【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part19【改蔵】at EROPARO
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part19【改蔵】 - 暇つぶし2ch69:枷姫へと捧ぐ声 16
08/11/12 17:23:56 0dz0l+JL
─とても上手ですよ、常月さん。
愛しくてたまらないといった様に夢中で絶棒を愛撫するまといにそう言おうとして、望は思いとどまり、まといの髪を撫でてそっと口を開く。
「…先生、とても、気持ちいいですよ…… 常月さんの口の中、とても温かく……」
まといは嬉しいような恥ずかしいような顔で目を細めるが、
自分の口の中で小刻みにひくひくとして確かに感じているはずの絶棒が、
未だ立ち上がったと言えるほどの硬さにはならず、少々不満気に、ちゅぽっと音を立てて一旦抜き去った。

愛しそうな表情で手に持ったそれを優しく指で撫でながら、まといは思い切ったように望の顔を見る。
「…先生、目を閉じて。……想像してみてください。」
「え…? は、はあ…… 何をでしょう?」
戸惑った顔で、それでも素直に目を閉じた望に、まといは一瞬ためらいをみせるが、すぐに言葉を続ける。
「…好きな女性の事を、です。……想像して下さい…」
まといの言葉に望は思わず小さくむせ返り、喉をゲホゲホと咳き込ませながら目を開けて、伺うような視線をまといへと送る。
少し怯えの色をにじませた望の視線を受けて、まといは口元に笑みを浮かべ、上目使いのまま目を細めてみせる。
悪戯している子供を叱る様に軽く睨みながら、くすっと笑い声を漏らした。
「……私じゃなくても、いいですから。」
「え…… あ……」
そう言って笑いながらも少し辛そうなまといの笑みに、望は喉が塞がったように声が出なくなってしまう。
またしても固さを失いつつある絶棒を指でゆっくりと愛撫しながら、まといは小さな声で呟く。
「浮気は駄目。……なんて、もう、私は言えないんですから。……いいですよ、先生。」
それだけを言うと、再び絶棒を口に含んで先ほどよりも激しく刺激し始めた。
戸惑っていた望だったが、繰り返される少女の舌や唇の感触に身をゆだねてゆき、やがて目を閉じる。

まといは、口の中で望の物が少しずつ膨らみ固くなってゆくのを感じていた。
やがてそれは完全に立ち上がった状態となり、ちょっと誤ると喉に届いてしまいそうなほどにまで成長する。
絶棒を咥え、それに愛撫を続けながら、まといはチラリと望の方を伺ってみた。
集中しているのか、目を閉じ天井を仰いだ姿勢で時おり絶棒をヒクつかせながら息が荒くなってきていた。
「…も……もうすぐ、かも、しれません…… そろそろ……」
望はまといに自分の限界が近い事を告げるが、まといは動きを止めず、一層激しく絶棒を責め始めた。
「あ…! あの…!? このままだと、出ちゃいますよ!? 常月…… さ…ん…!」
まといは動くのをやめない。
じゅぷじゅぷと音を立てて望の絶棒を吸い上げ、絶頂へと導いてゆく。

望はもう、まといの口中で果てる事を決めたのか、それ以上何も言わず、再び目を閉じて近付いてくる射精感を待っている。
まといはラストスパートをかけるように絶棒を責め─
突然、口の動きをピタリと止めた。
口中の絶棒が達するには未だもう少しの刺激が必要らしく、口の中で切なげに震えながらも、果てる事が出来ないでいるようだった。
「…す、すいません……! 私、まだ……!」
もう完全にこのままいくつもりだった望は、焦った声を上げて目を開け、まといの方を見る。
絶棒の頭の辺りに、舌や唇ではない何かが当たる感触がした。

望の目には、まといが自分の性器の頭を、前歯で挟み込んだ状態で咥えているのが映る。
「つ…… 常月さん…!?」
まといの瞳はどこも見ていない。
死んだような目をして、虚ろな視線を宙に漂わせ、望のそれを噛み切ろうとでもしているように見えた。
「常…月…さん……」
恐怖感とともに何かが胸に刺さり、望は擦れた声を上げた。
まといの歯に挟まれた絶棒が、早く果てたいとの抗議をするように大きく一回震える。
その途端まといの瞳に生気が戻り、慌てて咥えている絶棒を開放した。
              

70:枷姫へと捧ぐ声 17
08/11/12 17:25:10 0dz0l+JL
                 
どう言葉をかけるべきか分からずに望が沈黙していると、まといは潤んだ瞳で望の手を取り強く握り締める。
「私を愛して…… 先生……! 私を……愛してください……」
「常月さん……」
泣き出したいのを我慢しているようなまといに、望はその髪を撫でようと手を伸ばす。
─その瞬間、まといに力ずくで引き寄せられ、そのまま寝転んだまといを押し倒す形となった。
「先生……さあ ……来て下さい。」
寝そべったまといは、少し頬を赤らめながら足を開き、自分の秘所を望の眼前に晒す。
突然見せられたまといの大事な部分を目にし、望は焦りながらどうにか平静を保とうとあたふたと言葉を選んでいる。
まといの指が自分の秘所に伸びてそれを左右に開き、ピンク色をした中身まで見せ、望を促がしている。
「……ちょ、ちょっと待ってください。私、もう、寸止めに近い状態でして……」
「どうぞ。」
望の言葉を意に介さず再び招くまといに、さらに焦った声が上がる。
「いえ、ですから…… あなたの中に入っただけで暴発してしまいますよ…!」
「だから、どうぞ。」
さらっと答えたまといの両足が望の腰に絡みつき、その体が少女の方へと引き寄せられる。
「妻と子作りをする事に、何をためらっているんですか?」
「いや、妻って……!」
戸惑い続ける望の絶棒に手を添えて、まといは自分の場所へとあてがった。

「とうとう、先生と……」
幸せそうな笑顔で目を閉じるまといに、望はもうそれ以上は何も言えず、まといの頬にそっと掌を寄せた。
温かい望の手の感触にまといの頬がほんのりと紅くなり、望に絡みつかせた足でその腰を引き寄せ、自分の中へと導こうとする。

時間にすればほんの十数秒だろう。
空白に思える時間の後、怪訝そうな顔をするまといが目を開くと、バツの悪そうな顔をした望の顔が映った。
「すみません…… また……その……」
その一言で状況を察したのだろう。
一応、望の絶棒に手を触れ、それを確認すると、
この世の終わりが来たのかというくらい落ち込んだ顔の望を抱き寄せて、ちょっと残念そうに笑い声を上げた。
「先生、本当にチキンさん。……気にしなくてもいいのに。」
「…チキンな自分に絶望するのは、これで何回目でしょうかね……」
暗い顔で溜め息をつく望の体を抱き起こして座らせると、まといは勢いを失った絶棒を手で撫でて望を見上げる。
「先生…… 私、お口でご奉仕しますから。…今度こそ、安心して最後まで行ってください。」
「……かなり、なさけない男ですね。」
悲壮的な声を出す望に、まといはくすくすと笑いながら、絶棒に手を添えて軽く口付けを落とす。

「何回でも、いいですから。 満足するまで遠慮しないでくださいね?」
「そんなに何度もするなど無理です! ……一回で十分だと……」
まといはもう一度小さく笑って、舌先で絶棒を軽くつついた。
「なら…… ゆっくりと…… じっくり、愛させてくださいね……」
そう言い、するりと絶棒を口に含みはじめる。
再び湧き上がる快感に包まれながら、望は、一心に自分の物を愛撫してくれるまといを眺める。
そっと手を伸ばし、その頭を撫でながら、恥ずかしそうに目を細める少女の顔をずっと見つめていた。

                  


71:枷姫へと捧ぐ声 18
08/11/12 17:26:07 0dz0l+JL
               
  □  □  □


「……そう、ですか。他に何か分かった事は……?」
あれからまだ、数えるほどしか日は経っていない。
まといは戸惑い顔で携帯電話の向こうとやりとりをする望の顔を、少し心配そうに覗き込んでいる。
望はまといの視線に気がつくとチラリと一度目をやり、大丈夫だと言うようにぎこちなく微笑んでみせた。
「ええ。……ええ。いえ、特に…… ええ、分かりました。また、何か分かったら知らせて下さい。」
通話を切り、携帯をしまうと、望は神妙な面持ちでまといの方を向いた。
「命兄さんが…… いなくなったと……」
ある程度は会話の内容から推測していたのだろう。
だが、やはり改めて伝えられるとショックが大きく、まといは唇を噛みしめてしばし沈黙する。
「…どうして。」
「それは、わかりません…… 倫の話では、部屋は完全に引き払っていて、
医院の方は、しばらく頼むと言い残して後輩に預けてあったとの事ですから─
身の回りの事はちゃんとしていったなら、思いつめて短気をおこしたというような事はないでしょう。」
努めて冷静に説明する望だったが、まといの表情は変わらず、うつむいて肩を落としていた。
「……あなたのせいではありませんよ、常月さん。あまり考えないほうが良いです。」
柔らかい声でまといの背に手を回し、顔を近づけて笑いかけてみせる。
「ね?」
「…はい。」
返事はしたものの、それで納得しているわけではない事は望もわかっているようだった。
まといが返した笑みはやはりぎこちなく、不安で曇った瞳には同じようにぎこちない笑顔の望が映っていた。


静寂に包まれた部屋に微かに聞こえる寝息と、秒針の音。
薄暗い部屋を照らす常夜灯と、時折窓を叩く木枯らしの通る音。
先生の寝顔を見つめて座り込み、うつらうつらとしていたまといの耳に、風音とは少し違う音が窓を叩いたように聞こえ─
一瞬覚えた既視感が睡魔に包まれかけていた意識をわずかに刺激し、
次の瞬間、弾かれたように立ち上がると、まといは窓の外へ食い入るような視線を送る。
月明かりも無い暗闇、その中に見えた先生によく似た作りの顔にもう一度既視感を覚え、窓の側へと近寄る。
近付いてきたまといの姿に気がついたのだろう。
命の手がゆっくりと窓の前に差し出され、その手に握られている物に気がつき、まといは息を飲んだ。
薄暗い中で鈍く光る包丁の切っ先が窓の外からまといの方へと向けられ─
だが、すぐに命が手を翻し、
ちょっと悪戯っぽく笑うとポケットから取り出したハンカチに刃を包み、すぐ横にあるエアコンの室外機の上に置いた。
「……あ、それ…… 私の……」

見覚えのある柄の形に、それが病院で落としてきたままだった自分の物だと気がつくと、安心したように笑みを浮かべる。

どちらかともなく窓に近づき、締め切ったまま風に揺れる窓を挟んで見つめ合っている。
命の手が窓に伸び、冷たいガラスに触れる。
一瞬考えて、まといは窓の反対側からガラスに触れて、向こう側にある命の手と重ならせた。
顔をさらに触れんばかりに窓に近づけ、命はまといの顔を凝視している。
「…やっぱり、可愛いな。君は。」
ガラスに遮られながらも、くぐもった音でまといの耳に命の声が届き、まといは困った顔で頬を赤くしてうつむいてしまった。

「……君に、さよならと言いにきたんだ。」
唐突に切り出した命の言葉に、まといは顔を上げて眉を寄せた。
「これからどこへ……?」
「…決めていない。でも…… 今日限りで、君の前に現れる事ができないように、遠くへ、行くつもりだよ。」
窓越しとはいえ、あまり大きな声は出せない。
一言一言をゆっくりと区切りながら、命は言葉を続ける。
「私は、本当は、君の望への想いをすべて断ち切ってしまいたいと…
そんな事ばかり考えていた。最低だ…… 君に近づける場所にいる限り、私は、君に幸せになってくれと思う事はできない。
いつも…… 壊してしまいたくなる… 君を手に入れたいのに……」
命は少し顔を伏せ、窓ガラスに眼鏡が軽く当たる音がする。
「私は、いなくなるから。……もう二度と、君を穢すことはしない。追い詰める事もない。」
まといはうつむいたまま、自分も顔を窓に近づけて、小さな声を窓越しに送る。

72:枷姫へと捧ぐ声 19
08/11/12 17:27:54 0dz0l+JL
「…穢していたのは私の方。……あなたの気持ちを知っていて、利用して……」
「─それが私には嬉しかった。今は本当にそう思うよ。」
まといは顔を上げた。
ガラス一枚隔てて、すぐそばに命の顔が見える。
「まとい…… 私には君しかいない。君以外は考えられない… 君にどれだけ嫌われても、ずっと君を想っている。私は……」
言葉の最後はまといには聞き取れなかった。
もう一度言って欲しいと、まといはそう言って、よく聞き取れるよう窓に耳をつけ冷たいガラスに頬を寄せる。
命の言葉は無かった。
代わりに、ガラス越しのまといの頬に、向こう側から何かが強く押し付けられた感触があり─
一瞬だけあったその感触が、命の口づけだと理解した時には、もう彼は窓から離れていた。

まといは顔を離し、窓ガラスに額を張り付かせてその向こうを窺う。
暗い校庭の方へと去って行く命の後姿が見え、
それはまばたきする間に暗闇の中へと消えてゆき、まぶたに微かな残像だけを残していた。
力無くその場に膝をつき、それでももう一度窓の外を見つめる。
だがどんなに目を凝らそうとも、そこには深い夜がただ暗幕のように広がっているだけだった。

どのくらいそうしていたか。
やがてまといは立ち上がると、部屋の真ん中で熟睡している先生の布団へと足音を忍ばせて近寄ってゆく。
枕元に跪き、先生の寝顔を見つめ、ゆっくりとその上に自分の顔を覆いかぶせた。
起こさないように、軽く触れるだけの口づけを眠っている先生と交わすと、
まといは満足そうにその頬に触れ、先生の寝顔に優しく微笑んでみせた。



「先生ー そろそろ起きないと間に合わないよ─」
霧の声で目を覚ますと同時に味噌汁の香りが鼻腔をくすぐり、一つあくびをして、眼鏡を取ろうと枕元に手を伸ばした。
枕元に畳んで置いてある自分の着替え。
その横に並べて置いてあるもう一組の着替えに気がつき、上半身を起こして眼鏡をかけてみる。
畳んで置かれたもう一組の着替えに見える物。
見覚えのあるそれを手に取りそれを広げてみた。
「…これは、常月さんの……?」
呟いて記憶を手繰ってみるが、確かにこの柄の着物をまといが着ていた覚えがあった。
状況がよく飲み込めていないものの、何か予感があったのだろう。
傍らに置いてあった携帯に目をやると、メールの着信をしらせるランプが点滅していた。
急いで手に取り、一件の新着メールを開き、読み進める。

「─必ず、連れて帰ります ……そうですか…… 常月さん…… 行ってしまわれたのですか……」
ぽつりと呟き、まといの残して行った着物にもう一度触れる。
「…いつも、あなたは、一人で勝手に決めて、一人で何も言わず苦しんで…… 全部自分で何とかしようと……」
着物に触れた手を握りしめ、強くそれを掴む。
「どうか、無事で…… 帰ってきてください。どうか……」
まといが抜けがらのように残して行った着物を握りしめ、何度も祈る言葉を口の中で繰り返す。
あの夜にまといが見せた寂しそうな笑みが脳裏をかすめ、滲み出てきた涙を袖口で拭い取った。


宿直室から廊下に踏み出し、想像以上の冷え込みに体を縮こませて腕を擦り合わせる。
「冷えますね…… 冬ってこんなに寒い物でしたかね…?」
体を震わせながらも、教室に向かい廊下をゆっくりと歩き出す。
「……冗談では無く冷えますね。特に首すじや背中からも冷たい空気が浸みこんできて、寒気が…… あっ……? ……ああ。」
廊下の真ん中で足を止め、ゆっくりと首を動かして背中を振り返る。
「─そうでしたね。…………いないんでしたね。常月さん……」
何かにぽっかりと穴が空いてしまったような、そんな気持ちを苦笑いで誤魔化して、正面を向いて再び歩き出した。

「……早く、また温かくなって欲しいと願いたいものですね。……ねえ、常月さん。」
窓の外、雪でも降りそうな寒空に向かい、独り言のような呟きが漏れた。
ようやく、冬を迎え始めたばかりの季節。春は当分の間、気配すら見せないはず。
その願いが叶うのは、まだ、ずっと先の話になるのだろう。

                                                  

73:305
08/11/12 17:29:37 0dz0l+JL

ありがとうございました。

では、これで。 失礼します。


74:名無しさん@ピンキー
08/11/12 17:38:48 Vz+8eXqy
GJ!緊迫感とドロドロっぷりが面白かったです。
まといって猟奇モードになっても、魚目にならないんですよね。真顔で刺そうとする。

75:名無しさん@ピンキー
08/11/12 20:04:56 1LKliDte
泣いた。
切なすぎます。命も望もまといも、素晴らし過ぎます。
次どうなるかわからない展開にハラハラしながら読ませていただきました。
まとい本当に可愛い。命が自慰をするシーンが切なすぎて・・・・・・
305さん、最高です!!

厚かましいお願いですみませんが、是非もう1度、奈美を、もう1度でいいので死ぬ前に
305さんの奈美が読みたいです。よろしければ書いていただきたいです。

76:名無しさん@ピンキー
08/11/12 20:43:25 LAFEtWlt
要求し出したら際限ない
そう思うんなら自分で望奈美1本書くとかしてせめて誠意見せよう
キャラスレで半端なことしてないで
そうすれば書いてくれるってわけでもないがその一方的過ぎる要求は失礼だろ

77:名無しさん@ピンキー
08/11/12 21:12:25 tRHztm75
>>75は前前スレあたりで望奈美書いてた人じゃないのか?

>>73
430×305、良かったGJ!久しぶりにエロを読んだ気がする

78:75
08/11/12 21:28:50 1LKliDte
申し訳ありませんでした。誤ればすまされる問題ではありませんが。
折角のSSだったのに、雰囲気悪くしてしまいました。
>>74さん、ご注意ありがとうございました。

305さんは本当に憧れの方で、305さんのおかげで奈美好きになったので、
感謝しているんです。
だから、こんなカタチでご本人や住人の方々に迷惑かけてしまい、本当に情けないです。
失礼な発言してしまって、本当に反省しています。
好きなものを書いていただけるだけで十分ありがたいです。
どうかお気になさらず、これからも次回作頑張って下さい。応援してます。



79:名無しさん@ピンキー
08/11/12 23:10:30 GJX/316Z
ちょ、ま…!
す、すいません、呼吸困難状態です…わぁぁぁぁぁぁあ!!
とりあえず、今ここで言えるのはGJとしか…っ!


80:名無しさん@ピンキー
08/11/13 00:20:53 VafMsBtK
GJ……!特に>>69から>>70のまといの挙動に切なくなりました。
先生が枯れていて、到らないのも、良かったと思います。

81:名無しさん@ピンキー
08/11/13 00:30:05 mEwruUQW
GJ せつないいじゃないか

82:名無しさん@ピンキー
08/11/13 00:32:26 F7nyGYiC
こっそり置き逃げさせてください。
カフカさんと久藤くんで、内容は すかとろ です。
 
くめた先生 ごめんなさい。
勝手に出演させていまって。

83:汚面の告白
08/11/13 00:36:12 F7nyGYiC
汚面の告白

授業終了のチャイムが鳴り響いてもカフカは席についたままぼんやりと窓の外を眺めていた。
教室は千里とマ太郎とカエレが糸色を囲んで談笑が盛り上がっていたが、いつもなら得意の
ブラックユーモアの突っ込みで輪の中にいるカフカだが今日はその輪に加わろうとはしなかった。
カフカには先生と楽しくやれるみんなが少し恨めしく、本音を言えば寂しい気持でもあった。
一人ぼっちで席にいてもカフカに声をかけてくれる級友がいる訳でもなく、力なく立ち上がり楽しげな笑い声を背に席を立ち、行くあてもなく廊下を歩いていった。
つい先日、みんなとの何気ないやり取りで、千里は余りにキッチリしすぎて遊ぶ仲間にはちょっと誘いにくいよね・・・、みたいな話が出ていて、カフカもなんとなくその話分かるなぁ、
くらいで聞いていたのだが、カフカがその場を離れた後に、でも千里はキレやすい性格だけど友達には裏表ないし、絶対に味方を裏切らないから、一番に付き合いずらいのって、カ○カちゃんじゃない? 
あの子、自分の話になると本当のこと隠すし本心見えない子って相談も持ち掛けにくいよね・・・、しかも仲間を売ること平気でやるし、みたいな流れになって、翌日にその話が人つてにカフカの耳に入ったのだ。
しかしカフカにはそんな陰口は中学の頃から慣れっこだった。
理屈っぽくてオトナさえ本気で引かせるツッコミの理論武装のキャラはカフカが作り上げた唯一の級友と接点が持てる手段だった。
子供の頃から強烈な自己顕示欲とは裏腹に素直な気持ちを出すのが苦手だった。
自然な流れで友達と語り合うとこと出来なくて、そんな不自然で煙たがられるやり方でないと級友とさえいまだに接点が持てないいだ。
しかし今のカフカにはそんな陰口をもしのぐ大きな悩みがあった。
その悩みの方が大きすぎてよくある陰口などさらりと聞き流せた。
どうしようもない悩みを一人で抱えていても解決につながる訳でもなく、自然に足が図書室の方に向いていた。
放課後の図書室は利用者もほとんどいなく閑散としていた。
カフカには本の中に今の悩みを解決する手段がないとゆうことは十分に分かっていたが、破裂しそうなこの想いを抱えて苦しいばかりで
何かにすがりたい気分だった。ずらりと立ち並ぶ本箱に吸い寄せられるように図書室の奥へ歩いていった。
様々な分野の本のタイトルを見ているだけでも、文書などの創作活動で稼いでるカフカにはワクワクする前向きな気持ちが沸いてくる。
そして書籍に囲まれると自然に起こる不思議な自然現象、つまり、強烈な尿意も感じてしまった。
― うわぁ・・・。オシッコ行きたい。
でも読みたい本にまだ見つけてないからなぁ・・・。―
気が付くと図書室の最奥にある館内閲覧のみで貸出禁止の本が置いてあるコーナーにまで来ていた。
そこはずらりと並ぶ大判の哲学書や古典物やらが圧巻だった。


84:名無しさん@ピンキー
08/11/13 00:36:28 ZS4j6Ejs
謝?

85:汚面の告白
08/11/13 00:39:09 F7nyGYiC
そしてゆっくりと閲覧が出来るようにとの配慮で、学校には似つかわしくない程に豪華な応接セットのようなテーブルとソファーが用意されていた。
さすがのカフカもここに来るのは初めてだった。暫く呆気にとられて閲覧コーナーを見ていると、先ほどの強烈な尿意の波がまたやって来た。
― 早くトイレ行かなきゃ ―
カフカは尿意からくる体の震えを堪えた。
「やぁ。風浦さん? 本を探してるの?」
優しく少し間の外れた声がした。
久藤准が応接セットの机で大型本を閲覧していたのだ。
「久藤くん?こんなところで読書?」
ここに本の虫の久藤准がいても何ら不思議なはいが、まさかこんな所で久藤と会うとは思っていなかった。
「読みたい本を探してるんだけど、ここにはないみたいね」
閲覧専用の珍しい書籍には興味があったが、先ほどから何度かピークを迎えている尿意にこれ以上は耐えられそうもないので、
カフカは足早にここを立ち去ろうとしていた。
「風浦さんのお気に召す本がなければ、代わりに僕が物語を語ってあげるよ?」
久藤の甘い声に誘われて尿意とは別なゾクっとする快感を感じた。
クラスの子の大半は、久藤に自分の好みの泣いたり感動したりする創作ストーリーを語ってもらっていたのだが、
そんな時もやはり、絡みにくいキャラのせいか、
カフカは仲間はずれでクラスが盛り上がる輪を羨ましげに外から眺めていただけだった。だから久藤のこの言葉はとても嬉しかった。
しかし一刻の早くトイレに駆け込まないと間に合わない、そこまで尿意は頂点に達していたのだ。
「嬉しいけど、でも、私、今はいいって言うか、用事があるから、早く行かないと」
言葉がうまく出てこないカフカに久藤は優しい目で微笑んだ。
「遠慮しなくていいよ。ここ座りなよ」
工藤は自分の座っているソファーの隣にモジモジしているカフカを座らせた。
― あわわ・・・ 座っちゃったよ。まさかオシッコしたいなんて言えないよ。う~んん。って言うか、もおトイレまで行ってる余裕ないかも ―
恥かし気に腰の辺りをモジモジさせているカフカを見て、久藤の瞳はいっそう優しい眼差しになった。目を閉じて久藤はカフカの耳元で囁いた。
「意地っ張りなお姫様」
久藤の甘い声にカフカは背筋にゾクっとする身震いを感じ、そして、少しだけチビってしまった。
「昔ぁし、昔、ある国に、それはとても内気で甘えん坊さんなお姫様がいました。
ところが、そのお姫様は、とっても甘えベタで、いつもお城の中で一人ぼっちで過ごしていました。 
          ・・・・・・・中略 ・・・・・・・」


86:汚面の告白
08/11/13 00:43:00 F7nyGYiC
自分の子供時代そのままを、お伽話に変えて話す久藤の声を聞いているとカフカの目は涙で滲み始めた。
秀才にありがちな理屈っぽい性格に加えて、不安定な家庭環境のせいで転校を繰り返していたカフカには友達なんていなかった。
相次ぐ親族の病気やら自殺やらで、絶えず不穏な空気に包まれていた家庭内。
揚げ句に父親は借金に追われ自殺を図る。心労から母までもカフカの目の前で首を吊った。学校も家庭も生き地獄のようだった。
そんなカフカの物語を久藤は優しく語る。
― 久藤くんは何でも読めちゃうって先生が言ってたけど本となんだな。
信じてなかったけど、久藤くんには子供の頃にこと全部バレちゃってる。 ―
そしてカフカはハッとした。
― じゃあ、あのことも久藤くんにはもうバレてるに違いない! そして今こうやって考えていることさえも!
 でも言葉で伝えなくていいからラク。 ―
久藤の声を聞きながらカフカは中学の頃を思い出していた。
何でも知りたがりの知識欲旺盛な性格と、子供からオトナの女として完成されつつあった早熟な肉体。
そして自然に肉体に芽生えた女の欲求。カフカは現実の辛さからの逃避やこの世に自分の存在を確認したくて、
中一の時に悪戯に男に抱かれた。その日を境に次々と男を求めて抱かれていった。
一旦、快楽を知ってしまった体は求めることを止めることが出来なくて際限なくSEXに依存していった。
少しでも体に欲望を感じたら、自分ではどうしようも出来ない程に男が欲しくなって、むさぼるように男達の体を求めていた。
使用されてない音楽室や空き教室のベランダ、体に火がつけば、何の躊躇もなく所構わず男達と交わり合っていた。ペニスが子宮を突き上げる快楽に身を痺れさせ、まるで盛りのついた獣の様に、現実を逃避して快楽の世界に溺れていたあの日々・・・
「大勢の男達がお姫様にご奉仕をしたけれど、お姫様の心は満たされません」
なんと、久藤はそのクダリもお伽話で語ったのだ。
感高まってカフカの耐えていた決壊ははちきれる寸前になった。
― 出る!  出ちゃうよ!!!!  ―
「久藤くん・・・あたっ、あたし、オシッコがぁぁぁ・・・。漏れそううう」
「なぁんだ、おトイレ我慢してたの?気が付かなくてゴメンね。
ここにでも出しちゃえば?」
そう言うと工藤はカフカを抱きかかえ自分の股座に座らせて、足元にあったゴミ箱をカフカのお尻の下に置いた。
― ちょっと! ゴミ箱にしろって?! そんなの出来っこない!
でも、もう限界!!!! オシッコ 漏れちゃう!!   ―
久藤の股座にお尻を置かれた衝撃でカフカのアソコが刺激され脆い決壊が切れた。
「いっ イヤぁぁぁぁ!!!!!」
ジョボジョボと音を立ててオシッコが溢れ出る。
カフカはスカートの中に手を入れて必死でアソコを押さえて止めようとするのだが
溢れ出る聖水の勢いは止まらない。久藤に抱きかかえられて子供のようにM字に足を開いた姿勢を取らされて、
ジャアジャア


87:汚面の告白
08/11/13 00:46:52 F7nyGYiC
と勢いよく放出してしまった。
「ひぃいいいいんん」
カフカは尿と共に恥ずかしさから涙が溢れ出て泣き叫んでしまった。
「我慢しないで気持良く全部出しちゃえば?誰も見てないんだし」
久藤はいたって冷静にカフカのスカートをめくり上げ、尿でグショグショの下着を
太ももに下げてやり気持よく用が足せるようにしてやった。
久藤はカフカの放尿が止まると濡れたスカートと下着を全部脱がしてやった。
「すっきりした?」
「うん・・・」
何故かオシッコを漏らしてしまった恥ずかしい気分より、
放尿の快感と久藤の優しい気配りを感じてしまい、自然に素直になれた。
「僕ね、ずっと前から仮面の下にある素顔の風浦さんに興味があったんだ」
そう言うと久藤はポケットからハンカチを出して股座でM字に股を開かせているカフカの、
尿でグショグショのアソコやお尻を拭いてやった。綺麗にふき取るとまだ湿り気のあるカフカの
体を手で触れカフカの反応を確認していった。
そしてアソコに手を置いて指を滑り込ませた。
「ここオシッコで濡れてるんじゃないよね?」
グチョグチョのあそこに久藤の指の刺激がとても気持良かった。
高校になってからは気分を入れ替えて悪戯に男を求めるのを辞めて、
自慰だけでいたからなおさら久藤の指の動きに感じた。
じれったい程に優しい刺激の久藤の愛撫が、
男に求められる悦びを知っているカフカの肉体に火をつけた。
―― 気持ちいいよおおお。 もっと。もっと触って・・・ ―― 
体が久藤を求める。腰を動かして工藤の指を誘導した。
「カフカちゃん・・・。ずっと我慢してたんだね。
 ここ暫くのカフカちゃん辛そうで、僕なりに考えてた仮説があったんだ。
恐らくビンゴかな。 今のカフカちゃん とても可愛いよ」
そう言って久藤は二本の指ですっかり立ち上がったクリトリスを挟み優しい動きで擦った。
何でも読めてしまう久藤には隠してもムダだと、
カフカは観念していた。
ずっと男の体を求めていた。今日の授業中もそのことばかり考えて、濡れっぱなしだったのだ。
それと言うのも、つい一月前に・・・。
「ずっと僕ばかりが喋ってたから、今度はカフカちゃんの番だよ。
僕はこのまま気持ちよくしててあげるから言いたいことみんな吐き出しちゃいな。
 今日もカフカちゃん、とっても欲しそうだったよ・・・。
ここ感じる?      ねぇ?こぉして欲しかった。   でしょ?」
もう一本の指が膣に入ってきてカフカの思うところを優しく掻いてやる。
「うん気持ちいい・・・。久藤くんなら聞いて欲しい。でも・・・とっても気持ちいいから。
久藤くんの指が気持ちいいから。久藤くんの指に集中してたい。
あたし脳内で久藤くんに話すから、読んで・・・・。」


88:汚面の告白
08/11/13 00:50:33 F7nyGYiC
「そっか。女の子は感じながら話すの不得手なんだ?無知でゴメンね。
カフカちゃんの脳内の話はちゃんと読んであげるから、
このまま僕に感じてね」
カフカは耳元で囁く工藤の声にゾクゾクする快感を感じウットリとした。
― 久藤くんでも知らないことあるんだ? 可愛いな・・・ ♪
もしかして、初めてなのかな?女の子にこんなことするの。
指のとことっても気持ちいいよ久藤くん。
もっと擦って。胸も激しく揉んで欲しいなぁ~。
 あっ・・・。 今触ってるそこ。乳首、いい。気持ちいい。
服の上からキュッて摘まんで小刻みに指で揉んで・・・。
ああっ。そう。気持ちいいよ・・・。もっと、もっと、いっぱい乳首小刻みに揉んで。
クリも・・・もっと早く擦って。もっと、もっと、クリ、いいよ・・・ 
もっと いっぱい して欲しい。 あぁぁぁ。 ―― 
― 思い出しちゃう。先生。欲しくて欲しくて仕方なかったな。先生 ―
高校に入ると周り級友たちは、どう見ても処女と思しき子たちばかりだった。
既に男なしでは寂しくて仕方ない欲しがりの自分の体と比べると、
肉欲の悩みなどとは無縁の無垢な体が羨ましかった。
そして恋心に似た糸色への憧れの気持ちが芽生えるとドロドロの欲望に支配された自分が汚らしく感じたが、
気持ちと裏腹に脳内には糸色との濃厚な情事を思い描いてしまう。
快楽を知っている体は想像だけでは満たされず、カフカは体に火がつくと所構わず自慰にふけっていた。
欲情した体は糸色の姿を見るだけでたちまち濡れるほどになってしまった。
ついにカフカは糸色にその思いをぶっつけてた。ちょうど一月前だ。
あの日は偶然に放課後の教室に2人きりだった。
糸色が欲しくて、欲しくて、自分が止められなかった。
「先生。相談があるんです」
「なんです?あなたが相談ごとなんて。珍しいですね?」
いつもの回りくどいやり方でなく、一直線に糸色に伝えた。
カフカは昔からSEXが絡む時だけ本能のままの素直な気持ちが伝えられた。
「実は、あたし、先生が欲しくて仕方ないんです。今も欲しくて欲しくて」
そう言って糸色の手を取りスカートの中に秘部に当てた。
最初、糸色は驚いた顔をした。
勘のいい糸色はすぐにカフカのただ事でない欲情を感じ取った。
カフカの要求を受け止めた糸色の手はしっかりとカフカの思いに応えた。
糸色は置かれた場所を少し力を入れて押さえ込んだ。
薄い布の割れ目を糸色は指でなぞった。
下着まですっかりグッショリと濡れそぼっていた。
「ここに。欲しいんです。先生が」
― 理由は分かりませんが 我慢できないほど欲しいのですね?
私では満たしてあげられませんが、貴女を鎮めてあげるくらいないなら ―
グッショリ濡れた下着から、糸色はカフカが自分に何を求めているのかすぐに察した。
割れ目の上部にある突起を薄布の上から小刻みに押しながら糸色は言った。
「後悔しても知りませんよ」
一瞬この言葉でカフカの胸は詰まった。
確かに今までもSEXの快楽の後には必ず虚しさと寂しさがあって、
糸色との情事の後にもまたそんな気持ちがあるのかと思う

89:汚面の告白
08/11/13 00:53:40 F7nyGYiC
とためらう気持ちがよぎったが、欲情した炎には勝てなかった。
膣の中いっぱいに男を感じて、ペニスで子宮の奥まで突き上げられたくて仕方なかった。
糸色もカフカの誘惑は、高校生の女の子が悪戯に男を知りたくて思い切った
冒険をしているのとは全く違うだとすぐに分かった。
下着の上からも容易にカフカの体はすっかり開発されつくした女のモノだと確認できたからだ。
「先生が欲しい。早くアソコに先生が欲しい」
自分の体に腰をすり寄せて欲しがるカフカを糸色はまずクリトリスで一回イカせてやった。
挿入を避けたのは一応、暴走する生徒に愛情を持って接したいとの糸色の配慮だった。
今時のお年頃の女子は、男子同様に恋後心の前にまずエッチありきとは聞いていたが、
目の前にいる自分の教え子が、恋愛よりも先に肉欲が暴走しているのに糸色は軽く絶望しながらも、
自分の目の前にいる教え子が、なぜ捨て身で自分を求めるのは理解しがたかったが、
彼女の諸々の生い立ちを考えながら、この一瞬だけでも糸色なりに大事に受け止めてやろうと心に誓った。
次にアソコに指を入れてやるとスンナリ入る。感じる所を探り当て、彼女を頂点に導いてやる。
挿入本番にはめっぽう弱いが糸色は指の技法には自信があった。
「私の指、どうです?感じますか?」
「いいっ・・・。気持ちいい・・ あっ もぉ少し・・ イクううう・・・」
カフカは糸色にしがみ付いて腰を動かした。そしてイッた。
指で2回イカされたカフカは袴の上から大きくなったのが確認できる糸色の勃起に頬をすり寄せ欲しがった。
「先生の、先生のコレが欲しい。」
刺激され勃起はムクムクと大きくなっていったが糸色は必死の理性で押さえた。
「風浦さん。あなたは私の大切な生徒です。先生は貴女を傷つけたくないんです」
糸色に拒まれカフカは頭が真っ白になった。
「欲情だけで求め合っても虚しいだけです。特に女子は」
理屈では糸色の拒絶は自分を気遣ってのことだと分かったていた。糸色は欲情だけで求め合った男達とは違う。
だから少しだけ嬉しかった。けれど体は理性とは別で糸色が欲しくて仕方なかった。糸色はカフカを抱きしめながら言った。
「体は治まりましたか?」
「まだ足りない。もっと欲しい・・・」
糸色はカフカを抱きしめながら、再び下着に指を差し込んでやって、5本の指を使って二箇所同時に攻めた。
「貴女が治まるまで、先生が傍にいてあげますから焦らないで」
ペニスに激しく突き上げられることに慣れてしまったカフカにとって指でイカされるのは少し物足りなかったが、
カフカが大量の愛液を噴いても糸色の指は攻撃を止めず、
腰がフラフラになるほど何度もイカされてようやくカフカは満ち足りた。
「次からはちゃんと愛し合う男性に抱かれなさいな」
最後に糸色はそう言った。


90:汚面の告白
08/11/13 00:55:07 F7nyGYiC
― 次は先生に愛を持って抱かれたい。私には先生への愛あるよ。 
だから、先生が欲しい。先生に抱かれたい。―
その日のことが頭から離れなくなり、糸色との情事が何度も頭の中を反芻して授業の内容すらうわの空。
下着は前に増して濡れっぱなし。糸色もなんとなくカフカと距離を置いていた。
そんな悩み誰にも話せなかった。

久藤の指でこうしてイカされてる今もあの日、糸色に何度も絶頂にイカされた思いを重ねて感じていた。
そんなカフカを見透かす様に久藤は言った。
「ここんとこずっと、カフカちゃんが先生を見る眼差しに嫉妬しっぱなしだったよ。
 どうにか振り向かせたくて、でもずっと話しかけるタイミングが見つからなくて」
― あたしのこと見ててくれる人がいたんだ? なんだか嬉しいな。
気持ちはずっと先生を追っていたから気が付かなかった ― 
久藤の甘い声のトークに包まれて、いっそう久藤の指に体が感じていく。
― 気持ちいい。久藤くんの体に触れてもっと体中で感じたい。―
カフカの手がセーラー服のリボンをほどこうとすると久藤の手が止めた。
「女の子が自分から脱いじゃダメ。して欲しいのなら、欲しいって言ってね。
 ・・・・お姫様、お召し物は僕が脱がせてあげる。さぁ、目を瞑って」
そう言って久藤はカフカのセーラー服をスルスルと脱がしてやった。
丸裸にされたカフカはようやく少しだけ恥らった。
その仕草が可愛らしく久藤の気持ちにさらに火をつけた。
カフカももう自分が抑えられなかった。
久藤に抱かれたくて、体中を感じさせて欲しくてたまらなくなった。
「舐めて・・・」
久藤に抱きついたカフカが言うと、久藤はカフカを寝かせ足をM字に開かせた。
カフカの蜜壷に自分の顔を埋めカフカの突起を唇に含んだ。
「ああああっ・・・・。いいっ。久藤くん。ソコ 気持ちいいよ・・・」
初めてとは思えない久藤の舌が充血しっきたカフカをたやすく絶頂に導く。
「いいっ。いっちゃうよ!!」
すでに感じきっていたカフカはオシッコとは別の液体を流して果てた。
久藤はカフカを抱きしめて耳元で言った。
「好きだよ」
この甘い言葉にカフカは溶けてしまいそうだった。告白されたのは初めてだった。
「こんな・・・。  こんな、あたしでいいの?」
「今のカフカちゃんが好き。ムリしないで僕の前では自然でいて」
カフカは気の遠くなるほど幸せな気分に包まれた。
―― 愛? あたし愛されたの?  嬉しい こんなの初めて ――
「僕にして欲しいことあったら我慢しないでちゃんと言うんだよ」
久藤に耳元で囁かれ、カフカは涙を浮かべて幸せに浸った。
―― 嬉しいよ。久藤くん。久藤くんに気持ちまで持っていかれそう ―― 


91:汚面の告白
08/11/13 00:56:26 F7nyGYiC
「入れて欲しい。久藤くんの入れて」
カフカは久藤に腰をすり寄せた。
久藤は初めてだった。少し顔を赤らめて言った。
「いくよ。いい?」
久藤はカフカを抱きしめながらゆっくり挿し込んでいった。
反りあがった久藤の勃起はヌルヌルのカフカにはスンなりと入れた。
「カフカちゃんの中、暖かいね。気持ちいいよ」
「あたしも久藤くんのでいっぱいに満たされて幸せ」
2人は繋がったままお互いを敏感な部分で感じ合いながらキスを交し合った。
―― こんな幸せに包まれたSXE初めて。久藤くん。あたし。
あたし、久藤くんが好き・・・。好きになっちゃったよ。
だから、さよなら 絶望先生。
久藤くん、お願い。このまま。動いて。奥までいっぱい突いて ――
結びついた部分がムズムズしてきて先に動き始めたのはカフカだった。
久藤もカフカの動きを逆手に取って自分の体を擦り合わせる。
「いいっ。もっと。もっと奥まで。お願い。突いて」
カフカのおねだりで久藤の動きが激しくなる。
「ああぁぁんんん。いいっ。気持ちいいよおおおおおお。
 もっと。もっと。突いて。突いて。あぁぁん。いいよぉおおおお」
カフカの太股は久藤の体に絡みつき結合の快楽を少しでも多く味わおうとする。
「もっと。もっと。あああああんんん。いいっ。イクっ。イッちゃうよ!!」
―― ゴメン。カフカちゃん。もぉ限界!! ―― 
先に限界がきたのは初めての久藤だった。
スルリとカフカから抜け出た瞬間に白濁した液体が久藤から溢れ出た。
「ごめん・・・」
久藤は絶頂のタイミングがズレたカフカを気遣ってカフカのアソコを
手のひらで覆って感じるところを刺激しながらグイグイと奥の方めがけて揉んでやった。
―― 久藤くん・・・・。 気持ちいいよぉおおおお ―― 
「あああああっ。  いいよぉぉぉぉぉ。」

「イケた? かな?」
何でも読めてしまう(?)久藤が弱気な顔でカフカに尋ねる。
「うん。いっぱいイっちゃった。  良かったよ。久藤くん。」
そういってカフカは久藤に抱きつき頬にキスをした。
「またSEXしてくれる?」
「うん。いつでも。抱いてあげるよ。僕の彼女になってくれたらね ♪」


92:汚面の告白
08/11/13 00:57:17 F7nyGYiC
アトガキ

地平線に沈む間際の大きな夕焼けに向かって2人は歩いた。
とても綺麗な夕日にカフカは魅入っていた。
「ねぇ。前から聞きたかったんだけど」
久藤が優しい声で沈黙の中で呟く。
「なに?」
カフカが弾む声で明るく応える。
「ん・・・。風浦可符香ってPNはフランツ・カフカへのオマージュなの?」
「さぁ? どうかな~」
カフカは久藤をはぐらかすが、いたってマイペースな久藤はカフカにさえも振り回されることもなく、お構いなしに持論を展開していく。
「PNって、幾つあってもいいよね?」 
「ん・・・。まぁ、そうだけど」
カフカも工藤のペースに引き込まれる。
「もぉ一個PN持ってみない? 僕、考えてみたんだけど。これなんかどう?」
久藤は手にしてた本の中からシオリを取り出してカフカに差し出した。

シオリの裏には久藤の手書きの文字があった。

―― 為苦自慰子 ――

「タメク・ジーコ?」
カフカは声に出して読んだ。

「ぷっ」
カフカは吹き出した。

「やだぁ!!」
と言って久藤に抱きついた。

抱きつかれた久藤の手からパラリと本が落ちた。
「 秘儀伝授    加糖 鷹 著 」



おしまい


93:汚面の告白
08/11/13 00:59:26 F7nyGYiC
おわりました。

94:名無しさん@ピンキー
08/11/13 01:00:29 ZS4j6Ejs
久藤ですね

95:名無しさん@ピンキー
08/11/13 01:16:31 ZS4j6Ejs
割り込んでしまってすみません
なぜ可符香が、かたかななのですか?

96:82
08/11/13 02:34:57 F7nyGYiC
>>95
「すかとろ」なのに読んでくださってありがとうございます。
勝手にカタカナ。すいません。
可符香はカタカナだとカフカっとなって回文みたいで好き。なので。
でも原作と違うので、ごめんなさい。

常月さんの話は素晴らしすぎる!!
たっぷりエロを堪能させていただきました。
そしてストーリーは超泣けます。せつない。    すんすん。

今回のタイトルはくめた先生も「仮名の告白」で使用された
三島先生の「仮面の告白」からいただきました。




97:糸色 望 ◆7ddpnnnyUk
08/11/13 04:30:18 b67YS0fC
ルルーシュのDW8.4はブリタニア重工製が1段3要素、茨城コンバータ製が1段4要素である。
糸色 望は製造当初は1段4要素型のDW9.4形であったが、現在は機関換装に伴い、
2段5要素型のDW14E/C形へと交換された。※変直切り替えハンドルは残されており、
変速-直結1段への切り替えは手動式、直結2段-直結3段への切り替えは自動式である。

変速から直結に投入するときには自動的にアイドル指令が出され、機関の回転数が低い場合には、
自動的に最適な条件まで機関の吹き上げを行うため、衝撃の少ない変速操作が可能となっている。

98:名無しさん@ピンキー
08/11/13 07:57:18 HpDrS7Va
今さらだけど199さんGJ!最終回乙です!
最後の一言が気になるけど、また戻ってきてくれるよね・・・?

99:266
08/11/15 07:16:34 1ar7NdON
素晴らしいSSの後で、恐縮ですが、投下させていただきます。
また、芽留と万世橋の話です。
>>41-43の続き、懲りずにやってしまいました。

100:266
08/11/15 07:17:24 1ar7NdON
某月某日、とある書店。
その日はとりたてて客もおらず、アルバイトの青年が一人あくびを噛み殺しながらレジに立っていた。
時刻は午後の5時を回り、窓から差し込む西日がやたらと眩しい。
そんな時、自動ドアの開く音と共に、ようやく久しぶりの客が現れた。
太った体、目つきの悪い顔に眼鏡をかけた少年、近くの高校の生徒らしいお馴染みの常連さんだ。
いつもアニメ誌やコミックスを凄まじい量で買っていくので、恐らく相当のオタクなのだろう。
ところが、そんな彼が、今日はアニメ誌やコミックのコーナーに行かない。
何やら雑誌コーナーを色々と探し回っているようなのだが……。
「………これください」
店内を幾度も右往左往してから、彼がレジに持ってきたのは、彼がいつも買っている本とは180度ベクトルの違うものだった。
『特選デートスポット100』なんて言葉が表紙に踊る雑誌の数々。
らしくない買い物をしている自覚があるのか、少年の顔は真っ赤になっている。
(この子が色気づくとはねえ……)
心中の呟きは顔に出さぬよう淡々と会計を済ませると、少年は逃げるように店を出て行った。
まあ、彼とて男だ。色々あるのだろう。
「健闘を祈るよ」
自動ドアのガラスの向こうに遠ざかっていく少年の背中に、アルバイトの青年はそう呟いた。
そして、それから僅か数分後、今度はセーラー服姿の小柄な少女が店内に入ってきた。
こちらも常連。携帯電話のメールでしかコミュニケーションを取らない変わった娘だ。
いつもは少女漫画誌なんかを買っていく彼女なのだけれど……
(おいおい、この娘もかよ……)
さっきの少年とは反対に、彼女が向かったのはアニメ誌なんかが置かれたコーナーだった。
その中でも美少女とか、そんなのを扱った雑誌を手当たり次第に手に取ってからレジにやってくる。
少し呆然としてしまったアルバイトの青年に向かって
【おい、会計だ。早くしろ】
少女は携帯の画面に打ち込んだ文章で急かす。
「あ、はい、すみません」
アルバイトの青年はいそいそと本の会計をしながら、ちらりと少女の顔を見る。
真っ赤に染まった頬、それはまるでさっきの少年と同じようで……。
いつもと違う本を大量に買い込んだ少年と少女。一見すると共通点のなさそうな二人だけれど……。
アルバイトの青年の頭の中で想像が膨らんでいく。
(まさかね……。でも、もしかしたら……)
金を払い、お釣りを受け取ると、少女もまた逃げるように書店から出て行った。
「これは、ちょっと面白いかもな……」
今後、あのオタク少年とメール少女が、どんな形で店に姿を現すのやら。
アルバイトの青年はニヤリと笑って見せたのだった。

心臓が止まるかと思った。
大量の雑誌の入った紙袋を抱えて、家に帰り着いたオタク少年、万世橋わたるは大きな溜息をついた。
「慣れない事はするもんじゃないな…」
レジでの支払いの僅かな時間が永遠の長さに思えた。

101:266
08/11/15 07:18:11 1ar7NdON
似合いもしない買い物をする自分が、嘲笑われているような気がして、いっそ消えてしまいたかった。
だが、それでもこれはやらねばならない事なのだ。
今も手のひらに残る、あの小さな手の感触。
暖かくて、柔らかな、彼女の手の、指先の記憶。
音無芽留。
小憎らしくて、そのくせ臆病で、だけどわたるの持たない健気なほどの勇気を持った少女。
毎日の、憎まれ口まじりのメールのやり取りの中で、わたるの想いはどうしようもなく膨らんでいった。
駄目元でかまわない。
もっと彼女の近くにいたい。彼女と一緒に街を歩きたい。
「まったく、あんな奴相手に、こんなに思い詰める事もなかろうに……」
なんて言いながらも、既に自分の気持ちが彼女に傾き始めている事は否定のしようがなかった。
書店の紙袋を開けて、買ってきた雑誌を取り出し、早速読み始める。
自分のようなタイプの人間が、書物の情報のみを頼りに行動すると、
相当痛い事になるだろう事は十二分に理解していたが、今のわたるには他に縋るものがない。
「まあ、やってみるしかないだろ…」
呟いて、わたるはページをめくり、慣れない雑誌の内容に没入していった。

「おかえりなさい、芽留」
【おう、ただいま】
玄関のドアを開けて、ちょうどそこにいた母親に帰宅の挨拶を返す。
それから靴をそろえるのももどかしく、トタタタタ、と階段を登り自分の部屋へと急ぐ。
ドアを閉め、鍵をかけ、小脇に抱えた書店の紙袋の、中身を机の上にぶちまけた。
アニメ誌、ゲーム誌、その他それっぽい雑誌が多数。
どれも芽留にとっては馴染みのないものばかりだ。
だけど……。
(読もう。読むしかない……)
口も悪けりゃ顔も悪い、その上とんでもなく偏屈なオタク野郎。
今だって、アイツの悪口を言おうと思えば、百でも千でも思いつく自身がある。
でも、だけど……。
(嬉しかったから…)
その想いは否定のしようがない。
痴漢から助けられた一件以来、胸の奥に芽生えてしまった気持ち。
気遣いが、優しさが、この上もなく嬉しかった。
毎日交わすメールでのやり取りが、どんどん楽しくなっていく。
万世橋わたる、アイツに少しでも近寄りたい。
だから、まずはアイツが興味を持っているもの、それがどんな風なのかを知ってみようと思った。
それが、何かの突破口になるのではないかと、そう考えた。
机の上の雑誌の中から、とりあえず一番上の一冊を手に取る。
ぱらり、ページをめくり、芽留は未知の世界への一歩を踏み出した。

「ぐ……、ぬぅ……、わ、わからない……」
買ってきた各種雑誌を読み始めて既に3時間、わたるは苦悶の声を漏らしていた。

102:266
08/11/15 07:18:53 1ar7NdON
読めば読むほどわからなくなる。
もちろん、何が書いてあるかは理解できるのだが、そもそもわたるはこの手の事について全く無知である。
情報の良し悪し、有効性、そういった事を判断する基準を持っていないのだ。
だから、読めば読むほど嘘か本当かわからない知識ばかりが蓄積され、わたるの苦悩は深まっていく。
誰かに相談できれば良いのかもしれないが、なにしろ友人は揃いも揃ってオタクばかり。
そりゃあ、モテモテのオタクも世の中には存在するが、少なくともわたるの交友関係の中にはいない。
何をどうすれば、彼女に近づけるのやら、わたるの求める答えは霧の中に消えていくようだ。
それでも、わたるは雑誌のページをめくる手を止めない。
ぱらぱら、ぱらぱらと流し読みする内に、わたるはあるページに目を留めた。
『今月の映画レビュー』
ハリウッドの超大作から、ドラマ発の日本映画までずらりと並んだ映画紹介。
「そうか、映画か……」
芽留を映画に誘う。
見終わった後で、その映画の感想なんかを話題にしながら街を歩く。
ベタ過ぎて思い付きもしなかったが、悪くないかもしれない。
少なくとも、自分のように知識のない人間が無理に背伸びをするより、ずっと良い結果が望めるだろう。
向こうがこちらの誘いに乗ってくれるかどうかは、まあ、当たって砕けろ、と言うしかない。
そうと決まれば、後はどの映画を見に行くかなのだが……。
とりあえず、映画のレビューサイトでも巡ってみよう。
雑誌を片手に持ったまま、わたるはパソコンを起動した。

「…………む……ぐぅ……」
無口な芽留が珍しく声を漏らしていた。
机の上にはとあるアニメ誌が大開きにして広げられている。
そこはちょうど雑誌の巻頭のあたりで、美少女の描かれたピンナップがあったのだが、これが問題だった。
(ほとんど、裸じゃねえかぁああああっ!!!!)
露出の高い水着で、媚びたポーズをしている美少女を見ているだけで、芽留の顔は真っ赤になってしまう。
(次いくぞ、次っ!!)
気を取り直してピンナップをめくると、裏面も印刷がされてあった。
今度は美少女数人の、露天風呂入浴シーンである。
(完全にっ、裸だぁああああああっ!!!!)
まあ、タオルなんかで隠すとこは隠しているのだが、今の芽留には同じことだ。
芽留はアニメ誌を机の上から投げ捨て、次の本を掴み取る。
今度こそはと表紙を開き、絶句。
(こ、こ、こ、これはぁああああっ!!!?)
あられもない姿の少女たちが、男性とまぐわう姿が所狭しと並べられている。
明らかに成人向けだ。
顔から火を噴きそうな恥ずかしさの中で、芽留は思い出す。
そういえば、アニメやゲームの雑誌コーナーと成年誌コーナーはそう離れていなかった。

103:266
08/11/15 07:19:48 1ar7NdON
あの時はかなり慌てながら、次々とそれらしい本を手に取っていったので、その過程で紛れ込んだのだろう。
表紙はそれほど過激な絵ではないが、裏表紙を見れば露骨な成年向けゲームの広告が印刷されている。
(気づいて止めろよ、店員~~~~ッ!!!!)
一体こんな本、どうやって処分すればいいのだろう?
机の上に、芽留はがっくりとうなだれる。
もう、精も根も尽き果ててしまった。
すっかり無気力になってしまった芽留は雑誌の山の中から比較的穏当そうなアニメ誌を選んで、パラパラとめくる。
ふと、とある記事が目に留まった。
アニメの紹介、それもテレビ放映ではなくて劇場公開中の映画らしい。
少年と少女。飛び交う戦闘機。空の青と雲の白が目を引いた。
タイトルを確認する。
『スカイ・クロレラ』
アイツはこの映画の事を知ってるだろうか?
多分、知っているはずだ。アイツはかなりのレベルのオタクである事を自認している。
公開されたのはつい最近のようだったが……
(もしかして、もう見に行ってるって事はないよな……)
もし、そうでないのなら……。
脳裏に浮かんだアイデアは、芽留にとって、非常に魅力的に思えた。

翌日。学校。時間はすでに昼休憩。
教室の片隅で、わたるはいつになくそわそわしていた。
『芽留を映画に誘う』
それが、昨日出した結論だ。
だが、言うは易し。芽留に断られるか断られないか以前に、どう話を持ち出すかが問題だ。
何度もメールの文面を、打っては消し、打っては消し……。
ここ一番で決心のつかない自分に、わたるはいい加減ウンザリし始めていた。
今日は、まだ芽留からのメールは届いていない。
正直、今彼女からのメールを受け取っても、どう返信して良いのかわからない。
「うう、情けないな……」
少し歩いて気分を変えるとしよう。
わたるは自分の席から立ち上がり、教室を出ようと出入り口に向かう。
そして、扉を開いたその向こうに、先ほどから自分が問題にしている少女の姿を認めた。
「………あっ!?」
いつもなら、開口一番、いつもの不機嫌顔で皮肉の一つも飛ばすところだが、今のわたるはそれどころではなかった。
思考がぐるぐると空回りして、何をしていいのかわからない。
何か言葉を掛けるべきなのだろうけど、喉がカラカラに渇いて、声すら出てこない。
冷や汗を額いっぱいに浮かべたわたるは、だから、芽留の様子が少しおかしい事に気がつかなかった。
その、少し赤らんだ頬の理由に思い至る事はなかった。
(そうだ、むしろこれはいい機会だろう……)
パニック状態のわたるの脳内だったが、何とか本来の目的を思い出した。
いつまでも迷っていても仕方がない。どうせ、駄目元なのだ。当たって砕けろ。
呼吸を整え、伝えるべき言葉を脳内で再度確認。

104:266
08/11/15 07:20:34 1ar7NdON
断崖絶壁から身を投げるような気持ちで、わたるは口を開いた。
「こ、今度の週末、映画を見に行かないかっ!」
上ずった声が我ながら痛々しいと思った。
だが、ここで止まる訳にはいかない。わたるは言葉を続ける。
「『スカイ・クロレラ』ってのがやってるんだが………」
と、そこまでまくし立てて、わたるは自身の犯した重大なミスに気がつく。
(『スカイ・クロレラ』って、アニメ映画じゃねかっ!!!!)
映画に誘う、そのアイデアで頭が一杯になって、昨日の映画選びの時にはその事をすっかり失念していた。
わたる自身もいつか見に行こうと考えていた映画だったのが良くなかったのかもしれない。
映画レビューサイトをなめる様に見て、考えに考えて、考えすぎて重要な事を見逃してしまったようだ。
オタク野郎がアニメ映画に誘ってくるって、普通の女子なら敬遠したくなるところじゃないだろうか。
(ち、致命的だ……)
わたるの顔を流れ落ちた汗の雫が一滴、床に落ちて弾けた。
だが、もはや後戻りは出来ない。時計の針を戻す事など誰にも不可能だ。
わたるは、恐る恐る、芽留の様子を伺う。
視線の先、芽留の表情はなにやらポカンとして、なんだか何かに呆然として驚いているようにも見えた。
(えっ………)
そんな芽留の様子に、わたるが疑問を抱いた、そんな時だった。
ヴヴヴヴヴヴ。
わたるの携帯に届いた一件のメール。
差出人は、目の前の少女。
一体何が書かれているのか、ビクビクしながらわたるが確認すると、そこに書かれていたのは余りにも意外な言葉だった。
【『スカイ・クロレラ』見に行かないか?】
ポカン……。
今度はわたるが呆然とする番だった。


晴れ渡った休日の空の下を電車が走る。
込み合った車内の中で、芽留は座席に座り、その前でわたるがつり革につかまって立っている。
以前のバスでの一件もあってか、何となくこれが定位置になってしまった。
電車に揺られる二人。行き先は『スカイ・クロレラ』の上映されている映画館だ。
【しかし、存外意気地がないな、お前も。あの時の顔を思い出しただけで、笑えてくるぜ】
「う、うるさい……」
先日、芽留を映画に誘おうとした時の一軒をネタにされて、さしものわたるも形無しのようだ。
【お前なら、こっちの都合なんて考えず、自分の興味だけで決めた映画で、強引に誘ってくると思ってたんだがな】
「俺だって、相手の事ぐらい考える……」
【ヘタレなだけだろ、単に】
いつもは対等にやり合っている二人だが、さすがに今回はわたるも反撃しにくいようだ。
散々にわたるを苛めながら、芽留はくすりと笑う。
本当は、嬉しかった。
まあ、最後の最後にアニメ映画なんて選んできてしまうのがアレだったが、
コイツがこんな話を持ちかけてくるなんて思ってもみなかった。

105:266
08/11/15 07:21:22 1ar7NdON
そもそも、今こうして、安心して電車に乗っていられるのだって、目の前のデブオタのお陰だ。
痴漢に遭った時のトラウマは、まだまだ芽留の中では払拭できていない。
だけど、わたるが一緒なら怖くない。安心して乗っていられる。
こんな奴……、と心の中で悪罵を浴びせる一方で、どうやら自分がわたるを信頼している事も間違いのない事実のようだ。
やがて、電車は目的地の駅のホームへ。
電車を降りてもわたるへの攻撃を緩めない芽留、その足取りは軽く、表情は晴れやかだ。
時折反撃しつつも、やっぱり苛められてしまうわたるも、苦笑いしつつ、その実会話を楽しんでいるようだ。
駅からはそれなりの距離があった筈だが、映画館までの道のりは二人にはあっという間のように感じられた。
二人並んで映画のチケットを買うのは結構気恥ずかしかった。
お決まりのポップコーンとコーラを両手に持って、薄暗い館内に入っていく。
観客の入りはそこそこといったところ。
隣同士の席に座ると、改めて”二人で”やって来たのだという実感が湧いてきた。
【なあ…】
上映開始直前、芽留が携帯の画面で語りかけてきた。
【なんだか楽しいな】
「えっ!?」
わたるがその言葉を読み終えるか読み終えないかの内に、芽留は携帯の電源を落とした。
ブザーがなる。
映画が始まった。

銀幕を横切る戦闘機の軌跡。飛び交う弾丸。どこまでも高い空。
映画に見入りながらも、わたるはちらりと、隣に座る芽留の表情を確認する。
その視線はスクリーン上に繰り広げられる物語を一心に追いかけているようだ。
少なくとも、退屈した様子はない事にわたるは安心する。
難解さで知られる監督の作品だが、今回のは比較的わかりやすかったのも良かったのかもしれない。
再び、わたるは画面に目を向ける。
辛らつなわたる自身にとっても、この作品はなかなか悪くないものに思えた。
だけど、ストーリーに没入しながら、筈のふとした瞬間に、隣の少女を見てしまう。
(あ~、我が事ながら……まったく)
自分の気持ちを自覚しているつもりだったが、どうにも予想以上に重症なのかもしれない。
気を取り直して再び視線をスクリーンに。
(と、思ったが、もう一度……)
これで最後と思いながら、再び視線を芽留の横顔へ向けて………
(………あっ!?)
一瞬、息が止まるかと思った。
目の前には、自分と同じように、こちらを見てくる彼女の顔があった。
視線と視線が交差する。
時間が停止したような錯覚。
スピーカーから流れる映画の音声だけが、かろうじて時が流れている事を教えてくれた。
やがて、どちらも気まずそうに、おずおずと前方に、スクリーンの方に向き直った。
これ以降もう一度隣を見るような勇気は、さすがにわたるにもなかった。


106:266
08/11/15 07:22:08 1ar7NdON
やがて映画も終わり、二人は映画館の外に出た。
暗い館内に慣れきった目には、傾きかけた太陽の光もひどく眩しく感じられる。
映画の内容には芽留も、わたるも概ね満足していた。
互いの感想などを言い合いながら、二人は街を歩いていく。
【あの監督の他の作品、お前、なんか持ってないか?】
「ん、いくらかDVDは持ってるが…」
【よし、貸せ。週明けたら持って来い】
「命令形かよ……」
【お前のオタク趣味に付き合ってやるって言ってるんだ。感謝する事だな】
「……わかったわかった、2,3枚見繕って持って来てやる」
会話が弾む理由の裏側には、映画館の暗がりの中で目が合った時のドキドキした感覚が、まだ尾を引いているのかもしれない。
浮き立つ足取り。
二人とも、口には出さないでいたけれど、来て良かったと、心底から思っていた。
だから、そんな楽しい気分が、周囲への注意力を二人から奪い取ってしまったのは、全くの不運だった。

ぬう、と前方に大きな影が立ちふさがって、二人は足を止めた。
短く刈った髪を金に染めた長身の男を先頭に、目つきの悪い男たちが6人。
睨み付けるような鋭い視線。敵意があるのは明らかだった。
「よう……」
先頭の男がドスを効かせた声で話し始めた。
「楽しそうだな、お二人さん……」
蔑み、嘲笑う下衆な視線。
芽留とわたるにとって不運だったのは、二人共揃って負けん気の強い性格である事だった。
二人とも、男の視線を真っ向から受け止め、反射的に睨み返してしまった。
男はそんな二人の様子に、何が可笑しいのかクククッと笑い……
「おらあああっ!!!!」
わたるに向けてパンチを繰り出した。
男の拳がわたるの右頬をとらえる。
痛烈な一撃を喰らい、倒れそうになところを何とかこらえて、わたるは踏みとどまった。
一瞬、黒い怒りの炎が心の内から吹き上がりそうになるが、わたるは隣の少女を見てそれを思いとどまる。
(こんな奴らとやりあったって、何の得にもならない……)
そうと決まれば、やる事は一つ。
「逃げるぞっ!!!」
芽留の腕を強引に掴み、わたるは走り出した。
(くそっ…まあ、目につきやすい組み合わせなのは認めるが……っ!!)
最初は戸惑っていた芽留も、わたるにペースを合わせて走り始める。
ちらりと後ろを見ると、6人の男たちもへらへらと笑いながら追いかけて来る。
どうやら、二人は彼らにとって、いかにも魅力的な玩具に見えたらしい。
二人と男たちの距離は一定で、近づきも離れもしない。
歩幅の小さい芽留と、太ったわたる、二人の足はお世辞にも速いとは言えない。
恐らく、しばらくは追い掛け回して遊ぼうという魂胆なのだろう。
(まずいな……)

107:266
08/11/15 07:31:40 1ar7NdON
息が切れ、酸素の回らない頭で、わたるは必死で考える。
そして、一つの結論を導き出す。
「おい……」
隣で走る芽留に、わたるは自分の考えを伝える。
「この先の角を右に曲がったら、そこで二手に分かれるぞっ!!」
わたるの言葉に、芽留は明らかに戸惑っているようだが、メールを打つ余裕のない今は反論できない。
「それで奴らを撒く。どうせこのままじゃ駅と反対方向だ。バラバラに逃げてまた駅で合流するぞ」
芽留の答えも聞かないまま、わたるは芽留の腕をひっぱり、スピードを上げて走った。
曲がり角を右に、そして、そこから分かれた二つの道の右の方に芽留の背中を押しやった。
「何かあったら、メールで連絡しろっ!!上手く逃げろよっ!!」
何か言いたげな芽留の背中にそう叫んで、わたるは左の方の道に駆けていく。
仕方なく走り出した芽留の姿が道の先に消えた後、時間にすればわずか十数秒後、6人の男達も曲がり角を曲がって姿を現した。
「…………ん!?」
先頭の金髪男が足を止める。
彼らの行く手、道のど真ん中に仁王立ちしている人物。
走り疲れて息を切らす見苦しいデブ、彼らの目下の遊びの対象がそこにいた。
「なんだよお前、女はどうしたよ?」
金髪男の横から、別の男が出てきて、馬鹿にし切った口調で言った。
しかし、相手は無言のまま、こちらを睨むばかり。
その態度だけで、極端に沸点の低いその男を逆上させるには十分だった。
「なんとか言えや、うおらああああっ!!!」
大振りなパンチがうなった。
ガシッ!!!
咄嗟に腕でガードしたようだが、こいつのような根性なしのデブ野郎には十分に堪えただろう。
そう思ってニヤリと笑った顔が、一瞬の後、凍りついた。
「な、てめえっ!!!」
パンチを振るった右腕と、上着の襟を掴まれた。
そして、戸惑う暇もろくに無いまま、男の顔面に凄まじい衝撃が走った。
「っがああああっ!!?」
頭突きを喰らったのだ。
男の鼻からたらりと鼻血が垂れる。だが、攻撃はまだ終わらない。
ゴキィッ!!!
襟を再び引っ張られ、次に攻撃されたのは男の急所。
強烈な金的を喰らい、路上に倒れた男は激痛のために悶え苦しむ。
「…………」
一部始終を見ていた金髪男と、その仲間たちの表情が険しくなった。
彼らは見誤っていた。
万世橋わたるという男を甘く見過ぎていた。
確かにわたるは見た目通りのオタクだ。運動神経が良いわけでも、体力があるわけでもない。
先ほどの男のパンチも、実際のところ、わたるにはかなり堪えていた。
だが、しかし、わたるにはそれを凌駕するものがあった。
「おい、お前ら……」
静かに、わたるは口を開いた。
その瞳には、燃え上がる怒りと、尽きる事のない闘争心が映し出されている。
それこそがわたるの最大の武器だった。
喧嘩にルールはない。
それでも強いてあげるなら唯一つ、最後まで立っていた者が勝者である。それだけだ。
わたるの心には、それを可能にするだけの力が眠っていた。
わたるは怒れる男だ。
無尽蔵の怒りと闘志が、今のわたるを動かしていた。
「逸脱するなら二次元にしとけ………お前ら好みのソフトの一つや二つ、譲ってやらんでもないぞ」
金髪男が構える。
背筋に物差しを入れたような姿勢の良さ、恐らくは何かの武道経験者だ。
それを睨みつけるわたるの顔には、ニヤリ、獰猛な笑いが浮かび上がっていた。


108:266
08/11/15 07:32:31 1ar7NdON
見知らぬ道を、走る、走る。
僅かな段差に足を取られ、転びそうになりながら、それでも芽留は足を休めない。
今は何よりも、あの男達から逃げる事が先決だった。
確かにわたるの判断したとおり、多勢に無勢の状況で、あんな奴らと争う事に何の得も無い。
だが、必死で走りながらも、芽留の胸にはどうにも割り切れない違和感が残っていた。
二手に分かれて、暴漢達の追跡を撒く。
わたるの剣幕に押されて、つい納得してしまったが、考えれば考えるほどおかしい。
自分たちより土地勘があるだろうあの連中を相手に、分かれて行動するのは果たして良策なのか?
それに、あの分かれ道の直前での、わたるの焦った態度が気にかかった。
まさか……いや、でも、もしかして………。
ぐるぐると、芽留の胸中に疑念が渦を巻く。
思い過ごしならいい。だけど、あいつの性格ならば……。
立ち止まり、芽留は今まで走ってきた道を振り返った。
もし、勘違いなら、自分はただでは済まないだろう。
携帯をぎゅっと握り締め、延々と苦悩して、芽留はついに決断を下した。それは……。

体中が痛む。
打ち込まれる鋭い打撃に、息が止まるような心地を味わう。
目の前の金髪男は、わたるを相手にしながら、明らかに遊んでいた。
手加減した攻撃で、むかつくオタク野郎を生殺しのままいたぶろうという魂胆なのだろう。
残りの男達が観戦に回って、手を出してこないのがせめてもの救いだった。
「おら、どうしたよっ!!」
鞭のようにしなるキックが、わたるの太ももを強かに打つ。
間髪いれずに放たれた拳は、ガード越しでも凄まじい衝撃をわたるに喰らわせた。
だが、金髪男の思うがままにサンドバックにされながら、ガード越しに睨みつけるわたるの目は全く死んでいなかった。
次々に放たれる攻撃の中、明らかに大振りで隙だらけのそのキックを、わたるは見逃さなかった。
ドンッッッ!!!!!
わき腹を突き抜ける衝撃。一瞬、目の前が真っ暗になりそうになる。
だが、わたるの意識はギリギリで踏みとどまり、繰り出された右足をその両腕でしっかりと捕らえた。
だが、しかし……。
「やっぱ、そう来るよなぁあああっ!!!!」
攻撃を受け止められた金髪男は、ニヤニヤと笑っていた。
打撃で勝てないなら、掴み合いに持ち込むしかない。
わたるの行動など、端から予測していたのだ。
拳を大きく振りかぶり、今度は遊びではない本気のパンチを打ち込む。
それでこの不愉快なデブも黙るだろう。
「うぅらぁああああああああああっ!!!!!!」
叫びと共に、全力の拳をわたるの顔面めがけて放った。
バキィイイッ!!!!
凄まじい激突音。これで全てお終いだ。
清々した気分で拳を引いた金髪男は、一瞬遅れてその異変に気づいた。
「な、あ、あああ……」
拳が、指が、掌が、醜く折れ曲がり、ひしゃげていた。
目の前の、血まみれのわたるの顔がニヤリと笑うのが見えた。
コイツは、このデブは、自分の頭でパンチを迎撃したのだ。
全力の拳に、全力の頭突きを叩き込んだのだ。
そして、想定以上の衝撃が、金髪男の拳を粉々に砕いた。
やがて、驚愕のあまりに忘れていた痛みが、じわりと金髪男の拳に広がっていく。
「あ…な……お前…どうして……」
……どうして、平気で立っていられるんだ?
今まで散々痛め付けられて、そして最後にはこちらの全力のパンチに頭突きするなんて無茶をして……。
金髪男は今になって初めて、目の前のデブを相手にした事を後悔していた。
怖い……。
湧き上がる恐怖が、男の体を金縛りにする。
それが運の尽きだった。
「もう一度言っとく。逸脱するなら二次元だ。その手を直したら家に来い。おすすめを貸してやるよ」
金髪男の右足を捕まえたまま、残された左足に足払いをかける。
空中に浮かび上がった男の体を、わたるは全体重をかけて道路に叩きつけた。
男は、受身を取る事さえできなかった。
立ち上がったわたるの足元で、男は無様にのたうち回る。

109:266
08/11/15 07:33:32 1ar7NdON
「……くぅ…勝負…ありか……だけど…」
満身創痍で立ち尽くすわたるは、事の成り行きを呆然と見ていた金髪男の仲間たちに目をやる。
金髪男敗退のショックにしばし凍りついていた彼らだったが、やがてその驚愕はわたるへの敵意に変化していく。
「漫画みたいに、一番強い奴がやられたら、それで引き下がってくれると有難いんだが……」
男たちは、金髪男のように武道の心得があるわけではないようだったが、それでも、今のわたるが相手をするのは厳しい。
何しろ、四対一、これまでのダメージを考えれば、勝てる見込みはほとんどない。
かといって、逃げてしまおうにも体が言う事を聞いてくれない。
「やるしかないな……」
わたるは腹をくくった。
どうせ、芽留を先に逃がした時点で覚悟していた事だ。
「うぅりゃあああああああっ!!!!」
男達の一人が殴りかかってきた。
わたるはそれをかわそうとして、しかし、足がもつれ直撃を食らってしまう。
派手に吹っ飛び、地面に倒れたわたるのポケットから携帯電話が転がり落ちる。
何とか立ち上がろうとするわたるに襲い掛かる、容赦の無い蹴り、蹴り、蹴り。
「はぁ~ん、これがコイツの携帯かよ。やっぱ、デブのだけあって脂ぎってるワ」
男達の一人が、わたるの携帯を拾い上げて言った。
「これで、お前の連れのチビ娘に知らせてやるか。お前のデブの彼氏は俺らにボコられてる最中だって…」
「…や…め……」
芽留がその知らせを受けて戻って来たら、一体こいつらにどんな目に遭わせられるのか。
それは、わたるの考え得る最悪の事態だった。
しかし、必死に伸ばしたわたるの手の平は、男達の足に踏みつけられてしまう。
「ぎゃああっ!?」
「さてさて…おお、わかり易いね。女の名前は一つだけだわ。っていうか、登録件数自体かわいそうなぐらい少ないよ、コイツ」
男が早速、芽留宛のメールを作成しようとした、その時だった。
ヴヴヴヴヴヴヴヴ。
「なんだぁっ!?」
携帯が振動した。
メールが一件。
それは、男が今まさにメールを送ろうとしていたその相手、音無芽留からのものだった。
【それはそこのデブの携帯だ。とっととその汚い手を離せっ!!このクソッタレの蛆虫どもがっ!!!!】
突然のメールに呆然とする男。
その背中を凄まじい衝撃が襲った。
「があっ!!?」
地面に這い蹲りながら、わたるは見ていた。
華麗に宙を舞い、暴漢の背中にとび蹴りを喰らわせる音無芽留の姿を。
地面に着地した彼女は、どこで拾ったのか鉄パイプを肩にひっさげ、仁王立ちで男達を睨みつける。
その姿に、わたるは体の痛みも忘れて見惚れていた。
きれいだ。
本当に、心の底からそう思った。
わたるの顔に、再び不敵で獰猛なあの笑顔が蘇る。
「うおらぁあああっ!!!」
好き勝手に自分を蹴っていた足の一本をぐいと両腕で捕まえ、そのまま立ち上がる。
予想外の反撃にひっくり返った男に、容赦の無い金的を食らわせてやった。
「ああっ…てめえっ!!!」
続いて叫んだ男に、頭突きを一発ぶちかます。
不思議な気分だった。
気力も体力も尽き果てたはずなのに、体の奥から凄まじいまでの力が湧き上がってくる。
「やってやるか……」
呟いて芽留の方を見ると、彼女もニヤリと笑って頷いた。
再び立ち上がったわたるに、男たちはジリジリと後退する。
わたるは渾身の力を拳に込めて、暴漢どもに向かって突っ込んで行った。


110:266
08/11/15 07:34:09 1ar7NdON
夕日が空を赤く染めるころ、路上に残されていたのは芽留とわたるの二人だけだった。
二人を襲った暴漢たちは、彼らの死に物狂いの反撃に、ついに撤退してしまった。
精も根も尽き果てて、道路にへたり込むわたると芽留の顔には、どちらもしてやったりという笑顔が浮かんでいた。
【逃げてく時のアイツらの間抜け面、見たか?】
「ああ、泣きべそかいてる奴までいたな」
【ただの女とデブの二人に、六人がかりであの有様、アイツら当分外を出歩けないぜ】
くっくっく、とひとりでに笑いがこぼれてしまう。
体中傷だらけで、痛くて仕方が無かったが、わたるは実に爽快な気分だった。
だが、その爽快な気分に釘を刺すように、芽留が声のトーンを落として口を開く。
【それにしても、今日のお前、どういうつもりだったんだ?お前一人であいつらをどうにか出来ると思ってたのか?】
いつかは言われるだろうと思っていたが、それでもその言葉は重たかった。
【ただのデブオタが、思い上がりも甚だしいな……】
「だからって、あのまま走って逃げ切れたとも思えないぞ」
苦し紛れだとわかっていても、わたるにはそう言うしかなかった。
多分、また同じような状況に追い込まれても、わたるの判断は変わらないだろう。
彼女を、芽留を危険に晒すような選択肢など、彼の頭の中には端から存在しない。
そんなわたるの言葉に、芽留はしばし沈黙してから、こう答えた。
【オレの気持ちも考えろって、そう言ってるんだ……】
その言葉は、わたるの心の奥の、深い深い場所に突き刺さった。
芽留の、それが偽らざる気持ちなのだろう。
そう言ってくれる芽留の心が嬉しくて、そう言わせてしまった自分が悔しかった。
苦い表情を浮かべて俯いたわたる。
そんな彼を横目に見ながら、芽留はなるべくそっけない調子でこう続けた。
【ところで、次、どうする?】
「次?」
質問の意味がわからず、オウム返しにわたるは尋ね返した。
【今日は、最後でとんだケチがついた。埋め合わせはしてもらうぞ】
そう答えた芽留の顔は、夕日に染まって少し分かりにくかったが、いつもより赤く見えた。
「そうか、次か……次は…」
【先に言っとくが、連続でアニメはなしだぞ】
苦笑しながら、わたるは芽留の顔を見つめる。
やっぱり、彼女はきれいだ。
そう思った。
【なんだ、人の顔をジロジロと…。気持ちの悪いヤツだな…】
戸惑う芽留の顔を見ながら、わたるは『次』の事を考える。
『次』の、『次』の、そのまた『次』の、これからも続いてゆく自分の過ごす日々に、芽留の存在がある事が今のわたるには無性に嬉しかった。

111:266
08/11/15 07:35:18 1ar7NdON
これでお終いです。
最初は思い付きのカップリングだったんですが、なんだか愛着が湧いてきて長くなっちゃいました。
それでは、失礼いたします。

112:名無しさん@ピンキー
08/11/15 08:36:48 BNxTRFNE
たまらんね
GJ

113:糸色 望 ◆7ddpnnnyUk
08/11/15 09:20:34 y/7JM1lc
カップリングですか・・・。
2台の扇風機を使って、1台の扇風機を回転させると、
向こう側の扇風機は風を受けて羽根車は回り始めます。
風の無駄の無いように、周りをチューブなどで囲むと、
羽根車の回転数は同じ回転数で回ります。

これをミッションオイルに置き換えた物が液体継手です。
液体継手は Fluid Coupling (フルード・カップリング)とも呼ばれます。
液体継手では回転力(トルク)を大きくすることは出来ませんが、
これに案内羽根(ステーターと呼ぶ部品類)を入れますと、回転力を
大きくすることが出来、その代わり回転数が下がります。
これが液体変速機 Torque Converter (トルクコンバーター)です。
液体変速機の部品類の基本は1段3要素です。

114:糸色 望 ◆7ddpnnnyUk
08/11/15 09:24:38 y/7JM1lc
例えば、DE10ディーゼル機関車などでは、2個の液体変速機があり、
低速段・高速段(これをフォイト式(充排油方式)と呼ぶ)と、
この変速機にオイルの出し入れを切り替えて、より効率の良い
回転力を伝え方をしています。

115:名無しさん@ピンキー
08/11/15 13:50:21 4kANmfYi
後のロリコンフェニックスである

116:名無しさん@ピンキー
08/11/15 18:58:03 xJIDTSnT
266さん
おおぉぉ、万世橋×めるめるの続き!?、 G J
 G J 過ぎて眩暈がしたw

117:名無しさん@ピンキー
08/11/16 12:35:05 MIGBPqxA
わたるがカッコよすぎて噴いたw

118:名無しさん@ピンキー
08/11/16 21:49:40 fWKbUjrN
これは熱い青春譚

顔と体型と趣味以外
完璧な漢ですね彼は

> 【あの監督の他の作品、お前、なんか持ってないか?】
万世橋、あんまり濃すぎるの選ぶなよ?w

119:名無しさん@ピンキー
08/11/16 23:26:32 Mea9QusK
万世橋は痩せたらイケメンなんだよ多分

120:糸色 望 ◆7ddpnnnyUk
08/11/17 04:23:22 5Y5CG7x6
万世橋をガァーという轟音を上げながら渡りきるキハ40系。

121:名無しさん@ピンキー
08/11/19 13:58:10 CEhStOPR
今週はまれに見る望カフプッシュだったなあ

122:名無しさん@ピンキー
08/11/19 13:59:50 Ugqw3be7
先々週にカフカの出番が全くなかったことって結局何の伏線でもなかったんだね。

123:名無しさん@ピンキー
08/11/19 17:50:10 nKilYMBy
スカトロ 乙
陵辱もポジで受け入れるカフカ最強 

124:名無しさん@ピンキー
08/11/19 21:19:19 94CXDDpb
>>122
打ち切り詐欺の一環じゃね?

125:名無しさん@ピンキー
08/11/19 22:02:55 vLjFX6nc
いい最終回だったなぁ

126:266
08/11/19 22:15:50 GkRjXrCw
>>100-110の続きの、万世橋×芽留の話を投下します。
一連のお話も、今回で一応一区切りです。
それでは、いってみます。

127:266
08/11/19 22:16:35 GkRjXrCw
昼休憩、教室の生徒達のざわめき、その喧騒の片隅で万世橋わたるは深い溜息をついた。
片手に持った携帯電話のメール画面を開く。
空しい行いだと自覚しながらも、受信メールの一覧を確認する。
あの日以来、彼女からのメールを受け取っていない。
「これで四日目か……」
音無芽留。
数ヶ月前からほんの数日前まで毎日のように交わした、彼女との昼休憩のメールのやり取り。
それが嘘のように途切れてから、今日で四日目。
きっかけはあまりに些細で、思い出す事も出来ない。
ただ、誰にでもあるような虫の居所の悪い日が重なって、売り言葉に買い言葉を重ねて互いの怒りがエスカレートしてしまった事。
たったそれだけで、わたると芽留の数ヶ月に渡る交流は、ぷっつりと途絶えてしまった。
【もういいっ!!二度と顔を見せるんじゃねえぞ、キモオタッ!!】
乱暴に投げつけられた、彼女からの最後の言葉がわたるの脳内でリフレインする。
わたると芽留の教室は隣同士だ。
会いに行こうと思えば会いに行ける。
こちらの非を詫びて、もう一度彼女と言葉を交わす事が出来る。
直接顔を合わせるのが気まずいのなら、メールで謝る事だって出来る。
だけど、わたるの心と体はまるでタールの沼に捕われたように、虚脱感に満たされて自ら動く事が出来ない。
それが、単に自分の臆病さ、意気地の無さの現われである事もよくわかっていた。
それでも、彼女と言葉を交わし、時に笑い合った数ヶ月間が、あっさりと終焉を迎えてしまった事。
そのショックが、わたるを金縛りにする。
人との関わりを避けて、逃げて、誤魔化して、そうやって生きてきた芽留と出会うまでの自分。
それは彼女と関わっていく事で、少しずつ変化していった。
そう思い込んでいたけれど……。
やっぱり、自分はどこまで行っても自分でしかなかったのだ。
孤独に生きて孤独に死ぬ、きっとどんな時代にもいたはぐれ者の人間。
芽留との出会いで変わったつもりになっていた、そのメッキが剥がれただけだ。
結局、自分は、万世橋わたるはそれ以上でもそれ以下でもない。
人との関わり合いで傷つく事を恐れ、あまつさえそれを他人のせいにする臆病者。
たかだかこれだけの事で立ち上がれなくなる自分に、彼女と顔を合わせる資格なんてある筈が無い。
「………くっ」
携帯電話をぎゅっと握り締め、わたるが小さく声を漏らす。
ただ一言でいい。
たった一言、彼女に謝る事が出来れば、それでいいのに……。
彼女のいない昼休憩は、どこまでも長ったらしくて、空虚で、まるで砂漠に一人で放り出されたような孤独感の中、
わたるはいつまでも携帯の画面を見つめ続けていた。

「芽留ちゃん?」
自分の名前を呼ぶ声に気づいて、音無芽留はハッと我に返った。
【お、おう、何だよ?何か用があるのか?】
「いや、ボーッとしてるみたいだから、どうしたのかなって」
芽留に声を賭けたのは、可符香だった。
屈託の無い笑顔で覗き込まれて、戸惑う芽留だったが、すぐに表情を取り繕う。
【別に何でもない。昼休憩なんだ、ゆっくり休んでボーッとしてたら、何かおかしいかよ?】
「ううん、そんな事はないけど…」
しかし、可符香のペースは崩れない。
芽留の机にひじを突いて、さらに芽留との距離を詰めて、可符香は言葉を続ける。
「なんだか元気が無いみたいに見えたし…」

128:266
08/11/19 22:19:22 GkRjXrCw
【気のせいだ。オレはすこぶる元気だ。おせっかいされる理由はないな】
「それにほら、いつもの昼休みのメール、この2,3日してないよね?」
その言葉に、芽留の表情がサッと険しくなった。
【別にどうでもいいだろッ!!!】
可符香が話しかけてきた時点で、こうなるであろう事は薄々感付いてはいた。
芽留にとっては、今最も触れてほしくない話題。
ピシャリと断ち切るような芽留の言葉に、可符香は少しだけ心配そうに声のトーンを柔らかくして
「何か、あったんだね?」
そう言った。
対する芽留は、俯き、何も答えようとはしない。
たぶん、これは可符香なりの気遣いなんだと、力になろうとしているのだと、芽留には何となくわかった。
だけど、それで何が変わるというのだろう。
喧嘩がきっかけで、何となく疎遠になって、それっきりになってしまう友人。
そんなのは良くある事じゃないか。
何か誤解があったとか、そういうややこしい話でもない。
互いに感情をぶつけ合って、言い争っただけの事。
当事者ではない可符香に、してもらう事なんて何もない。
これはあくまで、芽留自身の問題なのだ。
【何でもない。何でもないから、早く向こう行けよ】
芽留のその言葉を受けて、気遣わしげな視線をこちらに投げかけながらも、可符香は去っていった。
そう、これは芽留自身の、芽留だけの問題なのだ。
(あの馬鹿が、かけらも融通の利かないあの馬鹿が全部悪いんだ……)
心中でそう呟きながらも、芽留の胸はチクチクと痛む。
ひどい言葉を幾つも投げかけた。
相手の言い分もろくに聞かず、一方的に断罪した。
優しくしてくれた人に、
いつも気遣ってくれた人に、
とてもとてもひどい事をしてしまった。
そんな罪悪感が芽留の心をがんじがらめにして、一歩も動き出す事が出来なくしてしまった。
こんな自分が、今更のうのうと、アイツに何を言ってやれるというのだろう?
片手で携帯をもてあそぶ。
アイツからの、わたるからのメールは今日も来ない。
まるで迷子にでもなったような不安感。
賑やかな昼休憩の教室の中で、芽留は一人ぼっちの寂しさに震えていた。

学校から家への帰り道を、わたるは一人トボトボと歩いていく。
結局、今日も芽留に謝る事はできなかった。
芽留と喧嘩して以来、ボンヤリと過ごして曜日の感覚が無くなっていたが、よく考えれば今日は金曜日。
今週はこれでお終い。
土日の間は、芽留と顔を合わせる事もできない。
もちろん、メールで連絡を取るという方法はあるのだけれど、なんだかこのまま二人の距離が遠ざかっていくようで、
わたるの心は一段と暗くなる。
ガタンガタン。
近くを通り過ぎていく電車の音に、わたるは顔を上げる。
「そう言えば、明日の予定だったよな……」
わたるが思い出したのは、先週の頭ごろ、芽留と交わした会話の事だった。
【連れて行け】
唐突にそう言われて、わたるは面食らった。
「何だ、藪から棒に……。何の話か、もう少し具体的に言え」
【忘れたのか、この間の埋め合わせだ】
その言葉で、ようやくわたるは思い出す。
以前、わたると芽留が一緒に映画を見に行った事があった。
しかし、運の悪い事に二人はその帰り道、地元の不良らしき男たちに絡まれてしまった。
何とか難を逃れたものの、二人はズタボロになってしまった。

129:266
08/11/19 22:20:07 GkRjXrCw
そこで芽留はこう言ったのだ。
【今日は、最後でとんだケチがついた。埋め合わせはしてもらうぞ】
もう一度、どこかへ出かけるなり何なりして、とにかく今回不運に見舞われた分を取り返したい。
そういう事らしかった。
「なら、なおさら具体的な話が必要だろ。なんか考えでもあるのか?」
【ああ、も、勿論だ……】
わたるの問い答えた芽留の態度は何故か少し煮え切らない様子だった。
【これ…なんだが……】
ごそごそと、カバンの中から雑誌を取り出し、角に折り目を付けておいたページを、わたるに向けて開いて見せた。
それは、とある映画の紹介記事だった。
右ページの半分以上を占めているのは、抱き合い、見詰め合う二人の男女の写真。
わたるにもそれが、どういう類の映画なのかは一目瞭然だった。
【これを見に行く。ちょうど、この間の映画館で次の次の土曜日から上映するらしい】
ベタベタの恋愛映画だった。
「こ、こんなのが見たいのかよ?」
【ど、どうした…キモオタ野郎には高すぎるハードルだったか?】
明らかに動揺した様子のわたる。
それを茶化す芽留の方も、顔を真っ赤にしていた。
思いがけない提案にしばし思考停止状態に陥っていたわたるだったが、しばらく沈黙してから腹を決める。
「わかった。一緒に行ってやるよ。たまにはこういうのも悪くない」
本当は、たまにどころか、テレビですらわたるがこの手の映画を見ることはなかったのだが、ぐっと堪えて、わたるは言い切った。
【そ、そうか、思ったより度胸があるじゃねえか】
わたるの答えを聞いて、芽留はホッと安堵の表情を浮かべ、それから本当に嬉しそうに微笑んだ。
【それじゃあ決まりだな。細かい事はまた、上映時間表を見ながら決めるぞ】
あの時の芽留の笑顔は、今もわたるの脳裏に焼きついて離れない。
いまや遠い夢へと変わり果てた、幸せの記憶。
思い出せば、思い出すだけ辛くなるばかりだ。
わたるは記憶を振り切るように、早足で歩き出す。
しかし、あの笑顔はそう考えれば考えるほど、より一層鮮明さを増してわたるを苦しめる。
(そうだ。あの時のアイツは……本当に、嬉しそうだったんだ)
応えてやれなかった。
裏切ってしまった。
そんな後悔に苛まれて、わたるの胸の奥の傷が、またキリリと痛んだ。

「芽留ちゃんっ!」
呼び止められて、芽留はゆっくりと振り向いた。
【何だ、今日はやけにしつこいな…】
「えへへ、一緒に帰ろうよ」
振り返った先、相変わらずの笑顔で駆けてくる可符香を見て、芽留は溜息を漏らす。
【そんなにオレの事が気になるのか?】
「当たり前だよぉ。大事なクラスの仲間なんだから」
【よくもそんなポンポン、調子のいい言葉が出てくるな】
呆れ返りながらも、相変わらずの可符香の調子に、芽留はついつい心を許してしまっていた。
これが人の心の隙に付け入り自在に操る風浦可符香の実力といった所だろうか。
ニコニコ顔の可符香は、歩幅の小さな芽留のペースに合わせて、彼女の横に並んで歩き始める。
「ひどいなぁ、親友の私をそんな風に言わなくたって…」
【……まだ、そのネタ生きてたのかよ…】
二人で歩きながら、どうでもいい事を話す。
それだけで少し楽になったような気がした。

130:266
08/11/19 22:20:53 GkRjXrCw
どうやら思っていた以上に、芽留の心はわたるとの喧嘩の事でいっぱいいっぱいになっていたようだ。
ガチガチに固まっていた心をほぐしてくれた可符香に、芽留は少しだけ感謝の気持ちを感じ始めていた。
それから、どれぐらい歩いただろうか。
不意に、何でもないような調子で、可符香はこう言った。
「誰かと、喧嘩したんだね」
芽留の歩みが止まった。
「誰かと喧嘩をしちゃったんだね、それも大切な、大好きな誰かと……」
【何で……そんな事がわかるんだよ?】
硬い表情で尋ねた芽留に、可符香はあくまで笑顔で答える。
「そりゃあ、親友だもの」
【茶化すなよ】
「……そうだね。本当は、今の芽留ちゃんを見たら、誰でも大体察しがつくんじゃないかな?」
言われて、芽留はきゅっと下唇をかみ締める。
可符香の言うとおりだろう。
どんな風に取り繕って、平気な振りをしても、今の自分の落ち込みは自分が一番良くわかっている。
傍から見ればそれは、滑稽なぐらいの動揺振りなのかもしれない。
【アイツが悪いんだ、全部。人の気も知らないで、好き勝手言いやがって…】
「でも、芽留ちゃんは自分の方がもっと悪いって、いけない事したって、そう思ってるみたいだね」
【ちょ…人の話ちゃんと聞いてんのか?オレは…】
「ひどい事をたくさん言ったから、もうその人に合わせる顔がないって、そんな風に思ってるんじゃないかな?」
畳み掛けるような可符香の言葉に、芽留は反論できない。
しばしの沈黙の後、観念したように芽留は答えた。
【ああ、そうだよ。その通りだ…】
芽留は心中の苦悩をそのまま見せるかのように顔を歪ませて続ける。
【でも、だからって、どうすればいいんだよ?オレは…アイツに本当にひどい事を……】
「そうかもしれないね。でも……」
今にも泣き出しそうな芽留に、可符香はあくまで優しく語り掛ける。
「でも、その相手の人はどう思ってるかな?芽留ちゃんの事、まだ怒ってるかな?」
【それは……】
「きっともう喧嘩の事なんかより、早く芽留ちゃんと仲直りしたいって、そう思ってるんじゃないかな?」
それは芽留が頭に浮かべた事さえなかった考え方だった。
そうだ、今、アイツはどうしてるだろう?
無愛想で、口が悪くて、だけどいつも芽留の事を大事にしてくれたアイツは、今、どんな事を考えているのだろう。
「その人は、芽留ちゃんとまだ喧嘩しようって、そう思ってるかな……?」
【それは……アイツはそんな奴じゃないって……オレは、そう思う】
その芽留の答えに、可符香はニッコリと笑って、こう言葉を結んだ。
「その人はきっと待ってるよ。芽留ちゃんの事、ずっとずっと待ってると思うよ……」

翌日、土曜日、天気は気持ちの良いぐらいの快晴。
芽留は駅前のベンチにポツンと一人で座っていた。
(来るわけないよな……)
時刻はそろそろ午後の1時を回ろうかというところ。
先週決めた約束の時間、待ち合わせの場所で、芽留は来る筈の無い待ち人の到着を待っていた。
また映画に見に行こう。
芽留から切り出した話だった。
選んだ映画が映画だったので、断られるかもしれないと思ったが、わたるは了承してくれた。
しかし、それもあの喧嘩の前の話だ。
普通なら、そんな約束は反故になったと考えるのが当たり前だ。
芽留自身、自分は何をやっているのだろうかと空しさを感じてしまう。
そんなに一緒に行きたいのなら、わたるに連絡を取ればいいのだ。
昨日、可符香に指摘された通り、もはやこの問題は相手がどうのと言うよりは、芽留自身の気持ちの問題なのだ。
一言、謝ればいい。
それをせずにこんな所で相手に期待だけして待っているのは、あまりに臆病で怠惰な態度ではないだろうか。
「……………」
既に時間は電車の発車時刻ギリギリだ。
もう一度周囲を見渡す。
わたるの姿は無い。
当然だ。当たり前だ。そんな都合のいい事、起こる筈がないのだ。

131:266
08/11/19 22:21:45 GkRjXrCw
芽留は諦めてベンチから立ち上がった。
あらかじめ買っておいた切符を財布から出して、駅の改札に向かう。
わたるが不在のまま映画に行く事に何の意味があるかはわからない。
むしろ、自分で自分の心の傷を抉るようなものだ。
だけど、何もしないで今日一日を過ごす事もまた、芽留にとっては耐え難い苦痛だった。
今は自分の心の思い付くまま、流れるままに行動しよう。
切符を自動改札に通して、ホームに向かう。
ギリギリで駆け込んだ芽留を乗せて、電車は駅を離れていった。

ペダルをこぐ足が軋む。
自分でもみっともないと思うぐらいに呼吸が乱れる。
額に流れる汗を拭う時間も惜しんで、わたるは全力で自転車を走らせていた。
やがて自転車は駅前へたどり着いた。
わたるは周囲を見渡して、自分の探し求める少女の姿を見つけようとする。
「いない……当たり前か」
あんな喧嘩をした後で、今更映画の約束も何もあったものじゃない。
そもそも、本来の約束の時間からは少しオーバーしてしまっている。
それでもわたるは、もしかしたらという淡い希望を抱いて、ここにやって来たのだが……。
わたるの背後で電車が動き出す。
もし約束通りの時間の映画を見ようとするなら、あの電車に乗らなければ間に合わない筈だ。
「そもそも、時間切れだったわけか……」
自嘲気味に笑いながら、わたるが呟いた。
もうこの場所に用事は無い。
わたるは自転車のペダルをこいで、待ち合わせのベンチから離れていく。
と、その時、背後を通り過ぎる電車の中に、見知ったツインテールの後姿を見たような気がしてわたるは足を止める。
しかし、それを確かめるより早く、電車はわたるの前から走り去って行った。
「……そんな筈はないか……俺の頭もいい加減危ないな…」
今日はもう何をするあても無い。
かといって家に戻る気にもなれなかった。
行く当ても定めないまま、わたるは自転車を漕ぎ出し、土曜日の街の雑踏の中に消えていった。

目的の駅にたどり着き、芽留は映画館への道を歩き始めた。
以前は二人で歩いた道を、今度は一人で歩く。
(こんなに長かったか、この道……)
あの時は、自分を映画に誘った時のわたるの動揺振りをいじめながら、二人でなんだかんだと騒いでこの道を歩いた。
二人で交わす会話が楽しくて、ほとんど歩いたような記憶もないまま、映画館に辿り着いたのを覚えている。
今、一人で歩くこの道は、まるであの時の何倍にも伸びたかのように感じる。
ぶり返す記憶に、また胸の奥がチクチクと痛む。
忘れろ。
今はただ何も考えず歩こう。
そう自分に言い聞かせてから、芽留はふっと苦笑する。
(忘れられるなら、一人でこんな場所には来ないよな……)
一人ぼっちの道を、ただ黙々と、歩いて、歩いて、芽留はようやく映画館に辿り着いた。
一人でチケットを買って、一人で館内に入り、一人で席を探す。
客の入りは以前見に来た映画より多いようだったが、それがむしろ今の芽留の孤独感を一層際立たせた。
椅子に深く腰掛け、芽留はスクリーンを見つめながら、心で呟く。
(なあ、一緒に来たかったんだぞ。お前と一緒に、この映画を見たかったんだ……)
やがて、上映開始のブザーが鳴った。
照明が落とされて、映画館の暗がりの中に、芽留の小さな背中は紛れて、消えていった。

上映が終わり、映画館を出た頃には、太陽は西の空に沈もうとしていた。
夕日が赤く照らす街を、芽留はとぼとぼと歩いていく。
いかにも大作映画らしい、しっかりとした作りのその映画は、傷ついた芽留の心にとっていくらかの慰めになった。
それでも、ずっと自分の隣に感じている空虚な感覚は消えてはくれなかったけれど。
長い長い道のりを歩いて、ようやく芽留は駅に辿り着いた。
ホームは電車を待つ乗客の群れがごった返し、列に並ぶだけでも一苦労だった。

132:266
08/11/19 22:22:26 GkRjXrCw
(これは、まず座れそうにないな……)
結構な距離を歩いて疲れていたが、座席でゆっくりと休むというわけにはいきそうにない。
多分、押しつぶされそうな満員電車になるはずだ。
と、そこで、芽留の脳裏に嫌な記憶が蘇った。
満員電車の片隅で、見知らぬ男にいやらしく体を触られた記憶
まるで、あの時と同じようなシチュエーションに、芽留の体が細かく震え始める。
何とか震えを抑えようと芽留は苦心するが、震えは激しくなるばかりで一向に収まってくれない。
だが、そんな時……
(……あっ)
芽留の脳裏を、不機嫌そうなアイツの顔が横切った。
『黙れ、痴漢』
されるがままで何も抵抗できなかったあの時の自分にとって、その声がどれだけ頼もしかった事だろう。
ぼろぼろと泣き崩れる自分を慰めてくれたあの手の平は、あんなにも暖かだった。
ゆっくりと震えが収まっていく。
それと同時に、何となく、昨日の帰り道、可符香が言わんとしていた事がわかるような気がしてきた。
(そうだ。きっと、アイツはオレを待っている……)
それは、二人の間で起こったさまざまな出来事が、毎日のちょっとしたやり取りが、ゆっくりと時間をかけて育んだもの。
(オレは、アイツを信頼してる……)
時にはひどい喧嘩もするかもしれない。
だけど、そんな事とは関係なく、揺ぎ無く存在し続けるものが、確かにある。
お互いがお互いを信じている。
ならば、後は些細な問題じゃないか。
芽留は携帯を取り出し、メールの作成画面を開く。
謝ろう。
仲直りしよう。
自分を信じてくれているアイツに、自分の言葉で応えよう。
こんな自分だから難しいかもしれないけれど、できるだけ素直な言葉に、素直な気持ちを乗せてアイツに送ろう。
やがてホームにやって来た電車に乗り込みながら、芽留はわたるへのメールの制作に没頭していった。

午後からの時間のほとんどを、わたるは自転車をこいで当てもなく街をさまよった。
どこに行こうと、頭に浮かぶのは芽留の事ばかり。
今も本屋で雑誌をぱらぱらとめくりながら、頭の中では芽留との間に起こったさまざまな出来事に思いを馳せていた。
芽留と深く関わるきっかけになった事件。
電車の車内で痴漢に遭っていた芽留を助けたのが、そもそもの始まりだった。
あの時、自分の抱える大きな矛盾に苦悩していたわたるは、芽留の生き方に強く心を動かされた。
過去のトラウマのため、人前でしゃべる事が出来なくなってしまった芽留。
しかし、彼女はそれでも人と関わる事を諦めなかった。
頼りない携帯電話一台を片手に、自分なりの方法を模索し続けた彼女。
(だからこそ、俺はアイツに……)
不意に、わたるの頭の中でなにかが弾けた。
脳裏を次々と駆け巡る、彼女の言葉、彼女の涙、彼女の笑顔……。
それはわたるを一つの確信へと導いていく。
「そうだ……。そうだよな、何やってたんだ、俺は……」
繊細で、臆病で、だけど誰よりも強い勇気を持っていた彼女。
そんな彼女だからこそ、わたるは心を惹かれたんじゃあなかったのか。
(俺は今まで、何をウダウダしていたんだ……)
答えはいつだって、彼女が示してくれていた。
臆病な自分がいるなら、それを越えて行けばいい。
臆病を恥じるあまり何も出来なくなる自分がいるなら、それもひっくり返して行けばいい。
彼女と顔を合わせる資格なんてある筈が無い、なんてそんな事を考えるよりも先にやるべき事があるはずだ。
前へ進め。
行動しろ。
ただそれだけの、単純な事だったのだ。
ふと、わたるは書店の店内を見渡した。
アニメコーナーに、先日芽留と二人で見に行った映画のムック本を見つけた。
「手土産片手に謝りに行くってのは、どうにもセコイやり方だが……まあ、いいだろ」
呟いたわたるの表情に、もう迷いの色はなかった。


133:266
08/11/19 22:23:07 GkRjXrCw
満員電車の片隅、芽留は壁の方を向いたまま、手にした携帯を操作して、わたるへのメールの文面を打っていた。
(むう、だけど、思うように進まないな……)
わたるに謝ろうという決意は固まったものの、肝心のメール作成がなかなか上手くいかない。
打っては消して、打っては消して、結局まだ一行も書けていない。
(難しく考えすぎているか…でも、オレの気持ちが伝わらないと意味がないし……)
また打ち込んだ文章を白紙に戻して、芽留はうむむと唸る。
と、その時だった。
「………っっ!!?」
背中から思い切り壁に押し付けられて、芽留はバランスを崩しそうになった。
(なんだ、カーブでもないのに、ふざけた事しやがって……)
怒り心頭で振り返った芽留は、思わず息を呑んだ。
「…………」
背後に立っていた男。
芽留を見下ろすその男の視線は、まるで獲物を値踏みする狼のような貪欲な光が宿っていた。
芽留は、その感覚を、空気を知っていた。覚えていた。
芽留が何らかのアクションを見せるより早く、男は動いた。
男の手の平が芽留の口を塞ぐ。芽留の体を力ずくで壁に押し付ける。
(なんで…こんな無茶苦茶な真似をして、誰も止めないんだ!?)
男の腕の下でもがきながら、左右に視線を向けた芽留はその疑問の答えを知る。
芽留の右手と左手を遮る二人の男。
その瞳には、芽留を押さえつけている男と同じ、淀んだ光が宿っていた。
(こいつら、三人がかりのグルなのかよっ!?)
以前痴漢に遭った時とは比較にならない、おぞましいほどの恐怖が芽留の背中を駆け抜けた。
それでも、芽留の抵抗の意思はなくなりはしなかった。
先ほどまでわたるへのメールを打ち込んでいた画面に打ち込んだ文章を、目の前の男に見せつける。
【ふざけた真似をしやがって、この痴漢野郎ッ!!そんなに急所を蹴り潰されたいのかよっ!!!】
だが、男はその文面を見てニヤニヤと笑い……
ガッ!!
芽留のすねを思い切りつま先で蹴った。
(………痛っ!!?)
口を押さえられ、悲鳴を上げることも出来ない芽留は、身をよじってその痛みに耐える。
「ふざけた真似をしたら、どうするんだってぇ…?」
その芽留の耳元で、男は馬鹿にしたような口調で囁いた。
だが、それでも芽留は屈しない。
【この野郎……】
痴漢に向けてせめて言葉で反撃しようと、新しい文章を打ち込み始める。
【お前みたいな痴漢の蹴りが効くとでも思ってんのか。もう一度言うぞ。これ以上ふざけた真似をしや……
だが、その文章を打ち終わる前に、男の手が芽留の携帯電話を鷲づかみにした。
(そんな、携帯まで……)
携帯を奪われまいと必死で引っ張る芽留だったが、力では男の方が勝っていた。
ぐいぐいと引っ張られるたびに、芽留は携帯を手放しそうになってしまう。
(駄目だ。もう限界だ……)
口を押さえられて呼吸もままならず、指先から力が抜けていく。
このまま、全ての抵抗手段を奪われて、自分はこの男達のなすがままになってしまうのか。
何とかしなければ。
必死で考える芽留は、ある事を思い付く。
それは、策と呼ぶ事さえ出来ないような、ほとんど幸運と偶然を頼りにした一手だった。
(だけど、もうオレにはそれしかない……)
今にも奪い取られそうな携帯のボタンを、素早く操作する。
その作業を終えたギリギリの瞬間に、携帯は芽留の手から離れ、男の手の中へ。
「さあ、これで生意気も言えなくなったな…」
男が下卑た笑いを浮かべて、さも嬉しそうな調子でそう言った。
(ちくしょう……後はもう、運に任せるしか……)
祈るように目を閉じた芽留に、三人の男たちの手の平がゆっくりと伸びていく。
それが、芽留にとっての長い長い悪夢の始まりだった。


134:266
08/11/19 22:24:38 GkRjXrCw
とある公園の片隅のベンチ。
わたるはその脇に自転車を停めて、携帯のメール画面を操作していた。
芽留への謝罪を、週が明けてから直接会って行うか、それともメールで先に謝っておくか。
それがわたるの目下の悩みだった。
「やっぱり、謝るなら早い方がいいだろうな…」
最初は、直接会って謝った方が、こちらの気持ちが伝わるんじゃないかとも思ったのだが、
考えてみれば、メールはわたると芽留のやり取りの基本スタイルだ。
直接会うのをわざわざ待つより、まずはわたるの気持ちを少しでも早く伝えた方がいいだろう。
「となると、問題は文面なんだが……」
色々と書きたい事は思い付くが、まずはこちらがきちんと謝りたいという気持ちを、シンプルに伝えるべきだろう。
細かい話は、週明けに直接会った時にすればいい。
「まあ、それが順当なところか……」
それでわたるの腹は決まったようだった。
ならば早速メールの作成だ。
わたるが携帯の画面に文章を打ち込もうとし始めた、ちょうどその時だった。
ヴヴヴヴヴヴ。
携帯が震えた。
「ん?」
メールが一件届いたようだった。
その送り主を確認して、わたるは思わず声を上げた。
「まさか……」
恐る恐るメールを開く。
だが、そこにあったのはわたるが予想だにしなかった内容。
「なんだ……なんだよ、これは……!?」
焦燥、不安、怒り、様々な感情がわたるの顔に浮かび上がっては消えていく。
そして、そのメールが意味するところを完全に理解したとき、わたるは行動を開始した。
自転車にまたがり、公園を飛び出す。
「どうすればいいっ!?一体、どうすりゃあいいんだっ!!?」
必死の表情を浮かべたわたるは、全速力の自転車で夕闇に沈む街を駆け抜けていった。

もうどれだけの時間が経過したのか。
幾つの駅を通り過ぎたのか。
延々と男達の玩具にされる耐え難い時間が、芽留の頭から次第に思考能力を奪い去っていた。
最初はもがいて、手足をばたつかせて、せめてもの抵抗をしていたが、もはやその気力もない。
無抵抗のまま、男たちに体を弄られる内に、芽留の思考は暗く深い淀みに沈んでいく。
(何でこんな事になったんだろう?)
手を伸ばせばすぐ届くほどの距離に、当たり前の日常を過ごす多くの人達がいるのに、3人の男達の壁に阻まれたここで、
芽留は拷問にも等しい、地獄のような時間を過ごしていた。
(もしかして、これは罰なんじゃないだろうか?)
弱りきった芽留の心は、我が身を襲う理不尽に何とか理由を見つけ出そうとする。
(そうだ。きっとその通りだ。自分は何か悪い事をして、罰を受けているんだ。でなければ、こんなひどい事……)
何か理由がなければ、納得のいく理由がなければ、自分にはこんな事は耐えられない。
撫で回し、這い回り、いやらしく蠢く手の平の感触。
まるで違う。
全然、違う。
自分が知っている、あの優しくて、大きくて、暖かな手の平の感触とは全く違う。
アイツの手に触れられている時はいつも、心の底から安心していたれた。
(ああ、そうか、アイツにあんなひどい事を言ったから……)
自分はわたると喧嘩して、数え切れないぐらいのひどい言葉をわたるに浴びせかけた。
これはその、当然の報いなんだ。
ようやく納得のいく理由を見つけて、さらに芽留の心は流されていく。
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい………)
少女の瞳から零れ落ちる涙に、男たちはその下卑た嗜好を刺激され、一層激しく少女の体をまさぐる。
だが、流されていくだけかと思われた少女の思考が、一瞬浮かび上がった小さな疑問に立ち止まる。
(だけど……だけど、アイツはこんな事を望むだろうか?)
優しさ。気遣い。好意。
アイツがいつも芽留に与えてくれたもの。
自分は今日まで、散々悩みぬいて気が付いた筈ではなかったのか?
(そうだ……オレは、アイツを信じてるっ!!!)
芽留の瞳に、微かな光が戻る。

135:266
08/11/19 22:25:30 GkRjXrCw
こんな奴らに負けてたまるものか。
ほんの僅かでもいい、こいつらに抵抗をするんだ。
萎えかけた気力を無理やりに蘇らせ、芽留は必死に逆転のチャンスをさぐる。
その時だった。
『間も無く列車は駅のホームに入ります。お出口は左側……』
千載一遇のチャンスが訪れた。
列車が駅に停車して、自動扉が開く。
芽留にとって幸運だったのは、この駅で下車、もしくは乗り換えをする乗客がかなりの数いた事だった。
乗客の密度が減って、密集している事を怪しまれるのを恐れた男たちが立ち位置を変えようとする。
その隙を、彼女は狙った。
(今だっ!!)
男達の拘束を強引に抜け出し、芽留は飛び出す。
列車を降りる人の流れに乗って、男たちから離れる。
たとえ車両から降りられなくても、男達の囲みを破れば、もう奴らには何も出来ない。
(うわああああああああああっ!!!!!)
何も考えず、がむしゃらに前に進む。
希望に向かって、ひたすらにまっすぐに……。
だが、しかし……
(うわっ!?)
ドンッ!!!
大きな壁にぶつかって、芽留の体がよろめく。
わけがわからないままその壁を見上げた芽留の表情が、さっと青ざめた。
(そんな……)
壁と思われたのは、大柄な男の胸板だった。
「いけないなぁ、お嬢ちゃん……」
その見下ろす瞳は、さきほどまで芽留を囲んでいた男たちと同じ淀んだ色に染まっていた。
(3人じゃ……なかった!?)
恐らく、芽留を直接押さえつけていた3人をさらに囲むように、壁の役割をしていた人間がいたのだ。
目の前の男を含めて、恐らくもう3,4人ほど。
壁役を交代しながら、痴漢行為を行おうという事なのだろう。
呆然とする芽留の腕を、背後から伸びたいくつもの手の平が捕まえる。
(これが…最後のチャンスかもしれないのに……)
助けを求めるように伸ばされた芽留の腕も、壁役の男たちによって巧みに周囲の人間からは隠されてしまう。
必死で抜け出そうとする芽留の体が、じりじりとまたあの囲いの中に引っ張られていく。
また、あの地獄に引きずり戻される。
(……助けてっ!!…誰か、助けてっ!!!)
涙を流し、必死で喉を振り絞っても、かすれた声さえ出す事ができない。
声さえ届けば、誰かが気付いてくれるのに。
忌まわしい呪縛に捕われた芽留には、たったそれだけの事さえ叶わない。
(…助けてっ!!!…わたるっ!!!!)
芽留の心の叫びが、再び下卑た男達の欲望の中に飲み込まれていくかに思われた、
その時だった。
「手を伸ばせっ!!!」
聞き慣れた声に、下ろしかけていた腕を上げた。
広げた手の平をしっかりと掴む、優しくて、頼もしい、あの手の感触。
腕を引っ張られるタイミングと合わせて、全力で足を踏み出すと、後ろから縋り付く男達の手の平はあっけないほど簡単に離れていった。
そして、芽留の体はそのまま、彼女が信じた少年の胸の中に倒れこむ。
(そっか、届いたんだ、来てくれたんだ……)
見上げた先には、いつも通りの不機嫌そうな顔があった。
(わたるっ!わたるっ!!わたるぅ!!!)
芽留が携帯電話を奪われる直前にした操作。
それはわたるに宛てたメールを送る事であった。
芽留はわたる宛てのメールを作成中の画面に文章を打ち込んで、痴漢と会話していた。
【ふざけた真似をしやがって、この痴漢野郎ッ!!そんなに急所を蹴り潰されたいのかよっ!!!】
そんな言葉が並んだ文面を、メールとしてそのままわたるに発信したのだ。
当然、尋常な事態でない事はすぐにわたるに伝わる。


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch