08/10/24 21:40:34 idiBsvA6
というかここにいる全員SSじゃなくて
叩き合いを楽しみにきてるだろw
604:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:42:58 T5bkBWyM
>>600
ただ自分が一方的に叩かれるのが嫌だから次へ次へと話題ずらしてるだけ
ほんと存在自体がアホくさいなー
605:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:43:18 f2fP7K6B
>>601
あんなデフォなトリ付けてたのが彼の未熟であり罪なの
ところで、中だるみしきった次回作は何処に投下するのかしら
これだけの騒動の原因を作っちゃったんだもの
楽しみだわ
606:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:44:47 T5bkBWyM
多分こいつは寝るまで居座るんじゃない
発狂中だし、勘違いした意地が出てきてるし
わかりやすい奴だよほんと
607:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:46:54 f2fP7K6B
そのアホくさい相手に見事引っ掛けられた気分を聞いてみたいもの
見苦しいわ
608:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:47:02 i8YsUSce
どういう状況か分からないがSSさえ読めれば良い
609:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:47:12 G76XNzpm
勢いで投下もしてほしいな
610:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:48:51 T5bkBWyM
引っかけられた……?
未だに「俺絶賛圧倒的勝利中!!」な脳内部なのか……。
611:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:50:20 T5bkBWyM
構ってもらう=引っかける、で解釈できるな
構ってちゃんのカミングアウトなんて今さらすぎませんか
612:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:51:05 f2fP7K6B
ウナを叩くことで蒼天さんへの贖罪を果たそうとしてるのは見え見えだけど
本当、ウンザリしちゃうわ
613:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:51:53 6x2hJqhz
>>612
お、自分に言い聞かせ始めたな
効果はばつぐんだ!って感じだ
614:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:52:41 8WqqAP71
とりあえずウナギイヌは自分が偽SS書いたっていう証拠をうp
じゃないと便乗で注目されたい可哀想な子にしか見えない
615:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:53:07 eEnR4Q1B
これ通報できないのかな
削除スレじゃなくて病院に・・・
616:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:53:16 T5bkBWyM
>>612
自分に都合のいいように物事を認識できる能力って凄いと思うけど、
それをレスにして周りに発信しちゃうのはどっちかというと病人の行動だよね
617:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:55:49 G76XNzpm
ここまで構う奴が出てくると自演に見える
618:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:56:15 6x2hJqhz
いつも「ここまで俺の自演」って言ってくれるお人は今日はまだいないのか
619:名無しさん@ピンキー
08/10/24 21:57:40 f2fP7K6B
>>614
さて、ホントのところはどうなのかしらね
ひょっとしてウナが書いたんじゃないのかもよ
まとめサイトでのスタンスは定まったけど
まだアレが本物の作者による作品じゃないと決まったわけじゃないし
620:名無しさん@ピンキー
08/10/24 22:00:11 6x2hJqhz
>>619
そうだとしたらお前の狂人指数の観測がより難しくなるな
図りきれないという意味で
>>556-557は超々脳内妄想でした!って話になるしな
621:名無しさん@ピンキー
08/10/24 22:02:43 T5bkBWyM
>>619
煙に巻けば格好いい!っていう図式が当てはまるのは小説の中のキャラだけだよ
リアルの人間がやっちゃうと「今さらなに言ってんのこいつ……統合失調症?」ってことに
622:名無しさん@ピンキー
08/10/24 22:04:43 f2fP7K6B
>>621
じゃあ、そういうことでイイじゃない
623:名無しさん@ピンキー
08/10/24 22:05:28 fBOKDWo3
過程はどうあれ職人を寄り付かなくさせスレの空気を悪化させる事に成功した
これを荒らしの完全勝利と言わずして何と言えよう
624:名無しさん@ピンキー
08/10/24 22:07:02 UtihsLsd
>>618
はいはい。ここまで俺の自演だからここから下は黙って全裸でSS投下ましでもしてろや。
625:名無しさん@ピンキー
08/10/24 22:07:26 idiBsvA6
もうここにいる全員アク禁になればいいんじゃね?
626:名無しさん@ピンキー
08/10/24 22:08:34 G76XNzpm
>>623
一部のクソガキがウナギイヌさんに構ってるだけだろ
627:名無しさん@ピンキー
08/10/24 22:16:11 T5bkBWyM
>>622
では統合失調症のウナギさんということで今後認識させていただきます
628:名無しさん@ピンキー
08/10/24 22:28:07 f2fP7K6B
阿修羅さん、だから警告してあげたのに
629:名無しさん@ピンキー
08/10/24 22:30:14 6x2hJqhz
ぼけ老人の如くだな
630:名無しさん@ピンキー
08/10/24 22:36:02 M3vK+a9d
おまえら…
631:名無しさん@ピンキー
08/10/24 23:19:19 E8IrPCfa
>>630
いや、だから全部オレの自演
>おまえら…
「おまえ…」だから
632:名無しさん@ピンキー
08/10/24 23:48:51 M3vK+a9d
おまえ…
633:名無しさん@ピンキー
08/10/25 02:38:03 hk4Lq0F3
おまえ…
634:名無しさん@ピンキー
08/10/25 02:55:00 SFy3pTsF
あんた・・・
635:名無しさん@ピンキー
08/10/25 03:51:09 2lhMZnwo
あんさん…
636:名無しさん@ピンキー
08/10/25 05:18:34 pcXvDPy9
おにいちゃん…
637:名無しさん@ピンキー
08/10/25 10:33:59 ofEuZvak
すっぺらぴっちょん体操はっじまっるよー
638:名無しさん@ピンキー
08/10/25 12:14:36 aGrcSlSv
君ねえ…
639:名無しさん@ピンキー
08/10/25 17:02:10 OoIlugRx
おぬし…
640:名無しさん@ピンキー
08/10/25 17:25:19 uQ1TVQvG
ダーリン…
641:名無しさん@ピンキー
08/10/25 20:02:02 F4wGAEVB
キングクリムゾン!
642:名無しさん@ピンキー
08/10/26 00:45:24 EreSWgVI
裸にソックスで待ってたらちょっと風邪ひいてしまった
私もまだまだ未熟ということだな
折角の投下にGJが出来なかったとは。。。
今更だが>>526GJ!
風呂場でのやり取りはほのぼのさせられた
さて、最近テンガという新しいソックスを手に入れたから
それを装着して次の投下を待つか
643:名無しさん@ピンキー
08/10/26 03:00:21 vuddjQxL
あの真ん中の足を気持ち良くするというマッサージ機能付きのソックスか!?
人前ではおろか家族に見つかれば己の人としての尊厳を失うという両刃のソックスを……
644:名無しさん@ピンキー
08/10/26 11:15:12 mcFf3szx
>>643の真ん中の足発言で
闇夜に突如現れる漆黒のコートに身を包んだ男。
うら若き女性の前に現れたその男は唐突にコートの前をおもむろに広げその下の全裸の体を露出した!
そう! 彼こそが黒のコートが羽に、そして股間の巨根が3本目の足に見えることから名づけられた
伝説の露出狂「 ヤ タ ガ ラ ス 」だったのだ!!
って言う妄想が思い浮かんだがどう考えてもスレ違いにしかならない
645:名無しさん@ピンキー
08/10/26 19:12:19 b20dAgpu
この前、修羅場検定3級を受けたんだけど不合格だった。
俺に何が足りなかったんだろうか?
646:名無しさん@ピンキー
08/10/26 19:36:36 qqS4QXAN
やっぱり見る目だろうねぇ
ティオーナかわいいよ、ティオーナw
647:名無しさん@ピンキー
08/10/27 11:50:58 /kHiSHUt
ああああ三角関係に巻き込まれたい
648:名無しさん@ピンキー
08/10/27 23:38:16 XADsIJgz
>>647
昔リアルでの三角関係には遭遇しかけたことあるぞ?
流石に怖くなって一歩手前で消滅させたが。
´ー`)あの頃はよかったなぁ・・・
そう考えると矢代君すげぇ。
ところで矢代君まだ?
これからの時期段々と全裸は辛くなって行くのだが
649:名無しさん@ピンキー
08/10/27 23:52:50 Yaq5EfE/
未完作品の完結が待ち遠しいねぇ…
650:名無しさん@ピンキー
08/10/28 00:16:30 /X6xDU5O
頭いたいし
目眩するし
吐き気するし
はっ、もしかしてこれが恋か・・・・?
651:名無しさん@ピンキー
08/10/28 00:21:14 tEuvnJri
>>650
お前それ彼女さんに一服盛られ…あ、こんな時間に宅急便が
652:名無しさん@ピンキー
08/10/28 00:26:21 p3jm+dDR
>>302見るとマジで未完作品多すぎだなw
653:名無しさん@ピンキー
08/10/28 00:50:02 /X6xDU5O
・・・・・・俺に彼女なんていない
654:名無しさん@ピンキー
08/10/28 00:51:56 W6/WLYbe
ドンマイ
655:名無しさん@ピンキー
08/10/28 01:09:36 d+s4rtyx
ウナギイヌもどういう訳か矢代くんだけは叩かないんだな
前から不思議に思っていたけど
656:名無しさん@ピンキー
08/10/28 01:11:01 7N2OhLSk
トライデントの叩きは尋常ではなかったな
おかげで避難所スレでは彼はチヤホヤされてますw
657:名無しさん@ピンキー
08/10/28 01:33:26 W6/WLYbe
>>651
気がつくと、ベッドに縛り付けられていて
そんな俺をなぜか妹が見下ろしている・・・
彼女はどうしたんだ・・・
658:名無しさん@ピンキー
08/10/28 01:42:19 CW09oNcR
荒らしのレスは自分の叩きたい人の話題を何とかして出そうとするからすぐ分かるなw
659:名無しさん@ピンキー
08/10/28 02:33:01 tSnaMdQw
>>657
「ごめんねお兄ちゃん。ちょっと用事があったから遅くなっちゃった。
おなかすいてるでしょ
すぐに作るから待っててね」
妹はそう言って部屋を出ていった
どうして妹が俺の家にいるんだ??
今日はあいつが来るから晩ごはんの心配しなくてすむと思ってて・・・
あれ?それからどうしたっけ?
記憶がないぞ
それにさっきから頭がいたい・・・
660:名無しさん@ピンキー
08/10/28 04:41:22 v0aoJsRM
みんな、全裸待機で風邪を引いたようだな
661:名無しさん@ピンキー
08/10/28 06:20:18 5CkPdQs/
>>659
人肉フルコースですね、わかります
662:名無しさん@ピンキー
08/10/28 10:05:56 3vW+7RDB
ちょっと前に、同僚と派遣の子との知り合いで
コンパしてめちゃくちゃ盛り上がって二次会に行くことになったんだけど
居酒屋があったビルから出て、次の場所に行く前の廊下で
同僚の一人(お調子者だけど、気は悪くない奴、ラガーマン)が
清掃してた同い年くらいの大人しそうな奴(ガリ、メガネ)
の前までよろよろ歩いて行って
「負け組みフォー!!!」ってやったんだよ
一同大爆笑、笑い死ぬかとおもた。
今考えたら、悪ふざけが過ぎたかなとは思うけど・・・
ちなみにお持ち帰り成功。いいコンパでした
663:名無しさん@ピンキー
08/10/28 10:14:49 W6/WLYbe
今日は代休とって久々の休みだけど外は寒いねぇ
こういうときは血肉の踊る熱い嫉妬SSを読みたいもんだ。
というわけでSSまとめを読んでくる。
664:名無しさん@ピンキー
08/10/28 14:15:21 sH/iSwfT
いいねぇコンパ!
さて、誘ってくれる友達作りにいくか
665:名無しさん@ピンキー
08/10/28 17:13:08 nAV4Nv47
まとめの、天使と悪魔の狭間で…を読みました。
とってもぐっじょ! 続き楽しみにしてます。
666:名無しさん@ピンキー
08/10/28 17:30:57 TfscZwQ2
死ね
667:名無しさん@ピンキー
08/10/28 17:35:04 5CkPdQs/
ドカッ!バキッ!
わたしはしんだwwwww
668:名無しさん@ピンキー
08/10/28 17:46:27 W6/WLYbe
ふう・・・まとめSS全部読むと結構疲れるね
それにしても、ああ・・・未完のSS復活しないだろうか
つづきが読みたいものがありすぎて困るぜ
669:名無しさん@ピンキー
08/10/28 19:08:36 d+s4rtyx
天使と悪魔の新シリーズは同時期に連載された矢代くんに格の違いを思い知らされたからな
断筆までする必要はなかったと思うが、才能ないんじゃ仕方ないか
670:名無しさん@ピンキー
08/10/28 19:27:05 G10142Wv
>>668
久々にまとめSSを読もうと思うんだが
お前さんのオススメを聞かせてくれないかい?
671:名無しさん@ピンキー
08/10/28 19:40:55 W6/WLYbe
>>670
多いからいくつか絞ってみる。
完結済み
沃野,鏡,不義理チョコ、合鍵,ブラマリ
未完成
雨の音,九十九の想い,RedPepper
一話完結
幼馴染と妹とモンブランケーキ,12.24(仮)
異論はあると思うが、とりあえずこんなところかな。
好みに合わなければすまんが。
672:名無しさん@ピンキー
08/10/28 19:54:09 W6/WLYbe
追加
未完成
閉鎖的修羅場空間
673:名無しさん@ピンキー
08/10/28 20:24:41 29WVpE8V
ウナちゃんマン逮捕…
え?ウナ?
674:名無しさん@ピンキー
08/10/28 20:36:48 9kw7BJJl
>>672
修羅場空間は神
675:名無しさん@ピンキー
08/10/29 06:50:17 d1yF93SA
>>662
ホンマに死ね
どんだけ相手傷付けたとおもっとん? 傍観者でも許せん 俺だったら空気読まんこと承知でそいつ殴るわ
676:名無しさん@ピンキー
08/10/29 09:54:19 MgFQhZjj
>>675
落ち着け、釣りだから。
ご丁寧に解説まで作ったサイトがある。
URLリンク(0dt.org)
スルースキルを磨こうぜ。
同志よ。
677:名無しさん@ピンキー
08/10/29 10:08:26 d1yF93SA
>>676
すまない 昨日麻雀で負けたからイライラしてたようだ
678:名無しさん@ピンキー
08/10/29 15:46:36 m4IuyZN0
いろんな意味でドン引きした
679:名無しさん@ピンキー
08/10/29 16:54:18 O2neI6Hz
希にみるマジキチ
680:名無しさん@ピンキー
08/10/30 00:00:36 qZtAhQAl
沃野と合鍵はガチで名作
681:名無しさん@ピンキー
08/10/30 00:25:40 xgLtyoHK
スウィッチブレイド・ナイフとひとりワルツはマジオススメ
682:名無しさん@ピンキー
08/10/30 02:08:44 H94RL1ky
昔の作品を懐古してる奴ってやっぱ荒らしなの?
今書いてくれてる作者さん達に失礼過ぎ
避難所に旧作を懐かしむスレがあるんだから、そっちでやれ
誘導されて見に行ったけど、言うほどにはたいして面白くないぜ
683:名無しさん@ピンキー
08/10/30 02:14:10 SalV+qwD
そういうことをいうやつも荒らし
684:名無しさん@ピンキー
08/10/30 02:50:11 j+mrIjyJ
別に昔の作品と今の作品を比べてるわけじゃない
ただ好みを言ってるだけ
685:名無しさん@ピンキー
08/10/30 06:46:16 H94RL1ky
だったら避難所の専用スレ使えや
古参の住民を気取りたいんだろうけど目障り
そんな話題は百害あって一理なしだ
686:名無しさん@ピンキー
08/10/30 06:59:26 VXSk0BFW
会話が成立してるんだからいいんじゃない
キチガイがいるよりは数段マシだろう
687:名無しさん@ピンキー
08/10/30 08:54:49 l5jfjPQU
神経過敏。
688:名無しさん@ピンキー
08/10/30 08:57:10 H94RL1ky
ハイハイ古参、ワロスワロス
689:名無しさん@ピンキー
08/10/30 09:53:37 kCV17xsX
温故知新
690:名無しさん@ピンキー
08/10/30 14:49:49 r+gBS4IO
ウナギって捕まったんだったけ?
691:名無しさん@ピンキー
08/10/30 15:44:41 hIwmEufS
同一人物かどうかはしらん。
キチガイにはちがいないが・・・
ただ、文章を頻繁に書く奴には見えないな。
692:名無しさん@ピンキー
08/10/30 18:36:57 puDso1qI
今のも昔のも素晴らしい物が多いよね。
このスレは俺のオアシスだわ。
693:名無しさん@ピンキー
08/10/30 20:03:36 H94RL1ky
ウナギイヌのお陰なんて冗談にも言うつもりはないけど、文章は最近の作品の方が格段に上手いね
よく名前の上がる名作と呼ばれる作品だって、先入観持たずに読んでみると「???」って出来のが多いよ
牧歌的と言うか、勢いが全ての良い時代だったんだな
694:名無しさん@ピンキー
08/10/30 20:14:26 X1vNxzWf
それはない
695:名無しさん@ピンキー
08/10/30 20:21:58 VXSk0BFW
文章が良いか悪いかは別として、全盛期は勢いがあった。
今はキチガイのおかげで寂れてるがな。
何にしても細々でもいいからSSが投下されないかなあ。
SS投下こないんで、過去のSS読んでお茶を濁してるが
そろそろ新しいのが読みたいところだな。
696:名無しさん@ピンキー
08/10/30 20:24:33 Ry27yV4X
ID:H94RL1ky ←今日のオバカさんです
697:名無しさん@ピンキー
08/10/30 20:32:20 hIwmEufS
早く投下こないかなあ
蒼天の作者さんにも謝りたいし・・・
698:名無しさん@ピンキー
08/10/30 20:54:06 H94RL1ky
スレの最高傑作とかいう『沃野』だって冒頭部分から
「しなやかで細い長身は適度な丸みに帯びていて」
なんてやらかしてるんだからなw
これじゃでたらめな「てにをは」を叩かれまくって避難所に敗走していったトラと変わりないよ
この際だからウナギをけしかけて旧作の添削をやらせてみようか
奴がまとめサイトに行かないんなら俺が手持ちのログを貼り付けるよ
日頃古参の住民が有り難がってる名作とやらが、どんなもんだったのか見直してみるいい機会かも知れない
699:名無しさん@ピンキー
08/10/30 20:56:01 Ry27yV4X
ID:H94RL1ky ウナギイヌ 必死
700:名無しさん@ピンキー
08/10/30 20:59:34 VXSk0BFW
誇大妄想には付き合いきれんな・・・
701:名無しさん@ピンキー
08/10/30 21:05:04 H94RL1ky
事実を突き付けられるといつもこれだ
ウナギイヌって便利な言葉だよな
702:名無しさん@ピンキー
08/10/30 21:06:18 CTAQkIMi
作品の質云々以前に、昔はよかったと言わざるおえない
703:名無しさん@ピンキー
08/10/30 21:08:51 H94RL1ky
言わざるを
ここ、笑うところですか?
704:名無しさん@ピンキー
08/10/30 21:18:13 Ry27yV4X
ウナギイヌって、実社会が上手く行ってないとここでストレス解消ですか
とんだ小物だな
705:名無しさん@ピンキー
08/10/30 21:37:54 AThEKwjp
かまってちゃん相手にするヤツなんなの?いい加減自重しとけよ
俺もスルーできてねー!
706:名無しさん@ピンキー
08/10/30 21:54:52 UUzvfNl8
荒らしって何でこう自己主張強いんだろな
要するに、俺はウナギイヌじゃない!別の名前の荒らしなんだ!!
ウナギイヌじゃなくて俺を構ってくれ!!!
こういう事か?
707:名無しさん@ピンキー
08/10/30 21:55:50 Ry27yV4X
だったら、自分でコテハン名乗ったらいいじゃんという話になるのだが
まあ、自分は作者よりも面白い作品が書けるとか思い込んでいるのが痛いよな
708:名無しさん@ピンキー
08/10/30 22:00:32 hIwmEufS
いや
ただのネタだから
709:名無しさん@ピンキー
08/10/30 22:02:33 CZ+cibIR
とりあえずエロパロで評論家気取っているやつは
痛々しくて見ていられないということはよくわかった。
710:MOON 5話 ◆IhTqFIlZ4Y
08/10/31 00:01:56 FIQ3000R
「う~、寒む」
無邪気な鳴から何とか逃げることに成功した俺は再度、街道をトボトボと歩いていた。
寒い上に酔っぱらい多数。その上、人目を気にせずイチャイチャしているカップル。
気楽でいいよなと心で悪態を付く、こっちはこれから起こる惨事を想像しただけで気が重いというのに。
「俺の姫さんは二人ともお転婆だからな」
近いうちに増えるであろう三人目の姫の顔が頭によぎり、どんより気分がさらに増していく。
「・・・一番の優先事項は静菜だな」
家には戻っていないようだし、友達の家に転がり込んでいないことも確認済み。
「と、なると・・・」
小さい頃から静菜は嫌なことがあるといつも近所の公園で泣いている事が多かった。
それは大きくなった今でも変わらず俺とケンカなどをすると、その公園に行って俺への罵詈雑言を大声で叫ぶという奇行を行っていることが多い。
都会のど真ん中にしては珍しい緑の園が視界に入り俺は一旦、歩みを止めた。
「嫌な感じだな・・・」
俺の大嫌いな奴の気配を感じた。思い出すだけでゾッとする、あの正義面した最低野郎の顔を・・・
711:MOON 5話 ◆IhTqFIlZ4Y
08/10/31 00:07:35 2+msMg/q
「・・・」
公園で静菜を探すこと数分、ようやく見つけたと思ったら案の定嫌らしい空気が纏わりつくあいつも一緒だった。
『松里 直人』・・・忌々しい事に俺の従兄弟だ。黒いスーツを着こなし、温和そうな顔に、紳士的な動作。
完璧に俺とは正反対な出で立ちの男が静菜に馴れ馴れしく話しかけている。
直人の奴は楽しげにしているが、一方の静菜は・・・嫌そうな顔をしている。
少し前まで静菜は直人の事が好きなんだと思っていたが、静菜の友達曰く『誰かさんの気を引こうと言ってただけじゃない?』との事なので静菜が直人を好きだというのは俺の勘違いだったらしい。
静菜も『小さい頃は優しい人って思ってたけどね。最近になって気づいたんだけどあの人の目つき時々嫌らしいんだよね。だから・・・今は苦手なんだ、あの人』
などと言っていたので残念ながらお前の下品な恋心はちゃんと伝わっていたようだぞ直人。
と、いうか・・・空気を読め、静菜が嫌そうな顔をしているだろうが。
静菜にその気がないと分かっていても、静菜が俺以外の男と話してるという状況を見ているだけで、心の奥にチクリと刺さる衝動を抑えることができない。
この感情が何なのか分からないし知りたいとも思わない。
けど・・・俺がイラついているの確定だ。
「あのさ、やめてくれないかな。その不機嫌オーラまき散らすの」
鼻に絡みつく香水の匂い。端正な顔立ちの男が目の前に立っていた。
どうやら、俺がイラついている間に目に前まで来ていたらしい。
「静菜は?」
「飲み物を買ってくるって・・・キミが中睦まじい僕たちを見て嫉妬の念を放っているから耐えられなくなったのかもね」
「寝言は寝てから言えクソ野郎。どう見てもお前のいやらしい目つきと、きつい香水のせいだ」
「ん、そうかい?なら彼女の為に善処しよう・・・」
こいつはいつも善人の仮面を被っている、それは完成度の高いものでほとんどの人間がこいつのことを善人だと信じて疑わない。
けれど、静菜や鳴のように純粋な子は、こいつの善人の仮面の中のねっとりと絡みつく汚い本性を見抜いているようだ。
静菜は『嫌らしい』と言っていたし鳴も前にあいつに会ったとき『・・・あの人、嫌い』と言って以来、直人に寄りつこうとしない。
「それよりも、その汚い口調はなんだい?キミみたいのが彼女の近くにいたのでは彼女の人格まで破綻してしまう、なにか策を考えないといけないね」
普段はこいつのことなどキレイに忘れている。思い出したくもないし、思い出したら出したでピリピリする俺に鳴や彩音が怯えてしまうので、普段はこいつのことなど最初から存在しない物として忘れている。
だからこいつに会うたびに再認識する、俺はこいつが嫌いなんだと。
「静菜に指一本触れてみろ・・・ぶっ殺す」
「僕は将来の伴侶の身を案じているだけだよ」
こいつが嫌いな理由。善人の仮面を俺の前でだけは外し、俺を見下す。
「それにキミこそ彼女を惑わすのは、やめてほしいものだね」
なによりムカつくのはこいつの静菜への歪んだ愛情だ。
「くたばれ、妄想ロリコン野郎」
「世界の毒のキミが言われたくはない・・・」
『世界の毒』・・・こいつは俺を指す時その呼び方を使うときがある。
なんでも俺の存在は特異な『魔術』の力を持つ者の中でも『天才』を通り越して『異常』なのだそうだ。
たった数ヶ月での魔術の覚醒。それだけではなく圧倒的な術力を短期間で習得し、それを使いこなすだけの才。
なにより恐ろしいのは魔術を前にしての絶対的な耐性らしい。などと前に偉そうに語っていたのを思い出した。
「いいか、腐った頭に刻んでおけ。僕がお前を必ずこの世から抹消してみせる。そして彼女を必ずキミの魔の手から救い出してみせる」
このロリコン野郎の頭の中では俺はヒロインを攫った極悪人。攫われたヒロインが静菜でそれを救い出すヒーローが自分という、シナリオが出来ているらしい。
「・・・」
なにも言えないとはこのことなのだろうか?
ある意味、賞賛に値する。
712:MOON 5話 ◆IhTqFIlZ4Y
08/10/31 00:09:41 2+msMg/q
「う、湊・・・」
ようやく、戻ってきた静菜が俺の姿を確認し、一瞬後ずさったがすぐに目で俺に合図する。
『直人さん、話長いから早く逃げたいの・・・手伝って』
久しいな、お前と意見が合うのは。俺は小さく頷いて静菜の首根っこを掴んだ。
「さっきはよくも噛みついてくれたな。静菜・・・」
「謝らないもん。まだ怒ってるんだから」
「おお、そうかい。なら続きは今度だ・・・帰るぞ」
「湊とは絶交したんだもん」
こいつは・・・自分で助けて欲しいと言っておいてこの態度、こいつは生まれたまま何の教育も受けないで育ってきたらしい。
だが、大人な俺は大人な対応で応える。
「はいはい・・・」
駄々をこねる静菜を引きずりながら直人の横を通り過ぎる。
「さっき言ったことは本気だ。これ以上、彼女を穢すことは許さない」
すれ違い様。直人の奴が俺にだけ聞こえるように呟いた。
「お前こそ忘れんな。静菜に指一本でも触れてみろ・・・ぶっ殺す」
お互いに他の人間には聞こえないように話すことに慣れてしまったようだ。至近距離に居る静菜は俺達の会話にまったく気づいていない。
「直人さん。バイバ~イ」
俺たちの周りに漂う空気などお構いなしに呑気に手を振る静菜。
「また今度。静菜ちゃん・・・」
にっこりと紳士の笑みのお手本のような笑顔を作る直人。チラリと静菜の表情をうかがっていると。ようやく解放されたという風に脱力していた。小さな身体が完全に俺に寄りかかってくる、重いことこのうえない。
713:MOON 5話 ◆IhTqFIlZ4Y
08/10/31 00:11:50 2+msMg/q
「ふぃ~、ようやく解放された~」
完全に直人の姿が見えなくなってから静菜は風呂に入るオヤジのような声を漏らし呟く。
「苦手なんだろ?だったら適当に理由をつけて逃げればよかったのに」
「しつこいんだもの、あの人・・・」
「香水の匂いもしつこいな」
「そうだね、あはは・・・って」
急に静菜は何かを思い出したかのように声のトーンを上げた。
俺の手から逃れ、わざわざ前までやって来て睨んだ後にそっぽを向いた。
「湊とは今は絶交中なの・・・だから今は湊が大嫌いなの」
「は~」
どこまでも子供っぽい。どうせなら家のナルナルのような純粋な子というのなら可愛いのだが。
これでは、暴君のワガママではないだろうか?
少しはナルナルを見習ってほしいものだ。
「およ?」
そっぽを向いた先に何か見つけたらしい、静菜が目がキラキラしだした。
「牛丼・・・」
「あちゃ~」
静菜の視線の先を追っていくと案の定、静菜の大好物の牛丼の文字がデカデカと書かれた店があった。
「湊・・・お腹減った」
「はいはい、お家に帰ってからにしましょうね~」
「やだやだ!牛丼!牛丼がなきゃ死んじゃうの!死んじゃう五秒前なの!」
今にも地べたに寝転がって足をジタバタしそうな勢いの静菜に俺は根負けしてしまった。
「わかったよ、行くぞ!」
「牛丼一筋~」
俺のOKを聞いてとび跳ねながら喜々として牛丼屋に特攻していく静菜の後ろ姿を見てふと思う・・・こいつがワガママになったのって俺のせい?
714:MOON 5話 ◆IhTqFIlZ4Y
08/10/31 00:14:36 2+msMg/q
「キノコジュースお願いしま~す」
テンション高がかな静菜が店に入ってすぐに叫んだ。
「牛丼一筋じゃなかったのかよ」
「牛丼5杯お願いしま~す」
「夜も遅いから1杯にしましょうね~」
なんか俺ってこいつのオカン?みたいになっているような気がする。
しばらくすると牛丼が俺達の前にだされた。ゆっくりと噛みしめて牛丼を味わう俺の横で、静菜はキノコジュースを一気に飲み干したあと、すぐに牛丼攻略に取り掛かってる
「ご飯粒が付いてるぞ・・・」
静菜の頬に付いたご飯粒をとってやる。
「まったく、お前はいつまで経っても子供だな・・・」
「・・・」
あれ?いいすぎたかな?
箸を止め俯く静菜。黒いいオーラが辺りに広がっていくのを感じる、どうやらご立腹のようだ。
「てい!」
突然、後頭部を掴まれる。そしてなぜか俺と急接近していく牛丼。
べちゃりと音がして、俺の顔面は牛丼に押し付けられた。
「し~ず~な~ちゃ~ん!」
顔を上げていくと肉が俺の顔面から落ちていく。それを見て静菜はニタニタと無邪気に笑い。
「もう、湊は何時まで経っても子供なんだから」
俺の頬に付いているご飯粒を摘まむと自分の口に運んだ、そのあとテヘリと笑んで舌をかわいらしく出した。
残念なことに周囲の男の客の中では『俺が牛丼に顔を押し付けられた』ことよりも『静菜の笑顔』の方が優先度が高いらしく、明らかに俺に大丈夫かと聞く場面なのに、静菜に見惚れポケ~としている。
「こうなったら戦争じゃ~い!」
俺はこいつの笑顔など何度も見ているのでそんな色仕掛けには掛からない(そもそも俺にとってはムカつく笑顔でしかない)。
俺が勢いに任せテーブルを叩くとその衝撃で静菜の牛丼が宙を舞い吹き飛んでいく。
「のあ~・・・私の牛丼が・・・湊・・・許さない」
俺の言葉通りその場は戦場になった。
715:MOON 5話 ◆IhTqFIlZ4Y
08/10/31 00:17:02 2+msMg/q
「また、出入り禁止の店が増えてしまった」
頬の引っかき傷を撫でながら、俺は夜道を静菜と歩いていた。
「湊。疲れた・・・おんぶ」
そりゃあ、疲れるだろうよ。さっきまで大暴れしていたんだから。
「俺も疲れた。お前のせいだ」
「なら、抱っこ」
「ならの意味が分からないし、おんぶよりグレードアップしてるよな?」
もちろん実行時の俺の『お疲れ度』がだ。
「抱っこ・・・」
今度は清純派アイドル並に透き通った瞳によるキラキラ攻撃が俺を襲った。
「あ~わかったよ、おんぶだおんぶ」
俺が姿勢を低くすると静菜は勢いよく飛び付いてきた。若干よろめきながら立ち上がると静菜はギュッと俺にしがみついてくる。
「ぐ~」
そして凄まじい速さで寝てしまった。
「重いぞ~」
「ぐ~」
「まったく・・・」
ここはあれだ。背中に押し付けられる柔らかい感触を楽しんでも・・・
楽しんでも・・・あれ?おかしいな、以前彩音をおんぶしたときは柔らかさを感じたのに、今回背中に感じるのは固さだけだ。
「Aカップと見た」
「がぶ」
「のわあ~、噛んだよこの子!俺のうなじを噛んだよ!」
「うるさい。Bカップだっての」
「嘘をつくな!」
「がぶ!」
今度は身を少し乗り出して俺の首元辺りに噛みつき、あろうことか吸い出した。
「キスマーク付ける」
「わかった。俺の負けだ」
「ダメ・・・」
そう言った静菜の声が沈んでいたので、気になった俺が振り返った瞬間。
「ん・・・」
口付けてきた。
「私の初めてのキス。とっておいたのに湊は他の子とした。許さない」
それで・・・ずっと怒っていたのか。
「牛丼くさ」
しまった。思わず感動の声をあげてしまった。
「み・な・と。」
静菜の背後に無数の氷の刃が出現する。刃はまるで生き物のようにその歯を研ぎ澄ます。
間違いない、静菜の殺意は本物だ。俺に刺されれば絶対に死ぬ。
「ぶっ殺す!」
殺害命令が静菜より下された。
716:名無しさん@ピンキー
08/10/31 00:18:10 thw+Qc3Q
支援
717:MOON 5話 ◆IhTqFIlZ4Y
08/10/31 00:20:37 2+msMg/q
「た、ただいま~」
本日二度目の言葉。あの後なんとか静菜をなだめて、ようやく愛しの鳴の待つ家まで戻ってくる事ができた。
まだ背中に氷が何本か刺さってはいるが・・・
生きる喜びを噛みしめる、俺はようやく安息の地に辿り着いた。
「くるくるりん・・・」
開いたドアを閉める。
なんか今、鳴がフリフリの魔女っ子衣装を着て、ちんちくりんなステッキを回転させていたが・・・夢幻だったのか?
再びドアを開く。
「くるくるりん!魔女っ子ナルナル、華麗に参上」
鳴の周りに星がまたたき、ちんちくりんなステッキが七色に輝く。
光の反射を利用した魔術で演出しているのだろう、正直こんな魔術の使い方があるなんて思わなかった。
あまりの衝撃に倒れる俺。鳴はすぐに駆け寄るとしゃがんみこんで。
「・・・湊。ナルナル萌え~?」
どこだ?深夜に魔女っ子アニメなんて放映しているテレビ局は。
〈クルナタン萌え~〉
〈クルナタンは僕の癒しです〉
テレビの音声が俺の耳に届いた。
どうやら魔女っ子のオタクのドキュメント番組らしい。
「ナルナルは可愛いな」
どうやら俺の望みとは裏腹に鳴は一歩一歩と大人の道を歩んでいるらしい。
「ナルナルに癒されました」
今は甘んじて受けとめよう。だって可愛いんだもの。
俺が頭を撫でてやるとナルナルは子犬のようにじゃれついてきた。
「なにが癒されるって?なにが可愛いって?」
悪寒が俺を襲う。そう言えば・・・静菜の奴。今日は遅いから家に止めるって付いて来てたんだっけ?
「この腐れロリコンが・・・ぶっ殺す」
こうして、俺の長い一日を終わらせたのは静菜の怒りの鉄拳だった。
718: ◆IhTqFIlZ4Y
08/10/31 00:21:18 2+msMg/q
これで終了です。
719:名無しさん@ピンキー
08/10/31 00:38:46 IzcJjaSl
GJ
720:名無しさん@ピンキー
08/10/31 00:58:12 BvzUMH27
96 :名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 22:18:48 ID:hIV26Qae
中弛みしたかなと思ったけど、面白くなってきた
次にも期待、gj!
128 :名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 22:43:24 ID:wc80u4fZ
盛 り 上 が っ て ま い り ま し た
151 :名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 03:50:36 ID:5DASMWo4
>>125乙
ティオーナがいい感じに熟成してきたかなぁ
152 :名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 05:18:55 ID:yZS7WeK2
>>125
GJっす!
ティオーナも良い感じになって来ました
少なくとも同じキャラを使って同じ世界を描かせたら、ウナギの方が面白い作品を書けると住民が認めてるわけか
荒らしに負けて、阿修羅さんに泣いてすがるしかできない本家って……どんだけヘタレなんだ
ホント、痛々しくて見てられないな
721:名無しさん@ピンキー
08/10/31 01:08:51 jUKMa6Ej
>>718
GJ!
こんな殺伐としたスレでも投下してくれる貴方は本当に貴重な存在だ。
次も期待してます。
722:名無しさん@ピンキー
08/10/31 01:20:23 gKYYasu/
GJ!! やっぱ誰かが投下してくれないと、ここは荒れちゃうなw
723:名無しさん@ピンキー
08/10/31 03:01:23 mS7fQ4c8
荒らしに構ってるお前等が原因だよクソども
724:名無しさん@ピンキー
08/10/31 03:21:14 W5bydVpL
乙
725:名無しさん@ピンキー
08/10/31 06:35:42 dwL1Mtbs
世界観がいきなり変わってないか?
キャラの性格も変わりすぎ
没
726:名無しさん@ピンキー
08/10/31 10:07:45 8qLBcCQy
>>698
*ウナギイヌ様のご希望に沿って、これから過去作品の日本語おかしいぞ委員会の成立および
作品の推敲を行いますので、皆様も作者の文章を向上のためにお協力ください
今回に対する事は荒らし行為ではなく、純粋な
・指摘するなら誤字脱字
のテンプレに基づいて検証作業を行います
727:名無しさん@ピンキー
08/10/31 10:08:34 8qLBcCQy
「でさぁ、洋平、やっぱり三組の綾瀬さんと付き合ってるんだろ?」
「……違うって言ってるじゃないか」
何度となく繰り返されてきた質問に、いつもと同じ返事をする。
が、信じてもらえた様子はない。
「けどさっきだって弁当一緒に食ってただろ」
「それも手作りの。しかもベタベタくっつきながら『よーくん、はい、あ~ん』って」
「おいおい、今時バカップルでもしねぇよ、あんなの」
「……あいつは単なる世話焼きなんだよ。昔からそうだったし」
自分でも理由になってないと分かるが、そう言って躱す。
高校生にもなって、左手を添えながら「はい、あ~ん」をしてくる数年来の幼馴染み……
それを「世話焼き」というだけで片付けるのは、いかにも無理があった。
「ったく、お前がそうのらくら逃げるから他の男子が無駄に希望持っちまって玉砕するんだよ」
「何人も告白しては『ごめんなさい』って断られてるんだぞ」
「ありゃどう考えたって他に好きな奴がいるからだろ」
「で、思い当たるのはお前しかいないわけで……」
寄ってたかって強弁されるうち、否定するのが億劫になってくる。
黙り込んだせいで勢いづいたのか、いっそう執拗に絡んできた。
「洋平、俺たちがムカつくのはな。お前が綾瀬さんとイチャイチャ仲良く話しながら登校するのとか、
睦まじく弁当をつつくところとか、たまに他人が口を挟めないふたりっきりの時空を築いたりするから
じゃなくて……いやそれも充分殺したくなるくらいムカつくが……なんと言っても、
お前の態度がはっきりしないところだっての」
そうだそうだと、周りで聞き耳を立てていた奴らまでが同意し、
「ただの幼馴染みなんて言い訳、納得できるかよ」
「お互いの呼吸が当たるくらいの距離に顔を寄せるとかありえなくね?」
「綾瀬さんが名前で呼ぶ男子って洋平くらいじゃん」
「名前で呼ばせる男子も洋平だけだぞ」
「なのにお前ときたら……」と口々に責め立てる。
─針が。
無数の針が視える。級友たちの鼻からメカジキみたいに突き出している。
「お前、綾瀬さんの好意を知っていてわざと無視してんだろ、このヘタレが」
「あーあ、なんでこんなヘタレにあんな可愛い子が……」
責める声、嘆きの声に内心で頷く。
知ってる。胡桃の奴が俺にどういった想いを寄せているかぐらい、誰よりも知ってる。
それに、客観的に見て胡桃がどれだけ優れた子か─
柔らかな顔つきに相応しい人当たりの良さと、黒くて長い髪の重さを引きずらない明るさ、
よく通る声とはきはきした口調、しなやかで細い長身は適度な丸みに帯びていて、
体育の時間は特に目を引き寄せられそうになる。
普通に考えれば、そんな子が自分に好意を示しているなら喜んで受け入れるところだろう。
でも、俺は、意識的に避けている。
他でもなく、あいつの想いを知りすぎているからだ。
俺にはちょっとだけ特異なところがある。
普通の人間が見えないようなものが「視える」のだ。
別に、幽霊とか妖怪とか、おどろおどろしい存在ではない。俺が「視える」のは、人の感情だ。
例えば母親に叱られたとき。その頭に角が視えた。縁日で売っている鬼のお面みたいな黄色い円錐の角。
今思うと間抜けな光景だが、子供心には文字通り角を生やした母の姿が異様で恐ろしかった。
帰ってきた父に「おかあさんの頭に角があった!」と言っても笑われるだけで取り合ってもらえなかった。
俺は当然他の人も似たようなものが視えていると思っていたし、噛み合わない会話にもどかしさを覚えていた。
似たようなことを繰り返すうち、近所や親戚の間で「洋平は空想癖の強い子供」と言われるようになった。
あんなにはっきりと視えているのに、空想だなんて……俺は躍起になって主張した。
結果はいつも虚しかった。友達と思って遊んでいた子にも信じてもらえなかった。
小二の時、夏休みの読書感想文を書くために借りた児童向けの本で、不意に悟った。
それは周りの人間の心が読めてしまう、いわゆる「読心術」を持った少年の話だった。
彼は常軌を逸した能力のせいで不幸になっていく。待ち受けるのは孤独な破滅……
自分と少年とを重ね合わせ、次第に自分の視えるものが他人にはどうやっても視ることのできない
ものなんだと納得するに至った。
秘密を明かすとろくなことにならないことも学び、以来誰にも話すことなく過ごしている。
変なことを口にしなくなり、家族も、親類も、俺が空想癖を卒業したと思ったことだろう。
728:名無しさん@ピンキー
08/10/31 10:09:27 8qLBcCQy
さて。人の感情が視えるとは言ったが、実のところ、あまり便利な能力ではなかった。
いや、そもそも能力とすら言えないのかも。
自分の意志で使えるものではなく、勝手に視えてしまうものだから、能力というより体質に近い。
視えるのも相手の感情がこちらに向いているときだけで、よそに逸れているときは何も視えない。
つまり、「相手がこちらをどう思っているのか」だけが視覚イメージとして伝わってくるのだ。
差し当たってこの現象を「隠喩」と呼ぶことにしている。
怒りが角、やっかみが針と、意味するところは分かりやすい。
だが、明確に喜怒哀楽が分類されるわけではなく、いちいち読み取る必要がある。
便利ではないが、厄介でもない。
元より相手の顔色をいちいち窺って行動するほど殊勝な性格ではなかったから、どんな隠喩が見えても
少しばかりの注意を払うだけで気にせずやりすごしてきた。
所詮は視えるだけだ。目をつむってやりすごせばそれで済む。日常生活に支障はなかった。
そして隠喩は隠喩に過ぎない。相手が具体的にどういったことを考えているか、までは分からない。
抱える悩みなど、望まずとも他人の本音が聞こえる読心術者よりかは、ずっと軽かった。
初めて綾瀬胡桃と出会ったのは十歳になる直前の夏だ。春生まれの胡桃は既に十歳になっていただろう。
隣の家に引っ越してきた彼女は、偶然にも俺のいたクラスに転校生としてやってきた。
おかげで顔を合わせる機会が多く、最初に対面したときはやけに意地っ張りだったあいつが仕掛けて
くる喧嘩を躱したり、あいつの作った料理をお裾分けされたりしているうちに親密になっていた。
真性の幼馴染みではなかったけど、たまに物心ついた頃から一緒にいた気がしてくるほどだった。
出会って間もないときから胡桃の好意は察していた。
彼女は俺を見るたび、胸に白い花を咲かせた。
道端に咲いているような、ありふれていて小さく質素な花だったけれど、温かみのある素朴さが心地良かった。
折れてしまいそうな繊細さの中に、しっかりと根を下ろそうとする力強さがあった。
どんなにあいつが生意気な言葉を口にしても、根を生やした好意ばかりは偽れなかった。
白い花弁に徐々に赤味が差し、色が変貌していったのは小六のあたりだったか。
ふと視線を向けると胡桃が熱っぽい目をしていたり、ぬらぬらと瞳が潤んでいることが多くなった。
さりげなく、と見せかけて体を寄せてくる割合も高くなっていた。
誰よりも胡桃の想いを知っているつもりだった俺は困惑した。
そこで露骨に無視したり、冷たい言葉をかけたり、体を引き剥がしたりすると、胡桃の花は捩れた。
針金細工みたいに捩れて、そのまま止まってしまう。
本能的な恐怖に胸を衝かれ、それとなく謝って優しくし、機嫌を取ると捩れはゆるりと解消された。
綺麗な花に戻ってホッと胸を撫で下ろすが、胡桃の縋るような視線とともに赤味はいっそう増している。
中学に上がって制服を身にまとうようになると、胡桃の膨らみ始めた胸の奥にはショッキングピンクの
大輪が咲き誇った。道端なんかでは生き残れない、過剰に養分を欲する花。毒々しいまでの鮮やかさ。
俺が少しでもつれない素振りを見せると、己の茎を捻じ切らんばかりに乱れた。
他の女子と会話をしただけで、葉が紅蓮に染まって火を噴くのだ。
それでいて表情はといえば、平静に穏やかな微笑みを保っている。胸の花ばかりが赤い。
胡桃の内心で荒れ狂う感情と取り繕った顔の差には、幾度となく背筋が凍りついた。
付き合っていると明言したわけでもないのに胡桃の独占欲は日に日に強まり、花は奇形に育っていく。
周りは誰も気づかない。俺だって、隠喩がなければ何一つ知らずにいただろう。
知っていてわざと距離を一定に保ち続ける俺のことを、胡桃はただ鈍いだけと思っているみたいだ。
しかし、それもいつまで続くだろうか……
729:名無しさん@ピンキー
08/10/31 10:09:57 8qLBcCQy
「よーくん」
驚いて振り返ると、背後に胡桃がいた。
まただ。こいつはいつも、狙ったように現れる。放課後は図書館で過ごす俺と弓道部で部活をする胡桃。
時刻を約束してるでもなく、携帯でも使わなきゃすれ違いかねないのに、いつもばったり出会う。
休日でもそうだ。ストーキングを疑ったこともあるが、尾行を確認したことはないし、四六時中
俺の後を付け回していられるほどこいつも暇じゃないはずだ。
なのに、なぜ……
「さ、一緒に帰ろ」
俺の狼狽も知らぬげに微笑んで手を取り、ぎゅっと指を絡ませて引っ張る。
外野で級友が揶揄の口笛を吹くが、彼女は一向に気にしなかった。
抗わず、手を引かれながら、俺は胸を……今やだいぶ大きくなって、無造作に制服を押し上げている
隆起の向こうをそっと覗き見た。
高校に入学して一年ちょっとだろうか。
─胡桃の花はもう、食虫花になっている。
730:名無しさん@ピンキー
08/10/31 10:10:28 8qLBcCQy
2
翌朝。胡桃と連れ立って登校し、昇降口をくぐって下足場に辿り着いた。
彼女は繋いでいた手を名残り惜しそうに離すと、三組の教室へ入っていく。
背中を見送り、息をついた。
さすがに朝起こしに部屋まで乗り込んでくることはないが、俺が靴を履いて玄関を出て行くと
毎度タイミングを計ったように隣の家からも胡桃が出てきて「奇遇だね」と笑いながら手を掴んでくる。
当然の行為と思っているかのように。何の躊躇いもなく、滑らかな仕草で指を絡める。
柔らかい肌の感触に心が躍るが、制服の奥では食虫花が粘液を垂らしている─気持ちも冷める。
手を繋いで登校するのは譲歩だった。胡桃が腕まで組みたがったのを俺が拒否したのだ。
できることなら「手を繋ぐのもちょっと……」と断りたかった。
頼めばたぶん、胡桃も聞き分けてくれるだろう。少し残念そうな顔をしながら。花を荒れ狂わせて。
そんな様を見たくなかったからこそ、落としどころと弁えて子供みたいな要求に従っていた。
別に俺も胡桃が嫌いなわけではない。彼女が俺の手を握って笑顔になるのを見ると、嬉しくなってくる。
余計なものが視えるせいで過度に踏み込むのを躊躇しているだけに過ぎない。
いっそ、隠喩される彼女の想いを知らずにいたらすんなりと付き合っていたのかも。
……それが幸せなことかどうかは、大口を開ける異形の花を見る限り断言しかねるが。
苦笑しながら履き替えた靴を下駄箱に仕舞うと、自分の教室に向かった。
高校に上がって一年目は同じクラスだったが、二年になって入れ替えがあり、別々になった。
それが胡桃にとって相当なショックだったようで、一時期は部活もガタガタになったらしい。
「家が隣同士なのは変わらんでしょーが」と友達に慰められ、二ヶ月経った今は回復している。
離れ離れになることで他の女子に気が移ることでも心配したのだろうか。
入学以来、時折束縛をイメージさせる鎖や檻の隠喩が胡桃に見え隠れして、戦々恐々としてる。
おかげで「部屋に上がっていかない?」と誘われても言い訳して断ったものだ。
今はそれも見えなくなったが、安心するには程遠い。
教室も違っているのに特殊な情報の伝手でもあるらしく、俺がクラスの女子と口を利いたり
仕事を手伝ったりすると帰りには確実に機嫌を損なっていた。
ひと気がないところで見知らぬ女子とふたりきりになると、どこから聞きつけたのか何食わぬ顔で
やってくる。彼女はいつも探知機でもあるみたいに俺の居場所を把握している。
あいつの目ざとさは異常だ。小学生で会った頃から特技は失せ物探しでどんなに探し回っても
見つからなかったものを一瞬で発見しやがったし、中学生のときは俺が知恵を振り絞って隠した
エロ本の在り処をズバズバと看破しては掘り当て、にっこりしながら捨てることを強要した。
人の持ち物を捨てさせるなんて横暴だが、写真の裸体にまで嫉妬心を燃やし蠢いている赤い花を
目にして逆らえるわけもなかった。
だからこうして胡桃のいない教室で席についていても、まだ落ち着かない。
別段クラスの女子に疚しい気持ちなど抱いてないが、こうも行動が筒抜けになっている有り様では
おちおちと言葉を交わす気にもなれない。自然、男ばかりと話すことになる。
が、男も男で俺が「三組の綾瀬さん」と付き合ってると信じて疑わないから言葉に揶揄が挟まれる。
針の筵といったところだ。隠喩も正に針の山、剣山に落ち着く。気力が削げること甚だしい。
だから、休憩時間にそいつが言葉をかけてきたときもろくな返事をする余裕に欠いていたし、
何よりそいつが女子である以上は会話も最低限に済ませたかった。
「先輩、英語の辞書を貸してもらえませんか─?」
731:名無しさん@ピンキー
08/10/31 10:11:08 8qLBcCQy
なんと、下級生だった。あっさりと入ってきたので、肩を叩かれるまで気づかなかった。
上級生の教室を訪ねるともなれば普通、緊張を強いられるはずなのに物怖じした気配は微塵もない。
呆れるやら感心するやら、態度を決めかねた。が、あまり話が長引いては胡桃の耳に入る。
知らない間柄でもなかったし、さりげなく「ほい、五時間目までには返せよ」と辞書の貸与を済ませる……
……つもりだったが、それは周りが許してくれなかった。
「おい、洋平、この子誰だよ! ま、まさか愛人ってやつか!?」
「むしろこっちが本命?」
「てっきり三組の綾瀬さんとくっついてると思ってたのに、まさか一年の子に手を出していたなんて!」
「神は死んだ……! 死んでなきゃ俺が殺してやる!」
クラスの連中がギャアギャアと騒ぎ出した理由は一つ。単純に、その子が可愛かったからだろう。
ハーフだかクォーターだか、よく知らないが日本生まれなのに緩やかに波打つ金髪と青い瞳を持った小柄な少女。
一年生というより、小学六年生といった風情。高校二年生の教室に入り込み、浮き立つこと夥しい。
「むう、あの子は……!」
「知っているのか、都電!」
「あの幼さは間違いない、一年五組の荒木麻耶!」
「荒木麻耶!? 噂に名高い『暴れロリ』か!」
以下、解説モードに入った都電の話を要約すると、一年男子たちが好奇の目を向けてくるのに対し
最初は丁寧に応じていた彼女が「荒木さんってちっちゃいね」の一言でブチギれ、声がした方にいた
男子三人をまとめて叩き伏せたところ、三人中二人に「金髪ロリに足蹴にされることがこんなに気持ちいいなんて」
とM属性を植えつけたとか。残りの一人はもともとMだったからノーカンらしい。
「そんなキモいことがあったせいか男子をヘイトして関わろうとせず、あらゆるクラス、あらゆる学年の
アプローチを断っていたというが、まさかこんな身近に二股をかけている奴がいようとは……」
二股って。辞書を貸しただけでえらい言われようだった。
「あー……その、荒木。気にするな。聞き流しとけ」
他人の色恋沙汰を無理矢理にもでっち上げようとするうちのクラスのノリは、理解不能で不快だろう。
早く退出するよう目で促した。
別に、連中が騒いでいるほど荒木とは親密じゃない。接点と言えば荒木が図書委員を務めている縁で
何度か言葉を交わしたり、廊下で行き合って二言三言喋ったりしたくらいだ。
他の図書委員から「男嫌い」と聞いていた評判通りにツンケンしていて取りつく島がなかったし、
高いところにある本を取ってやっても無愛想にそっぽを向き「……ぁりがとぅ」と礼を言うくらいで、
下手なことをすると鼻で笑われたりする。
なるほど、外見を別にすれば扱いにくくて可愛げのない下級生に見えることは確か。
彼女の隠喩は、身を守る殻のような鎧だ。年相応ではない小躯を気に病んでか、対人に際しては
舐められぬよう自分を一回り大きく見せる気概でいるのだろう。なかなかいじらしい心構えだ。
その顔が無表情で、冷たく見えても、鎧の下からは尻尾を立てて威嚇する仔猫のような懸命さが伝わる。
強がりであることが分かってる以上、荒木の振る舞いに腹が立つはずもなかった。
狙って打ち解けようとも思わなかったが、胡桃以外に気軽に話しかけられる女友達がいない寂しさ
からか、ついつい構いすぎることがあった。おかげで会うたび彼女は硬化し、鎧が厚みを増していった。
まあ、隠喩が視えるってことは感情がこちらに向いてるわけで、無視されてないだけ充分だったけど。
ただ、どう見たって俺と荒木が仲良く映るはずもないのに、「あの子と恐れず会話できるのってお前だけ」
「これがニブチンのパワーか」「やがてデレ期が来る、未曾有のデレ期が……」と周りから感心されてしまった。
いや、こんな微笑ましい子を恐れたりするお前らの方が鈍いんじゃないかと思うがな。
732:名無しさん@ピンキー
08/10/31 10:12:44 8qLBcCQy
ちみっこいのに威風堂々として、しかも金髪碧眼。
気圧されながらも興奮してしまう男子どもの心情は、分からないでもなかった。
日本人離れした容貌と低身長に反する威圧感が醸し出す魅力が、倒錯的な欲望に火をつけるのだ。
構いたくて、構われたくて、仕方なくなる。なのに、構う切欠も構われる切欠もないもどかしさ。
遠巻きに騒いでいる連中からは、彼女と接点を持っている俺への滾るような妬みが感じられる。
針─どころか、吸血鬼も殺せそうな杭を隠喩として突き出す奴までいた。
恐らく、胡桃との関係もあって怒りが倍加されている。
このまま荒木と会話を続けるのはヤバい。さっさと彼女を帰らせてから即座に誤解を消すのが得策だ。
騒ぎが伝播して胡桃のところまで届いたら……って思うとゾッとする。
既にあいつは荒木の存在を嗅ぎつけていて、しかも警戒している節がある。雑談でなんとなく「荒木って
下級生がなぁ……」と話題にした途端、顔が無反応なのに食虫花の方が暴れ出した。宥めようとして
「い、いや、実に可愛げのない奴で……」とごまかしても花の憤激は収まらなかった。
もうあいつは見境がなくなってきている。これ以上刺激したらどうなるか、知れたことではない。
だが、荒木は俺のアイコンタクトも、周りで騒ぐ連中も無視して突っ立ったままだった。
頬がわずかに紅潮し、唇が小刻みに震えている。
どうしたんだ? 訝りながら、起伏に乏しい荒木の体へ視線を下ろす。
視える隠喩は甲冑。優美な曲線を孕んだ西洋の鎧が首から下を覆い、荒木の頑なな感情を象徴していた。
それは初めて会ったときと同じだ。あのときも視えていた、硬い鋼。
けれど、おかしい。いつもは艶々と光沢を放ってどんな干渉も跳ね返しているはずなのに、今は
ところどころが綻びて穴まで空いており、全身がギシギシと軋んでいる。
一秒後にも決壊して、中から何かが溢れ出してきそうな、追い詰められた感情─
不吉な予感が頭をよぎる。
だいたい。そう、だいたい、なんでこいつは英語の辞書ごときで上級生のクラスにやってきた?
「男嫌い」でも同性の友達はいる。別のクラスに行って借りれば済む話なのに、なぜ?
分からない。だが、きっとろくなことじゃない。それだけは分かる。
「ちょっ……荒木、やめ……っ!」
制止の声は間に合わなかった。
「好きです─先輩」
「付き合って、ください」
一瞬の沈黙を経て迸るどよめきとともに、鎧は粉々に砕け散った。
晒される─秘められていた植物。
細く長い蔓と紅に色づいた葉。
蔦だ。鎧の裏にびっしりと張り付いていたそれが宙を泳ぎ、新たな居場所を求めて俺に絡みついてくる。
呼吸が止まる。捕縛されて、指一本まで静止した。
いや。隠喩は隠喩に過ぎない……絡みつかれても身動きは取れる。
俺が動けなかったのは、驚愕のせい。
ああ……こいつ、なんてことを……。呆けた心地のままに見上げた。
荒木は、頬を赤く染め、見たこともないような笑顔を嫣然と浮かべていた。
733:名無しさん@ピンキー
08/10/31 10:13:16 8qLBcCQy
3
「………ッッ!!」
顔面神経が狂奔しそうになるのを必死になって堪えようとした。
堪え切れなかった。
「ぶはっ!」
隣の梓は飲んでいたペットボトル緑茶を噴き出した。
「えほっ、げほっ……び、びっくりさせるなよ胡桃! 急に物凄ぇ顔しやがって……!」
「ご、ごめんね……」
謝りながら、平静を取り戻そうとする。深呼吸。叫びたくなる気持ちを押し留め、努めて冷静な思考を試みる。
……無理だ。どうしても心が波打つ。よーくんのことになると、わたしは平常心でいられなくなる。
「いったいどうしたってぇのよ……ほらそこ、本が破れてるじゃない」
指摘されて見ると、確かに手に持っていた本が無惨に裂けていた。
無意識の力で引き裂いてしまったらしい。まったく記憶になかった。
ああ、どうしよう、図書館のなのに。弁償かな?
─いや。それは後回し。今はよーくんのことだ。さっき視たことを思い返す。苛立ちに手が震える。
わたしはいつも通り、よーくんを「視」ていた。彼は周りの男子との話にも飽きたようで、
椅子に座ってぼんやり黒板を眺めていた。
そこに、あの、金髪で、ちっちゃくて、いかにも「可愛い」と言われ慣れているようなあの子が来て……
ああ。駄目。思い出しただけで目の前が真っ赤になる。呼吸が乱れる。
嫉妬深いのはいけないことだと思うけど、よーくんのそばに女が寄るとカッと血が沸き立つのだ。
しかもあの子。馴れ馴れしく、よーくんと見詰め合って、おまけに吐いた言葉が、
─好きです─
─付き合って、ください─
わたしが、どれだけ、言おうと思って、言えなくて、よーくんって鈍感だから仕方ないよねと
自分で慰めながらなかなか眠れない夜に何度も何度も目蓋の裏で予行演習してうん、明日こそは、
と誓って興奮したせいで余計に眠れなくなった心を鎮めるため隣のうちのよーくんの寝顔を覗き視て
ようやく安心して寝付いて結局翌日には断られるのが怖くて言い出せない、ってことを繰り返してきた
セリフなのに、あの子はいともあっさりと言ってしまった。
悔しい、そして、それ以上に憎い。熱さを通り越して寒気すら覚える憎悪が腸から突き上げてくる。
荒木麻耶─知っている。目立つ子だし、何より彼女はよーくんと接触したことがある。
わたしが知っているだけでも三度ほど。もっとあるのかもしれない。
よーくんが図書館にいるとき、わたしは弓道場にいて、つい監視が疎かになってしまう。
その隙をついて、こっそり会っていたのかもしれない。だからあんな言葉を。
許せない。
許せるわけ、ないよ。
今すぐにでも立ち上がろうとしたわたしを、休憩時間の終わりを告げる鐘が遮った。
忌々しいウェストミンスターチャイム。咄嗟に舌打ちしたくなった。
けど、まぁ、いい。視れば、あの子も鐘の音に従って教室を出て行くところだった。
次の授業が終わって、昼休みに入るまではお互いおとなしくしなきゃね。
でもこんな調子だととても授業に集中できそうにない。ああ、よーくんも途方に暮れた顔してる……
「─おーい、また遠くを見ちゃって、どうしたの」
「あ、えっと、なんでもないよ」
「なんでもないってなぁ……確かに胡桃はしょっちゅう遠い目をしてボーッとしてるけどさぁ」
ぶつぶつ言ってくる梓に生返事をしながら、わたしはこれからどうすべきか考えていた。
734:名無しさん@ピンキー
08/10/31 10:14:11 8qLBcCQy
千里眼っていうのかな。遠くを見通す、超能力みたいなの。
わたしは生まれつきそれを持っている。使いこなせるようになったのは小学生になってからだけど。
昔から「胡桃は目がいい」とよく驚かれた。どんなに遠くにあるものでも、角度が悪くなければ
米粒程度の文字さえ読み取ることができた。「アフリカの人は視力が10.0」とかいう話も聞いたことが
あるけど、わたしの視力は数字で表せばどのくらいだろう。4.5km以上先、地平線の彼方でも視ることができた。
それってもう、視力がいいとかそういう問題ではない気がする。
よーくんもわたしの目の良さは知っているし、失せ物探しが得意なのも覚えているだろう。
けど、「眼」のことまで話すと気持ち悪いって思われてしまうような気がして、失せ物探しについては
「なんとなく分かる」としか言っていない。
わたしの「眼」は胸のあたりにある。
本当はどうなのか知らないけど、使っているときはそのあたりに熱を持つ。
「眼」で視るときに目を閉じる必要はない。両目を開けたままで遠くを見通せる。
ただ、集中力はどちらか一方に傾いてしまうので、両方の視覚を同時に処理するのは不可能だ。
セカンドサイトに意識が行っているときは五体の感覚が希薄になるし、体に意識を戻そうとすると
「眼」は閉じてしまう。便利だけど、一種の余所見なので気をつけないと結構危ない。
その「眼」で、暇があればいつだってよーくんを視てきた。
よーくんと初めて会った頃。わたしは特別な能力があることを自慢にしていて、他人を見下していた。
実に嫌な子だった。「はんッ、ムシケラどもめ」系オーラを周囲に放つ漫画みたいな悪役。
前の学校ではかなり威張り散らしていたし、よーくんと会ったときも生意気なことを言った。
思い出すと顔が赤くなったり青くなったりする。身悶えを禁じえない。過去に返って自分を叱りたい。
でも、よーくんはそんなわたしを嫌ったりしなかった。
分かっているのかいないのか、はっきりしない口振りで応じて、どんなに嘲っても柳に風、糠に釘、
暖簾に腕押しだった。ムキになって言い返してきたところを誘導し、「眼」の力で屈服させ、従わせる
……そんな計画を思い描いていたわたしは、まったく手ごたえがないよーくんの態度に苛立った。
なんで、自分がそれほどよーくんに固執するのか。
大きな疑問からあえて目を逸らしながら、挑むような口調で突っかかっていた毎日。
遂に我慢ができなくなり、癇癪を起こして叫んだ。
─洋平なんか、嫌い─!
すると、笑われた。
「胡桃は面白い嘘をつくね」
って。何一つ疑わない、確信に満ちた声で。
そう。本当に嫌いなら、顔を真っ赤にして、面と向かって、そんなことは言わない。
ようやく悟った。ムキになっていたのはわたしだって。
気を引きたくて。構ってもらいたくて。それを認めるのが恥ずかしいから生意気な口を利いて。
そこにいたのは特別でもなんでもない、ただ素直になれないだけの女の子だった。
素直になることが恥ずかしいと思って、隣の家にいる男の子と単に仲良くしたい気持ちを隠したがっていた。
そんなの、とっくに見抜かれていたんだ─
遠くを見通す「眼」を自慢にしていた自分が不甲斐なかった。大事なものを見落としていたんだ。
だから、お詫びもかねて、一生懸命つくった料理を、まだ温かいうちに食べてもらおうと運んだ。
「お、お裾分けだからねっ。ただ、その、つくりすぎちゃっただけ……なんだから……」
分かっていてもまだ素直になれないでいた自分を持て余しながら。
以降はずっとよーくんを視ながら成長してきた。
わたしの「眼」は単に遠くを視るばかりじゃなくて、壁とか屋根とかの障害物も通り越して視る、
言わば透視能力も含まれていた。
プライベートを侵害するいけないことだって分かっていたけど、何度もよーくんの部屋を覗き視た。
自室で誰の目も気にせずに寛いでいるよーくんの姿にはドキドキした。
休日も、よーくんがどこにいるか、周囲を360°精査して探した。いつもすぐに視つかった。
わたしが失せ物探しが得意なのは、視ようと思うものを、方角さえ合えばほぼ自動的に発見できるから。
携帯なんかで連絡を取り合う必要もなく、町にいるよーくんを視てはそこを目指して走ったものだ。
一刻も早く会いたくて─
「眼」に集中してすぎて転んだり、電柱にぶつかったり、側溝にはまったりすることも一度や二度じゃ
なかった。
735:名無しさん@ピンキー
08/10/31 10:14:42 8qLBcCQy
部屋で着替えるよーくんを視て興奮するようになったのはいつ頃からだったかな……
前はそういう場面に出くわすたび顔を赤らめて「眼」を逸らしていたものだったけど、友達を通じて
性の知識を吸収するたび、よーくんへの肉体的関心が深まってしまった。
だからって正面切って「裸見せて」と頼むのは恥ずかしすぎる。
いくらなんでもそこまで素直になる勇気はなかった。
せいぜいが、ふざけているように見せかけて体をすり寄せるくらい。その程度で限界だった。
そこで、よーくんと一緒に下校して玄関先で別れるや、脱兎の如く階段をのぼり、制服を脱ぐ暇も
惜しんでよーくんの部屋がある方角に張り付き、わたしより少し遅れて上がってきた彼が物憂げに
溜息をつきながら気だるく着替える一部始終を「眼」に焼きつけた。
さすがに下着までは着替えなかったけど、それはお風呂の時間を狙うことで解決した。
わたしの「眼」はいかなる距離も無にするけど、角度は常に一定だ。
ベストショットを得るためのポイントを求めて夕方に家をうろうろする娘を母も父も不審がって
いたけれど、「難しい年頃だから……」と理由になっていない理由で無理に納得していた。
よーくんと会ったのは十歳のときだから、揃ってお風呂に入ったりしたことはもちろん一度もない。
初めて視るよーくんの裸……!
緊張するやら興奮するやら、感極まるあまりにガクガクと震えながら涎を垂らす娘を見て父も母も
「難しい年頃だから……」と言いつつ受話器に手を伸ばすべきか迷ったことだろう。
そんなこんなでわたしがよーくんの裸に異性を感じ出すのに前後して、よーくんも異性への興味を
抱き始めたようだった。ふたりとも中学に上がり、よーくんの声変わりも始まった頃だ。
こともあろうに本である。いかがわしい写真が乱舞する書籍に、よーくんの視線は釘付けだった。
誰のものとも知れぬ裸に欲情するよーくん。それを覗き視るわたし。
耐えられるはずもなく、よーくんが卑猥な本を部屋に持ち込むたび押しかけ、廃棄を強制した。
隠し場所に工夫を凝らそうとするよーくんの努力は涙ぐましかったけど、わたしの「眼」に敵う道理はない。
モノがモノとはいえ私物の廃棄を求められることはよーくんにとっても不快だったようで、
何度か苛立ちの素振りを見せたこともあったけれど、こちらを見ると諦めたように何も言わなかった。
よーくんは、なるべく平気な顔をしているわたしが内心で耳鳴りがするほど激昂していたのを
察していたみたいだった。よーくんは鈍いくせに、そういう察しはやけにいい。
鈍い─そう、彼はわたしの気持ちを知っててわざと無視してるのでは、と勘繰るほど鈍い。
なんでこんなに甲斐甲斐しく干渉しているのに、よーくんは反応してくれないんだろう?
もっと露骨じゃなきゃいけないのかな?
736:名無しさん@ピンキー
08/10/31 10:16:18 8qLBcCQy
以上だ
これから文章推敲及び検証作業に各自入ってくれ
脱字誤字の報告は早急に書き込んでくれ
なお、これは作者様の文章向上のためなので
誇りを持って作業して頂きたい
737:名無しさん@ピンキー
08/10/31 10:59:14 jUKMa6Ej
誇りを持って(笑)
自分が荒らしではなく、本気でやりたいんだ!って主張したいなら
避難所にそういうスレあるからそっちに行ってやってくれ。
本スレでやられるとやっぱ荒らし以外の何物でもないから。
しかし誰も構ってくれないからって昨日から必死にこれやってたんだな・・・可哀想です><
738:名無しさん@ピンキー
08/10/31 11:15:21 vXp2Yu89
>>718
作品がきてくれて嬉しいです
gjでした
739:名無しさん@ピンキー
08/10/31 11:45:10 zynV4MEP
ヴァギナイヌ参上
740:名無しさん@ピンキー
08/10/31 11:50:27 8qLBcCQy
4
よーくんが自慰をしているのに気づいたのは、中一の秋だった。
その頃、よーくんが寝付くのを視守ってから眠りに就こうと頑張っていた。
でも、わたしは十時前に寝てしまうのに、彼はもっと遅くまで起きてるようで、なかなか難しかった。
よーくんの寝顔を見てから眠ったら気持ちいいだろうなぁ、と思いつつカーテンの彼方を眺めていた。
すると、まだ十時前なのによーくんは消灯してベッドに潜り込むところだった。
これはチャンスだ。よーくんが寝付く瞬間を捕捉しよう。
多少浮き立った心で観察したけれど、彼は輾転反側と寝返りを打つばかり。
もう涼しくなって寝苦しい季節でもないのに、どうしたんだろう?
じっと「眼」を凝らしていると、よーくんは掛け布団を跳ね除けて起き上がり、電気を点けた。
眠れないのかな……何か悩みでもあるのかな……て心配していたら。
突然、パジャマのズボンを下ろした。パンツごと。
思わず「眼」が丸くなった。無論、比喩だけど、実際そんな心地がした。
部屋で寛いでいるときはだらしなく股間を掻いたりお尻を掻いたり、なぜか腋の下や足の裏を嗅ぐ
ような奇行に及ぶよーくんだけど、パンツを下ろしてアレを剥き出しにするのは初めて見た。
半ば思考が止まっているわたしをよそに、よーくんが晒し出したものに手を伸ばす。
何度か視たものではあった。が、まさか「勃起」という現象があれほど凄いとは思わなかった。
よーくんのそれは普段とはまるで別物で、自分の体内に飼っている動物を引っ張り出したようにも視えた。
慣れた指つきで皮をめくると、ゆっくりとしごく。日課のように、ぎこちなさを感じさない動き。
事実、日課だったんだろう。たまたま、その日がいつもより始めるのが早かっただけで。
いつもはわたしが眠ってからの時間帯にしていたというだけで……
「オナニー」という言葉は聞いていたし、概ねどんなものかも知っていたが、いざよーくんが
しているところを視るとショックを受けた。よーくんが男の子なのは当たり前だし、わたしだって
異性として意識しているし、求められれば、えと、その、やぶさかではないつもりだった。
しかしそれはそれ、だった。知識としてしかインプットしていなかった事柄を「眼」の前で堂々と
(そりゃ、視られてるとは思ってないだろうけど)遂行されると、動揺しすぎて思考がポッカリ空白になった。
これは、さすがに、視ないでおいた方がいい……遠くから理性の訴えが響いた。
でも、蠢く指に翻弄されて跳ね回るよーくんの秘密めいた場所から「眼」が離せなかった。
テスト勉強しなきゃいけないと分かっているのに他のことがやりたくなる、あの気持ちを百倍強化した感じ。
よーくんはきつく目をつむって指を動かし続けた。
静かに。黙々と。
……ねえ よーくん、
その脳裡に 何を 誰を
思い浮かべているの ……?
741:名無しさん@ピンキー
08/10/31 11:51:43 8qLBcCQy
思考の空白が埋まり、足早に訪れたのは興奮ではなく、虚しさと哀しさだった。
こんなに、わたしが視ているのに、そばに感じているのに。
手が届かない。わたしの手が、伸ばしても伸ばしても、どこにも届かないのだ。
やがて言葉もなく欲望を吐き出し、気だるげに脱力した後で処理にかかる一部始終を、
泣きたくなる気持ちのまま視守っているしかなかった。
どんなに遠くが視えたって、すぐそこにいるよーくんの頭の中を視ることはできない。
彼が何を考え、思っているのか、分からないままただ視ていたってどうにもならない。
─わたしは、手を届かせたかった。
行動を起こさないといけないのは自明だったけれど、さりとて具体的な方策はなかった。
昔からずっと露骨なくらい好意を示してきたのによーくんが反応してくれないのはただ鈍いだけじゃなく、
知っていてわざとわたしから距離を置いているんじゃ……って考えると告白には踏み切れなかった。
よーくん、好き─胸の裡でなら、何千回、何万回と呟いた。
舌に乗せる直前まで行ったこともあった。でも、断られるのが怖くていつも後回しにしてきた。
頑張ろうとは思ってみても、勝算を見積もる材料が乏しくて、不安だったのだ。
自分に自信は持っていた。よーくん以外の男子にだったら何人も告白されたし、
よーくんだってチラチラとわたしの体に視線を這わせるようになった。
満更興味がないわけでもないだろうし、まったく異性として意識していなかっただなんてありえない。
よーくんがあくまでわたしという存在を欲しいと思っているのか、
それとも不特定の女の子に対する関心がたまたまわたしの方にも向いているだけなのか、
その判断はつかなかったにしても。
別にどっちでも良かった。よーくんがわたしを「綾瀬胡桃」としてではなく
「手近なところにいる女の子」として見ているのでも構わなかった。
よーくんが他の子を見さえしなければ、わたしはそれで充分なのだ。
他の子を、見さえしなければ─?
ああ、なんだ……簡単なことじゃない。
わたしはようやく方針が見えた気になって笑った。
よーくんに、わたし以外の女の子との接触を断たせればいいんだ。
性欲を持て余している彼は「女の子なら誰でもいい」って思ってるかもしれない。
選択問題みたいにいくつかの候補があればよーくんの気持ちはどこに向こうか予想できないけれど、
わたし以外の子と関係を深めることができない状況に追い込めば、彼は自然とわたしを唯一の候補と
見做すようになるはず。選択肢が一つしかなければ、誰だってそれを選ぶしかないんだから。
よーくんの人間関係を封鎖する。見えない檻に閉じ込める。それが、中学生の間に心血を注いだこと。
席替えのときは籤引きの中身に「眼」を向け、必ずよーくんの隣を確保した。
存在を近くに感じられる点でもうってつけの位置だったけど、
よーくんに近づく女を汀で迎え撃つ絶好のポジションでもあった。
行動を監視するのは当たり前。そばを離れているときによーくんが他の子と会っていても、
偶然に見せかけて駆けつける。携帯の番号を交換するような女友達は絶対につくらせなかった。
ただ視ているだけでは無益な力も、行動と結びつければ役立つにことこの上ない。
いつもよーくんを視てる、という安心感があった。彼がわたしの知らないどこかでよからぬことを
しているのでは、という不安に苛まれることもなかったから余裕も湧く。自慰に飽き足らなくなって
悶々とするよーくんは遠からずわたしに食指を伸ばすと信じて疑わず、泰然と構えていたわけだ。
その安心感と余裕が仇となったのかもしれない。持久戦に耽っているうち、中学を卒業してしまった。
─このままでは駄目だ。もっと積極的な策を取らなくちゃいけない。
募る想いと焦りから、警官だった祖父の部屋に忍び込んで手錠を調達した。
然る後、よーくんを部屋に誘い込もうと試みた。
オナニーばかりを繰り返すのはよーくんの体にも良くない気がしたのだ。彼のためを思うからこそ、
手段なんて選んでいられない。わたしから襲うみたいな形になるのは内心忸怩たるものがあったし、
742:名無しさん@ピンキー
08/10/31 11:53:30 8qLBcCQy
よーくんの自由意志を蔑ろにするみたいで心苦しかったにしても、こっちにはちゃんと愛情があるわけで
結果的にはよーくんも満足してくれるに違いないから別に犯罪じゃないよね。うん、完璧な理屈。
でもよーくんはどんなに誘っても部屋に上がろうとはしなかった。
もう気軽に部屋を出入りできる年頃ではないんだ、と気づいた。ああ、もっと早くやっておけば……
悔やんでも仕方ない。
しかし諦めることもできなくて、鍵の掛かる引き出しにはまだ手錠が仕舞ってある。
周りのみんなはわたしをよーくんの彼女って見てくれている。
残念ながらよーくんは「違う」って否定するけど、形成された包囲網が一種の圧力になっていたはずだ。
しかし今、それも綻び始めている。
「おい、胡桃。あんたの彼氏が一年の子と浮気したとかしないとか、やたら噂になってるよ」
「よーくんが浮気だなんて、そんなまさかぁ」
心配そうな梓に、繕った笑みで応えながら、穏やかな気持ちではいられなかった。
千里眼で声まで聞くことはできない。でもちょっとだけなら唇を読める。
「せんぱい・すき」「つきあって・ください」─何かの間違いなら良かったのに。
荒木、麻耶。ちっちゃくて可愛くて、遠い国のお姫様みたいな下級生。
男の子に対して冷淡で、つれない素振りが得意な子だけど、だからって安心はしていなかった。
よーくんは生意気な女の子を転ばす素質があるから……昔のわたしみたいに。
用心して早めに釘を刺しておかなきゃって思っていたら、タッチの差で先を越されてしまった。
今からでも刺せるかな。うん、刺さないと。
何を?
釘を。
刺したいな、あの青い目に。刺したいな、あの高い鼻に。
顔中、釘・釘・釘で埋め尽くしてあげたいな。
あはっ─喩えだけどね?
「うっ。胡桃の表情……なんか怖くね?」
「そう?」
昼休みになったことだし、お弁当を小脇に抱えてよーくんの教室へ向かう。
ごはんを一緒に食べるのはわたしたちにとって日常の一部だ。誰にも邪魔はさせない。
教室の前まで来た。開け放たれた入口から中を覗く。
あの女が。よーくんのそばに立って、あろうことか─手まで握っていた。
体温が下がる。口のあたりが強張りそうになる。訳が分からない。
ねえ、荒木さん。あなた、誰の許可を得てそんな近くにいるのかな?
よーくんにはわたしという存在がいるってこと、分かっていてふざけた真似をしてるのかな?
冗談も度を越すと、笑えなくなるよ?
「…………あはっ」
笑えないと思いつつ、込み上げてくるのはおかしさだった。
怒りや憎しみが歴然としてある一方で、笑い出したくなる気分もどんどん湧いてくる。
ずっと待ち望んでいた、「好き」って告白を口にする機会、先に取られちゃって。
わたしだけが握ることのできたよーくんの温かい手を、べたべた触られちゃって。
ここまでやられちゃったらさ……なりふり構っていられないよね?
なりふり、構わなくていいよね?
今まではよーくんとの関係が壊れるかもって恐れていたけど─もう箍を外そう。
決心すると、なんだか、わたしがようやく「本当の自分」になれたような……解放感と充実感を覚えた。
聖書の言葉にあったっけ。土は土に、灰は灰に、塵は塵に、ゴミはゴミ箱に。
掃除の大切さが身に沁みるね。実力行使だって厭わない心境でGO、だね。
例えば。雑菌だらけというより雑菌そのものな手を切り落としてやるとか。あはっ。
他にも、よーくんを誘惑する猫なで声が二度と出せないよう、あの子の声帯でも切っちゃうとか。
なーんてね。
ふふ……でもわたし、声帯ってどのへんか知ってるよ……
だって、視えるもの。
743:名無しさん@ピンキー
08/10/31 11:54:00 8qLBcCQy
5
言っちゃいました、言っちゃいました。
先輩に、好き─って。
言っちゃいました!
「時間がありませんし、返事はまた後でお願いしますね」
と余裕ぶり、澄ました顔でお辞儀して出てきましたけど。
心臓はもうバックバク。すぐにも破裂してしまいそうな有り様です。
顔が熱くなってるのも分かります。冷めろ~、冷めろ~、と念じても無理です。冷めません。
少しでも興奮を紛らわせようと深呼吸したり髪をいじってみたりしました。
ふう、と物憂げに溜息をついて窓の外を眺めたりもしてみます。落ち着いたふりではありますけど、
ちっとも落ち着いていないのは震える肩からして明らかです。息もまだちょっと荒い。
こんなに緊張したのは入学以来初めてでしょう。
殿方に交際の申し込みをすること自体が初めてですから仕方ないと言えば仕方ありません。
いくら私が周りとは趣を異にする外見だからって、心の中身は高校生。
いえ恋愛経験が不足気味というかゼロなことを勘案すれば中学生レベルかもしれません。
念願の告白……前夜に鏡の前でこれでもかと練習してはみましたものの、やはり本番はキツいです。
いっそナシにして辞書だけ借りて帰ればいい、と弱気の虫を跳ね返すのに難儀しました。
そもそも辞書なんて口実に過ぎないんです。本当は持ってます。告白のために乗り込んだんです。
あそこで引き下がったりしたら自分の情けなさに涙を流すところでした。
まずは第一段階が終了ってところでしょうか。いかにも人の気を知らない、鈍そうな先輩に向かって
私の想いを吐露することができただけでも上出来。これであの人は嫌でも私が気になりますよね。
先輩に決まった人がいる、という噂は会って間もない頃から耳にしていました。
最初は「ふーん、あんな男に」と比較的無関心でした。色恋沙汰にはまだ興味がなかったから。
無関心でいられなくなってからは、「決まった人」が誰なのか気になり出しました。
噂は有名だったので、友達にちょっと聞いてみただけで相手の方が分かりました。
先輩とはクラスが違う、三組の綾瀬胡桃さん。長くて黒い艶やかな髪、すらりと伸びた背。
弓道部という所属に負う凛とした立ち振る舞いの中に、活発で朗らかな性格が垣間見えます。
発育も大変によろしく、凹凸のお手本みたいな体は男女問わず注目の的でした。
友達に「憧れる」と述べる子もいましたけど、私は羨望より妬みが勝ちました。
いつになってもずっと「外人」扱いの見た目と、一向に成長しない体。
「外人なのになんで成長が遅いの?」みたいな眼差しを受けて何度傷ついたことか。
私服で歩いてるとき「あの子、小六くらいかな?」「外人だから上に見えるんだって。本当は十歳未満だろ」
と無茶苦茶なこと言われました。
誰も彼もが子供っぽく見えるクラスメートの男子に「子供みたいだ」と思われる屈辱がどれほどか、
ちょっと表現し切れないものがあります。
そんな体験を一度もしないでチヤホヤされてきただろう綾瀬先輩。
よりによってそんな人がなんで彼のそばにいるの? と二重の妬ましさに苦しみました。
私自身「あんな男」と思った時期があるように、彼は取り立てて目立つ生徒ではありません。
運動も成績もパッとせず、見た目も性格も格好いいわけじゃなく、純粋な注目度は低い。綾瀬先輩を
語るついでに「ヘタレ」呼ばわりされるのが関の山。あたかも料理に添えられたパセリです。
なのに綾瀬先輩は彼に付きっ切りで、昼食も一緒、登下校も一緒です。「はい、あ~ん」をやったり
おてて繋いで歩いたりしてるんですからもうバカップルそのもの。
そんな光景を他人事と切り捨てることができずに悩み、胸を苦しませるようになったのは。
私が、パセリの味に目覚めてしまったからです。
744:名無しさん@ピンキー
08/10/31 11:54:31 8qLBcCQy
大して劇的な切欠はありませんでした。なんてことのない積み重ねで、私は恋に落ちていました。
彼は図書館によく来ました。うちの高校は併設されている図書館の規模がそこそこ大きく、当番は
組まれていますが基本的に図書委員が総出になります。おかげで私も目にする機会が何度もあり、
自然と話しかけられる関係になりました。
私は殿方に対する不審が根強かった。彼らは、見下すことをやけに好むから。
「可愛い」「綺麗」という言葉は同性の友達からも掛けられますし、
愛玩動物を見るような意識が感じられるとはいえ誉め言葉として受け取ることに抵抗はありません。
しかしそこに珍獣か何かを調教しようとするような不快な好奇心を覗かせるとあっては、
到底応える気になれません。
どうも私は相手の征服欲を無闇に煽るところがあるらしいです。
金髪で碧眼という未だに日本人のコンプレックスを刺激してやまない要素に加えて、
体が未成熟で幼く見えることがいけないようです。
私だって、別に恋愛に興味がないわけではありません。
ただ、「したい」と思える人がいなかった。
だからもちろん、先輩に対しても最初は好感を抱いておりませんでした。
警戒心が解けず、随分と突慳貪な受け答えをしてしまった記憶があります。
ここで怒ったり萎縮したりする人もいますけど、先輩は軽く受け流していました。
ひょっとして鈍い人なんだろうか、って確かめる意味で何度も露骨に冷ややかな態度を取ってみました。
それでもめげません。どころか、高いところにある本を取ってくれたりするとき、
恩着せがましくもわざとらしくもない雰囲気で向き合ってくれます。
男の子へお礼を言うことに慣れていない私の小さな声にも気にした風がなかった。
そこで上向き修正が加わったのは確かです。
ふさふさした金髪や青い瞳という、私の一部分に過ぎない場所ばかりを注目せず、
ありきたりの友達として接してくれるような異性を求めていた……って想いが漠然とありましたから。
むしろ、あったはずなのに、です。
不思議なことに、彼が自然な優しさや思いやり、時にからかいを示すたび、私の身は硬くなりました。
体を覆う不可視の殻─好奇の視線や不躾な言葉から守る、精神的な防御。
対人関係においてそれをまとう傾向にある私ですが、彼と会話するたびに殻の存在を意識し、
「もっと厚くしなければ」と思うのです。いささか過剰なくらいに。
そうしないと、私の「中身」が溢れ出してきて、こぼれてしまうような……そんな気がしました。
なんだかとても息が苦しくなりました。
いっそ先輩なんて無視してしまえばいい、と思ったこともあります。黙殺してしまえば、苦しまない。
けれど、話しかけられるたびに反応せずにはいられない自分がいました。
どんなに殻を強固にしても、無視することはできなかった。
むしろ無視したくなかったからこそ、殻を補強したのかもしれません。闇雲に、頑なに。
そして。綾瀬先輩という非の打ち所がない人が彼の傍らに寄り添っている瞬間を目にしたとき。
私は諦めることにしました。
彼を、ではありません。殻を保持し続けることを、です。
たぶん、彼は私の築いている殻に気づいているはずです。
決してその殻を壊そうとはしません。殻ごとの私を見てくれているのだと思います。
でも、私は。
楽しげに笑って彼の手を引っ張る綾瀬先輩を見て。
どうしてもあの位置に立ちたい、と願ってしまったんです。
─話しかけられるばかりで、身を硬くして自分から喋りかける言葉を持たない私が嫌でした。
─廊下で会っても、挨拶程度しか交わせずに通り過ぎるだけの関係が嫌でした。
私はあの人のことをよく知りません。
だからこそ。もっと知るために殻を脱ぎ去ろうと決心しました。
それは、あの人なしでは生きていけないような女になるってことかもしれないけれど。
剥き出しの私を見て欲しくなったのだから、どうしようもありません。
あなたがそれなりに大切に思っているかもしれない、幼馴染みとしての距離。
二度と取り戻せないのかもしれませんよ……?
745:名無しさん@ピンキー
08/10/31 11:55:03 8qLBcCQy
綾瀬胡桃が別に先輩と付き合っているわけじゃないことを先輩本人の口から聞いたとき、
思わず小躍りしたくなる気分を抑え込むのに苦労しました。
胡桃は幼馴染みだよ、別に彼女ってわけじゃない─
図書館で他の人にそう言っているのを耳にした私は、いよいよ自信を持ったわけです。
たとえ先輩と綾瀬胡桃が本当に男女交際しているのだとしても、玉砕する覚悟ではいましたが。
そんなこんなで昼休みになりました。
愛しの……と言い切れるほどの自信はまだありませんが、ともあれ先輩の教室へ急行します。
コンパスの短い足が今はもどかしいばかり。
「き、来たぞ! 魔性の下級生が!」
入って行くと、私は注目の的になりました。
「おいおい、すっげぇ自信満々だぜ、あの目つき。まるで映画の子役みてぇだ」
「こんなちっちゃい子が男を寝取るだなんて世も末だなぁ」
「洋平のバカタレがモテる時点で世の中終わってるよ……」
なんでも告白した休憩時間以来ずっと私の話題で持ち切りだったそうで。
「略奪愛の旗手」とか「いたいけな泥棒猫」とか、大層な名前までいくつも得てしまいました。
略奪も何も……先輩はフリーのはずなのに。まあ、先輩以外の発言は特に気になりません。
「しかし、相手が三組の綾瀬さんよりも格下なら話にならなかったところだが……」
「うむ、格上格下以前にタイプからして違う。この勝負、読み切れん!」
うるさい外野はシカトしましょう。
ここは脇目も振らずに駆け寄るのが恋する乙女の嗜みです。
たったっと小走り。先輩はぐったりした感じで椅子に座ってます。どうやらかなり詰問された様子。
「ええっと、で、さ。荒木。悪いけど俺は……」
「先輩!」
いきなり断りの言葉から始めようとした口を慌てて塞ぎます。出鼻を挫かれるのは最悪のパターンです。
あの女を引っ張り出すまで間を持たせないと。
「えっ、何?」
大声に反射的な質問を返す先輩。戸惑っているその顔に向け、
「だ─抱いてください」
ぶほわぁっ、って壮絶な音とともにごはんを吐き出すクラスのみなさん。汚いなぁ。
「……は……?」
先輩まで土偶のような顔をしています。少し予想外です。
いくら衆人環視だからって「抱き締めてほしい」とお願いするだけでここまでびっくりするなんて。
緊張で少し言葉は違ったかもしれませんがニュアンスはちゃんと伝わったはずですよね?
「……駄目ですか?」
「そりゃ……駄目だろう……普通……」
驚きすぎたのか、他人事みたいな口振りです。
「じゃあ、いいです。代わりに手を握らせてください」
大きな要求を突きつけて拒ませた後に譲歩して小さな要求を行うと、相手はついそれに応じてしまう、
いわゆる「ドア・イン・ザ・フェイス」の心理テクニックを活かした戦法です。我ながら完璧。
言われるままに差し出してきた先輩の手をはっしと両手で掴み、挟み込むように握ります。
伝わり合う素肌の感触……ふふ、ちょっとだけ親密度アーップ。
あの女もそろそろ来る頃合ですね。
さあ─勝ちに行きましょう。
746:名無しさん@ピンキー
08/10/31 11:55:36 8qLBcCQy
6
「道を開けろ……! 本妻の出頭(おでまし)だ!」
「来たか、全クラスに勇名を轟かせる最強の世話女房!」
「現代に甦った那須与一!」
「浮気者は射殺すまでッ!!」
「見せてくれ、『情けなし』の心!」
「─二年三組、弓道部所属、綾瀬胡桃さん!」
「おおお─!」
相変わらずこのクラスの方々は騒がしいことこの上ありません。
当の綾瀬先輩は自分の名前を呼ばれたのも耳に入らないようで、
奇妙に強張った笑みを顔に貼り付かせて立っています。
手を握られたことがそんなにショックだったんでしょうか。たかだか手ぐらいで。
ふふ、ショックですよね……私だってあなたと先輩が手を繋いでるの見たとき、結構キましたもの。
きっと今、私の手首を切り落としたいとか思ってますよね。あははっ。
「く、くるみ……これ、は……その……」
喉をひくつかせて呻く先輩。なんだか本当に浮気が見つかった亭主みたいです。
むー。不満です。納得いきません。
彼氏でもなんでもないんなら、もっと毅然とした態度を取ってほしいところですよ。
「よーくん、」
つかつかと歩み寄ってきます。私と違って背が高いので迫力ありありです。
なにげない手つきで髪を掻き上げましたが、指先が僅かに震えているのを
動体視力のいい私は見逃しません。
手にはお弁当袋があります。自分のに加え、先輩のも用意してきたんでしょう。
と。いきなりでした。
ゴッ
私の腕を殴りつけたのです。肘のあたりを、こう、無造作にスイングした拳で。
ジーンと痺れます。
思わず力が抜けて離してしまった手─蠅でも叩くみたいに押しのけて、体を割り込ませました。
「おべんと、食べよ?」
にっこり笑って先輩に向かい、私の方はアウト・オブ・サイト。
存在を強制的に無視されてしまいました。いやはや。これは難敵ですね。
でもこれしきで引く気はありません。逆襲してやります。
「先輩、一つお聞きしたいのですが」
「えっ?」
彼はまだ混乱から立ち直っていない模様。
一気にカタをつける必要がありそうです。畳み掛けましょう。
「綾瀬さんは、先輩の幼馴染みであって─別に恋人ではありませんよね?」
ひくり。肘叩き女は片っぽの頬を痙攣させました。
ここで否定されたら彼女は立つ瀬がなくなる……のですが、
「う……えーと……その……」
先輩は言葉を濁すばかりで答えようとしませんでした。
目から「恋人って言いなさい」ビームを放つ綾瀬胡桃の威容に恐れをなしたのでしょうか。
む。あれだけ鈍い先輩ならズバッと確言するって思っていたのにあてが外れちゃいました。
まあいいです。気長に攻めましょう。
勝算はゼロじゃありませんし。
何はともあれ今は。
「─お昼、ご一緒させてもらえませんか?」
チャンスに食いつくのみ。
かくしてギスギスした昼食会に出席することと相成りました。
綾瀬胡桃の放つオーラが重いです。「あっち行け」系の圧力を無言でのしかけてきます。
それでも先輩の心は離したくないからか、顔は懸命に装ってにこやかな表情を浮かべています。
よっぽどつくり笑い慣れしてるんでしょう。倒すべき牝犬ながら、尻尾振りにかける情熱は見事だと
感心させられます。お爺さんの時計並みに何年も休まずパタパタと振り続けてきたに違いありません。
ご苦労様です。もうすぐ千切ってあげますからね、その尻尾。
747:名無しさん@ピンキー
08/10/31 11:56:40 8qLBcCQy
「でね、よーくん、さっきの休憩時間に梓が緑茶噴いちゃって……」
巧みに私の存在を無視しつつ雑談を披露する牝犬。
私は黙々と食事。今ここで先輩に話しかけても、牝犬に妨害されるのがオチです。時間の無駄。
仕掛けるのはもう少し先です。
そろそろ。そろそろ来る頃ですよ……。
「よーくん」
「ん?」
「はい、あ~ん」
出ました! ダダ甘幼馴染み流必殺の型、「食べさせてあげる」の構え!
左手を添え、おかずをグリップした箸を周りの目も気にせず悠然と突き出しています。
この態勢から繰り出される一撃はあらゆる殿方を骨抜きにし、ことごとく幼児化せしめる威力を持つとか。
口を半開きにして「あ~ん」とかほざく女は同性から見ればキモいだけですが、異性には違うみたいです。
というかこの女、相当「あ~ん」慣れしてますね……口の半開き具合が絶妙ですよ。
「う……あ~ん」
逆らっても無駄だと学習している先輩は素直に従っています。
親鳥から餌を受ける雛のように口を開けて。
ああっ……悔しいっ。起こると分かってても間近で見ると毛が逆立ちそうになりますよ、これ!
周りにどんなに人がいても構わずふたりだけのラブ時空─
衆人環視の密室をつくりだす威力は傍から眺めてると「おへえ」とか呻きたくなります。
脳がムズムズする感じで、目の裏が痒くなってきます。
ぐぐぐ。牝犬め、毎日毎日来る日も来る日もこんな不埒の悪行三昧に及んでいたとは。
即座に予定を変更して彼女のお弁当を引っ掴み、窓の向こうへダイブさせたくなりました。
我慢……ここは我慢の子ですよ、麻耶! あなたは我慢のできる人です! 耐えよ!!
己に言い聞かせて必死に自制をかけます。傍らで行われるおぞましい儀式からも目を背けません。
既に彼女が使って唾液が付着している箸を、先輩の唇に触れるよう動かされても我慢。
先輩の伸ばした舌がねっとりと箸や具材に絡みつくのを傍観させられても我慢。
そもそもお弁当自体があの女のつくったもので、材料に腐れた愛情が混じっている件も我慢。
綾瀬胡桃が勝ち誇ったような視線をこちらに投げて含み笑いするのにも我慢─
すみません、やっぱり屠殺していいですか、この牝犬?
「どう? おいしい、よーくん?」
「あー、塩加減がちょうどいいな、うん」
にこっ。照れっ。阿吽の呼吸で遣り取りされる常習犯スマイル&はにかみ。
がああ……っ! 腸が煮えくり返るとはこのことですか……っ!
無理、もう無理! これ以上は耐えられません! 反撃の狼煙を上げさせていただきます!
「せ、せんぱいっ!」
「な、何?」
いけません、緊張と憎悪でつい声が裏返ってしまいました。
コホン、と一つ空咳をしてから。
「……はい、あ、あ~ん……」
やられたんだからやり返します。私も先輩に食べさせてあげるのです。
座高でも差がありますから、ちょっと腰を浮かせていますよ。手もプルプルですよ。
恥ずかしいせいで口も半開きどころか四分の一開きですよ。
ええきっと傍から見れば不恰好で無様ですよ。
でも私だって必死なんです。必死になってる乙女を笑わないでいただきたい。
摘むは丹精を込めてつくりあげた、彩りも鮮やかな塩茹でブロッコリー。
今、先輩の口元へ参ります……!
と見せたのはフェイントですよ、綾瀬胡桃!
「…………ッ!!」
一瞬物凄い形相を覗かせた牝犬めが机の下から蹴りつけてきます。
はははっ、引っ掛かりましたね、罠とも知らず!
あらかじめ読んでいた私は難なく避けます。
「あっ!?」
そしてバランスを崩したかのようにフラついてみせるわけです。
少しだけ持ちこたえるフリをしてから先輩めがけて倒れ込みます。
ここで先輩が避けたりしたら私はただのイタい子というか椅子に激突して痛い目見る子になりますが、
先輩は避けません。これには確信があります。はじめから分かっていて賭けたのです。
「わっ……荒木!」
748:名無しさん@ピンキー
08/10/31 11:57:49 8qLBcCQy
ほうら、狙い通りに腕の中へぽすん、です。
このときばかりは小さくて軽くて受け止めやすい我が身を幸いに思うことしきりでございます。
一連の所作においてもグリップしたブロッコリーを取りこぼさなかったのは執念の為せる技。
抱き止められ、見上げる形になった私はすかさず箸を先輩の口に向け、食べてもらいます。
「どうですか?」
「もぐっ……ああ、これも塩加減がなかなか……ハッ!?」
殺意が篭もった視線に気づいて振り返る先輩。
綾瀬胡桃は慌てて嫉妬まみれの表情を消しますが、一瞬チラッと見えたはずです。
ふふ、先輩、あれがあの女の本性ですよ。付き合うには重過ぎる奴って分かりますよね。ふふ。
今度は私が勝ち誇る番です。お箸を持ったまま先輩の腰に腕を回しギュッと抱きつきます。
鼻孔に伝わってくる汗の混じった匂い。これが先輩の体臭─嗅覚に刻み込みました。
容姿のせいか「気紛れな猫」と言われたりする私ですが、むしろ心性は犬に近いと自覚しています。
匂いには敏感なんです。今後はこの匂いを「ご主人様」と認識して帰巣する所存にございます。
こっそりしたつもりでしたが鼻をスンスンさせている私の仕草に綾瀬胡桃は気づいた模様です。
敵もさる犬。「匂い」に関しては鋭敏なんでしょう。マーキングされることも警戒してるはずです。
「よーくん……ちょっと、聞いてくれるかな」
いよいよ腹に据えかねたのか、彼女は重々しい口振りになりました。
ゴクリと喉を動かす先輩。周りの方々も固唾を呑んで見守っています。
「わたしね、よーくんのことが─好き」
「愛してる。ずっと、ずうっと昔から。口にするのは初めてだけど、気持ちは最初からあったよ」
「だから、ね。お願い。早くその目障りな子をフッてくれないかな─?」
ああ……言っちゃいましたね。
いいんですか、綾瀬さん。覆せませんよ。
749:名無しさん@ピンキー
08/10/31 11:58:20 8qLBcCQy
脱幼馴染みを目指す牝犬から宣戦布告が為されてより七時間後。
夕食も終わって寛いでいるところです。
遂にあの女との全面戦争が始まったとなると気持ちもそわそわしがちですが、
適度な弛緩もなければ勝ち抜けません。気を張るばかりがすべてではない。
肩の力を抜いたまま携帯を取り出し、先輩の番号へ掛けます。既に短縮に登録済。
でも掛けるのはこれが初めて。先輩の方には見知らぬ番号が表示されているはず。
名乗らなくては、と思うのにドキドキして第一声がなかなか出ません。初TELって緊張しますねー。
『……荒木か?』
「な、なんで分かったんですっ!?」
『蔦が……いやなんでもない』
「はぁ」
なんか別の意味でドキドキしました。
『ていうか、なんでお前が俺の番号知ってるんだよ?』
「秘密です」
『えっ、秘密?』
「はい」
『秘密って、え?』
「秘密です」
断固として口を割るつもりはありません。
『まあいいや……で、どうしたんだ』
「単刀直入に言うとですね、私の告白の返事を延ばしていただきたいんです」
『延ばすって、なんでまた』
「牝い……コホン、綾瀬胡桃さんまで告白したせいで事態がもつれているからです。
仮に先輩が私を受け入れてくれたとしても今の段階で彼女が聞き分けてくれるとも思えません。
必ず荒れます。既に荒れ気味ですが、もっと荒れること請け合いです。
少し時間を置いて私たちの気持ちが整理できるまで保留すべきでしょう。
でないとこの三角関係は血を見ることになりかねません」
750:名無しさん@ピンキー
08/10/31 11:58:50 8qLBcCQy
『あのな、荒木。気を持たせないように言っておくが、俺はお前のこと……』
「先輩に恋愛感情がないのは承知してます。でもですね、考えてみてください。現在の状況はほぼ二択に
なっているんです。つまり、先輩が私をフッたら自動的に綾瀬さんと付き合うことになりますね。
『あの子を捨てたってことはわたしを選んでくれるのね! 嬉しい……!』
って彼女は絶対に言ってきますよ」
これまでは想いを口にしなかったので曖昧な関係でもすんだわけです。
しかし、一度明言してしまったからには彼女も後に引けません。吐いた唾は飲めないのです。
そう仕向けることが私にとって、か細い勝機を掴むことに繋がる─
「私を選べとは言いません。先輩に考える時間をつくってほしいだけです。
私をフッたせいでなし崩しに綾瀬さんと付き合うことになるとか、
そうした流れにはなってほしくありません。消去法ではなく、あくまで先輩が自分で考えて
どちらを選ぶか決断する、そのための猶予として返事を保留していただきたい」
逡巡の時間は一分とかかりませんでした。今日のこともあったからでしょうか。
彼も、綾瀬胡桃には危惧すべきところがあると分かったみたいです。
『……分かった。それでいいんだな』
「ええ」
二、三言交わした後、通話を切りました。途端に静寂が身を包みます。
なんて淋しいんでしょう……先輩の声が聞こえなくなっただけで、こんなにも。
ふふ、強く持とう、強く持とうと願っていても、剥き出しの心は脆いみたいですね。
私は強くありません、ちっとも強くありません、強いフリをしていただけです、痛感せざるをえません。
一人だけの体温がひどく心細いです。殻を脱いでしまったせいか寒さが芯まで沁みてきます。
せんぱい。はやく、あなたが私の殻になってください─
情けない欲求と、それを許そうとする憐憫の中で、静かに頬を濡らしました。
私はこの弱さを肯定し、強さに変えられるまで、負けるつもりはありません。
たとえ相手があの綾瀬胡桃であっても。吐いた唾が飲めないのは私もです。
一度孵化してしまったからには。
殻の中へ戻ることなどできません。
7
両手に花と人は言うが。俺にとっては花の牙に狙われ蔦に絡みつかれる秘境の密林な日々だった。
随分とこちらにとって都合のいい提案をしてくれた荒木は、明くる朝に俺ん家を強襲した。
夜中に突然電話を掛けてきといて、そのうえ自宅まで押しかけてくるとは。夜討ち朝駆けの精神か。
チャイムの音に「は~い」と玄関のドアを開けた母は、そこに外国人風の少女を見てたまげたことだろう。
え、なに、宗教の勧誘? こんなちっちゃい子が? みたいな。
彼女が息子の後輩と聞いて腑に落ちないながらも俺を呼びにきた。
着替えもまだだったせいで対応に困り、「ちょっと待たせてやってくれ」と伝えたら母は気を利かせて
しまったらしく「じゃあ、上がってもらいましょう」という運びに。
そうして朝の食卓の席に荒木麻耶が鎮座ましましている。湯気の立つコーヒーを前に行儀良く、しかし
物怖じせず。俺や両親の方がよっぽど落ち着かない。
「え、えーと、あの、その、なんだ……」
動転したのか、父は目をキョロキョロさせながらあらぬことを口走った。
「きゃんゆーすぴーくいんぐりっしゅ?」
金縛りの呪文。
ツッコミどころが多すぎて俺と母は絶句した。
「いえ、英語は不得意でして。日本語なら話せます」
澄ました顔で答える荒木。目の前のコーヒーには手をつけない。
と、そのときだった。
「ごめんください!」
玄関のドアを荒々しく開けた胡桃が言い放った。姿は見えないが声で分かった。
お隣さんだけあって両親ともに面識がある。これはさすがに遇しやすく、いささかホッとした面持ちで
751:名無しさん@ピンキー
08/10/31 11:59:52 8qLBcCQy
「あら、胡桃ちゃん、いらっ……」「お邪魔します!」と迎え入れられた。
普段、家に上がり込むことなんてないのに。やはり荒木の存在を感知したからか?
胡桃の情報網はいったいどうなってるのだろうか。
ズンズンと食堂に入ってきた胡桃は荒木を睨みつけた。父が「ひっ」と呻いて新聞紙を取り落とす。
涼しげな目で見詰め返す荒木。すぐに興味なさげな仕草で目を逸らし、湯気の減ったコーヒーに
ドボドボと牛乳を注いで啜った。ひょっとしてこいつ猫舌なのか。
「おばさん、わたしの分もコーヒーお願いします」
言うや否や椅子を引き、座り込む。このまま粘って牽制を続けるつもりらしい。
意識が完全に荒木へ向かっているせいか隠喩は何も見えない。そのことを幸いに思う。
母は新しいコーヒーを用意しながら「あのね。母さん、二股はイケナイと思うなっ」と叱るような
口調で囁いた。父も新聞を拾いながら頷いた。俺は半笑いで否定した。
人間は追い詰められると半笑いになるらしい。
できあがったコーヒーを渡されるや、胡桃はそのまま飲み始める。ブラック無糖、
そして地獄の熱さがこいつの好みなのだ。辛いものは苦手なくせに。どんな舌をしているのやら。
会話は絶えた。そらぞらしく話題を振る気にもなれず淡々と食事を取った。
素で拷問みたいな朝だった。
登校時間が近づいてきたので三人揃って外に出る。母は目で「ガンバレ!」と伝えた。いや何に頑張れと。
歩き出す寸前、さっと右手を握られる。指と指とが絡み合う。胡桃恒例の「手繋ぎ刑」だ。
やられたことのない奴には分からないと思うがこれは刑と呼びたくなるほど恥ずかしい。
見せつける意味が強いのだろう、食虫花が満足げにゆらゆら揺れている。
「よーくん、遅刻しちゃうよ。要らない子は道端にほっぽっといてガッコいこ?」
満面の笑顔で言えるあたり、肌寒い。
いや、胡桃だって昔はいい子だったのだ。気遣いがあった。配慮があった。俺が他の女子と遊んでいても
面罵せずそれらしい理由をつけてから追い払ったり俺の手を引っ張って連れ去ったりしていた。
「もう、よーくん、メーッだよ」と冗談っぽく抓るに留めた。割合痛かったけど。花もよじれてたけど。
……あれ?
なんか本質的には変わってなくない?
気づいてちょっと憂鬱になった。
一方、俺が胡桃と手を繋いでいる間もぐるぐると蔓を巻きつけてくることに余念がなかった荒木は、
この攻撃にもへこたれていない様子だ。
「先輩、鞄をお持ちします」
申し出るというより通告だった。巧みに取っ手から俺の指を引き剥がしてもぎ取る。
持ち替えて左手に保持した。荒木自身の鞄は背負う方式になっているから両手フリーなのだ。
ランドセルじみて余計に幼く見えるってことは、言わない方がいいんだろうな。
「あっ、こんなところに先輩の空いた手が。僭越ながら握らせていただきます」
わざとらしい言い草とともにギュッとしてきた。小さな手だ。しかも白くてすべすべ。
俺のと対比してみるとそのへんがいっそう際立つ。胡桃とはまた違った心地良さだ。
あ、ヤバ、ちょっとドキドキする……
752:名無しさん@ピンキー
08/10/31 12:00:23 8qLBcCQy
「よ・お・く・ん?」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ! 軋むっ、軋んでるっ、骨がっ!」
絵に描いたような嫉妬っぷりだなぁ、おい! 顔は笑ってるけど目が笑ってないし口角引き攣ってるし
食虫花さんもプンスカ湯気を発してるぞ。えらくコミカルな隠喩だ。
そろそろこいつに名前つけたくなってきた。
「綾瀬さん、そういう怒り方はみっともないと思いますよ」
猫系のスマイルを浮かべながら荒木が嘯く。しかし、こいつもこいつでギュウッときつく握ってきてる。
おいおい、実はお前も内心胡桃と一緒なんだろ……蔦の絡まり方が尋常じゃないぜ。
なんかもう、他人事ならげらげら笑って指をさしたくなる情景だった。
「あはっ。ねえ荒木さん、さっさとよーくんから手を離してちょうだい?
よーくんの手、汚れるじゃない」
「ふふ。お断りです。あなたが離したらどうですか。先輩、歩きにくそうですよ」
それぞれ、自分が優位であることを示そうとする威嚇的笑声を交わす。
「えっとな、両方離してくれるとありがたいんだがな」
提案にいらえはない。
隠喩が消えている─どうやら本格的な睨み合いに発展してきたらしい。
ふたりに挟まれながらふたりに無視される形となった俺。
それは蔦や食虫花からも解放される、奇妙な安息だった。
「げええ、洋平が本妻と愛人を並べて仲良くおてて繋いでる!」
「なんてことだ、3Pへの黄金フラグか!?」
「いかん、このままでは洋平のハーレムが建立されてしまう……!」
安息はすぐに掻き乱された。通学路なのだ。登校時間なのだ。人目はある。
注目されるのは当たり前だった。
ああ、もう、どうしよう。
そうだ。
諦めよう。
即座に無の境地へ達することができた俺は我ながら見事なヘタレだった。
「そばに女の子たちがいなかったら石を投げてやるのに」
という目で睨めつけて来る男子のことごとくをスルー。
下足場まで来ればもうゴールだ。胡桃とはクラスが違う。荒木とは学年からして違う。
手を離した二人は残された僅かな時間を使ってガンをつけ合い、
最後に何か語りかけるような目をして去る。
ようやく、平穏な朝が訪れた。
すぐに級友たちに囲まれてボコボコにされたり詰問されたりする儚い平穏だったが。
心休まるのは授業中だけ。高校生は「勉強なんてやってられるか」とほざくのが本分なのに泣ける話だ。
休憩時間に入るとすかさず胡桃が乗り込んでくる。少し遅れて荒木も。
距離と足の短さが反映されてるのか。
ふたりはがっちりと俺の両脇を固め、互いに微笑みと毒の利いた言葉で牽制し合い、
たっぷりと睨み合ってからチャイムの音で帰っていく。
ちゃんと押しかけないと相手に抜け駆けされるとでも思っているように、
毎時間毎時間律儀に同じことを繰り返すのだ。俺は恐怖のサンドイッチに心臓が縮こまって
「あ……その……」「う……えと……」など言葉を濁すしかない。ヘタレ人形だった。
級友たちの好奇心と嫉妬心も最高潮だ。二人が帰ってから授業が始まるまで、ほんの一分足らずの間に
俺に罵詈雑言を投げかけたり制裁を加えたりと忙しない。おかげで心と体がボロボロだ。
世界中が敵になったと誇大妄想に陥っているうち、昼休憩がやってくる。
およそ学校生活において誰もが待ち詫びるオアシスの時は、しかし俺には殺伐たるラブコメ地獄だった。
三組側の戸から胡桃が。階段側の戸から荒木が。僅かな時間差でやってくる。
ふたりとも、お弁当を二つ持って。花と蔦が嵐をスパークさせながら。