ヤンデレの小説を書こう!Part20at EROPARO
ヤンデレの小説を書こう!Part20 - 暇つぶし2ch700:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:51:22 LjD7YQ3b
よく聞くあのなんともいえない電子音と店員のいらっしゃいませという言葉と共に俺は店内に入った。
店の中は温かく、おでんやら中華まんのにおいがした。そういえばろくに飯を食ってなかったと今になり空腹感を覚える。
なにか簡単に食べれるものも買っていくことにした。
レジの脇にある弁当売り場からおむすびを2つ、シャケとオカカを手にとり、そのすぐ隣にある洋菓子などが並べられているコーナーから売れ残っていたのであろうショートケーキをひとつ掴むと、
それをレジへともっていく。
商品をレジに置き、財布をポケットからだす。ふと顔を上げると店員と目が合った。
店員はなにか俺の顔についているのか、最初の数秒まじまじと俺の顔を眺めていたが、思い出したように商品を清算していく。
たしかに最近は忙しくてろくに寝てもいなかったが、まじまじと見られるとそうとう酷い顔をしていたに違いない。
今日と明日は休みを貰ったのでゆっくり休む事にしよう。
会計で475円ですと言われたので、財布から小銭を探す。ちょうどの代金を払い、袋を持ち店をでようとすると袋の中に買った覚えのない栄養ドリンクが入っていた。
「あの、これ買ってないですが?」
そういうと、うっとりとしたような笑みを浮かべながら、
「いえ、これは私のサービスです。ちゃんと休んでおかないと体壊しますよ?」
「はあ、それはご丁寧にどうも。それじゃいただいておきます」
折角相手の厚意でくれるというのだから貰っておく事にした。それに夜勤明けで断る体力もなかったともいえる。
こんなご時世だから人と人との助け合いが大切なんだろうな、これからはあそこのコンビニをひいきにしようと名もしらぬ店員の優しさをかみ締めながら家へと帰ることにした。
不思議と外の寒さも気にはならなかった。


しかし、家についた俺はせっかくもらった栄養ドリンクやショートケーキも口に入れる事なく布団へ倒れこんだ。
予想以上に疲れが溜まっていたらしい、俺の意識はすぐに夢の中へと堕ちていった。

701:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:52:08 LjD7YQ3b
変な夢を見た、俺に娘ができる夢だ。しかも5歳くらいの娘がだ。
朝から晩まで俺の後をテコテコついてきてなにをするにも一緒である。
娘はとても可愛らしく、俺の遺伝子をどういじくればこんな子供ができるのだろうというくらい可愛らしかった。きっと母親が美人なのだろう。
だが、夢のなかにその母親はでてこず、家の中に俺と娘とでふたりきりだった。
おままごとだったり、お馬さんごっこだったり、とにかく時間が経つのも忘れずっと娘と戯れていた。
しかしふと思い出したように、俺は仕事をどうしたのだろうという気になった。夢の中でも俺は社畜なのかと嫌気がさしたが、
夢の中でも今の会社に勤めていたのだったら他の人に迷惑をかけていることになる。課長にはよくしてもらっているのでなおさらだ。
いまから一度会社にいってくると娘に告げると娘は頑なに拒んだ、小さな瞳を涙で潤ませ、俺の目をみていやいやをするのだ。
母親がこの夢にはいないのでひとりになるのはこの娘も嫌なのだろう。
娘は俺の手にしがみつき、俺を仕事にいかせまいと必死である。さて、どうしたものかとしばらく困り果てていたが、これは夢である。
そうであれば、別に無理に仕事にいくこともないかと先程の決意をあっさりと曲げ、今日はこの娘と一緒にいることにした。
俺が諦めるのを感じ取ったのか娘は俺の手を放し、またさっきのようにコロコロと笑い出した。しかし本当に可愛い、嫁にだすのが今から惜しいと思うほどだ。
色々と気になることもあるが、今はこの娘と戯れる事にしよう。そう思い、俺はまた娘と遊び始めた。

視界がごろんと回転し、夢から覚める。せっかく娘とオムライスを作っていたというのに。
俺はベットから上半身を床に投げ出す格好で目が覚めた。
そのままズリズリと下半身も床に落とし、体が天井へ仰向けな格好になる。
ガバッと勢いよく体を起こす。不味い、時計はどこだ、完全に遅刻だ。急いで目覚ましを引っつかみ時間を確認する。15時21分。
いったいなんでこんな時間まで寝てたんだ、俺は。目覚ましのアラームは、なんで今の今まで俺は寝てたんだ。
俺を起こさなかった目覚ましを乱暴に放り、軽いヒステリックを起こしながら駆け足で洗面所に向かう。
幸いスーツのままで寝ていたので着替えに時間をとられることはない。
あとは髭をそってさえ行けば大丈夫なはず、飯は昨日買ったおむすびがあるはず。
ん?おむすびを昨日買った?そんで昨日はクリスマスで、俺はショートケーキを買って…
ふう、とため息をつく。なんだ、そういえば課長が俺に気を使って2日間の休みをくれたんだ。
だがこんなに血相をかいて飛び起きたりするなんて、やっぱり日ごろの習性ってのはなかなか抜けないもんだ。
いくら休みだと頭に言い聞かせても、体はいつものようにしっかりと動く。
だが、これじゃまるで仕事が俺の人生みたいじゃないか。
確かに、仕事は辛いが給料はいい、だが金を溜めたところで特に使う道もなく、毎日体をすり減らして働く。いつからこんなに夢がない人間になったんだろうな。
「なにやってるだろうな。俺」
だれもいない、寝て起きるだけの部屋で俺は独り言を漏らした。
「なら、やめましょうよ。無理に疲れて生きるより、自由に素直に幸せに生きましょうよ」
突然、誰も居ないはずの俺の部屋から返事が返ってきた。本当に唐突のことだったので、体がびくりとはねる。
そしてゆっくりと声がした方向へ体を向ける、そこには見覚えのない女性が立っていた。
「おはようございます、ゆっくり眠れましたか?」
「きみは誰ですか?どうやってこの部屋に入ったんですか?なんで俺の部屋に?」
もっともな質問が口からでる、そりゃ見知らぬ人間が自分の家に居て、突然自分の後ろに立っていたら驚くだろう。
物騒な世の中だ、なんの目的もなく他人の家に入りはしないだろうし、要件次第じゃ警察を呼ぶ事も考えにいれておいた。
「そんなに矢継ぎ早に質問をされても困っちゃいますが、一つずつお答えします。
まず最初の質問ですが、私は久野巴です。さっきまでコンビニで正社員をしてましたがやめちゃいました。
次の質問ですが、玄関の鍵が閉まってませんでしたよ?そんな無用心だから簡単に部屋に入れちゃいました。
最後の質問ですが、好きだからです、このさい私と結婚しましょう」
一応俺の質問に全部答えてくれたようだけど、どこかずれている気もする。
一部おかしな返答もあったし、なんなんだろう。やはり警察に通報した方がいいのだろうか。
考えるにも、こういう手合いの人間は初めてだ。だから俺はとりあえず
「まあ、立ち話もなんですし。座って話しましょう、コーヒー飲みますか?」
コーヒーを交えて、話し合うことにした。

702:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:53:15 LjD7YQ3b
飯台の反対側に久野さんを座らせ、今後の俺たちの関係をどうするか話し合うことにした。
一応コーヒーはドリップ式で結構値の張るものを使っている。湯を二人分のカップに注ぎながら俺は再度久野さんに質問をした。
「いつから俺の部屋に入ったんです?というより赤の他人の、しかも男の部屋に躊躇なく入るってどういうことですか。若い女性がそういうことしちゃいけないですよ」
「あなたが寝てからしばらくしてからですかね。家の鍵も空いてたので駄目だとは思いつつやっぱり入っちゃいました。
あと、実はなんどか会ったり話したりしてます。たぶん覚えてないと思いますが。だから赤の他人とはいいません。それに私貞操観念硬いですよ、未だに純潔です」
たとえ純潔でも、数回会っただけの男の部屋に入ってる時点で十分軽いのではないだろうかと思うが、どうなんだろう。
それにこの会話のかみ合わなさ、なにか事情があるのだろうか。
コーヒーを蒸らしながら次の質問をする。
「好きってどういうことですか、さっき聞いたぶんには俺に惚れる要素なんて皆無じゃないですか」
「そんな、人を好きになるっていう事に時間とかを持ち出すなんてナンセンスですよ。
しいて言えば最初は生き生きしていた貴方の顔が日を重ねるごとにやつれていくのにですかね。その顔をみていたらぞくぞくしてきちゃって、
どうしようもなくあなたと幸せになりたくなりました」
やっぱりどこか感性がおかしい人だ、と思いながらコーヒーが出来上がったので久野さんにお出しした。
「どうぞ」
「どうも、温かいですね。こんなに温かい飲み物を入れることもできるんですね。真心がこもってます」
そういうと、顔に満面の笑みを浮かべながら、久野さんはコーヒーをすすった。
「そういえばさっきから私が質問に答えてばかりですね、そろそろ私が質問をしてもいいですか?」
まあ、たしかに変な人だけど悪い人じゃなさそうだと思い。俺はその要望に応じる事にした。
「変に俺の過去に突っ込んだ質問でなければいいですよ」
「それじゃあ、なんで私がプレゼントした栄養ドリンクを飲んでないんですか?」
栄養ドリンク?はて、そんなもの貰った覚えはない………と思ったが、確かに貰ったな。あの店員は久野さんだったのか。
「ああ、あの店員さんは久野さんでしたか。家に帰ったらすぐに寝ちゃったのでまだのんでませんよ?」
「やっぱり覚えてないんですね。予想はしてましたが、いつだって私はあなたの目を見て話してるのにそれに気づきもしない。私は寂しいです」
久野さんはおもむろに立ち上がり、それでその栄養ドリンクはどこに置いたんですか?と訊ねてきた。
「それならコートの下のレジ袋の中に」
それを聞くと久野さんは俺のコートをとり、いったん綺麗にたたんでからレジ袋の中の栄養ドリンクを取り出した。
「まったく、私が色々と元気になってくれるように作った特性のドリンクをなんですぐに飲んでくれないですか」
少し怒ったような口調でカリカリとドリンクのキャップを開けてながら、俺の隣に座る久野さん。

703:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:53:54 LjD7YQ3b
開けおわったキャップを飯台におき、グイッと自分の口に入れる。俺に飲ませるためにくれたのではなかったのかと疑問に思っていると、
久野さんの顔が俺の顔に重なり、唇を奪われた。
あまりにとっさのことだったので反応しきれず、そのまま唇をこじ開けられる。
久野さんの舌がドリンクと共に口内に入ってくるのが分った。駄目押しに鼻をつままれる、こばもうととするも、息苦しさから長続きせず、そのまま口の中のものを飲み込んでしまう。
飲み込んだのを確認したのか、鼻をふさぐ指は解かれたものの、唇は重なったままだった。
人付き合いが苦手でいままで彼女なんてできなかった俺が、女性とディープキスなぞできるはずもなく、俺の唇はただ彼女に蹂躙される。
むさぼるように唇を求めながら彼女は俺の口内のいたるところに舌を這わせ、何度も何度も俺の舌を吸い上げた。
ひとしきり、キスをしつづけた後、唾液の糸を引かせながら唇をはなす。それを俺の唾液ごとすするように飲み込んだ。
「飲みましたね?ちゃんと飲み込みましたね?私とキスしてくれましたね?私も初めてだからうまく出来たか分かりませんがとにかくキスしましたね。
いいんですうまく出来たかなんてことは、これから二人で上手になっていけばいいだけなんですから。でもちゃんとあなたからも求めて欲しかったです。
今度はちゃんとあなたからもキスしてくださいね?」
そういうとぽかんと開いたままの俺の口はまた彼女の唇でふさがれた。
求めろといわれても、こんなムードもへったくれもない状況でどう求めればいいのか分らなかったが、とにかく相手の舌に動きをあわせてみようとした。
もとより性欲が強いほうではなかったが、仕事仕事の毎日で俺のなかにも溜まるものは溜まっていたらしく、彼女とのキスで俺の男もその存在を主張しはじめていた。
俺の舌の動きを感じた彼女も、俺を押し倒し俺の頭を両手で抱きしめてきた。心なしかさきほどより彼女の体が熱を帯びてきたように思えた。
いや、駄目だろ。普通であったばかりの男女がこんなことしちゃ、風俗じゃあるまし。常識から逸脱している。
手遅れながらも働き出した理性で、俺の顔に張り付いてる久野さんの顔を引き剥がす。むぅと艶のある声で抵抗されても構いはしない。
「どうしたんです、途中からのりのりだったのに。いきなりやめちゃうなんてムードぶち壊しですよ」
「いやいや、やっぱり駄目でしょう。それに久野さんはこの状況にムードを感じてたんですか?」
久野さんは唇を指で拭いながら、恍惚とした表情で
「久野さんだなんて、他人行儀ですね。巴でいいですよ。それにふたり一緒ならいつでもムード満天じゃないですか?」
やっぱりこの人どこかおかしいですよ、部屋に入り込まれた時点で外に追い出すべきだった。
「もうやめましょう、帰ってください。俺は好きでもない人にこんなことされても嬉しくないです。それにこういうことを軽い気持ちでする人は嫌いです」
「嫌い?私のこと嫌い?そうなの?」
「はい、俺はそういう人が大嫌いです」
そっか、とつぶやき久野さんの顔に笑みが張り付く。昨日俺に栄養ドリンクを渡した時のような妖艶な笑みだった。
「しかたないよね。そう、しかたない。でも大嫌いとまでいわれちゃと流石に傷ついちゃなあ」
笑みを浮かべながらおもむろに尻ポケットを探る久野さん。次の瞬間何かを腹に押し付けられたと思うと、鋭い刺激が走りみるみるうちに俺の意識は混濁していった。
視界が完全に閉じる瞬間に見えた久野さんの瞳は暗く濁り、その色が暗転した俺の意識と混ざっていく。
意識が夢に落ちていく間際、大丈夫絶対幸せにするよ?、という囁きが聞こえた気がした。

704:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:54:28 LjD7YQ3b
ああ、またこの夢か。俺はまた自分の娘と戯れていた。
娘は俺の膝の上にちょこんと座っており、俺はこの娘に本を読み聞かせていたようだ。
そういえばまだ、オムライスを作ってなかったな。時計を見るとちょうどお昼時、よし今度こそ作ろうか。
俺がそういうと、娘は大きくうなずきキッチンへとかけていく。転ぶとあぶないぞと声をかけながらそれを追いかける。
キッチンにいくと、内装こそ変ってないがやはり食器や調理道具が増えている。実際の俺はパスタをゆでる深鍋なぞ買っていなかった。
冷蔵庫を開けると、都合よく卵やその他野菜類が置いてある。流石夢だな、欲しいものが事前にそろっているとは。
娘と一緒に野菜を切りそろえていく、包丁も鉄の出刃包丁ではなくプラスチックの可愛らしい奴だ。
身長が足りてないので、小さな脚立を使いながら器用に包丁を使う娘。こういう手先の器用さは俺に似るのだなと思い、にやりとする。
野菜を炒める段階になり、娘がやりたいといいだすが、流石に火を使わせるのはまだ早いだろうと思いそれを制止する。
渋りながらも了解する娘。このどことない強情さは母親に似たのだろうか?俺はもう少し聞き分けがいいと自分では思っている。
てきぱきと野菜をいためていき、そこに1人前強のご飯を入れる。あとは男の料理でコンソメとケチャップをぶち込む。
出来きた似非チキンライスを皿に盛る。次は卵だねと、娘に卵を割らせてやることにした。
幼いながらも卵を慎重にひびをいれ、カパリと割る。やっぱり器用なところは俺に似たなと、親馬鹿じみた考えが浮かぶ。
夢の中なのにいやに現実感があるなと疑問を抱きながらも娘が割った卵を溶き、再加熱したフライパンに落とす。
高温のフランパンで急速に固まっていく卵を崩しながらフライパンの端によせ、ひょいひょいとオムレツ状にしていく。
昔は自炊もしてたが、最近ろくな飯をくってないなとふと現実にもどされそうになるが、夢の中くらい現実を忘れようと出来上がった半熟オムレツを似非チキンライスの上に乗せる。
さあ食べるぞ、と飯台へとオムライスと運ぶ。娘にはスプーンを二つ持たせてだ。
ここでも一つ気づいたが、俺の家には丸型のクッションなぞ置いてなかった。それも丁度3つ。はて、この娘の母親はどうなったんだろうか?
そんなことを考えていると、娘が早くたべようと膝の上から俺の襟を引っ張っていた。
そうだねと笑顔で返し、いただきますを言う。作法も小さい頃からしっかりとせねばな。
オムライスのオムレツの部分をスプーンで割っていく、こうすれば半熟のオムレツがとろけるように自らの重さでチキンラスを包むはず、はずなのだ……
しかしこのオムレツは半熟ではなく、完全に固まったオムレツに成り下がっていた。きっと余熱で固まったんだなと自分を擁護する。
「パパ駄目だね」という娘の心無い一言が胸に刺さる、こういうぶっきらぼうなところまで俺に似なくていいのに思う。無駄に現実感あるんだよな、この夢。
「パパ頑張ったけど上手く作れなかったよ、でも味は一緒だから食べようか?」
気を取り直して食べようと膝の上の娘の顔を覗き見る。うん、と元気よく返事をした娘の顔が俺の顔を見つめ返した。
眉や顎のラインはたしかに俺に似ているが、この目じりがやんわりとさがりった目元は母に似たのだろうか?
そう思うと何か心あたりがあるように思え、しばらく娘の顔をまじまじと見る。ここまで出掛かっているのに、見覚えがありながらも思い出せない。
もどかしさを覚えながら、頭の上に『?』マークを浮かべている娘の目を見る。この目、目なのだ。きっとこの目が最大のヒントだろう。
そう思いもっとよく見ようと顔を娘の顔に近づけようとした時、
俺の意識は覚醒した。

705:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:55:45 LjD7YQ3b
まずいつもの天井があった、味気の無い俺好みのベージュの天井。この色に惚れてこのマンションに契約を決めたのだ。
しかし色々とおかしな夢ばかりみたものだと思い、体を起こそうとして俺は自分の手足がベットの四隅に貼り付けにされているのに気がついた。
いつから俺は自分を縛り付けなきゃ寝れなくなったのだと思い首を真横に傾けると、夢の一部は夢でなく現実であったと気づかされた。
両手で頬杖を付いた久野さんの顔がそこにはあった。意識を失ったときに見たあの笑顔のまま、今も俺を見つめているのだ。
「起きました?どうです、体の方も調子がいいでしょう?」
「貼り付けられた状態で、どうやって体の状態を確認しろっていうんだよ」
「あ、その口調。敬語じゃなくなってますね。少し私たちの関係進展ですね」
さらに顔を緩ませ、嬉しそうに微笑む久野さん。いや、もう「さん」は要らないな、久野で十分だ。
「でも、もっと進展しますよ。なにせ私たち結婚するんですから、夫婦のスキンシップは大切です。
さっき体の状態なんて分らないっていってましたけど、ちゃんと目に見えるくらい元気ですよ。ほらこんなにいきり立ってるじゃないですか?」
そういうと久野は、俺の分身をさすり上げる。なにか寒いと思ったら、俺は全裸だったのかとその原因に納得する。
しかしいつからこの状態なのか、さすがに凍死はしないだろうが衰弱くらいしていてもおかしくはない。
でも今の俺の状態を見るに、そんな様子は毛ほどもない。久野の栄養ドリンクが本当に効いているのだろうか?
「あの栄養ドリンクになにを入れた?真冬に全裸でいて肌寒いとしか感じないなんて異常だぞ?」
「普通の栄養ドリンクをベースに、巷で話題の精力増強剤を各種混ぜ込んでます。味もちゃんと飲んでも美味しいように結構頑張りました。実際美味しかったですよね?」
あんな無理矢理なディープキスをして飲まされたもの味なんて覚えてるわけないだろう。鼻だってつままれてたしな。
それにおかしいぞ。混ぜ込んだってそれなら普通蓋を開けるときにキャップがガリガリとはいわんぞ。
「普通に工場の人に頼んだらやってくれましたよ?」
頼んだって、さっきから普通普通とこともなげに危ないことを言われてもな。一般人の頼みを聞いちゃいけないだろ、俺の系列の会社に頼んでなきゃいいがな。
「ラベルだって私のオリジナルなんですから、手作りです。さっきは軽いとか言われましたが、これでも軽いとか言いますか?」
たしかにただの一般人がここまでのことはしない、それこそ普通は。だが言動の節々から薄々久野が普通の人間じゃないってことには気づいていた。
いままでの人生で唯一好意を寄せられた人間がこんなアブノーマルな奴だったとは、笑い話にもならない。
「はあ、流石です。思ったとおりです。こんなに大きくてグロテスクだと逆に惚れ惚れしちゃいますよ。これで沢山子供を作りましょう。いえ、授かりましょう」
そういうと、さっきから寒い室内でもその勢いを衰えさせない我が分身をしごきだす久野。
気を失う前に飲まされた精力剤のせいか、かなり敏感に反応する愚息。
「やっぱり興奮してくれてるんですね、じゃなきゃこんない汁が出るわけないですもんね。でもまだ駄目です。ただ何もないところに精子をぶちまけるのは許しません」
そういうと、彼女は俺の体の上にのしかかり、腰にまたがる。
「そこからでも見えます?キスしてからだいぶ時間が経っているのにずっと下着の中がぐしょぐしょです。さっきから切なくて切なくて早く繋がりたいっていってるんです
でもちゃんとあなたにも感じて欲しくてずっと我慢してたんですよ?もうおあずけされるのは沢山です」
下着をわずかにずらし、秘部をあらわにさせそのままゆっくりと腰を落としていく。
先端から徐々に自分が久野の中に包まれていく。彼女の秘部は大量の汗をかいたように濡れぼそり、溢れ出る愛液が触れ合う肌を通して自分へと伝ってくるのが分った。

706:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:56:15 LjD7YQ3b
「感じますよ、ちゃんと感じます。少しまだほんのさきっぽだけなのにこんなに気持ちいいですよ。んぁ、もう一気にいっちゃいます」
すとんと一気に腰を落とす。同時に自分の全てが包まれた感覚になり、それが快美な波となり押し寄せた。
久野の顔は初めての性交で痛みを感じているのか、頬を引きつらせながらか細い声で小さくうめいた。
「くぅ、やっ…ぱり、い…たいです…ね。でも、これ…で繋がった…んですよね。夫婦になったんですよね?」
繋がった状態で体重を俺に預けながら、久野は俺を抱きしめる格好になる。
久野の乳首は硬くなっており、それが自分の胸板に擦れる。
「でも、やっぱり痛いからキスしながらしましょう。それなら私耐えられます。いい…ですよね?」
上目づかいで俺を見つめる。頼りなささげに眉をさげながらそんなことを言われると、俺の気持ちは揺らいだ。
それに初めての性交で、繋がったまま。久野は痛いといってはいるが、さっきから俺の分身は彼女の中で締め上げられており、早く動きたいと脈打っていた。
「わかった…から、動いてくれ。もう…どうにかなりそう、だ」
その顔を見て満足したのか、妖艶な笑みを浮かべた久野は再度俺に唇を重ねた。
すぐさま、舌をねじ込ませ俺の舌を求める。舌を絡ませ吸いたてながら、互いの唾液を貪りあう。
荒い呼吸をしながら、重なり、互いがそこにいるかを確かめ合うように求める。
俺は腰をまるで獣のように久野の膣に突き立て、久野はそれに応えるように受け止めた。
心臓が早鐘のように脈打つのがわかる、それは久野も同様だった。
重なり合った胸の鼓動が、しかと感じられた。抱き合って分ったのだが、久野もやはり女性。その体は柔らかく華奢で手荒く扱えば壊れてしまいそう気がした。
意識すればするほど、自分が熱くなるが分る。俺は欲望に身を任せひたすらに久野を求めた。
自分から行為に及んだとはいえ、やはり痛みがあるのか久野は涙をこぼしながら、俺の体をしっかりと抱きしめてくる。
いったん唇をはずし、大丈夫かと声をかける。
「痛くないのか?駄目ならやめてもいいんだぞ?」
「巴、巴って呼び捨ててください。名前を呼ばれるだけで私は気持ちよく慣れるんです。それだけで我慢できます。だからいっぱい呼んでください」
自分が一番辛いのに、それを隠すように弱さを見せない久野、もとい巴のいじらしさが俺にはとても愛しく思えた。
「クッ、もう限界だ。出すぞ、巴」
名前を呼んだ瞬間、膣の中が勢いよく締まり、射精感がさらに高まる。
「でますか?でるんですね?いいですよ、来てください。私を貴方のものにしてください、もっと貴方の色に染めてください」
ピクピクと肉茎が脈打ちながら、関をきったように精液をはきだす。俺は巴の中で果てていた。
「やっと名前で呼んでくれましたね。でも、これくらいでへばってちゃ駄目ですよ。今までお預けをくらっていたぶんをたっぷり返して貰いますからね」
そういうと、射精して間もない俺の肉棒を抜くことなく、またリズミカルに動きはじめる。
「私もアソコで気持ちよくなりたいので、とりあえずそれまで頑張ってください」
たとえそうなったとしても終わらせる気なぞ微塵も感じさせない顔で、巴は幸せそうに微笑んだ。
その顔を見て、俺はあの夢の娘の母が誰なのか分ったようなきがした。



艶めかしい声を上げながら何度も何度も腰を打ち下ろす。あれからすでに何度射精したかなぞ覚えておらず、何時間この状態かも分らない。
それでも巴は俺を求めつづけた。小刻みに腰を揺すりたて、肉壁をきつく締め上げ、何度も何度も。
「まだ、だめです。もっとください。もっともっともっともっともっともっと、いっぱい赤ちゃん産みます。一生気持ちよくしてあげます。
だからもっと私に愛をください。ふたりで愛を育みましょう。少し遅めの私からのクリスマスプレゼントです。
くふっ、うふふふふふふふあははははははははは」
精力剤の効果なぞとっくにきれていたが、射精を終え息子が萎えるとそのたびに前立腺に指を突きたてられ、何度も何度も性交をし続けた。
射精感はあるものの、精子はとっくに打ち止めになっていただろう。それでも巴は求め続けた。より確実に俺を虜にするため。
「幸せにしてあげます。幸せになります。もうやつれなくてもいいんですよ?もう寂しくないですよ?これからはずっと死ぬまでいっしょです」
俺は幸福がなにかは分らなかったが、確実にいえることはこのままではいつか俺は干からびるということだ。
それでもなんとなく、こんな生き方も悪くないのじゃないか、と思い始めていた。

707:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:57:30 LjD7YQ3b
投下終了です。時期を過ぎたネタって冷めたコーヒーなみに美味しくないですよね。
お目汚し失礼。

708:名無しさん@ピンキー
08/12/28 04:00:31 c45MDk1A
乙GJ
工場の人いい加減だなwww

709:名無しさん@ピンキー
08/12/28 06:31:07 cbSN5lz3
>>707
GJ。好きよこういうの、大好きよ

710:名無しさん@ピンキー
08/12/28 08:26:18 804Vi+VM
>>707
GJ!
大好物です
うちにも是非きてホスイ

711:名無しさん@ピンキー
08/12/28 13:18:42 Ir4HZHAq
>>707
GJ
冷めたコーヒーでももっと冷たくしてアイスコーヒーとして飲めばおいしいですよね


712:名無しさん@ピンキー
08/12/28 20:35:00 Aa5J88xF
誰かクロノトリガー並みマルチエンディングのSS書いてくれないものか・・・

713:名無しさん@ピンキー
08/12/29 00:56:48 w8tBw/X6
>>707
GJ、続きがあったら読みたいぜ
ヤンデレの敬語はたまらん

714:名無しさん@ピンキー
08/12/30 13:48:45 HmI1iUSl

ヤンデレって、ヤンデレになる過程が大事なんだと思うんだよな。

715:名無しさん@ピンキー
08/12/30 23:24:55 WUkKbHGo
>>714
あなたの気持はすごくわかります

716:名無しさん@ピンキー
08/12/30 23:51:39 59aJux5c
ヤンデレスレの住人なら初詣のお願いはみんな決まってるよな!

717:名無しさん@ピンキー
08/12/31 00:52:21 LI1WqhQ2
少しは女の子にもてますように。ですね、わかります。

718:名無しさん@ピンキー
08/12/31 01:12:37 Imb5yBK1
普通の女の子にモテて嬉しいわけないだろ…常識的に考えて

719:名無しさん@ピンキー
08/12/31 01:14:23 J5cXBKJz
朝起きたらイケメンになっていますように

720:名無しさん@ピンキー
08/12/31 02:36:23 If6V0G+v
朝起きたらベッドに拘束されていて、そのままヤンデレの女の子に逆レイプされますように。

721:名無しさん@ピンキー
08/12/31 03:36:44 op0Mou2V
健康

722:名無しさん@ピンキー
08/12/31 04:16:57 LI1WqhQ2
>>718
「少しは女の子にもてますように!」
「どうして?私がいるのにどうしてそんな事言うの?ねえどうして?」

というフラグを回収したいのだよ。わかるな?

723:名無しさん@ピンキー
08/12/31 07:49:00 mJzKbRJ/
普段はさっぱりしてるんだけど、実はかなり病んでたりする
明るくかっぱつな女の子に監禁されてますように

724:名無しさん@ピンキー
08/12/31 10:28:46 7JMY1SBB
俺も監禁されて逆レイプがいいなぁ

725:名無しさん@ピンキー
08/12/31 12:39:46 HkWOYGhS
俺は、薬盛られてレイプ→責任とってね。がいい。


726:名無しさん@ピンキー
08/12/31 16:49:16 7JMY1SBB
それもすばらしい

727:名無しさん@ピンキー
08/12/31 20:21:45 +HVWEYvs
卑劣なヤンデレ

(中略)

 千葉でピーナツと暮らしていたあなた、
 また千葉の田舎へ戻られたらいかがですか?

728:名無しさん@ピンキー
08/12/31 22:44:13 nA0sRVBT
デヴィ夫人やめてください!

729:名無しさん@ピンキー
09/01/01 02:08:52 /0LXhUsS
あけおめ!今年こそ監禁されますように! 

730:名無しさん@ピンキー
09/01/01 06:23:51 OPHRWBQa
全ての人類は地球と言う名の惑星に監禁されている。

731:名無しさん@ピンキー
09/01/01 06:46:11 /VduVH7H
重力萌えとは新しい。
ロケットの歴史を思い出す。

732:名無しさん@ピンキー
09/01/01 11:24:38 /3yHLEEe
地球か・・・

なにもかも、皆、なつかしい・・・

733:名無しさん@ピンキー
09/01/01 12:48:32 UUoOjEBr
地球姉さんと月妹が海男をキモ引力で引っ張り合うのを想像した。

734:名無しさん@ピンキー
09/01/01 20:59:33 Q1ZRHzw2
ヤンデレが活きる正月ネタが思い浮かばない…

735:名無しさん@ピンキー
09/01/01 21:16:08 lyxUwZKa
病み巫女?

736:名無しさん@ピンキー
09/01/01 22:06:36 GrcPYkEl
神頼みならぬ、病み頼み…


訳が解らんなこりゃ

737:名無しさん@ピンキー
09/01/02 01:08:33 DXtKf1eI
ヤンデレ×お正月=X

誰かXを解明してくれ!

738:名無しさん@ピンキー
09/01/02 01:25:51 5DlT/RoW
そりゃ初詣へ一緒に行くをすっぽかされたのに、寒い風の中唇が割れても男が来るのを待ち続けるヤンデレだろ。

冷たく乾いた風が容赦なく皮膚から水分を奪い取り、
ヤンデレの柔らかい唇がひび割れても待つのだ。


739:名無しさん@ピンキー
09/01/02 01:33:33 HXGNFBbU
年賀状がやたら多いと思ったら!

740:名無しさん@ピンキー
09/01/02 05:29:48 VF1d/Oyy
「ねぇ、737君。お年玉ここに頂戴?」
と振り袖を開いていくとか?

741:名無しさん@ピンキー
09/01/02 09:01:56 jB5Mx4ly
白いお年玉ですね、わかります。

742:名無しさん@ピンキー
09/01/02 14:58:23 WVYPPA0+
>>739 全部同じ人からだった……。

743:名無しさん@ピンキー
09/01/02 20:19:09 jtLrve4E
しかも郵便局からではなく直接投函されていた

744:名無しさん@ピンキー
09/01/02 23:35:53 UgkQUOuY
一人で何通も直接投函とかきめえ
そんな女がいたらすぐさま警察に突き出すよ

745:名無しさん@ピンキー
09/01/03 00:03:03 SebtgLWn
>>744
ははは、ツンデレめ

746:名無しさん@ピンキー
09/01/03 00:42:56 W2NgNIn5
逆に考えるんだ。
下のお年玉番号で当選する確立があがると。

747:名無しさん@ピンキー
09/01/03 01:06:45 W41gAez9
>>746
当選する賞品はすべてヤンデレ自身ですね

748: ◆Tfj.6osZJM
09/01/03 04:50:02 clWZ+s3E
投下待ちしてる間に自分も小説つくってみました。長編です。投下します。

749:似せ者  ◆Tfj.6osZJM
09/01/03 05:00:55 clWZ+s3E
第一話 ~始まり~


 偽者は本物を越す事は出来ない。
 偽者が本物を越す時、それは偽者と本物が入れ替わる時。
 似せ者は本物になる事は出来ない。
 似せ者は本物を越そうが越さまいが似ているだけのオリジナル。



 入学式から丁度一ヶ月が経った。
 俺は苦労の末に仁衣高校に入学した。
 県内トップクラスの学力を保持、様々なスポーツで好成績を収めるという文武両道の校風、そしてさらに日本トップレベルの仁衣大学へエスカレーター方式で行かれるとなれば、当然、皆行きたがるというものだ。
 女子の場合はさらに制服が可愛いことも人気に拍車をかけているらしい。
 倍率は10倍以上。去年は二年前に仁衣高校に入学した姉さんとの猛特訓の日々だった。
「はい、次はこの問題を解く!出来なかったら罰ゲームよ」
 次から次へと来る問題。そして悪魔のような罰ゲーム。二度と思い出したくない…。
 しかしそんな地獄のような日々を乗り越えて手に入れた生活はまさに夢のようだった。何から何まで楽しくて充実している。一ヶ月があっという間であった。
 入学してすぐに陸上部に入学した俺は走ることで青春を満喫していた。たった今も練習に励んでいる。
「んじゃ始めっか!」
俺は気合を入れるように呟いた。
 一週間前から、朝の授業前に一年部員同士で集まっての自主朝連をしているのだ。
 早起きが苦手な俺だが大好きな陸上の為となると話が違う。目覚ましやら携帯のアラームやらを何重にも設定し、体を叩き起こしていた。
 みんなで一緒に朝練と言っても、やることは様々だ。体操だけ全員一緒にやり、後は個人個人で好きなようにやっている。
 投擲や跳躍などのフィールド種目専門の人間とトラック種目専門の人間が一緒に練習したって仕方がない。そもそも、同じトラック種目専門だって、短距離専門の人間と長距離専門の人間じゃ、鍛え方はまるで違う。
 俺はというと…、とにかく、がんがんと長い距離を走っていた。それこそ、ブレーキのない車のように。
 きっかけはなんだっけ?オリンピックのマラソンに感動した時だろうか。それとも駅伝のゴボウ抜きというものに強く憧れた時であろうか。案外、幼い頃に読んだ『走れメロス』に影響されてなどといった、くだらない理由だったかもしれない。
 とにかく俺は走ることが大好きだった。
 とりあえず俺はいつも通りジョグを始める。もう5月だが、まだまだ風は冷たい。しかし、それは、身を凍えさせるような冷たさではなく、朝の肌を適度に刺激する心地の良い冷たさだった。
 うん、今日もいい朝だ。


「じゃ最後に全員参加で400mダッシュ。ビリの奴は今日の昼休みに好きな女子に告白」
いきなりそんなふざけた事を言い出したのは俺の悪友の杉下だ。
「俺はパス」
「無理」
人間のインパルスの限界スピードを越しているのではないかと疑うほど、瞬時に俺の意思は却下された。
「あのですね、俺はジョグやらインターバルやらをやりまくった後で、歩くのもキツイので…」
「だから?」
今度は最後まで言葉を発することすら、許されなかった。
 周りの奴らはニヤニヤと俺を見ている。この状況が面白くてたまらない様子だ。
 そういえば、今日はやたら、俺以外の奴らの練習が軽かった気がする。
「嵌められたな…」
 元々、400mとなると長距離専門の俺は分が悪い。さらにこの状況となると…
「おいおい、諦めるのか?俺の知っている赤坂映太という男はどんな逆境にも勇敢に立ち向かう強い人間なのだが、はたして違ったのかな?」
「俺の知っている杉下隆志のイメージ通りの発言、ありがたく受け取っておくよ」
「さぁ、スタートラインにつくがよい」
 見ると、既に俺以外はスタートの体勢であった。こういう時、うちの部員は妙に団結するから困る。
「詰みだな」
 俺は自らの運命を悟った。
 どうやら俺は今日、藤堂優奈に告白する運命のようだ。さてどうしようものか…。


750:似せ者  ◆Tfj.6osZJM
09/01/03 05:04:41 clWZ+s3E
 藤堂優奈。隣のクラスの女子。
 残念なことに、彼女に関する確かな情報はあまり持っていない。趣味も好みも不明。
 とりあえず、外見は良い。というか、めちゃくちゃ可愛い。人気のアイドルも彼女を前にしたら裸足で逃げ出すのではないであろうか?
 思わず撫でたい衝動に駆られる茶味がかかった黒髪。
 完璧以上に完璧な整った顔立ち。
 繊細な指や足。
 唯一、胸はあまりないが、全体的に細いそのスタイルは彼女のか弱いイメージとマッチしていて、それすらも計算されているのではと思わされる。
 杉下曰く、「仁衣高校三大美女」と呼ばれるうちの一人であるらしい。
 余談だが、その「仁衣高校三大美女」には姉さんも入っているらしい。本人は知っているのだろうか?今度聞いてみよう。
 そして彼女は独特の雰囲気を持っている。実際、俺は外見よりそちらに惹かれたのかもしれない。
 上手く説明は出来ないが、何というか、彼女は自分の人生を客観的に生きていた。おそらく彼女は、人が喜びそうなことをしたら喜び、悲しみそうなことをしたら悲しむであろう。しかも演じているような不自然さとは無縁に。
 彼女の主観は客観であるというのが言い得ているであろうか。人間らしい人間。それが藤堂優奈であった。


751:似せ者  ◆Tfj.6osZJM
09/01/03 05:08:10 clWZ+s3E
 昼休み前の前の四時間目。俺は数学の授業を華麗に聞き流しながら、必死に告白のセリフを考えていた。
「もう俺は君無しでは生きていけない。俺と付き合ってくれ!」
「どうしようもなく君が欲しい。高校生活を俺と共に歩いてくれないか?」
…。駄目だ。俺にはこういったセンスはないらしい。
 俺は、二時間目終了後に、藤堂優奈の机に手紙を入れてきていた。
「話したい事があります。昼休みの空いている時間、屋上に来てください」
と。
 しかし、呼び出して、どういう風に告白するか。それをまったく考えていなかった。
「まぁ適当に挨拶した後、ストレートに、好きです!付き合ってください!でいいだろう」
 どうせ撃退だろうし…。
 彼女にまだ彼氏が居ないことは確かである。なので、可能性が0というわけではない。
 しかし彼女はかなり頻繁に男子の告白を受けているが、それを全て断っているらしい。
 理由は不明。杉下によると、撃沈者の数は、まだ入学から一ヶ月しか経っていないというのに、十人を軽く越しているとか。
 そんな事を考えていると逆に緊張感は薄れてきた。
 藤堂優奈のことは本気で好きである。おそらく杉下達の罰ゲームがなくても、いつかは告白していた。
 もし自分の彼女に出来たら、とてつもなく嬉しい。そして、振られたら、もちろん悲しいであろう。
 しかし例え振られても、俺には現在の充分に充実した生活があった。
「失う物は何もない」
 自らに言い聞かすように小声で呟いた。
 丁度、俺の覚悟をしたのを見計らったかのように授業終了のチャイムが鳴った。
「さて行くか!」
 俺は授業終了の号令と同時に教室を出た。


 仁衣高校は屋上が開放されている。ただ風が強いのと季節によっては寒いのとで、昼休みにここで弁当を食べる習慣の生徒は居ない。(もっとも、たまには居るのだが)
 なので、教室とは違った話場として使われていた。しっかりとベンチもあったりする。
 告白にはよく使われているらしい。
 普段は人がいないのに加え、例え自分のような人間が複数居ようと、仁衣高校の屋上はなかなか広いため、あまり気にならないためであった。
 今日は俺しか居ないようだ。もっとも、まだ昼休み開始すぐなので、これから人が増える可能性はあるが。


752:似せ者  ◆Tfj.6osZJM
09/01/03 05:11:18 clWZ+s3E
 ガチャリ…
 入り口のドアが開く音がした。まさかもう来たのであろうか?
 ドアが完全に開くとそこには可憐な少女が居た。藤堂優奈だ。
 俺は一度小さく深呼吸をし、藤堂優奈に話しかけた。
「こんにちは。来てくれてありがとう。俺は1-Cの赤坂映太。よろしく」
「え…」
 いきなり、驚いたような顔をされた。少し馴れ馴れしかっただろうか?さっそくミスをしてしまったか?
 俺はとても焦った。
「好きです、付き合ってください!」
 気づくと俺は既に告白のセリフ言ってしまっていた。
 藤堂優奈が屋上に来てから三十秒も経っていないうちの告白。挨拶だけして、前置きも無しに叫んでいた。
 相手からすれば俺は今初めて知った人間なのに。
 しかも顔は下げたまま。まともに藤堂優奈の顔を一度も見ていない。
 やってしまった…。駄目な告白の典型例だろう、きっと。
 とりあえず、俺はおそらく真っ赤になっているであろう顔を上げ、返事を待った。
「兄さん…」
「は?」
 様々な返事を想定はしていた。断りの返事はもちろん、希望を込めてのOKの返事も。
 が、こんな返事は予測していなかった。俺の口から間抜けに疑問符がこぼれる。
「兄さんーー!」
 藤堂優奈はもう一度そういうと、勢いよく俺の胸に飛び込み、そして抱きついてきた。
 兄さん?藤堂優奈に抱きつかれた?好きな女の子にいきなりの行動に俺の頭はパニックに陥っていた。
 顔を見ると、目に涙が溜まっている。
「兄さん!兄さん!寂しかったよぅー」
 何が何だか分からない。
 俺はしばらく抱きつかれたまま、その場で立ちすくんでいた。


753: ◆Tfj.6osZJM
09/01/03 05:14:02 clWZ+s3E
投下終了です。不評でなければ続き投下していきます。
では裸にネクタイの態勢に戻ります。

754: ◆Tfj.6osZJM
09/01/03 05:15:37 clWZ+s3E
追記
昼休み前の前の四時間目→昼休みの前の四時間目
普通にミスです。すみません。

755:名無しさん@ピンキー
09/01/03 06:36:51 qmFjoBpY
GJ!

756:名無しさん@ピンキー
09/01/03 06:43:19 jexV9bZ+
続きが楽しみだ。GJ!!

757:名無しさん@ピンキー
09/01/03 11:39:11 snLHAzVP
続き~楽しみに決まってます!!!

758:名無しさん@ピンキー
09/01/03 18:19:14 dLSzsSSq
GJ!続きがきになる!!全裸で待機してます!

759:名無しさん@ピンキー
09/01/03 18:27:48 KWXh7ImH
GJ!この後のどうなっていくのか気になる(>< 

760:名無しさん@ピンキー
09/01/04 00:58:05 OknPVrM0
良作ホイホイだな

761:名無しさん@ピンキー
09/01/04 05:02:00 ikCddwhD
GJ!!
これは、神の予感・・・

762:名無しさん@ピンキー
09/01/04 07:22:37 SUfb/mYA
GJ!!
続きキボン

763: ◆Tfj.6osZJM
09/01/05 03:16:39 /qiCKxV6
こんなにGJと言って頂けるとは!嬉しいのでさっそく2話目投下しちゃいます!
ってなる予定だったんですが…
2話以降、全部消えました。気分良くなって保存もせずにログオフとか…

優奈「雨音ちゃんは俺の妹!とかはしゃいで、私の事を忘れる兄さんが悪いんですよ」
はい…、その通りです。

スミマセン、それだけです。そういう報告は要らねーよって思うかもですが、あまりに悲しかったので…

764:名無しさん@ピンキー
09/01/05 04:39:50 VvMor0kP
>>763
楽しみにしてるので、諦めずまた投下されることを祈ってます。

765:名無しさん@ピンキー
09/01/05 06:47:29 f2xhAhK4
>>763
字が消えたら物語が消えるって訳でもなし
脳内に残ってるならまた書けばいいさ
気長に待ってるよ

766:名無しさん@ピンキー
09/01/05 11:24:55 xPTBIbP8
SSって書き始めたとしても、なかなか書ききれないよね

767:ワイヤード  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:28:20 TDyDTYz3
久々に投下します。二話連続ですが、今回あまり面白い部分はないと思います。
これからへのつなぎみたいな話です。

768:ワイヤード 幕間  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:28:50 TDyDTYz3
幕間『少女の祈り』

神様―。

月夜。
光がステンドグラスを超えて差し込み、少女を照らしていた。天使のごとき輝き。
翼のないその姿が、むしろ神秘だった。
闇の中の教会で唯一輝ける少女は、独り神に祈りをささげていた。
「神様」
目を閉じる。
少女はその瞼の裏に、世界でたった一人、愛し、全てをささげるべき存在を想い浮かべる。
そして、それは神ではない。ただの、一人の少年の姿だった。
「神様、どうか……」
少女は、神など信じてはいなかった。信じているのは、ひとつだけ。
未来。
少女と、少年の、二人の未来。たったひとつ、それだけがあれば、それは彼女の幸せだった。
「どうか、ちーちゃんと私の生きる、未来を……!」
ただひたすらに、純粋で、しかし利己的な願い。
信じてなどいない神にまですがる。
それは、彼女がプライドよりも大切なもののために生きているという証拠だった。
それほどまでに、少女はあの少年を愛していた。
「神様……」
教会の奥にひっそりと佇む、神を模した像は、ただ、少女を見つめるだけだった。
―この世界に、神なんていない。
少女には、そんなことは既に分かっていた。
神なんていない。人は、狂おしいまでに平等だ。
だから、強いものが勝ち、弱いものが負ける。平等だからこそ、違いがある。
だから、少女は力を願った。


769:ワイヤード 幕間  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:30:28 TDyDTYz3

かたん。
突然後ろから聞こえたその音に、少女は振り向く。
教会の扉が開いていた。差し込む光に、浮かび上がる影。
人影。
「待ってたよ、アリエス」
少女は、確信をもって人影に声をかけた。
アリエスと呼ばれた少女も、落ち着いた声で返答する。―まるで、こうなるのがはじめからわかっていたかのように。
「逃げないとは、たいした自信だな」
「けじめをつけるためだよ。一人でも逃がしたら、ちーちゃんに迷惑がかかっちゃうから」
「お前は……!」
アリエスが激昂する。
「お前は、悪魔だ。神に祈る資格など、ない!」
「……そう」
少女は神にひざまずいていた姿勢から、立ち上がり、アリエスと向かい合う。
「自らの目的のために、何人を義性にした! 何人を殺してきた! お前の殺した者には、帰りを待つ家族がいて、恋人がいて、友がいて……ともに、笑い、泣き、怒り……。全て同じ、人間だ!
 それを、お前は簡単に……! そして、遂には、お前はおまえ自身の両親までも……!」
「なら、逆に聞かせてもらうよ」
「……何だ」
「あなたたち統合教団は、私にどういう仕打ちをした? 度重なる、過酷な能力テスト。人体実験。兵器開発。薬物投与。攻撃力の調査のために、大型動物と素手で戦わされたこともあったよ。
 そして、死刑囚を連れてこられて、人体への攻撃を試すとか言って、私にその人を殺させたのも、あなたたち統合教団」
「……っ」
「もともと人間扱いされなかった私に、私の両親は何をしてくれた? もともと統合教団に私を売ったのもお父さんとお母さんだよ。そして、そのためにちーちゃんと私を引き離したのもあの二人。あの二人だって……あいつらだって! 私を人間扱いしてくれなかった!」
「それでもっ」
「それでも、何だっていうの!? 私を助けてくれたのは、心の中にあったちーちゃんとの記憶だけなんたよ……? あの人と結ばれる未来だけが。その夢だけが、私を守ってくれたんだよ? そんな、小さいけど幸せな未来への願いさえ、統合教団は許さなかった」
「だから、全て破壊したというのか!」
「そうだよ! それのどこが間違ってるって言うの? アリエス、あなたに私が裁ける? ちーちゃんが好きだっていうだけで、それだけで良かった私を、ここまで変えてしまったのは、あなたたちなんだよ……?」
「違う……。お前は、お前のエゴを押し通しているだけだ! お前一人の願いのために、多くの―お前と同じ、小さな願いを持った人間を、何人も殺したんだ。それは、許されるものではない」


770:ワイヤード 幕間  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:31:03 TDyDTYz3
「……なら、その力は誰が私に与えたものなの?」
少女は、手にもった剣を握り締めた。
「それは、お前が元から持っていた力だろう。だから我々統合教団は、お前を保護し……」
「違う! 私は、ちーちゃんと一緒にいたいだけなの! 本当は、こんなちから、いらない!」
「血塗られたお前が言うことか……!」
暗闇で隠されていたが、徐々に光で浮き上がる少女の姿。
アリエスには、しっかりと見えていた。少女の、血塗られた身体。
少女のものではない。返り血。少女が虐殺した、統合教団の構成員達のものだ。
そして、それだけではない。少女は、奇怪な鎧を身に着けていた。
やけに近未来的な―今は血塗られて赤いが―白い鎧である。手には、長剣が握られている。
「その剣は、確かに我々が与えたものだ。だが、お前の剣を振るうのはお前自身だ。お前の心だ」
「……そう、そうなんだ。アリエス、あなたは、分かってくれないんだね……」
「別の形で出会っていれば、お前とは友でいられただろう。だが、私は全てを奪われた。だから、もう戻れない。戦うことでしか、私たちは分かり合えない」
アリエスは、マントに隠していた武器を取り出した。
「『ヴァイスクロイツ』。エクスターミネート」
十字架のような形をした武器。『ヴァイスクロイツ』。中心にある宝石がアリエスの闘気に反応するように光る。
「本当に、やるんだ。さっき、私の力は見たでしょう? この『ネクサス』がある限り、私は無敵だよ。そして……」
少女は、剣を構え、突進した。真っ直ぐ、アリエスに向かって。
「この剣を振るわせるのは、あなた!」
「だとしても!」
全くゆがみのない攻撃。ひたすら真っ直ぐに、迷いなく、最速で剣を振り下ろす少女。その一撃を、アリエスは『ヴァイスクロイツ』で正面から受け止める。
互いの強大なエネルギーの衝突に爆音が轟き、教会全体が強く揺れる。ステンドグラスが吹き飛ぶほどの衝撃。
「『ネクサス』! ブーストアップ!」
"ブースト・アップ"。少女が身に付けている鎧のベルト部分から、機械音声が発せられる。
同時に、少女の持つ剣が強い光に包まれる。
「っ!?」
アリエスはとっさに少女とのつばぜり合いを中断して、ヴァイスクロイツを引き、少女の左隣に飛び込み、床を転がって距離をとった。
次の瞬間、少女の剣から発せられた強い光が剣から一気に溢れ出し、少女の前方の物体全てを切り裂いていた。
教会にあった椅子、カーペットはもちろん、教会の壁、地面でさえも、少女の前方のものは、全て。
「……」
アリエスは驚愕する。これほどの威力の攻撃は、かつて見たことがなかった。
少女が、本気だということだ。アリエスが見たことのない領域の力を行使するまでに。


771:ワイヤード 幕間  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:31:33 TDyDTYz3
「どう? これが、あなたたち統合教団が恐れ、制御しようとした『ワイヤード』の力。『WE粒子』のもたらす、世界を変える力」
「……この力は、人が手に入れていいものではない」
「あはっ! 同意見だよ、私もね。でも、末端のアリエスは知らなかったかもしれないけど、本当にこれを手に入れたがっていたのは、統合教団……つまり、人なんだよ」
「そんな、ばかな……」
「いいよ、今なら許すよ、アリエスのこと。だって、知らなかったんだもんね。アリエスは、ワイヤードに家族を殺された恨みを晴らすために、統合教団に協力してたんでしょう?」
「……」
確かに、その言葉は正しい。
アリエスは、ワイヤードという存在に教われ、全てを失った。自身も、一生消えない傷を負った。
そして、ワイヤードたちと闘っている組織、統合教団に拾われ、その中でずっと戦ってきた。
知らなかった。
アリエスは、統合教団の行動は、全てワイヤードの殲滅のために行われていると、信じていた。
「統合教団は、人類のためにワイヤードを滅ぼすなんていう、正義の組織じゃなかったんだよ。教団の目的は、『WE粒子』の軍事転用。それをもって世界を統一する。つまり、本当のエゴの塊は、統合教団のほうなんだよ。私じゃない。あんなやつら、殺されてとうぜんでしょ?」
「そんな……そんなことが……」
「アリエス、今なら、私の仲間になれるよ。一緒に行こう、アリエス」
「……それでも」
「?」
「それでも、私は、神を信じている」
「……あきれた。どうしてそんなに頑固なの?」
「統合教団の神ではない。お前の神でもない。私の神は、ここにいる」
アリエスは、勢いよく立ち上がり、自らの胸を強く叩く。
まるで、心臓の―命の存在を確かめるように。魂を確かめるように。
「この魂が、叫んでいる。お前は歪んでいると! 私は、私の信じる全てを―神への祈りを、全て……!」
ヴァイスクロイツを強く握り締めるアリエス。
その腕には、瞳には、もはや何の迷いもない。
「……分かった。私がちーちゃんを想うのと同じ。アリエスも、本当に大切なものがあるんだね」
「その通りだ。もはや、どちらが善、どちらが悪なのか。そんな問題は超越した。私とお前の、運命は。……全て、神の導くままに。そして、私自身の意思で、ここで断ち切る。この祈りを、全て、この一撃に懸ける……!」
「いいね。一撃、たった一撃の勝負……」
少女も、剣を握り締める。ベルトが"エクステンション・ドライブ"とコールしたと同時に、少女の剣が強い光に包まれる。
「もう、言葉はいらない! いくよ、アリエス!!」
「西又イロリ……いや、ワイヤード! 私が、お前の運命を断つ!!!」
二人が同時に駆け出す。
「いっけええええええええええええええ!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


772:ワイヤード 幕間  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:32:04 TDyDTYz3
ある朝、京都近郊の、町外れの教会が、全焼、倒壊状態で見つかった。
近隣住民に寄れば、その前の晩、なにか大きなゆれと、音と、そして、天まで届く光が教会から発声していたらしい。
調査隊の活動虚しく、焼け跡からは死骸もなにも見つかっておらず、おそらく被害者はゼロと思われる。
警察は原因究明に乗り出したが、結局全てが不明であり、調査はすぐに打ち切られた。

西又イロリが東京に現れる、数週間前の出来事である。

773:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:32:38 TDyDTYz3
第十四話『存在に心奪われる時』

「(どこだ……どこから撃ってきている……)」
第二射。
千歳は即座に反応して手のひらで矢を受ける。
千歳の手のひらを貫くかと思われた矢は、逆にひしゃげて地面に落ちた。
そして、千歳は分析を終了した。
今の一撃で。矢の方向や速度、角度によって、狙撃者のいる位置を特定したのだ。
「(ありえないことだが、3000メートルほど離れた地点から撃っている。そして、恐らく高くて、俺が見える場所……)」
―学校、だ。
「っ!?」
思考している間に、三発目が迫っていた。
「蒼天院清水拳、流転投槍!」
両手を円状に回転させて、その中心で作った空気の壁により、触れずに受け止める。
矢にこもったエネルギーを保ちながら腕をさらに回転し、矢を方向転換する。
「受け取りな、こいつは警告だ!」
両腕を押し出すと、空中で静止し、方向転換した矢が、まさに飛んできた方向をめがけて校則で飛んでいった。
清水拳による反射。
「……とどくか?」


774:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:33:08 TDyDTYz3
「くっ……ボクが二発も外した……!?」
メアは動揺する。彼女の腕を持ってすれば、暗殺など一撃で十分なのだ。本来なら、もうとっくに終わっている。
焦りながら、第三射を放つ。
「あいつ、受け止めて……!」
そして、こちらに向かってくる。
「ちっ!」
高速で迫ってきた矢を寸前で掴み取り、メアは防御した。
「まさか倍化して反射するなんて……。鷹野千歳、思ったよりやるな」
こうなれば、暗殺は無理だろう。メアはさっさと見切りをつけ、ずらかろうとする。
「まさか、本当にこのまま逃げられるとでも思っているんですか?」
「!?」
突如背中に投げかけられた声に、メアは飛びのいて距離をとった。
「何者だ!」
「何者って、あなたのほうこそ何者なんですか? そうでしょう、だってあなた、高校生には見えませんよ」
「……」
メアの背後に立っていたのは、この高校の女子生徒のようだった。
黒のショートヘアに眼鏡の、一見地味な風貌だ。
だが、メアには一瞬でわかった。
こいつは―野獣だ。
「まあ、相手に素性を聞く時は自分からっていいますしね。私は井上深紅。この高校の風紀委員です。以後、お見知りおきを」
「……なぜ、ここにいる」
「なぜって、確かに今日は休日ですが、生徒会活動やらなんやらも大変なんですよ。委員長っていうのは。それに、その質問はあなたに対して為されるべきでは? あなた、他人の学校の屋上で、人を狙撃してましたよね?」
「くっ……」
メアは動揺する。
目の前にいるこのミクという女は、一体何者なのか。
表面上はなんて事のない、丁寧語を喋る優等生然とした少女だ。だが、どう見ても、それ以上の何かが秘められている。
「いえ、そんな目で見ないで下さい。別に怒ってるわけじゃないんです。狙撃はかまいませんよ。たまにはしたくなりますよね、狙撃」
こいつは何を言っているんだ。ミクの異常性に、メアはついていくことができない。
「ただ、狙撃している対象に問題があるんですよ」
ミクは笑い始める。無気味に、ひたすら不気味に。
くすくす。
くすくす。
くすくす。


775:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:33:55 TDyDTYz3
「(こ、こいつは……!)」
メアは、ここでやっと確信を得る。
「(こいつも、ワイヤードだ!)」
そうと分かれば行動は早かった。
メアはアルバレストをミクに向ける。
「お前、ワイヤードだな……」
「さあ、何を言っているのやら、わかりませんね」
「随分余裕だな。ボクがここで引き金を引けば、お前は死ぬ」
「くすくす。本当に、やんちゃなんですね。『ボク』ですか。可愛い女の子が……」
「何がおかしい」
「いえ、失礼。だってあなた『タチ』ですもんね。そして、可愛い子猫ちゃんを欲しがってます。『百歌』ちゃんという、可愛い子猫ちゃんをね。だから、男の子を演じている」
「……!! お前、一体……!」
「知ってますか? 情報というのは、時に銃よりも強い武器になるんですよ? メア・N・アーデルハイドさん」
「お前……」
「そして、私は今、怒っているんです。あなたの愛がどこへ向かおうと勝手ですが、その怒りの矛先を千歳君に向けた事実に」
「……!」
井上ミクは、どう見ても弱い。ひょろりと細いし、身長もあまり高くない。メアより若干上な程度だ。
どう見ても、勝てる相手。
なのに……。
「(なぜ、ボクの脚が動かない……!?)」
ミクはくすくすと笑いながら、少しずつ近づいてくる。
―そんな姿に、メアはどうしようもない恐怖を抱いていた。
「千歳君を……。私の千歳君を……。あなたに、彼の何がわかるって言うんですか? あなたに、彼を裁く権利はあるんですか?」
「(動け……動け……!)」
已然、メアは硬直している。
ミクの指がメアの首に触れる。
「あなたも、戦闘では強いみたいですが、もうすこし身の程を知ったほうが良いんじゃないですか? 世の中には、触れてはいけない尊いものがあるんですよ?
 千歳君を殺そうだなんて、イスラム圏でマホメットを馬鹿にするようなものです。この世界全てから、あなたが殺されることになるんですよ?」
すべすべの、優しい指がメアを撫でる。
「(殺される……)」
「私の『幸せ家族計画』にも支障をきたしちゃうじゃないですか。千歳君無しには、何もかも台無しなんですよ。……だから」
「ぐっ……!」
ミクがメアの首を締め上げ、その身体を軽々と持ち上げた。


776:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:34:26 TDyDTYz3
「(こいつ……なんという力だ……!)」
「暴力沙汰は苦手なんですけどね。それでも、私にはものの価値判断というものができますから。ねぇ、メアさん。この世界のなかの、大切なものって、分かりますか?」
「(な……なにを……言っている……)」
「人間も、何もかも。この世界に平等なんてないんですよ。どんなものにも優先順位があります。それはまず第一に、『自己』が尊重されるべきであり。しかし、その前提に成り立つ、最も上位の存在があります……。それが、千歳君なんですよ」
「(こいつ……)」
「あなたと、あなたの大切にしている世界は、あなた自身が思うほど特別じゃないんですよ。本当に特別なものが世界にあるとしたら、私の観測した、私と千歳君の生きる世界です。これは本当に簡単な理屈なんですけど、なぜ誰もそれに気付こうとしないんでしょうね?」
くすくす。
「(狂人だ……!)」
「さて、そろそろ良いでしょう」
ミクはメアを掴んだまま、屋上の端に移動する。
「お別れです」
そして、足場のない場所にメアを持っていき、その手を放した。
「……ちぃ!」
メアは空中でくるりと身軽に回転し、見事に着地。
五階建てのこの学校校舎の屋上からの落下を、全く苦にしなかったのだ。
「あいつ……なんなんだ……」
焦燥。
ここはとにかく一旦退くしかなかった。


777:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:35:36 TDyDTYz3
「やはり、この程度では傷ひとつつきませんか」
ミクは、退散していくメアの姿を、屋上から悠々と見下ろしていた。
「あんな化け物とまともに戦ったら、私なんか肉片も残らないでしょうね」
そう言いつつも、ポケットから小さなビンを取り出し、ぷらぷらと目の前で振った。
「この『硬直香』の効果範囲の狭さも、改善の余地ありですね」
ビンの中には鮮やかな赤色の粉末が入っており、小さく火がついている。ビンの口からは、甘い匂いが漏れ出している。
これは硬直香とミクが呼んでいる特殊ガスであり、その効果はその名のとおり、かいだものの筋肉を硬直させる。
匂いは強くなく、効果も即効性があるため、非常に高性能だが、欠点は、その効果範囲の狭さだった。最低でも5メートル以内に近づかなければ、全く意味がない。
「自慰行為をするというのは、主義に反するのですが、まあいいでしょう」
実の所、これは自身の体臭がもつ幻惑作用を取り出して物質化したものである。それに必要だった愛液は、もちろん自家発電した。
ミクはそれまで自慰行為をしたことがなかったが、千歳に対して行った数々の性的暴行を思い出すと、非常に簡単に濡れることができた。
「ふふっ、千歳君に試す時は、もう少しちゃんとしたものを作らないといけませんからね。副作用なんてあったら大変です」
そこまで言うと、ミクは満足げにビンをしまった。
「さて、メアさん。この警告を真摯に受け取ってくれれば幸いなんですけどね」

「さて、狙撃手があの警告を真摯に受け取ってくれると幸いなんだがな」
狙撃がやみ、千歳は家についていた。
「ん、どうしたのお兄ちゃん?」
「いや、なんでもない」
百歌は相変わらず何も知らず、無邪気だ。だが、それがいい。一番いい。
千歳は、百歌をわけのわからない命の取りあいなどに関わらせる気は全くなかった。
目的もなにもわからない狙撃手だが、野放しにしておくと百歌まで危険に晒すことになるかもしれない。
「(次はない。次に俺や百歌を狙ってきたら、容赦なく消す……。そのための、俺の清水拳だ)」


778:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:36:37 TDyDTYz3
数日後。
狙撃手も現れず、その日も平和に千歳とナギ(と、家の方向が違うのにいつの間にか合流しているイロリ)は、元気に登校していた。
「いや、北斗はやはりトキだろう。家族を想うあの生き様は見習わなければな」
ナギが熱くトキの人生を語る。
「まてまて。サウザ―を忘れるな。やはり拳法家としては、ケンシロウももちろんだが、ああいうサウザ―のストイックな所にも憧れるだよ」
千歳も負けじと熱く語る。
そして。
「二人とも、あまーい!!!」
「な、なんだよ、いきなり大声出して」
イロリは、千歳に槍訊き返されたとたん、まるでダムが決壊したかの如く言葉を垂れ流し始めた。
「確かにトキの家族愛やケンシロウの隣人愛はすごいとは思うけど、最高はシンだよ! 北斗はもともとシンとケンシロウの闘いの物語だったんだし、それにやっぱり愛に生き、愛に死ぬあのシンの生き様には現代人が見習わなければならない部分がいっぱいあるよ!
 言うなれば、『さふいふものに、わたしはなりたい』だよ!」
「そ……そうか……?」
「そうだよ! それに、ちーちゃん。サウザ―なんて駄目駄目! あんな『愛などいらぬ!』なんていう人、全然わかってない!」
「いや、それは違うぞ、イロリ」
ナギが口をはさむ。
「サウザ―が愛を失ったのは、やつ自身の持つ愛が、誰より深かったからだ。愛を持つ苦しみを知ったが故に、悪によってそれを塗りつぶしてしまおうと思ったんだ。
 愛と憎しみの重さとは、常に均一なんだよ。愛を守るためにせよ、壊すためにせよ、それに対応した憎しみが存在する」
「……た、確かに」
「サウザ―の場合は、生まれた憎しみが愛そのものに向き、シンはユリアへの執念ゆえにケンシロウを傷つけたという、そういう方向の違いが二者にはあったが。
 ともかく、他の北斗の拳の登場人物も、どんな形であれ、愛と憎しみを持っている。ユダですらそうだし、ケンだって悪を憎む心は愛から生まれている。奴らは皆、同じ人間だからな」
「な……なるほど。勉強になるよ」
千歳にはそこまでわからなかったが、イロリはなんとか納得できたみたいだった。
「やっぱり、ナギちゃんは凄いね!」
「まあ、それほどでもないがな。それに、お前がシンを尊敬する気持ちも、分からんでもない。結局、歪んだ愛をもった人間が多いのにたいし、シンの愛は方向性はどうあれ真っ直ぐだった。正しい形をとっていなかったとしても、あそこまで一途なやつも、そうそういないな」
そうこうして無駄話をしているうちに、校門までたどり着く。
見ると、なにやらいつも通りの風景ではない。
生徒たちはざわざわと野次馬のように外に出てきていて、その中心には大きくスペースが開いている。
黒服の男達が何人か断っていて、野次馬達を押しのけているのだ。
さらに、開いたそのスペースの中心に、誰かが立っていた。
「なんだ、こりゃあ」
千歳が小さく呟く。とにかく学校に入らなければ。と、踏み込む。ナギとイロリも追従する。
真っ直ぐ歩いていくと、見るからに怪しい誰かさんにぶち当たることになる。迂回していくか、と、千歳は方向転換―
―しようとした矢先、怪しい人物が走り出した。
その手には、槍が握られている。


779:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:37:08 TDyDTYz3
「なんだ……!」
超スピードで接近し、不審者は槍による打突を繰り出す。
反射的にそれを清水拳で受け止めようとする。
「―っ!?」
が、清水拳の生み出す闘気の障壁を、その槍は貫いた。とっさに身体をひねり、ギリギリで回避。
「(こいつ、まさか『狙撃手』……!)」
体勢をくずしたのを逆に利用して、地面に手をつき、脚を突き出して脚払いを仕掛ける。
不審者はそれを身軽に跳んで避け、距離をとって着地した。
その間に千歳は立ち上がり、不審者と対峙する。
不審者の風貌は本当に不審だった。鬼のような面に陣羽織。そして手には槍。どこかのアニメキャラと、気のせいか似ていた。
「てめー。何者だ」
答えてくれるとは思わないが、一応そう訊いてみる。
「……わたくしは」
「!?」
意外なことに、その不審者は返答した。しかも、その声は女。
女が、清水拳をたやすく貫くほどの貫通性を生み出したというのか?
そして、その不審な女が続けた言葉は、さらなる驚愕に値するものだった。

「わたくしはミス・キシドー! あなた様の存在に心奪われたものです!!」

780:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:38:22 TDyDTYz3
終了です。
>>753 確かに、良作のヨカン……! 頑張ってください。

781:名無しさん@ピンキー
09/01/05 13:46:13 yoqBzRV6
リアルタイムGJ!
抱きしめたいな
とか言ってきそう

782:名無しさん@ピンキー
09/01/05 14:01:55 on/kLpK9
>>780
GJ!!

とりあえず◆.DrVLAlxBIは絶対00見ててグラハムファンってわかった。
俺もです。

783:名無しさん@ピンキー
09/01/05 14:48:12 +7dvXH7S
gj!
>>780もまた乙女座なんだろう。

784:名無しさん@ピンキー
09/01/05 16:46:09 fDvfUoLI
GJ
でもキシドー名乗るなら陣羽織じゃダメだろww

785:名無しさん@ピンキー
09/01/05 17:01:02 F9xeZuRa
つまんね。死ねよ

786:名無しさん@ピンキー
09/01/05 18:34:47 ngfiz04p
ワイヤードキターーーーGJ!!続き楽しみです

787:名無しさん@ピンキー
09/01/05 23:19:17 VvMor0kP
GJ!! 
やっときましたか!

788:名無しさん@ピンキー
09/01/06 00:00:37 rie1UnEh
『闘うことでしか、わかりあえない』
で(0w0)と(<::V::>)を思い出したのは俺だけで良い…後Mr.ブシドー思い出したww

789:名無しさん@ピンキー
09/01/06 00:23:14 IzXHMM7Y
>>788
うぜえ

790:名無しさん@ピンキー
09/01/06 00:50:00 +nH+kb12
いい感じの厨二病タイトル

791:名無しさん@ピンキー
09/01/06 17:40:15 tHlj3s68
新ジャンル考えた! ヤンデレスイーツ(笑)

あたし病んでる、みたいな?
いま流行のヤンデレってやつ?
彼氏はいる、ていうか
いない訳ないじゃん
あたしは彼氏がいないと生きていけない、みたいな?



自分で書いててムカついてきた

792:名無しさん@ピンキー
09/01/06 17:42:45 5KbOcXkF
そもそもヤンデレとスイーツは結構相反するものじゃね?

793:名無しさん@ピンキー
09/01/06 18:18:08 C4MQ0r68
その人間が本質的にスイーツ(笑)じゃなければいけそうだが、本当にスイーツ(笑)なら「これが真実の恋(笑)」になっちゃうから無理だろ。どこまで行っても利己的じゃあ

794:名無しさん@ピンキー
09/01/06 18:35:25 /AGIfe5V
スイーツは我儘で悲劇主義者?だからな
ヤンデレとの決定的な違いは尻軽で無い点と彼氏に忠実である点だろ
スイーツはカッコイイオトコを発見すると乗り換えするけどヤンデレにはそれがない

795:名無しさん@ピンキー
09/01/06 18:50:21 5KbOcXkF
まぁある出来事をきっかけにスイーツが更正?したと同時に
更正させてくれた男への愛情が溢れてヤンデレになるのはありだとおもう
まぁ独占厨もいるからそういうやつには微妙かも知れないが
そういうSSもあるとこにはあるしな

796:トライデント ◆J7GMgIOEyA
09/01/06 23:28:04 nM93YJCi
では投下致します

797:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA
09/01/06 23:30:40 nM93YJCi
第3話『絶対監視領域』

 そんなわけでいつもの朝がやってきた。季節は暑苦しい夏が終わり、
ゆっくりと秋に移行しているせいか、朝方は少し冷える。こんな季節に布団を被らずに寝ると
風邪の一つや二つぐらいひいてもおかしくはない。
 隣で寝ているであろう彩さんは起床しているのか、すでにいなかった。

台所の方から美味しそうな匂いがしてきた。独り暮らしの俺以外に誰も住んでいないこの家に料理を作れる人間は
彼女しかいないだろう。自慢ではないが、独り暮らしをしているくせに俺は料理の方はさほど上手ではない。
自炊すると言っても、コンビニから買ってきた弁当の中身を開けたり、インスタント食品にポットのお湯を注ぐことしかできない。
だって、男の子だもん。

「あっ。起きたんですね。周防さん」
 フリルの付いたピンク色のエプロンを身に纏った彩さんが天使の微笑みを浮かべて、こっちにやってきた。
片手には長年使っていなかったフライパンを持っており、テーブルの上に置かれた皿に目玉焼きなどと言ったおかずを盛り付けていた。
「これは桜井さんが作ったの」
「泊めてもらったお礼ですよ。これぐらいのことをさせてください」
「俺はロクに料理ができないから、人が作った朝食を食べるなんて久しぶりだな」
「周防さんは普段料理とか作らないんですか?」
「うんうん。全然、ダメなんだよ。せっかく、調理器具を買い揃えてもあんまり使う機会もないし、
料理のレシピを見てもさっぱりとわからん。みじん斬りなんてどうやって斬るのってレベルだし」

「神話級の不器用ですよ。料理に絶望したと言って、大根を持ちながら銀行強盗に走り出してもおかしくないレベルです」」
「うん?」
「な、な、な、なんでもないですからね。さあ、冷めない内に食べましょう」
 
 久しぶりに一人ではない朝食を彩さんと過ごす時間は快適であった。
作ってくれた料理も旨いを通り越して、美味の領域に達していた。
心から涙を流せるような美味しい料理を作れるのは日本でも彼女しかいない。と大袈裟に言えるぐらいに素晴らしかった。

「えへへ。私の料理をたくさん食べてくれて嬉しいですよ」
「本当に美味しかったよ。ごちそうさまでした」
 食べ終えた食器を台所に運んで、軽く汚れを水で落とす。
朝はのんびりしている時間が作れないため、そんなもんは適当でいい。
彩さんは小さな口でゆっくりと朝食を食べているのだが、今日はちょっと起床時間が遅かったせいか、
すぐにバイトへ行く時間を迎えていた。

「あの桜井さん。俺はバイトに行かなきゃいかないんで。
これ俺のアパートの鍵を渡しておくからさ、部屋を閉めたらポストの方に入れておいてください」
「は、はい、わかりました」
「それじゃあ、バイトがあるんで先に失礼させて頂きます」
「周防さん。お仕事頑張ってくださいね!!」
「ガッテンだ」
 意味不明の掛け声を発すると俺はさっさと自分の家を後にした。

798:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA
09/01/06 23:32:55 nM93YJCi
 一人残された私は未だに自分の作った朝食と対決していた。
忍さんのために作った朝食は一人で食べる時よりも何倍も何倍も美味しかった。
昨日、私の我侭で泊めてくれた恩返しのために朝食を作ったけど。
これからも何かと理由を作って、忍さんに私が作った料理をたくさんたくさん食べて欲しいな。

 ふと、私は忍さんの部屋に一人でいることに気付いた。
 そう、一人なのだ。

 えへへ。
 忍さんは将来のお嫁さんのことを信用しすぎているようですね。
 恋する女の子にこんな危険な自宅の鍵を渡すなんて。私に犯してくれと言っているようなもんですよ。
 うにゃ。
 自宅の鍵さえあれば、鍵屋で簡単に合鍵の10個や20個も作れるし。
いつでも、忍さんの家に不法侵入しまくりですよ。忍さんの趣味とか好みとか
たくさん情報をたっぷりと仕入れて、忍さん好みの女の子になれます。
 ううん。

 私がこういう行動を取ると予想して渡してくれたのかな? 
だったら、私だって全身全霊で忍さんを口説き落とします。夜這い、誘惑、悩殺、なんでもやりますからね。

 さてと、忍さんがアルバイトに行っている間になんでもやれます!!
 合鍵を作って貰っている間に盗聴器と盗撮カメラを買って来て設置しましょう。
リアルタイムで忍さんを監視するんです。私以外の女の子と接点があるのか調べなくちゃならないし、
それに24時間ずっと忍さんを見続けたいですから。
 この際だから、将来のために貯蓄していたお金を銀行から引き出して買おう。
生活はちょっと苦しくなるかもしれないけど、愛する人を手に入れるためなら。

 私はなんでもやる。
 なんだってやります。
 だって、私が初めて好きになった人だもん。
 昨日の出来事だけで私は人生で初めて人として、一人の女の子として優しく接してもらえた。
その思い出だけで永遠に生き抜くことができる。
 忍さん。

 あなたのほんの些細な優しさだけで私は救われました。
 それと、人を初めて好きになりました。
 一緒に泊めてもらったことで、それを何よりも確信しましたよ。
 あなたの体温はとても温かくて、私はとても安心できました。それにちょっとだけ興奮して鼻血とか出したけど。

忍さんは私が鼻血を流しても、嫌な顔を一つもせずにティッシュで拭いてくれましたよね。
 他の人なら私を汚いと罵り、面白そうに暴力を振るんですよ。私が気を失うまで。
 孤児院、学園、私が辿って来た人生がそうだった。

 だから、周防さんの優しさが本当に有難かった。彼の気持ちに偽りや下心がなかった。
彼自身も気付いてない優しさに心を惹かれていく。

 私が乙女座だった事をこれほど嬉しく思った事はないです!!
 
 桜井彩はここに宣言致します!!
 忍さんを絶対に自分の彼氏にすると。
 これは私の最優先事項であり、修羅を凌駕する苦難の道。
 この手が真っ赤に汚れようが、ちょっとした犯罪行為すらもためらいません。
 乙女の意地です。
 懲役刑なんてクソ喰らえです。
 
 私は拳を硬く握り締めてそう決意すると自分の計画のために走り出した。
 忍さんの部屋に盗聴器と盗撮カメラを仕掛けるために。

799:名無しさん@ピンキー
09/01/06 23:34:36 0cXLMqL6
(・∀・)支援

800:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA
09/01/06 23:36:07 nM93YJCi
今日もそれなりに働いたと自負しているが、バイト先の店長に5回も叱られた。理由は簡単だ。
バイト先の女の子(店長のお気に入りの子)と仲良く話しているところを見られたからである。
バイトごとき奴隷が俺の女になる(予定)に気安く話しかけるなと軽く脅されたが、俺的にはどうでもいいことだった。
その女の子と仲良くなるつもりもないし、給料さえ払ってもらえば、それなりに労働力を提供する。人間関係なんて知ったことか。
 ともあれ、仕事の疲れを癒すために家路を目指していた。

バイト先から家までは徒歩で通勤しているので、およその時間で15分ぐらい。すでに陽が沈むのに早い季節だ。
 女性の変質者に襲われやすい季節になってきた。ヤンデレ症候群の影響で女性が病んでいる割合が大きくなった。
病んでいる女性に狙われると、非力な男性は何も抵抗できずにひたすら襲われるだけである。
彼女たちの戦闘能力は軽く警察官や特殊部隊をも凌ぐ。

 俺の友人もヤンデレに襲われて、そのまま監禁されてそれ以降は音信不通になっている。
 全く、恐ろしいことだ。
 病んでしまった女の子と生涯を共にするなんて。
 破滅的な結末しか思い浮かべない。
 ともあれ、俺も用心しておこう。いつ、俺のことが密かに好きでたまらない女の子の心が病んで、

知らない内に監禁されるってことが起きるかもしれないからな。
 監禁されるなんてとんでもないな。
 と、何か考えながら歩いているとアパートの外壁が見えてきた。

あの刑務所に匹敵する程の外壁の高さは一体なんのためにあるのかと首を傾げたくなる。
アパートの敷地の入り口から見知った人物が出てきた。

801:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA
09/01/06 23:37:05 nM93YJCi
「おや、周防のクソガキじゃないか」
「ババア」
 このアパートの所有者である老女。通称、ババアと俺が呼んでいる。
「バイトの帰りか?」
「そうだよ」
「若いもんが定職に就いてねぇのは情けないとしか言いようがない。もう、樹海で練炭自殺してきたらどうじゃ」
「いやぁ、さすがにそこまで人生に絶望してませんので」
「フン。くだらないね。お酒の肴すらもなりゃしない」
 人様の人生をなんだと思っているんだ。
「そういえば、昨日お前の隣に引っ越してきた奴がいたな。もう、会ったのか?」
「ええ。会いましたよ。引越ししている最中だったから、少しだけ手伝ったんだけど」
「ほう、好感度を上げるために必死すぎるわぃ。隣に若い女の子が住んでいるからと言って、狼に変貌して襲うなよ。
ワシに全ての管理責任がかかってくるから」

「そんなどこぞの変態と一緒にしないでくれ」
「周防のクソガキならやりかねん」
 すでに会った初日で一緒に一夜を過ごしてましたと言えば、目の前の妖怪ババアに斧で惨殺されそうだ。
性に飢えた狼だって相手を選ぶ。昨日、出会ったばかりの女の子を襲う卑劣な真似なんて
一般的な倫理観さえあれば、絶対にやるはずがない。

「で、ババアさ。なんで、あのアパートは無意味に外壁が高いんだ? あれじゃあ、外からも内からも侵入することができないじゃん」
「あれはな」 
 ババアが過去を懐かしそうに思い出すような遠い目をして言った。
「ワシのひいひいお婆ちゃんが建てた家だ。当時は愛しい人を閉じ込めて監禁するために設計された家らしくて、
その名残が今にも残っているんだろうな。敷地も家もワシは特にいじってないから当時とそう変わらない」

「監禁されるって……おいおい」
「過去にあのアパートを貸した住人で男と女が住み着いた時に限って、監禁事件が起きたことがある。
というか、アパートを借りた住人全てに監禁事件が起きたな」
「えっ?」
「このアパートで監禁するには快適な環境じゃ。外部の接触を遮断する高く覆われた外壁に、
周囲に悲鳴を漏らすことができない完璧な防音施設。出入り口は一つしかないので、監禁された男はそう簡単に逃げられぬ。
これこそが我が家代々に伝わる監禁システムなのじゃ」
「そんな監禁システムなんて作るな。燃やせ」
「ほう、びびっているな。だが、安心せい。周防のクソガキを監禁するような女性がこの世にいないからのぅ。ほぉほぉほぉほぉ」

 と、ババアは変な笑い声と共にスキップしてさっさと過ぎ去った。
 
 もう、家に帰って。寝よう。

802:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA
09/01/06 23:37:52 nM93YJCi
■監視領域
『現在の時間は20時頃です。忍さんが帰宅してきました!!』
 と、私は電気代の節約のために電気を消して、部屋を暗くしていた。唯一の光は忍さんを監視用モニターだけであった。
『忍さん。帰ってきたばかりなのに、着替えるなんて。私のことを誘っているんですか? きゃは』
 当然、この映像は全て録画している。後でこの場面を何度も見直して見直してやろうと思います。
 昼頃に設置した盗聴器と監視カメラは全部で64個。
これを付けた奴は見つかるの覚悟で付けたに違いない程に付けまくった。
おかげで忍さんをあらゆる角度から見れるし、死角なんてあの部屋には存在しません。
でも、お風呂とかトイレとかは最低限のプライベートに関しては何にもしてません。
だって、覗く楽しみがなくなるじゃないですか。
『今晩の夕食は……コンビニ弁当ですか』
 近くにあるコンビニからお弁当を買ったんですね。そういえば、ロクに料理が出来ないって言ってましたね。
 うふふふ。
 難攻不落の要塞の弱点を見つけちゃいました。

803:トライデント ◆J7GMgIOEyA
09/01/06 23:39:28 nM93YJCi
以上で投下終了です

今年もよろしくお願いします。
それでは。

804:名無しさん@ピンキー
09/01/06 23:57:25 iscNud29
>>803
GJ!なんかババアのキャラが濃くて笑えた

805:名無しさん@ピンキー
09/01/06 23:59:02 Y6Xax9h4
>>803
乙 今年もよろしくおねがいします。



そしてまた某乙女座ww

806:名無しさん@ピンキー
09/01/07 00:20:32 Jr+YRxOy
何でこんなに人気なんだwww俺も好きだけどさww

807: ◆Tfj.6osZJM
09/01/07 00:32:34 J+afXyNs
>>780 >>803
GJです!
そして二話目投下します。

808:名無しさん@ピンキー
09/01/07 00:33:57 rSonQmCB
>>807
待て、ちょっと待て。
せめて少し間を開けてやれ。
それがマナーだ。

809:似せ者  ◆Tfj.6osZJM
09/01/07 00:36:09 J+afXyNs
第二話 ~偽りの兄~

嘘も方便である。
嘘が御方便になることもある。
嘘が方便になるような状況。
これはけっして御方便でない。



「た、頼むから落ち着いてくれ!」
俺は落ち着かない口調でなんとか言った。
「兄さん?」
藤堂優奈の抱きつく手は緩まない。
とりあえず体を離して話をしないと。
そう思い、名残惜しい気持ちを抑え、彼女の体を遠ざけた。
「えーと、俺は君の兄さんじゃないんだけど…」
「え?」
「俺の名前は赤坂映太。クラスは1-C。陸上部所属。君の兄さんじゃないだろ?」
彼女がきょとんと俺の話を聞いていく。
徐々に彼女の顔から、涙も笑顔も引いていった。
どうやら勘違いを悟ってくれたようだ。
最初の自己紹介から聞いていなかったとなると、告白も最初からやり直しかな?
「あ…、あ…」
一瞬、彼女の嗚咽が漏れた。
しかしすぐにいつも通りの藤堂優奈に戻る。
「ごめんなさい、あまりに、本当に驚くほどに、私の兄に似ていたもので…、つい取り乱してしまいました。本当にすみません」
「いやそれはいいんだけど…」
「本当にすみません」
本当に申し訳なさそうな顔だった。
いつも通りの人間らしい表情。その表情には謝罪の意がしっかりとこもっている。
さっきの表情とはまるで逆。今の彼女の顔にあるのは、単色の純粋な意思だけだ。
「藤堂さんには兄さんがいるの?」
「はい、いました。一年前に死にましたが…」
「だから…、ごめん…」
藤堂優奈には兄がいて、仲が良くて、でも死んでしまって…。
そして、その兄に俺が似ていた。彼女はいきなり現れた俺に兄の面影を重ね、兄に対しての藤堂優奈になった。
だいたいこんな感じであろう。
「いえ、謝らなければいけないのはこちらの方です。赤坂くん、ですよね?すみませんでした」
「あ、うん…」
ここまで謝られると引かざるをえない。
「えーと、それで、私に用があったんですよね?なんでしょうか?」
「うん、俺、藤堂さんが…」
俺は口を止めた。
兄を失う悲しみ、か…。

俺が妹を失った時、どれだけ悲しかったっけ?
ずっとずっと泣いて。
妹が生き返るように祈って。毎日、神社にお賽銭を捧げて。
しばらく学校もズル休みして。
姉さんがずっと側にいてくれて、慰めてくれて。
でもすぐには立ち直れなくて。
たまに妹が生き返る夢を見て。でも朝起きると、どこにも居なくて。


810:似せ者  ◆Tfj.6osZJM
09/01/07 00:39:30 J+afXyNs
死んだ人間は生き返らない。
死んだ人間のコピーは居ない。
では偽者は?
彼女が今、一番必要としている存在は?

今の彼女の顔には、用件が何なのか?告白かもしれない、そうしたらどうしよう、そんな事を気にする表情しか浮かんでいない。
この状況なら誰もが浮かべるであろう表情。そして誰もが思うであろう気持ち。
とても人間らしい姿。
人間らしすぎる姿。
俺が知る藤堂優奈らしい姿。
でもさっきの俺を「兄さん」と言い、抱きついてきた時の彼女の表情は違った。
全く人間らしくない、俺の知っている藤堂優奈らしくない。
これ以上の表情があるのであろうか?というほどの感情が溢れ出ている表情。
普通の人間が表現できる感情のキャパシティを越えた表情。
彼女を、藤堂さんをそんな顔に出来るのは誰?

それになにより…
俺自身が藤堂さんの最高の笑顔が見たかった。
人間らしくない、この世で最高の。
ここで告白して、振られて、他人になってしまうくらいなら、いっそ…

「俺、藤堂さんの兄になっちゃ駄目かな?」
「え?」
「嫌ならいいんだ。おこがましいことを言っているのは分かっている」
「…」
「藤堂さんの兄さんの偽者になれないかな。君のこと支えるから、出来るだけだけど…」
少しの空白の時間が流れる。
「出来るだけ…、ですか?」
「え、あーいや、出来る以上に頑張るよ」
「そんな言い回しまで兄さんにそっくりです」
「あ、そうだった?」
彼女は笑っていた。今まで俺が知っていた藤堂優奈らしくない笑顔で。
「本当にいいんですか?」
「もちろん!俺は藤堂さんのこと好きだから!」
今日、二度目の告白だった。また顔が赤くなる。
「嫌です」
「え?」
「兄さんは私の事を、藤堂さん、なんて呼びませんよね」
くすっ。そう本当に聞こえてきそうなほどの無邪気な顔だ。
「もう一度聞きますね?本当に私の兄になっていただけるんですか?」
そう言う、彼女は本当に可愛くて…
「もちろんだよ。俺は優奈のことが好きだから」
俺は藤堂さん、いや、優奈の頭を優しく撫でながら言った。
「私も兄さんのことが好きです」
俺は優奈と生きていく。兄として。
この笑顔をずっと見ていたい、そう思った。
「じゃよろしくな!優奈!」
「うん、今日はありがとう兄さん」
校舎の時計をみると、もう五時間目開始の三分前になっていた。
「悪い、俺、次の授業の教室遠いんだ。先行くな。授業頑張ろう」
「はい、頑張りましょう」
俺は幸せな気分で屋上を後にした。教室へと走る途中、笑みが浮かぶのを止められなかった。

「また、よろしくお願いします、兄さん。もう二度と兄さんを失いません…」
そう一人呟き、優奈も屋上を後にした。

811: ◆Tfj.6osZJM
09/01/07 00:41:32 J+afXyNs
>>808
すみません、投下時間見ていませんでした。
>>803
本当に申し訳ないです。以後気をつけます。

812: ◆Tfj.6osZJM
09/01/07 00:47:38 J+afXyNs
申し訳ないことをしてしまいましたが、一応、二話は終了です。
シーン構成の都合上、二話はかなり短めになりました。そちらもすみません。
トライデントさん、本当にごめんなさいです。

813:名無しさん@ピンキー
09/01/07 01:02:05 l5ULb2lV
GJ!
投下間隔は俺はあまり気にしない派だけど気にする人もいるから気をつけた方がいいかもね。
でもGJだ!

814:名無しさん@ピンキー
09/01/07 01:53:26 rcZoaXcW
GJ!なんかブレス4のED曲思い出したぜ…。

815:名無しさん@ピンキー
09/01/07 05:06:46 DnRtzEIC
中国人の女性は世界一独占欲が強いんだって聞いたんたが

816:名無しさん@ピンキー
09/01/07 07:17:49 qjinwb5I
ブータン人を見習うべきだな

817:名無しさん@ピンキー
09/01/07 15:13:09 G9mJ0OxM
>>796 >>807

GJ!!どちらとも続きが楽しみです。

818:【楔】
09/01/07 17:56:16 rx8mu9nu
初めて覗いてみたがなんとGJなスレw

ヤンデレスキーな自分にはクリティカルなスレっすw

なので自分も初めて小説を書きましたが投下します

819:【楔】 ◆seRwt2jbbc
09/01/07 18:00:39 rx8mu9nu
私…


もう我慢できない…


あの醜い淫売に…


好きな人を汚されるのが…!!!


   【楔】


俺は山芳高等学校に通う2年の七瀬由岐(ななせ ゆき)だ。

今日もいつも通り学校に向かう為にいつも通りの道を歩いている。…ん?あの後ろ姿は?

「よぉ!茉莉華!」

「…あ!由岐くん!おはよ♪」

こいつは俺と同じクラスの綾橋茉莉華(あやはし まりか)で、まぁ幼馴染みの間柄だな。


「ねえ♪由岐くんは昨日のあの番組は観た?」

「観た観たw俺的にはぐっ〇ん〇ーンが面白かったなw」

「あれは笑っちゃダメだけど笑っちゃうよね~♪」


そんな感じで昨日観た番組だとかの話しをしながら、いつも通りの時間が流れていく。

まさか…あんな事が起こるとも知らずに…。


学校に着き上履きに履き替えて教室に着き机に向かう途中である女子生徒に話しかけられた。


「あら…今日も冴えない顔してるわねぇ」

「おいおいw朝の挨拶がそれかよw」


こいつは櫛山早苗(くしやま さなえ)で、このクラスの学級委員長をしている毒舌家だ。(何故か俺にだけ毒舌…orz)


「あ!早苗おっはよー♪」

「おはよう、茉莉華さん今日も元気ね」

820:【楔】 ◆seRwt2jbbc
09/01/07 18:02:31 rx8mu9nu
「うん!今日も元気にがんばってこぉー♪」

「…なんで俺には普通に挨拶してくれないんだよ」


坊やだからさ…。

…は!?なんだ!今の電波は!…まぁ、いっか。


「由岐ったら独り言?気持ち悪いわねぇ…。あ、そうそう話したい事が有るから由岐1人でお昼休みに屋上に来てくれる?」

「ん?今、話せない事なのか?」

「なになに?茉莉華も知りたいな~♪」

「今は話せないわねぇ。あと由岐とだけ話したいから茉莉華ごめんね」

「わかったよ。昼休みだな」

「…ざんね~ん」


そこで担任が来てHRが始まり授業も寝ながら過ごして、あっとゆう間に昼休み。
弁当を食べてから屋上に行こうと思ったら早苗は弁当も食べずに屋上へ。
仕方ないので俺も弁当を食べずに廊下を小走りで歩き屋上に続く階段を登り屋上のドアを開けて早苗を探すと奥のフェンスに寄り掛ったまま空を見上げてた。


「よう、なんだ話しって」

「あら…早かったわね」

「あぁ早苗が昼休みが始まってすぐに教室を出ていったから俺もな」

「…そう」


なんだ…?いつもだったら毒舌の1つでも飛んでくる筈なのに調子が狂うなぁ。

821:【楔】 ◆seRwt2jbbc
09/01/07 18:04:04 rx8mu9nu
「…私達って出逢ってから約2年よねぇ」

「ん?そうだな~確か入学式の日に早苗から話しかけて来たと思ったらいきなり「貴方、冴えない顔ねぇ」だもんな~あれはマジで驚いたぜw」

「その後の約2年間は早苗と茉莉華と俺でいろんな事して遊んだよな~」

「…そうだったわねぇ。あれが由岐との出逢いで、そして私が由岐に一目惚れした瞬間」

「………え?今なんて?」

早苗は何度か深呼吸をして…

「私は由岐が大好きです。付き合って下さい」

驚天動地とは正にこの事…まさかあの早苗から告白されるとは…オラ、ビックリしてドキドキが止まらねえぞ~

…は!?また電波が!!

そんな事より早く告白の返事をしなければ…でも今まで早苗はそんな仕草やら態度やらをしてなかったし俺も早苗の事は密かに好きだったし…ああ!もう!いっちまえ!!


「俺も早苗の事が大好きだ!付き合ってくれ!」

「…本当に?…由岐は茉莉華の事が…好きだと思っ…てたからダメだと…ありがとう…」


俺は何も言わずに泣いてる早苗を抱きしめて泣き止むまで頭を撫でてあげた…

その時の俺は気がついてなかった…茉莉華がこの告白を見ていた事を…その顔が歪んでいた事も…

822:たくあん議長 ◆seRwt2jbbc
09/01/07 18:13:07 rx8mu9nu
取りあえずここまでの投下です

続きは書く気でいますが、こんな稚拙な文で良いのだろうか?

この後からヤンデレが出まくりな感じでwww

823:名無しさん@ピンキー
09/01/07 18:19:49 +0pIIwe+
ヤンデレってなんだ?

824:名無しさん@ピンキー
09/01/07 18:23:32 Tlw4vitc
>>823
お前は何だ?消防か?

825:名無しさん@ピンキー
09/01/07 19:05:00 4f+iCH5U
投下が多くて嬉しいな
>>815
しかし家事を全くしないと聞いたが?

826:名無しさん@ピンキー
09/01/07 19:21:14 6A69CEIT
>>822
女の子二人とも可愛いので病みまくるまでガンガってくれ

827:名無しさん@ピンキー
09/01/07 19:24:01 k0OX2cf+
>>822
ガンガンいこうぜ!

828:名無しさん@ピンキー
09/01/07 20:36:54 46lVGE24
wktk

強いて言えば、台詞に草はないほうがいいと思われ

829:たくあん議長 ◆seRwt2jbbc
09/01/07 23:28:47 rx8mu9nu
今、ヤンデレ漬けにしてる最中です。裸に靴下でお待ち下さいw

>>826
ありがとう。俺的に好きなタイプのキャラを出しました。
>>827
ヤンデレをたいせつにw
>>828
貴重な意見ありがとう~草は無しですね。

830:名無しさん@ピンキー
09/01/07 23:42:05 ii+yxXUT
>>829
GJだ

ただ作者は感想等にレス返すのは控えた方がいい


831:名無しさん@ピンキー
09/01/08 00:46:36 vfxmVwcm
>>829
VIPに帰れ

832:たくあん議長 ◆seRwt2jbbc
09/01/08 01:23:30 NYsbUkXr
【楔】の続きを投下します。ここからは…

ちょい甘、シリアス、ちょい過激な表現を使いますのでヤンデレスキー、全裸で紳士じゃない人はご注意を。

833:【楔】 ◆seRwt2jbbc
09/01/08 01:25:21 NYsbUkXr
放課後になってようやく早苗も落ち着きを取り戻したが

(結局午後の授業サボッちまったぜ…)

教室に戻った俺達は茉莉華に俺と早苗が付き合う事を告げると…


「ええ!?由岐くんと早苗ちゃんが付き合うの!?2人して中々帰って来ないから心配してたんだけど…」

「…うん?おめ…でとう…?ごめん!私、先に帰るね!」


この突然の出来事に茉莉華も素直に祝福してくれると思ったのに微妙な表情のまま走って帰ってしまった…。

俺達は茉莉華の様子が気になりながらも下校時間ギリギリまで教室で初デートは何処に行くかなど話し合いながら帰宅する事とした。


その帰宅の途中…


「ねぇ…手を繋ぎながら帰らない?」

早苗が顔を赤くしながら、そんな事を言うもんだから俺も顔を赤くしながら…

「…おう!じゃあ手繋ぐぞ?」

俗に言う恋人繋ぎで手を繋いだ。幸い周りに人の気配も無さそうだし、この時季は日が落ちるのも早く暗かったので気にせず手を繋いだ


その瞬間…!!!!!



闇夜から憎悪と殺意を含んだ鋭い視線を俺は感じた!!!!

「…誰かいるのか?」

「どうしたの?由岐?」

その時、俺の声に反応して足音が近づいて来た…あれは…?

834:【楔】 ◆seRwt2jbbc
09/01/08 01:27:04 NYsbUkXr
「…由岐く~ん…早苗ちゃ~ん」

「ふぅ…なんだ!茉莉華か!どうし…た…?」

闇夜を切り裂いて現れた茉莉華はその小さな手に刃渡り24cmはある和牛刀を持っていた…

「…私ね~…気づいたんだ~…私も由岐くんが~…大好きだって~…」


「「…え!?」」


その告白に俺達は驚いた…だが、そんな事より普段の茉莉華に無い異様な雰囲気に俺達は恐怖と狂気を感じた…

「…だからね~…私は~…大好きな由岐くんを~…奪った~…早苗がね~…」




「許せないんだよ!!!!!!」




その瞬間、茉莉華は手に持った和牛刀で早苗を切りつけてきた!!
だが、とっさに俺が早苗を自分の方に引き寄せたお陰で早苗の髪が数本切られただけで済んだ。

「や、やめろよ!!茉莉華!!冗談じゃ済まないぞ!!」

「冗談じゃないんだよ!!!その女が!!その女が!!なんで…?なんで由岐くんはそんな女の事をかばうの!?」

茉莉華の狂気を纏った殺気に早苗は声も出せずに俺の腕の中で震えてる…。

「…そんな乳がデカイだけの牛女は…由岐くんに…ふさわしくない…解体してやる…解体してやる…解体してやる…解体してやる…解体してやる…解体してやる…解体してやる…」

835:たくあん議長 ◆seRwt2jbbc
09/01/08 01:34:56 NYsbUkXr
今回はこんな感じで。まぁ生あたたかい目で読んで頂ければうれしいです。
>>830
>>831
失礼しました今度からは気をつけます。

836:名無しさん@ピンキー
09/01/08 02:03:00 TYqz13vY
ちょっとした独白みたいなのはいいとおもうが
あんまり作者が意見を出しすぎると叩かれやすい
だから良い意味でも悪い意味でも作者自信はできれば無個性であったほうがいい
作者が個性をだしたいとおもうのならSSの中でやるべきだな

837:名無しさん@ピンキー
09/01/08 06:14:59 dIe5i2kq
>>823
ヤンデレにやられて記憶を失ってるんだ
触れてやるな

838:名無しさん@ピンキー
09/01/08 09:02:22 i/ehMMzS
GJ!!


839:名無しさん@ピンキー
09/01/08 17:43:48 8pa8XMyK
>>823
こんなところに居たのね?さあ早くおうちに帰りましょ

840:名無しさん@ピンキー
09/01/08 20:58:47 BBHtzqf8
GJでした。
ところで「お隣の彩さん」でも「ヤンデレ症候群」ってでてくるけど
なんか、SS同士の世界観が共通してるみたいでいいですね。

841:名無しさん@ピンキー
09/01/08 21:00:07 nT76MTsX
ぽけ黒マダー?

842:名無しさん@ピンキー
09/01/08 22:08:06 D2VxDKGK
>>840
人気そうなSSのキャラを沢山出したオールスターSSとかいいんじゃね?
それぞれの作者さん達にキャラの使用許可さえ取れればだけど。

843:名無しさん@ピンキー
09/01/08 22:13:35 aFi52E2i
それはたいへんきけんなかんがえです

844:名無しさん@ピンキー
09/01/08 22:45:32 D5mCQieB
ああ、とっても危険だ。
どのくらい危険かというと嫉妬に狂ったヤンデレに銃火器を与えるくらい危険だ。

845:唐突ですが
09/01/08 23:13:40 6Zq1yCz6
処女作です。
自分は小中高と国語の先生に"文章力に難あり"と言われ続けてました。
かなり言い訳がましいですが結末だけを考えて作り始めたので最初から理解不能です。
歴代SSの中でも随一、並ぶ物のないほどの下手さです。
その事をふまえた上で時間に余裕がある方はご覧ください。

ジャンル:微妙なヤンデレ?
(年齢、名前、容姿、一人称などはご想像下さい)


846:ハッピーエンド
09/01/08 23:14:27 6Zq1yCz6

腐った親に存在を否定され必要最低限の金を置いていくだけだった
学校では問題夫婦の一人息子として、危険人物として存在を無視されていた
だが成長するにつれ、1人で我関せずと何も興味なく、飄々といる事は
年上からみれば粋がってるように見えたようだ。
下校中にいきなり後ろから殴られた
最初は2,3発殴られれば興味を無くすと思い好きなようにさせた
だが彼らには無抵抗の人間を殴る事が好きだったようだ
5,6発殴られ、これ以上我慢する必要が無いと感じて反撃をした
体は生まれ持った才能のおかげで特にスポーツもせずに強い部類に入るほうだった
その時にいた人数は4人だったが難なく叩きのめす事ができた。
彼らはアウトローを気取りタバコ、飲酒などをして運動をしなかったおかげだったかも
しれない。また学年下のガキが1人で反撃などしてこないと思ったのかもしれない。
学校での地位しか知らない彼らは学年というものが大きな壁だと思ったのかもしれない。

これ以後殴られる事は無くなったが、ますますクラスから、学校から孤立していくのが
感じられた。

後悔はしてない、、と脳内で言う

でも、、どこか苦しくて、、


847:名無しさん@ピンキー
09/01/08 23:14:50 BBHtzqf8
>>842
オールスターよりも、ゲストで少しだけ出てくるぐらいでいいと思います。


848:ハッピーエンド
09/01/08 23:15:15 6Zq1yCz6
自分が崩れないように、壊れないようにするため感情の起伏を減らし
笑う事も悲しむ事も怒りも忘れた、、

だけどそれは彼女に付き合わされる内に嘘だった事を実感した。
何も忘れてない、、

彼女と会ったのは広い森林公園だった
休日の時間つぶしで民間図書館で借りた本を簡素な部屋で読むよりは
森林に囲まれた静かな場所で読むほうが頭に入ると思い、公園に来ただけだった。
だが休日の事もあり中央地の広場は家族連れが多くおり、静かとは言えないようだった
静かな場所を探し、端の方を歩き回ってると女性がしゃがんで子犬に話しかけていた
話しかけると言っても「ワン、ワン」と擬音語でしか話しかけてなかったので
意味はわからなかった。
横を通り過ぎようと近づくと足音で気づいたようで大仰な仕草で振り返った。
その顔は真っ赤だった。
どうやらここには人があまり寄りつかないと思ったのかもしれない。
たしかにこの場所は背の高い木に挟まれ陽ざし悪く、場所も中央地と違い広くなく、
それに背の高い木のおかげで閉塞感があった。
わざわざ公園に来てまで来るような場所ではないだろう。
自分も静かな場所を探していなければ確実に来ない場所だろう。

"どうでもいい"と思い無視して通り過ぎようとした。

通り過ぎようとした時彼女から自分の名前を呼んだ。
怪訝な顔をしていると少し怒ったような、だけど羞恥が残る赤顔で"同じクラス"と言った。
同じクラスと言ってもまだ学年が変わって一ヶ月も経ってない。
人に興味がない自分にはまだ名前も顔も覚えていないクラスメイトが9割以上だ。
"そうか"と一言だけ言って目的の場所を探そうとまた歩き続けようた。

849:ハッピーエンド
09/01/08 23:16:03 6Zq1yCz6
5歩ぐらい歩いただろうか、パーカーに付いてるフードを下に引っ張られた。
"何か用があるのか"と無感情の声をかけながら、後ろを振り向くと犬の顔が間近にあった。
"何の用だ"とさっきと変わらない声質で言う。
彼女は"この子犬可愛いでしょ飼いたいでしょ、そうでしょ"と言ってきた

つまりは彼女はこの子犬の面倒を見てくれないかと言ってきてるのだ、、
自分に

"話にならないと"無視してまた歩き続けた。
彼女はそれが気に入らないらしく足を思いっきり引っ掛けた、、
、、、、こけた、、、、


彼女は馬乗りになって子犬を顔に近づけて"この子犬飼いたいでしょ、"とまた言った
自分は"家がペット禁止のマンションだから飼えない"と適当に嘘を言った。
その言葉を聞いた彼女はいきなり財布を取り住所の書いてあるカードを見た。
彼女は勝ち誇った顔で"部屋番号書いてないけど"と言った
どうやら彼女は常識というものを知らないらしい。
自分はこれならと"ペット類はすぐに殺してしまうから飼えない"
引かれるかもしれないが特に問題はない、彼女に嫌われようがこれから
自分には実害がないと思い言った
"嘘だね"と彼女が言った
いきなりな言葉に怪訝な顔で"なんでだ"と聞くと彼女は
"君が持ってる本は動物好きがよく読む本だから"と言った
確かにこの本には人と動物との暖かい交流を眠くなる文体で書く如何にも動物好き
が読むような本だった。

色々と訂正するのもめんどくさくなり"偶然だ、飼うのがめんどい、どけ"と率直に言った。
彼女も押し問答がめんどくさくなったようで
"ああもう、とにかくこの子犬お願い"と言い、犬を体の上に乗せられ、
彼女は走って逃げた、、、

1人犬を抱いて地面から起きる。
子犬をあらためて見ると少し痩せていて親犬もいないこの状況なら死ぬかもしれない。
子犬が自分を見て鳴いた。

850:ハッピーエンド
09/01/08 23:16:40 6Zq1yCz6
ただ、、、、ただ何となく、、、、家に連れて帰った。
そこには特に同情やら何やらが有ったわけでも無いと思う。
そんな感情があるはずは無いと、、残ってるはずがないと思う。
ただの気まぐれ、なんとなく。
明日にでも彼女に押し付ければいい

まずは犬を風呂に入れる。
入れた後、底が深く倒れないように固定した大きなバケツに入れ、これからの事を考えた。
動物を飼うにはまず餌を買わなければならない。
餌を買うには金がいる。
親は高校に入ると同時に金をくれなくなった。
だけど親も知らない隠し地下倉庫を見つけ、先祖代々から続くような調度品を怪しい骨董屋に
売って、大学を出ても当分は生活に困らないぐらいの金はある。
それを使い餌を買ってくる。
だけどその前に図書館から犬の飼育本を借りて調べる。
最後に弁当屋で自分の飯も買う。
決まったら行動する。

まず図書館に行って犬の飼育本を読む。
犬の餌が決まったら本を借りに受付に行き図書館を出て、
人の餌も犬の餌も買える大型スーパーに行った。

買い物を終え家に帰り、まず犬に餌をやった。
その後自分の飯を食い、一服をついた処で飼育本を読む

この日の就寝の時、かなり変わった休日だったと1日を振り返った。

翌日の登校日クラスに行くと昨日犬を預けて無責任に逃げた女が話しかけてきた。
"昨日はごめんなさい、恥ずかしい処を見られて少し錯乱してた、犬はどうしてる?"と言った
自分はめんどくさい事にならないように"捨てた"と一言言った
彼女はうれしそうな笑顔で"嘘、服に犬の毛が付いてるよ。私も昔飼ってたからわかるよ"と言った
どうやら室内での放し飼いのせいで、服に何本か付いてたらしい。

彼女は"飼っていた"と言った。それにあの犬を自分で飼わず無理矢理押し付けてきた。
昔は飼えて今は飼えない状況にでもあるのだろう。
あの犬を押し付ける事は出来なさそうだ。

彼女に話は無いと言う態度で興味なく自分の席に向かった。
その時視界に入るクラスメイトは大抵こちら側を見ていた。
顔を向けた瞬間目をそらされた。
いかにも興味ありませんという白々しい態度で友人同士話をしる。
"どうでもいい"何も感じずに席へ向かった。
その後ろで彼女が"今日の放課後、あなたの家に犬を見に行くね"と言った
彼女の方へ向き、拒絶の言葉を言おうとしたら彼女は親しい女友達のもとへ行っていた。
1人で勝手に帰ればいい、そう思い話しかけるのをやめた。

851:ハッピーエンド
09/01/08 23:17:12 6Zq1yCz6
いつもと変わらない授業が終わり、放課後になった。
いつもと同じように帰宅する。
学校から出て100Mぐらい歩いた所で彼女に止められた。
"さぁ、行きましょ"と、先に帰宅した事を咎めることもなく、横に並んだ。
追い返すのも無理という事を感じ無視して歩き続ける。
学校から自分の家まで歩いて20分近くの所にある。
一言も話さず20分歩き家に着いた。

家の中に入ると犬が飛びついてきた。
はたいた。
彼女は"なかなか過激な愛情表現ね"と言った
何事も無かったように自分の部屋に向う。

私服に着替え、腹を満たそうとリビングに行くと犬が彼女にじゃれ合っている。
その横を通り過ぎようとしたら彼女に"そういえばこの子犬の名前は?"と聞かれた
"ワサオ"と答えた。

時間が経ち彼女がそろそろ帰ると部屋に言いに来た。自分は特に返事もせず本を読む。
彼女が"明日も来るから"と言った。
自分は拒絶の言葉を言おうとしたら彼女はもういなかった。

次の日の放課後、宣言道理に彼女が家に来る。
この日の帰る時も"今度は明後日、来るから"と言った
もう自分は何を言っても無駄という事を悟り特に何の反応もみせなかった。

犬を見に彼女が家に来る。そんな日が半年以上続いた。

犬の話題だけだったのが少しずつ他の話題の話もするようになった。
最初は彼女の言葉を相づちだけですましていたが、今は聞かれればそれなりに
話すようになった。

日に日に変わっていく自分、、、

852:ハッピーエンド
09/01/08 23:17:43 6Zq1yCz6
いつの間にか少し笑っている自分がいた。
愛など知らなかったのに彼女を見るだけで知らずと愛というものが
少しずつ実感できるようになった。
表情が豊かになるに連れ、クラスの面々も一言二言話しかけるようになった。

昔の自分なら考えられないような日々を送っている。
幸せ・・・・だと思う。

ある日彼女に遊びに行かないかと話しかけられた。
自分は嬉しさを心の中で感じ、まだ少し無表情ながら"行く"と即答した。

彼女が先に歩む場所は誰もいない森の奥地だった。
普通の人なら家族だろうと誘われたら不振に思い行かないような場所である。
だけど自分は何も考えず彼女の後を追った。

何十分、何時間歩いただろうか、、いきなり森が切れ、円状に開いた
小さな白い花の咲く場所に着いた。とても幻想的だった。
その中央に彼女の後を追って行くと、いきなり振り返って抱きついてきた。
抱きつく力が強く、体が倒れる。
彼女は自分を覆い被さった状態になった。

訳が分からず彼女の顔を見ていると唐突に彼女が涙を流した。
"好きなの"と言う。

「私はあなたを見ていた・・・・・・
  私もあなたと同じように何も興味がない。家でも学校でも作った表情。
  仲間意識があった。だからあの日私はあなたに近付きたくて犬という接点を作った。
  ・・・・・だけどあなたはどんどん変わっていった。
  言葉を返してくれるようになった、微笑むようになった。
 
  ・・・・クラスであなたは少しずつ人気が上がってきた。
  知ってる?あなたの事が気になるって女子結構いるんだよ。
  ・・・・・・・あなたが変わって、周りが変わって自分の気持ちに気がついた
  ・・・・・・・・あなたの事が好き、愛してる・・ずっと前から
  だけどあなたは変わって、格好良くなって、
  いつの日か他の女性が出てきて私なんか興味なくなる。話もしなくなる。
  だから・・・だから今あなたと共に終わらせたい。
  あなたの人生を私で終わらせたい」


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch