ヤンデレの小説を書こう!Part20at EROPARO
ヤンデレの小説を書こう!Part20 - 暇つぶし2ch350:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:12:19 EQo+XaYL
>>349
作者乙

351:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:15:36 EorITxF8
ヤンデレの邪魔をしたい

352:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:20:39 rvY8P6mu
>>351
ヤンデレ「邪魔しないで!!」
―ザシュッ―
351「ぐはぁ!…」
ヤンデレ「○○君待って~」


353:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:20:52 LrEXnscC
ヤンデレの目の前で他の女の名前を呼びながら抜いてみたい

354:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:22:14 sfIJbkx5
馬鹿な……! 危険すぎるぞ

355:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:22:35 WDaWTiCh
ヤンデレの追ってる男に逃げるアシストをしたい

356:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:31:37 lXgpvpE4
よほど死にたいのかお前等は・・・

357:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:38:14 Zecmvfyb
>>344
すさまじい外道だなw

358:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:56:35 EQo+XaYL
 

359:名無しさん@ピンキー
08/12/01 01:40:38 PeLsRDdI
>>355
んじゃ、俺はヤンデレの追うアシストをするか。

俺「アシストするぜ!」
ヤ「邪魔よ」
俺「ぐはッ!(死」

・・・邪魔しないでおこう

360:名無しさん@ピンキー
08/12/01 02:55:26 NG7HWXtK
よし、婦女暴行犯とヤンデレさんで…
主人公が救いようの無いクズになるな…

男「ああ、もうどうにでもなれ!どうせダメなら一発ヤッてやる!」
ヤンデレ(その人生買った、やっと私のモノになる…)
男はノーパンミニスカートの女を後ろから羽交い締めにして車に引き込む。
男「来るんだ!…ヘヘッ…そんな恰好して…ジックリ可愛がってやる。」
ヤンデレ「あなたの方から手出ししてくれるなんて…やっと…やっと…」
男「な…悲鳴もあげないし怖がってもいない…どういう事だ!!」
ヤンデレ「わたしのものになりなさい。お楽しみは私の部屋で…」
バチッと言う音を立てたあと男は気絶した。次に目覚めたときそこは…
ヤンデレ「お目覚めですか、愛しの…さん」
男「なんで…俺の名前を!何だこの部屋は…」
ヤンデレ「私とあなたの狂おしいまでの愛の部屋…すばらしいわ…」
男はレイプするつもりが監禁された。  

361:名無しさん@ピンキー
08/12/01 05:05:16 2Q7T1N5H
今年も後1ヶ月か…ぽけもん黒12月号マダー?

362:名無しさん@ピンキー
08/12/01 07:32:27 hqMnpsfu
やたらと催促する奴が多いのは仕様ですか?

363:名無しさん@ピンキー
08/12/01 10:46:35 ZTdsoKjU
エリートサラリーマンって平凡な存在なのか?

364:名無しさん@ピンキー
08/12/01 12:55:40 i/dFDF35
しかも婚約者持ちって……。
リア充じゃねえか畜生!

365:名無しさん@ピンキー
08/12/01 13:27:56 61T2x4kQ
おばあちゃんは言っていた、リア充ほど自分の事を平凡だと思うって……

366:『リア充』のなり方
08/12/01 15:17:00 tqHkITzv
>>364
>>364君大丈夫だよ!>>364君は私にとって『特別な存在』だから!
 大好きだよ>>364君。あなたのためだったら私何でもしてあげるよ?
 立派な職に就きたいのなら私が口利きをしてあげる。結婚したいのなら私が今すぐにでもしてあげる。
 あなたに捧げる為に守り通してきたこの身体を思う存分滅茶苦茶に犯していいんだよ?
 だからもう他の女の事なんて見ちゃ駄目……あなたには私だけ、私にはあなただけでいいの。
 ね?みんなに『リア充氏ね!』って妬まれちゃうくらい幸せな夫婦になろう?」

 いつもの様に愚痴をこぼした>>364の目の前で美しく微笑む少女。
 しかし、その可愛らしい唇からこぼれた言葉からはありありと狂気が感じられた。
 ずっとただの友達だと思っていた少女の激情を垣間見てしまった>>364
 これから何が自分の身に降りかかるのかというあまりの恐怖に一歩も足を動かすことも出来ない。
 しかし、彼は気付いてしまった。心のどこかでこの状況に微かな期待と喜びを確かに感じていることに。

(もしかして俺は望んでいたのか?こうやって誰かに気が狂いそうなほどの愛情を注いでもらう事を……)

 最早>>364にはその場から逃げ出そうという考えすら浮かばなかった。
 そんな彼の姿を見て、少女はより一層美しく笑った。今まで一度も見た事のない妖艶な笑みを浮かべて。

「大丈夫……私がちゃんと>>364君を『リア充』にしてあげるから……」

 彼女は身動きの取れない>>364をゆっくりと押し倒し、その体にしな垂れかかる。
 そして、彼の唇に優しく噛みつきながらその柔らかな肢体を包む衣服を脱ぎ捨て……

(続きは省略されました。全てを読むにはワッフルワッフルと書き込んでください)


367:名無しさん@ピンキー
08/12/01 17:16:33 R4Z8fN/2
ワッフルワッフル

>>364ウラヤマシス
(´・ω・`)

368:名無しさん@ピンキー
08/12/01 17:16:40 5oQKutz7
もっぽすもっぽす

369:名無しさん@ピンキー
08/12/01 17:19:56 NrqLFDR/
ワッフルワッフル

370:名無しさん@ピンキー
08/12/01 19:00:36 Zi9vrvhs
ワッフルワッフル

371:名無しさん@ピンキー
08/12/01 19:13:28 rvY8P6mu
ワッフノレワッフノレ

372:名無しさん@ピンキー
08/12/01 19:28:08 lXgpvpE4
ワッフルワッフル

373:名無しさん@ピンキー
08/12/01 19:39:00 EorITxF8
わっふるわっふる

374:名無しさん@ピンキー
08/12/01 19:54:13 hlZFzTXq
ワッフルワッフル

375:名無しさん@ピンキー
08/12/01 19:55:49 u3l8YIyq
無駄に使うなよ

376:名無しさん@ピンキー
08/12/01 20:07:24 dsmWZBer
俺も>>364 になりたいね

377:名無しさん@ピンキー
08/12/01 20:09:20 dsmWZBer
おっとsageを忘れてた

378:名無しさん@ピンキー
08/12/01 20:19:26 WDaWTiCh
俺も養われてニート生活送りたい

379:名無しさん@ピンキー
08/12/01 20:37:53 Zecmvfyb
しかしヤンデレに経済力と経済性があるとは思えない
よって>>378は心中ルートか
え?無理心中じゃないよ?双方同意の上だよ?

380:名無しさん@ピンキー
08/12/01 20:38:00 9EXnB1KD
リア充の>>364なんか
死ねばいいのに

381:名無しさん@ピンキー
08/12/01 20:56:10 iToyO80I
愛しい人を養うために仕事をしなければならない
でも仕事に出かけたら当然その間は愛しい人に会えない
ああ、どうしたら

382:名無しさん@ピンキー
08/12/01 21:04:39 qxuKuuuF
頂点に登り詰め、側近としてそばにおく

383:名無しさん@ピンキー
08/12/01 21:10:00 qv+XYR4b
愛する人の為に頂点に登り詰める

女よりどり

ヤンデレの害虫駆除タイム

384:名無しさん@ピンキー
08/12/02 00:35:42 DjgsMK1U
ヤン「気になる子とかはいないの? 『あの子が好き』なんてバカなことを言わなくても」
 男のいるクラスは公立共学高校にして文系だから女子の占める割合が大きく、四十人のうち七割は女子だ。
ヤン「ねえ、なんでだんまりなの? 男くんに彼女が出来たとか聞いたためしがないけど、隠れて作ったりしてるの?」
男「何を? 最近は陶器を作ってるんだが」
 話の意図がつかめず、とりあえず話を別方向へ持っていくためにダイニングテーブルの上に鎮座する花入れを指差した。
男「グリップ性を重視したそのつくりは、掴んで鈍器として使うのに最適」
 ヤンデレが机を叩き、重そうな花入れが揺れる。華奢な体からは想像もつかないような一撃。不満のオーラがひしひしと伝わる。
ヤン「隠れて浮気して女作ってるかどうか、ってこと!」
男「まさか、いないよ。それに……いたら話してる」
ヤン「そっか、そうだよね。ひひひひひぃ、安心したよ」

この花入れが凶器になる可能性に1000ペリカ

385:名無しさん@ピンキー
08/12/02 00:39:04 vkMiGurA
第二次ヤンデレブーム来ないかなぁ

386:名無しさん@ピンキー
08/12/02 00:39:21 DjgsMK1U
ヤンデレと女さんは微妙な仲。
至ってフレンドリーな女さんなのだから、
そこまで一方的に嫌わなくてもいいものをと思うが、
改善される様子は微塵もない。


387:名無しさん@ピンキー
08/12/02 00:46:16 0hpeGTPc
ほの純ノリはなんかな・・・

388:名無しさん@ピンキー
08/12/02 04:30:51 6Ib4SJyl
投下します

389:Un reencounter
08/12/02 04:33:27 6Ib4SJyl
―今日は卒業式。中学校生活最後の日。私は今日この中学校を卒業する。
その式も終わり、卒業生達は最後の思い出を作ろうとそれぞれ世話になった担任、仲の良かった友達や後輩,想いを寄せていた人の元へ足を運ばせている。
きっとあたしもその内の一人に入るのだろう。いろんな男子達から今更ながらの告白を受けたけど全て断り、今は人気のない校舎裏に向かっている。

しかし、彼女が二人きりで直接話したいことは一体何だろう?
てっきり正義と三人で何かするのかと思っていた。
彼女はここを卒業して彼らと違う高校に通うことになる。寂しいことだけど彼女の両親は厳しいらしく、言うことには逆らえないそうだ。
しかし、彼女が推薦で合格が決定したと聞いた時、あたしは少しだけ嬉しかった。
今まではこのぬるま湯のような優しい関係が崩れるのが怖くて、互いに正義へ過剰なアプローチをかけることが出来ずにいた。
でも彼女が違う高校へ進学してくれれば、何の後腐れもなくあたしと正義は堂々と付き合うことが出来る。あたし達はこのまま地元の同じ学校に進学するから。
誰も傷つくことなく、彼女とは親友のままで正義を手に入れることが出来る。
そんな打算的な考えが浮かんだ自分がすごく嫌だった。
「ゴメンゴメン。なんかたくさん男子に絡まれてさ。今更告白してきてももう遅いってのにね?」
あたしの親友である『鈴音』が壁に寄り掛かり、ぼうっと立ちすくんでいた。
なんだか元気がない。今日は卒業式だから感傷に浸っているのだろうか?
「ふふっ、そうですねー」
いつもよりも声が硬く、春の野原で咲く健気な花のような笑みは見られない。
どうやら緊張しているようだ。
「んで話って何?正義と一緒に写真を撮ってこいって親がうるさいから早く行かないといけないのよ。全く小学生じゃあるまいし、困ったもんよね」
本当はこうでもしないと素直に正義と写真なんか撮れないのだけど、彼女の前だからいかにも迷惑そうに言っておく。
「あ、あのね。私、佳奈ちゃんにお願いがあるんですけど……」
彼女の声が震える。
「―私、よっくんのことがずっと好きだったんです!だ、だからよっくんに告白するのを手伝って欲しいの……」
その瞬間、あたしの中で一気に感情が爆発した。それはとても黒くドロドロとした醜い感情。
ああ、とうとう言っちゃったんだ。しかも、万が一告白に成功しても離れ離れになるっていうのに余計なことしてくれて。
あたしはずっと二人に気を使って言わなかったのに。鈴音だけずるいよ。あたしの方が正義のことを想っているんだから。
鈴音への憎悪や嫉妬であたしの心があっという間に覆われる。
そして次に感じたものは深い悲しみ。
こんな事を思ってしまう自分が嫌だった。できればずっと彼女とは親友でいたかった。
でももう元には戻れないことをあたしは悟っていた。
あたしと鈴音は親友ではなくなり、新たに構築された関係図に彼女はこう記される。
―彼女は“敵”だと。
「―あ、あのさ」
だからあたしはいつもの様に嘘をつく。
「私と正義、実は付き合ってるの。だからゴメン……」
でもこの嘘は正義とそこまで親しくない人にしか使った事がない。
多分正義と極めて親しい鈴音に通用する確率は低いだろう。
だって正義本人がきっぱりと否定してしまえばそれまでだから。
彼は嘘をつかないことをあたし達はよく知っている。


390:Un reencounter
08/12/02 04:34:16 6Ib4SJyl
「え……?」
だがこの稚拙な嘘は思いのほか通じてしまった。
目を大きく見開き、カタカタと小刻みに震える彼女の姿は嘘をついた自分からしてもとても信じられなかった。
頭のいい彼女のことだ。すぐに嘘と見抜かれるかと思ったのに。
それだけあたしの事を親友として信頼していたのだろうか。そう思うととても胸が痛む。
しかし、これを機と見たあたしは彼女の動揺に乗じてすらすらと嘘を並べていく。
このまま一気に畳み掛けてしまえ。そう思ってしまう自分に恐怖しながらも嘘をつくのは止められなかった。
その嘘を素直に信じてしまった鈴音の顔は徐々に青くなっていく。足元もおぼつかない。
「そ、そうですか……ご、ごめんね。変なこと言っちゃって……………………よっくんと幸せにね!」
声は聞き取れないほどに震え、目からは涙が溢れそうになりながらも、彼女はあたしに祝福の言葉と精一杯の笑顔を贈った。
次の瞬間、鈴音は一言も喋らずにこの場から走り去る。
あたしは慌てて何か声を掛けようと手を伸ばした。
でも彼女に何と言って声を掛ければいいのかわからなかった。
「今のは全部嘘でしたー!ゴメンねー♪」なんて今更言えるわけがない。
そもそもあたしは鈴音に何か声を掛ける資格さえない最低な女だ。
あたしが彼女に出来ることは何もない。ただ黙ってこの咎を背負うことしか出来ない。
それに三人全員仲のいい友達のまま綺麗に別れることも出来たはずなのに、彼女は敢えてそれを壊すことを選択した。
その結果、あたしが賭けに勝ち、鈴音は負けた。
例えそれがイカサマを使った勝負だったとしても知らなければそれはイカサマじゃない。
あたしは親友という関係を鈴音に無理矢理壊されて、親友か正義のどっちを取るか、天秤に掛けさせられた。
その結果、正義を取っただけじゃない。あたしだけに非があるわけじゃない。鈴音だって悪い。
そう開き直れたら、自分の利益のためだけに生きることが出来たらどんなに楽だろうか。
「ごめんね鈴音……ごめんね…………」
懺悔のように繰り返し呟いている内に、いつの間にか頬に温かい雫が伝っていた。
その勢いは止まることなく、あたしを探しに来た正義と両親に見つけられても尚、あたしは涙を流し続けていた。
みんなはあたしが卒業式で感極まって泣いてしまったものだと勘違いして、いろいろと励ましの言葉を掛けて慰めてくれた。
違う!!そうじゃない!!
あたしは親友を裏切って、傷つけた挙句、その過ちを今更後悔して勝手に泣いているだけのどうしようもない女なの。
みんなに慰められるどころか、罵倒されて当然の卑劣な人間なの。
でも何があったかなんて話せるはずもなく、ただ黙って泣き喚くことしか出来なかった。
甘い慰めの言葉を掛けられるたびに心を鋭く抉られる。みんなの優しさがただ痛かった。

―あの日、あたしは何を選べば全てを失うことなく、仲良し三人組のままで笑い合っていられたのかな?
答えは一年以上経った今でも出ないまま、あたしは正義の一番傍で立ち止まっている。


391:Un reencounter
08/12/02 04:35:26 6Ib4SJyl
「ふぅ……」
窓の外から見える澄んだ晴れ空とは対照的に、なんとなく憂鬱な気分のあたしは周りに気付かれない程度にそっと溜息をつく。
相変わらず代わり栄えのしない日常をあたしは送ってる。
いつも通り正義に起こされ、正義と一緒に登校し、正義と一緒に授業を受ける。
これだけでも十分幸せなはずなのだが、人間という動物は一度満たされるとそれと同じ量の幸福では満足できなくなる。
つまり、あたしは人間だから満足できない。以上、証明終了。
そう割り切ることが出来たらどんなに楽だろうか。少なくともこの現状にやきもきすることはなかったに違いない。
あたしはいつだって正義のことを見てきて、正義のことを一番に考えて行動してきたっていうのに。
どうして正義はあたしだけを見てくれないのだろうか?
「……太田よ。この前話したと思うが俺が金欠でヤンデレッドのフィギュアを買い損ねたのは知ってるな?」
「まあ、あそこまで落ち込んでいた君を慰めたのは僕だしね。嫌でも覚えてるよ」
今だってそう。
正義が同じクラスの友人の太田君に、どんよりと落ち込んだ表情で話しかけている。
多分例によって特撮物についての話だろう。正義が彼と話す内容なんてそれ以外にない。
はっきり言ってあたしは太田君のことをあまり良く思っていない。
何故なら彼は正義にとって共通の趣味を持つ親友という重要度の高いポジションに位置しているからだ。
あたしには正義だけ、正義にはあたしだけでいいのに。正義の関心が少しでもあたし以外に向けられるのは耐えられない。
なのに彼はあたしと正義の時間を奪う。せっかく彼の恥ずかしい趣味をやめさせようとしているのに、それを助長するような真似さえする。
どうしてあたし達の間に割り込んでくるの?恥ずかしいと思わないの?
あんた邪魔……邪魔なのよ……
「それで?まさか僕のを譲れとか言い出すんじゃないだろうね?いくら君でもそれはダメだよ。オタクが全員観賞用、保存用、布教用に三体買うと思ったら大間違いだ」
「わかってるよ。俺はそんな見苦しい真似はしない。今でもあれが売っている店を知らないか聞きに来たんだ」
正義は真剣な顔をで太田君に何かを頼んでいる。
ああ、もうよく聞こえないじゃない。もっと大きな声で話しなさいよ。
「んー……ちょっと待って」
彼はノートを一枚破るとさらさらと何かを書き始めた。
一体何だろう?
「ほら。多分まだここなら売ってると思うよ」
「おお、恩に着るぞ太田!やはり持つべきものは友達だな!」
太田君から手渡された紙切れを大事そうに掲げて、まるで宝物を見つけた子供のように無邪気にはしゃぐ正義。
「はいはい。いつも君はそればっかだな」
そんな正義の姿を見て肩を竦めて呆れたポーズを取る太田君。でもその口元は微かに緩んでいる。
「細かいことは気にするな。わが親友よ!」
「こら、離せ。暑苦しい」
調子に乗った正義は太田君の肩に手を回し、豪快に笑い続ける。
太田君も嫌がっているような態度は取っているけど、本当はそうでもないのだろう。
でなければあんなに仲良く二人で笑い合うことなんて到底できやしないからだ。
そう。二人はいかにも僕達はお互いをよく理解している親友ですって顔で爽やかに笑い続ける。

……むかつく。
あたしと一緒にいるときはそんな顔しないくせに。
雑誌に書かれているデートスポットについて話しても、おしゃれな服を着ているのを見せても、レストランで美味しい料理を食べても、あたしにはそんな嬉しそうな笑顔を見せてくれないくせに。


392:Un reencounter
08/12/02 04:35:57 6Ib4SJyl
どうして?もしかして男の太田君の方がいいの?あたしじゃダメなの?
ダメ!!そんなの絶対ダメ!!誰が何と言おうともあたしは絶対に認めないんだから!!!
ホモなんてただの気持ち悪いだけの犯罪者予備軍だよ。太田君じゃ子供も作れないんだよ?
早く正義を止めなきゃ。そんな考え方はおかしいって説かなきゃ。
彼をそんな間違った方向に進ませちゃダメだ。あたしが正しく導いてあげなきゃいけないんだ。
そのためだったら、その……え、Hなことも教えてあげなきゃいけないよね?!
せ、正義を正気に戻すためだったらし、しょうがないわ。
し、したくてこんな恥ずかしいことしてるわけじゃないんだからねっ!!
ま、まずは優しくキスするのが基本中の基本よね?この前読んだ雑誌にもまずは雰囲気作りが大事だって書いてあったし……
じ、じゃあ、目ぇ閉じて、正義……んむっ……れろっ、ちゅ……んん?!んむむむむ……
っぷはぁ!はぁはぁ……し、舌まで入れるなんて聞いてないわよ正義ぃ……
それにしてもファーストキスがこんなに激しくていいのかしら……体が蕩けちゃいそう……
次はあたしの服を優しく脱がせて頂戴。乱暴にやったら殴るわよ。
んっ……どこさわってのよバカ……くすぐったいわよ……
どう?これが女の体よ。結構スタイルには自信があるんだけど……
きゃっ?!ち、ちょっと、いきなりおっぱい揉むなんて……
んっ、べ、別に気持ちよくなんか……ひいっ!!乳首舐めちゃだめぇ!!
え?じゃあどこを触って欲しい?ば、バカッ!!そんなの言えるわけないでしょ!!この変態!!
ひゃうっ?!ど、どこ触って……きゃひぃ!!そ、そこらめなのぉ……
えっ!?ち、違うっ!!佳奈美変態じゃないもん!パンツぐちょぐちょになんかなってないよぉ……
あうっ!!だ、ダメって言ってるのにぃ……あひゃ!!そこぉ!!そこ気持ちい……え?な、何でやめちゃうの……?
ダメって言ったじゃん?そ、それはその……言葉の綾で……本気で嫌がったわけじゃないのに……
え?!続きをして欲しかったらちゃんと素直になれ?で、でもそんな恥ずかしいこと言えるわけ……
ああっ!!ごめんなさい!!やめちゃダメッ!!言うからっ!!何でもするからやめちゃダメェ……
ごめんなさい。佳奈美は嘘つきました。あたしは本当は正義に触って欲しくておパンツびちょびちょに濡らして喜んじゃう変態です。
ち、ちゃんと言ったよ……だ、だから早くお、おまんこいじってぇ……ひぃぃ!!そこ、そこ気持ちいいよぉ!!
だめえっ!!そこいじられるとおかしくなっちゃう!!あ、ああ……あああああああああああああっ!!!
はぁはぁはぁ……い、イッちゃったぁ……あたし正義にイカされちゃったんだ……
え?まだ女の良さがよくわかんない?そ、それって……わ、わかったわ。ちゃんと最後までするわよ……
見て、正義……ここが女の子の大事なところよ正義……ここに正義のおっきなおちんちんを入れるの……
あ、あのさ……あたし初めてなんだからちゃんと責任取ってよね?あたし正義とだからこんな恥ずかしいことまで……
んっ、んむむ……ちゅっ、じゅる……れろ、ぴちゃ……っはぁ……うん、あたし幸せよ。
だってずっと正義とこうなることを夢見てたんだから……ぐすっ……
ううん、嬉しくて涙が出ただけだから気にしないで。さっ、続けましょ?
うん、そう……そこにそのまま優しく……っ、痛ぁ……ううん、平気だからやめないで……そのまま動かして……
っはぁ、なんか気持ちよくなってきたかも……んっ、んっ、あぅっ!そこ気持ちいいよぉ正義……
ハァ、もっと奥まで突いてぇ!!ギュッてして!!あたしを離さないで!!
ダメッ!何かキちゃう!何かキちゃうよぉ、正義ぃ!!ハァハァ……一緒に、一緒にイこう?
あっ、あっ、あっ、イクッ!!イ、イクゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!
はぁぁぁぁぁぁぁぁ……熱いのいっぱい出てる……あたし正義に種付けされちゃったんだ……
あは、あそこから白いのが出てきてる……もう、こんなにたくさん出したら赤ちゃんできちゃうでしょ!
でもちゃんと責任は取ってくれるんだよね?愛してるわ、あ・な・た♪


393:Un reencounter
08/12/02 04:37:00 6Ib4SJyl
「……おーい、大丈夫かー?」
ふと気付くと正義が怪訝な顔をしながら目の前で手を振っていた。
「キャアッ!!ななななななな何よっ?!」
思わず奇声を上げて後ろに飛び退いてしまった。
ううう、恥ずかしいよぉ……
「いや、顔を真っ赤にしてボーっと涎を垂らしているから一体どうかしたのかと思って。風邪か?」
「べべべべべ別に何でもないわよ!!いいからさっさと席に着いて。先生が来るでしょ!」
いつの間にか卑猥な妄想に完全に意識を飛ばしていたせいで全く気付かなかったようだ。
慌てて否定をしながら口元を拭い、火照った顔を冷ますためにぱしぱしと頬を叩く。
彼には気付かれていないようだが、乳首は固くしこり、下着の下が熱く潤っているのがわかる。
学校という公の場所ではこんなに熱く体が火照っているのに慰めることもできないのが辛い。
まぁ、目の前にいる張本人がやってくれれば話が早いんだけど。
「いや、だってなぁ。どう見てもあれはヤバイ顔してた……いぎっ!?」
とにかくこの話は終わりにしたいのに正義は首を傾げ続けるので思い切り足を踏みつけてやった。
あまりこの話を長くされるとボロが出そうで怖い。というか、何気に失礼なこと言ってないこの男?
「い・い・か・ら!席に着きましょうか、正義君。そろそろ授業が始まるよ~?」
「ハ、ハヒッ……」
痛みで引きつった顔のまま素直に席に着く正義。何だか可愛い。
もう、学校でこんなHな妄想に浸っちゃうのも、照れてつい可愛い暴力を振るっちゃうのも、正義がいつまで経ってもあたしに告白してくれないせいなんだからね!
そうよ、あたしが素直じゃないのではない。彼が自分の気持ちに素直にならないだけなのだ。
だって物心ついたときからずっと傍にいて、今でもずっと何をするのも二人一緒でお互いが好きじゃないなんてどう考えてもおかしいじゃない。
実際あたしは正義のことが好きだからこの法則は正しいと証明している。正義もあたしを愛してくれている。
なのに正義は奥手とかそういうレベルじゃないくらいにあたしに手を出さない。
まるであたしのことを友達としか見ていないかのようにだ。
ああ、もう。恋愛沙汰には疎いくせにやきもきさせるのだけは上手いんだから。
確かに正義はあと一年経たないと結婚はできないけど、あたしは既に結婚できる年齢だから今すぐにでも結婚を前提としたお付き合いはできるのよ。
もしかしたらキリよくあたしにプロポーズしようとしているのかもしれないけど。
ぶっちゃけそんなのはどうでもいいから早くこの曖昧な関係を崩したい。ロマンチックな展開だったら告白した後でいくらでもできるでしょ。
早くあたしを奪ってよ……


394:Un reencounter
08/12/02 04:38:14 6Ib4SJyl
「はぁ……」
授業が始まってもこの憂鬱な気分は一向に晴れず、机の上で組んだ腕に頭を乗せながら溜息をついた。
ちらりと先生にばれない程度に正義の横顔を見る。
真剣な目で黒板を見つめ、書かれている内容をノートに写すその姿を見ているだけで心が熱くなる。
やっぱり彼はかっこいい。あの真剣な目で愛を囁かれたら、あたしはきっと何も言えなくなる。
ああ、早くさっきの妄想通りにならないかなぁ……そろそろあたしの我慢も限界。
あんまり遅いとあたしの方から正義を襲っちゃうよ?
ぼやぼやしてる内に彼を他の女に寝取られるくらいなら彼を強姦した方がまだマシだ。
無理やりにでも行為に持ち込めば責任感の強い正義のことだからきちんと責任は取ってくれるはず。
女が強姦されることはあっても男が強姦されることはない。正義の言うことなど誰も耳を貸さないだろう。
それにもし子供が出来てしまっても、あたし達の仲にはとても寛容的な両親のことだからきっと出産することを認めてくれる。
正義が社会的にきちんと責任を取ることを前提にしてだけど。
まぁ、どうせ遅かれ早かれ、あたし達は結婚して子供を作ることは決まってるんだから大した問題じゃないよね。
あたしの手によって正義の周りに張り巡らされた社会的責任という網は確実にその範囲を狭めていく。
そして逃げ場がなくなり、雁字搦めに捕らえられた正義は大人しくあたしを受け入れる他になくなる。
こうしてあたし達は幸せになりました。めでたしめでたし。
「フン、馬鹿馬鹿しい……」
そう呟き、顔を腕に埋めてこの狂った考えを頭から飛ばす。
無理矢理正義を束縛して結婚させて彼は喜ぶだろうか。いいや、そんなはずがない。
いつも何かに縛られることなく自分の信じる道を突き進むのが赤坂正義という人間なのだ。
確かに先ほどの妄想通りにすれば確実に正義はあたしの物になる。
だが重圧に押し潰された結果、あたしの思うがままになってしまった彼は最早彼ではない。
ただの操り人形だ。
何事にも真剣に取り組み、曲がったことが大嫌いで困った人を放って置けない熱血漢。
でもどこか抜けていて危なっかしい行動を取りがちな優しいヒーローの正義があたしは好きなのだ。
もちろん付き合うことになったら、あたしだけのヒーローになってもらう予定だけど。
あたしはありのままの彼を愛し、愛されたい。
だからあたしはそんな真似はできればしたくない。正義の気持ちを裏切りたくないから。
今まであたしは数え切れないほどあたし達の障害になりそうな災厄の芽は一つ残らず摘み取ってきた。
それでも正義本人に直接手を出さなかったのは、彼“が”あたし“を”愛しているという証拠を見せて欲しかったから。
揺らぐことのない無限の愛をあたしだけに注いでくれると誓うところを彼本人の口から聞かないと不安なの。
あたし達がお互いを想い合う理想の関係になるにはその誓約が必要不可欠なのだ。
だから辛いけどあたしは待つ。正義が心の底からあたしを愛すると誓ってくれるその日まで。
ふと思いつき、開かれたノートの空白に相合傘を書きこんでみる。もちろん傘の下には『赤坂 正義』と『黒田 佳奈美』の名前を入れて。
それを見ると何だか心の奥がほっこりと温かくなって、自分でも気付かないうちに自然と柔らかい笑みがこぼれていた。

だから……信じていいよね、正義?
いつかあなたの方からあたしに愛を囁いてくれる日がきっと来るって。


395:Un reencounter
08/12/02 04:39:33 6Ib4SJyl
……何だかまた正義の様子がおかしい。
太田君から例の紙を渡されてからずっとボーっとしていて、放課後が近づくに連れてそわそわとし始めた。
「どうかしたの?」とあたしが聞くと、嘘をつくのが下手なくせに言葉を濁してなんとか話を逸らそうとする。
あまりしつこく問い詰めると彼を不快にしてしまいそうなので追及するのを諦めたが明らかにおかしい。
そして、いざ放課後になると『登下校はいつも一緒』という暗黙の了解が私達の間にはあるのに、彼はそれを一方的に破ったのだ。
そればかりか、あたしの制止を振り切って、あたし一人を残してさっさとどこかへ行ってしまった。
ついさっきまで満たされていた心は、正義がいなくなると同時に空虚な器と化していく。
何で?どうしてあたしを独りぼっちにさせるの?
佳奈美のこと嫌いになっちゃった?あたしが何か正義を怒らせるようなことしちゃったの?
それならいくらでも謝るから、何でもするからお願い……今すぐあたしの元に戻ってきて。
その逞しい腕の中にあたしを包ませて。体の芯から蕩けそうになるほどの甘い言葉を耳元で囁いて。
そうじゃなきゃあたし、あたし……壊れちゃうよ……
気持ち悪い。吐き気がする。頭がぼうっとする。
ガクガクと足は震え、両腕はいなくなってしまった正義の代わりを果たすかのように勝手にこの身を抱きしめる。
寒い……心が寒いよ正義。
今すぐ抱きしめてくれなきゃあたし凍え死んじゃうよ。早くあたしの心を優しく温めて。
でもあたしを抱きしめる彼はここに、私の隣にいない。
何で?あたしを置いてどこかへ行ってしまったから。
何で?わからない。
どうして?どうして最愛の女性にして未来の妻、果ては一生涯を共にする伴侶であるあたしを置いていくの?
酷い。酷過ぎるよ。
あたしはこんなにも正義のことを想っているのにそんなことをするなんて。正義だってあたしのことを想っているはずなのにどうして……

もしかして誰かに悪いことを吹き込まれたの……?
そうだよ。そうに決まってる。
だってそうじゃなきゃ説明がつかない。正義がこの世で最も愛している女性のあたしに対してそんな酷いことをするなんてあり得ないからだ。
誰よりも深く結ばれているあたし達二人の仲を引き裂こうだなんて一体どこのどいつだ。
正義に余計なことを吹き込んだ罪は重い。その報いはしっかりと受けてもらおうか。
彼を誑かす悪い奴等は一刻も早く始末しなければ……
「―あ」
その時、あたしの中である考えが閃光のように走り抜けた。
ああ、何でこんな簡単な事に気付かなかったのかしら。愚鈍だった今までの自分が恨めしい。
「くふっ、くふふふふ……」
自然と口からは笑い声がこぼれる。足の震えも治まり、あれほど寒く感じていた孤独感もすっかり失せていた。
代わりに胸の内からふつふつと湧きあがってくるのは奇妙な高揚感。
そう、きっとこれは“悦び”だ。
ただし、それはどこまでも堕ちていく深い闇のような暗い“悦び”。
「そうよ……邪魔する奴等がいなくなれば、その分だけあたし達の幸せに早く近づくよね?」
あたしと正義が結ばれるのを邪魔する奴を排除する。妨害するモノがなくなれば必然的にあたし達の幸せな未来へとまた一歩確実に近づく。
何だ、簡単な事じゃない。邪魔する害悪がいたらそれを排除すればいい。
そして立ち塞がる障害全てを倒した後には、あたし達二人が幸せになる未来への道のみが切り開かれている。
やっぱり正義からの告白を待つだなんて甘っちょろいことを言ってる場合なんかじゃないのかも。
正義本人がそれを望んでいなくても結果的には彼のためになるんだから多少強引に事を運んでもいいよね?
そうすればきっとあたし達幸せになれるよね?
やがて訪れる幸せに思いを馳せながら私はそっと正義の後を追った……


396:Un reencounter
08/12/02 04:40:47 6Ib4SJyl
正義を追っていくうちにあたしはずいぶんと遠くへ来てしまった。
わざわざこんな遠くまで来るなんてやっぱり怪しい。絶対に自分が何をしていたかわからないようにしているとしか思えない。
よっぽどそれはあたしに見られるとまずい用事らしい。そんなにあたしに見られたくないモノって一体何?
……まさかオンナ?
嘘っ!!嘘嘘嘘!!嘘よそんなの!!絶対に認めない!!
正義はあたしのもの!!他の誰にも渡したりはしない!!
一体どこのどいつだ。正義をたぶらかした薄汚い雌犬は。
誰に断ってそんな真似を……許さない。
殺す。殺してやる。絶対にこの手で殺してやる。
二度と正義の姿が目に入らぬようにその目を潰し、二度と正義の声が聞こえないように耳を鼓膜を破り、二度と正義の匂いを嗅げないように鼻を削ぎ落とし、
二度と正義を味わえぬように舌を引き千切り、二度と正義に触れられぬように四肢を切断して、それから早く死なせてと懇願するくらいの苦しみをゆっくりと与えながら殺してやる。
一刻も早く正義を見つけてその売女を始末しなければ。綺麗な正義が汚される前に速く始末しなきゃ……

「ついにこの時がキターーーーーーーーッ!!」
「正義ッ?!」
突然近くから正義の叫びが聞こえた。
待っててね、今すぐそこに行くから!そして薄汚い体を摺り寄せる雌犬を処分してあげる。
建物の影から飛び出し、通りに出ると遂に正義の姿を視界に捉えた。
だがあたしの視界に映りこんだものは歓喜に震える正義と、
「……おもちゃ屋?」
何故か彼はおもちゃ屋の目の前で大声を上げて喜びに身悶えしていた。
えっと……これってどういうこと?
さっきまでの勢いを急に失い、その反動で呆然と立ちつくすあたし。
するとあたしの脳裏にある記憶が浮かび上がってきた。

正義が同じ特撮オタクの太田君に何かを頼んでいる。
大田君は呆れながらも彼の頼みを聞きいれたらしい。
『んー……ちょっと待ってな』
彼はノートを一枚破るとさらさらと何かを書き始めた。
『ほら。多分まだここなら売ってると思うよ』
『おお、恩に着るぞ大田!やはり持つべきものは友達だな!』
その紙を受け取ると子供のようにはしゃいで喜ぶ正義。


397:Un reencounter
08/12/02 04:42:30 6Ib4SJyl
「もしかして……あの紙はこのおもちゃ屋のことだったの?」
一体これはどういうこと?ま、まさかあたしの一方的な勘違い?!
そういえばこの前正義と進路のことで喧嘩して仲直りした際に、ケーキとかアイスとか奢らせて彼の財布の中身を散財させた時にも、
「ああ、俺の『修羅場戦隊ヤンデレンジャー ヤンデレッド Ver.(1/8スケールPVC塗装済み完成品)限定スペシャル版』を買うお金が消えていく……しくしく……」
と、涙ながらにぶつぶつとうわ言を呟いていたような気が。
まぁ、あれは完全に正義に非があると本人も分かっていたし、あたしも文句を言わせるつもりはなかったのできっちり支払わせたけど。
おかしいな。これ以上正義の部屋に戦隊物のコレクションが増えないよう、あの時にかなりの額を使わせたはずなのに。
大方お母さんにお金でも借りたのだろう。昔からお母さんは正義に甘すぎて困る。
彼自身に収入がないから可哀想とでも思っているのかもしれないが、優しくするのと甘やかすのは全く違う。
正義が『いつまでもそんな物を』と謂れのない非難を浴びないようにと、あたしは心を鬼にして人の趣味の領域にまで口出しをしているのだ。
決して彼がフィギュアや何やらに夢中なのが気に入らないって訳じゃないんだからね!
きっと彼は普段からうるさく口出しをするあたしの監視の目から逃れようと、強引にあたしの制止を振り切ってこんな遠くまで来たのだろう。
まぁ、無駄な努力だったけどね。だってあたしはここまで付いてきてしまったのだから。

さて、どうしてあげようかしら?今のあたしは少しばかり気が立っているわよ。
これは決して理不尽な八つ当たりなんかじゃないわ。勝手にあたしが妄想の末に勘違いしただけとは意地でも認めないんだから。
そもそも明日はあたしとの大事なデートだっていうのに、こんなところで使っていいお金なんて一銭たりともあるわけないでしょ。
たとえどんなにお金を持っていたとしてもそれは愛する彼女のあたしのために使われるべきだ。
あたしは喜び、あたしの喜ぶ顔を見れる正義も喜ぶ。まさに一石二鳥だと思わない?
それをあんな子供が遊ぶような訳の分からないフィギュア、しかも女の子の奴に貴重な資金を出すだなんて……腸が煮えくり返りそう。
正義は所詮ただのおもちゃである人形に心奪われて、本当に彼のことを想っているあたしのことなど見向きもしない。
そんなの絶対に許せない。認められない。
本当なら今すぐ正義に怒鳴りつけて一発や二発鉄拳制裁をくわえてやっても、この苛立ちを抑えることはできないくらいだ。
しかし、あたしも鬼じゃない。今日の所は大目に見て、見逃してあげることにしよう。
喜びの絶頂に達している正義を一気に絶望の淵に叩き落とすのもそれはそれで体がゾクゾクしそうだけど、あまりに束縛し過ぎて正義に嫌われたら元も子もない。
彼に拒絶される。それを考えるだけでまるで体温がなくなったかのようにあたしは身体の芯から凍り付いてしまう。
それだけは何よりも忌避すべきことだ。適度にガス抜きもさせないとここまで築き上げてきた信頼や努力が一気に崩れてしまいかねない。
だから正義に嫌われない程度に彼の行動を制限し、同時にやりすぎないように彼の趣味はある程度までは許容している。
ここは何も見なかったことにして、正義がフィギュアを無事に買えたと安心しているところで、このことをちらつかせる。
きっと彼は驚愕、動揺、焦燥、様々な感情が入り混じった顔をあたしに向けてくれることだろう。
「あはぁ……」
それを想像するだけであたしの中の何かがざわめき出す。吐息は熱く乱れ、子宮がずくんと疼く。
正義を好きなように扱い、あたしの思うがままにコントロールする。彼はあたしの手の中で踊り続ける可愛いお人形さん。
ありのままの彼を愛したいという欲求と、あたしだけを見つめてくれる正義に作り変えたいという相反した欲求が心の奥底で交じり合い、渦を巻く。
最早彼に対して矛盾した醜い情欲を抱いてしまうほどにあたしは彼を愛している。
ああ、もうダメ。我慢できない。
心が、身体が狂おしいほどに彼を求めている。早く家に帰ってたっぷりと自分を慰めなきゃ。
今日の所は特別に見逃してあげるけど、明日のデートでこの借りはきっちり返してもらうからね!たっぷり振り回してやるんだから覚悟しなさいよ!
少し名残惜しいけど彼の喜んだ表情をしっかりと網膜に焼き付けてからこの場を立ち去る。
早くあたしを見る時、あたしと話す時、あたしとキスをする時、あたしを抱いている時にそんな素敵な笑顔を見せてくれるようになって欲しいなぁ。
彼への溢れる愛情と一抹の寂しさを感じながらあたしは帰路についた。


398:Un reencounter
08/12/02 04:45:32 6Ib4SJyl
『……ーン』

……ん、今何時だ?
寝ぼけ眼を擦りながら目覚まし時計を手探りで探す。
カーテンの隙間から日の光が差し込んでいるので結構な時間が経っているのではないだろうか。
やべぇ。もしや俺寝坊したか?
昨日俺はヤンデレッドのフィギュアを買い忘れたショックのあまり、帰宅した後飯を食う気力もなくベッドに倒れこみ、そのまま眠ってしまった。
そう、目覚ましをかけることもなく。
おいおい、これはまずいぞ。急いで支度をしなくては。
いまだ覚醒しきっていない重い体を布団という楽園から何とか引きずり出す。
だが壁に張られているヤンデレンジャーのカレンダーが視界に入るとふと違和感に気付いた。
もしかして今日は土曜日じゃないか?
そう、今の学生諸君はゆとり教育によって週休二日の恩恵に与っているのだ。
世間では学力低下が叫ばれているようだが遊び盛りの学生達にとってはまさに天国である。
そうと決まれば話は早い。たまにはぐうたらと不貞寝をするのもいいだろう。
俺がもう一度布団の中に潜り込もうとすると、
『ピンポーン。ピンポーン』
チャイムの音が二度この家に響き渡った。
そういえばさっきから一定の間隔で鳴り続けているな。この音で目が覚めたのだからずいぶんと前から鳴っているらしい。
しかし、うるさいな。ったく誰だよ土曜の朝っぱらから。
のそりともう一度起き上がり、寝巻き姿のまま玄関に向かう。
『ピンポーン。ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン』
その間にもチャイムの音は激しく鳴り響く。つーか鳴らし過ぎだろ。
朝起きたばかりの耳にはかなりうるさい。
一体どこのどいつだ?こんな非常識なチャイムの鳴らし方をする奴は。
寝起きの期限の悪さも相まって俺の不機嫌度は既にMAXだ。
このドアの向こうにいる不届き者に一言文句を言ってやらねば気がすまん。
苛立ちでいきり立った俺は鍵を開けてドアを勢いよく開き、
「すいません。うるさいんですけど……」
と、この無礼な訪問者に怒鳴りつけようとしたのだが、
「正義!!あんた今何時だと思ってんの?!もう約束の時間過ぎてるわよ!!」
何故か鬼の形相で怒り狂う佳奈美が目の前に立っており、その凄まじい怒鳴り声に何も言うことができなかった。
おお、体中が痺れる。鼓膜が破れたらどうしてくれるんだ。
「え、えっと……俺何か約束してたっけ?」
約束と言われても思い当たる節がないのでとりあえず聞き返すが、その口調に先ほどまでの勢いはない。
燃え盛る地獄の炎を背後に浮かび上がらせている悪鬼羅刹を前にしてはこんな情けない喋り方にもなる。
決して俺はチキンなわけじゃない。
「『何か約束してたっけ?』ですってぇ……?」
どうやら俺は佳奈美の逆鱗に触れてしまったようだ。
彼女はプルプルと怒りに体を震わせ、その拳はこれでもかというほど固く握り締められている。
その表情は俯いていてよく見えないが多分見えなくて正解だと思う。他の人が今の佳奈美の顔を見たら卒倒してしまうかもしれない。
「あんた今日はあたしとデー……買い物に行くって約束してたでしょ!!」
額に青筋を走らせながら佳奈美が大声で叫ぶ。なんとなく決壊寸前の堤防が頭に浮かんだ。
「……あ」
「『……あ』じゃないっ!!!!あたしがどれだけこの日を楽しみにしてたと……な、何でもないっ!!」
あまりにも普通に俺が忘れていたと知った瞬間、とうとう佳奈美の怒りが爆発した。
怒りのあまり、言葉が支離滅裂になっているようだ。それに所々何か気になるところもあるし。
だがその言葉で完全に思い出した。
今日は佳奈美のご機嫌取りのために街に繰り出して、高い飯を奢ったり、長い服選びに付きあわされ、重たい荷物を一人で持たされるという苦行を行う日だった。
俺は敬虔な修行僧というわけじゃないのに何故こんな酷い目に遭うのか。しかも、報酬を出すどころか、自腹を切らせるなんて。
お前は鬼か、佳奈美!……ああ、そうだ。今目の前にいるのは可憐な少女の皮を被った鬼だった。
こんなくだらないことを思い返している内にも佳奈美の機嫌は悪くなる一方だ。彼女の体から滲み出る怒りのオーラで周りの空間が歪んで見える。
これ以上彼女の機嫌を損なうと俺の身が危ない。ここは素直に謝るしかないな。


399:Un reencounter
08/12/02 04:47:09 6Ib4SJyl
「わ、悪い。すっかり忘れてた。すぐ支度するから少し待っててくれ!」
このままこの場にいると危険な気がするので準備をすると言って逃げ出す。
これは戦略的撤退であって、決してビビった訳じゃないぞ。
しかし、約束を忘れて寝過ごしていたといっても佳奈美に起こされたのは少し悔しい。
……ん?そういえば何か佳奈美に言わなきゃいけないことがあったような……
まぁ、いいか。後で思い出すだろうし、今はさっさと着替えて支度するのが何よりも優先される事項だ。
「……三分で用意できなかったらぶっ飛ばす」
恐ろしく冷たいドスの効いた声が背後から聞こえた。思わず背筋が寒くなる。
こ、恐ぇ~。多分マジだ……
わずか十余年で生涯の幕を閉じるなんて冗談もいいところだ。ピンクさんというまだ見ぬ恋人に出会うまで俺は死ねないんだよ。
まだまだ命が惜しい俺は素直に佳奈美の言うことに従わざるを得なかった。

それから何とか無事に支度を終えた俺はいまだ怒りが収まらぬ佳奈美を宥めながら家を出た。
目的地に向かう間、ずっと佳奈美は俺に文句を言いまくっていた。
佳奈美がここに行こうと普段からうるさかった評判のレストランに入っても彼女の機嫌は未だ直らない。
飯でも食えば少しは機嫌も良くなるか……?
「えっと、これとこれとこれとこれとこれと、あ、これもお願いします」
ウェイトレスを呼ぶと早速馬鹿みたいに大量の注文をする佳奈美。
普段は可愛い女の子らしく見せようとしているのか、皆の前では少ししか食べない。
しかし、その実態はかなりの健啖家で俺よりも食うくらいだ。
さっき注文した料理もきっと気持ちがいいほど綺麗に完食してくれることだろう。
これで金を出すのが俺でなかったら何も文句はないのだが。
彼女の大食いといえば高校に入学して間もない頃のことを思い出す。
クラスで一緒に飯を食っている時に俺は彼女の弁当の中身が余りに少ないことに気付いた。
中学の時は一人男子に混ざって給食のお代わりをするような女子だったのにこれはどういうことか。
驚いた俺は思わず彼女にその訳を尋ねた。
「おい、こんな少しで足りるのか?いつもはもっと食べ……ぐおおおっ?!」
その先の言葉が俺の口から出てくることは遂になかった。
「あれっ?急にどうしたのかな~、正義クン?」
佳奈美がニコニコと可愛く笑いながら机の下ではタバコの火を消すようにぐりぐりと俺の脚を踏み潰していたからだ。
「お、お前……だってこの3倍は軽く……あがっがっががが!!」
多分クラスの皆がいる前で聞いたのが悪かっただろう。先ほどの3倍増しの威力で踏みつけられた。
うん、酷い目に遭ったけど今となってはいい思い出……のわけあるかボケ。
とりあえず公衆の面前で彼女の大食いをバラそうとすると大変なことになるというのは学習した。高い勉強代だったがな。
ちくしょー、可愛い子ぶりやがってこの女。お前に彼氏ができたらこっそりバラしてやろうか。
料理を作れないのに大食いな彼女、あるいは嫁って旦那としたらかなりヤバイと思うぞ?
「かしこまりました。そちらのお客様は?」
「……コーヒーで」
対する俺はコーヒー一杯。この後の出費を予想すると飯なんか恐ろしくて頼めやしない。
空きっ腹に苦い汁を一杯だけというのはあまり体によくなさそうだが、背に腹は変えられないのだ。
その後も、料理が来るまで佳奈美はいかに俺が女性に対して失礼な行動を取ったかをくどくどと説き続けた。
来た後も飯を恐ろしい勢いで平らげつつ、嫌味を言うのは忘れないという実に器用な真似を見せてくれる。
飯を食いながら喋るなって親に教わらなかったのかと思いながらも俺は苦いブラックコーヒーを啜るしかない。
今回はどう見ても俺に非があるからだ。
約束事を破った俺が悪いのは百も承知。それは認める。
だがな、十何年前のことまで話に持ち出してくるのはちょっと大人気ないんじゃないですかね、佳奈美さん?
どこまで遡ってんだよ!それはもう時効だろ?!
かと言って一度口答えすれば今度こそアウトなので何も言えない。
徳川家康も耐え忍ぶことによって天下を取ったって言うし、ここは我慢だ正義。


400:Un reencounter
08/12/02 04:48:00 6Ib4SJyl
「すいませ~ん、この『ウルトラスーパーデラックスパフェ』下さい」
佳奈美が追加注文を頼んだ料理の欄を見るとそこには驚くべき数字が並んでいた。
おいおい。こんなの何個も食べられたら、いくら橙子さんからもらった金があってもやばいぞ。下手したら予算オーバーだ。
この後佳奈美は服も買いに行こうと言い出す可能性が非常に高いのでここは一つ注意しなければ。
「あの、佳奈美さん……それ一つでコーヒー何杯飲めると思っているんですか?それにどうせこの後洋服を買いに……」
「何か文句でもあるわけ?」
「いえ、ありません」
チキンと言うなかれ。あの目は人を殺せる目だった。
結局手持ちの三分の一以上をいきなり失ってしまうことになり、佳奈美が夢中で料理を胃に詰め込む作業を見る羽目になったのであった。

よかった……正義はいつもどおりの正義だ。
ねちねちと嫌味を飛ばしながらご飯を食べていても、彼を細かく観察するのは忘れない。
あたしは彼に気付かれないようにほっと胸を撫で下ろす。
そうだよね。正義があたしのことを放っておいて他の女と浮気なんてするわけないじゃない。
一体あたしは何を思い悩んでいたのだろうか。
彼があたしを裏切ることなどあるはずもなく、これから先もないというのに。
そう考えると随分と気分が楽になり、焦燥に駆られていた心にも余裕が生まれる。
もう正義のこと許してあげてもいいかな?
いや、まだまだ彼には反省してもらわなくてはいけない。未来の妻であるあたしを心配させた罪は重い。
それに彼がこうやってあたしの機嫌を取ろうと必死になっている姿を見ると何だかゾクゾクする。
この後、服を買いに行くからその時にあたしをたくさん褒めてくれたら考えてあげよう。
うふふ、正義と二人っきりで服を選ぶの。
『ねぇ、これどう?』
『ああ、すごく似合っているぞ。やっぱり俺の佳奈美は可愛いな』
『ちょ、やめてよ。こんなところで……』
『仕方ないだろ。本当の事なんだから』
『もう……バカ』
えへ、えへへへ……幸せかも。
そうと決まったら早速行かなきゃ。
「正義、次の所に行くわよ!分かったらさっさとコーヒー飲んでお金を払ってきなさい!」
「はいはい。とほほ……」
半分泣きそうになりながら力なくカウンターへ向かう正義。
フン、自業自得でしょ。あたしとのデートの約束を忘れて、家で寝過ごすだなんて万死に値するわ。
健気な未来の奥さんの気持ちを無碍にするとこうなるって覚えておきなさい。
「ほら、男ならいつまでもうじうじしてないでしゃっきり歩く!ヒーローがそんな顔で歩いていたら情けないわよ?」
店を出てからもぼんやりしているので、ばしんと正義の背中を叩いて発破をかける。
「お、おう。そうだな。ヒーローには落ち込んでいる暇はないもんな」
正義も何とか気を取り直したみたいで、ちゃんと顔を上げて歩き始めた。
隣り合って歩くあたし達。その距離は友達と言うには近すぎる距離で。
肩や手を少しずらせば触れ合ってしまうほど。
知らない人から見たらきっと恋人同士って思われるんだろうなぁ。
「何ニヤニヤ笑ってるんだよ?そんなに楽しみか?」
知らず知らずの内に笑みがこぼれていたらしい。正義に指摘された。
「そうね……楽しみにしてるわよ、正義?」
あたしはその問いにとびっきりの笑顔で返す。
正義はお金を払わされるという意味で受け取ったのか、溜息を吐いてがっくりとうなだれる。
その様子がおかしくてあたしはさらに笑いを堪え切れず、噴出してしまう。
どこまでも穏やかで優しい空間があたし達二人を包み込んでいた。


401:Un reencounter
08/12/02 04:48:58 6Ib4SJyl
「ふぅ……今日は一体何時間待たされるのかね?」
佳奈美が愛読しているファッション誌に掲載されていた有名店の中で一人立ち尽くす俺。
佳奈美は俺にここで待っててと言い残すと、さっさと目当ての服を探しに行ってしまった。
しかし、いかんせん手持ち無沙汰だな。ここは女物の服しかないので適当に服を見て暇を潰すことも出来ない。
以前その事を佳奈美に言ったら
「だったらあたしに似合うと思う服でも探してなさい。あんたのセンスをこの佳奈美様が見定めてやるわ!」
と言われたのだが、俺にそんなファッションのセンスはない。
大体俺が自分の服を買う時も何故か付いて来て、これはダメ,あれもダメと俺が選んだ服を片っ端から切り捨てて,自分が選んだ服を無理矢理買わせているじゃないか。
そんな佳奈美曰くファッションセンス0の俺が選んだ服を佳奈美に突き出したらなんかしらけた顔で見られそうだ。
それが怖くて、結局言われてから一回も実行していない。
しかし、それはそれで不機嫌になるのだから女ってのは難しい。
ああ、とにかく暇だ。ここはとりあえず先週のヤンデレンジャーの脳内ダイジェストでも……

「だーれだ♪」
「おわっ?!」
「うふふー、問題です。私は誰でしょう~?」
突然視界を奪われ、同時に澄んだ張りのある無邪気な声が俺の耳に入ってきた。
この声、どこかで聞いたことがあるような……って昨日会ったばかりだろ。
俺は溜息をつくと瞼を抑える柔らかい手を優しく剥がし、呆れた口調でこのいたずらっ子の方へ向き直る。
「ったく。やっぱりお前じゃないか―」

―認めよう。
あの時、あたしは有頂天になっていた。
彼の全てはあたしが支配し、これからもそれは続いていくと思っていた。
このままいけばいつかは正義と結ばれ、何事もなく幸せな人生を謳歌する。
そんな順風満帆な未来があたし達に訪れる事を確信していた。

天災は忘れた頃にやって来ると言う。なら人災はいつ来るのだろう?

雑誌に載っていた服を見つけたあたしはそれを持って急いで正義の元へと戻る。
これを着たあたしを見て、正義はなんて言ってくれるかな?
『似合ってるぞ』?『可愛いな』?『綺麗だ』?
えへ、楽しみ……
あれ?誰かと話しているみたい。
相手は服棚が邪魔でよく見えないが、きっと店員さんと話でもしているのだろう。
以前違う店でも正義と来た時も、同じように正義が店員さんに
「うわー、彼女さん可愛い~!よかったわね、君!こんな子を捕まえられて!」
と言われて、苦笑いしていたからだ。
残念ながら事実とは違うのでとりあえずやんわりと否定しておいた。もう少しでそうなりますけど。
あの時と違うのは正義が楽しそうに話しているところ。
その事にあたしは少し違和感を覚える。
こんな女物の服しか売ってないお店で正義が満足するような話題を振れる店員がいるのか?
まぁ、直接その店員に話を聞けば済む話だよね。もし店員さんが美人だからとかだったら思いっきり足を踏みつけてやろう。
そう思ってあたしは正義の元へ駆け寄る。


402:Un reencounter
08/12/02 04:50:43 6Ib4SJyl
でもいつだって神様は残酷だ。かつてこれ程ほどまでに偶然を呪ったことがあるだろうか。
―だって再び出会ってしまったのだから。

「ねぇ、これどう思う?正…よ……し………」
そこから先の言葉をあたしは口から出すことが出来なかった。
何故なら―
「お、戻ってきたか。俺は昨日会ったばかりだけどお前は久し振りだよな?」
のんきに笑顔で彼女を歓迎し、あまつさえあたしと彼女を引き合わせる正義。
今はその眩しい笑みが本気で憎い。
彼の隣には可憐に咲く花のような笑みを浮かべてあたしを見つめる少女の姿があった。
一年前よりも彼女はさらに美しく、女らしく成長していた。
しかし、相変わらずねっとりと熱の篭った視線で正義を見つめる所は、憎たらしいことに少しも変わっていなかった。

「お久し振りです、佳奈ちゃん。元気にしていましたか?」
―そこには一年前あたしが欺き、陥れ、切り捨てたはずの忌々しい過去の亡霊がニコニコと微笑みながら立っていた。


403:Un reencounter
08/12/02 04:57:57 6Ib4SJyl
投下終了です
書き忘れましたが、これは「Rouge?Blanc?」の続編です
あとトリは付けた方がいいですか?
付けた場合、過去に名無しで投下した作品は申し出れば追加していただけますか?

404:名無しさん@ピンキー
08/12/02 05:53:59 XL9vicIy
GJ!!
鳥はつけた方がいいと思う。

405:名無しさん@ピンキー
08/12/02 09:01:58 iKpbjW4j
>>403
GJ。待ってました。
鳥は無いよりあったほうが良いかと

406:名無しさん@ピンキー
08/12/02 12:18:35 pUbOYLkW
>>403
佳奈美が一人悶えてるエロ部分よりも、
泥棒猫をどうやってなぶり殺しにするかを考えている所に萌えてしまった俺ガイル。

407:名無しさん@ピンキー
08/12/02 13:52:37 AYn1EyT/
続きキターーー!!GJ!次たのしみにしてます

408:名無しさん@ピンキー
08/12/02 16:34:01 cdfZ+2K7
ぐっじょぉぉぉぉぉぉぉぉぶ!!!
この戦いはwktk感がすげぇwwwww
次回も待ってます!!!

409:名無しさん@ピンキー
08/12/02 16:55:26 7fr3Tnhz
続き書かれないと思ってたからめっちゃ嬉しいぜ!!

410:名無しさん@ピンキー
08/12/02 17:17:43 6kUpzDYV
待ってた甲斐があった!

411:名無しさん@ピンキー
08/12/02 20:50:45 mbekqtfE
GJするしかない!

412:名無しさん@ピンキー
08/12/02 21:01:42 p5gZ70O5
じーじぇい!


413:名無しさん@ピンキー
08/12/02 22:51:59 tLXumNku
>>403
おもしろ過ぎて発狂したw
GJ!!!

414:名無しさん@ピンキー
08/12/02 23:50:29 NYB1PMsT
鈴音キター! みなぎってきたぜ!!

415:名無しさん@ピンキー
08/12/02 23:58:41 3QedMfxd
>>403
GJ!!
さあ、次はどんなバトルが……?と期待しまくりだ。


416:名無しさん@ピンキー
08/12/03 00:14:08 nxmR9Wzm
>>403
超GJ!!
テンション上がってキタアァ!!

417:名無しさん@ピンキー
08/12/03 16:14:48 A8kIrHR0
佳奈美の病状も悪化してワクワクしてきたぜGJ!!

418:名無しさん@ピンキー
08/12/03 18:06:35 tUOoJ+SM
>>403
GJ!
クオリティタカスwww

419:名無しさん@ピンキー
08/12/04 18:42:32 eJSj8HQF
vipper死ね

420:名無しさん@ピンキー
08/12/04 18:47:12 eJSj8HQF
>>419
誤爆した、すまんスルーしてくれ

421:名無しさん@ピンキー
08/12/04 19:51:15 aAgQ0Ff/
あの人を狙う雌豚は皆死ね


422:名無しさん@ピンキー
08/12/04 21:40:27 8ofp383z
金持ちヤンデレと同居する男

ヤンデレの親からの仕送りで十分食っていけるのに、
男は「いつまでもお前のお父さんに頼っていられない」といってバイトへ出かける。
たまたま外出して、男の後をつけていくと、そこには懇ろに男と話をする女の姿が―

423:名無しさん@ピンキー
08/12/04 22:02:25 kHoVN0kW
すばやく護身用のコンバットナイフを確かめる。
――殺れる・・!ッ・・・。
気配を消して、そっと女に近づく。
女「男君って彼女とか居るの?」

424:名無しさん@ピンキー
08/12/04 22:25:22 8ofp383z
男「いないよ、今度ウチに来る?」
女「うん」
 背中を刺すような気配を感じたが男は気にしない。
男(やれやれ、あとはいかにしてヤンデレを外出させるかだな)

425:名無しさん@ピンキー
08/12/05 02:12:37 dO5fynha
雌猫さん死亡フラグ全開ですね

426:名無しさん@ピンキー
08/12/05 07:41:17 kUiJGfzj
なんで猫なんだろうね

427:名無しさん@ピンキー
08/12/05 09:37:42 76T9CMj4
「この泥棒猫!」から来てるんじゃね
ヤンデレが「雌豚」って言うと少しアレだが「雌猫」ならなんだか可愛いげがある希ガス

428:名無しさん@ピンキー
08/12/05 12:18:25 8UDFSlfr
雌猫でくぐったら、排卵日がなく交尾が成功した場合90%が妊娠するらしい
あと発情期とかも関係あるんじゃないか?

429:名無しさん@ピンキー
08/12/05 12:36:30 dLCFz8jA
単純にさかる動物として身近だからでは。
春になればニャーニャー鳴きまくってうるさい。

猫は雄のペニスに逆さ向きにトゲがついていて、
射精後に抜くときに膣内をひっかく。
その強い痛みで排卵をする。

430:名無しさん@ピンキー
08/12/05 18:42:43 iewxNddR
このどろぼうぬこ!


なんか可愛くなった

431:名無しさん@ピンキー
08/12/05 18:43:37 AiZYWwT5
私の秋刀魚を返しなさい!

432:名無しさん@ピンキー
08/12/05 19:05:12 IOaeOMcI
>>431
「私の秋刀魚=愛しい○○君(のお○んちん)」という意味ですね分かります


433:名無しさん@ピンキー
08/12/05 20:41:49 kUiJGfzj
わんわんお(∪^ω^)

434:名無しさん@ピンキー
08/12/05 21:57:06 YWiEszuo
(∪^ω^)アルトくぅ~ん


435:名無しさん@ピンキー
08/12/05 22:00:16 a3Df30bX
顔文字きめぇ

436:名無しさん@ピンキー
08/12/06 17:02:36 Z4ESyvSu
ヤンデレメイドに明日デートの旨を伝えたい

437: ◆wzYAo8XQT.
08/12/06 23:00:03 9YLzBs9Y
ぽけもん 黒投下します
第十話です

438:ぽけもん 黒  長老の頭が一番フラッシュ ◆wzYAo8XQT.
08/12/06 23:01:37 9YLzBs9Y
 食事を終えた僕たちは、部屋に荷物を取りに戻るとそのまま桔梗町に向けて出発した。
 三十番道路はお使いのときに一度通ったということもあり、実に順調な行軍だった。ただ、そこまで早く進めているわけでもない。完全に僕が足を引っ張っていて、全体の速度を落としている。ただの人間である僕には、二人の速さにはとても合わせる事が出来ない。
 それと、以前のようにトレーナーを避けるのが難しくなってきたというのもある。今までは向こうも戦いに消極的だったっていうのもあるけど、全国の旅となれば当然、各地区にいるジムリーダーと戦っていかなくてはならなくなる。
トレーナーとパートナーを相手にした戦闘はジムでの戦いに向けた絶好の予行演習になる。それに、ここまでの旅で野生のポケモンとの戦闘に慣れて、自信がついてきたというのもあるんだろう。
すれ違うトレーナーは皆バトルに積極的だ。相手に見つかったら、問答無用でバトルを申し込まれてしまう。
 ……まあ香草さんの相手にもならなかったんだけどね。ポポに空から降りてきてもらう必要も無く、僕が一切手出しを行う必要が無いくらい、瞬時に相手を戦闘不能まで持っていってしまう。
今まで野生のポケモンとしか戦ってなかったから香草さんの強さは半信半疑だったんだけど、香草さん自身が言うとおり彼女はまさに無敵という言葉がふさわしいような強さだった。
バトルに負けた相手は勝った相手に所持金の半分を差し出さなくてはならないと決まっているので経済的にはおいしいんだけど、なんだか罪悪感が積もる。
 それでも日没までに三十番道路の終わりのほうまで進むことが出来た。ポケギアのGPSによる判断だから、実際に残りの道がきつい上り坂だったりすると、全然終わりのほうと言えないんだけどさ。
 香草さんとポポはまだ進めると言ったが、ポポは相変わらず夜目が利かないため、やはりここで止まることにした。
 若葉町から吉野町までの行軍で前よりも大部進むペースが速くなっているから、すべての食事を木の実に頼らず乗り切れるということに気がついた。でも、やはり食料を節約するに越したことはないので、以前のように朝食だけは木の実で賄うことにした。
 いつものように香草さんとポポに挟まれ、夜を明かすと、また桔梗市へ向けて進む。その途中で、生垣に突き当たった。
両脇や周りは太い木が群生していて、下手に入ると危なそうだけど、ここだけ木の向こうは獣道のようになっていて迷わないようになっているから、この生垣を何とかできればかなりのショートカットが出来そうだ。
「こういう場所で居合い切りを使うのかな」
「居合い切りって?」
 足を止めて考えていた僕に、香草さんが問いかけてくる。
「剣の達人とかさ、これくらいの藪とか細い木とかスパーンって斬っちゃえるんだって。シルフカンパニーが秘伝マシンを開発したらしくて、ポケモンは簡単に覚えられるみたいだよ。もちろん、覚えられないポケモンもいるらしいけどさ」
 でも僕は居合い切りの秘伝マシンなんて持っていない。というか技マシンの一つも持っていない。僕の小遣いで買えるような安価なもので、特に必要のある技マシンがなかったというものある。
「あら、そんなものいらないわよ。見てなさい」
 香草さんはそう言うと、両袖からそれぞれ数本ずつ蔦を伸ばし、それを束ねた。そのまま両腕を胸の前に交差し、強く左右に薙いだ。
 一閃。―いや、二つの束だから二閃なのかな、まあそんなことはどうでもいい―彼女は一瞬の内に幅数メートル、奥行き数メートルの生垣を一掃した。
 ……こういうのって、ありなのかなあ。
 僕はただただ、彼女の破壊力の高さと非常識な発想に呆れるしかない。
「どうしたの、間抜けな顔して。早く通らないとまずいわよ、コレ」
 香草さんに言われてみてみれば、薙ぎ倒された木々の切り口からはすでに木の芽が生え始めており、全体が急速に再生しつつあった。
そもそも、居合い切りで切れるような木というものは一部の人間の通行だけを許す自然の扉なのだから、こうでもならないと使われたりしないだろう。しかしそれが分かっていても、映像として目の当たりにすると驚かされてしまう。
 僕は先を行く香草さんの後に続いて、慌ててその道を抜けた。ポポはそもそも空を飛んでいるから地上の木々など問題なく飛び越せる。

439:ぽけもん 黒  長老の頭が一番フラッシュ ◆wzYAo8XQT.
08/12/06 23:02:35 9YLzBs9Y
 でも、このお陰で大きくショートカットに成功したのは事実だ。タウンマップによると、この道を通っていくと「暗闇の洞穴」を素通りしてしまうのだけど、
そこは真っ暗で、秘伝マシンの「フラッシュ」を使用されたポケモンがいないと何も見えないほどの暗さだということだし、そもそも最短ルートからは外れているからもともと立ち寄らないつもりだったので問題は無い。
 僕らはそのまま三十一番道路を走破し、日没前に桔梗市へとたどり着いた。出来るだけ二人のペースに合わせていたから、疲労で足が折れそうだ。
 この町を回るのは明日にすることにして、すぐさまポケモンセンターに行って手続きを終えると、その日はそれ以上のことはしなかった。ちなみに、ポケモンセンターの内装は全国すべて共通のようだ。
というのも、このポケモンセンターの内装が吉野町のものとまったく変わらなかったからだ。
初めてでも迷う心配が無いので便利というか安心というか、そういう意味で言えばそのとおりなんだけど、まったく違う場所なのにまったく同じ施設を建てる、というのも無駄な気がしなくもない。
 外と変わらず、僕らは一つのベッドに三人で固まって寝ている。正直言って狭い。でも二人がこうじゃなきゃ嫌だというから、しょうがなく妥協している。

 翌日は早朝から市内を巡ってみることにした。ここ桔梗市はさすが古都と言われるだけあって、町並みも建物も中々に趣がある。ポポは町並みにはあまり興味が無いみたいだったけど、香草さんは目を輝かせていた。
尋ねたら「ロマンチックで素敵」ということだ。確かにいい街なんだけど、いつまでもブラブラしているわけにもいかない。そもそも、市内探索だって半ば日が高くなって香草さんが本調子になるまでの時間潰しみたいなものだし。

 この街には、「マダツボミの塔」と呼ばれる、古い塔がある。風もないのに大黒柱がゆっくりとだけどユラユラと揺れるとても不思議な塔で、この街の一番の名所になっている。一説によると、巨大なマダツボミが塔の柱になったから揺れているのだとか。
 この塔はもともと修行のために建てられたということで、現在も多くの僧が修行に励んでいる。
 僕がこの塔に来た目的は観光でも―観光という意味も少しはある―修行でもなく―そもそも僕らは僧侶じゃないしね―、この塔の最上階まで行くと秘伝マシンの一つ『フラッシュ』がもらえることになっているからだ。
 秘伝マシンは戦闘に役立つものは少ないが、先に進むには無くてはならないものが多いため、是非とも手に入れたい。
 というわけで、僕たちはマダツボミの塔へと乗り込んだ。
 入り口から真正面にその例の大黒柱はあった。確かに、ゆっくりと揺れている。その大黒柱を囲うように座禅を組んだ修行侶が数人座っていて、なにやら物々しい雰囲気を醸し出している。
 その修行僧さんの集団と目を合わせないようにしつつ、どんどん階段を上っていく。すると途中で修行僧さんに声をかけられ数回戦闘になった。
 修行さん僧のパートナーのポケモンはみな揃ってマダツボミばかりだ。相性の問題を考え、全戦ポポで戦ったが、香草さんは自分でも楽勝なのに、と道中不満げだった。
 そしてあっという間に最上階。そもそも五階建ての塔だから、上るのにそんなに時間はかからなかった。
 その階の一番奥に、「長老」と呼ばれる老僧がいた。彼の後ろには箱が山積みにされている。アレがフラッシュの秘伝マシンなのだろう。
「よくここまで着ましたな。では、あなたが秘伝マシンにふさわしい人間か、テストをさせて頂きます」
 長老さんは威厳のある、渋い声でそう言うと一歩後ろに下がる。すると脇に控えていたマダツボミが前に出た。精悍な顔つきをした、たくましい男だ。
「彼と戦って、三十秒以上気絶せずに耐えることができたら合格です。三十秒以内に気絶した場合は不合格ですよ」
 その長老の言葉に合わせるように、マダツボミは大胸筋をピクピクと震わせた。
 これは油断できないかもしれないな。

440:名無しさん@ピンキー
08/12/06 23:03:04 mvBMDrtu
支援

441:ぽけもん 黒  長老の頭が一番フラッシュ ◆wzYAo8XQT.
08/12/06 23:03:29 9YLzBs9Y

 油断する間も無かった。
 念のため、戦闘を行っておらず体力が温存できている香草さんに戦ってもらったのだが―ポポは当然ごねたけど、いつものように宥めた―、秒殺、いや、瞬殺であった。
足元に放たれた蔦の一閃を避けた敵に突き刺さる容赦のないボディーブロー、そしてそれによって生じた一瞬の隙をついて蔦で上空へ放りなげる香草さん。
相手は一切の防御も反撃も取る間もなく、空中という飛行能力を持つ生物以外には回避不可能な領域で、蔦による情け容赦の無い無数の突きを加えられた。彼が地上と再会した頃には、もうすでに彼の意識は無かった。
 落下してきたマダツボミによって巻き上げられた粉塵が引いてくると、そこから赤く輝く鋭い双眸が浮かび上がる。
 長老さんは完全に引いている。えらいもん見ちまった……みたいな顔をしている。
「三十秒もたなかったみたいだけど、どうなの?」
 香草さんの、研ぎ澄まされた刃物のような言葉を向けられて、長老はビクリとその身を震わせる。
「ご、合格です、おめでとう。これが約束の秘伝マシンだから……」
 しかしさすがは年の功、と言ったところか。香草さんの睨みを意にも介さず……というのはさすがに無理なようだが、それでも自分に割り当てられた使命を果たそうとしている。僕だったら怖くて声もかけられないだろう。
「ど、どうも」
 香草さんにこのまま荷物を受け取らせるのはなにやら危険な気がしたので、僕は自分から進み出て長老からダンボールの小包を受け取った。
「どうゴールド! 見た!?」
 香草さんは先ほどの気迫はどこへやら、嬉々として僕に尋ねてくる。
「う、うん、すごかったよ」
 一部速過ぎて見えなかったけどね……。
「当然でしょ! 私、ゴールドを相手にするときはいっつも手加減してるんだからね!」
 彼女は誇らしげに胸を張ってそう言った。
 確かに、蔦の速度といい、容赦の無さといい、僕に向けられるそれの比ではなかった。一応、乱暴ではあるものの、彼女なりにパートナーである僕を気遣っていたのだろう。
 つい先日のことが思い出されてゾクリとする。あの状況で彼女にも僕にもなんの怪我もなく逃げ切れるなんてとんだ思い上がりだった。僕の持っている、出来れば使いたくは無い道具すら総動員しても、
彼女の初手に対応できない限り一切の活路はない。そういう意味では、あそこでおとなしく香草さんが引き下がってくれて本当によかった。きっとあの状況だと、香草さんがその気になれば僕は今頃五体満足ではなかっただろう。
尤も、ポケモンセンターの中でそんな大きな騒ぎを起こした時点で彼女の負けなのだが。
「坊や、少しばかりお話よろしいかな?」
 帰ろうと振り向いたとき、後ろから長老さんにそう声をかけられた。穏やかな口調だ。もうすっかり冷静さを取り戻しているようだ。
 再び振り向いた僕は、彼の様子から「二人きりで話したい」ということを感じ取った。
「香草さん、ポポ、先に降りててくれるかな。もう修行僧さんは皆倒したし、一本道だから大丈夫だよね?」
 僕は二人にそう声をかける。
「どうして?」
 香草さんは怪訝そうだ。
「長老さんと、二人きりで話したいんだ」
「話だけなら、私がいたっていいじゃない」 
「ホホホ、お嬢ちゃん、男には女性に聞かれたくない話というものがあるのですよ。君がこの少年を好きなのは分かるがの」
 長老さんは冗談交じりにそう言った。
「べ、別にそんなんじゃないわよ! ただパートナーとして気になっただけよ! いくわよ! ポポ」
 香草さんは慌てて、ポポを引きずって階段を降りて行った。
 たとえ事実でも、そこまで強く否定しなくても……。
 若干へこんでいた僕に、長老さんは急にまじめな顔になって話を切り出す。
「さて、本題ですが……あの嬢や、只人ではないでしょう。あんな恐ろしい目は、そうそう見るものではありませんからの」
「目?」
 想像だにしていなかった言葉に、僕は思わず鸚鵡返しに聞き返す。
「そうです。あの目に宿った影。あれはいずれ彼女自身を傷つけ、そして、君にも被害を及ぼすでしょう。あの影は、いつか無実の人を殺す」

442:ぽけもん 黒  長老の頭が一番フラッシュ ◆wzYAo8XQT.
08/12/06 23:04:10 9YLzBs9Y
 殺す、という物騒な単語に僕は驚いた。
 長老さんが何を言わんとしているか、いまいち飲み込めない。目とか影とか被害を及ぼすとか……香草さんは確かに乱暴なところはあるけど……。
「彼女は決して悪い人間ではありません。彼女の強さでそう思ったのなら、それは見当違いです。彼女の強さとか、決意には理由があるんです」
「ゴールドさん、と言いましたかの? 今はまだ正気を保っていても、誰があの嬢やが変わらない保障できるのです? その力が、その目的以外に振るわれぬ保障など、誰も出来はしないのですよ」
 何なんだ一体。香草さんを侮辱したいのか? 一方的に自分のパートナーが倒された腹いせか?
 僕はだんだんいらいらしてきて、つい語気が荒くなる。
「長老さん、あなた、さっきから何が言いたいんですか! そんなに彼女を悪者にしたいんですか!」
「私は見てのとおり、老いさらばえておりますが、まだ耄碌してはおりませぬ。私は今まで無数の人を見てきた。
老いてこそ身につく能力というものもあります。ゴールドさん、あなたは彼女をしっかりと見守ってあげなくてはなりません。彼女を止めれるのは、一番近くにいるあなたに他ならないですからの」
 長老さんは、僕に無礼な態度をとられたというのに、あくまで冷静だった。なにやら達観しているような、淀みの無さを感じる。
 僕は無言で彼を睨む。しかし彼はそれをまったく意に介していないように続けた。
「ただ、あの嬢やの傍にいてあげるだけでいいのです。ゴールドさん、この老いぼれの言葉、努々忘れてはなりませんぞ」
「……ご高説どうも。では、僕はもう行きますので」
「待ちなさい。最後に一つだけ、これを持って行きなさい」
 長老はそう言うと、懐から鈍色の、人差し指をふた周りくらい大きくしたような筒を取り出し、僕に差し出した。
「……なんですか、これは」
 僕はそれを一瞥すると、それを受け取りもせず、長老を睨む。
「これが何か、は時が来ればおのずと分かりましょう。これを肌身離さず持っていなされ。きっと、ゴールドさんの助けになるでしょう」
 そう言う彼の表情は真剣そのものだった。
 あれだけのことを言われておいて、彼から何かを受け取るのは癪な気もするけど、彼が懐から取り出したということはおそらく持ち主に害を及ぼすものの類ではないだろう。もらっておいても損はないはずだ。
 僕は無言でそれを受け取り、胸ポケットに収めた。
 あなたの旅の息災を祈っております。その長老の祝福を背に、僕は階段を降りた。

 外の明るさに、目を細める。
「早かったわね」
 僕がものをちゃんと見えるようになるより前に、香草さんに声をかけられた。穏やかな笑顔をしている。これが、人を殺す者の顔であるはずがない。
「うん、大した話じゃなかったんだ」
「……で、結局どういう話だったの? あ、別に女の子には言えないような話が何か気になるとか、別にそういうんじゃないわよ!」
 今も慌てて頬を染めて否定している香草さんが、悪い人間なわけが無いじゃないか。
「別に、旅の無事を祈る、みたいなくだらない話さ」
 僕は半ば笑い飛ばしながら言う。
 そう、くだらない話だ。
「そう、ならいいけど」
「……」
「どうしたの?」
「いや、疑わないのかな、って」
 以前の香草さんなら、そんなの嘘でしょ! 馬鹿にしてんの!? くらいは言ってきただろうに。
「だって、もう私に嘘はつかないって約束したでしょ?」
 香草さんはキョトンとして僕に尋ね返した。
「……そんな約束したっけ?」
 そういえば、この間、もう私に嘘はつかないで、みたいなことを言われた記憶はあるけど、あれはあの場限りの話だと思ってた。
「したわよ」
 煮え切らない口調の僕の迷いをぶった切るように、香草さんははっきりと言い切った。
「……したかもね」
「もし嘘ついたりしたら……酷いんだからね」
 そう言って彼女は意地悪げに口の端を吊り上げる。もし彼女が蛇で僕が蛙なら、今頃恐怖で悲鳴すら上げられなくなっているだろう。
「はい、よおく覚えておきます。絶対に嘘をついたりはしません」
「よろしい」
 僕の大仰な返事を受けて、彼女はにへーっと笑った。
「ゴールドと香草サンばっか楽しそうにしててずるいですー! ポポ寂しいですー!」
 と、いきなり今までまったく話に加わっていなかったポポに飛び掛られた。
「ご、ごめんね」
 僕はポポの頭を撫でながら謝る。しかし、今度は香草さんから鋭い視線を感じる。
 う……こっちを立てればあっちが立たずだ。香草さんは一体何が気に入らないんだろう。
 僕はただ、苦悩させられるばかりである。

443: ◆wzYAo8XQT.
08/12/06 23:05:55 9YLzBs9Y
以上で投下終了です
当初は十話、約十万字程度で終わらせるつもりだったのが気がついたら十話でもまともにヤンでいないというのは一体どういう(ry

どうかおおらかな心でお願いします

444:名無しさん@ピンキー
08/12/06 23:08:49 mvBMDrtu
GJ、そして乙。

香草さんは十分ヤ(ry


445:名無しさん@ピンキー
08/12/06 23:15:36 a9pE3e2h
リアルタイムGJ!

香草さんはもう片足以上危険ゾーンに突っ込んでると思う

446:名無しさん@ピンキー
08/12/06 23:21:30 2/qj+foN
GJ
だが香草さん無双すぎだw彼女が暴走したとき止めれる奴いるのか

447:名無しさん@ピンキー
08/12/07 00:15:39 8i8GePnd
同じ草タイプなのにマダツボミ可哀想すぎるw
GJ!

448:名無しさん@ピンキー
08/12/07 00:23:31 RYs32Fbz
GJ!!
相手が弱点属性じゃなければ香草さんほぼ無敵だなw

449:名無しさん@ピンキー
08/12/07 00:27:06 lSUOdH2p
弱点属性であれば追い詰められてゴールドのためにさらに覚醒というのが見えそうで・・

450:名無しさん@ピンキー
08/12/07 00:56:17 taKrNr8n
サブタイトル酷すぎwwワラタwww

GJ!

451:名無しさん@ピンキー
08/12/07 03:31:58 ZcU1mNj7
乙です
てっきり長老の頭が30秒フラッシュするのかとおもたww

452:名無しさん@ピンキー
08/12/07 09:13:34 fn3GMyDI
GJ!
十話どころか百話でも読んでいたいです!
殿堂いりするまでじっくり描いていただけたら嬉しいです。

453:名無しさん@ピンキー
08/12/07 10:51:13 pEsWriI1
GJ!!
毎回楽しませてもらってますw

454:名無しさん@ピンキー
08/12/07 16:16:10 c56em8ct
GJ!ついにマダツボミのとこへw

455:名無しさん@ピンキー
08/12/07 16:29:33 y+u5NYUe
「他の女に触っちゃだめ! 近づいちゃだめ! 同じ空気吸っちゃらめえええええ!!!!」

456:名無しさん@ピンキー
08/12/07 17:25:59 /kPuzFbe
最後のはどうしろと…

457:名無しさん@ピンキー
08/12/07 17:36:09 weaCV8HC
常に人工呼吸ってことだろ

458:名無しさん@ピンキー
08/12/07 17:38:52 J3QiSMbn
ヤンデレは自己中

459: ◆mkGolZQN7Y
08/12/07 17:43:02 RYs32Fbz
鳥付けてみました
>>436を見ていたら妄想が止まらなくなってしまったので、
流れぶった切って投下です

460:幸せになったメイドさん ◆mkGolZQN7Y
08/12/07 17:45:35 RYs32Fbz
「俺さ、明日デートの予定あるから夕食の用意はしなくていいよ。彼女とどこかで食べてきちゃうから」

いつも一緒に日々を共に過ごしてきた家族同然のメイドに向かって、彼女の雇い主である男は喜々とした表情で意中の相手と明日デートすることを話した。
彼は長らく思い続けてきた女性に勇気を出して、
「よ、よかったら明日一緒に遊ばない?」
と今日ようやく言うことができた。
突然そんなことを言われて彼女も最初は戸惑っていたが、少し考え込むと
「うん、いいよ!でも、約束破ったりしたらひどいんだからね?」
と可愛らしく微笑みながら答えてくれた。
今その光景を思い出すだけでも顔が自然とにやけてしまう。主人としての威厳が。
しかし、明日のデートを想像するとどうしても頬が緩むのを抑えられない。
ニヤニヤと明日のデーットへ思いを馳せている主人を余所に、メイドの少女は顔も向けずに抑揚のない声で答える。

「旦那様。その件ですが、先方からなかったことにして欲しいとの連絡がございました」

「え……?だって今日『いいよ!』って言ったばっかりで……」
先ほど約束したばかりの彼女がいきなりそんなことを言うとは何事だ。
驚き、慌てて彼女の方を振り返ると彼はかすかな違和感を覚えた。
デートは中止にするとの旨の電話が掛かってきたと彼に伝えた彼女の顔はあまりにも無表情で、能面か何かのようだった。
「旦那様……女中風情の私が申すのは差し出がましいことでしょうが、あの御方と交際なされるのはあまりよろしくないかと。
旦那様は何よりも気高く、何よりも麗しく、何よりも優しい心をお持ちになった素晴らしい御方です。
その貴方様がせっかくお誘いになられたのに、それを軽々しく袖にするとは見下げ果てた方です。
そう、あんな女など……しまえば……いえ、何でもございません」
今男に対して忠告、あるいは警告をしている彼女は確かに普段と違っていた。
彼の話を楽しげに聞くいつもの穏やかな表情は今の彼女にはどこにも窺えない。
むしろ、そう……まるで激しい怒りを吐き出す寸前で何とか平静を保っている危うい顔をしていた。
端正な顔を眉一つ動かさずに淡々と喋り続けるその姿に違和感を覚える主人を置いて、彼女は冷たい口調で話し続ける。

「とにかく。旦那様には自分が騙されているかもしれないという自覚が足りていないように見受けられます。
旦那様はとても立派な御方。それ故に身の程知らずの恥知らずな女性達が、常日頃、息を潜めて貴方様を狙っているのです。
それに昔から『女心と秋の空』と言われるように、女の抱く思慕の情など移り気なもの。
もし、旦那様の眼鏡に適うような女性と交際をすることになっても、その方が本当に貴方様のことを想っておられる保障などどこにもないのですよ?
思慕の情を持たない相手にも金次第で簡単に股を開き、相手に飽きたら次々と交際相手を乗り換えるという呆れた女性達が世間には蔓延っているようですね。
一片の穢れもなく、清らかな身体のまま健やかに育ってきた旦那様にとってそのような方達は毒以外の何物でもありません。
彼女達に気を許したら最後。きっと貴方様を悩ませ、苦しませ、全てを蝕み、元の色が分からなくなるまで汚し、そしてボロ雑巾の様に捨てるでしょう。
決して貴方様をそのような不埒な輩に渡すわけにはいきません。そう、例え何があっても絶対に……」
過剰なほどに自分の主を褒めちぎり、それとは逆に今の女性が低俗な恋愛観を持っているかを力説する彼女の顔は俯いていてよく見えない。
だが固く握り締められたこぶしはプルプルと震え、彼女が何かに対して怒り狂っていることは男にも分かった。
しかし、彼には普段あまり感情を表に出さない彼女が一体何に対してそこまで憤りを感じているのかまでは理解できなかった。
最も理解していたところで彼の運命は変えることはできなかったに違いない。


461:幸せになったメイドさん ◆mkGolZQN7Y
08/12/07 17:48:30 RYs32Fbz
「どうしてもとおっしゃるなら、旦那様にそのような女性達の思惑を見抜き、誘惑に誑かされぬ屈強な精神を作っていただく必要があります。
そう……例えばこんな状況になったら旦那様はどうなされますか?」
言い終わって顔を上げた彼女は笑っていた。
いつも一番傍にいて、最も多くの時間を共にした男でさえ見たことのない妖艶な暗い笑みを浮かべて。
そして彼女は身に纏うメイド服に手をかけ、ゆっくりと一枚一枚丁寧に衣服を脱ぎ捨てていく。
まるで飢えた男を挑発するかのような淫らな動きを彼の目に焼き付けるために。
均整の取れた美しいプロポーションをメイド服の下に隠していたが、今それは月明かりの元に全てが曝け出されている。
メイドの思惑通り、自分の主人はただポカンと口を開いたまま、視線を外さずに食い入るように見つめることしかできなかった。
その様子を見て、一子纏わぬ生まれたままの姿になった彼女はおかしそうにくすくすと笑い声を漏らす。
「さぁ、旦那様。こうやって体を使って迫るような悪いオンナは早く振り払ってください。ほら……」
そう言うと彼女は出来る限り素早く、しかし主に痛みを感じさせぬように優しく押し倒す。
突然メイドが衣服を脱ぎだし、自分を誘惑するかのような行を目の当たりにして、半ばパニックになっていた彼は、あっと言う間の出来事に抵抗することも忘れていた。
ふと股間の当たりに甘い痺れが走る。気が付くと彼女が浅ましくズボンの中で暴れる彼自身を、布越しから愛しそうに撫でていた。
「ダメじゃないですか。こんなに大きくしてしまっては。これではやめろと言っても説得力の欠片もありませんね?ではこのまま続けます」
彼女は嬉しそうにズボンの中に窮屈に押し込められていた彼の愚息を取り出す。
本来自分に使えるメイドである少女に今は良い様に弄ばれているというこの状況に、彼の肉棒は痛いほど反応していた。
「素敵です、旦那様……いつまでも子供と思っていたらこちらの方もすっかりご立派になられて……私は嬉しいです」
恍惚とした表情でうっとりと顔を赤らめるメイド。最早その瞳は焦点を結んでおらず、情欲に潤みきっていた。
彼女の熱い吐息が男の肉槍にかかり、ひんやりとしたその細い指が決して逃さないように絡みつく。
その度に彼は情けない嬌声を漏らし、ビクンと身体を跳ねさせる。

「そう……これでいい……旦那様の純潔がどこぞの薄汚い泥棒猫に奪われるくらいなら、私が……」
自分が使えている主人のあられもない痴態を見て、彼女はとても満足そうに呟く。しかし、その声はまるで呪詛を唱えた様に低かった。
のそのそと体を起こし、仰向けに横たわる自分の主人の上に覆いかぶさる体勢となる。
そして、彼女は腰を浮かすと熱くそそり立つ彼の一物を掴み、自身の秘所へと導く。
既にそこは男と男そのものを欲しがるあまりに、溢れ出る蜜が糸を引くほどに熱く潤っていた。
最早彼女は我慢の限界に達していたが、わざとその蜜壷の中に彼を招待しようとはしない。
「んっ……入れたいですか、旦那様?いいですよ。たっぷりとこの卑しい召し使いめの肉壷の中にたっぷりと子種をお吐き出しになってください。
でもちゃんと言葉にして誓ってください……あのような端女のことなど忘れて、私のことを愛すると……そして、死が二人を分かつその時まで私を愛し続けると……」
彼に脅迫としか思えない言葉を投げかけ、入り口を怒張した陰茎の先端で軽く擦る。
だがその熱く潤った花弁の奥への侵入は決して許さない。焦らしているのだ。
その生殺しともいえる悪戯に男は情けない声で呻くのみ。
彼にはもう主人とメイドの禁じられた関係などを気にしている余裕はない。

『早く入れさせてくれ!!』『精液を吐き出して楽になりたい!!』

完全に性欲に支配された男の頭では、目の前で意地悪く微笑む少女の体内に自分の分身を埋めることしか考えられなかった。


462:幸せになったメイドさん ◆mkGolZQN7Y
08/12/07 17:49:22 RYs32Fbz
「――!!」

とうとう耐え切れなくなった彼は息も絶え絶えに彼女に向かって何かを呟く。
まるで囁くような掠れた声だったが、彼女の耳は決してその言葉を聞き逃すことはなかった。
やっと彼女が大事に育ててきた想いが報われた瞬間だった。
彼女の顔に満面の笑みが広がる。しかし、それはあまりに美しく、妖しく咲き乱れていた。
もう誰にも渡さない。一生離さない。旦那様は私のものだ。
今は快楽に支配された体だけの淫らな繋がりかもしれない。しかし、いずれは心も私の虜にしてみせる。
そして、私にはその自信がある。何故なら彼をこの世で一番愛しているのはこの私なのだから。

「旦那様、愛しています……」

そう言って彼女は今日見た中で最も美しい笑みを浮かべ、彼の唇にそっと口付けをする。
彼女にとってそれは誓約であった。自分は男を愛し、男は自分だけを愛するという誓いを互いの体に、心に刻み付ける。
そして、彼女は最後の仕上げとして彼の熱く滾ったペニスを彼女の入り口にあてがうと、一気に腰を落とした――



その後、主人である男とメイドの少女は忽然と屋敷から姿を消した。そして、彼らの姿を見た者は誰もいない。
ただ一つ言えることは、かつてただのメイドにしか過ぎなかった少女はあの日、この世で最も幸せな女になったということだけである。


463: ◆mkGolZQN7Y
08/12/07 17:53:34 RYs32Fbz
投下終了です
前は皆さんにワッフルさせたり、大作の後がこれとか色々とスイマセン……

464:名無しさん@ピンキー
08/12/07 18:04:46 taKrNr8n
>>463
メイドさんに俺から精一杯の祝福を贈りたい。

GJ!

465:名無しさん@ピンキー
08/12/07 18:50:17 zJ2feEcN
俺もデーットしたいぜ

466:名無しさん@ピンキー
08/12/07 19:41:51 xoAe/ByE
しかしデーッドにもなる

467:名無しさん@ピンキー
08/12/07 19:55:52 6puryr8x
そろそろクリスマスだな
おまえらの予定はどうよ?

468:名無しさん@ピンキー
08/12/07 20:16:50 FbaBu0/A
>>463
これは良いメイド
しかし振られた女の子の逆襲も見たくなってしまったw

469: ◆mkGolZQN7Y
08/12/07 20:54:40 RYs32Fbz
>>デーット
なんというミス
これはまちがいなくねたにされる
と思ってたら本当にされてたorz
直せるものなら直したい
しばらくROMってます……

470:名無しさん@ピンキー
08/12/07 21:06:56 FbaBu0/A
保管庫に訂正して保管してもらえばいいんじゃない?

471: ◆mkGolZQN7Y
08/12/07 21:14:21 RYs32Fbz
>>470
そうですね……
保管庫の管理人さんへ
もし見ていたら他の誤字脱字はともかく、
>>460の12行目にある「デーット」だけはどうか「デート」に直していただけないでしょうか?
厚かましいお願いですが、どうかよろしくお願いします

472:名無しさん@ピンキー
08/12/07 21:22:43 YOOCQmAu
wikiなんだから自分でやれよ

473:名無しさん@ピンキー
08/12/07 21:32:06 We3r0tDo
まあまあ
自分の作品を自分で載せるのは抵抗がある人もいるし
それに誤字と言っても無理に訂正する必要もない気もするけどな
たいていの作品に一個や二個は誤字脱字はあるものだし

474:名無しさん@ピンキー
08/12/08 00:14:23 7e6Rt89M
GJ!
いいなぁ…メイドいいなぁ…

475:名無しさん@ピンキー
08/12/08 01:16:15 /TF1kZBW
>>467
その話題に誰も触れようとはしない

476:名無しさん@ピンキー
08/12/08 01:48:22 KBT30P9l
自演乙

477:名無しさん@ピンキー
08/12/08 05:56:34 D33g1qUL
自演ではないが…
ヤンデレの彼女が欲しい…

478:名無しさん@ピンキー
08/12/08 07:25:10 GrHzOXEv
みんな欲しいよ!

479:名無しさん@ピンキー
08/12/08 09:23:08 2cXWSHRk
>>477
一番大切なものって、案外すでに持ってたりするんだよな

480:名無しさん@ピンキー
08/12/08 13:54:20 zdqw3Jds
貴方の身辺の水面下で何が起こっているか把握したらあるいは…

481:名無しさん@ピンキー
08/12/08 20:25:27 mPIzvdZm
昔ちょっとヤンデレ気味の娘と友達以上恋人未満な感じだったんだが
リアルに恐いと感じたことがあった……

482:名無しさん@ピンキー
08/12/08 20:46:24 QUfeXmiD
惜しい事を。
でも、今このスレに居るという事はその娘のことを忘れられないんだろ?
今すぐよりを戻せ。骨は拾ってやるから代わりに観察させろw

483:名無しさん@ピンキー
08/12/08 20:56:48 2cXWSHRk
馬鹿だな。骨の一片まですべてあの子のものに決まってるじゃないか。俺達が手に入れられるわけが無い
よって骨も拾ってやれないが行ってこい

484:名無しさん@ピンキー
08/12/08 21:25:08 X/uBjTtv
いや待て、>>481は「骨を拾わせる」という名目で>>482を誘いこむ為のヤンデレ娘の罠ではないだろうか

485:名無しさん@ピンキー
08/12/08 21:33:55 o8pBTmPy
嫌な流れ

486:482
08/12/08 21:36:47 QUfeXmiD
ちょっと、骨拾ってくる。ノシ

487:名無しさん@ピンキー
08/12/08 22:24:39 p3fKUhBB
ムチャシヤガッテ……(AA略

488:名無しさん@ピンキー
08/12/08 23:14:13 e5dSRAPM
ヤンデレの彼女が家にいない間に他の女を家に呼びたい
スリルショックサスペンス

489:名無しさん@ピンキー
08/12/09 03:34:26 5jEd93gA
俺なんかヤンデレの彼女を大事に大事にしてみたいぜ。
でも相手からは俺の身体に触れさせないぜ!

490: ◆UDPETPayJA
08/12/09 18:15:41 P3hsFZwf
第8話投下します。

491: ◆UDPETPayJA
08/12/09 18:16:18 P3hsFZwf
 飛鳥くんに拒絶されて、何がなんだかわからなくなった私はただ、子供のように泣きじゃくっていた。
 視界がぼやけ、床が生き物のようにぐにゃりと歪む。立つことすらままならない。怖くて寒気がとまらない。今の私はそんな状態だった。

「…だから言っただろう。もうよせって。」
 男の人の声がした。この声はたしか…斎木くんだったかな?
「私…もうだめだよ。飛鳥くんに拒まれてまで生きていたくなんかない。」
 実際その通りだった。もしこの場にカッターナイフがあれば手首を縦に切り裂き、縄があれば迷わず首をくくれる。…もう絶望しきっていた。
 でも、斎木くんはこう言った。
「結意ちゃんは悪くないよ。飛鳥ちゃんはきっと騙されてるんだ。」
「…だまされてる?」
「そう、騙されてる。きっと妹ちゃんにでもそそのかされたんだろ。でなきゃ突然あんなこと言ったりしないさ。」

 斎木くんの言葉は魔法のようだった。今の私はそれを疑う術も、余裕もない。むしろ、私にとってその言葉は救いだった。
「…そっか、そうだったんだ。まったく…しょうがないなぁ飛鳥くんってば。それなら早く言ってくれれば良かったのに。でももう大丈夫だよ。」

 そう、もう大丈夫。どうすれば飛鳥くんを解放してあげられるか気付いたから。
 そんな悪い娘、死んじゃえばいいんだよね。わかってるよ、言ったでしょ?

「私、飛鳥くんの為ならなんだってできるんだよ?」

492:天使のような悪魔たち 第8話 ◆UDPETPayJA
08/12/09 18:17:06 P3hsFZwf
* * * * *

 結意ちゃんのほうはこれでよし、と。次は飛鳥ちゃんのほうだ。一応確認しとかなきゃいけないな。
 おそらく…亜朱架さんがやったんだろう。あの人はそういう人だ。結意ちゃんもそうだけど亜朱架さんの愛情も、狂気じみたものがある。
 わざわざ研究所を逃げ出してまでここに戻ってきたのは、たぶん結意ちゃんのせいだ。まったく…女のカン、ってのはつくづく厄介なものだよ。
「結意ちゃん。」俺はもう一度声をかける。「俺、これから飛鳥ちゃんのとこに行くけど、良かったらその弁当渡してきてあげるよ。」
「いいの?」
「ああ、たぶん結意ちゃんが行くと迷惑になっちゃうよ。帰ったらきっと妹ちゃんにお仕置きされちゃうんじゃないかなぁ?だから俺が行ってきてやるよ。」
 これはもちろん嘘だ。妹ちゃんが飛鳥ちゃんに通常はあってはならない好意の抱き方をしていることは知っているが、実際にはまだそこまでは達してないはず。
 亜朱架さんがいるから、まもなくそうなるかもしれないけどな。
「じゃあ、お願いするね。」結意ちゃんは弁当箱を預けてきた。俺はそれを受け取り、飛鳥ちゃんのもとへ向かった。

 飛鳥ちゃんはやはり屋上に来ていた。この学校内で教師の目に付かない、サボりに適した場所といえばおのずと限られてくる。
 今でちょうど三時限目のチャイムだ。どうせ渡すなら空腹がピークに達する昼時がいいだろう。
 場所さえ確認できていれば、すこし寄り道しても問題あるまい。俺は屋上を離れ、人気のない旧校舎に足を向けた。

 周りに人がいないことをよく確認し、俺は携帯を取り出した。電話帳から呼び出した番号は、飛鳥ちゃんの自宅だ。

「…もしもし、神坂ですが。」
 やはり。この幼い少女のような…それでいてどこか知性が感じられる声。間違いない、亜朱架さんだ。
「お久しぶりですね、亜朱架さん。斎木です。」
「…あら、隼くん。どうしたの、今は授業中じゃあ?」ある意味当たり前の質問だ。
「亜朱架さんも人が悪いな。サボってるのわかってるくせに。」
「そうね。で、サボってまで電話してきて…なんの用件かしら?」
「では単刀直入に…飛鳥ちゃんの記憶をいじりましたね?」さて…亜朱架さんはどう答えるだろうか?

「ええ。飛鳥には悪いけど、あの結意っていう娘のことをちょっと忘れてもらったわ。」
「何のためにです?」
「あなたもわかっているんじゃなくて?妹のためよ。」電話口でひとつため息をついて、亜朱架さんはさらにこう続けた。
「妹の幸せが私の幸せなの。あの娘が飛鳥を愛していたことはずっと昔に知っていたわ。でもあの娘は飛鳥と2人でいられる幸せを壊したくないから言えずにいた。
 飛鳥はあの娘のことを普通に妹としてだけ愛していたし、もし知ればあの娘を拒絶するのは目に見えているしね。だから隠していよう、と決めていたみたい。
 でも、あの結意って娘のせいでぶち壊しになったのよ。あの小娘のせいで明日香は傷つけられた。だから、2人からその"傷"を消し去ってやったの。」
 おおむね予測どおりの回答だ。亜朱架さんの気持ちはあのときから全く変わって…いや、より強固になったようだ。
「そうですか…でも、今回ばかりは俺も折れることはできませんよ。」
「…今でもあのことを忘れられないの?」
「当然でしょう。忘れられるわけがありませんよ、だからこそ同じことの繰り返しだけはしたくないんです。それでは。」

 電源ボタンを押し、会話を強制終了する。今の俺の心境は最悪だ。
 亜朱架さんは絶対に結意ちゃんを敵としてみなしているはず。俺にとっても今の亜朱架さんは敵だ。
 だけどもう絶対に繰り返さない。でなきゃあ俺はまた失うことになる。俺が唯一愛した、あの人のように。それだけはさせない。


493:名無しさん@ピンキー
08/12/09 18:17:50 bN3TmLaV
天使のような悪魔たち でお送りします

494:天使のような悪魔たち 第8話 ◆UDPETPayJA
08/12/09 18:17:54 P3hsFZwf
* * * * *

 ツー、ツー、と空しい電子音を鳴らす受話器を置き、もういちど今の会話を考察してみる。
 まさか隼くんが結意さんについていたなんて……たしかに結意さんはどこか彼女に似ているけど、所詮代わりでしかない。
 そんなもの求めたところで何の意味もない。彼もいいかげんそれに気づくべきなんだわ。
 でも、私の…私たちの邪魔をするというなら無視するわけにはいかない。最悪、2人とも死んでもらわなきゃいけないわ。

 そこまで思案したところで電子レンジのピー、ピーという音が鳴り響く。いけない、まだ昼食の準備をしているところだった。
 明日香はテスト期間で今週は帰りが早く、そろそろ戻ってくるはず。さっさと作ってしまいましょう。
 まったく…つくづく彼って私の邪魔でしかないわね。

* * * * *

「…ああそういえば、今日は不思議な奴に会ったよ。」

 ここは図書室。俺こと佐橋歩は数ある椅子の一つに腰掛け、目前の少女と会話をしていた。話題は、俺が朝がた見張りをしていたときにここを訪れた男についてだ。

「不思議な?それって男?それとも…」
「男だ、心配するな。」

 その少女…光は怪訝な表情で性別を尋ねてきた。まったく…こいつは俺が女子と軽く一言二言交わしただけですぐ嫉妬するんだ。
 だからまず最初にこれを訊かれるのはもはや毎度恒例と化した。もし女子と話したなんてことになったら、なだめるのが大変なんだ。

「そ、ならいいや。それで、その子は何がどう不思議だったんだい?」と、光が言ってきた。それに対し俺は、
「…視えたんだよ。」とだけ応えた。光にはそれだけで通じるはずだ。誰よりも俺のことを知っている女だからな。

 俺は"あの件"以来、自分だけでなく他人の未来も視えるようになった。ただ、それはかなり限定…いや、唯一の最悪な未来だけ。それは、すなわち『死』だ。
 朝の彼で7人目になるが、今までの6人は死んでいる。みんな俺の知り合いだ。
 たとえば、突然行方不明になった級友の男がいた。そいつの未来は、姿をくらませる前日、学校での別れ際に視えた。
 そいつは一週間後に死体で発見された。傍には女の死体がひとつ、寄り添うように在ったそうだ。
 他にも、視えた直後に事故にあった奴や……自殺した奴までいた。
 この間は、クラスメートの女が後ろから別の女に首を掻っ切られるのが視えた。…そしてどうやらその通りになったようだ。
 だから俺は以前より人を避けるようになった。授業をさぼれるだけさぼり、その間は図書室にこもりっきりだ。
 ノートは光のを写せばすむし…幸い、俺の見た目は不良そのもの。誰も何も言わない。そうやって、なるべく人と関わらないように。
 こんな未来、視たいわけがない。止められない、変えられないのに…それでも、今日また視てしまった。
 
 奴は…神坂 飛鳥といったか。あいつもまた、死ぬ運命にあるようだ。できれば外れてほしいが、恐らく叶わないだろう。
 何故なら…俺の予知は"今まで一度も外れたことがない"んだ。ほんと、無駄な能力だよな。

495:天使のような悪魔たち 第8話 ◆UDPETPayJA
08/12/09 18:18:46 P3hsFZwf
* * * * *

 俺はあのあと屋上に来ていた。さすがにこの季節はだいぶ肌寒いが、今更教室に戻る気もしなかった。
 そのまま惰性でここに居続け、気付けば四限目の終わりを告げるチャイムが鳴っていた。と同時に俺の腹も鳴る。
「あー…弁当ねえんだったー…、どうしよ。」
 明日香のつくった弁当は先ほど結意が持っていた。今から奪い返しに行くのもなんだかあほらしいな。…仕方ない。隼に何か買ってきてもらおう。
 俺はメールを打つべく、ポケットを探る。が…携帯はなかった。それもそのはず、携帯は先日壊れたんだった。ちくしょう、なんてこった。
 心のなかで悪態をつき、ため息をひとつ。そこでひとつの疑問符が浮かんだ。…そういや、なんで壊れたんだっけ?

「よお飛鳥ちゃん!やっぱここにいたか。」
 聞き慣れた声がする。…隼か。
「ああ。腹減った、なんかないか?」期待はしてないが、訊いてみる。
「奇遇だなあ…実はこんなの持ってるんだ。」
 隼は後ろ手に持っていた物体を差し出してきた。それは、先ほど結意が持っていた弁当箱のひとつ…怪しい方だ。
「なんでお前がそれを持ってるんだ?」俺は当然尋ねる。こいつがこれを持つ理由なんて思い当たらないからな。すると隼は、
「それは俺が訊きたいねえ?結意ちゃん、泣いてたぜ。何したんだ飛鳥ちゃん?」と返した。やつにしては珍しく真面目な表情だ。
 何をしたか…分かりきったことをききやがって。
「簡単な話だ。ああいうのははっきり言ってやった方がいいんだよ。だからそうした、それだけだ。」と、簡潔に答えてやった。
 だが何故だ?今の俺自身の言葉はどこか自分を正当化してる気がしてならない。…いや、俺は当然のことを言ったまでだ。悩むことは無い。
 その言葉を聞いた隼は、なにやら黙りこくってしまった。……数秒おいて再び唇が開かれる。

「飛鳥ちゃん…結意ちゃんとデキたんじゃなかったのか?」

 ―――はぁ?結意に続いて隼まで…今日は厄日か?俺と結意が…ないない。あんな変態願い下げだ。もし本当にそうだったら何されるんだか…ああ考えたくない。
 俺はその思いを隼に伝えた。

「………そっか、そりゃそうだよな。もし俺が好かれたとしても悪い気はしないけど…結意ちゃんは残念としか言いようがないしな!」

 わかってくれたか。なら隼、もう結意の名前を出さないでくれ。
 あの結意のすがるような姿を思い出すと無性にイライラするんだ。
 くそっ…あんなやつ、どうなろうが知ったこっちゃねえはずなのに。

「ところで、これどうする。腹が減ったんじゃあ?」
「あほなことを訊くな。そんな何入ってるかわからんもの食えるか。どうしてもっていうんならお前が食え。」
「…いや、やめとくよ。」そういって隼はブレザーのポケットからパンを数個取り出した。…なんだ、最初からわかってたんじゃないか。
 俺は財布から小銭を出して隼に渡し、パンをふたつほどいただいた。


496:天使のような悪魔たち 第8話 ◆UDPETPayJA
08/12/09 18:19:31 P3hsFZwf


 それから2人で他愛のないいつも通りのくだらない話をし続け…気づけば放課後のチャイムが鳴った。
 空はオレンジいろに染まり、校門からはぞろぞろと生徒たちがあぶれていく。
「…俺たちも帰るか。」隼が切り出した。俺はああ、と返事をして2人で教室に向かった。

 ドアをスライドさせ、教室に入る。誰もいない…と思ったら誰かがひとりいた。
 あれは…うちのクラスの生徒会委員、穂坂 吉良の姿だ。
 目が合った。穂坂は俺たちのほうへ向かって歩いてくる。
「またサボったんですか?だめですよ、ちゃんと授業に出なきゃ。はい、これ。」
 穂坂が差し出したのは今日の授業のノートだ。ちなみに穂坂は俺たちがサボるたびにノートを見せてくれる。
 とても字が綺麗なので見てて飽きることはないんだが…毎回毎回、どうしてノートを貸してくれるんだろうか。
 以前その理由を聞いてみたら、「うちのクラスから落第点をだすわけにはいきませんから。」と言われた覚えがある。
 事実、俺が赤点ぎりぎりの点数を取ったときにはめちゃめちゃ怒られて、強制的に残らされて勉強させられたのは記憶に新しい。
「神坂くんがこんな点数を取ったのは私の責任です!」とかいきなり涙目で言い出したんだ。
 ここで断ったら周りの奴らから白い目で見られるだろう。なら、残るしかないじゃないかっ!というわけだ。
 そういや穂坂は結意を嫌ってたみたいだが…まあ所詮ストーカー。生徒会委員からしたらきっと汚名でしかないんだろう。そういった意味では落第点も、か?
「ありがとう、参考にさせてもらうよ。」と、とりあえずノートを受け取る。
 ちゃんと写さなきゃ、次の日チェックされるからな、こいつに。生徒会委員って、ほんと大変だよなぁ。
「あ、そうだこれ、神坂君にあげます。」すると穂坂は鞄から包みをとり出した。なんだそれは、と訊いてみる。
「私の手作りクッキーです。あ、斎木君のはこっちです。」穂坂は鞄から再度包みを出す。俺のと比較すると、若干地味な包みだが…きっとたまたまだろう。
 ちょうど小腹がすいたころだ。さっそくクッキ-をいただくことにした。
 サクッ、と小気味いい音を立てつつ咀嚼する。…旨いなコレ。ただ甘いだけじゃなく、なにか不思議な味がする。なんだろう…とにかくウマい。
「うまいよ穂坂。ありがとう。」「ありがとうな、穂坂さん!」俺たちは2人そろって礼を言う。穂坂は照れながら「いえいえ、どういたしまして。」と答える。

 さて…ノートも写さなきゃだし、隼と一緒にマックでも行くとしよう。
「じゃ、ノート借りてくな。」
「ちゃんと写してくるんですよ?明日は数学提出ですからね。」
「ああ、さんきゅ。」

497:天使のような悪魔たち 第8話 ◆UDPETPayJA
08/12/09 18:20:23 P3hsFZwf
* * * * *

 お兄ちゃん、今日も帰りが遅い。また例のストーカーに追われてるのかなぁ?
 あの雌猫め…私とお兄ちゃんの邪魔ばっかりして、ほんと許せないよ。
 でも一番許せないのは、お兄ちゃん。 呼び方もお兄ちゃんの前では「兄貴」に変えて、私はもうこの気持ちがバレないように必死なのに…
 お兄ちゃんは変わらず私に優しくしてくれる。もう何度打ち明けようと思ったことか。でもお兄ちゃんはきっと私を選んではくれない。
 わかってる。お兄ちゃんの「スキ」はあくまで兄としての「スキ」。私とは違う。
 だからせめて、このくらいはいいよね…?お兄ちゃん。

 私はお兄ちゃんのベッドに顔をうずめ、深呼吸をする。
 すーはーすーはー…ああやっぱりお兄ちゃんの匂いすごくいい………。嗅いでるだけでもうぐっしょりだよぉ…。
 もう…止められない。あとは頭をベッドでうずめながら一心不乱にあそこを弄くるだけ。
 あはぁ!お兄ちゃん、きてぇ!もっと明日香の恥ずかしいとこ見てぇ!いく、いっちゃうよおぉぉ!ふぁぁぁぁん!

 …自己嫌悪。またやっちゃった。
 シーツはまるでおねしょしたみたいに私のおつゆでびしょびしょ。こんなの兄貴に見られたら…嫌われちゃうよ。
 そこで扉が開かれ、誰かが――まさか、お兄ちゃん!?いや、見ないで!!
 でも、現れたのは私そっくりのシルエット。…お姉ちゃんだった。

「あーちゃんはホントに飛鳥のことが好きなのねぇ?」
 そう言ったお姉ちゃんの表情は、けっして侮蔑や嘲笑などではなく…まるでお母さんみたいにほほえましい笑顔だった。

「うん…自分でもどうかしてるのはわかってる。でも、兄貴じゃなきゃだめなの!…好きなの。」
 私はお姉ちゃんに、今まで心の奥にしまっていた思いを吐き出した。なんでだろう…わからないけど、お姉ちゃんになら打ち明けても大丈夫、そんな気がしたから。

「…そう。わかったわ、お姉ちゃんがいいこと教えてあげる。」
「…え?」
「見ててなさい。」
 そう言うとお姉ちゃんは兄貴のベッドの下から雑誌を数冊とりだした。それは私が一番嫌いな、下衆で卑猥な類だ。
 兄貴ったら…こんなもので処理してたんだ。そう思うと無性に目前の雑誌の表紙を飾る雌豚が腹立たしくて、切り刻んで…いや、殺してやりたくなった。
 これが「いいこと」だっていうの?お姉ちゃん。わかんないよ。
 そのとき、視界のなかでなにかが瞬き…雑誌は失せていた。これは…お姉ちゃん何をしたの?

「さあ、やってごらんなさい。」
「え?い、いまの?」
「簡単よ。これに向かって"消えろ"って強く念じればいいのよ。さあ…」

* * * * *

 ノートを写し終え、隼と別れた俺は独り家路についていた。時刻は夜8時。空はとっくに紫いろだ。星も見えている。
 ロマンチストならこんな夜空を見て詩を詠んだり出来そうだが…あいにく俺にはそんな才能も属性もない。
 もういちど後ろを見やり、人がいないのを確認して俺は一安心した。今度こそ本当に解放されたようだ。やっぱりはっきり言ってやってよかったんだな。
 俺は鼻歌をうたいながら、歩を速めた。今日はいろいろなこともあったが、これからはやっと平凡な日々が帰ってくるんだ。
 そう思うと足取りも軽くなる。こんなにも明日が待ち遠しいのは某神の集団のニューシングルの発売前日以来だ。
 
 しばらく歩き、家が近づいてくると後ろに人の気配を感じた。…まさか、結意か?俺は確認も兼ね、気配のするほうへと振り向いてみた。
 が、それよりも早く、後続者から声が発せられた。それは、よく聞き慣れた声色だった。


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