☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第88話☆at EROPARO
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第88話☆ - 暇つぶし2ch350:名無しさん@ピンキー
08/11/13 21:47:27 M8SKn92z
たった一つの命を捨てて 生まれ変わった不死身の身体
戦闘機人を叩いて砕け カルタスがやらねば誰がやる


>>350
おっさん乙

351:名無しさん@ピンキー
08/11/13 21:55:10 1fP3BLHb
自虐するんなって…

>>349
俺もだw

352:ザ・シガー
08/11/13 22:21:40 /dZvzq5Q
うし、25分までチェックしたらちょっくら投下すっぜ。
ゼスト×アギトのエロだす。

353:烈火の剣精と槍騎士
08/11/13 22:26:51 /dZvzq5Q
烈火の剣精と槍騎士


 どこまでも広がる真っ暗な空間、視覚も聴覚も効かない感覚。
 不思議と、今自分が眠りに付いているという自覚だけはある。
 こういう事はたまにある、眠りと覚醒の間隔が曖昧で思考は過去の記憶に飛んでいく。
 これは人にもある事なのか、それともあたしが大昔に作られた融合機だからなのかは分からない。
 そして徐々に視覚は光を、聴覚は音を取り戻していく。
 月と星の光が彩る夜の空、虫の鳴く自然の音色、いつしか嗅覚は土と草の香りも認識し始めた。
 懐かしいなぁ……あたしとルールーとあの人と、三人で色んな世界をたくさん回って旅したあの時の思い出だ。
 おぼろげな過去の記憶、最悪だった研究所での記憶、そのどれもを上回る一番幸せだった時の記憶。
 思えば、この時があたしの生の全てだったと思う。
 愛しかったあの人、この世で一番大好きなあの人と一緒に過ごせた時間だから……

 蘇る記憶の中、あたしが視線を上に向けるとそこにはあの人の……ゼスト・グランガイツの顔があった。
 そうか、今のあたしは“夜の奉仕”をしてる時間だったんだ。
 口の中になんとも言えない青臭い臭いと妙な味が広がっている、過去のあたし口淫の真っ最中だった。
 視線を下に戻すと、そこには硬く大きくなった旦那の陰茎がある。
 普段は人間よりもかなり小さい身体のあたしだけど、今は奉仕の為に普通の人間の子供くらいの大きさになっていた。
 そして、夢の中のあたしは過去の記憶通りに目の前の大きな肉の塊に舌を這わせる。
 ペロリと舐め上げれば、懐かしい青臭さが口の中に満ち溢れた。


「くっ! ぅああ……」


 あたしが舌を動かすたびにゼストの旦那は苦悶に似た表情をして声を漏らした。
 でもソレは決して嫌だからじゃなくて、快楽に耐えてる声だってすぐに分かる。
 あたしは手で扱いて刺激を続けながら口を離すと、顔を上げて旦那に視線を移した。


「旦那、我慢しなくても良いよ? 好きな時に出して」


 あたしはしっかりと覚えこんだ絶妙な力加減で旦那のモノを扱きながらそう促した。
 旦那はいつもそうだった、少し離れたところで寝ているルールーを気にして快楽に深くのめり込まない。
 あたしがどんなに頑張ってもそうだった。
 そりゃあ、旦那の性欲処理を買って出たのはあたしの方だけど、もう少し気持ち良さに身を任せて欲しいと思う。
 最初は偶然旦那の自慰に遭遇した時だった、旦那が色々と男の欲求を持て余しているのを知ったあたしは自分から進んで旦那の性欲処理を引き受けたんだ。
 おぼろげな霞の向こうにある大昔の記憶、そして研究所の科学者共が戯れに強制した行為であたしはそれなりに性技に精通してた。
 熟練の技で攻め立てれば、旦那のペニスの先端からはまるで射精したかのようにカウパーがあふれ出す。
 あたしはそれを、まるで最高のご馳走にでもするかのように舐め上げる。
 とても美味しいなんて言える味じゃないが、旦那の身体から出た快楽の証を零すのがもったいなく感じて舌で掬った。
 青臭くて苦くて、舌の上に旦那の味が溶けるたびにあたしも身体が疼いていく。
 下腹部の子宮が熱を持って暴れだす、あたしの身体が快楽を欲している証拠だ。

 人間を模して作られた融合機は、モノにもよるけど人と同じ欲求を持つ事が多い。
 食欲・睡眠欲、そして性欲、形は子供でもあたしもれっきとした女だって事だ。
 旦那のモノを口にすればそれだけで欲情してしまう。
 でもあまり自分から執拗にねだる事はしなかった、そうした時に旦那に軽蔑されるのが恐かったからだ……
 あたしは自分が最低の融合機だと思う。
 旦那の為と言って、結局は自分自身の火照りを慰めているのかもしれない。
 なんて浅ましいガラクタなんだろう……きっと、こんな事を知ったら旦那はあたしを捨ててしまう。

354:烈火の剣精と槍騎士
08/11/13 22:28:42 /dZvzq5Q
 だからあたしは必死にいやらしい部分に蓋をして隠して、ただ旦那が気持ち良くなる事だけ考えて奉仕した。

 あたしが舌を這わせる度に、旦那のモノから溢れ出す先走りの汁がどんどん濃くなっていく。
 それこそ射精した時にでる精液のような粘性と味になったそれを、あたしは一心不乱に全て飲み干した。
 もうすぐだ、もうすぐ旦那が我慢の限界を迎えて欲望の白濁を吐き出すって事が分かる。
 何度も身体を重ねる内に完全に把握した射精のタイミングに合わせて、あたしはさらに舌先に力を込めてしゃぶった。
 尿道をほじくり返すように舌先で抉り、エラの張ったカリを執拗に唇で引っ掛け、頬をすぼめてペニス全体を吸い上げる。
 その技巧を続けて丹念に刺激を与えながら、何度も何度も頭を上下に動かしていく。
 そうして何度目かの律動が行われた時、あたしの身体が覚えた間隔とキッチリ同じ周期で咥えた男根は精を爆発させた。


「んぶっ! ふぐぅぅ!」


 凄まじい勢いで吐き出されたあまりに大量の精液に、あたしは一瞬驚いてむせ返る。
 でも吐き出すなんて絶対にできない、口の中に溢れかえる青臭い精をあたしはできるだけ零すまいと必死に飲み込んだ。
 ゴクゴクと喉を鳴らして青臭い液体を飲む込む、ドロドロした凄い粘性が喉に引っかかり少し苦しかった。
 でもこれが旦那の気持ち良かった証だと思えば全然嫌じゃなかった、むしろもっと飲みたいとさえ思う。
 そうしてしばらく喉を鳴らしていたけど、いつしか射精は終わりを告げて溢れる精も底をついた。
 あたしがそっと口を離せば、唾液と精液の混ざった液体が唇と陰茎との間に糸を引く。
 少しだけお口の奉仕が終わったのが名残惜しいけど、いつまでも口だけじゃ旦那が満足できない。
 あたしはその場で横になると纏っていた下の服、股を覆う部分をずらして自分の膣口を曝け出した。
 既に愛液でビショビショになるまで濡れてたのが恥ずかしい、顔が真っ赤になってるのが自分でも分かるくらい頬が熱くなってた。
 でも恥ずかしがってるだけじゃ旦那に満足して楽しんでもらえないから、あたしは自分で入り口に指をかけると左右に軽く広げた。


「旦那……まだ満足してないよね? 今度はこっち使って良いからさ……」


 その時のあたしは一体どんな表情をしてたんだろう? きっと凄くだらしなくていやらしい顔だったんだと思う。
 後から後から溢れ出す愛液で地面には小さな水溜りができているくらいにあたしの身体は甘く疼いてた。
 本当に恥ずかしい……旦那の為にしてる事なのに、あたしの身体は自分自身も快楽を楽しもうと期待に燃えている。
 あたしは浅ましい自分の身体を呪いながら旦那を促す、旦那は少しだけ悲しそうな表情を見せるとまだ硬さを失っていない自分の陰茎をあたしの入り口に押し当てた。
 溢れ出た愛液を少し馴染ませると、旦那は腰を少しずつ沈めて行く。
 いくら人間大になっても容姿は子供、大人のそれも大男の旦那のモノはキツくてちょっと苦しい。
 でもそれは最初だけ、すぐに圧迫感と苦しさは快感で塗り潰されていった。


「んぅ……ふぅああぁぁ……」


 あたしの口からは思わず恥ずかしい甘えた声が漏れる。
 少し離れたところで寝ていたルールーを起こしちゃったら大変だから、あたしはすぐに自分の口を手でふさいで声を我慢した。
 旦那もそれを察したのか、挿入しても動かずあたしの準備が整うのを待っててくれた。
 あたしは口を押さえたまま頷いて旦那に動いて良いって旨を伝える。
 旦那は一度頷くと、そのままゆっくり腰を前後させだした。
 あたしの濡れた入り口を旦那の鉄みたいに硬いモノが動いて抉る度に凄くいやらしい音が出て耳を犯す。

355:烈火の剣精と槍騎士
08/11/13 22:30:03 /dZvzq5Q
 これが全部あたしの出した愛液の音で、旦那にも聞かれてると思うと恥ずかしくて死んじゃいそうだった。
 でもそんな事を気にする余裕はなかった、旦那との交合の快感で漏れる嬌声を我慢するだけであたしは気が狂いそうになる。


「んぅぅううっ! ……んぅっ!!」


 口元をいくら手で押さえつけても、溢れ出る声は全ては消えてくれない。
 くぐもったいやらしい声が零れて、とてもあたしの出した声とは思えなかった。
 お腹の中を旦那のモノが凄い抉る勢いはドンドン強く早くなっていって、内臓まで貫通されそうな錯覚すら覚えた。
 膣の中を削り取られそうな快感の衝撃に頭の中が真っ白に染まっていく。


「んっ! んぅっ!!……ふんぅぅううっ!!」


 切なくて甘くて、おかしくなりそうなくらい気持ち良い電気が頭の中でたくさん弾ける。
 あたしの中のまともな意識と思考がピンク色の靄の中に確かに溶けてくのを感じた。
 膣を抉りこむ旦那のモノから背筋を快感の炎が駆け上って、あたしはまるで奈落の底に堕ちるような錯覚を感じる。
 その瞬間、あたしは全身をしならせて盛大に絶頂した。


「ふぅんぅぅっ!! ふぅはぁぁあっ!!」


 頭の中身が全部蕩けるような快楽、あたしは我慢しきれずに声を漏らしてしまう。
 でもそんな事を気にする余裕なんてあたしにも旦那にもなかった。
 あたしはイった反動で全身をしならせて震えて、旦那も我慢の限界を超えて二度目の射精を迎える。


「くぅっ! アギト……出すぞっ!」


 言葉と共に、あたしはお腹の中で何かが爆発するような感覚を感じた。
 ねばねばしてて火傷しそうなくらい熱い精液が身体の中で弾ける。
 気持ち良過ぎて本当に自分が壊れてしまったかと思った、涙が溢れて視界が霞む、身体はフワフワとした浮遊感すら覚えた。
 痙攣させながら全ての精液を吐き出すと、旦那はあたしの身体からペニスを抜き出す。
 旦那のモノはまだ少し硬さを残していたけど、これ以上する気がないのか旦那は早々にあたしの身体を手元のタオルで拭き始めた。


「すまんなアギト……俺の勝手でこんな事に付き合わせてしまって……本当にすまん」


 ゼストの旦那は心底すまなそうにそう言ってあたしの身体を丁寧に拭いてくれた。
 謝る事なんてないのに……あたしも旦那の事を求めてて、旦那とこうして身体を重ねることが嬉しいのに、愛してるのに。
 でもそんな事言えなかった、あたしの気持ちを伝えたって旦那には迷惑だから。


「気にしなくて良いよ旦那、こんな事で良かったらいつでも手伝うからさ」


 あたしは精一杯笑ってそう言った。
 本当は自分の気持ちが伝えられなくて泣き出しそうだったけど、旦那の重荷になんてなりたくないから。
 だからあたしは、自分の心を押し殺して自分の顔に乾いた笑顔を張り付けた……

 そこであたしの意識はまた闇の中に飲まれ始める。


 闇と無音が世界を侵食していく。
 懐かしくて切なくて大好きな夢が終わりを告げる、あたしの心は果てのない黒と同化していった。

356:烈火の剣精と槍騎士
08/11/13 22:30:57 /dZvzq5Q
 夢が終わり、今度こそ本当に光が目に映る、耳は現実世界の確かな音を捉え始めた。


『ギト……起きろ……アギト』


 ああ、これは今のロード(主)の声。そうだ起きないと、もう仕事の時間だ。
 あたしは目を開いて意識を現実世界に覚醒させた。
 目の前の明るさに眩暈を覚えそうだ、でもそれは一瞬、すぐに身体も頭も正常な状態に稼動する。
 眼を覚ましたあたしの顔を、今のロード、烈火の将シグナムが不思議そうな顔で覗き込んでいた。


「起きたか」
「ああ、おはようシグナム」


 あたしはそう返事を返すとゆっくりと身体を起こす。
 今あたしとシグナムは勤務中の休み時間の最中だった、僅かに記憶の糸を手繰れば自分が仮眠を取った事にすぐ気付いた。
 時計を見ると、そろそろ休憩も終わる頃合だ。
 うん、と小さく伸びをすると軽く羽根とシッポを振って身体をほぐす。
 懐かしい夢を見たお陰か、心も身体も随分と気持ちの良さを感じている。
 そんなあたしに、シグナムが一つ質問を投げかけた。


「随分と嬉しそうな寝顔だったが、何か良い夢でも見たのか?」


 夢の内容を聞かれて、さっきまで見ていた過去の思い出が一瞬で脳裏を駆け巡った。
 旦那のとの思い出に胸が甘くて切ないモノで満ちる。
 少しの間、それこそ一度呼吸する間だけ夢と過去のまどろみに酔うと、あたしはシグナムの顔を見上げて返事を返した。


「……うん、まあな」


 あたしはちょっとだけ悲しいのを我慢して、今度は本物の笑顔を見せた。
 哀しいことも辛いことも含めて、ゼストの旦那との思い出は全部宝物だったから。


「大好きな人との夢……見てたからさ」


 終幕。


357:ザ・シガー
08/11/13 22:37:26 /dZvzq5Q
最近アギトのエロSSが立て続けに投下された。
実に良い3Pモノだった。 だが……

その流れに反逆する!!  全力で反逆するううぅぅ!!!


アギトのエロ少ない上に、ゼストの相手と言えばメガーヌ母さんやらチンク姉ばかりじゃないっすか?
悪くないよ? 全然悪くないよ? むしろ大好きだよ?

でもさ……STS本編であんだけ「旦那旦那」言って甲斐甲斐しく尽くしてたアギトが報われないってのは耐えられないのよ。
需要のあるなしに関係なく、ただ純粋にアギトを可愛く書きたかった、ただそれだけ。
後悔はない。

ただ全部アギトの一人称だったのは冒険すぐる。

358:名無しさん@ピンキー
08/11/13 22:59:51 QjZTCFmV
GJでしたー。切ない、これは切ないッッ!!

というかゼストはいっそ種族の差を超えて孕ませるべきだったと(ry
くそう、生き急いだゼストがこれほど憎たらしいとは・・・
・・・責任取って、最期まで生きていてやれよ・・・などと思うのでした。

359:名無しさん@ピンキー
08/11/13 23:19:00 1fP3BLHb
>>357
GJです!

>>345
そういえば、人間がサイバーグ化するのってARMSであったな。
あれって、意識とかどうしてたんだろか?

360:名無しさん@ピンキー
08/11/13 23:21:48 6iKz3Ma2
>>357
アギトが可愛ええ……

>>358
あの最後もあれはあれで。

361:名無しさん@ピンキー
08/11/13 23:22:35 M8SKn92z
>>359
よくわからんが、人間の身体を機械で代用するのが「サイボーグ化」なので、意識は関係ないぞ。
(幻肢痛とかの話題かな?)

362:名無しさん@ピンキー
08/11/13 23:40:00 4FZuANVY
>>345GJ!!
結局イクスもスバルの元を離れてしまうのか
一人になったらもうスバルはダメかと思っていたが、カルタスの言葉でわずかでも六課で過ごした幸せな時の気持ちを思い出せたらと思う
次回はとうとうスバエリの再会か?
エリオはスバルとルーテシアに平穏と笑顔をもたらせるのか…いや絶対にもたらして欲しい!


363:名無しさん@ピンキー
08/11/14 00:14:45 N82mJeFw
やばい、カルタスがドラッケン部隊の隊長に見えてきたw
死した仲間のパーツを使い共食い整備でなんとか戦えるレベルで、
敵の最新鋭の奴らに旧式とか馬鹿にされるのに、戦うと敵を瞬殺とかするw
スバルにやられたノーヴェが挑んだら、こんな感じでやられちゃいそうだ。

364:名無しさん@ピンキー
08/11/14 00:20:25 QS9adZtL
>>345
GJです
スバルはまだかわいらしいわんこに戻れると俺は信じてる
イクスやカルタスの気持ちを無駄にはしてほしくはない
ついでにルー子はエリオの忠実なわんこになれると俺は信(ry

>>357
GJ
ゼストは生き残って、アギトとくっついてメガーヌと再開を喜んでシグナムと好敵手になってエリオを弟子にして、
こんな未来もありだったな…

365:名無しさん@ピンキー
08/11/14 03:01:08 ks9zgIfC
誰か高町家の方々にもスポットライトを……

366:名無しさん@ピンキー
08/11/14 06:00:47 jgonZFya
>>365
高町家にスポットあてると、とらハ要素混じる場合は基本別スレとかになるんじゃなかったっけ

367:名無しさん@ピンキー
08/11/14 11:12:04 btpy3Hy8
とらハ板ってあったのか?

368:名無しさん@ピンキー
08/11/14 12:13:02 dm278TxL
>>366
リリなののキャラと絡むのは構わないんじゃないか?
とらハのみのネタで突っ走る場合はわからないが。

ところで、クライド×リンディは見たことあるけど士郎×桃子は見かけないな。

369:名無しさん@ピンキー
08/11/14 12:28:47 N82mJeFw
凄まじいエロのオーラを感じるなw

アルトとユーノのSSの続きが読みたいなぁ。それか、リンディとユーノのハードエロ系w

370:名無しさん@ピンキー
08/11/14 14:52:16 DtI3RQSG
>>369
いいなぁ、ユーノはともかくリンディさんのハードエロは見たいw

371:名無しさん@ピンキー
08/11/14 15:16:27 poBkRt3K
未来編でのルー子によるエリオ寝取り+既成事実作成の成功編もあると、ずっと信じております
あれだけ純粋なんだから、いざという時は重婚するぐらいの気持ちでエロオには頑張って欲しい

372:名無しさん@ピンキー
08/11/14 15:47:21 z62So16Z
上司であるユーノとの職場恋愛を望む俺は異端?

373:名無しさん@ピンキー
08/11/14 16:32:46 z62So16Z
ごめん、‘ユーノとルーテシアの職場恋愛’の書き間違えだ。

374:名無しさん@ピンキー
08/11/14 19:47:52 PUaYb4LL
>>369>>370
ハードかは判らんが、そのカプなら保管庫にあったな。

>>373
どこをどう通ってそんなのになるんだ色んな意味で見たいZE

375:名無しさん@ピンキー
08/11/14 20:51:44 TzUy9nui
>>374
きっと無人世界が暇すぎて本ばっかり読んでるうちに司書の仕事に興味が
出てきたりしたんだろうぜ、いや暇なのかはわからんが

>>345
GJです、メカルタスかっこいいよメカルタス、中の人的にどうしても
グレンラガンが頭に浮かぶけど
そしてヴァイス……何があったんだ……

376:名無しさん@ピンキー
08/11/14 20:55:38 poBkRt3K
>>345
遅くなりましたがGJ!果たして今のスバルとエリオが再開して再び共闘できるかといえば難しいように思います。
復讐しようとする者と助けようとする者。
どうしても相容れない気がしてしまいます。

>>357
GJ!
ゼスト…お前ってやつはと思わず思ってしまいました。


377:名無しさん@ピンキー
08/11/14 22:14:41 ofw5S6Nr
あと五分ほどで投下します。

378:野狗
08/11/14 22:20:44 ofw5S6Nr
冬のおつとめが近づいて、そろそろカキコ速度が鈍る頃。

魔法少女リリカルなのはIrregularS 第五話です。(全十三話予定)

捏造まみれです。
SSX前提です。
あぼんはコテで

レス数14

379:野狗
08/11/14 22:21:52 ofw5S6Nr
      1

 某管理世界の空。
 レヴァンティンの一振りで、セッテタイプは次々と燃え尽きていく。
 戦果を確認すると、シグナムはアギトとユニゾンアウトする。

「さっすがシグナム。パチモンナンバーズなんか敵じゃねえっ!」
「……劣化コピーとはいえ、脆いものだな。質より量とは、つまらんことを考えるものだ」

 軽くうなずきながら、フェイトはシグナムに並ぶ。

「アギトとユニゾンしたシグナムとは、私も戦いたくないけれど」
「へっへー、そりゃそうだろ」

 アギトが胸を張るのを見て、フェイトは微笑む。

「模擬戦でも、シグナム単体で手一杯です」
「謙遜だな、テスタロッサ。それを言うなら、私はまだお前の真ソニックフォームを間近に見たことはないぞ? あれならどうなんだ?」

 シグナムの言葉に応えるように、二つの影が近づく。

「来たよ。これでシグナムの期待には応えられるのかな?」
「だといいが」

 シグナムはフェイトと合流。フェイクマザーの設置されている拠点を潰して回っていた。
 どの拠点にも、決まってセッテ、ノーヴェ、ディエチの量産型が配備されている。そこで出た結論は、この三タイプは新たに製造されたものではなく、
フェイクマザーによるコピーだというものだった。

「ここには、ボスがいるみたいだね」
「……二対二か。どうする?」

 シグナムが聞いたのは対応策ではない。もっと単純に、戦う相手を尋ねているのだ。

「シグナムは?」
「私としては、主の偽者は見過ごせんな」
「それじゃあ、決まりだね」

 フェイトは前方に佇む二人を見た。
 六枚翼の一人。そして、白いバリアジャケットの一人。
 アギトが笑った。

「お、テスタロッサの旦那さんの昔の恋人じゃん! よおしっ、やっちまえ!」

 がくん、と体勢を崩すフェイト。

「あ、あ、アギト?」
「あれ? 違ったの?」
「えっとね、ユーノとなのははそういう関係じゃなくて……、そもそも、あれはなのはじゃないし……」
「来たぞ」

 シグナムはアギトを連れてその場から回避する。同時にフェイトも、砲撃を回避する。
 ディバインバスターを回避した二人。フェイトはそのまま、コピーなのはへと向き直る。

「そうやって、良くも悪くも人の話を聞かないところだけは、なのはにそっくりだね」

 SONIC MOVE

 高速移動で飛んでいく姿をシグナムは見送った。

「では、私たちも行くぞ、アギト。主を詐称する痴れ者など、放っておく訳にはいかん」

380:野狗
08/11/14 22:22:30 ofw5S6Nr
             2

                     魔法少女リリカルなのはIrregularS
                             第五話
                    「セインの覚悟 ウェンディの意地」


 集束された魔力は、禍々しい輝きとともに大きく膨れあがっていく。

「誰から? 空? 地面? それくらいは選ばせてあげる」

 コピーなのはの瞳はギラギラと光っていた。獲物を弄ぶ獣の瞳の色が、魔力の輝きを照らし返している。
 その輝きに照らされながら、ジュニアは立ちつくしていた。

「…………嘘だ、こんな……こんな集束が可能なんて」

 ディエチにスターライトブレイカーを撃たせるために研究は重ねた。戦闘機人テンプレートからの集束手段も発見した。
しかし今目の前で行われているシークエンスは、ジュニアの考え出した手順を遙かに凌駕している。
 携帯用分析機―トリコーダのディスプレイに映し出される数値は、間違いのない事実をジュニアに突きつけている。
 コピーなのはが収集しているのは戦場に散った魔力の残滓だけではない。明らかにそれ以上の魔力を収集している。
その収集先は、コピーフェイトとコピーはやて、そして倒された量産戦闘機人。
 おそらくは、瀕死の者の魔力を直接収集している。。
 ジュニアは理屈を理解した。過去、ヴォルケンリッターによって行われたリンカーコア収集では、シャマルの旅の扉による強奪を除けば、持ち主を倒す必要があった。
持ち主を一旦弱体化させなければならないのだ。
 弱体化すれば、リンカーコアは抜けるのである。それを利用したのが、コピーなのはによるSLB魔力集束だった。リンカーコア自体は抜かずに、魔力のみを利用。
 そして、不完全とはいえディープダイバーの解析。これも、今のジュニアには不可能と言っていい。

「…………欲しい」

 無意識に、呟いていた。
 欲しい。あの力が、否、あの知識が欲しい。
 心のどこかが痛切に叫んでいる。
 欲しいなあ!
 あの知識が欲しいなぁ!
 あのコピーが欲しいなぁ!

「ジュニアッ!」

 ノーヴェの声がジュニアを現実に戻す。その瞬間、ジュニアは己の思いに怖気を覚えた。
 同じだ、と感じたのだ。父である、スカリエッティと同じだと。

「しっかり掴まってろ!」

 全速で走るノーヴェがすれ違いざまにジュニアを担ぎ上げる。

「あの砲撃馬鹿の圏内から一歩でも遠くに逃げる!」
「でも、皆が!」
「あんたがいりゃあ、死なない限り直せるだろっ!」
「でもっ!」
「うるせえっ! 妹が命懸けて意地張ってんだっ! 応えてやんなきゃ、なんねえだろっ!!」

 ノーヴェは叫び、泣いていた。
 ジュニアは見た。
 限界まで加速したライディングボード。そして、戦場を自在に駆けるドーターズの姿を。
 魔力塊に突撃する二人の姿を。

「ウェンディ……? ガリュー……?」

381:野狗
08/11/14 22:23:17 ofw5S6Nr
         3


 ドーターズが突然操作できなくなったことにチンクは気付いた。
 ウェンディが直接操作しているのだ。

「まだ、戦えるッスよね」
「ウェンディ、お前」
「あたしがいなくなっても、他の皆がいれば、まだ戦えるッスよね」
「何考えてんだ」
「ノーヴェはジュニアを頼むッス。あたしは、あれを止めてみせるッス」

 返事を待たず、ライディングボードが加速する。
 逆方向へ、なのはから逃げる方向へと飛び始めるドーターズ。

「ノーヴェ、ウェンデイを止めてくれ」
「チンク姉、逆の立場なら、あたしは止めてほしくない。チンク姉だって、一緒だろ」
「ウェンディ!」

 叫ぶことしかできない。空を飛べない自分の性能を、チンクは初めて恨んだ。
 ドーターズは戦場を駆け、姉妹を離脱させようとしていた。
 ディエチを乗せ、オットーとディード、ルーテシアの囲みを数体を犠牲にして破り、別の数体がセインへと向かう。
 圧倒的多数に囲まれて傷を負った双子とルーテシアはほとんど動けず、ディエチもそれは同じだった。動けるのはノーヴェとチンクのみ。
しかし、ノーヴェはジュニアを脱出させるために走っている。
 スバルとエリオはそれぞれ、コピーはやてとコピーフェイトの呪縛から離れることができないでいる。
 せめて、セインを。
 チンクはスティンガーを構えた。
 一瞬、わずか一瞬動きが収まれば、セインを捕らえているセッテタイプを破壊できる。ただし、この場で止まれば終わりだ。

「チンク姉! 構わないからやってくれっ! 手の一本や二本、吹き飛ばしてくれていいからっ!」

 逡巡の時間はない。チンクはスティンガーを投擲する。

 ISランブルデトネイター

 爆発の中から、セインを捕まえたドーターズが飛び去っていく。そのセインの姿にはあるべき四肢の一部がないことを、チンクの目は捉えていた。

「すまんっ……セイン」

382:野狗
08/11/14 22:24:07 ofw5S6Nr
        4


 ガリューは飛んだ。高速直線移動に限れば今のガリューはフェイトよりも早い。
 そして、ほとんど同時にウェンディのボードが同じ位置に到達する。
 コピーなのはの目前。SLBによって集束した魔力塊に振りかざされるデバイスの間近。
 ガリューの腕がデバイスを止めた。

「こざかしい虫けらっ!」

 シークエンスに入ったために膨大な魔力が術者であるコピーなのはをアシストしている。それはガリュー単独では止められない。
 ウェンディが身体ごと、デバイスと魔力塊の間に入った。

「撃たせないッ! 絶対に!」

 ガリューが吼え、デバイスに触れていない左手を高々と上げる。
 ウェンディはその行為を理解した。

「やるッス!」

 ライディングボードを盾に、魔力塊を地面へと押しやるように身体を伸ばす。ガリューの手がそこに重なり、二人かがりで魔力塊を押しやろうとする。
 もう、間違えない。
 ウェンディは誓っていた。
 自分は馬鹿だった。あの日、クアットロがモニターの中で断じたように。でも、今は違う。
 もう、間違えない。二度と、為すべき事を間違えない。
 ティアナに敗れた理由も、今ならわかる。単純なことだ。自分たちが間違っていたから。ティアナは間違っていなかったから。
 だから、もう間違えない。だから、もう負けない。
 たとえ個人としての自分が負けても、自分たちはもう負けない。
 魔力塊の波動がウェンディの全身を貫くように蝕む。

「くぁああ……」

 ガリューも同じように苦しんでいるのが見える。

「ガリューも、もう間違えないッスね。ルーお嬢様に間違えさせないんスよね」
「虫けら! ジャンク! 負け犬が! どうして、邪魔するのっ!!」

 コピーなのはの叫び。狂気にも似た眼差しに、ウェンディは笑った。

「あんたが……間違ってるからッスよ」

 デバイスと魔力塊を繋ぐプラズマ状の力場が伸び始める。
 魔力塊は、ゆっくりと降下を始めていた。同時に、凄まじい衝撃が、内に籠もる衝撃がウェンディとガリューの身体の中をかき回す。

「間違っているから……それを正したいから……戦うんスよ」


383:野狗
08/11/14 22:24:58 ofw5S6Nr
         5

 痛みを痛みとも感じなくなった自分の身体を、ウェンディは不思議に思った。
 もう、口が動かない。それでも、身体は動く。
 目が見えなくても、身体は動く。
 ドーターズから送られてくる映像はまだ見えていた。
 どうして、皆は泣いているんだろう。SLBを防いだのだから、喜べばいいのに。

 ……みんな、根が暗いッスよ。もっと明るくするッス……

 ……ここまでやってもまだ動ける。さすが、ドクターッスね……

 ……チンク姉、ノーヴェ、ディエチ、オットー、ディード……スバル、エリオ、ルーお嬢様……勝つッスよ……

 ……ジュニア、もうあたしを作ろうなんて、思わなくていいっすよ……

 ……クア姉や騎士ゼストに、会えるのかなあ……

 ……ドゥーエ姉様に会うのは楽しみッスねえ……

 ……あ、ボード壊しちゃった……ティアに譲っ……

 最後に聞こえたのは、ガリューの吼える声。ウェンディにはそれが、勝ち鬨に聞こえていた。



 地上に落とされた魔力塊は、小規模な爆発とともに消え去る。

「うぉああああああああああああああっ!!!」
「あああああああああああああああああっ!!!」

 呪縛の解けたストラーダとリボルバーナックルの前に、魔力を使い切ったコピーはひとたまりもなかった。

「コピー一組でこの成果。弱いね、エリオ、スバル」

 笑うコピーなのは。
 次の瞬間、その身体は文字通り溶けていた。
 それが、不完全なコピーの断末魔の姿だった。

384:野狗
08/11/14 22:25:40 ofw5S6Nr
          6

 遊撃隊本部、隊長室―
 エリオはデスクの前に座り込んでいた。

「隊長、被害報告ができました」
「……ああ、そこにおいてくれ」

 左手を吊ったルーテシアが、書類をエリオの机に置いた。その後ろには、チンクが付き従っている。

「キャロのことですけれど」
「……気にしなくていい」
「しかし」
「気にしなくていいと言ったんだっ!」
「わかりました」

 ルーテシアは静かに答える。そして、左手を吊っていた包帯を外した。

「ルーテシア?」
「私は、隊長補佐だから」

 エリオは、訳がわからないと言った顔になる。

「隊長が指揮を執れない状態になったとき、指揮を執るのは私」
「どういう意味だ」

 ルーテシアは書類の最後に記されたパラグラフを示す。

「仮に隊長が行方不明になれば、私が指揮を執ります」
「行方不明……?」

 エリオの表情が奇妙に歪む。

「隊を捨てて妻を救えとでも言うつもりか」
「では、妻を捨てますか?」
「……考えさせてくれ」

 チンクが二人の間に入った。

「隊とキャロ、両方を救うつもりはないのですか?」
「……そんな力はないよ、僕には」

 チンクの表情がやや険しくなる。

「私の知っている中で最も偉大な騎士にも、そんな力はありませんでした」

 ルーテシアの厳しい視線を、チンクは甘んじて受けた。

「貴方なら、彼を超えられるかも知れない。そうも思っていたのですが」
「僕は、そんなに強くない」
「失望させられた……というより、私の期待が大きすぎたのでしょうね」

 二人は、座り込んだままのエリオを置いて部屋を出ていった。

「……僕は……僕は……」 

385:野狗
08/11/14 22:26:25 ofw5S6Nr
               7

 部屋を出たルーテシアは、通路の反対側に見えた影に気づき、その正体がわかると頭を下げた。まるで、お願いしますというように。
 それに対して、わかったと言うようにうなずく影。
 あえてそのやりとりには触れず、歩き出したルーテシアにチンクは告げる。

「できるなら、補佐の昇進を見たくはありませんが」
「同意するわ。だけど、とりあえずやれることはやりましょう。チンク、すぐに資材課を突っついて、デバイスの修理機材を。必要なら、押し込んで奪ってきなさい」
「了解。それから」
「なに?」
「しばらくは状態復帰が主目的です。正直に言って、補佐が表立って行動する必要はありません」
「それで?」
「手続きなどは私がやります。ガリューの所へ行ってください」
「……でも」
「ルーテシアお嬢様」

 チンクは、久しぶりにその呼びかけを使った。

「姉の言うことは、素直に聞くものです」
「姉? チンクが、私の?」
「僭越ながら、それに似た感情を抱いていました。いえ、今でもそうかもしれません。ご迷惑でしたか?」
「ううん」

 ルーテシアはしゃがみ込むと、チンクの胸元に頭を置いた。

「ありがとう、チンク姉」



「あの時は、そこにチンク姉がいて、あんたと私はここでチンク姉を見てたんだよね」

 セインは物言わぬ妹に語りかける。

「だけど、あの時はチンク姉は意識があって……時間はかかるけれど必ず直るって……」
「セイン姉様、それ以上は……」

 セインの乗った車椅子を、ディードが押している。
 二つ並べられた生体ポッドの一つには、辛うじて回収できたウェンディの残骸が納められている。奇跡的に頭部が残っていたことが、一同に微かな望みを生んでいた。

「帰ってくるよね……ウェンディ。あんたのことだから、普通の顔して能天気に帰ってくるよね」

 セインは、生体ポッドの横に横たえられたドーターズの頭を、唯一残った右手で撫でる。

「この子たちだって待ってるよ」
「セイン姉様、そろそろ出ましょう」

 ゆっくりと、セインは振り向いた。

「そうだね。私がここにいてもウェンディに何もできない」
「セイン姉様。そういう意味では……」

 ディードは、何かを噛みしめるように唇を強く結んだ。

「ジュニアの所に行こうよ。それからディード、お願いがあるんだ」


386:野狗
08/11/14 22:27:04 ofw5S6Nr
             8

 ルーテシアと入れ替わりに入ってきた姿に、エリオは反射的に立ち上がった。

「シャマル先生」
「いいわよ、隊長は座っていて」
「連絡なんてなかったのに…」
「受付には口止めしたのよ。ナカジマ特佐の特命だって言えば、あっさり了承してくれたわよ。はやてちゃんが特佐になってから、こういう役得が増えて少し楽しいかな」
「それは…」
「言っておくけど、はやてちゃんの特命は本当。頼まれて、医者としてここに来たのよ」
「しかし、僕やジュニアは無傷に近い。怪我をしたのは戦闘機人とガリューだけですよ」
「……」
「どうかしましたか?」
「また、“僕”に戻ったの?」

 エリオは、苦虫を噛み潰したような顔になる。

「僕は……僕です」
「隊長職はそんなに重荷?」
「……負けたんです」
「報告は聞いたわ」
「僕たちには調査は期待されていない。戦うためだけの部隊です。それなのに、その戦いに負けたんです。あっさりと、何もできずに」
「まだ、隊長になるには早かった?」
「……きっと、そうなんですよ」
「貴方が選んだ道ではなかったの?」
「僕は、はやてさんにはなれなかった。僕には、部隊を率いるなんて無理だったんだ! 僕のせいで、ガリューとウェンディとセインが……!」

 突然、シャマルの手が上がる。エリオが反応するより早く、その手がエリオの頬を打つ。

「落ち着いて、エリオ。貴方がはやてちゃんになれなかった? 当たり前でしょう? 貴方、九歳の時何してた? 六課にもまだいなかったわね? 
はやてちゃんはね、九歳の時、すでに私たちヴォルケンリッターの主、夜天の王だったの。しかも、望みもしてなかったのにね。今の貴方と一緒にしないで」

 平手を張られ、痛みよりも呆気にとられた顔のエリオに、シャマルは指を突きつけた。

「貴方は、九歳の八神はやての足元にも及んでいないの。わかる? 隊長職なんてできなくて当然。なんのためにルーテシアがいるの? スバルがいるの? 
ジュニアがいるの? チンクだって、貴方よりは経験を積んでいるのよ?」
「それは…」
「三人の被害がそれほどひどいことなの? 無傷で作戦を完遂することが貴方にとっての隊長の資格なの?」
「でも、これだけの損害を」
「いい加減にしなさい! もう忘れたの? 私たちのいた六課は一度壊滅的打撃を受けた。そのとき貴方は、部隊長は部隊長に値しないと思ったの?」
「そんなことはありません」

 即答だった。
 遊撃隊の隊長となってから、あの頃の部隊長と自分を比べなかった日などなかったと言っていいだろう。六課こそが、自分の目指す部隊のあり方なのだ。

「じゃあ、あの時貴方は何を考えていたの? 負けたことを悔やんでいたの?」
「強くなりたい、そう思ってた……。ルーテシアを救いたい、フェイトさんを、キャロを守りたい。みんなを守りたいって」
「だったら、今、貴方の部下は何を考えてるの? 貴方への不満? ガリューとウェンディが、セインが、貴方を恨んでいるとでも?」

 口を開きかけて、エリオは俯いた。
 猛烈な羞恥に襲われたのだ。
 自分は、隊員の何を見ている? 何も見ていない。ただ、負けたことを恥じて、自らの力量の未熟を悔やんで、隊長としての資質の不足に歯がみしていただけだった。
 後悔は、隊長の責務ではない。
 何故、隊員の考えを知ろうとしないのか。
 シャマルの言外の問いかけを、エリオは恥じた。


387:野狗
08/11/14 22:27:38 ofw5S6Nr
             9

 道化。
 改名すべきかも知れない。
 アンリミテッド・アナライザー? お笑いだ。
 スカリエッティの後裔? 不遜以外のなにものでもない。
 きっと、何かの間違いだったのだ。どこかに欠陥があったのだ。クローニングの過程にミスがあったのだ。さもなければこんな低脳は生まれない。
 敵は、スカリエッティの持っていた戦闘機人データをどこからか入手している。この点に関しては自分も同じ立場だ。しかし、敵はジュニアのさらに上を行っている。
 そしてなのは、はやて、フェイトのデータを入手している。おそらくは、フェイクマザーでコピーを作れるほどに揃ったデータを。
 ディープダイバーを不完全ながらも解析、コピーに仕込んでいる。
 そして、次が重要だった。
 コピーなのはのSLBである。
 ジュニアがディエチにSLBを撃たせるために改良したのは、テンプレートからの集束である。
しかし敵は、死亡した者のリンカーコアやテンプレートからの集束を可能としているのだ。
 それはジュニアの力量を超えていた。

「僕は、自分で思っていた半分も優れてなどいなかったんだ」
「ジュニア、元気を出して」

 ディエチが傍についている。

「ごめん。ディエチさんのデバイスを修理しないとね」
「そんなことは後でもいいの。貴方が元に戻らないと」
「……元に?」

 ジュニアは笑った。

「これが、元々の僕だよ。父さんに遙かに及ばないのはわかってた。でも、ナンバー2ですらなかったんだ、僕は」
「やっぱりここか」

 部屋のドアが開き、ディードの押す車椅子に乗ったセインが姿を見せる。横に立っているのはヴィヴィオだ。

「ラボにも自分の部屋にもいないと思ったら、ディエチの部屋とはね」
「セインさん……」

 ジュニアの言葉を無視して、セインはディエチをにらみつける。

「甘やかしすぎだよ、ディエチ」
「セイン、そんな」
「ジュニアは甘えてる。どうせ、自分はドクターに及ばないとか、コピーを作ったやつに及ばないとか、考えてるんだろ」
「事実じゃないですか。僕が及ばないのは、事実じゃないですか」
「そうだよ」
        
 セインはジュニアに残った手を伸ばす。

「悔しいんだろ。自分が負けたのが。ディープダイバーを先に解析されたのが悔しいんだろ」

 ジュニアはセインをにらみつけていた。
 ディエチは、ジュニアを守るように二人の間に入る。


388:野狗
08/11/14 22:28:20 ofw5S6Nr
         10


「どうしたの、セイン」
「ディエチ、引っ込んでて」
「だけど」
「引っ込んでなさい!」
「セイン!」
「ディエチ、引きなさい」

 ヴィヴィオが冷たく言った。まるで、ゆりかごの中にいたときのように。
 思わずディエチは一歩下がり、無意識に恭順の姿勢を取っていた。
 ジュニアは同じく姿勢を変えそうになったが思いとどまる。
 しかし、わかった。今のヴィヴィオは見習い隊員ではない。聖王の血を引く者として言葉を発しているのだ。

「ジュニア、提案があります」
「陛下……」

 ジュニアは自然にそう言っていた。

「貴方の父親が私に行った処置。同じ事が貴方にはできますね」
「陛下!?」
「聖王の力が必要なのです」

 聖王ヴィヴィオならばコピーなのはと拮抗、いや、圧倒することができる。

「加えて、ジュニアにはもう一つの力が必要だね」

 セインは首筋を見せつけるように顎を上げた。

「ディード、お願い」

 ISツインブレイズ

 ディードが双剣をセインの首筋に当てる。

「ジュニア、私の命をあげる。私の身体を好きに解析して。ジュニアなら、ディープダイバーを完全再現できるはず」
「セイン!」

 ディエチの悲鳴のような声。

「わからないかな? 何者かは知らないけれど、ディープダイバーを不完全ながら解析再現した者は、私のクローンをあれだけ殺しているんだよ。
あれだけ殺して、ようやくあんな不完全な再現しかできないんだよ」
「……それは、セインさんの能力は偶然の産物みたいなものだから、クローンしたからって能力までコピーできる訳じゃない」
「問題はそこじゃない。それに、私は完全にディープダイバーの能力を持っているよ。私を解剖すれば、解析して再現できるかも知れないんだよ」

389:野狗
08/11/14 22:28:56 ofw5S6Nr
           11

 ヴィヴィオが言葉を続ける。

「私の聖王の力、そしてセインのディープダイバーの再現。これならジュニアは確実に勝てるよ」
「嫌だ」
「何が嫌なの」
「嫌に決まってるじゃないか! なんで、セインさんを解剖しなきゃならないんだ。どうして、ヴィヴィオをまた苦しめなきゃならないんだ」
「勝つためだよ」
「だけど、それは違う!」
「だったら!」

 セインが声を張り上げる。全員の注目が集まった。

「負けたことを悔しがる必要なんてないだろっ! あいつらの戦い方を見ればわかるだろっ、命なんて何とも思ってない。味方であろうと敵であろうと、
殺すことを何とも思ってない。殺して有利になると思えばあっさりと殺す」

 ディードが双剣を退いた。

「だけど、ジュニアは殺しません。ジュニアが選んだのはそういう道なのでしょう? それなら、最後まで進むべき」

 セインは車椅子の背もたれに全身を預け、天井を見上げた。

「それに、信じてる。ジュニアなら、あいつらより上だって」
「買いかぶりすぎです」
「そんなこと、ないよ」

 ディエチがジュニアを背後から抱きしめていた。

「あたしは、ジュニアを信じてる。あたしたちも、信じてる」
「私もね」

 ヴィヴィオが力強くうなずく。

「エリオお兄ちゃんがいて、ルーちゃんがいて、スバルさんがいて、ジュニアがいて、皆がいて。管理局一の部隊なんだからね。ママたちには劣るけど」
「私は、必要なかったかしら?」

 突然の声に、五人の視線が集まる。

「はやてちゃんに言われて、駆けつけたんだけど?」

 白衣の姿が戸口に立っていた。

「メンタルケアが必要ならお手伝いに、と思ったんだけれど。もう、必要ないみたいね」

 シャマルはそう言って、微笑む。


390:野狗
08/11/14 22:29:37 ofw5S6Nr
          12

「それじゃあ、いつも通りにしましょうか?」

 ヴィヴィオがうなずいて、しかしすぐに首を傾げる。

「いつも通りって何?」
「旅の鏡の解析よ」

 しばらく前から、シャマルに対してジュニアが依頼していたのが、旅の鏡の解析調査協力依頼であった。数度の調査はすでに済ませている。

「一応、今日の約束だったのだけれどね」

 さすがに、今日という日の調査はキャンセルだろう、とシャマルは言った。
 しかし、ジュニアは否と言う。

「せっかく来てもらったのだから、調査はします。予定よりは短くしますれど」
「今すぐ?」
「勿論。時間は無駄にはできませんから」



 ルーテシアは生体ポッドの中のガリューを見上げていた。
 身体の左半分を失ってはいるが、生体反応は消えていない。 この程度でガリューは死んだりしない、とルーテシアは信じている。
いや、この程度どころが、ルーテシアにとってのガリューとは絶対に死ぬことのない、いつだって頼りになる戦士なのだ。

「ガリューは、少しお休みしているだけだよね」

 ガリューには聞こえている、とルーテシアは信じていた。
 いつだって、ガリューは傍にいた。呼べばどこにでも駆けつけてくれた。
 守ってくれた。守り抜いてくれた。
 ゼストよりも、きっとエリオよりも。
 ガリューのいない自分なんて、想像もつかない。いつだって自分の隣にはガリューがいると思っていた。

「私はまだ、ガリューがいないと何もできないんだよ。ガリューがいないと駄目なんだよ。だから、お休みした後はまた帰ってくれなきゃ駄目なの」

 答えはない。静かな空間に、生体ポッドの稼働音だけが響いている。
 ルーテシアはガリューをもう一度見上げ、隣のウェンディを見た。
 あのとき、ウェンディはガリューと心が通じていたように見えた。ガリューの意思表示なんて、ウェンディには何一つわからなかったはずなのに。
 どこか、心がうずくのがわかった。

「…また、来る」

 振り向いたルーテシアは、開いたドアから入ってくる光に目を細める。

391:野狗
08/11/14 22:30:24 ofw5S6Nr

       13

「隊長補佐?」
「スバル?」

 スバルはルーテシアの眩しそうな顔を見て、慌ててドアを閉める。

「あ、ごめんなさい」
「どうしたの? スバル?」
「ガリューさんと、ウェンディの様子を見に来たんです」

 放心状態だったスバルをルーテシアは見ている。
 事実上の生身だったコピーはやてを、戦闘機人の力で文字通り貫き砕いたこと。さらに、それが罠だったこと。
そして、そのためにウェンディとガリュー、セインがこのような状態になってしまったこと。
 ある意味では、スバルはエリオ以上に自分の身を責めていたのだ。

「落ち着いたのね」

 スバルはやや寂しげに微笑んだ。

「教会まで行って来ました」

 ルーテシアはうなずく。
 スバルは、イクスに会いに行ったのだろう。そして、語ったのだろう。

「もう、大丈夫。あたしのやるべき事は、あの子が思い出させてくれた」

 スバルには、スバルの想いがある。守るべきものがある。
 ガリューにも、ウェンディにも、セインにも。
 そして、ルーテシアにも。
 それは、命より重いのかも知れない。


392:野狗
08/11/14 22:31:16 ofw5S6Nr
        14


  次回予告

エリオ「守りたいと思った。弱い自分を打ち消したいと思った。全てを作り替えたいと思った。強くなりたいと思った。生まれ変わりたいと思った。
意志を貫きたいと思った」
ルーテシア「そんな貴方を追いかけたいと思った。一緒に歩けなくてもいい。後からついていくだけでいい。ずっと、そう思ってた。貴方と、貴方の隣を歩くあの人。
二人を後ろから見ていればいい、そう思ってた。こんな風に見守ることは、あの人にはできない。そう信じてた」
エ「次回、魔法少女リリカルなのはIrregularS第六話 『エリオの偽善 ルーテシアの高慢』 僕……俺たちは進む。IRREGULARS ASSEMBLE!」



中書き

 SLBの砲撃シークエンスを間違えていたことに気付いて大あわてで書き直して、ストーリーも少し予定より変えました。
 おかげで、終盤まで活躍させる予定だったウェンディがこんな事に………。なんか、勝手に動いたよ。
 セインとガリューに関しては予定通り。

393:野狗
08/11/14 22:31:59 ofw5S6Nr
 以上、お粗末様でした。

394:名無しさん@ピンキー
08/11/14 23:04:40 QS9adZtL
>393
GJ!!!
ウェンディ、ガリュー…。 。゜。゜(ノД`)゜。゜。 。

そして!すさまじく!燃えてきた!
ジュニアは自分の父親の血と狂喜と戦い勝利する
スバルもルーテシアも行うべきことをはっきりとさせた
エリオはキャロも隊も、そしてルーテシアも救うために戦う
これで燃えずに何とする!

395:名無しさん@ピンキー
08/11/14 23:58:44 poBkRt3K
>>393
GJ!
予告を見る限り、ルーテシアはエリオのためにエリオクローンの元へ行くのでしょうか。
エリオにはルーテシアも含めて全て何が何でも守って欲しいです。
ウェンディは本当に大丈夫か凄く心配です

396:名無しさん@ピンキー
08/11/15 00:15:07 0sVPWnTl
ガリューは再生能力高いだろうから大丈夫だろうけど、もうウェンディはダメのような
そして報復のための戦いになるのもまたすごいことになりそう


397:名無しさん@ピンキー
08/11/15 01:06:48 HjLCtSN1
というか機人って結構各部が吹き飛んだあと修理?している描写があるけど、
破損→修理をくり返すとそのうち完全なロボットになってしまわないか?

それとも生態部分自体が生態パーツ扱いなのか?

398:名無しさん@ピンキー
08/11/15 01:31:29 GkzhhD0y
>>397
UCガンダムは、1機が稼動するには最低でも3機分の補給パーツがいるという。
まぁ元々兵器なんだから動かす=戦闘。で、どっか壊れるのは当り前。
機人の場合生身の部分が残ってるなら、ある意味では機人の方が稼動難しいのかも

399:名無しさん@ピンキー
08/11/15 01:40:03 t+xNU4A7
どこまで生身かにもよるしな。
スバル曰く骨格や筋肉は人工物らしいが、機人って脳以外はほとんど造り物なのかも。
ロボコップや仮面ライダーZXも顔(後者は脳)だけ生身だし。
人造でも生体なら回復や補助が利くのかとか考えだすと設定スキーの血が騒ぐぜ。

400:名無しさん@ピンキー
08/11/15 01:41:53 BmwGs57m
現実でもクローン創る目的の一つに、拒否反応がなく取り換えられる臓器の作成があるし、10年程度未来であれ魔法文明なリリカルワールドの天才ドクタースカトロなら脳みそ以外とっかえひっかえ楽勝なんだろう

401:名無しさん@ピンキー
08/11/15 01:57:31 1K3UzSE8
ディエチにジュニアは手を出したのかな?

402:名無しさん@ピンキー
08/11/15 13:20:35 jcmh4aIu
このウェンディはライスピのタイガーロイドばりに
パーフェクトなサイボーグとして復活を…しないか

403:名無しさん@ピンキー
08/11/15 13:56:13 DDIKQa9r
ウェ「楽しい命のやり取りの後に立っているのは『死』という地獄をかい潜って来た真の『鬼』のこの私だ!」

404:名無しさん@ピンキー
08/11/15 14:24:47 BmwGs57m
次のウェンディは肩にキャノンつくわライディングボードの代わりにライドアーマーがつくわバーボンが泥水だわでえらい事ですね

405:名無しさん@ピンキー
08/11/15 14:40:11 jX35xviq
>>402
あんな悲壮感漂うウェンディはなんか嫌だw

406:名無しさん@ピンキー
08/11/15 15:02:54 t+xNU4A7
>>402
それだと、ポジション的にセインがZXじゃないか(ウェンディとコンビ組んでいたらしいし)w

407:名無しさん@ピンキー
08/11/15 18:48:51 fq57RdxW
>>393
GJ!!
実に燃える展開だ
エリオはルーテシアもキャロも全て守ると大口叩くぐらい自信持てばいい!
それが漢だ!

408:名無しさん@ピンキー
08/11/15 19:01:21 ex43zWTy
>>400
少なくとも、目は無理っぽいけどな

409:名無しさん@ピンキー
08/11/15 19:12:26 t+xNU4A7
>>408
チンクのことをさすのなら、あれは確かわざと治していなかったんじゃなかったっけ?

410:名無しさん@ピンキー
08/11/15 20:19:38 NWDXcSoF
>>409
>>408はラグナのこといってるんじゃね?
スカは関係ないがさ

411:69スレ264
08/11/15 20:39:14 BGSoWela
業務連絡です。
87スレ保管完了しました。
職人の方々は確認お願いします。

412:名無しさん@ピンキー
08/11/15 21:03:11 3aJjnvv7
>>411
いつもありがとうございます。

413:名無しさん@ピンキー
08/11/15 22:04:19 cgpvxGtZ
>>411
つ旦

414:名無しさん@ピンキー
08/11/15 22:07:21 t+xNU4A7
>>411
確認しました、ありがとうございます。

415:名無しさん@ピンキー
08/11/15 22:27:25 HUe9rSXJ
>>411
  ∬ 
つc□  コーヒードゾー  


416:名無しさん@ピンキー
08/11/15 22:37:17 Pru29odL
>>411
どうも乙です~

417:名無しさん@ピンキー
08/11/15 22:49:26 fq57RdxW
>>411
乙かれ様です

418:554
08/11/15 22:55:29 gr9Ly5eY
尻叩く意味でも0:00までにクリニックF更新するっ! と宣言しておく。

というわけで、少々のお待ちを。

419:名無しさん@ピンキー
08/11/15 23:04:37 kR0fsfzv
>554氏
きゃほ~い! 投下待ってます~♪

420:名無しさん@ピンキー
08/11/15 23:06:32 3aJjnvv7
来たッ!!!

421:7の1
08/11/15 23:47:52 gbKB4Z19
この流れの中で初の投稿になります。
注意事項
・一部エロありです
・時間軸はJS事件から1年後
・JS事件のもたらしたもの
・捏造満載
・オリキャラ出てます。
・StSキャラはヴィヴィオしか出ていません
・ユーノ×なのはは基本です。
・主人公:ユーノ
・タイトルは「再び鎖を手に」  




422:7の1
08/11/15 23:49:18 gbKB4Z19
 管理局の制服の上によれよれの薄茶色のレインコートを羽織ったさえない中年男が、時空管理局の廊下を
所在なさげにふらふらと歩いていく。
前から歩いてくる男性局員は、その男を気にする風もなく無視して通り過ぎる。廊下の角でぶつかりそうになった
女性局員をひょいと避けながら失礼と頭を下げる男の挨拶は見事に無視される。
足早に通り過ぎていった女性局員を見て肩をすくめた男は、無限書庫の入り口に着くとセキュリティチェッカーに
無造作に手をかざした。
「ID確認 幹部評議会議員マテウス・バウアー卿、入室を許可します」
「ご苦労さん」
 バウアー卿と呼ばれた男は、習慣なのか単なる機械にすぎないセキュリティチェッカーに声を掛けると無限書庫
の扉が開いた。
 無限書庫の無重力空間を縦横に走る通路代わりの梁に腰掛け、目の前にモニターを展開しながら口述筆記を続ける
ユーノは、二本下の右に走る梁の上を危なっかしく歩く男を認めると作業を中断して声を掛けた。
「マテウスさん、ここですよ」
「やあ、ユーノ先生、そこでしたか。ちょ、ちょっと待ってください」
「無理することないですよ。今、行きますから」
 無情力空間に不慣れなのか、上手く飛び上がれずじたばたするのを見かねたユーノは、梁を器用に蹴ると無重力空間
を優雅に飛翔して男の前に降り立った。
「相変わらず見事ですな。さすが大空のエースオブエースの師匠だけのことはある」
「お世辞は結構です。それよりご用件は?」

423:7の1
08/11/15 23:52:48 gbKB4Z19
自分の思い人のことにふれられたユーノは、素っ気ない口調で答えると胸ポケットから取り出した布で、はずした眼
鏡を拭きだした。
「相変わらず見事ですな。さすが大空のエースオブエースの師匠だけのことはある」
「お世辞は結構です。それよりご用件は?」
 自分の思い人のことにふれられたユーノは、素っ気ない口調で答えると胸ポケットから取り出した布で、はずした眼鏡を拭きだした。
「二つありましてね。一つは野暮用で、もう一つはご要望のありました例の件についての資料で・・・」
 レインコートのポケットからディスクの入ったケースを出して手のひらで弄ぶマテウスにユーノは鋭い視線を向けた。
「わかったんですか!」
 懸念していた件についての答えを得たユーノの声は、不安と希望がないまぜになったせいか、若干震えていた。
「ええ、聖王陵の書庫にある埃を被った本に載ってましたよ。ケースは全部で8件、完治率は4件ですから50%、
 まあそれほど分の悪い賭ではありませんね。それにしても、こんな資料、無限書庫にありそうなもんですがね?」
「第3管理世界始原ベルカの収集資料は、無限書庫にほとんどありません。いにしえの時空管理局ですら手を出せなかった世界ですよ
現在の時空管理局が収集できた資料も、聖王陵の許可を得て収集できた歴史書や口碑、伝承、詩歌 の類だけなんです」
 その資料があれば、ここまで悪化することもなかったんだとユーノは心の内で続けた。
「へぇぇ私が管理局に奉職して30年近くになりますが、資料請求の要請なんて一度もされませんでしたがね?
まあ、 私じゃ当てにならないと思われてたんでしょう」
 苦笑するマテウスの手のひらの上でくるくると回りだしたディスクを眼鏡を拭くのも忘れて食い入るように見つめていたユーノは、
にやにや笑いをうかべるマテウスに気づくと、あわてて眼鏡を掛けなおした。

424:7の1
08/11/15 23:55:41 gbKB4Z19
「で、野暮用とはなんですか?バウアー卿」
「なに、たいしたことじゃありません。かねて要請していた評議員就任の件ですよ。お受けいただけますかね。
いや、 誤解なさらないでください。このディスクはお渡ししますよ。なにせエースオブエースの命がかかってますからね」
 手のひらで回していたディスクを一瞬でユーノの胸ポケットに転送させるとマテウスはこれだから、私は駄目なんですがね
とつぶやき、櫛の通ってない髪を右手でがりがりと引っかき回しはじめた。
「評議会入りですか?無限書庫の人員的にも僕が抜けると資料請求作業の遅滞率が30%を超えるんですよ。本局評議会
は無限書庫の機能不全を望んでるんですか」
「正確には32%強ですな。評議会の意としては、個人頼りの無限書庫という体制を改革したい。それには無限書庫の代表者が、
評議会入りして人員の要求や予算の増額に関して発言してくれたたほうが良いというわけです」
「で、無限書庫は評議会の飼い犬になれと・・・」
「聖王教会ーハラオウン閥と見なされるている現状よりはましでしょう」
 JS事件解決の裏の立役者と識者の評価が高いのに3人ほどの人員増なんて常識じゃ考えられませんがねと続けた
マテウスは、髪の毛を引っかき回していた右手でポケットから吸いかけのちびた葉巻を取り出すと指先に浮かべた炎
で火をつけた。
「ここは禁煙ですよ。やめてください」 
「煙は次元の狭間行きです。ご心配なく」
 葉巻から吹き出した煙を転送魔法で次元の狭間にはき出すマテウスを睨み返したユーノは、部下の職員たちの顔を
思い浮かべながら考え続けた。どの部下も寝食の時間を削り、過酷を通り越して拷問としか思えない無限書庫への資料
請求に答えている。それでも請求者たちから、資料に間違いがある、不足がある、要求した項目を満たしていないなど不満や
苦情が絶えない。 そのストレスが原因で管理局を退職したり、鬱を発症して長期療養を要する羽目になった職員たち。
人員さえいれば避けられた事例が何件あったことか
「しかし、ぼくが評議員になったら実務から遠ざかることになりますよ。それでもいいんですか。資料請求の遅滞率は」
「その点は、ご心配なく。かねてご要望のスタッフを当方で用意しておりますから」
「評議会推薦の?忠誠心だけじゃ無限書庫のスタッフは勤まりませんよ。能力と資質がいるんです。その点を理解できている
とは、今までの経緯からして思えませんがね」

425:7の1
08/11/15 23:58:28 gbKB4Z19
 ハラオウン閥と見られているユーノが司書長を勤めている無限書庫の統制を目的として評議会より回された50名の人員が、
わずか1ヶ月後には、過労による病気やストレスによる鬱自殺(ユーノや他のスタッフの関与が疑われたが、
最終的には無実が証明されたが)などで2人しか残らなかった事実を思い返しながら言い返すユーノの口調は苦かった。
「ああ、評議会推薦スタッフの件ですか。ありゃ最高評議会の三無脳が文字通り無能だったことの証明ですな。いまじ ゃ文字通り
”脳なし”ですがね」
 後始末させられたものの身にもなってほしいもんですよと愚痴をこぼすマテウスの口調は皮肉げだった。
「今回のスタッフは、私の推薦ですよ。実力は折り紙付き、なにせ遺跡泥棒のプロフェッショナルで探索魔法にかけては、無限書庫
のスタッフも裸足で逃げ出す連中ですから」
「遺跡泥棒!?」
 いやな汗がユーノの背を伝って落ちる。
「ええ、聖王陵内の墳墓にあるロストロギア発掘を請け負った連中で、その道のプロですからね。捕獲するまで
ずいぶん手間が掛かりましたが、全員、無傷で収監していますよ」
 二本目の葉巻を取り出して火をつけながらマテウスは続けた。
「まだ本局には未通告でしてね。連中もあなたの元なら、喜んで働きたいと言ってるんです。いかがですか?まあ必要ないなら
本局に引き渡しますが、死刑は免れないでしょうねなにせ第一級ロストロギアに手を出したんですからね」
「・・・で、どんな人たちなんですか?こんな過酷な場所で働こうって奇特な人たちは」 
 平静を装うユーノだったが語尾がかすかにかすれていた。

426:7の1
08/11/16 00:00:14 gbKB4Z19
「ご自分で面接されたらどうですかな。連中のプロフィールは、こちらのディスクに入ってます。面接日時が決まったら、ご連絡ください」
「今すぐできますか?こういうのは早いほうが良いでしょう。情報リークの件もありますし・・・」
「スカリエッティのNo2の件ですね。確かドゥーエっていう機械人形でしたっけ?」
「戦闘機人です!彼女たちは人間だ」
 海上施設での社会復帰プログラムの一環としてミッドチルダ史の講義を行ったユーノは戦闘機人と恐れられる彼女たちが、無知にして
無垢の人間であることを知っている数少ない一人だった。それだけにマテウスの皮肉な口調に我慢がならなかったのだ。
激した口調で反駁するユーノをまじまじと見返しすと
「それは失礼。なにせ戦闘機械みたいな連中しか知らないもんでしてね」
 と言い訳したマテウスは、では4時間後に如何ですかと提案した。
「結構です。午後の予定はキャンセルします。場所は、どこです?」
「本局の第7ドックに入港している時空航行艦デートリッヒに収容してます。デートリッヒが積んできた口碑を見学したいとユーノ博士が
申請してくだされば、堂々と彼らに会えますよ。なにせ口碑を発掘した連中ですから」
 じゃあ、これでと手を挙げたマテウスは、ユーノに背を向けると危なっかしい足取りで梁の上を歩きながら闇の中に消えていった。


第一章終了です。 続きは明日上げます。

427:554
08/11/16 00:02:25 gr9Ly5eY
おうっ、先を越された!

一応ルールに則って1:00に延期しますです。

428:名無しさん@ピンキー
08/11/16 00:05:48 lmxyqzfr
GJGJ
待ってまっせwユーノが主役のSSは久しぶりな気がする

429:名無しさん@ピンキー
08/11/16 00:46:31 B2RP8Yi6
>>426
Gj
でもsageた方がいい

430:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 00:59:59 K9WM35jb
1時ぽーーー(ry
こんばんは。 なんつーか、遅くなって申し訳ないorz

さて、残り3話ですよクリニックF。
んで今回の話がプロットを立てたときに一番書きたかったお話です。 どうも私は相当のドSであるようでして。
なんか、スカさんとウーノさんが書いていて悲しいです。 自分で書いているのですが本当に幸せなれるのかと不安になります。
そんなこんなで注意書き行きます。

・カップリングはジェイル(あえてこう表記)×ウーノ
・スカの性格がかなり変化してます。それについては保管庫にある話を参照して下さい。
・なのはキャラはスカとウーノ以外はフェイトくらいしか出ません。よってほぼオリジナルストーリー。
・現在までの話はほのぼのでしたが、今回から作風が百八十度変わります。
・イメージBGMは水樹奈々さんの”through the night”です。 知らなくても楽しめますが、知っているとより楽しめます。
・NGワードは「Clinic F 'through the night' Ⅲ」です。

それでは原案の73-381氏に多大なGJを送りつつ、投下したいと思います。


431:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:00:49 K9WM35jb
 今では何も出来ないのは 動けない冷たい氷の中

 どうにか一人温める人 後ろ姿は悲しい


 何か企んでいるのかと思案しながら歩いていたフェイトだったが、ジェイルに教えられた通り丘を降りてすぐの所に温泉旅館らしき暖簾を見つける。
 周りの建物とは少し違う、木造ではあるがその立派な作りにフェイトはしばし圧倒される。佇まいというか、その歴史の重みというものを肌でひしひしと感じることが出来る。
 例えるならば、見るからに樹齢数百年と思えるような大木に宿っているその雰囲気に似ている。そうだ、力のある者は背中で語るという言葉を前にテレビで聞いたことがある。
 と、遠くで誰かが叫んでいるような声がフェイトの耳を微かに揺らした。その声は徐々にフェイトの方へと近づいてくる。

――さーい!! 待ってくださーい!!」

 自身が降りてきた丘の方を振り返ると、先程まで一緒にいた青年と女性が一目散にこちらへ駆けてくるのが見えた。
 はあ、はあ、と荒い息をしながら、しかしその目には決意という名の光が宿っているように、まだ執務官としては新米である彼女の眼にはそう写った。

「―ぁ、はあ……。えと……」
「フェイトです。フェイト・ハラオウン」
「フ、フェイトさんは、一体何をしにこの町へ? ジェイル先生とはどんな関係で?」

 もっともな疑問だった。低崎の売店のおばちゃんには旅行と称していたが、フェイトとジェイル・スカリエッティの会話を聞いてしまった今となっては旅行という言い訳が通用するとは思えない。
ましてや、外見は完全に外人のフェイトである。いくら日本語が上手いとは言えど、失礼ではあるがこんな辺鄙な街に外国人の旅行客などそうは訪ねて来まい。
 そして、フェイトは彼らをこの町でジェイル・スカリエッティに最も近しい人物達であると先程の会話から判断した。そうならば、ジェイル・スカリエッティの人となりを多少なりとも知っているはずである。例え優しい人間へ心変わりしたのだとしても。
 嘘を付いてもおそらく感づかれる。フェイトの執務官としての本能がそう告げていた。


432:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:01:47 K9WM35jb
「私は警察みたいな仕事をしていまして、その仕事の課程でちょっとジェイル博士に聞かなければならないことがあって、それで来たんです」
「……ジェイル先生を、連行するつもりですか」

 青年が少しくぐもった後に、唸るような低い声を発する。妙に勘の鋭い人たちだな。フェイトは本心からそう思った。
 これだけの情報から自分がジェイル・スカリエッティを捕縛するつもりであることを、よくも感じ取れたものだ。
 フェイトはより一層、洞を吹いても立場を悪くするだけだと、もう一度気を引き締める。

「なんでですか! ジェイル先生、あんないい人なのに」

 女性が声を張り上げる。まばらではあるが、歩いていた通行人が何の騒ぎかと三人の方を振り返る。
 彼と彼女がこうも必死にジェイル・スカリエッティを擁護する理由。それはおそらく、今まで彼は優しい人間を演じ続けていたか、あるいは何かしらの皮を被っていたのだろう。
一方的ではあるが、追い始めてからもうすぐ十年になるかという付き合いだ。そう簡単に性格まで変化するとは思えない。
 しかし、だからといって彼らの主張を足蹴にすることは、フェイトには出来なかった。かつて、自分を母親の呪縛から助けてくれたときの彼女の笑顔が、ふと頭をよぎった。
 私が変われたように、彼らだって変われているかも知れないのだ。
 自分は犯罪者をコケにして興奮を憶えるような特殊な性癖など持ち合わせていない。むしろ、この世から犯罪者など無くなればいいと思っている。自分の食が無くなろうが、構うものか。世界が平和であるならば、その方がよっぽど良い。
 だから、フェイトは彼らの更正をほんのちょっとでも期待し、そしてこのままそっとしてあげたいと思ってしまうのだった。それは執務官にとってあるまじき感情であり、管理局に楯突いていることにもなる。
 だが、フェイトはそんな希望的観測を捨てきれないのだ。彼女がかつてそうであったように、ジェイル・スカリエッティにも今という時間を夢を持って生きようとしていることに。
 それでも、彼女は時空管理局の執務官である。常に法の下に平等で無ければならない立場だ。それを、目の前に立ちふさがる彼らに理解して貰わねばならなかった。

「……彼が、ジェイル博士が何をしてきたのか。それをお聞きになれば理解してもらえるでしょう」

433:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:02:42 K9WM35jb
 それはある意味で禁忌だった。管理外世界で魔法が絡む様々なことを伝導するのだ。一歩間違えば大事になるのは避けられない。
 それでも、フェイトはそうすることで彼らを納得させようとした。フェイトは科白を言い終わった後、義兄に似て堅物になってしまったと自嘲的な溜息を吐いた。
 フェイトが話す内容。それはフェイトの捜査ファイルをそのまま朗読しているようなものだった。無論、魔法関連の事象は暈かしているが、それでも自分が掴んでいる事実ほぼ全てをその話の中に盛り込んでいた。彼らを絶望という形で納得させるには、これしかないのだ。
 ゼスト隊のこと――実験体にされた二人の同志、そしてその子供の悲しき戦いの記録。
 戦闘機人のこと――戦うためだけに生み出された儚き戦乙女たちの惨状。
 聖王のこと――戦力としてなら幼い子供さえも戦いに利用し、苦しめていく。
 彼も、ジェイル・スカリエッティも被害者であるのだ。管理局上層部の思惑によって、結果的にこんな状況まで追い込まれてしまった。しかし、だからといって彼を許すわけにはいかない。
 親友を、部下を、ミッドチルダの全市民を、ここまで苦しめた彼を野放しにしておくわけにはいかない。これは管理局の思いでもあり、彼女の思いでもあった。
 しかしそう思おうとしても、フェイトには彼が他人には思えなかった。自分と同じような境遇を背負い、あるいは発狂してしまったのではないだろうか。もしも、あの時手を差し伸べてくれた人が居なかったら、自分も同じか、あるいは惨めな末路が待っていたことだろう。

――。彼は、人の命など微塵にも思っていない人間なんです」

 フェイトは長い話を終えた。その間、ずっと聞き続けていた青年と女性であったが、フェイトの予想とは裏腹に先程まで持っていた光を未だ失っていない。
 やがて、青年が重い口を開くかのように顔をフェイトの方へ真っ直ぐ向け、ゆっくりと口を開く。

「……だから、どうしたって言うんですか」
「……え?」
「ジェイル先生はジェイル先生です。医療用の機会を作ったり、専門外の牛を助けたり、子供の面倒を見たり、遭難した女の子を助けたり、子供と一緒に親の所へ謝りに行ったり、風邪を引いた母親の変わりに運動会に行ったり、熱中症で倒れた子供を無償で助けたり」


434:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:03:29 K9WM35jb
 青年の紡ぐ言葉に女性が拳を握りしめてうんうんと頷く。

「今日だってそうです。あのケガ、難しいものだったんでしょう? なのにジェイル先生は惜しげもなく最先端の医療を使って治してしまった。そんな人が犯罪者だなんて、人の心を微塵にも思っていないだって? そんな言葉、俺には信じられません」
「私も、今までジェイル先生をずっと見てきました。私は、ずっと助けられてばかりで、それに、すごく頼りになって。私がここで先生を否定してしまったら、私が今まで糧にしてきたことは無駄だったなんて、そんなのあり得ません。だから、私は信じられません」

 フェイトは呆気にとられていた。しかし、表面上は何事もないように取り繕う。動揺した方が負けなのだ、このような駆け引きは。
 しかし、誰が何と言おうとフェイトはあくまで時空管理局の執務官である。情で罪人を許すほど、彼女の就いている職は甘くない。

「……言いたいことはそれだけですか」
「ッ……!」
「何と言われようと、私は私の仕事を果たさねばなりません。ああ、そうそう。明日の夕方は絶対に診療所には近づかないでください。もし来られた場合は武力行使も持さないことを覚えておいて下さい。それでは」

 フェイトはくるりと踵を返して旅館の暖簾をくぐっていく。
 その場には、ただ呆然とした表情で彼女の背中を見つめていた青年と女性がポツリと残されていた。
 既に夕陽は山裾に沈み、満月が夜の到来を知らせていた。




435:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:04:25 K9WM35jb
     □     □     □     □     □



「私は秘書として、そして部下として優秀であったから君を連れてきたんだ。私は君を、愛してなどいない」

 血の滲み出た手をそのままに、ジェイルはウーノを真っ直ぐ見て言った。
 ウーノは唯一の支えであった支柱を失ったのだ。それなのに、そのはずなのに、彼女は依然としてその光を失わず、それどころか微笑みさえ浮かべている。
 その笑みは全ての者に安らぎを与えるかのような、まるで聖母のような笑みであった。

「嘘、ですよね?」
「そんなわけがないだろう。第一――
「耳」
「何だって?」

 唐突にそう呟いたウーノに言っていることがよく分からずジェイルが聞き返す。

「貴方が嘘を付くときはいつも耳が動きます」
「なっ……!」

 不意を突かれたのか、普段の彼からは想像も付かないほど驚愕に染められた顔がウーノの瞳に映る。ジェイルの手は、彼の耳に添えられている。
 そしてそれを見届けたウーノは満足そうに微笑むと、ウーノは態とらしく舌をちょこんと出してみせた。


436:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:05:35 K9WM35jb
「嘘です」
「…………」

 ウーノは相変わらず微笑のままだ。
 しかし、その瞳は悲しみの炎が宿り、彼女の影の部分をいっそう濃くしているようだった。

「貴方は言いましたよね? 優しい嘘は付くけれど、悲しい嘘は付かないと」
「……ああ、言った」
「貴方にとって、これは優しい嘘なのですか?」

 目頭に雫を浮かべながら自分を問いただすウーノに折れ、ばれてしまっては仕方がない、と嘲笑を浮かべてウーノの問いに答えようと、重い口をゆっくりと開く。

「……君には私のことなど気にせずに、檻の外で生きていて欲しい。だから嘘を付いた。本音を言うならば、今もその気持ちは変わらない」

 はあ、と一瞬の溜息。



「君を愛している。それこそ、どうしようもないほどに」




437:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:08:26 K9WM35jb
「ふふふ……」
「何がおかしいんだい?」
「いいえ、何でも。ただ、嬉しいだけです」

 二人でお互いの目を見つめ合い、どちらが切欠だったかも分からずに唇を重ね合う。
 以前のように、異常なまでに顔を赤くしたり、妙に冷静であったり、そんなことは一切ない。ただ、目の前に存在する相手を、ただ見つめ続け、そして深く深く口づけを交わし続ける。
 綺麗に整えられていたはずのシーツは既に皺で所々が段々を形作り、ベッドの上では男と女が互いの唇を貪り合う。
 紳士とおしとやかという表現がよく似合う二人であったが、彼らはそんな体裁じみたことなど気にはしなかった。
 お互いを愛し合い、お互いを感じ合う。それこそ、獣のごとく。
 彼らに残された時間は後僅かしかないのだ。それを、誰が止める権利があるのか。いや、誰が何と言おうと彼らは止まらないだろう。彼らに、自らの瞳に映し出された人間以外のもの全て映ることはないのだから。

「……ドクター」
「ああ、分かった」

 女が悩ましげな声で男の名を呼ぶと、それに応えるかのように彼女の豊かな乳房を揉みしだき始める。
 ジェイルは先程のキスと今の声で既に達してしまいそうだった。彼女の感じ方は彼女のことを知り尽くしたジェイルであっても予想し得ないものであった。
 そして、そんなジェイルの手は既に汗で湿っており、温度は人の温もりを感じさせるような温かさだ。その温もりがウーノの胸を心地よく刺激し、それが心地よさとなってウーノの感覚全てを蝕んでいく。
証拠に、細く開いた口の隙間から絶え間ない嬌声が小さく漏れだしていた。

「っあ……ぁっ……」
「根を上げるにはまだ早いぞ、ウーノ」


438:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:09:14 K9WM35jb
 ジェイルは自らの舌をウーノの胸に這わせ、更にはさくらんぼを啄むように彼女の乳頭を口に含んで舌で転がす。
 ウーノの体もジェイルと同じく汗で湿り、ジェイルの攻めと同じタイミングで体を上下左右に捻り出す。頬は先刻にも増して朱に染まり、瞳はまるで子猫のように蕩けた表情へと変わっている。
 やがて乳房を口に含みながら、ジェイルは手をウーノの股座へと伸ばし、少しの力でちょこんと触れてみる。

「ふぅあっ……!」
「何だ、胸を弄っただけで準備万端じゃないか」
「い、言わな、っああっ! ……いで……っあっ」

 彼女の秘部は少し触れただけで雷で打たれたように体の感覚全てが快感によって押しつぶされ、意識が快楽によって強制的に淫らな方へと変えられていく。
 そんな彼女のうねうねと蠢くそこへジェイルが指を差し入れると、それを待ち望んでいたかのように彼の指を吸い尽くそうと潤滑油がしみ出し、膣内部での呼応によって次第に奥へと導いていく。
 それに応えてジェイルが中指を上下し始めと、それだけでウーノは腰を反らせて大きく喘ぐ。それはジェイルの知っている彼女の姿ではなかった
 何と淫らで、なんと扇情的なのであろうか。ジェイルの目の前で展開される愛欲の宴はそれだけで一種の芸出と言っても言い過ぎではなかった。

「いくぅぅぅぅっっ!! イっちゃいますうぅぅぅっっぅぅぅ!!」

 ジェイルの中指が次第にスピードを上げ、ウーノの中から溢れだしてくる愛液も次第に量を増してくる。
 それは、彼女が徐々に絶頂へと向かっている事への確かな証であった。証拠に、上ずっている声は徐々に途切れ途切れになり、口からはヒューヒューという空気の漏れる音だけが目立っていた。
 それから数秒の後にウーノの腰がくの字に曲がり、惚けた顔で絶頂を迎えたのも多少早かったにしろその前の乱れ方からして別段おかしいことではなかった。


439:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:09:53 K9WM35jb
「ひ、ひゃぃぃ……」
「……少しやりすぎたか」

 絶頂によって湿り、そして火照っている彼女の秘部にジェイルは自らの男根を宛う。それだけで絶頂を迎えて間もないウーノの躰を揺さぶるのには充分すぎる攻撃だった。
 しかし、ウーノの躰へは一向にそれ以上の波紋は訪れない。ジェイルの動きそのものが止まってしまっているのだ。

「……ど、ドクター、い、いれてください……」
「いいのか?」

 何故か執拗に同意を求めてくるジェイル。その瞳には迷いが浮かんでいた。
 それを見抜いたウーノが言う。

「どうしたんですか? いつもならこのまま…………なのに」
「いや、これが最後になるだろうから、キミに優しくしようと思ってだな……」

 最後。その言葉がウーノの脳裏で弾けた。

「……ドクターは私のことを愛していますか?」
「む、無論だ」
「でしたら簡単です」

 ウーノが見せた聖母のような笑み、そしてジェイルにとっての懐かしい笑み。思わず彼は息を呑んだ。

「私は愛された証が欲しい。貴方の、貴方だけのモノだという証が。それこそ、狂うくらいに」


440:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:12:34 K9WM35jb
 ジェイルは呆気にとられた表情から真剣な眼差しに変え、頷く。いつのまにかウーノは彼に押し倒されていた。

「本当に良いのか? 私は止まらないぞ」
「いいんです。最後なんですから」

 覚悟を決めたかのように目を閉じたが、彼女の顔が苦悶の表情に彩られることはない。
 彼とこうして触れあえるのも、これが最後なのだ。そう思うと、彼と過ごした今までの時間の証拠が欲しかった。無かったことにされないような、より強い何かが。
 それが、躰が傷つくことだって良い。機能停止に結びつくことだったとしても良い。とにかく、彼女は彼との時間を否定されることそのものを嫌ったのである。
 やがてその言葉に応えるように、襞を捉えてそのままになっていたジェイルの男根がゆっくりとウーノの膣へと侵入していく。

「っぅ……ふぅ、ん……」
「……いくぞ」

 その言葉の最中もジェイルのモノは進むことを止めず、そして上気し荒く甘い息を吐くウーノの口から「っつぅぅぅっ……!」という一際大きな声が吐かれた。ジェイルの挿入は止まっている。即ち、ウーノの最奥までジェイルの男根が貫いたことになる。
 ウーノはコンコンとドアを叩くようにノックするその存在を己の一番奥で直接感じていたが、止まらないと言った彼の一挙一動は未だにぎこちないままだ。
 ならば、と押し倒されていた体を無理矢理に起こし、その勢いで押し倒していたジェイル自身をも押し倒して、ウーノが彼の上に完全に馬乗りになった。
 その一挙一動にジェイルはただ唖然とすることしか出来ず、押し倒されている状況を把握するのが精一杯であった。

「ウーノ、これは……」
「貴方が積極的になってくださらないから。私はもっと、激しくして欲しいんです」

 そう言うと、ウーノはジェイルの腰に手を置いて、ジェイルの男根を支柱にして自らの体を上下させ始めた。
 その度にじゅぶじゅぶと卑猥な音が彼らの股間から奏でられ、お互いの顔を深紅に染め上げていく。

「っつぅ……ウーノ……!」
「はあっ……! ドクターぁぁぁっっ!!」


441:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:13:46 K9WM35jb
 ウーノが上下する速度は彼らの体の熱さに比例して速くなり、空いていたウーノの胸にはジェイルの手が添えられて形の良い乳房がジェイルの思うがままに変えられている。
 抜けるたび、挿さるたび、だらしなく涎を垂らすウーノの口からは躊躇のない喘ぎ声が大きく漏れだし、自分を襲う快感に顔をしかめるジェイルの口からも荒い息が絶え間なく吐き出される。
 お互いの情欲がお互いを直接染め上げていく。まるで、誰とも知れない誰かにこれは自分のモノだと分からせているかのように。

「っふぅ……! ウーノ……!!」
「っぁああああ……!! ドクタぁぁああっっ!!」

 野獣のごとく交じり合う二人には、もはや誰の声も、どんな音も、耳にはいることはないだろう。
 彼らを縛り付けているのはもうこれで最後だという覚悟。そして、思い出。
 一緒にご飯を食べることも、一緒に研究するのも、一緒に野菜を採るのも、一緒に作戦を練るのも、一緒にこんなことをするのも――一緒に笑い合うことさえも。
 彼らに残された時間は僅かだった。お互いが愛し合い、それを確かめ合う。残された時間で彼らが本能的に選んだ道はそれだった。ただ、お互いを感じ合う。お互いを愛し合う。これからの自分たちの、生きていく糧とするために。
 ウーノが腰を振り続ける中、体を起こしたジェイルはウーノを優しく抱きしめる。それこそ壊れ物を扱うかのようにゆっくりと。
 ジェイルが体を起こすとウーノの体は自然と彼の体へ寄りかかることになる。彼女もまた、なんの戸惑いもなく彼に抱かれ、そして自らの腕も彼の背中へと導いていく。
 まだ、股間から発せられる卑猥な音は止まらない。しかし、暗い寝室の中にうっすらと映し出される影は興奮を指すようなものではなく、一種の芸術であると言った方が正しいほどの美しさであった。
 人間は生まれたままが一番美しいというのは美術家の話であるが、彼らがまさしくそれだった。彼らは、本当の意味で人間だったのだ。
 作られた存在であっても、望まれて生まれてきたわけではなくとも、今彼らは人間だった。その辺にいる人間よりも、よっぽど人間らしかった。

「っあっ! ふぁあっ! うぅあっ!」
「ウーノ……! ウーノ……っ!!」


442:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:14:54 K9WM35jb
 これは自分のモノだと言わんばかりに、ジェイルは白く美しいウーノの首筋に吸い付いて赤い痕を付けていく。
 それを挿入と同時のタイミングでやってくるのだから、ウーノは常に絶頂と隣り合わせの所に置かれることになってしまった。
 彼のモノだという証を付けられるというこの行為をいつもなら気持ちいいと感じるだけだが、今日は何故だか嬉しく思う自分が居ることに今更ながら気づくウーノ。
 自分は彼のモノ。それがこれからずっと変わらない。そう思うと涙まで出てきた。
 ああ、これはこれから離別することになる運命を呪った涙だろうか。こうして彼と繋がっていられることでの安心感からだろうか。それとも、彼のモノだと直接教え込まれた躰が歓喜のあまり流した涙なのだろうか。
 答えは分からない。だが、ウーノは寂しさよりも、嬉しさを感じていた。彼と一つになれたこと。ただ、それだけを。

「……っ!……ウーノ、そろそろ限界だ……!」
「わたしもぉぉっ!! いっちゃいまっぁあああっっ……!! い、いきますすぅぅっっ!!」

 白濁とした液体が自分の中に注ぎ込まれるのを感じながら、ウーノの意識は白く飛んだ。
 その顔は倦怠感がもたらす疲労した顔ではなく、ただ満足そうな笑みが印象的な顔であった。




443:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:16:01 K9WM35jb
↑はミス。 すまんorz

444:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:17:14 K9WM35jb
 これは自分のモノだと言わんばかりに、ジェイルは白く美しいウーノの首筋に吸い付いて赤い痕を付けていく。
 それを挿入と同時のタイミングでやってくるのだから、ウーノは常に絶頂と隣り合わせの所に置かれることになってしまった。
 彼のモノだという証を付けられるというこの行為をいつもなら気持ちいいと感じるだけだが、今日は何故だか嬉しく思う自分が居ることに今更ながら気づくウーノ。
 自分は彼のモノ。それがこれからずっと変わらない。そう思うと涙まで出てきた。
 ああ、これはこれから離別することになる運命を呪った涙だろうか。こうして彼と繋がっていられることでの安心感からだろうか。それとも、彼のモノだと直接教え込まれた躰が歓喜のあまり流した涙なのだろうか。
 答えは分からない。だが、ウーノは寂しさよりも、嬉しさを感じていた。彼と一つになれたこと。ただ、それだけを。

「……っ!……ウーノ、そろそろ限界だ……!」
「わたしもぉぉっ!! いっちゃいまっぁあああっっ……!! い、いきますすぅぅっっ!!」

 白濁とした液体が自分の中に注ぎ込まれるのを感じながら、ウーノの意識は白く飛んだ。
 その顔は倦怠感がもたらす疲労した顔ではなく、ただ満足そうな笑みが印象的な顔であった。



     □     □     □     □     □



 ウーノがやんわりと瞼を開けると、そこにはあの頃のドス黒い笑みを浮かべていた人物とは思えないほどに優しく微笑むジェイルの顔があった。
 躰を見ると彼に付けられたのであろう、虫さされのような赤い痕がある。それを見て満足そうに微笑むウーノの笑顔とても優しいものであった。
 優しく微笑み合う男と女はまさしく夫婦だった。
 ふと、ウーノが呟くように口を開ける。


445:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:18:04 K9WM35jb
「また、こんな日が来ますよ。いえ、絶対来ます」
「……理由は?」
「『夜明けのない世界なんて無いから』 誰かがそんなことを言っていました」
「フッ……フハハハハハハ!! そうだ、それでこそ我が助手、そして我が妻!」
「ありがとうございます」

 あの時のような人を小馬鹿にしたような笑みではなく、純粋な、ただ自分の娘を褒めるかのようで。
 あの時のようなただ機械的な笑みではなく、純粋な、ただ飼い主に頭を撫でられた子犬のようで。
 正式な書類を出したわけでもない。結婚式を挙げたわけでもない。そうではなく真の意味で、彼と彼女は夫婦だった。お互いを尊重し、お互いを想い合う。形ではなく、二人で一人というその存在が、雰囲気が。
 それも明日の夕刻には終わりを告げようとしている。全ては明日の夕暮れまで。そう思うと悲しかった。

「ありがと……ござ、い……っ」
「……泣くな、ウーノ」
「すみませ……う、うわぁぁぁぁぁん!!」

 決して広くはない診療所の中で、ジェイルの胸に抱かれたウーノの泣き声だけが木霊している。とても悲しい泣き声が診療所を包み込む。
 哀愁と悲壮しか感じさせないその泣き声はジェイルの心をも悲しくさせ、ウーノの胸に一粒の水滴が落とさせた。
 そしてその声は診療所を飛び越え、丘の下へも届いていた。




446:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:19:12 K9WM35jb
     □     □     □     □     □



「泣き声……」

 フェイトは宿の自慢だという露天風呂に月光に照らされながら浸かっていた。その姿は月より舞い降りた天女のごとく、しなやかな体のラインに豊満な胸、それに長い髪の毛がより一層彼女の神秘さを引き立てている。
 本来ならば心休まるはずであるこの時も、嫌でも耳に入ってくるこの声を聞きながらでは落ち着くものも落ち着かない。

「どうしたらいいのかなぁ……」

 フェイトは迷っていた。あれだけ彼らの無実を訴えられて動じない執務官がいるとしたら教えて欲しいくらいだ。
 平静では装っているものの、本来冷静沈着とは対極にいる人間である。悪く言えば仕事が出来ない。良く言えば人情捜査官。彼女は他人を詮索するという仕事にはあまり向かない性格をしていた。
 自分はどうしたらいい。先程から頭の中のクロノに話しかけてみるも、反応は無し。どうにもならなかった。
 しかし、彼女は執務官だ。最後には自分で判断せねばならない。ふと、教えを請うかのように闇に美しく光る月を眺める。

「……よしっ」

 何かを決意したかのように目線を鋭くさせると、勢いよく湯船から上がる。
 女神のごとく肢体が月夜の中に浮かび上がる。周りには湯気が立ちこめ、その湯気も相まって彼女を人外なものと勘違いさせるほどの美しさを印象づける。
 彼女の眼にもう、迷いはなかった。



 
 その夜は泣き声とも喘ぎ声とも取れないよく分からない声が、しかし聞いた者の涙を自然と誘うような、そんな声が町のいたる所から聞こえたことが報告されている。


447:Clinic F 'through the night' Ⅲ
08/11/16 01:21:20 K9WM35jb




 ひらひらと舞い上がる 想いを受け止めて

 約束してよ.....


 あの日の場所に連れ戻して 広くても触れあう二人の世界

 もちろん一つ この夢だけ掻き乱さないでいて

 今では何も出来ないのは 動けない冷たい氷の中

 どうにか一人温める人 後ろ姿は悲しい


                                                     to be continued.....




448:554
08/11/16 01:23:46 K9WM35jb
さて、これで残り2話と相成りました。
もう何も言わないよ。 二人のファンの方、申し訳ない。謹んでお詫びします。
だけどハッピーエンドにはするよっ。これから何とか頑張るよっ!
まだまだ先が見えませんが、頑張ろうと思います。

それでは原案の73-381氏に多大なGJを送りつつ、投下を終わります。


449:名無しさん@ピンキー
08/11/16 01:25:50 581y6pHK
>>448
GJ!!
寝る前に見て良かったんだぜ
あと2話頑張ってください!

450:B・A
08/11/16 02:12:31 Rdbz/Po+
>>448
GJ。
ウーノが可愛すぎる。
もう切なくて2人の幸せを祈らずにはいられない。
残る2話でどう決着させるのか気になります。



さて、5分後くらいから投下いきます。

451:B・A
08/11/16 02:24:22 Rdbz/Po+
推敲完了、ではいきます。


注意事項
・非エロでバトルです
・時間軸はJS事件から3年後
・JS事件でもしもスカ側が勝利していたら
・捏造満載
・一部のキャラクターは死亡しています
・一部のキャラクターはスカ側に寝返っています
・色んなキャラが悲惨な目にあっています、鬱要素あり
・物騒な単語(「殺す」とか「復讐」とか)いっぱい出てきます
・SSXネタもあります、未聴の人は気をつけて
・主人公その1:エリオ
     その2:スバル
・タイトルは「UNDERDOGS」  訳:負け犬

452:UNDERDOGS 第五話①
08/11/16 02:25:48 Rdbz/Po+
自身に注がれる複数の視線に耐えられず、スバルは顔を俯かせる。
苦労しながらも追っ手の目を搔い潜り、野良犬に扮していたザフィーラを見つけたスバル達は、
カルタスの治療のために彼らが拠点としているクラウディアへと招かれた。
懐かしい面々と再会したのに、あまり喜ばしい気持ちにはなれなかった。迷惑をかけまいと自分から出て行ったのだ、
気まずくて当然である。

「たった1人で局の関連施設への破壊工作。よくも生き残れたものだ」

この3年間の足取りを手短に説明されたクロノは、呆れたように顔をしかめる。
ロクな支援も得られないまま、現地調達の部品でメンテナンスを繰り返しつつ重要施設に潜入、情報を集めた後に破壊する。
言葉にするのは簡単だが、凄腕の武装局員でも難しいことだ。人よりも無茶の利く機械の体に高い生存能力、
そして彼女のISがあったからこそ今日まで生き残ってこれたのだ。最も、そのおかげでスバルの体は目に見えてボロボロになっていたが。

「あの、カルタスさんのことですが・・・・・・・」

「ああ、それに関しては少々問題があってね」

「問題ですか?」

「簡単なメンテナンスくらいならこちらでもできるわ。協力者のおかげで、私達も戦闘機人の取り扱い方がわかってきたから」

シャマルの言葉が終るか終らないかの内に、会議室の扉が開いて茶髪の少女が姿を現す。
見覚えのあるその姿に、スバルはイクスを庇うように彼女から距離を取る。

「お前、ナンバーズの・・・・・」

「スバル、彼女は味方よ」

「初めまして、ゼロ・セカンド。直に話をするのは初めてですね」

恭しく一礼した彼女の名はディード。かつてはスカリエッティの手先として機動六課の前に立ち塞がり、
最終決戦においてティアナと対峙した戦闘機人だ。

「何で、お前が・・・・・・・」

「彼女もメンバーの1人だ。3年前に機動六課が保護したナンバーズは、治療中の1人を含めて3人ともクラウディアに乗船している」

「お見知りおきを、ゼロ・セカンド。それとも、スバル姉様とお呼びした方がよろしいですか?」

問いかけるディードに、スバルは無言で返答する。大切な家族をスカリエッティによって奪われたスバルに、
その配下であった者に良い感情は抱けという方が難しい。だが、少なくともクロノ達は彼女を信頼しているようだ。
スバル・ナカジマという異物が現れたことによる張り詰めた空気が、彼女の登場でほんの少しだけ和らいだ気がする。


453:UNDERDOGS 第五話②
08/11/16 02:26:42 Rdbz/Po+
「ディード、検査の結果を」

「はい。結論から述べますと、修復は不可能です。幾つかのパーツはストックがありますし、私やオットーでも修理可能ですが、
基礎フレームの修復まではできません。人工臓器も幾つか取り換えねばなりませんし、ちゃんとした知識のある人間でなければ施術は困難でしょう」

「やはりか。なら、多少の危険を覚悟してでも奪ってくるしかないか」

何やら考え込むようにクロノは瞼を閉じ、数秒置いてからスバルに向き直る。

「彼の治療は全面的にこちらで引き受けよう。ただし、今後は君が我々に協力してくれることが条件だ」

「良いんですか、わたしみたいなのがいても」

「ナカジマ二等陸士、私達は何も戦闘機人を排斥したいわけじゃない。あくまで敵はスカリエッティ、そして公然と人道に反している管理局だ。
現にディードのように戦闘機人がメンバーに加わっているし、実弾デバイスを使用している者もいる。それに敵は強大だ。
情けない話だが、今のままでは勝ち目は薄い。だから君のように優秀な者の力が必要だ」

「戦闘機人の力をですか?」

「スバル!」

あまりにも辛辣な言葉に、今まで黙っていたティアナが声を荒げて立ち上がる。
だが、彼女がスバルに掴みかかるよりも早く、彼女の傍らにいた少女の平手がスバルの頬に飛んでいた。

「・・・!?」

「すみません。ですが、そのような言葉はあなたらしくありません」

鋭い目つきでスバルを睨んでいるのはイクスだ。さっきまで怯える様に縮こまっていたのに、今はその面影は微塵も感じられない。
ただの傍観者でしかなかった彼女が、一転してこの場を支配する主役へと変化していた。

「スバル、この方々はあなたの仲間なのでしょう。ならば、卑屈になるのは止めてください」

「けど・・・・・・・」

反論しようとするスバルの額に、イクスは容赦なく自分の指を叩きつける。俗にいうでこピンという奴だ。

「・・・!?」

「おバカな子にはでこピンです」

「・・・・そう、でしたね」

「もう少し信じてあげては如何ですか? 少なくとも、スカリエッティを憎む気持ちはみんな同じなのでしょう」

「すみません。けど・・・・・・いえ、そうですね、こんなのはわたしらしくないや」

頭を振り、スバルはクロノに向き直る。彼女の脳裏に蘇ったのは、前にカルタスが言ってくれた言葉だ。

『汚れた手でも、抱きしめることはできる』

復讐が目的だからといって、孤独でいる必要はないのだ。
自分の戦いは正義のためではない。そんな風に決めつけて、安っぽい正義感に押し潰されるのを避けていただけだ。
けど、どんなに誤魔化しても自分の本心は曲げられない。スカリエッティは許せないし、できることなら人殺しはしたくない。
それは偽善かもしれないし、自分の甘さなのかもしれない。けれど、どっちか捨てることなんてできないのだ。
どっちも自分の中から生まれた気持ちに違いはない。なら、とことん貫いてみるのも良いかもしれない。


454:UNDERDOGS 第五話③
08/11/16 02:27:35 Rdbz/Po+
「正直に言います。わたしはスカリエッティが許せない。もしもチャンスがあるのなら、この手であいつを殺したい。
それでも・・・・・・・構いませんか?」

「良いだろう。歓迎しよう、スバル・ナカジマ二等陸士。ようこそ、我らが家、クラウディアへ」

クロノは立ち上がり、握手を求めて右手を差し出す。だが、スバルはその手を掴もうとして一歩踏み出した瞬間、
バランスを崩して前のめりに倒れ込んだ。咄嗟にティアナが駆け寄って支えなければ、テーブルに頭をぶつけていたかもしれない。

「スバル!?」

「大丈夫・・・・・・少し、よろめいただけだから・・・・・・」

「今日までの疲労が一気に出たんです。本当は、あなただって診てもらわないといけないのに」

「提督、スバルを医務室まで連れて行きます」

「ああ、頼むよ」

ティアナの肩を借り、スバルは会議室を後にする。1人残されたイクスは、どうしたものかと困惑気味に周囲を見回した後、
無言で一礼して彼女達の後を追った。何と言うか、不思議な少女だ。毅然とした態度を取ったかと思えば、
年相応の少女のような反応も見せる。子どもの頃のなのはやフェイトを見ているようだと、クロノは思った。

「とりあえず、協力はこぎつけられたか」

「ご苦労さまです、提督」

「こういうのは僕の性分じゃない。彼女がいなかったら、どうなっていたものか」

「不思議な娘ですね、あの娘。けど、どこかで会ったことあるような・・・・・・・・」

「知り合いかい?」

「いえ、多分人違いです。私が彼女と会ったのは大昔の戦場ですから、他人の空似でしょう」

「そうか。それじゃ、大至急エリオとギャレットを呼んでくれ。襲撃計画を立てなきゃいけない。
場合によっては、君やザフィーラにも動いてもらうかもしれない」

「了解。マリエル技師官奪還大作戦ですね」

「いいや、悪党らしく誘拐させてもらうのさ」





クラウディアの内部は見た目に違わず非常に広く、通路も数人が横に列を成しても歩けるように造られている。
天井に至っては空戦魔導師が空中戦を行えるくらい高く造られており、艦内に敵が侵入された場合の白兵戦も考慮されて設計されているのだろう。
だが、艦内の広さに反してすれ違う人間は疎らだった。ほとんどの乗員が何かしらの仕事をしているのもあるのだろうが、
それ以前に乗り込んでいる人間自体が少ないのだ。3年前と比較して、明らかに人員は減っている。


455:UNDERDOGS 第五話④
08/11/16 02:28:15 Rdbz/Po+
「相手は戦闘機人に人造魔導師、無傷で生還する方が難しいわ。非戦闘員は残りたいって人以外降ろしちゃったし、
今じゃ食事を作るのも当番制なのよ」

「ははっ、シャマル先生の料理だけは食べたくないなぁ」

「艦長命令で禁止されているわ」

乾いた笑みが高い天井に響いて反響する。
3年前の決戦の時以上に、ここでは死というものが身近にある。隣で肩を貸してくれているかつてのパートナーも、
ひょっとしたら明日にはいなくなっているかもしれない。或いは、肩を借りている自分自身が。

「ティア・・・・・ヴァイス陸曹と会ったよ」

「・・・!」

「ううん、顔は見ていない。けど、空の上から狙撃してきた人がいるんだ。あのヘリの形、ストームレイダーに似ていた。
ティアの言っていたことが本当なら、きっとカルタスさんを狙撃したのは・・・・・・・・・」

「止めて」

感情を押し殺したような声で、ティアナはスバルの言葉を遮る。
ヴァイス・グランセニックは機動六課でヘリのパイロットをしていた男性だ。陽気だがどこか陰のある男で、
危なっかしい新人であった自分達をいつも見守ってくれていた。また、武装隊出身で狙撃に関してはエース級の実力を持ち、
その経歴を知ったティアナは同じガンナーとして尊敬のような思いを抱いていた。だが、彼は自分達の前から姿を消した。
あの決戦の時、ティアナはディードを始めとする3人の戦闘機人と対峙し、後一歩というところまで追い詰めていた。
だが、長時間の戦闘の疲労によって不意を突かれ、背後に回り込まれてしまった。その時、ヘリに乗って上空を飛んでいた
ヴァイスはティアナを守ろうと長距離狙撃を行ったのだが、撃ち出された魔力弾はディードではなくティアナの右目を誤射してしまった。
それでもティアナは辛うじてディードの攻撃から身を守り、他の2人を取り逃がしたものの戦闘に勝利することはできた。
だが、ティアナの右目を誤射してしまったヴァイスが乗っていたヘリは墜落してしまい、ヴァイス自身はそのまま消息不明になっていたのだ。

「きっと、何か事情があるのよ・・・・・・・でなきゃ、ヴァイス陸曹がスバル達を傷つけようとするはずない」

「ティア・・・・・・・」

かける言葉が見つからず、スバルは押し黙る。
その時、通路の角からエリオが現れ、スバルと鉢合わせの格好となった。

「・・・・・スバルさん」

「久し振り・・・・・・エリオ」

気まずい沈黙が場を支配する。
3年前ならスバルの方から話しかけていた。他愛のない冗談にうぶなエリオが頬を赤らめ、照れながら抗議する。
そんな2人をキャロが楽しそうに見つめていて、ティアナが辛辣なツッコミで調停役に回る。
それが彼女達の日常だった。
だが、それは3年前に崩壊した。
そして、スバルとエリオの間には、埋めようもない齟齬が生じているのだ。

「失礼します」

一礼し、エリオは早足でその場を立ち去ろうとする。だが、スバルは苦しげに呻きながらもそれを制した。

「まだ、救おうとしているの?」

「・・・・・・ダメですか?」

感情のこもらない凍えるよう返答。
エリオが命を賭けて成そうとしていることのはずなのに、そこには熱意が感じられない。
まるで天井に反響する声のように空虚な響きがそこにあった。

456:UNDERDOGS 第五話⑤
08/11/16 02:29:21 Rdbz/Po+
「本当に、それがしたいこと?」

「それがキャロの願いです」

「エリオはどうしたいの?」

「キャロの願いを叶えます」

「・・・キャロのため?」

「はい」

迷うことなく、エリオは答えた。しかし、その表情は目に見えて辛そうだった。
握り締めた拳はふるふると震えており、視線も定まっていない。まるで自分に言い聞かせているみたいだ。

「エリオは、憎くないの?」

「憎む? 誰をですか? 何のために? それが何になるって言うんですか?」

「楽になれるよ、今よりは」

「憎しみは何も生みません。恨んじゃいけないんです」

「それでエリオは救われるの? 自分を押さえつけて、強い思いで羽交い絞めにして!?」

「復讐したって、スバルさんは救われないじゃないですか!?」

拳を壁に叩きつけ、エリオはスバルを睨みつける。
鈍い痛みが走ったが、気にはならなかった。それよりも、スバルの問いかけの方が遙かに堪える。
彼女の言葉を許容してはいけないと、エリオの中の誰かが告げている。

「誰かを傷つけても、虚しいだけです。自分から手を伸ばさなきゃ、何にも変わらないんです。
一人ぼっちのままなんですよ、ずっと!」

「それでもわたしは、自分に嘘だけはつきたくない。ううん、ついちゃいけないって、最近やっとわかってきた」

エリオの視線を、スバルは真っ向から迎え撃つ。
一触即発の気配が漂い始め、傍らのティアナは口を挟むこともできずにうろたえるしかなかった。
幼少の頃に兄を犯罪者に殺された彼女には、2人の言い分のどちらも理解できたからだ。
スバルが言うように相手を憎めば、少なくとも気持ちは楽になる。
エリオが言うように憎しみからは何も生まれない。仇を討っても死んだ人は蘇らないし楽しかった日々は戻ってこない。
お互いに大事な人を失いながらも、2人は正反対の答えに辿り着いていた。

「あの・・・・・・・」

そんな張り詰めた空気を破ったのは他でもない、イクスであった。

「無関係な私が口を挟むのはおこがましいことかもしれませんが、一言言わせてください」

「イクス?」

少しだけ緊張した面持ちで、イクスはエリオに向き直った。
透き通った緑色の瞳には、険しい表情を浮かべてエリオの顔が映っている。


457:UNDERDOGS 第五話⑥
08/11/16 02:30:17 Rdbz/Po+
「子どもは、泣いても良いのですよ」

「・・・・・・・・・・」

「辛いのなら泣いて良いし、苦しいのなら叫べば良い。違いませんか?」

「泣いても何も解決しないし、叫んだって何も変わりません」

「けど、後悔し続けるよりは良いと思います。一歩踏み出す勇気があなたにあるのなら、認めてください」

意味深な言葉で締めくくり、イクスは医務室へ向かうようにスバル達を促す。
向けるべき怒りの矛先を失ったエリオは、戸惑いながらもイクスを呼び止める。
最後の言葉は、エリオの心に深々と突き刺さっていた。自分でも見ようとしていなかった本心を、
無関係な赤の他人である彼女は意図も容易く見抜いていたのだ。

「君は、いったい・・・・・・」

「私はイクスヴェリア。スバルの友達です」

作り物めいた美しさと高貴な佇まいに、エリオは思わず息を飲んだ。
彼女の儚げな微笑みは、重傷を負って今も苦しんでいるフェイトとよく似ている気がしたからだ。





扉の前に立ち、チンクは自分の格好に不備がないかを確認する。
袖を通しているのはいつもの戦闘服ではなく、大人っぽさと可愛らしさが同居した子ども用の外出着だ。
片手には利便性も何もない小さなハンドバック、念入りにシャンプーした銀髪からは仄かにフローラルな香りが漂ってきている。
問題ない。全て、彼の記憶の通りだ。
緊張を解すかのように頬を叩き、チンクはインターホンに指を伸ばす。

『今、開ける』

スピーカー越しに聞こえた男の声に、チンクの鼓動は一瞬だけ高鳴った。
情けない話だが、百戦錬磨の戦闘機人である自分がたった1人の男と会話を交えようとしているだけで緊張しているのだ。
程なくして、ジャージ姿の茶髪の青年が姿を現す。その男はチンクの顔を見ると、何故か安心したかのようにホッと胸を撫で下ろし、
彼女を部屋へと招き入れた。

「悪いな、前もって言ってくれていればこっちから迎えに行ったんだが」

「いや、別に気にするな・・・いや、しないで良いよ」

いつもの尊大な口調が出てしまい、慌てて言い直す。
男は特に気にしていないようで、冷蔵庫からオレンジジュースを取り出してコップに注ぎ、椅子に座ったチンクの前に差し出した。



次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch