09/01/05 22:48:06 PlyaNIHd
しばらくはぬるい海の中を漂っている風だった。
身体中に染みわたっていた快楽がカーテンのように引いていく。頭の中に張った白濁した膜が溶け去る。ようやくリチアの神経を麻痺させていた白い化物が帰っていった。
心地よい脱力感にいつまでも身を浸しても居られない。リチアは荒い呼吸をやっとの思いで押さえつけ、着衣を整える。役目を果たしたクンツァイトのソーマが彼の首元に収納されていった。
「……はぁ、はっ……。今の、は……?」
「性器の充血、筋肉の硬直を確認。オーガズムを迎えたと推測します」
「……お、オーガズ、ム?」
聞きなれぬ言葉に、リチアは思わず鸚鵡返しに聞き返す。
「肯定。性的快感の極地。俗語的な言い回しをすれば、『イった』」
「……!!」
顔が炎で炙られているのかと思うほど激しく熱した。
そういった単語は耳にしたことがあったが、まさかこの今自分が経験するとは思いもよらなかった。先程のあれがそうだったなんて。あまりの恥ずかしさに目元には涙さえ滲む。
……このまま消えてしまいたい。
「しかし、それは『豊乳コース』の使用です。よってアナタが羞恥を覚える必要性は皆無です」
珍しく空気を読んだクンツァイトが、どこか慰めるように告げる。
「……そ、そうは言っても……」
とんだ痴態を演じてしまった。
ああも淫らに声を上げて、身体を捩じらせて、…………。
彼にあのようなあられもない姿を見せてしまったのだ。これからは視線さえも合わせられない。
「……とにかく! あ、ありがとう、ございました」
「問題ありません。更なる豊乳をお望みであれば、いつでもお申し付け下さい」
ただ、起伏の薄い何時も通りのクンツァイトの表情だけが救いだった。
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