卓上ゲームエロパロ総合スレ25at EROPARO
卓上ゲームエロパロ総合スレ25 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
08/10/13 11:34:39 TpzGbhvj
1乙。
地鎮祭に期待だ。

3:名無しさん@ピンキー
08/10/13 13:13:16 /icXeAIG
1乙ー。
地下的にはエグゾダスに期待かのう

4:名無しさん@ピンキー
08/10/13 13:23:00 248e/1w8
1乙

5:名無しさん@ピンキー
08/10/13 14:47:25 Du4I079r
あ、1乙。

んでうっかり前スレに書き込んじまったんで改めて…

>前スレ439
俺の脳裏には
セクハラに耐えかねて逃げ出す→連日かくまってくれるシャルに、気づいたらラヴ→へっぽこ指揮官頭脳を駆使して落としにかかるもへっぽこゆえに逆に落とされる
 →以蔵&勇、それを覗いてシコシコ(オチ)
の方が浮かんだが文章にはならなかった。


>前スレ457
ぐっじょぶー!!
次はレンちゃん、レンちゃん!!
……ああ、でも世界の壁を越えたWヒロイン合流も捨てがたいw


6:マッドマン ◆265XGj4R92
08/10/13 17:39:56 wJw6fvJR
いきなりですが、六時半前頃から魔王少女の爆撃舞踏曲のエピローグを投下してもよろしいでしょうか?


7:名無しさん@ピンキー
08/10/13 17:46:35 /icXeAIG
>>6
駄目という奴の気が知れない。

8:名無しさん@ピンキー
08/10/13 17:53:00 kHKZpaEi
>>7
ですよねー。というわけでどうぞどうぞ。

9:名無しさん@ピンキー
08/10/13 17:59:16 2w/+TrCO
>>6
もっと早くても…いいんだぜ?(親指を立てる)

10:名無しさん@ピンキー
08/10/13 18:16:07 HcAs8xi/
投下前に1乙と言っておこう!
このスレでもみんなよろしく!

11:名無しさん@ピンキー
08/10/13 18:19:34 248e/1w8
待ちな>>6、お前の投下より俺がGJ!する方が確実に速いぜ?


12:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/10/13 18:27:59 wJw6fvJR
そろそろ投下開始します。
注意事項。
■■ゼロットさんのカリスマ度が高いです。
柊はどこまでも柊。
魔王様たちはこれからも出番あります。

そして、次回ヒロインはレン決定。

投下開始です!


13:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/10/13 18:28:40 wJw6fvJR


 祝福せよ。
 祝いたまえ。
 ダンスを踊ろう。
 歌を紡ぎ上げよう。
 音楽を奏でよう。

 今日は良き日なのだから。




 消える世界。
 撃ち放たれた制限解除の虚無の世界は数百メートルの巨獣すらも喰らい尽くす巨大な顎となり、呑み込んだ。
 消えよ、汚らわしい。
 果てよ、世界の終わりまで。
 詠唱に編みこんだ抹消の意思、術式に組み込んだ崩壊の理。
 それは巨大なる冥魔だけには留まらず、加速度的に月匣の全てに侵食した。
 消えよ、果てよ、滅せよ。
 世界が罅割れる。
 蜘蛛の巣のような亀裂が月匣中に走り、紅い夜空が砕け散る、大地が崩壊し、大気が粉砕されていく。
 まるでガラス細工のようだった。
 魔王の一振り、叩き込まれた鉄槌に呆気なく砕け散る玩具のように。

 この日、一つの世界が終わりを告げた。


14:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/10/13 18:29:39 wJw6fvJR
 
 いつの間にか空を見上げていた。
 空に浮かぶのは蒼い透き通るような蒼穹の空。
 雲は白く、太陽は輝き、淡い日光が差し込む青天だった。

「……終わったのか?」

 崩壊した世界から降り立った柊がそう呟いていた。

「そのようだな」

 その横に立つ同じく月匣から解放された勇士郎が周囲を見渡して、告げた。
 異空間特有の違和感は無い。
 感覚を研ぎ澄ませても襲い掛かってくるような気配もない。
 一安心といったところだろうか。

「柊。その子は?」

 勇士郎の言葉に、柊は抱きとめていた少女のことを思い出した。

「コイツも無事みてえだ」

 その手には救い出した少女の感触。
 温かい肉の触感があり、魔王であるが体温を感じられるので生きているのだろう。
 よかったと思う。
 いずれ討たねばならぬ敵の一人だとしても、苦しみ、助けを求めている誰かを見過ごすなんてのは後味が悪すぎるのだから……

「そういえば、ベルの奴は……」

 姿の見えない少女を探して、柊が周囲を見渡そうとした瞬間だった。
 ゲシリ。
 上を向いた柊の顔面に小さな靴底がめり込んだ。

「てぇー!?」

「ここよ」

 片手で顔を押さえつつ、呻く柊。
 それをふわりと体重を感じさせない着地で降り立った魔王―ベルが冷ややかな目線と言葉で侮蔑した。

「貴方如きが私の心配するなんて100億年早いんじゃなくて?」

「いてて。一々蹴る必要はねえだろうが」

 靴底の残った顔を摩りながら、柊がぼやく。
 それに嗜虐の喜びを湛えた瞳を浮かべて、ベルが唇のみで笑う。

「あら、ごめんなさい。偶々降り立った先に貴方の顔があったのよ。不可抗力だわ」

「ぜってえ嘘だ……ていうか、お前空飛べるだろ」

 そんな会話をこなす柊とベル。
 本来ならばそんな会話をこなすどころか殺し合う宿命にあるだろうウィザードと大魔王のどこかくすぐったい会話を、他人事のように勇士郎は聞きながら、肩を竦めた。

「それでどうするんだ?」

 放っておけばいつまでも口喧嘩を続けそうな二人に、勇士郎は静かに呟いた。


15:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/10/13 18:30:53 wJw6fvJR
 
「あ? どうするって……」

「そうね。冥魔は斃したし、貴方達との休戦を続ける必要もないわね」

 勇士郎の言葉に、ベルはぞくりと背筋が凍りつくような笑みを浮かべた。
 魔王としての殺意。
 月匣は既に解除され、本体からの力の供給も可能。
 消耗した柊と勇士郎の二人ならば、今からでも十二分に潰すことは可能だろう。
 侵魔たちを散々苦しめた怨敵の二人。
 それを討ち取ればどれほどベール・ゼファーの名誉が、裏界における発言力が増すか計り知れない。
 絶好のターゲットとも言えた。
 そんなベルの意思を感じ取ったのだろう、勇士郎が即座にエクスカリバーを構える。
 そして、柊は―魔剣を構えることすらしなかった。

「ちょっとまて」

「なに? 今更命乞いかしら?」

「ちげーよ」

 柊はスタスタと無造作にベルに歩み寄ると、抱き抱えていた魔王を彼女に手渡した。

「え?」

「折角助けたんだ。こいつを裏界に送り返してやれ」

 自然に、そう告げる柊。

「そうしたら後は幾らでも付き合ってやるよ」

 魔王の必殺の間合いに居ながら、柊は怯えもしない。
 自分が殺されないと自惚れている? 否、それほど彼は強くない。
 ただ己が信じるままに行動し、その後の責任と結果を覚悟しながらも動いている―愚か者。

「しょうがないわね……」

 そんな柊の態度にどこか毒抜けたかのようにベルは呟くと、魔力を集めて、抱えた魔王に魔力で編み上げた服を着せた。
 いつまでも裸身だと哀れだと思ったのか、それとも誰かにその裸を見せ付けて居たくなかったのか。
 それは分からない。
 ただベルから発せられていた殺気が霧散化していた。

「一つ貸しでいいかしら?」

 魔王を助けることか。
 それともこの場で戦わぬことを指してか。
 どちらにしてもベルは不敵な笑みを浮かべて、楽しげな表情を取り繕う。

「それでいいぜ」

 別にどうでもいい、そう告げるかのように柊は肩を竦めると、勇士郎に目を向けた。

「ああ」

 彼もまた頷く。
 やっかいそうなことになる予感がしたが、しょうがないと諦めた。

16:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/10/13 18:32:03 wJw6fvJR
 
「ふふふ。それじゃあしっかりと憶えておきなさいよ」

 ベルは不敵に微笑むと、抱えていた魔王の少女を掴む手とは違う手を唇に当て、チュッと湿った音を立てて投げキスをした。
 それに嫌そうな顔を浮かべる勇士郎、からかってるのか? と首を傾げる柊。

「それじゃあまた逢いましょう、愛しく憎いウィザードたち」

 蠱惑的な声。
 蕩けるような美貌。
 あまなく全てが平伏すかのような麗しき蝿の女王の祝福。


「私に殺されるまで死ぬことは許さないんだから」


 そうして魔王ベール・ゼファーは掻き消えた。

 あっさりと。

 未練すらも残さずに、消え去った。

 そして、一時間後、柊たちからの連絡で駆けつけたロンギヌスたちが訪れるまで、街を静寂が満たし続けた。

 例え元凶が消え去ったとしても失った者は帰ってこない。

 喰われた住人達は戻ってこないのだから……







 息を飲むほどの美しさ。
 透けて通るかのような白磁の肌、白銀を紡ぎ上げたかのような銀髪の少女。
 守護者、アンゼロット。
 彼女は優雅に紅茶を啜りながら、事態の経過を終えた。

「そうですか……ベール・ゼファー。彼女が関わっていたとは正直予想外でしたが、上手く行ったようですね」

 数週間前のことである。
 ある冥魔に絡んだ事件においてアンゼロットはまんまとベール・ゼファーを釣り上げたのだが、またしても絡んでくるとは嬉しい誤算だった。
 これで確定された。

 ―裏界の住人もまた冥魔を敵として見なしていると。

「三つ巴の戦いになりそうですね」

 はぁとため息を吐く。
 彼女の気苦労は終わりそうにない。
 これでは前のようにネットゲームに勤しめる日々になるのはいつになることやら。

「中々楽にはなれそうにありません」

 そう彼女がぼやいた時だった。
 コツリと音を立てて、一人の仮面を付けた青年―ロンギヌス・コイズミが現れた。

17:名無しさん@ピンキー
08/10/13 18:36:37 iMXTWoPo
ここって連投規制あるの?

18:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/10/13 18:38:13 wJw6fvJR
 
「アンゼロット様。客人です」

 そう告げるコイズミの声はどことなく緊張を孕んでいた。
 かつてないほどの緊張を帯びている。
 蒼き惑星の守護者に仕え続ける彼がこれほどまでに緊張することがらとは何か。

 それは彼の背後からゆっくりと現れた褐色の肌の麗しき少女の存在に他ならない。

「ようこそ、我がアンゼロット宮殿へ」

 アンゼロットが立ち上がる。
 優雅な一礼を持って、彼女は自らのテーブルに座る席を勧めた。


「我が招待を請けてくださって感謝しますわ、“輝ける黄金”」

 それはまるで太陽のような少女だった。
 燃え盛る陽光の煌めきに輝く黄金のような髪、その身に内包した力の灼熱を彩るかのような褐色の肌、見つめたものに活気を、欲情すらも通り越した感情を湧き上がらせるほどの美貌。
 蒼く煌めく真夏の空の下を歩くかのような美しい純白のワンピースで精密なる人形の如き調えられた造形の肢体を包んだ美少女。
 輝ける黄金。
 それが少女の称号であり、呼び名であり、その存在の証明。

「ありがとうございますわ、“真昼の月“」

 ハープを奏でるかのような透き通った声。
 その声にアンゼロットの周囲で待機するロンギヌスたちの数名が一瞬心蕩かされたかのように膝を崩し、慌てて周囲にいる同僚に支えられた。

「あら?」

 その醜態に真昼の月と呼ばれたアンゼロットが少しだけ眉を歪めて、告げる。

「困りますわね、輝ける黄金。私のロンギヌスたちには少し刺激が強すぎるようで」

「そのようですわね。失礼しましたわ」

 にっこりと笑みを浮かべる少女。
 太陽の如き優しさと慈悲を讃えた笑み。
 それを見て揺さぶられぬものなどいるまい。

19:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/10/13 18:38:55 wJw6fvJR

「まったくしっかりなさい」

 ふぅっとため息を吐き出すアンゼロット。
 その悩ましい顔つきすらも麗しく、十六夜の夜に朧に輝く月光のような儚さを持ち合わせた芸術品と呼ぶべき表情。
 幸福なる仕打ち。
 待機するロンギヌスたちは密かにプラーナを解放し、仮面の奥で魅了されかねない二人の少女の顔から目線を逸らすことでしか耐えうる手段はなかった。

「コイズミ、OO。紅茶の手配を。それと最上級の茶菓子を持ってきなさい」

 ベルを鳴らすと、唯一正気を保ち続ける二人の仮面の男がアンゼロットの指示に従い、立ち去った。
 そして、輝ける黄金と言われた少女はどこまでも優雅に椅子に腰掛ける。

「それでは始めましょうか」

「ええ」

 二人の少女の笑み。
 誰が知ろうか。
 その二人が同一なる存在だということを。

「ファー・ジ・アース」

「ガイア」


『私たちの世界を語り合いましょう』


 真昼の月―アンゼロット。
 輝ける黄金―アンゼロット。
 二人の守護者の会談。

 それの意味するものとは何か。

 それはまだ誰も知らない。



20:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/10/13 18:40:07 wJw6fvJR
 
 それは永遠に続く月夜。
 紅い月の世界。
 永久なる孤独を約束された時の牢獄。
 裏界/ファーサイド。
 その一つ、巨大なる古城の中に舞い戻る影があった。

「リオン―戻ったわよ」

 一人の少女を抱えた蝿の女王。
 それに答えるのは一人の黒髪を足まで伸ばした少女―秘密侯爵リオン・グンタ。
 高位の爵位持ちである魔王の一人。

「お帰りなさい、ベル」

 死蝋めいた病的なまでの白い肌。
 その中で確かな親しみを感じられる笑みを浮かべて、リオンは微笑んだ。

「そちらは?」

「マヌケな馬鹿よ。まったく手間をかけさせて」

 そう告げると、ベルはまるでゴミでも扱うように投げ捨てて―その床に開いた魔法陣から少女の姿が消失する。
 転移魔法。
 ベルに付き従う―あるいはその強大なる力に怯えて崇拝するものは多い。
 それらの元に送り、伝言のように思念メールで治療を命じた。
 適当に時間を掛ければいずれ復活するだろう。
 侵魔から昇格した魔王とはいえ、地獄たる裏界から這い上がったもの。
 この程度で心折れるようでは使い物にならない。

「リオン。貴方が言っていた楽しいことってあの二人のことかしら?」

 あの町に降り立つまえ、リオンが警告したのだ。


「ベル。貴方にとって楽しい出来事になるでしょう」 と。


「嘘吐きね。私は楽しくなんかなかったわ」

「あら? そうなのですか」

 意外そうな口調に対して、リオンの表情は楽しげだ。
 ぶぅーと子供のように頬を膨らませたベルの態度が可愛らしくてたまらなかった。

「ただ面倒だっただけよ。またあの男に邪魔されて……」

 あの男。
 ―柊 蓮司。
 有史上もっとも強大なる魔王たちを屠り続ける男。
 本人に自覚はなし、されど裏界の侵魔たちが注目する神殺し。
 黄金の魔王ルーサイファーをも退け、皇帝シャイマールの復活を食い止めた戦士。
 魔剣以外にはなんら特別な素養も経歴も持たないというのに、救い続けるイレギュラー。
 リオンは知っている。
 ベール・ゼファーがそんな彼を気に入っていると。
 こっそりとベットの下に隠している柊 蓮司人形の存在まで秘密侯爵は知っていたが、あえて言わない。
 だって聞かれないから。
 ついでに面白いから。


21:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/10/13 18:41:44 wJw6fvJR

「まあいいわ。貸しを作ってやったから、あとはどれだけ高く払わせようかしら」

 どこか楽しげな表情―本人に自覚はないだろう。

「楽しみにしてますよ、ベル」

 リオンは微笑む。
 その笑顔の下に全てを隠して。


「さあ次のゲームを考えましょう」


 今日も魔王たちは悪巧みをする。

 美しい蒼の惑星を手に入れるためのゲームを考える。





魔王少女の爆撃舞踏曲 END



22:マッドマン ◆265XGj4R92
08/10/13 18:51:46 wJw6fvJR
投下終了です。
長々と続いた魔王少女の爆撃舞踏曲もこれにて終了。
次回は(あるとしたらだよ!) 勇者少女の連携狂騒曲(仮)などになる予定です。
ベルらしさや、勇士郎らしさが出てればよかったのですが、まだまだ未熟さたっぷりな内容でした。
読んでくださった方、感想をくれた方、支援してくださった方、全てに感謝です。
出来ればもっとエロなどをいれたかったのですが、どう頭を捻ってもベル様エロスが思いつかない俺の馬鹿。
ごめんよ、名無しの魔王少女ちゃん。
前回よりもエロパロらしくなったかな? と個人的には満足しています。
次回は本格的なエロスを!(そういって何回失敗したんだ)


それと次回作ですが、圧倒的なまでにレン希望が多かったのでレンで行きます。
個人的にはブルースフィアで宮沢パパの圧倒的な剣戟バトルなどを書きたかったのですが(ヒロイン? あんな錆びたシャードもちなんて(トール=神ダメージ))
それにしてもレン大人気ですね
さすが巨乳、さすがマイヒロイン(レンスキー)、だからあえて言おう脱がすと!
次回作ではレンのエロスを入れる予定です。
それとさりげなく希望があったノーチェなども一応出演予定です。
色々とありがとうございました。

他にも希望があったら、感想にちょこっと付け加えてくださると出来るだけ頑張りますのでお願いします。
それでは!

23:名無しさん@ピンキー
08/10/13 19:24:47 h3hHYGda
レン期待!
待ってる!

24:名無しさん@ピンキー
08/10/13 21:12:20 tJLrFgoK
>マッドマンさま。
完結ご苦労様です ! なんか、ベル様よりもアンゼのほうが企んでそうでステキなんですが(笑)。
でもでも、魔王らしい魔王のベル様カッコいいんですけどー !?
ゲーム大好き残虐っ娘って感じで、なんというかもう大好物です !!
次回も、期待させてください。ってゆーか、私的には錆びシャード娘さん希望なんですがー !?
だけどレンのSSも読みたいんですが、いったいどうすればいいんでしょうか(笑)。
とにもかくにもお疲れ様でした !
で。
直後に唐突なんですが、ようやく「エリ夢」最終回お届けできます。
長い物語の、結構ながい最終回です。
連投規制が入りそうなんで、途中時間空けて投下したいんですけど、差し支えなければ十時ごろ
から投下したいなー、と。
どうでしょう ?


25:名無しさん@ピンキー
08/10/13 21:21:22 wJw6fvJR
全力でOK!
ちなみにここだと連投規制はないからいつでも平気のはずですよ?


26:名無しさん@ピンキー
08/10/13 21:51:22 PC0dSb1o
>マッドマンさま
完結おめでとうございます。戦闘描写といいかっこよくて最高でした。
しかしベル様、柊人形なんていつ作ったんですか?
それともアレですか、秋葉原かアンゼロット城あたりで下がる男人形として
売られていたりするんですか?部下魔王(仮)の詳細なプロフィールもちょっと
気になりますね。ていうか柊、またフラグ(しかも魔王)立ててるんじゃねぇ
つーの(もてない男のひがみ)。まぁ、柊だからまだ許せるけど(どっちだよ)。
次はレンちゃんっすか。マッドマンさんは題名もかっこいいので期待してます。
あとノーチェ。クロススレで一気に好きになりましたので楽しみにしています。

27:名無しさん@ピンキー
08/10/13 22:00:55 v6l52Sj7
>柊人形
ファンブックの2巻にそういう絵がある。
ちなみにベルが遊び相手として柊を気に入ってるということもわかる。

28:名無しさん@ピンキー
08/10/13 22:24:23 3Z75+5yK
>25さま
 あ、連投規制ありませんか ? では、こころおきなく(笑)。
 以下、投下でございます。


29:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:27:26 3Z75+5yK
 眩暈がする。
 眼前の信じ難い光景に、まるで悪酔いしたように頭痛と吐き気が同時に襲い掛かってくる。
 夢。
 これは悪い夢ではないだろうか。
 柊先輩がお腹から血をたくさん流して、なんとか自分の足でようやく立っている。
 血の気を失った顔は青色を通り越して紙のように白く。流れ落ちる血の赤だけが、ひどく目に鮮やかで。
 不思議と、それ以外の背景がどんな色彩に彩られていたのか ―― 後に思い出してみようと頑張ってみたの
だが、そのときのエリスは淡い色彩のモノクロームで塗りつぶされた光景しか憶えていなかった。
 漂い始めた血の臭いが次第に強くなる。ますます吐き気が強くなる。
 かたかたと硬い音がするのは、噛みあわなくなったエリスの上下の歯がお互いに軋り合って立てる音だ。
 傷ついて、不規則に乱れた呼吸を懸命に整えようとする柊。
 彼の名を呼びつつ、駆け寄って肩を貸す。エリスは、そこまでのことをようやくし終えただけなのに、それからどう
したらいいのか、なにを言ったらいいのか、まるっきりわからなくなってしまった。
 風雨にさらされて頼りなくわななく木の葉のように。なにもできずに、ただ小刻みに身体を震わせるだけ。
 エリスは、ただ呆けたように柊の顔を見つめるだけしかできないでいた。
 凍ったような冷たい汗が、たらたらと柊の額から滴っている。ふいごのように熱く吐き出される呼吸が、ひどく苦し
げであった。次第に失われていく血色の悪さが、まるで人が存命するための温かみからかけ離れていくようで。
 そんな中 ――
 決して希望の輝きを失わない双眸だけが、ひどく綺麗に見えた ――

 そのことだけは、エリスはよく憶えていたのだった。



「おい、くれは………ちょっと離れてろ。いや………ちょっとじゃねえな………エリス連れて、向こうのほうまで離
れてろ」
 意外とはっきりとした口調の柊の声が、耳に痛いほど良く届いた。
 それがあまりに普段と変わらぬ物言いであったのも、エリスに現状を夢だと錯覚させた原因であったかもしれな
い。その声からワンテンポ遅れて柊の顔を見上げたエリスの動きは、壊れた操り人形のように、どこかぎくしゃくと
していた。
 いま、柊先輩はなんて言ったの、と。柊先輩がなにかおかしなことを言っている、と。
 極度の混乱と緊張に見舞われたせいであろう。いま、この場における現実感を喪失しているのはエリスだけで
はなく、向かい側で柊に肩を貸すくれはすら、石化したように固まっていた。
 とはいえ、それはわずか数瞬のことで。彼女が混乱から回復したのが、意外と早かったのは流石といえば流石
であった。
「………な、なに言ってんの、ひーらぎ………わ、私だって戦うよ………」
 くれはの声に、いつものような闊達さがない。唇が震え、たったそれだけのことを搾り出すように言い終えた彼女
が、なんだか迷子になって路地裏で泣いている小さな女の子のように見える ―― エリスは、こんなときだとい
うのに、そんなことをぼんやりと考えていた。
 たぶん ――
 くれはとエリスが考えていることは同じである。
 柊が、自分たちを置いてどこかへ行ってしまう。遠くへと行ってしまう。自分たちの助けも届かない、声すらも通じ
ない、どこかひどく遠い場所へ行ってしまう。残されたものたちのことなどお構いなし。任務だなんだといって、ふら
り、と居なくなるいつものあのやり方で、柊はきっとどこか遠い場所へ自分たちを残して行ってしまう。
 だから、くれはの顔は泣いている迷子のようなのだ。大切な人とはぐれて、淋しい路地裏で泣いている子供のよ
うに見えたのだ。たぶん ―― きっとエリスも同じ顔をしていたに違いなかった。
 遠い、別離の予感。
 それは異様に現実感のある、悪い予感だ。
 だけど、柊は言う。あの、無条件に人を安心させる明るい口調で言ってのける。
「おう………はなっから俺はそのつもりだぜ………この際、助っ人の選り好みはしねえ」
 こんな風に、いつもの、幼馴染み同士のやり取りを平然として見せるのだ。


30:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:28:08 3Z75+5yK
 ぐすっ、と鼻を鳴らしながら、
「ば、ばか。そんなこと言うと助けてやんないからね、ひーらぎ」
 くれはが泣き笑いの表情をして言う。二人のやり取りを見ながら、エリスは思う。
 柊先輩がこんなだから、私は『先輩なら大丈夫』って安心しちゃう。柊先輩に騙されちゃう。
 本当は大丈夫だったことなんて、きっと一度たりともあったことはなかったはずなんだ。
 いつだって、先輩の戦いは世界を救う戦いだった。そんな戦いに赴くことが、大丈夫なんて笑って言える戦いで
あるわけがないんだ。こうやって、いつも先輩はくれはさんを安心させてきたんだな、と。そうしておいて、いつも無
茶なことばかりやってきたんだな、と。彼が負傷した現実を目の当たりにして、エリスはいま初めてそのことに気が
ついた。
 でも、きっとくれはさんは気がついている ―― エリスはそうも思う。
 柊先輩の言葉を無条件に妄信などしていない。大丈夫だ、という先輩の言葉の裏にあるものを、本当は気がつ
いていながら知らないふりをしている。知らないふりをすることができる。あの涙声がその証拠じゃないか、とそう
思うのだ。
 すごく危険で、命の保障もできないような戦場へ柊先輩を送り出していくとき。
 はわわ、と笑っている顔の裏に、いつもどんな想いを隠しているのか。それを、今日このとき、エリスは気づかさ
れたといっていい。
 限りなく優しい嘘をつく柊先輩。その嘘に騙されてあげるくれはさん。それでいて二人とも、そのことを本当は知っ
ているのだ。自分がついた嘘に、本当はくれはさんが気づいていることを、柊先輩は知っていて。くれはさんは、自
分がその嘘に乗ってあげていることに柊先輩も気づいていることを、知っている。
 改めて、そんなことを思い知らされて ―― 二人の絆の強さを理解する。
 こういうとき、くれはさんがとても羨ましい。そして、柊先輩がちょっとだけ憎らしい。
 そしてそれ以上に、こんなにも強い絆で結ばれた二人という存在がいることに、嬉しさと誇らしさを感じる。

 そう思ったとき、エリスの身体から震えが消えた。

 こんな素敵な二人がいるこの星を、やっぱり私は大好きで。二人が護ろうとしているものがとてもかけがえのな
いものなのだということを再認識する。だから、この世界を危機に陥れようとするものがいることを、この世界に滅
びをもたらそうとするものがいることを、エリスはやはり容認することはできない ―― そう思った。

「エリスちゃん !?」
「エ………エリス !? ま、てよ、なにを………」
 くれはの叫ぶ声。苦しい吐息の下から自分を呼び止める柊先輩の声。それをやけに遠くに聞いたような、そんな
気がする。顔を上げ、百もの黒い刃を振りかざす禍々しい姿をした自分自身と同じ顔の少女へと、しっかりと視線を
向けながら。エリスの身体が、ふっ、と柊から離れる。
「……… ? なによ……… ?」
 影エリスがいぶかしげに眉根を寄せて自分を見る。それもそのはずだ。取るに足らない、なんの力も持たない、
護られるだけの存在。志宝エリスというただの少女が、こともあろうに自分に向かってその頼りない一歩を踏み出
してきたのだから。
「………せません」
 エリスの囁くような声。青い前髪で顔の上面が隠れてしまうほどにうつむきながらも、確かにエリスはなにかを呟
いている。額から黒い煙を噴き上げたまま、影エリスが唇を歪めた。なにをでしゃばるのか、塵芥の分際で。そうと
でも言いたげな憎々しげな表情だった。
「………なんですって ? はっきり言いなさいよ」
 顎をしゃくりあげ、見下すように。百の刃が隣り合う同胞と重なり合い、威嚇の音を立てる。
 じゃりん。じゃりん。じゃりん、と。
 くれはが、喉の奥から短い悲鳴を漏らした。
 それは、エリスの身に降りかかるであろう災厄を予期した恐怖と絶望のためであった。
 並の人間なら、ただならぬ迫力と狂気に満ちた影エリスの威容に触れただけで命を落としかねない。致死量の
恐怖とプレッシャーを放つ妄執の怪物と化した影エリスには、ウィザードですらも退けるほどの圧迫感がある。
 睨むだけで。声をかけるだけで。殺してやろうかと念じるだけで。
 いまの影エリスは、ただの脆弱なイノセントの少女など殺すことができるだろう。


31:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:29:04 3Z75+5yK
 恐怖で死ねる生き物 ―― それが人間だ。
 それなのにエリスは退かない。怯えも躊躇も微塵もない。じゃり、と一歩。とてもとても小さな一歩ではあったが、
しかし確かな一歩を踏み出した。
 ざわり。
 影エリスの首筋に、嫌な感覚が甦る。
 捕食結界内での二人きりの暗闘のとき。わずかの間とはいえ、ただの小娘に過ぎないエリスが、 “完全なる無
限循環者” たる自分に恐怖を与えたときにも感じた、あの嫌な感覚。自分の器から力を奪い去ったときと同じ、い
や、それ以上の迫力をいまのエリスが静かに湛えているのは、どういうことなのか。
 掛け値なし。本当に。これ以上なく。完全に。
 志宝エリスはただの少女である。
 自分を脅かす力は欠片も持たない、人間の ―― イノセントの ―― 小娘。
 なのに、なぜ。

「………せません………………っ、柊先輩には指一本触れさせません !!」

 エリスが堂々と顔を上げ、その瞳を見開いた。
 両手を水平に拡げ、その小さな掌は開かれて。大地をしっかり踏みしめるために、肩幅よりもわずかに開かれた
両脚が、境内の土を削り取るほどの力で華奢なエリスの身体をしっかりと支えている。
 迫り来る影と闇の象徴を真っ向から見据える、瞳の色は冴え冴えと澄み渡る湖面の青。
 震えることなく。わずかに、わななくこともなく。
 魔剣使いたる柊が、その立ち姿に一瞬放心するほどの乱れない不動の姿勢である。
 武術の心得などあろうはずもない。体捌きも、身体の真っ芯を通る正中線の使い方もしらない。
 そんなエリスが ―― 揺ぎ無い心に裏付けられたとき。
 真に護るべきもののために立ち上がるとき。
 人とは、ここまで美しく立つことができるのか、と。
 ここまで “真っ直ぐに” 立つことができるものなのか、と。
 おそらく、この場にいる誰もが驚愕したに違いないのだ。
「………な、にを………馬鹿な………」
 エリスの行為は愚かなものである。勇気ではなく、蛮勇。いや、無謀といっていい愚行であろう。
 しかし、それを嘲ろうとして ―― その言葉がついに影エリスの口からは出てこなかった。
 それほどまでに、志宝エリスは揺るがない。
 くれはの肩を借りて立つ柊蓮司と、百振りの黒刃をもって迫る影エリスのちょうど中間地点まで、エリスはやって
くる。危うく後退しそうになって、影エリスはようやくその半歩を踏み止まった。
 ぎり。
 影エリスの歯軋りが空気を震わせる。
 後退ですって !? この私がどうしてこんな無力な小娘に !?
 信じ難い屈辱が起爆剤となって、影エリスの瞳に暗い炎を灯らせた。殺す。殺してやる。ただの人間のくせにな
んて生意気な。私は完全なる者。 “おじさま” の意志を継ぐもの。柊蓮司すら恐れない。大魔王ベール=ゼファー
ですら私の力の前には膝を折った。いずれ世界を喰らいつくしてやる存在なのだ。

 影エリスは夢を見る。

 いまや放出されていく力の噴出を止める術はなく、自分が刻一刻と衰退へとの道を辿っているというのに、そん
な『現実』を忘れ去っている。いまの彼女が見ているものはただの夢。だけど、それに彼女が気づくことはなく、そ
の現実に気づかせてやれるものも、もはやどこにも存在しないのだ。
 だからこそ。
 彼女は、無意味で滑稽な殺意に身を震わせた。
 左手をかざす。黒い剣の一本、百振りの刃すべて柊蓮司に向けられていた中のただ一振りが、強大な憤怒を撒
き散らしてエリスの胸元へ狙いを定めた。
 その瞬間 ――


32:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:29:41 3Z75+5yK
「ひーらぎ、ごめんっ !!」
 柊に貸していたくれはの肩が突然振り払われた。後方に突き出すようにして柊の身体を押しのけ、くれはが全速
力で走り出す。よろめき、倒れそうになる身体をなんとか魔剣の杖で支えた柊の目に、くれはの巫女服の背中が
見えた。走る。走っていく。影エリスと対峙し、黒の刃の生贄となろうとしているエリス目指して、くれはが走る。
「くれはっ !! バカヤロウっ、戻れーーーっ !!」
 柊の声が怒号となって響き渡る。
 それから続く眼前の光景を、柊はまるで映画のフィルムのコマ送りのように見た。
 現実感のないスローモーション・ムービー。色彩を失った悪夢のような光景。

 整然と、自分の心臓を目掛けて並べられ百本の剣。
 そのうちの一本が、隊列を乱すように切っ先をわずかにずらす。
 その先端が指し示すのは、か弱く、小さな命の在り処。
 志宝エリス。 
 大切な仲間。自分を慕ってくれる可愛い後輩。かけがえのない、友人。
 その小さな、しかし眩く輝く生命の灯火へ向けて、ただ奪うだけの、ただ殺すだけのモノが差し向けられた。
 両手を大きく拡げ、戦う術も持たないのに。不覚にも傷を負い、情けない姿をさらしている自分をかばって強大な
敵の前に立ちはだかろうとする、健気な、そして勇敢な少女。
 ダメだ。手を出すな。お前の敵はここだ。
 そう叫ぼうとしたそのとき ――
 不意にこの身体を突き飛ばしたのは他の誰でもない、赤羽くれは。
 バカヤロウ。こっちは怪我して思うように動けないってのに。エリスを護らなきゃいけないのは俺なのに。
 なんだってお前が駆けていくんだ。なんだって俺より先にお前が死地へ飛び込もうとするんだ。
 『ごめん』だって !? 誰が許してやるもんか。勝手なこと、しやがって。

 ―― わずかなその瞬間に、様々な思いが柊の胸中を飛来する。

 そして、その光景が、現実のものとなった。

 不動の姿勢で眼前の敵を見据えるエリスの元へと。
 くれはが全速力で駆けていく。
 手を伸ばし、誰よりもなによりも早くその少女を救うために。
 影エリスが左手を。掲げていた左手を垂直に振り下ろす。
 黒い剣で創られた隊列の一角が、突如として喪失した。
 闇の緞帳の一部に欠けた、寒々しい空白。
 それは、剣の一振りが射出された証拠であった。
 大気を切り裂き、剣が飛来する。くれはの、伸ばした手が奇跡的にエリスの肩に触れた。かばう。かばおうとして
エリスの身体を抱きこもうとする。しかし。剣の切っ先はくれはの右肩を。右肩の肉と、おそらくは骨までも。
 固いものが、より固いものに削られる音。それは、きっと肉を破り、骨をこそぎ落とし、それでもなお止まらぬ勢い
で。幼馴染みの肉体の一部が、黒の刃に傷つけられた音、だった。血が。血の赤が。やけに鮮やかで。

 柊の、この世でもっとも聞きたくない音がした。
 それは、くれはの苦痛の悲鳴だった。
 あんなに血が出てる。肉を割き、破り、骨まで削れて。痛くないはずがない。叫ばないはずがない。
 くれはの痛みを、柊はほとんど自分の痛みとして認識することができた。
 そして。
 悪夢はそれに止まらなかった。
 身を挺してエリスを護ろうとした、くれはの肉体という盾を傷つけてすり抜けた剣の切っ先は。
 止まらなかった。まだ、その勢いを完全に失うことなく目指す標的へと前進を続けた。


33:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:30:23 3Z75+5yK
「エ ――― 」

 後方に、やけに綺麗な血の赤を撒き散らしながら。
 生命を屠る目的で鋭さを獲得した存在が、それの生み出された本来の目的を遂行するためだけに前進する。

「リ ――― 」

 触れた。エリスに “死をもたらすもの” が触れた。
 薄っぺらな制服の生地などものの役にも立たない。黒い刃が、エリスの身体に埋没する。

「ス ――― 」

 たっぷりと十数センチ。鳩尾の下辺り。貫通こそしなかった。だが、それがなんだというのだ。ただの少女の命を
奪うには十分すぎるほどの深手。十分以上の傷ではないか。
 剣が ―― もう自分の目的は達したといわんばかりに ―― 雲散霧消した。
 うめきを漏らし、エリスを抱きしめるくれは。
 くれはに抱かれたまま、それでも眼前の敵を注視するエリスの青い瞳が。
 ふっ、と。力を失った。
「エリス ――― !!」
 柊の口から漏れたのは、悔恨の叫び。
 護るべきものを護り切れなかった悔恨の叫びである。
 地面に突き立てた支えの魔剣を引き抜き、かばいあうような姿の二人の少女の元へと駆け寄る。
 腹部の傷の痛みなどもうどうでもよかった。出血の激しさなど、いつしか忘れていた。
「ご、め………ひ………らぎ………まもり、きれな、か………たよ………」
 傷の痛みに顔をしかめながら、くれはが謝る。柊と同じ悔恨の情をくれはも抱いていた。眉根を寄せ、涙を瞳に
浮かべているのは、自分の肩に受けた傷の痛みのせいなどなどでは決してなかった。
「バカヤロウ………お前こそ喋んなよ………傷に障るじゃねーか………」
 柊の口をついて出た言葉には、不思議とただ優しさと労わりだけが溢れていた。
 悔しさも、後悔も、悲しみも、激痛も、憤りも、二人の少女を見る柊の目には、これっぽっちも顕れていはいない。
 そのことが、なぜかくれはには悲しかった。柊の強さが ―― 悲しかった。
「それより、エリスは………」
 くれはの腕の中のエリスの顔を、二人揃って覗き込む。うっすらと開いた瞳が、苦しげに柊を見上げた。
「ひ………らぎ………せ………ぱい………すいませ、ん………先輩の………助けに………なれ、ば………いい
な、って………わた、し………」
「ば、ばか。エリス、喋るなって。もう、もういいから、さ」
 柊の瞳がエリスの瞳と絡み合う。そのとき、エリスは自身の傷の痛みをまるでなかったもののように、柔らかく笑
顔を浮かべてみせた。
「えへ………半分は無理でも………十っ………ううん………五本ぐらいまで………頑張ろうって………思ったの
になあ………」 
 それが ―― エリスが柊の身代わりになって引き受けようとした黒の剣の数だと知って。
「エリスちゃん………」
「エリス………………」
 二人の胸がつまった。五本どころか一本だって、まともに受けきれるようなものじゃない。それはウィザードの自
分ですら深手を負うほどの殺傷力を持つ刃なのだ。くれはの肩をクッションに、本来の勢いは殺されていたかもし
れないが、イノセントの少女が受け止めるにはあまりにも重荷。
 それでも、エリスはこの刃に立ち向かった。戦おうとした。柊を、護ろうとしたのである。
「くれは………エリスのこと………任せるぜ」
 視線を二人からすうっ、と外し。影エリスという強敵へと目をやりながら柊が言う。
 ああ。なんて温かい声だろう。くれはもエリスも、傷の痛みの中で不思議とそんなことを思った。
 くれはの胸の中から、エリスが心配そうに柊を見上げる。エリスを抱きしめながら、くれはも柊の顔を見た。


34:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:31:38 3Z75+5yK
「ひーらぎ………ひーらぎの………傷は………」
 喉に詰まった声を押し出すように、ようやくそれだけをくれはが言った。傷の深さ、出血の量だけをいうならば、柊
のそれはエリスとくれはの二人分以上なのである。
「俺は………まあ、平気だ」
 平気なわけないじゃん。
 平気なわけないじゃないですか。
 ―― なんてな。
 ―― こんなときでもなかったら、くれはとエリスの両方から突っ込まれるだろうな、と。
 柊は笑みをかすかに唇の端に浮かべる。まだ何かを言いかけようとするくれはを手で制しておいて、
「それより、俺なんかよりエリスとお前だ。治癒、急いでくれよ。特にエリスは ―― 」

 ウィザードじゃない、普通の女の子なんだから、な。

「………うん。わかってる………私はまあ、かすり傷だから、舐めとけば治る………っつ、ててててっ………」
「馬鹿。治るわけあるか。自分の傷も、ちゃんと治しとけよ、くれは」
 ほろ苦く笑いながら軽口を叩く。なんだ、いつもの柊じゃない、とくれはが錯覚してしまうくらいの普通の声音で。
 本当に。本当に怖いくらい ―― いつもの柊蓮司なのである。
「柊先輩………」
 なんだかそれが、また別の悪い予感のような気がして。エリスが柊に呼びかける。
 それに振り返ると柊は ――
「エリス。それに、くれは。お前らのおかげだぜ」
「え」
「はわ」
 柊が笑った。にかっ、と笑った。明るい、力強い、柊蓮司のあの笑顔。
 ああ、そういえばいまは夏だったっけ ―― その笑顔を見て、なぜだか二人はそんなことを思い出した。
「お前らのおかげで勝てる。それがわかったっつーか………確信した。言っとくけど強がりとかなんかじゃねーぞ。
ホントに、勝機ってやつが見えたんだ。お前らの、おかげだ」
「わ、たしたち………」「そんな………なにも………」
 言いかける二人に首を振り。
「いいから、治療治療。そっちに専念してくれよ。んじゃ、ま。いってくるわ」
 かがめていた腰を伸ばし。腹部の傷など始めからもうなかったかのように。柊が立つ。立って、歩き出す。
 その視線の先には ―― 闇色の刃たちを従えた、影エリス !
 腕組みをして、下からねめつけるような暗い視線を送り続けていた影エリスは、くれはとエリスを後にして近づい
てくる柊を、嘲るような瞳の色で見た。
「勝機、ってなに ? その二人がなにをしてくれったっていうの ? ただ私の剣に傷つけられて、なにもできずに
無様な姿をさらしただけじゃない」
 じゃり。柊の足が止まる。
 ついっ、と魔剣が持ち上げられ、彼の身体の中心線と刀身が重なった。正眼。揺ぎ無い正眼の構えである。
「………気づかねえんだろうな。自分がしでかした、この局面で一番のミスってやつに」
「なにっ !?」
「余計なことしなけりゃ、たぶんお前の勝ちだった。さっきも言ったけど、強がりなんかじゃねーし、ましてハッタリな
んかでもねえ。二人が、俺にこの戦いは俺の勝利で終わるって教えてくれたんだ」

 沈黙。そして、硬直。嫌な感じだ。あの、嫌な感じだ。ざわざわと背筋を怖気が這い登り、首筋をチリチリと熱いも
のが灼き焦がす。影エリスは知っている。柊蓮司という男が、この状況でつまらない駆け引きで嘘をついたりはし
ないはずだ、ということを。同時に、直感する。
 柊蓮司は、本当にこの戦いに勝機を見出したのだ、と。
 私はどんなミスを犯した ? 一連の行動の中にどんな間違いがあったのだ ?
 赤羽くれはと志宝エリスを傷つけたこと ? それで、柊蓮司の怒りに火をつけたっていうことなの ?
 いや、違う。そんな陳腐な理由じゃない。「怒りが俺に力を与えた」とか、そんなくだらない三文芝居じみた理由
で、柊蓮司は自分が勝利するなんて宣言をしたわけじゃ、決してない。
 第一、柊蓮司のあの顔。あれは怒りに我を忘れている顔じゃない。
 むしろ、逆。この上なく冷静でそれ以上に普通。正気もいいところである。


35:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:32:26 3Z75+5yK
「そう………それなら、やってみればいい。私の刃たちを受け切れるのか、やってみるといいわ !!」
 影エリスが両手を振り上げる。
 柊蓮司が正気すぎて、それがむしろ薄気味悪い。そして、そのことが再び彼女の狂気に火を点けた。
 なけなしの力すべてを振り絞って造り上げた刃たち。それらが一斉に影エリスの背後で、じゃりん、じゃりんと音
を立てる。彼女を中心として放射状に拡がったそれらは、まるで真っ黒な孔雀の羽のよう。すべての力を集めて、
たった一人の魔剣使いを葬り去るために、剣たちが闇を深めていく。
 黒よりも黒い黒。影よりも深い影。闇以上の闇たちが刀身の形となって瘴気を放つ。
 いままで影エリスが造り上げてきた闇の中でも最上級の闇たち。
 もし、夜が人の心に恐怖を植えつける存在なのだとしたら。その色だけで人心を狂わせるほどの黒を湛えて、剣
たちは解放の瞬間を待ち構えていた。唇を歪め、仇敵である魔剣使いを、射殺すほどの視線で睨みつけながら、
影エリスは叫ぶ。

「最後よ、柊蓮司っ !! 滅び去ってしまえええエーーーーッ !!」

 轟、と風が鳴る。周囲に浮かぶ剣、また剣。それらは影エリスの号令を受けて、彼女の全身全霊、全生命全存
在を凝り固めた刃の雨となって柊目掛けて降り注いだ。逃れえぬ。避けきれぬ。あんな深手を負った身体で防ぎ
きれる攻撃などではない。なにが勝機か。なにが最強の魔剣使いか。なにがウィザード、なにが人間、なにが柊
蓮司か ―― !

 勝利を確信するのは、私のほうだ。
 たとえこの身は滅びても、貴様だけはこの世界から消し去って見せる。肉片に裂き、骨を欠片へと砕き、その血
液の最後の一滴までをも啜りつくしてから、私は滅びよう。これが私の狂気の力。正気では辿りつけない領域から
繰り出される正真正銘、最後の攻撃。人の心が到達しえない場所から得た、無上の力なのだ ―― !

 笑う。嗤う。哄笑う。
 影エリスは嗤い続ける。柊蓮司の無惨に肉塊と成り果てた姿を幻視して、狂気の哄笑を爆発させた彼女が。

 次の瞬間、凍りついた。



 瞼を薄く閉じる。顎を引き、首の上に乗せた頭を水平に保つ。
 見るでもなく、見ないでもなく。全方位に視線を配れるように。
 肩の力はできるだけ抜いて。しかし両手に握った魔剣の柄は決して放さぬように。
 視覚情報だけでは捉えきれぬ剣戟の妙を知り尽くし、また勝ち続けてきたものだからこそ辿り着く境地に、柊蓮
司はその一歩を踏み出した。
 風が鳴る。殺意が唸る。肌で感じ、気配で知覚する。
 攻撃が繰り出されてから動くのではない。それでは遅い。停滞することなき絶え間ない動きの中でそれを知り、
それに対処する。ある領域に達したものたちは、すべからくこの動作の中で生きている。この動作の中で戦いを
繰り広げる。立ち止まるな。動き続けろ。先を読め。読まれるな。一歩先んじ、さらにもう半歩先んじよ。
 流れを止めたものから敗れ去る。読み違えたものから葬られる。ゆえに、剣舞の流転する最中で感覚を研ぎ澄
ませ。対手が狙った箇所を護るのではない。敵の繰り出す刃の先に、己の剣を「置け」と。

 さればこそ ――

 影たちの女王よ、目にも見よ。
 これが魔剣使いだ。これがウィザードだ。これが人間だ。これが柊蓮司だ ―― !


36:名無しさん@ピンキー
08/10/13 22:36:08 /icXeAIG
支援

37:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:36:51 3Z75+5yK
「な、にいっ……… !?」
 それだけ叫ぶと、影エリスは絶句した。
 柊蓮司を襲う刃は八方よりの鋭い斬撃。第一陣は頭上から降り来る。
 魔剣の柄を頭上にさらし、その切っ先を地面に向け。刀身を自分の身体の側面へと密着させるような構えを取っ
た柊が、まるで踊るようなステップでわずかに半歩右へ移動する。一撃目を柄に最も近い部位で受け止めたかと
思うと、二撃目、三撃目の影が吸い込まれるように魔剣の刀身に受け止められていく。振り下ろされた刃を受け、
受け流す形で受け止める。柊の体移動に合わせて、魔剣という滑り台の上を、八本の影剣がずるり、じゃらり、と
滑り落ちていった。
 がしゃ、がしゃん、がしゃん。
 力なく地に落ちた初撃の八本が、目指す標的に触れることすらできず掻き消えた。
 剣舞は続く。
 半歩が、今度は二歩。わずかにリーチを取ったバックステップ。
 とはいえ、それはたかが二歩。たった八、九十センチにも満たない移動である。
 しかし、その二歩が。第二陣目の攻撃を柊に回避せしめる動きであった。
 頭上からの攻撃とくれば、当然予測しうる次の手は ―― 剣士同士の戦いであればさほど注意を払うことのな
い、足元を狙う斬撃である。玉砂利を削り、火花を散らし、一対の剣が左右の脚を狙って地を滑り、柊のくるぶしを
砕かんと猛追した。
 一歩、二歩。地から浮いた足が、足下の剣を難なく避けた。いや、そうではない。柊の歩みの隙間を、二本の剣
が、ただすり抜けていった ―― そうとしか見えなかった。
 これこそが一歩先を読む、これこそが半歩先を読む剣士の所作。
 攻撃を避けるのではなく。攻撃の来ない場所に身を移す。ただ、それだけの行為である。
「それなら、これは ―― どうっ !?」

 ぎゃり、ぎゃり、ぎゃり。

 耳障りな音を立て、黒い刃が水平に倒れた。柊の足元から頭上まで。彼の身長と同じ高さを等間隔に分割して、
さらに十本の剣が空中に配置される。それぞれ違う高さの空間を真横に薙ぐ刃 ―― 発想はエッグスライサー
と同じ。茹でた卵を等分割するアレだ。もっともこれは、卵ではなく人体をスライスするための物騒な “調理器具”
ではあるのだが。
「死ねぇえぇぇーーーーーーっ !!」
 まさしく、柊蓮司を料理するためのもの。それらが、ぶん、と唸りを上げて柊を襲う。
 眉間を。喉元を。胸を。腹を。脚を。膝を。それぞれがそれぞれの部位を狙い定めて振り抜かれる。
 柊は臆することなく。動じることなく。魔剣を頭上高く振りかぶった。いや、敵に先んじて、魔剣はすでに振り上げ
られていた。
「どりゃあぁーーーーーーっ !!」
 怒号。咆哮。それを、いったいなんと呼ぼう。柊の口から発せられた気合一閃、同時に斬り下げられた鋼の光が
空間そのものを両断したようだった。
 がきん、と鈍い音がして、柊の魔剣が一本目の剣を圧し折った。下降。さらに地を目指して下降する魔剣。
 続けざまに二本目が砕け散る。魔剣の描く一本の軌跡。その間合いに入ったものは、それがなんであれ破滅を
免れることは不可能だ。柊が十本の影剣の間合いに捉えられたのではない。柊の振り下ろす魔剣の軌道上に、
愚かにも飛び込んできたのが闇の刃たちだったのである。
 先ほどまでの動きを「技」と「静」に仕分けるならば、この一撃こそが柊の持ち味である「力」と「動」。
 鋼と鋼の打ち合う破砕音、砕けた黒の刃金が微粒子となり空中で燃え尽きる。
 音と火花のコンチェルト。
 三本目を破壊し、四本目を弾き飛ばし、五本目を捻じ曲げ、六本目を叩き割る。
 七本目を撃ち落し、八本目を刀身ごと削り、九本目を地に深く沈め、十本目を元の影へと押し戻す。
 それが、立った一振り。一連の一動作。
 柊が大地に魔剣を叩きつけ、その光景に影エリスが立ち尽くしたとき ―― すでに、二十本の剣が消え失せ
ていた。


38:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:37:46 3Z75+5yK
 ぶしゅ、と。
 なにかが飛沫を上げる音がする。
 それが、いまの動作をし終えた柊の傷が開き、鮮血を噴き出した音だと気づき。
 くれはとエリスが顔を上げた。
 ほんのわずかの交戦の時間、くれはがエリスの胸元から腹部にかけて治癒のための呪符をあてがい、自らの
傷にも回復を施していた間。柊の振るう技のあまりの冴えに、柊の魔剣の一撃のあまりの力強さに、陶然とこの
戦いを見守っていた二人が、いまさらながらに青褪めた。
 勝つと言ったって。勝つ見込みができたと言ったって。依然として柊は負傷しているわけである。
 ハッタリじゃない、確信がある勝利だという柊を信じ続けることで、こんなに辛い光景を目の当たりにすることとな
ろうとは。だからといって、目を逸らすことなどできなかった。信じると決めた以上、この戦いを見守ることが義務で
あると、言葉には出さなくともくれはとエリスは心に誓ったことなのだ。
 案の定。
 柊は深く大きな溜息にも似た吐息を、ゆっくり、ゆっくりと吐き出した。
 魔剣を身体にあてがい、わずか数十センチの距離のステップを踏み、ただ一度それを振り下ろしただけで、呼吸
を乱す彼ではない。ならばそれは当然、影の剣による一撃を腹部に受けたその影響でしかありえない。
 傍目に見ても、優勢なのは影エリス。
 百人が百人、そう考えるであろう光景である。だけれども。

 敗北の予感にわなないていたのは柊ではなく ―― 影エリスのほうだった。

 唇が乾き、震える。
 瞳が揺れ、焦点を失いかけていた。
 確信した勝利をもぎ取ることもできず、手負いの人間風情にすべての攻撃を受け流され。一見優位に立っている
かのように見える自分が、その実追い詰められているのを、影エリスはひしひしと実感していた。
 なぜ斬れない。なぜ殺せない。
 その想念だけが頭の中で渦を巻き ―――

「なあ、エリス」

 低く、太い声の呼びかけに、思わずエリスはハッとする。
 だけど、次いでエリスは気がついた。
 柊が呼びかけたのは自分ではないのだと。いままさに、命を賭して戦っている相手、影エリスのほうなのだ、と。
 その見つめる視線の先に、褐色の肌をしたもう一人の自分がいる。

「なあ、エリス」

 もう一度。
 しばしの沈黙と静止の後、影エリスがのろのろと顔を上げた。
 彼女も、それが自分への呼びかけだとは思ってもいなかった。だからこそ、驚きと困惑に満ちた表情を作りあげ
る。柊蓮司が、私のことをエリスと呼んだ、と。思えばこの世界に現れて、「エリス」という名前で呼ばれたのは初め
てのことではなかったろうか。そんな、益体もないことを考える。

「まだ、やるのか……… ?」

 驚くべきことを、柊蓮司は口にした。
 不覚にも呆気に取られてしまった影エリスが、すぐさまその言葉の意味することに気がついて声を張り上げる。
「情けをかけるつもり !? それとも命乞い !? どっちにしろ、私は貴方を滅ぼすわ !!」
 情けをかけるというならお門違いだ。まだ私には影の剣が残されている。戦う力が残されている。
 命乞いだというならば、本当に柊蓮司を軽蔑する。やっぱり、私に勝てるという言葉はハッタリだったということな
のだから。


39:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:38:28 3Z75+5yK
「そういうことを言ってるんじゃねえっ !!」
 怒声と同時に、再び溢れ出る大量の鮮血。くれはが、エリスが短い悲鳴を上げた。
「………そういうことじゃねえんだよ………」
 なぜか柊の顔が、肉体以外の苦痛に歪んでいるように見えて、影エリスは絶句する。
「………もう、やめにしようぜ。全部、無意味だ。お前がやろうとしていたこと、すべてがな」
 柊の言葉に、その場にいる誰もが凍りついた。
 私の行為のすべてが無意味 ―― ?
 ふつふつと湧き上がる憤りを抑えることができず、影エリスが叫ぶ。
「どういう意味 !? 私は愛するおじさまのために、この世界を滅ぼすと決めたのよ !? それなのに、貴方と志宝エリ
スが余計な邪魔をして………もう、私にはおじさまの意志を継ぐ力はない !! だけど、それならばせめて、貴方だ
けでも滅ぼしてやる !! そう決めたのよ !! それを無意味だなんて ―― 」

 私の最後の存在理由まで否定しないで。

 最後の叫びを口にすることはできなかった。口にするわけにはいかなかった。
 それを言っては、あまりにも自分が惨めではないか。
 悔しさと、悲しみと、絶望と。それらすべてを払拭するために、影エリスは再び手を振りかざす。
 残る、黒き刃が柊に向けられた。

「エリス………それじゃあ、お前 ―― キリヒトの “なに” を継ぐつもりだったんだ……… ?」


 し………………ん。


「………え……… ?」
 我ながら阿呆のような声を出してしまった、と思う。
 なんだ。なにを言っている。柊蓮司はなにを言おうとしている ―― ?

「気づいちまったんだよな、戦ってるうちに。お前、やっぱり似てるんだ。そっくりなんだよ………エリスに」
 そう言って、柊が淡い微笑をエリスのほうへ向けた。
 一瞬だけ目を見開いたエリスが、淋しく笑って柊へ向けて、こくり、と頷く。
 似ているのは姿形が、ではない。もって生まれた境遇が、である。
 キリヒト=ゲイザーの粛清の意志を遂行するために産み出され。身に余る力を持たされて。
 “おじさま” に呪縛されていた、二人の少女。
「だから、なんていうか………もしお前が滅びてしまう存在なんだとしても………こいつの力は、できれば借りたく
なくなっちまったんだよ………」
 魔剣をかざしてみせながら。柊は、そんなことを言った。
「だけどよ………やっぱりこれだけは言わなきゃな、って思う」

 ―― ナニヲイウツモリダ。
 影エリスの胸に、暗雲がわだかまる。

「キリヒトのヤツ、この世界を滅ぼすって言っていた」

 ―― ソウダ。ダカラワタシハ。

「この世界は、アイツが見守るに値しないろくでもねえ世界だ、って」

 ―― ワカッテル。ソンナコトハワカッテル。


40:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:39:10 3Z75+5yK
「一度世界を滅ぼして、もう一度自分が見守る価値のある世界を ――」

 ―― ! マテ。マッテ。ナニカイヤダ。ソノサキハイワナイデ !

「それじゃあ、お前は」

 ―― イウナ。イウナイウナイウナイウナイウナイウナイウナイウナイウナ ――


「………この世界を滅ぼした後で、どうやって………どんな世界を造ろうとしたんだ……… ?」


  Q6>/w1\M△fさ0e■X6yo&$29EP32たfl+6 ――― !!

 影エリスの中で、なにか大きなものが音を立てて崩れた。
 キリヒトの望みは、世界の再生。
 薄汚れた世界を粛清し、真に護る価値のある世界を創造しようという目論見。
 だが、それならば。キリヒトの意志を真に継ぐということは、新世界の創生ではないのだろうか。
 そしてその世界を、終焉のその瞬間まで見守り続けるということではないだろうか。
 それは ―― あまりにも大きな力と、悠久の時間を必要とする事業であろう。
 だから無意味だと、柊蓮司は言ったのだ。無理だったから。始めから彼女には無理だったから。
 世界を造る神としての力もなく。その世界を見守る永遠のときを生きることもできない影エリスは ――

 ただ、世界に破壊をもたらすだけの存在でしかない。

 影エリスは夢を見る。
 とびっきりの悪夢を夢に見る。

 この惑星を覆いつくす影。すべての生命を根こそぎ奪い去り、ただただ搾取し続けるだけの、なにも生み出さな
い存在。なにもかもが息絶え、死に絶え、暗黒で覆いつくされたこの星の只中、無明と荒廃の地平に、ただひとり
きりで立ち尽くす、褐色の肌をした一人の少女。
 ただ滅ぼしただけ。ただ世界を破滅させただけ。
 生命を失った惑星で、永遠にただひとり、虚空を見上げて孤独に震える自分の姿。


 こんなものが ―― “おじさま” の望んだ新世界であるはずがないではないか。


「だから、もうやめようぜ、エリス………せめて、このまま ――」
 柊蓮司が言う。
 せめて、なんだというのだ。せめてこのまま安らかに、とでも言うつもりか。
 それこそ、無意味だ。それこそ、私の存在した理由を失わせるものだ。
 それになぜ、そんな悲しい目をする。なぜ、お前のほうが泣き出しそうな顔をして唇を噛んでいる。

 なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜっ ―― !!

 影エリスが魂からの絶叫を天に放つ。
 振り上げたままで硬直した両腕を、柊蓮司へ向けて振り下ろす。
 
 最後の ―― いや ―― 『最期』の刃を、影エリスが解き放った ―― 。


41:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:40:50 3Z75+5yK
                                                                      


 それは、いままで誰も聞いたことのないような絶望の悲鳴だった。
 聞くだけで、他人まで悲嘆に暮れさせ、そのものの魂すら滅びに追いやるほどの叫びであった。
 自然と、涙がこぼれる。自分と同じ声で叫び、自分と同じ顔で絶望に顔を歪ませる褐色の少女。
 エリスは目を閉じ、目を背けようとして、結局それができなかった。
 なぜだか、彼女のことはしっかり目に焼き付けておかなければ、とそう思った。
 エリスは涙で曇る瞳で、彼女と彼の最後の激突をただただ見つめ続けていた。



 投射。刺突。斬撃。残る力のすべてを注いだ波状攻撃。
 滅茶苦茶に腕を振り回し、見開いた目でただ柊蓮司の姿を凝視しながら、絶叫と共に繰り出す狂気の刃。
 法則性も思慮もなく、しかし黒い切っ先は狙い過たず柊の急所目掛けてほとばしる影の剣たち。
 がきっ、じゃらっ、ざしゅ、と物凄まじい音を立て、風を薙ぎ大気を震わせ、愚直なまでの攻撃を繰り返す。
 初撃の剣二十本が失われた後は、もう攻め手が休まることはなかった。
 その刃すべてを、柊は受け止めていく。
 斬り、払い、砕き、叩き、あるいはかわし、時には防ぎ、または避け。
 目まぐるしく魔剣をひるがえし、影エリスの放つ剣を一本一本無効化していくのだ。
 柊に決して届くことのなかった刃が次々と霧と化し、風に乗って消えていく。五十本、六十本、七十本。
 出血と疲労で普段の動きがようやく鈍り始めた柊を、やっと影エリスが捉えたのは、ちょうど八十本目の影の刃
を繰り出したときだった。叩き落しきれなかった剣の一本が、受け止め損ねて軌道を変えられ、したたかに柊の腿
を切り裂く。軸足として酷使していた左足の太腿から、血飛沫が上がった。
 しかし。
 柊は怯まなかった。
 かすかに眉根を寄せただけで微塵の停滞もなく、魔剣の刀身を閃かせ続ける。
 まるで新たな傷の痛みなど感じていないかのようだった。その代わりに、影エリスの力が底をついてくるにつれ、
その表情に刻まれた懊悩はますます深くなっていく。傷ましく思っているのか。哀れんでいるのか。その胸中にあ
る想いの正体はわからなかったが、影エリスと同等かそれ以上の苦悩を、柊が抱いているであろうことは疑うべく
もなかった。
 八十五本目 ―― 最後が近づく。
 九十五本目 ―― 九十六本目 ―― もうすぐ決着が、つく。
 そして ―― すべての黒き剣が地に落ちた。

 静寂が、訪れる。
 結局、柊は二者の間合いをそれ以上詰めることは絶対しなかった。
 踏み込みひとつで、彼の魔剣の攻撃範囲に影エリスを捉えることができたにもかかわらず。
 柊蓮司は彼の言葉通り、魔剣での滅びを影エリスに与えることがついにできなかったのであった。
 影エリスの手が、柊に向けられたまま行き場をなくして宙に浮いている。
 その顔からは、いつのまにか狂気の色がすべて消え去っていた。
 ひび割れた額から立ち昇る黒の霧 ―― 搾取し、溜め込み続けた力の放出は、もはや途切れ途切れになっ
ている。影エリスもまた、その力を使い果たし、自らの存在の力すらも枯渇し始めていたのであろう。

「柊………蓮司………」
 それは、ひどく静かでどこか悲しい声だった。

「ああ………なんだ、エリス」
 応える柊の声もまた、とても静かでやはり悲しく。


42:名無しさん@ピンキー
08/10/13 22:42:45 /icXeAIG
支援

43:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:43:35 3Z75+5yK
「私はやっぱり………失敗作だったのね………おじさまの想いを継ぐこともできない役立たず………志宝エリスに
敵わず………こうして、貴方にも敵わない………ああ………せめて、壊したかった………おじさまが忌み嫌った
この世界を………せめて壊してやりたかった………そう思い続けてきたけど………それすらも無意味なことだっ
たなんて、ね………」
 影エリスが自嘲の笑みをこぼした。
 そのとき ――

「違うっ……… !」
 胸を押さえ、まだ完治しきらない傷を抱えたまま、エリスがよろめきつつも立ち上がった。

「生まれてきたことに間違いなんかないんだよ ! 無意味なことなんてないんだよ ! 私だって同じ、同じだった
から……… ! だけどみんなに意味を貰った。生まれた意味、これから生きていく意味、全部全部、みんなに貰う
ことができた ! この世界が大好きで、この世界で生きていくことの意味を見つけることができて、だから私は生
きていくことができる ! だから……… !」

 だから、貴女にもそうであって欲しかった。
 “おじさま” のために、ではなく自分の居る意味を見つけて欲しかった。
 それはもはや手遅れなことかもしれなかったが、でもそう願わずにはいられなかった。
 言葉と一緒に涙が溢れて止まらない。本当に伝えたいこと、胸の中にある言葉、それは涙に邪魔されて結局声
に出すことはできなかった。だが、その涙こそが ―― 千の言葉、万の文字よりも雄弁に、エリスの内心を代弁
するものである。敵であるはずの自分のために、あれだけ泣きじゃくることのできるエリスを、もうひとりのエリスが
不思議そうに見つめていた。
 その瞳からは ―― すでに妄執の嵐が完全に消え去っていた。

「柊蓮司………最後にひとつだけ………教えてほしい」
「おう………」

 影エリスの姿が、陽炎のように揺らめいていた。
 淡々と言葉を交わす二人の間に流れる空気に、いまはもう張り詰めたものはない。

「これを聞かないまま、滅びるのは悔しいから………この局面で、私はどんな間違いを犯したのか………貴方が
見つけた “勝機” って、なんだったのか………それだけが………どうしてもわからない………」
 深手を負ったままの戦い。敵である自分には、いまだ数十本の影の刃。
 それなのに柊は勝機を見つけたといい、そして言葉通りにすべての攻撃をしのいで見せた。
 それがどんな手段で為しえたものなのか。自分の攻め手にどんなミスがあったのか。それとも、その攻め手を防
ぐ方策をいかにして見つけたのか。
 どうせ消えていく身だ。それを知ったからどうということはない。
 だけど、いまはそれが知りたい。切に知りたい。
 柊蓮司という男の強さの一端を垣間見たい。この好奇心は、いまさらながら『柊蓮司』という青年に、初めて影エ
リスが本当の意味での興味を持った証拠かもしれなかった。

「あー………聞かなくてもいいだろ、そんなこと………大したことじゃねえし………もしかしたらガッカリするかもし
れねえから、さ………」
 途端に口ごもる柊。
 柊は ―― なんと、驚いたことに ―― 照れているようだった。
 その様子がなんとなく可笑しくて、影エリスはふふっ、と笑う。恥ずかしがっている柊蓮司をからかってやろうか、
苛めてやろうかという気持ちになった。邪気のない、子供のような可愛らしい悪意が浮かぶ。
「滅びていく私の………最後の質問でも……… ?」
 わざとらしく、同情を誘うように。柊蓮司が、戦いの中でも見せなかったような情けない顔をしてみせる。


44:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:44:18 3Z75+5yK
「しょうがねえな………」
 ついに観念したのであろうか。頭をガシガシとかき回しながら、柊が躊躇いがちに口を開いた。

「お前の不意打ちで腹、ぶち抜かれた後………実は勝ち目がないかも、って思ってた」
「え………」
 意外と言えば意外な柊の告白に、影エリスだけではなく、くれはもエリスも異口同音に声を上げる。

「怪我させられた上に、黒の剣が百本。こりゃ、負けるかもなって思ってた」
 ならば、「勝機を見つけた」というのはやっぱりハッタリだったのか ?
「さすがに、百………ってのはな………なんつーか、三桁は反則だろって思った」
 生死を賭けた戦いに反則もなにもあったものではないだろうが、きっとそれが柊の率直な感想だったのだろう。
 戦いの最中ですらもそんな素振りは毛ほども見せなかったとはいえ、もしかしたら一度は死を覚悟していたのか
もしれない。
「でも、エリスとくれはのおかげで、これならいけるんじゃねえか、いや、いけるだろって思ってさ」
 話を振られた二人が、「え ?」「はわわ ?」と同時に間の抜けた声を上げる。
 一方の影エリスは、柊の口元を、どんな一言も聞き漏らすまいとするかのように見つめ続けていた。

 ああ ―― 続く言葉を受け止めた三人の少女たちが、いかに呆れたか。
 柊が再び語った言葉とは ―― 。


「そンとき俺………『ああ、一本でもあの剣が少なきゃなんとかなるかもしれねえのにな』って、そんなこと考えて
た」

 ………………………。

「なん、ですって……… ?」
 いったい、何回私を絶句させれば気が済むのだ、柊蓮司 ―― そうとでも言いたげな影エリス。

「剣百本ってのは無理かもしれねえ。だけど、九十九本ならなんとかなるかもしれねえ。つまり俺が考えてたのは
そういう………っ、いっ、いってーーーーーーっ !! ば、ばか、くれはお前なにすん………どわああああっ !?」
「ばかーーーーーーっ !! ばかひーらぎーーーーーーっ !! そ、そんなの、そんなの全然勝機でもなんでもないじゃ
ないのよーーーーーっ !?」
 ああ。さっきまでの戦いの緊張感はなんだったのだ、とでも言うしかあるまい。
 あまりといえばあんまりな、柊の言う『勝機』とやらに、ついにくれはがキレた。
 肩の怪我は治癒しきっていないのだが、そんなことはもうお構いなし。だだだっ、と駆けてきて、こともあろうに新
たに出来た傷のある左腿に、後ろからトゥーキックをかましてみせる。
「いで、いでででっ、おい、怪我、怪我してんだ………おごおおおぉぉぉっ !?」
「知るかーーーっ !? ばか、ばかひーらぎ、もう死んじゃえーーーーっ !?」
 血の赤が彩りを添える、いつも以上に過激な夫婦漫才。見れば、口をぽかんと開けたエリスが、へなへなとその
場に座り込んでいた。たぶん、腰が抜けている。
 その様を、唖然とした顔で眺めていた影エリスが ―― 笑い声を立てた。
 きっとそれは、彼女がこの世界に産み出されて、初めて発した本当の意味での『笑い』であった。

「あ、あは………あは、はははは………なに、それ。あは、くくくくくっ」

 笑いながら、涙が出た。
 赤羽くれはが怒っている。志宝エリスが脱力している。しかし、影エリスだけは ―― 柊蓮司と激闘を繰り広
げた彼女だけは、柊の言葉の中に彼の真の強さの正体を見つけていた。


45:エリス~悪夢の終わり・後編~
08/10/13 22:45:42 3Z75+5yK
 柊蓮司の言うとおりなのだ。
 『無理かもしれない』と『なんとかなるかもしれない』の二つの言葉の持つ意味。
 その二つの間の距離がどれだけかけ離れているか。
 それは、距離で言うなら何光年、時間で言うなら幾星霜。
 意志と狂気の力を支えにここまで戦ってきた彼女には、それがよくわかる。

 想いには想いの持つ力があり。
 人間には人間の強さがある。

 柊蓮司はそうやって ――
 想いの力でただ一本の微細な針をもって山を崩し ――
 またあるときは、二本の腕を翼代わりにはばたかせて空を舞い ――
 そうでないときも、吐き出す息だけであまねく木々をなぎ倒してみせたのであろう。

 だからこそ、柊の言葉が影エリスの胸にはストン、と落ちた。十二分に納得できた。
 仲間が自分の負担を減らしてくれた。百本の剣の一本を引き受けてくれた。だったら、それに全力をもって応え
てやろう。きっと、彼にはその想いも強くあったのに違いない。
 柊蓮司とは、それが出来る男なのである。

 それに気づいた時、彼女は。

(ああ、この世界もこんな人間たちがいるのなら、そう捨てたものではない)

 初めてそう ―― 思うことが出来た。

 影のエリスは夢を見る。
 世界への憎しみを捨てた自分の姿を。
 そこには柊蓮司や赤羽くれはがいて。当たり前のように自分のことを『エリス』と呼んでくれて。
 そして、志宝エリスと私は双子の姉妹のように並んで歩き、この世界のどこかの街並みの、ひとつの風景として
存在している。
 そんな、夢を見た。


「まったく………この世界は………」


 それが、彼女の最愛の人が遺したものと同じ言葉であったことを、彼女は知らない。
 柊蓮司たちの立てる喧騒を遠くに聞きながら、もうひとりのエリスは ――


 静かにこの世界から姿を消した。

(エピローグへ)


46:名無しさん@ピンキー
08/10/13 22:45:45 /icXeAIG
支援

47:エピローグ・エリス~すべての悪夢のあとで~
08/10/13 22:47:22 3Z75+5yK
                                                                      


 赤羽神社境内。
 巫女服姿に身を包んだ青い髪の少女が、竹箒を忙しなく動かしているそんな光景。
 文字通り、世界中を巻き込んだ『シャドウ事件』(通例として以後、このように呼ばれるようになる)が収束を迎え
た翌日には、まるで何事も起きなかったかのように、そんないつも通りの光景を見ることができる。
 空を埋め尽くしていたあの暗雲はすでになく、夏の日差しは燦燦と降り注ぎ。
 少女 ―― 志宝エリスの日常は、ようやく取り戻されたのであった。
「ふう………」
 額にうっすらと浮かんだ汗を拭う。
 月衣を持たないエリスには、この強い夏の日差しが直接肌で感じられる。
 それは半分残念で、半分嬉しい感覚でもあった。
 ふと、青い空を見上げる。なぜか、思い出されるのは影エリスのことだった。
 最後の戦いの直後、いつの間にか、それこそ影が陽を浴びて薄れるように消えてしまっていたもうひとりの自分
のことを想い、エリスはとても ―― 考えてみれば奇妙な話なのだが ―― 寂しい想いに捉われたのである。
 敵だったのに。世界を破滅に追いやろうとした敵だったのに。
 もっとちゃんと話をしたかったな。もっといろいろな話を聞いてあげたかったな。
 そんなことを思ったのであった。
 自分と同じ境遇の少女。一歩間違えれば、 “あのとき” のエリスも彼女と同じ運命を辿っていたかもしれない。
 そう思うと、やっぱり他人のようには思えなくて。

 この一連の騒動は、まるで嵐のようにその最後を迎えた。
 影エリスの消滅と共に、全世界を覆っていた影は掻き消え、赤羽神社付近にアンゼロットが待機させていたロン
ギヌスによって、周辺住民の救助と、この戦いに参加していたウィザードへの救援が行われていた。
 負傷して戦線を離脱していた緋室灯は絶滅社の研究所へと身柄を移され、完全回復までメンテナンスを受ける
という。腕利きのヒーラー数十名が一度に押しかけてきた神社の境内では、くれはから殴る蹴るの暴行を受けて
逃げ惑っていた柊と、まだ傷の感知していないくれはの二人をなんとか取り押さえ、半ば強引な形での治療が行
われていた。
 今回の戦いでもっとも深刻なダメージを受けたはずの彼女 ―― 大魔王ベール=ゼファーが一番の気がかり
であったが、
「あん ? 殺したってなかなか死なねーぞ、アイツは。心配するだけ損だぞ」
 と、柊にあっさりと一蹴されてしまった。
 どこかでその台詞を聞いているベルさんに、手酷いしっぺ返しを喰らわないだろうか ―― エリスが逆にそっち
を心配してしまうほどの、あっけらかんとした返答である。


48:エピローグ・エリス~すべての悪夢のあとで~
08/10/13 22:47:58 3Z75+5yK
 そして。
 これは事件の規模から考えると、驚くべき吉報だったのだが。
 事件終結の夜、わざわざ気を使って連絡を入れてくれたロンギヌス・コイズミからの事件の顛末報告を信頼する
ならば、
『今回の事件によるシャドウ被害ですが………負傷者・衰弱者の数はそれこそ世界規模で拡がっていたのです
が、驚いたことに………死亡者はゼロ、との報告が為されている模様です』
 とのことである。
 さすがにそれはないであろう、とのアンゼロットからの横槍で、ロンギヌス一同再調査を命じられたとのことであ
るが、
(たぶん、それは本当にそうなんじゃないかな)
 エリスは、コイズミの報告が正しいのではないかと直感的に感じ取っていた。
 最期のとき。
 影エリスが、この世界から消失したとき。
 彼女は、自分が奪った存在の力や生命の力を、還すべきところに還してから、逝ったのではないだろうか。
 エリスは、そんな気がするのである。

「きっと、そうだよね………エリス」

 エリスはもう一人の自分を自分と同じ名前で呼ぶと、掃除の手を休めて再び空を見た。
 彼女には、この一件においてただひとつ、後悔していることがある。
 それを憂えて、エリスは深い溜息をついた。
 彼女に言いたかったこと。言わなければいけなかったこと。言ってあげればよかったと思うこと。
 それを、ついに言う機会を永遠に失ったまま、もう一人の自分は消えてしまったのである。

「最後は………微笑ってたよ………キリヒトくん………微笑ってたんだよ………」

 永遠に失われてしまった、かけてあげたかった言葉を呟いて、エリスは青い瞳をそっと閉じた。
 境内のどこかで蝉の鳴く声がする。
 夏の日はいまだ熱く、日が落ちるまで生命みなぎる暑さは冷めまい。
 境内に続く石段の遥か下から、にぎやかに近づいてくるざわめきは、参拝客のものであろうか。


「さよなら」


 誰に言うとでもなく呟いて、エリスは再び、自分の日常の中へと還っていくのであった――。


(END)


49:名無しさん@ピンキー
08/10/13 22:48:39 3Z75+5yK
支援有難うございます。
大変長い事、お付き合いを頂いた皆様すべてに深い感謝を。
思えば、書き始めた季節に合わせて舞台を夏に設定したのに、いま秋ってどういうことなのか、と。
全編を通してH成分が少なかったことに愕然としつつ、
複数スレにまたがる投下にも関わらず、ご声援・ご感想・ご意見いただいた皆様、本当に有難うございました。
また、ネタが浮かびましたら参りますので、懲りずにお付き合いくだされば、と。
ではでは。


50:名無しさん@ピンキー
08/10/13 22:49:20 /icXeAIG
とりあえずあなたのやるべき事はエンターブレインに小説を持ち込む事じゃないかと思うんだ。

51:名無しさん@ピンキー
08/10/13 23:39:50 iRSHRRSU
>>49
うん、凄かった。
でもいったい何KBあったんだろうこれ。

52:名無しさん@ピンキー
08/10/13 23:43:18 V3OXKVZE
>>22 マッドマン氏
魔王少女の爆撃舞踏曲、完結おつかれさまです。今回はベルがあんまりポンコツじゃないですね(ぉ
前回までで熱く激しいバトルが終わり、今回は戦後処理と次回への伏線ですか。
たった三行でしたが、理不尽に失われてしまった人たちについて書かれていたのがうれしかったです。
静寂が支配する街で柊やブルー・アースはなにを思ったのでしょうか。
ほかにもいろいろと疑問が残りました。はたして二人のアンゼロットはどんな話し合いをしたのか。魔王勢は次は何を仕掛けてくるのか。
そして、何よりも今回助けた名もなき魔王にはたしてフラグは立ったのだろうかと(ォィ
…いやあり得ないってわかってるんですけどね。でも、だからこそ妄想が止まらないというかw
妙に懐かれて斬ることもできずに困る柊とか、はわはわ慌てるくれはとか、固まるエリスとか、やっぱ殺っとけばよかったと思う
ベル様とか、微笑んだまま最強クラスのウィザード軍団を招集するアンゼロットとかが一瞬で思い浮かぶあたり、おれの頭も相当に壊れてるらしいですw

次回作の「勇者少女の連携狂騒曲(仮)」も楽しみにしています。無理しない程度に頑張ってください。


>>49
>>50
エロ分落して、いくらか手直しすれば行ける気がしますね。

まあ、それは置いておいて。
完結おめでとうございます。長い間楽しんできた夢エリスも最終回。最後の最後まで目が離せない、
緊迫したバトルを存分に味あわせていただきました。
毎回毎回、自分の予想を超える面白さに続きを今か今かと待っていたのもいい思い出です。
さすがに今回の柊の「勝機」よりも凄いのはなかったですけどね。「一本でもすくなけりゃなんとかなる」とかって…
予想の斜め上にもほどがありますがなww

それと、最後のエリスのセリフとか本当にぐっとさせられました。逝ったもう一人の自分に伝えられなかった最後の心残り。
それをそっと零すエリスがなんだかものかなしい感じにさせられました。

またネタが浮かべばいらっしゃるということで、その時を楽しみに待っています。
最後に、愛した叔父様と同じ言葉を残して消えた、一人の少女の冥福を祈って。
本当にお疲れ様でした。

53:マッドマン ◆265XGj4R92
08/10/14 00:31:46 IVLvtyte
あえてコテつきでレスさせてもらいます。
いやはや凄いですね。
自分の作品も含めてですが、新スレ立てたばかりで二つも長編作品の完結話を投下。
50レス程度しかまだ入ってないのに、もう72KBww
なんというお祭り騒ぎですか(苦笑)

>エリス夢氏
超長編お疲れ様でしたー!!
なんというか最初から最後まで見続けてさせてもらいましたが、凄いとしか言いようが無いのが凄いw
エロパロの領域なのか? ええー!? と疑問が浮かび上がりますw
くれはは素敵だし、エリスも健気だし、ベルもポンコツ(最後らへんはな!)じゃないし、色んなキャラクターが総出演でしたが、見事なハッピーエンドでした。
そして、なにより柊!
かっけえ、柊かっけえよ、馬鹿だけどww
なんというか一話毎にぐぐっと数段飛ばしで進化していく戦闘描写に興奮しました。
正直最初の方と最後のほうだと、戦闘描写の練り込みの度合いが、魂が違います。
まだまだマイナーなNW小説ですが、これほど凄いのはあまりいないんじゃないかな? と思えます。
書き手が居ない分、未知な領域ですが、新たな可能性が見えました。
本当に凄いです。

そして、黒エリスに対する勝機……アホかw
でも、柊らしい凄さでした。
ああ、俺も戦わせたいなぁ。でも、それだと二番煎じ、三次創作になってしまう!(書きたいのは山々ですが、三次はどうなんだろう?)
そして、確実にエリスのハートをゲッチュどころかフラグ確定にしてしまうことが確定なので、俺には出来ない!(苦悶)

とまあ、次回の作品も楽しみにしてますよ!


54:名無しさん@ピンキー
08/10/14 07:24:00 3wo8KYtW
>>49
言ったことをやれると思わせる柊蓮司とそれを魅せる文章に圧倒されました
やっぱ、柊格好いいなあ
男も女もコイツと少しでも一緒に居て惚れない奴はいない気がするw


55:名無しさん@ピンキー
08/10/14 17:14:34 n/Ed4Sie
>>52
甘いな、おれは「自分が助かった経緯を映像付きで知って人間に借りを作ったままでは
 いけない(それと若干の好意)と考え借りを返すためにどこからか仕入れた間違った知識で
 スク水堕天使メイド姿で柊家訪問、柊が姉ちゃんにぼこられるなどのイベント後
 魔王の出現を感知したウィザード襲来、そこでひと悶着あり庇ってくれた柊に対して
 フラグ確定」
ってとこまで妄想したぞ!ちなみにスク水堕天使メイドとは(以下妄想過多につき省略)。

56:名無しさん@ピンキー
08/10/14 19:15:01 uRPJnwND
堕天使メイドで真っ先なきくたけヒロイン一番の汚れキャラを思い浮かべた俺は異端だろうか?

57:エリ夢作者
08/10/14 19:34:42 zcsa1JA3
頂いた御感想にまとめてレス返しなど。
言われるかと思ってましたが、そうか、柊の「勝機」はやっぱりアホっぽかったか(笑)。
でも影エリとの決着は、「柊自身の力による柊らしい勝利を」という当初の考えを重視したのでこんな結果になりました(笑)。
皆様に過分な評価を頂いて、こそばゆい気持ちもありましたが大変嬉しくも思います(苦手な戦闘場面を褒められたのが特に!)。
心残りはHシーンの少なかったこと、他のキャラにもっと見せ場をあげたかったこと。
でも、マユリたちまでカバーしようと思ったら、あと四、五回くらい投下増えてたかも(笑)。
あと、エリスをもっとヒロインさせたかったな、と。ベルやアンゼのようなアクの強いヒロインや本妻くれはがいると大変です。
次回のディテールはまだ練ってませんが、「くれはとそういう関係になってない柊」と「宝玉戦争後、柊と結ばれたエリス」というパラレル的な二人の話もいいななんて無責任なこと言ってみたり。
予定は未定ですけど。長く書いてたせいもあるのか、私の中のエリス株急上昇(笑)。
とはいえ、執筆はいつになるやら(別板でDXも開始したんで、少なくともそれが終わるまでは無理かな、と)。
ではひとまず筆を置きます。長文失礼しました。最後にもう一度、有難うございました。
ではでは。

58:名無しさん@ピンキー
08/10/14 19:44:14 FOY+T/Vf
>>57
もしかしてブーンにダブクロやらせてるのはあなたか。

59:名無しさん@ピンキー
08/10/14 20:44:32 KarFxFYZ
>58
kwsk

60:名無しさん@ピンキー
08/10/14 20:51:38 FOY+T/Vf
>>59
VIPでそう言うスレがあった。
プレイのPCをそのまんまAAキャラに置き換えたやつ。

61:魔王少女の爆撃舞踏曲 おまけ ◆265XGj4R92
08/10/14 22:47:51 jorRZWAX
>>55
つまりこういうことですね? 分かります!


 本編とは関係ないよ。
 脊髄反射で書いたよ。
 エロス、エロス、メイドぉおおお!!!




 朝起きたら冥土に居た。
 いや、違うメイド(?)が居た。

「……」

 沈黙と共に起床する柊 蓮司。
 先週どこぞの都市で巨大冥魔と激闘を繰り広げたばかりであり、疲労の抜け切らない体は少しだけ鈍く、朝の覚醒としては少々遅い。
 学校を卒業し、見事な定職に付かないニート……訂正。フリーランスのウィザードとして活動している彼としては、任務以外であれば朝寝坊も許される身だ。
 それが朝起きたら、ゆさゆさと揺さぶられて起床した。
 誰だ? と寝ぼけ眼で考える。
 姉の京子? 違う、あの姉は揺さぶるなんて優しい起こし方はしない、蹴り起こし、それでも起きないならばエルボードロップの一撃を鳩尾に叩き込んで文字通り叩き起こすだろう。
 激痛を伴う覚醒ははっきりと彼の脳内を起床させ、否が応でも準備万端のスタート段階、エンジンはかかったぜ! モードにするはずだ。
 いやいやいや、まて落ち着け、素数を数えろ、まったくもって今冷静じゃない。

「落ち着け、柊 蓮司落ち着け」

「?」

 自分に呪文のように言い聞かしながら、柊 蓮司は瞼を揉み解し、さらには唾をつけてこめかみを押した。
 頭痛によく効く方法である。
 俺は冷静だ。
 朝起きたら裸の女が飛び込んできたり、或いは窓ガラスを叩き割ってキルキル部隊が襲い掛かってきたり、寝て起きたらアンゼロット宮殿で簀巻きにされているなんてよくあることじゃないか、HAHAHA―悲しくなってきた。

「さて、目は覚めた。いざっ!」

 カッと必殺技に開眼したかのように柊が目を見開く。
 その先には―メイド(?)がいました。

「夢じゃねぇえええええ!!」

 絶叫だった。
 その柊の叫び声に、亜麻色の髪をしたメイド(?)少女が「ピィッ!?」と声を上げた。
 目をパチパチと鳥のように瞬かせて、驚いた顔を浮かべる。


62:魔王少女の爆撃舞踏曲 おまけ ◆265XGj4R92
08/10/14 22:48:51 jorRZWAX

「ピィ?」

「ピッ?」

 少女の口から洩れ出たのは鳥のような甲高い声だった。
 どうやら人語は喋れない―酷く魔王としては珍しい少女だった。
 そう、柊は目の前のメイド(?)には見覚えがあった。
 先週どこぞの冥魔に捕まっていた魔王である。
 何故ここにいるのだ? と首を捻るもそれ以上に傾げるものが合った。

「なんて……格好をしてやがんだ」

 柊は呆れた。
 少女は極めて変わった格好をしていたのだ。
 美しい亜麻色の髪を左右に垂らし、カチューシャをつけているのはいい。
 その十代半ばにも満たない顔つきには似つかわしくない膨らんだ乳房はメイド服、いや、スク水? なのだろうか、酷く淫らな格好で縛り上げ、引き締めていた。
 少女の外見年齢からすれば当たり前のようなスクール水着だが、それは発達した彼女の体つきにとっては覆い隠すには足りない、どこかボンテージにも似た下着も同然だった。
 きつく彼女の肩から伸びたゴム紐は前面から押し出した乳山による押し上げで細い紐のようになっているし、首前まで覆うはずの水着前面はその小ささ故に大きく膨らんだ乳房によって胸元を露出させ、その谷間が大きく見えていた。
 そして、極め付けが股間だった。
 メイドらしいのだろうか? 黒いスカートを水着の上につけてはいるが、膝上よりも短く、単なる腰布にしか見えないフリルのついたスカート。
 その下にちらちらと見える股間、それはぎゅうぎゅうに引き締められたスクール水着の食い込みによって秘所の形まで浮かび上がり、淫猥な形を浮き彫りにしていた、妖艶的な格好。
 そして、極めつけなのだが―その背中には以前にはまったく見られなかったものが見えた。
 翼である。
 猛禽類のどこか分厚い翼が、何故かミニサイズで少女の背中でパタパタしていた。

 この格好を一言で語るなら―【スク水堕天使メイド】?

 いや、おかしい。
 そんな言葉がどこから出たんだ、俺の脳内。
 柊 蓮司は頭を抱えて呻いた。

「やべえ。俺もそろそろ末期かもな」

 戦いの神経症か。
 少し病院にいったほうがいいかもしれない。
 そんな柊の様子を、「ピェ?」と少女が小さな唇を尖らせて、首を傾げた。



 そんな柊の元に姉である京子が来襲してくるまであと十分。

 そして、その騒ぎを聞きつけたベルとアンゼロット率いる最強ウィザード集団が襲い掛かってくるまで三十分を切っていた。


63:マッドマン ◆265XGj4R92
08/10/14 22:51:23 jorRZWAX
>>55
つまりこんな風になるわけですね! わかります!(><)

投下終了 ノシ!
あ、魔王ちゃんの名前は【ハル=ピュイラ】(オリジナル)でした。
どうせもう出ませんが、一応設定明かしです。

64:名無しさん@ピンキー
08/10/14 23:52:29 KWfsMLHr
>>63
【ハル=ピュイラ】


アンソロで宝玉狙ってくれはのゼロ距離ヴォーテックス誤射で
撃墜されあかりんのマドレーヌに犯られとどめにフルボッコされた
ボクっ娘魔王の妹ですねわかります(ぇ


幸薄い姉妹ぢゃのぅ(ぇ

65:名無しさん@ピンキー
08/10/14 23:53:52 +1MVqcZP
ちょwwwいいぞもっとやってwwww
 
…てか襲撃なんかされたら魔王ちゃんと二人で逃避行して
余計にフラグが深まること請け合いです、この書物に書いてあるからわかります。

66:名無しさん@ピンキー
08/10/15 00:18:54 6l4XWalt
マッドマン氏さすがすぎるwwwwwwwwww

前作は戦闘シーンも凄かったですが、個人的にはHシーンもすげーよかったです。
あぁいう、ぬるぬるどろどろ系に襲われるシチュは大好きだーっ!!
しかも次回はレンですかっ、おっぱい星人の俺としては今から全裸待機するしかありません!!
全裸待機しながら「おっぱいとすらいむ……おっぱいとすらいむ……」と電波送っときますね

エリ夢の人もお疲れ様でした! すげー読み応え。最後の最後まではらはらしっぱなし。なに? エロが足りない? ほら、あれだ、確かあかりんもつかまってたから実はあの時に……と、加筆修正すればいいんですよ!

67:名無しさん@ピンキー
08/10/15 00:46:44 itwEVwnW
>64
あー…あの、せっかく俺好みの活発系ボクっ娘だったのにイラストの一枚さえもらえなかった不憫な子か…

んでもって、エリ夢作者さんとマッドマンさんお疲れ様ー
…私も本気で、エリ夢さんの作品、えろ分薄めるか削って、分量考えて描かなかったという
部分を追加したらふつーに出版してもらえそうって言うかしてくださいとか。
えろ分あるまま出版でも私は一向に構わんっ!!のですがw

そして、読んでて途中で誇り高き幼女なちびベル様思い出した今日。


68:マッドマン ◆265XGj4R92
08/10/15 01:00:54 HHUX/gUb
ばれーた!

>>64~以降
ま、まさかばれるとは!?
そうです、あのNWアンソロジーに出てきたボクっ子魔王の姉妹のつもりでした。
おそらく元ネタであろうハルピュイア(いわゆるハーピー)は三姉妹でして(一説によると四姉妹とも)
その中の一人のつもりでした。
名前が微妙に同じなのは、同じ種族出身ということでお願いしますw(ハルニ号でも可)

>>66
巨乳が好きですかw
ええ、私も好きです。
レンのエロスは数が少ないというかほぼないので、ちょっとドキドキしてます。
これからもよろしくお願いします。

69:名無しさん@ピンキー
08/10/15 01:37:50 8HXqXXZz
>ハーピー三姉妹
あいつら普通に名前あったような気も。
…まあ、それいったら最初にハル=ピュイアって名前を使ったひとが…
…アリアン・アクロス楽しみですね(何故か話を逸らす)。

70:強化姉ちゃん劇場 2/2
08/10/15 01:49:31 9tlAg8iw
魔王にコスプレだとぅ!?

それだ!

71:名無しさん@ピンキー
08/10/15 01:50:33 9tlAg8iw
ぐはあハンドル保存にチェックが
>>70の名前は見なかったことに

72:名無しさん@ピンキー
08/10/15 01:56:23 yh8RfwGp
レンのエロス…某板で着衣パイズリ見た程度だな

73:名無しさん@ピンキー
08/10/15 02:03:18 itwEVwnW
>72
kwsk

74:名無しさん@ピンキー
08/10/15 02:18:54 yh8RfwGp
そういや俺が誘導されたのもここか卓ゲ関係のスレのどっかだったようなw
たしかお絵描き板の依頼スレだったと思う、かなり前だから絵は流れてるだろうが

75:名無しさん@ピンキー
08/10/15 02:28:07 itwEVwnW
う、そうか。死ヌ程残念だが流れたもんは仕方ないよな…サンキュ。
誰か保存してないかなw

76:名無しさん@ピンキー
08/10/15 10:12:15 6l4XWalt
>>68 マッドマンの人
おお、同士よ! おおきなおっぱいには浪漫が詰まってますよね!
寒くなってくるのでお体に気をつけつつ、執筆頑張ってください! ……へぶしっ(全裸待機中)

>>75
逆に考えるんだ! 絵を見れないという事は、お前のイメージ力さえあれば、その絵よりも何倍もエロイレンたんのパイズリシーンを脳内で生み出せるんだ!
ここに、ある男の言葉をおいておく!
「起きてたって夢を見る事はできるんだよ。
そして、夢を現実にすることが出来るのが人間なんだ!!」

77:名無しさん@ピンキー
08/10/15 12:46:35 jpE8eB+J
>>73
虹裏のナイトウィザードの画像スレじゃないの?

78:名無しさん@ピンキー
08/10/16 01:09:59 vS+i301u
まてまて、レンと言えば男装の麗人。
つまり必然的に「だったら男らしく扱ってやるよ」→処女アナルルートは必須ではないか?
そう変態真紳士は語るのだった。

79:名無しさん@ピンキー
08/10/16 01:48:29 IeazfDKx
つまり、シャルの初めてを頂いてしまっちゃったレンですね、判ります。


【明らかにわかっていない】

80:名無しさん@ピンキー
08/10/16 01:50:47 UfRRISJ4
つまり、
レン「ああ………ボクのオトコノコの初めてが………奪われちゃうぅっ………!」
こういう展開でひとまず手を打とうじゃないか。

81:名無しさん@ピンキー
08/10/16 08:44:38 A2OYvPxR
>>78
貴殿の仰りたい事は痛いほどわかります。処女なのにアナルでイかされちゃうレンたんはすさまじくよい……が、少しだけ待ってほしい
男装の麗人だからこそ、そのおっぱいで徹底的に女であることを教え込むのですよ

82:名無しさん@ピンキー
08/10/16 09:16:23 mE9L/n7R
>>80
……なぜかふたならーなレンに(性的な意味で)翻弄される柊の図が……。

83:名無しさん@ピンキー
08/10/16 10:02:51 +7+7OD7z
どう見てもドMのレンにまで翻弄されるのか柊w

84:名無しさん@ピンキー
08/10/16 10:13:13 A2OYvPxR
そりゃあ、下がる男だしなぁ……
それにドMなら「ボク、平行世界の自分である蓮司君にこんなことしてる……っ!」って羞恥にまみれるシーンを作れるじゃないか
あるいは第三者にそういう状況に追い込まれて、言葉責めされてるとか

85:名無しさん@ピンキー
08/10/16 11:59:54 agPAkMsH
でも性別逆転してるとはいえ、自分とセクロスするってどんな気分だろうな?

86:名無しさん@ピンキー
08/10/16 12:40:37 mE9L/n7R
……究極のナルシシズムだろーなぁ>自分同士
つっても、別人って認識があるだろうしよく似た他人って……あーでも顔の造形かなり似てんのか、そういや

そーゆー禁断的な感じ?

87:名無しさん@ピンキー
08/10/16 13:20:11 yF5jRzK0
レン「違うよただのオナニーだよ」

【もはやセクロスという認識すらない】

88:名無しさん@ピンキー
08/10/16 13:36:59 A2lT8045
すると、柊のほうが自家発電すると、たちまちレンのほうもあふんあふん?

89:名無しさん@ピンキー
08/10/16 13:41:42 fGajy8nD
いや、心理学的には人間って自分と似た顔立ちの相手を選ぶという研究があってだな
つまり自分とよく似た、しかし女のレンはその流れでイクと柊のりそ……うわなにをするやめハッタリしご(PAM!

90:名無しさん@ピンキー
08/10/16 14:12:22 GiZXAQLj
>>89
それはレンの方にも言えるわけで
そもそもヅカ趣味ってことは結構タチ側やりたい願望ありそうな感じがしたり……さすがに異性に対してはないか

レンはなんかこう真面目で従順なわんこのイメージがあるからタガ一回外れるとエラいことになりそうな予感

91:名無しさん@ピンキー
08/10/16 14:24:16 A2OYvPxR
>>90
激しく同意、一度ハマっちゃうと病み付きになりそうだw

92:名無しさん@ピンキー
08/10/16 14:59:05 Inm6GQ5o
「タガ一回」がダガーに見えて何事かと思った

93:55
08/10/16 16:02:22 CnQu3dAj
>マッドマンさん
遅くなりましたがGJ!ていうか貴方は神です!
自分の妄想がこんな文章になるとは!御見それしました。
しかし、文章からするとハルちゃん結構スタイルいいみたいですがそうなると、
柊姉襲撃>純粋っぽい性格で柊姉に気に入られる>監視していたロンギヌスから
アンゼに連絡>キルキル部隊出動>柊、ハルちゃんと逃亡(格好はそのまま)
>街で見かけたくれはなどが追跡に加わる。ついでに柊の町での評判が下がる
>逃げている間にグィードなどの濃い連中と遭遇>ハルちゃんびびって柊に
抱きつく>ムニュ(擬音)>モニター&コンパクトで見てたアンゼ&ベル様がきれる。

って感じのストーリーを妄想したんですが実際書くとしたらどこら辺修正すれば
いいですかね?ちなみに書いて欲しいと催促してるわけではありませんよ?いや、マジで。

94:名無しさん@ピンキー
08/10/16 16:26:48 lrswuk6P
>>90
柊が女になっちゃえばいいんじゃね?

95:名無しさん@ピンキー
08/10/16 19:24:51 laCztvT/
>93
そうだな、作者名をマッドマンさんから>55さんに変更するのがいいと思う。

>90
真面目で従順なわんこ…。
前をはだけたシャツと上着だけ羽織って、四つん這いというかお座り状態で首輪から伸びたリードを咥えて差し出してるレンが何故か脳裏に浮かんだ。


96:名無しさん@ピンキー
08/10/16 19:44:53 nwnhL9ao
まさに打てば響くような変態紳士どもだな!

いいぞもっとやれ。

97:名無しさん@ピンキー
08/10/16 20:37:30 IeazfDKx
>95
「さぁ、ボクを連れて行きたまえ、ベネット君……」
「そ、それはこっちの台詞でヤンスーっ!?」
「僕はどっちも嫌ですよ!助けてせんちょ……って何でエリーさんがここにっ!?」

「……命、これ、付けたい?」
「あかりん……ボクが?君が?」

98:名無しさん@ピンキー
08/10/16 21:20:14 8VxDgGYv
>>95
熱を出してしまった病弱レンが、柊に「体温計で熱測ってくれないかな?」と、直腸体温計を渡しつつ、尻を掲げておねだりですね、わかります。
レントとノエルでもいいよ!

99:名無しさん@ピンキー
08/10/16 21:49:54 mE9L/n7R
つまり、>>94-95を総合すると……


暗闇の中。白い肢体が、揺れる。
ぴちゃり、ぴちゃり。時折ずず、となまめかしい音を立てながら、加減を知らぬ子犬がむしゃぶりつくような
相手のペースをまるで考えていない、激しい口内愛撫。

唇を重ねているのは二人の少女。
鏡映しのように顔の造形は似通っているのに、纏う雰囲気と表情、瞳の色だけが、彼女達を別の存在であると告げていた。

一人は波なき湖面のように蒼い双眸。凛々しい百合のような気高さをはらむ少女。
しかし、今は目の前の少女の全てを貪るように、相手の動きを体づくで封じ、逃げようとする舌を絡ませ
繋がる口の中の唾液を味わい、飲み下し、とろけた瞳で目の前の少女の恥態を見逃さぬよう焼き付ける。

いま一人は、空舞う鳶の羽色の瞳。戦地を駆け回る戦士のような鋭さを持つ眼差しの少女。
しかし、今は目の前の少女に動きを封じられ、ただ貪られるだけの獲物のよう。
なぜこんなことをするのかと、よく知るはずの目の前の相手を制止しようとするものの
声は封じられ、息継ぎすら許されず、ただ酸欠と相手の苛烈な舌により生まれた不可思議な情動に翻弄される。

そんな、暗闇の中の鏡合わせは。
蒼い瞳の少女がはぁ、と熱い息を漏らし、舌を絡めるのを唐突にやめた時に途切れた。
じゃらり、と少女の首にある革製の首輪からのびた鎖が擦れて音を立てる。

犬が座っているような体勢のまま、彼女は眼下の、すでに抵抗する気力もなく未知の情欲に浮かされながら涙を零す少女を見て、呟く。

「あは……かわいい」

言われた少女は羞恥に一瞬で顔を赤らめ、表情を見られないよう俯こうとして――脇腹を軽くつつかれ、びくんと体をのけ反らせた。
小さな衝撃でさえ官能と受け取るほどに高められた今、彼女にできる抵抗などないと言っていい。

蒼い瞳の少女は不思議そうにたずねる。

「そんなにかわいいのに、なんで隠しちゃうの?」
「そんなこと、言われて、嬉し、がれるか……」
「喜んでいいんだよ、ほら」

言って、彼女は相手の胸を自分の豊満な胸で押し潰し、着衣の上からですら尖っているのがわかる先端で、
相手の同じ場所をぐりぐりといじめぬく。涙目の少女が、高い高い嬌声をあげ、高みへと昇る

「ひっ……あっ、ああァっ! やっ。
 やめ――あああっんあああぅああああっ――!!」

びくりびくり。同じ体格の少女がしな垂れかかっているにも関わらず、体が弓のように反り――
――ぼろぼろ涙をこぼし、悲痛なまでの声とともに、果てる。
あまりの快感への耐性のなさに、攻め手があっけにとられるほど。

果てを見た少女は、虚空に目をやったまま、頭に散った火花を追いやるように力無く首を振る。
その姿を見て、攻め手の少女はぺろりと唇を濡らす。
「ほんとに――かわいいよ、蓮司くん。食べちゃいたいくらい」

そう言って、彼女は――首輪に「レン」とだけ彫られた金属板を付けた少女は、再び目の前の少女を貪りはじめた。
鏡合わせの凌辱劇は、当分の間終わる様相はない……。


こんな感じ?
つか、携帯辛い……(涙)

100:マッドマン ◆265XGj4R92
08/10/16 22:05:41 EPfGZbFe
>>93
そうですね。
うーん、アドバイスというと。




101:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/10/16 22:07:11 EPfGZbFe

 一行あらすじ:
 突然の魔王の襲来。それに一介の魔剣使いである柊 蓮司はとても困っていたのである!
 以下省略。



 上半身はTシャツいっちょ、下には着たままのジーンズ姿のラフな格好の柊の前には凄い難問が存在していた。
 とてつもなく、そうとてつもなく卑猥でマニアックで禁忌的な色香に満ちた格好をしたおそらく多分メイドな服装をした魔王の少女。
 それを前に柊は腕を組んで、どうするかなーと悩んでいた時だった。
 どたどたどたと、足音が聞こえたのを柊は察知した。

「っ!? やべえ、こんな時間か!?」

「ピッ?」

「とりあえず、隠れろ!!」

 混乱の上に迫る危機。それに柊は冷静な思考能力など星の彼方に弾き飛ばして、布団を引き引き剥がすと、神速の勢いでメイド服(?)な少女を抱え上げて、ベットに放り込む。
 ピェッ!? と可愛らしい悲鳴が聞こえるが、それすらも押し殺すかのような速度で布団を上から被せて、さらに頭隠して尻隠さずとばかりに突き出た臀部を無造作に押し込み
 ―その際にしっかりとスクール水着で覆われた瑞々しい尻肉を掴んでいるが、気にしている暇も無く大きめの枕で蓋をした。
 速度にして二秒にも満たない早業である。

「蓮司ー! 朝だぞー! さっさと起きなさいっ」

 その瞬間だった。
 どげしっと早朝の朝からいい音を響かせて、自室の扉が文字通り蹴り開けられたのは。

「あ、蓮司。もう起きてたの?」

 そう呟くのは茶に染め上げた艶やかな髪を肩下まで伸ばした長身の女性だった。
 飾り気のない安物のズボンを履き、大き目のタンクトップからはみ出る乳房の露出も気にせずに、上から男物のジャケットを羽織った綺麗というよりも凛々しい雰囲気の女性。
 メンソールを口に咥えたどことなく気だるい表情を浮かべた美人の女性。
 柊 蓮司の姉である柊 京子だった。

 ぜはーと息を吐いて、ベットに持たれかかるように荒い息を吐いている柊を見て京子が意外そうに声を上げた。

「た、たまには早く起きてるんだよ」

「なんでそんなに息が荒いのよ」

「たまにはそんなこともあるんだよ」

 一点調子の返事だった。
 なんかおかしいな? と京子が内心首を傾げて―気付いた。
 いや、気付くのは必然だった。
 柊のベットの布団、それがこんもりと山になっているのだから。それも人間サイズぐらいで。

「蓮司……ベットの中に何隠してるの?」

「はっ?! な、何も隠してねーよ!」

 汗ダラダラで答える柊。見事なまでに隠しようが無いのに、開き直っているのは哀れとも言えた。
 スタスタと近づきつつ、京子が告げる。


102:魔王少女の爆撃舞踏曲 おまけ2 ◆265XGj4R92
08/10/16 22:08:03 EPfGZbFe
 
「じゃあ、見てもいいよね?」

「だ、ダメに決まってんだろ!」

 せめてもの抵抗とばかりに柊が立ち上がろうとして―瞬間、こめかみに直撃した回し蹴りで吹っ飛んだ。
 一応不良のカテゴリーに入る柊 蓮司。
 その姉である京子はどうやら元チーマーだったらしい見事な回し蹴りだった。
 世界結界の弱体化故にイノセントの物理攻撃はもはや完全に遮断するはずの月衣を纏ったウィザードである柊 蓮司をも弾き飛ばす姉の一撃というのは常識外に該当しているのだろうか?

「ぐえ!」

 地面から引っこ抜かれた雑草の如き哀れさで壁に激突し、呻き声を上げる柊。
 そして、京子が内心(ついにくれはでも連れ込んだのかしら?) とウキウキしつつガバッと布団を引っぺがした。

 其処にいたのは堕天使スク水メイドでした。

「……」

「……ピェ?」

 少女と京子の目線が重なる。
 しばしの沈黙。
 しばしの硬直。
 そして、数秒にも数時間にも思えた静止した時間からギギギと音を立てて京子が壁に激突したままの柊を見て。

「このドぐされ犯罪者がぁあああ!!!」

 床を蹴る、空を舞う、全力全身のドロップキックの追撃が柊に完全無欠のトドメを刺した。
 頚椎の軋む音が聞こえるほどのイイ一撃だった。




 しばし、グロテスクな光景が続いております。

 しばらく柊蓮司の下がる映像と柊。 はわっ! ガッデム! 弁当……などと呟く四人の女子の映像を脳内でエンドレスで流し続けてくださいませ。


103:魔王少女の爆撃舞踏曲 おまけ2 ◆265XGj4R92
08/10/16 22:08:52 EPfGZbFe
 
「で? アンタもなんでここにいるのか、まったくもって知らないと?」

「ま、まったくもってその通りです……っていうか、俺はそんなことしねえって……」

 アンタが死ぬまで殴るのをやめない!
 とばかりに、馬乗りになり、紅く染まった拳を振り抜き続けていた京子が正気に戻ったのは、鳥の鳴くような声で必至に制止した少女の行動があってだ。

「うっさいわね。どうみても無理やり着せ替えた後に、強姦行為に及ぶ少年Aだったわよ? ……ああ、もう18だから本名そのままで報道されるわね」

「しねえって……」

 顔のアザだらけ、流れ出る鼻血を食い止めるためにティッシュを詰めた顔が痛々しく、柊は呟いた。
 魔王でも、古代神でも、冥魔の手でもなく実の姉に殺されかけるウィザード屈指の魔剣使いだった。

「えっと、それで君は誰なのかな?」

 柊と京子の間に挟まれ、居場所なさげに視線を巡らせていた亜麻色髪のメイド(?)少女に、京子が優しげに話しかけると、こくんと頷いて。

「ピー」

 と、鳴いた。

「あ、ハル・ピュイラっていうのね」

「分かるのかよ!?」

 京子があっさりと頷き、それに柊はふんっと鼻から丸めたティッシュを吹き出しながら突っ込んだ。

「うっさいわね。フィーリングと心意気で会話なんて成り立つものよ。前に海外旅行にいった時、ハンドサインだけでブランド品の値切り交渉までしてやったわ」

「いや、それはそれですげえけどよ……なんかちがくね? 明らかに人語じゃねーし」

「いいのよ~。なんか可愛いし~」

 メイド服(?)少女から、ハル・ピュイラという名称と存在に生まれ変わった少女は京子に頭を撫でられて嬉しそうに微笑んだ。

「きゃー。いい肌してるじゃない、なんかモチモチ肌~、いいわねー若いってー」

「……なんだかなぁ」

 ぎゅーとイノセントである京子に抱きしめられて、本来ならば恐怖を与えるはずの存在であるハルは戸惑ったように声を上げて、その歳不相応に成熟した肢体を触られていた。
 そんなある意味セクハラな現場に取り残された柊は静かにため息を吐いて、これからどうするかなーと現実逃避をするかのように遠い目を浮かべた。
 しかし、彼は気付いていなかった。
 そんな柊蓮司の自宅、その窓、そこを常時ストーカーのように監視し続ける視線があったことに。

「―キルキル。柊 蓮司の自室にて魔王級エミュレイターの出現を確認したキルキル」

『キルキル。了解したキルキル』

 怪しげな会話をこなす監視者とその連絡先とは!?



 ―数十行後に判明するだろうから、説明は省略!


104:魔王少女の爆撃舞踏曲 おまけ2 ◆265XGj4R92
08/10/16 22:09:42 EPfGZbFe
 
 何故ハル・ピュイラが来たのか。
 その理由を尋ねると、ハルはどこからともなく取り出した紙芝居で語り出した。
 クレヨンで書かれた真っ黒い怪獣―おそらく冥魔、それに捕まった自分―子供のラクガキのような女の子が描かれた絵。
 次の絵を取り出す。
 その黒い怪獣に切りかかる棒人間とでっかい剣―おそらく柊蓮司とその魔剣が描かれていた。
 さらに次の絵を引き出す。
 見事に柊 蓮司に助けられるハルが描かれている……何故か80年代の少女マンガタッチで、キラキラした瞳の柊が大変きもかった。
 そして、最後の絵。
 もやもやとした白い雲の中に浮かぶ美形化された柊、それに挑みかかるようなポーズのハルの絵があった。
 それらを順番に見せると、ピエッと声を上げて、力瘤を……そんなものはないから細く白い腕を折り曲げて、ハルが声を上げた。

「んー、翻訳すると、恩返しにきたって感じ?」

 じーとしばらく紙芝居の絵を見ながら、思案した京子がぼそりと呟いた。

「ピィ!」

 その通り! と、ばかりに笑みを浮かべるハル。

「……マジか。鶴の恩返しじゃあるまいし」

 魔王が恩返しなど誰が想像するだろうか。
 少なくとも柊は想像などしなかった。

「まあいいや。途中経過がよく分からんが、暴漢か何かから蓮司が助けたんだろ? 恩返しとやら、受けてやろうじゃないか」

「え? 本気かよ」

 バツ悪そうな顔を浮かべる柊に、京子はぽかりと頭を叩いた。

「人の行為を無駄にするようなことを言うんじゃない。まあ掃除と洗濯でもしてもらえれば丁度いいだろう」

 手ごろに相手が満足するような代償行為を考えて京子は告げると、柊も問題ないとばかりに頷く。
 見たところ爵位も持たない侵魔上がりの魔王とはいえ、下手な行動をされれば何が起きるのか分からない。
 問題ない恩返しをさせて、さっさと帰ってもらうのが一番の解決策だろう。

「んじゃ、とりあえずそのちょっとおかしい格好から着替えてもらって」

 常軌を逸したマニアックコスチュームは不味いだろうと、京子が声を上げようとした時だった。


「―キル」


 ……変な声がしましたよ?

「この声は!?」

 瞬間、柊は神速の反応で立ち上がると、即座に部屋の窓を覆っていたカーテンを開いた。
 其処には静かに窓ガラスの張り付いた仮面を被った黒衣装の男たちが居た。
 正直言おう。

 ゴキブリみたいだった。

「な、ななななな!!!」

 前を向いたまま、器用に全力後退し、柊が悲鳴じみた声を上げる。
 京子はなんだありゃ? とばかりに眉を歪めて、ハルは怯えてピーピーと声を荒げた。


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