☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第88話☆at EROPARO
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第88話☆ - 暇つぶし2ch300:名無しさん@ピンキー
08/11/11 23:57:30 uPlwBbO3
>>299
地名を聞いてるなら公式で出てないことに関してはなんとも言えん

301:名無しさん@ピンキー
08/11/12 00:05:19 aAhuCd+w
>>299
あえて言うなら、スバルはクラナガンで親元を離れていて、
エリキャロは61管理世界で暮らしているってくらいか。

SSXから俺がわかる範囲はこんだけ。

302:名無しさん@ピンキー
08/11/12 01:08:29 z91MMq2V
>>299
あそこって全寮制じゃなかったっけ?
無限書庫まで気軽行き来できる距離みたいだが

303:名無しさん@ピンキー
08/11/12 01:32:50 aAhuCd+w
>>302
クラナガンから快速レールウェイで1時間でいけるミッションスクールらしい。
それ以上はわからん。
ちなみにミッションスクールというのはキリスト教関連の組織が設立した学校法人のことだが、
あの世界では多分、聖王教会関連の学校がミッションスクールなんだろうな。


304:299
08/11/12 01:35:24 5MexaYMD
きっちりしてないようなので、好きにいじれるのだと都合よく解釈しときますね
どうも有難う

305:名無しさん@ピンキー
08/11/12 01:38:02 r/Xqjc6u
>>301
ん、特救隊って首都の南部港湾地区に有るんだっけか
てっきり自分はミッド全体の南の方かと思ってた

306:ザ・シガー
08/11/12 19:21:08 XsCezwUf
>>71
>>72
ウホ! 良い感想♪
嬉しいこと言ってくれるじゃないの、それじゃあとことん喜ばせてやらないとな。

という訳で、25分まで見直ししたら投下するぜ。
レジアス×なのはの「ある中将と教導官の日々」の最新話だ!!

307:名無しさん@ピンキー
08/11/12 19:26:03 rgeVcrWI
おおおおおっ!!!!
待ってやすぜ!

308:ある中将と教導官の日々
08/11/12 19:26:41 XsCezwUf
ある中将と教導官の日々7


レジアスへの淡い恋心を自覚して、なのはの心に一つの波紋が生じた。
19年の人生の中で初めて異性に恋を抱き、そして彼の心は亡き妻に縛られていると知り、恋というものに未成熟な心に激しい恋慕と深い嫉妬が同時に生まれる。
そしてなのはは思う、“彼が欲しい”と。
少女は性質の異なる二つの炎を胸に燃やしながら、携帯端末で相部屋の親友にメールを入れた。
内容は“今夜は外で食事をする事”そして……


“今夜は帰らないかもしれない”という事を。





夜の帳が下り、暗黒が覆い始めた街には空に星が、地には街灯が明かりを灯し始める。
太陽が消えた夜の世界で二人の男女が歩いていた。
一人は長く艶やかな栗色の髪をサイドポニーに結った女性、機動六課スターズ隊長高町なのは。
そしてもう一人は恰幅の良い大柄な男、地上本部所属の中将、レジアス・ゲイズ。
二人は寄り添い、レジアスがなのはを支えるように歩いていた。
なのはの歩きはフラフラの千鳥足で、とてもじゃないが一人で歩くのは困難だった。
二人の近くに寄れば、朱に染まった頬とその吐息に混じるアルコール臭で彼女が酔っ払っている事がすぐに分かるだろう。


「大丈夫かね?」
「ええ……ぜんぜんだいじょうぶですぅ」
「足がフラフラだが?」
「だからへいきですって……」


どこが平気なのか、レジアスはもう一度問おうと思ったが、どうせ徒労に終わると思ったので止めた。
どうも彼女の様子は一緒に夕日を眺めた時からおかしかった。
なんと言えば良いのか、自分に向けられる視線に絡み付くような熱が込められている気がする。
公園で夕日を眺めた後、二人はそのまま夕食を共にしたのだが、なのはは飲めもしない酒ばかり注文しては次々にグラスを空にしていった。
たっぷりとアルコールを摂取した少女はすっかり酔っ払い、足元もおぼつかない状態に陥る。
そして今、こうしてレジアスの肩を借りてなんとか家路についている途中だった。
正直な話、少女の柔らかな肢体の感触と甘い香りに彼の中の色々なモノが暴走しそうだったが、それは鉄壁の理性が必至に制御している。
しかし、まるでレジアスの葛藤を知っているかのようになのはは時折蠢いては自分の身体を彼に摺り寄せた。
その度に中年中将の心の中では脳内アインヘリアルが極大砲撃を連発していた。
だがレジアスの努力も虚しく、状況は彼をさらなる窮地へと追い込む。
ポツンと音を立て、彼の頬に冷たい水の雫が落ちた。


「これは……雨か」


冷えた夜の大気が呼んだのか、いつのまにか曇天となった空がまるで嫌がらせのように冷たい水滴を人々に与える。
レジアスは降り注ぐ雨に顔をしかめながら周囲を見渡す。
今の時節は夜になるとかなり冷え込む、傘も差さずにいれば風邪を引くのは眼に見えて明らかだった。
どこか雨宿りできる場所を求めて彼は当たり一帯に目をやるが、そこに映るのはどれもホテルばかり。
正直、酔いの回った若い娘を連れ込めるような場所ではない。
だが悩んでいる時間がないのもまた事実。
レジアスは、さながら若い頃に大規模な暴動を鎮圧する任務に当たった時のような焦りに駆られていた。
しかし、その時少女の口からとんでもない一言が飛び出す。


「レジアス中将……」

309:ある中将と教導官の日々
08/11/12 19:27:56 XsCezwUf
「ん? なんだね?」
「……ホテル入りましょ」
「ナ、ナニを言っているんだっ!?」


正に驚天動地、レジアスは顔を真っ赤にしてアタフタと大慌てする。
辣腕中将の普段は決して見せない姿はそれなりに笑える光景ではあったが、本人からすれば堪ったものではない。
だが彼のそんな様など露知らず、なのははどこか憂いを帯びた切なげな瞳で彼に哀願した。


「だって寒くて……ダメですか?」


涙目&上目遣いの少女の哀願、これを断ったら男で無い、否! 漢(おとこ)ではない!!
そしてレジアス・ゲイズは男の中の漢である、これに応えぬ道理はない。
彼ができるのは、ただ彼女の要求に従ってホテルのロビーに足を進める事だけだった。





訪れたホテルの部屋は値段の安いビジネスホテルにしてはそれなりに良い部屋だった。
間取りも広く、床もベッドも実に綺麗に掃除が行き届いている。
従業員の質が伺える手入れに感心しつつ、レジアスはひとまずベッドに足を進めて今まで肩を貸してたなのはを横にした。
屈強な体躯を誇るレジアスからすれば軽いとは言えど、長時間人一人の体重を支え続けた老体は少しばかり悲鳴を上げていた。
なのはを寝かせた隣りのベッドに腰掛けた彼は軽く肩を回して一日の疲労を感じる。
そして、とりあえず上着を脱いでひと段落しようと……


「っと、いかん! ナニをやっているんだ私は!」


……はしなかった。

正直言って今の状況はヤバ過ぎる、危険度1000パーセントだ。
中年の政府高官が階級が下のうら若き乙女をホテルに連れ込む、客観的な見地で考えれば超ド級のセクシャルハラスメントである。
もし週刊誌にでも嗅ぎつけられたらそれだけで身の破滅は免れない、社会的な地位を全て失うは必定。
今まで積み上げてきたミッド地上の秩序の守護者と言うイメージは崩壊し、ただのエロオヤジへと成り果てるだろう。
それだけはなんとしても避けねばならない事態だった。
地上の平和の共に誓い合った親友の為に、自分を信じてくれる部下やミッド地上の市民の為に、そしてなにより最強最悪に嫉妬深い実の娘やあの世の妻の為に。
故に彼の取る行動は一つ。
今すぐ部屋を出てフロントへ行き、部屋の料金を先に支払い、何事もなかったように家に帰り、娘にお休みのキスをしてベッドに飛び込む事。
その過程を数秒で超高速シュミレーションして反芻すると、レジアスは即座に行動を開始した。
一度脱いだ上着を羽織り、ドアに向かって足を進める。

だがそんな彼の進路を阻む緊急事態が発生。
上着の袖を何者かが掴み、彼の進行を阻止したのだ。
レジアスはまるで悪魔に捕まった人間の如く焦りと恐怖駆られた表情で振り向く。
そしてそこには、サイドポニーに結われた茶色の髪を揺らす美少女教導官の姿があった。
アルコールの為か、それともレジアスと密閉した空間に二人きりという状況への興奮の為か、なのはの頬は鮮やかな朱色に染まっている。
瞳はトロンと潤んで切なそうに物欲しそうに、とても処女とは思えぬほどの蟲惑的な魅了を持って彼を見つめていた。
ボタンを肌蹴た胸元から覗く胸の谷間と相まって、今のなのはは破壊力の塊、男と言う生命体を狂わす魔毒に他ならない。
レジアスは反射的になのはから視線を反らした。とてもじゃないが、今のなのはの瞳を見つめて理性を保つ自信がなかった。
だが彼のそんな葛藤など露知らず、なのははその瑞々しい桃色の唇を蠢かし妖しく言葉を紡ぎだす。


「……どうして行っちゃうんですか?」

310:ある中将と教導官の日々
08/11/12 19:28:56 XsCezwUf
「い、いや……そのだな……あ、あ、明日も仕事があるし……流石にこんな状況で男女が二人きりというのは……なんだ、その、問題がだな」


汗だくでしどろもどろになりながら必至に弁明するレジアス。
その姿はとても公衆の面前で演説する時の威厳や気迫など欠片もなかった。
おそらく、彼がここまで狼狽する様を見た人間など数えるほどしかおるまい。
普段は厳格で知られる彼の意外な一面に、艶めいたなのはの雰囲気が少しだけ和らいだかに見えた。
だがそれも一瞬、少女の顔はすぐに淫蕩さを含んだ妖女へと変わる。


「その……私、今日はもうここで過ごしたいんです……酔いも酷いし……でも一人は心細くて……」


思わず庇護欲をそそるような弱弱しい表情と言葉、そしてその中に溶け込んだ妖しさは形容し難い引力を誇っていた。
昼間は可憐で天真爛漫だった少女が見せる媚態にレジアスは思わず息を飲む。
昼と夜で違う顔を見せる、それはまるで太陽と月に彩られる空のようだった。
そして、艶やかに濡れた少女の唇は続く言葉を紡ぎだした。


「……今夜は……今夜一晩は私と一緒にいてください……」


レジアスの服の袖を掴みながら、なのはは上目遣いに彼の瞳を覗き込み哀願する。
潤んだ少女の瞳がもたらすその魔性めいた力に男は頷くことしかできなかった。





ホテルのバスルームに入れば何も纏っていない肌にゾクリと肌寒さが走った。
季節は既に上着無しでは外に出れないような時分であるだけにしょうがない事ではある。
少女はシャワーのコックを捻り、熱い湯を己が裸身へと注いだ。
かなり温度設定を高く設定しているのかバスルームには濛々と湯気が立ち込める。
湯の熱に白く澄んだ少女の肌は徐々に桃色に変わっていった。
体内に摂取したアルコールのせいか、いつもよりも紅潮している彼女の肌はどこか艶めいていて、とても処女とは思えぬ色香を放っていた。
酒の残り香と熱湯の温度、この二つだけではなく恋しい思い人と二人だけで過ごす事への興奮がさらなる燃料となって、少女……高町なのはの身体は芯から熱く滾っていく。
だが、燃え滾るような身体とは正反対に彼女の心は氷のように冷たくなっていた。
それは全て、自分自身を軽蔑する自虐の心が故に。


「わたし……さいていだな……」


シャワーを浴びながら、水滴が床を叩く音に溶けるような小さな声でなのはは呟いた。
今日の……いや、今の自分がしている行為に少女は自身を軽蔑する。
酒の力を借りて彼を誘惑し、挙句の果てはホテルに連れ込んで一晩共に過ごすように強要。
責任感の強くて優しい彼が、今の自分の頼みを断れないと分かっていてここへ誘った。
酔いのせいにしてはいるが、半分は計算ずくの行動である。
それは、とても普段の自分からは想像もできない良識を逸脱した行いだ。


「どうして……わたし……どうしてこんなことしてるんだろ……」


なのはは湯気に曇るバスルームの中、自虐と自問を繰り返す。
レジアスへの恋心を自覚してから、彼女の心はおかしくなった。
狂おしい愛しさが胸を甘く焼き、彼の口から出た亡妻の存在が嫉妬と憎悪を煽る。
産まれてこの方恋の一つも知らなかった乙女には制御不可能なあまりに強すぎる二つの感情。
彼女の心は混乱の極みだった。
今すぐ彼に想いを伝えたい、卑しい想いを募らせる自分が恥ずかしくて顔を見るのが辛い、亡き妻の事など忘れて自分だけ見て欲しい。

311:ある中将と教導官の日々
08/11/12 19:29:31 XsCezwUf
数多の思いが混ざり合い、思慮は深い闇へと堕ちる。

一体どれくらいそうしていたのだろうか。
混沌とした思慮に沈む中、いつしかなのはの身体は浴び続けたシャワーで真っ赤に火照っていた。
茹るように熱くなる身体に脳髄まで溶けるような錯覚を感じ、シャワーのコックを捻ってお湯を止める。
熱くなった身体からは湯気が立ち上っており、彼女の身体がどれだけ熱を帯びたか良く分かった。
なのはは思う“考えても無駄だ”と。
そして今はただ、この混ざり合った混沌に身を任せようと少女は決意した。

濡れた身体をタオルで拭くと、置いてあったバスローブに袖を通す。
桃色に染まった肌を覆い隠す純白のヴェール、火照った身体を包む布地との温度差になのははゾクリと心地良い感覚を覚えた。
そして唇から一度息を吐き出すと、少女はドアに手をかけた。
僅かに軋む蝶番の音と共にバスルームを出れば、ベッドに腰掛けたレジアスの視線がなのはのそれと空中で絡み合う。
数瞬の沈黙、見つめあう瞳と瞳、互いの思考が空白で埋まるのが分かる。
そして、最初に口を開いたのはなのはだった。


