ヤンデレの小説を書こう!Part20at EROPARO
ヤンデレの小説を書こう!Part20 - 暇つぶし2ch300:名無しさん@ピンキー
08/11/29 13:19:39 tea2zSte
ヤンデレネタにはなんでも食いつくスレなんだよな、それで問題もなかったし
強いて言えば荒らしたり問題になるのって
「あれはやめろこれもやめろ」
とか言う規制派かな

301:名無しさん@ピンキー
08/11/29 13:34:45 a+2ntlkm
・優越感ゲームは空気が淀むのでやめましょう

302:名無しさん@ピンキー
08/11/29 13:41:09 h5FipcvS
別にそんなゲームはしてませんよw

303:名無しさん@ピンキー
08/11/29 14:17:22 ABWcdoJO
雑談が続くと、こういうことになるのか……
とりあえず、靴下のみ全裸待機だな


304:名無しさん@ピンキー
08/11/29 14:50:52 oNB6uJbR
>>303
ハクキンカイロおすすめ。暖かいぞ。

305:名無しさん@ピンキー
08/11/29 15:33:31 tea2zSte
神妙になることはないだろw
皆疑心暗鬼になってるな

306:名無しさん@ピンキー
08/11/29 17:06:55 PD774HQI
ヤンデレが全裸ニーソで待機してますお

307:名無しさん@ピンキー
08/11/29 17:47:42 Hzi8FUMo
>>306
想像したら
み な ぎ っ て き た !

308:名無しさん@ピンキー
08/11/29 22:24:32 YzBP5xmE
男の全裸ニーソ想像して泣いた・・・何で想像しちまったんだ俺・・・

309:名無しさん@ピンキー
08/11/30 00:30:30 G6U2f3XW

>>308
ふふっ…他の娘のこと考えたお仕置きだよ?
男くんは私のことだけ考えてればいいの。

310:名無しさん@ピンキー
08/11/30 00:48:14 6HAloDlz
命令に忠実なヤンデレ…



実に良い

311:名無しさん@ピンキー
08/11/30 01:08:17 1NLA1Lyr
レベルEであったな
あの女性バージョンはいいかも

312:名無しさん@ピンキー
08/11/30 02:06:53 BQZ43v8p
雑談が前より続くようになったのは単純に
住人が増えただけだと思っていいよな?

313:紳士 ◆wzYAo8XQT.
08/11/30 02:11:01 dl4DyePw
「お兄ちゃん!? 一体何やってるの!」
 俺は慌てて振り向く。そこには俺の部屋の戸を開けて唖然としている妹がいた。
 や、やっちまった。どう言い訳したらいいんだ。
 何せ俺の格好は全裸。しかも黒ニーソだけを穿いている。白と黒の狭間で揺れ動いたが、やはりニーソといったら黒だと思うんだ、俺は。
 と、そんな俺のニーソ論はどうでもいい。今すべきことはどうやってこの状況を誤魔化すか、だ。

 何で俺がこんな怪奇な格好をしてるかといえば、「春……よくその目に焼き付けておきなさい、これが紳士の正装だ」と死んだ父さんが夢枕に立って―全裸にネクタイという珍奇な姿で―言ったからだ父さんの傍らには、死んだ母さんが微笑んで立っていた。
 二人とも、とても幸せそうだった。
「父さん! でも俺はまだ社会人じゃないんだ! ネクタイなんて持っていない」
 俺は、咄嗟に父さんにそう呼びかけた。すると父さんは、
「ならばネクタイではなく靴下を穿きなさい。それが、若き紳士の嗜みというものだ。お前がニーソックスを穿きこなせたとき、初めてお前は一人前となるだろう」
 そう言い残し、父さんは母さんとともに去っていった。俺は、起きてからさめざめと泣いた。そして決めたのだ。紳士を目指すと。
 その矢先にこの悲劇である。さすが一人前の証、ニーソックス。いきなり俺みたいな若輩者が穿きこなすには無理あったのか。

「も、萌、違うんだ、これには訳が」
 死んだ父さんと母さんが夢枕に立ってこの格好を推奨したんだ!
 ……言えない。言えるわけが無い。そもそも言っても信じるわけが無い。俺だって、他人がそんなことを言っても信じない。というか間違いなく黄色い救急車を呼んで縁を切る。
 しかし実際に体験した身としては、こうせずにはいられなかったのだ。まるで、父母の遺志をないがしろにするような惨苦に思えたのだ。
「お兄ちゃん、その靴下……」
 妹はただ呆然と、俺の穿いているニーソを指差す。
 そうだ。この靴下は萌のものだ。当たり前だろう、変態でもない普通の男が黒ニーソなぞ持っているはずもない。ならば当然買うか借りるかしなければならないわけだ。
 幸い、俺には妹という存在がいた。よって彼女の箪笥からちょっと拝借した次第である。大体お兄ちゃんはな、萌には白ニーソのほうが似合うと思うぞ。ロリロリで。
 しかしその選択が裏目に出たようだ。それもそうだ。兄の部屋に行ったら兄は全裸で黒いニーソックスだけを身に着けていた。これだけでアウトだ。
 しかもそのニーソックスが自分のものであった。もうアウトを通り越してゲームセットだ。通報だ。『妖怪ニーソ穿き』として妖怪図鑑に登録される日も近い。
 妖怪ニーソ穿きはその名のとおり、ニーソックスを勝手に穿く妖怪である。普段は全裸だが、戦利品のニーソックスを身につけている場合もあるという。
 ……断固駆除されるべきである。この地球上に到底生かしておいて良い存在ではない。人類の敵である。
 ああしかし私は気づいてしまった。鏡に映る自分の姿がその忌むべき妖怪そのものであることに。ああなんということだろう。嗚呼何たる悲劇。
 死すべきだ。死すべきである。しかし悲しきかな、自身の妖怪ニーソ穿きという存在としての実存がそうさせてはくれぬ。それどころか、ニーソを盗み、それを穿くという自らが最も汚らわしく思っていた行為を実行せしめよと己の実存が責め立てるのだ。
 穿いてはいけない。穿いてはいけない。穿いてはいけない。
 だがしかし。ああ、どうしてこの責めに抗えようか。私がかくも弱く愚かであることは罪なるかな。人よ、かくも弱きその存在を憐れみ給え。神よ、かくも愚かしき我を憐れみ給え。
 しかし人は私を憐れんでなどくれはしないだろう。私が、そうであったように。神は、人から堕ちた私を哀れみなどしないのだろう。悪魔によって堕落せしめられた幾千幾万の人のように、その焔で私の身を焼き尽くすのでしょう。
 私は頭を抱えて部屋の隅でガタガタを震える。もう外にも出れない。どこにもいけない。出てはいけない。狂ってもいけない。
 私が気を失い、次に意識を取り戻すとき。それは私がニーソを盗み、穿いたそのときの他ならないのだから。
 ああ。嗚呼。
 どうして私。どうして私なのだ! どうして私が、私がこのようなおぞましきけだものに身を窶せばならぬのだ!
 もはや私の悲哀を聞くものはなく、もはや私の慟哭を止めるものはない。
 私に許されたことは、ただ震えることのみなのだから。
 そうして、私は耐えねばならない。狂わぬように。狂いませんように。
 そうして、私は待たねばならない。ただ、ただ終わりを。すべての、終わりを。ただ一人で。永遠に。

314:紳士 ◆wzYAo8XQT.
08/11/30 02:12:15 dl4DyePw

「お兄ちゃん! どうしてそんなことしたの!」
 妹の叫び声で俺は我に返った。現実逃避のあまり、妖怪にに身を堕とした一人の聖人の夢を見ていたようだ。恐ろしい夢だった。泣けてくる。
「……まだ萌には分からぬか。しかし我が妹よ、いつかきっと知るときがくるだろう。人が、なぜニーソを穿くかを」
 妹はまったく反応を示さずこちらを見ている。ちょっとかっこよく言ってみてもダメか。まあ当たり前だろうけど。
「……………………のに」
 妹は俯いて拳を震わせている。
「へ?」
「お兄ちゃんが欲しいっていうなら、そんな靴下じゃなくて私のすべてをあげるのに!」
 ええっと、その話はどっから来たんだ? 妹。
「いつでも、お兄ちゃんのものになる準備は出来てたのに!」
 妹はそういうと、俺に向かって飛び掛ってきた。
 対する俺は一切の防衛の術を持たない。全裸とはかくも無防備なものなのか。それなのに、父さんはああも泰然とたたずんでいた。父さん、あなたの背中は俺にはまだ遠すぎます。
 俺はそのまま妹にのしかかられ、組み倒された。妹は鼻息も荒く、ニーソックスには目もくれず、俺の胸部に嬉々として頬を擦り付けている。
「も、萌、一体どうしたんだ!」
 俺の惨状を見て精神が崩壊したにしては、少々方向がおかしい。まるで主人に飛び掛る犬のような様子だ。
「萌がお兄ちゃんのものになるんだったら、お兄ちゃんも萌のものだよね。萌だけのものだよね。萌以外の誰のものでもないよね。
だから、お兄ちゃんは今日から萌の所有物なの。持ち主は所有物には何をしてもいいの。その代わり、お兄ちゃんも萌に何をしてもいいからね。唇も、胸も、アソコも、ぜーんぶお兄ちゃんのものだからね」
「な、何って!」
「ナニ?」
 妹はそういいながら俺の股間の紳士に手を伸ばす。だ、ダメです! そんなばっちいのに触っちゃいけません! 何時までも無垢な少女のままでいて!
「汚いのなら、なめなめして綺麗にしないとね」
 妹の赤い舌が、口の端からチロリと覗く。
「萌! 俺達は兄妹なんだぞ! 兄妹でこんなこと、許されるわけ……」
「許される? 一体誰が萌とお兄ちゃんを邪魔するの? お兄ちゃんを許してあげられるのは萌だけなんだよ?」
「神様とか、世間体とか、死んだ父さんと母さんとか……」
「そんな神様殺してあげる。そんな人間皆殺しにしてあげる。……それに、お兄ちゃん知らなかったの? お父さんとお母さん、兄妹だったんだよ?」
 妹の狂気より、最後の一言に驚かされた。
「な、ななななな」
「な?」
「な! そんなバカな!」
「本当のことだよ。お母さんが教えてくれたもん。『男なんて、いざとなるとてんで駄目なものよ。女のほうから導いてあげないと、ね』って」
 か、かかかかか母さん! あんたって人は! 俺の美しい思い出を返せ!
「お兄ちゃん、そんなに靴下が好きなら、靴下で踏み踏みしてあげる」
 萌はそう言うと、そのまま白のニーソに包まれた足を俺の紳士の上におろした。
 そのまま、両足でこねるように俺の紳士を刺激する。玉を軽く踏んだかと思えばもう片足を先端に走らせ。棒を両足で挟んだかと思えばそのまましごきあげ。執拗な責めに、俺の紳士もだんだん背伸びを始める。
「な、何するんだ萌! い……今すぐこんなことやめなさい!」
「うふふ、妹の靴下穿いて、妹の足で踏まれて興奮するような変態さんは、妹の足でも舐めてなさい」
 そのまま俺の口に萌の足が押し込まれた。妹の足の香りと、俺のかすかな先走り紳士の味が俺の口いっぱいに広がる。
 足なんて口に入れられたら激怒しそうなものなのに……萌の足の味が、俺にそうさせなかった。
 いつの間にか、俺は自分の意思で妹の足をしゃぶっていた。
「くすぐったいよ、お兄ちゃん。どう、萌の足、おいしい?」
 俺は妹の足をしゃぶるのに必死で、その嬌声に答えることもできない。妹は、嬉しそうに続けた。
「うふふ、お兄ちゃんはヘンタイさんだね。でも、ヘンタイさんだけどぉ……お兄ちゃんだから、だーい好き! ……もう、死んでも離さないんだから」





 俺は、今では立派にネクタイをつけている。

315: ◆wzYAo8XQT.
08/11/30 02:12:50 dl4DyePw
ひたすらに馬鹿なものが書きたくてやった。今は後悔している

316:名無しさん@ピンキー
08/11/30 02:16:53 Sf9+dFY4
>>315
リアルタイムGJ!
ヤンデレ妹は、スタンダードで良いね。


317:名無しさん@ピンキー
08/11/30 02:21:33 EXpYAOvD
GJ!この続きが見たい

318:名無しさん@ピンキー
08/11/30 02:22:26 Ml6OahL8
GJ!!
>>317
下に同じ

319:名無しさん@ピンキー
08/11/30 05:42:31 8hzMZwTQ
ど…どうしようもねぇ……

320:名無しさん@ピンキー
08/11/30 10:53:01 a4XVdPzC
>>315
GJ!!
俺も一人の男として早く一人前の紳士になりたいものだ……

321: ◆.DrVLAlxBI
08/11/30 13:18:10 hZWgCSrL
>>315 GJ! 文章が異様に上手い!
しかしニーソの男が……と想像すると、なんだか寒気が。

>>210氏にささげます。今回は痴漢とヤンデレネタです。
ただエロを加えただけですが。

322:痴漢とヤンデレ:エクスタシー  ◆.DrVLAlxBI
08/11/30 13:19:07 hZWgCSrL
『痴漢とヤンデレ:エクスタシー』

平凡なサラリーマンとは、おそらく俺のことを言う。そう、この俺、『麻生忠雄(あそう ただお)』。
この現代日本の男の平均値を搾り出してみよう。ほら、君も俺の顔を思い浮かべることができるはずだ。
平平凡凡な顔、身体、運動能力。なにも秀でたところなんてありゃしない。社会の歯車でしかない二十六歳。
それなりの人生を生きて、それなりに死んでいく。そんな未来しか見えてない。
スリリングな生き方に憧れた若き日もあったように思うが、今ではもうそんなこと、忘れてしまった。
……それにしても、俺は今いつも通りの満員電車に乗って通勤している。が、何かが変だ。
いつも通りではない。
揺れる電車の中、俺は一人の女子高生と密着状態にある。
その子は某名門女子高に遠くから電車で通っている娘らしく、俺は何度か電車内で見かけていたし、密着状態も一度や二度のことではない。
それはそうだろう。どの車両に乗るかは、意識的にせよ無意識的にせよ、だいたいは決まっているものだ。
その女子高生ははっきりといえば地味で、おとなしそうな少女だった。大柄でも小柄でもないのだが、オーラとも言うべき存在感にかけていて、体格よりも小さく見える。
髪は黒で、後ろで大きな三つ編みにしており、今は俺の胸をうっとうしくくすぐってくる。
顔はあまり眺めたことは無い。おそらく俺と同じ、平平凡凡なのだろう。眼鏡をしているという情報しか、俺の頭には残っていない。
制服の着こなしも地味以外の何もいえない。スカートは校則にきっちり準拠しているであろう膝丈。脚はハイソックスで覆い隠されている。
本来なら、俺は密着状態であろうがその少女になんの興味も示すことは無かった。
だが、今日は違った。
少女の背中に密着している俺だが、その首筋を見下ろしたとき、強烈なフェロモンを嗅ぎ取っていた。
そのフェロモンに当てられて、俺の理性に皹が生じたのだ。
……その首筋、舐めたい。


323:痴漢とヤンデレ:エクスタシー  ◆.DrVLAlxBI
08/11/30 13:19:38 hZWgCSrL
いや―いけない。
俺は平凡なサラリーマン。そんな痴漢行為を働けば、いちやく変態サラリーマンの仲間入りだ。
せっかく婚約して同棲中の恋人もいるのに、俺は職とともに全てを失ってしまう。
―そもそも、あいつがいけないんだ。
俺はフィアンセである、『一条美恵子(いちじょう みえこ)』を思い出す。今は俺の部屋にいるだろう。何をしているかは知らない。
「忠雄さん! ……こ、このいかがわしい読み物は一体なんなのですか!? わたくし、忠雄さんがこんなにいやらしい方だとは思いませんでした!」
ある日、俺の秘蔵の人妻本を発見した美恵子が叫んだセリフである。
一ヶ月ほど前から同棲を始めた美恵子は、真っ先に俺の部屋をガサ入れし、上記のものに類似したセリフを連発してあらゆるオナネタを捨ててしまったのだ。
曰く、「忠雄さん、わたくしという婚約者がありながら、なんですの! このいかがわしいサイトの観覧履歴は!」
曰く、「忠雄さん、このティッシュはなんでございますか! ゴミ箱を妊娠させるおつもりですか!」
曰く、「ああいやらしい! わたくし、このようないかがわしいビデオが世に出回っているなどとは、つゆほどにも知りませんでした!」
曰く、「わたくしの目の黒いうちは、不潔な行為を一切ゆるしませんわ!」
美恵子はつまり、俺にオナ禁を強要した。
ならば恋人なのだから、俺の下半身の世話を美恵子がしてくれるのかと思えば、その期待は間違っていた。
「まあ、まさか忠雄さんは婚前交渉をお持ちになろうというの!? この美恵子、そんな軽い女ではございませんわ!」
美恵子は、思うに、古風すぎるにもほどがあるのではないか。
いや、事実現代では珍しいほどの箱入り娘だ。しかし、ネットも大衆雑誌も無しの生活が、ここまでの堅物を生み出すのは予想外だった。
昔―俺が大学生のとき、当時高校生の美恵子の家庭教師をつとめたとき。これがきっかけで俺達は恋人になったのだが、俺はこの時点ではこれも魅力だと思っていた。
実際、美恵子のこういう世間知らずなところは俺は好きだ。
俺は箱入り娘の親に家庭教師を任命される(美恵子の父は、俺の大学の教授だった)程度にはまあ、高学歴というかインテリと言える人間だったので、美恵子とは知的な分野の話が異様に合った。
下品な外国文学の話ではない。日本の古きよき文学について、二人で話し合った。俺達は互いに惹かれあい、今に至る。
思えば、文学の話で結びついた俺達が性的なものの見解に相違があるなど、当たり前だ。
世の中、こういうことで別れてしまう、言うなれば『夢を見ていたカップル』がたくさんいるのだろう。
……とまあ、こういう理由で俺は一ヶ月オナ禁であるので、性欲は十分すぎるほどに溜まっていた。
もちろん、美恵子のことは愛しているし、美恵子だってたぶん俺を愛している。―愛しすぎているくらいで、俺がテレビの女優をきれいだと褒めただけでそのテレビをスクラップにしたくらいだ。


324:名無しさん@ピンキー
08/11/30 13:20:00 5ENsMLTA
支援

325:痴漢とヤンデレ:エクスタシー  ◆.DrVLAlxBI
08/11/30 13:20:12 hZWgCSrL
その後、ストーカーや無言電話の被害でその女優が活動を休止したのは、偶然だろうか。文学的に考えると、美恵子の生霊が……? いや、ばかな。
とにかく、俺は目の前の地味な女子高生に、すさまじいまでに魅力を感じていた。
ごくり。唾を飲み込む。
いや、なにやってんだ俺は。美恵子のためにも、俺は善良なサラリーマンで有りつづけるべきだ。教授からたくされたあの箱入り娘は、俺以外の人間では手におえないだろう。
それに、美恵子は一人では生きていけない。あの性格では一生社会に出られはしない。俺が養ってやらないと、だめだ。
そう、ここで社会的地位を失うわけにはいかない。
と、ここで違和感に気付いた。
ちらちらと、女子高生が『下』を気にしている。
『下』?
俺は下を見る。
おおーっ!!!!??? NO!
俺の股間のビッグマグナムは見事に肥大化していて、少女の背中をつんつんとつついていた。電車が揺れるたびに、マヌケにも当たっている。
恥ずかしそうに顔を赤らめながら、少女は俺に態度で訴えた。
だ、だめだ……。
謝ろう。ここは謝るしかない。
しかし、無情にも電車の揺れは絶妙なタイミングで強化された。
「―うぁ!?」
倒れそうになる。まずい、何かに捕まらねば!
「んっ……」
ぽよん。……ぽよん?
なんということか。おお、神よ。それほどまでに俺をスリリングな世界に導こうとしているのですね。
俺は見事に少女の胸を掴んでしまっていた。なんというか、柔らかすぎて一瞬別世界のものかと思った。っていうか、死んだかと思ってしまった。
その感触は、まさに天使。肉肉しいというか、俺の身体にはない女っぽさがどうしようもなく俺の興奮を促進した。
こういう地味な娘も、エロい身体してるもんなんだなぁ、と、なんだか感無量だ。
っていうかさ……ああ、俺、捕まったな。
今時さ、こういうセクハラ行為はな。すぐに警察行きのフラグが立つわけなんですよ。そうです。俺は人生終わりました。
皆さん、さようなら、さようなら!


326:痴漢とヤンデレ:エクスタシー  ◆.DrVLAlxBI
08/11/30 13:20:43 hZWgCSrL
……と思ったが、ずっと少女の胸を掴んだまま放心していたにも関わらず、少女は何もしない。
後ろから顔を覗き込むと、ただ顔を赤らめてうつむいているだけだった。
―俺の理性は崩壊した。
「―っ……!」
制服の上から、強く胸をもむ。少女は声にならないうめきを上げた。痛いのだろうか。
相変わらず柔らかくてとろけてしまいそうなエロい肉体だ。
股間のマグナムも、腰にすりつける。腰周りの肉も、ほどよくついている。気持ちが良い。
ぴくぴくと振るえる少女がなんだか可愛らしく、平凡なはずだった俺に眠っていた加虐心に火がつく。
制服の中に、下から手を突っ込み、ブラをずらして生乳を触った。
「はぅ……!」
手が冷たかったのだろう、少女はびくんと跳ねた。
周りの目を気にして見る。みな、背を丁度向けてくれている。俺達を見ている人間などいない。好都合すぎる。
俺は差し込んだ右手ですべすべの肌をひとしきり楽しみ、胸をちょいとつまんだ。
さらにうつむく少女。顔はゆでだこのように真っ赤だ。そんな少女にあまりに魅力を感じる。そうか、俺は変態だったのだな。
胸を、外側から円を描くように撫でてゆき、徐々に中心部に向かっていく。手触りからの推測だが、少女の胸には強いはりと弾力があり、なかなかのサイズながらもつんと上を向いている。
おそらく、俺の思ったとおりの場所―この円軌道の終着点こそが、少女のイチゴの生った場所なのだ。
「ひっ!」
しゃくりあげるように少女が小さく叫ぶ。その声は電車と、多すぎる人々の騒音に容易にかき消された。
俺の指が少女のピンクの果実に行き着いたのだ。色は見ていないが、どう見ても処女だし、なんとなくのイメージで、ピンクだとしておく。
乳首を指ではさみこみ、ちょいとひっぱった。
ぴくりと少女が反応した。
それに気をよくした俺は、くりくりと乱暴に弄ってみる。
「はぁ……ぁ……ぅ……」
あまりの羞恥心に、少女は興奮して息を荒くしていた。
乳首に刺激を与えるたびに、少女の口から声がもれ出る。
俺は、「感じてんのか? 淫乱な女だぜ」と言えるほど自分に自信は持っていない。
俺の手が冷たいからとか、屈辱だからとか、人前だからだとか、そういう羞恥心などの新鮮な刺激が少女を興奮させているのだ。
俺のフィンガーテクで少女が感じているなどとは、どうにも思えない。
が、それでも気分はいい。少女の反応は、痴漢もののAVで見たようなものよりよほど初々しくて可愛らしくて、エロい。
空いた左手も使おう。


327:痴漢とヤンデレ:エクスタシー  ◆.DrVLAlxBI
08/11/30 13:21:13 hZWgCSrL
俺は大胆にも、少女の長いスカートをめくり上げ、少女のたっぷりとした尻を下着の上からつかんだ。
「んくっ……」
少女は脚を震わせて緊張を示した。拒絶の意か。
ならば、と、俺は胸を思いっきり乱暴につかみ、乳首を高速で擦り上げた。
「―っ!?」
ぴくんと少女の身体がはね、下半身への注意がそれる。その間に、するりと手を滑り込ませ、下着の中に手を差し込んだ。
もちろん、最初から急いで秘所に突撃などはしない。まずはその柔らかい尻の感触を味わうのが礼儀と言うもの。
左手で、丁寧に、ねっとりと、絡みつくように尻の肉をもみしだく。
直接触れる少女の尻はすべすべで、指に張り付くように肉質が見事な感触をかもし出していた。
「ぁぅ……ぅぅ……」
少女はもはや抵抗を示さず、俺にされるがままだ。上では乳首を弄られ、下では尻をもまれ。
おそらく人生でも最大級の屈辱だろう。
さて、肉感は味わいつくしたので、そろそろメインディッシュといきますか。
俺は左手をスライドさせ、股間に差し込んだ。
脚の付け根をすりすりと摩っていく。
「くぅ……ん」
少女の顔を後ろからまた覗き込む。あそこに触れる瞬間の顔が見てみたいからだ。
今の少女は、真っ赤な顔で、目を硬く閉じている。恥ずかしさに顔から火が出る勢いなのだろう。正直萌える。いや、燃える。
では、いただくとします。
「―ん―っ!?」
少女の茂みを探し出し、割れ目に指を当てた瞬間、少女の身体が大きくのけぞって口が開かれた。少女は声を抑えようと必死で、持っていたハンカチを噛んだ。
声にならない叫びが歯と歯の間から零れ落ちる。
ああ、いいよ、きみ。その大きさだと、周囲には聞こえない。
「ひぐ……ぁう……ひっ……!」
ちろちろと、弱い力で、じらすように花弁を弄くりまわす。
まだ本格的な性感帯は攻めない。ゆっくりと、反応をうかがいながらが良い。
ぐちゅぐちゅと、いやらしい音が響く。―実際には響いていない。周囲の騒音にかき消されている。
少女のそこは、既に濡れていた。まさか、俺の乳首攻めで本当に感じてしまったのだろうか。
いや、防衛本能というやつだろう。危険なときこそよく濡れるというらしいし。レイプの時が一番濡れるとも聞いた。


328:痴漢とヤンデレ:エクスタシー  ◆.DrVLAlxBI
08/11/30 13:21:44 hZWgCSrL
少女は顔を上に上げて口を大きく開けて激しく息をしている。
肺から空気が押し出される感触があるのだろう。
そろそろいいか。と、俺はさらにその股間をまさぐり、小さな突起をみつけた。
「ん―!!!」
今までで最大の反応。俺がクリトリスをつまんだ瞬間だ。
少女は身体を大きくのけぞらせてびくびくと震えた。
おそらく、達してしまったのだろう。
早いな、つまらん。
俺はお構いなしに、クリトリスをさらに弄くりまわした。
「ひぐぅ……!?」
少女はついにこちらを向いて、抗議の目を向けた。初めて目が合った。
赤く染まった頬には、涙が流れ落ちていた。少女のその姿は、今まで見た誰より―美恵子より、美しいとさえ思った。
「イッたばかりなのに……!」とでも言いたげなその顔を無視しながら、俺は手をさらに加速させた。
「はぅ……あ、あぁ……!!」
少女の声が徐々に大きくなる。おいおい、周りに聞こえるぞ。
だが、誰も俺達を気にせず、吊り革を持ちながらうとうとしている。なんという平和ボケした連中だ。
もう、いいや。捕まってもかまわん。俺のやりたいこと全て、完走してしまおう。
俺は乳首を弄っていた右手を引っこ抜き、スカートの下に動かした。
左手ではクリトリスを弄ったまま、右手では、少女の割れ目を蹂躙し始める。
「ぃ、あぁ……ぅん……くあ……!!」
よほど気持ちよくなってきたのだろう。少女の腰はただの震えではない上下運動を始めていた。
少女はもの欲しそうに腰をくねらせ、その花弁は蜂を誘い、蜜をしたたらせていた。
ぱくぱくと何かを求めて開いたり閉じたりしている少女の秘所に、俺はついに指を……!
『×××駅ー! ×××駅ー!』
なんとっ!
車内アナウンスによって、俺は指を止めた。それは俺の降りる駅だ。
俺ははっと理性を取り戻し、少女から手を離してカバンを拾いあげ、電車から駆け下りた。
車内には少女を残したままだったが、気にしてる場合はない。
顔を覚えられた可能性は有るが、明日から車両を変えればいいだけの話。現行犯でもなければ証拠不十分だ。少女を避ければいいのだ。
とにかく……。
俺は駅のトイレに駆け込み、その個室で抜いた。
ありえない量。丁度アトリエかぐやで描かれるほどのレベルで出てしまった。
今までこれほどに女に欲情したなど、恐らく初めてではなかろうか。美恵子にすらここまで欲情はしたことない。
というか、美恵子はロリだ。
あの少女のように成熟した体はもってはいない。
……その違いが、俺の脳を締め付ける。もしかしたら、俺は明日も少女に痴漢行為を働いてしまうかもしれない。
自分の中の『悪』が間違いなく俺自身の身体を蝕み始めていた。


