ヤンデレの小説を書こう!Part20at EROPARO
ヤンデレの小説を書こう!Part20 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
08/11/14 13:35:40 x664o8CZ
>>1さん乙です!!

3:名無しさん@ピンキー
08/11/14 13:43:43 7O0PiuKV
>>1

4:名無しさん@ピンキー
08/11/14 16:08:19 Qp1DJ2u0
はやくね?

5:名無しさん@ピンキー
08/11/14 17:15:38 7O0PiuKV
>>4
part19はもう作家さんが投下できないだろうからいんじゃね?
こっちで待とうぜ もちろん全裸に正座で

6:名無しさん@ピンキー
08/11/14 18:30:03 ebC18WWD
ただの全裸は誰でもできる
紳士ならば靴下蝶ネクタイ着用こそ正装
もちろん正座で待ちます
まあ>>1

7:名無しさん@ピンキー
08/11/14 19:10:25 MqkNA/0O
修羅場スレに帰れ

8:名無しさん@ピンキー
08/11/14 19:45:00 8cCcVAxH
>>7紳士に他のスレの話題は無用さ

9:名無しさん@ピンキー
08/11/14 20:07:45 qTCgt2Sn
>>1
うちに来て妹とファックしていいぞ

10:名無しさん@ピンキー
08/11/14 20:41:06 p2Q1CljX
そういや最近>>8>>8の妹を見なくなったな

11:名無しさん@ピンキー
08/11/14 20:41:40 p2Q1CljX
>>8じゃなくて>>9でした\(^o^)/

>>1乙!

12: ◆.DrVLAlxBI
08/11/14 23:39:29 3mVZRW6x
短いですが、投下します。

13: ◆.DrVLAlxBI
08/11/14 23:41:50 3mVZRW6x
と、忘れていました。百合注意。バトル展開注意。グロ注意。
以前書いた短編『二人なら』の続編の、一話完結の中編三部作『the Two in the Dark』の一作目『the inFinite Evils』。
中編だけあって非常に長いので、ぶつぎりに投下します。
今回は序章(チャプター1)です。
では、始まります。

14:the inFinite Evils チャプター1 ◆.DrVLAlxBI
08/11/14 23:42:44 3mVZRW6x
あてのない旅をしていました。
たどり着く場所なんてないのに、私はどこかにある―ないかもしれない、安らぎを求めて旅をしていました。
「寒いね」
傍らにたつ少女―涼ちゃんは、私の腕をぎゅっと握って呟きます。
唇が震え、衰弱している。
私は、焦っていました―このままでは、涼ちゃんはもう長くない。
二人であてもなく歩き始めてもう半年。なんとか生き延びてきた私達。
しかし、涼ちゃんは旅のなかで少しずつ弱ってきました。
食事も何でも、特に障害はないのですが、ただ『生命力』が奪われたかのように、動きが遅くなり、鈍くなってきました。
医者には何度も見せました。
しかし、ヤブ医者達は、涼ちゃんを散々こねくりまわして調べても「原因不明だ」などと無責任にも穿き捨てるだけでした。
あろうことか、大学病院で研究させてくれなどという輩もいました。
私は、そんなわからずや達を殴りつけ、涼ちゃんを治せる人のいる人を探しました。
そして、歩きつづけたその果てに、私は自分達がどこにいるかもわからなくなりました。
日本かどうかもわからない、何もない荒野を何日も歩き続けました。
「これを着てください、涼ちゃん」
「でも、希望(のぞみ)が……」
「私はかまいませんから!」
私は自分の来ていた上着を涼ちゃんに着せ、その身体を支えながら歩きました。
雪が降っていました。
べたべたと私達の服に張り付き、溶けて冷たい水となり、体温を奪っていきます。
がたがたと身体を振るわせる涼ちゃん。震える唇は、変色していて。
綺麗。


15:the inFinite Evils チャプター1 ◆.DrVLAlxBI
08/11/14 23:43:15 3mVZRW6x
……綺麗?
なぜ、私はそんなことを思ったのでしょうか。
死に行く涼ちゃんを見て、綺麗?
そんな、馬鹿なことがあるわけがない。涼ちゃんは、太陽なんだ。
私は、いつも元気な涼ちゃんが好きなのに、なぜ、一瞬でもこんなことを考えてしまったのだろう。
私は、涼ちゃんに生きていて欲しいのに。
「……希望、あたしたち、死ぬのかな」
「死なせませんよ。涼ちゃんだけは、絶対に、私が守りますから」
「でも……」
―希望が死んじゃったら、あたしも生きていけないよ。
涼ちゃんはけなげにもそう呟きました。
だから。だからこそ、私は涼ちゃんを絶対に死なせないという決意をしました。
徐々に、雪は大雪に。大雪は吹雪に変わっていました。
積もった雪が脚に絡まって、私達の歩みを邪魔します。
「……」
怒り。
衰弱していく涼ちゃんの顔を見ていると、怒りが溜まってきます。
もちろん、涼ちゃんへの怒りではありません。
この世界の、全てへの怒り。
運命を決める、神への怒り。
「どうして……?」
どうして、この世界はこんなにも優しくなってくれないのでしょうか。
私と涼ちゃんは、二人だけで生きていきたいのに。
私と涼ちゃんは、二人いればそれだけで幸せなのに。
なぜ、奪い去ってしまうのでしょうか。


16:the inFinite Evils チャプター1 ◆.DrVLAlxBI
08/11/14 23:43:48 3mVZRW6x
「もう、いいよ……。希望、あたしを、捨てていって……」
「……!? 涼ちゃん、何を言って……!?」
「このままじゃ、希望も死んじゃうよ……。あたしが、足手まといだから」
はぁはぁと呼吸もままならず、震える声で私にそう訴える涼ちゃん。
そんな……。
涼ちゃんは、私のために死のうとしている。
そんなこと、私が望むわけがありません。
だれのせいか。それはもう、分かりきっていました。
この運命を決めた何か。―おそらく、神と呼ばれるもの。世界そのもの。
もう、気付いてしまっていました。
私達を苦しめるもの……。涼ちゃんの命を奪おうとしているもの。
「……そんなこと、できるわけがありません」
涼ちゃんの頬を撫でる。
冷たい。
でも、すべすべの肌は、やっぱり気持ちよくて。私の大好きな涼ちゃんの感触で。
この感触は。
涼ちゃんのぬくもりは。
放したくない。
絶対に。
「……私はっ!!」
涼ちゃんを強引に掴んで背負い、走り始める。
私と涼ちゃんは同じくらいの体重。かつ、私の筋力はそこまで大きくありません。
でも、だから背負えないなんて。
そんなの、誰が決めた?
神ですか?

17:the inFinite Evils チャプター1 ◆.DrVLAlxBI
08/11/14 23:44:19 3mVZRW6x
なら、私は逆らって見せようって、決めたんです。
「……希望」
ざくざくと雪を掻き分けて、私はがむしゃらに前に進みました。
ひたすら、前を。
時に、雪に足をとられて転んでしまうこともありました。
その時は涼ちゃんだけは命をかけてかばいきり、私は再び走りました。
いつしか、身体が血だらけになって……。感覚がなくなってきて。
涼ちゃんは、すでに何も言わなくなって。
呼吸すらしているのか怪しい。そんな危険な状態でした。
「はぁ……はぁ……」
何も見えない。真っ白な世界。
完全な闇と、同じでした。
白と黒。反対だなんて、誰が決めたのでしょうか。これも神でしょうか。
―同じじゃないですか。
怒りと憎しみと。同時に、笑いが零れる。
「神さま……」
存在するはずの無い、神に、いつしか私は祈っていました。
「涼ちゃんをこんなにしたのは、あなたなんですか……? 私に、ひとつたりとも幸せをあたえようとしないのは、あなたなんですか……?」
涙が流れていることに気付いたのは、このときでした。
凍ってしまって、頬にずっと張り付いていました。
「神さま……涼ちゃんを助けて……! そのためなら、私、なんでも……なんでもします!」
神をあがめてなどいない。
でも、これが本心だった。


18:the inFinite Evils チャプター1 ◆.DrVLAlxBI
08/11/14 23:44:50 3mVZRW6x
「涼ちゃんのためなら、私は、悪魔にだってなってみせます! どんな天罰でも受けて見せます……。だから!」
―だから、涼ちゃんを助けて……!

光が。

光が、生まれました。







そして、意識を失う直前に私が見たのは。

白い霧が晴れた先にある。
暗いくらい。
『漆黒の街』でした。


19:the inFinite Evils チャプター1 ◆.DrVLAlxBI
08/11/14 23:45:39 3mVZRW6x
『the inFinite Evils』

20:the inFinite Evils チャプター1 ◆.DrVLAlxBI
08/11/14 23:46:38 3mVZRW6x
作品予告


「君は特別なんだよ」
突きつけられた事実。
「だからって私……。人には、できることとできないことがあるから……」
戸惑い。
「この子は大きすぎる悪意を感じ取ってしまっている。それがこの子の生きる意志を縮小してしまっているんだ」
義務。
「ありがとう!」
覚醒する希望。
「正義を成すことが、こんなに嬉しいことだなんて、初めて知りました」
終わらない戦いの始まり。
「もっと強くなりたいです!」
そして……邪悪。
「そうやって大きすぎる夢を持ったから、人間は争ってんだろぉ!?」
怒りと憎しみ。
「それでも私は……前に進むって決めたんです!」
愛。
「この身体が朽ち果てても、護りたいものがあるから」

短編連作『the Two in the Dark』 First tale『the inFinite Evils』
始まります。

21:the inFinite Evils チャプター1 ◆.DrVLAlxBI
08/11/14 23:49:49 3mVZRW6x
ってなわけで、ワイヤードそっちのけの短編(中編)連作を開始してしまいました。
これには理由がありまして。
ワイヤードの書き溜めが前に消失したことでいろいろと遅れてしまったことと。
ワイヤードのプロットは終盤までだいたいできたのですが、あまりに長くて一年くらい書くのに費やしそうだったことで。
三月くらいまで(忙しいので)は月刊くらいにしてしまって、それまでは短編書きとして活動しようかと思ったというのが理由です。

では、チャプター2は明日。

22:アキト
08/11/14 23:53:57 KTERV6vH
乙ですよー。

23:名無しさん@ピンキー
08/11/14 23:55:01 rqieHqLu
GJ

24:名無しさん@ピンキー
08/11/15 00:28:49 Z2m3ODMF
作品予告(笑)
作家気取りも大概にしろよ

25:名無しさん@ピンキー
08/11/15 00:37:06 plAiSc6x
>>24
じゃあ序章ってことで脳内変換しときなー

26:名無しさん@ピンキー
08/11/15 00:41:13 5az4zAAP
つられないくま

作者氏のほうはGJ! 俺たちはこのスレで作家の役割を担ってくれている人に敬意を持っている
続きも待ってる
それがヤンデレを愛するヤンデレマイスターだ

27:名無しさん@ピンキー
08/11/15 00:51:25 LmCJIn+i
私達がヤンデレだ!!

28:名無しさん@ピンキー
08/11/15 12:10:47 FsX6uLUx
>>24
>>7

29:名無しさん@ピンキー
08/11/15 14:19:13 /5SUdJff
いい釣堀だ

30:名無しさん@ピンキー
08/11/15 18:24:26 D4406Pb0
修羅場スレ修羅場スレって馬鹿じゃないの

31:名無しさん@ピンキー
08/11/15 19:56:01 UVElJcKA
デレッデレの状態からなんらかの事情で病み始めた時期が一番かわいい。

32:名無しさん@ピンキー
08/11/15 20:40:48 mLRP1JQd
ヤンデレデレが読みたい

33:名無しさん@ピンキー
08/11/15 21:36:11 uzlCynAk
>>32
スレタイ見てみろよ、いつまでも読者気分じゃいられねえんだぜ
「叩かれてもいい!」って位の気迫でその妄想を文にする作業に入ってみろよ

34:名無しさん@ピンキー
08/11/15 21:45:08 FsX6uLUx
>>33
じゃあまず先にあなたからどうぞ。

35:名無しさん@ピンキー
08/11/15 22:02:58 5az4zAAP
いやその理屈はおかしい。
なんで今日はこんな殺伐としてんだ…

ヤンデレか。ヤンデレの仕業が。

36:名無しさん@ピンキー
08/11/15 23:25:47 FsX6uLUx
別に殺代としてないぜ?^^

37: ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:42:55 NGbYBcv8
流れぶったぎって投下余裕でした。
短編投下します。
特に注意事項はありません。しいて言えば、ロボ注意。

38:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:43:37 NGbYBcv8
『魅惑のヤンデロイド』

「おじいちゃん、メイドさんが欲しい!」
いつだったろう。小さな頃、僕は洋画が好きで、祖父にこんなことを口走っていた気がする。
日本では見かけない―最近は喫茶店にパチモノが横行しているが―メイドさんという存在。
僕は子供ごころながら、その魅力に取り付かれていた。
「だからって、学校で『エマ』を読んで良い理由にはならないわよ、高雅(こうが)」
「エマは良い。つつましやかなメイドの魅力がつまっている……!」
「だからって一巻につき三冊持って来て布教したら周囲にも不快だろうがだあほっ!!」
ごぼっ! 息がやばい! お前のパワーで俺がヤバイ!
俺、『高雅(こうが)』にスリーパーホールドをかけているこの乱暴者は、幼なじみの『恋(れん』。
オレの理想とするメイドとは似ても似つかないほどにがさつな女だ。正直、興味ないね。
メイド喫茶でバイトをしているらしいが、こんなやつの働く店には行く気にもなれん。
さらにいうなら、メイド喫茶の存在自体が俺にとってはあえて言おう、カスであると。
なんだ、あのカラフルなメイド服。なんだ、あのふりふりの媚びたエプロンドレス。なんだ、あの短いスカート。
つつましやかで、控えめで、御主人をたてる健気さがメイドの良さだろうが! 
それを勘違いした馬鹿どもは、われ先にと金儲けのためにあんな『わかってない』施設を作りやがる。
ったく、世の中くさってんな。
二次元の世界でも同様だ。
流行りだからって、メイドだしゃいいってもんじゃねーぞ。
まずはロングスカートじゃないやつ。そいつまず除外だからな。
さらに、ロングスカートを、武器を隠すためにつかっているやつ。もはやグレーだね。
俺くらい心が広くなければ、あれも即死だろう。メイドの道というのは、それほどにおくが深い。


39:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:44:07 NGbYBcv8
「さっきからなにアホなことぶつぶついってんの! もう放課後よ!」
おっと、トリップしていたようだ。恋に殴られたときには既に今日の授業すべてが終わっていた。
「さっさと帰るわよ、ほら、立ちなさい」
「あ、ああ」
恋に腕を引っ張られて無理矢理立たされる。
ああ、メイドさん欲しい。
恋は世話焼きだ。親が不在の俺をいつも気遣って、お越しに来てくれて、朝飯と、弁当を作ってくれる。
部屋だって片付けてくれる(これは余計なお世話だといえるかもしれないが)。
行動自体には感謝している。幼なじみとして、恋はすばらしい女だと言える。たぶん、誇って良い。
しかし、こいつのしている俺への世話は、極端に乱暴だ。
俺がこいつに抱いている不満はその一点。
メイドさんと同じような役割を果たしてくれているくせに、心はガサツな幼なじみ。
ここ、治らないかな?
「ちょっと、なに人の顔じろじろみてんのよ……」
恋はつんとして目をそらした。なぜか顔が赤い。
「いや、もうちょっとおしとやかなら良い女なんだがな……って思って」
「え……そう、かな……?」
ん、なんか変だな。てっきり「余計なおせわよ!」とか言って殴られるかと思ったが。
「やっぱり、あたし。乱暴、かな……。もっと、女の子らしくしたほうが良いかな……」
しゅんとして下を向く恋。まずい、悲しませてしまったか。


40:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:44:43 NGbYBcv8
急に罪悪感が沸いてくる。空気をよめないことで定評がある俺だが、他人を傷つけて平気なほど面の皮は厚くない。
「い、いや、そんな無理して変わる必要はないし、それに俺個人の意見だからさ! ……ほら、別に俺の好みってマイノリティだし、合わせても得はないぞ!」
「……あんたにあわせなきゃ、意味無いわよ」
ぽそりと呟いた恋。
俺にはその声は小さすぎて届かなかった。
恋はそれっきり黙りこくってしまった。
「と、とにかく。俺の家、あがれよ! 茶菓子くらいは出すからさ!」
俺の家の前についたとき、俺は意を決してそう提案した。
恋の機嫌をそこねると、俺の日常生活もやばい。
俺には全くといって良いほど生活力が無い。なんだかんだで、恋なしには生きていけない。
「最初からそのつもりよ。あんた、覚えてないの?」
「なにを……?」
「今日、あんたの誕生日でしょ! あたしがごちそう作ってあげるから、最初からあんたの家に上がるつもりだったっていってんの!」
「そ、そうか! そうだったな! なら、今日は久々にどんちゃん騒ぎに……」
家の扉のノブをつかむと、違和感があった。
「あいてる……?」
「あんた、また鍵かけわすれたの?」
「いや、そんなことは……まさか、泥棒か?」
「やだ、ちょっと、やめなさいよ」
俺は恋の制止を振り切って、ドアを開けた。
俺の家にはたくさんのメイドさんフィギュアが眠っている。価値を知らない素人に傷をつけられては大変だ。


41:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:45:13 NGbYBcv8
「……だれか、いるのか?」
―もしくは、いたのか?
心の中でそう付け加えて、家の中に入る。
緊張する。他人の家みたいだ。
すり足で家の中を進む。あまり荒らされた印象は無い。
「お帰りなさいませ」
「びやああああ!!!!」
いきなり背中から声をかけられ、馬鹿みたいな大声をだしてしまった。
「ちょっと、高雅! どうしたの……!」
恋もどたどたと追ってくる。
「あわ……あわわ……」
俺は腰が抜けて動けない。
侵入者はそんな俺に徐々に迫ってくる。恐怖で目を開けられない。
「高雅!! このっ……高雅に、手を出すなぁ!!!」
恋が侵入者に飛び掛かった―っぽい音がした。
「きゃ!」
どたんと何かが投げ飛ばされて床におちる音がした。たぶん、恋だ。
「失礼。急に攻撃をかけられたので、反射的に」
……ん?
冷静になってみると、それは女の声だった。若くて、綺麗で、透き通った声。
少しずつ、目をあけて見る。
「……!?」
そこには、メイドが立っていた。
まぎれもない。否定しようがないその佇まい。
まさに、メイド。それ以外のことばでは表現できない。
メイドだった。


42:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:45:44 NGbYBcv8
「改めてご挨拶いたします。私は博士―あなたのおじい様によって製作された、人間型.Yarn.D.Ray.スーツ.オートタイプ『YDR-001A.コロナ』と申します。御主人様、お帰りなさいませ」
『コロナ』は、そう言うと床に三つ指ついて丁寧なお辞儀をした。
完全に計算された動作だった。
「とにかく、椅子に座ってくれ。俺らだけテーブルってのは、目覚め悪いだろ」
「しかし」
「いいから。頼む」
「御主人様の命令なら」
そう言って、コロナはテーブルの、俺のむかいの席に座った。
隣には、なぜかぴくぴくと額を震わせて怒りをこらえている恋。居心地悪い。
「つまり、あんたはじいちゃんが俺のために送り込んできたメイドロボってことなのか?」
「はい。誕生日プレゼントであるとのことで、先日ロールアウトされたばかりのワンオフ機である私を高雅様に」
「つまり……コロナは、俺専用の。世界で俺だけのメイドってことか……?」
「はい、そうなります」
コロナはいまいち感情の表されていない顔で頷いた。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
「なんだよ、恋」
「なんであんたは普通に納得してんのよ! もっと疑いの心を持ちなさい!」
「疑いって、この状況でそれ以上に適切な説明があったか?」
「あるでしょうが! この人が泥棒が見つかった言い訳をしている可能性とか、ただのストーカーがあんたに近づきたいがためについた嘘とか!」
「まさか。俺らを倒したんだから、そのまま逃げてもいいだろう。それに、俺なんかにストーカーがつくかっての。アイドルじゃあるまいし」
「……なら、しょーこ見せなさいよ! コロナとか言ったわね。あんたがロボットだっていう証拠はあるの!?」
恋は、俺に話が通じないとみると、今度はコロナを指差してまくしたてた。
「証拠、ですか」


43:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:46:14 NGbYBcv8
「そう、証拠よ。ロボットなら、『らしい』ことができるでしょ。目からビームとか、大車輪ロケットパンチとか」
どこのマジンゴーだ。
「そういう武装はついていません。高雅様はそういうごてごてしたものがお嫌いとのことで、博士がなるべく人間らしく作ってくださいました」
「……なら、不審者じゃないって証明できないじゃないの」
「そこまで言うのなら……。恋様、『ターミネーター2』はご存知ですか?」
「当たり前よ」
「なら、その手法を使います。しばしお待ちを。包丁を用意します」
ここまできてやっと意味がわかった。
グロ注意ってことだ!
「ちょ、やめろって! コロナ、お前は俺が保証する! だからストップ! ウェイト! 分かるな!」
「御主人様の命令は特Aレベルの優先順位となります。よって、いかなる状況処理を無視してでも有効です。無論、従います」
ほっと胸を撫で下ろす。
いきなり腕の皮をはごうだなんて、マジ、やばい。
洋画でグロ耐性がついた俺でも、そういうのをリアルでみたらショック死しかねない。
「……まあ、いいわよ。高雅の誕生日を祝う人間が一人くらい増えても、ばちは当たらないもんね」
やっと恋は納得したようで、すっくと立ち上がった。
「もういいわ。とりあえず、誕生祝いのおいしい料理、つくったげる。待ってなさい」
そう言って、恋は俺の家におきっぱのエプロンをつけた。
「その必要はありません」
「……どういうことよ」
恋がコロナをキッと睨んだ。あまり良い感情を持っていないようだ。
「既に作ってあります。勝手ながら、御主人様が帰ってくる時間にあわせて料理を完成させていただきました」
コロナはキッチンにすたすたと入ると、その二秒後にお盆に大量の皿を載せて帰ってきた。
「……」
恋はあんぐりと口をあけて、言葉を失っていた。
俺もおなじだったろう。


44:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:46:45 NGbYBcv8
「御主人様、お口に合うでしょうか」
「ああ、美味い! ロボットが作った料理ってどんなもんかと思ったけど、すげーよ! 恋とはえらい違いだ!」
「……くやしいけど、確かにすごいわ」
恋は悔しそうにしていたが、箸は進んでいた。
恋も料理は下手じゃない。むしろ、上手なほうだろう。しかし、コロナはその遥に上を行っていた。
「御主人様の賛辞が、私には最大の喜びです」
コロナはそう言ったが、顔は喜んでいない。最初から最後まで、全く同じ、作られたかのような綺麗な顔。
無表情。まるで、彫刻かなにかのようだ。
「他にも、御主人様のお部屋の掃除、庭の水やり、洗濯、お風呂掃除。全て完了しています」
「まじかよ。すげぇな」
そう言えば、妙に家がぴかぴかしている。
これがコロナの実力か。
全てが、恋とは違う。
「ははっ、こりゃ、もう恋はお払い箱ってやつか?」
「ぇ……」
恋が俺を見つめた。
その顔の衝撃を、俺は一生忘れないだろう。
「それ、ほんとう……高雅……?」
絶望。
その顔には、絶望という言葉そのものを形にしたようなものが表れていた。
まずい。まずいまずい。
恋は、いままでにも何回かこの状態になったことがある。
まずい。過去のトラウマが呼び覚まされる。
あれは、俺がクラスの可愛い子についていろいろ褒めていたときだったか。
「あたしは、もう、いらないの……?」
光を失った目で、そう呟いた。
そう、あのときと今は、全く同じ。


45:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:47:15 NGbYBcv8
「い、いや、そういうわけじゃ……」
「そのとおりです」
―いや、違う。
コロナが口を挟んだ。そう、今はコロナがいたのだった。
「恋様。あなたは御主人様のお世話をしていただいて、感謝しています。しかし、これからは私がその任務を引き継ぎます。あなたは、もう用済みということです」
一瞬、耳を疑う。
コロナは、恋に追い討ちをかけた。
馬鹿な。
「これからは、御主人様の全てが私に。私の全てが御主人様のものとなります。ですから、あなたはもう必要ないのですよ」
「そんな……そんな……あたしは……高雅の……」
恋は頭を抱え込み、ガタガタと震えだした。
「お、おい、恋。落ち着け……」
「高雅の……高雅が……全てだったのに……あんたなんかに……」
恋は震える手でキッチンに置いてあった包丁を握り、コロナに向けた。
虚ろな目。焦点が定まっていない。
「理解、できませんね。人間というものは。能力の無いものが捨てられるのは当たり前のことですが、それすら理解できないのですか?」
「あたしは……ロボットじゃない……! あんたとは、違う……!」
コロナは恋の唐突な暴走にさらに拍車をかける。
「違うのは当然のことです。私は御主人様のために存在するロボット。あなたとは違います。あなたのような役立たずとは」
「言うな……言うな……」
「おい、やめろ、コロナ!」
「……はい」
コロナはそれきり黙った。
が、包丁を持って興奮しきった恋は、収まりのつかない感情を暴走させたままだ。
「あたしは、高雅の……!」
包丁を突き出し、コロナに迫った。


46:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:47:46 NGbYBcv8
「―ぁっ!」
俺が反応して叫ぶより早く、コロナは機械的反射速度で対応していた。
包丁を指ではさみこんで止め、そのまま奪い取り、空いた手で恋をつかんで床に組み伏せ、鎮圧。
そのまま包丁を突きつけた。
「やはり、あなたは御主人様には相応しくない。廃棄処分です」
そのまま包丁を振り上げる―まずい!
飛び込む。
「……間に合ったか」
「……こう、が……?」
「御主人様、なぜ……」
ギリギリで、恋に振り下ろされた包丁を掴んで止めることができた。
手のひらから血が大量に流れている。痛い。
けど、今は恋を守れたことに安堵を感じていた。
「恋……良かった」
「馬鹿、あんた、なんで、あたしなんか……!」
恋の目から涙が零れ落ちる。
ああ、わかったよ。はっきりいってやる。
俺だって、今始めて分かったことだ。
「俺はな、お前をメイドだとか家事手伝いだとか、そんな役割求めてねぇんだよ。……お前は、お前だろ。俺の幼なじみで、ちょっと乱暴だけど、時々可愛くて……俺の好きな女だ。恋、お前はそれでいいだろ……?」
「ぇ……?」
恋は涙でぐしゃぐしゃになった目を見開き、俺を見つめた。
「ほんと……? こーが、それ、嘘じゃないよね?」
「ああ、恥ずかしいけど、今気付いた。本心だよ」
「……う、うぅ……」
恋の目からさらに大量の涙が追加された。
「な、泣くほど嫌かよ……」
「ちがうよぉ……うれしいの……高雅に好きっていってもらえて、うれしいんだよぉ……」
それだけしぼりだして、恋はわんわんと泣き始めた。
ああ、めんどくさい女だ。
でも、なんでこんなにほっとけなくて―可愛いんだろうな。


47:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:48:16 NGbYBcv8
「……すみませんでした」
泣き喚く恋をとにかく帰らせて、俺はコロナに手を治療してもらっていた。
「いや、かまわねーよ。俺があいつにとってた態度が悪かった。お前は、それを気付かせてくれたんだからな」
「……」
コロナは顔を暗くした。
とはいっても、少し角度を下げただけの、微細な変化。表情は変わっていない。
それでも、俺にはわかった。
コロナは、ただのロボットじゃない。俺達と同じ、感情がある。
なら……。
「反省してるなら、これからは恋にも優しくしてくれ」
「……」
コロナはこくりと頷いた。
「今日は、その傷ではお風呂には入れませんね。私が、身体をお拭きします」
「いや、いいって。自分でやるから」
「そうはいきません。ただでさえ身の回りのお世話は仕事ですから、この件は私の責任であって、これは絶対に私がやらなければならないことです」
―俺の指示、したがってねーじゃん。
そう思いつつも、ここはコロナの仕事を遂行させてやろうという、一種の親心が勝った。
たぶん、それを見抜いたからコロナも断行しようとするんだ。
「では、上着を脱がせます。両腕をお挙げください」
「わかったよ」
丁寧に、しかしすばやく上着が脱がされ、俺は上半身裸になる。気恥ずかしい。
が、コロナはロボットだ。別に俺の身体が貧弱だろうが、メタボだろうが醜いなどとはおもわないだろう。
それに、俺は身体は鍛えている。自身はあるし、人に見せてもそうそう馬鹿にしたもんじゃない。
コロナは温めたタオルで俺の身体をこすった。絶妙な力加減だ。


48:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:48:46 NGbYBcv8
「痛くないでしょうか」
「ああ、丁度いい」
「何よりです」
丁寧だというのにすばやく完了した。
「では、次は下を」
「そ、それは……」
「お願いします」
コロナの目をみると、断れなかった。
無表情だからかはわからないが、強い意志を感じる。自分の仕事に誇りを持っている。
「……」
俺はズボンを脱ぎ、椅子に座った。
「では、足をお拭きします」
タオルで片足ずつ拭いていく。鍛えて、筋肉がついた足。
妙にゆっくり、丁寧になぞっていくもんだから、なんだか俺も変な気分になる。
「終わりました」
不覚。妙な気分のままトリップしたのか、いつのまにか終わっていた。
「ああ、ありが―」
「では、トランクスも失礼します」
「―とぁ!?」
さすがにそれはないだろ! と、拒絶する前にコロナは素早く俺のトランクスを取り去った。
ああ……俺の股間のベストフレンドが、見られている……!
コロナは無表情にそれをみて、タオルでいきなり触れた。
「―ぃ!?」
「御主人様、どうしました?」
「ちょ、おま……!」
「性器は最も大切な部位のひとつです。メンテナンスは念入りにせねばなりません」
メンテナンスって、そんな、俺は機械じゃないっすよコロナさん!?
コロナが俺のマグナムをタオル越しの手で掴み、擦りあげる。


49:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:49:21 NGbYBcv8
「ぐっ……ぁ……」
むくむくと、だらしのない俺のマグナムは硬化して天をさした。
「これは……」
「い、いや、違うんだ、これはなんていうか、人間としてしかたのないことであって……」
「存じています。勃起という現象です。陰茎が性交を求めるときに形態を変化させるものですね」
コロナは冷静にそこを凝視しながら、タオルを取って―急に素手で触った。
「おぉっ!? こ、コロナさん!?」
「御主人様の性処理も、私の仕事のひとつですから」
「ぉ……ぉあ……!」
冷たい手でしこしこと扱きはじめる。
そう、コロナの手は冷たかった。しかし、肉感はあり、人間味はある。
そのギャップが、また快感を促進する。
「これは……カウパーというものですね」
いつのまにやら、俺の我慢汁が溢れていて、コロナの手を汚していた。
上下に動かすたびにぐちゅぐちゅと卑猥な音がする。
ああ、やばい……。やばすぎるぜ……。
ぺろり。
「―っ!?」
俺の身体が跳ねた。
コロナさん、何舐めてんすか!? 汚いっすよ!?
「いえ、御主人様の体液が私の一番の好物となるように、味覚が設定されています」
そう言って、コロナは俺のモノをくわえこんだ。
おいおい、マジやばいって。口の中、あったかくて、濡れてて、やばい……。
ぐちゅ、ぐちゅ。
リズミカルに頭を上下させ、コロナは俺のマグナムを口で喜ばせていた。
口の中では、舌が活発に動いて舐めあげ、カウパーを一滴残らずに掠め取る。
「まずい……もう、出るから、やめ……!」
って、やめてって言って、やめてくれる雰囲気じゃないっすよね。ははっ……。もう、諦めたぜ。


50:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:51:11 NGbYBcv8
「はい、やめます」
って、おい!!
逆にビビるわ! この展開なら、エロマンガとかだとごっくん路線だろ!
「私の擬似性器の性能テストも兼ねて、御主人様にはこの中で射精してもらいます」
コロナは俺を強引に押し倒し、床に押さえつけて馬乗りになった。
そして、ロングスカートを両手で上げる。
「……!?」
俺は、信じられないものを見ていた。
完全な人間の身体が、目の前にあった。
っていうか、コロナさんパンツはいてないんっすか?
「私は、骨格こそメカですが、外皮はほとんど人間と同じです。性器も、その生殖機能以外はほとんど精巧に再現されています。……失礼、再現されている、『はず』です。テストプレイも行わず、ここで性能テストするのですから」
そう、完全な人間の身体。いや、俺は童貞だから正直初見だが。
知識にあるそれとは同じ。
俺の目の前に晒されているコロナの股間には、確かに無毛のピンクの割れ目があったし、そこからは液体が流れて俺の服にしみを作っていた。
「では、始めます」
「お、おい……!」
有無を言わさず、コロナは俺のモノを掴んで固定すると、そこに一気に腰をおろした。
「……うぐっ」
コロナが始めて表情をゆがめた。一瞬だけだったが、痛みに顔をゆがめたのだ。
「おい、血が……」
「そうですね。擬似血液ですから、行為に支障有りません」
つらそうな顔をしていうなっての。
「では、続行します」
俺の上に乗っかったまま、コロナは腰を上下させ始めた。
やばい、やばすぎる。俺の股間に、全身に、すさまじい快感が走る。
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ。
コロナが身体を上下させるたびに、卑猥な水音が響く。


51:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:51:50 NGbYBcv8
「……御主人様、快感を感じますか?」
「……不覚にも、ロボットに欲情しちまってるよ、俺。情けない限りだ……」
「そうですか。嬉しい、です」
コロナの腰がピクリと震え、きゅうきゅうと膣がしまった。
「今、軽いオーガズムに達しました。私の感度は高めみたいですね」
無表情。息が若干速くなっている程度の変化。
しかし、その頬は確実に赤く染まっており、その身体は熱を帯びていた。
コロナの性交の機能は、精巧だ。駄洒落じゃないが。
「しかし、まだ御主人様の番はまだです。続行します」
そうだな。なぜか、俺はなかなか射精できなかった。
メイドさんの同人誌で散々オナニーした時はこうじゃなかったが。なぜだ。
……もしかして。
「……んぁ!」
やっぱり。
今、俺は腰を突き上げて自分からコロナの奥に挿入した。俺の快感は上がった。
やはり、能動的にならないとだめだったか。
しかし、不可解なのは、コロナが嬌声を上げたこと。
さらに激しく攻め立てる。
「ぁっ、あぁ! ……御主人様、はげしっ……! そんな……! だめっ……だめじゃない、訂正します、だめじゃないですっ!!!」
連続で突き上げられてよがっているコロナは、さっきまでとは全く違う、表情豊かに喘いでいた。
「そんな、私が、こんなっ……はしたないっ! ……私は、メイドロイド……こんな……!」
「そんなことないぞ。お前も、可愛いよ」
「……っ!? ひぁ……ん、ああああああああああああああ!!!!!」
俺の声が起爆剤になったのか、コロナは盛大に叫びながら身体を逸らし、びくびくと振るえた。
「あ……あぁ……また、御主人様より先に……申し訳、ありません……」
涙と涎(のような液体)で顔をぐしゃぐしゃにぬらしながら、コロナは俺に何度も謝った。


52:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:52:20 NGbYBcv8
「いいって、そのほうが人間らしくて可愛いぞ」
「か、可愛い……? 私が、ですか? 恋様ではなく?」
「……恋も、お前も、違うだろ。それぞれ必要な部分はあるし、可愛いとこも違う」
「……」
コロナは、無言になって一瞬硬直した。
「御主人様、恋様と、恋仲になるおつもりですか?」
「それは、まだよくわからない」
「なら、恋様は諦めてください」
「……?」
「この行為の全部は私の中で映像としても、音声としても残っています。ロボットに欲情したという事実を、私は誰にでも公開することができます」
「……お前」
「言ったはずです、私は御主人様の全てであり、御主人様は私の全てです。恋様……いえ、あんな雌猫は、必要ないのです」
「コロナ、お前、一体……」
「このデータを公開すれば、御主人様の社会的な評判は一気に落ちるでしょう。ロボットと性交など、獣姦と変わらないですから。ですから、これを秘密にして欲しければ、私以外と絶対に性行為をしないでください」
「ど、どうして……!」
「私とて、御主人様の信用が失墜するのは耐えかねます。しかし、御主人様がずっとこの家にいてくださるということは、私の存在価値が完全に発揮されるということですから」
コロナはゆっくりと、つながったままの性器同士をまたこすりあわせ、上下運動を始めた。
「私にはどう転んでもよいのです。御主人様が私のものになってくださるか、御主人様が私以外の全ての他人から軽蔑されてしまうか。それだけの違いです。私は、そのどちらの未来でも御主人様を唯一支える存在となります。選ぶのは、もちろん御主人様です」
ぐちゅぐちゅと、また激しく動きはじめる。
上着のボタンをはずし、胸も露出した。大きく、肉感的だ。
上下するのにあわせて、ぶるぶると揺れる。


53:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:52:52 NGbYBcv8
「さあ、はやく私に射精してください……♪ これで、御主人様は私のもの……」
あたまが、痛い……。
どうして、こんなことになったのだろうか。
わけわかんねーよ。
でも、気持ちいい。コロナを選んでしまっても……。
いや、コロナを選ばなければ、俺の人生は終わる。
どうする……。
コロナが全てを公表したとしたら、俺を今までどおり扱ってくれる優しいやつなんて殆どいなくなるだろう。
恋は……受け入れてくれるかわからない。とても怖い提案だ。
そして、もうひとつの案は、魅力的だった。
コロナ意外とセックスさえしなければ、俺はいつも通りの生活。
本当に、簡単な話。
恋とやっと好きだって伝え合った事実から目を逸らさなければならない。
しかし、恋のためにも、俺のためにもこちらがしあわせだ。
……どうする。
どうするんだよ。
「あ、ああああ! 御主人様の、熱いです……! コロナのいやらしいロボットおまんこの中に、いっぱい、いっぱい……!」
出しちゃったよ。
「はぁ……はぁ……では、選択してください」

「御主人様、私はずっとあなたの味方ですから」


54:魅惑のヤンデロイド ◆.DrVLAlxBI
08/11/16 00:54:29 NGbYBcv8
終了です。
危険を冒してでも恋を選ぶか、それともコロナの庇護下で生きるか。
悩みどこってやつですね。
恋のヤンデレを書ききれなかったので(高雅の部屋に盗聴器を仕掛けていて、それをコロナに発見される展開とかをカットしてしまいました)
もしかしたら続きをかくかもしれません。
では、また

55:名無しさん@ピンキー
08/11/16 01:08:12 vw1ueHXy
GJ!!面白かった!

56:名無しさん@ピンキー
08/11/16 01:12:15 OtbgyVUQ
GJ!
最近のロボは疑似性器まで装備してるのか…


57:名無しさん@ピンキー
08/11/16 07:44:11 Wj3WkFwj
>>54
GJっす

コロナ可愛いよコロナ

俺的にはコロナを応援したいぜ

58:名無しさん@ピンキー
08/11/16 10:07:16 Eg1uo1kz
GJ!!
恋ちゃんを応援したくなっちゃう俺異端

59:名無しさん@ピンキー
08/11/16 13:37:13 T5Pd3iCa
こんなメイドロボに洗脳されたい

60:名無しさん@ピンキー
08/11/16 13:58:04 DjJkZAjg
実は生身の人間が素体で妊娠しないはずなのに妊娠しちゃったどうしよう的な泥沼になると俺的にいい感じ

61:名無しさん@ピンキー
08/11/16 15:50:50 3O08ZDvb
俺は恋を応援するぜ。
頑張れ!

62:名無しさん@ピンキー
08/11/16 16:23:18 92VKlhLr
これはメチャクチャに萌えたw愛情で機械が暴走するってイイ!
俺としてはコロナガンガレw

63:名無しさん@ピンキー
08/11/16 20:23:24 DIlDYlej
それぞれ二人分あってもいいと思うぞ

64:名無しさん@ピンキー
08/11/16 21:32:00 WT9Ees0N
両取でおk

65:名無しさん@ピンキー
08/11/16 23:39:56 AAzdDMKc
これで実は元になったモデルの少女が居たりして乱入してくるとかだったら神

66:名無しさん@ピンキー
08/11/17 00:28:58 9KZXGOnN
展開予想自重汁

67:名無しさん@ピンキー
08/11/17 04:34:54 TyhOnQLq
 だがそれも(・∀・)イイッ!

68:名無しさん@ピンキー
08/11/17 06:19:26 mQeH+FRc
なにはともあれ期待して全裸待機

69: ◆.DrVLAlxBI
08/11/17 23:10:06 R28X6e72
とりあえず短編組の絵も置き逃げしていきます。
ヤンデロイド
コロナ URLリンク(up2.viploader.net)
恋 URLリンク(up2.viploader.net)
二人なら
希望 URLリンク(up2.viploader.net)
涼子(涼ちゃん) URLリンク(up2.viploader.net)

70:名無しさん@ピンキー
08/11/17 23:14:39 ygplYuys
>>69
コロナ可愛いいいw

71:名無しさん@ピンキー
08/11/17 23:17:51 bw3Tv//A
>>69
VIPでやれ

72:名無しさん@ピンキー
08/11/18 00:24:21 0xkOzVes
自分のキャラのビジュアルが把握できて、かつそれを絵に出来るってのはいいなぁ
妬ましい、ああ妬ましい、妬ましい

73:名無しさん@ピンキー
08/11/18 00:58:13 PKBh64pN
新たなるヤンデレの誕生である

74:名無しさん@ピンキー
08/11/18 01:14:22 5Wlubv5r
愛の矛先はどこへ向かうんだ?

75:名無しさん@ピンキー
08/11/18 01:24:08 gDP+rAas
自分

76:名無しさん@ピンキー
08/11/18 02:33:18 FvXmjhy5
  ∧ ∧  乙。夜食の差し入れだ、味わって食ってくれ。
 ( ´・ω・) え?だれの###かって?そりゃ・・・なァ?
 ( ∪ ∪  ,.-、   ,.-、   ,.-、   ,.-、     ,.-、      ,.-、    ,.-、
 と__)__) (,,■)  (,,■)  (,,■)  (,,■)    (,,■)      (,,■)   (,,■)
       脊髄  左足  耳   腎臓     目      小腸    舌
          ,.-、   ,.-、     ,.-、      ,.-、   ,.-、   ,.-、    ,.-、
          (,,■)  (,,■)    (,,■)     (,,■)  (,,■)  (,,■)   (,,■)
          左手  膵臓    右足      肺  心臓  右手   肝臓
      ,.-、   ,.-、     ,.-、    ,.-、    ,.-、   ,.-、    ,.-、   ,.-、
     (,,■)  (,,■)    (,,■)   (,,■)   (,,■)  (,,■)   (,,■)  (,,■)
     太腿  十二指腸  胃    鼻    脳   大腸   卵巣   脾臓


77:名無しさん@ピンキー
08/11/18 04:15:31 K6K+tc0m
>>69
GJ~
皆かわいいよ皆

78:名無しさん@ピンキー
08/11/18 18:10:09 RYXIOxM7
ロボットとヤっているデータの公開、と言っているけど
それがロボットだと誰が証明するの?
シチュエーションプレイに見えるじゃない?

79:名無しさん@ピンキー
08/11/18 18:26:15 sghNP58Z
いらん口出しに感じた俺

80:名無しさん@ピンキー
08/11/18 19:55:27 txHrpwbE
ヤンカマ
(ヤンデレオカマ)
ナルヤン
(ナルシストヤンデレ)
ブリヤン
(ブリっこヤンデレ)

81:名無しさん@モンキー
08/11/18 21:25:08 ZecKpzoO
>>69
GJ。マイフォルダに回収させていただいた。

>>71
zipperの俺が通りますよ

>>78
最初からデータがないとか改ざんしかねないとかおもった俺は間違っているのか。
創価創価

82:名無しさん@ピンキー
08/11/18 22:34:09 S+HfdNrJ
>>80
他はともかくナルヤンって、難しくないかw

83:名無しさん@ピンキー
08/11/18 22:43:28 rudh3Dri
>>80ナルヤンwwwあれか、美しすぎて頭も良い私にはあなたさえいれば完璧になれるのっ的な?

84:名無しさん@ピンキー
08/11/18 22:49:06 uiO+wijT
この美と知を兼ね備えた私に選ばれたんだからわかっているわよね?
もし、私以下の雌に目を向けたら…監禁よ、永遠に。
というやつですな…。

85:名無しさん@ピンキー
08/11/18 23:07:42 MXfPJlnB
ヤンデレ様は本当に頭のよいお方・・・

86:名無しさん@ピンキー
08/11/18 23:24:25 /D5kVqht
俺はてっきり
「あの人カッコいいわね……って何をこの美しい私以外に見蕩れているの!
駄目ね、美しい私!二度とそんな気が起きないように美しい私にはお仕置きしなきゃいけないわ……」
という自分に病んでデレている人かと思った

87:名無しさん@ピンキー
08/11/18 23:52:14 QZF/vhPR
極度のナルシかよww

88:名無しさん@ピンキー
08/11/18 23:55:27 FnvWw9Ki
女「夜の河の如き流れる黒髪 白磁さえ霞むこの美しい柔肌 それでいて野性を感じさせる完成されたプロポーション」
「あぁ…なんて…美しい」
女「輝く銀河そのものを現わす様な瞳 唇はまるで、白銀の大地に一つだけ咲き誇る満開の桜
…ねぇ、私は少し憂鬱なの…もし神がいるのなら彼は自分自身をも越える私と言う人間を創ってしまった事に
至上の喜びを感じる以上に、恐怖を抱いているのではないか…とね…ふふ」
「……」
女「さぁ…恥ずかしがらずに私を見て…私を見て…感じて…私と言う存在を、飽く事なき
その手で抱いて…」
「…で、でも……」
女「怖気づいてづいているの…?どうして…? …まさか…他の女の事を考えているのではなくて…?
そんな事…絶対に…ゼッタイニ…ユルサナイ。ゼッタイニゼッタイニゼッタイゼッタイゼッタイゼッ」

ガラッ
「ねーちゃんメシできでっど、独りで喋ってねで降りてコ。」

女「今いぐー」

ナルシスヤンデレだから大好きなのは自分じゃないの?

89:名無しさん@ピンキー
08/11/19 00:38:05 69FhNjoD
私的には84がジャスティスすぎる

90:代弁してみますた
08/11/19 01:26:56 pk9b+pEP
>>69「ショック!一生懸命書き上げた絵と文なのに、一晩で別の話題ですか!」
>>69「おーのーれー。だが忘れるな住人達、世界はヤンデレを愛し続ける! この世にヤンデレがあるかぎり、頭脳世界に生き続けるヤンデレヒロインがいる限り他の神からヤンデレがやって来る!
 ……おお、なんという人の業……!罪深きもの、汝らの名はヤンデレスレの住人なりぃぃぃい…………」

91:名無しさん@ピンキー
08/11/19 03:15:38 weNhrS8A
ヤンデレが頑張って並べたドミノを倒したり
ヤンデレが進めてるゲームのセーブを上書きしたり
ヤンデレの分のお菓子も食べてしまったりしたい



92:名無しさん@ピンキー
08/11/19 08:50:18 RYekf+Jw
>>91
そういう発想は無かったわ

93:名無しさん@ピンキー
08/11/19 08:52:13 1EhxU41L
ヤンデレを修羅場と関係ない方向でいじるのがブームですか

94:名無しさん@ピンキー
08/11/19 09:28:50 tnUu1HsQ
>>91
普通なら口をきかなくなる冷戦状態だが、ヤンデレならあるいはッ……!

95:名無しさん@ピンキー
08/11/19 15:26:54 89v2LoUq
クリティカル☆ショック

96:名無しさん@ピンキー
08/11/19 16:40:16 Sv3giVKv
>>91
>ヤンデレが頑張って並べたドミノを倒したり
「男君が楽しんでくれるなら、何回だって並べなおしてあげるわ♪」
>ヤンデレが進めてるゲームのセーブを上書きしたり
「ゲームなんかより俺にかまえ、ってことなのね。男君カワイイ♪」
>ヤンデレの分のお菓子も食べてしまったりしたい
「嬉しい、口移しで食べさせてくれるのね!」→熱烈なベーゼ

97:名無しさん@ピンキー
08/11/19 16:59:23 0RU8wfwp
凄まじいプラス思考だなwwww

98: ◆wzYAo8XQT.
08/11/19 17:50:41 RYekf+Jw
風邪とアク禁に巻き込まれたせいですっかり投下が遅くなってしまいましたが、ぽけもん 黒 十一月分を投下します
一行が長いというご指摘がありましたが、それは自分でも自覚しているところですがかといって直す気もないので、各自ブラウザを縮小するなどして都合してください

99:ぽけもん 黒  緊張と告白 ◆wzYAo8XQT.
08/11/19 17:51:55 RYekf+Jw
 柔らかい布団で寝たはずなのに、妙に体が痛い。
 それが僕の起床時に抱いた最初の感想である。
 左右から挟まれていたから、寝返りが取れなかったのだろう。
 体を起こすと、香草さんも同様に体を起こした。僕のせいで起こしちゃったのか、それともまた起きていて僕が起きるのを待っていたのか。後者だったら理由が聞きたくもあるけど、僕の思い上がりだったら嫌だから聞くに聞けない。
「おはよう」
 目をこすっていると、香草さんから笑顔で言われた。こういうのも、中々悪い気はしない。
「おはよう、香草さん」
 僕がそう返すと、香草さんの笑みは一層明るくなった。
 ポポはまだ寝ているみたいだ。そりゃ、ポポは香草さんの甘い香りを嗅いでいるんだから、香草さんと同様に起きれないのは無理もない。
確か草ポケモンの出す甘い香りには精神安定作用があるんだったっけ。その精神安定作用が香草さん自身にも作用してくれるとありがたいんだけど。
 それとも、すでに作用しているのかな。そういえば昨日今日と、以前より態度は柔和だし。でもそう考えても進化前の態度の変化の説明がつかないしなあ。ダメだ、わかんないや。
 こんな物思いに耽っている間も、やたら香草さんの視線を感じる。どうして彼女は行動せずに僕のことをじっと見てくるのだろうか。
 僕の寝起きの顔はそんなに間抜けなのかな。
 そんなことを考えながら、僕はポケギアで今がやはり早朝だということを確認すると、ポポをまたいでベッドを降りた。
「どこ行くの?」
「風呂に行こうと思って。洗濯もしたいし」
「私も行く」
 そう言われて思わずドキリとしてしまった。風呂は別に混浴じゃないし、彼女は単に自分も行こうと思っていただけなのかもしれないのに。
 でも、可愛い女の子にこんな言われ方したら、つい反応してしまうのが、悲しい男の性って奴だ。
 二人で廊下を歩く。香草さんは僕の半歩後ろをついてくる。
 無言がやけに気まずい。といっても、僕が勝手に意識してしまっているだけなんだろうけど。前はこんなことなかったのになあ。
 ……というか、香草さんのほうからうるさいほど話しかけてきたから無言になることがなかっただけのような。
 僕が何か話さなければと迷っているうちに浴場についてしまった。「じゃあここで」と言って香草さんと別れ、男湯のほうに進む。
 洗濯物を備え付けの洗濯機に叩き込み、稼動させるとさっさと風呂に向かった。
 まだ早いというのに、風呂には数人の男がいた。いや、逆にこの時間を有効活用しようとすると、必然的に風呂という選択肢を選ぶことになるのか。
そりゃ寝ることはどこでも出来るけど、風呂に入るのはどこでもってわけにはいかないからな。出発前にひとっ風呂、というわけか。

100:ぽけもん 黒  緊張と告白 ◆wzYAo8XQT.
08/11/19 17:52:45 RYekf+Jw
 体を流すと、湯船に浸かった。はあ、気持ちいい。体の凝りがほぐされていく。
 風呂に浸かっている間、風呂にいた男達と世間話や近況報告などをした。ここにいた人は全員もう全国の旅に出発している組だった。
やっぱり時間を効率的に使おうという意識のある人たちは歩みが速いのか。噂や話を考慮すると、僕たちは割りと先頭のほうにいるらしいし。
 僕は石英高原に一番乗りすることに興味はないから―早く着くことが選考基準になる職もあるから、人によっては殿堂入りよりも早く着くことに気合を入れているらしい。
通称最速組と呼ばれている。ちなみに僕のような殿堂入りを目指しているのは殿堂組と呼ばれる―、とりあえずそこまでせかせかする必要はなさそうだ。
 僕はしばらくぼんやりと風呂を堪能した後、浴場の前まで出て行くと、香草さんが立っていた。
「ど、どうしたの?」
 僕はおずおずと香草さんに問う。
「勝手にゴールドがどこかに行かないように、見張ってたのよ」
「見張ってたって……」
「だって、あの赤毛コンビに絡まれたときだって、あなたが勝手にどこかにいったのが原因みたいなもんじゃない。あのときはたまたま不審に思った私が後をつけていたからよかったものの……まったく、ゴールドは私がいないとダメなんだから」
 誇るように胸を張って香草さんは言った。
 不審に思ったって、僕はそんなに信用がないのかなあ。
 赤毛コンビ。それはおそらくシルバーとランのことだろう。その言葉を言った香草さんには何の悪意もなかっただろう。でも、その言葉は僕の心に重くのしかかる。
「……どうしたの?」
「え、何が?」
 香草さんに尋ねられて、慌てて僕は取り繕う。
「何が? じゃないわよ。今、すごい顔してたわよ。……もしかして、私といるのが嫌……とか」
 香草さんは伏せ目がちにそう尋ねてくる。
 顔に出てたのか。ダメだなあ、どうしてもアイツが絡むと、つい取り乱してしまう。
 僕は香草さんの態度にドキリとし、慌てて否定する。
「ち、違うよ!」
「そ、そうよね! ゴールドが私と一緒にいたくないとか、そんなわけないわよね! ……だとしたら、さっきの表情は何よ」
 香草さんは相変わらず伏せ目がちだが、視線をせわしなく左右に走らせている。少し挙動不審のような感じだ。僕の反応から、この話題が聞きにくいものだということを感じ取って、尋ねるのを躊躇しているのだろう。
 確かに僕はあまりこのことを聞かれたくない。かといって何も言わないわけにもいかない。僕は言葉を選びながら、なんとか返答を取り繕う。
「……香草さんも分かってると思うけど、僕とアイツには……なんというか……因縁、みたいなものがあるんだよ」
「因縁? 何よそれ」
「う……ん、あまり人には言いたくないというかなんというか……」
 やっぱり追求してくるなあ。どうしよう、困ったな。
「ゴールドの分際で私に隠し事する気?」
「分際って……」
 香草さんに詰め寄られたじろいでいると、遠くからポポが僕を呼ぶ声が聞こえてきた。しかもどうやら涙声だ。
「ポポ?」
 僕は声のしたほうに向き直って香草さんから目をそらしながら、大声でポポを呼んだ。ナイスタイミングだ、ポポ!
 通路まで移動して覗き込むと、遠くから涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしたポポがものすごい勢いで突っ込んできた。あれはまさしく電光石火。

101:ぽけもん 黒  緊張と告白 ◆wzYAo8XQT.
08/11/19 17:53:43 RYekf+Jw
「ゴールドー!」
 あまりの剣幕に、僕は思わず半歩下がって壁の影に隠れる。結果、ポポはそのままの勢いで、したたかに壁に全身を打ち付けられた。
「……」
「……」
「……」
 なんだろうこの空気は。
 全員無言で静止している。
 そんなとんでもないシュールな空気は、ポポの泣き声で打ち破られた。
「びどいでずごーるど……なんでよげるでずが……」
 ポポの発する文字すべてに濁点がついているようだ。そりゃああの速度でコンクリートの壁に全身強打したらそんな風にもなるよね。
「よしよし、痛かったねー。ごめんねー」
 僕はポポを覆うように抱くと、なぜか小さな子供をあやすかのように慰めた。ポポは小さな子供、というほどではない年だろうけど、何故かこの行動が一番適切に思われたからだ。
 その後、通りがかる人の奇異の視線と香草さんの視線に晒されながらも、ポポが泣き止むまであやし続けた。
 あれだけ強く衝突したのに、ポポに目立った外傷がなかったのが驚きだ。やっぱり華奢に見えても、人間とは根本的に強度が違うんだろうなあ。
「どうしてあんなに慌てて走ってきたのさ」
 ポポがとりあえず落ち着いたので、僕は当然の質問をする。すると泣き止んでいたポポの瞳に再び見る見る間に涙が溢れてくる。
「そうです! 起きたらゴールドがいなかったから、ポポをおいていっちゃったんじゃないかと思ったんですぅー」
 涙声でそういうと、また僕に抱きついてわんわん泣き出した。
 そういうことか。でも、確かにポポに何も告げずにおいていったのは悪いと思うけど、さすがにこれは過剰反応なんじゃないのかなあ。
「ごめんね。今度からはそんなことのないようにするよ」
 寝てるときにいちいち起こすのは気が引けそうだなあ。でもとりあえずこう言っとかないと収まりそうにないし。
「そういえば、ポポも風呂入ってきたら?」
 と、ここまでいって気がついた。ポポは今きている黒のワンピース以外の服を持っていないじゃないか。……まあ乾くまでの間、ポポには裸でいてもらえばいいか。部屋にいればいいことだし、どのみち羽毛で覆われているので問題はないはずだし。
「香草さん、面倒みてもらえないかな。また行かせて申し訳ないんだけど、ポポ一人だとやっぱり不安だし」
 僕がそう頼むと、香草さんは露骨に嫌そうな顔をしていた。しかし、何かに気づいたような顔をしたかと思うと、ポポを僕から引っぺがし、そのまま女湯のほうに引っ張ってった。
 ポポが、ゴールドから離れたくないですー、と言ってもがこうが聞く耳無しだ。
「じゃ、じゃあ僕、部屋に戻ってるから」
 脱衣所から聞こえてくる彼女達のキャットファイトを聞いていても仕方ない……というかいろんな意味でアレなので、僕は一人洗濯物を持って部屋に戻った。

102:ぽけもん 黒  緊張と告白 ◆wzYAo8XQT.
08/11/19 17:54:48 RYekf+Jw

 荷物の確認と点検をしていると、二人が戻ってきた。ポポは胸から下を覆うようにタオルを巻いている。こんな格好をしたらむしろ目立つんじゃないだろうか。
「それが、ちょっとね……」
 香草さんはなにやら言いにくそうにしている。普通に全裸はまずいから、と言えばいいようなものなのに、どうしたんだろう。
「もう部屋に戻ったから脱いでもいいですね?」
 ポポはそういうと、香草さんが止めるより早くタオルを解き放った。

 見える。
 ……見える?
 僕がポポと初めてあった時、ポポの胸部や胴部は羽毛で覆われていて素肌は見えなかった。
 ところがどうだろう、今は進化の影響か、というか僕は何かあるとすべて進化の影響にしている気がするが、まあなんというか羽毛が以前より格段に薄いというか、
濡れていることもあいまって羽毛の絶対量が減ったのに嵩も減っていて、つまりそのまあ放送できない部分が普通に見えてしまっているというか、
僕の記憶ではパンツは二枚買ったはずなのになんではいてないのというか、パンツはいてない状態というか、パンツはいてない状態というか! ぱんつはいてない状態というか!! 
でもそもそもこのくらいの年ならかろうじてセーフなのかというか、そもそも僕ポポの年知らないじゃんというか、香草さんの蔦がポポのその放送禁止の部分を覆い隠すとともに僕の目を潰さんと伸びてくるというか、
蔦はやっぱり万能だな、と思いつつも蔦が来ることは分かっていたので蔦を回避できたが、追撃で足を払われ、倒されることで視界をフェードアウトさせられ、僕が地面に頭をぶつけ、
視界が安定するころにはすでにポポの胴部にはタオルが再び巻かれていた。

 何が起きたんだ。
 脳がパニック状態で、いまいち事態を正確に飲み込めない。
 しかし先ほど僕の目に映し出された景色は……。
「忘れなさい!!」
 香草さんが僕の頭めがけて放った蔦の一撃を、首を右にずらすことで何とか回避する。
 これはきっと僕の頭部に強い衝撃を与えることで直前の記憶を飛ばそうとしているんだろう。ええい、僕がつい最近に頭部に強い衝撃を(香草さんに)加えられたのを忘れたか! そんなしょっちゅう頭打ち付けてたら頭おかしくなっちゃうよ!
「止めるです!」
 僕の身の危険を理解したのだろう、ポポが両翼を広げて僕の前に立った。
 タオルは巻きなおされたとはいえ、もともと丈が短いので、床に横になった僕のアングルからだときわどい! も、もう少しで見え……見……じゃない! 何を考えているんだ僕は!
 香草さんも瞬時にそれを理解らしい。一瞬般若のような恐ろしい表情をしたが、すぐに真剣な表情に変わり、ポポに話しかける。
「バカ! お風呂での打ち合わせ忘れたの!? 大体、私はアンタが何かしなきゃゴールドに危害を加えるつもりはないわよ!」
 打ち合わせ? なんだそれは。
 しかし当然のことだろうけどポポには何か伝わったらしい、ポポは「そうでした!」というと僕の前からどいた。
 きっと香草さんは今にも僕を蔦で縛り付けて僕の頭をぶつけながら床と天井を往復させたいのだろうけど、状況的にそれは厳しいと妥協してくれたらしい。僕が恐る恐る起き上がっても、彼女の蔦は飛んでこなかった。
彼女はといえば、ポポにパンツをはかせている。そうか、もともと換えの下着を風呂まで持ってきていなかったのか。それならばパンツはいていなかったのも納得だ。うん、実に自然なことだ。興奮で若干思考がおかしくなってる気がするけど、それはきっと気のせいだ。

103:ぽけもん 黒  緊張と告白 ◆wzYAo8XQT.
08/11/19 17:56:00 RYekf+Jw
 僕がベッドに腰掛けると、向かい合うように香草さんとポポは並んで反対側のベッドに腰掛けた。胸部の問題もあるので、パンツをはいてもポポのタオルは巻かれたままである。
いや、考えようによってはベッドに腰掛けているためパンツ見放題という普段から考えればボーナスステージのような状況なんだけど、ポポのパンツは香草さんの蔦によって見事に隠されていて、
糸の一本も見えやしない。というか香草さんの蔦って何本まで出るんだ?
「それで、打ち合わせって何なのさ」
 僕は先ほど香草さんがポポに言ったことを尋ねる。どうせ碌なことじゃないんだろうけどさ……。
 香草さんはいかにも「失敗した!」というような表情をしたが、すぐに気を取り直したのか、僕の目を見ると、半身を前に乗り出した。
「あの赤髪のアホ二人についてよ」
 ああ、そのことか。まだ諦めてなかったのか。というか、アイツがただのアホだったら、話はこんなにややこしいことにならず、もっと簡単に解決していただろうに。
「香草さん、さっきも言ったけどさ、僕はそのことをあんまり人に話したくないんだよ」
「人って何よ、私たちはパートナーでしょ? いわば家族みたいなものじゃない! なら隠し事は無しよ!」
 うわ、痛いところついてくるなあ。確かに、長い旅をともにし、旅を制覇することのできた人間にとってはパートナーは一生ものの付き合いになることも少なくない。
そういう意味じゃ家族という言葉も、まだ旅に出ていくらも経っていないことを無視すれば、あながち大げさでもない。
「か、家族でも秘密の一つや二つあるしさ……」
 僕はそう言いながら、リュックに手を伸ばした。なぜあのプライドの高い香草さんがすんなりとポポを風呂に連れて行って、しかもそこで「打ち合わせ」なんてものをしてきたのか検討がついてしまったからだ。多
分香草さんも、話し合いで何とかなるなんて本気で思っているわけじゃない。いざとなったらポポと二人で僕を取り押さえるつもりなんだろう。ポポの速度はこと取り押さえなんて場面においては恐ろしい。
ただ、やはり実力行使は最後の手段にしたかったのだろう。
「ゴールド、なんでリュックを掴んでるのよ」
 香草さんは当然僕の動きに気づいて、半ば咎めるように言ってくる。
「い……いや、手が落ち着かなくてさ」
 対する僕はこんな言い訳を取り繕うのが精一杯だ。
「じゃ、じゃあ、手、つないであげるから、リュックは放しなさいよ」
 香草さんはわずかに頬を赤らめ、右斜め下あたりを睨みながら手を差し出してくる。
 リュックを放させるために手をつなぐ、という発想が普段ならば可愛らしく思えるのだろうけど、今の僕にそんな余裕はない。
「で、でも手は二つあるし……」
「ポポもつなぐですー!」
 ポポはそう言って元気よく両翼を挙げた。
 まずいぞ。もうすでに戦いは始まっているのか。リュックから手を離し、かつ両手を封じられてしまったら僕に勝機はない。……勝機は最初からないけどさ。
 しばらくジリジリと互いを見る。今余計な動きをするわけにはいかない。おそらく香草さんもそう思っていることだろう。となると、ポポが行動不確定分子だな。
 が、僕の恐れを知ってか知らずかポポは動かなかった。いや、ポポが動き出す前に、痺れを切らした香草さんが先に動いた、というべきか。

104:ぽけもん 黒  緊張と告白 ◆wzYAo8XQT.
08/11/19 17:56:34 RYekf+Jw
 袖口から僕を拘束しようと数本の蔦が飛び出してくる。
 僕は半身を右に振ることでかろうじてそれを回避する。そしてそのまま立ち上がり、出入り口へと加速を開始する。
 しかしそのようなことを考えない香草さんではない。蔦が数本、ドアの前を回り込むようにして僕に伸びてくる。ドアから出ようと思えばこの蔦を回避することは不可能だ。
 香草さんの蔦の強度は以前コッソリ確かめてある。十得ナイフ程度では到底切断は不可能だ。しっかりとしたサバイバルナイフならば切断も可能だが、一本を切断するほどの時間があれば彼女は僕の両手両足絡めとることができるだろう。
 僕はリュックの中に手を突っ込み、煙幕弾を掴んで取り出した。しかし、僕はそれをすぐさま使おうとはしなかった。
「香草さん、落ち着いてよ!」
 僕は煙幕弾を二人に見えるようにしながら、香草さんと向き合った。
 僕に届く寸でのところで、香草さんの蔦は静止する。
「……なに、それ」
 そう言う香草さんの声はぞっとするほど低く、暗い。もし僕が香草さんという人間をまったく知らなかったら、寒気さえしていそうだ。
「煙幕弾。要するに目くらましだよ」
「……それで?」
「話し合いってのはもっと平和的にすべきだよ。香草さん、僕は逃げるってことに関しては、同い年くらいの普通の人間の誰にも負けないっていう自信があるんだ。
ただテレポートを使えるってだけの人間よりも、ね。さすがにテレポートが使えて、僕並みに準備をしている人には適わないと思うけどさ」
「だから、なんだっていうの?」
「だからさ、香草さんが強硬手段に及ぶなら、僕はここから逃げて交番に逃げ込んだっていいんだ。でも、そんな大事にはしたくないんだよ」
「この状況で? ドアの前にある私の蔦が見えないの? 逃げ場は無いわよ」
 香草さんは半ばバカにするように言った。
「見えてるよ。ただ、この程度で逃げ場が無いなんて、お笑いだよ。せめて、窓も抑えてから言うべきだ」
 対して、僕も挑発的な口調で答える。
「あら、窓までは随分距離があるわよ」
 香草さんはそう言いつつも、窓の前まで蔦を伸ばす。
「これで、逃げ場はないわよ」
「いや、まだまだだよ。もしそこを塞がれたら逃げられなくなるんだったら、最初から教えたりはしないよ」
「……ハッタリだわ」
「試してみる? でも、二人とも損をすることにしかならないと思うんだ。僕はやっぱり、殿堂入りしたいしさ」
「そもそも、二対一なのよ?」
「二対一なんてことは問題にならないよ。特にこんな狭い部屋じゃね。混乱したりしたら、ポポのスピードなんかは逆に仇になると思うけど?」
 僕のその言葉を最後に、そのまま暫し膠着状態になった。香草さんは僕の実力を測りかねているのだろうし、ポポはさっきも展開についていけてないみたいだから、どうしたらいいのか分からないんだろう。
冷静になって考えれば、そもそも彼女らにとってすればこんな小さなことでこんな大きなリスクを払うこと自体、馬鹿げてる。

105:ぽけもん 黒  緊張と告白 ◆wzYAo8XQT.
08/11/19 17:57:12 RYekf+Jw
 長い沈黙の後、香草さんはゆっくりと蔓を元に戻した。
 僕は安心して息を吐く。
「分かってくれて嬉しいよ」
「でも、隠し事はやっぱりダメよ」
 香草さんは僕を咎めるように言う。う、確かにそれを言われると弱いんだけれども……。
「うーん……香草さんにだって、僕に知られたくないことの一つや二つくらいあるだろ?」
「ポポは無いですー!」
「はいはい、分かったよ」
 そりゃ、ポポは無くても不思議もないけど、香草さんはそうはいかないだろう。
「わ、私だって、ないわよ!」
 香草さんはポポに先を越されたせいか、慌ててそう言った。その様子を見て、僕の心にわずかに悪戯心が芽生える。
「ホントに? じゃあとりあえず胸のカップ数教えてよ」
「へ、変態!」
 香草さんは僕の思ったとおり、顔を真っ赤にしていい反応をしてくれた。
「カップ数ってなんですか?」
 ポポの質問を無視し、僕は一応自分の発言を取り繕う。
「しょうがないじゃないか、答えにくい質問じゃないとダメなんだから」
 香草さんはしばらく、自分の身をもじもじとよじっていたが、意を決したかのように、ポツリと呟いた。
「え……」
「え?」
 僕は意地の悪い笑みを浮かべながら、香草さんに聞き返した。
「……………………Fよ」
「いや、さすがにそれはない」
「……」
「……」
「Fってなんですか?」
「う、うるさいわね! アンタに胸のことなんか分からないでしょ! 女の子の胸見たことあんの!?」
「さっきポポの胸なら」
「忘れなさいって言ったでしょ!」
「また見たいですか?」
「アンタは黙ってなさい!」
「だって香草さんがちゃんと答えないからだろ!」
「そもそも女の子に面と向かって胸のサイズとか聞いてんじゃないわよ! このド変態!」
「じゃあ僕の過去だって聞かないくれよ!」
「だって、私はあなたの過去を聞いてるんだから、私の過去について聞くべきよ!」
 ……一理ある。
「じゃ、じゃあ……恋愛経験、つまり好きな人は誰かとか……」
 ……こんな陳腐な質問しか思いつかない自分の貧しい想像力な嫌になる。
「ポポはゴールドが好きですー!」
「はいはい、分かったよ」
「ホントに好きなんです!」
「はいはい、後五年もしたら意味が分かると思うから」
 あれ? ポケモンの知能の発達は年齢じゃなくて経験とか進化に依存するんだっけ。
「……わた、私は……」
「私は?」
 僕は再び意地の悪い笑みを浮かべながら、香草さんに聞き返した。
「わ………………いないわよ」
「何今の間」
「う、うるさいわね! 特に意味は無いわよ!」
 はあ、と僕は一つため息を吐いて続ける。
「大体さ、僕が嘘をつかない保証なんてどこにも無いじゃないか」
「ポポはゴールドを信じてるですー!」
「はいはい、分かったよ」
「私だって、ゴールドを信じてるわよ!」
 香草さんは、そんな人の言うどんなことでも鵜呑みに出来るほど純真でも馬鹿でもないと思うんだけどなあ。
「じゃあ言うよ。二人とはただの初対面。会ったこともありませんでした」

