09/12/06 23:14:05 rXfAj8bP
男は白蘭といった。
いいにおいのする泡がいっぱいのバスタブの中で、色んなことを話した。
好きな食べ物のこと、将来の夢、好きな有名人のこと、今まで生きてきた内容まで。
最後の内容についてはどうしても気落ちしてしまった。
なぜなら、わたしの人生はお母さんに殺されかけて、あげく殺されるはずが殺してしまって、そのあとは路地裏での身売り生活だ。
なのに白蘭という男は生まれつき育ちもよく、ちゃんとした学校を出て、ちゃんとしたお仕事をしているらしい。
あまりの違いに、さすがに恥ずかしくなってしまった。
俯く私に、後ろから声がかけられた。
優しく穏やかな、牧師様のような声だった。
「ブルーベル、君はさ、身売りなんかしたくなかったんだよね」
「え…えーと、」
「でも、そうするしか生きていけなかった」
「ニ、ニュ~…」
「生きていくためだから仕方のない事だったんだよ。過去は変えられない。でも未来は変えられるんだ。君の思う通りにね?」
「…本当に…?」
あまりに優しい声に、今までの罪が泡風呂の泡と一緒にとけて流れていってくれそうだった。
振り返ろうとした瞬間、白蘭の両腕が肩に回された。
男の人なのに、すごく繊細な腕をしていた。
たくさんの男を見てきたけれど、こんな綺麗な身体をした人ははじめてだわ、と思った。まるで王子様みたい、とも。
その後、もっとたくさんのことを聞きたかったんだけど、質問をしようと開いた口に滑り込まされてきた舌のせいで、おしゃべりはおしまいになった。
続