329:痴漢とヤンデレ:エクスタシー  ◆.DrVLAlxBI
08/11/30 13:22:21 hZWgCSrL
仕事を終えて、家に帰る。どたどたと慌てて美恵子が飛び出してきて、俺に抱きついた。
ああ、美恵子。なにもかもが懐かしい。
「……ん」
「どうした、美恵子」
「忠雄さん、あなた……浮気をしましたね」
「……!?」
俺は答える暇もなく、組み伏せられていた。玄関のタイルが冷たい。
美恵子は俺の腹に馬乗りになり、ヒステリックに叫ぶ。
「どうしてですか! どうして……忠雄さんには、わたくしがいるのに……! そんな雌犬の匂いと、精子の匂いを漂わせ、わたくしに対するあてつけなのですか!?」
「いや、違うんだ美恵子、誤解だ!」
「なにが誤解ですか!」
そうだ、何が誤解なんだよ、俺。全部俺が悪いんだ。美恵子の誤解なんか、なにもない。むしろ正しい。
「忠雄さん……わたくしが間違っていたのですね」
だが、美恵子は急にもうしわけなさそうな顔をして俺に謝り始めた。
「忠雄さんも、一人の男性です。やはり、将来的にではありますが、妻であるわたくしが……その、下のお世話も、しなければならないのですね……」
美恵子は、顔を赤くしながら自分の上着をめくり上げた。
ぺったんこで、ブラすらつけていない胸が剥き出しになった。あの少女と比べると、いささか迫力に欠けるだろう。
しかし、婚約者の今まで見たこともないような部分を見た俺のベストフレンドは、またまた天を目指して背伸びをしていた。
一発だしただけじゃ、一ヶ月の蓄積はなくならなかったと言うのか。
「忠雄さんの……」
ごくりと唾を飲み込み、美恵子は俺のズボンを剥ぎ取った。露出したマグナムを小さな手で掴む。
「ふごっ!!」
驚いて変な声を出してしまった。美恵子が俺のマグナムをぺろりと舐めたのだ。
「ああ、これが忠雄さんの……夢にまで見た、忠雄さんの……」
「お、おい美恵子、まて!!」
「忠雄さん、忠雄さん……!」
俺の声なんてまるで聞いてはいない。美恵子は夢中で俺のモノを舐め上げていた。
まるで大好物のアイスにでもしゃぶりつくように、小さな口で必死にむしゃぶりつく。


330:痴漢とヤンデレ:エクスタシー  ◆.DrVLAlxBI
08/11/30 13:22:51 hZWgCSrL
「わたくしも、忠雄さんと同様に我慢していたのですよ……。でも、もう限界でした。忠雄さんが他の女に取られるくらいなら、こんなくだらない主義は捨てることにします!」
……なんつーか。俺達は空回りしてるんだなぁ。と、つくずく感じた。
そういえば、美恵子は俺のモノを舐めている。ということは……。美恵子の尻はこっちを向いている。
俺は美恵子のスカートを掴んであげ、尻を露出させた。
二十四歳にしてはちいさくて可愛らしい尻と下着。
「た、忠雄さん……!?」
「我慢してたんだろ? なら、俺もご奉仕してやるよ」
下着を一部だけずらし、割れ目だけを露出させ、人差し指で触れた。
「ああ……!」
ぴくんと美恵子の尻が跳ねる。あの少女にしたときとは違って、声を押さえる必要がない。美恵子の、小さな少女のような声が心地よい。
花弁を指で押し広げ、中を確認してみる。
「た、忠雄さん、見すぎですよ! ……そんなところ、汚いでしょう!?」
「いいじゃないか。綺麗だぞ、美恵子」
ピンク色の膣が見える。俺はそこに人差し指を先っぽだけ入れ、ゆっくりかき回した。
「はぅ……ああっ!!」
ぴくぴくと、美恵子は反応する。その間にも俺の股間の怪物を小さな手で擦り上げるのは継続させている。
「お前、相当な淫乱だったんだな」
「ひぃ……い、言わないでぇ……!」
弄れば弄るほどに、美恵子の秘所からは蜜が溢れ出し、俺の顔に滴り落ちていた。
「俺の指を必死でくわえ込んで、可愛いまんこだ。お前にそっくりだぞ」
「わたくしの……一部なのですから……あっ……あたりまえ……です……!」
可愛い幼な妻(二十四歳なのに、外見は十四歳くらいに見える)への愛情を俺は完全に取り戻しつつあった。
あの少女の肉体に欲情した俺自身が、もはや嘘のようだった。
そうだ。
やはり、あの少女には絶対に近づかないでおくべきだ。
俺にはもう、こんなに魅力的な妻がいるじゃないか。


331:痴漢とヤンデレ:エクスタシー  ◆.DrVLAlxBI
08/11/30 13:23:22 hZWgCSrL
次の日。
なぜ、こんなことになっているのか。
俺は再び少女と密着していた。
車両は変えたはず。
……まさか!
少女も俺を避けるために車両を変え、それがたまたま同じになったとでもいうのか?
いや、それにしてもできすぎている。
同じ車両でも、ここまで満員電車のなかで密着などできるか? 移動も制限されているのに。
少女がわざとここに来たとしか思えない。
「……あの」
「!?」
びくりと、今度は俺の肩が跳ねてしまった。
少女が話し掛けてきたのだ。
何を言われるのだ。まさか、俺の痴漢行為を携帯ムービーに収めたから、神妙にお縄につけというのか?
それとも、俺を脅すのか? 金を出せと。なら、昨日大人しかったのは演技で、この少女はとんだくわせものか?
「あなた、麻生忠雄さんですね?」
「……ご、ごめんなさい」
俺は反射的に謝っていた。なんと、少女は俺の名前を知っていたのだ。馬鹿な! 調べたのか? それとも、毎日同じ電車に乗っているからいつのまにか知られて……。
ごまかすのももう無理だろう。しらばっくれるよりは、素直に謝ることにした。
「あなたは……犯罪者です……。それは、わかります、よね?」
丁寧な口調で少女が問い詰める。あまり怒っているようには見えない。感情の起伏が少ないタイプなのか。
それとも冷静に見えているほうがむしろ本気で怒っているというあれなのか。
「はい……どのような処分も甘んじて受けます」
もう、諦めた。
俺は小心者だ。こんな局面で対抗しようなんて気は起こらない。
「なら……」
少女は俺に何かを突きつけた。―って、ナイフ!?
「静かにしてください。これから私の要求を言いますから」
こくこくと、俺は必死で頷いた。
「まず、私は『近衛 木之枝(このえ このえ)』といいます。名前を復唱してください」
「こ……このえ」
「そうです」
少女は満足そうに微笑んだ。

332:痴漢とヤンデレ:エクスタシー  ◆.DrVLAlxBI
08/11/30 13:24:05 hZWgCSrL
「麻生忠雄。名門国立××大学文学部卒業後、御神グループの系列である某大会社に入社。徐々にその能力を認められ、将来有望なエリートサラリーマン。その性格は真面目で、容姿とあわせて癖が無く、平凡そのもの。婚約者が一人存在。
 名は、一条美恵子。その父は××大学文学部教授であり、彼の著書はロングセラーを多数たたき出す、かの有名な一条博士。……すばらしい経歴ですね。あなたのような方が、犯罪者などとは、世の中悪くなったものです」
「そ、その通りです……」
なんで、俺の情報がこんなに……! 馬鹿な! 一日やそこらで、俺の顔をチラッと見ただけで?
前々から調べてないとこうはならないんじゃないのか?
俺は、この少女……木之枝に底知れない恐怖を覚えた。腰が抜けて、まともに声も出ない状態に追い込まれる。
木之枝は、俺にさらに身体をすりつけてくる。
―そして、その手が俺の股間を掴んだ。
「あなたのような犯罪者はほうっては置けません。よってこれからは私が管理させていただきます。わかりましたか?」
頷く。
「これからは毎朝、この時間のこの車両に乗ってください。そして、私のいる場所まで移動してください」
頷く。
「それからは私が監視します。私以外の女性に手をだしてはいけませんから、これからは私だけに痴漢行為を働くこと。これは、あなたのような犯罪者の性欲の捌け口を身を持って勤めるという、私なりの犯罪の抑止です。いかなる感情的行為にも当てはまりません」
頷く。
「これらの要求に逆らえば、分かりますよね? 順調な人生の素晴らしさは、失ってから気付くものなんですよ」
頷くしか、なかった。
「では、最後の要求です。私に昨日の続きをしてください」
もはや、恐怖で逆らうなどという選択肢は消えていた。

ああ……俺の人生、終わったな。

注:くれぐれも、痴漢は犯罪です。

333:痴漢とヤンデレ:エクスタシー  ◆.DrVLAlxBI
08/11/30 13:25:07 hZWgCSrL
投下終了です。
>>210氏のすばらしいアイデアに感謝いたします。

334:名無しさん@ピンキー
08/11/30 14:23:36 GMmwnYOI
>>333
GJ。痴漢アカン

335:名無しさん@ピンキー
08/11/30 14:50:36 D5QeouZV
>>333
GJ!その通りだ。痴漢はいけない。

…というわけで俺もこうなるように痴漢するわ。

336:名無しさん@ピンキー
08/11/30 14:55:16 hg5vXnC8
うむ、痴漢イ・・・アカン

337:名無しさん@ピンキー
08/11/30 15:54:33 EBFRjbJF
GJ

338:名無しさん@ピンキー
08/11/30 16:32:47 AQf3RIWH
ヤンデレ娘が逆痴漢なら大歓迎さ!

339:名無しさん@ピンキー
08/11/30 17:32:38 D4dTlEEn
ちょっと335に痴漢されてくる。

340:名無しさん@ピンキー
08/11/30 19:00:51 /fPqX8dO
つまんね

341:名無しさん@ピンキー
08/11/30 19:21:05 ssYbLRp2
ヤンヤン♪

342:名無しさん@ピンキー
08/11/30 19:21:35 Vuumy6Vc
>>333GJ!
だが紳士の皆は真似しちゃいけないぞ!

343:名無しさん@ピンキー
08/11/30 20:11:02 Sf9+dFY4
>>333
GJ!
痴漢は犯罪です!

というか異様に上手いなあ。

344:名無しさん@ピンキー
08/11/30 22:18:16 94/e38yE
どの作品もハイクオリティでうれしいぜ

不妊症のヤンデレに「家庭を持つなら子沢山がいいな」って言ってみたい

345:名無しさん@ピンキー
08/11/30 22:27:17 IyOcozwk
ふぅ…

ウム、痴漢はいかんな
痴漢はいかんが>>333GJ!!

346:名無しさん@ピンキー
08/11/30 23:07:05 RTAk2POc
>>340
死ね

347:名無しさん@ピンキー
08/11/30 23:31:49 vNwNgI5J
前からこのスレ(というかたぶんこの作者)についてる粘着だから、反応しないほうがいいよ
大切なのは荒らしへの敵意より、投下してくれる人への敬意とGJの精神だ

348:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:08:22 NNdmPvU5
>>346
作者乙

349:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:10:07 aS/pGbqA
>>348
粘着ご苦労様です^^^^^^^^^^

350:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:12:19 EQo+XaYL
>>349
作者乙

351:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:15:36 EorITxF8
ヤンデレの邪魔をしたい

352:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:20:39 rvY8P6mu
>>351
ヤンデレ「邪魔しないで!!」
―ザシュッ―
351「ぐはぁ!…」
ヤンデレ「○○君待って~」


353:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:20:52 LrEXnscC
ヤンデレの目の前で他の女の名前を呼びながら抜いてみたい

354:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:22:14 sfIJbkx5
馬鹿な……! 危険すぎるぞ

355:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:22:35 WDaWTiCh
ヤンデレの追ってる男に逃げるアシストをしたい

356:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:31:37 lXgpvpE4
よほど死にたいのかお前等は・・・

357:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:38:14 Zecmvfyb
>>344
すさまじい外道だなw

358:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:56:35 EQo+XaYL
 

359:名無しさん@ピンキー
08/12/01 01:40:38 PeLsRDdI
>>355
んじゃ、俺はヤンデレの追うアシストをするか。

俺「アシストするぜ!」
ヤ「邪魔よ」
俺「ぐはッ!(死」

・・・邪魔しないでおこう

360:名無しさん@ピンキー
08/12/01 02:55:26 NG7HWXtK
よし、婦女暴行犯とヤンデレさんで…
主人公が救いようの無いクズになるな…

男「ああ、もうどうにでもなれ!どうせダメなら一発ヤッてやる!」
ヤンデレ(その人生買った、やっと私のモノになる…)
男はノーパンミニスカートの女を後ろから羽交い締めにして車に引き込む。
男「来るんだ!…ヘヘッ…そんな恰好して…ジックリ可愛がってやる。」
ヤンデレ「あなたの方から手出ししてくれるなんて…やっと…やっと…」
男「な…悲鳴もあげないし怖がってもいない…どういう事だ!!」
ヤンデレ「わたしのものになりなさい。お楽しみは私の部屋で…」
バチッと言う音を立てたあと男は気絶した。次に目覚めたときそこは…
ヤンデレ「お目覚めですか、愛しの…さん」
男「なんで…俺の名前を!何だこの部屋は…」
ヤンデレ「私とあなたの狂おしいまでの愛の部屋…すばらしいわ…」
男はレイプするつもりが監禁された。  

361:名無しさん@ピンキー
08/12/01 05:05:16 2Q7T1N5H
今年も後1ヶ月か…ぽけもん黒12月号マダー?

362:名無しさん@ピンキー
08/12/01 07:32:27 hqMnpsfu
やたらと催促する奴が多いのは仕様ですか?

363:名無しさん@ピンキー
08/12/01 10:46:35 ZTdsoKjU
エリートサラリーマンって平凡な存在なのか?

364:名無しさん@ピンキー
08/12/01 12:55:40 i/dFDF35
しかも婚約者持ちって……。
リア充じゃねえか畜生!

365:名無しさん@ピンキー
08/12/01 13:27:56 61T2x4kQ
おばあちゃんは言っていた、リア充ほど自分の事を平凡だと思うって……

366:『リア充』のなり方
08/12/01 15:17:00 tqHkITzv
>>364
>>364君大丈夫だよ!>>364君は私にとって『特別な存在』だから!
 大好きだよ>>364君。あなたのためだったら私何でもしてあげるよ?
 立派な職に就きたいのなら私が口利きをしてあげる。結婚したいのなら私が今すぐにでもしてあげる。
 あなたに捧げる為に守り通してきたこの身体を思う存分滅茶苦茶に犯していいんだよ?
 だからもう他の女の事なんて見ちゃ駄目……あなたには私だけ、私にはあなただけでいいの。
 ね?みんなに『リア充氏ね!』って妬まれちゃうくらい幸せな夫婦になろう?」

 いつもの様に愚痴をこぼした>>364の目の前で美しく微笑む少女。
 しかし、その可愛らしい唇からこぼれた言葉からはありありと狂気が感じられた。
 ずっとただの友達だと思っていた少女の激情を垣間見てしまった>>364
 これから何が自分の身に降りかかるのかというあまりの恐怖に一歩も足を動かすことも出来ない。
 しかし、彼は気付いてしまった。心のどこかでこの状況に微かな期待と喜びを確かに感じていることに。

(もしかして俺は望んでいたのか?こうやって誰かに気が狂いそうなほどの愛情を注いでもらう事を……)

 最早>>364にはその場から逃げ出そうという考えすら浮かばなかった。
 そんな彼の姿を見て、少女はより一層美しく笑った。今まで一度も見た事のない妖艶な笑みを浮かべて。

「大丈夫……私がちゃんと>>364君を『リア充』にしてあげるから……」

 彼女は身動きの取れない>>364をゆっくりと押し倒し、その体にしな垂れかかる。
 そして、彼の唇に優しく噛みつきながらその柔らかな肢体を包む衣服を脱ぎ捨て……

(続きは省略されました。全てを読むにはワッフルワッフルと書き込んでください)


367:名無しさん@ピンキー
08/12/01 17:16:33 R4Z8fN/2
ワッフルワッフル

>>364ウラヤマシス
(´・ω・`)

368:名無しさん@ピンキー
08/12/01 17:16:40 5oQKutz7
もっぽすもっぽす

369:名無しさん@ピンキー
08/12/01 17:19:56 NrqLFDR/
ワッフルワッフル

370:名無しさん@ピンキー
08/12/01 19:00:36 Zi9vrvhs
ワッフルワッフル

371:名無しさん@ピンキー
08/12/01 19:13:28 rvY8P6mu
ワッフノレワッフノレ

372:名無しさん@ピンキー
08/12/01 19:28:08 lXgpvpE4
ワッフルワッフル

373:名無しさん@ピンキー
08/12/01 19:39:00 EorITxF8
わっふるわっふる

374:名無しさん@ピンキー
08/12/01 19:54:13 hlZFzTXq
ワッフルワッフル

375:名無しさん@ピンキー
08/12/01 19:55:49 u3l8YIyq
無駄に使うなよ

376:名無しさん@ピンキー
08/12/01 20:07:24 dsmWZBer
俺も>>364 になりたいね

377:名無しさん@ピンキー
08/12/01 20:09:20 dsmWZBer
おっとsageを忘れてた

378:名無しさん@ピンキー
08/12/01 20:19:26 WDaWTiCh
俺も養われてニート生活送りたい

379:名無しさん@ピンキー
08/12/01 20:37:53 Zecmvfyb
しかしヤンデレに経済力と経済性があるとは思えない
よって>>378は心中ルートか
え?無理心中じゃないよ?双方同意の上だよ?

380:名無しさん@ピンキー
08/12/01 20:38:00 9EXnB1KD
リア充の>>364なんか
死ねばいいのに

381:名無しさん@ピンキー
08/12/01 20:56:10 iToyO80I
愛しい人を養うために仕事をしなければならない
でも仕事に出かけたら当然その間は愛しい人に会えない
ああ、どうしたら

382:名無しさん@ピンキー
08/12/01 21:04:39 qxuKuuuF
頂点に登り詰め、側近としてそばにおく

383:名無しさん@ピンキー
08/12/01 21:10:00 qv+XYR4b
愛する人の為に頂点に登り詰める

女よりどり

ヤンデレの害虫駆除タイム

384:名無しさん@ピンキー
08/12/02 00:35:42 DjgsMK1U
ヤン「気になる子とかはいないの? 『あの子が好き』なんてバカなことを言わなくても」
 男のいるクラスは公立共学高校にして文系だから女子の占める割合が大きく、四十人のうち七割は女子だ。
ヤン「ねえ、なんでだんまりなの? 男くんに彼女が出来たとか聞いたためしがないけど、隠れて作ったりしてるの?」
男「何を? 最近は陶器を作ってるんだが」
 話の意図がつかめず、とりあえず話を別方向へ持っていくためにダイニングテーブルの上に鎮座する花入れを指差した。
男「グリップ性を重視したそのつくりは、掴んで鈍器として使うのに最適」
 ヤンデレが机を叩き、重そうな花入れが揺れる。華奢な体からは想像もつかないような一撃。不満のオーラがひしひしと伝わる。
ヤン「隠れて浮気して女作ってるかどうか、ってこと!」
男「まさか、いないよ。それに……いたら話してる」
ヤン「そっか、そうだよね。ひひひひひぃ、安心したよ」

この花入れが凶器になる可能性に1000ペリカ

385:名無しさん@ピンキー
08/12/02 00:39:04 vkMiGurA
第二次ヤンデレブーム来ないかなぁ

386:名無しさん@ピンキー
08/12/02 00:39:21 DjgsMK1U
ヤンデレと女さんは微妙な仲。
至ってフレンドリーな女さんなのだから、
そこまで一方的に嫌わなくてもいいものをと思うが、
改善される様子は微塵もない。


387:名無しさん@ピンキー
08/12/02 00:46:16 0hpeGTPc
ほの純ノリはなんかな・・・

388:名無しさん@ピンキー
08/12/02 04:30:51 6Ib4SJyl
投下します

389:Un reencounter
08/12/02 04:33:27 6Ib4SJyl
―今日は卒業式。中学校生活最後の日。私は今日この中学校を卒業する。
その式も終わり、卒業生達は最後の思い出を作ろうとそれぞれ世話になった担任、仲の良かった友達や後輩,想いを寄せていた人の元へ足を運ばせている。
きっとあたしもその内の一人に入るのだろう。いろんな男子達から今更ながらの告白を受けたけど全て断り、今は人気のない校舎裏に向かっている。

しかし、彼女が二人きりで直接話したいことは一体何だろう?
てっきり正義と三人で何かするのかと思っていた。
彼女はここを卒業して彼らと違う高校に通うことになる。寂しいことだけど彼女の両親は厳しいらしく、言うことには逆らえないそうだ。
しかし、彼女が推薦で合格が決定したと聞いた時、あたしは少しだけ嬉しかった。
今まではこのぬるま湯のような優しい関係が崩れるのが怖くて、互いに正義へ過剰なアプローチをかけることが出来ずにいた。
でも彼女が違う高校へ進学してくれれば、何の後腐れもなくあたしと正義は堂々と付き合うことが出来る。あたし達はこのまま地元の同じ学校に進学するから。
誰も傷つくことなく、彼女とは親友のままで正義を手に入れることが出来る。
そんな打算的な考えが浮かんだ自分がすごく嫌だった。
「ゴメンゴメン。なんかたくさん男子に絡まれてさ。今更告白してきてももう遅いってのにね?」
あたしの親友である『鈴音』が壁に寄り掛かり、ぼうっと立ちすくんでいた。
なんだか元気がない。今日は卒業式だから感傷に浸っているのだろうか?
「ふふっ、そうですねー」
いつもよりも声が硬く、春の野原で咲く健気な花のような笑みは見られない。
どうやら緊張しているようだ。
「んで話って何?正義と一緒に写真を撮ってこいって親がうるさいから早く行かないといけないのよ。全く小学生じゃあるまいし、困ったもんよね」
本当はこうでもしないと素直に正義と写真なんか撮れないのだけど、彼女の前だからいかにも迷惑そうに言っておく。
「あ、あのね。私、佳奈ちゃんにお願いがあるんですけど……」
彼女の声が震える。
「―私、よっくんのことがずっと好きだったんです!だ、だからよっくんに告白するのを手伝って欲しいの……」
その瞬間、あたしの中で一気に感情が爆発した。それはとても黒くドロドロとした醜い感情。
ああ、とうとう言っちゃったんだ。しかも、万が一告白に成功しても離れ離れになるっていうのに余計なことしてくれて。
あたしはずっと二人に気を使って言わなかったのに。鈴音だけずるいよ。あたしの方が正義のことを想っているんだから。
鈴音への憎悪や嫉妬であたしの心があっという間に覆われる。
そして次に感じたものは深い悲しみ。
こんな事を思ってしまう自分が嫌だった。できればずっと彼女とは親友でいたかった。
でももう元には戻れないことをあたしは悟っていた。
あたしと鈴音は親友ではなくなり、新たに構築された関係図に彼女はこう記される。
―彼女は“敵”だと。
「―あ、あのさ」
だからあたしはいつもの様に嘘をつく。
「私と正義、実は付き合ってるの。だからゴメン……」
でもこの嘘は正義とそこまで親しくない人にしか使った事がない。
多分正義と極めて親しい鈴音に通用する確率は低いだろう。
だって正義本人がきっぱりと否定してしまえばそれまでだから。
彼は嘘をつかないことをあたし達はよく知っている。


390:Un reencounter
08/12/02 04:34:16 6Ib4SJyl
「え……?」
だがこの稚拙な嘘は思いのほか通じてしまった。
目を大きく見開き、カタカタと小刻みに震える彼女の姿は嘘をついた自分からしてもとても信じられなかった。
頭のいい彼女のことだ。すぐに嘘と見抜かれるかと思ったのに。
それだけあたしの事を親友として信頼していたのだろうか。そう思うととても胸が痛む。
しかし、これを機と見たあたしは彼女の動揺に乗じてすらすらと嘘を並べていく。
このまま一気に畳み掛けてしまえ。そう思ってしまう自分に恐怖しながらも嘘をつくのは止められなかった。
その嘘を素直に信じてしまった鈴音の顔は徐々に青くなっていく。足元もおぼつかない。
「そ、そうですか……ご、ごめんね。変なこと言っちゃって……………………よっくんと幸せにね!」
声は聞き取れないほどに震え、目からは涙が溢れそうになりながらも、彼女はあたしに祝福の言葉と精一杯の笑顔を贈った。
次の瞬間、鈴音は一言も喋らずにこの場から走り去る。
あたしは慌てて何か声を掛けようと手を伸ばした。
でも彼女に何と言って声を掛ければいいのかわからなかった。
「今のは全部嘘でしたー!ゴメンねー♪」なんて今更言えるわけがない。
そもそもあたしは鈴音に何か声を掛ける資格さえない最低な女だ。
あたしが彼女に出来ることは何もない。ただ黙ってこの咎を背負うことしか出来ない。
それに三人全員仲のいい友達のまま綺麗に別れることも出来たはずなのに、彼女は敢えてそれを壊すことを選択した。
その結果、あたしが賭けに勝ち、鈴音は負けた。
例えそれがイカサマを使った勝負だったとしても知らなければそれはイカサマじゃない。
あたしは親友という関係を鈴音に無理矢理壊されて、親友か正義のどっちを取るか、天秤に掛けさせられた。
その結果、正義を取っただけじゃない。あたしだけに非があるわけじゃない。鈴音だって悪い。
そう開き直れたら、自分の利益のためだけに生きることが出来たらどんなに楽だろうか。
「ごめんね鈴音……ごめんね…………」
懺悔のように繰り返し呟いている内に、いつの間にか頬に温かい雫が伝っていた。
その勢いは止まることなく、あたしを探しに来た正義と両親に見つけられても尚、あたしは涙を流し続けていた。
みんなはあたしが卒業式で感極まって泣いてしまったものだと勘違いして、いろいろと励ましの言葉を掛けて慰めてくれた。
違う!!そうじゃない!!
あたしは親友を裏切って、傷つけた挙句、その過ちを今更後悔して勝手に泣いているだけのどうしようもない女なの。
みんなに慰められるどころか、罵倒されて当然の卑劣な人間なの。
でも何があったかなんて話せるはずもなく、ただ黙って泣き喚くことしか出来なかった。
甘い慰めの言葉を掛けられるたびに心を鋭く抉られる。みんなの優しさがただ痛かった。

―あの日、あたしは何を選べば全てを失うことなく、仲良し三人組のままで笑い合っていられたのかな?
答えは一年以上経った今でも出ないまま、あたしは正義の一番傍で立ち止まっている。


391:Un reencounter
08/12/02 04:35:26 6Ib4SJyl
「ふぅ……」
窓の外から見える澄んだ晴れ空とは対照的に、なんとなく憂鬱な気分のあたしは周りに気付かれない程度にそっと溜息をつく。
相変わらず代わり栄えのしない日常をあたしは送ってる。
いつも通り正義に起こされ、正義と一緒に登校し、正義と一緒に授業を受ける。
これだけでも十分幸せなはずなのだが、人間という動物は一度満たされるとそれと同じ量の幸福では満足できなくなる。
つまり、あたしは人間だから満足できない。以上、証明終了。
そう割り切ることが出来たらどんなに楽だろうか。少なくともこの現状にやきもきすることはなかったに違いない。
あたしはいつだって正義のことを見てきて、正義のことを一番に考えて行動してきたっていうのに。
どうして正義はあたしだけを見てくれないのだろうか?
「……太田よ。この前話したと思うが俺が金欠でヤンデレッドのフィギュアを買い損ねたのは知ってるな?」
「まあ、あそこまで落ち込んでいた君を慰めたのは僕だしね。嫌でも覚えてるよ」
今だってそう。
正義が同じクラスの友人の太田君に、どんよりと落ち込んだ表情で話しかけている。
多分例によって特撮物についての話だろう。正義が彼と話す内容なんてそれ以外にない。
はっきり言ってあたしは太田君のことをあまり良く思っていない。
何故なら彼は正義にとって共通の趣味を持つ親友という重要度の高いポジションに位置しているからだ。
あたしには正義だけ、正義にはあたしだけでいいのに。正義の関心が少しでもあたし以外に向けられるのは耐えられない。
なのに彼はあたしと正義の時間を奪う。せっかく彼の恥ずかしい趣味をやめさせようとしているのに、それを助長するような真似さえする。
どうしてあたし達の間に割り込んでくるの?恥ずかしいと思わないの?
あんた邪魔……邪魔なのよ……
「それで?まさか僕のを譲れとか言い出すんじゃないだろうね?いくら君でもそれはダメだよ。オタクが全員観賞用、保存用、布教用に三体買うと思ったら大間違いだ」
「わかってるよ。俺はそんな見苦しい真似はしない。今でもあれが売っている店を知らないか聞きに来たんだ」
正義は真剣な顔をで太田君に何かを頼んでいる。
ああ、もうよく聞こえないじゃない。もっと大きな声で話しなさいよ。
「んー……ちょっと待って」
彼はノートを一枚破るとさらさらと何かを書き始めた。
一体何だろう?
「ほら。多分まだここなら売ってると思うよ」
「おお、恩に着るぞ太田!やはり持つべきものは友達だな!」
太田君から手渡された紙切れを大事そうに掲げて、まるで宝物を見つけた子供のように無邪気にはしゃぐ正義。
「はいはい。いつも君はそればっかだな」
そんな正義の姿を見て肩を竦めて呆れたポーズを取る太田君。でもその口元は微かに緩んでいる。
「細かいことは気にするな。わが親友よ!」
「こら、離せ。暑苦しい」
調子に乗った正義は太田君の肩に手を回し、豪快に笑い続ける。
太田君も嫌がっているような態度は取っているけど、本当はそうでもないのだろう。
でなければあんなに仲良く二人で笑い合うことなんて到底できやしないからだ。
そう。二人はいかにも僕達はお互いをよく理解している親友ですって顔で爽やかに笑い続ける。

……むかつく。
あたしと一緒にいるときはそんな顔しないくせに。
雑誌に書かれているデートスポットについて話しても、おしゃれな服を着ているのを見せても、レストランで美味しい料理を食べても、あたしにはそんな嬉しそうな笑顔を見せてくれないくせに。


392:Un reencounter
08/12/02 04:35:57 6Ib4SJyl
どうして?もしかして男の太田君の方がいいの?あたしじゃダメなの?
ダメ!!そんなの絶対ダメ!!誰が何と言おうともあたしは絶対に認めないんだから!!!
ホモなんてただの気持ち悪いだけの犯罪者予備軍だよ。太田君じゃ子供も作れないんだよ?
早く正義を止めなきゃ。そんな考え方はおかしいって説かなきゃ。
彼をそんな間違った方向に進ませちゃダメだ。あたしが正しく導いてあげなきゃいけないんだ。
そのためだったら、その……え、Hなことも教えてあげなきゃいけないよね?!
せ、正義を正気に戻すためだったらし、しょうがないわ。
し、したくてこんな恥ずかしいことしてるわけじゃないんだからねっ!!
ま、まずは優しくキスするのが基本中の基本よね?この前読んだ雑誌にもまずは雰囲気作りが大事だって書いてあったし……
じ、じゃあ、目ぇ閉じて、正義……んむっ……れろっ、ちゅ……んん?!んむむむむ……
っぷはぁ!はぁはぁ……し、舌まで入れるなんて聞いてないわよ正義ぃ……
それにしてもファーストキスがこんなに激しくていいのかしら……体が蕩けちゃいそう……
次はあたしの服を優しく脱がせて頂戴。乱暴にやったら殴るわよ。
んっ……どこさわってのよバカ……くすぐったいわよ……
どう?これが女の体よ。結構スタイルには自信があるんだけど……
きゃっ?!ち、ちょっと、いきなりおっぱい揉むなんて……
んっ、べ、別に気持ちよくなんか……ひいっ!!乳首舐めちゃだめぇ!!
え?じゃあどこを触って欲しい?ば、バカッ!!そんなの言えるわけないでしょ!!この変態!!
ひゃうっ?!ど、どこ触って……きゃひぃ!!そ、そこらめなのぉ……
えっ!?ち、違うっ!!佳奈美変態じゃないもん!パンツぐちょぐちょになんかなってないよぉ……
あうっ!!だ、ダメって言ってるのにぃ……あひゃ!!そこぉ!!そこ気持ちい……え?な、何でやめちゃうの……?
ダメって言ったじゃん?そ、それはその……言葉の綾で……本気で嫌がったわけじゃないのに……
え?!続きをして欲しかったらちゃんと素直になれ?で、でもそんな恥ずかしいこと言えるわけ……
ああっ!!ごめんなさい!!やめちゃダメッ!!言うからっ!!何でもするからやめちゃダメェ……
ごめんなさい。佳奈美は嘘つきました。あたしは本当は正義に触って欲しくておパンツびちょびちょに濡らして喜んじゃう変態です。
ち、ちゃんと言ったよ……だ、だから早くお、おまんこいじってぇ……ひぃぃ!!そこ、そこ気持ちいいよぉ!!
だめえっ!!そこいじられるとおかしくなっちゃう!!あ、ああ……あああああああああああああっ!!!
はぁはぁはぁ……い、イッちゃったぁ……あたし正義にイカされちゃったんだ……
え?まだ女の良さがよくわかんない?そ、それって……わ、わかったわ。ちゃんと最後までするわよ……
見て、正義……ここが女の子の大事なところよ正義……ここに正義のおっきなおちんちんを入れるの……
あ、あのさ……あたし初めてなんだからちゃんと責任取ってよね?あたし正義とだからこんな恥ずかしいことまで……
んっ、んむむ……ちゅっ、じゅる……れろ、ぴちゃ……っはぁ……うん、あたし幸せよ。
だってずっと正義とこうなることを夢見てたんだから……ぐすっ……
ううん、嬉しくて涙が出ただけだから気にしないで。さっ、続けましょ?
うん、そう……そこにそのまま優しく……っ、痛ぁ……ううん、平気だからやめないで……そのまま動かして……
っはぁ、なんか気持ちよくなってきたかも……んっ、んっ、あぅっ!そこ気持ちいいよぉ正義……
ハァ、もっと奥まで突いてぇ!!ギュッてして!!あたしを離さないで!!
ダメッ!何かキちゃう!何かキちゃうよぉ、正義ぃ!!ハァハァ……一緒に、一緒にイこう?
あっ、あっ、あっ、イクッ!!イ、イクゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!
はぁぁぁぁぁぁぁぁ……熱いのいっぱい出てる……あたし正義に種付けされちゃったんだ……
あは、あそこから白いのが出てきてる……もう、こんなにたくさん出したら赤ちゃんできちゃうでしょ!
でもちゃんと責任は取ってくれるんだよね?愛してるわ、あ・な・た♪


393:Un reencounter
08/12/02 04:37:00 6Ib4SJyl
「……おーい、大丈夫かー?」
ふと気付くと正義が怪訝な顔をしながら目の前で手を振っていた。
「キャアッ!!ななななななな何よっ?!」
思わず奇声を上げて後ろに飛び退いてしまった。
ううう、恥ずかしいよぉ……
「いや、顔を真っ赤にしてボーっと涎を垂らしているから一体どうかしたのかと思って。風邪か?」
「べべべべべ別に何でもないわよ!!いいからさっさと席に着いて。先生が来るでしょ!」
いつの間にか卑猥な妄想に完全に意識を飛ばしていたせいで全く気付かなかったようだ。
慌てて否定をしながら口元を拭い、火照った顔を冷ますためにぱしぱしと頬を叩く。
彼には気付かれていないようだが、乳首は固くしこり、下着の下が熱く潤っているのがわかる。
学校という公の場所ではこんなに熱く体が火照っているのに慰めることもできないのが辛い。
まぁ、目の前にいる張本人がやってくれれば話が早いんだけど。
「いや、だってなぁ。どう見てもあれはヤバイ顔してた……いぎっ!?」
とにかくこの話は終わりにしたいのに正義は首を傾げ続けるので思い切り足を踏みつけてやった。
あまりこの話を長くされるとボロが出そうで怖い。というか、何気に失礼なこと言ってないこの男?
「い・い・か・ら!席に着きましょうか、正義君。そろそろ授業が始まるよ~?」
「ハ、ハヒッ……」
痛みで引きつった顔のまま素直に席に着く正義。何だか可愛い。
もう、学校でこんなHな妄想に浸っちゃうのも、照れてつい可愛い暴力を振るっちゃうのも、正義がいつまで経ってもあたしに告白してくれないせいなんだからね!
そうよ、あたしが素直じゃないのではない。彼が自分の気持ちに素直にならないだけなのだ。
だって物心ついたときからずっと傍にいて、今でもずっと何をするのも二人一緒でお互いが好きじゃないなんてどう考えてもおかしいじゃない。
実際あたしは正義のことが好きだからこの法則は正しいと証明している。正義もあたしを愛してくれている。
なのに正義は奥手とかそういうレベルじゃないくらいにあたしに手を出さない。
まるであたしのことを友達としか見ていないかのようにだ。
ああ、もう。恋愛沙汰には疎いくせにやきもきさせるのだけは上手いんだから。
確かに正義はあと一年経たないと結婚はできないけど、あたしは既に結婚できる年齢だから今すぐにでも結婚を前提としたお付き合いはできるのよ。
もしかしたらキリよくあたしにプロポーズしようとしているのかもしれないけど。
ぶっちゃけそんなのはどうでもいいから早くこの曖昧な関係を崩したい。ロマンチックな展開だったら告白した後でいくらでもできるでしょ。
早くあたしを奪ってよ……


394:Un reencounter
08/12/02 04:38:14 6Ib4SJyl
「はぁ……」
授業が始まってもこの憂鬱な気分は一向に晴れず、机の上で組んだ腕に頭を乗せながら溜息をついた。
ちらりと先生にばれない程度に正義の横顔を見る。
真剣な目で黒板を見つめ、書かれている内容をノートに写すその姿を見ているだけで心が熱くなる。
やっぱり彼はかっこいい。あの真剣な目で愛を囁かれたら、あたしはきっと何も言えなくなる。
ああ、早くさっきの妄想通りにならないかなぁ……そろそろあたしの我慢も限界。
あんまり遅いとあたしの方から正義を襲っちゃうよ?
ぼやぼやしてる内に彼を他の女に寝取られるくらいなら彼を強姦した方がまだマシだ。
無理やりにでも行為に持ち込めば責任感の強い正義のことだからきちんと責任は取ってくれるはず。
女が強姦されることはあっても男が強姦されることはない。正義の言うことなど誰も耳を貸さないだろう。
それにもし子供が出来てしまっても、あたし達の仲にはとても寛容的な両親のことだからきっと出産することを認めてくれる。
正義が社会的にきちんと責任を取ることを前提にしてだけど。
まぁ、どうせ遅かれ早かれ、あたし達は結婚して子供を作ることは決まってるんだから大した問題じゃないよね。
あたしの手によって正義の周りに張り巡らされた社会的責任という網は確実にその範囲を狭めていく。
そして逃げ場がなくなり、雁字搦めに捕らえられた正義は大人しくあたしを受け入れる他になくなる。
こうしてあたし達は幸せになりました。めでたしめでたし。
「フン、馬鹿馬鹿しい……」
そう呟き、顔を腕に埋めてこの狂った考えを頭から飛ばす。
無理矢理正義を束縛して結婚させて彼は喜ぶだろうか。いいや、そんなはずがない。
いつも何かに縛られることなく自分の信じる道を突き進むのが赤坂正義という人間なのだ。
確かに先ほどの妄想通りにすれば確実に正義はあたしの物になる。
だが重圧に押し潰された結果、あたしの思うがままになってしまった彼は最早彼ではない。
ただの操り人形だ。
何事にも真剣に取り組み、曲がったことが大嫌いで困った人を放って置けない熱血漢。
でもどこか抜けていて危なっかしい行動を取りがちな優しいヒーローの正義があたしは好きなのだ。
もちろん付き合うことになったら、あたしだけのヒーローになってもらう予定だけど。
あたしはありのままの彼を愛し、愛されたい。
だからあたしはそんな真似はできればしたくない。正義の気持ちを裏切りたくないから。
今まであたしは数え切れないほどあたし達の障害になりそうな災厄の芽は一つ残らず摘み取ってきた。
それでも正義本人に直接手を出さなかったのは、彼“が”あたし“を”愛しているという証拠を見せて欲しかったから。
揺らぐことのない無限の愛をあたしだけに注いでくれると誓うところを彼本人の口から聞かないと不安なの。
あたし達がお互いを想い合う理想の関係になるにはその誓約が必要不可欠なのだ。
だから辛いけどあたしは待つ。正義が心の底からあたしを愛すると誓ってくれるその日まで。
ふと思いつき、開かれたノートの空白に相合傘を書きこんでみる。もちろん傘の下には『赤坂 正義』と『黒田 佳奈美』の名前を入れて。
それを見ると何だか心の奥がほっこりと温かくなって、自分でも気付かないうちに自然と柔らかい笑みがこぼれていた。

だから……信じていいよね、正義?
いつかあなたの方からあたしに愛を囁いてくれる日がきっと来るって。


395:Un reencounter
08/12/02 04:39:33 6Ib4SJyl
……何だかまた正義の様子がおかしい。
太田君から例の紙を渡されてからずっとボーっとしていて、放課後が近づくに連れてそわそわとし始めた。
「どうかしたの?」とあたしが聞くと、嘘をつくのが下手なくせに言葉を濁してなんとか話を逸らそうとする。
あまりしつこく問い詰めると彼を不快にしてしまいそうなので追及するのを諦めたが明らかにおかしい。
そして、いざ放課後になると『登下校はいつも一緒』という暗黙の了解が私達の間にはあるのに、彼はそれを一方的に破ったのだ。
そればかりか、あたしの制止を振り切って、あたし一人を残してさっさとどこかへ行ってしまった。
ついさっきまで満たされていた心は、正義がいなくなると同時に空虚な器と化していく。
何で?どうしてあたしを独りぼっちにさせるの?
佳奈美のこと嫌いになっちゃった?あたしが何か正義を怒らせるようなことしちゃったの?
それならいくらでも謝るから、何でもするからお願い……今すぐあたしの元に戻ってきて。
その逞しい腕の中にあたしを包ませて。体の芯から蕩けそうになるほどの甘い言葉を耳元で囁いて。
そうじゃなきゃあたし、あたし……壊れちゃうよ……
気持ち悪い。吐き気がする。頭がぼうっとする。
ガクガクと足は震え、両腕はいなくなってしまった正義の代わりを果たすかのように勝手にこの身を抱きしめる。
寒い……心が寒いよ正義。
今すぐ抱きしめてくれなきゃあたし凍え死んじゃうよ。早くあたしの心を優しく温めて。
でもあたしを抱きしめる彼はここに、私の隣にいない。
何で?あたしを置いてどこかへ行ってしまったから。
何で?わからない。
どうして?どうして最愛の女性にして未来の妻、果ては一生涯を共にする伴侶であるあたしを置いていくの?
酷い。酷過ぎるよ。
あたしはこんなにも正義のことを想っているのにそんなことをするなんて。正義だってあたしのことを想っているはずなのにどうして……

もしかして誰かに悪いことを吹き込まれたの……?
そうだよ。そうに決まってる。
だってそうじゃなきゃ説明がつかない。正義がこの世で最も愛している女性のあたしに対してそんな酷いことをするなんてあり得ないからだ。
誰よりも深く結ばれているあたし達二人の仲を引き裂こうだなんて一体どこのどいつだ。
正義に余計なことを吹き込んだ罪は重い。その報いはしっかりと受けてもらおうか。
彼を誑かす悪い奴等は一刻も早く始末しなければ……
「―あ」
その時、あたしの中である考えが閃光のように走り抜けた。
ああ、何でこんな簡単な事に気付かなかったのかしら。愚鈍だった今までの自分が恨めしい。
「くふっ、くふふふふ……」
自然と口からは笑い声がこぼれる。足の震えも治まり、あれほど寒く感じていた孤独感もすっかり失せていた。
代わりに胸の内からふつふつと湧きあがってくるのは奇妙な高揚感。
そう、きっとこれは“悦び”だ。
ただし、それはどこまでも堕ちていく深い闇のような暗い“悦び”。
「そうよ……邪魔する奴等がいなくなれば、その分だけあたし達の幸せに早く近づくよね?」
あたしと正義が結ばれるのを邪魔する奴を排除する。妨害するモノがなくなれば必然的にあたし達の幸せな未来へとまた一歩確実に近づく。
何だ、簡単な事じゃない。邪魔する害悪がいたらそれを排除すればいい。
そして立ち塞がる障害全てを倒した後には、あたし達二人が幸せになる未来への道のみが切り開かれている。
やっぱり正義からの告白を待つだなんて甘っちょろいことを言ってる場合なんかじゃないのかも。
正義本人がそれを望んでいなくても結果的には彼のためになるんだから多少強引に事を運んでもいいよね?
そうすればきっとあたし達幸せになれるよね?
やがて訪れる幸せに思いを馳せながら私はそっと正義の後を追った……


396:Un reencounter
08/12/02 04:40:47 6Ib4SJyl
正義を追っていくうちにあたしはずいぶんと遠くへ来てしまった。
わざわざこんな遠くまで来るなんてやっぱり怪しい。絶対に自分が何をしていたかわからないようにしているとしか思えない。
よっぽどそれはあたしに見られるとまずい用事らしい。そんなにあたしに見られたくないモノって一体何?
……まさかオンナ?
嘘っ!!嘘嘘嘘!!嘘よそんなの!!絶対に認めない!!
正義はあたしのもの!!他の誰にも渡したりはしない!!
一体どこのどいつだ。正義をたぶらかした薄汚い雌犬は。
誰に断ってそんな真似を……許さない。
殺す。殺してやる。絶対にこの手で殺してやる。
二度と正義の姿が目に入らぬようにその目を潰し、二度と正義の声が聞こえないように耳を鼓膜を破り、二度と正義の匂いを嗅げないように鼻を削ぎ落とし、
二度と正義を味わえぬように舌を引き千切り、二度と正義に触れられぬように四肢を切断して、それから早く死なせてと懇願するくらいの苦しみをゆっくりと与えながら殺してやる。
一刻も早く正義を見つけてその売女を始末しなければ。綺麗な正義が汚される前に速く始末しなきゃ……

「ついにこの時がキターーーーーーーーッ!!」
「正義ッ?!」
突然近くから正義の叫びが聞こえた。
待っててね、今すぐそこに行くから!そして薄汚い体を摺り寄せる雌犬を処分してあげる。
建物の影から飛び出し、通りに出ると遂に正義の姿を視界に捉えた。
だがあたしの視界に映りこんだものは歓喜に震える正義と、
「……おもちゃ屋?」
何故か彼はおもちゃ屋の目の前で大声を上げて喜びに身悶えしていた。
えっと……これってどういうこと?
さっきまでの勢いを急に失い、その反動で呆然と立ちつくすあたし。
するとあたしの脳裏にある記憶が浮かび上がってきた。

正義が同じ特撮オタクの太田君に何かを頼んでいる。
大田君は呆れながらも彼の頼みを聞きいれたらしい。
『んー……ちょっと待ってな』
彼はノートを一枚破るとさらさらと何かを書き始めた。
『ほら。多分まだここなら売ってると思うよ』
『おお、恩に着るぞ大田!やはり持つべきものは友達だな!』
その紙を受け取ると子供のようにはしゃいで喜ぶ正義。


397:Un reencounter
08/12/02 04:42:30 6Ib4SJyl
「もしかして……あの紙はこのおもちゃ屋のことだったの?」
一体これはどういうこと?ま、まさかあたしの一方的な勘違い?!
そういえばこの前正義と進路のことで喧嘩して仲直りした際に、ケーキとかアイスとか奢らせて彼の財布の中身を散財させた時にも、
「ああ、俺の『修羅場戦隊ヤンデレンジャー ヤンデレッド Ver.(1/8スケールPVC塗装済み完成品)限定スペシャル版』を買うお金が消えていく……しくしく……」
と、涙ながらにぶつぶつとうわ言を呟いていたような気が。
まぁ、あれは完全に正義に非があると本人も分かっていたし、あたしも文句を言わせるつもりはなかったのできっちり支払わせたけど。
おかしいな。これ以上正義の部屋に戦隊物のコレクションが増えないよう、あの時にかなりの額を使わせたはずなのに。
大方お母さんにお金でも借りたのだろう。昔からお母さんは正義に甘すぎて困る。
彼自身に収入がないから可哀想とでも思っているのかもしれないが、優しくするのと甘やかすのは全く違う。
正義が『いつまでもそんな物を』と謂れのない非難を浴びないようにと、あたしは心を鬼にして人の趣味の領域にまで口出しをしているのだ。
決して彼がフィギュアや何やらに夢中なのが気に入らないって訳じゃないんだからね!
きっと彼は普段からうるさく口出しをするあたしの監視の目から逃れようと、強引にあたしの制止を振り切ってこんな遠くまで来たのだろう。
まぁ、無駄な努力だったけどね。だってあたしはここまで付いてきてしまったのだから。

さて、どうしてあげようかしら?今のあたしは少しばかり気が立っているわよ。
これは決して理不尽な八つ当たりなんかじゃないわ。勝手にあたしが妄想の末に勘違いしただけとは意地でも認めないんだから。
そもそも明日はあたしとの大事なデートだっていうのに、こんなところで使っていいお金なんて一銭たりともあるわけないでしょ。
たとえどんなにお金を持っていたとしてもそれは愛する彼女のあたしのために使われるべきだ。
あたしは喜び、あたしの喜ぶ顔を見れる正義も喜ぶ。まさに一石二鳥だと思わない?
それをあんな子供が遊ぶような訳の分からないフィギュア、しかも女の子の奴に貴重な資金を出すだなんて……腸が煮えくり返りそう。
正義は所詮ただのおもちゃである人形に心奪われて、本当に彼のことを想っているあたしのことなど見向きもしない。
そんなの絶対に許せない。認められない。
本当なら今すぐ正義に怒鳴りつけて一発や二発鉄拳制裁をくわえてやっても、この苛立ちを抑えることはできないくらいだ。
しかし、あたしも鬼じゃない。今日の所は大目に見て、見逃してあげることにしよう。
喜びの絶頂に達している正義を一気に絶望の淵に叩き落とすのもそれはそれで体がゾクゾクしそうだけど、あまりに束縛し過ぎて正義に嫌われたら元も子もない。
彼に拒絶される。それを考えるだけでまるで体温がなくなったかのようにあたしは身体の芯から凍り付いてしまう。
それだけは何よりも忌避すべきことだ。適度にガス抜きもさせないとここまで築き上げてきた信頼や努力が一気に崩れてしまいかねない。
だから正義に嫌われない程度に彼の行動を制限し、同時にやりすぎないように彼の趣味はある程度までは許容している。
ここは何も見なかったことにして、正義がフィギュアを無事に買えたと安心しているところで、このことをちらつかせる。
きっと彼は驚愕、動揺、焦燥、様々な感情が入り混じった顔をあたしに向けてくれることだろう。
「あはぁ……」
それを想像するだけであたしの中の何かがざわめき出す。吐息は熱く乱れ、子宮がずくんと疼く。
正義を好きなように扱い、あたしの思うがままにコントロールする。彼はあたしの手の中で踊り続ける可愛いお人形さん。
ありのままの彼を愛したいという欲求と、あたしだけを見つめてくれる正義に作り変えたいという相反した欲求が心の奥底で交じり合い、渦を巻く。
最早彼に対して矛盾した醜い情欲を抱いてしまうほどにあたしは彼を愛している。
ああ、もうダメ。我慢できない。
心が、身体が狂おしいほどに彼を求めている。早く家に帰ってたっぷりと自分を慰めなきゃ。
今日の所は特別に見逃してあげるけど、明日のデートでこの借りはきっちり返してもらうからね!たっぷり振り回してやるんだから覚悟しなさいよ!
少し名残惜しいけど彼の喜んだ表情をしっかりと網膜に焼き付けてからこの場を立ち去る。
早くあたしを見る時、あたしと話す時、あたしとキスをする時、あたしを抱いている時にそんな素敵な笑顔を見せてくれるようになって欲しいなぁ。
彼への溢れる愛情と一抹の寂しさを感じながらあたしは帰路についた。


398:Un reencounter
08/12/02 04:45:32 6Ib4SJyl
『……ーン』

……ん、今何時だ?
寝ぼけ眼を擦りながら目覚まし時計を手探りで探す。
カーテンの隙間から日の光が差し込んでいるので結構な時間が経っているのではないだろうか。
やべぇ。もしや俺寝坊したか?
昨日俺はヤンデレッドのフィギュアを買い忘れたショックのあまり、帰宅した後飯を食う気力もなくベッドに倒れこみ、そのまま眠ってしまった。
そう、目覚ましをかけることもなく。
おいおい、これはまずいぞ。急いで支度をしなくては。
いまだ覚醒しきっていない重い体を布団という楽園から何とか引きずり出す。
だが壁に張られているヤンデレンジャーのカレンダーが視界に入るとふと違和感に気付いた。
もしかして今日は土曜日じゃないか?
そう、今の学生諸君はゆとり教育によって週休二日の恩恵に与っているのだ。
世間では学力低下が叫ばれているようだが遊び盛りの学生達にとってはまさに天国である。
そうと決まれば話は早い。たまにはぐうたらと不貞寝をするのもいいだろう。
俺がもう一度布団の中に潜り込もうとすると、
『ピンポーン。ピンポーン』
チャイムの音が二度この家に響き渡った。
そういえばさっきから一定の間隔で鳴り続けているな。この音で目が覚めたのだからずいぶんと前から鳴っているらしい。
しかし、うるさいな。ったく誰だよ土曜の朝っぱらから。
のそりともう一度起き上がり、寝巻き姿のまま玄関に向かう。
『ピンポーン。ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン』
その間にもチャイムの音は激しく鳴り響く。つーか鳴らし過ぎだろ。
朝起きたばかりの耳にはかなりうるさい。
一体どこのどいつだ?こんな非常識なチャイムの鳴らし方をする奴は。
寝起きの期限の悪さも相まって俺の不機嫌度は既にMAXだ。
このドアの向こうにいる不届き者に一言文句を言ってやらねば気がすまん。
苛立ちでいきり立った俺は鍵を開けてドアを勢いよく開き、
「すいません。うるさいんですけど……」
と、この無礼な訪問者に怒鳴りつけようとしたのだが、
「正義!!あんた今何時だと思ってんの?!もう約束の時間過ぎてるわよ!!」
何故か鬼の形相で怒り狂う佳奈美が目の前に立っており、その凄まじい怒鳴り声に何も言うことができなかった。
おお、体中が痺れる。鼓膜が破れたらどうしてくれるんだ。
「え、えっと……俺何か約束してたっけ?」
約束と言われても思い当たる節がないのでとりあえず聞き返すが、その口調に先ほどまでの勢いはない。
燃え盛る地獄の炎を背後に浮かび上がらせている悪鬼羅刹を前にしてはこんな情けない喋り方にもなる。
決して俺はチキンなわけじゃない。
「『何か約束してたっけ?』ですってぇ……?」
どうやら俺は佳奈美の逆鱗に触れてしまったようだ。
彼女はプルプルと怒りに体を震わせ、その拳はこれでもかというほど固く握り締められている。
その表情は俯いていてよく見えないが多分見えなくて正解だと思う。他の人が今の佳奈美の顔を見たら卒倒してしまうかもしれない。
「あんた今日はあたしとデー……買い物に行くって約束してたでしょ!!」
額に青筋を走らせながら佳奈美が大声で叫ぶ。なんとなく決壊寸前の堤防が頭に浮かんだ。
「……あ」
「『……あ』じゃないっ!!!!あたしがどれだけこの日を楽しみにしてたと……な、何でもないっ!!」
あまりにも普通に俺が忘れていたと知った瞬間、とうとう佳奈美の怒りが爆発した。
怒りのあまり、言葉が支離滅裂になっているようだ。それに所々何か気になるところもあるし。
だがその言葉で完全に思い出した。
今日は佳奈美のご機嫌取りのために街に繰り出して、高い飯を奢ったり、長い服選びに付きあわされ、重たい荷物を一人で持たされるという苦行を行う日だった。
俺は敬虔な修行僧というわけじゃないのに何故こんな酷い目に遭うのか。しかも、報酬を出すどころか、自腹を切らせるなんて。
お前は鬼か、佳奈美!……ああ、そうだ。今目の前にいるのは可憐な少女の皮を被った鬼だった。
こんなくだらないことを思い返している内にも佳奈美の機嫌は悪くなる一方だ。彼女の体から滲み出る怒りのオーラで周りの空間が歪んで見える。
これ以上彼女の機嫌を損なうと俺の身が危ない。ここは素直に謝るしかないな。


399:Un reencounter
08/12/02 04:47:09 6Ib4SJyl
「わ、悪い。すっかり忘れてた。すぐ支度するから少し待っててくれ!」
このままこの場にいると危険な気がするので準備をすると言って逃げ出す。
これは戦略的撤退であって、決してビビった訳じゃないぞ。
しかし、約束を忘れて寝過ごしていたといっても佳奈美に起こされたのは少し悔しい。
……ん?そういえば何か佳奈美に言わなきゃいけないことがあったような……
まぁ、いいか。後で思い出すだろうし、今はさっさと着替えて支度するのが何よりも優先される事項だ。
「……三分で用意できなかったらぶっ飛ばす」
恐ろしく冷たいドスの効いた声が背後から聞こえた。思わず背筋が寒くなる。
こ、恐ぇ~。多分マジだ……
わずか十余年で生涯の幕を閉じるなんて冗談もいいところだ。ピンクさんというまだ見ぬ恋人に出会うまで俺は死ねないんだよ。
まだまだ命が惜しい俺は素直に佳奈美の言うことに従わざるを得なかった。

それから何とか無事に支度を終えた俺はいまだ怒りが収まらぬ佳奈美を宥めながら家を出た。
目的地に向かう間、ずっと佳奈美は俺に文句を言いまくっていた。
佳奈美がここに行こうと普段からうるさかった評判のレストランに入っても彼女の機嫌は未だ直らない。
飯でも食えば少しは機嫌も良くなるか……?
「えっと、これとこれとこれとこれとこれと、あ、これもお願いします」
ウェイトレスを呼ぶと早速馬鹿みたいに大量の注文をする佳奈美。
普段は可愛い女の子らしく見せようとしているのか、皆の前では少ししか食べない。
しかし、その実態はかなりの健啖家で俺よりも食うくらいだ。
さっき注文した料理もきっと気持ちがいいほど綺麗に完食してくれることだろう。
これで金を出すのが俺でなかったら何も文句はないのだが。
彼女の大食いといえば高校に入学して間もない頃のことを思い出す。
クラスで一緒に飯を食っている時に俺は彼女の弁当の中身が余りに少ないことに気付いた。
中学の時は一人男子に混ざって給食のお代わりをするような女子だったのにこれはどういうことか。
驚いた俺は思わず彼女にその訳を尋ねた。
「おい、こんな少しで足りるのか?いつもはもっと食べ……ぐおおおっ?!」
その先の言葉が俺の口から出てくることは遂になかった。
「あれっ?急にどうしたのかな~、正義クン?」
佳奈美がニコニコと可愛く笑いながら机の下ではタバコの火を消すようにぐりぐりと俺の脚を踏み潰していたからだ。
「お、お前……だってこの3倍は軽く……あがっがっががが!!」
多分クラスの皆がいる前で聞いたのが悪かっただろう。先ほどの3倍増しの威力で踏みつけられた。
うん、酷い目に遭ったけど今となってはいい思い出……のわけあるかボケ。
とりあえず公衆の面前で彼女の大食いをバラそうとすると大変なことになるというのは学習した。高い勉強代だったがな。
ちくしょー、可愛い子ぶりやがってこの女。お前に彼氏ができたらこっそりバラしてやろうか。
料理を作れないのに大食いな彼女、あるいは嫁って旦那としたらかなりヤバイと思うぞ?
「かしこまりました。そちらのお客様は?」
「……コーヒーで」
対する俺はコーヒー一杯。この後の出費を予想すると飯なんか恐ろしくて頼めやしない。
空きっ腹に苦い汁を一杯だけというのはあまり体によくなさそうだが、背に腹は変えられないのだ。
その後も、料理が来るまで佳奈美はいかに俺が女性に対して失礼な行動を取ったかをくどくどと説き続けた。
来た後も飯を恐ろしい勢いで平らげつつ、嫌味を言うのは忘れないという実に器用な真似を見せてくれる。
飯を食いながら喋るなって親に教わらなかったのかと思いながらも俺は苦いブラックコーヒーを啜るしかない。
今回はどう見ても俺に非があるからだ。
約束事を破った俺が悪いのは百も承知。それは認める。
だがな、十何年前のことまで話に持ち出してくるのはちょっと大人気ないんじゃないですかね、佳奈美さん?
どこまで遡ってんだよ!それはもう時効だろ?!
かと言って一度口答えすれば今度こそアウトなので何も言えない。
徳川家康も耐え忍ぶことによって天下を取ったって言うし、ここは我慢だ正義。


400:Un reencounter
08/12/02 04:48:00 6Ib4SJyl
「すいませ~ん、この『ウルトラスーパーデラックスパフェ』下さい」
佳奈美が追加注文を頼んだ料理の欄を見るとそこには驚くべき数字が並んでいた。
おいおい。こんなの何個も食べられたら、いくら橙子さんからもらった金があってもやばいぞ。下手したら予算オーバーだ。
この後佳奈美は服も買いに行こうと言い出す可能性が非常に高いのでここは一つ注意しなければ。
「あの、佳奈美さん……それ一つでコーヒー何杯飲めると思っているんですか?それにどうせこの後洋服を買いに……」
「何か文句でもあるわけ?」
「いえ、ありません」
チキンと言うなかれ。あの目は人を殺せる目だった。
結局手持ちの三分の一以上をいきなり失ってしまうことになり、佳奈美が夢中で料理を胃に詰め込む作業を見る羽目になったのであった。

よかった……正義はいつもどおりの正義だ。
ねちねちと嫌味を飛ばしながらご飯を食べていても、彼を細かく観察するのは忘れない。
あたしは彼に気付かれないようにほっと胸を撫で下ろす。
そうだよね。正義があたしのことを放っておいて他の女と浮気なんてするわけないじゃない。
一体あたしは何を思い悩んでいたのだろうか。
彼があたしを裏切ることなどあるはずもなく、これから先もないというのに。
そう考えると随分と気分が楽になり、焦燥に駆られていた心にも余裕が生まれる。
もう正義のこと許してあげてもいいかな?
いや、まだまだ彼には反省してもらわなくてはいけない。未来の妻であるあたしを心配させた罪は重い。
それに彼がこうやってあたしの機嫌を取ろうと必死になっている姿を見ると何だかゾクゾクする。
この後、服を買いに行くからその時にあたしをたくさん褒めてくれたら考えてあげよう。
うふふ、正義と二人っきりで服を選ぶの。
『ねぇ、これどう?』
『ああ、すごく似合っているぞ。やっぱり俺の佳奈美は可愛いな』
『ちょ、やめてよ。こんなところで……』
『仕方ないだろ。本当の事なんだから』
『もう……バカ』
えへ、えへへへ……幸せかも。
そうと決まったら早速行かなきゃ。
「正義、次の所に行くわよ!分かったらさっさとコーヒー飲んでお金を払ってきなさい!」
「はいはい。とほほ……」
半分泣きそうになりながら力なくカウンターへ向かう正義。
フン、自業自得でしょ。あたしとのデートの約束を忘れて、家で寝過ごすだなんて万死に値するわ。
健気な未来の奥さんの気持ちを無碍にするとこうなるって覚えておきなさい。
「ほら、男ならいつまでもうじうじしてないでしゃっきり歩く!ヒーローがそんな顔で歩いていたら情けないわよ?」
店を出てからもぼんやりしているので、ばしんと正義の背中を叩いて発破をかける。
「お、おう。そうだな。ヒーローには落ち込んでいる暇はないもんな」
正義も何とか気を取り直したみたいで、ちゃんと顔を上げて歩き始めた。
隣り合って歩くあたし達。その距離は友達と言うには近すぎる距離で。
肩や手を少しずらせば触れ合ってしまうほど。
知らない人から見たらきっと恋人同士って思われるんだろうなぁ。
「何ニヤニヤ笑ってるんだよ?そんなに楽しみか?」
知らず知らずの内に笑みがこぼれていたらしい。正義に指摘された。
「そうね……楽しみにしてるわよ、正義?」
あたしはその問いにとびっきりの笑顔で返す。
正義はお金を払わされるという意味で受け取ったのか、溜息を吐いてがっくりとうなだれる。
その様子がおかしくてあたしはさらに笑いを堪え切れず、噴出してしまう。
どこまでも穏やかで優しい空間があたし達二人を包み込んでいた。


401:Un reencounter
08/12/02 04:48:58 6Ib4SJyl
「ふぅ……今日は一体何時間待たされるのかね?」
佳奈美が愛読しているファッション誌に掲載されていた有名店の中で一人立ち尽くす俺。
佳奈美は俺にここで待っててと言い残すと、さっさと目当ての服を探しに行ってしまった。
しかし、いかんせん手持ち無沙汰だな。ここは女物の服しかないので適当に服を見て暇を潰すことも出来ない。
以前その事を佳奈美に言ったら
「だったらあたしに似合うと思う服でも探してなさい。あんたのセンスをこの佳奈美様が見定めてやるわ!」
と言われたのだが、俺にそんなファッションのセンスはない。
大体俺が自分の服を買う時も何故か付いて来て、これはダメ,あれもダメと俺が選んだ服を片っ端から切り捨てて,自分が選んだ服を無理矢理買わせているじゃないか。
そんな佳奈美曰くファッションセンス0の俺が選んだ服を佳奈美に突き出したらなんかしらけた顔で見られそうだ。
それが怖くて、結局言われてから一回も実行していない。
しかし、それはそれで不機嫌になるのだから女ってのは難しい。
ああ、とにかく暇だ。ここはとりあえず先週のヤンデレンジャーの脳内ダイジェストでも……

「だーれだ♪」
「おわっ?!」
「うふふー、問題です。私は誰でしょう~?」
突然視界を奪われ、同時に澄んだ張りのある無邪気な声が俺の耳に入ってきた。
この声、どこかで聞いたことがあるような……って昨日会ったばかりだろ。
俺は溜息をつくと瞼を抑える柔らかい手を優しく剥がし、呆れた口調でこのいたずらっ子の方へ向き直る。
「ったく。やっぱりお前じゃないか―」

―認めよう。
あの時、あたしは有頂天になっていた。
彼の全てはあたしが支配し、これからもそれは続いていくと思っていた。
このままいけばいつかは正義と結ばれ、何事もなく幸せな人生を謳歌する。
そんな順風満帆な未来があたし達に訪れる事を確信していた。

天災は忘れた頃にやって来ると言う。なら人災はいつ来るのだろう?

雑誌に載っていた服を見つけたあたしはそれを持って急いで正義の元へと戻る。
これを着たあたしを見て、正義はなんて言ってくれるかな?
『似合ってるぞ』?『可愛いな』?『綺麗だ』?
えへ、楽しみ……
あれ?誰かと話しているみたい。
相手は服棚が邪魔でよく見えないが、きっと店員さんと話でもしているのだろう。
以前違う店でも正義と来た時も、同じように正義が店員さんに
「うわー、彼女さん可愛い~!よかったわね、君!こんな子を捕まえられて!」
と言われて、苦笑いしていたからだ。
残念ながら事実とは違うのでとりあえずやんわりと否定しておいた。もう少しでそうなりますけど。
あの時と違うのは正義が楽しそうに話しているところ。
その事にあたしは少し違和感を覚える。
こんな女物の服しか売ってないお店で正義が満足するような話題を振れる店員がいるのか?
まぁ、直接その店員に話を聞けば済む話だよね。もし店員さんが美人だからとかだったら思いっきり足を踏みつけてやろう。
そう思ってあたしは正義の元へ駆け寄る。


402:Un reencounter
08/12/02 04:50:43 6Ib4SJyl
でもいつだって神様は残酷だ。かつてこれ程ほどまでに偶然を呪ったことがあるだろうか。
―だって再び出会ってしまったのだから。

「ねぇ、これどう思う?正…よ……し………」
そこから先の言葉をあたしは口から出すことが出来なかった。
何故なら―
「お、戻ってきたか。俺は昨日会ったばかりだけどお前は久し振りだよな?」
のんきに笑顔で彼女を歓迎し、あまつさえあたしと彼女を引き合わせる正義。
今はその眩しい笑みが本気で憎い。
彼の隣には可憐に咲く花のような笑みを浮かべてあたしを見つめる少女の姿があった。
一年前よりも彼女はさらに美しく、女らしく成長していた。
しかし、相変わらずねっとりと熱の篭った視線で正義を見つめる所は、憎たらしいことに少しも変わっていなかった。

「お久し振りです、佳奈ちゃん。元気にしていましたか?」
―そこには一年前あたしが欺き、陥れ、切り捨てたはずの忌々しい過去の亡霊がニコニコと微笑みながら立っていた。


403:Un reencounter
08/12/02 04:57:57 6Ib4SJyl
投下終了です
書き忘れましたが、これは「Rouge?Blanc?」の続編です
あとトリは付けた方がいいですか?
付けた場合、過去に名無しで投下した作品は申し出れば追加していただけますか?

404:名無しさん@ピンキー
08/12/02 05:53:59 XL9vicIy
GJ!!
鳥はつけた方がいいと思う。

405:名無しさん@ピンキー
08/12/02 09:01:58 iKpbjW4j
>>403
GJ。待ってました。
鳥は無いよりあったほうが良いかと

406:名無しさん@ピンキー
08/12/02 12:18:35 pUbOYLkW
>>403
佳奈美が一人悶えてるエロ部分よりも、
泥棒猫をどうやってなぶり殺しにするかを考えている所に萌えてしまった俺ガイル。

407:名無しさん@ピンキー
08/12/02 13:52:37 AYn1EyT/
続きキターーー!!GJ!次たのしみにしてます

408:名無しさん@ピンキー
08/12/02 16:34:01 cdfZ+2K7
ぐっじょぉぉぉぉぉぉぉぉぶ!!!
この戦いはwktk感がすげぇwwwww
次回も待ってます!!!

409:名無しさん@ピンキー
08/12/02 16:55:26 7fr3Tnhz
続き書かれないと思ってたからめっちゃ嬉しいぜ!!

410:名無しさん@ピンキー
08/12/02 17:17:43 6kUpzDYV
待ってた甲斐があった!

411:名無しさん@ピンキー
08/12/02 20:50:45 mbekqtfE
GJするしかない!

412:名無しさん@ピンキー
08/12/02 21:01:42 p5gZ70O5
じーじぇい!


413:名無しさん@ピンキー
08/12/02 22:51:59 tLXumNku
>>403
おもしろ過ぎて発狂したw
GJ!!!

414:名無しさん@ピンキー
08/12/02 23:50:29 NYB1PMsT
鈴音キター! みなぎってきたぜ!!

415:名無しさん@ピンキー
08/12/02 23:58:41 3QedMfxd
>>403
GJ!!
さあ、次はどんなバトルが……?と期待しまくりだ。


416:名無しさん@ピンキー
08/12/03 00:14:08 nxmR9Wzm
>>403
超GJ!!
テンション上がってキタアァ!!

417:名無しさん@ピンキー
08/12/03 16:14:48 A8kIrHR0
佳奈美の病状も悪化してワクワクしてきたぜGJ!!

418:名無しさん@ピンキー
08/12/03 18:06:35 tUOoJ+SM
>>403
GJ!
クオリティタカスwww

419:名無しさん@ピンキー
08/12/04 18:42:32 eJSj8HQF
vipper死ね

420:名無しさん@ピンキー
08/12/04 18:47:12 eJSj8HQF
>>419
誤爆した、すまんスルーしてくれ

421:名無しさん@ピンキー
08/12/04 19:51:15 aAgQ0Ff/
あの人を狙う雌豚は皆死ね


422:名無しさん@ピンキー
08/12/04 21:40:27 8ofp383z
金持ちヤンデレと同居する男

ヤンデレの親からの仕送りで十分食っていけるのに、
男は「いつまでもお前のお父さんに頼っていられない」といってバイトへ出かける。
たまたま外出して、男の後をつけていくと、そこには懇ろに男と話をする女の姿が―

423:名無しさん@ピンキー
08/12/04 22:02:25 kHoVN0kW
すばやく護身用のコンバットナイフを確かめる。
――殺れる・・!ッ・・・。
気配を消して、そっと女に近づく。
女「男君って彼女とか居るの?」

424:名無しさん@ピンキー
08/12/04 22:25:22 8ofp383z
男「いないよ、今度ウチに来る?」
女「うん」
 背中を刺すような気配を感じたが男は気にしない。
男(やれやれ、あとはいかにしてヤンデレを外出させるかだな)

425:名無しさん@ピンキー
08/12/05 02:12:37 dO5fynha
雌猫さん死亡フラグ全開ですね

426:名無しさん@ピンキー
08/12/05 07:41:17 kUiJGfzj
なんで猫なんだろうね

427:名無しさん@ピンキー
08/12/05 09:37:42 76T9CMj4
「この泥棒猫!」から来てるんじゃね
ヤンデレが「雌豚」って言うと少しアレだが「雌猫」ならなんだか可愛いげがある希ガス

428:名無しさん@ピンキー
08/12/05 12:18:25 8UDFSlfr
雌猫でくぐったら、排卵日がなく交尾が成功した場合90%が妊娠するらしい
あと発情期とかも関係あるんじゃないか?

429:名無しさん@ピンキー
08/12/05 12:36:30 dLCFz8jA
単純にさかる動物として身近だからでは。
春になればニャーニャー鳴きまくってうるさい。

猫は雄のペニスに逆さ向きにトゲがついていて、
射精後に抜くときに膣内をひっかく。
その強い痛みで排卵をする。

430:名無しさん@ピンキー
08/12/05 18:42:43 iewxNddR
このどろぼうぬこ!


なんか可愛くなった

431:名無しさん@ピンキー
08/12/05 18:43:37 AiZYWwT5
私の秋刀魚を返しなさい!

432:名無しさん@ピンキー
08/12/05 19:05:12 IOaeOMcI
>>431
「私の秋刀魚=愛しい○○君(のお○んちん)」という意味ですね分かります


433:名無しさん@ピンキー
08/12/05 20:41:49 kUiJGfzj
わんわんお(∪^ω^)

434:名無しさん@ピンキー
08/12/05 21:57:06 YWiEszuo
(∪^ω^)アルトくぅ~ん


435:名無しさん@ピンキー
08/12/05 22:00:16 a3Df30bX
顔文字きめぇ

436:名無しさん@ピンキー
08/12/06 17:02:36 Z4ESyvSu
ヤンデレメイドに明日デートの旨を伝えたい

437: ◆wzYAo8XQT.
08/12/06 23:00:03 9YLzBs9Y
ぽけもん 黒投下します
第十話です

438:ぽけもん 黒  長老の頭が一番フラッシュ ◆wzYAo8XQT.
08/12/06 23:01:37 9YLzBs9Y
 食事を終えた僕たちは、部屋に荷物を取りに戻るとそのまま桔梗町に向けて出発した。
 三十番道路はお使いのときに一度通ったということもあり、実に順調な行軍だった。ただ、そこまで早く進めているわけでもない。完全に僕が足を引っ張っていて、全体の速度を落としている。ただの人間である僕には、二人の速さにはとても合わせる事が出来ない。
 それと、以前のようにトレーナーを避けるのが難しくなってきたというのもある。今までは向こうも戦いに消極的だったっていうのもあるけど、全国の旅となれば当然、各地区にいるジムリーダーと戦っていかなくてはならなくなる。
トレーナーとパートナーを相手にした戦闘はジムでの戦いに向けた絶好の予行演習になる。それに、ここまでの旅で野生のポケモンとの戦闘に慣れて、自信がついてきたというのもあるんだろう。
すれ違うトレーナーは皆バトルに積極的だ。相手に見つかったら、問答無用でバトルを申し込まれてしまう。
 ……まあ香草さんの相手にもならなかったんだけどね。ポポに空から降りてきてもらう必要も無く、僕が一切手出しを行う必要が無いくらい、瞬時に相手を戦闘不能まで持っていってしまう。
今まで野生のポケモンとしか戦ってなかったから香草さんの強さは半信半疑だったんだけど、香草さん自身が言うとおり彼女はまさに無敵という言葉がふさわしいような強さだった。
バトルに負けた相手は勝った相手に所持金の半分を差し出さなくてはならないと決まっているので経済的にはおいしいんだけど、なんだか罪悪感が積もる。
 それでも日没までに三十番道路の終わりのほうまで進むことが出来た。ポケギアのGPSによる判断だから、実際に残りの道がきつい上り坂だったりすると、全然終わりのほうと言えないんだけどさ。
 香草さんとポポはまだ進めると言ったが、ポポは相変わらず夜目が利かないため、やはりここで止まることにした。
 若葉町から吉野町までの行軍で前よりも大部進むペースが速くなっているから、すべての食事を木の実に頼らず乗り切れるということに気がついた。でも、やはり食料を節約するに越したことはないので、以前のように朝食だけは木の実で賄うことにした。
 いつものように香草さんとポポに挟まれ、夜を明かすと、また桔梗市へ向けて進む。その途中で、生垣に突き当たった。
両脇や周りは太い木が群生していて、下手に入ると危なそうだけど、ここだけ木の向こうは獣道のようになっていて迷わないようになっているから、この生垣を何とかできればかなりのショートカットが出来そうだ。
「こういう場所で居合い切りを使うのかな」
「居合い切りって?」
 足を止めて考えていた僕に、香草さんが問いかけてくる。
「剣の達人とかさ、これくらいの藪とか細い木とかスパーンって斬っちゃえるんだって。シルフカンパニーが秘伝マシンを開発したらしくて、ポケモンは簡単に覚えられるみたいだよ。もちろん、覚えられないポケモンもいるらしいけどさ」
 でも僕は居合い切りの秘伝マシンなんて持っていない。というか技マシンの一つも持っていない。僕の小遣いで買えるような安価なもので、特に必要のある技マシンがなかったというものある。
「あら、そんなものいらないわよ。見てなさい」
 香草さんはそう言うと、両袖からそれぞれ数本ずつ蔦を伸ばし、それを束ねた。そのまま両腕を胸の前に交差し、強く左右に薙いだ。
 一閃。―いや、二つの束だから二閃なのかな、まあそんなことはどうでもいい―彼女は一瞬の内に幅数メートル、奥行き数メートルの生垣を一掃した。
 ……こういうのって、ありなのかなあ。
 僕はただただ、彼女の破壊力の高さと非常識な発想に呆れるしかない。
「どうしたの、間抜けな顔して。早く通らないとまずいわよ、コレ」
 香草さんに言われてみてみれば、薙ぎ倒された木々の切り口からはすでに木の芽が生え始めており、全体が急速に再生しつつあった。
そもそも、居合い切りで切れるような木というものは一部の人間の通行だけを許す自然の扉なのだから、こうでもならないと使われたりしないだろう。しかしそれが分かっていても、映像として目の当たりにすると驚かされてしまう。
 僕は先を行く香草さんの後に続いて、慌ててその道を抜けた。ポポはそもそも空を飛んでいるから地上の木々など問題なく飛び越せる。

439:ぽけもん 黒  長老の頭が一番フラッシュ ◆wzYAo8XQT.
08/12/06 23:02:35 9YLzBs9Y
 でも、このお陰で大きくショートカットに成功したのは事実だ。タウンマップによると、この道を通っていくと「暗闇の洞穴」を素通りしてしまうのだけど、
そこは真っ暗で、秘伝マシンの「フラッシュ」を使用されたポケモンがいないと何も見えないほどの暗さだということだし、そもそも最短ルートからは外れているからもともと立ち寄らないつもりだったので問題は無い。
 僕らはそのまま三十一番道路を走破し、日没前に桔梗市へとたどり着いた。出来るだけ二人のペースに合わせていたから、疲労で足が折れそうだ。
 この町を回るのは明日にすることにして、すぐさまポケモンセンターに行って手続きを終えると、その日はそれ以上のことはしなかった。ちなみに、ポケモンセンターの内装は全国すべて共通のようだ。
というのも、このポケモンセンターの内装が吉野町のものとまったく変わらなかったからだ。
初めてでも迷う心配が無いので便利というか安心というか、そういう意味で言えばそのとおりなんだけど、まったく違う場所なのにまったく同じ施設を建てる、というのも無駄な気がしなくもない。
 外と変わらず、僕らは一つのベッドに三人で固まって寝ている。正直言って狭い。でも二人がこうじゃなきゃ嫌だというから、しょうがなく妥協している。

 翌日は早朝から市内を巡ってみることにした。ここ桔梗市はさすが古都と言われるだけあって、町並みも建物も中々に趣がある。ポポは町並みにはあまり興味が無いみたいだったけど、香草さんは目を輝かせていた。
尋ねたら「ロマンチックで素敵」ということだ。確かにいい街なんだけど、いつまでもブラブラしているわけにもいかない。そもそも、市内探索だって半ば日が高くなって香草さんが本調子になるまでの時間潰しみたいなものだし。

 この街には、「マダツボミの塔」と呼ばれる、古い塔がある。風もないのに大黒柱がゆっくりとだけどユラユラと揺れるとても不思議な塔で、この街の一番の名所になっている。一説によると、巨大なマダツボミが塔の柱になったから揺れているのだとか。
 この塔はもともと修行のために建てられたということで、現在も多くの僧が修行に励んでいる。
 僕がこの塔に来た目的は観光でも―観光という意味も少しはある―修行でもなく―そもそも僕らは僧侶じゃないしね―、この塔の最上階まで行くと秘伝マシンの一つ『フラッシュ』がもらえることになっているからだ。
 秘伝マシンは戦闘に役立つものは少ないが、先に進むには無くてはならないものが多いため、是非とも手に入れたい。
 というわけで、僕たちはマダツボミの塔へと乗り込んだ。
 入り口から真正面にその例の大黒柱はあった。確かに、ゆっくりと揺れている。その大黒柱を囲うように座禅を組んだ修行侶が数人座っていて、なにやら物々しい雰囲気を醸し出している。
 その修行僧さんの集団と目を合わせないようにしつつ、どんどん階段を上っていく。すると途中で修行僧さんに声をかけられ数回戦闘になった。
 修行さん僧のパートナーのポケモンはみな揃ってマダツボミばかりだ。相性の問題を考え、全戦ポポで戦ったが、香草さんは自分でも楽勝なのに、と道中不満げだった。
 そしてあっという間に最上階。そもそも五階建ての塔だから、上るのにそんなに時間はかからなかった。
 その階の一番奥に、「長老」と呼ばれる老僧がいた。彼の後ろには箱が山積みにされている。アレがフラッシュの秘伝マシンなのだろう。
「よくここまで着ましたな。では、あなたが秘伝マシンにふさわしい人間か、テストをさせて頂きます」
 長老さんは威厳のある、渋い声でそう言うと一歩後ろに下がる。すると脇に控えていたマダツボミが前に出た。精悍な顔つきをした、たくましい男だ。
「彼と戦って、三十秒以上気絶せずに耐えることができたら合格です。三十秒以内に気絶した場合は不合格ですよ」
 その長老の言葉に合わせるように、マダツボミは大胸筋をピクピクと震わせた。
 これは油断できないかもしれないな。

440:名無しさん@ピンキー
08/12/06 23:03:04 mvBMDrtu
支援

441:ぽけもん 黒  長老の頭が一番フラッシュ ◆wzYAo8XQT.
08/12/06 23:03:29 9YLzBs9Y

 油断する間も無かった。
 念のため、戦闘を行っておらず体力が温存できている香草さんに戦ってもらったのだが―ポポは当然ごねたけど、いつものように宥めた―、秒殺、いや、瞬殺であった。
足元に放たれた蔦の一閃を避けた敵に突き刺さる容赦のないボディーブロー、そしてそれによって生じた一瞬の隙をついて蔦で上空へ放りなげる香草さん。
相手は一切の防御も反撃も取る間もなく、空中という飛行能力を持つ生物以外には回避不可能な領域で、蔦による情け容赦の無い無数の突きを加えられた。彼が地上と再会した頃には、もうすでに彼の意識は無かった。
 落下してきたマダツボミによって巻き上げられた粉塵が引いてくると、そこから赤く輝く鋭い双眸が浮かび上がる。
 長老さんは完全に引いている。えらいもん見ちまった……みたいな顔をしている。
「三十秒もたなかったみたいだけど、どうなの?」
 香草さんの、研ぎ澄まされた刃物のような言葉を向けられて、長老はビクリとその身を震わせる。
「ご、合格です、おめでとう。これが約束の秘伝マシンだから……」
 しかしさすがは年の功、と言ったところか。香草さんの睨みを意にも介さず……というのはさすがに無理なようだが、それでも自分に割り当てられた使命を果たそうとしている。僕だったら怖くて声もかけられないだろう。
「ど、どうも」
 香草さんにこのまま荷物を受け取らせるのはなにやら危険な気がしたので、僕は自分から進み出て長老からダンボールの小包を受け取った。
「どうゴールド! 見た!?」
 香草さんは先ほどの気迫はどこへやら、嬉々として僕に尋ねてくる。
「う、うん、すごかったよ」
 一部速過ぎて見えなかったけどね……。
「当然でしょ! 私、ゴールドを相手にするときはいっつも手加減してるんだからね!」
 彼女は誇らしげに胸を張ってそう言った。
 確かに、蔦の速度といい、容赦の無さといい、僕に向けられるそれの比ではなかった。一応、乱暴ではあるものの、彼女なりにパートナーである僕を気遣っていたのだろう。
 つい先日のことが思い出されてゾクリとする。あの状況で彼女にも僕にもなんの怪我もなく逃げ切れるなんてとんだ思い上がりだった。僕の持っている、出来れば使いたくは無い道具すら総動員しても、
彼女の初手に対応できない限り一切の活路はない。そういう意味では、あそこでおとなしく香草さんが引き下がってくれて本当によかった。きっとあの状況だと、香草さんがその気になれば僕は今頃五体満足ではなかっただろう。
尤も、ポケモンセンターの中でそんな大きな騒ぎを起こした時点で彼女の負けなのだが。
「坊や、少しばかりお話よろしいかな?」
 帰ろうと振り向いたとき、後ろから長老さんにそう声をかけられた。穏やかな口調だ。もうすっかり冷静さを取り戻しているようだ。
 再び振り向いた僕は、彼の様子から「二人きりで話したい」ということを感じ取った。
「香草さん、ポポ、先に降りててくれるかな。もう修行僧さんは皆倒したし、一本道だから大丈夫だよね?」
 僕は二人にそう声をかける。
「どうして?」
 香草さんは怪訝そうだ。
「長老さんと、二人きりで話したいんだ」
「話だけなら、私がいたっていいじゃない」 
「ホホホ、お嬢ちゃん、男には女性に聞かれたくない話というものがあるのですよ。君がこの少年を好きなのは分かるがの」
 長老さんは冗談交じりにそう言った。
「べ、別にそんなんじゃないわよ! ただパートナーとして気になっただけよ! いくわよ! ポポ」
 香草さんは慌てて、ポポを引きずって階段を降りて行った。
 たとえ事実でも、そこまで強く否定しなくても……。
 若干へこんでいた僕に、長老さんは急にまじめな顔になって話を切り出す。
「さて、本題ですが……あの嬢や、只人ではないでしょう。あんな恐ろしい目は、そうそう見るものではありませんからの」
「目?」
 想像だにしていなかった言葉に、僕は思わず鸚鵡返しに聞き返す。
「そうです。あの目に宿った影。あれはいずれ彼女自身を傷つけ、そして、君にも被害を及ぼすでしょう。あの影は、いつか無実の人を殺す」


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