らき☆すたの女の子でエロパロ54at EROPARO
らき☆すたの女の子でエロパロ54 - 暇つぶし2ch349:名無しさん@ピンキー
08/11/23 20:23:06 Gr91pPS+
>>347
ぐっじょぶです。
相変わらず、ぶっとんだお話ですね。弄ばれるこなたんが可愛くて仕方ありません。
とても、たのしませて頂きました。

準備される方がいなければ、投下させていただきます。

350:23-251 ◆5xcwYYpqtk
08/11/23 20:28:09 Gr91pPS+
「Affair 第1話」

つかさ×ゆたか

注意事項
・非エロ
・Elope関連、Escapeの続き
・6レス程度使用



351:Affair 1/6
08/11/23 20:29:24 Gr91pPS+
 午後5時になり、バイトの時間が終わった。
「お先に失礼します」
「お疲れ、ゆーちゃん」
「お疲れ様、ゆたかちゃん」
 まだ勤務中のこなたお姉ちゃんや、バイト仲間に挨拶をしてから私服に着替えて店を出る。
 紺から黒へと移りゆく晩秋の空を見上げながら、私は買い物客で賑わうアーケードを過ぎ、赤門をくぐり抜けて、
上前津駅に向かう。
 普段なら、鶴舞線に乗ったままなのだけれど、今日は2つ先の伏見駅で、交差する東山線に乗り換えて、
隣の名古屋駅で降りる。
 地上に戻ると、ひんやりした空気が衣服の隙間から身体に流れ込む。
 立冬が過ぎてからは、雨が降るごとに冷え込みが厳しくなっており、先週からコートを纏うようになった。
 タクシー乗り場の横を通り過ぎ、桜通口からJR名古屋駅に入り、金色の大きな時計がある場所で立ちどまる。

 ここは、ナナちゃん人形程ではないが、地元ではそれなりに有名な場所で、多くの人が待ち合わせの場所として利用している。
 ほとんどの人はとても楽しそうな顔をみせているが、私だけは不安に包まれてひどく落ち着かない。
 足を止めて待つことができずに、時計の周りをぐるぐると回ってしまう。
「…… 本当に、会っていいの? 」
 心の声が何度も危険信号を送ってくるが、今さら、約束を破るわけにはいかない。
「しっかりしなくちゃ」
 無意識な領域からわき上がる不安を無理矢理抑え込んで、ひたすら待ち続ける。

 5時55分。意味もなく歩きまわることに疲れて立ち止った時に、待ち合わせの相手が姿をみせる。
「お久しぶり。ゆたかちゃん」
 柊つかさ先輩は、とても楽しそうに微笑む。
 前と同じように、いや、前より増して綺麗で可愛らしくみえた。

352:Affair 2/6
08/11/23 20:30:09 Gr91pPS+
「こんばんは…… つかさ先輩」
 私は、緊張による細かい身体の震えを抑えながら、挨拶を返す。
「うん。こんばんは。ゆたかちゃんは、いつみても可愛いね」
「きゃっ」
 いきなり抱き締められて、思わず声をあげてしまう。
「や、やめてください! 」
 衆人環視の中での過激なスキンシップに、顔を真っ赤にしながら、腕を伸ばして先輩を振りほどこうと試みるが、
力が強くて離すことができない。
 私に密着したつかさ先輩は、調子に乗ってくんかくんかと鼻を鳴らしながらセクハラまがいの質問をしてくる。
「ゆたかちゃんは良い匂いがするねえ。どんなシャンプー、つかっているの? 」
「においを嗅がないでください! 」
 抗いながらイヤイヤと身体を捩じるけれど、先輩の身体はとても柔らかくて、温かくて、油断すると受け入れてしまいそうになる。
「お願いですから、やめてください! 」
 それでも本気で抗うと、唐突に体を離して言った。
「食事にいこうよ。ゆたかちゃん」
 つかさ先輩は、唖然としている私の手を掴むと、すたすたと歩き出してしまう。
「ま、待ってください! 」
 引きずられそうになって慌てて声を出すが、結局、右手を握られたまま、マイペースすぎる先輩の後を追う羽目になった。

「つかさ先輩…… 」
 私は、精一杯怖い目つきをつくって、先輩をにらみつける。
「ふふ。ゆたかちゃんがラブな視線を送ってくれて、とっても嬉しいなあ」
「違います! 何、とぼけたことを言っているのですか」
 私はため息をつきながら、言葉を続ける。
「どんどん先に行ってしまうから、てっきり、お店を知っていると思っていましたよ」
「あはは」
「笑ってごまかさないでください! 」
 私はあきれながらも、突っ込みを入れざるを得ない。

 なにしろ、つかさ先輩は、意気揚々として5分程歩いた後、人気のないガード下まで歩いたかと思うと、急に立ち止まって、
「ゆたかちゃん、ここどこだっけ?」
と、あっけらかんと聞いてきたのだ。こなたお姉ちゃんが、つかさ先輩のことを天然と言うのも分かる気がする。

「場所も、知らずに歩いていたのですか? 」
 先輩はちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめながら答えた。
「ううっ、ごめんね。だって名古屋のお店なんて、全く知らないだもん」
 両手をあわせながら、しゅんとうなだれるつかさ先輩は、年上なのにとても可愛らしい。
「仕方ないですね…… 私の知っているお店にしますが、良いですね」
 柄ではないけれど、お姉さんぶった言い方になってしまう。
「うん。ありがとう。ゆたかちゃん」
 向日葵のような笑顔を浮かべながら子犬のようにじゃれついてきて、本当に2つも年上なのだろうか、と疑問に思ってしまった。


353:Affair 3/6
08/11/23 20:30:49 Gr91pPS+
 私が、不?戴天の敵ともいうべき、柊つかさ先輩と会う約束をしたのには、いくつか理由がある。
 表向きの理由としては、初夏の騒動の時に結んだ、先輩達が名古屋に来た時は会うように努めるという協定があるためだ。
 もっとも、それだけならば多忙を理由に断っていたが、つかさ先輩は誘いをかける時に、
抜かりなくそれなりの「お小遣い」をくれると持ちかけてきた。

 第三者が聞いたら幻滅するかもしれないが、現実は結構非情だ。
 安くない家賃を払い続けながら、未成年の女の子二人が独立して暮らすのにはまとまって金額が必要で、
親元からの援助と、バイト代を合わせても余裕があるとはいえない。
 それでも、ただ単に食べていくというだけの話ならば、当面は何とかなるけれど、本格的に社会に出る準備として、
進学という道を捨てる訳にはいかなかった。
 少なくとも私にとっては、つかさ先輩の誘いはとても魅力的なものだった。
 
「はい。ゆたかちゃん」
 お店に入り、席につくなり差し出された封筒を受け取る。
「中を確認してね」
「あの…… 多いです」
 事前に教えられていた額よりもかなり多い。
「いいから、いいから」
 先輩は鷹揚にうなずいたが、一介の学生が出せる金額とは思えない。
 ただでさえ、新幹線での往復という余計な費用を使っているのに、大丈夫なのだろうか?

「ゆたかちゃんは心配性だねえ」
 つかさ先輩がカラカラと笑った。
 先輩が言うには、神社のイベントの時は、巫女となって、神主である先輩のお父さんのお手伝いをしているけれど、
昨年から参拝客が倍以上に膨らみ、予想以上の収益があがっているとのことだ。
 それ加えて、お父さんが末娘に激甘という事情もあるらしい。
「だから、ゆたかちゃんが気にすることはないよ。お金は、必要な人が必要に応じて使ってくれればいいの」
 私は思わず、つかさ先輩の顔をまじまじと見つめた。
 悪意に満ちた陰謀だけではなくて、ごく真面目なことも考えているのか。

354:Affair 4/6
08/11/23 20:31:22 Gr91pPS+
「ゆ・た・か・ちゃん」
「な、なんですかっ」
 いきなり、どあっぷで迫られて思わず後ずさる。
「今、とっても、失礼なことを考えていたよね? 」
 ぷーっと頬を、焼いた餅みたいにふくらませる。
「そ、そんなこと…… 」
 しかし、嘘をつくこともできず、私は顔を真っ赤にしたまま、両手の人差し指を合わせることしかできない。
「考えていたよね」
「ご、ごめんなさい」
 慌てて謝った途端、先輩の表情に笑みが戻る。

「ふふ。ゆたかちゃんって素直で、可愛いね」
 今日何度目の『可愛い』なんだろう? 
 しかし、先輩の無邪気そうな笑顔には必ず裏がある。騙されてはいけないと気を引き締める。
「私はそんなに可愛くなんかありません。それはつかさ先輩もご存じのはずでしょう? 」
 今までの行動を振り返ってみても、お世辞にも可愛らしい行動をとったとはいえない。

「ううん。ゆたかちゃんは、どんなことをしても純粋で素敵な女の子だとおもっているよ」
「はあ…… 」
 つかさ先輩の言葉は、魔法のように、私の敵愾心をどんどん溶かしてしまう。
 このままでは非常にまずい。何とかしなくては。
「この際だからはっきりと言いますけれど」
「何かな? ゆたかちゃん」
 つかさ先輩は、愛らしい笑顔を浮かべたまま、小さく首を傾けた。

「つかさ先輩。私のことが嫌いじゃないのですか? 」
「え? 」
「つかさ先輩は、こなたお姉ちゃんのことが好きなのでしょう。こなたお姉ちゃんをひとり占めしている、
私がとても憎いはずです。今度は、一体何をたくらんでいるのですか? 」
 私は、先輩から決して目を逸らさずに、厳しい口調で言いきった。
 わざわざつかさ先輩の誘いに乗った理由は、お金の為だけなんかじゃない。
 企みを暴いて、私とこなたお姉ちゃんの関係を護らなければならなかった。


355:Affair 5/6
08/11/23 20:32:16 Gr91pPS+
「ふうん」
 しかし、つかさ先輩の表情は変わらない。デフォルトとなっている笑顔のままだ。
「ゆたかちゃんは本当に頭が良いんだね」
 うっとりと、私を見つめてくる。
「何が…… 言いたいのですか? 」
「私はね。自分がそうじゃないから、できる人に憧れるの。もちろん、こなちゃんは大好きだよ。
でも、ゆたかちゃんも同じくらい好き」
「あ、あの…… 」
 つかさ先輩は、何を言いたいのだろう?
 訝しみながら先輩の顔を見つめていると、店員が料理とお酒を運んできた。
 若い女性の店員が手際よくコルクを抜いて、グラスに赤のワインが満たされる。

「ゆたかちゃん。乾杯しよっか」
「はあ…… 」
 私は言われるままに、グラスを合わせると、鈴の鳴るような乾いた音が響く。
「乾杯! 」
 グラスを傾けて、赤い液体を喉に流し込むと頭がぼうっとなってきた。
「ふふ。美味しい? 」
 つかさ先輩の声がやけに遠くから聞こえる。
「は、はい…… 」
 
 一旦はグラスを置いたけれど、すぐに喉が渇いてくる。
「遠慮しないでね」
 再び注がれたグラスに口をつける。ほんのりと甘くて、さっぱりとしていて、喉越しも良い。
「とても、美味しいです」
「ええ。そうね」
 つかさ先輩が、相槌を打った後に尋ねてきた。
「こなちゃん、元気にしている? 」

「こなたお姉ちゃんですか? 」
 お酒で身体が熱くなっているのを感じながら答えた。
「元気ですけど…… お店のチーフになったから最近はとても忙しいです」
「そうなの? 」
「最近は残業も多くて、遊びにいくこともままなりませんから」
「ふうん。今日もバイトなのかしら? 」
「ええ。私と違って最後までです」
 チーフに昇進したこなたお姉ちゃんの業務は、閉店時間までとはいかない。
 食材の発注や、バイトメンバーのシフトの調整など、煩雑な管理業務のせいで、帰りはとても遅くなる。
 お姉ちゃんのことを考えていると、何故か喉がとても渇いてきて、私はグラスをまた空ける。
 すぐにつかさ先輩が継ぎ足してくれる。
「ありがとうございます…… 」
「じゃあ、あまり遊びにいかないの? 」
「はい。仕事の時間が合わないことが多いですし、余裕もありませんから」


356:Affair 6/6
08/11/23 20:33:34 Gr91pPS+
 仕事に明け暮れるお姉ちゃんを見ていると、少し悲しくなってくる。
 もっと、いろんなところに遊びに行きたいのに、思い出をたくさん作りたいのに。
 寂しさを紛らわそうと、あおるようにしてワインを飲む。
「ゆたかちゃんは、とても寂しいんだね」
「そうなんです。私、とっても寂しいです。バイトの人は優しくしてくれるけれど……
他に知り合いは…… いませんから…… 」
 急に呂律が回らなくなってくる。そう、私はとっても寂しいのですよ。つかさ先輩。
 だから、もっと、お酒をくださいね…… 

「ゆたかちゃん? 」
 ほとんど飲んだこともないお酒を、注がれるままに飲み続けた為に、急に眠たくなって机にうつぶせになる。
「つかさせんぱい…… とっても眠いですよう」
「駄目だよ、ゆたかちゃん。ここで寝ちゃあ」
 つかさ先輩が困った顔でたしなめるけれど、力が全くはいらずに、起き上がることができない。
「だめです。私、もう立てないです」
 ぼんやりとした状態のまま顔だけを先輩に向ける。つかさ先輩の顔がひどくぼやけて見える。
「ゆたかちゃん…… そろそろお家に帰ろうか? 」
「イヤ…… です。わたし、もう、歩けない」

 身体中がふわふわして宙に浮いているみたいで、到底、家まで辿り着く自信がない。
「だったら、ホテルに泊まっていく? 」
 つかさ先輩が近寄り、私の耳元で囁く。
「そこで…… 寝て…… いいんですか? 」
「うん。大歓迎だよ。ゆたかちゃん」
「ありがとう…… ございます」
「ふふ。ゆたかちゃんはとっても良い子だね」
 先輩が私の頭を優しくなでてくれる。
「ふぁい…… つかさせんぱい…… おやすみなさい」
 視界はだんだんと暗くなっていく。
 意識が闇に堕ちる寸前まで、つかさ先輩は穏やかな笑みを浮かべていた。

(続く)

357:23-251 ◆5xcwYYpqtk
08/11/23 20:39:10 Gr91pPS+
読んで頂いた方、ありがとうございます。

寂しさを募らせるゆたかの隙間に、するりと忍び込んでいくつかさを表現できていれば良いのですが……
よろしければ、お付き合い願えればと思います。
では。


358:名無しさん@ピンキー
08/11/23 21:17:59 P3/9cFee
>>357
GJ!
こなかが派だけど、この作品だけは注目し続けている俺。
つかさくるか!またしても黒でもない白でもない、
純粋にして凶悪な意図によって構成された、柘植つかさくるか!!
今度はどんな「だから!遅すぎたと言ってるんだッ!!」がくるか!?

島みやえい子をBGMにしつつ、続きを所望いたします。

359:名無しさん@ピンキー
08/11/23 23:00:51 QFx3bC82
>>347
わははっ GJ !
なんちゅーか、このシリーズ好きだわw
ラノベ風の読みやすい感じもいいねw

続きはもうないのでしょーか ?

360:名無しさん@ピンキー
08/11/24 03:20:48 8kU8T+Jo
>357
何と圧倒的なつかさ
忍び込むというか、『もう完全に射程圏内。でもまだ食べないよ、面白くないし』みたいな

何だか意味深なタイトルにドキドキしつつ、
ワクテカでお待ちしております

361:名無しさん@ピンキー
08/11/24 10:59:58 OHha6M3z
>>357
まずはタイトル理解。
満を持して動き出したつかさに、はらはらが止まりません。
ていうか逃げてゆーちゃん、ゆーちゃん逃げて。

手に汗握りつつ、続きをお待ちしております。ぐっじょぶ。

362:名無しさん@ピンキー
08/11/24 12:55:56 8nc3iHJb
>>360
ゆたかちゃーん ゆたかちゃーん
むいてむいてむいて また着せる
ゆたかちゃーん ゆたかちゃーん
むいてむいてむいて、見てるだけ
たべないよー たべないよー(性的な意味で)
(楽しみが)なくならないよーにー
たべないよー たべないよー(まだまだ)
むいて見てるだけー

ということですね、わかります。

363:名無しさん@ピンキー
08/11/24 21:18:17 TKs0FRE+
>>347

どうも、「オかツ乱」ですw遅くなりましたがGJ!

やべぇなぁ面白いなぁ。おいらのような初心者は、こーゆーラノベっつーかラSS(何やねん)大好きです。続いて欲しいなぁ・・・

364:名無しさん@ピンキー
08/11/26 07:13:07 emHUy0GV
保全ついでの小ネタ

もしも登場人物が大富豪だったら
「こなた、アニメイトを三店舗も買ってどうするのよ。」
「かがみんや、観賞用、保存用、布教用はオタクの常識だよ。」
「もうちょっと有意義にお金を使いなさいよ」
「そう言うかがみもお菓子工場を衝動買いしたって、つかさから聞いたよ」
「…あれは資金繰りに…困っていた工場を助けて…。」
「また太っちゃうよー」
「うっさい。」

チラシの裏
一月ぐらい書き込み規制に巻き込また、
GJが言えないのがここまで苦しいとは思わなかった。

365:名無しさん@ピンキー
08/11/26 12:16:17 Mt13/bdq
>>364
つ●

366:名無しさん@ピンキー
08/11/26 18:15:45 nyaNhmaF
p2の方が安いよ

367:名無しさん@ピンキー
08/11/27 08:34:42 H2dragFx
>>364
ワロタw

368:名無しさん@ピンキー
08/11/27 12:49:16 2SavmNp1
>>364
「うにょ~ん、何故私は話題に上らないのかな…」
「つかさはもう答えが決まってるからね~」
「そうね…あれしかないわよね」
「「せ~の…





バルサミコ酢工場!」」
「なんじゃそりゃ~!!」

369:名無しさん@ピンキー
08/11/27 18:16:42 OlUCayvF
「そう言えばみゆきさんが無駄遣いするイメージって沸かないなぁ」

「みゆきの場合今のままで十分お金持ちだからね」

「そういう人って急にお金が入っても無駄遣いするイメージじゃないんだよねぇ」

「そりゃそうよ、私達よりは何に使うか具体的なプランも立てられるでしょうし、アニメイトや工場買うなんて言い出さないわよ」

「なるほど、私達みたいな庶民はお金持ちになったら?って聞かれても庶民の発想でしか考えられないわけだね」

「そういう事、結局は実際になってみるまでわからないって事ね」

「工場まではないにしてもかがみは軍隊とか買いそうだよね、凶暴だし」

「そっちの方が非現実的だろ……なるほど、こなたは私と戦争したいんだ」

「ちょ、ちょっとかがみん?冗談だよ?」





「あの、私は歯医者さんに行かなくてもいいお薬を……ってもう聞いてませんよね……」

「ゆきちゃん……私は聞いてるから……大丈夫だよ」


370:名無しさん@ピンキー
08/11/27 22:28:22 Ganmv2JM
 やまと誕生日小ネタ

 こう 「ハッピーバースデー、やまと!」
 やまと「一日遅れだけどありがと、こう」
 こう 「はい、プレゼント」
 やまと「……この形、この重さ、こうの趣味。宇宙戦艦的なDVDボックスといったとこ?」
 こう 「げ、原子力潜水艦の方がよかった?」
 やまと「……まあいいわ。高く売れそうだし」
 こう 「そんなあ。一緒にテーマ曲歌った仲じゃないか」
 やまと「誰かさんに無理矢理歌わされたの」
 こう 「カラオケ好きのやまとにぴったりな曲をチョイスしてあげたのだ」
 やまと「ありがと。死ぬほど嬉しかったわ(超棒読み)」
 こう 「それにしても、なんで『やまと』って名前付けられたの?」
 やまと「予定日が12月16日だったの。大和が完成した」
 こう 「反抗して早く出てきちゃったんだ」
 やまと「……まあ、そんなとこ」
 こう 「男の子だったら『むさし』だったとか?」
 やまと「……よく分かったわね」
 こう 「イヤ、マサカアタルトハ……」
 やまと「埼玉だしちょうどいいって」
 こう 「東京23区と神奈川の一部でも無問題ダネ♪」
 やまと「長野に住んでたら、永森しなのになってたかもね」
 こう 「……そうなると、建造中止になった四番艦が激しく気になるね」
 やまと「『111号艦』って言うらしいわよ」
 こう 「ギャンブラーの血が騒ぐ番号だね」
 やまと「こう……」
 こう 「な、何、改まって?」
 やまと「もし私が『永森111号艦』だったとしても、友達になってくれた?」
 こう 「もちろん! 何なら嫁入りして『八坂111号艦』になるかい?」
 やまと「遠慮しとく。そもそも、『やまと』でもなくなってるし」
 こう 「いや、でも、私はやまとって名前好きだよ」
 やまと「こう……」
 こう 「帝国海軍とか宇宙人で、長門に通じるものがあって羨ましい」
 やまと「そこがツボなんだ……」
 こう 「見た目はキョ●子に通じるものがあるけど」
 やまと「知らないわよ」
 こう 「やまとは自分の名前嫌いなの?」
 やまと「爆弾と魚雷でタコ殴りの上撃沈されたフネってどうなのよ」

 こう、やまとを押し倒す

 こう 「ごめん、私欲情しちゃった」
 やまと「今の会話のどこにそんな要素があったの?」
 こう 「魚雷で激チン。いやー、たまらん」
 やまと「ツッコミどころが多すぎて抵抗する気にもならないけど、一つだけお願い」
 こう 「わかった、優しくする」
 やまと「そうじゃなくて、子供が出来ても『111号艦』ってつけないでね」

371:名無しさん@ピンキー
08/11/27 23:21:53 eVMyklOf
>>370 あなたの妄想力に負けましたw

「でもやまとは、ひらがなだから超大型ごえいかn…ぐはっ」



372:名無しさん@ピンキー
08/11/28 00:57:47 Ll1LYMHN
>>370
とりあえずキョ○子吹いた。

とりあえず、黒のぬこ耳と黒尻尾の付いた微妙にきわどい衣装を着て『今日はあなたがこ主人様にゃん』と言ってくれ。
……いや、スマン。最近某ハルケギニア物語を読んでるせいでやまとを黒猫ヤマトと考えてこんな事に……

ちなみに、その某ルイズ・フランソワーズと平民の使い魔つながりであきら様にルイズのコスをしてもらいたい俺がいる。

373:名無しさん@ピンキー
08/11/28 01:04:21 +HR1I2yc
>>370は俺を笑い殺す気に違いない!GJだ

374:某緑無乳
08/11/28 01:12:48 ff0gdZka
>>370
長門と…聞いて…飛んで…来ました…

375:名無しさん@ピンキー
08/11/28 08:02:18 9QlEUjZq
>>371

こなた「えっ、原潜にして独立国家じゃないのっ?」
かがみ「あのラストは、なんとも釈然としなかったわ……海江田艦長が不憫すぎて」

376:名無しさん@ピンキー
08/11/28 18:34:01 pmpOMrMq
ナイフじゃなくて、キスマークで体に「やまと」と刻むんですね、分かります。

377:名無しさん@ピンキー
08/11/28 19:47:04 Xo5diTOM
>>370
ガチで百合カプだから困るwww

378:名無しさん@ピンキー
08/11/29 01:31:28 SZ8xdH1j
>>爆弾と魚雷でタコ殴りの上撃沈
つまりやまと総受けですね。わかります。

379:名無しさん@ピンキー
08/11/29 02:14:40 0GT47U79
大勢のアメ公に色々とブチ込まれたやまとが
なでなでしこしこした末に轟沈するわけですね

380:一年生のアメ公
08/11/29 13:10:41 sXcJo07J
>>379
ワタシがヤマトをセメルのですネ。

381:名無しさん@ピンキー
08/11/29 19:34:57 Q7wkxdJ2
間をとって、アメ公と腐女子のコンビで。
実際そういうSSいくつかあるしw

382: ◆MoiSlbQnQw
08/11/29 19:49:44 Ij1MgFCQ
皆がバージルの剣に夢中になってるときにあきらと白石を投下する俺KY。
べ、別にPS2のゲーム持ってないから話に入りにくいとかそんなんじゃないんだから!

URLリンク(www.sonokawa28.net)

投下してからふと思う。『あれ、あきらのマネージャーって伊藤さんで合ってたっけ?』と。

383:名無しさん@ピンキー
08/11/29 21:32:58 jC8DFvUl
確か、「すえし」って名字じゃなかったっけ

384:名無しさん@ピンキー
08/11/29 23:19:22 jSBSW9c/
確かアニメ版では「伊藤」という名前は出ていた。
(みのるにファンレターが来たのに、あきら様のところにはDMが来た時の発言より)
だが、それがマネかどうかはわからない。

385:名無しさん@ピンキー
08/11/30 00:01:56 +ZSY1AVu
>>383
確認した所、『すえし』(アニメ8話のらきちゃん)は中の人(今野さん)のマネージャーの名前らしい。

386:名無しさん@ピンキー
08/11/30 00:16:07 Sf9+dFY4
>>382
ぐっじょぶです。
ツンデレあきらがいいですね。楽しませてもらいました。

準備をされる方がおられなければ、投下いたします。

387:名無しさん@ピンキー
08/11/30 00:20:56 ww8J8eb+
伊藤敦さんはプロデューサーだね
角川の人らしい

388:23-251 ◆5xcwYYpqtk
08/11/30 00:30:48 Sf9+dFY4
「テスト (後編)」

・こなた×ゆたか (+名無しの登場人物あり)

※注意事項
 ・エロあり
 ・SMあり
 ・ダーク
 ・こなたん注意
 ・8レス程度使用

389:テスト 1/8
08/11/30 00:31:36 Sf9+dFY4
「ただいま…… こなたお姉ちゃん」
「おかえり。ゆーちゃん」
 夕方、私はふらふらとよろめきながらも、こなたお姉ちゃんの家に戻ることができた。
 保健室でみなみちゃんと性行為をした後も、アソコに貼りつけたままのローターは、動いたり止まったりを繰り返している。
 しかし、大事なところを、執拗に刺激されたにも関わらず、それ以来は達することができていない。
 センサーか何か、特別な仕掛けでもあるのか、頂きに到達する寸前になると決まってローターは止まってしまい、
昂った気持ちが落ち着いてくると再び、思いだしたように動き出す。
 ほとんど生き地獄のようなイヤらしい責め苦よって、家に着く頃には本当に気が狂いそうになっていた。

「お姉ちゃん。お願い、イカせて! 」
 扉を開けてくれたお姉ちゃんに、縋りつきながら叫ぶ。
 おじさんが聞いているかもしれないけれど、到底、我慢ができない。
「まだ、だめだよ。ゆーちゃん」
 しかし、こなたお姉ちゃんは、突き放しながら冷然と首を振った。
「ど、どうすればいいの?」
 私は、こなたお姉ちゃんの瞳を、物欲しそうに見つめながら尋ねた。

「そうだね。ゆーちゃん、買い物にいこうか」
 こなたお姉ちゃんは、両手をぽんと叩きながら言った。
「お買い物? 」
 戸惑う私をよそに、こなたお姉ちゃんは笑みを浮かべたまま近寄り、制服のスカートの裾を持ち上げる。

「お、お姉ちゃん? 」
「ゆーちゃん。ちょっと丈が長いね」
「え、え? 」
 こなたお姉ちゃんが、戸惑う私を横目に、スカートの端を折りたたんで短くしてしまう。
「これくらいかな? 」

「ちょ、ちょっと、お姉ちゃん!? 」
 元々、膝上までだったスカートの丈が、股下わずか5センチくらいのところまで引きあげられる。
 太腿はほとんど露出してしまい、少し動いただけで白い下着が露出する。
「恥ずかしいよ。皆に見えちゃうよ」
 私は、極端に短くなったスカートの前を抑えながら、情けない声をあげた。
「これで終わりじゃないよ」

「や、やだっ」
 こなたお姉ちゃんの手が、私の下着に伸びる。
「だ、駄目だよ。そんなの…… はずかしいよう」
 しかし、お姉ちゃんは許してくれない。
「さ、寒いよ」
 下着をはぎ取られると、冷えた空気が下腹部に滑り込んできて身体が勝手に震える。
「そろそろ、出かけよっか」
「えっ!? 」
 こなたお姉ちゃんが玄関の扉を開けると、風が流れ込んできて、スカートがふわりとめくりあがった。
「きゃあ」
 悲鳴をあげながらスカートを抑える私を、こなたお姉ちゃんは満足そうに眺めていた。

390:テスト 2/8
08/11/30 00:32:24 Sf9+dFY4
「もう少し歩かないと、いつまでたっても着かないよ」
「で、でも」
 こなたお姉ちゃんに縋りつきながら、黄色く染まった銀杏並木の下を歩く。
 ほんの少しの風が吹いただけでも、マイクロミニと化したスカートがめくりあがって、お尻もアソコも丸見えになってしまうので、
一瞬たりとも油断ができない。
 少しでも早く風のない店の中に入りたいのに、通行人の視線を気にしながら内股でよちよち歩くものだから、遅々として進まない。
「お姉ちゃん。みんなに見られてるよう」
 行き交う人間全ての視線が、私の下半身に集中しているように思えてしまう。
 現に、先程すれ違った中年のおじさんは、私の太腿のあたりを舐め回すように凝視していたし、
20メートル程、後ろを歩いている高校生の二人組はずっと前かがみだ。

「そりゃあ、『パンツ穿いてない』だもんね。無理もないよ」
「そ、そんなあ」
「もう少し速く歩かないと、羞恥プレイはいつまでたっても終わらないよ」
「ううっ」
 私は、泣きそうになりながら無理やり歩幅をひろげた。

(下着を付けないだけで、こんなにも心細くて恥ずかしいんだ…… )
 追いうちを掛けるように、途中からはアソコに貼られたローターがイヤらしい振動を再開して、愛液がとろとろとわき出してくる。
 ショーツを穿いていないので、溢れ出す水液を押しとどめるものは何もなく、粘性の液体は太腿に伝わったり、
ダイレクトにアスファルトの地面に落ちたりするしかない。

「きゃっ」
 突如、下から巻き上げるような風が吹いて、スカートが思いっきりめくりあがる。
慌てて手で抑えつけようとするけれど、到底、間に合わない。
「うおっ」
 ちょうど脇を通り過ぎようとした、車に乗っている男性がハンドル操作を誤り、けたたましいブレーキ音を立てながら壁に激突した。

「お、おねえちゃん! 」
 あまりにも恥ずかしすぎて、申し訳なくて、お姉ちゃんの腕に縋りつく。
「うーん。破壊力が凄いねえ」
 こなたお姉ちゃんは、どこか呆れたような口調で言って、両肩を竦めた。

391:テスト 3/8
08/11/30 00:33:05 Sf9+dFY4
 いつも使っている、食料品や生活雑貨も売っているドラッグストアの前まで、普段の3倍の時間をかけて到着すると、
こなたお姉ちゃんが一枚の紙を渡した。
「ゆーちゃん。コレを買ってきてくれるかな」
「う、うん。お姉ちゃんは? 」
 メモ用紙を受け取りながら、お姉ちゃんに尋ねる。
「ちょっと、18歳未満禁止のお店だからね。ゆーちゃんは禁止なのだよ」
 こなたお姉ちゃんは、ドラッグストアの向かい側にある、大きな注射器を持って微笑んでいるナース姿の女の子の看板が目立つ、
美少女ゲームの販売店に行ってしまった。

「いらっしゃいませ」
 自動扉をくぐり抜けると、クリスマス・ソングが耳朶に飛び込んでくる。
「えっと、精力増強ドリンクと、随喜エキス、にんにく、コンドーム…… 」
 メモを開いて読んだだけで顔が赤くなる。どれもイヤらしいことに関係のあるものばかりだ。
「でも、お姉ちゃんの期待に応えないと」
 最初は戸惑ったけれど、次々に紙にかかれた商品を買い物かごに入れていく。残るはコンドームだけだ。

(あっ、あった)
 目立たない場所に、鎮座しているコンドームの群れの一つを手に取ろうとした時に、ローターの振動が急激に強くなった。

「きゃっ! 」
 大声で叫びかけて、慌てて手で口を押さえる。
(やだ、やだあ)
 今までとは比べ物にならない強烈な振動に襲われ、とても立っていられない。
(だめっ、お願いっ、お願いだから、とまってよ! )
 しゃがみこみながら、強制的な愛撫に耐えていると、小学校低学年くらいの男の子が近づいてきた。

「お姉ちゃん、どうしたの? 」
 どうやら、しゃがみこんで辛そうに顔をゆがめている私が、心配になったようだ。
「う、ううん…… んあっ、なんでも、なんでもないの」
 私は、無理やり笑顔をつくって立ち上がる。
「あの、お姉ちゃん」
 しかし、男の子はなかなか傍を離れてくれない。
「な、なに? 」
 おなかを押さえながら、なんとか声を振り絞る。
 ローターが私の中を淫らに蠢き回って、身体の震えがとまらない。
 苦悶の表情を隠せないでいる私に、男の子は無邪気な様子で尋ねてきた。
「お姉ちゃん、どうしてパンツ、はいてないの? 」


392:テスト 4/8
08/11/30 00:34:31 Sf9+dFY4
「きゃっ」
 私は、小さく悲鳴をあげた。
 足元を見ると、しゃがんだ時にずれたのか、極端に短くなったスカートがめくりあがって、お尻が丸見えになっている。
「や、やだあっ」
 動揺しながら、スカートを抑えたとき。
「こんなもの、みてはいけません! 」
 とても怖い顔をした母親の手にひっぱられて、男の子はどこかに行ってしまった。

「あ…… 」
(そうだ、レジに行かなくっちゃ)
 男の子の母親の冷たい視線が気になるけれど、精算を済まさなければいけないので、立ち上がって歩きだす。
 突き上げるような衝撃に襲われる度に、立ち止まって太腿をぎゅっと抑えながらこらえる。
(もう駄目、耐えられないよう)
 折れそうになる心を懸命に励ましながら、一歩、一歩、レジに近づく。

「いらっしゃいませ」
 私の苦境に気づくはずはなく、若い男の人が営業用の笑顔をみせる。
「これ、お願いします」
 私は、唸り続けるローターにうち震えながら、カゴを台の上に置いた。
 大人の為の商品で埋まったかごを見た途端、店員の表情が引きつった。

「398円…… 2200円…… 」
 それでも、店員は何もいわずに業務に専念し、バーコードを読み取る電子音がひどく無表情に響く。
「4725円です」
 私も言われるままに、お財布から5千円札を取り出して店員に渡した。
「おつりは275円になります」
 店員からお釣りを受け取ろうとした時、ローターの振動がMAXに切り替わった。


393:テスト 5/8
08/11/30 00:35:22 Sf9+dFY4
「いやああああああっ! 」
 強烈な振動によってクリが滅茶苦茶に掻き回されて、私はお釣りを床にぶちまけながらしゃがみ込んだ。
「だめええええっ! 」
 人目をはばらずに絶叫する少女を店員は呆然と眺めている。
「だめ、わたし、だめなの、お願い、許して! 」
 悲鳴をあげながらも、撒き散らしたお釣りを取るために、這いつくばって床に手を伸ばす。
「お願い、いく、いっちゃうの、お願い、とめて!  」
 周囲の客がざわめき始めるが、周りの視線を気にする余裕はどこにもない。

 プルプルと震えるローターに刺激されたアソコからは、粘着力のある水液がどんどんあふれだす。
 下着を穿いていないから、卑猥な液体は膣口からそのまま垂れ流しとなり、床にはしたない水たまりを拡げていく。

「うわっ、この子、パンツはいてねーよ」
 後ろに並んでいた若い男性客が、指をさしながら露骨に顔を歪めて言った。
「あの子、やだ、何をつけているの? 」
 男性客の隣に立っていた恋人とおぼしき女性が、振動音に気づいて、ひきつった声を張り上げる。
「嫌っ、聞かないで! 」
 私は悲鳴をあげながらぎゅっと脚を閉じるけれど、ローターの音は小さくなってくれない。
「何、ローター? 最低ね」
 長い髪を伸ばした女性は、蔑んだ目で見降ろしてくる。
「いやあああ、お願い、やだあ、聞かないでください! 」
 私は絶叫しながら、それでも、あちこちと転がったお釣りをかき集める。

「まさかドラッグストアで恥女をみることができるとはな」
 文句を言いながらも、私の痴態を愉しそうに眺めている男性に怒りながら、若い女性が吐き捨てる。
「ホント社会の迷惑よね、この変態! 」
 汚物をみるような目つきで睨まれ、私の心をぐちゃぐちゃにする。
 何しろ、制服を着た女子高生が、パンツを穿かず、クリにローターを貼りつけて、イヤらしく悶えているのだ。
 痴女と蔑まれようが、変態と罵られようが反論はできない。

「はう、んあっ、わ、わたし、かえらなくちゃ」
 羞恥と疲労でくたくたになりながらも、最後の硬貨を財布にしまい、立ち上がって商品を受け取る。
「ありがとうございました…… 」
 私は、完全に傍観者になりきった店員の乾いた声と、客の蔑んだ視線を浴びながら、ほとんど逃げるようにして店を出た。

394:テスト 6/8
08/11/30 00:36:00 Sf9+dFY4
 こなたお姉ちゃんが入った店の入口に向かおうとした時、携帯が震える。
 ディスプレイを覗くと、こなたお姉ちゃんからのメールがあり、
『私は帰ったから、ゆーちゃんも家に戻ってね』
と、液晶に表示されていた。

 帰り道になっても淫らな試練は終わらない。
「もう、だめ、ふあっ、んくぅ」
 路面を歩くたびに、身体に突き抜けるような衝撃が走って身体が震える。
 壁に手をつきながら足をぎゅっと閉じていると、快感が更に高まってイキそうになる。
「いく、いっちゃう…… 」
 しかし、もうひと押しというところで、無情にもローターの振動は弱まる。
「んあっ、お家に、帰らないと…… 」
 気力を振り絞って再び歩き始めると、また振動が激しくなる。
「はあっ、はあっ」
 絶頂の手前を行ったり来たりしながら、よろめくように進む。
「私、もう駄目、んああ、あるけ、ない…… んああっ 」
 背後を振り返ると、まるでおしっこを漏らしたみたいに、アスファルトに染みが点々と続いていた。

「んんっ、お願い、もう、許してっ」
 快楽の階段の上下が果てしなく繰り返される。
 よろよろと歩きながら、溢れた愛液で太腿をはしたなく擦り合わせても、頂上のすぐ手前で計ったように
ローターはとまってしまい、どうしても達することができない。

「イきたい、イきたいよう」
 道路に転がりながらアソコの割れ目をおもっきり掻き毟りたくなるという衝動を、必死で抑えてひたすら耐え忍ぶ。
 永遠とも思われる快楽地獄をのたうち回った後、私は、ようやくこなたお姉ちゃんの家にたどり着いた。

395:テスト 7/8
08/11/30 00:36:43 Sf9+dFY4
「おかえり、ゆーちゃん」
「お姉ちゃん、私、わたし! 」
 扉を閉めることもせずに、お姉ちゃんにむしゃぶりつく。
「こなたお姉ちゃん、お願いだからイかせて! もう限界、もう駄目なの! 」
 こなたお姉ちゃんは、今度はとても優しく抱きしめてくれた。

「ふふ。ゆーちゃん、合格だよ」
 こなたお姉ちゃんは、ついに私の想いに応えてくれた。
 同時に、アソコに激しい刺激を与え続けて、私を散々に苦しませたローターは、ぴたりと動きを止めている。
「本当に、私、本当にお姉ちゃんの恋人になっていいの? 」
 とても嬉しいけれど、すぐには信じられなくて、念を押すようにして尋ねる。
「うん。ゆーちゃんはとても淫乱な女の子になったからね。もう、私の趣向についてこれるはずだよ」
「ありがとう。本当にありがとう」
 幸せを噛み締めながら、私は、こなたお姉ちゃんの懐で泣きじゃくった。

「じゃあ、そろそろ用意しようか」
「えっ、何を? 」
 泣きやむのを待ってから、おもむろにこなたお姉ちゃんが耳打ちをしてくる。
「…… をお願いしていいかな? 」
「うん。こなたお姉ちゃん」
 私は力強く頷いた。こなたお姉ちゃんが望むことは、何でもやり遂げるつもりだった。

396:テスト 8/8
08/11/30 00:37:35 Sf9+dFY4
「おっす、こなた」
「こんばんは。こなちゃん」
「こんばんは。泉さん」
「やふー、いらっしゃい」
 私が帰宅してから暫く経ってから、柊先輩達と高良先輩が家にやって来る。今日はお泊り会とのことだ。
 三人はこなたお姉ちゃんの親友で、とても綺麗な人ばかりだ。
 
 私は、こなたお姉ちゃんの言われたように準備を整えた後、紅茶とケーキを用意して部屋の扉を開ける。
「こんばんは。柊先輩、高良先輩」
「こんばんは、ゆたかちゃ…… 」

 挨拶を返そうとしたかがみ先輩たちは、濃紺のスクール水着を身に纏い、
更に、首回り、乳房、腰、股間を荒縄で縛りあげられていた私を見て、一様に硬直した。

 SMという単語を知らなかったとしても、スクール水着と荒縄という姿は尋常ではない。
 青ざめる先輩達に向かって、私は、妖艶な微笑みを浮かべてみせる。
「私は、こなたお姉ちゃんのモノになることができました」
「こなた、アンタ…… 」
 お姉ちゃんは、ひどくうろたえているかがみ先輩の顔を、愉しそうに眺めながら宣言した。
「かがみん。ゆーちゃんは私の恋人になったのだよ」

「そ…… んな」
 かがみ先輩が放心したように呟いた時、荒縄に抑えつけられた、ローターが再び蠢き始めた。
 振動はみるみる強まり、静まり返った部屋に淫靡なモーター音だけが響き渡る。
 私は、何度もよろめきながらも、ケーキと紅茶を載せたお盆をテーブルに置くと、こなたお姉ちゃんの懐に飛び込んだ。
 お姉ちゃんは、ローターで悶えている私を優しく受け止めてくれる。

「ゆ、ゆたかちゃん!? 」
 つかさ先輩だけが辛うじて声をあげた。
 頭の上でリボンを結んだ、可愛らしい顔をしたつかさ先輩は、真っ赤になった顔を両手で覆うが、
指の隙間から、よがりつづける淫乱な後輩の痴態を食い入るように見つめている。
 おしとやかで美人と誰もが言う高良先輩は、とても怖い顔をしたまま、取りだしたハンカチを折り畳んだりひろげたりしている。
 そして、活動的で皆を惹き付ける魅力に溢れているかがみ先輩は、何か大切なものを失ったような
虚ろな表情を見せたまま、全く動かない。

「ほら、ゆーちゃん。みんなにお願いしないといけないよ」
「うん。こなたお姉ちゃん」
 私は、蕩けきった身体を引き起こして正座をする。
 あまりの出来事に絶句する先輩達に向けて、床に頭をこすりつける程、深く頭を下げてから顔をあげる。

「先輩方、こ、これからも、よろしく、んあっ、お願い…… します。ふあっ、よろしければ、今日は、くうんっ、
この淫らな私を使って、心ゆくまで、んっ、愉しんでください…… ね」

(おしまい)


397:23-251 ◆5xcwYYpqtk
08/11/30 00:41:54 Sf9+dFY4
以上です。
読んでくれた方、ありがとうございました。
個人的には、ダークなエロに拘ったつもりですが、最終的には(一応にしても)、ハッピーエンドとあいなりました。
ジャンル的には、ゆーちゃん調教ものということになりそうですね。
では。

398:名無しさん@ピンキー
08/11/30 16:03:38 3dF5l/w+
夢オチにでもするのかと思ったら全部現実かっ

399:23-49
08/12/01 19:13:19 sV0Cnohw
どうも、お久しぶりです

以前に宣言した「エロいの」、頑張ってみました
というか、26スレ目に名無しで投下した「温もりの冬」の完成版です
(もう一年も前になるのだなぁ)

それでは、被りがないようでしたら五分後ぐらいから投下させてください


・こなた×かがみ
・15レス使用

400:最後の日 1/15
08/12/01 19:18:24 sV0Cnohw
 
 三月も半ばを過ぎ、春を間近に迎えながらもまだまだ寒さの続く冬のある日。
 かがみは泉家を訪れた。
「おーっす。寒いねー」
「いらしゃーい。さ、上がって上がってー」
 セーターの上に半纏を重ねたこなたにうなずいて返し、彼女の部屋へと進みかけるが、
「あ、和室行っててよ。コタツつけてるから」
「え? ……ああ、うん」
 台所に向かうこなたに制され、思い出した。
 今日は彼女以外に誰もいないのだった。
 勝手知ったる人の家。迷うことなく廊下を歩き、目的の部屋のふすまを開けて中へと入る。
「―ふぅ」
 ほっと一息。
 エアコンでほどよく暖められた空気が、冷えた身体を包み込む。
 上着を脱いで、ハンガー等はないので適当に丸めて荷物とともに床に置く。
 コタツに入って足を伸ばし、座り心地を確かめるように軽く身じろぎ。正座の姿勢で落ち着いた。
「うー、あったか……」
 ぺたり、天板に頬を預けてつぶやく。
 しばらくそのままぼんやりしていたが、聞こえてきた足音に反応して身を起こす。
「ふあー、台所は寒っむいねぇー」
 開け放しておいたふすまを抜けてこなたが姿を現した。
 両手に抱えたおぼんには、みかんの入ったかごと二人分の湯呑み。
「悪いわね」
「いやいや」
 おぼんをコタツの上に載せ、ふすまを閉じるとこなたもいそいそと潜り込む。
 かがみの向かいではなく左隣。
 部屋の角に置かれたテレビを二人で眺める形だ。スイッチは入っていないが。
「生き返るねぇー」
 先ほどのかがみと同じように、天板に顔を押し付けるこなた。
 見事に平らに潰れたほっぺたが柔らかさを主張している。
 緩んだ顔といい、丸められた背中といい、本当に猫のようだ。
 ぴこぴこと揺れるアホ毛は、さながら尻尾か。
「……、もらうわね」
 なんとなく生まれた気恥ずかしさをごまかすように、湯呑みに手を伸ばし取り寄せる。
 緑茶。残念ながら茶柱は立っていない。
 湯気を立てるそれに息を吹きかけ、一口。
「ほっ……」
 まろやかな渋みとほのかな甘みが喉を通り抜け、じんわりとした熱が胃の奥を中心に広がる。
 かがみは思わず頬を緩めた。
 それを見て、こなたはかすかに目を細める。
「かがみはさ、」
「ん?」
「冬は好き?」
 唐突かつ脈絡のない質問にも、もう慣れた。
 ん、と湯飲みを置き、少し考えて口を開く。
「そうねえ……寒いのは苦手かな」
「夏生まれだから?」
「ああ、そうかも」
 ふーん、と、姿勢をそのままみかんに手を伸ばすこなたに、かがみは逆に問いかける。
「あんたは? 冬と夏」
「冬」
 即答したこなたは、みかんの皮を剥くでもなく、手の中でもてあそんでいる。
「……ちょっと、意外ね」
「いや~、クーラーが人類の至宝だっていうのに異論はないんだけど、やっぱコタツの魔力には
敵わないっしょ」
 ようやくにして頭を起こし、こなたは無駄に力説する。どこからクーラーが出てきたのか。ため息。
「また何かのアニメネタか?」
「コタツ形式の冷房ってできないのかな」
「暑苦しいだけだろ」

401:最後の日 2/15
08/12/01 19:19:19 sV0Cnohw
 やれやれ、とお茶をもう一口。
 湯呑みを置いて、吐息で笑う。
「……ま、私もコタツは好きだけどね」
「でしょー」
 くふくふと笑い、こなたはみかんを剥き始めた。
 かがみもかごに手を伸ばしかけたが、なんとなくやめて、代わりにコタツの中へと引っ込める。
「そうね。コタツにストーブ。鍋料理とか、焚き火に焼き芋とか、あとお風呂もかな。
暖かいものが楽しめるって考えると、冬もいいかなって思うわ」
「人肌もね」
 皮を剥き終えたみかんをそのままに、こなたがつぶやく。
「え……」
 いつの間にかコタツの中に滑り込んでいたその手が、かがみの手を取った。
 果物を触っていたためか、少しひんやりとしている。
「あったかいよ」
 こなたからは、そうであろう。かがみの方は熱い湯呑みに触れていたのだし。
「ちょっと……」
「な~に?」
 笑いを含んだ疑問符とともに、もう一方の手も伸びてきて、やわやわと揉んでくる。
 かがみの背筋に何かが走った。
「冬は、好き?」
「……まぁ」
「コタツは?」
「……好き、だけど」
「あったかいもんね」
「……うん」
 いつしか冷たい感覚は消えうせ、むずがゆい暖かさに指先が包まれている。
 むずがゆいが、不快ではない。
「あったかいの、好き?」
「…………ん」
「……私の手、あったかい?」
 暖かい。
 だがコタツの外で空気に触れている頬の方が、今は熱い。顔を背ける。
「こっち見てよ」
「っ……!」
 妥協案として、目線だけを戻す。
 こなたはいつものニヤニヤ笑いではない、優しい微笑を浮かべていた。
 かがみの頬が熱を増す。
「みかん……」
「ん?」
「……食べないの?」
 耐え切れなくなりそうで、話題を変える。が、
「みかんと緑茶ってっさ、あんまり相性よくないよね。あったかくないし」
「あんた、自分で出しといて―」
「だからさ、」
 かがみの言葉を遮って、こなたは顔を近づける。
「今はまだ、だいじょうぶ」
「なに、が……」
 わかってはいる。なら聞くなというのは、かがみには無理な注文だ。
 少しだけ視線を下げると、はい正解、とばかりに猫口から赤い舌先がちろりと顔を覗かせ、
 引っ込んだ。
「あったかいと思うよ?」
「……」
「あったかいの……好き?」
 もはや顔全体が熱い。耳にまで及んでいる。
 だから熱はもう十分―そうは、思わなかった。思えなかった。
「…………す、き」
「んふっ?」
 蕩けたように微笑むこなたの顔がさらに近づき、目を閉じた。かがみも閉じる。
 そして温もりが訪れた。

402:最後の日 3/15
08/12/01 19:20:14 sV0Cnohw
「ん……」
 こなたの舌先が、かがみの唇の割れ目をなぞる。
 少しだけ開いて迎え入れると、器用に前歯をノックされる。
 小さな小さな水音が、脳の奥まで伝わった。
 もう一段階、進入を許す。
「ふ……」
 まず、吐息。続いて舌先同士が触れ合う。
 無味無臭。そのはずなのに、痺れるように甘い。腹筋がぴくりと浮き上がる。
 嬉しそうに笑うこなたの気配が粘膜越しに伝わってくる。かがみの体温がさらに上昇。
 コタツの中の手を握り返した。
 悔し紛れに、なってない。
「―んっ」
 手首を親指でなでられた。思わず唇に力が入る。
「んむっ」
 挟み込まれたこなたの舌が小さく暴れる。優しく噛んで動きを止める。
 先端を軽く吸ってみた。
「……っ」
 ふるふるとこなたの震える気配。同時に舌が引っ込む。
 ちぷっ。
 小さな音を立てて、熱と柔らかさが離れていった。
 目を開けると、上気したこなたの顔。唇に手を添えている。
 目が合った。
 ほんのわずかに戸惑っていた表情が、一瞬でニヤリと笑う。
「……積極的じゃん」
「なっ……!」
 かがみの顔が沸騰した。
 こなたがますますニヤニヤ笑う。
「舌吸われちゃったよ」
「しょっ―しょうがないでしょ!」
「しょーがない、ね……そかそか♪ そんなに吸いたかったんだ、私の舌」
「――っ!!」
 頭のてっぺんから湯気が噴出する。
 少なくともかがみはそう感じたし、こなたにもそう見えた。
「…………」
「んふふふふ~」
 真っ赤になって睨みつけるかがみの視線を意にも介さず、こなたは上機嫌にみかんを割る。
 一房を摘み取り、ぱくり。
 あむあむと動く猫口が恨めしい。
 恨めしくて、目が離せない。
 こなたはたっぷり時間をかけて飲み込むと、もう一房。
 かがみの方へと差し出した。
「はい」
「……」
 無言で手を伸ばす。引っ込められた。指が空を切る。
「……何よ」
 低い声で、赤い顔で腐るかがみに、こなたはにっこりと笑顔を返す。
「あーん」
「なっ―」
 驚いて口を開きかけて、慌てて閉じて、顔ごと逸らす。
「かがみ、あ~~ん?」
 小さな手が追いかけてくる。
「……ぃ、ぃぃゎょ……」
 なるべく口を開けないようにして、ごにょごにょとつぶやく。
 こんな態度を取っても逆に喜ばせるだけだと、やはりわかってはいてもどうにもできない。

403:最後の日 4/15
08/12/01 19:21:10 sV0Cnohw
「もぉ~、しょうがないなぁかがみは」
 案の定、わざとらしいぼやき声。
 が、それ以上の追求はなく、意外にも大人しく手が引っ込んだ。
 え、とかがみは顔を戻す。こなたはみかんの白いスジを取り除き始めていた。
 一つ目は普通に食べていたのに。
 思いつつ見ていると、続いて薄皮まで剥き始める。
 他の柑橘類に比べて剥きにくいはずの、ノーマルな温州みかんのそれを、小さな細い指が
 器用にはいでいく。
 やがて鮮やかなオレンジ色の、缶詰から取り出したような一房が完成した。
「……なにやってんの?」
「んー? ……皮がノドに詰まらないように、ってね」
 はい? と疑問を深めるかがみをよそに、こなたは「あむっ」とみかんを口の中に放り込む。
 と、そのまま何の前触れも見せずにかがみの頭を両手でがっしりとホールド。
「え」
 次の瞬間、口をふさがれた。
「―んむ!?」
 唇が強引にめくられる。歯に、舌ではない何かが押し付けられ、当たる端からプチプチと潰れていく。
 あっという間に酸味のある液体が口の入り口付近にあふれ、こぼれそうになり、たまらず歯を開いた。
 甘酸っぱい味と香りが口腔に押し寄せる。
 反射的に嚥下する。
 休む間もなく、今度はやや薄味の、代わりに粘り気を帯びたものが流し込まれた。
 こなたの唾液だ。
 意識したとたん、全身が反り返るような震えが走った。
 腹の底から何かが競り上がってくるような、あるいは逆に全てが沈み込んでいくような、快感。
 くちゅくちゅと卑猥な水音が、それをさらに加速させる。
 夢中になって飲み込んだ。
 喉が痺れる。
 脳が痺れる。

「―っぷは」

「ぁ……」
 唇が離れる。
 快感が途切れ、一拍遅れて口の周りが冷気に襲われる。
 目を開けると、思いのほか近くにこなたの顔があった。
 息がかかる距離。
 真っ赤に上気している。
 潤んだ瞳が、かがみの目をまっすぐに覗き込んでいた。底の見えない深い色。
 吸い込まれそうになり、思わず息を呑む。
 つややかに濡れ光る唇が、にんまりと笑みを描いた。
「……ものたりない?」
「んなっ!?」
 図星だった。
 首の周りがカアッと熱くなる。
 理性が必死で否定を叫ぶ。が、
「……」
 気が付けば、かがみは口元を手で押さえながら首をコクリと縦に振っていた。
 上目遣いに覗き見ると、こなたは少し驚いたような顔。
「あれぇ……? どしたのかがみ? なんか素直じゃん」
「悪かったわね。ツンデレじゃなくて」
「いやいや、そのセリフは十分ツンデレだって」
「うるさい」
 視線を横に逃がし、蚊の鳴くような声を絞り出す。
「だって……最後なんでしょ、今日で」
「……あ」
 こなたの発する気配が変わった。

404:最後の日 5/15
08/12/01 19:22:06 sV0Cnohw
 そう。
 こうして二人きりの時間を過ごせるのは、この日が最後なのだ。
 明日からはそうではなくなる。完全にできなくなるわけではないが、機会はぐっと減るだろう。
「ん~……、半分、口実みたいなもんなんだけどねぇ」
 ぽりぽりと、頬を掻くこなた。
 眉が下がり、目が細くなっている。
「ま、だいじょぶだよ。なんとか時間作ってみるから」
「……場所は?」
「……たぶん、だいじょうぶ」
 不安が少し、大きくなった。
 かがみと、そしてこなたも。
「ごめん」
「なんでかがみが謝るのさ」
「……良いこと、なのよね。わかってるのよ私も。でも……」
 かがみはまだいい。だがこなたは複雑だろう。
 自分はただ単純に恨めしく思うだけだが、彼女にとっては喜ばしいことでもあるはずなのだ。
 今のこの関係を自分が望みさえしなければ、こなたも単純に喜ぶだけでいられたかも知れない。
 それを思うと、胸が苦しい。
「もぉ~~、ほんとしょーがないなぁかがみは」
「きゃっ」
 いつの間にかコタツを抜け出していたこなたが、かがみの背後から抱きついてきた。
 肩があごに乗せられ、頬が触れ合う。甘い匂い。落ち込みかけた気分と体温が再び跳ね上がる。
「考えたってどーにもならないよ。……そんなことより、ね?」
「そ、そんなことって」
「ってゆーか、だからこそ時間を無駄にしたくないじゃん?」
 ごく至近距離からの流し目。息を呑む。
 まるっきり子どもみたいな外見のくせして、どうしてこんなに蟲惑的な気配を出せるのか。
 とてもじゃないが、逆らえない。そんな気になれない。
「……うん」
 うなずくと、こなたはますます目を細めた。
「ホント、素直になっちゃって」
 指先が首筋をなでてくる。
「んっ!」
 あごから耳までのラインを往復。
 同時に、熱したハチミツのような声がダイレクトに流し込まれる。
「ツンデレなかがみんも萌えだけど、素直なかがみも、かわいいよ?」
「ばかっ……」
 声に力が入らない。全身が粟立っている。
「ばかだもん」
 こなたは抱擁を解くと、かがみの隣にぺたんと座り込み、再び両手で両手を包み込んできた。
 目は相変わらず妖しく輝いているが、その笑みはどこか無邪気に映る。
「ねぇ」
 見た目に相応の甘えた声。
「……なに?」
「今度は、かがみからちょーだい?」

 ピシリ。

 そんな音がした。
「なっ……!?」
 すっかり身を任せる気でいたかがみを、再び動揺が襲う。体温がさらにさらに上昇。
 計ったら凄いことになりそうだ。―そんな現実逃避。
 そうこうしている間にも、こなたは目を閉じ、やや上向きになって準備万端。
 赤ちゃんみたいなほっぺたがほんのりと薄桃色に染まっている。
 ほんのり薄桃だとこの野郎、こっちはリンゴみたいに真っ赤っかだってのに。―そんな現実逃避。

405:最後の日 6/15
08/12/01 19:23:04 sV0Cnohw
「こっ、こな、た……」
 声が震える。
 こなたは動かない。
 どうやら完全に待ちを決め込んでしまったようだ。
 ごくり、つばを飲み込む。
 かがみは意を決すると、目を閉じ、身を乗り出して顔を前に進ませた。数センチ。
 薄く目を開ける。
 まだあと数センチ。
 目測を定め、また目を閉じる。
 さらに意を決して、じりじりと顔を寄せていく。
「……」
 じりじり、じりじり。
「……」
 じりじり、じり……
「……?」
 疑問が湧く。
 こんなに遠かっただろうか。見当をつけた距離は既に通過したはずなのに、唇が温もりに届かない。
 眉をひそめて目を開ける。
「……」
 赤く染まったこなたの顔があった。
 しかしそれは、期待にでも羞恥にでもなく、喜悦に。
 繋いだかがみの手に違和感を与えない限界まで、上半身が後退していた。
「……ぷっ……」
 膨れた頬から笑いが漏れた。
「なっ……!」
 からかわれた。
 キスしようとしている顔を、至近距離、真正面から観察された。こんなに恥ずかしいことはない。
 頭の中が真っ白になり、白熱し、爆発した。

「―ばかぁっ!!」

 絶叫。
 耳から首元まで真っ赤に染めて、涙を飛ばして、かがみは叫ぶ。
 こなたが目を丸くしてのけぞった。
「ご、ごめん……」
「ごめんじゃないわよ! なんでこんなことするのよっ!」
「やっ、だって、その……かがみが可愛かったから、つい……」
「ばっ―あ、アンタはそんなことばっかりっ!」
 怒鳴り、そっぽを向くかがみ。
 あからさまな照れ隠しだったが、こなたは指摘してはこなかった。
 代わりに繋ぎっぱなしだった手をきゅっと握ってくる。
「あの……」
「……」
「ごめんね、かがみ。……うん、ホントごめん」
「……」
「ついいつものノリでやっちゃった。そんなに傷つけちゃうとは思わなかったから……」
 珍しく真摯に、心からこなたは詫びる。少なくともかがみにはそう聞こえる。
 しかし真横を向いたまま動かない。
「……」
 いや、視線だけが時おりちらちらとこなたの方に向いてしまっている。
 単純なものだ、と、外に出さぬよう自嘲する。
 既にかがみは九割方許す気になりかけていた。こんな、たった一言二言謝られただけで。
 しかし、やはり、悔しい。
 せめて何か一つ、余裕を持って「許す」と言えるだけの理由がなければ収まらない。収めたくない。

406:最後の日 7/15
08/12/01 19:23:57 sV0Cnohw
「……ねぇ、どうしたら許してくれる?」
 猫なで声でこなたが囁く。
 気付いているのだろう。かがみのそんな感覚に。
「お願い、かがみ。なんでもするからさ。言えた義理じゃないけど、このままなんてイヤだよ」
「……」
 形だけなら懇願だが、意図するところはつまり譲歩だ。
 謝ってやるから機嫌を直せと、そう言っている。
 ―だったら、乗ってやろうじゃないか。
「……なんでも?」
「うん」
「そう……」
 ぼそり、つぶやき、かがみはこなたに向き直る。まず目線だけで。一拍置いて、顔と身体も正面に。
 向き合う体勢に戻った。
「じゃあ……手」
「手?」
「離して」
 冷たく突き放すように言うと、軽く裏切られたような顔をしながらも、こなたは素直に手を離す。
 その様子を見てやや溜飲を下げつつ、かがみは自由になった両の手で、先程されたのと同じように、
 こなたの頭を鷲掴みにした。
「え」
「動かないで」
 そして一言。
 ほぼ同時に掴んだ顔を引き寄せ、自分も押し出し、唇に唇を押し当てた。
「!?」
 こなたが目を剥く。
 本能的にか、身をよじって逃れようとする。もちろん思い通りにはさせない。
 勢いに任せて舌を突き入れ、上下の唇の裏側をぐるりと一周。手の中で小さな身体がびくりと跳ねた。
 そんな反応にかがみは心の中でガッツポーズを決める。
 成功だ。
 たった今、言われるがままにやったおかげで酷い屈辱を味わう羽目となったそのことを、
 さらに自分から繰り返してくるとはまさか思うまい。そのように考えての行動だ。
 あとはこなたが気を取り直して反撃に転じる前に口を離せば―
「あ……」
「……♪」
「!」
 見た。
 切なそうな物欲しそうな顔。と、見られたことに気付いて焦る顔。
 一瞬だけだったが、確かに見た。
「おっけ。許してあげる」
「うぐぅ……」
 どこかで聞いたような呻きを上げて上目遣いに睨んでくるこなたの視線を、
 かがみは満足感を持って受け止める。
「何よ。私からして欲しいって言ったのはあんたでしょ」
「ウヌゥ……」
「その上でさっきのも許してあげるって言ってるんだから、感謝しなさいよね」
 満足感。
 達成感。
 優越感。
 それらに浮かされ―かがみは油断した。

「だったら……もういいよね」

「え?」
 こなたが何かをつぶやいた。
 それが聞こえたと思ったときには、かがみの視界は縦に九十度回転していた。

407:最後の日 8/15
08/12/01 19:24:50 sV0Cnohw
「……え?」
 押し倒されていた。
「もうチャラってことで、始めちゃってもいいよね?」
 目が据わっている。
 いつもの余裕の笑みが消えている。
「ちょ」
「待たない。てか今ので火ぃついちゃった」
 言うが早いか、目の前の顔がさらに急接近。何を思う間もなく、ふさがれた。
「んんっ!?」
 間髪をおかず熱いカタマリ―こなたの舌が、かがみの唇の裏側をぞろりと一周。
 肩が抜けそうになるほど縮み上がった。
 舌は続いて歯の内側まで再度侵入し、上あご、下あご、頬の裏、歯茎、舌の裏、そして舌。
 口腔内のありとあらゆる箇所を舐め、くすぐり、ねぶり、這いまわっていく。
「~~~~―っっ!!」
 呻き声すら舐めとられるよう。
 首が限界まで反り返る。折れそうだ。腰が引きつって、右足が跳ね上がり、空を切る。
 半ば無意識に伸ばした腕が、何故かコタツの足を掴んだ。
 違う。これじゃない。
 まるで言うことを聞かない指を苦労して引き剥がし、再度中空をさまよわせる。
「……っ、……!」
 触れた。柔らかい布地。
 こなたの半纏だ。
 縋りつき、引き寄せる。
 素直に身体を預けてくるこなた。
 軽い。
 下唇を甘噛みされた。
 さらに舌先でちろちろとくすぐられ、次いで再び口腔内を蹂躙される。
 背骨の末端にひりつくような痺れが生じ、瞬く間に全身に伝播した。
 真っ白な衝撃が脳髄を突き抜ける。
 意識が一瞬、どこかに跳んだ。
 そして、

「…………―っぷは」

 唇が離される。
「ぁ……」
 数秒だったのか、数分に渡っていたのか。
 それすらも判別がつかなくなるほどに溶かされたかがみの頭が、とりあえず酸欠から
 開放されたことだけを理解する。
「はぁ……はぁ、は―ぁ…………」
 呼吸もままならない。
 軽く達してしまったらしい。
「―かがみ」
 声が降ってきた。
 けっこうな努力をして焦点をあわせると、真正面。つまり真上に、こなたの顔。
 思っていたよりも若干距離があった。上体を起こし、髪をかき上げている。
「にゅふふ、いーいカンジに蕩けてきてるね」
 自分の指を舐めながらそんなことを言って、そしてまた、ずい、と顔を寄せてくる。
 が、今度は唇を素通りし、脇へと逸れた。
「んっ」
 熱い吐息が耳をなでる。

408:最後の日 9/15
08/12/01 19:25:45 sV0Cnohw
「可愛い声、いっぱい聞かせて?」
「そ……―ひっ!?」
 言葉と同時、音もなくかがみのスカートの中に滑り込んでいたこなたの指が、
 最も敏感な部分にいきなり触れた。
「わっ♪ こっちもとろとろ」
「そっ、んな、こと―んんん、んっ!」
 下着の上から、中指が割れ目をなぞり、親指が突起を的確にこね回す。
「ふ、ううっ、や……あ、ああっ!」
 声が抑えようもなくこぼれ落ち、腰が勝手にびくびくと跳ねる。
「てか、濡れすぎじゃない? アナルの方まで染みてきてるよ?」
「あなっ!?」
 とぼけたような日常口調の中に唐突に混じりこんだ卑猥な単語に、脳が沸騰する。
「そ、そういう―ぅうっ、こと、言う、なぁ!」
「いつまでも初々しいねぇかがみは」
 あざけるような声。
 けれど決定的なところで優しさを残した声。
 かがみの背筋を震わせる。
「こんだけ濡れてれば、もうだいじょぶかな?」
 囁いて、こなたはかがみの下着をずらし、入り口に直に触れた。
「んっ……」
 思わずのけぞり、腰を引いてしまうが、こなたはぴったりとついてくる。
 しかし―それだけだ。ついてくるだけ。
 指は先ほどまでのように入り口付近を浅くなぞるだけで、奥にまで入ってこようとはしない。
「こな、た?」
 閉じていたまぶたを片方だけ開けると、愉しそうに笑っているこなたと目が合った。
「どっち?」
「え……?」
 意味がわからない。
 何が「どっち」だというのだ。
 両目とも開き、視線で問いかけると、こなたはますます笑みを深めた。
 かがみのよく知っている、こなたの笑い方。
 いたずらを仕掛けてくるときの顔だった。
「ど・う・す・る・?」
「あっ、や、うっ」
 声のリズムに合わせてクリトリスをタッピング。
 もだえながら、理解した。

 こいつっ、言わせる気だ。

「ほらほらかがみ? もう行っちゃう? それともも少しほぐす?」
「う、うう……」
 やはり。
 かがみに“おねだり”させる気だ。
「こなっ……たあ……っ!」
「うん、私はここにいるよ? どうして欲しい?」
「ど、どうって……んあっ、うっ!」
「ね、ちゃんと言って?」
「だ、だか、らぁ……っ」
 囁く間も、こなたは指の動きを止めようとはしない。
 強すぎず、弱すぎず、一定の調子で入り口だけをゆるゆるとなぞり続ける。
 もどかしい刺激に思考力が削られる。

409:最後の日 10/15
08/12/01 19:26:40 sV0Cnohw
「お―」
「お?」
「……おねがいっ、こなた……!」
 だというのに、羞恥心だけが最後まで残り続けるのは何故なのだろう。
「う~ん……ダメだよかがみ。ちゃんと言わないとわかんないよ?」
「ばか……っ!」
 胸元にしがみついて怒鳴るが、そんなことで怯む相手ではない。
 怒鳴ったといえるほどの声も出せていない。
「ほぉら、かがみ」
「うっ……」
「このままでいいの?」
「やっ、あ、っくぅ……」
「さっきみたいに素直になってよ。ね?」
 こなたの声も少しずつ熱を帯び始めている。口調も懇願のそれに近い。
 が、かがみは気付かない。
 そこまでの余裕は既にない。
 そして、ついに。
「う、ううぅ……こなたっ」
「なに、かがみ?」
「……おねがいっ。入れて……っ!」
 ついに、言った。
 言ってしまった。
 ただでさえ熱かった頭と身体がさらに発熱する。血液の代わりにマグマが流れているかのよう。
「入れるだけで、いいの?」
 しかし、こなたはなおも言う。
「―っっ!!」
 ガリっ。
 食いしばった奥歯が嫌な音を立てた。欠けてしまったかも知れない。
 どうでもいい。
 そんなことは、どうでもいい。
 もう限界だ。

「か―掻き混ぜてっ! 気持ちよくさせてっ!」

 叫ぶ。
 声が裏返る。
「……」
 こなたが一瞬だけ、心から幸せそうに笑ったが、その肩に顔をうずめているかがみにはわからない。
「……よくできました」
 ただ、囁き声に秘められた喜びと、頬への口付けに込められた優しさは、理解できた。

「じゃ……ごほうび、あげるね?」
「あっ……」
 つぷり。
 こなたの指が、入り口を割って潜り込んでくる。
「うっ、あっ」
 激しい異物感。
 これが本当に、こなたのあの細い指なのかと思う。
 そしてそんな思考も、すぐに快感に押し流される。
「相変わらず、キツキツだね。まだ二本が限界かぁ」
「んっ―あ! あぅっ!」
 ゆっくりと、丹念に。
 まるで何かを探すように、指は襞のひとつひとつをなぞり上げていく。

410:最後の日 11/15
08/12/01 19:28:41 sV0Cnohw
「ひっ、き、あ、うあっ!」
 奥に手前に小さなピストンを繰り返し。
 また右に左に捻りを加えながら。
「っ! ―はぁっ……ふあ、あ、あ、ああ、あっ」
 じわりじわりと、確実に、かがみの中心へと迫っていく。
 そうして奥まで来くると、今度は襞を引っかきながら戻っていく。
「っくぅぅぅ……っ!」
「足閉じちゃだめだよ、かがみ」
「だっ……だ、って……!」
 そんなことを言われても、閉じたくて閉じているわけではない。
 腹筋が縮み上がったまま戻らない。
「―あっ! う……あ! そこっ!」
 と。
 ひときわ強烈な電気が、腰から脳髄までを一気に駆け抜けた。
「ん? ここ?」
「だっ! やっ! だ、めっ……!」
 散々に焦らされたせいもあるのだろう。快感が増大し、身体がまるでいうことをきかない。
 突かれるたびに全身がでたらめに跳ね回る。
 首がのけぞり、後頭部が畳に擦れる。
「前と場所違わない?」
「知ら―や、はあっ! ……しら、ない……わよっ! くっ、ああぁあっ!」
「むふふ、まいーや。ココね」
「まっ、ちょ――ひぁあっ!?」
 まぶたの裏に火花が散った。
 指の動きが変わった。
 往復、回転、ともに大きくなり、奥に来たときにはたった今見つけられたポイントを的確に押していく。
 くちゅ、くちゅと、攪拌の音も粘り気を増し、なけなしの理性を切り刻む。
 思考が掻き乱され、磨り潰される。
 頭の中で快感と羞恥がせめぎ合う。
「ここかー? ここがえーのんかー?」
「あ、あっ、あ、あ、あーっ、あ、だめ、っあ!」
 気持ちいい、恥ずかしい。
 恥ずかしい、気持ちいい。
 双方が双方を増幅しあい、それ以外のことがどんどん押し遣られていく。
「やあっ! あ、だめっ、だめ……そっ!」
「お、そろそろイっちゃう?」
「やっ!」
 図星だった。
 必死で顔を背けようとするが、こなたはそれを許さない。
 空いている方の手でかがみの頬を捕らえ、やんわりと、しかし有無を言わせず向きなおさせる。
「逃げちゃだーめ」
「いやっ、見ないで、ばか、あっ……!」
「だが断る。かがみの一番カワイイとこ、見・せ・て?」
「やっ! だめっ! ふあっ!」
 こなたが指のペースを上げた。
 ハァハァと熱い吐息が耳にかかる。
 そうして―手首を大きく捻りながら、親指でクリトリスを押し潰した。

「イッ……――――っ!!」

 弾けた。
 白い、何かが。
 強烈な浮遊感。いや、落下感。
 曖昧な白に意識が塗り潰されて、かがみは果てた。


411:最後の日 12/15
08/12/01 19:29:29 sV0Cnohw
 
「可愛かったよ」
 かがみの髪を梳きながら、頬に軽く口付けつつ、こなたが言う。
「……ばかぁ……」
 息も絶えだえに抗議を返すが、弱々しいその声は、こなたをさらに喜ばせる効果しか持たなかった。
 悔しい。
 愉悦に蕩けきった笑顔が恨めしい。
 そんな反応を少なからず嬉しく思ってしまう自分が、何より悔しい。
「さて」
 と、こなたが半纏を脱ぎ捨てた。
 セーターとスウェットの上下も脱ぎ去り、下着姿になると、かがみの服にも手をかける。
「それじゃ、脱ぎ脱ぎしましょうね~」
「え、ちょ」
 まだ少し力が入らないが、反射的に抵抗する。
「だから待たないってば。こんなもんで終わるわけないでしょ」
 確かに。
 まだ自分の方しか気持ちよくなっていないし、ここまでなどと思ってはいないが、
「はい、バンザ~イ」
「じ、自分でするってば」
 いやらしく伸びてくる手を振り払い、身体を起こすと、かがみはゆるゆるとボタンを外し始める。
 しかし、
「……」
「全部脱いでね?」
 指をもたつかせていると、こなたが言った。胡座をかきながらニマニマと笑う。
「え? 全部?」
「うん」
 思わず手が止まる。
 いつも『半脱ぎの方が萌えるから』と恥ずかしい格好ばかりさせたがるのに。どうしたというのだろう。
 やはりこなたも、最後ぐらいはまともにと思っているのだろうか。
「ベッドの上以外だと全裸の方が萌えるんだよね」
「……」
 脱力する。
 そんな殊勝な相手ではなかった。
「あ、でも靴下は残してね?」
「……もぅ……ばかっ」


     ☆



412:最後の日 13/15
08/12/01 19:30:24 sV0Cnohw
 
「かぽーん」
 湯気の立ち込める空間に、間の抜けた声が響いて消える。
「なによ、いきなり」
「んー? お風呂場っていったらこの音でしょー」
 あのままさらに小一時間ほど肌を重ねたあと、かいた汗を流すために二人で風呂に入っている。
 二人とも浴槽に浸かり、こなたはかがみの足の間に三角座りで納まって、胸元にもたれかかる体勢。
 自然、かがみはこなたを抱き抱えるように、その肩に両腕を回している。
 互いに預け合う体温と体重が、ただ心地よい。
 二人分の長い髪の毛が、湯の中で溶け合うように複雑に絡み合っている。
「……でも、何の音なんだろ」
「知らないわよ。洗面器か何かじゃない?」
「ふーん」
 つぶやくと、こなたは湯船から身を乗り出して洗面器を手に取り、そのまま床に打ちつけた。
 コンッ。
 軽い音が浴室に響く。
「……音、違うよ?」
「知らないってば」
 ため息混じりにかがみは笑う。
 しかし、確かに言われてみれば、何の音なのだろう。
 かがみの読む漫画やラノベでも風呂場のシーンとなるとそんな擬音が使われることが多い気がするが、
 実際に聞いたことはないように思う。
「むー。かがみが冷たい」
 元の位置に収まりなおしたこなたが、不満げに唇を尖らせる。
「身体はこんなにあったかいのに」
「悪かったわね」
「中は熱いぐらいなのに」
「やめんかっ! このセクハラ親父!」
 怒鳴り声が反響する。
 酷い下ネタだったが、即座に返せてしまった。
 付き合い始めのころはもっとずっと軽いものでも真っ赤になって固まっていたのに。
 この半年ほどで、すっかり慣れてしまった。オタクな知識も随分と増えた。
 どんどんこなたに染め上げられていく。それが実感できる。
 多少は悔しさも感じるが、これは言い換えればココロの距離が近づいているということでもある。
 そう考えると、やはり嬉しい。
 かがみは思う。
 これから先、自分はどうなっていくのだろう。
 さらに半年後には。そして一年、二年、三年後には―否。
 そんな、ことよりも。
 明日、以降は。
 かがみは、そしてこなたは。
 どうなって、しまうのだろう。

「……ねぇ、こなた」
「んー?」
「その……名前、なんていうんだっけ」
「え? ―ああ、ゆーちゃんだよ。小早川ゆたかちゃん」
 コバヤカワ、ユタカ。
 それが、この泉家に居候することになる、こなたの従妹の名前。
 実際に住み始めるのは明後日からだが、明日はその準備があるらしい。だから今日が最後なのだ。
「ゆたか、ね。なんか男の子みたい」
「あ、ソレ言っちゃ駄目だよ。気にしてるみたいだから」
「そっか。ごめん」
 こなたの言葉に、とりあえず謝るかがみだったが、あまり気持ちは入っていなかった。
 仕方がないといえば仕方がない。
 彼女の出現により、こうして二人きりで過ごせる機会は確実に減ってしまうのだ。
 しかも、恋人であるかがみを差し置いて、こなたと一つ屋根の下で暮らすことになる女の子。
 良い感情を持てというほうが無理な話だ。

413:最後の日 14/15
08/12/01 19:31:19 sV0Cnohw
 かがみはそのまま、こなたの首に回した腕に力を込めて、縋りつくように抱きしめた。
「かがみ?」
「……信じてるんだからね?」
「や、説得力ないよ?」
 苦笑いの混じった返答。
「だって……」
「もぉ、何度も言ってるよね? ゆーちゃんはホントに妹みたいなもんなんだってば。かがみだって
つかさとどうこうなったりしないでしょ?」
「……」
 確かにその通りだ。
 かがみだってわかっている。仮にそうでなくとも、こなたは浮気などしない。
 そう見せかけたイタズラならやりかねないが、一線を越えることはきっとない。
 わかってはいるが、しかし、やはり理解と納得は別の問題だ。
「あー、もー」
 ざぱっ、と勢いよく、こなたが立ち上がった。
 反転し、かがみに向き直ってくる。そしてとっさに反応できずに固まってしまったかがみの頭を、
 先ほどのように両手で、しかし今度はそっと包む。
 またキスをされるのだろうか。
 今はそんなものが欲しいわけではないのだが、されること自体は嫌ではない。
 目を閉じる。
 が、訪れたのはコツンと軽い感触だった。唇ではなく額。目を開ける。

「大好きだよ」

「……」
「私が好きなのは、かがみだけ」
 何故だろう。
 完全な不意打ちとなるはずだったその一言は、かがみの心に無理なく浸透し、
 全身に優しく溶け込んでいった。

 ―ああ、これだ。
 ―これが欲しかったんだ。

 ようやく、埋まった。
 渇きにも似た嫉妬心が掻き消えて、代わりに歓喜と幸福感が湧き起こり、そして溢れ出す。
「……私も、」
 目の前の瞳をまっすぐに見つめ返しながら。
 すう、と一息。

「大好き」

 瞬間、こなたが目を見開いた。
 一拍遅れてその顔が真っ赤に染まり、
「っぷお!?」
 奇声を発しながらのけぞった。
「え?」
「か、かかがみ……ズルイよ。それハンソク」
 デレデレに茹だった顔と声。こんなこなたを見るのはかがみも初めてかも知れない。
「ちょ、な、なによ。どうしたのよ」
 大いに戸惑う。
 “それ”とはなんだ。何がここまでこなたを不覚にさせた。
 確かに、かがみの方からこなたへ、ここまでまっすぐに真正面から愛情を伝えることは稀ではあるが……
「…………ねぇ、こなた」
 否。
 稀ではない。皆無だ。皆無だった。
 つまり、今のが始めてだ。

414:最後の日 15/15
08/12/01 19:32:14 sV0Cnohw
「な、なにさぁ」
 やや回復しつつあるこなたの手を取って、かがみはぐっと身を寄せる。
「え、ちょ」
 押されるように上体を反らすこなた。湯が大きく波打って、少し溢れた。構わずかがみはさらに迫る。
「こーなたっ」
 恥ずかしさをぐっと堪えて、笑う。
「だ、だから、なにってば」
「……大好き」
「っ……!」
 一瞬でまた茹で上がる。
 かがみはニヤリと意地悪く―傍目にはだらしなく―笑った。
「どうしたのぉ? こなたぁ?」
「ど、どうって、そんなの」
 必死で目を逸らそうとするこなただったが、逃がさない。
 肩に背中に手を回し、しなだれかかる。
「もしかして……イヤだった?」
「そ、そんなわけないけどっ」
「ほんとに?」
「あ、当たり前、じゃん」
「そう? ありがと。嬉しい」
 にっこりと笑顔を作る。
 いや、作るまでもなく、顔全体が勝手に緩んでいく。
 かがみにも恥ずかしい気持ちはもちろんある。顔のみならず全身が熱を持っている。
 湯のせいだけではない。
 しかし今は、それ以上に、
「大好きよ、こなた」
「~~っ!」
 こなたの反応が、楽しい。
「……ああ、かがみが、かがみが壊れてしまわれた。村はもうオシマイダアー」
「何よそれ」
「だって! そんなのズルいよ! いきなりデレデレになるなんて! ―はっ! さてはキサマ、
偽者だな! おのれっ、本物のかがみをどこへやった!?」
 ぐいぐいと抱擁を引き剥がしにかかりつつ、こなたが喚く。
「ふふふっ、駄目よ? そんなネタに走ろうったって逃がさないんだからね?」
「う、うぐ……」
「知らなかったわ。あんた、こういうストレートなのに弱かったのね」
「ううぅ、一生の不覚だよ……」
 とはいえ、それも今このときだけだろう。
 次に同じことをしてもきっと上手く行かない。よほどタイミングを読んで隙を突かなければ。
 それに、あとで冷静に戻ったら、逆にこのことをネタにからかわれてしまうに違いない。
 でも。
 ―だから、
「ねぇ、こなたも言って?」
「いっ―さ、さっき言ったじゃん」
「もっと言ってよ」
「うぅ~……」
「おねがい」
「……わかったよぉ。―その、かがみ」
「うん」
「す、好き……だよ」
「私も大好きっ」
「う、ううううぅ……ぅにゃあーっ! もおーっ!」
 今の内に、思いっきり甘えてやろうと、かがみは思うのだった。





                                                  了


415:23-49
08/12/01 19:33:10 sV0Cnohw
以上です
ありがとうございました

416:名無しさん@ピンキー
08/12/01 20:13:05 a/6bcRHn
なるほど、こういう「うにゃああああ」もあるのですね、わかります。
ものごっつい、ドストレート、正統派こなかがGJ!
題名から、別れモノかと思ったら、そういう意味の「最後」か。こういうのもミスリードと言うのかな?

417:名無しさん@ピンキー
08/12/01 20:16:56 9mDMAxiE
>>415

「最後の日」ってそういうことかーー!
心地よい敗北感に包まれつつ、ぐっじょぶっした。


ところで、「かぽーん」は風呂桶を落とした音だと思うわけです。
銭湯体制発令中に、たまに聞きます。

418:名無しさん@ピンキー
08/12/03 07:12:30 choe24ol
>>415
ほのぼのとラブラブとエッチがいい具合にブレンドされてGJでした。


419:名無しさん@ピンキー
08/12/03 07:41:27 Vvu2ysK3
銭湯は広くて桶も軽いからなー

420:名無しさん@ピンキー
08/12/03 12:41:32 797nqJGw
……でもさ、

ここからelopeに繋がったりしたら、

破壊力(ダメージ的な意味で)半端ないよねorz

421:名無しさん@ピンキー
08/12/03 17:42:02 saaolM1S
いや、ここは2人のイトナミをこっそり覗き見したゆたかが何かに目覚めてみなみにアーッ!な路線とかw

422:名無しさん@ピンキー
08/12/03 20:51:25 RT9HPnbt
>>415
すばらしいこなかがをありがとおおおおお!!
堪能いたしました、GJすぎです。

423:名無しさん@ピンキー
08/12/03 22:06:16 ANWWRb6H
>>415
心地よくタイトルにだまされ、ラストのこなデレで和みました。ぐっじょぶ!

424:名無しさん@ピンキー
08/12/04 16:14:58 5ib7I6rE
さっき「参考資料」の所を見てきたんだが、ゆきさんいったい何歳の時にゆい姉さん産んだんだよ!!

425:名無しさん@ピンキー
08/12/04 17:31:10 Jvah1ltt
>>415
GJ!スンドゥブ(クソ甘いドーナツのシロップ漬け)のよーな甘々SSでつね、そして貴殿の表現力に感嘆。

426:名無しさん@ピンキー
08/12/04 18:21:25 JnK6/dj8
>>424
諸説の一つにすぎない。
決まってないからこそ、2次でいろいろ出来るというもの。

427:名無しさん@ピンキー
08/12/05 00:02:51 lbj+Tq08
>>424
あえて強引な解釈を

ある小説家の証言
「俺はロリコンでもあるが、ゆきの旦那はロリコンだからな」
「お、お父ーさん、ゆい姉さんとゆーちゃんがどす黒いオーラを放ってこっちに来てるよ」

428:名無しさん@ピンキー
08/12/05 08:43:39 v0hridoR
>>415
感動した ! 久々の正統こなかがに感動した !

でも本当にこの二人は、じゃれあいからキスとかエッチに発展しそうw

429:戸別響
08/12/05 11:12:56 i7rNT4iO
こんにちは、戸別です。シリーズの続編が完成しましたので投下したいと思います。
スケッチスケッチ!  4筆目 ストレンジ・コミュニケーション
・みゆき&パティ みゆき視点
・非エロ
・5レス使用
今回はペア隠しはなしです。
3分後に投下をはじめます。では、どうぞ。


430:スケッチスケッチ!  4筆目 ストレンジ(略)(1)
08/12/05 11:17:03 i7rNT4iO


ガサ……ガサガサ……ガッ
「……きゃ!」
「ドウしましたカ?」
「い、いえ、ただ躓いただけです」
慣れない畦道、草に隠れて見えない足元。本当に、いつも以上に集中しなければ、すぐに
転んでしまいそうです。倒れなかっただけ、まだよしとしましょう。


スケッチスケッチ!  4筆目 ストレンジ・コミュニケーション


こんにちは、高良みゆきと申します。私、今日は泉さんの企画した、スケッチ大会に参加して
います。泉さんとは同じ学校のクラスメイトでして、この大会については、中間テストの
期間中に提案なされました。私自身、ここ最近テスト勉強や受験勉強で少し疲れが溜まって
いまして、少しでも気晴らしになれば、と思いまして、この大会に参加することにしました。
その日、向かいのみなみさんも誘ってみまして、あっさりと了承なさった事には驚きましたが、
積極的になったみなみさんを見て、少しうれしくも思いました。

そして当日、泉さんが連絡してくださった場所は、素晴らしい、としか言えない所でした。
綺麗な紅葉、のどかな風景。
勉強の疲れを取るには最高の場所ではないか、と駅を出た時は思いました。

そして泉さんが提案した組分けで、私はアメリカから来た留学生、パトリシア・マーティン
さんとペアを組むことになりました。パトリシアさんとはあまり話をしたことはないのですが、
泉さんのアルバイト先に行った時や、この前の学園祭でチアダンスをした時などで、とても
明るく、快活な人だという事を知りました。今日も、ペアに決まった時、すぐに私の所に
来てくださって、「Patricia=Martinデス。ヨロシクお願いシマス!」と、笑顔で挨拶して
くださいました。

大会がスタートした後は、しばらく泉さん・峰岸さんペアと同じ道を通るという事でしたので、
4人で分かれる所まで歩いていまして、そして今、私達は泉さん達と分かれて、目的地までの
細い道を通っているのですが……



431:スケッチスケッチ!  4筆目 ストレンジ(略)(2)
08/12/05 11:18:12 i7rNT4iO

「私が前に行きまショーカ?」
「いえ、大丈夫ですから」
パトリシアさんが少し心配した様子で話しかけてくださいましたが、足元は草や木の根で
荒れていまして、先程から私は何度も躓いたり、転びかけたりしていました。

スカートやソックスを見てみますと、ヌスビトハギやセンダングサなどがくっついています。
私はそれを見つける度に剥がしていくのですが、すぐにまたくっついてきます。

と、

ガッ!

「きゃあ!?」
くっついてくる草たちに気をとられて、足元への注意が薄らいでいた私は、大きく張り出して
いた木の根に足を引っ掛け、今度は抵抗の甲斐もなく、思いきり派手に転んでしまいました。

「いたたた……」
「大丈夫ですカ……Wow……!」
「………?」
転んだ私に、パトリシアさんはすぐに声をかけてくれましたが、その後すぐに、感嘆の声を
出していました。私は不思議に思って、鼻をさすりながらパトリシアさんの方を向いてみます
と、少し驚いたような顔で、前を向いているパトリシアさんがそこに立っていました。
気になって、私も立ち上がり前の方を向いてみますと、

「……わぁ……」
「すごいデス! It’s beautiful!」
この畦道の終わり、そして私とパトリシアさんの目的地。
そこには、都会では滅多にお目にかかれない、広大な花畑が広がっていました。



「……これは、コスモス……ですね」
「Yes, cosmos!」
私とパトリシアさんはその花畑に駆け寄って、私は花の種類を調べてみました。
広大なコスモス畑。私も、植物園やフラワーパークなどでしか、このような大きなものは
見た事がありません。なぜ外来種のコスモスがここに自生しているのかは謎ですが……


432:スケッチスケッチ!  4筆目 ストレンジ(略)(3)
08/12/05 11:20:01 i7rNT4iO

「……全てオオハルシャギクのようですね」
「オオハルシャギク? cosmosデハないのですカ?」
私が言った花の名に、パトリシアさんは不思議そうな顔をして私に尋ねました。
「コスモスですよ。ただ正式名称は、日本では『オオハルシャギク』と言うんです。英語でも、
『Mexican Aster』が正式名称だそうですよ」
「Oh, ソウなんですカ!」
パトリシアさんは目を丸くしてこちらを見ています。
「ちなみにオオハルシャギクはキク科コスモス属の一年草で、原産地は英語でもあるように、
メキシコです。18世紀末にスペインのマドリードの植物園に送られて、ヨーロッパに渡来
したそうです。日本には明治20年頃に渡来したといわれています。短日植物で、秋頃に花の
見ごろを迎えます。花言葉は『乙女の真心』『乙女の愛情』、色ごとでも分けられていまして、
このようなピンク色の花ですと『少女の純潔』、赤色ですと『調和』、白では『美麗』などが
あります。さらに言いますと、コスモスはつかささんやかがみさんが住んでいらっしゃる町の
シンボルフラワーにもなっています」
一息でそこまでを説明して、ふとパトリシアさんを見てみますと、目を丸くして、ポカンと
口を開けたまま固まっていました。……あっ!

「す、すいません! 差し出がましい事を……」
そうです、パトリシアさんはそこまで詳しい事を私に尋ねたわけではありません。聞いても
いない事を言われても、呆れるしかないですよね……私の悪い癖です。
しばらくして、パトリシアさんは俯いて、肩を震わせて、そして―


「―How wonderful!!」


「……えっ?」
思い切り上げられたパトリシアさんの顔はとても輝いていて、なんとも嬉しそうに見えました。

「あ、あの……」
「すごいデス! 何でソンナ事マデ知ってるんデスカ!? Amazing! Surprising! コナタの
言った通りネ! サスガみwi……じゃなくてミユキデース!」
「…………?」
……何か、悪口が聞こえたような気がしましたが……

と、今度は少し起こった様に、しかし勢いはそのままで、
「But, cosmosの発音は『コスモス』デハなく、『コーズモス』デス! わかりましたカ?」
「……あ、イ、イエス……」
その勢いに呑まれて、つい英語で返事をしてしまいました。



433:スケッチスケッチ!  4筆目 ストレンジ(略)(4)
08/12/05 11:21:41 i7rNT4iO

「ミユキー、質問がありマス」
「はい、何でしょうか? パトリシアさん」
「Non non, パティと呼んでくだサイ」
しばらくして、私とパト…パティさんは、お花畑の前でお昼ご飯を食べています。
私達はスケッチのモチーフにcosmos―コスモスを使用することになりまして、その直後に
12時を告げるチャイムが鳴ったため、スケッチを始める前に食べましょう、というパティ
さんの提案からです。
「cosmosについてなのですガ……Englishデハ『ウチュー』の事モcosmosと言いますよネ?
何か関係があるのでショーカ?」
……何故そのような事を私に尋ねるのでしょうか……

「ええっと……どうでしょうか。私も良くは知りませんが……しかし、『宇宙』の方のcosmos
には、コスモスの花言葉である『調和』の意味もありますから、少なからず関係はあると思い
ます」
私が答えますと、パティさんは「Oh, ソウなんですカ!」と驚きました。しかし……

「……えっと、パティさん? 英語の事なら、パティさんの方が詳しいのでは?」
母国語なのですから……と私が尋ねますと、パティさんは少し難しい顔になって、
「Hmm... 確かにソウなのですガ……Americaデハあまり使わない意味の方がたくさんある
ノデ、わからナイものモ多いのデス。……ミユキ、ソノ意味はdictionaryデ調べましたカ?」
「あ、え、ええ……昔、英和辞典を見ていたら、偶然見つけたのですが……」
「ソウいうもので、ある言葉の最後の方に書かれているものハ、Americaデモあまり使われない
ものが多いのデス。日本語デモ、外国人ガdictionaryナドを見て、日本でもあまり知られて
いない事に詳しかったという事があるでショウ。ソレと同じデス」
……納得のような、納得ではないような……

「デスから、私にもナゼこの萌え文化を日本人が知らないのですカ!? と日本に来て思う事ガ
ありマス! 特にアニメでは今クールだけでもCLANNAD、ミナミケ、バンブレと、こんなニ
スバらしい萌えるアニメがあるというノニ! ナゼですカ! 理解できまセン!」
ええっと……わ、私にそのようなすごい剣幕で言われましても……

驚きつつも、私はパティさんの様子を見て、何と言いますか……まるで泉さんの様な人です、
とふと思ってしまいました。その、「萌え」とか、普通の話題からそのような話に持っていく
ところなどは、泉さんによく似ています。ただ、学園祭の時などでもそうでしたが、泉さん
よりも……その、何と言いますか……そう、少しテンションが高いような気がします。
……でも私は、パティさんの様な人、嫌いではないですね。



434:スケッチスケッチ!  4筆目 ストレンジ(略)(5)
08/12/05 11:23:40 i7rNT4iO

「……ふふっ」
何故だかわかりませんが、そこまで考えると、私は自然と笑みを浮かべていました。
「ミユキ? ドウしたのですカ」
「いえ、何でもありません。……パティさん、早くご飯を食べ終わりましょう。絵を描く
時間がなくなってしまいます」
「Oh, ソウでした!」
私が話をすりかえますと、パティさんは急いで残ったコンビニ弁当を食べ始めました。


私達はその後、それぞれモチーフにしたコスモスの前に行き、分かれてスケッチを始めました。
時々、お互いの進み具合の確認のために見せ合いをしたり、お互いがアドバイスをしたり
しましたが、やはりといいますか、パティさんの絵は、どこか漫画チックでしたが、とても
上手に描かれていまして、私があまり口を出すことを躊躇うほどでした。私の絵は、パティ
さんの絵と見比べますと、あまり上手とは言えないものでしたが、それでもパティさんは、
私の絵を見て「スバらしいデス!」と何度も褒めてくださって、アドバイスも的確になさって
いました。

残り時間が迫ってきまして、私はこのパティさんとの時間を思い出し、そして当初の目的に
ついて考えてみました。

私は束の間の休日を、有意義に過ごせたのでしょうか。

パティさんとの時間は、少し奇妙なやり取りもありましたが、とても楽しいものでした。
ならば、私は目的を果たすことができたのでしょう。

「ミユキー、絵は完成しましたカ?」
「あ、はい、おかげさまで」
「どれどれ……Wow! Great! スバらしいデス!」
「ありがとうございます。パティさんも、上手ですね」
少し傾いてきた太陽の下、私は今日という日の素晴らしさを噛みしめながら、パティさんと
一緒にコスモス畑から離れ、皆の待つ駅までの道を歩き始めました。








435:戸別響
08/12/05 11:39:32 i7rNT4iO
以上です。
名前が長すぎて投下できなかったので、(略)にさせていただきました。前書きにも書きましたが、タイトルは
「スケッチスケッチ!  4筆目 ストレンジ・コミュニケーション」
です。ご迷惑をおかけしました。
みゆきさんとパティ、特にパティは初めて書くので口調や性格があっているか不安です。というか、パティって
こんなに親切だっけ……
みゆきさんのコスモス語りと英語については、
辞書とネットとwikipedia
を利用しました。書いてて楽しかったです。
感想、批評、ありがとうございます。この作品でも、どうぞよろしくお願いします。

この前お話した再投下の件ですが、ご意見をいただき、ありがとうございます。それらを見まして、その作品について、
再投下はせず、修正、編集をしましたら、そのときスレに投下した作品のあとがきにて報告をしようと思います。
もちろんwikiへの更新報告はします。いいでしょうか?

436:名無しさん@ピンキー
08/12/05 21:44:39 Hevas+DQ
何気に続きが気になってたシリーズがあがってる!GJ!
パティのアッパーテンションとみゆきの包容力&wikiを
見事融合させた一話。堪能しますた。

そうか、「みwiki」を悪口と認識していたのねみゆきさん・・・orz

それはそうと







某無乳緑「この組み合わせ・・・私に対する・・・あてつけ・・・?」

437:名無しさん@ピンキー
08/12/05 23:56:59 ZHWxthwV
久々にみwiki節聞いた! GJ!

