キモ姉&キモウト小説を書こう!Part16at EROPARO
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part16 - 暇つぶし2ch500:【世界の黄昏に愛する人と】(2) 5/5
09/01/02 03:27:47 3B1y5CUw
「何? いま聞いても平気だから、教えて」
「俺たちがいるこの世界には、いま、おまえと俺の二人きりしかいない。ほかの人間は誰もいないと思う」
「…………」
 さすがに美沙は箸を止めた。
「……待って。『俺たちがいるこの世界』って、どういう意味?」
 微妙な言い回しに、美沙も気づいたらしい。
 陽祐は味噌汁をすすって、
「何の確証もないけど、ここは俺たちがいた世界とは別の、パラレルワールドみたいなもんかと思えてきた」
 お椀を置いて、トマトを一切れ、口に運びながら言い添える。
「おまえのほうが、こういう話は詳しいんじゃねーか、漫画とかアニメで?」
「…………」
 美沙は、じっと陽祐を見つめている。
「……どうして、そう思うの?」
「だって、そうじゃなければ本当にみんな消えたことになるだろ? オヤジやオフクロを含め、人類全てが」
 陽祐は再び味噌汁をすすり、
「それよりは、俺たち二人だけが違う世界に迷い込んだと考えたほうが納得いく」
「ママやパパか、美沙たちか、世界から消えたのは、どちらかってこと……?」
 美沙は箸を置いて、うつむいた。
 陽祐はごはんを口に運んで、
「……あとで聞いたほうがよかったろ?」
「どうせ聞くなら、早いほうがいい。悪い話は……」
 美沙は、うつむいたまま首を振り、
「……でも、確かに現実感ないね。世界中の人間が消えて、美沙たち二人が残ったなんて」
「戦争とか疫病で全滅したならわかるけどな。いや、そのほうがいいって言ってるわけじゃねーけど」
 卵焼きを口に運び、
「全人類が跡形もなく消えるよりは、理解できるってことで」
「なんだかお兄ちゃんって、冷静だね」
「現実感がねーからな、おまえの言う通り。だけど、まだ消えただけのほうが救いがあるか」
「救いって……?」
「消えたときと同じように、そのうち急にまた、みんな戻って来るかもしれねーだろ?」
 あるいは、俺たちが元の世界に戻れるか……と、陽祐は付け加える。
「…………」
 美沙は無言のままもう一度、箸を手にとった。
「無理して食わねーでいいぞ」
 陽祐が言うと、美沙は首を振り、
「食べる。ママやパパがいつか戻って来るのなら、この世界で美沙たちも、元気に頑張らなくちゃ」
 美沙は顔を上げて、まっすぐ陽祐の顔を見た。
「そうでしょ、お兄ちゃん?」
「そうだな……」
 陽祐は眼を細めた。
 しっかり者の妹が意外と芯まで強いことは、新しい発見だと思った。


【第二章 幕】

501:【世界の黄昏に愛する人と】投下終了
09/01/02 03:30:20 3B1y5CUw
次の投下は1月3日以降になります。
この手の話はダメ、つまらねー! って方は、NGワード【世界の黄昏に愛する人と】で……

502:名無しさん@ピンキー
09/01/02 03:45:52 Ppa4ZhbD
まさかのリアルタイムに遭遇w

GJですた

503:名無しさん@ピンキー
09/01/02 04:06:11 jJVI5mEY
GJ!! まじGJ!

504:名無しさん@ピンキー
09/01/02 04:07:28 ZtMlyIiv
おもしろくなりそう、
頑張って

505:名無しさん@ピンキー
09/01/02 21:37:10 Ebtf1zdN
GJダヨー!
ウヒョヒョーだよー!

506:名無しさん@ピンキー
09/01/02 22:19:13 7v5XG9eV
>>501
GJ!
富樫義博の漫画「レベルE」にでてきた超能力の例を思い出した
娘が両親の喧嘩による極度のストレスから父親を自分の心の中に閉じ込めて父親を改心させたって話

507:名無しさん@ピンキー
09/01/02 23:46:42 cpI9k2Ei
なるほどね、兄以外はいらない・・・と

508: ◆3vvI.YsCT2
09/01/03 04:53:21 JdF7eMxf
かくなる上は拙者も作品を投下いたしたいと思う所存に在りますでござる。
……全然キモくないけど、なんというか、最近の妹もの作品の内容を反映させた作品になれれば幸いでござる。
(参考文献:忘却録音とか俺妹とか)

ちょっと長めの作品になり、しかも完結してないという最悪のパターンでござるが、
とりあえず現状の状態で投下するでござる。

タイトル:サワーデイズ(仮)
内容:クローズドタイプのキモウトが出てきます。

↓いざ!


509:名無しさん@ピンキー
09/01/03 04:55:21 JdF7eMxf
この想い。もし遂げられるなら、悪魔に魂を売り渡してもいい。
―そう思っている。本気で。

私は夢を見る。私の年子の兄―御門迅(みかど じん)と手を繋いで一緒に春の野を行く夢を。
花咲き誇る丘の上。桜舞い散るその場所で、私は兄に抱きつく。
兄はそんな私をやさしく受け止め、唇にキスをするのである。
―そして二人は結ばれる。

そういう夢を見る。願わくば、これが夢でなければ良いとも思う。
しかして現実はそうともいかない。

何の間違いか、私こと御門華音(みかど かのん)は実の兄のことを一人の男性として愛してしまった。
いつの頃からか。ずっと昔からだ。
初めの頃は、これが人間として普通のことだと思っていた。
家族のことを好きでいて、愛しているのは誰しもそうである、と小学校の道徳の授業ではそう教えていた。
だから、小学校の、高学年まではずっとお兄ちゃん好きで通していた。
お風呂にも一緒に入っていたし、一緒の布団でも寝ていた。
ある日突然、それが許されなくなった。
母は兄と私が一緒の風呂に入ることを禁じ、一緒の布団に入ることを禁じられた。
何故? きっかけは単純だ。禁止令が発布される前の日に、私には初潮が訪れていた。
母にそのことを話したらその日の晩にはお赤飯が出されていたことを覚えている。
二つの事象は繋がっていた。……母は何も言っていなかったが、今ならそう言える。
もちろんその時の私は理不尽な命令に対して拒絶をした。何故なのか、説明を求めた。
だが、返ってきた答えは「みんなそうしてるし、あなたたちもそうするべき」との一点張りだった。
母は従兄弟の努お兄ちゃんと友香お姉ちゃんを例に出して私たちにそう言い包めた。
努お兄ちゃんと友香お姉ちゃんは5歳ほど歳の離れた姉弟で、友香お姉ちゃんはその時丁度二十歳だった。
二人は小学生の頃から別々の部屋を与えられており、私たちよりずっと早く別々に風呂に入るようになったそうだ。
だから、それに比べたら私たちのそれは、遅すぎるというのだ。
私は納得できていなかった。しかし、兄は納得した様子だった。
それどころか「華音は甘えんぼさん過ぎるんだ。だから、もうちょっと大人にならないとな」とまで言ってきた。
そして、「分かったかい、華音。大人しく言うこと聞いてくれたら、お兄ちゃんちゅーしてあげるからな」
と頭を撫でてくれたのが決定打となった。
私はうん、とそのまま頷くと、その日から独りでなんでもするようになった。
それからもう五年にもなるだろうか。私はもう16歳になった。しかし、約束はまだ果たされていない。

―私はまだ、子供だということだろうか。


510:サワーデイズ 2 上のは1 ◆3vvI.YsCT2
09/01/03 04:57:21 JdF7eMxf
暗闇の中、ひたすらに兄を想う。目を開けたまま見る夢があるとすれば、私は瞬きすら惜しんでその夢を見るだろう。
せめて、夢の中ならば、私は兄と自由にいられる。一緒にキスをすることも、抱き合うことも―
股間に手が伸びる。
兄を想い、寂しくなり、涙が出そうなときは、こうやって自分を慰める。
それが一時の快楽でしかなく、心の隙間を埋められる行為でないことは百も承知の上だ。
体だけが大人になってしまった。心はまだ子供のまま。兄離れは、できていない。
繰り返される虚無との対面。私は、この家に於いて、世界に於いて孤独を患う。


「華音。朝だよ、起きなさい」
とうに目は覚めている。兄が起こしに来るまで、ずっと目を瞑って待っていた。
すう、すう。寝ている振りだ。
私は、そうそう良い子と認められるような娘ではなく、ちょっとだけわがままで手のかかる娘である。
少なからず、そう思われるように生きていくつもりだ。―兄に構ってもらう為に。
「華音は全くお寝坊さんなんだからなぁ、これだから、世話が焼けるよ……っと」
兄が布団をめくりにかかる。
「……寝相も悪いし……」
そんなことは無い。兄が部屋に来る直前に、寝巻きをはだけさせておいたのである。
胸元のボタンはいくつか開けておいた。下半分も、下品にならない程度にずり下げておいた。
寝るときにブラジャーは着けない。見えているはずだ。
自慢ではないが、私はスタイルに自信がある。胸はDカップだし、ウエストも綺麗にくびれている。
身長はちょっと低めだけれど、でも雑誌の読者モデルに誘われたことだってあるし、
結構良い線行ってるんじゃないかなって思ってる。
会ったことも無い男子からラブレターを貰った事だってある。全部、開封もせずに捨てたけど。キモいし。
だから、兄だって、そうそう私の体を意識しないということも無いだろう、と睨んでいる。
私は女の子である。兄は、男の子である。
理性が私と兄との関係を抑制しようと、本能のレベルではそのくびきからも開放されるだろう。そう信じている。
……ただ残念なことは、これを続けてから今までに兄がそういう気分になった気配がない、ということだ。
「なにしてるのよ、お兄ちゃんのエッチ!」
しかし、恥じらいは必要である。私はだらしの無い娘かもしれないが、貞操観念の緩い女ではない。



511:サワーデイズ 3 ◆3vvI.YsCT2
09/01/03 05:00:09 JdF7eMxf
ある年の四月に兄が生まれた。翌年三月に私が生まれた。
年子ではあるが、学校での学年は同じである。
ゆえに、私と兄とが距離的に離れたことは無い。
幼稚園から小学校、中学校。高校に至るまで。
私は兄と一緒の空間にいることを選択した。
この選択が正しかったのかどうか、疑問に思うこともある。

私と兄が近親者であること以前の問題である。
接触回数の非常に多い人間、例えばそのもの親や親 友間に於いて、
男女間の関係に発展することは全くといって良いほど無い。
これはウェスターマー ク効果といって、我々生物全般に刷り込まれた遺伝子の命令のようなものらしい。
卵から孵った雛 が初めて視る動物を親だと思い込むそれと同じ類である。
それらは誰に教えられるでもなく、みん な自然にそうなるという。

だとすれば、生まれてからずっと一緒にいる兄が、
私のことを異性と見做さないのもまた自然にな された選択だといえる。
―だが、現に私は兄を異性として認識している。
兄は、私と血の繋がりを持つ者だ。私だけがそ うであるはずなど、ない。そう思いたい。そうであって欲しい。

いっそのこと、兄と離れて暮らし、より女性らしくなり
兄妹という関係を薄らげた状態で兄と接すればよいのではないか、と考えたこともあった。
しかし、それをやるためには私が我慢をし続ければいけないこと、
及び兄にたかる「何か」の存在 を軽視できなかったため、今に至っている。

兄は取り立てて特徴のある顔をしているわけではない。
いわゆるイケメンかと聞かれれば、私であ ってもそうでもない、と答えてしまうほどに普通の顔をしている。
服飾センスは無い。(もっとも 、これは私が任意で兄をごまかしているからだが)
積極性はあまり無い。―だけれど、一つだけ 大きな欠点がある。
兄は、決定的に人に甘い。私に対してもそうだが、万人に対して甘い。
まるで宮沢賢治の詩に出てくる人間のように。
我慢強く、いつもにこやかに笑い、困った人を放っ ておけず、人と一緒に泣き、笑い、励ましてもくれる。
優しすぎるのである。―私が、手放したくなくなるほどに!

そんな兄のことだから、いつ私以外の女が纏わりつくか知れたものじゃない。
だからいつ何処であ ろうと監視の目を光らせておかなければ気が気でない。
そのためにずっと一緒にいる道を選んだ。
お陰で、今のところ兄は彼女いない暦は年齢と同じに保たれている。
もっとも、私を彼女とカウントしたならば、彼女いない暦は常にゼロで固定だが。


512:サワーデイズ 4 ◆3vvI.YsCT2
09/01/03 05:02:07 JdF7eMxf
問題はある。

私と兄が兄妹の関係であることは周知であり、これをして極度にいちゃつくようなことがあれば
関係が疑われるだろうことにある。

仲の良い兄妹。
それすらなるべくならば避けておくべき領域だ。……外聞上は。
目の前にいるのに。友達のように接することすら控えねばならないというのは、とても辛いものだ。
せめてもの救いは、兄が帰宅部で、私も帰宅部で「偶然」帰り道が一緒になるということくらいか。
あまり学校とは関係が無いが。その時だって雑談をする程度で、手を握ったりなんてとんでもない。
普通の恋人同士がやるようなことは何一つ出来ない。
だって、私たちは体面上恋人同士ではないし、もしそのような噂が立てば一番困るのは兄である。
兄に迷惑をかけることだけは全力で避けたい。
例えば手作り弁当。やってみたいと思っているが、周囲から冷やかされるのが怖くて出来ない。
同じクラスであるのに一緒にお弁当を食べることさえままならない。
これで、本当にいいのかな……と思うことしきりである。

兄を好きでいること。
そのことに後悔は、したくない。
そのために出来ることはないか―
一人で考えていてもなかなか思いつかない。時間は刻々と過ぎてゆく。

相談相手がいないわけでもない。私にだってちゃんと心の内を吐き出せる友人の一人や二人はいる。
ただし、ちょっとだけ変わっている娘なのでそんなにまともな回答は返ってこない。
……ま、話を聞いてもらえるだけでも有難いし、秘密を守ってくれているだけでも感謝すべきなんだけどね。

513:サワーデイズ 5 ◆3vvI.YsCT2
09/01/03 05:04:43 JdF7eMxf
相談しましょう。そうしましょう。

一日のうちで一番の楽しみである、兄との下校ツアーをキャンセルして向かうは学校の図書室。
そこには司書席に座りながらBL小説を机に積み上げ、ものすごい速度でページを捲る少女がいる。
名前は神楽坂朱未(かぐらざか あけみ)。私と同じく高校二年生である。
分厚い瓶底メガネは小さ い頃に暗いところで本を読みすぎたせいだとかなんとか。
今はちゃんと本を読むときは明るい場所で 読むようになったので、近視は進まなくなったのだとか。
いやに長い髪をゴムで纏めてポニーテール のようにしている。
本人曰く、「これが一番本読みに適した髪型さね。前髪かからんし」とのことだ 。
切ればよいんじゃないのか? との意見に対しては「切るの面倒」との返答だった。
髪を洗う手間 は度外視されているらしい。
実際のところ、朱未の髪はオタク特有の―手入れされていないぼさぼ さのそれとは違い、
エナメルの如きキューティクルが女の命たる輝きを存分に発揮していた。
ただし 、それに気づくものは私のほかにはいない。


ひたすらにBL小説を読む、朱未の存在こそが彼女を魅力のある異性とは映していなかった。
それは同性にとってもそうであるようで、一時期彼女が教室内で常に浮いた存在であったことは否定 はしない。
ただし本人は浮いていようが浮いていまいが他人に興味など無く、
ひたすら小説や物語にのみ興味の矛先が向いていたため、寂しさなどは感じなかったようだ。
人から見て孤独であるように 見えたが、彼女は決して孤独ではなかった。
―私とは正反対だ。

だから、私は彼女に憧れた。
彼女の強さを手に入れたいと思った。
なので、勇気を出して彼女に話し かけてみることにしたのだ。


514:名無しさん@ピンキー
09/01/03 05:05:42 6eCGb/0t
連投支援

515:サワーデイズ 6 ◆3vvI.YsCT2
09/01/03 05:07:28 JdF7eMxf
「ねえ、あなた、何でそんなにいつも幸せそうなの?」

今思えば嫌味な質問だったかもしれない。
でも実際に私は彼女の生き方と言うものに憧れていたし、 その疑問は嘘ではなく本当に知りたかったことだ。
「知りたいかいな? うひひ、ならこれあげるから読んでみ~」
朱未が私に渡してくれたのは一冊の小説だった。
表紙には線の細い男性とボーイッシュな女の子が描かれている。
何かの漫画だろう。その時はそう思 った。
「これ、貸してくれるの? ありがとう。早速、家に帰って読んでみるね」
その渡された本にどういった秘密が隠されているのか。
なんてことはなかった。秘密など隠されていなかった。

渡された本は俗に言うBL(ボーイズ・ラブ)と呼ばれるジャンルの本であり、
漫画ではなく小説、 それもライトノベルというジャンルになるだろうキャラクタ小説の一種であった。
表紙に書かれてい たカップルは男女のペアではなく、両方男であり、作中この二人は行為にまで発展する。
行為は男女間のそれと変わりなく(多分)、性別を除いて通常の恋愛小説とそう変わりなく話は展開 していく。
そこに「男同士だから宜しくない」というような社会通念は入り込まない。
まるで、男と男が愛する ことは当然かのように描かれる。
女性の存在は極めて薄く描かれる。それが、その世界での価値観だった。
はっきり言う。訳が、分からなかった。
だから、私は朱未にも、ちゃんとそう言った。すると
「ふふふふふ。最初は誰だってそうさね。でもね、これがまた辞められんのですよ……」
と言い、今度は二冊程鞄に捻じ込まれた。そして家に帰って読みきってみせた。
やはり感想は変わりなかった。何が面白いのか? 疑問はそれに尽きる。
「説明させるのかい? なぁーがーいよぉ。それでも聞く?」
したり顔で笑いながら私に問いかける朱未に、「……うん」と答えてしまったことが
彼女に私を友人 だと認められた瞬間であったような気がする。
場所を図書館に移して、朱未の講義は閉門まで続いた。私はただ聞いてるだけだった。
相変わらず、理解は出来なかった。だけど一つだけ分かったことがあった。
好きなものを好きでいることを厭わないこと。これが彼女の、朱未の強さだということだ。

「やぁ御門くんじゃないかい。あちきのお勧めBLでも借りていくんかい?」
私の接近を音だけで感知したらしい。本から目を離さずとも私を認識できているようだ。行儀は悪い が。
「あのね、今日は乙女の方」
乙女、というは隠語のようなものである。本来なら乙女といえば乙女小説、
つまり女性向けのハーレム小説を指すものだが、私と朱未の間ではその意味が違ってくる。
―お兄ちゃんのことで相談がある。
朱未と私の間だけで通じる言葉のやり取り、である。
朱未はこの言葉の重要さを良く知っている。だから、軽い意味で私がこのような相談を持ち掛けないことを理解している。
「ん、ああ。OKですお。今人居ないみたいだしの」
朱未はBLから目を離し、辺りを確認しながらそう言った。

516: ◆3vvI.YsCT2
09/01/03 05:10:50 JdF7eMxf
というわけで今のところはここまででござる。
(実は今日書いた内の半分であることは内緒)
展開の遅さ、gdgdじゃねえ?など、文句は随時受け付けておりまする。無視するけど。

あと、「ぼくの考えた妹」は作品に登場する可能性がありますのでどんどんアイデアをくださいまし。
以上。お目汚し失礼いたし申した。これにて!

517:名無しさん@ピンキー
09/01/03 08:56:22 +oqnqCp8
僕の考えた妹
・右手がドリル
・汗がニトロ
・スカートの中から武器が出てくる
・物凄く細かいゴリラのモノマネができる

・・・これどうすんだよ・・・w

518:名無しさん@ピンキー
09/01/03 09:19:01 GvKmgHqR
シスマゲドン?

519:名無しさん@ピンキー
09/01/03 09:35:19 5dn1iHFy
他のはともかく。
『スカートの中から武器が出て来る』はキモ姉妹のたしなみじゃないか?


520:名無しさん@ピンキー
09/01/03 11:01:18 IUGs019M
>>516
GJ!!

521:名無しさん@ピンキー
09/01/03 11:47:29 K3ZLfhsn
>>516
乙です。

このBLちゃんが、兄を巡る、恋のライヴァルとなっていくわけですか。
となると、兄がどういう人間なのか、もう少し詳しい描写が欲しいところですな。

522:名無しさん@ピンキー
09/01/03 12:44:31 U7Hs43nc
不思議に思ったんだが
キモ姉やキモウトは寵愛対象が性転換した場合
どういう反応をするのだろう

523:名無しさん@ピンキー
09/01/03 12:57:16 3sKtPPUD
>>519
そんなっ!胸の谷間から凶器が出てくるのはキモ姉妹じゃないのか?

524:名無しさん@ピンキー
09/01/03 13:24:49 dDqsySjR
>>522
TSものでは日常茶飯事だが
「兄は女としては0歳も同然だから私が上」という論法で徹底的に性的な意味で攻めまくってくるのが常道

525:名無しさん@ピンキー
09/01/03 17:17:06 znOQ3miP
>>519

それはなんというかメイドさんの嗜みな気がする

526:名無しさん@ピンキー
09/01/03 17:17:27 wJcXqFOd
>>523
むしろ、対兄弟用の凶器が足の間に(ry

527:名無しさん@ピンキー
09/01/03 21:21:27 LcZf8gXq
こえ~
俺もキモウトに襲われてーな

528:名無しさん@ピンキー
09/01/03 21:23:16 9AzPi92b
URLリンク(dec.2chan.net)

529:名無しさん@ピンキー
09/01/03 22:14:24 gTbBxhHK
>>528
kwsk

530:名無しさん@ピンキー
09/01/03 22:16:01 gTbBxhHK
あげちまった……
早く自宅から書き込みたいぜ

531:名無しさん@ピンキー
09/01/03 22:24:06 nenYoCDT
犬星?

532:名無しさん@ピンキー
09/01/03 22:40:47 uYdddhBJ
巻田佳春だと思うよ?

533:名無しさん@ピンキー
09/01/03 22:56:55 dLSzsSSq
>>528
・・・ゴクリ

534:名無しさん@ピンキー
09/01/03 23:42:17 2U2EZF/A
中に     \  きゅんきゅん        / 子
  出したら   \      どぷんっ!   /  作
  赤ちゃんが!!\  きゅうっ      /    り
            \    びゅぷっ/中出し
精  ふあああんっ!!! \∧∧∧∧/       小学生嫁
液            <      >   和
で  中はいやあ… < 予 巻  >    姦
おなか熱いよおっ…!!<    田  >        妊娠
─────< 感 佳 >─────
  八王子海パン   <   春 >           び
   突         <  !!! の > びゅるるっ     く
と   撃        /∨∨∨∨\            ん
ら    騎      / テンプレ   \ きゅっきゅっ  っ
ぶ     兵   /下      RiN  \          び
る      隊/  の  中学生     \ ずぷっ   く
すくらんぶる/   口         ロリ  \ずぷぷっ んっ

535:名無しさん@ピンキー
09/01/03 23:50:03 Hy8Qw6j1
態度のデカイ男キャラがウザくて(流される女キャラもだが)
どうも受け付けられないんだよな、この人の漫画

536:名無しさん@ピンキー
09/01/04 01:39:04 CfpJ+Id8
このスレってどっちかっていうと迫られるほうだしね

537:【世界の黄昏に愛する人と】投下予告
09/01/04 01:40:33 EcflRkum
全11レス、投下します。
続きものの途中まで。まだキモウト性は発揮してません。

それでは↓

538:【世界の黄昏に愛する人と】(3) 1/11
09/01/04 01:41:26 EcflRkum
   【世界の黄昏に愛する人と   第三章 美沙(二)】


 朝食後、陽祐と美沙は自転車に乗って町を探索した。
 世界中の「ほとんど」全ての人間が消えたらしい。
 だが、わずかな例外である自分たち兄妹と同様、この世界に残っている人間が、ほかにいるかもしれない。
 あるいは、なぜ自分たち以外の人間が跡形もなく消えたのか謎を解く手がかりが見つかるかもしれない。
 それとも、この世界が推測通りのパラレルワールドであるならば、その証拠が見つかるかもしれない。
 車が通らないので、車道上を二人並んで自転車を走らせた。
 バス通りを駅へ向かう。道沿いに並ぶ商店はシャッターを下ろしたままだ。
「……午前一時にみんなが消えたとして、その時間でも道を走ってる車やトラックはいたはずだよな?」
 陽祐は言う。
「だったら、運転手が消えた車が事故を起こしてもいいのに、そんな形跡は見当たらねーな」
「でも、道端に停まってる車はあるね。路上駐車っていうの?」
 美沙が言って、陽祐はうなずき、
「可能性としては、走行中の車だけが全て、運転手ごと消えたってことか」
 行く手の信号が赤になり、美沙がブレーキをかけようとしたが、陽祐はスピードを落とさない。
 美沙は「もうっ!」と怒りながらも、それに従った。横から車が飛び出して来ることは当然、なかった。
 その先にコンビニがあった。店内は明かりがついているが、外から見える範囲で人影はない。
「ちょっと寄ってみよう」
 店の前に自転車を停めて、中に入った。
 客も店員もいないこと以外は何の変哲もないコンビニエンスストアだった。
 陳列棚が寂しく見えるのは早朝に行なうはずの商品補充がされていないからだろう。
 残っていた弁当を手にとってみた。賞味期限はきょうの昼まで。おにぎりやお惣菜も同じ。
 だが、冷凍食品のコーナーには、それなりの数の商品が並んでいる。
「食料は当分、なんとかなりそうだ。冷凍庫の電源が切れなきゃだけど」
「停電とかするかな?」
「わからん。トラブルさえなければ、発電所は自動で送電してるもんだと思うけど」
「ここで食べ物を手に入れるとして、お金はどうする? パパのお財布から借りておく?」
「店員もいないのに、誰に金を払うんだよ」
「レジに入れておけば……」
「本気で言ってる?」
 陽祐は美沙の顔を、じっと見つめた。美沙は気まずそうに眼を伏せ、
「いちおう本気だけど……変?」
「いや、おまえらしいけどな」
 コンビニを出て、再び駅へ向かって二人で自転車を走らせた。
 駅へ行って何をしようという考えはなかったが、ほかに目指す場所もない。
 駅前の大型スーパーは駐車場のゲートバーが閉まり、案内板に『定休日』と表示されている。
 本来は水曜定休だから、きのうからそのままということだ。
 駐車場の奥にある店舗の入口はシャッターは下りていないが当然、施錠されているだろう。
 いざとなればガラス戸を割って押し入るほかはない。
 駅前にも、やはり人の姿がなかった。
 ロータリーにタクシーを含めて数台の車が停まっているが、いずれも車内は無人だ。
 銀行はシャッターが下りていた。それを指差して、陽祐は言う。
「世界が元に戻るときに備えて、いくらかカネを持ち出しておくか? いまなら誰も追いかけて来ないし」

539:【世界の黄昏に愛する人と】(3) 2/11
09/01/04 01:42:12 EcflRkum
「閉店してるから、お金は全部、金庫にしまってあるんじゃない?」
 美沙が冷静に答えて、陽祐は苦笑いする。
「おまえの言うとおりだな。どこからか爆弾でも手に入れてくるしかねーや」
 交番も無人だった。中を探せば拳銃が見つかるのだろうか。
 そんなものに触ってみたいと思わない自分は、まだ正常なのだろう。
 いずれ、この世界に絶望したら、どうなるかわからないけど。
 駅のシャッターは下りていなかった。午前一時といえば最終電車が到着する前後だ。
 終点は、まだ先である。この駅を出発した電車は、そのまま乗客ごと消えたのか。
「駅の中を見てみる?」
 美沙が言って、陽祐は首を振る。
「いや、無駄だろう。それより、ほかに確かめておきたい場所がある」
「どこ?」
「スタンド」
「えっ……?」
 きょとんとしている美沙にそれ以上は説明せず、陽祐は自転車を出す。
 ロータリーから放射状に伸びている道の一本を進むと、すぐ先にセルフ式のガソリンスタンドがあった。
 給油機の前まで自転車を乗りつけて、料金投入口のイルミネーションが点滅しているのを確かめる。
 どうやら使える状態だ。料金は前払いで機械に入れなければならないけど。
 美沙がたずねた。
「ガソリンなんてどうするの?」
「車で移動することになったとき、必要だろ?」
「車? お兄ちゃん、運転できるの?」
「たぶん。うちのオートマなんてオモチャみたいなもんだろ」
「……美沙、一緒に乗らなきゃダメ?」
 陽祐は妹の顔を、じろりと睨む。美沙は苦笑いして、
「冗談だって」
「この世界で一人きりになるのと俺の運転、どっちが怖いだろうかね?」
「……やめて! やだ、一人になるのは考えたくない……」
 美沙は本気で怖がる顔をした。冗談のつもりが脅かしてしまったようだ。
 これは自分が道化を演じるしかないと、陽祐は苦笑いしながら、
「情けねーこと言っていいか?」
「え……?」
「俺も一人きりになるのはごめんだ。頼むから一緒に乗ってくれ」
 両手を合わせてみせると、美沙は笑ってくれた。
「……いいよ。これから、どこへ行くときも一緒ね」


 先ほどのコンビニまで戻って、当面の食料と必要な物資を調達することにした。
 もったいないので賞味期限寸前の弁当は昼食に充てる。
 さらに夕食以降の食材としてカット野菜と冷凍肉を手に入れる。
 ガスや水道が止まったときに備えてミネラルウォーターと缶詰も確保した。
 バンソウコウや薬は家にあるはずだが、予備があってもいいだろう。
 ほかに入用のものはないか探して、買い物カゴを手に店内を回る陽祐のそばから、
「ちょっとだけ待ってて」
 と、美沙が離れて行き、棚から何かの商品をとってレジに向かった。

540:【世界の黄昏に愛する人と】(3) 3/11
09/01/04 01:43:00 EcflRkum
「どうした?」
「ごめん、ちょっと……」
 美沙はカウンターの向こうに回り、手にした商品をレジ袋に入れている。
 陽祐にも何となく理解できた。つまりは女の事情だ。
 考えたら、美沙もいちおう女なのだ。実の妹だから意識しなかったけど。
 世界中の人間が消えて、自分以外でたった一人残った相手が妹だったというのも色気のない話である。
 この世界のアダムとイブにはなれねーな、俺たちじゃ。
 いっぱいにふくらんだレジ袋をそれぞれの自転車のカゴに押し込み、陽祐と美沙はコンビニをあとにした。
 結局、金は置いてこなかったが、美沙は何も言わなかった。
 バス通りを家に向かって走りながら、美沙が言う。
「もし、世界がずっとこのままなら、どこか田舎に引っ越して農業を始めるのもいいんじゃない?」
「農業?」
「だって、コンビニやスーパーの食料なんて、すぐになくなっちゃうだろうし」
「そっか……。コメは長持ちするから当分は米屋の倉庫を漁るにしても、野菜がな……」
 陽祐は、ふと気がついて、
「この世界って、俺たちのほかに動物もいないのか?」
「えっ……?」
「向かいの家の犬は消えてたし、鳥が空を飛んでる様子もないだろ? それに、蝉の声もしないし……」
「そういえば……」
「人間だけが消えて、牧場の牛や豚とかペットの犬や猫が取り残されてたら悲惨なことになるけど」
「そうだね、その点は救われてるみたい……」
 うなずく美沙に、陽祐は眉をひそめて、
「でも、それじゃ俺たち、肉も魚も食えねーじゃん。せめてニワトリを飼って卵くらい食いたかったけど」
「そうだね……」
 美沙は苦笑いする。


 家に帰ったが、まだ昼食には早かった。
 陽祐と美沙は、プリンター用のA4の白紙を三枚、ダイニングのテーブルに広げて、

  1・いま現在わかっていること
  2・考えられる原因
  3・今後の対策

 を、思いつく限り書き出した。
 わかっているのは、世界中の人間がきょうの午前一時前後に消えた「らしい」こと。
 この町も調べた限りでは無人である「らしい」こと。動物も全て消えた「らしい」が植物は残っていること。
 いまのところ、世界のどことも連絡がつかないこと。
「『らしい』ってのは、この世界に残って途方に暮れている人間が俺たちのほかにいないと言いきれないから」
「そうだね……」
 そのほか、先ほど見て来た町の状況についても一枚目の紙に書き足した。

  ・コンビニ △(品揃えに限りあり)
  ・スーパー ?(ガラスを割って押し入れば?)
  ・ガソリンスタンド ○(ただし現金で前払い)

541:【世界の黄昏に愛する人と】(3) 4/11
09/01/04 01:43:46 EcflRkum
「これは今後の対策に絡んでくるけど、もし野生動物まで全部消えてたら、自然の生態系はどうなるんだ?」
 腕組みをして言った陽祐に、美沙がきき返す。
「食物連鎖とか、そういう話?」
「植物の中には昆虫が花粉を運んで育つのもあるだろ? 農業やるにしても、そこをきちんと考えないと」
「そうだね……」
 二枚目の「考えられる原因」は、全てが想像でしかなかった。推理といえるほどの根拠もない。
 陽祐は最初に『パラレルワールド』と書いた。
「でも、普通はパラレルワールドって歴史のIF(イフ)みたいな世界だよな? 信長が桶狭間で負けたとか」
 クエスチョンマークを書き加えながら、
「人間が誰ひとり存在しないのに家や車があるこの世界は、それとは違う気がするんだ」
「そうだね……」
 うなずいている美沙に、陽祐は苦笑いして、
「おまえって、さっきから『そうだね』ばかりだな」
「えっ? ……ごめんなさい」
 美沙がうつむいてしまい、陽祐はあわてた。
「いや、悪いってわけじゃなくて。こんな状況じゃ、ほかに言葉が出てこなくても仕方ねーよな」
 書いたばかりの文字を棒線で消しながら、
「俺が適当に思いつく限りのことを書くから、おまえも何か気づいたら意見を言ってくれ」
 陽祐は原因の二番目として『コピーワールド』と書いた。
「コピーってのは、元の世界から人間だけ取り除いて、そっくり同じものを作ったってことだ。つまり……」
 下に線を引っぱって、書き添える―『ニセモノの世界』
 美沙がその文字を見つめながら、
「……世界をコピーするなんて、仮にそんなことができたとしても、誰が何のためにやるの?」
「わからんけど、宇宙人か、どこかの秘密機関が、追い込まれた人間の心理を観察するためとか」
「よくそんなこと思いつくね、お兄ちゃん……」
 あきれているのか感心したのか、美沙は、まじまじと陽祐の顔を見た。陽祐は苦笑いして、
「俺だって漫画くらい読むからな。予備校に通い始めてから、ほとんど買ってないけど」
 三番目には『夢またはバーチャル』と書いた。
 美沙が小首をかしげ、
「夢……?」
「世界を丸ごとコピーするより早いだろ。本当は俺たち、頭に電極つけられて怪しい夢を見せられてるのかも」
「夢だとしたら、ここまでリアルな夢はないと思うよ」
「そこが宇宙人の超科学だよ。さっき頬をつねったら痛かったし」
 陽祐は言って、にやりとした。
「おまえは試した?」
「えっ?」
「つねってやろうか、頬?」
「やめてよ」
 ふくれ面をする美沙の頬に、陽祐は手を伸ばす真似をして、
「そのふくれた頬、つねり甲斐ありそーだ」
 美沙は、じっと陽祐を睨んだ。
「……あー、すまん」
 陽祐は手を引っ込めて、自分の頬を掻く。
「真面目にやろうな」
「そうだよ」

542:【世界の黄昏に愛する人と】(3) 5/11
09/01/04 01:44:37 EcflRkum
「……で、お次は『超常現象』だが」
 陽祐は用紙にそのままの言葉を書いた。
「人が原因不明のまま突然消えるといったら、普通はこれだけど」
「つまり、この世界は美沙たちが元いた世界だけど、ほかのみんながいなくなったって可能性ね?」
 美沙が言って、陽祐はうなずき、
「乗員全員が姿を消した『マリー・セレスト号』が有名だが、世界中の人間が消えるのとは規模が違いすぎる」
 もっとも……と、陽祐は言い添えて、
「常識じゃ説明つかないことが起こるのが超常現象だ。どんな規模で起きてもおかしくないとは言えるけど」
「そうだね……」
 言ってから美沙は、はっと気づいたように、うつむき、
「……ごめんなさい」
「いいって」
 陽祐は笑って、
「超常現象の場合だけど、消えた人間がどうなるか、二通り考えられるな」
 そう言うと、用紙に書き加える。

  ・別の世界で生きている
  ・ブラックホール? に飲み込まれて消滅

 それを見た美沙が眉をしかめた。
「やだ……」
「……すまん、俺のほうは謝ってばかりだ」
 陽祐は『消滅』の字を棒線で消した。
 美沙が陽祐を、じっと見つめて、
「お兄ちゃんは、ママやパパがいなくなって平気なの?」
「まだ現実感がない。とか言ってる場合じゃねーけど、オヤジやオフクロが完全に消えたとは考えられない」
 陽祐は消した字を、さらに塗り潰しながら、
「そのうち何でもない顔をして帰って来るんじゃないかと思う。だったら消滅なんて書くなって話だけど……」
「美沙も、ママたちはどこかで無事にいると思う。そう思いたいよ。でなきゃ美沙、普通でいられないよ」
「ああ……、俺だってそうだ」
 陽祐は二枚目の紙を脇によけて、三枚目を引き寄せた。
「今後のことだが、一つは、この世界を徹底的に調べるって選択肢がある。世界中を飛び回るくらいの覚悟で」
「……それでママたちが帰って来ると思う?」
 美沙が陽祐を見つめながら言って、陽祐は首を振り、
「わからん。世界中の人間を消すとか世界をコピーするとか、とんでもない超常現象だか超能力が相手だし」
「でも……何もしないよりは、いいのかも」
「いや、何もしないのも一つの選択肢だと思う」
「え……?」
 きょとんとする美沙に、陽祐は用紙に『平凡な日常』と書いてみせ、
「俺は、いまの状況は何らかの意図があって作り出されたものだと思う。偶発的な超常現象とかじゃなくて」
「…………、どうして……?」
 じっと見つめてたずねる美沙を、陽祐は真っすぐ見つめ返し、
「世界中の人間の中で、俺たち兄妹だけが選ばれたみたいに、この世界に残るなんて偶然は考えられないだろ」
「それは……そうかもしれないけど」
「だとすれば、誰だか知らないが俺たちをいまの状況に放り込んだ奴がいるってことだ」

543:【世界の黄昏に愛する人と】(3) 6/11
09/01/04 01:45:27 EcflRkum
 陽祐は『平凡な日常』と書いた文字に向かって矢印を引き、逆側の一端に『退屈』と書いた。
「そいつの目的はわからん。世界で二人きりという状況に置かれた俺たちに何を期待してるのか。……でも」
 矢印の横に『観察』と書き添えて、
「一つ言えるのは、そいつがいま俺たちを観察してるだろうってことだ。だったら裏を掻いてやるんだよ」
「裏を掻く……?」
「俺たち二人で全く普通の日常を演じてみせるんだ。観察してる奴には、さぞ退屈だろうけどそれこそ狙いだ」
「…………」
 美沙は、ぽかんと口を開けて陽祐の顔を見た。
「……お兄ちゃんって、ホントにいろいろ思いつくね」
「まーな、俺たちが観察対象として役立たずとわかれば、元の世界に戻してもらえるかと期待してるんだが」
 陽祐は眉をしかめて腕組みをする。
「だけど、あまりに退屈で逆ギレした相手が天変地異とかイベントを押しつけてくる可能性も否定できねーか」
「いや、でも……うん、それが一番だと思う」
 うんうんと美沙はうなずいてみせ、
「ママたちも、そのうち帰って来るかもしれないんだから、なるべく普通にして待ってたほうがいいよね」
「ま、ほかにもう一つ選択肢はあるんだけど」
 陽祐は用紙に『世界の終わり』と書いた。
「俺たちのほかに誰もいない世界だ。町中のガラスを割ろうが火をつけようが、やりたい放題できるだろ」
「お兄ちゃん、それ本気で言ってるの?」
 あきれた顔をする美沙に、陽祐は肩をすくめ、
「いや。それじゃ観察野郎を楽しませるだけだし、それに俺だってオヤジたちが帰って来ると思ってるんだ」
 用紙の余白に、わざと乱暴な字体で書いてみせる―『陽祐参上★夜露死苦』
「暴走族(ゾク)が暴れたみたいにガラスが割れたりペンキで落書きしてあるのをオヤジに見せられねーだろ」
「そうだね」
 美沙は、くすくす笑う。
「だったら答えは決まりだね。美沙たちは、できるだけ普通に生活する」
「そーゆーことだ」


 昼食のあとは、駅とは反対の方向を自転車で探索することにした。
「何も発見はないと思うけど、家に閉じこもってるより気が晴れるだろ?」
 住宅地を抜け、国道を越えて、その向こう側の団地も抜けた先には大きな川の堤防がそびえていた。
 一面、緑の草に覆われているのが鮮やかだ。
 自転車を停めて、堤防の斜面を登っていく。
 離れた場所に階段もあったが、そこまで行くのが面倒だし、草を踏みしめていくほうが心地いい。
 陽祐と美沙は、並んで堤防の上に立った。
 眼下には河川敷のグラウンド。その向こうに、夏の日差しに輝く水面。
 対岸には、こちらと同じような堤防。その奥に、どこまでも広がる町並み。
 何でもないような風景を眺めて、陽祐は、ため息をついた。
「川の向こうが世界の果てだったりしないかと思ったんだけどな……」
「世界の果て……?」
「そんなものが見つかれば、この世界がニセモノだって確信できるだろ?」
 美沙はそれには答えず、
「あした……」
「ん?」

544:【世界の黄昏に愛する人と】(3) 7/11
09/01/04 01:46:19 EcflRkum
「お昼、ここに食べに来ようよ。サンドイッチ作るよ」
 そう言って、美沙は微笑んだ。陽祐も笑って、
「じゃあ、どこかでパンを仕入れねーとか」
 自転車を停めた場所まで戻り、帰りに団地を抜けるときは先ほどと違う道を通ることにした。
 国道との交差点の角にレンタルビデオ屋があった。
 入口のシャッターが半分下りた状態で、ガラス戸が開いている。
「閉店直後だったみたいだな。何か借りていくか?」
「お兄ちゃんが観たいものがあるなら……」
 自転車を停め、シャッターをくぐって店内に入った。
 明かりはついているが、営業時間中なら流れているはずのBGMは止まっている。
 陽祐は新作のスパイ映画と刑事アクション映画と戦争アクション映画のDVDを借りることにした。
 返しに来ることがあるのかは、わからない。
「おまえも何か選んでおけよ」
 美沙に声をかけると、動物のキャラが主人公のアメリカ製CGアニメを一本だけ選んできた。
 陽祐は見本のパッケージを手に貸出カウンターの向こうに回った。
 後ろの棚に並んだDVDの整理番号と、パッケージに記された番号を照らし合わせて目当ての作品を探す。
 美沙が感心したように、
「お兄ちゃん、ビデオ屋でバイトしたことあったっけ?」
「いや……でも、いつも店員がやってるの見てるから」
 DVDを手に入れて店の外に出た。
 ふと思いついて、陽祐は言う。
「駅前のスーパーって、通用口に回れば開いてないかな?」
「そうだね……。できればお野菜とか、ちゃんとしたの欲しいし」
「あした、買い出しに行ってみようぜ。買うと言っても、金は払わねーけど」
 国道を挟んでビデオ屋の斜め向かいにコンビニがあった。
 二人はそこで八枚切りの食パンとハムとスライスチーズを手に入れてから、家に帰った。


 美沙が夕食の支度をしている間、陽祐は居間で戦争アクション物のDVDを観ることにした。
 ほかの二本は一緒に観たいけど、これだけは興味がないと美沙が言ったからだ。
 映画の中の兵隊たちは、ばたばたと容赦なく敵弾に撃ち倒されていた。
 同じような光景がフィクションではなく現実として、つい十数時間前まで世界中で見られたのだろう。
 世界中から人間が消えて、戦争もなくなった。
 考えたら空しくなり、陽祐はリモコンの停止ボタンを押してDVDをデッキから取り出した。
「どうしたの?」
 美沙がキッチンから声をかけてきた。
「つまんねー映画だった」
 陽祐は美沙のそばへ行き、
「俺も何か手伝うよ」
「え? いいよ。お兄ちゃん、きのうまで毎日、受験勉強だったでしょ? 少し休みなよ」
「そう言われりゃ、そうだけど」
「ね? ちょっと早いけど、夏休み」
 美沙は微笑む。
 陽祐は妹の言葉に甘えて、代わりにネットで超常現象について調べることにした。
 本当の夏休みが来たときは、陽祐は休む暇などなく夏期講習に通いつめる予定だったけど。

545:【世界の黄昏に愛する人と】(3) 8/11
09/01/04 01:47:30 EcflRkum
 夕食のメニューは豚肉の生姜焼きだった。
 食事の間、陽祐は超常現象について調べたところを美沙に披露した。
 人間が原因不明のまま忽然と消えた事件は、過去に世界中で起きている。
 一八七二年、大西洋上の帆船『マリー・セレスト号』事件、乗員乗客計十一名消失。
 第一次世界大戦中のトルコにおける『ノーフォーク連隊』事件、イギリス軍兵士三百四十一名消失。
 遡って十六世紀末、当時イギリス領だった北アメリカの『ロアノーク島』事件、入植者百十六名が消失。
「どうしても人が消えてそれっきりの事件が有名になるけど、ちゃんと帰って来るケースもないわけじゃない」
 それは数ヵ月後であったり、数百キロ離れた場所で保護されたりであるのだが―
「でも、やっぱり帰って来ることもあるんだね」
 美沙が言って、陽祐はうなずき、
「ただしその場合、戻って来た人間は自分が消えていた間の記憶を失っていることが多い」
「何が起きたか覚えてないってこと?」
「だから、あしたの朝、みんなが戻って来たとすると、本当は金曜なのに木曜だと思って生活することになる」
「でも時計は丸一日、進んでるよね? それはそれで謎の事件になりそうだけど……」
 美沙は眼を伏せて、ため息をついた。
「……お兄ちゃんも最初に言ってたけど、やっぱり消えたのは世界中の人間じゃなくて、美沙たちのほうかも」
「おまえもコピーワールド説に転向か?」
 陽祐が笑うと、美沙は眼を伏せたまま、
「だって……そのほうが世界のみんなは普通に暮らしてるってことでしょ?」
「まあ、オヤジやオフクロには心配かけてるだろうけど。俺たち二人がいなくなって」
「そうだね……」
 美沙は首をかしげて考え込む様子を見せてから、ふと思いついたように陽祐に視線を向け、
「……お兄ちゃん、ビール飲む?」
「え? いいのかよ、委員長?」
 陽祐が眼を丸くすると、美沙は笑って、
「委員長はヤメてよ。次にそれ言ったら、もうお兄ちゃんにはごはん作ってあげないから」
 席を立って冷蔵庫から缶ビールと、食器棚からグラスを二つ出してきた。
「おまえも飲むのか?」
「ダメ?」
「許す。というか飲め、俺ひとりで飲んでもつまらん」
 お互いのグラスにビールを注いで、乾杯した。
 陽祐は一息にグラスを干した。旨かった。
 だが、美沙はほんの少し口をつけただけで、咳き込んだ。
「……けほっ! 何これ? よくお兄ちゃんやママたち、こんなの美味しそうに飲むね」
「この味がわかんねーんじゃ、まだまだ子供だな」
「子供だもん、どうせ。きのうも本屋で中学生と間違われたし」
 美沙はふくれ面で、もう一口、飲んでみせ、
「参考書の売り場を店員に聞いたら、小中学生用のコーナーに案内されたし」
「おい、無理して飲むな。酒の味がわかんねー奴が飲んでも、もったいねーだろ」
「わかるようになるまで飲むの! ママやパパの子供だもん、美沙だってお酒に強いに決まってるんだから!」
「むしろ酒癖の悪さを発揮しそうだけどな、おまえ……」
 陽祐は苦笑いするしかない。


 食後は陽祐が皿洗いをした。美沙は赤い顔をしていたので、ソファで休ませた。

546:【世界の黄昏に愛する人と】(3) 9/11
09/01/04 01:49:02 EcflRkum
 突然、携帯の着メロが聞こえて、陽祐は思わず皿を落としそうになった。
 まさか―誰からの着信だ!?
 振り返ると、ソファに寝転がった美沙が陽祐の携帯をいじっていた。
 着メロの設定を操作していただけだ。あきれ返って陽祐はたずねた。
「……おまえ、何してんの?」
「ん? あ、ちょっと借りてた」
 美沙は悪びれた様子もなく笑ってみせる。本当に酔っているようだ。普段と態度が違う。
 陽祐は、ため息をついて、
「まあ、見られて困るよーなもんは、ねーけどな」
「そうなの? メールとかも?」
「前の彼女とのは全部消したぞ、そのこと言ってるなら」
「ふうん」
 美沙はつまらなそうな顔で、ソファの上で寝返りを打って陽祐に背を向けたが、携帯は手放さない。
 陽祐は肩をすくめ、皿洗いを再開した。
 しばらくしてから美沙が言った。
「……お兄ちゃんって、今年に入って携帯買い換えたよね?」
「ああ」
「電話帳は昔のまま?」
「データはそのまま移してもらったけど、なんで?」
「べつに……」
 見られて困るものが本当になかったか心配になってきた。
 だが、登録名にはフルネームを入れているだけでクラスメートも部活の女子も同じ扱いだ。
 元カノ―麻生夏花の名前も、つき合っていた当時からフルネームで特別扱いはしていない。
 部活の後輩という関係でなければ、別れた時点で登録自体を消してもよかったのだが……
 夏花のことを頭から追いやるためと、携帯から美沙の気をそらすために陽祐は言った。
「おまえ……きのう観てたアニメは、どんなやつ?」
「え? どんなって……何で?」
「……あん?」
 陽祐が振り返ると、美沙は携帯をいじる手を止めて、じっとこちらを見ている。
 きかれて困ることでもないだろうにと思いながら、陽祐は苦笑いで、
「いや……昔のアニメなのかなって、ちょっと画面を見た感じが」
「ああ、友達に借りたんだけど……」
 美沙はアニメのタイトルと原作者名を挙げた。そのタイトルは知らなかったが作者は陽祐も知っていた。
 少し前に少年漫画誌で別の人気作品を完結させた大物漫画家だ。
 美沙が観ていたアニメは、その作家が二十年ほど前まで連載していた漫画が原作だという。
「きのうのは劇場版で、漫研の子と文化祭の相談してるときに話題が出て。文化祭が舞台で面白いからって」
「漫研の……文化祭? おまえ、漫研入ってたの?」
 妹のアニメや漫画好きは知っていたが、自分で漫画を描くとまでは思わなかった。だが、美沙は首を振り、
「そうじゃないけど、漫研が文化祭に向けてドラマCDを自主制作するから声優やってみないかって誘われて」
「声優?」
 陽祐が眼を丸くすると、美沙は口をとがらせた。
「もうっ、いいでしょ! 美沙の趣味なんだから!」
「悪いとは言ってねーだろ」
「どうせ美沙、アニヲタだもん……将来の夢は声優って小学校でも中学でも卒業文集に書いたもん……」
 ぶつぶつ言いながら背を向けてしまう美沙に、陽祐は苦笑いするほかない。本当に酒癖が悪いようだ。

547:【世界の黄昏に愛する人と】(3) 10/11
09/01/04 01:50:01 EcflRkum
 皿洗いを終えた陽祐は、機嫌を直した美沙と一緒にレンタル屋から持ち出したCGアニメを観ることにした。
 あまり子供向けとはいえないブラックなジョークが利いていて、二人で大笑いした。
 アニメが終わって、美沙はソファから立ち上がり、「うーん」と伸びをした。
「……美沙、そろそろシャワー浴びようかな」
「ああ、行ってこい」
 デッキからDVDを取り出しながら陽祐が答えると、
「ねえ」
「……あん?」
 振り向いた陽祐に、美沙が頬を赤らめて言った。
「お兄ちゃん、ついて来てくれない?」


 まったく、色気のねー話だな……
 陽祐は文庫本を片手に脱衣場の床にあぐらをかきながら、ため息をついた。
 曇りガラス一枚隔てた風呂場では、うら若き十六歳の娘がシャワー中である。
 それが実の妹でなければ少しは興奮していいシチュエーションだろう。
 美沙がもう少しくだけた性格ならば、ガラス戸をちょっと開けて「背中流そうか?」と声をかけるところだ。
 しかし、美沙にそれをしたら、悲鳴を上げたあとに泣き出すか、本気で怒り出すかだろう。
 かといって、戸を閉めたまま脱衣場から話しかけても、シャワーの水音で美沙には聞こえない。
 だから陽祐は、黙って本を読んで待つしかないのである。
 しばらく前に買ったけど、読む暇のなかった歴史小説だった。
 これから毎晩、妹のシャワーの間に脱衣場で待たされるならば、しっかり読み終えることができそうだ。
 シャワーの音が止まった。風呂場から美沙の声。
「お兄ちゃん、ありがと。もう出るから、廊下で待ってて」
「ああ」
 やれやれと陽祐は立ち上がり、脱衣場から廊下に出て、ドアを閉めた。
 逆に自分がシャワーを浴びている間、美沙は脱衣場で待つつもりだろうか。
 勘弁してほしいけど、仕方ないのか。
 理由もわからず消えた両親に続いて、兄まで消えるのではないかと不安なのだろう。
 そのうちトイレまでついて来てほしいと言い出さなければいいけど。


 予想した通り、陽祐がシャワーを浴びている間、パジャマ姿の美沙は脱衣場で待つと申し出た。
 やむを得ず陽祐は承知した。
 シャワーを終えて、脱衣場でTシャツと短パンに着替えていると、ドアの向こうの廊下から美沙が言った。
「ねえ、きょうは一階で一緒に寝ない?」
「いいけど」
 夏場だし、枕とタオルケットだけ用意して居間でゴロ寝もいいだろう。
 ところが美沙は、
「じゃあ、あとでママたちのベッドのシーツ替えるね」
「ちょっ……ちょっと待て、そりゃー……アレだろ」
「ママとパパのベッドで寝るの、嫌?」
「オフクロたちがどうのってんじゃなくて……」
 ダブルベッドで妹と一緒に寝る気にはならんぞ、さすがに。
「だったら和室で寝ようぜ、そのほうがいいだろ」

548:【世界の黄昏に愛する人と】(3) 11/11
09/01/04 01:51:18 EcflRkum
「でも、お布団ずっと干してないと思うよ」
「敷布団だけなら我慢できるだろ。枕とかは自分のを用意して」
「いいけど……」
 納得してくれ。それで。


 和室に布団を並べて、二人で横になった。
 窓は開けて、網戸だけ閉めておいた。この世界では虫が入ってくることはないと思ったけど。
「二人で一緒の部屋で寝るのって、いつ以来?」
 美沙がきいてきた。
 陽祐は、天井を見上げたまま、
「さあ……」
「おじいちゃんの家に泊まるときは、お兄ちゃんはパパと二人で寝るし」
「うん」
「家族旅行はお兄ちゃん、嫌がるし」
「中学一年か二年のときから行ってないな、そういえば」
「そうだよ。お兄ちゃんが留守番するとか言うから、美沙たちも日帰りになったりして」
「そりゃ悪かった」
「……ねえ」
 指先に美沙の手が触れた。陽祐は妹の顔を見た。
 窓から差し込む月明かりの中で、美沙は、じっと陽祐を見つめていた。
「子供だよね、美沙。お風呂場までついて来てとか言って、一人になるのが怖いなんて」
「俺だって怖いよ。その点は安心しろ」
 陽祐は美沙の手を握ってやった。そんなことをするのも幼い頃以来だったけど。
 美沙は安心したように微笑んだ。
「……おやすみ、お兄ちゃん」
「ああ、おやすみ……」


 二人きりの世界での一日目が終わった。
【第三章 幕】

549:【世界の黄昏に愛する人と】投下終了
09/01/04 01:53:04 EcflRkum
次の投下は、また何日かおきます。
いちおう書き上がってる話なんですが……投下前に各章ごとに見直すと、結構な修正が必要だったり……

550:名無しさん@ピンキー
09/01/04 02:01:05 gcAarOR+
>>549
リアルタイムGJ
これからどんな展開で進むのか全く分からないw
早く続きが読みたいものですな

551:名無しさん@ピンキー
09/01/04 02:02:45 xaZZb3FN
GJ!
wktk。

552:名無しさん@ピンキー
09/01/04 02:51:38 u24pYsjP
やべぇ一瞬なんのスレか忘れちまってたぜ

553:名無しさん@ピンキー
09/01/04 05:51:58 KHRtUkBc
>>549
GJ
確かに今の美沙タンはちょっとブラコンの入った普通の妹だが
所々にキモウトの兆しが見えたのがたまらん

554:名無しさん@ピンキー
09/01/04 12:21:54 oLJ80NDX
>少し前に少年漫画誌で別の人気作品を完結させた大物漫画家だ。

ガモウひろしですね。わかります。

555:燃料投下
09/01/04 15:47:05 5ZFo1qmH
ここから泥棒猫のターン↓

556: ◆sw3k/91jTQ
09/01/04 16:22:38 sIGuX/zK
投下します。
4レス予定

557:思い出の村 2話(1/4)  ◆sw3k/91jTQ
09/01/04 16:23:38 sIGuX/zK


side秀樹
 俺達は実家を目指して歩いていた。
「月並みですが懐かしいですね、兄さん。」
「ああ、こっからの夕日が凄く綺麗なんだよな。」
昔まだ新しかったアスファルトが、今ところどころ欠けて、古めかしくなっているのを見て、なんとなくノスタルジックな感じになる。
そういえば気になったいた事を聞いてみる。
「なあ、瑞樹。」
「何ですか?兄さん。……ハッまさか!」
「プロポーズネタはくどいぞ。」
「ネタじゃ無いのに…。」
そっちのがこええよ!、とは突っ込まない。
「楢崎茜ちゃんのこと、覚えてるか?仲良かっただろ瑞樹。」
「楢崎...ッッッ」
瑞樹は急に何かを思い出したような顔をしてひどくうろたえた。
「に、兄さん……。私急にハウスダストになってしまって、ええと、その、つまり……、かっ、帰りましょう!!」
「マテ瑞樹、落ち着くんだ。言いたいことはわかるがお前は決してアレルゲンではない。それにじっちゃやばっちゃが待ってるからさ、
急には帰れないよ。大丈夫、かっこいい兄さんがついてるから。」
しかし瑞樹はまだどこか落ち着かない様子で、「しまった...、でも、どうして?」だのとブツブツつぶやいている。
コイツ大丈夫かよ...。
「兄さん、用事が出来たのでおじいさんおばあさんの所には先に兄さんだけで行ってて下さい。」
ようやく落ち着きを取り戻した瑞樹はそう言い残し来た道を戻って行った。
「ちょっと!お~い。何かあったらメールしろよ~。」
「ちゃんと見ましたか~?圏外ですよ~。」
あらホントだ。見慣れたディスプレイには圏外の文字。
「...っかしーな。電波悪いんかな?」
無事に島に着いたことも親に報告したいし、実家ついたら電話でも借りるか。
心配性な親のためにも電話しとかなきゃな。

558:思い出の村 2話(2/4)  ◆sw3k/91jTQ
09/01/04 16:24:27 sIGuX/zK



side瑞樹
「おかしい、忘れるはずなんて無いのに...どうして?」
さっきから私はずっと自問している。
自慢ではないが私は記憶力が良い。それなのになぜこんなに大事な事を忘れてしまっていたのだろう。
あのたぶん私にとって一番の敵、楢崎茜の事を。
兎に角一刻も早くこの島から脱出しなければ。
あの汚らわしい雌犬を兄さんに会わせてはいけない。
明日の朝に帰るための連絡船のチケットを買おうと営業所まで戻ってきた。
営業所の中は、じめっとしていて、夏特有の不快感が体を巡る。
とっとと用事を済ませてしまおう。
私は販売員らしき初老の男性に話しかけた。
「すみません。明日の朝の船のチケット2枚いただきたいのですが。」
男性はこちらに一瞥をくれ、無愛想に言い放った。
「船は来ん。」
男性の態度に腹が立った。
「ふざけないで下さい。船が来ないわけ無いじゃないですか。」
「ふふふふふ、その人は冗談を言っている訳じゃないのよ。瑞樹ちゃん。私の許可がないと物流船以外の船は緊急時を除いて入港しないわ。」
突然の乱入者。何の気配もなく、私の背後に回っていた。
「くっ...楢崎...さん。」
「茜でいいわよ。"トモダチ"でしょ。」
その眼は昔となんら変わらずに、どうしようもないほどに、濁っていた。
「あの人はどこ?教えて。"トモダチ"なら教えてくれるわよね。」
こんな女に、負けたくない。
「学校があった所に行きましたよ。」
「あっはっはっは嘘おっしゃい。あなたたちの実家とは逆方向じゃない。」
怖い。怖い。すべて見透かされている。逆らえない。昔みたいに、屈伏させられる。
「そうそう。言い忘れてたけど、あなた達のおじいさんおばあさんね、昨日から旅行に行っちゃってるの。残念ねぇ。
でも安心して。船が来るまで、私の屋敷に住む事になったから。ご両親からの許可はとってあるわ。」
ここまでするのか。この女は。
「昔の様にはいきませんから。」
自分を奮い立たせる呪文。
「そう、残念ねぇ。」
それさえも、この女はあっさりと打ち消した。
「それじゃあ私あの人に会ってくるけど、邪魔したら、ワカルヨネ。瑞樹"ちゃん"。
それと、私の事忘れてたのあなたのせいじゃないから、そんなに思いつめる事無いのよ。」
そう言い残し、茜は去って行く。止めることなんて、できなかった。

559:思い出の村 2話(3/4)  ◆sw3k/91jTQ
09/01/04 16:25:13 sIGuX/zK


茜side
 あの人のことを好きになったのは、小学校に上がってすぐの事だった。
もともと人口が少ない離島だけあって、クラスは小中学年、高学年で、2つのクラスしかなかった。
そんな中、屋敷の生まれで、常に他者との間に壁を作っていた私は、いじめられていた。
そんな私に一番最初に声をかけてくれたのがあの人、水野秀樹さんだった。
いつものようにいじめられていて、お気に入りの人形を隠されてしまったとき、雨の中ずぶぬれになって探し出してきてくれた。
髪の毛を引っ張られて泣いていた私に、立ち向かうことを教えてくれた。
当時の私にとって彼は、ピンチの時に来てくれる、王子様のような存在だったのだ。
そんな彼に恋をしないほうがおかしいのだ。
二年生にあがると、あの人の妹が入ってきた。
彼の妹、瑞樹は、何かにつけてよく泣く子だった。
私が彼と遊んでいるのを見ると、兄を取られまいと泣き落としにかかる。
そんな瑞樹のことが、私は大嫌いだった。
彼の見ていないところで、昔私がされたことをした。
彼女は臆病だったので、口封じは簡単だった。
愉悦に顔を歪めながら、「"トモダチ"だからゆるしてくれるよね?おにいちゃんにいわないよね?」
と言うと、泣きながら頷いてくれた。
それに味をしめ、強者の立場に酔ってしまった私は、今まで私をいじめてきた人に復讐し始めた。
各界に顔が利く親に頼み、いじめっ子の親に圧力をかけ、島から追い出した。
裏ではこんなに黒い事をしていた私だが、あの人の前では、猫をかぶっていた。
一人、また一人とクラスメイトがクラスから消え、幸せな日々が続いた。ずっと続くと思っていた。
しかし、今度は別の問題が起きた。
ただでさえ子供が少ないのに、島から追い出してしまったから、学校が廃校になってしまったのだ。
今思うととても馬鹿なことだが、まだ子供だった私には想像が出来なかったのだ。
私は父が教師を雇っていて大丈夫だったが、彼は学校へ通わなければならない。
彼はあっけなく本土に帰ることになった。
私はすでに傀儡となっていた瑞樹の私に関する記憶を操作し、恐怖による支配がなくても私の悪行を彼にばらされないようにした。
別れの日、ぼろぼろに泣いた事と、泣いている私に彼が「またあえる。だからもう泣かないで」と言ってくれた事を覚えている。
また会える。その言葉を信じ、私は必死に自分を磨いた。その日を夢見て。

560:思い出の村 2話(4/4)  ◆sw3k/91jTQ
09/01/04 16:25:45 sIGuX/zK
 あの人が帰って来る。
そのことを知ったのは、七月に入ってからのことだった。
いつものようにあの人の実家に仕掛けた盗聴器のログを確認していた時、あの人の声で、夏休みにこっちに帰ってくる。
と言う内容のメッセージが入っていた。
私は飛び上がりそうになるのを抑え、刻々と準備に取り掛かった。
病床に伏している父を操り、連絡船を操作し、うまく計画が進むまでこの島から彼らが出られないように仕向けた。
彼の祖父母には、屋敷の地下に旅行に来てもらっている。これは切り札だ。出来れば使いたくない。
だがもし万が一彼が私を拒んだら、このカードを切るしかない。
優しい彼のことだ。祖父母の事をちらつかせればこちらの言いなりになってくれるだろう。
いつも彼に羽虫のように付きまとっていた妹は、この時あまり問題視していなかった。
また力で屈伏させればいい。それに彼女は私に関する負の記憶は消してあるから大丈夫だ。
ふとしたことで戻るかもしれないが、この島にきた時点で、思い出そうが思いださまいが私の勝ちは決まりだ。
もう待つのは嫌だ。独りは嫌だ。

 そして、運命の日。
船着場で瑞樹を見た時、彼女は欲情した女の眼をしていた。
彼は気づいていないと思うが、あれはだらしなく発情した雌犬の眼。
許せなかった。今すぐ殺してやろうかとも思った。
だが彼を悲しませる様な事はしたくない。
唇を強く噛みすぎて、口の中に鉄の味が広がる。
彼の実家までの道中、彼が私の事について何か言っていた。
遠くて聞き取りづらかったが、私の事を覚えていてくれて、とてもうれしかった。
茜というワードで、私の事を思い出したのか、青ざめた顔をした瑞樹が船着場まで戻って行く。
ちょうどいい。釘をさしておこう。
そう思い、気配を殺し、近づいた。
船のチケットが欲しいらしい。馬鹿な子。
声をかけると、ポーカーフェイスでこちらを睨んできた。怖がってるのばればれよ。お馬鹿さん。
やっぱりあの子は私には逆らえない。
内心の笑いをこらえ、彼のところに行くことにした。

561: ◆sw3k/91jTQ
09/01/04 16:27:27 sIGuX/zK
以上です。
なんかgdgdですみません。
生産力が低いのでスローペースになりますが、お付き合いください。

562:燃料……
09/01/04 16:40:13 5ZFo1qmH
本当に泥棒猫のターン
キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!

ここから瑞樹が逆転できるのか、続きにキタイ

563:名無しさん@ピンキー
09/01/04 17:25:50 OJhLUWp/
<<561
この作品の1話目ってどこにある?

564:名無しさん@ピンキー
09/01/04 17:28:15 TeYKFLir
>>563
「思いでの村」でページ内単語検索かけろ
後アンカーの方向が逆だろ
「<」ではなく「>」だ

565:名無しさん@ピンキー
09/01/04 17:31:54 wPX43vda
記憶の操作ってどうやったの? 催眠術?

566:名無しさん@ピンキー
09/01/04 17:32:09 7WGDGjpM
>>562
死ね

567:名無しさん@ピンキー
09/01/04 17:34:54 OJhLUWp/
563です
普通にありましたorz


568:名無しさん@ピンキー
09/01/04 20:52:23 5ZFo1qmH
>>566
お兄ちゃんってば、また勝手に抜け出して!
ほら、お兄ちゃんの居場所まで、一緒についてってあげるから!
URLリンク(changi.2ch.net)

569:傷 (その9)
09/01/05 01:32:20 X9LVBZCy
投稿します。

570:傷 (その9)
09/01/05 01:33:42 X9LVBZCy

「兄さんはどうなのですか? こんなわたしを、迷惑に思いますか……?」

 やぶれかぶれになったわけではない。
 口に出した瞬間、葉月は、自分の言葉が紛れも無い本心であることを知った。
 自分はこの男を愛している。
―そう考えたとき、今まで欠けていたパズルのピースが、音を立てて当て嵌まったのを感じたのだ。
 無論、今までは弥生の冬馬に対するストレートすぎる愛情表現に顔をしかめる立場を取っていた彼女だ。変節とも言うべき心境の変化には、当然ながら葛藤がある。
 だが、五日間の引き篭もりを含む紆余曲折の結果、葉月の心理は、もはや意地を張ることに、あまり意味を見出せなくなっていた。

「迷惑に思うかって……それはこっちの台詞だろうが」
 
 たっぷり二呼吸ほど間を取り、冬馬はぼそりと呟いた。
「おれがいなければ、お前は何も迷うことも悩むことも無く、研究や論文に全力を尽くせたはずだろうが。おれがここにいたことが、結果として、お前を苦しませることに繋がったんじゃねえのか?」

 葉月は何も言えなかった。
 彼の言葉は、確かに一面の真実を突いていたからだ。
 もしも冬馬が、兄として我が家に現れることさえなかったら。
 単なる知人友人として違う出会い方をしていたなら、自分はこんなに苦しまずに済んだに違いない。
―そう思うのは、あまりにも当然だ。
 だが、いま問題とすべきはそんな事ではない。
 そんなことは、いまさら考えても仕方のないことだし、なにより葉月はもう覚悟を決めたのだ。
―行けるところまで行く、と。


「……はぐらかさないで下さい、兄さん」
 葉月の視線は、もはや揺るぎない。
 近親相姦もクソも知ったことか。
 好きな異性と結ばれたい。その想いの、いったい何が間違っているというのか。
 現に姉は、タブーの向こう側にいとも無雑作に足を踏み入れている。姉にできたことが自分にできない道理があるものか。
(わたしは柊木葉月。柊木弥生の妹です!!)
 弥生の名は、葉月にとって現世に存在する唯一の劣等感であるが、それだけではない。彼女自身、“完璧超人”と謳われた弥生の妹であることに、大いに誇りを持っている。

「質問に質問を返すのはマナー違反です。二度は許しませんよ」
「葉月……」
「さあ、答えて下さい兄さん。兄に男性としての好意を抱く妹は、迷惑ですか?」

 冬馬はやがて、太い溜め息をついた。
 葉月の硬い視線から目を逸らすようにして、だ。
「迷惑なわけ、ないだろ」
 だが、そう言い切る彼の表情に、いつもの明るさは無い。
 その事実に、心が折れそうになるのを必死にこらえながら、葉月はなおも食い下がる。
「兄さんの表情は、そうは言っていませんが」
「だって、それは、―当たり前だろっ!!」
 冬馬の口から、ハッキリそれと分かる唾が一滴飛ぶのが葉月には見えた。


「おれたちは兄妹なんだぞ!? 好きとか嫌いとか、そんな感情を抱いていい関係じゃねえだろ!?」



571:傷 (その9)
09/01/05 01:35:15 X9LVBZCy

―来た。
 浮世の正義たる一般論。
 兄を男性として意識する妹にとっては、最初に乗り越えなければならない常識の壁。
 だが、その言葉に反論の余地が無いわけではない。
 そう、近親相姦の禁忌を主張するのが冬馬本人である限り、葉月は彼の常識に言葉を返すことが出来る。なにしろ反論の論拠を実証したのは、柊木冬馬その人なのだから。


「白々しい事を言わないで下さいっ!! 兄さんはかつて、『おれが好きなのは弥生姉さんだ』とハッキリ言ってるじゃないですかっっ!!?」


 呆然と目を見開く兄に、葉月は半ば、凶暴な気分で言葉をぶつける。
「……なんで……」
「何故わたしがそれを知っているのか訊きたいなら答えます。―聞いたんですよ、この耳で。一週間ほど前の早朝に、兄さんが電話の相手にそう言っているのを、ドア越しに盗み聞きさせてもらったんですよ!!」

 いまや葉月の心の内には、あの時の激情がふつふつと甦っていた。冬馬が自分ではなく、姉の弥生を選んだとハッキリ言い切った一言を聞いた瞬間の、我ながらどうしようもない絶望感と屈辱を、いまの葉月は明確に思い出していたのだ。
 無論、その言葉のフォローは弥生から受けている。
―冬馬の言葉は当てにならない。
―あれは、しつこい電話相手を黙らせるための、彼一流の方便だ。
 確かに弥生はそう言った。そして葉月も、その姉の言葉には納得せざるを得ない。
 だがその時、込み上げる歓喜を懸命に押し殺そうとしている光が、姉の瞳に宿っていたのを気付かぬほどに、葉月は鈍感な少女ではない。
(姉さんは、喜んでいる……!!)
 姉が喜ぶのは分からない話ではない。普段の言動から察すれば、むしろ当然だと言えよう。だが、それでも葉月は、そんな姉に殺意すら伴う嫉妬を感じずにはいられない。
 また、たとえ弥生の言う通り、兄の言葉が偽りであるならば、葉月としては、その釈明を、やはり他ならぬ兄本人から聞きたかったのだ。

「おれは嘘をついちゃいないよ」
 冬馬は、ごりごりと頭を掻きながら、そう言った。
 見方によっては、痛いところを突かれて不貞腐れているような口調に聞こえないでもないが、葉月は辛抱強く、引き続き兄の言葉を待った。
 もし冬馬が話の矛先を逸らすつもりなら、葉月が自白した盗み聞きというマナー違反を話題に持ち出し、空気を変えればいい。だが、彼はそうはしなかった。兄は兄なりに、自分の言葉を真摯なものとして受け止め、応えようとしている。―葉月はそう判断した。
 そして冬馬は、煩悶の極限のような表情の末、搾り出すように言った。
「……分かった。泥を吐くよ」

「姉さんのことは嫌いじゃない。客観的に見て、あの人はやっぱり……ふるいつきたくなるようないい女だからな……。でも、それはお前にしても同じだ。あと五年もすれば、お前は姉さんに負けないくらいのいい女になるだろう。―そう思うよ」
「……お世辞ですか?」
 だが、冷たく言い放つ葉月の皮肉にも、冬馬はひるまない。むしろ話の腰を折るんじゃねえと言いたげな尖った一瞥を向ける兄に、妹は黙らざるを得なかった。
「お前にしても、姉さんにしても、おゆきや千夏にしてもそうだ。―この四人は特別なんだよ、おれの中じゃあな。だから、柊木冬馬としては、お前の女性としての魅力が、弥生姉さんに劣っているなんて言うつもりはないんだ。あくまでな」
「…………」
「だから、姉さんの存在を口実に、お前の気持ちに応えられないとか、そんなことを言う気は無いよ」
「……どういうことですか」
「だから―おれは、女とは付き合えないんだよ。姉だったらOKで妹ならNGだとか、血縁ならNGで義理ならOKだとか、そんな下らねえ事を言うつもりは無いんだ。地球上のどんな女にアプローチをかけられても、おれにはその好意に応えられない理由があるんだよ」

 そこまで聞いては、いかに葉月といえど、気付かざるを得ない。
 兄は、尋常な人間だ。変わり者の部類に入ると言えば入るだろうが、それでも世間並みには、充分に“普通”の範疇に入るであろう人間だ。だが、彼の過去は尋常ではない。
「―まさか、トラウマですか……虐待されたときの……?」


572:傷 (その9)
09/01/05 01:41:24 X9LVBZCy

 冬馬の目の色が、その一瞬で変わった。
 彼が虐待の経験者であるということは、肌の無残な傷痕を見ればバカでも分かる。
 だが、その傷痕が“性的虐待”の痕跡であることは、事前に情報を知っていなければ、すぐに結びつけるのは難しい。彼の全身に刻まれた傷は、傍目に見て、セックスを基本とする性的虐待など、とても連想できないほどに無残極まりないものだったからだ。
 そして、冬馬が柊木家に於いて、過去の虐待の具体的内容を語った事実はない。
 つまり―。

「誰から聞いた?」
 さっきまでとはまるで別人のような冷たい声が、彼の口から飛ぶ。
 その迫力に、葉月は反射的に口をつぐんだ。
 だが、冬馬とて鈍重ではない。葉月が口篭もった数瞬の間に、たちまち正解に辿り着いた。
「なるほど……千夏のやつか。なら、弥生姉さん経由のネタってところか」
 葉月としては、俯かざるを得ない。

 いままで柊木家においては、冬馬の過去―それも虐待に関して、直接的に言及することは控えられてきた。父も母も姉も、そして自分も、その肌の傷痕についての質問を冬馬にしたことが無い。それが家族としての気遣いだと信じていたからだ。
 だが―知っていたのに、あえて知らないフリをしていたというなら話は違う。知らないフリというのは、捉え方によっては明確な嘘であり、欺瞞であるからだ。
 そして、その事実がアッサリ露見してしまった今、少なくとも葉月の抱く気まずさは、それまでの流れの攻守を入れ替えてしまった。追求する側に冬馬が立ち、葉月は劣勢に立ってしまった。……少なくとも葉月の心中には、それまでの攻撃性は跡形も無く消失してしまっていた。
 だが、


「なんだよ……知ってるんなら、話は早えじゃねえか」


 そう呟いた兄の声は、先程の質問の鋭さはまるでない、飄々としたものだった。
―え? 
 と、言わんばかりの表情で葉月が顔を上げると、兄は、拍子抜けしたような顔で、冷蔵庫のドアに歩み寄るところだった。
「どこまで知ってる?」
 きんきんに冷えたトマトジュースのスチール缶を一本取り出しながら、冬馬は訊く。
 冷蔵庫の位置的に、彼がどんな表情で、その台詞を吐いたのかは分からないが、少なくとも葉月には、その声と背に緊張の様子は見えない。

「兄さんと千夏さんを引き取ったのが、―あの芹沢家だったということは聞きました。ですが、そこで兄さんが、どういう虐待を受けたのかまでは知りません」
「なるほど」
 プルタブを押し開け、そのまま缶ビールでも飲む父のような姿勢で、冬馬はトマトジュースを一口飲む。
「ん~~~~デルモンテもいいけど、やっぱトマトジュースはカゴメだよね」
 冬馬の表情には、一点の曇りも無い。
 だが、葉月としては、カゴメだよねと言われても『そうですね』と答える状況には無い。

「おれも千夏も非道い目にあったよ。色々とな」

 カゴメだよね、と言ったまったく同じ表情で、冬馬はいきなり切り出した。
「以前、墓参りの時にした話と同じだ。暗くて長くて、ひたすら救いの無い話だ。まあ、お袋が親父を刺した話よりも、少しだけこっちの方が……ひどい、かな」
「…………」
「だから、お前が知っているなら、それはそれで構わねえんだ。むしろ、くどくど詳細を説明する手間が省けるってもんだ。だから―」
 冬馬はそこで言葉を切ると、冷蔵庫からトマトジュースをもう一本取り出し、葉月に放り投げた。
「だから、そんなツラすんなって言ってるのさ。知らねえフリしてた事に罪悪感を覚える必要はないって言ってるんだよ」
 そう言って、冬馬は笑った。


573:傷 (その9)
09/01/05 01:42:47 X9LVBZCy

「警察に保護されて、また施設に放り込まれたのが5年前―おれが11歳の時だ」
 そこで言葉を切ると、冬馬は一口トマトジュースを飲み、
「トラウマは無いって言えば、さすがに嘘になるけど、でも後遺症は無いんだよ。日常生活に支障をきたすようなヤツはさ。少なくとも暗闇が怖いとか、悪夢にうなされて眠れないとか、メシの味がしなくなるとか、そういうひどい症状はマジでおれには無縁なんだ」
 と、言った。
 だが、その言い方に葉月は引っ掛った。
「―では、日常生活に支障をきたさない程度なら、後遺症はあるということですか?」

 冬馬は薄く笑った。
 そして、またトマトジュースを一口あおると、
「つまり、それさ。おれがこれから言おうとしていたのは」
 と、自嘲するように言い、彼はスチール缶をそのまま不燃ゴミ用のくず入れに投げ入れた。


「勃たなくなっちまった」


「―は?」
 葉月は、目をぱちくりさせながら、訊き返す。
 冬馬は、そんな葉月に頬をゆがめると、足りない台詞をさらに言い直した。
「勃起不全、ED、インポテンツ。……呼び方はいろいろだが、早い話が、朝勃ちすらもしやしねえ。排尿以外に全く役に立たない飾り物になっちまったのさ、おれの“男”はな」

「……だから、女性と交際はできない、ということなのですか……たった、それだけの理由で……?」

 冬馬は微動だにしなかった。
 だが、やがて、先程に倍するほどの太い溜め息をつくと、
「ま、―お前には分かんねえか」
 と言い、寂しげに笑った。
 だが、葉月は彼のそんな笑顔に激しく苛立ちを覚えた。
 冬馬が嘘をついていないことは分かる。そして彼が話をはぐらかそうとしていないという事もだ。だが、だからこそ葉月は、自分が全く理解できないところで話を完結させている兄に、激しい憤りを覚えたのだ。

「わたしには分かりません。だって、そうじゃないですか!? 生殖機能を失ったからといって、人としての兄さんの価値がいかほどに変わるものではないでしょう!? わたしたちが求めているのは兄さんそのものであって、兄さんとのセックスだけではありませんよ!?」
「当たり前だ。人が人として在る理由をセックスだけに求められてたまるかよ」
「だったら―」
「だがな葉月、それはあくまでも人間論としての話だ。“男女交際”という生臭いものを正視するためには、前提条件として、おれたちそれぞれが一対の牡であり牝である事実から目を逸らすことは出来ない。そして、おれは牡としての機能を失っている……」
「わたしはそんなものを兄さんに求めてはいませんっ!!」
「だったらお前が、兄妹という関係に不服を抱く必要はないはずだ。男としてのおれに、女としての扱いを求めるからこそ、お前は本音を吐いたんだろう? だが、男としての機能を持たないおれには、お前という“女”を受け入れることなど出来はしない」
「……ッッ!!」
 その冬馬の言葉に、葉月は絶句した。


「おれという人間はここにいる。だが、おれという“男”は、もう死んだんだよ。死んだ男に家族や隣人を愛することは出来ても、“女”を愛することは出来ないんだ」


 冬馬の言い分が正しいとは思わない。
 性的不能者には異性を愛する資格は無いと言わんばかりの冬馬の言い分には、少女独特の潔癖さを差し引いてもなお、やはり葉月は納得がいかなかった。
 だが、それでも葉月は、彼に何を言い返すことも出来なかった。
 冬馬の口調は、さほど重々しいものではない。
 だが、彼の発する雰囲気は、今の言葉が、その場しのぎのいい加減なものではない、歴とした思想に基づいたものであることを厳然と証明している。
 男にとって、“男”を失うという現実がどういう意味を持つのか、いまだ若すぎる葉月には見当も付かない。たとえ天才と謳われた学識の所有者であっても、彼女は弱冠13歳の少女に過ぎないからだ。


574:傷 (その9)
09/01/05 01:44:36 X9LVBZCy

(もし、ここに姉さんがいたなら……)
 弥生ならば、ただ絶句するしかない自分とは違い、頑なな兄に、違う言葉をかけてやれるかも知れない。―葉月は、そう思わずにはいられない。
 だが、そう期待しながらも、同時に葉月は絶望する。
 彼女にも分かるのだ。兄の信念は、他者の理解を必要としない境地まで辿り着いているということが。おそらく、姉妹が百万言を費やして反論しても、彼に自説を翻させることは不可能に違いない。
 ならばどうする?
 どうすれば兄の心を開くことが出来る?


「信用……できません」


「え?」
 今度ぽかんとなったのは、冬馬の方であった。
「兄さんの言葉の全てが真実であると確認するまでは、わたしとしても引くわけには行きません。兄さんが本当に勃起不全なのかどうか、本当に女性を諦めねばならない身体なのか、わたしに証明する義務があるはずでしょう」
「おれが嘘ついてるってのか?」
「わたしには、兄さんの言葉がすべて真実なのかどうか知る権利がある。そう言っているのです」
「おい葉月……てめえ、さっきから何言ってやがる……!」

 冬馬の瞳に、ふたたび剣呑な光が宿りつつある。
 彼が怒るのは当然だ。
 兄といえど、一人の少年に過ぎない。
 少年の身ながら、男として不能である事実を吐露することがどれほどの苦痛を伴うものだったか、それこそ計り知れない。おそらくその羞恥は、葉月の“愛の告白”の比ではないはずだ。その言葉を信じられないと言い切られては、彼としても立つ瀬が無かろう。
 だが、葉月としても、もはや退路は無い。
 兄の静かな怒りに、身の毛もよだつような恐怖を覚えながらも、それでも彼女は踏み止まった。冬馬の殺気に対抗するために―萎え果てそうな己を奮い立たせ、毅然と兄に向き合うために、懸命に心の内の激情をかき集める。

(わたしは、この男にフラれたのだ)
 勃起できない。―それがどうした?
 セックスができない。―だから何だ?
 兄が何と言おうが、その程度のことが、他者からの愛を拒む条件になり得るわけが無い。

 兄の告白にどれほどの意味があろうが、それは葉月にとって重要ではない。どういう理由にせよ、葉月の愛が冬馬に拒絶されたという事実には何ら変わりは無いのだから。
 ならば、ここで問題にすべきは彼の証言の真偽―ではない。彼の信念が、前提条件として、すでにして間違っていると証明することだ。
(―そう、証明だ)
 不能の告白が真実かどうか、証明して見せろと言った葉月だが、いまから自分が為すべきことこそ、真実の証明に他ならない。説得が通じぬ相手に、言葉で交渉を続ける愚を葉月は知っている。ならば彼女としては兄に対し、その目で、その身体で証明して見せねばならない。
 そのためには、むしろ兄の怒りは幸いとも言える。
 いまの彼は、とても冷静な判断が出来そうも無いからだ。


「人が人を愛するということは、もっと高い次元で語られるべき話のはずです。兄さんの身体が、女性をもはや愛せないと言うのなら、わたしが証明して見せます。―そんなことはないのだと。たとえ、どんな兄さんであろうとも、愛を交わすことはできるのだと」


 そういう話をしているつもりは無い。
 冬馬はそう言おうとしたのだろうか、だが、彼は口をつぐんだ。そして、押し殺すような口調で、訊き返した。
「口で言うのは簡単だ。だが、どう証明する?」
「お風呂場に行きましょう。どんな兄さんでもわたしには関係ないということを、生身の肉体で証明します。兄さんが抱く絶望など、浅はかな男根信仰でしかないと、兄さんに教えて差し上げます」
―葉月はそう、凛然と言い放った。


575:傷 (その9)
09/01/05 01:47:58 X9LVBZCy

「ごちそうさま」

 冬馬がそう言って箸を置いた。
 葉月はびくりと身を震わせる。
 兄は、そんな葉月の様子に一瞬、目を細めたが、
「お茶、淹れるな」
 そう言うと、冬馬は立ち上がり、食器棚から急須と茶葉を取り出し、ポッドから熱い湯を注いで、煎茶を二人前用意する。

 葉月の皿には、まだ三分の一ほどお好み焼きが残っている。
 だが、彼女には、今更それを口にする気はなかった。食欲など、とっくの昔に無くなっている。それどころか、今はひたすらに喉が渇いて仕方が無い。
 湯飲みに手を伸ばすと、ぐいっと喉に流し込む。
 だが―、

「~~~~~~~~~~~~~っっっ!!!」

 何とか、口中の熱茶を飲み下すまで、たっぷり30秒はかかったろうか。
 当然兄は、そんな妹の様子を見て、腹を抱えて笑っている。
「ひっ、ひどいです兄さんッッ!! そんなに笑うことは無いじゃありませんか!!」
「いっ、いやっ、だってよ……くっくっくっくっ……っっっ!!」
「ひどいですっ、ひどいですっ、ひどいですっっ!!」
 懸命に笑いを押し殺そうとする冬馬の背中を、真っ赤になった葉月はぽかぽかと殴る。まるで、重圧に押し潰されそうになっていた鬱憤を、ただひたすらに晴らそうとするように。

「―葉月」

 兄の声で、葉月の手がぴたりと止まった。
 その声に、彼女の動きを封じる鋭いものが含まれていたからではない。むしろ逆だ。兄の声は、さっきまでの重苦しい雰囲気とうって変わった、のんびりとした日常の声だった。その声が与えてくれる、いつもの安心感こそが葉月の手を止めたのだ。
「もう……やめとくか?」

 優しい瞳で、冬馬は尋ねる。
 これは質問ではない。提案だ。
―そんなに怯えるくらいなら、そんなに無理をするくらいなら、もう、やめようよ。
 彼の目がそう言っているのが葉月にも分かる。
 だが、その気遣いが、今の葉月には逆に気に入らなかった。
 兄が自分のことを気遣ってくれているという嬉しさは、当然、ある。
 でも葉月は、それ以上に、冬馬に子供扱いされているという現実が、非常に癇に障った。
 いや、それだけではない。その瞬間、彼女は気付いてしまったのだ。
 
「いやです。やめません」
「でも、よう……」
「わたしはやめないと言っているんです」
「…………」
「さあ、お風呂に行きますよ、兄さん」
 そう言うと、自らの両頬をぱんと叩いて気合を入れ、葉月は冬馬の手を曳き、脱衣場まで歩き始めた。
 すでに彼女を襲っていた恐怖はない。
 冬馬の目を見た瞬間、その恐怖は、まるで化学変化を起こしたかのように、別のものになっていた。


 食事というワンクッションを置いたことで、少しはものを考える余裕が生まれた。
 その余裕こそが、少女としての自分に恐怖を感じさせたことは事実であるにしても、それでも葉月は、兄の心理を推し量るだけの時間を持てたことは僥倖だと思う。
『もう……やめとくか?』
 と言った時の、あの冬馬の表情。陽気で優しい、いつもの兄の素顔。だが、葉月には、その優しげな瞳の奥に潜む、冬馬の、もう一つの感情が見えた気がしたのだ。
 その瞬間、葉月は自分の推論に、確信を持った。
(兄さんは、おびえている……)
 おそらくはそのおびえこそが、彼の紛れも無い本音なのだろう。


576:傷 (その9)
09/01/05 01:49:03 X9LVBZCy

 勃起不全という現実が、冬馬の心理にいかほどの衝撃を与えたか、それは葉月に想像することは出来ない。だが、強制売春の手駒として、おびただしい性行為を強要されたトラウマを持つ少年にとって、それは喪失であると同時に、解放でもあったのではないか。
 己の“男”を売り物とされた少年からすれば、“男”を失って、初めて男娼たる自分の過去との決別が果たせたのかも知れない。ならば、現在の彼を、心的外傷の後遺症が襲わないのも、ある意味、必然だとも言える。

 だが、その結論は、女としての葉月を著しく不快にさせる。
 女性を愛せない―なら分かる。まだいい。
 しかし、女性を愛せなくなったことによって解放された―というなら、客観的に見てそれは、トラウマからの逃避に他ならない。
(兄さんが、“女”から尻尾を丸めて逃げ回っているだけの男であるわけが無い)
 少なくとも、自分や弥生が魅力を覚えた冬馬という少年が、そんなだらしない男であるとは、葉月としては信じたくは無かった。

 彼のトラウマが「女性」でなければ、あるいは、葉月自身が彼を慕う一人の女性でさえなければ、もっと違う考え方が出来たかも知れない。
 だが、葉月は認めたく無かった。
 自分を魅了した男ならば、やはり、一人で世界と対峙し得る男であって欲しかったのだ。
 わがままだとは思う。
 だが、理不尽だとは思わない。
(女の理想に応えられる男だと思わねば、誰が禁忌を犯してまで惚れるものか)
 冬馬の手を曳きながら葉月は、内心にそう毒づいた。


「兄さん、まさか今になって、逃げようなんて思っちゃいないでしょうね?」
「……バカ言え」
「フフフ、そうでなければ困ります。―ま、どのみち逃がしませんけどね」



 心に傷を負った一人の人間の心理がどれほど微妙なものであるか、それを想像するよりも先に、女性としての感情を優先して「女体」というトラウマを兄に突き付ける事を選択した自分を、のちに葉月は死ぬほど悔やむことになる。
 だが、神ならぬ今の彼女には、そんな未来は知るよしも無い。



577:傷 (その9)
09/01/05 01:50:07 X9LVBZCy
今回はここまでです。

578:名無しさん@ピンキー
09/01/05 01:51:28 07LSO3RV
リアルタイムGJ!!

579:名無しさん@ピンキー
09/01/05 01:52:24 /O7wW74F
リアルタイムGJ!だけど・・・
ここで終わるのかああああ!!!今から全裸待機してますね。

580:名無しさん@ピンキー
09/01/05 02:25:56 ngfiz04p
GJ!!
今後の展開と兄のイチモツが復活することに期待

581:名無しさん@ピンキー
09/01/05 02:26:32 ngfiz04p
・・・sage忘れorz

582:名無しさん@ピンキー
09/01/05 03:54:28 Y0iV1Ze7
勃たぬなら勃たせてしまえインポテンツ

583:名無しさん@ピンキー
09/01/05 10:51:32 0Cm5z0wI
なんだこの投下ラッシュは…
興奮してきた…全裸で待つ

584:未来のあなたへ4
09/01/05 17:23:00 8b01TZGy
投下します。

585:未来のあなたへ4
09/01/05 17:23:49 8b01TZGy
PRRRRRRRR
PRRRRRRRR
『もしもし』
ガチャン
ツーッ、ツーッ、ツーッ…………
「…………女…………」



作戦構築。
予備作戦B:索敵。
作戦概要:敵A(目標からの仮称『先輩』)に対する情報収集。
手法条項:
 手法:目標に、敵Aに関して直接尋問を行う。ただし、敵Aに関する情報を私は知らないはずなので、誘導尋問に留める。
 手法:情報源Yを使用しての情報収集。同高校に属しているため効果が見込める。
 手法:協力者Aを使用しての情報収集。
総括:
 本作戦において最も重要なのは、敵Aの個人情報ではなく。目標-敵A間における恋愛感情有無の確認。
 また、最終目的を達成するのに必要なのは敵Aの排除ではなく、あくまで本次作戦(一次作戦B:洗脳)の遂行。
 それを念頭に置き、手段と目的を履き違えないよう、感情のコントロールを行わなければいけない。
 だが……もしも一線を越えていたら……その時は…………殺してやる。憎悪と共に殺してやる。


586:未来のあなたへ4
09/01/05 17:25:27 8b01TZGy
「ふうん、榊君には妹さんがいるのか」
「はい。これが、俺と違ってすごく出来のいい奴なんですよ」

五月も半ばを過ぎた頃の放課後。
その日、俺は図書室で片羽先輩に勉強を教えてもらっていた。
図書室には他にも勉強をする生徒がたくさんいて(さすが進学校!)勉強を教えてもらうのも目立つというほどじゃなかったけど。
なにしろ先輩はすごい美人なわけで、そんな人が横に座ってこちらを覗き込んでいるというのは、むしろ俺の方が周囲を意識してしまった。
先輩が俺の勉強を見てくれてるのは今日で三日目だけど、なんでそんなことになったのかといえば。
『ところで、榊君は勉強が辛いと泣き言を吐いていたわけだが』
『うう。まあ、そうなんですが……先輩、俺のこといじめて楽しいんですか』
『まあね。で、覚悟を以って乗り越えるのもいいんだが、少しは抜本的な解決も試みてみようか』
『え、ばっぽんてき、ですか? でも、俺の頭が悪いのが原因だし……』
『ふふん、そこだ。つまり頭が良くなれば、この場合言い換えるとしたら効率的な学習ができたなら、諸問題は解決するとは思わないかな』
『えーと……そりゃまあそうですけど。そんなうまい話はないでしょう』
『ああ、基本的にはその考え方でいいと思う。学問に王道なし、と言うしね。まあ、上手くいったら儲け物、程度の気持ちでいいだろう』
『はあ……それで、具体的にはどうすればいいんですか?』
『榊君の勉強の仕方を見てみたいな。良ければ放課後、一緒に勉強しないかい?』
『え、ええっ! そ、そりゃまあいいですけど』
片羽先輩の携帯は、本人が言った通り電源が切れている時が割とある。そんな日を除いて、図書室で待ち合わせて勉強をすること三日目。
『ところで勉強の方法は誰に教わったんだい?』と聞かれたので。妹です、と普通に答えて冒頭の会話に繋がったのだった。

「うーん。でも、やっぱり妹に教わるっておかしいですかね」
「いやいや、愚兄賢弟という言葉もあるさ。ところで兄妹仲は良好かい?」
「う、聞き辛いこと聞きますね。やっぱ思春期だからと思うんですけど、キツいですよ」
実際は物心ついた時からかなりキツかったわけだけど。受験に入ってからは特に厳しい。
けどまあ、それでも優香は立派な人間だと思うし、守るべき妹だ。物心ついてからそれも変わりない。
「では嫌がらせなのかな……」
「へ? 今、なんて」
「いや、なんでもないよ。ところでもう一つ疑問なんだけど。ここしばらく見てたんだが、予習をしないのは何故だい?」
「え、予習……ですか?」
ぽかんとした。予習……そういえば俺、復習ばっかりで全然そんなことしてないな。
けど、受験の時からこんな風に勉強してきたんだし。大体、復習だけで手一杯なんだから、予習している暇なんて無いんじゃないだろうか?
「予習と復習では主旨が違う。予習は授業内容の吸収を効率よく行う意味があり、復習は学んだことを身につける意味がある。まあ、遅れを取り戻すなら復習に重点を置くべきだろうが、追いついているなら予習復習をバランスよく行った方が効率が良いはずだよ」
「そ……そうなんですか」
うーん。けど優香には今までそんなこと、一度だって言われたことはないんだけどなあ。
『復習、復習、復習です。兄さんに他人よりも理解力に劣っているという自覚があるのなら、人の三倍復習を行わなければいけません』
こんな感じで。鞭を持っていてもおかしくないぐらいの気迫だった。
なので予習だなんて、考えたこともない。
「ふふん。教師がいても、授業内容を理解していない復習では自習と同じだよ。せっかく学費を払ってるんだ、活用しない手はないだろう?」
「まあ、それはそうですけど……予習ってどんなふうにやればいいんですか?」
「なあに、そう身構えることはない。教科書の進み具合からあたりをつけて、明日はどのようなことを学ぶのか、それはどんな意味を持つのか、あらかじめ関連付けておくだけだよ」
「ふんふん」
「大事なのは学問に対して能動的に取り組むということさ。事前に疑問が沸いた箇所は授業中にでも教師に質問してみるといい。なに、彼等だってそのために給料を貰ってるんだ、遠慮することはないよ」
「えー、それはさすがにちょっと恥ずかしいっていうか、気後れしますよ」


587:未来のあなたへ4
09/01/05 17:26:19 8b01TZGy
そんな感じで。
周りに迷惑をかけない程度に、片羽先輩と一緒に勉強する。
正直、勉強というよりは雑談がメインで、その時間はとても楽しいものだった。
片羽先輩は、自分では成績が悪いと言っていたけれど、とてもそうとは思えない。頭が良い、というか。物事に対して、明瞭に判断を下すところは優香とタイプが似ているかもしれない。
優香と違うところは、やっぱり態度に余裕があるところだろうか。なんだかんだ言って、この人は俺よりも年長なのだ。
むしろ俺の方が(例えば妹に対するより)甘えている部分が大きいんだろう。
「ところで繰り返しになるけれど、兄妹仲は悪くないのかな?」
「え、まあ。ちょっとキツいところもありますけど、そんなに悪くないと思いますよ。時々一緒に出かけますし」
「ふむふむ。受験勉強も手伝ってもらったのかな? というか、もしかして受験先を決定したのも?」
「まあ、恥ずかしながら、ほとんど妹のおかげで受かったようなものです。でも俺と違って、本当にすごい奴なんですよ。部活……あ、柔道部にも打ち込んでるし、自慢の妹です」
「なるほど。ところで何度も繰り返して悪いんだけど、妹さんになにか恨まれるようなことはしてないかい?」
「それ三回目じゃないですか。別に、ちょっとぎくしゃくする時もありますけど、普通の仲ですよ」
「そうか。いや、すまないね……しかし凄まじい執念だな。気付かれずに縛り付けるとは……」
「ん? なんですか?」
「いやなに。君の妹さんに会ってみたくなったということさ。ふふん」
と。
そこでいきなり、がしい!と背後からヘッドロックを食らった。
く、くるしっ! うぐぐぐぐぐぐっ。
「だ、だれだー! ってお前かよ柳沢!」(小声)
「てめえええ! タレコミで張ってみれば、なに親友に黙ってこんな美人といちゃいちゃしてやがるううう!」(小声)
「普通に話してるだけだろっ! 大体、こんなところで何もあるわけないだろっ! ていうか、タレコミってなんだ!」(小声)
「そいつは企業秘密だ! とにかく許すまじ!」(小声)
お互いに小声なのは図書室だからだ。それでもアクションが派手なせいで、周囲から迷惑そうな視線を向けられる。
というわけで。いきなり背後から忍び寄って俺にヘッドロックをかましたのは俺の友達兼クラスメイトの柳沢だった。
って、このパターン前もあったよな……
一通り見苦しいやりとりを続けた後。柳沢は先輩を挟んで俺の反対側に座った。きらーん、と歯を光らせて笑顔。爽やかなつもりらしい。
「俺、榊の親友の柳沢浩一っていいます。よろしくお願いします」
「いや、だから親友……?」
「ふふん。僕は片羽桜子、三年生で榊君の友達だ。よろしくね」
「うっす!」
「……あれ?」
前みたいなパターンで、てっきり先輩に迫るかと思ったんだけど。柳沢はあっさり引っ込んだ。
いや、先輩を口説こうとするなら断固として阻止するつもりだったけど。普段と違う行動を取られるというのも気味が悪い。
と。柳沢が席を立って俺に顔を寄せてきた。おいおいおいおい。どういう風の吹き回しだ?
「で、だ。榊、物は相談なんだが……」
「なんだなんだ。悪い物でも食ったのか?」
「んなわけあるか。それよりさっき思いついたんだが、今度の週末ダブルデートに行かないか?」
「ダブルって……誰と誰と誰と誰だよ」
「俺とお前、んでもって片羽先輩と優香ちゃんでだ」
「優香ぁ? なんでここで優香が出てくるんだよ?」
「いやあ、毎日メル友やってんだけど、デートに誘ってもなかなかOKしてくれないんだよな。で、兄貴も一緒に出かけるならいけるかな! と」
「あのなあ、勝手に……」
「ふふん、なかなか面白そうだね。僕としては構わないよ」
「頼む、榊!」
手を合わせて拝んでくる友人。一方、先輩の方は意外と乗り気のようだった。そういえば優香と会ってみたいって言ってたしな。
俺としても、休日に片羽先輩と一緒に遊ぶのはとても楽しそうだと思う。
けれど……うーん。なんか妹を裏切るようで、あんまり気が進まなかった。
「それじゃ、家に帰ってから優香に話してみるよ」
「よっしゃ! 結果が出たらメールしてくれよな!」
その時の俺は、優香に話は通すけど、強く進めるつもりはなかった。
妹が少しでも嫌がるようなら、すぐに断ればいいと、そんな風に考えていた。
けれど夜。優香は少し悩んでから、条件付きでOKを出した。


588:未来のあなたへ4
09/01/05 17:27:35 8b01TZGy

優香に、片羽先輩のことを話したことはない。
少し前に『最近楽しそうですけど、彼女でもできたんですか?』と皮肉交じりに聞かれたことはあったけど、その時も適当にお茶を濁すだけだった。
勿論、先輩は彼女なんかじゃない。まあ、そういう期待がないとは言わないけど。話すに値する人であることは確かだ。
けれど、優香に先輩のことを話したことはない。
なんとなくだけど。この二人を関わらせたくない気持ちが、俺の中で働いているようだった。
なんでだろう……まあ、いいか。
今は週末を楽しみにしながら、勉強をしよう。


589:未来のあなたへ4
09/01/05 17:28:55 8b01TZGy
議長「それではこれより一人緊急対策協議を開始します。案件は敵Aこと片羽桜子への対応について」
強行「殺しましょう」
常識「却下」
分析「目標に対する情報が足りなさすぎます。また、殺人というリスクを背負ってまで排除すべき存在なのか、それすら不明です」
議長「それから、ダブルデートの申し込みについての対応も検討してください」
潔癖「反対します。兄さん以外の男とデートなんて絶対に嫌です」
分析「私は賛成します。片羽桜子に対して情報収集を行う絶好の機会です」
常識「まあ、ダブルデートですから。そこまで警戒するものではないのでは」
潔癖「以前雨宮明義に行ったように、二手に分かれるよう嵌められたらどうするんですか。兄さんと片羽桜子を二人きりにすることになりますし、情報収集すらできませんよ」
打算「もしもそうなったら、私は兄さんに売られたことになりますね。片羽桜子とデートするために」
潔癖「…………」
強行「…………」
分析「…………」
議長「…………」
常識「…………」
打算「禁句でしたか」
強行「その時は片羽桜子を殺しましょう」
潔癖「兄さんはそのようなことをする人ではありません」
分析「私に対する好感度はそれなりにあるはずです。問題は、片羽桜子に対する好感度が不明なことですが」
打算「では兄さんの申し出を受ける代わりに、交換条件を提示して。二手に分かれることができないようにしたらどうでしょう」
潔癖「兄さんとずっと手を繋いでいるとか?」
常識「馬鹿ですか」
分析「後一人誘うというのはどうでしょう。そうすれば奇数になるので二手に分かれてもリスクは減ります」
打算「それなら藍園晶を誘いましょう。適当な報酬で動くはずです」
強行「彼女は信用できるのですか?」
分析「お互いに良心などという物では動いてはいませんから、問題ないでしょう」
常識「兄さんに対する理由付けはそうですね。『以前から約束していた』というあたりでいいでしょう」
議長「それではダブルデートは受けると言うことで」
性欲「ちょっといいですか? デートがどうこうはさておき、私としては。兄さんと片羽桜子が既に性的関係を持っているかどうか、の方が気になります」
強行「殺しましょう」
潔癖「兄さんに限って有り得ません」
分析「ダブルデートという申し出、最長で出会って一ヶ月半という期間、以前に『恋人なんていない』と明答したこと。総合的に考えて可能性は低いですよ」
性欲「会って一日で性行為に及ぶ人間はいくらでもいるでしょう」
常識「兄さんはそのような人間ではありませんし、そのような人間に好かれるような容貌でもないのでは」
打算「まあ、ここに一名ベタ惚れがいますけどね」
性欲「それに、性的関係まで行かなくても、デートをする以上はお互いに好意を抱いている可能性は高いと思われます」
強行「殺しましょう」
性欲「その場合、一刻の猶予もありません。一次作戦をAに切り替えて強姦しましょう」
議長「可能性の段階でそのような賭に出ることはできません。一次作戦Aへの切り替えは最終目的の達成を困難にします」
潔癖「いえ、下手をすると兄さんの童貞が奪われてしまいます。私は賛成です」
打算「しかし、童貞を奪うのはあくまで予備目的。最終目的の達成を優先すべきではないでしょうか」
潔癖「嫌です。兄さんの童貞は私のものです」
強行「まどろっこしいですね。片羽桜子を殺してしまえば一緒です」


590:未来のあなたへ4
09/01/05 17:29:32 8b01TZGy
打算「ただ、兄さんが好意を抱いているとしたら、片羽桜子は私よりも魅力的ということになりますね」
潔癖「兄さんは私の一体何が不満だというのですか」
性欲「胸とか」
強行「ぶっ殺しますよ」
常識「まあ、妹補正でマイナスがかかっているからではないでしょうか。私は客観的に見て、十分魅力的です」
分析「私とは全く違うタイプなのかもしれませんね。その場合は比較対象にはなりにくいでしょう」
議長「議論が後退しています。好意の有無を探るために、情報収集を行うのではないですか」
性欲「そもそも、このような事態になったのは長期戦略の誤りが問題ではないですか?」
議長「私が間違っていたというのですか」
分析「確かに。一年間、所属場所が異なることで監視と対応が遅れる可能性は指摘されていましたね」
強行「こんなことなら足でも折ってさっさと留年させておけば良かったんです」
常識「それはあまりに酷すぎるでしょう。人生から落伍したらどうするんですか」
性欲「何を言っているんですか。最終目的がまともな人生からの落伍そのものでしょう」
潔癖「それに、柳沢浩一の相手をするのもいちいち面倒です。吐き気がします」
分析「メールだけなんだから我慢してください。彼は情報源として、最低でも一年間は必要です」
議長「とにかく。この一年間が危険だということはわかっていました。だからこそ、高偏差値校に進学させ、勉強三昧にさせたのではないですか」
常識「しかし非効率的な勉強方法を刷り込むというのは、将来的に大きなマイナスになるのでは」
議長「過ぎたことを議論しても仕方ありません。今年は凌いで、来年再来年で勝負を賭ける。この戦略に変わりはありません」
性欲「しかしあまり戦略に拘りすぎるのも問題です。兄さんが誰かと性交を行えば、一次作戦Aの効果は半減します。快楽で縛り付けるのも目的なのですから」
常識「それでは取れる作戦が無くなってしまいます」
潔癖「そんなことになったら兄さんを殺して私も死にます」
強行「いえ、それより片羽桜子を」
分析「たしかに。不測の事態が発生した以上、戦略の見直しは必要かもしれませんね」
議長「わかりました。戦略の見直しも視野に入れて、週末に臨むことにしましょう。それでは一人緊急対策協議を終了します」

591:未来のあなたへ4
09/01/05 17:30:56 8b01TZGy
とりあえずここまで。残りは明日投下します。
改行の関係で小刻みになってしまい申し訳ありません。

592:名無しさん@ピンキー
09/01/05 17:31:54 yoqBzRV6
強行派ww

593:名無しさん@ピンキー
09/01/05 17:40:06 vwvBNlbW
これが秘技マサル会議か

594:名無しさん@ピンキー
09/01/05 18:00:46 fDvfUoLI
駄目だ強行たんが面白すぐるwww

595:名無しさん@ピンキー
09/01/05 18:10:52 lDgYHpRv
ダメなゼーレみたいだw


596:名無しさん@ピンキー
09/01/05 18:45:19 ngfiz04p
強行wwってかすげー会議だなw

597:名無しさん@ピンキー
09/01/05 18:51:33 y0DqNZyu
潔癖の思考が性欲よりヨゴレていることについて

598:名無しさん@ピンキー
09/01/05 19:46:19 0Cm5z0wI
潔癖w

599:名無しさん@ピンキー
09/01/05 19:53:44 fmCCfw+R
キモ姉妹は正月休みが明けても兄を実家から出さないんだろうな…

600:名無しさん@ピンキー
09/01/05 20:27:22 5faxC5M5
潔癖たんが潔癖じゃない件について。

601:名無しさん@ピンキー
09/01/05 21:31:40 wg4fhTmz
第一話のピュアな優香はどこへやら

602:名無しさん@ピンキー
09/01/05 21:36:26 unHImGbt
やっぱ面白いな

603:名無しさん@ピンキー
09/01/05 22:02:03 P2W60DQX
作者さんGJ
潔癖たんなのに性欲剥き出しでワロタw

>>601
最初は死にたいとか言ってたのになw

604:名無しさん@ピンキー
09/01/05 22:28:13 bFWD56/g
GJ!

しかし優香はどこへ行くんだwww

605:名無しさん@ピンキー
09/01/05 22:40:24 8iox3di+
脳内会議クソワロタ

606:未来のあなたへ4
09/01/06 08:05:28 eKIsSSlG
後半投下します。
特に盛り上がりもなく終わり。


607:未来のあなたへ4
09/01/06 08:06:51 eKIsSSlG
さて、週末。
柳沢の提案によりダブルデート(というより遊び)に集まった俺たちは、アーケードの広場で無事に合流していた。
「ちーっす! はじめまして。優香ちゃんの友達で、藍園晶っていいます。どうか気軽に晶ちゃんと呼んでくださいっ」
「OK! 俺は柳沢幸一。榊の親友だ、よろしくな!」
「ふふん。僕は片羽桜子。彼等の先輩で三年生をやっている。よろしく頼むよ」
「榊優香です。いつも兄が御世話になっております」
とりあえず、お互いに自己紹介合戦。賑やかだなあ。あ、全員知ってるのは俺だけか。
ちなみに、なんで晶ちゃんがいるのかというと。優香が以前から同じ日に遊ぶ約束をしていたらしい。
それならば、と取りやめようと思ったけど。どうせなら一緒に遊べば良いじゃないですか、という妹の言葉で合流することになった。
「晶ちゃん、久しぶりだなあ。サッカー部はどうなってる?」
「頑張ってますよー。新入生が結構入ったんで、びしばし鍛えてるところです。そうそう。雨宮先輩は高校でもサッカー部はいりましたよ」
晶ちゃんは相変わらず元気だった。背も少し伸びたようだ。短めのスカートにパーカーというラフな服装をしている。
優香は女物のジーンズに厚手のシャツ。いつものポシェットにポニーテールという活動的な格好。
片羽先輩は、裾の長いスカートに、水色のサマーセーター、白いブラウスという服装だった。美人って何着ても似合うんだなあ。
あ、俺と柳沢は、まあ適当なズボンと上着。特筆するようなことはない。
「それじゃ映画いこーぜー!」
「「おー!」」
「おっと。榊君には伝えたが、僕はホラー映画が死ぬほど苦手なので、それだけは避けてくれないかな」
「あ、はいはい。わかってますよ」
「そうなんですか。片羽……さん」
「まあね。優香君だって、苦手の一つや二つはあるだろう?」
「そういえば、優香ちゃんの苦手な物って全然聞かないっすね。何かあるんですか、榊先輩」
「おお、そいつは俺も興味ある! 是非とも教えろ、榊!」
「えー、うーん」
優香の弱点……そういえば思いつかないなあ。昔はちょっと運動が苦手だったけど、今はもうそれもこなすようになったし。
あ、そういえば男関係には弱いかな。美人な奴ではあるんだけど、どうも男というものを怖がっている気がする。
そこまで考えたところで「に、い、さ、ん?」と、腕を思いっきりつねられて、その話題はお開きになった。あいたたた。

映画は、柳沢があらかじめ調べておいたんだろう、すんなり見ることができた。
ハリウッドものの映画で、内容は囚人が銃とかで武装した車を使って、釈放のためにレースをするというもの。
席順は、先輩、俺、優香、柳沢、晶ちゃんの順。多分、柳沢は映画中に手を握るとか、そんなアプローチを考えていたんだろう。実を言うと、俺も似たようなことを考えていた。
けれど映画が始まってしまえば、派手なアクションの連続で。思わず見入ってそんな思惑はすっ飛んでしまった。
あ。そういえば、映画の途中で先輩は薬を飲んでたみたいだけど、大丈夫かなあ。



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