106:ぽけもん 黒  緊張と告白 ◆wzYAo8XQT.
08/11/19 17:58:25 RYekf+Jw
「どうして嘘吐くのよ!」
 案の定、彼女は語気も荒く怒鳴ってくる。
「ホントのことだよ。信じてるんじゃなかったの? それに、自分は嘘を吐いておいて、人には本当のことを言ってもらおうだなんて、都合よすぎだよ」
 僕も、いくら隠したいとはいえ、よくもいけしゃあしゃあとこんなことを言えたものだ。
 香草さんはその言葉を受けて、苦虫を噛み潰したような顔をして僕を睨んでくる。彼女の袖口にはユラユラと蔦が飛び出しかけてきていた。
 僕は右手に握られた煙幕弾を握りなおすとともに、左手でベルトに着けられた『怪しい光曳光弾』に手をかける。こんな天井の低い部屋で使ったら、天井に若干の焦げが残るだろうけど、部屋の損傷など、僕の命の損失に比べたら安いもんだ。

「……Aよ」
 僕の緊張を知ってか知らずか、香草さんは唐突にそう呟いた。
「え?」
「胸のサイズよ! あなたが言えって言ったんでしょ!」
 時間差があったから反応が遅れた。
「え、ああ、Aね」
 目で見た映像的にも、多分真実だよね。
「い、いいい言っとくけど、Aって言っても限りなくBに近いAなんだからね! そこを誤解しないでよね!!」
「ご、ごめん」
 なぜだから知らないけど、香草さんの剣幕に押されて謝ってしまった。
「じゃあ、アンタもホントのこと言いなさいよ」
「へ?」
 呆気にとられていたせいで、一瞬彼女が何を言っているか理解できなかった。
「へ? じゃないわよ! こんなこと聞いといて、ただで済むと思ってたの!?」
「え……いや、半ば香草さんが勝手に言ったというか……」
「いうか?」
 香草さんの袖口には、袖を切り裂かんばかりの大量の蔦が殺到していた。ああ、こんなに香草さんが化け物染みて見えたのは初めてです。もうこうなってしまえば、僕はまともに旅を続けるためには全自動平伏装置と化す他になかった。
「はい、言います……」
「もう嘘は吐かないでよね」
「はい……」
 というわけで、僕は洗いざらいすべてを話してしまった。嘘を吐こうと思えば吐けたかもしれなかったけど、この状況で嘘を吐けるほど、僕は大胆でも命知らずでもなかった。もっと有体に言えば、僕は臆病なのだ。
「それで、どうしてそんなに話したくなかったの?」
 僕の話を聞き終わった香草さんは、まずそう尋ねてきた。ちなみにポポは僕の話の途中で二度寝タイムへと突入していた。
「どうしてって……だってさ、僕がちゃんとアイツの正体に気づいていれば、ランのお父さんも死ななくて済んだし、ランだってさらわれて、こんなことにならずに済んだはずだったんだ」
「考えすぎよ」
 香草さんは優しいような、毅然としたような口調でそう言った。
「ごめん、慰めないで欲しい」
 僕はたとえ誰が許しても、ランを救い出してシルバーにしかるべき処置を与えるまで、いや、それが叶っても自分を許すつもりはない。失われたものは帰ってこない。慰められると自分の無能さを責められるようで、余計惨めになる。
「……ごめんなさい」
「いや、僕のほうこそ」
 また気まずい空気になってしまった。

107:ぽけもん 黒  緊張と告白 ◆wzYAo8XQT.
08/11/19 17:59:01 RYekf+Jw

「そういえば朝食まだだったよね。そろそろいい時間だろうから食べに行こうか」
 なんとかこの空気を打破しないと。
 僕はそう思ってなんとか話題を取り繕う。
「そ、そうね」
 香草さんも素直にその流れに乗ってくれた。
「ほら、ポポ、起きて」
 ポポを揺すって起こす。
「……んあ…………ね、寝てないですよ! 起きてたです!」
 起きたポポは両翼をバタバタとバタつかせながら慌てて自分が起きていたことをアピールする。なんだか微笑ましい。でも左の翼が香草さんにバシバシ当たってるからやめたほうがいいと思うな。
「はいはい、分かったよ。朝ご飯、食べに行こう」
 そう言うと僕はポポの手を引いて起こした。香草さんはさっきのポポの行動のせいだと思うが、少しむっとした表情をしている。
 洗濯と乾燥の済んだ服を取りに行き、ポポに着せると、そのままポポの手を引いて食堂へ行った。久々にちゃんとした食事にありつくことができたような気がする。
ポポの食事は相変わらず香草さんに手伝ってもらった。つくづく、蔦というものは万能だな、と再確認させられた。

108: ◆wzYAo8XQT.
08/11/19 18:00:06 RYekf+Jw
以上で投下終了です
何か改善点等あれば言ってもらえるとありがたいです。……反映されるとは限りませんが

109:名無しさん@ピンキー
08/11/19 18:12:24 JfZFShwZ
GJ!!

110:名無しさん@ピンキー
08/11/19 18:36:02 npHQbBmV
11月分GJ!!!!
何かゴールドに蔦耐性ついてきてるなw

111:名無しさん@ピンキー
08/11/19 19:24:00 EAacZ7z6
GJ!

112:名無しさん@ピンキー
08/11/19 20:05:08 2OtxF7Gz
じーじぇい!

113:名無しさん@ピンキー
08/11/19 20:17:02 2Si9nA/H
これを読むと一ヶ月たったんだなって気がするよ、GJ!

114:名無しさん@ピンキー
08/11/20 00:35:49 hGtGJz7g
俺、このSSのせいづDSとポケモン買っちゃったんだ…

激しくGJでした

115:名無しさん@ピンキー
08/11/20 01:07:47 Z1324H1j
GJ!!

116:名無しさん@ピンキー
08/11/20 06:42:55 q/vOG0SU
とりあえず改善点は香草さんのカップ数をD寄りのCにしてくれ!!

嘘だ!! GJ!!

117:名無しさん@ピンキー
08/11/20 08:50:33 AhhRok0B
初投稿です。
投稿させていただきます

118:シンデレラアンバー
08/11/20 08:55:38 AhhRok0B
 昔々、ある所に、それはそれは可愛らしいお姫様がいました。性格はとっても無邪気で誰に対してでもにこやかに笑う女の子。その笑顔は国中の皆を明るく照らしました。お姫様は国一番の人気者になりました。
 ただ、お姫様は『大切なもの』を『宝箱』に入れるという難癖を持っていたのです。
 見かねた王様はお姫様にこう言いました。
「姫よ、なぜ森のお友達を殺してしまうのだい?」
「私がいつ、お友達を殺したのですか?」
 王様は従者を呼んで彼女の『大切なもの』を持ってこさせました。
「それじゃあ、なぜ友達を剥製にしてしまうのだい?」王様は『大切なもの』の中から一匹の子じかの剥製に指を向けました。
「私たちが永遠に仲良しになるための方法です。私も剥製になりたいのですが、お姫様としての『お仕事』がまだ終わっておりませんので」
 王様はこれ以上口を挟むことが出来ませんでした。王様は天を仰ぎ、お姫様の顔から逃れました。王様は怖がっているのです。姫様が賢く、そして王様を姫様自身を恨んでいることが、お姫様の歪みきった口元から窺えたからです。
 王様はお姫様に意趣返しをするようにこんな提案を持ち出しました。
「そんなに言うのなら、お前を隣の国の王子の下へ嫁がせようぞ」
 お姫様は難なくその提案に答えました。

 お姫様は隣の国に行く前の夜に部屋から抜け出しました。そして、待ち合わせ場所の薄暗い森へと足を運びました。
 ほんのりと明かりが点いていたのでお姫様は少しあせりました。
「遅れてしまいましたか?」明かりと共に切り株に座っていた少年がお姫様に気づきました。
「いや、先ほどきた所ですので」
 そうですか、とお姫様は返事をして少年の隣に座りました。
「私はこの星たちが消えてしまうとお嫁に行かなければなりません」
 少年は驚きはしたものの、肩をおろして、「そっか……」と呟きました。
 少年はおもむろに服を脱ぎ始めました。
「お姫様、私にあなたの操をいただけないでしょうか? さすれば私はあなたの『永遠』に成れると思うのです」
 お姫様は目からポロポロと涙を流しました。
 お姫様は嬉しかったのです。
 この、この少年だけが私の真の理解者だったのだ。本当のお友達なのだ。
 いままで、お友達だと思っていた人間にお姫様は『永遠』を理解してもらえなかったのだ。
 ただ、この少年は私の『永遠』に理解をしてくれた。一緒にお友達を『永遠』にしてくれた。
 今も、これからも、少年だけが私の理解者なのだろう。
 お姫様は少年の手を握り、首を縦に、小さく振りました。
 

119:シンデレラアンバー
08/11/20 08:56:52 AhhRok0B
 隣の国の王子様は憂鬱でした。
「なぜ、彼女は私に心を開いてくれないのだろう」王子様はたいそうお姫様のことを気に入っていたのです。
 そこに、王子様の友達である騎士が答えました。
「姫さまは異常だからです。きっと悪魔にでも取り付かれるているんでしょう」
 騎士の口調はたいそうまじめな物でした。しかし、王子様は頭を抱えて声を振るいだします。
「私はそれでも姫のことが好きなのだ」
 騎士は大声を上げて王子様に言いました。「王子様はあれをごらんになされたのですか!? あの、あの、死体部屋を! ああ、忌まわしい……」騎士は余りの恐ろしさに体を震えさせました。
 しかし、王子様は俄然と答えます。
「見たよ」
 騎士は耳を疑い「それならば、なぜ!」尋ね返しました。
 王子様は少し考え、騎士にこう告げました。

「私は姫の心にほれてしまったのだ。例え、家来の前でも、子供の前でも、国民の前でも、そして、私の前でもはがす事のないあの鉄の仮面。私はその鉄の仮面の下に見える狂気にほれてしまったのだよ」

 騎士は呆然としました。そして、踵を返すや否や、騎士は城の頂上から飛び降りて死んでしまいました。

「王子は悪魔に呪われてしまった。この国はもう長くはない」

 『絶望』という悪魔が騎士を呪ったのです。

 それから長い年月がたち、お姫様と王子様はおばあさんとおじいさんになりました。
 姫は相変わらず『宝箱』を覘いては『大切なもの』を可愛がり、床に伏すまで幸せな時間を過ごしました。
 ただ、王様は相変わらず憂鬱な顔持ちでお姫様に焦がれていました。
 そして、王子様よりも先にお姫様は死に、王子様はお姫様が残した遺言書通りに彼女を『永遠』にしました。

「私は、私は王女のそばに眠りたい!」

 王子様はとある決断をしました。
 早速、それを実行すべく重臣と息子たちを呼び寄せてこういいました。

「あの『大切なもの』を焼き払い、私を王女の『大切なもの』にしてくれ」

 周囲の咎める声を聞きながら、王子様はおもむろに腰につけた短剣を胸に突き刺しました。

「たのんだぞ……」


 更に長い年月が経ち、わたしたちの時代に足した時も、相変わらずお姫様の『宝箱』は永遠を保ち続けました。
 
 ただ、『ある者』を除いて……


 めでたし、めでたし


120:名無しさん@ピンキー
08/11/20 08:58:27 AhhRok0B
投稿終了です。
既出のものです。

あまり、このスレには馴染まない文章かもしれません。
駄レスで申し訳ない。

121:名無しさん@ピンキー
08/11/20 09:40:39 jJAy2bBg
>>108
GJ乙です
次回も楽しみにしてます

122:名無しさん@ピンキー
08/11/20 09:41:12 s+u6VmsO
既出のものです



もしかして、転載?

123:名無しさん@ピンキー
08/11/20 09:57:41 AhhRok0B
>>122
もちろん自分で書いたものを転載しました。
転載はだめだったでしょうか?

124:名無しさん@ピンキー
08/11/20 10:06:55 s+u6VmsO
>>123
いや、自分で書いたなら大丈夫。


これで心置きなく言える

姫様可愛いよGJ

125:名無しさん@ピンキー
08/11/20 11:35:52 5QRlQBlT
タイトル吹いた。弾幕シュー史上最高に楽しいボスの一体じゃないか。
でも二周目はトラウマもの。

126:名無しさん@ピンキー
08/11/20 14:31:24 XDxkmHEC
ふと思ったんだけど
古代エジプトとかにも、もしかしたらヤンデレ王女がいたのかもなw
GJ!

127:名無しさん@ピンキー
08/11/20 22:22:54 mrnL0SPb
王子も病んでるなあ
男女逆転も萌えるかな

128:名無しさん@ピンキー
08/11/20 22:57:28 0ghd2g36
■投稿のお約束
 ・男のヤンデレは基本的にNGです。

男のヤンデレなぞくたばるべきだ
ただし、女のほうもヤンデレであった場合、そうと言い切れないこともあるが

129:名無しさん@ピンキー
08/11/20 22:59:12 Z8BdTV/m
男のヤンデレはオリバだけ認める

130:トライデント ◆J7GMgIOEyA
08/11/20 23:09:46 rj7tQf5D
久々に投下致します


131:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA
08/11/20 23:12:06 rj7tQf5D
 第1話『偽善者』
 大切な人たちを失ってから、いくつの日々が過ぎたのだろうか。
最初は何気のない日常が続くと思っていた。
それが変わらないと信じていたからこそ、俺は失った時にその重さを知った。
 多額の借金を背負った両親が首吊り自殺をしたのは高校を卒業式が終わった当日であった。

その日は俺の卒業を祝ってくれた両親が普段は滅多に行かない料理店に連れてもらって、美味しい料理をご馳走になった。
親父は俺の卒業が嬉しかったのか、いつもよりお酒を飲み干すと泣きながら喜んでくれた。
母も俺の卒業を自分のように嬉しそうに祝ってくれた。
 普段とは何も変わらなかったおかげで俺は気付かなかった。
両親の様子がおかしかったことに。

 朝起きたら両親が首吊り自殺していた。
 その光景を目撃したとき、何でこんなことになったのかとさっぱりわからなかった。昨日まで何事もなくいつもの両親だったのに。
 厳しいが涙もろい父、いつも優しかった母。

 二人に何が起きたのかを知ったのは葬式の時だった。
親戚一同が集まり、俺が喪主をやっている最中の出来事だ。
ガラの悪い男が吐き捨てた言葉が発端だった。

『人に優しいバカは騙される』

 その言葉の意味は理解できなかったが、俺の両親に向かってバカと言った奴を許せなかった。
我を忘れた俺は問答無用にその男に殴りかかった。
親戚の人たちに止められるが、数発殴ってやった。が、逆に俺は腹部に何回も反撃された。
男は唇から切れた血を拭き取るとこう言っていた。

 両親にとって共通の仲である友人の事業が上手く行かずに従業員と奈落の海に沈没すると悲劇的な話で同情を誘い込み。
言葉を巧みに操り、自分を助けるためにこの消費者金融にお金を借りてくれないかと嘘の契約書を用意して契約させる。
両親は僅かな金額でも友人の助けになるのならと思って借りた金額が気が付くと数十倍にも膨らんでいた。

金利が高いわけではなかった。友人と消費者金融の人間が借用書を改竄し、借りた金額を限界枠突破まで設定してお金を借りた。
 両親が友人に騙されたと気付いた時はすでに遅く、
友人はどこか遠くへ高飛びして行方不明。
消費者金融はその事情も関係なしに取立てを行おうとしていたが。
俺に迷惑をかけないように弁護士辺りに依頼して恐いおじさんたちを家に来れない様にしていたらしい。

 そのガラの悪い男こそが両親が依頼した弁護士だった。
 俺は平謝りして、両親に何が起きたのか事件の真相を聞いた。
 両親は真面目に借金を支払っていたそうだ。生活費を削りながらも、
俺に何不自由がない生活を送らせる。借金していることを悟らそうとせずに。

 借金生活に疲れ、俺の行く先を見届けた後、両親は自殺した。

 俺は何も知らなかった。
 それは罪。
 子供だから両親の優しさと愛情に甘えていた。
 辛いこと、悲しいことから全てを遠ざけてくれた父と母を。
 俺は恩返しもすることができずに逝ってしまった。

 だから……。
 

 
 周防忍(すおう しのぶ)は……。

132:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA
08/11/20 23:15:18 rj7tQf5D
人の死は慣れるものである。
 それが自分にとって親しい人だったとしても、失った痛みは過去になり、時の刻みはゆっくりと明日へと進んでいる。
逆らうこともできずにただ流されるだけ。
 両親を失った俺は厳しい現実を一人で生きていた。
多額の借金を抱えた両親の借金の相続を放棄すると今まで住んでいた家を俺は出て行かなきゃならかった。

当たり前の話だが遺産というのは両親が生前に築き上げた富のことを言う。
その中に借金も含まれるために親が汗水流して購入した家も遺産に含まれる。
自分以外の財産は没収され、通うはずだった大学も進学を諦め、求人情報雑誌でバイト先を探し、アパートを借りた。
 一人暮らしに馴染めずに色々と大変な事はあったが、
人間という生物はどんな環境でも適応していくというしぶとい生物だということを再認識する。
俺は今の生活に慣れると余裕というのが生まれる。
両親が死んでから、俺にはようやく肩の力を抜けて、物事をゆっくりと見つめる時間が増えたってことかな。

 近所で浪人生が何者かに刺殺されるという恐ろしい事件があったりと周囲には物騒な事件が増えた。
特に女性が男性を監禁するという犯罪が増加、社会問題化にまで発展して
ワイドショーを賑わせるなんて日常茶飯事になっている。
 まさか、俺がその事件の犠牲者になるなんて夢にも思わなかった。

 あの時、困っている桜井彩さえ助けなければ、俺は後々と起こる厄介ごとに巻き込まれなくて済んだのだ。


 バイト先の都合で仕事を早めに切り上げてきた。
 自宅に早く帰宅できた日の出来事だった。
 俺が借りているアパートの前にたくさんの荷物が置かれていた。
いわゆる、日常品とタンスとテレビとか冷蔵庫とかetc。
自分が借りている部屋のドアの前に多数の荷物が置かれていたら、

なんとなく家に帰ることができないなと微妙に違ったことを考えていた。
 ちなみに俺が借りているアパートというのは一軒家であり、二部屋しか存在していない。
 その家の前には広めの庭と外界の接触を封じる囲いが刑務所のごとく男の身長の何倍もある高い壁で覆われていた。
 不思議なアパートである。
 大家であるババアに『ほう。このアパートを借りるのか? 物好きな。その好奇心が君を殺すよ』と入居時に
  不気味な伏線を残したことは気になるが。もう、2年以上もこのアパートに住んでいるが何事も起きなかった。



133:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA
08/11/20 23:17:01 rj7tQf5D
 今まで隣に住んでいる人がいなかったが、この引越しの荷物が見る限りでは隣の空き部屋に誰かが住むようだ。
  これからは同じアパートで暮らす身なんだから、隣人とは良好な関係を築かないとね。些細なことがきっかけで、
  深夜にボリューム最大で音楽とか流されたり、糞尿を投げ付けられる可能性もあるし。
 今の内に軽く挨拶を交わしていこう。
 引越し作業をしているであろう、隣人の姿を見掛ける。

「あの、こんにちわ。今日、ここに引越ししてきたんですか?」
「あ、あ、あのあなたは?」
「俺はこのアパートに住んでいる周防 忍と言います。よろしくお願いします」
「私は桜井彩です。今日からこのアパートに引っ越してきました。周防さんですね。
 よろしくお願いしますね。では、私は引越しの作業がありますので」

 と、桜井彩さんは軽く会釈すると引越しの作業に戻っていた。
 物腰が穏やかで和やかな雰囲気を持っている人である。
 容姿は童顔で、長い腰まで届く黒い髪をピンク色のリボンで纏めていた。
 作業中のために地味な赤色のジャージを身に纏っていたが、ちゃんとした洋服を着ているならば、
 相当な美人の分類に入る女の人だ。年頃は俺と同じぐらいだろうか。

 そんな彼女はよいしょ、よいしょと抜けた掛け声をかけながら重たい荷物を運び出した。
 中身は知らないが、ダンボールの箱を彩さんは頑張って運ぼうとしたが。女性の細い腕では
 その荷物を運ぶのは表情を見る限りでは辛そうだ。本来なら引越しセンターの社員辺りが重たい荷物を
 率先して運んでいるはずなのだが。その会社のトラックも見えずに、ただあるのは彩さんの荷物だけ。
 まさか……。
 辿り着いた真相に、俺は恐る恐ると彩さんに言った。

「もしかして、引越しセンターの人に逃げられたんですか?」
「うにゃ!!」
 奇妙な叫び声の共に運んでいたダンボールを派手な音を響かせながら彩さんは落とした。

「そ、そうですよ。悪いですか? それがあなたと私にどういった関係があるんですか?
そりゃ、私が節約するために新聞紙に隅の隅に載っている怪しい引越しセンターに引越しの依頼をした私が悪いんですけど。
本当の悪は人を殺してそうな狂暴な引越しセンターの男たちですよ!!!! 
このアパートについた途端に荷物だけその辺に投げて、とっとととんずらしたんです。
信じられますか。こんなことが!!」
「あのお気持ちは少しわかりますので。落ち着きましょう」
「いいえ。もう、私のことはもう軽くスルーしてください。後は一人で運びますから」
「そんなこれだけの荷物を女の子一人で運ぶのはさすがに無理だ」
「いいんですよ。もう、私は人なんて信用しませんから」
「えっ?」

 その時の彩さんの瞳が寂しそうで何かを求めていた。それが何か全くわからないが、確かに俺の心の中で何かを惹きつけていた。

134:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA
08/11/20 23:19:08 rj7tQf5D
 しかし、それはすぐに敵意に満ちた視線に変わった。
「どうせ、あなたも何か下心があって私を助けようとしているんでしょ!!」
「違いますよ」
「ニンゲンなんて、ニンゲンなんて……」
「彩さん?」
「私のことは放っといてください。あなたの手なんか絶対に借りないんだから」
 と、彩さんは再び引越しの荷物を持ち始めた。女性のかよわい力ではこのたくさんの荷物を運ぶのは殆ど不可能。
本当なら猫の手も借りたいはずだが、彼女は断固として俺の力を借りずに再び作業に取り掛かった。
「よいしょ。よいしょ」
 妙な掛け声で彩さんは重たい荷物を運ぶ。
膝は不安定にガクガクと震え、彼女の白い頬が紅潮して、荒い呼吸していた。
 その姿を見て、さすがの俺もただの傍観者でいることに罪悪感を覚えてしまう。
両親が大変な時に何もできなかった自分。そのことが後悔になるなら。
ここで困っている彼女を見過ごすことが後で後悔すると言うのならば。
 俺は自分にとって正しいと信じていることをしよう。

「手伝います」
「結構です!! 私、一人でやらないと」
「いいんです。俺が勝手に手伝いたいと思ったから。もし、迷惑になるなら、警察とかに通報しても構いませんから」
「その、困ります」
 と、制止する彩さんの言葉を無視して、俺は引越しの荷物を運び出す。
荷物自体は彩さんの几帳面な性格なのか、ダンボールの表面に日常品の分類をマジックペンで記載されていた。

それを見て、まずは一人で運べる重たい荷物を見つけて、とっと彩さんが住むことになる部屋に運ぶ。
彼女からの冷たい視線を受けるが、それらを考えるのは後にして、引越しの作業を続けていく。
 どのくらいの時間が過ぎたかはわからないが、すでに夕日が沈む頃には彩さんの引越し作業はほとんど終わっていた。

荷物を運ぶ作業しかしていないため、彩さんの部屋はダンボールの荷物だらけになっていた。
だが、これ以上は彼女の私物とかプライベートに関することが多いので荷物整理は手伝うことできないだろう。

 彩さんは俺とも口は聞かずに部屋の中央でぽつんと座り込んでいた。
作業中ですら、俺とは全然口を聞かなかったし、赤の他人が踏み入ってはいけない領域に無神経に入り込んだのだ。
彼女が怒るのも無理は無い。

「じゃあ、これで失礼します」
「待ってください」
 俺の退室を遮る彩さんの声。
 彼女は表情を長い髪で隠し、視線は俯いて畳の方を向いていた。

135:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA
08/11/20 23:20:32 rj7tQf5D
「どうして、私なんかを助けたんですか?」
「人を助けるのに理由がいるのか」
「人間は自分に利益がないと人を助けることなんてしませんよ」
「そうかもしれないね」
「だから、あなたも私の体とかそういうのが目的じゃないんですか?」
「いや、さすがに初対面の人に嫌らしいことを考えるのはちょっと」
「だったら、どうして、私なんかを助けたの!!」
「理由なんて特にないかな。何か自然と体が動いて、桜井さんを助けたくなったのかな?自分でもさっぱりとわからないけど」
 その解答に彩さんは呆然と言葉を失う。
「それに桜井さんは今日からお隣さんじゃないか。互いに助け合うのは良いことだよ」
「互いに助け合う……」
 その言葉に反応して、彩さんは俺の顔を見上げた。彼女は泣いていた。
目を真っ赤にして、瞼から涙が頬をつたって零れ落ちていた。
「ご、ごめんなさい。私、周防さんが手伝ってくれたのに冷たい態度を取って」
「いいよ。俺も出来すぎた真似をして済まないと思っている」
「あの、ありがとう。本当に助かりました」
「いいえ。それでは今日はもう帰ります」
 と、軽く会釈して俺は彩さんの顔も見ることもなく、さっさと部屋を退室していた。
彼女の笑顔を間近で見てしまうと自分では制御できない感情が生まれそうだったから、

俺は自分の家にさっさと帰宅することを望んだ。

 桜井彩。
 最初は彼女の雰囲気通りに朗らかで誰からも好かれる優しい人だと思っていたが。
話しかけると冷たい瞳でこの世の全ての人間を拒絶している。
その理由はまったくわからないが、過去に人を拒絶させる程の出来事があったのだろうか。

それならば、今日出会ったばかりのキモい男なんかが引越しの手伝いをさせてくれと言われたら、
相当に嫌な思いをさせてしまったかもしれない。いろいろと注意せねば。
 これからはある程度の距離を置いて、隣人として接して行こうと思う。


136:お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA
08/11/20 23:21:33 rj7tQf5D
 引越しの手伝いを終えてから、しばらくの時間が流れた。
今はいつもの就寝する時間帯で俺はのんびりとテレビでも視聴していた。
 その時にインターホンの音が鳴り響いた。
 この夜更けに一体誰が訪ねてくるのだろうか。俺は欠伸をかきながら、ドアを開くと。
 訪問主は彩さんだった。
「あ、あの」
「どうしたんですか。こんな夜遅くに」
「え、え、えっと」
 虎柄のパジャマを着用している彩さんが何か言い出しづらそうな感じで俺を上目遣いで見ていた。
この時間帯に男の俺に尋ねてくるのだから、余程重大な問題なのであろう。
「その、今日は手伝ってくれて本当にありがとうございます。
色々と手伝ってくれた周防さんに悪いんですが、お願いがあります」
「どうしたの?」
「ベットと布団が引越しセンターの手違いで明日か明後日に届くことになっているんです。
だから、あの、周防さんが良ければ、泊めてくれませんか?」
「はい?」
 
 俺は思わず首を傾げた。

 それが俺にとって、ヤンデレな日々の始まりだったかもしんない。

137:トライデント ◆J7GMgIOEyA
08/11/20 23:23:53 rj7tQf5D
以上で投下終了です

前回は幽霊の女の子が病んでいた話ですが、
今回は隣人の人がどんどんと病んでいくお話です。
たった一つの優しくしたことがきっかけで女の子が病んでいく仕様なので
これからもよろしくお願いします

それでは。

138:名無しさん@ピンキー
08/11/20 23:30:13 CnO2AfHD
支援

139:名無しさん@ピンキー
08/11/20 23:33:36 CnO2AfHD
GJです今後の展開にwktk

140:名無しさん@ピンキー
08/11/20 23:35:30 aACEyudx
いいねいいねー
こういうじっくりゆっくりなのも好みなんだよね
どんな風に病んでいくのかこれから楽しみにさせてもらうよ

>>128
うんうん、それにそっちには専用スレがあるしな
男のヤンデレ好みな人は誘導置いておいた方が良いんじゃない?
間違ってこのスレに書かれたら不快になるしね
というわけで男ヤン好きな人は以下こっちね
女ヤン好きな奴は行くなよー

愛あるレイプ
スレリンク(eroparo板)

141:名無しさん@ピンキー
08/11/21 01:56:27 h+/I4vIT
>>137
やっぱり話が出来過ぎな所が目についてしまう
でも面白いのでGJ!
今後の展開も期待します


142:名無しさん@ピンキー
08/11/21 02:01:36 MyWPpa19
>>140
死ね

143:名無しさん@ピンキー
08/11/21 06:12:05 CGgS1j86
つられないくま



>>137
GJ!

144:名無しさん@ピンキー
08/11/21 07:19:38 iV4dYwYr
>>125
もちろん、ケツイのボス名から取らせていただきました。
個人的に好きなボスはエヴァッカニアです。
>>126
ネクロフィリアはたぶんヤンデレの元祖じゃ無いかな?
お姫様のように「保存欲」というのが働くらしい。
女性の殺人鬼でそんな人がいました。
>>127>>128>>140
わたしがメンヘラではない限り、
王子様はヤンではないです。
「人間として人を愛したらこういう結果かな?」
という目測で書かせていただきました。

ご感想有難うゴザイマス。



145:名無しさん@ピンキー
08/11/21 07:26:39 41Wls1sb
わざわざ返信はしなくていい
そういう習慣はない場所だ

146:名無しさん@ピンキー
08/11/21 09:15:45 iDZPW/pw
半年とは言わんがひと月ほどROMってみたほうがいい

147:名無しさん@ピンキー
08/11/21 13:35:01 LyceddLm
ヤンデレの前で3年目の浮気を女友達と一緒に熱唱してみたい

148:名無しさん@ピンキー
08/11/21 16:25:39 Vt3AvWwI
>>147 オマエ…気持ちは分かる!
だが、ちょっと危険な橋を渡ってみたくなる衝動は命を落とすぞ…
今度、植木等の“どうしてこんなにもてるんだろう”歌ってみるか。
さて監禁コースかね…それとも… 

149:名無しさん@ピンキー
08/11/21 18:31:24 bvbxiTi3
>>148
成仏しろよ
来世でもヤンデレに追いかけられるんだろうけどな

150: ◆UDPETPayJA
08/11/21 19:12:49 yomVWorA
投下します。

151: ◆UDPETPayJA
08/11/21 19:13:36 yomVWorA
「ひ…ひぃぃっ!来るな、化け物!」
今わたしの眼前にいる男は、その屈強な体躯をまるで小動物のように震わせながらそう言った。失礼な物言いね?そっちからわたしを呼んだくせに。
わたしは一歩、また一歩と男に歩み寄る。
「やめろ!こっちにくるなぁ!」
男の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃ。なんて醜いのかしら。ねぇ…知ってる?

――――

人間の頭のなかから、恐怖以外の感覚と記憶を奪い取ったらどうなるか。

――――

そう、この世の全てのもの…たとえば、今そこを通りかかった仔猫ですら世にも恐ろしいモンスターのように感じるの。

――――

あら…だらしないわね。失禁なんかしちゃって。そんなにがたがた震えちゃって…寒いのかしら。
でもあなたが悪いのよ?わたしの大事な弟たちに手を出そうとするから…万死に値するわね。
せいぜいそこで戯れているがいいわ。"お仲間"がたくさんいてよ?


152:天使のような悪魔たち 第7話 ◆UDPETPayJA
08/11/21 19:14:39 yomVWorA
* * * * *

目覚まし時計の軽快な音が鳴り響く。俺はその音で目を覚まし、ベッドを降りる。
階段を降り、台所へ……ん? 幼女が二人………なんだ、姉ちゃんか。

「おはよう、兄貴!」
「おはよう飛鳥。」
「んぁ?ああ、おはよう。」

そういや昨日突然帰ってきたんだった。電話は壊れちまったし…突然ってのも仕方ない話か。連絡受けられなかったんだから。

「はいこれ、お弁当だよ。」
「ああ、さんきゅ。」

俺は明日香から弁当箱を受け取り、お礼とばかりに頭を撫でてやった。

「……………。」

うーん、今の明日香の表情をなんといったらいいのか……
そうだな、きっと鼻からジュースを飲ませても気づかないだろう、といえば通じるだろうか?とにかく、そんな感じだ。

「ほら二人とも、はやくごはん食べちゃいなさい。遅刻するわよ?」

姉ちゃんの一言ではっ、と目を覚ました明日香はあわてて食卓へとかけ、食べる体勢になった。俺もそれに続く。
今日の朝食は、どうやら姉ちゃんが作ったみたいだな。明日香の苦手な魚が並んでるということは、そういうことだろう。
明日香は、魚の鱗が嫌いなんだ。本人曰く、見ると鳥肌がたつとか。ちなみに今朝の焼き魚は皮がきれいに除去されている。

朝食を食べ終えた俺たちは制服へと着替え、それぞれの学校へと向かった。
また今日も下駄箱に弁当箱が…あれ?ない。―――やったぞ!ついに解放されたんだ!
俺は歓喜のあまりバンザイしてしまった。まわりの奴らが訝しげに俺を見るが、そんなんどーだっていい。
が、そのとき後ろに人の気配、まさか………。俺は恐る恐る振り向いてみた。

「飛鳥くん、おはよう!(はぁと)」

俺の喜びは三秒で打ち砕かれた。なぜなら、朝この場でこいつとエンカウントした場合、まず間違いなく"告白コース"だからだ。
今までの88回中、だいたい半数くらいがそのパターンだった。そうなれば今日はもう授業のほうには戻れまい。…はぁ、また単位が……orz

「あのな結意、何度も言ってるが俺はだなぁ……」
「わかってるよ、朝ごはんとメニューかぶるのが許せないんだよね?だいじょうぶ、今日はアスパラベーコンだから。」

……あれ、会話が噛み合ってない。なんでアスパラの話になってるんだ?
いやそれより、なぜ今朝の我が家の朝食を知ってるような口ぶりを?むしろそっちのほうが問題だろう!
俺がそんなことを思考していると結意は自分のかばんから弁当箱を取り出した。女子のものにしては少々…いや、けっこう大きい。そしてそれを俺はほぼ毎日目にしている。

「はい、約束どおり作ってきたよ!いっぱい食べてね?てへっ☆」

11:3=3    へ?

……いかんいかん、わけがわからずついバ○ボンのパパみたいな表情をしてしまった。これでいいのd…よかねぇ!約束ってなんだ!?
まさか結意のやつ…脳内ではすでに俺と結婚でもしてるんじゃないだろうな?そりゃあ…これだけかわいけりゃあ俺だって断る理由ないし…変態でさえなければ!

「あのさぁ…約束って、なんだったっけ?」むだだろうが、一応訊いてみる。
「もぉ…忘れちゃったの?昨日飛鳥くん帰り道で『明日さ、弁当作ってくれないか?』って言ってたじゃない。だから作ってきたんだよ?いっぱい愛情こめて。えへへ」

―――まったく心当たりがない。だめだ、こいつの妄想力は半端じゃない。これ以上こいつのそばにいたら何されるかわかったもんじゃねえ!というわけで

「俺は、逃げる!」
「ちょっ――飛鳥くん!?どこ行くのよぉ!!」

153:天使のような悪魔たち 第7話 ◆UDPETPayJA
08/11/21 19:15:59 yomVWorA
* * * * *

あのあと俺は図書室に逃げ込んできた。結意のやつ…想像以上に足が速い。だが、もう追ってはこない。まずは一安心だ。
呼吸を整え、近くにあった椅子にかけようとしたそのとき、奥のほうからなにやら声がした。
確かあそこには図書委員の詰め所(?)があったはず…

「ん…はぁっ!ああっ!いいよぉ!もっと、もっときてぇ!」

――― し こ ー て ー し ―――

じゃなくて、いったいなんだってんだ!? なにこんなとこで仲睦まじくヤってんだ!? つか誰だ!?
と…とにかくだ!気づかれたらまるで覗き見してたみたいで後味悪い。よし、離れよう。
俺は踵を返し、出口へと向かった。

「ここにいたほうがいいぞ。」

ふいに、後ろから呼び止められた。俺はつい反射的に振り向いてしまった。
そこにいたのは…両耳にピアスを4個ずつ、合計8個も装着している、片隅で椅子に腰掛けて本を読んでいる男子生徒。

「あと20秒くらいであんたに身の危険が訪れる。具体的には、ここを出て廊下を曲がった瞬間に、だ。」

その男子生徒はいきなり予言めいたことを告げてきた。うーん…なんか、説得力あるような……ないような…やっぱあるような…。
とりあえず俺はその男の言ったとおりに残ることにした。そして俺は至極当然な質問を彼に投げかけた。

「ええと…とりあえず、君は誰なんだ?」


154:天使のような悪魔たち 第7話 ◆UDPETPayJA
08/11/21 19:16:30 yomVWorA
数十分後―――

「あそこの部屋、騒がしかったろ?あいつらいつもそこでヤってるんだ。朝っぱから元気だよなぁ。見張りをやらされてる俺の身にもなってみろっての…ったく。」
「あ、ああ。迷惑な話だな。」
「だろ?でさ…」

彼―佐橋 歩という―はあれから俺に延々と愚痴をこぼしていた。そうとうたまってんな…鬱憤が。
詰め所にいたのは環 左京って女子と、その弟の右京っていう男子らしい。俗に言う近親相姦ってやつか、初めてみた。…あれ、なんか既視感が?

♪みーあげたーならーよぞらをきりさーいてーかーけー ピッ

「もしもし…ああ、光か。今図書室。……そう、また見張りだよ。…ああ。じゃ。」

ピッ

「…悪いな、約束があったんだ。もし暇なら、俺の代わりに見張りをしてくれないか?」
「―――え?」
「ちなみに今外に出ればもれなくあんたにさっき言った身の危険がくる。」

……それって、新手の脅迫か!?

「いや…終わったみたいだ。なんでもない、忘れてくれ。じゃあな。」

そういうと佐橋はさっさと図書室を出て行ってしまった。と同時に一時間目の終わりを告げるチャイムが鳴る。
…俺も戻るか。なんかあの、あとの濁し方がすさまじく気になるが…まあいい、出よう。
そして一歩踏み出した。……いない。どうやら佐橋の予言は外れたみたいだ。これで安心して戻れる。

「み つ け た よ ?」

―――背後から声。マイナス20度くらいの、ひんやりとした声だ。それだけなのに……なぜかとてつもなく怖い!ゆっくりと、振り向いてみる。

そこにいたのは、結意だった。とてもにこやかな笑顔だ…だけど、なんか背に般若背負ってる気がしてならない。小学生ならきっと恐怖のあまりガクブルしてしまうだろう。

「どぉして逃げるのかなぁ?せっかく作ってきたのに…ねぇ、これはなんなの?」

そういうと結意はいつの間にやら持っていたもう一つの弁当箱を俺に突きつけた。それは、けさ明日香が作ってくれたものだった。

「飛鳥くん…わたし、言ったよね?妹ちゃんと話しちゃだめだって。なのに…なにこのお弁当箱、あの女の匂いがぷんぷんするよ?どういうことなのかなぁ?
…ねぇ、答えてよ!?」

…俺の頭は混乱していた。さっきからこいつはわけのわからんことばっか連呼しやがって…。今まで遠まわしに…いや、ソフトに断り続けてきたがもう限界だ!
もういい…この際はっきりと言ってやる!

「…なんでお前にそんなこと言われなきゃなんないんだ!黙って聞いてりゃ調子に乗りやがって…そうだよ、俺はお前がだいっ嫌いだ!
いっつもいっつもストーカーまがいなことしやがって!そんな何入ってるかわかったもんじゃない弁当なんか食えるか、気持ち悪い!
金輪際俺に近づくな!もう顔も見たくねえ!わかったな!」

一気にまくし立てる。………結意はただ呆然としている。俺は返事を待たず、半ば逃げるようにその場をあとにした。

155:天使のような悪魔たち 第7話 ◆UDPETPayJA
08/11/21 19:17:03 yomVWorA
* * * * *

「うそ…だよね。だって、好きだって…愛してるって言ったじゃない。何度も何度も…えっちだってしたじゃない…。
ねえ、何がいけなかったの?私、なにか悪いことしちゃったんだよね。だから飛鳥くん怒ってるんだよね?
…やだよ。飛鳥くんに捨てられちゃうよ…。怖いよ。こんなのやだよ……捨てないでよぉ…。
わたし、なんでもするから…飛鳥くんのためならなんだってできるから…だから…

おねがい…わたしをひとりにしないでよぉ……」


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