「あの……シャワー、先に使わせてもらいました」
「あ、あ、ああ、そうか」


なのはの唇から紡ぎだされる言葉に、レジアスは顔を真っ赤にして狼狽しつつ答える。
彼女の放つ言葉の残響はいつも聞く優しげな響きと打って変わった艶を帯びており、ストレートに下ろされた濡れた髪やバスローブから覗く美しい太股のライン等と相まってレジアスの心を容易く掻き乱した。
彼の反応になのはは少し嬉しくなった。
男性へのセックスアピールに今まで一度たりとも縁のなかった自分だが、少なくとも今は彼の心を動揺させるだけの艶を持っているらしい。
胸の内に沸きあがる女としての悦びに、なのはは生娘とは思えぬ深みのある艶美なる微笑を浮かべながら口を開いた。


「中将も……どうですか?」
「い、いや! 私は結構だ! 明日も早いしもう寝る!!」


これ以上なのはの艶姿を見ているのが理性的な問題で耐えられなかったのか、レジアスはそう言い切ると彼女に背を向けてベッドに潜った。
鋭い本能と数多の経験が彼に脱衣と言う隙を許さない。
レジアスは、これ以上身体を熱くしたら本当に何か取り返しの付かない間違いを起こしてしまいそうで恐かった。
だからそうならないように、こうしてベッドに潜り込み必死に雑念を払おうとする。
彼の頭の中では昔銭湯で見た親友の屈強な肉体や部下の男の身体をイメージして煩悩に対抗、なんとかして先ほど見たなのはの美しい姿を消し去ろうと努力した。
だが皮肉にも、意識すればするほど目に焼きついた少女の肢体が鮮明に思い浮かぶ。
艶やかで長い栗色の髪、思わず美味しそうだと思ってしまう桜色の唇、どこまでも澄んだ美しい瞳、磨き抜かれた白磁の如く白い肌、女性らしい起伏に満ちた悩ましいまでのボディライン。
その全てがあまりにも美しかった、これは意識して忘れられるものではない。
思い起こせば、彼女の甘く芳しい香りが脳裏を過ぎる……いや? むしろ実際に漂ってくるような気さえする。


「んっ!?」


そう思った刹那、レジアスは背後に近づく妖しげな気配に気付いた。
自分の後方、被ったシーツの向こう側に“何者か”がいるという確かな確信がある。
そして、鼻腔が溶けるかと思えるほど艶めかしい甘やかな芳香が漂ったかと思えば、次の瞬間レジアスの眠るベッドの中にその何者かが侵入してきた。
中将の巨体にほんのりと温かい微熱を帯びた柔らかな感触が服越しに伝わる。
言い様の無い至福の柔らさを誇る二つの肉の塊が背中に押し当てられたかと思えば、聞き慣れた、されど今日初めて聞く声色の澄んだ声が響いた。


「……中将……ちょっと、お邪魔しますね」

312:ある中将と教導官の日々
08/11/12 19:30:17 XsCezwUf
「たたた、た、た、高町空尉!?」
「少し寒くて……ベッド……ご一緒させてください」


とても処女とは思えぬ大胆さ、あろう事かなのははバスローブのみを身に纏っただけの危険と色香極まる格好でレジアスのベッドに侵入工作を慣行したのだ。
シーツの中、少女の肢体がさながら妖しき蛇のように男に絡みつく。
太く逞しいレジアスの腕や足になのはは自身のそれを絡ませて存分に肌で味わった。
常の彼女ならば恥ずかしくて死んでしまいそうな行為だったが、冷静な思考と判断力を失った今の彼女にはどうという事は無い。
ただ彼が恋しくて、乙女の脳髄は暴走の極みだった。
対するレジアスは、突然の誘惑に狼狽しながら彼女に対して淫らな想像と欲望を抱きそうな自身の中に芽生えた滾る欲望を必死に理性で押さえつける。
そしてなんとかなのはを説得しようと、ありったけの理性を総動員して口を開いた。


「たたたた、高町空尉、いいい、い、いくらなんでも男女がみだりに床を共にするのは道徳的に見て間違っているとは思わんかね?」


なのはの髪の甘い香りと身体に絡みつく柔らかな肢体の感触を必死の耐え難い誘惑を鋼の理性で押さえ続けながら、レジアスは舌の上手く回らぬ口でなのはに語りかけた。
だが、なのははこの彼の言葉に対して、まるで生来の淫婦の如く甘えた声で返す。


「……今日の昼間……言った事覚えてます? 中将とか、そういう仕事の時みたいに呼ぶなって言いましたよね?」
「え? いや、まあ……確かにそんな事も言ったが……それがいったい」


なのはの言っている言葉の意味、伝えんとする意図が理解できずレジアスはうろたえた。
しかし彼の次の言葉を待たず、少女はぎゅっと抱きつきながら自身の口を開いた。


「だから、あなたの事を……名前で呼ばせてください……レジアスさん」
「へぇ? いや……別に構わんが……」


突然の少女の要求に、レジアスは思わず素っ頓狂な声を漏らしつつ了承の返事を返した。
むしろ彼女と一緒にいる時に堅苦しい呼び方をされないというのは、かねてからある程度望んでいた事だったが故にそれなりに嬉しくある。
だが問題はなのはが次に放った言葉だった。


「あの……だから、私の事も……名前で……“なのは”って呼んでください」
「ええぇぇっ!? い、いい、いや、それは流石に……せめて、苗字で……」


突然のなのはの要求に、レジアスは慌てふためいた。
ただでさえ危険の状況なのに、この少女を名前で呼ぶというのはどこか一線を越えるような錯覚を覚える。
相手を名前で呼ぶ事にどこか抵抗感を示すレジアスだったが、なのははトドメの追撃を慣行した。


「……嫌ですか?」


哀しそうな切なそうな、そんな声。
逆らう事などできない、一切の抵抗の叶わない、ただ頷く事しか許さない、そんな言霊の込められた言葉だった。
レジアスは少しだけ首を動かして頷くと、静かに口を開いて彼女の望むままの言の葉を紡ぎだす。
静かに、だが確かに届く声量で。


「分かったよ、その……なのは」


渋みのある低い声、だがなのはの耳には甘美なる天上の音色に等しい。
思わず下腹部の“女の器官”が甘い疼きを感じる。彼への愛しさが直接的な身体の欲求を呼び起こしていくのが分かった。

313:ある中将と教導官の日々
08/11/12 19:30:47 XsCezwUf
心も身体も、高町なのはというものを構成する全てがレジアス・ゲイズという男を欲していた。
頬がさらに熱く紅くなるのを感じながら、なのはは彼の背中に擦り寄る。
鼻腔に伝わる男性特有の匂いがひどく心地良く思えた。


「ありがとうございます……レジアス……さん」


彼の言葉が嬉しくて、なのはは火照る肢体でさらに力を込めて目の前の屈強な五体を抱きしめた。
その行為はレジアスの理性を魔法に例えるならスターライトブレイカーの如き怒涛の破壊力で攻撃したが、彼の鉄壁の理性はそれでもなお耐え続けた。
なのはの方としては、もしレジアスが欲望に耐えかねて自分に姦通を強要しても喜んで受け入れる気持ちではあったが、彼の精神は少女が考えるそれを遥かに上回る強靭さを宿していたが故にそうなる事はない。

互いの体温が溶け合うような中、なのはは彼の温もりに穏やかな眠りに落ち、レジアスは彼女の甘い芳香と柔らかさに眠るに眠れず、結局何事もなくその日の夜は過ぎ去った。


続く。


314:ザ・シガー
08/11/12 19:35:28 XsCezwUf
投下終了~。

デート編の収穫を纏めて見ると。
「手を繋いだ」「間接キスした」「下の名前で呼ぶ」「同じベッドで眠る(行為なし)」
と、まるでエロパロらしからぬピュア過ぎる事象の数々に思わず書いてる俺本人が吹いたよwww

『ヘイ! カモン!!』状態のなのはに対してオロオロしながらも耐え抜いたレジィは男の中の漢です、異論は認めぬ。

さて、ピュアなレジなの書いたし、次はなんかエロ書こう。
うん、エロエロなやつ。

315:名無しさん@ピンキー
08/11/12 19:43:14 rgeVcrWI
………まさかこのスレで、いや、なのは二次創作で、レジアスを羨ましく思う日が来ようとは…………
ひたすらにGJ!

316:名無しさん@ピンキー
08/11/12 19:51:18 DJ7ZPYS8
>>314
GJ!!
なのはさんをここまで狂わせるとは、これが恋という奴なのか……
スターライトブレイカーを耐え凌ぐレジィをイメージして笑った。
しかし、オーリスさんは未だにお休みのキスをされているのだろうか。


317:名無しさん@ピンキー
08/11/12 19:54:14 e/kk5mIi
レジなのかあ…
同じ世界観?でゼスフェとかスカはやとかやってくれないかなw

318:名無しさん@ピンキー
08/11/12 20:09:18 IYKOkVfz
>>314
GJ!
いやはや、レジアスは鋼の漢だなw
このさあ召し上がれと言わんばかりのなのはの猛攻に耐えきったかw

319:名無しさん@ピンキー
08/11/12 20:21:42 7ye4oJqL
>>314
うざい、キモイ、最悪。

320:名無しさん@ピンキー
08/11/12 20:45:07 lb4TW/Mp
レジアスGJ!
なんたる鋼の精神w まさしく漢です!
いちゃいちゃというか恋を知らぬ乙女らしい暴走っぷりのなのはがかわええw
けど、甘いぞ! レジアスはその程度の誘惑には負けぬ武士だわ!
このままピュアな関係で言って欲しい反面、いつまでザ・シガー氏の理性が保つのか心配ですw
これからも頑張ってください~

321:名無しさん@ピンキー
08/11/12 22:08:58 yLE6b6lS
>>279
GJ!
エリオの受けはおとこにょこなのにどうしてここまで似合ってしまうのだろう
でも動きを制限されなければ、狼モードになってた可能性もいける
お二人と同様すごく素敵な作品をありがとうございます

>>314
GJ!
なんというピュアピュアなのレジなんだ
手を出さなかったレジアスはすごすぎる

322:名無しさん@ピンキー
08/11/13 01:01:01 7663cH22
>>314
GJ!!
ところで、この下げたズボンはどうしたら・・・
エロエロつったらあれですよ JS通販


323:名無しさん@ピンキー
08/11/13 01:11:54 1FlxdX7Z
ちょっと聞きたいんだが、過去にクトゥルフ神話を題材にした連載ものがあったって本当?

324:名無しさん@ピンキー
08/11/13 01:33:31 FLloUiHT
旧保管庫にあったような無かったような。読んだことはないが。

325:名無しさん@ピンキー
08/11/13 02:02:16 /tQaD71k
>>323
新保管庫の「魔法少女リリカルなのはACF」。
ちなみに未完。

326:名無しさん@ピンキー
08/11/13 02:09:24 Gu1sM+cB
>>314
GJ!
なのはさんが悪魔からサキュバスにクラスチェンジしたwwwww

327:名無しさん@ピンキー
08/11/13 10:02:39 yrqKvrwv
>>325
あれ、続き読みたいんだが。
今更無理だろなぁ…

328:名無しさん@ピンキー
08/11/13 12:12:27 3Z5XR6Eb
シナイダさんの御尻フェイトそんを未だに待ち続けてるんだぜ?

329:B・A
08/11/13 14:44:34 JiyYhqDI
投下いきます。


注意事項
・非エロでバトルです
・時間軸はJS事件から3年後
・JS事件でもしもスカ側が勝利していたら
・捏造満載
・一部のキャラクターは死亡しています
・一部のキャラクターはスカ側に寝返っています
・色んなキャラが悲惨な目にあっています、鬱要素あり
・物騒な単語(「殺す」とか「復讐」とか)いっぱい出てきます
・SSXネタもあります、未聴の人は気をつけて
・サイボーグ化して復活なんて使い古されたネタが出てきます(赤外線照射装置は搭載していない)
・主人公その1:エリオ(今度も出番なし)
     その2:スバル
・タイトルは「UNDERDOGS」  訳:負け犬

330:UNDERDOGS 第四話①
08/11/13 14:46:04 JiyYhqDI
建物から火の手が上がり、あちこちから悲鳴が聞こえてくる。
スバルと何者かが仕掛けた爆弾によってプラントは天地を引っくり返したような騒ぎになっていた。
それはスバルが望んだ結果であり、その混乱に乗じてリインと共に脱出するつもりであった。
だが、施設の外に飛び出た途端に飛び込んできた凄惨な光景に、スバルはおろか追いかけてきたノーヴェとチンクまでもが
驚愕して動けずにいた。

「こ、これは・・・・・・・・」

チンクの呟きが灰色の空に消えていく。
目の前に広がっているのは虐殺の現場だ。
爆破された装甲車、破壊されたガジェット、行動不能となった量産型戦闘機人。
屍のように折り重なるそれらの中心に立っているのは襤褸のマントを羽織った1人の男だ。
バイザーで顔を隠しているので素顔はわからないが、風になびいている髪は緑色だ。
マントの隙間から見えている左腕にはスバルが装着しているものと色違いのリボルバーナックルが装備されており、
両足には純白のローラーが見え隠れしている。

「そのデバイスは!?」

「お前、ゼロ・セカンドの仲間か!?」

スバルの驚愕と、ノーヴェの攻撃は同時であった。まとめて始末しようとしたのか、広範囲にガンシューターがばら撒かれている。
咄嗟にスバルは防御しようと身を捩るが、腕に走った激痛で思わず身をかがめる。
彼女のIS“振動破砕”は強力な分、自身へのノックバックも大きい。ロクな整備も受けられない状態で単独行動を続けてきたことで、
基礎フレームに疲労が蓄積していたのだ。
せめてリインだけでも守ろうと、スバルは彼女の小さな体を抱き締める。だが、予想していた痛みはいつまで経っても訪れなかった。
恐る恐る見上げると、襤褸マントの男がスバルに背を向けての立ち塞がっていた。
彼がノーヴェの攻撃から身を挺して自分達を守ってくれたのだ。

