09/07/20 22:37:13 vbXDlLdb
いつまででも待ってるぜGJ
201:名無しさん@ピンキー
09/07/25 09:00:41 2b4IjYp7
期待あげ
202:名無しさん@ピンキー
09/07/29 21:57:16 jYxS4AUw
スレタイに惹かれつつ騙されないぞと覗いてみたら
期待以上の神スレだった
203:名無しさん@ピンキー
09/07/29 22:40:44 FierfPf4
前回より間が長い
これは期待すべき
204:名無しさん@ピンキー
09/07/29 23:01:48 BSjfolrV
作者本人が楽しみながら(悦しみながら)書いてくれるのが俺の一番の望み
205:名無しさん@ピンキー
09/07/29 23:18:31 BuJHpaoM
>>204
同じく。
いつまでだって待てるから存分に書くことを楽しんで頂きたい。
206:名無しさん@ピンキー
09/08/03 08:32:02 rHF+ZrZ/
まだかな
207:名無しさん@ピンキー
09/08/05 21:44:46 BfnfIRo3
待機いているのだがそろそろズボンを穿くべきだろうか
208:名無しさん@ピンキー
09/08/05 22:28:56 OgUNGFcW
それじゃ俺がズボン脱ぐよ!
209:名無しさん@ピンキー
09/08/06 08:32:05 wbtFXFKF
早くお脱ぎなさいな
210:名無しさん@ピンキー
09/08/06 13:54:23 VtW4ELJ7
ちょっと男子ー、こんなところで脱がないでよー
211:名無しさん@ピンキー
09/08/06 16:07:08 OCCAZA79
何だよ女子ー、お前らはもうスッポンポンじゃないかよー
212:名無しさん@ピンキー
09/08/06 22:35:02 q8ArZmAf
>>178のつづき書いてみた。
以下から12レス分投下します。
213:女学院復讐SS5 1/12
09/08/06 22:36:25 q8ArZmAf
ベヒシュタイン製のグランドピアノは、さすがに丁寧に磨き上げられていた。光沢を放つ鍵盤
蓋は覗き込めば表情さえ映りこむほどだ。
今そこには、嗜虐の愉悦と、被虐の恐怖と、二種類の感情が浮かび上がっている。
「え、演奏会……?」
下半身がむき出しになるまで切り裂かれたズタズタのワンピースだけをまとった格好で、月小
路妃美歌は震える声をあげた。住み慣れた自室の座り慣れたピアノ。だというのに、まるで異
次元にでも放り込まれたような気分だった。
部屋の中には月小路の他に三人の生徒がいて、全員が敵だ。恐怖に潰されそうになるのも、
無理はない。
月小路の目の前で微笑む有瀬文月が、楽しそうにうなずいた。
「そう、演奏会。せっかく月小路さんがいて、ピアノがあるんですもの、弾いてもらわないと損じ
ゃない?」
「……」
ピアノは月小路の最大の誇りであり、唯一のよりどころだ。これを失ったら、月小路はどこにも
いけない。たとえば今、指を一本でも切り落とされたら、それだけで月小路妃美歌という人間
は終わる。そうして目の前のこの女は、その程度のことならばたやすくやってのけるだろう。
「ん、いやなの?」
だが、断ることは出来ない。状況が許さないし、なにより恐ろしい。同い年の文月のことが、
心の底から怖い。
「ひ、弾くよ」
「そう? つらいならやめてもいいのよ」
「弾く」
首を振って、月小路は断言した。重い鍵盤蓋を自ら押し上げ、並ぶ黒白の鍵盤に指を添
える。
「何を、弾けばいいんだ」
「譜面は必要?」
「ものによるけど……」
文月は口元に手をあてて数秒考えると、ピアノに背を向けて鞄の中を漁りはじめた。月小路
をいたぶるためだけに用意したという道具の数々が、あの中にはおさめられているはずだ。
「私はよくわからないんだけど、月小路さんが一番得意なのって、なに?」
「……」
言われて、月小路はほんの少しだけ黙った。小学校の頃から今まで、繰り返し奏でてきた無
数のメロディーが脳内をめぐる。
答えはすぐに出た。
「……月光」
「月光?」
顔をあげて、文月が繰り返す。カメラを構える逢坂が、ぱちくりと目を瞬かせた。
「ベートーベンですよ」
「ああ……柚子澤さん、知ってる?」
「有名な曲だよ。ピアノソナタ第14番嬰ハ短調作品27の2『幻想曲風に』。知らない?」
「詳しいのね」
鞄の中からコードのようなものを引きずり出しながら、文月が感心したようにつぶやいた。当
の柚子澤は心外そうに肩をすくめて、
「そりゃ、私もピアノはやってるしね」
と、月小路に視線を向けながらそう言った。
「そうなの?」
「それは意外ですねー」
214:女学院復讐SS5 2/12
09/08/06 22:37:14 q8ArZmAf
「にわ子、どういう意味?」
柚子澤が引きつった笑顔を浮かべて一歩進み出ると、逢坂が乾いた笑いを漏らして二歩
下がる。無意味に緊迫した空気が室内の温度を下げていく。
「遊んでないで手伝って」
呆れたような声に、二人はそろって文月の方を振り向いた。ようやっと鞄の中から目的の器
具を取り出したらしい。
それは両手で抱えられるほどの大きな機械だった。L字型の本体にはいくつかのボタンと液
晶が備えられていて、なにやら物々しい印象を受ける。そこから細いコードが四本伸びて、辿
った先には楕円状の平べったいパッドのようなものが繋がっていた。
「なんだそりゃ」
「低周波治療器よ」
簡潔に、文月は答えた。微電流によって肩こりや血行不良を治療する医療器具である。文
月は絡まったコードをほどきながら、ちらりと月小路に視線を向けた。
月小路は顔面蒼白になって、その機械をにらみつけていた。
「ああ、なんだ。使ったことがあるのね、これ」
なら説明の必要はないわね、と文月が微笑む。パッドを手に持って月小路の前に立つと、ゆ
っくりと腰を下ろした。
椅子に座る月小路の股が、ちょうど文月の目の前にある。下着を取り除かれ、陰毛を剃られ
た月小路の秘部は、痛々しい剃り跡を震わせて陵辱を待っている。
「開きなさい」
「……」
いまさら、抵抗することに意味などない。震える膝をゆっくりと開く。文月は秘唇に指を這わ
せると、つぷり、とスリットの中に指を沈ませた。柔らかな尻がビクリと跳ねるのを見て、小さく笑
みを浮かべる。
「柚子澤さん、開いていて」
「はいよ」
柚子澤の指が秘唇を割り開く。先ほど一度絶頂を迎えた余韻がまだ残っているのか、月小
路がかすかに甘い吐息を漏らした。ピンク色の肉壁はぬらりとあやしく照り輝いて、ここから快
感が溢れたのだと知れる。
文月は粘液を指で掬い取るように襞をひと撫でしてから、手にしたパッドをくちり、と肉壁に
押しつけた。震える声が月小路ののどからこぼれる。構わず、文月はもうひとつのパッドも貼り
つけた。残るふたつのパッドを手の中で弄びながら、舌から月小路の顔を見上げる。
「これ、結構高級品なのよね」
そうして、見せ付けるようにパッドを掲げてみせた。
よく見ると、パッドから直接コードが伸びているのではなく、コードの先端についた洗濯バサミ
のような接続端子がパッドをくわえていることがわかる。患部、症状に合わせてパッドを交換で
きるように設計されているのだ。
文月はわざとゆっくりとした動作でパッドをはずすと、細長い棒のようなものを取り出した。ボ
ールペンより一回り大きい程度のそれには、末端に電極がついているのが見える。
「わかるわね?」
言って、文月はそれにコードをつなげた。
「―なっ、」
さすがにこれは予想外だったのか、月小路が小さくうめき声をあげた。凌辱者たちはその声
に笑みを深くする。ぱっくりと開かれたままの秘唇、その奥の女穴に、文月は慎重に電極を挿
しいれた。
「ぅんっ……」
215:女学院復讐SS5 3/12
09/08/06 22:38:02 q8ArZmAf
冷たい感覚が膣に押し入る違和感に、月小路がまた声をあげる。わずかに濡れた響きを交
えるその声は、ますます三人を昂ぶらせた。
「それで、これが仕上げね」
「ま、まだ……」
あるのか、と、月小路は最後まで言えなかった。文月が手にしているのはコードの先につい
た接続端子だけ。パッドも、棒もない。パクパクと開閉するそれを見て、月小路は全身から血
の気が引いた錯覚に襲われた。
あれで、どこを、挟むつもりだ?
「待て! 無理、無理、それは無理だ!」
「大丈夫よ」
切迫した悲鳴を軽くいなして、文月はむき出しのクリトリスに目を向けた。いっぱいに開いた
端子の口が、小さな淫芽を挟み込む。
「えいっ」
ぎちゅっ!
勢いよく指が放れ、バネ仕掛けが遠慮なく月小路の秘芯を噛んだ。声にならない悲鳴をあ
げて、月小路の背がビクリとのけぞる。
「準備完了ね」
念のためテープで補強してから、柚子澤に手振りで合図する。散々に嬲られたとはいえ処
女の秘部だ、すぐに口を閉ざしてしまう。
成熟した形に無毛の丘、加えてひくひくと蠢く唇から伸びる四本のコードは、いやがおうにも
官能を刺激する。つばを飲み込む音がした。いったい、誰のものか。
「それじゃあ月小路さん、ピアノ。月光だっけ? それをお願い」
「……? ひ、弾くだけでいいのか」
それでは何のためにコードをつなげたのかわからない。文月はにっこりと笑って、柚子澤に低
周波治療器の本体を示した。
「月小路さんが一音でも間違えたら、柚子澤さん、あれのスイッチを入れて」
「……っ!」
「ああ、なるほど。これ、そんなにすごいの?」
「試しましょうか?」
くすくすと笑いながら、文月が治療器のダイヤルを操作して、スイッチに指を乗せる。月小路
が制止の声をあげるのを待たず、カチリ、と軽い音を立ててスイッチを押し込んだ。
「んきぃやぁああっ!」
とたん、月小路の背がのけぞって、ビクリと大きく跳ね上がった。地面に対して水平近くまで
跳ね上がった足が、同じ勢いで振り下ろされる。思わず両手で股間を抑えるものの、刺激は
内側から来ているのだ、意味のあるはずもない。
「やっ、やっ、やめっ、やめ……っ」
定期的に送り込まれる刺激に抗うように、涙目になって体を抱く。その様子を見て、文月は
満足気にスイッチを切った。
「わかった?」
「……よくわかった。このつまみが強さ?」
「そう。今のが10%くらいね」
電流も流していないのに、月小路が大きく体を崩した。椅子がガタン、と音をたてて、一同の
視線が集まる。
「どうしたの? 大丈夫よ、いきなり最大値になんてしないから」
「……」
216:女学院復讐SS5 4/12
09/08/06 22:38:49 q8ArZmAf
「それにね、」
立ち上がって、優しく微笑みかけながら、文月は緩やかな足取りで月小路に歩み寄った。
両手を肩に置いて、ピアノに向かって座りなおさせる。安心させるように、軽く肩をたたいて、
「間違えなければいいのよ」
そう、耳元でささやいた。
「簡単でしょう? あなたの得意なピアノの、得意な曲なんだから。最後まで演奏しきれば、そ
れだけでいいの。私は、絶対に邪魔はしないわ」
「そ、そんな、そんなこと、」
そんなことを言っても。
こんな状況、こんな精神状態で演奏などしたことはない。出来るとも思えない。指が震えてい
る。鍵盤が叩けない。そんなことを抜きにしても、ピアノのミスタッチはプロの演奏でも当然のよ
うに起こる。
「できないの?」
毒を送りこむような声だった。静かで、優しく、だからこそ恐ろしい。
「できないの、月小路さん。ピアノが、弾けないの? このくらいのことで?」
「う……」
肩に置かれていた手が首筋を撫で上げ、頬を包む。耳元に唇を触れさせて、文月はもう一
度繰り返した。
「できないの? そんなはずはないわよね。貴方がピアノを失ったら何も残らないもの。ただの
傲慢で怠惰な女だもの。そんなはずはないわよね」
その通りだ。
ピアノは最大の誇りであり、唯一のよりどころ。月小路妃美歌という人間の価値は、ここにし
かないのだから。
「ひ、くよ。弾けば……いいんだろ」
「そう、弾けばいいのよ」
文月の体温が離れる。月小路は十指を鍵盤に乗せて、ゆっくりと息を吐き出し、同じように、
ゆっくりと吸い込んだ。肺の中身を全て交換するような―文月の囁きと共に送り込まれた毒
を全て吐き出すような深呼吸をすると、目を閉じて、そのまま数秒静止する。
「弾くよ」
そして、宣言した。
「演奏、しきってやるよ」
指先が浮き上がる。足がペダルに添えられる。折れそうになる精神を屹と立たせて、月小路
は鍵盤に指を叩きつけた。
おそらく、人生で最も多く演奏した曲。文月は知らなかったが、月小路妃美歌の名を世に
知らしめた、彼女の最も得意とする曲。―月光の演奏がはじまった。
最初の一音の時点で、既に柚子澤は愕然として動きを止めた。あまり音楽を嗜まない文月
や逢坂ですら、それが異様であると、理屈の外で悟ってしまった。
月小路妃美歌の演奏は、それほどに美しかった。
ただの和音が、まるで生を持って空を踊っているかのようだ。大気をふるわせる振動が耳元
から入り込み、脳をやさしく撫で回して陶酔へと導いていく。音を外すだとかリズムを乱すだと
か、そんな次元の話ではない。楽譜どおりに弾けることは大前提で、そこからいかに表現する
かが『音楽』なのだと、この時文月ははじめて知った。
先の宣言は虚勢ではない。きっと月小路は、最後まで弾ききるだろう。
「驚いたわね……」
軽く頭を振って、文月はそうつぶやいた。下半身がむき出しになるまで切り裂かれたワンピ
ース、股座から伸びる四本のコード、どこをどう見てもそんなものとは無縁のはずなのに、演奏
する月小路からは神々しさすら感じられる。
217:女学院復讐SS5 5/12
09/08/06 22:39:38 q8ArZmAf
自分の甘さを反省するようにもう一度かぶりを振ると、文月は周囲をちらりと見回して、入り
口とは別の扉へと向かっていった。演奏に集中する月小路は気づかない。柚子澤と逢坂は
気づいてはいたが、それどころではなかった。
柚子澤が考えていたのはひとつだけ。もしこのまま演奏が終わってしまったら、文月はどうす
るのだろう、ということだった。
まさか、本当にこれで終わりにするとは思えない。幸崎幸にあれほど残酷な仕打ちをしてみ
せた文月が、この程度で満足するはずがないのだ。また何か適当な理由をつけて月小路をい
たぶるに違いない。
……けれど、もし文月が「ここで終わり」だと言ったら?
指が震えるのを自覚する。低周波治療器のスイッチに、知らず人差し指が乗っていた。月
小路の演奏は完璧だ。きっと、そのまま最後まで完璧な演奏をするだろう。
「ゆ、柚子澤先輩……」
逢坂が遠慮がちに声をあげた。それは、反則だ。だが、それがなんだというのだ。今更どんな
意味が―
「柚子澤さん」
びくり、と指が震えた。
「それは反則よ」
携帯電話を手に持った文月が、困ったような顔をしてこちらを見ていた。隣の部屋から戻っ
てきた彼女は、音楽に合わせるような緩やかな足取りで柚子澤の元までやって来る。
「ルールは、守りましょう」
「わかってるよ……」
歯をかみ締めて、柚子澤は搾り出すような声でそう言った。
柚子澤が葛藤している間に、曲は第一楽章を終え、更に先へと進んでいた。月光は三楽
章からなるソナタで、徐々にテンポをあげていく。特に第三楽章はそれまでとは別の曲のように
すら思える激しいもので、難易度がもっとも高い。
第二楽章は二分と少しで終わった。月光は全体で十三分から十五分。これでおよそ半分
の工程を過ぎたことになる。
三人の見守る中、月小路はひたすらに指を躍らせている。月光ならば、ノーミスでの演奏だ
って何度もこなしている。股の違和感も、身に巣食う恐怖も、何も問題にもならない。
あと数分。もうゴールは目の前だ。
月小路は確信した。今の自分はかつてないほど冴えている。そう。ピアノに愛され、ピアノを
愛した自分が、この程度の困難で折れるはずがなかったのだ。自分の価値はピアノにしかな
いが、ピアノがあれば、誰より尊く、美しくなれるのだから。
残り三十小節ほど。演奏も大詰めだった。
音は美しく、大気は完璧な調べに酔いしれていた。
彼女が演奏を完成させることを、誰も疑わなかった。
月小路の体が揺れた。
文月も、逢坂も、あわてて周囲に目をやった。揺れているのは月小路だけではない。部屋も、
ピアノも、大きく縦揺れの震動を繰り返していた。
―震度四。直下型。普段ならば、翌日の会話の種にしかならない、つまらない出来事。
だが月小路の指をほんの少し、数ミリだけ横に逸らすのには、それだけで十分だった。
美しく響いていた和音に、かすかな違和が混じる。揺れる室内に目も向けず、ただその瞬間
を待ち構えていた柚子澤は、迷わず指に力をこめた。
次の瞬間、完璧に調和のとれた大気の調べが、強烈な不協和音で打ち砕かれた。
「あっ……んぁあああっぁあああっ!」
でたらめな場所に置かれた十本の指が耳障りな音を響かせ、その後を追うように月小路の
悲鳴が轟く。
218:女学院復讐SS5 6/12
09/08/06 22:40:32 q8ArZmAf
「ひっ、ひっ、ひぁっ、ああっ!」
今まで経験したことのない感覚だった。指でこねるのとも、舌で舐められるのとも違う、肉の内
側に直接触れられているような、神経そのものをしごかれているような、いわくいいがたい感覚。
「と、とめっ、とめて! とめてぇっ!」
前のめりに倒れて腕全体が鍵盤を押す。そのまま崩れそうになる体を、不協和音を奏でな
がら鍵盤についた左手で支える。その瞬間にも、走り抜ける電撃はやまない。
股間の内側から立ち上る断続的な刺激は、一瞬で全身を駆け巡り、また秘部へと戻ってい
く。腰が勝手に浮き上がり、体が跳ねる。その度に、責め立てるように不協和音が響いた。
「もっ、もうっ、止めっ、ひぇあっ、うぁああんっ」
視界がぐらぐらと揺れて、あちこちで火花が散っている。畝肉を震わせながら走る電流は、
襞の一枚一枚に無数の針を突き刺すような鋭い痛みと、指先の自慰では決して得られない
強烈すぎる刺激を同時に与える。快感と、はっきり言えるほどではない。しかしただ苦しいだけ
でもない。その境界に揺れる感覚は、月小路から正常な思考回路を奪っていく。
「ひ、ぁ……ふ」
鍵盤に全身をもたれかけた無理な姿勢で、月小路は小さく息を吐いた。ようやく、治療器の
スイッチが切られたのだ。
「どうだった?」
「ふぁ……」
返事ができる状態ではない。指先がガクガクと震えて、少しでも体を動かせばそのまま倒れ
てしまいそうだ。
文月は月小路の肩に手を置いて、支えながらゆっくりと体を起こしてやった。抗議のような声
が漏れたが、舌まで痺れているのか、何を言っているのかわからない。
「ほら、しゃんとして。柚子澤さん、端のスイッチ入れて」
「端……? ああ、この、コードがつながってるところのスイッチ?」
「そう」
スイッチ、という言葉にビクリと月小路が震える。その肩をぽんぽんと叩いて、文月がまた、耳
元に唇を寄せた。吐息が耳朶からもぐりこみ、鼓膜を揺らして三半規管をぐるりと巡る。また、
毒をささやかれている。
「いい。さっきのはね、ここ―」
「あふぁっ、」
文月の指が、くちゅり、といやらしい音を立てて月小路の女陰を割り開いた。ぬるりとした粘
液の滲み出る肉壁を指先で撫でて、貼り付けられたパッドをトントン、と叩く。
「―このふたつだけが動いていたのね。この奥にあるのとか、」
「きゃうっ、」
指先が膣穴からわずかに除く電極の尻をつつく。秘部から一度指を離し、端子にはさまれ
た淫芽を指ではじいた。
「ふぁあうっ」
「ここのお豆のとかは、動いていないの。わかるわね?」
「は……あ、ふ……」
わからない。今の月小路には、文月の言葉は聞こえていない。聞こえていたとしても、理解
できなかった。電流は止まったというのに、体中が痺れている。
「わかったら、もう一度、最初から」
痺れているのに、信じられないことを文月が言った。
「ふぁ……?」
「ふぁ、じゃなくて。ほら、鍵盤に指を乗せる」
219:女学院復讐SS5 7/12
09/08/06 22:41:21 q8ArZmAf
文月に手をとられて、指が鍵盤に添えられる。月小路は火花の散る頭で必死に考えた。何
をすればいいんだろう。何をさせる気なんだろう。
「弾くのよ。最初から、もう一回、やり直し」
嘘だ。
だって終わったはずじゃないか。たった今終わったはずじゃないか。
「な、んで」
「なんでもなにもないわ。きちんとできるまで、何回でも、やり直すのよ」
「―は、」
視界が、一瞬でゼロになった。
まだ、何か声が聞こえる。弾けといっている。無理だ。無理だ。もう無理だ。こんなのは音楽
じゃない。演奏じゃない。できなくたって、どうこう言われる筋合いはない。月小路妃美歌のピ
アノは、もっと気高く美しいものなんだ。
「弾けないの? できないの? ピアノが、弾けないのね?」
なのに。そう思っているのに。
その言葉に逆らえない。ここを逃げれば、ここで負ければ生きていないと、どこかで誰かが叫
んでいる。だから、戦わなくては。
「ふ……ぁ……」
二度目の演奏がはじまった。
震える指は、それでも見事に演奏を進めた。文月が本当に感心したのはこの時だ。なるほど
月小路妃美歌は確かに天才で、確かに、音楽にその身を捧げているのかもしれない。
だから、音楽と共に倒れるのだ。
「―あ、」
失敗は、やはり第三楽章で起こった。声を漏らしながらも指は自動的に演奏を進めるが、そ
れを許す柚子澤ではない。
二度目の電流は、一度目の比ではなかった。
「あっ――」
声が止まる。息が詰まる。与えられた刺激の種類を、脳が判別できない。ただその大きさに
視界が白濁し、意識がそのまま飛ばされ、
「――いぎゃあああああああああああっ!」
即座に、同じ刺激で呼び戻された。
挿入された電極から起こったそれは、いわば爆発だった。密着した膣壁を蹂躙したそれは、
肉の壁を打ち破って全身へ伝播する。痺れる、などという生ぬるいものではない。まるで肉とい
う肉がすべて沸騰しているかのようだった。稲妻はあらゆる感覚を振り切って、全身の神経を
一瞬で焼ききった。文字通り飛び上がった月小路は、うまく着地できずに椅子から転げ落ち
てしまう。伸ばした指先が鍵盤をかすかに撫でて、物悲しい不協和音を響かせた。
「いぁっ、はっ、ふああっ、ひゃっ、ひぎゃあっ」
血が沸騰する。視界が明滅する。腰が跳ね上がり、手足がバタバタと床を叩く。低周波治
療器の電流は断続的に強弱をつけて流される。新たな刺激が膣から全身を突き刺すと、そ
れだけで意識まで飛ばされる。そうして、同じ刺激でまた引きずり戻されるのだ。
気の触れた狂人のように床を転げ回りながら、月小路は壊れたおもちゃのスイッチが勝手に
切り替わるように、意識のオンオフを繰り返した。涙と涎が顔中を汚していたが、そんなことに
気づくような余裕はない。
「ふぁ、あ、」
何度目かの覚醒で、ようやく彼女は自分の体が止まっていることに気がついた。電流はまだ
流れているが、強さを調節したのだろう、体の奥で疼く程度のものだ。
220:女学院復讐SS5 8/12
09/08/06 22:42:17 q8ArZmAf
「ぁ、あ、……うぁ……」
股間のあたりがあたたかい。体温が漏れ出たような錯覚。それでも、月小路は股を覗くことも、
体を起こすこともできなかった。間接がまだガクガクと震えている。太腿あたりから尻の下まで
生ぬるい液体に浸っている気がしたが、体を横に転がすこともできない。
「お漏らししちゃったのね」
くすくすという笑い声が、そんなことを言った。
「涎まみれのだらしない顔。そんなに気持ちよかったの?」
「あひゃぅっ!」
反論しようと開けた口から出たのは、文月の言葉を肯定するような甘い声だった。さっきまで
の強すぎる刺激と比べて、今月小路の膣から全身を撫でて回る微電流はあまりにも優しすぎ
る。電気ではない何かが首の後ろを痺れさせて、月小路は無意識に内腿をすり合わせた。
「白目剥くまで電撃くらってよがってるのか?」
「変態ですねー」
「ひ、ひがう……」
違う、と言っているつもりなのに、言葉にならない。ふるふると力無く首を振ると、文月が笑い
ながら両脇の下から手を差し入れてきた。
「はい、立って。柚子澤さん、最後のスイッチいれて」
「はいよ」
「ひゃ……」
軽いタッチで柚子澤がスイッチをオンにすると、月小路の体が小さく跳ねた。やさしくなで上
げる微電流が、最後の端子―すっかり膨らみきった淫芽へと電流を送り込みはじめたの
だ。
「やっ、やあぅっ、待っ、ひゃぅんっ、」
ただでさえ敏感なそこは、文月の執拗な愛撫ですっかり昂ぶっている。ぷっくりと腫れ上がっ
た快楽の中心、その更に深奥、まさしく秘芯というべき奥の奥までを、微電流は撫で上げてい
く。焼ききられた神経の名残を、快楽の電流が伝っていく。ただでさえ震えている足には全く
力が入らない。文月に支えてもらわなければ、立つことすらできないだろう。
「ほら、月小路さん。もう一回よ。今度は最後まで弾きましょうね」
「や、で、できない……」
「できない?」
また、耳元で文月が毒を送り込む。もうやめてほしい。もう許してほしい。できない。できるは
ずがない。指が動かない。足が震えてる。椅子にも座れない。今度失敗したら、またあの電流
に襲われて―きっと、死んでしまう。
「できるわよ、月小路さんなら。さあ」
椅子の上まで引きずられて、数分前の焼き直しのように、鍵盤に指を乗せられる。もういやな
のに、ピアノの前に座らされると、弾けないとは言えない。
「やだ、もう、やらぁ……」
「大丈夫よ月小路さん。あなたは人生をピアノに捧げてきたのだから。外で演奏はしなくても、
部屋ではずっと弾いてたんでしょう?」
今度こそうまくいくわ、と文月は月小路の肩を叩く。無理に決まってる。鍵盤の位置が見え
ない。ペダルがどこにあるのかわからない。頭の中はまっしろで、電流は止まったっていうのに、
全身が痺れてろくに動かない。
それでも月小路は、演奏をはじめた。
「―あ」
最初の一音。
それが聞くに耐えない不協和音になって、月小路ははじめて、自ら演奏の指を止めた。
「ひぁっ―――」
221:女学院復讐SS5 9/12
09/08/06 22:43:01 q8ArZmAf
目の前が真っ白に染まった。
全身をハンマーで突き上げられたような衝撃が来たのは、その後だった。
世界が一瞬で、消えてなくなった。
■■■
「あ、起きた」
「……?」
ぼんやりした頭で、月小路はその声を聞いた。なんだか視界がはっきりしない。目に力を入
れてどうにか焦点を合わせると、三人ほどの女生徒が笑っていた。
なんだろう、これは。
ここは自分の部屋のようだ。目の前にいるのは有瀬文月ではないだろうか。その奥にいるの
は? ……あれも、かつて自分たちが標的にした女たちのように思える。
「らに……あんひゃら……」
おかしい。舌が回らない。舌だけじゃない、体中が痺れているようだった。これはなんだ。なん
でこんなことになってるんだ?
「どうも現状がわかってないみたいね。柚子澤さん、やっちゃいましょう」
「スイッチオン」
「ポチっとなー」
逢坂の無邪気な掛け声とともに、柚子澤の指がスイッチを押す。月小路は何か機械のよう
なものがあることにこの時はじめて気がついて―
「んぁあぁあああぁああっ!」
―走り抜ける衝撃に、やっとすべてを思い出した。
「いひぅっ、ひゃああああっ、やっ、んんん!?」
体を跳ねさせようとして、動けないことに気がつく。後ろ手に回された腕はベルトのようなもの
で拘束され、折り曲げられた足は膝の後ろを通る鉄の棒に固定されて、閉じることができない
ようにされている。それらの器具はどうやら背後のグランドピアノにつながっているらしく、月小
路の体はほとんど動けないようになっていた。
「んぁっ、あっ、あううぁあああっ、らに、らにこれええっ」
「何って、拘束。さっきみたいに跳ね回られたら大変じゃない」
「やぁああぁあっ、あっ、ふぁあああっ」
ガチャガチャと拘束具を揺らしながら、月小路は体を左右に振った。背後のピアノがギシ、と
軋み音をたてたが、それだけだ。
「んああっ、と、とって、これとってよぉおっ」
ぼろぼろと涙が零れはじめた。股間からは相変わらず四本のコードが伸びている。気絶しな
い程度に抑えられた電流が、月小路の膣を荒らしまわっているのだ。
筋収縮によって蠢く膣は自ら電極をくわえこみ、弾ける電流は慣れてしまった体に痛みより
も快楽を走らせる。全身を隈なく走破する稲妻は、細胞のひとつひとつを愛撫するような、未
知の悦楽をもたらした。
「いっ、やぁっ、お、おかひくっ、おかひゃくなっひゃああああっ!」
ガチャガチャと拘束具を揺らしながら、月小路は頭を振り乱した。あまりの激しさにグランドピ
アノがわずかにずれる。それを見て、柚子澤が口笛を鳴らした。
「もっとおかしくなりたいって?」
そうして、笑いながら強弱のつまみを少しだけ回した。
「ひぅぁああああああっ! やらぁあっ! も、もう、もうやめっ、やぁああああっ」
まるで全身が性感帯になったようだった。それでいて、全身を同時に愛撫されているのだ。
快楽の稲妻は手加減を知らず、脳髄までも痺れさせる。あっという間に月小路は絶頂まで引
き上げられた。だが、そこから下ろしてもらえない。
「いやぁああっ、いっ、だめっ、こっ、んぁああああっ、とまっ、とまらなっ……!」
222:女学院復讐SS5 10/12
09/08/06 22:43:43 q8ArZmAf
ブツブツと脳の回路が断線する音が聞こえる気がした。体中あちこちが途切れて、そこを快
楽の稲妻がつないでいる。上の口からも下の口からも涎を零して、月小路は繰り返し絶頂に
たたき上げられた。
「ひっ、ひぁっ、もうやっ、やっ、イひたくない、いきたくないのぉっ!」
懇願には誰も答えない。機械的に送り込まれる刺激だけが、月小路への回答だった。
「月小路さん」
「あああああっ、あ、んふぁあああっ」
いつの間にか目の前にいた文月が、目線を合わせて微笑んだ。電流が徐々に弱まっていく。
連続絶頂からようやく下ろされて、月小路は小刻みな呼吸を繰り返した。
「もう止めてほしい?」
「あ、うぁ、」
なんとか、月小路は頷いた。この地獄から解放されるなら、もう何をやってもいい。プライドな
んていらない。
「でも、約束だから。ちゃんとできるまでやらないと。弾けるでしょ?」
「むり、むり!」
「できるわよ。だって月小路さんにはそれしかないじゃない」
「むりなの! むりだよ! もうやだ! やだ! やだあっ」
子供のように泣きじゃくって、月小路は頭を振り乱した。長い髪が宙を泳ぐ。しゃくりあげて
嗚咽を漏らす月小路を見て、文月は残念そうにため息をついた。
「三回、か。まあ、がんばったわね。それじゃあ月小路さん、弾けない、のね?」
「ぅ……うう、」
「はっきり目を見て、ちゃんと言いなさい。ピアノが弾けないのね?」
「ぁ……」
微弱な電流が性を刺激する中、月小路は顔をあげた。文月がそこにいる。逢坂がカメラを
構えている。柚子澤が、睨みながらスイッチに手を伸ばしている。
弾けない。
弾けない。
弾けない。
「ひけ、ない」
こんな状況で、ピアノなんて、演奏できるはずがない。
「ぴあの、が、ひけない」
月小路妃美歌は、ここでやっと、そう口にした。
電流が止まった。
解放された感覚に、全身から力が抜ける。口元から零れた涎が涙と混ざって落ちていく。足
を開いて拘束された淫らな格好のまま、月小路は大きく息を吐いた。
「よかったわね、月小路さん」
ぽん、とその頭に手を置いて、
「これで貴方も、ただの女よ」
そう、有瀬文月は微笑んだ。
視界が飛んだ。
何の刺激もないのに、世界が真っ暗になった。
「あ」
そう、月小路妃美歌は、たった今自分の人生を否定した。自分が培ってきたもの、育て上げ
たもの、磨きぬいたもの、その全てが、ただの暴力に劣ると告白したのだ。
心が、折れた。
223:女学院復讐SS5 11/12
09/08/06 22:44:22 q8ArZmAf
「あ……」
眼球が揺れる。視界が像を結ばない。脱力しきった体が、これ以上動くことを拒んだ。
「それじゃあね、月小路さん」
言って、文月は柚子澤に手を振った。それを合図に、柚子澤がスイッチを入れる。
電流が迸った。
「あぎっ―ひぎゃああっ!」
拘束されているにも関わらず、月小路の体が数ミリ浮き上がった。焦点の定まらなかった目
を見開いて、涎をまきちらす。
「なっ、ぁっ、なんでぇ! 言った! 言ったよ! できないって言ったよぉぉ!」
「そうね、だから?」
笑顔のままで、文月はそう答えた。それ以上何も言わず、鞄を持って扉に向かって歩いてい
く。柚子澤も満足げに立ち上がり、機械を放置してその後に続いた。
「これから、がんばってくださいねー」
無邪気な笑顔を浮かべた逢坂が最後にそう言い残して、二人の後を追う。このまま。このま
まなのか。このまま放置されるのか。
死んでしまう。冗談ぬきに、耐えられるわけがない。
「うそ、うそ、うそ! 助けて、ゆる、ゆるしっ、あぅぁっ、うそでしょお!?」
体を揺らしても、どんなに力を込めても、拘束具が音を立てるばかり。扉の前まで来た文月
が、ちらりと背後を振り返っても、月小路は悲鳴をあげて体を跳ねさせていた。
「助けは呼んでおいたわよ。すぐに来るんじゃないかしら」
言って、文月は手の中の携帯電話を振って見せた。文月自身の電話は幸崎の糞尿にまみ
れてトイレの中だ。これは月小路の電話である。月光の演奏中に、隣の部屋から失敬してきた
のだ。
とはいうものの、月小路には聞こえていないようだった。懇願を続けながら襲い来る激流に悶
える月小路を見て、文月はほんの少し苦笑した。
扉に手をかける。もう、ここには用がない。
だが、文月がその扉を開けることはなかった。向こう側から、誰かが扉を開いたからだ。
□□□
「あら、伊勢宮さん」
息を切らしたアリスが扉を開けてまず目にしたのは、微笑む有瀬文月だった。愕然と手を止
めて、息を呑む。
「幸崎さんの介抱はもう終わったの? もっと時間がかかると思ったのだけど」
答えられず、アリスは二歩、後ろに下がった。
アリスが文月から受け取ったメールは、幸崎幸の惨状を伝えるものだ。月小路については一
言も書かれていなかった。彼女は現状を正しく認識して、ここまで走ってきたのだ。
「こ、幸崎さんは、自分で、始末をつけると、言っていました」
「あら、そう」
「そんなことより、これは……!」
アリスが問いかけるより早く、文月が扉の前から身を避けた。背後の女生徒たちもそれに続く。
知らない生徒が二人もいることに眉をしかめつつも、アリスは部屋に目をやった。
「ひっ―」
息が止まった。
ピアノにくくりつけられた月小路は、涎と涙を零しながら何もない場所に向かって腰を振って
いる。ガチャガチャと拘束具が鳴り響き、悲鳴とも嬌声ともつかない叫びがそれを彩っている。
「な、なんで、なんでこんなこと……」
「本当は、次は貴方の番だったのよ」
224:女学院復讐SS5 12/12
09/08/06 22:44:53 q8ArZmAf
震えるアリスの前に、文月の体が立ちふさがった。顎がとられ、唇が触れそうになる距離まで
顔が近づく。
「でもね、かわいそうだと思って、やめてあげることにしたの」
「な……え……?」
微笑みとともに、文月の手が放れた。脇をすり抜けるように、廊下へと進み出る。あわてて振
り返ったその耳元に、
「せっかく『そっち』にいけたのに、またいじめられる側に戻るのはいやでしょう?」
とびきりの猛毒が囁かれた。
「はっ……!?」
きっと今、自分はひどい顔をしている。アリスはそう思って、それは正しかった。文月の表情
がそれを証明している。
「馬鹿よね、伊勢宮さん。自分が仲間にいれてもらえたと思ってたんでしょう? 彼女たちはね、
貴方が慣れないことを無理にやらされて、本当はいやなのに従わされて、でも心のどこかで強
者になれたことを喜んで―そんな貴方を見て、笑っていたのよ?」
「ぁ……」
「本当はわかってたんでしょう。貴方はどこまでいっても従わされる人。虐げられる人。自分か
ら変わろうともしないのに、立場が変われるわけがないじゃない」
くすり、と哀れみを含む微笑みを浮かべて、
「さようなら、伊勢宮さん。だから貴方は、見逃してあげるわ」
文月の背中は、廊下の向こうに消えていった。
「う、あ……」
悲鳴が響いている。知らない女生徒たちが、文月の後を追っていく。いつの間にかへたりこ
んでいる自分に気がついて、アリスはそれでも立ち上がろうとした。助けなければ。いくらなん
でも、あんなのはひど過ぎる。
助けなければ……?
自分が泣いていた時、誰も助けてくれなかったのに?
自分が叫んでいた時、笑っているだけだったのに?
それなのに、自分はどうして、あの子を助けるのだろう。
今だって、彼女たちは自分のことを、仲間だなんて思ってないのに。
「たひゅけてえええっ」
思考を蹴飛ばすように、月小路の悲鳴が轟いた。あわてて顔をあげる。助けるのか、助けな
いのか、彼女の命運は、アリスの両手にかかっている。きっとこの決断は、アリスの今後を左右
する。
「あ……今!」
何と言おうとしたのだろう。今から? 今さら? どちらにせよ、言葉は完成しなかった。アリス
の躊躇を待たず、支えを失った防音扉が、重い音をたてて部屋を外界から隔絶したのだ。
「あ……ああ……」
悲鳴はもう聞こえない。目の前にはただの扉があるだけ。開けばそこには平穏な寮の一室が
あるのだと、そんな願望すら抱かせる日常。
「あ……」
決断すら、できない。
アリスは無人の廊下、無音の扉の前で、ただ呆然と座りつづけた。
225:名無しさん@ピンキー
09/08/06 22:45:45 q8ArZmAf
以上です。まさか一月もかかるとは思わなかった。すいません…
んじゃつづき書いてくる。
…まだつづくよ!
226:名無しさん@ピンキー
09/08/06 23:01:34 ELu7zJZx
覗きに来たら投下宣言来たー!
早速脱いでライブで読ませて貰った乙、相変わらず壊しっぷりがハンパなかったよ
文月がアリスをねっとりと責め堕とすのも期待しているぜ
227:名無しさん@ピンキー
09/08/06 23:05:42 l/qaSLVu
うひょう! とととりあえず乙!
228:名無しさん@ピンキー
09/08/06 23:06:10 e2nmJnJW
新作きたーー!
こういう快楽を使って心を折る責めは素晴らしいね
前の幸崎の時もだけど、本当に心の一番弱いところを崩しにかかってるから
読んでて凄いゾクゾクした、GJ!
この後の展開はどうなるんだろう?続きも楽しみに待ってます
229:名無しさん@ピンキー
09/08/06 23:37:08 BfHfy6kZ
最高すぎる…
続きに期待!
230:名無しさん@ピンキー
09/08/06 23:43:31 kqDWTi1+
もう凄すぎて何を言っていいやら
とりまGJ!、
231:名無しさん@ピンキー
09/08/06 23:43:53 kqDWTi1+
もう凄すぎて何を言っていいやら
とりまGJ!、次回も楽しみに待ってるぜ
232:名無しさん@ピンキー
09/08/07 19:09:06 iRBd7A16
相手ごとに個性のある苛め方で飽きさせないなあ
曲を利用した描写も丁寧だし、とにかくGJです!
次回はいったいどうなるのか、楽しみにしています!
233:名無しさん@ピンキー
09/08/08 13:22:49 3FQZjDVG
凄いなあ
緊迫していて、迫力があって、なんというか本当に上手い
続きを楽しみに待ってます
234:名無しさん@ピンキー
09/08/08 15:05:37 Lc7rt7Db
待ってた。
精神的な攻めと肉体的な攻めがあわさってたまらんです。
235:名無しさん@ピンキー
09/08/08 21:41:16 V9K6IZQD
すごい…落とし方が半端じゃない…
こんなに続きが楽しみな作品はなかなかないな。GJ!
236:名無しさん@ピンキー
09/08/10 00:32:34 oddDo2Xw
やっぱり精神的に責めるの良いなぁ
237:名無しさん@ピンキー
09/08/10 03:20:07 Xusk5zOM
自分の写真ばらまいても仕返しを実行するところといい、
心の支えを的確にへし折るところといい、
文月様は魅力があり過ぎる。
そしてアリス関連の描写がたった1レスちょいなのに凄い絶望感を感じた。
238:名無しさん@ピンキー
09/08/17 00:33:31 Pq4gRpdX
ほっしゅほしゅ。
239:名無しさん@ピンキー
09/08/23 12:09:58 DTstysJj
ほ
240:名無しさん@ピンキー
09/08/23 17:51:16 uWxsoB1t
コレは保守しないわけには
241:名無しさん@ピンキー
09/08/25 01:20:31 F1gI+38G
ぴあの、が、ひけない
242:名無しさん@ピンキー
09/09/01 20:35:21 iFx4lTxH
ほしゅ
243:名無しさん@ピンキー
09/09/02 18:47:35 o8RT0NnL
次は誰をやるんだろうか?
244:名無しさん@ピンキー
09/09/02 18:54:09 rO1xX7C0
しょうがない、俺がやられるよ。
245:名無しさん@ピンキー
09/09/02 22:26:48 qRRLNRG+
いや、俺が
246:名無しさん@ピンキー
09/09/03 09:33:11 CiN0V3kj
>>244と>>245をシカトすればいいのか
247:名無しさん@ピンキー
09/09/08 00:30:26 8CiTQTh1
ときに続きはあるのだろうか?
このまま復讐しないともとれるんだが……
248:名無しさん@ピンキー
09/09/11 11:36:25 nKUVcoE0
>>247
>>225
期待しようぜ
249:名無しさん@ピンキー
09/09/12 02:58:17 RlJLYvrm
一年以上前になるかもしれんが2chのどっかのスレで投下されてたんだけど
テニス部の女子高生だか同士のいじめで羞恥、露出要素のあるエロ小説知ってる人いないかな?
250:名無しさん@ピンキー
09/09/12 04:12:09 NTis4b2Z
2chのスレで無ければ思いつくのがいくつかある
251:名無しさん@ピンキー
09/09/12 06:53:35 AfhFPbkz
>>249
もしかしてこのスレかな。チアリーダーという設定。
この作者、わりと歴史が長い。更新止まってるけどね。
スレリンク(pinkcafe板)
252:名無しさん@ピンキー
09/09/12 13:39:20 RlJLYvrm
>>250
レスありがとう!
教えてくれたら嬉しい
>>251
それだ!チアリーダーだったか
まさかこんな早く教えていただけるとは思わなかった本当にありがとう
253:250
09/09/13 02:23:14 6UPVdcDs
>>252
探してた物が見つかったみたいだけど
俺が思いついたのはネットだと
ブログ形式になる前の「選ばれし天使達の伝説」の裕美
後は商業誌とか
254:名無しさん@ピンキー
09/09/13 20:49:08 fzX+x9DH
>>253
ありがとう!調べてみる
255:名無しさん@ピンキー
09/09/16 22:40:45 TZCFemGf
女の子が女の子をいじめるお話ってエロスレあったのに…
あれもこのスレ同様良かったが落ちたんだよなあ…また読みてえ
256:名無しさん@ピンキー
09/09/18 17:27:08 g9pLDU5M
つづきマダ~?
257:名無しさん@ピンキー
09/09/18 22:43:54 HWGKGTJY
そろそろ作者死亡説が…
258:名無しさん@ピンキー
09/09/21 23:51:19 Pna121ao
まだー?
259:名無しさん@ピンキー
09/09/22 17:40:00 cbNPjVAl
保守 マターリ待とうぜ
260:名無しさん@ピンキー
09/09/25 01:53:52 z2LyKas6
>>257
まさか作者はうs…
261:名無しさん@ピンキー
09/09/25 15:05:06 XlSh2V34
うしろの百太郎
262:名無しさん@ピンキー
09/09/28 22:05:27 BZgrmpMJ
このスレも潮時か・・・
263:名無しさん@ピンキー
09/09/29 07:08:53 EImJ4+KN
何そんなことは
264:名無しさん@ピンキー
09/09/30 00:12:35 V5ysazQz
マターリ待とうぜ
265:名無しさん@ピンキー
09/10/06 03:51:04 KGGKyCcS
いつまでも
266:名無しさん@ピンキー
09/10/06 07:56:04 /enZc8jC
待つわ
267:名無しさん@ピンキー
09/10/09 06:36:00 sYULcnIj
age保守
268:名無しさん@ピンキー
09/10/10 15:53:42 Rhl6C0dt
投下したい人は投下していいでしょ
269:名無しさん@ピンキー
09/10/10 17:18:12 zA0dWgyW
そりゃもちろんいいだろ。
長編連載中だからって、完結するまで待つこたないわよ。
270:名無しさん@ピンキー
09/10/10 20:38:23 hlvVB6nv
>>268
しちゃいなさいよ…見ててあげるから。
271:名無しさん@ピンキー
09/10/13 13:29:04 Zi/GCEbg
まあ実際に投下する人がいるかだろ問題は
休養中の職人に気を使う人も居るだろうし
272:名無しさん@ピンキー
09/10/19 22:52:46 IJrUjD8Q
保守
273:名無しさん@ピンキー
09/10/22 21:01:10 Sfqo4sFm
保守
274:名無しさん@ピンキー
09/10/23 12:53:18 QlP+3pja
また女子高系いじめ誰か投下しないかな
275:名無しさん@ピンキー
09/10/23 14:40:22 ZonyEoFv
ご自分でお書きなさい
276:名無しさん@ピンキー
09/10/24 11:47:57 2CVLtoNw
書きたいなら早く書きなさい?
見ててあげるから…
277:名無しさん@ピンキー
09/10/24 14:39:25 agFGw7Zm
ほら、自分の文章相手に見せるの恥ずかしいでしょ…?
278:名無しさん@ピンキー
09/10/25 00:19:35 LQ4PhqJl
このスレはもうじき死ぬな
279:名無しさん@ピンキー
09/10/29 15:31:19 JPkiEqz4
誰か投下しないと
280:名無しさん@ピンキー
09/10/30 13:32:32 KzYb7RZZ
女同士の集団いじめSSって貴重なんだよ、落ちないようにしないと
281:名無しさん@ピンキー
09/11/02 09:07:28 cu5z3hu7
保守
282:名無しさん@ピンキー
09/11/03 10:40:09 XK6e0sJk
ほ
283:名無しさん@ピンキー
09/11/06 14:40:03 hM41ilxl
つうか別に投下してもいいんだよな、この前途中で消えた作者はもう戻って
来ないんだろうか…?
284:名無しさん@ピンキー
09/11/06 18:32:32 Sszh2jzO
一度途絶えると本人も出てきにくい(or原稿に手をつけにくい)のかもしれない
別に個人スレじゃないから投下はぜんぜんおkですよ
285:名無しさん@ピンキー
09/11/06 19:43:05 n+QtqsSd
このスレはいじめ無しのSSでもいいのかな
規制に巻き込まれてるから投下は今は無理だが
286:名無しさん@ピンキー
09/11/06 21:15:20 PbKkMumv
いじめなしならスレちがい
287:名無しさん@ピンキー
09/11/07 01:09:15 RrcYJyzk
いじめ要素は欲しいなあ。
個人的にはイジメかレズどっちかといえばイジメが重要。
イジメの首謀者が女でもちろん標的も女でさえあれば
男をけしかけて犯させるSSでもいいくらい。
288:名無しさん@ピンキー
09/11/07 01:39:21 ItGZ83Dk
このスレの連中は自分で書かずに誰かに書かせようという書き手いじめしてる連中ばかりだな
289:名無しさん@ピンキー
09/11/07 15:51:09 qXyozgMr
確かにそうだなあ…あと誰か書けば皆投下しやすくなると思うんだけどねえ
あと、消えた職人さんの作品がレベル高いから投下しにくいってのもあるのかもしれないな
290:名無しさん@ピンキー
09/11/15 04:00:26 +VldGA4N
補修
291:名無しさん@ピンキー
09/11/18 15:07:06 RHQOsKh/
いじめ好きだから誰か期待するよ
292:名無しさん@ピンキー
09/11/22 13:29:11 gWqlkdEq
これだけ間が空くとは…誰か制作中なんじゃね
293:名無しさん@ピンキー
09/11/23 12:59:00 yaXuHp4n
い
294:名無しさん@ピンキー
09/11/25 17:04:20 tMI59gXT
がんばれ
295:名無しさん@ピンキー
09/11/30 18:02:44 kEqCTwsZ
待ってるよ
296:名無しさん@ピンキー
09/12/03 12:14:32 PoopuUTZ
そろそろ
297:名無しさん@ピンキー
09/12/04 17:04:48 FaohTdtr
もう一声!
298:名無しさん@ピンキー
09/12/04 18:20:16 tr8FKdDX
Don't 来いです
299:名無しさん@ピンキー
09/12/05 03:40:41 cSe0C/vR
ん?何か呼ばれた気がした
300:名無しさん@ピンキー
09/12/06 17:03:03 nClvIQgC
>>213のつづきがやっとできました。
お待たせして申し訳ない。以下から12レス分投下します。
301:女学院復讐SS6 1/12
09/12/06 17:04:05 nClvIQgC
有瀬文月が自分の嗜虐嗜好を自覚したのは、彼女が中学にあがる前だった。
十歳になる頃には既にそれに近い感覚はあったが、その時の文月にはまだ、そんな性癖が
存在するということ自体、わからなかったのだ。文月の常識はまだ、自分の異常を押しとどめる
ことに成功していた。
それが完全に崩壊したのが小学校四年生。学校で飼っていた兎が殺されるという事件が起
きた時だった。
周囲の同級生がその光景の悲惨さに泣く中、文月は自分が悲しんでいないことに気がつい
た。いや、悲しまなかったわけではない。それよりも遥かに、強い感情があったのだ。
兎のうちの一羽にはまだ息があった。ただ生きているだけで、あとは死んでいくだけだろうそ
の兎を、文月は誰にも悟られないようにこっそりと殺した。
どうせ苦しんで死ぬのだから、早く楽にしてあげよう、と、そんな考えがあった。安楽死という
概念こそ知らなかったが、文月はやさしさから兎を手にかけたのだ。
それが直接的なきっかけだった。
死んだ兎を見た文月が得たものは、ひどく鬱屈した、しかし激しい―快感だった。
有瀬文月はこの時、自分が他者を虐げることに悦びを感じることを確信した。それを異常と
知っていながら、否定する気は起きなかった。
そして、文月が自分が『虐げる側』なのだと自覚したのと同じ頃。
伊勢宮アリスもまた、自分が『虐げられる側』なのだと、ぼんやりと自覚していた。
二人はこれまで何の接点もなく生きてきた。その二人が接触した時、アリスは虐げる側で、
文月は虐げられる側に立っていた。
アリスは変わりたいと考えている。虐げられて生きるのは嫌だった。いじめられる側に理由が
あるのなら、自分が変わることでそれを無くそうと思った。
文月は変わる必要はないと考えている。誰かを虐げながら生きるのは面倒だから、この感情
を抑えて生きようと思った。たまに溜まったものを晴らしていけば、それで済むはずだった。
そうしてどこまでも対照的な二人は―結局、すれ違ったのだった。
「ふぅ……」
自室の天井を見上げて、文月は小さく吐息をついた。一仕事終えた虚脱感は、一日置い
ても抜けきらない。やりつくした、というには些か控えめな遊びだったが、それでもここまで腕を
振るったのは久しぶりだ。使いもしないのに集めていた嗜虐コレクションが日の目を見たことも、
どこかうれしい気分になっている原因だろう。
いつもは大きい鞄にいれて隠してあるそれらは、ストレス発散として収集しているものだ。見
つかったら大変だが、入学のさいこっそり持ち込んだのである。
文月の父親である、ALICEグループ総帥有瀬王春は鞄の中身も文月の性質も知っている
が、何も言わずに彼女を送り出した。態のいい隔離だと文月は考えていて、それはあたってい
る。
大人しくしていよう、と思ってはいたのだ。中学の時に少しばかり『やりすぎた』せいで、文月
はここに放り込まれた。卒業するまで粛々と過ごそうと、そう考えてはいた。
「でも、しょうがないわよね……」
売られた喧嘩だ。しかも、文月は二ヶ月我慢したのである。
机の上にあるノートパソコンにちらりと目を向ける。開きっぱなしの液晶はスクリーンセイバー
に切り替わっていた。
思い出にするほど時間が経っているわけではないが、デジタルカメラのデータでも見ようかと、
文月の指がタッチパッドを操作する。が、フォルダを開きはしなかった。
部屋の扉を、遠慮がちにノックする音が響いたからだ。
「なあに、早苗」
「文月さん、今、大丈夫ですか? クッキー焼いたんですけどっ」
302:女学院復讐SS6 2/12
09/12/06 17:09:14 nClvIQgC
頬を赤く染めて、わずかに開いた扉からこちらを伺うのは、同室の早苗だ。ショートボブの黒
髪で、頭の両端からちょこんとひと房飛び出すように結わえている。待ちきれないように体を揺
らす早苗にあわせて、そのひと房が小動物の尻尾か、あるいは耳のようにぴょこぴょこと跳ね
ていた。
「そうね、いただくわ」
ノートパソコンを閉じて、文月は扉をくぐった。礼染女学院の寮は二人一組で使うが、一室
が三部屋に区切られている。それぞれの個室とダイニングである。簡易キッチンも用意されて
いて、早苗はここでお菓子を作るのが趣味だった。
「文月さんこないだの夜は忙しいみたいだったけど、少しは落ち着いたんですか?」
「そうね……だいたいの後始末も済んだし、もう、全部終わったと言ってもいいわね」
「そうなんですか。えへへ、なんだかわからないけど、無事にすんで良かったですね」
「無事に―」
その言葉に文月はくすりと微笑んだ。無事に。いったい、何に対してそう言えばいいのか。
糞尿にまみれて自己を否定した幸崎幸にか。
唯一の支えを破壊された月小路妃美歌にか。
「―そうね。無事にすんで、何よりだわ」
無事といえるのならば、あのクォーター、そもそもの発端の位置にいた伊勢宮アリス、彼女だ
けは無事だといえるかもしれない。文月は彼女に何もしていない。少し厳しい指摘をしただけ
だ。まさかあの程度で心が折られる人間などいまい。
正直、文月はあまり彼女に興味がない。芯の弱い人間はつまらないのだ。
「はい、クッキーと紅茶です。自信作ですよ!」
「ありがとう」
かわいい後輩の作ったクッキーを口に運びながら、文月はこの穏やかな生活をいとおしいと
思った。心のどこかで何かが唸り声をあげていたが、そんなものは気のせいだ。
復讐は終わった。暴れていい時間は終わったのだ。
だからこの獣は鎖につないで、眠らせておかなければいけない。
ことの終わりから二日を経て、文月は小さな幸福の中に、やっと復讐の完成を自覚した。
こうして、有瀬文月の短い復讐は幕を下ろした。
■■■
香堂智恵はその日、閑散とした放課後の教室で、一人本を開いていた。
読み始めると終わるまで止まらないのは彼女の悪い癖だ。どうしても続きが気になって、本を
閉じることが出来ないのである。それでも授業や用事があればそちらを優先させるが、今日は
もう帰るだけだ。ページが残りわずかということもあって、読みきってしまおうと考えたのである。
物語は終盤に向かって盛り上がっていく。結末まではもうあと少しだ。……と、そこで、はやる
気持ちを抑えながらページを繰っていく香堂の指がピタリと止まった。
「ああ、よかった。まだ残ってましたか」
教室の入り口に、見知らぬ生徒が立っていた。とっさにスカーフのラインを確認する。二本。
一学年上の先輩だ。
「香堂さん、よね?」
「はい」
間の悪いことに、自分に用事があるようだ。香堂はため息を飲み込んで本を閉じた。教室に
すたすたと入ってくる生徒は、背筋をピンと伸ばした凛々しい印象のある人物だった。本を鞄
にしまって、階段状になっている教室を前方へと降りていく。先輩は微笑みを浮かべて待って
いた。
「私のことわかるかしら。生徒会なんだけれど」
「ああ……」
言われてみれば、確かに行事のたびに壇上で見かける顔だ。しかし生徒会が何の用だとい
うのだろう。
303:女学院復讐SS6 3/12
09/12/06 17:10:15 nClvIQgC
ふと、香堂は数日前の出来事を思い出した。過去、香堂に凄絶な屈辱を与え、そして今に
なってその記録を外部にばら撒いた幸崎幸という生徒のことだ。
表沙汰にはなっていないはずのアレが、そして香堂自身は参加していなかったが、その後に
起こったはずの月小路妃美歌への報復が、問題になっているのだろうか。
「たいしたことではないのだけど、会長が呼んでいるのよ」
「会長が……」
相手の言葉を繰り返しながら、香堂は心中、そんなはずはない、とつぶやいた。幸崎も月小
路も事を公にはしていない。幸崎は出来るだけ平静を装って登校してきているし、月小路が
学校に来ないのはいつものことだ。復讐劇を計画した有瀬文月の言葉が正しければ、もう何
もかも終わっているはずなのだ。
「行ってもらえる?」
「はい」
断る理由はない。香堂は頷いて、生徒会役員だという先輩と連れ立って教室を出た。他に
も用事があるらしく、そこで先輩とは別れる。生徒会室までの道のりを思い浮かべながら、香
堂は廊下を歩き出した。
「何の用ですかね……」
件の復讐劇に関して、香堂の考えは他の参加者とは異なる。
そもそもの立案者である有瀬文月や、柚子澤蜜柑、逢坂仁和子などは復讐を楽しんでい
た。他者に暴力を加えることに、喜びを感じていたのだ。
香堂にもそれ自体を否定する気はない。ないからこそ、復讐に参加した。
だが、釈然としないものを抱えているのも、また確かだった。
かわいそうだとは思わないが、自分が手を汚している事実にいやなものを感じた。復讐という
名目で暴力を振るうことは、幸崎が自分にしたこととなんら変わりがないのではないかと、そう
思わないではいられなかった。
だから、彼女は月小路を標的とした復讐には参加しなかったのだ。
「そういえば、相田さんはどう考えているのかしら」
実行に際して、相田涼香だけは現場にいなかった。彼女が復讐についてどう考えているの
か、聞いてみたい気がした。
そんなことを考えているうちに、生徒会室の大きすぎる扉が目の前にあった。ご丁寧に用意
されているノッカーを叩いて、
「香堂智恵です」
と、声をかける。中からすぐに「どうぞ」と涼やかな声が返ってきた。
今の生徒会長は天王寺弥生という三年生で、文武両道の才女である。女系で有名な天王
寺家の三女であり、ずば抜けた才覚から家の今後を任されていると噂される。
女傑。そんな言葉が似合う女性である。
存在は知っていたが、面と向かうのははじめてだ。いささかの緊張を自覚しながら、香堂は
扉を開いた。
とたん、噎えた匂いが立ち込めた。
汗と、尿と、そして濃密な淫液の匂いが交じり合う、一度嗅いだら忘れることのできそうにな
い匂いだった。そう、実際香堂はこの匂いのことをよく覚えていた。
あの時、授業中のトイレの中は、この香りで満ちていたのだ。
「あ……ぅぁ……」
うめき声が聞こえた。ふらふらと室内に踏み入ると、背後でひとりでに扉が閉まる。重厚な大
扉はそれなりに大きな音を立てたが、香堂にそんなことを気にする余裕はなかった。
304:女学院復讐SS6 4/12
09/12/06 17:12:16 nClvIQgC
広い生徒会室。その中央に、生徒が独り、白目を剥いて横たわっていた。制服は着ていな
い。それ以外のどんな服も身に着けていない。十代の裸身をさらけ出して、時折ビクビクと痙
攣している。
口元には何か器具のようなものを噛まされて、こぼれた涎が絨毯を汚していた。股座には手
首ほどもありそうな巨大な筒状の何かが突きこまれて、処女でもないはずなのに血が流れてい
る。一歩近寄ると、重量に引かれて横に流れる両乳の先端に、ピアスのような物がゆれている
のまで見えた。
それは、明らかな陵辱の痕跡だった。
「あ……いだ、さん……」
ぐらり、と世界が揺れる。吐き気すら覚えた。
その名前を、香堂は知っている。相田涼香―計画に参画しながら直接的な報復には及
ばなかった、五人目の復讐者。利尿剤入りのジュースを幸崎に飲ませた、仕掛け人。
「な、なんで、こんな……」
声がふるえる。足もふるえている。報復だということは、すぐに思い当たった。だが誰が? 幸
崎幸にはできない。彼女の心は文月がへし折った。月小路妃美歌にはもっと無理だ。学校に
すら来ない引きこもりが、どうやってここまでいたぶれるというのか。
誰もいない。復讐は終わっている。報復に報復が返ることなど、ないはずなのに。
「当然の、結果ですよね」
この部屋に入室を促したのと同じ声が、そうつぶやくのが聞こえた。あわてて視線をめぐらせ
る。探すまでもない。彼女は香堂の真正面、部屋の奥、中庭の見渡せる大きな窓のそばに立
っていた。最初から、隠れもせずにそこにいたのだ。
「私たちに復讐した貴方たちなら、これを否定することは、できないですよね」
そこにいたのは、幸崎幸でも、月小路妃美歌でもない、そしてもちろん、この部屋の主人で
あり、香堂を呼びつけたはずの生徒会長でもなかった。
輝くような金の髪、吸い込まれるような碧眼。学院でも珍しいクォーター……
そう。
香堂の時にはいなかった、三人目の陵辱者。文月が唯一見逃した、かつて被害者だったら
しい誰か。
「香堂智恵さん。私は貴方に、復讐します」
伊勢宮アリスが、そこにいた。
■■■
終わってみればたった一日の復讐劇は、文月の生活に何も残さなかった。二ヶ月に渡った
陰湿な嫌がらせが消えたくらいで、文月は当たり前の顔をしてゆるやかな日常へ帰ってきたのだ。
一週間ほどの間を置いてそれとなく探りをいれてみたところ、アリスや幸崎はきちんと登校し
ているらしい。月小路は相変わらず引きこもっているようだ。
文月の行為が明るみに出ることはなかった。学院の性質はもとより、幸崎や月小路が外部
に漏れることを嫌ったのだろう。特に月小路は、ピアノが弾けなくなった、などと言えるはずもな
い立場にいる。
柚子澤や香堂とは、すれ違えば挨拶する程度の関係だ。そもそもお互い、会えば嫌な記憶
を思い出す。用もないのに顔をつき合わせても憂鬱なだけだ。
逢坂仁和子だけは持ち前の明るさでよく声をかけてくれるが、それもさほど仲が良いというわ
けでもない。そもそも学年が違う―彼女は中等部なのだ。
新調した携帯電話には、誰のアドレスも登録しなかった。
唯一の例外として、相田涼香とはそこそこに親密な関係を築いている。彼女は復讐に直接
参加しなかったこともあり、撮影したデータを肴に二人でこっそりとジュースで乾杯などしたものだ。
305:女学院復讐SS6 5/12
09/12/06 17:13:13 nClvIQgC
ともあれ、文月にとって、それが今回の顛末だった。
「……?」
だから、その日帰宅しようと開いた靴箱の中を見て彼女が眉をしかめたのも、無理からぬこと
だった。
靴はある。きちんと揃って入っている。問題は、その上に乗っているCDのケースだった。
あるはずのものがないということは以前ならばよくあったが、ないはずのものが入っているのは
これがはじめてだ。
「……ラベルはなしか」
透明なケースにおさめられているのは、どうやらDVDのようだ。白いレーベル面には何も書
かれておらず、市販されているデータ用ディスクであることが伺える。一応靴箱を確認するが、
自分のものだ。
ここでディスクを見ていてもはじまらない。文月はそれを鞄にしまうと、普段どおりの足取りで
昇降口を後にした。
文月は部活動に所属していない。純粋な帰宅部はこの学院では珍しいが、そんなことを気
にする文月でもないから、授業が終わればまっすぐ寮に向かうのが彼女の日常だった。だから、
彼女が寮に戻る時、中はほとんど無人である。この日もそうだった。
自室の扉を開けて、革靴を脱ぐ。ちゃんと鍵をかけてから猫のスリッパを取り出して、かわり
に靴を靴棚にいれる。靴棚には他に数足の靴と、ウサギのスリッパが入っている。
足が沈み込むような錯覚すらする絨毯を踏みしめて、文月は『ふづきさんのお部屋』というプ
レートのかかった扉の前まですたすたと歩いていく。早苗が作ったプレートに少し笑みを浮か
べて、扉を開いた。
無駄なものを極力省いたシンプルな部屋に入ると、文月はまず机の上のノートパソコンを開
いた。鞄をその脇に置いて、中からディスクを取り出す。本体脇のスイッチを押してトレイを引
き出すと、今は何も入っていないそこに白いディスクを置いた。
ヒュイィン、とスムーズな稼動音を立ててトレイが飲み込まれていく。しばし待つと、画面上に
ディスクの中身がフォルダとして表示された。
表示されているフォルダの中には、ふたつのファイルが入っている。どちらも動画ファイルの
ようだ。タッチパッドに指を滑らせて、文月はカーソルをうちのひとつに合わせた。
開く前にウイルスがないかどうかだけチェックする。手馴れた調子でスキャニングを済ませると、
文月は躊躇も好奇心もなく、いっそ事務的な調子でファイルを開いた。
自動で動画再生ソフトが立ち上がり、小さなウインドウが現れる。かすかに目を細めて、文月
は細い指先でいくつかのキーをタッチした。すぐにウインドウが全画面表示に切り替わる。
まず、ノイズが液晶を埋めた。それからわずかの間を置いて、映像が切り替わる。
どうやら室内らしい。しかし、解像度が低く粗い上に、やたらと上下に揺れていて、何が映っ
ているのかほとんどわからない。スピーカーから聞こえてくるのは何気ない雑談のように思える
……これは、校舎の中だろうか。
幾度か近い位置からささやきかわす声が聞こえた。どうやら撮影者の声らしい。そこでやっと
画面の揺れがおさまった。やはり校舎の、廊下のようだ。カメラは下を向いていて、見慣れた
絨毯と、上履きを履いた生徒たちの足がいくつか見て取れた。
休み時間か、放課後なのだろうか。
カメラの標的は目の前にいる生徒らしい。一体どういう方法で操作しているのか、足元から
ゆっくりとフレームをずらしていく。下から覗き込んでいるとしか思えないのだが、まさかそんな
真似を校内でできるはずもない。
ターゲットは黒いストッキングを着用していた。繊維が細かく肌に吸い付くそれを、カメラはの
ろのろと追っていく。まるで安物のAVのようだと文月は思った。さすがに、見たことがあるわけ
ではなかったが。
太ももが映し出される頃になって、標的となっている生徒のスカートが短いことに気がつく。
306:女学院復讐SS6 6/12
09/12/06 17:14:25 nClvIQgC
礼染女学院は成り立ちや風聞から受けるイメージほど厳しい学校ではない。さりとて、こと服
装に関して言えばそこまで自由というわけでもないはずなのだが。
そんなことを考えていた文月は、次の瞬間映し出されたものを見て、一瞬、かすかに眉を跳
ね上げた。
形のよい、丸いお尻。ストッキングによって形を整えられ、きゅっと引き締まったそれが、フレ
ームにおさめられている。やはり下から覗き込んでいる。何か器具を使っているのだろう。
短すぎるスカートの襞はかろうじてお尻の丸みを隠す程度で、あれではさすがに指導を受け
る。すこしでもかがめば下着が見えてしまう、そういう長さだった。
が、その心配はない。
その生徒はそもそも、下着なんてつけていなかったからだ。
「……よね、これは」
粗い画像にまじまじと目を凝らす。黒いストッキングなんてつけているものだから余計に分か
りづらいが、下着のラインが出ていない。どころか、繊維の奥には淡い茂みまで見える。
文月は一度、映像を止めた。
液晶を見つめる。気のせいかと思ったが、違う。粗い画像でも見分けやすい、白い楕円形の
何かが、ストッキングの向こう側で剥き出しの秘部に触れている。
ローターだ。
実物を、文月も持っている。指先でつまめる程度の小さな器具。女性が自身を慰めるため
に使う、電動式の玩具である。
軽い仕草で指を跳ねさせ、キーを叩く。映像が再開された。
よくよく耳を澄ませば、モーター音も聞きとれる。カメラはいたぶるように秘部を眺め回して、
更に上へと向かった。
礼染女学院はセーラー服だ。今は移行期間なので、夏服冬服の判断は各自に任せられる。
画面に映る生徒は夏服を着ていた。あるいは、着させられていた。
「つけてない……」
ぽつり、と文月はつぶやいた。薄手のセーラーは陽に透かされて、その奥にあるものをさらけ
出す。もちろん本当に透けているわけではない。だが、膨らんだ胸部の頂点で震える突起が
生地を押し上げるのはどうしようもない。うっすらと桜色が見えるのは、画面上の錯覚か、ある
いは単なる気のせいなのか……それとも。
更に、画面は上へ向かう。白い首筋はじっとりと汗に濡れていた。羞恥に耐えているのか、
悦楽を堪えているのか、その両方なのか。
震える顎、引き結んだ唇。形のよい鼻、その上に乗る眼鏡のブリッジ。
「……」
ここにきて、ようやく文月は映る人物の正体を知った。そして同時に、この映像の意味をほぼ
正確に悟った。
今にも泣きそうな顔で改造制服に身を包み、人のあふれる廊下で身を震わせているのは、
誰であろう、香堂智恵だった。
■■■
見られている。
事実はどうあれ、香堂智恵はそう感じていた。実際、廊下で談笑する生徒たちのうち何人か
は、過激すぎる香堂の制服に注目している。
黒いストッキングはいつもよりも肌の露出を少なくしているはずなのに、太ももを撫でる風がい
やに冷たく感じられた。短すぎるスカートをおさえる手がカタカタと震えて、掌にはじっとりと汗
が浮かび上がっている。
「いい格好ですね」
背後から、そう声が聞こえた。透き通るように美しい声だった。
「こ、こんな格好、」
307:女学院復讐SS6 7/12
09/12/06 17:15:29 nClvIQgC
「自分で選んだんですよ、香堂さん」
声は、そう続けた。唇を噛んで、香堂は震える顔を前に向けた。
―生徒会室で相田涼香を発見した香堂は、選択を迫られた。この場で彼女と同じように
陵辱の憂き目に遭うか、それとも、とある格好をして校舎を一周するか。
香堂の脳裏に閃いたのは、かつて自身が受けた屈辱であり、そして幸崎幸に与えた暴虐だ
った。あんな思いをするのはもう嫌だ。
逃げる、という選択肢もないではない。だが、アリスが生徒会室を陵辱の舞台に選んだという
ことは、少なくとも生徒会のうち幾人かはアリスの味方だということだ。
そう、香堂を呼びに来たあの役員も、そうなのだろう。逃げ出しても意味がない―状況が
悪化するだけだ。
かくして、香堂は卑猥な制服に身を包むこととなったのである。
「それじゃあ、行きましょうか。ゆっくり歩くんですよ」
「……」
肩越しに、ちらりと視線を投げる。圧倒的優位な立場から香堂をいたぶっているはずの伊勢
宮アリスは、なぜか厳しい顔をしていた。緊張しているように見える。
「早くしてください」
促されるままに、香堂は歩を進めた。
「んぅ……」
一歩踏み出しただけで、自然と声が漏れた。秘部に埋め込まれたローターは微細な振動を
繰り返して、絶えず刺激を送り続けている。歩くだけで、その震えが倍増されて伝わってくるのだ。
体の中心を撫でるような曖昧な刺激は、しかし確実に香堂の官能を揺さぶっていた。
なるべく刺激を抑えるように、内股になってしずしずと歩き出す。訝しげな視線を何度か受け
たが、それ以上に注目してくる生徒はいなかった。『スカートが短い気がする』程度の違和感
なのだろう。まさかその内側で、ローターが暴れていることなど彼女らに知るよしもない。
「そんなにゆっくり歩いていたら、終わりませんよ」
「……ぅ、んぁ……」
ついさっきとまるで逆のことを言いながら、アリスがくすくすと笑った。ローターの振動がわず
かに強くなる。アリスが急かしているのだ。
歩く速度をあげようにも、少し大またになっただけでスカートの裾が気になって足が止まって
しまう。ストッキングを履いているから、遠目になら下着をつけていないことは悟られない……そ
う思っても、やはり大きな動きを躊躇してしまう。
そうしてまごまごと鈍重な歩みを続けるからかえって注目の機会を増やしてしまうのだ。
「ぅ、うぅ……」
じわじわと擦り寄ってくる官能の熱は、お腹の下の方にたまって全身を炙っている。微妙す
ぎる刺激はかえって自分自身の性欲を強く意識させる。体中の感覚が全て股間へ集まって
いくような錯覚すらあった。
「足が止まっていますよ」
「ひぁぅっ―」
思わずあげそうになった嬌声を、無理やりに飲みこむ。ローターからの刺激が、急激に強ま
ったのだ。
一気に最高値まで引き上げられた振動は、すぐにまたゆるやかに撫でさする曖昧なラインに
戻されたが、一度あげてしまった声は周辺の生徒たちの目を集めるのに十分すぎた。注目か
ら逃げるように、ひきつりそうになる足を懸命に動かして、香堂は廊下を先に進む。
「そんなにあわてなくてもいいのに」
急がせたいのかそうでないのか、アリスがまた矛盾したことを言う。
ほんの一瞬ではあったが体の中心を貫いた衝撃は、香堂の中にあるスイッチをいれるのに
十分だった。
308:女学院復讐SS6 8/12
09/12/06 17:16:48 nClvIQgC
鼓動の速度が倍になる。さっきまでと変わらないはずの振動が、妙に強く感じる。震える足が
少しずつ前に進むと、その度に秘唇をさする衝撃が強くなる。思わず太ももをすり合わせて、
そのはしたない仕草に気づいてあわてて前進を再開する―
「淫乱」
―それら一連の行為を見つめて、ぼそり、とアリスがつぶやいた。
「……ッ」
否定できない。吐く息すら荒く、頬の紅潮している自分が、何を言えるだろう。
息がおさまらない。今が冬だったら、口のまわりがずっと白くけぶっているだろう。熱を孕む吐
息が口の端から漏れて、それをこらえようと唇を合わせれば、口内にじっとりと唾液が溢れる。
涎を零しているのは下の口も同じで、汗と混じりあった濃密な粘液が股間からふとももまでをぐ
っしょりと濡らし、ストッキングの繊維を肌に張りつかせていた。
「はぁっ……は、ふ……」
右足を前に出す。ぐちゅり、という音が聞こえる。
左足を前に出す。にちゃり、という音が聞こえる。
「は……ぁ……」
気のせいだ。本当にそんな音が響いているわけではない。だが、一度頭の中で鳴りはじめた
淫音は、まるで香堂を煽るようにこだまする。
そうしてその音が響くたびに、体の奥の方で、何かがずぐん、ずぐんと蠢くのだ。股座から伸
び上がる性感は膣道を通って子宮に達する。そこで確かに、得体の知れない何かが暴れて
いる。
「ん……んふぁ……は、はぅ……」
ふとももをすりあわせながら歩く香堂は、自分が性欲をこらえるためではなく、貪るためにそう
しているのだと、うすうす気づきはじめていた。膝頭がこすれあうたびに大きくなる刺激が、香堂
を内側から破壊していく。尻を振りながら歩く姿がどれほどいやらしく惨めか、ちらちらとこちら
を伺う同校生たちを見ればわかりそうなものだ。
「とてもかわいらしいですよ。まさに、雌犬という風情で」
「は、ぅ……んぅ……!」
引き結んでいるはずの唇から、あえぎ声と一緒に涎が一滴こぼれた。あわてて口元をぬぐって、
「ぁ……」
掌についた唾液を見て、香堂は一瞬動きを止めた。
手を振って、また歩き出す。ぬらりと光る唾液は彼女の性を象徴しているようで、あげく香堂
はそれを『舐めたい』と思ってしまったのだ。
「ふ……」
ローターの刺激が少しずつ強くなっていることを、この時香堂はやっと悟った。弱い刺激を
延々与えているように思わせて、気づかれないようにリモコンを操作していたのだ。
「ん、んぁ……あふ……」
気づいてしまうと、余計にローターが意識された。脳裏に、かつて凌辱された記憶が蘇る。
泣いても叫んでも許してもらえなかった、あの地獄のような時間が。
視界がだんだんと曖昧になっていく。すれ違う生徒たちの顔がよく見えない。ここはどのあた
りだろう。廊下の景色はどこも似たようなもので、それが余計に香堂の理性を削り取っていく。
朧とした世界を漂うように歩き続ける。もはや明確な感覚は、股間を嬲る淫悦だけだった。
「香堂さん、止まってください」
唐突にささやかれて、香堂は足を止めた。現実から乖離していく香堂の意識は動きを止め
ても不明瞭なままで、ぼんやりと靄がかった世界を眺めるばかりだ。半開きの口元からは断続
的にあえぎ声が漏れている。かろうじて声を抑えているのが、ぎりぎり残された理性だった。
「ここには、誰もいませんよ」
309:女学院復讐SS6 9/12
09/12/06 17:17:24 nClvIQgC
「ぁ……あ、ふぁ……」
「いくらでも、声をあげていいんですよ」
「あ……」
まるで催眠のように、アリスの声が忍び寄ってくる。綻んだ理性の隙間を通りぬけて、香堂の
内側を侵略していく。細く綺麗な指がそっと震える尻に添えられた。それだけで、香堂は背を
震わせてしまう。
「ほら」
短すぎるスカートの裾をくぐって、ぐしょぐしょに濡れたストッキングを撫でる。薄布一枚隔て
た感触が、優しくなだらかに、香堂を昂ぶらせる。
そうして、
「叫んで、いいんですよ……!」
小声でそういうと同時に、アリスの指が、ストッキングごと香堂の菊座につきこまれた。
「―っ」
声をこらえる。肛門から背筋を突き抜けた感覚は紛れもない快感で、曖昧模糊としていた香
堂の視界を真っ白に染め上げた。それでも嬌声だけはあげずに、天を仰いでぶるりと大きく震
える。
「叫んでいいと言っているのに」
呆れたようにアリスがそうつぶやいた。指が引き抜かれる衝撃にまた背を震わせて、香堂は
肺の奥から、大きく吐息をついた。予想外の強襲を乗り切った、安堵の吐息だ。
香堂は気づかなかった。
アリスは、その吐息を待っていたのだ。
「―ひぁああぁあああっ!」
ぐぢゅり、と膣内で響く淫音が、体の中で反響する。一度抜かれたはずの指は、一瞬の油断
に前に回りこみ、今度は疼く秘唇に突き立てられたのだ。
「あら、どうしたんですか、そんな悲鳴をあげて」
「なっ、中、な、なかっ、中に、入っ……あぁあああああっ!」
「何が、入ってるんですか?」
「ろ、ろぉっ、あ、ぁああっ、いやぁああっ!」
アリスが指を蠢かせると、狭い膣道で震えながら『それ』も身を捩る。そう、アリスの指はストッ
キングごと、その奥のローターまで、香堂の中に押し込んでしまったのだ。
最大値で震える淫具を埋め込まれた膣は、わななきながら未知の悦楽を吐き出していく。膝
が震えて立っていることすらできない。内側から送り込まれる刺激は、先ほどまでの比ではな
かった。
がくり、と膝が落ちる。同時にアリスの指が離れていくが、よほど奥までねじ込まれたのか、ロ
ーターは落ちてこない。膣の収縮運動でストッキングだけがゆるゆると吐き出されてきても、肝
心の玩具は唸り声を止めないまま、香堂の中で暴れて回っていた。
「はっ、はぁ、い、いや、やぁああ……」
両手を床の絨毯について、涙と涎を零しながら、香堂は立ち上がることができないでいた。よ
つんばいの姿勢で腰をひねりながら悶える姿は、どう見ても性を懇願するあさましい雌だ。
このローターをどうにかしなければいけない。そうしなければ、気が狂ってしまう。香堂は震え
る指を、自身の秘裂にそっと這わせた。布地に浸透した淫蜜に指先がぬめり、なめらかな繊
維の感触がふっくらとした土手を撫でる。這い上がる電流にも似た感覚に背を震わせながら、
香堂は指先を蠢かせる。しかし、ストッキングが邪魔をして秘所に指を触れさせられない。アリ
スがそうしたように、勢いよく突き込めばいいのだろうが、それでローターを取り出せるとは思え
なかった。
310:女学院復讐SS6 10/12
09/12/06 17:18:16 nClvIQgC
「い、いう、ん、んんぁあああ……っ」
片腕を肘までついて、腰を振りながら秘所をまさぐる。これではただの自慰だ。それも校舎の
中で、まだ人がいるというのに。
「あ、ああ、ああああ……っ」
違う、ただローターを取り出したいだけだ。違う。違う。違うのに、布地ごしに暴れる指を止め
られない。
「あ、ああ、あっ、ああぁ、あっ……ふぁああっ、」
加減もなく掻き毟っていれば、当然ストッキングは伝線する。どころか、布を引き裂く音と共
に、香堂の指はついにストッキングを破ってしまった。涼やかな風が股を走り抜ける。その瞬間、
確かに香堂はつぶやいていた。
「さわれる、」
と。
「ふぁっ、ああああっ!」
何もかも振り切るように突きこんだ指は、剥き出しの淫裂を割り開いて膣口に突き立った。奥
に潜むローターの固い感触が指先にあたる。全身を衝き抜ける快感の波に流されるままに、
香堂はそのまま、指を思い切り深くまで突き刺した。
「んぁああぁあああああ――っ!」
視界が白濁する。七色の光が真っ白の世界を飛び交って、香堂の体をどこか知らない場所
に連れ去っていく。今まで感じたことのない、全く知らない類の絶頂だった。
「あぁ、あ、ふぁ……」
指を抜くことも忘れて、ぐったりと弛緩する。床に頭をつけると、眼鏡が絨毯に触れてわずか
に音をたてた。
「……だ、大丈夫?」
―そこで、知らない声が聞こえた。
「……ふぇ……?」
顔をあげる。知らない女生徒が、心配そうにこちらを見下ろしていた。背後には何人かの生
徒が、気遣わしげに、あるいは気味悪げに香堂を見ている。その更に後ろからは、ざわめきと
共に野次馬の集まる音が聞こえてきた。
「あ……ぇ?」
振り返る。
伊勢宮アリスは、どこにもいなかった。
誰も来ないと言われていた場所は、確かに人通りは少ないがただの廊下の隅で、香堂自身
の悲鳴を聞いてだろう、多くの生徒がざわめきながら集まっていた。多数の視線に晒されなが
ら、香堂はよつんばいのまま、尻を高く掲げて上半身を地面に伏せた恥ずかしい姿勢で、自
分の指を股間に沈ませている。足元の絨毯は捩れて皺だらけになっていて、ここでさんざん悶
えたことを言外に示していた。
「な、なに、してるの……?」
指の行き先に気がついたのか、声をかけてきた生徒が顔を赤らめてそう言った。一歩退く彼
女に合わせて、ざわめきが波のように伝播していく。
「あ……あ、ああ、ち、ちが、ちがう、違う―あぁああっ」
あわてて起き上がるその勢いで、膣の中でローターがぐしゃりと押しつぶされる。密着した玩
具は電動式の愛撫を容赦なく香堂の体に刻み付けた。まなじりから涙を零しながら、香堂は
視線を巡らせる。少なくとも、この玩具の電波が届く範囲にはアリスがいるはずだ。
「う、うぅう……」
羞恥心だけを頼りに、香堂はふらふらと立ち上がった。一歩進むと、人垣がざわりと割れる。
二歩進むと、誰かが香堂の足元を見て、
「なに、なんか垂れてる」
311:女学院復讐SS6 11/12
09/12/06 17:20:59 nClvIQgC
と、そうつぶやいた。
「なにあれ、おもらし?」
「違いますよ、あれ、……その、あれじゃないですか」
「嘘、あの子、こんなところで何やってるの?」
「変態なんじゃないの」
ぼそぼそとした囁きが一斉に沸き立つ。中には香堂を弁護するものもあったが、とても耳に
入れている余裕なんてなかった。ローターは休まず動き続け、絶頂に達して敏感になった香
堂の性感を刺激している。どこかに隠れているだろうアリスは、笑っているのだろうか。
「うう、う、うぁああ……」
呻きながら、香堂はふらふらと廊下を、逃げるように歩いていった。ざわめきは収まらないが、
誰も追ってこない。ただ気味悪そうに、遠巻きに香堂を見つめているだけだ。
助けてくれる人などいない。
香堂はそのまま、人の目から隠れるように角を曲がると、一番近いトイレに駆け込んだ。気が
つけば、ローターの動きは止まっている。アリスから離れたのだろう。
「う、う、うぅ、うぁあ……」
汗が浮き上がった手を個室の扉にかける。それを開くと同時に、
「傑作でしたよ」
……この数十分でいやというほど聞いた、澄んだ声が響いた。振り返れば、かすかな笑みを
浮かべて、伊勢宮アリスがトイレの入り口に立っている。
「香堂さん、きっとマゾの素質があるんですね。かわいかったです」
「い、いせ、みや……」
「さあ、それじゃあ」
すたすたと歩いてくるアリスの腕が、香堂の肩をトイレの中に押し込んだ。同時に、また膣の
中でローターが蠢動を開始する。後ろ手にアリスが鍵を閉める音が、いやに大きく響いた。
「遊びましょう?」
微笑は美しかった。
まるで、悪魔のように。
■■■
映像が終わった。
液晶を見つめたまま、文月は小さく、しかし深い吐息を漏らした。最後にノイズになった画面
からは、悲鳴も嬌声も、もう聞こえてはこない。
「よくもまあ、大胆にやったものね」
あれほどの人数に目撃されては、口封じなど不可能だろう。いや……文月が知らなかったの
だから、ある程度はそれも成功しているのかもしれない。野次馬の生徒全員がアリスの協力者
という可能性もあったが、さすがにそれは考えすぎだろう。
だが、中に二、三人のサクラがいたかもしれない。
「そう……そうか……」
伊勢宮アリスという人間を計り違えていたのかと、文月は沈思する。彼女は戦える人間では
ないと思っていた。ただ虐げられ、搾取されつづける家畜のような、餌になるべき人間だと認
識していたのだ。
彼女は変わったのだろうか。それとも、最初から文月が間違っていたのだろうか。
「……」
文月は沈黙したまま、指先をタッチパッドに滑らせた。マウスカーソルをふたつめのファイル
に合わせ、ダブルクリック。
同じように再生ソフトが立ち上がるが、映像は流れなかった。シークエンスバーだけが横に伸
びている。どうやら音声のみのファイルらしい。
数秒の雑音の後、澄んだ美しい声が、さえずるように流れ出した。
312:女学院復讐SS6 12/12
09/12/06 17:21:39 nClvIQgC
『許しません』
まず、声はそう告げた。
『貴女がわたくしたちを許さなかったように、わたくしも貴女を許しません』
文月はかすかに目を細めて、シークエンスバーを見つめる。どうやらほんの十数秒の音声だ。
つまりこれは、宣戦布告なのだ。
『貴女の行為が復讐ならば、これも復讐なのだと―貴女には理解できるはずです』
「わかってないな……」
ぽつり、と思わず言葉が漏れる。自分ながら『らしくない』反応に、文月は自身の昂奮を悟っ
た。昂ぶっている。それは、知り合いのあられもない映像を見たからではない。
『貴女のいうような人間では、わたくしはない。わたくしは自分で、貴女に復讐できる』
これが昂ぶらずにいられようか。文月はぶるりと震えて、自身の肩を抱いた。
『これは、わたくしの復讐です……!』
言葉を最後に、再生が止まった。文月が止めたわけではない。これが収録されている音声
の全てなのだ。文月は震えながら、口元を掌で押さえて、
「くっ……あはははははっ……」
いつかのように、笑い出した。
「そう、そうなのね、貴女、私と戦争をしようというのね……!」
ぶるりと、また大きく震える。
早鐘のように打つ心臓が、脊椎を駆け上る快感の予兆が、文月の興奮を押し上げる。一度
は終わったはずの楽しい遊びの時間。鎖から解放された獣が雄たけびをあげる狩りの時間。
刹那の慰めだったはずのそれを、獲物の方から望んできたのだ。
昂ぶらずにいられようか。
これを、喜ばずにいられようか。
「ああ、そう、そう! それならばやりましょう。見逃すなんて失礼な事を言ったわね―」
興奮のあまり手を打ち合わせて、文月はつとめて声を抑えながら、うっすらと笑みを浮かべて
宣戦した。
「―潰してあげるわ、貴女も!」
伊勢宮アリスの復讐は、こうしてはじまった。
313:名無しさん@ピンキー
09/12/06 17:25:49 nClvIQgC
以上です。今回は四ヶ月も間が空いてしまって申し訳ないです。
おそらく、あと二回か三回くらいで完結すると思います。
が、今回ほどではないと思いますが、若干時間がかかるかもしれないです…
なるべく早く書き上げたいと思うので、もう少々お待ちください。
んじゃつづき書いてくる。
314:名無しさん@ピンキー
09/12/06 23:08:08 P+k2UkaR
うわああああおかえりいいいいいいい
待ってたGJ
抜いてくる。
315:名無しさん@ピンキー
09/12/06 23:14:05 iPvZ30Gv
S女同士の対決になったって訳か
俺としては文月に勝って欲しいな
316:名無しさん@ピンキー
09/12/06 23:42:07 FEd5TGvW
最新話読んで面白かったので、最初から読んでみたがこれは何という大作。
夢中で読んでしまった。
>315
正当防衛(過剰防衛?)と言えなくもないし、俺も文月派かなぁ。
次もアリスのターンなら、蜜柑と仁和子のどっちかが狙わるのかな。
それとも文月のターンなのか、続きも楽しみだ。
317:名無しさん@ピンキー
09/12/07 02:44:29 3nDQdc2+
女学院の人の投下キターーー!
ほんと帰ってきてくれてありがとう!ありがとう!!
相変わらず程よい鬼畜っぷりがたまらんね
次回のS同士の対決(?)も期待してます
318:名無しさん@ピンキー
09/12/07 07:39:36 P/5N4iuH
きたああああああああああ!!!!!
待ってたぜえええええええええええええええ!!!!!!
しかし、なんだ
文月とアリスじゃ器が違いすぎやしないかという気もしなくもないがw
アリスがどんだけがんばるのかが楽しみだ
319:名無しさん@ピンキー
09/12/07 18:16:53 ujhglN26
うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ続きが気になるぅぅぅぅぅ
320:名無しさん@ピンキー
09/12/07 19:30:03 JpUE2TMY
戻ってきてくれて、嬉しいです!
続き楽しみに待っています。
321:名無しさん@ピンキー
09/12/07 20:38:13 XHqNBKb1
>>318
文月は残酷であるだけでなく非情さも相当なもんだからねぇ
アリスなりに色々策を練るだろうが返り討ちにされて自殺ものの恥辱を受けそう
322:名無しさん@ピンキー
09/12/07 21:23:53 XHUdodEB
アリス…
人の痛みが分かる子だったのに…
323:名無しさん@ピンキー
09/12/07 22:43:19 vec4vxGt
次回から最終回まで文月無双ですねわかります
324:名無しさん@ピンキー
09/12/07 23:10:20 qa58CpUl
おお、ついに続きが!
325:名無しさん@ピンキー
09/12/09 09:42:44 kkgXteeC
>>322
幸崎幸と一緒に文月を陵辱しまくってたがなww
326:名無しさん@ピンキー
09/12/09 10:04:49 A65Lr86a
ポップスベストテンデビュー
327:名無しさん@ピンキー
09/12/09 14:25:28 GDCAShnR
保守
328:名無しさん@ピンキー
09/12/09 14:33:49 c8t9z1K3
初めてこのスレを開いたけど
ふおおおぉぉぉぉっ!!!
329:名無しさん@ピンキー
09/12/09 15:42:30 q9VSR6oY
いつのまにかきてたあああああああああああああああ
アリスいい!敬語責めかわいい!
330:名無しさん@ピンキー
09/12/09 15:52:06 tBRoJvtt
相変わらずのクオリティ、GJ!待った甲斐があった。
331:名無しさん@ピンキー
09/12/09 16:08:40 04i7YX/e
お互い復讐にかける気持ちが真逆なんだな。
文月が折れるとは思えんが、アリスがどこまでいじめぬけるか楽しみだ。超GJ!
332:名無しさん@ピンキー
09/12/10 15:25:57 KDuEp9Hc
やられた事をやり返してるだけの文月か
やられて自業自得ざまぁのアリスか。
どちらに軍配が上がるのだろうか・・・。
333:名無しさん@ピンキー
09/12/10 23:19:42 sSLm+HTC
アリスかわいいな
いじめる側もいじめられる側も見てみたい
334:名無しさん@ピンキー
09/12/17 01:25:53 6s3ImE/D
すげえええ!!作者さんgjすぎる!!
これは保守せざるを得ない
335:名無しさん@ピンキー
09/12/21 15:04:49 xp6DEmTz
保守
336:名無しさん@ピンキー
09/12/22 11:28:39 h+0bsd43
保守
337:名無しさん@ピンキー
09/12/22 16:52:42 G6pU2AQb
今読んだ。職人さん凄いですな
いたぶられながらも矜持を失わない月小路は魅力的
というかやられる前に挿入されるいじめっ子たちの生い立ちが彼女たちの人物像に厚みを持たせていていい
相手に取り返しのつかない傷を与えないよう、自分たちなりのルールを守っていたいじめっ子たちと
仲間(というより手下)さえも欺き、双方に回復不可能な痛手を負わせる文月
はたしてどちらに義があるのか…
続きがすごく気になります
338:名無しさん@ピンキー
09/12/22 23:02:59 Qr7Yj5sm
まだまだ感想募集期間は続くよ(笑)
339:名無しさん@ピンキー
09/12/23 03:31:21 sjF7LWgx
2chのエロ小説と言えども、単にスレごとの趣向に合わせて
女がアハンアハン言ってるだけではダメなんだよね
小説である以上読ませる文章でないとダメで、
でも気負いすぎの過剰装飾な文章だったり
エロ以外の枝葉を無駄に広げすぎても当然ダメで、
その辺がこの作者さんはうまいなあ
340:名無しさん@ピンキー
09/12/23 08:56:25 CF6CcbEy
そうだね
昔は文章の素人がエロリビドーに任せて書いてた作品がほとんどだった
最近はネットによるエロ創作とその共有が普通になってきて
こういう創作が特殊なことでなくなってきたせいか
文章書ける人が多くなってきたのは実感するね
そのかわり今度は読ませる文章やしっかりした構成になってれば
肝心のエロ要素置いてきぼりで文章部分に夢中だったり
扱いきれない話を広げてエロにたどり着けないまま立ち消えるのを
よく見かけるようになった
その点でもこの作者さんはうまいな
内容もしっかりしていて文量もあるのに
エロだけに注目してもおろそかになってる間延びがないし
ストーリー展開だけに注目しても停滞や退屈がない
341:名無しさん@ピンキー
09/12/26 10:26:49 HhpjmZZE
言いたい事は勿論分かるんだが
そんな感想の書き方したら初投稿しようとしてるかもしれない人達が
躊躇して投稿止めるかもしれない
342:名無しさん@ピンキー
09/12/26 11:40:37 CvXJWpUV
まあ今は>>313へのGJキャンペーン中ですから
書きたい新人は気になるなら時期を選ぶか他で書くかすりゃいい
343:名無しさん@ピンキー
09/12/26 15:23:50 xIuKPtpu
女学院の人でみんな満足してるのかもしれんが、ここ基本的には超過疎だからな。
あんま書き手を遠ざけるような物言いは控えたほうがいいとは思う。
>>313でも間があくって言ってるし、書き手さんは小ネタとかでも遠慮なく投下したらいいんじゃないかな。
誰か投下すれば、気安く投下できるようになるだろうし。
344:名無しさん@ピンキー
10/01/09 23:36:27 uF9kwp2d
ほ
345:名無しさん@ピンキー
10/01/12 16:55:18 DDkODMoA
ところでアリスがいじめられてる描写ってどっかにあったか?
別スレ探せば見つかる?
何もされてないのに私はひどい仕打ちを受けたのだって騒いでる
あほな女にしか見えん、文月よ、いいぞ、もっとやれ。
346:名無しさん@ピンキー
10/01/12 20:51:22 baDRNHNt
>>345
無い。
つまり主要キャラの中ではまだ誰にもイヤラシイことをされていないわけで、
ということはこの先の役割は・・・
やっぱり文月がんばれ、ですねw
347:名無しさん@ピンキー
10/01/12 22:18:00 MU2eRqO4
レズ
348:名無しさん@ピンキー
10/01/12 22:43:51 jxyE4SlY
文月にぐちゃぐちゃにされるアリス期待。
349:名無しさん@ピンキー
10/01/13 01:20:24 3KVAcWrX
文月の編入前:アリスは幸崎と月小路にいじめられてた
文月の編入後:幸崎と月小路は遊びで、アリスに文月をいじめさせる
って感じで、アリスは元いじめられっ子じゃなかったっけ。
350:名無しさん@ピンキー
10/01/14 16:12:06 YnA6gAmO
ここのメイン作者様の素晴らしい文章、読ませる力のある言葉の並び…
正直、このようなハイレベルなSSがあると自分のSSを書き込むのが
恥ずかしくなってしまうのですが、それっぽいものを書いてみたいと思います!
このレベルの差を直に感じるのも勉強だと思ったので!
351:名無しさん@ピンキー
10/01/14 16:12:55 YnA6gAmO
誰しもがそう思うだろう。
弱い者の上に強い者は立つ。
弱い人間がいるから強い人間はその立場を利用する。
なら、弱いモノがいなければ、力を持つ人間はどうなるのだろう…?
私はどちらでもない。
ただ、ほんの少し他の人間より強いだけの、ただの傍観者だ。
いつだってそう…
なまじ道場に通っていたせいか、ケンカ等の暴力沙汰にはあまり手を焼いたことが無い。
だからといって、トラブルに巻き込まれるのは真っ平ごめん、それが私の性分だ。
そう、つまり今のこの状況も私にとっては、何の変哲も無い日常でのワンシーンとして平然とただその上を歩いていけばいい。
誰しもがそう願うだろう。
私は弱者でも強者でもないのだから…
ゴボゴボゴボッ…便座横のレバーをクイッと持ち上げ、勢いよく水が流れていく。
この学校のトイレも近いうちセンサーになるのだろうか、いやならないだろうな。
個室を出て、蛇口をひねり手を濯ぎながら彼女はそんな事を考えていた。
ティッシュやハンカチなどを常備する習慣の無い彼女は、濡れた手をピッピッと数回払ってトイレを後にしようとする。
さも日常的な光景ではないか。
しかし、それが彼女だけの(あるいは彼女にだけ許された)日常なのは、いかんともし難いと言える。
何故なら今この空間で行われている行為は“異質”そのものだからだ。
3人、いや4人か…数名の女生徒と、その向こうには裸にされお世辞にも清潔とは言えないこの学校のトイレの床で突っ伏している女の子。
恐らくはイジメの類で、そのリンチの真っ最中といった感じだ。
幾人かは煙をくゆらせ、甘いメンソール臭が漂っている。
最もこの状況、彼女がトイレで用を足す前から行われていたものだ。
そして今何食わぬ顔でここを後にしようとしている。
果たしてここでの“異質”とは彼女の方を指して言うのかもしれない。
352:名無しさん@ピンキー
10/01/14 16:14:42 YnA6gAmO
「ちょっと待ちなよ…」
ドスを聞かせて一人の女が彼女を呼び止める。
「アンタ、このまま出て行く気?」
「あっ…ゴメン、お取り込み中だったみたいね。でもさぁ、漏れそうだったから」
もう半分以上ドアを開けて出て行こうとする彼女に、なおも女は食い下がる。
「ちょちょちょ、まあ待ちなって。ねぇ、わかるでしょフツー?ん?これからどうなるか…」
「もうメンドーだからコイツも一緒にやっちゃう?」
「あっ、アタシ生のレズ絡みとか見てみたいかも!」
何故か後ろの方が盛り上がってきていた。
相変わらず全裸の女の子はぐったりと、無防備に体を床に預けていた。
いいねぇー、いいねぇーと声が大きくなっていく女達に彼女は若干の苛立ちを覚えた。
そして、いよいよ腕を捕まれそうになった時、彼女は威圧感を顔に滲ませた。
「やめといたら?」
それは、彼女が発しようと思った言葉だった。
ギィイイイという個室の扉が開く音に、ゴポゴポッという水の流れる音…。
一番奥の個室からもう一人の女生徒が出てきた。
そして、彼女の傍まで歩み寄って来ると、手を洗い始めた。
「ねぇ、ハンカチ…持ってない?ティッシュでもいいけど…」
そう言って、彼女の手がまだ乾いてないのに気付き「あ、やっぱりいい」と、奥に向かっていく。
「アンタ、持ってなかったっけ?」
全裸で横たわる女の子の前で屈みながら、その女は聞いた。
目は虚ろで、けれども怯えた表情で女の子はコクンと頷いた。
その怯え方は他とは違う様子にも感じられた。
「ある?そお……って、そういやこの子の服どうしたっけ?」
その女は周りにいた女達に聞いたが、思い出したかのように
「あっ、そっか。捨てたんだっけ、ははは。ゴメンゴメン!それじゃあ無理か」
と苦笑交じり、立ち上がった。
「そうだ、こんな時の為に一枚残しといたんだ!」
シュルル…とポケットから布のようなものを取り出す。
淡いピンクのハンカチサイズの布だ。
それが何であるかわかった女の子は「や、やぁああ!!」と泣き出し、取り返そうとするが、周りの女二人に手足を押さえられバタバタをもがく事しか出来なかった。
そして、いざそれで手を拭こうとした時、
「あ~…でも、やっぱこれで拭いちゃうと余計汚くなっちゃうか…」
その言葉に周りは大ウケし、言った本人も笑いを堪え引きつった顔になっていた。
「コレ、いらないから、返すわ。」
353:名無しさん@ピンキー
10/01/14 16:15:40 YnA6gAmO
クルクルと団子状に布を丸めはじめ、「心配いらないわよ、ちゃんと元の場所に返すから」と言って、女の子の股間に丸まった布を押し当てた。
ズズ…ズ…ズリュ、布は彼女の性器の中に少しずつ埋もれていき、そして全て入り切った所で押し込めていた人差し指の力を抜いた。
「さっ、行こ!この子もう飽きたし…いいわ、いらない」
クルッと振り返り、トイレの出口に向かって歩き始める。
女の子を離し、他の女達もそれについて行くように次々とトイレを後にする。
すれ違いざま、その一部始終を見ていた彼女に対し、その女はこう言った。
「貴女とはやり合わないわ、割に合わないもの。ただ、弱い者を自分の物にする感覚はたまんないわよ。
誰かの上に立つってのは、選ばれたものの特権…いえ、使命にも近いわね。
そして、そうされるのがあの子の宿命なのよ、わかる?」
「………」
目と目が合う、視線と視線が交差する。
「まっ、好きなようにすれば?中古でよければ、だけど。
ちゃんと躾はしてるから扱いやすい筈よ。水島 叶絵さん…」
ドアは閉まりかけていた。
彼女…叶絵は手を振ってじゃあね~、というジェスチャーで笑って去っていくその女を知っていた。
そう、最初から。
「……緑川 夢子」
叶絵にとって最も苦手な女。
賢く計算高く、残酷で陰湿な、女のドス黒い部分を全て最大値まで高めたような女だ。
叶絵としても、あんなのとは関わりたくも無い…が、
『使命』
という言葉が、彼女の中の“何か”をゆっくりと動かし始めていた。
354:名無しさん@ピンキー
10/01/14 16:16:10 YnA6gAmO
放心状態でその無残な恥体を晒す女の子。
女性器から少し顔を覗かせているピンクの布は恐らく彼女のショーツだろう…。
叶絵は女の子を見下ろすように立ち、かすかにうめき声を上げるその様を見やると、やおら下腹部辺りに手をやって、少し濡れそぼった小陰唇を押し分け、人差し指と親指でその布切れ掴むと、ゆっくりと引き摺り出し始めた。
徐々に布が出てくる、その直径がおよそ最大に達したとき、女の子は裸体を一瞬のけぞらせ、「ひぐっ!」とくぐもった声を出した。
布が全部出るころ、指には透明色の粘液がいやらしく糸を引いているのがわかった。
「…っう…ぅぅ…」
同性に全てを見られた恥ずかしさか、はたまた初めて会った人間にここまでされた恥ずかしさからか、女の子はプルプルと体を震わせ、声を押し殺して泣いていた。
叶絵にとってはどうでもいい世界だった。
『強い人間が弱い人間を支配する』
そんな事は自分には関心の無い世界の出来事だった。
けれど、今この状況が…ただのワンシーンに過ぎなかった日常が、大きく変わって見え始めていた。
「ねぇ、アンタ…名前は?」
「…え?」
「教えてくれない?名前…」
泣いてる女の子の髪を撫で、叶絵はやさしく聞いた。
「…の……み…」
「ん?」
「く、黒岩 希望…です」
女の子は伏せ目がちに、けれど少し叶絵の表情を伺うかのように呟いた。
「ノゾミかぁ…希望…、うん、気に入った!」
ポンッと頭を叩くと、叶絵ははにかむ笑顔でこう言った。
「じゃ、今日からアンタは私のもの!玩具にする!それでいい?!」
希望の顔からは一切の笑みは見て取れない。
やっと鳥かごから抜け出せた小鳥は、すぐにまた別の鳥かごへと閉じ込められたのだから。
この日から、希望にとっての非日常は、更に過酷なものになっていくことになるのだが…
それはまた、別のお話。
355:名無しさん@ピンキー
10/01/14 16:36:44 xOHd0Ulf
期待しちゃうぞー
356:名無しさん@ピンキー
10/01/14 17:26:40 KQHOCSKz
>>350
蝶乙。
膣にショーツ突っ込むのいいね。
357:名無しさん@ピンキー
10/01/15 17:27:59 UHgjTev7
いいじゃまいか
358:名無しさん@ピンキー
10/01/16 02:25:07 P2gofscD
つづきが気になる
359:名無しさん@ピンキー
10/01/16 02:52:25 U1oQN5fW
願望系の名前なのね
たまえはいないのかな
360:名無しさん@ピンキー
10/01/16 10:20:01 9o9YK967
のぞっみー!かなえたまえ!
すべってー!燃えてしまえ!
361:名無しさん@ピンキー
10/01/16 23:35:57 Xo9i9SM1
続きがこないというのも、ひとつのいじめですか
362:名無しさん@ピンキー
10/01/16 23:52:58 9o9YK967
>>361は女じゃないだろ
363:350
10/01/17 00:05:05 DI1MGZP2
続き、書きました。
書きました…が、エロパートを全く入れられませんでした!
ごめんなさい!!
ここは大人の為の掲示板です。
エロが無いとは全く持って度し難い!!
けれど、この次はもうビックリする位エロくするつもりなんですッ!
それを考慮して、エロ無しのSSをここに上げてもいいでしょうか?
駄目でしょうか…駄目ですよね、やっぱり…
364:名無しさん@ピンキー
10/01/17 01:03:16 XgJqV9IA
>>363
はやく つづき クレ
365:名無しさん@ピンキー
10/01/17 01:21:19 edvYXd8l
>>363
誘い受けなんて要らないッ!
早く投下するんだッ!!
366:名無しさん@ピンキー
10/01/17 02:00:35 IptEs5d0
>>363
それ相応にちゃんと叩くなり褒めるなりしたげるから
そういうリアクション乞食みたいな真似はやめよう
367:名無しさん@ピンキー
10/01/17 02:59:08 UXsAhlLJ
もうプレイは始まっているのか……
368:名無しさん@ピンキー
10/01/17 16:04:00 wErCVBid
斬新だなw
369:名無しさん@ピンキー
10/01/17 21:22:54 pFpn+RNV
367「はやく…はやくッ…!」
350「…何? ちゃんと言ってごらん?」
370:名無しさん@ピンキー
10/01/17 22:06:42 I1JlKHlu
>>1へもどる
371:名無しさん@ピンキー
10/01/17 22:33:54 XgJqV9IA
誘い受けして放置とか・・・ウザ過ぎ
>>350はもう書かなくても良いよ
372:名無しさん@ピンキー
10/01/17 22:59:37 IptEs5d0
単に初心者なだけじゃね?
何の気なしに誘い受けしてみて
こんなに叩かれることを知らず
びっくりして怖気づいたとか
373:名無しさん@ピンキー
10/01/18 02:50:54 tgJ9ljWo
>>363
エロパートまで書きあがったらまとめて投下してくれると嬉しいです
374:名無しさん@ピンキー
10/01/18 09:14:12 3EMuTnFg
>>351
こういうのは俺好きかな…典型的な過激いじめだけどそれがいい
375:350
10/01/19 08:19:15 X7+m3cPJ
ホント申し訳ないです!
やっぱりエロいのがないと駄目なような気がして、
書いても書いてもなかなかその部分までいけず、そうしてやっとイジメが始まりそうになってきました。
と言ってもまだぜんぜんヌルイですが。
366お姉様、371お姉様
ごめんなさい…とにかく全力で書きました。
もうあまり下手なことは書き込まないよう注意します。
なので、もう一度だけチャンスを下さい。
前半は本当フツーです。
けど、こういう描写が後々になって利いてくると思っています。
それでは。
376:350
10/01/19 08:20:19 X7+m3cPJ
なんで、泣いてるの?
私は彼女にそう聞かざるを得なかった。
彼女は泣き腫らした目をこちらに向け、そして一回だけズズッと鼻をすすると、
「飼ってたね、ペットが死んじゃったの」
そう言って、少し恥ずかしそうに涙を拭った。
私はその時、夕暮れに染まる彼女の横顔が、
とても美しく見えた…
◆
あの日から、一週間が過ぎた。
希望の学校での生活は今までとは明らかに変わっていた。
誰も彼女を相手にしてこない…
教室で一人、誰からも相手にされず一日を過ごしている。
以前と違う点は、そう誰も彼女に“何もしてこない”という点だ。
本当に…
本当に彼女は私を解放したのだろうか…?
解放されたからといって、次の第二、第三のグループにまた目を付けられ、結局はまたいつも通りになってしまう筈なのに…
そうならないのは、恐らくもう一人彼女のお陰なのだろうか…?
彼女は私に何もしてこない。
殴ることも蹴ることも裸にすることも。
壊れかけていた私の心は、苦痛に対する抗体がある程度構築され、
ただ次に何をされるのかという恐怖心だけが常にあった。
私は彼女に救われたのだろうか…?
願わくばこの幸せが偽りでは無い事を、今は信じたい。
377:350
10/01/19 08:24:39 X7+m3cPJ
◆
「希望!」
昼休み、購買部の前でパンとジュースの入った袋を片手に彼女が手を振っていた。
「み、水島…さん」
名前を呼ばれたその女の子は、控え目に少し照れた表情で返事をした。
これが二人の日課だった。
「お昼、一緒に食べよ!」
そう最初に言ってきたのは彼女だった。
それが私に彼女が要求してきた事。
ただそれだけ…。
「あっ、買わなくていいよ。ちゃんとアンタの分も買ってあるからさ!」
「えっ?」
彼女は希望の持っていたパンを掴み取ると、そのままもとの場所へと戻した。
そして、今度はキョトンとしている希望の腕を掴むと、
「屋上、行こっ!」
と、人で溢れ返った購買部前の廊下を力任せに引っ張って歩き始めた。
階段をズンズン登っていく。
もうとっくに人ごみを離れ、十分一人でも歩ける状況だった。
それでも、希望の腕は彼女に掴まれたままで、ときどき「ぁの…」と呟いてみたりもするが、
彼女はお構いなしに先に進んでいく。
希望は恥ずかしさもあったが、どこか嬉しくも感じていた。
あれは彼女と出会って二日目のことだった…。
今のように腕を引っ張られ階段を登っている最中、希望のクラスの数名の女子とすれ違った。
「あれ、希望じゃん?アンタ何してんの?」
そう言って薄笑みを浮かべる。
「アンタさぁ~、夢子が捨てたって言ってたけどホント?」
クスクスと笑い声混じりに聞かれる。
「次、アタシらがオモチャにするから、ソレこっちに渡してくんない?」
私の腕を握っていた彼女に向かってそう投げかける。希望はただ下を俯く事しか出来なかった。
肩が震え、動悸が激しくなる。
私にはやっぱり普通の日常はやってこない…
378:350
10/01/19 08:25:23 X7+m3cPJ
「何訳の分かんないこと言ってんの?」
彼女はそう言った。
掴んだ腕をグイッと引き、希望の体を自分の後ろに置き、まるで守るかのようにして。
「悪いけど、この子は私のもんだから。そこ、どいて…。」
水島 叶絵はそう言った。
その迫力に気圧された数名の女子は先程の笑みを失い、一人また一人と道を開けた。
この学校で叶絵に敵う者はいない。
ましてや女の力では10人やそこらではまるで相手にならない。
夢子のグループが一つの巨大な勢力だとしたら、叶絵もまた唯一人でその力と張り合える程の力の持ち主だった。
「…っち!!」
二人が過ぎ去った階段で、その女は悔しそうに舌打ちする。
「卑怯者!アンタは何もしないだけのただの傍観者だろ!!」
希望は後ろを向きチラッと一瞥する。
「今更になって、遅いのよ!今まで誰も…助けなかったクセに!!」
叶絵が後ろを振り向くことは無かった。
ただ、掴まれた腕が少し痛くなっている事に希望は気付いたいたが、彼女は何も言えなかった。
何故だろう…あの時、彼女を少し怖いと思ってしまったのは…
それが、希望にとって拭いきれない不安感を今尚抱かせている。
◆
ギィイイ…ガチャン!
屋上の扉が開く。
外は晴天、少し肌寒さもあるが、とてもいい天気だ。
ここで二人はいつもパンを食べる。
その間会話は…弾んでいるとは言い難い、が穏やかな時間だった。
終始叶絵のペースで話は進んでいく。
今日の授業のこと、テストのこと、家でのこと…
彼女はクリームパンが好きなようだ。
必ず一つは入ってある。
こう毎日会っていると、流石に少しずつだが彼女のことが見えてくる。