【田村くん】竹宮ゆゆこ 5皿目【とらドラ!】at EROPARO
【田村くん】竹宮ゆゆこ 5皿目【とらドラ!】 - 暇つぶし2ch100:名無しさん@ピンキー
08/11/26 22:55:33 UNKSSOQl
画像はどう考えても板違い
よそでやってくれ

101:名無しさん@ピンキー
08/11/26 22:56:54 v5l2prJz
>>99
それこないだも言ってなかった?

>>82
GJ
そうして帰ってきた大河が見るのが
やっちゃんと一緒に寝てる竜児なんですね、わかります

102:名無しさん@ピンキー
08/11/26 22:57:35 fyxnIKmb
ヒロインが自分と同じ名前だったときもあれだぜ…

103:名無しさん@ピンキー
08/11/26 22:59:58 fyxnIKmb
>>100
所でIDすごいですね

104:名無しさん@ピンキー
08/11/26 23:03:54 Y6iJ5UTW
氏ね氏ね言われる名前よりマシだろ

105:名無しさん@ピンキー
08/11/26 23:05:43 S78JEpsH
26レス(亜美竜)の投下がこっちにも来てないのか……
もしや容量オーバーに気づいていないんだろうか。

106:名無しさん@ピンキー
08/11/26 23:27:55 LoStaiLC
>>66

107:名無しさん@ピンキー
08/11/26 23:33:28 S78JEpsH
oh,流れが速すぎて飛ばしてた。
なんか最近すげえなあ。

108:名無しさん@ピンキー
08/11/26 23:36:18 SiZiITxX
俺もコピペ便乗してみた。
亜美と竜児が結婚してる設定で、しかもかなりキャラ崩壊してるから見たくない人は見ないで


***

亜美は,今日も仕事で疲れきって,遅くなって家に帰ってきた。すると,彼の夫、竜児がドアのところで待っていたのである。彼女は驚いて言った。
「まだ起きていたの。もう遅いから早く寝よ」
「亜美。寝る前に聞きたいことがあるんだけど」
「なに?」
「亜美は,1時間にいくらお金をかせぐの?」
「竜児には関係ないことでしょ」亜美はイライラして言った。
「なんだって,そんなこと聞くの?」
「どうしても知りたいだけなんだ。1時間にいくらなの?」竜児は嘆願した。
「あまり給料は良くないよ・・・20ドルくらいかな」
「わあ」竜児は言った。「ねえ。亜美。ボクに10ドル貸してくれない?」
「なんだって!」疲れていた亜美は激昂した。「竜児が何不自由なく暮らせるためにあたしは働いているんだよ。それが金が欲しいだなんて。だめよ!早く部屋に行って寝なさい!」
竜児は,黙って自分の部屋に行った。

しばらくして,亜美は後悔し始めた。少し厳しく叱りすぎたかもしれない...。たぶん,竜児はどうしても買わなくちゃならないものがあったのだろう。それに,今まで竜児はそんなに何かをねだるってことはしない方だった・・・
亜美は,竜児の部屋に行くと,そっとドアを開けた。
「もう,寝ちゃった?」亜美は小さな声で言った。
「ううん。亜美」竜児の声がした。少し泣いているようだ。
「今日は長いこと働いていたし,ちょっとイライラしてたの・・・ほら。竜児の10ドルだよ」
竜児は,ベットから起きあがって,顔を輝かせた。「ありがとう。亜美!」
そして,竜児は大きな手を枕の下に入れると,数枚の硬貨を取り出した。
亜美はちょっとびっくりして言った。「ちょっとぉ。もういくらか持ってるじゃない」
「だって足りなかったんだもん。でももう足りたよ」竜児は答えた。そして,10ドル札と硬貨を亜美に差しのべて...
「亜美。俺,20ドル持ってるの。これで亜美の1時間を買えるよね?」

109:名無しさん@ピンキー
08/11/26 23:43:05 5ebPgROg
>>108
wwwww崩壊しすぎwwwwww

110:名無しさん@ピンキー
08/11/26 23:45:01 PcI+R28/
>>108
おいおいw 亜美が竜児の母親じゃないかwww
疲労困憊の竜児が大河につい怒鳴って的な流れでセリフもらしく変えたならそれなりに自然になると思うんだ。

111:名無しさん@ピンキー
08/11/26 23:45:53 bLo/2y+C
>>108
ちょっと別人すぎて竜児や亜美っぽくないな

112:名無しさん@ピンキー
08/11/26 23:47:26 SiZiITxX
確かにwwww
サーセンwwwwwww

113:名無しさん@ピンキー
08/11/26 23:48:21 LoStaiLC
竜児とやっちゃんでやったらまんまだけど無茶苦茶ハマりそうだな

114:名無しさん@ピンキー
08/11/26 23:54:37 IVUkEMGa
>>108
せめて口調とかお金の単位を変えようぜwwww

そんな事より北村よ、ちょいと聞いてくれよ。流れとあんま関係ないけどさ。
このあいだ、学校で三人娘と屋上で飯食ったんです。三人娘。
そしたらなんか囲まれてめちゃくちゃでカオスなんだよ。
で、よく見たらなんか扉の鍵とか閉められてるし、逃がしてあげないから、とか大河が言うんですよ。
もうね、怖いと。来なきゃ良かったと。
お前らな、三人で一人の男囲って襲おうとするなよ、マジで助けて。
三人だよ、三人。
なんか乱交とか言ってるし。女三人で男一人か。体もたねーよ。
よーしみのりん竜児の童貞奪っちゃうぞー、とか言ってるの。もう本当に逃げたい。
お前らな、ご飯やるから逃がしてくれと。
昼食時ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
一人で飯食ってる独身と向かい側の既婚者の愛妻弁当でいつ喧嘩が始まってもおかしくない、
狩るか狩られるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。三人娘は、面談室へ行ってください。
で、事が終わってやっと解放されるかと思ったら、川嶋が、まだ足りない、とか言ってるんです。
そこでまた絶望ですよ。
あのな、そんな何回もでねーんだよ。マジで。
物欲しそうな顔して何が、まだ足りない、だ。
お前らはいつ俺を解放する気になるのかと。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前ら、午後の授業サボる気なんじゃないんかと。
昼飯通の俺から言わせてもらえば今、昼休みの醍醐味と言えばやっぱり、
お茶、これだね。
お昼の後の一服。これがお昼の醍醐味。
お茶はお昼の区切りの至高の一服。そん代わり次からまた授業と言う絶望感に襲われる。これ。
で、それに予鈴のチャイム。これ最強。
しかしこれをやるとだんだんと昼休みが嫌いになってくる、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まあ親友のお前、北村は、早く俺をかくまってくださいってこったうわなにする大河に櫛枝と川嶋やめr。

115:名無しさん@ピンキー
08/11/26 23:55:54 VI0FoIKI
>>113
やっちゃんが子供役ですね。分かります。

116:名無しさん@ピンキー
08/11/27 00:18:14 VEvSF4BO
>>114
口調とかキャラとか変えなかったのはあえてでウケ狙いだったんだけど、失敗してあーなった。でも後悔はしてない。

117:名無しさん@ピンキー
08/11/27 00:22:19 mJuYpTs4
>>114
吹いた俺のコーヒー返せwww

118:名無しさん@ピンキー
08/11/27 00:52:52 czuW0tU4
前スレの「川嶋亜美の暴発」の続きまだー?
6/26で上限に達してて生殺し状態なんだが・・・

119:名無しさん@ピンキー
08/11/27 01:43:36 pGpLYahm
勢いに任せて、人生初のssを書いてしまったんだが
投下してもよいものか。
カップリングはなしなんだぜ。

120:名無しさん@ピンキー
08/11/27 01:45:28 4Nr3enTy
>>119
今投下せずにいつ投下するんだい?
GO!GO!

121:名無しさん@ピンキー
08/11/27 01:50:43 pGpLYahm
なら、投下するぜ。
文が下手なのは勘弁してくれな。

『本性バレ』

「なぁ、高須。昼の放送にでてみないか?」

そう出し抜けに北村から言われて、竜児は驚いた。
なぜ、北村が急にそんなことを言い出したのかがわからなかったのだ。
「お、俺が?昼の放送に?…なんでまたそんなことを」
「いや、みんなが高須に持っているイメージをどうにか払拭したくてだな。みんな変なイメージを高須に抱きすぎだと思うんだ」
…まぁ、それは、確かに。何も苛ついてなどいないのに、目を向けた人から怯えられるというのは日常茶飯事だ。
それは、ただ単に自分の目つきがどうしようもなく悪い故の出来事であって。たとえ自分が殴り合いのケンカなど一度もしたことがなくとも
この目は、見る人に常勝無敗(路地裏のケンカ的な意味で)なすさまじい恐怖を与えるのだ。
「だけど、今更じゃないか?今、俺に対するみんなのイメージが変わっても…」
そう弱気になる竜児に、北村は言う。
「今だからこそだ。本当は、ずっと前から高須の名誉挽回策は考えていたんだが…。いかんせんタイミングがなくてな。決行に至らなかった」
「いや、名誉挽回策って…」
「そこで、俺が生徒会長になった今、昼の放送を通して高須の本当の姿をみんなに知ってもらおうというわけだ!」
自信ありげに言う北村。
「…何でそんなに俺の事を気にかけるんだ?俺のイメージが変わったってお前は何も得しな「それは違うぞ、高須」
竜児は北村の真面目な表情に言葉をなくす。
「俺はもっとみんなにお前がいい奴だと知ってもらいたい。俺の友人はこんなにもできた奴なんだと自慢したいんだ」
その言葉に不覚にも竜児は感動してしまって。俺はそんなほめられる奴じゃ…とは思いつつも
「お、おう」
と、了承の返事をしてしまったのだった。

122:名無しさん@ピンキー
08/11/27 01:51:56 pGpLYahm
『あなたの恋の応援団!』

『こんにちは、今日も始まりましたみなさんの恋を応援するお昼のひと時。
 メインパーソナリティーの生徒会長、失恋大明神こと北村祐作です。
 今日は、特別ゲストとして僕の友人に来てもらいました』

『…二年C組の高須竜児です。よろしくお願いします』

『はい、それでは今日の一つめのお便りです。
 ラジオネーム、K・Yさん。
 『僕には今気になる人がいるのですが、その人に自分が近づいていいものかわかりません。
  その人を僕が傷つけてしまうのではないかと、不安で動けなくなるのです。
  どうすればいいのかわかりません。どうか僕を導いてください。』
 なるほど、これは難しいですね。好きだからこそ、自分が傷つけてしまうのでは…と不安になる。
 高須君はどうしたらいいと思いますか?』

『いきなり俺に聞くのかよ!?ちょ、ちょっと待ってくれ。すぐに考える。
 …あくまでも、俺の考えだが。距離が遠すぎるから、傷つけるんじゃないかと不安になるんだと思う。
 例えば、パンチとかは相手と距離があるから威力が増して痛いんだ。逆に、相手と距離が近いと腕が伸びきらずに、当たっても全然痛くない。
 だから、傷つけたくないと思うんなら思い切って距離を詰めてみたらいいんじゃないかと思う。
 それなら、痛い思いをさせないし、何より相手の声も聞こえるから』

『なるほど。思い切って近づいてみる、と。うじうじするよりはそれがいいのかもしれませんね。
 それでは次のお便『お前の意見はなしかっ!?』りです。
 ラジオネーム、教えて大明神さん。
 『今、自分には彼氏がいるのですが聞いてください。この前
  「例えば、湖の真ん中に二人乗りのボートがあって、それにあなたが乗っていて、目の前で私とあなたのお母さんが溺れていたらどっちを助ける?」
  と聞いたら、曖昧に答えを濁されて結局答えてもらっていません。やはり男の人はみんなマザコンなんでしょうか?
  それと、大明神だったらどう答えますか?』
 これもまた難しい質問ですね。高須君はどうですか?』

『いや、お前名指しされてるだろ!?何でそれを差し置いて俺なんだよ!?』

『ゲストですから』

『お、お前なぁ…!!』

『で、どうなんですか?教えて大明神さんからのお便りへの返事は?』

123:名無しさん@ピンキー
08/11/27 01:52:40 pGpLYahm
『…まぁ、答えるけどよ。というかそもそも、教えて大明神さんの彼氏が何で答えられなかったかがわからないんだが』

『ほう。高須君はすでに答えを持っていると言うことですか?それは興味がありますね。
 いったい彼女か母親のどちらを…』

『俺がボートから降りて、二人を乗せる。それでボートを岸まで押す』

『…は?』

『まぁ、泳ぎには多少の自信はあるし、湖だから波もないし大丈夫だろう。できればボートにタオルとかがあればいいんだが。
 濡れたままだと体に悪いしな。…あ、俺が降りる前に服を脱いで、それを使わせればいいのか』

『高須…』

『後は、温かい飲み物とか用意して…ん?なんだよ、北村。というか口調が戻ってるぞ』

『俺は、なぜ、お前に、今、恋人がいないのか、不思議でしょうがない』

『…何を言ってるんだ?お前』

『お前みたいな超優良物件は他にない!断言してもいい!!何でフリーなんだ!!』

『いや、それは俺の外見がヤンキーというか何というかだな』

『そんな些細なことはどうでもいいだろう!!!なぜ誰もお前の内面を見ようとしないんだ!?』

『それを、俺に言われても…。というか、おい、北村?』

『ありえないありえないありえない俺が女だったら絶対付き合うぞ?優良すぎるだろ?というか男から見ても格好いいぞ?そもそも…』

『…失恋大明神がぶつぶつ言い続けてるので、今日の放送はこれでおしまいです。
 以上、『あなたの恋の応援団』でした。…これ俺がまとめてよかったのか?』


124:名無しさん@ピンキー
08/11/27 01:53:18 pGpLYahm

この後が大変だった。放送が終わって教室に戻ると、誰も俺と目を合わせようとしないのだ。
大河に「俺、何かしたか?」と問いかけても「ううううっさい、駄犬!!話しかけるな!!」と拒絶され
川島には「もうちょっと場所考えて本性だせよ、あーもうっ!!」と罵られ
実乃梨には「何て言うか、隠してた宝物の場所を暴露された気分だぜ…」と嘆かれた。

やっぱり俺のイメージは昼の放送ぐらいでは変わらなかった。
むしろ酷くなってないか、これ?北村の心遣いには感謝するが、以前より悪化してしまったようだ。
それにしても。
何で、みんな顔赤かったんだろうな?


それから、竜児が『天然タラシ』として名をはせたり、相談役として北村の地位を危うくしたりするのはまた別の話。


125:名無しさん@ピンキー
08/11/27 01:56:23 pGpLYahm
以上!!

書いてて思ったが、考えてることを文章に起こすのは難しい…。
やっぱssは壁が高いな

126:名無しさん@ピンキー
08/11/27 01:57:29 4PDO99Lj
何というイケメンGJ

127:名無しさん@ピンキー
08/11/27 02:00:26 cYiOF6ts
GJ!
これは全学年の女子がキュンときたに違いないw

128:名無しさん@ピンキー
08/11/27 02:01:47 PLgv0xnp
初めてとは思えないくらいよかったぞGJGJ!!
ハーレムエンドですね


129:名無しさん@ピンキー
08/11/27 02:14:22 4Nr3enTy
GJ!
これはよいものだ。
自分たちだけの宝物の価値をみんなに知られちゃったのは残念だよなw

130:名無しさん@ピンキー
08/11/27 02:15:24 /iJQ64XG
ほのぼの…とは違うけど、良いわ~

131:名無しさん@ピンキー
08/11/27 02:20:22 pGpLYahm
>>126->>130
GJと言ってもらえてうれしいwww
褒められると、次への意欲がわいてくるなww
個人的に竜児はものすごいイケメンだと思うんだ。漫画とか特に
ハーレムなのは自分の趣味…w

132:名無しさん@ピンキー
08/11/27 02:23:03 qYAjakKU
これはいいところに目を付けたSSだな(・∀・)イイ
この放送できっと、腐系の女子が喜(ry

133:名無しさん@ピンキー
08/11/27 02:38:44 0TzPCsyV
性格というか性質というか、そういう部分をうまく表現できていると思う。
いいですね。新鮮。
今までに無い話を読めた。
こういう話は好きなほうだ。

134:名無しさん@ピンキー
08/11/27 02:55:23 o3lwGrNA
GJ!だが裸族がもう少しホモっぽい方が好みd

135:名無しさん@ピンキー
08/11/27 03:11:19 qYAjakKU
さて、それじゃ俺も一発イキますか。
ジャンルは…調教もの?

犬の躾

「いい竜児? パンツなんてモノは、それで何を妄想しようとしょせんはただの布っ切れなの!
そんなものに一々心乱されたり、見えた見えないで動揺するなんて、まさに愚の骨頂よ!
アンタがそんなんだから、バカチワワに毎回毎回からかわれるの!」
…どうやら大河は、俺が川嶋のパンツを見たことを根に持っていらっしゃるようだ。
しかし何とも身も蓋もない意見だ。こいつは男の性情ってヤツに思いを致すほどの想像力がないらしい。
とはいえ、一々反論するとまたうるさいことになるので、とりあえず聞いているフリは…
「だ・か・ら、このご主人様自ら、アンタを躾けて少しはマシな飼い犬にしてあげるわ」
大河はそう言うと、俺の正面に陣取り、ペタンと体育座り…あ、白…っておいこら、見えてる見えてる。お前何を…
「いちいち喚くなっ! わざわざ見せてやってるんだから、目ん玉広げてよく見てなさい!」

「まったく…小学生や中学生じゃあるまいし、この程度で喚いたりハァハァするんじゃないの!
アンタ本当に、女に対する耐性無さ過ぎよ。みのりんの前じゃすぐにテンパるし、ばかちーには翻弄されるし…」
流石にそうはっきり言われると、俺の男のプライドが少々傷つく。良かろう、そんじゃ見てやろうじゃねぇか。
「これから2人の時は、恥ずかしいけど極力下着の見えるもの履いて、アンタの正面に座ってやるから。
少しは自制することを覚えなさい。あ…もし発情して私に襲い掛かったりしたら、容赦なく殺すからそのつもりで」

136:名無しさん@ピンキー
08/11/27 03:12:46 Pqxmuxu7
手乗りタイガーが可愛すぎる件について

137:名無しさん@ピンキー
08/11/27 03:13:31 qYAjakKU
まったくこいつは、口じゃ恥ずかしいだの何だの言いながら、羞恥心なんぞ欠片もないのかい。
興奮するどころか、半ば冷めてあきれ果てた俺の様子に気づいたのか、大河は俺を鋭い視線で一瞥すると、なぜかニヤリと笑みを浮かべ、
「…竜児、あんたそこに仰向けに寝なさい」
と言い放ちやがった。何をする気だ…と首をかしげると、すぐに自分の命令に従わなかったことに業をにやしたのか、
「さっさと仰向けに寝ろっ、このアホ犬!」
と怒鳴りやがった。お前声デカいって、犬だのなんだのと呼ばれる俺の身にもなってくれ、隣近所への世間体も…
心の中でぼやきながら仰向けになると、大河は俺の顔を跨いで立ちやがった。おいこら、なんてことを…と言うまでもなく、

「視覚訓練だけじゃダメね。触覚と嗅覚も訓練しなきゃ」
俺の視界は真っ暗になり、なにやらすべすべした感触と、ほのかな体温と、そしてなにやら…

「おいこら何をしやがる!」
そう言ったつもりだが、モゴモゴフガフガとしか聞こえなかっただろう。
「このアホ犬! ああ…有難く思いなさい。わざわざここに来る前にシャワーを浴びて…」
そこから先は声にならなかった。

138:名無しさん@ピンキー
08/11/27 03:14:30 qYAjakKU
「ねぇ竜児、面白かった? 興奮した? このシチュエーション」
なあ大河…川嶋のパンツを見たことは、もう何度も謝っただろ。だから…たまには普通にやらないか。
「ダ~メ! 私以外の女のパンツ見て、鼻の下伸ばした罰だから」

俺はいつまで責められるのだろうか。やれやれ。

139:名無しさん@ピンキー
08/11/27 03:15:44 qYAjakKU
どうやら大河さんのヤキモチのようです( ゚∀゚)
ということで、ここまで。

140:名無しさん@ピンキー
08/11/27 03:23:05 Pqxmuxu7
やきもちタイガーも可愛すぎる件について

141:名無しさん@ピンキー
08/11/27 03:44:09 IdswYh/M
>>119
GJ
クラスメイトに若干モテる竜児、それにリアクションする三人という続きも頼む

なんかハーレムもの読ませてもらったら
あのクリスマスイブ、竜児が熱で倒れたのがもっと前で
大河が自分の気持ちに別の形で気付く
修学旅行もヒロイン三人ともなんだかんだ進展してして
そして、どんなバレンタインの一日になるかというIF話を書きたくなるな

142:名無しさん@ピンキー
08/11/27 06:49:18 SoIiWisT
>>119 ベリーGJ!

今までにない切り口で、マジでオモローだったw
別口で思いついたら、また頼む

143:名無しさん@ピンキー
08/11/27 07:37:06 f3z0LhJh
もはよう
お前らはえーよ
GJ

144:名無しさん@ピンキー
08/11/27 13:00:09 tJ6wSHiA
>>119
久々に奇才を見たぞ

145:名無しさん@ピンキー
08/11/27 13:59:54 4Nr3enTy
>>139
いっつもなりきりシチュでしてるのかw
評価したい。大河はgj

146:名無しさん@ピンキー
08/11/27 14:03:22 10C3iWXF
>>139
GJGJ
大河可愛いよ大河

147:名無しさん@ピンキー
08/11/27 15:09:32 YQ5RshM9
>>119
シチュは全然違いますが、内容がちょっと似ているのを考えてました。
しかし、竜児が格好良すぎる…。GJです!

土曜には何か投下できるように頑張ろう…

148:名無しさん@ピンキー
08/11/27 17:35:14 xvE5QFEk
>>119
これは一気に恋のライバルが増えたなw

149:66
08/11/27 17:54:46 DDawPt6N
ちょっと、テスト。


150:66
08/11/27 17:56:35 DDawPt6N
テスト結果、良好なので、
旧スレで、容量不足で、頓挫した、「川島亜美の暴発」を、
最初から投下します。全22レスの予定です。

151:川嶋亜美の暴発 1/22 by SL66
08/11/27 17:58:09 DDawPt6N
「あ〜、もう、フラ語って、本当にうざい」

「そう言うなって、国木田のフランス語は、お前の法学部でも、俺が居る理学部でも落とせない科目
なんだからさぁ。手抜きはできねぇ」

大橋駅の駅ビルの一角にあるハンバーガーショップの窓際の一角に、大学生と思しき男女が並んで座り、
フランス語の辞書を広げて呻吟している。
目つきの鋭い男は、

「第二外国語は、ヤバいよ。D(不可)がついたら、それまで。1年留年決定だからな」

と、諭すように言う。

「うん、わかってる。あいつは、国木田は、階段教室の学生を順繰りに指名して、朗読させて、
訳までさせる。答えられなければ、それまで。本当に嫌な奴だよね」

「だな…」

川嶋亜美は、この春、高須竜児、北村祐作と一緒に、国立大学に進学した。
川嶋亜美にとって、大橋高校からの知り合いは竜児と北村祐作の2人のみ。
幸いなことに、櫛枝美乃梨も、逢坂大河も、いない。
邪魔者のいない楽園。もう、自分を異分子と自嘲する必要もない。
あとは、竜児と学園生活を満喫できるはず、だった…。
しかし、実際は、講義の進度の速さは気違いじみていて、高校とは桁違い。
成績不良者は、容赦なく留年。
高須竜児との接点も、共通する科目の予習と、行き帰りの電車の中での会話程度。
これじゃぁ、何のために同じ大学に進学したのか分からなくなってくる。

不意に、赤ん坊の泣き声が聞こえる。視線を右に移せば、大橋高校の制服を着た男女が
抱き合っている。目障りな連中だ、とばかりに亜美は眉をひそめる。
何よりも、高須竜児は、この喧騒が気にならないのだろうか?
本当にもう、鈍感なんだから、いろんな意味で…。

「ねぇ、高須くん、ここじゃうるさくって、勉強するのは無理なんじゃない? あたし、できたら、
高須くんの家か、あたしの家でやりたいんだけど、場所、変えれば、いくらあたしでも、うん、
あたしだって…なんとかなるかも」

また、その話か、川嶋、と竜児は思う。

「いや、自宅とかだと、緊張感が足りないだろ、俺なんか、ついついテレビやインターネット
見ちまうし、それに…」

「それに…?」

「いや、何でもない」

また、俺を、からかうつもりなんだろう? という一言は飲み込んでおく。時と場合によるが、沈黙は金だ。

「高須くん…、なんかつまんない」

152:川嶋亜美の暴発 2/22
08/11/27 17:59:17 DDawPt6N
「そりゃ、勉強だからな、もともとがそんなに面白いもんじゃないだろ」

「だから、そうじゃなくて…」

「そうじゃなくて?」

「もう、いいよ…」

そんな亜美に、高須竜児は、またか、程度の一瞥をくれると、フランス語のテキストに視線を戻した。
亜美はイライラする、相変わらず鈍い男だ、そのくせ何でも無難にこなす。
悔しいけど、亜美にとって高須竜児はスーパーマンだ。

「ここをこう訳して、ほらできた。川嶋、ちょっと、読んでみておかしなところがないか確認してくれ」

「う、うん…」

二人の共同での予習と言っても、それは名ばかり。フランス語の翻訳は完全に竜児の独壇場。
高須竜児が差し出したノートには、細かい文字で、邦訳がびっしりと書かれていた。
係り結びも、文脈にもおかしなところがない。完璧だ。

「帰りに、コンビニで、こいつのコピーとれば、OKだな」

一仕事を終えた満足感が、高須竜児の表情には現れていた。
高校時代は、
『あたしは、川嶋亜美は、高須くんと同じ地平の、同じ道の上の、少し先を歩いて行くよ』
とか、はったりをかましたけれど、高須竜児には到底かなわない。
ルックスだけが取り柄の亜美ちゃんは、高須くんの心を引き止めておくことができるんだろうか。
今、この場に、櫛枝美乃梨が現れたら、あたしは、彼女に対抗できるのだろうか?

「ねぇ、高須くん…」

苛立ちは天使のような仮面に潜ませて、すぅーと、亜美は、右隣の竜児に寄り添った。
竜児は、左半身に亜美の体温を感じ、「またかよ」と、一瞬だが顔をしかめる。
高校時代から、こいつは、隙あらばこうだ。この大胆さには、今だに辟易させられる。
これがなければ、竜児の基準から見ても、亜美は、かなりまともな奴なのだが…。
なにより、腹黒さの毒が、以前に比べれば、だいぶ薄まってきたように思えるし。

「川嶋、人目があるぞ、ほどほどにしてくれよ」

悪ふざけも大概にして欲しい、とばかりに、竜児は、亜美をたしなめる。

「ほどほど?」

天使のような仮面の下で、苛立ちが膨らむ。

「お前には節操というものがねぇのか? お前だって、大学の受験勉強するまではモデルでちっとは
知られた存在だったろうが。無名の一般人じゃねぇんだぞ」

「モデルなんて、もうやめちゃったし。あたしなんか、もう、どこにでもいるタダの女子大生だよ」


153:川嶋亜美の暴発 3/22
08/11/27 18:00:09 DDawPt6N
さらりと、髪をかき上げ、

「それに、亜美ちゃんはつまんない子、腹黒で、嫉妬深くて、歪んじゃってる子。でも…」

「でも…?」

亜美は、竜児の背中越しに右手を伸ばし、竜児の体を抱きとめた。
亜美のバストが、竜児の左脇腹に押し付けられ、その胸元からは、甘い匂いが微かに香る。

「か、川嶋、密着しすぎだって。離れろ! そういう節操のないことは止めろと、あれほど…」

「高須くん、亜美ちゃんは、無節操な女じゃないよ。見てくれだけじゃなくて、あたしの真っ黒な
ところ、歪んじゃってるところとか、全部知ってて、それでもあたしを避けずに一緒にいてくれる。
高校時代の友達は、みんな亜美ちゃんからいなくなっちゃった。今では、高須くんと祐作を除けば、
麻耶と奈々子くらい。だから…」

さらに、ぎゅっと、竜児の脇腹にバストを押し付けて…、

「こんなことをしてあげるのは高須くんだけ、だから…、だから、あたしを大事にして」

やわらかな感触と、ほのかな香りに理性が吹っ飛びそうになる。
今日は、いつになく挑発的。
竜児は、そこをこらえて、擦り寄る亜美の上体を引き剥がす。

「た、高須くん」

「まぁ、まぁ、落ち着け、川嶋。俺達ゃ、大学に合格したばかりで、右も左も分かっちゃいない。
まぁ、俺も、正直、川嶋とこうして一緒に居られるのはうれしいさ。だがな、当面の敵、赤点で、
即留年決定の必修科目を何とかしなけりゃならん。お遊びは、こいつが何とかなる目処がついてから
でもいいんじゃねぇか?」

さらに、

「俺の場合は、奨学金がかかっているから、よけいに深刻なんだ、でも、多少は障害があった方が、
やりがいがあるぜ」

と、言って、「にやり」とする。

こうしているときの竜児の顔に、亜美は見覚えがあった。学校や別荘で、念入りに掃除をしていた
ときの顔と同じだ。
解決が困難な課題に集中しているときこそが、高須竜児にとっての生き甲斐なのだろう。
凡人には理解しがたいところであるが…。

「高須くん、亜美ちゃん、もう疲れちゃった」
高須くんは、相手の気持ちを考えずに、自分一人で頑張りすぎ。

もう一度、亜美は、竜児に抱きついて、

「高須くんは、冷たいよ」
うつむいて、鼻をすする。やべ、まじで涙が出てきちゃった…。


154:川嶋亜美の暴発 4/22
08/11/27 18:00:57 DDawPt6N
「はぁ…」
竜児は、軽く嘆息する。

「なぁ、川嶋…」と、前置きして、再び、亜美を引き剥がし、

「ガキみたいなこと言うなよ。お互い大学生にもなって、こんな露骨な……、過剰な、ダイレクトな
表現だけでしかコミュニケーションがとれないってのは、悲しくないか? 
川嶋がそんな大胆なことをしなくたって、気持ちは伝わるさ」

「言葉で伝わらないことがあるから、ダイレクトな表現があるんじゃないの?」

「い〜や、川嶋、お前は、根本的に間違っている。過剰なものは有害無益なんだよ。
過ぎたるは及ばざるが如し、っていうじゃないか」

「でも、でも、みんながみんな、言葉だけで真意が伝わるなら、もめごとなんて起きないよ。
言葉には嘘があるから、本当の気持ちの表現が大切なんじゃないの?」

「嘘だったら、体を張った表現にだってあるだろうさ」

「どういうことよ?」

「例えば、ものすごい美人からだな、『好きです』とか言われて、いきなり抱きつかれても、
容姿が並以下の男だったら、それを素直に信じないと思うんだ。信じるに足る根拠がない。
もっと言うと、その美人にとって、不細工な男と付き合うメリットが客観的には見出せないからな」

「それはあくまでも客観でしょ、その美人とかの主観はどうなの? それが一番大事なんじゃない?」

あたし達のことを喩えているとしたら、悪趣味もいいところ。
あたしが、この亜美ちゃんが、あんたを偽っていると言いたいのか、と亜美は訝る。

「主観までは分からないな。でも、大方は、客観的な評価と大きくは違わないだろ? 
その美人だって、本当は、イケメンの野郎と付き合いたいに決まっているさ。
資産があれば更に言うことなし。これが、客観的な認識じゃないか?」

あんた、間違ってるよ、と心の中で亜美は毒づく。
あんたの言う客観は、ただの皮相だろ? 人の本音なんて、そう簡単に分かるものか。
亜美は、思いっきり嫌みな口調で皮肉を言った。

「すっごぉ〜い、高須くん。そっか、客観的な評価から、そこまで何もかも分かっちゃうんだ。
じゃぁ、今、あたしが何を考えているかも、見当がつくよね?」

その言葉に、竜児は、

「おう! 取り敢えず、明日の分の予習が終わって、ほっとしているとか、
そんなところじゃないのか?」

胸を反らして、得意気に、言い放つ。

「それだけ?」

「おう! それだけ」

155:川嶋亜美の暴発 5/22
08/11/27 18:01:35 DDawPt6N
「じゃ、あたしが高須くんに抱きついたことは、どう説明がつくの?」

「そりゃ、いつものお前の悪ふざけ。そんだけだろ?」

亜美の表情が、一瞬、険しくなる。何だと? コラ!
辛うじて、平静を装って、最後通牒のつもりで、竜児に畳み掛ける。

「念のため訊くけど、本当にそんだけ?」

「おう! 本当にそんだけだろ?」

「はぁ〜?」

亜美は絶句する。本気で言ってるのか? しかも、自信満々に。
この根拠のない自信は、どっから湧いて出ているんだろう。
竜児はさらに、ダメ押しの一言。

「どうだ、図星だろう。何せ、俺は、『気遣いの高須』と呼ばれているくらいだからな」

だめだ、こりゃ、話通じねぇ…。
『気遣いの高須』だぁ? あんたが、本当にそうなら、亜美ちゃんこんなに苦労しねぇよ。
こいつはだめだ、救いようがないバカだ。むかついた、あたしゃ本気でむかついた!
表情を怒りで引き締め、スツールから立ち上がる。

「お、おい、川嶋…」

当惑する竜児に、キッ、とばかりに向き合い、

「あんたは、何にもわかっちゃいない! ああ、もういいわ。あんたには何言っても無駄。
あんたは本当にどうしようもないバカ。あたしの言うことなんか、聞いちゃいないんだ。
もう、いい!!」

亜美の手が、もがくように竜児の胸を強く突いた。その勢いに、竜児はスツールから転げそうになる。
亜美は自分のカバンをひっつかみ、

「あたしはもう疲れたから帰る。どいてよ、道開けて! やだ、もう混んでて…うざい」

そのまま、顔をおさえながら逃げるように走り出す。もう、いやだ、勉強も、高須竜児も、何もかも。

「川嶋…」

取り残された竜児には、周囲からの冷たい視線。
さらには、「極悪なツラした奴が、あんなかわいらしい娘を怒らせるなんて」「サイテー」
「女の敵よね」「ヤクザが堅気の女の子に手を出していたのかしら」「いやねぇ」、
無遠慮なヒソヒソ話が追い討ちをかける。
竜児は、それらを無視して辞書や教材を片付ける。
確かなことは、もう、ここでは勉強できないこと、それと川嶋はえらく怒っていたこと、
それと、ここは大橋高校の関係者がよく来る場所でもあった。噂に尾ひれが付いて、
広まっていくのは確実だろうということだ。



156:川嶋亜美の暴発 6/22
08/11/27 18:03:03 DDawPt6N
***
「あ〜、ちくしょう、むかつく。あの鈍感バカ、死ね、死んじまえ!!」

物騒なことをぶつぶつ言いながら、川嶋亜美は商店街を大股で闊歩する。本当に腹が立って仕方が
なかった。高須竜児が鈍感なのは出会った直後から分かってはいたことだったが、これほど重症だと
は思いも寄らなかった。

「腹立つから、もう、亜美ちゃん酒のんじゃう。お酒は好きじゃないけど、なんか飲まないとやって
られない感じぃ!」

どこかの居酒屋にでも入ろうかと思ったが、最近は未成年者への飲酒にうるさいから、酒を買って、
自宅でやけ酒あおることにした。買うなら一升瓶の日本酒。やけ酒の定番だ。

亜美は、酒屋はどこだよ、ばかりに商店街に連なる看板に視線を泳がす。目に入ったのは「稲毛酒店」
の看板。店頭では、前掛けをした小太りの中年男がビールケースを運んでいた。
しかし、このおっさん、どっかで見たことがあるような…。

「らっしゃい。お、あんた、たしか魅羅乃ちゃんの息子さんの彼女だったっけ? 久しぶりだねぇ」

しまった、このおっさんが店主だったか。亜美は、唇を歪めて、舌打ちする。
前に、高須竜児と一緒のときにスドバで会ったことがあったっけ、なんつ〜、間の悪さ。

「今日は、魅羅乃ちゃんの息子さんは一緒じゃないのかい?」

やなこと訊くなよ、おっさん、空気読めよ。この無遠慮なダボハゼがぁ、とばかりに、
亜美の表情が険しくなる。

「ねぇ、ねぇ、どうしたんだい?」

「も、もう、彼女じゃないかもしれませんから…」

眉間に深いシワをピクピクさせて、怒りをこらえる亜美の表情にさすがに気づいたのか、
稲毛酒店の店主は、「あう…」と嗚咽のような声を発して押し黙った。

「そんなことはどうでもいいんですけど、お酒ください、一升瓶で、あまり甘くないやつ」

やけ酒をあおろうというのに、できるだけ糖質が少ない酒を買おうとするのも、元モデルの性か。

「え、あんたが飲むの? でも、たしかあんたは竜児くんと同い年で未成年じゃなかったっけ?」

むかっ! うっるせーな、関係ねーだろとばかりに、亜美の表情がさらに険しくなる。

「おお、わかったわかった」

店主は、「剣呑剣呑」と唱えながら、

「これなんかどうだろう? 辛口で、すっきりしている。おすすめだよ」

と、半紙で包まれた一升瓶を持ち出してきた。亜美にはその意味がさっぱり分からないが、
『純米 山廃仕込み』という文字が、半紙の包越しに確認できた。


157:川嶋亜美の暴発 7/22
08/11/27 18:03:43 DDawPt6N
「じゃ、これでいいです…」

5千円札を店主に手渡し、釣りと包装された一升瓶を受け取る。酒がなみなみと満たされた一升瓶は、
ずっしりと重い。
それを肩に担いで、亜美は、ぶすっとした表情で、店主を睨みつけるように、一瞥する。
元々が整っている顔立ちだけに、不機嫌な時は、まるで般若だ。

しかし、一瞬、

「ありがとございます。これ、いただいて帰りますわ」

瓶を両手に持ち替えて、物腰もやわらかに、鬼女の面から、天使の面に早変わり。
ほ〜ら、亜美ちゃん、本当はこ〜んなに、かわいいのぉ〜、心して拝めよ、この愚民〜とばかりに。

その豹変ぶりに、店主は、「おお~っ」と、呆けかけたが、それも束の間、
次の瞬間、元の般若顔へ戻った亜美に、腰を抜かさんばかりに仰天し、
「わは!」と、小さな悲鳴とともに、商品棚に背中をぶつけるまでのけぞった。

そんな店主の無様な姿へ、「ふん…」とばかりに、亜美は、侮蔑を込めた冷笑を浴びせて、立ち去る。

「何なんだありゃ…」

女はこわい、俺も離婚して正解だったかな、それにしても竜児くんは、あんなのを彼女にしていたのか、
う〜、ぶるぶる。稲毛酒店の店主は、悪寒を感じて、首をすくめた。


***
自室にこもった亜美は、買ってきた日本酒を白いマグカップになみなみと注いだ。
うす黄色い液体からは、アルコールの刺激的な匂いのほかに、エステルのような華やかな香りが
漂っている。
日本酒は、というよりもお酒はあんまり飲んだことないけれど、第一印象は悪くない。
そのまま、ちょっとひと口。アルコールのピリッとする刺激と、華やかな香り、それと米に由来する
旨味なんだろうか、甘い、辛いといった単純な言葉では表現できない美味さを感じた。

「悪くないじゃない、これなら、ちょっといけるかも」

そのまま、一気にあおり、マグカップを空にする。

「ぷっはぁ〜」

一杯目で、早くも酔いが回ってきた。でも、もう一杯。一升瓶からドクドクと注ぎ込む。
それを、さらに、ぐっと一気にあおる。
それにしても、ちくしょう、高須のバカ野郎、死ね、死んじまえ、鈍感、グズ、根性なし、と、
ぶつぶつ毒づきながら。

「あは、なんか余計に腹立ってきちゃったぁ」

アルコールは怒りを増幅させる。飲めば飲むほど、怒りが収まらなくなるのが普通だが、
亜美の場合は、どうやらその傾向が特に強いらしい。


158:川嶋亜美の暴発 8/22
08/11/27 18:04:28 DDawPt6N
さらに、もう一杯。血中アルコール濃度に比例して、高須竜児へのどす黒い怒りがふつふつと
たぎってくる。

「誰かに、愚痴でも垂れるか…」

亜美は、おもむろに携帯を取り出して、

「もしもし、麻耶ぁ〜、ひっさしぶり、ほらあたし、亜美ちゃん、元気してたぁ〜?」

怪しい呂律で、高校時代の友人である木原麻耶に電話をかける。
電話からは、「うっわ〜、ほんと久しぶり、元気してた?」という、麻耶の声が聞こえる。

「う〜ん、亜美ちゃん、あんまし元気じゃないけど、なんとか生きてるよぉ〜」

えらく酔ってるな、と、麻耶は思う。酔っぱらいの戯言ほど迷惑なものはない。
大体において、話題も、ロクなもんじゃないからだ。
麻耶は、適当に亜美をヨイショして話を終わらせることにした。

「でもさ、亜美はすごいよ、高校3年のクラス分けの時、私ら、私大文系だったじゃん。
それを北村くんと同じ国立に行っちゃうんだから、やっぱ並の人じゃなかったね」

「そんなことないよ、試験は水物だぁしぃ〜、まぐれだよぉ〜、まぐれ…」

「あたしなんか、私立の女子大じゃん。つまんね〜って、毎日が。秋の学祭には、男どもがわんさか
来るんだろうけど、どうせ発情したヲタばっかだっていうし、ちょー最悪」

なにせ、北村祐作もいないし、本当につまんないんだよね、と、麻耶は本音を心の中で反芻する。

「それで、さぁ、まるお、つか、北村くんは元気?」

「祐作ぅう〜、あんだか相変わらずだよう、優等生ヅラしてぇ〜、相変わらずボケたことばっか。
正直うっぜぇ〜」

「そこが北村くんの、いいところなんじゃん。
ま、亜美には、高須くんがいるから、そんなのどうでもいいんだろうけどさ」

『高須くん』の一言に、亜美は「うっ」と言葉をつまらせた。

「高須くんは、何だかんだっても勉強できるし、家事も何でもやっちゃうし、本当にすごいよね。
なんか理想のお嫁さんて感じ? あ、違った、お婿さんか、あはは」

「そ、そお?」

「そうだよ、顔はアレだけど、脚は長いし、結構いいじゃん」

「そうかぁ?」

「他人に対する思いやりもあるし」

「そんなことないって…」


159:川嶋亜美の暴発 9/22
08/11/27 18:05:13 DDawPt6N
「それに、気遣いの高須だし、洞察力があるっていうか、やっぱすごいよね」

「違うよ…」

「どうして? まぁ、高校の男子が、能登や春田みたいなバカばっかだったせいもあるけど、
高須くんとかは、今にして思えば特別な存在っていうか、ああいう男はなかなかいないねぇ」

「麻耶、あんたねぇ…」

「もしもし、どうしたの、ねぇ亜美」

「た、高須、高須って、うるさいよ、あ、あいつのせいで、どんだけあたしが苦労しているか、
ちくしょう、高須、高須のバカは…」

うわ、地雷踏んじまったか、やっべ、と麻耶は思った。

「ごっめ〜ん、亜美、空気読めなくて。そ、そだね、高須くんだって、完璧じゃないから。
彼女でもない私がアレコレ言うのは失礼だったよね、ほんと、ごめん」

「い、いいんだよ、あいつの悪口なら何だって許す。あ、あたしも、あいつがあんなにバ、バカだっ
たとは思わなかった、ち、ちくしょう、死ね、高須竜児」

ひゃー、修羅場? 勘弁してよ、あんたらの痴話喧嘩に、私を巻き込むな、と麻耶は困惑する。
とにかく、ここは酔っ払いの機嫌を適当にうかがっておくしかない。
いきなり電話切ったら、後々までしこりが残りそうだし…。
それにしても、高須竜児と一体何があったのか?

「そうだね、高須くんは、粗暴そうな印象があるからね。何ていうか、いきなり女の子を襲いそうな、
ちょっとヤバそうなところがあるから。存在自体が危険物っていうかぁ〜」

「お、襲ってくるような根性がありゃ、苦労しねぇ……」

「え、亜美なんか言った? ま、いっか、高須くんはやっぱり怖い人だよね、亜美も高須くんの
そんなところが嫌いになったんじゃないの?」

「そ、そういうとこが嫌いなんじゃねぇんだけど……」

「あ、そ、そうなんだ、そうだねぇ、高須くんみたいなワイルドな感じもいいよね。ちょっと、強引
なところとかあって、でも、そこが魅力みたいな…」

「ま、麻耶ぁ、あいつに強引なところなんてねぇ。ゆ、優柔不断な根性なしだぁ〜」

「え?」

「ちくしょう、あの優柔不断な、鈍感野郎!」

「ど、どうしたの、亜美、落ち着いて」

「ま、麻耶ぁ、あいつは、あいつは、あいつはぁ〜」

電話口では、亜美がわんわん泣いているようだ。

160:川嶋亜美の暴発 10/22
08/11/27 18:05:54 DDawPt6N
「あいつは、あいつは、この亜美ちゃんさまが、体を寄せても、む、胸を押し付けても、な、何にも
しない。エッチどころか、キスすらさせない、手だって、自分からは握ろうとしない。バカだよ、
本当にしょうもないバカ、バカ、バカ、バカぁ〜、鈍感、グズ、甲斐性なし!!」

あっら〜、亜美ちゃん、欲求不満みたい。んで、精神崩壊、まっしぐら? 
こいつはヤバくね?

「そ、そうだね、高須くんってさぁ、結構、冷たいところがあるじゃない。ほ、ほら、高2の時、
高須くんに、私と北村くんとの仲を取り持ってくれって、お願いしたのに、結局、役立たず。
ほんと、グズで、無責任な奴だよね」

「うん、あいつは冷たい。嫌な野郎だぁ〜」

「乙女心を踏みにじったのだよ、高須竜児は。女の敵だね。本当に」

「そ、そうだぁ、女の敵だぁ〜」

「なんつ〜かさ、紳士ぶっているところがキモいよね。品行方正らしいけど、わりとつまんね〜奴っ
ていうか、ヤンキー顔にあわね〜だろ、品行方正は、とか?」

電話口の酔っ払いは、泣き止んだようだ。

「そうだぁ〜、もっと言ってやれぇ〜、うふ、うへへへへ…」

それどころか、今度は笑い上戸になったらしい。このまま機嫌がなおってくれればそれでいいのだが。
しかし、喜怒哀楽が激しい。これも、腹黒さを隠し、
笑顔の仮面で他人を欺いてきたことの反作用かな? と麻耶は思う。

「いずれ、痛い目に遭うと思うよ、今のままだと。無自覚に、女の子を傷つけているもん。
そのうち、バチが当たるんじゃないかな」

「うんうん…」

「なんつーかさ、高須くんには、天罰というか、天誅っていうか…」

「あ、天誅、それ最高ぉ〜」

「もう、誰かに成敗された方がいいかもね。思いっきり痛い目に遭えば、目が覚めるかもしれないし」

「……」

「あれ、亜美、もしもし、もしもし…」

「麻耶ぁ〜、いいこと言うなぁ、やっぱ持つべきは同性の友達だね。うん、そっか、天誅、成敗か、
いいねぇ〜。お〜し、決まったぁ〜。これから、女の敵、高須竜児を、成敗しに行こう!!」

「え!?」

地雷爆発。それも核地雷だったりして。


161:川嶋亜美の暴発 11/22
08/11/27 18:06:49 DDawPt6N
「麻耶、あんたも、憎っくき高須を成敗すんだぁ〜。あたしゃ、これから高須の家に殴りこむぅ〜。あんたも、なんか武器持って、高須の家に集合だぁ〜、武器はバットなんかいいんじゃないかなぁ〜、
それも金属バットなら最高かもぉ〜、ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ」

「ちょっと、ちょっと、亜美、大丈夫? 正気に戻ってよ!」

「亜美ちゃんは、いつだって正気だよぉ〜。正気じゃないのは、あいつ、女の敵、高須竜児だぁ!!」

電話は切れた。

「どうしよう…」

時刻は、午前0時過ぎ。110番通報をすべきかどうか、麻耶はしばらく迷った。
安易に警察沙汰にはしたくなかったからだ。亜美のためにも、竜児のためにも。
電話口での亜美の様子だと、そうは暴れ回ることは出来ない感じだったが…、
「もしも」の場合も否定はできない。

「高須くん、もしもの時は、亜美を何とかしてやって」

もしものときは、高須竜児が適切なフォローをしてくれるか否かがカギだろう。
だが、竜児なら、いけるかもしれない。


***
一升瓶を握り締めたまま、亜美は、高須竜児の家を目指す。
酔いが回って、千鳥足だが、一歩、また一歩と、確実に竜児の家までの距離を詰めていく。
警官に出くわさなかったのは幸運だった。
もし、出くわしていたら、その警官は、亜美が振り下ろす一升瓶の餌食になっていたかも
しれないのだから。

「みぃつけたぁ〜」

既に何度か訪れたことがある、見慣れた木造家屋。その2階に高須竜児は居る。
竜児の部屋には未だ明かりが灯っていた。
たしか、明日のフラ語の予習は済んでいるはず。こんな夜更けまで、一体、何をやっているんだろう。
まぁ、いいか、奴が何をしていようが関係ない。あの鈍感野郎の脳天に、こいつを一発お見舞いする
だけだ。起きているのなら、起こす手間が省けるというもんじゃないか。
よろめきながら階段を登り、呼び鈴を押す。1回、2回、3回…。

「は〜い、どちらさんですかぁ?」

つい数時間前に聞いた声が、ドア越しに聞こえてくる。奴は、居る。
亜美は、半分ほど酒が残っている一升瓶を逆手に持ち替え、背後に隠した。
こいつを一発かませば…。
ガチャ、ドアが、ドアチェーンの長さ分だけ開いた。

「か、川嶋、こんな時間にどうしたんだ?」

うわ、と竜児はドン引きする。顔見知りとはいえ、真夜中の訪問者。血走った酔眼。
一目で尋常でないことは誰の目にも明らかだ。

162:川嶋亜美の暴発 12/22
08/11/27 18:07:33 DDawPt6N
「……」

亜美は、無言で血走った酔眼を竜児に向けてくる。ヤバイ、限りなくヤバイ雰囲気だ。

しかし、相手は婦女子、こんな夜中にむげに追い返すわけにもいくまい。ヤンキー顔でも
高須竜児は紳士なのだ。

「ま、何だ、そんなところに突っ立っていてもしょうがないだろう。ひ、ひとまず、中に入るか? 
何せ、こんな夜更けだしな」

亜美は、それには応えず、ずい、とばかりに高須家の玄関に踏み込み、

「でぇーい!」

と、気合一発、背後に隠し持っていた一升瓶で左右をなぎ払った。

「うわぁ! か、川嶋、なにすんだ!!」

空振り。高須竜児は、尻餅をついて、難を逃れていた。

「逃げんじゃねぇ! 高須竜児、この女の敵!!」

今度は、一升瓶を右から左にフルスイング。

「わああ!」

竜児は、首をすくめて、それを避ける。

「か、川嶋、何で、何でこんなことをする。女の敵って何だ? おれが一体何をした! 教えてくれ」

「うるさい、この根性なし!」

亜美は、一升瓶を構え直して、左から右になぎ払う。

「うわあ、わけが分からねぇ。川嶋ぁ! お前は俺を殺す気か」

「殺す? 亜美ちゃん、そんなことするわけないじゃない。高須くんてバカ? 
亜美ちゃん、高須くんが正気じゃないから、これで頭を叩いて正気にしてやろうとしてるだけだよぅ、
うふ、うふふふふ…」

ほとんど泥酔状態の亜美は、団扇のように自分の体がふらついている。

「正気じゃないのはお前だろ、酔っ払いやがって」

「あ〜ら、亜美ちゃんは正気だよぅ。いっつもね。ただ、惚れてる男がなぁ〜んにもしてくれない
から、亜美ちゃん、ちょっと心配なだけ。もしかしたら、脳の悪い病気かな? なんてね。
だから、亜美ちゃん、これでその人の頭をぶっ叩いて、正気に戻してあげようとしてるだけなんだよぉ〜」

「お前のその考えが、そもそも正気じゃねぇよ」

163:川嶋亜美の暴発 13/22
08/11/27 18:08:15 DDawPt6N
「高須くんが、今のあたしを正気じゃないとか何とか、そんなのどうでもいいの。高須くんは、
個々の主観は不明だから、考慮しないんでしょ? だったら、高須くんが今のあたしを正気じゃない
と思っていても、そんなの、あたしには関係ないじゃない。それに…」

腰が抜けて座り込んでいる高須竜児に、亜美はさらに半歩詰め寄る。

「これから高須くんは、リセットされるの。
あたしのこと、この亜美ちゃんのことを、ちゃ〜んとしてくれるようにね」

さらに半歩。

「だから、おとなしく、これで、ね…」

亜美は、一升瓶を大上段に振りかざす。これをへたり込んでいる竜児の脳天に見舞うつもりだ。
まともに食らえば、即死か? はたまた、脳挫傷で、一生廃人かもしれない。

「ま、待て、川嶋、落ち着け。は、話せば分かる」

「話せば分かるぅ〜? 亜美ちゃん、嘘を含んだ言葉なんて信じられなぁ〜い。だから亜美ちゃんは、
直截な行動に出るの。特に、言葉でいくら言っても分かってくれない高須くんにはねぇ〜」

亜美は、一升瓶を上段に構えたまま、じりじりと竜児に迫る。一方の竜児は、へたり込んだまま、
ずるずると後退するものの、ついに背中が壁に当たって行き止まり。
万事休すだ。
だが、

「うっ」
酷薄な笑みを浮かべていた亜美が、突然、口元を押さえて、その場にしゃがみ込む。
さらには、

「う、ううう、うぇえええええーっ!」

と、ものすごい勢いで嘔吐した。

「川嶋!」

黄色い吐瀉物が、高須家の玄関の板の間に広がっていく。
亜美は、うずくまって、一升瓶にすがるようにして上体を保持し、吐瀉物まみれの口から、荒い呼吸
を繰り返す。過度の飲酒、その状態での運動。その結果の悪酔いだった。

「川嶋ぁ!」

竜児は、亜美の体を抱きとめ、その手から凶器の一升瓶を取り上げる。
こんなので、ドタマをかち割られたらたまったもんではない。
次いで、古新聞紙を、亜美が吐瀉した内容物の上に広げ、吐瀉物を吸着させる。1時間もすれば、
大方水分が吸着されるから、あとは、残りを雑巾で拭き取ればいいだろう。
それと洗面器。

「川嶋、大丈夫か?」

激しい嘔吐でテンションがぷっつり切れたのか、亜美はぐったりとしていて動けない。

164:川嶋亜美の暴発 14/22
08/11/27 18:09:03 DDawPt6N
竜児は、亜美を部屋に連れていく。そして、座布団を何枚も敷いた上に亜美の胸部を載せ、亜美を
うつぶせに寝かせる。亜美の頭部は別に積み重ねられた座布団で保持。さらには、亜美の顔の下には吐瀉物を受ける洗面器。
急性アルコール中毒では、吐瀉物が気道に詰まることがあり、これが命取りとなりかねない。
うつ伏せに寝かせて、吐瀉物を回収できるようにすれば、気道に吐瀉物が詰まる危険性はかなり低く
なる。

「高須くん…」

「川嶋、喋るんじゃない、お前は、飲みすぎて急性アルコール中毒になっていたんだよ」

亜美は、「あは…」と、笑いとも、嘆息ともつかない声をぽつりと漏らす。

「失敗しちゃった。高須くんを懲らしめようと思ったのに、亜美ちゃんは、本当にダメな子。
どうしようもなく嫉妬深くて、歪んじゃってる子。
これじゃぁ、高須くんに嫌われてもしようがないね、ほんと、ほんとにダメだ、あたし」

もはや、動く気力もないらしい。

「川嶋、もういい喋るな。それと、気持ちが悪くなったら、遠慮なく戻していいぞ。
そのままの体勢で、吐いても大丈夫なように、お前の顔の下には、洗面器が置いてある」

「う…ん、ありがとう高須くん」

そう言うと、嗚咽とともに亜美は肩を震わせた。

電話が鳴った、時刻は午前1時30分。こんな時間に誰だろうと、不審に思いながら竜児は受話器を
持ち上げた。

「もしもし、夜分にすいません。私、高須くんの高校時代のクラスメートで木原といいます。
高須くんですか?」

「おう、木原か、お前が電話とは珍しいな」

「高須くん、高須くんなのね? よかった、無事だったみたい」

電話での麻耶の声には、明らかな安堵の色があった。

「俺が無事だったとかなんとか、そりゃどういう意味だ?」

「う〜ん、ちょと説明する前に、今、高須くんの家に、亜美が来ていない?」

「ああ、来ている。だが、ひどい泥酔状態だ。日本酒を5合も飲んだようだ。
これじゃ、悪酔いしても仕方がない。
しかし、わけがわからん。川嶋の奴、女の敵とか喚いて、一升瓶振り回して。何なんだろうね」

やっぱり実力行使にでたか、と、麻耶は思った。それにしても、

「怪我は? 高須くんも、亜美も大丈夫?」

「ああ、俺はどこも何ともない。川嶋もひどく酔って、嘔吐したが、怪我はない」

165:川嶋亜美の暴発 15/22
08/11/27 18:09:54 DDawPt6N
「よかったぁ、亜美の携帯に電話してもつながらないし、どうなっちゃたかと思っていたんだ」

おいおい、木原、お前は、どこまで知っているんだ、と、竜児は麻耶に不信の念を抱く。

「なぁ、木原、お前なら知っていそうなんで尋ねるが、いったい川嶋に何が起こったんだ?
いきなり一升瓶を振り回して襲いかかって来たんだぞ。わけがわからねーよ」

電話口の麻耶は、「う〜ん…」と呟くように言った。

「お前は何かを知っているんだろ? 今回の川嶋の襲撃。これは、いったい何が原因だ?」

「高須くんは、思い当たる節がないの?」

「あれば、こんなこと、お前に訊かねぇ。本当に、俺にはさっぱりわかんねぇ」

麻耶は、ふぅ〜、と軽く嘆息をつく。こりゃ、亜美が言う以上に、鈍感な野郎だわ…。

「あのねぇ、高須くん。今回の亜美の件だけど、その原因は、やっぱ高須くんにあると思うんだよな」

「なんで、俺が原因なんだ? わけがわからね〜な」

「そう言うと思った。ちょっと長くなるけど、順を追って説明するね」

木原麻耶は、酔った川嶋亜美が電話を掛けてきて、高須竜児が、ぜんぜん自分を女として見てくれ
ないことに苛立ち、激昂したことをかいつまんで説明した。

「と、いうわけなのよ。亜美は、不安なんだと思う。どうやったら、高須くんの心を自分につなぎ止
めておくことができるのかが、わからずに、もがいているのかもしれない」

そうなのか? あいつの両親は芸能人で資産家で、あいつ自身もモデルをやっていたことがあって、
母子家庭の貧乏息子の俺なんかとは住む世界が違う奴なんだ、何をバカな、と、竜児は思う。

「木原、夜中にそんな冗談はウケないぜ。俺なんか、あいつにふさわしい奴なんかじゃない。
あいつには、もっと似合いの奴がいるはずだ」

高須くん、君は乙女心ってもんが、まるで分かってないねぇ、と、麻耶は舌打ちする。

「ねぇ、高須くん、亜美は高2の成績で、私大文系に振り分けられたのは知ってるよね?」

「ああ…」

「でも、実際は、頑張って、高須くんと同じ国立大学に合格した。これが何を意味するか分かる?」

正解が出てこないことを確信しつつ、麻耶は竜児に問いかける。

「そんなものは、単純に、より偏差値の高い大学に行きたいという、受験生の本能ともいうべきもんじゃないのか? 
ほら、うちの大学からは、局アナとかも出ているし、川嶋は、そっち方面狙いかと思っている」

「いや、そうじゃなくて…」

166:川嶋亜美の暴発 16/22
08/11/27 18:13:39 DDawPt6N
察しの悪さに麻耶も苛立ちを隠せない。

「そうじゃない?」

「受験勉強を始めたとき、亜美はモデルをすっぱりやめているんだよね。私は、この業界のことを、
よくは知らないけれど。おそらく、1年以上も休業していたら、ほとんど廃業するに等しいと思うの」

「ああ、川嶋も、そんようなことを言ってたな」

そこまで聞かされていながら、なぜ分からない? 麻耶は、亜美に同情する。
こいつの察しの悪さは天然記念物並だ。『気遣いの高須』は、完全に看板倒れじゃないか。

「そこまでの犠牲を払ってまで、どうして亜美は国立大学にこだわったんだと思う? 亜美みたいな
資産家の娘だったら、無理に受験勉強をしなくても、そこそこの私立に行けたかもしれないのに」

「し、知らねぇよ」

「じゃあ、誰のために亜美は国立を目指したんだと思う?」

「わからねぇよ」

麻耶は、「そう…」と、一瞬の間を置いて、

「高須くんのためなんだよ。高須くんと一緒に勉強したいから、亜美は本当に無理して受験勉強を
やって、高須くんと同じ大学に行ったんだよ。人気モデルの地位も何もかもを捨てて」

「信じられねぇ」

「これは、本当の話。高校時代、私と奈々子にだけ亜美が漏らした本音だよ。
『あたしは高須くんについていく。あたしは高須くんと同じ地平を歩いていくんだ。今は、高須くん
が、ずっと先の方を歩いているけど、いつかきっと追いついて、その時は、一緒に歩いていくんだ』
ってね」

竜児は、「そうなのか?」と、消え入るような呟きを漏らしただけ。続く言葉が浮かばない。

「そうだよ、亜美は本気。高須くんのことしか眼中にない。高須くんは、そんな亜美の気持ちに
気づかず、亜美の気持ちを踏みにじった。こりゃ、亜美でなくたって怒るよ」

竜児が、「そんなはずがない」と、抗弁したが、麻耶は無視して、さらに続ける。

「ここからは、私の推測なんだけど…、高須くんに亜美がベタベタしてくるのは、彼女の焦りみたい
なもののせいなんだろうね。
勉強でも、家事でも何でもできちゃう高須くんに、亜美は全然かなわないわけさ。このままだと、
自分は高須くんから疎外されちゃうって思っている。
だから、手段を問わず、高須くんを自分につなぎ止めておきたんいだよ」

竜児が、「いや、あいつは色気過剰だし、ルックスもすごくいい、だから、俺みたいな奴をからかっているとしか思えねぇんだが…」と、漏らすと、麻耶は、きつい口調で、高須竜児に説教した。


167:川嶋亜美の暴発 17/22
08/11/27 18:14:34 DDawPt6N
「高須くん! 高須くんは、亜美って子を全然分かってない。色気過剰とかっていうけど、その色気
を高須くん以外に振りまいているのを見たことがあるの? 彼女は、高須くんのことしか眼中にない
んだよ。それに、亜美は、自分の見てくれがいつまでも保てるとは思っちゃいない。知性に裏打ちさ
れた、っていうのかな? 内面の美しさこそ重要だと気がついているよ。高須くんのポテンシャルに
釣り合った、高須くんと対等の存在に、亜美はなりたいんだよ」

「……」

「あとは、高須くんの気持ちだね。まさかと思うけど、今でも櫛枝とか、手乗りタイガーに未練が
あるの?」

竜児にとってのつらい過去。
正直、なんで、木原なんかに、という気持ちがあったが、電話での麻耶の口調は厳しく、竜児に逃げ
る隙を与えてはくれない。観念して、竜児は、ぼそりと、言う。

「櫛枝とは完全に終わった、今は、未練は全くない。大河とは、最初から恋愛感情はなかったん
だろう、親子の関係みたいなものだったんだろうな。今にして思えば…」

麻耶の追求は、さらに容赦がない。

「なら、亜美のことは、どうなの? 彼女に対して、恋愛感情は、全くないの?」

認めたい自分と、それを認めたくない自分とが、せめぎ合っているような気が竜児はした。

「どうなの! 高須くんの本心を聞かせてよ」

消去法で選択したようで、それを認めたくなかったのかもしれない。だが、本心は本心だ。

「川嶋のことなら、憎からず思っている。今、言えるのはこれだけだ」

受話器からは、「そう…」という、ちょっと失望したような声が流れてきた。

「高須くん、亜美が元気になったら、亜美が望むとおりのことをしてあげて。もし、何もして
あげなかったら、私、高須くんのことを心底軽蔑するからね」

その言葉を最後に、麻耶からの電話は切れた。
竜児は、数秒間、手元にある受話器を眺めた後、受話器を置いた。

『ありがとうよ木原、俺も、自分の本心を明確に意識できたぜ。だが、俺にも意地はある。
俺の本心を、真っ先に伝えてやるべき相手は、あいつだ…。悪いが、お前じゃない』

部屋に戻ると、川嶋亜美が、洗面器に突っ伏すようにうつ伏せになっており、その洗面器には、
うす黄色い新たな吐瀉物が溜まっていた。

「ごめん、気持ち悪くなって、また吐いちゃった…」

その洗面器の取り上げ、

「いいんだよ、気にするな。ちょっと後始末だけしてくる」

中身を流すべく、トイレに向かった。その竜児の背中に向かって、亜美は、

168:川嶋亜美の暴発 18/22
08/11/27 18:15:38 DDawPt6N
「電話があったみたいだけれど、誰からだったの? なんだか、あたしの名前も出ていたから気になって…」

「木原からだった…」

竜児は、洗面器を洗いながら答える。

「そう…」

「木原に説教されたよ。お前が怒るのは無理もない。確かに俺はお前のことを何一つ理解
していなかったんだ。恥ずかしい話さ」

固く絞った濡れタオルを手に、竜児は部屋に戻り、

「気分はどうだ? これで口のまわりとか、拭くといい」

と、言って、その濡れタオルを、座布団の上に膝を抱えてうずくまっていた亜美に手渡す。
亜美は、「ありがとう」と言って、顔や、手をそのタオルで拭った。

「寝てなくて大丈夫か? もう、吐くような感じはしないか?」

「うん、多分大丈夫。もう、胃の中はからっぽみたい」

竜児は、ふぅ〜、と嘆息をつく。

「吐瀉物を見たけど、固形物なんか、まるでなかった。お前、何も食べずに日本酒を飲んでたんだな。
無茶しやがって」

亜美は、自分の膝に顔を埋めたまま、

「だって、やけ酒でしょ。健康を気遣って飲むやけ酒なんて、この世にあるわけないじゃない」

と、鼻をすすりながら言った。
そうだな、とだけ、竜児は応じた。川嶋にはケアが必要なんだ、と思う。
そして、竜児にできる川嶋のケアといえば…。

「それよりも、川嶋、よかったら何か飲むか? ハチミツ入りのホットミルクなら
今すぐできるんだが」

その問いに、亜美は大きな瞳を眇めて、遠慮がちに応えた。

「う、うん…、飲む、そのホットミルク、あたしがここに初めて来たときに、高須くんが
ご馳走してくれたやつだよね」

「ああ…、よく覚えていてくれたな」

電子レンジで2分加熱、ハチミツを加えてかき混ぜ、亜美に差し出す。

「川嶋、甘さはどうだ? 足りなければハチミツを追加するぞ」

169:川嶋亜美の暴発 19/22
08/11/27 18:16:25 DDawPt6N
亜美は、首を左右に降って、

「ううん、ちょうどいい感じ。これでいい…」

そのまま舐めるようにミルクを飲みつづけ、空になったカップを卓袱台に置いた。
飲み終わって、ふぅ〜っと一息。亜美は、また、膝を抱えて暗い表情になる。

「今日は、高須くんに亜美ちゃんの汚いところ、醜いところを、いっぱい、いっぱい見せちゃった…。
本当なら、こんな変な女、警察に突き出されて当然だよね。酔っていたとはいっても、高須くんに
危害を加えるために凶器を振り回したんだもの、立派な犯罪だよ」

そういって、きゅっと唇を引き締める。酔いが覚めれば、しでかしたことを冷静に振り返ることが
できるようになる。それは、恥ずかしくて、恐ろしくて、嫌なこと、思い出したくもない痛いこと。

「かわいさ余って、憎さ百倍、っていうか、そんな自己弁護はしたくないんだけれど、高須くんの
ことが、亜美ちゃんは好きで、好きで、大好きで、でも、高須くんは、亜美ちゃんに対しては、一見、
冷たくて、だから、亜美ちゃんは不安になって、高須くんを独占したくなって…」

最後の方は、亜美の嗚咽に混じって聞き取れない。

「ごめんなさい、本当にごめんなさい…」

女が泣く姿というものを見て、何の感慨も抱かないという奴は、少なくとも男じゃない。
その点において、高須竜児も例外ではなかった。

「川嶋…、それはもう気にするな。さっき木原に説教されたように、俺が悪いのさ。お前の気持ちに、
ちゃんと応えてやれなかった、俺のいい加減なところが、ここまで、お前を追い詰めた
。責められるべきは、俺の方だ」

竜児の話を、亜美は鼻をぐずぐずいわせながら聞いている。竜児は、亜美にティッシュボックスを
差し出す。

「でもね、高須くん、バカで鈍感だったのは、あたしの方。
高須くんは、高須くんを傷つけようとした、こんなあたしにも、ホットミルクを差し出して、慰めて
くれる。こんなこと、高須くんは、誰にでもしてあげるわけがない。
今までだって、高須くんの、こうしたやさしさ、ってものを気づかなかった。あたしも本当にバカで、
傲慢だった、責められるべきは、あたしだよ…」

「川嶋、そんなに自分を責めるな」

だが、亜美は首を振り、

「あたしって、本当に、バカだった。高須くんに、お弁当作ってもらったり、一緒にフラ語の勉強し
たりとかで、高須くんを独占していたのに、こんなこと、高須くんは誰にでもやってあげている、
とか、思っちゃったんだよね。ごめん、『こんなこと』なんて表現する事自体が、あたしって、
どうしようもなく傲慢で鈍感だよね。だから、そうした、高須くんの気持ちに気づかなかった、
本当にバカだ、あたしって…」

痛々しい、というよりも自虐的。

「川嶋、もう、言うな」

170:川嶋亜美の暴発 20/22
08/11/27 18:17:19 DDawPt6N
竜児は、亜美の背後から、亜美のか細い体を抱き寄せる。

「もう言うな、もう…、自分を貶めるようなことは言うんじゃない。そのかわり…」

「そのかわり?」

背中に竜児の体温を感じる。

「俺は、本当は、お前が好きだ。不器用な俺は、これしか言えねぇ」

「それで十分だよ…」

亜美は顔を上げ、竜児の顔と向き合っう。その距離、5cm。亜美は竜児の顎を掴み、
竜児の唇を引き寄せる。
竜児も、亜美の唇に自分の唇を重ねた。
ほのかに香るホットミルク。初めてのキスは、ミルクとハチミツの味がした。
そのまま、時が止まったかのような、静寂。


***
「あれれ、竜ちゃ〜ん」

素っ頓狂な、泰子の声で、静寂は破られた。

「竜ちゃ〜ん、玄関にぃ、なんかびしょびしょの新聞紙が敷いてあるけどぉ〜、どうしたのぉ〜?
なんか、匂いからすると、お酒、飲みすぎて、吐いちゃったみたいだけれど、竜ちゃ〜ん、大丈夫?」

そのまま、ずかずかと、部屋に入り、抱き合っている竜児と亜美を、目撃する。

「やば…」
これから、いいところだったのに。

「あ〜、亜美ちゃんだぁ、そっかぁ、竜ちゃんと、いつのまにか、そんなことになっていたんだねぇ。
うん、うん。やっちゃんは、このまま寝ちゃうから、後は、お二人さんで仲よく、頑張って、うふ、
うふふ」

そのまま、部屋で眠りこけそうになる泰子を、慌てて、寝室に連れていく。

「たぁく、メイクも落とさねぇで…」

そして、亜美に向き直り、

「すまねぇ、雰囲気が台無しになっちまった…」

と、頭を掻く。
亜美は、

「いいんだよ、あたしは満足。高須くんの本心と、やさしさが分かったんだから」

そして、「あ~、頭痛い…」と言いながら、ふらつきながらも立ち上がり、

171:川嶋亜美の暴発 21/22
08/11/27 18:18:05 DDawPt6N
「今日のところは、帰るね。それにしても、すっげー、いろんなことがあった日、あたし、この日を、
一生忘れない」

それは、竜児も同じだった。

「あたしにとって、ファーストキスだったし…」

え? とばかりに竜児は、狼狽する。

「うふふ、信じた? 高須くんには、そう信じてもらいたいな。信じる者は救われるから…」

嘘か誠かを探らせない、謎めいた微笑を亜美は竜児に向ける。

「もうこれで、あたしは、川嶋亜美は、高須くんのもの。少なくとも、あたしは、そう思っている」

亜美は、右手の人差し指を、竜児の心臓辺りに突きつけ、

「そして…」

ばーん、と、拳銃を撃ったようなジェスチャー。

「か、川嶋…」

「これで、高須くんも、あたしのもの」

天使のようでありながら、悪意のエッセンスが効いた、笑みを覗かせる。
まいったな、こいつは、俺の負けかもしれねぇ、と竜児は思う。

「俺も、川嶋の本心が、少しは理解できたから、おあいこだよ」

亜美は、大きな瞳を、ほんのちょっと眇めて、笑う。

「ありがとう、本当に、今日のことは忘れない」

それから、思い出したように、

「いけない、あたしが吐いたゲロ、掃除しなくちゃ」

そんな亜美の肩を右手で押さえながら、竜児は言う。

「川嶋、いくらお前でも、俺の楽しみを奪うんじゃねぇ。掃除は俺の生きがいだ」

亜美は、ぷっ、と吹き出す。

「そうだったねぇ、スーパーマン高須竜児の必殺技は、お掃除だったっけ?」

「おう! たとえ、世間が許しても、お天道様と、この高須竜児は許さねぇ」

あはは、と、亜美は笑う。

172:川嶋亜美の暴発 22/22
08/11/27 18:18:48 DDawPt6N
「高須くんは、今日の講義、特に、午後の国木田のフラ語はどうするの?」

「俺は出席するつもりだ。そうだ、昨日のドサクサで、こいつを渡すのを忘れていた」

差し出されたのは、竜児のフランス語のノートのコピー。
大橋駅駅ビルのバーガーショップで、竜児が翻訳していたやつだ。

「あ、ありがとう。これもらっちゃったら、あたしも出席しなくちゃ」

「おう! 頑張ろうぜ、川嶋」

「うん…」

竜児と一緒に、亜美は外に出た。
5月とはいえ、早朝は冷気が肌にしみる。東の空は、茜色に染まってきた。
間もなく日の出なのだろう。

「タクシーがつかまるとこまで、一緒に行こうか」

という竜児の提案に、亜美は、わざと迷惑そうなそぶりで、応じた。

「え〜っ、逆効果じゃないの? この時間帯に、高須くんみたいな面相の人がタクシー
呼び止めようとしたって、タクシー強盗と間違われるのがオチじゃん。だから、
亜美ちゃんは、ここまででいいよ」

「強い子だな、川嶋は」

「あはは、何度も言わせないでよ。亜美ちゃんは真っ黒で、歪んじゃった子。
でも、その全てを受け止めてくれそうな人がいるから、あたしは強くなれるんだ」

そう…、と亜美は前置きして、

「高須くん、あんたがいるから、あたしは強くなれるんだよ」

「そいつは光栄だな」

「それと…」

亜美は、小首を傾げて、

「あたしがいるからこそ高須くんが強くなれるように、あたしも頑張るから」

大きな瞳を、見開いたまま、口元を、ほんのちょっと左右に広げて、微笑むのだった。


173:SL66
08/11/27 18:25:15 DDawPt6N
以上です。
好評であれば、続編を製作します。


174:名無しさん@ピンキー
08/11/27 18:31:59 Siygo0yy
GJ!GJ!GJ!
亜美可愛いよ亜美。
続編見てみたい

175:名無しさん@ピンキー
08/11/27 18:32:29 Vzc2qu3I
>>173
GJ過ぎる!
続編を希望する!

176:名無しさん@ピンキー
08/11/27 18:33:33 U9UCt0sY
超(・∀・)イイ
亜美かわいいよ亜美(*´Д`*)/ヽァ/ヽァ

177:名無しさん@ピンキー
08/11/27 18:44:16 H0mjWpF8
超GJ!! 続編をおおいに期待

178:SL66
08/11/27 19:12:14 DDawPt6N
>>174-177
ありがとうございます。
自宅の環境が、アクセス制限を食らっているので、職場から、
捨て身の特攻ならぬ、捨て身の投稿でした。

次回作は、「横浜紀行」(仮称)です。
中華鍋を買いたい竜児に、亜美が中華街への買い物とデートを提案、
実際に行ってみると…、という筋書きを予定しています。



179:名無しさん@ピンキー
08/11/27 19:13:39 8ZIjFF2f
>>173
MOTTO MOTTO!
亜美のもがきあがき、掴めどもすり抜けて、っていう感触が直接伝わってくるようだった。
感情移入しちゃってこっちまで亜美のモノローグで熱くなっちまった。

180:SL66
08/11/27 19:19:51 DDawPt6N
>>179
ありがとうございます。
心理描写に拙いところがありますが、萌と、笑いと、哀愁と、アクションを
コンセプトに、次回作も頑張りますので、ご期待下さい。

181:名無しさん@ピンキー
08/11/27 19:34:37 jnOZFidE
>>180
GJなんだけどカキコミに一々返レスすんなよ
前スレでもあったけど馴れ合いがどーのこーのって話になるし、言っちゃうとなんだけど正直ウザイよ

182:名無しさん@ピンキー
08/11/27 19:42:24 mJuYpTs4
感動大作マジ乙。

あーみんの可愛さはマジで異常。

183:名無しさん@ピンキー
08/11/27 19:50:59 KRRWD8c7
ふ、GJだ。
激しくGJだよ!

184:名無しさん@ピンキー
08/11/27 20:37:06 yTuNvAHt
あみドラGJ
続編?そりゃ裸で待つぜ


185:名無しさん@ピンキー
08/11/27 20:41:13 A769buwg
>>181
言葉は選んで使ってくれ


186:名無しさん@ピンキー
08/11/27 20:44:10 nlU7gFt7
GJGJGJ
あーみん可愛すぐるw

187:119
08/11/27 20:47:22 jRic7mgt
ども、>>119です。
またもや、ノリと勢いにより、後日談を書いてみた。
思ったより長くなってしまったので、一つずつ投下。
基本的に大河・亜美・実乃梨との絡みが多いw
今回は大河のターン?
よくわからないものになってしまった・・・orz

188:119
08/11/27 20:48:29 jRic7mgt
投下開始

『本性バレafter』

あれから。つまり北村に上手いこと言われて昼の放送にゲストとして出演してから、一週間がたった。
放送が終わった直後は、クラスメートぐらいしか反応を確かめられるやつがいなくて、
俺のイメージは変わらないままか・・・と思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
らしい、というのはこの俺、高須竜児にそこまでの劇的な変化は感じられないからだ。
しかしまぁ、能登も春田も北村も声をそろえて
「「「絶対、イメージ変わってる!!!」」」
と言うのだから、俺のイメージは変わっているのだろう。上昇か下降かは知らないが。
確かに俺の身の回りは微妙に変化したがそこまで言うほどのものなんだろうか。
放送の直後、大河にも川嶋にも実乃梨にもがっかりというか何というか、な反応をされた自分が懐疑的になるのも仕方がないと思う。
それに、北村たちは友達だから俺を傷つけないようにそういってくれたのかもしれないし・・・。
だって、自分はあの放送で何もしていないのだ。普通に質問に答えただけ。それだけで今までのイメージが変わるなんてあるのだろうか。
だいたい・・・


などなど、強面の高校二年生男子が弱気に考えているときにも、種は色々な場所で育っていたのだった。
あの昼の放送でばらまかれた、『高須竜児』という名の種は一週間という時間をかけて実に色々な花を咲かせてみせた。



189:119
08/11/27 20:49:15 jRic7mgt
<花一本目>
お昼休み。いつものようにみんなと机を合わせて、弁当をあける。
北村が「また、おいしそうな弁当だな」なんて嬉しいことを言ってくれたので、素早く里芋の煮物ときんぴらをチェンジ。
この高須竜児の目には、冷凍食品などお見通しなのだ。たとえ、どれだけ恐ろしい目つきだろうと、主夫の目なのである。
「すまないな。交換してもらって」
「おう、気にするな」
なんて会話を交わしながら、昼食を開始する。六つの机を合わせた大きなテーブルに、男と女で分かれて座っている。
最近は、川嶋グループ(川嶋・木原・香椎)も一緒に食べるようになっていて、結構な大所帯だ。
男側は竜児・北村・春田・能登の四人。女側は大河・実乃梨・川嶋グループの五人。
計九人の大派閥である。まぁ、竜児としては別段何も問題などないし、楽しく食事がとれるなら大歓迎だ。
ただ、どこへ視線を向けても目をそらされるが。・・・やっぱりイメージ変わってないんじゃないのか?
そんな微妙に傷ついた竜児が、いつものことか・・・と勘違い甚だしい思いを抱きながらいざ、弁当を食べようとすると

「高須先輩はいらっしゃいますか」

空気が凍った。いや、別に呼ばれたことに問題がある訳じゃなく、むしろ言った人物が問題なのであって・・・。
女の子だった。それも「先輩」と呼んでいることからわかるように一年生の。
何が起こってる!?と竜児は思いつつも呼ばれた以上、答えないわけにもいかず
「・・・お、おう」
と、立ち上がる。その瞬間、目の前で殺気がふくれあがった。
ーー俺が何をしたというんだ、大河!!
背中からの威圧にビビリながら廊下にいる一年生に近づくと、何とその女の子は竜児の耳に口を寄せて
・・・!!まてまてまてまて!何でそんな今までで一番の殺気が教室から放たれ「一週間前、助言をいただいたK・Yです」

・・・。

190:119
08/11/27 20:49:51 jRic7mgt
「・・・は?」
「ですから、一週間前、助言をいただいたK・Yです」
そう言って、耳から口をはなす。
「先日は、ありがとうございました。先輩のおかげで決心することができました」きれいな姿勢でペコリ。
「・・・ええっ!?や、あれってその傷つけるかどうか不安って・・・。お、女の子!?」
「はい。私は家が道場をやってまして。自分で言うのも何ですが、強いんです」
そうなのか。このどうみても綺麗としか表現できない後輩の女の子は強いのか。・・・まぁ、大河の例もあるしなぁ。
「それで、あの放送で勇気をもらったので、今日お礼を言いにきました」
「いや、それはまぁ、わかった。でも、何で一週間たった今?」
当然の疑問として竜児がそう聞くと、その子はいい笑顔で
「一週間かけて、思い切り距離を詰めてました」
「・・・そうか」 ごめん、見知らぬ男の子。我知らず、大陸間弾道ミサイルのスイッチを押してたみたいだ。
「ですから、お礼が今日になりました。すみません」頭をペコリ。
「それは、全然かまわないんだが・・・。・・・一つ聞いていいか?」
「はい、何でしょう?」
「なんで、一人称を『僕』で投稿したんだ?」
そう。竜児はそこが気になって仕方なかったのだ。わざわざ『僕』なんて一人称を使っているから、男だと自分は勘違いした。
もし、腕っ節の強い自分のことを卑下してのことならそれは違う、強いというのも含めてその人の魅力なんだと、言ってやり
「だって、自分だとバレたら恥ずかしいじゃないですか」
「ここにきて普通の答えだと!?畜生、俺の気持ちを返せ!」
やるせねー。超やるせねー。
「まぁ、色々とありがとうございました、ということで」もう頭も下げてないし。
「ああ、どういたしまして・・・」
顔が下に向く。つい、ため息が漏れてしまう。まったく、怒濤の展開だった。息つく暇もない。しかし、これだけは言っておきたい。
竜児は顔を上げる。ラジオネーム、K・Yはいつの間にか自分の教室に戻ろうとしていたみたいで、少し自分と距離があった。
「そこの後輩!!」
声を上げた竜児に、少し驚いた様子で立ち止まりこちらを振り向く。その表情で、なんですか?と思っていることがわかる。
竜児には言いたいことがあった。昼休みにわざわざ二年の教室まできて、竜児の名を呼び、竜児にこれまで感じたことのないほどの殺気を集めさせた存在に言いたいことがあったのだ。
そして、今、その言葉を放つ。

「ーーおめでとう。」

後輩は、ひどくびっくりした顔をしていて。してやった、と思う。
もう、これ以上言うことはない。固まったままの後輩をほっといて、教室に戻る。
気分よく教室に戻った竜児が、自分の弁当のところまで行き、席について、前に目をやると。
ーー手乗りタイガー(普段より殺気5割り増し)がいらっしゃった。しかも、他の女の子たちも冷ややかな目を向けてくるし。

「ねぇ、竜児・・・?きちんと、最初から、最後まで、説明してくれるわよね?」

やはり、恨み言の一つ二つはあの後輩に言っておくべきだったか。

191:119
08/11/27 20:50:39 jRic7mgt
「・・・だから、あの後輩が、『ラジオネーム K・Y』だったんだよ・・・」
「るっさいのよ、あんた!!ちょっとだけ、ほ~んのちょっとだけ目を廊下に向けたら、耳に口寄せられちゃって!!
 あんなんでデレデレデレデレしてんじゃないわよ!!まったく!!飼い主として恥ずかしいわ!!」
「知らなかったな~、高須君って年下趣味なんだ~。亜美ちゃんロリコン変態のそばにいたんだね~。
 きゃー、こわーい!!・・・ちっ、腹立つなぁほんと」
「高須君!!年下好きなら、大河で手をうてばいいんじゃないかな!!同い年だけど、こんなにちんまくてかわいいぜ?
 やー、大河がいいと思うよ、私は!!・・・・・・でなきゃ、私が『決めた』意味が・・・」
「だから、話を聞けって・・・!!あいつには、すでに恋人的存在が・・・」
「「「あいつだってー(ヒソヒソ」」」
「・・・!!おまえら俺のこと絶対嫌いだろう・・・!?」


「で、高須。どんな人物だったんだ?あの女の子」
「うん?えーと・・・大河みたいなやつだった」
「私みたいなやつ?」
「ああ」
「逢坂みたいな女の子か。具体的にどこが似てたんだ?」
「綺麗で、強いとこ」

りゅうじはたいがをたおした!
たいがフラグをげっとした!

<花二本目に続く>

192:119
08/11/27 20:52:14 jRic7mgt
以上!!

あまりに処女作が好評すぎて、逆にプレッシャーなんだぜorz
ほめられると意欲がわくとか、言うんじゃなかったwww

193:名無しさん@ピンキー
08/11/27 20:55:15 mJuYpTs4
>>192

ニヤニヤが止まらんwwwwGJ!


194:名無しさん@ピンキー
08/11/27 21:05:41 4Nr3enTy
>>192
イメージ。
  _、_
(メ ,_ノ` )y━・~~~<おめでとう by竜児
( ´∀`)σ)~Д~)←大河
まったく格好いいことしてくれる奴だw
GJ!
><花二本目に続く>
正に+(0゚・∀・) + ワクテカ +

195:名無しさん@ピンキー
08/11/27 21:20:05 XpCQYIYo
GJ!
速く続きが読みたいぜ

しかし竜児はなんというハーレム。けしからんもっとやれ

196:名無しさん@ピンキー
08/11/27 21:22:22 YN8ANYFG
>>187
みのりんの台詞にぼっkした
続きまってます


>ID:mJuYpTs4

197:名無しさん@ピンキー
08/11/27 21:39:08 Pqxmuxu7
>>178
あみドラGJだ!
いいねいいね続きにも期待しちまうぜ

>>181
うるちゃいだまれ(可愛く言ってみました)

>>192
続くのかッ!
嬉しい
もっと書いて

198:名無しさん@ピンキー
08/11/27 22:26:42 XA/Xqx2X
スレ建てから24時間経たずに200とは・・・さすがゆゆぽスレだズズー

199:名無しさん@ピンキー
08/11/27 22:37:06 SoIiWisT
>>192
引き続き面白かったw
シチュエーションがすげー上手いと思う、頑張ってくれw

200:名無しさん@ピンキー
08/11/27 22:39:53 YN8ANYFG
>>198
お前どのスレから来たんだよ!

201:名無しさん@ピンキー
08/11/27 23:30:33 tJ6wSHiA
>>192
続きGJ


そのコテはなかなか上手いな

202:名無しさん@ピンキー
08/11/27 23:38:13 yTuNvAHt
GJ!
ななドラ続きこないかなぁ

203:名無しさん@ピンキー
08/11/27 23:44:43 IdswYh/M
>>192
GJ
後日談あればいいなとは思ったが、こんなに早く読めるとは思わんかったよ
一本目が竜児モテる、ヤキモチという図式でないのは
良い意味で今後のそういうベタな展開への期待が高まって良かったっす
続編気長に待っとります

204:名無しさん@ピンキー
08/11/28 00:52:37 0YltAgow
>>178
あみドラGJGJ!全俺が泣いた
感動の超大作だな、映画化決定!!亜美可愛いいなー畜生ー
続編期待

>>192
GJGJ!こんなにも早く続編がみれるとはな
大河プラグゲットw
まさか女だったとは…
こちらも続編期待



205:名無しさん@ピンキー
08/11/28 00:58:52 YA63X1Fg
>>181
正論だけどそんな正直言ったらやる気そがれるだろ
とりあえず一作品書いてあげてみろ
GJと言われる嬉しさが分かるから

>>192
GJ!
ニヤニヤしながら読ませてもらいました

206:名無しさん@ピンキー
08/11/28 02:25:03 aTNu8ykp
>>178
あんなに察しの悪い竜児はマジで一回殴られるべきw
ばかちーかわいいよばかちー

>>192
淑女御三方、一歳年下に手を出したらもうロリコンですか?そうなんですか?
てか、みのりん未練タラタラじゃねぇかwww

おかげで今日も頑張ろうと思えました。GJ!!!

207:名無しさん@ピンキー
08/11/28 02:29:41 0YvdpVge
>>178
前半の竜児はマジぶん殴りたくなったけど
素直になった亜美ちゃんのかわいさが異常で涙が出てきた
木原のアシストもよかったです。

>>192
今度は二人目の相談者なのか?小出しにするとは意地が悪いなw
大所帯のお弁当うらやましす

208:名無しさん@ピンキー
08/11/28 02:41:32 LSNQNgr2
投下祭絶賛継続中だなw

209:名無しさん@ピンキー
08/11/28 02:44:30 dBpfIFoY
>>192
GJ!!!
ニヤニヤしすぎて引きつった顔が戻らねえwww
っていうかこれで初SSって‥‥自分は‥‥まぁいいや、また暇出来たら書いてみよう

210:名無しさん@ピンキー
08/11/28 02:46:15 mPw+vZpV
(’・ω・`)やぁ。ようこそゆゆぽスレへ。
この水道水は相模ダムのサービスだから、まずは落ち着いて呑んで欲しい。
うん、また「大河SS」なんだ、すまない。
亜美ちゃん★の顔も三度って言うしね、謝るから許してくださいお願いします。

注意みたいなもの。
・内容の薄さの割りにネタバレが多いので、原作を読んでいない人で続きが楽しみな人は回避行動をとって下さい。
・本当にネタバレの嵐です。
・大人になった二人の話。
・作者はツンデレ大河の人。
・やっぱり嫌いな人は退避を勧めます。
・裸の人ごめんなさいエロ無しです。

211:名無しさん@ピンキー
08/11/28 02:49:14 mPw+vZpV

「結婚しよう」

男は、横の座席に座って映画を見ている女に言った。
丁度スクリーンには苦難を超えて結ばれたカップルの顔が互いに引き寄せられているところがアップで写されていて、
男は狙い済ましたような――実際に狙っていた――タイミングで隣の女に声をかけた。

「結婚しよう」

男が言った。そして、二人がスクリーンの中の光景と同じようになろうと―――

「センス悪っ」

なろうとするところで、二組のカップルを写していたテレビの電源が消された。






ある晴れた日曜日だった。土曜日の仕事の帰りに、同居人である(世間様は同棲と呼ぶ)高須竜児が、

「たまには映画でも見よう」

なんて言って、その顔に恐ろしいほどに似合わない、話題のラブロマンスもののDVDを買って来たのだ。
予定もなくて、一緒に布団から抜け出すとすぐに竜児は朝食を作り、そして私はテレビとDVDの準備(電源をつけるだけ)をしたのだ。

絵に描いたように、幸せな、週末と言えた。


だが、そのラブロマンスのなんと似合わないことか。


簡単に言えば、何処にでもいる(パッケージにはそう書いてあった。きっとイギリスにはハリウッド・スターのような美形のサラリーマンがあふれているのだ)
会社員が意中のあの子を射止める話だったのだが、本当に、なんと私達に似合わないことか!

運命だ何だのと銘打っているが、こんなちっぽけなことが運命なら私と竜児は何だったのだ。
紆余曲折のさらに紆余曲折、おまけに一回点半ひねりみたいな結ばれ方をした私達が、いまさらあんなものを見てなんになるって言うのだ。


長い、道だったと思う。
ラブレターの誤爆から始まって、竜児の記憶を消そうとしたこともあったし、
川嶋亜美(いまやドラマに映画にの大人気である)の別荘にも行ったし、学園祭でプロレスもどきもやった。
クリスマスにサンタと踊ってみたりもしたし、遭難してみたりもしたし、逃避行だってした。
北村くんが好きだといってみたりもしたし、みのりんと色々揉めてみたりもした。

かたや、この会社員もどきはどうだ。
ちょっと金持ちのライバルが現れてみたくらいじゃないか。

こんなのよりよっぽど現実の方が運命的なのだ、私達にとっては。
それに、あのベタベタな行動はなんだ。
もうちょっと粋な幕引きもあるんじゃないのか。
流石に、あれを粋というのは少しセンスが前時代的すぎる。
(――と思う。他人とかけ離れていることが売りの私が言っても説得力はないかもしれないが)


212:名無しさん@ピンキー
08/11/28 02:51:11 mPw+vZpV

「ねえ、竜児?」

「何だ」

「これ、見てると苛々するんだけど」

「...そうか?何か変なとこあったか?」

竜児が、困惑した顔になる。
仕方ない。説明してやろう。

「だって、」

隣に座っている竜児に体重を預ける。
寝間着に上着を羽織っただけの竜児の肩に、頭を任せた。

「だって、あんなのより私達の方が大変だったよ。あれくらいで運命がどうのって言われたら、なんかムカつく」

竜児の顔が歪んだ。これは照れている顔だ。
いつまでたっても初心なところは変わらない。

「...そうか。そうだったな。俺達も色々あったんだ。お前が鞄を間違えたことから始まって、」

「私が竜児の家に押し入って、」

「お前が家に来るようになって。だんだんお前がいつも横に居るようになって」

「私はいつも竜児の傍に居て。竜児が居ないと何も出来なかった」

「俺も、大河に後押しされて色々出来た」

「私が北村くんを好きって言い張ってた頃もあったし、竜児はみのりんが好きだった」

「そうだ。川嶋の別荘で色々やったりもした。今になって思うと、あの作戦とかも本当バカだったよな」

「私が三年のクラスに殴りこんだこともあった。結局竜児が来てくれるんだよね」

「俺がインフルエンザで寝込んだりな。クマとスーツ交換してもらったりもした」

「私は遭難したしね。ここでもやっぱり竜児が助けてくれた」

「そして極めつけは」

「「二人で逃避行」」

声が重なった。

「一緒なら、幸せだと思ったんだろうな。無意識に。高校生の分際だって言うのに」

「いいんじゃない?今だって幸せだから一緒に居るわけでしょ?」

「ああ」

「ほらね。私達の方が絶対運命的だったでしょ?」

「ああ。そうだな。その通りだ。」

口を開こうとした瞬間に、竜児が咳払いをした。
リビングの主役が竜児一人へと切り替わる。

213:名無しさん@ピンキー
08/11/28 02:52:59 mPw+vZpV
「大河」

「これを受け取ってくれないか」

竜児が、上着のポケットから化粧箱を取り出した。
何だろう。心臓が暴れ始めた。これはやっぱりそういうことなのだろうか。

「指輪...」

「そうだ。本当はさっきのシーンに合わせようと思ってたんだけどな」

センス悪いって言われちまったしな、と続ける。

「それに、お前に言われて気づいた。そうだな、俺達には似合わなかった。俺達はいつもどおり、変に気取らないでただ一緒に居るのが一番幸せなんだ」

緊張しているのだろう。竜児は、私の鼓動に負けないぐらいものすごい早口だった。
それでもなぜか、その言葉を私が聞き逃すことはなくて、一字一句間違えずに聞き取れていたのだ。

「だからさ、大河」

「生憎、俺は顔も性格も良くないし、収入も多くはないけど、裕福とは言えないかも知れないけど」

「結婚してくれ」


...ああ、本当に長かった。高校時代に始まって、今まで続いた関係が、やっと昇華されようとしているのだ。
大学に行ったって私達はずっと一緒だった。社会人になってからは一緒に住み始めた。
ケンカだってしたし、一方的に距離を置いた事だってあったけど、それでもそれだけ続いてきた。
その間、私なんかは今か今かと待ち続けてきたというのに。やっと今。

本当に、このバカは、どれだけ人を待たせていたと思っているのだろうか。
一丁前に緊張なんかしちゃって、私の答えなんてわかっていそうなものなのに。

だから、人を待たせた罰に、満面の笑みと共にこう言ってやるのだ。

「土下座しなさい。そうすれば、」


そうすれば、アンタのためにブチのだって白いのだって茶色いのだって産んであげる。


214:名無しさん@ピンキー
08/11/28 02:54:44 mPw+vZpV
終わりなんだぜ。

今回は隆二さんは居ないと思うが、居たら本当にすまん。

お目汚し失礼しましたー。

215:名無しさん@ピンキー
08/11/28 03:04:32 VIdl1Yag
GJGJGJ

216:名無しさん@ピンキー
08/11/28 03:32:28 aTNu8ykp
GJ!そして4巻につながり無限ループですね
え?違うんですか?

217:名無しさん@ピンキー
08/11/28 03:55:57 Pr5wKfzP
139です。竜児と大河、第2戦目です。

駄犬の逆襲

竜児とて男である。
凶悪な目つきに似合わず、温厚で面倒見の良い彼にも、プライドはあるし、我慢の出来かねることだってある。
今までこういう事態にならなかったのは、ひとえに彼が逢坂大河に何を言われようとも、受け流していたからに過ぎない。
日々積み重ねられた暴言に対する、凄惨極まりない復讐は、ある日突然やってきた。

「てめぇ! 口さえ開けば駄犬だバカ犬だ、人を何だと思っていやがる!」
また例のごとく、罵倒する必要もない場面で竜児を駄犬、アホ犬呼ばわりしていた大河は、聞いたこともない竜児の怒声に
目を見開いて身体を硬直させたが、5秒と経たずに緊張を解くと、いかにも心外だといわんばかりに、
「アンタ、誰に口聞いてるの! ご主人様に口答えするなんて、いつの間にそんなに偉くなったの?」
とやり返した。

その瞬間、大河の右頬がバチンとなり、大河は畳の上に横倒しにされてしまった。

「ちょ…なにすんのよ竜児。こんなことしてタダで済むと…」
「うるせぇ。口を開けばこの俺を犬呼ばわり。大河、お前こそ何様のつもりだゴルァ!
だいたいどこの世界に、犬に飯を作らせて食わせてもらっているご主人様がいるんだ? あぁ?」
鬼気迫る顔で、上から押さえつけてくる竜児を押しのけようと、大河はもがき、身をよじろうとしたが、身体はまったく動かない。
こいつ…こんなに力強かったんだ。
あまりの衝撃と恐怖で声を出すことも出来ず、大河は自分が思わぬ人間の手で、窮地に陥ったことを悟った。

218:名無しさん@ピンキー
08/11/28 03:57:09 Pr5wKfzP
「今日は誰が真のご主人様なのか、大河、お前の身体にたっぷり教えてやる」
ビリビリとシャツが破られる音に我に返り、思わず叫び声を上げようとした大河の口を、竜児の大きな手が力いっぱい塞ぐ。
「ん~っ! …んんん」
いつの間に手元に用意したのやら、大河を押さえつけたまま口にタオルを噛ませて頭の後ろで固く結びつけると、竜児はボロ切れと
化したシャツを投げ捨て、スカートの中に手を入れると、必死で足をバタバタさせたり、よじったりする大河の両足から、力づくで
パンツも抜きとってしまった。

「竜児…お願い、ごめんなさい…もう許して、無理矢理なんてヤダ…ヤダよ…」
大河のこんな声も言葉にならず、ただ必死に何かを訴える形相だけが空しく映る。
そんな様子に微塵も注意を払うこともなく竜児は、口と下でむき出しの大河の上半身を蹂躙しながら、もう一方の手の指を大河の膣内に差し入れた。
「何を必死に嫌がってるフリなんざしてるんだ。大河、お前、こんな濡らしやがって…気持ちいいのかよ」
抵抗する気力も体力も萎えていくのが分かる。なんで…なんではじめてなのに、こんなことになっちゃったんだろう。

「さて…お前を愉しませるのはここまでにしようか、大河」
散々もがいた挙句、ついに抵抗する気力を失ったのを見計らい、竜児は口のいましめを解いてやった。
荒い息をつき、涙と涎でぐちゃぐちゃになった顔で、大河は竜児に懇願する。
「竜児お願い…ちゃんとつけて…中に出さないで…」
「は? こんな時にゴムつけたり、外出しなんかするわけねぇだろが。たっぷり中に出してやる」
「いや~! いや~! うえええん…」
泣き出した大河にニヤリと笑いかけると、竜児は青筋を立てて赤黒く怒張したモノを、大河に押し当てると一気に奥まで押し込んだ。

219:名無しさん@ピンキー
08/11/28 03:58:14 Pr5wKfzP
「…ふう…」
胸と割れ目を指で愛撫しながら、恍惚の時間をさまよっていた大河は、はげしく弓なりになって2、3度ビクビクと痙攣すると、
ベッドに仰向けに身を横たえた。スプリングがギシリと音を立て、ベッドに広げられたバスタオルの上には、大小の染みが広がっている。
大河は忘我状態でハァハァ息を整えながら、なんとなく心地よいけだるさに浸っていた。
「竜児とする時って…いつも…」
なんとなく寄り添って、いちゃいちゃしている流れの中で突入するか、或いは大河が竜児を責めるシチュエーションでやるかのどちらかだ。
この間は、川嶋亜美のパンツをアホ面さげて見ていたことをネタに、竜児を散々苛めてやった。それはそれで楽しかった。
「お前、人の顔使って1人だけでイクんじゃねぇよ。俺まだイッてねぇぞ」と不平満々の竜児のために、手と口で奉仕することになったけど。

でも、それだけじゃ大河は物足りないのだ。たまには竜児から強引に迫ってきて欲しい。
「ね、竜児。伸びたり擦り切れて捨てようと思ってるシャツとかパンツが溜まってるんだけど、レイププレイに使わない?
男の子ってそういう願望あるんでしょ」
ところが意に反し、これを聞いた竜児は喜ぶどころか、大河を目の前に正座させると、ただでさえ怖い顔をさらに怖くして、

「大河。男ってのをみんな、そういう願望がある獣だなんて考えるんじゃねぇ。少なくとも俺は違う!
俺はたとえお遊びプレイでも、嫌がる女を力づくで犯すなんて死んでも嫌だ。
大抵のプレイには付き合ってやるが、そのテのヤツだけは勘弁してくれ」

凶悪顔のフェミニストは、大河を前に毅然と言い放った。そして続けて、
「あ…MOTTAINAIから、古くなったシャツや下着は捨てんじゃねえぞ。いくらだって転用の方法はあるんだ」
と、なんともまあ、顔に似合わないが彼らしい生活感溢れる一言を付け加え、大河をずっこけさせたのだった。

「酷いでしょみのりん。竜児ったら、私の気も知らないで」
「そんな話を平然と、独り身のあっしの前でするおめぇさんの方がひでぇと思いやすぜ。私にどう反応しろと?」
竜児と付き合うようになって、すっかり変わってしまった親友を前に、櫛枝実乃梨は大きな溜息をつくのであった。

220:名無しさん@ピンキー
08/11/28 03:59:44 Pr5wKfzP
竜児くんはやっぱり真面目なようです(`・c・´)
そして大河さんは、ちょっと欲求不満のようです( ゚∀゚)
ということで、ここまで。

221:名無しさん@ピンキー
08/11/28 04:05:51 WSM0ACjv
まぁ、なんと過激なズリネタwww
まさか大河でくるとは思ってなかったけどピッタリです。GJ!

222:名無しさん@ピンキー
08/11/28 10:54:40 xHrSicVo
久々に来たらスレが凄く進んでる
皆さんGJです

223:名無しさん@ピンキー
08/11/28 12:49:28 9xKNoY7R
>>210
>>217
GJGJ
大河可愛いよ大河

224:名無しさん@ピンキー
08/11/28 13:35:49 y/3njN5o
>>192
はああああんみんなかわゆすなあ
続きも楽しみにしてます

>>210
こっちも幸せになるわあGJ

225:名無しさん@ピンキー
08/11/28 15:15:46 x2C/qtDY
なんか久しぶりにエロが投下された気がするなw
GJ!

226:名無しさん@ピンキー
08/11/28 15:27:10 IhbY+4yK
展開早ぇ。たった1日見れなくてもうこんなに伸びてんのかよ(
>>119
GJすぎるぜ。
そこで初ラブレターを貰ってうろたえる高須とか3人娘を見てみたいと思ったオレがいる

227:名無しさん@ピンキー
08/11/28 18:01:22 palBMu4+
投稿ラッシュね
玉石混淆【エロスレ的には】ですが、作者一人一人の発想が個性的で面白いわ。

さて
受け止めは人それぞれですが、大宮駅発伊豆急下田駅行き湘南新宿ライナー、スーパービュー踊り子とは思わなかったわ。
新宿8時30分の
小説は三人席向かい合わせなので新幹線を使っているのに。

それと、大河が天井裏を探検しないのが残念。
「降りて来い」「パンチラ狙いかエロ犬」が無かったな。
全身ホコリまみれで、くしゃみの連発も無かったし。『花のように舞うホコリ』期待してたのだけと。


しかし、この状況だと、エロなしで投下しても大丈夫みたいですから、後で一石投げ込みます。

228:名無しさん@ピンキー
08/11/28 19:09:44 wBcKdw+v
作品、GJ評価以外で長文投下すんな
容量あんだぞ

229:名無しさん@ピンキー
08/11/28 19:15:45 LLq+GgOh
>>227
エロパロスレ的にする話題じゃないな
それに玉石混淆なんて言葉、投稿してくれてる人達にあんまりじゃないの?
今のスレの流れだと必ずエロを入れる必要もないんだから

230:名無しさん@ピンキー
08/11/28 19:51:46 aTNu8ykp
てか原作の雰囲気がエロに持ってき辛いよな

231:名無しさん@ピンキー
08/11/28 20:06:41 cd6/H4hB
俺はエロ無しでニヤニヤできるほうが好きだ

232:名無しさん@ピンキー
08/11/28 20:10:23 IhbY+4yK
>>230
いやいや、どちらもよいぜ。
ラブければさらにいい。
ラブエロならいけるんじゃないか?
神諸氏は臆せずGOの方向で。
とZENRAでSEIZAな俺がいる。

233:名無しさん@ピンキー
08/11/28 20:11:16 K/4NQc3C
>>211
遅レスかもしれんがGJ!
色々振り返ってるのが楽しかった
確かにドラマチックどころか波乱万丈、七転八倒だよなw

234:名無しさん@ピンキー
08/11/28 20:15:16 xHrSicVo
エロが少ないくらいエロパロ板ではよくあることだ

235:名無しさん@ピンキー
08/11/28 21:10:25 4PnqFonC
すげぇぜ、今やここはエロパロ板で最も勢いのあるスレとなった!

236:名無しさん@ピンキー
08/11/28 21:25:45 MlZPnS1c
アニメ化ってやっぱ偉大だね。
心配してた作画も気にならないし、内容も結構良い。

237:名無しさん@ピンキー
08/11/28 21:27:35 9ZJpl3lR
>>234
竜児や大河たち、登場人物そのものがエロス的存在だから問題なし( ゚∀゚)

238:名無しさん@ピンキー
08/11/28 21:47:04 M50z2ru8
URLリンク(blog-imgs-19.fc2.com)

239:名無しさん@ピンキー
08/11/28 22:21:28 6q6LTdV1
角煮でやれ氏ねカス

240:名無しさん@ピンキー
08/11/28 22:23:50 YA63X1Fg
竜虎出た嬉しさでストックをあげようと思う。

かなりオリジナル要素強いから嫌な人いたらゴメン。

241:名無しさん@ピンキー
08/11/28 22:24:46 YA63X1Fg

『ある日の巡り会い』


高校二年生になり、心機一転。新しいクラスになり数日が経った頃。 …私には、最近気に食わない奴がいた。
私と親友が話していると、チラチラとこちらをみてくる男子。私より前に席にいるんだから見てるのバレバレだってのに。
とりあえずじっと睨んでおく。大抵の奴ならこれで目を合わせようとしなくなるんだ。

そして案の定、そいつも慌てて目を背けている。ふんっ、バッカじゃないの。
そんなに私の親友がみたいなら勇気でもだして話しかければいいじゃないの。まったく。男は全員死ねばいいのに。

「でさ~! ……ん?どったの??」
「ううんなんでもない。それよりなんの話だっけ」

えー聞いてなかったのかよーちゃんと聞いてろよー!と猛抗議の親友。
やばい、バカ男子を睨みすぎて親友の話なんかまったく聞いていなかった。
そしてまたこれだ…親友と話し出すとチラチラこっちを見てくる。
ああまったく意気地がないったらありゃあしない…こんな蛆虫みたいな奴が同じ空間にいるだけでさぶいぼが…。


***


それは下駄箱に入っていた。
授業も終わり、下校時刻。親友はソフトボール部で部長を務めているので一人での帰宅だった。
そうして帰宅しようとして下駄箱を開けるとそこには一通の封筒が。

『屋上で待ってます』

…はぁ、またこれか。
その少女は、本人は自覚はないが容姿端麗、お人形さんのような子だった。
入学当初はその外見に惹かれ告白してくるものが後をたたず、全部切り捨ててはきたけれど未だにたまにこんなことがあるのだ。
それにしても。

「…てかアンタ誰なのよ。名前くらい書きなさいよ、どれだけドジなのよ…。」

とりあえず、こんなバカはさっさと切り捨てて帰ろう。ああ男ってホントにうざい。
そう思いながら気だるげに屋上に向かうのだった。


***

242:名無しさん@ピンキー
08/11/28 22:25:39 YA63X1Fg


「げっ…なんでアンタこんなとこにいるのよ」

少女の目の前には、最近クラスでチラチラ見てくる気に食わない男子が。
こいつ、私の親友を見てたんじゃなかったのか。

少年は、顔を真っ赤にして俯いている。

「…で、なんなのよ」

ある程度内容の検討がついているのだが、わざと知らないふりをして急かす。
それにしてもじれったい奴だ。さっさと言ってしまえば楽なものを。

「……あ、う。」
「聞いてあげるから、早くしてよね」
「あ、あのさ俺…」
「うんうん」
「俺、お前のことが好きなんだ!」
「ごめん無理。はい却下」
「ちょ!少しは悩むとかもなしかよ!そんなとこも好きだけどさ!」
「はいはい…それじゃあね、私早く帰りたいから」

呆然と立ちすくむ少年を尻目に、少女は屋上から去っていく。
はぁ、早く帰ってママのご飯作らなきゃ…。今日はパパも久しぶりに休みだし、久々に料理教えてもらおうっと。
そんなことを考えながら階段を降りていた。
後ろからはさっきの少年がなにか叫びながら追いかけてきているような気がするが無視無視…。

と。
「うわぁ!」
という声。

それとともに少女の横をすさまじいスピードで何かが転がり落ちていく。
目の前の壁にぶつかって止まったのは、さっきの少年。
…しかもちょっと泣きそうな顔。男のくせにこいつはまったく…。


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