438:名無しさん@ピンキー
08/12/06 00:21:38 PcwAfCgi
0:25くらいに投下したく。

439:42-115
08/12/06 00:27:48 PcwAfCgi
 ではいきます。

 「玄関で寝ちゃった2 親子どんぶり 姉妹どんぶり」


 ・9レス
 ・エロなし
 ・ゆたかvsゆい


440:玄関で寝ちゃった2 1/9
08/12/06 00:29:58 PcwAfCgi
 「ギネス」と聞いてアイルランドの黒ビールを思い浮かべる人は、おそらくひねくれ者だろう。ひねく
れ者検定の準3級くらいを自分で認定するといい。ひねくれ者でなければ、世界記録的な本を連想するは
ずなのだから。……もっとも、その本を出しているのはビールの関連会社なのだからいいではないか、と
抗弁すればおめでとう。晴れて3級合格である。
 さて、では、その世界記録的な本にも載っているであろう「1088人」。
 これが何の人数かというと、一機の航空機に搭乗した人間の最多記録である。紛争地からの脱出機だっ
たため、定員やら何やらを色々無視し、1086人を無理矢理詰め込んで離陸。それだけでもたいしたものな
のだが、乗り合わせた妊婦が飛行中に双子を出産したため、着陸時には1088人になっていたのだという。
 さて、では、「4人」。
 世界記録的な本には載っていないこれが何の数字かというと、泉家の玄関で寝てしまった人の数である。
 そうじろう、こなた、ゆたか、そしてゆいは、玄関で寝ちゃったのである。




 えーと……。
 玄関に敷かれた布団を見下ろしつつ、ゆたかは思案に暮れ、途方にも暮れる。
 そこでは向かって左からそうじろう、こなた、ゆいの三人が寝ていた。こなたとゆいの間が若干大きめ
に空いているのは、つい先ほどまでそこにゆたかがいたためである。親子と姉妹で横並び。四連装の魚雷
発射管のようになって寝ていたのだ。
 それにしてもおかしい。
 玄関で朝を迎えている時点でだいぶ日常から逸脱しているはずだが、今日に関してはいつもにも増して
違和感がある。
 ゆたかは眠くてフラフラする頭を、翻訳機の調子が悪いかのようにコツコツと叩き、昨晩の出来事を思
い出してみることにした。




 昨晩、そうじろうは泉家に不在だった。
 とある文学賞の選考委員になったとかで、その授賞式に出席するためである。
 「俺も選ぶ側に回っちゃったよ」
 なんて照れ笑いをしながら出かけていった。
 9時ごろになってそうじろうから電話が入った。曰く、久しぶりに会った作家や編集者と飲んで帰るか
ら、先に寝てていいとのこと。
 電話を終えたこなたは、笑いながら言ったものである。
 「ゆーちゃんは先に寝てていいってさ。実の娘には一言もないなんて、冷たい父親だよ」
 「お姉ちゃんは? ……あ、そっか」
 こなたは受験生であるという事実が、ゆたかをして全てを納得させた。
 「私のもう一つに一日は、深夜から始まるのだよ」
 と言って、ことさらニヨニヨするこなた。……ひょっとすると、ゆたかは何か勘違いしているかもしれ
ない。

441:玄関で寝ちゃった2 2/9
08/12/06 00:30:51 PcwAfCgi
 先に入浴し、そのまま床に就いたゆたかが目を覚ましたのは、こなたの「もう一つの一日」の最中だっ
た。玄関の方がなにやら騒がしい……。
 「お姉ちゃん……?」
 目を擦りながら玄関まで行くと、そこでは、ドジな考古学者かビッ●バイパーが、うっかりモアイ像に
潰されたらおよそこんな感じだろうという状態で、こなたがそうじろうの下敷きになっていた。
 「おぉ、ゆーちゃん……」
 こなたが助けを求めて手を伸ばす。
 「大変……。今助けるから」
 ゆたかはこなたの手を掴み、地引網の要領でこなたを引っ張り出した。内陸の埼玉ではめったに見られ
ない光景である。
 「ふう……。ありがと、ゆーちゃん」
 こなたは壁に背をついて一息つく。
 「伯父さん、酔っ払っちゃったの?」
 「うん……。この具合だと朝まで目を覚まさないね」
 それに答えるかのように、そうじろうは「んごー」という鼾を吐いた。鼾ではなくイオンリングだった
ら、外に放り出したところである。
 「あー、ゆーちゃん。手伝ってもらえる? 起こしちゃった上悪いけど」
 「いいよ」
 二人がかりなら何とかなるかもしれない。
 「じゃあ脚の方を持って……せーの」
 二人はそうじろうの体を持ち上げたが、いくらも行かないうちに力尽きた。181cmのヨッパライは、二
人には文字通り荷が重すぎた。
 「やっぱダメか」
 再び床にそうじろうを安置(!?)し、今度は二人で息をつく。
 「投げ飛ばすなら出来るけど、運ぶのがこんなに大変とはねー」
 そうぼやくのは格闘経験者のこなたである。
 「そうだ! 投げ飛ばすのを繰り返して運ぼう」
 「ええっ。二階まで運べる?」
 こなたとゆたかは一階に自室があるが、そうじろうのは二階である。
 「この際、生死は問わない」
 「と、問おうよ!」
 「ゆーちゃんがそこまで言うなら仕方ないなあ……」
 ゆたかがそこまで言わなかったら、本気で実行するつもりだったようである。
 「じゃあしょうがない。おとーさんにはここで寝てもらう」
 「うん……」
 ゆたかは肩を落とす。彼女にとって、この敗北感はまだ記憶に新しい。肩と一緒に、瞼も落ちそうにな
る。この睡魔と脱力感も、また新しく手強い。

442:玄関で寝ちゃった2 3/9
08/12/06 00:32:17 PcwAfCgi
 「ならゆーちゃん、布団を持ってきてくれるかな。私はその間に、ポケットの中身とか抜いとくから」
 「うん……」
 ここでゆたかはミスを犯した。思考の停止しかけた眠い頭である種の条件反射に従い、自分のベッドか
ら布団を持ってきてしまったのである。
 「ゆーちゃん……」
 ボールペンやら櫛やら、寝ているうちに刺さったら困るものを抜き取っていたこなたが、やけに愉快そ
うな顔でゆたかを見る。
 「それを持ってきちゃったら、ゆーちゃんはどこで寝るの?」
 「はう……」
 ゆたかは自分のベッドの布団をその場に置き、二階にそうじろうのお布団を取りに行く。みゆきさんと
組んだらすごいことにって思ったけど、ドジッ子属性が具わってきたかあ……なんて言葉が追い討ちをか
けて、はずかしいったら仕方ない。うぅ、そんなんじゃないもん。
 そうじろうの布団を持ってくると、ゆたかはそれを投げ出すように広げてそうじろうの上にかけた。そ
して、自分の体もその上に投げ出す。
 「え?」
 「ごめんね、お姉ちゃん。私……もう……ダメみたい」
 びっくりするこなたの目の前でゆたかはイモムシのように体を蠢かせ、布団の中にもぐりこんだ。もは
や自分の布団と一緒に自室に戻る気力は、残っていなかったのである。
 「ちょ、ゆーちゃん!?」
 うろたえる様なこなたの声を最後に、ゆたかの記憶はここで途絶えていた。
 ゆたかも、玄関で寝ちゃったのである。




 状況からして、こなたも玄関で一緒に寝てくれたようだ。持つべきものは、玄関で寝る従姉である。…
…こなたはそう思ってないかもしれないが。
 「……!」
 そこでゆたかはある決定的な異変に気付いた。
 「お姉ちゃん、どうしているの……?」
 ゆたかがお姉ちゃんと呼ぶ人物は二人で、その二人とも目の前にいたのだが、ゆたかの視線は血の繋が
った姉に向けられていた。
 ゆいは何故玄関で寝ているのか?

443:玄関で寝ちゃった2 4/9
08/12/06 00:33:10 PcwAfCgi
 玄関に四連装寝床。その内一人は部外者とは言い切れないが、その家には暮らしていない上、いつやっ
てきたか分からない。この非常識を「常識的に」解釈すれば、ゆたかが眠りに落ちた後にやって来たゆい
をこなたが招き入れて、面白がって二人とも玄関で寝ちゃったということにでもなるはずである。……常
識的なら。
 しかしこの世に生を享けてもうすぐ16年。ゆいの傍若無人さを身を以って知っているゆたかは、別の可
能性も考慮した。お姉ちゃんは勝手に入り込んだのかも知れない。
 そこでゆたかは、一番手近な出入り口……玄関を調べた。サンダルをつっかけ、ドアノブをそのまま回
してみる。
 「やっぱり……」
 玄関ドアは、解錠せずとも開いてしまった。寝ぼけ眼にはまぶしすぎる光が網膜に突き刺さり、光学的
な目薬となって目に染みる。つまり、施錠自体されてなかったということである。酔って帰ったそうじろ
うに気を取られて、こなたが鍵をかけ忘れたようだ。招き入れたのであれば、こなたかゆいのどちらかが
閉めるだろう。こなたは玄関の鍵を閉めることなく、ゆたかと同様すぐに玄関で寝てしまったようだ。そ
こへ「酔った」ゆいがやって来て、一緒に玄関で寝てしまったのであろう。鍵を閉めなかったのも、玄関
で妹と従妹と伯父と一緒に寝てしまうという奇行もそれで説明がつく。いや、それでなければ説明がつか
ない。そして酔った事それ自体と、泉家へやって来た理由はきよたかが単身赴任で不在で寂しかったから
ということで説明がつく。
 でも……。
 と、ゆたかは思う。だからといって、何もゆいは玄関から入ったとは限らないではないか。指紋を採取
できるとかならともかく、今は確かめようはない。
 「確かめなきゃ……」
 一階の、事によると二階かもしれない。さすがに壁に穴を開けるということはないだろうが、窓ガラス
が割られていたりしたらみんなが起きる前に破片を片付け、一緒に謝ろう。
 とりあえず一階からだ。ゆたかはまず自室を調べる事にした。
 ドアを開けて中を見る。窓に異常はないようだった。施錠されたまま閉まっている。しかし、部屋の真
ん中には見覚えのない紐が天井から垂れていた。
 ……なんだろう?
 天井を見上げながら中に入って行く。
 ―と、その時。
 歴史は動かなかったが、ゆたかの脚が何かに囚われた。
 「きゃあ!」
 前のめりに転倒しそうになり、その手は反射的に謎の紐を掴んでしまった。
 何か微妙に重量がある物を引っ張る感覚。
 何か落ちてくる!
 やはり反射的に上を見たゆたかの目に飛び込んできたのは、銅製のたらいの底だった……。

 ガン

 小気味の良い音と共にゆたかの視界が暗転し、瞼の中で星が舞った。

444:玄関で寝ちゃった2 5/9
08/12/06 00:33:57 PcwAfCgi
 「うぅ……」
 呻きながら半身を起こす。布団の様に体の上に乗ったいたのは、しかしやっぱり銅製のたらいだった。
ドアのすぐ近くの足元には、天井から垂れていたのと同じ紐が張られていた。これに脚をとられたようで
ある。たらいの方は、照明をぶら下げるフックを利用して仕掛けられていたようだ。
 「お姉ちゃん……なんでこんな事を?」
 酔っ払うという行為にもはや神秘性さえ覚えながら、ゆたかは当初の目的である自室の窓が侵入路に使
われてないかを確かめた。
 窓には異常はなかった。
 泉家の庭が異常だった。
 「!?」
 そこにはあちこちに、小枝が散乱していた。まるで嵐の後である。目が覚めたら嵐のような姉と同床で
はあったが、さすがに暴風を巻き起こすような人ではない。庭木を見上げると、冬枯れでは片付けられな
いほど寂しい枝付きになっていた。つまり、小枝の出所は庭木である。のこぎりか高枝切りバサミで切っ
たのだろう。でも、なぜ?
 ベッドにぺたんと座り込み、ゆたかはこれまでに分かった事を整理する。
 まず昨晩の深夜、ゆたかもこなたも寝静まった後、酔っ払ったゆいがやってきた。そして家に色々な仕
掛けを施した。おそらく最初に庭の枝を切ったのだろう。のこぎりか高枝切りバサミを物置で見つけ、使
った。そして底でたらいや紐なども見つけ、ゆたかの部屋の仕掛けに使ったのである。動機は不明。
 でも……。
 と、ゆたかは思う。
 現時点で調べたのは自室だけであり、従って仕掛けが他の部屋にもないとは限らない。侵入路に使われ
た可能性だってまだある。
 「確かめないと……」
 ゆたかはまだフラフラする頭で、隣のこなたの部屋へ赴くことにした。
 「お姉ちゃん、入るよ」
 まだ玄関で寝ている従姉に一応断ってからドアを開ける。
 そこにもやはり天井から紐が垂れていた。でもそれ以上に、目を引くものがあった。
 「お姉ちゃんのお人形が……」
 こなたのコレクションのフィギュアが、紐によってカーテンレールから窓辺にぶら下がっていたのであ
る。さながら干し柿か、吸血鬼避けのにんにくのように。
 壊さないようにして外さなきゃ。でも、勝手に触る方が嫌がるかな……。
 そんなことを考えながら窓に近付こうとしたゆたかは、明らかに油断していた。窓辺の紐と、天井の紐。
これらに気を取られ、自室にもあった足元の紐まで頭が回らなかったのである。

445:玄関で寝ちゃった2 6/9
08/12/06 00:35:19 PcwAfCgi
 「きゃあ」
 例によって足をとられ、例によって前のめりに転倒しそうになり、例によって天井の紐を掴んでしまう。
例によらなかったのはゆたかが防御姿勢をとり、顔をガードした事である。そのせいで、ゆたかは見事に
罠にかかってしまった。

 ガシャン

 金属的な音が、床に倒れたゆたかの全周で鳴った。顔を庇った手には、何やらざらざらしたものの感触
がある。恐る恐る目を開けると、自分が囚われの身になっているのを発見した。
 「網??」
 詮索は後回しにして、障害物競走の走者のように床を這い、金属的な音の正体となった重しを上げて網
から抜け出す。体の凹凸がほとんどないため、難なく抜け出せた。
 「網……」
 何度見ても、それはナイロン製の糸で編まれた漁獲器具であるところの網に相違なかった。紐を引くと
広がった状態の網が天井から落ちて来る仕掛けだったようだ。のこぎりか高枝切りバサミと一緒に、物置
で見つけたといったところだろうか。
 「……」
 こなたのフィギュアをカーテンレール吊りの刑から解放しながら、ゆたかは考える。ゆいがこのような
ことをした動機が、おぼろげながら見えてきたのだ。
 「!」
 そこでゆたかは、大変な事に気付いた。ゆたかの部屋、こなたの部屋と罠が仕掛けられたのなら、泉家
のもう一人の構成員にして当主であるそうじろうの部屋にも何か仕掛けられたと考える方が自然である。
もしそうじろうの逆鱗に触れるような事があれば、下宿先としての泉家を追い出されてしまうかもしれな
い。
 「確かめなきゃ……」
 ゆたかは震える足で階段を上り、そうじろうの部屋の前まで来た。鬼が出るか蛇が出るか。金だらい、
投網ときて、次に待ち受けるは……。
 「伯父さん、入りますよ……」
 玄関で寝ているそうじろうに一応断ってから、ドアを開ける。
 ゆたかは闇に迎えられた。カーテンは元より、雨戸まで締め切っていて真っ暗である。原稿に集中する
際、雑音をシャットアウトする為の措置である。
 「灯り……」
 呟きながら壁際のスイッチを押してみる。が、点灯しない。そして罠も発動しない。この部屋に何か仕
掛けがあるとして、それはスイッチに連動したものではなかったようだ。まだ闇に慣れぬ目で辺りを探り、
やがて一本の紐を見つけた。これを引けば電気がつくはずである。そこでゆたかは、その紐を引っ張った。
 「きゃあああああああああああ」
 ゆたかの体が足を上にして浮き上がる。


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