10/01/14 16:12:55 YnA6gAmO
誰しもがそう思うだろう。
弱い者の上に強い者は立つ。
弱い人間がいるから強い人間はその立場を利用する。
なら、弱いモノがいなければ、力を持つ人間はどうなるのだろう…?
私はどちらでもない。
ただ、ほんの少し他の人間より強いだけの、ただの傍観者だ。
いつだってそう…
なまじ道場に通っていたせいか、ケンカ等の暴力沙汰にはあまり手を焼いたことが無い。
だからといって、トラブルに巻き込まれるのは真っ平ごめん、それが私の性分だ。
そう、つまり今のこの状況も私にとっては、何の変哲も無い日常でのワンシーンとして平然とただその上を歩いていけばいい。
誰しもがそう願うだろう。
私は弱者でも強者でもないのだから…
ゴボゴボゴボッ…便座横のレバーをクイッと持ち上げ、勢いよく水が流れていく。
この学校のトイレも近いうちセンサーになるのだろうか、いやならないだろうな。
個室を出て、蛇口をひねり手を濯ぎながら彼女はそんな事を考えていた。
ティッシュやハンカチなどを常備する習慣の無い彼女は、濡れた手をピッピッと数回払ってトイレを後にしようとする。
さも日常的な光景ではないか。
しかし、それが彼女だけの(あるいは彼女にだけ許された)日常なのは、いかんともし難いと言える。
何故なら今この空間で行われている行為は“異質”そのものだからだ。
3人、いや4人か…数名の女生徒と、その向こうには裸にされお世辞にも清潔とは言えないこの学校のトイレの床で突っ伏している女の子。
恐らくはイジメの類で、そのリンチの真っ最中といった感じだ。
幾人かは煙をくゆらせ、甘いメンソール臭が漂っている。
最もこの状況、彼女がトイレで用を足す前から行われていたものだ。
そして今何食わぬ顔でここを後にしようとしている。
果たしてここでの“異質”とは彼女の方を指して言うのかもしれない。