09/04/11 20:57:29 mCH+BUQ5
ロレンスの固いものがあてがわれ、ホロは小さく吐息をこぼす。尻尾を左右に揺らしながらその瞬間を
今か今かと待ちわびていた。
「動かすぞ、いいか?」
「う、うむ、じゃが最初は優しくじゃぞ?」
そんなホロの可愛いおねだりに、ロレンスは笑いを堪えて一度頷いてから、ゆっくりと動き始めた。
ずっずっと擦りながら慎重に押し込み、ゆっくりと引いてはそれを繰り返していく。
「あっ、ああ……」
擦れる度に歓喜の声を上げるホロの姿に、次第に速度を上げ、自然と力も込められる。
「ん、ああっ!ぬしよ、上手じゃ……」
「痛くはないか?」
「くふっ…大丈夫じゃ、うぅ……くぅっ!」
その言葉とはためく耳に気を良くして、ロレンスの動きはどんどんと大きくなっていく。
ゴリゴリとホロの身を削っていく感覚に、無心になって動かし続けた。
「ああ!ぬしよ!ふかっ、深すぎじゃ!」
「もう少しだから……我慢してくれ」
「そんなにされたら、わっちは……わっちゃあ狼に戻れなくなってしまいんす!」
悲痛なまでの叫びが耳に入るが、己の欲を止める術も無くロレンスはホロの震える手を力強く握った。
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「30点じゃ」
後始末をする後ろからかけられた言葉は実に辛らつな評価だったが、満足気に緩みきった顔を
隠し切れないロレンスは振り向くことが出来なかった。
そんな態度に、ぐにゃりと頬に爪を立てられる。
「聞いておるのかや!?」
綺麗に研がれた爪は肌に食い込むには至らず、つるつると頬を撫でてロレンスをくすぐる。
固いヤスリについた爪の粉を丁寧にふき取ってからようやく向き直り、むくれるホロの頭を撫でた。
「こっちの方が綺麗だし、可愛いと思うけどな」
「ふん!こんなに深ヅメされては、ぬしの顔を引っ掻く事もできん」
ぷいと顔を背けるが、揺れる尻尾は隠さないところを見れば、まんざらでも無いのだろう。
それから実に不機嫌な声で「寝る」とだけ言って布団へともぐり込んだ。
ロレンスはそれを見届けてから、だいぶ短くなったロウソクの火を吹き消し、床に着いて天井を見上げる。
耳と爪、そして尻尾はホロの狼としての誇りであり、その手入れを任せる事がどれだけの信頼なのか、
ロレンスには想像もつかない。だが、それが重大な事であるのは十分に分かる。
それを求めるホロの甘えは、ロレンスにとっても『雄』としての誇りなのだ。
ロレンスはいつの日かさせられるであろう、尻尾の手入れを思いながらまぶたを閉じるのだった。
終わり