじゃぁ、明日、詳しく聞かせてくれ」
『分かったよ。それじゃあまた明日』
俺は電話を切って、店内に戻って行った。



「よぉ青山。調べついたか?」
翌日の放課後、俺は青山を技術棟の屋上に呼び出した。
不本意ながら、藤原真紀も一緒だ。
「うん。やっぱり持つべきは友だね。かなり面白いことがわかったよ」
青山が、持つべきは友だなんて言うと、笑えてしまうのはなぜだろう。
「ふむ。どんなことが分かった?」
「まず、もう5ヶ月くらい前の話なんだけど、K県Y市でトラックによる交通事故があったんだ。それも単独事故」
「単独事故?」
「もちろん、事故そのものは決して珍しいものではないんだけど……中身がね」
「なんだったんだ?」
「うん……当時の記事には、デジタル機器としか書かれていなかったんだけどね……ここからが、
友達に頼んで調べてもらったんだけど、どうもただのデジタル機器ではなくて……」
「あのカメラだって言うのか?」
つい力んでしまい、凄んでしまった。
青山は、ややためらいがちに頷く。
「確証はないよ。でも、最新のカメラであったことは間違いないみたい。
それもかなり小型のね。話を聞く限り、それしか考えられないんだよ」
青山が続ける。
「そして、そのトラックの運転手が謎の失踪をとげてる」
「行方不明?」
「おかしいでしょ? しかも大した記事にはなってないんだよ。テレビにもなっていないし、当時の記事も、
扱いがすごく小さかったし。事故ってだけで、少なくともその日のニュースくらいにはなるはずなのに」
言われてみれば確かにそうだ。
「確かにおかしな話だ。おまけに運転手が行方知れずときたら、普通ならワイドショーのいいネタになるはずだしな」
「ワイドショーどころか、翌日のトップニュースだってありうるよ」
青山の言葉に、俺は頷いた。
なぜかその時、漠然と俺に不安がよぎった。



318:いつか見た夢
09/04/24 21:47:33 bF40HAQ1
「それにね、事故の対応も凄く不審なんだよ」
「どういうことだ?」
「普通事故があれば、必ず警察が来るよね?」
「ああ。昔、自転車に乗ってるときに原付きにぶつけられたことがあったが、その時にだって来た」
「そう、よほど小さなものじゃない限り、警察は来るものなんだけど、この時は、
警察の前に別の人達が来て、対応したらしいんだ」
「別の人達だと? なんなんだ、その別の人間ってのは」
「残念だけど、そこまでは……ただ、トラックの中身と運転手を探してたのは、間違いないみたい。
その人達が帰って、警察が来たみたいなんだけど、どうもその人達が警察に連絡させなかったみたいなんだ」
それは珍妙な話ではないか。
まるで警察が来る前に、撤収しなければならない理由でもあったのか?
「その事故のあった近辺に住んでる人達に、友達がわざわざ聞いてくれたみたいでね、
この辺の話は、信憑性を持っていいと思う。
おまけに、そのトラック、どうもタイヤが破裂したみたいになってたって話だよ」
「なるほどな。でもな青山。そいつと今回のストーカーとどう結び付くというんだ?」
「うん……実はね、九鬼くんからもらったカメラから指紋が出てきたんだ」
「まさか本当に、指紋まで特定したのか?」
「あ……ま、まずかったかな、やっぱり」
「いや、そんなことはない。ただ、あまり乗り気じゃぁなかったろう? だからな……」
そう、まさかこの青山が、そこまでのことをしてくれるとは思わなかったのだ。
「……で、データベースにアクセスしてみたんだけど」
「何かひっかかったのか?」
「………うん」
青山が、妙な間をおいて肯定するが、何かが納得いかないといった風だ。
「……その、はっきり言うと……その指紋の人物はすでに、死んでる………みたいなんだ」
「………なんだって?」
多分、この時の俺は、間抜けな顔をしていたことだろう。
青山が口にしたことは、それほどに予想だにしなかったことだった。


その男の名は、蒲生義則(がもう よしのり)というらしい。
「おいおい、まさかお前は幽霊がストーカーしているとでも言いたいのか?」
「まさか。僕は幽霊は信じているけど、それとこれは全く別と思ってるよ」
だとしたら、最近やつが現れないのももしや死んだからなのか?
しかし、こうも都合良くこのストーカー野郎が死ぬだろうか。
「そいつが死んだのはいつかは分かるか?」
「もちろん。すでに1年以上前に死んでるよ」
もしやとは思ったが、やはり違ったようだ。
だが、この蒲生という男が何かしら関わったと思われる代物が、こんな犯罪に使われていたのだ、
こいつは、色々と調べてみる価値はあるようだ。
「………確か、指紋というのは3~4年なら、残ると聞いたことがある。
そいつが最後に触ったのが1年前だとしたら、何か関わった可能性は?」
「ないとも言えないね。でも結局は、なんの打開にもならないかもしれない……」
「……そうだな、お前の言う通りだ」
結局は、直にあの野郎を捕まえないとなんの意味もないのか。
ここで今まで黙っていた真紀が、口を開いた。
「……あなたたち、さっきからすごく面白いこと言っているけど、
単純にその人が関わった人を調べれば良いと思わないの?」
「「あ………」」
俺と青山は、そんな単純なことにも気付かないほど、冷静ではなかったようだ。



319:名無しさん@ピンキー
09/04/24 21:51:43 bF40HAQ1
今回分の投下は以上です。

また早ければ、日曜に投下できそうです。
少しでも面白いと思って頂けるよう精進いたしますので、これからもよろしくお願いしますm(__)m


320:名無しさん@ピンキー
09/04/24 22:23:20 FmyN1+CK
おつ~
だんだんサスペンスが深まってきましたなぁ ノってるウチに書ききってしまうのが吉だぞ

321:名無しさん@ピンキー
09/04/24 23:40:11 P4qNPATG
投下乙です

というか、指紋データベース漁れる青山はいったい何者なんだよww

322:名無しさん@ピンキー
09/04/25 00:31:51 LgO5+dA6
キシマイ堂を見た瞬間にキモウトスレかと勘違いした。

投下乙。

323:名無しさん@ピンキー
09/04/26 22:06:47 Xob5HPms
>>321
創作だから・・・

324:名無しさん@ピンキー
09/04/26 22:17:15 DaQRkgak
レスして頂きまして、ありがとうございますm(__)m

青山はやればできる子なんです。
生暖かく見守ってやってください。

では予告通り8回投下したします。


325:いつか見た夢
09/04/26 22:18:58 DaQRkgak


結局、あの後作戦会議は終わり、俺達はお開きとなった。
青山が例の彼女とデートの約束があるらしく、帰らなくてはいけなくなったからだ。
青山が去った後、真紀が、人って見かけによらないのね、と言ったのが、なぜか印象的だった。
続けてあの女狐は、こともあろうか、俺をデートに誘ったが、丁重にお断りしておいた。
いくら恋人が欲しいと言っても、俺にだって多少は選ぶ権利があるというものだ。


ともあれ、今探るべきことは、カメラに付着していた指紋の持ち主である、
蒲生という人物の人間関係や、仕事、とにかくあらゆる情報だ。
すでにストーカー野郎が、俺達の周りをうろつかなくなって丸一週間以上。
そろそろ何かしてきても、おかしくないはずだ。
一刻も早く、何かしら奴に繋がりそうな情報が欲しい。
今にして思えば、一度奴と対峙したときに、是が非でも追いかけておくべきだったかもしれない。
何もかも手遅れになってしまっては、何の意味もないのだ。
手札が何もない今、焦っても仕方ないとは言え、どうしても焦りが出てしまう。
とにかく今は、青山に任せるしかない。
俺は俺で、自分が今できることをするべきだと、自分に言い聞かせた。



『………!』
『さや………待ってろ、いま……!』
なんだ?
今俺は夢を見ている。
それは自分でも、はっきりと分かる。
『……いちゃん……ごめ……』
よく聞き取れない。
なんだ、何と言っている?
『お兄………私…………ゃんのこと……』
なんだ? 今なんと言った?

――直後に轟音が鳴り響いた。


「………ってぇ……」
俺は、いつもと違う目覚めの感覚に、目を醒ました。
体を起こし、周りを見回す。
「……おれの部屋……だよな」
目を醒ますと、自分が今ベッドではなく、床にいることに気がついた。
ベッドから落ちて、どうも体をぶつけたらしい。
頭はどこも痛みを感じなかったので、頭はぶつけなかったようだ。
のそっとベッドに潜り込み、枕元にある時計を見ると、まだ6時半を過ぎたところだった。
「後10分か15分もしたら沙弥佳が起こしにくるな……」
まだ覚醒しきっていない頭で、ぼんやりと天井を見ながら呟いた。



326:いつか見た夢
09/04/26 22:23:46 DaQRkgak
(沙弥佳か……)
俺は、さっき見た夢を思い出だしていた。
さっきの夢はなんだったのだろう。
まるで、壊れかけたテープのように、音が途切れ途切れになっていた。
そもそも夢の中で音があったこと自体、珍しいことではあるが。
ただ俺と沙弥佳が何かに巻き込まれて、危険な状況であったということしか、分からない。
そして、沙弥佳が最後に言おうとした言葉……。
カチャ
突然、部屋のドアが控えめに開かれると、沙弥佳が入ってきた。

「お兄ちゃ~ん……って、まだ寝てるよね」
なぜかその時俺は、寝たふりをしてしまった。
(何をしているんだ、俺は)
「えへへ~お兄ちゃんの寝顔だぁ……やっぱり可愛いな」
沙弥佳は俺の頬を、指で軽く撫でる。
「お兄ちゃんのこんな顔見れるのも、私だけの特権だもん………」
何か、いつもと違う感じがした。
そもそも、この時間に自分から目が覚めるということ自体ないのだから、
妹が朝俺の部屋に来て起こす前のことなど、知る由もなかったのだが。
「お兄ちゃんは知らないと思うけど……今、学校でお兄ちゃんって女の子の間じゃ有名なんだよ?」
女の子に限らず、そりゃぁそうだろうな。
学校まで、両手に花なのだ。
おまけにその二人は美少女で、俺は高校生だ、目立たぬはずはない。
「いつもクラスの女の子達から紹介してって言われてるんだよ………お兄ちゃんのこと何も知らない癖に……
お兄ちゃんの外見だけで、中身なんて全然見てないような薄汚い子達になんか、紹介できるわけないのに」
本当、馬鹿だよねと付け加える。
……なんだろう、この感じは。
「あやちゃんは本当に私の友達だったから紹介しただけなのに、調子に乗って私にも私にもだなんて……」
沙弥佳は、寝ている俺の体にしな垂れかかってくる。
正直、今ここで起きた方が良いような気がしたが、タイミングを逃してしまった。
「でも最近………お兄ちゃん、私のこと見てくれる時間、すごく減った」
今起きてすぐにでも、そんなことはないと言いたかったが、理性がそれを拒んだ。
「………お兄ちゃん、最近あやちゃんのことばかり見てるよね………ねぇ、なんで?
それに………私が話しかけてもどこか上の空で、何かいつも考えてる……それがすごくつらいよぅ……」
まるで俺が起きていることを、悟っているかのように話す沙弥佳に、一瞬バレたかと思った。
「ねぇ……もっと私のことも見てよ……あやちゃんばかりじゃイヤだよ………それにお兄ちゃん、
他にも別の女の子の匂いがするよ………学校でお兄ちゃんに近づく泥棒猫がいるの?」
その独白であるはずの問い掛けに、俺はドキリとしてしまった。
「お兄ちゃん……?」
いかん、起きていることがバレたか?
仕方ない、起きたふりをしてやり過ごすしかないか……。
「ん………重いぞ」
「あ……」
沙弥佳は目に少し涙を滲ませていた。
急いで、それを拭う。


327:いつか見た夢
09/04/26 22:26:33 DaQRkgak
「えへへっおはよ、お兄ちゃん」
「ん……おはよ、沙弥佳。……目、どした?」
白々しい嘘だ。
だが、気付いたと思わせてはいけない。
「え! あ……な、なんでもないよ! ちょっと目にゴミが入っちゃって!」
「ん……そうか。とりあえず出てってくれ、着替えるから」
しかし、いつもならこの台詞の後は哀しい顔をするはずが、今日は笑顔だった。
それが余計に痛々しく見える。
「うん、先に下行ってるから」
沙弥佳は、笑顔のまま部屋を出ていった。
俺はなんともやりきれない思いになったまま、制服に着替えた。


「面白いことが分かったよ、九鬼くん」
放課後、青山が珍しく興奮気味に話しかけてきた。
俺達は、また例によって技術棟の屋上に来ている。
藤原真紀は、待ってましたと言わんばかりに扉の前にいた。
聞けば、なんとなくよと短く、愛想もなく答えた。
この女に愛想があったとしても、それはそれであまりいい気持ちにならないだろうが。
「まず、蒲生義則についてだけど、製薬会社の営業マンだったみたい」
「営業マン……サラリーマンか」
「それもかなりやり手だったみたいだよ。しかも、その蒲生義則の勤めてた会社がK県のY市にあるんだ」
「Y市? 確か例の事故があった場所だな」「そう。それで蒲生義則は、やり手だった分、周りと良い人間関係を築けてなかったみたい」
「まぁ、よくある話だな」
俺は頷きながら、先を促す。
「いや……ちょっと違うかな? 蒲生義則はむしろ、その仕事ぶりが嫌われる要因だった感じかな」
「グレーゾーン商法ってやつか……でも、人によっちゃぁ稼げてるんなら、それでいいって奴もいたんじゃないか?」
「うん………いなかったことはなかったと思うよ」
「いなかったことはなかった? 何か含みのある言い方だな」
「……蒲生義則に肯定的だった人は、何人も死んでるみたいだから」
「死んでる……?」
こいつはいよいよきな臭くなってきた。
指紋の人物は死に、それに関わり(しかも肯定的な人間)を持った連中も仲良くあの世行きとなれば、
さすがの俺でも怪しいと思うし、興味もわくというものだ。
「それもかなり不自然なね。ある人は列車との事故で、またある人は車との正面衝突で……他にも水難事故だとか。
とにかく事故が起こりそうもない状態で起こってるんだ。水難事故に至っては、別に嵐でもなかったのに転覆してる」
俺は言葉も発さずに、青山の説明を聞いていた。
「最も不審だったのは、今川という人なんだけど……殺されてる……みたい」
「殺人……?」
「それも首をこう、たった一かきで………」
青山は、自分の首を切ったようなジェスチャーをしてみせる。
「……それでお前は、他の人間がどうなったかも調べたというわけか」
「うん。詳しい話は長くなるからやめるけど、皆事故に見せかけて殺されたんじゃないかと思ってる。
証拠がありありであるにも関わらず、事故として発表されたって感じだからね」
青山はかなり興奮していたようで、一旦深呼吸して気持ちを鎮めている。


328:いつか見た夢
09/04/26 22:30:23 DaQRkgak
「しかも、それらの事件は全て、蒲生義則の死亡後にあったってこと。まるで蒲生義則の亡霊がやったみたいにね」
「製薬会社の営業マンが、何故カメラを持ってたか……ってこともだな」
「きっと蒲生義則も死んだ……いや、多分殺された理由はあのカメラにあるんじゃないかと思う。それで……」
青山がまたも珍しく、こちらを上目使いに伺ってくる。
多分、こいつのこんな仕草は、そういう趣味の女にはたまらなく感じさせそうだ。
「なんだ?」
「……そのさ、行ってみない?」
「どこにだ?」
肝心の主語が抜けていてさっぱりだ。
「だから……蒲生義則の家にだよ」
きっとこの時、俺の目は点になっていたはずだ。


さて、青山の提案で来ることになったわけだが。
「紹介するよ、九鬼くん。僕の友達の徳川さんと織田さん」
駅で待っていると、青山が二人の男を連れてきた。
徳川と呼ばれた男は、俺よりも10cmは高く、190近くあるだろうか。
けれども、ひょろひょろでまさに骨と皮だけと言った感じだ。
もう一方の織田と呼ばれた方は、身長こそ俺が勝るが、かなりがっちりとした体格をしており、
短髪モヒカンの頭とどこか聡明さを佇ませた顔は、爽やか好青年といった印象だ。
実際に、織田は紹介された後、自ら握手をもとめ手を差し出してきたほどだ。
「で、こっちが今回の依頼主の九鬼くんです」
青山が二人に俺を紹介する。
「九鬼です。今日はよろしく」
「話は聞いてる。何やら危なげなことに首突っ込んでるみたいだね」
織田は印象通り、爽やかとした口調で話しかけてきた。
「いや、突っ込んだというより、巻き込まれたが正しい、かな?」
「九鬼くん。この二人が今回の主な情報提供者なんだ。二人ともこういうヤバ気な話は好きだから、
今日は一緒に行動することになったけど、構わないよね?」
「構わないも何も、もう連れて来てるだろ。それに、助かりますよ」
俺は二人を見て、軽く礼をした。
「いや~気にしなくていいよ。僕らも片足半分突っ込んでるしねぇ」
片足ではなく、さらにその半分というのは、突っ込んだ方がいいのだろうか。
徳川の話し方は、所謂オタクっぽい話し方だ。
それに青山を加えたトリオは、なるほど、なかなか世の中うまい具合に出来ているようだ。


「君からの話を聞いたとき、またただのストーカー事件だと思ったんだけどね」
織田が、初対面の時以上の爽やかさと、興奮気味な口調で喋る。
見た目だけではやはり人は判断できない。
この男もやはり、青山と同じ人種なのだと痛感した。
「何やらきな臭い方向に行ってるし、俺のジャーナリストとしての魂がこう、なんかね!」
俺は、愛想笑いを浮かべながら、この男の話に聞いていた。
まぁ……言わずもながら、いつものごとく右から左だが。
今俺達は、K県K市にあるという、蒲生が生前住んでいた家に向かっているところだ。
その間、織田という男のどうでも良い話を延々と聞かされた。
ぱっと見は女の子受けしそうなものだが、これでは駄目だろう。


329:いつか見た夢
09/04/26 22:33:33 DaQRkgak
見れば、青山も少し引いてしまっていた。
ただ、一つだけ彼の言っていたことで、頭の片隅に残っていることがある。
それは俺の名前のことだった。
「へぇ、九に鬼で九鬼かぁ。カッコイイじゃないか。知ってる? 九というのは、すごく強いとか、
最上といった意味が含まれていることがある。空想上の生き物で、九尾の狐というのがいるんだが、
これも非常に強いといった意味があると言われてたりするんだ。古今東西なぜか九というのには、
同じような意味で表されることが多い。南米アンデスの神話にも、ビラコチャと呼ばれる創造神が、
やはり屈強な戦士の神を九人引き連れていたっていう話もあるんだよ。同じ神話でエジプトの神話でも、
やっぱり初期の九柱神が最も偉大な神であるとされているしね」
このくだりだけは覚えていた。
それ以外は、全く覚えていない。
そんな話を聞いているうちに、目的の場所である蒲生の家に着いた。

蒲生の家は一軒家だった。
聞けば、家族がいたわけでもないのに、一人こんな家に住んでいたのか。
俺は、この家になぜか漠然とした違和感を感じた。
家主であった蒲生が死に、すでに1年は経っているはずなのに、この家はまだどこか活気を感じたのだ。
この家は、もういない主人を未だ待ち続けているような、不思議な佇まいを感じさせた。
織田が、門に手をかけ、敷地へと入っていく。
俺達もそれにならって、敷地内へと足を運ばせる。
「ここからは、なるべく話さないようにしよう。静かにしないと近所に声なんかあっという間だ」
俺達は頷いた。
ここは清閑な住宅街だ。
場合によっては足音だって響く。

「まずどうします?」
徳川が、織田に問いかける。
「ま、ここはまずは普通に正面からいきましょう」
織田が、呼び鈴を鳴らす。
電気を使わない、古いタイプの呼び鈴だったため、家の中で音はあまり反響しない。
もう一度鳴らしたが、反応はなかった
「こういう古いタイプの家なら、裏に勝手口があるはずだが……」
織田は、俺達にそこにいろとジェスチャーし、足音を偲ばせながら裏へと廻っていった。
青山と徳川は、そわそわと落ち着かなさそうだ。
人に見つからないかと、周りをキョロキョロと何度も伺っている。
はっきり言って、まんま挙動不審者そのものだ。
そう、1年は空き家のはずなのだが、とてもそんな風には感じられない。
そもそも、ここは蒲生の親の代から住んでいたらしく、蒲生が死んでからもう誰も住んでいないはずなのだ。
俺より一足早く入った織田も、その違和感に感づき、話しかけてきた。
「なぁ……この家、なんか変だよな」
「……ええ、まだ生活感を感じますね」
遅れて入ってきた、青山と徳川もやはり同じことを思ったようだ。
「い、一応靴脱いだ方がいいかな……?」
徳川が馬鹿みたいなことを言うが、無視した。



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