【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合35at EROPARO
【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合35 - 暇つぶし2ch490:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:21:36 7EHlY/l6

「ば、馬鹿かきさまは、貴族とはさまざまな義務を負い、家門の面子を守るものであり……
 だいたい反乱軍をほうっておけば攻められないと思っているのか! ここで戦わねばどのみち館を囲まれるのだぞ!
 ……もういい、いまさらきさまなどと話す意味はない。兵ども、こいつを拘束しろ!」

 ふりむいて叫ぶ領主に、あわてて応えようとその手勢がうごき……そこで長男を連れてきた家臣のひとりが合図した。
 長男の後ろにならんだ兵たちから、領主の手勢の兵にむけて、発射準備の完了している火縄銃およびマスケット銃が十数丁つきつけられる。
 ひるんだ領主側の兵が動きを止めた。

 いつから工作されていたのか、いつのまにか家内が完全に分裂していたことを知って衝撃を受けている領主に、長男がさらなる言葉をあびせた。

「そこが大まちがいだ。敵対の意思をしめさないかぎり、反乱軍はわざわざ囲みになんかこないぞ。決起しなかった家がひとつでも滅ぼされたか? いくばくかの軍税を持っていかれるだけだ。
 決起した貴族勢力は徹底的に攻めつぶされているが、そっちは見せしめのためだってのは猫並みの知恵があればわかる。もっとも、猫以下の領主がけっこういるようだが。
 いっぽうで、反乱勢のトップにいる商人どもは、そこらの領主よりはかなり知恵があるようだぜ。
 中立の家まで容赦なく攻めるような、金と時間と労力のむだづかいはしないだろうよ」

 双方の兵のとりまくなか、長男は嘲笑をうかべて高らかに突きつける。
 かれと、かれをかつぎだした出陣反対派の家臣たちがかかげる論の正当性を、領主側のざわめく兵たちにもよくのみこませるように。

「これまでを見るかぎり討伐軍を出した家は戦場で滅ぼされ、その領地はひどく荒らされる。しかし最初からおとなしくしていれば反乱軍は攻めてくることはない。
 王政府との戦いをひかえたいま、やつらが求めてるのは足元をなるべく安全にしておくことだ。つまり反抗の芽をつんでさっさとこの地域を黙らせたいだけだ。
 だから、こっちはその意をくんでやって、静かにじっとしてりゃいいんだよ。少なくともいま兵を出すのは最悪だ。
 王政府支持を声高に叫ぶにしても、まだ篭城して王軍を待ってたほうがマシってものだ」

 といっても大砲を相手どって篭城できる城館なんて、持ってる貴族はごく一部だが―そう続けた長男は、どうやら王政府支持を叫ぶことすらしないつもりらしかった。
 そうと知って、領主のこめかみに太い血管がうきあがった。

「反乱した平民どもに妥協するようなことを……恥を知れ、それでもトリステイン貴族か、王政府への忠誠はどうした!
 きさまの言うとおりになどすれば、王政府はわが家に悪感情をいだく! それはほかの日和見している卑怯者どもについても同じだ」

「忠誠ねえ。それが今日わが家を救うかね? 王政府への弁明は明日にでも考えられるさ。だいたい、大貴族筆頭のラ・ヴァリエール家からして日和って静観してるんだぜ。
 なあ父上、よく目をあけてものを見ろよ。トリステイン王政府の軍はまだこの地に来ていないのだよ。そして河川都市連合の反乱軍はすぐそばにいる。
 両者のまともな戦闘があったのは空のみだが、反乱軍は王政府の竜騎士隊を追いはらってしまった。俺がここにくる前、空で叔父上の兵を負かしてきたのと同じようにな。
 いくら待っても叔父上が来てないのを不思議に思わなかったのか」

 長男のその言葉に、領主は目を見開き、いっしゅん激痛すらわすれた。

「なんだと? きさまラウルを……自分の叔父をどうした……?」

「残念ながら、かれは首の骨を折ってしまった。
 頑迷な古い貴族だったとはいえ、ラウル叔父上のことは嫌いじゃなかったので心が痛むね。
 あんたのような奴に忠義をつらぬかなくてもよかったのにな」

「おまえ、に、肉親殺しにまで手を……ちがう、そんなことができるものか!
 ラウルとその幻獣騎士隊はわが領地の誇りなのだぞ。きさまのような空中戦闘の経験のない若造に討たれてたまるか!」

「数騎で追いかけはしたが俺が直接討ったわけじゃない、自滅に近い。空でむちゃな乗り方をして愛竜から落ちたんだ。
 魔法が使えないのを忘れたら危ない、とかれに忠告してやるべきだったかな。風の障壁で空気抵抗をよわめたり、落ちたときにレビテーションを使ったりはできないんだからさ……
 この地では世界が変わったんだよ。戦い方をふくめ何もかもが。おい、門の外の道具を持ってこい」


491:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:22:11 7EHlY/l6

 長男が命令すると、その兵たちがいくつかの道具を運んできた。 
 それを見て領主は眉をひそめる。それらの道具を持ってこさせた意味がよくわからない。
 拳銃や軽量のハルバードのような鉤型の武具と見えるものはまだいい。農民のつかう大熊手、漁民のもつ投げ網……
 疑問は、長男の言葉で氷解した。あるいは衝撃とともに砕かれた。

「空中戦、騎兵戦における反乱軍の戦術を真似してみた。本格的な道具は時間がなくて用意できなかったため、足りないぶんは領民から借りてきた。それがこれらだ。
 おかげでどうにか叔父上の兵に勝てたよ。まあ、あっちが新しい環境に慣れてなかったのが大きいのだが。叔父上の手勢に火竜がいないのもさいわいだった。
 いちばん役にたった道具はけっきょく拳銃かな。投げ網なんぞは使い慣れないと無意味だと気づくべきだった」

 河川都市連合は、傭兵として竜乗りふくむ幻獣騎兵を雇いいれている。
 この戦場となった一帯、すなわち大河流域の『魔法断絶圏』―魔法が使えなくなった地域は、いつのまにかそう呼ばれている―において、かれらの編み出した新しい戦い方は下劣なものだった。
 一般的なトリステイン貴族の感性からすれば。

「いまや、新しい戦い方が空でも展開しているのだよ、父上。
 魔法がないため風竜乗りは墜落を恐れる。それと風圧をいなせないことがあいまって、風竜の最大の長所であるスピードを完全に出せない。
 むろん遠くからの精度ある魔法攻撃もできない。
 そこで、たがいに至近に寄ってから戦う。たいてい勝負は竜のブレスと銃で決まるようになってる」

 竜で体当たりし、ブレスを吐く。
 鉤状の長得物でひっかけたり、網をかぶせてあるていど自由を奪ってから、何丁も用意して弾ごめしておいた拳銃で近くから撃つ。
 基本的に、数騎で一騎をおいつめる。乗っている人間より、当たりやすい大きな的である竜のほうをおもに狙う。
 竜が死ななくてもいい。痛みで暴れて乗り手を落とせばそれでいいのだ。

 文字どおり野蛮なぶつかりあいだった。洗練された魔法技術を駆使した、多くの若い貴族のあこがれだったこれまでの空中戦とはまったくことなる。
 だがこの「野蛮な戦術」で、数だけそろえたと見られていた反乱軍の空戦部隊は、トリステイン空海軍の竜騎士隊を魔法断絶圏の上空からたたき出してしまったのである。
 いまとなっては、この地域の空で王家の百合紋を見ることは、まずない。

 感心したように長男は幾度もうなずいた。

「まったく、反乱軍もいろいろ考えたものだ。王政府の空軍もちょっとは工夫してしかるべきだが、これまでの醜態をみるかぎり敵の模倣すらできてないんじゃないか。
 話を戻すが、いまここら一帯でずばぬけて強い勢力は反乱軍になっている。嫌おうが嫌うまいがそれは事実だ。
 臆病者だの日和見主義だの呼ばれようとも、俺たちみたいな小勢力が、強者に真っ向から馬鹿正直に立ちむかうのは愚の骨頂だ。
 時勢の見えないあんたじゃ家を滅ぼすだけだ、だから俺が代わってやる」

 古く穏やかな世にかわって、新しい世がおとずれている。血と革新の、無慈悲な世が。
 それに適応していくのは、この息子のような下劣でも狡猾さをもった奴だ、と領主はいやおうなく思い知らされざるをえなかった。
 それでも領主は、歯ぎしりしつつ長男に罵声をあびせた。今はもうそれしかできなかった。

「簒奪者!」

 この国の大混乱のなかで個人的な復讐を達成したかれの長男―粗暴ながら知性を有する危険な種類の貴族が、ぞっとする笑みを見せた。

「違うだろ? 四年前、不当にあんたがとりあげた俺の生来の権利が、やっとこの手のなかにもどってきただけだ。今回だってあんたの自業自得だ。あんたが判断を間違えたから家臣が俺についたのさ。
 現在のところ、ワインの乱なるこの嵐は、小勢力にとってやりすごすべきものであって立ち向かうものじゃないんだよ、『前領主』さま。
 とりあえず、隠居先として俺のいた塔にでも入ってもらおうか……心配するな父上、うちの家族はほとんどそっちに付けてやるから寂しくはないぞ」



492:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:23:19 7EHlY/l6
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 河口海域。

 霧たちこめる早朝、暗い海は鳴動していた。黒い波のうえにとどろきわたるのは砲音である。
 トリステイン空海軍の戦列艦、『レドウタブール号』。甲板のうえで水兵たちは索具に取りついて必死に帆をあやつっている。

 海上を自在にかけめぐる敵船から飛来する砲弾のため、この艦隊の周囲やまっただ中では、ときおり派手に水柱が上がっていた。

「ばかやろう船体を半端に回転させるな、やるなら反乱軍にきっちり船腹をむけて砲をぶちこめというのに!
 ……いや、いや、そっちのほうだと弾が味方の艦に当たる……! ええいちくしょう、商人どもめ、船をちょこまか動かしやがって!」

「艦をもどせ、いまの揺れはあぶない、船底になにか当たってる! 岩礁かなにかに乗り上げかけてるぞ!
 空にも注意しろ、船首のほうからまた敵の竜騎士が近づいてくるぞ! とにかく寄せつけるんじゃない、当たらなくても撃て! 船に火をつけさせるな!」

「火災が発生しました、火薬庫からは離れていますがバケツが足りません!
 至急人員をまわしてください!」

 銃と砲の轟音に負けないため、水兵たちは大声で指示と報告を交わし―そのはりあげた声にさえ絶望をにじませはじめている。
 彼らの声を聞きながら、『レドウタブール』号の艦長は霧のむこうで動く敵艦隊の影を見つめた。
 正面からしぶき混じりの風にあおられ、目を細める。

(やつらの艦は中型の武装商船がほとんどだ。乗っているのは貿易商のたぐいのはずだ。戦いは知っていても海賊に対応するレベルのものでしかない……
 にもかかわらず、なぜこうなった)

 敗勢が濃いのは、信じられないことにこちら側だった。
 彼の視線のさきでは、反乱を起こした河川都市連合軍の『水乞食』船団が、ここを先途とばかりに猛攻を加えてきている。

 『水乞食』はこの大河河口沖で、王政府の艦隊を待ちうけていたのである。
 船団が縦ならびの行列となって海上につらなった、[縦陣]という陣形。各船の横腹の砲門を空海軍艦隊にむけ、一列の海上砲台となっていた。
 その敵船団にぶつかったトリステイン空海軍艦隊は、突撃にとりかかった。
 各船が横にならんでへさきをそろえた「横陣」をくんで、敵に突っこもうとしたのである。

 だが、風石の助けなしでは、帆船艦隊は風上にまっすぐ向かうことはできない。切り返しを何度もおこなってジグザグに進むしかないのだ。
 そうなると各艦の足並みはそろわない。突撃前こそかろうじて保っていた空海軍の陣形は、突撃を始めるとたちまちに崩れた。
 連絡のための魔法なしで細かい連携がとれず、たがいの衝突を回避しつつ敵陣に向かうだけでも精一杯のところに、敵の砲弾がふりそそいだのである。
 風の抵抗をくらって、ばらばらに切り返しを行いつつのたのた前進する艦隊は、絶好の的だっただろう。

 それでも、そのままであったならばどうにか接近して乱戦に持ちこめただろう。そうなれば大型船の数で優位に立つこちらが勝っていた。



493:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:24:22 7EHlY/l6

 ……そうはならなかった。突撃をはばんだのは海中の大量の障害物だった。
 河口沖合いである。流されてきた土砂が広範囲につもって急激に水深が浅くなっていた。そこに自然の岩礁だけではなく、間隔をあけて沈められた人工物が群れをなしていたのである。
 廃船に石をつめこんで沈めたものか、塔型の石柱あたりかは知らないが、大型船なら底がひっかかる程度の深さに。それぞれが鎖でつながれて。
 空海軍の突撃は鎖にせきとめられ、不運な数隻が底をやぶられてその場で浸水沈没し、障害物にひっかからず前に出られた少数の艦はたちまち囲まれた。

 総じて喫水の浅い敵艦隊は、こちらに比べて、海中の障害物になやまされることがほとんどないようだった。いまでは各船が自由に動きまわっている。
 敵も味方も、最初の陣形がくずれている点では同じだが、現在の有利不利は一目瞭然である。
 「罠にひっかかって崩された」と「相手の失態に最大限につけこめるよう自分から崩した」という差だった。

 いま、『レドウタブール』号はじめ何隻かの戦列艦は、密集してしまっていた。
 海中で壁をつくっている障害物だか岩礁だかにおしつけられる形で自由な身動きもならず、そこを遠まきに半包囲されて砲撃をくらっているという、笑うに笑えない戦況におちいっている。
 なにしろ集中してくる敵の砲弾におびえながらも、まず味方の船と接触事故を起こさないほうに注意を向けなければならないのだ。

 しかし、彼らよりもっと笑えない状況にあるのは、密集の外側にある艦だった。
 糸のほつれた部分のように陣から離れてしまったところを、敵船にすばやく攻撃対象にされている。空海軍の艦一隻に対して、小さなサメのように反乱軍の数隻がむらがるのである。
 一隻あたりの大きさと砲門数、乗員数ではまさる空海軍の戦列艦は、不利な状況でも簡単には屈しないが……無敵でもない。
 砲弾に帆を破られたり舵を壊されたりすれば海上で自由に動けなくなるし、木造の船体を縦に割るような船尾からの砲撃をあびれば、一発で致命傷をおいかねない。

 視界がよくないためはっきりとはわからないが、三十隻のトリステイン空海軍艦隊のうち大打撃をくらった船はすでに五、六隻くらいにはなっているだろう。

「なんたるざまを……」

 この状況をじかに見るため甲板に出てきた艦長は、そのような場合ではないにもかかわらず嘆かざるをえない。
 この『レドウタブール』号ほか周囲の艦は、このあいだのアルビオン遠征をはじめ、王家と国家につかえる空海軍艦隊として少なからぬ任務をこなし、武勲に輝いてきた。
 それが。

「今になって平民の反乱などに手を焼くとは……」

「手を焼く!? たった今は殺されかかっておりますよ!
 砲弾が平民と貴族を見分けますか!? 危険ですから下に戻ってください!」

 艦長のぼやきに対し、間近でいささか以上に礼を失した怒鳴り声をあげたのは、甲板下から出てきて彼に駆け寄った副長だった。
 周囲に同じく青ざめた数名の士官を引きつれている。
 艦長は怒鳴り返した。

「甲板で指揮する、信号がなにも届かんなら自分の目で見る!
 ここでさえ視界はひどいが、船室にいるよりはるかにましだ!」

「状況確認はわたしがします! とにかく下へ!」

「そっちこそ下にいろ、君にはわたしが指揮できなくなったときの代役を……!」

 船尾甲板の船べりに砲弾が着弾した。その衝撃が彼らの言いあらそいを断った。
 木でできた船体の破片が飛びちって周囲の人体に刺さり、恐ろしい被害をまきちらした。木片に切り裂かれた水兵たちの悲鳴がまたも上がる。
 中央マストに上がっていた水兵が揺れで滑落し、甲板に背から叩きつけられてはねたきり動かなくなった。
 とっさにうずくまっていた艦長と副長は、海戦の喧騒のなか、そのままで会話を再開した。


494:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:25:16 7EHlY/l6

「下層砲門を開け、もっと撃ちかえせ! 砲門はわれわれの艦隊のほうが多いのだぞ!」

「レドウタブール号の砲門はすでにすべて開かせております!
 ですがごちゃごちゃと固まってもつれたこの艦隊の現状では、全艦が砲を使うなんてできませんよ!」

「ちくしょうめ、やはりさっさと陣形をたてなおさねばどうにもならん! 旗艦からの指示は! 信号は来たのか!?」

「魔法によるものならどんな信号も来ませんし、旗についてはここからでも見えないならお手上げです!
 さっき閣下が『信号が何も』とご自分で言われたでしょうに!」

 艦隊運動の信号や指示がすべて魔法であったわけではない。旗による信号などがある。
 それさえ抜きにしても、攻撃のためある程度連携した艦隊運動ができるように、パターン化された訓練も積んであったのだ。
 だが、天候と時刻によって視界は最悪であり……訓練してきたパターンは、どのような場合でも通用するわけではないことを露呈しつつあった。

 喧嘩しているかと思えるほどの剣幕で声をはりあげる二人の横から、第三者の比較的冷静な声がわって入った。

「向こうの多くの船は海上にしてはすばやく動きまわっていますね、切り返しも見事だ。砲の照準をあわせにくい。
 船が小さく、喫水が浅いつくりということもあるのでしょうが、水夫が熟練しているようです」

「当然だ、連中は日々ここいらの海域を船でかけめぐっていたんだ!
 船の喫水が浅いのだって、この辺りの海が遠浅なのに合わせてだ。ここはいわばやつらの庭のようなものだ」

 吐き捨ててからその人物が誰かに気づき、レドウタブール号の副長はあわてて態度をあらためた。

「ああ、これはヘンリー卿……見苦しいところをお見せしました」

 元アルビオン空軍の艦長であったサー・ヘンリー・ボーウッドである。アルビオン戦役でレコン・キスタを見かぎり、トリステイン軍の水先案内役をはたした。
 そのまま、レドウタブール号の客分あつかいを受け、顧問として相談役のようなことをつとめている。
 もと敵国人ということで、軍内にわだかまりが残っていなくはなかったが、なんといっても経験豊かな人材は貴重なのだった。

「ヘンリー卿、あなたならどうしますか、この状況で」

 副長とおなじくやや落ち着きをえた艦長が、客将にアドバイスを求めた。ボーウッドの返答にはためらいがなかった。

「この河口海域での戦闘は、こっちにとって地の利がなさすぎます。
 連中はただでさえ船足が速いうえ、船の喫水が浅いのと海中地形を熟知しているおかげで障害物にほとんどひっかからないようです。
 さらに相手の艦隊は砲の数こそすくないですが、最新式の砲をのせています。こちらの艦より弾の飛距離が長い。
 こちらは出ばなを完全にくじかれました。密集がほどけしだい戦場を離れましょう」

 つまり、逃げる。
 ボーウッドの提言を聞いて、艦長の顔がレモンにかぶりついたときの表情になった。屈辱もさることながら、勝手に戦場放棄したと見なされれば、へたすると彼は軍事法廷おくりなのである。
 副長のほうも似たり寄ったりだが、こちらは「やむをえない」とあきらめが顔に出ている。
 艦長は帽子をとって手のなかでくしゃっとつぶし、煮え切らない様子を見せた。

「そうだな……それが妥当であろうが……」



495:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:25:46 7EHlY/l6

「閣下、平民の船団から逃げるというのは苦痛かもしれませんが、いまは一隻でも多くのフネを残すべきです。
 いま残っている戦力がそっくり離脱できたなら、隊形をととのえて罠のない海域で再戦すれば勝ちます。半分に減っているとしても敵にまだまだ脅威を与えられます。一隻二隻しか残らなくとも戦い方はあります」

「そうです閣下、そもそも旗艦の首脳陣がこの戦闘を決定した判断が、『平民に背をむけたくない』という意地のためではないかと愚見します!
 完全な風上をとっている敵にむけて横列突撃! こんな愚策を艦隊にとらせた旗艦こそ呪われればいい、軍事法廷には提督がまっさきに出るべきだ! 生きていたらですが」

 ここでとつぜん副長が、ボーウッドの意見に追随しはじめた。
 説得というより、開きなおったように憤然と開戦判断をこきおろしている。

「き、きみ、言葉が少々過激にすぎやせんか……」

 艦隊首脳部に腹のすえかねた態の副長と、それにややたじたじとなっている艦長に、ボーウッドが真剣な面持ちで言った。

「教科書どおりならこちらも緻密な一列縦陣で向かい合うべきでした。旗艦もそのくらいはわかっていたはずです。
 縦陣を選ばなかったのは、魔法にたよる通信技術が使えず、こまかく連携した艦隊運動に不安があったらでしょう。開戦を避けなかったのは、艦隊の士気を考えたのかもしれません。
 通例は大型船の数にまさる側が勝ちをおさめるのが海戦ですから、力押しでもどうにかなると判断したのは無理もありません……調査のひまがなく、海中の罠にひっかかって突撃陣形を完全に崩したのが致命的だったのです」

 トリステイン軍へのフォローを含めたボーウッドの分析に、艦長が首をふった。
 帽子をもみつつ彼のついたため息は、砲煙まじりの潮風にたちまち吹き散らされた。

「いや……どうであれ、わが艦隊の首脳がミスを犯したのはもう間違いない。そのくらいはわかっていたのだ。
 では貴公のすすめにしたがって、機会がありしだい戦場から離れることにする。だがどこへ逃げる? 近場の港は反乱軍におさえられてしまっているのだが。
 あまり遠くまで航行するのはまずい、われわれの後方についてきている輸送船団を守らねばならないから」

「どこでもいいから、魔法断絶圏の外の海域を目指せばよいでしょう。
 ひとたび風石が使えるようになれば、それが尽きないかぎりフネは空を飛んで安全な港をめざせます、木の港でも水の港でも。
 反乱軍の船は、魔法断絶圏にふくまれた海域からけっして出てこないはずです。この外ならば世界はいまなおメイジの領域です」

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 トリステイン宮廷でひらかれる騒乱評議会。

 その席上における報告は、今日もまた出席者たちの心の安寧からほど遠い内容だった。
 当初はさほど重くみられていなかった都市民の武装蜂起は、途中から『ワインの乱』と呼ばれ、国土の三分の一をおおう大反乱と化しているのである。

 王宮の会議室で宰相マザリーニが読みあげている報告書は、そろそろ終わりに近づいてきていた。

「……以上が、レドウタブール号の艦長はじめ数艦からとりあえず聴取した、河口の戦いのあらましとのことだ。けっきょく日没まで戦闘はつづいたという。
 こちらの被害はさんざんだ。主力の戦列艦にかぎっても、拿捕五隻と沈没四隻でまるまる失ったのが九隻。損傷がはげしく、腰をすえて港で修繕しなければ使えないのは七隻。
 それほど大きな損傷がなく、ひきつづき使える戦列艦は十四隻。三十隻の艦隊が半分以下になったのだ」



496:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:26:32 7EHlY/l6

 序盤の被害がもっとも痛手だった。沈没四隻のうち三隻までが、海中障害物に底をやぶられて沈んだのである。

「中型の武装商船四十隻ばかりで出てきた敵の被害も、十隻くらいとそれなりに多いそうだが、つぎからは拿捕された戦列艦がそっくり敵に使われるだろう。
 空海軍は追いかえされた。一言でいうと大敗だ」

 マザリーニはやや乱暴に報告書の束を投げだした。
 テーブルの向こう側にすわる財務卿のデムリが、渋い表情とうつろな表情をくり返して浮かべているのは、頭のなかで何度も損害を計算してそのたびに呆然としているのだろう。

(財務卿が言葉をうしなうのも無理からぬことだ。
 戦列艦の数にまさる側が勝つのが海戦の常識であったはずだが、どうもわが空海軍は常識がくつがえった稀有な戦例をトリステイン史に残してくれたらしい)

 七十四門砲の戦列艦一隻がどれだけの値になるかを思うと、マザリーニも空海軍に向けてそんな嫌味を言いたくなる。
 が、そんな場合ではない。
 反乱地域からはさらに憂うべき知らせが届いていた。今度は海ではなく、陸からの凶報である。

「つぎは陸上での反乱軍の報告書だ。列席したおのおのにはぜひとも読んでいただきたい。
 この規模の軍としては異常に速い。一日に十数リーグ、ときには二十リーグを超える行軍スピードだ。大砲をともなってこれなのだ」

 五千をかぞえる反乱軍は、王政府に見せつけるように大手をふってトリステインの国土を移動している。
 大河、河口周辺地域において水路を活用しつつ。「魔法断絶圏内」を縦横にめぐるように、そして決してその領域から外に出ることなく。
 抵抗の意志をしめそうとする地元の領主たちはもちろんいた。が、各地でかきあつめられた小規模の諸侯軍はことごとく、焼き払われるアリのように掃討されていく。

「魔法が無いうちは、地元貴族たちの正面からの抵抗は無駄だな。
 各地で二、三百の兵を組織するのはいいが、連携した行動をとるまえに五千の反乱軍が即座に駆けつけてきて、再起不能になるまで叩きのめされる。そんな戦闘ばかりではないか」

 忌々しかった。
 マザリーニの当初の予想以上に、反乱軍―河川都市連合の「市民軍」は、その能力が高い。
 信じがたいことだが、同数で魔法なしという状況下においては、プロの傭兵集団である王軍をさえしのぐかもしれない。
 評議会の列席者たちも、反乱勃発当時の相手を見くびる態度はかけらもない。報告書を回し読みしながら、読みおえた者から一様に真剣に語りはじめている。

「これまで反乱軍とぶつかった貴族側で、生きて逃げのびた兵がほとんどいないそうですよ。勇敢に最期まで戦ったのだろう、と思いたいですがそうではありますまい。
 兵力差があったとはいえ、勝ちつづける反乱軍は毎回ほとんど損害なしというではないですか。
 貴族側をただ負かして追い散らすのではなく、たくみに包囲して兵を皆殺しにする戦い方をとられているのですよ」

「ああ。つまり、指揮官の指示にあわせて臨機応変に動き、陣形を変えられる軍だ。錬度には一定以上の高さがあると見てよかろう。
 報告には、反乱軍は戦場でも足並みをそろえて行進できるとある。調練を何度も繰り返さなければそうはならん」

「兵器においても、すくなくとも砲に関しては優良品を多数そろえているのではないでしょうか。
 ……あのあたりの都市は武器の市場でもありましたからねえ」



497:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:27:29 7EHlY/l6

「諸君はなにをしている! 『反乱軍は意外に強固な武力をもっている』、そんなことを確認しあっていてどうなるというのだ。
 このままむざむざと、魔法の使えぬ地域に取り残された領主たちが潰されていくのを見ているだけか!
 はやく助けに行かねば、王政府に向けられる不信の目はどんどん増えていくぞ」

「わからん人だのう、怒って焦ってもそれこそどうにもなるまいよ。助けに行くため、今は大急ぎで王軍を編成しているところであろうが。
 反乱軍は数千の兵をもって、数百規模の地元領主の軍を迅速にうちのめしていく。これは戦の理にかなっている。
 われわれは数万とはいかなくとも、せめて反乱軍に倍する精兵をそろえてから出撃するべきなのだよ。なるべく確実に勝てるように」

「いや、あまり準備に時間をかけていてもまずいのでは? 反乱軍にも防備を固めるだけの時間を与えてしまいますよ。堤防や道路をこれ以上壊されてはたまりません。
 それよりこれ以上、後手にまわらないようにするべきです。
 用意の終わった軍の先遣部隊をいますぐに発して、街道沿いにある、軍需物資をたくわえた倉庫をすぐに押さえなくてはなりません。
 今はまだ、反乱軍はおもに大河の東がわで騒いでいます。ですから大河の西がわの、王軍の進撃予定路にある倉庫は手つかずです。ですがこの倉庫群もぐずぐずしていると奪われて、物資を利用されてしまいますよ」

「待て、反乱地域に倉庫がまだ手つかずで残されている? それはうさんくさい。われわれを引きつけるための罠ではないのか。
 倉庫をおさえようと焦って小規模の部隊を出していったら、手ぐすねひいて待っていた反乱軍に片っぱしからかこまれて始末されかねんぞ。
 いっそ反乱地域にのこった倉庫は火をはなって焼いてしまえばどうだ、これなら竜騎士数名を派遣するだけですむ」

「ばかをいいなさい、国内各地の倉庫に平時からたくわえてきた弾薬、小麦、まぐさがどれだけの量になるとお思いですか。
 単にけちっているわけではありません、現地でこれを一つ確保するだけで、軍の行動がずっと円滑になるのです! 後方からすべての補給物資を荷馬車ではこぶのでは、金が何倍もかかるし補給部隊の危険が大きくなりますよ。
 焼いてしまうよりはまだ、地元の民に倉庫の中身を与えるほうがましでしょう。彼らが日ごろからおさめていた軍税を倉庫ごと目の前であっさり焼いてしまったら、王政府が白い目で見られます」

「だから、それだけの物資を先に反乱軍に押さえられたら逆効果だろう! 民に還元したところで反乱軍は民から徴発していくだろうが。
 お前みたいなやつの意見のせいでぐずぐずしているうちに、大河の東側の倉庫はとっくに大方が奪われてしまったんだぞ」

「だから早く、編成の終わった軍からすぐに進発させて要所を占めさせなければ……!」

「だからそれは兵力の小出し投入という愚行だというのに! へたすれば順番に叩かれていくだけで……!」

 つばの飛ばしあいじみた熱のはいった議論を聞きながしながら、マザリーニはこわばった肩の筋肉をもみほぐして考えた。

(……それにしても、河川都市連合の経済力はやはり馬鹿にならない。これだけの軍をそろえる実力があるとは……竜乗りなどを雇うのは高くつくというのに。
 これはトリステインの河川都市だけではないな、大河上流のゲルマニアの河川都市もひそかに加担して、資金を都合しているにちがいない。
 そこらの貴族が勝てないのは当たり前か)

 いかに領主級の貴族が裕福でも、槍や銃をもった兵にくわえて「騎兵」と「砲」と「船」のすべてを多数そろえられる者はそうはいない。
 国家つまり王政府と、ブリミル教会と、その陰でハルケギニアの経済をささえてきた商人たちの都市組織のみが、数千から数万規模のまともな軍をかかえるだけの財力があるのだった。



498:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:28:19 7EHlY/l6

 しかし平民が主体である都市は、前二者にくらべて取るにたりない存在とみなされてきた。ハルケギニアの歴史においてこれまで主役であったのは、あくまで魔法を持つ者なのである。
 これまでは貧しい下級貴族の集団でさえも、裕福な一部の平民にたいして優越した武力を誇ってこれた。
 資金力の差という道理に反することができたのはすべて、魔法の存在があったためである。

 その魔法が消えた。同時にメイジの戦士としての優越と威厳が、見るかげもなく融けて崩れた。大釜いっぱいの熱湯をかけられた氷のごとく。

(この内戦では、金が戦争を決定する唯一の力になってしまった)

 だというのに困ったことに王政府の国庫は、底が見えだしているのである。
 河川都市からの莫大な税収が絶えたのも、ゲルマニア方面との経済活動が阻害されているのも痛手なのだった。

(やるのなら、やはり「最短」を心がけるしかないな)

 マザリーニはあらためて自分のうちでそう確認せざるをえない。

 順序でいえば、まず王都から発した王軍を、なんとか反乱地域にはりめぐらされた水路に到達させる。軍の進路も補給線も、なるべくまっすぐとる。
 つぎに手にいれた水路を活用して物資を輸送しつつ、反乱勢に水没させられていない道をたどって反乱の中核地域まで進む。
 反乱の中核都市トライェクトゥムを威圧するなりなんなりして、早い段階で河川都市連合の市民軍を野戦にひきずりだし、正面からうちやぶる。

 最短距離を進軍し、可能な最短の期間で決着をつける。補給線を最短にすることで、王軍は最大限の力を保ったまま戦場に到着できる。

 王道、というより常道だった。
 そして単純明快すぎて、敵にも完全に読まれてしまうのが難点である。時間をかせごうと反乱軍が逃げまわるのを王軍が必死に追いかけまわす、という羽目になるかもしれない。

(しかし、魔法および空路の使用不能、そしてこの苦しい財政という状況では他の戦略をとりにくい。
 ……王軍が進軍するだけで反乱勢が白旗をかかげ、演技でいいからおそれいった形で講和のテーブルについてくれるなら、それが一番いいのだが)

 もちろん、それは都合のいい夢でしかないだろう。
 テーブルに前かがみになり、あごの下で手を組み合わせて沈思しているマザリーニの耳に、いっぷう変わった話題が飛び込んできた。

「……少人数で果敢な抵抗をつづけている貴族がいる? それは朗報だな、誰だ」

「先代のガヴローシュ侯爵、いまではガヴローシュ家の唯一の生き残りだ」

「ああ、あの隠居していた老人か。諸侯軍をひきいていて最初に殺された貴族が彼の息子だったな【拙作SS前回末】。
 くわしいところを聞こうではないかね」



499:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:28:58 7EHlY/l6

「単純な事情だ。復讐心が老公を駆りたてている。
 諸侯軍をひきいていた息子のガヴローシュ侯爵が殺され、侯爵の館は反乱軍に攻めおとされた。その際ガヴローシュ侯の妻子は惨殺され、その遺体はどこかへ運ばれたとか。
 そのあと、あの老人はわずかに残った家臣と領民兵をひきつれて、執拗に反乱軍の後方を乱しつづけているらしい。物資を運ぶ小舟を焼いたり、反乱軍の斥候兵をおそったりと。
 だが今のところ、反乱軍の神経をいらだたせる程度にしか成果はのぞめまい。反乱地域を駆けめぐりつつ生きのびるだけでも精一杯のはずだ」

「やれやれ、やりきれんなあ。あのご隠居は、孫を溺愛するだけが生きがいのおとなしいじいさんだったのだが」

 まったくやりきれない。耳をそばだてて話を聞きながら、マザリーニは顔をしかめた。
 こういう話は貴族たちの義憤をかきたて、軍事衝突以外の可能性をますます遠ざけていく。
 陸戦のまえに対話のみでの早期講和という、内乱をおさめるうえで出費と犠牲のもっとも少ない選択肢は、もはや消えたといっていい。

 ふと宰相は、上座のアンリエッタの様子をうかがった。
 憔悴した表情でずっと沈黙している女王は、青い瞳にかげりを宿し、その話にじっと耳をかたむけていた。
 感情のゆたかな彼女は痛ましさと怒り、それに女王としての責任感からくる慙愧を感じているのだろう。こころなしか身を縮めているようにも見える。

(……今回の反乱はご自分に責任があると思っておられるのは知っていたが、最近、根をつめすぎておられるようだな)

 アンリエッタを気にかけながらも、マザリーニは立ちあがり、視線をあつめたことを確認してから言葉を発した。

「軍の小出しはしない。河川都市連合の鼻先にでていく王軍は、かれらの市民軍をただ一戦で消滅させられる規模でなければならない。
 市民軍―反乱勢のもつ野戦のための軍―を一刻もはやく消しさることを考えよう。そうなれば、残った反乱勢がいかに強固な要塞都市にこもっていようと、負けを悟って降伏してくるだろう」

 泣きたいことに空海軍が失敗してしまった以上、王政府があてにすべきことは当面、陸戦での勝利にしかない。
 だが陸戦の勝利も意味はある。
 市民軍を完璧に打ち破ってしまえば、王軍は都市周辺の土地をとりもどし、港を陸からおさえられる。水路に砲をむけて、反乱勢の輸送船団の航行を妨害することもできるだろう。
 そして野戦のための市民軍がいったん消滅してしまえば、都市には囲みを打ちやぶる方法はないのだ。

「さいわいにして王軍の編成はあと数日で完了する。
 そのあと、なによりも真っ先にぶつからねばならない壁がある。最初に陸上で軍の通行をはばむものの存在を思い出すべきだ。
 王都から反乱地域につながる東への要路には、都市連合のひとつにして最西端河川都市であるガンが鎮座している。トライェクトゥムには及ばないが堅固な城壁を持つ都市だ」

 彼はテーブルに広げた地図の、ある一点を杖で示す。魔法断絶圏の周縁ぎりぎりにどうにかひっかかっている都市を。
 マザリーニは結論のため言葉を強めた。

「まずこの都市、ガンをどうにかすることを考えよう。門番に扉をこじあけさせねば、野戦をおこなうための戦場へすら踏みこめぬ」

…………………………
………………
……



500:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:29:36 7EHlY/l6

 評議会の解散ののち。マザリーニの数歩先をあゆむアンリエッタが、かれに話しかけた。

「財務卿から聞きました。ものの値段が急速に上がって、トリスタニア市民から不満が出てきているとのことですが」

「はい、陛下。
 ゲルマニア方面との流通路が断たれ、ガリア方面の経路のみが残った時点でこうなるとはわかっていたのですが、予想をだいぶこえて物価上昇が速いですな。
 緊急措置としてガリア方面での関税を大きく引きさげましたが、まだ物価は上がっております。なお、関税引き下げのぶん王政府の収入はさらに減りました」

「しかたがないわ。
 どうにかパンの値だけでもおさえなくては……民を飢えさせてはなりません」

「しかり。飢えれば暴動が起こりやすくなります。王都での暴動は起こしてはなりません、まかりまちがえば体制の動揺に直結するものですから。
 まあ当然ですが物価が上がったことで、市民の多くは今回の戦に反感をいだいているそうです。
 民のあつまるところにひそかに調査員を送りましたが『王家は河川都市と講和して戦をさっさとやめろ』という意見が多いようですな」

 王宮の廊下をつかずはなれず歩きながら、女王と宰相は言葉をかわしている。
 いちばん重要な論議は、まずふたりきりで行われるのが常だった。
 護衛としてつきしたがうアニエスはけっして口をはさまず、聞いているそぶりすら見せない。

 アンリエッタの口から憂わしげなぼやきがすべり出た。

「王政府がはじめた戦のように民草は思っているのかしら……
 まず武力を使って罪のない人々に被害をふりまいたのは河川都市のほうだわ。講和の道をせばめたのはむしろあちらなのに。痛めつけられた諸侯はいまさら簡単には納得しないでしょう。
 貴族ははやく戦って河川都市を罰しろとせまり、平民はいますぐ戦いをやめてほしいと期待している。
 分裂した国論がまとまるのは、ぐずぐず軍を編成中の王政府を批判する点においてだけ。こっちはとぼしい予算と相談しながら努力しているのに」

 その女王の愚痴をうけて、マザリーニの瞳がふいに冷たい理性の色を宿した。

「陛下、その諸侯のことですが、反乱地域にのこった諸侯からは協力はもう期待できませんな。
 決起した貴族が叩かれたあとは、反乱軍に目をつけられることをおそれて兵を出さず館にこもりきりという、利口な領主ばかりになりました」

 その話になったとたん、アンリエッタの歩みがいっしゅん止まりかけた。

「……しかたありませんわ。王政府のいまの体たらくでは、諸侯をつなぎとめられませぬ。
 こちらの空海軍が勝っていれば、諸侯はよろこんで王政府ばんざいを叫んでくれたでしょう。
 わたくしたちが頼りないから、反乱軍の威勢をおそれて声をひそめるしかないんだわ」

 なにかが話題にのぼるのを怖れて逃げるかのように、女王はこんどはわずかに歩みを速めた。
 その背をじっとみつめて、マザリーニは含みある口調で言った。



501:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:30:28 7EHlY/l6

「そうですな。恐怖なき徳は無力なり、と申しますから。
 王軍が到着するまでは、あの地域にあってより強い恐怖―すなわち最大の軍事力をもつ存在は、王政府ではなく都市連合です。自家の当面の安全だけ考えるなら、領主たちが反乱軍に無駄な抵抗をしなくなるのはごく当然でしょう。
 ましてトリステイン貴族の筆頭家門ですら動かないとあれば、下位の領主たちが多くそれにならうのは自然というものですな」

 言葉の最後をきいたとき女王の動揺の気配は、ほかの二人にはっきりつたわるほど大きくなった。
 容赦というものを廃し、宰相は告げた。

「ラ・ヴァリエール家のことですぞ、陛下。今日はそれについて話しあいましょう。
 かの公爵の態度はただの領主としてはともかく、トリステインの重臣としては少々問題です」

「……無理もないのよ。
 ラ・ヴァリエール公爵が動かないのは無理もないの」

 苦しげにアンリエッタは、親友の父親への擁護を口にした。

「ラ・ヴァリエール領は反乱地域とゲルマニア国境にはさまれた形になっているわ。
 魔法断絶圏に入ってしまったのは領地の半分とはいえ、へたに動いて反乱軍の注意をひけば、その半分を荒らしまわられて大きな被害が出るでしょうし……」

「まあ、それはそのとおりです。
 反乱軍は狡猾ですな、当初からラ・ヴァリエール領にはあえて手を出さず、踏みこむどころか水害さえ及ばぬように注意を払っているようです。
 裏をかえせば、公爵には反乱軍に対して兵をあげる直接の理由はないと言えます。
 公爵にとっても願ったりでしょうかな。最後まで我関せずをつらぬきたいのかもしれませんから」

「っ……」

「『わが領民は兵に出さぬ。さきのレコンキスタとの戦はまだしも、今回のような王家の私戦には軍役免除金を出すことすら納得しかねる』、うわさによればある有力な大貴族がそう言い放ったとのことです。
 下々の者たちや王宮の口さがない者は、そう言ってのけた人物がラ・ヴァリエール公爵ではないかと推測を―」

「枢機卿!」

 アンリエッタは回廊の途中でついに振り向き、影に徹していたアニエスがびくりとするほどの厳しさで、叱咤の声をはなった。

「反乱勢の手の者たちが街角にまぎれこんで王政府への中傷や不穏なうわさを流している、とこの前報告してきたのはあなたでしょう!
 そのあなたが、うわさ話を真に受けるのですか!」

「落ち着いてください、陛下。そのまま信じているわけではありません。このうわさ自体はおそらく反乱都市によって流されたものであろうと思います。
 ですが現状を考えるにあたって、頭ごなしにすべての可能性を否定するわけにもまいりませんぞ。
 反乱軍に大河上空を制されてしまって通信に手間のかかる状況とはいえ、ラ・ヴァリエール公爵がいまだ王政府の呼びかけに応えず、協力しようとしないのは事実なのです」

 ラ・ヴァリエール公爵がいつまでも沈黙しているのは、自領と領民の安全をはかるためか、今回の内乱を「私戦」と思って王政府への不満を抱いたからか、または別の理由があるのか。
 「いずれの理由にせよ、彼の沈黙自体が王政府にとってはすでに問題となってしまったのです」とマザリーニは断じた。

「先ほど言ったように『ラ・ヴァリエール家のような大貴族のなかでもとりわけ重要な家門が、王家にそっぽを向いている』と思われてしまえば、それ以外の臣民は動揺するでしょう。
 王政府と各地の領主たちの間にはいまや、つけこまれてしまうに十分な間隙が存在しており、反乱勢はそれをさらに押しひろげようと画策しているのです。
 どのような心づもりにせよ公爵の態度は、反乱勢の意図を助長してしまっています」



502:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:31:46 7EHlY/l6

 女王はすぐには答えなかった。
 ややあって歩きだし、すぐそこにあった部屋のドアノブに手をかけて入室する。マザリーニとアニエスはそれに続いた。
 とくに使われてはいないようだが、掃除のいきとどいた明るい室内であった。ドアはぶあつく、大声でないかぎり廊下に会話はもれない造りである。

 椅子にぐったり沈みこむように着席してから、ひそめた声でアンリエッタはようやく答えた。

「あなたの言いたいことはわかっていますわ。ほんとうは、わたくしもこのままでいいとは思っておりませぬ。
 あなたはよくやってくれているのに、声を荒げたりしてすみません。いやね、わたくし。もっと余裕を持たなければ……」

 憂鬱そうに言い、それから彼女は敢然と顔をあげた。

「枢機卿、あなたの言うとおり、ラ・ヴァリエール公爵が今回の内戦を冷ややかに見ている可能性はあります。
 かれは、反乱勢によって流されたあの情報、『この反乱は王家が河川都市の権益をとりあげようとしたことで始まった』という話を信じ、王政府に批判的になっているのかもしれない。
 けれどそれは誤解だし、それをわかってもらわなければ。わたくしたちに協力してもらわなければ」

 そこまで言ってから、ふと宙をみつめ、亡羊とアンリエッタはつぶやいた。

「さいわいなことに、王政府とラ・ヴァリエール家の橋渡し役となれる者に心当たりはあるのだけれど……」

 マザリーニはそれがだれか訊かなかった。訊くまでもなかったからである。
 大貴族ラ・ヴァリエール家の三女であり、女王の友人でもあるルイズ・フランソワーズ以上に、この役目に適当な者がいるはずがなかった。

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 河川都市連合の盟主、トリステイン都市トライェクトゥム。
 その市庁舎の大会議室。この都市をささえる者たちが、平民貴族の区別なくテーブルをかこんでいる。
 戦略を決定するための会議が進捗しているのだった。

 知るかぎりの情報をもちよって真剣に議論をたたかわせ、怒鳴り、失笑し、賛同し、ののしり、なだめすかし、みずからの意見をとうとうと述べ、他人の意見を論評し……

 多くの声による混沌のなかで、トリステイン王宮の〈騒乱評議会〉においてマザリーニがそうであるように、ベルナール・ギィは耳をかたむけつつじっと動かない。
 眠っているかのような半眼で座り、耳に入ってくる会話のすべてを吟味しながら、頭のべつの部分でかれはぼんやりと考えていた。

(振りかえってみれば、こんな遠くまでよく来たものだ)

 かれはそこそこ余裕のある商家の四男だった。文字を覚えるのが早く、身のまわりの書物を片端から読んだ。十になるかならないうちに専門書が欲しいと言いはじめた。
 文庫本になって大量に出版されているならともかく、専門書はそこそこ貴重品だった。多数所有しているのは貴族の教育施設や宗教関連の施設である。
 そこで親は四男を修道院に入れてくれたのだった。

 親からたっぷり喜捨をうけとった修道士たちは、雑用をつとめる平民の子が、日が沈んでからランプをもって書庫にこもるのを許可してくれた。
 法学、歴史、数学、論理学……あのころは古今の名著をむさぼるように読んだものだ。
 昼間の労役のため眠気はきつかった。かびとほこりに満ちた空気には鼻水が垂れ、目がかゆくなった。それでも、そんなことはみずからの知の世界が広がっていく爽快感にくらべればささいなことだった。



503:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:32:32 7EHlY/l6

 だがある日、「あいつ、法曹家でもめざす気だろうか。トリステインでは平民は公職につけないのだと、いちおう教えておいたほうがよいのでは」と修道士たちがささやくのを聞いた。
 もちろんそんなことは知っていたが、平民と貴族のあいだに立ちはだかる巨大な壁をあらためて意識させられたのはその日だった。

 以降、それを頭から完全においはらうことはできなくなった。
 貴族の子女しか通えない学院の図書室には、質量ともに修道院の図書室にまさるとも劣らぬ本が置いてあると聞いたとき、生まれてはじめて悔しさを覚えもした。
 多数の本がある環境、または本を買う金。最低限のパン。勉強にうちこむ時間の余裕。貴族の子は、そのどれもをたいして苦労することなく手に入れられるのだ。

(その壁自体は許せないものではないが……)

 平民のなかでも裕福な家と貧しい家には差があるように、貴族が生まれつき恵まれた環境にあるのはしかたないと思う。
 だが、努力をすれば壁を越えられるのならともかく、その壁は越えられない。
 トリステインで学問をこころざした平民の子は、どれだけ才能があり、どれだけ血のにじむ努力を重ねていようと、官職につくという並みの野心を持つことさえ封じられているのだ。

 そのようにできあがったこの世界の理を完全に理解したとき、怒りを通りこして、かれは絶望したのだった。
 許しがたかったのは、まっとうなやり方では壁に挑戦すらできないことだったのである。

 反乱を起こしたことにはいくつもの理由があった―けれど奥底には、つねに少年のころの絶望があったのかもしれない。
 そこまで思いをいたしたときに、ベルナール・ギィは呼びかけられたことに気がついた。
 いつのまにか周囲の席は静まりかえり、かれの発言を期待する雰囲気がつくられている。
 かれは立ち上がり、今日述べるつもりであったことを話しだした。

「王政府の力は大空にある」

 その最初のひとことだけでは、列席者は何のことかよくわからなかったらしい。わかったような顔をしつつ周囲の顔をさぐっている。
 かまわずベルナール・ギィは「軍事力という面で、かれらがわれらに対して本来持っている巨大な優越とはなにか?」と問う。
 そして、すぐさまその答えをだすかたちで、最初の言葉を説明した。

「それは魔法による直接の戦闘力の差だけではない。より広い視点で見れば、なによりもかれらが空を支配していることだ。
 多くの砲をつんだ空海軍の大船団をととのえ、空を自在に横行できることが、王政府の力を強大なものとしているのだ」

 平民も風石で動く空のフネをあつかうことはできるが、メイジがいる空海軍にくらべれば水路利用の比率はずっと多い。
 いざとなれば風魔法である程度はフネを浮かせられる貴族と違い、平民だけのフネでは、風石を切らして空から落ちれば悲惨なことになりかねない。
 また風石は買わねばならない。帆をはるだけの水上航行ならタダのうえ、風石を積まないぶんほかの荷を多くつめこむことができる。
 したがって、重く、多少時間をかけてもかまわない商品は、水上航路であつかうのに向いている。河川都市の商人はそれらの取り引きを手がけてきたのである。

「空路によって、彼らは大軍をすばやく戦場に集結させられる。補給をずっと簡単におこなえる。
 本来なら彼らはわれわれの軍を好きな場所で、好きなときに、自由に攻めることができただろう。空からの砲撃で……陸に降りるにしても、ずっと多くの兵力で。その場合、この反乱は一瞬で叩き潰されただろう。
 ところがいまや状況が変わっている」



504:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:33:44 7EHlY/l6

 諸君も知ってのことながら、と彼は述べた。

「ここら一帯の魔法断絶圏内において、風石の力を禁じられた王政府の軍は、まず陸路しか使えない。対してわれわれの市民軍は、保持している水路を最大限に使える。
 つまり一度に運べる物資の量で、コストの安さで、なによりも輸送スピードでこちらは優位に立った。
 これらの条件においては水路をゆく船は、空路のそれには劣るかもしれないが、陸路をゆく荷馬車よりは格段にまさるのだから」

 三十台近くもの荷馬車にわけて運ばねばならない量の物資を、船はただの一隻で運べる。小舟でも相当の量を。

 陸路で使われる馬や竜など輸送用の獣は、大量の食料を必要とする。ときには、軍の荷馬車の半分以上がまぐさを積むということにすらなる。
 船は食べない。少なくとも水上をゆくかぎり動力を積む必要はない。

 獣は夜をふくめ一日の半分以上の時間、休まねばならない。
 船は条件がととのっていれば夜間さえも休みなく進める。

 以上のさまざまな優位により、『水路』対『陸路』において軍配は前者にあがる。

「翼をうしなって水辺に落ちれば、猛禽でさえカワカマスに食い殺されよう。
 壊れた堤防からながれこんで地をおおった水。都市を育てた大河。都市民をながらく交易によって食べさせてきた水路。
 これらの水は、やがて来る王軍をさえぎってわれわれを守る壁であり、同時にわれわれにスピードでの勝利を約束する」

 厳粛な面持ちでベルナール・ギィは宣言した。
 賛美歌じみた荘厳な美声と、過剰なほどに修飾された言葉によって列席者を酔わせながら、そのじつ本人は醒めている。
 酔えるものではなかった。

(そうだ、わたしはここまで来た)

 修道院長の推薦で、とある法務官の非公式な秘書をつとめた。そのあいだの実績で市の法律顧問官の目をひきつけ、相談役に抜擢されて十数年。
 行政にもたずさわって平民からの支持をうけ、先の代表ラ・トゥール伯爵への反感を利用してラ・トゥール反対派をまとめあげた。
 ラ・トゥールを王政府とあえて接近させることで都市民を焦らせ、暴発させ、クーデターを起こしてかれを殺し、ついにこの都市の代表とみなされるまでにのぼりつめた。
 いまでは都市連合のまとめ役となり、トリステイン王家に対する大反乱を指導している。 

(引き返せるものか。わたしに退路はなくなっている)

 失敗すれば、反逆者のための処刑台が用意されているだけだ。
 王政府や貴族層の怒りの程度にもよるが、見せしめとして石うすや炭火をつかった無残な殺され方をしてもおかしくはない。死骸はトリスタニアの広場で腐肉になるまでさらされるだろう。
 もう、みずから選んだ血路をどこまでも進むほかないのだ。

「各国の王は貴族をしたがえ、天空に達する力をもってハルケギニアに君臨した。
 それに一部なりと取って代わり、われわれは都市と平民のための新しい時代を打ち出そうとしている。
 そのためには、われわれは自分たちの力がどこにあるのかを見失ってはならない―
 それが水だ」



505:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:35:02 7EHlY/l6
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 数日後。王都からでて東へ行く街道。
 日光さす午後の路上は、数リーグにわたって人馬でごったがえしていた。

「隊長どの、またまともに歩けない兵が出ましたぜ」

 大隊長がぽりぽり頭をかきつつギーシュのかたわらに歩み寄ってきた。
 この男はニコラといい、以前の肩書きは『ド・ヴィヌイーユ独立銃歩兵大隊のグラモン中隊の軍曹』であった歴戦の傭兵である【6,7巻】。
 現在は「新設軍」なる連隊の大隊長の一人であり、新設軍をあずけられた水精霊隊隊長ギーシュ・ド・グラモンの相談役だった。

 なぜニコラが大隊長などになったかというと、ぽんと一個連隊などまかされて顔をひきつらせたギーシュの手回しだった。
 今回の反乱鎮圧軍の総司令官となった父・グラモン元帥に頼んで、旧知のベテラン傭兵を引き抜いたのである。
 このくらいしてもいいはずだとギーシュは思っている。なぜなら父親こそが、新設軍をギーシュに率いさせて鎮圧軍にくわえるよう、女王に希望したからだった。

 王軍は先日トリスタニアでようやく編成を完了し、急いで行軍をはじめていたのだった。

「腹痛だそうで。道ばたに捨てときますか」

 ニコラの言葉に、ギーシュは馬上で頭をかかえた。

 王軍の行軍縦列の最後尾。
 歩みののろい補給部隊の守備隊をまかされた(という名目で後方に追い払われた)新設軍の兵たちは、予想以上に情けない体たらくだった。
 戦意がないわけではないのだが、それでも体調を崩す者が出るのである。あるいは初陣に気負いすぎなのかもしれない。
 グラモン元帥にひきいられて先をすすむ王軍本隊の傭兵たちは、慣れきった行軍を平然とこなしていることだろう。

「またかね? いや、犬猫じゃあるまいしそんなホイホイ捨てるわけにはいかんだろ。どうにか歩かせろ。
 どうしても歩けそうにないなら、荷馬車の荷台に乗せて運んでやれ」

「お言葉ですがね、荷馬車に積んでやる新兵はさっきのやつで何人目ですかい。
 今んとこはほんとに緊張で駄目になったやつばかりですが、あまり甘やかしちゃいけませんや。楽に移動する連中をみてたらそのうち、ほかの兵まで楽をしたいと考えだします。
 連中、名実ともに行軍のお荷物ですぜ」

 渋い顔をするニコラに、ギーシュは嘆息しつつ擁護してみた。

「しょうがあるまい。まともな訓練期間は数月、これが最初の実戦って部隊なんだから」

 アルビオン戦役時、自分も二ヶ月即席の士官教育を受けただけで戦場に行き、右も左もわからぬ状態だったことを思い返すと、ギーシュは彼らに対し共感せざるをえないのだった。
 が、そのギーシュを教導した本人のニコラは、肩をすくめてその感傷に水をさしてきた。



506:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:36:05 7EHlY/l6

「そうそう、それですよ。この新設軍ときたら九割がたが民間人をつのった新兵だってことでしょう。
 女王陛下もなんでこんな役立たずの部隊を戦に出すんだか。
 いままでどおり自分ら傭兵をあつめた軍でよかったでしょ、今までこの軍にかけてきた金で、同数の戦慣れした傭兵を雇えましたよ」

「そんなこと言ったってもう作っちゃった軍だし。肝心の戦で一兵でも欲しいときに出し惜しみしてたら批判が飛ぶだろう」

「そりゃ違いありませんやね。まあ、お偉いさんがたの決定にはいつでも政治的な理由ってのがあるってえことですな」

 平民の志願者で構成されたこの新設軍に対するニコラの評価は、きわめて低い。
 しかしニコラのこきおろす「新兵ばかりのヘボ連隊」をあずけられたギーシュとしては、初陣のアルビオンで戦場の作法を手ほどきしてくれたこの元・軍曹が頼りなのだった。

「ところで話は変わりますが」

「ん?」

「どっちの『隊長』でお呼びしましょうかね。近衛隊長と連隊長と。
 前の戦争んときはぼっちゃんのことは中隊長どのって呼ばせてもらいましたが、今じゃ出世されてますし。
 そういえば、自分を大隊長に引き立ててもらったことの礼がまだでした。すみません、愚痴る前にそっちを言っとくべきでしたぜ」

 いやあ大隊長なんて普通なら貴族のかたがたの役回りなんで、ほんとありがてえことです―と野趣あふれる笑みを浮かべたニコラの横で、ギーシュは空をあおいでうなった。

「きみの大隊長はいいんだが、ぼくが連隊長というのはねえ……。正式な連隊長ってわけでもないし、そう呼ばれるのは少々おもはゆいな。
 そりゃあいずれ新設軍を任されるかもなんて話はされていたがね、これは無茶すぎるというものだろう」

 実をいうと彼にも、自分自身のいまの階級についてはよくわからないのだった。
 グラモン元帥から希望されたということで、アンリエッタから「新設軍をたのみます」と委ねられはしたが、明確に連隊長に任命されたわけではない。

 が、立場だけ見れば完全に連隊長のそれなのである。
 自分の下に大隊長、軍の泊まるところを手配する設営隊長、補給担当の輜重隊長および実戦部隊の要である中隊長が並び、これら新設軍の人事権は自分がある程度にぎっている。
 いくら指揮権は無いに等しく、いったん戦場に出れば総司令官である父・グラモン元帥の命令にしたがうのみとはいえ、自分には責任が重すぎるような気がしないでもない。

「心配しなくとも、どうにかなりまさ。お父上の命令どおりに動いていればいいんでしょう?」



507:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:36:34 7EHlY/l6

「うん……そうだな、なるようになるか。それに出世は出世だし。
 うん、考えてみれば一軍を率いる若い将というのはじつに華があるな」

 とはいえ結局ポジティブ思考に向かうのは、ギーシュの長所といえば長所だった。

「そうそう、ぼくの呼び方だったな。
 とりあえず、連隊長でも近衛隊長とでも好きなほうで呼べばいいけど、できればこのまま気楽に『隊長どの』で呼んでもらおうか。
 ……父上の前に出たとき、『近衛隊長どの』と呼ばれるのはちょっと考えものだ」

 近衛隊長である彼の立場の重さは、本来なら元帥の地位にさえ匹敵するものなのである。
 そうなると父親とは同格にちかくなってしまうのだが、そこは家長をおもんじる貴族の家である。家内での序列が対等になるわけもないのだった。
 そこへきて新設軍を預けられたのは父親の口利きによるものとなれば、見栄っ張りなギーシュもさすがにはばからざるをえない。

 と、「なるほど。グラモン元帥はそういう心積もりですかい」とニコラが手を打った。

「なにがだ」

「この軍でさ。王軍というよりグラモン軍ですからな。隊長どのをとりたてたのも親父さんでしょう。
 ただの身内びいきじゃありませんやね。右翼左翼をひきいる将を身内でかためちゃえばどんな遠慮ない命令だろうとくだせます。
 ふつうの軍はときどき総司令官と幕僚、または幕僚同士で意見が食いちがって争いになり、それが軍の方針に悪い影響を与えたりしますけど、それも防げるってえことに」

 グラモン軍。その名称は的を得ていた。
 ギーシュの一番上の兄は、グラモン領の兵およびその他の諸侯軍をまとめた二千余名の兵を率いて右翼に。本隊に並行して少し離れた道を進軍している。
 三番目の兄は、もともと王軍士官であり、父のいる本隊のうちの一連隊に所属している。
 二番目の兄のみが、空海軍所属のためこの場にはいない。

 王軍+諸侯軍。六個連隊の規模を持つこの鎮圧軍は、街道をぞろぞろと行軍して、魔法が禁じられた区域に今しも踏みこむところなのだった。

「もちろんそれもあるだろうけど。実のところ、王軍のどの将も今回の出兵の指揮をとることを嫌がったんだそうだ、これが」

 ギーシュは肩をすくめた。
 平民の反乱はハルケギニアにおいてきわめて珍しい。支配層である貴族との間に、本来は大きな軍事力の差があるためだった。
 したがってごくまれに起こる平民の反乱を片付けることなどは、軍をひきいる貴族にとっては伝統的に気のすすまない汚れ仕事あつかいだった。
 簡単すぎるうえに弱いものいじめとあって、名誉とはみなされなかったのである。

 だから王軍の将たちは、鎮圧軍をひきいることに難色をしめした。
 「今回は魔法が使えないから簡単とはいかない。じゅうぶんに名誉ある出征である」と伝えてそれとなく打診しても、言を左右にしてどうにか避けたがる。
 手柄をあげたところで、あとあと競争相手である同僚からは「平民を殺してのしあがろうとした奴」と揶揄され続けるであろうし、まして失敗などすれば……と思えば、乗り気になるはずもない。
 女王が命じれば否応もなかっただろうが、アンリエッタが業をにやす前にグラモン元帥が宮廷に現れたのである。

「……だからといって、引退したはずの父上が出てきて奏上しちゃうとは思わなかったがね。
 『自分なら、王軍の将のだれにとっても競争相手とはみなされまいから』とのことだそうだ」

「そりゃ元気なこってすねえ」

「アルビオン遠征に参加したかったって残念がった人だぞ【6巻】。
 若手がぐずるのを見かねてしびれを切らしたというより、ありゃ自分がやりたかっただけじゃないのか」



508:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:37:18 7EHlY/l6

「いいじゃないですか。とにかく戦なれしたお人が指揮をとるだけでも下のほうは安心できまさ。
 こういっちゃなんですが、引き受ける人がいなくて隊長どのみたいなぺーぺーが指揮を任されるなんてことが起きてたら、王軍の一割は戦場に着くまえに脱走してますぜ」

「……一割ぐらいならいいじゃないか。たった一割だと思えないこともないだろ」

「さらに三割ほどは金を受けとり次第とんずらしようという算段ですな。
 自分もどんな苦境でも、最初の給料日まではと辛抱したもんです」

「きみの給料、反乱が終わってから一括払いでいいかね」

「いやいや冗談です逃げやしませんでしたから」

 戦にかかわる諸々のことについて話しあいつつ、あまり緊張感のないやり取りを交えながら、二人は馬をすすませていく。

 街道の周囲の畑には大麦や豆などの春蒔きの作物が育ち、太陽が兵士たちに軽い光の毛布をふわりと投げかけてきている。猫が農家の屋根で昼寝していた。
 ほんの数日先には戦があるとは思えないほどの、のどかな光景だった。
 だが、かれらが進んでいく先にはまぎれもなく、最初の河川都市であるガンの城壁がそびえたっている。

 この行列はやがて、敵の野戦部隊との遭遇をかんがえた横隊行進に変わるだろう。
 マスケット銃兵と火縄銃兵の混成部隊、騎獣に幻獣をふくむ騎兵、林のように槍先をたててならんだ短槍兵、砲と砲兵、工兵、補給を担当する何千台もの荷馬車隊……
 総勢、一万一千名。トリステイン王政府はごく短期間で、どうにか反乱勢に倍する戦力をととのえたのである。
 メイジが役に立たない戦であろうとも、この規模ならば市民軍を始末できるはずだった。

 激突は確実にせまりつつある。

\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\

(帰ろうかしら)

 岩の館の大広間。右に左にゆらめく人影。紅緞子の垂れ幕と、色とりどりのクリスタルの器。
 トリスタニアのとある一角にある大貴族の邸宅。奢りのつきない夜宴のただなか。

 会釈と談笑のあいまあいまに、アンリエッタはひっそりとため息をついている。
 ピンクの華やかなドレスに身をつつんで出席し、ほかの客と挨拶を交わしながらあたりさわりのない笑みを浮かべているが、本音を言うと今すぐ帰って眠りたかった。

 一週間のうち、虚無の曜日とその次のユルの曜日は、国務顧問会議。
 エオーの曜日とオセルもしくはダエグの曜日が、財務顧問官会議。
 マンの曜日が、新顧問官会議。
 のこりの日には枢密顧問会議、また招聘した技術者や学者の献策を聞いたり、拝謁を求める客に会ったり、政庁の各部門や高等法院への視察を行う。
 緊急国事会議―今回は〈騒乱評議会〉と名づけられているが―は、ほんとうに緊急のときでもないかぎり開かれはしない。そして反乱のおきた今は緊急時であり、ひんぱんに会議は行われていた。



509:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:37:51 7EHlY/l6

 それらの会議に出席する以前に、請願書や国王の押印が必要な書類などは、毎日のように机に山積みになる。講演や行事への出席要請までひんぱんにくる。

(嫌になってしまう。一昨日のぶんの書類はようやく夕方に片付いたけれど、昨日持ち込まれたぶんと今日のぶんは完全な手付かずだもの。
 いま帰って寝ずにやっても今夜じゅうには終わらないし……朝にはまた新しい書類が積まれるのね) 

 それさえもマザリーニやデムリはじめ大臣、官僚によりわけてもらった最低限の重要な部類なのである。
 反乱被害をうけた各地からの訴えをさばき、政府購入を調整することなどで通常の国務が量を増したことにくわえ、さらに騒乱評議会に通いづめである。
 いまのアンリエッタに休日などは無縁だった。
 アルビオン遠征が終わった直後のような、いや、それを上回るほどの激務なのである。

 それもこれも反乱が起きたことに対して、アンリエッタが責任を感じていたためだった。

 ほんとうだったら、国務会議の大半は廷臣たちに丸投げしてもかまわないのである。顔見せくらいでも問題はないのだ。
 出席したところで、どうせまだ若く経験があさい女王である。王政府の各部門の仕事について同年代の平均よりはむろん知識があるが、官僚や大臣などの専門家以上に役に立つアドバイスができるわけでもない。
 平和なときにアンリエッタが国務会議に出席していたのは、新女王の勉強の意味合いが強かったのである。
 現に、これまでアンリエッタが王都を一時はなれたときでも国は運営できている。

 それでも今回は休む気になれない。結果としてアンリエッタは無理をしがちになってしまったのだった。

 しかし、けんめいに仕事をこなそうとする彼女でも、こうしたイベントへの出席などはスケジュールから丸ごと削りたい、とたまに思うのだった。

(やっぱり退出させてもらいましょう)

 アンリエッタはぐったりしつつ内心でそう決意した。
 卓の上に並んだ山海の珍味も、洗練された機知あふれる会話も、嬌羞をふくんだ男女の優雅な笑い声も……典型的な貴族の宴にあるものすべてに少女は飽いている。

 たまった心身の疲労のため食欲はわかないし、いつ緊急の報告が入るかわからない以上、酒で思考を濁らせているわけにもいかない。
 ダンスは嫌いではないが、(悠長に踊っている時ではないのに)と感じてしまう。
 招待された手前、社交辞令として顔見せていどに舞踏会に出席はしたものの、はやばやと切りあげる決心を彼女が固めたのは無理なかった。

 が、退出を伝えるべく侍従を呼ぼうと歩きだしたアンリエッタは、一組のカップルとはちあわせした。

「あ、姫さま……」

 つぶやいた才人は、珍しく魔法学院の制服などを着ている。どうやらせめてもの正装として誰かに借りたらしい。
 そのかたわらに立つルイズは、髪をバレッタにまとめていた。そのドレスはひかえめなレモン色の地に金糸銀糸の花模様が刺繍され、華雅にして愛らしい。

 ルイズの顔を見て、アンリエッタはとある理由で気まずさを覚えた。
 それはお互いさまのようで、ラ・ヴァリエール公爵家の三女もまたうつむき加減になり、目を合わせてこない。
 「おい、ルイズ」と連れに発言をうながす才人に視線を戻したとき、アンリエッタの心情は別方向にはっきりと揺れた。
 どちらの動揺もおもてに出さないようつとめながら、アンリエッタはなるべくにこやかに話しかけた。

「……あなたたちも出席していたのですね。ルイズ、よく似合っていますわ」



510:名無しさん@ピンキー
08/11/19 00:38:10 MI4ZBEsf
支援

511:白い姫とワルツを〈二・激突直前〉
08/11/19 00:39:02 7EHlY/l6

「ええ、ありがとうございます、このパーティの主催者が父の知り合いなもので招待状をいただき……」

 “父”。
 その単語が出たとき、ますます少女たちの間の雰囲気はぎこちなくなった。
 狼狽ぎみで顔にありありと困惑を浮かべている才人も、なにを口に出せばいいのかわからないようで押しだまっている。

…………………………
………………
……

 帰るタイミングを逃した。
 いつのまにかダンスの時間がはじまってしまっている。

 女王は、ダンスを申しこんでくる希望者のひとりとやむなく手をとりあって、優美な身ごなしで踊りながらちらりと広間の離れたところに目をやった。
 ルイズと才人は、何か言い合いながら踊っている。

 はた目に見ても才人はあらたまった場でのダンスに慣れていないらしく不器用で、ルイズはそれに細かく文句をつけているようだった。
 手をつないでリードしてやり、才人の弁解を聞き流し、ときに小声で罵りあい、それでも間近にぴったりと添いながら。

 怒った顔でいてさえ、幸せそうなルイズの姿。
 それを空虚に見やるアンリエッタの胸で、からからと想いの糸車がまわった。

 踊りを完璧にこなせるパートナーと組むよりも、楽しくダンスできる相手のほうがいい。
 なめらかなステップができなくてもいい。足を踏まれてもかまわない。
 風雅な会話でなくていい。飾らず、偽りのない態度を取れる相手のほうがいい。
 立場を気にせず寄りそっていられれば―……

 アンリエッタは首をふった。ダンスの相手がけげんな顔をする。

(やめましょう……むなしいのはもう嫌だわ。ルイズをうらやんでもしかたない)

 いつのまにか未練がましく才人を見つめてしまっていたのだった。
 ルイズの使い魔であるあの黒髪の少年に、何度も迷惑をかけてきた。公のことだけでなく個人的にも、疲れているときにすがりつき、優しさに甘えてきた。
 そのため今も、してはならない期待をしてしまっていたのだろう。

 だがこのままひそかに見ていても、才人はたぶん気づいてもくれないだろう。
 いまあの二人の目に入っているのはお互いだけなのだろうから。

(この一曲が終わったら、今度こそ帰りましょう)

 きっと、山積みの仕事と時が忘れさせてくれる。
 ちろちろ燃える想いの火も、いずれは消えて灰と化し、記憶の隅にしまわれて冷えていくだろう。
 それを暗く望みながら、荘重な音楽に合わせてアンリエッタはゆるかに輪舞していった。



512:ボルボX
08/11/19 00:41:26 7EHlY/l6
この最終章・二話自体もぶつ切れなので、続きをまた後日に投下します。
ゼロ魔社会の技術水準は17世紀あたりとのことなので、このSSはそのころのフランスとオランダをかなり参考にしました。
それほど話の動きがなく、恋愛要素も暗めな回ですみません。

513:名無しさん@ピンキー
08/11/19 00:53:44 QC0R1c0e
>>512
ボルボ氏、新作GJ!です 相変わらず凄いクオリティと量だ

514:名無しさん@ピンキー
08/11/19 01:02:23 mHmbmXI1
>>512
ボルボ氏待ってました!嬉しい。
それにしても相変わらずの濃さですな。

515:名無しさん@ピンキー
08/11/19 03:15:32 Y8mw8uaf
マジでルイズ分が足りない

516:名無しさん@ピンキー
08/11/19 03:32:54 Z7CkfyG4
ルイズは原作を読めば充分なほどにスイーツを補給できるからなw

517:名無しさん@ピンキー
08/11/19 04:19:06 eySWMdqd
つまんねーなー

518:名無しさん@ピンキー
08/11/19 16:15:00 lZnamXYZ
ボルボ氏乙
正直本家よりもレベルが高いと思ってるw

519:名無しさん@ピンキー
08/11/19 21:35:43 X02GevTI
ボルボ氏 乙!
もう来ないかと思いましたよ。
つい催促してしまってスイマセン

続きもおまちしてます。

520:名無しさん@ピンキー
08/11/20 00:02:09 3rnlaT/q
ボルボ氏 乙乙!
お話の面白さももちろんですが、いつも読み応えのある文章量ですわー。

521:名無しさん@ピンキー
08/11/20 03:48:05 YpBB5rRc
本家よりも~
一人言うなら誉め言葉、二人続けばプロ舐めんなボケェ

522:名無しさん@ピンキー
08/11/20 07:18:33 8Gele9E4
「原作より面白い」とか言う人って、褒めてるつもりなのかねえ。

523:名無しさん@ピンキー
08/11/20 07:19:40 8Gele9E4
しもた、ageてもうた。スマヌ。

524:名無しさん@ピンキー
08/11/20 08:00:46 kuqa9uat
ノボル神はうまいよな
あえて崩しまくってるけど

割り切りっぷりがよくも悪くもプロだと思う

ボルボ氏も野生のプロなのは認める
本業作家だと聞いても不思議じゃない

525:名無しさん@ピンキー
08/11/20 10:02:11 hgH4JcDl
野生のプロってなんだw
何か別のを想像するぞw

526:名無しさん@ピンキー
08/11/20 10:09:09 ChUhQTaT
「アン様とったど~!」

と高らかに持ち上げるボルボ氏を思い浮かんだ

527:名無しさん@ピンキー
08/11/20 12:42:20 kuqa9uat
やせいの プロが あらわれた!

アンリエッタ の ゆうわく!
こうかは ばつぐんだ!

528:名無しさん@ピンキー
08/11/20 20:03:19 X3EOzrb3
ポルポ氏のは面白いんだけどこのとてつもない文章量とペースだと
完結まであと一年はかかりそうで恐ろしいぜ。
アン様孕みネタとか一発物だと思ったら何時の間にか非エロ長編まで
全部繋がりそうになってるのは凄いが。

529:X42
08/11/20 20:05:02 YvIw1ZUS
これから投下します。
なおこのSSは、せんたいさんのオリジルルキャラ「タニア」が主役です。
但し、私がキャラ改変していますので、オリジナル以外は、認めんと言う方は、
スルーして下さい。
せんたいさんへ、
タニアの使用許可有難う御座います。
女王様プレイ希望との事なので、事後承諾になり申し訳有りませんが、
ある4人組をお借りいたしました。(どSは、無理です)
彼ら以外適当なキャラがいないもので。
なるべくギャップが無いようにしたつもりですが、私はせんたいさんでは
ありませんので、ご容赦願います。

530:X42
08/11/20 20:06:07 YvIw1ZUS
魔法学院厨房裏口 夕方

 今ここに金髪のツインテールの少女が立っている。
 言わずと知れたベアトリクスである。
 彼女は、平民の友人の仕事が終わるのを待っているのである。

「遅いですわね。タニアさん、一体何をしてらっしゃるのかしら」
 無論後片付けをしているのである。
 イライラしながら待っていると、仕事を終えて待ち人が来たようである。

「ガチャ」と音がして、扉が開く。
「ヤッホー、ベアちゃん。こんなとこで何してんの?」
 タニアは、扉の前に突っ立ていた友人に声を掛けた。

「貴女に用があるのですよ、タニアさん。明日の虚無の曜日お暇?」
「唐突だなーベアちゃん。まあ暇だけど何?」
「それならば、近くの野原にピクニックに行きませんこと。とても綺麗な花が咲き誇って
 いましてよ」
 どうやらベアトリクスは、タニアをピクニックに誘いたいがため、一時間以上も裏口で
 待ち続けていたのである。

「えー、ベアちゃんと二人きりで?テファお姉ちゃんは?」
「テファお姉様は、ヘッポコ騎士とデートするそうですわ。何でもミス・ヴァリエールが
 ご実家に単独で呼ばれたとかで、それを利用してデートするそうですわ」
 ベアトリクスは、ティファニアにも誘いに行ったが、才人とのデートを嬉しそうに話す
 ティファニアを見て、誘わなかったのである。

「そっかー。それじゃ仕方ないね。で、何時出発?」
「9時、正門前で如何かしら?」
「オッケー、じゃあ明日ね」
 そう言ってタニアは、メイド長屋に帰って行った。
 ベアトリクスは、「うしっ」と両拳を握り締め、喜び勇んで自室に帰って行く。
 その2人の様子を物陰から4人の男が、覗き見ていた。

 当日は、抜けるような青空だった。時折そよ風が吹き正に絶好のピクニック
 日和と言えた。


531:X42
08/11/20 20:06:44 YvIw1ZUS
ベアトリクスは、今朝6時に目を覚まし、速攻で食事を済ませ、おめかしに2時間以上
 費やした。物凄い熱の入れようであった。
 その服装は、とてもピクニックとは思えなかった。王宮晩餐会か舞踏会に着る豪奢な
 シルクのドレスに身を包んでいた。
 普通の神経の持ち主なら100%ひく服装であった。が、

「オッハヨー、ベアちゃん。随分派手な服だね」
「何を仰いますの。こんなの普段着ですわ」
「そっかー。ま、ベアちゃんらしいね。じゃあ、出発―」
 正に大物、図抜けた神経の持ち主であった。
 一方タニアの方は、メイド服に似た正に普段着。
 右手には、お昼の入った籠を持っていた。

 二人は小一時間ほど歩き、目的地の野原までやって来た。
 その野原は、ベアトリクスの言う通り、赤や黄色、白、橙など色とりどりの花が
咲き誇り、幻想的な巨大絨毯の様であった。

「うわっー、すっごーい。とっても綺麗。ベアちゃん良くこんなとこ知ってたね」
無論これは、ベアトリクスが、事前に空中装甲騎士団に命じてピクニックに最適な場を
 探させていたからである。
「まっ、まあこれ位知ってて当然ですわ。気に入って頂けたかしら」
「もちろん!ベアちゃんなかなかいい趣味してるねー」
「気に入って貰えて何よりですわ」
(此処を教えてくれた団員の給金上げないといけませんわね―)

 二人は、野原を歩き回り、楽しいひと時を過ごして行った。
 暫く散策していると、奇妙な女性の声が聞こえて来たので、二人は声のする方に
 歩いて行った。
 100メイル程の距離に近付くと、タニアはベアトリクスを止めた。

「どうしたのです?」
「しっ」
 タニアは、気付いた。こんな遠目からでもはっきり分かる人物。
 そう元保護者のティファニアである。
 その元保護者が巨大な胸を揺らし、木陰で才人と励んでいたのである。
 つまり聞こえていた声は、ティファニアの喘ぎ声だったのである。


532:X42
08/11/20 20:07:23 YvIw1ZUS
タニアは囁き声で、
「ベアちゃん、テファお姉ちゃん達の邪魔しちゃ悪いからあっちにいこ」
「こんなに離れてて分かるのですか?随分お目が宜しいのね」
「テファお姉ちゃん分かりやすいからね」
「まあ、確かに。では野暮にならぬよう離れましょう」

二人はその場を離れ、近くの林の方に歩いて行った。
少し歩くと手頃な切り株があったので、2人は昼食をとる事にした。
「美味しいですわ。これタニアさんがお作りになったの?」
「そっだよー」
「家のシェフ顔まけですわね。何方に教わったんですの?」
 ベアトリクスは、興味津々だった。実のところ、誰に教わったかなど如何でも良かった。
 タニア達の昔話が聞きたかったのである。
「マチルダお姉ちゃんだよ」
「マチルダお姉ちゃん?」
「そ、私達の命の恩人なの。孤児になった私達の為にウエストウッド村を作ってくれて、
 料理や裁縫、狩りの仕方に森の食べ物の見分け方、生きる上で必要な事全般をね」
 タニアは、誇らしげに語った。

「随分凄い方ですのね。それでその方は今どちらに?」
「わかんない。私達の為に何処かに出稼ぎに出て、たまに遊びに来ても何も教えて
くれなかったし、こっちに来てからは音信不通だしね」
タニアにはしては珍しく、寂しげであった。
(いけませんわね。話題を変えなくては)
 ベアトリクスは、話題を変えようとした。

すると突然、3匹のオーク鬼が現れた。
身長2メイル程のマリコルヌ、じゃなくて2本足で立った豚の化け物という形容が
ぴったりの魔獣である。
オーク鬼の大好物は、人間の子供なのである。
オーク鬼達は、目の前の特上のごちそうに涎を垂れ流していた。
すかさずベアトリクスは、タニアの前に立った。
(私だけなら、フライで逃げられる。でもタニアさんを抱えては無理。何としてでも
 倒さなければ…迂闊でしたわ、空中装甲騎士団に遠巻きに護衛する様命じておけば)
 ベアトリクスは、護衛を拒否していた。無論邪魔だったからだが、今回は裏目に出た。


533:X42
08/11/20 20:08:03 YvIw1ZUS
「逃げなよ、ベアちゃん。一人だけなら逃げ切れるでしょ」
「何を仰るの!友を見捨てるのは貴族の恥。安心なさって、オーク鬼の3匹や4匹私が、
 倒して差し上げますわ」
 無論強がりである。ベアトリクスは、ドットメイジに過ぎない。1匹だって倒せるか
 怪しかった。それに今までは公女という立場上、実戦経験など皆無であった。
 生まれて初めての実戦、しかも1対3、いやオーク鬼1匹手錬の戦士5人に匹敵と
言われているから実質1対15といったところか。
死の恐怖がベアトリクスを襲う。しかし彼女は、勇気を振り絞った。

「エア・ハンマー」ベアトリクスは、一番近いオーク鬼を地面に叩き伏せた。
しかし残る2匹は、怯まず2人に襲いかかった。
殺される!そう思った瞬間、1匹のオーク鬼が燃え上がった。
(何故燃えていますの?)
すると後方から大きな火球が、もう一匹のオーク鬼に命中し燃え上がらせた。
(火のラインスペル、フレイム・ボールじゃありませんこと。それをほぼ連発出来る
なんてトライアングル以上でなければ出来ませんわ。ま、まさか)

 後ろを振り向くとタニアが杖を隠していた。
「や、やあベアちゃん。大丈夫?」
「タニアさん、誤魔化さないで下さい。今、杖をお隠しになったわね。貴女メイジ
 なのですね。どうして隠すのです?隠す必要など無いではないですか!」
友達だと思っていたのに隠し事をされる。ベアトリクスは、とても悲しかった。

「黙ってて悪かったけどさ、理由が有るんだよ、ベアちゃん」
「お聞かせ願いますわ、タニアさん」
「それはね…ベアちゃん、後ろ!」
「えっ」
ベアトリクスが振り向くと先程のオーク鬼が1匹立ち上がった。
ベアトリクスの魔法では倒しきれなかったのである。
オーク鬼が棍棒を振り上げる。2人共呪文の詠唱は、間に合わない。
(殺される)と思った瞬間、オーク鬼は、斬り倒された。

「最後まで油断すんじゃねぇ。てっ、タニアにベアトリクスじゃねぇか」


534:X42
08/11/20 20:08:41 YvIw1ZUS
 才人であった。
デルフリンガーが危険を知らせてくれた為、行為を中止して、駆けつけて来たのである。
「まあ、二人共無事で何よりだけどさ。ちゃんと止め刺さねぇと今頃天国行きだったぞ」
「有難う、お兄ちゃん。助かったよ」
「な、なかなかやりますのね。ご救命有難うございます」
 二人は、才人に礼を言った。

「タニア、ヴィヴィ。大丈夫?」
 ティファニアが息を切らせてやって来た。
「大丈夫だよ、テファお姉ちゃん。其れよりも走らない方がいいよ。ショーツずぶ濡れに
 なっちゃうでしょ」
「な、何言ってるのタニア!ま、まさか覗いていたの?!」
 ティファニアは、赤面してどもった。

「安心して、二人が励んでる所を見たらすぐ移動したから。ね、ベアちゃん」
「確かに、ですが私には、分かりませんでしたけどね」

 ティファニアは、一つため息をつき、
「人に見られるとは思わなかったわ。それよりタニア、貴女メイジだったのね」
(まずい。テファお姉ちゃんにも見られちゃたんだ)

 ティファニアは、泣き出した。
「ごめんね、タニア。私のせいで孤児にさせちゃって、ホントにごめんね」
(あちゃー、やっぱりこうなったか。世話の焼ける元保護者だなー)

「違うでしょ、王様のせいでしょ。テファお姉ちゃん。王様がテファお姉ちゃん達を暗殺
 しようとしたからでしょ。私の両親は、暗殺に来た軍隊と戦って」

 其れを聞いたベアトリクスは驚いた。
「お待ちになって。詳しく教えて下さい。どうしてテファお姉様が殺されなければ
 なりませんの?」
 タニアは、ティファニアの目を見た。
 ティファニアは、頷き


535:X42
08/11/20 20:09:33 YvIw1ZUS
「ヴィヴィ、これから話す事、誰にも話さないでくれる?」
「勿論ですわ。テファお姉様の秘密は、口が裂けても話しませんわ」

「有難う、ヴィヴィ。私はね、アルビオンの前国王の弟の娘なの。尤も母は、エルフで妾
 なんだけどね。そしてそれが王様に知られて、両親は殺され私は、逃げ延びたの。
 その時、父の部下が大勢死んでしまったわ。その中にタニアの両親もいる。そうよね?」
「そうだよ。で助けてくれたのが、マチルダお姉ちゃんって訳」

「それでは、テファお姉様は、アルビオン王族の唯一の生き残りではないですか!
となるとご卒業後は、女王に即位なされるのですね」

 ティファニアは、首を横に振った。
「ううん。そんなつもりはないわ。私は、ハーフエルフよ。私を受け入れてくれる人は、
 極少数だわ」

 ベアトリクスは、己が過去に犯した事を思い出した。
「では、どうされるおつもりです?」
「私は、王位なんかどうでもいいわ。ただ皆とサイトと一緒にいられればそれでいい」
「そうですか、ではこの事はもう申しませんわ」
「有難う。ヴィヴィ」
 ティファニアは、かるく微笑んだ。しかし、タニアの方を向き又泣き出した。

「タニア、今まで気付かずにごめんね。私自分の事しか頭に無かったわ。貴女が如何して
孤児になったのか。そして9才にも関わらず読み書きができた事、ちゃんと考えれば、
もっと早く分かっても可笑しくなかったね。そうすればもっと早く貴女に謝れたのに
そうだ、貴女のご両親のお墓にお詫びに行かなくては、それに償いもしなければ」

其れを聞いたタニアは、目に強い光を宿らせ、ティファニアの目を見つめてこう言った。
「その必要はないよ、テファお姉ちゃん。お姉ちゃんが詫びたからって両親が生き返る訳
 でもないし、謝れたら天国の両親悲しむよ。何のために父さん、母さん命を懸けたと
 思っているの?お姉ちゃんに泣いて欲しかったから?お詫びして欲しかったから?
 違うでしょ。お姉ちゃんにずっと笑って欲しかったから、幸せになって欲しかったから
 だよ。お姉ちゃんに出来る償いは、幸せになる事、ただそれだけだよ!」


536:X42
08/11/20 20:10:19 YvIw1ZUS
「でも父の命令で」
「違うよ!テファお姉ちゃん。モード大公様は、全員に逃げろって言ったそうよ。私達の
 為に死ぬ事は無い。そうマチルダお姉ちゃんから聞いたよ。でも誰も逃げなかった。
 それで、大公様は、マチルダお姉ちゃんに私達の救出を命じたそうよ。多分マチルダ
お姉ちゃんに死んで欲しくなかったんだろうね。その後大公様は、捕らえられて
マチルダお姉ちゃん家に軍隊が押し寄せて来て…」

「そうだったの。父は、皆に慕われていたのね。でもそれが仇となってしまった」
 ティファニアは、ややうつむき加減になった。
「だからさ!お姉ちゃんが気に病む事は無いよ。皆自分の意志で戦ったんだから。もし
 どうしてもお詫びしに行きたいっていうならさ、さっさとお兄ちゃんと子供作って幸せ
 な所を見せに行ってあげてよ。そうすれば死んでいった人たち皆喜ぶと思うよ」

 ティファニアは、真っ赤な顔になって、
「なっ、なにを言うのタニア。わ、私まだ学生よ!こ、子供なんてまだ早過ぎるわ」
「避妊薬飲まなければ、何時妊娠しても可笑しくない癖に」
タニアは、ウリウリとティファニアを小突いた。

「タニアさん」
 ベアトリクスにしては、珍しく真摯な顔をしていた。
「どったの?ベアちゃん」
「私、魔法学院に来るまで、感動した事が御座いませんでした。しかし僅か数カ月の内に、
 2度も感動してしまいましたわ。1度目は、テファお姉様。2度目は、タニアさん、
貴女ですわ。ああ何と言う事でしょ。お二人の心、私の心を震わせてやみませんわ。
貴女は、私の親友と呼ぶに相応しい方ですわ」
 表情がどんどんヤバゲな方向に向かっているように見えた。

「そ、そう」
 ベアトリクスは、両手でタニアの肩をガシッと掴んだ。
「タニアさん、魔法学院に編入しましょう。そうすれば、私達3人楽しい学院生活が
送れますわ!お金の心配なら必要有りません。私の命の恩人なのですから、生活に
掛るお金は、全て我がクルデンホルフ家がお支払い致しますわ。それでは早速手続きに
参りましょう」
素晴らしく強引なベアトリクスであった。


537:X42
08/11/20 20:11:00 YvIw1ZUS
「ベアちゃん、もうすぐ夏季休暇だよ。今更編入したってねぇ」
「勉強ならば、私が教えて差し上げますわ。こう見えましても、政治の授業では、クラス
 で5本の指に入りますわ」

「我々もお手伝いします」
草むらの中から4人の男子が現れた。
「あー、貴方達は」
「タニア様とクルデンホルフ姫殿下に蹴って貰いたい団です」
 そう彼等は、夕べベアトリクスが、タニアをピクニックに誘ったのを覗き見していた
 4人組なのだ。
「私ならば、経済学を」
「私なら、数学を」
「私なら、歴史を」
「私なら、音楽、ダンスを」

 タニアは、困惑した。
「いや、誰も編入するなんて、言ってないよ。私メイド好きだし」
 其れを聞いたベアトリクスが、激昂した。
「何を仰いますの!タニアさん。あれ程の魔法の才を持ち、あまつさえ私を感動させる程
 の心の持ち主がメイドなんて宝の持ち腐れどころでは有りません。貴方達も協力なさい」

「タニア様、クルデンホルフ姫殿下、我らの女王様達」
「へっ?」
「どうか我々を貴女様達の下僕に」
「いっ?」
「そして我々を」
「踏みつけてくださーーーい」
4人は、転がりながら2人に近付いていく。

「いやーーーーーーー、キモイ、キモすぎるーーーー」
 ゲシッ、ゲシッ…と秒間2発程度で蹴りこんでいった。
 ルイズ程蹴り慣れていない為、威力が余り無かった。先陣を切った2人は、回転
しながら、全身に蹴りを浴びて喜悦の声を上げる。

「こ、これだーーーこの痛み、此れを味わいたかったんだーーーー」
 なかなか沈まない2人に業を煮やしたタニア達は、急所攻撃を行い撃沈した。


538:X42
08/11/20 20:11:39 YvIw1ZUS
「次は、僕達をーーー」
今度はドロップキックを股間に見事に命中させ一撃で仕留めた。

「何なんですの?この変態集団は、一体何を考えているのかしら?」
「いくら振られたからってねぇー。此れは無いよね」
 再びベアトリクスは、タニアの肩を掴んだ。

「あんな連中なんか如何でもいいですわ。タニアさん、学院長室へ参りましょう」
「あれっ、ベアちゃん、忘れなかったの?」
「当たり前です。あの程度の事で忘れる筈無いじゃ有りませんか!」
(やれやれ、困ったなあ)

「あっ、テファお姉ちゃん達、キスしてる」
「えっ?」
 タニアは、一瞬の隙を付き逃げ出した。

「こら、お待ちなさい。くうーこんな古臭い手に引っ掛かるなんて。絶対逃しませんわよ
 タニアさん!」
 2人は、学院の方へ走って行った。

「なあ、テファ。もしタニアが同級生になったらどうする?」
「きっと楽しくなると思うわ」
「じゃあ賛成なんだ」
「決めるのは、タニア自身だけどね。ヴィヴィからは、絶対逃げられないと思うわ
 あの娘は、こうと決めた事は押し通すから」
「言えてるな」
 そよ風の吹く中才人とティファニアは、2人を見送っていた。


539:X42
08/11/20 20:12:39 YvIw1ZUS
以上です
なおこのSSは、単発物です。続編は有りません。
このSSの主人公タニアは、せんたいさんのオリジナルキャラです。
せんたいさんの許可を頂き、投稿することが出来ました。
改めて御礼申し上げます。
私が裏設定を幾つか付け足して改変してしまいましたが、
せんたいさんのオリジナルキャラに変わる事は御座いません。
くどいようですが、続編は有りません。好きにして構わないとの
許可を頂きましたが、連載しても構わないという許可は頂いておりませんので。

せんたいさんに御礼(というかお願い)が有ります。
X00-42-21で6P描写をしたのですが、実はあの描写の上位バージョン(?)が
有るのです。
その状態から、シルフィードの魔法で浮き上がり、全員で全員の体を貪り合うという
無茶苦茶な妄想なのです。
余りにも描写が難し過ぎるので、断念したのです。
これを満足できる描写が出来るのは、ストライクフリーダムのように全方位マルチロック
オンが出来るせんたいさんか、圧倒的表現力と文章力を持つボルボX氏位でしょう。
ですので、この妄想を何時でも構いませんから、SSにして欲しいのです。
其れではこれにて失礼いたします。


540:名無しさん@ピンキー
08/11/20 20:39:59 guJElPVy
乙!

541:名無しさん@ピンキー
08/11/20 22:08:37 Rj7dBJu/
やぁ~
ベアちゃんの名前は
「ベアトリス・イヴォンヌ・フォン・クルデンホルフ」らしい、ぞ。
(ジャ~)

542:名無しさん@ピンキー
08/11/20 23:17:26 Q7L2k6IL
何というかタニアはもう公式キャラな気がしてならない。

543:名無しさん@ピンキー
08/11/21 00:19:38 kn/PWXQs
つかタニアは原作キャラだと思っていたのでオリキャラだと聞いて驚愕。

544:名無しさん@ピンキー
08/11/21 00:26:47 uuyJ/KAT
>>539 乙です~

タニアは不遇なオチキャラだったので w ちょっといい話でホッとしましたよ
「どこでオチつけるのかな?」とずっと待ってたのはないしょ www

545:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
08/11/21 01:03:58 +IX0p96s
>>539
X42氏おつっした
うん、これ読んでて蹴ってもらいたい団でSS書きたくなったのはナイショだ
『キミは知っているか!実は王宮内に『アニエスに侮蔑されたい教会』が存在することを!』
とか考えちゃったんだぜ

…トリステイン大丈夫か。

まあそれはともかくお兄さんも投下行きます。
三日目エロパート、シエスタ編でごじゃーます

546:ぼくらの7日間戦争~三日目 ◆mQKcT9WQPM
08/11/21 01:05:36 +IX0p96s
先にベッドを占領されてしまったため、シエスタは部屋の隅にあった大きなソファに腰掛けた。
その前に、股間をはち切れんばかりに膨らませた才人が立つ。

「あは。もうこんなになってますね」

嬉しそうにそう言って、シエスタは才人の前を撫で上げる。
う、とその刺激に呻いた才人は、そのままの勢いでズボンを引き摺り下ろそうとしたシエスタを肩を掴んで止める。

「ちょ、ちょいまちシエスタ!」
「え?なんですか?」

折角ギンギンのうまい棒を丸飲みしようとしていたところだったのに、興をそがれてシエスタの眉が曇る。
そんなシエスタに、才人は続けた。

「今日はご奉仕ナシ。全部俺がするから。いい?」

意外な申し出に、シエスタは目を点にする。

「え?なんでですか?サイトさんご奉仕されるの好きでしょ?」
「いやまあたしかにそうだけどさ。でもなんつうか…さんざん焦らされてさ。
 今日は俺が攻めたい気分なのよ」

言いながらズボンを下ろし、ソファの上に掛けるシエスタに覆いかぶさる。
シエスタは少し戸惑ったが。

「じゃあ…サイトさんの好きにしてください♪」

笑顔でそう応えた。
才人はシエスタの肯定を受け取ると、そのまま欲求に任せて唇を奪う。
まるで茹でたての卵のような、滑らかさと弾力を兼ね備えた唇を堪能する。
その隙間から、粘液で覆われた柔らかい肉の塊が才人の口の中に入り込んでくる。
シエスタの舌だ。
才人はそのまま自分の舌をシエスタのそれに絡める。
まるで別の生き物のように、舌と舌同士が絡み合い、互いの口腔内で暴れまわる。
その刺激に、唾液が唇から溢れ出し、お互いの顎を、頬を汚していく。
お互いの口内を犯しあう間、才人はそっとシエスタのネグリジェをたくし上げていく。
完全にシエスタの胸を露にすると、キスをしたままその豊満な胸を揉み解す。
強い刺激にシエスタの舌の勢いが弱くなる。
才人は好機ととってか、そのままシエスタの中に己の舌を押し込んでいく。

「ふぐ!?」

互いを愛撫しあっていた状態から、一方的に犯される状態になって、シエスタは目を丸くする。
シエスタは、本当は奉仕するのが好きなのではなかった。
奉仕するふりで、才人を責めるのが好きだったのだ。
しかし今、その立場は完全に逆転していた。
才人の唾液を流し込まれ、口内を蹂躙される。
柔らかい胸をこねるように揉まれ、乳首を押しつぶされる。
そして。
才人の指が、どろどろに濡れたショーツにかかる。
そのままショーツを引きのばし、才人は己をシエスタの牝の裂け目に押し当てる。
シエスタが脚を閉じる間もなく、才人は一気にシエスタを奥まで犯す。

547:ぼくらの7日間戦争~三日目 ◆mQKcT9WQPM
08/11/21 01:07:00 +IX0p96s

「ふぅーーーーーーーーっ?」

唇を塞がれたまま、シエスタの唇から喘ぎが漏れる。
そのまま才人は、激しく腰を使い始める。
軽く濡れていただけの肉穴は、最後の抵抗を襲い掛かる肉棒に対し、試みる。
しかし理性のタガの外れた野獣は、少々の肉の摩擦など全く意に介さず、膣道を削り続ける。
被さる雄の暴虐に、牝はやがて生理的な反応を示す。
粘膜を守るため、粘液を分泌し始めたのである。
それがさらに、才人の陵辱を加速させていく事になる。
ぐちゃぐちゃぐちゃと、リズミカルに、淫靡に、シエスタの股間が鳴る。
その間も、口内を舌で犯され、唾液を啜られ、唾液を流し込まれる。
そして胸を蹂躙され、快楽を上乗せされていく。

「ふぅっ、ふぐっ!」

息苦しさがさらに陵辱感を押し上げ、シエスタの膣は才人をより一層喰い締める。
そして。

ぐに!

「─────!!」

激しく最奥を突かれた瞬間。
シエスタは、最初の絶頂に押し上げられたのだった。


シエスタが才人に陵辱されている間。
ルイズは、三人の才人にとんでもない責めを受けていた。

「やぁ、らめ、らめぇ」

ルイズは全裸に剥かれ、拘束されていた。
元々捕虜を監禁、拷問する用途で作られたこの隠し部屋には、様々な拘束具が部屋に埋め込まれている。
っしてそれらの拘束具は、女王が自らの騎士との行為の際に使うよう、いくつかが新調され、いまだもって現役であった。
そのうちの一つ、床に備え付けられた歪な台の上に、ルイズは拘束されていた。
それは、上に丸い板を渡され、普段は小さな円卓にカモフラージュされている。
しかしその丸い板を取り払うと、長方形に並んだ鉄製の四本の脚と、そのそれぞれの間に渡された四本の鉄棒と、短い辺同士を結ぶ細い木の棒に分けられていた。
その四本の脚の天辺には、同じく鉄で出来た小さな滑車がはめ込まれている。その滑車には、鉄製のワイヤーがかまされ、その先にある皮製の輪に繋がっていた。
ルイズは背中をその木の棒に預けさせられ、両肘の少し上、両太股の中ほどを革の輪で拘束され、鉄で出来た拘束具に繋ぎとめられていた。
三人同時に与えられる快楽にあっというまに達してしまったルイズを、三人がかりでこの拘束具に繋いだのである。

548:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
08/11/21 01:08:18 +IX0p96s
勢いで書けたのはここまでなの~。
つうか残業死ねばいいのに(何
んじゃ寝ますノシ

549:名無しさん@ピンキー
08/11/21 01:18:56 yacv8p2E
つまんね

550:名無しさん@ピンキー
08/11/21 02:03:16 7/ViCVNx
コテであぼーんしれ。俺はしてる

551:名無しさん@ピンキー
08/11/21 02:06:52 uarDkEoX
X42氏とせんたいさんもGJ!でした

552:名無しさん@ピンキー
08/11/21 02:17:21 ZS5QcVR8
GJ!

553:名無しさん@ピンキー
08/11/21 07:10:49 0l9riS0v
せんたいさんGJ
おいら寸止めでもう…

554:名無しさん@ピンキー
08/11/21 08:24:00 SNStBnbR

【表現規制】表現の自由は誰のモノ【107】
スレリンク(news2板)

555:名無しさん@ピンキー
08/11/21 10:16:59 v8upI/Q2
「あ、あれは・・・せんたいさん108の殺人技の一つ「寸止め殺し」だァ~~~!!」
「なんだってー!!!」

はやく続き書いてくださいよう



556:名無しさん@ピンキー
08/11/21 11:28:23 QEavUOWm
せんたいさん乙です
ティファニアもなんとかからませてください


557:名無しさん@ピンキー
08/11/21 21:49:12 Nv7a/I9a
おれはばれっと氏の作品に影響されて外伝二巻とも買ってしまった

…本編のイザベラどうなるんだろうなあ

558:名無しさん@ピンキー
08/11/22 15:08:30 e6XFZHwC
ろくでもない目にあうのはもう確定だろうな

559:名無しさん@ピンキー
08/11/22 17:41:48 QuOwOw89
本編16巻の前にタバサ外伝3巻め出すのも個人的にはアリだな

560:名無しさん@ピンキー
08/11/22 23:42:34 Jn3tTh/P
アン様やシエスタやテファの外伝出すのも個人的にはアリだな、てか出してほしい

561:名無しさん@ピンキー
08/11/23 01:12:00 G8F3M035
乙です

562:名無しさん@ピンキー
08/11/23 01:14:25 FHU6dzur
3日目でこれか・・・7日目にはヒロイン全員サイトの嫁とかなってもおどろかねぇ・・・・

563:名無しさん@ピンキー
08/11/23 21:47:55 8EWX1X+7
>勝手に作り上げられたルールに縛られる
元々ルールがある所に投下してる以上そこのルールに従うのは当たり前でしょう
それが出来ないならご自分でサイトを作ってそこでやって下さい、全てを貴方の責任とルールでやれる訳ですから

564:563
08/11/23 21:48:55 8EWX1X+7
済みません誤爆です

565:X42
08/11/24 00:40:33 eYjV8PIZ
これからX00-42シリーズの続編を投下します。

566:X42
08/11/24 00:41:22 eYjV8PIZ
オークション翌日 朝9時

 才人達は、アルビオンの旧ゲルマニア領のならず者討伐の為、準備をしていた。
 討伐メンバーは、才人の他、水精霊騎士隊、ルイズ、ティファニア、シャルロット
 そして、オストラント号と共に、コルベールとキュルケが同行となった。
 才人達の護衛としてアニエスを含む銃士隊10名もいた。
 今日出発する事は、ホーキンスの下には、昨日伝書フクロウで連絡がなされている。

 オストラント号に乗り込む前に、アンリエッタの訓示が有った。
「皆さん、必ず生きて帰って来て下さい。決して無理をしてはなりません。
 宜しいですわね」

「畏まりました」
 才人を除く全員が答えた。

 アンリエッタは、才人に近付いた。
「あなた、くれぐれも無理はなさらないで下さい。もうあなた一人の体じゃ無いのですよ。
 それからヤリ過ぎに注意なさってくださいね」

「こういう場で、そう言う事言わないでくれよ」
才人が困惑した顔で答えた。

「今ここでしか言えませぬので。本当は私も一緒に付いて行きたいのですから」
 アンリエッタは、悲しげに呟いた。

「ちゃんと帰ってくるから。アンリエッタも体に気をつけてな」
 才人は、笑顔でそう言うとアンリエッタがいきなり唇を重ね合わせてきた。
 1分?2分?その位長く感じられるキスであった。

「あのー前にも言ったけど、人前ではちょっと…ねぇ」
「キス位大目に見て下さいまし」
(大目に見たら歯止めが利かなくなるだろ!)

 そして全員が乗り込みオストラント号は、一路アルビオンに向け発進した。
 出発した後、各自自分の割り当ての部屋に入った。
 今、才人の部屋には、才人以外に、ティファニア、ルイズ、シャルロット、人化した
シルフィードがいた。


567:X42
08/11/24 00:42:02 eYjV8PIZ
 才人は、猛烈に嫌な予感がした。
「何で皆この部屋に居るのかな?」

「サイトとするためだよ」
 ティファニアが答えた。

「一寸待てよ!一昨日初体験で30発もやったんだぞ。それを今日もやるつもりなのか?」
 更に昨日は、アンリエッタと4発やっているので4Pは、やりたくなかった。

「違う。このフネの中でするのは、ティファニアだけ」
 シャルロットが答えた。

「其れは助かるけど、如何してまた?」
 才人の疑問に再びシャルロットが答えた。

「ティファニアとルイズの精神力を溜める為。ティファニアは、貴方とすると精神力が
溜まる。しかしルイズは、一緒にすると溜まらない、だからティファニアとするところ
を見せつけて、ルイズの精神力を溜めさせる」

「いや別に無理して溜める必要ねぇんじゃ?」
 才人の疑問に三度シャルロットが答えた。

「今度の件にガリアが噛んでる可能性ゼロじゃない。ならば2人の精神力を溜めておく
 必要がある。昨日の様になったら危険」

「そっか。確かにあの騎士人形に最初に遭遇したのアルビオンだもんな。罠の可能性
 がある。そう言う事なんだな?」

「その通り」
シャルロットは、簡潔に答えた。

「このフネの中でティファニア、向こうで私、帰りのフネでルイズ、帰ったら女王陛下と
 メイドの予定になっている」
 シャルロットは、サラッと答えた。
「そんな事まで決まってんのかよ。けど見られながらだと上手く出来ねぇぞ」


568:X42
08/11/24 00:42:45 eYjV8PIZ
 才人とて普通の男の子である。その上ルイズがお預け状態で見ているとなれば、恐怖で
 100%萎えてしまうだろう。

「心配無い。魔法で見えなくするし、ルイズからは杖を取り上げてあるから、ルイズが
 怒りで暴発するくらい励んで」
 シャルロットは、恐ろしい事を事もなげに言い放った。

「サ、サ、サイト、精神力溜める為だかんね。私が溜める為だかんね。そ、それから
 帰りは、ふ、二人以上のことして私を満足させなさいよね!」
 ルイズは、小刻みに震えながらそう言った。
(全く私の精神力ってどうしてこう条件が厳しいというか可笑しいというか。テファは、
 するだけで目一杯溜まると言うのに。ふんっとにもう!)

「分かったよ。それからシルフィード、ルイズを抑え込んでおいてくれないか。ルイズが
 暴発すると何すっか分かんねえから」
 才人は、最大の懸念を排除すべくシルフィードに頼んだ。

「了解、了解。お安い御用なのね。きゅい」
 シルフィードは、ルイズの背後に回り込み、抱きしめた。

「ちょっと!息苦しいわよ。変な気持になっちゃうでしょ!」
 ルイズは、真っ赤になって抗議した。

「恥ずかしがり屋さんなのね、きゅい。でも駄目なのね。怒ったときのルイズ、とても
 とても暴力的なのね。お姉様を悲しませる事平気でするのね。だから緩めないのね
 恨むなら、自分の暴力的な事を恨むのね。きゅい」
 シルフィードは、そう言ってそのままルイズを抱きしめ続けた。

「目を瞑って。そして10秒後に始めて」
「どうして?」
「姿が消えるところ見ていたら、消える意味がない」
「そっか、分かった」
 才人は、目を瞑った。其れを確認してシャルロットが魔法で姿を消す。そして声が
 漏れないようにサイレントも掛けた。これで、才人側からは、ティファニアと二人きり
 になり、サイレントの効果で雑音は、一切聞こえない状態となった。


569:X42
08/11/24 00:45:42 eYjV8PIZ
 10秒経ち才人が目を開けると目の前にティファニアがいた。
「うわっ!テファ脅かすなよ、びっくりするじゃないか」
 目を開けた途端、ティファニア程の美少女が目の前に居れば普通の男なら大抵驚く。
 尤も彼女の場合、凶悪な胸を見せた方が効果は大きいが(気の小さい者ならショック死
 してしまうだろうが…)

「エヘヘヘ…だってサイトと二人きりでするの初めてなんだもの。到着するまでの6時間
 たっぷりやろうね」
 ティファニアは、極上の笑顔でそう言った。

「昼食はどうすんだよ」
「1食位抜いたって平気だよ。じゃあ早速サイトの服脱がすね」
 と言い終わる前に服を脱がし始めた。
 やけに積極的なティファニアであるが、それには理由があった。
 事前にシャルロットから今日の打ち合わせが有ったのだ。

自分達は、姿を消す。
其れを忘れさせる為に、不意を突き積極的に行動する。
ルイズの怒りが頂点に達するように前戯は、胸を最大限に利用する。
序盤の体位は、騎乗位で行い、サイトに胸を揉ませまくる。
サイトの気分が乗ったら後はサイトに任せる。
 というものだった。

「脱がせて♪」
ティファニアは、才人におねだりをし、才人は、其れに応えて脱がし始めた。
上着を脱がすとティファニアは、ショーツ一枚だけとなった。
才人は、そのままショーツに手をかけてずり下ろす。
そして才人が立ち上がるや否や、ティファニアは、才人をベットに押し倒した。

「うわっ!」
 ティファニアは、キスをしながら胸を押し付け、才人の体を蹂躙した。
 次にティファニアは、ルイズやシャルロットには到底不可能な顔面パイズリを
 敢行した。
 才人は、表現不可能な程の甘美な刺激を受け、息子は準備万端となっていた。それでも
 攻めの手を緩めず、才人に胸を揉ませながら、固くなった乳首を才人の口の中に入れ、
交互にそれを吸わせた。


570:X42
08/11/24 00:46:29 eYjV8PIZ
「サイト、もっと、もっと吸って、噛み噛みしてー」
 才人は、ティファニアのおねだりに応え、吸ったり甘噛みをし続けた。
 その後ティファニアは、69の態勢になった。しかし才人の息子は、パンパンに成って
いた為フェラは行わず胸を腹に擦り続けた。
そして才人は、目の前に現れた彼女の秘部をしげしげと見つめた後、指でクリトリスに
刺激を与え、皮を剥き肥大させた後、クンニを行い人差し指を膣の中に侵入させ、
こねくり回して、強烈な刺激を彼女の脳髄に送り込む。

「ら、らめー、そんなにしたら、イ、イッちゃうよ」
 ティファニアは、盛大に潮を吹きへたり込んだ。
 そして夢遊病者の様に起き上がり、自分の秘部に才人の息子をあてがい、一気に
飲み込みこんだ。
「あうあうあーーー奥まで、奥までサイトが…あーーーーー」
 ティファニアは、無我夢中で腰を激しく動かし快感に酔いしれた。
 才人は、彼女の胸を揉みながら、腰を突き上げ、亀頭が子宮をノックしまくった。
 その度にティファニアから艶めかしい喘ぎ声が部屋の中に満たされた。

そして、殆ど理性の吹っ飛んだ状態になりながら花時計を敢行した。
「サイトのが膣でよじれる…ああっ、当たる…サイトのが当たるーーーー」

「サイト…お願い…後ろから…コンコンしてー」
 才人は、おねだりに応えて、体位をバックに変化させ、突きまくった。

「あーーー才人が膣奥に、膣奥に…もっと、もっと突いてーーー」
 ティファニアの膣は、物凄く締まり、才人に強烈な刺激を与える。
「テ、テファ…ち、ちょっと締めすぎ…くう…負けん…テファがイクまで…絶対負けん」
 才人は、強烈な刺激に耐えながら、ティファニアの膣壁を色々な角度で突くまくり、
 負けじと強烈な刺激を与えまくった。

「もうダメー…イ、イク、イク…あーーーーーーーーー」
 ティファニアは、絶頂をむかえ、才人がピストン運動が出来なくなる程締め付け、
 才人も、ティファニアの膣奥に盛大に射精した。

「サイト、もっと…もっとしよ…後5時間あるからあと5回しよ…」
「こんなのあと5回もやったら可笑しくなるぞ…」


571:X42
08/11/24 00:47:02 eYjV8PIZ
「平気…これで可笑しくなるなら本望だよ…だから…しよ」
 才人は、ティファニアのおねだりに応えて計6回頑張った。
 一方見事に忘れ去られたルイズは、凄まじい怒りで精神力が溜まり、尚且つ上限も
 急上昇し、ラグナ・ブレイドが2発唱えられる程になった。
 もう一人シャルロットも2人の激しい情事を目の当たりにし、胸の内に激しい炎を
 燃え上がらせていた。
 才人は、見事に死亡フラグを2本獲得していた。



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