「大丈夫か?」

細切れになったマントが風で吹き飛び、その下から鋼の外骨格が露になる。
まるで噛み合う歯車のように唸りを上げる左腕のリボルバーナックル。砂塵に塗れてもなお輝きを失わない、
亡き姉のインテリジェントデバイス“ブリッツキャリバー”。そして、被弾してひび割れたバイザーから覗く、
色白で端正な顔立ち。見覚えのあるその顔に、スバルの驚愕は頂点に達する。

「ど、どうして・・・・あなたが・・・・・・・」

「言っただろう、これからは俺が君を守ると・・・・・・・俺が、ギンガの代わりに」

男のただならぬ気配に、相対しているチンクは戦慄のようなものを感じていた。
纏った気配が尋常ではない。燃える紅蓮の炎と底知れぬ暗闇、
地獄の釜の中で茹でられたかのようなおぞましい殺気が男から発せられている。

331:UNDERDOGS 第四話②
08/11/13 14:46:48 JiyYhqDI
「直接会うのは初めてだが、ブリッツの代わりに俺が言わせてもらう・・・・・・久しぶりだな」

「そのデバイス、ゼロ・ファーストの関係者か?」

「ああ」

「見たところタイプゼロよりも更に旧式のようだが、そんな姿になってまで戦おうとするとは、目的は復讐か? 
我々を破壊するために、人の身を捨てたか」

「違う、俺はお前たちを殺しにきた。そしてもう1つ・・・・・・・彼女はゼロ・ファーストじゃない、ギンガ・ナカジマだ!」

カチリと、バイザーが外れて地面に落ちる。
それを合図に2人は同時に地を蹴った。
投擲された短剣“スティンガー”を男は裏拳で薙ぎ払い、砂塵を引き裂きながらチンクの矮躯へと肉薄する。
軋むようなモーター音と共に関節が駆動し、男の打撃が繰り出される。まるで滑空するように宙を舞ったのは
彼が装着しているブリッツキャリバーのローラーだ。鋼の車輪がチンクの鼻先を掠め、すかさず身を捻って遠心力が
込められた拳の一撃が頭蓋へと叩き込まれる。だが、それを簡単に許すチンクではなかった。
彼女は迫りくる拳の関節部にスティンガーを突き刺し、自身は頭を捻ることで振り下ろされた突きを紙一重で回避したのだ。
そして、がら空きの胴体に蹴りを叩き込んで距離を取り、間髪入れずに新たなスティンガーを投擲、自らのISを発動する。

「IS“ランブルデトネイター”」

地面に着弾したスティンガーに環状のテンプレートが出現したかと思うと、それはそのまま熱量の伴うエネルギーと化して
スティンガーそのものを爆破、その衝撃で粉塵を舞い上がらせる。一定時間触れていた金属を爆発物に変える能力。
それが彼女の先天固有技能(IS)だ。

「今の攻撃、確かキャリバーショットというシューティングアーツの基本コンビネーション。
ゼロ・ファースト・・・・・ギンガ・ナカジマが使っていた技だ。どうしてお前が使える?」

「学んだのさ。俺は彼女の技と力でお前達を倒す」

「警備の連中を始末したのもお前か? なるほど、大した腕のようだ。戦士ならば名乗らねばならないな、
私はナンバーズが5番、“刃舞う爆撃手”チンク」

「ラッド・カルタスだ。名乗ってくれたことは感謝しよう、チンク」

無機質な言葉で返答し、カルタスは右腕に突き刺さったままのスティンガーを投げ捨てる。
直後、それは先ほどのものと同じように爆散して砕け散った。

「ノーヴェ、まだ動いている連中を集めて作業員の救出に回れ」

「けど、チンク姉・・・・・」

「その体では足手まといだ。こいつらは姉とガジェットだけで始末する。案ずるな、姉は敗北などせぬ」

「わかった・・・・・気をつけて、チンク姉」

後ろ髪を引かれる思いでノーヴェはローラーを走らせ、傷ついた体を庇いながらその場を立ち去る。

「カ、カルタスさん・・・・・その体・・・・・」

呆けたようなスバルの呟きが風に溶けていく。
ラッド・カルタスは彼女の姉、ギンガが所属していた陸士108部隊の上司にあたる人物だ。
満更知らない仲ではないが、JS事件後に行方不明になっていたはずだ。

332:UNDERDOGS 第四話③
08/11/13 14:47:40 JiyYhqDI
「JS事件の後、俺は瀕死の重傷を負った。生き残るためには体を機械化する以外に方法はなく、
処置の時間を稼ぐためにナカジマ三佐はお亡くなりになられた。スバル、俺はギンガと三佐、
2人の無念を晴らすためにここにいる。俺は君と共にいる」

「脱出の算段か? 悪いが、ナンバーズの名に賭けて逃しはせん」

再び投擲されたスティンガーを弾き、スバルを爆発の衝撃から庇うように突き飛ばしてからカルタスは駆ける。

「カルタスさん!?」

「スバル、こっちにも来ましたよ!」

リインの言葉に、スバルは即座に立ち上がって態勢を立て直す。
既に周りはガジェットによって包囲されており、逃げ場はない。
カルタスが戦力を削ってくれていたおかげか、数はそれほど多くはない。
だが、脱出の際にこいつらに加えて戦闘機人まで相手にしなければならなかったと思うと、ゾッとしてくる。

「スバル、私が何とかして隙を作りますから、それまで耐えてください」

「了解」

『私も移動します。合流地点で会いましょう』





スバルとガジェットの戦いが開始される中、カルタスとチンクの戦いは熾烈を極めつつあった。
カルタスは飛び抜けて強いわけではない。魔力資質もなく、ISすら発現していない。
彼の武器は文字通りの鋼の肉体に記憶と資料だけを頼りに身につけたシューティングアーツ、
そして魔力なしでも使えるように改造した左腕のリボルバーナックルだけだ。それでも辛うじてチンクに食らいついていけているのは、
彼の執念の賜物だ。最愛の女性を失った悲しみが、カルタスの潜在能力を限界以上に引き上げているのである。

「ギンガの仇だ、ナンバーズ!」

「くっ・・・避けきれない!?」

チンクは遠心力の込められた後ろ回し蹴りを咄嗟に身に纏っていたシェルコートのバリアで受け止め、
弾いた隙にスティンガーを投擲して距離を取る。

(こいつの爆発力、侮れん)

離れて戦うスタイルがチンクの持ち味ではあるが、接近戦がこなせないわけではない。しかしカルタスの執念は凄まじく、
隙を見せれば羅刹の如き勢いに凌駕されそうになる。しかもローラーによって機動力を確保しているので、
離れてもすぐに距離を詰めてくる。自分とは相性の悪い相手だ。

「執念とは恐ろしいな。だが、例え修羅が相手であろうと私は勝利してきた!」

相手の間合いから逃れる際に地面に打ち込んでおいたスティンガーが爆発し、平らな地面に無数の亀裂が走る。
その亀裂にカルタスが足を取られた瞬間を見計らってスティンガーを投擲、即座にISを発動せんとテンプレートを展開する。
回避の時間は与えず、払い落とそうとした瞬間に爆破するためだ。たが、カルタスが次に取った行動は彼女の予想外なものだった。

333:UNDERDOGS 第四話④
08/11/13 14:48:17 JiyYhqDI
「うおおおぉぉぉぉっ!」

「何、防御しない!?」

「この至近距離なら、お前も無事じゃ済まない!」

「はっ!?」

バリアが展開されるよりも早く、カルタスはチンクの矮躯を押し倒して左腕を振りかぶる。
ごつい外骨格は見た目に違わない重量を誇り、如何に戦闘機人いえど容易に逃れる術はない。
そう思った刹那、底冷えするような呟きが可憐な唇から囁かれた。

「IS、ランブルデトネイター」

「なっ!? 自分ごと爆破する気か!?」

「ナンバーズに敗北は許されない。私は戦うためだけに生み出された兵器。これがその覚悟だ!」

直後、カルタスの体に突き刺さっていたスティンガーが爆発して2人の体が吹き飛ばされる。
直にISを食らったことで外骨格に亀裂が走り、損傷した場所から火花が飛び散る。

「あ、後一瞬、こちらが早ければ・・・・・」

傷ついた体を立ち上がらせながら、カルタスは呟く。彼の左手には、爆発の瞬間にもぎ取ったチンクの眼帯が握られている。
もしもチンクが一瞬でも躊躇してくれていれば、この手は彼女の頭蓋を叩き割っていただろう。
我が身を省みない彼女の覚悟が結果的に窮地を救ったのである。

「カルタスさん、危ない!」

危険を知らせるスバルの叫びが聞こえたかと思うと、舞い上がった粉塵を引き裂いて1本のスティンガーが飛来する。
その一瞬に、カルタスは全ての注意を注いでしまう。自分と同じようにチンクも傷ついており、
これは苦し紛れに放った一撃であると思い込んでしまったのだ。彼は知らない。目の前の敵が、投擲せずとも短剣を放てることを。

「オーバーデトネイション」

飛来したスティンガーが爆発し、カルタスから視覚と聴覚を奪う。そして無防備となったその体に、
虚空から独りでに出現したスティンガーが突き刺さり、背後の壁にカルタスを貼り付けにする。

「がはぁっ!」

「カルタスさん!」

動かなくなったカルタスを見て、スバルは悲痛な叫びを上げる。
しかし、向かってくるガジェットから背後のリインを守らねばならないため、助けに向かうことができない。

「無様だな、復讐鬼」

粉塵を払いのけ、憤怒の形相を露わにしたチンクが姿を現す。
悪鬼の如きその姿は、先ほどまでの冷静な彼女と同じ人物とはとても思えない。

「この右目は戒めであり、私の誇りだ。貴様はその無粋な手で私の誇りを傷つけた。その罪は万死に値する!」

チンクの右目は、かつてゼスト・グランガイツと呼ばれるベルカの騎士との戦いで負傷し、視力を失っている。
その傷はスカリエッティの技術力ならば修復することは造作でもないことだが、チンクはそれを自らの未熟な証として
直さずに戒めとしている。それと同時に、その負傷は創造主であるスカリエッティが生み出した戦闘機人が
オーバーSランクの騎士にも負けぬ優秀さを誇ることへの誇りでもあった。
カルタスは、そんな彼女の最も触れてはならない部分に手を出してしまったのだ。

334:UNDERDOGS 第四話⑤
08/11/13 14:49:27 JiyYhqDI
「そのままスクラップと成り果てるがいい!」

「マッハキャリバー!」

《駄目です、距離が遠すぎる》

間に合わぬと承知で、スバルはリボルバーシュートのチャージを開始、カルタスも激痛に悶えながらも四肢を貼り付けにしている
スティンガーから逃れようとする。だが、無情にもテンプレートの輝きがカルタスの死刑を宣告した。

「消し飛べ、ランブルデトネイター!」

「ぐうぅあぁぁぁっ、ギンガァァァッ!」

ぐしゃりと、何かが潰れる音と共にカルタスの体が前のめりになる。直後、彼の背後の壁に突き刺さったままのスティンガーが爆発し、
カルタスは爆風に吹き飛ばされる形でチンクへと迫る。彼は残る力を振り絞って四肢に刺さるスティンガーを貫通させ、
爆発から逃れたのだ。

「なにぃ!? 自分の手足を!?」

「これが俺の覚悟だ、ナンバーズ!」

左腕を掲げ、搭載された機構を解放する。瞬時に形を変えた左手は、火花を散らすナックルスピナーに連動するように高速で回転し、
空間ごと打ち砕かんとするかのような運動エネルギーを発生させる。

「リボルバァァァッギムレットォッ!」

(爆風で速度が増している。回避・・・・間に合わぬ)

凶暴なうねりを前にして、チンクはシェルコートのバリアを最大出力で展開する。
だが、施設規模の爆発にも耐えうる強度を誇るハードシェルは、ただ一点に全てのエネルギーを集中した螺旋運動によって揺るがされ、
削り取られるかのように消滅していく。
そして、2人を隔てる一切の壁が取り除かれた。
迫り来る螺旋の咆哮に、チンクは己の死を覚悟する。
目前に迫った仇敵の姿に、カルタスは己の勝利を確信する。
スバルもリインも、彼がチンクを打ち倒して勝利する姿を想像していた。
だから、高速で飛来した直射弾の存在に、誰一人として気づかなかった。

「なっ・・・・・・」

リボルバーギムレットがチンクの頭部を捉える寸前、斜め上から飛来した魔力弾がカルタスの左肩を撃ち抜いた。
更に立て続けに降り注ぐ魔力弾の雨。それは決して多い訳ではない。だが、恐ろしく正確な射撃が彼の関節を撃ち抜いていく。
全身に走る激痛は、機械の体でなければ確実にショック死していただろう。

「ば・・・・馬鹿な・・・・・・どうして・・・・・」

グラリと、カルタスの体が仰向けに倒れる。
その視線の先のありえない光景に絶句し、そこで彼の意識は途絶えてしまった。
一拍遅れて我に返ったチンクが、とどめを差さんとスティンガーを抜き放つ。
しかし、それよりもスバルの方が早かった。チャージの終えたリボルバーシュートで突破口を開き、
上空からの狙撃を搔い潜りながらカルタスを回収、肩にしがみ付いていたリインに合図を送る。

335:UNDERDOGS 第四話⑥
08/11/13 14:50:06 JiyYhqDI
「リイン曹長!」

「詠唱完了です。闇に染まれ、デアボリック・エミッション!」

リインがかざした手の平に出現した黒き球体が急速に膨れ上がり、スバル達の体を包み込む。
同時に、侵食を開始した闇は周辺のものを手当たり次第に飲み込みながら拡大していく。
ロード不在のリインでは本来の出力は発揮できないが、それでも広域攻撃魔法としての効果範囲は健在であり、
派手な見た目に危機感を抱いたチンクはハードシェルを展開して足止めを余儀なくされる。
そして、拍子抜けするほどの弱々しい攻撃が治まった頃には、スバル達はどこかへと逃げ去った後であった。

「チンク姉!」

「ノーヴェ、救助は完了したか?」

「ああ、生きている奴らは全員無事だ。けど、あいつらは・・・・・・・」

「私のミスで逃がしてしまった。それに、あいつが助けてくれなければ私は敗北していた」

「そんなことねぇ。チンク姉が負けるなんてあるわけねぇ!」

「ノーヴェ、事実を事実として認識しろ。戦場での敵の過小評価は死を招く・・・・・・私は、ただそれをしてしまっただけだ」

「チンク姉・・・・・・」

「帰還するぞ。ドクターにこのことを報告しなければ」

頭上で滞空するJF704式ヘリコプターを見上げながら、チンクは自身に内蔵された通信機のスイッチを入れる。
先ほどの狙撃は、自分の危機を知った彼が揺れるヘリの上から行ったものだ。
揺れるヘリの上で、マルチタスクを駆使してヘリの安定を保ちながら遙か彼方の動く物体を正確に狙撃する。
それだけでも、彼の狙撃の腕がずば抜けていることを物語っている。もしも彼が助けに来てくれなければと思うと、
ゾッとしてくる。

「後始末が済み次第、一度ゆりかごに帰還する。お前はヘリを降ろして待機しておいてくれ」

『了解、ヘリポートに着陸後、指示があるまで待機する』

「それと、さっきは助かった・・・・ありがとう、で良いのか?」

ノーヴェと喋っていた時とは打って変わって緊張した固い声音に、通信機の向こうから苦笑のようなものが漏れる。
どこか壊れてしまったかのような乾いた笑み。空々しさすら感じられるその声に、チンクの胸が少しだけ締め付けられた。

『別に気にするな、兄妹だろ』

「そうだな、ヴァイス・・・・お兄ちゃん」

『ああ、ラグナ。お前は俺が守る・・・・・絶対に』





宛がわれた部屋で鏡と睨めっこすること3時間。
その行為が無意味なことであると気づいたルーテシアは、てっとり早く疑問を解決するためにゆりかごの中を歩き回っていた。
前の戦いから、彼女はずっとエリオに言われたことを気にかけていた。
何となくではあるが、彼は今まで自分が出会ってきた人間とは違うような気がするのだ。
スカリエッティ達は良くしてくれているが、自分に戦うことを強要する。母親を目覚めさせてあげるから、
こっちの仕事を手伝って欲しいと。
今はもういないゼストやアギトは、自分のことを守ろうと気にかけてくれていた。極力荒事には巻き込ませず、
戦うことを求めてくるスカリエッティにも良い感情を抱いてはいなかった。
けれど、エリオ・モンディアルはそのどちらもしてこなかった。彼はただ、自分に笑っていて欲しいと言ったのだ。

336:UNDERDOGS 第四話⑦
08/11/13 14:51:11 JiyYhqDI
(笑えって言われたのは、初めてだ・・・・・・・・けど、笑うってなんだろう?)

親しい者達は、召喚師としての力を求めるかか弱き少女として守ろうとするかのどちらかしかしてこない。
しかし、彼はそのどちらもせずに笑うことを求めてきた。ただ笑っていて欲しいと、それだけを望んでいた。
けれど、ルーテシアには笑うということが何なのか理解できていなかった。それがどんなものかはわかっていても、
どうすれば笑うことがでいるのか知らないのだ。だから、誰かに聞いてみることにしたのだ。
クアットロやウェンディはいつも笑っているので、聞けばきっと何かわかるはずである。
そうして、小一時間ほど広いゆりかご内を歩き回った末に、ルーテシアは聖王の寝室の前で困り果てている
ディエチとクアットロの姿を発見した。

「あら、お嬢様。どうしたんですか、こんなところで?」

「クアットロを探していたの」

「あら、私をですか?」

「うん・・・・けど、忙しいのなら後で良いよ」

「ああ、別に忙しいわけではありませんよ。ちょっと陛下が駄々を捏ねているだけですから」

傍らに立つディエチが額をかきながら寝室の扉へと視線を送る。
ルーテシアは一度も入ったことはないが、その部屋で聖王は自分の母親と一緒に生活しているらしい。
母親。今の自分にはないものだ。

「3日も閉じこもりっ放しですからね。たまには運動でもしてもらわないと、健康を損ねるかもしれません」

「だからディエチちゃん、陛下が風邪なんか引くわけないじゃない。とっくの昔に遺伝子レベルで病気なんて克服してるのよ」

「精神的衛生にも悪いだろ、クアットロ。あたしは陛下のお世話係だからね、陛下の健康管理は万全でないといけないんだ」

(何がお世話係よ。聞き分けの悪いガキなんて放っておけば良いのに。ドクターもどうして感情なんて残しちゃったのかしら。
中途半端な洗脳なんてするから、あいつだって生かしたまま囲われているのに)

心の中で不平を洩らしながらも、クアットロは「さすがディエチちゃん、偉いわね」とディエチを褒め称える。
次元世界の安寧と自らの利さえ守られれば大人しくしている管理局と違い、古代ベルカの聖王を神と崇める聖王教会は
聖遺物であるゆりかごを利用しているスカリエッティを快く思っていない。もしも聖王が復活しなければ、
聖遺物の保護を理由に抵抗を続けていたかもしれない。信仰心とは時に利害すら超えた理解不能な行動を起こすものなのだ。
聖王は聖王教会を押さえるための切り札でもあるため、その扱いについて彼女もスカリエッティに強く言うことができないでいるのだ。

「それでルーお嬢様、私に用って何ですか?」

内心の不満を悟られてはいけないと、クアットロは話題の転換を試みる。
しかし、ルーテシアの口から出た言葉は彼女の好ましいものではなかった。

「どうすれば笑えるのか、教えて欲しいの。クアットロ、いつも笑っているでしょ」

(あら、何かと思えばくだらない悩みだこと。兵器は兵器らしく黙って言うことを聞いておけば良いのに)

兵器に余計な感情を持たせる必要はない。それがクアットロの考え方であり、今はもういない最後発組のナンバーズが
ロールアウトする際、意図的に感情を抑制することをスカリエッティに進言したのも彼女だ。ルーテシアも彼女にとっては
スカリエッティが生み出した兵器の1つであることに変わりはなく、そんな彼女が人並みに笑い方を知りたいと言っているのは
どうしてりんごは赤いのかと問うているくらい意味のない行為なのだ。
もちろん、そんなことは億尾にも出さずに懇切丁寧に顔の筋肉の動かし方を教えてやるのだが。

337:UNDERDOGS 第四話⑧
08/11/13 14:51:49 JiyYhqDI
「お嬢様、これが笑顔です」

「こ、こう?」

「うーん、ちょっと頬が引きつっていますねぇ」

「もっと唇を小さくして、目尻は下げ気味の方が良いんじゃない?」

「それだと、普段と変わらないわ。それよりも・・・・・」

「ああ、ダメっスよ。無理に笑ったってそれは笑顔とは言わないっス」

「ウェンディ?」

この陽気で独特な口調は彼女以外にありえない。振り返ると、予想通り愛用のライディングボードを肩に担いだ赤毛の少女が立っていた。

「ただいまっス」

「おかえり。いつ戻ってきたんだい?」

「ついさっきっス。いやぁ、新人の相手は辛かったっス」

そう言って、ウェンディは空いている手で肩を叩く。彼女は量産型戦闘機人で構成されたライディングボード部隊の教導のために、
長らく管理局に出向していたのだ。こうしてゆりかごに顔を出すのは実に一年振りである。

「ねぇ、ウェンディ。ウェンディはどうすれば笑顔になれるのか、わかるの?」

「お嬢様、笑顔は誰かに教えてもらうものじゃないっス。楽しいことがあると、人は自然に笑うものっスよ」

「楽しいこと?」

「美味しいものを食べたり、訓練で良い結果が残せたり、誰かに褒めてもらったり
・・・・・・とにかく、自分が楽しいって思えることっスよ」

「楽しいこと・・・・・・」

ウェンディに言われた言葉を、ルーテシアは静かに反芻する。疑問は深まるばかりだった。
何故なら、ルーテシアは生まれてから一度も、何かを楽しいと感じたことはなかったからだ。





壁を叩く雨音が、時を追うごとに激しくなっていく。狭い室内は湿気が充満し、閉塞するような息苦しさを感じてしまう。
だが、今は疲れ果てた体を休ませることができるだけでもありがたかった。


338:UNDERDOGS 第四話⑨
08/11/13 14:52:37 JiyYhqDI
「カルタスさんの様子、どうですか?」

「まだ眠っています。命に別状はありませんが、関節の駆動部を撃ち抜かれているので今は立つこともできません」

「治せそうですか?」

「応急処置くらいならできますけど、ダメージが基礎フレームまで及んでいるのでちゃんとした設備のあるところに連れて行かないと」

「私も、こういったものは専門外でして」

スバルと共にカルタスを診ていたイクスが、すまなそうに頭を下げる。いざという時に力になれないことが悔しいのだろう。

「イクスは悪くないですよ。悪いのはこんなことをした狙撃手です」

「そ、そうですね・・・・スバル?」

「はい?」

「どうしたのですか、ボーっとして」

「あ、いえ・・・・・何でもないです」

覇気の感じられない返答に、2人は訝しげな視線を向けてくる。だが、疲れているだけなのだろうと思ったのか、
それ以上は追求してこなかった。ひょっとしたらリインは気づいているかもしれないと思っていたが、どうやら杞憂だったようだ。
それに、まだ確信があるわけではない。自分は彼が実際に狙撃をする姿を見たことがないのだから。
ただ、JS事件後に彼が行方不明となったことが発覚した際、ティアナから彼の過去を聞かされていたので、もしやと思っただけだ。
ならば、このことはまだ自分の胸の内に仕舞っておくべきだ。

「とりあえず、今後の行動について検討しましょう。この男の人も含めて、3人と消耗しています。
どこか専門の機関で診てもらうことをお勧めしますが」

「それは無理です。私達はお尋ね者なんですよ」

「この場合、スバルが単独で動いている方が問題です。みんなと一緒にいれば協力もできて、もっと大きな活動もできるのに」

「みんなか・・・・・・提督達のところに行ければ、カルタスさんを治せるかもしれないなぁ」

あそこならばデバイスマイスターもいるはずだから、リインの検査もできるはずだ。
だが、自分から飛び出した揚句に連絡も取り合っていなかったので、どうすればコンタクトが取れるのかわからない。
そんな行き詰りの沈黙を破ったのは、擦れた電子音声であった。

339:UNDERDOGS 第四話⑩
08/11/13 14:53:12 JiyYhqDI
「・・・・き・・・た・・へ・・」

「カルタスさん!?」

「北に・・・・・北の街に、レジスタンスの工作員がいる。確か、六課にいた狼・・・・・」

「ザフィーラだ」

「そいつが・・・・・北の街で諜報活動を行っている。スバル、提督達と合流しろ。
1人では・・・・・・個人ではできることなど、知れている・・・・・復讐は・・・・仇は、俺が・・・・」

「喋らないで、体に障ります」

「スバル・・・・・俺が、君を・・・・・・・」

そこでカルタスは力尽き、再び意識を失った。
チンクのISはまともに浴びればスバルでも無事では済まないのだ。
こんな旧式の改造でそれを食らい、まだ生きていることが奇跡に等しい。

「おい、喋るのは良いけど壁が薄いからもう少し静かにしてくれよ」

背後の扉を開けて部屋に入って来た少年が、額をかきながら言う。
この家の主で、スバル達に雨宿りのための屋根を貸してくれた人物だ。とても心の優しい少年ではあるが、
見ず知らずのスバル達にも物怖じせずに辛辣な言葉を投げかけてくる口の悪さも併せ持っている。
ちなみに彼の両親は不在であり、現在は1人で暮らしているらしい。

「ああ、ごめんなさい」

「まあ良いさ。それよか、シャワー使うだろ。いつまでも汚れたままじゃ落ち着かないだろうし」

「良いよ、雨宿りさせてもらえるだけでもありがたいんだから」

「そうか? そっちの彼女は使いたがっているようだけどな」

「え!?」

図星を突かれたイクスとリインが頬を真っ赤に染めて恐縮する。
実は2人とも、ここ最近はロクに風呂に入っていない。イクスはスバルと野宿ばかりしていたからで、
リインはプラントで実験体扱いを受けていたからだ。

「ついでに飯も用意したからさ、食ってけよ」

「良いのかな、そんなに良くしてもらって」

「困った時はお互いさまって、学校で習わなかったか?」

「そうだね。それじゃ、お言葉に甘えようかな。けど、もう少し言葉遣いはどうにかした方が良いよ」

「地なんだよ、これ! とにかく、浴びるならとっとと浴びてくれ」

「わーい、久しぶりのバスタイムですぅ。イクス、一緒に入りましょう」

「はい、喜んで」

2人は少年の案内で、嬉々として階下のバスルームへと降りていく。
1人残ったスバルは、もう一度カルタスの体をチェックしようと彼の方に向き直る。
その時、激しい地鳴りと共に家が縦揺れを起こした。

340:UNDERDOGS 第四話⑪
08/11/13 14:53:53 JiyYhqDI
「地震!?」

《かなり大きいです。二次災害の可能性もありますね》

程なくして、俄かに外が騒がしくなる。
窓を開けて外を見てみると、スコップやらツルハシやらを担いだ男達が山の方角へと走っていく姿があった。
男達の怒鳴り声は大きく、離れている自分の場所にまでその内容が伝わってくる。

「麓で土砂崩れだって!?」

「子どもが生き埋めになっているらしい。急がないと死んじまう!」

弾かれたように、スバルは駆けだそうとする。だが、すぐに考えを改めて足を止めた。
自分はお尋ね者のテロリスト。それもほんの数時間前に管理局とひと悶着を起こしてきたばかりなのだ。
目立つ行動は避け、できるだけ大人しくしていた方が良い。もしも見つかった時、戦うことができるのは自分だけなのだから。
しかし、放っておけば土砂に埋もれた子どもが死んでしまうかもしれない。
自分にはその子を救える力がある。かつての自分のように災害で泣いている人を助けたい、。
その思いを胸に、魔導師を志したのではなかったのか。
そんな出口の見えないジレンマを吹き飛ばしたのは他でもない、彼女の相棒であるマッハキャリバーだった。

《迷うことはありません。あなたはあなたの信念を貫けば良いのです》

「けど、私達は・・・・・・・」

《相棒、あなたはそこまで非情ではない。私はあなたを信頼しています。何もせずに後悔するくらいなら、
できることを全てした後に泣いてください》

「マッハキャリバー・・・・・・」

《さあ》

「うん」

力強く頷き、部屋を飛び出して階段を駆け降りる。途中、小瓶を手にしていた少年とぶつかりそうになり、
何事かと呼び止められる。

「どこ行くんだよ!?」

「山で土砂崩れがあった。救助を手伝ってくる!」

「・・・本気で言っているのか?」

「こんな時に冗談なんか言わないよ」

「お前・・・けど・・・・・なんでそんなことするんだよ。自分とは無関係な奴だろ!?」

語気を荒げながら、少年は怒鳴るように問い質す。するとスバルは、酷く神妙な顔つきになって少年に向き直った。

「助けたいから助けるんだ。だって私は・・・・・レスキューだから」

少年の異変に気づかぬまま、スバルは雨の降りしきる夜の世界へと飛び出していく。
その背中を見つめる少年の瞳は仄暗い憎悪に彩られ、『睡眠薬』と書かれたラベルが張られた小瓶を握る手がふるふると震える。

341:UNDERDOGS 第四話⑫
08/11/13 14:54:41 JiyYhqDI
「何だよ、それ・・・・・あんたら、悪者じゃないのかよ・・・・悪いテロリストの癖に、何で人助けなんてするんだよ・・・・・・」





「私とスバルが出会ったのは、数ヶ月前のことです」

リインの銀色の髪にリンスを馴染ませながら、イクスはスバルとの出会いを語っていた。
2人が出会ったのは数ヶ月前に起きたマリアージュ事件の最中だ。古代ベルカに関連する研究者を襲った連続殺人事件。
その最後にして最大の被害者を出すこととなった海上アミューズメント施設“マリンパーク”で起きた火災。
その時、スバルは既にお尋ね者として追われる身であったが、燃え盛る炎と崩れていく施設に幼少時の記憶が呼び覚まされ、
逮捕されるかもしれないという危険を承知で救助活動を行っていた。そこで、長い眠りから覚めたばかりのイクスと出会ったのだ。

「私は戦乱を治めるための兵器として生み出されました。自国の勝利によって戦いを終わらせ、争いを止める。
けれど、どれだけ戦っても争いはなくならない。戦っても戦っても敵は次々とやってくる。
もう戦うのは嫌だと思っても、味方がそれを許してくれない。私には死ぬことすら許されなかった。
私という存在そのものが、争いを生む火種となってしまったのです。だから、1000年の眠りから覚めたあの炎の中で、
私は自分が消えることを望んでいた。古代の争いはもう過去の出来事、今の世に私と言う存在は必要ないと」

「けど、スバルがそれを止めた」

「あの人は言ってくれました。私は兵器ではないと。自分も同じように人によって造られた体だけど、
心は人間として生きていると。ボロボロになりながらも微笑みかけてくれているその姿に、私はとても救われました。
スバルは私を、初めて人間として扱ってくれた人なのです。だから、私は彼女に着いていくことにしました。
兵器として力を貸すのではなく、人間として、古代の王としてこの世界の行く末を見届けたいと」

「変わっていないですね、スバルは」

きっと、炎の中で一人ぼっちだったイクスに過去の自分を重ねたのだ。
だから、放っておくことができなかったに違いない。

「あのお方はとても強い人。けれど、その心はとても繊細で傷つきやすい。本当は誰も傷つけたくないのに、
復讐のために誰かを傷つけなくてはいけない。せめて、私が生きていられる間に、あのお方が安らげる日が来ると良いのですが」

「イクス・・・・・ひょっとして・・・・・・」

「はい。私は、もうあまり長くありません」





草木すら寝静まった深夜、スバル達に宛がわれた部屋の扉が音もなく開いた。
足音を忍ばせて忍び込んできたのは彼女達を招き入れた少年だ。
その手には鈍く光る包丁が握られており、殺意に彩られた瞳は毛布に包まっているスバルに向けられている。
よく眠っている。食事に混ぜておいた薬は利いているようだ。
ここまで来たら、もう後には引けない。少年は覚悟を決めて包丁を握り直し、ゆっくりと振り上げる。
その時、数時間前のスバルの言葉が脳裏に蘇った。

342:UNDERDOGS 第四話⑬
08/11/13 14:55:54 JiyYhqDI
『助けたいから助けるんだ。だって私は・・・・・レスキューだから』

「・・・・・・・・・!」

包丁を振り下ろそうとした手に迷いが生じる。直後、足元で横たわっていた男が目を開いた。

「止めておけ。そいつは人を傷つけるものじゃない」

「あんた・・・・起きていたのか?」

「少し前からな。お前、最初から彼女を殺すつもりで家に入れたのか?」

「・・・ああ。あんたら、テロリストなんだろ。俺の父さんは、テロリストに殺されたんだ」

彼の父親は管理局の局員だった。魔力資質を持たない一般局員だったが、誰よりも平和のことを考える局員の鑑であった。
そんな彼のもとに、新設される戦闘機人部隊に転属しないかという話が舞い込んできた。
魔力に頼らず、科学によって肉体を機械化した兵士達で構成された戦闘部隊。
危険度は高かったが、その分だけ手当ても増える。早くに母親が亡くなり、男手一つで少年を育てなければならず、
生活が困窮していたのだ。何より、少年の父親には適正があった。改造手術に耐えうるだけの強靭な肉体が。

「父さんは、手術を受けて戦闘機人になった。けど、最初の任務で・・・・・テロリストから工場を守るために死んだんだ。
俺の父さんは、テロリストに殺されたんだ!」

「その相手が、彼女だって言うのか?」

「わかんねぇよ。けど、テロリストは悪い奴らなんだろ。だったら、また殺すんだろ。
俺みたいなのが増えるんだろ!? だったら、だったら・・・・・・・・」

「殺すのか? そしたら俺はお前を恨むぞ。お前が殺されたら、今度はお前の友達が俺を恨むだろうな。
憎しみは終わらない。誰かを傷つければ誰かに傷つけられる。その覚悟があるか?」

「・・・・・・・・・」

「覚悟もないなら馬鹿なこと考えるな。お前、彼女を殺すかどうか迷っているだろ」

本当に少年がスバルを殺す気ならば、カルタスは何が何でも少年を止めていた。
身動きは取れないかもしれないが、這いずって噛み付いてでも彼を制止しただろう。
それをしなかったのは、彼の中の迷いを見抜いていたからだ。

「なんで・・・・・悪者なのに、どうして人助けなんてするんだよ。なんで俺らが、
悪者に感謝しなくちゃ・・・・なんで・・・・・なんでこいつ、こんなに良い奴なんだ・・・・・・・」

「彼女はただ、自分の思うままに行動しただけだ。後は自分で考えろ」

冷たく突き放され、少年は力なくうな垂れて振り上げた腕を下げる。
そして、無言のまま部屋を後にすると、眠っていたと思われていたスバルがごそごそと身動ぎした。


343:UNDERDOGS 第四話⑭
08/11/13 14:56:57 JiyYhqDI
「起きていたのか?」

「薬の味くらい、わたしにもわかるよ」

「そうか」

「わたし・・・・・だったのかな?」

「深く考えるな。俺も君もお尋ね者で、悪党であることに変わりはないんだ」

「けど、わたしは復讐には無関係な人達をたくさん傷つけてきた。手当たり次第に施設を爆破して、
戦闘機人を壊して・・・・殺して・・・・・・・こんなんじゃ、なのはさんに申し訳が立たないよ」

「『汚れた手でも、抱きしめることはできる』」

「え?」

「三佐の言葉だ。君の母親、クイント・ナカジマ准陸尉は首都防衛隊の所属だった。それも、故レジアス中将が
地上本部の実権を握り、本格的に組織改革を行う前からだ。海からの流入犯罪者、テロリズム、組織犯罪。
その当時のミッドは3年前よりも遥かに混沌としていて、地上本部の戦力も脆弱だった。犯人を取り逃がすこともあれば、
殺してしまうことも日常茶飯事だった」

「犯人を・・・・・・殺す・・・・」

「逮捕が不可能な凶悪犯、ロストロギアに取り込まれて救出不可能と判断された被害者。
止むおえない処分、恐怖に駆られた過剰防衛。君の母親も、染めたくない手を血で染めねばならないことがあったらしい。
酷いノイローゼに悩まされていたそうだ。自分は法の守護者なのに、人殺しをしていると」

人助けがしたいのに、やっていることはそれとは正反対の行為。
何かを守るために何かを傷つけ、その痛みが治まる前にまた新しい痛みを覚える。
そんな矛盾に、スバルの母も悩んでいたのだ。

「三佐がプロポーズした時も、それを理由に断ったそうだ。自分は人殺しだから、あなたの子どもを抱く資格はないと。
それに対する返答が、さっきの言葉だ。子どもにとっては、抱きしめてくれる温もりこそが真実。
どんなに血で汚れていても、優しく抱きしめてくれる母親を求めるものだって。
君達を引き取ったのも、多分それが理由だ」

誰とも知れない人のエゴによって生み出され、人ではない別のものへと造り返られた肉体。
人工的に生み出されたが故に家族もおらず、保護されても待ち受けているのは技術解明のための実験体としての日々。
だから彼女は自分達に手を差し伸べたのだ。もう二度と、辛い思いをさせないように。


344:UNDERDOGS 第四話⑮
08/11/13 14:57:34 JiyYhqDI
「スバル、誰かを傷つけることを嫌だと思える心を忘れないでくれ。誰かのために涙を流せる優しさを失わないでくれ。
何を憎んでも良い、何を壊しても良い。けれど、その思いを・・・・・君の若さを見失わないで欲しい」

カルタスの言葉に、スバルは無言で頷いた。
まだ気持ちの整理がついたわけではない。けれど、ほんの少しだけ楽になったのは事実だ。
母も同じように苦しみ、答えを出せたのならば自分もまだ頑張れるかもしれない。
自分はまだ、夢を諦めなくても良いのかもしれない。





翌日、日の出を前にしてスバル達は少年の家を後にした。
世話になったお礼を言うことはできず、簡単な書置きと手持ちから幾ばくかのお金を残すことしかできなかった。
もぬけの空になった部屋を見て、少年が何を思ったのかを彼女達が知る術はない。
その少し後にスバル達の行方を捜索している陸士隊がやって来たが、
少年は「何も知らない」とだけ告げてそれ以上は何も語ろうとしなかった。


                                            to be continued


345:B・A
08/11/13 14:59:04 JiyYhqDI
以上です。
2話分を圧縮してこの容量。
次回で2人がやっと合流できる。
カルタスに関しては・・・・うん、やり過ぎない程度に気をつける。

346:名無しさん@ピンキー
08/11/13 18:22:54 /dZvzq5Q
改造人間カルタスGJ!

まさかここで登場するのがカルタスとは思わなかったwww

347:名無しさん@ピンキー
08/11/13 21:12:04 FMqYtH52
>>345
本編みたいにルールーには笑顔が似合うのに母親が目覚めないからいまだに笑えないのか
果たしてエリオと亡きキャロの思いは届くのだろうか
そして二人の再開はスバルに救いをもたらすのかとかもう、色々気になりすぎる
Gj!!

348:名無しさん@ピンキー
08/11/13 21:15:23 0DowP7DL
GJ、なにこの昭和なノリのライダー

349:名無しさん@ピンキー
08/11/13 21:43:10 4fZ7DND0
ここで雷電と思ってしまった自分はきっとゆとりだwww

350:名無しさん@ピンキー
08/11/13 21:47:27 M8SKn92z
たった一つの命を捨てて 生まれ変わった不死身の身体
戦闘機人を叩いて砕け カルタスがやらねば誰がやる


>>350
おっさん乙

351:名無しさん@ピンキー
08/11/13 21:55:10 1fP3BLHb
自虐するんなって…

>>349
俺もだw

352:ザ・シガー
08/11/13 22:21:40 /dZvzq5Q
うし、25分までチェックしたらちょっくら投下すっぜ。
ゼスト×アギトのエロだす。

353:烈火の剣精と槍騎士
08/11/13 22:26:51 /dZvzq5Q
烈火の剣精と槍騎士


 どこまでも広がる真っ暗な空間、視覚も聴覚も効かない感覚。
 不思議と、今自分が眠りに付いているという自覚だけはある。
 こういう事はたまにある、眠りと覚醒の間隔が曖昧で思考は過去の記憶に飛んでいく。
 これは人にもある事なのか、それともあたしが大昔に作られた融合機だからなのかは分からない。
 そして徐々に視覚は光を、聴覚は音を取り戻していく。
 月と星の光が彩る夜の空、虫の鳴く自然の音色、いつしか嗅覚は土と草の香りも認識し始めた。
 懐かしいなぁ……あたしとルールーとあの人と、三人で色んな世界をたくさん回って旅したあの時の思い出だ。
 おぼろげな過去の記憶、最悪だった研究所での記憶、そのどれもを上回る一番幸せだった時の記憶。
 思えば、この時があたしの生の全てだったと思う。
 愛しかったあの人、この世で一番大好きなあの人と一緒に過ごせた時間だから……

 蘇る記憶の中、あたしが視線を上に向けるとそこにはあの人の……ゼスト・グランガイツの顔があった。
 そうか、今のあたしは“夜の奉仕”をしてる時間だったんだ。
 口の中になんとも言えない青臭い臭いと妙な味が広がっている、過去のあたし口淫の真っ最中だった。
 視線を下に戻すと、そこには硬く大きくなった旦那の陰茎がある。
 普段は人間よりもかなり小さい身体のあたしだけど、今は奉仕の為に普通の人間の子供くらいの大きさになっていた。
 そして、夢の中のあたしは過去の記憶通りに目の前の大きな肉の塊に舌を這わせる。
 ペロリと舐め上げれば、懐かしい青臭さが口の中に満ち溢れた。


「くっ! ぅああ……」


 あたしが舌を動かすたびにゼストの旦那は苦悶に似た表情をして声を漏らした。
 でもソレは決して嫌だからじゃなくて、快楽に耐えてる声だってすぐに分かる。
 あたしは手で扱いて刺激を続けながら口を離すと、顔を上げて旦那に視線を移した。


「旦那、我慢しなくても良いよ? 好きな時に出して」


 あたしはしっかりと覚えこんだ絶妙な力加減で旦那のモノを扱きながらそう促した。
 旦那はいつもそうだった、少し離れたところで寝ているルールーを気にして快楽に深くのめり込まない。
 あたしがどんなに頑張ってもそうだった。
 そりゃあ、旦那の性欲処理を買って出たのはあたしの方だけど、もう少し気持ち良さに身を任せて欲しいと思う。
 最初は偶然旦那の自慰に遭遇した時だった、旦那が色々と男の欲求を持て余しているのを知ったあたしは自分から進んで旦那の性欲処理を引き受けたんだ。
 おぼろげな霞の向こうにある大昔の記憶、そして研究所の科学者共が戯れに強制した行為であたしはそれなりに性技に精通してた。
 熟練の技で攻め立てれば、旦那のペニスの先端からはまるで射精したかのようにカウパーがあふれ出す。
 あたしはそれを、まるで最高のご馳走にでもするかのように舐め上げる。
 とても美味しいなんて言える味じゃないが、旦那の身体から出た快楽の証を零すのがもったいなく感じて舌で掬った。
 青臭くて苦くて、舌の上に旦那の味が溶けるたびにあたしも身体が疼いていく。
 下腹部の子宮が熱を持って暴れだす、あたしの身体が快楽を欲している証拠だ。

 人間を模して作られた融合機は、モノにもよるけど人と同じ欲求を持つ事が多い。
 食欲・睡眠欲、そして性欲、形は子供でもあたしもれっきとした女だって事だ。
 旦那のモノを口にすればそれだけで欲情してしまう。
 でもあまり自分から執拗にねだる事はしなかった、そうした時に旦那に軽蔑されるのが恐かったからだ……
 あたしは自分が最低の融合機だと思う。
 旦那の為と言って、結局は自分自身の火照りを慰めているのかもしれない。
 なんて浅ましいガラクタなんだろう……きっと、こんな事を知ったら旦那はあたしを捨ててしまう。

354:烈火の剣精と槍騎士
08/11/13 22:28:42 /dZvzq5Q
 だからあたしは必死にいやらしい部分に蓋をして隠して、ただ旦那が気持ち良くなる事だけ考えて奉仕した。

 あたしが舌を這わせる度に、旦那のモノから溢れ出す先走りの汁がどんどん濃くなっていく。
 それこそ射精した時にでる精液のような粘性と味になったそれを、あたしは一心不乱に全て飲み干した。
 もうすぐだ、もうすぐ旦那が我慢の限界を迎えて欲望の白濁を吐き出すって事が分かる。
 何度も身体を重ねる内に完全に把握した射精のタイミングに合わせて、あたしはさらに舌先に力を込めてしゃぶった。
 尿道をほじくり返すように舌先で抉り、エラの張ったカリを執拗に唇で引っ掛け、頬をすぼめてペニス全体を吸い上げる。
 その技巧を続けて丹念に刺激を与えながら、何度も何度も頭を上下に動かしていく。
 そうして何度目かの律動が行われた時、あたしの身体が覚えた間隔とキッチリ同じ周期で咥えた男根は精を爆発させた。


「んぶっ! ふぐぅぅ!」


 凄まじい勢いで吐き出されたあまりに大量の精液に、あたしは一瞬驚いてむせ返る。
 でも吐き出すなんて絶対にできない、口の中に溢れかえる青臭い精をあたしはできるだけ零すまいと必死に飲み込んだ。
 ゴクゴクと喉を鳴らして青臭い液体を飲む込む、ドロドロした凄い粘性が喉に引っかかり少し苦しかった。
 でもこれが旦那の気持ち良かった証だと思えば全然嫌じゃなかった、むしろもっと飲みたいとさえ思う。
 そうしてしばらく喉を鳴らしていたけど、いつしか射精は終わりを告げて溢れる精も底をついた。
 あたしがそっと口を離せば、唾液と精液の混ざった液体が唇と陰茎との間に糸を引く。
 少しだけお口の奉仕が終わったのが名残惜しいけど、いつまでも口だけじゃ旦那が満足できない。
 あたしはその場で横になると纏っていた下の服、股を覆う部分をずらして自分の膣口を曝け出した。
 既に愛液でビショビショになるまで濡れてたのが恥ずかしい、顔が真っ赤になってるのが自分でも分かるくらい頬が熱くなってた。
 でも恥ずかしがってるだけじゃ旦那に満足して楽しんでもらえないから、あたしは自分で入り口に指をかけると左右に軽く広げた。


「旦那……まだ満足してないよね? 今度はこっち使って良いからさ……」


 その時のあたしは一体どんな表情をしてたんだろう? きっと凄くだらしなくていやらしい顔だったんだと思う。
 後から後から溢れ出す愛液で地面には小さな水溜りができているくらいにあたしの身体は甘く疼いてた。
 本当に恥ずかしい……旦那の為にしてる事なのに、あたしの身体は自分自身も快楽を楽しもうと期待に燃えている。
 あたしは浅ましい自分の身体を呪いながら旦那を促す、旦那は少しだけ悲しそうな表情を見せるとまだ硬さを失っていない自分の陰茎をあたしの入り口に押し当てた。
 溢れ出た愛液を少し馴染ませると、旦那は腰を少しずつ沈めて行く。
 いくら人間大になっても容姿は子供、大人のそれも大男の旦那のモノはキツくてちょっと苦しい。
 でもそれは最初だけ、すぐに圧迫感と苦しさは快感で塗り潰されていった。


「んぅ……ふぅああぁぁ……」


 あたしの口からは思わず恥ずかしい甘えた声が漏れる。
 少し離れたところで寝ていたルールーを起こしちゃったら大変だから、あたしはすぐに自分の口を手でふさいで声を我慢した。
 旦那もそれを察したのか、挿入しても動かずあたしの準備が整うのを待っててくれた。
 あたしは口を押さえたまま頷いて旦那に動いて良いって旨を伝える。
 旦那は一度頷くと、そのままゆっくり腰を前後させだした。
 あたしの濡れた入り口を旦那の鉄みたいに硬いモノが動いて抉る度に凄くいやらしい音が出て耳を犯す。

355:烈火の剣精と槍騎士
08/11/13 22:30:03 /dZvzq5Q
 これが全部あたしの出した愛液の音で、旦那にも聞かれてると思うと恥ずかしくて死んじゃいそうだった。
 でもそんな事を気にする余裕はなかった、旦那との交合の快感で漏れる嬌声を我慢するだけであたしは気が狂いそうになる。


「んぅぅううっ! ……んぅっ!!」


 口元をいくら手で押さえつけても、溢れ出る声は全ては消えてくれない。
 くぐもったいやらしい声が零れて、とてもあたしの出した声とは思えなかった。
 お腹の中を旦那のモノが凄い抉る勢いはドンドン強く早くなっていって、内臓まで貫通されそうな錯覚すら覚えた。
 膣の中を削り取られそうな快感の衝撃に頭の中が真っ白に染まっていく。


「んっ! んぅっ!!……ふんぅぅううっ!!」


 切なくて甘くて、おかしくなりそうなくらい気持ち良い電気が頭の中でたくさん弾ける。
 あたしの中のまともな意識と思考がピンク色の靄の中に確かに溶けてくのを感じた。
 膣を抉りこむ旦那のモノから背筋を快感の炎が駆け上って、あたしはまるで奈落の底に堕ちるような錯覚を感じる。
 その瞬間、あたしは全身をしならせて盛大に絶頂した。


「ふぅんぅぅっ!! ふぅはぁぁあっ!!」


 頭の中身が全部蕩けるような快楽、あたしは我慢しきれずに声を漏らしてしまう。
 でもそんな事を気にする余裕なんてあたしにも旦那にもなかった。
 あたしはイった反動で全身をしならせて震えて、旦那も我慢の限界を超えて二度目の射精を迎える。


「くぅっ! アギト……出すぞっ!」


 言葉と共に、あたしはお腹の中で何かが爆発するような感覚を感じた。
 ねばねばしてて火傷しそうなくらい熱い精液が身体の中で弾ける。
 気持ち良過ぎて本当に自分が壊れてしまったかと思った、涙が溢れて視界が霞む、身体はフワフワとした浮遊感すら覚えた。
 痙攣させながら全ての精液を吐き出すと、旦那はあたしの身体からペニスを抜き出す。
 旦那のモノはまだ少し硬さを残していたけど、これ以上する気がないのか旦那は早々にあたしの身体を手元のタオルで拭き始めた。


「すまんなアギト……俺の勝手でこんな事に付き合わせてしまって……本当にすまん」


 ゼストの旦那は心底すまなそうにそう言ってあたしの身体を丁寧に拭いてくれた。
 謝る事なんてないのに……あたしも旦那の事を求めてて、旦那とこうして身体を重ねることが嬉しいのに、愛してるのに。
 でもそんな事言えなかった、あたしの気持ちを伝えたって旦那には迷惑だから。


「気にしなくて良いよ旦那、こんな事で良かったらいつでも手伝うからさ」


 あたしは精一杯笑ってそう言った。
 本当は自分の気持ちが伝えられなくて泣き出しそうだったけど、旦那の重荷になんてなりたくないから。
 だからあたしは、自分の心を押し殺して自分の顔に乾いた笑顔を張り付けた……

 そこであたしの意識はまた闇の中に飲まれ始める。


 闇と無音が世界を侵食していく。
 懐かしくて切なくて大好きな夢が終わりを告げる、あたしの心は果てのない黒と同化していった。

356:烈火の剣精と槍騎士
08/11/13 22:30:57 /dZvzq5Q
 夢が終わり、今度こそ本当に光が目に映る、耳は現実世界の確かな音を捉え始めた。


『ギト……起きろ……アギト』


 ああ、これは今のロード(主)の声。そうだ起きないと、もう仕事の時間だ。
 あたしは目を開いて意識を現実世界に覚醒させた。
 目の前の明るさに眩暈を覚えそうだ、でもそれは一瞬、すぐに身体も頭も正常な状態に稼動する。
 眼を覚ましたあたしの顔を、今のロード、烈火の将シグナムが不思議そうな顔で覗き込んでいた。


「起きたか」
「ああ、おはようシグナム」


 あたしはそう返事を返すとゆっくりと身体を起こす。
 今あたしとシグナムは勤務中の休み時間の最中だった、僅かに記憶の糸を手繰れば自分が仮眠を取った事にすぐ気付いた。
 時計を見ると、そろそろ休憩も終わる頃合だ。
 うん、と小さく伸びをすると軽く羽根とシッポを振って身体をほぐす。
 懐かしい夢を見たお陰か、心も身体も随分と気持ちの良さを感じている。
 そんなあたしに、シグナムが一つ質問を投げかけた。


「随分と嬉しそうな寝顔だったが、何か良い夢でも見たのか?」


 夢の内容を聞かれて、さっきまで見ていた過去の思い出が一瞬で脳裏を駆け巡った。
 旦那のとの思い出に胸が甘くて切ないモノで満ちる。
 少しの間、それこそ一度呼吸する間だけ夢と過去のまどろみに酔うと、あたしはシグナムの顔を見上げて返事を返した。


「……うん、まあな」


 あたしはちょっとだけ悲しいのを我慢して、今度は本物の笑顔を見せた。
 哀しいことも辛いことも含めて、ゼストの旦那との思い出は全部宝物だったから。


「大好きな人との夢……見てたからさ」


 終幕。


357:ザ・シガー
08/11/13 22:37:26 /dZvzq5Q
最近アギトのエロSSが立て続けに投下された。
実に良い3Pモノだった。 だが……

その流れに反逆する!!  全力で反逆するううぅぅ!!!


アギトのエロ少ない上に、ゼストの相手と言えばメガーヌ母さんやらチンク姉ばかりじゃないっすか?
悪くないよ? 全然悪くないよ? むしろ大好きだよ?

でもさ……STS本編であんだけ「旦那旦那」言って甲斐甲斐しく尽くしてたアギトが報われないってのは耐えられないのよ。
需要のあるなしに関係なく、ただ純粋にアギトを可愛く書きたかった、ただそれだけ。
後悔はない。

ただ全部アギトの一人称だったのは冒険すぐる。

358:名無しさん@ピンキー
08/11/13 22:59:51 QjZTCFmV
GJでしたー。切ない、これは切ないッッ!!

というかゼストはいっそ種族の差を超えて孕ませるべきだったと(ry
くそう、生き急いだゼストがこれほど憎たらしいとは・・・
・・・責任取って、最期まで生きていてやれよ・・・などと思うのでした。

359:名無しさん@ピンキー
08/11/13 23:19:00 1fP3BLHb
>>357
GJです!

>>345
そういえば、人間がサイバーグ化するのってARMSであったな。
あれって、意識とかどうしてたんだろか?

360:名無しさん@ピンキー
08/11/13 23:21:48 6iKz3Ma2
>>357
アギトが可愛ええ……

>>358
あの最後もあれはあれで。

361:名無しさん@ピンキー
08/11/13 23:22:35 M8SKn92z
>>359
よくわからんが、人間の身体を機械で代用するのが「サイボーグ化」なので、意識は関係ないぞ。
(幻肢痛とかの話題かな?)

362:名無しさん@ピンキー
08/11/13 23:40:00 4FZuANVY
>>345GJ!!
結局イクスもスバルの元を離れてしまうのか
一人になったらもうスバルはダメかと思っていたが、カルタスの言葉でわずかでも六課で過ごした幸せな時の気持ちを思い出せたらと思う
次回はとうとうスバエリの再会か?
エリオはスバルとルーテシアに平穏と笑顔をもたらせるのか…いや絶対にもたらして欲しい!


363:名無しさん@ピンキー
08/11/14 00:14:45 N82mJeFw
やばい、カルタスがドラッケン部隊の隊長に見えてきたw
死した仲間のパーツを使い共食い整備でなんとか戦えるレベルで、
敵の最新鋭の奴らに旧式とか馬鹿にされるのに、戦うと敵を瞬殺とかするw
スバルにやられたノーヴェが挑んだら、こんな感じでやられちゃいそうだ。

364:名無しさん@ピンキー
08/11/14 00:20:25 QS9adZtL
>>345
GJです
スバルはまだかわいらしいわんこに戻れると俺は信じてる
イクスやカルタスの気持ちを無駄にはしてほしくはない
ついでにルー子はエリオの忠実なわんこになれると俺は信(ry

>>357
GJ
ゼストは生き残って、アギトとくっついてメガーヌと再開を喜んでシグナムと好敵手になってエリオを弟子にして、
こんな未来もありだったな…

365:名無しさん@ピンキー
08/11/14 03:01:08 ks9zgIfC
誰か高町家の方々にもスポットライトを……

366:名無しさん@ピンキー
08/11/14 06:00:47 jgonZFya
>>365
高町家にスポットあてると、とらハ要素混じる場合は基本別スレとかになるんじゃなかったっけ

367:名無しさん@ピンキー
08/11/14 11:12:04 btpy3Hy8
とらハ板ってあったのか?

