【ひぐらし】07th総合part20【うみねこ】at EROPARO
【ひぐらし】07th総合part20【うみねこ】 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
08/10/11 22:03:31 oC1yg1K8
【作品を投下される職人さんへ】
現在スレが加速しているため、wikiへの収録が追いついていない状況にあります。
可能であれば、職人さんにセルフ保管していただけるよう、お願いいたします。

<作品ページを新規作成>

 新規ページの作り方
 ①:「@wikiメニュー」から「新規ページ作成」をクリックしたら「新しいページ名を入力して下さい」と言ってくる
 ②:タイトルをフォーム打ち込んだら(チェックはWikiモードのままでOK)「新規ページ作成」のボタンをクリック
 ③:下に出てくる空白にSSをコピペして、ついでに修正
 ④:「プレビュー」を押してチェック
 ⑤:問題なければ「投稿」を押す

<各SSリストを開いて編集>

 編集の仕方(SS本文の修正も同様)
 ⑥:各SSリストを開き、そこで「編集」から「このページを編集」をクリック
 ⑦:下に出てくる文章の適当な箇所に
    -[[作品タイトル(ページ名)]]  と入れる。
 ⑧:プレビューを見て問題なければ「投稿」して終了

何か失敗するかどうしても無理そうなら、そのときに言ってくれれば誰かしら対処しますのでご安心を。


3:名無しさん@ピンキー
08/10/11 22:45:28 NX+W0p+1
>>1乙なんだぜ!
さぁて、ルシファーモノを全裸で待つぜ!

4:名無しさん@ピンキー
08/10/12 01:55:04 rxN63oSm
>>1

5:名無しさん@ピンキー
08/10/12 02:40:54 iXYqp5LI
>>1エヴァトリーチェ様乙で御座います

6:名無しさん@ピンキー
08/10/12 06:04:29 wFgIeIvk
うみねこは現在も非冷房&原型機関(DMF15HSA形エンジン)車。

7: ◆CRIUZyjmw6
08/10/12 19:20:35 u9xLBeqt
>>1
乙です

お久しぶりです。
今回投稿するのは以前に出した「傲慢の果て」の続きになります。
前スレでも言いましたが、前回は陵辱ものでしたが今回は非陵辱ものです。

カップリング:戦人×ルシファー
予定消費レス数:10+1(ネタ)


8:傲慢の末路 ◆CRIUZyjmw6
08/10/12 19:22:15 u9xLBeqt
 ベアトリーチェはぼんやりと彼女らを眺める。
 同じ作業を毎度自らが執り行うのも面倒な話なので、今回はゲームの準備を家具……七杭の姉妹達に任せることにした。
 彼女らが手順に沿って一つ一つ作業を進めるごとに……盤に駒が乗るごとに、ベアトリーチェは次の勝負に期待が膨らむ。さて……次はどのように戦人と戯れようか?
 もっとも、姦しい姉妹達はいっかな作業に集中しようとはしないので、なかなか完成に至らなかったりするのだが。どうせまた戦人を玩具にすることばかりを考えているのだろう。
 ルシファーが戦人のところに行ったきり帰ってこない。
 おそらく、彼とまた戯れているのだろう。そしてそんなルシファーに対する嫉妬混じりの陰口が姉妹達から漏れる。
 遅々とした作業進行とその作業態度にベアトリーチェは半ば呆れるが……まあそれならそれでいい。その分、ゆっくりと優雅に紅茶を飲んで次の勝負の手順を考えていればいい。
 もっとも、戦人が何をどう足掻こうと、このゲームは彼女の勝利で決まっているのだが……。
「失礼します。お嬢様」
「……ロノウェか」
 ベアトリーチェが座るテーブルの脇にロノウェとルシファーが姿を現す。
 そしてその途端、ベアトリーチェの目が驚愕に見開かれる。
「何だそれは?」
 ルシファーはロノウェの胸の前に抱きかかえられていた。だがそれだけでは驚くようなことではない。問題は、彼女の衣服が千切られ、ほとんど全裸となっていることだ。しかも彼女は気を失っている。
「どうやら、戦人様と激しく遊ばれたようですな」
「……………………なるほどな……」
 彼女はため息を吐く。
 合点はいった。なるほど、だからこんなにも帰りが遅かったのか。
「それと、戦人様から伝言です。絶対にベアトリーチェ様には屈しないと仰っておりました」
 それを聞いて彼女は薄く笑みを浮かべる。
「ふっ。……そうか…………」
 彼女の家具の破壊。それこそ、まるで自分を拒絶する彼のメッセージのようだとベアトリーチェは思った。
 だが自慢の家具をここまで壊すとは……その力、確かに無視していいものではない。これでは次の勝負はどうなることか? ……想像が付かない。
 いやいや、結構なことではないか。想像が付かないとは、実に退屈しない。


9:傲慢の末路 ◆CRIUZyjmw6
08/10/12 19:23:46 u9xLBeqt
「ロノウェ。ルシファーを床に置け」
「はい。承知いたしました」
 命じられるままに、ロノウェはルシファーを床に置く。
 この様子に他の姉妹達が気付かないわけがない。ロノウェとルシファーが部屋に現れた瞬間には姉妹達は作業を放棄し、ベアトリーチェらの周囲に集う。
 無惨な姿へと変わり果てたルシファーを見下ろしながら、彼女らは表情を歪ませる。
「きゃははははははははははははっ!! ルシ姉ったら人間なんかに犯されてるー。なっさけな~い」
「本当に口だけなのよルシファーお姉様は。こんなのが長女だなんて、恥ずかしいったらないわね」
「まったく……姉妹の恥曝しだな」
「ほらほら見てよ。ルシファーお姉様のあそこから人間の精液が零れてるわよ。一体何回出されたのかしら?」
「あれじゃない? 気を失うほどよかったって事よね? この分じゃあ……くすくすくす……ひょっとしてルシファー姉様も相当乱れてたんじゃないのぉ?」
「人間如きに? うっわダサ過ぎ」
 けらけらと姉を嘲笑う姉妹達。同情や憐憫といった感情はそこには一切無い。
「……どくがよい」
 静かにベアトリーチェが言って、姉妹達は長女から離れる。
 そしてベアトリーチェは詠った。
「さぁさ思い出してご覧なさい。あなたがどんな姿をしていたか―」
 彼女の持つキセルから流れる煙がルシファーを覆う。すると、形を成していなかった服が時間を巻き戻したかのように修復されていく。裂け目がくっつき、再びルシファーの体を覆った。
 彼女の長い睫毛が震える。
 その様子を無言で彼女らは見詰める。
 三十秒ほどしたくらいか……ほどなくして、ルシファーは意識を取り戻した。
 目を開けて焦点の定まらない視界で周囲を見渡す。
「…………ふ……。どうやらまだご自分の状況がよく分かってないようですな」
 何が面白いのか、ロノウェは笑みを崩さない。
「……え? あ? …………あ…………ああ……っ?」
 だがそれも所詮は短い時間のこと。
 ゆっくりと戦人による陵辱の記憶が彼女の中で再現されていく。呆けていた表情に理性の色が戻るにつれ、彼女の瞳に涙が浮かぶ。
 その涙は断じて彼から解放されたことによる喜びではない。その逆だ。怯えた眼差しを周囲に向ける。
 その哀れっぽい仕草に、ルシファーを除く姉妹達に再び哄笑が巻き起こる。楽しくて仕方ないのだ。こんな面白い出来事をどうして笑わずにいられるというのか?
 嘲笑の渦の中で、よろめきながらルシファーは立ち上がった。どうせ妹たちには無様にしか映らないのだろうが、それでも床に這い蹲っているよりは心の痛みが少なくてすむから。
 テーブルに両手をつき、肩で息をしながら俯く。
 その様子をベアトリーチェは静かに見詰めた。じっくりとルシファーを観察し品定めする。
「……ふ……。よもやここまで完膚無きに壊そうとはな。戦人め、なかなかやりおるわ」
「左様でございますな」
 ベアトリーチェは薄く笑った。忌々しげに、かつこの上なく楽しそうに。
 その笑みに、ルシファーは背筋が凍る。目が覚めても終わらない悪夢に、彼女は絶望した。


10:傲慢の末路 ◆CRIUZyjmw6
08/10/12 19:26:07 u9xLBeqt
 まるでタイミングを見計らったかのように、彼が丁度クッキーの最後の一枚を口に入れたところでロノウェは姿を現した。
「お待たせしました戦人様。クッキーと紅茶のお代わりをお持ちいたしました」
「ああ、ありがとよ」
 満足げに笑みを浮かべる戦人の前に、ロノウェはクッキーと紅茶の替えを用意する。その動作は淀みない。
 そしてそれ故に、その異常は戦人にとっても見逃せなかった。
「……それで? これはいったいどういうことだ?」
「それは一体どういう? ……いえ、冗談ですよ。分かっております」
 目を細め、若干鋭い視線を向ける戦人に対し、ロノウェは涼やかに笑みを返した。
 ロノウェの背後にはルシファーが立っていた。だがそれだけなら別に異常ということもない。つまり異常とは……彼女は全裸だった。
 羞恥に顔を赤く染め、ルシファーは彼らか顔を背けて胸と秘部を手で覆い隠す。
「お嬢様より伝言です。『ゲームの再開には今しばらく時間が掛かる。この家具が気に入ったなら、その間思う存分戯れるがよい』……だそうです」
「へえ……なるほどな」
 合点がいったと、戦人は肩を竦める。
「それでは、私はこれで失礼いたします。いつまでもお邪魔していても、気が散るでしょうから。……ごゆっくりお楽しみ下さいませ。ぷっくっくっくっ……」
 笑みを残して、ロノウェは部屋から姿を消した。
 つい数秒ほどまで彼が立っていた虚空を戦人はつまらなさそうに見詰める。
「いらん世話だっての」
 聞こえないのを承知で、彼は溜息を吐いた。
 そして、残されたルシファーに視線を向ける。彼女はびくりと震えた。
 無言で戦人はジャケットを脱いだ。その意味が、ルシファーにとっては恐怖だった。
 けれど、彼女は逃げ出すことは出来なかった。その場に立ちつくす事しか出来ない。
 逃げるとして、一体どこに逃げるというのだ? この部屋に残され人間の慰み者になるのが主の意志ならば、それには逆らえない。逆らうことは許されない。不可能だ。そして彼から逃げることもまた、不可能だ。


11:傲慢の末路 ◆CRIUZyjmw6
08/10/12 19:28:03 u9xLBeqt
「…………え……?」
 思わず目を瞑り、身を竦ませたルシファーの体をジャケットが包み込む。
 彼女が顔を背けたまま視線だけを戦人に向けると、彼はつまらなさそうな顔をしていた。
「それ着て部屋の隅にでもいろよ」
 素っ気なくそう言って、戦人は踵を返した。
 それは、彼女にとって信じられなかった。
「……どういうつもり? あんなにさっきは……わ、……私を……」
「別に? ただ、あの野郎の思い通りっていうのが気に食わねえ。しかも自分に仕える奴を進んで差し出すなんてな。ちっ、どこまでもふざけた野郎だ」
 その言いぐさに、ルシファーは唇を噛む。
「……何よそれ。同情のつもりなの? 巫山戯ないで……あんたが……あんたが私を…………るから、私は……みんなにも……うっ……うぅ……」
 彼女の口から嗚咽が漏れる。
 てっきりまた彼に乱暴に汚されるものだと思っていたが、そうじゃなくて……気が緩んだ。同時に涙腺が緩む。
 戦人は彼女の泣き声など聞こえないかのように、テーブルへと戻った。
 どうせ彼女の涙など、そもそもが戦人を抉って楽しもうなどという身勝手な欲求が原因なのだ。同情してやる義理など無い。
 ルシファーは戦人の言葉に従い、部屋の片隅へと向かった。
 戦人は目を瞑りながら、彼女が遠ざかるのを感じた。そして彼女には聞こえないよう、小さく舌打ちする。
 はっきりと、彼は不機嫌だった。
 ベアトリーチェの外道や非道が気に食わない。それがそもそもの理由だった。その憂さ晴らしと、彼女への復讐のつもりで七杭の長女を犯した。消えない憤怒を込めて……。
 だが結局のところ、そもそもそういった行為が許せない彼だ。そんな彼が、悪魔が相手とはいえ少女を陵辱したところで気が晴れるわけもない。雄の生理現象として、癒されるものや潤うものも感じたが、それ以上に虚しさや苛立ちを感じた。
 ルシファーに同情する義理など無い。それも分かっている。だがそれでも、彼女が救われるどころか更に悪辣な状況に落とされるというのは、なおさら戦人の心をささくれさせた。
 自分でも、そんなことを考えてしまうというのはどうしようもなく甘いと思っているが……。
 ふと、自分と同い年にまで成長した妹の姿を思い出す。妹の言うとおりだ。自分はどうしようもなく甘い。お人好しだ。
 でも同時に思う。そんな妹の目はどうしようもないほどに哀しげだった。実家にいた小さな子供の頃の面影はもう無い。かつての彼女にもあった、お人好しさや甘さが抜け落ちていた。
 ……なら自分も今はあんな目をしているのだろうか? 果たしてそれでいいのだろうか?
 戦人は首を横に振り、雑念を追い払う。
 兄として、妹にそんな目をさせることは出来ない。
 だから……今度こそ、魔女を破るのだ。例えどんな手を使ってでも。自分があんな目になったとしても。
 目を開き、無言で戦人はロノウェの焼いたクッキーに手を伸ばす。まだほのかに温もりが残ったクッキーは美味だった。


12:傲慢の末路 ◆CRIUZyjmw6
08/10/12 19:29:33 u9xLBeqt
(……さっきから何してるんだあいつは?)
 ふと、戦人は眉根を寄せた。
 部屋の片隅でルシファーは戦人に背を向け、蹲って座っている。だが、それだけじゃない。様子が妙だと戦人は思った。
「…………んっ…………くっ……うぅっ」
 時折、彼女からくぐもった声が漏れてくるのが聞こえた。
 最初は泣き声だとばかり思っていたが、そうではないようだ。それにしては、声が熱っぽく艶を帯びている。
「……ぁっ……んっ……」
 戦人は席を立ち、ルシファーへと近付く。
 足音は立てていないが、彼女がその様子に気付く様子は無い。規則的に、小刻みに彼女の背中が揺れる。
 彼女の背後に立ち、戦人は数秒彼女の背中を見詰めた。
「……何しているんだ? 姉ちゃん」
 戦人が声を掛けた瞬間、ルシファーの体が大きく跳ね上がり、反射的に彼女は振り向く。
「あっ……その。ちが…………これは……違う。私は、そんなつもりじゃ……」
 その顔が羞恥に赤く染まる。
 彼女は堅く目を瞑り、首を横に振る。
「違う……違うから……見るな…………見ないで……お願いだから」
 しかし、彼女の懇願を聞くことなく戦人は彼女を見下ろす。
 けれど、見下ろされているにも拘わらず、彼女はその行為を止めようとしない。左手で胸を揉み、右手で秘部を弄び続ける。
 彼女は自らを慰めていた。
「ベアトリーチェ様が……その…………だからぁ……ひぁっ……ぁぅ……んっ……」
 それに対し、戦人は再び舌打ちする。どうやらあの魔女は目の前の少女に性的な衝動を誘発する呪いを使用したらしい。
「……あの野郎。一体何を考えていやがる」
 知らず、戦人は拳を握りしめていた。
 もし魔女が目の前にいたというなら、まず間違いなく殴りつけていただろう。自分も所詮、彼女を汚したという意味で魔女と同類だと分かっているが。
 戦人は一旦しゃがみ、彼女の右腕を上げて脇に頭を通し、彼女と一緒に立ち上がった。ルシファーは戦人に肩を貸されて無理矢理立たされた格好だ。


13:傲慢の末路 ◆CRIUZyjmw6
08/10/12 19:30:40 u9xLBeqt
「……はぁっ………………ぁぁっ……」
 ルシファーは抵抗しない。その脚に力を込めることなく戦人に従う。
「しっかりしろよ姉ちゃん。今あっちのテーブルに連れてってやる。紅茶でも飲んで気を落ち着けな」
 もっともそんなこと言いながら、戦人にもそんなものは気休めにならないと思っているが。けれどそれでも、部屋の片隅でしゃがみ、あるいは転がって悶えられるよりは、まだ座っている方が格好としてましな気がした。
 だが……。
「……おい……?」
「はぁっ……はぁっ…………んんっ」
 戦人の足が止まる。いや、ルシファーによって止められる。それも、部屋の隅から一歩も進まないうちにだ。
 彼女は荒い息を吐きながら戦人に抱きついた。戦人の耳元に彼女の熱い吐息が吹きかけられる。
「んっ…………はぁっ…………はぁっ……」
 戦人の左半身に身を委ねながら、彼女は彼の脚に秘部を擦り付けていく。
 艶めかしい温もりが戦人に押しつけられた。
 戦人は目を瞑り、深くゆっくりと息を吐く。
 発情した女の喘ぎ声を聞きながら、戦人はしばし黙考する。
 三十秒ほどそうしていただろうか? やがて彼は意を決した。
 無言で体を捻り、戦人は彼女を自分の体から引き離す。そして彼女の両肩を掴み、壁に押しつける。
 彼がルシファーの瞳を覗くと、そこには怯えと期待が入り交じっていた。


14:傲慢の末路 ◆CRIUZyjmw6
08/10/12 19:31:38 u9xLBeqt
「やっ……あっ」
 戦人は彼女の唇に自分の唇を押し付ける。ルシファーの口からくぐもった呻き声が漏れるが、決して抵抗はしない。戦人の胸に手を当てながらも、押し返そうとはしなかった。
 ルシファーは目を瞑り、戦人の唇を受け入れる。その重なりは、決して乱暴ではなかった。むしろルシファーの方こそ、彼を貪っているくらいだ。
 戦人の唇が僅かに開く。それを待ち望んでいたかのように、彼女もまた唇を僅かに開いた。舌の先で互いに触れ合う。
 ルシファーは戦人のシャツを強く掴む。
 やがて、戦人はルシファーから唇を離した。名残惜しそうに彼女は舌を伸ばす。彼らの口の間に、とろりとした糸が結ばれた。
「ふぁっ……」
 戦人の手が彼女の肩から下りていく。その感触に彼女は身悶えする。
「…………んんっ」
 戦人の手が彼女の左の胸を掴むと、彼女はまた身を震わせた。
 彼の手によって胸が撫で回され、揉まれるたびに切ない吐息が漏れる。彼に乱暴にされたときはあれほど嫌だったというのに……。
 体が熱い。燃えるように熱い。
 口に出しては言えないが、戦人にもっと強く求めて貰いたいと彼女は願ってしまう。それこそ、自分を陵辱したときくらいに激しくと……。
 今度は彼女から彼の手から逃れた。
 その場に膝立ちになり、戦人のスラックスからベルトを外し、ファスナーを下ろす。そして少し彼のスラックスを脱がした形で、その奥にある男性器を露出させた。
 戦人の硬くいきり立ったものに少女は手を添え、舌を這わせる。飴か何かを舐めるように愛撫し、そしてときには口に含んで強く吸い付く。
 そのぬらりとした感触に戦人のものがびくりと脈打つ。
「んんっ…………ふぅっ……んっ……」
 彼女を見下ろしながら、戦人は子犬が骨で遊んでいるようなイメージを思い浮かべる。
 彼女の奉仕を受けながら、戦人はネクタイに手を掛け、外していく。
 外したネクタイを床に落とし、今度はシャツのボタンを外した。微かな衣擦れの音がルシファーの耳にも届き、それは更に彼女の体を火照らせる。


15:傲慢の末路 ◆CRIUZyjmw6
08/10/12 19:32:23 u9xLBeqt
 高級なシャツが音もなく床へと舞い落ちるのと同時に、ルシファーの頭に戦人の手が置かれた。
 意地を張るように、猫のような鋭さと……そしてそれを和らげる、どこか陶然としたものが混じった眼差しで、彼女は戦人を見上げた。
 彼はその眼差しを乾いた瞳で見詰め返す。けれど、そんな彼の目の奥にも、それだけではない感情の揺らめきがあった。
 彼女の頭に手を置いたまま、戦人はその場に跪く。
 両手を肩に置き、戦人はルシファーをゆっくりと床に横たえた。そしてそのまま彼女の上に覆い被さる。
 右手を自分のものに添えて、戦人はルシファーの入り口にその先を当てた。
 軽い呻き声と共に彼女の体が小さく撥ねる。
「あっ…………ふぁっ……あっ……あぅっ」
 ルシファーの歓声を聞きながら、戦人は自分を彼女の膣内に埋め込んでいく。熱く濡れぼそった秘部は待ちかねたように彼を受け入れた。
 荒い息を吐きながら彼女は戦人の背中に腕を回し、強く抱き締める。戦人の厚い胸元の下で、ルシファーの胸が柔らかく彼を押し返す。
 逞しい戦人の体……その力強さにルシファーは溺れる。それこそが彼女の密やかな本性なのか、蹂躙されているように感じながらも、それを心地いいと彼女は感じた。
「やぁ…………あぁっ……だめ…………って……」
 彼女の膣内をそれこそ味わうかのように、戦人は腰をゆったりと動かす。その焦らすような動きに、ルシファーは抉られたときとは違った意味で、濃厚に彼の存在を感じる。
 彼のものが奥に届くたび、彼女は喘ぐ。
 彼女は自然と戦人の腰に脚を絡めていた。
 互いの温もりを……互いの存在を確かめ合うかのように、二人は交わり続ける。


16:傲慢の末路 ◆CRIUZyjmw6
08/10/12 19:33:23 u9xLBeqt
「うっ……くっ」
 戦人の顔が僅かに歪む。
 犯していたときとは違う、柔らかな興奮は思った以上に戦人の射精感を強く刺激した。
 戦人の中で何かが折れそうになる。折れるべきではないと思いながら、折れた方がよいと思う冷たい感情が……。
 その心地よさは、彼も望んだものだったが。
「んっ……はっ……あぅっ」
 背中を弓なりに反らしながら、ルシファーは戦人の熱い迸りを受け止めた。悦楽に浸りながら体を震わせる。
 やがて、彼女はくったりと脱力し戦人に絡めていた腕と脚を解いた。
 肩のすぐ下あたりにある彼女の頭を、戦人は子供にするように軽く撫でてやる。細く癖のない艶やかな髪の感触が、心地いい。
「……少しは落ち着いたか?」
 その問い掛けに少女は答えない。拗ねたと言わんばかりに、戦人とは反対方向に顔を背けた。
 その反応に、見られないことに安堵しながら戦人は薄く笑みを浮かべる。
「か……勘違いしないことね。わた……私は、ベアトリーチェ様に…………だから……それだけ…………で……。これは……違う……から」
「ああ、そんなことは分かってる。安心しろ」
 戦人もまた素っ気なく伝えてやる。
 そして彼女の膣内から自分のものを抜き、体を引き離す。
 無言でその場に立ち上がり、近くに投げ捨てた衣服を拾う。ファスナーは上げずに、スラックスは左手でずり落ちないように掴んでおく。
「どこに行くの?」
 そのまま立ち去ろうとする戦人の背中から、ルシファーの呟きが漏れる。
「……テーブルに戻るんだよ。せめて紅茶でも使って洗わないことにはな。下が穿けないっての」
 彼女はぼんやりと、戦人の背中を見詰める。
 彼の掛けたジャケットを強く握りしめる。姉妹から、そしてベアトリーチェから離れた心細さの中で、自分を覆うその感触だけが温かかった。そんな温もりは、少女にとっても生まれて初めてだった。
「……………………ん……私も行く……」
 力無くルシファーも立ち上がり、戦人の背中を追った。自分の体から、再び果てることのない疼きがぶり返すのを感じながら……その温もりにすがりつきたいという誘惑……その感情を否定しようと思いながら……。


17:傲慢の末路 ◆CRIUZyjmw6
08/10/12 19:34:49 u9xLBeqt
 ベアトリーチェの目の前では、相も変わらず姉妹達が姦しく騒ぎながら次のゲームの準備をしている。遅々として作業が進まない。仮にもまとめ役を担っていたルシファーがいないせいか、まさに船頭多くして船山登るといった具合だ。
 どれだけ時間が経とうと、無限の魔女であるベアトリーチェにとっては関係ないのでそれほど気にしてはいないが……。ひょっとしたらシエスタの姉妹兵あたりの方がまだましだったかも知れない。
「ロノウェ、お代わりを」
「畏まりました。お嬢様」
 空になったベアトリーチェのカップに、ロノウェが紅茶を注ぐ。
「……何か訊きたそうだな、ロノウェ。どうした? 何でもいい、言ってみよ」
「はい。それでは僭越ながら……。どうしてお嬢様はルシファーを戦人様のところに? あれでは、ますます彼女が壊されるだけでは?」
「ああ、それか」
 傍らに控えるロノウェに、ベアトリーチェはにやりと笑みを浮かべる。
「なに、壊されるといってもまた直せばよい。どこまで壊れようとな……。どのみち、あそこまで壊れていては姉妹ともども記憶を丸ごと消去して『無かったこと』にする必要がある。だがどうせ直すなら、今の内でももう少し役に立って貰おうって思ってなあ」
「と、仰いますと?」
「少なくとも妾が知る限り戦人は甘い男だ。どうしようもなくな……。ルシファーを犯したところで、それで自ら苛むような奴よ。なら、ルシファーに何の救いもなくあやつに送り返したらどう考える? ……同情するだろうなあ、憎しみが薄れるだろうなあ。抱けば尚更か?」
「つまり、頑なになった戦人様をルシファーが解きほぐす……と?」
「……ふっ、そんなところよ。ルシファーの奴も、今頃は妾の魔法でさぞかし魅力的で可愛い雌になっているはず。……ゲームが再開される頃には、二人ともさぞかし仲良くなっていればいいぜえ。そして、再開の直前でルシファーを元に戻せば……」
「なるほど、そうやって戦人様の傷を抉るおつもりでしたか……。ぷっくっくっ」
 僅かばかりにでも育ったルシファーに対する情を戦人から根こそぎ抉り出す。そのとき戦人はどんな表情を浮かべるだろうか? ベアトリーチェは想像すると楽しみで仕方なかった。
「ですが万一、戦人様の心が揺らがなかったときはどうするおつもりですか?」
「そのときはそのときで、戦人の覚悟のほどとやらが見て取れる。探りを入れる分には無駄では無かろう?」
 それだけ言って、ベアトリーチェはカップを口に運んだ。
 退屈しない……実に退屈しない。
(戦人……絶対に妾はお前を逃がさぬぞ)
 口に広がるその味は、実に美味だった。


―END―


18:傲慢の末路 ◆CRIUZyjmw6
08/10/12 19:39:16 u9xLBeqt
今晩は以上です。
お目汚し失礼しました。七杭はまだ出番少ないので書き分け難しいです。ベルフェゴールならまだいいけど、ルシファーとかはよく分かりません。orz 傲慢お嬢系のツンデレっぽく書けばいいんですかね?
妹達によって嬲り責められて感じる被虐ルシファーとか、ベアトの魔法でもっと半端なくよがり狂う色欲の虜ルシファーとかも考えましたが、構成出来なくて諦めました。
追加に、上記とはまた別のボツ展開を晒させて貰います。ちょっとでもお楽しみ頂けたなら幸いです。


<ボツ展開>

 椅子に座る戦人の上に、更にルシファーが腰を下ろした格好で彼らは抱き合う。戦人の肩に額を押し当てながら、ルシファーは腰を振る。
「ひぁっ……あっ……んっ……んんっ」
 ルシファーの体がまた撥ねる。これで達したのは何度目だっただろうか……。
 熱い息を吐きながら、彼女は戦人にしなだれかかる。
「……失礼いたします」
 と、その場にロノウェが姿を現す。
 もっとも、それに大して戦人は動じないが……。
「お前、何だそれ?」
 彼は冷めた視線をロノウェに向けた。
 鈍い音を立てながらロノウェは胸の前に抱きかかえたそれらをテーブルに置く。
「鞭、ロウソク、ローターに荒縄……手錠に首輪……。あとはネコ耳カチューシャやそういったオプションです。もしよろしければお使い下さい。ご希望とあれば各種コスチュームの他に三角木馬なんかもご用意させて頂きます」
「いや……何というか、いきなりそんなもん持ってこられても……。というか、冷静に抱えてくるなよ」
 言われながらもロノウェも同感なのか、彼は苦笑する。
 そしてそんなやりとりを聞きながら、ルシファーは戦人の腕の中でごくりと喉を鳴らし、秘部は彼のものを締め上げた。
「……おいおい、姉ちゃん」
 小声で彼女にしか聞こえないように戦人が呟く。
「ちが…………。う……あうぅ」
 同じく戦人にしか聞こえないように、恥ずかしげにルシファーは呻いた。


19:名無しさん@ピンキー
08/10/12 20:09:19 oYvykAZt
GJ!
GJ過ぎるぜ兄貴!!
ならば次はベルフェゴールを書くんだ~!
また期待してます!
超GJでした~

20:名無しさん@ピンキー
08/10/12 20:22:45 LMnw2UTC
何というルシファールート
萌え転がったわ

21:名無しさん@ピンキー
08/10/12 20:32:39 ocFgmskB
良すぎるぜ・・GJ!

22:名無しさん@ピンキー
08/10/12 20:49:41 AEYxpK1f
GJ!
しかし最後のベアトの台詞がヤンデレっぽく聞こえるんだぜ…

23:名無しさん@ピンキー
08/10/12 22:20:30 orC5wsBW
うっひょー!
超GJ
外道なベアトを犯したくなってきたお

24:名無しさん@ピンキー
08/10/13 01:59:56 bIy/Q7Sp
なんという作品
うみねこを知らない俺でも引き寄せられた

25:名無しさん@ピンキー
08/10/13 04:07:13 k/KcxvP5
助けてくれベルフェゴール……
浮気しそうだよ俺……

26:名無しさん@ピンキー
08/10/13 12:36:22 CkdLzjvz
>>25
浮気しちゃえばぁ~?

27:名無しさん@ピンキー
08/10/14 23:16:09 0F2z0X30
戦人が七姉妹に姦されちゃう話まだぁ~?

28: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:03:07 o+BAs37a
お久しぶりです。
今回は初めてうみねこに挑戦してみました。
ジャンルはベアト×戦人です。
時間軸は、EP2後のIFのゲーム盤という感じです。

注意点としては、微妙にグロ描写と鬼畜描写があります。
あと、相変わらず全体的に長い上、エロまでの前振りも結構長いです。

では、よろしくお願いします。

29: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:03:44 o+BAs37a
うみねこのなく頃に IF Episode 3
Reversal of the golden witch


「むぅ~」
 ベアトリーチェは、テーブルに突っ伏しながらうなり声を上げる。豪華なドレスに身を
包みながらするその行動は、異様なギャップ感を周囲に放っていた。こんな威厳も何もな
い姿は、間違っても戦人の前では見せないだろう。
「どうされましたか? お嬢様?」
 そこに、悪魔の執事が音も気配もなく現れる。
「ん、ロノウェか……」
 ベアトリーチェは頭も上げず、気だるそうにロノウェが現れた方向へ目をやった。
「お嬢様、そのようなはしたない行動はお控えした方が。万が一戦人様に見つかれば、何
を言われるかわかりませんよ?」
 ロノウェは、目を細めてやんわりとベアトリーチェを咎める。
「そんな事はわかっておる。しかしなぁ……」
「次の一手をどうするかをお悩みでございますか?」
「くっくっく……。よくわかったのう、ロノウェ」
 ベアトリーチェはテーブルに突っ伏したまま不敵に笑った。
「主が何に困っているのかをすぐに察知し、その悩みを解決するのもまた執事の勤めです。
第一、長年の退屈から解放された今のお嬢様が夢中になる事など、考えるまでもなくわか
ります」
「くっくっく。相変わらず口の減らぬ男だ」
「申し訳ございません。言葉遣いに関しては契約書に何も書かれておりませんでしたので」
「よいよい、そなたの言動は時に妾の退屈という名の病を癒す。……それよりそなた、今
主の悩みを解決するのも執事の勤めと言ったな?」
「えぇ」
「ならば、妾が今頭を悩ませている問題も当然解決できるのだな?」
「えぇ」
 当たり前のように、ロノウェは頷いた。
 それを聞いて、ベアトリーチェはがばりと体を起こす。元よりベアトリーチェは、ロノ
ウェに無理難題を吹っかけ、気晴らしをしようとしか考えていなかった。だから、ロノウ
ェのその返事は、全くの予想外だったのだ。
「……そ、それは本当か?」
 心底取り乱しながらベアトリーチェは言う。

30: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:04:44 o+BAs37a
「えぇ、本当ですよお嬢様。このロノウェ、戦人様を見事に屈服させる策を既に考えてお
ります。それも、次の局面ですぐに屈服させるような、切り札のような指し手です」
「次の局面で、だと……? ほぅ、なかなかの自信ではないか。今の戦人は、最初期の戦
人とは全く違うぞ? あやつめ、悪魔の証明を見事に使いこなし、更には親族を疑う事も
躊躇しなくなった。もはや、弱点らしいものがほとんど無い」
 ベアトリーチェは悔しそうに歯ぎしりを立てながら言った。
 前回の局面、つまりは第一の晩の論争で、追い詰められたベアトリーチェは『この島に
は十九人以上の人間はいない』という赤字を早くも使い、それが逆に戦人に親族たちを疑
う覚悟を持たせてしまった。これは、ベアトリーチェの焦りが生んだ、致命的なミスと言
える。もはや、今の戦人は単純な赤字の攻めではビクともしなくなってしまったのだ。
「いえいえお嬢様、弱点が無いというのは早とちりです。こんな寓話を知っていますか?
 ニンゲン達の間では、“北風と太陽”という名で親しまれている話なのですが」
「む? あぁ、あの旅人の服を脱がすというヤツか。無論、知っておるぞ。しかし、それ
が今の妾の悩みとどう関係がある?」
「つまりは、こういう事です……」
 そう言って、ロノウェはベアトリーチェに何やら耳打ちをする。ロノウェの話を聞いて
いる内に、ベアトリーチェの表情は徐々に邪悪な笑みへと変わっていった。
「なるほどなるほど。よく考えたなロノウェ」
 満足そうに笑みを漏らしながらベアトリーチェは言う。
「いえいえ、これも心より尊敬申し上げているお嬢様のためです。……ぷっくっく」
 言って、ロノウェも不敵に笑った。
「では、そろそろゲーム盤を進行させるかの」
 ベアトリーチェが、懐から取り出した懐中時計の竜頭を弄る。すると、ピッタリと動か
なかったゲーム盤世界の時が、川の水のようにゆったり流れ始めた。
「戦人は何をしておる?」
「向こうで、何やら考え事をしております。恐らく、次の局面の対策を練っているのか
と」
「くっくっく……そうかァ。しっかり頭を回転させておけよォ戦人ァ。もっとも、妾の次
の指し手は、頭脳だけではどうにもならんと思うがなァ……くひゃひゃひゃひゃっ!」
「だからお嬢様、そういうのは少し品がないかと」
 気持ちよく笑うベアトリーチェに、ロノウェの咎めがやんわりと入った。


31: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:05:45 o+BAs37a
「ここから離れるって……、父さん母さんどういうこと?」
 ゲストハウスのロビー、今朝の惨劇を免れた生存者達十二名がいるその中で、譲治は言
った。その表情からは、小さくない驚きの感情が垣間見られる。
「言った通りの事や、譲治」
 絵羽以外の全員の視線を浴びる中、秀吉は言った。
「いつまでもここに籠もっているのは、危険でしかない。私たちはそう判断したのよ」
 続いて、絵羽も言う。
「それはどういう意味だい、姉貴? 俺としちゃあ、この籠城状態から抜け出す方が、よ
っぽど危険に思えるが。わざわざ狼が放たれている森に逃げ込むようなもんだぜ?」
 留弗夫が、当然の疑問を投げかけた。
「ふん……。この中に狼がいるからに決まっているでしょう?」
 絵羽のその言葉に、周りの者たちは狼狽えた。……もっとも、それが本心からのものか
は、とても疑わしかったが。
 そう、もはや誰もがその推論から目を背けられないでいるのだ。恐ろしい殺人鬼がこの
十二人の中に紛れているという事に。
 皆がそんな物騒な疑心暗鬼に捕らわれているのも……今朝、何体もの惨たらしい遺体が
食堂から見つかったからだ。
 事件の詳細はこうだ。
 朝の六時頃、紗音が朝から姿の見えない嘉音と郷田と源次の事を訝しみながらも、使用
人の執務を優先させ、朝の見回りを行っていたところ、食堂の扉に不気味な赤黒い塗料で
何かの図形が書かれているのを発見。何か嫌な予感を抱き、食堂の扉を開こうとしたが、
施錠されていて開かない。そこで紗音は、意を決して自分たちのマスターキーで扉の鍵を
解錠、内部へと進入した。
 入った途端、紗音は凄惨な真紅の光景を目に焼き付けられた。姿の見えなかった嘉音、
郷田、源次だけでなく、金蔵、南條、夏妃の血に塗れた遺体がそこにあったのだ。それも、
普通の遺体ではない。胴体から頭を切り離され、更にその頭がテーブルの上の皿に、豪華
な料理と共に盛りつけられていたのだ。……まるで、金蔵達の頭も料理の一部だと主張し
ているかのように。
 生き残った者たちは、その理解不能な殺害現場を見て、ある者は泣き叫び、ある者は犯
人への憎悪に身を包ませ、またある者はこれが夢であって欲しいと願った。
 しばらくその場は混乱を極めたが、次第に冷静さを全員が取り戻し、それと共に自分た
ちが現在置かれた地獄のような状況を理解する事になる。
 何せ、この六軒島は昨日からの激しい台風によって外への脱出が不可能になっており、
更に電話などの連絡手段も何らかの理由で全て使用できなくなっていたのだ。これは、少
なくとも台風がこの六軒島から離れるまでは、一切の外部へ繋がる手段が消滅した事を意
味する。つまり、生き残った十二人は、一気に六人もの人間を惨殺した殺人鬼に怯えなが
ら、この島で台風が過ぎるのを待たなければならなくなったのだ。
 生存者達は、広すぎる本館に留まるのを危険と判断し、いくらか面積の小さい渡来庵―
―つまりはゲストハウスのロビーで台風が去るまで籠城する事に決めた。その時点では、
これに異論を示す者は誰もいなかった。一刻も早く、あの凄惨な現場から離れる事にしか、
皆頭が回らなかったのだ。
 ……しかし、いざ落ち着きを取り戻すと、人間は余計な事を考え始めるもの。生存者達
の心の中は、いつしかどす黒い疑心暗鬼で満たされていった。
 何せ、彼らが六軒島へ行く船の中には、右代宮と関わりのない怪しい人間などだれも乗
っていなかった。それでいて、この台風になっても怪しい人影はまったく見つかっていな
い。そうなると、自動的に犯人はこの中にいるという思考へ向かってゆくことになる。
「……絵羽叔母さん、落ち着けよ。あんなひでぇ殺人をしでかす奴が、この中にいる訳ね
ぇだろ? 殺された人の中には、右代宮の人間が何人もいた。そんな血の繋がった家族を、
ただ殺すだけならまだしも、あんな悪趣味な装飾をして死者の尊厳すら踏みにじるような
外道が、……この中にいる訳がねぇっ!」
 戦人が必死に絵羽の主張を否定する。しかし、自分の言い分がいかに荒唐無稽か彼も理
解しているのか、その言葉は大きく震えていた。
「血の繋がっている……? だったらそこの使用人二人は条件から外れるわね。確かに二
人は怪しいわ。何せ、マスターキーを二本も持っている。あんな密室くらい、赤子の手を
捻るより簡単に作れるわよねぇ?」
 言いながら、絵羽は鋭い視線を紗音、熊沢に向けた。事件当時、マスターキー二本を持
っていたという事実から何も言い返せず、二人はその場で萎縮する。

32: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:06:24 o+BAs37a
「……っ! そういうつもりで言ったわけじゃねぇ。紗音ちゃんも熊沢の婆ちゃんも良い
奴だ。そんな二人が、お世話になった源次さんや、同じ使用人仲間を殺せるわけがね
ぇ!」
 戦人は慌てて二人を弁護する。しかし、それは感情論ばかりで、論理的に彼らが犯人で
ない事を証明する弁にはほど遠い。疑心暗鬼に捕らわれた他の者を説得する言葉としては、
あまりにも脆弱すぎた。
 その証拠に、周囲の人間の疑惑の眼差しが容赦無く二人へと注がれる。彼らは、やはり
何を言い返す事も出来ず、萎縮したままその場で俯いた。
「……まぁ、良いわ。とにかく、この中に殺人犯がいるという可能性を否定できない以上、
私たちはここから離れるわ。何せ、六人もの人間を一晩で殺したんだもの。複数犯の可能
性も十分あるわ。籠城が仇になって、一息に全滅させられるかもしれない」
「……ここにいる誰もが犯人じゃなかった時は、その時はホンマにすまん。しかし、わし
らも命が惜しいんや……」
 萎れた声で、秀吉は言った。命が惜しいという言葉を出されると、戦人はそれ以上何も
言えなかった。
「ここから離れると言っても、どこへ行くおつもりかしら?」
 霧江が言う。
「遠くに行くつもりはないわ。ただこのロビーから離れたいだけだから。……そうね、こ
この二階の部屋に籠もろうかしら。あそこなら扉も頑丈だし、バスもトイレもあるから」
「ロビーから何か騒ぎが聞こえたら、すぐに駆けつける。だから、おかしな事があったら
すぐに大声を出してや」
 秀吉は優しい口調で言ったが、ほとんどの者はそれを信用しなかった。……どうせ、何
かあっても部屋に籠もりっぱなしに決まっている。そんな新たな疑心が、この場でグルグ
ルと渦巻いていた。
「譲治も勿論来るわよね?」
 絵羽が譲治を見て言う。
「僕は……ここに残るよ」
 躊躇しながらも、譲治は言った。
「何を言ってるの譲治……!? ここに犯人がいるかもしれないのよ!? なのに、どう
いうつもり!?」
 驚愕しながら絵羽は捲し立てた。
「僕は……ここにいる人たちがあんな惨い事をするだなんて、とても信じられないんだ。
それに、もし殺人犯がいたとしても、そうでない人をここに残して、自分だけ逃げるなん
て、……どうしてもできない」
「譲治! 自分の命が惜しくないの!? ……あなたからも何か言ってやってよ!」
 秀吉に目をやりながら絵羽は言った。
「……」
 秀吉はしばし何かを思考する。そして口を開いた。
「……譲治がそう言うなら、わしは強制せえへん。譲治も、もうえぇ大人やしな。もう親
がいちいち口を出す年やない。……だがな譲治。もし何かあったら、すぐに遠くへ逃げる
か、父さん達の所へくるんやぞ? えぇな?」
「……うん、ありがとう父さん」
 そう言って、譲治は秀吉へ頭を下げた。
 その後も、絵羽は何度も譲治を説得しようとしたが、遂に彼の口から絵羽の期待する言
葉が出る事はなかった。
 絵羽は諦め、秀吉と二人で二階へと上がっていった。本来なら使用人である紗音達が案
内をするべきだが、それを促す役である源次がいない上、生存者達からの疑惑の眼差しに
すっかり意気消沈した彼らに、案内をする気力は残っていなかった。
 ……ロビーに残された者たちの中には、絵羽達の背中を憎々しく睨み付ける者もいた。
しかし、絵羽達に続いてロビーから離れると言い出す者は現れなかった。それが犯人の狙
いである可能性もあるし、なにより、この非常事態時に自分の立場を悪くする事に躊躇い
があったからだ。

33: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:07:30 o+BAs37a
「……あの、皆さん、お腹のほうはお空きでないですか?」
 絵羽達が二階へ行ってしばらく経った後、殺伐とした空気に満たされたロビーの中で、
熊沢が恐る恐る口を開いた。
 その瞬間、いくつかの鋭い視線が熊沢に刺さる。
「ひぃ……」
 それに圧倒された熊沢は、つい小さく悲鳴を上げてしまった。
 もはや、ロビーにいるほとんどの者が使用人達を信用していなかった。食事と称して毒
を盛られるのではないか。そんな疑いを持つ者も少なくないのだ。
「あぁ、そういや腹減ったなぁ。結局、朝は何も食べなかったしな」
 戦人は、そんな周囲の空気を察知し、熊沢をフォローする。彼はまだ使用人達を信じて
いた。
「そうね、今朝は色々ありすぎたから……。丁度、お昼も近いし、皆さんお昼ご飯にしま
せんか? いつまでも気を張っていたら、とても明日までもたないわ」
 霧江が時計に目をやりながら言う。時刻は、正午まで後数分といったところだった。
「熊沢さん、お一人じゃつらいでしょう? 私も手伝います」
 更に霧江は笑顔で熊沢に言った。それは、暗に熊沢が料理をするところを監視すると言
っているようなものだった。……そう、戦人と違い、彼女は使用人達を信用してはいない
のだ。
 だが、食事をする事は良い気分転換になる。ずっと緊張状態では精神の疲労が進み、不
意の襲撃があった時かえって応戦できなくなる。だから、彼女は熊沢の申し出に乗ったに
過ぎない。
「……えぇ、そうですね。お願いします」
 そう熊沢が言い、霧江と共にゲストハウスの厨房へと消えていった。使用人でない人間
が付いている事に安堵したのか、熊沢を睨み付ける視線は無かった。
「あの、絵羽さまたちもお呼びした方がよろしいでしょうか? 確か、二階の部屋には食
べ物は置いてなかったと思うので」
 熊沢達がいなくなった後、紗音が小さく挙手しながら提案した。
「そうだな。後になって何で私たちを呼んでくれなかったのよぉ、とか言われても困るし
な。いっひっひ」
 戦人は冗談交じりに言う。その冗談が効いたのか、張り詰めたこの場の雰囲気が、ほん
の少しだけ緩んだように思えた。
「はい、それではお呼びして参りますね」
 そうにこやかに言って、紗音は二階へと上がっていった。彼女の後ろ姿に疑惑の眼差し
を向かせる者は、ほとんどいなかった。例え彼女が絵羽夫妻に襲いかかろうが、一対二で
はさすがに厳しいと思ったのだろう。
 それから数分経った頃。誰かが階段を降りてくる音が聞こえ、ロビーの全員が視線を向
ける。降りてきたのは紗音一人で、絵羽と秀吉はいくら待っても降りてくる気配がなかっ
た。
「お、おい紗音ちゃん。二人はどうしたんだ?」
 戦人が声をかけると、紗音は浮かない顔をして口を開いた。
「は、はい……。あの、いくらお二人をお呼びをしても、中から返事がなくて……。鍵が
かかっているので、大丈夫だとは思うのですが……」
 紗音の言葉を聞き、ロビー内にざわざわと声が上がり始めた。
「……ちょっと、僕見に行って来るよ」
 譲治はそう言い、階段へと向かった。
「俺も行くぜ。この非常時だ。万が一……って可能性もあるからな」
 そう言って、戦人も階段へと向かう。
 そして、この妙な事態にいてもたってもいられなくなったのか、結局その場にいた全員
が二階へ様子を見に行く事になった。
「寝てるだけ、ってなら笑い話じゃ済まねぇよなぁこれは」
「うむ、人騒がせにも程がある。もしそうなら、きつくお灸を据えてやらねばならん」
 絵羽達の部屋の前で、留弗夫と蔵臼が軽口を叩いた。それはこの場を和ませるためとい
うより、これ以上妙な事が起こらないでくれという願いに聞こえた。
「絵羽さま、秀吉さま。お食事の方はお召し上がりになられますか?」
 紗音が、コンコンとノックをしながら言う。しかし、返事はない。
「絵羽さま、秀吉さま……! いらっしゃいますか……!? どうか御返事をお願いいたします……!」
 更に紗音はノックを繰り返し、大きな声で二人を呼んだ。……しかし、中から返事らし
き音は何も聞こえてこない。
「……これは、どういう事なの?」

34: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:08:32 o+BAs37a
 いつまでも続くかのような静寂に堪えきれず、楼座が声を漏らした。
「さぁな。しかし、何か異常が起こっているのは確かだぜ……」
 留弗夫が言う。
 二人が部屋から出たのなら、皆の元へ来るはずである。だが、絵羽達がこの部屋に籠も
ってから、二人がロビーへ降りてきた事は一度もない。
 ならば、この矛盾は何か。
 ……この場にいる者たちの頭に、二つの推論が浮かんだ。すなわち、絵羽と秀吉が犯人
で、何らかの細工をしに部屋を出たか、もしくは絵羽と秀吉が新たな犠牲者となったか、
だ。
「……紗音ちゃん、マスターキーでこの扉を開けてくれないかい?」
 遂に痺れを切らしたのか、譲治が紗音を見て提案する。
「……わかりました」
 紗音は言って、懐からマスターキーを取り出した。部屋の主に無断で使用人が鍵を開け
るなど、普段なら絶対に許されない事だ。だが、その普段が完全に壊れている今となって
は、そんな事を言っていられない。
 ガチャリという音がして、扉の施錠が解かれる。それと共に、譲治は体当たりするかの
ように部屋の中へ飛び込んだ。他の者たちも、譲治に続く。
「……っ! 父さんっ……!!」
 部屋に入った途端、譲治は叫んだ。後に続いた者たちも、譲治の目線の先を注目する。
 ……そこには、ベッドの上に倒れている全裸の男性の姿があった。俯せだから、誰かは
わからない。だが、譲治の言葉と、倒れている男性の体格から、ほとんどの者がそれが秀
吉だと気付く事ができた。
「父さん……! どうしたんだ父さん!?」
 譲治が秀吉へ近づき、その肩を揺すった。しかし、どれだけ強く揺すっても、秀吉は全
く反応しない。だから、その場の全員が、最悪の可能性を想像しつつあった。
 意を決し、譲治は秀吉の首筋へ手をやる。……しばらくの無言の後、譲治は激しく泣き
叫び始めた。
「どうして、父さん……。うわああぁっぁあっ……!!」
 ……譲治のその悲痛な反応から、全員が秀吉の死を認めることになった。
「これは……どういう事だ。……そうだ、姉貴は? 絵羽の姉貴はどこに消えちまったんだっ?」
 留弗夫が、混乱しながらもようやく言葉を漏らした。辺りを見回すが、この部屋に絵羽
の姿は発見できない。
「バスルームは……!?」
 楼座がそう言って、部屋の隅にある扉から、バスルームへ入る。しかし、そこにも絵羽
の姿は無かった。
 それにより、この場にいるほとんどの人間の頭に当然の疑惑が浮かんだ。……すなわち、
絵羽が何らかの理由で秀吉を殺し、逃亡したのではないかと。
「おい、あそこ……、窓が開いてるぜ? こんな大雨だってのに」
 戦人が一つの窓へ指をさしながら言う。すると、確かにその窓は全開されていた。
 楼座はそれを確認すると共に、素早くその窓から外を覗いた。彼女は、この中で一番絵
羽の事を疑っていた。もしかすれば、逃亡する絵羽の後ろ姿を発見できるかもしれない。
そんな狙いからの行動だった。
 ……しかし、楼座が見つけたのは、彼女の期待とはまるで逆の光景だった。
「……そんな」
 窓の外、いや、正確に言えばその真下を見つめて、彼女は呆然と声を漏らした。
「楼座叔母さん、どうしたんだ……?」
 戦人が楼座の隣に立ち、同じく窓の外の真下を見つめる。……そして、“それ”を見つ
けた。
「な、絵羽叔母さん……!?」
 戦人は驚愕のあまり、崩れた表情になった叫んだ。
 ……戦人の目線の先には、血糊で真っ赤になった岩と、その傍らで頭から血を流しなが
ら倒れる絵羽の姿があった。秀吉と違い、衣服は着用している。しかし、絵羽の傷口から
は、鮮血と共に脳のような物があふれ出ているのが二階からも見え、それは絵羽がもうこ
の世にいないという事を、如実に表していた……。

35: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:09:19 o+BAs37a
「おいおい、コイツは一体どうなってんだ……!?」
 俺は眼前の光景を理解できず、吐き出すように叫んだ。
「くっくっく。お前が身内を疑う覚悟を持ったようだからな。その身内にも殺人が不可能
な遺体を出してみただけのことよ」
 相変わらずのむかつく笑みを浮かべながら、ベアトは嬉しそうに言った。
「ちっ……。確かにこれは訳がわかんねぇっ!」
 絵羽叔母さんと秀吉叔父さんが二階へ行った以降、他の生存者はずっとロビーにいたは
ずだ。だから、ロビーにいた生存者のアリバイは完璧……! これは鉄板だ。
 だが、そうなるとあの二人を一体誰が殺したんだ!? 
 第一の晩の六人はありえない。ベアトが赤字で『六人とも死んでいる』と言ったからだ。
そして、外部犯も勿論ありえない。ベアトが赤字で『この島に十九人以上の人間がいな
い』と言い切ったからだ。
 じゃあ……、そうなると、この目の前にある二人の遺体は何なんだっ!?
「ほらほら戦人ァどうしたよォ? 窓が開いてるから今回は密室でも何でもないぜェ? 
なのに、一体何を悩んでるんだよォオ? くひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
「……お嬢様、そういうのは品が無いと何度言えば。ぷっくっく」
 いつの間にかベアトの隣にいたロノウェが、苦言を漏らす。だが顔は完全にこちらを見
てあざ笑っていて、腹が立ってしょうがない。
 ……確かに、こいつは物理的には密室じゃない。だが、状況的には密室とほぼ同じだ。
何せ、犯行ができる生存者全員のアリバイが確定している。誰も絵羽叔母さん達の部屋へ
近づいていないのだ。
 ……いや、違う。まだアリバイが確定しているとは言えない。誰かが何か怪しい動きを
しているのを見逃した可能性もある。それを、復唱要求すれば……。
「『絵羽と秀吉以外の人間は、熊沢が昼食の提案をするまで誰もロビーから動いていな
い!』いや、これだけでは不十分だな。『ロビーにいた何れの人間も絵羽と秀吉を殺して
いない!』」
 こちらの心情を読んだかのように、ベアトは赤字で攻めてきた。
「なっ……! 誰も殺していないだと!? じゃあ、二人はどうして死んだんだよっ! 
おかしいじゃねぇかっ!!」
「くっくっく、答えは簡単だろう? 妾が! この手で! 魔法を使って殺したっ! そ
れ以外にどんな答えがあるのだ!? 早く認めちまえよ戦人ァ? そうすりゃ、楽になる
ぜぇ?」
「うるせぇっ!! 誰がそんな馬鹿な事を認めるかっ! これは人間がやった! それだ
けは絶対だ!」
「ならば妾を否定すれば良いではないか。お得意の復唱要求でなァ。なのに、何故それを
しない? そなたが今叫んでいるのは、馬鹿な子供の我が儘と変わらないぞ? ……くっ
くっく」
「黙れっ! …………そうだ、二人が死んでいるとは限らねぇ。特に秀吉叔父さんは見た
ところ外傷がねぇしな。復唱要求だ、絵羽叔母さんと秀……」
「『絵羽と秀吉は確実に死んでいる!』」
 またしても、俺の考えはすぐに赤字で否定された。
 ……だが、そこで、俺は何かがおかしいと気付く。今回のベアトは、俺にチェックされ
れば一気に不利になりそうな赤字を序盤からバンバン切っているのだ。明らかに、これま
でとは異質な指し手。
 本当に魔女がやったから? いや、そんな事を考えちまったら駄目だ! 絶対に、これ
を打ち破る指し手はあるはずだ!
 だが、この奇妙なベアトの指し手は一体何なんだ? 焦っている? 何に?
 妙な違和感を感じる。知らず知らずのうちに何処かへ誘導されているような、そんな気
持ち悪い違和感だ。
 局面としては、こちらが圧倒的に不利。つまりそれは、同時に相手の指し手が単調にな
ることを示す。
 ……だったら、こんな時こそ、チェス盤をひっくり返すべきじゃねぇのかっ!?
「……駄目だぜ、全然駄目だっ!」
「……ほぅ、何が駄目なのか言ってみるが良い」
 ベアトが、それまでのむかつく笑顔から一変、やけに大人しい表情になった。
 ……そう、動揺しているのだ。予想通り、この妙に勢いのある指し手は、俺がたった一
つの事に気付くだけで粉々に砕ける、捨て身の指し手。まるで偽物の拳銃でこちらを脅迫
しているような、完全なハッタリだっ!

36: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:10:24 o+BAs37a
「毎回毎回殺人ばっかだから、俺はまんまとてめぇに誘導されちまった。絵羽叔母さんと
秀吉叔父さんが、どうやって殺されるかに頭を回しているのが間違いだった。そう、根本
的すぎる問題である、“二人は殺されたのか否か”にこそ考えを巡らすべきだったん
だ!」
「……な、なにおぅ?」
「復唱要求だベアト! “絵羽叔母さんと秀吉叔父さんは何者かによって殺された”!」
「く……」
「どうした? さっきみてぇに気前よく赤を使わねぇのか? だったら、興ざめもいいと
ころだぜっ!」
「……拒否する。理由についてはあえて言わん」
 顔を俺から背けながら、ベアトはしおらしく言った。
 ……へっへっへ。見えてきたぜ。これが奴のハッタリを崩す起点だっ!
「嘘はよくねぇぜ、魔女様よぉ。言わないんじゃなくて、言えないんだろ? じゃあ答え
は簡単だぜ! 二人はあの部屋で誰にも知られずに自殺を図った! これが真相だっ!」
「ふんっ……! それなら赤で返せるぞ! 『絵羽と秀吉は自殺していない』! どうだ
ぁっ!? くっくっくっくかかかかかかかっ!」
「あぁん? てめぇ、長生きしすぎて遂に頭がイカレたか? こんなくだらねぇ罠にひっ
かかりやがって」
「何をっ……!? ……………………は、しまった」
 ベアトの表情がみるみるうちに青白くなってゆく。
 そう、こいつは自慢のハッタリが崩れかけている事に慌てて、目先の赤字に飛びついち
まったんだ。赤字は俺を攻める絶好の手段だが、同時に俺の反撃の手段にもなる。問題っ
てのは、可能性を否定されれば否定されるほど、自動的に正解へ近づくようになっている
からな。しかも今こいつは、俺にとって最高のヒントを自ら与えちまった。
「全然駄目だぜベアトっ! チェックメイトだ! 自殺でも他殺でもないなら、絵羽叔母
さんはあの状況的に事故死だ。何らかの理由で窓から足を滑らせ、転落した! 対して、
特に外傷の見あたらない秀吉叔父さんは病死だ! 何らかの理由で死に至るほどの病気が
発症した! 違うというなら赤で返してみやがれ!」
「この……、妾の些細なミスで調子に乗りおって! それが真実だというなら、その何ら
かとやらを説明してみせよっ……!」
「あぁ、そりゃ道理に叶ってるな。……だが、拒否するっ! 忘れたのかベアト? 悪魔
の証明だぜ。理由を説明できないからと言って、俺の言った何らかの存在を否定できるわ
けじゃねぇ!」
 ……こんな屁理屈、普通の推理で言ってりゃ、俺は即刻黄色い救急車で運ばれちまうだ
ろう。だが、この魔女のゲームでなら通用する! 向こうがあらゆる可能性を潰して魔法
の存在を肯定するのなら、俺はあらゆる可能性を生み出して魔法の存在を否定する! そ
れが、このゲームの戦い方なんだ!
 ……もっとも、この局面はそれだけで終わらせるつもりはねぇがな。
「……悪魔の証明、有効です」
 ロノウェが、静かにそう言った。それがスイッチになったのか、それまで悔しそうに歯
ぎしりを鳴らしていたベアトが、急に大人しくなり、そして囁くように言った。
「仕方ない、この局面はリザインす……」
「そんな偽物認めねぇよ」
「は……?」
 俺の言葉が理解できなかったのか、ベアトは間抜けに大口を開ける。
「てめぇの不完全なリザインを認めねぇって言ってんだっ!」
「な、何を言っておるのだ?」
「本来のリザインの意味は投了だ。それはつまり、このゲームでは全面的に相手の主張を
認める事と同義。だが、お前の使い方は違うよな? いつもいつも、自分が不利になった
時にその言葉を使って次の局面へまんまと逃げやがる。これじゃあ引き分けと変わらねぇ。
だから、俺はその不完全なリザインを認めねぇと言ってんだ。てめぇは、俺がこの局面で
徹底的に叩き潰すっ!!」

37: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:11:05 o+BAs37a
「妾のリザインを認めぬだとぅ!? ロノウェ! この要求は通るのか!?」
 完全に慌てふためいたベアトが、隣にいるロノウェへ向かって叫ぶ。
「……はい。戦人様の要求は正当でしょう。……しかし戦人様、お嬢様を叩き潰すとはつ
まり、この第二の晩の真相が解けたという事でしょうか?」
「あぁ、そうさ。じゃないと、こんな要求はしねぇ。さっきは一旦悪魔の証明で逃げたが、
よく考えりゃ真相へ至る材料は既に出揃っている。それに、何度もリザインで逃げるベア
トを見ていたら、いい加減腹が立ってきてな」
「ふ、ふん。何を言っておるか。そなた、その真相とやらが外れていたらどうするつもり
だ? もう、後には引けなくなるぞ? 妾が引き分けで終わらせてやると言っておるんだ、
大人しく従っておいた方が賢いだろう?」
 ……あぁ、確かにベアトの言うとおりだ。俺の推理した真相が赤で否定されりゃ、その
時点で俺は八方ふさがり。魔女を認めざるを得なくなる。だが、それはベアトも同じはず。
俺に魔法を完全否定されれば、奴の敗退だ。
 例え一局面でも相手を認めたら敗北決定のこのゲーム。奴は必死に虚勢を張っているが、
俺は今確実にベアトの首に刃を突きつけている。このチャンスを逃せば、もう俺が勝てる
局面は来ないかもしれない。
 だから、俺はこの局面を引き分けなんざで終わらせない、今ここで勝利を手に入れる
っ!
「うるせぇっ! 俺はもうこんな茶番に付き合う気はねぇんだ! このゲームは引き延ば
せば引き延ばすほど、悲惨な殺人事件が繰り返される! それこそ、みんなが無限に殺さ
れちまう! だから、俺はここで絶対の真相を推理してこの残虐なゲームを終わらせるん
だ! 覚悟しろベアトリーチェっ! お前に本当のチェックメイトを突きつけてやる
っ!!」
「ぬぅぅうううう……。……よかろう、来るが良い右代宮戦人っ! そなたの指し手、妾
が見事に躱してくれるわっ!」
「良い返事だぜっ……! じゃあ、いくぜ? ロノウェ、悪ぃが第二の晩の再構築を頼
む」
「了解しました」
 ロノウェがそう言った途端、茶会の席は無数の黄金蝶に分解され、一面が真っ白に包ま
れる。そして、気付くと周囲はゲストハウス二階の部屋、つまり秀吉叔父さんの遺体が見
つかった現場に変わっていた。
「まずは、秀吉叔父さんについてだ」
 俺は目の前にベッドで俯せに横たわっている、全裸の秀吉叔父さんの遺体を見ながら言
った。
「俺は死因を病死と判断した。だが、普通の病死だとしたら全裸になってる意味がわから
ねぇし、絵羽叔母さんが窓から落ちた事にも繋がらねぇ。秀吉叔父さんが心臓発作やらで
急死して、窓際にいた絵羽叔母さんが驚いて転落した……って解釈も不可能じゃねぇが、
やはりそうすると全裸の意味がわからん」
「……ふ、ふん。怪しげな雰囲気にするために妾が魔法で脱がせた、と解釈しても問題な
かろう?」
「訳の分からんこと言うんじゃねぇ。お前は黙ってろ。とにかく、普通の病死と判断しち
ゃ、この部屋に残された数々の結果の説明がつかねぇんだ。……そこで、俺は一つの仮定
を作った。この仮定を立てたまま推理を進めると、全ての状況に説明を付ける事ができる
んだ」
「……ほぅ、言ってみるが良い。もっとも、そなたの立てた下らん仮定など、妾の赤き宝
刀で簡単に叩き斬ってやるがな」
「へんっ、できるもんならな。俺の立てた仮定……そいつは“秀吉叔父さんの腹上死”
だ」
「……腹上死、だと?」
 ベアトはぽかんと口を開けて言った。明らかに戸惑っている。赤で斬る素振りなど全く
見せない。
 ……どうやら、ドンピシャってとこらしいな。
「聞いた話によると、腹上死ってのは心臓に病気を持ってる人だけじゃなく、高血圧の人
にも起こり得るらしい。過度の興奮状態が続いて、血圧が限界まで上がり、脳出血を発症
して死亡、って感じにな」
「なるほど……」
 ロノウェが頷きながら言った。

38: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:11:43 o+BAs37a
「俺は秀吉叔父さんがどういう健康状態だったか詳しくは知らねぇ。だが、六年前に見た
ときと比べると、明らかに体全体が丸くなり、腹も大きくなっていた。つまり、肥満の傾
向があったんだ。肥満と高血圧、この二つが切っても切れねぇ関係にあるのは常識だよ
な? そして、高血圧と腹上死にも関連がある。だから、俺は秀吉叔父さんの死因を腹上
死と仮定した。そうすると、全裸になっていた事も説明が付く。服来たままヤるなんて、
そういう専門の店でしかねぇだろうしな。
 秀吉叔父さんについては、これが結論だ。ベアト、間違ってるなら赤字で訂正を頼む
ぜ?」
 俺は挑発的な笑みを向けながら言ったが、当のベアトはうなり声すら上げない。ただじ
っと、俯いている。……こりゃ、正解と判断して良いだろう。
「続いて絵羽叔母さんだ。秀吉叔父さんの死因がわかれば、これは絵羽叔母さんの性格か
ら考えていけば簡単だ。右代宮家の大人達は基本的にプライドが高いが、特に絵羽叔母さ
んのそれに関しちゃ突出している。そんな人が、自分の旦那の腹上死を目の当りにしたら
どうなるか。
 死者を貶めるつもりはないが、やっぱ腹上死ってのは不名誉な死に方だ。そうなると、
あの絵羽叔母さんが、ロビーまで降りてみんなに報告しに来るとは思えねぇ。絶対に隠し
通そうとするだろう。しかし、どっかに死体を隠しても、この非常事態時じゃみんなから
あらぬ疑いをかけられるだろうし、死因を隠蔽しようにも、実の旦那の遺体に妙な細工を
するのは抵抗があるだろう。
 そこで、絵羽叔母さんはひとまずこの部屋からこっそり抜け出そうとした。行方不明に
なったフリでもして、様子見しようと思ったんだろう。逃走経路はもちろん窓だ。普通に
扉から出ちゃ、みんなに感づかれる可能性がある。
 ……しかし、いざ窓から外へ降りようとしたところで、足を滑らせたか、食事のことで
部屋に来た紗音ちゃんのノックに驚いたかで窓から落下し、運悪く頭を岩にぶつけてその
まま死亡した。衣服を着用していたのは、さすがに裸のまま外に出るわけにはいかないか
らだろう」
 そこまで推理を言い終えて、俺は少し息をついた。
「……これが、第二の晩の真相だ。ロノウェ、これまでの状況や赤字に反してる部分があ
ったら言ってくれ」
「いえ、……特にございません。戦人様、見事な推理でした」
「へっ、じゃあこれが本当のチェックメイトになりそうだな。ベアト、赤字で訂正する部
分はねぇか? ねぇなら、このふざけたゲームは俺の勝利でようやく終了だ!」
 余裕に満ちた表情で俺はベアトを見る。
「…………」
 しかし、当の本人は相変わらず俯いたまま無言だ。
「おい、どうしたんだベアト。負けが確定したからって、今度は何も喋らねぇでうやむや
にするつもりか?」
「……む、妾がそんな事をするはずがなかろう。前にも言った通り、妾は約束は守る」
 ようやくベアトは顔を上げて喋った。
「じゃあ、俺の勝利を言葉で認めろよ。俺は第二の晩に魔法が関わっている可能性を完全
に否定した。じゃあどう見ても、俺の勝ちだろう?」
「いや……そのだな……」
 明らかにベアトの様子がおかしい。何だ? 一体何を考えてやがるんだ?
「言いたい事があるなら、言ってくれ。このままじゃ、気持ち悪くてとても勝利の余韻を
味わえないぜ」
「……ん、わかった、言おう。……………………腹上死とは、何だ?」
「…………は?」
 今度は、俺が間抜けに大口を開けてしまった。

39: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:12:34 o+BAs37a
「だから、腹上死とは何かと聞いておる。妾の知らぬ単語を使って推理をされても、妾は
赤字を使いようがない上、そなたの勝利を認める事などできる訳がなかろう?」
「……ま、まぁ確かにそれは道理だ」
「うむ。だから早く言ってくれ。腹上死とは一体どんな死に方なのだ?」
「……あ、あぁ、腹上死ってのはな………………」
 だが、いざ説明しようとしても、なかなか言葉が出てこない……。何せ、ベアトは魔女
とは言え、一応女性だ。その女性に、腹上死について説明するというのは、何というか…
…その……恥ずかしくて仕方がない。
 クソっ、何て死に方をしてくれたんだ秀吉叔父さん……!
 助け船を求めようと、腹上死について知っているはずのロノウェに目線を合わせるが、
奴は口に手を当て笑いを堪えているのみで、何も言おうとしない。どうやら、この状況が
おかしくて仕方がないらしい。……野郎っ……!
「どうした戦人? 早く、腹上死について説明せんか」
 そうこうしてる間にも、ベアトは困った顔をしながらこちらを催促する。
「わ、わかってる。ふ、腹上死ってのはな…………」
 だが、やはりどうしても続きの言葉が出てこない。……腹上死について説明するには、
前提の性交の事を言わなければならない訳で、女性にそれを言うのは何というか男として
許せない気がする訳で……。というか、これはセクハラになるんじゃないのかっ……!?
 あぁ! もう! クソっ! 何でこんな死に方をするように出来ているんだ人間はっ……!?
「……そこまで説明をしたがらないという事はあれか、そなたは架空の死因をでっち上げ
て妾を騙そうとしているのか? もしそうだとすれば、とてもそなたの勝利を認める事は
できんぞ。それどころか、強制的に敗北にしてやりたい気分だ……」
 訝しんだ目でこちらを見つめながら、ベアトは言った。
「いや、違うそうじゃない……! 腹上死という死に方は確かにある!」
 敗北という二文字が耳に入り、俺は慌ててベアトの疑いを否定した。
「ならば早く説明するが良い。いつまでこんな問答を繰り返すつもりだ? 妾にはそなた
が何を考えているのか全く分からん」
「あぁ、わかった、言うぜ……」
 俺は腹の中で覚悟を決めた。
「腹上死ってのはな……つまり……せ、性交中に急死する事だ」
 言い終えて、俺は体中から汗が吹き出ているのに気付いた。
「性交中に……? そんな事、ありえるのか?」
 困惑した顔でベアトは俺を見つめた。
「……あ、あぁ。さっき俺が説明しただろう。極度の興奮によって、心臓病を患っている
人や高血圧気味の人が、心筋梗塞や脳出血を起こして死亡するんだ」
「ふむ、なるほど」
 興味深そうな顔をして、ベアトは唸る。
「こ、これで説明したぜ。秀吉叔父さんの死因が腹上死じゃないならとっとと赤で否定し
てくれ」
「……性交で死ぬほどの興奮状態になるなど、ありえるのか」
 ベアトは俺の要求を無視し、代わりに明後日の方向の質問を投げかけてきた。……こ、
こいつ、また返答のしづらい質問をしてきやがって。
「そ、そりゃあるんじゃないか? 刺激の強すぎる快感を得て、そのままぽっくりって感
じに」
 俺は曖昧に返答した。
「刺激の強すぎる快感……そんな程度で死ぬと言うのか。いくらニンゲンがひ弱と言って
も、限度があるだろう。にわかには信じられんぞ……」
 納得がいかないという顔をして、ベアトはうんうん唸った。
「あ~クソっ! じゃあどうしたら信じるんだよお前はっ!?」
「そうだのう……。そなたを使って実験してみるか」
「はぁ!?」
 訳の分からない事を言われ、俺は思わず叫んだ。
「ニンゲンは、不可解な事象を目撃したとき、実験によってそれを科学的に解明しようと
するであろう? それと同じだ。丁度そなたというニンゲンもいるしな。そなたを使って、
腹上死という死因が実在するか確かめるのだ」

40: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:13:15 o+BAs37a
「な、何言ってんだお前はっ!?」
「安心しろ。この空間でなら、そなたは何度でも生き返られると、妾の家具共のお遊びで
十分知っているであろう? 今更一度死ぬ程度、何でもないではないか」
「……そ、そういう問題じゃねぇっ! 腹上死が実在するか確かめるって事はあれだ、お
お、お前と俺が、そのっ……せ、いや、あれをやるって事かっ!?」
「む? 性交如きで何を慌てておるのだ?」
 こ、こいつ、俺がわざわざ言うのを自重した言葉を堂々とっ……!
「何を赤くなっているのだそなたは? ん……そうかなるほど」
 ベアトの顔がにんまりとした笑顔へ変わってゆく。明らかに、こちらを見下した表情だ。
「なるほどなぁ……」
「な、何だよっ!?」
「つまり、そなたは妾と性交する事に照れているんだな?」
 その言葉が耳に入った瞬間、俺は体中の体温が急激に上昇するのを感じた。頭のてっぺ
んから湯気の一つや二つが吹き出たかもしれない。
「う、うるせぇっ!」
「図星か。くっくっく。前回のゲームで妾の前で裸体を晒しておいて、今更何を言うか」
「は、裸見せるのと実際にや、やるのとはかなり違うだろっ!」
「……戦人……」
 ベアトはそう囁くように言い、急に大人しくなった。
「……ど、どうした?」
 俺はその急変に心底驚く。
「そこまで嫌がるという事は……妾には魅力が無いのであろうか?」
「はっ!?」
「だってそうであろう? そなた程の年齢だと、性欲もそれなりにあるだろう。なのに、
そこまで妾の誘いを断るという事は、妾自身に魅力がないからとしか考えられぬ」
「お、おい……!」
「……前回のゲームでは、妾もそなたに裸体を晒した。そなたは、そこで妾の体に魅力が
ないと判断したのであろう? ……妾は、それなりに自信を持っておったのだがなぁ。
 しかし、考えてみれば、それも当然かもしれぬ。何せ、そなたはニンゲンで妾は魔女。
あらゆる価値観が違いすぎる。その中に美的センスを含めても、何もおかしな事はなかろう」
「ちょ、ちょっと待てよ!」
 抗議の声を出すが、ベアトはまるで聞き入れない。それどころか、潤んだ瞳でこちらを
見つめてくる。
「……戦人。そなたの眼に、妾はどんな醜悪な姿でうつっておるのだ? 皺だらけの老婆
か? それとも、毛深い野獣か? ……いや、もしかすれば、妾の価値観ではとても形容
できぬような醜い姿なのか」
 そう言い終わると、ベアトは背を向け、しょぼくれたように肩を落とした。
「だからちょっと待てって!」
「……戦人?」
 ベアトはこちらに背を向けたまま、注意しなければ聞き取れないような小声で言った。
「俺は別にお前に魅力がないから嫌がってる訳じゃねぇ!」
「……そなたは、妾に牛チチと言い放ったぞ」
「あ、あれは、あの時のお前の行動に腹が立ったからつい言っちまっただけだ。……冗談
みたいなもんだぜ」
「……では、そなたに妾の姿はどのように映っておるのだ?」
「び、美人だと思うぜ。それもかなりレベルが高い。少なくとも、俺の眼にはそう映って
いるぜ。祖父さまが、黒魔術にはまり込んでまでお前を復活させようとしているのも、同
意は別として理解はできる。間違っても、魅力がないって事はありえねぇ」
 俺は、自分が思っている事をそのまま口にした。……確かにこいつは残虐で最低な奴だ。
しかし悔しいが、容姿の良さだけはどうやっても否定する事ができない。

41: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:14:08 o+BAs37a
「…………そうかぁ……!」
 ベアトは純粋無垢な少女のような笑顔でこちらへ振り向き、本当に嬉しそうな声を上げ
た。何だか照れくさく、俺はつい目線を明後日の方向へやってしまう。
「しかし、では何故そなたはそこまで妾を拒むのだ?」
「お、お前と俺が敵同士だからだ。普通、こんな関係でそんな事はやらねぇだろ!?」 「何だ、そのような理由で拒んでおったのか。それなら心配はいらん。もうこのゲームの
勝敗はほぼ決まったようなもの。妾との性交は、これまで付き合ってくれたそなたへの褒
美だと考えれば良い」
「だ、だけど、俺は腹上死のしようがないぜ!? 心臓病なんて患っていないし、特別血
圧が高い訳でもねぇ」
「それも、心配無用だ。妾の魔法がある」
「何だよ、俺の血圧を無理矢理高めようってか……!?」
「いやいや、それではそなたに悪い」
「じゃ、じゃあどうするんだ?」
「妾の魔法でそなたの精力と陰茎の感度を高める。それでも腹上死とやらに至らぬのなら、
妾の膣にも魔法をかけよう。無論、そなたが最大限の快感を得られるようにな。
 極限にまで敏感になったそなたの陰茎と、極上の妾の膣。二つが合わされば、決してニ
ンゲン界では味わえぬ快楽が得られるぞ? それなら、腹上死とやらも簡単に起きるだろ
う。どうだ、悪い話ではなかろう?」
 そう言いながら、ベアトは徐々にこちらへ近づいてくる。二歩、三歩と近づくにつれ、
その整った顔がこちらへ大きく迫ってくる。
「…………」
 俺はまるで言葉を忘れたかのように何も喋れないでいた。自分の本能が、ベアトの提案
に賛成しようとしている。そして、理性が必死にそれを押さえつけている。だが、両者の
勝敗は既に決まったようなものだった。
 何故なら、理性までもが半分ベアトの提案を受け入れようとしているのだ。何せ、デメ
リットがほとんどない。ベアトとの性交によって、奴は俺の推理を認めざるを得なくなり、
更に俺は極上の快楽を得られる。ベアトを拒絶する理由が見あたらないのだ。あるとすれ
ば、俺のプライドが少し傷つく事と、腹上死による苦痛を味わう事くらいか。しかし、前
者はこれが勝利を手にするために必要なプロセスだと納得すれば済む問題だし、後者は既
に何度も死の苦痛を味わっている俺にとって、ほとんど意味のない問題だ。
 ならば、もう…………。
「戦人……」
 その声が耳に入り、ふと気がつくと、ベアトの顔が目と鼻の先にあった。暖かい吐息が、
俺の鼻先にふわりとかかる。
「ベ、ベアト……!」
 思わず、俺は退いた。しかし、何かの力によってそれは妨げられる。見ると、ベアトが
俺の後ろ首を掴んでいた。強い力が入り、強引に抱き寄せられる。そして、俺とベアトの
体は完全に密着した。
「何故、逃げようとするのだ?」
 小悪魔的な笑顔をベアトがこちらへ向ける。俺との戦いの中で見せた、あの残虐な笑顔
とはまるで違う。無邪気で無垢で純粋で、それはいたずら好きな少女が見せる笑顔によく
似ていた。少女……そう、今ベアトから感じられる雰囲気は完全にそれだった。
 俺はいつの間にかその笑顔に魅了されていた。……この笑顔こそが、ベアトの本性なの
ではないか。そんな思い、いや、期待すら持ち始めていた。そしてその期待が、ベアトと
繋がる事への拒絶感を、まるで眠りにつく間際の意識のように、次第に薄れさせてゆく…
…。
 ベアトは更に力を込めて俺を抱きしめた。……暖かくて、心地よくて、心が安らいだ。
「ベアト……」
 俺はためらいがちに手を震わせながらベアトの背中へゆっくり手を回す。
「遠慮せずとも良い。……妾を優しく抱いておくれ」
 その言葉がスイッチとなったのか、……俺の意識は深く眠りについた。
 ベアトの背に回した手に力を入れ、そっと俺の胸の中へ抱きしめる。……少女が傷つき
壊れないように、本当に優しく……。
 柔らかさの向こうに微弱な鼓動を感じた。それはベアトが生きているという事の、何よ
りの証左だった。……何故だか、俺は心の底で喜びを感じていた。

42: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:15:06 o+BAs37a
 しばらく抱き合ったまま時が過ぎ、ふとベアトが口を開く。
「ここでは場所が悪いな。邪魔な執事がおるし、何より死体がそばにあっては興が削がれ
るのもいいところだ」
 ベアトに言われ、俺はようやくこの部屋にロノウェがいた事を思い出す。視線を向ける
と、奴はいつも通り口に手を当て苦笑していた。照れくさくて仕方がないので、俺はすぐ
視線を明後日の方向へ投げやった。
「他の部屋へ移動するが、良いか戦人?」
「あ、あぁ」
 俺が頷くと同時に、周囲のあらゆる物が黄金蝶の群れへと砕け散った。辺りは一面真っ
白な景色になる。そして、しばらくして無数の黄金蝶が壁や床や家具になり、気付くと周
囲の光景は先ほどとは全く違うものになっていた。その中に、俺とベアトが抱き合ったま
ま二人だけでいる。
「ここは……何処だ?」
 辺りを見回すが、ほとんど見覚えのない場所だ。思い辺りがあるとすれば……前回の
ゲームで出てきた貴賓室か。荘厳なシャンデリアに、天蓋付きのベッド、見るからに座り
心地の良さそうな豪華なソファー、絨毯……。そうだ、あの部屋にここはよく似ている。
 ……しかし、似ているだけで、ここが貴賓室ではない事はすぐに分かる。何故なら、窓
が一つもないのだ。
「ふふふ……妾の秘密の場所だ」
 無邪気に笑って、ベアトは俺から離れる。そして、部屋の奥へと歩き始めた。
「おい、何処に行くんだ?」
 胸に少し寂しさを感じながら、俺は言った。だが、ベアトは何も答えない。
 仕方なく、俺もベアトに付いて部屋の奥へと歩を進める。
「……な、こ、これって……!」
 そして、俺は間抜けな声を上げた。いや、上げるしかなかった。
 何故なら、俺の目の前にある“それ”は……。
「そう、これこそが金蔵の隠した黄金の山よ」
 ベアトが自慢げに言う。
「実在したのか……」
 俺は、目の前にある正に黄金の山と形容するに相応しい、大量のインゴットを見て言っ
た。規則正しく並べられたインゴットの一つ一つには、片翼の鷲がうっすらと刻印されて
いる。ということはつまり、これは正真正銘祖父さまの隠し黄金なのだ。
 そう言えば、俺はベアトとの戦いにばかり夢中で、碑文の推理なんてまるでしていなか
った。どうせ実在しないに決まっている。……そんな疑いが心の何処かにあったからかも
しれない。だが、これで俺の疑いが、単なる決め付けに過ぎないと証明されちまった…
…!
「ベアト」
「何だ?」
「どうして、わざわざこんな場所に移動したんだ?」
「……ふ」
 ベアトはそう小さく笑うと、再び俺の元へ近寄り、抱きついてきた。そして、耳元で囁
く。
「黄金の山のそばで淫らな行為をするのも、また乙なものであろう?」
「はっ、どうだかな。こんなご大層な物が近くにあったら、変に緊張して立つ物も立たな
くなりそうだぜ……!」
「ほぅ……」
 ベアトは目を細めながらこちらを見た。そして、俺の背中に回していた片手を、俺の体
に触れたままゆっくりと降ろしてゆく。それは腰、腹と辿り、最終的に俺の股間部に触れ
た。
「それはこれから妾がじっくり試してやろう」
 柔らかい手でゆっくり俺の股間をさすりながら、ベアトは言った。
「お、おいおい、お前が言ってたエロい魔法はかけねぇのか」
 内心、ベアトの大胆な行動に焦りながらも、何とか冷静さを装って俺は言う。
「くっくっく、そなたはせっかちだのう。何事も前置きは重要であろう? メインデッシ
ュは前菜があるからこそ更に美味になる。極上の快楽に浸る前に、まずは前戯を楽しもう
ではないか」
 そのベアトの言葉を聞き、俺は生唾を飲み込んだ。何故か、ひどく淫靡な響きに聞こえ
たのだ。

43: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:15:46 o+BAs37a
 ベアトは俺の股間をさする力を徐々に強めてゆく。上へ、下へ、時おり指を使って器用
に刺激しながら、徐々に徐々に強めてゆく……。
「戦人、そなたは嘘つきだな。もう硬くなってきおったぞ?」
「う、うるせぇ……」
 顔を紅潮させながら、俺はぶっきらぼうに言った。
「くっくっく。どれ、ずっと立っておるのも疲れるだろう。そっちのベッドへ座るが良
い」
 そう言って、ベアトは天蓋付きのベッドへ俺を誘導した。
「あ、あぁ」
 俺はされるがままにベッドへ座らされる。……男としちゃ、ここで逆にベアトを押し倒
したいもんだが、何故だか俺の本能がそれをしては駄目だと警告してきやがる。どうやら
俺は根っからの受け身属性らしい……。
「ほれ、足を開かんか戦人」
 言われて、俺は慌てて閉じていた足を開いた。
 ベアトは、俺の両足の間に膝を付く。……そして、俺の股間部にあるチャックをゆっく
り下ろす。その瞬間、俺の肉棒が外界へと勢いよく飛び出した。ガチガチに硬くなり、ほ
ぼ垂直に空中を突いているそれが、ベアトの眼前にさらけ出される。
「……そなた、少しはりきり過ぎではないか」
 ベアトに言われ、俺は声にならない叫びを上げた。普通の状態を見られるだけでも恥ず
かしいってのに、思いっきり元気になっている上、それを指摘されるなんて……。
「ふ、いちいち恥ずかしがるなこの戯けが。どうせ、これからお互いに裸を晒し合うであ
ろう?」
「わ、わかって……うっ!?」
 不意に来た急激な刺激に、俺は言葉を言い終わらない内に変な声を上げてしまった。見
れば、ベアトが左手で竿の部分をガッチリ掴み、頭頂部を右手の人差し指でグリグリと撫
でている。
「男というのは、確かここが一番弱いんであったな」
 ニヤニヤと笑いながら、ベアトは更に力を込めて亀頭部分を撫で回す。それは強すぎも
せず、また、弱すぎもせず、丁度良い程度の刺激で、俺の体全体に鳥肌が立つほどの快楽
が流れ込んでゆく。
「へっ……何だよやけに上手じゃねぇか」
「ふふ、魔女に知らない事などありはせん。それは男が何をされれば悦ぶかという知識も
例外ではない。……例えば、こんな風にな」
 そう言うと共に、ベアトは亀頭から右指を離し、代わりに顔を近づけてくる。……そし
て舌を出し、さっきまで右指で撫でられていた辺りを、丁寧に舐め始めた。
「うぅっ……!」
 体全体をブルブルと震わせながら、俺はついうめき声のようなものを上げてしまう。ベ
アトはそれを意にも介せず、ゆっくりとしかし丹念に俺の肉棒を舐め上げている。
 部屋内に響くピチャピチャとした水音。その中心で、俺はただひたすら下腹部から湧き
上がる快楽に身を任せていた。
「くっくっく、どうだぁ戦人ぁ?」
「ど、どうだと言われてもよ……。……はぁ、うぅ」
 時間が経つにつれ、徐々に興奮が高まってきたためか、息づかいが自然と荒くなる。
「さっきよりもガチガチに硬くなってきおったぞ? そこまで妾の舌が気持ちいいか? 
ふ、このままではすぐに精液が飛び出してしまいそうだ」
「ま、魔女様も意外とエロい言葉遣いをするもんだな。何処ぞの怪しい店にでも来ている
気分だぜ……」
「それは勝手な偏見だ。魔女とてベースはニンゲン。時には肉欲に狂うのも良かろう? 
それに、妾との行為をニンゲンの作った俗な店での行為と一緒にするのは、失礼である
ぞ? そなたは、これから決してニンゲンの世では味わえぬ快楽を得られるのだ。ニンゲ
ンが絶対に得られるものを魔女から授かる事は魔術的な儀式の一種。すなわち今妾たちが
している行為も高尚な儀式の一つなのだぞ?」
「へっ、そうかよ。だ、だったら少しは高尚に見える努力をして欲しいもんだぜ……」
「ふっふっふ、儀式をどのように進めるかなど妾の勝手であろう? ……さて、ただ舐め
るのにも飽きてきたな。そなたもこれだけでは物足りぬだろう?」
 ……正直、今のままでも十分に気持ちが良いのだが、それを言うとまたベアトに馬鹿に
されそうなので、何も言わないでおく事にした。

44: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:16:17 o+BAs37a
「うぁっ……!?」
 しかし、その沈黙は次の瞬間簡単に破れた。股間部から、これまでにない刺激が流れ込
んできたのだ。
 見れば、ベアトが俺の肉棒を口の中に頬張っている姿があった。俺の足の間に両膝を付
き、片手を添えて自らの口の中へ肉棒を入れているその光景は、とんでもなく卑猥な物だ。
「……はぁ……ぁあ……」
 訳の分からないうめき声が自然と零れた。何せ、股間部からは淫靡な刺激が絶え間なく
流れ込んでくる。ベアトの口の中は暖かく、そして何より柔らかかった。それだけでも気
持ちが良いというのに、ベアトは更に口内で俺の肉棒に舌を這わせ、縦横無尽に動かし、
更に喉奥の方まで入れてみたり、逆に戻してみたりとピストン運動を加えている。それは、
先ほどの規則的な舐め方とはほど遠い。しかし、だからこそ快楽の大きさは今までと比較
にならず、気を抜けばあっという間に白濁液をぶちまけてしまいそうだった。
「ちゅぶ……ちゅ……びちゃ……ちゃ」
 下品な音を立てながらベアトは上目遣いでこちらに目を合わせてくる。少し含み笑いを
した小悪魔的な表情だ。彼女の言葉は勿論聞こえてこない。だが、その表情からは、“ど
うだ気持ちいいだろう?”というベアトの声が今にも聞こえてきそうだった。それが俺の
倒錯的な何かを刺激したのか、ベアトの顔を見ているだけで興奮が際限なく膨れあがって
いきそうだった。
「……はぁ……あぁ……く……ぁあ」
 俺は肉棒に与えられる刺激をひたすらに傍受していた。何か言葉を出す余裕なんて微塵
もない。第一そんな事より、この快楽を少しでも楽しむために全神経を股間部に集中させ
たかった。
 ……そして、あっという間に射精の兆しが見えてきた。もはや何も考えられない。呼吸
をするのも忘れてしまいそうだった。
「……ぁあ、……くぁ……! ……で、出る……!」
 我慢の限界を超え、俺は恥も忘れて一息に叫んだ。……が、ぽんっという間抜けな音が
聞こえたと思ったら、それっきり嵐のような下腹部への刺激がぴったりと止まった。まる
で台風の目が来たかのようだった。
「……あ……れ……?」
 出したいといくら願っても、あと一歩の刺激が足りず、どうやっても射精する事ができ
ない。……これでは拷問でもされているようなものだ。
 見れば、ぼんやりとした視界の向こうに、反り返った俺の肉棒があった。ブルブルと小
刻みに震え、今にもその先端から白い液体を噴出させそうだった。
 そして、その先にベアトの顔があった。口元から唾液がだらしなくしたたり落ちている。
……いや、もしかすればそれは唾液だけでなく、俺の肉棒から零れた体液も混じっていた
かもしれない。
「……ふぅ。くっくっく、辛そうだなぁ戦人ぁ。だが、まだまだ射精などさせるものか。
もう少し妾に遊ばせろ」
 口元の液体を拭いながらベアトは言った。息が上がったのか、それとも向こうも興奮し
てきたのか、顔が少し紅潮している。
「……はぁ……はぁ……。ち……、人の大事な物をオモチャ扱いかよ……。これを高尚な
儀式呼ばわりしたら、かえってバチが当たりそうな気がしてきたぜ……」
 呼吸を整えながら、俺は苦笑いをした。
「ほぅ、ではこの儀式はここで中断という事にしようか。どうやら、そなたはこの儀式の
やり方が気に入らないようだからな。そんな状態で儀式を続けるのは、妾も少し抵抗があ
る」
 ベアトは目を細めて言う。
「……お、おいおい冗談だぜ冗談。悪かったから、そんな中途半端な事は勘弁してくれ」
 そのベアトの言い方が少し本気に聞こえたので、俺は慌てて謝った。こんなところで行
為を中断させられちゃ、この先俺は永遠に自分の軽口癖を恨み続けるだろう。
「ふっふっふ、こっちこそ冗談だ。しかし、この程度の冗談も通用しないとは、相当に溜
っていると見た。何処ぞの中学生かそなたは。……くっくっくっくっく」
 そう言われて、俺はようやくベアトの瞳の奥に、相変わらずの小悪魔的な笑顔の色があ
る事に気付いた。
「……あ、あぁ、そうだよ悪ぃかよ。こちとら、この妙なゲームに巻き込まれて以来、一
度もマスかきしてねぇんだ。エロイ事に関しちゃ必死になって当たり前だろ」
 俺はもはや弁解が不可能と悟り、真っ赤になりながら開き直ってみせた。

45: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:17:07 o+BAs37a
「結構結構、素直でよろしい。雄とは本来そのような生き物だ。下らんプライドを無様に
守っていても損をするだけであろう。正直になった褒美として、そなたの一番好きな部位
を使って一度目の射精をさせてやる」
 ニヤニヤと顔を崩しながらベアトは言う。その表情を見ていても、不思議と苛立ちは感
じなかった。……むしろ、妙な興奮を覚えたくらいだ。その証拠に、俺の肉棒はさっきよ
りも激しくその身をビクビクと震わせている。
「……一番好きな部位?」
「そうだ。確かそなたは乳房が好きであったな?」
「あ、あぁ……まぁ」
 俺は生唾を飲み込みながら頷いた。胸を使って一体どのようにベアトは射精に導いてく
れるのか。想像がつかない分、期待は大きく膨らんだ。
「くっくっく。膣の中よりも乳房に幻想を抱く青っぽさが実にそなたらしい。……では、
このような事をすると嬉しいのではないか?」
 そう言って、ベアトは依然勃起状態を維持している俺の肉棒を掴み、自分の右胸にドレ
スの上から押しつけた。
「ぅ……あ」
 ……口内とはまた違った柔らかさと気持ちよさが、亀頭の部分から伝わり始める。
「触れさせただけでとろけそうな顔をしおって。やはりそなたは面白い。どれ、もっと遊
んでやろう」
 ベアトは、ゆっくりと右胸に肉棒を擦り始める。上下左右、円状、ジグザグなど、様々
な動き方で肉棒がベアトの柔らかい乳房をなぞり、その度にあらゆる方向からの刺激が俺
の下腹部を襲った。ドレスの上からでも、十分な柔らかさが伝わってくる。時折、場違い
な感触を感じるが、それが僅かに硬くなったベアトの乳首であると気付くのに、さほど時
間はいらなかった。
「はぁ……はぁ……ぅ……く」
 たちまちの内に、俺の呼吸は再び乱れてきた。
「乳房で遊ばれるのがそこまで嬉しいか。見ろ、そなたから出た体液でドレスが汚れてし
まったぞ」
 見れば、確かにドレスの右胸の部分が液体によって濡れ、ほのかに光を反射させている。
明らかに俺の先走り汁によるものだ。しかしそれを見ても罪悪感は全く湧いてこず、むし
ろ豪華なドレスを俺の卑猥な体液で汚している状況に、妙な興奮を覚えていた。
「何だ、口の中に入れているときよりも硬くなってきたぞ? ドレスの上からだというの
に、そこまでこんな脂肪の塊が好きかこの変態め。では、直接触れさせたら、そなたはど
うなってしまうのだ?」
 言って、ベアトはドレスの上半身の部分だけを器用に脱いだ。少し大きめの二つの乳房
が、俺の目の前に現れる。官能的な曲線美を描いた双丘の先端には、桜色の突起がぷっく
りと付いていて、それがベアトの呼吸に連なって微かに揺れている。俺は、その様子を舐
めるように凝視した。
 その突起に、俺の肉棒の尿道口辺りが直接押しつけられる。瞬間、全身が痺れるかのよ
うな強い刺激が走った。ドレスの上から味わった感触よりも、遥かに柔らかい。何より彼
女の吸い付くような肌の感触が、先ほどとは比べものにならないくらい心地よい。
「どうした? これは以前そなたが牛チチと言い放った乳房だぞ? それが、そこまで気
持ち良いのか?」
 言いながら、ベアトは乳房に凹みができるくらいに力を込め、俺の亀頭を中心に何度も
乳首で擦りつける。
 しばらくして、乳首の感触がさっきより更に硬くなってゆくのを感じる。見れば、俺の
体液で濡れた桜色の乳首の先端が、明らかに勃っていた。同時にベアトの表情を伺うと、
彼女が赤面しているだけでなく、少し息を荒くしているのが見てとれた。……そう、余裕
を見せているベアトも、何だかんだ言ってこの淫靡な状況に興奮しているのだ。
「……はぁ……戦人ぁ、そなた今にも射精しそうな顔をしておるぞ?」
「ぁ……ぅぁあ……はぁ……! ……い、いっひっひ……てめぇも、気持ち良さそうな顔
をしているように見えるが……はぁ……俺の見間違いか……?」
 指摘してやると、途端にベアトは顔中を赤く染める。耳の先まで真っ赤だ。
「な、何をこの、調子に乗りおって……。え、えぇい、茶番は終わりだ……! そなたの
精液を徹底的に絞り上げてやる……!」
 言うと同時に、ベアトは二つの乳房の間に俺の肉棒を挟み込んだ。そして、亀頭めがけ
て唾液を何滴か垂らす。唾液は亀頭から流れ落ちて竿の部分をしたたり、最終的に乳房の
間の肉棒が収まっている辺りを艶めかしく濡らした。
 ベアトはその様子に満足すると、両手で二つの乳房を左右から押し込み始めた。

46: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:19:30 o+BAs37a
「う……っくぁ……はぁ……!」
 当然、乳房に挟まれた俺の肉棒にその圧力が全てかかる。肉棒の左右の方向から急激に
柔らかさの波が襲いかかってきた。
「ふっふっふ、もう軽口が叩けなくなったか? だが、まだまだこれで終わりではない
ぞ?」
 そう言って、ベアトは更に力を込め、まるで乳房の間ですり潰すかのような勢いで俺の
肉棒を挟み込み、上下に擦りつける。しかし、痛みなんてまるで感じない。むしろ、力が
込められれば込められるほど気持ちが良い……。
 肉棒には、乳房の柔らかさだけでなく、ぬるぬると濡れた感触も伝わってくる。それは
最初ベアトの唾液だけかと思った。だが、よく見れば俺の肉棒の先端から大量にあふれ出
た先走り汁や、ベアトが谷間にうっすらとかいた汗も混じっているようだ。それが立てた
にちゃにちゃという音が、俺たちの息遣いと共に部屋中に響き渡る……。
 ベアトの体液と俺の体液が一緒になり、俺の肉棒に塗りたくられる。それを想像すると、
俺の体中が熱を持ったかのように熱くなった。
「……ふぅ……っく、そなたのそれが……、妾の胸の中でビクビクと脈打っているのを感
じるぞ。……大きさも硬さ熱さも、これまでで一番だ……。」
 ベアトの乳房が、俺の肉棒に沿って柔らかく形を変えている事から、彼女の言葉が本当
である事を理解した。
「はぁ……ぁあぁっ……く……はぁっ……!」
 もはや言葉など出なくなっていた。俺の口からはただただ激しい呼吸音のみが零れてい
る。
 そして、激しい尿意によく似た感覚が、俺の底から急激にせり上がってきた。
「……べ、ベアト……! はぁ……ぁっ! で……出る……!」
 自然と、獣のような叫びを上げた。羞恥心も何もない。ただただ、俺は目の前の快楽の
波に溺れていた。
「だ、出すが良い……。今度は邪魔せぬから……はぁ……好きなように出せ……!」
 ベアトは言うと共に、更に強く肉棒を擦り上げ、自動的に俺に伝わってくる快感も強く
なった。にちゃにちゃとした卑猥な音が、一層大きく部屋中に響き渡る。
 そして、自分で意識するまでもなく、強制的に限界を乗り越えられた。
「はぁ……ぁああっ……はぁ、はぁ……! ………………うぅっ……!!!」
 瞬間、脊髄を貫くような快感が走った。同時に、俺の肉棒から無茶苦茶な量の白濁液が
飛び出す。それは、ベアトの胸の中だけに留まらず、顔、肩、果ては下半身など、様々な
場所へほとばしり、それぞれを白くぬらりと汚した。
「そ、想像以上に出したなそなた……」
 ベアトは頬に付いた精液を片手で拭った。粘液が白い糸を引くのが見える。
「……はぁ……はぁ……」
 俺は深い呼吸を何度も繰り返した。体全体に強烈な脱力感と疲労が襲いかかり、意識が
朦朧としてくる。けれども、股間の肉棒からだけは、いつまでも性的な刺激が流れ込んで
きていた。見れば、それはベアトの胸の中で嬉しそうにヒクヒクとうごめき、時折思い出
したかのように先端から精液を零している。まるで、自分とは別の生物のように見えた。
「ふっふっふ、まったく、妾の自慢のドレスをこんな風に汚したのはそなたが初めてだ
ぞ」
 半ばぼやけた視界の向こうで、ベアトがにぃっと笑うのが見えた。その下には、精液に
濡れたドレスのスカートの様子が確かにあった。それはまるで、黄金の刺繍の中にもう一
つの白い模様を縫ったかのように見えた。
「そ、そりゃ……光栄なこって……」
 気を抜けばすぐに飛びそうな意識の中、俺は何とか言葉を返す。
「待て待て、何を眠そうな顔をしておる。これはまだ前戯に過ぎぬぞ?」
「そ、そう言われてもな……男ってのは出すもん出したら嫌でもこうなるんだよ」
「ほう、しかしそなたのこれはまだまだ快楽を得たがっているようだが?」
 言って、ベアトが精液まみれな俺の肉棒を舐め回した。敏感になっている股間に、再び
甘い刺激がまとわりついてくる。途端、まるで底から這い上がってくるかのように、俺の
中で肉欲が燃え上がり始めた。……どうやら、本能は極上の快楽とやらを得たくて仕方が
ないらしい。それに気付くと共に、体に残っている僅かな理性は、本能によって飲み込ま
れていった……。

47: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:20:14 o+BAs37a
「くっくっく、オルガルスムを経て尚ここまで妾の体を欲するとは。嬉しいぞ戦人」
「そうかよ……だ、だったら、早く魔法をかけてくれ……!」
 もはや、羞恥心もプライドも全て理性と共に何処かへ流されてしまっていた。あるのは、
ただベアトの肉体という名の極上の快楽を欲する本能のみ。
「そなたは本当に可愛い奴だな。言葉も仕草も体も心も全てが妾の物欲を刺激してならぬ。
……ここまでニンゲンのままにしておくのが勿体ないと感じたのは初めてだ。やはりそな
たは妾の家具になるのが一番相応しい。
 悦べ戦人、妾がこれほどまでニンゲンを褒める事など滅多にないことだ。それは、あの
ゲーム盤から死者が出ぬ事よりも尊い。正に奇蹟と言っても過言ではない。そなたは、そ
の奇蹟の体現者となったのだ」
 ベアトの言葉は、ほとんど俺の頭に届かなかった。当然だ、今の俺の中には欲望しかな
いのだから。
「くっくっく……言葉すら理解できなくなったか。妾は本当に嬉しいぞ戦人ァ?」
 ベアトが何かを言ったと思った途端、俺の体はベッドに押し倒されていた。見上げれば、
ベアトが俺の胯間の上に膝を立てて跨っていた。……そして、ゆっくりとドレスのスカー
トを両手でたくし上げる。膝が見え、白い腿が見え、……やがて、俺が待ち望んでいたベ
アトの膣が目の前にさらけ出された。金色の茂みの向こうに、艶めかしい桜色の入り口が
見える。
 その入り口がゆっくりと着実に俺の肉棒の先端へ近づいてゆき……そして、遂に接触し
た。金色の茂みが、俺にくすぐったさに似た刺激を与えてくる。
「……べ、ベアトぉっ……!」
 俺は獣のような咆哮を出し、ベアトの中に入るために腰を上げようとした。
 ……しかし、動かない! 全力で筋肉を動かそうとしても、眼球すら満足に動かす事が
できない。まるで、金縛りになったかのように体中を得体の知れない痺れが襲っている。
「慌てるな戦人。そなたに魔法をかけるには、少し条件が必要なのだ」
 ベアトが、諭すような口調で語りかけてくる。……いや、語りかけてきているのではな
い。俺の心の中に直接言葉が送り込まれてきている。だから、俺は嫌でもその内容を理解
する事ができた。
「な、何だよ条件って……!? そんなのどうでも良いから、早く入れさせろよっ!!」
 俺は唯一動かす事ができた口を使って、精一杯に吼えた。
「妾としてもそなたと一緒になりたいのは山々なのだが、そなたの心がそれを邪魔してい
てな」
「心っ? 何言ってんだ、俺はお前をこんなにも求めているんだぞ!?」
「いや、そなたは未だ心の底で魔法を否定している。魔法を体現させるのは、奇蹟を信じ
る純粋な心。軽い魔法程度なら多少それが足りなくても実現できるが、今から妾がかけよ
うとしている魔法は、そなた自身の体に変化を及ぼすという高度な魔法だ。そなたが少し
でも魔法を否定していては、満足にかける事などままならん」
「じゃ、じゃあ俺は一体どうすれば良いんだ!?」
「安心せよ、小難しい事は必要ない。ただ“魔女を認める”と言葉を発せばそれで良い」
「……え?」
 魔女を認める。その言葉を聞いた途端、何故だか俺の体に寒気が走った。今更魔女を認
めるなど何も難しい事ではないはずなのに、実際にその言葉を発しようとすると、ひどく
抵抗がある。
 ……本能が警告しているのだ。欲望に染まってなお、その防波堤を越えてはならないと、
俺の深層心理が必死に止めているのだ。
「お、俺は……」
「どうした戦人? 極上の快楽を得たくはないのか?」
 言ってベアトが俺の肉棒へ更に力を込めて膣口を押しつけてくる。亀頭の一部が、既に
ベアトの中に入っているのが見えた。それだけだというのに、俺の全身に快感の波が込み
上げてくる。それは、これまで体験した事のない、正に極上の快楽と言えた。
 ……少し入れただけでこんなに気持ちいいのだ、完全に挿入してしまったら、どんな快
感が得られるのだろうか。それを想像しただけで、本能の警告は雲のように薄くなってゆ
く。
 そして……。
「お、俺は……“魔女を認める”。だ、だから、早く中に入れさせてくれ!」
 わずかな天秤の揺れが、俺にそう叫ばせた。

48: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:21:07 o+BAs37a
「よくぞ……よくぞ言った戦人。……くっくっくっくっくっくっく、くひひひひひ、くひ
ゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!」
 突然ベアトが不気味に笑いとも叫びともとれる声を上げた。その顔は邪悪な笑みで満た
されていて、俺がかつて感じた少女の面影など、微塵も残っていない。
「べ、ベアト……!?」
 俺が驚愕の声を上げた瞬間、周囲のあらゆる物が無数の黄金蝶となって爆ぜた。インゴ
ットの山も豪華なシャンデリアも天蓋付きのベッドも絨毯も壁も床も天井も、そしてベア
トさえもが瞬く間に黄金蝶へと変化した。
 そして、気付けば周囲が金色に染まっていた。一切の物体が存在せず、ただひたすらに
金色の光を放っている。その訳が分からない空間の中心に俺だけが取り残された。体は、
相変わらず動かす事ができない。
 金色の光は徐々に大きくなってゆき、やがて俺は目を開けていられなくなる。
 堪えきれず瞬きをした途端、辺りは右代宮家の屋敷のホールになっていた……。
「な、何だよ一体どうなったんだ……?」
 理解の一切が追いつかず、俺は知らず呆然と呟く。
「まだわからぬのか?」
 声がしたと思ったら、目の前にベアトの姿があった。俺の精液など一切付着していない
綺麗なドレスを身につけ、悠然と煙管をくわえている。
「そなたは負けたのだ、妾とのゲームになっ!!」
「ゲーム……に? ……あぁっ……!!!」
 ゲームという言葉を認識した瞬間に、俺は全てを理解した。
 ……お、俺は……何て失態を……!!!
「……くっくっく、くっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! ザマァねぇ! ザマァねぇなぁ
戦人ァアアア!? 妾があの局面でわざと不利になったと見抜けなかったのか!? 本当
に何も考えずに赤で自らの首を絞めたと思っていたのか!? 頭がイカレているのは貴様
の方だっ!!
 妾が腹上死を知らない!? 馬鹿か、この妾に知らぬ事などある訳がなかろう! それ
をお前は指摘の一つもせずに信じ込みおって! 甘ぇ、詰めが甘すぎて砂糖の海に潜って
いるような気分だぜ戦人ァアア!!?」
「……あ……あぁあ……」
 俺はベアトに何も言い返す事ができず、ただうめき声を上げる。いつの間にか、頬を涙
が伝っていた。
「挙げ句の果てには妾にまんまと魅了されおって! 敵にあそこまで情けなく欲情する者
など初めて見たぞ!!? 妾にあれだけ偉そうな事を言っておいて、結局は貴様も肉欲に
支配されると簡単に折れるのだなぁ!? もはや、貴様は無能という言葉でさえ勿体ない
ほどに間抜けだぞ! くひひひひひひひひひひひ!」
 笑いながらベアトがこちらへ近づいてくる。恐怖で腰がすくみ上がりそうになるが、体
の痺れのせいでそれすらできない。
「お前は妾に負けたのではない! この醜い棒に負けたのだっ!!!」
 言って、依然露出され勃起したままの俺の陰茎を、ベアトは靴で思いっきり踏みつけた。
「……ひぃぁああ…ぐぁっ!!!」
 同時に俺は訳の分からない悲鳴を上げる。肉棒から伝わる刺激に快楽など微塵もない。
ただただ、この世のものと思えない激痛が迸ってくる。
「つまり、貴様はこの棒以下の存在だ!!! もはやニンゲンよりも遙かに下等だっ! 
カスだ! ゴミだ! この世で一番の汚物だ! くっくっくっくっくっく!!!」
 言いながら、ベアトが更に足に力を入れ、グリグリと踏み抜いてくる。

49: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:21:42 o+BAs37a
「う……ひぃぁ……や、やめ……て、くださ……い……。……ぁあぁぁああっ!!!!」
 涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、必死にベアトに許しを請う。だが、痛みは減るどこ
ろかますます強まってゆく。
「お前達も見るが良いっ! これが妾に抗った者の惨めな末路だ!」
 一瞬、ベアトが誰に言っているのかわからなかった。……だがすぐに理解する。ベアト
の後ろには、ロノウェや煉獄の七姉妹、それから無数の山羊執事達の姿があった。
「ぷっくっくっく。これはこれは戦人様、何とも情けのないお姿で」
「やだ、何あれ気持ち悪~い」
「ベアトリーチェ様に逆らうからこうなるのよ。きゃはははははは!」
 それぞれの嘲笑と、哀れみに似た悪意のある視線が一斉に俺に向かってくる。
「や、やめろ……! や、やめてく……うっ!?」
 目の前で、またもや理解のできない現象が起こる。俺の肉棒から、おびただしい量の精
液が噴出したのだ。瞬間、その場の全員から侮蔑の視線が突き刺さるのを感じる。
 もう、訳が分からない……! 俺は快楽なんて微塵も感じていないはずなのにっ……!
「何だ貴様は!? このようにされても快感を得てしまうのか!? どうやら汚物なだけ
でなく、とんでもない変質者のようだなァ? これは傑作だ、他の者どもにも見せてやら
ねばならん!」
 ベアトがそう言うと、その後ろに更に人影が増えたのが見えた。……そして、それが誰
なのか俺は瞬時に理解してしまう!
 朱志香に、譲治の兄貴に、真里亞に……それからクソ親父に、霧江さんに……! ……
気付けば俺以外の十七人全員の姿がそこにあった。そして、彼らもまた汚物を見るような
目でこちらをじっとりと見つめてくる。言葉は何も発しない。ただただ、その冷酷な視線
が矢のようにこちらへ突き刺さってくる。
「み、見るな……! 見ないでくれ……! 頼むから……やめろぉおおぉぁああ
っ!!!」
 あらゆる者の視線の中央で、俺は泣き叫んだ。
「くっくっくっくっく! 安心しろ戦人ァアア! そなたのような愉快なニンゲンはただ
の汚物に終わらせぬ! 一生、いや、例え死のうとも生き返らせて妾が無限に飼い殺して
くれる!
 妾の立派な家具の一つにしてやるよおおおおぉぉぉぉぉぉおおオオオオ!!!!!」


 うみねこのなく頃に、生き残れた者はなし。

 Reversal of the golden witch
 THE END

50: ◆FBzEQW9kzY
08/10/15 03:24:07 o+BAs37a
投下終了です。
最後まで読んでくれた方、お疲れ様です。そして、ありがとうございます。

やっぱり、戦人はいじめると楽しいキャラですなぁ。

それでは、またいつかの投下の時に。
ありがとうございました。

51:名無しさん@ピンキー
08/10/15 10:50:31 +2kkI/m2
本番がないのは残念だったがGJ!

52:名無しさん@ピンキー
08/10/15 18:53:15 J9I+qIXl
ちょwwwwwドMにはたまんねーなおいwww
GJ

53:名無しさん@ピンキー
08/10/15 20:06:28 2O3XyBx8
いじめられる戦人が真のうみねこ最萌えであるGJ

54:名無しさん@ピンキー
08/10/15 20:27:50 5hN75V35
GJ!
ベアトがどこからどこまで演技なのかわからないのと
戦人を陥れるためなら何でもするところがすごくそれらしいw

55:名無しさん@ピンキー
08/10/15 20:35:04 wiqEI/ss
おいおい戦人wwww
こんなので魔女認めるんじゃねえwwww格好悪すぎるwwww
というか、ベアトがあれだけ色々出来て服上死知らないなんてあり得ないって気付けww
面白かった。GJ


56:名無しさん@ピンキー
08/10/15 20:59:08 nq5IX4co
ジェシカノで嘉音総受けって需要あるんかいな

57:名無しさん@ピンキー
08/10/15 21:35:06 CX3ixtBa
需要のないものはめったにないぞ

58:名無しさん@ピンキー
08/10/15 22:01:16 O9vekKuv
>>1上出来!!

ひぐらしの話題にしたければ、作品を投下すればいいじゃない

59:名無しさん@ピンキー
08/10/15 22:29:29 z/9WuZRn
>>50
こんなに格好悪いのが似合う主人公も珍しいwwGJ!
>>58
同意だな
少し前までうみねこもOKのスレとは思えない少なさだっただけに、流れが逆になったからと騒がれてもなー

60:名無しさん@ピンキー
08/10/16 00:55:30 hys8a3tK
助けてくれルシファー……
浮気しそうだよ俺……

61:名無しさん@ピンキー
08/10/16 02:53:14 qZjHy6bT
おいおい、アジカンの人の圭×詩シリーズが作者都合により閲覧が一時凍結になってるじゃないか。
一番好きな話なのに……
新作を発表するための準備とかならいいんだが。
このまま消滅とかだけはやめてくれー!!(><)

62:名無しさん@ピンキー
08/10/16 05:15:58 ePs03ECQ
どうでもいい

63:名無しさん@ピンキー
08/10/16 08:13:51 EXIG0FvU
>>62
消えろ

64:名無しさん@ピンキー
08/10/16 10:04:30 iUCW3Dve
楼座を妊娠させたい

65:名無しさん@ピンキー
08/10/16 10:21:10 aA00vP9A
>>50
せめて入れさせてやれよ…と思う俺
でもすごく良かった

66:名無しさん@ピンキー
08/10/16 13:52:38 FFzGls+F
これはいいなスレ立て早々に新作ラッシュwGJ!!

67:名無しさん@ピンキー
08/10/16 15:30:52 nQz5lT4Y
アニメ化の力ってすごいな

68:名無しさん@ピンキー
08/10/16 16:41:30 ICjdE2Hz
絵羽を孕ませたい

69:名無しさん@ピンキー
08/10/16 17:15:20 vfiYxqXW
トミタケが生まれます

70:名無しさん@ピンキー
08/10/16 17:36:37 ICjdE2Hz
('A`)

71:名無しさん@ピンキー
08/10/16 21:37:52 S8jkWbfr
そのままここで腐って死ね

72:名無しさん@ピンキー
08/10/16 21:48:55 Rcf3GEJ1
愛想が尽きた。

73: ◆KARsW3gC4M
08/10/16 22:31:50 VSCWQmYq
皆さんこんばんは。[れなぱん!]の続きが完成したので投下します。
前回感想を下さった方、wikiにまとめて下さった方ありがとうございます。
今回は、またアナル系+長いです。それでも良いという方は読んでやってください。
では次レスから投下します。

74: ◆KARsW3gC4M
08/10/16 22:32:35 VSCWQmYq
[れなぱん!14]
「はあ!はあ!…っく!はあ…」
「圭一く~ん!頑張れ~っ!!あとちょっとだよ。だよ!」
お昼ご飯を済ませて、圭一くんに私の自転車を運転して貰って、その後ろに乗っている。
きつい坂道を立ち漕ぎして登って行く圭一くんの身体に手を回して私はエールを贈った。
「お、おう!…ぜぇ!はっ!」
横向きに荷台に乗って、話をしながら景色を眺める。それだけでも楽しい。
ちなみに帰る前に、ちょっと寄り道して今は雛見沢と興宮の中間地点って所。
んぅ?何処へ寄り道したかって?
はう……。ん…言うのは恥ずかしいよぅ。……下着を買いに行ったの。
本当は行くつもりは無かった。すぐにお家に帰る予定だった。でも…ね。
『悪いレナ』が圭一くんをもっともっとイジメよう?って私に囁いたの。
恥ずかしがって抵抗する圭一くんを無理矢理引きずって、お店まで連れて行って選んで貰った。
店員のお姉さんにクスクス笑われて、お顔を真っ赤にした圭一くん…堪らなかったよ。
『このフリフリがついたのにする?』
とか
『はう…圭一くんのH。こんな小さなパンツ履いて欲しいの?』
とか聞きながら、圭一くんの反応を楽しんだ。



75: ◆KARsW3gC4M
08/10/16 22:34:04 VSCWQmYq
クスクス。かぁぃかったんだよ。何を聞いても
『あ…う』
とか
『う、うん』
とか消え入りそうな声でしか返事してくれなかった。
『俺はこんなのに興味無い』
そんな素振りを周囲に必死でアピールしてた…。
けど、やっぱり目が行っちゃうの。
私が手に取った下着を、チラチラって見て前屈みになってたんだよ。だよ。
わざとHぃ下着ばかり手に取って
『これかぁぃぃかな。かな?レナに似合うかなぁ?』
って身体にあてがって見せつけてあげたの。ふふ…♪
『男』になって時間が経っているのに、こういう部分は『男の子』のまま…ウブなんだよ。だよ。
恥ずかしくて慌てる姿を、お客さんのお姉さんに微笑ましく見られている所なんか…もう、我慢するのが精一杯だった。
わざと下着を落して拾うついでに、圭一くんのおっきくなったおちんちんを揉み揉みして辱めてあげたの。
たっぷり一時間そんな事を繰り返して、圭一くんに選んで貰った下着を買ってお店を出た。
その次は、街中を自転車で走っている時にも、おちんちんをズボンの上から揉み揉みシコシコしてあげた。
もちろん周りに人が居ない時にだ。こうやって圭一くんをイジメ続けた訳だ。




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