ヤンデレの小説を書こう!Part20at EROPARO
ヤンデレの小説を書こう!Part20 - 暇つぶし2ch650:名無しさん@ピンキー
08/12/25 19:56:01 YO9k43GO
不法侵入者でレイパーということか?

651:名無しさん@ピンキー
08/12/25 20:30:29 oJJR4NWC
>>650
それと泥棒ですかね
泥棒に入ったら女と遭遇。勢いでレイプってイメージで書きました
やっぱり書き足りてなかったですね

652:名無しさん@ピンキー
08/12/25 20:51:53 2BvqwYcV
いや、十分伝わってたよ

653:名無しさん@ピンキー
08/12/25 21:10:23 oJJR4NWC
すみません、厚かましいとは思いますが、どうやったらもっといい作品が書けるか、アドバイスをいただけませんか?
どんな細かいことでも構いません。
目指している作品は『黒の領域』と『恋人作り』、それに『真夜中のよづり』です

654:名無しさん@ピンキー
08/12/25 21:21:10 mlz2ua5D
日本語や文章がおかしいのはそれだけで読む気が失せる
読者を置いてけぼりにする白々しいノリも読んでて苦しい

655:名無しさん@ピンキー
08/12/25 21:24:00 BbeV9TIh
エロパロ板の作品に文章力を求めるのはどうかと思うが

656:名無しさん@ピンキー
08/12/25 21:37:21 YO9k43GO
色々な作品に触れてみるとか?
洋画ドラマやサスペンスはヤンデレ男が多くてオススメ。


657:名無しさん@ピンキー
08/12/25 21:42:27 mlz2ua5D
そりゃあ読んでて関心するような文章は求めないけど、
正直、例えば同じ接続詞を何度も使わないとか最低限の事は出来て欲しい
中学生レベルの話だから。良い作品を書きたいと思うならさ
趣味だから自由と言ってしまえばそれまでだが

658:名無しさん@ピンキー
08/12/25 21:52:08 pTqasxnP
読者の心情を想像して書くとか。こう書けば読んでる人はこう想像するだろうって具合で。
私の読解力の無さと想像力の欠落からきてるのだろうが、作者の想像したものと自分が(読んで)想像したものが違うなって自分でわかるときがあるし。
違うかもしれないが、作者がイメージを文にするのに対し、読んでる人は文からイメージを作るからね。
なんか偉そうに言ってごめんね。これも653君を愛してるからなの。


ごめんね。

659:プロット?
08/12/25 22:06:22 QZc/9ee+
ある少年が女性に恋をする。
大人の色香、どこかに弱さを感じさせる強い性格、そして、何故か妖しさを感じさせる美貌…。
少年は女性に愛されたいと願った。
例えこの身が傷つこうとも。

ある少女は幼なじみの少年の事を愛している。
あまのじゃくな性格も、時折見せる孤独な微笑みも、そして、その少年という存在を…
少女は少年の全てが欲しいと願った。
例え何を失っても。

ある女性は少女に溺れている。
その愛くるしい瞳を、その穏やかな声色を、そして、その一途な想いを。
女性は少女を一途に愛している。
例え誰かを殺す事になっても。


誰かこんな感じのお話を書いて下さい。

660:名無しさん@ピンキー
08/12/25 22:16:51 oJJR4NWC
いろいろなアドバイス、ありがとうございます。
言われたところを見直して、次はもっといい作品を書きたいと思います。
これからもお世話になりますが、よろしくお願いします。

661:名無しさん@ピンキー
08/12/25 23:10:17 YO9k43GO
男と仲のいい ゆっくりしていってねにまで嫉妬する。
あれは饅頭なのに

662: ◆.DrVLAlxBI
08/12/26 00:43:29 mVrqxCHs
遅ればせながら、クリスマス短編投下します。

663:名無しさん@ピンキー
08/12/26 00:44:01 U0/jVdTY
支援

664:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI
08/12/26 00:44:36 mVrqxCHs
『ヤンタクロース・サンタガール』

「あの……できれば、この状況について説明していただきたいのですが」
滋郎(じろう)は、非常に困惑していた。
それは十二月二十五日の朝。独り淋しい生活を続ける滋郎が、いつも通り独り起床した時のことである。
「あの……朝食をおつくりしましたので……まずは、食べてください」
顔を赤くしながら応える少女。
もちろん、生まれて二十三年間の間、女性と付き合うことはおろか、手さえ握ったことの無い滋郎には、実に覚えの無い人間だった。
知り合いではないことに加え、なぜ、知らないうちに家に入り、エプロンをかけ、朝食を作っているのか。
皆目見当もつかない。
まあ、相手からは敵意は感じられないし、説明してくれるということなのだろうから、と、滋郎は椅子に座った。
テーブルの上に、少女は食器を置いていく。
「おお……」
思わず、滋郎は声を漏らした。
家の冷蔵庫の中の適当な賞味期限ギリギリの食材たちが元になったとは思えないほどの美味しそうな朝食ではないか!
「あの、いただいて、いいんですか?」
「はい。そのために作ったんです」
一応、訊いた。不法侵入者にこういうことを言うものかと思うが、少女はそう言った犯罪的な、泥棒的な何かと無縁の存在に思えた。
だって―どっからどう見てもサンタだし。
ずずっと、薄め(滋郎の好みの加減だ)の味噌汁を啜り、一息つき、言う。
「サンタさん、なのかな?」
「あ……」
少女はもともと赤くしていた顔を、さらに赤くした。来ているサンタ装束と同じような色に染まっている。
訊いちゃだめなことだったのだろうか。滋郎は一瞬だけ罪悪を感じたが、やめた。冷静になるべきだ。
「はい。そうですね、言い忘れていました。わたしは、サンタガールをしています。『サンタ=マリア』と申します」
「はぁ、それはご丁寧に。でも、なんたって僕の家に。それに、深夜にプレゼントを渡すとかならまだしも、もう朝ですけど」
「そ……それは」
内気そうな少女、マリアは、もごもごと口篭もり、言った。
「わたしが……プレゼント、なんです」

665:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI
08/12/26 00:45:06 mVrqxCHs
♪ ♪ ♪

時はさかのぼり、十年前のクリスマス・イヴ。
その時、マリアは十歳。滋郎は十三歳であった。
マリアは、当時現役サンタクロースだった祖父につれられ、トナカイそりで聖夜の空を疾走していた。
「うわぁ……。おじいちゃん、人間界には、こんなにいろいろな『光』があるんですね」
「ほっほっほ。マリアは人間の『光』が見えるのじゃなぁ。こりゃ、将来大物サンタになるのう」
「人間の『光』?」
「そうじゃ。わしらサンタは、プレゼントを渡すことで、彼らの『光』をすこしずつわけてもらって生きるんじゃよ」
「そうなんですか……。すっごく、綺麗な光ですね」
「マリア、綺麗な光と、汚い光は。その違いは、見えているかの?」
「綺麗と、汚い……? 確かに、個人差があります。子供が綺麗で、大人は汚いです」
「一概にそうともいえんがのう。確かに、大抵はそうじゃ」
「どうして、同じ人間でも、違うんですか?」
「それはのう、この『光』は、人の『願い』『執着』『夢』そのものだからじゃ。大人になるに連れ、人はそれらの呪縛にがんじがらめにされていってしまうのじゃ」
「悲しい、ことですね……」
「じゃが、例外ならある。『恋心』じゃ」
「恋……?」
「恋をしている人間の光は、そのどれもが美しいのじゃよ」
「……」
「わしも、ばあさんと出会ったときは、それはそれは……」
また始まった。と、祖父ののろけ話には耳を塞ぎ、マリアは空を駆けるそりから身を乗り出し、地上の光をみつめた。
たくさんの光がうごめいて、まるで蛍。しかし、ぱっと見ただけでは気付かなかったが、綺麗な光は、目立つが実際は少ない。
殆どは闇のようなどす黒い光だった。
「……あ、あれは」
マリアは、その中に妙なものを見つけて、思わず手を伸ばしてしまった。
「あ―」
ひゅう。
マリアの小さな身体は、簡単に空に投げ出されてしまった。
「ばあさんとの情熱的な恋は、わしの『幻惑』能力抜きには語れんじゃろうな。お前にも遺伝していれば~」
祖父は、未だ嫁とのラブストーリーに陶酔していた。


666:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI
08/12/26 00:45:37 mVrqxCHs
♪ ♪ ♪

ぼふん。
雪がクッションになり、マリアは殆どダメージを受けずにすんだ。
しかし、雪の塊に全身をつっこませてしまったため、せっかくの子供用サンタ服がびしょぬれだった。
「おじいちゃんにもらったのに……」
ぐずぐずと、涙を流すマリア。
「おい」
そこに、1人の少年が現れた。
「……?」
「びしょぬれじゃないか。雪遊びもほどほどにしろよ」
少年は、悪態をつきながらも、自らの上着を脱いでマリアに差し出した。
「寒いだろ。これ、やるよ」
「え……。でも」
「やるって」
強引に押し付け、少年はさっさと走り去った。
「おーい、マリアー!」
サンタクロースがそりで駆けつけたのは、それから少ししてからだった。
そこには、びしょぬれではあったが、この上なく幸せそうな顔をした孫の姿があったという。

♪ ♪ ♪

「で、その時の少年って言うのが、僕、と。そういうことですね」
滋郎は、正直困っていた。確かに、いい話だ。いい話ではあるが、さっぱり身に覚えが無い。
「人違いでは?」
「いいえ。サンタのデータベースでちゃんと確認しましたから……。滋郎さんが、あのときの男の子で、間違いありません」
そう言うと、マリアはプレゼント袋をごそごそと探り、子供用の上着を取り出した。
「これ、お返しします」
「え、いいですよ。あげたんだし。今更もらっても、僕は着られないし」
そりゃ、マリアにも使い道はないのだろうが。滋郎はココロの中でそう付け加えた。
「それで、君はこの上着をわざわざ返しにきてくれたんですか?」
「あ、の……その……」
「?」
「プレゼントは、わたし自身だと、さっきも言ったと思いますが……」
「うーん。すみませんが、いまいちピンとこないというか……」
「恩返しがしたいんです……。家事でも、なんでもします。ご迷惑はおかけしません。この家に置いてください」
マリアは、そう言って床にひれ伏した。
「ちょ……ちょっと! やめてください!」
「……?」
「何年も前の恩じゃないですか。それに、当然のことをしたまでですから、感謝してもらっただけでも嬉しいですよ」
「しかし……。それでは、わたしの気がすみません」
「うーん」
滋郎は、しばらく考えて、応えた。
「なら、来年のクリスマスまで、家で家政婦さんをしてもらう、というのは?」
「は、はい! ありがとうございます! 頑張ります!」
「お礼を言われるとは思わなかったけどね……」
一年という長い期間が、若い娘なのに苦にならないのだろうか。滋郎は、断られると思って提案したのだ。
まあ、言ってしまったものは仕方が無いと、滋郎はマリアを受け入れることに決めた。


667:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI
08/12/26 00:46:07 mVrqxCHs
♪ ♪ ♪

それからの滋郎の生活は、刺激的で楽しいものとなった。
滋郎は御神グループ系列の、なかなか良い会社に努めており、将来はなかなか明るい部類だ。
そんな彼に唯一足りないのは、女性に好かれること(彼は『いい人』で止まるタイプだった)と、家事の能力。
マリアは、そのどちらも満たす存在だった。
マリアは献身的に滋郎に尽くし、精一杯の愛情を注いだし、滋郎はそんなマリアを大切に扱った。
二人は、間違いなく幸せだっただろう。
が、唯一、かみ合わない点があった。
滋郎は、マリアの愛に全く気付いていなかったのだ。彼は、あくまでマリアの目的が『恩返し』なのだと思い込み、彼女に手を出さなかった。
それでも、二人の間には何も問題は生じなかった。
そういうすれ違いがあろうが、マリアは滋郎のそばで暮らせることだけが幸せだったからだ。
しかし、約束のクリスマスは、待ってはくれなかった。

♪ ♪ ♪

「そろそろ、クリスマスですね」
食卓で、マリアはそう切り出した。
「そうだね。君はいつもサンタの衣装だから、見慣れてしまってどうにも気付かなかったよ」
滋郎は、ははっと笑う。その笑顔を見て、マリアも幸せを感じていた。
「そっか……。もう、クリスマスか。君とも、そろそろお別れなんだ。淋しくなるね……」
だから、滋郎がぽそっとそう漏らしたことにも、気付かなかった。


668:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI
08/12/26 00:46:38 mVrqxCHs
♪ ♪ ♪

そして、クリスマス・イヴ。滋郎はこんな日にもしっかり出勤し、仕事を終えて家に帰ってきた。いつもより遅かった。
「お帰りなさい、滋郎さん。今日は、クリスマス・イヴだからちょっとだけ豪華なお食事を用意しました」
「うん、いい匂いだね」
マリアと滋郎は食卓につく。すると、深刻そうな顔をして、滋郎はこう切り出した。
「明日で、お別れなんだね。淋しくなるな」
「え……」
予想だにしていなかった―ココロの中から、自然に消してしまっていたことが、マリアに突きつけられた。
「ありがとう。こんな僕のお世話をしてくれて。本当に、感謝してるよ」
「……で、でも、わたしがいないと、滋郎さん、困って……。やっぱり、これからも、ずっと……」
「君は若い女の子だ。自分の時間を大切にしなきゃ。……大丈夫、僕もこれから何とかやってくから」
「でも……」
「今日ね、会社の女の子に、告白されたんだ」
「……!」
「その女の子は、本当にいい子だよ。僕も、彼女となら暮らしていけるんじゃないかって思ってる」
「でも……でも……」
「僕は、君みたいに綺麗で優しくて、頭も良くて、何でもできるような、そんなすごい女の子を、僕なんかにとらわれたままにはしておけないんだ。だから、分かって欲しい」
「……」
「今まで、ありがとう。僕なんかを心配してくれて。僕は、なんとかやっていくよ。もう、君に心配かけないように。……本当に、ありがとう」
マリアは、もう何も言い返せなかった。
滋郎は優しい。だから、マリアも好きになった。
だが、だからこそ、マリアを無意識に傷つけていた。
ただの家政婦にとっては。ただ、世話を焼いてくれている優しい人にとっては。その言葉は、滋郎の自立や感謝を表す、誠実な言葉だったろう。
だが、マリアにとっては死刑宣告以外の何ものでもない。
「……少し、時間をください」
マリアは、うつむいたまま部屋をでた。


669:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI
08/12/26 00:47:08 mVrqxCHs
♪ ♪ ♪

「本当に、これでよかったのかな」
滋郎は、マリアの悲しげな顔をみて少し後悔した。
しかし、これでいいのだとも思っている。勇気を出して告白してくれたあの子に応えるためにも。
そして何より、優しいマリアが、彼女自身の幸せをつかめるようになるためにも。
「そのためには、僕は邪魔だから」
ふぅ。溜め息をひとつ。
無理矢理追い出す形になったのは、やはり申し訳が無かった。
もう少し、何か別の方法をとることはできなかったのだろうか。
「……。帰ってきたら、もうすこし。もうすこし、話をしよう」
マリアに幸せになって欲しいのは、本心だ。マリアを、ついにできた恋人のために追い出す口実などでは、決して無い。
しかし、さっきの宣告は、そういう風に伝わったかもしれない。即ち、「女が家にいると彼女が勘違いするから、もう出て行けよ」と。
「だとしたら、ひどい奴だな、僕は」
だから、帰ってきたら。もっと誠実な言葉でマリアを説得するつもりだった。
だが、待っていることすらマリアを傷つけるのではないのか。
誰かが言っていた。「こういうときは、追いかけるべきだ」と。
滋郎は立ち上がった。


670:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI
08/12/26 00:47:39 mVrqxCHs
♪ ♪ ♪

ふらふらと、マリアは当ても無く街を彷徨った。
彼女のサンタ服も、この繁華街ではもう珍しくない。似たような格好の、あらゆる店の店員が自らの店のクリスマスセールを宣言していた。
疲れきった街。
この街に、もう光など見えない。昔はもっと輝いていたのに。
いや―。
(わたしが、もう……サンタの力を失ってる)
マリアは、なんとなくそう思った。去年、人間界に居候を始めてから、マリアは明らかに弱くなった。
(人間になっている……わたしは)
思えば、人間に対する恋心というのは、普通サンタは持たないそうだ。
人間とサンタは違う。人間とチンパンジーが恋をしないように、似てはいても結局は交わらない。
おそらく、滋郎もその理由で、マリアのアプローチに気付かなかったのだろう。
だが、マリアの心は、違った。マリアは確かに滋郎に恋をしている。
そして、人間ゆえのあらゆる苦悩が芽生えているのだった。
執着、願い、夢、欲望。その全てが、人間らしい活力だった。同時に、人間を縛る鎖だった。
(滋郎さん……)
この十一年間、マリアはずっと滋郎を見てきた。
サンタの能力である透明化と、透視を利用して、空から、あるいは窓から、あるいはどこか遠くから、あるいは、すぐ隣から。
ずっと、ずっと。どこにいても、何をしていても、気がつけば滋郎のことを目で追っていた。
滋郎を観察しつづけるにつれて、その恋心は深くなっていった。
根っからの善人の滋郎は、誰よりも輝いているように見えた。少なくとも、マリアにとっては、これ以上ない、輝ける存在だった。
ずっとずっと。見つめつづけた。
起きるときも、食べるときも、風呂に入っても、笑っても、悲しんでも、転んでも、なにをしているときでも、いつも隣にいた。
触れることができなくても、満足だった。
マリアにとって、なにより嬉しいのは滋郎の自慰行為をいくらでも観察できることだった。
マリアは滋郎の自慰を観察しながら、自らも快楽をむさぼった。
時には、あの時もらった上着の匂いをかぎながら―あるいは、股に擦りつけながら。その手触りを、滋郎自身の代わりにして。
ずっと見つめるうちに、同じく滋郎を見つめる存在に気付くこともあった。
滋郎は優しい男だ。確かに、好意を持つ女も多いだろう。それはマリアにはよく分かっていた。
しかし、理解はできても納得はできない。
マリアは、滋郎に必要以上に近づく女を排除しつづけた。故に、滋郎はいつだって独り身だった。
時に、陰湿に、時に、強引に。マリアは、社会的に敵を抹殺しつづけ、滋郎の貞操を守った。
また、自分の貞操を守ることにも必死だった。
国家資格が必要で、高給取りのサンタガールは、サンタの世界では非常によくもてる。
祖父が見合いの話をだしてくることも少なくなかったし、親は何度も下らない男達を紹介してきた。マリアはそれらを実に巧みに退けた。
全ては、滋郎を観察しつづけるため。
そしていつか、結ばれるためだった。
「それなのに……。それなのに……」
マリアが滋郎を『見つめる』ことができなくなったのは、退職して滋郎のもとに転がり込んでからだ。
マリアの暴走する欲望が実に人間的なレベルに到達したその時、マリアは力を失い、透視もなにもできない、ただの人間となったのだった。
しかし、マリアは滋郎とともにいられるだけで満足だった。それ以上望まなかった。それが大きな油断だったのだ。
目を離した一年で、滋郎は女に目をつけられ、ついには告白されてしまった。
今まで女性に縁がないが故に、押しには弱いだろう滋郎。
「助けないと……」
ぶつぶつと呟きながら、マリアは夜の町を歩いてゆく。
「待っててください、滋郎さん……。今、目を覚まさせて上げます……」


671:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI
08/12/26 00:48:10 mVrqxCHs
♪ ♪ ♪

(やっちゃった……! ついに、憧れの滋郎君に告白したぞ……!)
裕子は、はっきり言って浮かれていた。ついに、人生をかけた告白が成功したのだ。
彼女の失恋率は100%。全ての恋が、告白の時点で破れている。
容姿のせいではない。彼女の異様な不器用さのせいだ。
彼女は人付き合いが余り上手ではなく、口下手だ。それに、身持ちも硬い。
それらがたたって、二十七歳となった今までずっと処女だった。
(これでやっと処女卒業できる! その相手は、しかもあのいかにも童貞な滋郎君……! この年になって処女童貞のカップルって、むしろ国宝級よね……。あたしたし、絶対幸せになれる。そう、これはサンタさんがくれたプレゼントなのよ!)
ああ、サンタクロースよ。ひげのおっさんでいいから処女奪ってくださいなんて願ってすみませんでした。あれは思春期の過ちですから!
空に向かって、裕子は手を合わせた。
「あなた、滋郎さんの同僚のかたですよね」
妄想に浸っている間に、急に後ろから声を掛けられ、裕子はとっさに奇行をやめ、とりつくろう。
「え、ええ。そうよ。それが何か?」
「少し、お話があります」
―大切なお話ですから、人気のないところに行きましょう。誰かに聞かれては大変です。
人気のないところに行く。男に誘われるならまだ警戒するが、相手は女。それも、若くて美しい女。裕子は警戒心を全く持たなかった。


672:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI
08/12/26 00:48:40 mVrqxCHs

♪ ♪ ♪

「いい格好ですね」
「あ……あんた、なんでこんなこと!」
縄で縛られた裕子を、美しい女―マリアが、生ゴミでも見るような目付きで見下ろしていた。
「何故? 決まっているじゃないですか。あなたが滋郎さんを誘惑した、淫売だからですよ」
「い、淫売ですって!? そんな侮辱……げふっ!」
マリアの蹴りが、裕子のみぞおちに直撃した。
「淫売は淫売らしく、下のお口で会話したらどうなんですか?」
マリアは、裕子のスカートをめくり上げると、さっと下着を取り去ってしまう。
「や、やめっ……むぐっ!」
そのまま裕子の口に、丸めた下着を押し込んだ。ざらざらした、布の舌触りにうめく。
その上に猿轡をはめ、マリアは立ち上がって、言う。
「さて。ここは非常に人気のない場所ですね。大変ですよ、こんな所に女性一人でいては……ねぇ、皆さん?」
『皆さん』? 裕子が不審に思って視線をそらす。
すると、どこからか男達があつまり、裕子を取り囲みはじめていた。
「ん―!! んー!!」
裕子は精一杯わめくが、言葉にはならない。
「皆さん、この女性は二十七歳にもなって処女だからコンプレックスを持っていた、不幸な人です。どうか、皆さんの聖なるつるぎで、その不幸を貫き壊してあげてください」
「んー!! んー!!!」
もう、ここまでくれば裕子にもこの先の展開が予想できていた。
しかし、予想はついても回避できない未来がある。これはそういう類いのことだ。
(ああ、神様……!)
裕子は涙を流しながら、ついに諦めた。
「駐在さん、こっちです! 今、女性が襲われています!」
と―その時、天の助けが現れたのだ。
男達は、ちぃ、と言い残し、どこかしらに消え去った。
が、いくら待っても警察はこない。おそらく、今現れた男の仕掛けたハッタリだったのだろう。
「大丈夫ですか、裕子さん」
そう言って、猿靴差をはずす男。どう見ても、その男は裕子の知った顔だった。
というか、彼は……。
「滋郎君……!」
「はい、危なかったですね」
「滋郎君……怖かったよぉ!!」
ひしと抱きつく。
「でも、滋郎君。なんでここに?」
「探している人がいて……。見失ったんですけどね。サンタの服をきた、綺麗な女の子です」
「サンタ服の……綺麗な子……?」
「はい。見ていませんか?」
「その子は……あたしを襲って……」
「襲った……? そんなまさか」
「いえ、あの子、普通じゃなかったわよ! きっと、滋郎君に恨みがあるんだわ! だから恋人になったあたしを狙ったのよ!」
怒りに打ち震えながら、裕子はまくし立てた。
「滋郎君、気をつけなきゃだめよ……。なんなら、今夜はあたしと一緒にすごさない?」
「それは……」
「こうやって、平気なふりしてるけど、あたしも正直不安なのよ。その……リンカン、されそうになったし」
「それは……確かに、ほうってはおけませんね。いいですよ、裕子さん。僕の部屋に泊まっても」


673:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI
08/12/26 00:49:11 mVrqxCHs
♪ ♪ ♪

(マリアさんなんだろうか。やっぱり……)
滋郎は、考えていた。
裕子の話をきくと、たぶん裕子を襲ったのはマリアなのだろうと推測できる。
しかし、あの優しい女の子がそんなことを……?
(僕が……。僕があんな、ひどいことを言うから……)
非常に、後悔していた。マリアが裕子を襲ったのは、自分に責任があるのではないのかと感じていた。
(もう、このまま帰ってこないのかな……)
そんなの、いやだな。滋郎は、マリアに謝りたいと強く願っていた。
「滋郎君……あたし、こわいわ。一緒に寝ましょう」
「で、でも……」
「今日から、あたしたち恋人同士よ。普通のことよ」
有無を言わせず、裕子は滋郎のベッドに潜り込む。
「滋郎君、抱きしめて……。絶対、放さないで」
「裕子さん……」
裕子は、自らの服に手をかけ、取り去っていった。
滋郎の前に、その裸体が晒される。
(裕子さん、思ったより、すごい……)
裕子の身体は、普段服の上から見たよりも見事で、美しかった。
「滋郎君……あたしたち、幸せに……!」
「裕子さん……!」


674:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI
08/12/26 00:49:45 mVrqxCHs
♪ ♪ ♪

「四回も、中に出しちゃったのね。滋郎君、見かけによらず好きねぇ」
「裕子さんこそ、初めてなのに感じすぎです。こえ、すごかったですよ」
―近所にも聞こえてるかも。
「……ねえ、滋郎君、あたしの身体、どうだった?」
「しょ、正直、おぼれちゃいそう、でした。この世のものとは思えないというか……」
「そうですか。うれしいです」
「え―?」
奇妙なことが起こった。
裕子が、急に口調を変えたかと思えば。その顔が―マリアのものに変わっていたのだ。
「マリア……さん……?」
「はい。そうです。滋郎さんが今まで獣みたいに犯し尽くした女が、わたしです」
「……ど、どうして……? いつから、入れ替わって……?」
「裕子さんを家に連れ込んだ後、ころあいを見計らって、です。滋郎さんと自然に近づける状況があれば、それでよかったですから。それと、裕子さんなら無事ですから、安心してください。死んじゃったら、滋郎さんの日常に支障をきたしますから」
「どうして……」
「まだ、わからないんですか……?」
マリアは、再び―偽の裕子だったときにしたように―滋郎に跨った。
「滋郎さんを、ずっとずっと……見てきたんですよ。愛していたんですよ」
腰を動かし始める。
「ああっ……滋郎さん……滋郎さんなら、わたしが妊娠したら、責任とってくれるって、確信してるんです……あんっ……!」
「うっ……き、きみはっ……」
「ゆ、裕子さんの存在を知って……あ……最初は……殺したくなるほど……あぁ……憎みました……。でも、利用価値に、気付いて……感謝しました」
マリアは興奮状態のまま、膣の収縮で滋郎のモノを締め付ける。
ねちっこく、絡みつくように。
―もう、はなさない。
「これは、人間になって、恋をしたわたしへの……プレゼント、なんです」
思い出したのは、祖父の言葉だった。「恋をする人の光は美しい。そして、美しい光をもつものは、きっと誰よりもすてきなプレゼントを授かるだろう。
すなわち、それは彼女のパーソナルギフト(サンタとしての特殊能力)である『幻惑』で滋郎を錯覚させ、性交に及ぶ機械を与えたこと。これは、今までどおり女たちを排除していては無理な戦法だった。あくまで、恋人の裕子なしには成立しないのである。
そして、もうひとつのプレゼント。
「今日、すっごく危険日なんですよ。こんな日にいっぱい中に出されて……わたし、赤ちゃんできちゃうかもしれません」
マリアは、神に感謝した。
彼女は人間化が進んでいたというのに、サンタの能力たる『ギフト』を使うことができた。これは、殆ど奇跡のようなものだ。
彼女の作戦にはこの幻惑能力が必要不可欠だった。彼女が失った透視や透明化を差し置いてでも復活すべき能力が、これだったのだ。
そして、彼女は賭けに勝った。
裕子の存在、能力の存続、そして、危険日。
これらの要素が揃ったこと。これは、もはや神か、あるいは天国の祖父がくれた、プレゼントだとしか思えなかった。
―そういえば、『幻惑』能力は祖父から隔世遺伝したんだっけ。
(まあ、そんなのはどうでもいいんです)
今は、とにかく、滋郎との性夜を楽しまなければ。
「あ……滋郎さんの、熱い……!! 赤ちゃんできちゃいます……!」
これからは、今までの。十一年間のツケを、たっぷり身体で払わせてやろう。
マリアは、今、幸せだった。

おわり


675:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI
08/12/26 00:52:17 mVrqxCHs
ちょっと淡白すぎたかなと思いますが、よく分からない部分は、たぶん次回投下するもう一つのサンタ物の短編で補完されます。
本来そっちから書き始めたので、サンタの設定やマリアの行動についてなどは、そっちで説明がなされると思うので。

文章も非常に淡白ですが、絵本っぽくしようと無意味に工夫した結果の賛辞です。
次回は改善します。

676:ヤンタクロース・サンタガール ◆.DrVLAlxBI
08/12/26 00:52:47 mVrqxCHs
賛辞→惨事 でした。失礼しました。

677:名無しさん@ピンキー
08/12/26 01:00:59 DRUfW3Yq
>>674
GJ!
大変美味しくいただきました。

678:名無しさん@ピンキー
08/12/26 01:03:45 3OaICsMd
GJ!!

679:名無しさん@ピンキー
08/12/26 02:26:47 M6QiPY5I
>>674
GJ!!!

680:名無しさん@ピンキー
08/12/27 01:17:54 hNv0s7Dg
GJ!

681:名無しさん@ピンキー ◆m6alMbiakc
08/12/27 02:54:52 y0ytdvCE
初めて投下させて頂きます。
どうかお手柔らかにお願いします。

682:『Hand in hand』 ◆m6alMbiakc
08/12/27 02:57:36 y0ytdvCE
狂っている。そうとしか形容のしがたい状況に追い込まれてしまった愚か者、それが俺、大沢 宗佑(おおさわ そうすけ)だ。
「あはははっ」後ろから聞こえてくる、乾いた笑い声が聞こえてくる。しかしながら、その笑い声は俺にとっては恐怖以外の何物でもない。
「くそっ!」今さっきの笑い声にびびり、足がもつれる。
衝撃。
見事なこけ方をかました体には、擦り傷が多く付いているが、そんなもの気にしてもいられない。なぜなら、後ろから追って来ている笑い声の主に捕まるほうが、億倍危険だからだ。
「そーちゃんみっけ!」しまった。そうとしか言いようのない。コケた際にずいぶんと距離をつめられたらしく視認できるほど近付かれていた。
いそいで逃走を開始する。後から再び声がする「そーちゃんどうして逃げるの?」
お前が危険なやつだからだ。声に出さずに即答する。
そもそも、なぜ追いかけられているのか、それすらはっきりとしていない。
何をどこで間違えたのか、それを思い出してみることにする。

§                    §

俺と、相良 風深(さがら ふうか)とは家が隣というそれだけのことだった。
昔から、仲良しだった俺たちは、小学校、中学、そして高校の登下校はほぼ毎日一緒だった。
小学校の頃から、俺は風深の世話役のようなものだった。
まあ、頼られることは正直、悪い気はしなかった。
そんな感じで、高校生活も2年目を迎えた、ある日のことだった。
「好きです」
突然、言われた言葉。断じて、頭に花畑が十個くらい咲き乱れているような幼馴染から言われた言葉ではない。
目の前にいて、聞きなれない言葉を言ったのは、一谷 日出(いちたに ひので)さんだ。
学校の中でも五本の指に入るとさえ言われる、美人から告白されたのだ。実感が湧くわけがない。
「ええっと・・・。こちらもよろしくお願いします。」
とりあえず、実感の湧かないまま了承する。
返事を聞いて、一谷さんの顔に一輪の白い花が咲いたかのように、綺麗に笑った。
「ありがとう・・・。」
か細い声だが一谷さんが返してくれる。
どうにも実感が湧かないが、心臓が高鳴り、痛いくらいなので夢ではないのだろう。
俺はそのままのご機嫌な気持で今日という日をすごした。

§                    §

「よう、ソースケ!!聞いたぞ。お前、一谷さんと付き合うことになったらしいじゃないか!」我が悪友の、裕司が次の日の朝いつも通りの調子で、話しかけてくる。
いったいこいつの情報は、どこから仕入れてくるのか疑問に思うくらい情報が早い。
「お前は、一体どこからそんな話を聞いてきた?学校中に監視カメラでも仕掛けているのか?」あきれ気味に問う。
「まさか!」裕司はとんでもないといった風に返し、続ける。
「そんなものを使うくらいなら盗聴器のほうが・・」「もういい、黙ってろ。」
なんとも変態じみた裕司の声を耳からシャットアウトし、我が麗しの一谷さんに目を向ける。
「おやおや。」ニヤニヤ笑いの裕司が話しかけてくる。
うるさい、馬鹿、黙っていろ。人の考えている途中に口を挟むな。
さすがに声に出すのは躊躇われた。とりあえず、鬱陶しいので振り払う。
「で?風深ちゃんはどうすんの?お前とは夫婦のようなもんじゃねえか?ん?」
しつこく纏わり付いてくる裕司に半分あきれ気味で返してやる。
「だから、俺と風深はそんなんじゃないって。」
「おやおや、毎日一緒なのに夫婦じゃあないと?」
「そうだ。」
うんざりしつつも、返答する。
「ま、せいぜい後からナイフで『グサッ』なんてことねえようにな。」
「はいはい。」適当に返事をして、気持ちの悪い笑い方をしている裕司を、頭の中から排除する。
それにしても、風深にこのことを放すとどういう反応を示すか楽しみだ。
「ねえ。」おっと、どうやらちょうどいいタイミングで、風深が来たようだ。
「なあ風深、俺な・・。」「一谷さんと付き合ってるってほんと?」
こいつ何で知ってるんだ?まさか、裕司の言うように盗聴器を仕掛けているのかもしれない。そう思うと、けっこう怖いな。
少し躊躇いながらも、返答する。「ああ。俺も信じられないがな。」「ねえ、なんで。」
「ん?」何でって聞かれても、何を?「なんで。何で私の気持ちに気づいてくれないの?」
「はあ?」おいおい、俺とおまえは、ただの昔からの友達だろ。何を言ってるんだ、本当に。
その旨を伝えると、何故か風深は涙目になって教室から出て行った。いったいなんなんだ。


683:『Hand in hand』 ◆m6alMbiakc
08/12/27 02:58:59 y0ytdvCE
・・・・放課後

そのまま風深は教室には、帰ってこなかった。
まあこういう日もあるさ。今日は一谷さんと一緒に帰ろう。

ここは、学校前の坂。俺の左手には一谷さんの右手が握られている。
やわらかく透き通りそうな肌から伝わってくる体温。やばい、なんかドキドキしてきた・・・。
「あ、あの・・・。一谷さん?」どもりながらだが、何とか口を開く。
「えーと・・、一谷さんの家ってどの辺りにあるの?」一谷さんとの親睦を深めようと話しかける。
「そーちゃん。」後から突然話しかけられる。
振り向いた先には、目に光のない幼馴染が立っていた。
「ねえ、そーちゃん。なんで?なんでなの?」
おまえは何が言いたいのかがわからない。「風深、何を言っているんだ?」
風深はにこりと笑い、「そーちゃん。大丈夫。私がそーちゃんをつけ込む泥棒猫には制裁を加えてあげるから。」とつぶやき、包丁を懐から取り出す。
なんだか、危険な感じがする。逃げなければと本能が告げる。
「一谷さん、逃げるよ。」「う・・・うん。」手を握り締めて走り出す。
「そーちゃん。そんな汚らしい女の手なんか握っちゃダメなの!!」
後から狂ったかのような声が聞こえてくる。
包丁を振り回す風深から、逃げようと必死に走る。だが、異様に早い風深の動きは俺たちを捕捉する。
「一谷さん!!!」ふとした瞬間に手から一谷さんの手が離れる。
「あはは!!」遅かった。完全に捉えられてしまった、一谷さんは、銀色に光る刃に切り裂かれて、鮮血を飛び散らせる。
「あは、あははははは!そーちゃん、ねえ、嬉しいでしょ?ねえ?」動かなくなった一谷さんを、蹴り飛ばしながら、ゆっくりと近づいてくる。そう、時間と呼吸の止まりそうなくらいの恐怖が、ゆっくりと。
「くそっ!」
毒付いて、そのまま全力で走る。
近づいてくる風深を押し飛ばし一谷さんに駆け寄る。
しかし、目からは光が消え失せ、鼓動を知らせる脈は絶えていた。
「そーちゃん、何でそんな女なんか庇うの?」「うるさい!!」俺は、怒りを声に乗せて、風深へと振り返る。
そこに立っているのは、もはや親しい幼馴染でも、正気を保った人間でもなかった。
包丁を持った右腕からは、一谷さんの血が垂れ落ち、こちらをまっすぐと見る目からは、後悔の念など浮かんではいなかった。
「そーちゃんはいつもそう。誰かのために怒る。泣く。悲しむ。
私がつらい時だって、同じように悲しみ、励ましてくれた。
でも、そんな女なんかと一緒にいたら、そーちゃんが汚れちゃう。そーちゃんも汚れたくないよね?」
風深が一気にまくし立てる。
「おまえ・・・、狂ってやがる・・・。」俺は心の底からの本音を、言葉に出す。
直後、風深の動き、呼吸、何もかもが止まった気がした。
事実、止まっていた。
「あは・・・・、あはは・・・・、そーちゃんがそんなこと言うはずが無い。
そっか・・・、そーちゃんはもうあの女に汚されちゃってるんだね?そうだよね?
そうじゃなきゃ、私にそんな言葉、言うはずないもんね?ねえ?」
だめだ。もはや聞く耳も持っていない。
「ねえ?そーちゃん?汚れてるのはそーちゃんも嫌だよね?だから、私が責任持って元に戻してあげるから。」近づいてくる。当然、俺は一歩ずつ後ずさる。
「なんで?何で逃げるの?ねえ?なんで・・・。」風深がさらに距離をつめようと走ってくる。
やばいと本能が告げている。俺は、背を向けて走る。
「あはは!」
後ろから、笑い声。
そして、冒頭へと話がつながる。

684:『Hand in hand』 ◆m6alMbiakc
08/12/27 02:59:53 y0ytdvCE
回想終了。結果、俺はどこで間違えたのかが理解できない。
とりあえず、この地獄の鬼ごっこから逃れることに専念しようと、決心する。
後ろを振り返るが風深が追ってきている様子は無い。
「少し休もう。」疲れているのか、思わず独り言を口から漏らす。
前に向き直ると、そこには風深が立っている。
「な・・・。」「そうだね、鬼ごっこはやめて、休もうか。」
俺はとっさに逃げようとする。
だが、背中を向けた直後に鋭い痛みを感じて、体が倒れていく。
意識が薄れる中、かすかに残る視界には、影を含んだ幼馴染の笑みだった。

§                    §

「ん・・・?」まぶたが開き、微弱な光が差し込む。
薄暗い部屋だった。おまけに、窓ひとつ無い。
とりあえず、ドアを開こうといすから立ち上がろうとする。
だが、出来なかった。できるわけが無い。椅子に縄で括り付けられ、おまけに後ろ手に手錠という、状態だったからだ。
がちゃり、ドアが開く。こんな馬鹿馬鹿しいことをした愚かな奴を目にしようと、開いたドアを凝視する。
居たのは、最も可能性がある、だが、同時に最も居て欲しくなかった奴が立っていた。
そう、風深だ。
「そーちゃん。」風深がさらに続けようとする。だが、その言葉を遮り、言葉を出す。
「何でこんなことをした。さっさとここから出せ。」怒りを抑えた声で、問いかける。
「だめ。そーちゃんは、私とこれから住むの。
でも、そーちゃん、恥ずかしがり屋だからすぐ逃げちゃうでしょ?
だから、こうしたの。そーちゃんも実は嬉しいでしょ?」
なにを言ってるんだこいつは。まったく理解が出来ない。
「冗談ならこの位にしとけ。でないと、警察沙汰になってロクなことに・・・。」「そーちゃん。」
今まで聴いたことのないような、冷たい声で中断させられる。
不意に、ふわりと抱きすくめられる。
「私は、そーちゃんのことが好き。大好き。
だから、私以外のことを考えないで。私のことだけを見て。ね?」
肯定しか許されていない質問だった。

何も言えない俺を、ただ風深は抱きしめていた。
ずっと、ずっと。


685: ◆m6alMbiakc
08/12/27 03:02:45 y0ytdvCE
投下終了です。
稚拙な文で申し訳ありませんでした。

686:名無しさん@ピンキー
08/12/27 03:08:42 c283yFLf
GJ
次はエロを期待してる
書き手が増えるのは良いねぇ

687:名無しさん@ピンキー
08/12/27 03:12:00 m+Mb33Nu
さがら・・・そうすけ・・・?

688:名無しさん@ピンキー
08/12/27 03:25:27 QziZd2WZ
GJ!!
申し分ないSSでしたよ!!!もっと自分に自身を持ってください!

689:名無しさん@ピンキー
08/12/27 03:38:23 rBMVIG99
>>685
GJ!
文章が素直で読みやすかったです。
もっと掘り下げて語れる設定だけに、長い文章を読んでみたかったかな。
今後の活躍に期待します。面白いSSが書ける人だと思います。
エロ描写にも挑戦してくれると嬉しいかな。

ただ、頑張っているだけにちょっとだけ苦言も。
文章を書くに当たって、ちょっとだけ知っておくと良いルールがあるんです。

(1)「 」台詞の最後に句点をつけない

「おやおや。」のように「」台詞の最後に通常句点はいりません。「…。」等も同様です。
結構、気にする人もいるので、無くされた方が良いかと思います。

(2)台詞の引用、状況の描写の改行に一貫性を持たせる。

改行する部分にかなりばらつきがあり、文章全体が読み辛いものになっていたように
感じられます。
台詞では「」を2度続けないとか、「」の後の情景描写や心理描写を改行後に繋げるとか
すると、読み手も読みやすく助かります。
  
では、今後も頑張ってください。

690:名無しさん@ピンキー
08/12/27 03:51:19 c283yFLf
荒れるだけだから反応するなよ

もういくつ寝るとお正月。
大晦日もやはり監禁で

691:名無しさん@ピンキー
08/12/27 05:14:49 74xTZfg/
>>691そして除夜の鐘を監禁されながら聞くのですね、わかります

692:名無しさん@ピンキー
08/12/27 08:37:21 Mxsq1x2g
>>691 おめでとう、来年はヤンデレ娘といい年を迎えられるだろうよ

693:名無しさん@ピンキー
08/12/27 14:02:00 /gFssgqk
むしろ鐘の中に監禁される。

694:名無しさん@ピンキー
08/12/27 17:35:57 PmyEaVGn
>>693
嫉妬に狂った女が蛇になって鐘の中に隠れた男を焼き殺す的な話って何だっけ?

695:名無しさん@ピンキー
08/12/27 18:33:28 m+Mb33Nu
ソウルイーター

696:名無しさん@ピンキー
08/12/28 00:19:36 tzlnWr1P
>>689
改善点を分かりやすく挙げていただきありがとうございます。
参考にさせていただきます。

>>694
おそらく安珍・清姫伝説では?

697:名無しさん@ピンキー
08/12/28 00:24:16 8a8854su
ヤンデレの好意を無視し続けるとどうなるかよくわかるお話です

698:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:49:35 LjD7YQ3b
しれっとクリスマスSSを投下します

699:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:50:35 LjD7YQ3b
世の中はクリスマスだったらしい。
俺は年末の忙しさに忙殺され、ケーキなぞ食う時間もなくすでに太陽が昇り始めた高速道路を家へと向かい車を走らせていた。
すでにこの仕事について3年ほどたち、この勤務体制にも慣れてきたが流石に3日も会社で寝泊りを繰り返していると憂鬱になる。
俺一人ではないにしろ、男ばかりの職場なので安らぎもなにもない。
そんな中でやれクリスマスだプレゼントだとはしゃいでいる輩は、俺からすればよく年末に遊んでいられるなといった感じだ。
まあそんな華やかな行事は性に合わないので、逆に今くらいの忙しさが俺にはあっているのかもしれない。
そうこう考えている間に高速道路が終り、国道へと降りた。
そういえばこの近くに新しくコンビニができたなと思い出し、せめて一日遅れのクリスマスを過ごそうとそこでショートケーキを買う事にした。


車を停め、外へと降りる。他に誰も車を停めていなかったが、念のため車の鍵を閉める。
息を吐くと白い湯気が顔の前に立ち上り、すぐに空気と混ざって消えた。冬というもあるが、朝方という最も寒い時間帯だ、いつまでも外にいるのは体によくないと店内に歩を進めた。

700:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:51:22 LjD7YQ3b
よく聞くあのなんともいえない電子音と店員のいらっしゃいませという言葉と共に俺は店内に入った。
店の中は温かく、おでんやら中華まんのにおいがした。そういえばろくに飯を食ってなかったと今になり空腹感を覚える。
なにか簡単に食べれるものも買っていくことにした。
レジの脇にある弁当売り場からおむすびを2つ、シャケとオカカを手にとり、そのすぐ隣にある洋菓子などが並べられているコーナーから売れ残っていたのであろうショートケーキをひとつ掴むと、
それをレジへともっていく。
商品をレジに置き、財布をポケットからだす。ふと顔を上げると店員と目が合った。
店員はなにか俺の顔についているのか、最初の数秒まじまじと俺の顔を眺めていたが、思い出したように商品を清算していく。
たしかに最近は忙しくてろくに寝てもいなかったが、まじまじと見られるとそうとう酷い顔をしていたに違いない。
今日と明日は休みを貰ったのでゆっくり休む事にしよう。
会計で475円ですと言われたので、財布から小銭を探す。ちょうどの代金を払い、袋を持ち店をでようとすると袋の中に買った覚えのない栄養ドリンクが入っていた。
「あの、これ買ってないですが?」
そういうと、うっとりとしたような笑みを浮かべながら、
「いえ、これは私のサービスです。ちゃんと休んでおかないと体壊しますよ?」
「はあ、それはご丁寧にどうも。それじゃいただいておきます」
折角相手の厚意でくれるというのだから貰っておく事にした。それに夜勤明けで断る体力もなかったともいえる。
こんなご時世だから人と人との助け合いが大切なんだろうな、これからはあそこのコンビニをひいきにしようと名もしらぬ店員の優しさをかみ締めながら家へと帰ることにした。
不思議と外の寒さも気にはならなかった。


しかし、家についた俺はせっかくもらった栄養ドリンクやショートケーキも口に入れる事なく布団へ倒れこんだ。
予想以上に疲れが溜まっていたらしい、俺の意識はすぐに夢の中へと堕ちていった。

701:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:52:08 LjD7YQ3b
変な夢を見た、俺に娘ができる夢だ。しかも5歳くらいの娘がだ。
朝から晩まで俺の後をテコテコついてきてなにをするにも一緒である。
娘はとても可愛らしく、俺の遺伝子をどういじくればこんな子供ができるのだろうというくらい可愛らしかった。きっと母親が美人なのだろう。
だが、夢のなかにその母親はでてこず、家の中に俺と娘とでふたりきりだった。
おままごとだったり、お馬さんごっこだったり、とにかく時間が経つのも忘れずっと娘と戯れていた。
しかしふと思い出したように、俺は仕事をどうしたのだろうという気になった。夢の中でも俺は社畜なのかと嫌気がさしたが、
夢の中でも今の会社に勤めていたのだったら他の人に迷惑をかけていることになる。課長にはよくしてもらっているのでなおさらだ。
いまから一度会社にいってくると娘に告げると娘は頑なに拒んだ、小さな瞳を涙で潤ませ、俺の目をみていやいやをするのだ。
母親がこの夢にはいないのでひとりになるのはこの娘も嫌なのだろう。
娘は俺の手にしがみつき、俺を仕事にいかせまいと必死である。さて、どうしたものかとしばらく困り果てていたが、これは夢である。
そうであれば、別に無理に仕事にいくこともないかと先程の決意をあっさりと曲げ、今日はこの娘と一緒にいることにした。
俺が諦めるのを感じ取ったのか娘は俺の手を放し、またさっきのようにコロコロと笑い出した。しかし本当に可愛い、嫁にだすのが今から惜しいと思うほどだ。
色々と気になることもあるが、今はこの娘と戯れる事にしよう。そう思い、俺はまた娘と遊び始めた。

視界がごろんと回転し、夢から覚める。せっかく娘とオムライスを作っていたというのに。
俺はベットから上半身を床に投げ出す格好で目が覚めた。
そのままズリズリと下半身も床に落とし、体が天井へ仰向けな格好になる。
ガバッと勢いよく体を起こす。不味い、時計はどこだ、完全に遅刻だ。急いで目覚ましを引っつかみ時間を確認する。15時21分。
いったいなんでこんな時間まで寝てたんだ、俺は。目覚ましのアラームは、なんで今の今まで俺は寝てたんだ。
俺を起こさなかった目覚ましを乱暴に放り、軽いヒステリックを起こしながら駆け足で洗面所に向かう。
幸いスーツのままで寝ていたので着替えに時間をとられることはない。
あとは髭をそってさえ行けば大丈夫なはず、飯は昨日買ったおむすびがあるはず。
ん?おむすびを昨日買った?そんで昨日はクリスマスで、俺はショートケーキを買って…
ふう、とため息をつく。なんだ、そういえば課長が俺に気を使って2日間の休みをくれたんだ。
だがこんなに血相をかいて飛び起きたりするなんて、やっぱり日ごろの習性ってのはなかなか抜けないもんだ。
いくら休みだと頭に言い聞かせても、体はいつものようにしっかりと動く。
だが、これじゃまるで仕事が俺の人生みたいじゃないか。
確かに、仕事は辛いが給料はいい、だが金を溜めたところで特に使う道もなく、毎日体をすり減らして働く。いつからこんなに夢がない人間になったんだろうな。
「なにやってるだろうな。俺」
だれもいない、寝て起きるだけの部屋で俺は独り言を漏らした。
「なら、やめましょうよ。無理に疲れて生きるより、自由に素直に幸せに生きましょうよ」
突然、誰も居ないはずの俺の部屋から返事が返ってきた。本当に唐突のことだったので、体がびくりとはねる。
そしてゆっくりと声がした方向へ体を向ける、そこには見覚えのない女性が立っていた。
「おはようございます、ゆっくり眠れましたか?」
「きみは誰ですか?どうやってこの部屋に入ったんですか?なんで俺の部屋に?」
もっともな質問が口からでる、そりゃ見知らぬ人間が自分の家に居て、突然自分の後ろに立っていたら驚くだろう。
物騒な世の中だ、なんの目的もなく他人の家に入りはしないだろうし、要件次第じゃ警察を呼ぶ事も考えにいれておいた。
「そんなに矢継ぎ早に質問をされても困っちゃいますが、一つずつお答えします。
まず最初の質問ですが、私は久野巴です。さっきまでコンビニで正社員をしてましたがやめちゃいました。
次の質問ですが、玄関の鍵が閉まってませんでしたよ?そんな無用心だから簡単に部屋に入れちゃいました。
最後の質問ですが、好きだからです、このさい私と結婚しましょう」
一応俺の質問に全部答えてくれたようだけど、どこかずれている気もする。
一部おかしな返答もあったし、なんなんだろう。やはり警察に通報した方がいいのだろうか。
考えるにも、こういう手合いの人間は初めてだ。だから俺はとりあえず
「まあ、立ち話もなんですし。座って話しましょう、コーヒー飲みますか?」
コーヒーを交えて、話し合うことにした。

702:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:53:15 LjD7YQ3b
飯台の反対側に久野さんを座らせ、今後の俺たちの関係をどうするか話し合うことにした。
一応コーヒーはドリップ式で結構値の張るものを使っている。湯を二人分のカップに注ぎながら俺は再度久野さんに質問をした。
「いつから俺の部屋に入ったんです?というより赤の他人の、しかも男の部屋に躊躇なく入るってどういうことですか。若い女性がそういうことしちゃいけないですよ」
「あなたが寝てからしばらくしてからですかね。家の鍵も空いてたので駄目だとは思いつつやっぱり入っちゃいました。
あと、実はなんどか会ったり話したりしてます。たぶん覚えてないと思いますが。だから赤の他人とはいいません。それに私貞操観念硬いですよ、未だに純潔です」
たとえ純潔でも、数回会っただけの男の部屋に入ってる時点で十分軽いのではないだろうかと思うが、どうなんだろう。
それにこの会話のかみ合わなさ、なにか事情があるのだろうか。
コーヒーを蒸らしながら次の質問をする。
「好きってどういうことですか、さっき聞いたぶんには俺に惚れる要素なんて皆無じゃないですか」
「そんな、人を好きになるっていう事に時間とかを持ち出すなんてナンセンスですよ。
しいて言えば最初は生き生きしていた貴方の顔が日を重ねるごとにやつれていくのにですかね。その顔をみていたらぞくぞくしてきちゃって、
どうしようもなくあなたと幸せになりたくなりました」
やっぱりどこか感性がおかしい人だ、と思いながらコーヒーが出来上がったので久野さんにお出しした。
「どうぞ」
「どうも、温かいですね。こんなに温かい飲み物を入れることもできるんですね。真心がこもってます」
そういうと、顔に満面の笑みを浮かべながら、久野さんはコーヒーをすすった。
「そういえばさっきから私が質問に答えてばかりですね、そろそろ私が質問をしてもいいですか?」
まあ、たしかに変な人だけど悪い人じゃなさそうだと思い。俺はその要望に応じる事にした。
「変に俺の過去に突っ込んだ質問でなければいいですよ」
「それじゃあ、なんで私がプレゼントした栄養ドリンクを飲んでないんですか?」
栄養ドリンク?はて、そんなもの貰った覚えはない………と思ったが、確かに貰ったな。あの店員は久野さんだったのか。
「ああ、あの店員さんは久野さんでしたか。家に帰ったらすぐに寝ちゃったのでまだのんでませんよ?」
「やっぱり覚えてないんですね。予想はしてましたが、いつだって私はあなたの目を見て話してるのにそれに気づきもしない。私は寂しいです」
久野さんはおもむろに立ち上がり、それでその栄養ドリンクはどこに置いたんですか?と訊ねてきた。
「それならコートの下のレジ袋の中に」
それを聞くと久野さんは俺のコートをとり、いったん綺麗にたたんでからレジ袋の中の栄養ドリンクを取り出した。
「まったく、私が色々と元気になってくれるように作った特性のドリンクをなんですぐに飲んでくれないですか」
少し怒ったような口調でカリカリとドリンクのキャップを開けてながら、俺の隣に座る久野さん。

703:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:53:54 LjD7YQ3b
開けおわったキャップを飯台におき、グイッと自分の口に入れる。俺に飲ませるためにくれたのではなかったのかと疑問に思っていると、
久野さんの顔が俺の顔に重なり、唇を奪われた。
あまりにとっさのことだったので反応しきれず、そのまま唇をこじ開けられる。
久野さんの舌がドリンクと共に口内に入ってくるのが分った。駄目押しに鼻をつままれる、こばもうととするも、息苦しさから長続きせず、そのまま口の中のものを飲み込んでしまう。
飲み込んだのを確認したのか、鼻をふさぐ指は解かれたものの、唇は重なったままだった。
人付き合いが苦手でいままで彼女なんてできなかった俺が、女性とディープキスなぞできるはずもなく、俺の唇はただ彼女に蹂躙される。
むさぼるように唇を求めながら彼女は俺の口内のいたるところに舌を這わせ、何度も何度も俺の舌を吸い上げた。
ひとしきり、キスをしつづけた後、唾液の糸を引かせながら唇をはなす。それを俺の唾液ごとすするように飲み込んだ。
「飲みましたね?ちゃんと飲み込みましたね?私とキスしてくれましたね?私も初めてだからうまく出来たか分かりませんがとにかくキスしましたね。
いいんですうまく出来たかなんてことは、これから二人で上手になっていけばいいだけなんですから。でもちゃんとあなたからも求めて欲しかったです。
今度はちゃんとあなたからもキスしてくださいね?」
そういうとぽかんと開いたままの俺の口はまた彼女の唇でふさがれた。
求めろといわれても、こんなムードもへったくれもない状況でどう求めればいいのか分らなかったが、とにかく相手の舌に動きをあわせてみようとした。
もとより性欲が強いほうではなかったが、仕事仕事の毎日で俺のなかにも溜まるものは溜まっていたらしく、彼女とのキスで俺の男もその存在を主張しはじめていた。
俺の舌の動きを感じた彼女も、俺を押し倒し俺の頭を両手で抱きしめてきた。心なしかさきほどより彼女の体が熱を帯びてきたように思えた。
いや、駄目だろ。普通であったばかりの男女がこんなことしちゃ、風俗じゃあるまし。常識から逸脱している。
手遅れながらも働き出した理性で、俺の顔に張り付いてる久野さんの顔を引き剥がす。むぅと艶のある声で抵抗されても構いはしない。
「どうしたんです、途中からのりのりだったのに。いきなりやめちゃうなんてムードぶち壊しですよ」
「いやいや、やっぱり駄目でしょう。それに久野さんはこの状況にムードを感じてたんですか?」
久野さんは唇を指で拭いながら、恍惚とした表情で
「久野さんだなんて、他人行儀ですね。巴でいいですよ。それにふたり一緒ならいつでもムード満天じゃないですか?」
やっぱりこの人どこかおかしいですよ、部屋に入り込まれた時点で外に追い出すべきだった。
「もうやめましょう、帰ってください。俺は好きでもない人にこんなことされても嬉しくないです。それにこういうことを軽い気持ちでする人は嫌いです」
「嫌い?私のこと嫌い?そうなの?」
「はい、俺はそういう人が大嫌いです」
そっか、とつぶやき久野さんの顔に笑みが張り付く。昨日俺に栄養ドリンクを渡した時のような妖艶な笑みだった。
「しかたないよね。そう、しかたない。でも大嫌いとまでいわれちゃと流石に傷ついちゃなあ」
笑みを浮かべながらおもむろに尻ポケットを探る久野さん。次の瞬間何かを腹に押し付けられたと思うと、鋭い刺激が走りみるみるうちに俺の意識は混濁していった。
視界が完全に閉じる瞬間に見えた久野さんの瞳は暗く濁り、その色が暗転した俺の意識と混ざっていく。
意識が夢に落ちていく間際、大丈夫絶対幸せにするよ?、という囁きが聞こえた気がした。

704:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:54:28 LjD7YQ3b
ああ、またこの夢か。俺はまた自分の娘と戯れていた。
娘は俺の膝の上にちょこんと座っており、俺はこの娘に本を読み聞かせていたようだ。
そういえばまだ、オムライスを作ってなかったな。時計を見るとちょうどお昼時、よし今度こそ作ろうか。
俺がそういうと、娘は大きくうなずきキッチンへとかけていく。転ぶとあぶないぞと声をかけながらそれを追いかける。
キッチンにいくと、内装こそ変ってないがやはり食器や調理道具が増えている。実際の俺はパスタをゆでる深鍋なぞ買っていなかった。
冷蔵庫を開けると、都合よく卵やその他野菜類が置いてある。流石夢だな、欲しいものが事前にそろっているとは。
娘と一緒に野菜を切りそろえていく、包丁も鉄の出刃包丁ではなくプラスチックの可愛らしい奴だ。
身長が足りてないので、小さな脚立を使いながら器用に包丁を使う娘。こういう手先の器用さは俺に似るのだなと思い、にやりとする。
野菜を炒める段階になり、娘がやりたいといいだすが、流石に火を使わせるのはまだ早いだろうと思いそれを制止する。
渋りながらも了解する娘。このどことない強情さは母親に似たのだろうか?俺はもう少し聞き分けがいいと自分では思っている。
てきぱきと野菜をいためていき、そこに1人前強のご飯を入れる。あとは男の料理でコンソメとケチャップをぶち込む。
出来きた似非チキンライスを皿に盛る。次は卵だねと、娘に卵を割らせてやることにした。
幼いながらも卵を慎重にひびをいれ、カパリと割る。やっぱり器用なところは俺に似たなと、親馬鹿じみた考えが浮かぶ。
夢の中なのにいやに現実感があるなと疑問を抱きながらも娘が割った卵を溶き、再加熱したフライパンに落とす。
高温のフランパンで急速に固まっていく卵を崩しながらフライパンの端によせ、ひょいひょいとオムレツ状にしていく。
昔は自炊もしてたが、最近ろくな飯をくってないなとふと現実にもどされそうになるが、夢の中くらい現実を忘れようと出来上がった半熟オムレツを似非チキンライスの上に乗せる。
さあ食べるぞ、と飯台へとオムライスと運ぶ。娘にはスプーンを二つ持たせてだ。
ここでも一つ気づいたが、俺の家には丸型のクッションなぞ置いてなかった。それも丁度3つ。はて、この娘の母親はどうなったんだろうか?
そんなことを考えていると、娘が早くたべようと膝の上から俺の襟を引っ張っていた。
そうだねと笑顔で返し、いただきますを言う。作法も小さい頃からしっかりとせねばな。
オムライスのオムレツの部分をスプーンで割っていく、こうすれば半熟のオムレツがとろけるように自らの重さでチキンラスを包むはず、はずなのだ……
しかしこのオムレツは半熟ではなく、完全に固まったオムレツに成り下がっていた。きっと余熱で固まったんだなと自分を擁護する。
「パパ駄目だね」という娘の心無い一言が胸に刺さる、こういうぶっきらぼうなところまで俺に似なくていいのに思う。無駄に現実感あるんだよな、この夢。
「パパ頑張ったけど上手く作れなかったよ、でも味は一緒だから食べようか?」
気を取り直して食べようと膝の上の娘の顔を覗き見る。うん、と元気よく返事をした娘の顔が俺の顔を見つめ返した。
眉や顎のラインはたしかに俺に似ているが、この目じりがやんわりとさがりった目元は母に似たのだろうか?
そう思うと何か心あたりがあるように思え、しばらく娘の顔をまじまじと見る。ここまで出掛かっているのに、見覚えがありながらも思い出せない。
もどかしさを覚えながら、頭の上に『?』マークを浮かべている娘の目を見る。この目、目なのだ。きっとこの目が最大のヒントだろう。
そう思いもっとよく見ようと顔を娘の顔に近づけようとした時、
俺の意識は覚醒した。

705:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:55:45 LjD7YQ3b
まずいつもの天井があった、味気の無い俺好みのベージュの天井。この色に惚れてこのマンションに契約を決めたのだ。
しかし色々とおかしな夢ばかりみたものだと思い、体を起こそうとして俺は自分の手足がベットの四隅に貼り付けにされているのに気がついた。
いつから俺は自分を縛り付けなきゃ寝れなくなったのだと思い首を真横に傾けると、夢の一部は夢でなく現実であったと気づかされた。
両手で頬杖を付いた久野さんの顔がそこにはあった。意識を失ったときに見たあの笑顔のまま、今も俺を見つめているのだ。
「起きました?どうです、体の方も調子がいいでしょう?」
「貼り付けられた状態で、どうやって体の状態を確認しろっていうんだよ」
「あ、その口調。敬語じゃなくなってますね。少し私たちの関係進展ですね」
さらに顔を緩ませ、嬉しそうに微笑む久野さん。いや、もう「さん」は要らないな、久野で十分だ。
「でも、もっと進展しますよ。なにせ私たち結婚するんですから、夫婦のスキンシップは大切です。
さっき体の状態なんて分らないっていってましたけど、ちゃんと目に見えるくらい元気ですよ。ほらこんなにいきり立ってるじゃないですか?」
そういうと久野は、俺の分身をさすり上げる。なにか寒いと思ったら、俺は全裸だったのかとその原因に納得する。
しかしいつからこの状態なのか、さすがに凍死はしないだろうが衰弱くらいしていてもおかしくはない。
でも今の俺の状態を見るに、そんな様子は毛ほどもない。久野の栄養ドリンクが本当に効いているのだろうか?
「あの栄養ドリンクになにを入れた?真冬に全裸でいて肌寒いとしか感じないなんて異常だぞ?」
「普通の栄養ドリンクをベースに、巷で話題の精力増強剤を各種混ぜ込んでます。味もちゃんと飲んでも美味しいように結構頑張りました。実際美味しかったですよね?」
あんな無理矢理なディープキスをして飲まされたもの味なんて覚えてるわけないだろう。鼻だってつままれてたしな。
それにおかしいぞ。混ぜ込んだってそれなら普通蓋を開けるときにキャップがガリガリとはいわんぞ。
「普通に工場の人に頼んだらやってくれましたよ?」
頼んだって、さっきから普通普通とこともなげに危ないことを言われてもな。一般人の頼みを聞いちゃいけないだろ、俺の系列の会社に頼んでなきゃいいがな。
「ラベルだって私のオリジナルなんですから、手作りです。さっきは軽いとか言われましたが、これでも軽いとか言いますか?」
たしかにただの一般人がここまでのことはしない、それこそ普通は。だが言動の節々から薄々久野が普通の人間じゃないってことには気づいていた。
いままでの人生で唯一好意を寄せられた人間がこんなアブノーマルな奴だったとは、笑い話にもならない。
「はあ、流石です。思ったとおりです。こんなに大きくてグロテスクだと逆に惚れ惚れしちゃいますよ。これで沢山子供を作りましょう。いえ、授かりましょう」
そういうと、さっきから寒い室内でもその勢いを衰えさせない我が分身をしごきだす久野。
気を失う前に飲まされた精力剤のせいか、かなり敏感に反応する愚息。
「やっぱり興奮してくれてるんですね、じゃなきゃこんない汁が出るわけないですもんね。でもまだ駄目です。ただ何もないところに精子をぶちまけるのは許しません」
そういうと、彼女は俺の体の上にのしかかり、腰にまたがる。
「そこからでも見えます?キスしてからだいぶ時間が経っているのにずっと下着の中がぐしょぐしょです。さっきから切なくて切なくて早く繋がりたいっていってるんです
でもちゃんとあなたにも感じて欲しくてずっと我慢してたんですよ?もうおあずけされるのは沢山です」
下着をわずかにずらし、秘部をあらわにさせそのままゆっくりと腰を落としていく。
先端から徐々に自分が久野の中に包まれていく。彼女の秘部は大量の汗をかいたように濡れぼそり、溢れ出る愛液が触れ合う肌を通して自分へと伝ってくるのが分った。

706:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:56:15 LjD7YQ3b
「感じますよ、ちゃんと感じます。少しまだほんのさきっぽだけなのにこんなに気持ちいいですよ。んぁ、もう一気にいっちゃいます」
すとんと一気に腰を落とす。同時に自分の全てが包まれた感覚になり、それが快美な波となり押し寄せた。
久野の顔は初めての性交で痛みを感じているのか、頬を引きつらせながらか細い声で小さくうめいた。
「くぅ、やっ…ぱり、い…たいです…ね。でも、これ…で繋がった…んですよね。夫婦になったんですよね?」
繋がった状態で体重を俺に預けながら、久野は俺を抱きしめる格好になる。
久野の乳首は硬くなっており、それが自分の胸板に擦れる。
「でも、やっぱり痛いからキスしながらしましょう。それなら私耐えられます。いい…ですよね?」
上目づかいで俺を見つめる。頼りなささげに眉をさげながらそんなことを言われると、俺の気持ちは揺らいだ。
それに初めての性交で、繋がったまま。久野は痛いといってはいるが、さっきから俺の分身は彼女の中で締め上げられており、早く動きたいと脈打っていた。
「わかった…から、動いてくれ。もう…どうにかなりそう、だ」
その顔を見て満足したのか、妖艶な笑みを浮かべた久野は再度俺に唇を重ねた。
すぐさま、舌をねじ込ませ俺の舌を求める。舌を絡ませ吸いたてながら、互いの唾液を貪りあう。
荒い呼吸をしながら、重なり、互いがそこにいるかを確かめ合うように求める。
俺は腰をまるで獣のように久野の膣に突き立て、久野はそれに応えるように受け止めた。
心臓が早鐘のように脈打つのがわかる、それは久野も同様だった。
重なり合った胸の鼓動が、しかと感じられた。抱き合って分ったのだが、久野もやはり女性。その体は柔らかく華奢で手荒く扱えば壊れてしまいそう気がした。
意識すればするほど、自分が熱くなるが分る。俺は欲望に身を任せひたすらに久野を求めた。
自分から行為に及んだとはいえ、やはり痛みがあるのか久野は涙をこぼしながら、俺の体をしっかりと抱きしめてくる。
いったん唇をはずし、大丈夫かと声をかける。
「痛くないのか?駄目ならやめてもいいんだぞ?」
「巴、巴って呼び捨ててください。名前を呼ばれるだけで私は気持ちよく慣れるんです。それだけで我慢できます。だからいっぱい呼んでください」
自分が一番辛いのに、それを隠すように弱さを見せない久野、もとい巴のいじらしさが俺にはとても愛しく思えた。
「クッ、もう限界だ。出すぞ、巴」
名前を呼んだ瞬間、膣の中が勢いよく締まり、射精感がさらに高まる。
「でますか?でるんですね?いいですよ、来てください。私を貴方のものにしてください、もっと貴方の色に染めてください」
ピクピクと肉茎が脈打ちながら、関をきったように精液をはきだす。俺は巴の中で果てていた。
「やっと名前で呼んでくれましたね。でも、これくらいでへばってちゃ駄目ですよ。今までお預けをくらっていたぶんをたっぷり返して貰いますからね」
そういうと、射精して間もない俺の肉棒を抜くことなく、またリズミカルに動きはじめる。
「私もアソコで気持ちよくなりたいので、とりあえずそれまで頑張ってください」
たとえそうなったとしても終わらせる気なぞ微塵も感じさせない顔で、巴は幸せそうに微笑んだ。
その顔を見て、俺はあの夢の娘の母が誰なのか分ったようなきがした。



艶めかしい声を上げながら何度も何度も腰を打ち下ろす。あれからすでに何度射精したかなぞ覚えておらず、何時間この状態かも分らない。
それでも巴は俺を求めつづけた。小刻みに腰を揺すりたて、肉壁をきつく締め上げ、何度も何度も。
「まだ、だめです。もっとください。もっともっともっともっともっともっと、いっぱい赤ちゃん産みます。一生気持ちよくしてあげます。
だからもっと私に愛をください。ふたりで愛を育みましょう。少し遅めの私からのクリスマスプレゼントです。
くふっ、うふふふふふふふあははははははははは」
精力剤の効果なぞとっくにきれていたが、射精を終え息子が萎えるとそのたびに前立腺に指を突きたてられ、何度も何度も性交をし続けた。
射精感はあるものの、精子はとっくに打ち止めになっていただろう。それでも巴は求め続けた。より確実に俺を虜にするため。
「幸せにしてあげます。幸せになります。もうやつれなくてもいいんですよ?もう寂しくないですよ?これからはずっと死ぬまでいっしょです」
俺は幸福がなにかは分らなかったが、確実にいえることはこのままではいつか俺は干からびるということだ。
それでもなんとなく、こんな生き方も悪くないのじゃないか、と思い始めていた。

707:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:57:30 LjD7YQ3b
投下終了です。時期を過ぎたネタって冷めたコーヒーなみに美味しくないですよね。
お目汚し失礼。

708:名無しさん@ピンキー
08/12/28 04:00:31 c45MDk1A
乙GJ
工場の人いい加減だなwww

709:名無しさん@ピンキー
08/12/28 06:31:07 cbSN5lz3
>>707
GJ。好きよこういうの、大好きよ

710:名無しさん@ピンキー
08/12/28 08:26:18 804Vi+VM
>>707
GJ!
大好物です
うちにも是非きてホスイ

711:名無しさん@ピンキー
08/12/28 13:18:42 Ir4HZHAq
>>707
GJ
冷めたコーヒーでももっと冷たくしてアイスコーヒーとして飲めばおいしいですよね


712:名無しさん@ピンキー
08/12/28 20:35:00 Aa5J88xF
誰かクロノトリガー並みマルチエンディングのSS書いてくれないものか・・・

713:名無しさん@ピンキー
08/12/29 00:56:48 w8tBw/X6
>>707
GJ、続きがあったら読みたいぜ
ヤンデレの敬語はたまらん

714:名無しさん@ピンキー
08/12/30 13:48:45 HmI1iUSl

ヤンデレって、ヤンデレになる過程が大事なんだと思うんだよな。

715:名無しさん@ピンキー
08/12/30 23:24:55 WUkKbHGo
>>714
あなたの気持はすごくわかります

716:名無しさん@ピンキー
08/12/30 23:51:39 59aJux5c
ヤンデレスレの住人なら初詣のお願いはみんな決まってるよな!

717:名無しさん@ピンキー
08/12/31 00:52:21 LI1WqhQ2
少しは女の子にもてますように。ですね、わかります。

718:名無しさん@ピンキー
08/12/31 01:12:37 Imb5yBK1
普通の女の子にモテて嬉しいわけないだろ…常識的に考えて

719:名無しさん@ピンキー
08/12/31 01:14:23 J5cXBKJz
朝起きたらイケメンになっていますように

720:名無しさん@ピンキー
08/12/31 02:36:23 If6V0G+v
朝起きたらベッドに拘束されていて、そのままヤンデレの女の子に逆レイプされますように。

721:名無しさん@ピンキー
08/12/31 03:36:44 op0Mou2V
健康

722:名無しさん@ピンキー
08/12/31 04:16:57 LI1WqhQ2
>>718
「少しは女の子にもてますように!」
「どうして?私がいるのにどうしてそんな事言うの?ねえどうして?」

というフラグを回収したいのだよ。わかるな?

723:名無しさん@ピンキー
08/12/31 07:49:00 mJzKbRJ/
普段はさっぱりしてるんだけど、実はかなり病んでたりする
明るくかっぱつな女の子に監禁されてますように

724:名無しさん@ピンキー
08/12/31 10:28:46 7JMY1SBB
俺も監禁されて逆レイプがいいなぁ

725:名無しさん@ピンキー
08/12/31 12:39:46 HkWOYGhS
俺は、薬盛られてレイプ→責任とってね。がいい。


726:名無しさん@ピンキー
08/12/31 16:49:16 7JMY1SBB
それもすばらしい

727:名無しさん@ピンキー
08/12/31 20:21:45 +HVWEYvs
卑劣なヤンデレ

(中略)

 千葉でピーナツと暮らしていたあなた、
 また千葉の田舎へ戻られたらいかがですか?

728:名無しさん@ピンキー
08/12/31 22:44:13 nA0sRVBT
デヴィ夫人やめてください!

729:名無しさん@ピンキー
09/01/01 02:08:52 /0LXhUsS
あけおめ!今年こそ監禁されますように! 

730:名無しさん@ピンキー
09/01/01 06:23:51 OPHRWBQa
全ての人類は地球と言う名の惑星に監禁されている。

731:名無しさん@ピンキー
09/01/01 06:46:11 /VduVH7H
重力萌えとは新しい。
ロケットの歴史を思い出す。

732:名無しさん@ピンキー
09/01/01 11:24:38 /3yHLEEe
地球か・・・

なにもかも、皆、なつかしい・・・

733:名無しさん@ピンキー
09/01/01 12:48:32 UUoOjEBr
地球姉さんと月妹が海男をキモ引力で引っ張り合うのを想像した。

734:名無しさん@ピンキー
09/01/01 20:59:33 Q1ZRHzw2
ヤンデレが活きる正月ネタが思い浮かばない…

735:名無しさん@ピンキー
09/01/01 21:16:08 lyxUwZKa
病み巫女?

736:名無しさん@ピンキー
09/01/01 22:06:36 GrcPYkEl
神頼みならぬ、病み頼み…


訳が解らんなこりゃ

737:名無しさん@ピンキー
09/01/02 01:08:33 DXtKf1eI
ヤンデレ×お正月=X

誰かXを解明してくれ!

738:名無しさん@ピンキー
09/01/02 01:25:51 5DlT/RoW
そりゃ初詣へ一緒に行くをすっぽかされたのに、寒い風の中唇が割れても男が来るのを待ち続けるヤンデレだろ。

冷たく乾いた風が容赦なく皮膚から水分を奪い取り、
ヤンデレの柔らかい唇がひび割れても待つのだ。


739:名無しさん@ピンキー
09/01/02 01:33:33 HXGNFBbU
年賀状がやたら多いと思ったら!

740:名無しさん@ピンキー
09/01/02 05:29:48 VF1d/Oyy
「ねぇ、737君。お年玉ここに頂戴?」
と振り袖を開いていくとか?

741:名無しさん@ピンキー
09/01/02 09:01:56 jB5Mx4ly
白いお年玉ですね、わかります。

742:名無しさん@ピンキー
09/01/02 14:58:23 WVYPPA0+
>>739 全部同じ人からだった……。

743:名無しさん@ピンキー
09/01/02 20:19:09 jtLrve4E
しかも郵便局からではなく直接投函されていた

744:名無しさん@ピンキー
09/01/02 23:35:53 UgkQUOuY
一人で何通も直接投函とかきめえ
そんな女がいたらすぐさま警察に突き出すよ

745:名無しさん@ピンキー
09/01/03 00:03:03 SebtgLWn
>>744
ははは、ツンデレめ

746:名無しさん@ピンキー
09/01/03 00:42:56 W2NgNIn5
逆に考えるんだ。
下のお年玉番号で当選する確立があがると。

747:名無しさん@ピンキー
09/01/03 01:06:45 W41gAez9
>>746
当選する賞品はすべてヤンデレ自身ですね

748: ◆Tfj.6osZJM
09/01/03 04:50:02 clWZ+s3E
投下待ちしてる間に自分も小説つくってみました。長編です。投下します。

749:似せ者  ◆Tfj.6osZJM
09/01/03 05:00:55 clWZ+s3E
第一話 ~始まり~


 偽者は本物を越す事は出来ない。
 偽者が本物を越す時、それは偽者と本物が入れ替わる時。
 似せ者は本物になる事は出来ない。
 似せ者は本物を越そうが越さまいが似ているだけのオリジナル。



 入学式から丁度一ヶ月が経った。
 俺は苦労の末に仁衣高校に入学した。
 県内トップクラスの学力を保持、様々なスポーツで好成績を収めるという文武両道の校風、そしてさらに日本トップレベルの仁衣大学へエスカレーター方式で行かれるとなれば、当然、皆行きたがるというものだ。
 女子の場合はさらに制服が可愛いことも人気に拍車をかけているらしい。
 倍率は10倍以上。去年は二年前に仁衣高校に入学した姉さんとの猛特訓の日々だった。
「はい、次はこの問題を解く!出来なかったら罰ゲームよ」
 次から次へと来る問題。そして悪魔のような罰ゲーム。二度と思い出したくない…。
 しかしそんな地獄のような日々を乗り越えて手に入れた生活はまさに夢のようだった。何から何まで楽しくて充実している。一ヶ月があっという間であった。
 入学してすぐに陸上部に入学した俺は走ることで青春を満喫していた。たった今も練習に励んでいる。
「んじゃ始めっか!」
俺は気合を入れるように呟いた。
 一週間前から、朝の授業前に一年部員同士で集まっての自主朝連をしているのだ。
 早起きが苦手な俺だが大好きな陸上の為となると話が違う。目覚ましやら携帯のアラームやらを何重にも設定し、体を叩き起こしていた。
 みんなで一緒に朝練と言っても、やることは様々だ。体操だけ全員一緒にやり、後は個人個人で好きなようにやっている。
 投擲や跳躍などのフィールド種目専門の人間とトラック種目専門の人間が一緒に練習したって仕方がない。そもそも、同じトラック種目専門だって、短距離専門の人間と長距離専門の人間じゃ、鍛え方はまるで違う。
 俺はというと…、とにかく、がんがんと長い距離を走っていた。それこそ、ブレーキのない車のように。
 きっかけはなんだっけ?オリンピックのマラソンに感動した時だろうか。それとも駅伝のゴボウ抜きというものに強く憧れた時であろうか。案外、幼い頃に読んだ『走れメロス』に影響されてなどといった、くだらない理由だったかもしれない。
 とにかく俺は走ることが大好きだった。
 とりあえず俺はいつも通りジョグを始める。もう5月だが、まだまだ風は冷たい。しかし、それは、身を凍えさせるような冷たさではなく、朝の肌を適度に刺激する心地の良い冷たさだった。
 うん、今日もいい朝だ。


「じゃ最後に全員参加で400mダッシュ。ビリの奴は今日の昼休みに好きな女子に告白」
いきなりそんなふざけた事を言い出したのは俺の悪友の杉下だ。
「俺はパス」
「無理」
人間のインパルスの限界スピードを越しているのではないかと疑うほど、瞬時に俺の意思は却下された。
「あのですね、俺はジョグやらインターバルやらをやりまくった後で、歩くのもキツイので…」
「だから?」
今度は最後まで言葉を発することすら、許されなかった。
 周りの奴らはニヤニヤと俺を見ている。この状況が面白くてたまらない様子だ。
 そういえば、今日はやたら、俺以外の奴らの練習が軽かった気がする。
「嵌められたな…」
 元々、400mとなると長距離専門の俺は分が悪い。さらにこの状況となると…
「おいおい、諦めるのか?俺の知っている赤坂映太という男はどんな逆境にも勇敢に立ち向かう強い人間なのだが、はたして違ったのかな?」
「俺の知っている杉下隆志のイメージ通りの発言、ありがたく受け取っておくよ」
「さぁ、スタートラインにつくがよい」
 見ると、既に俺以外はスタートの体勢であった。こういう時、うちの部員は妙に団結するから困る。
「詰みだな」
 俺は自らの運命を悟った。
 どうやら俺は今日、藤堂優奈に告白する運命のようだ。さてどうしようものか…。


750:似せ者  ◆Tfj.6osZJM
09/01/03 05:04:41 clWZ+s3E
 藤堂優奈。隣のクラスの女子。
 残念なことに、彼女に関する確かな情報はあまり持っていない。趣味も好みも不明。
 とりあえず、外見は良い。というか、めちゃくちゃ可愛い。人気のアイドルも彼女を前にしたら裸足で逃げ出すのではないであろうか?
 思わず撫でたい衝動に駆られる茶味がかかった黒髪。
 完璧以上に完璧な整った顔立ち。
 繊細な指や足。
 唯一、胸はあまりないが、全体的に細いそのスタイルは彼女のか弱いイメージとマッチしていて、それすらも計算されているのではと思わされる。
 杉下曰く、「仁衣高校三大美女」と呼ばれるうちの一人であるらしい。
 余談だが、その「仁衣高校三大美女」には姉さんも入っているらしい。本人は知っているのだろうか?今度聞いてみよう。
 そして彼女は独特の雰囲気を持っている。実際、俺は外見よりそちらに惹かれたのかもしれない。
 上手く説明は出来ないが、何というか、彼女は自分の人生を客観的に生きていた。おそらく彼女は、人が喜びそうなことをしたら喜び、悲しみそうなことをしたら悲しむであろう。しかも演じているような不自然さとは無縁に。
 彼女の主観は客観であるというのが言い得ているであろうか。人間らしい人間。それが藤堂優奈であった。


751:似せ者  ◆Tfj.6osZJM
09/01/03 05:08:10 clWZ+s3E
 昼休み前の前の四時間目。俺は数学の授業を華麗に聞き流しながら、必死に告白のセリフを考えていた。
「もう俺は君無しでは生きていけない。俺と付き合ってくれ!」
「どうしようもなく君が欲しい。高校生活を俺と共に歩いてくれないか?」
…。駄目だ。俺にはこういったセンスはないらしい。
 俺は、二時間目終了後に、藤堂優奈の机に手紙を入れてきていた。
「話したい事があります。昼休みの空いている時間、屋上に来てください」
と。
 しかし、呼び出して、どういう風に告白するか。それをまったく考えていなかった。
「まぁ適当に挨拶した後、ストレートに、好きです!付き合ってください!でいいだろう」
 どうせ撃退だろうし…。
 彼女にまだ彼氏が居ないことは確かである。なので、可能性が0というわけではない。
 しかし彼女はかなり頻繁に男子の告白を受けているが、それを全て断っているらしい。
 理由は不明。杉下によると、撃沈者の数は、まだ入学から一ヶ月しか経っていないというのに、十人を軽く越しているとか。
 そんな事を考えていると逆に緊張感は薄れてきた。
 藤堂優奈のことは本気で好きである。おそらく杉下達の罰ゲームがなくても、いつかは告白していた。
 もし自分の彼女に出来たら、とてつもなく嬉しい。そして、振られたら、もちろん悲しいであろう。
 しかし例え振られても、俺には現在の充分に充実した生活があった。
「失う物は何もない」
 自らに言い聞かすように小声で呟いた。
 丁度、俺の覚悟をしたのを見計らったかのように授業終了のチャイムが鳴った。
「さて行くか!」
 俺は授業終了の号令と同時に教室を出た。


 仁衣高校は屋上が開放されている。ただ風が強いのと季節によっては寒いのとで、昼休みにここで弁当を食べる習慣の生徒は居ない。(もっとも、たまには居るのだが)
 なので、教室とは違った話場として使われていた。しっかりとベンチもあったりする。
 告白にはよく使われているらしい。
 普段は人がいないのに加え、例え自分のような人間が複数居ようと、仁衣高校の屋上はなかなか広いため、あまり気にならないためであった。
 今日は俺しか居ないようだ。もっとも、まだ昼休み開始すぐなので、これから人が増える可能性はあるが。


752:似せ者  ◆Tfj.6osZJM
09/01/03 05:11:18 clWZ+s3E
 ガチャリ…
 入り口のドアが開く音がした。まさかもう来たのであろうか?
 ドアが完全に開くとそこには可憐な少女が居た。藤堂優奈だ。
 俺は一度小さく深呼吸をし、藤堂優奈に話しかけた。
「こんにちは。来てくれてありがとう。俺は1-Cの赤坂映太。よろしく」
「え…」
 いきなり、驚いたような顔をされた。少し馴れ馴れしかっただろうか?さっそくミスをしてしまったか?
 俺はとても焦った。
「好きです、付き合ってください!」
 気づくと俺は既に告白のセリフ言ってしまっていた。
 藤堂優奈が屋上に来てから三十秒も経っていないうちの告白。挨拶だけして、前置きも無しに叫んでいた。
 相手からすれば俺は今初めて知った人間なのに。
 しかも顔は下げたまま。まともに藤堂優奈の顔を一度も見ていない。
 やってしまった…。駄目な告白の典型例だろう、きっと。
 とりあえず、俺はおそらく真っ赤になっているであろう顔を上げ、返事を待った。
「兄さん…」
「は?」
 様々な返事を想定はしていた。断りの返事はもちろん、希望を込めてのOKの返事も。
 が、こんな返事は予測していなかった。俺の口から間抜けに疑問符がこぼれる。
「兄さんーー!」
 藤堂優奈はもう一度そういうと、勢いよく俺の胸に飛び込み、そして抱きついてきた。
 兄さん?藤堂優奈に抱きつかれた?好きな女の子にいきなりの行動に俺の頭はパニックに陥っていた。
 顔を見ると、目に涙が溜まっている。
「兄さん!兄さん!寂しかったよぅー」
 何が何だか分からない。
 俺はしばらく抱きつかれたまま、その場で立ちすくんでいた。


753: ◆Tfj.6osZJM
09/01/03 05:14:02 clWZ+s3E
投下終了です。不評でなければ続き投下していきます。
では裸にネクタイの態勢に戻ります。

754: ◆Tfj.6osZJM
09/01/03 05:15:37 clWZ+s3E
追記
昼休み前の前の四時間目→昼休みの前の四時間目
普通にミスです。すみません。

755:名無しさん@ピンキー
09/01/03 06:36:51 qmFjoBpY
GJ!

756:名無しさん@ピンキー
09/01/03 06:43:19 jexV9bZ+
続きが楽しみだ。GJ!!

757:名無しさん@ピンキー
09/01/03 11:39:11 snLHAzVP
続き~楽しみに決まってます!!!

758:名無しさん@ピンキー
09/01/03 18:19:14 dLSzsSSq
GJ!続きがきになる!!全裸で待機してます!

759:名無しさん@ピンキー
09/01/03 18:27:48 KWXh7ImH
GJ!この後のどうなっていくのか気になる(>< 

760:名無しさん@ピンキー
09/01/04 00:58:05 OknPVrM0
良作ホイホイだな

761:名無しさん@ピンキー
09/01/04 05:02:00 ikCddwhD
GJ!!
これは、神の予感・・・

762:名無しさん@ピンキー
09/01/04 07:22:37 SUfb/mYA
GJ!!
続きキボン

763: ◆Tfj.6osZJM
09/01/05 03:16:39 /qiCKxV6
こんなにGJと言って頂けるとは!嬉しいのでさっそく2話目投下しちゃいます!
ってなる予定だったんですが…
2話以降、全部消えました。気分良くなって保存もせずにログオフとか…

優奈「雨音ちゃんは俺の妹!とかはしゃいで、私の事を忘れる兄さんが悪いんですよ」
はい…、その通りです。

スミマセン、それだけです。そういう報告は要らねーよって思うかもですが、あまりに悲しかったので…

764:名無しさん@ピンキー
09/01/05 04:39:50 VvMor0kP
>>763
楽しみにしてるので、諦めずまた投下されることを祈ってます。

765:名無しさん@ピンキー
09/01/05 06:47:29 f2xhAhK4
>>763
字が消えたら物語が消えるって訳でもなし
脳内に残ってるならまた書けばいいさ
気長に待ってるよ

766:名無しさん@ピンキー
09/01/05 11:24:55 xPTBIbP8
SSって書き始めたとしても、なかなか書ききれないよね

767:ワイヤード  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:28:20 TDyDTYz3
久々に投下します。二話連続ですが、今回あまり面白い部分はないと思います。
これからへのつなぎみたいな話です。

768:ワイヤード 幕間  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:28:50 TDyDTYz3
幕間『少女の祈り』

神様―。

月夜。
光がステンドグラスを超えて差し込み、少女を照らしていた。天使のごとき輝き。
翼のないその姿が、むしろ神秘だった。
闇の中の教会で唯一輝ける少女は、独り神に祈りをささげていた。
「神様」
目を閉じる。
少女はその瞼の裏に、世界でたった一人、愛し、全てをささげるべき存在を想い浮かべる。
そして、それは神ではない。ただの、一人の少年の姿だった。
「神様、どうか……」
少女は、神など信じてはいなかった。信じているのは、ひとつだけ。
未来。
少女と、少年の、二人の未来。たったひとつ、それだけがあれば、それは彼女の幸せだった。
「どうか、ちーちゃんと私の生きる、未来を……!」
ただひたすらに、純粋で、しかし利己的な願い。
信じてなどいない神にまですがる。
それは、彼女がプライドよりも大切なもののために生きているという証拠だった。
それほどまでに、少女はあの少年を愛していた。
「神様……」
教会の奥にひっそりと佇む、神を模した像は、ただ、少女を見つめるだけだった。
―この世界に、神なんていない。
少女には、そんなことは既に分かっていた。
神なんていない。人は、狂おしいまでに平等だ。
だから、強いものが勝ち、弱いものが負ける。平等だからこそ、違いがある。
だから、少女は力を願った。


769:ワイヤード 幕間  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:30:28 TDyDTYz3

かたん。
突然後ろから聞こえたその音に、少女は振り向く。
教会の扉が開いていた。差し込む光に、浮かび上がる影。
人影。
「待ってたよ、アリエス」
少女は、確信をもって人影に声をかけた。
アリエスと呼ばれた少女も、落ち着いた声で返答する。―まるで、こうなるのがはじめからわかっていたかのように。
「逃げないとは、たいした自信だな」
「けじめをつけるためだよ。一人でも逃がしたら、ちーちゃんに迷惑がかかっちゃうから」
「お前は……!」
アリエスが激昂する。
「お前は、悪魔だ。神に祈る資格など、ない!」
「……そう」
少女は神にひざまずいていた姿勢から、立ち上がり、アリエスと向かい合う。
「自らの目的のために、何人を義性にした! 何人を殺してきた! お前の殺した者には、帰りを待つ家族がいて、恋人がいて、友がいて……ともに、笑い、泣き、怒り……。全て同じ、人間だ!
 それを、お前は簡単に……! そして、遂には、お前はおまえ自身の両親までも……!」
「なら、逆に聞かせてもらうよ」
「……何だ」
「あなたたち統合教団は、私にどういう仕打ちをした? 度重なる、過酷な能力テスト。人体実験。兵器開発。薬物投与。攻撃力の調査のために、大型動物と素手で戦わされたこともあったよ。
 そして、死刑囚を連れてこられて、人体への攻撃を試すとか言って、私にその人を殺させたのも、あなたたち統合教団」
「……っ」
「もともと人間扱いされなかった私に、私の両親は何をしてくれた? もともと統合教団に私を売ったのもお父さんとお母さんだよ。そして、そのためにちーちゃんと私を引き離したのもあの二人。あの二人だって……あいつらだって! 私を人間扱いしてくれなかった!」
「それでもっ」
「それでも、何だっていうの!? 私を助けてくれたのは、心の中にあったちーちゃんとの記憶だけなんたよ……? あの人と結ばれる未来だけが。その夢だけが、私を守ってくれたんだよ? そんな、小さいけど幸せな未来への願いさえ、統合教団は許さなかった」
「だから、全て破壊したというのか!」
「そうだよ! それのどこが間違ってるって言うの? アリエス、あなたに私が裁ける? ちーちゃんが好きだっていうだけで、それだけで良かった私を、ここまで変えてしまったのは、あなたたちなんだよ……?」
「違う……。お前は、お前のエゴを押し通しているだけだ! お前一人の願いのために、多くの―お前と同じ、小さな願いを持った人間を、何人も殺したんだ。それは、許されるものではない」


770:ワイヤード 幕間  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:31:03 TDyDTYz3
「……なら、その力は誰が私に与えたものなの?」
少女は、手にもった剣を握り締めた。
「それは、お前が元から持っていた力だろう。だから我々統合教団は、お前を保護し……」
「違う! 私は、ちーちゃんと一緒にいたいだけなの! 本当は、こんなちから、いらない!」
「血塗られたお前が言うことか……!」
暗闇で隠されていたが、徐々に光で浮き上がる少女の姿。
アリエスには、しっかりと見えていた。少女の、血塗られた身体。
少女のものではない。返り血。少女が虐殺した、統合教団の構成員達のものだ。
そして、それだけではない。少女は、奇怪な鎧を身に着けていた。
やけに近未来的な―今は血塗られて赤いが―白い鎧である。手には、長剣が握られている。
「その剣は、確かに我々が与えたものだ。だが、お前の剣を振るうのはお前自身だ。お前の心だ」
「……そう、そうなんだ。アリエス、あなたは、分かってくれないんだね……」
「別の形で出会っていれば、お前とは友でいられただろう。だが、私は全てを奪われた。だから、もう戻れない。戦うことでしか、私たちは分かり合えない」
アリエスは、マントに隠していた武器を取り出した。
「『ヴァイスクロイツ』。エクスターミネート」
十字架のような形をした武器。『ヴァイスクロイツ』。中心にある宝石がアリエスの闘気に反応するように光る。
「本当に、やるんだ。さっき、私の力は見たでしょう? この『ネクサス』がある限り、私は無敵だよ。そして……」
少女は、剣を構え、突進した。真っ直ぐ、アリエスに向かって。
「この剣を振るわせるのは、あなた!」
「だとしても!」
全くゆがみのない攻撃。ひたすら真っ直ぐに、迷いなく、最速で剣を振り下ろす少女。その一撃を、アリエスは『ヴァイスクロイツ』で正面から受け止める。
互いの強大なエネルギーの衝突に爆音が轟き、教会全体が強く揺れる。ステンドグラスが吹き飛ぶほどの衝撃。
「『ネクサス』! ブーストアップ!」
"ブースト・アップ"。少女が身に付けている鎧のベルト部分から、機械音声が発せられる。
同時に、少女の持つ剣が強い光に包まれる。
「っ!?」
アリエスはとっさに少女とのつばぜり合いを中断して、ヴァイスクロイツを引き、少女の左隣に飛び込み、床を転がって距離をとった。
次の瞬間、少女の剣から発せられた強い光が剣から一気に溢れ出し、少女の前方の物体全てを切り裂いていた。
教会にあった椅子、カーペットはもちろん、教会の壁、地面でさえも、少女の前方のものは、全て。
「……」
アリエスは驚愕する。これほどの威力の攻撃は、かつて見たことがなかった。
少女が、本気だということだ。アリエスが見たことのない領域の力を行使するまでに。


771:ワイヤード 幕間  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:31:33 TDyDTYz3
「どう? これが、あなたたち統合教団が恐れ、制御しようとした『ワイヤード』の力。『WE粒子』のもたらす、世界を変える力」
「……この力は、人が手に入れていいものではない」
「あはっ! 同意見だよ、私もね。でも、末端のアリエスは知らなかったかもしれないけど、本当にこれを手に入れたがっていたのは、統合教団……つまり、人なんだよ」
「そんな、ばかな……」
「いいよ、今なら許すよ、アリエスのこと。だって、知らなかったんだもんね。アリエスは、ワイヤードに家族を殺された恨みを晴らすために、統合教団に協力してたんでしょう?」
「……」
確かに、その言葉は正しい。
アリエスは、ワイヤードという存在に教われ、全てを失った。自身も、一生消えない傷を負った。
そして、ワイヤードたちと闘っている組織、統合教団に拾われ、その中でずっと戦ってきた。
知らなかった。
アリエスは、統合教団の行動は、全てワイヤードの殲滅のために行われていると、信じていた。
「統合教団は、人類のためにワイヤードを滅ぼすなんていう、正義の組織じゃなかったんだよ。教団の目的は、『WE粒子』の軍事転用。それをもって世界を統一する。つまり、本当のエゴの塊は、統合教団のほうなんだよ。私じゃない。あんなやつら、殺されてとうぜんでしょ?」
「そんな……そんなことが……」
「アリエス、今なら、私の仲間になれるよ。一緒に行こう、アリエス」
「……それでも」
「?」
「それでも、私は、神を信じている」
「……あきれた。どうしてそんなに頑固なの?」
「統合教団の神ではない。お前の神でもない。私の神は、ここにいる」
アリエスは、勢いよく立ち上がり、自らの胸を強く叩く。
まるで、心臓の―命の存在を確かめるように。魂を確かめるように。
「この魂が、叫んでいる。お前は歪んでいると! 私は、私の信じる全てを―神への祈りを、全て……!」
ヴァイスクロイツを強く握り締めるアリエス。
その腕には、瞳には、もはや何の迷いもない。
「……分かった。私がちーちゃんを想うのと同じ。アリエスも、本当に大切なものがあるんだね」
「その通りだ。もはや、どちらが善、どちらが悪なのか。そんな問題は超越した。私とお前の、運命は。……全て、神の導くままに。そして、私自身の意思で、ここで断ち切る。この祈りを、全て、この一撃に懸ける……!」
「いいね。一撃、たった一撃の勝負……」
少女も、剣を握り締める。ベルトが"エクステンション・ドライブ"とコールしたと同時に、少女の剣が強い光に包まれる。
「もう、言葉はいらない! いくよ、アリエス!!」
「西又イロリ……いや、ワイヤード! 私が、お前の運命を断つ!!!」
二人が同時に駆け出す。
「いっけええええええええええええええ!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


772:ワイヤード 幕間  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:32:04 TDyDTYz3
ある朝、京都近郊の、町外れの教会が、全焼、倒壊状態で見つかった。
近隣住民に寄れば、その前の晩、なにか大きなゆれと、音と、そして、天まで届く光が教会から発声していたらしい。
調査隊の活動虚しく、焼け跡からは死骸もなにも見つかっておらず、おそらく被害者はゼロと思われる。
警察は原因究明に乗り出したが、結局全てが不明であり、調査はすぐに打ち切られた。

西又イロリが東京に現れる、数週間前の出来事である。

773:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:32:38 TDyDTYz3
第十四話『存在に心奪われる時』

「(どこだ……どこから撃ってきている……)」
第二射。
千歳は即座に反応して手のひらで矢を受ける。
千歳の手のひらを貫くかと思われた矢は、逆にひしゃげて地面に落ちた。
そして、千歳は分析を終了した。
今の一撃で。矢の方向や速度、角度によって、狙撃者のいる位置を特定したのだ。
「(ありえないことだが、3000メートルほど離れた地点から撃っている。そして、恐らく高くて、俺が見える場所……)」
―学校、だ。
「っ!?」
思考している間に、三発目が迫っていた。
「蒼天院清水拳、流転投槍!」
両手を円状に回転させて、その中心で作った空気の壁により、触れずに受け止める。
矢にこもったエネルギーを保ちながら腕をさらに回転し、矢を方向転換する。
「受け取りな、こいつは警告だ!」
両腕を押し出すと、空中で静止し、方向転換した矢が、まさに飛んできた方向をめがけて校則で飛んでいった。
清水拳による反射。
「……とどくか?」


774:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:33:08 TDyDTYz3
「くっ……ボクが二発も外した……!?」
メアは動揺する。彼女の腕を持ってすれば、暗殺など一撃で十分なのだ。本来なら、もうとっくに終わっている。
焦りながら、第三射を放つ。
「あいつ、受け止めて……!」
そして、こちらに向かってくる。
「ちっ!」
高速で迫ってきた矢を寸前で掴み取り、メアは防御した。
「まさか倍化して反射するなんて……。鷹野千歳、思ったよりやるな」
こうなれば、暗殺は無理だろう。メアはさっさと見切りをつけ、ずらかろうとする。
「まさか、本当にこのまま逃げられるとでも思っているんですか?」
「!?」
突如背中に投げかけられた声に、メアは飛びのいて距離をとった。
「何者だ!」
「何者って、あなたのほうこそ何者なんですか? そうでしょう、だってあなた、高校生には見えませんよ」
「……」
メアの背後に立っていたのは、この高校の女子生徒のようだった。
黒のショートヘアに眼鏡の、一見地味な風貌だ。
だが、メアには一瞬でわかった。
こいつは―野獣だ。
「まあ、相手に素性を聞く時は自分からっていいますしね。私は井上深紅。この高校の風紀委員です。以後、お見知りおきを」
「……なぜ、ここにいる」
「なぜって、確かに今日は休日ですが、生徒会活動やらなんやらも大変なんですよ。委員長っていうのは。それに、その質問はあなたに対して為されるべきでは? あなた、他人の学校の屋上で、人を狙撃してましたよね?」
「くっ……」
メアは動揺する。
目の前にいるこのミクという女は、一体何者なのか。
表面上はなんて事のない、丁寧語を喋る優等生然とした少女だ。だが、どう見ても、それ以上の何かが秘められている。
「いえ、そんな目で見ないで下さい。別に怒ってるわけじゃないんです。狙撃はかまいませんよ。たまにはしたくなりますよね、狙撃」
こいつは何を言っているんだ。ミクの異常性に、メアはついていくことができない。
「ただ、狙撃している対象に問題があるんですよ」
ミクは笑い始める。無気味に、ひたすら不気味に。
くすくす。
くすくす。
くすくす。


775:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:33:55 TDyDTYz3
「(こ、こいつは……!)」
メアは、ここでやっと確信を得る。
「(こいつも、ワイヤードだ!)」
そうと分かれば行動は早かった。
メアはアルバレストをミクに向ける。
「お前、ワイヤードだな……」
「さあ、何を言っているのやら、わかりませんね」
「随分余裕だな。ボクがここで引き金を引けば、お前は死ぬ」
「くすくす。本当に、やんちゃなんですね。『ボク』ですか。可愛い女の子が……」
「何がおかしい」
「いえ、失礼。だってあなた『タチ』ですもんね。そして、可愛い子猫ちゃんを欲しがってます。『百歌』ちゃんという、可愛い子猫ちゃんをね。だから、男の子を演じている」
「……!! お前、一体……!」
「知ってますか? 情報というのは、時に銃よりも強い武器になるんですよ? メア・N・アーデルハイドさん」
「お前……」
「そして、私は今、怒っているんです。あなたの愛がどこへ向かおうと勝手ですが、その怒りの矛先を千歳君に向けた事実に」
「……!」
井上ミクは、どう見ても弱い。ひょろりと細いし、身長もあまり高くない。メアより若干上な程度だ。
どう見ても、勝てる相手。
なのに……。
「(なぜ、ボクの脚が動かない……!?)」
ミクはくすくすと笑いながら、少しずつ近づいてくる。
―そんな姿に、メアはどうしようもない恐怖を抱いていた。
「千歳君を……。私の千歳君を……。あなたに、彼の何がわかるって言うんですか? あなたに、彼を裁く権利はあるんですか?」
「(動け……動け……!)」
已然、メアは硬直している。
ミクの指がメアの首に触れる。
「あなたも、戦闘では強いみたいですが、もうすこし身の程を知ったほうが良いんじゃないですか? 世の中には、触れてはいけない尊いものがあるんですよ?
 千歳君を殺そうだなんて、イスラム圏でマホメットを馬鹿にするようなものです。この世界全てから、あなたが殺されることになるんですよ?」
すべすべの、優しい指がメアを撫でる。
「(殺される……)」
「私の『幸せ家族計画』にも支障をきたしちゃうじゃないですか。千歳君無しには、何もかも台無しなんですよ。……だから」
「ぐっ……!」
ミクがメアの首を締め上げ、その身体を軽々と持ち上げた。


776:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:34:26 TDyDTYz3
「(こいつ……なんという力だ……!)」
「暴力沙汰は苦手なんですけどね。それでも、私にはものの価値判断というものができますから。ねぇ、メアさん。この世界のなかの、大切なものって、分かりますか?」
「(な……なにを……言っている……)」
「人間も、何もかも。この世界に平等なんてないんですよ。どんなものにも優先順位があります。それはまず第一に、『自己』が尊重されるべきであり。しかし、その前提に成り立つ、最も上位の存在があります……。それが、千歳君なんですよ」
「(こいつ……)」
「あなたと、あなたの大切にしている世界は、あなた自身が思うほど特別じゃないんですよ。本当に特別なものが世界にあるとしたら、私の観測した、私と千歳君の生きる世界です。これは本当に簡単な理屈なんですけど、なぜ誰もそれに気付こうとしないんでしょうね?」
くすくす。
「(狂人だ……!)」
「さて、そろそろ良いでしょう」
ミクはメアを掴んだまま、屋上の端に移動する。
「お別れです」
そして、足場のない場所にメアを持っていき、その手を放した。
「……ちぃ!」
メアは空中でくるりと身軽に回転し、見事に着地。
五階建てのこの学校校舎の屋上からの落下を、全く苦にしなかったのだ。
「あいつ……なんなんだ……」
焦燥。
ここはとにかく一旦退くしかなかった。


777:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:35:36 TDyDTYz3
「やはり、この程度では傷ひとつつきませんか」
ミクは、退散していくメアの姿を、屋上から悠々と見下ろしていた。
「あんな化け物とまともに戦ったら、私なんか肉片も残らないでしょうね」
そう言いつつも、ポケットから小さなビンを取り出し、ぷらぷらと目の前で振った。
「この『硬直香』の効果範囲の狭さも、改善の余地ありですね」
ビンの中には鮮やかな赤色の粉末が入っており、小さく火がついている。ビンの口からは、甘い匂いが漏れ出している。
これは硬直香とミクが呼んでいる特殊ガスであり、その効果はその名のとおり、かいだものの筋肉を硬直させる。
匂いは強くなく、効果も即効性があるため、非常に高性能だが、欠点は、その効果範囲の狭さだった。最低でも5メートル以内に近づかなければ、全く意味がない。
「自慰行為をするというのは、主義に反するのですが、まあいいでしょう」
実の所、これは自身の体臭がもつ幻惑作用を取り出して物質化したものである。それに必要だった愛液は、もちろん自家発電した。
ミクはそれまで自慰行為をしたことがなかったが、千歳に対して行った数々の性的暴行を思い出すと、非常に簡単に濡れることができた。
「ふふっ、千歳君に試す時は、もう少しちゃんとしたものを作らないといけませんからね。副作用なんてあったら大変です」
そこまで言うと、ミクは満足げにビンをしまった。
「さて、メアさん。この警告を真摯に受け取ってくれれば幸いなんですけどね」

「さて、狙撃手があの警告を真摯に受け取ってくれると幸いなんだがな」
狙撃がやみ、千歳は家についていた。
「ん、どうしたのお兄ちゃん?」
「いや、なんでもない」
百歌は相変わらず何も知らず、無邪気だ。だが、それがいい。一番いい。
千歳は、百歌をわけのわからない命の取りあいなどに関わらせる気は全くなかった。
目的もなにもわからない狙撃手だが、野放しにしておくと百歌まで危険に晒すことになるかもしれない。
「(次はない。次に俺や百歌を狙ってきたら、容赦なく消す……。そのための、俺の清水拳だ)」


778:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:36:37 TDyDTYz3
数日後。
狙撃手も現れず、その日も平和に千歳とナギ(と、家の方向が違うのにいつの間にか合流しているイロリ)は、元気に登校していた。
「いや、北斗はやはりトキだろう。家族を想うあの生き様は見習わなければな」
ナギが熱くトキの人生を語る。
「まてまて。サウザ―を忘れるな。やはり拳法家としては、ケンシロウももちろんだが、ああいうサウザ―のストイックな所にも憧れるだよ」
千歳も負けじと熱く語る。
そして。
「二人とも、あまーい!!!」
「な、なんだよ、いきなり大声出して」
イロリは、千歳に槍訊き返されたとたん、まるでダムが決壊したかの如く言葉を垂れ流し始めた。
「確かにトキの家族愛やケンシロウの隣人愛はすごいとは思うけど、最高はシンだよ! 北斗はもともとシンとケンシロウの闘いの物語だったんだし、それにやっぱり愛に生き、愛に死ぬあのシンの生き様には現代人が見習わなければならない部分がいっぱいあるよ!
 言うなれば、『さふいふものに、わたしはなりたい』だよ!」
「そ……そうか……?」
「そうだよ! それに、ちーちゃん。サウザ―なんて駄目駄目! あんな『愛などいらぬ!』なんていう人、全然わかってない!」
「いや、それは違うぞ、イロリ」
ナギが口をはさむ。
「サウザ―が愛を失ったのは、やつ自身の持つ愛が、誰より深かったからだ。愛を持つ苦しみを知ったが故に、悪によってそれを塗りつぶしてしまおうと思ったんだ。
 愛と憎しみの重さとは、常に均一なんだよ。愛を守るためにせよ、壊すためにせよ、それに対応した憎しみが存在する」
「……た、確かに」
「サウザ―の場合は、生まれた憎しみが愛そのものに向き、シンはユリアへの執念ゆえにケンシロウを傷つけたという、そういう方向の違いが二者にはあったが。
 ともかく、他の北斗の拳の登場人物も、どんな形であれ、愛と憎しみを持っている。ユダですらそうだし、ケンだって悪を憎む心は愛から生まれている。奴らは皆、同じ人間だからな」
「な……なるほど。勉強になるよ」
千歳にはそこまでわからなかったが、イロリはなんとか納得できたみたいだった。
「やっぱり、ナギちゃんは凄いね!」
「まあ、それほどでもないがな。それに、お前がシンを尊敬する気持ちも、分からんでもない。結局、歪んだ愛をもった人間が多いのにたいし、シンの愛は方向性はどうあれ真っ直ぐだった。正しい形をとっていなかったとしても、あそこまで一途なやつも、そうそういないな」
そうこうして無駄話をしているうちに、校門までたどり着く。
見ると、なにやらいつも通りの風景ではない。
生徒たちはざわざわと野次馬のように外に出てきていて、その中心には大きくスペースが開いている。
黒服の男達が何人か断っていて、野次馬達を押しのけているのだ。
さらに、開いたそのスペースの中心に、誰かが立っていた。
「なんだ、こりゃあ」
千歳が小さく呟く。とにかく学校に入らなければ。と、踏み込む。ナギとイロリも追従する。
真っ直ぐ歩いていくと、見るからに怪しい誰かさんにぶち当たることになる。迂回していくか、と、千歳は方向転換―
―しようとした矢先、怪しい人物が走り出した。
その手には、槍が握られている。


779:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:37:08 TDyDTYz3
「なんだ……!」
超スピードで接近し、不審者は槍による打突を繰り出す。
反射的にそれを清水拳で受け止めようとする。
「―っ!?」
が、清水拳の生み出す闘気の障壁を、その槍は貫いた。とっさに身体をひねり、ギリギリで回避。
「(こいつ、まさか『狙撃手』……!)」
体勢をくずしたのを逆に利用して、地面に手をつき、脚を突き出して脚払いを仕掛ける。
不審者はそれを身軽に跳んで避け、距離をとって着地した。
その間に千歳は立ち上がり、不審者と対峙する。
不審者の風貌は本当に不審だった。鬼のような面に陣羽織。そして手には槍。どこかのアニメキャラと、気のせいか似ていた。
「てめー。何者だ」
答えてくれるとは思わないが、一応そう訊いてみる。
「……わたくしは」
「!?」
意外なことに、その不審者は返答した。しかも、その声は女。
女が、清水拳をたやすく貫くほどの貫通性を生み出したというのか?
そして、その不審な女が続けた言葉は、さらなる驚愕に値するものだった。

「わたくしはミス・キシドー! あなた様の存在に心奪われたものです!!」

780:ワイヤード 第十四話  ◆.DrVLAlxBI
09/01/05 13:38:22 TDyDTYz3
終了です。
>>753 確かに、良作のヨカン……! 頑張ってください。

781:名無しさん@ピンキー
09/01/05 13:46:13 yoqBzRV6
リアルタイムGJ!
抱きしめたいな
とか言ってきそう

782:名無しさん@ピンキー
09/01/05 14:01:55 on/kLpK9
>>780
GJ!!

とりあえず◆.DrVLAlxBIは絶対00見ててグラハムファンってわかった。
俺もです。

783:名無しさん@ピンキー
09/01/05 14:48:12 +7dvXH7S
gj!
>>780もまた乙女座なんだろう。


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