08/10/16 22:13:19 EPfGZbFe
そして、一方。
その頃の裏界では一人の少女―否、蝿の女王が笑い声を上げていた。
「アハハハハ!!! 最高ね!!」
腹を抱えて笑い転げるのは、銀髪に黄金の瞳をした麗しき女性。
黒衣のドレスを身に纏い、甘く脳髄まで蕩かすような淫靡なる色香を漂わせた肢体から零れ出る素肌を隠そうともせずに、笑っていた。
「アンゼロットの奴、あんなに悔しがってるわ!」
コンパクトから見える怒髪天を付く勢いの宿敵たる守護者の様子に蝿の女王、ベール・ゼファーは傍にいた友人である魔王に呼びかけた。
「最高だと思わない?」
「……そうですね。とても愉快だと思いますが、やはり全てはこの本に書かれた通り」
秘密公爵リオン・グンタは手に握った書物を大事そうに抱えると、不意に笑い続けるベルを見て首を傾げた。
「ところで、ベル。一つ訪ねてもいいですか?」
「なに?」
「一々大人の状態になっているのは、対抗するためですか?」
「……」
その質問に、ベルは答えなかった。