08/11/26 21:16:34 +zHaXNtj
『竜児のお弁当』
竜司は最近体調が悪い。それが理由かは知らないが、
竜司の作る弁当は味もイマイチで質素で見映えの悪い物ばかりになっていた。
北村くんに見られるのが恥ずかしくて、毎日食堂へ行き、お弁当はゴミ箱へ捨てていた。
ある朝竜児が嬉しそうに「今日は大河の大好きな卵焼きを入れといたぞ」と私に言ってきた。
私は生返事でそのまま学校へ行き、こっそり中身を確認した。
すると確かに卵焼きが入っていたが焼き方もめちゃくちゃだし、彩りも悪いし、
とても食べられなかった。
家に帰ると竜児は私に「大河、今日の弁当美味しかったか?」としつこく尋ねてきた。
私はその時イライラしていたし、いつもの竜児の弁当に対する鬱憤も溜っていたので
「うるさいな!あんな汚い弁当捨てたわよ!もう作らなくていいから」とついきつく言ってしまった。
竜児は悲しそうに「気付かなくてごめんな…」と言い、それから弁当を作らなくなった。
それから半年後、竜児は死んだ。私の知らない病気だった。
竜児の遺品を整理していたら、日記が出てきた。
中を見ると弁当のことばかり書いていた。
「手の震えが止まらず上手く卵が焼けない」 日記はあの日で終わっていた。
後悔で涙がこぼれた。