368:名無しさん@ピンキー
08/11/14 12:13:02 dm278TxL
>>366
リリなののキャラと絡むのは構わないんじゃないか?
とらハのみのネタで突っ走る場合はわからないが。

ところで、クライド×リンディは見たことあるけど士郎×桃子は見かけないな。

369:名無しさん@ピンキー
08/11/14 12:28:47 N82mJeFw
凄まじいエロのオーラを感じるなw

アルトとユーノのSSの続きが読みたいなぁ。それか、リンディとユーノのハードエロ系w

370:名無しさん@ピンキー
08/11/14 14:52:16 DtI3RQSG
>>369
いいなぁ、ユーノはともかくリンディさんのハードエロは見たいw

371:名無しさん@ピンキー
08/11/14 15:16:27 poBkRt3K
未来編でのルー子によるエリオ寝取り+既成事実作成の成功編もあると、ずっと信じております
あれだけ純粋なんだから、いざという時は重婚するぐらいの気持ちでエロオには頑張って欲しい

372:名無しさん@ピンキー
08/11/14 15:47:21 z62So16Z
上司であるユーノとの職場恋愛を望む俺は異端?

373:名無しさん@ピンキー
08/11/14 16:32:46 z62So16Z
ごめん、‘ユーノとルーテシアの職場恋愛’の書き間違えだ。

374:名無しさん@ピンキー
08/11/14 19:47:52 PUaYb4LL
>>369>>370
ハードかは判らんが、そのカプなら保管庫にあったな。

>>373
どこをどう通ってそんなのになるんだ色んな意味で見たいZE

375:名無しさん@ピンキー
08/11/14 20:51:44 TzUy9nui
>>374
きっと無人世界が暇すぎて本ばっかり読んでるうちに司書の仕事に興味が
出てきたりしたんだろうぜ、いや暇なのかはわからんが

>>345
GJです、メカルタスかっこいいよメカルタス、中の人的にどうしても
グレンラガンが頭に浮かぶけど
そしてヴァイス……何があったんだ……

376:名無しさん@ピンキー
08/11/14 20:55:38 poBkRt3K
>>345
遅くなりましたがGJ!果たして今のスバルとエリオが再開して再び共闘できるかといえば難しいように思います。
復讐しようとする者と助けようとする者。
どうしても相容れない気がしてしまいます。

>>357
GJ!
ゼスト…お前ってやつはと思わず思ってしまいました。


377:名無しさん@ピンキー
08/11/14 22:14:41 ofw5S6Nr
あと五分ほどで投下します。

378:野狗
08/11/14 22:20:44 ofw5S6Nr
冬のおつとめが近づいて、そろそろカキコ速度が鈍る頃。

魔法少女リリカルなのはIrregularS 第五話です。(全十三話予定)

捏造まみれです。
SSX前提です。
あぼんはコテで

レス数14

379:野狗
08/11/14 22:21:52 ofw5S6Nr
      1

 某管理世界の空。
 レヴァンティンの一振りで、セッテタイプは次々と燃え尽きていく。
 戦果を確認すると、シグナムはアギトとユニゾンアウトする。

「さっすがシグナム。パチモンナンバーズなんか敵じゃねえっ!」
「……劣化コピーとはいえ、脆いものだな。質より量とは、つまらんことを考えるものだ」

 軽くうなずきながら、フェイトはシグナムに並ぶ。

「アギトとユニゾンしたシグナムとは、私も戦いたくないけれど」
「へっへー、そりゃそうだろ」

 アギトが胸を張るのを見て、フェイトは微笑む。

「模擬戦でも、シグナム単体で手一杯です」
「謙遜だな、テスタロッサ。それを言うなら、私はまだお前の真ソニックフォームを間近に見たことはないぞ? あれならどうなんだ?」

 シグナムの言葉に応えるように、二つの影が近づく。

「来たよ。これでシグナムの期待には応えられるのかな?」
「だといいが」

 シグナムはフェイトと合流。フェイクマザーの設置されている拠点を潰して回っていた。
 どの拠点にも、決まってセッテ、ノーヴェ、ディエチの量産型が配備されている。そこで出た結論は、この三タイプは新たに製造されたものではなく、
フェイクマザーによるコピーだというものだった。

「ここには、ボスがいるみたいだね」
「……二対二か。どうする?」

 シグナムが聞いたのは対応策ではない。もっと単純に、戦う相手を尋ねているのだ。

「シグナムは?」
「私としては、主の偽者は見過ごせんな」
「それじゃあ、決まりだね」

 フェイトは前方に佇む二人を見た。
 六枚翼の一人。そして、白いバリアジャケットの一人。
 アギトが笑った。

「お、テスタロッサの旦那さんの昔の恋人じゃん! よおしっ、やっちまえ!」

 がくん、と体勢を崩すフェイト。

「あ、あ、アギト?」
「あれ? 違ったの?」
「えっとね、ユーノとなのははそういう関係じゃなくて……、そもそも、あれはなのはじゃないし……」
「来たぞ」

 シグナムはアギトを連れてその場から回避する。同時にフェイトも、砲撃を回避する。
 ディバインバスターを回避した二人。フェイトはそのまま、コピーなのはへと向き直る。

「そうやって、良くも悪くも人の話を聞かないところだけは、なのはにそっくりだね」

 SONIC MOVE

 高速移動で飛んでいく姿をシグナムは見送った。

「では、私たちも行くぞ、アギト。主を詐称する痴れ者など、放っておく訳にはいかん」

380:野狗
08/11/14 22:22:30 ofw5S6Nr
             2

                     魔法少女リリカルなのはIrregularS
                             第五話
                    「セインの覚悟 ウェンディの意地」


 集束された魔力は、禍々しい輝きとともに大きく膨れあがっていく。

「誰から? 空? 地面? それくらいは選ばせてあげる」

 コピーなのはの瞳はギラギラと光っていた。獲物を弄ぶ獣の瞳の色が、魔力の輝きを照らし返している。
 その輝きに照らされながら、ジュニアは立ちつくしていた。

「…………嘘だ、こんな……こんな集束が可能なんて」

 ディエチにスターライトブレイカーを撃たせるために研究は重ねた。戦闘機人テンプレートからの集束手段も発見した。
しかし今目の前で行われているシークエンスは、ジュニアの考え出した手順を遙かに凌駕している。
 携帯用分析機―トリコーダのディスプレイに映し出される数値は、間違いのない事実をジュニアに突きつけている。
 コピーなのはが収集しているのは戦場に散った魔力の残滓だけではない。明らかにそれ以上の魔力を収集している。
その収集先は、コピーフェイトとコピーはやて、そして倒された量産戦闘機人。
 おそらくは、瀕死の者の魔力を直接収集している。。
 ジュニアは理屈を理解した。過去、ヴォルケンリッターによって行われたリンカーコア収集では、シャマルの旅の扉による強奪を除けば、持ち主を倒す必要があった。
持ち主を一旦弱体化させなければならないのだ。
 弱体化すれば、リンカーコアは抜けるのである。それを利用したのが、コピーなのはによるSLB魔力集束だった。リンカーコア自体は抜かずに、魔力のみを利用。
 そして、不完全とはいえディープダイバーの解析。これも、今のジュニアには不可能と言っていい。

「…………欲しい」

 無意識に、呟いていた。
 欲しい。あの力が、否、あの知識が欲しい。
 心のどこかが痛切に叫んでいる。
 欲しいなあ!
 あの知識が欲しいなぁ!
 あのコピーが欲しいなぁ!

「ジュニアッ!」

 ノーヴェの声がジュニアを現実に戻す。その瞬間、ジュニアは己の思いに怖気を覚えた。
 同じだ、と感じたのだ。父である、スカリエッティと同じだと。

「しっかり掴まってろ!」

 全速で走るノーヴェがすれ違いざまにジュニアを担ぎ上げる。

「あの砲撃馬鹿の圏内から一歩でも遠くに逃げる!」
「でも、皆が!」
「あんたがいりゃあ、死なない限り直せるだろっ!」
「でもっ!」
「うるせえっ! 妹が命懸けて意地張ってんだっ! 応えてやんなきゃ、なんねえだろっ!!」

 ノーヴェは叫び、泣いていた。
 ジュニアは見た。
 限界まで加速したライディングボード。そして、戦場を自在に駆けるドーターズの姿を。
 魔力塊に突撃する二人の姿を。

「ウェンディ……? ガリュー……?」

381:野狗
08/11/14 22:23:17 ofw5S6Nr
         3


 ドーターズが突然操作できなくなったことにチンクは気付いた。
 ウェンディが直接操作しているのだ。

「まだ、戦えるッスよね」
「ウェンディ、お前」
「あたしがいなくなっても、他の皆がいれば、まだ戦えるッスよね」
「何考えてんだ」
「ノーヴェはジュニアを頼むッス。あたしは、あれを止めてみせるッス」

 返事を待たず、ライディングボードが加速する。
 逆方向へ、なのはから逃げる方向へと飛び始めるドーターズ。

「ノーヴェ、ウェンデイを止めてくれ」
「チンク姉、逆の立場なら、あたしは止めてほしくない。チンク姉だって、一緒だろ」
「ウェンディ!」

 叫ぶことしかできない。空を飛べない自分の性能を、チンクは初めて恨んだ。
 ドーターズは戦場を駆け、姉妹を離脱させようとしていた。
 ディエチを乗せ、オットーとディード、ルーテシアの囲みを数体を犠牲にして破り、別の数体がセインへと向かう。
 圧倒的多数に囲まれて傷を負った双子とルーテシアはほとんど動けず、ディエチもそれは同じだった。動けるのはノーヴェとチンクのみ。
しかし、ノーヴェはジュニアを脱出させるために走っている。
 スバルとエリオはそれぞれ、コピーはやてとコピーフェイトの呪縛から離れることができないでいる。
 せめて、セインを。
 チンクはスティンガーを構えた。
 一瞬、わずか一瞬動きが収まれば、セインを捕らえているセッテタイプを破壊できる。ただし、この場で止まれば終わりだ。

「チンク姉! 構わないからやってくれっ! 手の一本や二本、吹き飛ばしてくれていいからっ!」

 逡巡の時間はない。チンクはスティンガーを投擲する。

 ISランブルデトネイター

 爆発の中から、セインを捕まえたドーターズが飛び去っていく。そのセインの姿にはあるべき四肢の一部がないことを、チンクの目は捉えていた。

「すまんっ……セイン」

382:野狗
08/11/14 22:24:07 ofw5S6Nr
        4


 ガリューは飛んだ。高速直線移動に限れば今のガリューはフェイトよりも早い。
 そして、ほとんど同時にウェンディのボードが同じ位置に到達する。
 コピーなのはの目前。SLBによって集束した魔力塊に振りかざされるデバイスの間近。
 ガリューの腕がデバイスを止めた。

「こざかしい虫けらっ!」

 シークエンスに入ったために膨大な魔力が術者であるコピーなのはをアシストしている。それはガリュー単独では止められない。
 ウェンディが身体ごと、デバイスと魔力塊の間に入った。

「撃たせないッ! 絶対に!」

 ガリューが吼え、デバイスに触れていない左手を高々と上げる。
 ウェンディはその行為を理解した。

「やるッス!」

 ライディングボードを盾に、魔力塊を地面へと押しやるように身体を伸ばす。ガリューの手がそこに重なり、二人かがりで魔力塊を押しやろうとする。
 もう、間違えない。
 ウェンディは誓っていた。
 自分は馬鹿だった。あの日、クアットロがモニターの中で断じたように。でも、今は違う。
 もう、間違えない。二度と、為すべき事を間違えない。
 ティアナに敗れた理由も、今ならわかる。単純なことだ。自分たちが間違っていたから。ティアナは間違っていなかったから。
 だから、もう間違えない。だから、もう負けない。
 たとえ個人としての自分が負けても、自分たちはもう負けない。
 魔力塊の波動がウェンディの全身を貫くように蝕む。

「くぁああ……」

 ガリューも同じように苦しんでいるのが見える。

「ガリューも、もう間違えないッスね。ルーお嬢様に間違えさせないんスよね」
「虫けら! ジャンク! 負け犬が! どうして、邪魔するのっ!!」

 コピーなのはの叫び。狂気にも似た眼差しに、ウェンディは笑った。

「あんたが……間違ってるからッスよ」

 デバイスと魔力塊を繋ぐプラズマ状の力場が伸び始める。
 魔力塊は、ゆっくりと降下を始めていた。同時に、凄まじい衝撃が、内に籠もる衝撃がウェンディとガリューの身体の中をかき回す。

「間違っているから……それを正したいから……戦うんスよ」


383:野狗
08/11/14 22:24:58 ofw5S6Nr
         5

 痛みを痛みとも感じなくなった自分の身体を、ウェンディは不思議に思った。
 もう、口が動かない。それでも、身体は動く。
 目が見えなくても、身体は動く。
 ドーターズから送られてくる映像はまだ見えていた。
 どうして、皆は泣いているんだろう。SLBを防いだのだから、喜べばいいのに。

 ……みんな、根が暗いッスよ。もっと明るくするッス……

 ……ここまでやってもまだ動ける。さすが、ドクターッスね……

 ……チンク姉、ノーヴェ、ディエチ、オットー、ディード……スバル、エリオ、ルーお嬢様……勝つッスよ……

 ……ジュニア、もうあたしを作ろうなんて、思わなくていいっすよ……

 ……クア姉や騎士ゼストに、会えるのかなあ……

 ……ドゥーエ姉様に会うのは楽しみッスねえ……

 ……あ、ボード壊しちゃった……ティアに譲っ……

 最後に聞こえたのは、ガリューの吼える声。ウェンディにはそれが、勝ち鬨に聞こえていた。



 地上に落とされた魔力塊は、小規模な爆発とともに消え去る。

「うぉああああああああああああああっ!!!」
「あああああああああああああああああっ!!!」

 呪縛の解けたストラーダとリボルバーナックルの前に、魔力を使い切ったコピーはひとたまりもなかった。

「コピー一組でこの成果。弱いね、エリオ、スバル」

 笑うコピーなのは。
 次の瞬間、その身体は文字通り溶けていた。
 それが、不完全なコピーの断末魔の姿だった。

384:野狗
08/11/14 22:25:40 ofw5S6Nr
          6

 遊撃隊本部、隊長室―
 エリオはデスクの前に座り込んでいた。

「隊長、被害報告ができました」
「……ああ、そこにおいてくれ」

 左手を吊ったルーテシアが、書類をエリオの机に置いた。その後ろには、チンクが付き従っている。

「キャロのことですけれど」
「……気にしなくていい」
「しかし」
「気にしなくていいと言ったんだっ!」
「わかりました」

 ルーテシアは静かに答える。そして、左手を吊っていた包帯を外した。

「ルーテシア?」
「私は、隊長補佐だから」

 エリオは、訳がわからないと言った顔になる。

「隊長が指揮を執れない状態になったとき、指揮を執るのは私」
「どういう意味だ」

 ルーテシアは書類の最後に記されたパラグラフを示す。

「仮に隊長が行方不明になれば、私が指揮を執ります」
「行方不明……?」

 エリオの表情が奇妙に歪む。

「隊を捨てて妻を救えとでも言うつもりか」
「では、妻を捨てますか?」
「……考えさせてくれ」

 チンクが二人の間に入った。

「隊とキャロ、両方を救うつもりはないのですか?」
「……そんな力はないよ、僕には」

 チンクの表情がやや険しくなる。

「私の知っている中で最も偉大な騎士にも、そんな力はありませんでした」

 ルーテシアの厳しい視線を、チンクは甘んじて受けた。

「貴方なら、彼を超えられるかも知れない。そうも思っていたのですが」
「僕は、そんなに強くない」
「失望させられた……というより、私の期待が大きすぎたのでしょうね」

 二人は、座り込んだままのエリオを置いて部屋を出ていった。

「……僕は……僕は……」 

385:野狗
08/11/14 22:26:25 ofw5S6Nr
               7

 部屋を出たルーテシアは、通路の反対側に見えた影に気づき、その正体がわかると頭を下げた。まるで、お願いしますというように。
 それに対して、わかったと言うようにうなずく影。
 あえてそのやりとりには触れず、歩き出したルーテシアにチンクは告げる。

「できるなら、補佐の昇進を見たくはありませんが」
「同意するわ。だけど、とりあえずやれることはやりましょう。チンク、すぐに資材課を突っついて、デバイスの修理機材を。必要なら、押し込んで奪ってきなさい」
「了解。それから」
「なに?」
「しばらくは状態復帰が主目的です。正直に言って、補佐が表立って行動する必要はありません」
「それで?」
「手続きなどは私がやります。ガリューの所へ行ってください」
「……でも」
「ルーテシアお嬢様」

 チンクは、久しぶりにその呼びかけを使った。

「姉の言うことは、素直に聞くものです」
「姉? チンクが、私の?」
「僭越ながら、それに似た感情を抱いていました。いえ、今でもそうかもしれません。ご迷惑でしたか?」
「ううん」

 ルーテシアはしゃがみ込むと、チンクの胸元に頭を置いた。

「ありがとう、チンク姉」



「あの時は、そこにチンク姉がいて、あんたと私はここでチンク姉を見てたんだよね」

 セインは物言わぬ妹に語りかける。

「だけど、あの時はチンク姉は意識があって……時間はかかるけれど必ず直るって……」
「セイン姉様、それ以上は……」

 セインの乗った車椅子を、ディードが押している。
 二つ並べられた生体ポッドの一つには、辛うじて回収できたウェンディの残骸が納められている。奇跡的に頭部が残っていたことが、一同に微かな望みを生んでいた。

「帰ってくるよね……ウェンディ。あんたのことだから、普通の顔して能天気に帰ってくるよね」

 セインは、生体ポッドの横に横たえられたドーターズの頭を、唯一残った右手で撫でる。

「この子たちだって待ってるよ」
「セイン姉様、そろそろ出ましょう」

 ゆっくりと、セインは振り向いた。

「そうだね。私がここにいてもウェンディに何もできない」
「セイン姉様。そういう意味では……」

 ディードは、何かを噛みしめるように唇を強く結んだ。

「ジュニアの所に行こうよ。それからディード、お願いがあるんだ」


386:野狗
08/11/14 22:27:04 ofw5S6Nr
             8

 ルーテシアと入れ替わりに入ってきた姿に、エリオは反射的に立ち上がった。

「シャマル先生」
「いいわよ、隊長は座っていて」
「連絡なんてなかったのに…」
「受付には口止めしたのよ。ナカジマ特佐の特命だって言えば、あっさり了承してくれたわよ。はやてちゃんが特佐になってから、こういう役得が増えて少し楽しいかな」
「それは…」
「言っておくけど、はやてちゃんの特命は本当。頼まれて、医者としてここに来たのよ」
「しかし、僕やジュニアは無傷に近い。怪我をしたのは戦闘機人とガリューだけですよ」
「……」
「どうかしましたか?」
「また、“僕”に戻ったの?」

 エリオは、苦虫を噛み潰したような顔になる。

「僕は……僕です」
「隊長職はそんなに重荷?」
「……負けたんです」
「報告は聞いたわ」
「僕たちには調査は期待されていない。戦うためだけの部隊です。それなのに、その戦いに負けたんです。あっさりと、何もできずに」
「まだ、隊長になるには早かった?」
「……きっと、そうなんですよ」
「貴方が選んだ道ではなかったの?」
「僕は、はやてさんにはなれなかった。僕には、部隊を率いるなんて無理だったんだ! 僕のせいで、ガリューとウェンディとセインが……!」

 突然、シャマルの手が上がる。エリオが反応するより早く、その手がエリオの頬を打つ。

「落ち着いて、エリオ。貴方がはやてちゃんになれなかった? 当たり前でしょう? 貴方、九歳の時何してた? 六課にもまだいなかったわね? 
はやてちゃんはね、九歳の時、すでに私たちヴォルケンリッターの主、夜天の王だったの。しかも、望みもしてなかったのにね。今の貴方と一緒にしないで」

 平手を張られ、痛みよりも呆気にとられた顔のエリオに、シャマルは指を突きつけた。

「貴方は、九歳の八神はやての足元にも及んでいないの。わかる? 隊長職なんてできなくて当然。なんのためにルーテシアがいるの? スバルがいるの? 
ジュニアがいるの? チンクだって、貴方よりは経験を積んでいるのよ?」
「それは…」
「三人の被害がそれほどひどいことなの? 無傷で作戦を完遂することが貴方にとっての隊長の資格なの?」
「でも、これだけの損害を」
「いい加減にしなさい! もう忘れたの? 私たちのいた六課は一度壊滅的打撃を受けた。そのとき貴方は、部隊長は部隊長に値しないと思ったの?」
「そんなことはありません」

 即答だった。
 遊撃隊の隊長となってから、あの頃の部隊長と自分を比べなかった日などなかったと言っていいだろう。六課こそが、自分の目指す部隊のあり方なのだ。

「じゃあ、あの時貴方は何を考えていたの? 負けたことを悔やんでいたの?」
「強くなりたい、そう思ってた……。ルーテシアを救いたい、フェイトさんを、キャロを守りたい。みんなを守りたいって」
「だったら、今、貴方の部下は何を考えてるの? 貴方への不満? ガリューとウェンディが、セインが、貴方を恨んでいるとでも?」

 口を開きかけて、エリオは俯いた。
 猛烈な羞恥に襲われたのだ。
 自分は、隊員の何を見ている? 何も見ていない。ただ、負けたことを恥じて、自らの力量の未熟を悔やんで、隊長としての資質の不足に歯がみしていただけだった。
 後悔は、隊長の責務ではない。
 何故、隊員の考えを知ろうとしないのか。
 シャマルの言外の問いかけを、エリオは恥じた。


387:野狗
08/11/14 22:27:38 ofw5S6Nr
             9

 道化。
 改名すべきかも知れない。
 アンリミテッド・アナライザー? お笑いだ。
 スカリエッティの後裔? 不遜以外のなにものでもない。
 きっと、何かの間違いだったのだ。どこかに欠陥があったのだ。クローニングの過程にミスがあったのだ。さもなければこんな低脳は生まれない。
 敵は、スカリエッティの持っていた戦闘機人データをどこからか入手している。この点に関しては自分も同じ立場だ。しかし、敵はジュニアのさらに上を行っている。
 そしてなのは、はやて、フェイトのデータを入手している。おそらくは、フェイクマザーでコピーを作れるほどに揃ったデータを。
 ディープダイバーを不完全ながらも解析、コピーに仕込んでいる。
 そして、次が重要だった。
 コピーなのはのSLBである。
 ジュニアがディエチにSLBを撃たせるために改良したのは、テンプレートからの集束である。
しかし敵は、死亡した者のリンカーコアやテンプレートからの集束を可能としているのだ。
 それはジュニアの力量を超えていた。

「僕は、自分で思っていた半分も優れてなどいなかったんだ」
「ジュニア、元気を出して」

 ディエチが傍についている。

「ごめん。ディエチさんのデバイスを修理しないとね」
「そんなことは後でもいいの。貴方が元に戻らないと」
「……元に?」

 ジュニアは笑った。

「これが、元々の僕だよ。父さんに遙かに及ばないのはわかってた。でも、ナンバー2ですらなかったんだ、僕は」
「やっぱりここか」

 部屋のドアが開き、ディードの押す車椅子に乗ったセインが姿を見せる。横に立っているのはヴィヴィオだ。

「ラボにも自分の部屋にもいないと思ったら、ディエチの部屋とはね」
「セインさん……」

 ジュニアの言葉を無視して、セインはディエチをにらみつける。

「甘やかしすぎだよ、ディエチ」
「セイン、そんな」
「ジュニアは甘えてる。どうせ、自分はドクターに及ばないとか、コピーを作ったやつに及ばないとか、考えてるんだろ」
「事実じゃないですか。僕が及ばないのは、事実じゃないですか」
「そうだよ」
        
 セインはジュニアに残った手を伸ばす。

「悔しいんだろ。自分が負けたのが。ディープダイバーを先に解析されたのが悔しいんだろ」

 ジュニアはセインをにらみつけていた。
 ディエチは、ジュニアを守るように二人の間に入る。


388:野狗
08/11/14 22:28:20 ofw5S6Nr
         10


「どうしたの、セイン」
「ディエチ、引っ込んでて」
「だけど」
「引っ込んでなさい!」
「セイン!」
「ディエチ、引きなさい」

 ヴィヴィオが冷たく言った。まるで、ゆりかごの中にいたときのように。
 思わずディエチは一歩下がり、無意識に恭順の姿勢を取っていた。
 ジュニアは同じく姿勢を変えそうになったが思いとどまる。
 しかし、わかった。今のヴィヴィオは見習い隊員ではない。聖王の血を引く者として言葉を発しているのだ。

「ジュニア、提案があります」
「陛下……」

 ジュニアは自然にそう言っていた。

「貴方の父親が私に行った処置。同じ事が貴方にはできますね」
「陛下!?」
「聖王の力が必要なのです」

 聖王ヴィヴィオならばコピーなのはと拮抗、いや、圧倒することができる。

「加えて、ジュニアにはもう一つの力が必要だね」

 セインは首筋を見せつけるように顎を上げた。

「ディード、お願い」

 ISツインブレイズ

 ディードが双剣をセインの首筋に当てる。

「ジュニア、私の命をあげる。私の身体を好きに解析して。ジュニアなら、ディープダイバーを完全再現できるはず」
「セイン!」

 ディエチの悲鳴のような声。

「わからないかな? 何者かは知らないけれど、ディープダイバーを不完全ながら解析再現した者は、私のクローンをあれだけ殺しているんだよ。
あれだけ殺して、ようやくあんな不完全な再現しかできないんだよ」
「……それは、セインさんの能力は偶然の産物みたいなものだから、クローンしたからって能力までコピーできる訳じゃない」
「問題はそこじゃない。それに、私は完全にディープダイバーの能力を持っているよ。私を解剖すれば、解析して再現できるかも知れないんだよ」

389:野狗
08/11/14 22:28:56 ofw5S6Nr
           11

 ヴィヴィオが言葉を続ける。

「私の聖王の力、そしてセインのディープダイバーの再現。これならジュニアは確実に勝てるよ」
「嫌だ」
「何が嫌なの」
「嫌に決まってるじゃないか! なんで、セインさんを解剖しなきゃならないんだ。どうして、ヴィヴィオをまた苦しめなきゃならないんだ」
「勝つためだよ」
「だけど、それは違う!」
「だったら!」

 セインが声を張り上げる。全員の注目が集まった。

「負けたことを悔しがる必要なんてないだろっ! あいつらの戦い方を見ればわかるだろっ、命なんて何とも思ってない。味方であろうと敵であろうと、
殺すことを何とも思ってない。殺して有利になると思えばあっさりと殺す」

 ディードが双剣を退いた。

「だけど、ジュニアは殺しません。ジュニアが選んだのはそういう道なのでしょう? それなら、最後まで進むべき」

 セインは車椅子の背もたれに全身を預け、天井を見上げた。

「それに、信じてる。ジュニアなら、あいつらより上だって」
「買いかぶりすぎです」
「そんなこと、ないよ」

 ディエチがジュニアを背後から抱きしめていた。

「あたしは、ジュニアを信じてる。あたしたちも、信じてる」
「私もね」

 ヴィヴィオが力強くうなずく。

「エリオお兄ちゃんがいて、ルーちゃんがいて、スバルさんがいて、ジュニアがいて、皆がいて。管理局一の部隊なんだからね。ママたちには劣るけど」
「私は、必要なかったかしら?」

 突然の声に、五人の視線が集まる。

「はやてちゃんに言われて、駆けつけたんだけど?」

 白衣の姿が戸口に立っていた。

「メンタルケアが必要ならお手伝いに、と思ったんだけれど。もう、必要ないみたいね」

 シャマルはそう言って、微笑む。



次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch