08/11/22 04:18:44 ogdF4i0N
シャワーから出ると、鼻歌が聞こえた。
機嫌の良い声だ。何か良い事でもあったんだろうか。
少し音程の外れた鼻歌を聞きながら短い髪をタオルで乾かしていたら、その声は微かな余韻を残して突然途絶えた。
下だけ下着とジャージをはいて、部屋の戸を開ける。
「しぃ?」
そこには暗闇の中にぽつんと布団に包まって眠る妹の姿があった。
翌日、朝(と言ってもすでに昼に近いが)目が覚めると部屋にはもう静奈の姿はなかった。
残されていたのは置手紙ひとつ。
戸神行成と会ってくる、と。
やっぱり、と思った。
昨日の鼻歌の原因はこれだったわけだ。
軽く伸びをしてソファに寝転がる。いつの間にかここが俺の寝床になっていた。
元・俺のベッドは今ではもう静奈専用だ。
俺達が本当の兄妹ではないと知ってからも、静奈はそれを受け入れて、今まで通り俺と一緒に住んでいた。
計画のため、というのもあるけど
たとえ血はつながっていなくても、静奈は俺達の大事な存在に変わりはない。
そう。静奈は大事な妹で、大事な家族で、大事な……。
ため息。
難しいこと、面倒なことを考えようとするのは性にあわず、どうも頭が痛くなる。