キモ姉&キモウト小説を書こう!Part16at EROPARO
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part16 - 暇つぶし2ch300:傷 (その8)
08/12/20 10:18:44 YPS1ti1J

「お前はなんで、おれのことをそんなに気にするんだ?」
 その語調に咎めるような勢いは無い。だが、その言葉には明確に、のんきな声音に隠された棘があった。―いや、兄のことだ。語尾の裏にうっすら見え隠れする緊張すらも、実は意図的なものかも知れない。
「おかしいじゃないか。普通はお前、年頃のオンナノコって言えばよ、おれみたいな男の家族を避け始めるのが当たり前なんだろ?」

 それはそうだ。
 思春期に突入した年齢の女性は、まず“家庭”という最も身近な環境にいる異性を、敏感に意識し始める。幼い頃はともかく、普通の家族ならば思春期以降は、なかなか以前の親密さを保持することは難しい。
 葉月にとっても、例を挙げろと言われれば、それこそ枚挙にいとまが無い。クラスの女の子たちは、ほぼ例外なく、実家に同居する父親や兄弟の“男臭さ”に辟易している者たちばかりだからだ。
 だが、この際、問題はそこではない。どう考えても兄の発言は、葉月の質問をはぐらかそうとしているのが丸見えなのだから。
 こういう時、弥生ならばどう答えるのだろうか。―しかし葉月には、それがまったく想像できない。



「それは多分……わたしが兄さんのことを好きだから、でしょう」



 言ってから唖然とした。
 迂闊どころではない。何故こんなムチャクチャな発言をしているのか、葉月は自分が、まったく分からない。
 いや、唖然としているのは、葉月だけではない。
 冬馬もその口をあんぐりとさせて、呆然とこちらを振り返っている。

 葉月はバカではない。少なくとも机に向かった彼女を指して、バカと呼べる人間は、今の日本にはいないはずだった。だが例外が無いわけではない。
 柊木冬馬。
 事態が彼に関わると、途端に葉月はいつものペースを崩し、失言・失態を繰り返す。たとえば―そう、いまだ。
 そして、こうなってしまった以上、もはや仕方が無い。
 さっきの失言にしてもそうだが、一度口に出した言葉は、もう無かったことにはできないのだ。
 葉月は肚をくくった。

「兄さんはどうなのですか? こんなわたしを、迷惑に思いますか……?」

 行けるところまで行ってやる。
 姉が不在の夜、妹は兄を前にそう思った。


301:名無しさん@ピンキー
08/12/20 10:19:19 YPS1ti1J
今回はここまでです。

302:名無しさん@ピンキー
08/12/20 10:30:42 5nrLqgl1


303:名無しさん@ピンキー
08/12/20 10:41:18 OLjzfiqu
いつも楽しみにしてます


304:名無しさん@ピンキー
08/12/20 19:59:25 Z3w856Kt
GJ!今からキモウトのターン!!

305:名無しさん@ピンキー
08/12/20 23:31:33 HuDEMH60
葉月なかなか突っ込んだな
これは弥生の反応が気になるw
GJ!

306:名無しさん@ピンキー
08/12/21 01:01:57 p6BAdOdj
URLリンク(up2.viploader.net)

307:名無しさん@ピンキー
08/12/21 03:01:28 gbbAP/4r
>>306
zip

308:名無しさん@ピンキー
08/12/21 11:48:22 p6BAdOdj
URLリンク(iroiro.zapto.org)
URLリンク(iroiro.zapto.org)
URLリンク(iroiro.zapto.org)
URLリンク(iroiro.zapto.org)

309:名無しさん@ピンキー
08/12/21 12:12:29 azFxlQ6s
よくもまぁこんなのがアニメ化されたものだ。。

310:名無しさん@ピンキー
08/12/21 12:28:56 Sd2hiilo
>>306
詳細教えて

311:名無しさん@ピンキー
08/12/21 12:41:30 fOjE0+7H
おや、>>310は興味津々みたいだぞ、みんな?

312:名無しさん@ピンキー
08/12/21 13:01:08 YthJTRgz
>>310
vipでやれカス

めいびいっぽいけどどうだろ

313:名無しさん@ピンキー
08/12/21 13:57:44 EqYAilIG
>>306
>>308
タイトルが知りたい

314:名無しさん@ピンキー
08/12/21 14:22:46 Q58ox4Of
>>306
これヤングチャンピオン烈の7代目のとまりとかいうめいびいの作品だったはず。
>>308
これキスシスとかいうやつだったような?尿で有名な人だったはず

315:ユルキモ1
08/12/21 15:20:38 NhB+tg9W
 文香、君こそ真ノキモウトダ、君には「敵意」がナイ。「敵意」には力が向カッテ来ル…。
ヨリ強い力が「敵意」を必ずタタキにヤッテ来ル…。「敵意」はイツカ倒サレル、実に単純ダ。
ダガ君は違ウ。君には「敵意」もナケレバ悪気もナイシ。兄にも迷惑ナンカかけてナイと思っテイル。
だがソレコソ、スイーツ(笑)より悪い「キモウト」と呼バレルものダ。

この物語は、妹と兄による100年以上にわたる戦いの歴史だ。
彼女の名前は文香。ツヤのあるセミロングの黒髪、
お人形のように小さな顔にくりっとした丸い目をした少女。口癖は語尾に~でし、~じょ。


「お兄ちゃまが、帰って来る前にキレイにしなきゃ!」

それにしても、お兄ちゃまはお片付けが下手でしねぇ~。あたしが、毎日掃除してるのに…。
でもそれを口実に、お兄ちゃまの部屋に入れるんだから良しとしよっ。
まぁ、本当の目的は掃除なんかじゃないんでし…ぐひっ…ぐふ

「まずは…ゴミ箱、ゴミ箱っと」

まず目的1は、ゴミ箱の中の精液の回収。大体はティッシュにへばりついて、カピカピになってるけど。

「ラッキー!今日はコンドームじゃん…うはっ」

たまにこうやって、コンドームに入っている原液が手に入るんだよ。
しかもお兄ちゃまは、コンドームを縛って中身を出さない様にしているから、
意外と新鮮な精液が採集できるんでし。お兄ちゃまは、
文香が部屋掃除をしてゴミ捨てをしているのも知ってるのに、いつもティッシュとかコンドームを、
ゴミ箱に捨ててある。一応コンビニの袋に入れて、入り口を縛ってからゴミ箱に入れているが、
あんまりにも無防備だ。しかも一階までトイレに行くのが面倒らしく、ペットボトルにオシッコをしてあって、
それを片付けるのもあたしの役目だ。1日以上経つと菌が繁殖してるのか発酵してるのか、
開けるときに炭酸飲料みたいにプシュッと音がして、なんとも言えない匂いがする。
でもこの匂いを嗅げるのは、世界中でたったの一人だけ。とは言ってもさすがに行儀が悪い、
オシッコを手に入れる手段がこれしかないからしょうがないけど、
なにか方法が見つかったらすぐに止めさせなきゃ。
文香に相応しいお婿さんになってもらうんでし、お行儀も大事でし。

316:ユルキモ2
08/12/21 15:22:23 NhB+tg9W
「それはさておき、これだけ有れば精液を培養出来るじょ~!培養して、増殖させて…
お料理しよ~…でひっ…ストック切れそうだから助かったでし!ん~…なんでこんなにいい匂いなの~?
でもお兄ちゃまは、こんなゴムに出さないであたしに出せばいいって、何回言ったらわかるんでしぃ?」

指でコンドームの先端を触ると、 精液がグニュっと音を立てて変形する。
直接触らないでも、ドロドロとした感触が伝わる。
次に文香は、アーンッと小さな口を開けて精子の詰まったコンドームの先端を口に含み、
モゴモゴと口の中で楽しむ。ゴムの苦い感触も慣れたものだ。
まるで母親のおっぱいを吸うように口から離さない。
手にコンドームのローションがついているが、気にせずに制服のポケットにそれをしまう。
 そして回収の次は排除だ。文香は、お人形のようなクリクリした丸い目で室内を見渡す。
そして机の上の一枚の写真を発見した。

「んっ…このビッチ、お兄ちゃまとツーショット…き~!キー!」

ビリッ、ビリッ…ビリリリリッ

あたしでも、たまにしか撮ってもらえないのに~。
顔は覚えたから今度会ったら、ただじゃおかないんでし。はぁ…はぁ…

「おいっ、文香?」

「でしぃ?」

排除に夢中になっていたために、兄が帰宅していたのに気がつかなかったようだ。
文香は、慌てて写真の残骸をゴミ箱に入れる。

「あはっ…あははっ、お兄ちゃま…お帰りなさい。」

「お帰りなさいって、コンビニ行っただけだし。あれっ、ここにあった写真知らない?
阿部さんとツーショットのやつ」

「アベドゥルは…粉みじんになって…死んだ…」

「えっ…アベドゥ?…粉みじん?…まぁいいや、見つけたら言って」

「うん…」

「あれっ…部屋掃除してくれたのか?」

「うんっ!あと、ベッドの下からこんなの出て来たよ」

317:ユルキモ3
08/12/21 15:25:15 NhB+tg9W
文香の手には、アダルトな雑誌やらアイテムやらが。

「いっ…それは…」

「あたしがいるんだから、こんなの要らないでしょ?」

ピリッ、ビリリリリッ

文香はまずアダルト雑誌を力任せにビリビリ破り、次にアダルトDVDを真っ二つにする。
さらには、オナホールを裂けるチーズの如く細かくむいていく。

「面白~い!ほら…このオナホール簡単に裂けるよ~!お兄ちゃまもやるぅ?」

顔は笑っているが声は笑っていない。この調子だから、兄のアダルトグッズは寿命はかなり短い。
彼女を作りたくない訳ではないが、
アダルトグッズと同じ運命を辿ってしまうのではないかと考えると気が進まない。

「この写真集さぁ…前も燃やしたのに~。どう考えても文香の方が可愛いのに、おかしいな~?もう一回燃やさなきゃ」

「おいっ!それ限定版だぞっ、止めろっ…」

「離してよっ…こんなカキタレ、お兄ちゃまには似合わないっ」

「写真集くらいいだろっ」

ビリビリ、ビリりッ!ビリッヒィィィーンッ!

取っ組み合いの結果、限定版の大事な写真集はグシャグシャのビリビリ状態だ。

「あぁ…限定版が…二万もしたのに」

余程気に入っていたのか少年は、床に女の子のようにへたり込んだ。

「大丈夫、大丈夫ぅ~!今度ぉ~、文香の写真集プレゼントしてあげるからぁ。
もっと過激なポーズしてあげるでし…ぐひっ…それみてぇ…いっぱいシコってね!
写真集に直接ぶっかけてもいいんだじょ!」


アダルト・DVD→殺害
アダルト・雑誌→殺害
アダルト・グッズ→殺害
アイドル・写真集→間接的に(協力して)殺害


 キモ妹第一部の主人公は女性です。なぜ女性なのか、そこのところなのだ問題は。
キモ妹の主人公なのだから、兄にパンチをされてもへこたれないタフさが必要だ。
兄のベッドを無断で這いずり回ることもあるし、時には大股開きで兄の腰に落下する事もあるだろう。
女性にはちょっとキツい設定だ。でも考えてみると、そのギャップが面白いかもしれないと考えた。
しかも、聖母マリア様のような大きな兄妹愛を持つ女性。主人公は女性しかいないと思った。

318:名無しさん@ピンキー
08/12/21 15:27:17 NhB+tg9W
かわりにジョジョネタ書いたわ。ビッリヒヒィィーーンッはジョッリヒヒィィーーンッね。ちなみに続きます。

319:名無しさん@ピンキー
08/12/21 17:17:48 p6BAdOdj
URLリンク(paint.s13.dxbeat.com)

320:名無しさん@ピンキー
08/12/21 21:52:09 P3pjOHXd
はっとりみつる先生の作品だということまでは分かるがそこから先が分からん

321:名無しさん@ピンキー
08/12/21 21:54:00 yCBIl0kB
キモウトがよかろうなのだァッ!

322:名無しさん@ピンキー
08/12/22 00:03:23 YTTJ5YSl
>>319
修羅場かよ

323:名無しさん@ピンキー
08/12/22 00:56:51 VoH+OaT1
キモ姉妹系の漫画ならコミックハイで連載中(現在3話)の「ぶらこんッ!?」がいい感じ
「2人で近親相姦の扉を開けましょう」「BLに比べたら生産的よ」などのキモウト発言があり
兄が「何を生産するんだ」って心の中で突っ込んでたのが笑ったw

324:名無しさん@ピンキー
08/12/22 15:44:01 sf2Otdzc
>>323
ありゃ駄作だろ

325:名無しさん@ピンキー
08/12/22 21:27:45 K1wkkm1D
>>324
では、君のお勧めなのか教えてくれないか?

俺のお勧めは……ベタだが、「でろでろ」。ああいうつかず離れずの距離関係ってめちゃくちゃいいぜ……!


326:名無しさん@ピンキー
08/12/22 21:56:46 ELUN/PIi
まとめの「蝶変態超変態」ってやつにリアルタイムGJ!ってレスも入ってて吹いた

327:名無しさん@ピンキー
08/12/22 23:09:02 +kF5yHWd
>>325
でろでろは兄妹コミックであってキモウトコミックではないだろ
妹もデレるけど基本はシスコン兄の暴走だし

328:名無しさん@ピンキー
08/12/23 08:09:42 JMHcbQxa
漫画のキモウトと言えば、普段はそっけないくせに、兄に彼女ができそうになったら殺すこともいとわない妹がいたっけ
よく兄の持ち物を盗んでたやつ

329:名無しさん@ピンキー
08/12/23 11:01:51 GaWdN7gb
>>328
なんだその俺の好物はkwsk

330:名無しさん@ピンキー
08/12/23 11:18:39 rmmPVrlr
>普段はそっけないくせに
俺もツボだ

331:名無しさん@ピンキー
08/12/23 12:54:27 38e9UILQ
携帯のみだけど、こんなのなら
URLリンク(hittatu.com)

332:未来のあなたへ3.5
08/12/23 17:30:36 IN/7LRg9
遅くなりましたが投下します。
今回も完全にスレチです。こんなんばっかりでごめんなさい。
実はキモ姉とか、そんな予定もありません。あしからず。

333:未来のあなたへ3.5
08/12/23 17:31:48 IN/7LRg9
世界はなんて美しい。






高校に入学してから一週間ぐらい経ったある日。
良い天気だったので、俺は散歩がてら学校の敷地内を探検するつもりで歩いていた。
この高校は割と広くて、古い。戦前からある進学校という奴だった。ちなみに公立で、家からはバス通学になる。
このあたりでは普通に偏差値の高い高校だ。俺のような馬鹿がここにいることが、今でも信じられない。
全ては半年前の、何気ない会話から始まった。

『兄さん。ところで進学先は何処にするか決めているんですか?』
『ん? いや、別に。近くの適当なところにしようかと思ってるけど。歩いて通えるところがいいかな』
『…………』
『なんだよ、その盛大なため息は』
『兄さん。世の中には、定職に就けず毎日すり切れるほど働いて、それでも貯金もできない人間がたくさんいます。そうして、体を壊して働けなくなりゴミ

のように死んでいく……』
『そういった人間と、そうでない人間を分けるのはいったい何なのか、兄さんにはわかりますか? 幸運? 生まれ? いいえ、いいえ』
『天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと言われている。けれど人の立場に上下があるのは何故なのか。それは学問の差から生まれるものなり』
『人生の上下を決定づけるのは、幸運でも生まれでもなく、それまで積み上げてきた努力のみ。それが唯一、有意義な信仰というものですよ』
『自分の将来を想像してください。惨めな大人になるのが怖いのなら、今、努力するしかないんですよ。しないと言うのなら、未来を捨てると言うことです』
『あ……ああ』
そんなわけで、次の日から受験勉強の日々が始まったのだった。とほほ。
当初から目標は、偏差値が高く学費の安い公立高校と言うことで決まっていたけど、当時の学力ではとても無理にしか思えなかった。
それでもこうして入学できたのは、妹に尻を叩かれて遊びにも行かず、この半年ひたすら勉強をしてきた成果だ。
辛かったなあ……人生であれだけ、長期間勉強したのは間違いなく初めてだ。
しかし優香の奴、この高校一本に絞って、もし落ちたらどうするつもりだったんだ。


334:未来のあなたへ3.5
08/12/23 17:34:40 IN/7LRg9
そういうわけで。
そうして入った高校の敷地内を、俺は感慨深く歩いていた。
放課後の学校。
グラウンドでは野球部とサッカー部、陸上部が掛け声をあげながら練習している。体育館ではバスケとバレー、他にも弓道部、剣道部、柔道部、空手部と、活発に活動しているみたいだった。
とりあえず、しばらくサッカー部の練習を見ている。うーん、人が多いし結構熱心に練習してる。血が騒ぐ。
けど、部活に入るかどうかといえば否定的だった。
これは妹にも注意されていることだけど、俺は元々あまり頭がよくないから。毎日勉強していないと、あっという間に授業に追い付けなくなってしまう。
なので気晴らし程度に遊ぶならともかく、中学のように毎日部活に打ち込むというのは無理だ。まあ、妹は両立させてるけど、あいつは出来が違うからなあ。
「ふう」
軽くため息をついて、旧校舎の裏に回る。
木造の旧校舎は、今ではもう使っていないようだ。窓には板が打ちつけられ、周囲にも人気はない。
その裏手。なにもないと思ったそこでは、女生徒が一人倒れていた。

「いや、すまなかったね。助かったよ」
「あの、本当に大丈夫なんですか? 救急車とか……」
「ふふん、気にすることはない。この程度は日常茶飯事さ。ちょっとした運動不足に過ぎないよ」
「倒れるのが日常茶飯事って……それに、なんか薬飲んでましたけど」
正確には。俺が半分パニックになりながら彼女に駆け寄ると。ひゅーひゅーと息をしながらポケットを叩いていたので、そこに入っていた薬を二粒飲ませたのだった。
とても、本人が言うような軽い貧血には思えなかったけどなあ……
「ああ、昔から少し体が弱くてね。これはそのための薬だよ。運動不足とは関係ない。ふふん」
鼻で笑われた。そこは笑うところなんだろうか。
その人はどうも上級生のようだった。リボンの色を見るに三年生、最上級生だ。当たり前だけど初対面。
綺麗な人だった。
まず目に付くのは、とてもボリュームのある黒髪。お腹のあたりまで伸ばされて、毛先は一直線に切り揃えられている。
優香も髪は背中まで伸ばしてるけど、運動のために側面は切り落としている。けれど彼女は前髪以外が全てストレートで伸ばしている。運動するとき邪魔そうだ。
切れ長の瞳に、薄い唇。よく不適に笑う口元にギャップがあるけれど、俺は妹以上(かもしれない)美人には初めて会った。
背は、同じクラスの女子平均ぐらいだろうか。年長ということを考慮すると、若干低めなのかもしれない。
体の線は細い。スレンダーと言うよりは痩せている。プロポーションもまあ推して知るべし。肌はびっくりするほど白く、そのあたりはやっぱり体が弱い関係だろうか。
着ているのは紺のセーラー服で、これは学校指定のもの。特徴的な装備といえば、小脇に抱えたスケッチブック。
「ああ、これかい? 見ての通り、スケッチのつもりだったんだけどね。目的地に着く前に貧血でばったり倒れてしまったよ。我ながら不甲斐ないね」
「はあ……え、と。美術部の人ですか?」
「一応ね。君は一年生だね」
「あ、はい」
「なるほど。暇ならちょっとついてくるといい。お礼と言っては難だが、いい場所に案内してあげよう」
さっと髪をなびかせて、偉そうにきびすを返した先輩に、俺は言われるままに着いていった。やたら胸を張っているのが、この人のデフォルトなんだろうか。
旧校舎の裏を抜けて、破れたフェンスを潜って、林の中に入り、獣道を抜けて。その先は。


335:未来のあなたへ3.5
08/12/23 17:35:21 IN/7LRg9
「わあ……」
思わず、感嘆の声が漏れる。
その先は急に開けて、桜でいっぱいの公園になっていた。満開だ。
風が吹くたびに、ぱらぱらと花びらが舞っている。
公園は石畳の立派なもので、生徒や老人が数人、ベンチで花見やおしゃべりに興じていた。
「ふふん、どうだい。残念ながら独り占めとは言わないが、この季節はなかなかだろう」
「そうですね。へえ……裏にこんな公園があったんだ」
「道沿いだと、ぐるりと回らなければいけないからね。あまり人は来ないが、裏手を抜ければすぐそこだ」
言いながら先輩はスケッチブックを手に、桜の方に歩いていく。ああ、ここでスケッチするつもりだったのか。
なるほど確かに、絵に残さなければ勿体ないぐらいの風景だ。実際、写真を撮っている人もいる。
ざあ、と風が吹いた。
一際舞い散る桃色の中で、彼女は風になびく黒髪を片手で押さえる。
それは。それ自体が一つの絵として成り立つような、とても綺麗な光景だった。
何かが、胸を押し上げるように溢れる。たぶんそれは、感動だったんだろう。
先輩が微笑んだ。
「そういえば、名乗っていなかったね。僕は片羽、桜子だ」
「俺は榊健太っていいます、先輩」
「そうか。よろしくな、榊君」
そうして俺は。高校に入学して一週間で、片羽桜子という奇妙な先輩に出会ったのだった。

片羽先輩は、初対面の時から、妙に気になる人だった。
それは彼女がすごく美人だとか、発見したときに倒れているとか、そういうインパクトを除いたとしても。なんだか気になる人だった。
なんというか……二つ上で赤の他人なんだけど、すごく放っておけない気がした。
それが何故なのかは、うまく口では言えない。もしかしたらそれは、一目惚れという類のものだったのかもしれない。
その日は再会の約束もなく、ただ普通に別れた。家に帰って、勉強して、家族と話して、勉強して、寝た。
その人のことが胸に焼き付いて寝れなかったとか、そんなことはなかった。
ただ
次の日から。登校して、授業を受けて、友達と帰って、勉強して、寝る。その繰り返しの中で何となく、あの妙な先輩のことを捜すようになっていたと思う。
もしかしたら、またどっかで倒れてるんじゃないんだろうか、と。たぶんそんな心配をしていたんだと思う。
片羽先輩と次に会ったのは、一週間後のことだった。


336:未来のあなたへ3.5
08/12/23 17:35:50 IN/7LRg9
「こんにちは、片羽先輩」
「やあ、榊君」
その日。片羽先輩はグラウンドの隅で、石段にぽつんと腰掛けていた。
膝の上には例によってスケッチブックを広げて、鉛筆を走らせている。
今日はどうやら、グラウンドのサッカー部を描いているようだった。先輩の指先が、魔法のように輪郭を書き出していく。あ、袖がテカテカだ。
言うべきことを探して、そんな自分に戸惑った。自慢じゃないが人付き合いは得意な方だ。普通に話す方法ぐらい、意識するまでもなく身に付いているはずだった。
そうだ、考えてみれば作業の邪魔をするなんて馬鹿げている。俺も倣ってサッカー部の練習風景を見ていることにした。
グラウンドを見やる先輩の横顔は、普段と違って笑うことなく口を真一文字に引き結んで真剣だった。そうしていると一つの彫像のような美しさがある。
邪魔はしないと決めたはずなのに、気付けば口を開いていた
「サッカー、好きなんですか?」
「ん? いや、競技に特別な興味はないよ。被写体としての彼等には魅力を感じるけどね」
「魅力的……」
自分の足を見る。去年までボールを蹴っていた、制服のズボンに包まれた脚。
たぶん。いや、間違いなく、すごくなまっている。もう半年近くも練習してないのだ。
それに、サッカーに打ち込んだら今のペースで勉強ができるわけがない。今のペースで勉強してたら、満足な練習ができるわけがな……はあ。
「ふふん。君の方はサッカーが好きみたいだね」
「え? いや、好きっていうか、中学までサッカー部にいたんで」
「なるほど。トランペットを見つめる黒人少年のような目つきだったよ」
「トランペット……え?」
はてな顔になった俺を見て、また軽く笑う先輩。冷たい感じの美人なんだけど、よく笑う人だ。
その笑顔は無邪気とはとても言えず、明らかに毒を含んでいるはずなのに。俺は悪い気はしなかった。
うーん……俺ってマゾなのか。それとも、普段から毒舌を浴びてるせいで耐性ができてしまったんだろうか。
まあ、単に美人は得だってだけかもしれない。
それから、横に座って、とりとめのない話をした。
天気のこと、スケッチのこと、この前の公園のこと、サッカーのこと。
「榊君は、もうサッカーをやらないのかな」
「ん……いやあ。俺、バカだから勉強しないとあっという間に赤点まみれになっちゃうんで」
「なるほどね。君が辛くなければそれでいいけど」
「……!」

言われて気付いた。
そうか……俺は、辛いのか。
この半年、ずっと勉強してきて、幸運と努力のおかげでこの高校に合格できたけど。
身の丈に合わない場所にいる俺は、やはり努力をし続けなければ、落ち零れてしまう。
半年、頑張れば終わると思って来たけれど。その先にあったのは、変わらない日々だった。
中学の時のように、自分のやりたいことに最大限打ち込むような自由は、もうない。サッカー部を引退したときに、そんな自由は終わってしまった。
圧力。
俺は、人生にかかる圧力を、初めて明確に意識する。ああ、今まで気付かなかったなんて、俺はなんて鈍感なんだ。
水の中に、潜り続けているような憂鬱。

「先輩は、成績いい方ですか?」
「はは、立派な劣等生さ。まあ、僕の場合は既に諦めてしまってこの位置だけどね」
「うわあ、気楽そうですねえ……」
「ふふん」
けれど、そんなことを知り合ったばかりの先輩に言えるわけもなく。しばらく、どうでもいい話をして、その日は別れた。
それに。そんなことを考えてもどうしようもないから……結局、深く考えることはやめた。


337:未来のあなたへ3.5
08/12/23 17:36:51 IN/7LRg9
高校に入ってしばらくしても、友達はあまりできなかった。
中学の時は、自慢じゃないけど交友関係は広かったと思う。
それは部活という接点があったんだろうけど、やっぱり自由だったからだ。
受け続ける圧力が小さく、精神的な自由があったから、他人のことに気を回すことができた。
今だって、友達といるときは馬鹿でいられるけど。一人になるとため息をついていることが多い。
けれど、これくらいの圧力なんて、誰だって背負っているはずなんだ。少なくとも、今の高校に合格した人間は、俺と同じぐらい勉強してきたはずだ。
それでも、屈託無く笑っていられる生徒がいるのだから……単に、俺の器が狭いだけなんだろう。
妹のことを思う。
俺の知る範囲で、間違いなく俺よりも努力し続けている人間。
部活に、勉強に、家事において、絶え間なく努力し続けている、俺の妹。
優香は、どうしてそんな生き方ができるんだろう。
俺は妹が休んでいる時を、特にここ最近見たことがなかった。俺と違って、日々の努力を誰かに強制される場面も見たことがない。
いったい、どうして優香は。そんな日々に一言も弱音を吐かずにいられるのだろう。
それともやっぱり、俺の知らない場所で、我慢し続けているだけなのだろうか。
だとしたら、俺はやっぱり。妹のことを何もわかっていないんだな……

338:未来のあなたへ3.5
08/12/23 17:37:42 IN/7LRg9
そんなある日。
帰宅時。友達の一人と一緒にアーケードを歩いていると、制服姿の優香と出会った。
あれ? 行動範囲的に遭遇しても不思議はないけど……部活の時間、だよな?
「優香? なにやってるんだ、こんなところで」
「あら、奇遇ですね。今日はどうしても買いたいものがあったので、部活は休ませてもらいました」
「買いたいもの?」
「携帯電話です。近くのショップで契約してきたところですよ」
「へえー、母さんは反対してた気がするけど許したのか。頑張ったなあ、優香」
「……ちょっと待ってもらおうか、榊」
がしい、と一緒にいた友人に襟首を捕まれてずるりと引きずられた。
「てんめええ! 何めちゃくちゃ可愛い娘とナチュラルに会話してんだよ! 彼女いないって言ったじゃねえかっ!」
「おおお、落ち着けっ! 首を絞めるな柳沢!」
俺をがっくんがっくんと揺するのは、柳沢というクラスメイト兼友人だった。
席が後ろなので自然に話すようになり、お互い帰宅部なのでたまに(途中まで)一緒に帰ったり、こうして寄り道したりする。
ちなみに性格は……悪い奴ではないんだけど女好き。今の高校も、レベルの高い女子が多いということで死にものぐるいの勉強をしてきたらしい。
外見は茶髪の愛嬌ある顔立ち。俺が言える義理じゃないけれど、相当アホだ。そんな努力に関わらず、未だに彼女は募集中。
「ち、ちがっ! 妹! 妹だって!」
「ああん? 適当な嘘じゃないだろうな、全然似てねえじゃんか」
「俺は母さんに、妹は親父に似たんだよ! いいから離せって!」
「なんだ、そういうことは早く言えよな。可愛いなら特に!」
ぱっと満面の笑みを浮かべて、俺から離れる友人。と思ったら、今度は優香にアピールを始めた。
「俺は柳沢浩一。お兄さんの親友です」
「親友だったのか……?」
「柳沢さんですね。兄からいつもお話は伺っています」
「おい、榊。俺のこと、ちゃんとよろしく伝えてるんだろうな……?」
「普通に言ってるよ。ていうか、俺と妹でよくそこまで表情変えられるなあ」
むしろ感心した。やっぱり、彼女を作るにはこれくらい積極的でないとダメなのかもな。
ちなみに柳沢のことを妹には『スケベでアホだけど悪い奴じゃない』と話している。すまん。でも、どうせ優香は色恋沙汰に関しては鉄壁だから許してくれ。
「優香ちゃん、携帯買ったんだって? じゃあ、せっかくだから番号交換しようぜ」
「あのなあ柳沢。いきなり……」
「メールで良ければ構いませんよ」
「ぶっ!?」
えええええええええええええ!
ど、どういうことだ? 優香の奴、確かに今間まで携帯は持ってなかったけど。好きと言われた相手に何一つ譲歩なんてしたこと無かったのに。熱でもあるのか?
いや、もしかして柳沢みたいな奴が好みのタイプなのか? いやいや、今までだって同じような奴から求愛はされてるって。いやいやいや、優香にしかわからないものがあったのかもしれない。
いや、しかし、けど……
「何を目を白黒させているんですか。兄の御学友と交友を結ぶのに何か問題でもありますか? 登録しますから、兄さんも携帯を出してください」
「あ、ああ……ん? 俺と同じ型式じゃんか」
「そうでしたか、偶然ですね……はい。登録しました。次は柳沢さんですね」
「おうっ」
こうしてつつがなく、番号交換は終了した。優香は、柳沢にはメールアドレスしか教えなかったようだけど、それでもすごい譲歩だなあ。
「柳沢。優香は携帯買ったばっかりなんだから、あんまりメールするんじゃないぞ」
「おいおい、いきなり兄貴面するなよ。俺と優香ちゃんの関係じゃねえか」
「兄貴だってーの」
「残念ながらその通りです。それから確かに、まだ慣れてませんから返事は遅れるかもしれません」
「おっけーおっけー。帰ったらメールするからさ!」
うーん……なんか釈然としないな。

339:未来のあなたへ3.5
08/12/23 17:38:54 IN/7LRg9

その日から、妹と友人は定期的にメール交換しているようだった。
何でそんなことがわかるかというと、柳沢が毎日優香があーだーこーだと自慢してくるからだった。うーん、正直うざい。
考えられる可能性は二つ。優香は意外と、メールでのやりとりが好きなのか。それとも柳沢本人を気に入ってるのか。
けれど、優香から俺にメールが来ることなんてほとんど無い。かといって、優香本人から柳沢について聞くこともない。
うーん、妹に彼氏ができても別におかしいとは思わないけど、それが柳沢だっているのはなあ……ちょっとどうかと思うが、口出しするのも筋違いだ。
それにしても……メール、か。携帯電話は高校入学の時に買ってもらったけど、あまり活用はしていない。
そういえば俺、片羽先輩の携帯番号もメールアドレスも知らないんだよな……
放課後にちょくちょく探してはいるんだけど、見つかったり見つからなかったりのレアモンスターみたいな人なので。
今度会ったら、携帯の番号を交換しよう。

それからまた、しばらくして。
桜の季節が終わる頃。
小雨の降る放課後、学校の裏手にある公園までふと出向いた俺は。公園の中で一人、傘を差してベンチに座る先輩を見つけた。
サアアアアアアアアア……
「片羽せんぱーい」
「おや、榊君じゃないか。久しぶりだね」
「ですね。でも、雨の日にこんなところで何やってるんですか?」
「ああ。まあ、桜を見に来たんだよ」
「桜? でも……」
雨に打たれた花びらは、既に軒並み地面に落ちてしまっている。あれだけ綺麗だった光景は、もう見る影もない。
前は、桃色の絨毯のようだった花びらも。泥にまみれた今となっては、ただのゴミでしかなかった。
そういう、末路を直視すると。胸が締め付けられるような思いがする。
「悪いけど。傘、持っていてくれないかな」
「……あ、どうぞ」
先輩から傘を受け取り、二本の傘を持つことになる。どちらも地味な紺色の物。受け取った小さな方を、先輩の上にかざす。
傘を受け取る時に触れた手は、とても冷たく、とても細かった。思わず、戸惑ってしまうほどに。
「産まれてこの方、ダイエットの努力が必要なかったことが僕の密かな自慢なんだ。世の女性から非難されてしかるべき体質だね」
俺の表情を読みとったのか、軽口を叩きながら先輩がスケッチブックを取り出して広げる。この人、ほんとに絵を描くのが好きなんだなあ。
けど、この間の桜吹雪なともかく。なんでこんな雨の日の桜を描きたがるんだろう。
サアアアアアアアアアア……
「悲しいね。美しい物の末路は、やはり悲しい」
「あ……はい。けど……どうして、そんなものを描くんですか?」
「悲しいからだよ」
「え……」
「悲しみは、けして間違った感情じゃない。怒りも、絶望も、人が生きるのに必要な感情だと、僕は思うよ。ただ、人はそこから目を逸らしたがる」
「……」
「今のこの悲しみを、できるかぎり形にして残しておきたい。まあ、僕が絵を描く理由は、大なり小なりそんなものさ。日記のようなものだ」
「……」
悲しみ……怒り……目を逸らしたがる……
俺も……目を反らしていることがある。
どうにかして忘れようとしている。
けれど……けれど、仕方ないじゃないか。
考えたってどうにもならないことなんだ。目を逸らさずにいたって、辛いだけじゃないか。
毎日勉強を続けなければいけないこと。俺はバカだから、他の趣味に打ち込むような余裕はないこと。
そして何より。この状況を打開する方法が思いつかず、きっとずっと続いていくという……閉塞感。
どうしようもない。
どうしようもないじゃないか。
どうしようもないことを直視したって辛いだけだ。
誰でもこの程度の閉塞感は感じているっていうのなら、誰だって目を逸らしているはずだ。
……

340:未来のあなたへ3.5
08/12/23 17:40:12 IN/7LRg9
「どうしようもないことだって……あるじゃないですか」
「うん?」
「見続けたって、辛いことは、たくさんあるじゃないですか」
「たとえば?」
スケッチブックに走らせる鉛筆を止めず、無残な桜を描き続けながら。
先輩が、俺に背を向けたまま。思わず漏れた、俺の情けない言葉を当たり前のように問い返していた。
たとえば。
勉強が辛い、なんて。下らない泣きごとでしかない。言えば誰だって軽蔑するだろう。
成績を保つために、誰だって勉強はしているのだ。それに耐えられないのは、俺が小さい人間だから。それ以外にはない。
飲み込め、飲み込め。苦痛は、飲み込め。そうして生きていくしか、ないんだ。
「勉強が……辛いとか」
ああ。
「これから。ずっと、勉強し続けなきゃいけなくて……卒業しても、働き続けなくちゃいけなくて……」
「うん」
「それなら、もう二度と……うまく言えないんですけど。二度と……」
「人生に二度と自由は訪れない。それが君の絶望なのか」
先輩が。
鉛筆を動かしながら、自分自身形にできなかったことを、あっさりと言い当てた。
ああ……いや……そうじゃない。
俺が、形にしたくなかったもの。わかっていて、形にしたくなかったものを。
絶望……ああ、そうか。これが絶望、っていうものなのか。こんなよくあるものが、絶望なのか。
何処にも行けないという閉塞感。大切なものを奪われ二度と戻らないという喪失感。それこそが絶望なのか。
「幼年期の終わり。労苦への絶望……まあ、それ自体はどうしようもないね。この桜と同じで、どうしようもないことはいくらでもある」
「だったら……!」
「どうしようもないことに直面したとき、どうすればいいのか。君は絶望への対処の仕方を知っているかな?」
「え……」
絶望を、どうすればいいのか?
俺は……知らない。今まで絶望なんてものに遭ったことがなかった。今まで、どんなぬるま湯の中で生きてきたのか、よくわかる。
だから、目を逸らすことしかできなかった。見ない振りをして、気付いたことを忘れようとするしかできなかった。
何故か、優香のことを思いだした。物心ついたときから、心の中で誰からも離れた場所にいた妹のことを。
先輩は。
「越えるんだ。絶望は、強固な目的意識で越えられるものなんだよ」
きっぱりと。
「絶望を越えたとき、それはとても強いものになる。怒りも、悲しみも、絶望も。人が生きていく上で糧になるものだと、僕は思うよ」
ひどいことを言った。とてもとてもひどいことを、振り向きもせずに堂々と言った。

目的……意識。
俺の、目的意識。
それは……
それは……
それは……ない。
ないんだ。
俺には、目的意識なんて、何もないんだ。
ただ
『兄さん。世の中には、定職に就けず毎日すり切れるほど働いて、それでも貯金もできない人間がたくさんいます。そうして、体を壊して働けなくなりゴミのように死んでいく……』
『そういった人間と、そうでない人間を分けるのはいったい何なのか、兄さんにはわかりますか? 幸運? 生まれ? いいえ、いいえ』
『天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと言われている。けれど人の立場に上下があるのは何故なのか。それは学問の差から生まれるものなり』
『人生の上下を決定づけるのは、幸運でも生まれでもなく、それまで積み上げてきた努力のみ。それが唯一、有意義な信仰というものですよ』
『自分の将来を想像してください。惨めな大人になるのが怖いのなら、今、努力するしかないんですよ。しないと言うのなら、未来を捨てると言うことです』
『想像してください、兄さん。恐ろしいでしょう?』
ただ、怖かった。
俺には目的意識なんてものはなく、ただ背後から恐怖に追い立てられてきただけだった。
そして、これからも一生、追い立てられていくしかないという……絶望。
ああ。
この絶望からは逃げられない。逃げてしまえばそれこそ、優香に散々言い聞かされたような惨めな人生しか待ってはいない。
けれど、そんな恐怖に追い立てられ続けたとしても……待っているのは、永遠に続く未来への絶望だけ。
先輩の言うように、立ち向かうしかない。
けれど、俺には……立ち向かうための確固たる目的意識なんて、無いんだ。


341:未来のあなたへ3.5
08/12/23 17:42:23 IN/7LRg9

「無いんです……」
泣き言。
気がつけば、俺は本当に泣いていた。ぼろぼろと、涙が零れて頬を濡らす。
情けない、情けない。何で俺は、こんなことで泣いてるんだ。
目尻を拭おうとしたけれど、両手で傘を持っているせいで無理だった。せめて嗚咽を噛み殺して、先輩が振り向かないよう祈る。
「俺には……そんな、目的意識なんて、無くて……」
「目的なんて、ほんの小さなことでいいのさ。この学校は、好きじゃないのかい? 一緒にいたい友達はいないのかい?」
「それも……」
この学校に対して少なくとも今は、辛い勉強というイメージが強すぎる。友達だって何人かはいるけれど、心底一緒にいたい存在は、いないと思う。
そもそも。学校や友達に対する好意で……毎日、毎日、勉強をし続けることなんてできるとは思えない。
俺が今、戻りたいのは。何も考えずに部活へ打ち込めたあの頃だ。けれど時間は戻らない。それもまた、一種の絶望だ。
うう。
「やれやれ、困った後輩だね、君は」
ぱたん、と先輩がスケッチブックを閉じて膝の上に載せる。ポケットからハンカチを取り出して、振り向いた。
突然の行動にあっけにとられ、直後。涙まみれであろう自分の顔に気付く。
見られっ……!
「ふふん、思ったより泣き虫だね、榊君。よしよし」
「わぷっ」
ぐいぐい、と顔にハンカチを押しつけられる。布は水色単色のシンプルなものだった。やっぱり指が、とても細い。
咄嗟に抵抗しようとしたけれど、両手に傘じゃ動くのもままならない。あっという間に顔の涙は拭われた。
な……なんで?
俺が混乱している間に、先輩はハンカチを手早くしまって偉そうに胸を張った。
「さて。榊君。どうやら君は自分から動くための目的意識に欠けているようだね」
「は、はい」
「つまり、自ら学校に来るような目的意識さえあれば、いい年してぴーぴー泣き喚くようなこともない、と」
「うぐっ……」
「ふふん。それなら榊君。僕と付き合ってみないか」
「……え?」
………………………………………………………え?
「恋人の一人でも作ったらどうか、ということだよ。青春の張り合いといえばこれだろう」
「え、いや、ていうか、ええ!?」
「ああ。他にお目当てがあるならそれでいいんだ。僕と、というのはただの保険さ。一応僕は美人だからね、ふふん」
偉そうに胸を張る片羽先輩は、ちょっと細いところがあったけど、確かに文句なしの美人だった。
一方十人並みな外見の俺は、極度の混乱で呆然としていた。当たり前だ。
俺がみっともなく泣きだして、それがどうして付き合うかどうかと言う話になるんだろう。むしろ逆に、愛想を尽かされるのが当然じゃないんだろうか。
わけがわからない。
大体、恋人になるというのは。一緒に過ごすうちに、好きになって、告白して、それを受け入れてもらって、そうしてやっとなるものなんじゃないか。
確かに、俺には狙っているというか今好きな人なんていないけど、そんな風に自分を軽々しく扱うっていうのはどうなんだってすごく思う。
「おっと、ちなみに恋人になったからといって、すぐ不埒な真似ができるなんて思わない方がいいよ。僕に触れるまでは長い長い審査が待っているからね」
「え、審査……ですか?」
「あからさまにがっかりしたね。当然だろう? 榊君に対する僕の好感度は初期値のままなんだからね」
「は、はあ……」
え、えーと……これはなんというか。恋人、というよりも。友達から始めよう、ということなのかな?
ふふんと偉そうに胸を張る、すごい美人の先輩をもう一度見やる。なんだか、笑えた。
は、はは。
あはははは。
笑うことで、少し楽になった。少しだけ、自由になれた気がした。
先輩は、慰めてくれたんだろうな。
発想も言い方も無茶苦茶だったけど、心の中で感謝する。色恋かどうかはまあ別にして、この人のことを俺は好きになれそうだった。
ああ、悪くない。この変な先輩と話をするために、この学校に来るために、勉強をし続けるのだって悪くない。
ほんの些細な理由だけれど、それを自ら望むのなら。
しとしとと降りしきる雨の日だけど、視界が少しだけ開けた気がした。

342:未来のあなたへ3.5
08/12/23 17:43:17 IN/7LRg9
「ありがとうございます。でもとりあえず、友達から始めませんか?」
「その意見はやぶさかではないよ。そうそう、それを言いたかったんだ」
「あ、それじゃ先輩。携帯の番号交換しましょうよ」
「おっと、それもそうだね」
お互いそれぞれの傘を持って、片手で携帯番号とメールアドレスを交換する。先輩の携帯はシンプルなストレートタイプだった。
「これでよし、と。先輩って何処にいるかわからないから、これで普通に会えますね」
「おや、わざわざ探していたのか。それは悪いことをしたね。ただ僕は携帯の電源が切れてることが多いから、あまり期待はしないでくれよ」
「そ、それって携帯の意味がないんじゃ……」
「ふふん。いちいち充電するのが面倒でね」
それから、先輩が桜のスケッチを再開して。俺は結局それが終わるまで、先輩に傘を差していた。
会話はほとんど無かったし、腕は疲れたし、体は冷えたけど、けして嫌じゃなかった。
真剣に絵を描く先輩の横顔はとても綺麗で見ていて飽きなかったし、雨に打たれる桜の悲しさに俺もまた引き込まれていた。
その後、校門のバス停まで並んで歩き、そこで別れた。先輩は徒歩通学のようだ。
「それじゃ、後でメールしますね」
「ああ。さよなら、榊君」




送信
件名:こんばんわ
本文:
今日はありがとうございました。
描いていた絵ができたら教えてくださいね。
体が冷えたと思うのでゆっくりお風呂に入ってください。


受信
件名:Re:こんばんは
本文:
子供か、僕は。心配されなくても、可能な限り毎日入浴しているとも。
絵については、何時になるかはまだわからないが、完成したら君に見せることを約束しよう。
それから、言いそびれたが傘を持ってくれて感謝するよ。結局最後まで付き合わせてしまったな。
機会があれば何か礼をしよう。それでは。



「…………登録は『先輩』…………」

「………………誰?」


343:未来のあなたへ3.5
08/12/23 17:44:21 IN/7LRg9
以上です。
次はキモウトのターン。

344:名無しさん@ピンキー
08/12/23 18:14:05 vc+ppYCj
会いたかった…会いたかったぞ職人!
君の圧倒的な妹愛に心奪われた…この気持ち、まさしくGJだ!

345:名無しさん@ピンキー
08/12/23 18:54:13 teAiMZKR
GJ!なんというラブ米・・・
ていうか兄貴逃げてー

346:名無しさん@ピンキー
08/12/23 19:50:25 X+dh/AmN
というか先輩逃げてー
GJ!

347:名無しさん@ピンキー
08/12/23 20:29:50 JsJLMiAj
GJ! 
話は変わるが、クールな感じのキモ姉の場合
内面もクールな感じで溺愛してるパターンか、それとも弟ハァハァなキモい感じの内面だったらどっちが好みだ?

348:名無しさん@ピンキー
08/12/23 20:32:24 CDWU6rE3

先輩Re:なのに件名直しとるなんて細かいな

349:名無しさん@ピンキー
08/12/23 21:03:26 Z8V6j7Ls


350:名無しさん@ピンキー
08/12/23 21:13:35 7meSZcWn
――あの人は歪んでいます。
幼馴染にそう言われたのはいつのことだったろう。
「あの人」が私の姉を指すと気づいたのも最近のことだ。

姉さんはいつも私に優しかった。
それこそ、生まれたときから私は姉さんの怒った姿をあまり見たことがない。
年の近い弟だからか、姉さんはいつも私と遊んでくれた。
傍にいてくれた。

けれど、そのことに違和感を覚えたのはつい先日のことだった。
私は幼馴染の娘と恋仲になった。
初恋は叶わないとはよく言うが、私たちにはどうやら当てはまらなかったらしい。

姉さんも喜んでくれる―
そう思って一番に姉さんに報告しに行ったのだ。
ことあるごとに、いつも私が付いていますからね、お前の面倒はずっと見ますから、などと
言われ続けてきたのだ。周りでも評判になるほど美人の姉さんが、縁談を断り続けてきたのも
私が不甲斐ないせいだったのだと思っていた。
しかし、これで姉さんの肩の荷を降ろしてやることができる。良い相手を探してくれる。

そう思っていた。


351:名無しさん@ピンキー
08/12/23 21:14:54 7meSZcWn

最初、姉さんは無表情で聞いていた。
しかし、話が進むにつれてその顔は少しづつ、私の知らないものになっていった。
驚かそうとしてもそうはいきませんから、と笑っていた時はまだ良かった。
ところが、次第に顔が紅潮し、私の大切な宗太郎さんを、とか、あの糞猫が、とか喚き始めた。
かと思うと、私にもたれ掛かり、愛しています、だからどこにも行かないで、などと泣き出す始末。

ぞっとした。そしてその時初めて気が付いた。
姉さんは私のことを男として見ていたことに。

―確かに姉さんは歪んでいた。
けれども、私も姉さんのことは家族として愛していた。
だからこそ、真っ当な道に進んでほしかった。
―故に私は姉さんを拒絶した。

それからの姉さんは抜け殻のようだった。
あんなに美しかった長い髪も乱れ、生気を吸い取られたかのよう。
だが、私には距離を取ることしかできなかった。
時間が解決してくれる―私は根拠もなくそう思っていた。いや、ただ逃げていただけだった。

しばらくして姉さんは立ち直った。
以前と変わらない、淑やかな姉さんに戻ったのだ。
私は嬉しかった。これで家族として、お互いが上手くやっていけるのだと。

なのに、ここに転がっている幼馴染の首は何なのだろう。
出来の悪い人形のようになってしまった胴体に、何度も何度も刃を突き立てているあの人は誰なんだろう。

嗚呼。そうか。
彼女が言っていた言葉の意味が、真意がようやく理解できた。
確かに姉さんは歪んでいる。こんなにも醜く、美しく。
私に気付いて振り返った姉さんの顔は、私が見たこともないくらい綺麗な血染めの笑顔だった。


352:名無しさん@ピンキー
08/12/23 21:17:36 7meSZcWn
スレ汚しすんません。
でもキモ姉が大好きなんです。
イメージは和服です。
わかりにくくてすんません。

353:名無しさん@ピンキー
08/12/23 21:22:07 GaWdN7gb
>>352
とんでもない
激しくGJ
和風お姉ちゃんとかたまんねぇ

354:名無しさん@ピンキー
08/12/23 21:55:54 QCRuNdUP
久しぶりの泥棒猫惨殺だ…
だが352にGJ!

355:名無しさん@ピンキー
08/12/23 22:52:27 ciEBB7Qk
>>347
後者

356:名無しさん@ピンキー
08/12/24 00:15:17 QUVb76yr
おいおい、疲れてるんだからよ…>>343>>352もGJなんて言わせるんじゃねえよちくしょう……

357:名無しさん@ピンキー
08/12/24 07:32:16 8x+G3Hg7
>>352
GJなんだぜ
あんたのいう和風キモ姉、俺は大好きなんだぜ
今度は長編を頼むんだぜ

358:名無しさん@ピンキー
08/12/24 12:17:22 TJdOh3Gd
イヴの朝に絶望し、夜に妹が来て、次の日の朝に違う意味で絶望するわけですよ

359:名無しさん@ピンキー
08/12/24 17:24:20 zQWkANeJ
>>343>>352もGJ。

イブに良い物を見れた。もう悔いはない。

360:名無しさん@ピンキー
08/12/24 18:34:13 qX8Lmz++
>>352
感想を一言だけ言わせてくれ。

歪み姉(ねぇ)な。

361:名無しさん@ピンキー
08/12/24 20:35:40 Jb1NFb86
く、クリスマスネタはないんですか?

362:名無しさん@ピンキー
08/12/24 20:41:31 xDZcvYIk
処女をプレゼントして、お返しに子どもの種を膣内にプレゼントしてもらうんですね。

363:名無しさん@ピンキー
08/12/24 21:03:52 fr/l5YJA
そういや、去年の妄執のサンタクロースは神過ぎだったな

364:352
08/12/24 21:54:26 pZsmsMbQ
「お兄ちゃん。私、クリスマスプレゼントが欲しいんだけど。」

いつも通り二人で飯を食ってる最中に、妹がそんなことを言ってきた。
中学3年にもなって高校生の兄貴にプレゼントをねだるな、とも思ったが、
可愛い妹の頼みだ。できるだけ聞いてやりたい。とはいっても・・・

「お前、今日になってそんなこと言うなよ。」

そう。今日はクリスマスイブ。言ってくるのが少しばかり遅いんじゃないか?
もっと早く言ってくれれば、まあ、大したものじゃないけど買ってやれたのに。

「大丈夫。すぐにあげれるものだから。」
「何だそれ?まさか現金か?」

だとしたら夢もロマンもあったもんじゃない。

「違うよ。私が欲しいのは・・・お兄ちゃん。」
「・・・は?」

俺?俺をあげる?妹に?

「なんだ?肉体労働でもしろってか?
 そんなのクリスマスじゃなくたってやってやるのに。」
「ふふふ・・・肉体労働といえば肉体労働かな。」

わけわからん。まあ、でもあいつのたまのおねだりだ。

「よくわからんが、まあお前がそうしろって言えばやってやるさ。」
「・・・うん。じゃあ、後でお兄ちゃんの部屋に行くね。」
「え?・・・ああ、うん。」

妹が俺の部屋に来ることは珍しいことじゃない。
いつもゲームをやったり、ウダウダとテレビを見たり。
なんだ。結局普通のことじゃないか。
それとも、クリスマスだからって一人で家にいる兄に気をつかってくれているのだろうか。
・・・だとしたら俺、惨め過ぎる・・・


365:352
08/12/24 21:55:41 pZsmsMbQ
そんな俺の軽いヘコミ具合も知らずに、風呂上りの妹がやってきた。
綺麗なショートヘアがまだ軽く湿っている。

「ちゃんと拭かないと風邪ひくぞ。」
「うん。ありがと。」

全く。いつまでたっても子供なんだからなあ。

「じゃあ、テレビでも見るか?」
「うん!」

・・・まあ、可愛いからいっか。

それからしばらく二人でいつも通りの時間を過ごした。
なんだかんだでもう日付が変わる時間だ。俺も眠い。

「なあ。そろそろ寝ようか。」
「そうだね。・・・でもその前にやっておきたいことがあるの。」
「ん?何だ?もう一対戦やってく・・・」

いつの間にか。
俺の口は妹の唇で塞がれていた。
何だこれ。何が・・・?あれ?
思考が追いつかない。
どれくらいたったか。妹がようやく唇を離した。

「・・・お、おま、何やって・・・」
「言ったじゃん。お兄ちゃんが欲しいって。お兄ちゃんもいいっていったじゃない。」
「いや、でもお前・・・」

違う。こんなんじゃない。
俺が言いたかったのは、こんなんじゃ・・・・!

「お前な!俺はそんな・・・」

その瞬間
妹が俺の首に顔を近づけて
歯を
突き立てようと

366:352
08/12/24 21:57:31 pZsmsMbQ
「・・・・・え?」

噛み千切られる。
何故か反射的にそう思った。
妹の顔はよく見えないけれど、確信があった。
けれど。

チュッ・・・チゥ・・・ンチュ・・・

・・・キスしてるのか?俺の首に?妹が?
よくわからないが俺は生き永らえたらしい。
それと同時に言いようのない興奮と、気持ちよさが襲ってくる。
俺の首筋が妹の唾液まみれになって、ようやくあいつは顔を離した。
口の周りが輝いていて、何故か目が離せなかった。

「ふふ・・・噛み付いたりしないから安心してよ。
 それより、私プレゼントが欲しいな。」

・・・何言ってる?プレゼント?・・・俺が欲しい?

「それもあるけど・・・今年はお兄ちゃんをもらうでしょ。
 で、来年のプレゼントも考えちゃった。」

来年?

「うん。
 私ね。来年は」

お兄ちゃんとの赤ちゃんが欲しいな


367:352
08/12/24 21:59:06 pZsmsMbQ
ごめんなさい。
キモウトも大好きなんです。
大してキモくなくてすんません。

368:名無しさん@ピンキー
08/12/24 22:04:50 2lWQPJW7

GJ!長編希望!

369:名無しさん@ピンキー
08/12/24 22:12:52 Jb1NFb86
マーヴェラス!!!!!!!!
……こういうのが、いいんだよ、やっぱり!

370:名無しさん@ピンキー
08/12/25 01:15:08 E+Gyo6hI
 クリスマスは家族で過ごすというのが我が家のルールである。
 それは姉さんと二人だけで暮らしている今も変わらないルールだと、姉さんは言っていた。
 もとよりクリスマスを他のだれかと過ごせるあてもなく、料理上手の姉さんがいつも以上に気合を入れて作る料理は、とてもおいしい。
 そんな感じで今年も姉さんとクリスマスを過ごすことになったわけだが。

「姉さん、さすがにこれは作りすぎじゃない?」
 と、目の前に広がる料理の山を見ながら言ったら、いつも冷静な姉は少し頬を染めながら。
「少し、はしゃぎすぎた」
「少しって量じゃないよ姉さん、そこは途中で気付こうよ」
「あなたのためって思うと、つい」

 その反応は反則だろ、と思うと同時にそのまま姉さんに襲い掛かりたくなる衝動に襲われるが、そこは我慢だ。
 相手は実の姉だ、いくら無防備でいつも一緒の布団で寝たり、一緒に風呂に入ったり、子どもの頃からおはようとおやすみのキスを欠かさなかったりしてるが、その一線は越えてはいけない。
 倫理感がどうとかではなく、それは眠れる獅子を起こす行為であり、虎穴に入って虎との子を得る行為でもある。
 
「いただきます」
「いただかれます」

 危ない思考に耽っていたせいか、反射的にそんな返事にを返してしまう。
 姉さんの瞳に怪しい光が灯るが、気にせず料理に手を付けようとすると。

「待って、忘れてた」
 と言って、姉さんは冷蔵庫へ向いシャンパンらしきものを持ってきた。
「姉さん、お酒は……」
「大丈夫、アルコールは入ってない」
 発言を途中で遮り、グラスになみなみと注いでくる、当然瞳に灯った怪しい光はそのままに。
 つい嘘だっ、とか叫びたくなるのを堪えつつ、席に戻った姉さんとグラスを交わす。

371:名無しさん@ピンキー
08/12/25 01:16:15 E+Gyo6hI
 姉さんがやけにシャンパンもどきを勧めてきたことを除けば、無事平穏に食事とその後片付けも終わったんだが、姉さんの顔がやたら赤い、そのことを姉さんに言っても、気のせいだの一点張りだ。
 姉さんこっちの酌を断らなかったからなあ、とか考えつつ風呂の準備をしていると、ソファに倒れこんでいた姉さんから声が掛かる。

「お風呂行くなら私も」
「姉さん、お風呂入って大丈夫なの?」
「あなたと一緒なら問題ない」

 だから姉さんはこう不意打ちというか、なんというか、アルコールによって理性が麻痺している今の状態にはハードなことをする。
 そしてさらに追い打ちをかけてきた。

「だっこ」
 
 無言で姉さんを持ち上げ、脱衣所まで連れて行く。

「脱がして」

 またも無言で手早く脱がせるが、息が荒くなっているのを自覚できる。
 手早くこちらも裸になり、また姉さんを抱え直し風呂場に侵入する。
 ほのかに赤く色付いた白い肌に目を毒されつつ、湯船のお湯をかける。

「ん」

 ……今日の姉さんはやばい、赤いからなのかいつもの3倍はやばい。
 なんとか平静を保ちつつ、後ろから抱き抱える形で湯船に入っていく、一気にお湯が溢れるが気にしない。
 ただでさえ蕩けていた姉さんの表情が一層、ふにゃっとしたものになる。
 逆に普段はふにゃっとした部分が元気になりそうだったが、ポジショニングに著しい問題があるので涙ぐましい努力をして鎮める。
 うつら、うつらと船を漕いでいる姉さんに注意を払いつつ、いったん体を洗うため一緒に湯船から出る。

「洗って」
「わかってますよ」
「全部、隅々まで」

372:名無しさん@ピンキー
08/12/25 01:17:21 E+Gyo6hI
 姉さんの長い黒髪に丁寧にシャワーをかける、容器から洗髪料を取り出し手に馴染ませる。
 姉さんの髪は一日中触ったり、なでたり、弄ったりしても飽きがこない程、素晴らしい部分なので、驚くほどに艶やかで指通りのよい髪をひたすら丁寧に丁寧に洗っていく。
 そしてシャワーで洗髪料を流しきると、ついに問題のゾーンに突入だ。
 姉さんの皮膚は強くないのでスポンジではなく手を使って洗わなければならない。
 弱くしたシャワーの水流を姉さんにかけ、石鹸を泡立てなめらかなな肌に手を伸ばす。
 
「あ…ん、」
 いきなり艶めいた声を出してくる、意識的に気にせず、首筋から背中。
「ん」
 脇を通って腕。
「ひゃ」
 そこからお腹、そして第一の関門である胸へ、思わず喉を鳴らしてしてしまう。
 やさしく、やさしくなでていく。
「もっと」
 リクエストに応える。
「いいよぉ、もっとして」
 
 その声にいつの間にか飛んでいた理性を精一杯手繰り寄せつつ、なんとか胸から手を放し、尻をスルーして脚を洗う。
 付け根の辺りは、とばしてふともも、ひざ、膝裏、ふくらはぎ、すね、足首、くるぶし、足の甲を順にこすっていき、最後に足の指を一本、一本丁寧に洗っていく。
「あはぁ」
 さようなら理性、こんにちは本能、脳内で馬鹿なやりとりをして懸命に堪えるが、次がこの苦行のクライマックスだ。
 再び石鹸で手を泡立たせつつ、尻を撫でて、撫でて撫でる。
「ん、ん」
 そしてそのまま女性器に取り掛かる、神経をすり減らしつつ、繊細に、繊細に指先で洗っていく。
「いいのぉ、そこぉ」
 
 耐えた、耐えた、耐えきったぞ、と全行程の終了に安堵した後に興奮のしすぎなのか、意識は白く染まっていった。


 意識を失った弟はその後スタッフがおいしく頂きました。

373:名無しさん@ピンキー
08/12/25 01:18:05 E+Gyo6hI
以上

374:名無しさん@ピンキー
08/12/25 01:54:41 UMR1TJKu
>>318 見事にスルーされてるww だが俺は嫌いじゃない。
キモウトのぶっ飛びぶりとジョジョのぶっ飛びぶりが、シンクロすればいい感じになるかも?
相性は悪くないと思います。もしかしてただの荒らしだった?

375:名無しさん@ピンキー
08/12/25 02:05:17 Ju5ahuTx
スタッフ……だと……。
まさか、キモ姉妹による自作自演とか

376:名無しさん@ピンキー
08/12/25 02:20:47 5ddlGLVJ
なん・・・だと・・・

377:名無しさん@ピンキー
08/12/25 03:42:39 pej+gs/V
>>367
GJ
>>373
GJ

378:名無しさん@ピンキー
08/12/25 13:39:53 6Zg/2ra5
>>378
GJ

379:名無しさん@ピンキー
08/12/25 13:57:18 c/wtncet
待てコラw

380:名無しさん@ピンキー
08/12/25 14:51:05 cvm9hd0I
つまりはワンマンスタッフ。
たった一人のスタッフということだよ。>>373GJ!

381:名無しさん@ピンキー
08/12/25 16:19:23 Ju5ahuTx
>>378
よし、お前家にいる妹の婿に来い

382:名無しさん@ピンキー
08/12/25 18:27:38 6kZrpBn3
>>378はこれから小説を投下してくれるんだよ。

383:名無しさん@ピンキー
08/12/25 20:03:49 Zrll3Egb
>>378
GJ

384:名無しさん@ピンキー
08/12/25 22:54:00 YHKqLH1L
378じゃないけど投下します。
まださわりだけですがご容赦ください。
あと、事前に言っておくとキモ弟にはなりません。
ちゃんとキモ姉ものにするつもりです。

385:名無しさん@ピンキー
08/12/25 22:54:37 YHKqLH1L
初恋は姉さんだった。
気付いたときにはもう手遅れで。
あれから10年近くたつけど、僕の初恋は終わってくれない。
昔から姉さんは聡明で、美人で、優しくて、僕の自慢の人だった。
だからこそ、こんなにも魅かれてしまったのだろう。
そして、何回も繰り返してきた自己嫌悪――

――誰も幸せにしないこんな想いなんて、とっとと劣化してしまえばいいのに


僕の朝はバスケ部の朝練があるため割と早い。
けど、そんなぼくよりも少しだけ早く、姉さんは食卓に座っている。
「おはよう。姉さん。」
「うん。おはよう。幸一。」
そんな挨拶ひとつにもぼくの心臓の鼓動は高鳴る。
「ホント姉さんは朝早いよね。もっと寝てればいいのに。」
「だって幸一の顔を一秒でも長く見てたいんだもん。」
――嘘だ。いつもは優しい姉さんだが、僕をからかって遊ぶことも多い。
なのに。悪戯だとわかっているのに体の反応を止めることは出来ない。
「顔、赤いよ。」
ほら。クスクスと意地の悪い微笑みを浮かべてる。
「――行ってきます。」
わざと機嫌が悪そうに家を出て行く。
子供じみた、せめてもの反抗。でも、姉さんにはバレバレなんだろう。
「いってらっしゃい。」
――だって、あんなに優しい顔で送り出すんだから

この気持ちまで気付かれていたらと思うと――
いや、やめよう。
考えれば考えるほど憂鬱になってくる。
だから僕はそんな考えを吹き飛ばすように
「行ってきます。」
ほんの少しだけ大きな声で言って家を出た。


「うん……いってらっしゃい……幸一」


386:名無しさん@ピンキー
08/12/25 22:55:09 YHKqLH1L
「あ~羨ましいかつ妬ましい。」
「何だよ、いきなり。」
「いいよなお前は。沙智さんとひとつ屋根の下なんてさ。」
沙智は姉さんの名前だ。
高校生になってますます綺麗になった姉さんは、やっぱりモテる。
肩まで伸びた黒髪に、パッチリとした眼。そして本を読んでいるときの神秘的な佇まい。
図書委員の姉さんを見るために、ここ最近の図書室は男の比率が圧倒的に増えたとの噂まである。
……僕なんか毎日見てるもんね。

「あのなぁ。僕は弟だっての。」
「だとしても羨ましいんだよ!全く、お前は何もわかってないよな~」

何もわかってないのはそっちだろ。
弟になんて生まれてきたくなかったのに。
少しでも姉さんに良く見られようと色々な努力をしてきた。
姉さんのいる高い偏差値の高校に入るために必死に勉強したし、
スポーツマン=カッコいいなんて短絡的な考えでバスケ部にも入った。
それでも――姉弟という壁は大きすぎた。
いくら頑張ったところで、振り向いてなんてくれやしない。
幸せになんてなれやしない。

――この想いは、いつか必ず僕を殺す。



「幸一。こっちこっち。」
部活が終わり帰ろうとすると、姉さんに呼び止められた。
こうやって帰りに姉さんと一緒になることは多い。
そしてそのまま買い物の荷物もちになるのだ。
両親が海外に行ってしまっていて、かつ僕の料理センスが壊滅的なために料理は姉さんの役割になった。
かといってそのまま押し付けるわけにもいかず、せめてものお役に立とうとこうして働いているわけだ。
……まあ役得とも言えるが。

387:名無しさん@ピンキー
08/12/25 22:55:40 YHKqLH1L
買い物を終えて二人で歩いていると、前から腕を組んだカップルが歩いてきた。
――いいなぁ。僕も姉さんと……
「ねえ、幸一は彼女とかいないの?」
いきなり。姉さんがそんな話を振ってきた。
「彼女は…いないよ。……好きな人はいるけど。」
後半は小声だったが、すぐに後悔した。
姉さんの前で何言ってるんだ僕は!
「ふーん。告白とかしないの?」
残酷なことを聞いてくる。そんな簡単に言えたらこんなに悩んだりしないのに。
「しないよ。片思いだから。」
はっきりと言う。なんでこういうことはすんなり言えてしまうんだろう。
「そっか……幸一、モテそうなのに。」
「一番モテてほしい人にはモテてないんです。」
「へぇ……」
「そういう姉さんはどうなのさ。」
「私?」

何聞いてんだ俺は!
いや。待って。やっぱ聞きたくない――


「好きな人、いるよ。
 ふふ…しかも……両思いなんだ。」


あーあ。輝くような笑顔で嬉しそうに言っちゃったよこの人は。
僕の初恋は終わった。ようやく。
でもそんな感傷に浸る前にこの涙をどうしてくれよう。
とりあえず、一人になるまでは流れないでくれ――

「そう……なんだ。おめでとう。」
それだけはなんとか言えた。
「うん。ありがとう。」
「つ、付き合ったりしないの?」
「うーん…まだタイミングが合わないっていうか、期が熟してないというか。」
「そう…………」
それからの記憶はあまりない。
はっきりとわかったのは、これで姉さんが幸せになれるってことだけだ。
気持ち悪い、こんな想いに縛られることなく。
でもまだ、この想いは消えてくれそうにない。
宇宙飛行士になるって夢も、自転車で世界一周したいなんて望みもあんなに早く僕の中から消え去っていったのに。
まだまだ僕の苦しみは続いていく。


「両思いなんだよ。
 私も……君も、ね――」

388:名無しさん@ピンキー
08/12/25 22:56:58 YHKqLH1L
例によってまだあんまりキモくありません。
すいません。

389:388
08/12/25 23:09:50 YHKqLH1L
すいません。弟の一人称は「僕」です。
「俺」ってなってるところもありますが気にしないでください・・・

390:名無しさん@ピンキー
08/12/26 00:14:06 PIukQ5c8
お姉ちゃんは何でもお見通しか。



391:名無しさん@ピンキー
08/12/26 00:49:34 UfHlhx6x
>>389
気にするな? 気になるよ・・・とっても気になるよお兄ちゃん!!!!
責任(長編化)とってくれるよね??

392:名無しさん@ピンキー
08/12/26 12:32:13 K1Jz5V4A
確かに今のところキモ姉妹というよりむしろシスコン弟…だが、お姉さん大好きでなく
このスレを選択したということは…期待と恐怖が増幅の一途。

393:名無しさん@ピンキー
08/12/26 15:19:45 lY+Pu9d4
キモ姉と涎の相性は異常

394:名無しさん@ピンキー
08/12/26 17:41:50 wd0+I6+P
ごくり…
じゅる…
シャリ・・・
メロ・・・

395:名無しさん@ピンキー
08/12/26 18:06:21 2vowO5Uu
まるでバキの食事シーンのような擬音だが、食べられているのは兄か弟なのか…

396:名無しさん@ピンキー
08/12/26 18:08:51 h61zuJQu
実はブラコン&シスコンの両思いカップルってのは珍しいかも。
お互いの気持ちに気づけばバカップル一直線の危うい配置だけに難易度高い?

397:名無しさん@ピンキー
08/12/26 19:00:22 SWkxFcVw
クリスマスイブに、「兄さんは彼女も居ないんですか? 私は好きな人と一緒に過ごしますから」と言って
結局、一日中兄と一緒に居るキモウトのSS書こうと思ったが間に合わなかった

398:名無しさん@ピンキー
08/12/26 19:27:58 5+C1WsL8
>>397
今からでもおk

399:名無しさん@ピンキー
08/12/26 20:03:36 mrC8HLE1
>>397
今でもいいんじゃね?

400:名無しさん@ピンキー
08/12/26 20:22:58 r0Xkj5Ty
>>397
この遅漏め

どんどんやれ

401:名無しさん@ピンキー
08/12/26 20:31:10 e+Kfxv0j
>>397
(`・ω・´)やることは一つなんよ

402:名無しさん@ピンキー
08/12/26 20:36:26 6J0F/aJ4
えぇい!
兄「Xmasケーキならぬ兄ケーキで召し上がれますた」
弟「Xmasプレゼントは身体中にリボン巻かれハァハァされますた」
というSSはまだかぁぁ!!

403:名無しさん@ピンキー
08/12/26 20:40:04 e+Kfxv0j
ツンデレのキモウトって考えてみたけどヤンデレでツンデレはないな
キャラがおかしくなる

404:名無しさん@ピンキー
08/12/26 21:15:35 mBkVRoE5
綾とかキモウトの反応とかスレチだが修羅場スレの作品にもある

405:名無しさん@ピンキー
08/12/26 21:16:35 ZEXPvFhf
べ、別にあんたのために殺ったんじゃないんだからねっ!

406:【ショタ☆ウト】(1レス完結)
08/12/26 22:04:18 lSXcU8GD
 おっとうとの~♪ ショタ★チンチン~♪
 ずっとツルツル~♪ ショタ★チンチン~♪

 弟くんは毎晩、寝る前に牛乳を飲むのが日課です。もっと背を伸ばして男らしくなりたいのだそうです。
 お姉ちゃんとしては、いまの可愛い弟くんのままで充分ですけど、それを口には出しません。
 弟くんのご機嫌を損ねたくないですからね。
 黙って牛乳をレンジでチンしておいて、風呂上りの弟くんに差し出すだけです。
「ありがと、姉ちゃん」
 ごくっ、ごくっ、ごくっ……と、パジャマ姿で片手を腰に当てた弟くん、いい飲みっぷりです。
 えへへへ、美味しいですか? お姉ちゃんの愛情&睡眠薬入りホットミルクは?
「……ふぁぁぁ……、じゃあ、寝るから」
「はい、おやすみなさい♪」
 寝室へ向かう弟くんを見送ったお姉ちゃん。
 弟くんの使ったマグカップに間接キスしてから、もったいないけどそれを洗って。
 そして、弟くんが出たばかりのお風呂に入っちゃいます。
 弟くんの出汁がよく出たお風呂で身も心も温まったあとは。
 いよいよお姉ちゃん、弟くんに夜討ちをかけちゃいま~す♪

 ベッドの上で可愛い寝顔の弟くん。
 部屋の電気を点けても眼を覚ます気配はありません。さすがネットのアングラサイトで手に入れた睡眠薬♪
 もちろん安全性は事前にクラスメートで確かめておきました♪
 昼休みに飲ませたら午後の授業の間じゅう、教師に怒鳴られても眼を覚まさなくて問題になったけど。
 でも、あたしが分けたお弁当のおかずに薬を仕込んでおいたことはバレてないから無問題(もーまんたい)♪
 それじゃ、弟くんを剥いちゃいましょっか♪
 パジャマのズボンとトランクスをいっぺんに引き下ろすと、ぽろりと飛び出すショタ★チンチン♪
 きゅぅ~~~っ!!! その可愛らしさにお姉ちゃん、悶絶しちゃいそうです♪
 いますぐ★ぱっくん★したいけど、そこは我慢。
 まずはショタ★チンチンのショタ★チンチンらしさを守る大事な作業。
 ショタ★チンチンの根元に顔を近づけ、じーっと観察。
 すると……ありましたありました、無粋な「じんじろ毛」。
 正確には「じんじろ毛」になりかけの、産毛にしては色の濃い無駄毛です。
 即決裁判、判決、死刑! 用意してきた毛抜きで、ぷつっと引き抜きます!
 そうした無駄毛を三本ばかり抜いて。
 綺麗になった弟くんのショタ★チンチンの根元に、さらに脱毛クリームを塗り込みます。
 んふふふふ♪ 弟くん、いつまでも可愛いショタ★チンチンでいてね♪
 あとは腿から下にも脱毛クリームを塗っておいてあげます。脛毛の生えた弟くんなんて見たくないもの。
 そうして弟@キュート★ショタくんのメンテナンス作業が完了したら。
 おもむろにお姉ちゃん、大きく口を開けて、ショタ★チンチンを★ぱっくん★しちゃいます♪
 むふふふ……美味しっ♪ よだれあふれちゃう……じゅるるるっ♪
 お姉ちゃんの下のお口で★ぱっくん★してあげるには、まだまだ小さなショタ★チンチン。
 でも、大丈夫♪ お姉ちゃん、大好きな弟くんのショタ★チンチンなら舌と喉の感触だけで逝けちゃうから♪
 ……あっ、あっ、いっ……逝くぅぅぅ~~~~♪♪♪

 ―ところが、ある日のこと。
 いつも通りお風呂を出る頃合を見計らって牛乳を温めておいたのに、弟くん、なかなか姿を現しません。
 痺れを切らしたお姉ちゃん、お風呂場まで様子を見に行くことにしました。
 とんとん、とノックと同時に洗面所のドアを開けるお姉ちゃん。
 あわよくばお風呂上りの弟くんのヌードを鑑賞……なんて下心は、ほんのちょっとありましたけど。
「……わあっ!? なんだよ、姉ちゃん!?」
 残念ながら弟くん、下はしっかりパジャマのズボンを穿いてました。……ちっ!
 でも上半身は裸。そんな格好で洗面台の鏡の前で、何やら片腕を上げて自分の腋の下を観察しています。
「……何してるの? せっかく牛乳温めておいたのに冷めちゃうよ?」
 訊ねるお姉ちゃんに、弟くん、照れくさそうに笑いながら答えます。
「ああ、ありがと。いや、なんか……腋毛が生えてきたみたいで。ようやく俺も、オトナの仲間入り?」

 ……ガ~~~~ンッッ! ……ガ~~ンッ! …ガ~ンッ!

 お姉ちゃん、完全に抜かってました。下半身ばかりに気をとられ、上半身の無駄毛対策を忘れていたのです。
 これが本当の……「脇が甘い」? 【チャンチャン♪】

407:名無しさん@ピンキー
08/12/26 22:37:46 r0Xkj5Ty
誰が上手いことを言えと

408:名無しさん@ピンキー
08/12/26 22:38:53 wj6VaA17
駄洒落おちGJ!
是非続編を

409:名無しさん@ピンキー
08/12/26 23:12:49 Q6MlLLOT
ワロタ
最初の部分は岩下の新生姜のメロディで再生されたんだけど、あってるんだろうかw

410:【ショタ☆ウト】作者
08/12/27 06:15:24 d1vmtCt5
どうもです~
新生姜のメロディは意識してませんでしたが語呂はあってますね~(笑)

でも関係者が見ていたら
「ちょwwwうちの商品wwwチンチン呼ばわりwww」
と悶絶しそうなので、そこはあえて触れない方向で(笑)

411:名無しさん@ピンキー
08/12/27 09:34:26 6pPFl4Gp
「御託はいらねえ会話で萌やせ!」


会話のみの作品を見てみたいのう…

412:名無しさん@ピンキー
08/12/27 14:26:30 U+EzpZ14
>>411
開祖になるんだ

413:名無しさん@ピンキー
08/12/27 15:19:17 rGjGGyeT
この静けさ……まさしく『お姉ちゃん大勝利!』なのか?

414:名無しさん@ピンキー
08/12/27 15:59:02 65ZwFKEu
妹派の逆襲はなるか?

415:名無しさん@ピンキー
08/12/27 16:17:04 P+hchhfz
兄「やめろ!そんなもん地球に落としたら人が住めなくなる!核の冬が来るぞ!」
妹「私とお兄ちゃんの愛を認めない地球なんて、この私がみんな粛清してやるっ!」
兄「エゴだよ!それは!」

416:名無しさん@ピンキー
08/12/27 17:09:13 JwWygRnS
大学2年の夏休み、帰省せずにバイトしていた。
当時の俺は京王線沿いのワンルームに一人暮らし。
ある日、母から電話があり
「○ちゃん(従妹 当時中3)が友達と一緒に5日間ほど東京に遊びに行くって言うんだけど、
二人面倒みてあげてよ」と。
俺「5日もかよ!ガキンチョの相手なんかめんどくせーよ」
母「そう言わずに、ちょっとお金送っとくから」
当初は本当にお守なんか面倒だった。

当日、新宿駅まで迎えに行く。
人ごみの中、○○を探していると
「☆兄!」
日焼けしたショートカットの垢抜けないが可愛い少女…、○○だった。
○○と会うのは二年半ぶり。最後に合ったのは○○がまだ小学生のときだった。
俺「おー、ひさしぶり。なんだ、お前まっ黒じゃん。田舎者まる出しw」
○○「陸上部だからね。もう引退だけど…って、自分だって田舎もんでしょ!」
俺「やれやれ、無事着いたか。おのぼりさんのガキンチョだから心配したよ」
○○「もうガキじゃないよ!」
         ・
「こんにちは△です!よろしくおねがいします!」
隣を見ると、これもまた日に焼けたポニーテールの子。
「おー、よろしく。じゃあ、とりあえず行くか」
そっけなく先導したが、俺は内心ドキドキしてた。
ヤベー、めっちゃカワイイ…

その日はサンシャイン行って、展望台・水族館。
最初のうちははしゃいてた二人も夕方になると段々口数が少なくなった。
慣れない移動と人ごみで疲れたようだ。
晩飯食って早々に俺の部屋に引き揚げた。

部屋に着くと狭いワンルーム、ユニットバスに驚きながら
すぐに元気になり
「汗かいたからシャワー浴びたい」
「△ちゃん、狭いけど一緒に入っちゃお!」
バッグから着替えを用意する二人、それぞれ手作りらしき巾着を持ちバスルームに向かう。
ふと二人の動きが止まる。
俺の部屋はワンルーム。
脱衣所などない。

417:名無しさん@ピンキー
08/12/27 17:42:11 zMPZNXHx
ほほう…

418:名無しさん@ピンキー
08/12/27 18:04:31 R9wG0AEH
妹も姉も出てこないわけだが……!

419:名無しさん@ピンキー
08/12/27 18:15:54 x2SW7M3E
こっちに来てくれ
ロリ萌え妄想 ~小学生・中学生~ その5
スレリンク(eroparo板)

420:名無しさん@ピンキー
08/12/27 18:56:11 jPCqjt+e
実は二人とも血の繋がった兄妹なんですね。わかります

421:名無しさん@ピンキー
08/12/27 18:56:45 VkEI88eR
妹がいるがどうも嫌われているみたいだ
やさしいお姉ちゃんが欲しい

422:名無しさん@ピンキー
08/12/27 19:09:23 MeP64FIa
快楽中枢が繋がってる兄と妹。
兄がオナニーを始めると妹も濡れて感じてしまい、妹がオナニーすると兄も勃起して射精しする。

そんで兄が、学校で好きだった人を呼び出して告白しようとしたら、急に勃起してしまう。
兄はビックリしてその場を離れて妹を探すと、トイレでオナニーしている妹を発見。
兄の告白を邪魔する為にオナニーしてたと暴露。
「はやくおちんちん出さないと、ズボンの中で射精しちゃうよ?」



みたいなのを誰か……


423:名無しさん@ピンキー
08/12/27 22:00:58 SO6cO3Bl
なんか双子みたいだな
やっぱり双子の兄妹だと感覚とか繋がっているのだろうか

424:名無しさん@ピンキー
08/12/27 22:38:57 VA1f3Cne
俺がさっきまで読んでたエロ漫画じゃねえかww

425:名無しさん@ピンキー
08/12/27 22:50:58 bsDueqUm
>>422>>424が双子の兄妹だという事がわかりました。

あ、急に…

426:名無しさん@ピンキー
08/12/27 23:30:32 6ULX2BNP
newsnetworkの社会人兄妹って良いよな。
キモウトじゃないけど。素質はあるから何か妄想してしまう。

あれの三次創作を作りたくなる。

427:名無しさん@ピンキー
08/12/28 02:42:51 Aa5J88xF
ポケットモンスター=チ○コ
らしいね

428:名無しさん@ピンキー
08/12/28 20:57:34 xYrKU43A
>>426
現状でも充分アレだと今日更新ので思った

つか三次?あれ二次なのか?

429:名無しさん@ピンキー
08/12/28 21:11:16 3Mz983DI
三次といったら三次元、つまり実の妹で(以下略

430: ◆U4keKIluqE
08/12/28 23:00:42 Q34fdWsJ
ちょっと間隔が空きましたが、今年最後の投下です。5分割です。

431:転生恋生 第八幕(1/5) ◆U4keKIluqE
08/12/28 23:01:51 Q34fdWsJ
 日曜日の午前中、部屋で漫画を読みながらだらけていると、携帯の着メロが鳴った。発信者名を見ると猿島だった。これは初めてのことだ。
「もしもし?」
「桃川君、おはよう。今日は暇かしら?」
「ああ、暇だけど」
「始業式の日に私の芝居が見たいって言っていたわよね?」
「おう、言った」
「用意ができたから、見せてあげるわ」
「そうか。わざわざすまないな」
 猿島の演劇部での公演を撮影したビデオでも貸してくれるのだろう。特にすることもないし、暇つぶしにはちょうどいい。
「それじゃあ、午後1時にF駅の改札で待ち合わせしましょう」
 F駅は俺たちが通っている学校の最寄駅だ。猿島も電車通学だったと思うが、たぶん俺の家とはF駅を挟んで反対方向にあるんだな。それで中間地点のF駅でビデオの受け渡しをするというわけか。
 ……いや、ビデオの受け渡しなら月曜日に学校でやってもかまわないはずだ。
「俺は急がないぞ。月曜日でもいい」
「学校では無理」
 ビデオを渡すくらいがどうして無理なんだ? まあ、わざわざ時間を割いて貸してくれるというんだから、あえて逆らうこともないか。
「それなら、改札を出る前のところで落ち合うってことでいいか?」
 改札を出なければ、運賃を払わずに済む。ちょっとせこいが、これも生活の知恵だ。
「うん、その方がいいわね」
 猿島も小市民的感覚の持ち主らしい。
「じゃあ、F駅の改札のホーム側で、1時に」
「ええ、また後で」
 それで電話を切ると、俺は午前中はだらだらと過ごした。おふくろに頼んでちょっと早めの昼食をとらせてもらってから、簡単に身だしなみを整えて12時20分に家を出た。
 普段なら俺の外出には必ずといっていいほどついてくる姉貴は、今日は居間のソファでぐったりしていて元気がない。
「たろーちゃん、お出かけ?」
「ああ、ちょっとクラスメートにビデオを借りに行ってくる」
「AVだったら、一緒に見ようね」
「アホ!」
 姉貴としてはAVを見て気分が盛り上がったところで禁断の姉弟愛になだれ込みたいところだろうが、こっちも手の内はわかっているから引っかからない。そもそも高校の演劇で性的興奮を覚えるやつがいるか。


432:転生恋生 第八幕(2/5) ◆U4keKIluqE
08/12/28 23:02:59 Q34fdWsJ
 悪態をついたが、俺は姉貴にいつものうっとうしい元気がないのに気づいていた。といっても、特に心配する必要はない。病気以外の原因だとわかっているからだ。
 そう、健康な女性なら月が満ち欠けする度に必ず訪れる試練の日だ。姉貴もこの運命からは逃れられない。腕力で並ぶ者がいない姉貴が俺よりも弱くなり、そのために俺が貞操の危機を感じずに済む、月に1度の安息日だ。
「うー、今日は何もしたくないー」
 姉貴は本当に辛そうだ。こればかりは気の毒だが、俺にはどうしようもない。
「でもいいの。将来たろーちゃんの赤ちゃんを産むための苦しみだと思えば耐えられるわ」
「……耐えなくていい」
 キモい姉貴は放っておいて、俺は猿島との待ち合わせ場所に向かった。

 F駅の改札に着いたのは午後1時ちょうどだった。猿島はまだ到着していないらしく、見当たらない。時間には正確そうだったから、ちょっと意外だ。
 配信ゲームで時間を潰そうかと携帯電話を取り出したとき、俺を呼ぶ女の子の声がした。
「桃川くーん!」
 声のした方を見ると、知らない人だった。茶髪のロングヘアで、下はミニスカートとブーツ、上はこざっぱりとしたシャツだが、ボタンをほとんどとめていないのでキャミソールが覗いている。
 ……誰だろう? 明らかに俺の方へ駆け寄ってくるが、人違いか? でも桃川なんて苗字はそんなに多くはないしなぁ。
 その子は俺のすぐ傍まで来ると、ぱっちりした目を輝かせてニコッと微笑んだ。目元や頬、唇などうっすらと化粧をしており、かなりかわいい。
「ごめん、ごめん。待った?」
「いや……待つも何も……誰?」
「やだなぁ、けいちゃんだよ」
「けいちゃん?」
 多分、俺は眉を寄せたと思う。彼女は左肩に提げていたショルダーバッグから手帳を取り出して俺に突きつけた。
「ほら、見て」
 それは生徒手帳だった。氏名は『猿島景』と記入されており、教室で俺の隣に座っている地味な眼鏡の女の子の証明写真が貼ってある。
 つまり、目の前の『けいちゃん』と猿島は同一人物ということらしい。
「え!? おまえ、猿島なの?」
 あからさまに動揺した俺に、猿島は変わらずニコニコしている。
「けいちゃんだよ。そう呼んで」
「けい……ちゃん?」
 物凄く違和感がある。だが、猿島は「よくできました」と言うと、いきなり俺の手を取った。
「髪を触ってみて」
 言われるままに髪を指で梳いてみると違和感がある。どうやらウィッグらしい。すると眼鏡の代わりにコンタクトをしているわけか。
 私服で化粧をしているということもあるけど、女は化けるっていうのは本当だな。


433:転生恋生 第八幕(3/5) ◆U4keKIluqE
08/12/28 23:04:01 Q34fdWsJ
「わかった? じゃあ、行きましょう」
 猿島は俺の手を取ったままホームの方へ歩き出した。
「え? どこへ行くんだ?」
「T駅よ。ほら、急いで」
 てっきりビデオをもらって別れるものと思っていた俺は戸惑うばかりだったが、猿島の予想外に柔らかい手の感触に逆らえなかった。
 言われるままに俺はT駅へ向かう電車に乗り込んだ。中は空いていて、俺たちはボックス席に向かい合って座ることができた。
「なあ、いったいこれはどういう……」
「せっかくの日曜日なんだから、遊びましょうよ」
 猿島は楽しげに笑う。同じクラスになってから2週間だが、隣の席にいながら、俺はこいつの表情を1種類しか見たことがない。
 普段はまるっきり無口で無愛想で無表情なこいつが、こんなフレンドリーな、悪く言えば媚びるような笑顔を持っているなんて夢にも思わなかった。
 とりあえず、このまま誘いに乗ってみるか。貴重な体験だもんな。
 気を楽にすると、俺は目の前にいる女の子をけいちゃんとして受け入れることにした。
 T駅までは15分程度なのでさして話すこともなかったが、俺は何か場を持たそうと、彼女が着ている服を誉めてみた。
 けいちゃんは素直に喜んだ。実際、よく似合っている。フェミニンでかわいらしいし、キャミソールの胸元の慎ましやかな谷間やミニスカートが作る絶対領域など、男心をくすぐる色っぽい要素も満載だ。
 俺が特に目を奪われたのは脚というか太ももだった。細いというより、引き締まっている。そこそこ筋肉質らしい。猿島は本の虫という印象だったから、これは驚きだ。
「何か、普段運動しているの?」
「どうして?」
「脚が引き締まっているからさ」
「けいちゃんの脚ばかり見てたんだ。やーらしーな」
「あ……、ごめん。じろじろ見ちゃって……」
 スケベと思われたか。せっかくの雰囲気を壊したか。
 うろたえる俺を楽しむように、けいちゃんは右手の甲を口元に当ててクスクスと笑う。
「べつにいいよ。見せたくてミニを穿いてきたんだから」
「そうなのか?」
「女の子は男の子の視線を集めたいものよ」
「さし……けいちゃんもか?」
「そうよ。でも今日は桃川君の視線がほしいかな。だから、けいちゃんのことだけをいっぱい見つめてね」
 何なんだ、この歯の浮くようなやりとりは。漫画やラノベの中でしか目にしたことのない台詞だ。まさか、俺の人生でリアルに体験できるなんて。
 けいちゃんの説明によると、彼女はダンスのレッスンを受けているのだという。将来舞台女優になるための修行の一環だそうで、つまり猿島がそのような志望を持っているということか。
 ダンサーは皆筋肉質だから、猿島も見かけに寄らず引き締まった体をしているということになる。見た感じウェストが細いし、おそらく腹筋も割れているんだろう。


434:転生恋生 第八幕(4/5) ◆U4keKIluqE
08/12/28 23:05:07 Q34fdWsJ
 電車がT駅に着いた。改札を出るとすぐにショッピングモールが広がっている。けいちゃんは通り抜けるついでにウィンドウショッピングがしたいと言った。
 女物のアクセサリーの店には、姉貴に無理やり引っ張り回されて入ることが多い。俺はいつもうんざりさせられるんだが、けいちゃんと一緒に彼女に似合うアクセサリーを探すのはとても楽しかった。
 それから帽子屋とジーンズショップに入った。けいちゃんが試着して見せてくれたが、どれもかわいかった。コスメショップにも入ったが、ランジェリーショップはスルーしてくれたので助かった。
 ショッピングモールを抜ける頃には、けいちゃんは自然に俺と腕を組んでいた。腕に当るけいちゃんの体の控え目な感触が心地よい。
 この街には近隣の高校生が遊び場にしているアミューズメントパークがある。ゲームセンターやボーリング、ビリヤード、カラオケといった安い遊びが詰まっていて、金はないけど時間はあるという学生が遊ぶにはもってこいの場所だ。
 俺たちはビリヤードをやった。俺はこれが人生3回目のビリヤードだったが、けいちゃんは初めてだそうで、まるでうまくできなかった。どうやら手先は不器用らしい。
 けいちゃんはミニスカートなので、台に乗り出して球を打つとき、俺は他の客にスカートの中身を見られないよう、ガードする位置に立つことを心がけた。
「桃川君は紳士だね」
 けいちゃんはそう言って笑ったが、俺自身がけいちゃんを他の男どもの邪な視線に晒したくないという気持ちになっていた。
 次にクレーンゲームをやった。俺はけいちゃんが欲しいというぬいぐるみを取るのに挑戦したが、成功しなかった。千円を投資して失敗したところで、けいちゃんが止めたのだ。
「そんなに無駄遣いしちゃダメだよ。申し訳なくなっちゃう」
 これでますますけいちゃんに対する好感が高まった。男に金を使わせるのが女のステータスだと思い込んでいるやつらに、けいちゃんの爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ。
 クレーンゲームのお返しということで、けいちゃんのおごりでプリクラを撮った。過去にグループで撮ったのは別として、女の子と二人でプリクラを撮るのは初めてだった。
 姉貴には無理やり撮らされたことがあるが、もちろんそんなものはカウントしていない。
 それほど新しい機種ではなかったが、手書きの文字を書き込める機能がついていた。
「ねぇ、何て書こうか?」
「けいちゃんに任せるよ」
 そんなやり取りを経てけいちゃんが書き込んだのは、「ふたりの初デート記念」という一文だった。
 印刷されたプリクラを見ると、俺の顔は真っ赤になって写っていた。
 
 あっという間に夕方になった。最後に、けいちゃんの願いで観覧車に乗ることにした。
 係員に誘導されて二人で乗り込み、向かい合うように座った。夕日の赤い光に照らされるけいちゃんの顔は文字通り輝いて見えて、眩しかった。
 またこんな風に二人で会いたい。そう口に出そうとしたとき、けいちゃんは自分の髪をゆっくりと引き剥がした。
 ウィッグを外した後には、黒髪ショートヘアの無表情な女の子が残された。
「今日はお疲れ様」
 猿島は普段教室でそうしているように、無機質な口調で俺をねぎらった。
 ああ、そうか。目の前にいるのは猿島なんだ。シンデレラタイムはもう終わりというわけか。
 俺は自分でも不思議なくらい冷静に気持ちを切り替えることができた。
「お疲れ……。というか、今日のは何だったんだ?」
「桃川君が私の芝居を見たいと言ったから、ご要望にお答えしたまでよ」
 化粧はそのままなのに、まるっきり猿島だ。そうとしか言いようがないほどに淡々とした口調で、熱のない視線を俺に向けている。いつもと違うのは眼鏡がないことだけだ。


435:転生恋生 第八幕(5/5) ◆U4keKIluqE
08/12/28 23:05:50 Q34fdWsJ
「今日のは全部芝居だったのか」
「そう。いつもの私とは違うキャラクターを演じて見せたの。ご感想は?」
「凄いな。本当に別人だった。……でも、どうしてこんな手の込んだことをしたんだ?」
 俺はてっきり、過去の公演を録画したビデオでも貸してくれるものと思っていた。まさかこんな長時間にわたる実演になるとは思ってもみなかった。
「芝居は生で見るものよ。ビデオで見たって、何も伝わらないわ」
「そういうものか?」
「そうよ」
 猿島はきっぱりと言い切った。芝居とは役者の演技に対する観客の反応がその場で役者にフィードバックされ、その後の演技を左右する。それを繰り返して一回限りの空間を作り上げるものだという。
 だから、自分の演技をチェックする以外の目的で、ビデオで芝居を見ることなど意味がないというのだ。
「桃川君は理想的な観客だったわ。私の芝居にのめり込んでくれたから、私も役に入り込むことができたもの」
 ちょっとだけ猿島の言葉に熱がこもったような気がしたが、気のせいか。
「最初は面食らったけどな」
「無理もないわね。どんな舞台でも、幕が上がってから観客をその世界に引き込むまではタイムラグが生じるわ」
 猿島がウィッグを付け直した。いつの間にか観覧車が1回転して、俺たちの入っているボックスが地表に戻ってきていたのだ。
 茶髪のロングヘアに戻っても、もはや俺の目にはけいちゃんではなく猿島以外の誰にも見えなかった。
 猿島自身も、これ以上芝居を続ける気はないらしく、いつもの口調で話し続けた。
「芝居は自分と全く違う人間になれるから、楽しいの。今日のキャラクターはオリジナルだから、作るのに時間がかかったわ。桃川君の目から見て、どうだったかしら?」
「けいちゃんの感想ってこと?」
「そうよ。鼻の下を伸ばしていたみたいだけど、わりと気に入ってもらえた?」
「ああ……、凄くかわいかった。普段もあんな風にしたら、男は9割方落ちると思う」
「それは無理。日常生活でまで芝居を続けていたら、体と心がもたないわ」
 田中山は見たがると思うが。
「猿島の芝居が見たいって言ったら、今日みたいなことをまたやってくれるのか?」
「新しいキャラクターができたら、私の方から見てくれるようにお願いするかもしれないわね」
 その口ぶりからすると、けいちゃんは今日限りで見納めらしい。
「ああ、そうそう、念のために言っておくけど、今日のことは黙っていてね。中山田君たちに知られると面倒くさいから」
 確かに、連中に知られると「濡れ場」までリクエストしかねない。

 帰路に乗る電車の方向が反対向きだったので、猿島とはT駅で別れた。猿島は一度も振り返らなかったが、俺はその後ろ姿をひたすら見つめ続けて、目に焼きつけた。
 一人きりになった帰りの電車の中でも、俺は目を閉じてひたすらけいちゃんの姿を思い起こした。
 姉貴は相変わらず体調不良だったから、今日の俺はのんびりと風呂に入ることができた。浴場で俺はけいちゃんの裸を妄想して抜いた。
 その後もけいちゃんのことが頭から離れなかった。胸が焼けつくような感じがして、就寝時間まで悶々として何も手につかなかった。
 なかなか寝つけなかったので、もう1回抜いた。自分がとてつもなく下らない男に思えて、切なくなった。
 それでも体が疲労したせいか、やっと眠れることができた。


436: ◆U4keKIluqE
08/12/28 23:08:36 Q34fdWsJ
投下終了です。皆様、良いお年を。

437:名無しさん@ピンキー
08/12/28 23:10:58 nxS7SUJq
超GJ!!!
来年も楽しみに待っています。


438:名無しさん@ピンキー
08/12/28 23:13:06 IwBarmhq
GJ!
桃太郎も普通の思春期少年なんですね

439:名無しさん@ピンキー
08/12/28 23:16:44 V+ObVFOY
続きキタ━(゚∀゚)━!!ついに桃太郎の従者によるアピール作戦が始まりましたね。
これからが楽しみです。がんばってください。それではいい年を。(・∀・)ノシ

440:名無しさん@ピンキー
08/12/28 23:36:39 M4h/iF8A
GJ!
猿島の読み方は、さしまでいいのかな?

441:名無しさん@ピンキー
08/12/29 01:31:51 3m8UvHkY
そのプリクラを姉貴が見つけたらどうなるか今からwktkしてきた――!

442:名無しさん@ピンキー
08/12/29 02:34:23 NfyxVJc1
GJ!!
俺は犬ッ娘派だけどGJ!!!

443:名無しさん@ピンキー
08/12/29 03:29:48 y0DH4t3V
>>436
GJ!
あなたも良いお年を。

444:名無しさん@ピンキー
08/12/29 07:36:00 NCBtFDrn
自分がキモウトだと言うのを隠してるより、最初からキモウトをさらけ出してる作品のほうが面白い?

445:名無しさん@ピンキー
08/12/29 08:10:49 zMXqzNL8
ボクは、キモウトを隠していた方がいいように思うな……

446:名無しさん@ピンキー
08/12/29 09:04:42 NziQcKfb
>>445
死ね

447:名無しさん@ピンキー
08/12/29 09:21:03 gPd1a7sQ
と言うか、誰にどの程度さらけ出すかが話の展開を決めちゃうから
筋書き次第じゃないか?


448:名無しさん@ピンキー
08/12/29 09:44:09 KttZxtkj
けいちゃんで抜いてる桃太郎のダメ人間具合にGJ!

しかし猿島、そのままけいちゃんを演じ続けてたほうが桃太郎を落とせただろうに
けいちゃんを演じるのは疲れるってことだけど
桃太郎が落ちてから正体を表せばいいわけで
犬や雉との間で何か協定でもあるのかな

449:名無しさん@ピンキー
08/12/29 10:40:22 ISg2LZ4l
>>448
猿島とけいちゃん、そのギャップでアピールしてるのかも

450:名無しさん@ピンキー
08/12/30 00:17:05 39zrYJg0
>>448
真の自分を好きになって欲しい、という乙女心じゃないか。
いじましくて可愛いなあ。

451:名無しさん@ピンキー
08/12/30 12:08:53 lxGrCtBb
>>448
浮気者だ!浮気者がいる!

しかし最近では不況→財布の紐がかたくなる→家で飲む
のコンボでキモ姉妹歓喜だとか

452:名無しさん@ピンキー
08/12/30 13:21:52 i09lXtcT
一般の女性の貞操が緩くなる→女性不振

キモ姉妹涙目

453:名無しさん@ピンキー
08/12/30 16:01:27 9ig0TeoG
なんで俺の気に入ってる作品は来ないんだよ!
そろそろ来てもいいだろ!作者、ちゃんと書いてんのか!?
・・・・頼むよ、いい年明けを迎えさせてくれよ・・・・
いや、転成とかきて嬉しいんだけどさ・・・・

454:名無しさん@ピンキー
08/12/30 17:52:50 7yXCq3Z3
>>453
来年まで待てんのかカス

455:名無しさん@ピンキー
08/12/30 18:04:23 hE4d8usT
まあ気持ちがわからんでもない。
が、そんなレスしてるぐらいなら職人のやる気を出させるようなレスをしたほうが現実的

456:名無しさん@ピンキー
08/12/30 20:18:54 uyWB6pmg
>>431
キモ姉の勝因が一つも見当たらない
が、頑張れキモ姉!

457:名無しさん@ピンキー
08/12/30 20:22:44 PRIyaEs3
結局来世に繰り越しだったらおもしろい

458:名無しさん@ピンキー
08/12/30 20:34:41 7VXsI/j4
>>457
そうか、今生で姉に対する嗜好を刻み込んでおいて、来世に自分が姉として生まれるなんて
裏技もありなんだな

459:名無しさん@ピンキー
08/12/30 21:12:27 sNpHGnKK
>>458
このスレ的には妹もありじゃない。

460:名無しさん@ピンキー
08/12/30 22:22:10 5KTuUos2
現世は姉で弟にアタックしまくった末に嫌われて
「やっぱ俺、妹が欲しかったなあ。」といわれ来世では妹として生まれ変わるんですね

461:名無しさん@ピンキー
08/12/30 23:31:06 VD85smRj
姉弟心中とな?

462:名無しさん@ピンキー
08/12/31 12:42:20 iEicP2Qe
まさか猿だけに猿まねなのか?
とりあえず次の投下まで全裸待機だな
正月?関係ねえよ

463:ねえたん家の年越し
08/12/31 17:59:44 rC1zFgPj
『さー始まりました!カウントダウンお笑い紅白ネタ合戦!笑って年越し大スペシャル~!!』
テレビ画面のベテラン芸人が高らかに番組名を読み上げる。
豪華絢爛なタイトルテロップと、雛段にぎっしりと詰まった人気芸人の面々。
ありがちな年末のお笑い番組だ。
『はい!今回20組の芸人達を審査していただく特別ゲストの登場です!』
カメラが審査員席に移動すると、弾かれたように政人はテレビ前に飛び出した。
「居た!ねえたん映った!!今チラッと映った!顔ちっちゃい!可愛い!」
「ははは。政人君落ち着いて、ちゃんと録画してるから」
「未来ちゃん大晦日もお仕事なんて大変ねぇ」

頑張る姉を夜通し実況する弟であった。
よいお年を。

464:名無しさん@ピンキー
08/12/31 19:03:46 nA0sRVBT
デレのターン

465:名無しさん@ピンキー
08/12/31 19:20:05 tdJCEDdX
ほほえましい

466:名無しさん@ピンキー
08/12/31 19:38:15 DKmDlLKo
まーちゃん、すっかり陥落しちゃってw

467:名無しさん@ピンキー
08/12/31 19:50:31 brdrdgn8
落ちたな…まーちゃんww

468:名無しさん@ピンキー
09/01/01 00:03:16 AhqtFenx
明けましておめでとうマイシスターズ
そして同胞達よ

469:名無しさん@ピンキー
09/01/01 00:58:38 WB23FP/0
「お兄ちゃん、ずっと携帯見てるけど誰かからメール来たの?」
「……サーバーが混雑しててメールが来にくくなってるだけさ……きっと……」
「でももう、朝の五時よ。いくらなんでも、もう」
「黙ってろ! あと、あと一時間は混雑してるから来ないだけなんだって俺は信じる!」
「信じるって……じゃあ、問い合わせしてみたら?」
「問い合わせたら負けかな、って思ってる」
「は?」
「いや、いい。とにかくお前は口を出すな。これは俺の戦いなんだ。妹の出る幕じゃない」
「そこまで向きになってる時点で、もう来ないと思うけど」
「黙ってろって言ってんだろ!!」
「はいはい」
「……? そういや、お前は何通来たんだ?」
「私? ……教えてもいいけど、本当に言っていいの?」
「何?」
「もし私が何十通って来てるって言ったら、お兄ちゃんヤバいんじゃない?」
「う」
「それでも、聞く?」
「いや、や、やっぱりいい」
「ふふ、なんてね。嘘よ。私も一通も来てないわ」
「え? そ、そっか。なんか悪いこと聞いちゃったな」
「大丈夫よ、気にしてないわ」
「……あー、何だったら、俺が今から送ろうか?」
「やあよ。こんなこと言ったあとじゃ強制したみたいだもん」
「いや、そんなことないと思うけど」
「……じゃあ、お兄ちゃん一緒にお参りに行かない?」
「え?」
「だって、お互い誰も行く相手がいないんだから丁度いいでしょう?」
「そうだなぁ。行くか?」
「うん。行こうお兄ちゃん」
「じゃあ、準備してくるから待っててくれ」
「うん、私はもうほとんど準備できてるからここで待ってるね」
「ああ」
「…………さて、と。アドレスを元に戻しておこうかしら。もちろん、両方、ね」

470:名無しさん@ピンキー
09/01/01 01:03:10 WB23FP/0
今日あけおめメールが来なかったお兄ちゃん、つまりこういうことです

471:名無しさん@ピンキー
09/01/01 01:09:54 y8svybNL
>>470
これってキモウト?

472:名無しさん@ピンキー
09/01/01 01:23:07 r5Vm6Uys
>>471
わたしにはキモウトにみえましたがあなたはちがうのですか

473:名無しさん@ピンキー
09/01/01 01:31:18 1c5+powc
>>471
最後の一文を声に出して嫁

474:名無しさん@ピンキー
09/01/01 02:28:46 g/UKlAiB
このあと妹には作業がありそうだな

475:名無しさん@ピンキー
09/01/01 11:49:55 S7oTxUXO
 初詣に着物で行って、仕込みしていた鼻緒が切れて、帰りはおんぶして貰う。
 胸を押し当て、首に手を回し、兄の耳を舐めながら、
「あんっ♪ オシリにあたってるお兄ちゃんの手、感じちゃうよぉっ♪」
 と挑発する。その後に酒を飲ませて、翌日の朝に、衣服を破り、嘘泣きしながら、
「責任、とってね?」
 でハッピーニューイヤー。


476:名無しさん@ピンキー
09/01/01 12:11:56 NSdUA5S5
問い合わせメールの削除ですね わかります
あとおめでとう同志達

477: 【末吉】
09/01/01 16:46:44 Sd+sxdH0
今年も同志たちにキモウトの祝福がありますようね

478:名無しさん@ピンキー
09/01/01 16:54:03 xHvvjrXh
妹を正常にする薬アンチキモウトを手に入れた。
後はこれを妹に怪しまれないように服用させれば。

説明
キモウトの妹にこの薬を飲ませるのは至難です。
なので口うつしで飲ませましょう。

これを一年間服用させましょう。

見事あなたにとってキモウトではなくなっています。

479: 【豚】 【56円】
09/01/01 16:56:43 ilM1ErlF
今年もよろしく。兄さん

480:名無しさん@ピンキー
09/01/01 20:09:15 czA1VjcR
>>479
雌豚ってことですね、わかります

近親相姦なんて不純です
あなたのお兄さんは私が責任もって幸せにしますから

481:【キモウトの論理】
09/01/01 22:08:02 gBwVE81R
ねえ、お兄ちゃん。

お兄ちゃんは、まだ学生で、
女の子とエッチしたら責任とって結婚しなくちゃいけないとか、
エッチは子供を作る目的でしかしちゃダメだと考えるほど頭が堅くもないわよね。
つまり、女の子とエッチすることと、結婚したり子供を作ったりはイコールでは結ばれないわけ。

だとしたらだよ?
法律上は結婚できないし子供を作るのもちょっと問題あるような関係の相手とでも、
エッチするのは全く問題ないわけで……
何の話かって?

あのね、日本には姫初めという伝統行事があって、
それをすると一年の運気が開けると言い伝えられてるわけ。

でね、彼女イナイ歴十八年のお兄ちゃんと、
彼氏作る気ない歴十六年の私たち兄妹の一年間の幸福のために……

……ねえ、お兄ちゃん?
どこに行くの?
ちょっと、まだ話、終わってないってば……ねえ!
部屋? 部屋に行くの? その気になってくれた?

……って、なにドア閉めてんの!
鍵なんかかけないで……ねえ!
開けてよ、お兄ちゃん! お兄ちゃんってば!
やろうよ、姫初め……!

【UN-HAPPY END(妹的に)】

482: ◆sw3k/91jTQ
09/01/01 23:31:30 lGjcFKa1
>>481 GJ
&酉テスト

483:思い出の村1話  ◆sw3k/91jTQ
09/01/01 23:38:01 lGjcFKa1
短いですが、投下します。因みにSS書くの初めてなので、改善点などがありましたら、
教えて下さい。

484:思い出の村1話  ◆sw3k/91jTQ
09/01/01 23:38:42 lGjcFKa1

「うふふふふ。」
目の前で女が笑う。嫌な笑い方だ。まるでこの世は自分の思う通りに回っているとでも言いたげだ。
思い返してみる。どうしてこうなったのかを。



 俺、水野秀樹は中肉中背、妹曰く可もなく不可もなくな容姿をしている高校二年生だ。
容姿と同様に、成績も普通。強いてフォローするならば人よりもちょっとだけ頭の回転が速い(自称)事くらいか。
そんな俺は夏休みを利用して小学三年生の時まで過ごした離島に妹と二人でやってきている。
「兄さん、あれは何という生き物ですか?」
「ハハッ、瑞樹よ。あれはどこからどう見てもエチゼンクラゲじゃないか。刺身にするとうまいぞ。」
こいつは俺の妹、水野瑞樹。誰に似たのかスタイル抜群、容姿端麗な花の高校一年生だ。
「知ってます。聞いてみただけです。因みにエチゼンクラゲは食べれないこともありませんが美味しくはないですよ。」
ツンツンしてるがその表情は普段より柔らかい。久しぶりの旅行で内心はしゃいでるのかもな。
「久しぶりの旅行で気持ちはわかるがあんまりはしゃぐと海に落ちるぞ。」
「はしゃいでなどいませんよ。でももしそうなっても絶対に兄さんが助けにきてくれますから大丈夫ですよ。」
そして結構なブラコンである。
学校でもその容姿から男女問わずにもてた。しかし言い寄ってくる男はすべて振り、浮いた話は今まで一度も聞いたことがない。
しかも先日何で男を作らないかを聞いたところ、「兄さん以外の男に興味がないんです。」と、さらっと言われてしまった。
兄としてこんな妹を心配する気持ちが無いことも無いけど。ま、そういうのは時が解決してくれるだろう。
 なんて物思いにふけっているともう船着場に着いていて妹が急かしてくる。とっとと降りなきゃな。
「なにか考え事ですか?兄さん。」
「ああ、瑞樹についてちょっと考えてた。急がず焦らずいこうな。」
瑞樹は一瞬逡巡し、急に顔を赤らめて何を思ったのか、
「こっ、こちらにも心の準備がありますのでいきなりプロポーズに入るのはやめていただけませんか?」
と言ってきた。さっきの台詞のどこをどう取ればプロポーズになるのかは分からないが一応、
「おおすまん、プロポーズにも順序があったな。すまんすまん。」
とツッコミを入れておいた。そして妹の反応を待たずにわが故郷を見渡す。
そういえば、あの子は元気だろうか。茜ちゃん。元気にしてればいいんだけどな……

side瑞樹
 私、水野瑞樹は今、小学二年生までを過ごした離島に最愛の人と来ている。新婚旅行気分だ。
あの人は私を妹としてしか見ていないが、いつか絶対手に入れてやる。あわよくば既成事実でも作ってしまおうとかとさえ思っている。
そのためにこの旅行もセッティングしたのだ。これで夏休みは兄と二人の時間が増えて、間違いが(私にとってはバッチこいだが)起こる可能性も高くなるだろう。
しかしこの時私は浮かれて忘れていた。最強で最狂の敵、楢崎茜(ならざき あかね)の存在を。



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