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『チャーハン』
「おい大河ー、晩飯何か食いたいのあるか?」
こいつは高須竜児、私の使えない駄犬。
「今頃聞いてどうするのよ、アンタさっき買い物済ませたじゃない」
これだから駄犬は。さっき自分で買い物しといていまさら聞いても遅いじゃない。
それよりもさっき買ったものからすると今夜はマーボー豆腐あたりかな?
ま、少しは肉が入ってるから今日は文句を言わないでやろう。
この駄犬は栄養バランスだかなんだか知らないけどそんなの気にしてばっかり。もっと肉を食べたいのに。
まったく変なとこにばっかり気が利くんだから。
「あー、その…なんだ、今日はお前の誕生日なんだろ?
材料は買ってあるから好きなの作ってやるよ」
「…はぁ?」
…まったく、ホントに変なとこにばっかり、気が利くんだから。
「…なんで、私の誕生日、知ってるのよ」
「お前が前に1回だけ、言ってたのを思い出してな。
…実は昨日思い出したんで、プレゼントは用意出来なかったんだが。
かわりと言っちゃないんだが今日は腕によりをかけてやるよ」
やばい。すごく嬉しい。誕生日を祝ってもらうのなんて何年ぶりだろう。
記憶に残ってる限りじゃ小学生の頃が最後だった気がする。
そもそも自分ですら忘れてた誕生日を、このアホ犬が覚えていることが驚きだったけど。
…そんな優しいアンタだから、みのりんとうまくいってほしいと思うよ。
そんなことを考えた瞬間、急にモヤモヤしたものに襲われる。
気づいてはいけないこのモヤモヤの正体。大河は、認めたくないが、この感情がなんなのか薄々気づいている。
言ってしまいたい。でも言ったらダメ。みのりんと竜児はお似合いなんだから。
でもちょっとだけなら…。
「じゃあ…竜児に任せる。」
竜児が、私のことを分かってくれてるか確かめるだけなら。
「なんでもいいのか?好きなものなんでも作ってやるっていってんのに…」
「うっさいわね、アンタに任すって言ってんのよ。いいからさっさと作って。お腹空いた」
「分かった分かった」
苦笑いで台所に向かう竜児。
これはそう、ちょっとした神経衰弱のようなものよ。私が心の中で勝手に決めたのが出るかだけ。
別に当たってもなんでもない。当たるわけない。これは私の気持ちとは関係ないことなんだから。
そうね…チャーハン。竜児が最初に作ってくれた料理だし。あれが食べたい。
他のでもいいけどね、まぁ久しぶりにあの味を思い出したいっていうのかな、そんなもの。
きっと外れる。うん、私の気持ちなんか分からないはずよ、なんたって駄犬なんだから。
分かってなくてもいいんだけどね。
…竜児、アンタは私のこと、分かってくれてるのかな?